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1997-02-21 第140回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十一日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 高橋 一郎君 理事 中川 秀直君    理事 藤井 孝男君 理事 石井  一君    理事 権藤 恒夫君 理事 二階 俊博君    理事 中沢 健次君 理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    石川 要三君       臼井日出男君    江藤 隆美君       尾身 幸次君    越智 伊平君       菊池福治郎君    桜井  新君       新藤 義孝君    関谷 勝嗣君       高鳥  修君    中山 正暉君       葉梨 信行君    松永  光君       村上誠一郎君    谷津 義男君       渡辺 博道君    愛知 和男君       愛野興一郎君    石田 勝之君       太田 昭宏君    小池百合子君       斉藤 鉄夫君    田中 慶秋君       富田 茂之君    中井  洽君       西川 知雄君    平田 米男君       生方 幸夫君    海江田万里君       日野 市朗君    辻  第一君       松本 善明君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君       岩國 哲人君    新井 将敬君  出席公述人         外交評論家   岡崎 久彦君         京都大学経済学         部教授     吉田 和男君         税制経営研究所         長       谷山 治雄君         新日本製鐵株式         会社代表取締役         社長      今井  敬君         経済評論家   財部 誠一君         大阪大学大学院         国際公共政策研         究科教授    蝋山 昌一君  出席政府委員         内閣官房長官 与謝野 馨君         北海道開発政務         次官      太田 豊秋君         防衛政務次官  浅野 勝人君         経済企画政務次         官       河本 三郎君         環境政務次官  鈴木 恒夫君         国土政務次官  井奥 貞雄君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         官       細川 興一君         文部政務次官  佐田玄一郎君         厚生政務次官  鈴木 俊一君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         運輸政務次官  衛藤 晟一君         郵政政務次官  野田 聖子君         労働政務次官  小林 興起君         建設政務次官  佐藤 静雄君         自治政務次官  久野統一郎君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   大原 一三君     渡辺 博道君   北側 一雄君     斉藤 鉄夫君   松本 善明君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 博道君     新藤 義孝君   斉藤 鉄夫君     富田 茂之君   辻  第一君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   新藤 義孝君     大原 一三君   富田 茂之君     北側 一雄君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日はお忙しい中にもかかわりませず公聴会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。平成九年度総予算に対する御意見を拝聴いたし、予算審議の参考にさせていただきたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げる次第でございます。  御意見を承る順序といたしましては、まず岡崎公述人、次に吉田公述人、続いて谷山公述人順序で、お一人二十分程度ずつお願いを申し上げたいと存じます。その後、委員から質疑をいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、岡崎公述人にお願いいたします。
  3. 岡崎久彦

    岡崎公述人 私、外交安保問題専門でございまして、これだけの先生の前でお話しできることを大変光栄に思いますし、それから時間が二十分と限られておりますので、もう余計なことは申し上げませんで、専ら外交、安保問題で、これが現在一番大事だと思っていることだけ申し上げたいと思います。  冷戦が終わりまして、日米安保条約について、これはアメリカ側でも日本側でもいろいろ意見がございました。ただ、その議論はだんだん固まってまいりまして、一昨年の二月に出ましたジョゼフ・ナイ・リポート、これで大体アメリカ側の態度が固まりました。それが昨年の橋本クリントン会談、これで日米両国間の合意として固まってきまして、それで現在、日米同盟の将来については大体一つ路線がしかれているようでございます。大体安定してまいりました。  ところが、これはまだ新聞とか評論の場ではそれほど議論されておりませんけれども、日米同盟路線が固まりましてから、アメリカ側専門家の中では、日米同盟を今後どうしたらいいかということにつきまして非常に議論が深まっております。まず、その議論の深まり方を御紹介申し上げたいと思います。  実は、私も関係している会議なのでございますけれども、昨年五月、橋本クリントン会談が終わってすぐ、日米間の専門家が集まって会議がございました。そのときに出てまいりましたアメリカ側が幾つかペーパーを出したのでございますけれども、ペーパーの主な趣旨は、とにかくもう日本は早く集団的自衛権行使を認めてほしい。  例えばこれを引用いたしますと、カール・フォードという人がおりまして、これはブッシュの時代に国防省の国防次官補代理をやった人でございます。この人は、もし朝鮮半島で動乱が起こったときに日本がお金の支援だけで軍事力支援をしない、そういうことがありますと、それは日米関係に恐らくは広範囲にわたって修復不可能な打撃を与えるだろう。これは物の言い方をかえますれば、アメリカがもう日本を信頼しなくなる、広範囲にわたってということは安全保障だけではなしに経済問題も含めてということなんですね。日米関係がだめになってしまうだろう、そういうことを言っております。  同じ会議でリチャード・ダグラスという、これは日本部長になる直前にクリントン政権ができたものですから、政権を離れた人でありますけれども、これは集団的自衛権行使を認めないと日米間の政治同盟も崩れてしまうだろうということを書いております。  注目すべきは、こういう人たちはもともと政権にいた人でありまして、政権にいたときは、人に聞かれますと、日本憲法の範囲内でやればいいのだとか、いやもう今の解釈でやって結構だ、そういうことを言うのです。言わざるを得ない。一言でもそれはいけないと言ったら、アメリカ日本国内事項に干渉していると言って日本新聞あるいは国会からさんざんだたかれますから、こんなことは口が腐っても言えないわけです。それが一たん政府のポストを外れますと、これだけのことを言う。これは要するに、内心何を考えているかということが非常によくわかるぺーパーでございます。  それがことしの一月に、その会議の打ち上げの会議をいたしました。ところが、ことしの一月はさらに議論が深まっております。ここまでの段階では、ごく一般的に集団的自衛権行使を認めてほしい、そういうことを言っているのでございますけれども、ことしはもうシナリオを書いてまいりまして、こういうシナリオならばアメリカが満足するのであるということを言っております。  その一つシナリオが、これは皆様お聞き及びの方もあるかもしれませんけれども、元日本部長をやっておりましたジェームズアワーという人物でございます。この人が、これはむしろ一種理想の形を描いておりますけれども、もし日米関係が仮に一番いい形になるとすればどういうことだろうと。それは、日本総理マーガレットサッチャーのごとき人である、それからアメリカ大統領マーガレットサッチャーのごとき人である、その二人が協力してアジア太平洋の平和を守る、そういうことになったら一体どういうことになるだろうかということを書いたわけでございます。  それでそのシナリオによりますと、まず韓国問題。これは、日米首脳が連れ立って韓国を訪問して、南北対話平和的解決を支持する、それから米韓条約に対する両国の支持を表明する、そこで北朝鮮が南に攻めてくるというシナリオになっております。これは空母インディペンデンスインド洋に行っているすきに攻めてくる、そういう形になっております。それで日本総理は、直ちに在日米軍基地米軍による自由な使用を表明する。それから日本付近の海域、これを海上自衛隊航空自衛隊でもって哨戒活動をする。それから、インディペンデンスインド洋から帰ってくるものでございますから、アメリカ大統領は、台湾海峡を通るころから海上自衛隊とそれから沖縄からのF15が護衛してほしいということを日本総理に要請する。日本総理はそれを受諾する。その後も台湾水域の安全のための日米共同パトロールをする。中国は抗議をするけれども、別にそれ以上何もしない。朝鮮半島の方が若干の戦争がある話になっておりますけれども、日本は別に朝鮮半島にも出兵しないし、海上で若干の攻撃があるという程度の話になっております。  それから、台湾海峡も昨年の事件のような、台湾海峡事件のようなことがありまして、それに対して日米首脳が、台湾問題に介入する意図はない、一つ中国と言うならそれはそれでいい、ただ台湾海峡の平和が乱されることは座視し得ない。日本外務大臣中国の大使を呼んで、もし中国太平洋の平和と安定を乱すならば、日本としては在日米軍日本基地使用を許可する、日本自衛隊は同地域の平和を維持するための米国の海上パトロールに協力する、日本としてはもうそれ以外の選択肢はないのだということを通告する。中国日本を非難するけれども、これ以上出られない。  それから、三つ目シナリオ尖閣列島でございます。尖閣列島では、中国が小規模の艦隊を派遣して中国の国旗を立てる。日米首脳は、直ちに日本施政下にある地域に対する侵略には抵抗するという共同声明を発表する。日本海上自衛隊の護衛のもとに陸上自衛隊尖閣に上陸させる。それでアメリカ大統領は、アメリカインディペンデンス空母機動部隊がそれを護送することを命令する。若干の衝突があるけれども、これで解決する。  それから、香港に大暴動があれば、在住の日米両国民の救出作業日米が協力する。これが、ジェームズアワーシナリオでございます。  聞いていれば、ここまで一緒にやれば、日米同盟相互信頼関係というのは盤石のごときものなんですね。ここまでいくのが理想であるというのがジェームズアワーシナリオです。  それから、トーケル・パターソン、この人も元日本部長をやっておりましたけれども、この人は、ペルシャ湾でいろいろごたごたがある、そのときに、日本から海上自衛隊イージス艦AWACSを派遣してアメリカ艦隊一緒行動する、湾岸地域の平和を維持するんだという行動になっております。  パターソンの論文は、これは韓国中国に向けても使えるように全般的な論文になっておりまして、それで、この程度のことならば、これはもうまずアメリカの議会と世論は日本を信頼すべき同盟国と認めるだろう。それから他方、日本は別に本格的空母を持つわけでもなしに、強襲揚陸艦、トマホーク、ICBMは持つわけでもない。近隣に何の脅威も与えるものではない。だから、そのあたりが一番いいのであろうということを言っております。  この二つのペーパーの言っていることは、理想型をとっても日本は余り大したことをしなくていいんだ、別に朝鮮半島に出兵するわけでもありませんし、どこの国を攻撃するわけでもないので、基本は大体、アメリカの第七艦隊一緒パトロールをする、それから日本戦闘機が空中で援護する、その程度のことをして、それでも日米関係はしっかりするんだということでございます。  ということは、日米同盟信頼関係を維持するためには、これ以上軍備を増強する必要はないんです。今ある軍備でも大変これは役に立つ軍備なんです。近代戦闘機三百機、そのうち百九十機がF15でございますし、それからイージス艦を四隻、やがてAWACSも四機入ってくる。これだけの武器を、今最新のを持っているのは、恐らくアメリカに次いでは日本だけだろう。  それで、この人たち心配しているのは、これは確かに使える、まとまった戦力である、ところがこれは今ゼロなんですね。つまり、アメリカとの共同行動に使わないということになっている。だから、アメリカから見れば何の役にも立たない。それを役に立たせるかどうかということが、結局、集団的自衛権行使の問題につながるわけでございます。  実は、アジア太平洋軍事バランスというのはどんどん変わりまして、ここ二、三年は台湾の方がだんだん強くなります。今入れているF16が強くなりますから、恐らく四、五年は台湾が優位なんでございましょう。そのころから今度はだんだん中国の方が強くなります。アメリカ専門家は二〇〇五年と言っておりますけれども、私は、二〇〇二、三年ごろにそろそろ追いついてくるのではないかというふうに思っております。どういう追いつき方かと申しますと、機動部隊を二つ出してもとてもそれでは抑え切れない、そういうふうになってくる。  ただ、アメリカはまだまだ国内余力がございますから、それから在日米軍もございますし、いろいろ余力はあるんでございますけれども、その余力を使うときは政治的判断が要るんですね。外交的判断も要る。中国に対する政策もある。そこで迷ったときに、これは会議で出てきた議論でございますけれども、必ず出てくる議論は、日本は一体どこにいるんだ、日本という国は何の役にも立たないのか、あるいはゼロなのか、そういう話になってくる。そのころに、そろそろ決断しなければいけない。それが二〇〇三年ですから、今から五、六年のうちには何とか決断しないと日米同盟が崩れてしまう、そういう可能性があるわけでございます。  それで、日本防衛力の役割の増大を申しますと、中国韓国心配と申しますけれども、中国韓国心配というのは、軍事力増強とそれから軍国主義復活なんです。  それで、軍事力増強は、もう必要は全くございません。今既に大変なものを持っております。ただ使えないことにしているだけの話です。それが使えるようになればいい話なんです。  それから、軍国主義でございますけれども、これは要するに、日本日米同盟が崩れると困るので出るだけの話であります。もともと日本は、台湾韓国を救うために出兵する気なんかはもう全然ございません、これだけの平和国家でありますから。ただ、それをアメリカにつき合わないと日米同盟が崩れてしまう、そうすると日本人の国民生活も崩れる、そこまでの心配があるのでやむを得ず出る。これは別に日本だけのことでなしに、イギリスも、冷戦時代にソ連が攻めてきてドイツ人が何万人死のうと、それはイギリス人は知ったことではないのです。ただ、それに出兵しないとNATOの義務違反になって、国の基本である米英同盟が崩れるのです。これはイギリスが滅びるということなので、これはもう全面核戦争を冒しても出兵する。  結局、国の政策が、孫子ではございませんけれども交わりでありまして、同盟を失うと国の生存に関してくる、同盟を救うために協力する、そういうことでございますから、これは軍国主義復活と何の関係もない話でございます。  そこで、最後の時間を使いまして、それで、集団的自衛権を変えるにはどうするかということでございます。  今ガイドライン研究をやっております。ガイドライン研究をやっておりまして、それ自体は非常に価値のある研究はしているのでございます。この研究が進みますと、余りにくだらない議論は排除されます。例えば、朝鮮半島アメリカ軍の将兵が傷を負う、それを日本の病院で治す、これはアメリカとの共同行動である、これが今までの解釈でございます。こういう解釈は恐らく整理されるであろうと思います。  ただ、今回の会議に宝珠山元施設庁長官が出てまいりました。彼の発言は、ガイドライン研究が従来の法解釈の枠内で行われるならば、恐らくは一九七八年のガイドラインに基づく研究と同様に失敗となるおそれがある、また、従来のような議論は、国の安全保障の原点に立った正常な思考を退化させ、日本の独立、国際社会の対日評価を弱める方向に作用してきたということをはっきり言っております。私も同感でございます。  実は私、新進党の御指名にあずかりましてこういうところで意見を述べさせていただくのでございますけれども、新進党小沢党首の今回の発言、拝見しますと、集団的自衛権行使はこれを認めませんということをはっきり書いてあるのですね。実は新進党は、中の有志の議員が、集団的自衛権行使を認めろという論文をお書きになって、私は新聞で、これはもう大変結構なことだということを書かせていただいたことがございます。  こうなりましたのは、これは政党でございますから、政党内の事情というものはいろいろおありだろうと思うのでございます。ただ、私はこういうことはなるべく言わない方がいいと思うのです。と申しますのは、集団的自衛権行使しなくても済む場合もございます。恐らく八、九割まで使わなくてもいいのです。ところが一割ぐらい、これを使わないと日本国民の安全も繁栄もどこかへ吹っ飛んでしまう、そういう心配が出てくるのです。  こうおっしゃった経緯からいって、そうなってくれば、これは恐らくお変えになるだろうと私は信用しております。やはり皆さんはそれは日本の国が一番大事ですから、お変えになるのは当然なんで、恐らくお変えになるだろうと信用しておりますけれども、こういうことは、余り繰り返して申しますとだんだん手を縛ってまいりますので、新進党の御指名にあずかって、まさに私ごときに発言しろとおっしゃることは、その意味では新進党の御良識を私は信用していいのだろうと思います。  その点だけ申し上げまして、最後一つ、まだ一、二分ございますので申し上げますと、集団的自衛権行使の問題をどう解決するかということでございますけれども、これは憲法改正は全く必要ございません。それから解釈改正というのも、これは私、解釈と言うと今までまともな解釈があったかのごとき印象を与えるものですから、これもちょっと私、そういう言葉も使いたくないのでございます。  というのは、集団的自衛権なるものはあるのです。これはもう総理大臣に聞かれても防衛庁長官に聞かれても、日本集団的自衛権はありますかと言えば、それはございますと。これはもう憲法に許可されている。憲法で許可されていて、これを行使することが憲法で禁止されている、こういうことは法律ではあり得ないことなんですね。これは私、憲法それから刑法の大先生に伺いましたけれども、そういうことはあり得ない。憲法は許可している、だけれども政策として使わない、それはもう十分あり得る。憲法の精神に従って政策として使わない。その場合は、最終的なときには使うかもしれない。正当防衛権と同じでございまして、正当防衛権は我々はもう九割まで使いません。泥棒が来たらお金出すのです、怖いですから。ただ、こっちが殺されるとか、自分の子供を殺されるとか、この場合はしようがないのですね。最後の場合はやはり残っているのが本来なんです。  本来は集団的自衛権はある、だけれども政府政策から今は使いませんと言うのが正しかった。それが過去の国会答弁で、どこかで、権利はあるけれども行使は禁止されているという妙なことになって、これは一種論理矛盾というか、私は言語に対する侮辱だと思いますね。そういうことを言ったのでは、法治社会なるものは存在し得ないわけですから。ですから、過去の解釈があったと言う必要も、変えると言う必要もないと私は思います。集団的自衛権があるという答弁、これはどなたでもなさいます。それをして、後は余り恥ずかしいことは言わないということで解決するだろうと私は思っております。(拍手)
  4. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、吉田公述人にお願いいたします。
  5. 吉田和男

    吉田公述人 吉田でございます。  平成九年度予算案につきまして意見を申させていただきます。  まず第一に、平成九年度予算案につきまして評価できるポイントをお話し申し上げたいと思うわけです。  まず、四兆円の国債減額ということはやはり非常に重要なことでありまして、平成八年度予算におきまして二十一兆円という過去最大の国債発行が行われたわけでありますが、それを減額したということは評価させていただきたいと思うわけです。  それから、財政制度審議会でも議論させていただきましたプライマリーバランスというのを実現していただいた点が評価できるところであるわけです。  プライマリーバランスというのは、国債費を除いたところでバランスする、すなわち、現在の行政の費用を確保するために今の税金でファイナンスする。会社で例えますと、まずはその業務損をなくすというのが再建の出発でありますから、そういう意味で、まずそのプライマリーバランスを達成したということは重要なことかと思うわけです。  そして、それを実現するために医療改革などのことが行われたということも重要でありまして、特に医療費の問題というのは非常に難しい問題ですので、世界の各国どこの国もそうですが、医療費の制御に成功した国はほとんどないと言ってもいいかと思うわけです。どこの国も大変悩ましい問題を抱えておるわけですが、今回の改革をさらに進めて、高齢化を迎えて医療費財政に対して重みがかからないようにいろいろ工夫が必要かと思うわけです。  それから、最後に評価できるポイントとしまして、税構造改革というものができたということ。まあ平成六年度税制ですからその法律を実行したということにすぎないわけですが、国民の間では、五%への消費税引き上げといいますか、引き上げは既に平成六年度にやっているわけですが、それが実行されることになるわけです。これは、所得税を減税して消費税を増税する、いわゆる直間比率の是正になるわけでありますが、我が国の税構造、これはやはり非常にゆがんだものであったわけで、消費税の導入によってそれを是正していこうという考え方が進んでいるわけでありますが、これもまたさらに進めていただきたいポイントかと思うわけです。  次に、この平成九年度予算というのは、財政構造改革元年ということでスタートされたというふうにお聞きしているわけでございますが、今後の課題としてやはりもっと考えていただきたいということを申し上げたいと思うわけです。  平成九年度予算では、一般歳出伸び率が一・五%ということで、消費税相当分程度の上昇ということになるわけですが、さきに財政制度審議会が、二〇〇五年に国、地方の債務の増加をGDPの三%以内に抑える、それもできるだけ早期にやる、中間目標でございますが、こういう目標を御提示したわけです。それを実現していくというのはやはり並大抵のことじゃないわけでして、一般歳出伸び率を実質ゼロに抑えたから相当やったということでは済まないと思うわけです。  今後の経済成長率がどうなるかによって、歳出の伸び率をどういうふうに制御していかなければいけないかという問題は、不確定要因を含みますから一概に言えない点でありますが、現在の経済成長率の低い水準、まあ成長率が高くて過去のように自然増収で税収がどんどん入ってくるのならそうむきになる必要はないという発想はあるわけですが、今後経済成長率が高くなる要因というのはとりあえず余り考えられないというふうに考えた方がいいわけですね。  と申しますのは、今後、経済成長要因となるのが、経済学では経済成長要因というのは三つあるわけでして、労働人口、それから資本ストック、これは貯蓄ということになるわけですが、それと技術進歩という三つが挙げられるわけであります。そのほかに例えばエネルギー価格とかそういった問題もありますが、重要なポイントはその三つというふうに考えますと、人口は、今後生産年齢人口は減少していく、それから高齢化に従って貯蓄率は下がっていく、そうしますと資本ストックの伸び率を維持するのは非常に難しくなるといった問題が生じてくるわけでありまして、経済成長率が非常に高い水準で推移するのを期待するのはやはり難しいわけです。  日本人は今まで高い成長になれてきたものですから、経済成長率ゼロが三年続き、その後ももう一つぱっとしないというのを異常のように感じるわけでありますが、しかし、世界的に見て経済成長率が低いのは当たり前のことでありまして、今後ともその低い経済成長率に合わせて財政を考えていくということをしなければならないということになるかと思うわけです。  そのためには、この一般歳出を減額していくというところまで考える必要があるかと思うわけです。そのためにはいろいろな制度改革が必要になってくるわけでして、国の予算というのもどうしてもやらなければいけないというものがたくさんあるわけですが、しかしその中でも、今の考え方を基準にして、それでどうしてもやらなければいけないということになりますと何もできなくなってしまうわけですね。やはり発想の転換を含めた制度改革というものが求められていくかと思うわけです。  また、公共事業費の問題ですが、本来は、社会資本整備が進めば、ストックの水準が上がればフローの追加額が小さくなるというのは、これは極めて当たり前のことであるわけです。したがって、この公共事業費も将来的に圧縮していくということを考えなければいけないわけです。ただ問題は、雇用問題というのが常に議論されるわけでして、この雇用問題といかに切り離すことができるかということを考える必要があるかと思うわけです。  公共事業費の場合は、建設国債という財源調達の方法が財政法にも規定されておるものですから、比較的手軽と言ったらちょっと失礼ですが、そういった感じが今までもあるわけです。しかし、建設国債はいい国債、特例債は悪い国債という区別は余り意味のあることではないわけでして、建設国債であろうと特例債であろうと利子を払わなければならないのは同じでありますし、そして、政府が資金調達すれば民間の資金調達といずれ競合するということは、これは建設国債であろうと同じことになるわけです。したがって、この公共事業費もかなり意図的に減額していくという姿勢が今後必要になってくるわけです。  としますと、雇用問題というものがあるわけでして、雇用問題の現実をどう考えるかと常に言われるわけです。しかし同時に、財政がそれを負っていくことはできないという現実もあるかと思うわけです。雇用問題を財政以外の方法で解決するということが求められるわけでありまして、そのためには、やはり私は地方分権、その地方分権の中で地方に活力をつくっていくという方法を模索する必要があるかと思うわけです。そういう意味で、地方財政改革というのを今後非常に重要な課題と私は認識しておりまして、ぜひ御議論をお願いしたいと思うわけです。  また、平成九年度予算におきまして、まだ積み残しになっている案件というのも結構たくさんあるわけですが、代表的なのが国鉄清算事業団の債務の扱い。平成九年度予算では債務が増加しないような措置をとるということをお聞きしているわけですが、やはり根本解決、これはもう早期にしないと債務の拡大というものを避けられないということになるかと思うわけです。要するに清算事業団は収入を得る方法を持っていないわけですから、これは当然な話なわけですね。  それから新幹線ですが、私は地元の悲願というのはわからないわけでもないのですが、しかし、平成九年度予算の評判を悪くしている原因であることはぜひ考えていただきたいと思うわけです。収支、採算等のチェックということで歯どめをかけるということでございますが、十分なチェックのシステムが必要かと思うわけです。  今後の問題点と平成九年度中のこの扱い、財政の運営のあり方というものは、また別の問題があるわけです。すなわち、平成九年度と平成八年度は、ある意味で全く違う状況になってきつつあるということをまず認識しなければならないと思うわけです。  といいますのは、景気自身の回復基調というのは八年度から九年度に続いて、私はそれほど悲観することはないというふうに考えているわけです。それは、平成四年度のバブル崩壊後のゼロ成長がずっと続いた、あの条件のいろいろな問題、過剰投資それから過剰雇用、こういった問題は随分解決されてきているわけでありまして、景気の足を引っ張る要因というのは随分改善されたように思うわけです。  しかし、この景気の問題以上に大きな問題があるわけでして、それは、昨年まで、昨年もその傾向はもう出ていたわけですが、基本的に円高という流れが過去あったわけです。円高というのは日本経済にとっての天敵のようにずっと言われてきたわけですが、しかし、円高が支えていた面があるということを申し上げたいわけです。  それは、円高基調であるということは、外国との金利の裁定において、すなわち、投資家が外国に投資するか国内に投資するかといったときに、円高がある、あるいは円高が予想されるということは、国内の金利の方が低くていいということなわけですね。したがって、現実に、このしばらくの間というのは非常に低い、いわゆる超低金利時代ということが言われてきたわけです。超低金利だから、お年寄りの収入が減る、資産で収入を得ている人の所得が減るという問題はもちろんあるわけですが、しかし同時に、この超低金利が今の経済回復の基礎になっているということ、また、金融システム、すなわち不良債権を大量に持っているこの金融システムを維持してきたのも超低金利であるわけです。  したがいまして、この円安、年初来円安ということですが、円安になれば輸出産業が景気がよくなっていいじゃないかという議論では済まないわけでありまして、国内の金利の上昇ということを覚悟しなければならない事態になりかねないということであるわけです。そのときに、財政が資金調達をするということは、今度は金利の引き上げ要因になるということになるわけですから、今までだましだまし何とかうまくやってきているシステム、これを続けるのが非常に難しくなる状況になったときに、財政がそれを後押ししてしまうということになれば、非常に危険なことではないかと思うわけです。したがって、国債発行の運営に関しては、非常に弾力的に考えるということが必要な状況かと思います。  最後に、長期の問題についてお話をさせていただきたいと思います。  現在、国債残高、そして地方債の残高、全部合わせて五百兆円という水準であるわけですが、人口一億二千万で割りますと一人当たり四百万、四人家族で一千六百万、それだけの債務があるということが今後やはり日本経済にとっても非常に重荷であるということが言えるかと思うわけです。そして、家計の金融資産残高というのは一千二百兆円と言われているわけですが、その中で四百兆ぐらい債務がありますから、純資産の中は八百兆、八百兆はみんなあると思っているわけですが、実は五百兆は既にないわけなんですね。いわばタコの八本足のうちもう五本食ってしまったという状況であることをやはり強く認識する必要があるかと思います。  それで、このまま進むことはないとは思いますが、仮にこのまま進めば、私の計算では、二〇一五、六年には日本経済が破綻する。これは結局、国債あるいは地方債、政府の債務が資産を食っていくということになるわけですから、この形がもし続きますと、もう二〇二五年には日本経済がほとんどなくなってしまうということになるわけですね。もちろんそういうことにはなりません。なぜならないかといいますと、その前に破綻するからですね。ですから、その前に日本経済は非常な大ショックを受けることになるわけです。  例えば、ニュージーランドで行政改革が行われて、最近そのニュージーランドの改革を参考にしようとニュージーランドもうでをするのが非常にはやっているわけですが、まさにニュージーランドというのは破綻して改革が行われたわけですね。この間もニュージーランドの大蔵大臣の話を聞きましたけれども、ともかく外貨取引ができなくなった。ニュージーランドの為替が底なしに落ちてしまうと、取引ができなくなるわけですね。経済が機能停止になる。日本はニュージーランドと違いまして非常に大きな経済の国でございますから、もしそこでそういう事態になれば、日本だけにとどまらない、世界に大きなショックを与えることになるわけです。  したがって、重要なことは、私もよく聞かれるのですけれども、改革はできるんでしょうか、できますよ、日本経済が破綻したら必ずできますよ、日本経済がつぶれていいという人はだれもいませんからと言うわけですね。しかし、それではだめなので、破綻する前に改革をしてもらいたいわけですね。破綻する前に改革しなければ何の意味もないわけで、ニュージーランドのように、一遍倒れた、倒れたからどうしても仕方がないので改革するというのでは、余りにも被害が大きいということになるかと思うわけです。  それで、当面は歳出削減ということを一生懸命やっていただきたい。そのためにはいろいろな制度を改革していく必要があるわけでして、橋本総理も当面は増税なき再建でやっていきたいというふうに言っておられるのは、これは正しいことだと思うわけです。ただ、私が申し上げておきたいのは、今後高齢化時代に入ったときに、負担増なしでやることは、これもまた不可能であるということも御認識していただきたいということであるわけです。  いずれにしましても、財政というのは、日本経済を助けるために存在しているわけで、国民の生活や福祉を向上させるために存在するわけですから、それが日本経済をつぶすような話になっては本末転倒もいいところなわけでありまして、まず、破綻する前に大改革をしていただきたいというふうに思うわけです。  以上、お願いかたがた、私の意見を述べさせていただきました。(拍手)
  6. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、谷山公述人にお願いいたします。
  7. 谷山治雄

    谷山公述人 谷山治雄でございます。  私は、肩書から申しますと税金の専門家のようでございますけれども、実は、過去に大学で財政学も二十年以上講義してまいりましたので、少し幅の広いところから意見を述べさせていただきたいと存じます。  ただいま委員長の方から忌憚のない意見というお言葉なので、ひとつ率直に私の意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、今回の予算を考えます場合に、景気の動向がどうかという問題でございますが、公式見解としましては、景気の回復が進みつつある、こういう見解でございますが、一方で、町の本屋で高積みされております本は、大体日本沈没論みたいなものが非常に多うございまして、日本はまさに破綻寸前だ、どうにもならない、こういう本がたくさん並んでおります。私は、日本経済全体について全然悲観はしておりませんけれども、しかし、今大変な時代であることは間違いございません。  そこで、現在の景気の動向につきまして、詳しく申し上げる余裕はございませんけれども、言うなれば回復しつつあるという丸印と、回復していない、あるいは、まあ極端に言えば凍死寸前のような、そういう状態を三角印あるいはバツ印としますと、丸印はといえば全産業営業利益、鉱工業生産、機械受注、建設工事受注、これらは丸印でございまして、回復しつつあるような兆候でございます。一方、三角印あるいはバツ印は、賃金指数、それから常用雇用指数、それから完全失業者、家計消費支出、これらのものが三角あるいはバツ印でございます。  このように考えますと、現在のこの景気局面というのは明らかに消費不況と申しますか、消費不振というのが現在の状況であるわけで、さように考えますと、財政政策としましては消費需要を拡大する財政政策が本来は適当でありまして、具体的には減税とか社会保障ということになるわけでありますけれども、それが今回の予算ではどうもそういうふうになっていないというところに一つの問題がございます。  私の周りには中小企業が多いわけでございますけれども、中小企業は大変苦境に陥っておりまして、お手元の資料にもございますが、大阪商工団体連合会という団体がことしの一月に三百社についてアンケート調査しましたところが、「良くなる」と答えたのが全体の五・七%でございまして、過半数以上が「悪くなる」という答えを一月に出しているわけなんで、中小企業の段階では景気の回復というのは雲の上のような話だ、私はかように考えているわけでございます。  そこで、もし現在の局面が消費不況あるいは消費不振というところに焦点があるならば、財政政策予算もそのような方向に持っていかなければならないのではないか。しかし、伝統的な議論といたしましては、景気回復としては公共投資がいいのか、減税がいいのか、いろいろな議論がございますけれども、公共投資の問題は、経済企画庁が経済白書や最近出ました「日本経済の現況」平成九年版等で述べておりますように、公共投資の需要自体は確かに増加させたけれども、全体に波及していない、その乗数効果、波及効果が非常に顕在化していないということを言っているわけでありまして、これは例えて言いますと、マッチをすっても燃えるのはマッチだけで燃え広がらない、こういうのが現在の公共投資の問題であることが第一点。  第二点は、私は国会でどのような議論をされたか全く不勉強でございますけれども、現在の公共投資は建設国債で賄っておりますから、公共投資の本当の規模というのは建設国債の元利償還を合計した金額で考えなければいけないわけなんで、公共事業費そのものの乗数効果、波及効果が一・四とかいうのは、これはちょっとおかしい計算であります。例えば極端に言いますと、公共事業費を今後ゼロにいたしましても建設国債の元利払いはずっと続くわけでありますから、これは一種の公共投資のあらわれなんでありまして、公共投資というのはそういうふうに考えないと予算の編成についても誤った判断になりかねないというふうに考えておるわけなんで、これはぜひひとつ論議の対象にしていただいて、いわゆる公共事業費の効率といいますか、乗数効果といいますか、そういったことをぜひ今後はお考えになっていただきたい。もう既に御論議済みかもしれませんが、そういうふうに考えているわけでございます。  そこで、今度の予算を拝見いたしますと、新聞等でも言われておりますように、国民負担増が九兆円になる。消費税が五兆円、特別減税の収支が二兆円、医療保険の負担増が二兆円、合計九兆円という数字が出ておりまして、これはもっとも初年度と平年度と違うという御議論もございますが、九兆円という負担増になるという予算で、私は非常に大きな問題であろうと存じます。  企画庁の数字で見ますと、民間最終消費支出というのは、昨年と比べますと、ことしは九兆四千億円増加することになっておりますけれども、国民負担の増を九兆円としますと全くゼロになってしまうわけなんです。まさに消費支出の実質増はゼロに近い、こういう見通しになるわけで、先ほど申しましたように、現在の局面を消費不況あるいは消費不振と言いますと、要するにこれは、私はそういうことに水をかける予算になるのではないかという危惧をしておる次第でございます。  経済企画庁も言っておりますように、景気回復とはいっても手ごたえがない。それは不確実性が多いからということを言っておるのでありますけれども、私は全くそのとおりと思います。あるエコノミストが、消費不況と言うけれども六月二十八日になったら回復するということを言っております。何で六月二十八日かというと、ワールドカップのアジア・サッカーで日本が優勝するからだ、こういう話なんで、まさに不確実性を言い当てたような話でございまして、私はそういう意味で、今不確実性が多い、これをどうして除去していくかが予算の大きな課題になると思います。  私は不勉強でございますが、景気がよくない、あるいは景気の回復が大変微弱であるときに負担増という予算を組んだ政府があったのだろうかと思いましていろいろ調べてみましたが、どうもないようでございます。そういう意味で私は、自他ともに経済政策通をもって任じております総理をいただきます政府としては、この予算はいかがなものかというふうに考えているわけでございます。  過去におきまして、一九八一年度でありますが、経済政策に余り明るくない方が総理になられまして、このときの予算で一兆六千億増税をいたしました。このときの見通しではGNPの増加を一七%ぐらいと見込んでそういう予算をお組みになったのでしょうが、これは物の見事に外れまして、二年間連続して大幅な歳入欠陥を生ずるという、これは一九八一年と八二年の動向でございました。こういう轍を踏まないように、ぜひひとつ政府並びに国会の各位におかれましては御配慮を願いたい、かように考えております。  さて、次の問題でございますが、時間の関係上、今回の国会は私、新聞記事でしか拝見いたしておりませんが、消費税の問題がどの程度議論されているか大変疑問なので、一言申し上げてみたいと存じます。  私の意見では、今の日本消費税は言うなれば原罪を持っているような税金でございまして、持って生まれた罪という意味でございますが、公約違反、逆進性、それから打ち出の小づちという、こういうような原罪を持っている税金なんで、これは一たん廃止して消費課税の全面的な改革を、リストラを考えるべきであると私は思うのでありますが、既に五%引き上げということが議論をされている、もう決まったような議論をされておりますので、若干景気の面から申し上げてみたいと思います。  まず、約五兆円の増税でございますから、これも実は消費に大きなマイナスの影響を与えることは言うまでもございませんけれども、五兆円全部が転嫁をされませんで、日本経済新聞によりますと、六七%ぐらいが転嫁をされるという記事が出ておりますが、仮にそうしますと約一兆二千億円ぐらいが転嫁不能になる。これは結局どこに帰着するかというと賃金と利益に帰着することになりまして、これは結局、所得税、法人税の減収を来す結果になるわけなんで、これはよくわかりませんが、下手をすると一兆円以上の税収不足を引き起こすのではないか、こういう問題が第一にございます。  第二に、これも確たる数字として確かめたわけではございませんが、消費税の増税は当然国及び地方自治体の歳出を増加させますので、これは御承知のことと存じますが、税収の約一四%が歳出増加に充てられる。そうしますと、今申し上げたように、転嫁不能による所得の減による税収減が約一兆円、それから歳出増加額が七千億円と仮定いたしますと、二兆円近いものが実は目減りをするわけでありまして、そして、消費税の増税というものの財政再建効果あるいは税収効果というものにどれほど期待できるのかという疑問がございます。  それから、次の問題でございますが、これはもう先生方は十分御承知のことなので申し上げる必要はないかと思いますけれども、今度仮に五%に上がりますと、日本の食料品に対する税率は世界でも高い方に属することになってまいります。  これも御承知のように、イギリス、カナダ、アイルランド、ポルトガル等の国では食料品がゼロ税率でございまして、例えばフランスでは四・四%、スイスでは二%、いずれも日本より低いわけでございます。中には、消費税が二けたの税率になったときに軽減税率を考える、そういう御意見もあるようでございますけれども、そうではなくて、今もう既に考えるべきではないかというふうに考えております。  これが一つの問題点で、もちろん私は五%の引き上げに反対でございますけれども、仮にそれがやむを得ないものと仮定いたしましても、私は食料品についての配慮は今国会でやっていただきたい、これはぜひ国際経験ということでもってやっていただきたいと思います。  私はヨーロッパへ毎年のように行っておりますけれども、ヨーロッパの消費税、付加価値税の一つの特徴は、いろいろございますけれども、例えば人間の生存権といいますか、食べること、着ること、住むこと、それから文化的なことには課税しない、あるいは軽減税率を適用するというのがヨーロッパの付加価値税でございまして、税率は大変日本より高うございますけれども、そういう配慮をしていることは、私はぜひ御配慮をいただきたいというふうに考えております。  そこで、次の問題は、それに関連いたしまして、特別減税の中止の問題でございますけれども、私は現在の特別減税のやり方そのものには余り賛成をいたしませんで、むしろ人的控除の引き上げ等の形で所得減税を行うべきだと考えておりますけれども、景気対策という点から申しますと、そうした所得減税も大変結構でございますが、むしろ私は消費税の減税をやった方がいいのではないか。  私の全くの個人的な私案でございますけれども、例えば食料品、エンゲル係数を二五%といたしますと、大体約二兆円くらいの消費税を戻せばいいということになりまして、国民一人当たりにしますと、大体一万四、五千円の戻し税を実行する。これは市町村の窓口を通じて商品券を出せばいいわけであります。現金を出しますと貯金をしちゃうおそれがありますから、商品券の格好で出せば必ず消費に回るというふうに私は考えております。  かようなぐあいで、特別減税も結構でございますが、景気回復、まさにこれは消費不況ということになりますと、むしろ消費税の戻し税を商品券あるいはフードスタンプという格好でやった方がいいのではないか。これはかつてデンマークで似たことを実験したことがございまして、その場で現金を戻しますから、その場でお客が品物を買って帰る、消費が促進されるわけです。デンマークでそういうことを一年間実行した経験もございます。  ということで、消費税につきましては、私先ほど申しましたように、いわゆる原罪がございますので、ぜひ廃止していただきたいというのが原論でございますけれども、当面の問題といたしましては、そういったいろいろな御配慮を景気対策の面からもぜひひとつお願いをしたい、かように考えております。  そして、こういうふうに考えますと、財源をどういうふうに考えるか、財政再建をどうするか、そういう問題があるわけでございます。これはもう既に国会でもいろいろ、日本共産党の議員を初めといたしまして御議論が、十分といいますか相当されているようでございますのであえて繰り返しませんけれども、項目的に言いますと、防衛費とか公共事業費とかを削減する、あるいは大企業を中心とする不公平税制を是正をする。これはもう既にいろいろなことで論議されている問題だと存じます。この二つでもって大体、これは計算の方法にもよりますけれども、私は三兆円から八兆円の規模で歳出削減、歳入増加ができるのではなかろうかというふうに考えております。  さらにここで、問題提起として二、三申し上げたいのでありますけれども、一つは、これは外国との比較という問題もございますが、社会保険料の問題が、これも御承知と思いますが、大体年収八百万を超えますと社会保険料の負担が逆進的になってまいりまして、その逆進性は消費税よりもひどい逆進性になってまいります。これを何とか改善できないのか。年収八百万以上といいますと、大体民間企業で約五十兆円給与が払われておりますので、これに対して保険料を増額すればかなりの財源が得られるという問題もございますので、これは諸外国との比較もございますけれども、ひとつ考えていただけないかというふうに考えております。  第二は、国債の利払いの問題でございまして、これも今銀行の平均約定金利が二・五%くらいでございますけれども、二・五%以上の利率になっております国債が、これは九四年度の指標でありますが、全体の九二%を占めているわけなので、これを何とか削減できないかという問題もございます。本当は繰り上げ償還とか借りかえで低利国債にかえればいいということかもしれませんが、私の考えでは、こういう約定金利よりも高い金利については、これは仮の名前でありますが、国債利子平衡税というような税金をかけて源泉課税で徴収をする、これは取りっ放しですと国債の信用問題に関連いたしますので、しばらく預かり金にしておきまして、景気回復のときに順次返していく、こういう構想をとりますと、当面歳出削減にもなります。  時間もございませんが、今社会保険料と国債について申し上げたいことは、財政再建は私が見ても必要でございますが、だれの負担において行うべきなのか、これが大きな一つの課題になってまいりますので、そういう点では、豊かな者といいますか、富める者といいますか、そういう方の負担をぜひお願いして財政再建を進めていくことが必要ではないだろうか。そういう意味で、平たく言えば貧乏人ということでございますが、中小所得者層にしわ寄せするようなそういう財政再建はいかがなものか、かように考えている次第でございます。  言うまでもございませんけれども、予算というのは政治の鏡とも申しますから、ぜひそういう鏡にきれいな形の予算を映すように、ぜひ諸先生方の御努力をお願いしたいと存じますし、私どもの最後の結論といたしましては、とにかく今国民が全体としては大変グルーミーといいますか、灰色な状況に心理的にも経済的にも置かれておりますので、こういう灰色の雲を国民の頭から追っ払って、本当に日本はこれから生きるんだという、こういう姿を示した予算にぜひしていただきたい。  それで、最後最後にお願い申し上げたいことは、これは言うまでもございませんが、予算は期日がございまして、一日も早い審議ということが絶えず言われているわけでございますけれども、今申し上げたような景気の観点、その中でも公共投資やあるいは税金、とりわけ消費税の問題、そういう問題についてはじっくりひとつ時間をかけて、予算の成立が多少おくれましても、まあそういうことを申し上げてはいけないかもしれませんが、ぜひじっくりとこの予算委員会の諸先生方に議論をお願いしたい、かようなことを申し上げて、私の公述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 深谷隆司

    深谷委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  10. 谷津義男

    ○谷津委員 自民党の谷津義男でございます。  お三人の公述人の先生方には、本当にありがとうございます。非常に示唆に富んだ、また参考になりました。勉強にもなりました。本当にありがとうございました。  そこで、まず吉田公述人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、昨日開かれました財政構造改革会議で、橋本総理が増税に頼らずに財政を立て直すということを表明しまして、歳出の削減を軸に財政赤字を減らす路線が決まりました。財政再建の照準は地方も含まれる、そして積極的な歳出抑制や予算の収支も見直す必要があるだろうというふうに私は思うわけでありますが、吉田公述人も、財政構造改革特別部会だったと思うのですが、特別委員をしていらっしゃるのですね。最終報告が取りまとめられまして、二〇〇五年度までのできるだけの早い時期に、国と地方の財政赤字を対GDP比三%以下にすることなどを目指す財政の健全化目標が、またこれは閣議でも、あれは十二月の十九日だったと思いますが、決められたわけであります。この目標達成には、先ほどもお話の中に出ましたけれども、医療費等の切り込みはどこの国でも成功したものはないというふうにおっしゃっておりましたが、そうした社会保障や公共事業などのすべての分野において聖域を置かないで見直す必要があると私は考えます。  特別部会の最終報告では各歳出項目ごとの財政構造改革の方向性が示されておりますが、こうした提言を実現するためには何が重要であるというふうに思っておられますか、お聞かせを願いたいと思います。
  11. 吉田和男

    吉田公述人 今御質問になられました行政改革を進める際の最も重要なポイントと申しますのは、私は、政治家の決断、またそれを実行する際の中心になります首相の決意、決意といいますか実行ということが一番重要かと思うわけです。  イギリスに参りまして、行革担当の方とお話しさせていただく機会があったのですが、そのときのお話でも、政治家のバックアップ、それから首相のバックアップというのが十分なければできないことだというふうなお話をされておられました。どこの国も民主主義国というのは議員は票によって選ばれるわけですからなかなか難しい面があるわけでして、改革を行いますと、だれかのプラスになってだれかのマイナスになる。マイナスになる人はなかなかつらいものですから、やめてくれというふうな話になりがちなわけです。  しかし、財政改革を行って一番利益を得るのは一般国民、納税者であるということを申し上げさせていただいて、改革は必ず支持されるというふうに、これは信じてもらわなければしようがないということかと思うのですが、その信念に従って、ぜひ改革、行革をバックアップしていただければなと思っております。
  12. 谷津義男

    ○谷津委員 そこで、先ほど財政改革をいかに雇用問題と切り離すことができるかというのが重要だというお話でしたね。そして、財政以外の方法でやるとすれば地方分権であるというふうにおっしゃったわけでありますけれども、吉田公述人は地方財政改革についても大変いろいろな論文を出されておりまして、あれは平成四年でしたか、日本経済新聞に書かれたのを読んだことがあるわけであります。  そこで聞きたいんですけれども、財政構造改革は国だけの問題ではない、マクロ経済との関係を考えると地方の財政健全化は不可欠であるということでありますが、財政健全化目標の実現のためには地方と国が一体となって取り組まなければ、これはでき得ないというふうに思うんです。  そこで吉田さんに、財政健全化目標を達成するためには地方は何をすべきであるかということについてお伺いいたしたいと思います。
  13. 吉田和男

    吉田公述人 お答え申し上げます。  現在の地方制度、それから地方財政制度、これはやはり根本的に見直す必要があるかと思うわけです。  今、三千ほどの市町村があって、それが地域住民にとって非常に重要な仕事をしているわけです。しかし、やはり三千というのは体制としては非常に問題があるわけでして、何百人の自治体があったら、村長さんと村会議員さんとそれから村役場の人でほとんどを占めてしまうなどというふうな非常に変なことになってしまうわけです。ですから、地方制度自身の改革。  それから地方財政制度、これは交付税、補助金の問題でありますが、この交付税なり補助金というのは、今の制度ですともらわないと損になるわけですね。もらわないと損になるという制度を残しておいて、あなた方、行革しないから悪いと言うのは、これはやはりおかしいわけですね。ですから、行革が行われるような財政制度に立て直すことが、まずこれは根本的な問題として大事かと思うわけです。  と同時に、地方財政制度を一遍に改革するというのはそんなに簡単なことじゃないわけですが、しかし今の体制のもとでもできることはどんどんやっていただきたい。私も、高槻市の行政改革懇話会の座長をさせられたりしていますが、そこでも定員の一割カットとか、歳出予算の削減、補助金の削減とか、いろいろな項目を立てて実行していこうというふうな体制になっているわけです。ぜひ地方自治体においてもやっていただきたいなと思っている次第です。
  14. 谷津義男

    ○谷津委員 それで先ほど、今の考え方では何もできませんぞ、発想の転換をしなければだめだぞとおっしゃったわけでありますが、地方のそういう財政改革、これを発想の転換をするとすれば、どの辺のところに吉田公述人は発想の転換のポイントがあると思うか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  15. 吉田和男

    吉田公述人 まず、日本の地方財政制度というのは、戦前、国と地方というのは一体でやっていたわけですが、戦後、憲法の中に地方自治も書き込まれまして国と地方が明確に分かれ、しかし、それが結果として非常に両方ともやりにくいということが起こったわけです。中央としては仕事をやってくれる人がいない、地方は税金が自分らで徴収できないということになりまして、それをつないだのが補助金制度等でありまして、これは戦後のキャッチアップ時期、非常にうまく作用したかと思うわけです。こういう発想をまず廃止しなければならない。地方の仕事は地方がみずから負担してみずから決める、そういうふうにすれば、地方の振興というのもみずから考えてやっていただけるという体制をつくり得るかと思うわけです。まずそこの構造から、構造といいますか、構造と同時に発想から転換していただきたいというふうに思うわけです。
  16. 谷津義男

    ○谷津委員 吉田公述人、先ほど申し上げましたように、平成四年だったと思いますが、日本経済新聞を読みますと地方交付税のことをおっしゃっていますね。今でもあの考え方をお持ちなんですか、ちょっと聞かせていただきたい。
  17. 吉田和男

    吉田公述人 今、地方分権するために地方交付税制度が一番の障害であるというふうに私は認識しているわけです。それは、今の制度は財源不足を補うような形で交付されるというところに大きな問題があるわけでして、としますと、例えば補助金をとってくると裏負担まで見てくれる、財源不足になるわけですから。そういった形の交付税というのは非常に問題が大きいと思います。  ですから、私は、地域が発展して将来的に交付税制度がなくなることが望ましいと思うんですが、それまでの段階として交付税の交付基準に、例えば人口だけとかあるいは人口一人当たり税収を補整するというふうな形でやるのが望ましいんじゃないかというふうに考えております。
  18. 谷津義男

    ○谷津委員 昨年の六月のリヨン・サミットで、コミュニケにおいては、信頼できる財政健全化計画が投資や成長、それから雇用創出に貢献することが確認されました。一方、こうした考え方に立って財政構造改革への元年として編成されたのが今年の予算、九年度の予算であります。また、この予算については、景気の足を引っ張る、そういうデフレ予算であるという意見もあるんですが、吉田公述人はこの意見に対しましてどのように考えておられますか、お伺いいたしたいと思います。
  19. 吉田和男

    吉田公述人 例えば国債発行を減額して歳出を減らすと、これはデフレ要因であることは間違いありません。また、増税をして国債発行が減るということになれば、これもデフレ要因であるわけです。ただし、これは要因でありまして、果たしてデフレになるかどうかということとは必ずしも関係がないように思うわけです。  先ほども申しましたけれども、平成九年度の景気は、まあそれほど悲観する要因が、非常にクリティカルな問題であることはありますが、足を引っ張る要因が非常に減ってきたということで、恐らく景気というものはそれほど悲観的になる必要はない。国債発行をして歳出をふやしましたら、確かに短期的にはプラスになるわけですが、これは長期にはマイナスになるということでありまして、病人も痛みがあったときにはモルヒネを打たなければいかぬわけですが、余り打ち過ぎると麻薬中毒になってしまうということで、今の日本経済、ややヤク中的な雰囲気がないでもないというふうな感じを持っております。
  20. 谷津義男

    ○谷津委員 岡崎公述人にお尋ねをいたします。  岡崎公述人は、さきにハミルトン・フィッシュ、「日米開戦の悲劇」ですか、これを翻訳なされましたですね。あれによって大戦の見方が随分変わったと私は思うんですけれども、あの本は何を説いておられるのか。「日米開戦の悲劇」を翻訳なされましたですね。それについて、あの本の意図するところは何か、少し詳しくお話を伺いたいと思うのですが。
  21. 岡崎久彦

    岡崎公述人 ハミルトン・フィッシュという方は、アメリカの伝統的な孤立主義者であります。それで、アメリカという国は、国内で価値を高めるのが目的であって、外に出ていって余計なことをするべきでない、そういう哲学を持っておられる方なんです。その哲学を実施する方法として、第二次大戦前にヨーロッパにおいてもいろいろ活動されました。それから日本に対しても、戦争をするべきでないということを言っておられました。  それで、日本の場合は、成り行きとしては、真珠湾攻撃というものがあって、やむを得ずアメリカが入ったという形になっておりますけれども、ところが、ハミルトン・フィッシュさんが後で調べたところによると、ハル・ノートというものがありまして、これは要するにもう実質上の最後通牒である、これならばもうどんな国でも戦争せざるを得ない、そういうノートを出していた、それを我々は知らされてなかった、これはルーズベルトにだまされたんだと。ですから、戦争を挑発したのはアメリカであった、第二次大戦を起こしてあれだけの犠牲を出したのはアメリカの行政府の責任であって、アメリカがああいうことをしなければ戦争はなかったはずだということを述べたかったんだと思います。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕
  22. 谷津義男

    ○谷津委員 日本にとっては非常に大事なことなんだろうと思うんですが、歴史が証明するといいましょうか、そういうことだろうと思います。  そこで、もう一点岡崎公述人にお聞きしたいのは、先ほど安全保障関係等の話がございました。アジアも大分変わってきておるということでありますけれども、この委員会におきましても、随分、沖縄の問題については大変な議論があるわけであります。日本安全保障関係その他を見まして、沖縄の基地の位置づけ等について、アジアも大分変わってきておるというお話を承りましたけれども、岡崎公述人はどういうふうに考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  23. 岡崎久彦

    岡崎公述人 沖縄の問題は、まさに、今後日米同盟を維持していくに当たって、二つの大きな問題の一つでございます。  つまり、集団的自衛権の問題を解決して、それから沖縄の問題を解決さえすれば、日米同盟というものは恐らくこれからもう何十年間にわたって安泰でございます。それがまた両方とも日本国内問題にかかわる問題でございまして、結局、アジア太平洋の平和は日本国内政治が決める、そういう、不思議なということはございませんけれども、そういう状況になってきております。  それで、沖縄は、これはアメリカにとっては大変重要な基地でございます。特に、クラークとスービックというフィリピンの基地がなくなりました。そうなりますと、アメリカの持っている基地というのは、日本の本土の基地と、それからあとインド洋の真ん中にディエゴガルシアという基地がございまして、この二つだけでございまして、ディエゴガルシアの補給は沖縄が全部やっております。もし沖縄の基地アメリカが失うことになりますと、アジア太平洋インド洋全部にわたる介入能力を失うことになる。それでもいいではないかという孤立主義者の議論はあるのでございます。ただ、これはもう圧倒的少数でございまして、これは一%にもなりません。アメリカの民主、共和、両方合わせまして、現在、やはり冷戦後の国際秩序を守る責任をアメリカは放棄すべきでないと。放棄すべきでないということになりますと、これは日本基地というものをアメリカと一しては失うわけにまいりません。
  24. 谷津義男

    ○谷津委員 それでは、谷山さんにちょっとお聞きしたいんですが、先ほど付加価値税、消費税のお話がございました。そこで、税率を高くしますと逆進性の話をされましたですね。それはともかく、先ほどいただきました資料の中に、「食料品に対する付加価値税の税率について」というのが、六番目ですか、書いてありました。これについて言及なされなかったものですからちょっとお聞きしたいのでありますけれども、カナダやイギリス、アイルランド、ポルトガル、ハンガリー等はゼロ税率だ、あるいはスイスが二%だ。我が国において、この問題も、ここでは議論はされてはおりませんけれども、やはりいろいろと話が出るわけでありますが、食料品の税率問題というのは非常に難しい面があるのですね、税率を変えるあるいはゼロ税率にするというのは。  この辺のところについて、少しお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  25. 谷山治雄

    谷山公述人 私は、申し上げましたように、イギリス、カナダなどでは税率が、イギリスは当時八%、カナダは七%でございますが、こういう一けたの税率のときから既に食料品はいわゆるゼロ税率、完全非課税にしているわけでございますね。それと同じに、日本は最初三%で出発したものですから、全体としていいんじゃないかというふうにお考えになったのかもしれませんけれども、仮に五%になりますと、今申し上げましたように、もちろんゼロ税率の国より高くなりますし、それからさらにスイス、イタリアなんかよりも高くなるという、そういうことでございますので、日本でも食料品についてぜひ非課税といいますか、ゼロ税率を実現をしていただきたいと思います。  もう一つ基礎にございますのは、これも先生が御承知のように、日本はいわゆる高物価の国でございまして、特に食料品は、アメリカやヨーロッパに比べたら、日本は相当高い国でございます。そこへもってきて消費税が五%とかになりますと大変なので、ぜひ食料品については完全非課税で、現在の段階でやりますとおよそどのくらい、五%にしますとまあ三兆円規模になりますか、例えばその程度になったって、食料品非課税はぜひ実現していただきたい、かように考えております。
  26. 谷津義男

    ○谷津委員 食料といいましても、なかなか仕分けが難しいですね。それで、随分、私どももヨーロッパなんかへ行きましても調べてみましたのですが、日本のような状況の場合ですと、ヨーロッパとは違いましてなかなか難しい状況にあるんですけれども、その辺のところは、先生何かお考えがありましたら聞かせてください。
  27. 谷山治雄

    谷山公述人 先生のおっしゃるとおり、実務的にはなかなか難しい問題がございます。  そこで、参考になりますのは、かつて一九八七年に売上税をつくりましたときに、あのときには、一つ解釈として、口に入るものは非課税という、こういう考え方で食料品、医薬品等は非課税にしたという、そういう経験もございます。それからまた、一九八九年でございましたか、食料品については小売段階で非課税にして、あと卸、生産段階では一・五%、そういう改正案、自民党の方からお出しになったというふうに伺っております。  ですから、技術的、行政的に難しい点は確かにあると存じますけれども、さっき申し上げたように、言うなれば口に入るものは非課税というような、そういう広範な概念でかなりそれはクリアできるんじゃないか、かように考えております。
  28. 谷津義男

    ○谷津委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  29. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 次に、小池百合子さん。
  30. 小池百合子

    ○小池委員 新進党小池百合子でございます。  本日は、三名の公述人の皆様方、御多忙のところ、また遠方より御足労おかけいたしまして、本当にありがとうございます。  私は、まず、政治のプライオリティーといたしまして、国民の生命、安全、財産を守るということ、これをまず原則とし、そして、平成九年度の総予算の審議でございますので、当然のことながら、タックスペイヤー、納税者の観点から幾つか御質問させていただきたいと思っております。  まず、岡崎公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほど日米同盟、そしてアメリカ側のさまざまなシミュレーションについて御説明をいただいたところでございます。そして、岡崎さんはかねてより、情勢判断は必ず政策に先行するということをおっしゃっていると伺っております。  そこで、昨今、大変東アジア情勢が大きな動きを見せているということで、具体的には、一昨日中国の最高実力者の鄧小平氏が亡くなられました。また北朝鮮では黄書記が亡命ということで、これはまるでかつてのソビエトからレーニンが亡命するようだというような例えで受けとめられております。大変大きな事態の変化であると思っております。  そして、これはもう予定織り込み済みではございますけれども、この七月には香港が中国へ返還ということになるわけでございますけれども、こういった最近の情勢をどのように判断されておられるのか、またそういった中で我が国は、国益を守るためにどのような戦略、戦術をとっていくべきなのか、そういった点で、御私見で結構でございますので、忌憚のない御意見を伺わせていただきたいと思います。
  31. 岡崎久彦

    岡崎公述人 時間が短いので、いろいろのことがございますけれども、ごく簡単に申し上げます。  まず第一に、鄧小平死後の中国。これは、鄧小平から江沢民への継承は、常に二年半にわたって営々とやっておりまして、これがそのまま続いてことしの秋の十五党大会で確定するのだろうと思っております。大きなことがなければ、恐らくこれは順調にいくのだろうと思っております。  なぜ大きなことがなければという留保をつけるかと申しますと、権力が全部江沢民さんに集中していますけれども、実際はこれは集団指導体制なのですね。というのは、江沢民さんが鄧小平さんの指導力をそのままもらったわけではないのです。ですから、軍を統制しているといっても、軍の言うことを聞いて統制している。本当に実力があれば、好きな人を入れて嫌いな人を切るのが本当なのですけれども、それができないものですから、昨年だけで大将の数が大変ふえまして、これは好きな人も入れるし、それから反対する人もなだめるために入れるということで、どんどん大将の数が膨らんでいる。ですから、実質は集団指導体制なのです。ですから、大きなことが起きなければこのまま順調でございましょう。  ただ、大きな問題が起きますと、そこで、中で賛否があるような問題にはっきりした指導力を発揮するほどの力があるかどうかというと、まだないのではないか。大きな指導者が、スターリンとか毛沢東が死んだ後何年か集団指導が続きますので実質的にはそういう体制ではないかというふうに考えております。  そこで、大きな問題が何が起こりそうかと申しますと、朝鮮半島情勢あるいは香港の問題ですね。  朝鮮半島の亡命は、レーニンと申されましたけれども、私の感じではトロツキーの亡命ぐらいではないかなと思っております。トロツキーの亡命とか、それから蒋介石政権から亡命した汪兆銘。これは、結果としてはむしろ内部が固まっていくのですね、異分子がなくなる分だけ。政権が弱くなっているということの証左ではあります。それは明らかにそういう証左ではありますけれども、それが崩壊につながるかというと、崩壊するかどうかは全然別の話でございまして、経済が悪いから崩壊するというのなら、例えばサダム・フセインなんというのはそのために締めつけているのですから、五年間続くはずがないのでございますね。ただ、これは警察がしっかりしていて、クーデターとか暗殺未遂を全部摘発しておりますから。これだけもう形勢が悪くなりますと、本当に警察の能力だけの問題で、警察が全部事前にクーデターを摘発すれば十年でももっかもしれない。これは、一つ失敗したらあした崩れるかもしれない。そういうのが北朝鮮でございます。  それから香港は、私は順調に移行すると思っております。順調といっても楽観的ではございませんで、つまり一種のもうあきらめムードでございますね。昔どおりの自由があるとも思っていないし、それから全く腐敗のない昔どおりの経済制度が続くとも思っていない。ただ、そういうことを言っても、別にイギリスも助けに来ない、アメリカも助けに来ないということで、みんなもう自然に、ある程度の弾圧はしようがない、それからある程度の腐敗はしようがないということで、みんなあきらめてその方向で準備しておりますので、もう大勢順応というか、長いものには巻かれろというふうになっておりますので、自然にそうなると思います。ですから、短期的にはスムーズであると思います。  ただ、そういう精神的な敗北主義が、これは長期的にはやはりだんだん香港が寂れていく、長期的ですと、十年、二十年でございますけれども、長期的にはつながるのじゃないかと思っております。  大体、以上、アジア情勢でございます。
  32. 小池百合子

    ○小池委員 東アジア情勢、やはり朝鮮半島の行方ということが最も不確定要因ということでございますが、危機管理の観点から申しますと、やはり最悪のことについて備えておくということが不可欠だろうと思っております。  そこで、時間もないのではしょって大変申しわけないのですけれども、そういった危機管理の観点から申しますと、今進行中でございますが、ペルーの日本大使館の占拠事件でございますね。我が国の主権が及ぶ在外公館がテロリストにまんまと乗っ取られたということは、テロリズムというのは低位の戦争であるという考え方もあるようでございますけれども、その点で、非常に一国とすれば恥ずかしい事態が起こったのではないかというふうに思うわけでございます。また、現在も青木大使以下外務省の皆様方、そして民間人の方々、大統領の弟さんまで人質のままでおられるというような状況でございまして、きょうも第四回目の会議が開かれたということで、時間はかかるかもしれないけれども、それでも一日も早く解決することを願うことは当然でございます。  しかし、最初に申し上げました危機管理の観点、そして在外公館という観点から申しまして、ペルーというのはこれまでJICAの方が殺害されたりと、在外公館の中でも最も警備が厳しかったところだというふうに聞いているのですね。それでいて、すぐ隣の、ドイツのNGOが使っていたとか、それから空き家だったとかと言われるところから入り込まれたという事実でございますね。中には、もう既にだれかが内部をビデオで撮って、それをベースにして作戦を立てていたとか。言ってみれば、治安の悪いところで随分開放的な、あけっ放しのような、こう言うと言い過ぎかもしれませんけれども、結果的にあそこを乗っ取られたということは事実でございますので、こういった在外公館の今後の警備の強化ということは、これは真剣にやっていかなければならないと思っております。  そういった意味で、壁の修繕であるとか、それからペルーの大使館の警備強化という、今回のことが起こったのでということで、幾らかのこういう措置はとられますけれども、私は、もっと根本的な問題ではないかというふうに思うのですね。  基本的に、例えば日本の赤坂のアメリカ大使館に参りますと、最初にマリンが警備をしております。海兵隊が警備をしておるわけでございます。そういったことも考えますと、在外公館の危機管理というのは大変象徴的なことではないかと思いますので、岡崎さんの御意見を承りたいと思います。
  33. 岡崎久彦

    岡崎公述人 私は、今政府におりませんので、細かいことを弁護する立場にもございませんし、それからまた、これを機会に予算をとろう、そういう立場でもございませんので、ごく客観的に申しますと、今回の事件は、二千人いたテロリスト団体が追い詰められて八十人までになりまして、それが一年半かかって練りに練った計画なのですね。それで水も漏らさない計画で実施した。そういうものに対して抵抗するということを、それを各公館全部が備える、それはできないことはございませんけれども、それはコストエフェクティブの問題として、相当な経費がかかると思います。むしろ、私は、客観的に見ておりまして、この種の、本当に仕組みに仕組んだ奇襲攻撃というものは避けられないものだと思っております。  それでは何もしなくていいのかということでございますけれども、たまたま青木という人物がいまして、これが腹の据わった有事に際して強い人物でございまして、そういう人間を幾つか日本外交が各地に配置し得た、たまたまそういう人物のところで起こった。私、あの事件が起こってすぐに新聞に聞かれて、どうすると言われまして、フジモリと青木というのは一流の人物だから、結局あの二人に任せるのじゃないか、それしか方法がないのじゃないかということを申し上げました。  それ以上申し上げることはございません。
  34. 小池百合子

    ○小池委員 私は、予算の分捕りとかそういう意味ではなくて、やはり日本のシンボルである在外公館をぜひとも、ああやってテロのターゲットにされる、また、このやり方、今後の経過次第ではほかの日本の在外公館がまたターゲットにされかねないということもありますので、そういった点でも今回の危機管理の問題を、ただ人間の問題ではなくて、もっと国としてのシステムの問題としてやるべきではないかというふうに思っております。  それから、引き続き岡崎公述人に伺っておきたいのですけれども、ODAの予算、今回も一兆円以上組まれているわけでございますけれども、先ほどからお二方の公述人も公共事業のポイントを指摘なさいました。これも海外における公共事業のような様相を呈しているわけでございまして、こういったODA予算の効率化ということも考えなければならないのではないかと思っております。  要請主義をベースにしております一方で、ODAについての責任問題等々になりますと、あれは要請されたからというような責任逃れにもなっているのではないかというふうに思いますけれども、大使としてサウジ、タイなどお務めになられまして、このODAの予算の、もっと日本のタックスペイヤーも報いられると申しましょうか、ODAに出費をするもう少し価値のあるもの、さらに効果を上げるとすれば、どういった点を岡崎公述人は御指摘なさいますでしょうか。
  35. 岡崎久彦

    岡崎公述人 ODAの問題は、まさに非常に大規模な予算をいただいておりまして、これはもうお礼申し上げます。  なぜあんなにODAを出さなければいけないかということの大きな理由はほかの問題があるのですね。例えばボスニアにお金は出すけれども、兵隊は出さない。それから、難民救済といっても日本は難民をちっとも引き受けないですから。そういうのを比べますと、結局お金の額でもってカバーしていくよりしようがない。ODAじゃございませんけれども、湾岸戦争に出した莫大な費用、これも結局兵隊は出さないからの話でありまして、これは私自身の、端的に申しますと、先ほど申し上げました集団的自衛権行使の問題を解決して、それで、国際社会でもってどこでも共同して国際秩序の維持に当たれる、そういうことを言うと外務省に怒られますけれども、そういう形になれば、ODA予算はもうそれほどふやさなくてもいいのじゃないかと私は思っております。結局、国際責任のインバランスをああいう形でもって解決している。  しかし、今度そのお金を効率的に使わなければいかぬ。これは、国際的に見てというか、私自身これを随分手がけましたけれども、やり得る可能性の中で最善のことをしているのではないかと私は言えると思います。  どういうことかと申しますと、端的に申しまして、ここ数年間、高級役人の汚職、これが非常に問題になっております。ODAというのは大変な金を使っておりますけれども、外務省の上級の役人、エリートの中で汚職ということは考えられませんね。これは、ないという以上に、あるということがあり得ないですね。  どうしてかと申しますと、これがまた実に批判があるのでございますけれども、手仕事で始めまして、エリートを使って、エリートの徹夜労働でこなしているという形なのです。ですから、供応を受ける時間もないのですね。あそこへ入りますと、エリートが入りまして、お見合いする時間がないので結婚がおくれる、そういう状況でございまして、そういう作業の仕方をしておりますと汚職というものは起きないのです。機構にして、それぞれに権限を持たせて、これは何をしてもいいというふうに分けると、非常に危ない点が出てくるわけです。  あとは実際の問題でございますけれども、アジア諸国のGNPの中における日本のODAの貢献率というのは非常に高くなっております。これは数字で出てくるぐらい入っております。
  36. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  小切手外交ということが日本の看板のようになってしまっていることは非常に私残念に思いますし、先ほどおっしゃったような意味も含めまして、もっと総合的な貢献ができるのではないか、さらにお金の面では効率的な貢献もできるのではないかと思っております。  次に、吉田公述人に伺いたいと思いますが、吉田さんは大蔵省の主計官もお務めになられまして、我が国の予算編成の流れ、作業についてはもう十分過ぎるほど知り尽くしておられると思います。そういった意味で、今回の予算の審議のあり方についてちょっと御助言、御意見を伺いたいと思っております。  英語でよくアカウンタビリティーという言葉がございます。なかなかこれは日本語にぴったりした訳がなくて、結局説明責任などというふうに昨今では訳していたりもするわけでございますが、私ども議員にとりましても、納税者に対して今回の予算について説明責任を負うわけでございます。しかしながら、予算書の束を見ておりましても、これをどう納税者に説明していいのかということになりますと非常に戸惑いを覚えますし、また税法については、一読すれば難解で、二読すれば誤解して、三読すれば不可解だというふうに言われるほど、非常にわかりにくくなっております。そしてまた、予算の積算根拠ということをこの国会の中でも何度も何度もお願いをするわけでございますけれども、これが出てきたためしがないというようなことで、国会軽視というようなことも考えられるのではないかというふうに思っております。  そこで、これはアメリカの場合ですけれども、これが予算教書、バジェットですね。それと同時に、セットになって、連邦予算に対しての市民の解説というのが三ドル幾らかでついてくるのですね。これについては、本当に納税者に対して、まずは姿勢としてこの予算を説明しましょう、そういう意気込みといいましょうか、責任がここで、まさにアカウンタビリティーを果たそうという努力が感じられるわけでございます。  一方で、この国会予算案につきましては、できるだけ説明しまいという態度がこの予算委員会でも見てとれるわけでございますが、なぜこの予算の箇所づけが出せないのか。現場のことは今は忘れて、そういった問題点をぜひ、予算審議のあり方の大きな問題点、そして具体的な問題点を挙げていただければと思います。
  37. 吉田和男

    吉田公述人 お答え申し上げます。  私、主計官じゃなくて、その下のクラスの主査をさせていただきました。  おっしゃられるように、予算というのは非常にわかりにくい。予算だけじゃなくて、行政全般そうなのですね。日本のシステムというのはやや精緻過ぎるなというのが私の率直な感じであるわけです。大体、外国の話というのは明快なのですね。ここまでが公、ここからが民というのをばしっと決めてしまう。ところが、日本の場合は中間段階のグレーなところが非常に多い。例えば何か支出をする、そうすると、それに関連したところにもまた出てくる。政策というものと予算の関連というものが非常にわかりにくいというのは、もう全くそう思うわけです。  これをちゃんと説明しなければいけないじゃないかということになるわけですが、今度は説明されてもわからないことが問題だと思うのですね。すなわち、構造自身が複雑過ぎて。ですから、私は、まず手始めにやるべきは、この複雑さをできるだけ簡単にするということ、そこからしないと、幾ら説明しても、今度これはこれであれはあれでということをずっとやりますと、余計わけがわからなくなってしまうという状況があるかと思うのですね。最近政府に対する不信感みたいなものが国民の間に非常に強いのも、結局何を言っているかわけがわからないじゃないかということかと思うのですね。おっしゃられるように、恐らく大蔵省でもどこでも何とか白書というのをつくって説明はしているのですが、説明をしてもわからないというところに私は問題点があるように思うわけです。  特にアメリカ予算は明快なのですね。予算自身が明快だというところがあるかと思います。私は、民主主義というのは、みんなに理解されなければ民主主義じゃありませんので、余りごちゃごちゃ細かいことはもうやめて、みんなが理解できるベースで行政ができるような形にすべきではないかと思うわけです。
  38. 小池百合子

    ○小池委員 まさに複雑で、最後の三回読めば不可解になるというその過程をお話しいただいたか一と思います。  予算が複雑であるということと、それから行政の方もできるだけ説明をしたくないという思想が根本的にあるのではないかというふうにも思っております。  それから、もう一つの大きなポイントとすれば、こちらは予算委員会ではございますけれども、やはり決算が余りにも、過去のものを引っ張り出してきて、そしてその間に議員がまたかわっていたりもいたしますし、またそういった決算が余りにもスローモーであるということ、そして決算委員会よりはこの予算委員会の方が花形であったりするとか、いろいろな問題点がございます。しかし、企業では、四半期ごとに決算を出して、そしてまた毎年株主総会という形でクリアに、一年ごとにやっているわけでございますね。たとえ金額が大きいとはいえ、結局これも積算ということで同じことでございますので、この決算の問題点があるのではないかと思いますが、それについての吉田公述人の御意見を伺いたいと思います。
  39. 吉田和男

    吉田公述人 私は財政学をやっておりますが、財政法的なセンスからいきますと必ずしも専門ではないので、若干素人的なお話をさせていただきます。  結局、いわゆる財政法規的には法律で縛って予算を執行するという建前なわけですね。しかし、問題は、その結果がどうなっているかということに関する情報がどういう形で回ってくるか。おっしゃられましたように、つまり予算というのは、その予算をつくったときの情報で開示されるという形になっているわけですね。おっしゃられるように、それで十分かというと、私も不十分だと思うわけです。  ただ、やはり予算というのは、行政、そしてそれが実行されるのは民主主義ですから、多角的に批判されるような構造というのをぜひつくっていく必要があるかと思うわけです。それは、議会の批判と、それから、例えば経済学者あるいはジャーナリスト、そういったものが多角的に批判しやすいような形をどうつくったらいいか。残念ながらどういう仕組みがそういう形になるかというのは今のところアイデアはありませんが、しかしそういうふうな方向でシステムを考えていくという姿勢は必要かと思います。
  40. 小池百合子

    ○小池委員 公共事業のあり方など、谷山公述人にもお伺いしたがったのですけれども、五分間太陽の方に、岩國さんの方にお譲りいたしましたので、時間が参りました。どうもありがとうございました。
  41. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 次に、生方幸夫君。
  42. 生方幸夫

    ○生方委員 公述人の皆様方には、朝早くからお越しいただきまして大変ありがとうございました。  まず、吉田先生にお伺いしたいのですが、今年度予算の注目点というのは、何といっても財政再建元年になるかどうかというのがポイントであったというふうに私は考えております。吉田先生、いろいろなところに書いているのを拝見いたしますと、非常に厳しい論調で、もう日本経済は既に破綻しているのだというような御意見も述べておられますが、きょうは自民党さんの方でお招きになったということでやや辛口が何か甘口になっているような感じがいたすのですが、まず第一点目に、今年度予算案、評価すべきポイント、四ポイントを挙げられましたが、評価できないポイントというのも当然あると思うのですが、その辺からまずお話をお伺いしたいのですが。
  43. 吉田和男

    吉田公述人 先ほど総論で申し上げましたが、やはり二〇〇五年に三%に持っていくというのは並大抵じゃないので、一般歳出も切り込む、それから地方も切り込む、そして公共事業やらあるいは社会保障、全体に制度改革をして切り込むということが必要かと思うわけです。  今の財政というのが、結局、先ほども申しましたけれども、健全な財政また世代間でバランスのとれた財政にするためには、消費税率でいくと三〇%とかそういうふうにしないとバランスしなくなってしまう。こういうふうなことは現実に不可能ですから、三〇%というのはやはりちょっとクレージーな数字ですから。ということは、もう破綻になっているのじゃないか、もう返せない状況じゃないか、よっぽど改革基本的に行わないとだめじゃないかということを申し上げているわけです。  九年度予算財政改革元年ということで、財政制度審議会の特別部会も昨年末に報告をしたわけですが、制度改革となりますと直ちには難しいところがあるかなということで、今議員御指摘のように若干甘口の話になったかもしれませんが、しかし、九年度予算の次には必ずやってほしいというふうに思っている次第です。
  44. 生方幸夫

    ○生方委員 我々民主党では、この予算では財政改革元年にはとてもならないのではないかと。これは前の補正予算のときも申し上げたのですけれども、補正予算でも、もっと切れるべきところは切る、血の出るような努力をしなければいけないという点で、もちろん私も全面的にこれを評価しないというわけではないのですけれども、もうちょっと削減できるべきところは削減するという強い姿勢を見せる必要があるのではないかということで、先ほどの質問に戻るのですけれども、ここを改正したらどうかというようなアドバイスがございましたら、ぜひお願いしたいのですが。
  45. 吉田和男

    吉田公述人 現在の予算編成の流れからいきますと、まず十年度予算に関してはシーリングの問題があと半年弱後に来るかと思うわけですが、これまでのシーリング、平成九年度予算に対するシーリングも若干スタイルが変わったわけですが、それのときがかなり勝負じゃないかなというふうに思うわけです。まさに制度改革をしないとできないわけですから、制度改革の検討をまずしなければならない。そうすると、恐らくことし一年というのはそれに明け暮れる年でなければいけないということになるかと思うわけです。結局、十年度予算のシーリングということをかけるときに問題になってくるかと思うわけです。  まず、ポイントとしては年金。可処分所得スライドということになってきたわけですが、まだ工夫する余地はありますから、早目にやっておく必要があるかと思うわけです。私らが一番人口が多いものですから、そのときに大変なことになるということで、その直前に議論すれば必ずうまくまとまらないことになってしまいますから、できるだけ早目にやるということは大事かと思います。  医療も、ことし、九年度予算から改革されるわけですが、これもまだ引き続きやることはたくさんあるかと思います。  それから、やはり私は何といっても地方財政改革をぜひ御議論していただきたい。早急にやってほしい。地方分権と言いながら、地方制度、地方財政改革を言わなければ、これは全く意味のないことかと思うのですね。分権というのは、基本的に地方で負担して、地方でちゃんと税金を取って、その地域にとって必要なことをやるというふうな形をいかにつくるかということですので、絶対にやってほしいというのは、まず第一に挙げろと言われたらそこかと思います。
  46. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど制度改革に手をつけなければいけない、その元年であるというふうにおっしゃいましたけれども、発想の転換を含めた抜本的な制度改革が必要である、先生がお書きになったものを見ますと、行政そのものを削減しなければいけないような大胆な削減が必要である。例えば、どの農業政策をやめるのかとか、どの地域振興策をやめるのかという具体的なことをきちんとやっていかなければいけないというような御提言をなされておりますが、今年度予算においては、例えば具体的に、先生、これはもうやめるべきであるとかというようなことがございましたら、ぜひ御教示をいただければありがたいのですが。
  47. 吉田和男

    吉田公述人 制度改革を伴わなければできないということが、予算のかなり苦しいところかと思うわけです。  ですから、制度改革をまず行って歳出を削減するというときに、例えば、農業予算というのは常に議論の対象になってきて、今まで農業予算は随分少なくなってきているわけですね。私は、少なくなっていること自身は評価するわけですが、しかし、それをもっと進めるためには、やはり農業を今の制度のもとで、確かに、予算だけ削れば、農業をつぶすのかという議論は正しいことになってしまうわけですね。ですから、農業予算改革する前に、あるいは同時で結構なんですが、例えば農業の法人化とか農協の改革とか、そういうのを同時にやってほしいのですね。これは割合今機運があるわけですから、やろうと思ったらできますから、ぜひやっていただきたいと思います。
  48. 生方幸夫

    ○生方委員 私もそのとおりだというふうに思います。  それから、先ほどの地方分権のことに戻るのですけれども、三千幾つも市町村があるのはいかにも多過ぎるのではないかというような印象を受けた発言だったのですけれども、具体的には、一番うまく地方分権が機能するというのはどのぐらいのロットの市町村というのを考えればよろしいのか、ちょっとお考えがあったら教えていただきたいのですが。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 吉田和男

    吉田公述人 確かに市町村の規模というのは難しいわけですが、やはり二、三十万以上ぐらいが効率的であるということは過去の計算からも出ているわけです。それにするだけで随分、現在の基準財政需要の計算の仕方からいっても節約できるところが出てくるわけです。  ところが、問題は、統合しにくい地域が必ず出てくるわけですね。極端な例を言いますと、離島とかあるいは山の中とか、そういったところなんですね。そういうものをどういうふうに地方自治体としてやっていくかということが考えられなければいけないわけで、私ども、研究会をやっているのですが、その中では、国の中で地域全体を支えるというのではなくて、地域に割って、その地域の中の相対的に力のある自治体が、そういった山間なり離島なり、そういうものを少しずつお金を出し合って支えたらいかがかな、そういうふうなことも考えております。
  50. 生方幸夫

    ○生方委員 もう一点だけお伺いしたいのですけれども、先生は金融にも非常にお詳しいので、今度の日銀法の改正について、先生のお考えがありましたら一言ちょっと教えていただきたいのですが。
  51. 吉田和男

    吉田公述人 日銀法の改正というのが非常に重要な課題になっているかと思うわけです。もともと戦時体制向きにつくられた法律ということを聞いておりますので、当然の改革。  それで、独立性の問題ということで、私は、そのポイントをどう担保していくかということが重要かと思うのです。といいますのは、例えば、国債をめちゃめちゃ出して、日銀が独立した金融政策をやれと言ってもこれは無理なんですね。結局、例えば金融機関がばたばた倒産するなんていったときに、日銀はそれを見捨てることはできないわけですね。ですから、私は、日銀法そのものの議論と同時に、独立性を保障された日銀が、どうやって運用していく環境にすべきかということも御議論いただきたいと思うわけです。それがないと絵にかいたもちになるような気がして仕方がありません。
  52. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。  続いて、谷山公述人に一点お伺いしたいのですが、財政再建元年であるということで、歳出をカットしなければいけないということで、先ほど防衛費とか公共事業費で大体三兆円から八兆円程度、歳出が削減できるのではないかというようなお話を伺いましたが、もう少し具体的に、例えばどの部分をどういうふうにすればどれぐらい削減できるのかというお話を伺えるとありがたいのですが。
  53. 谷山治雄

    谷山公述人 お答え申し上げます。  私が三兆円から八兆円と申しましたのは、歳出削減だけですと三兆円ぐらいで、それから、いわゆる企業優遇税制などを改善しますと八兆円ぐらいになります。そういう趣旨で申し上げたわけでございます。  私は、時間の関係もございますし、不勉強でございますが、防衛費は、やはり人件費を削減するのはどうかと思いますし、いわゆる事実上軍隊というものがありながら演習もしないというのもおかしな話なので、そういう費用は残しておいて、あとの、いわゆる専守防衛には当たらないようなものをカットしたらいかがかというふうに考えておりますので、およそ一兆円ぐらいになるのではないかと、これは推計でございますが、そのように考えております。  それから、公共事業費の方は、これはもう新聞等でも言われておりますし、それからアメリカ側の方からも、日本の公共事業費は単価が二割ないし三割高い、そういうふうに言われておりますので、これも二割と仮定しますと約二兆円ぐらいの規模になる。いろいろございますが、そういうのでざっと三兆円ぐらいになるのではないかと思います。  先ほど時間の関係で言い忘れましたけれども、私も最近は民間のいろいろな経営のコンサルタントをやっております。民間の経営では、例えば、一律五%経費節約と号令を下すことがしばしばあるわけでございますね。そして、シーリングというのは、いわゆる増分主義を抑えるという意味がありますが、それにはカットするという意味が余りないのでありまして、私は、予算の編成にしましても、シーリングという考え方よりも、むしろ一度カットを考えてみて、それで必要なら復活するというような考え方に行ったらよろしいなと思います。  それから、企業優遇税制の是正でございますが、これは、私は時間の関係上、どれがどうということを詳しく申し上げる余裕がないわけでございますが、昨年の税制調査会の法人課税小委員会が、課税ベースの拡大ということについて報告をいたしました。これは非常に貴重な報告でございまして、その中で、いわば引当金などは約三十兆円ぐらい残高があるわけでございますから、一遍には廃止できませんが、これをなしましにやりますと、かなりの財源が出てくる。五兆円が正確かどうかわかりませんが、その規模は出てくるであろう。これは予算委員会がいいのかどうかよく存じませんが、この税制調査会の法人課税小委員会の課税ベース拡大についての御論議をぜひお願いしたい、かように考えております。
  54. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。  岡崎公述人に一点だけお伺いしたいのですが、駐留なき安保というのが将来的に今可能かどうかという一点、ちょっとお伺いしたいのですが。
  55. 岡崎久彦

    岡崎公述人 先ほども申し上げましたけれども、日本という場所は、ワシントンのちょうど反対側になりまして、それでアメリカ冷戦後の世界秩序を維持するためにはどうしても離せない基地なんだ。どうして離せないかと申しますと、地球の反対側にアメリカ側から持ってくるということは大変時間がかかるのですね。そのためにも基地があるということと、それから常駐しているということが、ほとんど同様の意味を持っております。
  56. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。
  57. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、矢島恒夫君。
  58. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。公述人の皆さん方、本当に御苦労さまでございます。私の与えられた時間はたったの十分でございまして、できるだけ皆さん方にお聞きしたいと思いますが、まず最初に、谷山公述人にお聞きしたいと思うのです。  政府自身が、可処分所得の伸びが個人消費の上昇というものに必要だということは言っているわけです。ここで、九兆円の負担ということで先ほどお話があったわけですけれども、結局、可処分所得が大幅に減少していく。結局、今度の予算というのは、私たちは景気回復妨害予算ではないかと、そういう面では。政府答弁を聞きますと、規制緩和など改革を進める、そういう中で、年度後半は景気は回復軌道に乗る、こういう答弁があるわけなんです。しかし、規制緩和とか構造改革などによってプラス面だけはいろいろと話が出るんですが、橋本総理も、改革には痛みが伴う、こういう発言はしているわけであります。  そうした中で、今谷山さんが述べられた中で、いわゆる凍死状態に現在あるような、バツか三角、こういう印のついた中に、中小企業の問題や失業者の問題が入っているわけですけれども、規制緩和ということによっての痛みの面で、これら中小企業問題や失業者の問題について、公述人どうお考えか、御意見ありましたら教えていただきたい。
  59. 谷山治雄

    谷山公述人 規制緩和というのは大変きれいな言葉なんで賛成しがちなんですけれども、具体的に申しますと、例えば大店法の改正などでスーパーが大幅に進出してきますと、これ自身、相当周辺の小売業が閉鎖になってくる、こういう問題もあるわけなんです。規制緩和というのは言うならばもろ刃の剣みたいな役割を持っておりまして、そういう意味では規制緩和一般が経済の活力を大きくする、こういうことではないというふうに考えているわけなんで、問題は中身であろうかというふうに私は存じます。  そういう意味で、規制緩和あるいはこの構造改革が一般的に財政再建なり日本経済の活力の向上に役立つかどうか大変疑問な点がございますので、これはぜひとも中身を御検討願ってお考え願いたい、かように考えております。
  60. 矢島恒夫

    ○矢島委員 これは、中小企業の大店法などによるいろいろな問題が地域にもう既に波及しております。  それともう一つ、また谷山公述人ですが、このバツ印、三角印の中にある失業者の問題なんですけれども、これについてはどんなふうなお考えかお聞かせ願いたい。
  61. 谷山治雄

    谷山公述人 この完全失業率の増大というのは非常に深刻な問題でございまして、これは日本経済のマクロとミクロとのギャップのようなことになるわけなんですが、結局、企業としましてはリストラということでもって人員整理をする、これはマクロ的には非常に大きな弊害を来す、こういうことになっているわけなんです。この問題につきましてやはり大事なのは、企業に対して一々リストラをするなと言うわけにもなかなかまいりませんから、ちょっとこれは労働組合の力というものがございますがなかなか難しいので、これはマクロ的な経済政策で思い切った景気回復、特に消費不況のといいますかあるいは消費不振の解決、これをやることが雇用増加につながってくるんではないか、私はかように考えております。  もう一つの問題は、いわゆる産業の空洞化の問題でございまして、これがいわゆる雇用に影響を来している。私は、長い目で見ますと、空洞化の問題はいずれはおさまるんではないかというように考えておりますが、当面、非常に緊急な問題でございますので、この空洞化そのものは、もちろん企業の自由といえばそれまでなんですが、それこそ何らかの規制を加える必要があるんじゃないか、かように考えておりまして、産業の空洞化に対する対策も失業防止の一つの重要な方策ではないか、かように考えております。  なお、ついででございますが、私は、失業者の統計が欧米と日本とはかなり違っている、日本はむしろ過小評価ではないか、こういう話も聞いておりますので、この辺も失業問題をやる場合にはぜひ御検討は願いたい、かように考えております。
  62. 矢島恒夫

    ○矢島委員 谷山公述人にまた続きますけれども、消費税の問題です。  確かに、御指摘がありましたように、この問題の中身について深く論議されていない。確かに二%で五兆円という負担がかかってくるということは当委員会でもいろいろ出されているわけですが、中身に具体的に入った論議というのはほとんどなされてないわけであります。税制特別委員会というのがございますが、これはほかの委員会の問題ですけれども、昨年の臨時国会のときに一日、七時間開かれたというだけですから、徹底審議が今必要だ、こう考えておるわけですけれども、そこで中身に少し入るんですが、益税問題なんです。  その問題や、あるいは限界控除などの問題で特例措置をなくしていこうというようなことも出されているわけですが、私、この問題は、こんなことを考えることはそもそも消費税導入のときの政府の約束違反じゃないかと思うんですが、谷山さんの御意見ございましたらお聞かせいただきたい。
  63. 谷山治雄

    谷山公述人 私は、まず、消費税の論議につきましては、簡単に申しますと、昨年の九月末までに一度見直すということが附則二十五条に書いてございましたですね。私は、当然これについては国会で審議が行われるものと期待しておったのでございますが、閣議決定ということでもって五%に決まってしまった。それから、臨時国会でもたしか一日の審議で終わったというお話を聞いておりますので、この点、消費税が五%になりますと全体で十二兆五千億円ぐらいの税収になって、所得税、法人税に次ぎます大変大きな税目になりますので、これが非常に論議不十分で結論が進行するのはいかがなものか、かように考えておりますので、この点はぜひ国会の方々の御努力をお願いしたい、かように考えております。  それから、益税の問題でございますが、これは、法律論からいいますと益税というのは発生しないわけでございます。こういう席上で余り変な法律論を言いたくございませんけれども、もともと消費者というのは消費税の納税義務はないわけでございますから、結局、事業者が消費税と称して価格の中に入れて消費者からもらっている、それを納めないのが益税、そういうことになってくるわけなんで、法律論からいいますと益税というのは存在しないわけでございます。これが第一点。  それから、第二点、現実の問題でございますが、確かに消費税と称してお客さんからもらって払わないという事実は私はあると思いますけれども、一面では、いわゆる損税というのが大量に発生しておるわけでありまして、これが一番典型的な例えといいますと、社会保険診療などいい例でございまして、結局、医療機器、医療資材は全部消費税込みで買われる、それで控除できませんから、事実上はそれが損税になっている、こういう事態が非常に多いわけなんです。私は、これまで統計的に、益税が多いのか、損税が多いのか、詳しく計算したことはございませんけれども、益税というのはないわけではないけれども、むしろ損税の方がかなり大きいのではないか、かように考えておりますのが一つ。  それからもう一つは、限界控除の廃止その他は、いわゆる益税批判からお考えになったと思うわけでありますが、これはヨーロッパ諸国にもある存在でございまして、時間の関係上詳しいことを申し上げられませんけれども、実は日本では余りやられておりませんが、コンプライアンスコスト、つまり納税者の納税義務遂行のためのコストということが欧米では非常に調査が盛んでありまして、一つだけ例を申しますと、イギリスのバース大学のサンドフォードという教授でございますけれども、付加価値税のコストは中小企業の場合には大企業の数十倍に当たるという調査もございます。これを保障するのが限界控除の一つの役割と私は考えております。結局、消費税なるものを消費者からいただいても全然手数料をもらわないわけなんで、私は、そのかわりが限界控除である、かように考えておりますので、これが廃止になりますということは、簡易課税の引き下げや、あるいはいわゆる日本流のインボイスといいますか、それに絡んで、中小企業に大きな打撃を与えて、このコンプライアンスコストを非常に大きくする。これは税率の引き上げと並んで非常に今重要な問題でございますので、消費税論議もぜひその点にひとつ焦点を当てて論議されるようにお願いしたい、かように考えております。
  64. 矢島恒夫

    ○矢島委員 岡崎先生にもお聞きしたがったのですが、集団的自衛権の問題はともかくとして、軍備はもう十分だ、これ以上拡大しなくてもいいんだ、そのあたりを興味を持ったのですが、時間が来てしまいましたので、終わります。
  65. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、北沢清功君。
  66. 北沢清功

    ○北沢委員 公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。社会民主党の北沢清功でございます。  私は、一括して三人の方にお伺いをいたしたいと思いますが、これはすべて関連している問題でありますから、御承知おきをいただきたいと思います。  まず、岡崎先生には、今も言われましたように、日本軍事力というのはアメリカに次ぐくらいの軍事力を持っているんじゃないかと言われております。  特に私が印象深いことは、米ソ対立の中で、ソビエトをいわゆる仮想敵国にしたような戦略があったわけでありまして、そういう中で沖縄問題を見ても、いわゆるアメリカ一つの意向というか戦略というものの中に日本の防衛ということがある程度組み込まれているのではないかという思いでありますが、特に北朝鮮の問題や、将来起こり得べき中国をある程度危機感を持って見るというのが、私は今の評論家の皆さん、マスコミの皆さんの立場だと思います。  北朝鮮は、私は今の段階では日本にとっては侵略の脅威にならぬのじゃないかという思いでありますが、いずれにしても、この間の、二年前の原子炉の問題のときに、毎日報道されるテレビは、今にもミサイルが飛んでくるのではないかという物すごいキャンペーンがございまして、それとあわせて、いわゆる後方支援という形で、しかも日本国民の権利を侵害するような意味での危機管理というものも恐らく立案をされたわけであります。  その後、リムパックの問題で、米韓日という軍事体制、協力体制も進んでいるわけですが、そういう中で、あのときにカーター元アメリカ大統領が来て、一晩来たらぴたっととまったのですね。一体あの騒ぎは何だろうと私は今思っております。  仮想敵国のことをいえば、かつて鬼畜米英ということや中国ということの中で、いわゆる恐怖心を呼び起こすことは、私は恐怖政治につながるのじゃないかという思いをしております。  そういう意味で、いわゆるアジア外交というもの、アジアの平和外交というものでお互いの信頼をとるということが、私どもは、アメリカの戦略もさることながら、日本としてのとるべき一つの方途ではないか、重要な問題ではないかと思いますが、このことに対する先生の御回答をお願いをいたしたいと思います。  次に、短いものですからはしょりますが、吉田先生には、いろいろと問題はありますが、今まで国会の論議で、貯蓄率というものがほとんど出てきていませんね。日本人は非常に、世界的に貯蓄が多いということはここ二、三年前まで言われまして、私は、日本人というのは慌ただしく働き、慌ただしく死んでいくにすぎぬのじゃないか、そういう表現で実は皮肉っておったんですが、地方分権の問題も先生と全く私は同じ考えですが、貯蓄率というものの中で今度の健康保険の問題なんかも見て、貯蓄の分布を見ると、やはりお年寄りの皆さんの所得というのは多いのですね。しかし、非常に困っている方もいるし、不安もあるわけですから、そういう意味でこの立案の一つの根拠になったのじゃないか、私はそう思っていますので、いわゆる日本人の貯蓄率。今、金融不安のために、それから最近の低金利ということで、たんす貯金や、郵便局には列をつくって行っております。その状況を私は現場で見て、やはり貯蓄率というものを考え、これをどういうふうに生かすかということが重要な課題だ、そのことが一つのかぎだろうというふうに私は思っています。  さらに、谷山先生にお伺いしたいのですが、先生消費税に対する考え方、その中においては、逆進性をどうすれば解消できるかという意味で、金券を配るということを含めて、幅広く公正にするという意味では貴重な御意見だと思っております。  しかし、いろいろ今まで景気浮揚のために公共投資していましたね。五十兆ぐらいになるのだと思います。そのことは、一つには社会資本を先取りをしたという意味にもとれますが、やはり雇用を守るという意味では非常に重要な役割をした。今でさえも雇用率は高いわけですけれども、そのことは私は一つのプラス材料になろうと思います。  それからもう一つ、先ほど申すように、減税が消費につながらなくて貯蓄につながっていくという、日本の持っている社会の不安、また北欧とは違う意味での負担率、そういう面で、景気回復のおくれている理由というものがやはりここで問われなきゃいけないわけですね。その点について、谷山先生に御高説を伺いたいと思っております。  以上です。
  67. 岡崎久彦

    岡崎公述人 三人で十分ぐらいと存じますので、三分ぐらいでお答えしたいと思います。  確かに、朝鮮半島の二年前からの経過でございますね、あれはもう先生おっしゃったとおりの経過でございます。その間のアメリカの物の考え方は、これはアメリカ公聴会の議事録などを全部読んでいれば大体わかるのでございますけれども、結局はあれは宥和政策なのでございます。北朝鮮があるいは開発しているかもしれない一、二発の、原発、これをもう許すかどうか。あの時点までは許さないという考えだった。しかし、これを許さないとなりますと、これはソウルも巻き込む大変な戦争になるのでございます。その人命の損害、それを全部考えるととてもそこまでいけないんだ、だからその点だけは目をつむるよりしようがないということを公聴会で言ってございます。  ということは、宥和政策というものは必ず賛否両論あるのでございまして、宥和政策の一番悪いケースというのは、宥和した結果、そのときしておけばよかった危険がもっと大きな危険になって将来起きてくる。宥和政策の一番の手本になっておりますのは、ミュンヘンのヒトラーとの和解でございますね。その問題がございます。  ただ、その当時から言われておりましたのは、ミュンヘンの場合は、ほっておくとだんだん向こうが強くなる、ところが北朝鮮の場合は、もしじっと抑えておければだんだん弱くなるのではないか、そういう現実的な計算の上に立って、あるいは宥和政策というものも意味があるのじゃないか、そういう議論がございました。  ということは、つまり軍事バランスの問題でございまして、戦争ができないような軍事バランスをしっかり持っておく、言葉をかえれば、問題が平和的解決以外あり得ないような軍事バランスをつくっておく、それが平和の基本なのでございます。  その平和の基本を知った上で、外交というものは、まさに相互信頼醸成、友好関係の増進、これが外交の目的でございます。ただ、その前提条件として、平和以外はあり得ないという軍事バランスをつくって、そこから先は大いに友好関係を増進する、それが外交基本であると存じております。
  68. 吉田和男

    吉田公述人 時間がないので、一言で申させていただきますが、まさに日本経済というのは貯蓄をうまく活用して高度成長したわけなんです。今やこの貯蓄が減ろうとしている、貯蓄率が下がろうとしている時代ですので、非常に貴重な貯蓄をもっとうまく活用する必要があるわけです。貯蓄率が高いことが経常収支黒字で摩擦を引き起こすというふうな議論をされているのは、まさにうまく活用されていないという証拠でもあるわけでして、例えばベンチャーキャピタルとか、そういった、どうしてもこれから進むようなところというのはリスクの高いところに投資しなきゃいけないわけですので、そういった貯蓄を活用する金融上の仕組みをもっと改革していく必要があると私は思っております。
  69. 谷山治雄

    谷山公述人 日本人の貯蓄率が高いのは、もちろん勤勉の証拠でもございますが、一方では、やはり教育、それから病気、失業、老後の心配があるから貯金をしている、そういう状況が私は主な側面にあると考えます。  そこで、所得税減税の問題でございますが、所得税減税しても貯蓄に回る方が多いのじゃないかということの一つの理由は、特に、現在の源泉徴収制度に一つ理由がございまして、つまり、給料も、税金を差し引きますと銀行へ振り込みになるというのが大勢でございますので、労働者、サラリーマンとしましては、減税分を一々計算しまして、その分をおろして使うということはちょっと考えられない行為になるわけなんです。私は、これはむしろサラリーマンを含めて、全面的には無理かもしれませんが、仮に申告納税制に切りかわりますと、減税が消費に回るということはあり得るのではないか、こういうふうに考えております。日本人のそういう生活、心理その他を含めまして、今の源泉徴収制度にも消費に回らない一つの理由があるのではないか、かように考えております。
  70. 北沢清功

    ○北沢委員 終わります。
  71. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、岩國哲人君。
  72. 岩國哲人

    ○岩國委員 太陽党を代表しまして質問させていただきます。  五分間私の割り当て時間をふやしていただきまして、委員長の御理解に心から感謝いたします。五分間は太陽党のために、五分間は新進党のために質問させていただきます。  まず最初に、岡崎大使にお伺いしたいと思います。  先ほどお話しの中で、アメリカの中で、アメリカは孤立すべきではないという人の意見は非常に小さくて、一%ぐらいのものであると。その一%というのは国会議員レベルでの一%なのか、国民レベルでの一%なのか。つまり、アジアに米軍を置くべきであるという世論調査は、国民の間では何%ぐらいがそのような意見を持っておられるのか。どういう御認識を持っていらっしゃるか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  73. 岡崎久彦

    岡崎公述人 世論調査の数字は存じませんけれども、外国から全部駐留兵力を撤兵しろと言っている評論家はただの一人でございます。ブキャナンという人だけであります。それ以外の人はそういうことを言っておりません。
  74. 岩國哲人

    ○岩國委員 私の理解では、そうしたいわゆる識者の方の中には特にヨーロッパということが頭にあって、人種が同じ、宗教が同じ、そういうヨーロッパに対する懸念から海外の駐留の必要性を認めておられる認識が非常に広く浸透していると思いますけれども、アジア、日本ということだけを取り上げますと、私は、一般の国民の間には非常にそれをサポートする意見は少ないのではないかなと思います。  次に、もう一つお伺いしたいと思いますのは、先ほど生方議員からも御質問がありましたけれども、基地なき日米安保という考え方について、これは先般大使も御一緒していただきました番組で、ロナルド・モース、アメリカを代表する知日派でありますけれども、モースさんは持論として以前から、もうそろそろ基地なき日米安保ということに日本は踏み切るべきだ、こういうことをおっしゃっています。これについて先ほど大使は、アメリカの立場から沖縄が必要だ、日本が必要だという御説明がありましたけれども、日本の立場から考えて、日本に依然として米軍基地は必要なのか、あるいは近い将来そのようなことを日本として主張すべきであるかどうか、その点について御意見を伺いたいと思います。
  75. 岡崎久彦

    岡崎公述人 今の御質問は有事駐留のお話ではなしに、基地そのものが必要かどうかというお話かと存じます。  私は、そういう大きな話になりますと、結局日本という国家の国家戦略に関する問題でありまして、これは私の持論でございますけれども、日本という島国は、海洋を支配しておりますアングロアメリカの世界、これと同盟している限りは国民の平和も安全も守られる、それから繁栄も守られる、それから世界の資源へもアクセスできる。その意味で、日米同盟さえ確保していれば日本国民は将来恐らくこれから何十年間か安全と思っております。そうなりますと、今度、アメリカが必要かどうかという問題になってくるわけであります。アメリカ日本基地が必要だと認識すれば、日米同盟は続きます。もう日本基地など要らないというふうになってきますと、これはありとあらゆる可能性が開けてまいります。
  76. 岩國哲人

    ○岩國委員 次に、谷山公述人にお伺いしたいと思います。  公共投資、公共事業の景気に対する貢献というのは意外に低いんだ、その借金のコストというものが足を引っ張る効果があるという御意見、大変鋭い御意見だと私も同感であります。そして、今度五%に消費税を増税した場合に、転嫁できない三三%、転嫁できる数字が六七%とおっしゃいましたから、転嫁できないのは三三%と私なりに計算しましたけれども、それがもたらす一兆円以上の税収不足、その他の影響によって、大ざっぱに言って、財政再建効果にマイナス効果、二兆円目減りがあるというお話でございましたけれども、今回の予算は景気妨害効果としては私は大変高く評価しております。妨害効果としては大なるものがあると思いますけれども、それに加えて二兆円のこうした税収目減りがあるということは大変深刻な問題を起こすのではないかと思います。  そこで、お伺いいたしますけれども、こうした特別減税約二兆円を継続する方がいいとお考えなのか、あるいは、同じ効果をねらうのであれば、消費税一%を減額して四%に抑えた方がいいのか、どちらの方が効果がいいとお考えでしょうか。
  77. 谷山治雄

    谷山公述人 お答えいたします。  私は、実は所得税減税も消費税の軽減も両方必要だと思いますけれども、あえてどちらかと言われますと、所得税は、御承知のように納税者人口のほかに、所得があっても納税しない人、一番いい例はパートタイマーの主婦でございますが、これが約一千万人おりますし、それから、払っていてもそれほど多くない年金生活者が約千五、六百万人おります。あと失業者、生活保護者でございますので、大体二千数百万の人が所得税に縁がないわけでございますので、こういう人には減税効果は及ばないわけでございます。それなら消費税の戻し税の方が、先ほど商品券などと申しましたけれども、消費税を軽減した方がむしろ低所得者にも効果が及ぶ、消費増大ひいては景気回復効果になると考えておりますので、両方必要だと申し上げたいのですが、どちらか選べと言われますと、私は、消費税の軽減の方を優先させたい、かように考えております。
  78. 岩國哲人

    ○岩國委員 次に、谷山公述人にもう一つお伺いしたい点は、食料品に対する非課税の問題。  私もアメリカ、ヨーロッパに長く住んでおりまして、そうした口から入るものについては税金をかけないという思想が非常に徹底しているわけでありますけれども、日本の場合に、食料品が非常に国際的に割高であるということになりますと、食料品がさらにそれによって割高になっていく。むしろ、政策としては、消費税を課税しないどころか、そうした割高を是正する意味で消費奨励金を食料品の購入に適用すべきではないかと思いますけれども、こういう意見に対してはどのように思われますでしょうか。
  79. 谷山治雄

    谷山公述人 食料について奨励金を出すというのは、実は初めて御意見をお伺いしましたので、検討させていただきますけれども、先ほど私が申しましたように、食料品は非常に割高でございますので、これは時間の関係上一々統計は申し上げませんし、先生もよく御存じだと思いますけれども、例えば日本で一番高い東京と、例えばドイツで一番高いボン、ハンブルクを比べますと、大体食料品の価格はボンの方が三割安いわけでございますから、それに一五%の付加価値税がかかるのと五%の消費税、まるで違ってくるわけなんで、こういうことが一つの基礎的な私は問題であろうと存じます。  奨励金というお話につきましては、初めてお伺いしますので、検討させていただきたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、消費税の戻し税を例えば商品券という格好で全世帯に配りますと、例えば食料品分だけですと、大体一人当たり一万五千円ぐらい配ればいいことになりますけれども、それで食料品を買うとなりますと、かなり食料品を事実上安くすることになるし、消費促進にもなる。大変私の個人的な考えでございますが、一度ぜひ御検討をお願いしたい、かように考えております。
  80. 岩國哲人

    ○岩國委員 先ほどの質疑の中で、減税は必ずしも消費に結びつかない、減税は貯蓄に結びつきやすいといったようなお話があったように記憶しておりますけれども、私は、小さな減税は貯蓄に結びつき、大きな減税は消費に結びつくという考えを持っております。ただし、今のような低金利のときには小さな減税といえども貯蓄に結びつく比率が少なくて、消費の方に結びついてしまう。金利水準によって、減税が消費に向かうか貯蓄に向かうか行く先が違ってまいろうかと思います。  そこでお伺いしますけれども、先ほど地方自治体の低利借りかえの話がありました。地方自治体が高金利の借金で苦しんでいるときに、そうした低利借りかえができない。また、政府の指導によってそれをやってはならないといったようなことから、結局、財投の利益水準を高めるために……
  81. 深谷隆司

    深谷委員長 岩國委員に申します。時間が過ぎていますので。
  82. 岩國哲人

    ○岩國委員 あるいは銀行に対する借金を返せない、銀行の利益性を確保するためにこうしたことが行われているんじゃないかと思います。これについて御意見を、吉田教授からお伺いしたいと思います。
  83. 吉田和男

    吉田公述人 財投の仕組みというのは、金融システムの中では極めて特異な形になっているわけです。それは、特に償還期限が非常に長い、しかもその固定期間が非常に長い。これはマーケットがもし完全でありますと裁定されることになるんですが、それが財投であるがゆえに非常に難しい側面を持っている。ですから、財投改革、今議論されるということですので、金融システムのあり方とあわせて議論されることを望んでおります。
  84. 岩國哲人

    ○岩國委員 どうもありがとうございました。
  85. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、お忙しい中をお越しいただいて、また貴重な御意見をありがとうございました。心からお礼申し上げます。  午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  86. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成九年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませずわざわざお越しいただきまして、まことにありがとうございました。平成九年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にさせていただきたいと思いますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず今井公述人、次に財部公述人、続いて蝋山公述人の順序で、お一人二十分程度でお願い申し上げ、お一人お一人の御意見をお述べいただきました後、委員から質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、今井公述人にお願いいたします。
  87. 今井敬

    ○今井公述人 新日本製鐵の今井でございます。本日は、予算委員会の公聴会に公述人としてお呼びいただきまして大変ありがとうございます。私からは、日本の経済構造改革につきまして、産業人の立場から意見を申し述べたいと考えております。  私の現在の日本経済に対する認識でございますが、中長期的には製造業を中心といたします産業の空洞化及びこれに伴う雇用の空洞化に関しまして大きな懸念を持っているところでございます。また、御承知のように、我が国は二十一世紀に向けて急激な高齢化社会を迎えるわけでございますが、これに伴う経済活力の低下は避けて通れないと考えられますことから、極めて深刻な問題と受けとめているわけでございます。このことは、中長期的に見ますと、強靱な経済基盤を確立しないと財政も社会保障も立ち行かなくなる、そして、豊かな国民生活を維持できなくなるということでございまして、この意味から、経済構造改革は国を挙げた取り組みが不可欠である、かように考えます。また、空洞化の現在までの進行のスピードあるいは高齢化のスピードを考えますと、残された時間はほとんどないわけでございまして、その意味から早急な対策が必要となってきていると思います。  現在、政府では、財政、金融、社会保障など六つの改革を検討しておられますけれども、こうした改革はそれぞれ密接に関係しております。社会保障改革なくして財政改革を行うことはできませんし、また、金融制度改革を行わないで経済構造改革もあり得ないわけであります。したがいまして、政府におかれましては、それぞれの改革を相互に整合性を保ちつつ、強力かつ早急に推し進めていただきたいとお願いしているところでございます。  こうした現状の認識に立ちまして、経済構造改革について申し上げたいと思いますが、私は、経済構造改革を四つの視点から考えることが重要だと思っております。第一は、高コスト構造の解消でございます。第二は、新規産業の育成でございます。第三は、制度の国際的なハーモナイゼーションでございます。第四は、公共投資の見直しでございます。  まず第一の課題といたしましては、何としても高コスト構造の解消でございます。経済人の立場から見ました場合に、現在最大の問題は産業の空洞化でございます。つまり、数年前の急激な円高などを契機にいたしまして、国際競争にさらされている産業、特に製造業が急激に海外シフトを強めているところでございます。これは一種の海外逃避でございます。資源のない我が国の製造業が海外に移転してしまうということは、資本の論理からいえばこれは問題ないかもしれませんけれども、しかしながら、資源や食糧が不足している我が国、それの輸入に必要な外貨を獲得するという観点、あるいは雇用を確保するという観点から見ますと、この海外逃避は国民経済的に見て大変大きなマイナスであるというふうに考えるわけでございます。  このような産業の空洞化の理由はさまざまであると思いますが、最も大きな理由は、産業が立地する箇所として日本がコストの高い国である、こういうことだと思います。立地する国としてコストが高いということから、本来ならば日本国内に残れる産業、あるいは生産性が高くて効率もよくてぜひ日本国内に残さなければいけない産業までが海外に移転し始めているということでございまして、もとより、こういう大競争時代にありましては、国内におきまして国際的な競争力を保つために、私ども個々の企業は血のにじむような努力をいたしているわけでございますが、しかしながら、こうした個々の企業の努力だけではどうにもならない高コスト構造が日本に存在している、こういうふうに思います。  それでは、この高コスト構造の原因は一体どこにあるかというと、やはりさまざまな規制に守られて国際競争にさらされていない分野の存在が非常に多くあるということだと思います。よく新聞に報道されておりますが、日本の流通、公共料金、サービスといったようなことは諸外国に比べると割高だというふうに言われております。こうした分野が規制に守られて競争にさらされていないことがこの高コスト構造の最大の原因だと思います。つまり、これは護送船団でございまして、一社たりともつぶさないということは、最も生産性の低い非効率なところに合わせて、そういうところが生き残れるように価格が設定されている、こういうことだと理解しております。したがいまして、こういった高コスト構造を解消、緩和するためには、徹底した規制の撤廃、緩和を断行して、そして自由競争の原理を導入するしかないと考えられるわけでございます。  こうした規制緩和の例でございますけれども、やはり内航海運あるいは電力料金とか、既に最近さまざまなところで幾度も指摘されているところでございます。政府も三月をめどに規制緩和推進計画の最終検討を進めておられますけれども、私もつい先日、官邸での行政改革推進本部におきまして、経団連を代表いたしまして三つの視点からの見直しをお願いしてきたところでございます。すなわち、今回は計画の最終改定でございますので、第一に、措置内容というのをあいまいにせずに明確に表現していただきたいということ。それから第二には、対象とする規制の範囲をできるだけ広くとらえていただきたい。つまり、税制だとかあるいは価格支持政策というようなものも規制の一種としてお考えいただきたいということ。それから第三には、規制緩和に伴う混乱や摩擦を回避する方策も含めまして、個別具体的な実行計画を明確にしていただくこと。この三つの点をぜひ考慮していただくようにということでお願いしてきたところでございます。  この規制の撤廃、緩和によって高コスト構造が是正できますと、日本経済は本来的には強い競争力、強い生産性を持っておると考えられますので、過度の空洞化あるいは雇用の空洞化は回避できる、かように考えております。また、新しい産業の育成、それから海外企業の対日投資の促進もできる、こういうふうに考えているわけでございます。  先般、政府の経済構造の変革と創造のためのプログラムという中で、物流、エネルギー、情報通信、金融、雇用、こういった点で抜本的な規制緩和をスケジュール感を持って推進することが閣議決定されましたことは、政府の強い意志のあらわれであるとして私どもは高く評価し、歓迎しているところでございます。  この構造改革の第二の論点は、新規産業の育成ということでございます。  構造改革を行っていくということは、非効率セクターを効率化していくということでございますから、必ずそこには雇用の問題が出てまいります。これを解消するには、新しい産業を起こして吸収していくということが、前向きかつ現実的な方策であると思います。この新しい産業を起こしていくには、技術の革新やあるいは人材の育成も必要でございますけれども、最大の課題は、やはりここでも規制の撤廃、緩和だと思っております。  よく、通信関連の自由化によりまして幾つもの新しい会社が通信事業に参入しまして、経済の発展に大変大きく貢献したということが言われておりますが、規制緩和に伴う新たな事業の創出の可能性ということは極めて大きいことが実証されているわけでございます。この意味からも、情報通信、環境関連、医療・福祉、都市環境整備、こういったような分野で、先ほど申し上げた政府のプログラムで方向づけされております新たな分野での大胆な規制の撤廃、緩和を早急に行っていただきたいということで申し上げているわけでございます。  特に、この問題につきましては、改革に伴う雇用の不安、これを解消するという観点からも重要だと思っております。新たな産業を起こすプログラムを明確化しまして、そしてこれを確実に実行していくということが、雇用に対する社会不安の解消の観点からも非常に重要な施策になると考えているわけでございます。  次に、第三の論点といたしましては、さまざまな制度の国際的な観点からの改革の問題でございます。この国際的な観点というのは、制度から見たときの産業立地箇所としての日本の魅力の問題でございます。魅力のないところに産業は立地しないわけでございます。  商法や独禁法のような企業組織制度、また法人税、固定資産税のような企業税制、さらには年金、医療などの社会保障制度、また雇用に関する労働法、こういったような制度は、企業の国際的な競争条件にとって非常に大きな影響を与える問題でございます。  とりわけ、私どものように国際的な競争にさらされている企業から見ますと、他国の企業と少なくとも競争条件をそろえて同じ土俵で競争していくということが非常に重要なことでございます。私は、こういったことは単なる産業のエゴとして申し上げているわけではないのでございまして、こうした制度を改革しませんと、既存産業が海外に出ていってしまう、また、新たな産業も育たずに、海外からの対日投資も行われない、こういう観点から申し上げているのでございます。そして、これをやらないと、その結果として国力が大いにそがれてしまう、こういう危機感を持っているわけでございます。  具体的に申しますと、例えば、独禁法の持ち株会社の解禁あるいは株式の保有制限、こういったことは早期に是正さるべきだと思っておりますし、税制につきましても、連結納税制度の導入はこれとあわせて必然のことであります。また、法人税の水準を諸外国並みに引き下げることも極めて急務の問題でございます。  それから、社会保障につきましても、年金、医療、介護、このすべてにわたりまして、第一に、どこまで公的な制度でカバーするのか、どこまで自己負担とするかということを明確にしなければなりませんし、また、世代間の負担の公平という観点からいえば、その財源を税に求めるのか、あるいは社会保険に求めるのかということも考えなければいけないと思いますし、第三には、供給サイドに民間の活力を取り入れること、こういうことも考えなければいけない。このような方法で福祉を適正化するということは、国民にとっても企業にとっても極めて重要な課題であると考えているわけでございまして、こうした意味からも、これらの制度につきまして国際的なハーモナイゼーションの観点から大胆な変革を断行していただきたいと切に希望する次第でございます。  第四の論点は、公共投資の見直しでございます。  公共投資の問題につきましては、財政改革の問題として大きな問題となることは当然でございまして、恐らく今後検討の中で、効率化やあるいは不必要な公共投資の思い切った見直しということを早期に行うことが検討されると思っておりますけれども、しかしながら、私は、公共投資を見直すということは、単に財政問題から相似形的に投資規模を落とせばいいという問題ではないと思っております。公共投資がすべて不要だということでは全くございませんで、何が有効な公共投資であるかということを考えるべきだと思います。つまり、公共投資の中でも、次世代の発展基盤の整備など経済の構造改革に真に資する分野での社会資本の整備ということは、グローバルコンペティションの中で従来にも増してその重要性がふえているわけでございます。  物流や情報通信など、コストが高いと言われている分野がございます。そこの分野において思い切った規制の撤廃、緩和あるいは競争原理の導入が必要なことは、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、それと並行いたしまして、高コスト構造の解消や国際競争力確保に資するような国家のインフラを整備していくことは、極めて重要だと思います。例えば、高規格の幹線道路の道路網の整備、ハブ空港の設置、国際的に競争力のある港湾の整備、国全体にまたがる光ファイバー網の拡充、こういったようなことは非常に重要なことだと思います。  また、これらと並びまして、新規産業の創出とも関係いたすことでございますが、資源のない我が国は、どうしても今後知識や技術で国を成り立たせていくことが必要でございます。したがいまして、国立研究所や大学などが産学官の連携のもとに新たなイノベーションをつくり出していけるような研究インフラの整備も、公共投資として極めて重要な問題であると考えます。そういう意味から、今年度の予算におきまして科学技術振興費が突出して非常に大幅に伸びたということは、大変意義があるというふうに感じておる次第でございます。  二十一世紀まで余り時間がございませんが、本格的な高齢化社会を迎えてしまうまでに、少なくともこうした社会インフラを整備しておくことが、国家の戦略的にも不可欠ではなかろうかというふうに考える次第でございます。今後、公共投資の単価の改善など民間並みの効率化を図っていくならば、大きな増額をしなくても、以上申し上げましたような社会経済の構造改革に資するような社会資本の整備の財源捻出は可能である、かように考えております。  以上、四点申し上げたわけでございますが、最後に、構造改革を進めていくに当たりまして出てまいります痛みの議論について、少し補足させていただきたいと思います。  構造改革を行う場合には、必ず出てくるのが総論賛成、各論反対ということでございます。それぞれの各論で反対が出てまいりますのは、それなりの不利益をこうむる部分があるからでございます。この問題につきましては、産業界も各論反対しない覚悟が必要であると考えております。つまり、構造改革は、みずからも痛みを甘受しつつ勇気を持って推進することが必要であると思います。経団連でもこのことは最重要事項として申し合わせを行っているところでございます。  なお、既得権の喪失への対応ということではなくて、社会的に痛みをこうむる本当の弱者につきましては、それなりの配慮が必要だろうと考えます。例えば、雇用の問題についてはある程度手厚い対応が必要であると考えます。これは、待ったなしの状態となっております改革のスピードアップを図る上で有効ではないか、また、コストの削減あるいは新規産業の創出に伴う経済効果、そういうことを考えますと、国民経済的にも是認されることではないかと思います。  しかしながら、私、こういうことを申し上げておりますのは、かつての石炭政策で行われましたように、非常に長期にわたって構造化するような対策を是とするということで申し上げているわけではございません。産業人の立場からすると、その施策にかかるコストとそれからその効果との比較考量の上で社会的な公平をどこまで担保するのかということを考えながら行うべきである、こういうふうに考えているわけでございます。  以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  88. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、財部公述人にお願いいたします。
  89. 財部誠一

    ○財部公述人 経済評論家の財部誠一と申します。本日は、私の意見開陳する場をいただきまして、どうもありがとうございます。  お手元に「「破綻」を回避するための一私案」という私の資料がおありかと思いますけれども、それは随時御参考にしていただきながら話を進めさせていただきたいと思います。  まず初めに、第一ページ目のところに、見にくいかと思いますけれども、こちらのこのパネルの写真のコピーがおありかと思いますけれども、実はこれはニューヨークの六番街というところのビルの壁にかけられたものでありまして、これは一体何かと申しますと、ナショナル・デット・クロック、こういう名前がついておりまして、直訳をしますと財政赤字時計、こういうふうなものがございます。これは、上の方の数字というのはいわば国全体の赤字の数字です。ちょっと見にくいかもしれませんが、下の方の数字はファミリーシェア、つまり一家族当たり幾ら借金を背負っておるかという、それを一つのパネルで、時々刻々と変わっていくさまが描かれている、そういうものです。  なぜこんなものを最初に私が話を持ち出したかと申しますと、今、日本が抱えている財政の厳しさ、これはもうさまざまなところで論議をされておるわけですけれども、その中で一番私が気になりますのは、こういう日本財政が大変厳しいんだという問題意識が、政治家の先生方であるとかあるいは役人であるとか、まだごく一部の限られた人たちの中だけの問題意識にとどまっておるのではないか。やはり本当に日本財政を立て直すんだということを考えたときに一番必要なことは、技術的なことよりも、まず最初に国民一人一人が日本財政状況というのをしっかりと把握する、これなしには私は財政再建というのはあり得ないというふうに思っております。  それは今の選挙制度を考えてみましても、小選挙区という制度の中で先生方が選挙に臨まれて、またその一方で国政というものにも責任を持っていこうとした場合には、常に地元の利益と国の利益と、ここをどうバランスさせるか、大変難しい問題だと思います。その際においても、やはり国民一人一人がそういう国の財政状況というのをしっかりと把握するということは極めて重要です。  これは、難しいことを言ってはわかりません。なるべくわかりやすく、説明がなるべく要らないように。例えば、私は今思っておりますのは、もし我が国でこういうNDC、ナショナル・デット・クロック、財政赤字時計というのをつくるのであれば、まあぜひおつくりいただきたいのですけれども、大きな数字はファミリーシェアにする、一家族当たり幾ら借金があるんだと。それで、下の方に国の、大きな数字になると実感がございませんから、大きな数字は下の方にと。いずれにしましても、借金が大変多くて、それが時々刻々とふえていく。ふえていくさまは、ちょっと計算をしますと、国の二百五十兆円の分だけで、地方分、地方の借金を入れなくても、公債の利払い費というのは一日当たり三百二十億円、一時間当たり十三億円というすさまじい勢いでふえていくわけです。  これを見るだけでも、私は、国民自身も財政再建という問題に対して積極的な意識を持てるのではないか、ひいては国全体の財政再建というものを進めていくための土壌ができるのではないか、むしろ、そういうナショナル・デット・クロックのようなものをつくっていくことでそういう意識を広げていくことも大切な政治の仕事ではないかなと僭越ながら考えております。これが、いずれこういう運動が広がっていくならば、各地方ごとにも、例えばその地方の財政赤字時計といったようなものもごく自然にできてくるのではないかと思います。  それで、こちらに参ります前に、今はやりのインターネット、私もこれ、余り得意ではないんですけれども、いろいろ苦労しながらちょっと引いてみますと、実はやはりアメリカの中には個人でこの財政赤字時計をつくって、これにアクセスをしますと、どんどんどんどん数字がふえていくさまが見えてくるのです。そのインターネットの画面は車が一台ずつふえていくのです。多分それは、二百万円か三百万円かわかりませんけれども、車が一台買える値段がふえていくさまが車が一台ずつふえていくという、そんな工夫までしてあるわけですね。こういった工夫もしながら、国を挙げて財政の問題に取り組む、こういう機運をぜひとも盛り上げていきたいというふうに私は考えております。  次に二番目、二ページ目に移っていただきたいのですが、ここには「財政を均衡させるための原則」というふうに銘を打ちました。  財政赤字時計をつくっただけでは財政赤字は一円も減らないわけでありますので、具体的にはどうするかというお話でございますけれども、このときに、私は、いろいろな財政再建の議論を聞いておって大変疑問に思う点が一つございます。それは、一体財政再建というのは何を指しているのか、何を目標にするのかということで、全く違う議論になってくると思います。  例えば、特例公債、赤字国債がゼロになればそれは財政再建なんだ、こういう考え方もあるかもしれません。いや、そうじゃなくて、単年度の一般会計の予算が均衡しなければいかぬ、こういう考え方もあるかもしれません。いや、そうじゃなくて、累積赤字が全部一掃されなければいかぬ、いろいろ考え方はあるかと思います。それから、目標一つとっても、GDP比で何%までに抑えたいとか、これも種々さまざまでありまして、国民にわかりやすい形、あるいは財政再建の議論をしたときに皆さんが同じ土俵でしっかりとかみ合った議論をするということもなかなかできない。  そこで、私が一点この中でもぜひ申し上げたかったことは、まず単年度の財政均衡を追求する、まずこれを通じて財政再建を図っていく。これはもちろん、単年度の財政均衡と申しましても、そこで厳しい枠をはめればそれが特別会計の方にしわ寄せが行くとか、いろいろ問題はあろうかと思います。あろうかと思いますけれども、まずはできることからやってみる、それを国民に見せてほしいという希望が強くございます。やはり、政治がキャッチフレーズで終わるのではなくて、法律に裏打ちをされた具体的な政策を政治家に示していただいて、事実として実態が変わっていく、これが国民の一番今望んでいることではないかというふうに私は思っております。  そこで、その目標としては単年度の財政の均衡。では、それは具体的に何を指すのだということになりますけれども、単年度の財政均衡という目標を実現するためにどういう手段、方法があるのかと申しますと、私は、国債の発行の禁止、これをもって財政の均衡というふうに申し上げたいと思います。政府も赤字国債の発行をゼロにしたいというふうにおっしゃられております。しかし、さらに申し上げますと、私は、建設国債、いわゆる四条公債に関しましても、やはりある一定の時間を置いた上で禁止をしていただきたいというふうに思っております。  そんなことができるのかという御指摘を、実はこういうお話をしますとよく言われます。そのときに、ちょっと飛びますけれども四番、四ページ目のシミュレーションの数字をちょっとごらんいただきたいのです。これは我々が試算をしたものでございますけれども、仮に二〇一〇年までに財政を均衡させるという、目標をつくった場合、一体どの程度ずつ歳出削減をしていけば達成できるのか、要するに、国債の発行をゼロにしても成り立つのかというものを実はシミュレーションしたものであります。このシナリオの一というところをごらんいただきたいのですけれども、これはもちろん、どういう選択をするかはもう政策の判断ですので、どれがいいかということは私はわかりません。わかりませんが、とりあえず一般歳出の中の経常部門を毎年三%ずつカットしていくとどうなるか。実は、毎年三%ずつ削減することによっても二〇一〇年に財政は均衡します。いやそんな、三%はできないということであれば、経常部門を二%削減をしますと、投資部門は毎年三%の削減で、やはり二〇一〇年で国債を発行をせずに財政を均衡させるという状況になり得ます。  これは、我々がもちろんあらん限りの情報に基づいて試算したものなのですけれども、あながちそんなに大きく、得手勝手な話ではないということは、例えば去年大蔵省が公表した試算がございまして、仮にマイナスシーリングを五%ずつ続けていくと、二〇〇二年には建設国債がゼロで済むという試算が出ております。また同じように、マイナスシーリング五%で二〇一〇年度に国債依存度がゼロになるという、これは経団連の試算です。大変厳しいとは思います、予算は伸びがゼロでも大変厳しいと思いますけれども、しかし、経常部門を三%の削減であっても二〇一〇年ぐらいにはできるという、ここはぜひとも御認識をいただきたいなと思います。  この財政の問題に関しまして、私、ぜひとも一言申し上げたかったことは、財政再建をする道は二つしかございません。収入をふやすか歳出をカットするかです。収入をふやしながら財政を再建するということは、実は極めて困難です。それは過去、あのバブルの最盛期、日本はすばらしい好景気を享受したわけです。その結果、赤字公債の発行はゼロで済むというところまで税収がふえました。ふえましたけれども、その間建設国債は発行され続けて、結果、累積債務はふえ続けているわけです。これを考えますと、その二〇一〇年、日本の人口がピークを迎えて、高齢化時代に本格的に足を突っ込んでいくわけです。そのときに責任を持つのは今の子供たちです。あるいは孫たちの世代です。彼らに、ただでさえ厳しい状況の中で、これ以上累積債務をふやしていくのは絶対にやってはいけないことではないか、私はこう思っております。それは、アメリカの第三代大統領トーマス・ジェファーソンが、子孫が支払うという借金は、大がかりな詐欺と同じであると。これは政治家の論理です。経済的に見てこれがどうか、これは別な議論があると思います。しかし、私は、この子孫が支払うという借金は、やはり今の世代が責任を持ってそれを解決していくというものこそ、今我々に求められている一番の課題ではないかというふうに考えております。  次に、二つ目の破綻。実はこれは、財政投融資の破綻を問題にしておるわけですけれども、これは五ページ目でございます。  財投の問題はいろいろございます。入り口、出口、中間、たくさんあります。また一方で、入り口の問題に決着をつけることで財投全体の問題、あるいは特殊法人の問題まで効率よく問題解決しようという考え方もございます。その結果、郵便貯金の民営化といったような御議論も多々あるように思われます。しかし、私は、この財政投融資に関しては、郵便貯金の自主運用という、いわば民営化と現在の形の中間であろうかと思いますけれども、そういうものに移行することによって大きな変化が生まれるのではないかなというふうに思っております。  それは、まず、民営化をしますと実は特定郵便局は成り立ちません。特定郵便局と申しますと、すぐに何か集票マシンであるといったようなことが言われます。しかし、実際私、地方の特定郵便局に取材に行ってみますと、これはその地元の地域の中でとても重要な役割を果たしている。このネットワークを簡単につぶすということは実に意味がない。というよりも、国益上大変損だ。むしろ、そのネットワークを生かしながら財投のもっと効率のいいあり方というのはないかということを考えますと、自主運用という方向に持っていきながら、さまざまな今の非効率な部分を変えていく、そういう中間的な解決の方法があるのではないかと思っております。  それは、ただ郵貯にだけ変化を迫るのではなくて、その一方に、出口である特に政府系の金融機関、これを保証業務に特化するように例えば変えてみたらどうなるか。例えば住宅金融公庫であれば、お金を貸すのではなくて保証をつけてあげる。政府系金融機関の開銀とか輸銀も、実際に融資をするのではなくて保証業務に特化するという形にすれば、これは直接的な財源はぐっと減ります。その結果、財投の予算自体もスリム化できるわけです。なおかつ、そうすることによって、実は、郵貯の自主運用の枠がふえますと、民間金融機関は単なるライバルではなくて、そこが逆.に、郵貯がお客さんになる、そういう新しい展開にもなります。また、新しい保証業務の登場というのは、ビッグバンという新しい金融自由化の流れの中で、ビジネスチャンスの拡大にもつながっていくのではないかというふうに考えております。  時間も迫ってまいりましたので、ちょっと駆け足ですけれども、最後に六番に進みたいと思います。これは三番目の問題、金融破綻の回避の問題です。いかにして金融破綻を回避するか。  私は、金融の問題に関しては随分長いことかかわってまいりましたけれども、今大変厳しい状況にございます。一年前よりも二年前よりもはるかに厳しい状況になっております。何か、例えば外国で日本の銀行が資金調達に困るといったような場面がありますと、幾ら国内できちっと手当てをしていても、突然破綻するといったような状況が来かねない大変厳しい状況です。そういう際に、いかにして銀行を救うか。それは、結論は一つしかないと私は思います。それは、既に中身が大変厳しい状況になっている銀行については、政府が責任を持って預金を保証するという大前提のもとにですけれども、だめな銀行はだめであると即座に店を閉めさせる。そこで必要な不足の金額、預金を全額保証するために幾らお金が足りないのか、この金額を明確にした上で、必要とあらば公的資金の導入も考える。こういう、いわば思い切った外科手術が必要な時期に参ったのではないかと思っております。  以上、駆け足でしたけれども、私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  90. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、蝋山公述人にお願いいたします。
  91. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 大阪大学大学院国際公共政策研究科の蝋山と申します。小学校のときに国会を見学して以来初めて建物の中へ入るものですから少々上がっておりますけれども、金融改革について私の意見を申させていただきます。こうした機会を与えられたことを大変ありがたく存じます。  御承知のように、昨年十一月十一日、橋本総理大臣は、三塚大蔵大臣、松浦法務大臣を同時に招かれまして、金融システムの抜本的改革を指示されました。この指示は文書になっておりまして、余り長いものではありません。恐らく多くの方々がごらんになったのではないかというふうに思いますが、ほんの三ページでしかないものであります。しかし、非常にはっきりと金融改革の方向性を文書の形をとったということ、また、改革完了の時期を二〇〇一年までに東京市場を再生させると明示されていること、また改革の原則を自由、公正、国際性の三点に絞り込んでいること、そして、何よりも行政の最高責任者である首相が、総理大臣が金融について直接に改革の大枠を示した、こういった点で私は極めて画期的であるというふうに評価しております。  私は現在、証券取引審議会総合部会の座長といたしまして、総合的な証券市場改革案の作成に携わっております。また、それ以前にも、証券取引審議会の委員として、また金融制度調査会の部会の委員として、幾つかの金融改革、例えば一九九三年金融制度改革法のための審議に加わってきました。さらにまた、金融に関心を持ち研究する者といたしまして、これまでの日本のみならず諸外国の金融改革について、私なりの観察、分析を行ってきました。  こうした経験を通して思うことは、まず、これまでの金融改革には二つの型、二つのタイプがあるということであります。その第一は、金融のあるべき姿を追求するという意図で改革を断行する、いわば理念追求型の改革であります。第二は、金融システムのパフォーマンスが低下いたしまして、このままではどうしようもないという危機意識が広まり改革が行われる危機回避型の改革であります。これまでの大量国債発行以降の一連の日本の金融自由化は、どちらかといえば理念追求型のものがあったように思われます。そうした性格であったように思われます。そして、そうであるがために、ゆっくりと着実に改革を小出しにしていくということが可能でありました。だが、現在はさま変わりでありまして、今回の改革、いわゆる日本版ビッグバンはどうしても成功させなければならない、日本の金融は危機に瀕しているというふうに私は考えます。  日本の金融が危機的な状況にあると申しますと、たちどころに思うのは、今財部公述人も御指摘になった、銀行等に累積する不良資産問題であります。これは、過去のツケを払うという意味で、後ろ向きの問題であります。だが、後ろ向きの問題を後ろ向きの問題として解決することは非常に難しいと思います。私の考えでは、この解決のためには、いつの時点でか思い切った公的資金の導入が必要になるであろうと思います。だが、公的資金をただ過去のツケの解消に使うということは、国民が許さないでしょう。私も賛成ではありません。辛うじてそれが許されるとするならば、それが、公的資金がこれからの新しい、より望ましい金融システムの建設のために使われるという前向きの条件を満たしていなければならないというふうに思います。そういう意味で、私は、金融改革の断行は不良資産問題解決の必要条件であるというふうに思います。  それだけではありません。今の日本の金融は、このチャンスを逃してしまいますと、幾つか致命的な結末がほぼ確実に予想されるような状況にあるというふうに思います。このままではどうなるのか、大変不安に思われるわけです。  第一に、今井公述人が御指摘になったように、これからの新しい産業への期待というのは非常に大切な問題であります。この新しい世紀の日本を担う新しい産業が、このままでは金融面の制約から育ちにくくなってしまうおそれが多分にあります。第二に、今や一千二百兆円になろうとする巨額の個人金融資産の運用効率が低下いたしまして、後世、何のためにあれだけ苦労してお金をためたのか、悔いを残す結果に終わってしまうおそれがあります。さらに、日本の貯蓄は全地球的な観点から効率的に使われ、世界に貢献しなければならないと思いますが、それが期待に反する結果となってしまいます。第四に、銀行を含めての金融サービス業が沈滞いたしまして、これからの有望な産業あるいは経済社会の基礎産業、これが成長する機会をみすみす閉ざすことになってしまいます。私は、こうした事態を将来避けるために、現在の時点でいわゆる日本版ビッグバンはどうしても成功させなければならないというふうに考えております。  これを成功させるには、まずは改革案の作成の段階で、日本の金融システム全体が今後どうあるべきか、全体像を可能な限り具体的にはっきりさせるということが必要であります。その上で、その望ましい姿を実現する手順を、時期をも含めて明示すること。この二点が私は不可欠であるというふうに思います。こうした改革案を完成させるには、やや時間がかかると思います。しかし、私は急がば回れと言いたいわけであります。少なくともことしの六月まではぜひ待ってほしい。全体像なしでともかくできることからという拙速型の改革というのは、これまでしばしば生じたように、既得権益の間の利害調整に終始することとなり、結局は改革の歩みをおくらせてしまうのではないかというふうに考えます。ゆっくりと着実に、スロー・アンド・ステディーという言葉は大変聞こえがいいわけですが、そうした悠長な対応は許されません。  それでは、この画期的な日本版ビッグバン構想というものは、どのようなプロセスで具体策に結びつくのか。三塚大蔵大臣は、総理の指示を受けた後、証券取引審議会、金融制度調査会、外国為替等審議会、保険審議会に本問題の結論を出してもらうよう要請すると述べられまして、事実、昨年の十一月十五日、これら四審議会及び企業会計審議会の代表者を招集し、総理からの指示を改めて伝達されました。こうした改革案作成の手続は、従来の手法と変わりありません。私は、当事者だから言うのではありませんが、これはこれでよいのではないかというふうに考えます。審議会方式での案づくりには、結局はお役人任せで信頼に欠けるという意見があることは重々承知しております。改善の余地が大いにあることは否定いたしません。改善すべき点は直ちに改善すべきであるというふうに思います。だが、大枠としてこの審議会方式以外、より望ましい具体的な改革案作成のプロセスはないのではないかというふうに現在の時点では考えております。  実は、私にとりましては、橋本総理大臣のビッグバン構想の指示は決して唐突なものではありませんでした。証券市場、証券業、証券行政の諸問題を審議する公的な機関は証券取引審議会でありまして、私はその会長代理も兼ねておりますけれども、この証券取引審議会は、橋本総理大臣の指示が明らかになる以前の昨年六月から、二十一世紀に目を向けて、中長期的な観点から証券市場の整備を行うことが喫緊の課題であるという認識のもと総合部会を設けまして、聖域を設けず、タブーにとらわれず、二十一世紀にふさわしい証券市場を確立するため、証券行政における基本的な問題について審議をせよということで審議を始めていました。このようにして設立されました証取審総合部会の座長として、私は橋本首相の指示で大いに勇気づけられまして、恐らく他の総合部会のメンバーも同じではないかというふうに思います。  そして、私の部会は、都合九回の審議の後、昨年の十一月二十九日、「総合部会・論点整理」を公表いたしました。お手元に配付されている文書がそれであります。これは、それまでの審議で提起された論点を整理した文書という体裁をとってはいますが、総合部会への問いかけ、すなわち、二十一世紀にふさわしい証券市場とは何かという問いかけに対する私どもの中間報告と考えてよい文書であります。この「論点整理」は、「二十一世紀初頭には、概ね全ての改革を完了することを目標とすべきである。」あるいは幾つかの理念を明らかにしている、改革の原則を明らかにしているということなど、橋本総理大臣日本版ビッグバン構想に相呼応したものとなっております。  なお、この「論点整理」は、全文がインターネットを通じて公表されました。また、ごらんになればおわかりのように、表紙にはファクシミリや新たに設けましたEメールでのアドレスを記載いたしまして、コメントを歓迎する文を挿入いたしました。さらに、総合部会の審議と並行して、証券局は多数の方々を個別に訪問いたしまして、証券市場に関する意見を徴して審議に反映させる、いわゆる五百人行脚という試みを行いました。このように、証券取引審議会総合部会は、審議会のいわゆる閉鎖性を可能な限りなくす努力を払い、審議を進めているということを付言したく思います。  もちろん、証券市場は金融システムの一部でありまして、すべてではありません。しかし、明示されてはいませんが、首相のビッグバン構想の基礎には、証券市場がこれからの日本の金融システムの中心になるべきだという認識、判断があるように私は思います。フリー、フェア、グローバルという改革の三原則を最もはっきりと具体化できる金融システムは、現実がそうでないということが極めて残念であるわけでありますけれども、証券市場であるからであります。さらに、具体的な検討例といたしまして首相が示されました九件は、すべて証券市場に直接間接に関連するものであります。これからの証券市場は、日本の金融の中心的な存在としてよい市場に生まれ変わらなければならない、これが私見では日本版ビッグバンのかなめだというふうに考えております。  「論点整理」は、このお配りした資料でありますけれども、よい市場建設のために具体的に検討すべき項目として二十二の項目を列挙いたしました。さらに、それぞれの項目について本文から中項目を抜き出しまして、整理いたしますと全体で三十三の項目となります。これらを子細に見てみますと、日本の証券市場の改革のためには、ただ証券行政だけではなくて、商法を初めとする法制度、会計制度、租税制度、さらには民間部門のやる気に至るまで、広範な見直しが必要なことが理解できます。  中でも、租税制度の問題は早急に解決していただきたいと私は考えます。何も証券関係に関する減税を要望しているわけではありません。より大切なことは、これからの金融システムの中枢として機能するさまざまな証券市場に対しまして、あるいは金融市場に対しまして、税制は中立的であってほしいというふうに思うわけであります。税制の市場に対する中立化ということをぜひお考えいただきたい。  商法から会計制度に至るまでの広範な見直しの結論は別の機会に譲りたいと思います。恐らく、私ども証取審総合部会の報告書はことしの六月には公表され、改革、見直しの具体的な内容、すなわち全体像とそれに至る改革の過程が明らかになると思います。また、それを受けて、具体的な改革、すなわち改革案の法制化が実施の運びとなることを私は期待しております。  証取審以外にも御承知のように金融改革の論議は進んでおるわけでありまして、昨年の十二月十六日に公表されました外国為替等審議会のリポート、いわゆる為銀主義の撤廃を盛り込んだリポートでありますが、これは今国会に外国為替管理法の改正案として上程されているというふうに伺っておりますけれども、これは極めて注目すべき改革の歩みであります。これが実現しますと、例えば日本の自動車会社アメリカで銀行を買えるようになります。あるいは、銀座の街角で海外の旅行から帰ったOLがドルを売るということも違法ではなくなります。  この自由化措置は、私は、じんわりとボディーブローのようにこれからの日本の金融市場、金融サービス業全体に圧力を加える、影響を加えるに違いないというふうに思います。しかし、これは日本の金融にとって必ずしもマイナスであるわけではないと思います。海外からの資金や金融サービスの導入が、日本側の対応いかんでは活発となる可能性も残されております。ビッグバンの本家はイギリスでありますが、一九八六年十月にビッグバンが行われましたが、それに先立ち、一九七九年に外国為替管理の完全自由化がイギリスでは実現しているわけであります。こういう例を考えますと、私は、このタイミングでビッグバンの先駆けとして外国為替管理法の改正が行われるということは、大変結構なことではないかと評価しております。  日本の金融の中枢に位置します銀行業、これまでの中枢でありました銀行業はどう変わろうとしているのでしょうか。  銀行制度を扱う審議会は金融制度調査会でありまして、そのもとには金融機能活性化委員会と命名された委員会があります。まだ証取審や外為審ほどはっきりとした改革の方向性を示していないように私は感じております。関係者がもしかしたら不良資産問題の処理で手いっぱいで、将来のビジョンを語る余裕がないのかもしれません。それでも、十二月二十六日にそれまでの議論をまとめた文書を発表し、その存在を世に問いました。その中で最も注目されておりますのは持ち株会社導入の問題でありますが、この点についての私見は最後に申させていただきたく思います。  今や、あらゆる金融サービス業が大きく変わらなければならない、あらゆる金融資本市場が変わらなければならない、こういう状況にあります。ここで変化の大波をとらえ、新しい方向にいち早くかじを向けた者こそ、これからの海図なき航海を乗り切れる。もっとも、今打ち寄せている波は非常に多種多様でありまして、どれが本当の大波かわかりにくいという面があろうかと思いますが、しかし、橋本首相のビッグバン構想は、この暗中模索の状態に一筋の光を与えたというふうに私は思います。金融界はこの意味することを、過去の経緯にとらわれず、三ページの文書を、眼光紙背に徹してあの文書を読むべきだというふうに私は思います。  しかし、必ずしも現状はそうではないように思われてなりません。一例を挙げてみたいと思います。  あの文書では、九つの項目が「具体的検討項目の例」として指摘されておりますが、その最初は、「新しい活力の導入」とされております。そして、括弧内に説明的に「銀行・証券・保険分野への参入促進」というものが例示されております。多くの人々はこれを、一九九三年金融制度改革法によって実現いたしました業態別子会社が今なお不完全であって、その業務分野に制約が多いということから、この「銀行・証券・保険分野への参入促進」というのを相互参入の一層の促進を指摘したものと理解しがちであります。過去の経緯にとらわれるとこういうふうに読むのも仕方がないことかもしれません。  しかし、それではビッグバン構想の具体例の冒頭に置く意味が乏しい。「相互」の文字がないこと、何よりも「分野への参入促進」とあることを考えますと、この具体例は、銀行、証券、保険といった金融サービス業への他産業からの新規参入をうたったものと解釈すべきだというふうに思います。そうであってこそビッグバンとしての意味がある。いわゆる金融村に新しい活力が注ぎ込まれることになるわけでありまして、これまでの金融サービス業は個室の固まりでありました。その弊害をなくすには、個室の壁を打ち破りまして相互に行き交うということだけでは不十分で、大部屋へも門戸を開放して、資源の流入というものがなければならないというふうに思います。この当たり前の競争促進政策というものを矮小化された相互参入策として理解してはならないというふうに私は思います。  最後に、持ち株会社制度の導入についての議論を考えてみたいというふうに思います。  これまでの持ち株会社の金融の側からの議論は、どちらかといえば総論の段階にとどまっていたというふうに思います。だが、これからは各論を詰めるべきであります。その場合、金融システム活性化の観点から、これからの持ち株会社、特に金融持ち株会社はいかにあるべきか、具体的な内容を検討し、次いで、そのあるべき姿を実現させるには現行の独占禁止法その他関係法規をどのように改正すべきかを明らかにし、その上で、望ましい持ち株会社制度のもとでの移行をいかに円滑に実現するか、これを明確にする、こういった議論の仕方が必要であろうというふうに思います。こういう議論は、金融改革一般について必ず適用されなければならない議論の仕方だろうと思います。  持ち株会社制度を活用いたしまして金融活性化をしようというときに、銀行持ち株会社とそれ以外の保険、証券、その他の持ち株会社とを区別する必要があるのではないだろうか。例えば、損保会社が持ち株会社となりまして、その傘下に損保を初めさまざまな金融サービス業を、銀行以外のものを子会社として有するケースと、銀行が持ち株会社となりまして、銀行を初めさまざまな金融サービス業を子会社として持つ場合とを、法的に同じものとして律するということはいいのでしょうか。私は、それはちょっと疑問だというふうに思います。銀行は特別の存在でありますからそれなりに律しなければなりませんが、しかし、そうだからといって、他のケースも同じように金融会社という概念でくくってしまって同じ金融持ち株会社に関する規制、法律のもとに服させるというのは、私はまずいというふうに思います。そういう点では、二番目の問題でありますが、独禁法にあります金融会社という概念を再考すべきだろうというふうに思います。  そして、三番目の問題としては、私は、銀行が持ち株会社をつくり、現在の銀行をそのまま子会社とする移行には問題があるというふうに思います。それでは銀行子会社に現在の銀行が持つ株式が残ることとなってしまいまして、持ち合いその他の日本的慣行が継続されることになります。子会社のレベルでの他業との関係で非常に面倒くさい問題が生じてしまう。証券市場などこれからの金融システムの心臓部が健全に機能するためには、やはりこの点を何とかしなくてはいけない。現在の銀行が持つ株式は、持ち株会社が導入された場合には親会社の方に移行されることが望ましいのではないか、そのような移行を私は提案したいというふうに思います。  日本の金融は、このままではますます閉塞状態に追いやられてしまいますが、何とか日本版ビッグバンを成功させ、これからの生き生きとした、市場機能を中心とした金融システムというものを我々は後世に残さなければならないというふうに考えております。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  92. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  93. 深谷隆司

    深谷委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  94. 尾身幸次

    ○尾身委員 自由民主党の尾身幸次でございます。  きょうは、公述人の皆様におかれましては、大変公私ともに御多忙の中をお越しいただきまして、大変貴重な御意見を承りまして、心から感謝、お礼を申し上げる次第でございます。  最初に、今井公述人に幾つかの点をお伺いをさせていただきます。  今井公述人、日本の経済構造改革についての非常に総論的な取りまとめのお話をいただきまして、大変に私ども得るところがあったと思うわけでございます。  私ども自民党政府として、今の経済の現状、あるいはそれに対する対策なのでありますけれども、ここ数年の間に、五、六年の間に約五、六十兆円の公共投資といいますか景気対策を行いまして、いわゆるケインズ流の景気刺激策をとってきたわけでございます。そして、今や緩やかな回復という状況になっているというふうに見ているわけでございますけれども、従来の、十年前ほどの日本経済に対する景気対策であれば、これが有効に働いてもう今ごろはとっくに景気がよくなっているはずだと思うのであります。しかし、今回についてはそういうわけにいかなかった。これはなぜかというと、先ほどの今井公述人のお話のとおり、公共事業をやって需要がふえても、それをつくる製造業までいったときに、例えばテレビでもその他電気製品でも、国内でつくらないでアジアとか中国でつくって、それを輸入してくるというような意味の空洞化現象が起こってきた。そのために、いわばざるから水が漏れるようにお金がアジアの方に流れてしまって、経済のサイクルがうまくいかない。そのことによって私は景気回復がなかなか思うようにいかなかったと思うのであります。  そこで、これからの対策、現状を踏まえた対策というのは、やはり橋本内閣で提案をしております六つの改革、その中の一つが経済構造改革でありますけれども、そういう六つの改革を総合的に推進をして日本経済の体質の強化をしていくことが一番基本である。例えば消費税引き上げをやめるとか、あるいは特別減税二兆円をさらに続けるとか、そういう需要喚起型の対策に重点を置いたのでは、この今の閉塞感のある日本経済の状況に対応できない。やはり社会保障の問題も含め、財政構造も含め、あるいはビッグバンも含めまして、そういう構造改革的な対策をやって日本経済の活性化を図っていく。そういう意味では、私どもの出している今の予算案の考え方というのはそういう考え方に基づいていると思っているわけでございますが、そういう点につきまして、今井公述人からのコメントをいただきたいと思います。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  95. 今井敬

    ○今井公述人 ただいまの尾身先生の御見解にお答えいたしますが、私は、現状、足元の景気というのは、製造業の立場から見るとそう悪くはないと。つまり、住宅あるいは非住宅の建設も割合伸びておりますし、それから、自動車だとか造船だとか機械といったような製造業もかなり伸びております。したがいまして、今先生がおっしゃいましたように、過去数年間、五・五兆円の減税とかあるいは数十兆円の財政、これが行われましたのは、バブルの崩壊後の民間設備投資が九十兆円から七十兆円にまで落ち込んだ、そしてほうっておくと大変なデフレ現象になる、それを財政金融で辛うじて支えたというときに非常に効果があったわけでございますが、現在のように、一つの循環的な景気が若干上向いてきておりまして、民間設備投資も一昨年からプラスに転じておりますし、また鉱工業生産も大体九〇年のレベルを回復しているというような状況にありましては、やはり先生がおっしゃいますように、国の財政事情をまず考慮して、カンフル注射的にとられました減税というようなものは一たん清算して、そして改めまして直間比率の是正とか構造改革の問題として税の問題は取り上げていただいた方がよろしいと私は考えているわけでございます。  私は、九年度の予算というのは、プライマリーバランスがとれて、そしてまた景気には中立的だというふうに考えておりまして、減税をやめる影響は、四―六月ごろの影響は注意深く見守らなければいけないと思いますけれども、この九年度の予算につきましては私は妥当な予算ではないか、こういうふうに考えている次第でございます。  以上でございます。
  96. 尾身幸次

    ○尾身委員 今のはおっしゃるとおりだと思うのであります。  そこで、先ほど来お話にありますように、今企業が国を選ぶ時代になった、言いかえると、企業が適切に国を選ばなければその企業の存立そのものが危なくなるような、そういう時代になったと私は考えております。そういう意味で、経団連の主要メンバーであります今井公述人が、国際的なハーモナイゼーション、高コスト構造の是正をしてほしい、そして日本という国を、日本企業も含めて、企業が生産拠点なり経済活動拠点として選ぶような体制をつくってほしいと言うのは、私は極めてごもっともなことだと思っております。例えば持ち株会社の問題にしても連結納税制度の問題にしても、少なくとも外国と同じような条件の経済的なバックグラウンドを備えて、整えていかなければ、経団連企業といえども外国に生産拠点を徐々に移さざるを得ない、そういう状況にあるわけでございまして、私考えますのに、いわば経団連関係の大企業の大部分はいつでも海外展開ができる。しかし、日本人として、ここに働く勤労者や中小企業や、我々政治家も外国に引っ越すわけにいかない。したがって、そういう点を考えれば、我々は、この日本という国の経済基盤をつくり直して、企業活動が少なくともほかの国におけるよりもやりやすくなるような、よくできるような、そういう体制をつくることが非常に大事だというふうに考えております。  そういう中の一つの問題が企業税制の問題でございまして、何といっても日本の法人税は、ほかの先進諸国と比べて実質的に高いというのが実態でありますから、これも少なくともほかの国並みにしなければならない。昨年の暮れには、いろいろ議論がありました。課税ベースを拡大してその財源だけで税率を下げる、レベニュー・ニュートラルでやるというような考え方が一時財政当局から出されたわけでありますけれども、そうではなくて、実質減税をして、イコールフッティングで競争できるような、そういう条件を整えなければいかぬと我々考えているわけでございます。これは、大企業のエゴとかなんとかいうことではなしに、やはり企業が日本という国を選ぶためにはこういう条件が必要なんですという、いわばそういう意味の叫びだというふうに私考えているわけでございますが、その点につきまして、今井公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  97. 今井敬

    ○今井公述人 今、尾身先生がおっしゃったとおりでございまして、私ども、この実質五〇%というほかの国に例を見ない高い企業税制のもとでは、なかなか日本の経済の活性化が望めない。私どもも、鉄は非常に重い産業でございますから、下工程の一部を出しただけでございますけれども、今展開しております新しい、例えばシリコンウエハーとかあるいは半導体事業とか、これは日本国内ではもうやれないような状況になりつつあるということでございまして、この税制あるいは日本の制度、これが非常に諸外国に比べて日本の企業立地を魅力ないものにしているということを大変に憂えているわけでございます。  ぜひとも、私どもは、これはもう国内で必死の努力をしておりますので、私どもが日本国内に残って、そして先端産業もできるような、そういうようないろいろな諸制度、税制、これをぜひ実現を図っていただきたいというふうに心から願っている次第でございます。
  98. 尾身幸次

    ○尾身委員 そこで、その問題は私どもぜひ解決をしていきたいと考えておりますが、日本経済の活性化を図る上に、やはり新規産業を起こして雇用機会を拡大しなければならない、そのためには何といっても技術開発、研究開発が大変大事だと思っておりまして、一昨年の科学技術基本法、私ども制定をいたしまして、昨年六月には科学技術基本計画をつくりました。ことしの九年度の予算では、科学技術関係の経費は、実は総額、昨年の二兆八千億円から三兆円に伸ばしておりまして、一般歳出一・五%に対して六・八%という大変大きな伸びをしております。  そういうわけで、この政府予算原案としては大変大きな資金になっていると思いますけれども、しかし、お金がふえただけではなかなか技術開発が促進されませんで、例えば、先ほどお話もございましたが、産官学の共同研究を行うとか、あるいは学界でも競争原理を導入するような研究をしていただくとか、その他いろいろな規制緩和をする、兼業規制の緩和をするというようなことがあるわけでございますが、経済界におきましても、例えば、大学院を出た若手の研究者については年功序列の体系から外して処遇をするというようなこととか、あるいは大学や国の研究機関との連携をさらに強化するような、そういう取り組みもぜひお願いをしたいと考えております。  そういう点につきましてのお考えと、それからまた、政府あるいは大学とか研究機関に対する産業界の御要望といったようなものがございましたら、お伺いをさせていただきたいと思います。
  99. 今井敬

    ○今井公述人 ただいま尾身先生おっしゃいましたように、九年度の予算で科学技術の振興の予算が非常に大きく伸びたということは、私ども大変大きく歓迎しております。  それで、おっしゃいますように、やはり国の産業の発展ということは科学技術に依存しているわけでございまして、これを今後一体どういう点を中心に日本はやっていくべきかということで、恐らく政府も科学技術政策大綱ということをこれからお考えになると思うのでございますが、我々産業といたしましても、これは産官学一緒になってそのことを考えていかなきゃいけない。そして、アメリカは、やはりあれだけ大きな軍需産業ということで、宇宙開発とかそういうことで技術を集積したことで非常にハイテク等も伸びたということがございます。日本もやはり技術の集積を考えていかなきゃいけない。一体どういう分野に集積を考えていくべきかということを今我々産業界の中でも研究しておりまして、こういったことを官学と一緒になりまして大いにやっていきたい、こういうように考えている次第でございます。
  100. 尾身幸次

    ○尾身委員 もう一つお伺いしたいのでありますけれども、公共投資に関してでありますが、先ほど、公共投資も伸ばすべきところは伸ばし、節約するべきところは節約して、めり張りのついた方向にすべきである、特に次世代の産業の基盤となるようなものについては伸ばすべきである、こういう御意見がございました。  しかし、私ども、今六百三十兆の公共投資基本計画について、これを見直すべきであるかどうかということがこの予算委員会でかなり議論になっておりまして、総理も、公共投資あるいは社会保障その他についても聖域を設けないで全部検討する、こういうことになっているわけでございますが、この点につきましてさらに追加のお話がございましたら、お伺いをさせていただきたいと思います。
  101. 今井敬

    ○今井公述人 公共投資の基本計画がつくられましたのは、たしかあれは細川内閣のときから村山内閣にかけてだと思いまして、非常に経済が沈滞していたとき、あのときに六百三十兆というのがつくられて、私もその作業に参画いたしました。それからまた、公共投資の配分につきましては、財政審の部会でもその物差しの議論が行われまして、それにも参画したわけでございますけれども、この公共投資を効率的に配分するということは、現在のシステムの中ではなかなか、私、微調整ができるぐらいで難しいんじゃないかというふうに思っておりまして、現在総理がお考えになっております行政改革、これが実現しますと、ただいまのこの省庁別の枠などが自然に崩れまして、そして、目的別に非常にプライオリティーを持った投資の順位づけができるのではないかと思います。  私は、この額の問題につきましては、現在のような厳しい財政状況の中では若干抑制的になることはやむを得ないというふうに考えておりますけれども、やはり、本当に経済構造改革に資する社会資本の整備だけは、これは絶対に減らしてはいけない、手を抜いてはいけない、こういうふうに考えております。  それから、もう一つだけつけ加えさせていただきますと、数年前から補正予算研究開発予算が取り上げられまして、これは非常にいいことだと思うのです。つまり、建設国債が六十年耐用の土木とかそういうことだけじゃなくて、研究開発というような非常に重要なものも国債で処理できるような、そういう物の考え方で進めていただくと大変ありがたい、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  102. 尾身幸次

    ○尾身委員 ちょっと時間がなくなったのですが、蝋山公述人に二つほどまとめて質問をさせていただきたいと思います。  一つは、ビッグバンを成功させることが大変必要である、今の改革案は審議会方式がいいというお話がございました。私も今まとめたものを、「論点整理」の要約版を拝見させていただきましたが、私どもがどうかなと実は思っているところを正直に申し上げますと、例えば、この委員会でも有価証券取引税は撤廃すべきであるというのが大合唱になっておりまして、そういう点はやはり審議会方式であってもきちっと出すべきだ。しかし、大蔵省が事務当局になっているためにこういうことが、何か租税という単語が一カ所あるように思いますが、あとは全然書いていないというような、そういう意味で審議会が役所にコントロールされているんじゃないか、はっきり言いますと。そういう点もありまして、税制の問題はやはり、どういう方向でやるべきだ、少なくとも国際社会とイコールフッティングでやるべきだということをきっちりと出していただきたい、そういうふうに思っておりますので、これをひとつぜひお願いを申し上げるといいますか、意見として申し上げますので、先生のコメントをいただきたいと思います。  それから、いわゆる銀行、証券、保険の業際問題がかなり議論をされておりますけれども、しかし、外国とイコールフッティングである、グローバルだということの中で、本当に外国では銀行、証券、保険の垣根が日本ほどあるのかというときに、外国で垣根がなくて日本で垣根があるということは、やはりそれだけ手足を縛られてやるということですから、国内の競争だけではなしに、国際社会でのそういう金融システムが競争可能でないということの原因にもなるのではないか、そういうふうにも考えております。ニューヨーク、ロンドン、シンガポールと競争するような東京の市場をつくる、体制をつくるのであれば、そういう点についても、かなり痛みもあるかもしれませんけれども、これもぜひ大胆な、本当の意味のビッグバンを考えて推進をしていただきたいと考えている次第でございます。  この二点につきまして御意見を伺いたいと思います。
  103. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 ただいまの尾身委員の第一の点につきましては、私は、大蔵省の証券局の報告だからといって、大蔵省の中の報告だからといって、主税局に遠慮して、証券市場にとって必要な税制はどんな税制かということをいわばあいまいにすることはしないようにしたいというふうに思っております。おっしゃるように、有価証券取引税というのは導入の経緯その他からいって大変難しい税であるわけですけれども、しかし、それはいわば主税局の論理である。いい証券市場をつくるためにはどういう税制がいいのかという観点は貫きたいというふうに思っております。  第二点の、グローバルな観点から見て業態間の垣根はどうかという、大変これは難しい問題であります。例えば、ヨーロッパにはそういう垣根はないというふうに普通は言われています。確かに制度的な垣根はございません。しかし、事実上の垣根というのは幾つかございます。例えば、西ドイツ有数の銀行が資本市場で資金を運用し、調達するためのいわば証券会社をつくったときに、これは別会社としてつくりました。その方がいろいろな事情からこの企業にとって有利であると判断されたからであります。そういう点で、制度の問題と、それから制度の中でどういう行動をとるかという問題とを絶えず我々は注意して考えなければならない。  そして、日本の場合には、ともすれば大規模な金融機関は何でも、こう言ってはしかられるかもしれませんけれども、ともかく考えなしに何でもやりたがる。こういうような行動を前提にしたときに、一体制度はどう考えたらいいのだろうか、その辺が悩ましい問題であります。しかし、方向性としては次第に、尾身委員の御指摘のような、グローバルな観点での、制度的には垣根は低いけれども、しかしその中でどういう行動をとるかはそれぞれの自己責任である、こういう方向には持っていきたいというふうに考えております。
  104. 尾身幸次

    ○尾身委員 どうも大変ありがとうございました。
  105. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 次に、太田昭宏君。
  106. 太田昭宏

    太田(昭)委員 新進党太田昭宏です。きょうは、大変お忙しい中ありがとうございます。  まず、財部公述人にお尋ねをしたいと思います。  先ほど御提案のありましたニューヨークのナショナル・デット・クロック、大変これはいい案といいますか、もう既にやっているということで、インターネットも踏まえて、日本でもこういうことが行われて、漠然とした意識の中で日本財政赤字がどれだけだというようなことだけでなく、全国民がやはり意識をするというような何らかの策といいますか、さまざまな形をとっていくということが必要であろうということを痛感をいたしました。  財政均衡の話をさせていただきますが、今回の予算は増税なき財政再建というどころか、まあ我々は、財政再建なき増税となっているということで、特に、これはだれしも指摘することなんですが、歳出の削減が非常に不十分であるということが問題になっていると思います。  ただ、なかなかこれは難しい問題であるということも事実で、財政均衡について、政府が一月二十四日に発表しました中期展望、これによりますと、赤字国債を毎年一兆円ずつ減らしても二〇〇五年までに年々財政赤字が拡大して、成長率を一二・五%としましても二〇〇五年の時点で九兆千億の単年度の財政赤字になってしまう。成長率が一・七五%、なかなか三・五%という成長は難しいでしょうから、そうなりますと、一・七五%ですと十四兆円の財政赤字と試算をされています。これを見ても、単年度の財政赤字をゼロにするのはかなり大変なことがわかりますし、要するに、財政再建あるいは均衡のためには相当ラジカルな歳出削減がなされなければならないということを中期展望は示していると思います。  そこで、財部公述人にお聞きしたいのですが、先ほどの話では、赤字国債の発行を二〇〇〇年に、建設国債の発行を二〇一〇年に停止せよ、こう言っております。経済情勢、景気等も考えた上でできるというのならばそれは大変すばらしいことなんですけれども、果たしてそれが可能であるのか、無理はないのか、経済との影響はどうなのか、そして、それが単年度収支の均衡にどうつながっていくのか。その実現可能性について、財部公述人からまず御教示を願いたいと思います。
  107. 財部誠一

    ○財部公述人 財政均衡の現実性があるのかという御質問だと思うのですけれども、こちらが先ほど申し上げました試算の結果、経常部門を毎年三%ずつ削減していけば二〇一〇年には赤字国債、建設国債とも発行をゼロにして、予算が均衡するというふうな試算が出ております。それで、御指摘の中で、実現可能性がどうなのかということだと思うのですけれども、この数字が仮に政治的に見て全く非現実的であるというのであれば、まずその期間を延長するということは当然のことだと思います。ただ、私は、非常に大切だと思うことは、何年までに国債の発行をゼロにするということを明確にするということは大変わかりやすい、これは国民のだれもがわかることですから、こういうふうに、財政の均衡をいかにしていつまでになくすのかということを国が宣言をするということの重要性をまず指摘したいと思います。  では、その場合、どんな方法によって削減項目を決めていくのか、具体的に何を削減するのかという御議論になろうかと思いますけれども、先ほど、ちょっと時間の都合で私、話をネグレクトしてしまったのですけれども、私の資料の中の三番をちょっとごらんいただきたいのですけれども、ここに「財政を均衡させるための予算編成手続」というものを用意いたしました。実は、これは私が親しくしておる官僚、若手の官僚であるとかあるいは政治家の先生方にも何人か御意見を伺いながらつくったものでございます。実は、私は、何を、どんな予算を削って財政を均衡させていくのかという議論をするときに、これを具体論で政治の場で闘いますと、ほとんどこれは、総論賛成だけれども各論では全く結論が出ないという形にどうしてもなります。  では、それを避けて前進させるために何か方法はないかといったときに一つのアイデアとして提示させていただきたいのですけれども、これは予算の編成手続を変えてはどうだろうか。言ってみれば、これは政治主導に持っていくということが実はそこには大きな考え方としてございまして、ことし、今年度幾ら削減をするのかという具体的な金額が決まった段階で、各省庁に、自分の省はもちろん、他省庁の予算に関しても、これは削減すべきであるということを大蔵大臣に提出してもらう。大蔵大臣はこれを受けて内閣総理大臣に伝える。言ってみれば、これをやるたびに、各省庁が大蔵大臣にことしはこういう予算がむだであるというものを提案したときには遅滞なく公表してもらう。  いわば、みんなが注視のもと、国民注視のもとで、各省庁がどんな予算がむだであると考えているかという意見を言ってもらいます。それを政治が判断をして、内閣総理大臣がこれを削減しましょうという提案をする。それをまた戻して、それを参考に、また各省庁で意見を出してもらう。いわば霞が関の中で、彼らの持っている情報を最大限に活用して、最終的にはこういったことを二回、三回繰り返して政治が最終的な判断をする、こういう予算編成の手続にまで手を入れていけば、私はなかなか具体的な前進ということが期待できるのではないかと思っております。
  108. 太田昭宏

    太田(昭)委員 先ほど今井公述人から、経済構造の改革ということで、高コスト構造の是正を初めとして四項目お話をお聞きしました。  確かにおっしゃるとおり、公共投資の見直し、この委員会でも大変な問題になってきているわけなんですが、一律に投資規模を落とすというのではない、何が大事かという優先順位を示せ、こういうことが先ほどもお話があって、次世代のためになるもの、あるいはまた研究所などの研究インフラというお話を聞きました。先ほども話がありました六百三十兆の中身の何を公共投資と呼ぶかという中には、情報とかあるいはここら辺の研究ということの部門がなかなか概念としても十分入っていないというようなこともあったりしまして、大変参考になるわけなんです。  産業界の第一線で指揮をとって、リーダーシップをとっていらっしゃるということで、実は私、産業界の方とお話をさせていただいたりしますと、日本はとにかくもう大変な状況で、例えば四つのハブが日本から逃げている、人、物、金、情報が逃げている、国家戦略としてどうするかということを政治家がリーダーシップをとらなければ大変なことになりますよ。こういうことを聞いて、さあ予算編成だということでこの予算委員会に臨みますと、日本予算が、そうした哲学とか国家戦略というよりも、前年度実績とかあるいは積み上げとかということで、なかなかこの辺の一律主義から脱し切れないということがあるわけですね。  これは、どんな組織でも、組織が成熟化をしてきますと、みんな一律平等であるという形でないとなかなか組織というのがもたないからということがあると私は思うのです。あえてその辺の国家戦略とか、あるいは今の日本ではどうしてもやらなくちゃいけないという優先順位をつけるとかいうことの中で、まず第一に今回の予算で非常に非難されておりますウルグアイ・ラウンド対策費の問題であるとか整備新幹線と言われるのですが、今井公述人が大変不満に思う予算の中身がありましたら具体的に、言いにくいかもしれませんが、あえて言っていただきたいと思いますし、その辺の優先順位をつけるリーダーシップというのを、これは政治がそういうことをやりなさいと言うのですが、どうしたらいいのかということの具体的な御提案が、経験というものに基づいてございましたら、ぜひとも提示をしていただきたいというふうに思います。
  109. 今井敬

    ○今井公述人 大変難しい御質問をいただきました。  私、財政審にもずっと出てやっておりますが、結局、省庁別の中身は、例えば圃場整備から集落排水とか変わっているのですけれども、例えば建設、それから農林、運輸、この三つの枠というのはもうほとんどここ二十年変わっていない。これが最大の問題であって、私は、その中でどこが不満とかいうことじゃなくて、まずそこの壁をぶち破らないと、本当に重要な社会資本の整備はできないというふうに思っております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、もし行政改革ということがきちっとできて省庁の再編が行われるならば、今度は省庁別じゃなくて目的別の公共投資の枠組みができるのじゃないか、そういう形で非常に合理化ができるのではないか、私はそういうふうに思っている次第でございます。今の枠の中では微調整しかできないのじゃないか、毎年毎年タッチしてそういう思いを非常に強くしております。
  110. 太田昭宏

    太田(昭)委員 財投の問題が先ほど出ました。確かになかなか財投についてこれまで切り込んでいないという状況が続いていたと思いますが、ことしに入りまして、財投ということもこれは聖域ではないということで、相当踏み込みを始めたと思います。  そこで、財投とその出口である特殊法人の問題。先ほど財部公述人から、政府系金融機関を保証業務の専門機関として生かしていく、こういうアイデアが出ましたけれども、これは財投をよりうまく運用していくという面から新しいビジネスチャンスがこれで生まれてくる、経済の活性化にもあわせてつながっていく、私はなるほどというふうに思ったのです。財投の入り口、中間、出口という全体の流れが非常に硬直化している、こういう実感をするわけです。  その一方で問題となっておりますのは、財投資金の出口である特殊法人の統廃合問題。税金のむだ遣いであるとか、あるいは特殊法人はしっかりと、これは赤字で国から補助等を受けて、その下にはいろいろな関連があって、そこは随分もうかっているというような構造、そこにまた天下りというものがあるというような非常に構造的問題が指摘をされているわけなんですが、財部公述人、そして蝋山先生、この辺の財投と特殊法人の問題等についてどうお考えになるのか、御意見をちょうだいしたいと思います。
  111. 財部誠一

    ○財部公述人 財投の問題の中で特殊法人の問題をどう考えるかということですけれども、私は、特殊法人には仕事柄随分取材もしましたし、細かいことも特殊法人によっては知っております。今回政府の方からも、住都公団に関して住宅部門は民営化であるというふうな、なかなかの英断がお話としてありました。その中で、ただ私は、この特殊法人の問題が出たときに必ず出る統廃合という問題に関していつも実は疑問を持っておりまして、単純に統廃合というのはちょっと意味がないのではないか。例えば住都公団でも、同じ住宅部門の中でも必要な役割があるのではないかと私は思っています。それから、住都公団の職員の人を子細に見ていくと大変優秀な人がいて、そういう優秀な能力はいかにして生かすかというその生かし方、具体的な生かし方というのはもっとあると思うのですね。  そういう意味では、まず特殊法人のディスクロージャー、ここがしつかりしないために、本来ある能力も生かさずにただ統廃合、こういう話になってしまいますので、一つ私が考えておるのは会計です。これは公会計ではなくて、かなり一般企業の会計に近いようなものを導入するというのが一つあるのではないかと思います。  それからもう一つ一つ一つの特殊法人に対して、実はこういうところがむだである、実はこういうところが必要であるといったようなものを第三者機関が一度全部調査をして、それをディスクロージャーするといったようなことをした上で統廃合の問題に着手するということが必要ではないかなというふうに思っています。
  112. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 財政投融資については、二つの混合物でありまして、一つ財政規律という問題があるというふうに思います。そういう観点から見たときに、特殊法人を初めいわゆる政府系のさまざまな機関というものが、いかにそうした面で、先生方の監視のもと、規律がきちんと守られているか。これは金融の問題というよりも、むしろどちらかといえば財政の問題であり、財政予算の使われ方と密接に関係している問題だというふうに思います。  二番目は、市場規律が働く分野でありまして、郵貯あるいはさまざまな債券の発行、預託証書の発行といったものは、本来であれば市場規律がもっと働いてもいい分野であります。その辺の市場規律が働く分野と財政規律が働く分野、あるいは働かすべき分野というものをもう少しきちんと分けた方がいいだろう。別な言葉で言えば、市場に任せられるところは市場に任せる。任せられないところは、政治の監視のもと、財政の組織としてきちんと運営される、こういう基本的な考え方が必要なのではないだろうかというふうに思います。そういう点では、例えば財投活動のための資金を市場で債券を発行して調達する、またその債券を郵貯が購入する、こういうようなことは財部公述人のメモの中にもありましたけれども、私も、あれは一九八二年ぐらいの、郵貯問題が今以上に議論されたときに書物の中で提唱しております。そういうような、もっと市場規律を働かせる部分を大きくする。  住宅金融公庫も非常に大きな政府系金融機関でありますけれども、住宅金融公庫は確かに保証をするというのも非常に重要な役割だというふうに思います。そちらの方に専念することも大事ですが、もう一つは、民間の金融機関が提供した住宅ローンの債権をもう一度政府機関として購入して、そして市場の中で民間の金融機関が住宅金融のための資金を調達しやすいようないわば証券化を図る。その証券化の担い手として政府系の金融機関がそれを購入する側に回って、モーゲージ・パス・スルー証書のようなものをもっと浸透させる。そういうような市場のメカニズムを利用したやり方というのをもっともっといろいろ考えなければいけない。  基本的には市場規律の働く部分をもっと広げて、そして、財政規律の働く部分は狭い範囲の中できっちり押さえ込む、こういう考え方が必要ではないかというふうに私は考えております。
  113. 太田昭宏

    太田(昭)委員 時間がなかなか短くてあれなんですが、ぜひとも聞いておきたいのは、公的資金導入の話が随分いろいろなところから出ております。先ほどからビッグバンのことが出ておりますが、不良債権処理と公的資金導入の問題とビッグバンの問題は避けて通れない問題だと思います。八六年にイギリスで行われたビッグバン、国際的にもかなり評価を受けているわけなんですが、イギリス国内の証券会社はこのビッグバンの中でかなり消えていったという事実はあるわけですね。  当時のイギリスと今の日本の大きな違いは不良債権をこれほどまでダメージを受けて抱えているかどうかということで、そんな中からも、この間からビッグバンというものをやろうという流れの中から銀行株が売られて株安になったというような話が出たり、そして三月期に公的資金を導入するのはどうかというような話になったりということだと思います。この不良債権処理のための公的資金の導入については、さっきも蝋山先生の方からも話がありましたが、住専のとき以来、私たちは公的資金導入はあくまで預金者の保護、最終的にはそういう立場でいこうというふうに考えているわけなんですが、蝋山先生と財部先生にこの公的資金導入の問題、それから、時間が限られていますから、特に蝋山先生にはそれに関連して、その前段の話になると思いますが、先生がよく書かれている純粋銀行と資金運用供給機関の二分化、累積不良資産を一挙に処理して、経営悪化銀行は解散させる、国債を発行する、そういうような前段階の話と公的資金の導入ということについて、先生とそれから財部公述人にお話をいただきたいと思います。
  114. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 不良資産の問題がこのままずるずると時間だけが経過するというときにどういう姿になるだろうかということを基準にして考えてみたときに、私は、一挙にすっきりと公的資金を導入してやった方が、解決した方が効果的だというふうに考えております。負担が後世にずるずると及んでいくということはないだろう。しかし、そのためには条件があるわけでありまして、陳述の際に申し上げたように、新しい金融の姿というものを確実に実現させるといういわば改革を断行し、それを担保することが大事だというふうに思っております。  それから、私見としてのいわゆる狭い銀行、銀行というものを狭い概念に押し込めることでそのほかの銀行の行っている主として資産管理業務というものをもっと活発にさせるということは、私は考え方として提示したわけでありまして、非常に大事な考え方だろうというふうに思います。一つは、銀行を狭い範囲の中に押し込めるということは必ずしも本意ではありませんで、むしろそれ以外の資産管理の部分というのが非常に大事だ。他人からお金を預かってそれを専門家として運用し、その収益を分配するという資産管理サービスという産業は大変重要であるにもかかわらず、今までの日本の金融の中で軽視されてきた。したがって、個室化された資産管理サービス産業はばらばらにありますけれども、しかし、考えてみればお金というのは全部いろいろなところに分散して投資してもらった方がいいわけでありまして、専門家基本的には幅広い範囲の中で、マーケットの中で資産を運用してもらうということの方が能力が発揮できるわけであります。  そういう点では、日本の金融はこれまで産業のための資金調達を重視してきましたけれども、個人のための、個人の生活のための資産管理という面はネグレクトされてきた。私は、その点をもっと新しい制度の中に織り込むために、マーケットが大事であると同時に資産管理サービス業というものの重要性を指摘する、そういう意味で、逆の意味でナローバンクというものを考え方として提唱したわけであります。
  115. 財部誠一

    ○財部公述人 私は、公的資金の導入について申し上げます。  私の結論も蝋山公述人と同じでありまして、やはり銀行の処理は一気に進めないとますます負担が大きくなるというふうに考えております。その際に、公的資金の導入は不可避、もう避けて通れない問題だと思っております。  そこで、どんな条件があるかと申し上げますと、私は公的資金の必要性の議論というのは余り意味がないと思っておりまして、ではどういう議論があるかと申しますと、まず一番大切なことは、幾ら必要なのかという金額が定まらないで公的資金が必要かどうかという議論は、議論の以前である。まず、幾ら幾らお金が足りない、だからこれだけの公的資金の導入が必要である、こういうふうな議論になろうかと思います。その意味では、経営が明らかに立ち行かない銀行、これを明らかにして即座に整理をする。その際、救うべきは預金だけでありまして、預金者の預金だけを完全に保護する、そのために必要な公的資金を、金額が定まった段階で導入を図る、そういうふうなやり方がよろしいのではないかと思っております。
  116. 太田昭宏

    太田(昭)委員 ありがとうございました。
  117. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 次に、生方幸夫君。
  118. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方と申します。公述人の皆様には、遠いところをわざわざお越しいただきまして大変ありがとうございました。  今の財部公述人への質問を引き続きましてちょっとさせていただきたいのですが、銀行は守らなければいけないということで、もう一つ今注目されているのは、自民党の山崎政調会長もおっしゃったように、金融債をどうするのかというような問題がございますが、金融債についてはどういうふうにしたらいいというふうにお考えになっていますでしょうか。
  119. 財部誠一

    ○財部公述人 私は、金融債というのはやはりいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、どういう形でお金を調達してくるかという議論の以前に、とにかくどことどこの銀行が立ち行かないのか、その銀行が具体的に資産を処分した後に預金の支払いに対して幾ら資金が足りないのか、それが金額が確定した段階で、いわばどういう資金が投入できるかというそこの議論からだと思っておりまして、そこで預金保険機構からの資金の調達もあるでしょうし、日銀からの特融という考え方もあると思います。そういったことが全部行われた後に、金融債の議論もあるでしょうし、最終的に公的資金、このように考えるべきものではないかと思っております。
  120. 生方幸夫

    ○生方委員 同じ質問を蝋山先生にもちょっと、金融債がもし破綻するというようなことになった場合どうしたらいいのかということをお考えを伺いたいのですが。
  121. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 お答えいたします。  私の考えでは、この問題は政治の問題として処理すべきだというふうに思います。いわば政治的に、行政的に、さまざまな失敗がこういうことになったということを明確に政治過程を反省すると同時に、それによって国民の支持を得る、そういうことがなければ、私はできない問題ではないかというふうに思います。したがって、金融といいますか経済学の観点からいいますと、私はこれはおかしい話だというふうに思います。  すなわち、現在の預金保険制度の対象外になっている金融機関の負債でありますから、こうなりますと、したがいましてそのルールをいわば超法規的に曲げることでありまして、まさにツー・ビッグ・ツー・フェール、大き過ぎてつぶせないということの格好の例で、その点では、したがいまして、専門家意見というよりもむしろ政治家の皆さん方、ここが国民の皆さん方とどういうふうにいい対話をして皆さん方の支持を得られるかという点に尽きるのではないかというふうに思います。
  122. 生方幸夫

    ○生方委員 蝋山先生に引き続きお伺いしたいのですが、アメリカで金融の自由化が行われたときに、たくさんの銀行がつぶれて、その中で経営者が責任を問われるということがございましたね。やはり責任を明確化しなければいけない。これから日本がビッグバンを行おうとする場合、当然倒産したり整理されたりするところが出てくるはずなのですが、ビッグバンのところをどこを見ても、責任体制をどうするのか、それをどう追及するのかというような項目は入っておらないのですけれども、実際今おつくりになっている側からして、その責任体制というのをビッグバンの中でどうやって取り込んでいくのか、その辺のお考えをお伺いしたいのです。
  123. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 一般的に申し上げれば、ビッグバンに積極的にコミットし、そして、それなりのお立場からそれぞれの関係者が全体のあるべき姿というものを提起していただき、かんかんがくがく議論し、それで合意がついたものについては皆さん積極的にこの実現に努力していただく、これが望ましい責任のとり方だろうというふうに私は思っております。  しかし、私の観察が間違っているかもしれませんけれども、直接の当事者、銀行界その他から、日本の金融はかくあるべしという全体像が残念ながら提示されていない。非常に、それぞれの与えられた現在の状況を、現在の制度的な状況、システム的な状況を与件としてきゅうきゅうとされるように思われてなりません。そういう点では、やる気がないとしか言いようがないわけであります。そういうふうになった一つの原因は、もしかしたら、ただ単なる過去の責任を追及するという世論にも反省するところがあるのではないかというふうに思います。  雑駁な答えですが、御質問に対しては、現在の段階ではこのように答えたく思います。
  124. 生方幸夫

    ○生方委員 もう一点だけ蝋山先生にお伺いしたいのですけれども、金融自由化は、もう日本でもかなり、七九年から進められてきた。もっと前からというふうな言い方もできるのですけれども、金融が自由化されても国民にとっては、例えば金利が自由化になっても相変わらず横並びで同じですし、どこでお金を借りてもほとんど同じですし、金融の自由化がどういう意味を持っているのかというのが国民にはなかなかわかりづらいと思うのですね。  やはりこういう改革というのは国民の支持がなければもちろんできないもので、その点、先生が今おやりになろうとしているときに、ビッグバンを行うと国民、預金者にとっては一体何がメリットになるのか、その辺をちょっとお聞かせいただけたらと思うのです。
  125. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 私は、一九七〇年代の半ばから、例えば現先市場といったマーケットができてから自由化というものは次第に始まったというふうに考えておりまして、委員が御指摘の七九年というのは、恐らくCDの導入のことをおっしゃっているのではないかというふうに思います。  このような形で、じわじわと長い時間をかけて、スロー・アンド・ステディーで自由化を進めてきた。その結果は、私は、目に見えたはっきりとした形で我々の生活の中でこんなふうに便利になったということはなかなかつかみにくいのではないかというふうに思います。そして、はっきりとして目に見えておかしくなってきた不良資産の問題のようなああいう問題の方が、むしろ自由化の、間接的かもしれませんけれども、結果としてとらえられている。こういう点では、私は、今回のビッグバンは目に見える形でしっかりとした成果を国民の生活の中にも浸透させるということが必要なのではないかというふうに思っております。そういう点では、証券会社の株式委託売買手数料といったものは株式の売買、投資をされる方は必ず払わなければならないのでありますから、そういう点を明確に自由化するということを行うとか、あるいは銀行でいえば二十四時間サービスのバンキングを可能にするとか、ある種の宣伝的な面もあるかもしれませんが、しかし、そうした明確な生活に関連したサービスの改善、料金の決め方の改善といったものを示さなければならないというふうに思います。  しかし、ビッグバンの基本は、もちろんそういうところもありますけれども、やはり現在の世界の金融を覆っている大口の投資家、大口の資金調達、そういうホールセールマーケットのところが中核であります。その辺のところが日本はがたがたになっているわけでありまして、そういうところの改善の方に本来の主眼があることは私はあえて申し上げたく思います。
  126. 生方幸夫

    ○生方委員 財部公述人にお伺いしたいのですが、外為法の改正がいち早く先行して行われるわけですが、ある一部の人によると、外為法の改正が行われると、日本会社はMアンドAに非常に無防備であるから、例えば日立なんかが買われてしまったりするのではないかというような懸念があるというふうにちょっと聞いたことがあるのです。その辺についての公述人の御意見を賜りたいのですが。
  127. 財部誠一

    ○財部公述人 今の御指摘は、多分私はそういう方向に向かっていくのではないかと思います。  ただ、今の日本にいて考え、我々が通常、常識的にこうあってほしいとかこうあってはいけないという感覚が、実は国際的なビジネスのルールとは全くかけ離れている。日立が外国資本に買われてしまう、これは何か大変苦しい選択のようではありますけれども、しかし、現在、世界はいわばルールというものがなくて、私はよく言うのですけれども、デファクト・スタンダードという言葉があります。これは、常に実態が先行して後からルールがついていく。そうしますと、日本はどうしても、外為法の今回の改正がある、常にルールがまず先にあって実態という考え方をするのですけれども、日本を除いた欧米のビジネスの世界では、まさにデファクト、事実が先行して後からルールがついてくる。こういう社会の中では、仮に日本の大企業が国際資本に買われても仕方がない。むしろ、それを前提に強い日本企業をつくっていく、それが必要ではないかと私は思っています。
  128. 生方幸夫

    ○生方委員 買われてそのままならいいのですけれども、それをまた分割してどんどん売られてしまったりすると実態がなくなってしまったりするというおそれがなきにしもあらずだというふうにちょっと思うのです。  続いて、今井公述人にお伺いしたいのですが、経済構造改革のために四点お示しいただきまして、実にわかりやすくお教えいただきまして、大変ありがとうございました。  高コスト体制の是正から始まって、新規産業を起ごさなければいけない、国際的なハーモナイゼーションをとらなければいけない、それから公共投資を見直さなければいけないという裏に、規制が非常に強いことがあるというふうに今指摘なさいました。規制が非常に厳しくて、それが日本企業の活動を阻害していると言われてもう久しいのですが、なかなか規制が本当に緩和されない。これはどうしてなかなか規制が緩和されないか、公述人のお考えをお教えいただければと思います。
  129. 今井敬

    ○今井公述人 規制は、ここ二、三年の間にやはりかなり実態的に緩和されつつあるという実感を持っております。したがいまして、私は、現状にある程度納得的な考え方を持っております、かなり進んでいるという意味で、  それから、規制が一番進みにくいのは、利害関係人、規制撤廃によってマイナスが出る人たちが、これはあらゆる部門で反対がある、こういうことだと思いますので、私ども経済界といたしましては少なくともそういうことは絶対起こさないようにということで、経団連では申し入れをしてやっている。なかなか難しい問題でございますが、そういうことだと思っております。
  130. 生方幸夫

    ○生方委員 経済構造改革をするためには当然日本の国の財政が健全でなければいけないというのが前提だと思いますが、公述人の目から見て今年度の予算、我々、まだまだ歳出削減に切り込んでいない、総理がおっしゃるほど財政改革元年にはなっていないのではないかというふうな実感を持っておるのですけれども、公述人のお考えで、この程度、この程度と言っては失礼ですが、これで財政改革元年と言えるかどうか、御評価をいただければと思います。
  131. 今井敬

    ○今井公述人 さっきもちょっと申し上げましたように、少なくともプライマリーバランスがとれたということは、国債費の範囲内で国債発行を抑えたということは、これはかなり評価できるのではなかろうか、こういうふうに思っております。そして、これ以上のことは、先ほどからお話が出ておりますように、相当にやはり歳出を今度はマイナスにしていかないとできないことだ。それで、それをマイナスにすることは、国民の各層に非常に全部痛みが来るわけでございますので、その辺をみんなが覚悟するように、やはり世の中の人に納得してもらうようにうまく説明しながらやっていくことが極めて大事ではないか、こういうふうに私は思っております。
  132. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。
  133. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 次に、松本善明君。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。日本共産党の松本善明でございます。  きょうは、予算の審議で、予算の公述でございますので、今井公述人は基本的に予算を評価するような御発言が質疑の中で出ております。三人の公述人に共通してお聞きしたいのは、予算そのものについての御意見でございます。  私も比較的長く国会におりますが、今年度の予算ほど評判の悪い予算は経験をしたことがございません。世論調査でも圧倒的に予算の批判ですし、それからマスコミの論調も同様であります。日本経済新聞などは、無修正で通過させる政治の貧困というような論説で評価をしております。やはりその中心は、もう詳しく申し上げるまでもありませんが、消費税の増税、それから特別減税の中止、そして医療の改悪、九兆円、一人当たり七万五千円の負担増、これがGDPの六〇%を占める個人消費を冷え込ませることはもう明白で、そのような論調が幾つも幾つも出ております。  これはマスコミだけではなくて経済界でもそうでありまして、経済同友会が財界人対象にアンケートを出して、七五%の返事が予算を評価しないということであります。経済界の発言も相次いでおります。日本生命の滝株式部長は、増税路線の修正が必要だ。第一生命の野村証券投資部長は、消費税引き上げ撤回を打ち出すべきだ。それから「エコノミスト」は、「日本経済「悪循環の構造」」「脱国策は予算見直ししかない」。「週刊東洋経済」は、「消費税引き上げが景気失速の引き金にならないか、不透明感が強まっている」。ルービン米財務長官まで、消費税引き上げで景気減速の心配があるという懸念を表明をしている、こういう状況であります。  私は、三人の公述人に特にお聞きしたいのは、このまま成立したときの景気、日本経済への影響、予算修正が必要だという意見についての見解、これを三人の公述人にそれぞれ伺いたいと思います。それから、特に財部公述人については、単年度財政均衡ということを言われましたが、そうするとやはり歳出を削減しなければならぬ。その対象は何がいいか。私どもは、公共事業費とかあるいは軍事費とか国債の利子とか、いろいろ挙げておりますが、公述人はどう考えていらっしゃるか、他の公述人が触れられることがあってももちろん結構ですけれども。  以上でございます。     〔中川(秀)委員長代理退席、高橋委員長     代理着席〕
  135. 今井敬

    ○今井公述人 ただいまの松本先生の御質問は、予算が無修正で成立した場合一体経済はどうなるかというようなことだったと思います。  私は、先ほど申し上げましたように、現在、製造業を中心といたしました実体経済はかなり強い、循環的には上り坂のかなりいいところまで来ているということを考えております。それで、現実に鉱工業の生産活動なんか非常に強いものですから、問題は、やはり四―六月の消費だと思います。ここは注意深く見守る必要があると思いますが、恐らくそれは半年くらいで乗り切って、後半にはそのファンダメンタルの強さが表に出てくるのではなかろうか、こういうふうに私は考えておるところでございます。  それから、株価等につきましても、これは実際、内容のいい株は昨年からずっと上がっているわけでございまして、やはり不良債権の処理がおくれた銀行だとかあるいは建設とかが下がっているということで、非常にまだら模様になっておりまして、昔のように一律的にどんと下がったり上がったりということではない、選別が明らかに行われておる。したがいまして、日本全体が売られているとか、そういう物の考え方は私は間違っているのではないか、こういう解釈をとっております。  以上でございます。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 財部誠一

    ○財部公述人 景気への影響ということなんですけれども、仮に昨年の七月から九月の、消費税の増税が決まった後のその三カ月間の住宅投資を見ますと、前年比で二〇%増という、いわゆる駆け込み需要というものなんですけれども、大変大きく伸びています。したがって、その反動は避けられないと思います。  ただ、私は、ではその消費税の増税あるいは特別減税の見直しといったようなものがなければ景気はよくなったのかというと、ここは今井公述人とは私ちょっと意見が違っておりまして、今の景気というのは大企業と中堅、中小企業と非常にねじれ現象がありまして、大企業は大変景気いいです。これは金利の引き下げ等々メリットが全部出ています。ところが、中堅、中小企業は、輸出が円安になっても仕事が戻ってこない、あるいは金利が下がっても銀行からお金を借りられない、こういう、いわば景気対策が中小、中堅企業には及ばないというところで、ここに関しては大変苦しいです。これは私、全国で講演をする機会がありますけれども、景気がいいと言う中堅、中小企業の方にお目にかかったことがないです。ですから、これは大企業と全く違う。この点に関して言いますと、ここは消費税の増税云々というよりも、超えた厳しさがあるというふうに思っております。  それから、もう一つの御質問である歳出削減の中身は何だということなんですけれども、これは、諸外国の例をとりますと、本当に削減するぞとなったときに、すぐに福祉であるとか教育であるというところにやはり削減の的が行ってしまうのですね。ですが、そうではなくて、具体的にここを削減しろというのを、個別の議論を、私がもちろん言うわけでもなく、政治が言うわけでもなく、むしろ霞が関の、最も予算に関して情報を持っている霞が関の役人たちに提案をさせて、それを公開の場で彼らの見識を問いながら出してもらったものを政治が判断していく、そういうふうに手続を変えていくということが不可欠ではないかというふうに私は考えております。
  137. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 予算の細かな内容については私はつまびらかではありませんが、しかし、予算の機能には経済を安定化させるという機能のほかに、長期的な資金の配分を政府の手によって全体として改善するという役割がある。私は、ただいま松本委員の御質問は、基本的に景気の安定、経済の安定という観点からの御質問ではなかったかというふうに思います。昨年の経済は比較的よかったんですね、一九九六年は。そういう意味で、どうも今回の予算の編成の仕方を見ますと、経済安定化という機能に関して、ともすればストップ・アンド・ゴーのやり方になりがちなのではないだろうか、この点を危惧しております。  長期的な資源配分という観点からいいますと、私は、財政均衡という考え方が、これは財部公述人とは大分違うわけですが、余り表に出過ぎているというふうに思います。もう少し全体の経済の中で、経済改革という、よりマーケットメカニズムを働かせるような経済に変えていこうということにふさわしい長期的な資源配分政策は何かということをもっと根本的に議論し、その中での財政均衡というふうに議論を整理していかなければならないのではないか、どうもその辺があいまいになったまま予算が編成されているのではないかなという印象を私は持っております。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 時間がありませんが、昨年度の経済白書でも、やはり日本の経済については非常に先行きが危ない。アメリカやヨーロッパは違いますが、そういう状況になっているということについて私どもは真剣に考えているということを申し上げて、質問は終わります。
  139. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、上原康助君。
  140. 上原康助

    ○上原委員 社民党の上原です。お三人の公述人の皆さん、大変御苦労さまです。  まず、今井公述人にお尋ねいたしますが、トップの、経団連あるいは日本の産業、経済をリードしておられるお立場から、今の産業構造、雇用の問題等々を踏まえてといいますか、その実態に立って、経済構造改革はぜひ必要だ、そして、四つの観点からそれを推進していかねばならないということでございました。  高コスト構造の改善というのは急務だというようなことですが、わずか十分しかありませんから、今、財部公述人の方からもありましたが、大手の経済団体の皆さんでさえ、産業の空洞化、雇用の問題を深刻にお考えになっていらっしゃる。そうしますと、とりわけ中小零細業の皆さんにとっては、より深刻な面があると思うのですね。日本の産業経済構造改革ということは総体的に進めていかなければならない課題だと私は理解をしている一人であります。そういう面で、中小の企業に及ぼす影響といいますか、それを含めての経済構造改革というのはどのようにお進めになろうとしておられるのかというのが一点。  同時に、産業の空洞化とか雇用の問題というのは、円高・ドル安の中で進行してきたわけですね。最近は、むしろ円安・ドル高に急速に今移行しつつある。このことの及ぼす日本経済なり雇用の問題に対しては、どういう御認識で、またどのように対処をしていかれようとしておられるのか。当然、これは今後の予算の編成であるとか、あるいは執行面において改善していかなければならない点があると思いますので、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと存じます。  もう一点は、公共投資の問題についてはいろいろございました。これもむしろ、円高の中で内需を拡大をしていく、貿易のインバランスを是正をしていくという面から、当初の四百三十兆円から六百三十兆円に、格上げというかかさ上げをして今日に至っているわけですが、これとてやはり、この期限をさらに延長していくか何らかの見直しということは、私は、国民の声であり、また、これはいろいろな分野の方々の率直なお考えじゃないかと思いますが、こういう点についてもう少し御見解をお聞かせ願えればと思います。
  141. 今井敬

    ○今井公述人 ただいま三つの御指摘があったと思います。  一つは、中小企業の問題でございますが、私、いろいろ経団連の仕事で地方を歩いておりますと、中小企業の問題というのはかなり問題が深刻だと思います。これはやはり、日本の我々産業を支えているのは、中小企業の今までの技能というものが非常に大きく支えている。例えば韓国なんかはそういうものがございませんから、景気がよくなると、全部部品を輸入してかえって赤字がふえる。日本はそういうことはございません。したがいまして、この中小企業対策というのは、やはり国としても非常に真剣にお考えいただかなければいけない問題ではないか。私どもも、自分たちの及ぶ限りにおいては一緒に歩いていこうということで、非常にそういうことには気を使って動いております。  それから二番目の、現状の円安・ドル高でございますが、私は、これは、一つの為替の循環の中でマーケットが決めているというふうに思っておりまして、大きな懸念は抱いておりません。ただ、余りにも円安に行き過ぎますと、多分アメリカの製造業からまた非常に大きな問題、貿易問題の提起が出てくると思いますし、逆に、これを余り円高に持っていこうとしますと、アメリカに対して今行っている機関投資家の投資が減ってアメリカの株価が崩れるというような問題もございますから、これは、余りいろいろ考えないで市場に任せておいた方がいいのではないか、私はそういうふうに思っております。  それから、公共投資の問題。おっしゃるとおり、非常に円高がどんどん進行して、日本の景気がおかしくなって、それでアメリカも、それは公共投資を少しやれというような圧力があった中で、おっしゃるように四百三十兆から六百三十兆だったと思います。したがいまして、私、先ほど申し上げましたように、その額にいつまでもこだわる必要はないと思います。これから財政再建をやっていく中におきまして、公共投資が聖域だということは全く考えておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、やはり、今後の次世代のための、日本の活力を維持するための必要な社会資本の投資ということは、これはどうしてもやっていかなければいけませんので、その全体を考える中でそういう優劣をぜひ先生方もお考えいただきたい、私どももそういう声を上げて訴えていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  142. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。  もう時間がわずかしかありません。財部公述人と蝋山公述人に共通してお尋ねしたいと思います。  金融機関の不良資産あるいは不良債権等々のことは、やはり日本経済というか、いろいろな面で国民も非常に関心を持っていると思うのです。これに公的資金を投入するということについても、いろいろな見解、見方があると思います。お二人の先生の御意見はわかりました。しかし、昨年、この住専問題で、私は当時そこに座っておったのですが、大変苦労いたしました。お二人の先生のお立場からすると、私は、あの措置はやむを得なかったというふうにきょう理解をいたしました。  同時に、金融機関のみずからの自助努力というか、銀行なり、そういった金融機関の役員なりの給与の問題であるとか、放漫経営とまでは言いませんが、そういういろいろな自己責任を自分たちで果たさずして公的資金を投入するということには、預金者はもとよりであるでしょうが、国民はなかなか理解をしてもらえない厳しい環境があるということも御承知のとおりでありまして、こういうことについてはどのように精査をしていった方がいいのか、御見解があればお聞かせを願いたいと存じます。
  143. 財部誠一

    ○財部公述人 私は、そこはもうはっきりと、救うべきは預金者の預金であって銀行ではないと。ですから、今はどうも、金融秩序の維持という大義名分のもとで銀行が救済されている、そういうムードが非常にございます。ですから、そこははっきりと、経営が成り立たない銀行は即つぶすという条件のもとで、それは預金者には迷惑をかけない、その原則を明確にするということが大事ではないかと思います。
  144. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 私も今の財部公述人と同じ結論でありますけれども、しかし、残念ながら、住専問題が議論されたときには早期是正措置を可能にするような法的な、制度的な手当てがありませんでしたし、日本の金融機関あるいは銀行が倒産するときどう処理したらいいかという点については何ら手当てがなかったわけでございます、一般の企業と異なって。そういうような制度的な不備というものをもっとよく国民に知らしめて、国民に納得をしていただくようなやり方、すなわち新しい金融制度というものはどんなものかということを国民に示す努力というものが、あの住専問題の論議の過程の中で必ずしも十分ではなかったのではないか、私はそんなふうに観察しております。
  145. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。時間ですから終わります。
  146. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、岩國哲人君。
  147. 岩國哲人

    ○岩國委員 太陽党の岩國でございます。太陽党を代表して質問させていただきます。  まず最初に、規制緩和についてのお話をちょうだいいたしましたけれども、そうした規制緩和が中小企業にどのような影響を与えていくかということについて、今井社長さんの方から御見解をちょうだいしたいと思います。  私も三十年間、皆さんに大変お世話になりましたけれども、大きければ強い、強ければ勝つ、裁判も免れる、それはちょっと余計なことですけれども、そのような強者の論理のような世界に三十年おりまして、そして今、このような規制緩和という大きな流れの中で、そうした強者の代表であるような新日鉄の経営責任者として、今後このような中小企業への影響がどのような形であらわれていくであろうか。とりわけ、日本経済の強さというのは大企業の強さだけではなくて、御承知のように中小企業の大変なある意味では犠牲また協力の中にこれだけの大きな経済の発展があったのだと私たちは認識しております。そうした中小企業への影響が、特にビッグバンといいますか規制撤廃が、下請構造を内蔵した現段階のままで外国と同じような形で行われるという場合には、他国に例を見ないような中小企業への影響というものが我が国では大変懸念されるわけです。この点について御意見をいただきたいと思います。
  148. 今井敬

    ○今井公述人 中小企業といっても製造業の中小企業の場合は、もう既に規制が全くない中で、大変に厳しい競争の中で生き残ってきておりますので、私は、規制撤廃、緩和、いわゆる製造業の関連では多分そう大きな問題は起こらない。そこで、起こるのは恐らく、問題とされております大店法の小売店、あるいは例えば証券の世界で言えばビッグバンをやれば中小証券、あるいは建設業で言えば、三人―五人の建設会社が六十万社もあるわけですから、それの効率化が図られていけば若干影響が出てくるだろう、私はそういう分野であると思っております。しかし、そこはやはり日本の構造改革をするためには避けて通れない道であると思っております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、既得権の擁護ではなくて、そういうことによって本当に影響を受けるような本当の弱者に対しては手厚く、雇用問題等にも配慮をしながらこれを進めていく必要がある。その問題があるから構造改革を進めないということは、日本はいつまでたっても世界の仲間入りはできないというふうに私は考えております。  以上でございます。
  149. 岩國哲人

    ○岩國委員 ありがとうございました。  次に、空洞化についてもお触れいただきました。確かにこうした空洞化というのは先進経済国においていずれも共通している現象であり、また悩みであるわけでございますけれども、特にこうした点において経済界を代表される社長の立場から、海外に進出した企業の危機管理体制について、これは単に海外の労働コストが安ければ出ていくという問題だけではなくて、かえってそうした安い労働コストのところほどまた危機管理の点で大変大きなコストを背負わなければならないという問題が最近非常にふえてきております。こうした危機管理について、例えば新日鉄の海外駐在の社員の数は何人おられるのか、御家族を合わせて何人なのか、また、新日鉄グループ全体としてはそれぞれどれぐらいの規模で今海外に駐在し、働いていらっしゃるのでしょうか。
  150. 今井敬

    ○今井公述人 私どもは海外に工場を持つということはほとんど今までございません。要するに、鉄は重い産業ですから外へ出ていけない。それから、ほとんど国有とかそういうことで鉄工業は各国なっておりますので、私企業はなかなか出ていけない。したがいまして、私どもはいわゆるアンテナとして駐在員を置いておるという程度でございます。  それから、最近になりまして下工程が、つまり我々のユーザーである自動車とか電機が海外にトランスプラントをどんどんつくって出ておりますので、それをやはりローカルコンテンツの問題で現地で供給しなければいけないということで、最近タイだとかその辺に出つつあります。  したがいまして、全体の数といたしましては、ほかの軽い産業、自動車とか要するに組み立て産業なんかに比べても大変に少のうございまして、全体合わせても百人から二百人の間ぐらいでございます。
  151. 岩國哲人

    ○岩國委員 私の質問が少し悪かったようでございますけれども、新日鉄さんの場合にはいろいろな、ジョイントベンチャーあるいは第三セクターあるいは企業買収といったような形で、最近そのような、直接駐在員の方が原材料の買い付けあるいは製品の販売といった過去の駐在の仕方とは相当違って、間接的な意味での進出が非常にふえておるのではなかろうか。そういった意味でそちらの方の数字をお聞きしたがったわけです。  時間がありませんので次の点に移らせていただきます。  先ほどから、こうした規制撤廃によって日本の企業のコストダウンをぜひとも一日も早く実現してほしいという御意見でございましたけれども、規制撤廃を叫びながら、政府に影響力を行使する立場にある与党に対して政治献金を今でも続けていらっしゃる。こうした点について、一般国民の間には、規制撤廃を期待してそのような政治献金が行われているのか、あるいは規制を残し、現体制を結局は温存することが株主の利益に合致していると思っておられるのか。その点、そうした政治献金、この規制撤廃を叫ぶ一つの流れの中にあって政治献金をそうしたところにされるということついて株主にはどのように説明されるのでしょうか。
  152. 深谷隆司

    深谷委員長 今井公述人、どうぞ、別に喚問でもありませんから答弁なさらなくても結構でございますから。  今井公述人。
  153. 今井敬

    ○今井公述人 私どもは政治献金をいたしております。率直に申し上げて、自民党と新進党にいたしております。  これは結局、私どもの信念は結果平等ではなくて機会均等、要するに機会均等の小さな政府、結果平等ではない、そういうような物の考え方で政策運営をしていただく党、そして個人の能力が最大限に発揮される、ただし弱い人たちには税でもってしっかりとした手当てをする、これは必要でございますが、そういう考え方の政党を応援している、こういうことでございます。  それから、私どもがやっておりますのは決して法に触れる行為ではございませんので、法の範囲内でやっておりますから、株主にも堂々と説明できる行為だ、こういうふうに思っております。
  154. 岩國哲人

    ○岩國委員 蝋山教授に一問、一つだけ御質問をさせていただきます。
  155. 深谷隆司

    深谷委員長 済みませんが、割り当て時間はもう過ぎていますので、恐縮ですが……。
  156. 岩國哲人

    ○岩國委員 ビッグバンにつきまして、その影響、証券人口、金融人口、こういう雇用の場についてどのような影響が出たか、アメリカにおいてあるいはロンドンのビッグバンにおいて。ごく簡単で結構ですから、お願いいたします。
  157. 蝋山昌一

    ○蝋山公述人 お答えいたします。  細かな数字は、私はノートを見なければわかりませんが、イギリスにおきましては、ビッグバン以降確かに銀行その他の名前は変わりました。海外に買収されたということはあります。しかし、雇用あるいは付加価値、そういうものはふえておりまして、かつて数%台だったものが一〇%を超える割合をGDPの中で占めるようになったのではないかというふうに考えております。そういう点で、ビッグバンの中期的な効果は、雇用、付加価値の増大という点ではプラスでありました。しかし、証券会社や銀行がだれの手によって持たれているか。株主保有構造という点ではユニオン・ジャックは消えたわけであります。
  158. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位に対しましてお礼を申し上げます。貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。皆様の意見を参考にして、これから政治を進めてまいります。御苦労さまでございました。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  次回は、来る二十四日午前九時三十分から委員会を開会し、一般質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会