○田英夫君
地雷の問題は、もう言うまでもありませんけれ
ども、私は四つの問題があると思っております。
一つは、既に敷設されている
地雷の
除去、これは非常に私は重要だと思います。同時に、そのためには
地雷を
探知してこれを処理する、そういう
技術をもっともっと進めないと、今までの
技術では一億一千万個と言われるものを処理することは到底不可能だと。それから三番目に、既に
地雷で
被害を受けた住民の皆さんに対する援助、これはいろんなことがあると思います。車いすを提供する問題から義足の問題から、いろいろ
日本のNGOの人も随分援助をしているようです。四番目に、今の
全面禁止に向けての国際
条約を進めていくという問題があると思います。
きょうは、ひとつ既存の
地雷を
除去するという問題について若干私の意見を申し上げてみたいと思います。
この問題については、私は実はカンボジアにかかわってまいりましたので、カンボジアはまさに
地雷によって
国土の復興がそのために阻害されていると言っていい、そういう
状況にありますので、このことにいろいろ取り組んでまいりました。
実は、
日本カンボジア友好協会という三十年ほど前にできた組織がありますが、その理事長をやっておりますので、しばしばカンボジアに行っているうちにこの問題に遭遇をしたんですが、御存じのとおり、カンボジアでは一九七〇年代末から八〇年代、ほぼ二十年間ベトナムの
侵攻と内戦という戦争状態が続いていて、その間に双方によって敷設された
地雷が全土にある、こういう
状況の中で、
世界でも最も
被害の大きいところであるわけですけれ
ども、この問題に実は私の友人の一人が取り組んでおります。
この人は、UNHCR、緒方貞子さんの難民高等弁務官事務所の所属で、もともとアフリカで
活動していたんですが、ベトナムの
侵攻でカンボジアの人が大勢難民となってタイに流出したという時期にカンボジアへ移りまして難民の救援をやっていた。難民がやがてタイからカンボジアへ戻れるようになったときに、土地を提供して農民として生きていくということを国際的に支援をしていたわけですが、いざやってみると、
地雷に阻害をされて、せっかく土地を与えられてもそこを耕作することができない。結局、一言で言えば、根源は
地雷にあるということにその私の友人も気がつきまして、もともと機械に強い男なものですから、
一般に道路工事など建設で使われている。パワーシャベルの大型のものを改良して、これを使って現在テストをしておりますけれ
ども、
地雷を
除去しながら農地を耕作する、こういう実験を今進めております。
カンボジアというところは大体十二月から五月の間が乾期で、ほとんど雨が降らない。それから六月から十一月は雨期と言っておりますが、全く連日、しかも
日本の梅雨のようなのとは違いまして、集中豪雨のような豪雨が毎日のように降るという大変厳しい気候であります。
雨期に行きますと、乾期に行ったときと空から着陸をする前に見ていても景色が全然違う。全土水浸しという感じになっております。トンレサップ湖という一番大きな湖の面積がほとんど倍になる。メコン川が流れているわけですが、この水量も急激に増大をする。そして、
一般の道路も川のようになってしまう。こんな
状況ですから、
自衛隊が行かれて修理された道路も実は雨期になると川のようになってしまっているわけですが、こういう
状況の中で多数敷設されている
地雷は水に流されて移動してしまう。極めて
探知が困難だと。大体、
地雷は本体はほとんどプラスチック製で、信管と電池と火薬だけが違うというものですから、全体として軽いもので、流れてしまう。こういう
状況をひとつ御理解をいただいておくと今のこの
状況がおわかりいただけるかと思います。
そこで、二十年間ほとんど、ほとんどというより全く耕作することもできずに、戦争のさなかで放置されていた田んぼや畑、特に過去のシアヌーク
時代にはカンボジアはお米の
輸出国であったわけですけれ
ども、それが全く農民が食べるものすら足りないぐらいの
状況に今なっているわけです。
何とか
地雷を
除去するということはカンボジアの復興の第一の問題だということで、実は今パワーシャベルを使ってテストをしているというのは、
一つはプノンペンから車で一時間くらいの近郊ですが、その付近も過去にいわゆるポル・ポト派が進出してきて
地雷を敷設したために
地雷原になっている。それを
除去しながら一千ヘクタールの土地をカンボジア
政府が我々の実験のために提供してくれまして、その私の友人がそこで今
活動しております。
三月に私も行って見てきましたが、現在のところは成功裏に
地雷を処理して、そしてそこに、一千ヘクタールの周辺に土手を築きまして、高さ五メートルぐらいの非常に高い土手です。それを築くために掘ったところがクリークになってその内側にあると。長良川の周辺などではいわゆる輪中というのがありますけれ
ども、大きな輪中と思っていただければいいわけです。その土手の高さが非常に問題で、どんなに雨期になってもその土手は水浸しにならないというものをつくっておかないと田んぼ自体も崩壊してしまうわけですから、そういう土手をつくるためにパワーシャベルはまさに有効である。
それを築いてならして、内側にはまだ完全に、潅木を含めて、草ならまだしも、もう二十年間放置したために農地が潅木の荒れ地になってしまっている。それを今度は、写真がありますけれ
ども、お見せしてもわかりませんから口で申し上げますが、パワーシャベルの先のところを取りかえまして、こうやっているものを、鋭い歯が十本ぐらい出ている、一本の歯の直径が十センチぐらいある大きなものです。しかも、最近ゴルフで有名になりましたチタンという非常にかたい金属をつけて、無限軌道で動くわけですから、それを潅木の下に丸ごと突っ込んでいって押していきますと潅木ごと根こそぎ掘り起こすことができて、そこに
地雷があっても
地雷は爆発して本体は安全であるという実験をまずやりました。今までのところ全く
被害はありませんし、
地雷は処理できています。
そうした掘り起こした材木のようになったごみは全部
除去しまして、一応土の表面になったところを、今度はまた頭を取りかえまして、ロータリー式に回る耕作機械を取りつけますとこれで耕すことができるという、三つの種類の頭を取りかえることによって
活動をしております。
最近、実は
防衛庁の御出身で、元一等陸佐ですけれ
ども、
防衛庁時代の御経歴を見ると
地雷の専門家であります。
陸上自衛隊の施設学校の
研究部長をやられたり、あるいはもともとが
技術系の方でありますから、
地雷処理のための、つまり戦車の前に取りつけて
地雷を処理するような機械を開発することなどにも取り組んでおられた方がおられますので、まさに
地雷の専門家ですからカンボジアに行っていただきました。昨年の二月にバッタンバンという第二の町ですが、その近郊で
地雷処理の実験をされました。使った道具は
先ほど申し上げた道具二台であります。それにブルドーザーとか耕運機とか、いろいろの道具も取りそろえてやられまして、結果的には全く成功をしたというリポートがここにあります。
地雷そのものは旧ソ連製のものをカンボジア
政府軍が敷設をしてくれて、これはだからわざわざ実験のために敷設をしてくれたわけです。しかも、
地雷の種類は、これは
一般的にそうですけれ
ども、
一つは電池式のもの、これは中に電池が入っていて、踏むと電流が通じて爆発する、こういう電池式のものと、もう
一つは機械式と言っておりますが、踏むことによって信管を刺激して、信管が爆発して爆発するという、
地雷は大ざっぱに言うとこの
二つの種類になるわけですが、このときもソ連製のこの二種類を二個ずつ敷設して実験をしたというリポートがあります。
そして、結果的には
先ほど申し上げたようなやり方で土地をまず耕して、このときは実験ですから全く小さなところで百メートルと五十メートルの幅のところをやって、そしてそこに
地雷を敷設しておいてそこを耕す。最終的には水田にして田植えまでやるところまでやりました。その結果、全く
地雷は瞬時にして処理できたし、その作業でも爆発音を含めて大きな音は余りない。したがって、学校その他住宅の近くでやったとしても支障はないだろうということが報告されております。
実を言うと、この報告によりますと、高速で回っているロータリーの場合は、そこに
地雷があっても
地雷そのものは爆発しない。高速で回っているために爆発
装置そのものが瞬時にして処理されてしまうので、実際には爆発は起こらずに、したがって音もなかったと。別の過去に敷設されたものをプノンペン近郊で実際に自然にやったときは爆発しました。そして、高さ五、六十センチの煙が出ただけで大した音もなく処理されたという報告も入っております。
いずれにしましても、この二カ所の実験によって、この機械を使えば、カンボジアの場合は特にその後を農地にしたいわけですから、この機械
一つで三種類の頭を取りかえることによって
地雷の処理から農地の耕作にまで全部やることができる、こういうことが実証されております。
これについて、プノンペン
政府は
地雷を提供してくれるような、実験に立ち会ってくれるようなところまで
協力しておりますし、現在プノンペン近郊で一千ヘクタールの土地を提供してくれていて、そこで耕作そのものの実験をやっておりますけれ
ども、そのくらいプノンペン
政府側も期待を込めて
協力をしてくれているという実態であります。
このプノンペン近郊のは千ヘクタールのうちまだ実は半分ぐらいしか手をつけておりません。残る半分の潅木の生えた荒地になっているところも見てきましたが、これも間もなく来年の乾期の間には処理できると言っておりました。そうしますと、そこで最初にゴマをつくって、土地の土壌の
状況な
ども検査をして、田んぼとして可能ならばそこで稲をとる、こういうところまで実験をすることでカンボジア
政府側と
合意をしているということであります。
何分ここまで来るのに大変費用もかかり、犠牲も払っているようでありますけれ
ども、ここまで来ましたので、これからはひとつもっと大規模な、
日本政府も含めた
協力でカンボジアの復興のために努めなければならないのではないかという気がしております。
質問ではなくて、一方的に御報告をいたしました。
時間はありますけれ
ども、これで終わります。ありがとうございました。