○田英夫君 今の
環境問題の中に実は鉱物資源の採取の問題も今度の
議定書の中に含まれているようですね。これも早くこうした
条約の中に入れたことは大変よかったと思います。
というのは、実は私が隊員で行ったとき、残してきた第一次越冬隊が、
昭和基地というのは島にあるわけですが、対岸の大陸を踏査したときにウラン鉱を発見したわけです。当時としてはかなり大きく
報道されたものですから注目を集めました。ある
経済界の人は私に対して、ウラン鉱を発見したということだけれども、
日本がまさに割り当てられた地域だから、ここを採掘してウラン鉱を
日本のものとして採取することができるのか、こういう御
質問を受けたことがあります。当時まだ原子力発電というようなものもなかった時代にそういう一種の先見の明を言われたのでさすがに驚きましたけれども、当時まだこの
条約ができてはおりませんから、領土の問題もあいまいのままですから、強引にやれば
日本が採掘することができたかもしれないんです。しかし、既にそのとき領土問題は凍結しようという話が出ておりました。
また、
南極大陸というのは、御存じのとおり、氷の厚さが厚いところは二千メートルにも達する。したがって、この下の地面に、地下に鉱物資源があるということを探知しても、これを採掘するためには二千メートルの氷の下まで到達しなければならないわけで、採算的に合わないんじゃないですかというお答えをしたことを思い出すんですが、もしこの
条約、
議定書がなければそういうことも起こり得たかもしれない。
これを発見したのは越冬隊の中の地質学者ですが、そういう人たちに聞いてみると、
南極大陸は十分ウラン鉱などあり得る地質だということを言っておりました。手つかずの大陸ですから、ここから大量の鉱物資源が出れば当然
経済的にはそこに目をつけるということでしょうが、これを規制したということは今度の
議定書の中の
一つの私は大変大きな意義があると思っております。
それから、
環境保護のことで先ほども
高野委員から話が出ましたが、
南極大陸というのはもともと大変きれいなところだったのが、
観測隊を含めて人間がかなり行くようになってから
生態系がいささか変わってきている。例えば、私どもが行ったときは最初ですからだれも人間が行ったことのない土地だったわけで、風邪というものを引かないわけですね。風邪のウイルスもおりませんから引いていた人も治ってしまうんですが、これが今はかなりそういう病気もあるようであります。その
意味でもきれいな場所として残しておくということは大変よかったと思うんです。
私は、軍事基地に利用しちゃいかぬとか領土権を主張しないとか
環境を守るとか、これは三本の柱でしょうが、この
南極条約の精神といいますか、これは二十一
世紀、今後未来に向けて
地球上の
あり方という点で一種の理想郷のような感じがしております。もちろん、人間の歴史を
考えてみますと、そう容易に、特に領土権を主張しないなどということを
南極以外の土地で
考えてもなかなか現実的ではないでしょうけれども、軍事利用の問題などはある
意味で、特に核兵器のことを
考えますと、核兵器を持ってはならない、攻撃してはならない、いわゆる非核地帯
条約、トラテロルコとかラロトンガとかできてきております。これは核についての一種の理想郷をその地域の国々が話し合ってつくっているという
意味では
南極条約の精神をもとにしてという感じがいたします。
そんなことで、これから
日本もこの
南極条約の精神というものを大きな
地球レベルの
規模で物を
考えていくときにひとつ尊重していったらいいんじゃないだろうか。そういう
意味でいうと、
南極精神という
言い方を私はしているんですが、これを
日本も未来の
地球の
あり方を
考える上で基本にしていただきたい、そんな気持ちさえするんですが、外務
大臣、いかがですか。