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1997-05-23 第140回国会 衆議院 労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十三日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 荒井 広幸君 理事 大野 功統君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 岩田 順介君 理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       粕谷  茂君    河井 克行君       小林 興起君    竹本 直一君       棚橋 泰文君    能勢 和子君       綿貫 民輔君    石垣 一夫君       漆原 良夫君    鍵田 節哉君       塩田  晋君    吉田  治君       近藤 昭一君    中桐 伸五君       松本 惟子君    大森  猛君       深田  肇君    畑 英次郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         労働政務次官  小林 興起君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 松原 亘子君  委員外出席者         中小企業庁計画         部下請企業課長 宮川萬里夫君         労働委員会調査         室長      中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十三日 辞任           補欠選任   西田  猛君     石垣 一夫君   福岡 宗也君     漆原 良夫君   村山 富市君     深田  肇君 同日  辞任         補欠選任   石垣 一夫君     西田  猛君   漆原 良夫君     福岡 宗也君   深田  肇君     村山 富市君     ――――――――――――― 五月二十日  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六三号)(参議院送付) 同日  労働基準法女子保護規定撤廃中止に関する  請願石井郁子紹介)(第二八五五号)  同(木島日出夫紹介)(第二八五六号)  同(藤木洋子紹介)(第二八五七号)  男女雇用機会均等法及び労働基準法改正に関す  る請願畠山健治郎紹介)(第二九六八号) 同月二十二日  労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する  請願大森猛紹介)(第三〇六一号)  同(金子満広紹介)(第三〇六二号)  同(東中光雄紹介)(第三〇六三号)  同(正森成二君紹介)(第三〇六四号)  同(松本善明紹介)(第三〇六五号)  同(吉井英勝紹介)(第三〇六六号)  男女雇用機会均等法及び労働基準法改正に関す  る請願畠山健治郎紹介)(第三〇六七号)  同(畠山健治郎紹介)(第三一三八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十二日  雇用分野における男女差別の解消に関する陳情 書  (第三三五号) 男女雇用機会均等法を廃止し、労働者側に立つ  た施策実行に関する陳情書  (第三三六号)  時間外・休日労働及び深夜労働男女共通規制  等に関する陳情書外一件  (第三三七号)  労働基準法女子保護規定見直し反対に関する  陳情書外十五件  (第三三八号  )  労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する  陳情書外十件  (第三三九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六三号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。岡野労働大臣。     —————————————中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 岡野裕

    岡野国務大臣 おはようございます。  ただいま委員長から議題としていただきました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  中小企業退職金共済事業団及び特定業種退職金共済組合は、設立以来、それぞれ、中小企業の常用の従業員及び特定業種中小企業に期間を定めて雇用される従業員を対象として退職金共済制度運営し、中小企業勤労者福祉増進に重要な役割を果たしてきたところであります。  政府におきましては、この二法人について、行政改革一環として特殊法人整理合理化を推進し、あわせて中小企業勤労者の総合的な勤労者福祉対策を進めるため、昨年十二月二十五日の閣議決定「行政改革プログラム」におきまして、統合することを決定したところであります。  この法律案は、これに基づき、両法人統合し、新たに勤労者退職金共済機構設立しようとするものであります。  次に、その内容概要を御説明申し上げます。  第一に、勤労者退職金共済機構は、中小企業従業員に係る退職金共済制度運営し、あわせて中小企業者及びその雇用する従業員福祉増進、これを図るために必要な施設を行うことを目的とすることとしております。  第二に、勤労者退職金共済機構役員として、理事長一人、副理事長一人、理事五人以内及び監事一人を置くほか、非常勤の監事三人以内を置くことができることとしております。また、特定業種に係る業務の円滑な運営を図るため、特定業種ごと運営委員会を置くこととしております。  第三に、勤労者退職金共済機構は、この両法人業務を引き継ぎ、退職金共済契約及び特定業種退職金共済契約に係る中小企業退職金共済事業を行うほか、従業員福祉施設設置等のための資金の貸し付け等を行うこととしております。  第四に、勤労者退職金共済機構の財務及び会計、監督等について、他の特殊法人の例に倣い、所要規定を設けることとしております。  このほか、勤労者退職金共済機構設立手続に係る規定中小企業退職金共済事業団及び特定業種退職金共済組合から勤労者退職金共済機構への権利及び義務の承継に係る規定等所要規定の整備を行うこととしております。  なお、この法律は、平成十年四月一日より施行することとしておりますが一勤労者退職金共済機構設立手続に係る規定等については、公布の日から施行することとしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要について御説明を申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
  4. 青山丘

    青山委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 青山丘

    青山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍵田節哉君
  6. 鍵田節哉

    鍵田委員 新進党の鍵田でございます。おはようございます。  ただいま議題となりました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案につきまして、幾つかの質問をさせていただきたいと思っております。  まず、今、趣旨説明の中にもございましたように、村山内閣時の閣議決定に基づきます特殊法人整理合理化、こういうことで、その一環として中小企業退職金共済事業団特定業種退職金共済組合を解散して、それぞれ勤労者退職金共済機構というものに統合するということになったわけでございます。行政改革一環としてこれはなされようとしておるわけでございます。ぜひとも、巷間言われますような単なる数合わせ行革であるとか、中身のない単なる統合であるということにならないように、中身のある行革にしていただきたい、こういう観点から二、三質問をさせていただきます。  今回の統合によりまして、役員を十二名から八名にするということが明らかになっておるわけでございますけれども、今日までの役員を四人を減じるということでございますけれども、それでは一般事務局員の数はどうなるのか、また事務局経費はどうなるのかということについてはまだ明らかにされておりません。四月八日の参議院労働委員会におきます審議の中でも、平田議員質問に対しまして、平成十年四月かちのスタートであるから、これにかかる予算組織人員については、八月末の大蔵省への予算要求に向けて検討したい、こういうことでございますけれども、私たち、民間産業でずっとやってきた人間から見ますと、余り理解ができない内容になっております。  本来、民間企業でいろいろな合理化を行う、こういうときには、どの程度合理化を行えばどの程度人件費やまたその他の経費が節減できるのか、こういうことを十分検討した上でこういう組織統合などが起こるわけでございまして、それらの内容も何も明確にならないままで、ただ統合だけを行う、そして今後、そういう削減策について検討していく、こういうことはやはり全く理解ができないわけでございます。しかし、現実にそのような御答弁でございます。  その後、一カ月半ほど経過をしたわけでございますが、その間に一体どのような討議がなされておるのか、その進捗状況などにつきましてお答えいただきたいと思います。    〔委員長退席河上委員長代理着席
  7. 松原亘子

    松原政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、この両法人統合行政改革一環ということでやらせていただこうとしているものでございます。したがいまして、この結果、本当の意味において行政改革効果が上がっているということにならなければ意味がないというのはそのとおりでございます。  ただしかし、今の時点で私ども申し上げられることは、先生からも御指摘ございました役員の数を十二人から八人にする、これは法律明記をさせていただいておりますが、するということでございます。  これから来年四月までの間、まだ十カ月以上日時があるわけでございますが、その間に統合のための準備をさまざまやっていくわけでございます。特に、そのうち、職員の数ですとか予算額、これはこの八月末に大蔵省予算要求として提出をしなければいけません。そこに向けまして、今鋭意作業をやっておりますが、職員の数、現在約三百人おります。もちろん、統合効果によりましてこれがある程度スリム化する、再編も含めまし、効率的な配置をすることによってスリム化できる部分もあるわけでございますけれども、もう少しその具体的な検討につきましてはお時間をいただきたいというふうに思っておりまして、八月末に向けまして、今鋭意検討を進めつつあるという状況でございます。
  8. 鍵田節哉

    鍵田委員 これは、行政改革一環としてこの中退金組織統合するわけでありますが、これからもいろいろな組織行政改革が行われていくと思かます。そのときの基本的な姿勢として、やはりこういう行政改革をやればぞれだけの経費が節減できるのか、人員も削減できるのかというようなことも踏まえた上で検討されるのが本来のあり方だというふうに思います。そういうことを考えますと、今後もっと具体的なものを示しながら、こういう行政改革を進めていただきたいということを一点お願いしておきたいと思います。  そして、職員につきましては、やはり行政改革をやる以上は余剰人員が出てくる、スリム化していく、こういうことになってきますと、その余剰人員をどうするのか。参議院審議では、包括的にこの新しい機構に継承する、こういうことでありますから、解雇はないのだというふうに言っておられます。私自身も、余剰人員が出たからすぐ解雇だというふうなことは反対でございますから、そういうことがあってはならないというふうに思います。しかし、余剰人員が出てくるというのが本来の改革ではないかというふうにも思いますから、その場合に、そういう余剰人員が出てきた場合にどのような対策を立てようとされておるのか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  9. 松原亘子

    松原政府委員 新しい法人は、法案の中にも明記をさせていただいておりますけれども、現在中小企業退職金事業団と特退組合がやっております。その業務もそのまま引き継ぐということでございます。そういうことでございますから、一般退職金制度と各特定業種ごと退職金制度、それはそれぞれ現行のとおり独立して運営するということ覇前提になっているわけでございますから、そういう意味におきましては、職員につきましても、当然それを適切に運営するための一定職員数は必要になるということは御理解いただけるかと思います。  ただ、当然のことながら、統合ということになりますと行革効果というものも出していくことになりますし、当然出てまいるわけでございますので、管理部門等を含めまして今後業務効率化を進めていきたい、組織スリム化を図っていきたいというふうに考えておりまして、また、その過程におきましてい職員の適切な再配置といったことも考えていかなければいけないというふうに考えているわけでございます。
  10. 鍵田節哉

    鍵田委員 わかりました。  それでは、参議院の方でもいろいろ役員処遇とか待遇などについて明らかになってきておるわけでございまして,特に理事長報酬額が二千三百九十四万円ということで答弁がなされておるわけでございます。年収につきましてはわかっておるわけでありますが、退職金についても一期四年の場合の退職金ということで答弁をなさっておられますけれども、今の理事長につきましては、もう八年、二期を超えたのではないかというふうに思いますけれども、この方の退職金というのはどのぐらいになるのでしょうか。  そして、それがわかりましたら、それを高いというふうに認識されているのか、低いというふうに認識されるのか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  11. 松原亘子

    松原政府委員 特殊法人役員退職金算定方法については一定の式がございまして、それは必ずしもこの事業団だけではなく、他についてもこれが適用されているわけでございますけれども、月収掛ける在職月数、それの百分の三十六ということになっております。したがいまして、二期八年ということになりますと、これを掛け合わせますと約四千百七十万ということになってまいります。  この額自体をどう評価するかということは、さまざまな見方というのがあろうかと思いますけれども、この理事長職務内容ですとか責任の程度等を勘案いたしまして、適切な水準に定められているというふうに私どもは考えております。
  12. 鍵田節哉

    鍵田委員 民間産業でも役員退職金というのは、特にオーナー的な、そして功労のあった役員に対しては巨額の退職金が支払われるというようなこともありまして、時々株主総会などでも問題になったりするケースもあるわけでございます。  こういう特殊法人なりそれぞれの省庁関連のところの役員皆さん退職金などの計算をする場合には、やはりその方がどのぐらいの年齢退任をされたのかというようなこともかなり影響するのじゃないか。民間企業の場合でも、例えばほかの子会社に出向するとか、天下りということになるのかもわかりませんが、そういうことをやられるケースもあるのですが、それは、五十歳ぐらいから天下りしていくのと六十歳を過ぎてから行くのとでは全然その処遇の仕方も違ってくるわけでして、その辺が我々も、公務員の場合のこういう評価の仕方が非常に難しいわけで、私も一概に高いとか安いとかということを言う気持ちはありません。  今、事務次官の人事の問題がマスコミなどで言われておりますけれども事務次官に一人がなられますと、同期で入られた人はその時点で全部退任をして外郭団体に行くというふうな慣行がどうもどの省庁でもあるように聞いておるわけであります。そうなってきますと、やはりその方の生涯賃金、生涯の収入というようなものに影響するという、これはちょっとどう言っていいのかわかりませんが、省庁でもらう収入外郭団体に出てもらう収入と合わせた、生涯賃金と我々はよく言っているのですけれども、そういうものの関連の中で高いとか低いとかというふうなことが言われるのではなかろうかなというふうに思うわけなんです。  それにしましても、民間の場合などでは、六十歳を過ぎてから出向して子会社などに行った場合には、ある程度賃金などは保障があるけれども退職金などについてはほとんどがないというのが一般的ではないかというふうに私は認識をしておるわけでありまして、そういう生涯賃金というふうな面で、こういう方々の所得というのは一体どうなっておるのかということについて、何かわかっておれば教えていただきたいなというふうに思うのです。
  13. 松原亘子

    松原政府委員 なかなか難しい御質問でうまく答えられないのじゃないかという気はいたすのでございますけれども、人の生涯所得をどう考えるかということは、その方がどういう仕事をし、その成果をどういうふうに上げたかという、そのやってこられたことがどう評価されたかということとの関係で考えられるのではないかというふうに思います。単に年齢幾つだからとか、民間会社であるからどうだ、公務員であるからどうだという平均像で見て、それが十分な高さなのか、少ないのか多いのかといったようなことを論ずるのはどうかなというふうにも思うわけでございます。  今先生がお取り上げになりましたこの方について、例えば生涯賃金ということで見れば、この方は、役所に入られて勤務をされ、いろいろ業績を上げられて事務次官までなられ、そしてその後外郭団体に行かれた、こういうことでございますから、全キャリアを見て、そしてその所得がどうかということになりますと、これはなかなか一概には言えないのではないかというふうに思います。  やはり、この生涯所得云々という場合には、単に所得の額だけで見るのではなく、どういう仕事をしてこられたかといったようなことを総合的に判断しなければなかなか言えないのではないかというふうに思う次第でございます。
  14. 岡野裕

    岡野国務大臣 特殊法人役員の給与につきましては、特殊法人全般行革というようなことが俎上に上っていること、御存じのとおりであります。そのいろいろな話の中には、この種の、言いますならば、渡り鳥であるような、そうして莫大な退職金をもらってというような問題も検討課題一つでございます。  私どもも、言うべきは言う、しかしながら、特殊法人全般をどうするかという一つ執行当局の考え方もあります。というようなことで、言うことは言いますが、全般的な見通しについてはこの席ではまだ申し上げられませんので、よろしくお願いいたしたいと思っております。  なお、冒頭、新聞等によれば労働省の高級大事について云々先生おっしゃいましたが、私は、目下、先生にお願い申し上げまして、男女雇用機会均等法、これはおかげさまで参議院の方にこれから送るというところまでさせていただきました。ありがとうございました。労働省としても全力投球で、これの速やかなる可決成立というものを考えておりますので、事務次官以下の大事について、岡野裕労働大臣といたしましては、一切何にも考えておりませんので、ひとつよろしくこの辺の御理解を賜りますよう。
  15. 鍵田節哉

    鍵田委員 私は単に新聞のことを言っただけでありまして、私自身がどうということは言っておりませんので、御理解いただきたいと思います。  今、生涯賃金ということを言いましたのは、全く違う外郭団体とか何かに行かれるわけではなしに、やはり関連のところへ大体皆さん行かれるわけです。功労があるからそういう外郭団体での役職もあるのだと思いますから、生涯にわたってどの程度所得を得られるのかというのは、やはりある程度明確にしておいた方が、ほかの省庁のことでありますけれども高級官僚のまるで伏魔殿のようなことで新聞報道されるようなことのないように、むしろ生涯を通じて、やはり国家公務員でもしっかり頑張っていけばこういう形で年収が得られるのだ、また、生涯賃金がこのぐらいもらえるのだというようなものがある程度確立しておってこそ、若い官僚皆さんも一生懸命頑張って仕事をしていこうということにもなるのではなかろうか。  それが、いわゆる世論といいますか、国民の心理からどんどん離れてやっていきますと、今言いましたような伏魔殿のような形で報道されまして、むしろまじめに働いている人まで大変迷惑する。そういう人の方が圧倒的に多いわけですから、そういうまじめな人が本当にやりがいがあるような形で、そしてまた、国民皆さん理解を得るような形でやっていただきたい。  こういうことから申し上げておるわけでありまして、決してっつき回してどうこうということではございませんので、その辺は御理解いただきたいと思います。  次に、具体的な統合問題についての議論に入っていきたいと思っております。  今度は、中退金と三つの特定業種退職金共済とが、それぞれ態様が違うわけでありますけれども、その勤務態様などが違いますと退職金の問題も違う、こういう答弁がなされておるわけでありまして、そういうことから、それぞれ経理区分を別にして機構だけを統合する、こういうことでございます。  この間に統合に当たってどのような議論があったのか、それからまた、スタート時では経理区分というものをそれぞれ別にするということで言われておるわけでございますけれども、これは永久に不変なのかどうか。年金などでも統合の問題などが出てきておるわけで、全く違う制度でありますけれども、そういうふうな問題が起こってきて、ある共済に入っておった人は非常に被害をこうむるとかいうふうなことが起こってこないかどうか、そういう議論があったのかどうかということについてお答えをいただきたい。
  16. 松原亘子

    松原政府委員 この統合に当たりましてどういった議論があったかということにつきましては、今先生御指摘されましたように、経理区分が不明確になってしまって、一部の退職金共済制度が非常に苦しくなれば他の方にそのツケが回るといいますか、そういったことがあるのではないかといったようなおそれがあるという声も一部にございました。しかし、それに対しましては、私も、そういうことはないということを御説明してきたわけでございます。  現在の特定業種退職金共済制度、これは三業種ございますけれども、これもきちんと区分経理がされているわけでございます。ですから、一般中退制度と特退制度が一緒になるということになりましても、それは当然のことながら、共済者集団が違うとか、資産保有状況だって違うわけでございますし、制度の設計をするに当たりましては、脱退率がどうかということも想定して計算するわけでございますが、その脱退率も異なっているといったようなことから、一つ制度にしてしまうというのは私も適切でないというふうに考えまして、引き続きまして各制度ごとの完全な区分経理を行うということ、各経理ごとに特別の勘定を設けて整理をするというようにいたしたわけでございますし、法律上明確に、制度間での資産流用を行ってはならないということも明らかにしているわけでございます。
  17. 鍵田節哉

    鍵田委員 それでは、将来にわたってそういう統合というふうなことは起こらないというふうに理解してよろしいですね。
  18. 松原亘子

    松原政府委員 私ども、今のところ、今のところというとおかしいのですけれども、将来といいましてもいつを想定していいか、なかなか難しいのですけれども、想定される将来においてはないというふうに御理解いただきたいと思います。
  19. 鍵田節哉

    鍵田委員 その辺が非常に悩ましいところでございまして、我々としても気になっておるわけでございますが、今の答弁で一応納得をしておきたいと思います。  次に、この中退金ポータピリティーの問題がいろいろ参議院でも議論されておるわけでありますが、これからも雇用流動化というものが予測されるわけでございます。退職金というのは、すぐれて従業員の定着というのですか、そういうものを目的としてできた制度でありますから、若干ポータピリティーとは相反することになる可能性もあるわけですけれども、しかし、従業員というよりも勤労者福祉の向上という面から見ると、これは全経営者なり全国民の課題としてこれを取り上げていかなくてはならぬわけでありますから、やはりポータビリティーをできるだけ進めていただきたいという気持ちがございます。  ここに二つほど問題がありますのは、一つは、やはり加入率がまだまだ低い。私もちょっと労働省で調べていただいたのですが、特に、そういう中退金に加入する可能性のある、そういう対象になる勤労者の中で、これに入っておるのは九%ぐらいということでありますし、企業の数でも一三・五%というふうな数字が出ておるわけでありまして、このポータビリティーを実効力あるものにするためには、やはり加入率が高い、AからBに移ってもそこでも中退金に加盟しておるという実態がなかったらその実効性が出てこないわけでありますから、そういう意味では、やはり加入率をもっともっと高めていただきたいということが一つ。  それから、やはり中退金だけじゃなしに、企業年金などとポータビリティーを持たせるような研究をぜひとも一日も早くやっていただきたい。  こういうことについて何かお考えがあれば出していただきたいと思います。
  20. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生御存じでありますように、これは共済であります。まあ、あまた共済、いろいろありますけれども共済はやはり加入の皆さんの数が多ければ多いほど、人なら人、企業なら企業、多ければ多いほど安定をするものだと。  翻って、一般年金については国によるところの大きな支えがありますが、退職金についてはないというところに着目いたしましてこの種の制度をつくってやってまいりました。  ところで、今回、この二つの退職金共済を一本にしようということでありますが、やはりより多くの加入者、企業を求めるということで、例えばその促進月間を設けるだとか、新しく入った皆さんには若干の掛金のかげんをするとか、また制度に魅力がなければお客さんに入っていただけないわけですので、いい商品を売るというようなことも考えていく。あれやこれやを活用いたしまして、この基盤が安定できるような加入促進に鋭意努力をしてまいりたい、こう思っております。     〔河上委員長代理退席、森(英)委員長代理着席〕
  21. 鍵田節哉

    鍵田委員 この中退金というのは、中小企業に働く皆さんにとっては大変役に立っておるわけでございまして、これに頼っておるということであります。私たちも一生懸命加入促進のために運動してきた経緯もございます。  しかし、昨今のそれぞれの会計の状態を見てまいりますと、中退金でも平成七年度で五百十六億円の当期損失がある。累積の欠損も九百四十三億円もあるというような状況でありますし、特定業種においても同じような傾向になっておるわけでございます。これはもうやはり政府の財政赤字と同じような傾向になってくるのではなかろうかというふうに思っておるわけでありますけれども、これらを改革していくという見通しなどが立っておるのでしょうか。いかがでしょう。    〔森(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  22. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘のように、中退制度、特退制度ともこの低金利時代で非常に厳しい運用状況に直面をいたしているわけでございます。私ども、こういう中にありましても何とか制度の財政的な安定を図っていかなければいけないというふうに考えているわけでございます。  このため、一つには、中退制度につきまして、平成八年四月から予定運用利回りを四・五%に引き下げて財政の改善を進めるということにいたしました。また特退制度につきましても、現在、中小企業退職金共済審議会におきまして財政改善策というものを検討いただいているところでございます。  また、当然のことながら、資産運用をこの低金利時代でも何とかいい方向に改善していかなければいけないということがあるわけでございますので、運用手段を拡大するとか、また比較的金利の低い金融債とか生保といったようなどころでの運用を引き下げて、比較的金利のいい国債とか金銭信託等を拡充するなどのポートフォリオを改善いたしまして、資産の安全かつ効率的な運用に努めているわけでございます。  今後とも、この制度が維持され発展していくことができるように、それには何よりもこの財政的な安定、改善ということが必要だということを認識しておりまして、引き続き努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  23. 鍵田節哉

    鍵田委員 時間もございませんので最後の質問に入りますけれども、現在の掛金が最低五千円から最高三万円ということになっておるわけでございます。これらの掛金の引き上げもしながら充実をしていくということは積極的に取り組んでいただきたいのですが、やはり実際の掛金の平均はかなり低いところにあるわけですから、現行の制度の中でももっと高い掛金で加入をしていただくという方向に誘導することが十分可能なわけでございます。  そういう面では、標準的な世間の一般の水準、いわゆるモデル退職金みたいなものを示しながらやはり高目に誘導をしていくとか、それからまた、現在加入しておらない方々に対しましてはいろいろな機会でPRしていくということを言われておるわけでありますけれども、スケールメリットなどもあるというふうに言われておるわけでございまして、こういうものを生かしながら拡充に努めていく。  そして、中退金そのものは、何か各地方にはそういう支店みたいなものはないようでございますけれども、しかし、各地方の事業主の皆さんとか経営者団体、労働者団体、これらを活用しての拡大、さらには現在入っておる加入者の皆さんを通じてそのメリットを喧伝していただいて、そして拡大をしていくとかいうふうなことに努めていただきたいと思っております。  これらにつきましての決意について、ひとつ大臣でも局長でも結構ですから、言いただいて終わりたいと思います。
  24. 松原亘子

    松原政府委員 掛金の月額につきましては、平成七年にこれまで最低四千円だったものを五千円に引き上げましたし、最高月額二万六千円だったものを三万円に引き上げたわけでございます。  ただ、制度として引き上げてもそれが利用されないということでは意味がないわけでございますので、私ども、あわせまして、掛金の増額を行うということにインセンティブが与えられないかということで検討いたしまして、増額した事業主につきましてはその増額分の三分の一を一年間免除するという措置をとっておりましたけれども、特に、掛金を引き上げたということにあわせまして、平成七年十二月から三カ年間の間に増額を行う事業主については、通常三分の一の助成率なんですが、それを二分の一にするということで、なるべく高い掛金の方に移っていただくように一生懸命やっているわけでございます。  確かに都道府県レベレでのいわばきちんとした出先機関というものがこの事業団にあるわけではございませんが、相談コーナーを全国八カ所設けておりまして、そこに駐在していただいている相談員の方々、事業主団体ですとか、場合によりましては労働組合といったところとも連携をとらせていただいて、積極的なる勧誘措置、また既に加入をされている事業主の方でもさらに高い掛金の方へと移っていただくことについての勧誘など、鋭意努力をいたしているところでございます。  今後とも一生懸命やらせていただきたいというふうに思っております。
  25. 鍵田節哉

    鍵田委員 ありがとうございました。  終わります。
  26. 青山丘

    青山委員長 これにて鍵田節哉君質疑は終了いたしました。  次に、河上覃雄君。
  27. 河上覃雄

    河上委員 中小企業は我が国の社会の中でも非常に大切な役割を担っていると思っておりますが、全企業に占める中小企業の割合が九八・三%、非常に多いわけでございまして、また全労働者に占める中小企業労働者の割合も七六・三%という、質、量ともこ中小企業が日本の経済を支える非常に重要な存在であるというのはこの一端を見てもおわかりだと思うわけでございます。さらに、これからベンチャーとかさまざまな企業による雇用創出というものが期待され、中小企業の役割というものもその中でますます重要なものになると思われます。  しかし、中小企業労働条件や福利厚生というものを考えてみますと大企業とかなりの格差があるわけでございまして、本法の退職金制度につきましても同様のことが言えると思います。労働者の福祉の向上を図るため、あるいは退職金の普及充実、その意味で私は中小企業労働者におきまして非常に大事な問題であると考えます。小零細企業の普及率もいまだ低く、今後とも制度の普及と充実を図ることは大切でございます。  いずれにいたしましても、こうした中で、平成三年から七年までの加入状況を見ますと、共済契約者数が年々減少しておりまして心配をいたしております。この原因と具体的対策は、どのように労働省として取り組まれるのか、まずその決意と見解をお示しいただきたいと思います。
  28. 松原亘子

    松原政府委員 先生が今御指摘されました平成三年以降の中小企業退職金共済事業団への加入状況なのでございますけれども、年々減ってきているというふうに御指摘でございましたが、減ってはいないのでございまして、ふえ方が減っているといいますか、そういうような状況でございまして、ちなみに平成三年度末は共済契約者約三十八万社でございましたけれども平成八年度末には四十一万社というふうにトータルとしてはふえております。ただ、新たに共済契約を結ぶ方の数が、平成三年度は三万社ぐらいあったのでございますが、平成八年度はそれが二万四千社というふうにふえ方が伸び悩んできているというのが実態でございます。  私どもも、中小企業に働く方々にとりまして、この制度は極めて重要な制度だというふうに思っておりまして、何とか新しく加入していただく方々もふえていただきたいと思うわけでございますけれども、今申し上げたとおりのような過去の実績でございます。これはやはり、このところの景気動向の影響を受けているというふうに思うわけでございます。  そういう中にありましても、何とか入っていただけないかということで、新規に入っていただく事業主の掛金の負担軽減措置をやるといったこともしておりますし、また、中小企業退職金共済事業団の中に加入を促進するための委員会を設ける、加入促進計画を策定して、どういったところに加入を勧めていけば効果的に加入者がふえるだろうかといったようなことも検討することにいたしております。  何よりもまず、こういう制度があるということを多くの事業主に知っていただかなければいけないということから、毎年十月を加入促進月間といたしまして、地方公共団体とも連携をいたしまして自治体の広報紙に載せていただく、また、事業主団体が、傘下の事業所にこの加入について呼びかけていただくようなことをしていただくとか、また、全国八カ所に相談コーナーがございますけれども、そこの相談コーナーの相談員が積極的に相談に応ずるといったようなこともやっております。  さらに、この退職金制度に入るというそこのことだけじゃなく、これに入ることによるさらに波及的なメリットといいますか、例えば細かい話でございますけれども一定のホテルや映画館と連携をとりまして、加入すればそういったところの利用が低廉な料金でできるといったようなメリットをつけるとか、また、この加入事業主になれば、例えば託児施設をつくりたいというときに低利で融資を受けられる、そういった附帯サービスも充実させるといったようなこともやってきておりまして、なるべく多くの中小企業の方々にこの制度が利用されるようにやってきているわけでございます。  環境は非常に厳しい中ではございますけれども、引き続き努力をいたしたいというふうに考えております。
  29. 河上覃雄

    河上委員 パート労働者はどうなっていますか。パートは、平成二年の法改正でパート労働者の掛金の特例を設けましたね。ある意味では加入がしやすくなったわけでありますけれども平成八年のパートの被共済者数は約二万二千人程度、パートの方まおよそれ百万人いると言われているわけでございますが、極めて少ないわけでございます。それに対して、加入契約者が一万強の数字でありますので、二万二千の実績から見ますと、一企業、一事業所に対して約二名程度、これは単純な比較はできませんが、その程度の加入者ということになるわけであります。  私は、平成二年の法改正でパートも掛金等の特例を設けてもなおかつこういう実態であるならば、パート労働者の方々の加入を促進するために、より具体的なことを何か考える必要があるのではないかと考えておりますが、労働省の御見解をいただきたい。
  30. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘ございましたように、中退制度におきまして、八年度末時点で約二万二千人のパートタイム労働者が被共済者になっているということでございますが、この間、新規に加入された方を含めまして三万二千人ということでございます。ですから、三万二千人の方、パートタイム労働者の方は、パートの仕事についたり、またやめたりということがあって出入りがあるわけでございますので、三万二千人余りの方が加入していただいたわけですけれども、八年度末時点では約二万二千人の方の在籍者数、こういうことになっているわけでございます。  御指摘のようにパートタイム労働者もこの制度が利用しやすいようにということで、最低の掛金月額、一般は五千円なんですけれども、二千円というのを設けまして、それを周知広報し、パートタイム労働者についてもこういう制度を利用すれば非常に入りやすいという積極的なPRもやってきているわけでございます。  おかげさまでといいますか、パートタイム労働者について、新規に加入する方の数というのは決して減っているわけではございませんで、例えば平成三年度、パートタイム労働者でこの制度に新たに入られた方は二千百人でございましたけれども、八年度には三千百人ということでふえてきております。そういう意味で私ども、もう少し周知をしなければいけないということを考えておりますし、またパートタイム労働指針、随分パートタイム労働者とフルタイム労働者の労働条件の格差が大きいのではないかという議論がいろいろあった中で、退職金制度をパートタイム労働者に設けている企業というのは余りないというのが実態でございます。  そこで、パートタイム労働指針の中で、この退職金につきましては、就業の実態とか通常の労働者との均衡などを考慮して定めるように努めるという努力義務といいますか、そういうものが指針に定められたわけでございますので、そういったものの周知とあわせて、そしてその受け皿としてこの制度があるということの積極的なPRをさらにやりたいというふうに思っております。  なお、パートタイム労働者はどの労働時間以下の者であるかということがこの中退制度について定められております。つまり、パートタイム労働者でなければ、フルタイム労働者としての一定の所定労働時間であれば包括加入をしなければいけないということでございますが、この労働時間、ことしの四月一日から、これまでの三十三時間以上だったものが三十時間以上ということになるわけでございます。そういう意味で、これまでパートタイム労働者三十三時間未満としていたのがこれからは三十時間未満ということになってまいります。  そういうことになりますと、いわゆるパートタイム労働者、この中退制度の中でのパートタイム労働者と、通常世の中で、先ほどの約九百万人おられる労働力調査で把握されているパートタイム労働者とちょっとぴたっと合わないといったようなことも出てくるのでございますが、いずれにしてもパートタイム労働者に幅広くこの制度を利用していただく、そういうことによってパートタイム労働者の退職金制度が整備されるということは極めて望ましいことでございます。  事業主団体を通じたPRですとか、私ども中小企業勤労者福祉を促進するために市町村がつくる中小企業勤労者福祉サービスセンター、ここに補助金を出しておりますけれども、そこの事業としてもこういったことが推進されるようにまた連携をとりまして、パートタイム労働者の加入促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  31. 河上覃雄

    河上委員 今の点はぜひともよろしくお願いしたいと思います。通常の労働者とのある意味での格差という問題を乗り越えるためにも、今言った視点は大切だと思っておりますし、具体的にさらにもう一工夫していただきながら、パート労働者の加入促進、ひいてはパート労働者そのものに対するさまざまな課題を越えるためにも、ぜひとも工夫をしていただきたいと考えております。  今お話がありましたように、新規の加入契約者が減少している、私は総体みたいな言い方をしましたのでこれは誤っておりましたが、新規の加入者が減少していることは事実でございまして、ただいま指摘したとおりであります。この新規の加入者が減少しているのに対しまして、反対に支給額あるいは支給件数がそれに反比例して増加の傾向にある。ですから、この制度が本当に中小企業勤労者の皆様方の福祉の向上につながるように、こうあるわけでありますが、制度それ自体が非常に厳しくなってきているのだろうし、また、今後もこのままの経済状況だとそういうことはさらに進むのではないか、こう考えられます。  先ほどの同僚議員の質問に際しまして今後の運用資産の範囲の拡大等々よく考えなくてはならない、こう局長も言っておりましたが、なかなかないのですね、よく考えてみますと。  だから、平成六年と平成九年の比較で、これまた単純な比較で恐縮ですが、例えば公定歩合が平成六年で一・七五、現時点で〇・五〇、こんなに格差があるわけでありまして、国債の十年物でも四・一〇が本年二・五〇です。定期預金でも一・九〇が現在〇・四〇です。生保の予定利回りにしても四・五〇が二・五〇、こういう実態下にあるわけでありまして、運用拡大といってもなかなかいいものも見当たらない。そして、三年から七年にかけてだんだん減ってきておる、反対に支給件数や支給額がだんだんふえているというような非常に行き詰まった状態と思っております。  答弁にもございました昨年四月から五・五の予定利率の設計を変更して制度の実態に合わせた設計に変えるという措置もこうした状況を勘案しておとりになった措置であろうと思っておりますし、責任準備金の積み残しに対応できるだけの運用益を得ることができないで単年度収支に赤字を計上せざるを得ないような状況になっているわけです。だから、私は心配をしているわけであります。本当にこのまま大丈夫なのか。また、現在の給付水準を下げることなく今後とも本制度は維持できるのでしょうか。  これは、中小企業で働いている勤労者皆さん方もいろいろと大丈夫かなと心配をする点であるでしょうし、ここの点は大丈夫であるとか大丈夫じゃないとか、こういうことはないわけですが、はっきりとこれはお答えいただきたいのです。よろしくどうぞ。
  32. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘のように、金利が非常に低い水準で推移しておりますことから、この中退制度は非常に厳しい財政状況になっているわけでございます。平成七年、一昨年、制度の財政的安定を維持するために予定運用利回りを四・五%に引き下げていただきまして、これは昨年四月から実施をいたしておりますが、四・五%に引き下げ、基本退職金の額を改正したわけでございます。その後、それとあわせまして資産運用の改善を図らなければいけないということから、運用手段を拡大する、多様化するということとともに、これまで比較的金利の低いのにかなりの資金を投入しておりましたけれども、それを比較的金利のいい方にシフトさせる。具体的には、金融債とか生保の運用の比重を下げまして、国債や金銭信託を拡充するといったようなポートフォリオの改善を図っているところでございます。  八年度においても、確かに単年度赤字が発生するということが見込まれております。厳しい財政状況となっておりますので、私どもとしては退職給付に支障が生じないように、何としても資産の安全一そしてかつ効率的な運用を一層図っていかなければいけないというふうに考えておりますが、現行のままの設計で制度が安定的に今後ともずっと運営され得るかどうかにつきましては真剣に検討しなければいけないというふうに考えているところでございます。
  33. 河上覃雄

    河上委員 ぜひこの点、本当に真剣に御検討いただきたいと思っています。  この中退金制度とは別に、特定業種退職金共済制度、これは先ほどの御答弁でも、今回の方針でも経理区分して流用等もしない、こういうふうにいくわけですが、中退金制度でこれだけの心配があるわけでございまして、他の三つの制度そのものも本当に大丈夫なのかねと、私はこれも心配をするわけでございます。  建設業につきましても、将来の労働力需給の視点から若者、若年者の確保というものが困難な実態にあることも想定されるわけでありまして、すなわち本制度の今後の加入とのリンクの問題でいろいろ問題もあると思います。  また、林業でも一雇用が不安定であることなど雇用環境面での立ちおくれというものが見られるわけでありまして、若者が安心して就職できるような対策労働省としてもお考えになっていると思いますし、対策を積極的に講ずるお考えはあると思いますが、これらの本制度についての心配、懸念もあります。  さらに、清酒製造業、この制度維持にも心配はないのか。合わせまして三つ、この三つの制度も大丈夫なのかということの見解をいただきたいと思います。
  34. 松原亘子

    松原政府委員 まず、建設業退職金共済制度でございますけれども、今のところ毎年約六千社、約十四万人の新規加入がございます。年度末時点で加入している企業数や労働者数は毎年三千社、約五万人の伸びを示しておりまして、まあまあ順調に伸びは示しているわけでございますが、御指摘のように、今後の労働力需給を考えますと、先行きそんなに安心していられるかと言われますと、必ずしもそうではないということがございます。  ただ、この制度は、他のあと二つもそうでございますけれども、期間雇用者のための制度でございます。そういう意味では、こういった職場を特に若い人たちにとって魅力ある職場にしていかなければいけない、そういう観点からすると、期間を限って雇われても同じ仕事をやっていれば退職金としてはずっとそれが通算されて、その業界から引退するときにもらえる、こういう制度は極めて重要な制度だと思いますので、さらに一層加入促進を図りたいと思っております。  ところで、この建設業の退職金共済制度は、現在、予定運用利回り六・六%で運用をいたしておりますけれども、現在の低金利水準とは非常に大きく乖離をしているというのが実態でございます。そういうことから、今のところはいいのですけれども平成九年度からどうも累積赤字となる見込みでございまして、非常に厳しい財政状況です。そういうことから、予定運用利回りの引き下げも含めまして、財政の安定対策というのを今現在検討いたしているところでございます。その検討結果も踏まえまして、今後、資産の安全運用、財政の安定ということを検討したいと考えております。  また、林業退職金共済制度でございますが、この制度は既に制度への加入というのが非常に大きく進んでいるところでございますが、一方で林業労働者が減ってきているということから、加入者数、加入企業数の伸び悩みが見られているわけでございまして、これにつきましても非常に厳しいというのは御指摘のとおりでございます。六・二五%の予定運用利回りでございますが、まだ結果は最終的に出ておりませんけれども平成八年度には累積赤字となる見込みでございます。そういうことから、これにつきましても、予定運用利回りの引き下げを含めました財政安定対策検討していかなければいけないというふうに考えております。  また、清酒製造業退職金共済制度でございますが、これも制度としては業界に広く浸透してきているものでございますが、期間雇用者の多い杜氏という仕事、こういう仕事をやられる方の数が減ってきておりますことから加入企業数や加入労働者数の伸び悩みが見られ、なかなか制度の維持も財政的な面から見れば難しい面もございます。この予定運用利回りも六・六%で制度設計がされております。そういうことから、平成十一年度には累積赤字になることが見込まれておりますことから、他の二つとあわせまして予定運用利回りの引き下げも含めた制度の財政安定対策検討しているところでございます。  いずれもその検討結果を踏まえて対処したいと考えております。
  35. 河上覃雄

    河上委員 もう少し聞きたいところもあるのですが、他の質問がありまして、次に移ります。  行革効果は当然求められるものでございます。先ほどの同僚議員の質問もありましたので予定しておりましたものを大分カットいたしますが、何点か確認の意味でその視点からお伺いいたします。  この中退事業団あるいは特定業種退職金共済組合には子会社はありますか。もしあるとするならば、取引状況等はいかなる状況になっておるのか、お答えいただきたい。
  36. 松原亘子

    松原政府委員 いずれの法人にも子会社はございません。
  37. 河上覃雄

    河上委員 ないという御見解でございます。国からの補助金は幾ら出ておりまして、その使途は何でしょう。
  38. 松原亘子

    松原政府委員 平成九年度におきましては、中退事業団に対する補助金額は約百七十三億円でございます。その使途でございますが、うち人件費、事務費が約三十五億円、掛金の補助が約百三十八億円となっております。  また、特退組合に対します補助金額は、合計で約三十億円でございまして、人件費、事務費の補助が十三億円、掛金補助が約十七億円というふうになっておるところでございます。
  39. 河上覃雄

    河上委員 役員数、現在合わせますと十二名、そして統合後八名ということでございまして、減らすわけでございますので、それ自体は一歩前進と理解しております。先ほどのお答えでも、合理化によってスリムになると思われるがということでございまして、少し不明確であったのですが、将来、職員の数も減るのだという前提だと思います。  ところで、現在十二名おります役員統合後八名になりますが、それぞれ労働省出身の役員は何人いらっしゃるのですか。
  40. 松原亘子

    松原政府委員 現在十二名でございますが、二事業団にそれぞれ六名ずつの常勤役員でございます。そのうち労働省出身の役員は、中退事業団におきまして三名、特退組合で二名、合計五名でございます。  今後につきましてはまだ未定でございます。
  41. 河上覃雄

    河上委員 ぜひとも統合効果をしっかりと御検討いただきまして、そして新しい出発を期していただきたい。あわせまして、中小企業に勤められる勤労者福祉向上につながる制度の安定、これをぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それで、ちょっとこの質問から離れますが、あと五分しかございませんので、この点を若干お伺いしておきたいわけですが、労働省審議会は、他の審議会と異なりまして公労使の三者によって構成されている、これは十分承知をいたしております。現在労働省が所管しております十二の審議会、公労使、合計で結構でございます、何人ずつ委員がいるのか教えてください。
  42. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 労働省所管の審議会は十二でございますが、委員数、合計で二百三十六名、このうち公益委員が八十九名、労働委員が七十一名、使用者委員が七十二名で、割合で申しますと、それぞれ約四〇、三〇、三〇の割合になっております。  なお、障害者雇用審議会につきましては、公労使の委員のほかに、障害者の立場を代表する方が四名任命されております。
  43. 河上覃雄

    河上委員 政府は、平成七年の九月の閣議で審議会の見直しの方針を決定いたしまして、それに基づきましてさまざまな措置を講じたところでございます。  ちなみに、この七年九月の閣議で見直しの方針を決定した中身は、過去五年以上委員が任命されていない審議会及び設置後十年以上経過した審議会については、平成七年度中に所管官庁で必要性を検討した上、その結果を明らかにする、まあ既に明らかになさったわけでございますが、この十二の審議会の中で、私は、じん肺審議会と中央家内労働審議会、この審議会は果たして独立性を有するものかなという気もしないではない。  ちなみに、このじん肺審議会は、平成五年に二回、それから六年は全く開かれていない、七年には一回と、極めて開催回数が少ない。それから、中央家内労働審議会につきましては、五年一回、六年一回、七年一回と、それぞれ一回ずつ。必要性が十分あるならば、開催回数も必然的にふえると思います、それだけではない、質の問題もあろうかとは思いますけれども。さまざまな側面から含めまして、独立性を有しなくてもできるのではないだろうか、統合し、その中でも内容的にも目的的にもできるのではないかと思われるような審議会もまだあるのではないか、私はこう考えております。  そこで、この二つの審議会等につきましては、今後の中で見直しあるいは検討の余地はあるのかないのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  44. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 初めに、審議会の見直しでございますけれども労働省では、現在十二の審議会がございますが、このほか、昨年三月末をもちまして失対事業賃金審議会というものは廃止をいたしました。  それで、御指摘のありましたじん肺審議会等でございますが、じん肺審につきましては、現在なおじん肺の有所見者とされております方が二万二千人を超えておりまして、現在でも最大の職業病の一つであります。かつ、このじん肺につきましては、非常に医学的な、衛生工学的な、専門的な立場からの検討が必要ということで、このじん肺審については、審議の充実、あるいはなかなかそれと一般的なほかの審議会との統合というのは難しいのじゃないかというふうに考えております。なお、開催回数ですが、総会は八年度二回でしたが、部会を四回開催しております。  それから、家内労働審議会ですけれども、御指摘のように開催回数が少ないわけですが、家内労働者はなお五十余万、五十数万人おられますし、さらに、最近の新しい問題として、情報機器の発達によりましてテレワークとか在宅労働者の問題も相当大きな問題になりまして、昨年六月のILOの総会でも在宅労働等に関する条約も採択されているわけであります。この家内労働審につきましては、このように新しい課題も生じていることでありますから、これはさらに活性化をするということを考えていかなければならないというふうに現在は思っております。
  45. 河上覃雄

    河上委員 時間が参りました。もう一点ぜひとも聞いておきたいことがあったのですが、その点を指摘して、私、終わります。  函議決定のもう一つの視点は審議会の透明性でございました。透明性という視点から現状をぜひともお伺いしておきたかったのですが、会議録の形式、あるいはこれが氏名入りであるのかあるいはそうではないのか、公開の方法は今どうなっているのか、労働省における審議会の透明性確保の点はいかになっているのかということにつきまして御質問したいところでございますが、時間が参りましたので、指摘だけにとどめまして終わります。  どうもありがとうございました。
  46. 青山丘

    青山委員長 これにて河上覃雄君の質疑は終了いたしました。  次に、松本惟子君。
  47. 松本惟子

    松本(惟)委員 松本でございます。  中小企業の問題については、日本の産業をこれまでも支えてまいりましたし、中小企業労働者を含めて、今後もやはり日本にとっては大変重要だと私は思います。高齢化が進んでいることから考えましても、この制度の重要性、年金の問題とあわせまして、退職金というのは老後の生活を支えるという意味で大変重要性を持っているというふうに思っております。  先ほどからお伺いをしておりますと、現状は大変厳しい実態にある。制度の改善を重ねながら労働省としてもこれまで御努力をなさってきていらっしゃるわけですが、今後、厳しい中でもなおこの制度の充実に向けてどのように考えられているのか、若干の質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず一点目は、パート労働者の加入の問題でございます。先ほどお伺いしておりまして、かなり実情が出されましたし、今後のお考えについても若干見えてはきておりますが、さらに、多少重なるところがあるかもしれませんけれども、再度お伺いをいたしたいというふうに思います。  パートタイマーは年々ふえておりまして、最近では女性だけではありません。ですけれども、やはり圧倒的に女性労働者が多いわけでございます。その勤続年数が短いことによりまして、一年未満の掛け捨てだとか、ぞれから一、二年掛けて掛け損というような現状の退職金制度で常用の労働者と同様の扱いをするのは問題があり、現行の枠内での改善もしくはパートのための別体系を検討すべきではないのかというような議論がかねてあったということを私も承知しております。  そういった意見の中で、つまりフルタイマーの人たちとの違いの中で、中退金制度への加入の促進それから企業間の通算制度の活用の促進、そういった措置とあわせまして、別体系については研究課題とする旨の政府答弁が行われていると思います。またその点について、前の法律の改正のときのことでございますけれども、附帯決議においても、「制度の改善に関する研究を進めること。」ということが盛り込まれていたというふうに認識をしております。  パートタイム労働の加入促進の方策とあわせて、そういった制度の改善についての検討状況につきまして、先ほどお答えがあったようでもございますが、再度お伺いさせていただければと思います。
  48. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者につきましては、平成三年の四月から掛金の特例制度が設けられたわけでございます。通常の労働者と同じ掛金ではなかなかパートタイム労働者について加入しにくいということもありまして、これまで五千円という掛金の最低額だったわけですけれども、パートタイム労働者については二千円という特例を設けたわけでございます。  それ以降この制度に加入したパートタイム労働者は三万二千人でございます。平成八年度末に在籍している方の数が二万二千人。新規に加入する方は必ずしも減ってきているというわけではありませんで、毎年二千以上の企業がパートタイム労働者を新たにこの制度に加入をさせてきている。パートタイム労働者の側から見ますと、新たに平成三年度で四千八百人、この制度に入ったパートタイム労働者がいらっしゃるのですけれども平成八年度には六千五百人余りが入ってきているということで、新規にこの制度でカバーされるパートタイム労働者の方もふえてきているという実態はございます。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども、パートタイム労働者でありましても、一定の週所定労働時間以上の方はこの中退制度のもとでは通常の労働者という扱いで、中退制度に入るからにはそれらの方も含めた包括加入をしなければいけないということになっております。  その週所定労働時間のレベルでございますけれども、これまで週三十三時間以上ということになっておりましたけれども、ことしの四月一日かち週所定労働時間が四十時間になったということに対応いたしまして、三十時間以上というのに引き下げたわけでございます。したがいまして、ことしの四月以降は中退制度におけるパートタイム労働者は週所定労働時間が三十時間未満、こういうことになってくるわけでございます。  また、平成三年にパートタイム労働者が入りやすいような制度設計にしたということの後に、パートタイム労働者については特に退職金制度を設けている企業は少ないといったようなこともありまして、退職金については就業実態ですとか通常の労働者との均衡などを考慮して定めるように努めるものとするということがパートタイム労働指針に定められたわけでございます。  こういったことの周知などもする。それを事業主団体を通じて行うとか、また先ほど申し上げました中退制度そのものがパートについて変わってきているといったようなことについて、中小企業勤労者福祉サービスセンターを通じて周知を図る、そして勧誘をするといったようなことをやってきているわけでございます。  パートタイム労働者向けの新たな退職金制度についての研究という御指摘がございましたけれども、今幾つか申し上げましたとおり、平成三年以降、パートタイム労働者につきましては中退制度の中でもその取り扱いが変わってきているということなど、さまざまな変化もございます。そして現在の制度においても、パートタイム労働者の方で新規にこの制度に入る方がふえてきているというようなこともあります。  そういったことから、パートタイム労働者についてこの制度が実際どのように機能しているか、まだそういう中でどういう問題点があるかなど、少し状況も見ながら検討したいというふうに考えております。
  49. 松本惟子

    松本(惟)委員 ありがとうございました。  お伺いをしましてもパートの数はかなりふえていると思いますが、それにしても、ふえているとはいいながら、やはり件数がまだ少ないと思いますし、まあ賃金が低いということもありますので仕方がないのかもしれませんけれども、額も大変低いなという感想を持たざるを得ません。  パート指針によって周知徹底を図り、加入促進に努めていらっしゃるということでございますけれども、短時間労働雇用安定ですか、短時間労働者のための法律がございましたね。その見直しに向けての準備が今されているというふうに思っておりますし、もし準備ができれば、来年、国会に法案がまた提案されるのではなかろうかというふうに思っておりますので、あわせてパート全体の労働条件の向上と雇用の確保のために一層の御努力をお願いしたいと思います。  それから、次は中退金の財政状況について。  これはお伺いをしておりまして、厳しい状況というのがひしひしと伝わってまいりました。特にお伺いをしておきたいと思いましたのは、資産の効率的な運用につきましてもお答えがあったようですが、特に労働者の側からすれば、安全性というものが気になるところなんですね。安全性の確保に努力をしておりますというお答えでございましたが、もう少し具体的に、何かなさっていることがあれば伺いたいと思います。
  50. 松原亘子

    松原政府委員 資産の運用、高い利回りを得ようとすればやはりハイリスク・ハイリターン、こういうことになってくるわけですが、こういう中小企業退職金制度のような資産の運用を、必ずしもハイリスクをかけてハイリターンを求めるというわけにはまいりません。さりとて非常に低い金利のものだけというわけにもいかないという中にあって、いかに適切な運用ができるか。そしてそれは当然のことながら、安全が確保されるかということが必要になってくるわけでございます。  金融商品まいろいろあるわけでございますけれども、その中でも比較的金利のレベルがそこそこであり、かつそのものとしての安全性があるといったようなものを選んで運用をするということにしておりますが、そのためにはこの運用に関する高度な知識経験を持った方のアドバイスがないとなかなかできないということもありまして、そういう人を配置して運用体制を整え、やっているわけでございます。
  51. 松本惟子

    松本(惟)委員 金融ビッグバンを控えての折からでございますので、くれぐれも運用には注意深くということをお願いしておきたいというふうに思います。  それでは、中小企業退職金、年金の今後の対策について幾つかお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  これも前の委員が述べられておりましたけれども、今、退職金をめぐる状況というのは大変厳しいものがございます。労働者の老後保障をするためには、厚生年金だとか適格年金だとか、それに加えて中退金というものがございます。通産省の方でもこういった問題を取り上げて、制度間の通算制度その他について問題提起をしているやに伺っております。このこととの関係、そして折からの労働移動、いや応なく労働移動が進んでいるということもございますので、そういったことを踏まえて質問をさせていただきたいと思います。高齢社会を迎え、老後の所得確保という意味から、退職金や企業年金の意義はますます大きくなってきているところでございます。我が国においての退職金制度については相当普及をしておりまして、労働省の調査によりましても、従業員規模三十人以上の企業のうちの九割以上がこの制度を持っている。しかしながら、全国中小企業労働事情実態調査によりますと、従業員十人未満の企業のうちの二割が退職金制度を持っていないということでございました。こういったところから、中退金制度というのはなかなか有用な制度かとも思います。  大企業との格差問題がずっと言われてきたわけでございますけれども、格差がどこに一番大きいかといいますと、賃金もさることですけれども賃金よりも、退職金だとか福利厚生の面での規模の大きいところと小さいところの格差というのが大きいというのが課題であったわけでございます。したがって、最も大きな影響を持つのが、退職金とか企業年金などいわゆる企業内福祉というところでございます。そういった意味からも、再度申し上げますが、中退金の役割というのは今も大きいし、今後も変わらないだろうと思います。  しかしながら、今日の産業構造の転換に伴う労働力移動の増加とかそれから終身雇用についての見直し論などがございまして、こんなことを考えますときに、果たして現在の退職金制度のあり方のままでいいのだろうかというふうにも思うわけでございます。労働力移動、つまりかわる人が結果的に損になるのではないだろうかという懸念も一方にはあるわけでございます。  そもそも退職金というのは、繰り返し言われておりますように、歴史的に見ましても、長期勤続を確保するためにあったという側面がございます。そういったことから、長期に働くことで優遇をされてきた、つまり短期雇用を繰り返し継続する者よりもずっと働き続ける人の方が老後が安定をするというふうな制度として推移をしてきているということでございます。数年ごとに会社をかわると、我が国では退職金がゼロに近くなってしまうというような実態もあるわけでして、これは今申し述べたような点からいいますと、やはり不公平ではなかろうかというような議論も一方ではあるわけでございます。  大変矛盾をした実態が今回時並行で進んでいるわけでございますが、退職金制度の歴史と果たしてきた役割を考えますと、こういった矛盾はありますけれども、勤続年数に基づく退職金とか年金制度が逆に労働者の移動を妨げたり不利にしたりするという、これも否定できない一方の側面として今動いているわけでございます。  そこで、退職金や企業年金の現状をどのようにごらんになって、そしてまた、今後どのようにあるべきとお考えになっていらっしゃるのか、お考えがあれば伺わせていただきたいというふうに思います。
  52. 松原亘子

    松原政府委員 非常に多面的な御質問でございましたのでちゃんと答えられるかどうかわかりませんけれども退職金制度、そもそもできてきた背景というのは、おっしゃったとおりだと思います。企業の中で教育訓練をし、その基幹労働力に育てた労働者が定年まではその企業に定着してもらわなければいけない、そのための一種引きとめ策的な要素もあって、退職金制度というのがいわば日本的な雇用慣行の中でできてきたものでございます。  ただ、そういう形で導入されたものでも、労働者の側にとりますと、今度は退職後の生活を保障するものだということで、また別の意味での重要性が増してきているというのは御指摘のとおりでございます。  御指摘ございました高齢化社会になっていく、また、産業構造が転換する、それに伴う労働移動がふえるといったようなことの中で、この退職金制度というのをどう考えるかということでございますが、民間企業におきましては、既に、こういう時代の要請から、退職金制度というものをもうそもそもなくしてしまって月例賃金に上乗せする形にするといったような試みも始められた企業もあるというふうにも聞いております。  ただ、一方で、非常に定着した制度でございますし、今、大企業と中小企業の格差を御指摘ございましたけれども、特にこの退職金制度についての中小企業での普及がおくれているということが目立っている点もあり、かつ、実際に実施している企業の統計を見ますと、中退制度に入っているというのが半分ぐらいあるわけで、中小企業における退職金制度、その中での中退制度の占める位置というのは非常に大きいものがあるというふうに思っておりまして、この制度はこの制度で充実し、きちんとした運営ができるようにしなければいけないというふうに私どもは思っております。なお、ポータビリティー化といいますか、労働移動すると、この退職金制度というのは一つの企業にずっと勤続するということがそもそも前提となってつくられて当ているわけでございますので、中退制度については、その中退制度の中でのポータビリティー化というのは実現はされているわけでございますが、それは、一つには、一定の掛金を掛けるということ、その掛金が決まっていて、将来受け取る退職給付は、先ほどちょっと予定運用利回りの見直しの話も申し上げましたけれども、その実勢に応じてその辺は見直さなければいけないということが出てくる、そういういわば確定拠出型になっているというところから可能になっている面もあるわけでございます。  確かに、退職金、企業年金のポータビリティー化がいそれがポータブルでないために、一たん退職すると通算されないことに伴う不利益というのも指摘はされております。労働市場の流動化を阻害している面もあるのではないかという指摘もございます。  そこで、この点、今直ちに結論を出すというのは非常に難しいかと思います。退職金制度が持っているそもそもの機能をどう見るか、これを新しい雇用労働市場が流動化していくという中でフィットさせるためにはどうしなければいけないか。一つの形というのは確定拠出型の退職金制度というのがあるわけでございますが、一方、それでは将来もらえる給付というのがはっきりしていない、大体はわかっていてもきちんと決まっていないといったようなことからくる老後設計の不安ということもあるではないかといや声もございます。  そういったことなどさまざま検討しなければいけないかというふうに思っておりまして、今直ちにお答えすることは難しいのでございますけれども、新しい時代に適応した退職金制度のあり方というのは私ども検討したいと思っておりますし、また、勤労者の財産形成という観点からは、財形制度というのもございます。  これは労働者の自助努力を国と企業がサポートするという考え方でできたものでございますが、勤労者が在職中から資産形成を行い、老後の生活に備えるという意味においては、この財形制度というのも非常に重要であろうかと思って参りまして、とういった大きな産業構造変化の中での勤労者の老後生活をどういうふうにきちんとしたものにしていくか、資産面でしていくかということについては、退職金のみならず、この財産形成制度ども含めて検討をすることが必要ではないかというふうにも考えているわけでございます。
  53. 松本惟子

    松本(惟)委員 従来のいわゆる縦型の企業対労働者という形での労働条件の確保、生涯賃金を含む労働条件の確保だけでは事足りない時代が来ていて、ポータビリティーのお話も出ましたけれども、横型のいわゆる社会的、横断的な制度の仕組みに向けて、かなりやはり速度を速めて対策検討しなければならないのではないだろうか。私ども何か頭が追いついていかないような実態もあるわけでございますけれども、そういった問題意識を持ちながら質問をさせていただいたわけでございます。  今局長の御答弁の中で、次に質問させていただこうと思っておりましたこともおっしゃっていただいてしまったわけでございますけれども、つまり、中退金制度間においての加入期間の通算がなされているけれども、そうでない他の退職金制度との通算については今後課題である、現在いろいる御検討なさっているというふうに承ったということでよろしゅうございます。  次に、確定拠出型年金について伺いたいと思います。  これは、昨年の六月に厚生省の年金局長の私的研究機関であります厚生年金基金制度研究会が、一律五・五%の運用を前提にしている利回りの緩和とか、それから年金の支給水準の引き下げを可能とすることを盛り込んだ報告書をまとめております。  その後、本年の二月の新聞報道でございますけれども、これによりますと、厚生省と労働省は、毎月の掛金が一定で、運用実績に応じて将来の年金給付額が変わる確定拠出型年金を導入する検討に入ったというふうに報道されているわけでございますが、年内にも具体案をまとめ、早ければ九八年度の実現を目指すということで、労働省では研究会が設置されているということのようでございますが、その状況はいかがでございましょうか。
  54. 松原亘子

    松原政府委員 今御質問にありました新聞報道については、私どもも見てびっくりしたぐらいでございまして、こういう研究会を労働省に置いてやっているということはございません。
  55. 松本惟子

    松本(惟)委員 わかりました。  それでは次に、厚生年金基金についてお伺いをいたします。バブル崩壊後の超低金利や株安を背景にいたしまして、財政悪化に耐えられなくて解散に踏み切る基金が出ていることは御存じのとおりでございますが、確かに、確定拠出型の年金は運用実績に応じて給付すればよいので、企業にとっては予想外の負担を背負わなくて済むということになりますけれども、他方、労働者にとりましては、個人の将来の年金額が予想できない不安に直面するわけでございます。したがって、老後の設計が成り立たないということになるので大変な不安を持っています。  こうした確定拠出型年金の制度についてどのように考えているのか。また、中退金制度を含む中小企業の企業内福祉の将来についてどのように考えているのか。これは労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  56. 松原亘子

    松原政府委員 私から確定拠出型年金についてだけお答えしたいと思います。  これは、労働者にとって転職の際のポータピリティーが高いということはございますし、企業にとって追加負担がないというメリットはあるわけでございますが、御指摘のとおり、将来の年金額がはっきりしていない、確定していないという意味において、老後の生活設計がなかなかしにくいというデメリットがあるというのもそのとおりでございます。  したがいまして、今後こういった、雇用流動化する、それを妨げてはいけないといったような視点。一方で、老後の生活のたりの資産というのをきちんとしなければいけないという視点。これをどうやって調和させて、どういった制度がそれに合致するものとして生み出されるか。なかなか難しい点があろうかと思います。確定拠出でなく、ポータピリテイーが高いものがあるのかどうか。ちょっと相当期間検討しなければいい解が出てこないということではありますが、いずれにしても、私どもは、今申し上げたような点、多面的な検討を行いたいというふうには考えております。
  57. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、日本は社会資本の蓄積が欧米に比べると非常に劣っている。それがソフトの面でいうと、健康保険制度はともあれ、やはり企業年金については非常におくれているというような意味合いと、日本の産業が非常に大きな力を持って発展をしていっているというような事態を踏まえて、企業年金を中心とする厚生年金基金が発足をしたということであります。  しかしながら、やはり全般的な産業構造の変革の中において、今現に先生がおっしゃっておられますようなこの五・五%の予定利率というものを確保するというようなことが非常に難しくなってまいりました。それで年金福祉事業団というようなものをつくりまして、株式等についても運用範囲を広げるというようなことで、何とか五・五%を確保しようという努力を厚生省当局ではなさってまいった、こう理解をいたしておりますが、やはり先生も再々おっしゃっておられますように、ハイリスク・ハイリターンではなくて、リスクの方をなるべく抑えてハイリターンを求めるというのは、その中に策を含んでいる、私はこう思っております。  そういう意味合いで、財政投融資資金あるいは資金運用部資金等々については、株式、土地というようなものを排除して、やはりある程度安全性というものを中心とした利回りというようなものを確保すべくやってまいったという意味合いでは、私どもが所管をしておりますところの中退金制度の資金の運用につきましても、今のような、前車の轍は後車の戒めというようなことで、ハイリターンを求めつつもその限界というものはこれあるというふうに考えております。  先生の御質問にかなった答弁に相なっているかどうかわかりませんが、一応お答えをいたしました。
  58. 松本惟子

    松本(惟)委員 ありがとうございました。  時代の大変大きな転換期でございますので、行政の方でも御苦労が多いかと思いますけれども、最善の方向を目指すべく頑張っていただきたいと思います。  その他事項についてもう一点お尋ねをしておきたいのですが、これは本法案に関することでございます。  確認をさせていただきたいのですが、国の援助について第八十七条で記載をしておりますけれども、この中に、簡単に言えば事務費が入っていない、事業団の事務費という項目がないのでございます。これにつきましては、どういう理由で削除をされているのでしょうか。御説明をお願いいたします。
  59. 松原亘子

    松原政府委員 確かに、「事業団の事務に要する費用」というのを削除いたしましたが、これは最近の立法例において、単に法人の事務費を補助するといったような規定は設けないということが通例である、それに倣ったことから今回削除をするというものでございます。  削除したからといって、事業団の事務に要する経費をもう国としては財政的に援助しないという意味ではございませんで、中小企業労働者の福祉増進のために引き続き、機構の事務費を含めまして中退制度を財政的に援助していくことは必要だというふうに考えており、必要な予算の確保には努力をしたいといりふうに考えております。
  60. 松本惟子

    松本(惟)委員 ありがとうございました。含まれているというふうに伺いました。  最後に一つ、直接この法案に関することではございませんけれども質問をさせていただきたいと思います。それは、野村証券のVIPの口座の問題に関することでございます。  現在、野村証券にまつわる問題がマスコミを大変にぎわしているわけでございますが、特に、一方にも達すると言われておりますVIP口座について、多数の政治家だとか官僚が関与をしている、中には利益の供与を受けた方もいるといううわさがあります。  そこで、大臣に一つ、それから各局長に一つお伺いをいたします。  大臣におかれましては、過去、現在を通じて、本人、家族、秘書が野村証券との取引に関与しておられるかどうか。そして口座があるかどうか。もしある場合は、その内容、便宜の供与があったかどうかということをお伺いいたします。  それから、局長につきましても同様の調査をなさっていらっしゃるのか。調査を行う予定があるのか。お伺いをさせていただきたいと思います。
  61. 岡野裕

    岡野国務大臣 私個人及び、家族といいましても家内しかおりませんが、両名とも野村証券の口座は持っておりません。  それから、VIP口座についての所見を先生求められておいでですかしら、VIP口座というものの中身が、私、まだ詳細に理解ができておりません。VIP口座かどうかはともあれ、やはり特定の個人、特定の企業等に例えば損失補てんというようなことは、証券大衆化というものを目がけております我々日本の行政としてはまことに言語道断である、こう存じております。
  62. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 局長について、御質問のような調査をする予定は目下ございません。なお、私は、残念ながら株の売買をしたことはございません。
  63. 松本惟子

    松本(惟)委員 ぜひ局長につきましても調査をお願いしたいと思います。  ありがとうございました。これで終わります。
  64. 青山丘

    青山委員長 これにて松本惟子君の質疑は終了いたしました。  次に、大森猛君。
  65. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  既にきょうの議論でもありましたし、また参議院での岡野労働大臣の御答弁でも、日本の産業は中小企業によって支えられているという御答弁がありました。これは、事業所数あるいは労働者数に占める圧倒的な比率を中小企業が占めるということだけではなくて、出荷額においては五割以上、あるいは販売額においては八割以上、中小企業が日本を支えている。そういう意味で、私は、多くの皆さんが指摘されたように、大臣が言われたように、この日本の産業はまさに中小企業によって支えられているという点は同感であります。しかし、今の日本経済の閉塞状況、これを打開していく上で、やはり日本経済の土台とも言える中小企業、ここにもつともっと大きな光を当てなければならない、このことがまず強く指摘をされなければならないと思います。  ところが、今、中小企業をめぐる状況というのは、景気回復期と言われながら、引き続く産業空洞化等々で非常に厳しい状況にある。今度の国会に提出された平成八年度中小企業白書でも、「大企業に比べ中小企業の業況感の回復の動きには力強さが欠けている」、こういう指摘がされているわけでございます。そういう意味で、経済政策、これがもちろん基本でありますけれども中小企業で働く労働者が本当に将来の展望を持って明るく働くことができるという点での労働行政の面から光を当てることがますます今重要になっていると思います。  今回の法案、「従業員福祉増進中小企業の振興に寄与することを目的とする。」こうなっておりますけれども、そういう点から、まず岡野大臣の基本的な御見解をお聞きしたいと思います。
  66. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、私がもう既に話をしてあるというお話がございましたが、きょうは河上先生からお話がありました。いかに中小企業が日本の産業の発展を支えているか、企業の数にして九九%である、人員の数にして七六%である、こういうお話がありました。あの数字はそのものずばりだと私は認識をいたしております。  そういう意味合いで、やはり中小企業に働く皆さんが豊かさをちゃんと実感ができて、心のゆとりがあって初めて職場生活というものが充実できる、つまり、家庭生活というようなものが十分味わえるようでないと企業生活というものもうまくいかないのではないか。そういう意味合いでは、福祉全般の向上というようなものの支えというものが企業の責務であり、そして我々行政府としての大きな仕事である。先ほど松原政府委員からお話がありましたように、財形の問題でありますとか、きょう御審議をいただいておりますこの法案の問題でありますとか、あるいは託児施設を育児休業法上ひとつ設けるだとか、いろいろなことを我々は考えて、かつこれをお勧めしている、あるいは支援をしている、以上であります。
  67. 大森猛

    大森委員 松原局長は参議院答弁の中で、いわば国営の中小企業退職金制度という表現をされましたが、そういう意味でも、この制度における国の責任、大変大きいものがあると思うわけであります。  先ほど来伺っておりましても、事業団にしても、あるいは特定業種共済組合にしても、大変厳しい今後の見通しになっておるわけなんですが、こういう中で、国の責任として国の補助、これをもっともっと強めてよかったんじゃないか、こういう点でお聞きをしたいのですけれども中小企業退職金共済事業団について、八七年度、昭和六十二年と九五年度、平成七年とを比較して、被共済者がどれだけ伸びて、国庫補助収入はどれだけ伸びて、そしてまた収入に占める補助金の割合はどう変化じたか、この点、お聞きをしたいと思います。
  68. 松原亘子

    松原政府委員 昭和六十二年度、被共済者数は二百二十一万人でございましたが、平成七年度はそれが二百八十一万人というふうになっております。この間の伸び率が二六・九%という状況でござういます。  掛金の補助でございますが、昭和六十二年度は約五十九億円、平成七年度は約百一億円ということでございます。この掛金の補助の伸びは六・六%というふうに伸びております。  収入に占めます補助金の割合でございますけれども、昭和六十二年度は約四・一%でございました。それに対しまして、平成七年度は約二・六%というふう長収入に占める掛金補助の割合は減っております。掛金補助自体はふえておりますけれども、減っております。それは、この間、収入が六八・一%というふうに、非常に大きくふえたということでございます。  掛金の補助というのは、主として新規にこの制度に入っていただく方の掛金を、そんなにずっと補助するわけではありません、一定期間、期限を限って補助するということでございますので、そういう意味では、新規に入ってきていただいた方が、昭和六十二年度十六万だったものが、平成七年度は十万というふうに、新規に被共済者になられた方が約三割減っているということもございまして、その方々のための掛金補助というのもそういう意味では減ってくる。一方、根っこの被共済者数というのはふえているわけですから、収入はふえるというようなこともございまして、この比率は下がってきているわけでございます。  そういう意味で、国として補助を減らしてきたということはないということは御理解をいただきたいと思います。
  69. 大森猛

    大森委員 昭和六十二年度、五十九億とおっしゃったのですが、九十五億だと思いますけれども、いずれにしても、被共済者総数が二七%近く伸びているのこ対して、国庫補助金は六%余りしか伸びていない。いろいろおっしゃいましたけれども収入に占める補助金の割合も四・一%から年々減って、ついに今では二・六%というところまで、やよりこれま後退と言わざるを得ないと思います。  今、行政改革と言われておりますけれども、もしこうした補助金を削減することが行政改革だと考えているとしたら、やはり間違いではないか。こういう行政改革のあり方として、今既に多くの問題になっておじますけれども、公共投資に典型的に見られるような大企業、ゼネコンなどのむだを徹底的に洗い直す。一方で、日本経済の土台と言われている中小企業、自分の力ではもう退職金制度も困難という現状にある中小企業の振興のためには、やはり削減ではなく拡充ということで臨んでいただきたいと思います。  事務費補助についての法律的な根拠がなくなった点について、先ほども答弁がありました。松原局長は参議院答弁の中で、来年度以降どうするかということについては行革という観点から十分検討いたしたい、このように答えておられるわけなんですが、もちろん、事務費の中で、既に指摘もされております高過ぎる役員報酬あるいは退職金見直し、これは、それこそ行革の立場から当然行うべきだと思います。時間の関係上、この点一点だけ指摘をするだけにとめたいのですが、例えば特退共、事務費補助が十億円余りあるわけなんですが、その十億円のうちの約一割、一億円以上が六人の役員の報酬で占められている、国の事務費補助の一割が六人の役員報酬で占められている。やはりバランスを欠く、そういうものではないかと思います。  収支の長期見通しについては松原局長から再三御答弁がありましたし、先ほど岡野労働大臣の御答弁もありましたが、重ねて収支の長期見通しの展望を確固たるものにしていく、大臣の御抱負と、あわせて、事務費の補助は将来にわたりて減らさない、そういう御決意をぜひこの委員会の場でお聞きしておきたいと思います。
  70. 松原亘子

    松原政府委員 まず、事務費の点でございますが、それは法律上はその規定を削除いたしましたけれども、事務費を補助していくということは、この中退制度を維持していくために非常に重要だというふうには考えております。しかしながら、未来永劫今の額が変わらないといったようなことでいいかどうかということは、これはあろうかと思います。業務を効率的にするようにちゃんと見直しをしなければいけない、その結果として事務費も減らすという方向の努力は必要だろうというふうには思います。  それで一方、中退制度、その本体の方なんでございますが、これは先ほど来収支の状況等御説明しておりますけれども、非常に厳しい、この低金利の中で非常に厳しいという状況はございます。したがって、今の設計のままでこれがずっと維持できるかどうかについては私どもも十分検討しなければいけないと思っておりますし、特に六%を超える高い予定運用利回り率を設定しているものにつきましては、今審議会で、これをどうするか、財政の安定という観点からどうすればいいかということを、運用利回りの引き下げも含めて御検討いただいておりますけれども、いずれにしても、この制度が健全な形で維持できる、そして中小企業に働く方々の退職金制度としてちゃんと世の中の評価を受けるようなものとして存続できるようにしたいというふうには考えておりますし、今後とも努力をしたいというふうに思っております。
  71. 岡野裕

    岡野国務大臣 やはり、先ほどもお話をいたしましたけれども、大きな経済的なあるいは産業的な変革があります。その中で、企業に働く皆さんのこういった意味での諸施策をどうするかということが問題になるわけです。  その前に、我々としては、やはり退職金制度とかいいますものと、それから毎月毎月いただくそういう報酬というようなものとの絡み、関係、これが将来展望に立ってどういうふうに進むかというようなことをはっきりいたしておきませんと、退職金の、こういった中小企業向けの我々の行政というものの評価といいますか位置づけといいますか、そういうようなものが決まってまいる。  しかし、冒頭お話をしましたように、やはり中小企業皆さんによって日本の産業の発展はある、そこに我々は基本的な観点というものを絞りまして、中小企業皆さんが安心して働けるような、そういう環境づくりには一生懸命頑張ってまいりたい、こう存じております。
  72. 大森猛

    大森委員 もちろん経済の変動その他いろいろな変動の中で、退職金などを当てにしなくてもいい、そういう時代も恐らく来るときもあると思います。しかし、今日の日本において、年金の制度あるいは老後の保障制度、そういう公的な制度が不十分で、国民の中に根強い老後への不安がある。そういうことがある限りは、やはり国の責任をきちんと貫くことがあくまでも重要だということをまず指摘しておいて、具体的な点でお聞きをしておきたいと思います。  最近私の事務所に、会社が突然破産宣告、全員が解雇され、今、破産、全員解雇反対労働債権の完全確保、企業再建等を目指して闘っている、株式会社HKKの労働組合の方が相談に来られました。三月三十一日をもって七十八名の労働者が退職金ももらえないまま会社をほうり出されようとしている。本当に今深刻な事態になっております。  この問題自体については後ほど改めて伺いますけれども、きょうの議題であります中小企業退職金共済制度との関係でも大変重大なことが明らかになりました。  第一に、このHKKも中小企業退職金共済に加 入しておりましたが、驚いたことに、とにかく、被共済者である労働者の多くの方がそのことを知らない。きょうもそのうちの何人かの方が委員会の傍聴に見えておりますけれども、これは共済申し込みにおける労働者の同意義務、第六条違反。あるいは、退職金共済手帳の存在も知らないんですね、手帳があることも知らない。ですから交付義務違反。そして、七十八名中被共済者は四十六名だけということで、これは包括加盟義務違反。これになるのじゃないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  73. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘の企業のケースについて私どもちょっと具体的に把握をしておらないので、一般的なお話でしか御答弁できないのでございますけれども、中退法上は、事業主は、期間雇用者など一定の者を除き、すべての労働者を加入さぜなければならない、つまり包括加入させなければならないということになっているわけでございますし、労働者を中退制度に加入させた場合には遅滞なくその旨を労働者に通知しなければならないというふうに法律上なっているわけでございます。  このことにつきましては、事業主の方が中退制度に加入したいというふうに言ってこられ、加入の手続をとられるというときこま、私ども、十分事業主の方にこのことについてもお話をし、また労働者の方に十分それを知らせてもらわなければいけないということもお話をしているわけでございます。それで、まだまだ十分でないという場面もあろうかと思いますが、今後ともそれについては努力をしていきたいというふうに考えております。
  74. 大森猛

    大森委員 事業主の、共済者の義務が履行されていないということになるわけなんですが、このHKKの被共済者一覧表をきょう持ってまいりました。事業団整理番号、氏名、契約成立年月日等々も克明に記され、これは既に事業団にも確認をしてまいりました。同時に、このリストの中には、会社の総務課で計算した平成九年三月現在の中退金の、退職金の支払い額もすべて記入されているわけですね。それによると、四十六人分、総額で二千九百四十九万二百五十五円。  大変な額で、今収入が全くない労働者は大喜びですけれども、同時に不安もあるわけですね。第一は、退職金共済手帳がないけれども、支給されるだろうか。もう一つは、四十六名のうち組合に参加されているのま一部なわけですから、恐らくこの支給についてこの瞬間にもまだ知らない労働者の方がいらっしゃるのじゃないかと思うわけなんですが、この二点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  75. 松原亘子

    松原政府委員 この中退制度に加入していたことを労働者の方が全く知らなかった、したがって手帳すら、存在すらも知らないということもあるのかもしれませんが、そういう場合に、実際に事業主が中退制度に、この労働者について掛金を掛けて入っていたということであるということを前提としてお話しいたしますと、退職金共済手帳を所持していない場合でありましても、被共済者本人であることが確認できれば手帳を再発行いたして退職金を支給するということにしているわけでございます。
  76. 大森猛

    大森委員 次の質問とあわせて、今のもう一点の点、労働組合加盟の方は通常それを知ることができるでしょう、今なお恐らくその事実を、そういうものが支給される事実を知らない労働者がいらっしゃると思うのですが、それについてはどうされますか。
  77. 松原亘子

    松原政府委員 この具体的なケースについては、私ども、実態がどうなっているか 今資料が何もなくてお答えできないのですけれども労働者の方が、自分ももしかしたら入っていたのではないかといったようなことについて、中退事業団の方にお問い合わせをいただければ、もちろん手帳がないということだとは思いますが、先ほど申し上げましたように、手帳を所持されていないということであっても、御本人であることが確認できれば手帳を再発行し、退職金を支給するということはできるものでございます。
  78. 大森猛

    大森委員 今のケースは、とにかく全員解雇で、しかも、共済契約者はどこにいるかわからないような状況ですから、恐らく今おっしゃったようなことではだめだと思います。  それで、関連してお聞きしたいのですが、事業主の責任で、労働自身がこの退職金制度への加入の事実を知らずに退職のときに請求しないことがあるとすれば、この制度の意義は、全くこれはなくなってしまうと思うのですね。ちなみに退職後五年間で請求の権利は解消するというぐあいに法律上なっておりますけれども、五年を経て時効となった件数と金額について、単年度と累計についてお聞きしたいと思います。
  79. 松原亘子

    松原政府委員 退職金の時効は五年ということで法定されているわけでございますが、その件数及び金額でございます。  中退制度の場合には、時効後に請求がありましても実際には退職金を支給しているということはございますので、それらも全部含めて申し上げると、これが全部払われなかったものだということではないのですけれども、八年度見込みで、件数といたしまして一万七千六十件、約二十億円でございます。制度発足以来の累計は約三十八万六千件でございます。金額では約百七十三億円というふうになっております。
  80. 大森猛

    大森委員 単年度で約二十億円、累計で百七十三億円、これは事業団だけでありますけれども、これに特定共済を入れればさらに大きなものになってくると思うのですね。  今回、このHKKについては、たまたま法案の審議のための調査の中で明らかになったわけですけれども、知らないままでいる人も少なくないと思います。五年の時効でも柔軟に運用しているということは、これは当然そうしていただきたいと思いますが、必要な告知を積極的に行って、可能な限り給付を行うということがこの制度を本当に生かしていくことにつながっていくと思うのですが、この点、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  81. 松原亘子

    松原政府委員 告知といいますのは、多分先生がおっしゃられたのは、事業団の方から個々の労働者に、あなたはこういう退職金の加入者になっていますよということだと思いますが、ちょっとそこまでは、今のさまざまなことを効率化していかなければいけない、事務を効率化していかなければいけないというこの時代にあっては、ちょっと事業団としてはやり切れないというふうに私ども思っております。やはり事業主の方に、自分の労働者が退職金制度に入っているということを知らせてもらうことが一義的に必要というふうに考えておりまして、その周知のための努力はしたいというふうに思っております。
  82. 大森猛

    大森委員 私は、個別に知らせろと言ったわけではなくて、趣旨は、やはりそういうことをもっともっと普及する、その方法は皆さんで考えていただいたらいいと思うのですが、事務費補助の一割を六人の役員の報酬に回すというようなあれがあれば、もっともっとそういう啓発普及費に使っていただきたいということであります。  このHKKに関しては、破産、解雇をこの三月三十一日に受けている。労働者にとっては本当に、すべての収入の道を閉ざされてしまう、もう大変なことであるわけであります。  どうしてこういうことになったかという点でいいますと、もちろん、この間のバブル崩壊、長期不況、いろいろな原因は当然あるわけなんですけれども、最大の引き金になっているのが、事実上の親会社、HKKの仕事の六割から七割発注、受注しておりました日製産業、これが突然営業活動停止という通告をしてきた。こういう点で、この日製産業の責任は大変大きいものがあると思います。  ちなみに、この日製産業というのは、資本金五十四億円、従業員千五百十一人、年商売り上げ五千三百四十四億円、一部上場の大手の商社であるわけなんです。名前のとおり、日立製作所が株式の五六・五%と、完全な子会社で、もともとこのHKKというのは、日立と直接取引をしていたのを、日立の指導といいますか口添えで日製を通じて納めるようになったという経過があるわけなんです。そういう経過で、結局、HKKがこの日製産業への依存体質が強まったということから、当然のことになるわけでございます。  HKKは、今年度の経営計画を策定するに当たっても、日製からの十億円受注確保を前提に企業再建を進め、HKK経営者も、再三再四、日製に要請してきたにもかかわらず、日製がこれを拒否して今日に至っておるわけでありますけれども、下請振興法の振興基準によると、「長期発注計画の提示及び発注契約の長期化」、「継続的な取引関係を有する下請事業者との取引を停止し、文は大幅に減少しようとする場合には、下請事業者の経営に著しい影響を与えないよう配慮し、相当の猶予期間をもって予告するものとする。」こういうぐあいになっているわけなんですが、こういう立場からいって、本件のように取引の全面停止が突然行われる、それが引き金になって倒産に追い込まれるというようなことは、決してこれはあってはならないと思います。  ここで、中小企業庁、通産省、きょうおいでいただいておりますけれども、関係者、事業者等の実情をよく聞いて、HKKの労働組合の方の願いがかなえられるよう対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 宮川萬里夫

    ○宮川説明員 お答えいたします。  近年、厳しさを増す経営環境のもので、親企業、下請企業とも一層の競争力を確保する、こういった経営戦略から、親、下請企業双方に厳しい企業経営が求められている、こういうふうに認識しております。  しかしながら、個々の取引におきまして、親企業の優越的地位の乱用による発注の取り消し、こういったこと等の親、下請企業間におきまして生じるいわゆる下請いじめ、こういったものに対しましては、下請代金支払遅延等防止法等、法律の定める範囲内で厳正に対処してまいる所存であります。  なお、御指摘の点につきましては、HKKの労働組合の方々から陳情があることは承知しております。今後、関係当事者の協力のもとに事情を聴取し、関係法令に照らし、問題点の有無について、その把握に努めてまいる所存であります。  また、今後とも、親企業と下請企業のあり方につきましては、下請中小企業振興法の振興基準の普及啓発等を通じまして、親企業の一層の理解を促してまいる所存であります。
  84. 大森猛

    大森委員 このHKKというのは、大臣、かつては報国チェーンということで、六十年の伝統を持つ、コンベア業界の中でも、中小企業ながら、労使の大変な努力の中で専業メーカーとしての地位を確立してきた、そういう企業であるわけなんです。バブル崩壊後も、労使間協議なども結んで、経営改善の努力を非常にされてきました。昨年は、夏季一時金は〇・五カ月、年末は五万円だけの一時金ということで、そういうことに耐えながら大変な努力をされてきて、徐々に経営の状況も改善に向かっている中で、今回、こういう日製の大口受注打ち切りということで今日の事態を迎えて、今労働者の方は、この日製と話し合いを持ちたいということで門前に行かれる。ところが日製は、ガードマンを配して、全く完全に拒否される。つい先日は、何と警官まで導入して、犯罪者扱いされるような状況にあるわけですね。  これは、中小企業で働く労働者、これはもう全く特異な例じゃなくて、これからの激動する経済の中で、恐らく、あすは我が身になりかねない、そういう状況であるわけなんですが、労働者の、せめてこの日製産業と話し合いを持ちたい、こういう願いに、どうか労働省として、それに、そのための何らかの援助をしていただけないだろうかということを大臣からお聞きをしたいと思います。
  85. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生がおっしゃいます固有名詞の企業につきましては、私、先生からお話を伺うまでは一切名前も存じませんでした。しかし、話し合い云々といいますものにつきましては、多分、会社側と労働側との間で話し合いのルール、手続及び方式等について定めがあることだ、こう思っております。それに基づいて労使間で円滑哀に進められることを、私どもとしては労使にお任せをするという立場にありますもので、これ以上のああせいこうせいというようなことは申し上げられません。  ただしかし、中退金制度で私はこれを大きく広めてまいりたい、先生の御要望にこたえて、私どもそういうPRをしていく、こう申しました。にもかかわらず、中退金で積み立ててきたにもかかわらず、その職を失うに対して退職金が出ないというのは非常にもったいないことで、意義を失わせるものだと思っております。  今後も、このPRにつきまして、一生懸命努力をしてまいりたい、この答えをもってお答えとしたい、こう存じます。
  86. 大森猛

    大森委員 終わります。
  87. 青山丘

    青山委員長 これにて大森猛君の質疑は終了いたしました。  以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
  88. 青山丘

    青山委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  89. 青山丘

    青山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 青山丘

    青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  91. 青山丘

    青山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十二分散会      ————◇—————