運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-05-13 第140回国会 参議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十三日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      山本 一太君     武見 敬三君      釘宮  磐君     小山 峰男君  五月十三日     辞任         補欠選任      笠原 潤一君     依田 智治君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 依田 智治君                 猪熊 重二君                 田村 秀昭君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        三井 康有君        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   上村 知昭君        内閣官房内閣情        報調査室長    杉田 和博君        行政改革会議事        務局参事官    坂野 泰治君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        通商産業省貿易        局長       伊佐山建志君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        警察庁警備局警        備企画課長    小林 武仁君        警察庁警備局警        備課長      近石 康宏君    参考人        特命全権大使ペ        ルー国駐箚    青木 盛久君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (在ペルー日本大使公邸占拠人質事件に関す  る件)  (テロ対策に関する件)  (特殊部隊(SAT)に関する件)  (我が国ナショナルデーに関する件)  (ペルーに対する経済協力に関する件)  (対北朝鮮外交に関する件)  (尖閣諸島に関する件)  (行政改革会議に関する件)     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九日、釘宮磐君及び山本一太君が委員辞任され、その補欠として小山峰男君及び武見敬三君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査のため、本日、参考人として特命全権大使ペルー国駐箚青木盛久君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  青木参考人には、本日は当委員会に御出席をいただき、ありがとうございます。どうか忌憚のないお話をお聞かせいただきたいと存じます。  質疑に入るに先立ちまして、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で質疑を行うのでありますから、不規則発言等議事の妨げになるような言動のないよう御協力をお願い申し上げます。  また、参考人におかれましては、質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。     ―――――――――――――
  5. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  まず、青木参考人から意見を聴取いたします。青木参考人
  6. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 昨年の十二月十七日、現地時間でございますが、夕刻、私が私の公邸において主催いたしました天皇誕生日国祭日レセプションのさなかに、トゥパク・アマル革命運動を名乗る反政府テロリストによりまして私の公邸を占拠され、その結果、大勢の邦人及び日系人方々、また我が国に親しみを抱いてレセプションに足を運んでいただいたペルー及び第三国のお客様皆様に長期間にわたって筆舌を尽くしがたい苦痛に満ちた人質生活を強いる結果になってしまいました。この間、人質として拘束された方々はもとより、御家族の皆様にも大変な御心痛があったことと存じます。そして、国会政府及び国民皆様にも大変御心配をおかけいたしました。私は、このレセプション主催者として、このように多大な御迷惑をおかけしたことについて弁解は許されないと思っております。ここに伏しておわびを申し上げます。  私がとりわけ申しわけなく、そして残念に感じておりますことは、救出作戦の際に三名の方が亡くなられたことでございます。犠牲者のうちバレル大佐及びヒメネス大尉は今回の救出作戦に参加された特殊部隊の隊員でございました。特殊部隊の勇敢な行動が私たち人質解放につながったわけでございますけれども、その際にこのお二方が亡くなられたということについてはまことに胸がふさがる思いがいたします。また、人質として拘束され、救出作戦の際の負傷によって命を落とされたジュスティ最高裁裁判官につきましても、四カ月以上も同じ苦痛をともに耐え忍んできた仲間であっただけに、救出の喜びを分かち合うことができなかったことは本当に無念でなりません。ここに謹んでお三方の御冥福をお祈りいたしたいと思います。  また、解放された人質皆さんには改めてお許しを賜りたいと存じます。長期間にわたる生命の不安と不自由な環境の中、希望を失うことなく、励まし合いながらこの困難を克服することができた皆様団結、自尊心、勇気そして忍耐に心からの称賛を送りたいと考えております。  また、見事な作戦によりまして私たち救出してくださったペルー政府及び人質解放に向けて献身的な努力を払っていただいた保証人委員会皆様にも心からの感謝をささげるとともに、国際社会が一致団結して我が政府及びペルー共和国政府への協力や支援の手を差し伸べてくださったことについても、この場をかりまして感謝の意を表したいと思います。また、百二十六日間にわたり私たちをさまざまな形で支援してくださった国会及び国民皆様に改めて御礼を申し上げたいと存ずる次第でございます。  このように、私がみずから主催いたしました天皇誕生日レセプションの際にあのような事件が発生し、その結果、民間の方を含む内外の多くの人質に多大の苦痛をもたらし、とうとい犠牲者を出したことにつきまして、まことに申しわけないと思っております。また、我が国そしてペルー両国政府国民を初めとする世界各国政府国民皆様に長期間にわたり御心配をおかけしたことについて責任を痛感しております。  私は、帰国直後に総理に御報告に伺った際、みずからの進退は政府にお預けすると申し上げておりましたけれども調査委員会の結論を待たずにこの職を辞したい旨去る九日改めて外務大臣に申し出たところでございます。  改めまして、今回のこの事件に関しまして、皆様に多大の御心配をおかけし、また多くの人質皆様に大変な苦痛をもたらしましたことにつきまして、私の責任を痛感するとともに、深くおわびを申し上げたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  7. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 以上で青木参考人からの意見の聴取は終わりました。  この際、池田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。池田外務大臣
  8. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の事件に関しましての青木大使の心情はただいま御本人からるる述べられたところでございます。委員皆様方お聞きいただきましたとおり、大使自身責任を痛感され、職を辞したいとの非常に強い気持ちを重ねて表明しておられます。そのお気持ちを酌みまして、またいろいろな観点から熟慮いたしました結果、私といたしましては青木大使に在ペルー大使の職は引いていただこう、職を解くこととしたい、このように考えております。  以上申し上げます。
  9. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 武見敬三

    武見敬三君 質問に先立ちまして、今回人質救出のためにみずからの命をささげられましたペルー国陸軍ファンバレルサンドバル大佐及びラウル・ヒメネス・チャベス大尉に対し、心より尊敬の念とともに感謝気持ちをあらわしておきたいと思います。また、人質として亡くなられたカルロス・ジュスティ・アクーニャ最高裁判事に対し、心より哀悼の意をあらわしておきたいと思います。  本日は、こうした彼らの死を重く受けとめつつ、このようなテロ事件再発防止のために御質問をさせていただきたいと思います。  また、青木大使は、四カ月の長きにわたりまして、特命全権大使として極めて困難な立場に置かれながらも、人質生命と安全の確保及び事件解決のために御尽力されたことに対し、心より敬意を表しておきたいと思います。  ただし、このようなテロ事件再発防止のためにまず確認しておくべきことは、今回のテロ事件を何ゆえに防止できなかったのか、その経緯を明らかにし、その原因を明らかにし、そしてまたその責任所在を明らかにすることが必要と考えます。  そこで、既に大使自身責任を痛感し辞任の意思をあらわされていると今伺ったわけでありますが、こうした責任所在は私はただ単に大使お一人にのみあるとは思いません。やはり実際に、これからお伺いするように、警備官、そして大使自身、また外務省本省テロ対策に関連する諸部門を含めてその責任を負うべきものと私は考えております。この点について、大使自身及び外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問につきましては、大使にも御質問ございましたけれども、御質問の性格から申し上げまして私から御答弁申し上げるべきものと考えております。  外務省といたしましても、今回の事件につきましていろいろな事情の調査分析を行わなくちゃいけませんし、調査の結果として当然責任有無ということも考えなくちゃいけない、こう考えております。  そういった観点から、この事件解決といいましょうか人質方々救出が行われたその当日、直ちに外務省内に事務次官をヘッドといたします調査委員会を設置いたしました。そして、現在、この事件にかかわるいろいろな事実関係調査し、青木大使を初め人質になられた方々からもいろいろお話をお伺いしております。また、今後場合によってはペルーの方からの情報もちょうだいしなくちゃいけないと思っておりますが、そういったいろいろな調査分析を行いました上で、しかるべき時点で今御指摘のございました責任有無につきましても適切に対処してまいりたい、こう考えております。  なお、その調査委員会報告は、現在のところ一応六月の半ばという時点を考えておるところでございます。
  12. 武見敬三

    武見敬三君 また、今回のテロ事件に関しましては、まことに国民のやり場のないフラストレーションといいますか不満というものがたまっておりました。またこうした状況下において、大使が御帰国なさったときの共同記者会見での言動であるとか、あるいは一部の報道に刺激されて、言うなれば青木大使バッシングのような現状が出てきたことと思いますけれども、これで青木大使もようやく日本に帰ってきたなというお気持ちになったかもしれません。  しかしながら、この中にはやはり改めてこれから御指摘させていただかなければならないようなこともあると思うわけでありますが、この点、こうした状況等について大使自身はどう受けとめておられますか。
  13. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 五月一日に外務省で行われました私の記者会見でも申し述べたところでございますけれども、四カ月を超える人質生活の中で、私に対するいろいろな不満、私の言動に対する不満といったようなものが出てきたということはもう当然のことだと思っております。そうしてまた、解放されました後、私も大変興奮状態にございまして、その間の言動において国民皆様に非常に不快感を与えるような部分があったのではなかろうかと想像するわけでございまして、この辺につきましても大変申しわけなく思っております。  ただ、一つ申し上げておきたいことは、とにかく人質皆さんが最後まで団結を保ち、あのような大変な御不満をお持ちであるにもかかわらず、それを表に出されることなく毅然として耐え抜いてこられた、これが今回の大部分人質解放ということに結果したのではなかろうかと考えておりまして、皆様のその間の大変な御努力に私としては改めて深い敬意を表明させていただきたいと存じております。
  14. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、実際にこうした事件経緯等を考える上でひとつ整理しておきたいと思います。  おおよそ、テロ対策に示される四つ段階がございます。まず第一段階というのは、国際協力を通じてこうしたテロを起こさせないような国際的な体制をつくること、これを予防段階といいます。二つ目には、平素より人的、物的資産の安全を確保する阻止という段階があります。三つ目には、個々の事件が発生したときにいかに対応するか、いわば狭義の危機管理対処という段階がございます。そして四つ目に、平素情報の収集と分析等情報活動といういわば予測の段階がございます。  日本は、今回のペルー事件を通じて、やはりこの第一段階予防段階にしか達していないということが残念ながら明らかになってしまったように思うわけであります。  そこで、こうした問題を整理してこれからお話をさせていただきますが、まず大使公邸警備あり方及びその責任所在についてお伺いしたいと思います。  公邸外側に関しましてはペルー国警備責任があり、その警備を実際に担当するというふうに聞いておりますが、公邸内部というのは言うなれば不可侵権対象でございまして、こうしたペルー国政府警備対象から外されておる。したがって、公邸内部警備というものは日本大使の指示のもとで警備が実際に行われていたというふうに解釈するわけでありますが、大使、これでよろしゅうございますか。
  15. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問は一般的に大使公邸といいましょうか、大使館の建物も含めた外交施設警備なり安全を保護する役割は一体どこが果たすべきかという原則の話でございますので、まずそちらの方につきましては私の方から御答弁させていただき、それを踏まえて具体的にペルーの事例についてどうであったかということにつき補足していただく必要があればその点は青木大使から答弁させていただく、こういうことでお願いしたいと思います。  今の武見委員の御質問の点でございますけれども公邸あるいは外交施設外側、あるいは内部という分け方では必ずしもございませんけれども一般論といたしまして、国際法上どういうふうな考え方になっているかという点から申しますと、外交関係に関するウィーン条約というのがございまして、その二十二条の二項におきまして、接受国はそういった外交施設につきまして侵入とか破壊とか、そういったことから保護するための措置をとる特別の責務を有する、こういうことになっております。  しかし、一方におきまして、当然のこととして、派遣国といたしましてもみずからの国の公館の安全を確保しておくために国際法上許される範囲内での警備対策を講ずるということは必要なわけでございまして、我が国といたしましても従来から接受国治安状況等に応じまして所要警備対策上の措置をとってきたわけでございます。  今回のペルー大使公邸につきましてもそのような我が国としての措置はとっておりましたし、またペルー側においても安全を確保するための対応はしていただいておったわけでございます。しかし、結果といたしまして今回のような事件が起きたわけでございまして、私どもは、先ほども申しました調査委員会等における調査等も含めまして、今回の事件の反省の上に立って、ペルーにつきましてもまた在外公館一般につきましても今後の警備対策あり方というものを見直してまいりたい、こう考えているような次第でございます。
  16. 武見敬三

    武見敬三君 実際の警備の内容につきましては、大使館警備官、それからペルー政府側国家警察等協力をしてこれを行うことになっているというわけでございますから、これは当然我が国政府外務省警備責任というのはそこで発生するというふうに理解をするわけでありますが、外務大臣、それでよろしゅうございますね。
  17. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、我が国といたしましても我が国としての安全のための措置はとらなくちゃいけない、当然でございます。そして、今回の件につきましてもそのような所要措置はしてきたはずでございますけれども、結果としてこのようなことが起きたわけでございますから、そのあたりの事実関係をよく調査いたしました上で所要対処をしてまいりたい、こう思います。
  18. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、青木大使にお伺いいたします。  青木大使は、共同記者会見の中で、先進国特殊部隊並み装備をしたゲリラ対処し得るような警備というものはけん銃一丁では不可能であったというようなことなどをおっしゃっているわけであります。では、何ゆえにこうした特殊部隊並み装備をしたゲリラ対処し得るような警備現実には施されなかったのか、その理由は一体どこにあったのか。それは、ただ単に特殊部隊並み装備をしたゲリラペルーには存在しないという治安情勢上の判断大使がなさっていたのか、あるいは我が国の予算や組織、制度上限界があるからそうしたゲリラ対処し得ることはそもそも不可能であったということであるのか、その判断をどのように大使は下されたか、お話を伺いたいと思います。
  19. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問につきましても、ペルーに特殊具体的な観点もあるいはあるかと思いますけれども、やはり我が国外交施設全般警備対策との関連ということが前提になっておりますので、まず私から御答弁申し上げさせていただきます。  先ほど申しましたように、我が国としても所要のいろいろな警備対策はしておりますけれども、一般的に申しまして、非常に重装備をいたしました、そして部隊といったような構成に近いものに襲撃をされた場合に十分対処し得るだけの警備対策がとられているかと申しますと、残念ながら、これまで我が国在外公館警備あり方一般として見た場合に、それは必ずしもそういうふうになっていなかった、このように考える次第でございます。  それから、ペルーの件について申しますと、確かにペルーは非常にテロリスト活動がしょうけつをきわめまして、これまで我が国関係者現実にそういった事件に巻き込まれたこともございました。そういった観点から外務省といたしましても重点的な警備対策はしてきたわけでございます。しかし、ここのところペルー政府テロ対策が強化されたこともございまして、テロ事件の発生は近年格段に減少しておったということも事実でございます。  そういったこともございまして、結果として今回襲撃を受けたようなテロリスト対処するに十分な情勢にはなっていなかったということでございます。
  20. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 池田外務大臣答弁青木参考人からお願いをいたします。
  21. 青木盛久

    参考人青木盛久君) ただいまの御質問でございますけれども、私ども公邸内部警備ということにつきましては、公邸の塀に二十四時間稼働するテレビカメラを設置しておりまして、道路状況は二十四時間を通じて把握できる形になっておりましたほか、やはり道路沿いでありますが、私の警備官及び公邸警備警察官が合わせて七名、それから当日特別に頼んでまいりました警察官十四、五名等々相当の警備を実施していたわけでございます。  ところが、隣家につきましては、相手方のプライバシーという問題もございましてテレビカメラ等の設置は不可能でございまして、実際高い塀を構築しておく以上のことはできていなかったという現状がございます。  また、公邸内部も、例えば各窓あるいはドアにすべて鉄格子をはめましたり、あるいはさまざまな仕掛けをいたしまして、銃砲撃を受けても大丈夫というようなことにしておりましたけれども、これは逆に、テロリストに入り込まれてしまいますと大変解放を困難にするという意味では逆効果になってしまったという面もございました。
  22. 武見敬三

    武見敬三君 それでは大使、実際にテロリストたちが侵入する経路になりましたドイツのNGOが実際に使っていた隣家、家屋でございますが、ここは昼間は実際仕事をしている、しかし夜は警備員一人を残してだれもいなくなっているということで、警備上問題があるという認識は当初より大使館内部、特に警備官等の間ではあったというふうに伺っておりますが、事実ですか。
  23. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私は実はこの事務所開所式にも出席しておりますし、この所長さんとも、女性の方でいらっしゃいますけれども、おつき合いがございます。仕事上の意味でいろいろとお話しなどしたこともございますが、夜間無人になってしまうということと、ごく一部ですが私ども公邸と先方の裏庭が隣り合っているということから、ここを通って何かの攻撃が行われるということについては少なくとも私自身としては全く気がついていなかったわけでございます。大変申しわけなかったと思っております。
  24. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、平素段階で一体どの程度のテロ攻撃等を想定しながら大使館のいわば警備というものが策定されていたのか。恐らく警備官によってこうした公邸警備計画というものがきちんと文書として作成されていたと思うのでありますが、いかがですか。
  25. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 実施されておりましたし、特に事務所の方でございますけれども避難訓練等も随時実施しておりました。また、私ども夫婦でございますけれども、万一攻撃があった場合の、例えば二次防衛線、三次防衛線というふうなことも十分にブリーフィングは受けていたわけでございます。  ただ、これはあくまでも私ども二人が公邸内にいる、そこに攻撃があったということが前提でございまして、七百人ものお客様がいらっしゃるところではそのような用心といいましょうか設備は全く用をなさなかったということが現実でございました。
  26. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、問題の本質に入っていくわけでありますが、ではペルー治安情勢をどのように認識した上でこのような大規模の。パーティーを開催し、政府、軍の要人をその中で招待をするという判断がなされたのかということになります。  そこで、九六年の九月十一日、外務大臣から大使への訓令で天皇誕生日のパーティーを開催する指示を出したということでありますけれども、その訓令を受け取りましたでしょうか。
  27. 青木盛久

    参考人青木盛久君) はい、受け取っております。
  28. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、パーティーの規模と招待者リストなどは現地大使判断にゆだねられているということのようでありますけれども、こうした千二百組もの招待をするパーティーの開催は適切で安全だという判断をどのように大使自身は下されたのか、その点、お聞きしたいと思います。
  29. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まず第一に、ペルー政府及び私どもが接触し情報をとっております友好国の大使館関係者あるいは民間のテロ対策の専門家、一致して現在テロは極めて退潮傾向にあるし、特にトゥパク・アマル革命運動はほぼ壊滅状態であるという情報を受け取っていたということがまず第一でございます。  それから第二に、この国祭日レセプションというのはやはり私どもの外交行事として非常に大きなものでございまして、特に日本ペルーの友好協力関係が最近目立って増進してきたということ、さらに日系人皆様ペルー社会の開発に対する御活躍というものが非常に大きいという観点から、私は私の着任以来日系人皆様の招待枠を大幅にふやしたという経緯もございまして、それでかなり大きな規模のレセプションを開催する決意をいたしたわけでございますが、大体この規模は他の主要国の国祭日レセプションに比べまして異常に大きいというものではございませんでした。
  30. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、治安情勢をどのような形で判断していたのか、そして当日、十二月十七日にどのような警備計画を立てていたのかということが問題になります。  警備官の作成した情勢見積もりというのがあったはずでありますが、それについて大使はどのようにそれを読み取られ、レセプション開催のリスクと結びつけて御判断なされましたか。
  31. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まず、レセプションの日にちの決定でございますけれども、日にちを決定いたしましてから実際招待状を発送するまでの期間というか、招待状を発送しましてから実際レセプションが行われる期間というのはかなり重要でございますが、余り前広にいたしますとやはりテロリストにつけ込む機会を与えるし、そうかといって直前に出したのではお客様の方に御迷惑がかかるということで、要人については二週間前、それからそのほかのお客様については一週間前にお出しするという形で考えたわけであります。  警備の計画でございますが、先ほど申し上げましたように、一般的な判断に基づきまして私といたしましては前年並みの警備体制を組むということで指示を出したわけでございます。
  32. 武見敬三

    武見敬三君 十二月十日に国家警察第七管区司令官と警備担当官との間で事前協議が行われたということでありますが、その内容はいかなるものであったのか、また大使館側はどなたが出席をされていたのか、お伺いしたいと思います。
  33. 青木盛久

    参考人青木盛久君) もちろんその前にさまざまな形での分析をやっていたわけでありますが、この十二月十日の話し合いというのは扇山書記官が行ったものと記憶しております。そして、特に変わったことはないということが先方からの情報でございました。
  34. 武見敬三

    武見敬三君 特に変わったことはないという説明に対して、大使自身はいかなる御自身独自の情勢判断に基づいてペルー政府側の説明を受けとめられたんですか。あるいは、それを全くそのまま信じられたということになるわけでありますが、いかがでしょうか。
  35. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まさに御指摘のとおりでございまして、私といたしましては、一般的な情勢分析からして、このようなテロ攻撃の目標になっているということは察知しておりませんでした。そして、言ってみれば最後のだめ押しの情報収集として直前に行いました協議でも先方政府から何も危ないことはないと言われましたので、これは私の判断が間違っていないという判断を下したわけでございます。
  36. 武見敬三

    武見敬三君 実際に事件が起きて、ゲリラ側から大使に対し、日本大使公邸であれば要人が大勢来ており、獲物は大きいだろうと思ったということが述べられたというふうに伺っておりますが、こうした経緯も踏まえて、日本大使公邸のパーティーが特にゲリラの標的になるという予測はなぜできなかったんでしょうか。  特に、一九九一年の七月にはJICAの職員三名の射殺事件、それから九二年の十二月にはセンデロ・ルミノソによると言われております日本大使館の爆破事件、こういう事件がやはり起きているわけであります。しかも、地方においてはまだゲリラ活動が散発的に行われていたわけでありますし、リマ市内においても警官等の狙撃事件あるいはさまざまな殺傷事件テロ事件として起きていたという事実がございます。  昨年の一月から九月までの間に四百件以上ものテロ活動が実際には行われたという事実があったわけでありますから、当然こうした日本大使公邸における大規模なレセプションというものがテロの標的になるという極めて慎重な判断が下されてもよかったのかなという気もするわけでありますが、なぜそういう判断ができなかったのか、今になって改めて大使はどうお考えになりますか。
  37. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まさにその点が今後調査委員会で徹底的に追求されるべきであると私は考えておりますし、私としても最も責任を感じているところでございます。
  38. 武見敬三

    武見敬三君 さらに、十二月十一日、国家警察第七管区司令官らと警備官が再度具体的な十二月十七日当日の警備についての打ち合わせをしたと聞いております。ここで警備の増強を大使館側から依頼がなされたということを聞いているわけでありますが、それはどのような治安情勢上の情勢認識、あるいはテロ等の攻撃を想定して依頼したものであったのか、伺いたいと思います。
  39. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私どもとして、その段階で突然従来の私どもが依頼しておりました警備をさらに強化するという要請を出した記憶はございません。むしろ、その段階で細かな実施計画につきまして確認をとったということではなかったのかと記憶しております。
  40. 武見敬三

    武見敬三君 そういたしますと、大使公邸におけるレセプションというものが特にゲリラの標的になるという認識がなく、その上で特段警備についてもしかるべく深刻なテロ対策上の警備の必要性というものはほとんど認識をしていなかったんだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  41. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 先ほども申し上げましたとおり、私の当時の判断では、これだけの警備をしておけば私が予想していたような形でのテロ攻撃、つまり道路を通って侵入してくる、道路を通って直接公邸に侵入してくるようなテロ攻撃は起こり得ないと認識しておりました。
  42. 武見敬三

    武見敬三君 ただ、実際にゲリラは救急車に乗り込んで、そして警備線を突破して隣家の中に入り込んだ、そしてそこから攻撃をしかけたということになるわけでありますが、そうしたテロに対するあらゆる配慮というものはこの時点ではほとんどなくて、正面からの、道路からのテロ対策しか念頭にはなかったんだということでよろしゅうございますか。
  43. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まことに申しわけございませんが、そのとおりでございます。
  44. 武見敬三

    武見敬三君 それから、警備官治安情勢の見積もり等、さらには警備計画等について、大使は実際に事前にどの程度警備官と打ち合わせ、協議等をなさったわけでしょうか。
  45. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まず、ペルーの政治情勢ということについての調査が私ども大使館の任務の主要なものの一つでございますが、この中にはやはりテロの動きというものが入ってございます。そして、私ども、ただ単に警備官だけではなく、政務担当官、公使あるいは私自身が随時テロの問題につきましてはペルー政府要人あるいは友好国の大使館、さらには民間の専門家等々と接触をし、情報を収集していたところでございます。
  46. 武見敬三

    武見敬三君 実際に大使館情報収集能力というものに限界があったということが今回私は明らかになったように思います。と同時に、ペルー政府側からのさまざまな治安情勢等に関する意見、こういったものを十分にみずからの判断に基づいて消化するだけのいわば情報体制が大使館の中になかったのではないか。その上で、ペルー政府側からの情勢認識というものを余りにもうのみにするような状況がなかったのかどうか、この点に関しては大使はどうお考えになりますか。
  47. 青木盛久

    参考人青木盛久君) この点につきましては、まさに調査委員会の御調査と御判断を待ちたいと思っております。
  48. 武見敬三

    武見敬三君 特に、ペルー政府側日本企業も含めた外国企業の誘致に極めて熱心であって、そのために治安というものが保たれているということを国際社会にも示すということが極めて重要な国策であったと考えます。であるがゆえ情勢判断も甘くなりがちになるというような判断大使にはなかったんですか。
  49. 青木盛久

    参考人青木盛久君) この点につきましては、先ほど申しましたように、政府だけではなくて第三国大使館あるいは民間の専門家等からも情報を収集しておりまして、いわば政府側からの情報を検証するということをやっていたわけでございますけれども、少なくとも今回の事件に関連しまして、政府側の見方あるいは友好国大使館、民間の専門家、ほぼ一致してテロは退潮傾向にあり、特にMRTAはもはや大きなテロ活動はできないという判断でございました。
  50. 武見敬三

    武見敬三君 ただ、MRTAだけじゃございませんで、ほかにもセンデロ・ルミノソとかゲリラ活動を行っていたゲリラ勢力はあったわけでありますから、全般としての判断をMRTAだけで下されるというわけにはいかなかっただろうと思います。したがって、その点、今のお話では納得のできるようなものではないと思うわけであります。  しかも、今私が質問させていただいたのは、ペルー政府情勢判断の中にそういうさまざまな政治的な意図も含めて情勢判断が甘くなりがちだというような、そういう認識を大使自身はお持ちでなかったんですか。
  51. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 大変難しい御質問でございます。私が任国政府の言うことを信用しないということを申し上げるわけにまいりませんが、しかし、おっしゃるとおり、一人の言い分だけを聞いていくわけにはまいりませんので、第三国の友好国の大使館や民間の専門家からも情報をとりまして、いわば情報の突き合わせをやっていたということでございます。
  52. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、こうしたテロ対策上、外務省本省との間で事前にどの程度の連携が行われ、これに対処されたかということを伺いたいと思うわけでありますけれどもペルー治安情勢というのは、おおよそ定期的には二カ月に一回本省に送られて、官房の在外公館警備室、領事移住部テロ対策室、中南米局の中南米一課等々に報告されていると聞いているわけであります。  今回のレセプション開催に当たって、実際にこうした本省内部テロ対策等に関連した部局というものは一体どのようにこうしたペルー日本大使館から送られてきた治安情勢報告分析、評価していたのか。これは、従来、例えば渡航する邦人の保護等の問題意識が中心であったと伺っているわけでありまして、こうしたレセプション、パーティーを開催し、その行事にかかわるリスクというものについて、どの程度平素よりきちんと分析をするような問題意識がこうした本省の各関係機関にあったのかどうか、これを伺いたいと思います。
  53. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のペルー大使館から送られてまいります治安情勢報告につきましては、従来から本省におきましても関係部局はそれを重要な情報として取り扱ってきたところでございます。また、そういった情報を踏まえまして、本省での受け取り方というのは、最近のペルーの治安状況というものは従来に比べれば大幅に改善している、しかしながら依然として在ペルー大使館は我が国の世界に張りめぐらされております外交施設の中で最も脅威度の高い在外公館の一つには引き続き分類をしてきた、こういうところでございます。  ただ、今回の天皇誕生日レセプションにつきましては、先ほどお話がございました訓令でございますが、これは在外公館全般に向けたものでございますけれども、原則として例年と同じような要領で開くようにということを伝え、ただ、任国の情勢等によってその開催が不適当あるいは困難と判断される場合には改めて請訓をするように、そういうふうな通達をしたところでございます。
  54. 武見敬三

    武見敬三君 時間がもうございませんので切り上げることにいたしますけれども、基本的には、こうした情報があったとしても、それをテロと結びつけて分析、評価をするための情報分析機関というものの不足、そしてさらには制度上こうした警備官という制度がやはり我が国の在外公館警備を、特に深刻な治安状況下においてつかさどる上においてやはり問題があるということ、こうした問題点などが指摘されるとともに、やはり本省との連携の中でこうしたテロ対策というものについての危機意識がまだ外務省の中にきちんとした形でなかったということを私は痛感せざるを得ません。調査委員会報告を待たなければなりませんけれども、そうした抜本的な対策について今後御尽力されることを切に期待いたします。  以上です。
  55. 高野博師

    ○高野博師君 青木大使には、大変お疲れのところ本委員会参考人として御出席いただきまして御苦労さまでございます。けがをされているということもありまして、ゆっくり休養していただきたいところでありますけれども、やはり重大な事件でありますので、大使から直接事実関係をお伺いして、今後の教訓とすべき点も御意見をいただいて参考にしたいと思う次第であります。  まず冒頭、三人のペルー側犠牲者に対して衷心より哀悼の意を表したいと思います。  四カ月の長い間、人質という想像を絶する厳しい環境の中で大使としての重責を担ってこられ、無事帰ってこられたということに対して、まずは労をねぎらいたいと思います。  実は、私も合計十数年中南米に勤務したことがありまして、中南米の治安情勢というものについては十分承知しているつもりであります。毎日ゲリラ組織あるいは麻薬組織の動向等に注意しながら生活していたことがありまして、大使の立場については十分理解できるつもりであります。自分が大使の立場で同じ事件に遭遇していたらどういう行動をとったかなと思うと、軽々に批判はできない気がいたします。  今回の事件に関してはさまざまな論評とか批判がマスコミを通じてなされておりまして、私は、大使に対する評価について、むしろ世論が大きく揺れ動くということに対して一種の危惧というか不安を持っております。この種の事件は、客観的に、そして正当に公平に評価することが大切ではないかと思いますが、そのためには事実を正確に認識することがまず必要だろうと思います。  そこで、今回の事件については青木大使自身が最も責任を感じておられて反省されておられる。ただいまも何度も謝罪の言葉がありましたので、これについては多としたいと思います。大使にはあくまでも参考人として知り得る範囲で正確な事実関係を述べていただきたいと思います。そして、今後の在外公館警備体制等のあり方の研究、参考にしたいと思っております。  まず最初に、大使参考人は今回の事件についてどのような認識をされているのか。先ほど御自身からお話がありましたので、簡単で結構でございますので、質問いたしたいと思います。
  56. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 最前、冒頭にも申し述べさせていただきましたが、まことに残念であり、まことに申しわけないことであったと考えております。
  57. 高野博師

    ○高野博師君 それでは次に、事件前のペルー治安情勢についてお伺いしたいと思います。  大使は平成六年の十一月にペルーに赴任されたということでありますが、大使館として任国のペルー情勢治安情勢に関する情報をどういう方法で入手していたのでしょうか。
  58. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 最前もお答え申し上げましたとおり、まず私どもといたしましては、国家警察のテロ対策局を初めとするペルー政府側から常時情報を入手しておりましたし、それからまた友好国の大使館あるいは民間の専門家、これには国会議員あるいは元国会議員等々も含まれておりますし、また左翼の組織ともいわば連絡のあるような人も含めまして情報収集に努めておりました。  これもまた、ただ警備官が実施するということではなくて、私どもの最も大きな任務の一つとして、政務班の人間も、あるいは大使館の公使、総括といった幹部も情報収集には心を配っていたところでございます。もちろん、私自身もさまざまな機会を通じて、特に大統領との間に意見交換を実施していたところでございます。
  59. 高野博師

    ○高野博師君 大使館としては治安関係情報提供者等いろいろな情報源はあると思うんですが、ペルーの場合はフジモリ大統領が最も治安関係情報を多く持っているんではないかと思います。軍とか警察、テロ対策本部を直接指示していたようなところもありますし、そのフジモリ大統領に対しては大使は直接会う機会も多かったということで、治安情勢については容易に情報は入手できたんではないかと思います。それと、在ペルーの日系企業の代表等との意見交換、情報交換等、こういうこともやっておられたと思います。  先ほど質問もございましたけれども、MRTAに関する情報はどの程度持っていたんでしょうか。
  60. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 一昨年の十一月に私は大統領のお供をして地方を視察する機会がございましたけれども、ちょうどその前の晩、政府がMRTAが企図しておりました国会襲撃を事前に見破りまして、彼らのアジトを急襲し、一網打尽に関係者全員を逮捕したという事案がございまして、大統領は私に対しまして、これでMRTAは息の根がとまったと大変大喜びでおっしゃっていらっしゃいました。他方、センデロ・ルミノソにつきましても今や非常に勢力が弱っているということも私どもが一般的に感じておるところでございます。
  61. 高野博師

    ○高野博師君 そういう情報分析として、依然として厳しいという分析が出ていてしかるべきではないか。その背景として、九一年のJICAの職員の殺害とか九二年の大使館の前での車爆弾の爆発事件、あるいは日本赤軍のメンバーの動向等もかなりの情報が出ておりました。先ほどおっしゃいました一昨年のMRTAのペルー国会襲撃計画事件も発覚している。全体的な点でいうと、去年一年間、前半だけでも月間四十件以上のテロ事件が発生したという事実がありますので、客観的に見て治安情勢というのは楽観できるものではないと思われますが、その点についてはいかがでしょうか。
  62. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 確かに、ペルー状況というものは日本のような平和な国とは大違いでございまして、そういった状況は警戒を要する点は多々ございました。私どもとしてもそれなりにいろいろ警備対策を考えておったわけでございますが、全く裏をかかれてしまったということが現実でございますので、大変申しわけなく思っております。
  63. 高野博師

    ○高野博師君 この種の事件が起きるときは、特に中南米では犯行の予告あるいは脅迫状とか、何かその前兆、予兆といったものが時々あるんですが、ペルーの場合はどうだったでしょうか。
  64. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 一切ございませんでした。
  65. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、大使館警備体制についてお伺いいたします。  まず、天皇誕生日のパーティーですが、これまでは昼間行っていたというのを夜に変更した理由は何でしょうか。
  66. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私が着任したのが平成六年の十二月でございます。十一月に任命されまして、十二月に参ったわけでございますけれども、その当時からペルー治安情勢はJICAの専門家暗殺事件大使館に対する自動車爆弾事件の当時と比べて顕著に改善しているという認識がございましたこと、それから、いろいろ調べてみますと、主要国も昼間ではなくて夕刻にレセプションを開催しておる、そういう事実も踏まえまして夕刻の開催に私の代から踏み切ったということでございます。
  67. 高野博師

    ○高野博師君 ちなみに、天皇誕生日レセプションに関してでありますが、私は今回の事件を契機に自粛とか取りやめるというようなことは必要ないと思っております。ほとんどの国が独立記念日あるいは国王の誕生日とか、ナショナルデーというのを持っておりまして、在外公館では重要な外交活動あるいは友好関係を深める機会にしているのは国際的な慣例でもありまして、時には大事な情報も交換できるというメリットもあると思います。事件があったからといって、極端に走ってこれを中止するようなことはやるべきではないと思っております。  それから、膨大な費用をかけて、税金を使ってレセプションをやるだけの必要があるのか、あるいはこれは問題だという意見もかなりありますが、私の経験では、これはそれほどの費用はかかっていないのが現実でありまして、日本と違って、国によっては一人当たり二十ドル前後ぐらいでできる。ペルーの場合は中南米では最も安く上がるところではないかと私は認識しておりますが、レセプションそのものに対する批判に対して政府もきちんと反論すべきところはすべきではないかと私は思っております。  ただ、問題は、治安の悪い国においては夜間の時間帯を避けるとか招待客を絞って実施するとか、あるいは警備に力を入れるとかの配慮が必要ではないかと思っておりまして、パーティーの規模によっては夜も考えられると私は思います。中南米全体で見れば、治安の悪い国では通常昼間行っているのが多いということが事実だと思います。  パーティーのための警備体制をしくために十二月十日に軍と警察と大使館側で打ち合わせをやったということでありますが、これによって百六十五名の警官あるいは軍を配備したということは前回の外務委員会でも大臣の方から御答弁がございました。これは間違いございませんか。正確な数字は結構でございます。
  68. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 実は、高野先生も御存じのとおり、ペルーあたりになりますと要人がみんな自分のボディーガードを連れてまいりますので、私どもで手配しました警備関係者はそんなにたくさんはございませんでした。その人たちは当然門の前にいるわけでございますが、この人たちも加えるともしかしたら百人を超える人たち公邸の周辺にいたということは十分可能ではないかと存じます。
  69. 高野博師

    ○高野博師君 それで、パーティーの規模ですが、先ほどのお話だと七百人ぐらいの招待客があったということで、他の大使館と比べて非常に多過ぎるということはないという御発言でございます。問題は、ペルー国家警察の内部文書によれば日本側が厳重警備を断ったということが言われておりますが、この事実関係はいかがでしょうか。
  70. 青木盛久

    参考人青木盛久君) そのような事実はございませんでした。
  71. 高野博師

    ○高野博師君 ペルーの警察側はテログループによる襲撃の可能性を排除できないとして軍部隊も含むそういうような配置の計画を提出したと、しかし大使館側は公邸内は大使館スタッフで十分だとして断ったと、パーティー直前にも警察側が確認したらば必要ないということだったと、こういう報告書が出ているそうですが、これはないということですね。
  72. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私どもはそのような要請は受け取っておりません。
  73. 高野博師

    ○高野博師君 それからもう一つ、玄関入り口の金属探知機を外したとか、あるいは入り口が招待客でごつた返していたというような報道もありますけれども、この辺は事実でしょうか。  私の経験では、日系人というのはかなり時間に正確で、かなり早くから来て玄関で待っていて、時間になるとみんな一緒に入ってくるということがあってかなり混雑するというのは私も経験しております。大事な招待客に金属探知機の中を通ってもらうというのも失礼に当たるということも理解できますが、この辺の事実関係はいかがでしょうか。
  74. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 金属探知機を使用してチェックをさせていただいたということは事実でございます。そしてまた、そのバックアップも含めましてすべての金属探知機が稼働していたというのが私の認識でございます。  さらに、一言だけつけ加えさせていただきますと、ゲリラ側は全く裏をかいて反対側から侵入してきてしまったということでございますので、つけ加えさせていただきます。
  75. 高野博師

    ○高野博師君 公邸の裏側の空き家を犯人側は利用したという事実、あるいは救急車を装って犯人グループが侵入、突入してきたということでありますが、このときの状況を含めまして警備体制に油断あるいは甘さがなかったとは言い切れないと思いますが、いかがでしょうか。
  76. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、まさか私どもの裏手にありますドイツNGOのオフィスを通って彼らが侵入してくるということは夢にも予測していなかった、この点全く手落ちであったと深く反省しております。大変申しわけございませんでした。
  77. 高野博師

    ○高野博師君 それから、報道によれば、人質生活の中で大使人質との間でいろんな対立があったということが言われておりますが、極限状況に置かれた中での出来事でありますので、その是非について云々するつもりはありません。  ただ、大使は一国の代表でありますので、その責任は重大でありまして、何とか全員を救出させるよう最大限努力を払ったものと思います。そのための心理的な重圧は相当あったのではないかと推察いたしますが、報道されている中でこれは事実とは違うんだ、これだけは反論しておきたいということはございますでしょうか。
  78. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 一部いろいろ報道されております中で、ただ一つ正鵠を射ておりますのは、私が毎日のようにテロリストのところに日本の民間人の解放を頼みに行かなかったということだけでございます。あとはすべて私の発言が全く意味を取り違えられて報じられておりましたり、あるいは私が申したことと反対のことで報じられておりまして、この点は少々残念であると考えておりますけれども、それにもかかわりませず、先ほど高野先生御指摘のように、こういう状況でございますから私に対していろいろな不平不満が出てくるのは当然でございますし、またそういったことを表に出さずに最後まで私との間で人間的な関係を維持してくださった人質皆さんの忍耐というものに対しては私は深い感謝の念を抱いているということを申し上げさせていただきたいと思います。
  79. 高野博師

    ○高野博師君 もう一つ、日本政府はこの事件直後に人命尊重、平和的解決テロに屈せずということを強調したわけでありますが、これは人質になっておられた大使も中で当然認識されていたと思うんです。人質にある間にトンネルを掘削していたという事実を知っておられたということが報道されております。このトンネルを掘っていたということは武力行使をするということにつながることでありますが、この辺について大使はどういう認識をされていたのでありましょうか。
  80. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 実は、一月の中旬に私ども大使館の館員、私を除きます館員と一部の民間の方が一階の部屋におろされたわけであります。その翌日から、大使館員からどうもトンネルを掘っているという報告が参りました。これは彼らがその事実を発見して騒ぎ出す一月半前のことでございました。私はこれに対して大変心強いなと思っておりました。  平和解決ということは何としても努力をしていかなければいけませんけれども、他方、何の備えもなしに平和解決だけではなかなかあのテロリストというものは言うことを聞かないという認識がございまして、トンネルを掘っていてくれるというのは非常にありがたいな、我々が脱出することができるかもしれないというふうに考えておりましたので、ありがたいと思っておりました。
  81. 高野博師

    ○高野博師君 時間が余りありませんので、今回の事件大使が学ばれた最大の教訓とは何でしょうか。そして、それは今後どう生かしたらいいのか、簡単にお答え願いたいと思います。
  82. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まだ現在調査委員会でさまざまな調査が進められておりますので、この際私が私見を申し述べるのは時期尚早ではなかろうかと思います。しかし、人質全員、これは日本人に限りませずペルー人もそうですが、日本政府が終始一貫平和解決ということを主張してくださったことについてどんなに我々が心強く思っていたかということはぜひここでお話し申し上げて、また改めて皆様に御礼を申し上げたいと存じます。
  83. 高野博師

    ○高野博師君 もう一つ、MRTA側が日本経済協力について、これは貧困対策に役に立っていないんではないか、あるいはフジモリ大統領を利するだけではないかという今回の事件の一つの口実を、理由を言っているわけでありますが、日本の対ペルー経済協力について大使はどうお考えでしょうか。見直し等の必要はないのかどうか。
  84. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 実は、この点につきましては、ペルー側のムニャンテ農業大臣以下の皆さん、あるいはまた我々も彼らと随分話をしまして、結局彼ら自身が言い負かされて、後はそのような話はしなくなったという事実がございました。むしろ、いかに我々の経済協力が草の根の人たちには浸透しているかということを彼らはいや応なしに実感させられたわけであります。
  85. 高野博師

    ○高野博師君 それでは最後に、大使公邸そのものについて私は予算委員会でも言及したんですが、事件解決前の段階でしたけれども大使公邸公邸としてもう使えないだろうと。あれだけ全世界に大使公邸の中までわかってしまった。今回事件解決した段階ではもうほとんど使えないということで、これはコロンビアのドミニカ大使館が占拠された後十数年たってもいまだに廃墟同様になっておりまして、こういうことを考えますと、もう公邸として使えないのであれば何か考えなくてはいけないのではないか。  そこで、これは私のアイデアですが、再来年は日本ペルーの移住百周年記念の事業があるということでありますので、例えば大使公邸日本庭園にするとか、あるいは日秘友好公園等にして一般市民に開放するとか、そういうことを考えてもいいんではないかなと思っておりますが、この点については午後外務大臣答弁を求めたいと思います。  以上で終わります。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 まず、犠牲になられた三人のペルー方々に心から御冥福を祈りたいと思います。  青木大使には、百二十七日という長い間人質として大変な御苦労をなさったことに対して、まず冒頭御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。  今回の事件について、警備上の問題などは既にお二人の方からかなり突っ込んだ御質問がありましたのであえて触れません。  私ごとですが、大使が青年海外協力隊の事務局長をしておられたころにしばしばお会いいたしましたので、お人柄はよく存じ上げているつもりです。したがって、あの事件が起きました直後、青木大使なら頑張ってくださるであろうということを感じておりましたところが、機会があって外務省のOBの方を含めてかなりの方にお会いしたときに、ちょうど事件直後でしたが、青木大使なら頑張るだろうということで皆さん一致をしておられました。結果的に、四カ月本当に大変な極限状態だったと思いますが、頑張ってこられたことに改めて敬意を表したいと思います。  短い時間ですから一、二問だけになると思いますが、まず最初に伺いたいのは、なぜ日本大使公邸がねらわれたのかということです。ほかにももちろんいろいろな国の大使館あるいは公邸があるわけです。例えば、フジモリ大統領が日系である、あるいは日系の方々がたくさんおられる、あるいは今もお話が出ました日本からの経済協力ということについて不満があったとか、いろいろ考えられると思いますが、いろいろな意味大使はどうとっておられますか。
  87. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まさにテロリストのリーダーが私に述べておりましたように、日本との関係、またフジモリ大統領と私との個人的な関係からして大勢の要人が来るだろうから、ペルー政府に圧力をかける、有効な圧力をかけるだけの人質を捕まえる上で日本大使館は非常にいいと思ったということでございました。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 となると、MRTAの連中のねらいというのはいろいろ言われるわけですけれども、仲間の釈放ということなのか、それとも金なのか、両方なのか、四カ月一緒におられたわけですが、その会話の中で大使はどういうふうにとっておられますか。
  89. 青木盛久

    参考人青木盛久君) もちろん初めは両方だったわけですが、その中で仲間の釈放の方を重視する連中と金の方を重視する連中とがいまして、それが彼らがいつまでたっても交渉に対して有効に対処できなかった、いわば当事者能力がなかったということに結びついたと思っております。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 事件が発生した直後のころだったと思いますが、日本での報道によると、青木大使は自分が人質として残るからあとの人質を釈放してほしいということを要求されたというような報道がありましたが、これは事実でしょうか。
  91. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 事実でございます。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 それはどういう御心境ですか。人質という状況になったときに、前例がないわけではありませんが、やはり責任者としてのお立場からそういうことを言われ、それに対して向こうの反応はどうだったんでしょうか。
  93. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私としましては、やはり私のお客様として見えていた日本の民間の企業の代表者の皆さん、あるいは大使館の特に若い館員の諸君、これは解放しても彼らテロリスト側にはそれほど大きなマイナスにはならないだろうという判断もございましたし、できれば解放してほしいと。他方、彼らはむしろそういう余り関係のない人だからこそ、フジモリ大統領は本当に関係ない人であれば構わず突っ込んでくるだろうが、そういう関係のない人はやっぱり人権問題、人道問題ということでなかなか動きづらいだろうからこういう人も置いておくんだということで、なかなか私の頼みが聞かれなかったということもございました。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどからいろいろ伺っておりまして、かなり今までの報道と違った印象を私は持っておりました。これはいいことだと思います。こうした問題は真実をみんなが知る、世界の方も含めてみんなが知るということが一番大切であって、ある部分のところを誇張して報道されたものがまかり通ってしまうということは後々に対して大変悪い影響があると思いますので、きょうのこの委員会出席をしていただいて率直に述べていただいたことに感謝をして、終わります。  ありがとうございました。
  95. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 田委員のお尋ねと全く重複するのでもう発言はやめてもいいような気がしておるんですが、一応端的にお伺いします。  ゲリラの主たる目的が投獄されている同志、特に幹部の釈放要求にあったということはたびたび報道されましたが、私の心に一番とまりましたのはこの初期の時期、先ほど田委員の言われたように、何ゆえ日本大使館を目標にしたかと。それは、日本ペルーに対する政府援助が富める人々に対してウエートがかかり過ぎている、貧しい者には恩恵が及んでいない、これに対する抗議がこの事件を起こした目標といいますか理由といいますか、その重大な一つだと、こういったことが心に残っております。  これはどの程度の真実性があるのか私には知識はありませんが、世界第一の政府援助国たる日本がこういう人々に対して大きな問題を指摘されたとすれば、これはただ今度だけの問題にとどまらず、日本の途上国一般に対する援助政策の一つの重大な問題を指摘されたということが言えないこともないと思うんです。もちろんこれは日本政府の問題であり、あるいはペルー国の特殊事情下における政府の方針もそういう印象を与えたということも当然考えられるわけでありますけれども、この場合は大使の異常な御体験の中で、一応相当なところがキャップとして乗り込んだわけでありますから、百二十六日ですか七日ですか、その間のさまざまなチャンスにおける接触においてこの人々の物の考え方、特に政策理解あるいは人間性、どういう人たちがこういう行動の中に参加しておるのかということはこのたびの特殊な御体験で余人にはわからない御認識があったかと思うんですが、これについて忌憚のないお考えを伺いたいと思います。
  96. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 最前、田先生にも申し上げましたように、テロリスト側は大変一国社会主義的な、全部自分の国で賄うというような思想を持っていた者が多かったわけでございます。また、日本経済協力あるいは日本との経済関係一般、貿易関係についてまでいろいろな偏見を持っておりましたが、これにつきましては、民間の企業の方も含めて、これだけの雇用を創出しているとかいろいろなお話の中で、実は我々は彼らを論破したと思っておりました。彼ら自身そういう話をしなくなりました。もしかしたら一人の人間は逆洗脳されていた可能性もございます。
  97. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 今回の武装テロリストの行動というのは国際的には許すべからざる犯罪行為であるというふうに考えております。この間、人質皆さん方が長期間にわたって非常に頑張ってこられたのではないかというふうに考えております。この中から私たちはやっぱり教訓を引き出すことが必要だというふうに思うわけです。  日本側として考える必要がある問題の中の一つとして、時間が短いわけですからお尋ねしたいと思うんですが、なぜテロリストにこういう犯罪の機会を与えてしまったかという問題があると思うんです。それは先ほど来問題になっていますように、天皇誕生日ナショナルデーとしてレセプションが開催されたのがねらわれたということについて若干事実関係を二、三お尋ねしたいんです。  一つの問題は、ペルーでの日本公館としていつから天皇の誕生日をナショナルデーとしてレセプションを開催するようになられたのか、いつごろから行うようになったのか。
  99. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私が外交官に任官いたしましてからことしが三十四年目でございますが、三十四年前にフランスに参りましたときも、これは四月二十九日でございましたけれども天皇誕生日に今の国祭日レセプションを開催しておりました。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 今回は、昨年は二千人の方に招待状を出されたというふうに報道で見ているわけですが、それ以前も規模としてはほぼ同じような規模だったんでしょうか。
  101. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私が参りまして前回が実は三度目の国祭日レセプションでございましたが、一回目のレセプションは着任直後ということもございまして前任者のリストを受け継ぎましたが、二回目から先ほど申しましたような日系人皆さんを大量にふやしまして、従来千組程度であったものを千二百組というような規模に拡大した次第でございます。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 これは外務省の方にお尋ねすることになるのかどうかあれですけれども、世界じゅうの在外公館ではナショナルデーとしてすべての公館でほとんど行っておられるのか、あるいは治安の悪いような場合には特別の例外措置をとるというようなことを講じているのかどうか、その事実関係について。
  103. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) お答え申し上げます。  原則として全在外公館に対して天皇誕生日レセプションをするようにという指示を一括して出しております。先ほど大臣からも御説明があったと思いますが、それと同時に、その任国あるいは任地の情勢等の事情によってレセプションの開催が不適当あるいは困難と判断される場合にはその旨を説明して本省に請訓せよと、そういうような形で処理してきております。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間で最後になりますけれども大使に、先ほどお話がありましたように、結局テロリストの危険性をほとんど感じておられなかったというような状況で、ですから外務省からのそういう訓令に対して意見を述べるというふうなことはなさらなかったわけですね。
  105. 青木盛久

    参考人青木盛久君) そのとおりでございます。まことに申しわけありませんでした。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 終わります。
  107. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からお尋ねいたします。  青木大使の前任は西崎という方だろうと思います。この方が事件直後にテレビに出演されましてはっきり言っていたことは、ペルーは大変危険な国だ、自分の時代は万一を考えて天皇誕生日のパーティーは比較的安全な昼を選んで規模もできるだけ縮小してやっていたと、なぜ青木大使の時代に最も危険な夜、しかもあれだけの大人数を集めてやるようになったのかちょっと理解できない、こう申しておりました。  ペルー治安情勢は基本的にはほとんど変わりがないのにかかわらず、なぜ同じ大使でかほどさように認識が違うのか。いかがお考えでしょうか。
  108. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 西崎大使は、JICAの専門家暗殺事件が起こりました一九九一年、その起こりました直後に現地に赴かれまして、九二年の十二月には大使館の爆破事件といったものも経験しておられます。いわばペルー治安情勢が最も悪かった時期に現地にいらっしゃったわけであります。それに対して、私が赴任した時点では、その後のさまざまな推移、特にセンデロ・ルミノソとMRTA、両方とも最高幹部が全員逮捕されたということもございまして、治安情勢は顕著に改善したという認識がございました。そういうことで実施したわけでございます。
  109. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 青木大使自身ペルーの治安についてどういう認識を持っておられたのか、その辺興味あるところだと思うんです。ことしの一月の週刊新潮の中で、昨年の十二月十六日付の青木大使からの年賀状が届いたと。これによるとペルーは大変な国だと、もう失業と貧困は最悪だと、フジモリ大統領も限界、人々の忍耐は切れかかっていると、こういうふうに書いてありました。まさか週刊新潮がうそを言ったとは思えません。青木大使自身ペルーの治安について大変懸念しておられたのではないか、こういう気がいたすわけであります。いかがでしょうか。
  110. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私の年賀状は実は週刊新潮の松田編集長あてのものを全部あれしたわけですが、私自身はあのような認識は持ちつつも、しかしそれが例えば大使館に対する直接のテロ攻撃に結びつくというふうなことは予想していなかったということでございます。まことに申しわけないと思っております。
  111. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 危機管理の基本は最悪の場合を想定することにあるわけです。大体いいだろうとか、これぐらいやればおおむね大丈夫だろうとか、これはもう危機管理者としては失格なわけでありまして、最悪の場合を常に考えて、これだけのことならどうだろうか、それでも防御ができなければもうやめておこうとか、こういうことでないと本当の意味での危機管理というのは達成できないわけです。どうも先ほどからお話を承っておりますると、まあ大体いいのではないかとか、そのぐらいのことであのパーティーが開かれたような気がしてしようがないんですけれども、いかがでしょうか。
  112. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 難しいところとは思いますが、私はあれで十分だと思っていたわけでありまして、これは全く間違いであったということでございまして、まことに申しわけございませんでした。
  113. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 本省の方にも、ペルー治安情勢を踏まえて、こういう規模で夜間こういうパーティーを開催するという報告をしておると思いますけれども、それに対する本省の訓令というのか回答というのか、指示はどういうことでございましたでしょうか。結構である、大いにやりたまえということだったのでしょうか。
  114. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私がいただいた訓令は、日時及び規模については事後に報告せよということでございました。
  115. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 外務省自身ペルーは大変危険な国だ、こういう認識をしておられたようですから、そうすると夜間ああいうことを開催するについて格別な連絡はなかったわけですね。
  116. 青木盛久

    参考人青木盛久君) これも最前御報告申しましたとおり、もしこれは危険というようなことでレセプションの中止、延期ないしは大幅な規模縮小を必要と考える場合には請訓せよという訓令でございましたが、私は請訓をいたしませんでした。これは私の判断でございました。申しわけございませんでした。
  117. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後になりますけれども、あなたが救出されまして、車いすで出てきまして、テレビに映っておりました。大変感激的な、感動的なシーンであったと思いますが、あなたが橋本総理の写真を掲げておったのは一体どういう発想なのか。あなたは現場の責任者でありまして、橋本総理は行政のトップ、全体の責任者。現場の責任者が全体の責任者の写真を高々と掲げて登場してくる、これ会社の場合でしたら工場長が社長の写真を持ってくるような感じでありまして、あれちょっとこれはどういうことなのかなと非常にいぶかしい気がしたわけでありますけれども、あれはどういう考えだったんでしょうか。
  118. 青木盛久

    参考人青木盛久君) あれは、両陛下のお写真と橋本総理の写真をテロリストたちが私どもに返してくれまして、保管していたのをあのときに公邸から持って出たわけでありますが、実はあれはフジモリ大統領が私にくれたのでございます、あの写真を。総理のお写真をフジモリ大統領が私に渡されたということでございます。
  119. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 何かこれ見よがしに掲げていたものですから、ちょっと疑問に思ったわけであります。了解いたしました。
  120. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今までの各委員からの御質問、それから青木大使からの率直な御陳述でいろいろなことがわかりまして、私から特につけ加えることはありませんが、一つだけいわばお願いをしておきます。  今度、結果的には、とにかく暴力というものは割に合わぬということがはっきりしたという結果が出たことは非常によかったことだと私は思うわけです。テロリストには決して屈しないという日本の態度をさらに明確なものにこれからしていこうというきっかけにもなった。  ただし、考えてみると、ペルーにフジモリさんという大変決然たる大統領がおって、大変周到な話し合いも本当に最後までやり、その結果、突入をして救出したということをやっていただき、また大変残念なことでありますが、そこで殉職者、犠牲者も出たということで、日本は相当救われたという気がするんですね。  そこで、私、これからというか、もう手をつけておられるんでしょうが、調査委員会というものをおつくりになって、原因それから再発防止というようなことを徹底的に調べる、こう言っておられる。私どもが考えなければいけないのは、人命尊重第一にとか、あくまでも平和とか、そういうことの枠内だけで物を考えていたらまた中途半端な話になるだろうと私は思うんです。この調査委員会というものが、今度のペルー事件それから外務省責任という枠にとどまらないで、日本が国際関係の中でどういう振る舞いをするかということまで本当は踏み込んでお考えにならなければならないと思います。  青木大使は、先ほど伺ったわけですが、ペルー大使辞任される、それを外務大臣は受けられたということですが、この調査委員会に御自身が大変な御経験をなさった中からのいろいろな所見などを十分に反映させていただきたい。そして、今、日本の現行の法制その他の中でできる範囲でどうだったかというようなことを、一歩踏み込んだ調査委員会の結果というものを、最終的な形はともかくとして、お考えの最中では出していただきたい。それに対して全面的にひとつお力を出していただきたいということを青木大使にお願いをし、外務大臣にはそういう心構えで調査委員会をやっていただきたい、これをお願いして、御所感があれば承りますが、私は以上でございます。
  121. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま椎名委員からお話がございました点も十分踏まえながら、私ども調査委員会でいろいろ検討いたしまして、そしてその結果を、外務省限りではないかもしれません、政府全体としてもこれからの国際社会における我が国あり方という観点から真剣に考えてまいりたいと思います。
  122. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ぜひよろしくお願いいたします。終わります。
  123. 矢田部理

    ○矢田部理君 まず、大使には、極限状況のもとで大変な辛酸をなめられ御苦労されたことに、改めてその労をねぎらいたいと思います。  率直に事実関係を伺いたいと思いますが、ペルー治安情勢は好転したとはいえ、昨年の十月にはリマの市内でゲリラの人たちが逮捕されました。その直後に武器庫の機関銃、弾薬が捜査の結果押収された。十二月にはその人たちの動きがあるという情報を陸軍省では持っていたという指摘もあるのであります。あなたの説明によると、そういう予兆は全くなかった、専門家から聞いても大丈夫だったというのですが、本当にそうだったのでしょうか。
  124. 青木盛久

    参考人青木盛久君) そのとおりでございます。
  125. 矢田部理

    ○矢田部理君 ペルー政府側、いわば官側の情報だけに頼り過ぎて、独自の情報収集が甘かったのではないかというようなことも指摘をされております。もう一つ、あそこの公邸の弱点は隣の民家だということは前任者も承知しておって、次に引き継いでおったというような情報、新聞報道もあるのでありますが、いかがでしょうか。
  126. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私の前任者が帰国する時点ではあの家は空き家だったわけでございます。そこにドイツのNGOが入って事務所にしたということでございまして、私もその点については一応安心をしたわけでありますが、やはり夜間は無人になるということに思いをいたさなかったことはまことにうかつであったと深く反省している次第でございます。
  127. 矢田部理

    ○矢田部理君 大使館警備の担当官がリンセという警察署に出向いて、警察が余りたくさん出てくると大使公邸は危ないのではないかと疑われたり誤解を受けたりするので、交通整理程度でいい、中は自分たち責任で守るとわざわざ日本側の態度を申し伝えたという報道もあるのですが、いかがでしょうか。
  128. 青木盛久

    参考人青木盛久君) そのようなことではございませんで、つまり交通規制という中には当然車両の規制、車両のチェックも入るわけでございますが、私どもといたしましては、とにかく人の出入りが非常に多い機会でございますので、これの規制を中心にした警備を実施していくということでありました。また、最前もお答え申し上げましたとおり、ペルー側から警備の強化の申し入れがあり、それを私どもが拒否したということは一切ございません。
  129. 矢田部理

    ○矢田部理君 テロ活動が少なくなったとか治安情勢がよくなったとはいいながら、まだまだペルー内には不安な情勢があったし、それに対して余りにも警備についてやっぱり無防備、無警戒であったのではないか。その点で大使責任を追及する向きもあるわけでありますが、それについてどうお考えでしょうか。
  130. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まさに私としてはその点責任を痛感しているわけでございまして、進退をお伺いするだけでは不十分であろうということから、大臣に対しまして辞意を表明させていただいたということでございます。
  131. 矢田部理

    ○矢田部理君 百二十六日間に及ぶ人質の生活を大使としても送られたわけでありますから同情すべき余地は多々あるわけでありますが、その間、大勢の人質と一緒に大使としての責務あるいはパーティーを主催した者としての責任を全うしたとお考えでしょうか。  もう一、二申し上げますが、人質の人たちの朴安や心配を解消する努力だとか、平和解決のためにゲリラ側とも交渉して何人かでも釈放する努力だとか、それから外部の情報についてできるだけ収集をして皆さん方に知らせる努力ということも必要だったと思いますが、そういう努力をされたかどうか。さらにはまた、日々の状況について日誌などをつけて後のために残されたかどうか。そして、いろんな言動が問題にされておりますが、それはここで触れる余裕はありませんが、外部の状況等について、例えば保証人委員会の動きだとか平和解決のための状況だとかということについてどの程度つかんでおられたのか。そして、最後になりますが、武力行使で解決というところについては、大使としてはいつの段階で知り得たのか、全く知らなかったのかなとについてまとめて質問したいと思います。
  132. 青木盛久

    参考人青木盛久君) まず、テロリスト側が部分解放ということを実施していた間は、何とか日本人の皆さん、特に民間の皆さんを一人でも多く釈放してもらいたいと思っていろいろ努力をしてまいりました。しかし、彼らがもうこれ以上の部分解放をしないと言った瞬間から私としては、実は私も人質でございますので、動きがとれなくなりまして、交渉はできなくなったという状況がございます。そして、武力解放につきましては、それが起こるまで全く気がつかなかったということでございます。
  133. 矢田部理

    ○矢田部理君 日誌などをつけてはおらなかったんですか。
  134. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私は実はそのようなことをやることが私の心身を疲労させるゆえんではないかという判断を持ちまして、とにかく黙って生きてくるということだけを考えておりました。
  135. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。
  136. 小山峰男

    小山峰男君 まず最初に、犠牲になられた皆さん方に心から弔意を表する次第でございます。また、フジモリ大統領初め関係した皆様の御努力に心から謝意を申し上げたいと思います。また、青木大使におかれましても、大変な長期間、人質というようなことで御苦労いただいたわけでございまして、心から御慰労を申し上げたいと思います。  さて、その上で御質問申し上げたいと思いますが、治安情勢あるいはそれに対する対応策につきましては既にそれぞれの委員の方から御質問がございましたので、私は若干視点を変えまして、人質生活の中で大使がどんな行動をとられたか。週刊誌等でいろいろ書いてありますが、あれは必ずしも真実ではないというふうに思っております。まず、人質皆さんのいろいろな要望等が当然出てきたわけでございますが、そういうものを集約してゲリラ側に伝えるような役割を果たしたのかどうか、また早期に解決するために日本政府に対して意思を伝えるというようなことをされたかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  137. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 最初の時期でございますが、突入されてから彼らが部分解放を行うことしの正月初めまでの時期でございます。この時期は私はできるだけ多くの人質たち解放してもらいたい、その中にあって日本人の皆さん、できるだけ多くの方を、できれば民間の方は全員解放してほしいという方向で努力してまいりましたことと、たまたま公邸でございますのでさまざまな備蓄の品がございます。こういったものも活用しながら人質皆さんの生活環境をできるだけ改善していくという方向で努力してまいりました。  そして、その後、状態が膠着状態に入るわけでございますけれども、このとき私が特に日本人質皆様に申し上げてきたのは、こういう話は時期を限っていついつというふうに考えることは難しいのである、タイミングが来れば解決できるけれども、タイミングが来るまではとにかく黙って耐えているしかないということをずっと申し上げてきたわけであります。
  138. 小山峰男

    小山峰男君 早期解決のために日本政府に対してどんな行動をとられたか、その辺はあったでしょうか。
  139. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 私も人質でございまして、やっぱり人質としての私の最大の責務は元気で生きていること、そして人質皆さんが元気で生きているということが政府の平和解決へのさまざまな努力の少なくとも邪魔にならないということで、私の今の気持ちではそれ以上のことは実は人質の立場からできることはなかったのではないかなと思っております。
  140. 小山峰男

    小山峰男君 時間もあれでございますので、今回百二十七日ですか、大変長期の人質生活を経験されていろいろの思いがあったというふうに思います。  まず一点目は、在外公館警備あるいは防衛体制、さらに情報収集についてどうあるべきだというふうにお考えになったか、その辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  141. 青木盛久

    参考人青木盛久君) この点につきましては、現在この場で私が軽々に申し上げるより、やはり調査委員会の結論の中でしっかりとした判断を下していただくのが適当ではないかと存じます。申しわけございません。
  142. 小山峰男

    小山峰男君 できれば率直な感想なり考え方をお聞きしたいわけでございます。これもなかなか難しいと思いますが、日本政府としてのとるべき態度というのはこうあるべきだというようなことをお感じになったはずでございまして、その点をお聞かせいただければということ、あるいは日本国民に向かって、こういうことは常日ごろ考えておく必要があるとか、いろいろの思いがあったと思いますが、この二点についてできれば具体的にお聞かせいただければと思います。
  143. 青木盛久

    参考人青木盛久君) 最前申し上げましたように、平和解決に向けての日本政府の御努力に対して人質全員が非常にうれしく、心強く思ってきたということはぜひこの際御報告させていただきたいと思います。  ただ、日本政府がどうすべきだこうすべきだということは現在この場で私が申し上げることは適当ではないと存じます。
  144. 小山峰男

    小山峰男君 以上で終わります。
  145. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  146. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、笠原潤一君が委員辞任され、その補欠として依田智治君が選任されました。     ―――――――――――――
  147. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  148. 依田智治

    依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  本日は、午前中、青木大使を招きまして大変熱心な論議が行われ、事件発生当時の警備状況情勢判断その他いろいろ事件状況が明らかになったというように承知しております。  私は、この結果等を引き継ぎまして、今回のペルー事件、特に奇跡的に人質の大多数が救出されたというものの、特殊部隊二名、人質一名というとうとい犠牲があるわけでございまして、私どもはこのとうとい犠牲を無にしないようにテロ対策の万全を期していくということが大変重要じゃないかと考えております。  自由民主党としましては、事件発生直後に、国際テロ対策の万全を期する必要があるということで政務調査会の中に外交調査会国際テロ対策委員会というのを設けまして、不肖私が小委員長に任命されました。今日までずっと事件をフォローするとともに対策等を協議して、近々提言をまとめたいと思っておりますが、きょうは政務、外交日程等大変多忙で、本会議等もスキップしていただいて官房長官にもおいでいただいていますので、この中でぜひともお尋ねしたい点を幾つかこれからお尋ねしたいと思うわけでございます。  そこでまず第一、せっかく官房長官に来ていただいていますのでお尋ねしたいんですが、やはりテロ対策については日本は毅然たる顔が見えないというのが何としても私は大きな問題じゃないかと思います。  「テロと戦う日本」ということで、首相はペルー大統領とこの間十日に会談したときに、新聞見出しになっています。しかし、残念ながら事件発生当時、例えば政府対策本部初会合、十二月二十日の新聞の朝刊等を見ますと、橋本総理ペルー対策本部の初会合に出席して人命尊重優先を強調したというのが大きく見出しになっているんですね、これは当然なことなんですが。  それから、この間、池田外務大臣が当委員会で御報告したのを見せていただきますと、十二月十九日から二十三日までの間、現地の我が方対策本部の体制をきちんと立ち上げる、事件解決に当たり人質の安全を重視し、本件の平和的解決を目指すとの我が方の基本的考え方をペルー政府要人に伝えること、それで意見調整するというようなことで、要するにテロ対策で一番重要なのは犯人のいかなる不法な要求にも屈しない、これをまず第一に表明すると。しかし、もちろん人質の安全第一ということは当然なんですが、まず第一に、一緒にテロに屈せず頑張りましょうというのがそういうところに出てきていないということが非常に大きな問題じゃないかと思います。  私が二十数年前警察庁におりました当時、五十年代の初めにクアラルンプール事件とかダッカ事件が起こり、人質をとって立てこもって、要求された多額の身代金を払い、さらに獄中の犯人を釈放し、そのために第二、第三の事件が起きたという苦い事件があるので、我が政府としては「ハイジャック等に対する対処方針」というのを五十三年八月二十五日に出したんです。  そのときに、ここで、人質の安全救出のため最大限努力を払うことはもちろんであるけれども、「犯人の不法な要求に対しては断固たる態度をもって臨む」、この「断固たる態度をもって臨む」というのは、それ以来ああいう反省を含めた決意を述べたはずなんですが、どうも断固たる、毅然たる顔が見えない、ここが一番問題じゃないかと思います。  そういうことで、もう既にいろいろな場で政府は述べており、国会の衆参両院においても発生時と終結のときに感謝決議等を行っておるわけですが、その中でも、ノーコンセッション、犯人に絶対譲歩しないということは述べておるわけです。このあたりをもっと、このペルー事件の反省に立って、政府は最近の国際情勢等を踏まえながら改めて対処方針というものをきちっと述べ、今後こういう対策を徹底してやりますよと、したがって国民皆さんもぜひ協力してくださいということで、国民テロに対する世論を形成するという意味でもイニシアチブをとっていく。それで、国連等で演説をぶっても、日本はあんなことを言っているけれども自分のところのおひざ元はしっかりしているのかと、こういうことになってしまうと思うんですね。  この点について、ひとつ官房長官、まず政府の基本的考えをお伺いしたいと思うわけでございます。
  149. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今回のペルーにおける日本大使公邸人質事件、ようやく解決を見まして、まことに御同慶にたえません。  この間、政府並びに議会等の意見は幾たびかちょうだいをいたしております。総理からも外務大臣からも、この具体的な対策については既にお述べになられておりますし、今後の方針についても幾たびか言及をされているわけであります。  まずもって、全体的な危機管理責任者という地位にある私から、今回の事件に対する対策ないしは原因等についての甘かった判断おわびしなければならないと思いますし、これからその対策に向けて万全を期してまいりたい。  しかし、委員御承知のように、この事件が起きて早速我が政府は、テロに屈することなく平和裏に人質の全員解放を目指すという大変難しい今で言えば三次元方程式を出したわけであります。この三次元方程式を一挙にうまく解ける方法があるのかしらと大変苦悩をいたしましたけれども、それぞれの国、国民によって、あるいは地域によってその順位の置き方が若干ずつ違うこともこれまた現実でございます。  私たちは今、昨年起こった時点から今日、幸いにというか、武力解放ではございましたが、三名のとうとい犠牲者が出ましたし負傷者もありましたけれども、とにもかくにも人質の一人を除いて全員が解放された、この問題をめぐりましてよくぞここまで来れたという深い感懐を覚えるわけであります。そして、改めてテロに屈しないでやってきてくださったペルーないしはペルー政府に対して謝意を表するとともに、この事件の一応の落着を見たことを私たちは大変安堵いたしております。  しかし、安堵をするだけでこれからの対策はどうかという問題に当然なるわけであります。現状をよく見てみまして、この問題に完全に対応できる体制が国内的に整うのかどうなのか、それから海外で起きた場合にこれに対応する手段、方法はあるのかどうなのか、これから具体的な問題は検討しなければなりません。例えば、国内でこの問題が起きたとして、短期、部分的な問題に対応する研究あるいは実施訓練はいたしておりますものの、これほど長期にわたる、そしてそれぞれの武器を持った方々に対抗する手段、方法があるかといいますと、今の知識ではそれに完全に対応する能力は残念ながらないのではないのかなという気がいたします。  警察はそれなりのノウハウをソフトの面で備えておりますけれども、今度のペルー事件を見てまいりますと、警察の持っている装備で果たして十分な対策がとれたのかどうなのか、こういうことを考えますと、これからは装備の面をいかにするか、あるいはほかとの合同部な部隊の編成ができるのかどうなのか、例えば防衛庁とか、それが果たして今の法令その他に抵触をしないのかどうなのか、もろもろの研究をしなければなりません。  いずれにしても、テロに対して断固たる措置がとれるための方式を国民の理解を得ながら取り進めていくこと、これが何よりも肝要というふうに考えております。
  150. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  いずれにしましても、テロに対決するというのは、口先だけではなく、官房長官から今御指摘のような、もし万が一発生した場合には毅然たる態度をとって臨む、我が方だって特殊部隊もこのように強力なものを持っている、いつでも対応する用意があるぞというようなこと、またその前に、午前中も指摘があり、また私も後ほど指摘しようと思っていますが、情報体制等に万全を期していくとか、いろいろ方法があるわけです。そういう全体の備えが結局人命尊重、平和的解決につながる、こういうように思いますので、よろしくお願いしたい。  次に、テロ対策、ただいま官房長官から御指摘いただきましたようにいろいろあるわけですが、私はまず情報面をぜひ取り上げてみたいと思うんです。  今回、青木大使等のいろいろ答弁を聞いておりましたり、また池田大臣等のいろいろ答弁もあり、そして結果論として、我々は当時何でもうちょっと認識がなかったのかと。我々も政治家として、ペルー情勢ぐらいは多少知人等から聞いて、大変なことだぞぐらいのことはアドバイスもしないでここで大きな言葉もたたけませんが、しかし今回の事件は、現地はもとより、外務省政府全体として情勢判断が甘かったんじゃないか、こう思うわけです。  そこで、外務大臣外務省では現地の情報は政務官とか警備官とかでとっておるわけですが、今回はまさかこんな事件が起こるとは思わなかったという答弁がありますが、やはりそれは実際上、情勢判断として甘かったと考えております。今後、これはペルーだけの問題じゃないんですが、我が国国内だって相当外国人がふえており、その中に相当過激な行動をとるテロリストが潜入している可能性も非常に大なわけですが、そういう国際テロ情勢というものの認識をまず外務大臣にお伺いしておきたい、こう思います。
  151. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の事件は、ただいま委員も御指摘になりましたように、結果としてこのような大事件が起きたわけでございますから、やはり情報収集の面も含めまして遺漏がなかったかといえばそうは言えない。私どもはその点は率直に反省し、将来に向かっていろいろ対策を強化していかなくちゃいけない、こう思っております。  そういったことを申し上げました上で、ただいまの国際的な情勢をどう考えているかという点でございますけれども、御承知のとおり、国際的には現在もテロ事件はなかなか後を絶ちません。最近の事例を見ましても、昨年六月のアルコバルの爆破事件であるとか、また昨年の年末にはパリの地下鉄爆破事件というふうに深刻な事件が次々と発生しております。  そういった意味で、国際社会全体としてもテロ対策の強化をしなくちゃいけないということで認識の一致を見ておりますし、我が国もそのような国際的な流れの中できちんと対応してまいりたい、こういうことで、例えば昨年末、この事件の起きる直前でございましたが、アジア太平洋地域のテロ対策国際協力セミナーなども開催したところでございます。しかし、これからも十分やってまいりたいと思います。  それから、ペルー事件につきましても、やはり我々の情報収集なり分析、その上での認識は、結果的には先ほど言いましたように反省しておりますけれども、一般情勢として申しますと、大変テロがしょうけつをきわめておりまして、九〇年代の初め、九三年ぐらいまではテロの発生件数、またそれによる犠牲者も四けたになっておったのでございます。それが九四年以降は急速にそういったテロの勢いが衰えてきた。とりわけ、午前中の青木参考人の話にもございましたが、一昨年十一月の国会占拠の未遂事件以降、MRTAは事実上崩壊したし、センデロの方もかなり勢いが弱まっているというのが、これはペルー政府だけではなくて、専門家や他の民間のいろいろな情報あるいは分析も含めて一般的な共通の認識であったというふうに考えております。  しかしながら、とはいっても四けたではないけれどもなお三けたの事件が起きておったということは事実でございますので、やはりペルーというのは今もなお危険の存在する国だということで、我々はそういう認識はございましたけれども、なおこういった事件が起きたことを踏まえまして、甘かったと言われればその点は我々も反省しなくちゃいけない、こう考えている次第でございます。
  152. 依田智治

    依田智治君 やはりテロの国際情勢は大変厳しい。ただ、厳しいというだけでは対策にならない。そうすると、個々具体的にどこでどういう可能性があるかという情報の具体化、情報分析、評価という問題が非常に重要で、今回、テロ対策委員会等でもいろいろ情報体制を詰めてみたんですが、我が国の場合は国として情報を本当に責任を持って集約する体制がない。これは青木さんだけの責任じゃないんです、国がそういう責任の体制をとってやっていないんですから。  要するに、情報専門家があそこに配置になっていないんです。警察庁なり内調が情報専門家かどうか知りませんが、少なくともペルーのようなところには政務班の方とか他の役所からとか警備保障会社等の警備官等が行っていますが、やはりもちはもち屋で、国として情報の専門家を配置する。そのためには、官房長官おいでですからお尋ねするわけですが、内閣情報調査室というのが内閣五室にあるわけです。この体制、陣容というのは余り外に公表していないと思うんですけれども、大体みんな知っておると思うんですが、兼任者も含めて百数十名しかいない。ところが、英国の秘密情報局、ドイツの連邦情報局、アメリカの中央情報局、フランスの対外安全総局、こういうところは数千人、数万大規模なんです。これが国家として情報をとり、国の安全なり企業なり国民の安全を保持していく。  そういうことですから、私がまず提案したいのは、現在の内閣情報調査室、これは国の行革会議等でもいろいろ議論があるようですが、やはりこれは単なる室というより内閣情報局、名前はどっちでもいいんですが、もうちょっと陣容を増強して、少なくとも主要な大使館等には国の責任において情勢判断ができる情報の専門家を送るとか、それから内閣に今情報連絡会議というのがありますが、各国ではみんな正式の機関として大統領なり首相を補佐する委員会なり会議というのが置かれている。我が国の方は、あるけれども任意の機関である。私も昔参加したことがあります、安保室長として。今回これをどうするかというようなことでやっているわけです。  だから、これではだめだ。やはり内閣に責任ある法定のしっかりした連絡会議というものを設けて、その下に国際テロ連絡会議、そういうものを位置づけたりいろいろして、ただ情報機関は一本にしちやっとミスがあったら大きなミスになっちゃいますから、防衛庁で得た情報、警察庁、外務省、公安調査庁、いろいろな情報を多角的に総合収集し、分析、評価する体制というのが必要である、そういう形をとるべきだと思います。  それから、情報専門家、専門家と言っていますが、各役所も必ずしも専門家ではないんです。情報というのはやっぱり言葉ができるということも大変重要だし、地域の情勢に明るいということ、またあらゆる専門技術的な、別に非合法手段で我が国の場合はとれというのではなく、合法情報も幾らでもとれる方法はあるわけで、そういう問題をもっと内閣の責任において研修するような制度というのが必要じゃないか。例えば、在外公館に担当官を配置する場合には、少なくとも内閣情報調査室で研修していくような制度というのが必要かなという感じがしていますが、官房長官、いかがでしょうか。
  153. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今までもいろんな機関の統合や整理をしながら、情報の一元化というか集約化を図ろうという動きは現実にございました。具体的な名称はここでは差し控えますけれども、そういう動きがあることは当然でありますし、今回の行政改革でも、新しい事態に対応するために、情報の収集、分析、評価、そしてそれに基づいた対応をどんなふうにすべきかということは非常に大切なことであります。  今まで、ともすると自然災害を中心とした国内の情報収集のセンターをつくりましたけれども、今度のペルー事件その他を見てまいりますと、前々から問題になっていた今の外交機能の中での情報収集能力、これが果たして十分であるのかどうなのか。私たちは決して軍事的な面を申しませんが、テロの問題だけではなくて、各国の相当な情報を収集していない限り国際社会に対応することはできないわけでありますから、事緊急を要する問題あるいはそういうテロや災害その他という問題を離れた意味でも、広い意味情報を収集することは適正な日本の国連を伸長する上では大切な要因だというふうに考えております。  ぜひとも衆知を絞って、新しい国内外の情報をどういうふうに集積し、分析し、評価し、これに対する対応策を早急に出せる体制、これが総体的な危機管理であり、あるいは国家経営の基本につながるものだというふうに考えておりますので、この問題には集中的な努力を払ってそういう体制の万全を期してまいりたい、このように思います。
  154. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  この情報の問題は、テロだけの問題じゃなくて、国政全般にわたって、本当に国際社会の中で日本がアイデンティティーを持ちつつどう行動していくか、大変に極めて重要な問題でございますので、真剣な取り組みをお願いしたいと思います。  先ほどちょっと触れましたが、そういう中央における体制を踏まえながら、各省の体制、これは武見さんの質問でも出ていましたけれども外務省情報が上がっていたのか、外務省が本当にそういう現地情報を的確に分析してアドバイスできるような体制ができているのかとか、そういう問題もあります。  それから、そもそも現地に、地方情報局というか、警察庁とか関係機関から情報担当者というのを主要なところに送って、その人が核となって情勢分析をしていく。ペルー政府情報機関はこう言っておる、しかし我が方が独自で集めた情報によればこういう問題がありこういう問題がある、したがってどうなんだろうということが少なくとも言えるくらいの情勢判断能力というもの、そしてそれはただ単に大使館警備なりに生かすだけじゃなくて、現在物すごい数の日本人が海外旅行をしておりますし、海外進出企業の安全、そういう点も考えますと、大使館の主要なところに情報専門官を配置して的確に運用していく、これは大変重要なことなので、行革の時代でございますが、国家の安全なり存立にかかわる重要な問題だと思いますので、ぜひ実施していただきたい。外務大臣、この点をお願いいたします。
  155. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、外務省といたしましても情報機能の強化を図っていかなくちゃいけない、ごれは喫緊の急務であると考えております。  そのためには、何といいましてもまず外務省自体において専門家を育成していく、委員の御指摘の中にもございました研修の強化なども一つの手段だと思いますが、そういうことをやらなくちゃいけないと思います。それと同時に、今お話がございました外務省以外の専門家といいましょうか、優秀な人材を適材適所の観点から積極的に起用していくということも考えていかなくちゃいけないと思っております。  これもまた委員御指摘でございましたが、全体としての行政改革という流れもございます。ただ、その文脈の中でもこういった問題にどういうふうに対応していけるか真剣に考えてまいりたいと思います。
  156. 依田智治

    依田智治君 それで、こういう体制をとった場合にやはり一番重要なのは、情報が結局引き出しに入ったままじゃ全く活用されない。  私も情報担当をしたことがあるのですが、情報マンというのは情報を大事にしますけれども、本当は実施部門に情報をやらなかったら実施に生きないんですね。ところが、同じ局に情報担当課と実施課があっても、情報担当課から極秘情報がこっちに来ないというのが普通です。普通と言ったら申しわけないけれども、そういう傾向がある。私も防衛庁等におって防衛駐在官で出ているけれども、防衛情報というのはなかなか外務省から、請求して大分おくれて防衛庁に上がってくるというような感じもあるわけです。これは池田さんも防衛庁長官をやられて十分御承知だと思います。  やっぱりこういう体制をとったら、外務省にまず送ったら外務省から直ちに関係のところにはずっと同じ情報が流れる、それで内閣の合同情報会議等で、この問題はどうだ、これは問題だ、直ちにこういう手を打つべし、こういうぐらいに生きるように、いわゆる情報共有ということが非常に重要だと思います。  だから、防衛庁でも情報本部が発足しておりますが、やはりああいう情報を、非常にいろいろ高度な情報が国政全般にわたってある、これを防衛庁が私物化していては意味がないから、そういうものは内閣にも上げなきゃいかぬし、在外公館でせっかくとったこういう情報が直ちに、外務省はもとより、そういう関係機関に上がって評価される、こういう体制がとれるということが重要なんで、外務大臣、これはいかがでございましょうか。
  157. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおりでございまして、在外公館でいろいろ収集しました情報、その中には、今御指摘になりましたように、防衛駐在官その他のそれぞれ専門分野の知識あるいは能力をお持ちの方のお集めになった情報もございます。そういったものは外務省におきまして有効に活用することはもとよりでございますが、これはやはり政府全体として共有し、そして生かしていかなくちゃいけないと思います。  そういった意味で、これまでも内閣情報調査室を中心にして政府関係機関ではいろいろ円滑化のための努力はしてまいったわけでございますけれども、今後一層その努力をしてまいりたい、外務省も積極的に取り組んでまいりたいと思います。
  158. 依田智治

    依田智治君 いずれにしましても、情報マンというのはそういう傾向がありますから、よくよくその点をしっかりとあれして、国家全体として情報をしっかりと収集、分析、評価、活用、この体制をぜひこの機会に確立するようにお願いしたいと思います。  時間があともう少々になってきましたので、あと二点だけ官房長官にお伺いします。  一点は、今情報の話をしましたが、事件が万が一発生した場合にどう迅速的確に対処するかということだと思います。  それで、内閣では安全保障室、私も二代目安全保障室長をやったんですが、今の体制は必ずしも万全でない。ここに三井安全保障室長がいますが、やはり事務分掌を一本化する。まず内閣、そして情報センターというのを阪神・淡路大震災の後つくりましたが、あれは私に言わせればお茶を濁したような形で当直しておるんですが、事件発生に対応するところの課に当直体制がない。だから結局、連絡をとったら何時間かたって、何時間でもないけれども、集まってきて対応するということですから、やはり当直体制というのは、高度な国政全般にわたって情報分析するところというのは内閣情報調査室が持つべきですが、事件の初動情報並びに対処なんというのはまさに官房がやらにゃいかぬじゃないかという問題があります。  それから、特殊部隊の問題は最近新聞紙上に相当強化と言われていますが、これは大変やっぱり重要な問題で、特にテロ対策については治安警察的アプローチと軍事的アプローチがあると思うんです。  日本の場合には警察があらゆる犯罪、テロというものをやる。しかし、この犯罪、テロというのもだんだん高度化してきて、武器もだんだんエスカレートしてきているという状況が一方である。ペルーなんかは軍が対応していますが、このあたりは軍が平素でもそういう治安面で比較的活動している、そういう国もある。しかし、我が国で目指すものは、やはり警察を主体とする特殊部隊、その装備なり訓練というものを高度化していって対応できるように、しかしそれのみで対応できない事態というものに対する自衛隊の支援体制のあり方、こういうのをやっぱり本格的に検討しておく必要がある、こう思うわけであります。  この点は、もう時間もありませんので、若干何か最近新聞等でも警察のテロ対策部隊の強化とかいろいろ出ていますので、まず官房長官、一言お伺いできればと思います。
  159. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今までの国内のそういう警備や人の安全、そういうものについては警察が一義的にやってきたという経緯がございます。  しかし、考えてみますと、それに対応できなかったときにどうするかということになりますと、警察も、当然自衛隊も、そしてまた海上保安庁ないしは消防、ありとあらゆる体制、組織がそこに投入をされて初めて国民の安全や平和というものが守れるわけでありますから、お互いにセクトに閉じこもることのないようにしなければなりませんし、それを有機的に結びつける機構なり法制を整備しなければ実際には作動することはないわけでありますから、今度の教訓もひっくるめ、あるいはこれから起きるであろういろんな危機管理、そういうものの万般を見ながら、そういう専門職の養成や各種の連携を深めてまいりたい、このように考えます。
  160. 依田智治

    依田智治君 そういう体制がとれているということが私は結局平和的解決につながっていく、こう思いますので、万全な体制をつくるようにお願いしたいと思います。  もういよいよ時間があとちょっとですが、最後に一点、テロと報道の問題です。  今回も我が国の場合には、まず第一に事件が発生してすぐ競って人質の名簿や何かが発表されておる。テロリストが知らぬのに新聞が教えてやっているという状態が起こっておる。外務省に聞いたら、外務省は発表していないと。各国もそんなことを発表するなんというのはない。我が国の場合は、ハイジャックが起こっても何でも、ハイジャックはともかく、人質事件のときにどういう要人が入っているかなんということは極めて重要な問題で、何としてもこういうテロの発生時にどう対応するのかという問題があります。  それから、取材競争があって、勝手に潜り込んだとか無線機を置いてきたとか、いろいろありまして、惨事が起こらなくてよかったと思っているんですが、こういう問題は二十数年前のダッカ事件とかで、何とか政府も報道機関と話し合って独自の倫理綱領その他をつくったり、何か対応を講ずべきじゃないかというまま二十数年が過ぎておるという感じがしております。  そこで官房長官、記者会見を毎日やっておられる立場で、報道関係の自主的規制ということに期待しつつも、何かもうちょっと政府としてもいろいろ話し合うなりなんなりして、こういう場合におけるしっかりした対応のあり方というのをこの際確立していただいたらと思いますが、いかがでございましょうか。
  161. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 大変難しい問題でございます。報道の自由、取材の自由があることは当然でありますが、こういう公益にもとる場合、個人の危害、災害というかそういう問題に関連する場合、マスコミの方々協力を要請することは当然でございますし、それが公的な介入にならないでなおかつできる方法は何かないのかどうなのか。これはマスコミ自体のそういう協議の場ができ上がって、大きい意味での合意を見て、個々に小さい問題で違いがあるかもしれませんが、そういうことが形成をされませんと被害をいたずらに大きくしてしまうという結果になろうかと思いますので、慎重のうちにも単急にそういうものに対応する対策を考えてみたい、このように思います。
  162. 依田智治

    依田智治君 こういう危機管理、安全保障も同様ですが、備えあれば憂いなしということで、平時において万全な備えをしていただくようにお願いして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  163. 高野博師

    ○高野博師君 ペルー問題について私はこれまで何度も質問をさせてもらいました。きょうはこれで最後にしたいなと思っているんですが、何点か自分で納得いかない点がありますので、この点を確認しておきたい、そう思っております。  最初に外務大臣にお尋ねしますが、事件解決してすぐペルーに行かれてフジモリ大統領と会見をされたわけです。このときの第一報を私はラジオで聞いたんです。まず、外務大臣の方から日本人全員無事救出されたということに感謝するという報道があったんですが、これは事実でしょうか。
  164. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) フジモリ大統領との事件解決後の会談におきまして私が申し上げましたことは、まず救出の際に犠牲になられた方、救出に当たられた方のペルー軍人のうちのお二人の方、そして人質のうちのお一人の方の御逝去に対する心からの弔意と、それから負傷された方々へお見舞いの意を表明いたしました。  そして二つ目には、この事件解決に当たってフジモリ大統領を中心としてペルー政府が長い間積み重ねてこられた努力、そうして最終的に周到な準備の上に立って、しかも果敢な行動によってあのような結果をもたらされたこと、それによって人質の大多数が救出されたことへの謝意の表明をしたわけでございます。  そのほか、もとより両国関係は今後一層かたいきずなで結ばれなくちゃならないということも申し上げましたけれども、今お答え申し上げましたようなところが会談の内容でございまして、人質の中の、しかも日本人の方の救出についてのみ謝意を表したというふうにもし報道されたというふうにとられたとするならば、それは事実ではないということを申し上げておきます。
  165. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、武力突入に関して事前連絡がなかったということに対して総理も遺憾だということは言われたわけですが、遺憾の意は先方には伝えていないという理解をしているんですが、これは事実でしょうか。
  166. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いえ、その点は先方には伝わっておるわけでございます。事件当日の総理とフジモリ大統領との電話会談の中で伝わっております。  それからなお、私自身もこの経緯につきまして、フジモリ大統領との会談の中で、総理との間で電話会談で話をされたとおりだから、我が方としては御連絡をちょうだいできなかったけれども、もうそのことについてはこれ以上あれこれ申し上げることはしない、こういうことは言っておきました。
  167. 高野博師

    ○高野博師君 それから、フジモリ大統領が当初武力解決を不可能と見ている国に通告はできないという不信感を言われた、あるいは日本が平和的解決と言っていながら具体的には何も示さなかったというような発言をされているようです。その後はちょっとトーンダウンをしてこういう言葉は出なくなったんですが、この辺についてはどう思われますか。
  168. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いろいろな報道がなされておりますが、今回の事件をめぐるいろいろな報道、特に現地と東京とは大分距離的にも、それからまた意思の疎通という面でもいろいろ難しいところもあるせいかもしれませんけれども、私ども自身が関与している報道につきましても正確さにおいて甚だ問題のあるものが少なくありません。そういったこともございますので、今御指摘の報道につきましても私から一々コメントを申し上げることは避けたいと思います。  ただ、私どもがフジモリ大統領との間で、あるいはペルー政府との間でいろいろお話し申し上げている中ではそのようなことはないわけでございまして、私どもは基本的にテロに屈することなくしかし人質全員の解放を目指して、しかもそれは平和的解決でということを基本にしながら、ペルー政府日本政府との間で連携をとりながらずっと進めてきたわけでございます。  そういった中で、もとより現地で本当に第一線の責任を持ち、そして最高の指揮官として判断し行動される立場のフジモリ大統領と、我々東京にいる人間との間では、細かいところにおいていろいろ差異の出ることもいろんな局面であったと思いますけれども、基本はきちんとした連携のもとに進められたということでございますので、ペルー政府の認識もそういうことであると、事後の話し合いも含めて私どもはそのように認識しております。
  169. 高野博師

    ○高野博師君 警察庁が武力突入のシミュレーションをやったと。これによれば、武力突入をした場合には人質の三割から四割ぐらいの死傷者が出るだろうという結論であったそうですが、このシミュレーションが、日本政府が平和的解決というか、武力突入、武力行使に反対した、足を縛ったといいますか行動を縛った一つの理由かなと思っているんですけれども、警察庁が来られていますので、どういうメンバーでこのシミュレーションをやったのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  170. 小林武仁

    説明員(小林武仁君) お答えいたします。  警察といたしましては、現地からの情報をもとにいたしまして、いわゆる実力行使も含めた一定のシミュレーションなり研究を行ってまいりました。しかし、その内容につきましては極めて内部の検討でもあり、事柄の性質上答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  171. 高野博師

    ○高野博師君 このシミュレーションの中で現地の大使館からの情報もあるんだと思いますが、トンネルを掘削するということについては全く頭に入れていなかったのではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  172. 小林武仁

    説明員(小林武仁君) お尋ねのトンネルの掘削につきましてはペルー当局においても極秘中の極秘でありまして、これの確認は事中においてはとれませんでした。
  173. 高野博師

    ○高野博師君 私は予算委員会でもちょっと言及したんですが、中南米ではトンネルを掘るという事件はしょっちゅうあるわけで、そういうことを考慮に入れないシミュレーションをやったということは非常に全体観に欠けているのかなと思う。中南米の事情をよく知っている人間も入れた上でのシミュレーションをやる必要があったんではないかと私は思っております。  それではその次に、けさの参考人に対する質問の中で、日本側の公邸警備体制についてはペルー側警備を断ったという事実はないという参考人発言でありました。そうしますと、警備体制については日本側には問題なかったというか、責任はないということになると思うんですが、この点について、池田外務大臣ペルーに行かれて、ペルー側責任があるという発言をされまして、これに対してフジモリさんからも反発があったんですが、この点は大臣はどうお考えでしょうか。
  174. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 警備体制がどうであったかという点につきましては、青木大使がどういうふうにとらえ、どういうふうに認識しておられるかということにつきましてはけさほど答弁があったとおりでございます。  外務省といたしましても、青木大使の証言も含めまして、これまでの段階である程度の状況は承知しておりますけれども、なお正確を期するために、どういうことであったか、調査委員会でさらに情報を収集しながらきちんと調べてまいりたいと思います。その上で、責任がどうかという問題につきましては、午前中も私は答弁いたしましたけれども、その責任有無を含めまして調査委員会の結論を待って適切に対処してまいりたいと思います。  なお、私がペルーで、ペルー政府責任である、あるいは日本政府責任はないというふうに答弁したというふうに一部報道がなされ、その必ずしも正確でない報道を基礎にして、さらにそれが発展したような、展開されていったようなあれもございますけれども、正確に申しますと、私が申し上げたのはこういうことでございます。  あの段階でございますから、当然のこととして確定的なことは申し上げられるはずはございません。それで、私はあくまで一般論でございますと断った上で、一般論として申しますといわゆるウィーン条約上は公邸のような外交施設の安全を確保する役割あるいはその責任というのは一義的には接受国が担うものと理解しておりますと、こういうふうに答弁したわけでございますので、まず一般論と言っておりますので、具体的なものについて責任問題を云々したわけではございません。  それから、一義的にはと申し上げておりますのは、条約上はそういうことになっておるけれども、一義があるのでございますから二義もあるわけでございまして、当然日本政府責任あるいは役割というものも警備についてはあるんだということをインプリシットといいましょうか言外に私は答弁したつもりで、そういうふうに一義的にはという言葉を意識して使ったところでございます。
  175. 高野博師

    ○高野博師君 大臣御自身は自分の責任についてはどうお考えでしょうか。
  176. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私も外務省を統括する立場なものでございますから、今回の事件が起きたということにつきましてはまことに申しわけないと思っておりますし、調査委員会における調査を含めた上で、全体としてきちんと対処していくことはその中で十分に考えてまいりたいと思っております。
  177. 高野博師

    ○高野博師君 この間の本会議でも質問をしたんですが、外務大臣が向こうに行かれて間もなくというか、すぐに無償援助を十四億六千万円供与したということでありますが、この点については、どうしてそんなに急ぐ必要があったのかという疑問を私は持っております。少なくとも、けさもちょっと言及しましたが、MRTA側が日本側の経済援助については問題があるという問題提起をしたということもあるので、一応は検討してみるという時間的な余裕を置いてやってもよかったんではないかと思うんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  178. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましては、私ども事件解決したからこれを急いで決めた、実行したというわけではございません。これを協議したのはたしか二十八日の月曜日だったと思いますけれども事件解決が二十四日でございますね。事件解決以前から準備は進めておったものでございます。  これは、事件の未解決段階においても国会答弁したこともあると思いますけれども、この事件がございましても我々は基本的に経済協力も含めましてペルーとの関係は友好裏に実施し、そしてさらに進展させていきたいという方針でおりました。  さらに、経済協力につきましても、この事件の未解決段階であっても実行できるものは進めていこうということで、現に草の根無償などにつきましては昨年末に行ったものもございますし、年明け早々にも実行したものもあったわけでございます。  この無償二件、十四億六千万円だと思いましたけれども、両方でですね。これについても、そういったことでかねてから準備しておったのが、たまたま二十四日の事件解決の数日後の二十八日実行ということになったと、こういうことでございます。
  179. 高野博師

    ○高野博師君 この案件は九六年度の案件だと理解していますが、そうでしょうか。
  180. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 無償資金協力で実施いたしました案件、それから草の根無償の案件につきましては九六年度案件として三月までにコミットしたものでございます。
  181. 高野博師

    ○高野博師君 前年度の予算を、予算がついているから何とか消化しなくちゃいかぬという発想でやったとすれば、僕はそこに問題があるんではないかなと思います。  もう一つは、全体として対ペルーに対する経済協力をもう一回総括する必要はないのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  182. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 九六年度、平成八年度予算であるから何としても年度内にやらなくちゃいけないというので急いだわけではございません。基本的に我々はきちんと経済協力も進めるべきものは進めなくちゃいけないという方針でいて、そして比較的無理なく実行できたと、こういうことでございます。  それから、全体の対ペルー経済協力あり方を見直すべきじゃないかという御指摘でございますが、その前の御質問にMRTAもそういうことを言っておるじゃないかというような話がございました。しかし、この点につきましてはけさほどの青木大使答弁の中でも、いわば論破したとか、民間の方も含めて日本経済協力の持つ意義というものを説明したということもございました。  それから、MRTAがどうこうということでございませんけれども、私ども我が国経済協力は事実としてペルー国民生活の安定なり経済の発展のために役に立っておると思います。とりわけ貧困を解消することを通じてテロのいわば土壌をなくするという面でも効果があるんだと考えておりますし、そのことはペルー政府だけではなくてペルー国民の多くの方にも御理解をちょうだいできたのだろうと思いますけれども、なおその点についていろいろペルー国民皆様方の中にも疑問があるとするならば、その点についてはよく理解が得られるように努力をしなくちゃいけないと思います。  また、当然のこととして我が国経済協力我が国国民の理解を得て進めなくちゃいけませんので、そういった点についてもきちんと理解を得るように努力をしなくちゃいけません。我々は現在行っております対ペルー経済協力の内容にそういった観点から問題があるとは考えておりませんけれども、なお将来にわたって本当にペルーの民生安定なり経済発展に、国民生活の向上に資するものであるように意を用いてまいりたいと思います。
  183. 高野博師

    ○高野博師君 ペルーに対してのODAですが、フジモリ大統領が就任する前と以後でどのぐらいの違いというかふえ方、これについてちょっとお伺いいたします。
  184. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) フジモリ大統領の就任は九〇年でございますけれども、九〇年の前と後とを比べますと、額だけ申し上げますが、八八年二千八百四十四万ドル、八九年二千七百八十六万ドル、九〇年三千九百七十九万ドル、九一年三億五千二百八十五万ドル、九二年一億五千四百八十万ドルということで、この後も若干の推移はございますけれども、九五年では六千六百十四万ドルでございます。
  185. 高野博師

    ○高野博師君 貧困という問題がテロの温床になっているということであれば、今ペルーに対する援助の額を示されたんですが、ペルーばかりじゃなくて中南米には貧困問題を抱えている国はたくさんあるわけです。これとの比較で、日本の経済援助がフジモリ政権の浮揚というか、フジモリをバックアップするような形になっているというある種の批判に対してはどういうふうにとらえておられますか一
  186. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 今申し上げました実績でございますけれども、フジモリ大統領就任前と後とで大変極端に違っておりますが、これは一つ大きな理由がございます。  先生御存じのように、フジモリ政権の前のペルーの経済状況というのは財政赤字あるいはインフレ、そういった大変ひどい状況にございまして、八五年には政府が対外債務返済額を非常に制限するという政策を出したために、IMFも含めまして国際金融市場からお金が借りられないという状況になっておった状況下でございます。  これに対しましてフジモリ政権後、構造調整を非常に進めたということもありまして、九一年及び九二年にアメリカ、日本、ドイツ、主要国が構造調整を支援するということで二回にわたりまして大きなパッケージを組みました。その結果、第一次は十一億ドル、それから第二次は二億三千万ドルといったようなことで、各国がペルーの金融危機を救うという行動をとったわけでございまして、その中においても日本がそれなりの役割を果たして借款を出したということもありまして、その前後が非常に大きな差が出ております。
  187. 高野博師

    ○高野博師君 この人質事件との関係でキューバ、ドミニカとの関係なんですが、キューバについては、フジモリ大統領自身もキューバを訪問されてカストロとも会談されている、それで犯人の出口についての議論もされたようであります。その中で、これは報道なんですが、フジモリ大統領がキューバ側に日本側の経済援助が得られるというか、あるというような発言をしているという報道があるんですが、この事実関係は御存じでしょうか。
  188. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そのような報道があったとするならば、それは全く事実に反する報道でございます。
  189. 高野博師

    ○高野博師君 わかりました。  それでは、キューバもドミニカ共和国についても日本に対しては好意的に協力をしてくれるというような約束もあったわけですから、この二つの国に対してはどういう形で礼を尽くそうとしているんでしょうか。
  190. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) キューバ、ドミニカにつきましては、確かにこの事件解決に向かって努力をする過程におきましていろいろな協力を得られないかということでペルー政府も要請し、また我が国政府といたしましても、例えば高村政務次官に総理特使として両国を訪問していただきいろいろ要請もするというようなことをいたした次第でございます。そして、協力の用意があるという姿勢を示していただいたことがやはりこの事件解決に向かっての大きなベースになったと思いますし、最終的な解決の手法は違ったとはいえ、やはりこのような努力、その中での両国の協力の姿勢というものもこの解決に資するところがあったんだというふうに認識しております。  そういった認識の上に立ちまして、私どもといたしましては、事件解決、終結の当日に私自身キューバの在日の大使には、もう出発直前でございましたから電話で御礼を申し上げましたし、ドミニカの大使は不在でございましたのでできませんでした。そして、もとより任国のそれぞれキューバ、ドミニカ駐在の我が国大使からは両国政府に謝意を表明したところでございます。そしてその際、総理からカストロ議長及びドミニカ共和国のフェルナンデス大統領に対して深く感謝する旨の親書をお送りしたところでございます。  なお、両国との関係につきましては今後とも友好関係の増進に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  191. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、総理ペルー訪問について何点かお伺いいたします。  総理ペルーに行かれてフジモリ大統領に謝意を表明された、あるいはこれからも経済協力を続行するとかいう発言をされておりますが、今回総理ペルーを訪問する必要性がそもそもあったのかなという私は行く前から疑問を持っておりました。というのは、外務大臣がすぐ飛んでいかれて、その後また総理が行くというそこまでのことをしなくてはいけないのかどうか。国会との関係、あるいはほかの外交案件などとの関係でそういう必要性というか、そこまでする必要があったのかという感じがするんです。  一つは、ペルー側に橋本総理は悪い時期に来たと、もう公邸人質事件どころではないとのペルー側の批判的な意見も、これは新聞報道ですがありました。これはなぜかというと、事件解決してフジモリさんの支持率が六七%と相当高くなった。しかしまた、いろんな政権内のスキャンダルとか、いろんな事情で今はもう五〇%に急落しているという中で総理が訪問されたということは、フジモリ大統領三選の戦略に乗ることに利用されないか、あるいはそういうことがあり得るということを十分配慮した上で行かれたのかどうか、その辺についてお伺いいたします。
  192. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いろいろな見方はあろうかと存じますけれども委員も御承知のとおり、今回この事件で大変とうとい犠牲が払われたという点はございました。その点は残念ではございますけれども、全体といたしまして人質の大多数が解放されるというような決着を見たと。こういった結果が得られる上において、フジモリ大統領を中心とするペルー政府の大変な御努力があったわけでございます。このことに対しては、本院におきましてもあるいは衆議院におきましても感謝の決議がなされたところでございますし、また我が国国民の中でも広くこれを評価し、また感謝の意を表する動きがあるところは御存じのとおりでございます。  そういった我が国国民気持ちも踏まえながら、また総理自身としても直接フジモリ大統領に対し、またペルー政府初めこの事件解決努力された方々に対して謝意を、感謝の意を直接あらわしたいというお気持ちがあり、また犠牲になられた方々の御遺族への弔意も表したいと、こういったお気持ちで今回ペルーを訪問されたわけでございます。それはいろんな見方はあり得ると思いますけれども、私は全体としてはそういったことで日本国民気持ちペルー政府に伝える上で意義があったものと考えている次第でございます。
  193. 高野博師

    ○高野博師君 総理ペルー滞在中に在外公館というか大使館情報収集能力の強化をすべきだという発言をされているんですが、この発言の背景には情報収集能力に問題があるという認識を総理は持っておられるのかどうか、これは総理に聞きたいところですが、外務大臣、いかかでしょうか。
  194. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私が総理のお気持ちをそんたくして申し上げるということになるかもしれませんけれども外務省といたしましてはこれまでも情報収集に努力を傾注してきたつもりでございます。  しかしながら、結果として今回のような事件が起きたということでございますので、情報の収集、その分析あるいは評価、それをさらにいろいろな政策に生かしていくという面においてやはり十分でなかったと言われれば、我々は率直にそれを認めざるを得ないところでございまして、総理も今回の事件が起きたことを踏まえて十分に事情を解明し、そして情報収集の面でもさらに努力を重ねる必要があるということをおっしゃったんだと思っておりまして、我々外務省としてもそれを受けて今後努力をしてまいりたいと思います。
  195. 高野博師

    ○高野博師君 もう一つ、特殊部隊の訓練、これは海外での共同訓練等も検討するという発言もされているんですが、この特殊部隊SATの海外派遣については警察法六十一条との関係もあっていろいろ問題はあると思うんですが、この法改正等も含めて検討していくということでよろしいでしょうか。
  196. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この点は総理も基本的にはテロ対策全体を強化しなくちゃいけないという御認識で発言された、その中に入っておるのだと思いますし、また仮に具体的にSATの話であったとしても、これは基本的には国内でのいろんな事件対処するということで考えられているんだと思います。  海外でどうするかという点につきましては、まず国際法上はそういった行動をすることを想定する国の方の受け入れといいましょうか同意がなければ活動はできないわけでございます。国内的にも先ほどのSATの性格、目的あるいは法制の面につきましてもいろいろまたこれから検討しなくちゃいかぬ面もあるのかと存じますけれども、いずれにいたしましても、こういった緊急事態に対する対処の能力あるいは対処の体制を強化しなくちゃいけないという御認識から出た御発言だと考えておる次第でございます。
  197. 高野博師

    ○高野博師君 来るサミットでテロ対策についても提案したいということを言われていますが、まず我が国テロ対策を強化しなくちゃいけないと思うんですが、今テロ対策の提案についてはどのような検討をされているのか、お伺いします。
  198. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これは提案と申しますか、むしろこれまでもサミットではテロリズムに国際社会としてどういうふうに対処していくか、常に話し合われてまいりました。そして、今回のデンバー・サミットにおきましても恐らく同じように重要なテーマの一つとなるということが想定されるわけでございまして、その際には、我が国といたしましても、今回のペルー事件の経験を他の参加国とも分かち合いながら、今後のテロ問題の対応において資するべきものがあればそれを役立てていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  199. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと質問が前後するんですが、外務大臣ペルーに特別機で行かれて、帰りのフライトで人質になっていた在留邦人あるいはその家族はだれも乗らなかったということで、在留邦人と大使館あるいは大使との関係、この辺はどういうことになっているんでしょうか。乗らなかったということは人質になった方々の一つの反感ととられるようなところもあるものですから、その点についてお伺いいたします。
  200. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 事実関係といたしまして、東京からペルーに向かいますときの飛行機には民間の関係の方も何人か御一緒いたしました。そして、ペルーからこちらに帰ってまいります際にも、御希望があればいつでもと、こういうふうなことを申し上げたわけでございますが、それぞれ御事情がございます。それは、帰着される場所が必ずしも東京と限らないということもありましたし、あるいは既にもう準備をしておられたと、こちらの特別機の帰る日時が必ずしも明白じゃございませんでしたから、そういったこともございます。そんなことで、結果として、今回は大使館関係者は同乗いたしました、人質になった人間も。しかし、民間企業の方々はそれぞれ別途他の手段で帰国された、あるいは現地にしばらくお残りになったと、こういうことになっております。  その理由は、外務省との関係でどうこうということを一部報道されたこともございますけれども、その辺は私どもはつまびらかにしていないところでございます。  ただ、事前に、解放された場合にどういうふうに対応するかということは、現地においてもあるいは東京においても関係企業の方あるいは御家族の方々も含めて随分話し合いをしてきたわけでございます。その中でいろいろ心配されましたことは、ああいった状況の中に長期間とどめられておられたわけでございますので、どうしても心身は非常に疲れておられるだろうと、だからそこのところはなるべくそっとさせたいという御家族なり関係者気持ちが非常に強かったということがございます。そういった観点から申しました場合に、特別機というものを使うのがどうなのかという点についてもいろんなお話があったということは申し上げられると思います。
  201. 川島裕

    政府委員(川島裕君) ちょっと補足させていただきますと、事件が終わるまでに大分時間がかかったものですから、その間、事件が終わったときにどうするかというのは物すごく早くからいろんな検討を進めていて、当然のことながらその時点で特別機の派遣ということは想定をしていたわけです。人質になっておられた企業の方にそういうのに乗ってお帰りになるというのが一つのオプションとしてございますという話を随分いたしました。それぞれの社もそれなりに検討されましたけれども、結局、一緒に乗って帰るということではなくて、それぞれ別に帰りたいというのが割に早くから各社の意向として表明されていた次第で、したがって事件が終わってからどっちに乗るか決めたということでは必ずしもないということだけ補足申し上げたいと思います。
  202. 高野博師

    ○高野博師君 武力行使について事前の通報がなかったということと、それから実際に武力突入のあった後、事件解決した後、現地の日本側の対策本部には解決して四時間たってもペルー政府から何の連絡もなかったというような報道がありますが、これは事実でしょうか。
  203. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 実は、事件の決着を見ました当日、そもそもフジモリ大統領と橋本総理が直接電話で話をしておられるわけでございます。私自身もその現場におりましたが、あれは午前七時ぐらいだったと思います。だから、二時間足らずの間に首脳間でのお話が既にあったわけでございます。そして、その直後でございましょうか、それから余り時間を置かずに大統領自身事件の決着直後に我が方の大使館にも来ておられるんだと思います、当日。当然、そこには青木大使もおりましたし、また我が方の館員もいたわけでございます。それから、現地の対策本部長もおりました。そういうことでございまして、大統領からそういう連絡もございましたし、もとよりペルー政府のそれぞれの衝にある方との間の連絡もあったと承知しております。  ただ、ああいう状況の中でございますから、いわゆる平常時における、要するに接受国側の政府のそれぞれの行政機関と大使館との間の当然経るべき経路を経て接触されたかどうかという点についてはいろんなことがあったと思います。
  204. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、時間がありませんので、赤十字の活動についてちょっとお伺いしたいと思います。  ミニグ代表を初めとして赤十字がいろんな活動をされたわけですが、実際には例えば盗聴器とか小型のビデオとか、いろんなものが赤十字が活動していたものの中に入っていて、ある意味で利用されたということが言えると思うんです。これについては中立的な立場で行う赤十字の今後の活動に影響を与えるのではないかと私は見ているのですが、その辺はどうでしょうか。
  205. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私は、今回の事件解決に至るまでのプロセスにおける赤十字の活動については、赤十字は当然のこととして赤十字の行動の原則、中立を守らなくちゃいけないということを大切にしておられました。そして、我が国もそうでございますが、ペルー政府もそういう赤十字の活動の性格というものは十分承知しておりましたので、それは守られておったものと考えております。  例えば、保証人委員会にミニグ代表も参加されましたけれども保証人委員会の中でミニグ代表の果たす役割は、やはりそういった赤十字の性格からして人質方々の安全と申しますか、あるいはあそこの居住環境を守るといいましょうか、そういったことを中心とした赤十字にふさわしい役割に限定されておったと承知しておりますし、いろんな報道はございましたけれども事件決着後もミニグ代表自身もたしか自分たちはそういった赤十字の原則にのっとって活動をしたというふうに述べておられたものと承知しております。
  206. 高野博師

    ○高野博師君 ペルーに関する質問はこれを最後にしたいと思うんですが、けさの参考人とのやりとりの中でも私ちょっと言及したんですけれども大使公邸をこれからどうするのかという話で、私は一つのアイデアとして日本庭園あるいは公園にしたらどうかということを言ったんですが、この点について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  207. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 事件決着後、私も現場へ行って見てまいりましたけれども、少なくとも建物の損傷は大変ひどうございまして、到底このままで、簡単な修理作業で使用できるものではない、そのようには認識しております。  しかしながら、この建物あるいは土地をどういうふうにするのか、これにつきましては我が方の外交機能を果たす公邸として適当であるかどうかということも検討しなくちゃいけない。そして、もし外交施設として使わないということになれば、これはいわゆる普通財産ということになるわけですから、それを所管する省庁、具体的には大蔵省でございましょうけれども、そこの考え方もいろいろ聞かなくちゃいけない。そしてまた、委員がおっしゃいましたように、他の用途に供用するとするならば、国有財産管理の観点からの考慮と同時にそれに伴う予算措置その他もありましょう。そういったものも含め、もとより外交的にどう考えるかというものもあると思いますが、そういったものを総合的に勘案しながら決めなくちゃいけないことだと思っております。いずれにいたしましても、この公邸の建物あるいは敷地をどうするか、これから慎重に考えてまいりたいと思います。
  208. 高野博師

    ○高野博師君 終わります。
  209. 田英夫

    ○田英夫君 質問に入ります前に、けさの青木大使に対する質疑のやりとりを拝聴していて、また私自身質問をいたしまして、その印象を申し上げたいんですが、残念ながら、ペルー事件は大変重大な事件であったことは間違いありませんし、したがって報道機関、特に日本の報道機関が重大な関心を持って集中的に報道された。そういう中で実は誤った報道もあったわけで、それがかなり多く大使自身の口から正されたということは大変この委員会として成果があったと言っていいと思います。特に、特徴的なものは、ペルー政府側から警備を強化しようと言われたのを青木大使が断ったということを明快に否定されて、そういうことはないと。速記録を後で精査すればほかにもたくさん出てくると思います。  私がなぜこういうことを申し上げるかといえば、私もマスコミ出身の人間として、マスコミというかジャーナリズムというのは真実を報道するのが仕事であります。このことは今度のような事件については殊さらに重要なことだと思っておりますので、あの誤った報道がそのままに放置されて、そしてそれが定着をしてしまうということであったならば後々大変大きな影響があったと思います。今後も実はそういう意味青木大使自身も正すべきところは正していただく。正すという意味は、間違った報道は勇気を持って正していただきたいと思っております。  きょうは一般質問という中で、最初に最近発表されました外交青書の問題を、これはお願いという意味を込めて申し上げたいんです。  昭和三十年代から出ている非常に長い歴史を持ったものでありますし、私もしばしば使わせていただくわけです。この二冊目の方はそれぞれの国別に現状を簡明に書いておられるのでつくられる担当者の御努力は大変なものだとは思うんですが、それだけの努力を払われるとすれば、一冊目の方の部分でもう少し、やや客観的に過ぎるのではないかということを懸念するんですね。外務省としての外交政策があからさまに打ち出されるということを遠慮されているのかもしれませんが、もう少し日本の外交姿勢というものがにじみ出るような、そういうことをひとつお願いしたいと思っています。  例えば、日米を基軸にするという一つの柱がある。それから、今度の副題が「相互依存の深まる世界における日本の外交」とあるように、これもそのとおりだと思いますが、日米を基軸にする、同時に地域協力というものがある、それから地域間協力というものがある、それからグローバルな地球規模のものがある、この分析も私は賛成いたしますけれども、それならその間の関係日本を中心にして日本はその関係をどう結びつけていくのか。日米基軸とAPECなりアジア太平洋地域という関係日本はどう考えているのか、どう結びつけて今後外交を進めていくのかというような部分がもう少し明瞭に出た方が、これは国民皆さんにもあるいは研究者にも読んでいただくわけですから、わかりやすいんじゃないだろうか。  それから、日米基軸ということに加えて、じゃ中国は一体どういうふうに日本政府は、重視していることはにじみ出ていますけれども、どういうふうに考えるのか。この前、あれはたしか決算委員会で日米中三角関係ということを私は申し上げましたが、それはそうなのか、それとも日米が基軸で中国はアジア太平洋の中の一つの大国として考えるのかというような部分が実は欠けているんじゃないかなという感じを持ちましたが、大臣、いかがですか。
  210. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 外交青書は、委員御指摘のとおり、昭和三十二年から出させていただきまして、一貫してそれまでの過去一年間の国際情勢や外交活動の動きを記述していくという形になっております。そして、委員も第二部の方はこれはこれでいいとおっしゃいましたけれども、そちらの方は主として資料的な意味で各国別にきちんと具体的に整理させていただいているものでございます。そういった調査研究のための資料を提供するというのも青書の大きな役割だと思っております。  それと同時に、やはり一年間の我が国の外交活動の動きを極力客観的にまた包括的に整理し説明しようという役割を持っている、それがいわば一部の方でございます。その際にも、やはり極力客観的にという方針で来ておりますので、あるいはそういった意味我が国の外交の方針が具体的にどこにあるのか、何を意図しているのか、どうもそこのところが食い足りない、物足りないというお感じが残るのかもしれません。  今回出しました外交青書におきましても、今も御指摘をちょうだいいたしましたけれども、相互依存関係の深まりであるとか地域協力関係であるとか、あるいはこういった動きの中での国家の役割の変化であるとか、従来余り見られなかった視点も満たさせていただいたと考えております。そういった認識は認識として、それを日米との関係、中国との関係、あるいはリージョナルな組織とのかかわりの関係において具体的にどう行動していくかの点についてさらに掘り下げて記述したらどうかという御指摘かと思いますけれども、将来に向かって参考にさせていただきたいと思います。
  211. 田英夫

    ○田英夫君 例えば、私の感覚で言いますと、あの中に核を持った、核を含む強大な軍事力が存在をする、このアジアに。それは当然中国のことを言っておられるんだというふうに読んだわけですが、それは中国とは書いてない。そして、アメリカの一部に中国脅威論が非常に強く出ていることも事実であります。  そうなってくると、例えばコーエン国防長官がアジアに十万、日本に四万七千は変えないぞと。あの前後に来られたアメリカの高官は皆同じことを言われた。この問題と日中米という関係とはどうなっていくんだろうか。一般の方は大変疑問を持たれると思うんですね。そこを日本中心にもう少し整理をして書かれるといいんじゃないか。これはお願い、希望にとどめておきます。  もう一つ、次の問題ですが、やはりこれももう少し明快にしたいという意味で、北朝鮮に対する日本の外交の問題ですけれども、これはけさの新聞に出ておりますが、自民党の山崎政調会長が東京での講演の中で日朝国交正常化交渉を早急に始めるべきではないかということを提起しておられます。これは私はもう以前から提起してきたことでありますが、自民党の役員のお一人がこのことを言われたということに私は注目をしたわけです。  これは橋本総理がよく答弁などで言われることで、今北朝鮮で大変食糧に困っているから人道的な立場から援助しろという質問に対して、人道というなら拉致された日本人あるいは日本人妻の問題、こういうことも人道的な立場で解決すべきだと、こう言われるんですが、それはそれなりの論理があるかもしれません。私は、そういう問題を解決するためにも、北朝鮮との間に話し合いというものがあって、近い将来に国交回復、国交正常化、そういう状況を見通していける、そういうことの方がむしろいいんじゃないだろうかと思えるわけです。いっかこれも決算委員会かで北風か太陽かという話をいたしましたが、こういう考え方について外務省としてはどうお考えですか。山崎政調会長の話を含めて。
  212. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 外務省あるいは政府全体といたしましても、基本的に日朝関係につきましては第二次世界大戦後の不正常な関係は正さなくちゃいけない、そしてそれは朝鮮半島の平和と安定に資するものとするという観点から見ていく、そして正常化を進めるためのいろいろな我が方の動きにつきましても韓国などと緊密に連携をとりながら進めていこうと、こういうふうな方針でこれはずっと来ておるわけでございます。現時点におきましても、国交正常化の交渉再開については、今申しましたような基本的な視点に立って進めてまいりたいと考えておる次第でございます。  日本人妻の問題だとか拉致疑惑といいましょうか、行方不明者についてのいろんな解明に資するためのいろんな動きにつきましては、これも正常化交渉が進むならばというお話がございましたけれども、この問題は正常化交渉の進展いかんにかかわらず、それとは切り離してでも対応してもらいたいものだなと考えている次第でございます。  一方におきまして、食糧の問題なんかにつきましても、例えば昨年あるいは一昨年においては、正常化交渉はそれとして、一応緊急のものとして対応したということは御承知のとおりでございます。
  213. 田英夫

    ○田英夫君 これは大分前、一九九〇年か九一年、まだソ連の時代、ゴルバチョフ大統領時代ですけれども、ゴルバチョフ大統領の特使としてヤコブレフ氏が来日いたしましたときにたまたま会う機会がありましたが、いわゆる日ソの交渉、特に北方領土の問題の絡んだ交渉ということが話題になったときに、日本政府は交渉をしようとして部屋に入ろうとすると、その部屋の入り口に大きな石を置いて部屋の中に入れないようにする癖があると。どうぞひとつその石を取り除いていただくか、とにかく部屋の中に置いておいていただいてもいいから、つまり部屋の中に北方領土という石があることは承知で自分たちも部屋へ入って、その石をどうやって取り除こうかという話をしたいんだ、入り口に大きな石を置かれたんじゃ中に入れないと、こういうことを私に言ったことがあります。  私は、そのときちょうど北朝鮮との間では第十八富士山丸ですか、あの問題などが横たわっていた時代で、北朝鮮についても同じことが言えるなと感じていたときに、最近ではそれがテーマが変わって拉致事件日本人妻というふうになってきたけれども、依然として石は石だな、こういう感じがしてならないんです。  ヤコブレフさんの言い方に全く同調するわけじゃありませんけれども、部屋の中へ入ったら、そこに拉致事件日本人妻という石があることは承知でお互いに部屋の中へ入って話をしたらどうか、この石をどうやってのけましょうか、その方が問題解決しやすいんじゃないかという考え方ができると思いますが、これはいかがですか。
  214. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本側が置き石をしたというようなお尋ねでございますけれども、そもそも石がなぜできたんだろうかと。それもあるんだと思います。  それで、石の存在そのものを否定されるということもありますけれども、しかし、例えば日本人妻の問題につきましては、そういう問題があるということは歴然としているわけでございますし、そのことはだれも否定していないわけでございます。そういうことならば、この問題について北朝鮮側においてもよほど柔軟な姿勢をとることは何ら立場を損なうものでもないと見るのが常識じゃないでしょうか。そういった問題についてはやはり対応していただきたいと思います。  それからまた、いわゆる拉致疑惑の問題につきましても、何も私どもはだれがやったと断言しているわけじゃございません。疑惑と言っているわけでございますから、そういった疑いがあるんだから、それでないならないで、また何らかの情報をお持ちならお持ちで対応していただくことがあっても不思議じゃないんではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。  私どもといたしましては、やはりそういった石そのものが何とか解決されるような方向に向かうということが我が国国民気持ちからいたしましても、関係をいろいろ進めていくということに、あるいは当面非常に困窮している状態に対して我が国も支援してもいいじゃないかという気持ちに変化してもらう上で影響があるんじゃないか。この点を何とか先方にも理解してほしいなと考えている次第でございます。
  215. 田英夫

    ○田英夫君 こういう外務委員会という席で申し上げるのが適当かどうかとは思いますが、私の恥を申し上げるんですが、北朝鮮に対して私は重大な失敗をしたことがありました。  ことしの一月に中国を訪ねたときに、唐家セン外務次官がなぜかそれを知っておりまして、からかわれて、なるほど北朝鮮問題にかかわっている人の間では既にわかってしまっているのかなと思いますのであえて申し上げます。北朝鮮にも私は何度も行きました。今の金永南外務大臣が一番多く話し合った相手であります。彼が労働党の国際部長のころにしばしば会っていたんですが、今から十五年ぐらい前に行ったときに、私の所属する党が変わっていたからかどうかわかりませんが、会うことができなかった。  そこで、手紙を書きまして、その内容は、簡単に言えば、もっと国際社会に率直に出ていろいろ交流をして、例えばアメリカや日本の国会議員やジャーナリストをどんどん国内に入れるというようなことをしたらどうですかという、そんなことを含めていわば私にしてみれば提案をしたつもりだったんですが、相手側にしてみれば余計なおせっかいであったかもしれません。おせっかいというのは言い過ぎかもしれませんが、内政干渉であったかもしれません。  唐家セン次官によると、非常に朝鮮民族は誇り高い民族ですから、その誇りを傷つけてはいけないと思いますよというのが私に対する注意であって、私も実はそのことは十分感じ取って反省をしていたところでありますが、これは御参考までに申し上げるんですけれども、韓国の方も含めてあの民族の皆さんは大変誇り高いということは私も事実だと思うんです。本当にこちらの対応の仕方というのは、相手のことを攻撃するのは易しいんですけれども、対応の仕方は非常に慎重でなければいけないなということを感じておりますので、申しておきます。  次に、余り時間がありませんが、先ほどから問題になっておりますテロ対策特殊部隊などの問題について若干お尋ねをしたいと思います。  橋本総理ペルーに行かれて、そして警察庁の特殊部隊SATを外国へ派遣して訓練するというようなことも考えなくちゃいかぬなと言われて、たちまちこれは大きな反響を呼んでいるんですが、だんだん修正というか、よくよく伺ってみると、SATを外国の、例えば今度のペルーのようなところへ派遣しようというのではないと。これはウィーン条約のこともありますし、私もそのとおりだと思いますが、警察庁の方に伺いたいのは、SATのそもそもの目的は何だといったらいいんでしょうか。
  216. 近石康宏

    説明員(近石康宏君) 警察の特殊部隊、いわゆるSATの任務でありますけれども、これはハイジャックや人質立てこもり事件等に出動いたしまして、被害関係者人質等の皆さんの安全を確保しつつ、被疑者を制圧、検挙するということでありまして、これを目標にSATの隊員も連日訓練に励んでいるところであります。
  217. 田英夫

    ○田英夫君 全くそのとおりであって、想定できる、例えばハイジャックのようなときに既に行動をとっておられるということを承知しております。あるいは日本ではまず想定しがたいんですが、ペルーの逆版、日本のというようなことがあるとすれば、これは一つの活動の舞台になると考えていいんでしょうか。
  218. 近石康宏

    説明員(近石康宏君) ハイジャックもしくは人質立てこもりというのが最大の任務というふうに考えておりますので、やはりこれはSATが出動して任務を遂行するということになろうかと存じております。
  219. 田英夫

    ○田英夫君 私は、本当にSATというのは本来そういう役割で、練度を高めるという意味で訓練をされるというのは当然一つの部隊として行動されるわけですから必要なことだし、現行法上外国で訓練をするということもその意味では支障はないと思っていますが、それで間違いありませんか。
  220. 近石康宏

    説明員(近石康宏君) 特殊部隊SATが海外において訓練を行うということは現行法上特に問題点はないというふうに存じております。
  221. 田英夫

    ○田英夫君 問題は、SATのようなものから、今度はいわゆる危機管理といいますかテロ対策というか、こういうものが発展をしていって、現在も、先ほどからお話が出ておりましたが、内閣情報調査室ですかへいわゆる内調があったり公安調査庁があったり、いわゆる治安当局と言われるものが日本にもあるわけですけれども、外国にはもっとすごいものがたくさんあるぞというお話もあります。そのとおりだと思います。  しかし、これが行き過ぎますと、過剰にいわば国民皆さんの生活に対して影響を与えるというようなことになってはいけない。情報活動というものも非常に重要ですけれども、それが募りますと、ある政党の幹部の方の自宅の電話に盗聴器が仕掛けてあったという事実がありました。こういうことに発展をしていくおそれがありますので、この点も私はあえて警告を発しておきたいという気がしてならないんです。ペルーのような事件がありますと、ある方向へ過剰に走り過ぎるというおそれがあるんじゃないかと思いますが、外務大臣、いかがですか。
  222. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 情報機能の強化は当然必要だと考えますけれども、しかしそのことによって国民の権利が侵害されるようなことはやはり避けなくちゃいけない、これは当然のことだと思います。そういった点におきましては、我が国におきましては従来非常に慎重な上にも慎重な配慮をしてまいったと承知しておりますけれども、それでも委員が今御指摘になったような事例があるじゃないか、こういった御指摘もなされるわけでございますので、今後情報機能強化の上でもそういった点には配意をしながら進めていくべきものと考える次第でございます。
  223. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  224. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 私も北朝鮮についてのお考えを伺います。  最近、北朝鮮について常識ではちょっと考えられないような報道、しかも事実とすれば危険きわまりないような報道がたびたび見受けられます。例えば、韓国に亡命しました北朝鮮の黄前書記の陳述として伝えられておるわけですが、金正日政権はもし戦争になれば一〇〇%勝利する、三日で韓国の釜山まで制圧をすると確信しているとか人間魚雷や飛行機の特攻隊で米国の空母は撃沈してしまうとか、あるいは長距離核ミサイルで日本を焦土にしてしまう作戦計画を持っているとか、こういうようなことが盛んに報道されているわけです。  常識では到底そういうことを事実とは判断できませんけれども、こういうことについてはっておいていいものかどうか。これに対応して日本側はどういう判断をするのかというようなことを、一応国民の良識に健全な考え方を定着させる意味でも何らかこれに対する判断を公にするというような必要はないものでしょうか。
  225. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今御指摘のような内容のお話を黄長燁元書記が行ったということは韓国の国家安全企画部長が韓国の議会で報告されたところというふうに承知しております。しかしながら、黄元書記が述べたような内容の作戦計画というものが北朝鮮にあるのかどうなのか、そこのところは私どももわからないところでございます。  しかし、いずれにいたしましても、北朝鮮は従来から極めて大規模な兵力を保持し、しかもそれを前方展開している、そういう体制をしいておりまして、軍事境界線を挟んで緊張状態が続いているということは否定できないわけでございます。  それと同時に、北朝鮮の国内の情勢も、御承知のように、食糧あるいは経済情勢全般、非常に苦しい状態にございますけれども、依然としてあのような政治体制が続いているということでございまして、その動向については細心の注意を払わなくちゃいけないといいましょうか、目が離せないと申しましょうか、そういう情勢であるということは私どもいろいろな機会に公にしているところでございます。  それと同時に、何とか北朝鮮ももう少し国際社会に開かれたといいましょうか、それとの関係を改善するような方向に変化されないだろうかという期待も持っておりますし、そのようなことを求める状況というものも一方においてあるんだと、こう考えている次第でございます。
  226. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 例えば、私どものごく一般的な常識からいいましても、アメリカは宇宙衛星でしょっちゅう世界のいろんな出来事を刻々キャッチする能力を持っているわけで、北朝鮮が仮にそういうような陽動作戦をとり、あるいは釜山まで行く云々はちょっと空想的でありますけれども、そういうようなことがもしあれば韓国と米国との連合軍はどういう対応をするかというようなことは、いろんな場合もあるでしょうけれども、北朝鮮としても韓国、米国連合軍はどうするだろうというようなことぐらいはいろんなケースに照らして考えているはずなんですね。  そうすれば、まず常識的に言えばこれは勝負になりませんよね、軍事的にやった場合。核戦争が起きた場合のシェルターの設備なども完備しているというような北朝鮮側の話もありますけれども、シェルターが役に立つようになればもうこれは壊滅なんですね。だから、そういうようなことさえ考えないでそういうことを触れ回っているとすれば、北朝鮮の軍事についての常識というものが恐らく国際的には全く信用されなくなるということも考えないのかなと思う。私などは北朝鮮に親しみを感ずる方でありますけれども、まことに寒心にたえないですね。  ですから、そういうことを、先ほど田委員がおっしゃったように、内政干渉か誇り高い民族のプライドを傷つけるかという危険があるかもしれませんけれども日本側から、隣人としてあるいはかつての植民地支配をやった国としてもっと積極的にまず日本側が心を開くというようなことで対応できないものか。  例えば、今度北朝鮮に対する援助について韓国とアメリカとが北朝鮮と話し合いをする、この次には中国も出てくるという話もありますけれども日本はどういうチャンスにそこに出るのか、あるいは出る可能性があるのかということについてよくわからない。こういう事態自体が私はやはり日本が北朝鮮に対して、出入り口の石か何かわかりませんけれども、まず自分の方から親愛の情を持って接近するという努力があった方がいいような気がするんですが、どういうものでしょうかね。
  227. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほども申し上げましたけれども、私どもでも日朝の関係を正常化するということは必要だと考えておりますし、それがまた朝鮮半島全体の安定に資するものであるように願っております。そして、当然のことながら、こういうものを進めていく場合には韓国等との連携というもののもとに進めることが大切だと思っていますが、いずれにしても朝鮮半島全体の安定ということは大切に考えておりまして、そういった意味では、決して我々の方から一切話はしないよ、関係を持たないよと言っているわけじゃございません。  御承知のとおり、日朝の正常化交渉も八回まで試みられたわけでございますけれども、これが今中断状態になっておりますのは先方が席を立ち上がったということでございますので、我々としてはそこのところは先方が始めようとするならば決してこれを拒むものではないということは申し上げておきたいと存じます。  それから、米の支援の問題につきましても、私どもはもうカテゴリカリーにだめだと申し上げているわけじゃございませんで、現に一昨年、昨年も進めてきたわけでございます。しかしながら、今我が国国民気持ちというものを考えてみますと、やはり食糧事情が非常に厳しいからといって、他の面での人道にかかわる問題が北朝鮮の対応いかんによっては何らかほぐれてくる可能性があるのに、そちらがむしろかたくなに何らの対応をしないままに、また米が不足しましたから出しましょうというのでいいのかと。そこは割り切れないという気持ちもあるのはやむを得ないところでございますので、そういったところはいわば環境整備という観点から北朝鮮側において対応し得る部分があるんじゃないかということを申し上げておるわけでございます。
  228. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 お考えは一応わかっているつもりなんですが、問題はこちら側の行動あるいはこちらのそういう考え方が向こうさんにどう映っているか。したがって、近い将来に隔意なく語り合える間柄を構築する建設的な要因ができつつあるのか、前進の気配もなくじっと固定しているのかということを心配するわけで、お考えは一応わかっております。  それから、その次にもう一つ心配情報は、最近中国とロシアとの軍事関係が緊密化しつつあるようです。昨年十二月、中国がロシアから購入決定したと言われているソブレメンヌイ級駆逐艦二隻ですか、私の軍事的な知識は的確ではありませんが、アメリカの第七艦隊の空母、それからこれを護衛する附属船隊イージス艦などを攻撃し得る性能を持っているサンバーン超音速ミサイルですか、そういうものを搭載するんだと言われているわけです。  アメリカ側はこれをもう既に第七艦隊及び台湾を威嚇する能力を持つものとして警戒感を表明しているそうでありますが、中国とロシア、これに対してアメリカ、こういう世界における大国の動きの構図は、ヨーロッパでアメリカの軍事力を背景とするヨーロッパの体制がウクライナに近づき、ウクライナもこれと呼応して手を握ろうとする気配を濃厚にしている。これに対してロシア側が険悪な表情をもって論難する。ロシアとしては、中国と提携して極東に対する負担を軽くしてヨーロッパに対する軍事的な体制を強化するという、実態はどうかわかりませんが、姿勢としてはそういう形をとろうとしていることが心配されるわけです。  そういうようなことになりますと、これは口ではどういうことを言いましても、現実の行動が軍事力を強化する。中国の方がそういう強化をすれば、アメリカの軍事技術力をもってすればさらにそれを上回る体制をつくろうと、あるいはそれは可能でしょう。そうすればまた、中国、ロシア側はそれに対抗する措置をとるというような、そういう条件がだんだんに悪化を上積みしていく心配はないのか。少なくとも日本はそれに対してかなり直接的な憂い、脅威を感ぜざるを得ないわけでありますので、こういう状況に対してやはり何らかの機会に平和的な発言をする必要はないのか。このあたりをどういうふうに御判断なさるか、お考えを伺いたいと思います。
  229. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま委員おっしゃいましたのは、何級かちょっと失念いたしましたけれども、中国がロシアから駆逐艦二隻を導入すると、このことが中国の海上阻止行動能力を高めるだろうというふうに米側が、米国の国家安全保障委員会だと思いましたが、その報告で記述されているというのは私も承知しております。  しかし、ロシアと中国の間では従来から、例えばキロ級の潜水艦であるとかスホーイ27戦闘機であるとか、そういった武器の供与といいますか取引も含めましていろんな軍事面での協力がこれまでもあるところでございます。  それで、もとより我々はそういったことも含め、また中国の軍事力の動向にも従来から関心を持って見てきておりますけれども、基本的に申しますと、現在の中国の軍事力の整備というのは陳腐化した装備の近代化という観点から進められているというふうに承知しておりますけれども、いずれにしても動向はこれからも見てまいりたいと思います。  しかし、基本的にそういった軍備の動きだけじゃなくて、中国が政治的な方針としてといいましょうか、あるいは意図としてどう考えるかということも大切だと思います。そしてまた、さらに申しますと、中国の置かれた政治、社会あるいは経済的な諸情勢、諸条件から見て中国がどういうふうな行動をとる可能性とか蓋然性がどうだとか、そういうことも見ていかなくちゃいけないんだと思います。  そういった観点から申しますと、私は、中国が基本的に我が国も含めたアジアの諸国、あるいはヨーロッパの国々に対してもそうかもしれませんけれども、との関係を良好に維持していきたいと、そういった国際社会との良好な関係の中で改革・開放路線に基づく国民生活の向上を図っていくというのが政策の中心を形成しているということは間違いないんだと思います。  そんなこともございますし、それから軍事面のいろいろな動きにつきましても私どもも機会のあるときには率直にいろいろ話をしております。透明度を高めてほしいとかということも言っておりますし、それから最近では、例えばロシアの関係で申しますと、先般ロシアとの間で中央アジアの諸国も含めましていろいろな新しい約束事が取り決められましたけれども、そういったことについても巷間いろいろなことが言われました。これについては私自身直接銭其シン外務大臣からも、あるいは一方でプリマコフ・ロシアの外務大臣からも、これは決してどこかの国を対象として描いたりして考えているものではないんだと、要するにあの地域の関係を非常に安定化させていこうという意図のものだということを聞いております。  そういうことで、中国のみならず、そういった安全保障の観点からも私どもが関心を持つ国々の動向については我々なりに適切な対応をしていかなくちゃならないと心得ておるところでございます。
  230. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 現状においてアメリカが飛び抜けた軍事力の水準を確保しているということは否定できない事実でしょうが、中国がこれから先の経済成長の中で国民経済全体としてはアメリカに拮抗する状況になるということも時の問題ではないかというふうにも考えられますし、全体において軍事力を強化するというようなことを考えに入れますと、必ずしもアメリカの軍事力の優越性にだけ依存することは合理的じゃない。  ましてや、今政治を担っているそれぞれの人が、おまえさんのところを警戒しておれの方はこういうことを計画するぞなんということを言うはずがありませんので、これはお互いに仲よくしますよということを、お互いに他意はありませんということを言うのは当然の話であって、そうじゃなくて、むしろ歴史の進行の中で客観的にあり得る情勢をどう展望するのか、どういう状況になれば日本のみならずアメリカにとっても中国にとっても、もちろんロシアにとっても容易ならざる脅威が発生するというような見地から、お互いに平和関係を時とともに増進するような姿勢を今からとろうじゃないかと。  私が一案として今後三十年は戦争しないという条約を結んだらどうですかと言っておりますのは、つまり口先だけじゃなくて、それぞれの国の体制として、これからの客観的な情勢の推移をにらんで、お互いにお互いを信頼し得る条件を逐次増進させていこうという考え方からそう申し上げているわけで、もちろんこれが唯一の方策ではないでしょう。ないでしょうけれども、アメリカの軍事力だけに頼るということもないでしょうが、それに比較的ウエートを置いたあり方日本の将来を考えるということについて、私はやはり中国なりロシアのあり方というものは決して安心はできないと思うんです。  この辺になりますと全く判断の違いでありますので、これは論争するわけじゃありませんから、一応そういうことを申し上げて、私の発言を終わります。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 ペルー事件に関連してですが、去る五月九日でしたか、参議院の本会議で橋本首相が質問に答える形で、このペルー事件の問題について政府最高責任者として改めておわびするという答弁をされました。先日、外務大臣の行ったペルー事件解決についての報告の中では、本事件を教訓として反省すべき点、改善すべき点、調査分析することが極めて重要だと、鋭意その作業を進めながら、この問題については六月中旬に公表できるように努力されておるという報告がされましたけれども、首相がこのように述べておられるし、現時点外務大臣として反省すべき点がおありだったら述べておいていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  232. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 当然のこととして、私といたしましても、大勢の方々をお招きした天皇誕生日の祝賀レセプションにおいてあのような事件が起き、そして大勢の方々人質の状態になられた、そしてまたそれを解決する過程においてとうとい生命が失われたということにつきましては、亡くなられた方々には心からの哀悼の意を表しているところでございますし、また人質方々はもとよりのこと、大勢の方々に対しましてもまことに申しわけない、こういう気持ちは持っているところでございます。  調査委員会の結論を待つことなく、現段階でもそういった意味での反省の念、そうして申しわけないという気持ちは持っているということを御答弁させていただきたいと思います。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 午前中も同僚議員からいろいろ質問が出たんですけれどもペルーにおける武装テロリストの動向をどの程度把握しておられたのか。それで、もう大臣先刻御承知のように、一九九〇年代前後の間に日本人をターゲットにしたテロ事件というのが相当ありましたし、それから大使館についても付近での爆破事件だとかいろいろなことが起こってきたわけですね。そして、九一年でしたか、JICAの農業技術者が三人射殺されるなんというような事件がありましたし、その後も小さな形ではあってもいろいろと事件が、たしか一九九四年以降一定の安定化を示し観光客もふえたとはいえ、事件がなくなったわけではないわけで、そういう点でもっと十分な注意を払うということが外務省の方としても必要ではなかったんではないだろうかと思うんです。  そういう点、外務省としては、午前中のあれでは二カ月に一回現地からの報告を受け取っていたというわけですが、そういう問題についての把握の仕方についてはどういうふうな状態だったんでしょうか。十分だったというふうにお考えになるのか、これはその点が甘いというふうな判断もあったと今考えておられるのか、その点についてお伺いします。
  234. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 一九九四年以降ペルー状況は格段に改善はされました。しかしながら、全世界を見渡しましても非常に危険度の高い地域であるということは依然として変わらないということで、それなりの対応はしておったところでございます。だから、そういった認識の上で対応したわけでございます。  したがいまして、あの公館のいろいろな警備体制についても私どももそれなりの対応はしておった、むしろあちらこちらの公館に比べましてもかなり配慮をしておったところだと思います、日本公館全体の中でも。それから、各国の公館に比しましても、それは米国等とはちょっと格差はあったかもしれませんけれども、全般的に見て非常に抜かりがあったということではなかったと思います。  そして、午前中の青木大使の御発言の中にもありましたけれども、この行事を行うに際してもそれなりの配慮はしたんだと思います。しかしながら、結果としてこのような事件が起きてしまったということにかんがみるならば、やはり我々はあれで十分であったとはとても言えない、このようにその点は反省しているところでございます。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 午前中の大使発言にもありましたように、前々回と変わって前回は、去年の場合には千二百組の招待状を出した、二千四百ということになるわけで、来られた方は七百から八百という形だろうと思うんです。千二百組というのはどういう意味の千二百組と言われるか。御夫婦で、御夫妻で千二百組というふうな計算で言われたのかどうかわかりませんけれども、二千四百人と。出席されたのが実際には八百人前後ということじゃないかというふうに思っているわけですが、それが今回から夜開くようにしたというふうな点も事前に掌握されて、そして現地とも十分なる対応をなさっておられたのかどうなのか、ちょっと重ねて。
  236. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、事実関係について二、三点申し上げたいと思います。  今回招待した数はたしか千二百二十二だったと記憶しておりますけれども、千二百名余りでございます。従来も千名を超しておったんだと思います。そして、現実に来られた人数はきちっと掌握はされておりませんけれども、けさの大使発言の中でも七百名ぐらいという御発言がございましたし、私どもも大体そのぐらいのものだというふうに、事件の直前の段階で八百名ぐらいおったという現時点での調査の結果もございます。しかし、事件段階でどうだったのか、お帰りになる方もありましょうから、いずれにしてもそのぐらいの人数だったと思います。そして、その規模というのは、他の公館の行っている行事から比べても決して日本だけが突出しておったものではないという点がございます。  それから、第二点目といたしまして、今回初めて夕刻から始めたということじゃございませんで、けさも青木大使発言の中で、一昨年の十一月でしたか、青木大使が赴任されてからいろいろな情勢を勘案して夕刻から行うことにしましたという発言もございましたように、一昨年、昨年も今回と同じような時間帯に行われていると承知しております。
  237. 立木洋

    ○立木洋君 今、大臣も述べられましたように、もう完全に治安が回復した状況ではないというふうなことについては十分に押さえていたというわけですが、毎年のように訓令電報を出してレセプションを開くようにというふうにしておるという午前中のお話でした。  特別に治安に問題があるところには十分に事前に目を配っていただいて、今度の場合の教訓を生かすということは大切なことではないだろうかというふうに思うので、現地から特別の訓令を求めるというようなことがなくても、こちらの方、本省の方からも、おまえのところは大丈夫か、最近のテロの動きなんかに問題はないのかというようなことを事前によく協議し合った上で、現地でも慎重に対応できるようなことを本省としても十分配慮を払ってやるということが必要ではないだろうかというふうに思うんですが、その点について。
  238. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましては午前中も御答弁申し上げましたけれども、従来は各公館一律にこの行事は原則として例年どおり行うように、そして基本的にその開催の要領等は大使の御判断でと、こういうことで訓令を出しております。その中に、ただそれぞれの任国あるいは任地の状況によって開催することが困難であるとか不適当であるというときには請訓してこい、相談してこいと、こういうことでやっておるわけでございます。  もとより、その前提として世界の中でどの地域が危険であるかということは平素からいろいろ検討はしておりまして、そしてある公館についてこういうふうな位置づけをするということはあるわけでございます。ペルーについても最も危険なところであるという位置づけは従来あるわけでございます。  しかし、天皇誕生日レセプションという行事の開催については、先ほど申しましたような一般的な形でしかやっておりません。これがいいのか悪いのか我々も検討いたしまして、その点については今後改正する方向で具体的な詰めを行っておる段階でございます。
  239. 立木洋

    ○立木洋君 こういう事件の問題に関しては、これを未然に防ぐという点から、やっぱり念には念を入れるという点でこれからも十分に検討していただきたいということを申し述べておきたいと思うんです。  それから、天皇の誕生日をナショナルデーというふうに決めたのは明治六年だというふうに承知していますが、間違いないでしょうか。
  240. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今正確に明治六年かどうか私もお答えできるだけの資料を持っておりませんけれども、もう早くから、要するに明治時代から天皇誕生日をいわゆるナショナルデーと位置づけて、世界各地の我が国公館でこのような行事を行ってきたという伝統があるところでございます。  ちなみに、諸外国ともいろいろその国柄によって違います。例えば、共和国制度のところでございましてきちんと独立宣言をしたとか、そういう日がある国においてはそういう日にいたしますけれども、君主制の国においては君主の誕生日をナショナルデーと位置づける例が多いというふうに承知しております。
  241. 立木洋

    ○立木洋君 これは外務省の方に電話でお尋ねしたときにそういうお答えをいただいたので、公式の場所でも一応確認しておきたいという意味で明治六年ということを今お聞きしたんです。
  242. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 確かに明治六年ということを申し上げたと思うんですが、その前に、明治元年八月二十六日、これは陰暦でございますけれども、太政官布告によって「九月二十二日ハ」、陰暦十一月三日は「聖上 御誕辰相冨ニ付毎年此辰ヲ以群臣ニほ宴ヲ賜ヒ 天長節御執行相成天下ノ」――済みません、読めませんが、そういうことを敷衍されまして、そして儀礼が整備されたのは明治五年の天長節からで、翌明治六年一月四日、太政官布告第一号によって「神武天皇即位日天長節ノ両日ヲ以テ自今祝日ト被定候事」というふうになっております。
  243. 立木洋

    ○立木洋君 一応布告されたのは明治六年というふうに考えておいていいわけですね。
  244. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) それは国祭日ということになっておりますが、そのころからすぐに在外公館で祝祭日を祝ったということでは必ずしもないと思います。
  245. 立木洋

    ○立木洋君 明治三十二年にニューヨークで明治政府の決定によって第一回の大規模なナショナルデーとしてのレセプションが行われたということも外務省から聞いているんですが、それも間違いないですか。――今言えなかったら結構です。  それで、戦後ずっとこのナショナルデーというのが毎年のように行われたのではなくて、先ほどの青木大使答弁、つまり御自身の経験による答弁では三十六年前からやられたような発言をちょっと聞いたんですけれども、先ほども官房長が言われた外務省が毎年訓令電報を出して、ナショナルデーレセプションを行うようにというふうな通知をし始めたのは戦後いつからでしょうか。
  246. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 戦後につきましては、我が国国際社会への復帰等を行ったサンフランシスコ平和条約の発効に際しまして、昭和二十七年四月に四月二十九日を国祭日と定めるのでレセプション等を適宜措置されたいという外務大臣発在外公館あての訓令が発出されておりまして、そこからだと思っております。
  247. 立木洋

    ○立木洋君 昭和二十八年八月からそういうふうに実施するということに戦後はなった。だから、一定期間中断した期間があったわけですね。
  248. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 多分二十七年からだと思います。そして、少なくとも昭和十三年から二十七年まではこの祝祭日は行っておりません。祝賀は国内においては行われておりませんで、在外公館においても、この間全部ではありませんけれども、一定期間在外公館においても中断がされております。
  249. 立木洋

    ○立木洋君 十一二年からですか。
  250. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 国内では十三年から二十七年までこの祝祭は行われていなかったわけでございますが、在外公館においてもその中の一定期間中断しておりました。
  251. 立木洋

    ○立木洋君 戦後に憲法が変わったもとで、この天皇の誕生日をナショナルデーと決めて在外公館  の最大の行事とした根拠は一体何なんでしょうか。
  252. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 根拠は、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、サンフランシスコ講和条約の発効に基づき外交関係も外交活動も完全に復活してきた、そういうことで天皇誕生日ナショナルデーとして行事をするようにという通達を出したと、それが根拠でございます。  その趣旨いかんということ、あるいはなぜ新しい憲法のもとでもそうなったのかという御質問かと存じますけれども日本国憲法におきましても天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であられるわけでございまして、そういった天皇の誕生日というものは、我が国民にとってのみならず我が国関係ある国際社会においてもそれなりのものとしての意義があるものだと考えます。  それと同時に、先ほど来出ておりますように、明治以来長い間、一時中断したとはいえ、その日を我が国ナショナルデーとして祝うということが国際社会でも一般に了知され受け入れられておったという歴史的な経緯も踏まえて、先ほど申しましたような通達を出すことは適切であるということで、そういった判断のもとに出されたものと考える次第でございます。
  253. 立木洋

    ○立木洋君 これはもう私が言うまでもなく、戦前の帝国憲法のもとでは「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」という形で絶対的な君主国家となっていたのと、戦後、主権者は国民であるということを宣言してつくられた憲法のもとで戦前のそういう状態を引き続いて継承するというふうなことは私はやっぱり時代錯誤的なあり方だと思うんです。そういうことは、主権者は国民だということを国民自身が正しく自覚をしてやらなければならない問題のときに、絶対君主的なかつての時代のあり方をいかにも踏襲するというふうなことは、私は考え方としては根本的に是正すべき点ではないだろうかというふうに思うんです。  橋本総理も、我が党の不破委員長質問したときに、これは長年の慣例でございました、慣習でございましたと。だから、そういう長年の慣習だといって戦前の慣習を変わった憲法のもとで継続するというようなことは適切ではない、この点については改めるべきだというふうに、主権は国民にあるんだということを明確にすべての行事の上でもはっきりさせていくことが私は必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  254. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、いわゆる明治憲法と現在の日本国憲法におきまして天皇の位置づけというものが違っているというのはそのとおりでございます。しかしながら、現在の日本国憲法におきましても天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると明確に規定され、そのようなものとして国民の中でも定着しておりますし、また国際社会におきましてもそのような位置づけは定着していると私は考えております。  そういったことを踏まえまして、天皇誕生日に在外公館におきましてその祝賀の行事を行うということは何ら憲法の規定に反するものでもないし、我が国国民にとりましてもまた国際社会におきましても適切なものとして受け入れられていると承知をしております。
  255. 立木洋

    ○立木洋君 これはやっていても私の主張を大臣がそのとおりでございますと言うとは私は思いませんから、時間が長くかかると思うんです。しかし、やっぱり主権者は国民だと、かつての絶対君主と違って天皇は象徴的な存在になったわけですから、だからこういうふうなあり方ナショナルデーの問題等についてもやっぱり再検討をする必要が私はあるだろうということだけ述べておきます。答弁は結構です。  もう時間がなくなってきましたので、最後に、この問題に関しては、テロに屈することなく人質全員の救出のために、平和的な解決のために努力をするというふうな態度をとってきたのは私はやっぱり当然だっただろうと思うんです。こういうふうな状況で武力行使というのは、実力を行使するということは大きな危険が伴うものです。不測の事態が生じるということもあり得るわけですから、だからこの問題についてそういうことに努力しながら、結果としてこういうさまざまな幸せに支えられて今日ほぼ全員が救出されたということは望ましかったことだろうと思うんです。  それで、今までの経過を見てみても、実力を行使して人質が完全に救出できたということもありましたし、それからエジプトのハイジャック事件なんかの場合は、いわゆる特殊部隊が突入したときに人質が六十人も死亡したとか、それからパキスタンにおいても十六人の人質が死亡したとかいうふうな事件が起こっているわけです。それから、話し合いで解決できたという事例もないわけではありませんので、この問題については教訓を一般化するのではなくて、このペルーの事態の事実経過に基づいて、どこがどうだったのかということを教訓として導くような検討を私はぜひお願いしたいということをひとつ要望しておきたいんですが、それは結構ですか。
  256. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 答弁はよろしいですね。
  257. 立木洋

    ○立木洋君 それで賛成ですと言われれば、それで結構です。
  258. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもでも、テロリズムに屈することなくしかし人質方々の全員の無事解放を目指して、しかも平和的な手段でということでずっと追求してきたわけでございます。最終的には実力行使という手法になりましたけれども、今申しましたような三つの要請をもとにした基本方針でやってきたということが、実力行使をするにしても周到な準備のもとに人質全員の安全につながることになったのでございましょう。そういった意味でこれは意義があったものだと思っております。  それと同時に、この事件の教訓は将来に生かされなくちゃいけませんけれども、またこの事件は特殊な状況のもとでこのような結果につながったという面も我々は無視してはいけないというのはおっしゃるとおりだと思います。
  259. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一問だけ。  これは別の問題なんですが、去年の七月八日に国際司法裁判所が、核兵器の使用、威嚇の違法性を問う国連総会の要請に応じて、御承知のように、核兵器の使用、威嚇は一般的に国際法に反するというふうな判断を示されましたが、この件に関して日本外務省としては、一般的に国際法に反するという点についてはどういうふうな御見解なんでしょうか。この機会にお聞きしておきたいと思います。
  260. 林暘

    政府委員(林暘君) 国際司法裁判所が出しました勧告的意見は、今、立木委員おっしゃいましたように、一般的には国際法に反するということと、その後に究極的な自衛の場合には云々という意見がついております。それで、国際司法裁判所の勧告的意見におきましても、司法裁判所は、これは全体として判断してほしい、そのうちの一部分だけを取り上げないで全体として受けとめてほしいということを言っております。  我々もそういうものとして、日本政府としても司法裁判所がそういう勧告的意見を出したということを全体として、そういうものとして受けとめております。
  261. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私はペルー問題に絞ってお尋ねしたいと思います。  最初に調査委員会についてですけれども、四月二十三日に発足をしまして鋭意作業中と。大変結構なことだと思いますが、その結論が出るのが六月中旬、しかも一応のめどとするというのが少しく納得できない。余りにもかかり過ぎるのではないか、こういう気がします。事件が起きてからもう既に半年近い、解決を見てからも二十日余りということで、事実関係はもう既にある程度把握されておるわけで、その事実関係に基づいて現地大使館責任はどうか、それを指揮する本省の責任はどうか、日本政府責任はどうかと。言うならば、あとは抽象的に責任を論ずる、こういうことだろうか、こういう気もするわけであります。今からペルー政府にいろいろと事実関係を照会して確かめる必要があるかもしれませんけれども、それは言ってみれば細かい話なのでありましょう。  橋本首相も衆議院や参議院の本会議ではっきりと今回の件についてはまず情報収集に手抜かりがあった、それから警備体制も十分とは言えなかった、責任を痛感しておるという趣旨の発言をしておりまして、責任日本政府として認めておるというふうに考えてもいいわけですから、今度はそれを個々的に、段階的に大使館責任はどうだ、本省の責任はどうだというふうな区分けをしていく、理論づけをしていく、こういうことだろうと思います。  大変時間がかかるというならやむを得ませんけれども国民は早くこういう事件の最終結論を待っておるわけですから、もしどうしてもかかるというならば、大きい問題について中間報告的なことをするというふうに考えられてもよかろうという気がするんです。これは勘ぐりますと、国会は六月十八日で終了いたしまして、国民もそのころにはもう一切忘れておるから、何か事件も次に起こるだろう、そのころにそろりそろりと発表しておしまいにしようかと。これは勘ぐりですよ。私の勘ぐりではございませんけれども、そう勘ぐる人もいるというわけなんで、もっと早目にこういうことはぴしっとやっていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  262. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どももできるだけ早く調査を進め、結論を出し、国会その他にも御報告をしなくちゃいけない、こう思っております。  しかしながら、私どもが六月半ばをめどにと申しましたのは、あの段階で事情聴取するとしても、人質になっておられた方々状況、これは心身を含めてのいろいろな状況もおありだろうと。それから、こちらへ帰ってこられるのかどうだろうかという点もございました。それから、委員も今御指摘になりましたが、ペルー側でも当然いろいろ調査、場合によっては捜査もお進めになる、そういったところからの情報もちょうだいしなくちゃいかぬということもございます。それから、我が国の捜査当局もこれを事件として立件しょうということも当初の段階で明らかにされております。そうなりました場合に、当然我が公館関係者も事情をいろいろお話ししなくちゃいけないということもあるんだと思います。  そういったいろいろな調査の間の整合性というものもある意味では必要なんじゃないか。整合性と申しましても、決してつじつまを合わせるということで申し上げているわけじゃございませんで、それぞれのプロセスでいろいろ調べていくものを集約しながら正確なところを、もっとも事件を起こした張本人がいないわけでございますから本当の事柄というのはすべて明らかになるのは難しいかもしれませんけれども、極力正確な事実を究明しました上でということで六月半ばと申し上げたわけでございます。いずれにいたしましても、急いで進めてまいりたいと思います。
  263. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 いろんな問題があることは万事承知であります。しかしまた、人質の話を聞く、ペルー政府から詳細な報告を受ける、その他日本の捜査当局の意向はどうだとか、それは物事の本質と私は関係がないことだろうと思います。  簡単に申し上げれば、なぜ世界で一番危険な国だと言われているああいう国で、しかも危険な夜に大勢集めてああいうことをやったのか、万が一にしろゲリラ襲撃ということを考えなかったのかどうなのか、その辺のところで問題はもう集約されるんだろうと思うんです。それに対して、現地がどう判断したか、報告を受けた本省がどういうふうに訓令を発したか、それに尽きることだろうと思います。  そんな難しく、人質から一人一人話を聞くような問題ではないだろう、こういうふうに考えますので、なるべく早く、あらぬ勘ぐりを受けないように、せめて今月中ぐらいにはきちっとした、法的責任有無につきましてもそれも踏まえて結論を出していただきたい、こういうふうに私は要望しておきます。  それから、私自身やみくもに責任を追及しているわけじゃございませんで、我々の世界では不可抗力は罰しない、これは当たり前のことなわけです。こういう事件が非常に治安のいい国、どこか知りませんけれども、例えばスイスとかフィンランドあたりで万が一にも全然だれも考えないような事態がふっと起きた場合に、その責任はどうだと言うつもりは全くございません。  今も申し上げましたとおり、大変危険な国であることは外務省本省自身も皆承知しておる。そこでああいうパーティーが開かれる。本省としてどういうふうに考えたのか。少なくとも情報官とか警備の専門家を派遣するとか、現地から担当者を呼んで状況をいろいろ聞いて適切な指示を与えるとか、そういうことは公務員として当然やるべきことだろう、当たり前のことだろうと私は考えておるものですから責任を追及したくもなるのかなという気がするわけであります。そういう点はいかがお考えでしょうか。
  264. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) こういった事件が起きたということを考えますと、委員が今追及あるいは御指摘なさるのも無理からぬことと思いますし、私どもとしても反省すべき点は重々ある、こう思っております。  しかしながら、これは決して弁解するわけじゃございませんけれども、私どもは、数年前に比べるならばペルー情勢は格段によくなったとはいえ、依然として非常に危険な国の一つであるという評価をし、そういう認識がございました。そして、それに対応した対策といいましょうか対処もしたつもりであったわけでございます。しかしながら、それが十分でなかったということは事実をもって証明されたわけでございますので、そこのところはきちんとしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。  それと同時に、これはいわゆる責任問題だけではなくて、将来に向かっての再発防止、そしてまた警備対策の強化という観点からも調査を進めなくちゃいけないと考えている次第でございまして、その点はひとつ御理解賜りたいと思います。
  265. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 午前中の質疑青木大使は、ペルー側警備の申し出を断ったのかという質問に対して、そういうことはないとはっきり申しておりましたが、実は青木大使は帰国後の記者会見で報道陣から同じような質問を受けた際に、彼は何と答えたかと申しますと、何しろゲリラというのは先進国特殊部隊並みの武装をして入ってきたんだと。それに対してピストル一丁の警官を五人十人配備したところで何の意味があるんだ、犠牲者がいたずらに出るだけではなかったのかと。こちら側から警備の要請をしたのかしないのかどうもはっきりしないんです。それから、向こう側の申し出を断ったのか断らなかったのか実ははっきりしないんですけれども、現地の最高責任者である青木大使自身がどうも警備について余り関心がなかったんじゃないかという気がしてしようがないんです。  その辺は外務省の事情聴取に対してどのように答えておるのかわかりませんけれども、大変重要な問題だろう、こういうふうに私は思いますので、もう一度はっきりと外務省の方からもその辺を踏まえてお答えいただきたいと思います。
  266. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましてはけさほどの青木大使発言の中にもございましたけれども、我が方としてはペルー側警備責任者と事前に複数回にわたり打ち合わせをしておりまして、警備の体制をしいた次第でございます。そして、そういった際に、ペルー側からオファーされた警備の内容を日本側が断ったというような事実は全くないということはこれまでの調査委員会調査においても明らかにされておるところでございます。  それから、今御指摘のございました帰国直後の青木大使発言につきましては、私もテレビのそれを思い起こしながらの御答弁でございますからあるいは正確を欠くかもしれませんけれども警備についてペルー側と相談したかしなかったかとか、あるいはそれに対して断ったかどうかというような趣旨ではなくて、そもそもこれだけ大きな、しかも重装備テロリストに来られた場合にはなかなか難しかったんじゃないかということを一般論というか仮定を置いて答えておられたというふうに記憶しております。
  267. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 余り難しいことを言う気もないんですけれども、こういう議論が再発防止につながればという思いがあるだけなんです。  先ほども言いましたとおり、不可抗力は我々の世界でも罰しないわけですけれども、これを過失犯として考えたらどうだと。これはもう立派に過失犯は成立するのかなと。しかも、ああいう危険な国でああいうパーティーを夜やるということにおいてはもう未必の故意すらあるのではないかという疑いも私は持っておるわけです。  私、一番疑問に思うのは、ああいうことにつきまして外務本省の方からどういう内容の訓令なり指示なりが、十分に注意しろとか現地とよく打ち合わせをしろとか、そういうことは行くはずでしょうし、先ほども言いましたとおり、やはり専門家を派遣するぐらいの配慮があってしかるべきではなかったのかなという気がしておるわけですけれども、もう一度その辺につきまして。
  268. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私は法律論を闘わすつもりはございませんけれども、未必の故意あるいは認識ある過失ということを、私はそう簡単にそれはそうでございますとはちょっと申し上げられないということだけは御答弁させていただきたいと思います。  さてしかし、事実問題としてこういう事件が起こりました。それで、今振り返ってみますと、こういうこともやっておくべきではなかったか、こういう点に抜かりがあったんじゃないかということがいろいろ思い当たる点もございます。そういったことを今調査委員会のプロセスも経ながらきちんと整理してまいりたい、こう考えているような次第でございます。  ただ、あのような状況の中で、しかも夜やったのは非常に抜かりがあったんじゃないかという点でございますけれども、その点につきましては先ほども答弁いたしましたけれども、ことしが初めてじゃなくて三回目でございました。そして、我が国だけではなくて、例えば米、英、仏、イタリア、アルゼンチン、メキシコ等々も我が方と同じような、あるいは場合によってはもう少し大きな規模の会合を夕刻から夜にかけて行っていることもあったというのも事実でございます。それにいたしましても、私どもは反省の上に立って、改めるべき点は改めなくちゃいけないものと思っております。  それから、本省からのいろいろな通達のあり方につきましても、先ほど御答弁しましたように、在外公館すべてに対して一般的に通達をし、特別の事情で開催が適当でないとかを判断する場合には相談してこいという言い方でございましたが、そこのところは改めたいということで今詰めておるところでございます。
  269. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 少しく角度を変えまして、平和的解決という言葉がよく使われております。外務大臣の当委員会に対する報告の中でも何カ所か出てまいります。この平和的解決というのは一体どういう意味であろうか、こういうふうに私は考えるわけでありまして、ゲリラ側と交渉いたしまして身代金の要求を半分にまけさせるとか、あるいはまた彼らの要求している受刑者の釈放の人数を値切るとか、多分そういうことをいうのであろうかと。  例えば、ゲリラが全面降伏をしまして、反省をして武器を投げ捨てて降伏してくるとはゆめ思えませんので、ゲリラを相手に平和的解決とは何だ、こういうことになりますと、やはり彼らの要求をある程度のんだ上で、キューバとかああいう安全な地帯に人質ゲリラを送り込んでそこで解決というふうなことをいうのであろうかと思うんですけれども池田外務大臣はどういうおつもりでこの平和的解決という言葉を使っておられたのか、ちょっと説明していただきたいと思います。
  270. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、私どもは平和的解決と申しましたけれども、同時にテロリズムの要求に屈することなくということも言ってきたわけでございます。そういった意味におきまして、委員は今例えば身代金という話をなさいましたけれども、そういうもので解決しようということを行ったことはございません。このことははっきり申し上げておきます。  それから、テロリストの要求としても早い段階で、例えば戦争税ということが一番最初に出されました要求の中にございました。それは事実でございますけれども、それの意味するところは一体何なのかということでいろいろ私ども考えましたし、世間でもいろいろ取りざたされたこともございます。その点についての話はその後のいろいろなプロセスの中で、いわゆる保証人委員会のプロセスあるいは直接対話と言われるプロセスにおいてもなかったわけでございます。  そして、今回の事件を起こしましたMRTAのメンバーなどについて、いわゆる出口ということでキューバその他の第三国へという選択肢を検討したことは事実でございます。けれども、既にテロリズムの関係で逮捕され収監されている人間の釈放をどうするかという話につきましては日本政府として容喙できるところじゃございませんし、ペルー政府もいろいろ考える中で、そこの点は譲ることはできないんだということはフジモリ大統領が終始言っていたわけでございます。  そういった中で、テロリズムに屈しないということを大切にしながら、テロリスト側の態度に変化をもたらすような要素が何かないかということでいろいろ苦労はあったんだというふうに理解しているところでございます。
  271. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 言葉の論争みたいで余り感心しないのでありまするけれどもゲリラとは聞こえはいいけれども、これはしょせん犯罪者集団ですから、警察官と犯人との間にフェアはあり得ないわけで、検挙するかどうか、場合によっては、状況いかんによっては射殺もやむなしというのが警察の態度でありまして、話し合ってどうしようこうしようという問題ではないわけです。  今までもよく使われていたんですけれどもゲリラ問題について平和的解決だ、いや交渉だというのが実はしょせんこれは方便にすぎないんで、タイミングを見計らって彼らを検挙する、鎮圧するということしかあり得ないんじゃないか、こういう気がして、これは状況いかんにもよりましょうけれども、これからもなるべく軽々に平和的解決という言葉は使ってもらいたくないなという感じがしておるわけであります。何かございますか。
  272. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点で私どもも極力実力行使をすることなく、実力行使した場合にはやはり人質の身に危険が及ぶという可能性も排除されないわけでございますから、そういった手段に訴えることなく、犯人側の姿勢、対応に変化を招来することはできないだろうか、そういうことで努力するというのが平和的解決ということの意味だったと思います。  そういった粘り強い交渉をしたということが、同じ実力行使に訴えたとしても、人質の中に、あるいは救出に当たる方々の間に生じ得る犠牲、損傷の可能性を非常に低めていった、そのための周到な準備もされたと思います。一方において、いわば平和的解決という言葉がずっと出ていることの中で犯人側に油断を誘ったという面もあったというのは事実であろうと思います。
  273. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後になりますけれども、突撃した部隊が降伏したゲリラを射殺した、こういうことが報道されまして、そんなことがあるのかないのか議論がありましたけれども、どうもあったのではないかという説が今のところ有力です。私は何とも言いかねますけれども、仮にあったとすればゆゆしき問題ではないか、こういう気がするんです。  評論家その他は、ああいう状況下ではやむを得ない、ゲリラは武器を持って降伏を装ってやってくる、それを一々判定などしていられない、こういう言い方をしておりました。しかし、突撃した部隊というのは警察官以上のプロですから、犯人が今後引き続き抵抗するのか、本当に降伏してきたのか、それがわからないというんじゃ情けない限りでありまして、もし万が一、ええい面倒くさい、もう皆殺したというようなことでやったとすれば、これはフジモリさんの大変な責任問題だと私は思うんです。  しかも、我が国の主権の及ぶ領土内で明らかな殺人が行われたことにもなりかねないわけですから、虐殺そのものです。戦争でもこんなことは許されないわけですから、もう少し事実関係を確認して、ペルー政府にもかけ合いまして、本当に潔白なら潔白と証明してもらえばいいわけです。そういう野蛮なことはやっていない、事実関係はこれこれしかじかだと言ってもらえばいいわけです。それで我々も納得するわけですけれども、どうもやったのではないかと見ている人が今のところ圧倒的に多いものですから私も落ちつかないわけであります。もしこんなことが本当に行われたとすれば、ペルーなんというのは文明国の名にも値しない国だろうと言われても仕方がないわけですから、どうかその辺にも十分な配慮を払って今後のペルー政府との交渉も続けてもらえれば幸いだと思います。  でき得べくんば、その事実関係も当委員会において明らかにしてもらえれば我々も落ちつくと、こういうわけでございます。
  274. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましては私どもも報道は承知しておりますけれども、報道のもとになりました人質になられた方の発言というものも、それこそああいった状況の中でのことでございますので、どのような状況を見、どういうように判断されたのか、そこのところがはっきりわからない、確たるものがあるというふうには承知しておりません。  それから、その状況全体についても、救出作戦のああいうところではございましたので、私どももつまびらかにしておりませんのでこの点についてコメントすることは避けさせていただきたいと存じます。しかし、私は基本的に、ペルー政府も当然のことでございますが法治国家でございますので、そういった法治国家の政府という立場で行動をしてこられたものと承知している次第でございます。
  275. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 終わります。
  276. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ペルーに関連して、ゲリラの問題をお聞きいたします。  実は、ロンドンのエコノミストの四月二十六日から五月二日号に、ペルーにおける勝利という巻頭の社説みたいなところに載っている文章があるんですが、それをちょっと紹介させていただきます。大変粗っぽい私の翻訳でありますので意味が通らないところがあるかもしれませんが、お許しを願います。  暴力は割に合う、このことを世界の地下運動は過去五十年間に繰り返して証明してきた。みずからを解放軍団と呼ぼうと、あるいは彼らの敵が彼らをテロリストと呼ぼうと、彼らの手法はしばしば有効であった。ゲリラは、政府が彼らの暴力に対して暴力をもってあるいは彼ら以上の暴力でこたえることに不平を唱えるわけにはいかない。四カ月にわたる人質事件を終結した今回の軍隊の突然の襲撃についてさまざまな批判が既に耳にされるが、今その上に挙げたことがこれらの批判に対するショートアンサーである、こう書いてあるんです。ショートという意味は当面の答えということでしょうか。  続いて、フジモリ大統領は即座に暴力に訴えなかった。十二月に日本大使公邸に侵入して暴力を行使したのはトゥパク・アマルであって、しかも彼らが暴力を行使したのはこれが初めてではない。その後、彼らのビヘービア、振る舞いというのは比較的よい方だった、こう書いてあるんです。例えば、もう一つのゲリラの何とかというのだったらもっとひどいことをやっただろうというのに比べればはるかによかったということは言えると。  しかしながら、政府がこのゲリラの仲間を釈放するという要求に屈服するというような期待はおよそ不可能なことであった。また、そのようなことはあってはならない。ペルーは外国に占領されている国でもなく、大統領あるいは軍あるいは裁判所の落ち度をいかに云々しようとも、最近再選された大統領を持っている国である。それでも政府はまず話し合う用意を持って事に臨んだ。政府は話し、そして話し、そして話したと書いてあるんです。トークト・アンド・トークト・アンド・トークト。そして最後にはゲリラがキューバへの安全な出国をすることを容認するという案まで示した。この安全な出国を阻止したのは政府ではなくゲリラであった。  そして、最後の最後になって初めてフジモリ氏は突入を命じたのであって、その結果、ゲリラは降伏する用意のあったと言われる幾人かを含めてすべて殺された。世界がよりよい場所であればこういうことは起こらなかったであろう。しかし、実際の結果はこのとおりである。現実の世界ではこういう全員が殺されたというようなことに対して涙を流すのは偽善である。ゲリラたちは剣に訴え、剣によって滅亡したのである、こう書いてあるんです。  ここらあたりが大体常識なんだろうと思うんですね、ゲリラについての。さっきショートアンサーと言いましたが、ロンガーアンサーというのがその後に続いてなかなかつり合いがいいんです。これはこれとして、しかし南米のペルーに限らず、大変な貧富の差が拡大しているようなことに対して、ペルーを含めて各国はまだ答えを見出していない。それに対する問題というのは、ロンガーアンサー、より長期的な事態に対する答えはまだ見つかっていないということが後に出てくるんですが、こういうことが起こった以上、今御紹介したようなことがその答えであるというのは恐らく国際的な常識だと私は思うんですが、大臣はどうお考えになりますか。
  277. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、テロリズムの要求が入れられる形で事件が決着したということになるならば、それは解決とは言えないと思うのでございます。今回の事件そのものの決着についてもそうでございますけれどもテロリズムの要求に唯々諾々として応ずることがございますと将来にわたってまた同種の事件の再発を招く素地をつくるわけでございますから、そういった意味でその要求には応じられないということを確保しながら事件解決を目指してきたというペルー政府、そして我が政府も連携をとってきたわけでございますが、その道は間違っていなかったと思います。  そしてまた、今のそのショートアンサーの中でも、即座には政府側は実力に訴えなかった、極力実力に訴えることなく、いろいろな状況ゲリラテロリスト側に認識せしめて、そちらの方の変化を誘う努力をしたということは、それはそれで評価されるべきことだと思っております。  それから、そういったぎりぎりの努力の中で、テロリストの要求に屈するわけではないけれども、ぎりぎりの選択として第三国への出国ということの選択肢も用意したけれども、そういったことが実現しなかったということも踏まえ、いろいろな手を尽くしたあげくに、しかも四カ月を超えるという長期の拘禁状態に置かれた人質状況、あるいはゲリラの方のいろいろな心理状況というものを考えるならば、この事件の決着を図るために、解決を図るためには、本当に最後の最後の手段として実力に訴えるしがなかったという判断をしたフジモリ大統領の判断はやむを得なかったという今のショートアンサーが常識的な見方だなとおっしゃるならば、それはそうだと思います。  しかし、実力行使をするについても犠牲が極力出ないように、フジモリ大統領自身人質にも、そしてまた救出に当たる人間にも一人の犠牲も出ないということを目指し、その前提で進めたんだと言っておられますけれども、そういったことであったかと思います。
  278. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 私は午前中に調査委員会についてしっかりやってくださいというお願いをしましたが、そのときに申しましたのは、あのフジモリさんという人がいたので救われた、こう言いました。私はやっぱりそうだと思うんです。こうやって忍耐強く話をして、もうこれ以上しようがないというところで初めて突入をして、殉職者二人出したけれども人質の犠牲は一人ということで済んだために、日本テロリストには屈しないという陣営に何か威張って参加したような顔ができたというのは私は運がよかったと思うんです。  それから、依田委員が言われたように、組織の情報をきっちりすることは大事ですが、しかし危険な世の中、世界ですからまた起こるかもしれない。仮に起こったときに、そこの大統領にはまたいろんな人がいるかもしれない。元気なのがいて、占拠された途端に、こんなことをうちの国の中でほっておくわけにはいかぬ、すぐにでも突入して、少し人質に犠牲が出てもしようがないと例えば日本が言われた場合にどうするか。  逆に、極端に言えば、同じような事態が起こったときに、とにかくすごい装備を持っておるし、こんなことで突入でもしたら大変な犠牲が出る、これは金で片づけるより仕方がないと思うのでひとつつき合ってくれと日本政府が言われたらどうするか。  両極端の話ですが、そのときに、ちょっと待て、そんなにすぐ突っ込むなと言ったときに、向こうが、じゃ突っ込まないで待っていたらあなた方は何かやってくれるのかと言ったとします。そのときに日本には今の状態では何の手もありませんね。それから、悪いけれどもお金を払ってくれ、それで解決したい、こう言われたときに、いやそういうわけにはいかない、じゃどうしてくれるのかと言ったときにも恐らく何もできませんね。どうでしょうか。
  279. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) テロリズムの要求に屈しない、いわゆるノンコンセッションの原則というのは国際社会でも殊に近年確固たる流れになっておりますし、我が国政府も昭和五十三年に基本的にそういう方針を内閣としても決定いたしましたし、国際的な場におきましてもそういった原則をきちんと再確認していく流れの中に入ってこれまでも対応してきたわけでございます。  しかし、そういった原則を貫いていくのが非常に難しいことだということは委員御指摘のとおりだと思います。そういった意味で、今回の事件も我々日本のノンコンセッションの原則に基づく対処ぶりが問われた事件であったと思います。そして、このような決着が得られたことにつきましては、委員御指摘になりましたが、ペルー政府、とりわけフジモリ大統領の姿勢、そしてその対応にあずかって大きく力があったというのはそのとおりだと思います。  しかし、日本といたしましても、将来に向かってもこのノンコンセッションの原則というものを大切にしながら、起こってはならないことでございますが、それが起きた場合でございますけれども人質の安全を極力図り、実現していくという方向で努力していく方針を堅持しなくちゃいけないと思います。これは、政府はもとよりでございますけれども我が国国民全体としても今回の教訓を踏まえながら、将来に向かっていろいろ考えていかなくちゃいけない大きな課題かなと思っておる次第でございます。
  280. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今回の教訓を踏まえということなんですが、結局、起こっちゃいけないことを起こさないようにするためにも、やっぱりあの国に手をつけると割が合わないという感じがおのずから私はあるんじゃないかと思うんです。  そして、サミットでたびたびテロに対してはノンコンセッションだということをみんなで同意をした。あそこの国を見ていると、それぞれやっぱり手を持っておって、さっき言いました極端なケースで、もうやみくもに突入しようなんといっても、ちょっと待て、きちっとしたやり方というのがあるんだということが言えるような手を持っている。あるいは、金で片をつけるというのは我々の国際社会に害悪を流すので、おたくができないと言うのなら我々が考えると言えるだけの手を持っている。あのサミットの国の中でおよそ手がないというのは日本だけじゃないかと私は思うんです。  そこを考えておいていただかないと、先ほど言いましたが、まるで漫画のような話をして、そんなことはないだろうとおっしゃるかもしれないけれども、世の中にはどういうわけだが妙なのが大統領になったりするような国というのが時々あります。どんな人がいて、そしてその国のヘッド・オブ・ガバメントがそういう話を持ってこないとは限らない。それでも困らないためにはどうするかということをやっぱり私は考えておかなきやいけないだろうと思うんです。  何かまだ確認されたわけでもありませんでしょうけれども総理特殊部隊の何のということをおっしゃった。これもなかなか難しい話であって、今の警察の力、それからそれを少し延長したぐらい、それから今の法制度で何かそういうときに日本政府が物を言える力というのは持てるような感じなんでしょうか。
  281. 小林武仁

    説明員(小林武仁君) お答えいたします。  いわゆる我が国警察部隊が今所有していますSAT、特殊部隊につきましては平成八年四月一日に設置されました。以降、いろんな実戦的な訓練を施しておりますし、必要な事案対処能力の強化を図っておりまして、相当な事案には対処できると思っております。  なお、このSAT部隊のいわゆる海外派遣につきましては、権限法的には警察法六十一条でできるということで解しておりますが、実際には相手国政府の了解なり同意というものが必要でありますし、また相互主義というような観点も起こってまいります。私どもはこのSATの派遣というのは極めてまれなケースだというように考えております。
  282. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 いずれにしても、まれにしか起こらないような事件でどうするかという話をしているのでありますが、今のままだと例えば武器を持ち出すのにいろんな手続が要りますね。武器輸出の禁止というものがあって、今の警察の現況のものだけではどうも足りそうもない。相手が重装備だというようなときには自衛隊的装備まで持ち出さなきゃいかぬとかなんとかいう話になってくると、こういうものは、抑止力を持つためにはどれだけ強いかわからぬというところが大事なんでしょうけれども、一々これこれを持って出るという申請か何かをやっていると、出ていくときには、何だ、このぐらいの装備かというので向こうにすっかりわかつちゃって、別に怖くも何ともない、もう少し頑張ろうなんというような気をゲリラは起こすとか、そのあたりはどうなんですか、通産省では。
  283. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、武器の輸出につきましては従前から武器輸出三原則等という原則に基づきまして慎重に対応してきているところでございます。  ただ、武器とみなされるものでございましても、輸出の目的、態様等によってはこの三原則の趣旨を損なわないものとして輸出を許可した事例はございます。例えば、PKO活動にありまして、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律に基づきまして、国際平和協力業務の実施に伴いまして業務終了後我が国に持ち帰るということを条件といたしましたけれども、カンボジア向けにけん銃等武器に当たるものの輸出を認めていることがございます。  いずれにいたしましても、具体的なケースが生じましたときには、私どもの政策の趣旨を十分踏まえ、法律の目的を十分尊重した上で、目的、態様等を十分に専門的に考慮をしていただいて適切に対応するのが私どもの考え方でございます。
  284. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 大変整然としたお答えをいただいたけれども、そういう手続というのは結構時間がかかっちゃうんじゃないですか、今のような感じだと。
  285. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 今までの事例ですと、確かにある一定の実態というものを想定しながらそれに対応した武器等をそろえるということでございますので、全く支障なくやってきておりますが、事態いかんによってどう対応するかということについて私どもは予備訓練しているわけじゃございませんので、若干の時間はかかるかもしれませんけれども、比較的今までの事例で役所と役所の手続で何日もかかるというようなたぐいのことにはなっておりません。
  286. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 大変極端な例をいろいろ挙げて、池田さんを困らすためにやっていると思われると大変不本意なんですが、先ほど紹介しましたエコノミストの文章でも日本というのは全然出てこないんです。ただ、事件が起こった舞台として日本大使公邸と書いてある一語が出てくるだけで、これはどうも湾岸戦争のときに百三十億ドルかお金を出したけれども、クウェートの感謝の広告にも日本というのはあらわれなかったというのと何か似ているような気がするんですね。  我々はテロリストには屈伏しないということをこれで貫けたと総理もおっしゃるし、政府の方も皆さんそうおっしゃっているんでしょうが、実はただただ運がよかっただけであって、これから今度の教訓を生かしながらとおっしゃるところに私がきょう指摘いたしましたようなことをやっぱり本当に真剣に考えていただかないと、それがもし真剣に考えられないんだったらもうおりると、我々はお金で片づけることに決めますので御承知願いますと言った方がかえってわかりがよくて、国際的にいいかもしれないとさえ私は思うんです。  そのことをぜひお考えいただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
  287. 矢田部理

    ○矢田部理君 ペルーの件に関連してであります。  天皇誕生日のお祝いについてですが、どうも外務省は天皇を対外的には国の元首として位置づけてやっているんではないかという国民の疑問があります。あわせて、国内でもそんなに大げさな集まりは持っていないんですね。数百人も一千人もの規模で大々的に国費を使ってやるのはいかがなものかというような議論も町の中には相当あります。これについてはどうお考えでしょうか。
  288. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは、日本国憲法に規定されておりますとおり、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である、そのように認識しております。そして、国際的にも、我が国の政治のあり方、そしてまたその中での天皇の果たしておられる役割というものは基本的には認識されているものと承知しております。  そういったお立場の天皇の誕生日に在外公館においてこのような行事を行い、我が国接受国との間、あるいは我が国関係があり、また親しみの情を持っておられる関係方々にお越しいただいて誕生日を祝うということは、これは我が国と諸外国との友好関係の増進という観点から適切なことであると考えている次第でございます。
  289. 矢田部理

    ○矢田部理君 次に、テロは否定されなければなりませんが、ペルーなどでゲリラとかテロが発生をするという背景も同時に政府としては考えなければならない。貧富の格差が拡大をする、失業の影響が広がる、あるいは民主主義が必ずしもなくて強権的な政治が行われ、不当な弾圧とか逮捕者に対する扱いが問題にされるというようなことがその原因とも思われるわけですが、これらについてはどのように認識されておりますか。
  290. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも当然地球上のどの国におきましてもテロの根絶ということが望まれると考えておる次第でございます。テロが発生する要因にはいろいろございましょうけれども、基本的に申しまして、政治的あるいは社会的に安定するということ、あるいは経済的にも貧困が撲滅されるということ、そういうことはやはりテロも含めましていろいろな事件の発生する土壌をなくするという意味で有効なことだと考えております。  そういった観点から申しますと、我が国が行っております経済協力もそういった犯罪発生の土壌をなくするという面で役に立っている、これはペルーのケースでもそういうことはあるんだ、こう思っております。
  291. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう中にあって、今も言及されましたが、どうして日本大使公邸がねらわれたのか。午前中の議論もありましたが、やはり日本の外交姿勢にも問題があったのではないか。とりわけ、フジモリ大統領の時代になってからODAなんかの額が急激にふえました。それが貧困の撲滅とか民衆の福祉の向上に役立てばそれはそれで理解されるのでありましょうが、どちらかというとフジモリ政権のてこ入れに使われる比重が大きかったのではないかというような意見もないわけではありません。  その点で、ねらわれた背景の一つにそういうことも心しなければならないのではないかと思いますが、その点についてはどう受けとめられますか。
  292. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは、基本的に我が国経済協力というものはペルー国民生活の向上なり経済の安定、発展に寄与している、このように考えております。そして、フジモリ政権になりましてから我が国からのODAが急増いたしました背景には、先ほどの審議の中で担当の局長からも御答弁いたしましたけれども、フジモリ政権になってからペルーの経済運営にも格段の変化があり、そして例えば有償資金の受け入れなどもできるようになったということもあり、我が国だけではなくて、主要ドナー国の間の話し合いによってペルーに対するODAの供与自体が格段にふえたということもあったということを申し上げたいと思います。  ただ、あの国におきましても現政権に対する反対勢力なり批判勢力なりはあるわけでございまして、そういったところから政策のあり方についての批判がいろいろなされるということはあるんだと思います。  そしてまた、午前中の質疑の中で青木大使発言の中にあったと思いますけれども、今回の事件を起こしましたMRTAの中で、日本ペルーとの密接な関係は大勢の人が集まる場をつくる蓋然性が高い、そういったことが日本大使公邸をターゲットにする一つの要因になったということはあるいはあったかと存じます。  しかし、そういうことがあったからといって、我が国経済協力あるいは対ペルー関係あり方自体が基本的に問われるということじゃないと思います。もしそういったことが十分に理解されていないとするならば、その理解が得られるようにさらに努力はすべきだとは思います。
  293. 矢田部理

    ○矢田部理君 これらの課題についてはまた後刻議論することといたします。  平和解決ということを我が国も盛んに主張してきました。二月一日のトロント会談でも橋本首相は平和解決で合意をしたというふうに発表されたのでありますが、その直後、例えば二月九日、フジモリ大統領は、人質に犠牲が出た場合、平和的手段に失敗をした場合、武力行使に踏み切るという発表をしました。また、二月十一日には、公邸内でだれかの身に何かあった場合には武力行使に出るというような向きの発言をしましたが、結局トロントの会談では平和解決で合意というようなことにはならなかったのでしょうか。
  294. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この事件が起きましてからペルー政府との間では終始連携を保ってまいりました。そういう過程の中におきまして、人質の全員の無事解放を目指し、しかもテロリズムには屈することなく平和的な解決を図っていくという点で両国政府の合意は常にあったわけでございまして、トロントにおけるフジモリ大統領との会談におきましても、総理との間でそのような基本方針は確認されておったわけでございます。
  295. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもその辺がフジモリ大統領の受けとめ方と日本政府の対外的な発表にずっと乖離があるという印象を否めないのであります。  例えば、トロント会談の後、共同記者会見をいたしましたが、その第六項で、人質の身体的及び精神的健康の維持が不可欠とのペルー政府の立場を支持するという文言があるのであります。これについてフジモリ大統領は、人質の犠牲を避けるためには緊急手段もとり得ることになりますと。つまり、武力行使を含みとする中身なんだということを述べて、自分たちの行動を正当化しようとしているわけであります。ところが、日本政府側は、橋本総理が帰ってこられてから、先制の武力行使はしない、人質が危険になったときも突入するときは相談してくれと念を押してきたという報告をしておられるわけです。  どうも、トロント会談というのは一体何だったのかということで、受けとめ方に非常に大きなそごがあったのではないかと思われるのですが、この六項などをめぐってはどう考えられますか。
  296. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点は、MRTA側が人質に危害を加えない限り実力行使はしないとペルー政府もフジモリ大統領も言い続けておられたわけでございまして、日本政府としましてもそれを重く受けとめまして、いかなる意味においてもテロリストにより人質に危害を加えるというような試みは許されない、そういう認識を有しておったところでございます。  そして、テロリストにより人質に危害が加えられるというようなことが現実のものとなり、あるいはそういった状態が急迫した状態になった段階において実力を用いざるを得ない、人質の安全あるいは生命を極力確保するという観点からも実力に訴えざるを得ないということになる場合には、それは日本に相談するよという話があったのは事実でございますけれども、しかしあの最終の決着を図る段階においてその連絡はございませんでした。  しかし、その点については、あのような急迫した状態であり、時期を失することなくそれに対処しなくては人質の無事救出という目的が達成できないという判断、これは現場で救出行動全体を見ておられる、その指揮をとっておられるフジモリさんの判断であったわけでございますから、その点については理解できるということで、事件の決着直後、電話で橋本総理とフジモリ大統領の会話がなされましたときにそういうことをこちらは申し上げたわけでございます。  しかし、連絡がなかったのは遺憾だよということを橋本総理も番われて、しかし連絡ができなかったということは理解できるということを申したわけでございますし、フジモリ大統領の方からも連絡できなかったのは申しわけなかったという丁重な御説明もあったわけでございます。
  297. 矢田部理

    ○矢田部理君 フジモリ大統領が言っておられた人質に危害が加えられるような状況の場合はという状況になっていたのでしょうか。私どもが外から見ている限りでは、どうもそこまで緊迫した情勢に立ち至っていたというふうにはとても思い切れない、まだ解決の道筋を追求する余地がそれなりにあったのではないかという気持ちがどうしても残るのであります。  それはそれといたしまして、もう一つは、相談してくれるという約束があったにもかかわらず、それほど緊迫もしていないのに事前の相談もなしに武力制圧に出たということも外交関係としていかがかというふうに思わざるを得ないのでありますが、同時に、ウィーン条約の二十二条を読んでみますると、使節団の公館は不可侵だと、公館に立ち入るためには使節団の長の同意が必要だということで、同意を重視しているわけです。この同意はどこかであったんでしょうか。
  298. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、事情がそんなに緊迫していなかったのじゃないかという点については、それはそういう見方もあるかもしれません。しかし、四カ月を超える長期の拘禁状態が続き、しかも実力を行使しない形でのいろいろな解決の方途を模索してきたわけでございます、探究してきたわけでございます。そういったいろいろな努力がなされたけれども、実力を行使しないでの解決の道がなかなか見出せないという状況の中での救生活動であったということをひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、そんなに緊迫していなかったじゃないかと言われますけれども作戦そのものを成功に導くためには、非常に微妙な現地の情勢、現場の情勢というものをにらみながらやらなくちゃいけなかったということがあったということを御理解いただきたいと思います。  それから、公邸に入ってやられるような救生活動をすることについての同意があったかどうかという点でございますけれども、この点につきましては、先ほど申しましたような電話を通じてのフジモリ大統領の説明、また総理の方からの事情は理解できるという対話を通じまして事後的に了承したものと理解しております。
  299. 矢田部理

    ○矢田部理君 ウィーン条約二十二条一項というのは、事後の同意でもいいというふうには読めませんね。これは事前の同意と違いますか。
  300. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ウィーン条約二十二条には、事前、事後ということは特に明記されていないと存じます。  それから、委員も御承知だと思いますけれどもウィーン条約の審議の過程においては、例えば火災のような文字どおり急迫した状況の中では同意というものは必ずしも必要でないんだよということも議論はされ、大体了承されておったという事実もございます。
  301. 矢田部理

    ○矢田部理君 大使館の不可侵といいますか、これはやっぱり国際法上は非常に重要な課題なのでありまして、同意を得るための時間的余裕がないとかいうような場合では全くないのに、同意なしに大使館に武力突入するということは、結果よければすべてよしというわけにはいかないんです。一国の主権にかかわる問題だと私は思っているのであります。その点で、同意なしに突入をしたのは二十二条違反の疑いが強いというふうに私は思わざるを得ないのであります。  日本政府にとって、平和解決を求めてきたのに同意もなしに武力行使をされたというのは、帰するところ、日本の立場を無視されたということにはなりませんでしょうか。なるほど、ゲリラ以外の犠牲者が少なかったことから、同意がない武力行使を是認し評価する態度になったというふうに結果としては思われますけれども、これは日本のとってきた態度から見ると首尾一貫しないのではないか。現にワシントンのシンクタンクなどからも日本の態度についていろんな論評が加えられておりまして、倫理的な指導力と誠実さに欠けた情けないパフォーマンスだというような指摘も伝えられているのでありますが、この点はどう考えられますか。
  302. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、在外公館外交施設我が国の主権にあるという御発言がございましたけれども、そういうことではないと思います。ウィーン条約で規定されているのは外交施設のいわば不可侵権というものでございまして、これは決して我が国の主権下にあるとか治外法権があるとかいう性格のものではないということはまず一つ申し上げたいと思います。  それから二つ目といたしまして、二十二条の問題としても、一般的に想定されているケースは、平常の状態のもとで接受国の官憲がいろいろな行動をするために入ってくる、それはいけないよということを言っているのが一般の状況でございます。  それから、ウィーン条約の別の条項では、別途こういった施設が他の第三者から侵犯されることを、侵されることを防がなくちゃいけないといった責任接受国にあるわけでございます。また、別の条項では、外交官の身体が侵されること、危害が及ぶことも防がなくちゃいかぬということもございます。  そういう観点から申しますと、ああいうふうに我が国外交施設が現に侵されるという状態になっている、これを解除するという必要性もあるわけでございます。あるいは人質にとられて現に外交官がそういった身の危険にさらされているといった状態、それを解決するという必要性もあるわけでございます。そういった観点も考えながらいろいろ考えてまいらなくちゃいけないと思います。単に二十二条の物的施設の不可侵権だけですべてを律するわけにはいかないんじゃないかと存ずる次第でございます。
  303. 矢田部理

    ○矢田部理君 他の条項も私は読んでいるんですよ。しかし、私は、主権下にあるとは言わずに、主権にかかわる問題だと言っているんですから、正確に言うと。しかし、同意なしに入るというのは、一項を読んでもやっぱり同意が必要だと読むべきであって、今の大臣のお答えには賛成しにくいのであります。  もう一つ、先ほども議論が出ましたが、ゲリラの処刑について少し問題が残っているような気がいたします。  各紙の報道を読みますと、複数の人質の証言で、大使公邸に突入し武力制圧を行ったペルー部隊は、投降の意をあらわしたゲリラがいた、それから武力制圧が終わった後にも何人かのゲリラが生存していたと伝えられています。しかし、ペルー政府の発表ではゲリラ側に生存者はいなかった。投降または拘束されたゲリラは軍によって処刑、射殺されたと考えられるのですが、事実関係はいかがでしょうか。
  304. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは事実関係はわかりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと存じます。  報道があったことは承知していますけれども、その報道のもとになった発言なりなんなりがどういうものであったかもなんでございますし、そういった発言をされた方がどういう状況のもとでどういう瞬間のどういう状況を見たかということもはっきりいたしませんので、これについて事情を承知しないままに推測に立ってあれこれ申し上げることは避けなくちゃいけないと思います。  なお、あの救出作戦の過程におけるMRTAへのいろいろな対応についていろんな報道がなされておりますけれども、この点については、フジモリ大統領が五月四日のインタビューの発言で、MRTAの投降にまつわる諸説についてはこれを否定するというふうに明言されていると承知しております。
  305. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのフジモリ大統領の発言でありますが、直後の記者会見では、軍事作戦ではいかなることも起こり得るというような記者会見もまたあるわけでありますが、投降または拘束されたゲリラが軍によって処刑とか射殺をされたということになりますと、これは国際法上も大変問題になるのではないかという疑問も持つわけです。  とりわけ、軍事行動だということになりますと、例えば捕虜の待遇に関するジュネーブ条約というものがあります。これは捕虜とか投降者に対しては人道的に扱わなきゃならぬ、傷害や虐待や拷問を加えてはならない、裁判によらない処刑をしてもならないというような厳重な規定がありますし、またもう一つ問題点と思われますのは、いかなる生存者もなくするようなことを軍に命令することはできないというジュネーブ条約の第二議定書第四条の追加規定もあるのでありますが、こういう問題に違反する、場合によってはその趣旨にもとる行為も問題として残るような気がいたします。  私は、そういう観点から申し上げますと、その事実関係等についても、外務省では調査委員会をつくったそうでありますから、正確に事実関係調査し、この問題についての適切な対応をしてほしいということを特に申し上げておきたいと思っております。  結果がよかったので、あるいは犠牲者が少なかったのですべてよしということで問題を終わりにしてはならないというのが私の気持ちでありますので、何か御意見があれば言いただいて、私の質問を終わります。
  306. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたように、ペルー政府においても当然事後にいろいろ調査されたと思います。現段階までの、現段階といいましょうか、先ほど申しました発言までの時点調査を踏まえてあのように明確に否定されておるわけでございます。そして、一方におきまして、御指摘の報道につきましての根拠というもの、その正確性なり信憑性につきましてはとても確たるものがあるとは申せない状況でございます。そういった状況の中で、私どもはあれこれこの点について論評することは避けるべきものと存ずる次第でございます。
  307. 小山峰男

    小山峰男君 まず最初に、尖閣列島の関係について御質問を申し上げたいと思います。  最近、西村議員らが尖閣列島に上陸したという話がございまして、いろいろな意味で大変物議を醸しているわけでございます。私も必ずしもこの行為について賛成というわけではございませんが、これについての新聞報道によりますと、総理なんかも、土地の所有者が上陸を拒否し、その意思を伝達しているにもかかわらず、それを一切無視して行動する権利が国会議員といえどもあるのかというふうに言ったと報道されているわけでございますが、この問題について土地の所有者の問題ということに原因を押しつけると申しますか、帰着させていいのかどうか。いろいろな問題があるとすれば、政府としてはもっとこの問題について国民の理解を得るような懇切丁寧な説明があってしかるべきだというふうに思っているわけです。  この土地の所有者の問題だけに帰着するとすれば、ある報道にもございますが、例えば沖縄問題のいわゆる地主の論理が働いたと言われても仕方がないのではないかというような議論もあるわけです。みんながやっぱりこの問題については関心もあるし、我が日本の領土だということもみんな承知しているわけですので、外務大臣としてもう一度その辺を明確に国民に対して訴えてほしいというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  308. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましては五月八日の当委員会で私明確に御答弁申し上げたと思いますけれども、三点申し上げたと思います、その段階でも。  まず第一点は、尖閣諸島が我が国の固有の領土であることは疑いないところでございます、歴史的にも、また国際法上も。そして、現に我が国が有効支配しているところでございます。そういう状況でございますので、西村議員等が改めて上陸をして主権を主張される必要性は殊さらないわけでございます。そして、今回のああいう行動があったということが、行為があったということが、むしろその行為をされた方々が意図した効果とは逆行するような結果をもたらしているのではないか、こういうことを第一点として申し上げたいと思います。  それから第二点としては、これは土地所有者との関係でございますけれども、今回上陸した場所は私有地でございまして、その土地所有者からは政府に対しまして、これまで無断で島への上陸をしたり工作物の設置が行われているが迷惑している、自分たちの権利侵害に対しては関係法令に照らして厳重に対処してもらいたいという要望が寄せられているところでございます。これが第二点でございます。  それから第三点といたしまして、いずれにいたしましても尖閣諸島に関する我が国の立場は一貫しておりますし、これは変わらないものでございますけれども、本件をめぐる一連の事態によって日中関係全体が損なわれるようなことがあってはならない、日中関係は非常に大切な関係でございますから、そういうふうに考えておりまして、政府といたしましては関係者あるいはみんなが冷静に対処することを希望している、こういうことでございます。
  309. 小山峰男

    小山峰男君 たまたま私は差しかえで欠席しておりまして、もし同じ質問をしたとすれば大変失礼したわけでございます。  もう一点、この点も質問があったかどうか、いろいろな報道によりますと、十八日ごろですか、外国の人たちが尖閣列島へ、押しかけるというと語弊があるわけですが、上陸をするというようなお話もあるわけでございます。この場合、どういうふうになるのかわかりませんが、政府としての対応はどういうふうにされる予定でいるか、その点をお聞きしたいと思います。
  310. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今御指摘の中にございました報道、そこにありますような行動がもし行われるとするならば、これは我が国の法令に違反する行動でございますので、政府としては適切な方法により排除するということが従来からの方針でございます。  いずれにいたしましても、もし報ぜられるような行動が行われるということになれば、それは日中関係、あるいは我が国と台湾あるいは香港との関係にとりまして決して好ましいものではないということは当然でございますので、先ほど申しましたけれども関係者あるいはそれに関係を持とうとされる方が尖閣諸島をめぐる一連の事態については冷静に対処されるということを政府としては強く希望しているところでございます。
  311. 小山峰男

    小山峰男君 今、外務大臣のお言葉をお聞きしまして、適正に対処するという政府の姿勢を了解させていただきます。  それから、行政改革会議関係でお尋ねをしたいと思います。  行政改革会議は、四月十六日に各省に対して、それぞれヒアリングをしますからということで項目をまとめて連絡が行われたと。外務省については五月十四日、あした四十分の予定でヒアリングが行われるということでございます。五点が重点項目として外務省にぶつけられているというふうに聞いておりますが、それぞれの点について背景なり、どういう状況があってこういう問題が重点項目として選定されたのかということを行革会議の方からお聞きしたいと思います。  まず、一点目の「対外経済政策・交渉に関し外務省の果たすべき役割についてどう考えるか。また外務省と離れて一元的な担当組織を設けることについてどう考えるか。」というのが一点目の質問ですが、この背景等について説明をお願いしたいと思います。
  312. 坂野泰治

    政府委員(坂野泰治君) 御指摘の質問項目につきましては、御指摘のように、外務省のほか各省庁に対してあらかじめ行革会議から提示をいたしたものでございますが、今の御質問の趣旨に入ります前に、この質問項目全体の位置づけについて少し申し上げさせていただきたいと思います。  この質問項目につきましては、四月までの行革会議の各委員意見開陳を踏まえまして、かつそれまでの間に事務局が各界のいろいろな提言、意見を収集いたしまして、そういうものも参考にいたしまして、会議委員の関心が高いと考えられるものについて絞って各省庁に質問項目としてあらかじめお示しをしたものでございます。したがいまして、各質問項目については、これまでいろいろなところで述べられたさまざまな御意見や提言などをそのまま私どもとして参照して質問をさせていただいておるということでございます。  ただいま御指摘の一問目の問題でございますけれども、基本的にはこの表現どおりに受けとめていただきたいと考えますが、あえて補足を申し上げますれば、行政の各分野が専門化、高度化を深めているという状況の中で、外務省の役割についてどのようにお考えになるのか、また各界の意見の中には対外通商関係について一元的な組織を設けてはどうかというような御意見も散見されました。そういうものについてもどう考えるか、率直に御意見外務省から表明していただきたいという趣旨から設けた質問でございます。
  313. 小山峰男

    小山峰男君 二点目は、「外交・対外政策の企画・立案・調整や国際的な情報の収集・分析に関し、内閣官房外政審議室、安全保障室、情報調査室との分担関係をどう考えるか。」、これもまさに読んで字のごとくかと思いますが、その背景等についてお願いします。
  314. 坂野泰治

    政府委員(坂野泰治君) ただいま御指摘の質問につきましては、趣旨は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、あえて申し上げますれば、外交関係については、特に最近首脳外交というような形で事態がかなり進む状況になっております。そういう中で、外交、対外政策の企画あるいは実施に関して、内閣官房との関係について外務省として今後どのようにお考えになっていくのかという点について御意見を伺いたいということでございます。
  315. 小山峰男

    小山峰男君 三点目ですが、「経済協力関係行政組織の一元化をどう考えるか。」ということですが、これの背景等をお願いします。
  316. 坂野泰治

    政府委員(坂野泰治君) 経済協力関係についてはこれまでも各界でさまざまな御提言がございます。その中には、関係行政組織の一元化についても御提言が散見されたところでございます。これについて外務省のお考えを率直にお聞きしたいということでございます。
  317. 小山峰男

    小山峰男君 四点目は、「外務公務員制度の必要性についてどう考えるか。」ということですが、これはいかがでしょうか。
  318. 坂野泰治

    政府委員(坂野泰治君) この問題につきましてもかねてよりさまざまな論議があったところと承知をいたしております。そういう点について、これまでの論議も踏まえつつ外務省の率直な御意見をお聞きしたいということでございます。
  319. 小山峰男

    小山峰男君 五点目、最後ですが、「国際文化・スポーツ交流について、文化・スポーツ行政も含め、我が国として一元的な実施を図るための組織の在り方についてどう考えるか。」、これはいかがでしょうか。
  320. 坂野泰治

    政府委員(坂野泰治君) 国際的な文化・スポーツ交流につきましては、外務省のほか文部省など関係省庁があわせていろいろ実施をしておられるということでございます。これら全体について、現在の体制の評価を含め、外務省から率直に御意見をお聞きしたいということでございます。
  321. 小山峰男

    小山峰男君 外務大臣、この五点の項目が外務省にぶつけられているということでございますが、先ほども申し上げましたように、あす四十分の予定でヒアリングということでございまして、きょうここでそれぞれ外務省の考え方が発表いただけるかどうかわかりませんが、その辺はいかがでしょうか。
  322. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員御指摘のとおり、文字どおりあす外務省としての考え方を申し上げることになっておりますが、しかしあすはまだ私に出てこいという話はございません。事務方がまずお話しするようなことになっているのかと承知しております。それに先立ちまして私がこうだということを申し上げますと各方面でいろいろお困りになることもあるかと存じますので、恐縮ですが、政府委員から現段階での感触なりを答弁させていただきたいと思います。
  323. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) それでは、各五項目につきまして現段階での私どもの考え方を簡単に御説明させていただきます。  まず第一の対外経済政策でございますが、これは私ども我が国の外交において、特に日本においては大変大きな重要性を占めるものだと考えておりますがゆえに、この対外経済政策については外務省の関与が不可欠だと考えておりまして、したがって外務省を離れて一元的な組織を設けるということは不適切であろうという考えを申し述べようと思っております。  第二の問題でございますが、内閣官房との関係、内閣が安全保障、情報収集、分析等の分野で調整機能を強化するということについては基本的に賛成でございまして、当省としても協力していきたいというふうに表明したいと思っております。  第三の経済協力でございますが、これは外交政策の一環といたしまして、その政策方針を決定し得る体制を確保することが極めて重要だと考えております。したがいまして、経済協力関係組織の一元化につきましては、外交政策との整合性の確保、援助の効果的、効率的実施の観点から検討されるべき課題であろうということを主張したいと考えております。  それから、第四番目の外務公務員制度でございますけれども、これは採用試験も含めまして今後とも維持することが適当だというふうに私ども考えておりますが、外務省としては、人事交流の活発化あるいは大使等の外部からの登用につきましても、適材適所の観点から積極的に取り込んでいきたいということを表明したいと考えております。  それから、最後の国際文化・スポーツ交流でございますが、これもまた我が国外交の重要な柱でございまして、外務省を初めとする関係各省庁が緊密に連携しながらそれぞれの役割を果たすことが一層の効率的、効果的実施につながるであろうということを表明したいと考えております。
  324. 小山峰男

    小山峰男君 今おおむねの考え方をお話しいただいたわけでございますが、実は五月七日に警察庁、法務省、労働省がそれぞれヒアリングをやって、その結果の報道によりますと、大変後ろ向きな案が各省から出ているというふうに新聞報道等では言われていたわけでございまして、現状維持がある意味では最善だみたいな話が多いというふうに言われております。今お聞きしましても、なかなかきちっと前向きな感じにはどうもなれないようでございます。  例えば、国際文化・スポーツ交流等についても、一本化というようなことを含めて考えた方がいいんじゃないかなというような気がしますし、あるいは経済協力関係につきましても、今の国際協力事業団あるいは海外経済協力基金、こういうものをどうするかという問題が当然出てくるはずでございます。それから、先ほどの二番目の情報収集等についても、官房、外政審議室、安全保障室、情報調査室といろいろな分担がある。緊密な連携といいましても、その間にはかなりの労力が必要な形になろうというふうに思っております。  そういう意味では、ぜひ抜本的な外務省関係あり方を大臣の英断で期待するわけでございますが、最後に大臣、一言その辺の英断をお話しいただきたいと思います。
  325. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) しかるべき段階において、我が国外交政策の推進の観点から、そしてまた行政の効率化という観点からどういう道が最も適切であるかよく考え、そして私としても判断すべきは判断してその考え方を表明してまいりたいと思います。
  326. 小山峰男

    小山峰男君 あしたヒアリングでございますので、その結果をちょっと表にしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
  327. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 委員長にちょっとお伺いいたしますが、表にしてというのは我々の今のポジションを表にしてということですか。それとも、必ずしも先生の御趣旨がよくわからなかったんですが、議論の結果を、やりとりを表にしろということでしょうか。
  328. 小山峰男

    小山峰男君 この五項目について、外務省としてこういうことでヒアリングに臨んだんだという、それをいただきたい。
  329. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) この五項目につきましては、既に事務局の方から御指示がありまして、私が説明したよりももう少し詳細な我が方の説明は既に文書にして提出しております。これは公表されておりますので、もしそれでよろしければ早速お手元にお届けしたいというふうに存じます。
  330. 小山峰男

    小山峰男君 はい、それで結構です。  以上で終わります。
  331. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時散会      ―――――・―――――