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佐藤道夫君 私はつい数日前の青木前ペルー大使のテレビでの発言をちょっと取り上げたいと思います。
その際、まずもって、
先ほどの田議員の御意見とも関連いたすわけでありますけれ
ども、私も今回のペルー事件の
責任は挙げて接受国であるペルー
政府にあるということは、これは当然といえば当然、自明なことであるというふうに考えております。
日本国内の治安、犯罪防止、これまた挙げて警察の
責任であります。ですから、今回、神戸の方で変な猟奇的な事件が起きて、子供の首を切って、傷口の間に、何か口の中にですか、警察に対する警告文か何かを入れておいたと。ああいう猟奇的な事件が起きればまずもって警察が激しく非難される。これは当然といえば当然でありますが、やっぱりあの付近の住民は、少し気持ちが悪いんで夜間の出入りは遠慮しようかと、これまた当然の自衛
措置とも言えましょう。しかし、あの付近で最近
一つの盛大なパーティーでも
計画している人がおりまして、やっぱりやめておこうかどうしようかと、いや治安維持、犯罪防止は警察の
責任、構わぬ構わぬやれやれといってやって、猟奇犯に襲われて犠牲者が出たとすれば、やっぱりこれはただでは済まない。法的
責任を追及されることもあるんだろうと思います、このパーティー主催者は。そういう問題だろうと思います。
そこで、つい数日前にテレビを見ておりましたら、青木大使がさっそうと登場いたしましてペルー事件についての大変つらかった経験等を語っておりましたが、キャスターがこういう
質問をいたしました。青木大使の
責任問題が
日本では非常にやかましく取り上げられて厳しい意見も出ておりますよと、こう言いましたときに、青木大使自身が、あのような事件に巻き込まれてしまった結果
責任を感じておりますという答えをしておりました。私、これを聞いて少し
国会の彼の御意見とは違うな、少しどころか基本的に違うんじゃないかと、こういう思いがしたわけであります。
巻き込まれるということは第三者が言うことでありまして、当事者ではないんです。夜、道を歩いておるとやくざたちが入り乱れてけんかをしておる、それをぼんやり眺めておったら、おまえもあいつらの味方かということで片一方の側からさんざん殴られた、こういう場合に巻き込まれたという言い方をするわけであって、けんかをしている当事者たちがおれは巻き込まれたなんと言ったら、皆、何だこいつらはといって笑い飛ばすわけであります。
日本語としてはなっていないわけであります。
それから、結果
責任を感じておりますと、この結果
責任という
意味が、
法律用語じゃございませんからかなりあいまいなんですけれ
ども、いろいろと
日本人が好んで使うんですが、要するに法的
責任はないが事故を起こしたことについては私なりに
責任を感じておりますと、こういうときに使うようです。
非常に慎重な運転をする人が、法定速度を守って道を走ってきたけれ
ども、子供がふいと飛び出してきてはね飛ばしてしまったような場合に、自分の車ではね飛ばしたのでそれなりの
責任は感じておりまするというときにこの結果
責任ということをどうも使っておるようであります。物すごい乱暴な運転をする人がすごいスピードで飛ばしてきまして、しかもこれに加えて前方不注視もありまして横断歩道を渡っている歩行者をはね飛ばした際に、私は結果
責任を感じますよと言ったらこの人は厳しく非難される。君は何を言っているんだ、常識がないのかと、こう言われることになるわけであります。
今回のペルー事件、もしアメリカ大使館で開かれたといたしまして、それに青木大使が
出席いたしました。ところが、あに図らんやゲリラに襲われまして百日余りも監禁された、こうなりますと事件に巻き込まれたと、こういう表現はまことに適切だろうと思います。それから、百日余りも人質にとられまして大使館の仕事ができなくなって、
日本政府やら
日本国民やらいろんな人たちに御迷惑をかけましたと、こういう場合にどうも結果
責任を感ずる、こういう言い方をするようですよ。巻き込まれて結果
責任を感じておりますると。
パーティーを主催したアメリカ大使が事件に巻き込まれて大変な結果
責任を感じておりますると言ったら、
日本人はこれを聞いて何だと、自分たちでパーティーを主催しておいて巻き込まれたとは何だと、反省心が全然足りない、法的
責任もあるんじゃないか、結果
責任を感ずる、そんな言い方はあるまいと、こういって
日本人は皆憤慨すると思います。
青木大使がどういう
意味であれをおっしゃったのかよくわかりませんけれ
ども、前回、当
委員会に来ていただきまして、彼ははっきりと
責任を痛感しておりますということを再三繰り返しておりました。その理由といたしまして、ペルー
国内の治安情勢の状況把握が不十分であった、もうテロ、ゲリラは鎮静化しかかっていると思っていたと。それから、それなりに危険は感じて一応警備はしたけれ
ども、それは正面からゲリラが襲ってくることを考えて、まさか裏からやってくるとは思わなかったと、こういうことをこれまた言っておられました。
ゲリラですから、相手は。ゲリラが正面から来るというのはむしろナンセンスなわけで、すきを見てどこからでも入ってくるのがゲリラですから、後ろからゲリラは来ないなんという考えはいかにもばかばかしいわけでありまして、結局彼の
判断ミス、自分の
判断ミスだということを認めた上で
責任を痛感すると、こういう
意味でおっしゃったように少なくとも私は受けとめていたわけであります。
このことは参議院の本会議でも橋本
総理自身も、言葉は少しニュアンスが違いますけれ
ども、はっきりと情報収集が不十分であった、警備体制にも問題があった、
責任を感じておるという
趣旨の発言をしておるわけで、もう
政府部内としてはそれで決まっておると思っておったんですけれ
ども、必ずしもそうではなさそうであります。
国会はうるさいことを言うから、あの場に行って頭を下げておけばよろしい、言葉は何でもいいと。しかし、
国民向けの本心はまた別の機会でということでああいうことをおっしゃったのか。いずれにしろ、我々はどちらを信用していいのかわからないわけですよ。
責任を感じております、私の
判断ミスです、辞職もいたしますということをきっぱりと当
委員会で申し述べておきながら、テレビの前では、巻き込まれて困りましたな、結果
責任を感じておりますよぐらいの、そういう軽いことで済むのだろうか。しかし、それが本心なら本心でまたやむを得ないかもしれませんけれ
ども、一体どちらが本心なのだろうか、はっきりさせてもらいたい。
彼が公務員をもうやめておりまして自由な立場なら何を言おうと彼の勝手でありますけれ
ども、一応やっぱり
日本のお役人、公務員でありまするから、
国会で述べたことと、テレビはどうでもいいんだというわけにもいきません。テレビの前で
国民に向けて発言したこととはきちっと統一を保ってもらいたい、こう思うわけであります。
そこで、
外務省にお尋ねいたしたいのは、これまで何回も青木大使から事情を聴取しておられるはずですけれ
ども、彼は一体
外務省の事情聴取に対して、当
委員会の発言のようなことを言っておるのか、あるいはテレビでこの前言ったようなことを言っておるのか、どちらなのか、それをまずお尋ねしたいと思います。これは別に秘密でも何でもないと思いますからね、こんなことは。