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1997-06-05 第140回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月五日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 田村 秀昭君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        科学技術庁原子        力安全局長    池田  要君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        外務大臣官房審        議官       西田 芳弘君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○包括的核実験禁止条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  包括的核実験禁止条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 猪熊重二

    猪熊重二君 今回の包括的核実験禁止条約は、従前のいわゆる部分的核実験禁止条約地下における核実験を除外していたのに対し、地下をも含むすべての空間、水中における核実験禁止を企図するものであります。世界における唯一の原子爆弾被爆国としての我が国立場としては、特に本条約の早期の成立と効果的な実行を強く求めたいと思います。  ところで、この条約は、核実験禁止実効性を担保するための検証制度として具体的に次の四点、すなわち、一、国際監視制度、二、協議及び説明、三、現地査察、四、信頼醸成についての措置規定しています。  ところで、検証制度の四つの中で三番目の現地査察の問題は、我が国国民権利義務にも直接かかわりを持つ重要な内容をなしていると思いますので、現地査察に関連して国民権利義務側面から若干質問をしたいと思います。ただ、現地査察に関する条約規定のうち、いわゆる包括的核実験禁止条約機関における内部的な意思決定手続等についての質問は省略させていただいて、実際に査察を行うという段階になってから後の問題について伺いたいと思います。  先ほど申し上げた条約機関我が国の領土内の地域に対し現地査察を決定した場合、機関としてはどのような立場の人から我が国のどのような国家機関現地査察通告がなされるのか。また、その場合に予想される通常の通告内容の概略と、通告現地査察の時間的間隔についてどのくらいが考えられるのか、質問したいと思います。
  4. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今の御質問に対しまして、基本的に条約規定に基づきまして御返答を申し上げたいと存じます。  現地査察執行理事会により承認されました場合には、条約の第四条55の規定がございまして、この規定におきまして、事務局長は「査察団入国地点への到着予定時刻の二十四時間前までに、被査察締約国に対して査察通告する。」、このようになっております。  この被査察締約国と申します場合には、当然のことながらこの締約国関係機関通告を受けることになると思いますけれども、その関係では条約の第三条の4がございます。第三条の4において規定をしておりますのは、「締約国は、この条約に基づく自国義務を履行するため、国内当局を指定し又は設置し及び、この条約自国について効力を生じたときは、その指定又は設置について機関に通報する。国内当局は、機関及び他の締約国との連絡のための国内連絡先となる。」、このようになっておりますので、我が方といたしましても国内当局というものを指定することによって事務局長からの通告を受ける、このようになろうかと存じます。  さらに、査察通告につきましては、これは議定書の第二部43に規定がございまして、事務局長が「行う通告には、次の事項を含める。」、こうなっています。「(a)査察命令 (b)査察団入国地点に到着する日及び予定時刻 (c)入国地点に到着する手段 (d)適当な場合には不定期航空便のための外交上の許可番号 (e)査察区域における使用のために査察団が利用することができるよう事務局長が被査察締約国に要請する装置の一覧表」、こういうことになっております。  さらに、この(a)の「査察命令」といいますのは、同じ第二部の42に規定がございまして、「現地査察命令には、次の事項を含める。」ということで、例えば査察団長氏名でありますとか査察団構成員氏名査察区域位置、こういうふうなものが入っている、こういうことになっております。
  5. 猪熊重二

    猪熊重二君 もう少し簡潔に答えてください。今あなたせっかく答えたけれども、私は具体的にその機関から通告を受ける機関はだれなんだと聞いているのに何も言ってない。連絡機関を設けるとか、そんなことは条約に書いてある。私が聞きたいのは、国内機関のどこが直接に担当する部署かということを聞きたいから聞いただけなんです。そんなことをやっていたら三十分しかないのに全然聞けやせぬ。  それから、いずれにせよ、通告を受けた国内機関査察対象である私人に対してどういうふうに査察に行きますよということを通告するんですか。
  6. 池田要

    政府委員池田要君) 今回のCTBTにおきます査察につきましては、その担保のために原子炉等規制法改正することにしてございます。国民に対する通告方法につきましては、この改正案中には特に具体的には定めておりませんけれども、条約の性質上緊急性を要するといったことから、外務省から連絡を受けた場合に科学技術庁からとりあえず電話もしくはファクスで当該私人に対しての連絡を直接伝達することになると考えております。
  7. 猪熊重二

    猪熊重二君 ところで、査察対象として地域が選ばれた場合に、査察団は、公有地の場合はよろしいんですけれども、私人土地だとか私人建物その他の工作物の場合、具体的にどういうふうな行為ができるんでしょうか、あるいは行為をすることが予想されるんでしょうか。項目だけでいいから答えてください。
  8. 河村武和

    政府委員河村武和君) 非常に簡単に申しますと、例えば、位置確認をしました後、写真撮影放射性水準の測定、環境試料の採取、分析、余震観測、そういうものがございます。さらに、いろいろな制限がございますけれども、地震観測、磁場の調査、掘削というようなことも予定されております。さらに、建物その他の工作物へのアクセスについても執行理事会承認を得まして認められる、こういうことになってございます。
  9. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、要するに私が言いたいのは、外国人によって構成されている査察団日本に来て私人土地建物をいろいろ査察行為を行うといった場合に、我が国国家機関はこれに対してどういう立場にあるんでしょうか。簡潔に答えてください。
  10. 河村武和

    政府委員河村武和君) 査察団現地査察に際しましては、我が国は、現地査察が行われている間の締約国権利義務というものを規定していることに基づきましていろいろな制限ということも可能でございますけれども、いずれにいたしましても、査察団が任務を遂行している間、自国代表者査察団に随行させまして、当該査察団が行うすべての査察活動に立ち会わせる権利を有しております。
  11. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、査察団のほかに我が国国家機関立場の人がそれに随行すると言うけれども、一緒に行ったりあるいは査察に立ち会うという場合に我が国国家機関はどの程度の権限を持っているんですか。
  12. 河村武和

    政府委員河村武和君) これも条約に種々規定してございますけれども、現地査察が行われている間の被査察締約国権利といたしましては、査察団に対して査察計画の修正を勧告する権利査察区域内において査察目的関係しない機微に係る設備及び場所を保護し並びに査察目的関係しない秘密の情報の開示を防止するための措置をとる権利アクセス制限区域の設定などを含む措置、さらに査察団が撮影した写真や採取した試料を検査する権利、こういうものがございます。
  13. 猪熊重二

    猪熊重二君 そこで、私は伺いたいんだけれども、なぜ我が国国民国家機関とは無関係な、日本人も入っているかもしれませんが、外国人によって構成されている査察団のこのような行為国民が受忍しなければならない義務というのはどこから出てくるんでしょうか。
  14. 河村武和

    政府委旦河村武和君) 本条約について申しますると、この条約は第三条におきまして、「自国憲法上の手続に従いこの条約に基づく自国義務を履行するために必要な措置をとる。」ということを締約国義務づけているところでございます。この条項との関係におきまして、現在私たちが承知している限りにおきましては、先ほど説明がございましたけれども、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案というものについて国会にお諮りをしていると聞いておりまして、その法律案の中で現地査察受け入れのための関連の規定が置かれている、この規定に基づいて現実的な査察というものが行われる、こういうことになろうと考えます。
  15. 猪熊重二

    猪熊重二君 国民が、日本国という国を形成して、そしてその形成された日本国国家機関支配を受けなきゃならぬということはわかるけれども、何がゆえに、外国人によって構成されているような査察団土地に立ち入り、建物に立ち入り、あるいは土地を部分的にしろ採堀し、というふうなことを受忍しなければならない義務はどこにあるかということについて、今、審議官原子炉規制法という法律によるから可能なんだ、こうおっしゃるけれども、じゃ法律をつくればどんなことでも国民国家機関以外の機関権力的行使受け入れなきゃならぬということになるんですか。
  16. 西田芳弘

    政府委員西田芳弘君) 一般論として御説明するのはなかなか難しゅうございますけれども、本件条約の定めます現地査察を念頭に置いてお答え申し上げますれば、本件条約実施に当たりましては、先ほど答弁申し上げましたとおり、政府としては原子炉等規制法改正によって確保することが適当であるというふうに判断して今国会において御審議いただいているわけでございます。  CTBT機関査察団による査察につきましてはCTBT条約の定める範囲内において査察行動が行われるということでございまして、先ほど原子炉等規制法改正におきましてもCTBT機関が派遣するものの自由な活動を許している、決して何をやってもいいということになっているわけではないというふうに承知しております。
  17. 猪熊重二

    猪熊重二君 いや、私が聞いているのは、日本国国家権力支配国民が受けるのは当然であるとしても、何ゆえに国家機関でない国際機関権力的支配国民が受忍しなければならないのかという根拠を聞いているわけです。それに対して、先ほど審議官法律ができたからだとおっしゃるから、それじゃ法律をつくればイタリア警察官日本国民住居にまで自由に入り込んでこれるのか。法律さえつくれば、国民日本国国家権力以外の権力に服従しなきゃならぬ理由はどこにあるんだということを伺っているんです。
  18. 河村武和

    政府委員河村武和君) 国民のいわゆる権利及び義務というものにかかわる問題につきましては基本的に憲法という基本的な枠組みの中で、これを制限するときにおいては法律によって行われる、こういうことになっていると考えております。そういう意味におきまして、憲法の枠内で認められるような形で権利義務制限するという場合に、法律でもってこれを行うことによって国民権利義務というものが規定されると。そういう意味で、このCTBTにつきましても原子炉等規制法改正によって査察というものが行われるようにするということにしているということでございます。
  19. 猪熊重二

    猪熊重二君 いや、私が今質問しているのは、私もよくわかっているから質問しているわけじゃないんです。そうじゃなくて、こういうふうに国際的な広がりというものが多くなってきている。例えば、今回の査察団のようなもの、あるいはこれからもいろいろな条約等締結された場合に、直接的に国民義務を負担させるような条約をつくった、その条約の施行のために必要だということで国内法さえつくれば、外国、要するに日本国家機関以外の機関権力的行使国民が受けなきゃならないということの理由はどこにあるのかと聞いているんです。  先ほども申し上げたように、じゃ法律さえつくれば、イタリア警察官国民住居に直接捜索に来るとか、アメリカの麻薬取締官麻薬取締条約に基づいて直接来れるんだなんというふうなことになったら、国民は言葉もわからぬ外国人権力的支配になぜ服しなきゃならぬのかということの合理性というか根拠をもう少し明確にしなきゃならぬでしょう。  憲法に書いてあるように、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの」であるとなっているんです。国民信託によって日本国という国家を形成し、その国家権力のもとに服従するというなら、それは自律性の問題なんです。ところが、外国機関日本国国家権力以外の権力に服従するとかしないとかということは現行の憲法原理からは直接的に出てこないと私は思うから聞いているんです。
  20. 西田芳弘

    政府委員西田芳弘君) 憲法との関係でございますけれども、先ほど答弁の中に触れました憲法九十八条二項におきまして「日本国締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」というふうに定めております。その趣旨からいたしまして、我が国締結いたしました条約につきましては国内法としての効力を持つというふうに考えられます。  ただ、先ほど先生ちょっとお触れになりましたが、条約規定国内的に直接適用することができるかどうかにつきましては、それぞれの条約趣旨目的内容文言等を勘案して、具体的場合に応じて判断されるものであるというふうに考えられるわけで、今般の条約につきましては、国内において実施するに当たりまして国内法を整備することが必要であるというふうに考えて、そのような措置を講じようとしているわけでございます。  確かに、本件条約というのは査察受け入れという形で国民に負担を負わせる、あるいは国民義務を課す、国民権利を制約するという側面がございますけれども、その条約締結に当たりまして、国会承認が得られ、また関係国内法につきまして議決が得られますれば、それを国内的に実施することにつきまして法的な問題はないというふうに考えております。
  21. 猪熊重二

    猪熊重二君 例えば、住居不可侵というのは憲法上の権利なんです。日本国国家権力が個人の住居に入る場合には、憲法の三十五条に、何人もその住居について侵入を受けることのない権利は、要するに裁判所令状がなきゃ侵されないと書いてある。これは、裁判所令状も何もなしに、しかも日本国家権力とは別個な権力がどやどや入ってきて査察するということになるわけです。  そうした場合に、国民は、憲法上保障されている権利よりも、国際機関だということによって憲法上の保障さえ、何もこれは犯罪捜査という意味じゃないけれども、目的は違うけれども、家の中へ入り込んでこられるという意味では、住居不可侵制限されるという意味では同じなんです。その辺のことをもう少し検討しておかないと、これからいろんな条約が出てくる。いきなり直接国民にみんな義務を課するというふうなことの根拠対応等についてもう少し外務省としても検討しておく必要があるんじゃなかろうかということで質問しているわけです。  次の質問です。  要するに、査察団には条約規定によって外交特権が認められている。外交特権が認められているんですから、まさか我が国法上の公務員というわけにはいかぬと思いますが、まずこの査察団はいわゆる国法上の公務員に当たるんですか当たらないんですか。
  22. 河村武和

    政府委員河村武和君) 査察団構成員はいわゆる国際機関でございます包括的核実験禁止条約機関に対してのみ責任を有する国際公務員でございますので、我が国国内法令上に言います公務員には当たらないと考えております。
  23. 猪熊重二

    猪熊重二君 時間がないんで、民事の問題だけ伺う。  査察団が、故意にということはほとんどあり得ないけれども、過失によって国民に対し損害を与えることはないとは言えないわけなんです。そのような査察団不法行為によって損害をこうむった国民権利保全権利回復はどのように法的に保障されているのか。先ほど申し上げたように、特に査察団外交特権を有するということの結果として、これらの者に対する直接的な裁判権は行使できないと私は思うんだが、要するに査察団不法行為によって損害をこうむった国民権利保全はどのように法的に規定されますか、処理されますか。
  24. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今申されましたとおり、一般的に査察団構成員不法行為を行うような事態が生ずる可能性というのは極めて低いと思われますけれども、仮にこのようなことが生じました場合に、もろもろの特権免除と並行いたしまして、議定書第二部の30で規定しておりますことは、「事務局長は、査察団構成員に対する裁判権からの免除が正義の実現を阻害するものであり、かつ、この条約実施を害することなくこれを放棄することができると認める場合には、当該免除放棄することができる。」と、このように規定しております。  この規定に基づきまして、我が国といたしましては、事例条約上の要件を満たすと考えられる場合に裁判権からの免除放棄というものを事務局に対して強く働きかけていくと、こういうことになろうかと存じます。
  25. 猪熊重二

    猪熊重二君 それは、そういうことがあって、事務局長裁判権放棄するということを決めてくれりゃいいけれども、決めてくれない場合はどうするんですか。
  26. 河村武和

    政府委員河村武和君) 条約上、我が国として査察員に対して裁判権を提起することはできないということでございます。
  27. 猪熊重二

    猪熊重二君 だから、そうしたら査察団員に対する直接的な損害賠償の請求はできない。そうかといって、先ほど言ったように、査察団日本国法上の公務員じゃないんだから、いわゆる国家賠償も請求できない。何が請求できるんですか。
  28. 河村武和

    政府委員河村武和君) 繰り返しになりますけれども、基本的には先ほど規定に基づきまして裁判権放棄というものを強く働きかけていく、こういうことになろうかと存じます。
  29. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたが言っているのはわかるよ。放棄を働きかけたけれども、事務局長や向こうがいろいろ相談した結果、放棄できぬと言った場合にどうするかと私は聞いているんだ。
  30. 池田要

    政府委員池田要君) ただいまの御質問でございますけれども、今回の査察につきましては、先ほど申し上げましたように、こういう査察が行われます場合には、原子炉等規制法に基づきまして我が国政府職員が立ち会っているということになるわけでございまして、その場合に仮に私人損害をこうむったといったことを仮定しますと、その立ち会う政府職員自身がそれをいかにして防ぐことができたかどうかといったことにも及ぶかと存じます。  そうした場合には私人賠償を請求するといったことも観念的にはあり得るものと考えられますし、その場合には査察を受けた者が国家賠償といったことで請求するということ自身も個別の事例に応じまして司法ということから判断されることがあり得るかと考える次第でございます。
  31. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の答弁は非常に苦しい答弁だと私は思うんです。  要するに、先ほど私が伺ったのは、日本国家機関査察団に対してどういう立場にあるかと。随行的に同行、立ち会いできると。しかし、査察団行為を随行している日本国家機関公務員行為とみなすようなことは原則的にできないでしょう。できないとすれば、結局このままでいったら、仮に損害を受けた国民というのは、例えば査察団が現場へ行くための車を運転したって、人間のやることだからいつ事故を起こすかわからぬ。あるいは、現地へ行っていろいろ不必要なところへ入り込んでいって、悪意でないにしても、土地を採掘するとかどうとか、いろんな行為をやって何らかの損害を受けるということの可能性というのは考えておかなきゃならぬでしょう。  そういう被害を受けた国民権利保全として何が考えられるかといったときに、外交特権を与えられている査察団の団員に対しては何らの権利行使もできない。そうかといって日本公務員じゃないんだから国家賠償も請求できない。じゃ損害を受けた国民はどうするんだ自動車事故一つにしてみても。というぐらいのことをよく考えてやってもらいたいということを私は言っているわけなんです。  しかも、査察団が来るのが悪いとかそんなことじゃなくて、そういう国際機関が来て、今回の査察を仮に日本国に対してするといった場合に、できる限りしっかりやってもらわなきゃならぬけれども、しかしそのことの理由によって国民権利保全の方策がないというようなことじゃ困るんです。もう少し国民に目を向けたことも国内法的に考えて処置しておいてもらわなきゃ困りますよということを申し上げておきたいんです。  だから、この件だけだったら日本査察が来ることもないだろう、査察によって事故が起きることもないだろう、まあほとんどないでしょう。しかし、これからも似たようないろんな国際的な機関受け入れということがいろいろ出てくる可能性がある、国際社会の進展によって。だから、そうなった場合に、国際間の問題だというそちらの方にだけ目を奪われるのではなくて、一人一人の国民になぜ外国人のこんな査察受け入れなきゃならぬのか、それによって生じた損害はきちんと補償されるよというふうなところまで行政としては目配りしてやってもらわないと困りますよということを申し上げたかったわけです。  今、原子力安全局長公務員行為にみなしてなんて言うけれども、なかなかそんなの難しいよ、それは。と思うけれども、これ以上あれしても意見ですから、以上で終わります。
  32. 高野博師

    高野博師君 それでは、CTBTについて外務大臣にお伺いいたします。  このCTBTの歴史的なあるいは軍縮外交史上の意義及び日本外交にとってどういう意味があるのか、簡単で結構でございますので大臣にお尋ねいたします。
  33. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 核軍縮を進める上におきまして、核実験禁止というものは核兵器のない世界を実現するための措置として国際社会全体にとって大変大切な課題であると考えるわけでございます。そういった核実験禁止につきましては既に昭和三十八年にいわゆる部分的核実験禁止条約というものができておりまして、地下核実験を除くものにつきましては今禁止されておるわけでございますが、今回CTBTが作成されたことによりまして、地下核実験も含めてすべての核実験、核爆発が禁止されることになります。そういった意味で、核軍縮の問題がさらに一歩進むことになるわけでございます。  それからまた、今回の条約におきましては非常に厳格な査察措置規定されておるところでございまして、そちらの方からも実効性も確保されるということでございまして、全体として見まして核兵器のない世界に向けた歴史的な一歩であるというふうに評価する次第でございます。もとより、これですべてだとは思っておりません。
  34. 高野博師

    高野博師君 このCTBTについては、核兵器の垂直拡散、それから核保有国の核軍拡あるいは水平拡散、核兵器保有国数の拡大を防ぐ、それと核兵器の研究開発にも歯どめをかけるというねらいがあると言われております。大臣が今言われたように、核のない世界を目指す、核軍縮あるいは恒久平和に向けての大きな第一歩で画期的なものだということは言えると思いますが、いろいろ問題が、あるいは課題があると思います。  その中の一つは、核保有国が爆発なしの核実験を続ける道が残されている。したがって、五つの核保有国のヘゲモニーを維持させるだけだという意見もあります。また、核兵器の廃絶時期が条文に盛り込まれていない。これはインドが反対した理由の一つでありますが、そのほかにインド等四十四カ国の批准が条約の発効条件とされている、こういう問題があります。  そこで、核保有国の核独占を前提にした上で核兵器開発を監視する機能を持つのが核保有国側のCTBTのねらいとの指摘、すなわち新たな核保有国の出現を防ぐという点では五カ国の利益が一致していると言われておりますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  35. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、この条約によりましても既に核を保有している国の核というものがなくなるというものじゃございません。そういった意味では、とらえ方によっては委員が今御指摘をされたような見方もできないことはないと思いますけれども、ともかくこれ以上の核保有国の広がりを防ぐという意味でそれなりの意味はあると思う次第でございますし、また核保有国自体による核軍縮のいろいろな努力というものも現実に行われておるわけでございます。  そういったものと相まって、これから国際社会全体として核兵器のない世界へ向かって努力を続けていくならば、今御指摘になりましたようなある意味ではこの条約の限界というものも乗り越えて核廃絶へ向かっての動きにつながっていくんじゃないか、またそのように努力をしなくちゃいけないと考える次第でございます。
  36. 高野博師

    高野博師君 それでは、もう少し具体的に、CTBTが真の全面禁止条約であるためには、核爆発だけではなくてコンピューターによるシミュレーション、あるいは流体動力試験とか未臨界実験、あるいはレーザーを使っての高エネルギー・密度試験とか粒子加速を使っての兵器効果試験、こういう核兵器の改良、開発に導くすべての実験を禁止するものでなくてはならない、そうでなければ実質的には骨抜きになるとの批判がありますが、これについてはどうとらえておられますか。
  37. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、今回の条約におきましては未臨界高性能実験等は規制対象になっていないわけでございますけれども、未臨界高性能実験というのは既にある核弾頭の安全性そして信頼性を確保するもの、そういうものとして行われているものと理解しております。  また、もう一つ御指摘のございましたコンピューターシミュレーションにつきましては、この条約の交渉の過程においてもいろいろ議論はあったわけでございますけれども、現段階におきましては有効な検証手段が残念ながら存在しない、こういった事情等もございまして今回のCTBT禁止対象とはならなかったわけでございます。  そういったことを考えますと、まず現段階においてそういったものがお互い規制対象にはなっていないとしても、そのことだけをもって本条約趣旨がいわば骨抜きになったとは言い切れないんじゃないのか。むしろ、現状を踏まえながら、一歩でも二歩でも核廃絶に向かって進めていく努力というふうにとらえているところでございます。
  38. 高野博師

    高野博師君 この未臨界実験については核実験の予行演習だと、そういう意味合いが強いという意見もあります。この実験は、地下核実験がもし再開されたときにはこれに対応できるような技術の維持をするという意味も含まれているとも言われる。そういうこともあり、要するにCTBTが見える核実験禁止しても、見えない核実験を認めるということは結局核兵器の開発能力を温存させることに等しいという意見があります。そういう中で、探知されにくい小型の核爆弾を開発できるのは今の保有五カ国だけだと言われております。そういう意味では核保有国の責務というのが非常に重要になってくると私は思います。  このコンピューターシミュレーションあるいは未臨界実験ができる国はどういう国かというのは何か情報をお持ちでしょうか。
  39. 河村武和

    政府委員河村武和君) 御存じのとおり、アメリカが未臨界実験を行うということを発表しております。それ以外の国について特に私たちの方としては情報は有しておりません。  コンピューターシミュレーションと申しますのも、いわゆる一般的な形での核兵器の安全性とか信頼性というものを確保するために利用するということをアメリカは言っておりますけれども、そのほかの国については特に明白に自分たちの有している技術というものを発表しておりません。例えば、フランスなどはコンピューターシミュレーションにかわるといいますか、同じような技術というものを開発しているというようなことは承知しております。
  40. 高野博師

    高野博師君 中国はまだできないだろうと言われておりまして、パキスタンは可能だという情報もあります。フランスについては九五年から九六年に南太平洋で実施した核実験によって、起爆から核爆発までの反応で起きる高温高密度の状態をスーパーコンピューターで再現する技術をほぼ手中にした、こういう報道もされております。  それで、アメリカについては今月とことしの秋に未臨界実験をネバダ核実験場で行う予定だと言われておりまして、その現場と計画内容も公開されまして、きのうの夕刊に出ておりました。まさにこれから署名各国が批准しようとしているこの時期に、米国のこの未臨界実験というのは水を差すことにならないか。日本政府としてこれに対して何らかの対応、外交的な措置をとるつもりはあるんでしょうか。
  41. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、現段階におきましては、ともかく今回御審議を願っているような内容CTBTをまず締結すべきだと考えておりますが、これで事成れりとは考えておりません。将来的にはやはり未臨界高性能実験あるいはコンピューターシミュレーション等、核爆発を伴わない実験についてもどうするかということはやはり国際社会全体として今後の核軍縮への取り組みの中で検討はされなくちゃいけない事柄であろう、こう考えております。  しかし、現時点におきましては、ともかく現在御審議いただいている条約を御承認いただくということが、そうして早期に成立に持っていくということが核軍縮に向けた努力の中でも大きな意味があると考えている次第でございます。  なお、米国が行っているといういわゆる未臨界高性能実験につきましては、先ほども申し上げましたように、既存の核弾頭の安全性や信頼性の確保という観点から行っておるものと考えておりまして、現時点におきまして我が国として米国にこの問題について何らかの申し入れをするということは考えていないところでございます。
  42. 高野博師

    高野博師君 現在保有している核弾頭等の信頼性の確保という意味で今回の実験をやるということですが、アメリカはこの未臨界実験については化学実験だという言い方をしております。しかし、これは実質的には条約の抜け道を通ろうとしているという批判もかなり強いものがあります。  この未臨界実験というのは、失敗して臨界に達して爆発する危険性というのはあるんでしょうか。私は化学的には知りません。
  43. 河村武和

    政府委員河村武和君) 私たちもいわゆる核兵器についての知見というものは全く有しておりません。そういう意味におきまして、この未臨界実験というものが今御指摘があったようなことが生ずるか否かということについても知見を持ち合わせておりません。
  44. 高野博師

    高野博師君 ぜひそういう情報を入手すべきじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  45. 河村武和

    政府委員河村武和君) アメリカ政府が言っておりますのは、自分たちの実験というものはプルトニウム等の核分裂性物質を使用して高性能火薬を爆発させ、これらの核分裂性物質の臨界以下の爆縮の状況を確認するというものであって、化学的爆発は起こるけれども、臨界は超えないし核爆発も生じない、このように言っております。これが米国側の説明でございます。
  46. 高野博師

    高野博師君 私はその点については疑問を持っております。というのは、危険性がなければなぜネバダの核実験場でやらなくてはいけないのか。相当の危険性があるんではないか、私は個人的にはそう思っておりますが、そういう情報がもしあれば、もう少し収集してもらいたいと思います。  いずれにしても、日本政府はこういう実験に対しても明確な姿勢を示すべきではないか。化学実験だからとか現存の兵器あるいは核弾頭の信頼性を維持するためということで黙認すべきではないと私は思います。  結局、核兵器が残っている限りは先ほど言われた信頼性の確認とか維持管理に必要な実験は終わらないというふうに思います。東西冷戦が終結して、核兵器開発の意義が薄れる中で核保有国がなお実験に固執するというのは、老朽化した核兵器の維持管理といういわば冷戦の負の財産、マイナスの財産が背景にあると言われておりますが、この辺についてはどう認識されていますか。
  47. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 将来的には、先ほども申し上げましたけれども、核実験の分野においてもあるいは核保有国間の核兵器の削減の交渉の分野においてもまだまだ努力は続けていかなくちゃいけないものと考える次第でございます。  しかし、現段階におきましては、現実の問題として核兵器も含めた軍備というものがなお存在し、そういったものが世界にいろいろな形で、またいろいろな組み合わせでいわば世界全体の安全保障の世界の中で機能しているという面もあるわけでございますから、やはりその現実は無視するわけにいかないんだと思います。  しかしながら、将来的には核兵器のない世界に向かって我が国としてもいろいろな取り組みはしていかなくちゃいけない、こう考えております。
  48. 高野博師

    高野博師君 それでは、この条約実効性の問題についてお伺いいたします。  条約の発効の条件として、インドとかパキスタンあるいは北朝鮮、これらの署名、批准が必要でありますけれども、これについての見通しはいかがでしょうか。政府はインド等について説得等の対応をしているんでしょうか。
  49. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今御指摘がございましたとおり、このCTBTの発効のためには四十四カ国の批准というものが必要でございますけれども、そのうちインド、パキスタン、北朝鮮が署名をしていないということでございます。  インドにつきましては、いろいろと御説明があった点等を勘案して反対をしているわけでございますけれども、パキスタンはインドとの関係においてインドが署名しない限り署名しないということを言っております。北朝鮮につきましては、実は軍縮会議にも昨年の七月から参加しておるわけでございますけれども、CTBTに関しては一切その態度を明らかにしていないということでございます。  いずれにいたしましても、インド等に対しては外交的なルートを通じまして署名を呼びかけておりますけれども、さらにいわゆる各国間の信頼醸成を進めることによってインドの不信感というものを除くことも重要でございますので、今申しました二国間対話に加えましてASEAN地域フォーラム等の場で信頼醸成を進めるとともに、署名、批准というものを呼びかけていくことが重要であると考えております。
  50. 高野博師

    高野博師君 核実験については世界で一番最初に核実験を中止する何らかの取り決めが必要だということを訴えたのはインドのネルー首相だと。インドについては中国あるいはパキスタンとの国境の問題等複雑な問題があるので核の選択肢を捨てることはできない、こう言っているのでありますが、アメリカはインドについてはインドの政権交代に期待するしかないという見方をしているとも言われております。インドも国内的に今安定しているとは言えない状況もあります。しかし、これ以上インドが抵抗するというか、このCTBTに反対すれば国際的に孤立するということも十分考えられる。  そういう意味では、今言われたような信頼醸成機関を通じて、あるいは直接バイの外交ルートを通じてインドに対してこれに署名、批准するようにぜひ働きかけを行っていただきたい。唯一の被爆国として日本は説得力を持っていると私は思いますので、それをぜひお願いしたいと思います。  北朝鮮の核の疑惑の問題についてはまた別の機会に取り上げたいと思います。  そこで、CTBTの採択を受けて関係国は国際監視システムを構築するということで、世界に三百カ所以上の監視施設が指定される予定だと。そういう中で、条約違反のやみ実験の疑いが生ずれば現地査察ということが実施される。この監視システムについて、具体的に日本はどの程度のどのような協力をするんでしょうか。
  51. 河村武和

    政府委員河村武和君) この条約におきましては、地震、放射性核種、水中音波及び微気圧振動の四種類の監視技術を用いた国際監視制度を確立するということになっておりまして、これから発効までの間、包括的核実験禁止条約機関準備委員会において、これらIMSによる監視網の整備等を行っていくということになっております。  まず日本は、既に七六年以降、軍縮会議におきまして設置されました地震専門家会合を中心といたしまして、地震観測における我が国の知見を生かして、その検討において中心的な役割を果たしてきております。また、八四年から行われております地下核実験探知のための国際的なデータ交換実験にも気象庁の気象観測所が参加してきております。  さらに、国際監視制度の円滑な発足に資するという観点から、九五年度からでございますけれども、開発途上国における核実験探知についての地震の専門家の養成を支援するために地展観測研修というものを我が国において実施してきておりまして、九五年度は五名、九六年度は十名、さらに本年度も十名の将来の専門家の受け入れを行っているということでございます。  さらに、現在ございます暫定技術事務局に気象庁の地震専門家の方をこの事務局の職員として派遣するということで、この六月一日から行っていただくということにしております。  資金の話につきましては、とりあえず今申しました国際監視制度の整備及び暫定技術事務局の運営ということで財政的な負担を行うことになっておりますけれども、我が国は第二位の拠出国として資金的な貢献を行ってきておりますし、今後も行う予定でございます。
  52. 高野博師

    高野博師君 このCTBTとの直接の関係はありませんけれども、我が国は核廃絶のためのバイの協力を実施しているということで、例えば対ロシア非核化支援プログラムを実施しているんですが、この実施状況はいかがでしょうか。放射性廃棄物の処理施設の建設等具体的に何をやっているのか、お伺いしたいと思います。
  53. 河村武和

    政府委員河村武和君) いわゆる非核化支援ということとの関係で、日本はロシア、ウクライナ等旧ソ連四カ国との関係におきまして総計一億ドルに及びます非核化支援をやっております。ロシアとの関係におきまして今最も進んでおります計画と申しますのは、いわゆる日本海の液体放射性廃棄物の処理のための施設の建設ということでございまして、ロシアの原子力潜水艦の解体に伴って出てまいります液体放射性廃棄物を処理するための施設、年間七千立方メートル当たりの処理能力を有するということで、極東地域における原潜の解体から生ずる液体放射性廃棄物の処理というものは大体これでできるというものをつくっておりまして、ことしの夏ごろには完成をすることを予定しております。  さらに、解体されました核兵器から出てきますプルトニウムの貯蔵施設というものがロシアにおいて建設されることになっておりますけれども、その貯蔵施設との関連で今どういうことができるかロシア側と鋭意話をしている、こういう状況でございます。
  54. 高野博師

    高野博師君 それでは次に、CTBTに続く核軍縮の重要なステップとして、核保有国の核にも監視の網を広げる必要があるということで、兵器用核物質生産禁止、いわゆるカットオフ条約及び核先制不使用の条約等の策定の交渉の段階になると思うんですが、これらに対して政府の方針はいかがでしょうか。
  55. 河村武和

    政府委員河村武和君) カットオフ条約につきましては、既に九五年のジュネーブの軍縮会議におきましてこの条約の交渉のためのカットオフ特別委員会が設置されておりました。しかしながら、その後、非同盟諸国が一般的な核軍縮に関する特別委員会の設置というものを要求いたしまして、これが認められない限りカットオフ条約交渉は開始すべきでないと主張いたしまして、核兵器国はこのような条件づけに強く反対しているという状況でございます。こういう状況の中、現在までカットオフ条約交渉は開始に至っていないわけでございます。  我が国といたしましては、このような状況を打破するために、核軍縮に関する特別委員会の設置という前の段階として、まさに核軍縮についてどういうことが考えられるかということを各国と話し合って、将来の方向づけを行わせるための特別調整者、スペシャルコーディネーターと言っておりますけれども、この特別調整者をまず任命してはどうかということをことしの二月に提案したわけでございます。今のところ我が国の提案も提案の一つとして話し合いの中にまだ存在しているということでございますけれども、いずれにしましてもカットオフ条約交渉開始のために積極的に引き続き努力していきたい、このように考えております。
  56. 高野博師

    高野博師君 このカットオフ条約の交渉というのはジュネーブの軍縮会議で行われることになるんでしょうか。
  57. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今申しましたとおり、ジュネーブ軍縮会議で既に特別委員会が設置されておりますので、少なくともいわゆる軍縮関係者の間の了解といたしましてはジュネーブの軍縮会議においてこのカットオフ条約交渉を行う、こういうことであると考えております。
  58. 高野博師

    高野博師君 ジュネーブの軍縮会議というのはコンセンサス方式で行われているのでありまして、CTBTについてはインドの反対でジュネーブでの軍縮会議でこれが阻止された、それで国連総会で採択されたということでありますが、軍縮会議のコンセンサス方式の原則というのがこれによって崩れたという見方もあります。  CTBTのこの前例については中国とロシアがこの前例化を警戒しているとも言われておりまして、カットオフ条約が同じようなケースになるおそれはないのかどうか、もしジュネーブでこれが阻止された場合にまた同じように国連総会で採択というようなケースがあり得るのかどうか、その辺についての見通しはいかがでしょうか。
  59. 河村武和

    政府委員河村武和君) 将来のことにつきまして、まだ交渉も始まっておりませんので、恐縮でございますけれども見通しを述べることを差し控えさせていただきたいと思います。  他方、一言コンセンサス方式について申しますと、ジュネーブの軍縮会議においてコンセンサス方式がとられております理由というものは、まさに軍縮という問題が国家の安全保障にかかわる重要な問題を処理する機関であるということで、各国の利害を最大限に調整するためにコンセンサス方式が不可欠の要素であると認識されてきております。  そういう意味におきましても、ジュネーブの軍縮会議では生物兵器禁止条約とか化学兵器禁止条約というようなものをまさにコンセンサス方式で採択してきたわけでございまして、こういう形で採択されました条約というものは実効性国際的に有するものになる、このようになろうと思っております。そういう意味で、カットオフ条約についてもやはりジュネーブ軍縮会議で探求するということが非常に重要なことであろうと各国が認識しているという次第でございます。
  60. 高野博師

    高野博師君 時間がちょっとありますので、先ほどのインド、パキスタン等の関係でちょっとお伺いしたいと思うんです。  中国がパキスタンにミサイルを輸出しているということは前から言われております。また、中国はイラン等にもミサイルあるいはミサイル搭載の艦船、そういうのを輸出しているという情報もありますが、この辺についてはどのような情報をお持ちでしょうか。
  61. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今おっしゃられたような情報については、まず報道があることは当然承知いたしております。  それから、中国との間の対話というのは、当然のことながら米国その他の関係国との情報交換というものを踏まえて、それを背景として行われているわけでございます。そういう中での中国とのやりとりの具体的な中身ということについて申し上げるのは事柄の性質上差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私どもの方からは、九二年の七月に改定された姿のMTCRのガイドラインの遵守ということを非常に強く中国に求めてきており、これに対して中国は中国の御案内のような立場を述べると、こういうことになっているわけでございます。
  62. 高野博師

    高野博師君 核の問題は、核弾頭とミサイルあるいはその生産の物質というか、そういうことが一体になって核兵器としての効力を発揮するわけですが、フランス等もかなりミサイルを輸出している。アメリカもハイテク兵器の輸出をするような動向もあるということもありまして、全体としてこういう動向については我が国としても注視する必要があるんではないかと思います。これは特に答弁は求めません。  時間ですので、これで終わります。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 核兵器の廃絶という問題は、随分長い間、広島、長崎以来と言っていい国際的な議論を続けてきた問題でありますが、一方で核抑止論というアメリカを中心とした一つの議論があって、その間で、実は多くの世界の人が核は人類を破滅させるおそれがあるということをみんな承知しながらこれをなくすことができないと、人類という利口な生物にしては非常に愚かなことを続けていると言ってもいい、そういう状態だと思うんです。しかし、にもかかわらず一方で今回のCTBTもその一つの段階として核廃絶に向かって進んでいることも事実と言えると思います。  そういう意味で、政府としては段階的核廃絶への道という意味CTBTをどういうふうに評価しておられるのか、どういう段階を踏んできて今どういうところまできたというふうに認識しておられるか、そのことから伺いたいと思います。
  64. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、今回のCTBTも核兵器のない世界を実現するための努力の一つの段階である、このように位置づけております。  そして、まず核実験の方について申しますと、先ほども御答弁申し上げましたが、昭和三十八年の段階でいわゆる部分的な核実験禁止条約ができたわけでございますが、今回のCTBTによりまして地下核実験を含めた全面的な禁止ということでさらに一段階進んだというふうに認識しております。  それから、このCTBTの話が出てきました出発点と申しますのは、一九九五年に核不拡散条約の無期限延長ということがございました。その際に採択されました核不拡散と核軍縮のための原則と目標というのがございますが、それを通じましてこのCTBTの九六年中の妥結、それからその後のカットオフ条約の早期の交渉開始ということが当面の大切な措置だということが国際的に認識されたわけでございます。そういった中の一つのものと考えております。  そういった意味で、この次に来るのはカットオフ条約をどういうふうに進めていくかということだと思います。それから、さらにその先のということになりますならば、既存の核兵器をどうやって削減していくか、これまでも核保有国同士の交渉である程度進んでおりますが、その問題がいよいよ大きな意味を持ってくるんじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  65. 田英夫

    ○田英夫君 言われるとおり、段階的にという意味で言えば、実験の意味では部分確定が包括的になり、あるいは一方で非核地帯という考え方が一九六八年のトラテロルコ条約以来地球上に非核地帯が拡大をしてきて、いわば南半球はほとんど非核地帯で覆われた。  トラテロルコ条約、それからラロトンガ条約が八六年、それからASEAN非核地帯条約がごく最近、九五年ですか、それからアフリカのペリンダバ条約というのが九六年、それに既に南極条約で南極大陸は一切軍事利用を禁じていますから、これを含めると南半球はほぼ完全に非核地帯になっている。  ただ、非核地帯といっても、だからといってこれが拡大していけば世界が非核になるかというと、実は核兵器を持っている五つの国が廃絶しない限りなくならないわけであります。ただ、一つの非常に大きな知恵だったと思うのは、最初のトラテロルコ条約をつくったときに中心になったメキシコの当時のロブレス外務大臣から直接聞いたんですが、日本の非核三原則を参考にしましたと。それに加えてもう一つ、核保有国はこの地帯の諸国に対して核攻撃をしない約束をしなさいということを加えて、これを附属議定書で明記して、この附属議定書に核保有五カ国が署名しない限りこの条約は発効しないといういわば踏み絵を突きつけた。これは大変大きな知恵だったと思いますし、その後の非核地帯条約は皆これに倣っている。しかし、にもかかわらずこれで核がなくなるわけではないということも事実であります。  部分確定条約から、一方でまた核拡散防止条約と外堀を埋めるような感じのものが続いていて、肝心の核保有国そのものが核を廃絶するということは、アメリカとソ連のSALTあるいはSTARTの交渉によってようやく核弾頭が三千発ないし五千発という数字まで下がってきました。いずれにしても、三千発でも、両方で六、七千発あれば人類は消滅するわけでありますから、一向にその危険は去らない。こういう状態にいるわけで、カットオフ条約ができてもこれでなくなるわけではもちろんない。  こういう意味で、今伺ったのは、段階的に進んできているということは核廃絶につながるのかという問題が依然として残っているわけです。今、非核地帯というのが南半球をほとんど覆ったということを申し上げましたが、実はASEAN非核地帯によって北半球にほんのちょっと顔を出してきたわけです。以前から言われているのは、日本の周辺で北東アジア非核地帯というものができないだろうか、こういうことが言われておりますが、この問題について政府はどういうふうに考えておられますか。
  66. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御指摘のとおり、今世界のいろいろな地域で非核地帯というものができてきているわけでございますが、一般的に申しまして、そのような合意が形成され、そういった地域ができてくるということは核の拡散防止に資するものとして評価できると考えております。  しかしながら、そういったものは核保有国を含めたその地域の国すべての合意があって初めて成り立つものでございます。そういった観点から申しますと、残念ながら北東アジア地域にいろいろな対立関係あるいは緊張関係も残っておりまして、ただいま申しましたような合意が形成できるような環境はまだできていないんじゃないのか、こういうふうに考えている次第でございます。
  67. 田英夫

    ○田英夫君 もちろん北東アジアということになると日本と朝鮮半島ということで、もしこれが実現すれば、一つの大きな効果は、北朝鮮の核疑惑ということが言われておりますが、私は実は余り疑惑を持っておりませんけれども、あの程度の原子炉、そこから出てくるプルトニウムということから考えてもう少し冷静に考えていいとは思っておりますが、いずれにしても疑惑に対して一つの対応になることは事実でしょう。  それからもう一つは、ロシアと中国という核保有国に囲まれている地域、これが問題であることは間違いない。実は個人的にですが、この問題について中国の専門家と議論をしたことがあります。昨年は中国の核実験で中国は大変国際的な非難を浴びたわけですが、ことし中国と議論したときには、中国は核廃絶という基本方針を持ち続けているんだ、そういう中で、相手が持つのにこちらが持たないというのは悪い、本来核はすべてが持たないことが正しい、しかし一番悪い状態は相手が持っているのにこっちが持っていないという状態だ、となれば両方が持つという第三の道を選んだんだと、これはいいかどうか私は賛成できませんけれども、そういう論理を展開しておりました。  いずれにしても、それでは北東アジア非核地帯を日本、朝鮮半島で結ぶことができたとしたら中国は賛成か反対かという質問をしましたところ、これは賛成だ、中国は理解をするということを、これは政府の人ではありませんが、軍事専門家でありますけれども、そういう答えがありました。これは御参考までに申し上げておきます。  そこで、一転してCTBTの問題に入りますが、今度発効すると、いわゆる機関と訳しておりますが、一つの機構ができ上がってくる。そして、その中の中心的な機関執行理事会ということになりますが、日本はその理事国になる用意があるわけですか。
  68. 河村武和

    政府委員河村武和君) 執行理事会条約規定に従いまして五十一の理事国によって構成されることになりまして、さらにそれらの議席は六つの地理的地域に配分されることになっております。  特に、条約の二条の29におきましては、「政治上及び安全保障上の利益に考慮を払い、国際的な資料によって決定されるこの条約に関連する原子力能力及び当該各地理的地域において決定される優先順位による次の基準」云々ということで、国際監視制度の監視施設の数、監視技術についての専門的知識及び経験、機関の年次予算に対する分担金というものが基準になっておりますけれども、こういうことを考えますれば、当然日本としてはこの執行理事会の理事国になる資格は有しておると考えておりますし、そもそもこの包括的核実験禁止条約目的というもの自体にかんがみましても、日本としては執行理事国として活躍すべきであると考えております。  いずれにいたしましても、この理事国になるか否かの決定は条約が発効してから行われることになるわけでございまして、そのときには我が国としては今申し上げましたような観点から理事国になるよう当然努力を払う所存でございます。
  69. 田英夫

    ○田英夫君 CTBTに抜け道があるという問題は先ほど同僚委員から詳しく御質問があり、また御答弁もありましたので、私はこの問題は触れないことにいたしますが、未臨界の核実験とかコンピューターのシミュレーションとか、抜け道を探しては核保有を続けるという、これを許している限り本当に核は廃絶できないと思うんです。  そういう意味で、次に来るのはカットオフ条約、こういうことで、これはもう衆目の一致するところでしょうけれども、果たしてこれでもう一段階進むのかどうか。つまり、濃縮ウランとプルトニウムをどう規制するのか。この問題はまだ煮詰まっているわけではありませんから現段階では結論的なことは言えないでしょうが、政府としてはこの問題をどういうふうにとらえておられますか。
  70. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今御指摘のありました点はカットオフ条約におきます条約の帰結ということかと存じますけれども、まさにカットオフ条約は軍事用の核兵器生産のためのプルトニウム及び高濃縮ウランの生産を禁止するということを目的としておりますので、最終的な姿というのはまさにこれ以上生産をしないということでございます。その後、それでは現存のプルトニウム、さらに濃縮ウランをどうするかというのはさらに別の軍縮の課題ということになろうかと存じます。
  71. 田英夫

    ○田英夫君 結局、もとを断ってしまえばいいという考え方で、これはそれなりに非常に有効な手段だと思います。にもかかわらず、今の御答弁にありましたように、既存のものが既に、特にプルトニウムは大量にあるわけですから、これをどう規制しあるいは管理する、国際管理下に置くかという問題が具体的に非常に問題になると思います。  濃縮ウランの場合は兵器用のものと原子力発電用の平和利用のものと濃縮度が違うようでありますから、これは生産の段階からいい方法を発見すれば規制することはできると言われております。プルトニウムについては一部の学者が軍事用のものは違うということを言われた時期がありましたが、今はもう常識としてプルトニウムはすべて軍事用に、つまり核兵器にできると。もう五十年前の段階で長崎型原爆はプルトニウム爆弾でありますから、現在ではもちろんすべてのプルトニウムが核兵器の材料になるという論は正しいのではないかと思います。  となると、日本の場合はたちまち大変大きな、いわゆる核燃料サイクルの政府が今とっておられる基本的な政策が円滑に進むのかどうかという問題に触れてくるので、このことは当委員会でも以前に触れたことがありますけれども、これは科学技術庁なり通産省なりの問題を含めて、規制を大変強くすれば日本の核燃料サイクルは崩壊するということにつながりかねませんが、この点、大臣はどういうふうにお考えですか。
  72. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、プルトニウムにつきましては、平和利用の目的のものであっても、その性質から申しますと物理的には軍事利用も可能なわけでございますので、そこのところをどう考えるか。文字どおりもともとの根っこを断つという意味での考え方で禁止してしまうということになりますと、我が国のエネルギー政策上大きな問題が提起されるということは御指摘のとおりだと思います。  しかしながら、我が国の場合には、全体としてあくまで平和国家でいくんだ、そして非核三原則は厳守していくんだ、こういう大方針、いわば国是とも言うべきものがあるわけでございますし、そしてまた具体的には、原子力の利用につきましては原子力基本法を初めとして国内法の法体系の中におきましても平和利用に徹するんだという枠組みがきちんとできておるんだと思います。もとよりこれも法律でございますから未来永劫変わらないという保証はないわけでございますが、それは我々国民の核に対する姿勢、そして平和を希求する姿勢、それにかかってくるんではないかと考える次第でございます。
  73. 田英夫

    ○田英夫君 カットオフ条約まで進んで、これがうまく締結できまして、さあ次はということになると、核保有五カ国がいよいよ具体的に核廃絶という道に踏み込んでもらわなくてはならないという段階になるわけです。したがって、CTBT締結段階でインドが主張したいわゆるタイムバウンドという主張、核廃絶の時期をCTBT条約の中で明記しろという要求はその意味では私は正論だったと思うんですね。黒河内大使がちょうど帰国されたときにそんな議論をしたことがあります。結果的に、CTBTが成立するかどうかという意味でインドは今悪者のように言われている部分がありますけれども、実は核をなくすという一つの手段としては正論ではないかなという気さえいたします。もう核保有五カ国の核廃絶に向かってのところに踏み込んでいかないといけない段階に来ていると。  米ソ、今ロシアですが、米ソの間でSALTⅡで三千発とか、そういう段階ではもう許されないというところに来ているんじゃないかと思いますが、次の段階というのはやっぱりそういう核保有国の問題になってくるとお考えでしょうか。
  74. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおり、このカットオフ条約締結できたということになりまして、その次の段階ということになりますと、既存の核兵器を一体どうするんだ、どう削減していくかという問題の重要性がいよいよ高くなってくるんだと存じます。  そういった場合に、もとより米ロ間のSTART交渉のような核保有国間の削減の努力というのが非常に大切でもあり、まずは有効でもあると考えますけれども、しかしそれだけにとどまらず、核保有国と非保有国との間の、あるいはそれを含めましたもっと幅広い多国間の措置としてどのように既存の核兵器を削減していくかということに取り組まなくちゃいけない、そういう段階に来るものと認識しております。我が国としても、そういったことも展望しながら、これまでも国連における諸決議であるとか昨年末行いました京都セミナーであるとかいう努力もしているわけでございます。ただ、そういったものを進めます場合にも、まずは核保有国間の自主的な削減努力がどういうふうな状況にあるかということをにらみながら、やはり現実的な対応というものも必要かと存じます。  そういった意味で、委員が御指摘になりました今回のCTBTの交渉に当たってインドが主張しました時期的な枠組みに関する主張というものも、純粋に理論として考えるならばあるいは正論という見方もあり得ないとは申しませんけれども、しかし現実の状況の中で、現時点で考えた場合には、まずは今のような形のCTBTをということが国際的な大きな支持を得たわけでございますし、我が国もそのような立場をとっている次第でございます。
  75. 田英夫

    ○田英夫君 もちろん、インドの主張はパキスタンとか中国とかいうところを、特にパキスタンを見ながらのことであることは間違いないので手放しで褒めてもいけないのかと思いますが、そういうことを含めて、果たして次の段階で核保有五カ国、特に米ロの話し合いの中で核が廃絶されていくだろうかという問題、これはもう人類の将来に向かっての大問題だと思うんですけれども、私は大変悲観的に思っております。  実は、一九八五年に私はニュージーランドを訪ねましたが、それはロンギ政権で非核法をつくってアメリカの核を積んだ艦船や飛行機の寄港、着陸を拒否するという衝撃的な政策をとったその意図、それから現実の方法、そういうものを直接調査しようと思って行ったわけであります。  私が驚いたのは、労働党のロンギ政権だからやったと多くの日本の人あるいは世界の人が思っていたようでありますけれども、全くそうではないということです。ことし一月にまたニュージーランドを訪ねました。現在は、昨年の十月の選挙の結果、ちょうど日本の衆議院選挙とほぼ前後して選挙があって、一院制ですが、その結果保守の国民党と新しくできたニュージーランド・ファースト党という小さな党との連立政権という形になっておりましたが、現在もこのロンギ政権のときにできた非核法は厳然として守られている。  その根拠は一体何なのかということが実は八五年に行ったときにわかったんですけれども、それは保守とか革新とか、国民党とか労働党とかいうことなしに、ニュージーランド国民が国を挙げて反核という空気、反核という運動を展開してきた。六〇年代から一種の市民運動のようにして反核運動がずっと続いてきていた。  実はそのときにニュージーランドで発見したのをもとにして、後で差し上げますけれども、非核の家のシールです。(資料を示す)これは日本の地図になっていますが、ニュージーランドの場合はニュージーランドの地図が刷り込んであって、これは交通標識の進入禁止です。「ニュークリアフリー・ニュージーランド」「ノーニュークリア・ハウス」と書いてある。これは日本版でありますけれども、そういうものをつくって家々に張る運動をしたんですね。家の玄関にこれが張ってあります。それで、道路に面した家が全部これを張ると、今度はちょうど道路標識のような大きさのものをこれと同じデザインで道路に立てまして、非核道路になるわけですね。それで、町じゆうにそういう道路ができると、今度は非核シティーになると。そういう広げ方をして、ついに国全体が非核化という運動のもとに置かれたと、そういうことをやっておりまして、その中心的な運動家がちょうどオークランドの市長になっておられまして、キャサリン・ディザートさんという女性です。  その女性市長に会いましたときの市長の言葉は、ちょうど市長室から見ると湾内にあの虹の戦士号、フランスの核実験に反対をして近海まで行こうとしていた虹の戦士号ですが、これが沈没してそこに沈んでおりました。その市長はあそこに沈んでいますと言いながら、核の問題を話してくれましたが、彼女の言葉を最後に御紹介します。  核兵器をこの世の中からなくすことができるのはアメリカとソ連、当時はソ連ですね、アメリカとソ連の話し合いによってはできないと思う。核兵器を廃絶できるのは世界の平和を愛する市民が手をつないだときに初めて実現できると思いますよと。いかにも市民運動をやってきた人らしい言葉でありますが、これはある意味で事実かもしれません。その次に続いた言葉がちょっと残酷なんですが、核兵器というのは核保有国にとっては右腕のような強いものでしょう、自分の右腕を自分で切り落とす人はいません、だから自分たちでは絶対に核をなくさないだろうと、こういう意味を込めての言葉だと思います。  以上で終わります。
  76. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 CTBTが発効するためには、先ほど来お話がありましたように、核保有国あるいは保有疑惑国ですか、それと核を持つ可能性のある国々四十四カ国の批准が必要であるわけでありますけれども、私が見るところでは四十四カ国の批准がことごとく得られる可能性は極めて少ないと思うんです。したがって、CTBTが発効する可能性が極めて少ないということになります。  そういう状態の中で、条約違反の核実験を検知する国際機関のIDC、国際データセンターですか、これの暫定的なものとして既におととしの一月からアメリカが始めていると。予算の九割はアメリカが持って、その研究員といいますか職員といいますか、約六十名の中で、日本、ロシア、中国などから八名の客員科学者が参加しておるけれども、ほとんど大部分はアメリカ人であると。  条約がまだ発効するかしないかわからないような時点で、しかも二年も前から核実験を検知する国際監視網の構築に乗り出している、こういう事態は私はアメリカの核政策を端的に示していると思います。要するに、アメリカは世界の核の状況を独占的な姿勢をもってリードしょうとしているととられても仕方がない。したがって、これに対して中国とかインドとかが黙って見ているとはとても想像できないですね。  こういうようなことを考えます場合に、万が一このCTBTが発効しましても核を廃絶する一里塚とはならないんじゃないか、むしろ争いが激化する状態を内包していると思います。このあたりはいかがですか。
  77. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今申されましたいわゆる国際的なデータセンターということの関係でございますが、これは先ほども申しましたけれども、地下核実験の地震学的な探知による検証というものを国際的に研究するために、既に一九七六年から各国の専門家から成る地震専門家会合というものが設置されましていろいろな研究を行ってきております。そういうものがだんだんと発展をいたしまして、データの交換というものがまず八四年にかなり大規模に行われ、さらに九一年にも改善されたものが行われ、さらに九五年一月、今御指摘がございましたとおりアメリカの施設を利用してデータの交換を行うと、こういうことになってきたわけでございます。  しかしながら、まさにこれは地震学的な探知の検証という観点から各国の専門家が参加してやってきておったものでございまして、現在まではアメリカのものを使っておりますけれども、今申し上げたような交渉の過程におきまして、中国やインドがこのようなアメリカのデータセンターを利用してのデータの検証というもの等を行うことについて文句を言ったということは私たちは一切承知していないという状況でございます。  さらにつけ加えますれば、この国際データセンターというものは、いずれにいたしましても条約が発効いたしましたときにはウィーンで運用されるということになっていると、事実関係をちょっとつけ加えさせていただきます。
  78. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 そういう来歴とか中国やインドが文句を言わないとかということを問題にしているんじゃないんです。私が言っておりますのは、CTBTが発効してウィーンにCTBTの機構ができて、その重要なオルガンとして国際データセンターなるものができるということになっておる。それの暫定的なものとしてアメリカの独占的なリーダーシップのもとにできておるという事実を言っておるのであって、それを来歴はどうだとか、まだ中国やインドは言っていないとか、そういうことは言っておりません。問題にしておりません。私が言っておりますのは、そういうようなアメリカの独占的な姿勢自体が、このCTBTが仮に成立したとしても核廃絶の方向に国際的な世論を推進することに一致していないということを言っているわけです。  でありますから、これが成立しましても、それじゃアメリカと中国との核競争は完全になくすることができるかと、これもあわせて大臣の御意見を聞きたい。
  79. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まずIDC、国際データセンターに関する事実関係については先ほど政府委員から御答弁申し上げたとおりでございます。  それに対して武田委員は、しかし事実の問題として米国が独占的なそういう形でやっているじゃないかという御指摘でございます。しかし、CTBT核実験禁止、それを実効あらしめるためにきちんとした探知の手法というものを確立しなくちゃいけない、そういった場合にそのような技術がどこにあるか、その技術を持っているところの力を活用するということは必要なんだと思います。  そういった意味において、現在準備段階において米国の機関としてのIDCが一応の役割を果たしており、そして将来的に国際機関の中の一つのサブの機関、サブオーガンとしての新たなるIDCができた場合に、現在の米国のIDCの経験なり知識、技術というものが活用されるということは、米国の技術が中心になるからこれが米国の独占につながり、そしてCTBTそのものの有効性を阻害するとは必ずしも言い切れないんじゃないかと思います。それはやはりCTBT全体の枠組みがどういうふうに運営されるかということで決まってくるんじゃないか、こう思う次第でございます。  いずれにいたしましても、CTBTだけで核兵器のない世界が実現するわけではないということは先ほど来の審議の中で各委員からも御指摘ございましたし、私どもしてもそれはそのとおりであると認識しているところでございます。  一方において、さらにカットオフ条約であるとか、あるいは既存の核兵器の問題に取り組むための核保有国間あるいは核非保有国も含めた国際社会全体としてのさらなる取り組みが非常に重要になってくるということは、それは私先ほども御答弁申し上げました。  そして、御承知のように、現に米ロ間におきましてもいろいろな交渉がなされ、現在でもそれは相当な保有量ではございますが、いっときに比べれば格段の削減が実現していることも事実でございます。こういった核保有国間の交渉を通ずる削減というものが米ロ間においてもあるいは中国等を含めたほかの国との間においても進むことを期待いたしますし、それからまた我が国としてもこれからのいろんな情勢の進展を見ながら国際社会の中でその努力をしてまいりたいと考える次第でございます。  委員はその一里塚にはならないんじゃないかとおっしゃいましたけれども、確かに核兵器のない世界に至る道というのは遠い道であり、あるいははるかなる目標かもしれません。しかし、今回のCTBTのような、その段階その段階における現実を見ながらも、その目標に向かって着実に一歩一歩進めていくということで取り組んでいく、これしかその目標に至る道はないんじゃないかと考える次第でございます。
  80. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 御意見は承っておきますけれども、現在の核兵器を機能しなくしていこうというような話の進め方が、現実的には核を持たざる国の意思よりも、むしろ核を持っている国の利益を保存する性格を多分に持っているということは否定できないと思うんです。  私が申し上げたいのは、私も核廃絶を願うことにおいては人後に落ちるものではありませんが、このたびのCTBTによって一歩前進だということには同意しがたい。なぜなら、同僚委員もおっしゃいましたけれども、例えばアメリカと中国の核競争というもの、あるいはアメリカが中国以上の核軍事力を常に保持していこうという方針はなくならぬと思うんですね。中国はそれに対抗していこうという姿勢はなくさないと思います。したがって、世界の平和ももちろんそうでありますけれども、日本はそうなるとアメリカと中国の核兵器競争の最前線に何も持たないで立たされている。こういう現実はCTBTができましても解消しないわけです。  したがって、先ほど来お話もありましたが、なぜこの機会に核軍縮あるいは核廃絶のスケジュールを入れることを主張しないのか。インドが言おうとだれが言おうと正しいことは正しいのであって、一里塚がかえって情勢を激化する要因を含んでいるにかかわらず、それを今のうちからなくしてしまう、核軍縮、核廃絶のスケジュールを明確にする、それならば批准しようという姿勢がなぜ日本でとれないのか。だから、私としては、そういうことが核廃絶に対する日本の熱願を最も端的に表明する今度こそ絶好の機会ではないか。日本は今断然そういう核軍縮あるいは核廃絶のスケジュールを明確にして、しかる後に批准したいと、こういうことを、いつになるかわからぬというようなのんびりできるような状況ではないと思うんです。  でありますから、この機会に今のままの条約では批准できない、しかし核軍縮、核廃絶のスケジュールが明記されたならば真っ先に批准しましょうと、そういう姿勢がとれないかどうか、いかがですか。
  81. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御指摘は、今回のCTBTは一里塚であっても、それは核兵器のない世界に至る道の一里塚ではなくてほかの道へ行ってしまうんじゃないかと、そういう御指摘だと思いますが、そこは私どもといたしましては意見を異にするところでございます。そういうことにならないように、核廃絶に向かう道の一里塚として位置づけ、そして次なる一里塚へ向かって努力を進めてまいりたいと考えております。  そういった意味から申しまして、核廃絶に向かうスケジュールを明確にした上でこのような条約を結ぶべきだという御主張でございますけれども、私どもといたしましては、そのようなはるかなものではあるかもしれないけれども、目標はきちんと見定め、それに向かって努力していくというプロセスの中で、現段階においては多数国間の合意の形成が可能な今回御審議を賜っておるような条約内容をまずはつくっていくべきであろう、こう考える次第でございます。  それから、米国と中国との間の核をめぐる競争という観点からのお話もございましたけれども、そういったことにつきましては、核の問題ももとよりでございますが、それ以外の問題につきましても、北東アジアあるいはアジア太平洋の安定を図るという上で我々としてなすべきことはいろいろあるんだと思います。安全保障の面で申しましても、いろいろな手段あるいはルートを使いましてお互いの間での信頼を高めていくといった努力を現にしておるところでございますし、そういったことを通じながらこの地域における核保有国の間でも核兵器削減の交渉が進み得るような環境を整えていくために我が国としても役割を果たせるところはあろうと思います。そのような努力は進めてまいりたいと思います。
  82. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 御意見をまた伺っておきますという以外にありませんが、アメリカと中国との間は、既にアメリカは幾たびとなく中国の現在のあり方は非常に危険だということは公然と言っておりますし、また中国の方も、日米安保だけじゃないでしょうが、日米安保は中国を意識し中国を包囲するものだと、こういうことを言っているわけで、それは事実じゃないと、本音じゃないだろうということは、そう言ったって言えぬことはないでしょうけれども、しかし安全保障というやつは、これはもう最悪の場合を考えて安全を考えなければ安全じゃないわけです。  特に日本は、例えば中国が核実験をやったときに日本がこれに対して非難をする。私は現実に中国の大使が日本はアメリカの核の傘の中に安住しているからいいだろうけれども我々は自分で傘をつくらなけりゃならぬのだと言って一蹴したことを見ております。だから、そういうような状況の中で、日本は特にこの問題については人類の良識に訴える厳しい姿勢をとりませんと、日本は安全だからいつになるかわからぬけれどもだんだんよくなるであろうなんというようなことを言うんだと言われないようにしないといけないと思うんですね。  でありますから、この条約の目指すところを否定するんじゃないんです。最も端的に探究するがゆえにこの条約ではだめだと。例えば、インドから見ても文句のつけようのないもっと完璧な条約としてこれをやろうじゃないか、それならば日本は真っ先に賛成だと、こういうことをとることこそ日本の平和姿勢を端的に示す絶好の機会だろう、こういうふうに思うんです。  それで、米国が軍事的にあるいは核の問題について世界を廃絶よりも自分の国がリードしょうとしているというその姿勢は、これは日本の側としては余り弁解せぬ方がいいと思います。かえって日本立場を苦しくする。だから、本当にアメリカと日本が親友として世界の平和を考えるならば、私は、アメリカの権力のあり方じゃなくて、アメリカの持っている姿勢は非常に高く評価するものでありますけれども、そのアメリカがせっかく持っている高い知性あるいは科学技術あるいは経済力が全的に世界平和のためにうんと生きていく、そういうことのためにこそ日本は協力すべきであって、アメリカが例えばインドであろうと何であろうととやかく言われかねないようなことを弁護するような、弁護じゃないんでしょうけれども、そういう印象を与えるようなことはおやめになった方がいいんじゃないかと思うんです。  特に、何回も申し上げて恐縮ですけれども、日米安保をいきなりやめるということは現実的にはないかもしれないけれども、まずこういう核に対する姿勢を明確にするとかアメリカと中国と日本がせめて三十年は絶対戦争をしないんだという約束ぐらいすれば、これはほとんど日米安保は意味がなくなるぐらいの決定的な意義を持つわけで、そういうことも計算に入れて、日本の平和的発言が人類の平和の理想に根底から影響を与え得るような日本のあり方を探究していただきたいと思うんです。  大臣の言うことは大体わかっていますから、これぐらいにします。
  83. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  84. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、包括的核実験禁止条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 高野博師

    高野博師君 総理、きょうは御多忙の中を出席いただきまして、ありがとうございます。  海部総理以来の総理の外務委員会出席でございまして、これを評価したいと思います。この外務委員会各委員の強い要望でもありますので、今後とも重要な法案があったときはぜひ御出席をお願いしたいと思います。  それでは、まず最初にCTBTとの関係で、総理の核兵器と世界平和についての御認識、あるいは総理の平和理念あるいは哲学、この点についてお伺いいたします。
  86. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 何か座ったままで本当によろしいんですか。
  87. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 座ったままで結構です。
  88. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 初めてお許しをいただきましたので、少々勝手が違います。その点はどうぞお許しをいただきたいと思います。  今、大変大きな御質問をいただいたわけでありますけれども、私は、冷戦構造というものが終結をして以来、大きく世界というものがさま変わりをしつつある、現在もまたその変化の途上にある、まずそのように思っております。そして、その意味では国際的に相互依存関係というものが今まで以上に一層深くなっております。そうした中で、日本の繁栄あるいは安定というものが当然のことながら世界全体の平和と繁栄と密接不可分であるという状況は今まで以上に深くなりました。そして、そうした中で我が国が払っていくべき外交努力というものは今まで以上に、我が国だけのためではなく、世界的に大きな責任を感じなければならなくなっていると思います。  しかし同時に、冷戦構造が崩壊をいたしました結果、逆に地域的に不安定な要因というものはむしろ増してきたのではないか、私にはそのように思えてなりません。宗教上の対立あるいは民族的な対立、さらに歴史的なさまざまな因縁が今になってぶり返している。そうした意味では非常に国際情勢の不分明さが増してしまった部分がある。  そして、ある意味では今までヨーロッパ正面とアジア太平洋地域というものがある程度分けて議論をされてまいりましたけれども、ヨーロッパ正面の動きというものがアジア太平洋地域に与える影響というものもむしろ大きくなってきたのではないか。最近の中ロ関係等を見ておりますと、NATOとの絡みで違った動きが生じてきている、そのような感じを私は持っております。  そうした中で、まさに核兵器を含めました軍事力というものが依然として国際的な平和と安定の上で非常に大きな役割を演じておる状況、これは変わっておりませんけれども、その一方で、核兵器を含めまして大量破壊兵器というものをいかにしてなくしていくのか、その脅威を減らしていくのか、これはそれぞれの兵器を多量に保有していると言われる国にとっても大事なテーマになってきたのではないか、そのように受けとめております。  それだけに、今回御審議をいただいておりますCTBTも、そういった意味では核兵器の拡散を防いでいく、そして次に向けてのステップという意味では非常に大きな意味を持つものだと考えておりますし、いわゆる先進国と言われる中で、もしこれが国会においてお認めをいただけるならば、批准書寄託の非常に早い国の一つとして日本は先鞭をつけることができると思っております。  そして、それは次のステップに我々は結びつけていくことのできるもの、そのように位置づけておりまして、本委員会においても真剣な御論議をいただいておりますことに改めて敬意を表しますとともに、こうした状況を認識した上で我々は国際社会の中における行動を続けてまいりたい、そのように考えております。
  89. 高野博師

    高野博師君 ありがとうございました。  平和は人類の願望でありまして、世界平和にとって最大の脅威は核兵器であるということは論をまたないところであります。我々は、すべての人間は生存の権利を持っている。核兵器はその生存権を脅かす最たるもので、いかなる理由があっても、これを使用する国、人間、これは人類の敵であって平和の敵である、そういう考え方が世界的に浸透するというか、徹底されることが必要ではないかと私は思っております。  CTBT関係でもう一つ、核のない世界へ向けての日本外交の役割について総理の見解をお伺いいたします。
  90. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうど私どもが初めて国会に議席を得させていただきました昭和三十八年に、御承知のように、部分的核実験禁止条約が作成をされました。そして、今回御審議をいただいておりますCTBT、まさにそれ以来初めて形づくられた大きな国際的な枠組みと申し上げても過言ではないと思います。  その間における日本は、唯一の被爆体験を持つ国、常にそうした悲惨な思いを胸の中に皆持ちながら努力を続けてきたと考えておりますが、我々は現実をも直視したとき、理想論だけをいたずらに言うのではなく、核兵器のない世界というものに向けて着実な一歩ずつの前進を図っていく、今後ともにそうした努力を積み重ねていかなければならないと思います。  その意味では、私どもは、この次に目指すものとしてカットオフ条約交渉を早期に開始することが大事、こうした訴えをこれからも努力していかなければなりませんし、このCTBTに加盟をいわば否認してこられた国々というものが現に存在するわけでありますから、そうした国々に対してこれに参加することの必要性というものを訴える努力もしていかなければならない。次なる目標というものはそうしたことになるのではなかろうかと思っております。
  91. 高野博師

    高野博師君 それでは、核兵器の使用とか威嚇が国際法上違反であるかどうか、国際司法裁判所、ICJの勧告的意見を踏まえての総理の御見解をお伺いいたします。
  92. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、恐らく日本人の中でだれ一人核兵器が非人道的な兵器ではないということを口にする人間はないと思っておりますし、それが我々の基本でなければならないとも思います。同時に、先ほど来申し上げてまいりましたように、我々は一歩ずつ着実に進んでまいらなければなりません。  そうした中で、例えば核兵器全面禁止条約あるいは核兵器先制不使用条約、こうしたものについては、現在核兵器を保有している国々の中で、あるいはそうした国を含む関係国との間の十分な検討、調整がなされているとは言えない状況にあります。  そうした状況の中で、仮に例えば全面的禁止条約についてあるいは先制不使用条約についてのみ強調する、これはいたずらに私は問題をこじらせてしまう結果になりはしないか。そんな思いから、先ほど例えばカットオフ条約のようなものを次に考えるべきということを申し上げました。しかし同時に、まさにこのCTBTにまだ入ってもらえていない国があります。こうした国がやはりこのCTBTの持つ意味というものを認めた上でこの中に入ってもらえるような努力、これは我々がやっぱりこれから全力を挙げて進めていかなければなりません。  私は、国際化社会として、外務省の諸君が書いてくれた書き方からいきますと大変かた苦しい話になりますが、まず申し上げたいことは、核兵器というものが非人道的な兵器でないと思っている日本人は一人もいないはずだ、それは我々の一つの共通の意思であり、国民の共通の意思は国家としても同じように考えていくべきもの、そのように思っているとお答えをいたします。
  93. 高野博師

    高野博師君 この点については先般の衆議院での本会議の中で同じような質問がありまして、総理は、「核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しないと考えております。」というお答えをされております。これは、この問題について国際法上云々ということにはお答えになっておりません。  そこで、これまで政府としては核兵器の使用あるいは威嚇というのは実定法上違反とは言えないという見解を発表してきたと私は理解してきておりますが、このICJの勧告的意見を踏まえても、この考え方について変わっていないのかどうか、その点についてのみ見解を伺います。
  94. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) その点に限定してお尋ねになりますなら、私は政府として今日まで申し上げてまいりました考え方、それを公式にお答えを申し上げなければなりません。  それは、すなわち政府としては、核兵器の使用は、その絶大なる破壊力、殺傷力のゆえに国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、日本国民の核兵器に対する特別な国民感情を踏まえ、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であるというものであります。  これは、ICJの勧告的意見というものが発出された前と後において変わるものではございません。むしろ、実定法上云々ということで法理論を争うのではなく、私はやはりこの兵器の持つ非人道性というものに目を向けた率直な日本国民の感情というものの方が、ともに語り合う、そして他国に対して語るべき我が国の基本ではないかと、そのように思っております。
  95. 高野博師

    高野博師君 時間がありませんので、その点については私は総理と考え方を異にしておりまして、むしろこれは解釈を変更してもいいのではないか、あるいはすべきではないか。当然、このCTBTの後にカットオフ条約とか全面的な核兵器禁止条約等、今後の展望に立ったときに日本側のこの解釈というものがある意味で矛盾というか、これが場合によっては日本のこれから果たすべき役割にとって日本立場を難しくするんではないかなというような考えを持っておりまして、ICJの勧告前後で変わらないということでありますが、変えてもいいのではないかということを私は考えておりますが、その点について一言。
  96. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員はその解釈を変えてもよいのではないかと言われましたが、一番問題となります第百五パラグラフ、ここで目を通しながら見ておりますが、この最初にありますものは、「国際法上、核兵器による威嚇又はその使用を明示的に許可したり、これを包括的に禁止する規定は存在しない、」というところから始まっております。  議員はよく御承知でありますので、これを一々読み上げるつもりはありません。しかし、その中にございますが、「核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には相容れないが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における威嚇又は使用が、合法か違法かについて判断することはできない、」ということとともに、「厳格かつ効果的な国際管理の下で、核軍縮に向けての交渉を誠実に行い、交渉を妥結する義務が存在する」と述べております。  ですから、解釈の問題ではなく、被爆体験を持つ日本が、その被爆体験を持つ唯一の国として、同じ思いを共有しなければならない国または民族が一つもふえないように努力を続けていく、その意味では私は見解を変えなければならないという議員とその点は考え方を異にしておる、繰り返し申し上げます。
  97. 高野博師

    高野博師君 終わります。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 いきなり質問に入りますが、総理は核兵器というものは廃絶を目指すという意味のことを今言われました。確認をしたいのですが、核兵器というのは廃絶すべきものか、あるいは、抑止力ということがよく言われますが、抑止力をお認めになるか、この点をお答えいただきたいと思います。
  99. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現実に我々は抑止力というものを考慮に入れなければならない世界に生きている、私はそう思っております。しかし同時に、それが核兵器というものの存在を究極的にはなくしていかなければならないという我々の考え方の基本と相入れないものだとは思いません。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 私も長いこと核廃絶の問題に取り組んできて今思っていることは、核兵器というのは、もはや軍事的な立場や政治的な立場、今国際司法裁のことに関して法理論的立場と言われましたが、法的な問題も含めて、そういう立場で考えるべきものよりもはるかに高いといいますか、大きな次元のものとして考えなければならないものだと、つまり哲学と言っていいような立場で考えなければならないものだということを非常に感じているんです。  つまり、弓矢が鉄砲になったり大砲になった、飛行機が軍事的に使われるようになったというような新しい兵器が出てきたという過去の歴史上のそういう変革とは全く次元の違った新しい兵器を人類は持ってしまった。釈迦に説法ですけれども、まさに人類というのは大変利口な生物であるはずなのに自分自身の種を断絶させるものを自分たちの手でつくってしまった。どんな生物でも、植物も含めて、自分の種を自分の手で断絶するようなばかなことをする生物はいないわけですが、人類は初めてそういう生物になる可能性を持ってしまった。となれば、利口な生物なら、それをみずからの手で断ち切ってなくしてしまう、あらゆる知恵を絞ってそれをやるということが人類、特に二十世紀から二十一世紀にかけて今核を持っている現実に直面している人間の務めじゃないか、特に我々のような政治に身を置く者はそのことが使命ではないかという思いに今立ち至っているんですが、その考えは総理はどう思われますか。
  101. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、哲学的な論争をさせていただくならば、私もまた別途の議論を組み立て得るかとも思います。  その場合には、議員は核兵器を言われましたが、恐らく私と同じ思いで見ておられるのは、例えば生物兵器、化学兵器についても同様の視点を当てはめることができるでありましょう。しかし同時に、核兵器の抑止力というものが冷戦の終了にもかかわらず非常に不分明である。そして、国際情勢が不分明、不透明なだけではなく、むしろ核兵器そのものももしかすると我々が知識として持っている以上に分散してはいないかという懸念は消えませんし、運搬手段その他は当然のことながら現に存在しているわけです。そして、その拡散の危険、危機というものはむしろ拡大しているととらえることもできると思います。  ですから、みずからが生物として、その生物の存在を脅かすようなものを開発した唯一の愚かな生物、これは哲学的に確かに私は議員の言われることを否定しようとは思いませんが、その不安定さというものが現実に存在している中では、その抑止力というものを安全保障を確立していく上で大きな計算値として考えないわけにはいかない、私はそう思います。
  102. 田英夫

    ○田英夫君 まさにアメリカが言っている抑止力という論理、これが現実に存在し、それをまた駆使していることも事実でありますし、それが世界の政治の中で実際に一種の効用を持っていることも私も認めざるを得ない。時間が短いですから、これ以上哲学論争をする時間がありません。改めてまたそういう機会があればと思います。  最後にお尋ねしたいのは、CTBTからカットオフ条約と段階的に核をなくすための包囲網のようなものを今国際的にやってきたことは大変いいことだとは思います。しかし、最後は核保有五カ国がみずから核をなくすという決断をして、これを国際的に約束する、そこに行かなければなくならない。これは可能だと思われますか。
  103. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、五カ国と限定をされましたが、残念ながら核保有の可能性のある国を考慮に入れないわけにはいかないと思いますし、その場合に対話を持たなければならない相手が五カ国ではない、それが現実世界ではないだろうか、そう思います。それが、CTBTに今加盟を拒否しておられる方々は我々が全力を挙げて説得に当たらなければならない、カットオフ条約の早期の開始とともに、この努力目標をかざした理由でもございます。そういう中から話し合いの糸口というものは見つけなければならないんじゃないでしょうか。
  104. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  105. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 核兵器という武器は恐らく人類が持つ最後の武器じゃないかと思うんですね。そういう意味では、武器の進歩とか戦争形態の発展とか、こういうものが人類の政治的統一範囲と密接に関係する面がある、こういうふうに思いますと、人類の歴史は急速に世界が一つになる方向に動いているのではないか。今から百年前といいますと日本の周辺では日清戦争のころですね。五十年前が太平洋戦争で負けて二、三年のころ。それで今と、こういうことを考えるにつけても、人類の政治活動が非常に世界一体化の方向に急進しているということはまず否定できない。  そこで、世界が政治的に一つになれば戦争はないわけですが、そういう面でヨーロッパを見ますと、大体ヨーロッパのEUは、数十年前までは血みどろの戦争をやっておった国々がどうやらもう今後は戦争はやらないんじゃないか、政治的な独立は各国が持っておっても、戦争はやらない可能性が非常に大きい国家集団になっちゃったということが言えるんじゃないかと思うんです。ただ、統一通貨一つ見ても、なかなかそういう歴史的な達観を各国が共通に持てないものだから非常に混乱しますけれども、方向はやはりヨーロッパ一体化へ急速に行くと。  そういうことを考えますと、ASEANなどもその方向でしょうしNAFTAもまずそういう方向じゃないかと思いますけれども、それと同時に世界の一体化の趨勢が急速に進んでいくということがございまして、人類の持つ武器がそれと非常に関連があるんではないか。  これから先も世界政治に大きく御発言なさるわけでしょうから、これからの地球がどういうふうになるのかということはよくお考えだと思いますけれども、一つの方向に急進しているということは大体大局的には異論がないと思うんですが、その次の段階、今の次の段階はどういうふうになるのか。国家としてはアメリカが一番大きな力を持つだろうと。それに対抗するソ連、今のロシアはそういう力は容易に持てないだろうと。占いみたいなものでありますけれども、一番対抗するのは中国の可能性が大きいんじゃないか。その次はインドですね。それで、経済的に判断する限りはアメリカ、中国、インドぐらいが今後二十年、三十年の長期展望に立ったときには大きな力を持つと。そういう状況をにらみながら核兵器の問題も考えるべきではないか、こういう気がするんですが、そういう人類史の近未来展望についてどういうふうにお考えでしょうか。
  106. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は人類史という立場まで拡大してお答えを申し上げる能力は残念ながら持ちません。しかし、ある意味で、ヨーロッパが一体化を進めていく中において、ヨーロッパの安定性が拡大していくことが、例えばNATOの拡大に対するロシアの拒否反応、そしてそのロシアの拒否反応に対するNATOの中における主導権を持つ立場としてのアメリカの行動、そしてその中からまた逆に中ロの接近というものが言われる。実は、先ほどヨーロッパ正面とアジア太平洋とを分けて考えるというのは通用しなくなったんではないかという考え方を申し上げました理由は一つここにあります。  そして、そのためにも私は中国を建設的なパートナーとしていかに国際社会の中に引き入れる努力をするかが我々に課せられたもう一つの大きな役割であると思っております。これは、中国を入れてあげる、それが中国のためになるんだというのではありません。建設的なパートナーとして迎え入れることはむしろ我々にとっても必要だということであります。  同時に、そうした中で、アメリカという巨大な力を持つ国がみずからの大陸の中に閉じこもるのではなく、太平洋国家としての側面をも維持し続けるように、関心を持たせることも我々の大きな役割の一つだと思っております。  そして、そういう意味では、ややもすると今まで我々にとって遠い存在でありましたが、今我々ができるだけの協力をしていかなければならない地域としてのアフリカ、こうしたところに対して国際的な平和を増進するための役割を我々がいかに果たし得るか、こうしたことは今の流れの中で必然的に我々が負うべき状況ではないでしょうか。  ただ、その中において、やはり大きな我々の役割、議員の整理をされましたような考え方に立ちますなら、我々はあくまでもアジア太平洋の国家であり、そのアジア太平洋というエリアの中における安定性をいかに拡大するかの努力をする国として位置づけられ、その役割を果たすことの緊要性というものがある、私はそのように思います。
  107. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 大変良識に富んだお話で力強い限りでありますが、核戦争を仮に防止することができるとすれば、これは大体相当な国力を持っている国にとっては戦争そのものの放棄でないと核戦争防止ということにはいかないんじゃないか。そこにアメリカから押しつけられた格好になっている日本憲法第九条が人類の平和の歴史的な灯台として輝いているというふうに考えると、私なんかの考えでありますけれども、そういうことを念頭に置いて、やはり我々は太平洋の一角にくみしておりますし、特にアメリカと中国との間が心からの平和理想で手を結んでくれることを熱願する立場からいえば、アメリカと中国が戦争はしない、核戦争廃絶についても理想を同じくする、こういうふうに心から、古い言葉で言えば平和の同志的な提携をしてくれることが一番望ましいわけであります。現実にはこの二つの国はお互いに警戒し合っているということも事実でありますし、これに対して我々の平和的熱願を訴えるとすれば、これは日本が天から与えられた歴史的な役目と言ってもおかしくはないだろう。  世界がだんだん一体化していって、数十年後の時代に現在を振り返って歴史を書く人が、あのときの日本は米中間にあってまことに聡明に振る舞った、こういうふうに言われることが望ましいわけです。それで、私は昨年一月の本会議で総理に、米中を本当に仲よくさせたら総理のお名前は人類史にさん然として輝くでしょうと言ったら会場から笑い声が出ましたけれども、笑い事じゃないと思うんです。これはぜひ総理のような長い政治生命を確保される方が日本の平和的役割として米中の心からの提携を実現していただきたい、核兵器の問題もこの角度から善処していただきたい、こういうふうに思います。  時間が来ましたので、またゆっくりとお話を伺う時間があると大変幸福だと思います。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 CTBTがさきの国連総会で百五十八カ国賛成して採択されたということの背景には、やはり日本国民を初め世界の諸国民核実験に反対するというものが背景にあったというふうに考えるんです。しかし、未臨界実験等が禁止されていないという問題点も私は残されているというふうに考えます。  そこで、この条約に従ってお尋ねしたいんですけれども、この条約の中では締約国の再検討のための会議が開かれるというふうなことの規定もあります。ですから、核爆発の実験のみではなく、核に関するあらゆる実験を禁止するという方向に努力すべきではないかというふうに考えるんですけれども、日本政府としてはどのようにお考えでしょうか。
  109. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはもう議員はよく御承知の上でお尋ねだと存じますけれども、アメリカが実験を計画していると言われます未臨界高性能実験は、CTBT禁止される核爆発には該当しないというのが国際社会の共通した理解または認識になっていると私は思います。  そうなりますと、今お話しになりましたようなステップを踏むことが先なのか。あるいは、今ちょっと手元に持ちませんけれども、このCTBTに反対をいたしましたときのインドの発言内容、これは核に対する先進国と後発国との間の技術の差を固定するのが我々の反対の理由というような趣旨に組み立てられていたと記憶をしておりますが、そうした国を説得し、むしろCTBTで決められました、ある意味ではまさに第一歩の条約なんですけれども、核兵器禁止に向けた第一歩の条約にまず入ってくる努力をする方が先なのか。  私は、現実性からいいますと、国際的な認識の中でCTBTに該当しないという認識が普遍化しております未臨界高性能実験というものに対しての働きかけよりも、まさにインドの主張しましたような主張、これに賛意を示した国は残念ながらほかにもあるわけでありますけれども、そうしたグループを説得する努力をする方がより先に我々に必要なことではないか、私はそう思っております。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 その点については別の見解を私は持っていますけれども、後で外務大臣の方と議論をやらせていただきます。  それでもう一つ、核廃絶の問題なんですが、御承知のように、アメリカで昨年の十二月、クリントン政権の第一期目の事実上の核戦略の責任者でありましたバトラー氏を中心として、十七カ国の六十一名の退役軍人が核兵器廃絶の声明を出しました。これ非常に国際的にも大きな反響を呼んだようであります。  それから、ことしの三月二十七日に行われたアメリカの世論調査の結果を見ますと、すべての核兵器の廃絶に対して賛成だというのが七七%、そして核兵器の廃絶協定の交渉を行うべきだという結果が八七%という数字になっておるように、非常に変わっております。国際的にもいろいろ例を挙げることができますけれども、時間がないので挙げませんが。  そこで、去年の五十一回国連総会で、期限を切った核兵器廃絶のための交渉を一九九七年初めから行うべきである、そして同時に二〇二〇年までに段階を経て核兵器の廃絶を目指す行動計画を踏まえて核兵器を世界から一掃する、こういう決議が呼びかけられました。このように期限を切った核兵器の廃絶に関する決議ということが明記された内容の決議は四本あります。  ところで、この四本とも遺憾ながら日本政府はすべて賛成されませんでした。先ほどのお話を聞いていると、核兵器廃絶を目指す、それを段階を経て実効が上がるようにするのでしたら、どうしてそのように二〇二〇年までの中にそういう問題を進めていくように努力しようという期限を切った核兵器廃絶の国連での四つの決議案に賛成されなかったのか、その点をお尋ねしたいんです。
  111. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) インドあるいはミャンマーなどが提出をいたしました決議、御承知のように、内容は核兵器国に時間的な枠組みを付した核兵器の削減等の約束を求めると同時に、ジュネーブ軍縮会議に一九九七年の早期に時間的枠組みを付した核兵器の削減等の条約交渉の特別委員会、これを優先的に設置を求めるという内容のものでありました。  しかし、現実性を考えていただきたいと思うのでありますけれども、期限をあらかじめ設定した上で核廃絶を考える、そういった時限的な核廃絶という考え方が核兵器保有国、少なくともはっきり保有をしている国々との間に調整が全くなされない状況の中で、現実性としていかがなものでしょう。同時に、そういうやり方をとった場合に、核兵器国の核軍縮に対する態度をより硬化させるということはお考えにならないでしょうか。  昨年、私どもはモスクワでエリツィン大統領主催のもとにおけるいわゆる原子力サミットを行いましたけれども、兵器の部分というのは非常に議論に取り上げにくい雰囲気でありました。そして、そういう中で我々は主張すべきことは主張してまいりましたけれども、議員が今御指摘になったような考え方というのは実は核兵器国と非同盟諸国の間の対立をいたずらに激化させるだけのものになりはしないか、私はそのように思います。  そして、そういう中で、むしろまさにカットオフ条約交渉を早く始める方が実効が上がるという判断があることは、賛否は別として、ぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
  112. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 時間です。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一つだけ。  こういう国連の決議に賛成している国が百十から百十五カ国存在しているということも改めてお考えいただいて、そういう方向への努力を重ねてお願いして、私の質問を終わります。
  114. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 核兵器というのは非常に厄介な兵器であります。一方では非常に強大な破壊力があるために抑止力があるという性質を持っている。抑止力というのはどういうことかというと、普通でしたら非常に使用の敷居の低い通常兵器までも使用するための敷居を高くしてしまう、これが一つの大きな効用だと思うんです。  しかし同時に、今もいろいろお話が出ておりますように、大変使いにくい兵器である。そこで考え出されたのが、ちょうど核兵器がずっと展開されたのは冷戦でありますから、冷戦のときに大変にIQの高い人たちが、少し利口ばかみたいなところがありますが、考え出したのが相互確証破壊に基づく冷戦のときの核戦略理論だったと思うんです。それは結果的には幸いうまく働いた。しかし、冷戦が終わってみたらどうもあの理論というのは必ずしも当てはまらなくなってしまいました。  一つには、その基本的な前提というのは、持っている双方が非常に理性的な計算ができるということが理論の前提になっておりますので、そこがあいまいになってくるとあの話は余り通用しなくなってしまった。しかし、それにかわるしっかりした理論というのはまだできていないように思うんです。その間に、しかし垂直も水平もあわせて拡散を防止しなければいけないというのでさまざまなレジームをつくろうという努力があった。NPTもそうでありますし、このCTBTもその延長上である。むしろ一番大事であったのは米ソ間の交渉、これも一種のレジームと言っていいと思うんですが、これが進んできているということだろうと思うんです。  しかし、いろいろな条約とかレジームをつくり上げていったことで問題が片づくものではない。現実に核兵器はございますし、それから水平拡散も我々がわからないところでどれだけ進んでいるかもわからない。こういうことなんで、何かちょっとしたことをやるたびに、ちょっとしたといっては悪いかもしれませんが、これで究極的な核のない世界への着実な第一歩などといって、それで話が進んでいく話でもないと思うんですね。  そこで、この間に日本のとった態度というのを見ていると、結局時の気分もありますし、さまざまな事情がありましたけれども、昭和五十一年にNPTに加盟をした。余り議論をしないで駆け込んでしまったような嫌いがあるかと思います。つまり、思考実験としても、一体核というものはどういうものであるかということは、きちっと組織的に日本の中で勉強する場所もなかったし、実際行われていない。日本は非核三原則だから、例えば自衛隊は核のことは考えるな、どこかで研究するなんというと大騒ぎになるというような話で終始してきて、うたい文句は米国の核の傘のもとにありますと言っていればよかった。そして、今でもそういうことだろうと思うんです。しかし、やっぱり物事というのはわかりませんとコントロールできないので、一体核兵器というのはどういうものであるかということは今からでも遅くはない、もっとしっかりした勉強をすべきだというのが私の意見です。  そして、その中には、例えば核の傘というのはもう一度本当に、冷戦のときは相当はっきりしていて北の方に向けて傘を差していたというんですが、今は一体どっち向きに差しているのかわからない。破れていないか、これは点検しなきゃいかぬ。  それからもう一つ先にいきますと、私は核戦争と戦争というものを二つに分けて、核さえなくせばいいんだという話じゃないと思うんです。そうすると、核だけなくしてしまえば危険はなくなるか、むしろ危険が増すことはあるかもしれない。我々は核を持たない。核を持たない国の核戦略というものを日本が考え出すという余地はないか。結局、人道的な精神に訴えるということよりも、核というものが総合的な安全保障の枠組みの中でだんだん無用になっていって、有用性がないじゃないかというところに追い込むような総合的な核を持たない国の核戦略というものをお考えになる気はないか、それをお尋ねして、終わります。
  115. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、私は非常に大事な問題を提起されたと思います。そして、そうした視点から振り返りましたときに、我が国はNPT条約締結百八十六カ国のうちで、ワシントンに寄託した順番からいきますと八十八番目の寄託国でございました。CTBTの現在御審議をいただいておりますこの状況の中で、現時点における締約国、これはまだ二カ国しかございません。そして、我が国が今国会でこの条約締結についての御承認をいただき、批准書寄託国となりました場合には、恐らく世界で三番目ということになります。  その意味では、確かに我々は従来の核の理論のもとで、抑止力というものの傘の中にありながら、こうした行動をとってきた。その意味で、核という兵器をどう位置づけたらいいのか、保有していない国としての核戦略という議論はいたしてまいりませんでした。むしろ、国会においてそうした研究、検討というものを政府に許されるということになりますならば、私はこれは真剣に日本が模索すべき一つの大きな方向だと思いますし、その中において核を保有しないと宣言し、また現実に保有せず、しかも工業能力においては製造を可能たらしめるだけの力があると言われている国が、核というものを完全に否定し得るような戦略を構成し得るかどうかということは、もしそうしたものができるなら私は国際社会における日本の一つの大きな貢献として考えるものがあり得ると思います。  しかし、従来、必ずしも国会における御議論というものはそうした問題に政府が深入りすることをむしろ戒めるお立場からの御議論が多かったわけでありまして、私は議員から今いただきましたような助言というものが院からちょうだいできるということになりますなら、我々が真っ正面から取り組むべき大きな一つのテーマたり得るものだ、そのように率直に感じております。
  116. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ありがとうございました。
  117. 矢田部理

    ○矢田部理君 人類と核が共存できないと言われてから久しいのでありますが、またそのためにこそ核廃絶に向けたさまざまな努力がなされてきましたが、やはり道なお遠しという感を否めません。  そういう中にあって、核実験停止条約が結ばれた。これはこれとして評価を惜しむわけではありません。しかし、先ほど総理から指摘がありましたように、ここでも未臨界核実験などの抜け穴が用意されているということなど、またインドの不参加が見込まれるなど、いろんな問題点があるわけであります。  この条項を読んでおやつと思った一つ重大な問題がありました。それは核実験禁止をするというだけではなくて、他の核爆発も実施しないという条項が加えられていることであります。他の核爆発ということになりますと、平和目的であれ戦争目的であれ、核爆発はこの条約によってできないのだと。したがって、核兵器は戦争で使用できないのだというふうに私は読めるのでありますが、そういう性格の条約としてこの条約位置づけるべきではないのか。その意味では、核実験禁止条約だけではなくて、核爆発禁止条約というべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。総理の認識を伺いたい。
  118. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は少なくとも条約に目を通しました時点におきまして議員と同様の感覚は持ちませんでした。私は、残念でありますが、戦闘行為に全く核兵器が使用できないとこの条約を読むのには無理があるように思います。この条約禁止しておるものはあくまでも実験でありまして、戦争に使用されるというのは、あるいは議員の御論議をそのままに拝借するなら壮大な実験の延長線上という位置づけになるのかもしれませんが、私はそこまで読み切るのは無理だと思います。
  119. 矢田部理

    ○矢田部理君 前文にすべての実験的爆発をまず禁止すると、これはそのとおりです。及びその他すべての核爆発を終了させるという前文の文言があります。同時にまた、第一条の「基本的義務」の中には、核兵器の実験的爆発または核爆発を実施しない、取りやめるということになりますと、単なる実験だけではなくて、すべての核爆発がここで禁止をされるというふうに読むのが普通であって、それを除外する、戦争のための核兵器使用は除外するという規定はどこかにあるのでございましょうか。総理の認識を聞きたい。
  120. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 改めて今条文を政府委員から受け取って読み上げさせていただきますと、「締約国は、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を実施せず並びに自国の管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止し及び防止することを約束する。」と。これは自国の管轄または管理のもとにあるということでありまして、言いかえれば自国の管理のもとにない場所での爆発を否定はいたしておらない、私はそう読んだわけです。
  121. 矢田部理

    ○矢田部理君 「締約国は、」とありますから、アメリカやロシアが締約国になればまたその縛りがかかるのだと私は思いますが、これ以上議論しますとあとの問題が触れられませんので。  もう一点、総理と議論しておきたいと思いますのは、先ほどから議論されております核抑止力の議論であります。  米ソの冷戦下では、ソ連の核の脅威に対してアメリカが核を持って対峙している。アメリカの核の傘のもとに入った方が日本は安全だ、その必要があるという説明をしてきたのでありますが、冷戦崩壊後はその論理は根本的に見直されてしかるべきだというのが私の認識です。にもかかわりませず、依然としてアメリカの核抑止力に依存するというふうに一昨年の防衛計画の大綱では決められている、明示している。どこの国の核に対していかなる脅威を感じておるのでしょうか。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員よく御承知でお尋ねだと思いますけれども、今我が国の周辺において核兵器を確実に保有している国、その保有が疑われている国、さらに保有が疑われ、同時に運搬手段の開発が行われているのではないかと疑われている国がございます。そして同時に、このCTBTに加盟を真っ向から拒否しておられる国もございます。  私は、明示的にどこの国が脅威という言い方はこの場で避けるべきだと思いますし、また特定の国を意識して我々はみずからの安全保障を考えておりません。どこの国であれ、この国に対して危害を加えるものから我々は身を守りたい、同時に我々から他人に危害を加えに出かけるつもりはない、こう言い続けてまいりました。だれが危ない、だれは危なくないというような言い方というのは、議員がおっしゃいましたように、東西二大陣営対立の時代を乗り越えた、あるいは一方が崩壊して変化した現在の情勢の中で、むしろ深入りをして議論することが私は国のために望ましいことだとは思いません。
  123. 矢田部理

    ○矢田部理君 あと一問で終わります。  防衛白書によりますと、我が国周辺の諸国で多数の核を持っている国があると、ロシアと中国を指していることは明白であります。その核の脅威に対して、言うならば二国間の軍事同盟で、あるいはまたアメリカの核で自国を守るという発想は、私から言わせれば冷戦型の思考を払拭し切れていないのではないかという感じがいたします。  総理、ここで非核地帯を論じるに当たっても非核三原則を議論するに当たっても、日本はアメリカの核の傘にあって、どうしてそれを言う資格があるのかという国際的な指摘なども受けるわけでありますが、核抑止力からの脱却、この依存政策から抜ける道を核軍縮をにらむに当たっても積極的に検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  124. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはおしかりを受けるかもしれません。その点を覚悟した上で申し上げたいと存じます。  矢田部議員が御提起になりました問題点と椎名議員が御提起になりました問題は、極めて似ているようでありながら、我々に求められる思考方式には全く異質のものを要求することになると思います。そして私は、いずれかと申しますならば、椎名議員が提起をされましたような、核が現実に存在する国の中において我々もまたその抑止力の恩恵を受けて今日まで来た。しかし、核を保有しない国が戦略構成の論議の中において核というものがむしろ使えない、あるいは存在自体が逆に問題を提起する、そうした思考をぎりぎりと追い詰めていくことができるならば私は核を持たざる国としての国際社会における一つの考え方をつくり上げることができると存じますが、自国が現に同盟国であるアメリカの核の抑止力の傘の中にありながら、その同盟関係の根底を否定するような部分から発する考え方で果たして有益なものがつくり上げられるのかどうか。残念でありますが、議員とその点については私は意見を異にいたします。
  125. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。
  126. 小山峰男

    ○小山峰男君 最後でございますので、少し角度を変えて質問させていただきます。  デンバー・サミットにおきましては初日からロシアのエリツィン大統領が正式に参加することになったということでございまして、従来のサミットとかなり性格が変わってくるだろうというふうに思っているわけでございます。特に、日ロ関係が必ずしも正常化されていない中でロシアが正式に参加するということにつきましては、日本にとってかなり大きな影響が出るだろうというふうに思っております。ロシアが正式に参加する意義あるいは我が国の対ロシア外交に与える影響、あるいは今後のサミット全般についての総理の所見等につきましてお伺いしたいと思います。
  127. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょっと日付を忘れましたが、ヘルシンキ会談に出発される直前、クリントン大統領からロシアの参加問題について相談をしたいということで電話をいただきました。  そのとき私は、ロシアを入れて議論をすべき問題と、ロシアを除いて従来の七カ国で話し合うべき問題とを分けてきちんと整理することができるかということをクリントン大統領に対して提起をいたしました。同時に、日本はロシアとの間に旧ソ連時代から引き続いての領土問題を持っており、この領土問題を解決した上で平和条約を結ばなければならないという他の参加国との違いがある、この点についてエリツィン大統領に対して日ロ間の話し合いを促進するような協力はアメリカから得られるのかというのが私の提起した第一点であります。  二点目は、国際経済、マクロ経済の問題等々を議論いたします場合に、ロシアが入って議論をすることが望ましいのかどうか、むしろそうした問題は従来のG7で行うべきではないのか、そうした問題を私の方から提起をいたしました。  クリントン大統領の方からは、そのほかに例えばウクライナの問題等もロシアを入れて話すのではない、そうしたテーマではある。しかし、例えば環境問題のように、まさに共通の問題としてロシアを入れて話し合う方がいい問題もあると。  私は、そういう点で考えましたときに、ロシアがまさに改革の努力を継続しながら世界経済への統合を目指していく、進めていこう、そして国際経済社会において建設的なパートナーとしての役割を果たそうとする限りにおいて、私はむしろこれを受け入れて、G8の中で議論をするということに問題はないと。しかし同時に、それはまさに日ロ間に存在をする領土問題、そしてさらには平和条約締結へのプロセスというものについてアメリカが支援するということを言ってくれるかどうかが問題だと、そんな応答をいたしました。  そして、それを踏まえた上でエリツィン大統領とクリントン大統領との間の話し合いが行われました。  私は、その点では、ロシアがデンバー・サミットに参加する、しかしやはりロシアが入らないでG7で議論する問題は別にあるという姿は世界の実態に即した形のものとして受けとめるべきだと考えております。  その上で、むしろ我々としては、国際社会の共通のルールに従ってロシアが行動することを求めていく、こうした方向を模索する中でロシアの対外政策というものに対して肯定的な方向づけをすることができれば、そのような願いを込めておることも申し上げておきたいと存じます。
  128. 小山峰男

    ○小山峰男君 ロシアの核管理の問題は大変ずさんであるというふうに伝えられておるわけでございますし、きのうもテレビのニュースで十二隻の原潜がというような話も伝えられていたわけでございます。  今、総理がおっしゃられたように、サミットとして話す問題、環境問題等というお話もございましたが、デンバー・サミットの機会にエリツィン大統領に対してはっきりと核の拡散防止体制の強化だとか、あるいは核管理体制の強化というようなものについて、やっぱり各国で協議をし、ロシアにそういう対応策を求めていくというようなことが必要だというふうに思っておりますが、その辺のお考え方はいかがでしょうか。
  129. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 核物質の管理体制を一層厳重にしてもらわなければ核物質の拡散の危険性がふえる、この認識は私はロシアを含むサミット参加国が共有していいと思っております。そして、殊に昨年の四月にモスクワで行われました原子力安全サミット、これはエリツィン大統領自身のイニシアチブで提起をされ、実行に移された会議として私はロシア自身がそうした認識は基本的に持っていると思っております。殊に、核兵器の解体に伴って発生をいたします核物質の管理の問題というのは、これは非常に重要な問題でありますし、核不拡散という点からも大事な問題であります。一義的には実は核兵器保有国の問題なんですけれども、国際社会全体に与える影響ということでは極めて大きな問題だということが昨年の原子力安全サミットにおける共通の各国の認識でございました。  その上で、昨日、私も議員の指摘をされました老朽化した原潜の問題は報道で見まして大変心配をいたしますけれども、当然のことながら今回のデンバー・サミットにおきましてもロシアの参加している場でこの問題は議論をすべき問題として出てまいると思います。そして、これはただ単にロシア一カ国の核物質の安全かつ効果的な管理の促進ということだけではなく、ウクライナの問題等も含めまして当然のことながら議論をいたさなければなりませんし、各国の首脳と少なくともこれについてのある程度の共通の見解というものは昨年のモスクワの原子力安全サミットでそろってきていると思いますけれども、これをより前進させる努力は必ずいたしたいと考えております。
  130. 小山峰男

    ○小山峰男君 ありがとうございました。
  131. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。ありがとうございました。  引き続き質疑を行います。
  132. 立木洋

    ○立木洋君 午前中の大臣の御答弁の中に、確かにCTBTについては今までよりも進んだという点は考えられるけれども、しかしやはり限界もある、また今後検討しなければならない問題もあるという趣旨のことを述べられたわけですね。その一つが核爆発を伴わない核実験禁止されていないという未臨界実験等の問題、午前中からいろいろ問題になりました。この点は、つまり核兵器を保有している国が核爆発を伴わなければ核兵器を維持する、そういう実験を行うということについては何ら禁止するものではないというのはそのとおりですね。大臣にちょっと。
  133. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) CTBTは核兵器のない世界を目指した国際社会の努力の中で非常に大きな一歩ではあると思います。しかしながら、この条約によってすべての問題が解決されるとか究極的な目的が達成されるものでないことはそのとおりでございます。  そして、今具体的に御質問ございましたが、現在核兵器を保有している国が存在する、そのことがこの条約によって解消されるということではないというのは、そのとおりでございます。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 日本政府は、これまで包括的核実験禁止条約締結することを最優先課題とするというふうに主張されてこられたわけで、たびたびの言明の中でも、我が国は従来よりあらゆる国のいかなる核実験にも反対するという立場に立って進めていくということが強調されてきました。つまり、いかなる核実験にも反対するという立場だったと思うんです。だとするならば、この条約では核爆発を伴う核実験禁止するということになりましたものの、いかなる核に関する実験、これをも禁止するということにはなっていないわけですが、この点は日本政府は交渉の過程でどういうふうな立場を主張されたんでしょうか。
  135. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回のCTBTでは、いわゆる未臨界の実験とかコンピューターを使ったシミュレーションというものは規制対象になっていないわけでございます。しかし、そういったものをどうするかということは、将来の国際社会全体としての核兵器のない世界を目指しての努力の中で取り上げられる、あるいは検討されるべき課題であるということは否定しないところでございます。  それから、これまでの日本としていかなる核実験にも反対するという姿勢との関係いかんという御質問でございますけれども、私どもが反対する核実験というのは、今回のCTBT規制対象となりますような核爆発を伴う実験というものを具体的には念頭に置いてきたと、こういうことでございます。ただし、そのことが将来における核兵器のない世界を目指してのいろいろな国際的な努力、作業が進展する中で、それぞれの段階における状況を踏まえて、さらに突っ込んだものになるということはあり得るんだと思いますが、現段階ではそういうことでございます。
  136. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、それはこの交渉の過程の中であらゆる核実験には反対だということを主張したかどうかという私の質問について、未臨界実験についてのそれはやっぱりやめるべきだということを主張しなかったわけですね、日本政府は。
  137. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは、先ほども申しましたように、核兵器のない世界を目指しながら努力していく、しかし現段階でどうか、一体何をすべきか、また何ができるかを考えながらこのCTBT条約づくりにも参画してきたわけでございまして、そういった中で我々としては、具体的には未臨界実験、これは既に存在する核兵器の安全性なり信頼性なりをいわばチェックする、それを向上せしめる上で有効なものというとらえ方をしておりましたので、現段階におきましてこれをその対象にするということは主張しなかったところでございます。  なお、コンピューターシミュレーションにつきましては、午前中の審議の中でも御答弁申し上げましたけれども、現時点におきましては有効な検証手段がないという事情も勘案しながら我が国としては対応してきたところでございます。
  138. 立木洋

    ○立木洋君 確かに、アメリカ政府の主張の中に、この未臨界実験というのは現存する貯蔵している核兵器の安全かつ信頼性のある保持を確保するものというふうな指摘もあります。しかし、アメリカにおける核爆発を伴わない核実験について言うならば、未臨界実験だけではなくて、流体力学的実験だとか高エネルギー・密度実験、実験室内でのエックス線や中性子線、ガンマ線などを放出させて兵器の及ぼす影響を調べる兵器に対する効果実験等々、さまざまな実験があります。これらの実験によって核兵器の安全性や信頼性を保持する、確保するためのものだけではなくて、核兵器そのものの新しい兵器の開発を可能にするという指摘があるんですが、そうではないんでしょうか。
  139. 河村武和

    政府委員河村武和君) つい最近にアメリカが未臨界高性能実験を行うということを発表いたしました際にも、まさに既存の核兵器の安全性と信頼性を確保するという一連の計画に基づいてこれを行うということを言っております。  さらにつけ加えますならば、今挙げられましたいろいろな実験と申しますのも、まさにアメリカのいわゆる保有核兵器の管理運営計画というものに基づいて行われることとなっております一連の実験でございまして、それらもすべて核兵器の安全性と信頼性の確保という観点から行われるものという説明を米国は従来から行っております。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカ政府の軍備管理軍縮局に在籍している現職の専門家で、キャサリン・マグロー氏が最近論文を発表しています。その中では、CTBTによって爆発実験や開発は影響を受けても、実験室内での新型核兵器の開発は続き、既にミニ核兵器や超ミニ核兵器のモデルの開発が企てられているというふうに発表されています。このミニ核兵器というのは、マイクロ波や電磁波を発生させてコンピューターなどの機能を破壊したり、装甲部隊や地中の軍事目標を攻撃するための新しい兵器の開発だというふうに述べられているわけです。  ですから、こういうようにCTBTで実験が制約を受ければ、爆発実験が必要のないタイプの小型核兵器の開発に一層拍車がかかるという指摘さえあるわけです。この問題は、ただ単に現存する核兵器を保持する、維持するだけではなくて、新しい兵器を開発するということはアメリカの専門家によって指摘されているんですから、やっぱり新しい核兵器の開発が事実上促進されるということを意味しているんではないでしょうか。大臣、いかがでしょう。
  141. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) CTBTによりまして、少なくともはっきりしていることは、この条約に参画することによりまして、現在核兵器を保有していない国における核兵器の開発あるいはそれの保有という道が閉ざされるということはあると思います。新たに実験できないわけでございますからね。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 新たに……
  143. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これから実験をし、そして核兵器を保有しようという国にとっての核保有への道が閉ざされるという効果は少なくともあると思います。それと同時に、現在の核保有国も核爆発を伴う実験は行えないという制約をすることでございますから、やはりそれだけ核兵器の分野でのいろいろな作用といいましょうか、そういった道が制約されるということも否定できないところだと思います。  それから、それと同時に、このCTBTだけではなくて、核兵器のない世界を目指しての努力はいろんな形で行われておるわけでございます。核保有国同士の交渉を通じての核軍縮の交渉も現に行われておるわけでございます。そういったものとあわせて考えていくならば、このCTBTの持つ効果というものはやはり大きな意義があると考える次第でございます。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 全然効果がなければ意味がないわけで、効果が上がるという点については、一定の影響や効果があるという点については否定するものではありません。しかし、現実に新しい核を開発する道を完全に閉ざしてしまっていないという点にやはり問題があるんではないかという指摘なんですが、それはいかがですか。アメリカの専門家が述べているわけですから。
  145. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 理論的にはいろいろなことが考え得るんだと思います。しかしながら、根底においてやはり核軍縮を進めていこう、核兵器のない世界を目指そう、こういった国際社会の大きな意思の流れがある。その中に現在の核保有国も身を置いているわけでございますから、そういったコンテクストの中で考えていくべきじゃないかと考えます。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 次に、イギリスのウエストン軍縮大使が次のように述べているわけです。核疑惑国の批准も発効要件に加えなければ条約は無意味だと。それにあわせて、条約の重要な目的の一つは、核拡散防止条約、つまりNPTに加盟していない核疑惑国をCTBTの中に取り込むことによって核拡散防止の枠組みに縛りつけることにあるという目的やねらいがあるんだということを述べていますが、日本政府もそのように考えているわけですか。
  147. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、いわゆる核疑惑国と申しましょうか、核保有の意思あるいは力を持っていると疑われる国がこのCTBTに参加するならば、実験をしないということを通じて疑いを持たれるような道へ進むことが防がれるといいましょうか制約されるという効果があると思います。    〔委員長退席、理事高野博師君着席〕  また同時に、NPTに未加盟の国がこのCTBTに参加するならば、やはりこれも実験を規制されるということを通じて核保有に至る道を制約されるという効果はあると考えます。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 次に、一九九五年にフランスは実験を再開したわけですが、そのときには、一九九六年中にCTBT締結という公約を果たすためにこそ数回の核実験が必要だというふうにフランスは当時主張しました。そして、実験再開の理由として挙げたのは、一連の実験によってCTBT締結された後も核抑止力を維持できるシミュレーションなどの技術を取得するためだというふうに述べていたわけです。そういうふうなことはフランスの態度として当然とっていたというように日本政府も考えているわけですね。
  149. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その当時フランスがそのような考えを漏らしていたということは承知しております。そして同時に、その当時我が国はフランスの核実験に対して反対するということを明らかにしフランスに申し入れたということも委員御高承のとおりでございます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 そのときに、この条約の中には、「この条約対象である事項関係する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。」という脱退の権利の条項が規定されています。これはどういうことを意味するのでしょうか。
  151. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今指摘されました規定は、この条約のみならず、既に日本が加盟しております部分的核実験禁止条約、核不拡散条約、化学兵器禁止条約等に既に存在しております脱退規定と同様のものでございます。    〔理事高野博師君退席、委員長着席〕  一般論といたしまして、ある国にとって安全保障を確保するということは極めて重要な利益であると考えられますから、主権を行使して脱退する権利を明記した規定を確保しておくことが必要であるというのが条約交渉参加国の共通認識であったわけでございまして、その結果この九条が設けられたわけでございます。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 今幾つかの核兵器保有国の態度や認識の問題をお尋ねしたわけですけれども、結局、アメリカの問題にしても、ただ単に貯蔵している核兵器の安全と信頼性を確保するためのものに限らない。新しい核兵器を開発するに可能な実験の方法さえ今開発しているわけですし、これは同時にフランスにおいてもそういう技術が持てる段階に至るまでは核実験を行ってきたというふうな態度もあります。  自分たちの国の至高の利益にかかわる問題に異常が生じた場合には脱退する、核実験を再開するということの道さえ開いているという点では、核兵器保有国にとっては核爆発を行わないという点での一定の規制はあるけれども、やはりこの問題についてはすべての実験を禁止するという方向に進めていかない限り核軍縮としてより有効な道を進めていけるということにはならないんじゃないかという懸念がどうしても残るわけですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  153. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回のCTBTが核廃絶を目指すといった目標に対しまして万能の手段であるとは考えておりません。それからまた、いろいろこれから取り組まなくちゃいけない課題を残しているのも否定はいたしません。  しかし、現実の世界を見た場合に、やはり基本的には、主権国家があり、それぞれがみずからの責任でみずからの安全を図っていくという姿になっている。そして、その際、核の抑止力も含めたいろいろな手段が基礎になっているという現実もあるわけでございます。しかし、そういった中で、将来的には核兵器というものを廃絶していこう、それのない世界をつくろうという理念を追求する努力が一方においてあるわけでございます。  そういった両方の接点において、現在最も現実的でありしかも実効性のある条約は何か、そういった模索の中から生まれてきたのがこのCTBTである、このように認識している次第でございます。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 おっしゃるように、これが万能なものではない、だから問題点もあるんだというふうな午前中からの指摘もあるわけで、それは決してわからないわけではありません。しかし、少なくとも一般の人々、国民が考えていたことで言うならば、核実験を行わなければ新しい核の開発はできない、そして核の保有自身の安全も確保することができなくなる、だから核実験を完全に禁止するということは非常に意味があったんだと。御承知のように、一九七八年に国連で行われた会議、第一回軍縮総会においてもそういう問題点がなされておるからこそ、核実験の包括的な禁止というのは人類の利益にかなうものだというふうな極めて高い評価を与えていたわけですね。  だから、先ほど言いましたように、この審議の過程の中でやはり日本政府は未臨界実験についても意見をきちっと述べておくだとか、核兵器廃絶の課題も念頭に置きつつ進めるものであるならば、この条項の中にも核兵器の廃絶の課題を明記すべきではないかという意見も非同盟の諸国の中からもあったわけです。そういう問題点に対して積極的な態度を日本がとらなかったというのは、やはりアメリカの核の傘のもとにあるからそういう積極的な態度をとらなかったんではないかというふうにどうしても思わざるを得ないんですが、いかがでしょうか。
  155. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我々は、先ほども申しましたような国際社会の現状、核も含めた軍備のあり方、あるいは安全保障の枠組み、そういったものも前提にしながら、そして世界の各国のそれぞれの立場なり主張というものも念頭に置きながら、現時点において極力多くの国の参加を確保しながら、そして実効性のある条約をつくっていこうと、そういった観点から考えまして今回まとまったような内容CTBTに賛意を表してきたところでございます。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 私は唯一の被爆国としてもっと積極的なあるべき姿勢をとるべきだったということを指摘しておきたいと思うんです。  それから、先ほど同僚議員が問題にいたしました検証の問題ですが、この検証のために設けられている国際監視制度の中心が国際データセンターですね。これは一九九五年一月からワシントン郊外で動き始めているというお話がありました。私はこれは非常に重要な問題だと思うんです。河村一さんが先ほどお話しになった点からいうと私はちょっと議論があるんですが、総勢六十人のうち五十二人をアメリカ人で占めている。それから、年間約四千万ドルの費用がかかっているわけですが、この九割をアメリカが提供しています。そして、国際協力という形をとっているけれども、実態はアメリカの研究機関だという点に私は注目したいと思うんです。  昨年の夏まで外務省の専門調査員としてジュネーブでのCTBTの交渉にかかわってきた方が、この国際監視システムが核超大国であるアメリカのアメリカによるアメリカのためのものになりそうだという指摘をしているわけです。これは外務省の専門調査員としてジュネーブの交渉にかかわった方の発言です。  そして、現在アメリカはフロリダの空軍基地にある国内用のデータに加えて国防総省が判断をする。そして、最大の情報源は地上十五センチ程度の物体も見分けられる偵察衛星。この情報はアメリカの独占物だと、こういうふうに規定しております。そして、このような点から解説された一般新聞の中でも、大規模な暫定のこのセンターを自主的に運用してノウハウを蓄積し、偵察衛星を操るアメリカが今後の検証でも主導権を握ることは容易に想像がつくというふうな指摘もあるんです。  問題は、情報がどれほど重要かということは、私が繰り返すまでもなく、大臣は十分に御承知だろうと思うんです。より多くの情報、より正確な情報を持っている国がその問題に関する主導権をとり得るということは、検証の問題についても言えることだと私は思うんです。  こういう状態になっているということは、事実上偵察衛星から検証のための監視等々の情報を独占するアメリカが主導権を握るという問題があり、やはり核保有国としての利益はそういう面からも保障されるという道を考えているんではないかというふうに、今まで述べた核保有国の態度に関連して質問したいわけですが、いかがでしょうか。
  157. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 午前中の審議の中でも政府側から答弁いたしましたけれども、同じIDC、国際的なデータセンターと申しましても、現在ございますのは米国の機関でございます。そして、その中で国際協力が行われていますけれども、確かに現在行われているのは米国の機関でございますから米国主導でございましょう。しかし、この条約が発効いたしました後にできますIDCというのは、名称は同じでございますけれども、これは条約に基づいてウィーンにできるものでございまして、別物でございます。それをまず一点申し上げておきたい。  それから第二点として、実際問題として、そうはいっても米国において、さらにいえば米国の現在あるIDCにおいて蓄積された知見なり技術なりノウハウなりというものがウィーンにできるであろうIDCにおいて活用されるということは十分あるんだと思います。しかし、これは何も核保有国の利益を保障するために、確保するためにというものではなくて、やはりこのCTBT目的とするところをきちんと実行していく、その実効性を担保するための検証、そのために生かされる技術なり知見でございますから、これは決して米国のためというものではないと思うのでございます。  委員のおっしゃった言葉をおかりして申し上げるならば、ある意味ではラフな言い方かもしれませんけれども、米国の米国による米国のためのとおっしゃいましたけれども、私は米国の……
  158. 立木洋

    ○立木洋君 私の言葉じゃないんです。外務省の専門委員の……
  159. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 米国の機関で米国によってでき上がった技術なり知見というものが世界のための生かされると、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私はアメリカが必ずそうしているということを断定しているわけじゃないんです。しかし、核保有国という立場がありますから、だから日本立場からそういう問題についてもやっぱりきちっと目を配っておくということが必要ではないかということをこの点については述べておきたいと思うんです。  最後になりますけれども、発効要件と発効の見通しです。御承知のように、今は四十四カ国が批准することが発効の要件になっておりますが、そういう問題も重ねて、午前中問題になっていたインド等の問題がありますから、本条約発効の可能性についての見通しを日本政府としてはどのように考えられておるのか、今の時点でどう判断されておるのか、最後にそのことを伺って、終わりたいと思います。
  161. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現時点におきましてこれを締結した国は二カ国でございます。そういうことでございますので、今確たる発効の時期等を予測することは残念ながらまだ難しい状況でございます。  しかしながら、極力早期に多数の国が締結するように我々としてもいろいろな場を通して働きかけてまいりたいと思いますし、とりわけ、これは四十四の数がそろえばいいわけじゃございません。いわゆる敷居国等がきちんとその中に入りませんと発効いたしません。そういった国の中には現在のところ明確にこれには参加しないという立場を明らかにしている国もございますけれども、しかし我々としてはこの条約に認める意義を説きまして、何とか再考をし、態度の変化をしてくれるように働きかけてまいりたいと考えている次第でございます。
  162. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 先ほどの総理大臣とのやりとりで、私の核についての研究を真剣にやった方がいいんじゃないかということと、それから核を持たない国の核戦略ということについてお考え願えるかということを相当真剣に受けとめていただきましたので、余りつけ加えることはないんです。  勉強のことで思い出すんですが、例えばスイスという国があります。これは中立国ということでいまだに頑張っておるわけですが、あそこに二種類の防衛のマニュアルがある。一般国民のための市民防衛のあれがありますね、いろんなことが書いてあります。例えば、どこかの国に占領されてもうちはしっかりした亡命政府をつくるから、その通知が聞けるように電池つきのラジオは必ず持っておれと、電池を切らすなというようなことが書いてあったり、おもしろいんですが、今度は軍隊の方のマニュアルには最新の兵器の技術を駆使したマニュアルがあるんですね。どこの国の最新の戦闘機とか爆撃機とかなんとか、そういうのもみんな詳しく載っている。研究を怠らないわけです。  なぜそんなことをやっているかといったらば、例えば占領されて飛行場を取られて、そこにそういう飛行機が来たときに、どこをいじると動けなくなるかということを研究しておかないといざというときに間に合わないというようなことで、自分たちはそんなものをつくる気は全然ないんですが、しかし本当に最新の軍事の勉強をしている。  それから、御承知のように、全国民に核シェルター、入れるような設備がありますが、これも何となしに地下に穴を掘って入れるということだけではいけないので、核爆発というのが起きたときに一体どういうような破壊が起こるかということを十分研究した上であのシェルターというのはつくっているんですね。ですから、何食わぬ顔をしておりますが、スイスの人というのはどこへ行ってもちゃんと議論ができるような連中が随分たくさんいる。  私は、勉強しておかなきゃいかぬというのは、先ほども言いましたけれども、核をなくそうといういろんな努力はあるにせよ、とにかくそういうものがあり、そしてとにかく有効な面もあるというような世界の中でしばらくは暮らさなきゃいかぬという状況の中で、先ほど言いました核のない国の核戦略を持って積極的に議論に参加するためには我々はやはり勉強しておかないといけないんじゃないか。  しかし、日本の中のさまざまなムードとかその他のことでこれが行われていないというのは、いわばおれはもう自動車のようなものには乗らぬ、だからライセンスも取らない、だからボンネットをあけて何があるかなんというのはわからなくてもいいと言っていると自動車の議論は全然できないというのと同じことだろうと思うんです。  その点で、私はとにかく少ししっかりした勉強をしておくべきだと思うんですが、先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、そこらあたりどうお考えになりますか。
  163. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御指摘のとおり、私も同感する部分が多うございます。  もとより、核兵器のない世界を目指す、そういった熱い気持ちを持ち、その方向へ向かって努力をしていかなくちゃいけない、これは当然のことでございます。同時に、現実にそういったものが存在するという世界に我々は住んでいるわけでございますから、そういった意味での備え、いわゆる防備と申しましょうか、そういったことが必要でございましょうし、さらに積極的に進んで、先ほど来委員の御主張なさっているところ、ある意味では核兵器というようなものを無効化するような研究なり技術の開発なりというものもあるいは必要なんじゃないか。そういった意味での努力というものも一方において我々考えなくちゃいけないのじゃないかなと思う次第でございます。
  164. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それから、核を持たない国の核戦略という話に関連しますが、皆さん反対なさるかもしれないけれども、世界じゅうのすべての人間が、核兵器というのは非人道的な兵器であって、これはもう絶対に使われてはならない、使ってはならないと思い込んでいるという前提に立ちますと少し現実から離れるんじゃないかと私は思うんです。信用されるような理屈をつくるためには、そうではない部分もあるということも心得ておかなければいけない。  例えば、非常に強烈なナショナリズムですとか民族主義のような信念を持っている人たちは、我々がやっつけられるような事態が起こったときには最後のよりどころとしてやっぱりこれは持っていなければいけないという気分が、これは今核を持っていない国、非保有国で、どうも持ちそうだ、あるいは持っているかもしれないという国の中にもそういう気分があるだろうと思いますし、また核の保有国の中にもそういう気分があるから頑張るという国も、どことは申しませんけれどもありますね。  そういうような、最後のよりどころとしては道徳的にも許されるんだというような、これはまた逆に強烈な信念を持った人たちをも持たない方が得だよといって説得できるような話にしなければいけないというためには、そういう人たちもいるという、あるいはそういう国があるということを心得た上で物事は考えなきゃいかぬ。これが一つです。  それから、二つ目ですけれども、実は私は、一九八三年にNATOの加盟国の国会議員の集まりがヘーグでありまして、そこで非常に短い演説をやったんです。当時はSS20という中距離核ミサイルがソ連側に、東側に配備をされて、これにどうやって対抗するかということで、一九七九年に、交渉しつつ、それがだめだったらば配備をするという二重路線決定がありました。八三年というのはちょうどその期限になるころです。  当時のヨーロッパの空気というのは非常に恐怖心が高まりまして、デッド・オア・レッドというのがあって、死ぬくらいならみんな共産主義、要するにソ連に巻き込まれてもいいじゃないかというような世論の高まりがあって、大変に大きなデモがあったりして各国の政府も苦労していた。  このころ、それじゃ少し遠慮して、SS20をウラル山脈の東の方に持っていけばそれでいいのかねといったら飛びつきかけていたんですね、ヨーロッパの諸国は。しかし、アメリカは、いや、そうじゃない、ゼロオプションだと言ったんですが、要するにみんななくしてしまうと言ったんですけれども、なかなかヨーロッパの空気が強かった。それをやられますと、ウラルから東、極東に至るまでのSS20というのは手つかずになってしまうというこっちの都合もありましたから、そういうことになつちゃ困るという気もあったんです。  私が強調したのは、皆さんは核の恐怖によって核さえなくしてしまえばそれで問題は片づくと思っておられるかもしれないけれども、我々が抑止すべきものは形容詞なしの戦争である、戦争を抑止するということが先であって、核戦争という形容詞を取り除けば問題が片づくと思っていると、戦争の抑止力が減退するという事態が起こったら一体どうするかねという話を私はしたわけです。  ウィリアムズバーグ・サミットでの政治宣言その他もあって、究極的にはゼロ・ゼロオプションで全部なくすということにこぎつけて、そのときは外務省の諸君も非常によく働いたと私は思っておりますけれども、私は依然としてそう思っておりまして、核が全部いきなりなくなればそれですべて問題が片づくという話ではないと思うんです。そこまで視野に入れた核のない国の核戦略というものが立てられるかどうか、これを真剣に我々が、日本が考えるということを始めますと、今でも結局あんなことを言っているけれども二十一世紀の初頭ごろには日本は核武装するに違いないとキッシンジャーなんかはいつでも言っている。そういうようなことを思わせないためにも、我々は核の勉強をして、非常に現実的な、もちろんこういうレジームの構築も大事ですけれども、現実的な立場からの核というものをだんだん有用さを減らし、無用化するというような筋道はないかということを真剣になって考えるということが非常に大事だと私は思っておりますが、御感想を聞かせていただいて、終わりにいたします。
  165. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員が御指摘になりました二つの点、まず最初の点でございますが、確かに人間の善意を信じたくはございますけれども、人間は同時に悪魔的な要素を持っているものでございます。そしてまた、他に選択肢がなくなった場合、そしてまた非常に偏った信念に凝り固まっている集団が何らかの行為に出るおそれがあるという要素、これも我々は無視するわけにはいかないと思います。それは御指摘のとおりだと思います。そういった意味で、こういった核廃絶に向けての努力も、理想を追求しながらも、その人間の善なるものと悪なるものをよく念頭に置きながら、現実を踏まえて一歩一歩進めていかなくちゃいけない、このように考える次第でございます。  ただ、そちらの、悪の方の要素を余り重視しまして、これを抑止するためにはやっぱり万全の備えが必要なんだということで、核廃絶へ向かっている努力そのものが消えてしまうようなことになってもいけないのかなという感じはいたします。  それから二つ目の点、抑止すべきは核だけではなくて戦争ではないかという御主張、その点につきましては全く同感でございます。そういった意味におきまして、私どもも、こういった核あるいはその他の大量虐殺兵器等につきまして、殺りく兵器等につきましてのいろんな努力をすることはもとより大切でございますが、安全保障上の信頼醸成のためのいろいろな努力であるとか外交面の努力、それからさらに申しますと、今世界は経済面を中心といたしまして相互依存の関係はますます深まってまいっております。そういった相互依存の網の目を強化することを通じて、お互いの利害という観点からいっても戦争というものが一層起きにくくなるような環境なり条件なりを整備するということも考えてまいらなくちゃいけないんだと思っております。  それからまた、前段の方で御指摘になりましたが、かつてヨーロッパの方でいろいろな動きがあったときに、ウラルの東へというような動きもあったということを我々も想起するわけでございますが、そういった観点から申しましても、今や安全保障の問題はヨーロッパもアジアも、あるいは世界のどこの国の安全保障の努力あるいは安全保障環境の変化というものもお互いに影響し合うものだということを考えていろいろ対応していかなくちゃいけないと、こう考える次第でございます。
  166. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今ちょっと気になりましたのは、悪の要素とおっしゃったけれども、私はそういうふうに考えている人たちは決して悪じゃないと思うんですね。
  167. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 信念ですね。
  168. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 信念。その信念というのは、例えばこれは最後のよりどころだなんていって頑張っているということが、彼らからいえばもうまじめに、むしろ外は悪だと思っているわけでして、そういうものじゃないんだよという説得をすることによって、民族主義とかナショナリズムというのは正当化できるにしても、その手段としてはそんな利口な話じゃないよと、これは。ということを説得するということであって、おまえがそう言うんだったらこっちからぶち込むぞというアプローチをしようという話ではない。  だから、そこに核を持たない国の戦略というのが、そういうことを私は申しておりますので、善悪という話は私は余り好きじゃありませんので、その点はちょっと訂正していただければと思います。
  169. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) よくわかりました。  私のお答えの仕方もちょっと委員の御主張を十分に踏まえずにお答えした部分があったと思いますけれども、善悪という理念だけではなくて、おっしゃいますように、それぞれの立場でみずからはこの道を進むべきだという信念で行動していく、しかしそのことがより広い立場から見るならば問題があるんじゃないか、また当人にとってもとるべき道ではないんではないかということを知らしめ、そういった道に走らないようないろいろな工夫、努力をしていくということが極めて肝要であると考えます。
  170. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 そのとおりであります。
  171. 矢田部理

    ○矢田部理君 CTBTについて抜け穴があるということで午前中から議論がありましたが、例の未臨界核実験あるいはまたコンピューターシミュレーションなどで核爆発を伴わなければよろしいんだという立て方が一つあろうと思うのであります。外務大臣が衆議院などでも説明をしておりますのは、アメリカがやる未臨界の核実験、これは既存の核兵器の安全性とか信用性を維持するためにやるんであって、だから日本としても文句を言わないのだというような向きのお話もあったんですが、そういう限度で行われる限りは言わないが、それを超える場合には日本としてもアメリカに物を言わなきゃならぬという態度なのでしょうか。
  172. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私はもう一つの視点からお答えをしたと思います。  将来の課題としてはまだいろいろあるんだろうということを申し上げたと思います。現在の状況というものを考え、そしてその中での未臨界実験を位置づけました場合には、私は今回の条約対象外になっているということでやむを得ないと考えておりますけれども、将来、さらに核廃絶に向かっての国際的な努力が進んでいく中においてまたさらなる取り組みを求められる、それが必要になるということは十分あり得ると考えております。
  173. 矢田部理

    ○矢田部理君 未臨界の核実験で、従来の核兵器の安全性を確かめるとか信用性を維持するとかということのためという目的はアメリカも言っているようです。しかし、この実験で新しい核技術の開発とか質的な向上を図るとかという実験も可能ではないかと思うんですが、それは不可能だという確証みたいなものはあるんでしょうか。
  174. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私も技術の方は余り強くございませんので、確証と言われますと明確にお答えすることはできません。難しゅうございますけれども、少なくとも表明された意図としてそういうことを明示しているということはございます。それから、この問題だけではなくて、全体としての核問題への取り組み、あるいは軍事あるいは安全保障の問題についての取り組み、そういった中で考えていくならば、我々は表明されている意図をそのまま受け取るべきかと考える次第でございます。
  175. 矢田部理

    ○矢田部理君 今回のCTBT意味は、核爆発実験を禁止することによって核兵器の新たな開発とか質的な改善を抑えるということが目的だと前文にも書かれているんです。しかし、未臨界の核実験にしてもシミュレーション方式にしても、やっぱり新しい技術を求める可能性を多分に含んでいるという指摘も実はあるのであります。  そういう点でいうと、核爆発にかかわる実験だけを抑えればいいと、それはそれで価値がないわけではありませんけれども、やはり全体としての核開発をやっぱり抑制していく、これ以上進めないということにこの条約の大きな眼目があるというふうにも理解できますので、日本としては、被爆国という立場からいっても、未臨界であれ核爆発を伴わないものであれ、やっぱりそれはやめてほしい、やるべきでないという態度をとるべきだし、そういう国際的努力を今後条約の改定などを含めて進めるべきだというふうに私は考えます。  特に、インドなどを説得する少なくとも一つの材料として、核先進国というか核保有先進国は技術的にどんどん進んでしまう、他は一切やっちゃならぬというようなことで不平等性がより拡大をする可能性もはらんでいるわけでありますから、そういう点に着目をしても、これはやっぱりアメリカに注文をつけてしかるべきだというのが私の提案であり要請ですが、いかがでしょうか。
  176. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員もこの条約に盛られているところがやはり核廃絶に向けての努力を進めていく上で意味のあるものだということは認めておられるわけでございまして、強いて申し上げますならば、どこかをとってさらに蜀を望む云々かなという感じもいたします。  それと同時に、私は現段階でやはり何をすべきかと考えました場合、なるべく多くの国々の参加を得て、とりわけ核保有国の参加も得て、核実験の少なくとも爆発を伴うものの全面的な禁止を実現するということは非常に大きな歴史的な意義があると考えますので、今の段階ではこれは非常に大切な一歩であると考えておる次第でございます。  ただ、将来の問題としては、またこれからの核廃絶に向けての努力の進展ぐあい、またそのほかの安全保障等をめぐるいろいろな状況の変化の中で、またいろいろな新たなる課題、さらなる努力を求めることは十分あり得ると思っております。
  177. 矢田部理

    ○矢田部理君 繰り返しになりますからこれで終わりますが、将来の課題じゃないんですね。六月末にも未臨界の核実験をやろうと。専門家の一部の指摘によれば、やっぱり新しい核開発の第一歩だというような位置づけすらなされているわけでありまして、その点では日本立場からいえば、将来の課題としてではなく、やっぱり今日の課題としてこの問題にはきちっと物を申すべきだということを特に希望しておきたいと思います。  それから二番目に、先ほど総理との議論の中で、条項をよく読んでみますと、第一条などは、「締約国は、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を実施せず」という宣言になっているんですね。この「実験的爆発」はわかりますが、「他の核爆発」というのは何も平和目的に限ったわけではなくて、すべての爆発を禁止する意味ではないのでしょうか。
  178. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今、委員が申されましたとおり、「他の核爆発」というものは平和的核爆発を意味しているものでございますけれども、そもそもこのCTBTの前身とも言うべき部分的核実験停止条約というのが既に一九六三年にできております。  この部分的核実験停止条約におきまして使っております用語と申しますのは、「核兵器の実験的爆発及び他の核爆発」ということでございまして、一九六三年以降いわゆる部分的核実験停止条約によって地下以外で核兵器の使用が禁止されているという認識は国際的にはまず成立していなかったということが一つ言えるかと思います。  さらに、交渉の過程全体におきまして、交渉参加国全体がこの条約が核兵器の使用の問題を議論しているという認識は持っていなかったということが二つ目に挙げられるかと思います。  さらに、第三点でございますけれども、この条約は昨年の九月に署名をされました。その署名をされました後の国連総会におきまして、一部の国々が、これは従来からと同様でございますけれども、国連総会の決議として核兵器使用禁止条約締結すべきであるという決議を出しましたけれども、もし国際社会の認識がこのCTBTにおいて核兵器の使用を禁止しているということでございましたならば、国連総会でいま一度核兵器の使用の禁止ということの条約交渉を慫慂するような決議はやはりなされなかったんではないかと。  このような観点から、私たちとしてはこのCTBTは核兵器の使用の禁止について云々しているということはないと、このように考えております。
  179. 矢田部理

    ○矢田部理君 立法の経過や状況は文言を解釈する一つの参考ではありますが、文言それ自体では戦争目的の核爆発を除外しているということは、全条項を全部調べてみましたが、どこにもないじゃありませんか。むしろ前文などは、あらゆる核爆発、あるいは他のすべての核爆発を停止するということを強調しているということから考えれば、やっぱり一たん成立すれば条約はそれ自体が生きるのでありまして、そういうものとして私は解釈すべきだと思うし、そうなればこの問題はより一層進むというふうに思っておりますが、いずれにしても明確な除外の規定はないということだけは確認できると思います。  それから、三番目に伺っておきたいのは、インド等全体が参加しないとこの条約は発効しないと、そうなっておりますが、発効前であっても締約国は何らかの法的拘束力があるのでしょうか。発効しない以上は依然として実験は可能だという立場に立たざるを得ないのでしょうか。その辺はいろんな国際法規もあるようですが、明確にしておいてほしいと思います。
  180. 河村武和

    政府委員河村武和君) そもそもこのCTBTの成立が国際社会のもうほぼすべての総意に基づくものであったということは、国連総会におきましてそもそも圧倒的多数の支持を得て、百五十八カ国でございましたけれども、採択されたということから見まして、かつ百四十四カ国が署名したということからいたしまして、核実験を行うことがこのCTBT成立後政治的に極めて困難となっているということはまず指摘できるかと存じます。  同時に、この条約との関連で申しますと、いわゆるウィーン条約条約というものがございまして、ウィーン条約条約の中の十八条でございますけれども、条約に署名した国は批准その他の締結行為によって条約自国について効力を生ずる前であっても条約趣旨目的を失わせるような行為を行わないようにする義務があるというぐあいに規定しております。  条約趣旨目的を失わせるという行為は、このCTBTについて当てはめますれば核実験を行うということでございましょうから、このウィーン条約条約規定にかんがみましても、既に現状におきまして核実験に対する一定の抑止機能を果たしていると、このように言ってよろしいかと存じます。
  181. 矢田部理

    ○矢田部理君 今の答えで十分だと思いますが、そうしますと、核保有国でこの条約に加盟したというか参加した国々は、もう既に核実験はこの条約条約によってできないというふうに確認してよろしゅうございますね。
  182. 河村武和

    政府委員河村武和君) ウィーン条約条約によります限り、そういう規定になっております。
  183. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、もう一点だけ伺っておきたいと思います。この前の核拡散防止条約もそうでありますが、やっぱり核保有国と非核の国との格差が条約を結ぶたびごとに開いて、一種の不平等条約的な要素、性格を持っているということがかねてから指摘をされているわけであります。インドなどの反論にもそこが背景にあろうと思うのでありますが、やはり実験禁止だけでは不十分なんです。やっぱりこの廃絶と、それから本格的な核軍縮という道筋をどう求めるのかということが日本外交にとっても非常に大きな課題だと思います。また、それをより具体化することがインドなどの参加を求める道筋でもあろうと思っているのでありますが、それの具体策というか、こうしたいとかこうするとかというのは、外務大臣、何かありませんか。
  184. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましても、このCTBT締結されました後も、さらに核廃絶に向かっての努力は進めなくちゃいけないと思っております。  それで、近い将来ということで申しますと、まずこの次は高濃縮ウランであるとかプルトニウムなどの製造を規制いたしますいわゆるカットオフ条約というものの交渉を早期に開始するということがまず現実的な次なる一歩になるのではないかということで、我が国としても積極的に取り組んでおるところでございます。  それから、さらに申しますならば、昨年十二月に京都でセミナーも開催いたしましたし、また国連総会でのいろいろな核軍縮に関する決議につきましても、現実を踏まえながら日本としても対処してきておるわけでございまして、またそういったいろいろな面でこれからも努力をしてまいる所存でございます。
  185. 矢田部理

    ○矢田部理君 カットオフ条約締結への努力ということを私は否定はしませんが、しかしこれも本質的には同じ問題を含んでいるんですね。プルトニウムなどを既に大量に蓄積している国はもういいわけですよ。逆に、そうでない国を抑えるという意味があるから、ここでも不平等性というか、私は条約には賛成でありますが、同じ問題をはらんでいるんです。やっぱり核先制使用を禁止するとか核兵器の使用を抑えるとかという方向、あるいは核軍縮をより積極的に進めるという内容をより具体化しませんと、インドなどに対する説得も非常に難しいのではないかということで、その点にも十分留意されて進められることを求めていきたいと思います。  同時に、午前中にも議論になりました非核地帯の問題について、時間がある限り申し上げておきたいと思います。  南半球はこれでほぼつながりました。問題は北半球で、どう非核地帯をつくるかということで、この四月にも中国などアジア各国の民間レベル、政治家や学者、専門家が中心でありますが、集まっていろんな議論をしてきて、午前中も指摘がございましたが、朝鮮半島は九二年に南北朝鮮で非核化の宣言をやっているわけなんですね。これは確認できますね、その中身と状況について。
  186. 川島裕

    政府委員(川島裕君) それ以前におきまして、あの半島におきまして核の問題、南におきましても北におきましてもいろいろあったわけでございますけれども、あの年を契機として、一つは南北間でも合意がございましたし、実際上も核兵器というものがあそこからなくなったという一つ進展がございました。  ただ、別途北の核疑惑というものがその後再び残ったということは御承知のとおりでございますし、その意味で好ましい進展だったというふうに言えるだろうと思います。
  187. 矢田部理

    ○矢田部理君 北の核疑惑というのはこれまたいろいろな見方があると思うのでありますが、それも全体としては解消の方向に向かっているし、特にKEDOというのはそういう疑惑を排除するためにもそれを進めようということにもなったわけでありますから、ということになれば、やっぱり南北朝鮮の非核化宣言と。日本自身は非核三原則を持っているわけです。これも抑止力とかアメリカの艦船の寄港とか通過とかということで問題なしとはしないのでありますが、建前上は非核三原則を持っている。ということになれば、南北朝鮮と日本は非核化の議論では基本的な認識、政治的な宣言としては一致しているというふうに思われるわけです。  そこで、東北アジアの非核地帯をつくるに当たって、中国やロシアやアメリカも含めた三国が、今その地域を含めた非核化宣言はなかなか難しいというふうに私も思いますが、この三国を中心にした非核地帯をつくると。それをアメリカ、中国、ロシアが尊重し、保障していくというようなことならば可能ではないかという提起をここ一両年私はアジア各国にというか東北アジアの皆さんにも相談をかけているのでありますが、中国は去年まではかなり消極的でした。ところが、ことしは中国側からも同様同種の提案がありまして、その提案はより具体的であり、現実的であるということで、中国側は、かなり外務省の人たちも入った集まりでありましたが、積極的に支持をしていく方向づけがなされましたし、ロシアの代表も賛成された。そうしましたらモンゴルの代表が手を挙げて、私どもも東北アジアです、非核化賛成というようなことになってきておりまして、現実的可能性が開けつつあると。  午前中の議論でもまだ情勢は熟していないかのような物の言い方をされておりますが、私はやっぱりそういう努力も全体の核軍縮とか核廃絶の努力の重要な一環としてぜひ日本がやってしかるべきだし、日本としてイニシアをとるべきではないかというふうに考えます。今すぐやれということになると、どうも外務大臣はいい顔をしないようでありますが、今後の方向づけとして考えていったらどうなのかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  188. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 当然のこととして北東地域の安定度を強めていくための努力、そのためのいろいろな形での対話というものは必要だと考えております。現在でも、もとより政府間でもいろいろな形の対話がございますし、また、委員も御指摘になりましたけれども、民間あるいは研究者、いろいろな形でのそのような対話があるわけでございまして、そういった努力は今後とも進めていかれるべきものと考える次第でございます。  ただ、非核地域ということになりますと、これは午前中も申し上げましたけれども、やはりその地域のすべての国が、とりわけ核保有国も含めた国々の間での合意の形成がされなくちゃいけませんし、その合意を形成するためには、単に核の問題だけではなくて、そのほかの軍備の関係がどうなっておるかとか、あるいは対立関係があるかどうかとか不安定要素はどうであるとか、安全保障全般ともかかわってくることではないかと思います。しかし、いずれにしても将来に向かってのいろいろな努力は続けてまいらなくちゃいけないと思っておりますし、日本としてもそのような努力は払っていく所存でございます。
  189. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、先ほども少し議論をしましたが、アメリカの核の傘にあって、あるいはまた核抑止力に依存をしながら日本の安全を守ろうという考え方は少しく古いと。しかも、二国間の軍事同盟で対応するというやり方にも私は問題が多過ぎるということで、今東北アジアの非核地帯構想について提起をしましたが、東北アジアというと日本と朝鮮、それから中国、ロシア。アメリカも広い意味ではかかわるかもしれませんが、二国間の軍事同盟ではなくて、多国間の平和と軍縮のテーブルをつくっていくというような課題を追求することも非常に大事な課題だと。  ともすると、ヨーロッパと違って、アジアはまだ歴史も民族もいろんな意味でやっぱり違いがあり過ぎるし、複雑なために共通のテーブルをつくることは難しいとされてきたのでありますが、既にASEAN地域フォーラムなどではそういう多国間の協議が始まっておりますし、進んできているわけでありますから、東北アジアでも非核地帯だけではなくて、経済的な協力関係や友好の関係なども含めてそういう情勢づくりを積極的にやっていくべきではないのか。  特に、朝鮮は南北に分かれて依然としていろんな問題を抱えているわけでありますが、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と国交すらないというのは、もう戦後五十年、半世紀以上たってこれだけ近い国の間でおつき合いすらしないというのは私は問題が多過ぎると思うんです。  そのために幾つかの前提みたいなものが今出されているわけでありますが、問題があるとすればまずやっぱり門戸を開いた上で懸案事項の解決に臨むべきだと。韓国の金大中さんなどもそういう考え方に立っているし、特に北も南も国連に加盟している国なのでありますから、ここはやっぱり日本の戦前の植民地支配とか戦後責任というさまざまな立場から考えても積極的に北との外交をしかけていくということなどを含めて、東北アジア全体としての平和と軍縮のテーブル、友好と交流の環境づくりに積極的に取り組むことが、私はそうやると池田外交は非常に光ってくるんじゃないかと思うんです。あなたの存在理由にもなりはしないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  190. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、当然のこととして、この地域の安定を図っていく上において多国間の対話は大切だと思っております。御指摘もございましたが、ARF等の場におきましても、信頼醸成あるいは将来的な予防外交等々の役割を期待しながら、また我々もメンバーとして努力しているところでございます。また、北東アジアに限定したそういった多国間の信頼醸成の枠組みというものも将来的にはつくっていかなくちゃいけないなということで、今民間レベルあたりではいろいろな枠組みも既にある程度動いているところでございます。  しかし同時に、現在のこの地域の安全保障環境を見ました場合には、やはり日米安保体制のような二国間の枠組みが全体としてのこの地域の安定の基礎をなしているということも、これはあるいは委員のお考えとは若干違うかもしれませんけれども、我々はそう考えておりますし、また現在アジア太平洋の多くの国々、その中には韓国とか、あるいはロシアもそうでございますけれども、そういったことを認めておる。また中国も、現在の日米の安保体制のあり方についていろいろな意見は言っておりますけれども、少なくとも日米二国間の安全を維持する体制としての役割というものは否定しない、認めているところでございます。そういったことは申し上げさせていただきながら、多国間の努力は続けてまいりたいと存じます。  それから、北朝鮮との正常な国交関係を結ばなくちゃいけないというのは、我々もそう考えておるところでございます。そして、現に正常化交渉を八回にわたって積み上げてきたわけでございます。積み上げたと申しましても実質交渉には入れないままでございましたけれども、そういった努力をしてきたわけでございますけれども、残念ながら北朝鮮側が席を立っていきまして、そのきっかけになりましたのはどういう事柄であったかは御承知のとおりでございます。例の李恩恵事件でございましたけれども。  そして、現在、正常化交渉の公の交渉の場はないまま時間が推移しているわけでございますが、我々としては、日朝の関係は正常化しなくてはいけない、そしてそれはまた朝鮮半島全体の安定に資するものでなくちゃいけない、こう考えている次第でございます。
  191. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後になりますが、そういう立場からいえば、核問題に戻りますが、アメリカの核の傘のもとにあると。その理由として、防衛白書によれば、日本周辺に多数の核を持った国が存在する。名指しはしておりませんが、そう言えばロシアと中国だということがすぐわかる。それから、核疑惑とか核開発の可能性を持った国がある。これは北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国だということがすぐ読めるような表現になっている。だから核の傘のもとにある必要があるんだと、こう言う。そういう国の核の存在とか核開発の疑惑があるから核の傘のもとになきゃならぬのだと。  ソビエトの核の脅威に直面してアメリカの核の傘に入った。これは冷戦型の発想だったわけですね。中国を脅威視したり、特に安保再定義もそこに状況は向けられているといって中国は盛んに懸念を表明しているし、ガイドラインの中身と行方を非常に注視しているわけでありますが、そういう方向で東北アジアなりアジア太平洋への外交関係を仕切るのではなくて、やっぱり非核地帯をつくる。そのためには非核三原則を国内的には法制化するという議論もあります。それから、アメリカの核の傘から離脱をする。そして、全体がこの非核地帯を尊重し合うような関係を、アメリカはもちろんでありますが、中国やロシアにも求めていくというような外交展開を少なくとも中期的な課題としてやっぱり展望してほしいと私は思っております。  それからもう一つは、そういう立場でこれからガイドラインも、アメリカのアジア太平洋全面にわたる軍事力の展開に日本の自衛隊が積極的に加担、協力をしていくと。場合によっては集団自衛権の行使にも踏み込みかねない。憲法の枠内だ枠内だと言って、枠を広げていて枠内だと言ったってこれは我々理解しにくいのであります。というような方向ではないですね。  アジアと日本、とりわけ東北アジアに平和の構想をもっと大胆に日本が打ち出していくということを特に求めておきたい。返事は要りません。  終わります。
  192. 小山峰男

    ○小山峰男君 まず最初に、効力の発生の関係でお聞きしたいと思いますが、四十四カ国が批准をすることで発効するということでございまして、先ほど総理も三番目の批准国になるんだというようなことで胸を張っていたわけでございますが、実際問題として世界各国の状況というのを今外務省はどんなふうに把握しているか。例えば、この半年以内にどのくらいとか、そういうことを把握していたらお願いいたします。
  193. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今この条約に対する各国の態度についてお尋ねがございました。  既に御説明がございましたとおり、フィジーとカタールが批准をしております。私たちとしては国会承認をいただけるならば多分日本が三番目になるだろうと思っております。  そのほかに、私たちの方が発効にかかわります四十四カ国についていろいろな状況を調べましたところ、ことしじゅうに批准を行う予定であると申しました国が七カ国ございます。ことしはちょっと無理であるけれどもさらに鋭意検討中であると言っておりますのが残りの三十カ国でございます。その他、まだ返事がわからないという国がございます。  以上でございます。
  194. 小山峰男

    ○小山峰男君 いずれにしても、インドだとかパキスタン、この辺はかなり難しいという情勢のように思うわけですが、トータルで百四十四カ国が一応署名をしているという状況なわけですので、外務省としてもそれぞれいろいろのルートを使って批准国をふやす、批准国がふえることによって批准しないような国に圧力をかけていくような努力というのはやっぱり必要だというふうに思います。これからの手順として、ぜひ外務省にそういうことを積極的にやってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  195. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今、委員の言われたとおりでございます。まずはとりあえず日本国会の了承をいただいて批准をさせていただくことによって、まず日本自身の考えを示すことによりまして、これからバイの場でいろいろと働きかけを行っていくということがより可能になろうかと思います。  さらに、国連総会の場で日本も従来から決議を出したりしておりますけれども、国連総会の場を通じまして早期のCTBTの各国による批准、さらには発効というものもぜひ呼びかけていきたい、このように考えております。  さらに、より具体的に申しますれば、二国間対話、それから地域的なレベルでの対話、先ほどからいろいろと話が出ておりますけれども、アジアにおきましては特にASEAN地域フォーラムという場がアジア地域の安全保障について議論をする非常に適切な場になっているということかと思われますので、そういう場をも利用いたしまして批准それから早期発効というものをぜひとも呼びかけていきたい、このように思っております。
  196. 小山峰男

    ○小山峰男君 先ほど来いろいろお話ございますが、未臨界実験あるいはコンピューターによる模擬試験というようなものが条約では禁止されていないということでございまして、先ほど矢田部先生からアメリカでは六月下旬にもこういう実験をやるようなお話があったわけでございます。また、中国でもこういう実験をやるようなことが示唆されているというふうに承知しておるわけですが、この辺の状況を外務省は把握していたらお願いしたいと思います。
  197. 河村武和

    政府委員河村武和君) アメリカにおきましては未臨界実験と言われる実験を近い将来行うということについては従来から私たちは承知しております。特に、本年の四月にはアメリカは近い将来、すなわちこの春から以降にかけて行うということを言っております。具体的に、しかしそれではいろいろと言われましたとおりに六月中に行うのか、それがさらに延びるのかということについては特に情報を現在のところ有しておりません。  それから、今御指摘がございました中国が同様の実験を行うという情報につきましては私たちの方としては特に承知をしておらないという状況でございます。
  198. 小山峰男

    ○小山峰男君 アメリカなんかの場合は日本通告とか、そういう形の義務というか、そういうものは当然ないわけでしょうね。
  199. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今私が申し上げましたとおり、アメリカは一般的に発表するという形で実験を行う意向を世界じゅうに示したと、こういうことでございます。いずれにいたしましても、何らかの国際的な義務をアメリカがこの実験の実施について有しているということはないと考えております。
  200. 小山峰男

    ○小山峰男君 先ほど来あったと思いますが、そういう情報に基づいて、前向きと申しますか、さらに核を発展させるような形の実験等については少なくとも日本政府としてもやっぱり厳重に要請するというような態度というのはとれるわけですか、とれないわけですか。
  201. 河村武和

    政府委員河村武和君) 本件につきましては、先ほどから累次大臣が御説明しておりますとおり、このような実験の問題は今後核廃棄、核兵器廃絶というものをどういうぐあいに進めていくかという枠組みの中で検討されるべき課題であろうと、このように考えております。
  202. 小山峰男

    ○小山峰男君 それからもう一点、昨年アメリカは英国との間では既に締結している核実験データ等の相互利用のための協定というものをフランスとも締結したというふうに聞いておるわけですが、その辺の事実はどうなっておるでしょうか。
  203. 河村武和

    政府委員河村武和君) 私たちが承知している限りにおきまして、今言われましたとおり、フランスは米国との間におきまして核の分野における協力の中で核兵器の安全性と信頼性の確保のための一定の協力関係を有していると承知しております。
  204. 小山峰男

    ○小山峰男君 英国とは既に同じような協定を結んでいるということでよろしいでしょうか。
  205. 河村武和

    政府委員河村武和君) 英国につきましては、御存じのとおり、従来から米国の核実験場におきましてイギリス自身核実験実施していたという協力関係を有しているという情報は私たちとしても承知しております。
  206. 小山峰男

    ○小山峰男君 こういうことについては、今回の条約の中には当然入っていないというふうに思いますが、例の核拡散防止条約ですか、こういうものはどういう取り扱いになっているのか、お願いしたいと思います。
  207. 河村武和

    政府委員河村武和君) 今も御指摘がございましたとおり、アメリカはフランスでありますとかイギリスといろいろな関係を有しておるかもしれませんけれども、いわゆる核不拡散条約におきます規制と申しますのは、核兵器国から非核兵器国への情報等の流出というものが規制されていると、このように承知しております。
  208. 小山峰男

    ○小山峰男君 先ほどもいろいろお話がありまして、結局核兵器保有国と非保有国との間の差別条約じゃないかというお話もあったわけですが、今のような保有国同士における核実験データの情報の提供というようなことになるとすれば、ますます保有国が核兵器を発展させていくような形になってしまうのではないかというふうに思うわけです。こういうことで、今回のCTBTの発効というようなものの障害にもなっているんじゃないかというふうに思うわけですが、外務省あるいは外務大臣の見解はいかがでしょうか。
  209. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の条約も含めまして、核にかかわるいろいろな国際的な取り決めが、見方によっては保有国と非保有国との間の不平等な関係を固定するとか、あるいはそれを将来に向かってさらに強めてしまうという見方ができないことはない、それは私も否定いたしません。  しかしながら、平等性を重視する余りに、一番の目的である核廃絶に向かっての努力というものが水をかけられる、あるいは足を引っ張られることがあってはなりませんので、そこのところは我々は、中長期的な状態において核兵器のない世界が実現すればそれで平等になるわけですから、そこに至る過程においてはある程度の不平等性というものについてはあえて否定しないということもやむを得ないんじゃないかと思う次第でございます。  しかしながら、そういうことであっても、核保有国の側がそういうことをいわばエクスプロイトといいましょうか利用して、究極の核をなくすといった目的に照らして、好ましくない方向へ進むということは自制してもらわなくちゃいけないと考える次第でございます。
  210. 小山峰男

    ○小山峰男君 今の未臨界実験あるいはシミュレーションによる実験、さらに保有国同士の今のような情報提供なり、そういうものも今後の課題としてやっぱり十分外務省としても検討いただいて、より前向きにまた対応していただきたいと要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  211. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  包括的核実験禁止条約締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  212. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会