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中島参考人 弁護士の
中島です。
私は、この
均等法が制定された十二年前あるいはそれ以前から、
日本弁護士連合会の
女性の
権利委員会副
委員長さらに
委員長として、長年にわたってこの
法案の
立法に関して
意見を述べてまいりました。その
立場からが
一つ。そしてもう
一つは、現在、働く
女性のための
弁護団の
共同代表を務めております。このグループは、
電話相談その他さまざまな形で、
現実に働いている
女性たちの生の声、悩み、その他、日々
訴えを聞いて、その解決に当たっております。
この
二つの
立場、日弁連として
立法過程にずっとかかわってきたという
立場と、
現実にたくさんの働いている
女性たち、特に
労働組合のない
中小企業その他で働いて、かなりひどい
労働条件、ひどい
差別を受けている
人たちの
立場を代弁する形で、本日は
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、今回の
法案に対する
評価でございますが、大きく分けて
均等法と
労基法の
女子保護廃止関係がございます。
均等法につきましては、私
たちが求めてきたものからはまだ大きく隔たっております。例えば
間接差別が明記されないということだとか、賃金についてはこれは
労基法だということで全く触れられていない。あるいは、
パートに対してどのような適用をするのかということについてはほとんど
議論もされていない。そして
救済機関が、若干の改善はありましたけれ
ども、
実効性を期待するというにはほど遠いなどのさまざまな問題があります。
しかし私は、今回の
均等法に関しては一歩
前進であるというふうに考えております。今申し上げた問題あるいは残るさまざまな
問題点につきましては、できれば修正あるいは指針その他の法的な
措置によって
実効性を確保できるように御
審議の上、成立させていただきたいと思っております。
なお、後の御質問で
均等法についても御質問いただければ補足させていただきたいというふうに思っております。
きょうは、時間の
関係がございますので、
労基法の
女子保護の問題を中心に
意見を述べさせていただきます。
御
承知のとおり、
女子保護廃止に関しては多くの
方々、特に
現実に働いている
女性の
方々から、大変不安である、
心配である、このまま実行されたら
女性は働き続けられないのではないか、
パートになるしかないのではないか、こういう
心配が寄せられております。私もその点については全く同様の
心配をしております。
しかし、基本的な
考え方として、私は、
女子だけが
保護されて
男性が全く法的に
保護されていない
野放し状態であるという現在の
法制が望ましいとは思っておりません。二十年前から、
女性も
男性も健康でそして
家庭と
職業が
調和できるような、そういう
労働時間
法制をつくってほしい、これをずっと私
たちは求め続けてきました。それが当時、二十年前はなかなか
現実的な
課題にはならなかったわけですけれ
ども、今回ようやくその
方向に向けて、つまり
女子のみ
保護から
男女共通の
保護へ、
男女共通規制へという
言葉で言われておりまして、私もその
言葉に賛成なんです。こういうことが具体的な
課題になって
中央労働基準審議会で
審議されている、これは私は歴史の中で大きな
前進であると考えております。
したがいまして、この点について、つまり
女子のみ
保護から
男女共通の
保護へという世界の流れをぜひとも
実現してほしい。
確かに、現在の
国会で
審議されています
法案に関しては、
共通規制が含まれておりません。これは
中央労働基準審議会で現在
審議しているからということです。
立法の手法としてといいますか、
順序として、経緯としてそういう形になっているということのようです。しかし、
立法機関というのは、皆さん方、先生方、この
国会をおいてないわけですね。
審議会に任せればいいということでは決してなくて、この
法案を成立させるに当たっては
男女共通の
規制というものが必要である、現在
審議されているけれ
ども、それは
女子のみ
保護をなくしても
心配がないという状態にするということを前提としてこの
法案を採択していただきたい。
つまり、私の
立場は、
労働基準法の
女子保護廃止に関しては
条件づきで賛成。
条件とは、
男女共通の
規制をつくる、それで、その実施と
女子保護廃止の実施が一致するということですね。これを
条件として賛成したいと思っております。
そのためには具体的に、
空白期間を置かないということが絶対的に必要であると考えます。この点に関しては、今、
鷲尾連合事務局長がおっしゃいましたし、昨年の建議に対するコメントでもそのようにお述べになりました。
私は心からこれを
実現していただきたいと強く
お願いして、そして、これは、
労働側だけではなくてこの
委員会の皆さん方にもぜひこの
立場で
審議していただきたいということを、もうこれは祈るような気持ちで私は参りました。
それで、このことに関しては、先ほ
ども出ましたように、千八百時間というのは
国際公約ですから、しかも、この目安時間を現在の三百六十時間からもっと短縮するということに関しては、九二年の段階で約束されていることですね。本当はことしの四月までに三百六十時間を短縮することになっていたわけです、これは
中央労働基準審議会の
労働時間部会で。これが、約束が守られていないということについてもっと真剣に受けとめていただきたい。そして、この目安時間に対して法的根拠を持たせるということについても、
労働時間部会で検討されていたわけですから、これをきちんとやっていただくように
国会の皆さん方も強く要求して、あるいはみずからそれを
実現していただきたいと思います。
それで、二番目に、
男女共通規制ができるとしても、その内容とレベルがいかなるものであるかということが重要です。この点に関して、実態調査も行われないで
女子保護の廃止が先行したということについては、私は大変遺憾である。
労働省については、これは今からでも、実施前にきちんと調査をしていただきたい、これを強く要望しておきたいと思います。
そして、それではどのような基準であるべきか。これは、諸外国と
ILOの資料が
委員の皆さん方にはお配りされていますので、これに沿ってぜひ
実現していただきたいと思います。
それで、時間が大分迫ってきました。
あと、そのような一般の
共通規制ができたとしても、
家族的
責任のある
労働者の
保護という点に関してはまだまだ不十分です。これについては、時間
外労働、休日
労働の
規制の問題とそれから深夜業の
規制の問題、この
二つがあります。
育児・
介護休業法が深夜業についてだけ免除の
規定がありますけれ
ども、これも私
どもから見ると、非常に不十分であると言わざるを得ません。この不十分な点については、後で御質問いただければ述べさせていただきたいと思います。
育児・
介護休業法でも、
家族的
責任のある
労働者についての時間外・休日
労働をぜひ制限していただきたいということです。
それから二番目に、残業命令をする場合に、したとしても、断れる場合の法的保障をしていただきたい。この点については、九日の
委員会の
審議で、太田局長が、年内に、正当な理由がある拒否理由についてガイドラインのような基準を示すというお話がありまして、私は大変心強く思いました。
この点については、今までの判例を踏まえて、つまり、判例とそれから学説で、
業務上の必要性が実質的に認められなければならないし、必要性が認められる場合であっても、
労働者にそれを拒否する、行わなくてもやむを得ない正当な理由があれば拒否できるということが判例、学説でほぼ一致しておりますので、
家族的
責任がある場合の多くは時間外・休日
労働については拒否する正当な理由があると考えておりますので、それを
労働省の年内にお出しになる基準の中に明記していただきたい。その上で、この
法案について採択していただきたいと思います。
最後に、深夜業ですけれ
ども、この深夜業については、
育児・
介護休業法で制限を新設いたしました。このこと自体は非常に重要なことだと思いますけれ
ども、しかし、権利の性格が形成権であるにもかかわらず、ただし書きで「事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」と書いてあることによって、形成権としての性格が非常にあいまいになってしまっております。
年次有給休暇についての
規定を使っているようですけれ
ども、あれは時季変更権だけでして、深夜業の免除の
規定を全然適用しないということになると、これは性格がまるっきり違いますので、ここの
部分については一体どうなさるのか、どういう解釈なのか、これからの
審議で詰めていただきたいと思います。
それから、昼間の
労働への転換権がないということ、それから適用範囲が非常に狭いというようなことについても
審議を十分に尽くしていただきたい。
そしてもう
一つ、
労働条件の一方的不利益変更の問題として
審議していただきたい。この点については、やはり九日の
審議の中で、一定の場合には不利益変更になる場合があるという局長答弁でありました。これについては、最高裁の判例によって非常に具体的な基準が確立されております。変更の必要性と不利益の程度、内容、
社会的相当性、こういうようなことが判例上確立しておりますので、これらについて、
家族的
責任がある
労働者の場合については原則として不利益変更がある。本人が望む場合は別ですよ。本人が望まない場合には、一方的不利益変更として許されないということを法的に担保していただきたい。
これらについては、後で補足説明させていただければ幸いです。どうもありがとうございました。(
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