○鍵田
委員 新進党の鍵田でございます。先月の時短促進法に引き続きまして、時間をちょうだいいたしまして御
質問をさせていただきたいと思っております。時短促進法のときには、
大臣に労働観などにつきましていろいろお聞きをしたわけですが、きょうは、
雇用の問題、それも高度
技能の活用
雇用安定
地域の
指定ということでございますので、特に
職業観というようなことについて若干
大臣にもお聞きをしたいというふうに思います。
その
質問に入る前に、私ごとになるわけでございますけれ
ども、若干
自分なり家庭の経歴な
ども経験として
お話をさせていただきたいのです。
実は、父親は洋傘の柄をつくります職人でございまして、特に水牛の角などを曲げまして、それで洋傘の柄をつくるわけでございます。南方から輸入しました水牛の角を湯で温めまして、それを手で曲げてちょうど柄の形にする、そしてまた、ステッキの柄なんかにも使うわけでございますけれ
ども、それをグラインダーで削りまして、最後は
自分のいろいろなやすりを使って仕上げていく。そし、バフで仕上げて、非常にきれいな柄にするわけでございます。それは、何かお金持ちのだんな衆が持たれるというふうな高級品だったようでございまして、小ざいときにそれを見ながら実は育ったわけでございます。
私自身も、実は学校を卒業しましてから就職いたしました会社が、蛍光灯などをつくっております家電
関係の会社でございます。どういう職種を望むかということを聞かれたときに、
自分で
技能を身につけたいというようなことで、金型がやはりその中でも一番いいのではないかということを希望いたしまして、実はその希望を入れていただいたわけで、会社全体では三百人ぐらいの規模でありましたけれ
ども、金型自身は十人もいないぐらいの小さい職場でありましたけれ
ども、そこへ入れていただいたわけでございまして、そこで三年ぐらい金型の製造に従事しておったわけでございます。恐らくこの国
会議員の中でも、金型を製造しておった議員というのは余りいないのではないか。ひょっとするど唯一の議員かもわかりませんが、唯一で最後の議員にならないように後輩に頑張ってもらわないといかぬなと思っておるのですけれ
ども。
その当時の金型というのは、こういう鉄の塊がありますけれ
ども、その表面を両方削りまして、そしてそれに穴をあけて雌型をつくるとか、それを削って雄の型をつくって、雄と雌とがうまく合って、鉄板を打ち抜いたり、それからまた絞ったりというふうな型をつくるわけでございます。私が就職しましたのは昭和三十年ちょっと前でありましたけれ
ども、当時は、その金属の塊を打ち抜くのに、形をけがきましてその内側をずっと細かくボール盤で穴をあけて、そこへ当て金を当てて大きなハンマーでたたいてそれを打ち抜く、そしてその後、のみなんかで削っていったり、やすりで仕上げたりしてそういう形をつくっていくわけです。大変原始的で、手間のかかる仕事をしておったわけでございます。
さらに、それを仕上げていくためにはいろいろな機械も使わなくてはならない。セーパという、平面に削る機械もあれば、回転をさせながらやる旋盤もありますし、それからまた中をくり抜くためのミーリングという機械もあります。また、平面をきれいに磨くための研磨機もあります。いろいろな機械を使いこなさないと、金型仕上げ工というのはなかなかできないわけでございます。
そしてその金型を、今度は焼きを入れなくてはなりませんけれ
ども、この焼きを入れるのも、
自分で色を見て、この型にはどの程度の硬度が必要か、そういうことで、焼きを入れる。何といいますか対象になる、水でやるのか油でやるのか、またそこへ青酸カリを塗ってやるのかというふうなことを
自分自身で判断をしなくてはならない。また、要とする硬度によりましては、色とか何かを見まして、その焼き方の度合いを判断をしながら焼き入れをするということも必要なわけでございまして、そういう
技能を全部習得しようと思いますと大体十年ぐらいはかかるというふうに言われておりまして、私は、そこまでいかないでほかの、労働組合の仕事に入ったものですから、もう三年ぐらいでやめましたから、一人前にはまだなっておりませんでした。
しかし、先輩などには非常に習熟した人がおりまして、その人がそれでは教えてくれるのかというとそうではないのですね。ただ、おれのやっていることを見て
自分で覚えろというようなことでありまして、どこかへ行って
自分が習ってくるとかいうふうなことがなかなかできなかったわけでございます。大体、職人という世界はそういうもののようでございまして、余り
自分の
技能を人に教えるとかいうふうなことをやらない、それを、でっちというのですかね、その当時はもう余りでっちとは言わなかったようですが、見習い工ですね、これは先輩の
技能を盗み見をして、そして
一つ一つ覚えていくというふうなことでございます。
これは、私たちの金型もそうでありますけれ
ども、鉄鋼
関係に行きましても、溶鉱炉の中でいろいろな薬品を配合をしたり、それからどういうタイミングで火を出すのかというふうなことを、その色だとかそういうもので判断をして出す。今はもうコンピューターでほとんど制御されておりますが。
そういう、いわゆる職人の勘で非常に精度の高い製品をつぐっていくというようなことが常識的な世界であったわけでありますけれ
ども、最近はそういう職人というふうな言葉は本当に使われなくなってきておるのじゃなかろうかなというふうに思うわけでございます。何か職人といいますと、午前中も話がありましたけれ
ども、ちょっとダサなとか、ああいう汚い仕事は嫌だとかいうふうなことで、若者あたりからはどうも敬遠されるというのですか、そういう風潮があったわけであります。
こういう環境というのはどこから出てきたのだろうか。時期は私もわかりませんけれ
ども、私が就職しましたころはまだ工業高校が大変盛んでありまして、工業高校を出ておれば非常に就職もしやすいというようなことでありましたけれ
ども、いつの間にか、そういう工業高校はできるだけ敬遠して、普通高校に行ってそして次に大学を受験するのだというような風潮になってきたのではないか。それで、大学を通っておらなかったら会社へ就職しても余り立身出世は望めないというようなことで、とにかく普通高校へ行って大学に行くというような教育が、学校でもそして家庭でも蔓延しておったのじゃないかなというふうに思うわけです。
企業は
企業で、大学卒でないと、ある程度
技能とかそういうものはあっても余り重用しない。そして学卒だけを役職なんかにつけていくという。昔、軍隊などでもそうだったようでございます。例えば、幾ら軍隊でのいろいろな経験があっても、せいぜい軍曹ぐらいまでしか学校へ行ってなかったら上がれない。そして、学校を出ておれば、若い人でも尉官から将官に上がっていけるというふうな世界であったようでありますが、公務員の皆さんもそうじゃないかなというふうに思うわけなのですが。こういう風潮がだんだん、ブルーカラーといいますか、現場の仕事を嫌って、そしてホワイトカラーであるとかサービス
産業であるとか、そういうところにみんなが就職するというような
状況になってきたのではなかろうかというふうに思っております。
実は、円高不況のときに、とにかく
中小企業は大変なダメージを受けまして、その円高不況を何とか克服するためには、やはり外需よりも内需を
中心にした経済に切りかえていくということで、いろいろな経済政策が発表されたりしたわけであります。それが、
物づくりとか、そういうものをもっと大切にするということでそういう経済政策が達せられるならいいのですが、どうもあのときの
状況を見ておりますと違ったのじゃないか。というのは、当時の一部の著名な評論家などは、高額所得者がたくさんおるのだ、年に一億も二億も稼ぐような者がいっぱいおるのだ、だからそういう人をターゲットに需要をつくっていけば景気が一遍によくなるのだというようなことを言っておった評論家がおりましたけれ
ども、そういうことが現実のものになったのではなかろうか。
結局、こつこつと物をつくっていくよりも、マネービルというのですか、土地の投機だとか株の投機とかゴルフ場の会員権だとか、そういうものにどんどん手を出して、そして、実際の
物づくりとかそういうGDPの何倍にもなるようなそういう投機の金が動いたというような時期があったわけでありまして、こつこつと
物づくりをするということが何かばかに見えてくる、そういう風潮が大変広がってしまった。今そのしっぺ返しが来て、不良債権に大変困っておるのが金融機関ではないか。
大体、金融機関というのはもちろん大切な仕事でありますけれ
ども、本来、
産業活動をやっていく、それをどうサポートするかというのが金融機関の仕事ではないかというふうに思うのですけれ
ども、あのバブル景気を支えたのは金融機関でありまして、
中小企業の
経営者とか金を持っている人には、ここに物件があるからこの土地を買えとか、こういう株を買うともうかるぞとか、ゴルフの会員権、これはもう二倍、三倍になるから買いなさいとか、金は貸してやろう、そういうことでやった結果が今金融機関が困っておることになっておるわけでありますし、そして、学校教育も、
企業の採用、あと昇進、昇格などのあり方までみんなおかしくなってしまっておるのではなかろうか。
こういうふうな現状にあるわけでございますけれ
ども、そういうことに関しまして、今後学校教育の問題、午前中も若干
質問ありましたけれ
ども、学校教育というのは、何も
技能を教えるだけの教育ではなしに、
物づくりが大切である、そういうことを教えていくという学校教育、家庭教育、そして、
企業においてもそういう人たちをもっと重用していくというような風潮が必要ではないかというふうに思うわけでございますけれ
ども、その辺につきましての
大臣の御所見があればお聞かせいただきたいというふうに思います。