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金子(満)
委員 婦人
局長、私は意地悪して質問するつもりはないのですけれ
ども、違うと思うのです。事実も違うと思う。
例えば、かつてのひどい時期と、
女性労働者の立場というのは大きな
変化がある。これは、
女子保護規定があるこの
労働基準法の
もとで広がってきた
職域の
拡大なんです。
労働大臣も、十年この方随分
変化があったと言いました。十年この方あったのは、つい三年前まで、通達に言われるように、
女子保護規定の
重要性を強調してきたのです。その中で、ああ、重い
労働ではないな、深夜働くことはしなくてもいい、年間を通じて百五十時間以上は、
女性にはこの時間外
労働、残業は強制されないのだという中で広がってきたことなんです。
それを一面からだけ見るのは正確ではないし、それからもう一つは、
婦人少年問題審議会、婦少審の
全会一致という
意味があると思うのですが、その建議があった。これはたしか去年の十二月ですよね。だから、十二月にあるということは、それ以前に
審議はやられておったということです。
いいですか。そうすると、十二月、婦少審の建議に基づいてやりました、そして
法律が出ました。ここで何か、婦少審を金科玉条というか、最高の権威のあるところに持ち上げてしまうのです。だめなんです、それは。既に、これはもう私
ども資料でいただきましたけれ
ども、去年の三月二十九日に閣議決定で「
規制緩和推進
計画の改訂について」という分厚い
計画が
公表されているのですよ。
この中で、
女子保護規定をどういうように
労働省が扱ったか。「
労働時間等」という
規制緩和のところで、女子の時間外
労働、深夜
労働の
規制を外していくというのが
規制緩和で、閣議決定ですから、
労働大臣、
岡野さんじゃないですよ、これは前の
労働大臣ですから、そのときに決定をしているのですね。そして、この問題を、
婦人少年問題審議会の
審議が必要だというので、去年の三月ですから、そうして提起しているのじゃないですか。自分で提起をしておいて、婦少審が決めて
全会一致だからこうです、こんな人に責任をなすりつけるようなことは通らないと思うのです。
だから、そのとき間に合わせて言ってはいかん。そのときそのときで支離滅裂になってしまうのですね。それで、その犠牲を全部こうむるのはだれかといったら、
女性労働者であり、日本の
労働者であり、そして日本社会全体がこれをかぶるわけです。ですから、一つのものをやるときには十分
意見を聞いていかなければならぬ。
何でこんなことになったのか。だれが頼んだのですか。だれが
保護規定をやめてくれと言ったのです。これは、この国会の初めのときから随分出ました。そして、その点について私
どもは、よく武藤嘉文さん、総務庁長官の言葉を引用させていただきました。これは予算
委員会に対する答弁です。
これは二月二十七日、衆議院の予算
委員会において、我が党の石井議員が質問したのに対して、武藤さんはこういうふうに言っているのですね。
例えば日経連であるとか経済同友会であるとか、あるいは日本自動車工業会であるとか、あるいは日本鉄鋼連盟であるとか、どちらかというと産業
団体が
中心であったと私は聞いており
ます。こう言っている。そして、六日に本
会議でこれが提案され、
労働大臣が趣旨を説明しました。
翌朝、ぱっと新聞を見るのです。新聞は何て書いてあるか。これは読売新聞ですね。「変わる
女性の
労働環境」、歓迎一色の
経営陣と書いてある。それで証明していますね。
経営者は一様に保護
撤廃を歓迎している。括弧つきで、これは引用です
から、「残業や深夜業の解禁で
女性が
雇用しやすくなり、
採用は確実に増えるはず」だ、日本
経営者団体連盟の荒川労務
法制部長。ちゃんと発言まで出ている。歓迎しているのはこっちなんですね。こうなることを予想している
企業はいっぱいあるのですね。
例えば、これは日本経済新聞です。一月の二十九日の夕刊です。この
女子保護規定が
撤廃されればどういうことになるか。「トヨタ自動車は」、次が引用の
内容です、これは人事部の話です。「「
現行法では夜勤ができない
女性の
採用を控えてきたが、深夜業が解禁されれば
女性が使いやすくなり、
採用はもっと増えるはず」(人事部)」と書いてある。これは何を
意味するか、だれが考えてもすぐわかるのです。
これは、二十四時間のフル稼働の生産ラインに
女性を組み込んでいくということなんですよ。これはもう、うんと簡単です。これをやりたいために、随分やってきたと思うのです。それをだんだん受けて
労働省が、閣議のメンバーですから、閣議決定で
規制緩和の中に
女性の
保護規定の
内容を入れた。そして、出てくるときにはまるで、厳正中立の婦少審が
全会一致です、そこにつけ加えると、
労働組合も賛成です、こう言っている。
その
労働組合の代表は、言わずとわかっているわけですけれ
ども、連合です。その連合の中の
女性労働者が一番いるところのゼンセン同盟が反対を表明しているのじゃないですか。全国の
労働組合もたくさん反対をしているのです。
こういう状態を考えたとき、私は思うのです。いろいろのことが言われる。確かに、平等だとか均等だとか同権だとか、何か言えば、
差別をなくしてこうだと言うのです。反対する人、だれもいないのですよ。それは真理だからないのです。しかし、それが現実にあるのかといっならないから、なるほどと思うのですね。
ところが、現実と理想とがこんがらがった演説、解説が多いです。ごちゃごちゃになるのです。だんだんそれにつり込まれて誘導されていくとどこへ行くのですか。平等で
差別はなくなりますとずっといったら、長時間で過密
労働で過労死にまで通ずるような土俵の上に上がってしまうのです。
そういう長時間、過密
労働、過労死に通ずるような今の日本の
労働条件、男性の
労働条件と、そういうところへずっと下げて、
女性もどうです、平等ですよ、均等ですよと。私は口が悪いから、言えば本当に地獄で一緒になるようなものだ。地獄の均等みたいになってしまうのだ。そうではなくて、別なことを考えなければならぬ。
説明は幾らもできると私は思うのですけれ
ども、今必要なのは
女子保護規定を
廃止することじゃないのです。その
女子保護規定の中で
女性の
職域が
拡大してきたのです。
確かに
女性労働者の数もふえてきた。そういう中で今やることはどうか。あの女子保護の
内容はぜいたくかどうかと言うのですよ。あんなところまで保護して、
女性にはうんと甘いのだ。私はそうじゃないのだ。今、日本の
労働基準法にはっきりと位置づけられている
女子保護規定というのは常識なんです。ヨーロッパはそうじゃないですか。例えば時間外、
女子保護規定では百五十時間、
フランスは百三十時間、
男女ともそうじゃないんですか。この間の読売新聞にも大きく出ています。深夜、
スウェーデンは原則的に夜中の十二時から朝の五時までは深夜は
禁止なんです。特別の仕事をする人は例外であることはもちろんです。
そして、何かというとよく出てくるのは、
妊娠と
出産と
育児のことについていろいろの手だては講じてあります、そのとおりです。これは確かにあるのです。なかったら大問題だ。それでは
育児の点で見ると、就学前は、六歳まではいいのですよ。過ぎたらどうです。これはもう学校の
先生の中でも大問題になっているのです。一年生に上がったら留守番するのですか。お父さん、お母さん帰してください。これは当然出るのです。ところが
ドイツでは十二歳まで、申請すれば男でも女でも平等に
法律で与えているじゃないですか。
だからそういう点を考えると、私は、今
女子保護規定をなくすのではなくて、最も先進的で進歩的で合理的な世界の常識をまず日本の
男女共通の
労働時間として
制定することが先だ。これをやらなければ、よく
大臣の言うゆとりある生活に絶対にならないのです。そして、今の
女子保護規定に含まれているような
内容を
基準にして
男女同一の共通の
労働時間の
規制ができれば、おのずから
女子保護規定の問題は解決つくのです。悪い方へ水準を合わせるというのは、この際きっぱりと断るべきだ。
これまで戦後ずっと
労働大臣幾人もあったけれ
ども、私は最初にお伺いしたように、あの終戦の中で今の
労働基準法ができたとき心から喜んだという、それを今この時期に、
岡野さんが
労働大臣のときにこういう変なものは拒絶した、なくした、そして財界に対しても胸を張ったということが言えるようなことをやったらどうかと思うのです。そのくらいの度胸がなかったら今のこういう危機を救えないのですよ。
だから、私はそういう点で堂々とやるのならいいですけれ
ども、いろいろ言うのだけれ
ども、何だかこれは押しつけるだけの話じゃないか。だとしたら重大問題になると思うのですね。そういう
意味で、ちょっとこれは
大臣に伺います。