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武田邦太郎君 きょうはちょっと
中国問題を
お話ししたいと思ったんですが、
高野、田両先生の話を聞いているうちに、予定外の問題ですが、
北朝鮮関係、これは今有事に
対応するということが盛んに言われておりますけれ
ども、これについて
二つの問題があると思います。
一つは、有事を有事にしない、平和裏に
事態が
推移する
努力を我々はどこまでやっているか。先ほどの食糧援助の問題もその一つでしょうが、食糧を向こうに送って、おまえたちの困っているのを助けるんだからおれたちの言うことを聞けという気配がちょっとでも向こうに感じられれば、この食糧は死んでしまうわけです。そうじゃなくて、
日本の国民は
北朝鮮の国民、特に老人とか病人とか女性とか子供らの飢餓あるいは空腹を見ておれない、座視しておれないというので、本当に心からの憂いと真心で向こうに送る。国際的な取り決めがどうあろうと我々はじっとしておれないんだと、そういう気持ちが食糧に込もって向こうに伝わり、向こうの国民が、ああ
日本の国民はおれたちのことを
心配してくれている、ありがたいうれしいと、こういうことになりませんと食糧は死んでしまうわけですね。
だから、そういうことが一事が万事で、何とか北
アジア、東
アジアの平和を、相互の親しみあるいは敬意を持ち合う、そういうことで実現しようという
姿勢が先行しませんと、有事
対応ということは、ややもすると武力によって
対応するというふうにウエートが傾きますと、これは非常に悲しい
状況と言わざるを得ない。
ただし、そういう危険があれば、それに対してはちゃんと
対応しなきゃならぬことは当たり前の話でありますけれ
ども、その場合に、前線で活動するのはアメリカの軍隊で、
日本は後方勤務的なことをやる。こういう場合に、どういう
事態が
発生したらアメリカ軍はどういうふうに行動するんだから具体的に
日本の側はどういうことを担当すれば目的を達成できる。こういうような具体的なことが、アメリカと
日本が対等の統帥
関係といいますか作戦
関係といいますか、それを十分に打ち合わせた上で、まだほとんど熟していないようでありますけれ
ども、例えば本土の空港とか海港をアメリカ軍が使う場合には、具体的にどういう注文をアメリカがするのか、受ける側はどういうふうに具体的にやるのかというようなことについて、今すぐお返事は要りませんけれ
ども、まず第一は有事を起こさないと。その次は、有事があったら日米対等の協定において
日本側が、国民が十分の理解を持って
対応できるようなやり方。どうも
心配なんですね、先ほどの萱野
委員の
お話を聞いておりましても。だから、それに万全の配慮をしていただきたいというのが私の願いであります。
時間がありませんけれ
ども、いつもながら
中国の問題でありますが、
中国が将来アメリカと二超大国としてややもすると国際的に対立する勢力となりかねない。むしろその可能性が非常に大きいということになれば、やはり先ほどの論理と同じでありますけれ
ども、この二大勢力が対立しない、そういう国際
関係を
日本の
努力によって醸成できないか。これはかなり長期の歴史展望の上に立って、先ほど
お話ありましたが、的確な
情報をキャッチするということの上でなされなきゃならぬと思います。
例えば、核戦力の問題でも、今アメリカが圧倒的に
中国をリードした形でしょうけれ
ども、
中国がアメリカと少なくとも対等の核戦力を持とうと必死になっていることは間違いないと思います。アメリカあるいはフランスあたりが持っているような、核実験をしなくても核兵器はどんどん進歩する、こういうノウハウはまだ恐らく
中国は持っておりませんけれ
ども、しかし場合によってはロシアから入手できないとは言えない。そういうようなことを考えに入れて、今のままで
推移すれば超二大勢力は核兵器を持って対立する、こういう可能性は十分にあると思うんですね。これが一つです。
それから、そのほか、我々はややもすると現在の
中国を見て価値観が違うと、だからアメリカとは我々は価値観を同じぐするが
中国とはできないというような感じを持つ人が若干おるようです。私はこれはやはり歴史の展望において十分熟した掘り下げが必要だと。
例えば、
鄧小平大先輩はお亡くなりになったわけでありますけれ
ども、近い将来に
中国の
政治指導力を握る可能性のある年配、つまり四十歳から五十歳ぐらいまでの人たちがだんだんと
政治勢力の中心に立ちつつある、こういう
情報があります。しかも、これらの人たちは欧米的な、圧倒的にアメリカ的な教養を身につけているということになりますと、これは価値観が共通化する一つの重大な要因だと思います。あるいはまた、
経済成長が進んで一人当たりGNPが二千ドル以上になれば、そこに中産階級的な階層がだんだんと力を持ってくる。国民全体の教養も高くなる。
そういう
意味で、最も歴史の基本的な線において、民主主義の成長する基盤がほとんど必然的に熟成するというようなことを考えますと、アメリカと
中国はだんだんと価値観を同じくするということは、
中国が価値観においてアメリカナイズされるというのではなくて、人類の世界というものはそもそもそういうものだと。
こういう理解に立って、長期展望に立って、
大臣は今後相当長い期間
日本をリードするでしょうから、そういう長い視野に立って
中国とアメリカは平和裏に提携し得る本質を持っているんだという確信を持つのか持たないかで
日本の国際
政治に対する
態度、特に東
アジアに対する
態度はかなり違ったものになり得ると思うんですね。
それで、私は何回も申し上げましたけれ
ども、先ほどの
北朝鮮に対する愛情なり憂いなりと同じような心を持ってアメリカに対し
中国に対し、本当に
両国が力を合わせて世界の平和をリードしてくれと。アメリカは現状においてはすべての国から敬愛されていない。ややもすると腕力を使い過ぎるというようなことも、非難よりもむしろ親愛と憂いを持って
日本がアメリカを説得し、それに
対応する
中国もそういう心を持って
対応してくれないかということで、願うところは今後三十年ぐらいは
お互いに武力発動しない、
お互いに不可侵条約を結んで、その間に
お互いの安心の上に世界平和に協力するというようなことができれば、これは単なる空論じゃなくて歴史の
進展の必然的な
方向においてかなり国際的に発現する可能性があるんではないかと。
時間が参りました。これで終わります。お返事はこの次でも結構です。