○上原
委員 総理のお気持ちは一応聞いておきましょう。後段の安全保障についてはあれですが。
なかなかそうは物事が運ばれていないというところに懸念される
部分があるんですね。
国会だけじゃなくして、余りこれにこだわっているわけにもいきませんが、もう
一つ、復帰当時、五月十五日の政府声明にも出ているんですよ、政府声明にも。これも、歴史的なことですからちょっと読んでおきましょうね。
沖縄列島は、いにしえから、わが国と東南アジアや中国大陸を結ぶ接点ともいうべき役割を果してまいりました。この
周辺において東西の多くの文化が相互に影響しあったのであります。このように重要な位置を占めている沖縄が、今日わが国に復帰したことは、われわれ
日本国民の国際的責任と役割をいっそう大きなものとするとともに、わが国の将来に新しい展望を与えるものであります。沖縄を平和の島とし、わが国とアジア大陸、東南アジア、さらにひろく太平洋圏諸国との経済的、文化的交流の新たな舞台とすることこそ、この地に尊い生命を捧げられた多くの方々の霊を慰める道であり、沖縄の祖国復帰を祝うわれわれ
国民の誓いでなければならないと信ずるものであります。
これは当時の、五月十五日の政府声明ですよ。これと似たようなものが
佐藤元
総理のあいさつとしても出ている。
それで、こういうことが一体どう消化されてきたかということ。ただ文言だけ美しく飾ってきたというのが、だから沖縄の
皆さんというのはなかなか信用もしないし、いつまで同じことを言っているのかということになってしまう。
もう
一つ、当時は沖縄はまだ琉球政府ですから、さっき申し上げましたように、昭和四十六年の十一月十七日、屋良朝苗元主席がこの建議書をこしらえて、もう少し沖縄返還協定とか沖縄振興策とか沖縄土地問題に県民の意思を入れてもらいたいという立派な建議書を携えて羽田空港に着いた時期は、もう強行採決なんです、ここで。私は、この建議書も改めて読み直してみました。できたらこれに触れてある点を申し上げてみたいのですが、だから、そういう経過があるということ。
だから、沖縄の
皆さんというのは、私を含めて、ただ感情で物を言っているわけじゃない。事実と自分たちの戦前、戦中、戦後虐げられた、この苦難の歴史の上に立って物を言っていること、社会を見ていること、政治を考えること、このことはぜひ御理解いただきたいと思うのですね。
だから、
国会でこういう基地の整理縮小をやる、政府声明も出しておる。じゃこの二十五年、復帰して沖縄の基地が一なぜ私は政府の
努力の欠如かというと、見てください、
皆さん。これを見ればおわかりでしょう、これを見れば。復帰のときには沖縄の米軍基地は二万七千八百ヘクタール、五九%、本土の米軍基地は一万九千六百ヘクタール、四一%。復帰後、整理縮小すべき沖縄のものは整理縮小しないで、関東計画かそういうもので、現在七千九百ヘクタールが
日本の米軍基地、沖縄は依然としてこれだけあるから七五%、米軍専用基地。
だから、SACOであと十七年ぐらいかかるのかな、最高。二一%返しますというけれども、これはまだどれ
一つめどが立っていないのです、どれ
一つ。将来、十年ぐらいかかってもまだここですよ、ここ、沖縄の米軍基地の
実態というのは。これがどれだけ成るかはわからない。半分以上まだ沖縄だ。
こういう実情であるということを、ひとつ閣僚の
皆さんも議員の方々も、政府の特に頭のいい官僚の
皆さんもわかっていただいて基地問題をやってもらわなければいかないという、これが
実態なんですよ、
実態。
ですから、現在の沖縄はどうなっていると思いますか。こういう状態。どこにこういう国土がありますか。どこにこういう県がありますか。しかも、後ほど言いますが、この制限空域、これは県から強く出されておりますよね、二十九か十五。この
周辺の海域も全部使用できないのですよ、沖縄の県や自治体が。こういうことを、自分たちの都道府県であれば、一体その選出議員の
皆さんはどうなさるのか。ぜひ御理解をいただきたいと思うのですね。私は今、そういう
実態についてわかっていただくだめに申し上げております。
そういう前提に立って、いかに不十分であったかということをぜひ御理解を願いたいと思うのです。
だから、一昨年の、
総理もお述べになりましたが、不幸な少女暴行事件があって、知事は土地問題のことについて署名押捺を拒否する、あるいは公告縦覧についても異議を申し立てる、こういうことがあるわけですね。これは当然だと思うのです、私は。
そこで、これも念のためにお尋ねしておきますが、最高裁の判決に対しては一これは
福岡高裁那覇支部でも判決が出て、また最高裁大法廷でも審議をされ、結論は出されたわけですが、そのことは、政府にとっては
一つの、憲法上、沖縄に適用されている法律というもの、駐留軍特措法とかそういう関連法は違法でない、違憲でないという判決が出たので、留飲をおろしておられるかもしれません。ただしかし、法律論ではそうであったにしても、一体、政治論、
国民感情論ではどうでしょうかね。そうですがと納得しませんね、それは。
当時の新聞論調を見ても、「最高裁も沖縄を拒んだ」とか、沖縄の現実を踏まえた判決とは言いがたい、こういうことが言われておるし、歴史の審判にたえ得る判決にしてもらいたいという、切々と訴えた大田知事のあの陳述というか意見というものは、私は
国民の心を強く打ったと思うのですね。しかし、判決は残念ながら沖縄県が敗訴でした。
だが、注目すべき点は、この最高裁の裁判官の
皆さんが補足意見を出しているということですね。これをちょっと引用しておきます。
沖縄県に
我が国における駐留軍の基地が集中しており、それに伴って、演習による事故や駐留軍の軍人軍属による刑法犯罪が多数発生し、航空機騒音が付近住民の生活環境に影響を及ぼし、また、基地の存在は同県の地域振興開発の制約
要因となっているにもかかわらず、同県における駐留軍基地の整理縮小が十分な成果を挙げていないなど、原審の認定する同県の実情に照らすならば、駐留軍基地が同県に集中していることにより同県及びその住民に課せられている負担が大きいことが認められる。
こういう補足意見を最高裁でも出していらっしゃるわけよね。その上で、このことについてはやはり政治というか、はっきり統治行為論という表現はしてないが、そういう形で解決すべき問題だということになっている。
ですから、最高裁で判決が下ったから安保条約上も問題ない、憲法上も問題ないというような、そういう認識では私はいかないと思うね、基地問題の解決には。これについてはどういう御所見をお持ちか、
総理のお気持ちを聞いておきたいと思います。