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1997-02-20 第140回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 小里 貞利君 理事 高橋 一郎君    理事 中川 秀直君 理事 藤井 孝男君    理事 石井  一君 理事 権藤 恒夫君    理事 二階 俊博君 理事 中沢 健次君    理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    石川 要三君       臼井日出男君    江藤 隆美君       尾身 幸次君    越智 伊平君       菊池福治郎君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    田中 和徳君       高鳥  修君    戸井田 徹君       中山 正暉君    葉梨 信行君       松永  光君    村上誠一郎君       谷津 義男君    渡辺 博道君       愛知 和男君    愛野興一郎君       石田 勝之君    岡田 克也君       北側 一雄君    旭道山和泰君       小池百合子君    田中 慶秋君       高木 義明君    中井  洽君       西川 知雄君    平田 米男君       丸谷 佳織君    三沢  淳君       生方 幸夫君    海江田万里君       日野 市朗君    木島日出夫君       瀬古由起子君    松本 善明君       矢島 恒夫君    上原 康助君       北沢 清功君    岩國 哲人君       畑 英次郎君    前田 武志君       土屋 品子君  出席公述人         一橋大学名誉教         授       塩野谷祐一君         日本労働組合総         連合会会長   芦田甚之助君         北海道大学法学         部教授     宮脇  淳君         早稲田大学政治         経済学部教授  片岡 寛光君         株式会社野村総         合研究所主任エ         コノミスト   植草 一秀君         評  論  家 佐高  信君  出席政府委員         総務政務次官  野田  実君         防衛政務次官  浅野 勝人君         経済企画政務次         官       河本 三郎君         環境政務次官  鈴木 恒夫君         国土政務次官  井奥 貞雄君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       細川 興一君         厚生政務次官  鈴木 俊一君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         通商産業政務次         官       石原 伸晃君         通商産業政務次         官       上野 公成君         運輸政務次官  衛藤 晟一君         郵政政務次官  野田 聖子君         労働政務次官  小林 興起君         建設政務次官  佐藤 静雄君         自治政務次官  久野統一郎君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大坪 道信君 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     田中 和徳君   大原 一三君     戸井田 徹君   太田 昭宏君     旭道山和泰君   西川 知雄君     高木 義明君   矢島 恒夫君     瀬古由起子君   岩國 哲人君     畑 英次郎君   新井 将敬君     土屋 品子君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     渡辺 博道君   戸井田 徹君     大原 一三君   旭道山和泰君     丸谷 佳織君   高木 義明君     西川 知雄君   瀬古由起子君     木島日出夫君   畑 英次郎君     前田 武志君   土屋 品子君     新井 将敬君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 博道君     臼井日出男君   丸谷 佳織君     三沢  淳君   木島日出夫君     矢島 恒夫君   前田 武志君     岩國 哲人君 同日  辞任         補欠選任   三沢  淳君     太田 昭宏君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成九年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にさせていただきたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げる次第です。  御意見を承る順序といたしましては、まず塩野谷公述人、次に芦田公述人、続いて宮脇公述人順序で、お一人二十分程度ずつ御意見をお述べいただきたいと存じます。その後、委員からの質疑にお答え願いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、塩野谷公述人にお願いをいたします。
  3. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 おはようございます。塩野谷です。  立法者の皆様が国会審議中の貴重な時間を割いてくださいまして、私に意見を述べる機会を与えてくださったことに感謝いたします。私は、予算関連法案としての医療保険制度改正案につき限定して意見を申し上げます。  私は、過去二年近くにわたり、医療保険審議会において医療保険改革検討にかかわってまいりました。我々は、破綻に直面している医療保険制度の抜本的な改革のために、あらゆる問題点を大胆かつ慎重に検討し、その結果を十一月二十七日の建議書にまとめ、厚生大臣に提出いたしました。今、大胆に検討したと申しましたが、それは、利害の錯綜する問題でありながら、聖域を設けず問題点を洗い出したということであります。また、慎重に検討したということは、利害の錯綜する問題であるがゆえにさまざまな選択肢を設定し議論の対象としたということであります。この建議書は、医療保険制度始まって以来の大改革案であるというふうに世で評価されております。  建議書は「今後の医療保険制度あり方平成九年改正について」と題しておりますが、単に医療保険制度だけではなく、医療提供体制をも含む医療制度全体について、総合的かつ段階的な一連改革実施すると同時に、その第一段階として平成九年改正を行うよう提言いたしたものであります。  私が、ここでこの建議書に言及いたしますのは、そこにまとめられている議論は最も包括的な問題の整理であり、しかも国民各層の利益を代表する人々の冷静な判断を集約したものであるということの理由からであります。若干の点について意見は分かれておりましたけれども、医療保険制度あり方についてこのようにまとまった方向が示されたことはまことに注目すべきことであります。今後、議論出発点あるいは基礎となるべきものと考えられます。したがって、私は、今国会に提出されております改正案を評価するに当たっても、この建議書に盛られた考え方に立って考えることが最も適切であろうというふうに考えるものでございます。  今回の政府医療保険改正案は、一部負担保険料引き上げなど負担増が中心であります。今日これについて国会においてもマスコミにおいても国民の間においても一様に言われていることは、医療制度の抜本的な構造改革なしに国民負担増を強いるのは納得できない、こういうことであります。しかも、この意見一大合唱が起こっております。私もこの意見はまことにもっともであると考えます。だれにとっても負担増はない方がよいに決まっているわけです。しかし、私は、このような意見は正しいけれども、そうかといって負担増反対し、改正案を否定することは正しくないというふうに考えます。このことの理由を説明いたします。  医療だけでなく、年金や介護を含めて、社会保障制度全体を通じて今日我々に課せられている問題は、出生率の低下、若年者の減少、高齢者増大という人口趨勢の結果、高齢者を支えるために若年者に課せられる負担が激増していくということであります。今から三十年前を振り返ってみますと、一九六五年、六十五歳以上人口と十五ないし六十四歳の生産年齢人口との比率一対一〇・八でありました。つまり、若者十人で老人一人を支えるという関係でありました。現在、一九九五年をとってみますと、この比率は一対四・八となっております。五人で老人一人を支える。これから三十年後を展望してみます。二〇二五年にはこの比率は一対二・二となります。若者二人で老人一人を支えなければならないわけです。二〇五〇年にはこの比率一対一・七となります。  若年者の拠出によって高齢者給付を賄うといういわゆる賦課方式による現行の社会保障制度のもとでは、以上のような人口趨勢は、要するに三十年ごとに若者負担が倍増していくということを意味いたします。過去の三十年間には、実質GDP年率五%で成長し、その絶対規模は四・三倍になりました。若者がこの倍増の負担にも耐えることができたのは、このような経済成長が背景にあったからであります。しかし、これからの三十年間経済成長の鈍化によって五%成長を望むことはできません。年率二%の成長考えますと、GDPはこの三十年間に一・八倍にしかなりません。こういう環境の中で、高齢者を養う負担が倍増すれば、若年者生活水準は相対的に低下せざるを得ないのであります。  さらに、高齢者一人当たり医療費は、若年者一人当たり医療費の約五倍であります。しかも、医療技術進歩を含む成長産業でありますから、医療の質とコスト上昇は絶えず起こっていきます。ますますふえていく高齢者医療費上昇をますます減少する若年者負担するという構図が、いわゆる少子・高齢社会における社会保障問題点であります。負担はこういう形で必ず起こるわけでございます。ここで世代間の負担の公平という問題が生じ、高齢者にもしかるべき負担をお願いしなければならない必要が出てまいります。  したがって、我々の建議書は、国民各層負担を求めざるを得ない理由を強調すると同時に、今回の改革が一部負担保険料率引き上げを安易に求めるのではなく、医療提供体制見直し医療のむだの排除、医療効率化などが大前提となって、その上で国民全体に痛みを分かち合ってもらう、そういう改革として負担増加を求めざるを得ない、こういう苦渋の選択をしたのであります。構造改革負担増もともに必要なものであります。構造改革をすれば負担増はなくて済むというものではありません。また、負担増をすれば構造改革をしなくてもいいというわけではありません。どちらもやらなければなりません。この程度負担を避けることはできないのであります。なぜなら、今回の負担増をしても、構造改革なしには一、二年で再び財政収支赤字に直面するからであります。それほど我々の直面している問題は深刻であります。  そこで、建議書における改革方法論を申し上げますと、まず一方で主要な問題点を設定します。他方で、それらの問題を解決するに要する時間的なスパンあるいは段階考えます。したがって、問題点と時間的段階の両軸を持つマトリックスができ上がります。主要な問題点というのは、医療提供体制見直し診療報酬体系見直し薬価制度見直し老人保健制度の再編成社会的入院解消等々であります。これらの問題は、現在厚生省及び各種審議会検討課題となっておりまして、早急に具体的な改革案の全体像を提出することが必要となっております。これに基づいて、二〇一〇年ごろまでに改革が完成するように三段階に分けて計画を構成したのが建議書でございます。その第一段階として、平成九年の改正が位置づけられております。こういう時間的なスパン構造改革の時間的な工程表というふうに申しますと、その中では介護保険導入が極めて重要な柱となっております。したがって、医療保険構造改革は決して空想的なものではなく、介護保険導入というものをてこにして実現されるべき具体性を持ったものであると考えます。  そこで、以上のような観点から、政府案を評価するとどうなるかということについて私の考えを申し上げます。三つ申し上げます。  第一に、私は、九年改正政府案におけるように一部負担保険料などの引き上げという財政対策だけではなく、法改正を伴わずとも直ちに行政的に実施に移すことのできる各種の施策を同時に含むべきであるというふうに考えます。これらは、例えば必要病床数あり方見直しであるとか、医師数需給関係見直しであるとか、多数の項目にわたりますが、決して無視すべき小さな問題ではありません。私は、これらを平成九年に行う構造改革先行パッケージとしていろいろなものをまとめて、そして政府案に提出されている一連財政対策とリンクして考えることを提案します。  第二に、平成九年改正はあくまでも医療保険制度抜本的改革の第一段階でありますから、政府は、各種審議会を通じて、一定期間内に医療提供体制診療報酬体系薬価制度老人保健制度などの具体的な改革を策定することをはっきりと宣言すべきであります。これらにはもちろん若干時間がかかりますので、必ずなし遂げるための手順を、先ほど申し上げた構造改革の時間的な工程表として明らかにすべきであるというふうに考えます。これを政府平成九年改革案とリンクして考えることを提案いたします。  第三に、平成九年改正政府案は、医療保険制度安定的運営という財政対策であるにとどまらず、世代間の負担の公平に配慮したものであるというふうにうたっていながら、実は高齢者負担増を著しく低めております。建議書では、高齢者の一部負担を一割に定率化することが適当であるという意見が大勢であったということを述べておきましたが、政府案ではそれが取り入れられておりません。私の考えでは、定率化というのは、高齢者若年者との負担給付の公平を図り、二十一世紀にまで維持可能な制度を構築する上で象徴的な意味を持つものだというふうに考えております。新聞や雑誌の世論調査を見ても、高齢者自身の大部分建議書に盛られているような負担増加をやむを得ないものとして支持していることを考えますと、定率化の放棄は公正な制度改革のための足がかりを放棄するものであるというふうに言わざるを得ず、まことに遺憾であります。高齢者若年者との間の利害対立をますます先鋭化しないよう配慮を求めるものであります。  先ほど指摘いたしましたように、医療構造改革がないまま負担増を求めることは納得できないという意見が多数行われております。この意見は、一見したところ大変もっともらしく聞こえます。しかし、実は大きな危険を含んでいると考えます。負担増大反対し、構造改革を行えばいいという声にだれもが賛成するのは、その改革の中身が明らかにされない段階における総論賛成にすぎないからであります。改革痛みが伴うということから明らかなように、いざ改革を具体化するとなればさまざまな各論反対が出てくるでしょう。当面の財政危機を克服するために負担増大を図りつつ、改革に確実にリンクしていくことこそが改革実行に移すために不可欠なものであります。改革負担増とは不可分であって、改革のない負担増には反対だという意見総論賛成各論反対を唱えることにほかならないと私は考えます。  国民負担増を課すことは大変つらいことでありますけれども、これによって二十一世紀初頭に向けて医療保険制度安定化を確保し、質の高い医療国民に提供することができるように、抜本的な構造改革をするための基礎を確立することが今日必要であります。国会審議におきましては、負担増部分にのみ注目するのではなく、先ほど私が述べた構造改革先行パッケージ構造改革の時間的工程表の二つをあわせて考察することを要望します。  また、負担増につきましては、世代間の公正を図るという視点が不可欠であるということを強調したいと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、芦田公述人にお願いいたします。
  5. 芦田甚之助

    芦田公述人 連合芦田でございます。  本予算委員会におきまして、意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。  私は、まず九七年度予算案について概括的に見解を申し上げた後、私たち連合が求めております二兆円特別減税継続医療改革について考え方を申し上げ、あわせて当面する財政構造改革あり方につきましても付言をいたしたいと思います。  まず、九七年度予算案の特徴を一言で言いますと、財政改革に名をかりて国民に巨大な負担を押しつける予算であるというふうに言わざるを得ないところでございます。  歳入面では、消費税税率が五%に引き上げられます。そして特別減税廃止をされます。そして、医療制度改革を先送りしたまま健康保険料引き上げと一部負担増大が予定されているわけであります。これらを合わせてざっと九兆円の負担国民に押しつけられることになります。単年度で国民にこれほど多くの負担増を強いる予算はかってなかったと思うのであります。  一方、歳出面では、コストや社会的な効率面など幾多の問題が指摘されている公共事業につきまして、何一つメスが入れられていません。そればかりか、到底採算がとれない整備新幹線の着工が決められ、将来に大きな負担増をもたらすことになるなど、財政再建とは逆行することが行われていると思うのであります。  政府は、予算編成当たりまして財政構造改革元年と言っておられますが、その実は、改革に名をかりて国民にかつてない負担増を押しつけるものと言わざるを得ません。そこには国民生活景気への配慮といったものが見受けられないのであります。  一挙に九兆円もの負担増勤労国民は耐えられません。したがって、私たち連合は、二兆円の特別減税継続とその制度減税化を図ることを要請をしたいと思うのであります。二番目に、一年をめどに医療改革の具体的なプログラムについて結論を得るまで医療費負担増を凍結すべきであると思います。また、公共事業を初め歳出面見直しを徹底的に図っていただきたいと思うのであります。こうした観点から、本予算案が組み替え、修正されることを求めるものでございます。  以下、具体的な問題について申し上げます。  まず、二兆円特別減税について、私たちが何としてもこれを継続していただきたいと主張する理由並びに根拠についてであります。  予算案がこのまま成立をいたしますと、消費税引き上げ特別減税廃止医療その他の負担増、合わせて九兆円もの負担増勤労者家計にまことに大きなおもしとなってのしかかってまいります。私たち連合が試算したところによりますと、年収七百万円層の標準的な勤労者世帯夫婦片働きといいますか、一方が働いて子供二人の場合でありますが、消費税引き上げによりまして年間五万九千円、特別減税廃止で五万四千円、計十一万三千円の負担増となります。これに医療費等負担増を加えれば優に月一万円以上の負担増になるわけでありまして、まさにトリプルパンチと言わざるを得ないのであります。もう一つ引き下げまして、年収六百万円層の勤労者世帯夫婦片働き子供二人の場合はどうかといいますと、消費税引き上げによって年間五万一千円、特別減税廃止で三万八千円、計八万九千円、これに社会保険料等負担増を加えるならば、月に一万円近い負担増になるわけであります。  第二に、予算案が強いる負担増は、勤労者家計を直撃し、個人消費を冷やすことで、景気に大きなショックをもたらすものと思うわけであります。今、景気は緩やかな回復過程にあり、自律回復課題となっていますが、消費税引き上げに加えて特別減税打ち切りは、景気回復に冷や水をかけ、失速させるおそれがないとは言えないのであります。特別減税打ち切りを決めた予算案の発表と同時に、株価が一斉に下落をいたしました。これは、この予算案では政策不況のおそれありと市場が反応したのではないかと思うのであります。  消費税アップ特別減税打ち切り経済に与える影響について、経済企画庁は向こう三年間成長率平均〇・九%引き下げると試算をいたしております。民間調査機関が予想する経済への影響はそれよりも少し大きく、一%程度と見ております。その結果、九七年度の政府経済見通しは一・九%成長とかつてない低い水準となっているわけでございます。  問題は雇用でございます。こうした経済の総体的な冷え込みの中では、雇用は一層深刻化することが予測されます。九六年の完全失業率は、年間平均三・四%と統計史上最悪水準でしたが、これがさらに深刻化するとなると、経済構造改革もその実行前提条件を失うことになるのではないかと思うのであります。  今、民間自律回復力を腰折れさせないためには、特別減税継続など適切なマクロ経済政策実施基本的条件であると思うのであります。それはまた、一定の税収の伸びを必要とする財政再建にとっても不可欠なものだと思います。  以上、私たちは、勤労者生活を守るという立場景気自律回復を確実なものとしていく立場から、何としても特別減税継続すべきであると要求しているわけでありますが、さらに言えば、私たちは従来から、特別減税継続、その制度減税化消費税率引き上げ前提条件であると主張をしてきたのであります。  今回の消費税引き上げについては、九四年に五・五兆円の特別減税実施されましたとき、私たち連合は、財源について無責任な立場はとらない、こう言明してきた経緯がありまして、一定前提条件が満たされるならばやむを得ないという考えできたところであります。その前提条件として、我々は、行政改革の推進などとともに、益税解消など消費税改革総合課税化納税者番号制早期導入、あわせて特別減税継続とその制度減税化を主張してきたのであります。ここで特別減税廃止されれば、増減税イコールで想定されたはずの九七年度からの消費税引き上げ実質増税になってしまうわけであります。こうした前提条件が満たされなければ、連合としては消費税引き上げをそのまま容認することはできないのであります。  次に、医療改革についてですが、減税とあわせて医療制度改革も、九七年度予算案に関して私たちが非常に重視をしているところでございます。ことし五月から保険料引き上げ患者負担増大などを行う医療保険法改正が準備をされ、予算案にもそれが盛り込まれております。  国民医療費伸び国民所得伸びをはるかに超えまして、各医療保険制度はいずれも赤字に陥っております。政府医療保険法改正案は、これに対して保険料引き上げや一部負担増大で対処しようとするものですが、今後の我が国の経済社会構造の変化を考慮するならば、こうした負担増だけで対応できなくなることは明らかであります。今回の政府案でも、三年後には各制度とも再び赤字になるとされております。  したがって、連合は、医療問題を小手先の費用問題に矮小化するのではなく、二十一世紀の超高齢社会においても必要かつ良質な医療を保障できるよう、今から医療保険制度全体の見直し改革を講じていくことを何よりも優先させるべきであると考えております。  この改革具体的課題として、我々は、第一に診療所と病院との機能分担など医療供給体制の見直し、第二に出来高払い診療報酬制度見直しなど医療保険制度改革、第三に老人保健制度にかわる新たな制度の創設などについて早急に検討を行い、その基本方向について本年中に結論を出すべきだと提起をいたしておるのであります。負担あり方については、それらの改革方向と将来の費用見通しに基づいて、保険料、公費、患者負担の組み合わせも含めて国民的な合意形成を図るべきだと思います。  したがって、こうした改革の具体的プログラムについて結論を得るまで医療費負担増は凍結すべきだと思うのであります。  以上、九七年度予算案に対して、連合は、国民生活への配慮景気対策の観点から二兆円減税継続すること、第二に、医療改革についてはほぼ一年をめどに結論を得るまでは医療費負担増は凍結することを要求し、そのために予算の組み替え、修正を求めたいと思うのであります。  第四番目に、財政構造改革について若干触れさせていただきます。関連するテーマといたしまして、公共事業見直しについて付言をいたしたいと思います。  財政構造改革元年というならば、まずメスを入れるべきは公共事業あり方であります。今、公共事業は、国民のニーズに合った事業が展開されているかどうか、大いに疑問を持つところであります。  産業構造や国民生活スタイル、価値観の変化などに見合って公共事業の内容も柔軟に変化をしていくべきでありますが、実態はというと、一般会計予算における公共事業関係費の事業別配分は、過去十年間、コンマ以下のパーセンテージでしか動いていません。省庁別の配分の様子を見ましても、同様に全く硬直したものとなっております。  また、公共事業民間の工事に比べましてそのコストが二割から三割高いと巷間言われております。指名競争入札など、公共事業の入札、発注のあり方に問題があることがその原因の一つではないかと思うのであります。こうした公共事業のむだをなくしていくことは、財政状況が非常に厳しい中で第一に取り組まなければならない財政構造改革だと思うのであります。  また、今後ますます本格化する高齢社会に向けまして、財政需要は増加することが予想されますが、高度福祉社会の実現に必要となる財源を確保していくためにも、既存の歳出の抜本的見直しが不可欠だと思います。公共事業について言えば、この際、六百三十兆の公共投資基本計画及び各事業計画を見直して、例えば、五カ年計画は七年に、七年計画は十年に繰り延べるというのも一つの方法ではないかと思うのであります。  最後にもう一点。  今国会で九七年度予算案に先立って可決されました九六年度補正予算では、一兆六千八百億円に上る建設国債が積み増しされ、必要以上に公共事業が追加されました。しかし、景気対策の観点からしても、さきに見たようなゆがみをそのままに公共事業に大盤振る舞いを行うよりは、減税実施する方がはるかに国民の意向に沿った政策選択であると思うのであります。  以上、九七年度予算案に対して、私たち連合は、公共事業費を中心に徹底して歳出構造の見直しを行うこと、そして、二兆円特別減税継続医療費負担増の凍結を内容とする修正を求めていることについて、その考え方を申し上げたわけでございます。  九七年度予算案をして真に財政構造改革元年予算たらしめんとするならば、当予算委員会審議を通じて、どうか国民に一方的な負担を強いることのないよう、我々の切実な要求である減税医療改革に前向きの見直しを行われることを期待いたしまして、私の意見陳述といたします。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、宮脇公述人にお願いいたします。
  7. 宮脇淳

    宮脇公述人 北海道大学法学部の宮脇でございます。よろしくお願い申し上げます。  私からは、平成九年度予算に対する評価と、それに関連いたしまして、行財政改革の問題について考え方を御紹介させていただきたいというふうに思っております。  まず、平成九年度予算についてでございますけれども、数字上は、一般歳出の伸び率を一・五%に抑えている、また公債発行総額でございますけれども、これを前年度の当初予算と比較をいたしますとかなり抑え込むということで、その編成に対する努力というものがある意味で見られる予算であるというふうに言えようかと思います。  ただ、こうした数字上の問題とは別に、平成九年度予算が持っている財政の体質というものにつきましては、かなり違いがあるのではないかというふうに思っているわけでございます。それは、シーリングを初めといたしましたこういう数値コントロールによります予算編成の持っている欠点ということにつきまして、アメリカの予算編成でも指摘された点でございますけれども、頭のないくぎという表現がございます。この頭のないくぎというのはどういうことかといいますと、打ち込むことはできても抜くことができないという意味でございます。すなわち、総額を抑制することができたとしても、その財政体質そのものについてはなかなかこれだけでは改革することができない。ですから、シーリング的な手法と同時に、それを実効あるものとして体質構造改革に結びつけていく方法をやはり導入していく必要があるのではないかというふうに考えさせていただいております。先ほど塩野谷公述人からも御指摘がございましたように、やはり国民負担の拡大ということと構造改革というものは両輪の課題であろうというふうに思っております。  そういうことからいいますと、平成九年度予算につきましては、やはり残念ながら、その構造改革的な取り組みということについては、負担増に比べますと遅いものになっているというふうに言わざるを得ないのではないかと考えておるところでございます。  それでは、この財政体質の中で持っている問題点ということでまず挙げさせていただきたい点と申しますのは、やはり先ほども御指摘ございましたけれども、公共事業の問題であろうというふうに考えさせていただいております。  この公共事業については、二点具体的に指摘をさせていただきます。  一つは、補助行政による公共事業の執行の問題点ということでございます。  御承知のように、地方を中心といたしました公共事業の執行に当たりまして、現在、地方公共団体はほとんど自主財源を使わないか、あるいは使ったといたしましても一、二割のところで公共事業実施できるという仕組みがございます。すなわち、補助金を獲得して、そして地方債の発行の許可を得て、さらに地方債の元利償還については地方交付税等で最大限五五%程度まで賄われるという図式の中で地方における公共事業というものが行われている、こういう実態があるわけでございます。  こういう実態の中で、地方公共団体におきましては、まず補助金を獲得するということが最大限の努力課題となってしまいます。その中から生まれてくることといいますのは、やはり国が企画をした公共事業というものが中心にならざるを得ないということでございます。そうしますとどうしても、自主財源が厳しい中にありまして、企画に合わせる形での公共事業が先行してしまう。そうしますと、地域のニーズに対しては必ずしもこたえられない、そうした公共事業というものが拡大していってしまうということが現実の問題として起こっておるわけでございます。  そういうことから考えますと、公共事業の総額の問題と同時に、補助金を中心といたしましたこうした公共事業の執行方法についても、やはり抜本的な改革をしていくということが必要なのではないかというふうに考えております。  それと、第二番目といたしまして、この補助金による公共事業の問題の延長線上の課題ではございますけれども、いわゆるランニングコストに対する配慮というものが現在の公共事業予算については希薄であるということでございます。簡単な言い方にかえさせていただければ、つくることが目的であって、完成した後についての運用方法についての配慮というものが残念ながら薄いということになってまいります。  この補助金による公共事業によりまして、地方公共団体が、自己財源というものを十分確保できない、出さないでいいという中で公共事業をやってまいりますと、非常に大規模な施設というものを抱えてくる可能性が起こってくるわけでございます。つくった後にその施設というものを維持していくということに対しまして、非常に大きなコストがかかってきてしまうということでございます。  一九七〇年代から八〇年代にかけまして、ニューヨーク市が破産の危機に瀕するという状況に至ったことがございますけれども、この一つの原因と申しますのが、公共事業を、つくることを目的として非常に大きく投資をしてしまって、その後のランニングコストに対する配慮というものが十分ではなかったということがあるわけでございます。日本の公共事業も、建設公債等を発行して、国民の貴重な貯蓄を活用することによって形成されているわけでございますから、そうした貴重な財源によってつくられた施設というものが十分に生かされずに終わってしまうということに対しては、やはり抜本的に見直していく必要があると思います。  これは、全体的な問題ですので、細かい試算というものをするとまた別ではございますけれども、今の公共投資、新規投資分に対しまして、大体五年を経過したあたりから少なくとも二割程度のランニングコストがかかるというのが平均的な試算ということになってまいります。そうしますと、こうした将来の負担増ということを考えますと、現在の既存の公共事業につきましては、少なくとも一割から二割これを削減した上で将来のランニングコストを維持するということが必要になってくるのではないかというふうに考えております。  加えて、この問題は過疎地域における公共事業にも影響を与えるわけでございまして、過疎地域における公共事業の規模というものが、いわゆる身の丈の量というものをはかれない、そういった問題点というものもございます。ですから、公共事業の問題はそうした観点からやはり見直しをしていただければというふうに思っております。  それから、もう一つの大きな予算規模でございます社会保障関係費につきましては、先ほど来さまざまな御議論がございますので、ごく簡単に触れさせていただきたいと思いますが、一点だけ、国民負担を求める場合でも、税なのか保険制度なのかというところについてはやはり明確に区分をしていただくということが、この社会保険制度に対する国民の信頼性を確保していくためにもやはり必要な取り組みではないかというふうに思っております。  こうした一般会計を中心とした問題に加えまして、財政構造改革ということであれば、やはり特別会計と財政投融資の改革というものは一体の課題であるというふうに踏まえざるを得ないというふうに考えております。特に、特別会計におきましては特定財源の問題というのをどう考えていくのか。  日本の経済国民生活というのは大きく変化をしてきて.いるわけでございます。そうした中で、スタート当初は受益と負担を明確化するということで特定財源というのは非常に意味があったということは言えるかと思いますけれども、残念ながらその後の環境変化というものに対する対応というものが縦割りの中で十分行われてこなかった、そのことが財政配分を非常に硬直化するという問題点を今は抱えてきていると思います。  また、全体的に財政構造改革をするのであれば、今の財政の中で余力のあるものについてはできるだけ活用するということもまた一つの方法であろうと思います。そういうことからいいますと、特別会計、これを財政構造改革においては一つの中心テーマとして議論していくということがぜひ必要なのではないかと思っております。  そして、財政投融資の問題でございますけれども、この問題は、昨今、特殊法人等を中心といたしましてさまざまな議論が展開をされております。私は、平成九年度の財政投融資計画につきましては、従来よりも一歩踏み込んだ計画というものを立てていただいているということは言えるのだろうと思います。  と申しますのは、例えば、鉄道整備基金でありますとか中小企業事業団等の新規運用先からの除外といったようなことも含めて、取り組まれているというところは評価ができると思います。こうした動きというものをやはり制度全体に広げていく、そしてさらに、財政投融資制度そのものについて、どういう資金配分で行っていくことがいいのかということまでこの議論というものを拡大させていくことが必要だろうと思います。  ただ、特殊法人議論におきまして一点つけ加えさせていただければ、組織単位の議論ということと同時に、やはり機能論というものをどういうふうにしていくのかということが重要ではないかと  いうふうに思っております。  例えば、地域金融を担っている政府系金融機関あるいは今回御議論されております住宅・都市整備公団さんがこれから地域開発的なところに主力を持たれていくということになりますと、財政あるいは財政投融資で地域開発というものをどういうふうに位置づけるのかといったようなことをまずきちっと整理していただいた上で、そういった機能が国として必要あるのかないのか、その組織体としてどうなのかという議論も同時にしていただかないと、やはり組織単位の議論でいうとなかなか改革というものは進みづらいということになってこようかと思います。  なお、今回の改革におきまして、エージェント化ということが一つのテーマとして上がってきております。  御承知のように、イギリスのサッチャー政権からスタートしたこのエージェント化でございますけれども、私も、このエージェント化というプログラムを動かすということについては、基本的に積極的に取り組むべきではないかというふうに考えております。その大きな理由といいますのは、ただいま申し上げましたように、特定の組織だけではなくて、霞が関内部も含めましてすべてをその見直しのテーブルに一応のせる、そしてやってみるということがこれによって可能になってくるということだろうと思います。  ただ、このエージェント制度といいますのは、三点だけ踏まえなければならない点がございます。  一点といたしましては、これは、イギリスにおいては最終的に民営化というものを目的として行われたということでございます。ですから、エージェント制度については次善の策ということで、ネクストステップシステムの中の一つに位置づけられているわけでございます。したがいまして、仮に、日本語で今訳されておりますけれども、いわゆる外庁化ということが実現したとしても、そこがゴールではないということをまず踏まえなければいけないということでございます。  それから二番目といたしまして、この制度というのは各行政組織体に対して自主性を与えるということでございますので、今の予算編成方式そのものに対して影響を与えるということでございます。各組織体に対して、ある意味でいいますと自主性を発揮していただくために予算というものをファンド化、つまり基金化をして三年ないし五年提供するといったようなことが必要になってまいります。したがいまして、今財政が問題として指摘されております単年度主義ですとか、あるいは取得原価主義というところのあり方というものも厳しく問われてくる。あるいは、全部ではございませんけれども、行政におきます予算編成の方法そのものを変えていくということがこれについては求められてくるということでございます。  そして最後に三番目といたしまして、この制度というものは、ただいまも御紹介させていただきましたように、行政各機関に対して裁量権を与えるというのが基本的な枠組みとなるわけでございます。したがいまして、まず行政のやるべき領域というものを明確にした上で、各機関に対してはやはり最大限の裁量権を与える、すなわち官僚に対する国民の信頼性がこの制度の中の基本にあるということでございます。  こういったことをきちっと踏まえた上でエージェント化等のプログラムというものを明確に示していただくということが、今の行財政改革においてはぜひとも必要なことではないかというふうに思っております。  最後に、私の考え方を述べさせていただくまとめといたしまして、行財政改革というものに今真剣に取り組めば、日本という国にはまだ余力があるわけでございます。御承知のように、今まで戦後半世紀にわたって積み上げてまいりました国民の貯蓄、これを有効に使えるかどうかというのが今最大限に問われているというふうに思っております。もちろん、後世代に対して負担を残すということも大きなテーマではありますし、現世代の貯蓄というものをいかに有効に活用できるかというテーマでもあろうかと思っております。その意味では、ぜひ構造改革を通じまして日本の行財政の姿というものを国会を中心として提示していただきたいというふうに思っております。  そして、先ほどのエージェント制度というものが本当に有効に機能する、これはイギリスの場合もそうですけれども、議会が行政機関のいろいろな機能というものを有効にチェックし得るかどうかというところに最終的にはかかってくるわけでございます。したがいまして、そういった議会におけるチェック機能というものをいかに今後拡充していくかということもやはり大きなテーマであろうというふうに思っております。  以上、多岐にわたりましたけれども、行財政改革を中心といたしました私からの考え方の御報告をこれで終わらさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 深谷隆司

    深谷委員長 これより公述人に対する質疑を行いたいと存じます。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。関谷勝嗣君
  10. 関谷勝嗣

    ○関谷委員 私は自由民主党の関谷勝嗣でございます。  まず三人の公述人に、お忙しいところ御出席をしていただきましてすばらしい御意見をいただきましたことに対しまして、予算委員会の一人としてお礼を述べさせていただきたいと思います。  かつまた、私がどうして最初に自由民主党と言ったかといいますと、最近、御承知のようにいろいろな新しい政党が日々刻々できておりますし、また、顔を見ても、今どこに所属されているかということを判断してからいろいろ話をしなければならないように、大変大混乱の状態でございます。それでお三方に自由民主党でございますと、私も二十一年間自由民主党でまじめにやっておりますから、そういうようなことで質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、塩野谷公述人にお願いをいたしたいと思うわけでございますが、御意見の中にもございましたように、ことして戦後五十二年になりますか、半世紀が過ぎたわけでございますから、あらゆる分野といいましょうか、あるいはまた我々国民一人一人が持っております考え方、いわゆる主張、そういうようなものも当然大きく変わってまいりましたし、また変えていかなければならない、そういうようなことで、今橋本総理が六つの大きな改革をやるべく努力をしておるわけでございます。  それで、きょう私は社会保障の問題を中心にして御意見を改めてお伺いしたいわけでございますが、その御質問をします前に、やはり周辺の変化、これはもう公述人既に御存じでございますが、中でも高齢化というようなことをよく言われております。しかし、高齢化ということはもう十数年にわたっていろいろ施策を行ってきておる、その反対の少子化というものをもっと真剣に考えていかなければならない。ことしの予算委員会はその点が非常に大きく出ておりますから、私はよかったと思っておりますが、この少子化。それからまた、金利がもう最低である。それから、経済はなだらかな成長基調にあるといいますけれども、十分足腰の強いものではないと思います。  そういう中にあって、今後、保険料負担というものが、これは医療の保険にいたしましても年金の保険にいたしましても当然増加してくると思うわけでございますが、その中で塩野谷公述人が特に医療関係のことを述べていらっしゃいました。  医療費の財源というのは、釈迦に説法でございますが、三つあるわけでございまして、そのパーセントを調べてみますと、患者負担が一割、これを二割にしようと今言われておりますが、それから公費が三割、それから保険料が六割というようなことになっておるわけでございます。しかし、世の中に金のなる木があるわけでもないし、打ち出の小づちがあるわけでもない。やはりどれかを負担増というのはやむを得ないと私は思うわけでございます。  ですから、その三つを、平等といいましょうか、割合を同じく上げていくのか、あるいは、公費を上げていくのか、保険料を上げていくのか、患者負担を上げていくのかということになるわけでございますが、塩野谷公述人は、強いて行うとするならばこの三つのどの部分負担増にすべきか。私は、やはり今の財政赤字、それからまた、今保険料、税負担が三七・八%ぐらいでございますか、そういう中にあって、生産者人口、いわゆる若い方々がこれ以上の負担増には耐えられないというようなこともあるのだろうと思いますが、患者負担をふやすということはやむを得ない。それで、今医療の保険制度改革で一割を二割にしようというようなことが出ておるわけでございますが、そのお考え方はいかがでございましょうか。
  11. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 おっしゃるとおり、医療費の財源は、患者一割、公費三割、保険料六割という構成で行われております。  今回、患者一割を二割にするということで、マクロ的にこのとおり患者負担が二割になるかどうかはわかりません。いろいろ高額療養費とかそういうものがありますから、実際に一割が二割になるかどうかはわかりません。制度として一割を二割にした結果とマクロ的な数字とが一致するかどうかはわかりませんが、改正案では患者一割、それから保険料も当然上げるということになっております。公費の方は、財政再建の折であり、一つの制約条件として受け取り、むしろこれは減るようになっていると推計では出ております。  私は、患者の負担をふやすということはやむを得ないことであり、そうすべきであると思いますけれども、先ほどの公述の中で申しましたように、患者負担の中にも構造があるわけであって、若い人の負担老人負担、こういうものを考えて、もう少し老人にも負担をしていただきたい、こういうふうに考えております。  非常にその点にぴったりとした数字があるので申しますと、若い人、それから老齢の方、それぞれ保険料を払い、患者負担を払い、そして給付を受けている、こういうことですね。二つのものを払って給付が全体としてどれだけか。  そうすると、若い人は余り病気にかかりませんから、払ったものの三割五分しかもらっていない。三五%しかもらっていない。何十万払ってもその中の三五%しか給付を受けていません。老人の方は、払ったもの、つまり保険料患者負担に対して受けるものは七二二%、つまり払ったものの七倍のものを受けるわけであります。それは、先ほど申しましたように、一人当たり医療費というものが若い人と老人とで五倍の差がありますから、当然こういうことになりますし、それから一人当たり保険料も、老人の方はほとんど何分の一かでございますのでそういう差が出てきます。そうすると、その倍率は若い人の二十倍を老人は受ける。  それが、今回の改正案になりますと十五倍ぐらいに減る。若い人はやはり三五%ぐらいのものを給付として受け取る。しかし、老人は五三三%のものを返してもらっている。そうすると、要するに〇・三五対五・三三です。若年が三割五分に対して、老人は五・三倍ということであります。そういう一部負担患者負担の構造に私はむしろ関心があるということを申し上げたいと思います。
  12. 関谷勝嗣

    ○関谷委員 次に、もう一度お尋ねいたしますが、先ほど公述人が、構造的な改革がまだ十分でないというふうにおっしゃられましたが、確かにそういう点はあると思うわけでございます。  この構造改革審議会の内容を熟読しましても、よく効率化という言葉が使われておりますね。少し御意見の中で触れていらっしゃいましたけれども、この効率化というのが非常に難しい問題だろうと私は思うわけでございますが、項目的に挙げられるとするならばどういうことをやっていくのが効率化であるか。  例えば、田中角栄内閣総理大臣のときには、各県に一校ずつ医学部をつくっていくということで医学部をつくってまいりました。そうすれば、医者が余るのは当たり前であるわけでございます。  ちょっと私の関係の例を挙げて恐縮でございますが、私のおいっ子に医者がいるわけでございますが、どうも今後は医者だけではなかなか生活もやりづらいということで、よく努力はいたしましたが、三十七歳までかかりましたが、今度は税理士の免許を取ろうと。医者の免許を持っていて税理士の免許を取れば、医者が経理を頼んでくるだろう、そうすればその方で生活ができるというようなことでやりましたが、税理士といってもなかなかそう簡単に受かる試験ではない。とうとう三十七歳までかかりました。いまだに独身、かわいそうなものでございます。  そういう、医者の数をどうこうするのも、ですから今は事実、医学部の定数を減らしておりますね。だから、そういうのもまた構造の改革効率化の一つかもしれません。  それから、診療所と病院をはっきりとするというようなことも、それは先生でしたか、何か述べていらっしゃいました。そういうようなこともあると思うのですが、効率化というのはどこをどうすれば効率化できるのか、項目的にちょっと述べていただきたい。
  13. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 大変適切な御質問であろうと思います。要するに、日本の医療制度は大変むだが多いということでありまして、それをなくするということが効率化でございます。具体的にどうやるかは、あらゆる項目がすべてそれに関係を持ってくるわけで、どれかを挙げてどれかを挙げないということは不公平になりますけれども、主なもののみを挙げましょう。  皆さん、薬をお医者さんからもらってほとんど飲まないで捨てるとか、そういうことをよくおっしゃいますね。それも明らかなむだでしょう。薬のそういう過剰供与は何ゆえに起こるかということをまたたどっていけば、薬価差益というものがあり、要するに、政府が公定価格を薬について設け、しかし取引は自由に任せておく、そういう自由と統制とのミックスの仕方が大変日本の制度はまずいということの結果であります。  それから出来高払い制も、診療サービスにいろいろ価格をつけておいて、しかし請求したものは皆払う、こういうことになっておりますから、そこでも過剰な診療とか過剰な検査などが行われるわけであります。  要するに、効率ということは、一定のインプットによって最大のアウトプットを生み出すということであります。あるいは、あるアウトプットを生み出すために最小のインプットで済ませる。アウトプットというのは何も生産物のことをいうわけではなくて、医療についていえば、健康を回復して生命を健康に保つ、それから病気を治す、こういうことであります。そういう医学上のアウトプットを生み出すために今投じているような経済資源が適切に使われているかどうかということが効率化ということであるわけで、これはシステム全体を再調整する必要があるわけであります。  そして、具体的にやる方法は、競争というものを入れなければ効率化というのは行われないということを申し上げたいわけです。ですから、先ほど申しましたように、公定価格を薬についてつけ、しかし取引については自由だということであれば、それは間違った格好で不効率を引き起こすわけです。ですから、効率化というのは、本当にシステムが競争的になっていなくてはならないわけです。  部分的にむだをなくすようなことは幾らでもありますけれども、考え方の基準というのは、インプットからアウトプットを生み出す関係が望ましくなっているか、こういうことでございます。
  14. 関谷勝嗣

    ○関谷委員 芦田公述人に一つ御意見を伺いたいのでございます。  いわゆる労働組合というのも戦後大きく変わってきた一つだろうと思うわけですね。ですから、連合会長として組合員をどの方向に引っ張っていくか、その目指すところ等々ももちろん戦後五十年たって大きく変わってきておるわけですから、非常に成熟社会、もう成熟社会は通り過ぎて爛熟社会だと思いますが、そういう中でリーダーとして御尽力をするということは大変なことだと私は思っております。  そこで、社会保障と労働組合との関係といえばいいかもしれませんが、いろいろな保険料がこれ以上上がるということは働く者にとっては大変なことだろうと私は思います。そうなりますと、今度は年金の支給額を抑えざるを得ないわけです、パイは一緒でございますからね。こちらを抑えれば向こうが出る、向こうを抑えればこちらが出るということでございます、パイは一つなのでございますから。  ですから、芦田公述人とすれば、それはどうしても現に働いている労働者の方々の改善ということに努力をされるわけですから、そうなりますと私は、年金の支給額を抑えるという方向でいかなければならないのではないだろうか、そんなことを思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  15. 芦田甚之助

    芦田公述人 年金の支給額についても、負担と支給のバランスをとらなければならないと思うのですね。  私は、今の日本の年金水準はかなり高いところに行っていると思います。ほかの先進国と比べましても、日本の年金というものはそのレベルに達していると思いますので、年金の支給額をふやせふやせというような時代ではないだろうと思うのです。  ですから、支給額をふやそうとすれば今度は保険料をふやさなければならないということで、そのバランスをどうとるかということになれば、年金の分については、私は水準についてはそこそこ行っているわけですから、それで年金の掛金をこれ以上ふやすわけにいかないということであれば、その辺がいいところではないかと思っております。
  16. 関谷勝嗣

    ○関谷委員 あと二、三分ありますから、宮脇公述人にお伺いいたしたいと思うのでございます。  公共事業で補助を出し過ぎておる、それに比べてランニングコスト配慮がないということでございますが、その考え方はちょっと相反するのではないか。ランニングコストまで十分に補助をすると、なおのこと公共事業がますます要望が強くなってくる。また頼る姿勢、頼る考え方といいましょうか、それが出てくるのだろうと思うわけでございまして、逆にランニングコスト配慮していないからまだそれまで無理な注文がないのではないか、そんなことを思うのですが、そのことはいかがでしょう。  それからエージェント化ということをおっしゃっていましたが、私はやはりこれはいいことだろうと思うのです。これは進めていきたいと思いますが、その二つの問題につきまして、恐れ入りますが二分以内でひとつよろしくお願いします。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕
  17. 宮脇淳

    宮脇公述人 二点の御質問にお答えさせていただきます。  まず最初の公共事業の補助問題とそのランニングコスト関係でございますけれども、先生が御指摘くださいますように、ランニングコストまで補助金で出せば財政というのは物すごく肥大化してしまいますので、それはそういうやり方でやるべきではないと私も思っております。  したがいまして、私の場合には、当初つくる段階でも、国が補助金という形で、いわゆるひもつきと言われるものですけれども、そういう形で地方をある意味で規格品化するということについてやはり考え直すべきであると。ですから、ランニングコスト考えた上で地方も自主的に投資ができるという意味でございます。  それからエージェント化の問題でございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、私もぜひこれについてはプログラムを明確にしていただく上でスタートさせていただけないかと。このことは、先生が先ほど来御質問いただいております社会保険制度等についても重要なファクターになってこようかと思います。それは、単に効率化ということだけではなくて、選択制の問題ですとかあるいは年金運用とか、そういったことに対しても影響を与える問題でございますので、やはり幅広く考えていっていただければというふうに思っております。  以上でございます。
  18. 関谷勝嗣

    ○関谷委員 どうもありがとうございました。終わります。
  19. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 次に、高木義明君。
  20. 高木義明

    高木委員 新進党の高木義明でございます。  公述人のお三方の先生には大変示唆に富む重要なお話を賜りまして、極めて参考になりました。本当にありがとうございました。  今、我が国の平成九年度の予算審議が最重要局面に至っておるわけでありまして、私どもは、真に国民生活、また当面、経済の再建あるいは行政改革に資する予算にしなければならぬ、こういう気持ちで頑張っておるわけであります。  そこで、貴重な機会でございますから、以下お尋ねをしてまいりたいと思いますが、まず初めに、塩野谷先生にお尋ねをしてまいりたいと思います。先生は、医療保険制度には大変お詳しい立場におられまして、これまで長い間それぞれの審議会やあるいは会合において、また講演においてすばらしいお話をされております。  先生は、きょうお話を聞いておりますと、構造改革に手をつけなくて財政負担のみを強いるのは納得できないという国民感情については、これはもっともな話だ、こういうふうに言われております。改革をするときには痛みを伴うというのは、これはもう言うまでもありませんで、極めて明確なことでございます。しかし、私たちは、少なくとも国がしなければならない努力を全うしながら国民に適切な負担を求めていく、こういう姿勢が今国民にとって一番大切な時期であろう、こういう認識をしております。  問題は、医療費のむだについて、先生も明らかに今医療費にはむだが多いという指摘をされております。そういう意味で効率化をしなければならぬし、いわゆる構造改革が前提であるということもお触れになりました。この構造改革が今行われないままになしまし的に負担増を求めて、一方でそういうことをやっておっても改革は先送りになるという議論もありますけれども、簡単に改革は進まないことを見越して、対症療法的に負担増を求めていくという姿は厳に慎まなければならぬことではないか、私はこのように思っております。  この医療費の問題については、医療提供体制、あるいは診療報酬制度、薬価の問題、老人保健制度見直し等々、問題点があります。したがって、これらについては時間をかけてやっていくということも言われましたけれども、しかし、それはある意味の決意だけで、今日までの政府の対応を見てみますと、全く信頼性がないというのが私は偽らざる国民の気持ちではないか、このように思えてならないわけでございます。  行政改革一つをとってみましても、今日まで十数年来、「増税なき財政再建」あるいは行革なき増税はだめだという大きな国民の世論の中で、いろいろ断行は言われてきたわけでありますけれども、橋本総理にして、ことし一年議論をして来年度からやっていく、こういう悠長なことを言われておるのが実態でございます。  しかも、この医療保険の問題は、介護制度というのも重要なかかわり合いがある話であります。介護制度にしても、これまた大きな問題が横たわっているのが現実でございまして、私は、今言われた改革がすぐできるとは思われない。しかし、やはり政治の決断によってはでき得る、私はそう確信するわけでございます。だからこそ、安易な負担増についてはぜひ阻止すべきである、その前に改革をしてから、これが素朴な気持ちであるというのは十分理解できるわけでございまして、先生、この点について本当に、負担負担としながらも構造改革はできていくのでしょうか。その辺についての不安がやはり今潜在的に国民の中にあるわけでございます。だから、そのことが抜かれて、ただ単に会計、帳じり合わせで負担増だけを求めていくというのが今日までの姿ではなかったか。この反省を踏まえて、こういった国民の声というのは、私はある意味では正当ではないかなと思っておりますが、この点について先生の御所見を賜っておきたいと思います。
  21. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 先ほど私が公述の中で申しましたように、現在出されている政府案は、おっしゃるように、改革を余り含まないで負担増を求めている、そういう提案だと思います。私は、そうだからといって、負担増を否定して済むというものではなく、改革負担増とは不可分であり、一方をやったからといって他方がなくなるものではない、そういう規模の問題であるというふうに考えております。ですから、政治力でやる、これはまさに国会の方の問題でもございますから、ぜひ負担増を通じて、それを前提として必ず改革が行われるようにいろいろお働きいただきたいというふうに思うわけでございます。  事実、厚生省やいろいろな審議会でも改革の方向に向かって着実に進んでいると私は思います。そしてまた、そうせざるを得ない客観的な厳しい条件の中に立たされているというわけでございます。ですから、今まで改革がなされなかったからといって、将来改革がなされないということにはならないというふうに思います。
  22. 高木義明

    高木委員 負担を前提に改革を求めると。私は、改革を前提に負担を求めるということではないかなと思っておる次第でございます。かかって、これは政治、内閣の実行力の問題でございまして、私は、なかなかそういうことに信頼が持てない、こう思っておる一人でございます。  次に、宮脇先生に御所見を賜りたいわけでございますが、先生の著書の中にインタビューとしまして、「特集 緊急再点検 ニッポンの体力」「財投の改革と省庁スリム化を急げ」というテーマでインタビュー記事が載っております。「歳出を削減するには、予算編成の単年度主義を見直し、各省庁が合理化して余った予算を翌年度に回す方式にすることも一つの方法だ。そうした方法に加え、官の担うべき分野の再検討を通じて、行政改革を断行する必要がある。」こういうことが言われておるわけであります。  先生の今のお話の中でも、公共事業あり方、もっとコストを削減する努力が要るのじゃないか、あるいは特別会計についてももうちょっと整理をすべきではないか、財政投融資についても一部改革に評価はされながらもまだまだ議論は不十分だ、こういうことを述べられております。  そういう中で、平成九年度、これは財政構造改革元年政府がそのように言っておるわけですが、極めて重要な年にこういう問題点がある中で予算が通っていくこの現実。私は、今からでも遅くはない、そういうことについて、やはり修正をしてでも問題点はきちっと整理をする、こういうことがまさにこの国会の役割だろうと思っておりますが、先生のこの点についての御所見があればお聞かせいただきたいと思います。
  23. 宮脇淳

    宮脇公述人 お答え申し上げます。  今御指摘いただきましたように、先ほどの公述の中で、公共事業の問題あるいは財投、特別会計の問題ということについて触れさせていただいたわけですが、この平成九年度予算ないし財政投融資計画につきましては、評価できる面もありますけれども、構造改革元年という位置づけであるとすれば、やはりそういった取り組みについては非常に不足をしているというふうに私自身は考えさせていただいております。  ただ、そこで、こういった問題に取り組む場合に、今先生が御指摘くださいました単年度主義ですとかそういったものをどう変えていくのか。ここにつきましては、予算編成制度ないし予算執行制度そのものをやはり視野に入れた見直しということが必要になってくるのではないかというふうに思っております。ですから、単年度の平成九年度予算、これについて修正ということを御主張いただく、あるいはお考えいただくということとともに、その予算制度をどう変えていくのか。先ほど申し上げましたエージェント制におきますファンド化ですとか、そういったことを組み込んでいくことによって、年度で使い残した予算というものが単年度主義に拘束されないという制度もまた導入可能になってくるわけでございまして、そういった面につきましても同時に御検討いただければというふうに思っております。
  24. 高木義明

    高木委員 ありがとうございます。  では、芦田会長にお尋ねをしておきます。  私がここで触れるまでもありませんで、今まさに国際環境、激しい競争の中にあります。産業、企業も、リストラを前面に立てて、まさに歯を食いしばってこの荒波を切り抜けておられる。また、一部に、国民経済景気の回復は堅調な足取りが出てきたという見方もされておりますけれども、やはり景気をもっと抜本的に回復をさせてそして内需の拡大を図る、こういうことで、それぞれ連合八百万の組合員の方々、いやもっと言うならば、むしろ芦田会長の立場からいいますと、六千六百万人と言われる勤労者全体の立場に立って今のこの難局を切り抜ける、もちろんその原点は、私は国民の働くことの尊厳、勤労意欲じゃないかと思っております。  この厳しい環境にありながらも、連合としては九七年の春季生活闘争を組織をされて、今それぞれの産業別なり企業別でその交渉が行われている最中でございます。そういう意味で、会長として、どうしても組合員の暮らしの向上のためにこの闘いを十二分に展開をしたいという決意があられると思いますけれども、私は、今連合が進めておる春季生活闘争の意義について、また決意について、この際お披瀝をいただければと思っております。
  25. 芦田甚之助

    芦田公述人 今の御質問の春季生活闘争でありますが、私ども、春季生活闘争というのは、労使関係の中で労働条件を改善していくという面と、政策的な課題政府国会に要請をいたしましてその面から改善をしていく、あるいはまた地方自治体にもいろいろ要請をして改善していく、そういうものを総合的に組み立ててやっているわけであります。  それで、経済は回復基調にあると言っておりますけれども、我々労働者、サラリーマンの実感からすると、まだそこまでは行っていないのですね。それより不安の方が先に立つ。景気は緩やかに回復していると言っているけれども、本当にそうなのだろうか、実感がわいてこないなと。そうすると、隣のところではリストラをやっている、こっちではまた閉鎖があるというようなことが今でも起きているわけですから、自分たちの給料はこれからどれだけ上がるのかという問題と、自分たち雇用がどうなるのかというまた心配と、さらにまた老後の生活を心配しなければならない年齢層の方々も多くいるわけであります。  ですから、そういういろいろな不安が多いものですから、どうしても自分の財布のひもを締めておかなければならないというようなことで、国民総支出の六五%を占める個人消費がどうしても盛り上がらない。それはやはり、今言いましたような不安が常にあるから財布のひもを締めておかなければならないということだと思うのですね。やはり、我が国の経済の自律的な回復を促すためには、個人消費をもう少し上向きにさせて、それに応じてまた製造業の設備投資もふえていくというような、前向きの回転がないとうまくいかないのではないかというふうに思っております。  そういうふうな観点から、私どもは、金額にいたしまして一人一万三千円、率にいたしますと、定期昇給を含めて四・四、五%の要求でありまして、これは極めてリーズナブルな要求ではないかと思います。この程度の要求は経営側からは入れてもらわなければならないし、それがまた個人消費の上向きになっていく原動力になるのではないか。  もう一つは、やはり先ほども申し上げましたけれども、政府に対しては、二兆円の特別減税継続制度化をしてもらいたい。そのことがやはり内需拡大につながる私は一つのベースになると思っておりますので、この経営者側に対する要求と、そしてまた政府国会に対する要請、両面について、組合員の期待、そして多くの労働者、サラリーマンの期待にこたえられる春季生活闘争にしなければならないと決意を固めているところでございます。
  26. 高木義明

    高木委員 私は、この春季生活闘争は、まさに今お答えがありましたように、国民経済にとっても、また地域社会にとっても大切な一つの大きな課題であろうと思っております。したがって、私は最大限の成果が得られますように期待をする次第でございます。  そして一方で、今芦田会長も触れましたように、個人消費の低迷、これが景気の回復をおくらせておる最大の要因である、こう規定づけておられました。私も全く同感であります。  総務庁の資料によりましても、このところの可処分所得の伸び率を見ますと、企業別規模では中小企業で働く勤労者がほとんど低い位置におられる。あるいは、年齢層では四十歳以降の中高年の方々、こういった方々の可処分所得の伸び率というのは低位にある。もちろん、消費支出についても、これに呼応するようにこの層を中心にしてなかなか伸びていない、こういう統計もあるわけでありまして、可処分所得をふやす意味では、一方で賃上げ、そして一方で公共料金を含むいわゆる減税等の政策要求、これは私はもっともなことだと思っておるわけであります。特にこのような経済環境で、まさに経済改革なくして財政再建はあり得ないのじゃないか。そういう意味で、重要  な一翼を担うのではないかと私は思っております。  先日、二月の十七日でしたか、会長も寒い中、国会の議員会館の前に連合の代表組合員とともに座り込みをされておられました。大変お忙しい身で、私はまさかと思っておりましたけれども、会長自身がそういう体験をされるということは私は  かってない思いではなかったかと思っております。そういう意味で、私どもはそれを受けてこの予算審議に臨んでいかなければならぬな、こういう決意をしたわけであります。  特に、ここでいろいろ議論がございます。今、予算修正を求めて、各党それぞれ知恵を出し合いながら、何とか一つの方向を見出したいと努力をされております。そういう中でよく減税財源の問題が出てまいりますので、この際ひとつ、連合としては減税財源についてはどのようにお考えになっておるのか、お聞きをしてみたいと思います。
  27. 芦田甚之助

    芦田公述人 減税財源につきましては、歳出と歳入両面から考えなければならないと思うわけでありますが、まず歳出面考えられますことは、公共事業費のやはり見直しをしてもらわなければならないと思うわけであります。  一つは、先ほども言いましたように、今、新聞の解説でありますとかテレビの解説等を見ておりましても、公共事業の単価が民間の単価に比べるとどうも高い、二、三割高いというようなことが言われておるわけでありまして、公共事業そのものの見直しと、個々の公共事業の単価の見直しなんかもしていかなければならないときに来ているのではないかと思います。  それからもう一つは、補助金の問題であります。けさの新聞にも載っておりましたが、厚生大臣が厚生省関係の補助金については半減するように事務局に指示をしているときのうの予算委員会で述べられたという話が出ております。それぞれの省庁において補助金が非常に多いわけでありますので、もちろん補助金の中に削れる補助金と削れない補助金があると思いますけれども、できるだけ私はやはりこの補助金を削っていくことも大事ではないかと思っております。  それからまた、特殊法人や公益法人に対する出資金等につきましても、九七年度の予算では前年比九・八%この出資金が伸びているわけでありまして、その辺のところもやはり見直す必要があるのではないかなと思います。  それから、本予算編成された後でまた補正予算が毎年組まれます。その補正予算の中に、いろいろ項を見てまいりますと、既定経費の削減というところがございます。その既定経費の削減ということにつきましては、九五年度補正予算においては六千四百億円、九六年度補正予算においては八千億円、既定経費の削減を目指すというふうなことになっているわけであります。そうすると、いろいろ個別の事情もあるでしょうけれども、九七年度予算におきましてもまだ余地があるのではないか。今までのこの補正予算の組み方の中における既定経費の削減という例から見ても、来年度予算においても十分、十分と言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、あると思います。  それから、歳入面でありますけれども、税制の不公平、特に徴収の面においてクロヨンとかそういうことがいまだに言われているわけであります。特に、利子所得、資産所得などに対する課税は一律二〇%の分離課税にとどまっているというようなことで、やはり高額所得者に対して有利な部分があるのではないか。  そういうふうなことで、そういう現状を是正するために、納税者番号制度等を導入すべきだということを私ども連合は、以前からこの納税者番号制度を導入をして、税の公平化を図っていくべきではないか、いわば徴税というものもきちんとすべきではないかというようなことで、歳入の面についてはそういうようなことを考えているわけであります。  なお、これらの面については、私どもが考える以上に、国会議員の皆さんの方がもっと詳しいわけでありますので、大いに知恵を働かせていただいて、財源を見つけていただきたいと思います。
  28. 高木義明

    高木委員 私は、実は昨日、福岡県、熊本県、いわゆる三井三池炭鉱の閉山に伴いまして、我が党の特別委員会としての調査団の一員として現地に行ってまいりました。三月三十日をもって千二百人余りの方々が解雇されるわけであります。今、労使の間で、今後雇用問題、あるいは地域問題、あるいは退職に絡むそれぞれの付随した問題について、職場の中であるいは地域でいろいろな議論がなされております。  私は、必ずしも今景気が順調に回復しておるなんて言っておられないそういう深刻な時期だと思っております。産業界においては、これは一つのシンボルであって、構造改革のあらしが吹き荒れておる。その中で、やはりこの難局を切り開くためには、勤労者が働く意欲を持ち、そして経営者、生産者が投資の意欲を持つ、このことではないかな、こう私は思っております。  そういう意味で、我々も減税要求を中心とした予算組み替えの方も努力をしております。連合としてもひとつ、それぞれの持ち場、立場で日本の経済を立て直す、あるいは産業を活性化を図る、こういう意味でぜひ努力をしていただきたい、要請をしておきたいと思います。  時間も来ましたので、諸先生方に大変お忙しい中、貴重な時間、本当に参考になる御意見を賜りましたことに心から感謝を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  29. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 次に、海江田万里君。
  30. 海江田万里

    ○海江田委員 民主党の海江田万里でございます。  先生方には、お忙しい中お越しいただきまして、それから先ほど来貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  私は、時間も十五分と限られておりますので、短い質問、あるいは短いお答えをお願いしなければならないかもしれませんが、御容赦をいただきたいと思います。  まず、芦田公述人、今の高木委員のお話にも出ましたけれども、先日は本当に寒空の中を御苦労さまでございました。皆様方の決意というのは十分伝わってまいりましたが、私ども民主党は、二兆円の減税反対をしておるものではございませんで、もちろんこの二兆円の減税はぜひやりたいという考え方を持っております。ただ、やはり財源の問題に触れないわけにはいかない。今の高木委員からの質問でも、連合の皆様方も財源の問題を非常に真剣に考えておられる、しかも、赤字公債に財源を求めるということは、これはやるべきでないというようなお考えをお持ちだというふうに私は理解をしておるわけでございますが、その場合、これは芦田公述人自身がおっしゃっていることでございますけれども、やはり公共事業のむだを省いて、そこから減税の財源を持ってこなければいけないのではないだろうかということ。  それからもう一つは、今お話のありました既定経費の削減ですね。既定経費の削減の方は、これは今お話がありましたように、補正の部分でもできることでありますね。ただ、公共事業のむだを省いて、そしてここで財政構造の改革を遂げるということ、これはやはり本予算のところできちっとした議論をして、一つの方向性を出しておかなければいけないと私は思うのですね。  今、連合意見に賛同しておられる方の中にも、本予算は無傷のまま通してもいいのじゃないだろうかというような声も若干あるのですね。そういう意味では、橋本総理が言うところの財政構造改革元年の本予算であるというならば、やはりこの本予算のところでも切り込み、削減が必要なのではないだろうか。そして、もしそこで足りない部分があれば補正でも手当てをしなければいけない。それから、その切り込み全体の枠は、例えば減税の規模が二兆円であっても、決してその二兆円にとどまるものではない、もっと、三兆、四兆、できることならやはりやらなければいけないというふうに私は考えておるのですが、今の私の意見を聞きましてどういう見解をお持ちか、お答えいただきたいと思います。
  31. 芦田甚之助

    芦田公述人 今の海江田先生の御意見、御提起につきましては、私は、大体私どもと同じ認識に立っておられると思っております。  私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、この二兆円の特別減税の原資を確保するためには、今言いましたような形で公共事業や何かにメスを入れて財源を生み出してもらいたいということは、当然この本予算の中においてやってもらわなければならないことでありまして、私が冒頭に言いましたように、本来その組み替えあるいは修正をして本予算でしかるべくやるべきではないかと思っております。
  32. 海江田万里

    ○海江田委員 それでは宮脇公述人にお尋ねをしますが、やはりこの公共事業の問題でございますね。  よく言われますのは、来るべき高齢化、超高齢化に向けて、まだ日本が体力のあるうちに公共事業をできるだけやらなければいけないという言われ方をするわけですけれども、ただ、このロジックの中には重要な落とし穴が含まれているということです。それは、先ほど公述人が指摘をされたように、一度公共事業をやって公共施設をつくればそのランニングコストがかかる。そのランニングコストはまさに次の世代が払っていかなければいけないものだということですから、そういう意味では、公共事業を今のうちにやらなければいけないということは、将来的なそのランニングコスト考えた、先生の言葉で言うところの、社会資本がいかに有効に活用されるかという判断を一回しなければだめですよという御意見ですね。それは私どもも全くそのとおりだろうと思うのですね。問題は、その社会資本がいかに有効に活用できるかという判断をどこがやるかということになってくると思うのです。  先生は先ほどのお話の中で、国会があるいは議会がそういう役割を果たさなければいけないということをお話しされたのですが、その議会の中でも、当予算委員会でありますとか、あるいは決算委員会というのもございます。ただ、本来予算か決算かということでいえば決算がかなり重要になってくるのですが、現状の国会の機能からいうとなかなか決算委員会が機能していないということもございまして、私ども民主党では、そういう社会資本がいかに有効に活用できるかという判断をする国会の組織として、GAO、会計監視院の法案を国会に出しまして、これから御審議を願うところでございますけれども、その社会資本が有効かどうかということを評価をする、国会の中の、今の委員会とは別の組織でそういうものをつくらなければいけないという、この私どもの方の考え方についてどういう御見解をお持ちか、お聞かせください。
  33. 宮脇淳

    宮脇公述人 お答え申し上げます。  今先生の方から、アメリカのGAOという組織体について御紹介がございましたけれども、今の、議会においてそういう評価機関を別に設けるということについては、私も基本的に賛成でございます。  その場合に、アメリカのGAOの果たしている機能でございますけれども、これは三点だけ簡単に御紹介させていただきます。  一点は、事実を事実として明らかにするということが目標であるということでございます。ですから、GAOそのものはその公共事業等について適切であるか不適切であるかということ自身は基本的に評価をしないということでございます。ですから、それについては先生方が評価をしていただくということが基本になっております。  それから、二番目といたしまして、要するに、アウトプット型の評価ではなくてアウトカム型の評価をしているということでございます。いわゆる、道がどれだけ延びたかというところではなくて、延びた分でどれだけ有効に活用されているかというところをGAOというのは評価基準にしているということがあるわけでございます。  そして最後に、今のことと共通いたしておりますけれども、例えば、現状の会計検査院で申し上げますと、予算の費目が適切に執行されたかどうか、すなわち政策の意図を評価するということでございますが、その予算が執行されたことによってどこがその利益や効果を得ているのか、つまり政策の帰着ベースでこれを評価するというのがGAOのやり方でございます。  ですから、こういった仕組みを持つ中で議会においてそういう評価機関を持つということは、ぜひ必要なことだと考えております。
  34. 海江田万里

    ○海江田委員 宮脇先生にもう一つお尋ねをしたいのでございますが、最後の方で出てまいりましたエージェント化の問題でございます。  このエージェント化の問題で先生が別な雑誌に書いておる論文の中で、行政の所有と経営の分離という視点でお書きになっているのですね。私は、この行政の所有と経営の分離という視点は非常に重要なのではないだろうかということを考えておりまして、これもまた先生が別な新聞にお書きになっている、あるいは新聞に述べておられるコメントの中で、国有林野の赤字の問題ですね。  御案内のように、国有林野は特別会計になっておりますけれども、七五年から赤字に転落をして、七六年からその補てんに財投の資金が繰り入れをされている。そして現在、累積の赤字が三兆円を超えているというようなことがあって、やはりこの問題もこれから何とかしなければいけないというときに、国有林野のあり方として所有と経営を分離をするという考え方もお述べいただいているのですが、ちょっと先ほどの先生のお話の中で出なかったので、ここを、時間が余りございませんけれども、お話しいただけたらなと思います。
  35. 宮脇淳

    宮脇公述人 お答え申し上げます。  今先生から御指摘いただきました所有と経営の分離というのは、主にアメリカの州政府で取り組まれたやり方でございます。エージェント化といいますとどうしてもイギリスの制度が中心として議論されますけれども、アメリカの州政府レベルでもかなりの行革というのが行われておりまして、いわゆる公的な制度であったとしても実際にそれを運用するのは官僚である必要はないということでございます。ですから、ある意味でいいますと、役所と民間というものが互いに競争し合う分野もそういう部分では出てくるということでございます。  したがいまして、所有は、もちろん国民の貴重な税金等によってつくられたわけですからこれは第一義的に公的機関が持ちますけれども、その運用については純粋な特殊法人ではなくて民間の機関がこれを担うということで、より質の高いサービスというものを供給していく、ただその場合に、所有者であることによる監督というのは今まで以上に強化をしていただく場合が出てきますと  いうことでございます。  ですから、そういうことによってランニングコストを節約し、かつ公的部門における有用性や効率性を上げていこうというのがこの議論でございまして、アメリカ州政府においては、エージェント化に対しまして第三の軸という言葉を基本的に使っているということでございます。  ただいまございました国有林野事業でございますけれども、恐らくことし後半ないし来年度予算編成に向けましては、その赤字の問題というのは非常に大きな課題になってくるだろうと思っております。  この特別会計につきましては、要するに、事業会計として置いておくことの是非も含めましてやはり議論をしていくということが一つは柱にならざるを得ないと思いますけれども、その事業的な性格というものを生かしつつやっていける部分というのもやはり模索をしていかなければいけない。ですから、例えば山林部におきますいろいろな地域、これを荒廃させないということからいいますと、その森林は国が所有しますけれども、管理等については地元の民間組織等に委託をするといったような考え方も当然可能になってくるわけでございます。  したがいまして、この問題につきましては、やはり赤字を批判するだけではなくて、これをどう生かしていくのかということについて、こういった所有や経営の分離ということを通して考えていかなければいけないのではないかと思っております。
  36. 海江田万里

    ○海江田委員 塩野谷先生に一つ、お越しいただきましたので。  医療制度改革の中で、なるべく医療費全体を圧縮しようということで、特に一人の患者さんが幾つも病院に行って検査漬けになったりあるいは薬漬けになったりする、これをなるべくやめようということで、それは一つの流れとしてあると思うのですけれども、今度の医療改革の中で出てきておりますのは、最初の四回とか五回まではお金を払っていただきますよ、そこから後は払わないでいいですよという案が出てきておるのです。これは私に言わせるとむしろ逆で、初めの方にお金を払わなくてもいいですよ、そのかわり、その後から何度も幾つも行く場合はやはりお金をいただきますよということの方が最初のところでかかってくる医療費を圧縮できると思うのですが、これはいかがでしょうか。
  37. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 私は、政府委員ではございませんで、改正案をサポートしたわけではございません。我々がサポートするのは、つまり医療保険審議会の多数のメンバーがサポートするのは、老人医療費の一割定率化でございます。
  38. 海江田万里

    ○海江田委員 ありがとうございました。これはまた国会議論させていただきます。  どうもありがとうございました。
  39. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 次に、穀田恵二君。
  40. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。  きょうは、御出席本当にありがとうございます。貴重な御意見をいただきまして、本当に感謝をしています。  私は、今回の予算案の問題について若干だけお聞きしたいと思います。  新聞紙上などでも出ているのですが、今回の予算ほど評判の悪い予算はありません。それは、世論調査審議前から七一%の方々が修正してはどうかというふうなことが出るような状況ですし、さらに、先日の世論調査では、審議されている予算案で税金が有効に使われていない、こういうふうに答える方が七割を占めるというような状況になっています。  そして、審議の中で、予算委員会を通じて公共事業見直しなどが強く出されて、総理も、聖域にしない、こういうふうに答弁されました。ところが実際は、ともかく通してくれという一点張りの状況ですが、私は、そういう国民的な世論にこたえまして、そこに代表されてお見えの先生方が、ある意味では修正、組み替えが当然だと思うのですけれども、その点について、先ほど芦田公述人はお述べになりましたので、塩野谷先生と宮脇先生にまずお聞きしたいというのが一点です。  私も余り時間がないものですから、まとめて言っておきたいと思います。  そして二つ目に、塩野谷公述人は、医療保険をめぐって、先ほどもございましたように、医療全体を見直すということをお話しされました。また、それらのことにつきましてはさまざまな論文などで先生はお書きでございます。国会では、この医療保険の問題をめぐって、特に高過ぎる薬価と高過ぎる医療機器、これらについてもメスを入れる必要があるということが議論になりまして、総理や厚生大臣も、見直したとか透明性を高めるという問題について言及し、答弁をされました。したがいまして、医療保険審議会にかかわる先生としての御意見を伺いたいと思います。  そして芦田公述人には、先ほどもお話ございましたが、景気回復が本格化しない最大の要因は国民総支出の六割を占める個人消費が冷え込んでいるためだといろいろなところでお述べになっておられます。きょう配付の、先ほどのリーフレットにもその影響の度合いが書かれています。  この時期に政府消費税の五兆円の大増税という負担国民にかけます。私は大変なことだと思うのですが、消費税大増税が勤労者に、特に低所得者層に、また、なかなかそういう税金を転嫁できない中小業者にどんな影響を与えるとお考えなのか、お述べいただければ幸いです。  そして、宮脇公述人にお聞きします。  特に先生はいろいろな論文の中で、先ほどもお話ございましたが、ゼネコン型公共事業が地方財政を圧迫しているということをお述べになっておられますし、土建業者への所得移転ともいうべき実態が横行しているということなんかもお書きです。  私は、確かに地方財政を非常に圧迫している主要な原因になっているということも当然だと認識していますが、同時に国の財政赤字の主要な原因にもなっているということを考えているのですが、その辺の御意見をお聞かせ願えればと思っております。
  41. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 予算全般についてお尋ねいただきました。  私は、先ほどそれを含めませんでしたが、短時間で印象めいたことしか申し上げられませんが、もし今回の予算に明瞭な性格づけができないとすれば、それは現在、社会の要請として二つの対立するものが出されていて、それを妥協的にまとめるとこうならざるを得ないのではないか、こういうふうに思うわけであります。一方は財政再建ということでありますし、もう一つは景気回復ということでございます。ですから、性格がすっきりしないのは、その両方を妥協的に満たしつつある一つの腕の見せどころであったのではないかというふうに思います。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕  医療、特に薬のことでございますが、確かに薬価が高い、あるいは薬の投与がむだであるというようなことはよく知られておりますけれども、これをなくすにはどうしたらいいかということは、そういう局所的な対応だけでは十分できない大きな問題であるわけですね。例えば薬価差益があるという問題について、それをなくせば病院とか診療所のそれに依存している経営というものが成り立たなくなってくる、こういう問題があるわけで、全体としてこの仕組みをどういうふうに再点検するかということがなければ、局所的な対応は効を持たないというふうに思います。ですから、薬価制度を全部やめて成立するような仕組みを組むのかどうか、あるいは薬価制度のもとで、新薬にシフトしていく、そういうものを何か阻止できるのかとか、そういう枠組みをきちっと設定した上で議論することが必要であろうかと思います。  いずれにせよ、診療報酬体系と結びついて薬価制度というものは重要な検討項目となっております。
  42. 芦田甚之助

    芦田公述人 消費税のアップの問題ですね。  私どもは、今の二兆円の特別減税継続制度化される、それから不公平税制のいろいろな点が是正をされる、そういう前提条件をつけて消費税三%から五%に引き上げることについては容認せざるを得ないという態度できたわけであります。というのは、これまでの財政赤字の問題もありますし、これからもやはり高齢化社会や何かでますます財政需要がふえてくるわけでありますから、直接税だけで賄っていくのは大変だろう、したがって消費税のアップは容認せざるを得ないという考えです。  ただ、御指摘のように、消費税はやはり逆進性の問題があるわけでありまして、所得の低い人たちにしわ寄せが、必要以上にといいますか、一般的以上にその層に行くわけでありますので、消費税によって起こるマイナス面については、私はやはり社会政策的な面でやってもらわなければならないのではないかと思っております。
  43. 宮脇淳

    宮脇公述人 お答え申し上げます。  公共事業見直しにつきましては、できるだけ早い段階に、国民から見える形でやっていただきたいというのが基本的な考え方でございます。  それから、先ほどの公述の中では、地方ベースでの、現場サイドでの公共事業問題点というのを御紹介させていただきましたけれども、先生が御指摘くださいましたように、この問題というのは、国の財政赤字考える場合でも一体の問題であるというふうに考えております。
  44. 穀田恵二

    ○穀田委員 ありがとうございました。
  45. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、上原康助君。
  46. 上原康助

    ○上原委員 公述人の三名の先生方、大変御苦労さまです。社民党の上原です。  私も十分しか持ち時間がありませんから、それぞれお三人に一問ずつお伺いをいたします。  まず、塩野谷先生に医療保険制度改革についてですが、先ほど御所見を賜りました。確かに構造改革負担増も必要な面が出てきているかと思うのですが、今もありましたように、米欧に比べて格段に高い薬価制度、あるいは診療報酬制度の全面的な見直しが不可欠だと指摘されていることは御承知のとおりですね。  先生もおっしゃいましたように、改革痛みが伴うことは当然ですが、製薬業界、医師会にも相当の痛みを感じていただいて、分かち合ってもらわねばならないのじゃないかという気がいたします。今後の医療保険制度改革方向を明確に示していく上では、こういったところにメスを入れながら、国民の理解と協力を得る保険制度改革というのが必要だと思うのですが、この点についてどうお考えか、これが一点ですね。  芦田公述人にはいろいろ御苦労さまです。特別減税の問題については先ほどから御議論がありますので、私たちも、その必要性は認めながらも、財源問題がなかなかそう簡単にいかないということで苦慮しているところであります。そこで、このことは省きまして、行財政改革についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  特殊法人、公益法人の改革、リストラは私は絶対に必要だと思います。しかし、これは、芦田会長の御指摘は私もかねがねある程度知っておりますが、やはり労働組合、連合のかかわりも相当あるわけですね。人の問題があるのです。こういうことについて、これから具体化していく場合にどういう形で、総論賛成各論反対ということにならない方法論というのはいかがお考えか、これが芦田先生へのお尋ねであります。  宮脇公述人には、私はほかの委員会も兼ねておりまして十分聞いておりませんが、二兆円の特別減税をもし継続するとすれば、その財源確保というものは一体どういうふうにしていったらいいのか、公共事業費の問題等で先生の御所見はある程度理解をしているつもりでありますが、このことについて御所見があればお聞かせ願いたいと思います。  以上三点、一つずつひとつよろしくお願いします。
  47. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 先ほど私、公述の中で強調しましたのは、現在世の中で大変声の強い負担増に対する反対、つまり改革なしに負担増を求めていることは納得できないという国民感情でございます。これはそのとおり正しいわけですけれども、そのままそれを認めて、それでは負担増を延期したり、あるいは負担増をなくしていいかということには私は賛成できないわけです。  つまり、現在のところ、そういう負担増に対する反対はいわば同床異夢でありまして、いろいろな痛みを伴う人が一斉に違う内容の反対をしているわけで、これも総論賛成各論反対の一つの典型的な例でございます。ですから、改革を進めようとする場合にどうしても痛みが伴う、その先行のプロセスが始まっている、こういうふうに見なければならないように思うわけです。ですから、薬価とか診療報酬のことについて関係者に痛みが生ずるのは当然のことでございましょう。  しかし、そういう局部的な意見が全体を支配する、あるいは国民負担が上がらないことはいいと思うので、違う意見で述べている主張にまたみんな賛成するというのも大変困ったことであって、国民立場から、本当にこの困難な問題にどう解決の道をつけていくかという立場議論をしていただきたいというふうにお願いする次第でございます。
  48. 芦田甚之助

    芦田公述人 行政改革につきましては、人員を減らすとか、あるいはソフト面では規制緩和をするとか情報公開をするとか、いろいろな問題があると思うのですが、私は、初めから人の問題をどうするかということで、そこに働いている人たちに不安を与えるような雇用問題の取り上げ方はしてはならないなと。それでは、やはり成るものも成らなくなる。  したがって、そこに働いている人たちの理解をどう得るか、そのためにセーフティーネットをどうきちんと設けて不安のないような道をつけるか。私は、それがきちんとついておらなければ、特殊法人を減らすとか、やめるとか言ってもかけ声だけで終わってしまうのではないかと思いますので、その辺の雇用問題のセーフティーネットをどうするかということを、我々も考えますし、国会においても考えていただきたいと思います。
  49. 宮脇淳

    宮脇公述人 二兆円減税の可否につきましては別といたしまして、先生からの財源という御質問でございますけれども、これにつきましては、単年度でこれを先に実施しなければいけないということを踏まえますと、国、地方を合わせまして公共事業総額というのは今四十五兆円程度の事業規模を持っているわけでございます。ですから、これは単純計算でございますけれども、一割で四兆五千億円程度ということになってまいりますので、そういった点の見直しというのが一つの財源としては考え得るというふうに思えるわけでございます。
  50. 上原康助

    ○上原委員 それぞれ御意見ごもっともだと思います。参考にして、これからの予算の成立後の運用にも当たってまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  51. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、畑英次郎君。
  52. 畑英次郎

    ○畑委員 まずは、三公述人の先生方の本日の御協力に対しまして敬意を表する次第でございます。  まず最初に塩野谷先生にお伺いしたいわけでございますが、私は、やはり改革を行う、痛みを伴う、これはもう大方国民の皆さん方は御理解がされておる、こういうように考えるわけでございますが、問題はやはり、納得ということがすべての問題解決の前提になければ物事は進まないというように考えるわけでございまして、いわゆる制度改革医療供給の問題、あるいはまた薬価の問題、老人保健制度の問題等々、改革をしなければならぬということは、もう大方国民の方々も御理解がされておる。  ただ問題は、そういうような意味合いの中で、具体的な改革の内容といいますものが示されないままに、いわゆる国民の皆さん方の負担だけがふえる、負担増になるということについて納得がいかないということでございまして、やはり、どんなすばらしいことであっても手順を尊重しなければならぬというように私は考えるわけでございます。さような意味合いで、私は、やはり先ほど芦田会長も御指摘がありましたけれども、時間を切って、いつまでには改革の内容の具体像を示しますということをまず決めておかなければ実行にも移らない、こういうように考えますので、私は、塩野谷先生の、車の両輪であり、あるいはまたリンクして問題を処理しなければならない、そういうことはわかりますが、リンクしてという言葉の中で、過去、残念ながら、片一方の方が置き忘れられる、あるいは問題が難しい場合には先送りされる、そういうことが今までの経験で、これは政治家の責任といえば政治家の責任でございますが、そういうことに大方なってまいっておりました今日の実態からしました場合には、やはり改革というものがきちっと打ち出されて、国民の皆さん方がそれなりに納得をされた後に、あるいは負担増もあり得る。私は、まず第一義に負担増があるという位置づけは納得がいかない、こういうふうに考えるわけでございまして、この辺についての塩野谷先生の御意見をお聞かせを願いたいというふうに考えるわけでございます。  時間が短いものでございますから、質問を引き続きさせていただきますが、芦田会長にお尋ねしたいわけでございますが、今申し上げた、やはり物事の順序。大変失敬ではございますけれども、私どもは消費税の据え置きということで当時非常に努力をして、今日残念ながらそういう前進を見ておりません。先ほどのお話のとおり、連合のお立場でもやはり、その前提としての消費税を認めた。にもかかわらず、今日のこういう事態に追い込まれておる。これも一つの卑近な例ではないかなというように考えるわけでございまして、私は、あくまでも行革なき消費税の増税は反対だ、今日でもその気持ちは変わっておりません。  さような意味合いでは、行革といいますものが、消費税アップに値する今日前進があり得たかどうか、この辺に対する会長の御認識をお聞かせを願いたいと思います。  以上でございます。
  53. 塩野谷祐一

    塩野谷公述人 先ほど来、改革負担との関係について再び御質問がございましたが、私は、現在出されている政府案に、別に法案を変えるとかそういうことの必要なしにやれる、そういうことがあるということを申し上げたわけで、一つは、さまざまな構造改革の先ぶれとして、既に始まろうとしているいろいろなものを一つのパッケージにして、それを負担増と結びつけてほしい。  それからもう一つは、手順としておっしゃったようなことを、構造改革の時間的な工程表を出すということで、それもリンクしていただきたいというふうにお願いしているわけであって、改革を放棄して負担だけが先行しているというふうに私は現在の状況を見ないのであります。  日本は法治国家でありますので、負担を人質にとって改革を迫るというよりも、政治家が主導権をとって負担増を求めて、保険制度の財政的な基礎安定化した上で、きちっとした改革案をつくることが重要であろうというふうに思います。
  54. 芦田甚之助

    芦田公述人 行革がそんなに実績を上げているのかというお話でありますが、第二臨調以来十六年以上、行革、行革ということを言ってきているわけでありますが、御存じのように、目に見えているのは、国鉄の分割・民営化、電電公社のNTT、そういうのが目に見えるぐらいでありまして、あと若干の規制緩和もありました。あるいは行政手続法やなんかもきちんとされたという面はありますけれども、十六年間、行革、行革と言ってきた割には余りにも実績が少ないではないかというのが国民の気持ちだろうと思います。  それで、橋本総理としては、何とかしなきゃいかぬということで行革会議を設置されたのだろうと思いますが、私もそこの一員になったわけでありますので、その一員としての役割を果たしていかなければならないと思っております。
  55. 畑英次郎

    ○畑委員 ありがとうございました。
  56. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  57. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成九年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多忙中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成九年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にさせていただきたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお出しくださいますようお願い申し上げる次第です。  御意見を承る順序といたしましては、まず片岡公述人、次に植草公述人、続いて佐高公述人の順序で、お一人二十分程度ということで御意見をお述べいただきたいと存じます。その後、委員からの質疑がございますので、お答えいただきたいと存じます。  それでは、片岡公述人にお願いいたします。
  58. 片岡寛光

    ○片岡公述人 発言をお許しいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学の片岡でございます。行政学を専攻しておりますので、ごく狭い範囲からではございますけれども、私見を述べさせていただきたいと思います。  まず、平成九年度一般会計予算政府原案の規模でございますけれども、既に御承知のように、七十七兆三千九百億ということでございまして、対前年度比伸び率が三・〇%でございます。経済成長率が一・九%といたしますと、それを上回る歳出の増ということになるわけでございますけれども、一番大きな増加を見せておりますのが地方交付税交付金でございまして、これが一三%の増ということでございまして、一般歳出四十三兆八千億は一・五%の増加にとどまっております。それにいたしましても、公債発行が十六兆七千億ということでございまして、公債依存度が二一・六%ということになっております。  予算には、そのほかに特別会計予算、財政投融資などございまして、なかなか私ども素人では予算の全貌をつかむことが難しい状況でございますけれども、この一般会計歳出予算が国内総生産において占める比率を見てみますと、これが一五・〇%ということになっております。すなわち、国民経済の規模の一五%は政府予算であるということになってくるわけでございます。  これを国民負担の側から見てまいりますと、中央及び地方の税負担社会保障負担率を含めますと、当初予測ではございますが、三八・二%ということになっております。日本でこの種の統計がとられました明治十三年という段階におきましては負担率が一〇%でありましたけれども、第二次世界大戦を経まして、その後二〇%の台で推移し、これが三〇%になりましたのが昭和五十四年のことでございます。それから十八年足らずで間もなく四〇%の台に突入しようということでございまして、政府が本年度を財政構造改革元年と位置づけられまして支出の削減に努められようとしておられますのは、そのような事情によるものと思うわけでございます。  第二次臨時行政調査会の第一部会の報告におきましては、国民負担感の限度を考え、社会の活力を維持していく必要を考えれば、徹底的な制度改革の推進により、現在の、当時ですね、当時のヨーロッパの水準である五〇%よりはるかに低位にこれをとどめておく必要があるというふうに述べられているわけでございまして、四〇%を超えるか超えないかというのが一つのその目安になるというふうに私は理解いたしております。  もっとも、他の先進諸国に比べまして日本がとりわけ突出した財政規模を持っているわけではございませんで、アメリカは日本よりも低い三六・五%でございますけれども、イギリスは行政改革を重ねに重ねた結果まだ四六・二%、ドイツでは五三・三%、フランスでは六二%というふうに、日本よりも大きな財政規模を持っている国があるわけでございます。  一般に、日本人及び外国の観察者は、日本を大きな政府を持った行政国家というふうに理解する傾向がございますけれども、少なくとも量的にはこれは必ずしも正しい判断ではございません。例えば公務員数をとってみますと、日本の総公務員数は四百五十一万でございまして、そのうち国が百十六万、地方が三百三十五万ということでございますけれども、これを人口における比率に直してみますと、日本は三・七%ということでございまして、ドイツは六二%、アメリカは七・一%、イギリスは七・七%、フランスは九・三%ということでございまして、少なくとも公務員数に関する限りは日本は大きな国家ではない。発展途上国を含めましても、この日本の公務員数は少ない方に属するというふうに理解することができます。  さらに、新年度におきましては、第九次定員削減計画によりまして二千二百十九名の減員が見込まれております。そのほかに、政府がお決めになったところによりますと、国家公務員採用Ⅰ種試験の合格者による任用を、新年度から平成十三年度までの間の五年間これを三〇%縮減するということがうたわれておりますので、一層この公務員数は縮減していく方向にあるというふうに理解することができるわけでございます。  それにもかかわりませず、我が国は大きな政府を持った行政国家であるという印象をぬぐい得ないのは、政府が強力な規制の権限あるいは行政指導などの権限を持ちまして、社会における大変高いプレゼンスを持っているということが一つございます。  もう一つは、やはり公務員意識の問題でございまして、公務員の中には、自分たちに任せておけば間違いはないという官治主義的な意識が残っておりまして、今日でも、合理的な根拠に基づいて解決し得る以上の問題を抱え込んで、かえって不信を招く原因となっているわけでございます。  そういう事情によりまして、今日行政改革というものが喫緊の課題として登場してきているわけでございますけれども、御承知のように、行政改革は今日に始まったことではない。今続いております行政改革だけをとってみましても、これは昭和五十六年に始まりました第二次臨時行政調査会から連綿として続いているものであるわけでございます。  くしくも、レーガンがアメリカでレーガノミックスをひっ提げて登場し、サッチャーがサッチャーリズムをひっ提げてイギリスで登場したのが、我が国における臨調の発足とほぼ一致しているわけでございまして、このレーガン、サッチャーは世界じゅうの国々に大きな影響を与えまして、今日では、世界同時革命ならぬ世界同時行政改革進行中ということでございます。これまで一国の行政改革が他国に影響を及ぼしたということはあるわけでございますけれども、その場合には時間差というものがございました。今日では時間差がなく、すべての国々が何らかの形でこの行政改革というものを推進している状況にあるわけでございます。  これは、国内事情から申しますと、二度のオイルショックを経まして経済成長の鈍化を見まして、いずれの国も累積赤字に悩むというふうな事情がございますけれども、もう一つは、やはりコンピューターを含む電気通信分野における技術革新というものが世界を席巻いたしました。それと同時に、金融市場のグローバリゼーションというものが行われまして、グローバルなスタンダードに向けて規制緩和を行うというふうな動きが一斉に起こっているというために、こういう状況になっているわけでございます。  このように、世界の各国では同時に行政改革を推進いたしておりますけれども、この行政改革に向かうスタンスないしは行政改革のペースというものは非常に異なっております。アメリカやイギリスは、一気呵成に民活、民営化を推進し、規制緩和を徹底的に行いまして、経済効率化を図っておりますけれども、ドイツ、フランス及び日本というのは、用意周到に、公正が失われないように時間をかけて行政改革を推進しようというふうにしているわけでございます。  もともと、アメリカ、イギリスと、ドイツ、フランスの違い、あるいは日本を含めたその違いというのは、アペールがアングロサクソンモデルとラインモデルというふうに区別していた区別に一応符合はいたすわけでございますけれども、イギリスにはイギリスの特別な事情、福祉国家を推進するプロセスの中で、産業投資というものを怠ってきたがゆえに経済の力が著しく低下してきたという問題。あるいはアメリカにおきましても、生産性の低下という著しい問題があったわけでございまして、そういう事情により、一気呵成に行政改革を推進して、その実績が今あらわれつつあるということでございます。イギリス、アメリカに追随いたしておりますカナダ、ニュージーランド、オーストラリア等も、いずれもそのような経済上の問題を抱えていた。しかし、それがゆえに行政改革の実績は上げつつあるというふうに評価することができるわけでございます。  共産主義諸国におきましても行政改革を行っているわけですが、その場合にも、ソ連、東欧のように一気に市場経済を目指す国と、中国のように社会主義的市場経済というふうに申しましてじっくりと開放政策をとっていくという国と、二つに分かれているわけでございます。  日本は、順序立った、改革を手順を踏んで推進する慎重な態度をとっておりますけれども、このような日本の態度に対しまして、最近、「規制大国日本のジレンマ」という本、これは翻訳でございまして、原題は「ザ トランスフォーメーション オブ ザ ジャパニーズ エコノミー ザポリティカル バトル オーバー ディレギュレーション」という本でございますけれども、これは、エズラ・ヴォーゲルの息子さんでございますが、スティーブ・ヴォーゲルという人が書いた本でございます。  この中に、日本のようにゆっくりとしたペースで規制緩和を推進する、ないしは行政改革を行っていくには、それなりのメリットがあるということでございます。これは、一挙に競争の原理によって倒産する企業を出さないように、企業の力をつけさせながら時間をかけてやることのメリット、それと同時に、改革の結果、正義とか公正というものが失われないように配慮をするためには、日本的な行き方というものにもメリットがあるということを指摘しているわけでございます。  橋本総理の百四十回国会におきます施政方針演説におきましても、一方におきましては、世界の潮流を先取りする社会システムを一日も早く実現するというふうにうたわれながら、同時に、正義と公正というものを実現していくということが掲げられているわけでございます。  しかし、余り時間をかけ過ぎますと、そこに問題がないわけではございません。一つには、甘えの構造というものがいつまでたっても消えないわけでございまして、例えば銀行業界、これは一日も早い規制緩和を望んでいるわけですけれども、しかし同時に、倒産が出た場合には公的資金を導入してくれというふうな要求もしていらっしゃるわけでございまして、こういう姿勢がいつまでたっても続く限り、行政改革の効果というものは上がっていかないというふうに思われるわけでございます。  それと同時に、余り時間をかけ過ぎますと、官僚の手による骨抜き改革というものが行われまして、一体何のために改革を行ったのか、改革を行った結果、果たして所期の目的が達成されるのかどうかというふうな問題、あるいは、そもそも所期の目的、改革の目的は何であったのかということが明確でない状況というものが生まれる可能性が十分にあるわけでございます。  官僚は改革に徹底的に反抗いたしますけれども、反抗し切れないとなりますと、みずから改革のイニシアチブをとりまして権力を温存する組織づくりをするということは、これはイギリスにつきまして、ダンレビーという学者がこれをビューローシェービングという言葉で表現しているところでございます。我が国では金融検査監督庁あるいは日銀法の改正においてこのような傾向が見られないでもないわけでございます。  ただ、日銀法の改正につきまして、大蔵省の監督権が残ったということが批判されておりますけれども、しかし、大蔵省と日銀が連携をとることはやむを得ないことであるということを、アメリカの例を引いて説明させていただきたいと思います。  アメリカにおきましては、大統領の任期と連邦準備委員会の議長の任期とが一致しないようになっております。したがいまして、新たに大統領に当選した人は前の大統領が任命した議長とともに協力してやらなければならない。必ずしも前の大統領に任命された議長が同じ政策を持っているとは限らないわけでございまして、これはレーガンの時代までアメリカで極めて深刻な問題となっていたわけです。  ですから、日銀の独立性というのは、これは十分保障しなければならないことは言うまでもありませんけれども、しかし、やはり政策のすり合わせをする余地というのはどうしてもそこに残しておかなければならないというふうに思うわけでございます。  行政改革の場合には、しばしば総論賛成各論反対ということが言われます。経団連の会長の豊田さんも年頭に、行政改革は各論まで行かなければ日本は破局を迎えるという言葉をお使いになったことは御承知のとおりでございますけれども、しかし、振り返ってみますと、それでは総論があるのかどうかということでございます。すなわち、行政改革によってどういう改革を行い、それによってどういう社会を実現しようとしているということが果たして国民的な議論に上がってきているかどうかということが問題であるわけでございまして、まずその総論がないことが今の行政改革の一つの問題である。  これは、第二臨調の場合には、明確に理念というものを掲げまして、理念どおりにはならなかったわけですけれども、少なくとも理念は議論いたしました。しかし、今回は、総理大臣の施政方針の中に方向が示されておりますけれども、それが果たして国民議論としてコンセンサスを生む土台になっているかというと、そこに若干問題があろうかと思うわけでございます。  アメリカの場合を見てみますと、レーガン、あるいはイギリスのサッチャーというのは、ニューライトという思想に基づきまして改革を推進しようとしていたことは改めて説明するまでもないわけでございますけれども、一九九〇年代以降、オズボーンとゲブラーという人が「リインベンティングガバメント」という本を出しまして、これが両国におけるそれ以降の行政改革のバイブルとなっております。ここで軌道修正がなされるわけでございまして、これまではイデオロギー的に、とにかく市場経済が善で政府は悪である、だから政府を徹底的に小さくしなければならないというふうな考え方がとられてまいりましたのに対しまして、いや、政府というのはやはり社会というものをある一定の方向に誘導していくために強力でなければならないという考え方がここで確立されてまいります。  しかし、これまでの政府の運営の論理でございますと、そこに消費者主権と申しますか、国民主権の原理というものが必ずしも確立していない。政府で物を供給いたしますと、物を受益するのとそれに対する負担とが分離しておりまして、国民がどれだけの負担においてどれだけのサービスを受けるという意思を表明するメカニズムが存在しない。したがって、そこでは供給者主権の原理というものが働くわけでございます。これをとにかく改める。そして、政府の論理と市場の論理というものをゼロサム的に考えるのではなくて、これをうまく考え合わせることによって、人間が人間の尊厳を享受しながら生きることのできる社会というものを実現していこうというふうに向かっているわけでございます。  人間の尊厳と申しますのは、自由意思に基づいて人間が行動することによって保障されるわけでございます。そのためには、市場の論理というものが最適であるわけでございますけれども、市場というのは排除の原則によって成り立っている。すなわち、代価を支払わない者は市場を通じて物を得ることができないという原則によって成り立っているわけでございまして、すべての人々が人間の尊厳を享受することができるようにするためには、これにはどうしても政府の論理というものが必要となってくるということで、この両者を結びつけようというのが現在の改革のスローガンというふうになっております。  イギリスには市民憲章というのが制定されました。アメリカでは、ゴア副大統領が中心になりまして、ナショナル・パフォーマンス・レビューというものを出しております。  これに基づきまして、国民は消費者であるという位置づけを与えまして、消費者であるからには選択の自由を持っている、国のサービスも、受けたいと思う種類のサービスを選択して享受することのできるような状況をつくり出すという方向に今世界の行政改革は向かいつつあるわけでございます。そのためには、民営化、契約による民間委託、あるいは受益者負担の原則、そしてバウチャー制度導入というふうなことが言われているわけでございます。  本格的な行政改革は、行政機関を、企画立案を担当するコア機関と、検査、監督を担当する周辺機関及び実施を担当する執行機関とに分解いたしまして、相互のネットワーキング化を図りまして、これまで自己完結的なヒエラルキー的組織を通じて行われていた行政作用をこのネットワークの方にゆだねていくという方向がとられておるわけでございます。イギリスではこれをエージェンシー化というふうに言います。日本では外庁化という言葉が定着しつつございます。  これが行われますと、例えば規制緩和を行いましてもどうしても必要として残る規制というものは、企画立案を担当する機関の外で準立法的、準司法的手続を通じて行うことができるようになるわけでございます。アメリカでは規制は独立規制委員会が担当しておりますが、イギリスでも今日これと同じような方向がとられているわけでございます。  ただ、そうなりますと、それでは国民に対する責任と申しますか、アカウンタビリティーというのはどのようにして達成していくかという問題が出てくるわけでございます。そこで、企画立案を担当する機関は、任務を執行機関に委任する場合に、まず目標を明確に設定いたしまして、そしてその目標が達成される度合いを示す指標というものを与えます。それに従って、実施機関はどれだけ結果を出しているかということを一目瞭然に把握できるような状況を生み出すことによって、アカウンタビリティーを高めていこうとする方向がとられているわけでございます。  もちろん、現在はまだ試行錯誤の状況でございまして、完全にそれによって責任状況が改善されたということではございません。新しい状況のもとでは新しい問題が起こっておりますけれども、しかし、少なくともそういう形で改革が行われている。  それと同時に、実施機関には、目標をどのような仕方で達成するかにつきましては大きな裁量権を与えます。消費者に一番近い実施機関が一番国民の要求を知っているわけですから、そこに権限をおろしていくということですね。日本では地方分権化もその一つに入ろうかと思うわけでございます。  予算にいたしましても弾力化をする。これまで予算というのは、議会の統制手段としてこれが歴史的に発生したものでございますから、単年度主義というのが原則でございましたけれども、複数年度の予算というものを導入する、あるいは使い残した予算は次年度に使うことを許すというふうな方向があるわけでございます。  ただ、ここで問題なのは、国民は単なる消費者にのみ分解することができないということでございます。国民は主権の源泉であると同時に、有権者であり、行政の監督者であり、いろんな役割を同時に果たさなければならないわけでございます。国民がこういう役割をみずから果たすことによって自己責任というものを負っていくためには、情報の公開、企業につきましてはディスクロージャーということが不可欠なわけでございまして、こういうことを行うことが行政改革の前提になろうかと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  59. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、植草公述人にお願いいたします。
  60. 植草一秀

    ○植草公述人 野村総合研究所主任エコノミストの植草一秀と申します。よろしくお願いいたします。  私は、エコノミストという立場から、平成九年度総予算につき意見を述べさせていただきます。  資料を配付していただいておりますので、御参照くだされば幸いに存じます。  私からは五点申し述べさせていただきます。  第一は、当面の望ましい経済政策運営の考察をする際に、これまでの日本経済の推移と経済政策との関連につき、十分な検証が求められるという点であります。  お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。  グラフは一九九二年の年初以降の日経平均株価を示しております。株価と景気及び経済政策の関係を時系列に従って簡単にたどってみたいと思います。  まず、グラフの左端、①と番号を付しております九二年三月でございます。政府は日本経済の不況入りということを一年間にわたって見過ごして、九二年に入りましてから、この一―三月期にようやく不況入りを認めたということであります。その後、この九二年三月三十一日に景気対策を決定しているわけでありますが、積極的な策はほとんど盛り込まれない、そういう策が三月三十一日に決定になっております。  この時点で政策が消極策をとった理由は、財政収支の悪化を避けるということでありました。財政収支の悪化を避けることを理由に、財政政策の発動を拒否したわけでありますけれども、この結果としまして、株価暴落と大不況の到来というのが生じまして、皮肉にも、その後赤字国債の大量発行という事態を招いております。つまり、財政収支の健全化を目指しても、肝心かなめの経済悪化を招いては財政収支はかえって悪化してしまう、こういう重要な教訓を残したものであります。  こういう形で政府の対応がおくれまして、株価は八月には一万四千円台に暴落をしたわけですけれども、ここで政策スタンスが修正されまして、八月二十八日に十・七兆円の史上最大の景気対策が打たれました。第一回目の特効薬というか、麻薬の投入ということになったわけであります。  九三年に入りまして、景気対策の効果は顕著にあらわれ、景気は回復の方向を示し、株価は二万一千円台へ上昇いたしました。この時点で、政策当局から景気回復宣言というところまで発表があったわけでございます。  ところが、この九三年は記録的な冷夏に見舞われまして、また政局の変動もあり、景気は徐々に失速し、JR上場をきっかけにしまして株価が急落をいたしております。  ここで浮上してまいりましたのが、所得税減税の先行実施という話であります。グラフでは④というところに当たるわけでございますが、いろいろな議論の末、九四年の二月八日に五・五兆円の所得税減税を含む十五兆二千五百億円の経済対策が決定になっております。第二回目の特効薬、麻薬の投与ということであります。  この特効薬の投入によりまして、株価と景気は目覚ましい改善を示したわけであります。株価は六月に二万一千円台に上昇し、この年は一転して猛暑ということにもなりまして、景気は明確な回復を示したわけでございます。  九四年、日本経済は着実に健康体を取り戻しつつありましたが、この図表の中の⑤に示しておりますように、日本銀行がこの時点で時期尚早の利上げに着手し始めたわけであります。その結果、年後半に入りまして再び景気悪化、株価下落が生じております。と同時に、この金融引き締めの動きが、九五年に入りましてからの急激な円高の原因にもなっております。ここに年明け後、地震とサリンという事件が加わりまして、株価は暴落し、二度目の金融危機という局面を迎えたのが、この九五年の半ばでございます。株価は再び一万四千円台に下落をしております。  ここで⑥の局面でありますけれども、九五年の半ばになりまして、金融危機という事態に直面し、金融政策はスタンスを百八十度修正したわけであります。四月以降、二・五%の短期金利を〇・五%へと引き下げる一方、財政面におきましても、九月二十日には十四兆二千二百億円の景気対策が決定されております。三回目の特効薬、麻薬が投与されたということであります。ここでもこの特効薬は目覚ましい薬効をあらわしたわけであります。景気は順調に回復を示しまして、株価は昨年六月二十六日には二万二千六百六十六円まで上昇しております。  ところが、株価は昨年の六月二十六日を境に下落に転じております。何があったのかと調べてみますと、実は六月二十五日に政府消費税率を九七年四月から五%に引き上げる方針を閣議決定していたのであります。この政策決定を転機として株価は下落に転じております。そして、特別減税打ち切りなど追加的な緊縮策を盛り込んだ超緊縮の九七年度予算案が決定された十二月二十五日以降、一段の株価急落が生じております。  この株価下落につきましてはさまざまな解釈が行われておりますけれども、これは私見でありますが、この株価下落は、九七年度予算のデフレ的な性格により先行き景気が再び悪化する、こうした見通しを株式市場が先見的に織り込み始めたもの、こういうふうに理解することができるわけであります。  こういう形で、九二年以降の経済の推移、政策の推移、株価の推移をざっと振り返ってみたわけでございますけれども、こういう中で現在、政府は、日本経済の現状、景気対策、さらに財政赤字の問題につきまして、次のような説明をしているというふうに私は理解しております。  これまで数次にわたりまして大規模な経済対策を打ってきた、しかし日本経済は本格的な景気回復を実現できないでいる、一方、財政収支は急激に悪化を示してG7の中でも最悪の状況になっている、景気対策は効果が薄れており、今後はこのような手法をとることは望ましくない、悪化した財政を立て直すことが現下の最優先課題である、そのためには国民にもある程度負担増加を理解してもらわないと困る、こういう説明をしているように私は理解をしているわけでございますが、これまでの現実を振り返りますと、こうした説明はやや現実とかみ合っていない部分があるというように感じるわけであります。  つまり、三度打ちましたこの十兆円を超える景気対策は、いずれも目覚ましい効果を上げております。この景気対策によりまして景気の回復あるいは株価の上昇という形であと一歩というところで日本経済が健康体を取り戻すというような段階で、景気を逆戻りさせる施策がとられているのではないかということであります。病気が回復してあと一歩で病気が治癒に向かうという時点で、病気を再発させ再び重体に向かわせているということであります。そして、重体となりますと、再び高価な特効薬を投入しなければならない状況が生まれ、その結果としまして財政赤字がどんどん累増しているということであります。  言ってみれば、典型的なストップ・アンド・ゴーという政策の繰り返しになっているわけでありますが、このストップ・アンド・ゴーの政策を繰り返しておりますと、恐らくいつまでたっても景気はしっかりとした回復に入れない。一方で、そのゴーという政策をとるたびに財政資金が投入されるわけでありますが、財政赤字が累増していくということになるのではないかということを懸念いたします。  つまり、景気対策がきかなくなっているということではなしに、景気対策の効果を台なしにする政策運営がとられているというのが実情ではないかということであります。つまり、景気対策が効果を失っているという形で責任を転嫁する前に、貴重な財政資金をこれだけ投入したのに景気回復を実現できずにいる政策運営の不適切さを振り返ることがまず求められているのではないかというように思います。  問題は、九七年度に向けていかなる施策をとるのがよいかという点にあるわけでありますが、これまでの教訓を生かすとしますと、健康体にかなり近づいたと判断できる現在の日本経済の状況を踏まえますと、この病み上がりの状況であるということを踏まえて、病後の養生をするような政策を採用すべきではないかというように思われます。  九六年、昨年ですが、日本経済は、個人消費、住宅投資、設備投資といった民間需要が堅調に転じまして、消費主導の景気回復軌道にやっと差しかかった段階にあります。九七年にかけまして政策が中立を維持するのであれば、景気は着実に拡大軌道に乗っていく、こういう局面にあるというふうに判断することができます。追加的な積極策は全く必要がないというのが現在の局面でありますが、現在審議されております九七年度予算景気を今後極度に悪化させていくような内容になっておりまして、ようやく回復軌道に乗りかけている景気を失速させる危険性が非常に高いのではな  いかというふうに思われます。  九七年は、こうした形でこの懸念が表面化してまいりますと、徐々に景気悪化状況が進むにつれて株価が下落をして、九二年とか九五年に見られましたような、景気の悪化、株価の下落、金融不安という悪循環が再発する懸念を払拭はできないというように感じるわけであります。  現状での最大の問題は、一方におきまして不良債権問題が深刻でありますけれども、金融破綻が生じたときに預金を保証する資金的な手当ての体制が十分に整っていないということにあります。セーフティーネットの整備こそ本来第一に求められる施策でありますけれども、残念ながら、短時日にこれを整備することは困難と見られます。  そういう意味で、次善の策でありますけれども、金融恐慌を万が一にも発生させないためには、ここは増税規模を圧縮し、景気安定化を優先する政策をとる方が望ましいのではないかというように考えます。  危機管理についての論議が活発化しておりますが、危機管理の鉄則は未然防止にあります。景気を悪化させる政策を実行し、事態が最悪ケースをたどった場合のリスクが著しく大きいということにかんがみますと、ここは安全策、つまり景気を悪化させない政策をとることが適正ではないかと考えられるわけであります。  誤解がないように申し添えますけれども、必要な政策は、財政の積極策をとるということではなしに、現在極端にデフレ政策の方向に振れている政策を中立の方向に戻すということでございます。  それから第二番目に、株価下落の原因につきまして触れさせていただきたいと思います。資料2をごらんいただければと思います。  資料2は、一九九四年の年初以降の日経平均株価の推移と、下段は鉱工業生産の前年比のグラフを同じ時間軸上に書き記したものでございます。鉱工業生産の前年比の推移が比較的正確に景気の足取りを示しているということから、ここにこの指標を用いております。  こうしてごらんいただきますと、株価の動きが実際の景気の動きに約半年先行して推移しているということが見てとれるわけでございます。株式市場は先行きの景気を先見的に見通して動いている、こういうことがうかがわれるわけで、なぜ株式市場はこのように先を読んで動くかといいますと、そのきっかけになっておりますのが、政策の転換ということであります。政策の転換が生じることによりまして先行きの景気の見通しが変化をし、それを映す形で先行的に株価が推移をしているということであります。  昨年六月以降の株価の下落は、こういう文脈で理解をいたしますと、ことしに入ってから景気は少し減速傾向を示すのではないか、さらに、昨年末以降の株価の急落は、ことしの第二・四半期以降景気がかなり急速に悪化するのではないか、こういう市場の見方を示しているというふうに理解するわけであります。資料3をごらんいただきますと、今ごらんいただきましたグラフのうち、下段の鉱工業生産のグラフを半年左にずらした形になっております。  こういうふうに、生産の動きを半年左にずらしてごらんいただきますと、ほぼ株価の動きとパラレルという形になっております。株式市場が絶対ということではありませんが、先行きを考える一つの判断材料として、こうした株価と景気との関連につき、注意深く見ておく必要があるということが重要かと思います。  通常は、経済指標を見て景気を判断し、政策を決定し、それを実施していくということでありますが、こうして見ますと、通常、経済指標というのは、約三カ月昔の姿を示すのが経済指標であります。株式市場は通常半年ぐらい先を示しております。ということは、両者の間には約九カ月のタイムラグがございます。仮に、政策が、経済指標だけを見て判断をし、決定をしていくということになりますと、どうしても対応がおくれるということで、ことしの半ば以降景気が急速に悪化するといたしまして、それが経済指標で判定されるのはことしの第三・四半期ということになり、それを決定し、実施に移すということになりますと、対応は来年にずれ込むということも予想されるわけで、そういう意味では、政策運営に当たりましては、過去を示す指標ではなしに、先を示す指標も活用して判断をし、政策決定をしていくことが重要であろうかと思います。  それから、三番目でございますけれども、資料4をごらんいただきたいと思います。  今回の株価下落につきまして、一部に、株価の下落は銀行株、建設株といった特定の業種に限られているといったような見解がございますが、現実とやや合っていないという面がございますので、この点を御指摘申し上げたいと思います。  ここにありますのは、昨年六月二十六日から一月二十七日、これは東証株価指数の下落した時期でありますけれども、この間の業種別の騰落を示しております。  全体では、日経平均株価がこの間二三・五%の下落、TOPIXという東証株価指数では二二・九七%の下落となっております。これに対しまして、余り株価の下がっていない業種も存在しておりますが、ここにあります医療品、精密、輸送機、その他金融業、電気、通信、現在、自動車と移動体通信が非常に好調と言われておりますが、こういうごく限られた六業種におきましては下落の率が一けたにとどまっておりますが、残りの二十七業種は二けたの下落になっておりますし、全体の下落が二〇%台ということで、二〇%以上の下落を示している業種で見ますと、これが二十四業種ということでありますので、決してごく一部の業種が下落をしているのではなしに、日本経済全体の株価水準が下がっているということでございます。  それから、四番目でございますが、資料5をごらんいただきたいと思いますが、米国経済は現在非常に堅調ということでありますが、この米国経済が堅調に転じるきっかけとなった点について、時間の関係もございますので、ごく簡単に触れておきたいと思います。  この資料5の上段にありますのはニューヨークの株、下段は日経平均の株であります。米国のグラフは九〇年の年初から、日本のグラフは九二年の年初からということで、二年ずらしておりますが、実は、上段の九〇年から九二年にかけての米国の景気の推移、株価の推移と、下段の日本の九二年から九四年にかけての景気の推移、株価の推移は、まさに酷似しております。  この中で、米国では九二年、景気は一応回復過程に入っておりましたが、まだ先行きがおぼつかない段階で、追加利下げという対応をとりました。つまり、病み上がりに荒療治をするのではなしに、栄養と睡眠を与えるような政策をとったわけでありますが、これが功を奏して、その後四年間景気拡大を続け、株価が上昇しております。日本では、先ほど申しましたが、九四年、下段でありますが、こういう段階で利上げという方向が出てまいりまして、よくなりかけた景気が悪化しております。そういう意味で、この病み上がりの対処の仕方によって経済のその後の推移の大きな違いが生じているということを指摘しておきたいと思います。  最後に一点だけ、補足でございますが、財政構造改革ということは、長期的に非常に重要な課題だというふうに私も思います。しかしながら、高齢化を控えた現在の日本の状況を踏まえますと、現在必要な財政構造改革は、財政赤字の縮小ということよりは、むしろ支出構造の見直し政府支出からいかにむだを省くかという点がより重要ではないかと思います。  こういう中で、財政赤字の縮小には、大きく方法が二つあるわけですが、支出を切り詰めて行う財政赤字の削減と、収入をふやす財政赤字の削減でありますが、前者が小さな政府につながるのに対しまして、後者は大きな政府につながりやすいというリスクを伴っております。そういう意味で、私は、財政収支の改善、財政赤字の縮小よりは、この支出構造の見直しという点がより重要であるというように考えております。  以上で私からの意見陳述を終えさせていただきます。(拍手)
  61. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。  次に、佐高公述人にお願いいたします。
  62. 佐高信

    佐高公述人 極めて理論的でアカデミックな話が続きまして、ただ、民の声にはエモーショナルなものもありますので、私は、そこにメモをお配りしましたけれども、そのメモを見ただけでも理論的ではないということがおわかりいただけるかと思います。  最近、ある人が、私、電話で話しておりましたら、新聞を見たくないというふうに言うのですね。なぜかといったら、新聞には連日のように、だれが逮捕された、かれが逮捕されたという記事が載る、だから、いわばほとんど「タイホ新聞」みたいなものである、だから新聞を見たくないというふうに言うのです。  自民党公認の茶谷という人の逮捕に始まって、泉井、友部と、次にだれが逮捕されるのかという予想まで出る始末だと思いますけれども、そういう中で、それは皆さん方がお考えになる以上に、政治家と官僚というものに対して国民が、本当に深い意味で、何やつているんだと、私たちに働かせておいて何やつているんだということを考えている。そういうふうにしかと認識していただきたい。  それで、この間、この席でですか秋葉議員が質問されておりましたけれども、テリー伊藤という人が、直接大蔵官僚から聞いた「お笑い大蔵省極秘情報」という本を書いているのですけれども、その中で、その三人、匿名官僚を私は今訴えているわけですけれども、余りにその内容がひどいので、あれはでたらめだろうと言う人が多いのです。しかし、私が訴えているところにおいては、版元の代理人、弁護士は、その三人は実在の人物というふうに考えてもらっていいというふうに言っておりますし、テリー伊藤自身が、三人プラスアルファから話を聞いたと言っているわけですね。  その「お笑い大蔵省極秘情報」という本の中で、多分、今現に大蔵省にいて、あるいはアメリカか何かに逃げているのかもしれませんけれども、その人がこういうことを言っているわけですね。中島、田谷の問題というのを法務省、検察が追及できるわけがないのだと。なぜかといえば、「法務省は予算で動いてるんです。われわれがその気になれば、明日からすぐ法務省の予算を締められる。金がなかったら、法務省といえども何もできない。」というふうに言っているわけですよね。ということは、ここに「しかし、大蔵官僚は逮捕されず」というふうに書きましたけれども、大蔵官僚が逮捕されないというのは、そういういわば予算の権限を握って操っている、法務、検察まで操っているということではないか。  私は、この間「諸君!」という雑誌で野中広務さんと対談したわけですけれども、そのときに野中さんは、私がこのテリー伊藤の本を示したら、「やっぱり法務は、検察・警察を含めて、自分たちの名誉のためにやるべきだと思う。現にどんな理由があろうと、一千五百万円という現金が、少なくとも中島君」中島義雄ですね、元大蔵官僚。「の部屋を経由していったという事実はある。司法が何ひとつ手をつけられないというのであれば、そこに法は存在しない。」というふうに言っているわけですね。ということは、やはり大蔵官僚というふうなものに対して、皆さん方がどういうふうにきちっとした態度をとるのか。  何か泉井といういわくつきの人から絵をもらって、返せばいいのだ、そんな話は全然通らないわけですね。何十万円という絵をもらって、それを返したからいいのだ、それを三塚大蔵大臣が、返したからいいと言うのでは、国民はもう腹の底からあきれていますよ、それは。そういうことがどうして皆さん方の中できちっと問題になってこないのか。それは、この本の中で大蔵官僚が豪語しているように、政治家なんというのは、自分たちから予算を握られていて、税金で追及されるのが怖いから全然自分たちには頭が上がらないのだということを証明しているようなものではないかというふうに思うわけです。  次に、「住専問題と財政・金融の分離 公的資金導入の大前提」というふうに書きましたけれども、今また公的資金云々というふうな話がいろいろ出てきている。民主党あたりからまで出てきているようですけれども、公的資金導入、住専問題であれだけ国民が怒った、八割の国民が住専への税金拠出に対して反対したということの一つの大きな問題は、つまり大蔵省が過保護にした銀行が何も責任をとってないということ。そこに何のメスも入れられず、今現在、銀行のディスクロージャーなんて何もやられてないわけですね。銀行の頭取の月給さえ明らかになっていない。そういう中で、それをそのままにしておいて、また公的資金の導入なんということがどうして言えるのか。  やるべきことをやって、銀行あるいは大蔵省に対して住専問題の不始末の責任をきちっと、汚い言葉で言えば、自分でけつをふかせて、そしてその上で公的資金というふうなものが話に出てくるのならまだわからないこともないけれども、いきなり、また危ないから公的資金だというふうな話は全く通らないということ。その根っこには、財政と金融両方を大蔵省が持っている、こういう大問題があるわけですね。  住専問題というのは、簡単に言えば金融政策の失敗を財政で穴埋めしようという、大蔵省が左手の失敗を右手で償おうとしたことであるわけですね。その辺のところがやはり何も反映されていないということが、私は非常におかしいというふうに思うわけです。  持ち株会社というふうなものも今さらにまた出てきているようですけれども、持ち株会社で一番得をするのは銀行だというふうに言われているわけですね。一番問題で、何も責任をとってなくて、それでいて年俸一億とか頭取は取っていると言われますけれども、その銀行が一番得をするような持ち株会社の解禁みたいなことをどうしてできるのか。経済理論がどうのこうのというふうなことを言いますけれども、肝心の主体が何も責任をとってないというときに、そういうことをやっていいのか。それは住専に次ぐ失策となるであろうということを警告しておきたいというふうに思います。  それから「行革に逆行する整備新幹線」、何か整備新幹線にまともに反対した政党がないというのはどういうことなのかというふうに思う。そこに「「昭和の三大バカ査定」発言」と書きましたけれども、これは皆さんも御承知の方が多いかと思いますけれども、問題の、元大蔵省官僚の田谷廣明という人が、一九八七年の暮れ、予算編成をめぐる記者団へのブリーフィングの中で、半分オフレコだったわけですけれども、航空機の時代が来ていたのに、日本の海軍は大艦巨砲主義に固執して戦艦大和や武蔵をつくった。整備新幹線も完成までに十ないし二十年はかかる。できたときには時代おくれになっているだろう。大蔵省には昭和の三大ばか査定と言われるものがある。第一番目が戦艦大和や武蔵、第二番目が昭和三十年代の伊勢湾・鍋田の干拓事業、第三番目が青函トンネル。もし整備新幹線の昭和六十三年度予算を認めたら、三と建設費のけたが違うから、それと入れかわって三大ばか査定の中に入ってしまう。だから一円たりとも認めない。建設費も維持費も国に出せと整備新幹線推進派の当時の自民党議員たちは言っているが、それではまるでおんぶにだっこにおしっこだというふうに言って、これが、オフレコ発言が漏れて、当時の大蔵大臣に族議員というかそういう人たちが撤回を迫って、主計官の分際で大蔵原案内示前にあんなことを言うことはけしからぬというふうに言って、田谷は沈黙するわけですね。  私は、田谷廣明という人のたかり的な行為というのは全く賛成しませんけれども、官僚と政治家の関係考えたときに、田谷という人にとって、この昭和の三大ばか査定発言での族議員の圧力というのは、大きな挫折を経験させるものだった、好意的に、非常に好意的に田谷という人を解釈すれば、そういうものだったのではないか。自分たちが一生懸命公共の立場に立って発言しようとしても、族議員はそれを横車でもって押しつぶすというふうなことが、結局、まあ余り正論というか公共の論理に立って物を言ってもだめなんだというふうに田谷廣明という人を挫折させていったのではないか。それであれだけのたかりをやったというのは、私は全く論外だと思いますけれども。  ただ、政治家と官僚の関係において、大蔵官僚の関係においては、そういうことが一つのきっかけになった。どちらがパブリックの立場に立っているのか、どちらがプライベート、私の利益の立場に立っているか。パブリックの取り合い、競争ということを政治家と大蔵官僚が、逆に政治家の方がプライベートに立って、官僚の方がパブリックの立場に立つということでは、結局、政治家は自分たちがいないとだめだみたいなことを言われることになるだろうというふうに思うわけです。  その大蔵官僚というものが政治家をどう見ているかというのを、まあ半分ライブ的にこのテリー伊藤の本から御紹介しますと、ぜひ皆さん方、ここをお聞きいただきたいのですけれども、大蔵省の主計局のキャリア、仮名でこれは軍司誠という人が、大蔵官僚にとって橋本龍太郎は全く怖くないと言っているわけですね。その後、こういうふうに続けている。「怖くないところか、あれほど大蔵にとってあてになる人はいない。だっていま大蔵省分割をしなければいけないという大合唱の中で、内閣で彼ひとりだけが、「いや大蔵省の分割というのは軽々しくやるものではない」とはっきりいってるじゃない。」ちょっと前の時点ですけれども、「大蔵省はいまのシステムで十分機能を果たしてるんだから、よく考えなければいけないといってくれてるのが、橋龍さんだけ、」こういうふうに言っているわけですね。「橋龍は、はっきりいってコンプレックスのかたまりなんです。小沢もそうだけどね。」そんなことを言っている。  もっとひどいこと、たくさん言っていますよ。この本を皆さん方が何も問題にしないということで、私はあえて匿名官僚というものを名誉毀損ということで訴えた。そういう中で、匿名という場合は、訴訟というのは相手のところに訴状が届かないと発生しないものですから、今一生懸命逃げていて、大蔵省の方もそれは知らないみたいな話になっているんですけれども、版元の飛鳥新社というところだけを、今裁判をやっているわけですね。  しかし、先ほども申し上げましたように、版元の代理人、弁護士がはっきり、この三人は実在の人物だ、そして発言はそのとおりそのまま受け取ってもらっていいというふうに言っているわけです。橋本さんや小沢一郎、さらには田中眞紀子という人に対しても非常にすさまじいことを言っています。だから、そういう人がどうして問題にしないのかと私は思うわけですね。  田中眞紀子という人に対してはこういうふうに言っている。「田中真紀子が大蔵大臣になったら、それだけでイメージ変わりますよ。大蔵官僚に対する悪口は、半減どころじゃないと思う。おそらく十分の一ぐらいになっちゃいますよ。田中真紀子が来て、大蔵官僚はけしからんといって、誰かを血祭りに上げるかもしれないけれど、間違っても本当の血祭りには上げませんよ。」「彼女は脱税疑惑女王だから。」こういうことを言っているわけですね。国民の上に政治家がいて、政治家の上に大蔵官僚がいるんだということを放言している。その本は、皆さん方ぜひ読んで、徹底して追及しなければ、予算審議どうのということの大前提が崩れるんじゃないか。  「田中真紀子がとんでもない自己革命をやらないかぎりは、永遠に大蔵省の奴隷なんです。一生涯、生きてるかぎり。あるいは死んでからも。」こういうことを、固有名詞を挙げてやっているわけですね。大蔵官僚に対するコントロールというのが、皆さん方のコントロールというのがどれだけきいているのか。私から見ると、ほとんどきい  ているようには見えない。  分割論の場合でも、自民党なんかでも、最初は公正取引委員会型で踏み込むと選挙前公約しながら、ずるずる後退していって、あれだけの大蔵官僚の不祥事が出ながら、何できちっとした最初の公取型みたいな形でできないのか。それは、そういうふうになればなるほど、テリー伊藤がここで言っていることは本当だというふうに裏書きすることになるのではないか。  そこに、最後にちょっと「骸骨を乞ふ」というふうな言葉を挙げたんですけれども、大蔵官僚に何言ってもむだだというふうな感じがしますね。例の官房長の、今の官房長の涌井洋治という人が、返せばいいんだろうというふうな話、また、それを何も問題にできない国会、きちっと追及できない政治家というのは何なのか。  それで、私は私なりに、大蔵官僚に余り言葉は届かないかもしれないけれどもということで一生懸命何とか言葉を探しまして、吉田茂が老師と呼んで以来、歴代総理が、特に官僚出身の総理が神様のようにあがめ奉っている安岡正篤という人の「経世填言」という本をひっくり返した。その本の中に「骸骨を乞ふ」という言葉が出てくるわけです。  この「骸骨を乞ふ」というのはどういう意味かといいますと、官職を辞することだというふうに書いてあるんですね。それで安岡氏はこういうふうに説明している。「この片言隻句の中に、深甚無量の官吏訓」、官吏の教訓ですね、「官吏訓が含まっている。骸骨というのであるから、痩せ衰えて骨と皮とばかりになっている姿を想像せざるを得ない。つまり君国の為、民の為に身心を労して憔悴の揚句、いかにも職に堪えなくなった姿を表すものである。」というふうに言っているわけですね。国民のために一生懸命日夜あれして、骸骨のようになったからもうやめさせてくれというのが「骸骨を乞ふ」。  さらに安岡氏は、「役人になることはつらいことである、生命懸けである、ただに労苦ばかりではない。官吏なるがゆえに民衆よりは高い道徳才能を要求せられ、随って厳刻な批判と責任との対象とならねばならぬ。痩せざるを得ぬ情理である。ぬくぬく太れるわけのものではない」、これはもう全く皮肉にしか聞こえませんね。「ぬくぬく太れるわけのものではない」、ぬくぬく太って、絵だろうが何だろうがもらっている人たちばかりじゃないですか。中島義雄しかり、田谷廣明しかり、今の大蔵省の涌井という官房長しかり。この「骸骨を乞ふ」というふうな言葉が全く死語になっている。言えば言うほど何かこう浮いてしまうという状況が私はやはり大問題なんだろうというふうに思うわけです。  また、この「骸骨を乞ふ」というのは、もちろん官僚だけでなく政治家に対しても当てはまるものであろう。その「骸骨を乞ふ」までに国民のために心身を労し、憔悴しているのかどうか。むしろ骸骨のようになって心身を憔悴させているのは民の方であるということを申し上げて、私の陳述ならぬ放言を終わります。(拍手)
  63. 深谷隆司

    深谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  64. 深谷隆司

    深谷委員長 これより公述人に対する質疑を行  います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨信行君。
  65. 葉梨信行

    ○葉梨委員 自由民主党の葉梨信行でございます。  きょうは、午後、三公述人においでをいただきまして、それぞれ大変適切な、また痛切なお話を伺わせていただきまして、心からお礼を申し上げます。  片岡先生にお伺いしたいと思うのですが、その前に、実は私は、片岡先生のお話の中で、立法府と行政府関係ということに余りお触れになっておられなかったものですから、みずからを戒める気持ちでちょっと申し上げようと思っておりましたが、今、佐高さんから大変痛烈な御批判がございました。身にしみてお話を伺った次第でございますが、私ども立法府の者が行政府に対して毅然とした態度をとって、国民の代表として活動しなければならない、今ここの席におられる同僚議員みんなその気持ちでおるのでございますけれども、どちらかというとなれ合いで政治を、国会で政治活動をやってきたという反省の心しきりでございます。これから行政改革を行っていくためには、国民の信頼を基本にしながら、やはり行政府に対しまして緊張関係を持って事に当たらなければならない、このようにみずから戒めているところでございます。  さて、片岡先生のお話を伺っておりまして、お触れにもなっていらっしゃいますが、行政改革国民とのかかわりという問題でございます。  行政サービスを受けるのは国民であり、あるいは私どももみんなサービスを受ける立場にもあるわけでございますが、自己責任とか自助努力の価値をもう一度私どもも含めまして見直さなければいけないのではないだろうかと思うのでございます。何かといいますと、政府に何とかしてくれないかとすがる、予算をとりたいということで働きかける。あるいは一般庶民もそういうような行動をとってまいります。あるいは政党も、ともすると自己責任の追及ということをすることなく政府に要求するという嫌いが与野党を通じてあると反省をしている次第でございます。  それに対しまして行政府は、民間への規制とか行政指導で当たろうとしてきたと思うのでございますが、事前の介入に力点を置いた行政のあり方を根本的に行政改革の過程で転換しなければいけないと思うのでございます。客観的なルールをつくり、それに基づいて事後的なチェックを行うというような方向に新しい時代の行政のあり方は向かっていかなければいけないと思うのでございますが、片岡先生の御意見を拝聴したいと思います。
  66. 片岡寛光

    ○片岡公述人 お答えさせていただきます。  行政というのは、人間が幸福になるための条件を整えることはできますけれども、幸福そのものを提供することはできません。人間が幸福になるのは自分の行動を通じてのみでございます。近代市民社会というのは自由意思と自己責任の原則によって成り立っていたわけでございまして、それによって初めて人間の尊厳というものが確保されることができるということでございますので、私は、現在の社会におきましてもその原則というのは正しいものであるというふうに思っております。  ただ、人間にとりまして情報というのは必ずしも完全ではない。今日のように複雑な社会では、自分の見も知らずのところでつくられたものを消費し、見も知らずのところでなされた決定によって影響されて生きているわけですね。したがって、何らかのところで人間の諸環境を規制することは避けて通ることができない。これが行政に要求される最小限度のことでございます。  それからもう一つは、自己責任という原則を確立いたします場合、本当に自己責任の原則でいい場合と、やはり行政が介入しなければならない度合いがあるかどうかということを一応チェックした上でやるべきであるというふうに私は思っております。
  67. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ありがとうございました。  先ほどの片岡先生のお話の中で、行政改革のやり方、アングロサクソンのやり方、それに対しましてドイツやフランスやあるいは我が国、中国などのやり方を対比されました。なるほどなという思いをさせていただきました。感謝申し上げる次第でございます。  行政改革と言いますが、その行政改革を私どもが今、国会立場で行いますが、行政サービスを受ける国民もその行政改革に参加をしなければ本当のものにならない。そういう意味で、今度の情報公開法を今年度中に立案し実施しようということは、私は大変時宜を得たことであろうと思っている次第でございますが、情報公開ということに対しましてのお考え、どう受けとめていいか、片岡先生並びに佐高先生からお話を伺ってみたいと思います。
  68. 片岡寛光

    ○片岡公述人 情報公開の問題は、日本におきましては遅きに失した嫌いがございまして、スウェーデンでは一七八八年から行われていることでございまして、他国におきましては一九五〇年代、アメリカにおきましては六〇年代に入りましてから情報公開というのが行われてきたわけでございますけれども、日本では、三十年間情報公開を求める要求というのがあったにもかかわらずこれまでそれが延び延びになってまいりまして、ようやくここで情報公開に踏み切るということでございます。  平成八年十二月十六日に行政改革委員会が橋本総理に提出されました「情報公開法制の確立に関する意見」というものを拝見いたしますと、これは大変進んだものでございまして、非常に心強いわけでございます。国民に知る権利を保障いたしますと同時に、政府にはその活動について国民に説明する責務を負わせるということでございまして、これは、アメリカなどの情報公開よりもさらに一歩踏み込んだものであるというふうに私は理解いたしております。  それから、情報公開には必ず例外事項というのがつきまとうわけでございますけれども、例外的に秘匿される事項につきましても、公益上の理由がそれを上回ると考えられる場合には裁量的に開示することもあり得るということが規定されている。こういうことは非常に進んだ規定であろうというふうに思います。  ただし、この例外事項の中で、審議検討に付されている間の情報というのは公開しないということが規定されております。これは審議会等の問題が含まれてこようかと思いますけれども、アメリカでは、合議制の行政機関につきましては、情報公開法ではない、別途、サンシャイン法という法律によって規定されております。これを何らかの形でけじめをつけておきませんと、これを根拠に、今審議中であるということを根拠に国民的な審議に付されるべき情報が秘匿されるおそれがあるいは出てくるのではないかという懸念は持ちますけれども、総体としては非常にすぐれた提案がなされておりますので、これに基づいた法制化が一日も早くなされることを望んでおります。
  69. 佐高信

    佐高公述人 行政と立法の緊張した関係とおっしゃいましたけれども、それを保つ意味でも情報公開というのは非常に大きな意味を持つというふうに思います。  つまり、大蔵官僚が勝手を、まあ勝手をやっていると言うと出身の方もいらっしゃるからあれかもしれませんけれども、それを国会の方がチェックするというのはやはり情報公開がキーワード、キーポイントであって、それを、市民オンブズマンのこの間の調査か何かで情報公開度日本一になった宮城県ですが、その県知事の浅野史郎さんはこういうふうに言っているわけですね。料理人がそばを練っている姿を見せるのと同じように、見せることによって客の信頼も得るし、それで自分のつくる方の励みにもなるんだということを言っておりますけれども、まさに私は、情報公開を国会の側が主導権を握ってどんどん進めていって、そして官僚を国民の方へ向かせるというふうにすることをぜひ推進していただきたいというふうに思います。
  70. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ありがとうございます。  植草先生にお話を伺いたいと思います。  景気に対しまして大変厳しい見方を陳述されましたが、先ほどのお話の中で、今、病み上がりで病後の養生をしている段階だ、それで今は消費主導の景気である、こういうことをおっしゃっておりました。確かに消費はわずかに伸びているかゼロ程度でございますが、私ども新聞で承知している限りは、設備投資が大分一けたの終わりぐらいで伸びておりまして、昨年の秋からこの傾向はしばらく続くんじゃないかという判断を読んでおりますが、この点についてどういうふうにお考えになっておられるか。  それともう一つは、景気対策として、決して過去の何回かの景気対策のように十兆円とか十五兆円の財政支援をする必要はない、積極策をとらなくても中立的な支えで済むのではないかと。ここら辺の景気についての御判断も伺いたいと思います。
  71. 植草一秀

    ○植草公述人 お答え申し上げます。  まず、景気の判断でございますが、昨年の日本経済、まだ暦年の経済成長に関する国民経済計算の統計が発表になっておりませんので、推計でございますけれども、昨年大きな変化が生じましたのがやはり個人消費ということで、雇用情勢も有効求人倍率の改善ですとかあるいは所定外労働時間の増加といったような形で所得環境が好転しまして、これを映す形で個人支出を代表する百貨店売り上げですとか、あるいは乗用車の販売、あるいは住宅投資といったものが堅調に転じたのが昨年の状況でございます。  ここへ参りまして、昨年十二月ごろから個人消費の足取りがまたやや重くなっているということが、最近発表になっております統計数値によりまして一部散見されるわけですけれども、これは消費税税率引き上げというのを四月に控えて、それに向けてやや消費心理が後退しているのではないか、あるいは年明け後の株価下落の中で消費心理が後退しているのではないか、こういう懸念もございます。  そういう中で、御質問の設備投資でございますが、昨年九六年度で見まして恐らく実質で六%から七%程度のプラスが確保される、対前年度比で実質六%から七%のプラスということで足元の設備投資はかなり堅調だと思います。これは九七年につきましても、状況の変化によって急速に変動するのはむしろ個人消費の部門で、設備投資はそれなりに堅調は維持するだろうという予想は立つと思います。  ただ問題は、先行きの見通しが暗くなった場合に、設備投資計画が下方修正という形に変化をしてまいりますと、過去の通例でいいますと、景気が再び悪化する際に設備投資計画下方修正という状況が見られておりますので、設備投資の伸び率そのものは堅調であるにしましても、今後設備投資の計画が下方修正になるということであれば、それについては注意が必要ではないかというように思います。  それから、二点目の点でございますが、現在の日本経済、昨年で申しますと、暦年の経済成長率は五年ぶりに三%を超すという形で、長きにわたりました景気低迷から、昨年はかなりはっきりと少し立ち上がるという状況が統計数値からも確認されているわけであります。  この中で、特に財政政策面におきまして中立を維持するといいますのは、対前年度比で見まして財政政策運営が景気にプラスにもマイナスにも影響を与えない、これが中立という意味でございますが、九七年度予算は、こういう中で消費税率の引き上げ、それから特別減税打ち切り、さらに実施時期がやや不透明でありますが医療保険制度改革、さらに公共料金の引き上げ等予定されておりますので、通年度ベースで見ますと九兆円程度国民負担増加が生じるのではないかという、この国民負担増加が大きなデフレ的な要因になります。  麻薬を少し取り除くという場合に、一度に麻薬を取り上げますと患者が禁断症状で死んでしまうということも考えられるわけで、一たんこの水準の上がった財政政策の水準を修正する場合に、少し激変緩和というような対応をとらないと、九六年度から九七年度にかけての財政面からくる景気への圧迫要因が非常に大きい、こういうことでございます。
  72. 葉梨信行

    ○葉梨委員 植草公述人にもう一つ伺いたいと思うのですが、最近の為替動向でございまして、円安に振れておりまして、輸出産業はややいい景況ではないかと思うのですね。これが為替のことですから、また円高に振れるのかさらに円安に行くのかあるいは現在程度で推移するのかによって違いますけれども、今の百二十五円前後の円・ドル相場でしばらく続くとすると、これは景気にプラスに響くのかあるいは中立なのかあるいはマイナスなのか、そこら辺お話を伺いたいと思います。
  73. 植草一秀

    ○植草公述人 お答え申し上げます。  一昨年の四月に一ドル七十九円七十五銭という水準をつけましてから大幅なドル高が生じておりまして、ドルの水準は約五〇%上昇を見ております。この円安につきましては、直接的な影響としましては、輸出サイドでいえば、例えば一ドルの輸出の手取り金額の円換算額が八十円から百二十円になりますので手取り金額の増加、一方輸入サイドは、一ドルの輸入のコストが八十円から百二十円になりますのでこれはコスト増、両者が相殺し合いますとプラス・マイナス・ゼロということになりますが、現在日本では六百億ドル程度輸出が多い。財・サービスで見まして六百億ドル程度の経常収支の黒字を計上しておりますので、この黒字の多い分だけは直接的に円ベースの手取り金額の増加になるわけであります。六百億ドル、これは為替レートによりますが、仮に六兆円程度としますと、五〇%変動が生じますと約三兆円の円換算ベースの名目受取金額の増加になりますが、これが日本のGDPの〇・六、七%ぐらいに当たりますので、この円安によりまして、八十円から百二十円にかけての円安の推移は輸出企業の収益を通じまして景気にプラスの影響を与えてきたということで、ここまでの円安は総体的に見て経済にプラスの影響を与えた、こういうふうに評価できると思います。  ただ今後、今の御質問は為替が横ばいということが前提ですけれども、今後円安が進行してまいりますと、二つ懸念材料があります。日本のインフレ率が既に少しずつ上昇しておりまして、一昨年の十一月から昨年の十一月にかけて消費者物価上昇率が一%ぐらい上昇しております。そうなりますと金利が上がりやすくなる。これがマイナスの影響を与えるということと、それから外国人が日本株に随分投資をしておりますけれども、円安が進行ということになりますとこれの売却に動く動きが予想されるということで、一段の円安はプラスマイナス、差し引きますとマイナスの影響が強くなってくるのではないか。為替が横ばいの場合には影響はおおむねニュートラル、このように考えております。
  74. 葉梨信行

    ○葉梨委員 自由民主党では、税制調査会で今度の予算が上がりましたら早速、資産デフレの根源であります土地の税制それから証券税制等を根本的に議論をして、来年度に備えようということを今考えていることをつけ加えまして、私の質問を終わらせていただきます。三公述人の先生方、ありがとうございました。
  75. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、田中慶秋君。
  76. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、新進党の田中慶秋です。  三人の公述人の先生方には、大変お忙しいところありがとうございました。以下それぞれ、この予算委員会を通じながら、今国民から求められているのは何だろう、やはり景気を少しでもよくしてほしい、これが偽らざる国民の声ではないかな、こんなふうに考えているわけであります。  そこで、今回の予算を見ますと、少なくとも消費税二%のアップ、それから減税はこの三月末で打ち切り、さらには医療費、そして加えて公共料金の値上げ、こういうことがそれぞれ予想されますし、また当然これが九兆円以上の負担増になるであろう、こんなふうにも考えられるわけでありまして、少なくとも今の状態から考えてまいりますと、国民一人当り大体八万円、この程度の増税につながる、こういう予算ではなかろうか、こんなふうに考えられます。  そこで、植草先生にお伺いしたいのは、植草先生は、先ほど来グラフの指数を説明をしていただきながら、それぞれ減税の効果なりあるいは経済対策なり等々を説明をいただいたわけでありますが、この予算の中で今申し上げたようなトリプルが原因になって景気がよくならないのではないかな、こんなふうに私は考えておりますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
  77. 植草一秀

    ○植草公述人 お答え申し上げます。  景気の現状認識につきましては、先ほども少し触れさせていただきましたが、昨年の年末に向けまして日本経済はかなり堅調な推移をたどった、こういう認識でございます。  それで、昨年第四・四半期は、とりわけ消費税引き上げに伴う駆け込み需要的な、特に住宅投資におきましては住宅着工件数が高水準になるという形で生産をかなり牽引したということで、現在発表になっております昨年第四・四半期からことしの年初あたりにかけての経済指標は非常に強い、これは政府の説明に対しても余り違和感は感じておりません。  ただ、問題はむしろ九七年度ということでございまして、今も御指摘のございました、九七年度予算国民負担の九兆円程度増加を含む予算になっているということを踏まえますと、非常に強いマイナスの影響が特に個人消費を中心にあらわれるのではないかということが懸念されるわけであります。  米国の景気が過去四、五年にわたりまして非常に堅調な推移を示しておりますのは、景気拡大が消費主導パターンになっているということが大きな背景になっております。消費主導の景気は、消費拡大が生産増大をもたらし、その生産増大が所得の増加をもたらすことによりまして所得と消費と生産の好循環が続く、こういうことで、消費主導の景気拡大路線に入りますとそれが持続する、こういう傾向があるわけですが、今回日本では、昨年からことしにかけまして消費主導の景気拡大軌道が生まれかかっているわけですけれども、その肝心かなめの消費のところを直撃する内容が今回の予算に盛り込まれておりますので、その影響が相当強く出るのではないか。  それで、この九兆円の負担増加がどの程度成長率を押し下げるかということにつきましては、専門的に言いますと、例えば限界消費性向がどの程度であるかといったことに左右されるわけですが、同時に無視できない点は心理的な影響でありまして、消費心理が後退をしますと、通常想定される以上のマイナス効果もあらわれるわけであります。  前回八九年に消費税導入をした時点におきましては、バブル景気のただ中での消費税導入でありましたので影響は比較的軽微にとどまったと思われますが、今回は非常に景気低迷が持続をして、しかもまだ不良債権問題という問題が底流に横たわっておりますし、年明け後株価も下落をしているということを考えますと、かなり強いマイナスの影響が出てくるのではないかということで、成長率でいいますと、こういう政策がなかりし場合に比べてやはり二%程度成長率を落とすのではないか、このように考えております。
  78. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先生の先ほどの説明の中で、あるいはまた今政府がよく説明されるのは、徐々に景気が回復しつつある、こんな話、そして今の設備投資の問題、こういうことが出てくるわけでありますけれども、設備投資は少なくとも景気だけなのでしょうか。私は違うと思う。  長い間景気が悪かった、しかし、今の経済に即応するためにはどうしても設備投資をしないと、それぞれ人的な問題、人件費が高い時代ですから、設備投資をこういう形の中で買いかえを含めてやっているのではないかな、こんなふうに思いますし、先ほどのお話にもありますように、四月一日から消費税導入されるということでそれぞれ先行投資をしている部分、こういう問題を加味しておりますし、こういう一連のことを考えてみますと、この景気対策、徐々に回復しているという、よく説明されていることに、少なくとも一般の、先ほどのお話の株価の種類の中でも、マイナス成長といいますか、こういうものが非常に多いわけでありまして、こういうことから考えてみますと、徐々に回復しつつあるというこの認識は間違っているのではないかなと私は思いますが、いかがでしょう。
  79. 植草一秀

    ○植草公述人 お答え申し上げます。  政府景気判断につきましては、これは景気基準日付ということが最終的に政府の公式見解としての景気推移を示す事項になっているわけでありますけれども、これによりますと、政府は、九三年の十月以降景気は回復局面に入っている、こういうことを公式見解としております。そうなりますと、三年半にわたりまして既に景気回復過程に入っているということでありますけれども、実際にいろいろな形で景気の感触というものを伺ってみますと、三年半も景気回復しているという印象を持っている日本人は極めて少ないというのが実情ではないかというように思います。  どこに問題があるかといいますと、一つは、政府景気判断が主に大企業の業況判断に依存する程度が強いという点であります。  実際、日銀短観におきます最も注目される指標であります大企業の業況判断指数を見ますと、九三年の第四・四半期以降緩やかに上昇を続けているというのは事実でございます。ここに重きを置きまして景気判断をしますと、九三年の第四・四半期以降景気は緩やかに回復を続けているということになりますが、今回の景気回復局面におきます一つの特徴は、大企業が先行的にリストラ策を進める一方で、そのしわ寄せをかなり中小企業に与えている。したがいまして、中小企業の業況判断を見ますとかなり底ばいに近い状態ということでございまして、従来型の大企業の業況判断をもとに景気を判断するという手法そのものに問題が生じているのではないか、こういうふうに私は思います。  現実に、日本の実質GDP成長率、これが経済全体の推移を示す最も的確な指標かと思いますが、歴年の経済成長率で見ますと、一九九二年から九五年の四年間にわたりまして〇・一%から一・四%の数字が並んでおります。つまり、現在の日本の成長能力を三%程度考えますと、九二年から九五年いっぱいは実質的に不況という状態が続いたのではないか。こういう中で、昨年五年ぶりに三%を超す成長を実現したということでありますので、こういう意味では、実態に即して景気の動きというのを考えますと、景気が緩やかな回復に入ったのは昨年以降というのが実情に近いというように思います。  それから、設備投資につきましては、バブル崩壊に伴いまして長らくストック調整というのを行って設備投資を減少させてまいりましたが、そのストック調整がおおむね一巡して、能力増強ですとかあるいは更新投資といった投資が出始めたということで、これは少し長期的な循環に基づくプラスへの転換、こういうように理解しております。
  80. 田中慶秋

    田中(慶)委員 特に今、景気をよくするための漢方薬といいますか特効薬といいますか、そのことについて、午前中の公述の関係でも、減税が特効薬であるという問題、消費が特効薬であるという問題、こういうことを強く述べられておりました。私もそう思っておりますけれども、今の予算のようにトリプルでそれぞれ負担増になるようなことであっては、景気は決して今年度よくならないのではないかという心配を私はしております。  その特効薬は、二兆円減税を少なくともこれからも継続する、あるいはまた医療費や公共料金の値上げをストップさせる。かつて羽田政権のときに、公共料金は値上げをストップさせる、三年間据え置きだ、こういうことで期待をされましたけれども、この消費税アップに連動してもう既に公共料金の値上げが検討されているわけでありますから、こういうことを考えてみますと、私は、景気というものが非常に先行き心配になってきておりますので、そのことを含めて、我々政治家もそのことに力を入れてやっていかなければいけないわけですけれども、先生の考え方といいますか御見識をお伺いしたいと思います。
  81. 植草一秀

    ○植草公述人 お答え申し上げます。  言葉の使い方によりましていろいろな誤解が生じゃすいわけでありますが、今年度から来年度にかけての政策運営ということで、年度間の変化ということで申しますと、現在予定されておりますのは、消費税税率の二%引き上げ、これが消費税の増税になります。それから、所得税につきましては、九四年度に実施されました減税のうち二兆円部分特別減税というふうに呼んでおるわけでありますけれども、これを打ち切るということは、今年度から来年度にかけての関係でいいますと二兆円の所得税の増税という形になるわけで、それ以外に、医療保険制度改革に伴う負担増加、公共料金の引き上げに伴う負担増加ということが九兆円の負担増という形で言われるわけであります。  私は、ここで政策が積極策をとる必要はないということを先ほども申したわけでありますが、私のような主張をしますと、その言葉あやをとってケインジアンだというような批判が生じやすいわけでありますが、現実には、私が現在望ましいと考える政策は、今年度から来年度にかけて政策が中立をできるだけ維持するのが望ましいということでありまして、そういう意味では、特別減税継続するというのは、減税実施するということではなしに、いわゆる増税をしないというのが正しい表現になります。  それから、増税につきましては、今の日本経済の状況を考えますと、消費主導の景気がやっと動き出すという局面にありますので、極めて消費動向が重要な局面でありますから、その消費を直撃するおそれの高い消費税税率引き上げにつきましては、少し慎重な対処をした方が長い目でプラスが多いのではないかということで、私は昨年以来、消費税につきましては、ことしの四月と来年の四月一%ずつ二段階実施といったような弾力的な対応があってもいいのではないか、こういうことを申しておりました。少なくとも、消費税税率を二%引き上げるということであれば、所得税につきましては二兆円の増税を見送る、さらに医療保険制度負担増加は少し時期を先にずらす、こういう対応が必要ではないかと思います。  そういう意味で、現実にとられている政策は、言ってみれば非常に強い負のケインズ政策でありまして、現在の日本の状況を考えますと、まだ負のケインズ政策をとる局面ではない、まだ病み上がりという状況でありますから、追加的な積極策をとる必要は全くないと思いますが、極端なデフレ政策はやや緩和して、政策のスタンスを少し中立に戻すことが国民の利益にかなうのではないかなというように考えております。
  82. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、今植草先生のお話で、トリプル負担増というものはやはり日本の経済には今の段階で好ましくない。やはり何でも極端から極端というのはよくないわけでありますから、そういう点で先生のお話に大変感銘をしていたところであります。  そこで、片岡先生にお伺いしたいわけでありますけれども、先ほど来、行革のお話をされておりました。橋本内閣も火だるまとなってというお話が出るわけでありますけれども、火だるまになってという声は聞きますけれども、その現象が見られない。極端なことを言えば、第二次臨調、土光臨調とも言われる、その段階でもう既に今実施をすべきものはある程度メニューが決まっているわけでありますから、やる気があれば今できるだろう、こんなふうに考えているわけでありますけれども、先生の御認識をお伺いしたいと思います。
  83. 片岡寛光

    ○片岡公述人 日本の行政改革は二十年来遅々として進んでいないのは、皆さん御承知のとおりでございます。やはりここでやる決意をして進まないと、これは将来いつまでたっても実現しないというふうに私は思っております。  ただ、その場合、一体どういう社会を実現していくかということが大事なわけでございます。やはり活力のある社会であることは大事でございますけれども、同時に、正義、公正というのが失われない社会を実現するための行政改革というものを今考えていくべきだというふうに思っております。
  84. 田中慶秋

    田中(慶)委員 行政というのは、特に時の変化に敏感に対応する、こういうふうに言われているわけであります。しかし、今財政その他のことを考えてみても、敏感に対応しているかどうか、私はいささか疑問を持っているわけであります。  確かに、特殊法人、外郭団体を含めてやろうとしておりますが、加藤寛先生は税調の責任者でありましたけれども、加藤寛先生のグループがまとめた行政改革、「郵政三事業・九特殊法人 民営化なら収入二十三兆円」増というような、こんな見出しの新聞もありますけれども、先生は、この新聞、ごらんになっていただいていると思いますが、これらに対して認識、いかがでしょう。
  85. 片岡寛光

    ○片岡公述人 今民営化を推進するとすれば、郵政というのが一つ残っているわけでございます。  ただ、アメリカその他の国によりますと、民営化の範囲というのはそれにとどまりませんで、刑務所から造幣局まで民営化しているというのがアメリカないしはヨーロッパの実情でございますので、その他にもいろいろ範囲はあろうかと思いますけれども、当面、三公社が民営化されました。今残っているのは、郵政が問題になろうかというように思います。
  86. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先ほど来申し上げさせていただいているのは、私は、金融面だけを、あるいは税だけを今、今回のように消費税やあるいは減税や、あるいはそれぞれの負担増になるようなことを政府は、取れるところから取ろうという、こんな発想でおやりになっているような気がどうしてもしてならないわけであります。例えば、特殊法人、外郭団体等々を含めて公益法人が七千二百もあるわけです。そこの中に出てきている補助金が二兆三千億もあるわけでありまして、小泉郵政大臣は若干そういう点も含めてこれから補助金を見直すというふうに言われておりますけれども、こういう補助金は、トータルとして厳しい経済の中でもっと積極的に、日本の行革は何かゆっくりした行革だと言われておりますけれども、そうじゃない、時代がこれだけスピードがあるのですから、やはり急いでやらなきゃいけないのじゃないか、こんなふうに思っているのですけれども、先生の御意見、いかがでございましょう。
  87. 片岡寛光

    ○片岡公述人 そういった問題につきましては、早急にやらなければいけないというふうに思います。  しかし、補助金等の構造というのが、財政投融資を含めまして、これが縦割りになっております。財政投融資ないしはそういった問題が縦割りであるというのはそれなりの理由があるわけですけれども、そういう構造そのものを変えていきまして、弾力的な資金の運用というものを図っていく必要もあろうかというふうに思います。
  88. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先ほど先生が、中央、地方を含めて大体公務員は四百五十一万、こう述べられているわけでありますけれども、特殊法人、外郭団体、公益法人を初めとするOBを含めるとこの約倍近い数字になるわけですけれども、そのことはカウントに入れておりませんか。
  89. 片岡寛光

    ○片岡公述人 おりません。その数字には入っていません。
  90. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先ほど全体的な人口比率で三・七%と言われておりますけれども、それを含めますと約倍近くになるわけでありまして、そういう点では、今の、世界から見た日本の公務員の比率が低いという、こういう形にはならぬと思うのです。やはりトータルとして、今問題になっておる特殊法人、外郭団体等々を含めてまいりますと数字が大体倍近くなるわけでありますから、そういう点を含めて、今の日本の行革というものをより推進していかなければいけない、こんなふうに私は考えております。  そこで、時間の関係もございますが、佐高先生にお伺いしたいわけであります。  先生は、今回の公述人として恐らく社民党の御推薦できょうは出ておられるのじゃないかなと思いますが、いかがですか。――そのとおりですね。  実は、行革あるいは予算等々を含めて、先ほど先生がいろいろと御説明をされているわけでありますけれども、先生の評価として、今の社民党さんは先生の意向を十分反映されていると思いますか。
  91. 深谷隆司

    深谷委員長 田中慶秋君に御注意申し上げますが、適切な御質問をぜひひとつ続けていただきたいと思います。  田中慶秋君。
  92. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それじゃ、その部分は削除してもらって結構でございます。  そこで、先ほどテリー伊藤さんのお話が出ました。そして、三人の大蔵官僚がおられる、こういう説明をいただいたわけでありますが、もし差し支えなければ名前を教えていただけませんか。
  93. 佐高信

    佐高公述人 先ほど御説明しましたように、匿名で書いてありまして、実名はまだわかっておりません。ただいろいろ、垂れ込みじゃなくて、そういう話は少しはありますけれども、それはここで言うわけにはまいりません。
  94. 田中慶秋

    田中(慶)委員 実は今政府が、官僚の不祥事以来、倫理規程を一生懸命つくろうとして、あるいはつくっておるわけでありますけれども、そういう中で、倫理規程というもので自分たちの内部で内部を取り締まる、こういうことは非常に難しいだろう。私ども、公務員の倫理法という法律をつくって、それは公務員だけではなく政治家も、あるいは裁判官も、あるいは特殊法人、みなし公務員というところまでの範囲を広げて今やっているところでございまして、そういう点を考えてみますと、先生が先ほど、まさしく住専やいろんなことを御指摘をされて、政治家も役人もどちらかというと同じようなものだというような説明をされていたわけでありますけれども、しかし、今日本に公務員倫理法というものが私は必要じゃないかと思いますけれども、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  95. 佐高信

    佐高公述人 全くお説のとおりだと思います。  それで、若い官僚の方は、むしろそういうのをつくってもらった方がいい、ところが絵画とかなんとかもらっている人たちは、それは倫理規程でいいというふうなことを言っているわけです。倫理法がどうしてできないのか、私は不思議でなりません。国民もみんなそう思っていると思います。
  96. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、今のような政治を初めとする官僚の信頼を回復するためには倫理法制定が一番だ、こんなふうに考えております。そんなことを含めながら、私どもも今回の議会中にそういう問題を含めてやらせていただきたい、こんなふうに思っているわけであります。  関連してお伺いしたいのは、今の日本の全体の中で、高齢化、少子化、産業の空洞化、こういうことがよく言われるわけでありまして、その中で、少子化に対する取り組みが財政的あるいは予算的に見ても非常に薄いわけでありますけれども、客観的に見て、この問題について植草先生、若干商売外かもわかりませんけれども、見解があったらお聞かせをいただきたいと思います。
  97. 植草一秀

    ○植草公述人 日本の二十一世紀に入ってからの経済考えますと、少子化という問題は極めて重大な問題になってくると思います。やはり子供をふやすというインセンティブが与えられる施策が必要だというふうに考えるわけでありますが、そういう意味では二つ申し上げておきたいと思います。  一つは、将来の日本経済に対する明るい展望が持てるかどうかというところがまず第一に重要でありまして、現在のような非常に閉塞感の強い経済、社会の状況を見ますと、そういうインセンティブがわいてこない。つまり、そのためにどういう施策が望ましいかということになりますと、いろいろと議論もあるところだと思いますが、やはり経済安定化させ、二十一世紀にある程度発展のできる見通しが立つということが一つ重要だと思います。  それからもう一点は、今後の日本の例えば労働力不足というようなことを考えますと、女性の労働市場への参入ということを促進していくことも重要だと思いますが、女性が社会進出をする場合に、子供を持って社会進出をするということが現実問題としては非常に制度として整っていない、こういう側面が強いと思いますので、これは政策的に女性の社会進出を促し、かつ、子育てができるような取り組みというのが求められているのではないかなというように思います。
  98. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今の高齢化社会の負担率、年金を一つとっても、世帯当たり二・一というのが最低基準の負担率、それから今一・四三に下がっているわけであります。少子化の時代、そして産業の空洞化ということになりますと、日本の将来の経済の見通しというのは大変厳しくなってくるんじゃないかな、こんなふうに考えておるわけでありまして、そういう点では、今回の予算等々を含めて考えたときに、今俗に言われている、これらの問題に対する具体的な対策が余り見られていない、このように思いますけれども、もしょかつたら片岡先生、この辺、御見識ありませんか。
  99. 片岡寛光

    ○片岡公述人 老齢化の問題と少子化の問題は結びついているわけでございますけれども、一つは、老齢人口の数え方というものがちょっと低過ぎるというか、老人でも働いておればそれでよろしいわけでございますから、分母を大きくしていくという方策が一つ考えられる。もちろんそれには老人のための雇用ということが重要な問題になってまいりますけれども、そういう方の配慮もまた少子化に対する対応と同時に行われるべきだというふうに考えております。
  100. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  101. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、海江田万里君。
  102. 海江田万里

    ○海江田委員 まずお三人に、きょうはお忙しいところをお越しいただきましてありがとうございました。それから、貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。  私は、時間も限られておりますが、その中で幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず、植草公述人に対する質問でございますが、先ほど葉梨委員の質問あるいは今の田中委員の質問で、最初に公述をされたデフレ政策を中立の方向に戻すという中身が大体理解できました。一つが消費税税率を何とかできないかということで、二番目が減税打ち切りを何とかできないか、三番目が医療費負担増を何とかできないか、それから四番目が公共料金のアップを何とかできないかということでございます。  特に消費税税率アップの問題と、それから減税継続の問題ですが、技術的にといいますか、あるいはこの国会での議論の流れからいくと、これはもう消費税のことしの四月一日からの税率アップというのは既に決まってしまったわけで、今政治的な焦点になっておりますのは、まさに減税をどうするかというところが政治的な焦点ですけれども、そういう国会の法律の決まりだとかそういうことを抜きにしまして、今の景気対策上、特に消費税税率を据え置く、あるいは一%ごとにすることと、あるいは減税継続をすることと、どちらかしか選ばなきゃいけないという場合は、一体どちらの方が効果があるとお思いになりますか。
  103. 植草一秀

    ○植草公述人 大変難しい御質問でありますけれども、長期的に考えてみた場合に、日本では、これはいろいろな政策努力をすべて終えた後の段階の話でありますけれども、活力ある経済社会をつくるという視点から考えれば、直間比率見直しということが必要だということで、そういう意味では、行く行くは消費税税率が上がり、そしてその分所得税の減税が行われる、こういう大きな方向感に対して私は肯定的に考えているわけでありますが、そういう文脈から考えますと、この減税継続して、そしてこれを恒久減税化する、制度減税とするということが望ましいというように思います。
  104. 海江田万里

    ○海江田委員 実は、私もそういう考え方なのですが、ただ、消費税の直間比率を見直すという視点が、どうも今回の総理の施政方針演説あるいは大蔵大臣の財政演説、よく読んでみたのですけれども、一言も書いてないのですね。私は非常におかしなことだなと思いまして、その問題は今度当委員会でもできたら、時間があったらやりたいと思っているのですけれども、そういう直間比率見直しということが念頭になくて消費税を上げているとすれば、これはちょっと国民に、しかもかなり低金利で苦しんでおる低所得の人なんかにかなりの負担を強いることになるのじゃないだろうか、そんな意見を実は持っているところであります。  それからもう一つ、植草公述人にお尋ねをしたいのは、財政赤字の縮小よりも支出構造を変えることに意味があるのじゃないだろうかという趣旨の公述がございましたけれども、私は、これは私というより民主党でございますけれども、減税ももちろん反対でないのですけれども、その前にいわゆる公共事業のむだを何とかしなければいけないということを言っているのです。この公共事業のむだを何とかしなければいけないということは、一つは確かに支出の構造を変えるということでもあるのですけれども、それと同時に、やはり財政赤字の縮小ということも考えているのですね。  財政赤字の縮小というのは、経済的に考えますと、一つは、財政赤字を放置しますと、もちろんかなり遠い将来の世代にツケ回しをするという大きな問題がありますけれども、もう少し中期的に見ますと、やはり公債の大量発行ということになって金利を押し上げることになるのじゃないだろうか。その意味では、財政赤字を縮小することになると、非常にストレートな言い方をすれば金利低下ですけれども、今はなかなか今以上に下がるということはないでしょうけれども、少なくとも金利が上がっていく圧力を減少することにはなるのじゃないだろうかという点。  それからもう一つは、やはり為替の水準がファンダメンタルズに比較的近いところで、さっきおっしゃられた百二十五円ぐらいが妥当かどうか、これはいろいろな議論がありますけれども、為替の相場の安定ということにもつながってきて、そういう意味では景気に対する効果というのはそれなりにあるのじゃないだろうかということで、財政赤字の縮小より支出の構造を変えることに意味があるということをおっしゃるよりも、私はむしろ同時並行的にということの方が何となく私自身の考えにふっと落ちるものですから、そのあたりをもう少しお聞かせいただけたらと思います。
  105. 植草一秀

    ○植草公述人 財政の問題につきましては、財政の構造をどうするかという問題と、それから景気との関連において財政政策をどう運営するか、こういう二つの視点が必要かというふうに思います。  景気に与える影響でいいますと、これも経済学の立場によって多少見方は違いますけれども、端的に言えば、財政赤字を拡大させる政策は景気にプラスの効果を与え、財政赤字を縮小させる政策は景気にマイナスの影響を与える、こういう一般化ができるわけでありまして、その意味からいいますと、現在の日本の局面においては、財政赤字の縮小を余り急ぎ過ぎるということは、景気安定化が最優先だという前提を置きますと、余り望ましい政策でないということになります。  では、これは景気安定化が最優先課題かどうかというところに論議が生じるわけですけれども、先ほどのちょっと繰り返しになりますが、九七年の場合は、ここで景気を悪化させてそれが株価下落を招く場合に、金融不安に対するセーフティーネットがまだ整備されていないという状況を考えますと、事態が最悪のコースをたどる場合においては金融恐慌といったような大惨事を引き起こす危険もあるわけで、危機管理という点からいいますと、この起こり得る大きなリスクを未然に防止するという意味では景気を悪化させる政策は極めて危険が大きい。そういう意味で私は、金融市場に対するセーフティーネットが整備されていれば話は別になりますが、その整備がおくれているという前提を踏まえますと、ここは景気の安定が優先課題であって、財政赤字の縮小は少し先送りした方が適切だ、こういう判断であります。  それが景気との関連でありますけれども、財政の構造という面でいいますと、やはりこれは経済学の立場によってまた話が変わりますが、最も古典派的な経済学の立場をとる場合には、例えば財政赤字は大きくても小さくても、将来それが自分たち負担だということを考えれば経済には影響を与えない、極端に言いますと、財政赤字は大きくても小さくても全く影響はないという極端な立場もあります。ただ、その場合に問題にするのは政府支出の効率性ということで、政府が支出する支出の対象が非常にむだなものにお金が使われていれば、経済全体としての資源をむだ遣いするということになって経済全体の効率を下げる。  ですから、こういう最も合理的な考えをベースに置いた経済学においては支出の中身こそ問題で、そういう意味では、公共投資におきまして現段階でも必要な公共投資はあると私は思います。また、拡大していい公共投資もあると思いますが、現状の公共投資においては、だれも通らない道路とか船の着かない港とか、こういうところにお金が行き過ぎているというところで、そういう意味では支出の構造を見直すことは重要だと思います。  為替への影響でございますが、財政赤字が拡大するという政策は金利に一応上昇圧力を与えますので、現在、日本の状況では一段の円安の進行をとめるということが求められているとすれば、財政赤字を少し拡大させるといいますか、財政赤字の縮小を緩和するという政策は円安の是正にも、むしろこちらの方が整合的である、こういうふうに思います。
  106. 海江田万里

    ○海江田委員 もう少し議論したいのですが、時間もありませんので佐高公述人にお尋ねをしますが、「骸骨を乞ふ」ということで、役人になることはつらいことであるということですが、政治家になるのもつらいことだという認識を持っております。  佐高公述人にぜひお尋ねをしたいのは、今当委員会では一九九七年度の本予算審議をしているところでございますが、恐らく佐高公述人もこの本予算につきましては思うところがあると思いますので、本予算を私どもこれからもう間もなく、このきょうの意見を参考にさせていただいて、そして恐らく来週になるのか再来週になるのか、締めくくりの総括質問をやって採決をしなければいけませんので、佐高公述人の忌憚のない、歯にきぬ着せぬ本予算に対する御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 佐高信

    佐高公述人 さっき何か社民党推薦で来ているのだからどうのこうのという話がありましたけれども、海江田委員はそういうことは……。やはり国民の方は、行革、行革、つまり消費税のアップも行革があっての消費税アップというふうにみんな思っているわけですね。ところが、行革はほとんど入り口でいきなりつまずいてしまって消費税だけはアップするというのでは、本当に、やらずぶったくりという言葉がありますけれども、そういう感じで思っておりますので、私だったらやはり賛成はできないだろうということです。
  108. 海江田万里

    ○海江田委員 それでは、片岡公述人もお越しいただきまして、本予算に対するお考えをちょっとまだ述べておられないようですので、今の佐高公述人のように明快に短くひとつお願いいたしたいと思います。
  109. 片岡寛光

    ○片岡公述人 私は、きょうは自由民主党の方からのお招きで出席いたしておりまして、予算そのものについてトータルがどうのこうのというのは、ちょっと今申し上げる立場にないというふうに私は思っております。  ただ、予算をゼロベースで編成すればいいというふうな議論が昨今なされておりますけれども、これは、地方公共団体の場合に可能なこともございますけれども、国のレベルで、大変な計数を調整しながら予算をつくっていかなければならないということを前提にいたしますと、ゼロベース予算というのはまずあり得ないというふうに私は考えております。ゼロベースでも、カーター大統領が唱えたゼロベースというのは若干違っておりまして、これは、いろいろ予算の額を変動させて、それによって最も効果が上がる額を試行錯誤的に発見していくという方法でございまして、その方が若干現実性があるわけでございますけれども、しかしそれも実際にはつぶれたという経過がございます。  そういうふうに考えますと、やはり予算というのは、積み重ね方式で、そして前年度と変わる部分について審議を集中してやっていくというのが、人間の限られた合理性の中で可能な方法であるというふうに考えております。
  110. 海江田万里

    ○海江田委員 どうもありがとうございました。
  111. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、穀田恵二君。
  112. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田です。私の持ち時間も少ないものですから、皆さんにまとめて御質問を申し上げますので、順番にお答えいただければと思っております。  本当に貴重な御意見をありがとうございました。私は午前中にも申し上げたのですが、今回の予算に対して、実は審議前から世論調査では七一%の方々が、これは修正すべきだ、こういう意見があった。これも珍しいぐらいの実態なんです。その上に、ついせんだっての世論調査では、審議されている予算案では税金が有効に使われないと答えている方が七割いるのです。さらに、きのうでしたかの世論調査によりますと、このままの予算でいいという方は一一%にしかすぎないということで、どの世論調査をとってもこういうことなんです。こんな中で、どうしたらいいかという御意見を、きのうの世論調査を見ていますと、一番多いのはやはり、消費税を何とかしろというのが五割以上なんです。ですから、私はここが大事じゃないかなと改めて思っています。  そこで、先ほど、もう決まったのだからという話がありましたけれども、実は国会というところはけったいなところでして、こう言うと怒られますけれども、たった一日しか実は臨時国会では消費税問題の集中審議をやっていないのです。ですから、もう一度議論しょうじゃないかということを改めて今提起されている現状です。  そんな中で、やはり組み替え、修正、こういったことが私は大事じゃないかと。特に、皆さんからございましたように、公共事業のお金というのは非常にむだが多い。釣り堀の話も出ました、それから港湾の話も出ましたし、農道空港の話も私もしたがったのですが、そういったことからしますと、聖域にしないという答弁を総理大臣はしているわけですから、見直すということが必要だ。そうすると、組み替えというのは当然じゃないかと思うのです。この点について、お三方からお願いしたいのが一つです。  二つ目に、それぞれの方々に質問したいのですが、片岡公述人にお願いしたいのは、規制緩和の話がございました。これが雇用にもたらす影響をどうお考えかということが一点です。  それから植草公述人には、公述人は日経などでも、消費税率の引き上げ前提条件が満たされていない、先ほども佐高さんも、行政改革だと言って、やらずぼったくりだ、こういう話がありましたけれども、そういうことがやられていない現状の中で、午前中にも議論になったのですが、民間調査機関の予測では、九七年度経済に与える影響は、やはり消費税引き上げの方が大きいわけです、特別減税廃止よりも。私は、やはりこの点が一番大事じゃないかなと思います。だから実際、消費税賛成の方々も、今なぜやるのか、永久にやめろとは言ってないのだ、今やるのがまずいのじゃないかと言っておられるので、その辺について再度お聞きしたいと思います。  佐高公述人にお聞きしたいのは、先ほど新しい本の御紹介の中に書かれてあることを含めてお話があったように思ったのですが、特に公共事業に関連して、新しい著作では、国民の利益に反するものについては撤退したり再考したりするというのが公僕としての官庁の筋である、こういうふうに述べられておられました。私は、全くそのとおりだと思うのですが、実は、ゼネコン浪費型の公共事業だとか軍事費だとか大企業優遇税制、そういったところにメスを入れるべきだということも私どもは言っておりますので、その辺の御意見をお聞かせ願えればというふうに思っております。
  113. 片岡寛光

    ○片岡公述人 それでは、消費税の問題から、私の個人的な意見を申し上げさせていただきます。  行政改革というのは、これは世界のどこの国でも大体、パブリックチョイスという、公共選択の理論というのを前提として行っております。これは、個人の選択の自由を極大化するという考え方でございます。この考え方に基づきますと、消費税はあしき税ということになります。と申しますのは、財政錯覚、要するに、国民が税金を払っているという意識がなくて税金を納めさせられるたぐいの税金でございますから、これはあしき税というふうになると思います。したがいまして、パブリックチョイスの立場に立つ人が消費税を主張するのは、これは論理矛盾ではなかろうかというふうに私は思っております。  それから、規制緩和が雇用創出にどのように結びつくかということでございますけれども、私は、必ずしも即効性は期待できない。これは長期に影響が出てくるもの。例えば、地ビールが出ましても、地ビールの生産が大手メーカーによる生産量を食っている限りは、これは別にプラスの効果はないわけですね。新しいビールに対する需要を創出しない限り、経済効果は発生しないわけです。そういう点がちょっと誤解されていると思います。
  114. 植草一秀

    ○植草公述人 まず初めに、予算の組み替えといったようなことについてでございますが、私は、きょうも意見陳述させていただいておりますが、こうした意見を述べますと、現状での例えば新進党の主張と近いということがありますが、そういう形で、この問題が、経済政策面として何が最も適正かということよりは、国会の場におきまして政治上の問題として取り扱われて、私は、政治的には全く中立の立場でありますから、どの党がいいとかどの党が悪いという立場ではないわけですけれども、そういう経済政策をどうするかという問題と、政治上の争いというものが合わさって、どちらかといえば国会の場においては政治上の問題として経済政策が扱われていることに問題があるというふうにも思うわけです。そういう意味では、私は、政策の内容としていえば、現在のこの金融問題というのを抱えた日本経済の状況、それから先行き景気が悪くなるであろうという蓋然性の高さといったことを考えますと、予算は修正した方が長い目で見て日本国民に多くのプラスを与えるというように考えております。  ただ、現実にいろいろと国会の場での運営を見ている限りでは、その可能性はかなり乏しいのではないかというのは私の単なる予想でありますけれども、そういうことであります。  消費税につきましては、消費税税率引き上げについては、九四年度に一応は決めたことでありますが、これを決めました村山政権は、その前提条件として行政改革の断行、これを政権の至上命題とする、こういうことを言っていたわけですが、最終的にはいろいろな議論の末、日本輸出入銀行と海外経済協力基金の統合という形で、大山鳴動してネズミ一匹というような結果になっているわけで、そういう意味では、この消費税率引き上げのときの前提である行政改革が行われていない。  それから、実施時期につきましてやや弾力的な規定になっておりましたのは、経済の状況を見た上で、景気に心配がないかどうかということを判断した上で最終決定をするというのが、当時の実施時期を少し弾力的にしていた背景でありますが、昨年、この消費税率の引き上げの決定に係る過程では、十分景気あるいは金融問題との関連が論じられたというふうに、はたから見ておりましては見えなかったということでありまして、そういう意味では、消費税率引き上げ前提条件が整っていないのじゃないか。  さらに申しますと、財政赤字をどうするかというのは重要な問題でありますが、先ほども私が申しました支出構造にメスを入れるということがより重要だという視点に立ちますと、むしろ財政赤字が大きい方が、それがてことなって支出削減に力が入る。そういう意味では、赤字国債あるいは財政赤字の有効活用というような発想の仕方も重要ではないかなというふうに思います。
  115. 佐高信

    佐高公述人 消費税に関連してもそうですけれども、政治家の言葉というものがすごく軽んじられているという感じがします。  この間一番びっくりしたのは、船田元という人、名前を出してあれかもしれませんけれども、月刊誌が出て、月刊誌というのは出るまで二週間ぐらいの差があるわけですね。そうすると、その月刊誌では、自民党には絶対戻らないんだと断言しているのが、出たときには戻っていたという話ですね。これで政治家に対する信頼というのは増すのかどうか、根本問題だというふうに思います。それから、消費税の問題でも、党議拘束に反しても反対するんだというふうに勇ましいことを述べた方がくるりとひっくり返るというのですね。過ちを改むるにはばかることなかれという言葉がありますけれども、はばかりがなさ過ぎるという感じがいたします。  それで、組み替えというのはもちろんできればそれにこしたことはないということですけれども、公共事業の問題では、県とか自治体がやるから公共事業なんだということではないということを、やはり私は何かすごく惰性でやっているという感じがするわけですね。長良川の河口堰の問題でも、あるいは中海の干拓の問題でも、一方で休耕だと言っているのに干拓する。整合性のあることをきちっとやらないと、与党を含めて今政治家に焼け火ばしをもう一回握ってもらわなければならぬというのを、この間保守的な人から聞いて私はびっくりしましたけれども、それだけ国民の怒りは高まっているということだと思いますし、その辺のところをぜひ酌み取ってやっていただきたいというふうに思います。
  116. 穀田恵二

    ○穀田委員 終わります。
  117. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、北沢清功君。
  118. 北沢清功

    ○北沢委員 社民党を代表しまして、北沢清功でございます。  きょうは、お三人の方から非常に貴重な御意見をいただいて、非常に私も参考になりました。私は、先ほど社民党推薦云々という言葉がございましたが、実は、きょうばいろいろの面で尊敬すべき御意見をいただいておりまして、そのことをやはり今後の審議の中で十二分に生かしてまいりたいと思っております。  特に、今回のこの政治改革の発足というのは、いわゆるグローバルな日本の経済、それから経済を活性化をするということ、そのほかにやはり重要なことは、政官財の汚職の現状というものが、政治不信という形でもう国民にとってやむにやまれない一つの動機になっているのではないか。しかし、中身は、なかなか国民の皆さんと何か意思が通じないような感じがいたしまして、これも私も非常に反省をしていかなければならぬのではないか、そう思っております。  特に、今政治家の言葉が大事だと言われましたが、今から四年前ですか、あの細川内閣のときに、夜中に起きて、小沢さんとお二方で、私ども与党でしたけれども、全然知らないところで決めたことであろうと思いますが、お二方で、七%にアップということが突然出されました。  それから、今回の総選挙の中で、新進党の一つの、契約という表現ですから、公約以上に強い存在だと私は思いますが、ことしから、もし政権がとれれば十八兆を軽減をする、これは消費税も含めて。そういう形と、もう一つは、これはいいことなのですが、大胆な行政改革や規制緩和によって二十兆の予算を軽減するということが表明をされました。これは私は、非常に内部でも高市議員が離党をするという一つの契機になったと言われるくらい、恐らくこの選挙の公約というか契約ですから、非常に重みがあるわけでございまして、やはりこの内容をもっと精細に出すことが私は非常に大事じゃないかと思います。  それからもう一つ大事なことは、今、植草先生からは、財政再建五百二十一兆という中で、景気をどういうふうに浮揚するかが考えられなければならないかという、貴重な御意見であろうと私は思います。これはこれとして私は受けとめてまいりたいと思います。しかし、大勢は景気浮揚、そしていろいろの問題がありますが、最近は、行政改革という中で、いわゆる公共事業見直しということが、後半に来まして、ここへ来まして相当クローズアップされまして、これは私は、予算編成上非常に問題があるわけでありまして、容易にできるかどうかということは別として、やはりそのことも将来の財政再建も含めて考えていかなければいけないと思うし、国民負担を軽減するために私どもも真剣な努力をしていかなければいけない、そう思って、論議をこれからも継続していきたいと思います。  特に私は、片岡先生の述べられましたことは非常に重要なことであろうと思いまして、理念なき改革ではだめだということ、それからやはり今の日本は官治主義だ、官僚主導の大国である、そういう御証言がございました。それからもう一つ大事なことは、行政改革は公正でなければいけない、やはり弱い人、力の足らない人に配慮すべきだ、そういう理念が示されまして、これは私としては非常に御立派な御意見であるということで、このことを私どもやはり生かしていってこそ改革の実が上がると思います。そういうことを含めてあれします。  最後に、佐高先生に、私は一本に絞って実はお願いをしたいと思います。  今先生、政、官の問題を論ぜられまして、やはり問題は、大蔵省の改革が霞が関の政策の第一歩だ、私はそういう先生の御意見だと思います。いろいろ官僚の皆さんのことも報ぜられましたね。やはり、日本の官僚制度というものと我々政界というものが、余りにも私どもは官僚に依存し過ぎた、そこに今日の実は問題があると思うのです。そういう意味でこれから、辛口の御批判で結構です、それはもう本当に受けとめていかないと、私どもは再び過ちを犯すことになりますから。  先生にはそういう意味で、官僚主導なり政界なり、または業との癒着構造というものの中で、何が実は一番先、一番重要としてやらなければならないか。私は、これは具体的にはお示しにならなくても、やはりそういう根源にある、国民とのかかわりにおいて、今日のあり方について御説明をお願いしたいと思います。  以上です。
  119. 佐高信

    佐高公述人 行政改革出発点が大蔵省改革、私は大蔵省三分割というのを唱えているわけですけれども、だということははっきりしていると思うのです。  皆さん方が、先ほどちょっと大蔵官僚が政治家をどう見ているかというふうなことを、テリー伊藤の本を引用してお伝えしましたけれども、一番激しい部分ですね、今現役、現在大蔵省にいる官僚がどういうようなことを考えているかということについて、先ほども申し上げましたように私はその人を訴えているわけですけれども、仮名でこういうことをしゃべっているわけですね。中島義雄、田谷廣明の問題について、   中島、田谷はアホじゃない。あれは仕事においてはアホじゃない。アホなのはバレたのがアホなだけ。これは、またちょっと正直にいいすぎかもしれないけれども、中島さん、田谷さんというのは、大蔵省の中でも最も普通の人ですよ。一番典型的なエリートといってもいい。彼らの私生活が特段おかしかったとも思わないし、中島、田谷が女を抱いたといっても、京都に行って抱いてるわけでしょう。いわば遠く離れてやってたわけ。彼らはそれなりの配慮を尽くしてたんです。銀座でやってるやつよりはましですよ。主計局の人間は、まず僕が知ってるかぎりでは、銀座で女を抱いたりはしない。銀座で女を抱くやつって、大体主税局か理財局かそのあたり。主計はそんなことまでしない。中島さん、田谷さんというのは、一応主計の人間だから、銀座では女を抱いてない。わざわざ時間をかけて京都まで行ったんだ。 こういうことをしゃべっている大蔵官僚に、倫理規程で通用するなんというのは錯覚以外の何物でもない。公務員倫理法というものをやはりきちっとしなきゃならない。この人たちは私に対して、これ以上突っ込もうとするなら身辺を洗う、税務調査をやるというふうに言っているわけですね。  つまり、こういうふうな話が、私も物すごくひどいと思いますよ、ひどいと思うから訴えた。そうしたら、訴えたところが、向こうの版元の代理人は、実在する人物で、そのとおり発言は受け取ってもらって構わないというふうに司法の場で公言している。そこを私は皆さん方に改めて認識していただきたいというふうに思います。
  120. 北沢清功

    ○北沢委員 終わります。
  121. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、前田武志君。
  122. 前田武志

    前田(武)委員 太陽党の前田武志でございます。  私は、行財政改革あるいは経済構造改革、すべての面でこれだけグローバル化して、情報化して、特段に進化したこの市場原理というものをどういうふうに生かすかということにかかっている、こう思います。そんな意味から、短い時間でございますが、まず佐高公述人、そして片岡公述人にお聞きします。  「骸骨を乞ふ」、私も実は安岡正篤先生には生前に何度か直接御薫陶を受けて心酔している者でございますが、この言葉は初めて聞きました。まさしく公職にある者の倫理観、これはもう本当に高いものでなければならないとみずからも戒めております。  しかし、考えてみれば、この大蔵省のことについても、例えば金融関係、もうすべてこれは規制の世界でございました。しかも、日本が経済成長していく過程で、発展途上国型の経済ということで、効率的な運用、これは経済官僚すべて一生懸命その当時はやったんでしょう。しかしその結果として、世界第一の金融大国になったときに、大きな権限と、しかもそれがすべて規制の世界であって、その中から出てくるのがいわば不正融資、それの隠ぺい、大和銀行事件、そういったあらゆるところに問題がある。  例えば泉井事件なんかにいたしましても、石油エネルギーの世界というのは、これは国策として、日本の成長過程で一番重要な資源ということで、すべてが規制の世界でございました。そういったものが、今これだけ大きな経済になったときに、やはり装置としては余り変わらずにあるわけでございますから、その中でどれだけの権限を、規制の世界はほとんど運用の世界でございますから、どれだけの大きな権限を持っていたかということを感ずるわけでございます。  その辺に、倫理だけでは処置し得ない、構造、装置として、もっと政治がやらねばいけない面がある。それが今議論されている諸般の改革だろうと思いますが、この辺について、佐高公述人の御見解をひとつお聞きしたい。  そして二番目は、片岡公述人には、行財政改革といいますが、支出の面は、各省、各局、各課ごとにそれぞれ法律をもとに政策を立てていく。したがって、毎年組織をふやし予算をふやすのがいい行政であり、いい行政官であるわけでございますから、装置としてはふえるようになっているわけでございます。それを何とか節約し、もっと効果的なものにしていく、優先順位をつけて、むしろ多少の市場原理みたいなものを働かせて効率的にやれば、逆にそれが評価されるというような装置にならないか。エージェントというのも恐らくそういうような意味合いが多少あるかと思いますが、いかに市場原理を入れていくか、そういった点でお二方の御意見を賜りたいと思います。
  123. 佐高信

    佐高公述人 一点だけ、御提案というかしたいのですのが、大蔵省の金融、財政、税ですね、それを分けるということがなかなか難しいということであれば、私は、一番手短にできることは、国税庁長官に主計の出世争いで敗れた人間を回すというふうなことだけはやめさせる、つまり、国税庁の長官は国税庁プロパーの人間を充てるということが一番大事だ、それをやれば随分変わるというふうに思います。
  124. 片岡寛光

    ○片岡公述人 組織がふえるということでございますけれども、御承知のように、日本には国家行政組織法がございまして、官房及び局は百二十八ということで定まっております。局以下の組織は政令でつくり変えることができますけれども、現在、例えば新しい課をつくる場合には、既存の課をつぶさないとつくれないというルールになっておりまして、その点は御心配のことはないというふうに思います。  ただし、従来の行政組織の仕方では硬直化してまいりまして、新しい行政需要に対応できないという状態に立ち至っている。そこで、抜本的にこの省庁の体制というものを改革しなければならないという要請が出てきているわけでございまして、今、総理府、総理府というのは総理大臣府ということなんですけれども、そこにあります外局を一応整理いたしまして、内局としてそこに政府横断的な機能を持ってきて、そしてそれと社会に実体的な働きかけを行う行政機関というものをマトリックス型に組み合わせた行政機関の姿を一応私としては構想しております。
  125. 前田武志

    前田(武)委員 終わります。
  126. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な時間を御参加いただきまして、さまざまな角度から御意見をいただき、まことにありがとうございました。心から厚く御礼申し上げます。  明二十一日の公聴会は、午前十時より開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会