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1997-02-26 第140回国会 参議院 科学技術特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十六日(水曜日)    午前九時開会     —————————————    委員異動  二月二十一日     辞任         補欠選任      大野つや子君     岩永 浩美君      中原  爽君     北岡 秀二君      平田 耕一君     松村 龍二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         猪熊 重二君     理 事                 鹿熊 安正君                 吉川 芳男君                 高橋 令則君                 中尾 則幸君     委 員                 岩永 浩美君                 海老原義彦君                 北岡 秀二君                 沓掛 哲男君                 志村 哲良君                 二木 秀夫君                 松村 龍二君                 長谷川道郎君                 広中和歌子君                 水島  裕君                 山本 正和君                 川橋 幸子君                 阿部 幸代君                 立木  洋君                 矢田部 理君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長  近岡理一郎君        官)    政府委員        科学技術庁長官        官房長      沖村 憲樹君        科学技術庁長官        官房審議官    興  直孝君        科学技術庁科学        技術政策局長   近藤 隆彦君        科学技術庁長科学        技術振興局長   青江  茂君        科学技術庁研究        開発局長     落合 俊雄君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君        科学技術庁原子        力安全局長    池田  要君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事  中野 啓昌君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件)     —————————————
  2. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、大野つや子君、中原爽君及び平田耕一君が委員を辞任され、その補欠として岩永浩美君、北岡秀二君及び松村龍二君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のため、本日の委員会動力炉・核燃料開発事業団理事中野啓昌君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件を議題といたします。  これより質疑を行います。  なお、近岡科学技術庁長官の御答弁は着席のままで結構です。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 吉川芳男

    吉川芳男君 自由民主党の吉川芳男であります。通告申し上げたとおり順次質問をさせていただきます。  まず、昨年七月に閣議決定されました科学技術基本計画より二、三の質問をいたします。  かなり大部なものでございますが、一ページの中段に、「日本科学技術現状をみると、研究開発投資は、日本全体で平成五年度、六年度と二年連続して減少し、民間では平成四年度から三年連続して減少するという、我が国が近年経験したことがない厳しい状況にある。政府研究開発投資については、国防研究費の割合、民間活力差異等により、単純に比較できないものの、我が国政府負担研究費の対GDP比率欧米主要国の水準を下回っている。」、こういうふうに冒頭書いてあるのでございます。  科技庁からいただいたパンフレットによりますと、政府負担研究費の対GNP比の表によりますれば、政府負担額の中での自然科学部門は、一九九四年で〇・六二%、アメリカは〇・九一%となって低いことはわかりまするけれども国防費を除いた比較によりますれば、日本は〇・五九%に対し、アメリカは〇・三四%と優位な数字もあるわけでございます。また、民間も入れてのことなんでしょうけれども、全体の研究費GNP比率自然科学部門は、日本が二・八八%、アメリカは二・五一%という数字もあるわけでございます。  日本技術大国として欧米に伍して、あるいはフロントランナーとしていくからには、もちろん現状に甘んずるわけにはいかないわけでございますが、中期目標といいますか、今後五カ年計画ではトータルで十七兆円に伸ばしていく計画であると聞いておりまするけれども、現在の予算伸びが余り見込まれない財政状況の中で、いかなる方策で達成なさろうとなさるのか。数字等事務当局からで結構ですが、方策意気込み等について、まず長官から承りたいと思います。
  7. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 政府研究開発投資につきましては、科学技術基本計画におきまして、まず第一に、二十一世紀初頭に対GDP比率欧米主要国並みに引き上げるという考えのもとに、倍増の実現が強く求められておりまして、この場合、平成八年度から十二年度までの科学技術関係経費の総額の規模は十七兆円となっております。  一方で、我が国財政赤字欧米主要国と比較しましても悪化しておりまして、財政健全化が緊急の課題となっているところでございます。  これらを踏まえまして、厳しい財政事情等を踏まえつつ、同計画に掲げる施策推進に必要な経費の拡充を図っていくことといたしております。  二番目に、平成九年度予算案におきまして、一般会計科学技術振興費は対前年比一一・九%の増であります。政府全体の科学技術経費につきましては、科学技術庁におきまして集計いたしましたところでは、一般会計特別会計を合わせまして本年度三兆二十八億円となっております。これは初めて三兆円を超えるものでございまして、一般歳出の対前年度比一・五%増に比較いたしまして六・八%増という高い伸びとなっております。したがいまして、科学技術基本計画策定後編成した初の予算案として、同計画実施を図る上で重要な第一歩になるんじゃないかと考えております。  今後とも、関係省庁との密接な連携のもとに、厳しい財政事情を踏まえながらも、科学技術基本計画に示された施策の着実な推進に向けて最大限の努力をしてまいりたい、このように思います。
  8. 吉川芳男

    吉川芳男君 次に、長官の所信が前回述べられたわけでございますが、その中に、「率先して未踏の科学技術分野へ挑戦し、革新的な科学技術の成果を創出していくことが求められております。」、こういうふうに高らかに宣言されておるわけでございます。そして、基礎研究推進研究開発システム研究開発基盤構築整備を急がなければならぬと言っておられるわけでございます。  そこでお尋ねしたいことは、一つは、任期制導入について言われているわけでございますが、優秀な人材の確保には有効と思いまするけれども任期終了後の就職ということについて考えると、これは一体どういうことかというふうに不安があるようでございます。この不安の解消策は用意されているのか、そういうことをまずお聞きしておきます。
  9. 青江茂

    政府委員青江茂君) お答え申し上げます。  任期制のことに関してでございますけれども我が国研究現場というものをより活力のあるものにしていくということからいたしますれば、我が国研究システムというものを柔軟で、開かれた、そして競争的な研究環境というものをつくり上げていかなければならないだろうと。  そういう観点からいたしましたときに、研究者流動性、いわゆる横のモビリティーの向上といいましょうか、研究者というものが、自分が取り組みたい研究というものからいたしましてベスト研究現場を求めて、言ってみれば渡り歩く。一方、研究所側にいたしますれば、その研究所として取り組みたい研究課題、これから一番ベスト人材を求めていく。こういうふうな形でもって横の流動性が高まるということが不可欠であるという認識に立っておるわけでございます。  こういう観点から、先般の科学技術基本計画におきましても、任期制導入につきましてうたっておるというふうに私ども受けとめてございます。  今御指摘任期を付された研究者というものが任期が終わった段階、この段階におきまして以降どうなるのかということでございますけれども、私ども、基本的には、任期を付されたところでの研究というのはかなりインテンシブな研究がなされるわけでございますけれども、そこで培ったポテンシャルを使っていただきまして新しい場というものに展開をしていただくということではないかと思っておるわけでございます。  現実問題としまして、一例をちょっと御紹介申し上げたいのでございますが、理化学研究所基礎特研という仕組みがございます。三年の任期が付されてございますけれども、その実態を調べてみたのでございますが、ほとんどの人が新しい場を求めて展開をしておるということでもちまして、そういう形で少しずつ動いておるんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  10. 吉川芳男

    吉川芳男君 二つ目は、ポストドクター一万人計画についてお聞きしますけれども、この計画平成七年に始まったわけでございますが、平成九年度までに一体何人になるのか。また、聞くところによりますと、概算要求時点では各省は独自に増員要求を行っているということで、私は、科学技術庁が責任を持って取りまとめる立場になるべきだと思いまするけれども、このことについて方針をお聞かせ願いたいと思います。
  11. 青江茂

    政府委員青江茂君) ポスドク一万人計画ということでございますけれども、今の進捗状況につきましてまず状況を御説明申し上げたいのでございますが、平成八年度で大体六千人強というふうな手当てがなされてございます。来年度、平成九年度政府原案ベースにおきましては、それが七千八百人強というふうな数字推移をするという状況が見込まれてございます。このように、ポスドク一万人計画というのは、言ってみれば大変順調に推移をしておる、早晩この一万人計画というのは達成し得るんではないかということが見込まれるわけでございます。  これは、確かに今おっしゃるとおり、科学技術庁で、文部省で、それから通産省で、農水省で、こういったことでもってやっておるわけでございますけれども、私ども現実ポスドク一万人計画というものをどういう形で達成するかというときに、中心は、一つ文部省学術振興会、この仕組みでございます。  そのほかに、私どもの、先ほどちょっと申し上げました理化学研究所基礎特研、それから科学技術特別研究員制度等々、いろんな仕組みの中でポスドクというものをどう具体的に吸収していくかということで、具体的な仕組みの中で具現化を図っていくということでございます。  トータルといたしましては、私どもが全体を見切って、そして各省庁働きかけ推進をしておるということであり、現実問題としまして、着実に進展をし、早晩の達成というものが見込み得るという状況に至ってございます。
  12. 吉川芳男

    吉川芳男君 三点目は、研究評価についてお聞かせ願いたいと思うのでありますが、当然諸外国においても研究評価は行われておるわけでございますが、それらを含めまして、我が国はいかなる仕組みの上でやっていかれるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  13. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 御指摘のとおり、研究評価は大変重要な事項でございまして、科学技術基本計画におきましても、新しい研究開発システム構築一環としまして、研究開発機関とか研究開発課題につきまして、従来の評価のあり方を抜本的に見直しまして、厳正な評価実施することができるような、そういったシステムをつくるべしということが明記されておるわけであります。  このため、まず科技庁としましては、早速、来年度からでございますけれども、附属の各国立試験研究機関評価につきまして、外部評価導入しまして徹底しようということにしております。  また、基本計画におきましては、研究開発課題とか機関につきまして評価実施するに際しまして、特にこれを効果的なものにするために、国の研究開発全般に共通します評価実施方法につきまして、大綱的な指針といったものを示すようにということが書かれておりまして、できましたら今年度中を目途にしまして何らかの結論を得るべく現在作業をしております。  科学技術会議政策委員会評価指針策定のための小委員会をつくりまして、昨年十月以来既に八回の会合を持っておりまして、いろいろ鋭意検討しております。この委員会におきましては、評価透明性のある格好で、しかも公正に、また実効性を持つものになるようにということで、そういうことに留意しながら指針の内容につきまして鋭意検討を進めておるところでございます。  今後、これを踏まえまして、各研究機関等におきまして、厳正な研究評価が従来にも増して透明性を踏まえまして実施されるようにということで進めてまいりたいと考えております。
  14. 吉川芳男

    吉川芳男君 四点目は、建物や施設整備についてでありますが、事務局調査によりますと、国立試験研究機関における施設整備費推移は以下のとおりになっております。  平成六年度では百四十五億円、平成七年度では当初で二百十四億円、八年度では当初で二百二十三億円ということになっておりますが、七年度には一次補正で五百七十五億円、二次補正では三百九十一億円と当初の四倍強の補正がついたわけでございます。八年度も補正で二百五億円と当初とほぼ同額の予算がついたわけでございます。  その背景には、景気浮揚策一環としてか、あるいは施設の余りにも老朽化、設備の陳腐化を見過ごすことができないという判断によるものと思われまするけれども、シーリングの枠外とする補正予算のみに頼るのは一体いかなるものかと、問題がないというわけにいかぬと思うのでございますが、今後の予算づけについて当局の所見をお伺いいたします。
  15. 青江茂

    政府委員青江茂君) 試験研究機関におきましての施設老朽化陳腐化といった問題というのは大変深刻な課題だというふうに思っております。  また一方、研究というのは御案内のとおり日々大変なスピードでもって高度化している、その高度化に対応しての施設整備というものも大変重要な課題であるわけでございますけれども、その施設整備におきましては、確かに補正でもっての対応というものが相当ここ何年かにわたりましてウエートを持って対応してきたというふうな実態にあるわけでございます。  今後、施設高度化、そういったものを含めまして、補正というものは緊急を要する課題に対しまして対応するということでございますので、実態にもそぐってございまして、そういったものを含めまして順次計画的に進めてまいりたい、かように思っております。
  16. 吉川芳男

    吉川芳男君 次に、「もんじゅナトリウム漏えい事故について若干お尋ねいたします。  科学技術庁においては、さきの委員会に二月二十日付で、A4判の総計六十六ページにわたるような報告書を公表されましたけれども、膨大な資料の一つ一つお聞きする時間もありませんので、気のついたところから若干お尋ねいたします。  まず、この温度計さや管の損傷によるナトリウム漏れ原因は、米国機械学会、ASMEというふうに略されておりますが、アスメの基準の見違いによるものが最大のもので、段つき構造に適用するという判断ミスを犯した設計によるとしておるわけでございますが、さらには、温度計一本のみが破損した原因は、シースの取りつけ角度によるものと記載されているわけでございます。  専門家が入念に調査検討した上での結論でありまするから、疑問を差し挟むことはないのかもしれませんが、私は、合計四十八本にもなる同じ形態のものに同じ事故は起きないという保証はないと思うわけでございます。  事故出力四〇%から四五%の稼働中に起きたわけでございます。現在、出力はゼロでありますけれども、今でもナトリウムはA、Bループ配管の中を流れているわけでございまして、書いたものをそっくり引用させてもらえば、その中にはカルマン渦というものが細い段付温度計さやに流力振動による高サイクル疲労を与えたということになっているわけですが、そういう状況が今でも完全にないという保証はないと私は思うのでございます。  大体、四十八本中一本だけ折れたということを原因究明するということで、調査方法あるいは結果の概要等いろんな分析をなさっておりまするけれども、私に言わせれば、折れたという極めてまれなことによるものであって他の温度計さやには絶対にないと言っているように聞こえてならないのであります。  しかし、この中の九ぺ−ジのところに、「この調査は、当該温度さや一本のみが破損した原因を究明することを目的とするものであり、破損しなかったものがそのままでよいということを結論付けようとしたものではない。」というふうに付言しているわけでございます。  この文書ですか他の文書ですか、私が聞かせてもらった中に、今後同じ漏えい事故が起きても外部へはナトリウムが漏れないような袋をちゃんとつけて、そこにためるようになっているんで絶対外には漏れないということを言っておられるようでございますが、それなら今までのステンレスのパイプに穴をあけてナトリウム流れに抗するような形ではかる四十八本の温度計方式を一挙にやめた方がいいと私は提言したいんです。  素人の私が申し上げてもなんでございますけれども、例えばパイプの外側に温度計を密着させてはかる。もちろんその際は、今までの流れているところに直接温度計を差し込んではかるのと比べると誤差が生ずるということは考えられまするけれども、それぐらいの誤差はそれこそ科学技術で修正するということは、私は幾らでもできると思うのでありますし、現在でもナトリウム流れている配管に直接さわらなくとも、発生するところの熱線を外で、何メートル離れているところかわかりませんけれども測定するやり方もあると聞いているのでございます。そういうことについて一体どういうふうなお考えを持たれるのか、お聞きしたいと思うんです。
  17. 池田要

    政府委員池田要君) 吉川先生から、ただいま現在の状況はどうかということも御指摘がございました。若干、現在の状況について申し上げたいと思います。  今回の事故原因でありました温度計以外、二次系には四十七本あるわけでございますけれども、この温度計につきましては、今回の原因究明の過程におきまして超音波の探傷試験でございますとか、それからカメラによって内部を観察する等の調査をいたしまして異常がないこと、これにつきましては確認してございます。  また、「もんじゅ」の事故後も、これはA、B、Cと三っあるループのうちのCループで起こったわけでございますけれども、A、Bのループにつきましては現在ナトリウムを循環させているところでございます。流量は定格時に比べますと七%というような流量でございますが、ナトリウム流れに起因して温度計振動が発生する条件には至らないことを確認しておるところでございます。  また、昨年の二月の時点でございますけれども、これら残りましたA、Bループ温度計につきましては、今度の一本破損しました例にかんがみまして、温度計の途中にふたを設置するといった措置を講じておりまして、当面万全の対策をとっているところでございます。
  18. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 後の問題でございますが、破損いたしました温度計と同じ設計のものは今回すべて取りかえることにしております。一本だけでなくて、四十八本すべて取りかえることとしております。その際、採用します温度計といたしましては、そのとき必要とされます測定精度とか測定方法、これは先生が今おっしゃいました外からはかるとか、超音波ではかるとか、熱電対を中に入れてはかるとかいろんな方法がございますし、ナトリウム流れの影響、設置の方法等につきましていろんな角度から検討しているところでございます。  今、先生指摘配管外麦面から装着した温度計につきまして、そういう方法もございますが、精度とか応答性観点から非常に技術的な課題が残されております。それ以外にも、非挿入型と申しますが、そういう場合では音波によりましてナトリウムの音速が温度によって変化するわけでございますので、超音波で行う方式等もございます。  さらに、現在の方式に近いものでございますが、長さを短くする、短尺にするとかテーパーをなくすとかいろんな方法がございますので、そういうようなこととか、あるいは今回実験といいますか、データをとるためにたくさんの温度計を入れてございますが、そういう温度計を不要なところは減らすとかいうようなことも含めまして、いろいろと検討してまいりたいと考えております。
  19. 吉川芳男

    吉川芳男君 今ほどいろんな方策考えてみたいということと、従来のやり方はやめるというふうに私は聞いたつもりなんですけれども、そういうことであれば、私がこれから言うことは言わずもがなのことだとは思いますが、今までの間に私も提案してみたんだけれども、一層聞いてもらえそうな雰囲気じゃないものだから、追加的にちょっと書いてきたものをひとつ聞いてもらいたいんです。  「過ちては改むるにはばかるなかれ」、これは古いことわざにありますけれども、似たようなことで「君子は豹変す」という言葉もあるわけでございます。日本はこの言葉を余りいただけない言葉として受け取っておりまするけれども本当意味は、過ちを犯したならば豹の皮の文様のごとく鮮やかに変えなさいというのが本当意味なんだそうです。  私は、どのぐらいの長さの中で継ぎ足しているのかわかりませんけれども、四十八本もやっておいて、その一本が大変大きな意味を持っているということほど大きなことはないわけなのでございますから、他の四十七本は絶対にあり得ないと確信しようとも、仮に同じ欠損事故が起きたならば、ナトリウム漏れを起こしたならば、国民はもう二度と再開は許さないと思うのでございます。  そう遠くない例にも、かつて原子力船むつ」の例があるわけでございまして、「もんじゅ」はこの「むつ」の比でないほど非常に大きいわけでございます。初めからの調査費用、いろんなことを入れますともう一兆円以上の巨費を投じている、我が国原子力政策の浮沈をかけた大事業だと思うわけでございます。国家プロジェクトだと私は思うのでございます。  この部分だけでも、さっき流れがないから当分置いてあっていいようなふうに受け取りましたけれども、やっぱり念には念を入れて、早急にこのかんざしのようなやり方だけはやめたらいかがなものか。いろんな方法があるといろんなら、何かその結論が出るまでの間、仮に半年なり一年かかるなら、その間にまた事故が起きたなら一体どうなるのかなと、こういうことで心配をしているわけでございますが、いかがでございましょうか。
  20. 池田要

    政府委員池田要君) 「もんじゅ」につきましては、これまでに原因の究明の作業は終えたところでございますけれども、昨年の秋以来、安全性の総点検を始めさせていただいております。この過程で今回の「もんじゅ事故と同じような問題がほかにあるかどうかといった点につきましても全面的にチェックをしたいと考えております。また、今回の事故にかんがみまして、そういった点検の結果、提案されるような改善策があれば、これも総点検の過程で取り上げていこうということでございます。  こうした総点検が終了した段階では、さてそれではどういった改善策を施すのかといったことについての議論もできるような状態になろうかと思いますけれども、これはその場合には、事業者としても地元の御了解をいただくとか、そういった手続があろうかと思います。  そういった提案があって初めてそれについてのまた安全性のチェックといった手続に入るわけでございますが、先生が今御指摘ありましたような二次系の温度計についての抜本的な変更があっていいんじゃないかといったような点につきましても、そういった改善点、改善策を考える過程で当然ながらしかるべく取り入れられて、検討の一環として組み入れられるものと考えておるところでございます。
  21. 吉川芳男

    吉川芳男君 次に、瑣末なことかもしれませんけれども、「もんじゅ」のプラントには保険がつけられているのかどうか。それから、これを請け負ったメーカーの責任は非常に大きいと思うのでございますが、このことについて損害賠償を請求する考えがあるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  22. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 「もんじゅ」が保険に入っているかどうかでございますが、本件に対応し得る保険といたしましては、任意加入のものでございますが、原子力事業者みずからの財産を守るための原子力財産保険、それから建設工事のときの財産を守るための組み立て保険というものがございます。  事故が発生した時点では、「もんじゅ」は試運転段階でございまして、建設状態が続いているという認識のもとに、「もんじゅ」では組み立て保険に加入しておりました。この組み立て保険は、「もんじゅ」の施設、各種機器、設備などについて建設中に不測かつ突発的な事故により生じた災害をカバーする保険でございます。今般の事故に対する組み立て保険の適用につきましては、先ほどの原因究明の結果をもとに、動燃事業団、メーカー、それから保険会社の間で鋭意協議がされているところと承知している次第でございます。  それから、メーカー側の賠償責任と申しますか、賠償請求の点につきましてでございますが、賠償請求を法的に行うことは、瑕疵担保期間、これは引き渡し後二年間でございますが、これが平成六年十二月十五日でございまして、既に過ぎておりますので、契約上の責任は問えないわけでございます。  それから、民法上の故意、過失による不法行為等の責任につきましては、設計ミスが故意であるかまたは過失によるものであるかということの立証は極めて難しいということでございまして、法的に賠償請求を行うことが難しいと考えております。  しかしながら、今回の事故報告書で取りまとめられましたように、メーカーが温度計設計ミスをしていた、それから動燃事業団はその図面を承認していたということでございますので、メーカー及び動燃事業団それぞれに責任があるわけでございます。したがいまして、メーカーも応分の負担をする、賠償に応ずるという姿勢を示しておりますので、その辺につきましてメーカーと動燃事業団で分担につきまして協議を進めているところでございます。
  23. 吉川芳男

    吉川芳男君 「もんじゅ」の質問の最後に、端的にお聞きしたいのでございますが、今後いかなる手順を経た上で、またいつごろまでに「もんじゅ」は再開をしようとするのか、お考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  24. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ただいまいろいろな貴重な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。  「もんじゅ」の事故につきましては、先ほどもお話がありましたとおり、今月二十日に公表いたしました事故報告書によりまして原因の究明が終了したところでございます。今後は、昨年の十二月より実施しております安全性の総点検を着実にかつ厳格に進めてまいりたい、そして「もんじゅ」の安全確保に万全を期すことといたしております。  また、将来の高速増殖炉開発のあり方につきまして、原子力委員会に設置した高速増殖炉懇談会におきまして十分かつ幅広い審議を行うことといたしておりますので、この中で「もんじゅ」の今後の取り扱いにつきまして審議をいたしますし、この結果も踏まえまして的確に対応していきたい、このように思っております。  なお、今後とも安全確保に万全を期すとともに、積極的な情報の公開及び提供を進めまして、地元を初めとする国民の理解と信頼の回復に向けて一層の努力をしてまいりたい、このように思います。
  25. 吉川芳男

    吉川芳男君 いろいろと画期的な文書や何かが最近次々に出るわけでございますが、ついこの間も電気事業連合会から「今後の原子燃料サイクルの推進について」という文書が公表されたわけでございます。俗にプルサーマル計画と言われているものだと思いますが、バックエンド対策についても述べられているわけでございます。この計画の持つ意味について、科技庁の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  26. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 我が国原子力政策では、使用済み燃料の中にありますまだ有用なウラン、プルトニウムを回収いたしまして再利用していくというのが基本でございます。  そういうことで、再処理で回収されましたプルトニウムにつきましては、まず既存の軽水炉で利用を進め、将来的には高速増殖炉で利用を図るということでございまして、これは現行の長期計画を含めまして、それ以前の長期計画におきましても同じような考え方で進めているわけでございます。  特に、FBRの実用化と申しますのは、現行の長期計画では二〇三〇年ごろの実用化を想定しておりますし、それ以降につきましても軽水炉との共存状態というのは当然続くわけでございまして、相当期間プルトニウムの利用が軽水炉で行われるということが前の長期計画から予定されている次第でございます。  そういうわけで、そういうようなプルトニウムの利用をしっかりしていくことが再処理事業推進にも必要でございますので、そういうようなことを今回の原子力委員会で方針を定めまして、それを踏まえまして閣議の了解もしたわけでございます。これも国民の理解と申しますか、地元の関係者を含めまして、核燃料サイクルに対する合意形成あるいは改めて国の方針を示してほしいという要望に沿ったものでございまして、これを契機にさらに地元の方々、国民の皆さんの御理解を得るように努力してまいりたいと考えております。
  27. 吉川芳男

    吉川芳男君 最後に、先月の二十三日に総理大臣あてに提出されました福島、新潟、福井の三県知事の「今後の原子力政策の進め方についての提言」について、科技庁の受けとめ方、見解についてお聞かせ願って私の質問を終わります。
  28. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 昨年の一月かと思いますが、福井、福島、新潟の三県知事からの御提言がございまして、それに基づきまして原子力委員会といたしましては原子力円卓会議を開く等、合意形成に努めてまいりました。  それから、通産省におかれましては、総合エネルギー調査会で、当面の具体的なプルサーマルの問題とか使用済み燃料管理の問題について御検討されていらっしゃいました。  そういうものを合わせまして、先ほどの原子力委員会決定あるいは閣議の了解に達したわけでございまして、それにつきましては、二月四日でございますか、大臣からも三県知事に協力要請をした次第でございます。  その中で、三県の知事は、国のそういう努力につきましてはおおむね評価をいただいておりますが、プルサーマルとか使用済み燃料管理の問題、使用済み燃料貯蔵施設をふやすような問題につきましては、地元の理解を得るのがなかなか大変でありますので、国としても一生懸命理解を得るように努力してほしい、そういう要望がございまして、我々もその要望に沿ってやっていきたいと考えております。
  29. 高橋令則

    ○高橋令則君 平成会の高橋でございます。  まず、質問に入ります前に、大臣は風邪を引かれて体調を崩されたというふうに伺っておりましたが、お元気にお出になられましてまことに大慶に存じます。科学技術行政の最高責任者として、そしてまた国事多端の折から、国務大臣として、これから十分御自愛の上御精励をいただきますようにお祈りを申し上げます。  質問をさせていただきます。  一番先の質問ですけれども、先ほど吉川委員からもお話がございましたが、このたびの平成九年度、そしてまた、私ども必ずしも補正でやることに賛成はいたしておりませんでしたが、平成八年度の補正予算で計上された科学技術関係の全体の予算伸びといったものは、科学技術基本計画の着実な推進に資するものだというふうに全体としては評価をいたしております。  しかしながら、今後のことを考えますと、量的な問題として、まず平成八年度は補正で千五百五十億ぐらい、その前が二兆八千億ちょっとですから三兆弱、そしてまた平成九年度がちょうど三兆ということでして、あと三年に十一兆円積まなければならない。そうしないと十七兆円の当初目途が達成できないということになります。粗っぽい試算をしていきますと、今後毎年一〇%ずつ伸ばさないと達成できない、そのような数値に私には見えます。非常に財政状況が厳しいわけでございまして、とてもじゃないけれども今申し上げた数値を今後達成していくというのは、至難のわざとは言いませんけれども、相当なお覚悟が要るんじゃないかと。  大臣は閣議不統一をも辞さないというぐらいの気持ちで取り組まないと、これは表現が適当じゃありませんけれども、そのぐらいの気持ちじゃないとできないのではないかと私は心配をいたしておりますが、もう一度、御熱意と決意のほどを承らせていただきたいと思います。
  30. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ただいまのお尋ねでございますが、まず冒頭に、第二次橋本内閣で入閣させていただいた第二回目の閣僚懇談会におきまして、私は、総理以下全閣僚の御出席の中でこんなことを申し上げました。日本のエネルギー問題というのは日本の政治全体絡みでやらないと大変なことに将来なるんじゃないかと。  例を挙げてはどうかと思うのでありますが、例えば今の沖縄の問題なんかを振り返ってみますと、戦後五十年間あの問題に対して日本の政治全体が本当に真剣に取り組んでおったであろうけれども、やはり今の時点になってみると、防衛庁あるいはまた外務省のみならず、日本の政治全体絡みでやらなければならない大きな問題になっているわけであります。  これと同じように、エネルギー問題あるいは科学技術振興というものを考えますと、御案内のとおり政府で十七兆円という事業計画を決定いたしまして、これを達成するには単なる科学技術庁、通産省、エネルギー庁だけの問題じゃない、そういった意味で総理以下みんなの力をぜひかしていただきたいということを第二回目の閣僚懇談会で私は強く要請をいたしました。  したがいまして、先ほどの話のように、プルサーマルの問題にしましても、早速三県知事を、総理の御指示もあったわけでありますが、私と通産大臣と、私は通産省まで出かけてまいりました。今まで両大臣が一つの役所で一緒にやるということは余りなかったそうでありますが、今の縦割り行政というものの現状を見まして、行政改革あるいは財政改革その他いろいろ産業構造改革等を見ますと、やはりそういった弊害を乗り越えて日本が大きく二十一世紀へ向かって転換しなければならない時期を踏まえますと、私は科学技術行政そのものも、御指摘のように、本当にこれから私たちは次の世代のために今まで以上に努力しなければならぬなと、こんな気持ちでやってまいりたいと思います。  詳しいことはなお後でもし質問があればお答えしたいと思います。基本的な考え方だけを申し述べておきます。
  31. 高橋令則

    ○高橋令則君 今仰せのような御決意でもってぜひ実現できるように、達成できるように御努力いただきたい、このようにお願いをいたします。  それから、今お話がありましたような大変な熱意でもって研究費を積んでいった場合の今度は使い道の問題です。いろいろ研究費の充実に絡んでの各紙の論評を見ておりますと、どんどんお金はふえる、これはいいことだけれども、やりようによっては研究費バブルになりはせぬかという表現をしているのもありました。研究費バブルというのは適当な表現かどうか私はわかりませんが、要するに効率的に、いわゆる眼目的にきちんと使われない、そういう心配をしているのだろうと思うわけでございます。  これは先ほど吉川先生がお触れになりましたので私は質問にいたしませんけれども、やっぱり研究評価というものは非常に大事でございます。小委員会をつくってお取り組みになっていることは承知をいたしております。三月中に指針が出るんですね。ぜひそれを徹底して、そしてバブルというのは、国民の血税の中から、そしてまた大臣を初めいろいろ努力をされて、なおかつ使い道に変なものがあったというようなことがあったのではとてもじゃないがその後の展開ができないと思いますので、ぜひきちんと評価をして、国民の前に成果が見えるような、そういう方途について科学技術庁も責任を持って十分な取り組みをしていただきたいというふうに私は思います。  小委員会では、第三者による評価、それから評価の公開、それを出しっ放しではなくて、予算の配分とかその後のいわゆるプロジェクトチームとかいろいろなあれがあるんでしょうが、そういうチームの組み方、組織に反映させるというふうな方向をお出しになっておるようですから、私はさあるべしというふうに思います。ぜひこれはきちんとやっていただきたいとお願いを申し上げておきます。  各論に入らせていただきますが、まず一つは、ライフサイエンスの問題です。科学技術は、まさに足のつま先から頭のてっぺんまで、これは人間の体ですけれども、さらにもっと大きな意味でいいますと、土の底から宇宙のそれこそかなたまでというふうな非常に広い分野に取り組むわけです。最近、目に見えるような成果ということも絡めて、私ども自身、人類の生存というようなものも含めてライフサイエンスヘの貢献、その推進が非常に重要視をされている、私はこのように思っております。  そうはいっても、つま先から頭の云々までですから非常に範囲が広い問題でもあります。将来を見据えたライフサイエンスの振興についての大臣の御認識を承りたい、そのように思います。
  32. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ライフサイエンスは生命現象を解明し、その成果を広く利用しようとする科学技術でございます。その研究成果は、医療、農業、工業、環境保全等の各分野で幅広く応用され、健康な生活の確保、難病の克服、食糧の増産、環境の保全浄化とともに新しい技術、新産業の創出に大きく寄与するものと期待をいたしております。  科学技術庁としましても、科学技術会議の答申等に基づきまして、関係省庁と連携、協力しながらライフサイエンスを積極的に推進してまいりたい、このように思います。
  33. 高橋令則

    ○高橋令則君 そのライフサイエンスの大きな項目に、今回の平成九年度予算もそうでありますけれども、脳科学研究が非常に大きく取り上げられて予算も大きく伸びております。脳科学研究についての取り組みの現状と、今後の展開について御説明をしてください。
  34. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 脳科学の研究でございますが、先生十分御承知のとおり、アルツハイマー病等の脳精神疾患の病態の解明ですとか治療、予防及び新たな原理によります情報処理システム等の新しい技術、新産業の創出というようなものにつながりまして、御指摘のとおり脳科学の研究というのは我が国として重点的に取り組むべき課題だというふうに認識をいたしております。  御承知のとおり、アメリカにおきましては既にブッシュ元大統領が一九九〇年代を脳の十年という位置づけを行っておりまして、国立衛生研究所だけでも年間約一千億円を超えるような研究費を投入して研究を進めている分野でございます。  我が国といたしましても、このような二十一世紀に向けての重要な課題という脳科学研究につきまして、平成九年度から関係省庁合計で約百五十億円の予算を現在お願いいたしているところでございます。  この研究につきましては、関係省庁の持っておりますポテンシャルを活用いたしまして、政府全体として統一的な研究を行うことが必要というふうに私ども考えておりまして、このために我が国の脳科学研究の基本方針を示しまして、関係省庁を調整するための組織を新たに設けるなどの体制の整備考えておりますし、研究実施の現場におきましても、理化学研究所に脳科学総合研究センターというようなものを新たに設置いたしまして、同センターを中心とした関係省庁の脳科学研究関係機関の連携を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  35. 高橋令則

    ○高橋令則君 おっしゃるように、いただいた資料を見ていますと、三十七億円のものが、平成九年度百四十九億円ということで大変な伸びなんです。したがって、これがきちんと関係省庁の有機的な連携のもとに、まさにこの図にもありますようにしっかりとタッグマッチを組んで目的を達成できるように、科学技術庁がきちんとコントロールをしてやっていただきたいというふうに思います。縦割りとかばらばらとか、そういうそしりを受けないようにお願いを申し上げたいと思います。  ライフサイエンスに関連して、これは例の、最近報道もございましたけれども、遺伝子の組みかえのようないわゆる最先端のあの種の技術の安全の問題です。これは倫理上の問題もありますでしょう、受精卵のいわゆる障害卵の云々の話が私どもの目を引いたばかりでございます。あれについて、当該学会のみならず、やはり国全体として、国民が不安の念あるいは不信の念を持たないような、最先端技術のあの分野での安全規制あるいは保障というふうなものについての行政としての取り組みがあっていいのではないかと思いますが、いかがですか。
  36. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 今御指摘ございました遺伝子でございますとか微生物等の研究とか利用といいますのは、ライフサイエンスの中でも特に重要な領域の一つであるということは言うまでもないわけでございますが、今、先生、遺伝子組みかえのお話がございました。遺伝子組みかえの例をとらえて、それの安全の問題について現在どうなっているかということを御答弁申し上げたいと思います。  微生物等が外部に漏出して環境等に悪影響を及ぼしたりすることがないように、これまで研究段階におきましては、昭和五十四年の八月でございますが、内閣総理大臣決定で「組換えDNA実験指針」というものが決められております。さらに利用段階におきましては、「組換えDNA技術工業化指針」というものを初めといたしまして各省庁指針が作成されております。これらを研究者事業者が遵守するという形で安全を確保しながら研究や利用の推進が進められているところでございます。  今後とも、このような指針の適切な運用というものを図りまして、安全確保というものを図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  37. 高橋令則

    ○高橋令則君 ひところ言われているほど遺伝子組みかえとかそういうものに対するおそれとか、いわれもないとは言いませんけれども、薄れてきているようには私も思うんですけれども、そうは申しましても、やはり倫理上の問題も例えば人間の受精卵の問題ですと出てきますし、いろんな面の影響があると思いますので、これは細心の注意をもって行方を見守って、手おくれにならないというのは表現が適当じゃありませんけれども、事後の対策に追われるようなことのないようにちゃんとネットを張って行政の方も見ていただきたい。この分野の科学を推進するばかりではなくて、細心の注意も要るんだということを申し上げて、御配慮をお願いしたいと思います。  それから、時間もございますので少し飛ばせていただきまして、科学技術推進は、いわゆるそれぞれ専門の方々が熱心にお取り組みをいただく、これが最大のパワーであることはそのとおりでございます。それに対して、一般的に言いますと社会の理解それからまた次の世代を育てるというふうな意味の、底辺を支え拡大していくという努力が非常に要るんではないかと思うんです。  これについては、最近、国の科学技術政策の中でも広く取り上げられてきていることは私も承知をいたしております。平成九年度あるいは平成八年度の予算でも、科学技術の理解を深めるための、特に青少年というんですか、若い人たちへの教育を含めての予算施策というものがたくさんあるように見て私は心強く思っております。  しかしながら、何といっても難しいんですね。私が地方におりましたときに、文部省の高エネルギー物理学研究所の所長さん以下まさにトップの方々を煩わせまして、そして高校の先生と物理とか化学の研究クラブの連中を集めまして、それで例のビッグバンの話を含めて実は聞かせたんです。私は全然わからなかったんですが、むしろ若い高校生の方が目を輝かせて喜んで聞いておるんです。それがつながってくれればいいなというふうに思ったんです。これは五年ぐらい前の経験なんですけれども、あれを見て私は、大げさな取り組みもそうだけれども、もうちょっと地についたそういう、何tいいますか体得というような表現はちょっとうまくないんですけれども、地道な取り組みが非常に大切ではないかなということを痛感している者でございます。  言って聞かせて、さわらせてみせて、やってみせなければわからないと山本五十六さんが言った、元帥が言ったという話がありますが、これらを含めて一般の方々に対する科学技術への関心、理解度を高めるための方策について科技庁のお考えをお聞かせいただきます。
  38. 青江茂

    政府委員青江茂君) 国民全般におきまして、科学技術に対しましての理解が高まる。とりわけ、次代を担う若い人々におきまして科学技術に対する認識、理解というものが高まっていくということは、先生今おっしゃったとおり大変重要な課題ではないかというように思っておるわけでございます。その際に、御指摘のとおり、地についたと申しましょうか、本当にやりながら科学する喜びというものを若い人たちに伝えることができるような試みというものも私ども心がけておるところでございます。  例えば、ちょっと幾つか事例を紹介させていただきたいのでございますが、私どもの附属研究機関におきまして、夏休みに若い人たちに泊まり込みで研究所に入っていただく、そしてそこにおります現場の研究者と同じように研究にジョインしていただく、我々それをサイエンスキャンプというふうに呼んでおるのでございますけれども、そのような経験をいたしますと、先生今おっしゃるのと全く同じでございまして、若い高校生、中学生の方々が目を輝かせている。そして、その後いわゆるレポートを出してくれるのでございますけれども、そのときの喜びというものを書いていただいて、レポートバックしていただいてございます。  そういうふうな試みでございますとか、それから筑波の研究者が、これは一種のボランティアでございまして、出前レクチャーというふうな言い方をしておるのでございますけれども、自分の母校に参りまして、自分が何をやっておるのだということを後輩たちに伝える、そうするとそこに非常にいいコミュニケーションが生まれるというふうな幾つかの試みをなしてございます。今の先生の御指摘のようなラインを含めまして、国民理解増進ということに対しまして取り組んでまいりたい、かように考えてございます。
  39. 高橋令則

    ○高橋令則君 ぜひ御努力をいただきたい、そのように思います。  文部省の文教関係予算についても、理科教育の推進といいますか、そういう面でも予算計上がなされていることも承知をしておりますので、他省庁とも連携をとりながらぜひ推進していただきたい、そのように思います。  また、科学技術庁の外郭団体でそういう取り組みをしていることも承知をしています。宇宙開発事業団のあれは宇宙少年団のでしたか、国際大会もやらせていただき、私も実情を知っていますが、あのときはちょっといろんなことがありましたが、やることはちゃんとやっていただいてしっかりとお願いしたい、このように思います。  それから、ちょっと関連して宇宙開発についてお尋ねをしたいんですが、地球観測衛星「みどり」が打ち上げられています。それからまたこの十二日には、これは文部省所管になりますか、電波天文衛星「はるか」ですか、文部省の宇宙研の手によって打ち上げられたようでございます。着々進んでいるなというふうに思いますが、何せ大変なお金がかかっている話でございまして、この「みどり」を中心にこういった衛星によってどういう成果が期待できるかちょっとお聞かせをいただきたい、このように思います。
  40. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 今御指摘ございました「みどり」でございますが、昨年八月に打ち上げをいたしております地球観測衛星でございます。初画像の取得等の機能確認を昨年十一月に終了いたしまして、現在各センサーから送られてきておりますデータにつきまして地上の観測結果と照合するなどによりまして、データの検証でございますとか補正作業を行っているところでございます。今後、ことしの春以降のデータの配付開始を目指す予定となっております。  一方で、「みどり」のデータの利用の一環といたしまして種々の共同研究計画がございまして、既に「みどり」によって得られました海色や海温データを漁業や気象業務に活用するための研究等が既に着手されているところでございます。この「みどり」には、日本アメリカ、フランスが開発いたしました八つのセンサーが搭載されておりまして、陸海域と大気を総合的に観測できる世界最大級の地球観測衛星でございます。  これによりまして、二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスの濃度分布の把握によります地球温暖化のメカニズムの解明、オゾンの総量分布の計測、海面の温度やプランクトン分布の把握によります、先ほど申し上げました漁業情報等の提供というようなものに大きな威力を発揮するものと期待をいたしているところでございます。  今後とも、国内外の利用者と連携をとりながら、「みどり」から得られます衛星データを有効に活用してまいりたい、そのように考えているところでございます。
  41. 高橋令則

    ○高橋令則君 私の地元にあります岩手大学に横山先生という方がおられまして、これは御存じだと思いますが、この方は衛星による画像分析の日本でも屈指の取り組みをしている方です。この方から慫慂されまして私も若干かんだことがあるんですが、とりあえず何に利用できるかなということで、水産関係に利用しようということで職員を派遣して、何年か先生のところで勉強をさせているんです。まだ具体的な成果は上がっておりませんけれども、ランドサットを見たんですけれども、今度の「みどり」の写真を見せていただきましたら、もう格段に精度が違うんですね。もちろん、メニューというんですか、観測の項目も違いますので、随分と進歩しているなということを感心して見ました。  私は、この衛星の画像分析による成果というものがどうも私自身の経験からしてもまだ日本は十分に利用されていない、このように思います。ですから、せっかく「みどり」を打ち上げて成功したんですから、打ち上げてよかったなというだけではなくて、これがぜひ広く利用されるように、そういう面についても努力をいただきたいと思うんです。中央でばっかり利用しているのもなんですから、地方にも遺賢ありで、野に遺賢ありという言葉がありますけれども、利用できるような方策もぜひ考えて対応していただきたい、これは要望にいたします。  それから、時間もなくなりましたが、国際宇宙ステーション計画も進んでいるようでございます。拝見しますと、二〇〇二年の運用開始予定になっているようです。日本版スペースシャトルについては、どうも今新しくっくると大変お金がかかるので、試験機のHOPElXを改造して対処するとかというようなことも言われております。ぜひ国際的な貢献も含めてちゃんとできるように進めていただきたいと思います。  宇宙開発は、これはもう未踏のフロンティア空間にかかるものでございますので、非常に我々としても夢の持てる、そういう分野でございます。国の方では、宇宙開発政策大綱ということでつくられているようですが、この改訂を含めて、今後の宇宙開発についての大臣の取り組みのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  42. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ただいまも委員からいろいろな御指摘があったわけでありますが、宇宙開発というものはやはり地球環境の保全、また質の高い豊かな生活の実現、将来の新しい技術、新しい産業の創出に加えまして、人類の知的フロンティアの拡大、次世代の人材育成等にも大きく貢献する点において非常に意義深いものと認識いたしております。  したがいまして、今後とも、ただいまも御指摘がありましたように、昨年の一月に宇宙開発委員会が決定しました宇宙開発政策大綱に沿いまして、高度化、多様化する社会のニーズや厳しい財政事情を踏まえつつ、宇宙開発を着実に展開していくとともに、特に国際協力を積極的に推進しなければならないと思っておりますし、国際社会に貢献してまいりたい、このように存じております。
  43. 高橋令則

    ○高橋令則君 しっかりとお願いを申し上げたい、このように存じます。  それから、これは吉川委員から既に「もんじゅ」について非常に細かくお尋ねがございました。私からは申し上げることもないかと思いますが、二点ばかりちょっとお聞きをしておきたい、そのように思います。  一つは、プルサーマルの問題です。私もこの委員会に所属をさせていただきましてから、プルサーマルについて報道がありましたものですから、いろいろ前の文書をひっくり返して見てみましたら、新聞なんかでは「もんじゅ」がだめになったからプルサーマルだと、そういうふうにしか見えないというふうな論評が強かったわけですけれども、実際、前からの文書を見ていますと、もともとプルサーマルの利用計画というのが前からありまして、そして、六、四ぐらいの割合かな、そういう割合まであった文書などが出てまいりまして、決してそうではなかったんだなというふうな感じもしております、これは文書を見た限り。  しかしながら、経過とかそういうものは一般の人は知らないんですね、国民は知らない。これは困ると思うんです。やっぱりこういう極めて我が国の今後の原子力政策の根幹にかかわるような問題については、ちゃんとやっているから見ない方が悪いんだ、知らない方が悪いんだと言わんばかりの、そうはおっしゃらないでしょうけれども、そういうふうなことでは国民の理解は得られないと思うんです。  ですから、私はこのプルサーマルの問題についてもまさに原点に立ち返って、きちんと最初からわかるような説明をして、そして少なくとも国民に唐突な、苦し紛れにやったんだと言われないような、そういうふうな日ごろからの説明が要ると思いますし、こういう時期に当たってもそういう意味のPR、そういう取り組みが必要だな、そう思うわけでございます。  特に取り上げられておりますのは、安全性の確認が十分ではないんじゃないか、それから経済性はどうなのか。そしてまた、今私が申し上げた情報公開のありようといったことがどう考えてもこの問題についての批判の中心になっているように私には思われる。これらについての御見解はいかがですか。
  44. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 確かに今回のプルサーマルの問題につきましては、最初にプレスに取り上げられたときに、今までの路線を変更したとか修正したというところが見出しに出てしまったものですから、余計そういう印象を与えてしまっていると思います。  我々の立場は、先ほど先生御紹介いただきましたように一貫したものでございますが、国民の皆様の素朴な誤解と申しますか、我々のPR不足ではございますが、そういうものにつきましては機会をとらえましていろいろとやっていかなきゃいけないと思いますし、例えば、このように国会で御議論をいただきますことも正しい理解を進める上に非常に重要なことと考えております。  我々としましては、プレスに対しましてふだんからそのような事情を説明するといいますか努めさせていただきますが、先ほどの安全性、経済性、そういったものにつきましても、これから地元の方々あるいは国民の皆様方にもいろいろ御説明しなきゃならないと思っておりますので、いろんな機会を通しましてそういうことに努めていきたいと考えております。
  45. 高橋令則

    ○高橋令則君 ぜひその点を十分念頭に置いて取り組んでいただきたいと思います。  最後でございますけれども、「もんじゅ」の事故についてでございます。  先ほどの吉川先生のお話を聞いていて本当にそうだなと私は同感して伺っておりました。私も実はこういう言葉が浮かんだわけです、千丈の堤もアリの一穴からという言葉がございます。それに似たようなことじゃないかなと思っているんです。  新聞によりますと、例の温度計さや管を含めて手がけた工場主が、これは壊れるんじゃないかと思ったと言っていたというような報道があったんですよ。そして、ほかにもこの種のものはありますよというようなことを言っていたということが新聞を見たら載っていた、ある新聞に。これは事実かどうかわかりません。そういうものがありました。  あれだけの膨大な施設ですから、機械的ないわゆる最先端の技術をもって取り組みながらも、それを支えているのは既存の平凡な技術なんです。最先端の方にだけ目が行っちゃって、その底辺のいわゆる平凡な基礎材的なものに、基礎的なものに手抜かりがあるということはよくあることなんです。したがって、私はぜひそういった点に、今度総点検をやるそうですから、もうきちっと目を配って、土台石の材質まで気を配るというぐらいやっていただきたい。これはもう要望でございます。  それからもう一つは、これは提案ですけれども事故が起きたときの対応です。これは危機管理の問題でございます。日本ではもう今、危機管理のありようが非常にいろんな面で問われていて、必ずしもうまくいっていないという言い方が多いわけですけれども、私自身の経験からしますと、どんなマニュアルをつくってどんなことをやってもなかなかうまくいきません。結局その衝に当たった人間の資質にかかってくるんですよ。  私は提案をして終わりますけれども、災害から何から含めてやっぱり何か事故が起きたときに、ぱっと行ってそこに入り込んで指揮をする、そういうスタッフが必要なんではないかと思っているんです。そういう能力と知識のある人間ですね。どうもいわゆる役人の、申しわけないんですが、私も役人だったわけですけれども、二年交代ぐらいのローテーションでその衝につくようなのでは危機管理の指揮はできないと私は思うんです。私は山火事の指揮を三日間泊り込んで何千人の指揮をやったことがありますが、本当に困った、能力の問題で。自分の経験から推してそう思います。  ですから、私は、大変な財産を抱えて最先端のことをやっておられるわけですから、科学技術庁でも事故が起きたときにもう間髪を入れず飛んでいって仕切るというふうな意味の危機管理チームをあらかじめつくっておかれるような検討をされてはいかがでしょうか。  終わります。
  46. 水島裕

    ○水島裕君 平成会の水島でございます。ライフサイエンスの分野で私の専門に近い二つのことについてお尋ねしたいと思います。  実は私、この委員会質問をさせていただくのは初めてでございます。大変自分で言って恐縮でございますけれども、私は三年前に当時の田中眞紀子長官から私どもの発明に関しまして科学技術庁長官賞をいただいておりますので、現場をよく知っている者の一人というふうにしてお聞きいただきたいと思います。多少専門的なことになるかもしれませんけれども、大切なことですのでどうぞよろしくお願いいたします。  昨年度の十大ニュースのトップは、各社でちょっと違うかもしれませんけれども、O157でございました。このO157はことしももしかすると大きなニュースになるかもしれませんけれども、私は科学技術というものをちゃんと駆使していれば、これは一つも怖いものではないというふうに思います。  例えば、CDRグラフティングという方法がございますけれども、これでもってヒト化抗ベロ毒素抗体、易しく言いますとO157で一番問題になったベロ毒素を中和する、人に使える抗体というものが、本当のことを言えばもう日本でことしの夏には間に合うようにできて、私は今検討しておりますけれども、来年の夏には十分間に合うと思います。  と申しますのは、今私どもで行っているマウスの抗体で、マウスでやりますと、注射しておきますとO157を注射しましても全く死なないんですね。注射しないとO157をやると全部マウスが死んでしまう。ですから問題は、これを人に使えるようにするヒト化の技術だと思うんです。ところが残念なことに、日本ではこの技術、非常に基礎的な積み上げ、いわゆる本当科学技術でございますけれども、それがないために応用できないので、私どものチームも今アメリカに頼んで結構大金を投じて依頼しているわけであります。ですから、本当に国民に安心してもらえることができなくて残念だと思っているわけでございます。  この技術が確立いたしますと、もうどの抗原、どの毒素についてもすぐ対応できる、二、三カ月で対応できる。この技術がないと三、四年かかってしまうということでございます。ですから、そういう技術を日本で獲得すれば、エイズ、これはgp120というものですし、がんの抗原、これはメラノーマなど、それから難病、Fasとか言っておりますけれども、そういうものも簡単に中和、もちろん口で言うほどうまくいくかどうかわかりませんけれども、できるわけでございます。  こういうのが日本に技術がないと全部外国に頼まないと早急にできないということになるわけであります。  こういう技術の研究の延長線上はどうかと申しますと、今の技術は英国のMRCというところが特許を持っていますので、科技庁も余り気分はよくないかもしれませんけれども、この技術の延長上には抗体を使わないペプチドのライブラリーとかあるいは多糖体を使うということもできていきますので、そういう技術がどんどん発展していくと思います。  それで、研究開発局長にお尋ねしたいのは、こういうCDRグラフティングがすぐできるように膨大なデータベースを集めたり、それから解析する技術、その後は厚生省とか製薬会社ができると思いますけれども、そこまでが非常に大切であるという認識はいかがでございますか。
  47. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 先生の御専門でございますので、私から御答弁申し上げるのは適当かどうか問題でございますが、抗体を含みますたんぱく質につきましては、ライフサイエンスにおきまして、どう機能を解明していくかというのが非常に重大な課題であるという認識を持っております。そのためには、抗体と抗原の相互作用に代表されますようなたんばく質の立体構造と機能の解明、あるいはたんぱく質の機能を制御してゲノムや遺伝子の構造と機能の解明というものが重要だと認識をいたしております。  さらにあわせまして、たんぱく質、遺伝子等の研究推進する上で重要なたんぱく質や遺伝子等に関します種々のデータベースの構築、今、先生指摘ございましたデータベースの構築というものは極めて重要であるという点については、認識を同一にいたしております。
  48. 水島裕

    ○水島裕君 これは、製薬業界なんかはやはり経営を考えるわけでございますから、今の状態ですと外国に、何億円もかかるんですが、それでも頼んだ方が安いわけです。だけれども日本にこういう技術があれば今度はそれを使えるということになりますので、科技庁などが計画あるいは指導していただいてこういうデータベースをつくる必要があるというふうには思われませんでしょうか。
  49. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 科学技術庁といたしましては、ライフサイエンスの研究開発、その成果の応用というものを効果的に進めるために必要となります基盤をつくるという観点から、遺伝子、たんぱく質等、生体の基本を形づくっております物質の構造機能の研究、そのデータベース化等につきまして、体系的に何らかの方法で取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  50. 水島裕

    ○水島裕君 時間が少しありますのでもう少し詳しく申し上げますと、私もほかの分野のことを聞いてもすぐ理解ができないように、先生方もいろいろわかりにくいところもあると思うんです。  そういう抗体をつくるのは、今は遺伝子の技術が非常に盛んになりましたので、抗体の遺伝子、これは人のたんぱくをつくる、人の抗体をつくる遺伝子があるわけでございます。一方、毒素にくっつくものはマウスのものなんです。これは非常に強いものができるんですけれども、残念ながら人のはなかなかできない。ですから、例えばマウスのベロ毒素ならベロ毒素とくっつく場所の遺伝子を人の遺伝子に埋め込むわけです。それをこのCDRグラフティング、移植ですけれども、そういうふうに言っております。  ところが、それは口で言うと割合と簡単なんですけれども、これは何も医学の領域ばかりじゃなくて食料とかほかのことにも使えるわけで、酵素を阻害するとかそういうことに使えるわけでございますけれども、どういう相手にどういう構造をつくって移植したらいいかというような、これはすごい情報がたくさん要るわけでございますので、私はぜひ科学技術庁でそこまでおやりいただいて、それ以上のことをやると、薬に近寄ってくると厚生省に気兼ねをするとか、まあ本当はそういうこともする必要はないとは思いますが、いい食料が出るとすると農水省に気兼ねをするということもおありでしょうけれども、そこの技術まではぜひ日本で。  それで、NASAのいろんなことでおわかりのように、そういうことを一つやりますと必ずほかにいい成績が出てくるものでございまして、私はやはり生物学をやっておりますと、レセプターとリガンド、そういう結合というのは多糖体がすごく役割を果たしておりますので、そういうものも将来視野に入れておやりいただけるといいと思います。  そのためにも、そのもととなる抗原抗体反応、免疫のメカニズムでございますけれども、それはただくっつくというのではなくて、分子レベルあるいは高次構造、あるいはさらに進んでイオン化まで含めた原子レベルまで考えて免疫学というのを解きほぐしていきますとこういうことに応用できるわけでございます。その点、今後科技庁としても免疫学に力を入れるおつもりがあるかどうかお尋ねいたします。
  51. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 科学技術庁におきまして、従来から免疫のメカニズムの領域に関連いたしましては、科学技術振興調整費を活用いたしました免疫システムを制御する技術の開発に関する研究でございますとか、科学技術振興事業団の戦略的基礎研究推進制度を活用いたしました免疫系を中心とした生体防御のメカニズムの研究というようなものを行ってきたところでございます。  この分野は、私どもとしても極めて重要な分野であると認識をいたしておりまして、そのような認識のもとに平成九年度から新たに理化学研究所におきまして関連の研究を開始すべく、現在審議をいただいております平成九年度政府予算の中におきましてもその項目を計上いたしております。  今後とも、関係各省庁とも連携をしながら積極的な推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  52. 水島裕

    ○水島裕君 科技庁としても、ほかの目的も考えながら免疫学を推進していただくと大変ありがたいと思います。ただ、先ほどからも問題になっておりますように、免疫学者というのも非常に多いわけでございます。ですから、ただ頭がかたくごちゃごちゃ基礎的な研究をする人にお金をあげてもむだになるだけでございます。必ず、例えば今のCDRグラフティングあるいはエイズの治療とか、それから移植に非常にプラスに貢献するわけでありますし、そのほか先ほど出てきました脳の研究にも応用できる、それから医療を除けばバイオセンサーなんかにも非常に応用できるわけでございますから、そういうことをいつも頭に置きながら基礎研究をするという姿勢がないと、本当にお金のむだ遣いでございますので、ぜひ時々こういうところで進行状況などをお聞かせいただければと思います。  それから、実は質問をそちらに出しておりませんけれども、先ほど我が党の高橋委員の方から遺伝子組みかえの安全性ということで話が出ました。ちょっと気がつきましたので、お答えできたらお答えいただきたいと思いますけれども、今申し上げたような研究をやるためには、遺伝子の組みかえとアイソトープというのはほとんど不可欠で極めて重要な二つの柱に、もう一つぐらい柱があるかもしれませんけれども、なるわけでございます。  ところが、いつもアメリカとイギリスと比較しているというのも余り好かないんでございますけれどもアメリカと比較しますと、日本は規制が強過ぎるんですね。アイソトープの実験をするにしろ遺伝子の実験をするにしろ、規制が強過ぎて、こんなことを規制しなくてもいい、トランスジェニックマウスなんというのは御存じかもしれませんけれども、そういう動物をつくるといっても物すごく規制が強い。ですから、結局は面倒くさいからやらない。施設やお金がないところではやらないということになっておりますので、今お答えできればありがたいですけれども、お答えできるかどうか。
  53. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 先ほど高橋委員の御質問に私お答えいたしまして、組みかえDNAの実験指針の御答弁を申し上げました。  現在、基準内の実験数、大学を除きますけれども、組みかえDNA実験指針に示されております実験の数は年間で約四千件強というところかと存じます。さらに、基準外実験数の推移を見てまいりますと、基準外では年間に約百件から二百件あるというような状況でございます。  これらの実験が、先生今御指摘のアイソトープ、RIの規制で本来やるべき実験がやられていないというような実態があるのかどうか、私残念ながらつまびらかにいたしませんが、方向としてはRI規制そのものの物の考え方もあり得ることかと存じますので、そこら辺の調整の問題があるのかなということを今御質問をお聞きしながら感じた次第でございます。
  54. 水島裕

    ○水島裕君 これは、あり得るからじゃなくて、必ずした方がいいと思いますので、ぜひ御検討ください。  それでは次に、別なテーマですけれども、人工腎臓、特にハイブリッド型の人工腎臓ということについてお尋ねいたします。ハイブリッド型というのは、工学、化学、生物学といろんなものを組み合わせるということですけれども、通常は動物あるいは人の細胞組織と工学的なものを組み合わせた人工腎臓というふうに言ってよろしいかと思います。  先ほどからお話聞いておりますと、結構御理解はいいようでございますので、先見性には多少の疑問はございますけれども、ぜひまた御理解いただきたいと思います。  糖尿病というのは日本でも非常に多くなりまして、生命擁護あるいは機能障害の擁護ということからも非常に重要なことになっております。糖尿病を治す技術というのは理論的には物すごく簡単でございまして、血液中のグルコースが、糖が上がったらそれに応じてインシュリンが出る仕掛けが体に備わっていればいいわけでございます。これは膵臓がそうなわけでございます。ですから、それを何とかできないかということで、これもいろんなアプローチがあるわけでございます。  例えば、米国ではハイブリッド型の膵臓の治験が多分始まっていると思いますけれども日本でもそれぞれの分野では結構仕事をやっているわけでございます。  ですから、これからは医学、生物学ばかりではなくて、マイクロマシンとかあるいはインテリジェントマテリアルと言いますが、あたかも知恵があるような材料ということになりますけれども、いわゆるこういう工学的なものを一緒に集学的に研究していきますと、糖尿病はもしかしたら近い将来解決するかもしれない。そうすれば、医学の研究なんかも要らなくなると思いますので、こんなことを言う人は多分余りいないと思いますけれども、糖尿病を解決するのは厚生省の仕事ではなくて科技庁の仕事であると言っても過言でもないぐらいだと思いますが、その辺について科技庁の御意見はいかがでございましょうか。
  55. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 人工臓器に対します社会的なニーズ、これは先生今御指摘ございましたように非常に人口構造の高齢化というようなことも反映してニーズが高くなっているという認識を私ども持っております。それと、今もお話ございましたが、人工臓器の研究開発には医学のみならず生物学、電子工学それから組織工学というような幅広い分野の連携が必要であるという認識を持っております。  私ども科学技術庁といたしましては、まず昭和五十二年から理化学研究所におきまして循環系及び代謝系人工臓器に関します研究に着手をいたしております。また、平成三年から科学技術振興調整費を活用いたしまして人工心臓に関連した研究開発を行っております。また、平成九年度からは科学技術振興調整費を活用いたしまして、今お話ございましたハイブリッドの人工臓器というものに関する研究を新たにやりたいと思っておりまして、この研究につきまして研究開発の現状及び問題点を把握し、重要研究課題を抽出するというような調査実施することを検討中でございます。
  56. 水島裕

    ○水島裕君 私も科学技術庁の立場はよくわかるつもりで、本当に基礎的なところをぜひおやりいただきたいわけでございます。  今のハイブリッド型人工臓器というと一つは感覚器が考えられますね、目とか耳とか鼻とか。そのほかに重要なのは肝臓でございまして、肝臓というのは、御存じのように人間の中の巨大な合成工場あるいは解毒工場ということで、これを全部化学的、物理的な人工肝臓に置きかえることは一〇〇%不可能でございますので、これはもう肝細胞を使ったハイブリッド型のをしなくてはいけないわけです。  私がここで申し上げたいのは、人工臓器あるいはハイブリッド型の人工臓器をこれから計画なさるときに、どれが可能性があるのか、あるいは日本の技術が使えるのか、日本の進歩がここまで来ているのかということを十分お決めいただいてから研究費を投入する、あくまでもむだな研究費を使わないようにということをお願いしたいというふうに思います。  最後に、むだな研究費ということを申し上げましたけれども、先はどのように、十七兆とか、脳の研究に百五十億とか、確かに本当に額は多くなって非常にいいんですけれども一つの問題点は、必ずやはり目的も考えた、基礎学者であっても応用、医学の場合は臨床ということになりますけれども、それを必ず頭に据えながらやっていると応用までが時間が短くなるんです、ライフサイエンスの分野では、大概のことは。例えば遺伝子治療、遺伝子診断、今のグラフティングにしましてもアメリカと比べて三年から五年、下手すると十年ぐらいおくれてしまうことがあるというのは、外国人と話し合っても、そういうところが一番問題じゃないかと言われておりますので、その辺はひとつ注意していただく。  それから、やはり各分野の、名前だけのボスじゃなくて本当に能力のある、企画力と実行力のある人に研究費をつける。私どもも仲間の科学者あるいは生物学者、医学者から科技庁予算がついて非常にありがたいと言われておりますけれども、つまらない人がありがたがらないようにぜひ御注意をしていただきたいということを申し上げて終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  57. 山本正和

    ○山本正和君 少し予算面でお伺いしておきたいんですが、科学技術庁予算の総額というものがここに出ていますけれども、いわゆる我が国科学技術に対して組まれている公的資金の合計はどれくらいになっていましょうか、科学技術庁予算以外にですね。
  58. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 現在御審議いただきます平成九年度の予算におきまして科技庁関係省庁に協力を得まして集計しましたところでは、政府研究開発関係の投資資金でございますけれども、全部で三兆二十八億円という数字が織り込まれております。
  59. 山本正和

    ○山本正和君 科学技術庁予算は千七百十四億ですから、そうすると他の省庁、今の三兆三千億から五千七百億を引いた額が他の省庁が持っている予算、こういうことでよろしいですか。
  60. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 三兆二十八億円でございますけれども、さようでございます。
  61. 山本正和

    ○山本正和君 そうですね。  そこで、科学技術庁もそうですけれども、全体含めてよく言われるのは、我が国基礎研究が弱いというふうなことを言われたり、実は基礎研究なんというのは何をもって基礎研究というか非常に分類が難しいという議論もありますが、いわゆる科学技術白書で示されていることでいくと、基礎研究に対してほうり込んでいる額は大体どれぐらいで、科学技術関係のお金全体の中で何%ぐらいになるか。
  62. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 基礎研究に対します費用の件でございますけれども、全体の研究費に占めます数字ということで申し上げますと、政府民間全部ということもございますけれども平成七年度の数字でございますが、研究費総額全部で十四兆円強のうちの二兆円強が基礎研究ということでございます。したがいまして、全体の研究開発の費用のうちの一五%強が基礎研究の費用ということでございます。
  63. 山本正和

    ○山本正和君 これはよく言われるので国民の皆さんもどうもその辺が数字がわからないんですけれども、ヨーロッパやアメリカと比較した場合、これは一体高いのか、かなりのシェアを占めているのかどうか、その辺の比較はどうですか。
  64. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 各国と比べてみますと、若干年度の違いはありますけれども基礎研究研究費総額に占めますシェアでいきますと、先ほども日本が一五%強と申しましたけれどもアメリカ一六%強、それからドイツ、フランス等では二〇%を超えておりますので、そういう意味から言いますと、基礎研究に関する費用の全体の研究費に占めるシェアといいますものはまだ低い水準であると思います。
  65. 山本正和

    ○山本正和君 総務庁の統計局が出した中で、基礎研究というものについて定義してありますね。これは、この定義によってこういう分類がされているんですか。何をもって基礎研究というのか、何をもって応用というのか、その辺の部分がどうもわかりにくいんです。総務庁で言っているのは、「特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため若しくは現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究」、こういう定義になっておるんですけれども、これは具体的に言えば例えばどういう問題、分野を扱って基礎研究と言っているのか、その辺はどうですか。具体的な事例で挙げてもらったらどんなものですか。
  66. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 基礎研究は、ちょっと一般的な表現かもしれませんけれども、例えばいろいろな原理とか法則を解明するとか、それからいろいろな理論づけの根拠となるような問題を議論するとか、日本でいいますと、主として大学で行われているような研究が一般的に基礎研究だというふうに考えております。  特に、こういった数字を把握する場合には、定義は難しいものでございますので、総務庁の統計もアンケートを出しまして、研究者自身が基礎研究考えているものが基本的にはベースとなっているものでございますから、必ずしも正確じゃない点もありますけれども、一般的には今申しましたような法則とか原理原則とかそういったものというふうに認識をしております。
  67. 山本正和

    ○山本正和君 例えば超伝導、ちょっとこれ調べてみると、何か二百億ぐらいの予算がついているんですけれども、超伝導の研究というのはどっちの分野に入りますか。
  68. 青江茂

    政府委員青江茂君) 研究に、基礎、応用、開発というふうなクラシフィケーションが一つあるわけでございます。  先ほどの総務庁の調査でございますけれども、これは先生が読み上げられました一応の定義をした上で、そして研究機関調査をするわけでございます。そうすると、研究機関がそれぞれ自分たちいろんなテーマを抱えてございますが、そこで、この定義からすればこれは基礎だな、これは応用だなということを研究機関の方が独自に判断をいたしまして、それで数字を積み上げていわゆるアンケート調査に対応するということで、まさに研究現場一つの受けとめ方といいましょうか、進めるに際しましての認識といいましょうか、そういうものに基づいているわけでございます。それを全部まとめますと先ほど申し上げました一五%程度の数字になっておると、こういうことなんでございます。  超伝導というものにおきましても、単に超伝導の領域とか、いろんな多角的な研究がなされてございますから、それは多分に基礎から応用、開発、いろんなフェーズのものがなされておるということだというふうに思ってございます。
  69. 山本正和

    ○山本正和君 そうすると、例えば予算書で二百億と書いてあった場合には、その中に基礎的研究の部分も開発も応用も入っていると、こういうことですね。だから、この予算書ではどれだけあるかというのはわからないんですね。そういうことだろうと思うんです。  そこで、基礎的研究に対して外国は相当政府として力を入れている分野があるんですが、我が国は一体そういう基礎的研究に対する国の力の入れ方は外国と比較してどうですか。お金の面で言ってください。
  70. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 先ほどちょっと数字を引用させていただいたわけでありますけれども、外国との比較でも、幾つか比較の仕方もあると思っております。例えばよく一般的に言われていますのは自然科学部門の、ノーベル賞の受賞ということもございますけれども、こういう面で言いますと、アメリカとか特に欧米に比べますと非常に少ないということで、独創的な基礎科学分野では日本がまだまだこれからということじゃないかと思っております。  数字の点で申しますと、先ほど申しましたように、例えば対GDP比で基礎研究の部分ということを比較してみますと日本は〇・四%強でございます。大体アメリカとGDP比では同程度でございますけれども、ドイツ、フランスは〇・五%ぐらいでありますので、若干劣っているということだと思います。  いろいろ比べ方はあると思いますけれども、先ほど申しましたような幾つかの点からいいますと、まだ基礎研究につきましては費用的にもこれから大いに拡充すべき点があるというふうに考えております。
  71. 山本正和

    ○山本正和君 基礎研究ばっかりじゃなしに、自然科学というか科学技術全体について諸外国が力を入れている割合と、我が国が力を入れている割合がやっぱり数字で出てくると思うんですね。となると、今もちょっとお話があったんだけれども、公的な分野で見ると、これは我が国政府負担割合を見ていくと研究費全体の中で二三%程度、アメリカが三五%程度、ヨーロッパが大体四〇%前後と、こういうふうな数字が出ているんですけれども、これは間違いないですね。
  72. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 今おっしゃいました数字政府負担割合でございますけれども日本が二三%弱、アメリカが三五%ぐらいということでございまして、今おっしゃったとおりでございます。
  73. 山本正和

    ○山本正和君 そこで、実は、これは大臣にひとつ閣議の場所等で一遍議論をしていただきたいと私が思うのは、今言ったように、政府の負担というのは外国と比べてかなり少ないわけですね。そして、その中でまた基礎研究の分野についてはいろいろな議論がありますけれども、それは置いておいて、政府の中で科学技術庁が占めているのは五千幾らだったかな、三兆何がしのうちの六分の一か五分の一かわかりませんけれども、を科学技術庁が持っていると。ところが、科学技術というのは、例えば通産省もやっている、厚生省もやっている、文部省もやっている、いろんなところでやっている。となると、これだけのお金を一括して集中的に管理してしっかりと有効に使うのと、それぞれ省庁別に使われるのとでは、やっぱり効率が非常に違うと思うんですね。  そういう意味で、科学技術会議なんかでもいろいろ議論されているようですけれども、この種の問題を閣議等で、要するに我が国科学技術本当に振興するために、今のこういう省庁別に予算が配分されているにしても、これを系統的に使える、そしてそれをどこかで統括する、その役割が私は科学技術庁だと思うんだけれども、そういう議論をぜひ閣議の中でもやっていただきたいと思うんですけれども、どうですか。
  74. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 政府全体の研究開発費は、もちろん基礎研究も含んでおりますけれども、これにつきましては科学技術庁自身が調整官庁としまして予算案をつくる段階で見積もりの調整等を通じましてやっておるのが第一点でございます。  それからもう一点は、科学技術会議という場で、これは総理府の機関でございますので、関係省庁含めて全体の政府関係の研究開発投資につきまして調整をしておりまして、全体の目標の設定とか、それから具体的なテーマの選定とか、そういうことも含めて科学技術会議の場で議論しておりますので、そういったいろんな調整を通じまして、政府全体として調和のある適切な研究開発が進められるようにというような仕組みを持っておりますので、そういった場を大いに活用しまして、全体としての整合性のある研究開発を進めていきたいと思っております。
  75. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ただいま御答弁申し上げたことが現在の日本の政治の中では既に行われておるわけでありますが、やはり将来を考えますと、ほかの国の例をとってはなんでございますが、アメリカのようなああいう仕組みというものも、そろそろ日本の国も考えて、日本の政治全体から見てやはりこういった問題を取り上げていかなきゃならぬ時期に来ているんじゃないかなというようなことを最近特に私は感じておりまして、先ほどもちょっと答弁させていただいたことから考えますと、先生おっしゃることも十分私理解されることだなと、このように思います。
  76. 山本正和

    ○山本正和君 例えば、この予算書を見ても、それから長官の所信を見ましても、エネルギー問題と書いてある。これにつぎ込む場合、科学技術庁はほとんど専ら原子力とか「もんじゅ」だとかいうふうなところばかりやってしまって、それではクリーンエネルギーはどこでやっているかというと通産省がやっている。太陽光発電だとか風力発電とかやっておる。けれども本当はエネルギー問題というのは、全般的にやっていかなきゃいけないものがそういうふうに分かれてしまうと全体像がつかめない。  例えば、現在太陽光発電に我が国が占めるエネルギーのパーセンテージ、これは世界では一番、アメリカよりちょっと上ぐらいまでいっている。となると、それを有効に生かすために、科学技術庁がきちっと所管して、所管せぬでも、仮に通産省にやらせても、科学技術庁は全部それを統括するというか、そういうことでやっていく必要があるというふうに私は思うんですね。  ですから、我が国科学技術の問題、いろいろ言われますけれども、どうしてもどこかがまとめ役をするというところがないですから、大学は大学で、それでまた大学もそれぞれの大学が勝手にやっていると言ったらしかられるんですけれども、何か一貫性がないんですよ。  ですから、科学技術行政の省庁の責任者が科学技術庁であるという立場で、ひとつ何とかそういうものを連絡をしていくために取り組みをしていただきたい、こう思うんです。今度私予算委員会でも総理にかなりこの問題を聞こうと思っているんですけれども科学技術庁としても、私のところに任せてもらったらちゃんとまとめ役をできますよという絵をかいていただきたいというふうに思うんですが、その辺についての御所見はいかがですか。
  77. 近藤隆彦

    政府委員近藤隆彦君) 今、エネルギーの例をおっしゃいましたのでございますが、エネルギーにつきましては、科学技術会議におきましてエネルギー研究開発基本計画というものをつくっております。これは総理大臣の決定ということでやっておりまして、それが関係省庁に対して出されておりまして、それを踏まえて政府全体として整合性のとれたエネルギー政策ができるようにということでやっております。このような科学技術会議のテーマごとにつきましても、幾つかの項目につきましてはこういったものをやっておりまして、そういったことを十分活用して、政府全体としての個別の政策につきましても整合性のあるようなものにしようということで調整を進めております。  また、行政庁としましても、先ほど言いましたように、単年度の予算編成につきましても、科技庁が見積もり方針の調整等で基本方針を出しまして、各省庁のヒアリングをしまして、全体のバランスなり方向なり見ておりますので、そういったことをさらに活用していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  78. 山本正和

    ○山本正和君 最後に要望だけしておきますが、総理大臣が議長なんですよ、科学技術会議というのは。ところが、科学技術会議でいろいろ決められたことをそのとおり各省庁受けとめて、はいと動いているかといったら、どうも動いているように見えない、こういう批判がかなりあるんですね。それは実は科学技術庁が一番よく知っているはずなんですよ、そのことは雷っていないけれどもね。その辺の問題もやっぱり指摘して、そして各省庁に協力を求めて、ひとつ本当日本の、我が国科学技術をどんどん進めていくために縄張り意識をなくすようにやろうということを、ぜひ長官、頑張っていただきますように要望いたしまして質問を終わります。
  79. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 民主党・新緑風会の中尾でございます。よろしくお願いします。  私の質問で動燃の中野理事さんに参考人でおいでいただきまして、お忙しいところまことにありがとうございました。私も、まず最初に「もんじゅ事故について何点か伺いたいと思います。先ほどから質疑がございましたので、一部重複することをお許し願いたいと思います。  この「もんじゅ事故については、昨年五月二十三日の報告書、そして去る二十日に、原因究明の最終報告書と受けとめてもいいんだろうと思いますけれども、出されました。それを読ませていただきまして、これまでも指摘されておりますように、重大事故原因といいますか、チェック体制の甘さ、あるいはメーカー側の設計ミス等々が挙げられております。そして、さらにはそれを厳重に審査できなかった、あるいは検査できなかった体制に問題点があるんじゃないかということも指摘されてございます。  まず最初に、ちょっと基本的なことでございますけれども、伺いたいのは、設計、製造、設置についての問題点が今回指摘されました。この検査あるいは審査体制の充実が叫ばれておりますけれども、今後どう取り組むおつもりなのか、まず基本的な考えをお伺いしたいと思います。
  80. 池田要

    政府委員池田要君) 今回の「もんじゅ事故に関連いたしまして、設計審査についてどのように取り組むかというお尋ねでございました。  原子力施設の安全規制につきましては、原子炉等規制法に基づきまして、災害の防止上支障がないこと、すなわち一般の公衆の安全が確保されることを目的に行うものでございます。このために、設置許可にかかわります安全審査、この段階におきましては原子炉施設の基本設計への妥当性を確認するということでございまして、具体的な設計につきましては、設計及び工事の方法の認可といった過程でその妥当性についての審査を行うわけでございます。  今回の事故の直接の原因になりました二次系の温度計さやの取り扱いにつきましては、昨年五月の報告書においても述べてございますけれども、今後は審査及び検査の対象としていくという方針を既に示したところでございまして、この点は着実に実施してまいりたいと考えております。現在、「もんじゅ」の安全性総点検を実施しているところでございまして、その結果、温度計さやと同様に扱う必要のあるようなもの、こういった項目が出てまいりますれば、それも審査及び検査の対象とする考えでございます。
  81. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 今の御説明で若干理解したつもりですけれども、何分研究開発炉でございまして、先ほどの御質問にもありましたけれども、いろいろな事故が想定されるわけでございますから、広範囲にわたってその基準というんですか、点検、総点検チームがこれからやられることだと思いますけれども、しっかりやっていただきたいと思います。  次の質問に移ります。  事故発生時における対応の不備については、当委員会あるいは各種の委員会質疑があったと思いますけれども、私からも一問質問させていただきたいと思います。  昨年五月二十三日の科学技術庁事故報告書では、数多くの問題点が指摘されてございます。この中で、一つは現場担当者へのナトリウム事故を想定した教育訓練の不徹底が挙げられています。それによる漏えい規模に対する事故の過小評価といいますか、大丈夫だろうということがあったと。  二点目は、ナトリウム漏えい検出器等々の不備、とりわけ中央制御室において漏えい事故を直接監視できるシステムがなかったんではないか、これは私の読み違えかもしれませんが、等々の指摘がございます。この指摘を受けて、現在稼働中の原発は五十基、商業炉ですか、あるというふうに聞いておりますけれども、この「もんじゅ」の事故の経験をどう生かしていくのか。これは関係市町村ばかりじゃなく、都道府県ばかりじゃなくて国民の大変な関心のあるところだと思いますけれども、これについてお答え願います。
  82. 池田要

    政府委員池田要君) 先生からただいま御指摘ございました商業用の原子炉施設、この施設につきましては、行政庁としましては、通産省が規制を行っておるわけでございます。  私ども科学技術庁におきましては、原子力安全委員会がこういった原子力施設全般につきましての安全性を審査してございます。そういった事務局も兼ねておりますので、こういった立場から、今回の「もんじゅ事故におきます反省点、これを商業炉にどうやって生かすのかといった御質問に対して申し述べたいと思います。  原子力安全委員会におきましては、この「もんじゅ事故に関連しまして専門家を動員した組織を設けてございます。独自の立場から原因究明及び再発の防止対策についての調査審議を行っているところでございます。昨年の九月には中間的な報告書も出してございます。  今後、科学技術庁の安全性総点検、これは昨年の秋から進めているわけでございますけれども、それから改善策等の検討状況も踏まえながら、安全委員会においては再発防止対策についての調査審議を進めることとしているところでございます。  現在、調査審議の途中でございまして、この調査審議の結果を取りまとめてまいります過程で、御指摘のようなヒューマンエラー対策等さまざまな問題について、商業炉にも反映すべき点、こういった点が出てまいりましたならばこれを関係省庁に、この場合は通産省でございますけれども、伝えるなど適切に対応してまいりたいと考えてございます。
  83. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 次でございますけれども、もう一つの大きな問題点はヒューマンエラー、エラーと言えるかどうかわかりませんけれども、大変国民の不信を買って、いまだに今回の「もんじゅ事故に対する見方が大変厳しいというのは、ビデオ隠し等々による情報の隠ぺい、これが極めて大きな影響を与えていたのではないか、信頼を失う結果であったと思うんです。  これまでの報告書を見ていますと、情報開示の必要性が強調されておる。大変結構なことだと思いますけれども、動燃並びに科学技術庁はどのように取り組むおつもりか。  ちなみに、五月二十三日の報告書では、「普段から的確な情報を提供し、」云々、「事故時の情報提供については、動燃が、事故時の情報を迅速にかつ包み隠さず公表するよう既に「自己改革推進本部」を設置し、様々な措置を講じ始めているところであり、」云々と書いてあります。「様々な措置」、これ具体的にどんな措置であるか、動燃並びに科学技術庁にお伺いしたいと思います。
  84. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 科技庁側の方の取り組みにつきまして御説明させていただきます。  先生指摘のように、原子力の開発利用を進めるに当たりましては、安全の確保に努めることはもちろんのこと、国民の理解と協力を得ることが重要でございます。御指摘のように、このためには情報を公開し透明性を高めていく、これが何よりも重要と考えている次第でございます。  そのような観点から、昨年、原子力委員会におきましては原子力政策円卓会議というのを十一回開催していただきまして、その議論をもとに、九月の二十五日には、情報公開及び政策決定過程への国民の参加ということについての委員会決定を行いました。そこでは、実質的な審議が行われます原子力委員会の専門部会等の会議を原則公開する、それから、そういうところで報告書を取りまとめる際には国民から意見を聞くということで、既にバックエンドの研究開発計画につきましては意見を聴取しているところでございますが、そういうことを具体的な措置として逐次実施しているところでございます。  それからまた、最近のインターネットを活用したり、原子力公開情報資料センターを設置するとか、各地の勉強会に講師を派遣する等、いろいろ努力している次第でございます。例えば、原子力政策円卓会議の資料を公開しておりますが、インターネットを通しまして過去半年ぐらいでアクセス回数が約三万三千件ございます。それから、電子図書館の「げんしろう」という情報を提供するものがございますが、それも月に一万一千件ぐらいのアクセスがあるということで、非常によく利用されております。  ほかにもいろいろなことをやっておりますけれども、そのような情報の公開、提供とともに、いろんな場を活用いたしまして、なるべく対話的な形式を含めながら国民合意の形成に努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  85. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 動燃の方からお答えいたします。  先生指摘のように、情報公開につきましては、昨年の「もんじゅ」の事故以来、役職員挙げまして取り組んできておるところでございます。  先生の御指摘の中に、特に情報公開に関しまして大きく分けまして二つあろうかと思います。第一点は、事故が起きた際に迅速に正確な情報をちゃんと具体的に出せるようになっているのかということでございます。事件後、休日、祭日を含めまして常に連絡担当者というのを現場の全事業所に置くようにいたしております。そして、事件、事故が起きた際には第一線の現場の責任者が直接外に向かって情報を発信していくという方策をとっておるところでございます。  その他、いわゆる社会に対してどのように情報を公開していくかということにつきましては、いろいろな施策をとっておるところでございます。まず、昨年四月には私どもの本社の広報室の中に情報公開課というものを設けまして、また各事業所におきましては情報公開総括者というものを設け、密接な連携を図りながら情報公開を的確かつ迅速に行うように指導しておるところでございます。  また、ちょうど一年前のきようになるんですが、二月二十六日、自己改革推進本部というのを動燃の中につくりました。これは、今回の事故を契機にいたしまして役職員の意識改革を行おうという運動でございまして、その中の一つに情報公開というものを入れておりまして、各地の対話集会への積極的参加とかということを通しまして、開かれた動燃を目指しておるところでございます。  その他、情報公開に関する指針を今策定中でございまして、年度内にこれを公開したいというふうに思っております。核物質防護それから核不拡散等にかかわるような事項を例外といたしまして、他は原則公開という指針でございます。  そのほかいろいろございますが、かいつまんで申しますと、インターネットをつくったり電子ファイルをつくったりいろいろと施策を行っておるところでございます。また、成果の報告会につきましては、昨年以来すべてを公開の形で成果報告をさせていただくという方策をとっておるところでございます。
  86. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 大変懇切な御説明、ありがとうございました。  長官には申し上げてないんですが、平成八年度の原子力白書をどなたかお持ちだったら長官にちょっと。七ページをお開きいただければありがたいんですが、原子力委員会の最新版。関連質問ですけれども、これを読んでいまして私大変がっかりしたんです。今、情報公開、例えばインターネットを使ったりそれから自己改革推進本部等々、大変いい取り組みだなと思っているんですが、この原子力白書を読みましたけれども全く情けない。  ちょっと紹介します。今回の「もんじゅ」についての記述でございますが、七ページの五行目、「もんじゅ」の事故にいろいろ説明がありまして、その後、「しかしながら、発生の可能性が極めて低いと考えられていたナトリウムの漏えいが実際に発生したことから、地元をはじめ、国民に大きな関心をもたらした。」、何ですか、これ。事故が起こってから少なくとも一年たっているんですよ。いろいろ情報公開と書いてあるんです。あなたたち、情報というのは何だということを、私も情報に携わってきた立場から、これは作為があるんです。「関心」、何ですか、これ。普通は、不安ですよ。余り言いたくないんですが、これはなぜかと言ったら語尾をとらえているんじゃないんです。それに対する皆さんの姿勢なんですよ。原子力行政に対する哲学を聞いているんです。  それから次のページ、例えばもう一カ所、「ひいては、原子力開発利用全体に対する信頼感を大きく失わせる極めて残念な結果となった。」、大きく失わせる結果となったでなぜ悪いんですか。「極めて残念」と入れたのは作為があるんですよ。なぜかというと、いわゆる直接当事者でなくて第三者として批評家の立場に立ちたい、これは後からで結構です。  それからもう一つ事故後にこれは問題になったでしょう、動燃が事故直後十二月十二日、福井県の県議会の議員さんに説明した中で、一番最初にこういうふうに言ったらしいですよ。「今回の事象は」と言っているんです。これは事故に訂正しましたけれども、与野党挙げて大変ひんしゅくを買ったというんですよ。  私は、今例えば情報公開の話を聞きました。これ閣議に十二月に出されて報告されていますね。これでいいとお思いですか。簡単に言って下さい。もし直すのであればやっぱりまずかったと。こんなの出して、福井県だとか当該の原発を抱える方々にしたらこれは怒りますよ。簡単に答えてください。
  87. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 御指摘の、例えば「地元をはじめ、国民に大きな関心をもたらした。」ということよりも、先生指摘ございましたように、御不安とか御不信の念を与えたというのが正しいのであろうと思っております。今後、こういうものを作成するに際しましては、できるだけ細心の注意をしたいと考えております。  我々の気持ちといたしましては、そういう地元の皆様に大変な御心配をおかけしておるわけでございますので、その辺は適切に表現するように努めたいと思います。
  88. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 これ以上言いませんけれども、やっぱりますいですよ。  それからもう一点、メーカーに対する賠償責任についてちょっとお伺いします。今回の事故の直接要因、これは温度計さや管ということが挙げられているわけですけれども、メーカーに対して損害賠償どうするのか。  これは、昨年の衆議院の科学技術委員会でも動燃の中野さんから御答弁があったと思いますけれども原因究明に関するすべての解明が終わった時点で再度総合的に考えると。その中で契約上瑕疵担保期間内における損害賠償責任の規定があるようでございまして、その瑕疵担保期間は事故が起こったときにはもう既に終了していたという話もございましたけれども、今後どうなんですか。
  89. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  先生指摘のように、昨年の衆議院の科学技術委員会で御質問をちょうだいいたしまして、原因調査その他全体が済んだところで対応していきたいというふうに確かにお答えをいたしております。また、瑕疵担保期間につきましては、御指摘のように、既に平成六年十二月十五日をもって期限切れとなっておりまして、そういう意味では契約上の責任は問えないという状況になっております。  しかしながら、動燃のこれまでの中間報告書等の中でも、ナトリウム漏えいの直接の原因温度計さや設計に起因していることは指摘しておるとおりでございます。したがいまして、メーカーもその製作者としての責任を認識しておるところでございまして、応分の費用を負担するという姿勢を示しております。ただし、動燃もこの温度計の審査におきましては、いわゆる品質管理上の完璧さがなかったとかいうようなところでの反省すべき点もあるわけでございまして、こういった事実も踏まえながら、現在メーカーと鋭意協議を行っている最中でございます。  この後の展開でございますが、一応技術的に原因調査は終了したわけでございますけれども、私ども福井県に対して異常時状況連絡書というものを近々、最終報告書になりますが、これを出す予定にいたしております。大体年度内を目標に出したいと思っております。これをもって動燃としましては今回の一連の事故に対する総括にかえたいと思っておりますので、それを今後も踏まえた上で最終的な結論を出していきたいというふうに思っているところでございます。
  90. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 時間もありませんので、続いて原子力防災計画について若干御質問申し上げます。  これまでいろいろ指摘されていますけれども我が国の原発は安全であると、安全神話に寄りかかったという指摘も確かにございます。ただ、今回いろいろ事故も起こりまして、危機管理体制の話も先ほどございました。阪神・淡路にしても、それから今回の重油流出事故にしても、だれもが予測していないところに重大な災害が起こるという教訓ではないかと思います。  平成五年十一月に、原発を抱える関係各自治体の知事さんらが、原子力発電等に関する要望書を出しておられます。その要望書の中で、緊急時において原子力施設の運転状況やいわゆる放射能の流出した場合、流れた場合にリアルタイムで観測できる、いわゆる知る方法がないかというような要望書が出されております。自治体の地域防災計画事業者の対策、この連動性が今必要だろうと思われていますけれども、こうした地域の声にどのように取り組んでおられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  91. 池田要

    政府委員池田要君) 先生指摘のとおりでございます。緊急事態が発生しました場合に、第一報の通報でございますとか、放射性物質の放出の状況事故推移、こういった情報が迅速かつ的確に事業者から施設外の関係者に提供されること、これは大変連携をとる上でも必要不可欠と存じております。  このため、原子力発電所にかかわります防災対策上当面とるべき措置ということで、中央防災会議が決定したところによりますと、緊急時の第一報の連絡体制を整備すること、それから原子力安全委員会の原子力防災指針というのがございまして、ここでは緊急時の事業者からの通報様式等も定めているところでございます。  また、関係機関の迅速な情報提供ということで、現在、安全委員会におきましては、そもそも緊急時の判断基準といったことについての具体的な審議を進めているところでございます。  さらに、災害対策基本法に基づきまして、各自治体では地域防災計画が定められてございますけれども、こういった自治体への情報提供、それから防災対策につきましての協力ですとか、こういった面での事業者の役割についても定められてございまして、緊急時には例えば現地に災害対策本部が設けられるとか、事業者との連絡のための要員が派遣されるとか、こういった施設内外の連携を図る仕組みを設けることとしてございます。
  92. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 事故が起こると第一報、情報を混乱させるとこれは大変逆に問題点が生ずると思いますけれども、しっかり取り組んでいただきたいと思います。  アメリカの場合、調べてみますと、事業者は異常事態が発生したときに十五分以内に敷地外の機関へ通報することが義務づけられていると言われております。日本の場合はこうした基準が私の調べた限りではないなと。一刻も早くというのはあるんですが、ある程度システムを、十五分なら十五分を見当でやられたらどうかというふうに思うのがまず第一点。  それから、例えば緊急避難、どこの地域へ避難するかといういわゆる緊急時の計画区域というものについても、アメリカの場合は放射性ブルームと言うそうですが、その被曝が予想される場合は原発の半径十マイル、十六キロメートル、それからあわせて食物摂取、そこの地域のものを食べてはいけないよという、二次被曝といいますか、それを避けるためにその地域を半径五十マイル、八十キロと想定しております。日本の場合は十マイル未満の八キロから十キロと。それで、食物摂取の緊急避難地域には指定していないというようなことがありまして、なぜ食物摂取の部分が指定されていないのか、時間がございませんのでこの二点簡単にお答え願いたいと思います。
  93. 池田要

    政府委員池田要君) 第一点の通報のタイミングにつきましての目安でございますけれども、この点につきましては先ほど御紹介申し上げましたように、地域における防災計画等におきまして具体的な段取りその他につきましての明確を図っておるところでございますし、地域におきましてはこのための訓練等も事業者、自治体参加のもとに進めてございますから、この中で直ちにというような趣旨で万全の対応がとられることを期待しているところでございます。  二点目に、アメリカとの比較におきましての食物摂取制限についての、例えば地域について日本では明示していないではないかといった点でございますけれども、防災指針におきましては緊急時における限られた時間を有効に利用いたしまして、周辺住民の被曝を低減するための応急措置を適切に行う必要がございます。あらかじめ、ある地域の範囲を選定しますとか、そこに重点を置いた防災対策に特有な対策を講ずることが必要であるわけでございますが、我が国におきましては、原子力発電所を中心としまして半径八キロメートルから十キロメートルといった距離を提案してございます。  ただし、先ほどブルームの例も引かれましたけれども、例えば放射性物質が放出されて食物の汚染をするといった場合につきましては、これが例えば住民に摂取されるというような過程を考えますと、それまでにはいろんな過程がございます。飲食物の加工過程でございますとか、それが一般の消費者にどういった経過で供給されるかといったことも考えますと、ある程度時間的余裕を持ってその対策を講ずることができるといったことも考えているところでございます。  なお、米国におきましては、御指摘のようにこういった飲食物の摂取制限区域として五十マイルといった区域を設定しておると承知しております。これは、こういった飲食物の摂取制限といった措置が適切に実行できますように、あらかじめ生産の分布でございますとか流通経路を調べておくというための範囲でございまして、我が国では既にこの種の調査につきましては比較的完備しておると考えてございます。したがって、事故時に適切な対策を講ずる上では十分な時間的余裕があると考えている次第でございますし、我が国におきましてはこの点、食物摂取制限区域について特段言及していないのはこのような事情によるものでございます。
  94. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 まだまだ聞きたいことを質問通告していたんですが、時間がございませんので、改めて機会を見て質問したいと思います。  最後になりますけれども、バックエンド対策、高レベル放射性廃棄物対策をどうするのかという問題を一、二点お伺いしたいと思います。  私の地元の北海道の幌延町、十二年前に動燃が高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターを計画しまして、いまだに地元関係市町村あるいは北海道もゴーサインを出していないという状況は御案内のとおりだと思います。  一昨年ですか、十二月二十八日、動燃が岐阜県東濃地区に高レベル放射性廃棄物の処分等の研究施設を設置することになった際、この研究施設にはいわゆる廃棄物も持ち込まない、超深地層の研究をするんだ、そして最終処分地にしないということを自治体や関係市と協定を結んだということが出ていまして、少し進んだのかなと。  幌延の場合は貯蔵工学センターでございますから、これとは若干研究のタイプが違うということは私も承知しておりますけれども、この幌延、十二年間動いていないんですよ。このまま私は動くことは非常に難しいなと思っていますが、例えば協定とまでいきませけれども、核廃棄物を持ち込まないとか、最終処分地にこの地域はしないよというような、そういった流れを含めて再検討、見直しの時期に来ているのではないかと思いますけれども、御見解をお聞かせください。
  95. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 先生指摘のように、動燃事業団は岐阜県の瑞浪市の方には超深地層研究所ということで、放射性廃棄物を持ち込まないということで研究を始めるわけでございますが、片や幌延の方につきましては、そういう地層の研究以外に、それに加えまして廃棄物の貯蔵も含めた総合的な研究をするセンターにしたいと考えております。  もとより、幌延におきましても廃棄物の処分そのものを行うことは考えておりません。あくまでも研究段階をやろうと思っているわけでございますので、その辺もいろいろと地元の方々とも対話を図りながら、何か前進をするようにこれから努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  96. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 そこの貯蔵センターは処分地にしないといったって、一山越えればできるという可能性があるわけですよ。だから非常に疑念を持っておるわけでございます。  あと一分しかございませんので、最後に長官、この問題、私も何度かほかの委員会でも取り上げてまいりました。いろいろな意見があります。この幌延町の中では誘致、過疎対策で誘致するというのがありますけれども、関係市町村、北海道はほとんど反対しているわけです。道民の七割が反対しているという結果も出ております。長官がこういう問題で一度もこういう人たちとお話しになったことないんです。テーブルに着いたことないんです。やっぱりこういう意見も長富みずから聞いて、そして科学技術庁考え方を含めて原子力行政をひざを交えて私はするべき時期に来ていると思いますけれども、そういうお考え、おありなのかどうか、それを一言聞いて質問を終わります。
  97. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 動燃が北海道幌延町で計画している貯蔵工学センターに関しましては、いろいろな御意見が出されておることは私も承知をいたしております。  これまでも地元を初めとする皆様との対話に努めてきたところでございますが、今後とも引き続き幅広い立場の方々との対話を図りながら、地元及び北海道の理解と協力を得て同計画が進められるよう努力してまいらなきゃならないと思います。  ただいま委員から御指摘の件につきましては、私はまだ長官就任以来余り日がたっていませんので、今後、庁内その他と十分にいろいろ検討しながら、御意見を今拝聴しておりましたので、そういったことを十分に留意していきたい、このように思います。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 問題はいろいろあるんですけれども、きょうは原子力の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  御承知のように、原子炉が使用されるようになって相当の期間がたちました。当初から、核燃料リサイクルという考え方は日本としても考えておられて、御承知のように東海村でも再処理工場が早い時期からつくられるということがありました。さらに、それを商業化して実用化するという点で六ケ所村の問題なんかも浮上してきたという経過がありました。  しかし、この経過を見てみますと、核燃料リサイクルの問題での先般の「もんじゅ」における大変なナトリウムの火災事故が非常に大きな問題となって起こっただけではなくて、御承知のように、東海村おける再処理工場でも事故が相次いで存在しておりますし、「ふげん」についてもいろいろな問題もあるというふうに話を聞いています。  だから、核燃料リサイクルという問題について、この問題がいろいろな問題にぶつかって新しい状況を検討しなければならないという状況にやっぱりなってきているんではないだろうかというふうに考えられるわけです。プルサーマルの問題が先ほども出ましたけれども、これについては前々から考えられていたということについては私は否定しません。  しかし、その問題については、位置づけは違っているんですよ、加藤さん。あなたは先ほどこの方針について変化がないと言いましたけれども、ここに私は持ってきている、原子力白書、平成七年。一九九九年の終わりまでにプルサーマルについて使用するなんてこと一つも書いてないじゃないですか。二〇〇〇年からですよ、プルサーマルについて利用すると書いているのが、年間二・六トンですよ。  だから、現在の状態のもとでプルサーマルの問題が急浮上してきたということは新たな問題なんです。これは「ふげん」の問題が起こって、こういうふうな再処理工場、いわゆる再処理の問題についての行き詰まりが生じたからこそ、新たに転換しなければならないというふうになってきているわけです。そういう問題については、私は後ほどこれ改めて聞きますけれども、そういうふうな問題があっていろいろとやっぱり変遷をしてきたと。  私は、この時期にいわゆる原子力の核燃料問題ですね、これの利用のあり方を全般的に見直して、安全の基準体制等々についてもよく検討する。そして、体制、組織、機構のあり方についてもこれから本当にどうなっていくのか、全般的な問題について検討するということが極めて重要な時期に私は今日来ているんではないだろうかと。  細かい点は抜きにして、基本的なお考えをまず最初に長官にお尋ねしておきたいんですが、長官、そういう時期とお考えになるかどうか、大して今の時期は問題ないというふうにお考えになるのか、そのことだけで結構ですからお答えいただきたい。
  99. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) お答えしたいと思います。  資源の少ない我が国としましては、ウラン燃料を有効に利用していく必要があるわけですが、使用済み燃料は再処理し、また回収されたプルトニウム等を核燃料として利用していくことが政策の基本でございます。このために、一つは再処理の推進、またプルサーマルの推進、高速増殖炉の開発、バックエンド対策等についての考え方を先般原子力委員会決定及び閣議了解をいたしたところでございます。  私としましては、これらに基づきまして、政府が一体となって、安全性の確保を大前提に、積極的な情報公開のもとに、地元を初めとする国民の理解を得ながら核燃料サイクルを着実に進めてまいりたい、このように存じます。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 長官の御答弁にちょっと私は異論があるので、それは後で申し述べさせていただきます。  今、極めて重要な時期にあるということを考えたときに、今度の「もんじゅ」の報告書本当に今の重要な時期にこたえる報告書になっているんだろうか。私は非常に疑問を持つんです、この問題について。同僚議員も何人かいろいろ質問されました。  この問題については、事故原因になった温度計だけがなぜ折れたのか、これは去年の五月における中間報告の技術的な追加説明にとどまっている。若干詳しく書いてあります。それを私は否定しません。また、この技術的な問題について解明するということは不必要だなんというふうな考え方を持っているわけでももちろんありません。それも書いてあります。さらにまた、温度計のセンサーは装着後にメーカーが無断で交換したこともわかっていますけれども、なぜそうなったのかという問題については全く触れられていないんです、この報告書の中では。  さらには、メーカーの、つまり施工や動燃の管理問題についても言及されていません。さらにはまた、「もんじゅ」の安全性の基本に関する評価や安全審査基準の見直し、今後の安全対策についても引き続き検討するというふうになって先延ばしになっているんです。もちろん、引き続き検討しますということについては、それは池田さんが先ほど言われていますからわかるわけですけれども、これは最終報告だというものであるならば、その問題について言及されて私はしかるべきだと。最終報告でないならば、第二次中間報告として出されてしかるべきではないか。私は、それほどこの最終報告という文書を重視したいんです。  さらに、続けていきますと、再現実験で鉄製のライナーに穴があいたという問題については、実際の事故とは異なる化学反応だったというふうに述べられています。しかし、動燃では、水素爆発か水素の爆発現象というふうにかつて説明していたんです。この問題についてもこの報告書では全く触れられていません。  科学技術庁は「もんじゅ」の建設を担当した動燃の監督官庁でありますから、「もんじゅ」の第一次の安全審査を行ったところであります。それが、温度計設計になぜミスが起きたのか、なぜそれが見逃されたのか、温度計のセンサーの交換がなぜ動燃が知らないうちに行われたのか、チェックはどうなっていたのか、組織体制はどうなんだ、安全審査基準はどうなんだ、もっと根本的に突っ込んだ審査があって最終報告がなされるべきだというふうに私は考えるんです。  そういうふうな点について、言うならば、安全審査基準の根本問題、体制の基本のあり方の問題、この問題については明確にされていないというふうになるならば、今日こういう形で「もんじゅ」の最終報告が出されるという点が、私が一番最初に申し上げましたように、今日のエネルギーとしての原子力の問題を考えたときに、こういう報告では極めて不十分ではないかと。  もう私が不十分とだけ力説していたのでは御納得いただけないかもしれませんけれども、新聞にいろいろひどいこと書いていますね。もう長官ごらんになっただろうと思いますけれども、「薄い内容逃げ腰報告 動燃調査にゲタ預ける」なんて書いてあります。それから「反対派真っ向批判 「落第生レポート」 安全評価もなく ビデオ隠し調査せず 推定に終始募る不信」。これほど書かれたら、私は科技庁としては一言なければ仕方ないだろうと。同僚議員からも、書き直す、改める必要があるならば改めるという態度をやっぱりとるべきではないかということが言われている。  私は、現在の原子力行政が重要な時期に来ておるときだけに、問題をあいまいにしないで徹底してやっぱり調査をして、十分に国民の信頼にこたえ得るような、そういう行政を望むという立場から申し上げているわけであります。  その点についてはいかがお考えでしょうか。
  101. 池田要

    政府委員池田要君) ただいま先生からは、今回の二十日付でまとめました報告書が最終報告書としてはおかしいんではないかといった御質問をいただきました。  今回の報告書につきましては、その位置づけについて申し上げますと、昨年の五月の段階で、今回の「もんじゅ」の事故につきましての原因、経過、そういったことについては大要を明らかにしたところでございます。今回はそのときに検討がまだ残っておりました課題を、その報告書におきましても既に指摘してございました、なぜ四十八本のうちの一本だったのかといったこと、それからその折に「もんじゅ」で起こりましたことにつきまして、化学反応ということで見きわめをつけてございましたけれども、その内容についての詳細な分析を行ったわけでございます。  今回は、こういった五月二十三日の報告書におきまして明らかにした問題についての技術的検討を終わったということでまとめた次第でございまして、これをもって科学技術庁として最後の報告と申し上げるつもりはございません。原因究明についての作業を終えたということでございます。  ただいま先生から御指摘あったような安全評価の問題でございますとか、それからそのほかにも安全審査上どういった改善がこれから必要なのかといったことにつきましては、今後、安全委員会におきましての議論もございますし、行政庁としましても、そういった点は今回の原因究明の過程で得ました知見を踏まえて検討することにしてございます。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 実は去年、科技庁長官をやっておられた先任の中川長官、あの方にこの問題を質問したんですよ、同じ場所でね。そのときは、加藤さんも池田さんも今かわっておられるから、当時は岡崎さんと宮林さんだったわけです。そのとき長官が、安全審査の基本にかかわる問題についてこう答弁されたんです。  今は結論をまとめる前の段階ですと。去年の夏前ですね、答えたのは。基本的にはこの事故を教訓として、改善すべきものは徹底して改善するという方針でその責任を全うしなければいけないと考えておりますと。今後の最終報告を出してまいります。そのときに明らかにしてまいりたいと。そして、これまでも我々は法体系で安全審査をやってきましたと。しかし、今回、このような事故を教訓にこの全般について、私どもは私どもとして、また安全審査のあり方、温度計などについても、このようなことを起こさないために人知のあらん限りの努力をするという観点から、どういうやり方が正しいのか、それはそれとして研究開発の実験炉等について、当庁の所管するところについてともかく一回見直しをしますと。こういう立場で今鋭意進めているところでありますと。  中川長官がそういう説明を去年なさってくださったものですから、ですから私は最終報告でそれらの問題が明らかにされるものだと考えていたわけです。  それを見て、新聞でも最終報告という字がずっと出ています。それで、私はこれを読んでみますと、こういうような中川長官のお答えになった答弁がほとんど触れられていないではないかと。こんな重要な時期にこういう問題が抜かされてしまったんでは、私はこれは非常に問題じゃないかというふうに考えたものですから、今多少強い言い方をさせていただいたわけです。  そして、もう一つの問題については、この問題のときも、先ほども問題になりましたけれども、結局「もんじゅ」の設工認の問題、この問題についての報告、公表される問題の中で、長官御承知のように、このときの問題についてはいわゆる耐震設計上のデータというのはほとんど空欄になっているんです。書いていないんです。  そして、何でこれは書いていないんですかという質問に対して、当時の宮林局長さんがおっしゃったのは、核物質防護とか財産権の保護、これを理由にして非公開の理由だというふうに述べたんです。私はそれはおかしいんじゃないですかと。そして、原子炉の揺れを調べる固有周期が核物質防護の問題とどういう関係があるんですか、あるいはまた非公開にされている「もんじゅ」の配管系のデータや個別の機械の固有振動数、これが財産権の保護として非公開にしなければならない理由はどうあるんですかと。お答えになりませんでした。  そして、その後この問題については、今現実に進んでいるように情報公開というのが大きな問題になってきて、原子炉の問題についても、国民の完全なやっぱり理解を得るようにするためには情報公開というのが非常に必要だというふうなことがいろいろと議論されてきておると、国会の中でも。  こういう問題も含めて、そういうような完全なやはり安全審査基準の問題も、組織、機構、体制のあり方についても、同時に情報公開の問題についてもきちっとした対応をぜひともお願いしておきたいと思うんです。簡単で結構ですが、長官に二曹御答弁がいただけるとありがたいんですが。
  103. 池田要

    政府委員池田要君) 事務的な内容もございますので、お先にちょっとコメントさせていただきます。  今、二つの大きな点を御指摘ございました。  安全審査体制についての改善ぶり等、今回の報告にないんじゃないかといった点でございますけれども、今回の「もんじゅ」の事故にかんがみまして、審査から設計に至る検査の段階までどういうふうに取り組んでいったらいいのか、こういった点につきましては、現在、原子力安全委員会におきましても研究開発段階の原子力施設の安全確保のあり方について検討が進められているところでございます。こういった内容も踏まえて改善すべき点は改善してまいりたいと考えてございます。  それからもう一つ、「もんじゅ」に関連しまして設工認関係の図面等非公開部分を公開すべきじゃないかといった御指摘ございました。  もとより、私ども原子力につきまして国民の信頼感、安心感を得てまいりますためには情報の積極的な公開が重要だと考えてございます。特に、原子力の安全ということでの情報につきましては、核物質防護といったような観点からどうしても非公開にせざるを得ないものを除きましては公開するのが基本だと考えてございます。  平成七年九月に、先ほど御指摘ございました、ちょっと具体的に申し上げますけれども、「もんじゅ」の設工認の申請書、これにつきましても財産権の保護の観点から非公開とした部分がございました。しかしながら、「もんじゅ事故の教訓を踏まえまして、この点につきましてもできる限り公開しようということで、現在、動燃事業団におきましてもこの範囲の見直しについて進められておるところと承知してございます。  科学技術庁におきましては、これまでも天然ウランの輸送情報の公開でございますとか、それからトラブル情報、こういった迅速な公表等にも努めてきているところでございます。  今後とも、原子力安全にかかわります情報の公開につきましてはさらに積極的に取り組んでまいりたいと存じてございます。
  104. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) ただいま御指摘の点につきましては、日本のエネルギー、特に私の庁で扱っている原子力関係につきましては、これはどうしても国民の理解と、不安感を払拭しなければ将来進めることができないわけでございまして、それには、やはり事故原因あるいはまた点検等、あるいは審査のあり方、そういったものにはさらに慎重の上に慎重を重ねて、そして国民の理解を得ながら進めなきゃならぬ大きな問題であるので、私はただいま御指摘の点につきましては十分に留意してこれからも取り組んでいかなきゃならない、このような気持ちで今聞いておりました。今後ともそういった線で努力してまいりたいと思います。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 努力のほどを続けてくださるように重ねてお願いをいたしておきたいと思います。  それで、先ほどの加藤さんのお話に戻るんですが、きのうのあなたの衆議院での答弁に関して、高速増殖炉の実用化は二〇三〇年ごろ、この間プルトニウムを既存の軽水炉で使うという方針は原子力長期計画で打ち出しているとして、従来からの方針に変わりはないというふうに答弁なさった。  従来の方針から、プルサーマルを使うということが一貫して変わりがないんだということになると、先ほど来質問なさった方もありますけれども、プルサーマルという問題についてほとんどの人が知らない。プルサーマルについては、知らないのを知らす必要がない、方針に変化がないんだから知らす必要がないということにもなりかねない。ここらあたりは私は厳格にしておいていただきたいと思うんです。  問題は、先ほども言いましたように、平成七年の原子力白書には二〇〇〇年まではプルサーマルについては使用の計画全く入っていないんですから、そういうことを考えて、この問題については先ほどの答弁については私は改めていただきたいと思いますが、局長、いかがでしょうか。
  106. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 原子力白書の方は現在ちょっとつまびらかにしておりませんが、一般的に原子力白書というのは一年間にあった年報でございますので、その年にどういうことがあったかということを記述するのが主たる目的でございます。  したがいまして、例えば先ほど一九九九年という話がございました。電事連が発表したものでございますが、それはことしの二月に発表したものでございますので、今度の原子力白書には当然触れられる話だと考えております。  それから、先ほど長期計画の話がございました。前回の長期計画平成六年の六月でございますが、前回の長期計画には、「具体的には、一九九〇年代後半から加圧水型軽水炉と沸騰水型軽水炉それぞれ少数基において利用を開始し、」というのが前回の長期計画に入っております。  そこが今回の閣議了解の後、電力の発表によってもう少し具体化されましたが、三基、四基というふうに具体化されましたが、前回の長期計画を受けましても、少数基、一九九〇年代の後半から使うということを明記している次第でございます。  そういう意味で、従来からの方針が変わっているわけではないということでございます。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 私は、前々からこの問題が問題にされていたということを否定しているんじゃないんです。つまり、いつからそれを最重点の柱として実用化あるいは利用化するかとかいう問題なんです。  御承知のように、この数カ月以来ですよ、プルサーマルの問題について大きく浮上してきたのは。これは新聞紙上でも大きく出されましたし、第一、御承知のように、先ほど長官もおっしゃいましたように、通産大臣とも話し合いをして、そして三人の知事さんにも協力の申し入れをなさったと。あるいは全原協の代表ともお会いして内容についてもよく伝えて、考えてほしいということでなさったと。こういうふうな今までなかった問題について努力されてきた。  こういうふうな行動がやっぱり新聞で報道されますと、プルサーマルというのは一体何なんだということになるわけです。いわゆるMOXについての利用の仕方についても、それが本当に今までのウランだけを燃やした場合と違いがあるのか違いがないのかという問題から、さまざまな問題が出てくるわけです。  そこで、私は一つお尋ねしておきたいのは、このMOXを使って安全が保障されるという根拠は一体どこにあるんでしょうか、池田さん。
  108. 池田要

    政府委員池田要君) プルサーマルの安全性についてでございますけれども平成七年の六月でございますが、既に原子力安全委員会におきまして、軽水炉へMOX燃料の装荷をした場合の安全審査の基本的な考え方をまとめてございます。  この報告におきましては、軽水炉におきましては、従来の炉心の特性を大きく変えることなく、全燃料の三分の一程度までにつきましてはMOX燃料に置きかえて使用する場合の安全性について検討したわけでございますが、諸外国でのMOX燃料の使用実績でございますとか、それから我が国での少数体の試験結果、これを当然ながら考慮に入れたわけでございます。さらに、燃料及び装荷炉心の一般的な特徴でございますとか、熱とか機械設計、それから核設計、安全評価等につきましても検討を加えてございます。  その結果、MOX燃料を使用したときの特性、挙動はウラン燃料と大きな差はない。MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料の炉心と同様の設計が可能であるということ。もう一つは、安全評価に当たりましては従来からウラン燃料炉心に用いております判断基準、それからMOX燃料の特性を適切に取り込みました安全設計の手法、安全評価の手法が適用できるといった結論を得てございます。  なお、付言させていただきますと、実際に軽水炉において採用されるという場合には、MOX燃料を使用する原子炉ごとにこれはまた申請がなされまして個別に安全性を検討することとなります。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 今お話がありましたように、国内で実験したのは美浜と敦賀です、そのニカ所でやっています。実験したのは六体だけです、あなたが今おっしゃった。六体というのは私がつけ加えたんです。  しかし問題は、この問題というのは、非常に実験を重ねて重ねて、あの「もんじゅ」の高速増殖炉の問題については常陽で何回実験しましたか。1御承知ない。四百四十体ですよ。四百四十体実験したって「もんじゅ」であんな大事故が起こったじゃないですか。たったニカ所で六体しか実験しないで安全性が確保されたなんという文書をあなた書けますか。それを安全局長が言うというのは私は本当に遺憾てしょうがないです。  この問題については、例えば外国でも一千五百体実験されているという報告も私は知っております。しかし、外国で実験されている実験の内容が必ずしも日本でそのまま適用できるというふうにはならないですよ。  先ほども問題にされましたが、御承知のように「もんじゅ」の温度計の問題、これはアメリカの機械学会での基準に基づいてやったけれどもアメリカの機械学会での基準は途中で段差のある形状の「もんじゅ」の温度計には適用できない温度計だった、その温度計を使用した。ところが、一九九一年に、アメリカの機械学会は改めて原子力プラントの機械の構造の規格として「もんじゅ」の温度計の破損につながった振動の回避に新しい条件を提案していたんです。それを担当者のメーカーも知らない、動燃も知らない。そして使っちゃった。九一年にそれが明らかになっているのに、それをまた監督しなければならない科技庁についても原子力安全委員会についても審査の対象にもしていなかった。  外国でどんないい経験があったって、私は全世界でこういう原子炉の問題についてはまだ完全に完成した状態ではないというふうに考えています。仮にいい経験があったとしても、それがすべて日本で実用化されて問題にならない、安全が保障されるという実態にはならないんです。私は、もう時間がないからずっと言ってしまいますけれども池田さん、聞いておいてくださいね。  それで、専門家指摘もいろいろあります。特段技術的な問題はないという文書も私は読みました。ところが、違う専門家の次のような指摘があるんです。原子炉の性質がウランだけを燃やす場合と比べて微妙に違ってくることがある。MOX燃料はウランなどの燃料と比べて中性子に対する反応が異なるため、燃料の配置が均一にできないし、中性子濃度の低いところに置かれた制御棒の効き目が弱くなったりする。そのため、制御棒は緊急時に原子炉を停止させる役目を果たすが、それが役立たずになりかねない。こういうふうな問題についても明確な回答が出された文書を私はまだ見ていないんです。こういうふうな反論があるんですよ、安全性の問題については。MOXでやろうとウランだけでやろうと同じだと、特段変化がありませんというような答弁では私は安全性が保障されたとは思わない。  だから、この問題についても、今原子力委員会で新円卓会議が開催される。これまで十一回やってきました、円卓会議を。問題は何もこのプルサーマルの問題だけではございません、いわゆる再処理使用の問題等も含めて全般的な問題になるわけです。こういう問題で国民的な合意をよく聞いた上で結論を出すとか、あるいは閣議なら閣議で検討するとかというふうな方法をしないでなぜこんなに急いだのかという問題についても私は問題があるということを言いたいわけです。  アメリカのマサチューセッツ工科大学の研究報告によりますと、プルトニウム利用は国際的な懸念を高め、商業利用の正否に左右されるので計画の信頼性に乏しい、このような形で日本の態度を批判している。有名なあの工科大学の研究文書であります。こういうことも私は念頭に入れていただきたいと思うんです。  ですから、現在の問題は、核燃料リサイクルはプルサーマルだけでなく、使用済み核燃料の再処理から高レベル放射能廃棄物処理問題まで幾多の問題があるわけです。技術未確立のまま、果たしてこのまま進めていいんだろうかという懸念をどうしても私はぬぐい去ることができません。  プルサーマル事業計画の見通しの矛盾がはっきりし、「もんじゆ」事故核燃料リサイクル路線の将来が不透明になった今こそ、使用済み核燃料の再処理の中止をも含めて、核燃料リサイクル路線を見直すべきではないかということ、そして白紙に戻すということ等も含めて全般的な検討を私はすべきではないだろうかと思う。  燃料の問題についての重要性ということは、最初に長官がおっしゃいましたから、そのことを私は否定するものではありません。しかし、それはそれとしてまた考えるとしても、こういう安全性の問題が依然として問題になっているときに、重要な問題をこんなに強引に推し進めるというやり方は、少なくとも議会制民主主義の中ではやるべきではないということを最後に申し述べたいわけですが、長官の御答弁を最後にお願いしたいと思います。
  110. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 最初に大臣からも御答弁がございましたように、我が国は資源小国でございまして、ウランを有効に活用して我が国の経済社会、国民生活に役立てていく、これは必要なことと考えております。  それに、将来にわたるそういうエネルギー資源の安定確保、それから放射性廃棄物の環境への負荷の低減、そういったためには使用済み燃料を再処理して再利用する、これも非常に重要なことでございます。再処理をしてプルトニウムを利用していくということは、安全性を大前提に着実に進めていけばできると我々は考えておりますし、先ほどのプルサーマルにつきましても、過去二十年以上前から我が国としては計画しております。  それから、先生指摘がございましたように、少数体による実証試験も既に済んでおりますし、新型転換炉「ふげん」におきましては同じようなプルトニウム燃料も既に六百三十八体も安全に効率よく運転しているわけでございます。  そういう成果をもとに、核燃料サイクルあるいはプルサーマルにつきましては、着実に……
  111. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さん、余りあなたが言うと、また私は反論したくなるので、次の機会にしておいてください。
  112. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 私は、科学技術庁に参りまして感じますことは、やはり日本のエネルギー問題をどうするかということをもっと通産省資源エネルギー庁が真剣に検討することが基本にあってしかるべきじゃないか、このように思います。  特に、私の役所で安全性の関係から原子力関係を担当しているわけでありますが、そういった意味では、そういったエネルギー問題に対しての国民の不安感、あるいはそういった事故発生にかかわるいろんな原因の究明、あるいは安全性の点検、そういったものは先生方からいろいろ御意見されたとおり、これからも直すべきものは直さなきゃならないでしょう。  そういった意味で、ほかの省庁と連携をとりながら、やはり日本の将来のエネルギー問題というものは科学技術庁科学技術庁なりに、今の御指摘やいろんな問題等につきまして、今よりも一層留意すべき点があるならば改めるにはばかることはないんじゃないかというふうに思っております。特に、国民に情報を公開するという前提に立ってそういった信頼感が生まれるんじゃないかということを頭に置きながらこれからも取り組んでまいりたい、このように思います。
  113. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、「もんじゅ」の事故を中心にと思ったんですが、既にいろんな議論がなされておりますので、後半にそれは行うことといたしまして、沖縄の鳥島で発射された劣化ウラン弾に関連して、若干の質問をしておきたいと思います。  まずは、原子力基本法で定める核燃料物質に劣化ウランは当たるということはそのとおりでよろしいですね。
  114. 池田要

    政府委員池田要君) そのとおりでございます。
  115. 矢田部理

    ○矢田部理君 その核燃料物質の使用、保管、廃棄等については原子炉等規制法で、略称でありますが、いろんな規制がかけられておりますが、この原子炉等規制法にそういう規制が劣化ウランについてもあることもそのとおりでよろしゅうございますね。
  116. 池田要

    政府委員池田要君) 劣化ウランにつきましては、核燃料物質として扱うことにしてございます。
  117. 矢田部理

    ○矢田部理君 一方、地位協定と言われるものを見ますると、日本に駐留するアメリカ軍隊、米軍は日本国の法令を尊重しなきゃならないという規定が地位協定十六条にありますが、この点も確認できますね。
  118. 池田要

    政府委員池田要君) 先生の御指摘のとおりでございます。  ただ、コメントさせていただきますと……
  119. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、そこまででいいんです。聞かないことまで答弁要りません。  原子炉等規制法で劣化ウランの使用とか保管とか廃棄についてかなりいろんな規制がかけられている。一方、日本に在留する米軍も日本の法令は守らなきゃならぬということになると、素朴な疑問、一般的な考え方としては当然のことでありますが、米軍が日本に持ち込んでいる劣化ウラン弾、これは劣化ウランが砲弾の中身になっているわけでありますが、これも原子炉等規制法の対象になるのではありませんか。いかがでしょう。
  120. 池田要

    政府委員池田要君) 米軍の行為につきましては、先ほど先生から地位協定についての御言及もございましたけれども、まず一般的に国際法上からも我が国の法律がそのまま適用される状況にないということについて御理解をいただきたいと思います。  したがいまして、米軍がこういった劣化ウランを砲弾に用いましたことにつきましては、直接、規制法に従って規制を行うべきであったかということについてお答えするのは適当でないと存じます。
  121. 矢田部理

    ○矢田部理君 さっぱりわかりませんね。日本の法令を守りなさいと地位協定自身にも書いてあるんです。したがって、そうだとすれば、明確な除外規定がなければ日本の法令に従うのは当たり前じゃありませんか。何かそれを除外する法律上の根拠を示せますか。
  122. 池田要

    政府委員池田要君) 先ほど申しましたように、米軍につきましては日本の国内法がそのまま適用されることになっておらないということでございます。したがいまして、この規制法がそのまま適用されることにならないということでございます。  ただ、先ほど先生から御指摘ございましたように、米軍もさはさりながら日本の法令を尊重するということでございますから、その範囲で我が国の国内法令についてどのように承知し、それを理解し、かつ一般国民に対する災害の防止等必要な措置を講ずるかということにつきましては、米軍にしかるべく考えていただく必要があると考えております。
  123. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると、確かに十六条は尊重すると書いてあるが守れとは書いてない、尊重すればいいんであって、守らなくてもいいという考え方ですか。そういうことを排除する法律上の明確な根拠はありますか。あったら指摘をしてください。
  124. 池田要

    政府委員池田要君) 日本におきます米軍の地位につきましては、御質問ではございますけれども、私からただいまの御質問に答えるのは適当でないと存じます。
  125. 矢田部理

    ○矢田部理君 原子炉等規制法は、原子力基本法もそうでありますが、平和利用ということを基本にしておって、軍事利用はできないと。したがって、日本の自衛隊が劣化ウランを使った砲弾をつくることはできないというのは明確なのでありますが、アメリカにも、日本に駐留する以上は、明確な除外規定がない以上は、日本の法令が適用になると考えるのが主権国家として当然のことでありまして、今のは全く説明になっておらないし答えられないというのが私の指摘でありますが、時間がありませんからそこだけ。まだいろんな議論がありますよ、これについては。  もう一つ、「もんじゅ」の事故に関連して先般報告がなされましたが、これはもう既に御指摘がありますように大変技術的なことを中心にした報告であって、これで最終報告とか基本的な報告という位置づけにすることは理解できないというふうに私も考えておるわけであります。  もう一つ、それを前提にいたしましてまず長官に伺いたいのは、設計ミスがあった、取りつけミスもあった、検査や管理も大変不十分だったということが方々で指摘をされてきているわけでありますが、科学技術庁として、高速増殖炉は安全だ、危険だとか危ないというのは人心を惑わすものぐらいのトーンで今日まで来たのに、これだけの事故を起こしてしまった、いろんなところでミスが発見をされたということについてどんな責任を感じ、いかなる反省をしているか、まず長官から伺いたい。
  126. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 今月の二十日に公表いたしました事故報告書によりまして「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故の技術的な原因究明は終了いたしました。今後は、昨年十二月より実施しておる「もんじゅ」の安全性の総点検を着実に進めるとともに、原子力委員会に設置した高速増殖炉懇談会において「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発のあり方について幅広い審議を行い、国民各界各層の意見を政策的に反映していくことといたしております。  なお、「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故は、事故の発生はもとより、その後の情報の取り扱いが極めて不適切であったことから、原子力政策に対する国民の不安あるいは不信を著しく高める等、社会的に極めて大きな影響を及ぼした事故であったと深く認識いたしております。  このことを十分に念頭に置きながら、原因の究明は終了したものの、今後とも引き続き積極的な情報公開を行い、原子力政策に対する国民的合意の形成、信頼の回復に向け最善の努力を尽くしていかなければならない、このように思っております。
  127. 矢田部理

    ○矢田部理君 科学技術庁としての反省がより具体的でないということは大変私は不満でありますが、せっかく技術的な問題も報告がありますので、ちなんで質問いたしますと、これはまず温度計設計ミスがあったと。設計ミスをした企業、これはどこでしょうか。
  128. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 東芝でございます。
  129. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、四十八本の温度計のうち一本だけ破損をしたということが指摘をされておるわけでありますが、設計ミスは四十八本全般にかかるというふうに伺ってよろしゅうございますね。
  130. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 四十八本同じ設計でございますので、そういうことになります。
  131. 矢田部理

    ○矢田部理君 しかし、その一本がシースを取りつけるときに曲がってしまった、これが原因で破損をしたというふうに言われているわけでありますが、これは取りつけるときに曲がったのでしょうか、それとも取りつけた後そういう現象が生じたのかが一点。  それから、他の四十七本については、取りつけ時はもちろん、取りつけ後もそういう曲がったり変形したりしていることはないのかどうか、それについてはどんな検査、点検をしたのかということの二点伺っておきたいと思います。
  132. 池田要

    政府委員池田要君) ただいまのシースが曲がって入っていたことについてのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、今回この原因究明調査をいたします過程で、当該温度計のシースにつきましては、ナトリウム流れますパイプに保温材が取りつけられた後断水があったために取りかえたという事実が判明したところでございますし、さらにそのような状況で取りつける場合にどうなるかといったことにつきましても実験を繰り返しました。その結果、そういう状況で取りつけたとすれば十分このような曲がった状況で挿入されることはあり得るといった結論になった次第でございます。  もう一つの、ほかの本数についてはどうかということでございますけれども、ほかの温度計さやとシースの関係につきましても全部調査をさせていただきました。その結果わかってまいりましたことは、シースの取りつけ方によりましては、そもそも温度計さや設計にミスがあったわけでございますが、それがナトリウム流れによって振動する、高サイクル疲労を起こすということでございますけれども、その振動をある程度抑える効果があった、正しく挿入されていた場合にはこれを抑える効果があったということでございまして、今回の原因究明の結果わかってまいりましたことは、曲がって入っていたためにそれを減衰させることができなかったと。すなわち温度計さや設計の悪さがそのまま端的に出てしまった結果、それが最初に壊れたということがわかった次第でございます。
  133. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が二番目に伺っておりますのは、他の四十七本についても、例えば振動の影響を受けて挿入後に曲がるとか変形するということはないのかあるいはなかったのか、それについてはどんな検査をして大丈夫だったということになったのかということを伺っている。
  134. 池田要

    政府委員池田要君) ほかの温度計につきましても、内部の点検等すべて調査をした結果、いずれについても破損に至るような欠陥を生じてはいなかったといったことについては確かめてございます。
  135. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 先ほどの説明にちょっと訂正といいますか、詳細に説明させていただきたいんですが。
  136. 矢田部理

    ○矢田部理君 余り詳細でなくていいんだ。
  137. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 設計は東芝が契約しておりますが、東芝は二次系全体を契約しておりまして、当該温度計の設計は石播といいますか、石川島重工でございます。
  138. 矢田部理

    ○矢田部理君 取りつけたときにシースが曲がって取りつけられた、その責任者はどういう企業でしょうか。
  139. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) いずれにせよ、二次系につきましては東芝が全体的な責任を負っていますので、総括的責任は東芝かと思います。
  140. 矢田部理

    ○矢田部理君 設計にもミスがあり、しかも取りつけにもミスがあったと。そのミスを見逃してしまった責任、まず第一次責任はどこが負うことになりますか。
  141. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) 特に設計でございますが、設計はメーカーが図面をつくりましてから動燃事業団が審査をし承認をするわけでございますから、そのときに動燃事業団も気づかなかったという意味で、動燃事業団も責任がございます。
  142. 矢田部理

    ○矢田部理君 気がつかなかった理由、どういうところに問題があったんでしょうか。
  143. 加藤康宏

    政府委員加藤康宏君) それは担当者の御判断かと思いますが、当時は、温度計につきましては、過去のヨーロッパの例で見ますと溶接部分からよく漏れると。したがいまして、溶接については細心の注意を払って審査をしたのですが、角度があるところにつきましては見落としてしまったということかと聞いております。
  144. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう動燃の見落としを許した科学技術庁なり、それから原子力安全委員会でしょうか、この問題に直接間接責任を持つ行政機関はどういう責任があるのか、そこを明確にしてほしい。
  145. 池田要

    政府委員池田要君) 今回の原因究明の過程で明らかになったことでございますけれども、本来、この温度計設計に当たりましては、さや自身がナトリウム流れによる振動を回避できることが条件でございました。そういう意味では、今回のさや設計に根本的なミスがあったわけでございます。  今回、温度計シースの挿入がどういう状況だったか、これによって減衰効果があったということは調査の結果わかってきたわけでございますけれども、そもそもどういう取りつけ方をすべきか、これが温度計全体の安全性にそれほど重要なものであるかどうかといったことについての認識はなかったものと考えてございます。したがいまして、メーカーと動燃の間でも、その取りつけ方の具体的なとらえ方についての認識はさほどはっきりしたものはなかったという状況ではないかと存じます。
  146. 矢田部理

    ○矢田部理君 安全論争というか、いろいろこの高速増殖炉については問題をかねてから指摘されておる。ナトリウム事故はフランスなどにもなかったわけではないということから考えてみると、いかにもずさんであり、でたらめであり、人任せであったという批判はぬぐい切れないと思うのであります。  そして、他の四十七本については異常はなかったというのでありますが、にもかかわらず、その具体的な中身は、この報告書によると検討していないと。四十七本について問題がなかったかどうかについては、直接調査の対象にしなかったという指摘にもなるわけでありますが、結局のところは温度計はすべて取りかえることになったという五月報告もございます。しかし、仮にこれは取りかえたとしても、負荷変動の多いプラントでありまして、ナトリウム流量を固有振動数の領域から完全に外す、解放するというのは難しいのではないかという指摘もあるのですが、この点はいかがでしょうか。
  147. 池田要

    政府委員池田要君) 今回の原因究明の過程におきましても、二次系の温度計につきましては五月の段階で明らかにしたということも先生から言及がございました。そのまま放置しておけばいずれは破損に至ったであろうという見通しもできるものでございますから、そういった意味で全部取りかえるといった判断を既にしてございます。  さらに、今回の調査の過程では、二次系とは違いますけれども、一次系についても全部健全性については確かめさせたわけでございます。ただ、二次系につきましては、この二月二十日の報告書でも明らかにさせていただきましたけれども、これはほかのものが健全かどうかということを見きわめるために、そういう結論を導くために調査をしたわけでございません。  ただ、さまざまな要因について調査をしてまいります過程で、シースと温度計との関係によっては振動の減衰といった効果も認められた、さらには、それがなぜ一本かといったことにつきましては、それを決定づける要因になったといったことまで見きわめがついた次第でございます。そういった意味では、今回の究明を通じまして、温度計さやの関係、もしくは、それがどういう状況ならば振動を回避できるのか、あるいはできなくなるのかといったことについても知見を得たと考えているところでございます。
  148. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがって、そういうことならば、四十七本についても、また時間が経過をすればやっぱり問題なしとしなかったということにもなるわけでありますが、構造そのものが先ほど指摘したように完全に振動から逃れることはできないということになると、同質の問題が起こる危険性、可能性があることをまず指摘しておきたいと思います。  もう一点、科学技術庁などが盛んに言ってきたことは、リーク・ビフォー・ブレークというんでしょうか、危険な破断等が起こる前には必ずリークが始まる、それを見て対処すれば事故になるようなことはないということを盛んに今日まで言われてきたのです。半年以上も前に既にさやの貫通があったのに、そういう破断の前にリークが始まらなかった、したがって中央制御室等でも気がつかなかったということで、従来のあなた方の説明していた原則が破綻をしたことになりはせぬかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  149. 池田要

    政府委員池田要君) 今回の原因究明の過程におきまして、温度計さやが破損に至ります過程というのは技術的にも明らかにできたと考えてございます。その際に、先生指摘のように、リーク・ビフォー・ブレークというのがあったのかないのかといった点につきましては、この点は、分析の過程におきましては、当初亀裂が生じて、それが非常に早い速度で進展したということでございまして、その段階事故の以前にリークがあったといったような事実は認めていないところでございます。
  150. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう時間が来てしまいました。  結論的には、高速増殖炉開発から撤退をすべきだという考え方に私は立つわけでありますが、これだけ安全だ、心配ないと言ってきた「もんじゅ」がいろいろなレベルでミスが重なり、検査や審査の体制も極めて不十分、その対象にすらしてこなかったというようなことを考えますと、やっぱりこれは本格的に撤退を考えた方がいいのではないかと。  長官、最後に伺いますが、もう既にアメリカは真っ先にこの問題に手をつけたが、安全性では自信が持てない、経済性にも問題があるし、安全性を追求すればするほどコストが高くなってしまうということからいち早く撤退をしました。ヨーロッパもなべて撤退の方向で、ドイツもイギリスも、フランスもスーパーフェニックス計画が挫折をしてしまった。日本だけが突出して、安全性に極めて疑問の多い、現に大きな事故を起こしてしまった高速増殖炉、このままでは国民の理解や合意は得られませんよ。  そのほかいろいろな問題がありますからいずれまたやりますけれども、私は撤退を真剣に考えた方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。長官の政治的な話を聞きたいんだよ。
  151. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 高速増殖炉は限られた資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから、核燃料サイクルの中核を占めるものであり、その意義は重要であります。  「もんじゅ」も含めました将来の高速増殖炉開発のあり方につきましては、先般原子力委員会に設置しました高速増殖炉懇談会にて幅広い検討が始まったところでございます。私は、原子力委員会委員長としまして、本懇談会の精力的な検討に期待しておりますし、懇談会の成果は今後の原子力政策に的確に反映させてまいらなければならない、このように現在考えております。
  152. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 本件に関する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会