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1997-03-04 第140回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 中川 秀直君       小里 貞利君    谷津 義男君       鍵田 節哉君    北側 一雄君       中井  洽君    山中 燁子君       坂上 富男君    葉山  峻君       上原 康助君    辻元 清美君    兼務 河野 太郎君 兼務 冨沢 篤紘君    兼務 藤田 幸久君 兼務 矢島 恒夫君    兼務 吉田 公一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君  分科員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審 林  幹雄君         議官         防衛庁教育訓練         局訓練課長   柳谷 俊範君         防衛施設庁総務         部業務課長   西川 吉光君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  多田 孝基君         外務大臣官房会         計課長     中村  滋君         大蔵省主計局主         計官      御厨 邦雄君         大蔵省国際金融         局開発金融課長 荒巻 健二君         郵政省貯金局業         務課長     植村 邦生君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   北側 一雄君     鍵田 節哉君   中井  洽君     赤松 正雄君   仙谷 由人君     坂上 富男君   上原 康助君     中西 績介君 同日  辞任         補欠選任   赤松 正雄君     西野  陽君   鍵田 節哉君     山中 燁子君   坂上 富男君     葉山  峻君   中西 績介君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   西野  陽君     若松 謙維君   山中 燁子君     塩田  晋君   葉山  峻君     金田 誠一君   辻元 清美君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   塩田  晋君     北側 一雄君   若松 謙維君     福島  豊君   金田 誠一君     坂上 富男君 同日  辞任         補欠選任   福島  豊君     中井  洽君   坂上 富男君     仙谷 由人君 同日  第一分科員冨沢篤紘君、吉田公一君、第六分科  員河野太郎君、第七分科員矢島恒夫君及び第八  分科員藤田幸久君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。池田外務大臣
  3. 池田行彦

    池田国務大臣 平成九年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、七千七百四十七億九千九百万円であり、これを平成八年度予算と比較しますと百八十九億九千七百万円の増加であり、二・五%の伸びとなっております。  今日の国際社会においては、冷戦終結後の平和と繁栄を確保することを目指し、たゆみない努力が続けられておりますが、政治経済両面での課題は山積しており、依然として不透明で不確実な状況が続いております。核兵器の拡散の危険は依然大きいものがあり、また、主要国経済は困難を抱えたままであります。さらに、開発途上国の貧困の問題は一層深刻化しております。また、地球環境麻薬難民、人口、エイズといった地球的規模の問題にも取り組まなければなりません。このような状況の中で、我が国としても、一層積極的で創造性豊かな役割を果たす必要があります。  このような観点から、我が国外交に課せられた使命は極めて重大であり、平成九年度においては、その足腰ともいうべき外交実施体制強化外交施策充実強化の二点を重点事項として、予算強化拡充を図っております。  まず、外交実施体制強化に関する予算について申し上げます。  定員の増強につきましては、今回のペルー事件をも踏まえ、在外公館警備担当官増員数を昨年度増員数の倍の十六名増としており、平成九年度においては全体で百四十四名の増員を得て、外務省政令定員合計五千九十四名といたしております。また、機構面では、在クロアチア大使館を新設すること等を予定しております。  さらに、在外公館機能強化のために、在外公館施設等強化及び海外邦人対策危機管理体制強化のための経費五百五十億円を計上しております。  加えて、外交政策策定の基盤となる情勢判断を的確に行うために不可欠な通信、情報収集等機能強化に要する経費として八十億円を計上しております。  次に、外交施策充実強化に関する予算について申し上げます。  外交施策充実強化の四つの柱は、二国間援助等拡充、平和・軍縮のための協力、地球規模問題への対応、そして国際文化人的交流強化であります。  まず、平成九年度政府開発援助につきましては、一般会計予算において、政府全体で対前年度比二・一%の増額を図っております。このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比一・三%増の二千六百三十五億円計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が二千二百二億円、食糧増産等援助費が四百三十三億円であります。さらに、人的協力拡充のため、技術協力予算拡充に努め、国際協力事業団事業費は対前年度比二・二%増の千七百九十五億円を計上しているほか、国際協力事業団定員につき十名の純増を図る等、援助実施体制強化に努めております。  次に、平和・軍縮のための協力でありますが、国際の平和と安全の維持及び開発分野における取り組み強化、特に地域紛争平和的解決重要性にかんがみ、紛争の予防、政治的和解停戦等に参画し、この分野での国連地域機関等活動に対する協力を行い、また北方領土問題の解決に向けた取り組み等のため、総額九十三億円を計上しております。  次に、地球規模問題への対応は、国連中心とする多国間協力及び地域機関での協力が不可欠であり、例えば、気候変動枠組み条約第三回締約国会議を本年本邦において開催するなど、多国間の枠組みを通じた対応強化していく所存であります。このように環境麻薬テロ対策等課題にも引き続き取り組んでいくため、五十三億円を計上しております。  次に、国際文化人的交流強化でありますが、異なる文化間の相互交流を通じ、我が国世界各国との間の相互理解を一層深めるための諸施策を推進するとともに、アジア近隣諸国等との歴史を直視し、相互理解を一層増進するために展開されている平和友好交流計画を引き続き推進するため、百七十九億円を計上しております。  以上が外務省関係予算概要でありますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らい方をよろしくお願い申し上げます。  以上でございます。
  4. 中川秀直

    中川主査 この際、お諮りいたします。  ただいま池田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中川秀直

    中川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――    外務省所管平成九年度予算案説明  外務省所管平成九年度予算案について大要を御説明いたします。  予算総額は七千七百四十七億九千九百二十七万四千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費五千五百四十四億四千一万三千円、エネルギー対策費五十五億七千六十九万二千円、その他の事項経費二千百四十七億八千八百五十六万九千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省六千五百七十一億五千四百十五万八千円、在外公館一千百七十六億四千五百十一万六千円であります。  只今その内容について御説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費三百二十九億八千三百五十五万五千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち、本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一千九百八十八名の人件費及び事務費等、並びに審議会運営経費であります。  第二 外交運営充実に必要な経費百七億九千四百五十四万九千円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉我が国に有利に展開させるため本省において必要な情報収集費等であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費百九十八億七千百九十二万八千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金百六十億七千六百四十一万二千円及び啓発宣伝事業等委託費八億二千五百二十万五千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費百四十億五百二十一万三千円は、「旅券法」に基づく旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費であります。  第五 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費六十一億二千七百六十八万六千円は、アジア北米、中南米、欧州、太洋州、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十九億七千五百三万六千円、財団法人日本国際問題研究所補助金六億七千三百六十三万二千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五千四百六十三万三千円、社団法人国際協力会等補助金一億五千九百十六万四千円、インドシナ難民等救援業務委託費七億七千五百七十三万五千円であります。  第六 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費三億六千九百八十六万六千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 条約締結及び条約集編集等に必要な経費七千六百十三万五千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八 国際協力に必要な経費二十四億八千五十二万一千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金四千六百七十九万一千円であります。  第九 外務本省施設整備に必要な経費十一億六千三百六万七千円は、外務本省庁舎等施設整備に必要な経費であります。  第十 経済技術協力に必要な経費六十八億八千六百九十七万六千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金三十六億二千二百十六万七千円等であります。  第十一 経済開発等援助に必要な経費二千六百三十六億四千三百七万七千円は、発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助に必要な経費であります。  第十二 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費一千四十四億三千二十五万四千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十三 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費五十五億七千六十九万二千円は、我が国が加盟している国際原子力機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十四 国際分担金等支払に必要な経費九十二億七千九十三万三千円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団交付金に必要な経費一千七百五十七億八千九百七十万六千円は、国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十六 国際協力事業団出資に必要な経費三十六億九千万円は、国際協力事業団の行う施設取得等に要する資金に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費八百十五億二千三百一万七千円は、既設公館百七十七館六代表部平成九年度中に新設予定の在クロアチア大使館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計三千百九名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費二百九億五千六百二十三万五千円は、諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な情報収集費等であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十七億七千百六十二万七千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国政治経済及び文化等実情組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制維持強化に必要な経費三億八百三十二万七千円は、自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費百十億八千五百九十一万円は、在ポーランド大使館事務所・公邸新営工事(第一期工事)、在ジョルダン大使館事務所営工事(第一期工事)、在大韓民国大使館事務所新営用基本設計、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管平成九年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  6. 中川秀直

    中川主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 中川秀直

    中川主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。
  8. 河野太郎

    河野(太)分科員 河野太郎でございます。  本国会外務委員会に配属になりました。本日は外務省に幾つかの御質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず最初に、現在懸案事項になっておりますペルー事件でございますが、ペルー事件への対応で、本省及び現地で、今一体一日当たりどれぐらいの経費がかかっているのか、あるいはその内訳並びに発生から今日までの合計金額がどのようになっているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
  9. 原口幸市

    原口政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のとおり、急な、予想もしなかった出来事でございますので、本省においてもオペレーションルームを設置してそれなり経費がかかっておりますし、在外におきましても、大使館が事実上なくなって、それにかわって現地対策本部というものをつくって、そこにほかの在外公館あるいは本省から人を送ったということで、これもまた余分なお金がかかっているわけでございますが、この金額につきましては、所与の外務省の本年度の予算の中を種々やりくりいたしまして何とか対応しているというのが実情でございます。
  10. 河野太郎

    河野(太)分科員 金額的には幾らぐらいになりますでしょうか。
  11. 原口幸市

    原口政府委員 一日幾らというような計算は実はいたしておりません。先ほど申しましたように、今年度の予算の枠内でいろいろとやりくりして何とか処理できるというようなオーダーでございます。
  12. 河野太郎

    河野(太)分科員 来年度の予算の中でペルー事件に関連した経費はどのように取り扱うのかをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 原口幸市

    原口政府委員 今回のケース在外公館警備という問題に図らずも焦点を当てたわけでございますので、来年度におきましても、警備員が今年度は実は八名の増でございましたが、来年度はその倍の十六名増というのを認めていただいておりますし、その他、警備関係施設等につきましても特段の配慮をいただいておるわけでございます。  それに加えまして、今年度の予備費で二十一億円の経費をいただいておりまして、これによって、例えば爆弾探知装置、あるいは金属探知装置、あるいは携帯用の電話、あるいは脅威度の高い公館の外壁の補強、こういったもの、それに、先ほど大臣からもお話しいたしましたが、現地警備会社警備員を雇いまして二十四時間体制というものを実現する、そういうような施策を種々講じたいということでお願いしているところでございます。
  14. 河野太郎

    河野(太)分科員 このペルー事件が終了いたしましてから、なぜこうした事件を未然に防ぐことができなかったのか、あるいは事件に対する対応が適切であったのか、あるいは外務省オペレーションルームを初めとして、危機管理に対する用意が万全であったのかどうかということを総合的に見直さなければいけないのではないだろうかと思います。必要ならば、CIAその他の専門家を含めた外国人の方に入っていただくような体制をつくって、第三者外務省の今の体制をレビューをする、そういうことが必要ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  15. 原口幸市

    原口政府委員 在外公館の安全の確保につきましては、本来、外交関係に関するウィーン条約に定めるとおり、第一義的には接受国の特別の責務でございますが、在ペルー日本国大使館につきましては、かねてよりいろいろと脅威度が高いということもありまして、私どもとしては、人的あるいは機器の面でもそれなりの、我々ができる範囲内で最大限の警備対策を講じてきた次第であります。  しかし、結果から見ますと、ああいう事態になってしまったわけでございまして、我々としても十分その原因等については真剣な検討を行わなければならないと考えておりまして、実は先般、私すなわち官房長がヘッドとなりまして、省内に警備対策全般について見直す委員会を発足させたところでございまして、今後、この委員会審議を通じまして、警備体制の一層の強化を図っていくつもりでございますが、今先生指摘のように、その過程におきまして、必要に応じて関係省庁等第三者の知見というものも得ていきたい、そのように考えている次第でございます。
  16. 河野太郎

    河野(太)分科員 もう一つのテーマに移らせていただきます。  まず最初に、一般論をお伺いいたしますが、一般論として、諸外国から、日本各国の、関係があります外交文書公開について、この文書外国情報公開法その他に基づいて公開をしたいというような事前協議があった場合、外務省ではどのようなルートでそれを持ち上げて、だれが実質的な意思決定参加をするのか、お伺いさせていただきたく思います。
  17. 原口幸市

    原口政府委員 基本的には、外交文書開示というのはその国が決定すべきものでございますが、一般的には、相手国関係のあるものについては相談があるわけでございます。その相談があったときには、当然のことながら、外交関係文書でございますから、外務省の中でその事柄を担当している部局が実質的にいろいろな観点からその開示妥当性について検討するわけでございますが、その際の基準といいますか、検討の視座を与えるものは、例えば相手国との関係、あるいは関係している人のプライバシーの確保、あるいは国の安全保障に関連して今開示することが適当であるか、そういうような点を総合的に勘案するわけでございまして、もちろん、最終的には外務大臣のもとで、主管課中心になりまして、その他関係各者が集まって議論して我が方の立場を決定する、そういうことだろうと思います。
  18. 河野太郎

    河野(太)分科員 一般論として、例えば韓国からそういう事前協議があった場合に、大臣を補佐して最終的な会議参加をするのは外務省のどういったメンバーでございますか。
  19. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 少なくともアジア局官房を含む関係者であろうと思います。
  20. 河野太郎

    河野(太)分科員 韓国外務省筋の話によりますと、昨年の末に、韓国情報公開法に基づいて日韓交渉に関する外交文書韓国側公開をしたい、そういう申し入れがソウルの日本大使館を経由して外務省に入った。外務省は、先ほどの答弁のとおりでしょう。アジア局並びに官房その他が御審議をされて、日朝交渉へまだ影響があるだろう、あるいは両国民国民感情配慮をする、そういうこともあるということで、この日韓交渉に関する文書公開を避けてほしい、非公式にそういう要請を韓国にしたそうでございますが、この意思決定に当たりまして、外務大臣はどのように関与されておりましたか、少し詳しく教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。外務大臣に御答弁をお願いします。
  21. 池田行彦

    池田国務大臣 外交文書公開に当たっての一般的な取り扱いについては先ほど政府委員から御答弁申し上げたとおりでございますが、今御指摘の具体的なケースについてどういうふうな取り扱いをしたかにつきましては、これは恐縮でございますけれども、いろいろな方面への影響もこれあり、御答弁は差し控えさせていただきます。
  22. 河野太郎

    河野(太)分科員 今回の韓国外交文書情報公開ケースは、日朝交渉に関すること、あるいは国民感情配慮をしてということでございますが、実は韓国の内政に関する政治的な配慮があったのではないかということもあるのではないかと思います。これはかなり高度な政治判断があったと考えて差し支えないでしょうか。
  23. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども承知しておりますところでは、韓国外務部は、一九九四年からでございますけれども、三十年経過した文書公開していくというふうな公開制度を発足させたというふうに承知しております。しかしながら、今御指摘日韓国交正常化交渉に関する文書というのはまだ公開されたとは承知しておりません。  なお、当然のことでございますが、公開するかしないかということは、やはり当該政府の責任において決定されるものでございますので、それがどういう事情によるものかについては、これはやはり答弁は差し控えさせていただかざるを得ないということを御理解賜りたいと思います。
  24. 河野太郎

    河野(太)分科員 今回の日本外務省外交文書公開でも、日韓交渉に関する部分は日朝交渉影響を与えるということで公開をされませんでした。日韓交渉に関する外交文書日朝交渉影響を及ぼすとすると、例えば戦後補償の問題とかそういったところが考えられると思うのですが、それ以外に日韓交渉日朝交渉影響を及ぼすというおそれのある部分はどんなところがあるのでしょうか、御答弁をお願いします。
  25. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 日本における外交文書、日韓の交渉に関する外交文書という前提でお答え申し上げますと、今必ずしも私どもは日朝関係云々ということを申しておるわけではございません。この日韓の正常化交渉というのは十四年に及ぶ非常に長期の交渉であって、また、政治経済文化など内容が多方面にわたっております。そのため、関係記録の量というのは極めて膨大なものになっている。そういう理由から、審査は非常に慎重に行うことが必要で、この審査を終えるまでにまだ時間がかかる、こういう状況にあるわけでございます。
  26. 河野太郎

    河野(太)分科員 日韓交渉に関する文書の審査がどの程度進んでいるのか、それではお教えいただきたいと思います。
  27. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 まことに申しわけございませんのですが、今申し上げましたような状況でございまして、十四年間、七次に及ぶ会談が継続されたということのため、量が非常に多い。三十年を経過したわけでございますが、まだ相当時間を要するということしか今申し上げる段階にございませんで、ちょっとその点は御了承をいただきたいと存じます。
  28. 河野太郎

    河野(太)分科員 それでは、外交文書情報公開をされるための審査というのは既に始まっていると考えてよろしいでしょうか。
  29. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 審査自体は始まっております。
  30. 河野太郎

    河野(太)分科員 日韓交渉の内情に関しましては、既に韓国側で「実録 朴大統領と日韓会談」という本が九五年に出版され、ここにある記述がどうもある程度外交文書に基づいているのではないだろうかというような話もございますので、その辺を少し外務省は考慮をしていただいて、文書の審査をなるべく早くしていただければと思います。  もう一つ情報公開についてお伺いをいたしますが、日米安保に関する文書でございますが、日ロあるいは日韓というのは、平和条約の締結ですとか日朝交渉を控えておりますが、日米交渉に関してはそういった課題がないわけでございます。ことしの秋までにガイドラインの改定を行うということもありますので、これまでの日米交渉の情報をむしろ国民に広く知っていただいて、今後の議論の参考にしていくというのが正しいあり方かと思いますが、日米安保に関する外交文書がこれもなかなか公開をされておりません。これはいかなる理由からでございますでしょうか。
  31. 折田正樹

    ○折田政府委員 安保条約締結に関する文書につきましては、外交文書はなるべく公開するという原則に基づきまして、部内で検討は始まっておりますが、慎重な検討を要するためにまだ審査に相当の時間がかかるということは御理解いただきたいと思います。  他方、日米間で種々の取り決めがあり、例えば日米地位協定に基づきます合同委員会合意というものがございます。そして、この合同委員会合意というのは、日米双方で合意がない限り非公開とするというのがこれまでの原則だったわけでございます。それも実は種々議論をいたしまして、米側と昨年の三月に、これから合同委員会合意というのは基本的に、原則として公表していくということで、合同委員会合意についてはそれ以降公表しておりますし、それ以前の合同委員会合意についても、順次米側と協議の上公表していこうということで米側と話をしているところでございます。  そして、昨今特に問題になっておりますいわゆる五・一五メモと称するものがございます。沖縄返還に当たって、日本の施設・区域を米側に提供したときの合同委員会合意でございますが、これにつきましても、全貌が明らかになるように、現在作業を進めているということでございます。
  32. 河野太郎

    河野(太)分科員 日米安保に関する文書の審査を慎重に進めておられるということでございますが、この両国の間の文書については、それほど慎重、もちろん慎重であることは当たり前でございますが、日韓、日ロと比べて、極めて慎重にやらなければならないという理由は薄いのではないだろうかと思います。  大体のタイムフレームで構いませんので、一体どういう文書がどれぐらいをめどに公開をされつつあるのかということだけでも明らかにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  33. 原口幸市

    原口政府委員 私ども、先生おっしゃるように、外交文書につきましても原則公開が望ましいという立場を既に昭和五十一年からとりまして、三十年を経過したものにつきましては逐次この原則に基づいて公開に努めてまいりまして、ことして十三回この公開を行ったわけでございます。ただ、先ほどちょっと私も申しましたように、公開しますと国家の安全や利益、他の国々との信頼関係を損なうおそれのあるものというものもございまして、こうした一部の情報につきましては非公開とすることが必要であるということは、これは日本だけでなく、世界各国とも同じような立場をとっているわけでございます。  そういうことでございますので、私どもは、非常に限られた人員を駆使しながら、膨大な過去の資料というものを一々この原則に照らして、かつ一般的には公開が望ましいという要請をも念頭に置いて、懸命にその作業を進めているわけでございますが、現時点では、今先生の御質問になった答えに、具体的に、あとどのくらいあって、どのくらいの期間があればどの程度まで公開できるということをお答えできないのはまことに残念でございますが、唯一言えることは、今まで昭和五十一年度から十三回でございますが、今後は、今の世の中、情報公開ということが一般的な趨勢になってきていることにかんがみまして、毎年、できる限り、与えられた陣容の中でこの公開の実を上げていきたい、このようなことが今の外務省の立場だということでございます。
  34. 河野太郎

    河野(太)分科員 一年後なのか五年後なのか十年なのか、はたまた百年かかるのか、その辺だけでもお教えいただきたいと思います。
  35. 原口幸市

    原口政府委員 今私が申し上げられることは、できる限り早く御要望に応じられるように、この分野につきましても人員を補強して努力していきたいということでございまして、この点で御容赦いただきたいと思います。
  36. 河野太郎

    河野(太)分科員 劣化ウラン問題を初めとして、外務省情報公開に対する姿勢にやや国民から疑問の声が上がっているのではないだろうかと思います。秘密外交をしないという日本の外交の方針もございますから、外交文書の原則公開という大原則はきちんと守られなければいけませんし、守られるだけではなくて、積極的にこうしたことは進めていかなければいけないのだろうと思います。  どうも最近の外務大臣は、歴代見ておりますと、この点については落第点だった方が多いようでございますが、外務省は今後こうしたことに積極的にぜひお取り組みをいただきたいと思います。  時間もありませんので、最後の質問に移らせていただきますが、私の大学時代の恩師でございましたオルブライト国務長官が先般来日をされまして、十分ばかりお時間をいただいてお目にかかることができました。外務省からいろいろお口添えもあったことと思います。それについて感謝申し上げたいと思います。  私は彼女に十五年前に大学の授業で習いましたけれども、現国務長官は、十五年前に既にカーター政権のNSCのメンバーを務めてこられた。それ以来、政権の内外でいろいろと外交を見てこられた。そういう経験豊富な外務大臣が、各国には彼女だけでなくていろいろいらっしゃるわけでございますが、そういう外務大臣日本はこれから相手にしていかなければいけない。ところが、日本はどうも、外務大臣もそうでございますが、大臣の任期が現状では非常に短いわけでございます。当選回数を重ねていってだれでも大臣になる。しかも、大臣ポストの割り振りを派閥の原理を優先してやっていくということで、本当に日本の外交が大丈夫なんだろうか、そろそろこうしたやり方を変える時期ではないかと私は思うのでございますが、池田外務大臣政治家としていかがお考えか、お考えを聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  37. 池田行彦

    池田国務大臣 先般、オルブライト国務長官がお越しになりまして、私も会談そしてまた食事など御一緒にさせていただきましたけれども、その節も、かつて河野委員がオルブライトさんが教鞭をとっておられたころにいろいろ御交際があった、というよりも、私のクラスの大変ブリリアントな生徒であったよということを懐かしそうにおっしゃっておられました。  さて、今御指摘のように、こういうふうに、冷戦も終わりまして、外交もいろいろ多極化してくるといいましょうか、多方面に配慮をしながら進めていかなくてはいけない難しい時期になってまいりました。それだけに各国とも、外交を担当する閣僚はもとよりのことですが、その衝に当たる者、従来にも増してその力を問われる時代に入っておると思います。そういった意味合いにおきましては、我が国におきましても、他の閣僚もそうでございますけれども、外交を担当する者も、従来にも増しての努力と同時にその力を問われるんだと思います。当然、組閣に当たられるその時々の総理はそういうことも配慮されながらやられると思うのでございますが、我々その衝にある者としては、切磋琢磨といいましょうか刻苦精励と申しましょうか、そういった要請にこたえ得るように十分していかなくてはいけない、こう考えております。  それからまた、我が国の場合は議院内閣制ということもあり、大統領制をとっているアメリカなんかに比べますとどうしても全体としての内閣あるいは閣僚の任期が短くなる傾向は避けられませんけれども、そういった中でも、今申しましたような外交の持つ特性、とりわけ最近におけるその重要性、あるいはその継続性も大切だというような、その変化も踏まえながら、任命権者である時々の総理はいろいろな考慮も払っておられるんだというふうに承知しております。
  38. 河野太郎

    河野(太)分科員 どうもありがとうございました。
  39. 中川秀直

    中川主査 これにて河野太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、鍵田節哉君
  40. 鍵田節哉

    鍵田分科員 大変麗しい師弟愛の話の後に、現実的な、ちょっと次元が落ちる話になるかもわかりませんが、よろしくお願いいたします。新進党の鍵田でございます。  私は、国際ハブ空港の問題と、それに関連しました、特に関空の現状などについて、大臣なり、また外務省の皆さんの御意見をお聞きをしたいというふうに思っております。昨日、運輸省にもこのことについての質問をさせていただきました。地元の問題など外務とは直接関係ないことにも若干触れなければなりませんので、まことに恐縮ですけれども、それは背景としてそういうものがあるというふうに御理解をいただいてお聞きをいただきたいと思います。  まず、昨年の十二月に第七次空整が発表になりまして、また、それを受けた閣議決定もあったということを承知をしておるわけでございますけれども、最近非常に世界の各国で大きな空港の建設が相次いでおるわけでございます。特に、香港でも二本の滑走路を持った海上埋立空港が開港するということにもなっておりますし、韓国でも、開港時で二本の滑走路を持ち、全体の構想では四本の滑走路を持つそういう空港が開港するということでありますし、上海の浦東空港もそうであります。また、バンコクにおきましても今非常に大きな空港を建設中でございます。マレーシアでもシンガポールでも、また台北の中正空港も今第二ターミナルビルをつくるというふうなことで、非常に今空港ラッシュでございます。ハブ空港の競争というようなものも大変激しいわけでございます。  そういうことに関連をいたしまして、日本のハブ空港の建設といいますか、そういうものが一体どうなっておるのか。閣議決定を受けて、今後、成田におきましても、また関空におきましても、第二期工事といいますか、拡張の工事を進めようとしておるわけでありますけれども、そういう国際ハブ空港の建設が喫緊の課題であるという第七次空整の分析に比べまして、日本の場合には若干時期を失しているのじゃないかというような見方もできるわけでございますけれども、外務大臣としてそれらの状況についてどのように分析をされておるのか、お教えをいただきたいと思います。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 委員が先ほどおっしゃいましたように、今、アジア各国におきまして、ハブ空港化を目指して次々と空港の拡張あるいはその新設の動きがございます。私も、先般韓国へ参りましたら、青瓦台で新しい空港の模型、こうなるんだぞということで説明を受けたりいたしましたし、また、アジアでも非常に離発着が難しい空港の一つと言われておりました香港でございますが、あそこも今、新空港の建設をやっておりまして、私も昨年現場を見てまいりましたが、そういうふうに、各国が、これからのますます伸びていく国際交流の中で、ぜひ自分のところにハブ空港をという努力を傾注しておるところでございます。  そういった中で我が国はどうするかでございますが、委員御指摘の第七次空港整備五カ年計画、昨年十二月にそれに関する審議会の答申が出されたわけでございますが、その中にもうたわれておりますように、やはりこれから我が国国際空港を国際ハブ空港にしていくということは最重点の一つでなくてはいけないと考えております。それは、何も航空分野でそれが大切であるというだけにとどまらず、これだけ進展する経済面あるいはその他のあらゆる面での国際交流ということを考えてまいりますと、これからは、ハブ空港のない地域あるいは国というのは、どうしても世界の大きな流れ、進展から取り残されるおそれがあるのではないか。そういった意味におきまして、昨年末に出された航空審議会の答申は、我々のとるべき道を適切に示しておるのだと思います。  そういった意味で、具体的には、新東京国際空港あるいは関西国際空港について平行滑走路を整備するというようなことを国全体として進めていかなくてはならない、こういうふうに認識しているところでございます。
  42. 鍵田節哉

    鍵田分科員 それで、第七次空整の中で、関空にしましても、民間会社でやっておりますから、できるだけその負担を軽くするために、埋め立てなどは別会社で行ってというふうなことの配慮もされておるようでありますけれども、もともとの第一次の工事のほとんどが、七割までが借入金であるというような実態からしまして、大変使用料などが高いわけでございます。それが空港の活性化のネックになっておるのではないかというような一面がございます。     〔主査退席、谷津主査代理着席〕  特に、国際線の伸びというのですか、海外から来る国際線の数は開港時から見ますと大体倍ぐらいにはなっておりますし、乗降客も大変ふえておる。そしてまた、周辺の府県におきましても、ホテルなどの稼働率が大変上がってきておるというようないい面も一つはあるのですけれども、しかし、着陸料が高いということで、やはりこれからの伸びといいますか、そういうふうな面では若干ブレーキがかかってくるというふうなことも聞いております。  それから、飛行機の着陸料だけじゃなしに、施設の利用料、海外へ行く場合の出国の際の使用料が二千六百円ですか、そういうふうなこともございまして、日本人が出国するときだけじゃなしに海外の人が帰国をする場合にでもその費用は要るわけでありますが、これに対しても大変評判が悪いというふうにも聞いております。それから、空港との連絡橋、どちらかというと橋などというのはインフラの部分になるわけでありますが、それも会社の施設だというふうなことでこの使用料が取られておるわけですが、それが非常に高い。千七百円ほど取られるわけでございます。  そういうことですから、開港当初は物珍しいのもありましてたくさんの人が毎日毎日押しかけてきたのですが、二年目以降から激減をしておりまして、一日に千数百人ぐらいしか見学にも来ないというようなことになっておるようでございまして、それらがやはり空港全体の活性化といいますか、そういうものに大きなネックになっておるわけでございます。  そこで、今度羽田の沖合展開が一段落をしまして、そこで跡地の問題が今出ておるわけでございますが、これらの費用、大体一兆円ぐらいの時価になるのじゃないかと言われておるわけでありますが、こういうものも空港特会の中へ投入をする。さらには、一般財源からも、また公共投資の見直しなどもしながら、六百三十兆円とかいう公共投資の十カ年計画、これを量的にも見直さなくてはなりませんが、もう一つやはり優先順位も見直して、そして、これは喫緊の課題であるという分析のもとに国際ハブ空港の問題が言われておるわけでありますから、そういう面では、ほかの公共投資もそれぞれの地方ではそれぞれ優先だというふうには思っておられると思うのですが、これはやはり国家戦略の問題でございますから、ぜひとも外務省あたりから強く働きかけていただいて、そして公共投資の順位を上げていく。そういうことで、一般財源をもっと投入をして、そして使用料、着陸料などを安くできるような、そういう方法を考えていただけないか。そういうことを外務省としてはどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 局長にかわりまして御答弁申し上げます。  今委員御指摘のように、国際ハブ空港というのは、存在します地元にとってもそれは大切なものかもしれませんけれども、それにとどまらず、日本国民全体にとって、あるいはこの国の将来を考えた場合に大変大切なものである、このように認識しております。それが、これまでのいろいろな財政事情等々の関係から建設が必ずしも迅速に進まないだけではなくて、せっかく完成したものも、使い勝手が悪い、あるいはいろいろな面で非常に利用者にとって高いものにつく、こういうふうな点が指摘されておるということは、私どもも承知しております。  そういったことも踏まえまして、先ほどいろいろお話がございました、空港特会の資金をどういうふうに調達するかということ、あるいは公共事業全体のあり方をどうするかというふうなこともこれから当然考えなくてはいけないわけでございましょうが、そういった中で、外務省というのはもとより直接に公共事業に携わる官庁ではございませんけれども、それぞれの事業の持つ重要性について、我が国国際交流を進めていくという観点からどういうことかということについて意見を申し上げていくということは、今後機会をとらえながら進めてまいりたい、こう考える次第でございます。
  44. 鍵田節哉

    鍵田分科員 ありがとうございます。  本当に今の着陸料は、747のジャンボクラスで、関空で九十万ちょっとですか、それから成田で九十四万とかいうような金額でございまして、世界の水準から見ましても、一番高いハンブルクでも五十八万ですか、フランクフルトで四十四万くらいですか、それから見ましても倍近い金額でありますし、そのほかでは、既に開港以来時間の経過しましたそういう空港などでは、もう五万台からあるようでございますから、それから見ましても大変高いわけでございますので、ぜひとも外務省からも声を大にしてひとつ訴えていただきたいというふうに思っております。  そこで、この関空問題では、開港時の地元合意の三点セットというのがございまして、これは運輸省の管轄の問題だというふうに思うのですが、公害がなくて、地域社会との調和とか、機能的にもすぐれた空港にするというふうな合意事項があるわけでございます。  あの関空ができました地域というのは、大体大阪でも南の方になりまして、泉州地域、こう言っておるのですが、あの地域はもともと大阪の経済を引っ張っていくくらいの大変活発な経済活動をやってきた。もっと昔には堺などが非常に貿易港として栄えたというふうなこともありますし、そういう関係から戦前戦後を通じて大変活気のある町であったわけでありますけれども、今、九市四町というのですか、その地域がだんだん空洞化が激しくなりまして、特にタオル業界とか、それから毛布とかワイヤロープなどの産業とか、外務省の皆さんには余り関係ないんじゃないかと思うのですが、そういう仕事が非常に多かったのですが、これが本当にどんどん空洞化してきておりまして、新しい産業が起こるのではないかというふうに空港の影響を見込んでおったわけでありますけれども、なかなかその効果が出ておらない。  そして、空港の前にりんくうタウンという、三百二十ヘクタールくらいあると思うのですが、それを造成をしまして、大阪府の企業局が地域の活性化を図ろうということで取り組んできたわけでありますが、そのうちの約半分くらいが分譲可能の土地なのですけれども、それがなかなか分譲ができない。バブルがはじけたというようなこともございまして、なかなか分譲がスムーズにいっておらない、こういう実態がございます。  そこで、海外にも、アジアに非常に近いということもありまして、アジア各国からも進出してほしいということで今働きかけをしておるわけでございまして、実はベトナム航空が、空港側から橋を渡りましたところにりんくうゲートタワービルというのをつくっておりまして、そこに出店するということが決まったようでございますし、また、その周辺の土地、りんくうタウンの土地には台湾の方からもかなりの経済団体とか企業からの引き合いも来ておるわけでございます。  従来から、大阪とか神戸とかという関西は台湾や中国のそういう華僑の皆さんが大変多いところでございますので、そういう人たちとの往来が非常に多くて、そういうことからしましても、こちらに進出をしたい、こういう動きがあるわけでございます。  考えてみますと、台湾とそれから関空との間の航空路というのは、今キャセイ航空とシンガポール航空とアジア航空だけしか来ていないわけでして、大阪国際空港には中華航空なども来ておった時期もあるわけでありますが、最近では大阪には、大阪国際空港にも、まだ関空にも来ておりません。そういうことも大きなネックになっておるんじゃないかなということが言われておるわけでありまして、私自身も、なぜ台湾の飛行機が関空に来ておらないのかなという非常に素朴な疑問を持ったわけでございます。もちろん、中国と国交回復をしましたときから台湾とは国交が断絶をしたわけでありますから、民間レベルで、交流協会と亜東関係協会との間でいろいろな外交的な話し合いをされておる、したがって航空協定もそうなっておるということもよく存じてはおるわけでありますけれども、そういう台湾の飛行機が来なくなったその原因はどういうところにあったのでしょうか、そういう事実関係をちょっと知りたいなと思っておるわけです。
  45. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 一九七四年、日中正常化の後を受けまして、日中航空協定の締結が行われましたけれども、これ以来、台湾側が路線停止を声明して、昭和五十年すなわち一九七五年に、今度はその交流協会と亜東関係協会との間の民間取り決めに基づきまして、東京―台北間で運航が再開されました。  平成六年、一九九四年に、今申し上げました取り決めを修正する形で航空関係を拡大いたしまして、この中には台北―名古屋路線の定期便化とか就航企業の複数社化といったものが含まれますけれども、そういう経緯で参っております。
  46. 鍵田節哉

    鍵田分科員 関空が開港するときには、台湾側からは航空路を開設したいという申し入れがあったのでしょうか、どうでしょうか。
  47. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 開設時かどうかはともかくといたしまして、現在、亜東関係協会から交流協会に対しまして希望の表明がもう既になされていると承知いたしております。  そして、私たちといたしましても、その所要の調整を行った上で、早急に交流協会と亜東関係協会の間で民間航空協議が行われることになるように協力をしてまいりたいと思っております。
  48. 鍵田節哉

    鍵田分科員 運輸省の方に聞きますと、やはり関空の活性化のためにも、ぜひとも台湾機が来てもらいたいというような希望があるようでございます。  ただ、私も、中国ともいろいろ交流をしてきたという関係もございます。台湾とも交流をしておりますし、むしろ、両者をあわせて勤労者の交流をするというようなことも何回もやってきた経験がございます。そういう意味では、やはりこれは、そういう政治的なこともいろいろかかわるんでしょうけれども、経済的な部分とか人的な交流というのは非常に大事なことでございますし、台湾側がとってきたいわゆる三不政策というのですか、そういうものも実質的には今もう崩れてきておる。里帰りだとかというようなことにつきましても、もうその枠は大幅に超えてきておる、そういう環境にあるんじゃないか。そして、資本の投資も台湾から中国、大陸に対してどんどん行われておる。  そういうことで、またこの三月には、今月には、アモイと高雄の間で貨物船の定期航路が就航するというようなことも報道されておったわけでありまして、そういう環境になってきますと、それは、中台の関係でそういうことでありますから、日台の関係でやはりもとの状態にだんだん戻していっても日中の関係に支障があるとかいうふうなことが、もう余り問題がないんじゃなかろうかというふうにも私自身は分析をしておるわけでございますけれども、その辺はどのように外務省としてはお考えでしょうか。
  49. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 委員御指摘のとおり、日本と台湾の間の航空の現実のニーズも増しているという認識は、我々も持っております。それから、先ほども申し上げましたように、亜東関係協会から交流協会に対して就航の希望というのが出されているのも事実でございます。  私たちといたしましては、日中間において台湾の問題というのは非常に注目を集める問題になっているということがございますし、また、航空分野そのものは実務分野でありますけれども、日中間においては、日台航空の扱いは経緯的には政治的意味合いが非常に大きな分野であるということで、その円滑な処理のために、中国側の理解を得ながらこれまでいろいろな話し合いを進めてきているという経過がございます。  今回も、日台間の実務関係をより安定的に維持していくということが非常に大事だと思いますので、中国側の理解を得ながらこれを取り進めていくのが適当であるというふうに考えておるわけでございます。
  50. 鍵田節哉

    鍵田分科員 実は、私も平成六年の関空の開港の前に、たしか四月ぐらいだったと思うんですが、中国を訪問する機会がございまして、北京にあります全国総工会という、向こうでは最大の労働組合の団体でありますが、恐らく中国では最大の組織、そういう団体だというふうに思いますが、そこに対して、関空に台湾の飛行機が寄港することを中国側としてひとつ認めてもらえないか、そういうことについて政府やまた中国共産党の上層部に対して何らかの進言をしてもらえないかというふうな申し入れを、私も連合の立場で申し入れをした事実があるわけなんです。  上海市の総工会に対しましても同様の申し入れをいたしました。やはり中国も、香港の返還をめぐりまして、一国二制度というふうな考え方がもう定着をしてきつつありますし、先日亡くなられた鄧小平さんなんかは連合国構想みたいなことも言われたこともあるわけでございまして、そういう背景から考えますと、日本と台湾との関係も、正常な、そういう航空路などを結んで、そして、台湾側にも日本としてそれだけの便益を与えられるような体制になるようにひとつ中国側として配慮をしてもらいたい、こういうことをやってきた経過がございます。これは余計なことをしてと外務省の皆さんにおしかりを受けるのかもわかりませんけれども、民間レベルでありますし、私たち労働者の交流ということもありましたので、あえてそういうことをやらせていただいたわけでございます。  私は、やはり日中の関係というのは非常に大切にしなくてはならない、特にアジアの平和のためにもこれは重要な課題だというふうに思っておりますので、それを損なうようなことのないように、そして、理解を求めながら一日も早く、台湾にも二千万人を超える勤労者も私たちとしては交流の相手としておるわけですから、そういう皆さんのためにも、ぜひともそういう航空路が開設できるように努力をお願いをしたいというふうに思っております。やはり地元振興ということ、それから、日台の交流、また日中の交流、これらがうまくかみ合うように、ぜひともひとつ御努力をお願いをしたいと思います。  最後に、これは質問ということではございませんけれども、長野オリンピックがことし開催されることになりますけれども、実は二〇〇八年に大阪市がオリンピックに手を挙げておることを御存じだというふうに思っております。もし実現をしますと、昭和三十九年、東京オリンピック以来ということになるわけでございます。  大阪オリンピックというのは、やはり周辺の二府四県はもちろんのこと、西日本の皆さんが非常に大きな期待をしておるのではなかろうか。特に、大阪や神戸のような経済関係もありますし、京都や奈良や和歌山のような文化や自然が豊富にある、こういうものを背景に持った地域でございまして、オリンピックを開催をするにはもってこいのそういう条件を備えておるのではなかろうかなというふうに思うわけでございます。  また国際交流の方も、このオリンピックの開催によって大変活発になってくるわけでございます。関空も今二期工事に向けて着々と工事を進めていくということになっておるわけでありますが、これは間に合うかどうかはわかりませんけれども、そういうことで、東一極だけではなしに、やはり西にもそういう発展をしていくためにも、ぜひともこのオリンピックの日本での開催について外務省としても努力をしていただければなということをお願いしまして、大体時間が来たようでございますので、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  51. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて鍵田節哉君質疑は終了いたしました。  次に、冨沢篤紘君。
  52. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 神奈川県十三区から出てまいりました新進党の冨沢篤紘でございます。  私は、大和市議、神奈川県議の経験に立って今回国会に出てきたわけでありますが、御承知のように、神奈川県は沖縄に次ぐ第二の基地県でございます。地元にも、厚木基地という大きい米海軍の基地がある。そんなことで、地方議員として外務省、防衛庁に何度も陳情に伺った、そんな経験の中から、いつも基地の陳情ですと、いい回答というのは余りいただけない、その回答への不満も感じながら、外務省という役所は何となく官僚的で、伺うと温かみのない、そんな役所だな、こういう印象を持っておるところでございます。  この点について、大臣の御見解をまず伺いたいと思います。
  53. 池田行彦

    池田国務大臣 外務省日本の外交の責めを負ってその仕事をしているわけでございますが、日本の外交は一体何を目的とするかと申しますと、これは当然のことながら、国際社会の中において我が国が名誉ある地位をきちんと維持し、そうして我が国国民が、まず生きていく上で不安のないように、そうしてまた、個人としてあるいは企業その他の組織体としていろいろな仕事をしていく、活動をしていくどいった上におきましてそれがスムーズにいくように、そういった条件、環境をつくっていく、こういうことを目的としておるわけでございますから、当然のこととして、外務省職員も、国家公務員法あるいはさらに言えば憲法に規定されておりますように、国民全体あるいは国全体のための奉仕者といった立場であり、そういった心構えで仕事をするべきものだ、こう心得ておる次第でございます。  そういった意味で、我々は戦後の国家公務員法に律せられている存在でございまして、戦前の官吏服務紀律によって行動するようないわゆる官僚というものではない、こういうふうに承知しております。  委員がたまたま外務省職員と接触されたときに、官僚的な対応であったという印象を持たれたとするならば、それは我々心して将来を戒めなくてはいけないと思いますし、また一方におきまして委員御自身も、そういった基地の問題で行ったからそうなのかもしれないがという、若干の留保あるいは前提を置かれての御質問であったように思いますけれども、こういった米軍基地の問題につきましては、当然基地の存在する地元の地方公共団体あるいは住民の立場からすれば、それが生活上いろいろな不便をもたらす、あるいは負担を招来いたしますので、こういったものはぜひなるべくそういった負担を軽減してほしい、でき得るならば撤去してほしいというお気持ちになられるのは当然でございます。  ただ、私ども政府といたしまして、とりわけ国の安全を守る責任も持っております外務省の立場からするならば、やはり日米安保条約に基づき、そして駐留する米軍が活動するために必要な施設なり区域なりを提供するということも、これは大切である。これも国民全体の安全のために必要であるという観点もあると思いますので、そういう基本的な立場の違いから、必ずしも御期待されるような応対にならなかったかもしれませんけれども、その内容はともかく、これからいろいろ、立場はともかくとして、応対には、冷たいとか官僚的とか言われないように心してまいりたいと思います。
  54. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 日本の顔になる省庁でありますので、ぜひひとつ、国民に対しても外国に対しても温かい対応をしていただくようにお願いをいたします。  日米安保体制日本で一番大事な基盤である、これは申すまでもございません。戦後五十年、日本が戦場にならなかった、あるいはアメリカの大きな軍備の傘の中で軽武装で経済繁栄いちずに取り組めた、そして今日、五十年たって世界一の豊かな国になった、こういう安保体制のまさに光の部分があるわけなのですが、一方で、光には必ず影があるわけで、米軍基地を抱える自治体、周辺住民は、基地問題で、基地があることによって、あるいは基地から出るいろいろな公害、基地公害で五十年間、これに悩み続けてきた、悩まされ続けてきた、これもまた事実でございます。  豊かになった恩恵、豊かさの享受は一億二千万国民全体で享受をしている。しかしながら、基地があることによって、基地公害によって苦労をずっと続けてきた国民あるいは地方自治体がいるわけでございますので、まさに今政治は、この米軍基地を抱える自治体、周辺住民にもっともっと光を当てなければいけない、こういう政治政治家の配慮、政策が必要である、私はこう確信をするものですが、外務大臣、いかがですか。
  55. 池田行彦

    池田国務大臣 確かに、戦後の五十年余りの我が国の発展、これは基本的には国民の孜々とした努力のたまものでございましょうけれども、そういった努力が結実するためにはいろいろな環境条件が必要であった、その条件の一つ、非常に大きなものの一つが、日米安保体制も含めまして、我が国の平和がずっとこの半世紀維持された、こういったことであったということは、委員御指摘のとおりだと思います。そして、そのような国民全体の繁栄あるいは幸福を可能にするために、負担した部分あるいは犠牲になった部分、それに対して国民全体として報いるところがあってしかるべきではないか、それも私も御指摘のとおりだと思います。  しかし、そういった国全体としての発展あるいは国民の幸福実現のために払わなければいけなかった犠牲なり負担というものは、何もそういった米軍基地あるいは自衛隊の基地が存在するということだけではなかったと思います。ほかの面でもいろいろあったと思います。  しかしながら、そういった中でも、基地が集中的に存在する、例えば沖縄県の方々の御負担なんというものは、これは国民全体からの、いろいろな面で負担しているものに比べましても、余りにもかけ離れて大きなものである、それに対しては国民全体としてよく考え、それに対応するところがなければいけない、こういうふうに考える次第でございます。  委員御指摘の厚木の場合につきましても、どういうふうに考えるかということはいろいろございますが、私どもとしましては、まず住宅密集地でもあるということでございまして、極力生活への影響を軽減していこうということで、例えばNLPの硫黄島への移転とか、いろいろな工夫もしてきたわけでございますが、それと同時に、基地交付金その他でのいろいろな配慮もしていることは、委員御承知のとおりでございます。
  56. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 今沖縄県の話が出たところでございますけれども、神奈川県も沖縄に次ぐ第二の基地県でありまして、狭い県域に戦後五十年たって十七カ所の米軍施設がある。面積は沖縄の比ではございませんが、二千百四十一ヘクタール、そこに働く日本人従業員の数は約九千人で、これは日本一多い人数が雇用をされている。在日米軍人が四万三千人、そのうち二万人が神奈川県にいる。こういう実態であります。  そんな中に、上瀬谷通信施設というアメリカの軍の受信施設があるわけなのですが、これが数年前から受信アンテナが全部撤去されて、どう見てもこれはもう遊休施設になっているとしか思えないし、米軍筋からもそういう話が伝わってきております。そうこうするうちに、またアメリカの軍の資料で、その跡地に米軍の家族住宅六百戸の計画があることが判明してきた。この話は合同委員会、日米間の話し合いに出ておるのでしょうか、どうですか。
  57. 折田正樹

    ○折田政府委員 この話を日米合同委員会の場で議論したことはございません。
  58. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 こちらの知らないうちに米軍サイドでどんどん跡地利用の計画も進めていってしまう。しかも一方で、今度正面装備の、横須賀基地の実態を見ると、今までの艦船がどんどん新鋭艦に切りかえられている。今十数隻が横須賀を母港に活動をしているようでございますが、神奈川県民の感情とすると、米軍住宅も本年度の予算の家族住宅の半数以上が神奈川県に建設をされる、横須賀の艦船もどんどん新鋭艦に切りかえられている、基地機能がどんどん神奈川県に集中をしているのではないか、五十年間苦労を続けてきてこれ以上の基地強化は真っ平御免だ、こういう率直な県民感情があるところでございますが、この辺は外務省、どういうふうに御説明をいただきましょうか。
  59. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員御指摘のように、横須賀及びその周辺に乗組員家族を居住させている米海軍艦船は、空母インディペンデンスを初めとして合計十一隻あると承知しております。  そして、その船がかわったということでございますが、横須賀所在の米海軍艦船のうち、ミサイルフリゲート艦カーツにつきまして、昨年の十二月に米海軍より公表されているとおり、本年六月末にミサイル駆逐艦ジョン・S・マッケーンに交代し、同艦船の乗組員家族が横須賀及びその周辺に居住することとなるものと承知しているところでございます。
  60. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 承知していらっしゃるだけでは困るのです。県民感情としては、これ以上基地強化をされてはかなわない。五十年間、神奈川県民、長い間大変な苦労をしてきた。ここでまたどんどん基地強化、住宅だ、艦船だ、これ以上の基地強化は真っ平だ、こういう率直な県民感情がある。承知していただけでは県民感情にこたえられる答弁になっておりません。そこから先の答弁をいただきたい。
  61. 池田行彦

    池田国務大臣 全体といたしまして、現在の国際情勢の中で米軍が日米安保条約でコミットしております役割を果たしていく、そのために我が国に米軍も駐留させる、こういうことにしているわけでございますが、そういう全体としての水準あるいは兵力の構成を、日本全体について今のレベルを当面は少なくとも変えることは考えられない、こういうことが米側の見解であり、私どもも今日の国際情勢を考えてそのとおりであると考えております。もとより、中長期的には国際情勢の変化によっていろいろそういったレベルなり兵力構成にも変化があり得るわけでございますが。  さて、そういった中で、神奈川県に駐留する米軍が、あるいは今具体的には横須賀に駐留する、横須賀をいわゆる母港として活動する米艦船が強化されるかどうかということでございますが、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたところも、いわゆる横須賀を母港としている艦艇の交代という答弁であったと思います。それはたまたま、交代した艦艇の艦種によって一時的に横須賀を母港として、その家族の方々が神奈川県下に居住される人数がふえることがあるかもしれませんけれども、特にそれは強化ということではない、かつては艦艇の変更が逆に人員の減少につながったこともあるのではないか、こう考えますので、そこのところはそういうことで御理解いただきたいなと存じます。  それから、さらに具体的に申しますと、横須賀は米海軍の基地であると同時に我が国の海上自衛隊の主要基地の一つでもございますが、たまたま私の地元は呉でございまして、ここもやはり海上自衛隊の主要基地の一つでございまして、近年海上自衛隊が横須賀から大分移ってきたということもございますので、そういったことで申しますと、我が国の安全を守る上において神奈川県あるいは横須賀がいろいろ担っておられる役割というものを全体として過重なものにならないようにというふうな作用といいましょうか、あるいは配慮というものはないわけではない、こう考える次第でございます。
  62. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 お話に出ました空母インディペンデンス、これは横須賀が母港と言われている。アメリカの艦船が日本の軍港を母港にしている。私は、自衛隊の艦船が横須賀が母港だというならこれは理解できるのだけれども、アメリカの艦船がなぜ横須賀が母港なのですか。
  63. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国の平和、安全を維持していく上において、我が国はみずから適切な防衛の努力をする、具体的には陸海空の自衛隊を維持する、と同時に、日米安全保障条約に基づいて米国の協力を得る、こういうことでずっと来ておるわけでございます。  そういった安保条約に基づいて、我が国の平和を守らなければいけない、守るために働かなければいけないといった米国としての責務を果たしていく、そのためにある程度の米軍を日本に駐留させなければいけない、あるいは海軍の場合でございますと、いわゆる母港と言っておりますけれども、我が国の特定の港をいろいろな活動の拠点としていくということはある、その場合に、その乗組員の家族等が我が国に居住する、こういうことはある、こういうふうに理解しておるわけでございます。そういった意味では、確かに自衛隊とは違って、米海軍はそういった実力部隊ではございませんけれども、我が国の平和を守るために役割を果たしている、そういった組織体であることも否定できないと思います。
  64. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 これは、政治家として私の考えなのですが、横須賀というのはもう東京湾の入り口のかなめの要所で、旧日本軍がつくった基地なのです。東京の入り口にアメリカの航空母艦を置いておくなんというのは、しかも母港だというのは、アメリカの航空母艦全体で十隻以上あるようですけれども、日本だけのこと、世界じゅうでこんな国はないわけです。今朝鮮半島の情勢があんなぐあいですから、大変微妙な時期に今云々ということは申し上げませんけれども、政治家としてあるいは日本が独立国として、首都の入り口をアメリカの艦船の母港にしておくなんという、こういう政策が独立国としていかがなものか、私はこの点を指摘をしておきます。  地元の軍人の話を伺っておりますと、インディペンデンスが九八年に退役をする、退役をした後どうなるのだという話で、一説によると、退役をして航空母艦がなくなるから、そうすると艦載機が厚木基地に来なくなる、厚木基地が要らなくなる、日本に返ってくる、こんな話を米軍の中で聞いたことがあります。空母インディペンデンスの後継艦について、外務省で御存じの情報がありましたら御開陳をいただきたい。
  65. 折田正樹

    ○折田政府委員 米海軍空母インディペンデンスでございますが、九七会計年度米国国防報告によりますと、九八会計年度というのは一九九七年十月から一九九八年九月でございますが、この九八会計年度に退役が予定されているということでございますが、具体的な時期その他については承知しておりません。  これが退役した後の代替艦艇がどうなるかということでございますが、例えばコンステレーションではないかというようなことが報道されたことがございますけれども、具体的にどういう代替艦になるかということについては、アメリカ側でまだ正式な決定がなされていないというふうに承知しております。インディペンデンスが退役すれば空母はいなくなるというふうには私ども受けとめておりません。
  66. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 外交交渉というのはよくわからないのですけれども、八千人から乗組員がいる大きな航空母艦なのですが、こういう艦船の交代については、どういうところで日本政府に知らされてくるのでしょうか。
  67. 折田正樹

    ○折田政府委員 外交ルートその他であろうかと思いますが、空母ミッドウェーがインディペンデンスに交代したことがございますが、その際は、平成二年二月でございますけれども、当時のチェイニー国防長官が訪日されたときに、長官から我が国に対して、平成三年度中に空母ミッドウェーを通常型空母インディペンデンスに交代させ、アメリカの対日コミットメントを継続していくという旨の発言がありまして、これに対して日本側から、米側がアジア太平洋における前方展開を重視していることを評価する、空母ミッドウェーの交代艦が来ることについても歓迎するという旨の発言を行ったという経緯がございます。
  68. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 ありがとうございました。  私の選挙区の神奈川県十三区に、座間キャンプという米軍施設があります。在日米陸軍司令部がある、こういう認識をしておるわけでありますが、最近の座間キャンプの様子を見ておりますと、余り兵隊さんも動いていないし、施設そのものは閑散としているようです。広さが二百三十五万平方メートルといいますから大変広い施設でございまして、今この座間キャンプの機能がどんな機能を果たしているのか、この点をお知らせいただきたい。
  69. 多田孝基

    ○多田説明員 御説明申し上げます。  在日米軍施設・区域の円滑かつ安定的使用の確保は、日米安保体制の効果的運用のため、極めて重要であります。キャンプ座間につきましては、現在、在日米軍の司令部等、事務所用地として有効に利用されておりまして、日米安保条約の目的達成の上、極めて重要な施設であると承知しているところであります。
  70. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 紋切り型の御答弁なのですが、地元で暮らしていますとその施設が、上瀬谷通信施設じゃありませんけれども、機能しているかどうかというのは大体肌で感じられるものでございまして、殊に座間キャンプは二カ所に分かれていまして、真ん中は県道が通っている。そして、県道の南側が、これはサウスキャンプと俗称しているようでございますけれども、ここのところのサウスキャンプの機能がどんなものか、外務省はつかんでおられますか。
  71. 多田孝基

    ○多田説明員 私ども、サウスキャンプの地区におきましては、在日米陸軍第九戦域コマンド、第十七地域支援群及び在日米陸軍医局等、在日米軍陸軍司令部のいろいろな重要な管理施設あるいは司令部等があると理解しております。
  72. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 それも公式的な回答でありまして、ぜひひとつ、座間キャンプの実態が今どうなっているか、その中でサウスキャンプがどんな機能を果たしているか、ここのところを調査して、御報告をいただきたい。  私は、これは私見ですけれども、大した機能は果たしていないはずですよ。これは、統合整理、整理縮小ができる範囲だ。仮にあったら、その機能は北側に移してこれは地元返還していただきますと、大変すばらしい場所なのですよ、旧陸軍の司令部のあったところですから。まさに座間市にとっては宝物だ、そういう方向を目指して何とか活用をしたいものだと念願をしておりますので、ぜひひとつ調査して、実態を御報告いだだけますか。
  73. 多田孝基

    ○多田説明員 調査の上、御連絡申し上げます。
  74. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 ぜひひとつお願いをいたします。  最後に、基地交付金についてお尋ねをしたい。  神奈川県は、今米軍基地を抱えている自治体が七つあります。一番多く基地交付金をもらっているのが横須賀市の十九億というもので、一番少ないのが厚木基地を抱えている大和市の八千万。我々地方議員のとき、いつも外務省、防衛庁へ伺って、この金額がおかしいじゃないか、こういう陳情をしてまいったんですが、いまだにこの算出根拠が明確でないんですよ。理屈では、交付金  は固定資産税の代替措置を基本とした財政補給金、こういう説明をいただいておるんですが、受け取る自治体としては、一つ例を申し上げますと、厚木基地、大和市と綾瀬市に両方にまたがっている。大和市の方は八千万だけれども、綾瀬市の方は七億二千万入っている。受け取る自治体とすると、随分アンバランスじゃないか、こういう率直な感じがするわけでございますので、この基地交付金の算出根拠をひとつ明確に教えてくださ  い。
  75. 谷津義男

    ○谷津主査代理 冨沢委員、これは自治省らしいんですが。
  76. 冨沢篤紘

    冨沢分科員 所管外ですか。大変失礼いたしました。  質問時間が終了いたしました。御答弁ありがとうございました。
  77. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて冨沢篤紘君の質疑は終了いたしました。  次に、山中燁子さん。
  78. 山中あき子

    山中(燁)分科員 山中燁子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  一九九五年の九月に、私はまだ大学人として北京の女性会議に出ておりました。そのときに、中国における対日感情というものがどういうものかというものを非常に肌で強く感じまして、私よりちょっと上の方たちが残留孤児としてあそこに残っていて、日本人としてどういう思いでこの五十年近くを暮らしてきたかということをしみじみと感じておりました。そのときに、日本政府としては、在外にいる日本人に対して一体何ができているんだろうか、何をしているんだろうかという思いをいたしましたけれども、戻ってまいりまして、沖縄の少女暴行事件というのが報道されておりました。十二歳の少女の人権を日本の国土の上で守れない国というのは一体どういうものだろうか。そのときに私は、改めて日本というのは一体どんな国だろうかということを感じたわけでございます。  二月十六、十七日の両日の新進党の沖縄調査団に先立ちまして、一日早く参りまして、女性の方たちといろいろと意見の交換をさせていただきました。この少女暴行事件が、御存じのように決して単発的なものではなくて、一九八八年以降も、一カ月に二度ほど、女性暴行における軍法会議がアメリカ側ではかかっているという事実。しかも、日本側の調査では、申告をしない方もいますから、例えば一九八五年の現行犯逮捕された事件も、どういう刑罰が下されたかということが原告側に対しては不明である、こういうことの積み重ねが現在の沖縄の現状であるということを感じてまいりました。  そこで、池田外務大臣はもう二期目でいらっしゃってベテランでいらっしゃいますからお伺いいたしたいのですけれども、今まで何度沖縄を御訪問になりましたか。
  79. 池田行彦

    池田国務大臣 私が外務大臣の立場で沖縄に訪問いたしましたのは、先般、二月の二十一日、二十二日でございますが、それが初めてでございます。
  80. 山中あき子

    山中(燁)分科員 九月に橋本首相が、沖縄、最重点施策だということを発表なさいましたけれども、それから二月までの間にお時間がなかったのでしょうか。それともこれは別の所轄の問題とお考えになったのでしょうか。なぜ二月まで御訪問なさいませんでしたのでしょうか。
  81. 池田行彦

    池田国務大臣 私も、早く沖縄の現地事情外務大臣としての立場で拝見させていただき、また、沖縄県あるいは関係市町村の方を初め沖縄の地元の皆様方の意見を、東京でもお伺いしていますけれども、地元で直接お伺いしたい、こういう念願を持っておりまして、実は何度も沖縄へお訪ねする計画を立てて、いろいろ地元とも御相談したことも何度もあるのでございます。それはいろいろな事情、それは私の方の事情もあれば、それは受け入れ側の事情もいろいろなことで延び延びになり、二月の、先月の二十一日、二十二日にやっと念願かなった、こういうことでございます。  ちなみに、外務大臣として沖縄を訪問させていただきましたのは、かつて沖縄海洋博が開かれましたときに当時の宮澤外務大臣が訪問された、それ以来のことと承知しております。
  82. 山中あき子

    山中(燁)分科員 防衛庁長官としては前においでになられていらっしゃるわけですよね。  それで、そういう御経験を通して、沖縄の問題というのをどういうふうに位置づけていらっしゃるか、簡潔にお伺いしたいんですが。
  83. 池田行彦

    池田国務大臣 沖縄の問題、非常にいろいろな面からとらえられなくちゃいけませんけれども、恐らく今委員が外務大臣としての私にお尋ねになっているのは、日米安保条約上米軍が我が国に駐留している、しかもその米軍の相当な部分が沖縄に集中している、その関係でどう考えるのかという視点からの御質問かと存じますけれども、私どもは、現在の国際情勢の中で、また、日本のとっております安全保障政策からして、我が国の安全と平和を守っていくためには、自衛隊の努力と同時にやはり駐留米軍というものが必要だ、こう考えております。  しかしながら、それにしても現在、その我が国の平和を守るために沖縄県の皆様方にお願いしている御負担というのは、それは余りにも過大であるということは重々承知しております。そういったことで、私どもとしては、安保条約の目的を遂行していくということともあわせ考えながらではございますが、あとう限りの御負担の軽減を図りたいということで、今せっかく努力しているところでございます。  それと同時に、委員冒頭でおっしゃいましたけれども、こういった基地が存在する、そうして米軍が駐留するということに伴いましていろいろな事件や事故が起こっている、そのために大変な、あってはならないことも起こっているということも承知しております。そういったことをどうしてなくしていくかということ、あるいは生活面でのいろいろな御不自由を軽減していくためにも、地位協定の運用面等についてもいろいろ改善措置を講じなくちゃいけない、こういうふうに考えている次第でございます。
  84. 山中あき子

    山中(燁)分科員 ただいまのお話ありましたとおり、私も、沖縄の問題というのは、外交、安保の問題と同時に、生活、文化、そして人権の問題であるというふうに認識しておりまして、そういう観点からいたしましても、地位協定の運用の見直しというのがSACOの最終報告にもありますが、それをもう一度、今まで地位協定そのものを見直そうというふうに努力をなさってきたのでしょうか。簡潔にお答えいただきたいのですが。
  85. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、現実に沖縄の住民の方々がいろいろな事故や事件で御苦労なさっておる、あるいは生活面でもいろいろ御不自由なさっておる、そういったことを一つ一つ解消していくためにどうやっていくか、そういったことで地位協定の運用面での改善を図っていっておるわけでございます。  先ほど冒頭に委員御指摘になりました、そういういたいけな少女があのような悲惨な経験をしなくちゃいけなかった、こんなことはあってはなりませんし、そういったことを起こした犯人に対する司法手続その他はやはり我が国の立場を十分反映した形にしなくちゃいけないということで、それについては、地位協定そのものは改定いたしませんでしたけれども、きちんとした、正確な名前は忘れましたけれども、文書でもって日米間で約束をし、直していった次第でございますじ、そのほかにも現にいろいろな面で、検疫の面であるとかあるいは自動車の面であるとか、いろいろやっております。
  86. 山中あき子

    山中(燁)分科員 いろいろなことが起こるたびに少しずつ運用を見直してきてここまで来たということだと思いますが、例えばほかの国との比較としての地位協定の見直しで、抜本的にどういうふうに日本がすべきか、これでよろしいのかというようなことも含めて、私がレクチャーを受けた範囲ではそういうことは今までなされていないというふうに外務省の方からお聞きしましたので、今後、ぜひその全体を見直していただくことも含めて検討していただきたいと思います。  一つ質問させていただきたいのは、SACOの最終報告の中で、これは航空機事故に関してですけれども、よき隣人たらんとして、米軍の方針の一環として、米軍の部隊、装備その他の施設の関係で重要な事故が起こったときには、日本政府及び適切な地方公共団体の職員に対して適時の通報が確保されるよう努力するというのが盛られておりますけれども、このメジャーとかアプロープリエートという言葉について、どういう範囲かというのは既に限定するようなきちっとしたルールを話し合われているんでしょうか。それとも、これはこれからお決めになるんでしょうか。
  87. 折田正樹

    ○折田政府委員 SACOの報告に書かれるのは、今委員がお述べになられたとおりでございます。  で、それに基づきまして、どういう具体的な範囲で、どういう形で通報体制をするかということは見直しの作業をしておりまして、三月終わりまでに答えを出そうということで今、日米間で協議しているところでございます。
  88. 山中あき子

    山中(燁)分科員 劣化ウランが通報されるべきものかどうかという判断も含めてきちんとしたルールをつくっていただかないと、相互の理解が違っていたということが後に起こることのないようにお願いしたいと思います。  それからもう一点なんですが、外務大臣は、金武町で行われた、子供に基地が与える影響調査というのを御存じでいらっしゃいましょうか。
  89. 折田正樹

    ○折田政府委員 申し訳ございません。私、承知いたしません。
  90. 山中あき子

    山中(燁)分科員 これは、騒音または爆音による感情鈍麻。それから、暴行事件によるアメリカ人に対する反米感情。これは、野蛮な国であるということ。そして、被弾した山々その他の現状を見て、環境ということに対して非常に日本環境を重んじているという、いろいろな国の方針にもかかわらず不信感が募っているということが調査されておりますが、例えば、原状回復というようなことを返還をする土地に関して考えるというようなことは検討されておりますでしょうか。
  91. 折田正樹

    ○折田政府委員 地位協定の規定に基づきまして、返還されるときに日本政府がいろいろ措置を講じて地主の方にお返しするという手続になっております。
  92. 山中あき子

    山中(燁)分科員 このことについてはまた外務委員会などで議論させていただきますが、ボン協定におきましては、人、動物、植物、土壌、水質、大気、そして気候、地勢その他に演習によって悪影響が出た場合には早急に演習の見直しを行うなどというような規定もあります。そういうこともありますし、また、安保条約そのものの極東というのがアジア太平洋地域というふうに昨年四月十七日の橋本・クリントン声明ではなされていまして、さらに、それに関連して、ナイ・レポートでは、インド洋及びペルシャ湾を含むというふうにどんどん拡大しているわけで、安保条約も地位協定も、私はイコールパートナーとして、戦後五十年たった今、もう一度見直す時期に来ている、それは沖縄の問題を含めてですけれども、そういう時期に来ていると思いますので、その辺のことについて十分注意を喚起しておきたいと思います。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  橋本首相は沖縄のことを一生懸命おやりだと思って、私も大変その点は評価しておりますけれども、例えば二月四日では、兵力の削減に関してでございますが、削減も視野に入れているというような発言がありまして、二月十七日の大田知事との会談の中で、知事側の方から米兵の削減という話が出ました。そして、二十四日のオルブライト氏との会談の中では、日米双方種々の議論があるという遠回しな言い方ですけれども、おっしゃっております。しかし、二十七日の予算委員会では、米軍の兵力の削減は国際情勢から見て難しいというふうに言動が揺れておりますけれども、これは、おしやるように、長期的、中長期的と現実というような押さえをしていらっしゃいますでしょうか、池田外務大臣
  93. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、ただいまの御質問のことにお答えする前に、ボン協定と我が国の地位協定との比較という観点から環境面の配慮云々というお話がございましたけれども、これはやはり、ボン協定と我が国の日米地位協定を見ますと、いろいろな論点ごとにいろいろな違いがあると思いますので、一概には言えないんです。いずれにしても、環境面につきましても、日米地位協定の場合でもそれはもうちゃんと配慮はしていかなくちゃいけない、これは当然のことだと考えております。  それからいま一点、昨年四月十七日の日米首脳会談で極東地域がアジア太平洋地域に変わったということはございません。安保条約上の極東の地域というのは従来と同じでございます。昨年の四月に言われましたアジア太平洋地域というのは、それとは別の概念として、やはり日米間がきちんと安全保障面で連携をとっているということがいわば作用、効果として広くアジア太平洋の国々にも安心感あるいは安定感をもたらす、そういった観点からとらえているものでございます。  それから、最後の御質問でございますが、橋本総理の、米軍の兵力構成あるいは駐留の員数でございましょうか、それに関する発言がいろいろぶれておるというような、揺れておるというような御質問がございましたが、よくそれぞれの機会における総理の御発言をごらんいただきますと、そこには一貫したものがあるというものを御理解いただけると思います。  すなわち、私も先ほど御答弁申し上げましたけれども、現在の国際情勢、とりわけ我が国の周辺の安全保障環境を見ますならば、兵力構成をも含めて、現在のレベルの駐日米軍の存在は必要であるということ、しかし、将来にわたってそれがずっと固定化するものではない、中長期的に国際情勢が変わっていけばこれは当然そのレベルなんかも、あるいは兵力構成も変わることはあり得るんだと、そしてそういうことについては、日米間で協議をしていこうということは安保共同宣言にもうたわれておりますし、この間、オルブライト長官との会談の中では総理は特にそのことに注意を喚起された。そのことは意義があったと思います。しかし、それは中長期の話でございまして、現時点では今のレベルが必要であるという前提でございます。  それと同時に、そういった国際環境が変化するのをただ待つということではなくて、我が国もいろいろな外交面での努力を通じて、国際情勢、とりわけ安全保障環境の改善に努めていきたいということも、総理あるいは私もいろいろな機会に申し上げているところでございます。
  94. 山中あき子

    山中(燁)分科員 外務大臣にお願いしたいのは、私は、ぶれているのかという質問ではなくて、それは中長期的なものと短期的なものと理解してよろしいのでしょうかという質問をさせていただきましたので、できるだけ、質問させていただいたことに関して簡潔にお答えいただければ大変ありがたいと思います。  それで、現在の状況では極東の兵力を削減する状況にない、けれども、中長期的には環境が整えば変わっていくというお話ですけれども、NATOのレビューを見ましても、世界的には、兵力の削減、そして財源の削減というのも、日本を除く先進各国では、G7の中ではなされているわけですが、なぜ極東だけ削減できないというふうに御判断なさっているのか。これは、アメリカ側としては、北朝鮮の問題もあって、いろいろあるというふうにおっしゃっていますけれども、それが沖縄にあるべきものであるということの説明として納得をしていらっしゃるのでしょうか。
  95. 池田行彦

    池田国務大臣 簡潔に答弁しろというお求めに応ずるならば、それは、ヨーロッパとアジア太平洋地域との安全保障環境の相違によるものでございます。
  96. 山中あき子

    山中(燁)分科員 ブルッキングスのマイク・モチヅキ氏が、日本の、これは佐世保が中心ですけれども、そこから搭載できる兵員あるいは装備というものを、私が読んだものでは三千名ということですけれども、現在の沖縄の海兵隊が全員乗ってすぐ行けるという状況にないとすれば、これはほかの基地からでも可能ではないかというふうに私は思うのですが、その点はどういうふうに御解釈なさっていらっしゃいますでしょうか。
  97. 折田正樹

    ○折田政府委員 具体的事態でどのように米軍が対応するかというのはそのときの状況によりますので、ここで私が予断をもって申し上げるわけにはいきませんけれども、米軍が動く場合に、全員を運ぶというようなことはなかなか考えにくいことでございます。後方支援の部隊がいたり、その他いろいろな部隊がまたあるわけでございますし、運び方も、船で運ぶだけではなくて、戦略空輸というやり方もございますし、事態の進展に応じて米軍なりの動きがあります。その時々の事態に応じて適切な形で対応するということでございますので、佐世保にある船の数だけで海兵隊の能力その他を判断するのは、私はいかがかなというふうに思うところでございます。
  98. 山中あき子

    山中(燁)分科員 そういうことも含めまして、一体どのぐらいのプレゼンスがあれば本当に即応態勢ができるのか、全く削減する余地がないのかどうか、ぜひ外務省も防衛庁と一緒にこれは研究していただきたいと思いますが、いかがですか。
  99. 池田行彦

    池田国務大臣 もとより、何か事が起きまして緊急事態になったときに対応するのは、そこに現実に、日本あるいはこの地域に駐留している兵力だけによるとは限らないわけでございます。その緊急事態の態様あるいは規模いかんによっていろいろあるわけでございます。それと同時に、緊急事態にならないときにおいても、ここにいろいろ米軍が存在しているということがいわば抑止力という形でこの地域の安定にも寄与しているという点もあるわけでございます。  そういったものをすべて含めまして、現在のこの地域の安全保障環境にかんがみてどうかといった場合には、米国としては、日米安保条約に基づいて果たさなくてはいけない責務、あるいは広くアジア太平洋地域の安定のために米国のしているコミットメント、それを達成していくために、現在のような、駐日米軍も含めましてアジア太平洋地域に十万のレベルのプレゼンスが必要である、こういうふうに考えておるわけでございますし、私どもも、現在の情勢にかんがみまして、米側のそのような判断を了としているところでございます。  もとより、その過程におきましては、防衛庁その他ともいろいろ相談しながら、いろいろな検討も行っておるところでございます。
  100. 山中あき子

    山中(燁)分科員 先ほど池田外務大臣が、時代の機運を醸成していくためにも日本がイニシアチブをとって環境整備にも努力をするとおっしゃったのを、私は大変高く評価させていただいております。  それで、カナダのエバンス博士などは、やはり安保というものがアゲンスト・ア・サートン・カントリーからウイズで、その地域全体の構成国によってどういうふうに安全と平和を保つかというふうな論調になってきておりますし、国際政治学会あたりの動きを見ても、やはり世界的に時代が変わってきている、そういう認識が大変加速度的になってきていることは、もう釈迦に説法でございますから申し上げるまでもございませんけれども、そういうところをきちんととらえて、やはり日本の外交として、アジアにある、日本はアメリカとは違う場所にあるわけですから、そういう意味で、日本の独自の外交姿勢、安全保障の論理というものをきちんと打ち立てられて、ちょっと時間がありませんけれども、中長期的に検討するのであれば、今の段階で何をすべきか。今の段階から戦術的に動かなければ、やはり次のところに行ってもまた同じことの繰り返し、大変失礼ですが、そういうことがあったのではないかと思いますので、その辺はぜひ今後、そういう柔らかな発想も含めて、ダイナミックに日本がイニシアチブをとれるようにしていただきたいというふうに思っております。  時間がございませんので、ちょっと内閣の方に質問を移らせていただきたいと思います。  県民所得というのが全国の最下位で、いわば一番貧しい県民のところへ、非常に濃密な豊かなアメリカの軍隊がいるという現実の沖縄の状況でございますが、これまでに日本政府は、そのために大変なお金をかけて沖縄の地域復興のために努力してきたと思うのですが、どのぐらいの投入をしたのでしょうか。
  101. 林幹雄

    ○林説明員 御説明申し上げます。  いろいろな関連のお金が投入されておりますが、一番よく引用されますのは、私一内閣でございますが、沖縄開発庁の方で所管しております公共事業関係の投入が復帰以降約五兆円という数字がよく引用されております。
  102. 山中あき子

    山中(燁)分科員 それだけのお金をかけていながら、なぜ沖縄の方は、自分たちに対して日本の国が、これは戦争前のこともありますけれども、復帰後、十分に心に伝わるような施策をしてもらっていないというふうに感じるのでしょうか。その点はどういうふうに分析していらっしゃいますか。
  103. 林幹雄

    ○林説明員 その辺は、内閣として直接分析ということは特段いたしておりませんけれども、そのようなことを時の総理を初めとしてお考えでございまして、それで沖縄政策協議会というものが、九月に総理が沖縄の方へ行かれまして、設置になったということでございます。
  104. 山中あき子

    山中(燁)分科員 そのときに五十億の予算がついているわけでございますけれども、私が聞くところによりますと、今までは留学生に関すること、それから三月のシンポジウム、そういうようなことで各省庁間にそれを移管しながら進めている、そういうふうな理解でよろしゅうございますか。どうでしょうか、それだけ。よろしいですか。
  105. 林幹雄

    ○林説明員 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  106. 山中あき子

    山中(燁)分科員 ということになりますと、今までのようにまた各省庁に分かれながら使っていくという発想で、大変たくさんのプロジェクトを持っていらっしゃいますし、沖縄のその協議会に期待するところが大きいのですが、もう少し総合的な視座として、国として何ができるかということに関して、梶山官房長官が蓬莱経済圏のことも多少触れましたけれども、私は大変うれしく拝聴しておりまして、もっとダイナミックな、例えばフリートレードゾーンだったら沖縄全部をしてしまうとか、そういったような観点で発想の転換を図っていただきたいと思うのです。  こういう沖縄の例とダブるかどうかは別ですけれども、ヨーロッパ各国では、御存じのように、国境地帯というのはいつも紛争があったりいろいろな負荷がかかっておりますよね。そういう非常に負荷のかかっているところに対してどういう措置をなされているかというような研究はなさっていらっしゃいますでしょうか。
  107. 林幹雄

    ○林説明員 申しわけございません。内閣のこの私どもの部屋は、九月に総理が沖縄に行かれまして、政策協議会の設置、それから五十億円の調整費をお約束いたされました後にできましたもので、現在委員がお尋ねになりましたようなことを私どもの部屋といたしましてはやっておりません。
  108. 山中あき子

    山中(燁)分科員 それでは、例えば非常に有名なものでは、イタリアのアルト・アディジェというところは、国境地帯ですから法人税と所得税を免除する、払っていますけれども、そのかわりそれが全部その地域で管轄することができるというような措置がとられておりまして、もし、例えば沖縄に当てはめてみますと、平成七年度では、法人税、所得税合わせて一千五百八十六億七千七百万円に上るわけですが、そういった措置もあると思いますし、また国によっては、例えばベルリンがああいうふうに閉鎖されたときには環境庁を持っていったとか、スコットランドにパスポートの機関を持っていくとか、国全体としてできることを随分努力してやっているわけですが、今後、そういうことも視野に入れて沖縄に対しての政策を考えていただくということはいかがでしょうか。
  109. 林幹雄

    ○林説明員 政策協議会自身がすべての、厳密に言いますと北海道開発庁は入っておりませんが、すべての省庁それから沖縄県をメンバーといたしておりますので、そこではいろいろなことが話し合われる可能性はございます。ただ、現時点におきましては、具体的な振興策というものが話し合われておる時点でございます。
  110. 山中あき子

    山中(燁)分科員 時間になりましたのでこれで終了させていただきますが、沖縄の問題というのは外交、安保、そして生活、文化、人権の問題であるということをもう一度申し上げまして、沖縄の方々の不信感を回復するような、国として何ができるかというダイナミックな発想でぜひ協議会を続けていただきたいと思いますし、首相はもちろん、官房長官ももちろんですが、外務大臣も内政に関しても、沖縄に負荷をかけている分どういうふうにすればいいか国際的ないろいろな事例などもサジェストしながら努力をしていただきたいと思います。  漁業に関しましては、時間がございませんので、また改めまして外務委員会で議論させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  111. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて山中燁子さんの質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  112. 谷津義男

    ○谷津主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。葉山峻君。
  113. 葉山峻

    葉山分科員 私はきょう、この予算委員会の第二分科会で沖縄の問題について質問を始めたいと思います。  私の沖縄とのかかわりの始まりは、思い起こせば一九七二年、本土復帰直後、初めての沖縄県知事選のときでありました。そのとき私は三十八歳、ちょうど藤沢の市長に初当選したばかりで、全国でも一番か二番か若い市長と言われたものでありましたが、つい先日亡くなられました屋良朝苗さんが、琉球政府主席から初の知事選に立候補した、その応援に私は本土の革新市長会を代表して駆けつけたわけであります。  そして、屋良さんと喜屋武真栄さん、この前まで参議院議員、当時は沖縄教職員会の会長さんをされておられましたけれども、三人で車に乗って沖縄の北から南まで演説をして歩いたものであります。戦後の厳しい沖縄の実態、そしてようやくかなった本土復帰も、沖縄県の人々の意思と希望を踏みにじる形でしか実現しなかったという現実と、人々の怒りと悲しみを直接見てきたのであります。  それから、ここ十年ばかり、私は非核自治体宣言協議会の全国の会長をやっていた関係で、沖縄県や沖縄市町村の首長さんたちとは親しくつき合ってきたものでありますから、そのお気持ちが痛いほどわかるのであります。  そこで、まず御質問いたします。  五月十四日に国の使用期限切れを迎える沖縄県の十三米軍施設、実際には十二施設と楚辺通信所でありますが、の軍用地の強制使用問題について質問したいと思います。  県収用委員会の第一回公開審理が二月二十一日、行われました。冒頭からの審議打ち切りなど県民の不信を招いた過去三度の公開審理とは違って、今回は、収用委員会のメンバー七人全員が大田知事の任命した人であることなどから、反戦地主も今回のこの公開審理には進行に協力しようとしているわけであります。収用委員会は、実質審理をすると約束し、次回三月十二日から、ようやく各施設ごとに地主と国がその実情に基づいて具体的な話し合いが初めてこの場で行われることになるわけですね。期待しているのです、沖縄の人々は。だから、反戦地主たちがやじをたしなめ合ってまで公開審理の進行に協力しているわけであります。  戦後、米軍による米民政府の一方的な土地収用令によって、銃剣とブルドーザーで内地と違って強引に土地を取り上げられて以来、一九七二年の本土復帰後も、今度は日本政府の法律によって継続的に強制使用されることになってしまった。ほぼ五年置きに繰り返されてきた収用委員会の強制使用手続の折には、全く問答無用の態度でこれが行われてきたのでありますから、初めて実態を訴える機会を得て、何とかこれを基地の縮小につないでいきたいと思っておられるわけであります。  ところが、収用委員会が実質審理を明約したことによってでしょう、政府は、この第一回公開審理が開かれたこの二月二十一日、駐留軍用地特別措置法改正の本格準備に入ったと新聞等で報じられておりますが、これは事実なのかどうか。特措法改正とか新法を考えているのかどうなのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。答弁を求めます。
  114. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  現在、私ども、駐留軍用地特措法に基づきまして使用権原の取得手続をとっておるところでございまして、状況は、ただいま先生御質問でお述べになりましたとおりの状況で、第一回目の公開審理が先日、二月の二十一日に整々と行われました。それで、次の公開審理も整々と行われて、私ども現在とっております手続というものが円滑といいますか、円満に行われ、何とか五月十四日の、使用権原の期限が切れる日でございますが、それまでの間にこの裁決が円満に行われて、何とか私ども権原が得られるように、今政府として最大の努力をさせていただいているという状況でございます。したがいまして、先ほど先生、いろいろ報道等ございますが、現在私どもは、収用委員会にお願いしている立場として、こういう手続が円滑に行われることを心から念願しておる、こういう状況でございます。
  115. 葉山峻

    葉山分科員 収用委員会の裁定前に政府が特借法改正などをすれば、大変なことになると思います。薩摩の琉球処分はともかくも、沖縄戦後、日本政府によって切り捨てられ、米国に占領支配され、復帰独立と引きかえに米軍の統治下に置かれてきた積年の思いが沖縄の方々にはあるわけであります。自分たちのことは自分たちで決めたい、やっとその方向が見えかかってきたというときに、それを奪い取るのかと怒りは爆発すると思います。  あの米兵による少女暴行事件の直後にわき起こるようにして開催された八万五千人の県民大会、あれは米軍に対しての怒りというよりも、むしろ日本政府への怒りだったのであります。沖縄の知人はみんなそう言っています。その後起こった、那覇沖合に四百五十キロ爆弾が投棄されたこと、劣化ウラン弾の使用の問題、あるいは基地からのPCB垂れ流しなど、沖縄の人々にとってはまさに神経を逆なでするような、我慢の限界でありました。  政府もこの間努力したとおっしゃいます。その御苦労はよくわかります。けれども、SACOの最終報告にしても、基地の返還について「加速化する」などという文言とは裏腹に、全く進んでいないじゃないですか。そればかりか、最近では、朝鮮半島の不透明な行方を理由に、安保条約と基地の重要性ばかりを政府は強調しているではありませんか。実質審理を通じて、政府は沖縄の声によく耳を傾けること、そして一方で、海兵隊の撤退をアメリカ政府に求めるなど、基地の縮小につながる血のにじむような努力をしなければ、県民の気持ちはおさまらないでありましょう。  とにかく特借法の改正という手段はとらないでほしいと思います。そもそも収用委員会による公開審理は、特措法にのっとって進められる強制使用のための手続なのであります。沖縄の人々にとっては本来苦々しい法律なのであります。それでもこのルールの中で話し合おうといってテーブルに着いた。それを、着いたとたんにルールを変えるとか法律を改正するということでは、正義は一体どこにあるというのでありましょうか。  次に、今回の強制使用の裁決申請では、施設局は、嘉手納弾薬庫、キャンプ・ハンセン等、十の軍用施設の使用期間を十年間としておりますが、何を根拠に十年としたのかということであります。使用認定申請をした防衛施設局長も、それを審査して使用認定をした総理大臣も十年という期間を出しました。その理由を説明していただきたい。答弁を求めます。
  116. 首藤新悟

    ○首藤政府委員 お答え申し上げます。  私ども、今回の裁決申請に当たりましては、次に述べますような事情を考慮して使用期間を十年としたものでございます。  すなわち、まず第一点として、日米安保体制我が国を含むアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠な枠組みとして機能しておりまして、また、我が国への米軍駐留は、我が国の安全並びに極東における平和及び安全の維持に今後とも寄与するものである。したがって、日米両国とも日米安全保障条約を終了させることは全く考えておらず、駐留軍の駐留は今後相当長期間にわたると考えられ、その活動の基盤である施設及び区域も今後相当長期間にわたり使用されると考えられますので、その安定的使用を図る必要があること、これが第一点でございます。  他方で、しかしながら一方、沖縄県収用委員会は、今回使用期間が満了いたします土地の大部分を対象としました昭和六十二年の裁決におきまして、この相当長期間にわたる提供の必要性は認めつつも、不相当に長期にわたる使用期間を認めることは適正補償の面から困難と考えること等から使用期間は十年としたこと、この二つの主な点を考慮いたしまして、私どもこのたび十年としたというものでございます。  なお、今先生十施設とおっしゃられましたとおり、当初裁決申請を行いました十三施設のうち、普天間飛行場など三施設につきましては、SACO最終報告において具体的に返還の時期、または返還までの期間が明示され、日米安全保障協議委員会により了承されましたことから、使用期間を変更した次第でございます。
  117. 葉山峻

    葉山分科員 冷戦が終わったというのに、全く基地を縮小しようという熱意がないというふうに感ずるわけであります。期限切れのそのたびにもめるのが嫌だからできるだけ長くしようということだけでしょう。米軍特措法における収用でも本土では十年などという長いものはありませんよ。最高は横浜自動車部隊の三年と二月。二年以上はわずか八件であります。平均一年六月であります。基地縮小の世論が高まっている中、そして総理も沖縄の気持ちを理解したいというようなことを言っておきながら、十年の強制使用認定をするということは無神経きわまりないと私はこの際申し上げておきたいと思います。  反戦地主と言われましても、何も特別な方々ではないわけであります。沖縄戦を身をもって体験した人たちの土地を取り上げているのでありますから、反戦地主になるのは当たり前ではありませんか。  言うなれば、藤沢とも長い間のおつき合いをしている那覇市も反戦地主であります。那覇軍港に十九筆、一万五千平方メートルと、普天間基地内で二筆、三千九百平方メートルの土地を市有地として持っている。そして、那覇市は、一九七二年の復帰以来、平良さんから今の親泊市長さんまで、いかなる理由があろうとも市有地を米軍に提供しないという方針を貫いてきておられるのですね。あわせて代理署名も公告縦覧も一切応じてこなかったことは御承知のとおりであります。那覇市の親泊市長さんも二十一日の公開審理では反戦地主として発言をされました。ここにこの発言の原稿がありますが、これを読んでみますと本当に胸が詰まる思いがするわけであります。  一昨年来の大田知事がとられた態度に私は感動と敬服の念を深くしておりますけれども、大田知事ばかりでなく、親泊那覇市長も、それに一昨年の七月から代理署名と公告縦覧を拒絶している沖縄市長、また読谷村長さんも本当に立派であります。沖縄の市町村の首長さんは皆さん同じ気持ちです。  住民の生命と財産の安全を守ることこそ自治体の長の責務であります。沖縄戦ですべてを失い、戦後の復興の歴史は米軍のフェンスを少しずつ縮めていく歴史であったとは、親泊那覇市長が公開審理の場でおっしゃった言葉でありますが、私は、こうした沖縄の地方自治が著しく侵害されている現状に改めて憤りを覚えるものであります。今、地方分権推進の議論を国会でもしておりますが、こういうことをそのままにしていたのでは、地方分権どころか、民主主義も何もないではありませんか。  二月二十四日、橋本総理は、オルブライト米国務長官に、米軍の土地強制使用問題について、日本政府として安保条約上の責任を果たすために全力で努力したいと約束しましたが、総理が全力を傾注すべきは、那覇市長を初め、公開審理で述べられる沖縄の人々の心からの言葉を真剣に受けとめることではないでしょうか。しっかり心に刻み込んでいただきたいというふうに思います。  そして、あの婦女暴行事件の際にも、ハワイの州知事が、海兵隊はハワイで受け入れてもいいということを言明されたそうですが、海兵隊の削減、撤退、これを直ちに米政府に求める交渉をすべきだと思いますけれども、ちょうど外務大臣も御出席なので、海兵隊削減の交渉をするのか、しないのか、はっきりお答えいただきたいと思います。
  118. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、沖縄の県民の皆様方が米軍の基地の存在のために大変大きな御負担をなさっておられる、そしてまた生活の上でも大変な御苦労あるいは御不自由をなさっておられる、そのことはよく認識しているつもりでございます。そういった観点から、極力、いわゆる基地の整理、統合、縮小を進めていこう、こういったことで、昨年ほぼ一年間かけまして、いわゆるSACOで日米共同の作業を行い、あのような最終報告をまとめたわけでございます。  それは、必ずしも沖縄の方々の御期待に全面的にこたえるものではないということは私ども承知しておりますけれども、一方において、国の安全を守っていく、そのための安保条約の目的も遂行しなくてはいけない、そういった兼ね合いの中で我々はあとう限りの努力をしたつもりでございます。今後、そのSACO最終報告に盛られました事柄を着実に実施してまいりまして、基地の縮小を実現してまいりたい、こう思っております。また、米軍が駐留することによるいろいろな事件や事故もございますし、先ほど申しました暮らしの上での御不自由もございます。そういったものを解消したりあるいは軽減したりするためにも、これからも最善の努力を払ってまいるつもりでございます。  しかし、一方におきまして、我が国を取り巻く国際情勢、とりわけ安全保障環境を見ましたときに、やはり我が国の平和あるいは極東地域の平和を守っていく上で米国が果たしていかなくてはいけない責務というものがございます。それを全うするために今日本に駐留します米軍、その兵力構成あるいは部隊人員の数も含めまして現在の情勢においてはこれが必須である、このように米側も考え、我々もその認識をともにしているところでございます。将来におきまして、中長期的に国際情勢が変化していけば、当然そこにつきましてもそれは変化はあり得る、そしてそのことは日米間でもよく協議していこうということは昨年四月の日米安保共同宣言にもうたわれているところでございます。そして、そのことの重要性につきましては、先般橋本総理がオルブライト国務長官にも指摘されたところでございます。  しかしながら、現時点でどうかと言われますと、今御指摘の海兵隊も含めまして、駐日米軍の現在のレベルでの兵力構成での存在というものは我が国の平和、極東の平和、安全を守るために必要であると考えておりますので、現時点において海兵隊の撤退を米側に求める意図はございません。
  119. 葉山峻

    葉山分科員 ただいまお答えいただきましたが、海兵隊の問題については、きょうは時間がございませんのでまた別の機会に譲りたいと思っております。  私自身は、もう冷戦が終結し、そしてアメリカの国内での幾つかの論調を見ましても、あるいは国防省その他の御意見の中でも、日本の駐留費が世界で一番安い、そういう中で、しかも先ほどインディペンデンスの撤退という問題が論議になりましたけれども、それだけのプレゼンスが、例えば一万八千人という海兵隊のプレゼンスが沖縄で必要なのかどうか、こういうことについてもいろいろ論議があるように承っております。  私は、あのウラン弾の問題にせよ、あるいは婦女暴行にせよ、みんな海兵隊の問題でありますから、やはりここで沖縄の方々の心を本当に心とするならば、直ちに日本政府はアメリカ政府に対して堂々と海兵隊の削減、これを議題に上せて交渉する、それ以外に沖縄の方々は納得しないだろうと感じておりますので、あえて申し上げておきたいというふうに思います。  次は、私の地元の神奈川県厚木基地の問題に移ります。  厚木基地での夜間連続発着訓練、NLPの騒音解消を図る目的から一九九三年三月には硫黄島にNLP施設が完成いたしまして、訓練が開始されたにもかかわらず、いまだNLPを含む航空機騒音の解消には至っておりません。それはなぜなのか。厚木基地でのNLP騒音を解消するために硫黄島に訓練施設が建設されたのに、全面移転するつもりはないのか。以上の点についてお尋ねをしたいと思うわけであります。
  120. 首藤新悟

    ○首藤政府委員 この厚木飛行場の航空機騒音によります影響は、周辺地域住民の方々の生活あるいは教育環境に看過できない問題を与えておりまして、私ども重要な課題ともとより認識いたしております。このため当庁としましては、夜間着陸訓練によります騒音の軽減を図るためのいわば暫定措置としまして、硫黄島においてこの訓練をできる限り多く行うように米側に要請しているものでございまして、現在ではこの訓練の約九割方を硫黄島で行っておりまして、一定の成果が上がっているというふうに承知しております。  なお、この厚木飛行場は米海軍とそれから海上自衛隊が使用しているものでございまして、その運用状況は必ずしも一定のものではない。したがって、そこから発生する騒音についても、多少の増減がございますけれども、今申し上げましたとおり、夜間の騒音状況は改善されていると考えている次第でございます。しかしながら、当庁としましては、今後とも周辺住民の方々に対する騒音が軽減されるよう鋭意努力してまいるというふうに考えております。  それから、硫黄島にNLP訓練を全部持っていけないのかということでございますが、平成五年の九月以降、硫黄島において本格的にこの訓練が実施されましてからは、厚木における訓練は大幅に減少している。しかしながら、やはり米側によりますと、基本的にはできるだけ多くの訓練をこの硫黄島で実施するように努力はしているけれども、何分この硫黄島は厚木飛行場から約千二百キロメートルという遠距離にございますために、即応態勢等の面での問題あるいは天候不良などの不測の事態が生じるおそれがございますので、訓練の全部を硫黄島で実施することは難しいというふうに申しているわけでございます。  しかしながら、私どもとしまして、この厚木飛行場の騒音軽減は重要な課題であるとかねがね考えております。この考えのもとに、できるだけ多くの訓練が硫黄島で実施され騒音の軽減が図られるよう、今後とも米側の理解を求めてまいりたいと考えております。
  121. 葉山峻

    葉山分科員 厚木基地の問題は、私も周辺に住んでおりまして、まさにこの騒音は受忍の限度を超えているわけであります。しかも、そのために硫黄島のNLP施設の建設費が百七十六億円もかかっているんですよ。遠いとかなんとかいって十分な利用をしないで基地周辺の被害も減らないのなら、これは全くのむだ遣いであります。  先日、防衛施設庁を呼んで話を聞いたところが、最適なのは三宅島だったが住民の理解が得られなくて暫定的に硫黄島につくった、現在でも三宅島での広報活動実施しているということでありました。百七十六億円の上にまた巨額の費用を投じるおつもりなんですか。九〇%硫黄島に移っているといっても、総量というか総数がふえているのではないですか。横須賀を母港とする空母はふえております。二月十五日にどこかへ出港していった空母インディペンデンス初め、一度に八十機くらい積んで来るでしょう。そういった意味で騒音被害は深刻であります。  厚木基地の被害は、基地のある大和市と綾瀬市、それに藤沢市、横浜市、座間市、相模原市、海老名市などにわたり、周辺百万人の人口に被害が及ぶわけであります。私は、百万の住民が住むそのど真ん中に軍事基地があって、しかも夜の九時十時まで離発着訓練をするような都市は世界のどこにもないということを、市長当時アメリカ大使館あるいは外務省や防衛庁等に再三申し上げてきたところでございまして、やはりこの問題は、はっきり一〇〇%硫黄島に移すということを決断すべきだというふうに思うわけであります。  人口密集の市街地の真ん中に航空基地が存在し続けていることは、また大惨事を招く可能性が極めて高いわけでもあります。横須賀港が空母の母港である限り、艦載機の訓練、整備基地としての厚木基地は使用され続けまして、騒音被害にも航空機事故の危険にもさらされ続ける。  厚木基地の早期全面返還を求めると同時に、すべての空母の横須賀母港化を返上するよう強く求めて、時間がなくなりましてちょうど終わりになりましたが、私の質問を終わりたいと思います。
  122. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて葉山峻君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田幸久君。
  123. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 外務大臣に御質問いたします。たまたま香港の友人から借りました新聞でございますが、昨年八月二十九日に、外務大臣が香港に行かれましたときに香港政庁に行かれまして、当時、軍票等の戦後処理に関して、香港の国会議員に当たる方々数名が大臣に面会を求められて、いろいろな事情があったようでございますけれども、大臣は裏口の方からその建物をお出になった。これは翌日の新聞ですけれどもかなり一面で出ておりまして、それから、これは香港の新聞ですけれども、外務大臣が裏からどうやって退席をされたかというようなイラストまで出ている新聞でございます。  それから最近、香港の一流の書店で売られております絵はがきだそうでございますけれども、この絵はがきの中に、日本の総理大臣外務大臣それから現地の上田総領事を、何か動物に仕立てて、それに対して現地の方々がこういう形で抗議をしているというような絵はがきまで出ている。  私は非常に残念に思うわけでございますけれども、香港が七月に中国に返還をされますが、その返還前のいろいろな意味での戦後処理といいますか、この軍票の問題というものが非常に大きな問題である、少なくとも香港の方々の心の琴線にとっては非常に大きな問題であるということの一つの例が、こういった絵はがき、あるいは新聞等でおわかりいただけるのではないかと思います。  その軍票の問題に関しまして、最近起こった事例を申し上げまして、それを政府の方々に確認をしていただいた上で御質問をしたいと思います。  昭和二十年の十月十一日にシンガポールにおきまして、現在は台湾に住んでおりますけれども、当時、慰安婦であった方お二人でございますけれども、この方々御本人の方から氏名を申し上げることも了解をとっておりますけれども、葉さんという方と陳さんという方ですが、昭和二十年の十月十一日付というこれは郵便局のスタンプが押してあるわけですが、当時のお金で一万円の軍票を持って郵便局に行って、郵便局の方でそれを受けているわけでございます。当時のシンガポールというのは熊本郵便局の管轄だそうでございますけれども、その熊本郵便局の方から、このお二人に関しまして、昨年の四月十五日の日付で二十七万六千三百二十三円が支払われているという、この写しがあるわけですが、実際に昭和二十年の十月十一日に軍票の一万円を預金として郵便局が受け入れ、かつ昨年四月十五日に台湾におきましてこのお二人に支払いをされたということの確認をまずしていただきたいと思います。
  124. 植村邦生

    ○植村説明員 お答えいたします。  それが軍票による預入であったかどうかは貯金通帳に表示がされていないので不明でございますけれども、先ほど先生おっしゃいましたように、昭和二十年十月十一日に預入があったことは事実でございます。  また、平成八年四月十五日付及び平成八年六月二十六日付で熊本貯金事務センターがこの二人に支払い決定の通知を出しており、支払っておることも事実でございます。
  125. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 そうしますと、よく言われていることですけれども、昭和二十年の九月におきますいわゆるGHQによるところの覚書あるいはその後の大蔵省の声明によるところの、その軍票というのは無効・無価値だということがこれまでのいろいろなこの問題に関する根拠となっておるわけですが、今の郵政省の方からの確認によって明らかなように、それ以降の十月において郵便局がお金を受け入れられ、そして昨年それに対して支払いをされているということでございます。ということは、台湾に限らず、香港等におきまする軍票を持っておられる方がおられましたならば、その換金、つまり確定債務という形での換金ということが可能ではないかと思うのでございますけれども、それについて外務大臣の方からお答えいただければ幸いです。
  126. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今の御答弁にもございましたように、これは軍票による預入ということが確認できないという状況のもとで支払いが行われているということでございまして、軍票というものに対する支払いを求めたことには全くなっておらないと思います。
  127. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ということは、昭和二十年の十月十一日に軍票を持っていったということが確認がとれれば、今後も軍票を持っていった方々に関してはその換金が可能であるということでしょうか。
  128. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 逆でございまして、換金は可能ではございませんと申し上げた次第でございます。
  129. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 軍票を持っていっておれば、その軍票でそれを郵便局の方で受け入れたということが確認されればよろしいということになるんじゃないでしょうか。
  130. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 軍票に関する問題も含めて、例えば香港に関するさきの大戦についての賠償とか財産請求権の問題は、サンフランシスコ平和条約の規定によりまして我が国政府と英国政府との間において解決済みであるわけでございます。したがって、軍票というものを持っていって、それが換金できるという状況はないわけでございます。  先ほど御指摘になられましたケースというのは、預入というものが確かにあって、普通の預金の形で二十七万何がしというお金があった、それが確認できないという状況のもとで台湾との間の確定債務という手続に従って支払われているというにすぎないものでございまして、軍票だから支払われているという因果関係はないわけでございます。
  131. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 これは当時の、昭和二十年で一万円ということは大変な額のお金でございますから、当時の郵便局に慰安婦の方、しかもシンガポールに住んでいない方が一万円という当時の大変な額のお金を、リュックサックかなんか知りませんけれども、郵便局に実際に持っていったということは、常識的に考えましてもあり得ないことではないか。  恐らく、その場の郵便局にいらっしゃった方が軍票を受け入れた、恐らくそれを証明するということは、後々現実にその方々、生きて今台湾に住んでおられるわけですから、証明がやがて可能になるかと想像がつくわけですが、その場合はいかがなりますでしょうか。
  132. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 再々申し上げましたとおり、こちらの方では軍票ということを証明できない、そして一方において預入があるということでお支払いしたということでございますので、軍票ということがわかっていたらそれは支払わなかったわけでございます。換金いたさなかったわけでございます。
  133. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 郵政省の方にお伺いいたしますが、大分前の話ですけれども、実際に当時シンガポールにおきまして窓口にいらっしゃった方が、一万円という現金、いろいろな話がございまして、当時に比べれば二百倍とかいう価値があるという話もあるわけですけれども、実際に郵便局の方が、その場で現金を持ってこられたのか、あるいは軍票を持ってこられたのかということをやがて明らかにすることは可能であろうと思うわけです。あるいはその御本人が実際に台湾に生きていらっしゃるわけですから、もし、自分は軍票を渡したという裏づけが出てまいりました場合にはいかがなりますでしょうか。
  134. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 預入ということは、軍票であるということがわかっていればできなかった、すなわち軍票であるとすれば預入が無効であるということになります。したがって、もし、軍票が無効になる措置が出た後で預入された、軍票だと知りながら預入されたということがあれば、それはその行為に瑕疵があったわけでございまして、場合によってはさかのぼって取り消しになるという性質のものでございます。
  135. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 時間がありませんから、その事実関係は後で調べるということをまたさらに行ってまいりたいと思います。  よくその根拠になりますところの連合軍最高司令官の昭和二十年九月六日付の「法貨ニ関スル覚書」というものがございます。これをもって軍票は無効・無価値というふうに、そのcというところでなっているわけですけれども、ただこれをよく読んでみますと、もともとそのabcの前の一というところで、「日本政府ハ本州、北海道、四国、九州及ビ附近水域ニ於テ左記事項ヲ法律、命令又ハ其ノ他ノ規程トシテ即時実施スベシ。」とあるのです。  ということは、そのよく根拠にされますところの最高司令官の「法貨ニ関スル覚書」によりますと、「本州、北海道、四国、九州及ビ附近水域」となっているのですが、この英語の方を読みますと、その「附近水域」ということはアドジャセントウオーターズというふうになっておりまして、どういうふうに解釈をしても日本の四つの本土及び陸続きあるいは極めて隣接しているところの周辺水域ということになりますから、台湾、香港、シンガポールといったところはその付近水域には当たらないというふうに当然なるのではないかと思うのです。  となりますと、この慰安婦の方々、慰安婦というのはたまたま、別に慰安婦でなくてもいいわけですが、この中国人であったお二人がシンガポールで預入をされたということは、そもそも先ほどの局長のお話のところの、軍票であったならばとありますけれども、根拠となるGHQの対象地域自身が付近水域となっておりますので、シンガポールで支払った、軍票を持っていったということであれば無効にはならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  136. 荒巻健二

    ○荒巻説明員 お答えいたします。  軍票につきましては、先生ただいま御指摘のとおり、昭和二十年九月六日連合国最高司令官覚書及び昭和二十年九月十六日大蔵省声明が御指摘のような形で出されているわけでございますが、この覚書及びその声明に関する判決がございまして、東京高裁昭和五十七年四月二十七日の判決におきまして、「右声明は右覚書に基づき軍票の無効無価値化を宣言したものであり、このような宣言をされた以上、軍票の所持人が日本国民であると外国人であるとを問わず、軍票を無効無価値とする効果は絶対的に生じたものというべきである。」このような判決が行われているわけでございます。  政府といたしましても、本判決に示されておりますように、本覚書及び声明によりまして一切の軍票が無効・無価値とされたものでありまして、これによりまして軍票はその存在場所、所持人のいかんを問わず絶対的、確定的に無効・無価値となったものと考えておるところでございます。
  137. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 その判決は五十七年でございますから、ということは、きょう事例として挙げました昭和二十年の十月十一日の段階で判決前でございますし、ましてこの覚書自身が、先ほど申しましたように日本本土及びその近辺の水域ということになっていますから、十月十一日の段階では判決の以前でございますから有効であったということでしょうか。
  138. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 二十年九月六日、御指摘の連合軍最高司令部の覚書というものがございます。その覚書に基づきまして、二十年の九月十六日に大蔵省が、「日本政府及陸海軍ノ発行セル一切ノ軍票及占領地通貨ハ無効且無価値トシ一切ノ取引ニ於テ之が受授ヲ禁止ス」との声明を発表いたしたわけでございます。この声明によりまして、軍票はその時点で当然に無価値・無効となったものでございまして、以降、日本国の国民であるか外国人であるかを問わず、軍票と通貨との免換が現実に一切行われておりません。
  139. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ただ、その九月十六日の声明の根拠が、今までいろいろな判例なんかでもあるようですけれども、この十日前の九月六日の連合国最高司令官の覚書になっておりまして、その覚書の対象地域が先ほどから申し上げております付近水域までとなっておりますので、十月十一日の段階でシンガポールで軍票を持っていかれたということに関しては有効ではないか、昭和五十七年の判決前でございますからと聞いておるのですが、いかがでしょうか。
  140. 荒巻健二

    ○荒巻説明員 判決は先生指摘のとおり五十七年四月二十七日に行われておるわけでございますが、その判決の対象となります覚書及び大蔵省声明それぞれは、二十年の九月六日及び九月十六日に行われておるわけでございます。判決におきまして、その二十年九月十六日、大蔵省声明が発出されたことをもちまして、すべての軍票が無効・無価値となったということでございます。
  141. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 では、二つ確認をさせていただきたいと思いますが、後の五十七年の判決いかんにかかわらず、ここで昭和二十年の九月六日にGHQが言っておりますところの「本州、北海道、四国、九州及ビ附近水域」というところに台湾、香港、シンガポールが入るか入らないかについての判断をお願いしたいと思います。
  142. 荒巻健二

    ○荒巻説明員 繰り返して恐縮でございますが、東京高裁五十七年四月二十七日付の判決におきましては、先生指摘の記述もございます二十年九月六日付連合国最高司令官覚書及びそれに基づき二十年九月十六日に発出されました大蔵省声明、その二つにつきましてその判断を行われておりまして、したがいまして、先生指摘のことも含めまして、この二つの覚書及び声明によって軍票の無効・無価値が行われたという解釈、判決が行われているものでございます。
  143. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 いや、質問は無効・無価値かどうかということを聞いているのではなく、この覚書の四島及び付近水域という地理的な記述が香港、台湾あるいはシンガポールを含むかどうかということを伺っておるのですが。
  144. 荒巻健二

    ○荒巻説明員 判決におきまして……
  145. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 いや、判決について聞いているのではなく、このいわゆる連合国最高司令官の覚書で言っているところの記述が、それらの地域が対象として含まれるかどうか。
  146. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 繰り返しになりますけれども、大蔵省の声明と、その前に連合国の指令があるわけでございますけれども、その大蔵省声明の日付をもって軍票はその存在場所、所持人のいかんを問わず絶対的、確定的に無効・無価値となったということであり、それが裁判においても確認されたということだと思います。
  147. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ちょっと満足したお答えではございませんけれども、時間の関係でもう一つ、先ほどの確認になりますが、昭和二十年十月十一日にシンガポールの郵便局に行かれたお二人の方が、実際にリュックサックで現金を持っていっておらないわけだろうと思いますので、軍票を持っていったという証明がもしなされた場合には、先ほどのお話ですと、つまり九月十六日以降でありますから、郵便局の方に間違いがあってそういうことが行われた。それに基づいて、昨年四月十五日及び六月ですか、二回にわたって郵政省の方から、熊本郵便局の方から支払いがされたということになりますと、たまたま慰安婦のお二人でございますけれども、そのお二人に対する支払いというものが無効であったということでしょうか。確認をお願いしたいと思います。
  148. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほどアジア局長の方からも御答弁申し上げましたとおり、今先生指摘の昭和二十年の連合国最高司令官の覚書及びそれに続きます大蔵省声明によって、軍票というのが無効にされたわけですけれども、それの軍票が無効にされた以降、シンガポールの郵便局で預入がなされたことについて、政府としてそれが軍票によるのか、現金によるのかという証拠がない。したがって、預入が行われている以上、それに基づく支払いを日本の法律に基づいてしたということでございます。  そういう意味において、藤田先生が御指摘されている趣旨が定かではございませんけれども、わざわざその支払いを無効にするためにその支払いが軍票によって行われたのだということを、我々が政府の方としてする意味は全くございませんし、そういう意味で、我々としては証拠がない以上、その預入が行われたということが、無効な行為によって預入が行われたのではなくて、有効な預入が行われたという前提に基づいて支払いをしたわけでございまして、それについて特に問題があるというふうに我々は考えておりません。
  149. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 では、また引き続きこの事実関係につきまして調べてみたいと思いますので、また、きょうの御答弁に沿った形での努力というもの、先ほど申しましたように、私自身、別に揚げ足取りをするつもりで申し上げているのではなく、香港の返還の前に、やはり香港の方々にとっては恐らく返還される前の気持ちの上で、大臣も軍票というものがどういった形で使われて、軍票にまつわるいろいろな残念な事柄があったということは御承知と思いますけれども、非常に香港の方々にとりまして重い傷を持っていることでございますので、そういった意味で、こういった事例も踏まえて、よい解決になるいい好例ではないかと思いましたので申し上げた次第でございますので、新たな事実が生まれるにつきましても、ぜひ善処をお願い申し上げたいと思います。  それからもう一つ、七、八分ございますので質問申し上げたいと思います。  先週も予算委員会の方で取り上げられたようでございますが、昨今の外務省の報償費に関するいろいろなマスゴミ等での報道があるようでございますが、予算委員会の中で出てきた中で、昨年末の事務次官会議の申し合わせに基づく外務省の倫理規程の制定ということがあるようでございますけれども、その外務省の倫理規程というものが大体どのようなものか、概要について簡潔にお答えいただければと思います。
  150. 原口幸市

    原口政府委員 外務省の倫理規程は、総務庁がまず政府全体の案というものを出したわけでございますが、それに基本的には基づいております。そのエッセンスは、関係業者等とのつき合いにおいて会食等あるいは講演、接待を受ける、そういうふうなことについては禁止ないし慎重を期するということでございます。  それともう一つは、できるだけ透明性を高めるということで、判断しにくい場合には、省内に服務管理官というのを置いて、その管理官に何月何日、どういう機会にだれと会食をするというような話を提出して判断を仰ぐという形になっております。
  151. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 報道されたことに対して抗議を出されたということなわけですが、何名かの名前が、杉山さんとか森本さんとか出ているようですが、もしこの否定をされているということでありますならば、そしていわゆる報償費というものがほかの会計検査院の該当する対象のものと違う性質のものであるならば、むしろこれを機会に、今行政についていろいろなうわさがある時期でもございますので、大蔵省とか厚生省とかに比べれば外務省というのは非常に清廉な、透明性の高い、対外的な重要な役割を担う省庁と私は思ってまいりましたので、いい機会でございますので、報償費というものが大体どんなものかということを御説明いただくと同時に、その透明度を逆に外務省さんの方から説明するいい機会ではないかと思うのですが、その辺はいかがでございますでしょうか。
  152. 原口幸市

    原口政府委員 外務省の報償費は幾つかの目的に使われておりますが、その主なものは外交工作あるいは情報収集というもののために使われております。そういうわけでございますので、もちろん省内的にはその適正な支出のための厳正な手続をとって、その執行の適切さを確保するように努めてはおりますけれども、報償費本来の目的からいたしますと、どういう人たちを例えば会食に呼んでいるかというような話を外に出すことは、相手との関係もありますし、情報源秘匿というような関係もございますので適切でないということは、これまでも何度か国会の御質問があった際に御説明させていただいてきた次第でございます。
  153. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 たまたま行政監視院法案といったものも民主党で提出をしておるわけですけれども、報償費の中身そのものについてはなかなか、そういう性格があるにしても、いわゆる行政が行政を監視ということよりも、ちょっと違った立場で行政について監視をする。それから、ODAが聖域でないというような話もございますけれども、こういった報償費あるいは、工作の内容とか相手は別にしまして、こういうオペレーションをしているんだということを、逆にその開示をして第三者に伝えるような形。ODAについても、その評価というようなものについて第三者を使っているというようなことも昨今聞いておりますけれども、そういった形で、むしろ明らかにされることのいい機会ではないかというふうにも思うのですが、いかがでしょうか。
  154. 原口幸市

    原口政府委員 お答えする前に、一つ申し忘れたことがあるので、申し上げさせていただきますが、報償費につきましては、先ほど省内での適正な手続というものがあってそれに従ってやっているということを申しましたが、当然のことながら、関係書類につきましては会計検査院にも提出して、会計検査院からもチェックをいただいているということでございます。  それから、報償費の目的等にかんがみまして、なかなか、中身について明らかにすることは適切でないというのは我々の考え方でございますが、先ほど申しましたように、省内の服務規律の設定、それから服務管理官の設立というようなことを通しまして、従来にも増して、社会通念上も含めまして、世間の疑惑を招かないように一層厳正に対応していこうということを申し合わせているところでございます。
  155. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 あと二、三分しかないので、きょうは外務大臣にお答えを全然いただいていないので一言。  今、レバノンに平林外政審議室長を派遣されておりますが、私も数年前に、日本人がほとんど行っていないときにレバノンに参りまして、空港にシリアのアサド大統領の肖像画がかかっておるという、何か独立国であるのかなと思ったことがございます。そのシリアに今度は平林さんを送られて、非常に適切な対応をとっておられると思いますが、いわゆる連合赤軍と言われている方々の存在、そしてそういった方々がやがて日本の方へ帰ってくるような手配について御努力をされておると思いますが、その見通しについて一言お伺いできればありがたいと思います。
  156. 池田行彦

    池田国務大臣 レバノンにおきまして、日本人と思われる人間を含む数名の人が拘束されたということでいろいろな動きがあったわけでございますが、そういった中で、去る二十八日でしたか、レバノン駐在の石垣大使がレバノンの首相と会いまして、そのときに、日本人も含まれているようだ、そして今、人定、この人間がだれであるかということを確認作業を進めておるのですね、それを済ませた後で適正に運びたい、こういったような話があったわけでございますが、そういったことも踏まえまして、平林外政室長は橋本総理の書簡も持ちましてレバノンに赴き、レバノンの首脳といろいろ話をしたわけでございます。  そういった中で、先ほど申しましたような確認作業を終えた後には、それぞれの国の、レバノンあるいは日本の国内法規、そしてまた国際法というものを踏まえて、適正にこれを運んでいこう、こういうふうなことになっているところでございます。  なお、この際、平林外政審議室長はあわせてシリアをも訪問されますが、これはもうシリアは御承知のとおり、中東和平の今後にとっても大きな関係のある国でございます。シリアトラックとかもあるわけでございますからね。それから、あの地域の情報についてもいろいろ外政審議室長は話をしてくるもの、こう承知しておるわけでございます。
  157. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ありがとうございました。
  158. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて藤田幸久君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  159. 矢島恒夫

    矢島分科員 日本共産党の矢島恒夫でございます。私は、米軍機の低空飛行訓練による被害の問題で質問をしたいと思います。  防衛施設庁、来ておりますか。まず防衛施設庁に聞きますが、ここ数年で、米軍の艦載機による低空飛行訓練によって発生した被害状況、県別件数をお答えいただければと思います。
  160. 西川吉光

    ○西川説明員 御説明いたします。  米軍艦載機による低空飛行訓練等により平成六年度から平成八年度現在まで発生いたしました被害の件数は七件でございまして、これを県別に申し上げますと、高知県が一件、それから群馬県が六件となっております。その主な被害の内容でございますけれども、住宅等の窓ガラスの破損、それから工場の蛍光灯の損壊等でございまして、被害の申し出者数はこれまで三十九名となっております。  以上でございます。
  161. 矢島恒夫

    矢島分科員 予算委員会に防衛施設庁から出された資料、これによりますと、今高知県の一件、お話ありましたが、群馬県の渋川、北橘村あるいは富士見村、この辺ではもっと多くないのですか。これは予算委員会に提出された資料ですけれども。
  162. 西川吉光

    ○西川説明員 御説明いたします。  件数と申しますのは、複数の被害の申し出がございましても一つの事案ということでとらえておりますが、平成七年七月十日以降、数件群馬県で先生指摘のように起こっております。これを一つのまとまった事案ととらえますと、今申しましたように、群馬県では六件というふうに理解しております。
  163. 矢島恒夫

    矢島分科員 件数の方というか、一件と考えるけれども、実際に被害があったのはどれだけかという数字はありますか。
  164. 西川吉光

    ○西川説明員 御説明いたします。  これは、被害の申し出をなされた方の人数ということで申しますと、先ほど御答弁いたしましたけれども三十九名ということでございます。
  165. 矢島恒夫

    矢島分科員 そこで、外務省に聞くわけですが、今お聞きになったように、この数年の中で、特に九五年からことしにかけてこの群馬県での被害が突出しているのです。最近この地域が新たな訓練ルートになったのか、あるいはまた、以前から訓練空域だったところに衝撃波が生じるような飛行を必要とする訓練が加わったのか、米軍は何と説明しているか、お答えいただきたいと思います。
  166. 折田正樹

    ○折田政府委員 群馬県にいろいろ被害が生じておるということは、私どもも承知しております。そして、米側に対して、被害が生じているということを指摘するとともに、被害が生じないような運航法、飛行方法で飛行すべきであるということを申し入れているわけでございますが、最近になって新しく何かが加わったというふうには認識しておりません。アメリカ側の説明によりますと、気象状況、さまざまな状況が重なったときにドーンという爆発音が発生して、非常に被害を生じせしめることがあるというような説明をしておりまして、パイロットにそういうことのないように厳重指示をしているというふうに聞いております。
  167. 矢島恒夫

    矢島分科員 私の質問に答えていないのですが。どういう対応をしているかというのじゃなくて、ブルールートとかあるいはオレンジルートとか、今まで明らかになっている低空飛行ルートという地域というのはそういう地域には当たらないのじゃないかと思うのですが、新たに今これだけたくさん起こったということは、その地域が新たにそういう訓練ルートになったのかどうか。対応についてはまた後で聞きますから、いかがですか。
  168. 折田正樹

    ○折田政府委員 オレンジルートとかということで報道されたというようなことは私ども承知しておりますけれども、具体的にどういうルートでどういう飛行をするかということは、私ども承知はしておりません。
  169. 矢島恒夫

    矢島分科員 新たに、この低空飛行ルートに当たらないようなところで被害が突出しているわけですね。九五年の夏から昨年の春にかけて、群馬県の、先ほど申しました渋川、北橘、富士見、赤城、前橋、さらには埼玉県の北部の方まで、窓ガラスが割れるなど米軍機の爆音によって被害が集中したわけです。先ほどの報告でも、三十数件の被害届が出ている。私も現地で実際に見てまいりました。窓ガラスが割れる、あるいは蛍光灯が落ちる、あるいは天井が落ちる、そういう実態を見てきたわけですけれども、群馬県では、こうした被害が起こるたびに、この県知事あるいは渋川市長、あるいは北橘や赤城の村長が外務省にも来たと思うのです。あるいは、防衛施設庁にも行ったと思いますし、在日米軍にも繰り返し、この飛行の中止ということを申し入れてきたわけです。  私、ここに群馬の県議会で採択された意見書、「群馬県上空の、住民に被害と不安を与えるような米軍機の飛行を即時に中止する措置を講じられるよう、強く要望します。」こういう意見書が採択され、これが外務省にも寄せられていると思うのです。  外務省に聞きますが、このたび重なる申し入れを受けて、どういう対策をとりましたか。
  170. 折田正樹

    ○折田政府委員 委員御指摘のとおり、群馬県から外務省の方にいろいろな申し入れがございます。最近では、二月七日付で県知事から大臣あてに申し入れ書が参っているわけでございます。  そして、私どもといたしましては、こういう被害が発生しているということは遺憾に存じておるわけでございますけれども、飛行訓練一般につきましては、パイロットの技能の維持向上等を図るためのものでありまして、日米安保条約の目的を達成するために重要な訓練であるというふうに認識しておるところでございますけれども、他方で、在日米軍側が我が国において全く自由に飛行訓練を実施していいというわけではないということで、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うべきことは当然であるというふうに考えておるところでございまして、こういう被害が発生しないように米側に申し入れをするとともに、安全確保に万全を期するため、また地元への影響を最小限にするためには何ができるか、引き続き米側と話し合っていきたいというふうに考えているところでございます。
  171. 矢島恒夫

    矢島分科員 米軍側は具体的に、こういう被害や事故が起きているわけだから、こういうようにしますというようなことを外務省に何か答えているものはありますか。
  172. 折田正樹

    ○折田政府委員 米側は、自主的判断として、パイロットは音速を超えない飛行で訓練するように指示を出しているということを言っております。音速を超える飛行をしますと爆発音がすると言われているところでございますけれども、たとえ音速を超えない飛行でも、大気の状況、気象条件、地理的条件等により爆発音が生ずる場合もあり得るというようなことで、こういう条件が重なった場合に音速以下の飛行でも被害が生ずるということがあるようでございます。米軍のパイロットに対しては、大気の状況や気象状況等に十分配慮して、被害が起こらないような飛行をするように徹底したいということを米側は言っておるわけでございます。
  173. 矢島恒夫

    矢島分科員 米軍の、例えば厚木基地の司令官フィリップ・H・ミルズ大佐、最低飛行高度を上げるとか、音速の出ないよう積載重量を重くするなど指示した。これは昨年五月段階の県の申し入れに対しての米軍側の回答であります。そのほか毎回、これだけたくさん起きておりますから、六、七回、県や市町村がそれぞれ申し入れたり、要請を行っているわけですけれども、そのたびに米軍側はいろいろと回答をよこしているのです。例えば、米軍規則では住宅密集地上空での低空飛行訓練は禁止されている、騒音は最小限にしたいとか、日本の航空法で定められた最低飛行高度を守るように指示しているとか、いろいろとその都度こういう回答をよこしているのです。  いろいろ約束しているのですが、それにもかかわらず、ことしの二月一日午後二時半ごろ、渋川市を中心とする広い範囲で爆音で窓ガラスが破損する、こういう被害が生じたわけです。市への苦情電話は五十件以上になったそうですよ。事務所の窓ガラスが割れたとか、あるいはふろ場のドアのガラスが壊れたとか、太陽温水器のガラスとフレームが破損したとか、焼き物が落下し破損したというような被害届が出されているわけです。  委員長、焼き物が破損した写真がありますので、ちょっと大臣に参考までに見ていただきたいと思います。
  174. 谷津義男

    ○谷津主査代理 どうぞ。
  175. 矢島恒夫

    矢島分科員 これは焼き物が破損した写真でございます。  そこで、外務省に聞くわけですけれども、何回もこういういろいろな改善策を米軍は県民に約束しているわけですね。しかし、そのたびに、もう何回となくそれがこけにされている。仏の顔も三度という言葉もありますけれども、これだけ約束をほごにされてもまだ米軍の言うことを信頼せよ、こういうわけにはいかないと思うのですよ。ですから、信頼せよと言うなら、外務省は今度こそこうした被害は二度と起こさないとここで約束してもらいたいのですが、いかがですか。
  176. 折田正樹

    ○折田政府委員 委員御指摘のように、二月一日二時半ごろ、相当な爆音がございまして被害が生じております。窓ガラスの破損、それから焼き物の破損、ソーラー温水器の破損等がございます。  まず、一般論として申し上げますと、日本におきましては、現在の航空法の規定に基づきまして、航空機は原則として一定の高度以下の高度で飛行してはならないこととされているわけでございます。在日米軍機自体につきましては国内法の適用はございませんけれども、米軍が我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは当然でございまして、米側は、一般的に言いまして、我が国の領空内における通常の飛行訓練において、日本の航空法に言う最低安全高度、これは政令で、有視界方式により飛行する飛行機については、人家の密集していないところにおいては人または物件より百五十メートルの距離を保って飛行できる高度とされている、これを尊重しているものと承知しております。  それで、事故が生じておりますことを踏まえ、我々として、こういう事故を起こさないように、それから公共の安全に配慮するようにという申し入れを行っているわけでございます。
  177. 矢島恒夫

    矢島分科員 どうも、絶対に今後は起こらないようにするという約束は、外務省としてはできないようであります。そこが問題なんですね。  渋川の平和委員会の監視記録を見ますと、地上から監視できたものだけですけれども、九六年は八十八日、三百八十五回艦載機が飛来しているのですね。それから、九七年は二月八日までですけれども、十八日、百三十二回飛来しているのですね。この被害を受けたところでは、大臣、突然ドーンという物すごい衝撃を受けるわけですね。プロパンガスが爆発したのかと思ったと言う方もいらっしゃいます。浅間山が爆発したのかと思った、あるいは、この地域にある小学校の先生に聞きましたら、地震かそれとも爆発が起きたと思った、一時騒然となって授業ができなかった、こう言う先生もいらっしゃいます。  防衛庁に聞くわけですが、窓ガラスが割れるという被害はいわゆるソニックブームと言われる衝撃波によって生じるものだと思うのです。自衛隊では、近年、戦闘機の衝撃波によって窓ガラスを破損するという被害が起きたかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  178. 柳谷俊範

    ○柳谷説明員 お答え申し上げます。  自衛隊におきましては、従来から、自衛隊機による航空事故の発生を防止するため、安全対策に万全を期すとともに、民間に被害を及ぼした場合を含め、万一航空事故が発生した場合には、防衛庁訓令の規定に基づきまして防衛庁長官に報告させる、それで事故の再発防止に努めているところでございます。  御質問の、自衛隊機の衝撃波によって事故が発生し、民間に被害を及ぼした事例というのは、過去三年間発生しておりません。
  179. 矢島恒夫

    矢島分科員 自衛隊機と米軍機との性能の違いの問題ではないんですね、これは。つまり、自衛隊機だって超音速で飛行することもできますし、衝撃波を発生させる可能性を持つわけです。しかし、同じような戦闘機で訓練しながら、米軍機のみこうした被害を繰り返しているのですね。  外務省、どうして米軍機のみがこうした被害を繰り返すのか、何か原因があるからではないのですか。説明していただきたい。
  180. 折田正樹

    ○折田政府委員 私、専門的な軍事的知識を持ち合わせるわけではないので、あるいは不正確なお答えかもしれませんけれども、自衛隊の航空機と米軍の航空機で役割が違う分野があるのではないかというふうに思います。自衛隊は空母を持っておりませんので空母艦載機というような飛行機は自衛隊自身にはない。空母を使う米側の航空機による活動というのは、自衛隊の航空機の活動とは異なる部分があるのではないかというふうに思います。
  181. 矢島恒夫

    矢島分科員 役割が違うなどという問題ではないのですよ。市街地でそういう飛行訓練は自衛隊はやらないのですよ。ところが、アメリカ側の飛行機は、アメリカ本土では人口密集地ではやってはいけないということを日本でやっているのですよ。この衝撃波、ソニックブームというこの被害は、飛行機が地上に向かって急降下してくる、そして攻撃をして、地面すれすれのところで反転、急上昇していく、こういう状況だとか、あるいは超低空で音速以上で地面をなめるような飛行をした場合に大体生じているのですね。なぜそうなるかという物理的な根拠については時間がありませんから申し上げませんが、音速だから後ろに音波の乱気流が起こるのですよ。それが地面に衝突するわけですから。この渋川上空の状況でも、目撃した人が、米軍機が急降下して急上昇していく、こういうのが何回となく確認されているのですね。  つまり、この被害の原因は、役割の違いとかそういう問題ではなくて、自衛隊ではやってはいけないとなっている市街地上空での対地攻撃訓練を米軍機が渋川の上空でやっているからではないですか。そうではないのですか。
  182. 折田正樹

    ○折田政府委員 米軍が飛行訓練を行っていると承知しておりますが、今委員がおっしゃられたような形でやっているかどうか私どもは承知いたしません。
  183. 矢島恒夫

    矢島分科員 その部分になりますと、アメリカ軍からの説明あるいはこの被害がなぜ起きたのか、どういう飛行をやったのか、外務省自身がそれをきちんと把握していないということが証明されたわけです。そういう対地攻撃訓練ではなくてもいいですよ。なぜあそこでそういう訓練をやる必要があるかということについて、ここでは言えないけれども、アメリカ軍からは説明を受けたということがありますか。
  184. 折田正樹

    ○折田政府委員 アメリカ軍から説明を受けたことを今御説明しているわけでございます。
  185. 矢島恒夫

    矢島分科員 そうすると、アメリカ軍は日本の上空、とりわけ人口が密集している地域での訓練、しかも具体的に衝撃波が起きて被害を受けているし、そこに住んでいる住民の人たちが突然の爆発音ですから非常に不安に思っている。こういうことがどういう訓練の中で起こったかということについては、アメリカ軍に問いただしたことはあるのですね。
  186. 折田正樹

    ○折田政府委員 米軍の運用にかかわることで、そこは明らかにできないというのが米側の立場でございます。他方、先ほど申し上げましたように、アメリカは一般的には我が国の領空内における飛行訓練におきまして、日本の航空法、これは具体的に適用になるものではありませんけれども、そこに定められている基準、人家の密集していないところにおいては人または物件より百五十メートルの距離を保って飛行できる高度とされている、これを尊重しているという説明をアメリカ側より受けているところでございます。
  187. 矢島恒夫

    矢島分科員 そういう事故を起こさないように、あるいはそういうことがないようにということは、私が先ほど申し上げたように何回も米軍側は言っているのですよ。言っていながら何回もこういうように起こっているのですよ。ですから、それを外務省は今そう言っているのだから大丈夫だ、こう考えているのですか。先ほど二月一日の問題でお聞きしましたら気象条件ということをおっしゃられた。そのときの気象条件はどういう気象条件だと言っているのですか。
  188. 折田正樹

    ○折田政府委員 そこまでは承知いたしません。
  189. 矢島恒夫

    矢島分科員 そうなりますと、気象条件によっては、同じような気象条件というのはあるでしょうから、今後いつ起こるとも限らないのですね。こういう気象条件のときにはそういう訓練をすると衝撃波が起こるから、これは中止するかほかの場所にするか何か対応が考えられるわけです。ところが、気象条件といっても、ただそういうことを言いわけみたいに言うだけであって、実際にその気象条件がどういうものだかわからない。ならば、今後そういう気象条件のもとだと音速以下であってもこういう衝撃波が起こることがあり得るという先ほどの局長答弁だったのですけれども、そういうことですね。今後もいつ起こるかわからない、そういう解釈でいいわけですか。
  190. 折田正樹

    ○折田政府委員 音速を超えない飛行でありましても、大気の状況、気象条件、地理的条件等により、こういう条件がいろいろ重なりますと爆発音が生ずる場合もあり得るということでございまして、そういうことも十分に配慮して、そういう被害が起こらないような飛行にするようにパイロットに対して徹底していくというのがアメリカの立場でございます。
  191. 矢島恒夫

    矢島分科員 そのパイロットに対して徹底していくとか、こういうことを対処したいというのは、私は何回も言っているように、米軍側はもう何回も言っているんですよ。何回言っていても被害が起きたり、あるいは今回の二月一日の状況などのように気象条件だと言うわけですが、その気象条件の中身もはっきりしない。大体こういう人口密集地でのそういう被害が及ぶであろうということはやめるべきだと思うのです。  この地域というのは、ちょうど渋川から関越自動車道のインターチェンジがあります。それから、利根川が流れておりまして、そこに橋がかかっております。それから大きな工場もありますし、サージタンクもあるんです。高さが大体八十メートルですか、発電所の水圧調整タンクといいますか、こういうものがあるんです。まさにこの地域は、上空から格好の目的物がワンセットになっているんです。専門家は、絶好の対地攻撃演習場だと指摘している。東京新聞では、ここの地形が北朝鮮のある地域に酷似しており、そこでの作戦を想定したものだと指摘する専門家もいる、こういう報道をしています。目撃者も言いますように、赤城、榛名、これらの山合いからちょうどその部分を急降下で攻撃して立ち去るというような、いわゆる地上攻撃をやっている部分というのを目撃者も何回も見ているわけです。これがこの地域に衝撃波、いわゆるソニックブームの被害が集中した原因だと言えると思うのです。  時間がありませんので、大臣に最後にお聞きしたいのですけれども、今ずっと私、局長とやってまいりました。アメリカ本土ではこうした衝撃波、いわゆるソニックブームの被害が起こらないように厳重な規制が行われているんですね。米軍はもちろん当然このことを知っています。ところが、日本では日米地位協定によってそうした規制が一切ない。アメリカ軍は、そこがこの衝撃波によって被害を与えるかもしれない市街地域の上空なんですね、こういうことを知っていながら、ここはアメリカ本土ではないんだ、日本なんだということで、毎日のように飛来してきては轟音をまき散らす、市民に不安を与えている、こういう状況なんです。だからアメリカ軍は、アメリカ本国では許されない訓練をここ日本では、何回か約束しながらそれをほごにして平然と行っているわけです。今重大な問題になっている劣化ウラン弾事件も同じことで、これなどは典型的にそれを示したものだと言えるわけです。  こうして、二月一日に衝撃波、ソニックブームによって窓ガラスが割れる被害がまた起きたわけです。今後繰り返さないという保証は、今の局長答弁だとアメリカを信頼する以外にないという結論になるので、しかしこれまでの状況を見ますと、繰り返し繰り返しほごにされてきたアメリカ軍の空手形だけだ。住民に被害が発生したり、あるいは不安を抱くような飛行は中止してほしい。これが県民の声であり、願いなんです。私は、もはやこの米軍機の群馬上空など市街地上空でのこういう飛行訓練そのものを中止させる以外にないと思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  192. 池田行彦

    池田国務大臣 私は、やはり米軍がパイロットとしての技能を維持向上させるために訓練を行うということ、これは日米安保条約の目的を達成するという観点からも必要なものである、こう考えます。  しかしながら、それじゃ、どういった訓練をしてもいいのかといいますと、当然そんなことはございません。当然、米軍としても我が国関係国内法令そのものに縛られるわけじゃございませんけれども、そういったものは尊重しなくちゃいけない、そういったことでございまして、安全基準は尊重してもらわなくちゃいけませんし、また、公共の安全に妥当な考慮を払わなくちゃいけないのも、これも当然でございます。  そういったことで、これまでも米側に対しましてそういった配慮を求めておりますし、米側としても、基本的に我が国における訓練においても当然そういった安全面への考慮を払う、こう言っているわけでございますから、今後もそういった面で米側の努力を求めながら、こういった住民への悪影響は極力なくなるように努力はしてまいりたい、こう思います。
  193. 矢島恒夫

    矢島分科員 質問を終わりますが、実際になくなるかなくならないかの保証というのはやめる以外にないわけですし、何といってもこの日米地位協定というものが、厳格にこういう市街地での超低空を規制するという方向での見直し、これが必要だということを私は主張いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  194. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて矢島恒夫君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美さん。
  195. 辻元清美

    辻元分科員 私は、社会民主党・市民連合の辻元清美と申します。  本日は、昨年十二月三日なんですけれども、アメリカ合衆国司法省が、第二次世界大戦中に日本軍人及び軍関係者として、いわゆる七三一部隊での人体実験や従軍慰安婦の組織化、制度化を進めた十六人の日本人について、アメリカ合衆国への入国禁止の措置をとったという報道がなされましたが、この件について質問したいと思います。  今私の手元に、米国司法省が出しました緊急リリース、これは十二月三日付のものなんですけれども、これがございます。  この中で、戦争犯罪の疑いのある日本人の入国拒否監視リスト掲載についてという緊急リリースですが、米国司法省は、本日、というのは昨年の十二月三日ですが、十六人の日本人を米国への入国拒否監視リストに掲載した。リストに挙がったこれらの日本人は、非人道的人体実験を行った日本軍軍人や従軍慰安婦の慰安所の運営にかかわった人々であるということが書かれておりまして、ずっといろいろその内容について書いてありますが、特別調査室のローゼンバウム氏というのが、これが委員長らしいのですけれども、その人が、このリストに載った人々は、ボルツマン修正法として知られているUSCの条項一一八二(a)(3)(E)によって米国内の入国を禁じられたと言っております。  この法律は、ナチスのドイツに関係した人々、もしくは第二次世界大戦中の迫害行為にかかわった人々やナチス・ドイツの同盟国だった政府が対象であるというふうに聞いております。ナチス・ドイツの迫害行為にかかわった人々を入国拒否対象とした一九七九年の法律による監視リストに、ヨーロッパ以外では残虐行為にかかわった人々が挙げられるのは今回の日本が初めてだったと。  この法律を施行する立場にあるこの委員長は、調査が続くにつれてほかの日本軍軍人たちがリストに挙げられるだろうというような発言もしております。この委員長はさらに、この問題に関して容疑を確定させることができたという、確定という言葉も使って、このリリースには載っております。  そして、七三一部隊や慰安所にかかわった疑いの持たれている人々を入国させないことで、米国政府は犠牲者や彼らの苦しみを忘れないことの大切さを示している、そして、こういった極悪非道な犯罪を繰り返さないようにと願っているとこのローゼンバウム氏は言ったと米国司法省の緊急リリースが流れました。これによりまして、例えばアメリカのワシントンポストなどでは、大きな記事になって報道されています。  そこには、日本政府はこの件に関して公式な態度を明らかにせず、外務省広報官の橋本氏は、今後を見守るだけとコメントしたと報道されていたり、それから、日本でもその後、翌日すぐに各紙報道しておりますが、その中で、これは四日の読売新聞では、「今回の日本人の名簿記載にあたっては事前に日本政府には氏名を伝えた」という報道がなされていたり、「米司法省が三日、旧日本軍人十六人を特定して、過去に行った非人道的行為を理由に、米国入国禁止リストに載せたと発表したことについて、政府は戸惑いを隠していない。外務省は、四日朝から、事実関係の掌握に追われたが、情報が東京に届いておらず、不意をつかれた格好だ。」というふうに、これは昨年報道された記事であります。  私は、この記事を見たときから、これはやはり日本としてどのように今回のこういうアメリカの措置をとらえるのかということを日本政府として明確に考えていかないと、この先、アジアとの関係、そしてアメリカとの関係にも懸念が出てくる可能性もあるのではないかと思いまして、今回質問させていただきます。  そこで、まずこの十六名の氏名の問題ですけれども、日本政府は、アメリカ合衆国側から通知されたという事実はあるのかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  196. 折田正樹

    ○折田政府委員 十六名というふうに伺っていますが、アメリカ側はこれを公表しないものとしております。
  197. 辻元清美

    辻元分科員 今の、公表しないというお答えですが、それは一般に公表しないということで、日本政府はこの十六名の氏名について通知を受けたということですか、受けていないということでしょうか。
  198. 折田正樹

    ○折田政府委員 今申し上げましたように、公表しないものとして聞いております。
  199. 辻元清美

    辻元分科員 ということは、この十六名について、もう一度確認させていただきたいのですが、日本政府は通知を受けていないと理解してよろしいんでしょうか。
  200. 折田正樹

    ○折田政府委員 公表しないものとしてこういう措置をとっているというふうに聞いております。
  201. 辻元清美

    辻元分科員 この中には、これはアサヒイブニングニュースなどでは、公職についている方の名前もリスト掲載に当たって出ているというような報道も出ております。これは鈴木俊一前東京都知事でありますけれども、公職者も、この経過、これは日本の大学の先生なども、広島大学の名誉教授の芝田進午さんという方もかなりいろいろ情報を求められたというふうにここには載っておりますが、このように、公職者、鈴木前都知事も名前が挙がっているということは御存じでしょうか。
  202. 折田正樹

    ○折田政府委員 今回の監視リストへの掲載は、各国の入国管理当局が種々の理由から入国拒否者を判断するものと同様、アメリカも入国管理政策との関連で、疑うに足る何らかの理由があることをもって監視リストを準備しているという説明を受けておりまして、このリストに掲載されたからといって、これらの人物が七三一部隊や従軍慰安婦キャンプに関し責任があるという認定が行われたわけではないというふうに承知しております。  今、具体的な名前の御示唆がありましたが、私どもは承知いたしておりません。
  203. 辻元清美

    辻元分科員 ということは、この今回のアメリカの措置というのは、容疑であるというふうに外務省は受け取っていらっしゃると確認してよろしいでしょうか。  あと、私が司法省から取り寄せました資料は、アイデンティファイという言葉を使っているので、確定というふうに私は読んでしまったんですが、それは間違いでしょうか。
  204. 折田正樹

    ○折田政府委員 疑うに足る何らかの理由があればあったということでございまして、言ってみれば、刑事訴追ほど厳しい要件を求められているものではございませんし、仮に具体的人物が入国を拒否された場合には、それを不服とする場合には申し立てが行えるというふうに承知しております。
  205. 辻元清美

    辻元分科員 今回のアメリカ合衆国の司法省の措置は、先ほども申し上げましたボルツマン修正法に従ってなされたと聞いております。この法律は、先ほども申し上げました旧ドイツのナチス及びその同盟国で残虐行為を働いた人物を戦争犯罪者として人道上の罪に問う法律というふうに聞いております。ですから、このアメリカ合衆国の今回の措置というのは一般の入国を拒否するというのとちょっと私は質が違うように思うのですが、アメリカ合衆国が今回日本に通達してきたこの措置について、日本外務省の方は妥当なものと考えるのか、それともそれはアメリカが決めたことだから日本政府としては関知のしようがないとお考えなのか、どちらでしょうか。
  206. 折田正樹

    ○折田政府委員 アメリカ政府がいかなる人物を入国させるか否かということにつきましては、基本的にはアメリカの主権に属することであると考えます。日本にも日本の主権があって、日本がいかなる人物を入国させるか否かは日本が決めるものであろうと思います。  それから、これによりまして例えば戦争犯罪が認定されたのかという御趣旨でございますが、おっしゃられるようにボルツマン修正法案というのがございまして、一九三三年三月から一九四五年五月の期間にドイツ・ナチ政府等、それからドイツ・ナチ政府と同盟関係にあった政府、これで日本が入ってくるわけでございますが、これの指揮下にあったかまたは関連を有していた外国人であって、いかなる者に対してであれ人種、宗教、出身国または政治的見解を理由として迫害を加えることを命令、扇動、幇助したか、またはその他の形で当該迫害に加担した者についてはアメリカへの入国を禁止することができるというのがホルツマン修正法案セクション一一八二(a)(3)(E)の規定でございます。この規定に基づきまして、ドイツのナチの関係につきましては約六万人の人をリストアップしているということでございます。  日本に関してはこれが初めてということでございますが、特にヨーロッパの場合にはそういう方が結構アメリカに入国申請をしてくる場合があるらしゅうございまして、こういうリストを出すことによって、そういう人たちが自発的に入国の申請をしてこないようにするためにアメリカとしてやったものであるというふうに説明を受けております。  皆様方もアメリカに入国ビザの申請をされるときに、今申しましたこのボルツマン修正法案のこういうものがありまして、あなたはこれに該当しますかということをチェックするところも実はございまして、アメリカから見ますとアメリカの入国政策の一部をなしている部分でございます。
  207. 辻元清美

    辻元分科員 そうしますと、今回この司法省の発表による十六名については同じような措置を受けるということでございますか。
  208. 折田正樹

    ○折田政府委員 十六名の方が、仮にアメリカに入りたいというビザの申請をしてきた場合に、恐らくアメリカの政府がイエスと言わないということだろうと思います。仮にそれで不服であれば不服の申し立てができる。その結果どうなるかというのはアメリカの司法の問題であろうと思います。
  209. 辻元清美

    辻元分科員 私はこの記事が出たときに、自分自身も大きな衝撃を受けたわけなんですが、それはその理由なんですね。その人たちがなぜ入国拒否をされるかというその根拠において、ほかのものとは違うと思ったからなんです。十六名についてアメリカがこういうふうな措置をしたわけなんですが、もしもこれが事実誤認があった場合には本人にとっても大変なことですし、それから、もしもそういう事実があったならば、これは日本の戦争責任という意味でも重要な意味を持つというふうに考えています。  ですから、外務省は独自にこの措置について、もしくはその十六名と言われた人たちに関して調査をしたり、事実関係についてアメリカに問い合わせたり、そのようなことはされているのでしょうか。
  210. 折田正樹

    ○折田政府委員 先ほどもお答え申し上げていることでございますが、基本的にはこれはアメリカの主権にかかわる問題であろうと思います。我が方としてそれについて照会するとかそういう措置はとっておりません。
  211. 辻元清美

    辻元分科員 ということは、この十二月一二日に、報道によりますと、対応に困ったというような報道がなされているのですが、これが困って以来、アメリカとは一切このことについては日本政府としては何も話し合っていないというふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  212. 折田正樹

    ○折田政府委員 いろいろ外交上のやりとりはしております。
  213. 辻元清美

    辻元分科員 それはどういうやりとりなんでしょうか。外交上のやりとりというのがちょっとよくわからないのですが、御説明いただけますか。
  214. 折田正樹

    ○折田政府委員 アメリカがどういう背景、またどういう法律的根拠に基づいてこういうことをしたのかというようなことを含めて外交上のやりとりをしておりまして、先ほど来私が御答弁申し上げているのもそういう外交的やりとりの中でわかったことを御説明しているわけでございます。
  215. 辻元清美

    辻元分科員 そうしますと、その外交上のやりとりはこの先も続いていくと理解してよろしいのでしょうか。  といいますのは、この司法省の資料によりますと、これからも調査を続行していくというふうに書いてございます。ということは、これからも日本政府に、そういうふうなまた何名何名というふうに通知が来る可能性もあるわけなんですが、その外交上のやりとりを続行されていくという方針で対処されているのでしょうか。
  216. 折田正樹

    ○折田政府委員 いろいろな問題につきまして、ふだんからいろいろアメリカと外交上のやりとりをしております。  今またリストの数をふやすのではないかというお話がございましたけれども、今具体的にそのようなことでアメリカが何らかの措置を考えているというふうには聞いておりません。
  217. 辻元清美

    辻元分科員 それでは、ボルツマン修正法は一九七八年にできて七九年に特別調査部ができたということなんですが、ドイツ政府はその戦争責任という意味において、ドイツ政府対応はアメリカと協力して六万五千人の名前を一緒に作成したというふうに聞いています。日本は今後のそういう外交上のやりとりで、このドイツ政府がとったような態度をとる可能性はあるのかないのか、お聞かせください。
  218. 折田正樹

    ○折田政府委員 例えば慰安婦の問題につきましてはいわゆるサンフランシスコ平和条約に従って誠実に対応してきておりますし、従軍慰安婦問題についてはそれなり対応日本政府としてしてきているということでございまして、それに加えて新たに何らかのことをアメリカの政府との関係で行うということは考えておりません。
  219. 辻元清美

    辻元分科員 そうしますと、第二次世界大戦中に日本軍がアジアで行った残虐行為についてということで今回こういう措置があったわけなんですけれども、これは世界じゅうから日本政府対応が私は注目されているのではないかというふうに考えるのです。日本政府が、今回のような具体的な数字を挙げて戦争犯罪者の指摘に何らかの、今外交上のやりとりとおっしゃいましたけれども、これについてどう考えるのか。  そして、アジア諸国との関係からも、日本の外交上このままこれに対して何も、アメリカと話し合いをしていますが、どういう話し合いをしているかということをコメントしないということは、私は日本の戦争に対する姿勢にとってはマイナスのように思うのですけれども、いかがでしょうか。
  220. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、これはいろいろな側面から見なくてはいけませんけれども、一つ戦争責任という関係から申しますと、ドイツにおきましては、いわゆるニュルンベルクの戦争犯罪を初め、国際的な法廷以外に、ドイツ自身として、やはりああいったナチズムという考え方、そしてああいった運動の中で大変な大量虐殺を初め大きな犯罪を犯したという認識のもとで、ドイツの国内法においてもやはりそれを犯罪とし、いろいろ処断してきた、そういった背景が一つあると思います。  我が国におきましては、御承知のとおり、東京裁判あるいはそのほかのBC級についてのいろいろな裁判もございましたけれども、それはいわゆる国際的な場におけるなにであったと思います。そこに基本的な違いがあるということを一つ前提にしなくてはいけない。そういった意味におきましては、ドイツが今回の法律に基づく米国の入国管理政策上の措置についていろいろ協力したというのと、ドイツが協力する前提だったものが我が国にはないということが一つあるということを御理解いただきたいと思います。  それから、どのような人物を自国に入れるか入れないかという入国管理政策というのは、すぐれてその国の主権に属するものであり、それはかなり幅広い裁量の範囲があるというのが通例でございます。そういった中で、米国がこのようなことをされる、監視リストに掲載をされたということは、そのこと自体に対して我が方からこれはけしからぬと言うわけにもまいらない。これはかなり主権に属する、裁量の範囲の広いものでございますから、そういうことがある。  それから第三点といたしまして、仮にこれ、例えば七三一部隊との関係があったということでこの監視リストへ米国が掲載をいたしたとしましても、それは本当に七三一部隊において何らかの行為をしたということを確定するものじゃ毛頭ございません。ましてや、それが何らかの罪に当たるかどうかということを何ら決めるものではないというのは当然でございます。これはあくまで入国管理政策といういわば行政面での運用についての行政措置でございますから、そして、仮にそこで入国を拒否されるとかいった場合には、それは不服を申し立てて争訟手続を経て米国法に基づき争うという道も残されている、こういうことであるということで御理解いただきたいと思います。  そういうことでございますし、また、従軍慰安婦の問題につきましては、御承知のとおり、我が国の法的な立場はそれといたしまして、やはり女性の尊厳、名誉を深く傷つけたことであるという認識の上に立って、いろいろみんなが知恵を出し合い、ああいうふうにアジア女性基金というものをつくりまして、それに国民的ないわば反省と償いの意味を込めた、こういった事業を今行っておる。そういうところに政府といたしましてもちゃんとその役割を果たしておるわけでございまして、そういったふうなことで御理解いただきたいと思います。  そういった、今いろいろ申し上げました三点、四点とドイツと前提が違うということを考えますならば、今回の米側の措置について、今日本政府として特段のこうしろああしろという措置を申し入れをしないからといって、我が国の過去の戦争に対する反省度が足りないとか、そういった指弾を国際社会から受けるおそれはない。そういった点については、別の面でいろいろ配慮をしながらやっているというふうに御理解賜れればと思う次第でございます。
  221. 辻元清美

    辻元分科員 私がこの問題を取り上げましたのは、一つは、今まで戦後五十年のときもそうでしたけれども、アジアの国々と日本関係をどうするのかという、過去の戦争について随分議論もなされ、そして日本に対する批判も謙虚に受けとめて、これから新しい関係をつくっていこう、そういうふうな気風も一九九五年にはあったと思いますし、その中でもう一つアメリカがこういうことを出してきたというのは、さらに世界が、今アメリカの主権の問題でして、この入国に関してはアメリカが決めたことだというふうに御説明を受けましたけれども、さらに厳しい自で日本が見られているなというふうな一つのあらわれではないかと私は感じたのです。  今外務大臣は首を横に振られましたけれども、私はこれを見たときに、これは非常に厳しい目で見られているなというふうな一つのあらわれではないかと、繰り返しますが感じました。今外務大臣は首を横に振られましたが、私と認識が大きく違うのでしょうか、この措置につきまして。
  222. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは過去の戦争、その問題につきましては、基本的にサンフランシスコ平和条約そのほかの条約に基づきまして、きちんとそういったことを、いろいろな請求権の問題等につきましては決着を見たわけでございます。しかし、それだけで十分であるとは考えない。それは、法的な問題はそれで処理されたとしても、やはり我々がこの国際社会の中で平和を希求しながら生きていこう、そして世界のためにもそれなりの役割を果たしていこう、そのためにはやはり過去を直視しながら、反省すべきところは反省して、将来に向かって我々の行動を律していかなくてはいけない、こう考えております。  そういった点におきましては、例えば従軍慰安婦の問題につきましても、法的な問題としてはこれは決着したものであるという立場でございますが、しかしそれでもういいんだとは言い切れないということで、これはやはり過去を直視しながら、女性の名誉、尊厳を深く傷つけたということでこれも償いをしなくてはいけない。国民の中からも随分盛り上がりがございまして、数十万人の方々に拠出もしていただきました。そして、政府としても、法的な立場はおくとして、やはり道義的な立場からのある意味で責任と言ってもよろしゅうございましょう、そういうものは否定できないということで、きちんと国の予算にも所要の事業費も計上して、今平和基金の事業を国民とともに推進しようとしておるところでございます。  そしてまた、そのほか、外交はもとよりでございますが、いろいろな我が国国際社会における行動におきましても、それは過去を逃げることはせずに、過去のマイナスの面も十分踏まえながら、将来へ向かってそれをプラスに転化していく、そういった努力は当然していかなくてはならないと思いますけれども、今委員がお取り上げになりましたこの問題を、問題があるからといって国際社会が、日本の世界におけるあり方について非常に大きな疑問を新たに投げかけた、とりわけ米国が日本の生き方について大きな疑問を投げかけたとまでお考えになるのは少し、非常に鋭敏な神経をお持ちなのはよくわかりますけれども、過度に鋭敏になっておられるのじゃないのかなと。これはやはり入国管理政策という米国の行政の一分野での取り扱いであるというふうに考えた方が、私はいいのじゃないのかなと。むしろこれを余り大きく取り上げて、アメリカが随分日本の過去に対する反省が不足だというふうに考えていますよというふうに認識して、アメリカと我が国との対応を考えるということをしますと、かえって将来を誤ることになりはしないかと私は思います。
  223. 辻元清美

    辻元分科員 私は……(発言する者あり)そうです。私もそれを申し上げようと思って。敏感というのは悪いことではないと思うのですよ。いろいろなことに敏感に対応していかないと、日本の外交もとても大事なことだと思います。  私がこれを取り上げましたのは、やはり私は戦後生まれですけれども、戦争を知りません。しかし、日本人として戦争責任はあると私は考えております。ですから、こういう問題について私たちはその事実を直視して、今後アメリカだけではなくてアジアの国々と一緒に日本はつき合っていく上でも大事だと思って今回取り上げさせていただきました。ですから、敏感がいいのか鈍感がいいのか、両方とも過度というのは、ほどほどがいいというお言葉がありますが、私は、どちらかというとやはり敏感に反応していただきまして、これからも考えていただければというふうに思います。  もう時間が、三十分しかございませんので、これで終わりますが、引き続きこの問題は、敏感過ぎると言われても、もうちょっと私なりに調べさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  224. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて辻元清美さんの質疑は終了いたしました。  次に、吉田公一君。
  225. 吉田公一

    吉田(公)分科員 大臣、御承知のとおり、沖縄が返還二十五年、我が国が戦後五十年たっているわけでございますが、その間沖縄の米軍基地が整理縮小されたことがあるのかないのかということについて、まずお尋ねをしたい、こう思います。
  226. 折田正樹

    ○折田政府委員 沖縄に所属します米軍施設・区域でございますが、沖縄が復帰した昭和四十七年五月十五日の時点におきまして八十三施設・区域、ほかに地位協定二条四項(b)に基づく共同使用の施設・区域が四カ所ございます。そして二万七千八百ヘクタールでございました。現時点におきましては三十七施設・区域、これに地位協定二条四(b)に基づぎます共同使用の施設・区域がニカ所ございまして、約二万三千五百ヘクタールとなってございます。したがって、復帰以後今日までに、施設・区域数にして四十六、面積にして約四千三百ヘクタール、約一六%の施設・区域が返還されたということになります。  そして、委員御承知のように、昨年十二月にSACOの報告が出ました。このSACOの報告の措置が実施されますれば、沖縄におきます米軍施設・区域のさらに約二一%、面積にして約五千ヘクタールが返還されることになるわけでございます。
  227. 吉田公一

    吉田(公)分科員 今北米局長からお話がありましたように、一つ一つではありますけれども、返還の実績は上がっているということでございます。ただ、沖縄県民や沖縄知事が申し上げているように、やはり嘉手納基地や普天間基地というのが沖縄県民にとっては最大の課題だと思っておりますし、ぜひこのことについても、まずさらなる御努力をしていただきたい、こう思っているところでございます。  これは、後ほどの質問とダブりますが、いわゆる極東の安全ということをよく言われますが、一九〇三年からアメリカ軍が使っておりましたフィリピンのクラーク米軍基地が九十年ぶりに返還をされる、こういうことになったわけでございます。あわせてスビック米軍基地も返還ということでございましたが、これについてはフィリピンの上院なんかは反対をしておりまして、それにアキノ大統領が大変苦慮したなんということが報道に載っておりました。  そこで、極東の安全ということからいいますと、米軍がフィリピンで使用しておりましたクラーク米軍基地が返還になったということを考えますと、当時の報道でありますけれども、つまり対ソ緊張緩和を背景にしている。それから、アメリカの財政的視点からの戦略、在外基地維持の見直しとか、米太平洋軍の海軍力の重視への移行、こういう理由もあって、何も反対の多いフィリピンの国内に、九十年間にわたって使ってきたクラーク米軍基地を置いておく必要はないではないか、こういうような判断をされて恐らく返還になったのだ、こう思うわけです。  そこで、沖縄の県民の皆様にとってみれば、まさに沖縄県民での反基地運動の広がりということからいえば、このフィリピンの反基地運動と同じだ。そういう認識に立てば、極東の安全を脅かすことになったわけでございまして、日本の沖縄の米軍基地があることによって、極東の安全だ、極東の安全だ、こう言っておられますけれども、一体、その極東の安全というのは具体的にはどういうことなのか。  もちろん、戦略上の問題もあるし、いろいろ機密事項等もありますから、全部知るわけにはまいりませんけれども、通常、私どもが、極東の安全を脅かすとか、極東の安全のためには必要なんだとかと簡単に言っていますけれども、それでは一体極東の安全とは何だ、こういうことになるわけでございまして、そのことについて、ぜひひとつ基本的なお考え方があれば、極東の安全について御答弁いただければ大変ありがたい、そう思っているわけです。
  228. 川島裕

    ○川島政府委員 まず、フィリピンのケースに言及されましたわけですけれども、あの当時、フィリピン国内でも相当基地に対して反対論が強くなったわけですけれども、一つ大きな変化があったのは、御承知のとおり八九年に冷戦が終わったと言われているわけで、それ以前の七〇年代、八〇年代、やはり米ソの軍事的対決が非常に大きな要素であったし、それはおのずから、東アジアアジア太平洋地域においても大きな要因であったわけでございます。そのころは、まさにベトナムにソ連の大きな基地があって、それが日本の航路にどういう影響を持つのかとかそういうことがあった時代でございますけれども、それが幸いにと申しますか、そういう米ソの世界レベルでの対決というものがなくなったというのは、やはりフィリピンの米軍基地の返還ということの一つの背景にはあったということは否めないのだろうと思うわけでございます。  ただ、そういうことで冷戦が終わって、あの当時、八〇年代の終わり、九〇年代にかけてよく言ったわけでございますけれども、依然として、しかしアジアにはいろいろな問題は残っておるのではないか。その意味で、本当に大変すばらしい安定が冷戦の終了に伴って回復されたのかといえば、どうもそういうことではないというのが当時の、冷戦が終わった時点でのアジアを眺めての政策判断でございましたし、そこは基本的には変わっていないということだろうと思います。  つまり、例えば東アジアにつきましては、朝鮮半島、例えば、緊張はございますし、それから、すぐ火を噴きそうな場所はどこかと言われれば、それはそういうことではないにしても、依然として不安定性というか不確実性というか、一つ歯車がかみ合わないと、と申しますか、うまくいかなくなるとそこはいろいろなことが起こり得る可能性を秘めた地域であるということは、残念ながらというか、認識せざるを得ないということだろうと思います。  そういう状況のもとで、それが本当に我が国安全保障を害するような事態に発展するのをどうやって効果的に阻止していくか、抑止していくかという観点から安全保障というものを考えてきているというのが、基本的な考え方でございます。
  229. 吉田公一

    吉田(公)分科員 日米安保条約は、御承知のとおり、我が国の講和条約とともに署名され、発効したわけであります。しかし、その日米安保条約に調印をした背景、それから今の日米安保条約の背景、戦前は御承知のとおり、ソ連を仮想敵国として我が陸軍も海軍も装備をしてきたわけであります。また、戦略上の研究もしてきたわけですね。しかし、今の安保条約上の極東の安全からいえば、じゃ、どこの国なのか。極東の安全が脅かされるということになれば、じゃ、ロシアなのか、韓国なのか、北朝鮮なのか、中国なのか、台湾なのか、フィリピンなのか、そういう話になってしまいますね。だから、一体どの国に対する極東の安全か、漠然としているわけですよね。  そうなると、朝鮮半島の治安情勢が余りよくない。そうすると、北朝鮮のための、極端なことを言えば極東の安全のために沖縄の米軍基地の存在というのは認めざるを得ないんだ、こういう話になる。その朝鮮半島の治安情勢等について、今度はじゃ、沖縄の米軍基地が果たす役割とは一体何だという話になる。  そこで、そのとおりなのかどうか、非常に難しい問題だと思うのですけれども、極東の安全だという以上は、何かその安全を脅かされることがなければ、極東の安全のために沖縄の米軍基地が必要なんだと、論理的にはそうならないわけで、別に安全が全部保障されていれば、アメリカの米軍基地を何も国内に置く必要はないわけですから、その点での御判断はいかがなのかということです。
  230. 川島裕

    ○川島政府委員 日米安保につきまして、従来からとってきた立場でありますし、基本的には今も変わらないわけですけれども、どこの国が危ないからだとか、どこの国が仮想敵国だからだということは申したことはございませんし、そういうことを、具体的な国を指さすことによって得られることは多分少ないし、むしろ情勢がぎりぎりしてくるというか悪化してくるだけだろうと思うわけでございます。極東の安全と申しますか、要するに我が国安全保障との関連で我が国の周りの地域がどうやって安定して平和であるかということに尽きるのだろうと思います。  そういう観点からいえば、つまるところは抑止力の考え方でございまして、日米安保体制が効果的に機能するような体制になっている限りは安全を脅かそうというような動きも出にくいだろう、脅かす国がどういう国であれ出てきた際は、俗に言えばひどい目に遭うからそういうことはやめよう、こういうのが抑止力の基本でございます。そういう意味で、平和が保たれているのは、私どもの基本的判断はまさにそういう抑止力が効いているからで、その抑止力を維持することによって日本の安全というものを図るというのがこれ.までやってきたことですし、基本的にはそこは変わらないということだろうと思うわけでございます。
  231. 吉田公一

    吉田(公)分科員 余りよくわからないのですけれども、いずれにしても、日米安保条約を堅持するということについては実は私も賛成なんですよ。ただ、今までどちらかというと、日米安保条約というのはややもすると憲法解釈や条文解釈が優先して議論をされてきた。国会でもそうですよね。実際に、じゃ、平素沖縄のことについて議論したことがあるかというと、余りない。何か事件や事故や、そうした米軍の例の劣化ウラン弾みたいなものがあれば、あるいは誤射等があれば論議されるけれども、それ以外については憲法解釈だとか条文解釈だとか、よくやっていましたよね。旧社会党さんなんか年じゅう国会でそんなことをやっていましたよ。  だけれども、それじゃ具体的に沖縄の問題についてどこまで突っ込んだ議論をして、つまり県民の立場に立って議論をしてきたかというと、私は、外で見ている限りでは余りない。つまり、本当に事件や事故があると改めて沖縄問題が浮上してくる。そういうようなことで、国内の中でも特に沖縄に米軍基地がたくさんあるものだから、沖縄県民の皆さん方は生活と基地という切っても切れない経済的な問題もあるでしょうし、そういうこともあって常に接している。しかし、私どもは、確かに東京都なんかも横田米軍基地があったりいたしますけれども、入間基地があったりしますけれども、しかしそれほど生活に東京都民といえども関係がない。私は都議会議員をやっておりましたが、横田の米軍基地の問題が都議会で俎上に上ったということは余りありませんで、せいぜい騒音問題がよく住民運動の中から出てまいりましたが、横田米軍基地の存在そのものは別にそれほど、都議会で議論されたことは余りない。したがって、沖縄の問題も何か事件がないと議論にならない、こういうことであります。  やはり常日ごろ、もう私は何回も申し上げているのだけれども、日本だって独立して、後ほど質問いたしますが、ODAだって何だって大変な国へ援助をしているじゃないですか。その独立国で、その国が、専守防衛ということは憲法解釈上いい、こう言いながら、自衛隊があるわけですね。したがって、私どもは普通に考えれば、我が国には自衛隊があるんだから専守防衛のためなら自衛隊が出動できる。もちろん防衛庁長官、内閣総理大臣の指揮のもとに行われるわけですけれども。そういう自衛隊があるにもかかわらず、いつまでたっても自衛隊の方は正式な軍隊としては認められないで、災害復旧工事だとか、あるいは災害だとか、PKOだとか、PKFだとか、何十人単位で、しかも機関銃一丁持っていかなきゃだめ、二丁じゃだめだ、一丁しかできないとか、そんな幼稚な論議をしているわけ。  我が国で専守防衛いたします、自衛隊があります。だって、自衛隊の戦車でも何でも、特科車両なんて言い方をしていますけれども、あれは戦車ですよ。大砲もあるし、野砲もあるし、潜水艦も持っているわけだから、我が国の防衛は、もう独立して五十年、立派な経済大国になったのだから、我が国我が国で守りますという、いわば民族的な発想だけれども、私はそう思っているのですよ。従来の革新的な発想じゃなくて、私は日本民族的な発想で、自分の国は自分で守ったらいいじゃないか、いつまで米軍に守ってもらわなければいけないんだというのが私の基本的な発想なんです。  だから、沖縄米軍基地が独立した日本にいつまであるんだ。しかも、だんだん兵器というのは機能も強化してこなきゃならないし、新しい兵器がどんどん生まれてくるわけだから、それをまた沖縄米軍基地へも持ち込まれる、どんどん新しい兵器と入れかわるわけでしょう。だから、そういう状況の中で、これからの沖縄の米軍基地というのはそういう小手先の話じゃなくて、もっと我が国の防衛は、自分たちで守るという気構えのもとで発想を転換した方がいいのではないか、外務大臣、こう思うのです。  私の個人的な今まで思ってきたことですけれども、大臣としてはお答えにくいかもしれませんが、いかがでございますか。
  232. 池田行彦

    池田国務大臣 委員のお考えも、一つのこれからの国の行き方としてこうあるべしというお話、それは現在の我が国政治的な立場だけじゃなくて、法律、法制の面ですね、憲法も場合によっては変えてもいいんだという全く白紙の立場で、今から将来を見て理想的にどういうふうな体制がいいかという中で、我が国の例えば安全保障政策をお考えになる場合に、みずからの国はみずからで守れという姿勢を進めるべきだということは一つのお考えだと思います。  しかし、それは同時に、これまでの我が国外交政策はもとよりでございますが、憲法そのものの改正にもつながるのだということになるのだと思います。  私ども政府といたしましては、当然のことでございますが、現在の憲法の枠内で物事は考えていくということでございますし、冷戦は終えんしてもう随分たちましたし、世界は変わってまいりましたけれども、しかし変わった世界情勢の中においてもやはり日米安保体制というものは有効性を持っているのだ、新しい世界において新しい意味を持っているのだ、こういうふうに考えてやっているというふうに御理解いただきたいと思います。それと同時に、日米安保体制というのは、それは安全保障面、防衛面の要素が非常に強うございますけれども、それと同時に非常に広い範囲で、しかも深いつながりのございます日米関係全般の基礎になっているのだという面も考慮しなくてはいかぬというふうに思います。
  233. 吉田公一

    吉田(公)分科員 次に、我が国は、開発援助については世界有数の開発援助を後進国に対して行っているわけでございますが、予算も一兆数千億という予算でODAの開発が各国に行われているわけでございます。しかし、援助はしたが、例えば機材でも建物でも構造物でも、それぞれいろいろな施設に対する援助をして、その後のきちっとした確認といいますか、そういうことが行われているのかどうかということを非常に疑問に思っているのですが、その点はいかがでしょうか。
  234. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 援助をした後の管理と申しますか、きちっとしておるのかという御質問でございますが、通常の場合、技術協力は人が行っておりますのでそれはさておきまして、資金協力に有償資金協力、いわゆる円借と、それから無償がございます。そういったものを一応建物を建てたりあるいは機材を渡した直後に、どういう状況でおさまっているかということを、これは全部の案件について一度きちんと見ます。それからその後二、三年置きまして、それがどういう使われ方をしているかというような評価を実施してまいります。そのときに、当初我々と先方とで話をしました、いろいろな面で順調に動いているケースが大部分でございますけれども、時々いろいろな状況で十分な利用がされていないというような状況がある場合もございます。そのときにはフォローアップの人を出したり、あるいは手当てをしたりすることを心がけております。
  235. 吉田公一

    吉田(公)分科員 それはどこが確認をやっているのですか。
  236. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 最初に申し上げました仕上がったときの調査は、これは円借の場合には海外経済協力基金、OECFでございますし、それから無償の場合にはJICAに実施させております。  その後の数年置きました評価につきましては、これはいろいろな評価の仕方をしております。外務省が主となりまして大体年間百二、三十件を実施しておりますけれども、そのうちの七割強ぐらいは現地大使館のスタッフに現場を確認させたり、あるいはJICAの事務所があるときにはそういうところでしたりいたしておりますが、それ以外のものにつきましては、外部の専門家に評価をお願いしたり、いろいろなケースがございます。場合によりましては、ほかのドナー国と一緒になって評価を実施する場合もございます。
  237. 吉田公一

    吉田(公)分科員 次に、よく総理大臣が国賓あるいは公賓で各国を訪問されるわけでありますが、そのときによく二十億円借款とか、二十億、三十億援助するとかいろいろ報道があります。その三十億とか二十億円とかというお金は、あらかじめ決められているものなのか、それとも予算項目上どこから出しているのか。総理の訪問というのは、一年前から決まっているものもあるでしょうし、また突然行かなければならぬこともあるのですが、よく私は、一体こんなに持っていっていいのかなと思うほど、日本の総理大臣が行けばお金もついでに持ってきてくれるだろう、こういう認識があるのか、どういうことでそういう仕組みになっているのでしょうか。
  238. 畠中篤

    ○畠中(篤)政府委員 総理が外国を御訪問された際、あるいは逆に海外からそういう首脳が見えた際、そういったときにODAの案件の発表があることがございます。それから、交換公文に署名をするとかそういったことがございますが、通常このODAの案件を実施してまいりますのには、一年から二年前からいろいろな話し合いをしたり準備をしたり調査をしたりして、案件の内容を詰めてきております。  ただ、せっかくの二国間の関係強化する総理訪問、あるいは先方からの首脳の訪日といったような機会に、双方の国民にこういうことをしているということを広く知ってもらうという意味で、そのときまでに準備してきましたものについて、交換公文に署名したり、あるいはこういう協力をしたいという、いわゆる意図表明と申しますけれども、そういったようなことでできるだけ、きちんとしてきております中で、その段階でどんなPRの仕方があるかということを考えながら、いろいろな発表をしております。  したがいまして、交換公文が署名される場合もありますし、署名されたとしましても、大体の場合には数字を、そこに言っております額そのものをそのときに少し調整をして、あわせて発表するというようなことを工夫しておるわけでございます。
  239. 吉田公一

    吉田(公)分科員 以上で質問を終わらせていただきます。
  240. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて吉田公一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時二十七分散会