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相沢分科員 いや、それはわかっているのですよ。それはわかっているのですが、私が申し上げた前提があるのでして、要するに、これはあくまでも日ソ共同宣言なのでして、平和条約が締結されているわけではない。共同宣言どおりの平和条約になるかどうかということはこれからの問題だから、その点については、これはぜひひとつその際にはお
考えおき願いたい、こういうことで申し上げているのです。答弁は要りませんが、ひとつ重ねてそのことを申し上げておきます。
それからもう一つは、この六万人に及ぶ死者の問題でございます。
約千カ所余りの収容所でそれぞれ亡くなった方が、多いところはもう何百人にも及ぶわけでありますが、その墓ができているところもあるしできていないところもある。私はエラブカというところにおったわけでありますが、これは墓地ができておりまして、おととし私もお参りをしてまいりました。しかし、当時は、一人が亡くなったらその墓地をつくるというような状態ではなくて、恐らくはかの収容所もそうであったと思いますが、冬は凍って穴が掘れませんから、夏の間に掘っていた穴にそれを裸にしてほうり込んでしまう、こういうようなところが多かったわけであります。
その後、戦後しばらく墓参も許されませんでしたが、許されるようになってから、墓地があちこちにできている。その当時つくったのではない、後でつくったものも私は多いのではないかと思いますが、いずれにしましてもそういう状態であり、かつまた墓参が許される
範囲も限られているわけであります。
そこで、
平成三年度以来遺骨収集が行われておりまして、
平成八年度までに五千三百六十三柱の遺骨が収集されているわけでありますが、これは全体の一割にも満たない数であります。既に六年を経過しているわけでありますから、このような状態でいけば、数十年たっても、なかなか全部の遺骨を収集するというわけにはまいらない。
しかも、墓地が既にわからなくなっているところが多いわけでありまして、わずかに、その収容所にかつておった人たちが現地に行って、その記憶をたどって発見することも多いわけであります。そこで、その墓地が掘り返されて、そしてロシア人の墓地になっているところもあるようでありますし、また戦後五十年たっておりますから、既にその上に木も生えて、現在わからなくなっている、あるいは土まんじゅうのようなものが消失をしているというような状態でありまして、遺骨を収集するといっても、なかなか実際問題としてできないところが多いわけであります。
しかも、既に墓地ができておるところについて、では、その墓地におさめられておりますところの遺骨を掘り出して、持って帰るかという問題もあるわけであります。私は、遺骨収集を極力やって、最後の一体まで持って帰るというのが厚生省としてのお
考えのようにも聞いておりますが、実際問題として、それは不可能なことですね。そこで、収集して持って帰れるものについては、そのような
努力を今後もさらに飛躍的に拡大していただきたい。
と申しますのは、抑留されていた一番若い人も既に七十になんなんとしているわけでありますから、もう十年も十五年もすれば、とても現地に行ってその墓地を訪ねることもできなくなるだろうと思うのです。そこで、これは
関係の省にひとつ御検討願いたいのでありますけれ
ども、遺骨収集はひとつ規模を拡大して、できるだけ短期間にやっていただきたいということが一つ。
しかし、それでも、恐らくとても全部の遺骨を持ってまいるわけにまいらぬと思います。そしてまた、既に墓地として整備されているところもあります。そういうところは遺骨を掘り出して持ってくるというのもいかがかと思いますから、そういうようなところ、あるいはまた遺骨が収集できないようなところには、慰霊碑などを建てて、そこに慰霊巡拝をするというようなことを
考えていかなければならないと思っておるのであります。
そしてもう一つは、墓地の維持管理であります。
墓地の維持管理については、捕虜収容所に収容されていた者に関する
日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定というものが、既に一九九一年四月十八日に東京で結ばれているわけでございますが、この第一条の第四項に「
日本人死亡者の埋葬地が適切な状態に保たれるよう努めること。」と書いてありまして、その墓地の維持管理はロシア側が担当することになっているわけであります。
御案内のように、ロシア人の戦死者あるいは病死者で、
日本国内、金沢、松山、滋賀、
長崎等に墓地がございますが、その維持管理は、それぞれ
日本側が、
地元の市町村あるいはボランティア等によって行っているわけであります。したがいまして、ロシア領内における
日本人死亡者の埋葬地も、当然これはロシア側が維持管理をするというふうに我々は了解をしておるのであります。
ところが、私がおりましたエラブカの埋葬地について申し上げますと、これは既に参議院の板垣議員ほかの
方々が何回も墓参員で参っておりますし、私も一昨年参ったのですが、そのエラブカ市と我々のその団体との間で、エラブカ市が責任を持って墓地を維持管理するという取り決めができておったのでありますけれ
ども、市長さんがかわったりなんかすると、そんな約束はないというようなことを言い出す。
そしてまたドイツが、同じように亡くなった人が大勢ありまして、
日本人墓地の隣にドイツ人の将兵の墓地があります。その墓地の維持管理について、ドイツが、ドイツのV・D・Kという団体でありますが、そのV・D・Kが、エラブカのラフィア社という維持管理をしているところがありますが、それとの間に協定を結んで、そして維持管理費をV・D・Kが出しているわけであります。
そこで、エラブカ市としましては、ドイツの方がそういうことをやってくれているのだから、
日本側も維持費を出してくれたらいいじゃないかということで、なかなか話が進まない。我々は、エラブカ市との約束があるから、それはそちらの方で維持管理をしてもらうことになっているということで押し問答になっていますが、らちが明きませんので、抑留者に呼びかけて、何がしかの金を集めてラフィア社に送って、墓地の清掃等をしてもらうということにしているわけであります。これは一つの例で申し上げたのですけれ
ども、私は、ほかも同じような
状況があると思います。
したがいまして、先ほど申し上げましたように、すべての遺骨をこちら側に持って帰ってくるというようなことが事実上不可能であり、また、埋葬地に慰霊碑を建てて、そこで一応遺骨収集ということにはしないでするということも方法でありますから、いずれにしましても、墓地を維持管理するところの経費について、何らかの形でこれは
日本側が
考える必要があるのではないかというふうにも思っているわけなのであります。
そこで、私の
質問は、また
要望は、このソ連抑留者の中で亡くなった方に対して、今後政府としてどういう方針で当たるかということについて、ひとつ一度基本的に、
関係省庁で集まって、対策を
考えてもらいたいということでございます。この点についての政府側の御意見を承りたいと思います。