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1997-02-04 第140回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月四日(火曜日)    午前九時開議  出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 小里 貞利君 理事 高橋 一郎君    理事 中川 秀直君 理事 藤井 孝男君    理事 石井  一君 理事 権藤 恒夫君    理事 二階 俊博君 理事 中沢 健次君    理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    石川 要三君       臼井日出男君    江口 一雄君       江藤 隆美君    尾身 幸次君       越智 伊平君    越智 通雄君       大原 一三君    菊池福治郎君       桜井  新君    関谷 勝嗣君       田中 和徳君    高鳥  修君       中山 正暉君    西川 公也君       野中 広務君    葉梨 信行君       原田 義昭君    松永  光君       村上誠一郎君    村山 達雄君       茂木 敏充君    森山 眞弓君       谷津 義男君   吉田左エ門君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       愛知 和男君    愛野興一郎君       石田 勝之君    太田 昭宏君       岡田 克也君    北側 一雄君       小池百合子君    田中 慶秋君       中井  洽君    西川 知雄君       原口 一博君    平田 米男君       生方 幸夫君    海江田万里君       仙谷 由人君    鳩山 邦夫君       日野 市朗君    横路 孝弘君       志位 和夫君    松本 善明君       矢島 恒夫君    伊藤  茂君       上原 康助君    北沢 清功君       粟屋 敏信君    岩國 哲人君       新井 将敬君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 松浦  功君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 小杉  隆君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  藤本 孝雄君         通商産業大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)事務代理  佐藤 信二君         運 輸 大 臣 古賀  誠君         郵 政 大 臣 堀之内久男君         労 働 大 臣 岡野  裕君         建 設 大 臣 亀井 静香君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     白川 勝彦君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      麻生 太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 伊藤 公介君  出席政府委員         内閣審議官   及川 耕造君         内閣審議官   白須 光美君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         地方分権推進委         員会事務局長  東田 親司君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         総務庁長官官房         審議官     瀧上 信光君         総務庁人事局長 菊池 光興君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         防衛庁参事官  藤島 正之君         防衛庁参事官  別府 信宏君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         防衛施設庁建設         部長      竹永 三英君         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 五十嵐健之君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  河村 武和君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         国税庁次長   堀田 隆夫君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省体育局長 佐々木正峰君         文化庁次長   小野 元之君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官房         長       堤  英隆君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         林野庁長官   高橋  勲君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         運輸大臣官房長 土井 勝二君         運輸省運輸政策         局長      相原  力君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         海上保安庁長官 土坂 泰敏君         郵政大臣官房総         務審議官    高田 昭義君         労働大臣官房長 渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    村瀬 興一君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  委員外出席者         参  考  人         (地方分権推進         委員会委員長) 諸井  虔君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     渡辺 博道君   江藤 隆美君     田中 和徳君   越智 伊平君     渡辺 具能君   越智 通雄君     江口 一雄君   大原 一三君     茂木 敏充君   加藤 紘一君     葉梨 信行君   桜井  新君     原田 義昭君   中山 正暉君    吉田左エ門君   村上誠一郎君     森山 眞弓君   愛野興一郎君     原口 一博君   海江田万里君     鳩山 邦夫君   仙谷 由人君     横路 孝弘君   矢島 恒夫君     志位 和夫君   北沢 清功君     伊藤  茂君   岩國 哲人君     粟屋 敏信君 同日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     越智 通雄君   田中 和徳君     江藤 隆美君   原田 義昭君     桜井  新君   茂木 敏充君     大原 一三君   森山 眞弓君     村上誠一郎君  吉田左エ門君     中山 正暉君   渡辺 具能君     西川 公也君   渡辺 博道君     臼井日出男君   原口 一博君     愛野興一郎君   鳩山 邦夫君     海江田万里君   横路 孝弘君     仙谷 由人君   志位 和夫君     矢島 恒夫君   伊藤  茂君     北沢 清功君   粟屋 敏信君     岩國 哲人君 同日  辞任         補欠選任   西川 公也君     越智 伊平君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  この際、昨日の加藤紘一君の質疑に関連し、中川秀直君及び森山眞弓君から関連質疑の申し出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。まず、中川秀直君。
  3. 中川秀直

    中川(秀)委員 広島県第四区選出の中川でございます。  自由民主党を代表しまして、限られた時間でありますが、平成九年度予算並びに橋本内閣の掲げます六つ改革等についてお尋ねをさせていただきます。  昨日、我が党の加藤幹事長から、今の日本時代時代論と申しましょうか、そういった御質疑がございました。お尋ねに入る前に、まず冒頭総理に、私は、きのうの質疑に関連しまして若干の御意見を賜りたい、かように思う次第でございます。  まさに今日本、アップかダウンか、上向きにいくか、本当に下り坂にいってしまうか、岐路に立たされていると思うわけであります。その日本の再設計のためには、エンパワーメント、この言葉は九四年の国際人口開発会議、あるいは九五年の世界女性会議でテーマとして使われたようでございますが、要は、一人一人が力をつけること、だれかのせいにしたり、あるいはだれかを頼りにしたりするのではなくて、自分を変える勇気も含めて、よりよき社会をつくるためにみずからも先頭に立つ勇気を持つ、力をつけること、こういう意味のようでございます。まさに、やる気と希望と活気と魅力に満ちた社会をこれから目指して、こういう言葉も大事なんだな、こう思いました。  これは何も私がオリジナリティーで言うのではなくて、最近出た、これは電通総研さんですか、「日本の潮流」という本の中に出ていたことでございます。もう少しかみ砕いて言うと、今我々が必要なのは、腕一本で大リーグに身を投じて、毅然として勝負をかけた野茂英雄投手勇気だ。あるいはまた、バルセロナからアトランタまで、四年に一度ある日のために、本当に幾多の困難を乗り越えて栄冠をまさにかち取った、自分自分を褒めてやりたいという名文句を残した有森裕子さんの根気だ。さらには、打撃理論からいえばいろいろコーチからいじられるところなんでしょうが、自分なりの打ち方というものにこだわって三年連続で首位打者に輝いたイチロー選手のような、ああいう新しいものをつくり上げていく創気だ。この勇気根気創気だ、こういうのでございます。  大変私も打たれるところがたくさんあったわけでございますが、総理、そんな意見もあるということについて、いかがでありましょうか。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私はちょっと不勉強でその御本をまだ読んでおりませんでした。しかし、今議員が要約されて、勇気根気創気という言葉に要約されました姿、本質的に私も同じような感じを持っております。私は今何より大事なこと、それは一人一人の国民、殊に若い方が自分の将来に対して、どういう夢でもいい、自分の夢を持つ、そしてその夢を実現させるために挑戦していける、そしてそれがかなえられる可能性がある、そうした社会をつくりたいということを申し上げてまいりました。  戦後の五十年というもの、ある意味では豊かな国家という目標のもとに、平等性均質化というものが一つのキーワードになっていたような思いがいたします。しかし、それが限界に来ている状況というのはどなたもが認めておられることでありまして、要は、その中で、それぞれの方が自己責任というものを一方に置きながら、みずからの運命を切り開いていくチャンスがある。私は、それを今議員は三つの言葉に置きかえられて表現をされたと思います。本質的に同じような感じを持っている。そういうものが非常に大切な時代だ、この点に全く私は異論はございません。
  5. 中川秀直

    中川(秀)委員 これもまことに恐縮ですが、ある雑誌から出ていた表を借りてきたものでありますが、「二十一世紀日本がとりうる選択肢」ということで、ここに四つの道が書いてございます。  福祉削減の道、これは高齢者切り捨て、こういうことでは不安が増幅いたします。大増税への道、国民負担率が、総理もよくおっしゃっていますが、五割以下でなければいかぬのだ、これが六〇%にいくようになったら活力が低下する。今のように、財政赤字が国、地方を合わせて四百数十兆、一時間当たりの利息が十三億円などという、こういった借金財政をそのままにいたしますと、まさにGDPの一・三倍ぐらいの借金にどんどんなっていく。これは国家破産につながります。唯一残された道がこちらの活力上昇の道、まさに構造改革、こういった橋本内閣の掲げる六つ改革唯一この道しかないということだと思います。  実は、こういうことをやっていくのは、総理も再々おっしゃっておられますけれども、本当に自己責任、そして国をつくるのは国民お互いみんなである、その中にはある意味では痛みも伴う、こういうことをやはり率直、大胆に、明確にお互いに確認をしていかなければいけないのだろうと思います。  ちょうど総理施政方針のときに、総理も触れられましたが、アメリカではクリントン大統領就任演説をなさいました。若干、そのくだりを少しだけ御紹介しますと、新しい政府の使命とは、全国民によりよい生活を築く機会、チャンスを与えることであって、それを保障することではない。そこから先は我々次第だ。建国の父たちは、自由と統合は国民自身責任だと説いて、政府だけでは達成できるものではないのだということを語りました。そして、一人一人、国民がそれぞれ、自分や家族のためだけではなくて、隣人や米国のために責任を果たさなければならぬということがさわりだったと存じます。  総理施政方針演説でも、個人にあっては、逆境にあっても失敗をしても、立ち上がる不屈の精神が求められる。真に手を差し伸べる方々には必要な手だてを講じる。しかし、痛みを恐れて改革の歩みを緩めたり、先延ばしすることは許されない。今を生きる我々は、よい社会を実現して、次の世代にこれを引き継ぐ責任がある。こういう施政方針演説の結びになっておられる。  私は、本当にいい演説だった、かように思う次第でございますが、ともかく、そういうことについて、これから行政改革初め六つ改革を断行するためには、これが元気ある日本をつくるための停滞脱出唯一の道だ。国民にいろいろな御負担や犠牲もおかけするかもしれない。しかし、それがいいとは思わないけれども、そのかわり、それによって初めて我々の二十一世紀というものは明るい希望に満ちたものが築けるのだ。ともかく中央省庁あるいは官と民のあり方すべてを変えていく。できない場合は自分が全責任を負う。こういったようなことで、率直、謙虚、大胆に、総理、国の指導者でありますから、事あるごとに呼びかけていただきたい、語りかけていただきたいと存じます。  私は、これはお尋ねなんですが、こういう改革にはやはり総理大臣のリーダーシップ、官邸機能の強化というのは不可欠だと存じますが、内閣法六条では、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」と書いてあるわけでございます。私は、この施政方針演説、この通常国会冒頭で行われた総理施政方針演説は、全閣僚が出席した閣議で決めた、同意を得た方針であります。したがって、この内閣法六条に言う「閣議にかけて決定した方針」というものに当たる、こう理解すべきだ、こう思います。時間がありませんから法制局長官の見解は求めませんが、だれが考えたって、閣議でみんなで集まって決めた施政方針演説ですから、閣議にかけた方針と言って差し支えない。これが違うというようだったら日本語じゃないと思います。  さてそこで、私は、総理にこの施政方針演説に基づいて、困難な局面、いろいろあるかもしれないけれども、その場合は、もう本当に首相自身決断、裁断をされ、そして各閣僚も皆これに従って連帯してこの改革をなし遂げていくべきだ、このように思う次第ですが、総理、いかがでしょう。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、本当に議員が今述べられましたように、閣議で決定をし、その上で衆参の本会議において私自身の口から申し上げた施政方針あるいは所信表明というものの内容については責任を持っていかなければならない、そのような立場にございます。そして、極めて厳しい問題が山積していることを予測した上で、なおかつ私は国会でみずからの信じるところを申し上げました。方向性を示しながら、同時に、それに固執するのではなく皆さんの意見も十分聞かせていただく、そしてその上で、真剣に伺った上で議論をし、決断をする、そして実行をする、そうした責任を負うてまいります。
  7. 中川秀直

    中川(秀)委員 これは、私は国民の皆様にお願いでもあるわけですが、この前の選挙の投票率、五九・六五%ですか、まあ白け気分というのもあったと思うんです。結局本質的な改革は、政治家はああ言っているけれども実行はされないんではないか、こんな御気分も中にはあったかもしれない。あるいはまた、しばらくはこのままでいい、もうバブルだとか高度経済成長は求めないから、しかし厳しい競争は避けたい、そんな御気分もあったかもしれない。でも、先ほど申し上げましたとおり、この二十一世紀、目前に迫った新しい世紀は、この構造改革の道しかお互いの将来はない、愛する子供や孫たちの将来もないわけであります。  その意味で、やっぱり変革に対するためらいとかあるいはまた引き延ばしというものは、かえって悪い循環というか、悪循環に陥ってしまう。どうせ変わりはしないという不信感不安感、あるいは無関心、それ自体がこの改革を不成功に終わらせてしまう、熱気を冷ましてしまう、こういうおそれが十二分にあると思います。先ほどの繰り返しになりますけれども、本当に上向き循環に持っていくためには、お互い一人一人がそういう状況を変えていく努力をする、そういう力を持つ、つけるということが何よりも大事なんだろうと思います。  総理施政方針演説にはいろんなことが書いてございますけれども、簡単に言えば、一切の聖域を設けず、行政あり方も見直し、また補助金等整理合理化も、あるいは一段の歳出改革と縮減もやる、財投もいろいろな観点から見直す、こう全部書いてある。これは、本当に国民みんながそういう気持ちになって支える、これは何も橋本内閣を支えるんじゃなくて、お互い日本を支える、こういうことで、重要なことだと思いますし、総理もただいまの御決意のとおり、何の遠慮もなくひとつ先頭に立ってやっていただきたい、かように思う次第であります。  さて、演説ばかりして恐縮でしたが、財政構造改革元年予算、これについて若干お尋ねをいたします。  私は、この平成九年度予算は、消費税引き上げとか特別減税廃止とか、あるいは医療保険改革ほか、景気にもマイナスだと言われるような御指摘もいただいた、そういう改革案も含んでおります。改革元年予算と名づけたことについては、若干歳出面でまだまだ切り込み不足ではないか、こういう御批判もございますが、少なくとも改革の第一歩、あるいはまた種火、あるいは準備段階、こういう予算ではある、このように思います。  ちょっとこのボードで簡単に御説明もしながらお尋ねしたいと思いますが、確かに消費税引き上げ、五兆円国の税収が上がります。また、特別減税廃止で二兆円ございます。それ以外に、社会保険医療改革で二兆円。九兆円と言われていますが、この医療保険改革の方は、一兆円になんなんとしている政府管掌保険赤字解消ということでございますから国の収入ということではない、お互い健康保険を守るためのそういった改革であります。まあ、簡単に言えば七兆円ということでありましょう。  しかし、これに対して、いわゆる益税の解消を含めた中小特例の是正ということでまた増収が四千億ばかりございますが、案外議論されていないのは、消費税の場合は四月と十一月納付が一般的ですね。決算期関係その他、あと三カ月ごとにもございますが、大体の企業中小企業その他は四月、十一月です。四月分の消費税というのは、まだ消費税上がったばかりでありますから、結果的には二%増の税収にはなりません。いわゆる初年度効果というので一兆九千億円は入らないわけですね。この五兆円ということは成らないわけです。一兆九千億円は入らないわけですね、これは国、地方合わせた初年度効果でありますが。そうすると、差し引き五兆五千億円ぐらい、こういうことになります。  それから、消費税負担社会福祉増。国や地方自治体も、この消費税引き上げあるいは特別減税廃止に伴います公共事業の資材費とかあるいは事務費、用品費とか、みんな消費税払ってまいりますから、その負担が約九千億円ぐらい国の方から出てまいります。  そういうものを差し引いてまいりますと、まあ、七兆円といっても四兆六千億円程度、うち国が二兆七千億、地方が一兆九千億、これは地方交付税三二%行った分も含めてそんなことでございましょう。  これに対して、ことしの国債減額、借金の減額幅は、国、地方合わせて七兆一千億円。国が四兆三千億円、地方が二兆七千五百億円ということで、倍まではまいりませんけれども、八割増ぐらいの、四兆六千億に対して七兆一千億、それだけ公債を減額した、こういうことになっているわけであります。  私は、そういう意味でもう一点だけ申し上げたいと思いましたことは、この財政赤字の削減でございますけれども、昨年は二十一兆円の公債を発行いたしました。ことしは十六兆七千億円の公債発行額でございます。特例公債が、昨年は十二兆円。ことしは、この赤いところですが、七兆五千億円。建設公債は九兆円ですが、ことしは二千億少し増加しておりますが、特例公債を大幅に五兆円近く減らしたわけでありますから、合計、そういうことでこの国債発行額も大幅に減らしておるわけでございます。そして、公債依存度も、二八%が平成八年度、今年度でありますが、明年度、平成九年度は二一・六%と六・四%も下げる、こういうことに相なったわけです。  何を申し上げたいかというと、この表で、この平成九年度の国債費、いわゆる借金の元本とそれから利息代、この借金返しのための財源、国債費と言っておりますが、これがこの平成九年度では新規発行の借金の十六兆七千億円よりも一千億円上回って十六兆八千億円になった。これは数年ぶりのことだと思いますけれども。いわゆるプライマリーバランスと言っておりますが、これは国債費、いわゆる国の過去の借金の元利返済分、これを除く実支出、それを税収の範囲内に抑える。これをプライマリーバランスと言うのだそうですが、逆に言うと、元利返済額が新たな借金額を上回るということですが、これが初めて達成された。プライマリーバランスのプライマリーというのは第一歩であります。そういう意味で私は、この平成九年度予算は財政構造改革第一歩予算である、こう言って差し支えないのではないか、このように思う次第でございます。  その中には、そうではございましても、いろいろなまだ平成九年度でこれからやっていこうとする財政再建目標、昨年十二月に閣議決定した赤字国債ゼロ、国の借金をGDPの三%以内に抑えるという目標を達成していくことは確かに容易なことではありません。いろいろ国だけで財政を健全化するなら、毎年四兆円、政策的経費の一般歳出で一〇%近い削減が必要だということも言われております。  政府は、七月にはシーリングを見直して、また財政再建法を成立させ、個別の歳出にも上限をつけて、段階的、計画的に支出の削減をしていくというふうに理解をしております。要は、財政構造改革本格予算編成の開始をあと半年だけ待ってくれ、こういうことにもとれるわけですが、シーリングに関しては総理も、従来どおりのものでは済まない、こう答弁をされましたが、それは、このような財政再建の見地から抜本的に改革するんだ、こういう御決意である、こう承ってよろしいでしょうか。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先般来、本委員会におきましてもたびたび申し上げておりますように、この状況を保ち続けることが不可能なことはもう明らかでございます。そして、財政構造改革会議におきまして、一切の聖域を設けずに議論をしていくということも申し上げました。当然のことながら、十年度予算編成に向けての最初の作業は概算要求の作成でありますし、その前段階に概算要求のルールをどのようなものにするか、その作業がございます。その時点から次の年の作業が始まるわけでありますから、ある意味では、財政構造改革会議で一番最初にお願いをし、結論を出していただくべきこの次年度予算に対する要求のルール、これが一番大きな課題だと私は思っております。  同時に、そこにおいてどのような目標設定をするのか。海外の例をとるなら、総額抑制あるいはスクラップ・アンド・ビルド、個別政策目標についての削減目標設定、いろいろな手法があるわけでありますが、日本としてどれが一番いいのか、あるいはほかの方法があり得るのかも含めて議論をしてまいりますけれども、聖域を設けないということと同時に、要求のルールそのもの、これをどうするかが一番大切なポイントだ、私はそのように考えております。
  9. 中川秀直

    中川(秀)委員 経済団体、例えば同友会あたりでも、公共投資基本計画あるいは各種五カ年計画の見直し、国、地方の公共事業費を二〇〇二年まで二、三割削減できないか、いろいろなそんな意見も出されておりますが、私も、総理おっしゃったように、個別分野のキャップ、上限ですね、それはぜひとも必要だと思います。私も党の行革本部の財政改革委員長をしておりますが、私どものところでも既に委員会で作業を始めておりますし、これから総理を全面的にバックアップいたしますので、これについての御努力、ぜひとも大蔵大臣、総理も、内閣閣僚一体となって強力にお進めをいただきたいと存じます。  そんな意味で、本委員会に出された平成九年度予算は、先ほど第一歩予算、こう申し上げましたが、まさに財政改革の本格予算平成十年、この七月から編成が始まる十年度予算だ、こういうふうに決意をなさっておられる、大蔵大臣、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  10. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま中川議員、そして総理の答弁に尽きると思います。  人生にめぐり合わせがございます。また、歴史の遭遇という言葉もございます。政治家は、政党は、国会は、後世代、次の将来の世代の安心と安泰を基本としながら全力を尽くすということであります。火だるまにならなければならない宿命を負う内閣総理大臣国会もあります。橋本首相、まさに不退転の決意で、おのれを滅して財政再建をやり抜くこと、そして経済システム、金融システムを変えることによって、名誉ある経済的な地位を保ちながら、世界の平和のために、また途上国の発展のためにやり抜いていこうという、先人が築き上げたその基本に沿って、ただいま閣僚全員一致協力、一つ心になりまして頑張り抜いておるところでございます。  御指摘のとおり、九年度は、中川財政改革委員長御指摘のとおりであります。平成十年度は、まさに一年と二年の総決算として、新しい日本のスタート台に立つため、総理言われるとおり、あらゆる分野に聖域を設けず、それぞれの制度、それぞれの事項を見直しながら、有効、効果的に租税を運用してまいる、赤字公債の発行は最小限に抑え、二〇〇五年には解消をするという大目標に向かってやり抜くということであります。格段の御鞭撻を賜ります。
  11. 中川秀直

    中川(秀)委員 もう一、二点お尋ねしたいのです。これはいわゆる平成九年度の歳出の抑制ということでなされていることですが、消費者物価指数の見通しが一・六%、予算の伸びが一・五%、また、消費税もこの中に入っておりますから実質伸びはほとんどゼロ、むしろマイナス。また、名目成長率が三・一ですから、それよりもマイナスの一・五%の一般歳出、そういった圧縮が行われているということ。公共事業関係は七年ぶりに全く実質同水準、消費税分を入れれば、むしろ伸び率は完全ゼロといったような状態でしょう。若干私も前長官としてこれには関係をいたしましたが、経済構造改革に資する創造的、基礎的な研究の分野、これはそういう厳しい中でも一二%近い伸び率の予算配分をいたしました。  整備新幹線でございますけれども、これについてもいろいろな御批判がございますけれども、総理も、この扱いは厳正に対処するんだ、こうおっしゃいました。事業費について見れば、これは平成八年度は二千一億円であったと存じます、今年度ですね。新年度は、それじゃどのくらい平成九年度は組んでいるかというと千七百三十五億円、むしろ減額されておるのですね。これは、既に着工している三線五区間のうち高崎-長野が、もうピークアウトといいましょうか、でき上がってくるので予算歳出が少なくなるという影響ではございますが、いわゆるこの千七百三十五億円の内訳で今いろいろ御批判を浴びている新規着工分、この予算は何ぼかというと百億円であります。千七百三十五億のうちの百億円であります。しかも、その百億円も、ここに書いてございますとおり、区間ごとの収支採算性の見通し、JRの貸付料等の負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意の取りつけ、経営に当たるJRの同意等を条件として、所要の条件を総合的に勘案して優先順位を決定する、これを総理は厳正に対処する、こういうことでございます。  本来なら新規着工分も、当初言われていたのは、新幹線のフル規格で全部やるということになれば五兆円を超える、五兆三千億円ぐらいと言われておりました。それをスーパー特急などで圧縮に次ぐ圧縮をして、関係者が努力をして、平成三十年までで一兆二千億、そういうように抑え込んでおるわけでございます。  これは世論調査を見ても、やるべきだというのが五割、考え物だぞというのが五割というのがテレビ局の調査でこの前出ておりましたが、各地域、各党が、これはやはり地域の長年の要望の中で公約をしてきたことでございます。しかし、この財政再建厳しい折、この中でぎりぎりの政治的選択で何がどこまでできるか。国家百年の大計も考えながら、長年の公約も果たしながら、これは我が党だけではない、各党みんなであります、そういう中で、やはり常に将来に希望を持ってもらうためのぎりぎりでの選択は何かということで選んだのが今度の答えだったんではないか。しかも、厳しいハードルを付して今後政府・与党の検討委員会で厳正に着工については判断していくということでありますから、私は、いろいろ報じられたり批判を受けているところにはいささか誤解もある、このように思います。  総理、この整備新幹線の扱いについては、今申し上げたような理解でよろしゅうございますね。
  12. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員から御指摘をいただきましたように、まさに整備区間ごとに収支採算性の見通し、JRの貸付料等の負担、並行在来線の経営分離について地方公共団体の同意、当然ながら経営に当たるJRの同意、そうした基本条件がそろわなければ、これは動くものではございません。そしてその上で、その取り扱いを政府・与党の検討委員会におきまして厳正に判断してまいる、そうした所存であります。
  13. 中川秀直

    中川(秀)委員 公共事業についても、先ほど申しましたとおり実質的には消費税負担分を差し引くと伸び率はゼロであります。しかし、内容をつぶさに見ますと、その中でも、やはり国際ハブ空港、高規格幹線道路、防災公園、森林環境整備等、そういった自然環境とか防災とか、あるいは次世代の経済発展の基盤とかいうものに多少はめり張りをきかせて、例えばふやしているものは今言ったようなものが一〇%台の伸びであります。  それから、かわりに消費税を引くとマイナスになっているのが、治水とかあるいはまた港湾でも一般港湾とかそういうもので、めり張り幅、加重平均でいうと二・四%ぐらい、一%が一千億とすると二千四百億円だそうですが、まだまだこれも十分とは言えないかもしれない。しかし、そういう努力を始めているということは事実であります。  私は、社会資本というのは、今後の方向として、耐用年数が堤防とか長いものもあるのですね、新規投資の面だけではなくて、これからそういう維持更新の面も含めて、公共投資基本計画等もそういった耐用年数の観点もストック概念ということで織り込んで見直してはどうかなと思いますし、また純公共財である防災とか環境とかというものと、あるいは住宅などというある意味で純粋の純ではなくて民間でもできる、こういった部分、これはやはり分けて計画は考え直していくべきではないか、かように考えますが、建設大臣どうですか。
  14. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 新年度予算におきまして、社会資本整備について従来よりかテンポが遅い、そうした結果になっておるということは、私は、これは決まったことでありますから、それはそれとして効率的な執行を心がけてまいりたいと思いますけれども、私は、財政再建はどうしてもやり抜かなければならない課題だと思います。ただ、そのことが社会資本の着実な整備ということから手を抜いていくということに矮小化をされていくことがあってはならない、私はこのように考えております。  我々国民の富が日常生活の中で費消されていく、それの豊かさを求めることも大事でありますけれども、同時に、子や孫の時代に先進欧米諸国のようなそうした社会資本がやはり整備をされておるということがなければ、私は子々孫々から、我々が大変な侮りを受けると思います。そういう意味では、毎日の生活の豊かさを求めると同時に、そうした着実な社会資本整備ということは毎年度予算においても力を入れていかなければならない。これは、何も財政再建とこれが相反することではない。財政再建は、全体の経済の活力、これをどう出していくかという全体の中で実現しなければならないという点もございますし、先ほども申し上げましたように、富の配分をどうしていくかという、そういう問題が私はあろうかと思います。  そういう意味で、委員御指摘のように、今後とももちろん効率的なそうした公共事業の執行に心がけていきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、本委員会あるいは国会での論議を見ておりますと、どうも公共事業は悪だというような、何か妙な雰囲気が漂っていることが非常に私は気にかかるわけでございます。
  15. 中川秀直

    中川(秀)委員 いま一点、ちょっと医療保険の問題についても厚生大臣にお尋ねしたいと思います。  医療保険改革でも、大変つらいことではございますけれども、いろいろ患者負担の見直し等やっている内容の、それを前提とした平成九年度予算でございます。政府管掌保険は年一兆円の赤字、こういう事態を解消していくためにも、それはいたし方のないところでもございます。  ここに、増税増税といろいろ言われるんですが、最近の租税負担率というのをちょっと表に出してみました。実はバブル期は、二四%ぐらいの租税負担率でした、もっとそれが、バブルの始まる前が二四%が二七、八%近くまで行ったんですね。これはバブル期で税収が上がったせいもあるんですが。平成五年から二四・四%。所得税、個人住民税の制度減税を先行実施しましたね、十六兆五千億。景気対策のための特別減税もやりました。そんなことで少し下がっておったんですね、二〇%近くに。それが今度平成九年度で、これは例の七兆でこの二四に戻るんです。ちょうど平成五年の状態に戻る、あるいはバブルの始まるときに戻る。これが実際の国税、地方税合わせた状況のようでございます。  実は、医療保険でまた負担がふえるということは、先ほど申し上げましたようなことですが、ただ、これはもう本当に痛みの部分であって、本当につらいことではございます。しかし、いろいろお話を聞いていると、今度の医療保険改革も、それでも三年間の財政均衡を前提としてこれは見直したものであって、また二〇〇〇年になったら基金は底をつくんじゃないか、こういう御議論もいろいろ報道されております。とするならば、やはりいろいろ大変なことでありますけれども、これ自身やっていくことが大変なんでありますが、もっとより深く大きな改革をこれはやっていかなければいけないのかな、そういう感じも、そういう報道を読むとするのでありますが、厚生大臣、どうですか。
  16. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 確かに、今中川議員御指摘のとおり、今回の改革案というのは、患者負担というのが主眼あるいは財政対策が主眼で、本格的な構造改革に踏み込まないではないかという議論が一方にあります。しかし、これからどのような構造改革案が出ても、これから提案する程度の負担は私は必要だと思っております。  なかなか一方の議論ではまとまらないのが医療改革法案であります。片っ方では、この患者負担は過重だという批判がある。一方の審議会の意見では、これでは生ぬる過ぎるという批判がある。しかしながら、具体的な案を出して初めて私は本格的な構造改革が始まるんじゃないか、それを期待しております。
  17. 中川秀直

    中川(秀)委員 またボードで恐縮でございますけれども、いずれにしても、今我が国の財政赤字状況、これは単年度の国債、地方債の発行額の国民総生産比なのでございますが、各国がみんなこのEUの参加条件に近づけるように三%までにずっと、イタリアもこんなに大幅に、九・六%から三・四%まで下げてきている。アメリカ二・八、ドイツ二・六、フランス、イギリスがちょうど三%。我が国も、この平成九年度予算、九七年ですね、それから十年度予算を目指して、これはOECDのアウトルック、推計でありますが、こんなにいったのをどんどん下げようと。それでも欧米に比べてはるかに悪い状況であります。  ともかく、そういう現実の中でやっていくわけでございますから、今厚生大臣おっしゃったのが私は正しい選択だ、かように思う次第であります。  さて、いろいろなことを申し上げましたが、早速、あと残された時間、端的な質問だけさせていただきますが、ともかく欧米諸国では、景気対策というものはむしろ財政赤字の削減なんだということを申しております。これはG7の声明でもそうなっておるわけですが、大蔵大臣、これは国を挙げてそういう意味で取り組んでいる。ケインズ的ないろいろなことを言います。減税だ、公共事業だ、いろいろ言いますが、何よりも財政再建が、中期に見ても短期に見ても長期に見ても一番の景気対策なんだ、こういうことで取り組んでいるわけですね。そういう認識を大蔵大臣もお持ちですか。
  18. 三塚博

    ○三塚国務大臣 昔から、健全な身体に健全な精神が宿る。これは、人間社会、人間の体の問題だけではなく、困難に遭遇をしたというときの原因は何かということを探求してまいりますと、いずれの場合でも、痛み、つらさを回避をいたしまして安易な道につくということであります。難病と言われる病気も、痛みを耐えていくことによって手術が可能になるとも言われます。痛さのゆえに麻酔薬を打つことは、医学界、最小限にしたいと。  これは経済においても同じであります。赤字国債の発行によりまして現代に生きる者がそれぞれのレベルを保ちたい、また、そうすることがやむを得ないのだということの積み上げが、今日、世界経済の停滞、我が国経済の停滞と言われる基本的原因でありました。  そんなことから、マーストリヒト条約ではございませんが、アメリカ合衆国ですらその財政再建、こういうことでありまして、ひとり先進国である我が国が従前のパターンを踏襲するということは破滅への道であります。決心をして取り組まなければなりません。
  19. 中川秀直

    中川(秀)委員 きのうの加藤幹事長からの質問にもございましたが、金融市場でメッセージが発せられている、それについてのいろいろな背景、いろいろ申し上げたかったのですが、時間が限られておりますので、やめます。  ただ、金融システム改革について一、二点だけ伺いたいのですが、いわゆる金融ビッグバンの目的は、市場や円の競争力回復のためだけでありましょうか。私は必ずしもそう思いません。むしろ、この低金利時代にじっと耐えて貯蓄をしている国民、昨年の統計では、一昨年、平成七年が四十六兆円、昨年も、九月までしか出ていませんが十七兆円、個人貯蓄は日銀統計でもふえているのですね、半年だけで。こんな低金利でもじっと耐えて貯金をしていらっしゃる、そういう人たちに対して未来に対する希望を与えることだ、このようにも思うのです。そういう目的がある。  そういうことを考えますと、一日も早く達成していくことが大事だ。ユーロの開始年が一九九九年、実際に旧通貨がなくなるのは二〇〇一年と言われていますが、総理、どうでしょう。もう何回も議論されていることですが、具体的に一九九九年、これの達成を目指してやると言った方が、むしろ本当にそういう希望や何やらがわいてくるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに議員が御指摘になりましたように、この金融システム改革というものが、市場の安定というもの、あるいはユーロという新たな基軸通貨が生まれ基軸通貨が二つになっていく状況の中で、円がその価値を維持するためのもの、これはもう言うまでもありませんけれども、同時に、これは国民の資産運用の幅を広げ、より選択できる余地を広げていくということと同時に、我が国に立地しようとする企業の資金調達をよりやりやすくしていく、そうした問題を持っているものでもございます。  そして、私は確かに二〇〇一年ということを申しました。これは、昨日もちょっと申し上げたところでありますけれども、例えば商法等の改正までを含めませんと最終的な姿が上がりません。そういうことを考えまして少なくとも二〇〇一年にはということを申し上げてきたわけでありまして、そうした検討ができるだけ速やかに行われることによって、少しでも早くその安定の姿が描けますような努力は今後とも続けていきたいと思います。
  21. 中川秀直

    中川(秀)委員 これは御答弁いただく時間がないと思いますが、例えば証券市場の新規上場でも、今は入札高値というか、上限入札制度なんですね。ここら辺も考えないといけないのかなという感じもいたします。いわゆる入札下値上場といいましょうか、下限入札制といいましょうか、こういうこともどこかで大蔵大臣、検討しておいていただきたい、このように思います。  なぜかと申しますと、日本たばこにしてもNTTにしても、上場した途端に下がって庶民が損失を受けるという例が多過ぎる。これでは信頼は得られないですね。やはり、そこら辺も一考を要するところがあるような気がするし、また、日本の金融界、競争が少な過ぎる。余りにも横並び慣行。キャッシュディスペンサーのサービスにしても、時間にしても金利にしてもあるいは各種手数料にしても、競争がなさ過ぎますよ。あれは独禁法に触れないのかなと思うぐらいでありますが、やはりそういう金融改革の中で、大いに邦銀も競争していただくということでなければいけない、これはもうお願いの段階にとどめます。  さて、時間が限られておりますので、公共工事のコストの対策関係閣僚会議総理の主導で開かれたと。私は、もうかねてからこれは当委員会でも建設委員会でも申し上げてまいりましたが、三月までに具体的数値目標を立てるということです。これもるる申し上げる暇がないのですが、建設省の調査でも、公共事業費はアメリカなどの諸外国に比べると三割ぐらい高い。  しかし、建設省の外郭団体が数年前に出した報告書を私取り上げて国会でも質問したことがあるのですが、オフィスビルあたりはアメリカの二倍から三倍、これは建設物価調査会が出した報告書ですが、そういうことが言われています。地震国だから鋼材が多いとかいろいろなことの理由もあるようですが、それにしても金額ベースでいうとそんなものでそんなに違うはずはないのであって、また建設労務者の賃金は、この建設物価調査会の報告では、アメリカの労務者の労賃に比べて日本の労務者の労賃ははるかに安い、半分かそれ以下なんですね。じゃ、何なのかという議論があったわけであります。  いろいろ、そういうことで今政府も立ち上がっておられるのだと思いますけれども、いずれにしても、一割削っても四十兆では四兆円、二割削れば八兆円、大変な金額でございます。私は、こういう努力を大いにして、その縮減した分をJR初め国の債務の返済、残余を経済の活性化に向ける、あるいは長期五計や公共投資基本計画もこの観点からの見直しと。何も事業費ありきではないはずです。事業ありきかもしれない。しかし、事業費ありきではないんだと思います。そういう意味からの見直し、効率のよい運用ということも考えたらいいのではないか。  特に、やはり入札制度、これについては履行ボンドというものを導入することになっておるのでありますが、入札ボンド、入札の段階からこの会社にはそれだけの能力があるかどうか、履行をだれか保証するというのが履行ボンドですが、入札の段階から審査する。それも第三者機関、民間の損保、そういう損害保険、いろんなものをかみ合わせてやっているのがアメリカ。そういう入札ボンドを含めた制度改正。あるいは、談合なんかにはうんと厳しいペナルティーをやる。イギリスの場合は二年間入札禁止ですからね。だから、つぶれちゃうわけですから、そんなことできないわけです。そういう努力をするべきではないか、損保等の民間活用もすべきではないか、そういうことをかねてから訴えてまいりましたが、大臣、いかがですか。
  22. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 委員御指摘のように、確かに民間に比べて非常に高いという批判が一般的にあることは私どもも承知をいたしております。総理から、コスト縮減のための徹底的な努力をしろという、関係閣僚会議まで設置されまして気合いを入れられておるわけでありまして、私も建設大臣として、これについては徹底的に取り組んでまいっておるところであります。  ただ、非常に難しいのは、これが、いわば国営企業なりお役人がそれをすべて末端まで執行するわけじゃございませんから、一割とか二割とか、そういう数値目標をまず前提として掲げてやれといいましても、これは事業量が極端に縮小していくという形に結果としてなる場合があります。そういう意味で、今各事業ごとに、例えば下水道と道路、これは全部違うわけでありますから、個々について、それを徹底的な見直しをやっています。  入札契約制度あるいはまた資材の単価の問題流通過程の問題、また他省庁の規制とかあるいは手続の問題、こういうものをすべてトータルとして解決をしていきませんと、自由主義経済界において公共事業を発注するわけでございますから、それを決めたからすぐ単価がばあんと一割なり二割なり現実に下がるというものではない。そこではやはり現実的な手法を今後とっていかなければならないと思いますけれども、私どもとしてはもう徹底的にこの際洗い直して取り組んでおりますので、御期待をいただきたい。
  23. 中川秀直

    中川(秀)委員 ぜひよろしくお願いいたします。要は我々の決意だと思いますので、大臣の指導力でよろしく頼みます。  官民の役割分担基準というものを、昨年の十二月閣議決定された行革プログラムにおいても、最大限尊重する、活用するということが決まりました。  三つの基準がありまして、民間でできるものは民間にゆだねる、国民本位の行政の実現、国民に対する説明責任。要するに、民間でできるものは民間でやってもらって、メリットとデメリット、いわゆる便益と総費用、総費用が多いものからは撤退する、こういう考え方。そういう数量化というか計量化をして国民にきちんと説明する。これが三原則でございます。  これらの基準は、実はこの作業に加わられた東大教授のお話なども我々の委員会でも伺いましたが、すべての行政活動はこの基準に根拠を求めさせる、二番目に、当該活動が社会に与える総便益と総費用を明らかにする。なかなかこれはできない部分もあると思いますが、大変なことですが、そうすると。それから、仮にその計量化ができて、それで総便益が多いということがわかっても、その実施形態は、まず第一は民間に任せる、あるいは、第二に民間に任せ補助を与える、第三に規制を課す、第四に省庁以外の機関で行う、第五に省庁自身が行うという順番で検討して、できるだけ政府のスリム化を図る、以上の計算結果と過程を、またその前提を公開する、こう御説明になっておられますね、この作成に当たられた委員の方は。  大変私は、これはクリアであり、またショックでもありますね。しかし、このくらいのことをやらないと実際のスリム化、ルール化、オープン化はできないと思います。六つ改革は進まないと思います。  これについて、こういう解釈でよろしいんですね。いかがですか。
  24. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そのとおりの解釈で結構でございます。
  25. 中川秀直

    中川(秀)委員 幾つかお尋ねしたいことがございましたが、時間が迫ってまいりましたので、最後一、二点だけ、公務員倫理法でございます。  綱紀粛正について総務庁長官のもとでおまとめになられ、各省が綱紀粛正策を、十二月二十六日ですか、倫理規程をお出しになったのを全部読ませていただきました。業者との接待も一切禁止、なかなか内容は厳しいものでございます。がしかし、これが事務次官会議でまとめられた、申し合わされた。その事務次官が次々と不祥事を起こして、先般もまた新しく逮捕された。これで本当に国民の理解が得られるのかなということになると、私ももう答えはノーでございます。  官房長官は先般、これも視野に入れて検討していくんだという御答弁がございましたが、総理あるいは総務庁長官、いかがでしょうか。やはりこれは、資産公開の面も含めまして、欧米並みの基準をきちっとつくって取り組んでいくべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々もその欧米の法制度も調べてみました。そして、アメリカのように法律を持ち、細部を連邦規則に任せているやり方、法律を全く持っておらない、むしろ慣習法の世界で対応しておられる、さまざまな体系があります。そして、議員が御指摘になりましたような公務員倫理法といったものは、閣僚懇談会におきまして、そうしたものも視野に入れて議論をいたしてまいりました。しかし、さきに制定されました公務員倫理規程というものを厳格に遵守されれば、こうしたものが必要はなくなるわけであります。  我々は、日本の公務員がそれだけの誇りを持ってくれている、少なくともそれを取り戻してもらいたい、そう願っておりますし、直接、各省庁の職員の服務規律を確保すべく、各大臣ともに政府が一体となって綱紀粛正の徹底に努力をしてまいりたい。ただ、我々としては公務員倫理法の制定というものも視野に入れて、この状況をある意味では見守っているという状況でございます。
  27. 中川秀直

    中川(秀)委員 やはりすべての改革も、また今後の我々の作業も一貫した方針でやっていかなければいかぬし、同時にまた、国民が信頼するということが大前提でありますので、そういう見地からの前向きの作業をお願い申し上げたいと存じます。  若干それに関連して、国会においても、今オレンジ共済問題等々、マスコミ等でも取り上げられている問題が多々あるわけであります。限られた時間でもありますし、あえて個人名は言いませんが、私は、やはりこういうことがなされるということは、政治家が詐欺をしたというよりも詐欺師が政治家になったと言われてしまっているのでありますが、こういう人を選ぶシステムあるいは我々というものにも大いに責任がある。そういう意味で、この一連の経過は国会としても解明する義務がある。もちろん当該の新進党さんはそういう意味では断固として解明されるということでございますから、捜査協力要請もなされたようですが、それについても五役会議で協力すると言われたようでありますが、断固として解明していただきたい。そして、国会においても、やるべき機会があればそういうことはきちっとやっていくべきだと思います。予算委員長、その点はよろしゅうございますね。
  28. 深谷隆司

    深谷委員長 どういう意味でしょうか、よくわかりません。
  29. 中川秀直

    中川(秀)委員 いやいや、委員会等でもそういう証人喚問要求等もなされております。そういう機会が参りましたときにはきちんとやっていただけますねということで。
  30. 深谷隆司

    深谷委員長 理事会等で協議いたします。
  31. 中川秀直

    中川(秀)委員 また、これは詐欺罪ということでありますが、善意の第三者という、いわゆるよく法理論で言われる返還義務の問題になってまいりますが、こういう預かり金であることを知った上でお金を受け取ってしまった、あるいはそれがまた公選法に触れるようなそういうことにつながっていったということになると、私は、法理論だけじゃなくて、道義的にはこれはお返しをするのが筋だ、ある意味の重大な過失ということになるのではないかと思いますが、法務省いかがですか。
  32. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 民事上の法律関係についての御質問でございますので、民事法を所管している事務当局から御答弁させていただきますが、民事上の法律関係がどういうふうになるかということは、あくまでも個々具体的な事案に応じて、どういう法律関係が問題になり、どういう判断がされるかということから結論づけられるわけでございまして、御指摘の事案について、法律的に被害者から返還請求をすることができるかどうかということについては、御答弁することは困難でございますので御了承いただきたいと存じます。
  33. 中川秀直

    中川(秀)委員 限られた時間ですので、また改めて議論させていただきます。  いよいよ本当に待ったなしの改革が始まっております。ある意味で、行革というのは、国民の意識改革であり我々の意識改革であり世直したと思います。総理のリーダーシップによって必ずこれを実現することを心からお願い申し上げて、質問を森山委員に譲ります。どうもありがとうございました。
  34. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、森山眞弓君。
  35. 森山眞弓

    森山委員 森山眞弓でございます。前の質問者、中川委員からもお話がございましたが、私もまず国家公務員の綱紀粛正について質問したいと思います。  最近の国家公務員、特に、いわゆる高級官僚と言われる方々の綱紀の乱れというのは甚だしいものがあります。ここで一々私が申し上げるまでもなく皆さんよく御存じのとおりでございまして、私ども国民はすべてあきれ返って物が言えないという気持ちでございます。  ですから、内閣がどのように立派な政策を掲げ、改革ということをうたわれましても、実際にその仕事を具体的に進めていく国家公務員、特に責任者である高級官僚があのようなていたらくでございましては、国民の信頼を得ることは大変おぼつかないというふうに心配するわけでございまして、先ほどお話ございましたけれども、これを大変心配されて、昨年末、次官会議で申し合わせが行われ、各省庁がそれを受けてそれぞれの省庁における規則を決められたということは私もよく承知しております。  以前から国家公務員の汚職というのがなかったわけではありません。しかし昔は、例えば末端の、どちらかといえば待遇とか身分とかに余り恵まれない方々が経済的な理由からつい誘惑に負けたというようなケースが多かったように思うのでございますが、今回は非常にそういうグループとは違った方々の、何とも困ったことだというふうに思うわけでございます。特に、そのような人たちは、国家公務員全体の中で指導的な立場にあって、部下をリードし、教育し、率先垂範していかなければならないという立場でございますので、どういうわけでこのようなことになったのか、私もまことに不思議だと思わざるを得ません。  このような状態に対する対策といたしましては、普通のことではだめなのではないかというような感じがいたしますので、先ほど一応の御答弁はございましたけれども、もう一度内閣のこれに関する姿勢について御回答をいただきたいと思います。
  36. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員からお述べになりました問題意識、私どもも共有しているつもりであります。そしてその上で、閣僚懇談会におきまして議論をいたしました時点では、公務員倫理法というのを視野に入れながら我々は議論をいたしました。  しかし、今もちょっと申し上げましたけれども、こうした問題についての、それぞれの国、やはりそれぞれのやり方を持っておられます。そして、基本的には我々は国家公務員法というものがあるという思いを当初持っておりましたが、その範囲をはるかに逸脱するような問題が続出をしている。どうすべきか随分議論をいたしました。しかし、事務次官等会議においての申し合わせというものが生まれ、それを受けて各省庁における公務員倫理規程というものをつくるという一つの結論に到達をいたしました。そして、我々はこれが本当に遵守されることを、そしてその中で国民の信頼を回復する努力を公務員自身が行っていくことを本当に願っております。  しかし同時に、議員が言われたような懸念を我々も持たなかったわけではありません、情けないことでありますけれども。ですから我々としては、まさにこれが功を奏し、倫理法というものを制定しなければならないということにならないように、それだけの自覚を持った職務遂行というものを今求めております。
  37. 森山眞弓

    森山委員 国家公務員法があるということは私も承知しております。その国家公務員法には、国家公務員になるときに宣誓をするということが書いてありまして、宣誓の内容としては「国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、」「不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。」という文章になっておりますし、同じようなことが法律の規定にも書いてあります。また「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」ということも書いてあります。  ですから、今申し上げたような内容の規定をよくわかっていてそれを守るということをしさえすれば、このような事態になることはないわけでありまして、私は、それでもなおこれだけのことが起こる、しかも高級官僚の人たちの間に起こるというのは、最近の公務員を含む世代の方々の考え方が変わってきたのではないかというふうに思うわけです。  つまり、例えばアメリカのように、二十ドル以上のものをもらってはいけないとか、かくかくしかじかの接待を受けてはいけないとか具体的に言われないと、名誉を傷つけるなと言われても何が名誉なのかわからないのじゃないか、いわゆるマニュアル世代なのかもしれないと思います。本当に情けないですけれども、具体的にそれを示して法律で規制するということがないと、総理はそういうことがないように期待するとおっしゃいましたけれども、どうも心もとないという気がいたしますので、思い切ってこの際、そのような具体的な内容の法律を規定するというふうにお考えになるわけにはいかないでしょうか。
  38. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさにここに高級公務員の諸君がおります。そして、今の議論を拝聴しております。そして、公務員の大先輩である議員から現在の公務員に対してこれだけ厳しいお言葉が浴びせられていることを彼らは真剣に受けとめると、私は本当に願っております。そして、今回各省がつくりました規程というものをそのまま法律条文に直さなければ守れないというような状況に追い込まれることだけは、公務員の名誉にかけて避ける努力をしてもらいたい、私は本当にそう願っております。  我々自身が、先ほど申し上げておりますように倫理法というものを視野に入れて議論し、そしてその議論を踏まえながら今その服務規程の実施状況というものを見守っているということは事実でありますが、その上で、なおかつ私は名誉回復の時間を与えてやりたいという思いを持っております。
  39. 森山眞弓

    森山委員 次に、首都機能移転について一言お聞きしたいと思います。  総理は、いろいろな改革を非常に思い切って断行しようということをうたっておられますけれども、改革の象徴的な一つとして首都機能移転ということがあるのではないかと思います。過度の一極集中を排除するため、あるいは大災害の場合のことを考えて、かねてこの問題は少しずつ進んでまいりましたけれども、ようやく国会等移転審議会で具体的な審議が行われるようになったことは大変喜ばしいと思っております。  世間の関心も次第に高まってきたというふうに思うわけでございますが、しかし、どのようなところにどのように移転するにいたしましても、東京が今までどおり、あるいはそれとほとんど同じウエートで、産業とか文化とかあるいは行政の多くの部分の中心であり続けるであろうということは考えられるわけでございまして、その東京との連絡がしやすいところ、交通の便がよいところ、そして災害も比較的少ないであろうと思われるところ、そして広い平たんな地域が割に手に入りやすい場所というようなことが移転先として考えられるのではないかと思うわけでございます。そうすると、私の出身地の栃木県などは最有力候補ではないかというふうに考えておりまして、地元では大変その熱意と期待が高まっているわけでございます。  いずれにせよ、これは審議会でこれから考えていただくことだということはよく承知しておりますが、一部に首都機能移転そのものに反対という方があるやに聞いておりますが、総理自身の御意見、お考えはいかがでございましょうか。首都機能移転についての基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。
  40. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、自由民主党の総裁選に候補者になりました時点で、初めてこの問題に自分としての意見を申し上げました。そしてそれは、ややもすると例えば東京一極集中排除といった言葉で片づけられてしまうけれども、私は、現在の東京の中にむしろ空間をつくり出し都民の生活に豊かさを取り戻していくためにも、首都の持つ機能の一部、すなわち国会等を移転することは必要だということを当時申し上げました。  その時点ではそれほどの反発がありませんでしたが、その後、東京都内からはだんだん反発が強くなっております。逆に、議員のお地元のように、大変期待をかけ、場所の決定前から決定したかのように喜んでおられる場所もございます。ただ、私は本当に、この首都機能を移転し分散しておくことというのは、国土の災害対応力の強化といった点からも非常に重要なポイントだと思っておりますし、国政全般の改革と深くかかわる大変意義のあるものだと思い続けてまいりました。  現在、その移転先候補地、この選定につきましては、国会等移転審議会に調査審議をお願いをしておるわけでありますけれども、もともとその前身で首都機能の移転というものをまとめていただきました国会等移転調査会、それぞれ国会の意思でおつくりをいただき、その結果として結論を出し、それを受けて今審議が行われている、調査が行われているという状況であります。  内閣としても、極めて重要な問題だ、こう認識しておるつもりでありますし、今後この御答申が出ますならば、実現に向けて積極的に努力をしていくべき課題だと思います。
  41. 森山眞弓

    森山委員 次に、教育改革のことについてお伺いしたいと思います。  第二次橋本内閣は、行政改革、経済構造改革、金融システム改革社会保障構造改革、財政構造改革という五つの改革というのを当初掲げてスタートしたわけでございますが、この五つだけでも非常に重大で困難な課題であるわけですけれども、年頭、さらに教育改革というのをつけ加えられました。これはなぜなのでしょうか。なぜ、突然というふうに私たちには見えたのですが、教育改革をつけ加えられたのか、その意図をお伺いしたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 きのう新進党を代表され質問に立たれました西岡議員と、お互いに過去教育改革について議論をしたその中身を踏まえながら、意見を交わさせていた、だきました。  ちょうど私ども、まだお互いに若い議員でありましたころ、幼児教育が非常に問題になった時期があります。そして、むしろ幼児学校の制度を取り入れるか取り入れないか、あるいは義務教育開始年齢を下げるか下げないか等々、その時点では、特に幼児教育をめぐって一つの議論がございました。また、医学部を中心にした大学制度並びに大学院制度について大変真剣な論議を交わしたことがございます。  その当時から、教育改革というもの、教育改革といいますより教育制度というものについて関心を持ち続けておりましたけれども、私自身改革を発議いたします時点で、教育改革というものは他の改革とはちょっと種類の違うものという思いを持っておりましたので、当初はその中に位置づけておりませんでした。いわゆる五つの改革を進めていくもう一つ下だという思いの方が強かったのです。  ところが、だんだんだんだんその上で調べてまいりますと、実は教育の世界においても規制緩和というものの必要な部分がいっぱいあるとか、むしろ行政の仕組みそのものの問題点、あるいは行政官庁と各レベルの教育機関、すなわち大学あるいは高等学校、義務教育における中学、小学校、いろいろなかかわりの中でやはり制度を変えていかなければならない、現状の六・三・三・四制をそのままに守っていくとしても規制緩和が必要だ、そのような思いからあえてこれを加えさせていただきました。
  43. 森山眞弓

    森山委員 今総理自身がおっしゃいましたように、教育改革というのはもう長年の仕事でございまして、かねていろいろな立場からいろいろな場合に検討されて、逐次、少しずつ進められてきたものでございます。ある意味で、常に改革の連続であったのが教育ではないかというふうにさえ思うわけでございますが、最近では、御承知の昭和五十九年から六十二年まで行われました臨時教育審議会がございまして、その結果がいろいろな場面で今生かされて、次第に成果が少しずつあらわれつつあるわけでございます。  例えば、高校の総合学科であるとか単位制の高校の設置であるとか、これらは私、文部大臣に在職中、現実を幾つも見まして、大変立派によみがえった高校の姿を見て喜んだ次第でございます。高校入試の改善についてもいろいろな努力がされましてまた、これに関連する業者テストの排除、偏差値の横行をとめるというような努力もされております。大学についても、設置基準の柔軟化、大綱化ということが実施されておりまして、カリキュラムの編成を自由化しているというのは御存じのとおりでございましょう。大学入試についても幾多の改善を経てまいったわけでございます。  すべて、これがベストといっただ一つの答えのあるものではございませんけれども、いろいろな問題を少しずつ手直ししつつ、多様化したこのような価値観の社会、あるいはほとんどの子供が高校に進学するという現在の事態に合うように、さまざまな改善の努力がされて、それが少しずつ実を結びつつあるわけでございます。  現在も中教審の第十五期というのが二十一世紀を展望した我が国の教育のあり方について鋭意御審議中でございまして、昨年の七月十九日に第一次の答申がなされました。今もなおその続きを審議継続中であるわけでございますが、総理はそのようなことを全部よく御存じで、今回特に教育改革ということを加えられたのは、今お話しのように、さらに計画的に、あるいは規制緩和というような見地からも、もう一度これに光を当てて力を入れるということが必要であるというふうにお考えになったのであろうと存じます。  自由民主党では、かねて教育の抜本改革ということが大変大事だというふうに考えておりまして、最近でも、平成四年でしたか、六つのテーマに分けて、六つのプロジェクトチームを発足いたしました。そして、それぞれ一生懸命勉強いたしまして、平成五年には結論が大体まとまったのでございましたけれども、突然の政変に遭いまして実らないままに終わってしまったわけでございます。  そこで、改めて平成八年に、教育に関する行財政検討委員会、そして21世紀教育ビジョン委員会の二つを設けまして、続けて熱心に議論を行いました。  そこでは、例えば義務教育とは何か、そのあるべき姿はどうであるかというような基本論から始まりまして、入学年齢が明治以来ずっと六歳だけれども、今もそれでいいのだろうかとか、あるいは六・三・三ではなくて五・四・四の方がいいのではないかとか、飛び級をもっと自由に認めたらいいのではないかとか、中高一貫教育を公立の学校にももっと導入するべきではないか、大学の入学の時期は九月の方がいいのではないか、さまざまなことを議論いたしました。  個性を重視すると言うのであればもっと私学の振興に力を入れるべきであるとか、教員養成あるいは採用の条件には福祉ボランティアの体験を加えた方がいいのではないかとか、非常にさまざまな、各方面からの非常に建設的なよい意見がたくさん出てまいりまして、それも大まかにまとめられているわけでございます。  そのような議論に参加してまいりました立場から見ますと、総理の御指示を受けまして先般発表されました一月二十四日の教育改革プログラムと称するものは、ただ現に進行中の審議会の日程をつくってそれを一覧表にしたというだけのようにしか思えないわけでございます。その中身は、いかにも保守的、現状肯定的のような感じがするわけでございまして、甚だ残念であります。これが二十一世紀の教育を展望する教育改革プログラムなのかと、がっかりしてしまうというのが率直なところでございます。  このプログラムを受けまして、総理が、この内容はよい、あとは実行あるのみだというふうにおっしゃったと新聞には書いてございましたが、総理は本当に、この教育改革プログラムの中身がこれでいいと思っていらっしゃるのでしょうか。
  44. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、これはこれでいいということは確かに申しました。そして、決まったことは進めてくれということを申しました。  その上で、例えば私自身が非常に気になっております幾つかのテーマ、例えば、教職員の免状は持っていない、しかし非常にすぐれた評価を受けておられる例えば郷土史の専門家もありましょう、スポーツの指導者もありましょう、ボランティア体験の指導者もありましょう、あるいは自然観察の専門家もありましょう。教職員の資格を持たないということで、そうした方々が、殊に義務教育のプロセスにおいて全く子供たちに接する機会を与えられない、こういうことはもっと積極的に変えられないのか。  あるいは、学校教育という面だけではなく、地域社会における子供たちのいわば健全育成に向けてのさまざまな活動のリーダー、しばしば自分の生活を犠牲にしてこうした活動に従事をしておられる、あるいは逆に生活に追われて、非常にうまくいっていた組織が壊れてしまう、いずれも実は、私自身が身近に体験したケースであります。  そうしたことを含め、幾つかの例示を挙げながら、より積極的なそうした問題への取り組みを考えてもらいたいということを申しました。
  45. 森山眞弓

    森山委員 例えば、義務教育についてでございますけれども、義務教育というのは、もうみんな聞きなれた言葉で当たり前のように聞き過ごしておりますが、日本国憲法とか教育基本法によって決められているわけでございます。「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」という言葉が義務教育の根源かと思いますが、九年というのは、それまで長い間六年間の小学校というのが続いておりまして、そして突然、昭和二十二年、占領下の日本において九年にしなければならないということになりました。ですから、六年の後、急遽三年、いわゆる新制中学と称するものをくっつけたというのが実態だったのではないかと思うのです。  ですから、この法律に言うところの「九年の普通教育」というのは一体何か。六年の義務教育、前の義務教育じゃなくて、九年になった普通教育というのは全体として何かということをちゃんと検討して、その結果でき上がった制度ではないのじゃないか、残念ながら。あの当時の事情から考えれば、そういう余裕がなかったというのはよくわかりますけれども、しかしこの際、教育改革ということをこれほど大きく打ち上げている現在でございますので、九年の普通教育というのはいかにあるべきか。  学校教育法でも、小学校についてはその目的や内容をかなり具体的に詳しく規定しておりますが、中学については、「小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育を施す」と書いてあるだけでございまして、後ほとんど抽象的な言葉がつながっているだけなものですから、中学というものの教育の内容がはっきりとした概念としてつかまれていない、そういう嫌いがあるわけであります。その中学というものの性格の不明瞭さ、中途半端さというのがずっと今も尾を引いていて、今になるともう高校へ入学するための準備だけというような考え方、あるいは行かなきゃいけないから、仕方ないから行くというようなこと。中学の三年間で何をやるかということがはっきりしていないというのは非常に残念なことであります。  そのようなことの基本に立ち返って、義務教育九年間を終わった人間はどのような国民になってもらいたいか、なるべきであるかということを考えた上で、九年間でどういう勉強をどうするかということを、カリキュラムもすっきりとさせた方がよろしいのではないかというふうに思うわけでございます。  このカリキュラムについては、その計画の後の方で、二〇〇三年から完全五日制をやるので、カリキュラムについてはそれに合わせて改定するということが書いてあります。しかし、そのようなことではなくて、それも含めて、しかしもっと根本に立ち返って、カリキュラムを最初から基本的に見直す、そして手直しをするという必要があるのではないでしょうか。文部大臣。
  46. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 戦後の教育五十年が経過したわけですが、今森山委員が言われたように、憲法、教育基本法、学校教育法におきまして義務教育のあり方についての規定があるわけでございまして、特に小学校、中学校で何を教えるか、これについては学校教育法の中で具体的に決めているわけです。  例えば、小学校では、基本的に、生きる能力とか特性とかあるいは読み書きとか、そういう基本的な部分をかなり細かく、八項目にわたって規定しております。中学校の場合は、戦後六・三制という新しい制度を導入したために、御指摘のように十分な規定があるというふうには私もとらえておりませんが、小学校のカリキュラムに加えて、特に義務教育終了の中学三年のときには、これからの職業の選択をどうするかとか、あるいは国とか社会の構成者としてどういうあるべき生き方というものを身につけさせるか、そういうところに重点を置いているわけでありまして、確かに今五日制を目標にしてカリキュラムの検討をいろいろやっておりますが、私は、そういう視点のみならず、義務教育の小学校、中学校において最低限必要な教科内容をどうすべきか、特にこれから高齢・少子化あるいは国際化、情報化、そして経済の高度化、こういう新しい潮流の中で、今までのカリキュラム、小学校、中学校を通じたカリキュラムの再検討というものは十分必要だろうと思います。  したがって、単に五日制という視点だけではなくて、そういった基本的な立場に立って、今教育課程審議会で具体的な検討を行っていただいているところでございます。
  47. 森山眞弓

    森山委員 中高一貫教育についても取り上げられております。これが、この審議会が大変保守的な割には目新しい項目なものですから、新聞等にもちょっと取り上げられておりまして、そのために誤解も生じているような気がします。すべての子供が中学と高校一貫でいくのか。つまり、いわゆる高校全入という意味なのかというふうにとられている向きもありますので、そのようなことはないと私は思いますが、誤解のないように広報をよろしくお願いしたいと存じます。  私の考えでは、中学と高校を続けて六年間、十二歳から十八歳までの年齢のときに、途中中断があるためにせっかくの能力や特徴や才能が中断されて、伸びにくい、伸びないというような問題点があるわけですから、そのために日本としてはたくさんのオリンピック選手やノーベル賞学者やその他優秀な芸術家を失ったかもしれないと考えますので、例えば、まずこれを始めるならば、芸術科とかあるいはスポーツ科とか、そのような専門高校の部分から始めていくというのが一つの方法ではないかと思うわけでございまして、これは私の意見ですので申し述べさせていただきます。  それからもう一つ、第十五期の中教審は昨年七月の先ほど申した第一次答申で、子供たちの「生きる力」を育成するということを大変力強く言っております。「生きる力」という言葉が大変ひとり歩きをして、どこへ行っても「生きる力」と言っているんですけれども、その「生きる力」とは一体何かというのがはっきりしない。私ども普通の人は、「生きる力」というとまず体力じゃないかというふうに思うんですが、残念ながら体力ということがこの教育審議会の言葉の中には余りございませんで、一方において、子供たちの体力は低下する一方であるという報告がなされております。私はこれは大変憂慮すべきことだと思うのですが、この点についてどのような考えでいらっしゃるか、文部大臣、お願いします。
  48. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 最近、子供の発育は非常によくなって、体格も立派になりましたが、反面、体力とか運動能力は劣ってきております。それから、子供の中にも糖尿病とか成人病を思っているというような傾向も出ておりますし、歯医者さんなんかの話を聞きましても、歯が非常に悪くなっている、こういう状況でありますので、私は、中教審の今やっていただいている中で、「生きる力」ということで、あらゆる困難にめげずにたくましくこれを乗り越えていくという「生きる力」というものを身につけさせるためには、おっしゃるように学力だけではなくて、やはり体力というものを非常に尊重しなきゃいけないと思っております。  そこで、二十八年ぶりに保健体育審議会に私は答申を求め、諮問をいたしました。その一つの重要な柱は、子供の健康の増進とかあるいは学校内外におけるスポーツの振興、こういうことで、できればことしの秋ぐらいまでにいろいろな課題を出していただきたい、こういうことで諮問をしている最中でございます。
  49. 森山眞弓

    森山委員 これは体育の学科とかスポーツとかだけの問題ではなくて、どんな仕事についても大人になればすべて基本は体力だなということはみんなわかっているわけです。だから、保健体育審議会で検討していただくのはもちろん大事ですけれども、これは子供の将来全体にとって基本的な課題だということをお忘れにならないで、根本的に考えていただきたいというふうに思います。  それから、総理施政方針演説の中で、「共働き家庭が一般化した今日、社会の支えなくしては仕事と育児の両立は困難」である、「今国会においては、子供を持つ家庭のさまざまな要請に応じて保育サービスを選択できるよう、制度を改正したい」というふうにおっしゃられました。  私としては、そのような経験をしてきた一人として大いに歓迎をしたいと思いますし、施政方針演説にもこういう言葉が出てきたかと、いささかの感慨を禁じ得ないところでございますが、どのような方向で考えていらっしゃるのか。  そしてさらに、教育改革プログラムの中でも、「幼児教育の改善」の項で、「国民のニーズに的確に応えるための幼稚園と保育所の在り方について、地方分権推進委員会の勧告等をも踏まえ、厚生省と共同で検討に着手する。」とございます。人生の最初に受ける教育、保育でございますので、ある意味では最も重要な部分であると考えます。多くのお母さんたちが働いているという今日、子供たちのために何がベストかということを基本に置いて考えていただきたいと思いますが、今の点について、厚生大臣にお願いいたします。
  50. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 昨年十二月に、新しい時代にふさわしい保育所制度の確立を目指して、中央児童福祉審議会基本問題部会で報告がまとめられております。その主な点、二点あります。  その基本的考え方の一つは、保育所の保育内容や保育時間などを情報公開して、利用者が子供の個性や親の勤務状況に合わせて保育所を選択できる仕組みとすること、これが一点。二点は、現在、保育料は所得に応じて負担することになっていますが、低所得者に対する配慮を行いつつ、均一的な保育料にして公平化を図ること、これが基本的な考えでありまして、厚生省としては、この方向の考え方を踏まえて、利用者の立場に立った保育所制度にするため、今国会に児童福祉法改正案を提出したいと考えております。  また、幼稚園と保育所の問題についてですが、これは私も、お子様を預かるということについては、幼稚園も保育所も共通の認識といいますか、大事な点がたくさんあると思います。ですから、今後は、厚生省の所管だとか文部省の所管だとか、縄張り意識をなくして、いかに子供のためにいいか、その視点で考えて弾力的に運営すべきだ。前向きに取り組んでいきたいと思います。
  51. 森山眞弓

    森山委員 次に、これも省庁の縄張りに多少関係があるかと思いますけれども、教育改革プログラムの中で「医療・福祉関係の人材育成」ということが書いてあります。特に、私の関心がありますのは看護の高等教育でございますが、現在各地の大学で看護学部というのを整備を進めておりまして、少しずつですが整備されつつあります。一方において、准看護婦の養成というのは近いうちに停止するという方向が出されまして、次第にすっきりしてきたなというふうに喜んでいたところでございますが、その一方で、厚生省が、来年度の予算で新たに同じ大学レベルの看護大学校というのを考えるということをおっしゃっているのがちょっと脇に落ちないのでございます。  今、厚生大臣御自身がおっしゃいましたように、省庁の縄張りを超えて、本当に看護婦さんの実力の向上のために、また看護婦さんの地位の向上のために何がいいかという観点から調整をしていただきたいというふうに要望を申し上げておきます。  時間もなくなってまいりましたので、最後に、橋本内閣のおっしゃっている六つ改革のうち教育改革は、総理もおっしゃったとおり、ちょっと異質だと思います。コストが余計かからなければいいとか、手続が簡単になればいいとかいうものではございませんで、二十一世紀の子供たちにとって何がベストかということを考えて、場合によったら余計お金が少しかかるかもしれないけれども、そういうことよりは、二十一世紀日本を担う人間をつくるために何がベストかという観点からぜひ考えていただきたい。大いに、真剣に、これに対して勇敢な改革をお願いしたいということを最後に要望しておきます。  それで、一つつけ加えて、宗教法人法について質問を申し上げます。  宗教法人法の改正に伴いまして、昨年十月末までに宗教法人から各都道府県を経由して改めて届け出がされていると思いますが、財産の届け出その他手続はすべて終わっていますか。また、法に基づいて設立されましたものが、設立後事情の変更が生じて、設立の根拠となる教義などが変更されたり宗教法人の法人格に疑義が生じた場合、文化庁は適当な措置をとっていただけますか。そのことだけお願いいたします。
  52. 深谷隆司

    深谷委員長 簡単に答弁をお願いします。
  53. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 新しい宗教法人法、成立して以来、文部大臣所管に移管されましたものは五百五十四、合計で九百二十七法人となりました。これは、細かい説明は省略しますが、昨年九月十五日この改正案が施行されておりますが、既に従来の申請書などは引き継いでおりますが、財産関係の書類については平成十年七月末までに提出されることになっておりますので、現時点で最新の財務関係書類は提出、受けておりません。
  54. 森山眞弓

    森山委員 終わります。ありがとうございました。
  55. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて加藤君、中川君、森山君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  56. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  平成九年度総予算審査のため、本日、参考人として地方分権推進委員会委員長諸井君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 深谷隆司

    深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  58. 深谷隆司

    深谷委員長 次に、横路孝弘君。
  59. 横路孝弘

    横路委員 民主党を代表いたしまして御質問を申し上げたいと思います。  質問に入ります前に、ペルーの日本大使館がテロリストに占拠されている問題につきまして、私は、総理も言われますように、テロリストに屈するごとなく、そしてまた人質とされている人々の全員が無事で救出されることを、早ければ早いほどよろしいわけですが、時間がかかってもやむを得ないものと考えております。このことはまた国民すべての願いでもあろう、このように考えております。先日カナダに行かれまして、ペルーのフジモリ大統領とも十分なコミュニケーションをとられたというように思いますので、なかなか解決までは大変かと思いますけれども、総理の御努力をお願い申し上げたい、このように思います。  きょうは、外交の問題と、それから行政改革地方分権といった点につきましてお尋ねをしていきたいと思いますが、まず初めに、外交、特にアジア外交についてお尋ねをいたしたいと思います。  日本とアジアの平和と安定のために、一体我が国が今この状況を踏まえて何をするべきかということでございます。  アメリカは、外交・安全保障上のいわば戦略というのは割とはっきりしておりまして、一つは紛争の未然防止ということだと思います。  ペリー国防長官、前の長官が、アジアについて四つの柱を立てておられました。一つは、まず同盟関係の強化、これは日米関係あるいは米韓関係といった同盟関係ですね。それからもう一つは、アジアにおける地域の多角的な信頼醸成措置というものをつくり上げることというのが二つ目です。それからもう一つは、中国への建設的な関与ということですね。そして四つ目には、北朝鮮との間の枠組みを、つまり話し合いの枠組みをしっかりとつくるということだと思うのですね。この四つの柱を立てられて、それぞれ、中国との対話を進める、北朝鮮との関係におきましても四者会談の実現に向けて大変な御努力をされている、同盟関係の強化、そしてASEAN地域フォーラムへの参加というような、割とわかりやすい紛争の未然防止という目標を掲げて、外交・安全保障の政策を展開されていると思うのですね。  確かに、冷戦構造が終わりましてから、アジアも随分不安定な要素、不確実な要素というものはあるわけでございますけれども、こうした中で、平和と安定のために一体何を優先として考えていったらいいんだろうか、どのような信頼関係をつくって、どのような紛争を未然に防止するということを我が国の目標としていったらいいのか、大変大事なところに来ていると思っております。  先日は総理もASEAN諸国を訪問され、あるいは韓国の大統領との対談などもなされたわけですけれども、日米関係を基軸にするということを前提として、これからのそういった意味での日本のアジア外交の戦略といったようなことにつきまして、まず総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  60. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員もお触れになりましたけれども、私は、アジア太平洋地域における我が国の役割というものは、基本的に、この地域が安定し発展を続け得るその支えをしていく役割、一言に言いかえますなら、そのような役割があろうかと思います。そうした意味で、私も先般ASEAN諸国を訪問させていただき、ASEAN創設三十周年ということし、ややもすると経済関係、あるいは経済に加えて政治関係でとどまりがちでありましたASEAN諸国との関係というものを、よりあるいは環境とか文化とか、それぞれの国の伝統文化というものを尊重し合いながらの文化交流とか、より深さを持たせた交流に変えていきたいということを各国と話し合ってまいりました。そして、今回寄れなかった二カ国にも、その後直ちに私の代理として特使を出しまして、その状況を説明し、基本的な同意をとっております。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕  そして、その役割を果たしていく上で、私は前提条件が二つあると思っております。それは、一つはアメリカにこの地域に対するプレゼンスを今後ともに続けてもらう、もう一つは中国というものを国際社会のより建設的なパートナーとして迎え入れていく、そのための努力をする、これが私どもとして大きな方針でなければならないと思います。  そして、その視点から考えましても、日米安全保障条約という枠組みは、日本の安全保障というものに当然極めて大きな役割を果たしているわけでありますけれども、同時にアジアへの米軍のプレゼンスというものを保障している、そういう役割にもなっており、これはある意味での日本の貢献ということも言えるでありましょう。しかし同時に、これをさびつかせないようにする責任というのが我々にあるわけであります。  同時に、中国を建設的なパートナーとして国際社会に迎え入れていく。そのためには、一つは本年の七月の、これは大変歴史的な日になると思いますけれども、香港の返還というものが円滑に、しかも香港の経済的な地位というものが変わらないという中国側の保証のもとで行われていくその年に、米中、米日、中日、いわばこの三カ国がしっかりとした枠組みをつくり得るかどうかということがもう一つ大きな課題だと思います。  そして、昨年の春の段階におきましては、例えば日米首脳会談等におきまして、私は実は中国との関係を積極的に改善するようにということをアメリカに求めておりました。今、そういう方向が双方から見えてまいっております。日米関係は、御承知のとおり安定をしておると申し上げてよろしいと思います。  昨年の後半、多少私自身のせいもありまして日中関係がぎくしゃくいたしましたけれども、APECを機会にマニラで行いました日中首脳会談でその軌道は一応修復をされ、ことし、よりこれを深いものにしていく努力が求められております。  同時に私は、国際的な、経済と申しますか通商、貿易の枠組みの非常に大事なものであるWTOに中国をできるだけ早く参加させることの必要性を訴え続けてまいりました。こうした努力を積み重ねていくことが、今、中国を国際的に建設的なパートナーとして受け入れていく、その一つの大きな切り口になろうと考えております。  朝鮮半島につきましては、御承知のような状況の中で、我々は韓国とともにこの問題に当たっているわけでありますが、今、北朝鮮とアメリカとの間で行われてまいりました米朝会談、これをベースにして、昨年であったと思いますが、米韓両大統領が提唱をされた四者会談、会合、これの実現に向けての行動が加速されることを心から願っております。  当然ながら、北の核開発というものに対し、それを抑止する意味でスタートをいたしましたKEDO、この問題を進展させていくことも極めて大事なことであります。その意味では、この一両日の間に予定されておりました四者会談実現のための準備会合等が日程が変わったという話を聞いておりまして、北朝鮮がより積極的な対応をこうした問題にとることを願っております。
  61. 横路孝弘

    横路委員 私も、アジアにおいてはまず中国との関係の強化、それからやはり朝鮮半島の安定、あともう一つはロシアとの交流の拡大、それからやはりアジア地域全体についての信頼醸成の枠組みをどうつくるかということなどが課題かと思いますが、今総理から日中関係についてお話ございましたので、ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  シンガポールの演説の中でも、今お話ありましたように、これからの日米並びに日中、米中、この関係がそれぞれ前進することがこの地域の平和と繁栄に寄与するものだということで、そういう認識に立って関係を強化するために努力をしたいという趣旨の演説をされておられます。  私は、ASEANの諸国は米国の軍事的なプレゼンスということについては基本的には支持していると思いますが、しかし、支持しながらも同時に、日米安保が中国との間に緊張を生み出す、地域の安定をそのことによって損なうことがないだろうかという心配も、他方、していると思うのですね。  そういう意味で、私ども、大事なことは何かといいますと、日米中がそれぞれの二国間を強化していくと同時に、日本とアメリカ、中国の三極の対話というようなことも必要ではないだろうか。それぞれの二国間、あるいは三極的な構造、そしてASEAN地域フォーラムのような多極的な構造というような、重層的な外交というのが必要になってくるんじゃないかというように考えておりますけれども、この日米、日中、そして米中という関係を強化するために、日米中の間で、例えば外務あるいは防衛関係者でもって対話を重ねる、できるところから積み重ねていくというような努力なども、総理の言われる関係強化ということへの日本の努力の一つではないかというように思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  62. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 基本的な考え方の部分については余り食い違いがないということを言っていただいた上での御提案でありますし、私は、今議員が述べられましたような二国間関係以外に、ARFですとか多国間での話し合いの場というものが幾つかあることもよく御承知の上の御提案だと思います。そして、私自身が江沢民主席との会談を二国間で持てましたのはAPECという場を利用してのことでありましたし、私は、こういった日米中三国を含んだ会合というものは随分このごろふえてきた、そしてそういう場を利用して三国の意思は今までもすり合わせが進んできた、自分の体験を考えてもそう思っております。  私は、その三国だけと限定をした枠組みを公式につくることには、相当慎重に考える必要があると思います。しかし、今私は、委員が御自身の主張として述べていただいたような考えというものを我々も共有する部分を多々持つわけでありまして、これから先もこの三国の間における交流あるいは意思疎通というものがより緊密に行われるように実態的には進めていかねばならぬ、そう思っております。
  63. 横路孝弘

    横路委員 例えば、まずい方向は、日本がASEANなどと提携して中国と対抗するというような形になるのは非常に避けなければいけないと思うんですね。それはASEAN諸国も望んでいないと思うんです。  各国みんなどこでもそうですけれども、自分の国以外のところが二つでいろいろな話し合いをしていると、一体どんな話し合いをしているんだろうか。例えば、昨年中国の国防代表団が韓国を訪問して話をした、しかし、どういう話をしたのか余り内容が外に漏れてこないということになりますと、一体どんな話をしたんだろうかということがやはり不安になるわけですね。  ですから、そんな意味では、何も固定しての形をつくらないまでも、いろいろな会話の中で日米中がちょっと集まって話をする。いろいろなレベルがあると申し上げたのは、いきなり何もトップのレベルじゃなくて、さまざまなレベルでそういう努力も積み重ねるということも、またASEAN諸国にとって、特にそういう日本の行動というのは大変安心感を与えるのではないかということを申し上げているんですが、いかがでございますか。
  64. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさに同じような思いがいたします。  そして、そうした認識の上で、今回ASEANに参りましても、各国は、WTOに中国を参加させるべきという日本の努力に対して賛意を表され、同時に、それぞれの立場からのそれぞれの国における問題点、問題意識というものを提起をされ、いずれにしても建設的なパートナーとしての中国を国際社会に迎え入れる必要性、皆どこの国も結論の部分は同じでありました。  御趣旨のような問題意識は、当然のことながら持っております。
  65. 横路孝弘

    横路委員 シンガポールの演説の中で、総理は、国際社会が全体として抱えておる課題について一緒に協力関係を結んでいこうではないかという御提案をされまして、施政方針演説の中でも、米国との間で今進んでおりますコモン・アジェンダ、これをアジア諸国との間でも今後同じような取り組みを強化することが重要であると考えておるという方針を出されました。  私は、これは大賛成でございまして、ぜひ具体的にやっていただきたいと思うんですが、その前に、ちょっとこのコモン・アジェンダについて触れてみたいと思いますが、意外とこれ知られていないですね、こういう努力を日米両国政府がやっているということについて。  これは一九九一二年の宮澤・クリントン会談で、しかも日米包括経済協議の中の位置づけでスタートしたわけですね。内容は、日米が地球規模の、抱えているさまざまな問題に共同で対応していこうということで、現在は子供の問題から人口問題、エイズの問題あるいは環境の問題といった二十六の分野で行われておりまして、成果も上がっているというように考えております。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕  私は、これがどうして国民に知られないのかということに二つ要素があると思うんですね。  一つは、まだ今余りそのレベルが幅広いレベルになっていません。こういう問題を解決するためには、NGOとかあるいは地方自治体とか民間の企業とかというところの協力を得てやりますと、もっと国民の目に見えた形になるだろうと思うんですね。NGOの協力も、アメリカのNGOの協力は大分いただいていろいろやっているようですが、まだ日本のNGOとはこれからだということでございますが、日本でもさまざまな国際的な実績を持っているNGO団体がございます。ぜひ、一つはすそ野を市民レベルに広げてやっていただければというように思います。この点が明確になりますと、もっと国民の間に知られてくるのではないかと思っています。  特にもう一つは、いわゆる脅威というのも、国家が他国を侵略するという脅威も今でも必ずしもなくなったわけではないと思いますが、しかし、まさにこのコモン・アジェンダで扱っているさまざまな課題というのが新しい脅威としてこれからますます深刻になり、国際社会が協力して対応していかなければいけない課題だと思うんですね。  そうしますと、これからの日本の外交のあり方として、まさにこのコモン・アジェンダの方向性というのは、私はもっと大きく位置づけていいのではないかと。しかも、これは、日米間では包括経済協議の中で位置づけられていますけれども、むしろ包括的な安全保障、例えばASEAN地域フォーラムの第二回の会議の中で、安全保障という概念も軍事的な問題ばかりじゃなくて、政治的、経済的、社会的、少し広く抱えていこう、それでさまざまな脅威に対して対応していこうという考え方をASEAN地域フォーラムはとっているわけでございますが、そういうものの一環として位置づけるということが大事ではないかというように思うのです。  まず、この日米間で今進めているコモン.アジェンダについて、もっとNGO、地方自治体、民間企業の協力を得て幅を広げるべきではないかということと、その包括的な安全保障の一環としてもっと積極的に位置づけるべきではないかという二つの点について、お尋ねをいたしたいと思います。
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさに議員が御指摘になりましたような経緯の中から、このコモン・アジェンダはスタートをいたしました。そして、五つの大きな枠組みの中、二十六のテーマが今対象となり、それぞれが今、速さの違いはありますけれども、それなりに進んでおるわけであります。  そして、これは、まさに地球規模的な問題に対して日米が共同に取り組むという意味で、またこれによって日米関係がより深いものになるという意味で、私は非常に大きな柱の一つと考えてまいりました。  そして、これは、調べてみますと、この活動についても、国民の御理解また御協力をいただきますために、インターネットを活用したり、あるいはパンフレットなどを通じたさまざまな広報活動を今までも積極的に進めてきたようでございます。そして、コモン・アジェンダを日米両国の国民だけではなくて第三国の方々にも理解していただこう、そしてさらに積極的に推進していこうということから、平成十年の初頭を目標として、コモン・アジェンダ世界会議というようなものを開催を現在企画しております。  ただ私は、実は、コモン・アジェンダのその民間協力という意味では、これは創設以来、日米両国ともに官民連携の中で進められてきたということを強調させていただきたいと思うのです。殊に、人口でありますとか、エイズでありますとか、環境保護といった分野におきましては、日米双方ともに、そのNGOの方々を初めとした民間の協力というものによってここまでの成果が上がってまいりました。  ただ、議員が御指摘のように、我が国の方において広がりが浅いということを私は否定をいたしません。昨年の二月、民間の有識者の方々によりまして、官民の協力というものをさらに強化するために、コモン・アジェンダの円卓会議というものが設立をされまして、民間の視点から、政府に対する助言、日米双方の国民一般に対する広報を行っていただいております。  これから先も、自治体、NGO、当然のことながらこうした方々を含む民間の協力というものをさらに積極的に求めながら、コモン・アジェンダのさらなる前進というものに向けて努力していきたい、そのように考えております。
  67. 横路孝弘

    横路委員 それで、施政方針演説の中で、アジア・アジェンダという方向性が出されております。これをどう具体化するのかということでございますが、私は、ASEAN諸国というよりももっとアジア全体を、対象を広げた方がいい、このように思います。特に、アジアのこれからの紛争予防という点からいいますと、やはり大きな問題は、人口問題があり、食糧問題があり、エネルギー問題があり、環境問題がある。この四つの問題は、どうしてもやはり避けて通れない大変大きな問題だというように思っております。  御承知のように、アジアの人口というのは、一九九〇年で三十一億でございますが、あと三十年もたちますと五十億近い人口になります。従来は輸出国であった中国、石油や穀物の輸出国、もう既に石油も輸入国になっていますし、西暦二〇三〇年ぐらいになりますと、中国は二億トンを超える穀物の輸入が必要だろう、あるいはインドなども相当大きな輸入がさらに必要になってくるだろう、こんなことが言われておりますし、インドネシアでさえ、石油について、もう来世紀初頭には輸入国になるのではないかと言われておりまして、アジアがこれから持続可能な発展ということを考えていく上で、この四つの問題をテーマにして考えるということは大変大事だと思うのです。  総理施政方針演説の中で提案されておりますアジアにおけるアジア・アジェンダといいますか、この方向性、具体的にこれからどのようなことをやろうとされているのか、どんな枠組みでスタートしようとしているのか、その辺のところを具体的にお考えがあればお答えいただきたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員が指摘をされました四つのテーマ、人口、食糧、エネルギー、環境、これらのテーマはいずれも一昨年、日本がAPECの議長国として、総会において、また非公式首脳会議において、このAPECの席上、提起した問題であります。その位置づけは、二十一世紀のアジア太平洋地域というのは成長の地域と言われるが、果たして制約要因が存在しないのか、こういうテーマは制約要因となり得るテーマだということで我々は警鐘を鳴らしたわけであります。  その時点におきましては、率直に申しまして、特に食糧について、現在輸出余力を非常に大きく持っている国々、この国々の受けとめは我々と異質のものでありました。要するに、ウルグアイ・ラウンド合意をごまかそうとするのではないかとか、むしろそういう受けとめ方が現実に存在をしたわけであります。そして、それに対し、同じような立場にある国々、議論を重ねまして、まさに二十一世紀のアジア太平洋地域の制約要因として、人口の急増、それに伴う食糧消費の増大、供給の問題性、エネルギー消費の拡大、そしてその結果として生ずる可能性のある環境というテーマにしたわけであります。  今回、APECの国々を回ってみまして、これは昨年のAPECでもそうでありますけれども、既にこの四つの問題についてそれぞれ作業が始まっておる段階で、一昨年のようにむき出しの輸出国の反発といった感じは随分変わってまいりました。しかし、その問題を深刻にとらえるかどうかということについては、なお落差はあると思います。  そうした中で、私が今、各国に対し提起をいたしておりますのは、従来の日本は成功例を示すことによってモデルとなろうとしてきた。しかし、実は振り返ってみたとき、我々の過去の失敗例の中に、むしろ失敗例の中にこそモデルとしていただきたいものを多く持っている。例えば、昭和四十年代の半ばから後半にかけ非常に我々が苦労した公害の問題。我々が自然の浄化力の限界を見誤ったために、公害列島日本と言われるぐらいの公害を全国で引き起こした。しかも、その態様も、大気あり、水あり、土壌あり、さまざまなケースを持っていた。そして、それを克服するためにどれだけのエネルギーが必要となり、どれだけのコストがかかり、結果としてこういう状態になった。これは、まさに失敗の情報であります。こうした失敗の情報も我々は提供することを恐れない。それを駆使していただき、同じ失敗を人類が繰り返すことを我々は望まない。  これは一つの例でありますけれども、同じような発想のもとに、昨年十二月、沖縄県を舞台にさせていただき、東アジア福祉担当閣僚会議を開きまして、社会保障あるいは福祉行政というものの今まで日本のたどってまいりました軌跡、現在の人口動態等々を、その席上、赤裸々にお知らせをすることにより、今後他の国々が将来たどるであろう同じような時期に参考例となるようなものを提示してまいりました。  これは幾つかの例でありますけれども、現在日米のコモン・アジェンダの中にも、例えばサンゴの保護とかいろいろなものがあります。アジア太平洋地域の国々と協力をしていくことで非常に前進するテーマ、当然のことながら存在するわけでありまして、その中における日本は、過去の失敗の例示を恐れない日本という姿をとりたいと私は心から願っております。
  69. 横路孝弘

    横路委員 このコモン・アジェンダのいわばアジア版ということで具体的に進められることを期待いたしたい、このように思います。  このアジア地域の中で、特に日本にとって大事なのは北東アジア地域だというように思いますが、ここはどうもまだ冷戦の名残が残っておりまして、いまだ各国の信頼醸成ができていない地域でもございます。私は、韓国との関係でも、いわば国民レベルといいますか民衆レベルといいますか、そういう関係での信頼関係というのはまだこれから努力をしていかなければいけない点だというように考えております。  そこで、北朝鮮の問題についてお尋ねをいたしたいというように思いますが、現在食糧難とか経済危機に陥っていることは、国連などの調査などでもはっきりしていると思います。アメリカは、この国の抱えている問題というのを少しでも解決して、北朝鮮が国際社会に開かれた国になるように、外交努力を大変行って今日まで来ているというように考えております。  私は、我が国にとりましても、南北統一ということを支持しながら、同時に北朝鮮が余り急激に体制がいろいろと動くということにならないようにしていくことが日本にとっても大事ではないかというように考えております。そうした努力の一つとして、やはり何としてもやらなければいけないのは、日本と北朝鮮との間の国交回復に向けた努力ということだと思うのです。もちろん、このことは韓国やアメリカとの緊密な連携、提携の中に必要だと思うのですけれども、この点について、金泳三大統領との間でどういうお話をされたのか。  従来から韓国の姿勢というのは、南北関係が改善されてからというようなニュアンスなども出てきているかと思うのですけれども、私は、これからKEDOの話なども具体的にスタートするということになりまして、どれだけの分担をすることになるのかわかりませんが、いずれにしても日本としてもその責任を果たしていかなくてはいけないということになりますと、その際、北朝鮮の方と全く交渉もないというような中で、これだけ負担しますよと言っても、なかなかそれは理解のできないところだと思うのですね。  問題は、あの朝鮮半島の安定ということの中で、アメリカはアメリカなりの努力をされている、では日本日本としてどういう努力ができるのかということでございますが、先日の大統領との会談も含めまして、総理の御見解をお伺いいたしたいというように思います。
  70. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変微妙な部分を含む御質問でありますけれども、やはり朝鮮半島というものについて、我々は、韓国との友好協力関係というものを基本としながら、この地域の平和と安定というものに向けての努力をしていくということを基本姿勢といたしております。  それをまず申し上げた上で、首脳会談におきましては、これは北朝鮮の情勢を中心にして、随分、北東アジア情勢についての意見交換を行う時間がございました。そして同時に、この地域の安定、そして平和を生み出していく、そのためには、今後とも日韓両国にアメリカを加えた三国が非常に緊密に連携していくことが必要である。これはもうKEDOの例でも証明されることでありますけれども、この三国の連携というものが非常に大事なことだということを、これは再々確認しておることでありますけれども、再確認したということでありましょう。  同時に、ちょうど別府にお招きをいたしました時点では、四者会合の共同説明会が開催される、そういう運びになり、日程が一応決まった段階でありましたから、これが決まったことを私は歓迎いたしましたし、その共同説明会からまさに四者会合というものに向けて早期にこれが動いていくことが非常に大事なことだといった認識でも一致をいたしました。そして、KEDOについても引き続き協力をしていくことをお互いに確認したわけであります。しかし、残念ながらその共同説明会は動いておらないようでありまして、これは私としては非常に残念なことであります。  同時に、先ほどのお話が、日本と北朝鮮との関係という点についての御質問もございましたが、私が就任いたしまして一番最初に金大統領とお目にかかりましたときに、政府間が全く接触をしないということは決していいことではない、むしろそういう意味ではルートがばら、ばらになってしまって何が何だかわからなくなってしまう、だから、いきなり大変高いレベルでというようなことを今考えてもいないし、またできるわけでもないが、政府間の糸をつなぎ直し、低いレベルではあるけれども、意見の交換と申しましょうか、接触の場を持ちたいということを私は申し上げ、現在そうした糸がつながっておる状態ということを申し上げておきたいと思います。
  71. 横路孝弘

    横路委員 北朝鮮側の対応にも問題があるわけなんですけれども、向こうが積極的に日本と話し合いをしたいということを言ってきた場合には、もちろんこれを受けて立つというお気持ちはあるのでしょうか。
  72. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、私は必ずしも積極的にと言い切ってしまうことにはためらいがございます。  と申しますのは、どんな形で、どんな状況で、あるいはその四者会合等はどうなっているのか、KEDOの問題がどうなっているのか、私いろいろな状況があると思います。何らの前提なしに北朝鮮の、例えば相当ハイレベルの交渉を日本側に求める、しかし韓国との間は全く断ち切ったままだというような状態にそれを受けることが我が国として望ましいかどうかといえば、私は判断を要するものがあろうと思います。
  73. 横路孝弘

    横路委員 私は、食糧問題などを含めましてこの半島の様相というのを今日見るときに、やはり余り大きな急激的な変化のないようにバックアップしていくということも必要ではないかというように考えております。  もう一つ大事なことは、北朝鮮自身にさまざまな国際的な対話の場に参加してもらうということも大変大事なことだと思うのですね。特に政策決定に影響を持っている人々が国際的な会議の中で議論をする、そういう場をいかほど多くつくるかということが大変大事だと思うのです。民間では幾つかいろいろな会議がございまして、北東アジア協力対話でございますとか、これは本年ニューヨークで開催することになっているようでございます。あるいはアジア太平洋安全保障協力会議、これは国際問題研究所が参加しているわけでございますが、これらに従来呼びかけてもなかなか参加しなかったという点もあるわけなのです。  これは外務大臣にお尋ねいたしますけれども、やはりこういう北東アジアのフォーラムを形成していくということを目指してさまざまな協力対話というのを行うべきだと思いますが、ASEANフォーラムの中で北東アジア協力対話を少し政府ベースに格上げしようというような意見も出たようでございますが、この点、外務大臣、いかがでございますか。
  74. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員御指摘のように、現在、この北東アジアの諸国の間の対話の場といたしましては、北東アジア協力対話、あるいは国際問題研究所、これは外務省のいわば外郭団体でございますが、そういったものが中心になって行っているものがございます。これは民間ではございますけれども、その中には、各国の外交あるいは安全保障を担当している者が、政府関係者が個人の資格で入っているということでございまして、そういった意味では、かなり各国間の、国の政策のあり方についても意見の交換なり情報の交換ができる、そういう場になっているものでございます。  それで、北東アジア協力対話につきましては、現在のところ、北朝鮮に対しましては繰り返し主催者から呼びかけてはおりますけれども、まだ参加は得られておりません。今後とも参加を呼びかけていくということは続けるべきだと考えております。  さて、これを政府間のものにするかどうかという点についてでございますけれども、将来的にはやはり、ARFがアジア太平洋地域のいわばリージョナルな枠組みであるとするならば、そのサブリージョナルな枠組みとしてこの北東アジア地域の政府間の対話の枠組みというのは考えられてしかるべきだと思いますけれども、現在、まだこの地域の国々の間で、現に我が国も国交関係を持っていないところがあるわけでございますし、それから両国間の関係が非常に厳しいというものもあるということを考えますと、今、政治あるいは安全保障といったような問題を包括的に話し合う場としての政府間の枠組みをつくるというのは、なお時間がかかるんじゃないのかな、もう少し条件が整っていく、これを待たなくちゃいけないと思います。-しかし、いずれにいたしましても、ARFの場においても、あるいは先ほど申しましたような民間という形をとった政府関係者の参加するフォーラムにおいても、いろいろな情報、意見の交換には努めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  75. 横路孝弘

    横路委員 まだこの地域における努力が必要なわけですけれども、その北東アジア地域の安定のためのフォーラムの形成ということでの御努力をいただきたいと思います。  もう一つ、対ロシア外交でございますけれども、この分野については、どうもなかなかまだ冷戦構造下から抜け切れないでいるのではないかと考えております。  北方領土問題というのは、我が国の外交にとっても大変大事な問題でございます。東西対立のときにはそういう東西間の一つの問題だったわけですが、もう今やこの冷戦構造は終結いたしまして、日本とロシアという二カ国の中でこの問題をどう解決していくのか、解決するための枠組みをどうつくるのかということが今一番大事だと思うんですね。  そういう意味では、今まで政経不可分、それから拡大均衡と来たわけですけれども、この拡大均衡も、政治対話と経済対話と、どうも政治対話が十分でなくなりますと経済の方も落ち込んでいくということで、どうも交流全体が全体として落ち込むというような構図、構造になっていたのではないかと思うんですね。私は、もっといろんな意味での交流、対話を行うべきだ。経済交流も進めるべきだと思いますし、政治対話ももっとやるべきだと思いますし、あるいは北方四島との交流などももっとするべきだと思います。  特に安全保障の対話というのは、今ようやく防衛庁長官がモスクワを訪問するということで始まったわけなんですが、アメリカとロシアの関係、これは、クリントン大統領がモスクワへ行って、もうアメリカとロシアは同盟国なんだというような演説もし、また、アメリカの海兵隊とロシアの海兵隊が日本海で共同演習をやるというような感じに今なっていまして、交流を見ますと、もう一カ月に一度ぐらいのペースでいろんな人の往来があるんですね。それぐらい、この冷戦構造が終わりまして、お互いお互いを理解しようという努力をしているわけです。  そういう点からいいますと、日本は何となくまだ昔の意識のままでいるように思えてなりません。私は、この対ロシア関係もやはり新しい外交の展開ということが必要でございまして、北方領土問題の解決のためにもいろんなレベルの重層的な交流、政策というものが必要ではないかと思いますけれども、総理並びに外務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  76. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私ども、冷戦の終えんということを踏まえまして、そうしてまた、ロシアというものが民主化、市場経済化という努力をしている、そういうことを踏まえまして、冷戦下とは違った目でロシア関係を考え、将来に向かっていろいろ努力をしていかなくてはならない、そういう認識は同じでございます。  ただ、今、委員が、米ロの関係はもう同盟関係に近いようなところまで行っている、それに引きかえ日本はということをおっしゃいましたけれども、米ロの関係ということで申しますと、これは、冷戦の時代においては確かに非常に厳しい、対決と言ってはいけないでしょうか、対峙の関係にあったわけでございます。しかし、冷戦が崩壊した今日においては、もう国交関係もきちんとしているわけでございますし、あらゆる面での協力ということが進められる、そういう状況にあると思います。  ただ、我が国とロシアということになりますと、これは、まだ領土問題というものが解決していない。平和条約というものが締結されていない。そういった意味では、まだ、完全な、十分な形での国交関係の基礎ができていない、こういうところに違いがあるということはひとつ御理解を賜りたいと思います。  そういったことを踏まえまして、我が国の対ロの基本的な方針は、東京宣言を踏まえまして領土問題を解決し、そして平和条約を締結する、そして将来に向かってあらゆる関係を進めていく、こういうことで今努力している次第でございますが、しかし、その間にも、おっしゃるように経済の面あるいは安全保障、政治、あらゆる面でいろいろな努力をしながら、そういった本来の、一番大切な平和条約に向かっての作業を進めるための環境も整備していくということは大切だと思っております。  それはいろいろな会合においてよく話し合っているところでございまして、それを、車の両輪ではないか、同時に回すべきではないか、いや、前輪と後輪ではないかと、いろいろなやりとりもやっているということでございますけれども、そういったことで、我々としても先ほどの基本を踏まえながらいろいろな努力をしております。四島の間の交流、あるいは極東地域との間のいろいろな交流を進めておりますし、安全保障の関係でも、おっしゃるように防衛庁長官の訪ロ、そしてことしは先方の国防長官の訪日というのがございましょうし、外相間の会談はもう何度も行われております。そして、橋本総理も昨年はモスクワへおいでになりましたけれども、そういった首脳レベルの交流も進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  確かに、我々は、時代が変わった、そしてロシアも変わったと承知しておりますけれども、一つやはり完全に領土問題を解決しての両国関係という問題がある。これも大切にしながら、そうして日ロ関係全般を、重層的という言葉を使われましたが、重層的そして多面的に発展させてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  77. 横路孝弘

    横路委員 私は、北方領土問題はもちろん大事だというように考えていますが、ただ、その問題を入り口論のように扱って、この問題が解決しなければ、しない間はほどほどにしかつき合わないよということではなくて、解決するためにももっと、今、重層的、多面的と言われましたけれども、そういうことが必要ではないか。私どもにとりまして、隣の国が民主主義の国になる、それを目指して努力している、市場経済も取り入れようということで、混乱もありますが努力しているということは、やはり基本的にはそういう方向で支援すべきだというように思うのですね。  特に、極東地域の人々が、私は、領土問題解決の前提というのは、この人々が、日本との関係抜きにして自分たちの地域の発展はないんだというような経済的な関係ができるということが大変大事な一つは要素ではないだろうか、このように思っています。極東地域の人が、いや、日本とは関係ないんだ、関係なくとも我々は発展できるんだというようなことは、あり得ないわけなんですが、そんな思いでいれば、これはなかなか領土問題の解決にならない。  そんな意味では、特に極東地域との間の経済的な交流ということを進めることが大事だと思いますが、特に外務省がNIESを中心にして大変な努力をされています。ただ、これは各省、通産省そのほかいろいろな御努力もありますので、できるだけこれがばらばらにならないようにしっかり統一的にやられることと、極東地域は、日本海沿岸の各地方自治体などもさまざまな交流を積み重ねてきております。こういうところとのリンケージをどうしていくのかということなども大変大事になってまいりますし、外務大臣が昨年来たときに、四島の共同経済活動などという提案もありました。そんな方向なども考えながら経済的な交流をしていくということが一つですね。  それから、政治対話も、外務大臣同士が会う、あるいは首相同士が会うと、一々、成果が何かということがよく議論されますが、私は、ともかく会うこと自身が非常に大事なんだと思うんですね。余り成果ということを考えられないで、お互いにコミュニケーションをもっと交わしていく。これは何もロシアばかりじゃなくて、中国との関係も韓国との関係も同じだと思いますが、そういうやはり政治対話もしていただきたい、このように思っております。  外務大臣、この経済交流につきまして、お考えを。
  78. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ロシアとの経済交流、とりわけ我が国と近い極東地域との経済交流の重要性というのは、委員御指摘のとおりでございます。そうして、こういったことを進めていくことが領土問題の解決にも好ましい影響を与え得るんだという御認識、それも私どもも共有するものでございます。  そういったことで現在いろいろ進めておりますが、二、三例を申しますと、日本センターというものを現在、ハバロフスク、ウラジオストク、そうして今度サハリンで運営するようにしております。これは、市場経済化を進めておりますロシアに対しましていろいろなノウハウを伝授していく、こういうものでございますが、こういうものが非常に役立つんじゃないかと思っております。  それから、各省間の連携もちゃんととるようにというお話がございましたけれども、実は、通産省が中心になりまして、ロシアの貿易産業を支援するプランがございます。これは橋本総理がちょうど通産大臣をしておられるころに提案されたもので、橋本プランと日ロ間では呼ばれておりますけれども、中小企業センターでのいろいろな技術面、経営面のノウハウ等の伝授をするプログラムでございますが、こういったものも非常に有益なものだと存じております。  そのほか、極東、東シベリアの中小企業の育成を目的とする企業の基金というものも我が国のイニシアチブでやっておりますし、さらにザルビノ港という港の、これは極東地域の開発にとって大きな意味があるだけではなくて、将来的には中国の東北部との連携ということになればそちらの面でも大きな役割を果たし得るものでございますけれども、そういったものにつきまして先般フィージビリティースタディーが終了した、こういうこともございまして、これもこれから進めてまいりたい。  それから、輸銀融資につきましても、先般も新たに五億ドルの枠を決めましたけれども、これにつきましても極東地域にウエートをかけた配分をしていく。このように、我々も極東地域の経済開発については力を入れてまいりたい、こう思っております。  それから、いろいろな交流の際に、単に定期的にやって必ず成果を上げるようにというのではなくて、隔意のない対話をしようという話。それはそのように心がけておりまして、実は、プリマコフ外務大臣と恐らく私も五回は会っていると思いますけれども、実は彼があるときに、池田、おまえとおれとはどうもケミストリーが同じである、だから仲よく話をしよう。ケミストリーというのは御承知のとおり同じ体質だという話でございますけれども、私は、おまえはもともと共産主義者だろう、こちらはマルクス、レーニン大嫌いの保守主義者だから、そんなことを軽々に言ってもらっちゃ困ると冗談で言い返したわけでございますけれども、しかし、主張、立場はおくとして、隔意のない対話をそれぞれの段階でやるように心がけている次第でございます。  それはもとより、総理、首脳レベルあるいは大臣レベルだけではなくて、事務当局におきましても次官レベル、局長レベルそれからあるいは実務者レベルで今非常に多方面にわたり、そうしてまた緊密な連携がされております。  ちなみに、経済関係では、イリューシン第一副首相と私が共同議長をやります合同委員会が、近々第二回が東京で開かれる予定にされております。
  79. 横路孝弘

    横路委員 アジアにおきまして、その信頼醸成を促進すること、それから紛争を予防するというような観点に立って、今議論してきたことについてさらに御努力されることを御期待をいたしたいと思います。  さて次に、行政改革、経済構造改革など、六つ改革と省庁の再編成について御質問いたしたいと思いますが、この六つ改革の上に省庁の再編成を進めるということですが、必ずしもその理念とか、あるいはどんな国にしていきたいのか、改革を終えた後どんな国になるのかというイメージというのは、必ずしもはっきりしていません。  私は、市民の立場に立って、地方分権や経済的規制の撤廃というのは大変大事だと思うのですね。中央が何でも権限と財源を持ってすべてを決めるということから、そうではなくて、市民の身近な自治体のところで、町づくりについても教育についても福祉についても参加することができるということになりますと、政治への参加というのは非常に、ある意味でいうとやはり近くなるわけでございますし、あるいは、今まで余りにも生産の保護という立場に立ってきた、業界を例えば新規参入とか価格とかということで保護をしてきた規制というものがなくなれば、それは消費者の利益がより大切にされる社会になるわけですね。  そのことは結局、地方自治体やあるいは民間の企業やあるいは個人、市民の責任というのは大きくなると思うのですけれども、しかし、自分で選択して自分で決定できるという点は大変大きいというように思うわけです。もちろん、自分で選択できないハンディを負っている人には、そういう自立を支援するということが大事だと思うのですが。  そんな意味で、私は、これをやった方向性というのは何かといいますと、やはり民主主義の徹底ということではないだろうか。それをやった上で、さらに日本社会がより公平でより公正な、いわば社会的な正義も実現される社会に変わっていくのだということではないかと考えていますけれども、総理は基本的にどんな理念でこれから進められようとしているのか。余り時間もございませんので、ひとつ簡潔にお答えをいただければと思います。
  80. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、言葉、言い回しは違いますけれども、結局同じごとを言っているんじゃないかなと思うのです。  私は、議員が今述べられましたようなことを、若い人々が自分の夢を持ち、その夢を追って挑戦することができ、それがかなえられるチャンスのある社会をつくっていきたい。同時に、それだけの行動ということは、言いかえれば、それが失敗しても立ち上がる勇気を持ってもらわなければならぬ。自分にそれだけの強さを持ってもらわなければなりませんし、当然のことながら、本当に手を差し伸べなければならない方々には必要な手だてを講じることが必要でありますけれども、それだけの自己責任というものが求められる。何をやっても自由ということでは当然ないはずでありまして、社会性あるいは倫理観、こうしたものの豊かな人間性というものを求められることは当然でありましょう。  要は、多様な価値観というものをお互いに共有することができる。そしてそのために、議員が述べられたような、例えば地方分権、あるいは規制の緩和といいましょうか見直しといいましょうか、今進めております緩和計画は緩和でありますが、こうした努力をしていくことによって、中央省庁そのものが形の上でスリムになるだけではなく、持っております機能というもの自体をよりスリム化し、地方にお任せすべきこと、民間にお任せすべきこと、あるいは官が行うにしても、中央が行うのか地方にお任せをするのかといったことまでを突き詰めて考えていって仕組みをつくっていかなければならない、私はそう思っております。
  81. 横路孝弘

    横路委員 これは既にいろいろな努力が行われてきているわけです。行政改革委員会でも規制の撤廃とか情報公開とか、それから今の官民の役割分担とか、それからまた地方分権推進委員会の方でも機関委任事務の廃止、これからは補助金制度についても考えると。また、経済審議会からも建議が出されるとか、産構審の方からも構造のプログラムが出されるとか、大体メニューというのは大分出てきているんじゃないかと思うのですね。この、たくさんのところでそれぞれ分担されながらやっている改革をどうやって具体化していくのかということが、一番問われているのだと思うのです。  私は、行政改革会議ができまして、どういうことをおやりになるのかなと思っておりましたら、先日各省庁に質問項目ということで質問が出されまして、これを見ていますと、今までやってきたこととまた重複したようなことを各省庁に問い合わせをして、そしてまたそのヒアリングを始めて十一月までに結論を出すのだということのようなんですね。  例えば、行政改革プログラムというのは閣議で決定されていますよね。この既にもう内容としてやるんだということが決まっていることについても、各省庁どうお考えですかというような質問がここになされています。あるいは、地方分権推進委員会が既にある程度方向性を出しているものについても、地方公共団体への業務や権限の移譲、補助金の主な見直し状況とか、今後どんなものが考えられるかというような問い合わせを省庁にしているのですね。そうすると一体、行政改革会議、何をやろうとしているのか。私は、しっかりとしたマネジメントを行って今まで既に出されているものを、もうあとは具体化していくのをどうするかということだと思うんですね。  政府にも行政改革推進本部というのがありますね。結局、やはり各省庁の問題、各省庁の大臣に責任を持ってもらって、既に出されているメニューについてはしっかりやるということを総理がリーダーシップをまず発揮されるということだと思うんですけれども、どうも最近、少しいろんな点で混乱が起きているんじゃないかと思うのです。少し問題を整理してしっかり進める、私はそこに今一番総理に期待されている点があるのではないかと思いますが、この行革会議の質問項目を見まして、実はびっくりいたしました。またここからやるのか、今までの議論は何だったんだろうか、率直にこういう印象を持ちますが、いかがでございますか。
  82. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、事務局が恐らく今後の作業の参考のために求めたものであろうと思います。ちょっとその調査そのものを実は存じませんでした。  しかし、私は、一番これから問題になってまいりますのは、一つの意味では、実は財政構造改革との絡みではないかと思うんです。  財政構造改革を進めていきますときに、例えば新たな技術開発を必要とするような研究開発への投資というのは、経済構造改革という視点では求められるが財政構造改革では頭が痛いといったようなものが出てくる確率は多いと思うんですが、行政改革という視点からの場合、既に地方分権推進委員会は、先般、第一回目の機関委任事務についての作業結果を下さいました。そして、残っているものを春ぐらいまでに全部整理を終わるという御連絡をいただいております。これは、行政改革会議としては、その作業をそのままちょうだいすることによって、分権についての部分の議論を、少なくとも機関委任事務について省略することができます。  また、行革委の方で既に作業をしていただき、また、今委員からもありましたが、経済審等から特に六分野の規制緩和について御意見をいただきました。こういうものは、三月末にまとめます政府の規制緩和推進計画の中に取り込むことによって、それだけ行政のスリム化ができる部分を行革会議の仕事から外すことができます。  私は今、事務局の調査と申しますのは、そういった意味で論点の整理をしていくためのデータと思いますけれども、いずれにしても、コントーロールが必要であると言われるのは、私もそのとおりだと思います。特に行革委員会及び地方分権推進委員会は、会長自身に行革会議のメンバーを兼務していただきながら、議論の重複を排除するように全体を動かしてまいりましたし、これからもまいるつもりでございます。
  83. 横路孝弘

    横路委員 既に出されているメニューについて、当然のことでありますけれども、各大臣にやはりその具体的な目標を設定して改革を進めるようにということで、私はリーダーシップを発揮すべきではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  84. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先週、ペルーに出発いたします前の閣議であったと思いますが、同様の指示をいたしました。  そして、例えば、現在制度的に審議会に結論をゆだねなければならないようなものについては、その審議会での作業の終了時期を明らかにするように、あるいは、検討中という答えが出ているのであるなら、その検討がいつまでに終わるという時期をできるだけ明示するように、そうしたことまで、たしかペルーに出発する日の閣議であったと思いますが、各閣僚にそのような指示をいたしております。
  85. 横路孝弘

    横路委員 省庁再編の前提は、やはり規制緩和を進めること、地方分権を進めること、それから官民の役割分担を明確にするということを行って、まず、やっぱり各省庁スリムになるということが前提なんですね。例えば、許認可をやめて事後の届け出だけにするというように制度を変えますと、そこで確かに仕事も人もスリムになるわけですね。それから同じように、機関委任事務から完全な自治事務になりますよということになりますと、そこもやはりスリムになるわけです。  今までの例えば国の関与というのは、今一九九五年の数字で千二百二十六件もありまして、関与の言葉で言いますと、承認あり、認可、命令、指揮監督、指示、許可、取り消し、報告、届け出、通知、提出、勧告、協議、助言と、これだけ中央と地方との関係であるわけですね。これがなくなれば、そこで確かにスリムになるわけなんですよ。  そこで、諸井委員長、大変お忙しいところ、ありがとうございました。お待たせいたしました。  大変御苦労されて今日まで地方分権推進委員会の中で御努力されてきたと思うのです。私は、省庁再編の前提は、今申し上げましたようにやはり各省庁がいろいろと仕事の面でスリムになることだというように思いますので、その点についての委員長の御見解と、それから、今回の勧告で本当にスリムになるのかなという疑問はあります。というのは、自治事務の中にも協議や合意をしなければいけないというのが出てくるわけですね。  したがって、この関連でもう一つ、スリムになるのかということと、これから検討される事務、自治事務にするか法定受託かというもの。これはもう既にいろいろと各省庁、問題があるということで挙げたもの、これについて今日まで検討されてきたと思うのですね。したがって、これから残っている事務というのはそんなに問題はないというように考えていますけれども、残った事務の区分に当たりましても、できるだけ自治事務にする分野で協議とか合意を目指すというような事項がやはり少ないことが望ましいと思うのですが、その点についての委員長のお考えをちょっとお願いしたいと思います。
  86. 諸井虔

    ○諸井参考人 地方分権推進委員長の諸井でございます。ただいまの御質問にお答えをさせていただきます。  私どもも、地方分権を進めていくことが中央省庁のスリム化につながり、行政改革につながっていく非常に重要なポイントであろう、したがって行政改革あるいは規制緩和と相矛盾するものではなく、むしろ一体をなすものであるというふうに考えております。  それで、今回、第一回の勧告で機関委任事務制度の撤廃を提案したわけであります。それに伴って、大体、法定受託事務と自治事務という仕分けを行いまして、自治事務についても一部いろいろな関与が残るということは確かにおっしゃるとおりでありますが、しかし、基本的に、機関委任事務制度で中央の省庁が最終的な問題まで権限を持ち指揮監督をしてきた体制と、自治事務に移って多少の関与が残っているという体制とは非常に大きな違いがあろうかと思いますし、それから、権限の移譲もかなり進めたつもりでございます。  今後、さらに残っております機関委任事務の仕分け、それから補助金の問題、その他いろいろございますけれども、全体の方向としては、中央省庁の仕事をできるだけ軽くして、これを地方の方の責任と権限に移していく、それによって住民の意向が地方行政に反映できるようにというようなことで、これは確実に行政改革あるいは財政再建につながるものである、こういうふうに認識をしております。
  87. 横路孝弘

    横路委員 地方分権を進めていく上で、機関委任事務の廃止と、もう一つ大事なのは、今の補助金制度をどう考えるかということなんですね。これは、もう今二千件を超えておりまして、地方自治体としては大変これに業務をとられているのです。  例えば、補助金をもらって道路をつくろうといたしますと、まず補助事業として認めてもらえるかどうかということで、承認のための事務が必要になりますね。さらに、それは認めたよということになりますと、今度は道路の図面ですね。縦断図、横断図、平面図。横断図は二十メートルごとに持っていかなければなりません。そして、道路構造令に道路が合っているかどうか、あるいは技術的なアドバイスなどもいただく。設計変更のときもまた同じことをやるというのが、河川でも基盤整備でも同じように行われているわけですね。  この体制は、やや、どちらかというと開発途上国の体制なわけです。まだ技術者が育っていないときに、国が責任を持って、間違いないようにダムをつくりますよ、道路をつくりますよという体制なんですね。ですから、イギリスのような国になりますと、ほとんど技術者というのは政府の中に抱えておりません。もう民間でやれるし、地方でやれるという仕組みになっています。  それで、この補助事業の占める割合なんですけれども、ある調査によりますと、大体、申請業務の日常業務に占める割合が都道府県で三一%ある、市や特別区で二八%ある。三分の一がさまざまな補助申請の業務にかかわっている。あと、機関委任事務が大体仕事の八〇%、都道府県の場合は。市町村は四割ということでございますから、じゃ、一体時間がどうなるのかということになるわけなんですけれども、本当に地方分権を進めていく上ではこの補助金制度をどうするかということが大事でございまして、これが残りますと、実はスリム化という点からいいますと余り実態が変わらないことになるということになります。  私は、でき得る限りやはり一般財源化いたしまして、補助金の整理そのものを、事業そのものを廃止、減少して、丸々地方自治体の仕事とする、いわば一般財源化という方向が大事だと思いますが、ぜひ諸井委員長には、この補助制度についても、既に中間報告は出ていますけれども、この方向で議論を進められて、名実ともに地方自治というものが確立するように御尽力をいただきたいと思いますが、御見解。
  88. 諸井虔

    ○諸井参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  補助金の問題につきましては、方向としては、今回の勧告に伴って補助金、税財源に関する中間取りまとめを発表いたしまして、その中では、おっしゃるように、補助金を義務的な補助金とそれから奨励的な補助金に分けて、特に奨励的補助金については縮減の方向でやってまいりたい、それから補助条件もできるだけ緩和していくというふうなことで、全体として地方の自主性を高める方向でやってまいりたいというふうに述べておるところでございますが、具体的な点は、実はこの一月からスタートしたばかりでございまして、これから六月末まで精力的にそういう方向でやってまいりたいと思っております。
  89. 横路孝弘

    横路委員 諸井委員長にあともう一言。地方分権推進委員会の中で、大変各省庁との対応などで御苦労も多かったのではないかというように思うんですね。今までも臨調以来さまざまな、ある意味ではいい内容の答申というのが出ているんですね。しかし、これはなかなか実現できなかった。今まで本当に大変な会合を重ねてやってこられた御努力の上に、これをやはり実現していくというためにどんなことが必要だというようにお考えでしょうか。
  90. 諸井虔

    ○諸井参考人 このたび勧告をまとめるに当たりまして、三月に中間報告を出し、その中間報告を土台にして、地方団体あるいは中央の省庁、有識者、それからあるいは地方へも出向いて地方の方の御意見も伺いまして、そういうものを参考にいたしました上で、さらに委員、専門委員の一部の方と各省庁の担当の方と相当密接な協議をしてもらいました。このことはやはり、理念的な問題とそれから実行上の問題とを突き合わしていくという意味で非常に効果があったと思います。  したがいまして、このたびの勧告につきましては、実現性の高い、内容のしっかりしたものだと自負をしているわけでございますが、それだけに実行く直ちに向かっていけるものではないかというふうに考えております。
  91. 横路孝弘

    横路委員 総理、今委員長の方から、直ちに実行のできる内容にしたんだというお話がございました。この分野については、先ほど総理からも御答弁ありましたけれども、そろそろもう受け持っていろんな作業を進めているところ、あとはどう具体化するかということでございますので、地方分権に関することについてはこの委員会に、それからまた規制の緩和やなんかについてはいろんなところでやっていますが、行政改革委員会のこういう努力を踏まえた形でひとつ行政改革会議の方でやっていただきたい、このように思いますが、いかがでございましょう。
  92. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何度もお答えを申し上げておりますように、行政改革会議そのものをつくります時点で、行政改革委員会、地方分権推進委員会のそれぞれ今まで積み重ねてきていただいた作業を生かせる仕組みとしてスタートをさせております。これからもそのような運営をしてまいるつもりでございます。
  93. 横路孝弘

    横路委員 最後に、ちょっと大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、この行政改革についての国民意見というのはずっと盛り上がってきているわけですね。期待というのも大きいと思います。その底辺にあるのは、今日までの住専の問題でありますとか……
  94. 深谷隆司

    深谷委員長 諸井さんいいですか。諸井参考人はお帰りでいいですか。
  95. 横路孝弘

    横路委員 結構でございます。
  96. 深谷隆司

    深谷委員長 どうぞ。
  97. 横路孝弘

    横路委員 ありがとうございました。  住専の問題でありますとか、あるいは薬害エイズの問題でありますとか、さまざまな官僚の手による汚職事件といったようなことがやはりこの行政改革への大きなうねりになっていると思うのですね。そうした中でまたオレンジ共済あるいは泉井事件といったものが発生したわけでございますが、オレンジ共済事件についてちょっとお尋ねをいたしたいというように思います。  警視庁がさきに詐欺容疑で逮捕したわけでございますけれども、議員ということを隠れみのに定期預金事業などで九十一億円もだまし取ったということでございまして、信頼回復を求められている今日の政治に対する国民不信感というものを一層増幅させたものだというように考えております。特に、友部氏の参議院の比例名簿順位の引き上げにつきまして、いろいろなそのための資金を流したというような当事者の証言なども重なって、その不信というものはますます高まっていると言っていいかと思います。  このオレンジ共済組合につきましては、公職選挙法あるいは政治資金規正法違反の疑いとともに出資法違反、最初の警視庁の捜査というのは出資法違反から始まっているわけですね。  この出資法違反についてなんですけれども、このオレンジ共済のいかがわしいなということは比較的早い時期からやはり問題になっていた。既に一九九二年ごろ、大蔵省のサイドの方に、例えば保険課などの方に、これは問題じゃないかという指摘があったというような話もございます。しかし、まだ当時は社会問題として顕在化していなかったということで、そのままに過ごされてしまったということを聞いておりますが、この逮捕事件に帰着する以前に、大蔵省に対して、このオレンジ共済に関する問題を指摘する声が現実にあったのではないかというように思いますけれども、あったのかなかったのか。あるいは、なぜその出資法の観点からこれをチェックするということができなかったのか。  この点、ぜひ大蔵大臣にその辺の真相をお伺いをいたしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  98. 三塚博

    ○三塚国務大臣 後ほど、投書及び相談の案件は銀行局長から報告をさせます。  事件の端緒となりました出資法第二条、これは預かり金禁止の実効性を専ら罰則の適用によって担保しようとするものでございまして、大蔵省は、出資法上、具体的な規制監督権限を有しておりません。刑事当局による対応が行われることとされております。  しかしながら、大蔵省としては、この事件の重大性にかんがみまして、政府広報を活用した一般国民に対する注意喚起、さらに捜査当局との連携強化等を行いまして、出資法違反の未然防止の観点から最大の努力をするというのが精いっぱいのただいまのところであります。  政府委員から簡単に事実関係を。
  99. 横路孝弘

    横路委員 ちょっと委員長、もう一つだけ。  そういう市民からの指摘というのがあったのかどうか、その点もひとつ含めてちょっとお答えいただきたいと思います。
  100. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  平成七年の十二月に、中国財務局に対しまして一般の市民の方から問い合わせがありまして、その際、出資法の趣旨等をこちらで御説明を申し上げております。その後、マスコミ等からもいろいろな情報がございまして、八年の七月三日になりまして、広島県警の方に対しましてそれらの情報を参考情報としてお伝えした。その後、御承知のような展開になっております。
  101. 横路孝弘

    横路委員 もう少し早い時期にもそういう問い合わせがあったというような話もございますので、大蔵大臣、もう一度ちょっと庁内調べていただきまして、そういう事実があったのかどうか。  それから、今のお話ですと、そのときの対応、国民に対してどういう対応をするのか。こういういろいろないかがわしい活動については、たしか経済企画庁などでもそういう情報を提供するというような活動を行っているわけですね。そういうやはり連携も必要だろうと思うのでございますが、その調査をひとつお願いをしたいと思いますが、いかがですか。
  102. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御指摘の二点について調査をし、御報告をします。
  103. 横路孝弘

    横路委員 いずれにいたしましても、今抱えております改革の課題というのは、本当にもう大変大きな課題でございます。しかし、この課題をやはりしっかりやり遂げなければいけない。やっていく中では、政党そして私どもを含めた政治家一人一人の自己改革も問われているのだというように思っております。  今日のこのオレンジ共済あるいは泉井事件などにつきましては、国会としても関係者の証人尋問でございますとか、あるいは国政調査権などを使いまして解明に努めていかなくてはいけないというように考えている次第でございます。これらの事件の再発防止について、政府におかれましてもさらに真摯な努力をされることを求めまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  104. 深谷隆司

    深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  105. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、鳩山邦夫君から関連質疑の申し出があります。横路君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鳩山邦夫君。
  106. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 バブルが崩壊をして、不良債権というものが、いろいろ定義はあるでしょうが、大変な量の不良債権が存在をしていると言われる。六十兆と言う人もいれば、八十兆と言う方もいる。あるいは世の中の債権債務の総額の六%とか一割ぐらいが不良債権化しているのではないかというような話があれば、もっと大きな不良債権額というのは想定されるかもしれない。何をもって不良債権と言うのか、その定義は私もしっかりとはつかんでおりませんが、世の中に大体どれくらいの不良債権があって、それをどんな感じで処理が進んでいくことを望むのか、大蔵大臣から御答弁いただきたいと思います。
  107. 三塚博

    ○三塚国務大臣 正確な債権の額面は政府委員から後ほど答えさせますが、住専処理につきましては、御案内のとおり、関係法によりまして、ただいま中坊社長、松田理事長等々、真剣に回収に努めております。それがどのような予定額を、回収をして額になるのか等もありますが、私が報告を受けておりますところによれば、着実にその回収に向けて取り組んでおると言われております。  鳩山議員の言われる、世の中における不良債権、外国の分まで例に引きますと気が遠くなる話でありますが、我が国のことは我が国の機関が確実にこれを整理をし、対応しておるところでございます。私は、不良債権の問題についても、関係機関の努力、リストラによりまして、着実に進んでおるものと考えますが、政府委員から聞いてやってください。
  108. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 政府委員の答弁は要りません。  要は、今後の不良債権、その処理等で、公的資金といっても、それは住専のように税金をぶち込んでしまう場合と、あるいは日銀の融資とかいろいろな違いがあろうと思いますが、最近そういうような議論が幾つか出ておるようで、ただ、私は預金者を保護する、いわゆる国民の預金が脅かされるというような事態がもし万が一起きるときには、緊急避難としてそういうことも考えていいと思いますが、そうでない場合は、これはすべて民間での出来事でありますから、公的資金、まして税金を投入するというようなことは絶対あってはならないと考えているわけであります。  特に、そうなりますと、昨年の住専はなぜ六千八百五十億、国民一人五千五百円も税金を使って穴埋めをしたのかという問題になる。それは、住専でいろいろ被害を受けたあるいは住専で損をした人たちというのは利益を当て込んでおったわけだから、これはもう自己責任の原則で民間は処理をしなければならないのに、なぜか住専だけは、一次損失六兆四千百億円だったかと記憶をいたしておりますが、これは母体行が三兆五千億でしょうか、一般行が一・七兆でしょうか、そういうようなことで、あとは農林系信連、共済連が大分減額をされた。  自民党の選挙運動ではないかという説も随分あったわけでありますが、預金者保護という観点がないのになぜああいうような税金を使ったかということで、今の民主党ではそれは菅代表とか鳩山由紀夫代表というのはそっちに賛成した方でしょうから、これは民主党の中でもまだ議論は大いにしなくちゃならない問題であることは私はわかっておりますが、座り込みがよかったかどうかは別にして、決していい方法だとは思いませんが、私も何日間かは座り込んだ人間であって、決して自慢にはいたしませんが、やはり国民の税金をああいう形で使うことは絶対まずかった。  ところが、最近そういう話が出てきますと、あつものに懲りてなますを吹くようなことがあってはならぬというようなことが自民党筋から聞こえてくる。でもこれは、住専で自民党は懲りてないのじゃないか。あつものに懲りなかったから熱したてんぷら油でも飲んでやろうというような、それで大やけどするのかなというような思いもなくはない。  そういういろいろな実態があろうと思いますが、そこで私は、これは総理以外にはお尋ねができないのかと思います、なぜなら自民党のことでございますから。昨年の二月の十七日に、総理は総裁として銀行からの献金辞退を表明をされた。ところが、住専の決着がついた七月の上旬に、党三役と国民政治協会の名前で全国銀行協会連合会に七億円の献金を文書で要請をしておられる。それは本来、母体行やあるいは一般行がどれだけ負担するか、本当は全額負担すれば国民の税金を一円も投入する必要がなかったわけだけれども、そこは金融機関も守ってやろうということで税金が使われたのが六千八百五十億であった。そういう状態だから、総裁が金融機関からの献金を辞退しようと二月の十七日に発表されたのはまことに至当なものだ。ところが、七月上旬にはもう既に党三役の名前で銀行協会連合会に献金の要請をして、そして九月の十一日に全銀協の会長行であるさくら銀行の方が、岡田専務という方がそういう要請は文書で確かにありましたと認めているわけですね。  ちなみに、これは九月二十日に根本日経連会長が、銀行界への献金要請は全く常識外れだということをおっしゃっている。それが昨年の暮れからことしの初めになって、一月十三日に発覚をしたのは、年末に都銀、長信銀十三行に計二億四千万円の献金依頼があったようだ。そういうことですが、あと信託、地銀、保険などを含めて、私の知っている資料では、都銀、長信銀に二億四千万、地銀に一億、生保九千万、信託銀行六千万、これらすべて住専の母体行にもなっているところでございまして、合わせると大体五億円ということになるわけですね。  五億円の献金要請をしたということであれば、国民に六千八百五十億負担をさせておきながら、それだけ金融機関の母体行や一般行の負担を減じておきながら、そこから五億円自民党が政治献金をもらうということは、いわば六千八百五十億円のうちの五億円は、国民一人五千五百円ずつ払いながら実は四円ずつぐらいはみんな自民党に入っちゃう、こういうことになると思いますが、いかがでしょうか。
  109. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 住専の母体行からの寄附というものにつきましては、住専処理問題に関する国民の世論等を配慮しながら、昨年二月に当面の間自粛するということを党として決定をしたことでありまして、その決定に基づいて現在も寄附の要請はいたしておりません。  なお、最近復活したという御指摘でありますけれども、これはその使途を党の借入金返済への充当ということに限定した上で、平成七年からの計画として各方面から御協力をいただいているものであります。
  110. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 いや、そこが問題なんで、これは一九九三年に自民党が都銀八行から百億円を借り入れた、その返済に充てると。しかし、返済に充てるから新しい政治献金の要請でないというのは、一見何かもっともらしく聞こえますが、全く実態に合わない。それは要するに、自民党の借金がそれだけ減るわけですから、新しくお金をもらったってそれを充当すれば減るわけですから、特別な事情がある、新たに政治献金を要請したんではないんだ、借金を少し減らしてもらうんだ、相殺してもらうんだなどという理屈は全く通らないと思いますが、いかがでしょうか。
  111. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 党の経費に充てるための寄附とは全く別な性格のものであります。(発言する者あり)実質的に党の財源となり得る寄附とは異なる性質のものと心得ております。
  112. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 しかし、今やじで、お札に番号が振ってあるわけでもないし、お金に色はない。それは、借金の返済に充てるものとそうでないものを区別しろというのは無理で、百億円のものが金融機関からの献金で減っていくというんですね。五年間で大体二十七億ぐらいを金融機関からのそういう同様の処理で減らそうということでしょうから、百億の融資を受ける、借金があった、そのうち二十七億ぐらいを金融機関が返して、あとはほかから七十何億か埋めていくんだろうと思いますけれども、それは借金の返済だから政治献金ではないというような考え方をおとりになるのは全く不当だと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 不当という言い方をされましたけれども、私どもは、まさに今申し上げましたように、返済計画を立て、そのためのものを全く別の経理処理をいたしております。
  114. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 でも、例えばそれが通用すれば、私たち民主党だって、どこかからがばっと借金をしてしまって、それで後は借金の返済だからといっていろんなところからお金をかき集めても、すべてそれは借金の返済だからという言いわけがきくようになるので、これ以上この話は、参議院でも質問に出たという話を聞いておりますから、繰り返しになるだろうと思いますが、これはまやかしであって、しかも今回の新しい献金の二億四千万とかあるいは他の金融機関を含めた四億九千万とか五億円というお金について、それは金融機関の方もコメントを出して、今回の献金というのかな、借金の肩がわりというのか、借金の相殺というか……(発言する者あり)これは特別なんだ、特別なんだと。今約束事だとおっしゃったならば、例えばお金を百億借りて、後は毎年五億ずつ二十年間持っていらっしゃいというのも約束ということになってしまうのでね。そんな言い逃れは絶対通用しないということを強く主張いたしておきます。(発言する者あり)  いや、それは、政治献金がいい、悪いということで言えば、私は政治献金は悪いとは思っておりません。それは企業献金だって、一定の限度があればよろしいのではないかと私は思っていますが、ただ問題は、住専のことがあって、六千八百五十億という穴があいたのは、それは信連や共済連だ、農協関係だとは一般に言われているけれども、でも、もう少し母体行や一般行が負担をしておったら、六千八百五十は大幅に減ったか、あるいはなかったかもしれない。そのお金が五億円、自民党に流れていくならば、それは国民の税金が自民党に入っていく。これはまさに税金泥棒としか言いようがない、私はそう考えていることをはっきり表明をしておきます。  そこで、これから少しは夢のある話にかわりたいと思いますが、教育については先ほど森山眞弓先生も質問されておられて、私は少し聞いておりましたけれども、実はこの間、総理が文部大臣に対して、そのプログラムを示せとおっしゃったのが一月の七日ですよね、そうですね、文部大臣。それに対して一月の二十四日に、教育改革プログラムの骨子というのが文部省から出た。私もこれは細かく読んだ。ただ、これが教育改革かな、教育の若干の改善措置という感じかなという程度のものであって、目新しいものはないし、深く突っ込んだものがないしということは、私もかつて所属をしておりました自民党の文教関係の合同会議でも、相当こっぴどくやられたんだと思う。  森山眞弓質問にもそういうような色彩があらわれていたと思うし、実につまらぬペーパーを文部省がつくったなと思うんですが、この原因として私は、さっき総理森山質問に答えていろいろ話されておられたが、かつて中教審の四六答申で、あるいはまた「期待される人間像」とかいろいろあったけれども、やはり総理大臣は、あるいは内閣は、日本の将来はこういうような社会にしたい、そのために人材はこうあるべきだ、青少年は個性豊かに、能力がこういうふうに開くようなそういう世の中をつくりたい、あるいはもっともっとストレスに負けないで幸せをつかみ取れるような、そんな青少年をつくりたいというような話を、「期待される人間像」という言葉では余りにも官製の印象があるかもしれないが、教育については、それは個別の問題も私も質問させていただくが、個別でなくて、どんな日本人だったら、どんな日本人ができ上がればすばらしいんだろうという大きな理想を私は総理は持って話していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  115. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何遍か私は私なりの言葉で同じような御質問にお答えを申し上げてまいりました。その骨格となるものは、私流に言わせていただくなら、みずからが夢を持ち、その夢の実現のために努力し、そしてその夢がかなえられるチャンスのある、そうした国の中で、みずから問題にチャレンジするだけの強さを持ち、失敗しても立ち上がれるだけの精神の強さを持ち、そうしたまさに青年が育ってくれるようなものにしていきたい。  そして、その上でいろいろつけさせていただきますならば、当然のことながら私は、目上の人に対する尊敬でありますとか、弱い者をいじめたりしないとか、本来人間が持っているべき素養というものは持った上で公正な行動のとれる青年に育ってほしい。  その上でなおつけ加えさせていただきますなら、戦後五十年の間日本が目指してきたものは豊かな国土であり、平等性、均質性というものを強調した教育でありましたから、往々にして、よりよい記憶力を誇り得る人が成績のいい方と言われてきましたけれども、みずから問題をつくり出し、そしてそれに向かって解決への努力のできるような、言いかえれば応用技術の範囲から基礎研究の範囲に視点の移せるような、そうした人が育ってくれることを願っております。
  116. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 私、今の総理のお話は非常にいいお話だと思いますよ。私もかつて文部大臣をやらせていただいたときに、やはり何らかの像は示さなくちゃいかぬと思って、それは優しくて、たくましくて、国際性を持った子供をつくりたいというようなことを、つくるという考え方はちょっと横柄な考え方かもしれませんが、そういう子供が育ってほしい、それがまた二十一世紀日本を支えてくれる貴重な人材になってくれるでしようというようなことをいろいろなところで申し上げたんですが、さすがは、総理の今のお話を聞いていれば、私はなるほどそれは立派なお考えを持っていると今感じました。  ただ、ならば、総理は何で一月七日の「文部大臣への総理指示」を今のような言葉で語っていただけなかったか。取扱注意なんて書いてあるけれども、要するに、五つの改革自分は提案をした、第二次橋本内閣発足に当たって。しかし、それに教育改革を加えようと。このときこう書いてあるんですよ。文部大臣に対する指示、「この国の唯一の資源である人材を育む教育についても、臨教審の結論や中教審での検討など、」いろいろやっていますね、「自分自身の頭の中で整理しきれなかったため、あえて指示などをしなかった」、でも、立派に整理されておられるじゃないですか。それならこんな、頭の中で整理されていないからうまく書いてくれと言うから、適当に書くから、自民党でもたたかれるようなプログラムの骨子、内容になってしまうのです。  私は、そういった意味では、総理が文部大臣と相談されて、やはり今のような話をどんどん外に向かってされるべきである。教育の根本というのは、やはり目標とか理想というものが相当高くあるべきだと思っておりますし、今総理がおっしゃったかなりの部分、特に人に対していたわりの気持ちを持つとか、自立と共生とか、そういう考え方が一番大事なので、これを一言で言うと友愛となるわけですから、ぜひこの友愛という考えで、二十一世紀の教育は友愛というテーマでやればこれは間違いないだろう、こういうふうに考えます。  それから、私、実は時間がありませんから具体的に提案を申し上げますが、教育の地方分権の問題なんですね。これは、多様性のある子供たちにどう接していくか、地域にも特性があるでしょう。それぞれの個性を伸ばすのが教育のこれからのあるべき道ですね。文部大臣、そうでしょう。  そこで、教育の地方分権化ということは、もちろん文部省がやらなくちゃいけないことは山ほどあるのです。私は、国立大学を民営化するのがいいとは決して思っていない。高等教育の背骨としては国立大学があっていいし、文部省がそれと一体であっていいと思っている。あるいは、教科書の検定は、中曽根さんは要らないとおっしゃったが、私は、やはりうんと幅を持たせた中で、それは従軍慰安婦のことを書くか書かないかは自由だというぐらいの自由度を持った教科書の検定というのは、そういうのもあった方がいいと私は思う。  問題は、かつて、今は非常に給料が上がらない時代だけれども、ベースアップが一%あると文部省は三百億余計お金がかかると言われた。シーリングで抑えられてましょう。一%上がると三百億お金がかかる、四%のときには千二百億。これを、タコが自分の足を食うようにどこかで消化しないと、シーリングの中で文部省予算というのはできてこない、こういう状態がずっと続いてきましたから、したがって、文部省予算というのはもうほとんどが人件費だ。  人件費というのは、もちろん国立学校の経費もあるが、その過半は義務教育国庫負担制度というものである。これが今では、文部省予算が大体四兆五千億というような段階の中で、約三兆円が義務教育国庫負担制度である。すなわち、全国の公立の小中学校の先生方あるいは事務職一栄養職の方々の半分を国が負担するという仕組みであります。  これはもともと、地方公共団体、とりわけ都道府県が財政的に恵まれていなかったときに、差がついてはいけない、あるいは先生方が聖職であるのに給料が払えなかったら困るということで、国がその半額を全部持ちましようということでやってきたわけでしょうが、私は今後の地方分権を考えるときに、行政改革というのは地方分権と一体にならなければ絶対効果を持ち得ないというのが、私のこれは持論でございます。  そういう意味でいえば、義務教育国庫負担制度は全部一般財源化して、地方が直接責任を持つような仕組みにすればいいと思っている。恐らく文部官僚の九九%は反対をするでしょうね。それは自分たちの権益だと思っているかもしれない。でも、そういう考え方でもう政治や行政はやるべきでないのです。  地方分権化するのだったら、これは例えば、私が今のような話をすると、ある文部官僚は、鳩山さん、票が減らないように気をつけた方がいいですよと私に言ったわけです。それは日教組が怒る、こういうことなのかななんて私は解釈をしましたが、そうじゃなくて、例えば日教組の方々からいろいろな要求が出るのは、今まで予算を抑えるために、枠内に抑えるために、例えば旅費や教材費を一般財源化する、それからあるいは何かの退職のあれの一部を一般財源化するといって何とかつじつまを合わせてきた文部省予算というものの苦しい実態というのがあるわけだから、だからこれを全部一般財源化して、自治省にお願いするというか地方にお願いをすれば、文部省はもう政策官庁に脱皮できるわけですよ。それはいわゆるフェローシップの問題であろうと、科学技術の問題であろうと、あるいは私学助成の問題であろうと、本当に使うべきところにお金が使えるようになる。  私は、行政改革地方分権を一気に解決する問題として、小出しにして何かを一般財源化するんじゃない、あのでかい三兆円の義務教育国庫負担制度を廃止をするぐらいのお気持ちで臨む勇気がおありかどうか、文部大臣でもお答えいただきたい。
  117. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 この問題は、義務教育に関する根幹に触れる問題であります。したがって、私ども、義務教育というのが、やはり戦後の憲法でひとしく国民が教育を受ける権利がある、また保護者はそれを受けさせる義務がある、こういうことに基づいて、教育基本法で九年間の普通教育に関しては無償でやる、こういうことで今のシステムができ上がったわけです。  そこで、豊かになったからすべて地方へ任したらいいじゃないか、こういう御議論ですが、自治体によりましては、三千三百あるわけでありまして、まだ経済格差というのはたくさんあるわけであります。したがって、私どもはこの九年間の義務教育というものが、そういう経済的な事情によって変化をもたらされるということではなくて、やはり国の責任としてすべてひとしく国民が教育を受ける権利がある、教育の機会均等ということ。それから、地方はそれに基づいてそれぞれの学校を設置し、そして内容を決めて教育をしていく。そういう国と地方との役割分担というのは画然とあると思うのですね。  国はこの制度の枠組みを維持し、そして各種の基準、例えば学習指導要領、こういうものを、やはりこれは全国統一的な枠組みとその内容というものは決めるべきでありますし、地方はそれに基づいてその他の仕事をやる、こういうことですから、この問題は現在の教育制度の根幹にかかわる問題ですから、そう簡単に全部地方へ任せろという議論には私は賛同しがたいということであります。
  118. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 いや私は、だから先ほど申し上げているように、教科書検定とか学習指導要領とか、そういうことは政府が決める責任があると思うが、しかし、財政的に見て今後の地方分権ということで考えて言えば、これはシンボルになり得る。  しかも、だからできれば、私は昔田中角栄先生の秘書であったけれども、田中先生は日本列島を輪切りにすればいいと。道州制でしょう、一種の。どこのところも日本海側と太平洋側と両方あるようにして輪切りにしていって、大きな自治体が八つとか十あればいいというのを今でも信奉していますから、強いて言えば道州制だ。それぞれの道と州が教育の全責任を人件費の上でも持ったらどうか、こう考えているわけです。  時間がありませんので次に行かなければなりませんが、実は、中高一貫。中高一貫が今回中教審で取り上げられておりますのは、私は中高一貫、昔から持論でございましたし、新進党の皆様方も中高一貫についての研究をずつとされてこられて、そしていろいろ打ち合わせをしたこともあるわけですが、実は先ほど気になったのは、森山眞弓質問のときに、中高一貫、昔六年制中等学校という話が臨教審の結論で出たが、ほとんど行われていませんが、中高一貫というのは、例えば名前を出しては悪いですが、私学でいうと灘とか武蔵とか麻布もそうでしょうか、総理のところも、何かこう超エリートコースみたいな。それで、先ほどの森山さんの質問というのも、中高一貫六年間やればオリンピック選手が育つのだという、あるいはノーベル賞がとれるのだと。  私は、そういう感覚で一部のエリートのみが六年間ということを言っているのじゃないのです。私の基本的な発想は、十五歳の春には受験があってはならないと。十五の春は泣かすなじゃなくて、十五の春の受験はなくすればいいと。全部私は偏差値を使ってはならないということで、いろいろなところと大げんかをしました。高校入試をめぐって業者テストの偏差値を使うのはおかしいじゃないかということをさんざんやったけれども、でも問題の根本的な解決というのは、結局、その辺への悩み、十五の春の受験、そこに偏差値がべたべた張られることが、いじめとか自殺とか、いわゆる暗い、前期中等教育、中学校の三年間に投影をしている。  だから、問題の抜本的な解決というのは、六年間、みんなが六年間もう自由自在に思い切り個性を伸ばす。まあ最後の一年ぐらいは大学受験ということになりますよ、中高がつながるんだから。でも、それは、もう十七歳、十八歳になれば大人なんだからそれくらいの責任はとれるだろうと、こう考えまして、私は、中高一貫という考え方は、これは今は大体設置者が違いますからね。高校は都道府県がほとんどでしょう。小中学校は、まあ中学校は市町村でしょう。でも、まさにこれも行政改革になってくるわけで、これは行政上の問題だから技術的にやればできるわけです。私は、エリート校をつくる、六年間体操だけやる、野球だけやるというんじゃない、すべての子供が、六年間全部中学と高校とつながっちゃう。高校受験というのはありません。だから、義務教育が九年から十二年に延びたって私はいいのではないかと思っている、まあ高校が進学率がほとんど  一〇〇%に近いわけだから。  しかし、それが義務というのがおかしいならば、新進党は、就学保障期間というのかな、行ける人にはいわゆる今でいう高校分は全部保障します、まあ準義務化というのか、それはよくわかりませんが、言葉の問題でしょうが。  私は、だから、全国民が、全部の中学校、高等学校がつながる、私学にもいずれそういうふうにしていただくということを希望して考えているんですが、文部大臣、いかがですか。
  119. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 中高一貫教育につきましては、今まで数々提言もありましたし、また、自民党初め各党からのいろいろな提言もございます。  私ども、このたび発表いたしました教育改革プログラムの中でも、この中高一貫教育というのは重要な一つの柱として位置づけております。  これはなぜかというと、今鳩山委員も指摘されたように、一番精神的に思春期の動揺の激しいときに、受験戦争あるいは偏差値教育、こういうことでゆとりのある教育ができない、そのために人間性の涵養というものがおろそかにされる、そういう弊害がなかったかどうか。そういう反省に基づいて、今回、二つの視点から、一つは、新しい時代に沿ったすぐれた人材を養成するという観点と、もう一つは、やはり先ほど総理が申されたように、一人一人が自立心を持ったり、創造性とか正義感とか倫理観とか、そういうものを持った豊かな人間性を涵養するという、そういう二つの観点に立って中高一貫教育というものを導入しようとしたわけでありますが、従来の教育制度というのは、どうも平等性とか画一性という中で非常に選択の幅が狭い、そこで今度は、少し、何といいますか、選択の幅を広げる、こういう意味で中高一貫教育も一つの選択肢としてやるということであって、目的は、豊かな人材養成ということにかなり重点を置いた制度だというふうに考えております。
  120. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 時間がありませんので急ぎますが、要するに私は、間違っても六年制のエリート校をつくるというのではなくて、学制改革、六・三・三・四を六・六・四に向かって進めるぐらいの気持ちでやっていただければこの国は変わる、青少年の環境は変わると思っています。  個性豊かな多様性のある人間をつくろうと言いながら、それを邪魔しているものがある。というのは、これは大学入試センター試験でございます。  これは、大人の方から見れば、基礎、基本の到達度を見よう、そういうふうな試験でありましょうが、かつての共通一次試験の使命もそこにあったと思いますが、これは大人の論理なんです。子供から見れば、子供も個性的に生きようと思っても、結局何でも知っていなくちゃいけないというこの大学入試センター試験は、まさに子供の側から見ればこんな嫌なものはない。センター試験は、一つの物差しで人間をはかろうとするものだから、共通の物差しで人間をみんな、いわば偏差値輪切りと同じだ、分けようとするものであるから、このセンター試験は即廃止すべきだと思いますが、総理大臣、いかがでしょう。
  121. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来議員の御意見を伺っておりまして、私は一つ首をひねる部分がございます。  私、自分の子供たちを見ておりまして、中高一貫の学校で学んだ子もおりますし、公立、私立それぞれのところでそれなりの特色のある教育を子供たちが受けてまいりました。そして、その子供によって私は向き不向きがあるなということを、今議員のお考えを伺いながら感じております。  そして、私は、中高一貫教育を自分自身が受けてきましたし、それは私の場合非常によかったと思っております。そして、自分にそれだけの環境を与えてくれた我が母校を誇りにしておりますけれども、私は、すべてのお子さんが六年という時間に縛られる必要があるのかというならば、必ずしもそうは思いません。  それと、先ほど森山議員の質問をエリート教育というとらえ方をされましたが、六年制、中高一貫教育というものを、なかなか進まないのなら例えばスポーツとか芸術という分野からでも早められないかという御質問だったわけでありまして、エリート教育という視点からの御質問ではなかったということだけは私からかわりに申し上げておきたいと思います。  そして、私は、大学入試センター制度というものが必ずしもいいものだと自分の子供を見ておりましても思いません。要は使い方ではないでしょうか。
  122. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 もう時間がありませんが、先ほどオリンピックの金メダルとかあるいはノーベル賞を逃したのではないかということがおっしゃられていた。だから、六年制の学校というのは一部だけぽつぽつつくれば必ずそういう傾向を帯びるから、私は、満を持して、何も来年からと言っているのではない、十分準備を整えて一気にやるべきだ、こう考えております。  それから、これは意見だけ申し上げますが、道徳というのが、今援助交際とかいろいろな問題がありますが、これは世の中も悪い。日本の国は教育がしっかりしておったから、国の治安とか安全というのは非常にすぐれておったと言われていたけれども、今は教育環境の悪化というのか、性風俗のはんらんとかいろいろな有害図書、あるいはマスコミの問題等、少子化というのも影響を受けるのでしょう、いろいろ難しい問題がある。だから、今のお子さんは気の毒なのかもしれません。昔と同じ教育をやっても、それを害するいろいろな周囲の環境があるから、同じ教育を受けても教育効果が上がらない、そういう可能性はあるので、私は、道徳などというものは何となくばかにされてきたのかもしれませんが、これはしっかりと教科として取り上げればいいと思う。  例えば学習指導要領を読みますと、学習指導要領の「道徳」のところは、「だれに対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にする。」なんて、これ、鳩山由紀夫のイメージですね。「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や立場を大切にする。」これは自民党に聞いてもらいたい話ですね。「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や立場を大切にする。」あの補正予算の審議で全く耳をかさなかった。今後、道徳教育というのは政治家にもやらなければならぬか、こう思っております。  最後に一つだけ、総理にデノミについてのお考えを、もう時間がありませんからちょっとだけお聞きをしたい。  私は、百円を新一円にするデノミネーションというものはいつでもやるべきだと思うし、やれるものだと考えています。  これは何が大事かといえば、今一時的に円がちょっと安いかもしれませんが、要は円の国際化の問題であって、例えばドイツでは、輸出をする場合の八割はマルク建てだ、輸入は五割ぐらいマルク建てだ。日本はそうはいかないのは、やはりまだ円の国際化という面での進みぐあいが、円の単位だけ大きいために、それが阻害要因になっている。これからは間違いなくマルチカレンシー体制に入る。ドルだけではない。しかし、円のデノミをやらないと、百円を新一円にして国際比較が全部できるようにしませんと、マルチカレンシー体制といっても、結局はドル・マルク経済だけになってしまうのではないか。  そういう意味で、デノミはぜひやるべきだと思うが、これは、デノミには経費がかかると言う。経費は新しい需要も生む。これは三兆円とか五兆円とか十兆円とかいろいろな意見があるが、しかし、経費はかかるがコストは一時的ですよ。国際化して円の経済圏ができるというような、あるいは円に対する信頼というものは永久に続くわけだから、そのコストと……
  123. 深谷隆司

    深谷委員長 鳩山君、持ち時間を経過しておりますので、御協力をお願いします。
  124. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 効果の永久性を絡めてぜひお考えをいただきたいと思いますが、一言だけ御答弁ください。
  125. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、円の価値が、デノミをするから向上する、しないから下落するという性格のものではない、通貨としての信頼性はおのずから別のところにあると思います。  現時点で、私はデノミを実施するつもりはありません。
  126. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて横路君、鳩山君の質疑は終了いたしました。  次に、志位和夫君。
  127. 志位和夫

    志位委員 日本共産党を代表して、橋本総理に質問いたします。まず、消費税増税を初めとする国民負担増の問題についてであります。  九七年度政府予算案では、消費税率の引き上げ特別減税の打ち切り、社会保険料の引き上げ、自己負担増で、合計で約九兆円に上る国民負担増が押しつけられようとしております。これに対する不安と怒りが今日本列島に渦巻いております。  ある新聞の投書で、こういう高齢者の告発がありました。五%への増税が私には倍に思えてなりません、医療費も上がる、公共料金も上がる、病気持ちの老人には生存権はないのかと問い返したい。こういう声はたくさん新聞紙上にも見られます。  私、今厳しく問われなければならないのは、そういう未曾有の負担増を、どういう経済情勢のもとでやろうとしているかという問題だと思います。  政府の経済白書を読みますと、消費と設備投資を景気回復の二大主役だとして、この二大主役が本格的回復の軌道に乗って初めて景気は自律的回復の軌道に乗ったと言える、こう述べられているわけです。  そこで、総理にこの二大主役の現状についての認識をお聞きしたいと思うのです。
  128. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、経済企画庁長官からお答えします。
  129. 志位和夫

    志位委員 ちょっと待ってください。いいですか、まず総理に、総理の認識をお聞きしたいので、ぜひよく聞いていただきたい。  第一に、第一の主役であるこの消費の問題でありますが、その中心は、GNPの六割を占める個人消費、家計消費であることは言うまでもありません。政府のいろいろなレポートを見ますと、個人消費は緩やかな回復傾向にある、こういうことが述べられておりますが、私、総理に、基本的認識ですから総理に答えていただきたいのですが、七〇年代、八〇年代の景気回復期と比較した場合、今回の九〇年代不況の個人消費の回復、これは著しい回復おくれがあるのではないか、これまでにない低迷状況にあるのではないかという認識を総理がお持ちかどうか、これをまず伺いたいと思うのです。
  130. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今補足をされた部分で、議員が私にお尋ねになった理由がわかりました。  そして、私は、議員の御意見とは違うかもしれませんけれども、間違いなく、私ども数字を見ておりまして、我が国の最近の経済動向というものを見ました場合に、設備投資が回復の傾向にある、また住宅建設が高い水準にある。これはもしかすると、あなたからは消費税の影響で前倒しているのだという御意見があるかもしれません。しかし、現実に高い水準で推移している。そして、個人消費も緩やかな回復傾向にあります。また、減少傾向にありました純輸出もこのところおおむね横ばいで推移をいたしております。  と申し上げた上で、私は確かに、七〇年代、八〇年代の不況から景気の回復するプロセスと現在の状況に差異があることを認めております。そして、それは今ここで初めて申し上げることではなく、いろいろな機会に私は国民に対しても申し上げてまいりました。そして、それがまさに、私どもが構造改革というものを、経済におきましても、財政におきましても、他の分野におきましても必要とすると国民に訴えている大きな理由であります。  なぜなら、議員からお触れになりませんでしたけれども、民間需要も実は堅調さを増しているわけでありますが、従来のパターンと違っておりますものは、これは政府にとってプラスになる答弁ではありませんけれども、従来の景気回復期の状況に比べまして、依然として雇用情勢が非常に厳しいものがあります。こうした点を見れば、七〇年代、八〇年代の経験が役に立たない時代に入っているということは、私自身が今までも認めております。
  131. 志位和夫

    志位委員 七〇年代、八〇年代の景気回復局面と差異があるという御答弁だったのですが、私、景気を考える場合に、家計の消費、先ほど言ったGNPの六割を占める家計消費という問題がどうであるか、ここの点の差異を伺ったわけですよ。  私、この点でグラフをつくってみたのですが、この緑の線は七〇年代、八〇年代の過去三回の個人消費の回復の平均値です。大体、景気の谷から三年後には一〇三%ぐらいまで個人消費が回復しているわけです。赤の折れ線グラフの方は、今回の九〇年代不況のグラフですね。これを見ますと、景気の谷が大体九三年の十-十二月期ですが、三年経過しているのですが、上がったり下がったりの繰り返しで、これは非常な低迷がある。ですから、先ほど総理が違いがあると言った場合、一番重大な違いがこの個人消費という問題にある。  それで、構造改革という問題を言われました。構造改革、規制緩和ということで、これで景気が上向くのだということが言われますけれども、当面、規制緩和ということで逆に雇用が悪化する、こういうレポートもたくさんあります。  私、当面、まずこの家計が冷え込んでいる実態、これまでの景気回復期と比べて、本当に家計が冷え込んで個人消費が立ちおくれているという現状をまずお認め願いたい。この出発点である、景気の一番の基本である、土台である家計消費がどうなっているかというこの認識を伺っているわけですから、この点では異論なかろうかと思うのです。
  132. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そういうお尋ねでありますならば、七〇年代から八〇年代、すなわち高度経済成長からバブルに至る時代を、現在の安定成長に向けての努力期とそのまま対比することに無理があるのじゃないでしょうか。我々は、かつての高度経済成長から何回かの失敗を繰り返しながらバブルに突入した、このプロセスを踏もうとはしていないわけであります。当然ながら、そうした点を踏まえて我々は物を考えたい、そのように思います。
  133. 志位和夫

    志位委員 今の不況はバブル経済の破綻ということが招いた、そういう深刻な状況を今呈しているということを家計の問題で言ったわけですよ。  第二の主役である設備投資の方はどうか。ここでは、従業員数で七割、経済規模でも五、六割を占める中小企業がどうなっているか、私はここが肝心だと思います。  政府の経済白書を読みますと、これまでの不況の回復局面では、中小企業が設備投資でも収益でも景気回復をリードした。ところが、今回はそのリードが見られないということが経済白書に述べられております。新しい特徴を持っている。確かに大企業は、先ほど総理おっしゃられました、設備投資は回復しているかもしれない、収益を回復しているかもしれない。しかし、それとは対照的に中小企業が立ちおくれているという特徴があるわけですよ。  そこでこの問題も、私は、過去三回の不況の回復期と比較して、今回の不況における中小企業の生産指数の推移をもう一枚グラフにしてみました。これは中小企業白書をもとにしたものであります。ここでも非常に顕著な立ちおくれがある。この緑の方のグラフは、七〇年代、八〇年代の三回の平均でありますが、大体景気の谷から三年後には一一三%ぐらいには回復しています。今回は三年たって一〇五%ですよ。これだけ厳しい状況にある。これは新しい特徴なんですね。これまで七〇年代、八〇年代と違った九〇年代の不況の特徴なわけですよ。バブル経済の破綻という問題をおっしゃった、その後遺症ということもずっと引きずっている、それも含めての特徴なんですね。ですから、中小企業についてもこれまでにないこういう新しい著しいおくれという特徴があるという御認識を持っていらっしゃるか、これも経済情勢の認識として総理に伺いたい。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 昨年の衆議院選のとき、私は随分街頭に立ちましたが、まさに、従来景気がある程度回復の局面に向かうと必ず中小企業の皆さんが持ち前の創造力と行動性を生かして前に走り出す時期があった、今回まだそれが見られないということを率直にお話ししてまいりました。  その要因というものは幾つかあると思います、バブル崩壊後の不況という面だけではなく。大手企業の生産拠点が海外に移転し、その結果として従来の取引先を失い、新たな取引先を発掘できないといった状況の産業もありましょう。また、業種転換の中で新たな分野への移動をし切れていないといった企業もありましょう。さまざまな要因があると思いますけれども、中小企業の活気が出てきていないということは、私自身、選挙でも国民の前で申し上げてまいりました。
  135. 志位和夫

    志位委員 この問題については、ある程度認識は一致すると思うのですね、今の御答弁で。  私、この消費と設備投資という二大主役がこれまでにない立ちおくれにある、これは状況認識として一致すると思うのですよ。そうだとすると、この中で負担増をやっていいのか、経済政策としていいのかという問題を真剣に考えてみる必要があると思うのです。  こういう立ちおくれについては、経済白書の去年の版を見ても非常に明瞭に書いてあります。白書では「日本経済はなぜこのように長期にわたって低成長にあえぎ、かつ景気の回復力が緩やかであったのか」として、その原因を、消費と設備投資という景気牽引力の二大主役へのバトンタッチがおくれている、ここに求めています。バトンタッチがおくれている。このバトンタッチがおくれているとあなた方が言っているときに、国民負担増をやっていいのか。これがどういう影響を与えるかは明瞭であります。  第一の個人消費について言えば、経済企画庁の推計でも一・七%ぐらいのマイナスの押し下げがあるだろう。第二の中小企業について言えば、これは、税金を価格に転嫁できないで、廃業、倒産に追い込まれる業者がたくさん広がります。そういう悲痛な声をたくさん聞きます。しかも家計消費が冷え込めば、中小零細商店街、町工場、この皆さんの経営も悪化するわけであります。一重に中小企業の悪化につながる。  これまで政府は六回における景気対策を打ってきた力そのときの理由は、四十四兆円の公共投資を使う理由は、民需主導の自律的な景気回復にバトンタッチさせるためだ、こう言ってきました。ところが、その民需の二つの主役がどちらも景気回復の本格的軌道に乗ってないわけですよ。バトンタッチができてないわけですよ、あなた方の言葉で言えば。そのバトンタッチができてないときに今九兆円という負担増をかぶせるならば、バトンをたたき落とすようなものじゃありませんか。これは、これまで政府がとってきた経済政策とも矛盾する、経済白書などの経済情勢の認識とも矛盾する。私は、今度の九兆円の増税という問題をこういう情勢のもとでやるということは本当に矛盾した政策だと考えますが、総理、この点どうでしょう。(発言する者あり)
  136. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、わざわざ悪代官とまで言われましたけれども。  ではここで、この新たに御負担を願う消費税率二%の引き上げ、そのうちの一%は地方の財源であることはもうよく御承知のとおりであります。また、特別減税の財源が赤字公債であったことも御承知のとおりであります。この特別減税を継続するために赤字公債を増発し、地方財源を含めた消費税率を引き上げずにそのままでいき、さて、それで一体我が国の経済にはプラスがどこまで出るんでしょう。私は、より被害が大きいという気がしてなりません。そして、むしろ税制改革というもの、これは議員はよく御承知でお触れになりませんでしたけれども、所得税等、先行して行われている減税のその税収不足分を今回の消費税引き上げは埋めるという効果も果たすわけであります。減税は先行いたしております。  そしてその上で、今我々は、むしろここで歯を食いしばってでも、活力のある発展というものを妨げている今のルールを一刻も早く変えていくこと、そして活気を取り戻せるシステムに持っていくこと、これが大事なのではないでしょうか。むしろ特別減税を継続し、消費税引き上げを停止し、その結果公債の発行高をふやしていくことが後ほどどれほど大きな負担になるかをぜひお考えをいただきたいと思うのであります。
  137. 志位和夫

    志位委員 財源の問題を言われました。財源の問題は次の柱でじっくりお話を伺いたいと思うんですが、私、そのことで一つだけ反論しておきますと、ならば、なぜばらまき公共投資をやったのか。今度の本予算では確かに公共投資の伸びは一・三%です。しかし、補正予算を含めれば、同じ時期に公共投資をどんどんやるということには変わりない。この補正予算を含めれば一六%の伸びですよ。一方でこういう公共投資の膨張をやっておきながら、増税というのは理が立たない。これは後でじっくりやります。  ただ、私が総理に聞いたのは、こういう負担増をやって景気が大丈夫かということを聞いているんですよ。それをお答えにならないまま今の答弁では納得いかない。景気は大丈夫かと聞いているんです。
  138. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに経済企画庁の試算でも、委員が御指摘になりましたように、消費税の税率の引き上げ並びに特別減税廃止というものは、殊に四-六の影響はあるわけです。そして、それを決して否定をしておりません。だからこそ我々は、平成九年度予算を年度内に成立をさせて、年初から切れ目のない経済運営ができるように御協力をいただきたいとお願いをいたしております。  そして、平成八年度補正予算についても言及をされましたが、この中に含められております、いわゆる議員のおっしゃり方なら公共事業、これが緊急防災対策という役割を担っていることはよく御承知のとおりであります。しかし同時に、これが年初における景気の下支えの効果を持つことも私は否定しておりません。補正予算の御論議のときにも申し上げたことでありまして、そうした問題意識を持ちながら、なればこそ、平成九年度予算を年度内に成立をさせ、切れ目のな一経済運営に我々が取り組める状態をつくれるように、国会の御協力をお願いを申し上げております。
  139. 志位和夫

    志位委員 結局、景況に対するマイナスの影響はあるけれども、予算を通せば、何とかそれを含めれば景気は上向いていくという御答弁だったと思うんです。私、大変甘い状況認識だと。  個人消費がなぜ伸び悩んでいるのか。これも、この経済白書というのはなかなか的確でおもしろい分析をやっています。これを見ますと、いろいろな分析をやっておりますが、その結果というのは、実質可処分所得が伸び悩んでいるからだ、つまり給料から税や社会保険料を差し引いた手取りの給与が伸び悩んでいる、それが個人消費伸び悩みの原因だというふうにしております。  そこで、私、家計の視野から見て今度の負担増がどうなるか、総務庁の家計調査報告をもとに、勤労者世帯の平均で見て実質可処分所得がどう推移しているか、九兆円の負担増が家計にどう影響を与えるか、これも試算してみました。  これはぜひごらんになっていただきたい。この言い方の棒グラフは、景気の谷だった一九九三年を起点にして、三年間でどれだけ可処分所得が伸びたか。三年間で可処分所得の伸び一・五%ですよ。月額で七千百七十二円です。これしか伸びてない。微々たるものです。もう一つは、下に伸びている棒の方ですね、色がついている方ですが、これは、今度の九兆円負担増による影響額が家計にどれだけ出てくるかというのを、私が家計調査報告から試算したものです。  そうしますと、特別減税の打ち切りと保険料の引き上げで大体可処分所得の伸びを相殺してしまう。その上に消費税の二%増と医療費の自己負担増がかぶさってきて、毎月一万六千八百五十円、一世帯平均で負担増がかぶさってくるわけですよ。これでどうして個人消費が回復していきますか。家計底割れになるじゃありませんか。どうでしょう。これは総務庁の結果から私が試算したもので、責任持ったものです。  総理、これはどうですか。総理の御答弁、いかがですか。家計は本当に景気底割れですよ。総理、どうぞ。
  140. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、委員の試算をチェックするだけ実はその数字を分析できませんが、私、先ほどから申し上げておりますように、影響がないと申し上げておりません。そして、その影響がないと申し上げていないことを、今委員は家計消費支出に映して御議論になりました。これは一つの見識として私は受けとめさせていただきます。  しかし、なおかつ私が申し上げたいことは、だからといって、それでは先送りをして一体どうなるんだ。しかも、先送りをするその財源を公債の発行に依存していく、果たしてそれは将来にとってプラスの選択か、私はそうは思わないということであります。
  141. 志位和夫

    志位委員 私は、財源の問題についてはこれから議論していきたいと思います。しかし、経済の問題での影響ということを総理は否定されなかった。私、ここは再検討すべきだ、こう思いますよ。  一たん決めたものだから増税はそのとおりやります、一たん決めたものだから特別減税はそのとおり打ち切ります、社会保険負担増もやります。これもやはりこのままやってしまっていいのかという問題は、これは財界人からもいろいろな不安の声が聞こえてまいります。やはりこのときに経済全体を見渡して、経済に対する総理としての判断なり、負担増の影響なり、これをきちんと検討して、この問題については再検討すべきだ。  先ほど構造改革ということも言われました。しかし、規制緩和など構造改革をやったとしても、当面は景気にとって追い風ではなく逆風になるということが、これは財界からも共通して出されております。  ここに経済同友会が一月に発表した「市場主義宣言」というレポートがありますが、これを見ましても、構造改革に伴ってある程度の失業増加は避けられない。経済同友会の牛尾代表幹事は、今史上最悪の三・四%になっている失業率が五%から七%になるだろう、こういう見通しを言っているじゃありませんか。それからもう一つ、これも一月に日経連の労働問題研究委員会、これが出したレポートがあります。これを見ても、失業率は現在の二倍程度に及ぶと見られる。構造調整の過程では、雇用失業情勢が悪化する。  ですから、あなたの言っている構造調整、規制緩和ということをやったとしても、あなた方は将来雇用が生まれるんだという理屈だと思う、私たちはその保証がないと思うけれども。少なくとも、当面は雇用情勢が悪化するというのは経済人も認めているのです。景気の追い風にならないのですよ、逆風なんですよ。それも含めて、すべて、やはり今の景気の状況の中で九兆円の負担増という、これは見直すべきだ。  先ほど増減税という問題、言われました。増減税一体になってやったというふうに言われました。私は、あの問題について当時の国会で、サラリーマンの九割は差し引き増税だということを明らかにしました。その上でなお言いたいのは、その上でですよ、ことしと来年度と比べて国民が九兆円の負担増をかぶるという事実には変わりがないのです。先ほどの表を出しますと、減税やったとしても可処分所得はこれしか伸びていないのですよ。この現実があるのです。そのときにこれだけの負担増をかぶしていいのかという問題を私は提起しているわけですから、これはどうですか。これは再検討する意思ございませんか。総理総理に伺いたい。
  142. 三塚博

    ○三塚国務大臣 私から、御指名でありますから。  志位議員は、最悪の事態を摘記しながら、白書からも指数を出しながらやられておるわけですね。これは、私否定いたしません、そういう見方もベースにあっていいはずですから。  しかし、経企庁及び産構審、政府発表ということになりますと経企庁でございますが、総理言われましたとおり、四半期の第一期はそれなりの影響は受けますが、後半、一・九の経済成長が達せられる、こういうことなんですね。そして、ファンダメンタルズ、各項目、十幾つあります。その中で一点厳しい状況を出しておりますのは失業率の問題であります、三・三が三・四になりましたと。しかし、他の民需等々見てみますと、確実な足取りの中で、緩やかではありますが上昇の傾向にあります、こういうことであります。  ですから、私どもは、今回この消費税を上げるに当たりまして、全般を考慮をし決定をしたわけでございますが、特に初年度、平成九年度の問題を申し上げますと、志位議員は、全部九兆円かぶさりまして、そこの計算値を出しておるというふうに思います。実は、他の議員にもお答えをしたわけでございますが、あの九兆の部分については二兆と七兆に分けるわけですね。七兆の分について、国費、地方税、その他合わせまして効果は四・六兆なんですね、初年度効果。そして、その中で国税関係だけ見ますと二・七兆なんですね。この計算は確たる計算なんです。  そういうことからいいますと、減税をやらないときよりもやった方がプラスになった。というのは、三カ年先行減税による、六百万から七百万の中堅サラリーマン層は、これによって年六、七万の効果が出まして、十六・五兆円、こういうことになっておるわけでありまして、そういうことが国民所得のベースに相なりまして生活の基本が手がたくなったということも言えるということを、よく理解をしていただきませんといかないと思います。
  143. 志位和夫

    志位委員 初年度効果で少ないんだと言われるけれども、それは、国民から負担として吸い上げておいて、そして、国庫に入らない、時間差の問題でしょう。国民が払うことには変わりないのですよ。そういうごまかし屋の答弁やっちゃだめですよ。  ちょっと待ってください。私の聞いていないことをもう長々やられるから、あなたが答弁に立つと。時間がないのですからね。  私、きょうのこの経済問題の質疑を通じて、結局、大蔵大臣の答弁というのは、日本の景気は回復力を持っているんだということなんですけれども、その景気の回復の一番の担い手というのは家計消費じゃないかと言っているわけです。家計消費がなぜ伸び悩んでいるかといったら、可処分所得が伸び悩んでいるということで、こういう具体的な究明をやったわけですよ。それに対して政府の方は、まともな経済認識も示さない、負担増に対するマイナスも、これはもう本当に微々たるものだというふうに、こうやって過小評価して描く。そうやりながら増税を押しつけるというのは、これは納得いかない。  私は、昨年十二月の臨時国会で、大体総選挙の公約との関係で、増税実施の資格はないじゃないか、こういう提起をいたしました。自民党の議員の中に、延期だの凍結だの、あなたもそういうことを言ったでしょう、そういうことを言った議員がたくさんいる。この閣僚席の中にも、見直しとか言った人がいる。そういう公約に照らして、増税を実施する資格はないんだということを申しました。総理からはまともな答弁はなかった。  それに加えて、私、考えていただきたいのは、やはり日本経済のこの現状ですよ。これを見て、このままやってしまっていいのか。私は、これをやるならば日本経済のかじ取りを根本から誤らせる、このことを指摘して、その中止を重ねて求めまして、次の問題に進みたい、こう思います。  この議論の中で、総理の方から負担増を押しつける理由として繰り返し出されたのは、財政危機ということでした。しかし、一方で負担増を押しつけながら、一方でむだと浪費の構造を温存しているではないか、これについても国民の怒りが増幅しているわけであります。国で約十兆円、地方を合わせますと五十兆円という公共投資の問題を私は取り上げたい。  もちろん、国民生活や福祉に役立つ公共投資これについては効率化しながら拡充していくということは必要であります。しかし、これはマスコミでも多く取り上げられておりますが、港湾にしても、道路にしても、ダムにしても、干拓にしても、事業のための事業としか言いようのない浪費的な公共投資が日本列島を覆っている、これは紛れもない事実であります。なぜ事業のための事業に公共投資がなっているのか。私は、その大もとには、一九九五年から二〇〇四年までの十年間に六百三十兆の公共投資を行うという、公共投資基本計画という問題があると思います。この問題、少し総理の所見を伺いたいのです。  私は、これが実は公共投資の膨張の一つの根っこにあるのじゃないか。例えば、これは日本建設業団体連合会という、大手ゼネコンなどでつくっている日建連、これが去年の五月に出した「日建連ビジョン」というものでありますが、その中の「ナショナル・プロジェクト等の推進」という項目があります。  これを見ますと、巨大プロジェクトの推進を二十一世紀に向けてどうやるのか、これがずっと出ているわけでありますが、こういう文言があるわけです。「折しも一九九五年度から十カ年計画による、総額六百三十兆円規模の公共投資基本計画がスタートしたが、特に巨額の資金を要するナショナル・プロジェクト等は、この期間を逃しては推進が難しくなると思われる。」つまり、六百三十兆というものがあるから、今がチャンスだとばかり、ナショナルプロジェクト、巨大プロジェクトを推進しよう。これは大手ゼネコンの方針であります。  そこで出てべるいろいろなメニューを見ますと、まず第一に挙がっているのは、十四兆とも二十五兆とも言われる首都機能移転、第二に挙がっているのは、大都市機能整備のためのプロジェクトとして業務核都市の整備、これはオフィスビルをどんどん建てる計画です一あるいは大阪湾ベイエリア開発、これはりんくうタウンに見られるような赤字をどんどんつくり出しているようなやり方です一こういういろいろな巨大プロジェクトを六百三十兆があるからどんどん進めてしまおう、こうなっていると思うのですね。  私は、六百三十兆という公共投資の基本計画があることが、浪費的なこういう巨大プロジェクトを進める公共投資膨張のアクセルになっているのではないか、この問題を総理に考えていただきたい。  私、その点で総理に一番基本的な認識を伺いたいのですが、六百三十兆円という額の根拠、これは一体どこにあるのですか。細かいことを聞いているのじゃないのです、基本的なことを聞くのです。この数字は、国民生活の必要性から積み上げられてっくられた数字なのか、それとも初めに六百三十兆円、総額先にありきという形で決められたものなのか、これはどっちなのか。端的に、総理お答えください。
  144. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御指摘の六百三十兆円でございますが、二十一世紀初頭、高塩化・少子化社会を踏まえまして、その前に社会資本整備水準をおおむね九割前後整えるというための所要額として六百兆円、その後の状況の変化等を踏まえて、バッファーとして三十兆円ということでございます。
  145. 深谷隆司

    深谷委員長 亀井建設大臣。
  146. 志位和夫

    志位委員 委員長、いいです、もういいですよ、長々やらなくても。必要がない。公共投資基本計画の所轄大臣じゃないんだ。
  147. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 先ほどから委員のお話を聞いておりますと、共産党あるいは委員におかれて、日本の未来像をどう考えておられるのかなという疑問が出てくるわけであります。  下水道も完備されないくみ取りのトイレ、道路も完備されない、ただただそこで生活をしておるというような、私はそんな社会日本のあるべき未来の姿ではないと思います。  今の六百三十兆について申し上げますと、やはり社会資本、諸外国、先進国に比べて大変おくれております。まあ五割程度。これを着実に二十一世紀の初頭に整備するにはこれだけの費用が要る、そうした上に立った判断でありまして、決して対米的な配慮とかそういうことだけによってやっているわけではございません。  経済状況、財政状況が刻々変わる場合があるわけでありますけれども、そういう中においても、トータルとして長期において整備をするということで策定したものであります。
  148. 志位和夫

    志位委員 要するに、二十一世紀初頭におおむね整備されるとか、全く漠としたことしかないのですよ。下水道にしたって住宅にしたって、きちんとした国民生活の必要性からこれだけのものが必要だという具体的な計画をつくって上積みするのだったら道理がある。しかし、この公共投資基本計画を見たって、何にも具体的な目標らしきものはないじゃないですか。公共投資基本計画というからよほど詳細な計画があるかと思ったら、わずか十四ページ。目標らしき数字が出ているのは下水道と住宅、この二つぐらいで、あとは本当に抽象的なものしかないじゃないですか。  私は、総理に伺っているのは、この六百三十兆が総額先にありきか、それとも積み上げでつくったものなのかという基本的なことなんです。この総額先にありきということは、私は、公共投資基本計画が出てきたその経過を見ても歴然としていると思いますよ。  初めて十年間の公共投資基本計画という方式が持ち込まれたのは、一九九〇年六月につくられた四百三十兆円の旧公共投資基本計画であります。総理は、この当時の大蔵大臣として、この基本計画の取りまとめにかかわっておられます。  一九九〇年二月の日米構造協議の中で、アメリカ側が日本の公共投資を国民総生産の一〇%にという要求をする。その当時の報道を見ますと、その圧力にこたえる形で橋本蔵相が案を取りまとめて、それは過去十年間の各分野の長期計画、公共事業の長期計画を合わせて、それを五割増しにする、こういうものだったという報道があります。橋本蔵相も、九〇年四月の日米蔵相会談で過去十年間の五割増しという輪郭を示して、九〇年六月の日米構造協議で四百三十兆円と決着するわけです。四百三十兆円というのはそうやって生まれたものだった。  これは総理、直接の当事者は総理ですから伺いたいのですが、やはり公共投資基本計画というのは、生まれた当初から積み上げの数字じゃないじゃないですか。過去十年間の五割増しというそういう形で、まさに総額先にありきと決められた数字じゃありませんか。総理、どうでしょう。
  149. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変恐縮でありますが、少しく議員のごらんになりました資料は正確を欠いておるようであります。  当時アメリカ側が構造協議において求めてまいりましたこと、それはISバランスの議論とともに我が国の公共投資の総枠を飛躍的にふやすことであり、同時に、アメリカ企業の参入しやすいと思われる幾つかの分野にその公共投資の相当部分をシフトせよという要求でありました。その要求の背後にありましたものは、当時の我が国の抱えておりました大幅な黒字であり、反射的に存在をしたアメリカ側の赤字であります。  そしてその議論の中でもう一つ出ましたことは、各種のいわゆる公共事業に関連する五カ年計画の始めと終わりをそろえて見直し、その機会に、アメリカの目で見て日本が整備を急ぐべきであると思われる公共事業分野にウエートを置くべきであるという要求でありました。結果として、そういうまさに国の政策選択にかかわる部分はこれを排除いたしました。それが現在逆に、公共事業の計画がスタート時、それから終わりの時期が計画によってばらばらだという御批判を受ける原因でもありますけれども、こうした歴史があったことは申し上げておきたいと存じます。  そして、そのときにいろいろな角度での議論をした上で我々は将来に対する公共投資のいわば総額を示すとともに、その公共投資によって我が国が備えるであろう将来の水準、例えば下水道の普及率でありますとかそうしたものを頭に描きながら、たしか総額四百兆でありましたか、四百十五兆でありましたか、四百十五兆プラスその時点において想定し得ない新たな行政需要に対する弾力枠として十五兆、これを公共投資基本計画として公表したわけであります。十五兆というバンドまで置いた計画でございました。
  150. 志位和夫

    志位委員 政策の判断として総額方式でこたえたという経過だと思うのですね、今言われたように。  ですから、この経過というのは、GNP比で一〇%とアメリカが圧力をかけてくる。当時、橋本総理はGNP比で固定化されるのは一応突っぱねた。しかし、そのかわり四百三十兆という総額方式でアメリカの要求に屈したわけですよ。  その後、この計画というのは最初から日本国民の公共事業がどれだけ必要かということで具体的につくった計画じゃないのです。外圧に屈して、そしてこの四百三十兆が決められ、再度の外圧に屈して六百三十兆が決められ、引き上げていく。それが、総理、何をもたらしているかということを私は問いたい。財政破綻ですよ。  四百三十兆円が決まった一九九〇年を境に公共事業の異常な膨張が始まっています。一九九〇年にはGDPの六・六%だった公共投資が、九六年には九・二%に膨らんでおります。長期計画も、八〇年代のものと九〇年代のものを伸び率で比較してみますと、九〇年代は一五五%に全部水膨れしていますよ、基本的に。その結果が財政破綻です。  国と地方自治体の累積債務は、九〇年度にはGDP比七一%でした。それが御承知のように、九六年には八九%まで破局的に膨らんだ。  私、総理が九〇年に敷いた公共投資基本計画というレールですね。総額先にありきというレールが今日の財政破綻という結果を招いた、少なくとも重要な一因にはなっているという反省が必要だ、こう思いますが、総理いかがでしょうか。
  151. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 あなたがどう御批判になるかは、これはあなたの御意思であります。しかし、国際交渉の中で、私は当時の状況として対応し切れるぎりぎりの内容のものを考えました。むしろもっと大きな公共投資基本計画をつくるべきであるという御意見が、そこまでお調べでありましたなら、当時の報道等の中にたくさん出ておることも御承知であると思います。  私は、実行可能なぎりぎりの計画としてこうした数字を選んだ、それはそのとおりであり、屈したと言われましたが、むしろ私は、アメリカ側の要求というものを逆に使いながら、あるべき社会資本整備の姿を示したと考えております。
  152. 志位和夫

    志位委員 屈したと私はあえて言ったのですが、その状況というのは、その後の、公共投資基本計画を決めた後の例えば日米構造問題協議フォローアップ、この年次報告書を見ますと非常に明瞭ですよ。  これはアメリカに構造協議の結果を報告するものでありますが、九一年のフォローアップを見ますと、「九一年度予算等においては、公共投資基本計画の初年度であることにかんがみ、」「厳しい財政事情の下ではあるが、公共投資の規模の確保に最大限の努力を払った」。次は、これは九二年のフォローアップ、「九二年度予算等においては、容易ならざる財政事情及び巨額の公債残高の存在にもかかわらず、公共投資の規模の確保に最大限の努力をしたところである。」当時から、もう財政破綻というのは明瞭だったのです。厳しい財政事情も百も承知で、財政破綻百も承知で、こうやって伸ばしました、こうやってアメリカに報告しているわけですね。  私は、この総額先にありきという方式を決めたことが間違いだったと考えます。それを決めたことが、六百三十あるいは四百三十という額が先にあって、そして長期計画が決められ、そして予算が決められ、箇所づけが決められる。本来、公共事業というのは下からの積み上げで予算を立てなければならないものですよ。それが、六百三十兆なり四百三十兆なりという額から全部ばあっと出てくるというやり方は本末転倒だ。私は、この六百三十兆という公共投資基本計画、これは今の本当に財政破綻という状況からしても、総額方式は取り払うべきだ、こう思います。  私たちは、公共事業を本当に国民の暮らしや福祉に必要なものに限定し、圧縮し、効率的なものにする、浪費は省く、その財源で国民生活の向上に充てる、この政策の転換が要ると思うのですよ。その政策の転換をやるためには、六百三十兆を聖域にしてはだめですよ。六百三十兆の基本計画、この総額方式は取り外すべきだ、はっきり申し上げたいのですが、総理いかがでしょう。
  153. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々は今、財政再建、財政構造改革という大きなテーマに一方で取り組んでおります。そして、そのために、財政構造改革会議で議論をしていく中に聖域はないということを申し上げてまいりました。当然、こうしたものも論議の対象として行われるときはあろうと思います。  しかし、先ほどのお話の中で、公共投資基本計画ができたから各種の長期計画ができたと言われるのは、私はちょっと事実が違うと思います。むしろ、公共投資基本計画以前に各種の五カ年計画が存在したことは議員御承知のとおりであります。そして、その五カ年計画の起点と終点のそれぞれにそのテーマによって違いがあったことも御記憶のはずでありまして、そうしたものの上にこうした考え方は成立しておるということだけは御理解を願いたいと思います。
  154. 志位和夫

    志位委員 長期計画については、それ以前に存在したということは百も承知で言っています。ただ、四百三十兆が決まった時点で、四百三十兆効果とでもいうべきまさに力が加わって、八〇年代、九〇年代を比べたら一・五五倍になっているということも、先ほど申し上げたとおりです。  今総理の答弁の中に、聖域にしないということ、が言われました。  私、もう一歩お聞きしたいのですが、それは六百三十兆について言われていることですか。六百三十兆の公共投資基本計画、これも聖域にしないということなのか。つまり、その聖域にしないということの中には、総額を取り外す、総額方式というのをやめるということも選択肢に含みますか。やはり、総額方式も含めて聖域にしない検討が必要だと思うのですよ。いかがですか。
  155. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 政府・与党の財政構造改革会議で議論をする中に聖域はございません。
  156. 志位和夫

    志位委員 それでは、この六百三十兆の問題について真剣な検討を私は求めたい。  この点で、もう一点総理に伺いたいのですが、六百三十兆円をもし二〇〇四年までに全部実行するとした場合、財政再建と両立するかという問題です。  総理は、財政健全化目標として、国の一般会計で二〇〇五年までに赤字国債をゼロにするということをおっしゃられております。二〇〇四年までの六百三十兆円の実行と二〇〇五年までの赤字国債ゼロは両立し得るのか。総理は、これは具体的に吟味されておりますか。総理、どうぞ。
  157. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 公共投資基本計画六百兆円を仮に今後、毎年単純に同じ率で伸ばしていくということになりますと、二・八%程度の伸び率が必要でございますが、これは赤字国債ではございません。
  158. 志位和夫

    志位委員 総理、この問題はまだ検討途上だという感じなので、お立ちにならなかったのですが、私は検討してみたのですよ。  それで、これはその歳出のギャップのグラフなんです。これをぜひ見ていただきたいのですが、大蔵省は、さきに「財政の中期展望」というのを発表いたしました。その中に、名目経済成長率が最も高いと仮定して三・五%とし、そして赤字国債を毎年一兆円ずつ減らして、二〇〇五年には赤字国債ゼロを達成するという試算がございます。これをもとに、二つのケースをグラフとして私は自分で試算してつくってまいりました。  この青いグラフの方は、公共投資の伸びをゼロとした場合の試算であります。この場合、これは大蔵省の試算をそのままグラフにしたものですが、この場合でも、二〇〇五年には歳出入のギャップ、つまりお金が九・一兆円足らなくなるわけです。しかし、この伸びゼロでは、二〇〇四年までに六百三十兆は、これは達成できません。大体私が計算してみたら、五百三十兆ぐらいにしかいかないのですよ。  もう一つのこのグラフ、赤いグラフ。これは、二〇〇四年までに何が何でも六百三十兆をやる場合ですよ。これは、私が試算してみました。大蔵省試算をベースにやったものです。そうしますと、二〇〇五年の歳出入のギャップは十四兆円に上るわけであります。ですから、これはどうしたって、六百三十兆と財政健全化とは両立しないのですよ。これをあえてどうしても両立させようとすると、これは大変なことになる。  六百三十兆円にあくまで固執しながらあなた方の政策を続けた場合には、この十四兆円のギャップを埋める方法は二つしか私はないと思います。(発言する者あり)成長率は三・五%と言ったでしょう、よく聞きなさい。  第一のギャップの埋め方というのは、社会保障など国民生活部門を大幅削減してそのギャップを埋める、こういうやり方だと思うのですよ。しかし、その場合、この十四兆円のギャップを埋めようとすれば、経常部門の経費を九七年度よりもさらに二兆円以上少なくすることになる。途方もない福祉、教育の切り捨てになるのです。  第二のギャップの埋め方は、消費税の増税だと思うのですね、あなた方の論でいけば。その場合、この十四兆円のギャップを消費税の増税で埋めようとすれば、税率四%に当たります。つまり、五%から九%に引き上げなきゃならない。  あなた方の六百三十兆に固執した場合は、そういうメニューしかないんですよ。どちらも、国民に多大な犠牲を負わせること抜きに六百三十兆をそのまま実行するということはできない。ですから、私は、六百三十兆と財政健全化は両立しない。これはもう明瞭な、私、これは責任持って出しているわけですから、総理にぜひお答え願いたい。いかがでしょうか。総理、どうぞ。
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の御議論を拝聴しておりまして、今の幾つか見せていただきました議員の試算を疑るのではありません。その上で、二者択一の議論をされますけれども、果たして二者択一以外に道はないんだろうかと私は思います。  そして、極端なケースの挙げ合いをいたしますと、これはいろいろなケースが言えるでしょう。しかし、議員も公共投資の必要な部分が存在することを否定はされないと思います。当然ながら、毎年毎年の税収見通しの上に立ち、また必要な事業というものに着目して予算というものは編成をしてまいります。
  160. 志位和夫

    志位委員 二者択一以外のものはないかというと、ほかにもあるだろうというふうにおっしゃられるけれども、あなた方、例えば歳入の問題でも、この前の臨時国会で、大企業に新たな税負担を求めるかと言ったら、大企業には減税を検討すると言ったけれども、新たな税負担を求めないとおっしゃったでしょう。軍事費はふやしっ放しでしょう。そうしましたら、さっきの選択肢しかあなた方の論でいけばなくなるんですよ。  私は、活路はあると考えております。私たちは、三つの聖域にメスを入れるべきだ。先ほど言ったように、公共投資基本計画を一たん白紙に戻して大幅にこれを縮減する、これは第一です。第二に、軍事費の際限のない膨張ということにメスを入れて、軍縮に向かう。そして第三に、大企業優遇税制にも思い切ったメスをこの際入れるべきだ。この三つの聖域にメスを入れることをやれば、私たちは、増税抜きに、そして国民生活に犠牲を負わせること抜きに日本の財政は立派に十年間で立ち直るという具体的な案もお示ししております。私は、我が国を救う唯一の財政上の活路はここにしかない、こう考えます。  次の問題に移ります。医療保険の問題について伺いたい。  今、政府が進めている患者負担増を柱とする制度改定に、大変大きな不安が広がっております。お年寄りにとって、病院の敷居が高くなる、本当に治療の必要な方が病院に行けなくなるという不安であります。金の切れ目が命の切れ目になるのではないかという心配の声を私もたくさん受け取っております。政府はここでも医療保険の赤字を理由にしておりますが、私は、赤字をつくっている構造的な問題点にメスを入れないまま安易に患者負担増を押しつけるやり方はどうか、ここに一番の問題があると考えております。  私は、医療保険の赤字を解決する上で、何よりもまず薬の価格、薬価の問題にこそメスを入れるべきだと考えます。日本では、国民医療費約二十七兆円のうち、八兆円が薬価ですよ。約三割が薬価です。諸外国でこんな薬剤費の比率が高い国はありません。  私、その点で総理に基本的な認識を伺いたいんですが、日本の薬価を総理はどう認識されているかという問題であります。  この点では、大阪府保険医協会が一九九五年に、日本でよく使われている医薬品六十二品目の薬価について詳細な国際比較を行っております。その結果、日本の薬価はドイツの一・四倍、フランス、イギリスの二・七倍。そして、日本では、評価の定まった比較的古い薬は外国と比べて同程度ないし安いわけですが、新薬の価格が異常に高い。そして、新薬の使用比率が高い。それによって薬価全体が引き上げられているということが大変明瞭になっております。この調査結果というのは、経済企画庁の国民生活白書でも紹介されるなど、政府もその信頼性を認めているものであります。  総理は、本会議の答弁の中で、日本の薬価水準を問われて、中には高い薬もあるというふうに考えているという御答弁でしたが、私、伺いたいのは、全体として日本の薬価の水準、これは国際比較で見て高いという御認識をお持ちかどうか、これは総理に伺いたい。
  161. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、その国民生活白書の数字を見ながら改めてお答えを申し上げますが、医薬品あるいは医療機器の中に諸外国に比して価格が高くなっているものがかなりあるということは承知をいたしております。
  162. 志位和夫

    志位委員 この国民生活白書でも、結論的に「日本では使用した薬剤費の額が多いだけではなく、薬価、すなわち薬の値段そのものも高い。」国際的な比較で見て高い、こういう結論を下しておりますから、これはまず共通の前提として議論していきたいと思うのですね。そうしますと……(橋本内閣総理大臣「八五年以前のやつは同じ、確かに新薬はちょっと高い」と呼ぶ)そうです。八五年以前の薬、うまり古く承認された薬については日本は世間の相場並みだということを書かれているわけですが、日本の場合、新薬の比率が高いから全体の薬価が引き上がっちゃう。それを問題にしているわけですよ。  次に、そうしますと、個別の薬品につけられる薬価というのは、診療報酬の改定のたびに引き下げられているわけです。しかし、全体としての高薬価は是正されない、是正されません。そして、薬剤費が年々膨張を続けている。このからくりはどこにあるのかということが次に問題になるわけです。  今総理も、古い薬は安目だということをおっしゃられたけれども、新しい薬が高いわけですよ。大阪府保険医協会の調査結果によりますと、日本の薬価は全体として高いわけですが、それをつり上げているのは新薬の異常な高さだということがよくわかります。九四年に承認された最新の薬を比較しますと、日本はドイツの二・三倍、フランスの四・〇倍、イギリスの四・一倍になります。新薬が高くなりますと、医療機関への診療報酬も高くなり、その薬がたくさん使われることになる。こうして薬剤費の中に占める新薬の比率が高くなる、いわゆる新薬シフトという状況が生まれてまいります。  私は、新薬が医療品市場に占める割合を厚生省の資料からグラフとして作成してみました。これは、こういうことになります。ドイツとの比較なんですが、日本の場合、十年以上使われている薬、この占める額というのは三・五四兆円、それに比して九年新薬、九年以内の新薬の占める額は三・五三兆円。ドイツの場合、十年以上薬が三・六八兆円、九年新薬は〇・四三兆円。こう著しく新薬シフトが日本の場合ひどいわけですよ。こういう状況ですね。  ですから、総理に伺いたいのは、この新薬シフトという状況の認識です。この新薬シフトという状況が全体として薬剤費をうんと押し上げている原因になっている、これは明瞭だと思うのですが、いかがでしょう。総理、いかがでしょう。
  163. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身が医療の内容に十分な知識を持っているわけではありませんけれども、従来から、医薬品あるいは医療機器の価格設定というものは諸外国における価格と調整を図ってきたところでありますけれども、今私自身も申し上げましたように、議員が御指摘になりました資料と同様、八五年前に開発された医薬品とそれ以降のものとの間に大幅な数字の開きがあることは議員の御指摘のとおりです。  ですから、これから一層やっていかなければならないこと、それは医療保険改革を進めていく中で、やはり薬剤使用の適正化を図るといった視点も持ちながら、薬価基準の見直しなどの総合的な対応策を講じていく必要があると考えております。
  164. 志位和夫

    志位委員 薬価基準の見直しということを言われたんですが、私、二つ具体的に問題を提起したいと思うのです。  新薬シフト、じゃなぜこう起こるのかということを、私も私なりに勉強してみました。その結果、やはり二つの重大問題がここにあると思うんです。  第一に、新薬の承認審査、そして薬価の決定が、科学性がない、非常にずさんなやり方で行われているんじゃないかという問題であります。すなわち、従来の薬にちょっと手を加えただけで、有用性に乏しいゾロ新と言われる新薬が大量に認可されている。ぞろぞろ認可申請が来て、ぞろぞろ認可するからゾロ新という名前がつくそうなんですが、そんな名前があること自体異様なことなんですが、このゾロ新に高い値段がつくわけですよ。しかも、それに見合う効能がないわけです。むしろ有害なものも少なくない。  医学、薬学の専門家でつくっている医薬品・治療研究会というグループがございます。大阪府保健医協会とも協力しながら活動しているグループですが、私は、そこで中心的役割を果たしている医師の浜六郎氏にも会って話を聞き、資料もいただきました。  医薬品・治療研究会では、九四年承認新薬を三十七品目取り寄せて、これらを対象に、臨床試験論文をすべて製薬会社から取り寄せて、綿密な検証と総合的評価を専門家のチームでやっているんですね。その結果は、かなり驚くべきものでした。従来薬と比較して目新しくなく、危険性がより大きいと判断されるものが、三十七品目のうち十二品目。承認すべきでない、無用、危険なものが七品目。合わせて半分は、本来これ、認可していいものかというものなんですね。  幾つかちょっと具体的にここで紹介したいのは、例えばプロマックという胃潰瘍の薬があるんです。これは九四年新薬です。これは、医薬品・治療研究会がこのプロマックについて臨床試験論文を分析した論文でありますが、これを見ますと、服用量が多くなればなるほど治りが悪くなる。服用量が多いと潰瘍が悪化した例すらあるんですよ。これを医薬品・治療研究会では、判定として、有効性は認められず、むしろ危険性の方が大きいという判定を、かなり詳細な分析をやった上で下しています。  それからもう一つ、塩酸イリノテカンという抗がん剤があります。これも九四年新薬です。こっちの方は、臨床試験中に、四%、二十名の方が副作用死している。しかも、その死因がこのイリノテカンの毒性とほぼ断定できるのに、早期死亡例として処理し、安全性の評価から外されていた。医薬品・治療研究会では、この物質については、副作用が重篤であり、臨床使用をすべきでないという評価をしております。  これは一例なんですけれども、このプロマックとか塩酸イリノテカンとか、こういう薬がどんどん新薬として承認されている。こういうゾロ新の大量承認がいわば薬価を引き上げ、薬害をつくり出す、そういう土壌になっている。これは問題だということを専門家の集団が警告を発しているわけです。  私、ここは事務方ではなく、基本的な姿勢の問題ですから総理に答弁をお願いしたいんですが、ここは、新薬の承認システムに抜本的なメスを入れる必要があると私は思います。  具体的に提案したい。新薬の承認基準を科学性のあるものに抜本的に見直すこと。審査体制を抜本的に強化すること。そして、独立性と透明性の高い医薬品監視機構をつくること。そして、既に承認している薬についても、いろいろな危ないものがあるわけですから、きちんと国際的に通用する評価方法で全面的な再評価を行うこと。これはまず、総理決断して、こういう改革からやらなきゃだめじゃないですか。いかがでしょう。
  165. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 薬は、適正に飲まないと毒にもなり得る、これはいかなる薬にも私は通ずることだと思います。副作用が怖い、だからこそ薬の審査というのは厳重にしなければいけない。今御指摘の御意見、参考にしながら、薬価基準の見直し等、積極的に取り組んでいきたいと思います。
  166. 志位和夫

    志位委員 総理総理の直属の機関である経済審議会の建議というのがある。去年の十二月に六分野の経済構造改革という報告書を出しております。私も詳しく拝見させていただきましたが、そこでも私と同じ問題の指摘がされているのですよ。  世界には通用しないが、日本国内では高い薬価がつけられるゾロ新と呼ばれる新薬が多数開発されている、この事実を指摘し、欧米では有効性や新規性に乏しいという理由で新薬として承認されないものが承認されている、こういう問題も指摘して、新薬承認基準の見直し、これを図る必要がある。これは経済審議会の建議の中でも述べられていることですから、総理の決意をお聞かせ願いたい。総理、どうぞ。
  167. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 ただいまの建議は、私どもの経済審議会で建議したものでございますが、その中で、ゾロ新等の問題について取り上げました。総理にも御報告しまして、この線でぜひ改革を進めるようにという指示をいただいております。
  168. 志位和夫

    志位委員 総理、そういうことですね。
  169. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 経済審の御意見を承りましたとき、確かにそのように申しました。  ただ、これは非常に専門的な知識の要る部分でありますので、私は、業務局の責任者がおりましたなら、業務局の方から御答弁をさせたいと思います。
  170. 志位和夫

    志位委員 第二の問題として、もう一つ提案したい問題があります。新薬の承認審査と薬価決定のプロセスの透明化の問題です。  私、これを調べておりますと、余りにも薬価算定、新薬承認がブラックボックスでやられているという事態に唖然といたします。新薬の価格を決定する場合、同じ系統の薬がない全く新しい薬の場合は原価に基づいて価格算定を行うわけですが、この原価の情報というのは国民に全く明らかにされていない。ブラックボックスであります。メーカー言いなりの密室審査になっている。これが実態ですよ。  それから、大部分の新薬の承認というのは、類似薬効比較方式というやり方でやられております。これは、既に出回っている医薬品と比較して、同程度の薬効のものは大体同じ値段、有用性が高いと認定したものは高い値段をつける、こういうやり方であります。ところが、これもよく調べてみますと、比較の対象にする薬の選定、あるいはどこがどうすぐれているかという有用性の評価などについては、情報が全く国民に明らかにされていない。総理、これは非常に大きな問題だと思う。  新薬の承認審査と薬価決定のプロセス、これに関する情報を、個人のプライバシーあるいは特許に関するものを除いて全面的に公開する、これは当然じゃないでしょうか。総理、どうでしょう。
  171. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 薬価の透明性確保、これは重要な問題でありますので、今後透明化をいかに図っていくか、これも含めて検討させていただきたいと思います。
  172. 志位和夫

    志位委員 この問題でももう一回総理に答弁いただきたいのですけれども、この経済審議会の建議の中で、やはりこの問題も指摘しているのですよ。「薬事行政の透明化」「国民に対し、十分かつ詳細な情報が提供されず、チェック機能が働いていないことが挙げられる。そこで新薬承認手続や薬価のあり方について、国民に詳細な情報を提供する必要がある。」こう述べられているわけですから、総理の見解としてはっきりお答え願いたい。
  173. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、厚生大臣から積極的なお答えを申し上げました。そのとおりの方向で進んでまいります。
  174. 志位和夫

    志位委員 そうしますと、この新薬承認の仕組みの透明化という問題もメスを入れるということになれば、そっちを先にやることが先決じゃないですか。そのことを徹底してやって高い薬価を引き下げれば、ドイツ並みにすれば、二兆、三兆という財源がそこから生まれる。保険料引き上げや患者負担増なしにも、本当の意味でこの医療保険会計の赤字をなくすことができるのですよ。こっちが先決ではないか、こう思うのですね。  そこで最後に、この問題で私、率直に伺いたいことがある。私、この高薬価の問題、これがなかなか是正されないその根本に、やはり製薬業界からの献金の問題があると思います。私が調べますと、大変な巨額に驚きます。  私の調べでは、九五年だけでも、製薬会社など医薬品業界から自民党の国民政治協会に、少なくとも総額一億四千五百万もの政治献金が渡っております。橋本総理への献金も大変巨額であります。これは既に御自身国会で明らかにした数字ですが、九二年から九四年までの三年間に、薬業界から総額九千百万円の献金が行っている。製薬業界からこういった自民党あるいは総理への献金、私調べてみて、余りに巨額だと思うのです  よ。  これ、何で製薬会社はこんな巨額なお金を自民党やあなたに出すと思いますか。どうでしょう。何で出すと思いますか。
  175. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 協力をし、育てていこうと  いうお気持ちと思います。
  176. 志位和夫

    志位委員 出す方の証言を幾つか紹介したい。   全国の製薬企業で組織する日本製薬団体連合会、目薬連という組織がありますが、その理事長が、ある報道ですが、製薬業界のよき理解者を支援し、育てるため、こうおっしゃっています。よぎ理解者、このよき理解者というのが、私は、薬価も含まないとは言い切れないだろう、こう思いますよ。  ある製薬業界の関係者は、巨額の政治献金の理由について、薬価が一円違うだけで薬によっては年間数億円も利益に差が出る、製薬企業の生命線とも言える薬価や新薬の許認可権限は厚生省が一手に握っており、企業としては厚生省に影響力を持つ政治家に取り入らざるを得ない、こう言っているじゃありませんか。  そういう族議員が一体何をやっているのか。私は、厚生省薬務局のあるOBの方から、先日、直接次のような証言を受けました。彼はこう言っておりました。  二年ごとに薬価の改定があるが、それにかかわってびっくりしたことがある。厚生族議員の秘書が、課長や局長に、○○企業の薬を下げないでくれと電話をしてくる、電話をしてくるのは二けたぐらいの政治家筋からだ。これに基づいてマル政のリストをつくる。政治家銘柄のリストをつくるわけですね。事務の打ち合わせのときに、これはマル政だとして、○○先生のところから○○企業と口頭で報告がありました。こんなことが本当にあったのかと、びっくりしました。こういう証言であります。  私、政治家銘柄というのがあるとは、聞いて本当に驚きました。異常に高過ぎる薬価が政治献金の効能でないとどうして言えるか、こういう問題が提起されていると思うのですよ。  私、さきの臨時国会で、総理に対して、悪徳商法を行っている病院寝具協会などから多額の献金が渡っている、この業界は医療保険財政に大穴をあけているじゃないかという問題についてただしました。しかし、この医療保険財政の圧迫という点では、寝具もひどいけれども、この製薬業界、高薬価で巨額の利益をむさぼっている製薬業界の責任はけた違いのものであります。  国民には医療保険財政の赤字を理由に負担増を説く、ところが、自分は高薬価で保険財政の赤字をつくりだしている製薬業界から金をもらい続ける、こんなことは誰が聞いても理解しがたいことだと考えますが、総理はどうですか。
  177. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、確かに、政治家としての活動をいたしますために政治資金の提供を受けております。それとみずからの行動とを、今のような小説を描かれることは大変残念であります。  そして、薬価、先ほど来私は薬価基準の見直しということも申し上げております。その上で、専門家が来ておりませんのが大変残念でありますけれども、私は、今、薬価算定というものが、議員からは厚生省OBの証言というお話がありましたけれども、そのようにずさんな姿で行われているとは思いません。少なくとも類似薬効評価というものがあり、そして既に開発されている医薬品と同じ薬効を持つものは大体同程度の価格、全く新しく生み出されたものについては、全く新しい原価プラス開発関係も入ったんじゃなかったでしょうか、ちょっと私正確なのは忘れましたが、そういったルールで価格設定がされておると聞いておりますけれども、具体的な内容についてはむしろ私は専門家からお答えをすることが正しいと思いました。残念ながらおりませんので、今私から感じを申し上げます。
  178. 志位和夫

    志位委員 時間がなくなりましたから、最後、私申し述べたいのですが、小説とおっしゃったけれども、全部事実なんです。まあ事実は小説より奇なりと言いますが、本当にそういう奇怪なことが起こっているわけですよ。あなたはずさんではないと言われたけれども、経済審議会の審議の中で、本来承認すべきじゃないものが承認されておるのは問題だと、ずさんな審査をやっていると認めているじゃないですか。ですから私は、高過ぎる薬価に抜本的なメスを入れることによって……
  179. 深谷隆司

    深谷委員長 志位君に申し上げます。既に割り当て時間を過ぎております。
  180. 志位和夫

    志位委員 はい、わかりました。  赤字を解決することは可能なんであって……
  181. 深谷隆司

    深谷委員長 御協力をお願いいたします。
  182. 志位和夫

    志位委員 それをやらずに負担増を説くことは許されない。これを撤回すべきだということを重ねて申しまして、私の質問を終わります。
  183. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  184. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 社会民主党を代表して質問をいたします。  予算の本格論議に入りまして、一九九七年、本当に重大な年だなという思いを深くいたします。そして、私ども社会民主党は、先般の本会議での土井党首の質問、見解表明を引き継ぎまして、重要な幾つかの点について質問をしたいと思います。  私は、質問の前提に二つの前提を置きたいと思います。  その一つは、二十一世紀のドアをあける日という言葉であります。今私どもが国政で当面しているたくさんの課題がございます。順不同ですが、例えば介護保険にいたしましても二〇〇〇年、総理のおっしゃるビッグバンにしても二〇〇一年、そしてまた行政改革などなど多くの課題が、二十一世紀初頭に、また、二十一世紀のドアをあける日の日本をどうするかという設計にかかわる問題であります。  確かに、当面する状態を見ますと、うららかな春の道ではありません。国民の皆様とともにさまざまの厳しさも越えて努力をしなければならない。置かれているのが、今日の経済を初めとする内外の情勢であろうと思います。やはり、厳しさを越えて次の時代に向けてどう希望を語るかということが私どもの議論の中心でなければならないと思います。日本国民は理解とレベルの高い国民ですから、目の前のことだけで悲鳴を上げる国民ではないと思います。厳しいけれども、やはり次に希望を語るという面。  総理にお願いしたいんですが、火だるまとなって頑張るんだという決意も再三伺いましたが、やはり火だるまというとちょっと燃えちゃうという印象がありますから、まあ火の玉か何かになって、それでやはりあと三年、四年、二十一世紀のドアがあく日に、さまざまの難しいことがあるが、こういう希望を語り合いましようという姿勢での政府の対応、あるいは国民の皆様への提起というものをお願いしたいというふうに思います。  同時に、もう一つ前提としたいのは、閣外協力ではございますが、政権与党としての私どもの対応でございます。  土井党首からも私ども再三申し上げておりますように、昨年、三党政策協議を行いまして、そして政策の合意を見ました。三党首の御署名がございました。一致する点もあります。まだ合意に至らない点もございます。私どもは、やはり一致したことは誠実に、また相ともに協力をして実現をする、これはやっていきたいと思います。  また、合意に至らない幾つかの点もございますけれども、本当にこれはお互いに真剣に議論し合って、連立政権の一番いい点はお互いに磨き合うことですから、激しい議論をしても磨き合って、そうして国民の合意に沿ったいい結論を得る、そういう方向の努力をしてまいりたい。そういう意味では、相当はっきりばしばし意見を申し上げることもあると思います。どうぞ総理、ばしばしお答えください。そういうことになれば、恐らく国民の御理解とフォローの風が吹くだろうと思います。もたもたしたら逆になるだろうと。  いずれにいたしましても、その責任の重さもかみしめながら、議席の数は少なくなりましたが、大きな責任を持って、立場をかみしめながら議論をさせていただきたい。今、目の前に、安心して任せられる次の政権の構想等はないんですから、私どもが今努力をしなくちゃならぬという思いでございます。  その二つを前提にいたしまして、まず冒頭、これは総理に三つ要望がございます。一々御所見なくても結構なんですが、三つ要望がございます。  一つは、やはりペルーの状態でございます。もうこれは、基本は、ゲリラを許さない、人命尊重、平和的打開。これは多くの国民、今すべての国民がみんなが願っている、そうして日夜みんなが懸念をしている重大な問題でございます。総理もトロントへ行かれて、あるいはまた日夜そのことで本当に御苦労さまですが、精いっぱいの御努力をお願いしたいというふうに思います。明日はフジモリ大統領も帰国をされるということですから、私どもも注目をし、またいろんな期待を込めながら次の展開を願っている。ぜひしっかりやっていただきたい、一つでございます。  もう一つは、すべてのニュースで今一番目、二番目を争っている、私ども非常に心配している日本海におけるロシアのナホトカ号からの重油流出事件でございます。  この間、三与党の幹事長など仲間の皆さんと一緒に行ってまいりました。この間加藤幹事長も言っておりましたが、私も自分の手でさわってみて、油をすくってみて、テレビで見るのと本当に違う。油がひしゃくから流れるのかなと思ったら、全然流れない。一生懸命かき出しているという姿でございます。特に、五人お亡くなりになった方もいらっしゃるわけでございますけれども、御苦労のほどが本当に身にしみて痛感をいたしました。早く回収をしなければと思います。  また、これから先、生活対策あるいはさまざまの営業補償、営業支援、融資の問題、それから補償問題、国際的な保険その他で間に合うのかどうか。何か聞きますと、保険会社のかかわりでも、きちんとした積算をし、データを添えてそれを保険会社の方に提出をして、それを審査をして支払いになる。一定の時間、場合においては小一年かかることもあるなどとも聞いております。  私どもは、やはり気持ちのこもったできるだけのことをしなければならないというふうに思うわけでございまして、関係者の皆さんに不安を与えない、精いっぱいやっているんだという気持ちの対応をぜひお願いしたい。二つ目の要望でございます。  もう一つ要望がございます。これは総理に一言御答弁をいただきたいんですが、歴史認識の問題と梶山官房長官の発言の問題でございます。  これは土井党首などとも相談をしまして、社会民主党として、自由民主党、与党の関係ですから、そこを通じてお話を申し上げるということで、加藤幹事長、山崎政調会長ともお話をさせていただきまして、それは党レベルで御回答を申し上げますということで今お待ちをしているところであります。  ですから、それはそれなんですが、総理に伺いたいのは、やはり大事なことは、歴史観、アジアへのメッセージ、アジア諸国民の皆さんに対する我々日本、また日本政府の態度ということをやはりいつもきちんとしなければならないということであろうと思います。  先ほど申しました三党合意の中で、平和外交に関するところで、私どもは相談いたしまして、冒頭に歴史的な問題を合意事項として掲げました。そこには「歴史認識については、一九九五年八月十五日の村山総理談話を基本にすえ、アジア重視の外交を展開する。」「戦後問題の残された課題に関して検討する。」ということが書いてございます。その一行目の言葉をあえて冒頭に私どもは出すべきだということにしたわけでありまして、これは橋本総理も総裁として御署名になりました。やはりこの持つ意味というものの重要さをしっかり持ってやっていきたいと思います。その感覚が薄らいだり、揺らいだり、疑問を持ったりされないようにやっていくということが、アジアの一員としての日本の態度であろうというふうに思うわけでございます。  冒頭、三つ御要望申し上げましたが、総理、いかがでしょうか。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それぞれ、社民党を代表してのお立場からの御意見をちょうだいをいたしました。  冒頭、ペルーの日本大使公邸占拠事件につきましては、大変な御心配を皆様にもかけております。また、国民の皆様にも御心配をかけております。そして、人質になられた方々の御苦労とともに、その御家族の心労というものも思い半ばに過ぎるものがあります。  フジモリ大統領と会談をいたしましたが、今後ともに、我々はテロに屈するのではなく、人質になっておられる方々の全員をいかにして無事に少しでも早く救出するか、目標を絞り込みながら相談をしてまいりました。これから後、そのお互いの意思の中でこの事態が解決できますように、今まで同様、我々はペルー政府を全力を尽くして支えながら、フジモリ大統領初め関係者の努力に心から期待をかけております。  また、ナホトカ号重油流出事故につきましては、本日午前に、内閣官房長官の主宰するナホトカ号流出油災害対策関係閣僚会議を開催をいたしました。これまでも随時開いてきたわけでありますけれども、特に緊急を要する応急対策につきまして、運輸大臣を本部長として関係省庁で構成するナホトカ号海難・流出油災害対策本部を設置して、防除等に取り組んでおります。  現在、悪天候のために作業のおくれもありまして、被害の拡大が心配されるところであり、議員自身もその現地にお立ちをいただいたわけでありますが、多くのボランティアの方々にもお手助けをいただきながら必死の努力を続けております。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕  こうした問題の重要さ、事態の重大さというものにかんがみて、我々は早急に事故原因を究明する必要もありますし、学識経験者で構成される事故原因調査委員会を設置いたしまして検討を開始すると同時に、ロシア側に対しまして原因究明等の協力を提案をし、明日、すなわち明五日から七日まで、モスクワにおいて日ロ当局間の会合を行うことといたしております。  今、財政運営等についてもそれなりの配慮をいたしておりますが、一々長々とは申し上げません。  さらに、今回の事故というものを我々は貴重な教訓といたしまして、老朽タンカーの安全確保対策というものについて国際海事機関などを通じた国際社会への提唱を行うと同時に、このような事態にも対応可能な今後の油防除体制のあり方、再発防止策につきまして、関係業界や学識経験者を含めて総合的に検討しながら対応策を講じてまいりたいと思います。  最後に、さきの大戦に対する政府の考え、それは一九九五年八月十五日に村山内閣総理大臣が発出されました談話というものを基本とし、これに基づきまして我々は行動していくことといたしております。そして、それは昨年十月三十一日の三党政策合意においても確認をされておりました。  我が国が過去の一時期、植民地支配と侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国の方々に対し多大な損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、これらに対する深い反省とおわびの気持ちの上に立ち、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていくというのがその談話の基本であります。そして、こうした考え方を踏まえて、関係諸国との信頼関係を一層強化していく。その中で、国際社会の一員として国際協調の実現のために努力をしてまいりたい。  以上、お答えを申し上げます。
  186. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 通告いたしました質問の順番とちょっと違いますが、沖縄問題についてまず冒頭お伺いをしたいと思います。というのは、これから二月、三月、四月、五月、どう展開をするのか、非常に私どもも重く受けとめているからでございます。  振り返りますと、一昨年秋以来、村山内閣の当時に、ある不幸な事件を含めまして対応措置をとりまして、そして日米間でもハイレベルの協議機関をつくる。首脳会談でも重要な話題にする。そして、政府と沖縄県でも協議会をつくる。つくってよかったなと私も思います。そして、その努力の後を受けて、橋本総理も先般の施政方針演説でも冒頭部分で重要な位置づけをなさいました。  大田県知事も、いっか伺ったことがございますけれども、これから先非常に苦難な道が多いと思いますが、こういう言葉を言われておりました。長く続いた厳しい、激しい基地返還闘争という時代から変わって、これからは大きな次の沖縄の発展の将来の見通しを、目標を立てて、県民総ぐるみで汗をかきながら一歩一歩明るくなる、そういうやはり県政と沖縄にしたいという意味のことを言われておりました。  そういう意味言葉を受けとめますと、これから数カ月非常に重要な中でどうしていくのかということにつきまして、重く私どもも受けとめ、力いっぱいの努力をしなければならない、与党の中でも真剣な議論を交わしながら打開に努めなければならないという思いがいたします。  その中で一つ、これは本当に率直に総理に要望したいのであります。それは、沖縄県と沖縄県民に将来展望を語りましょう。沖縄県と沖縄県の皆さんにもつと明るい展望を語るという努力を、ぜひやっていただきたいと思うわけであります。確かに、今の情勢はすべてが明るく展開しているわけではございませんし、アジア情勢も難しい面も残っております。ただ、私の考えでは、ことしはいい方向に展開する、また、しなければならない年ではないかと思います。  朝鮮半島を見ましても、KEDOも動き始めました。二つの原子炉を国際協力でつくる。この間見えました事務局長も、春には建設を始めたいという意思表示をなさっております。これが始まったら、北朝鮮で、朝鮮民主主義人民共和国の中で、韓国から、アメリカから千人、二千人、三千人の人が行ってその工事で働くわけでありまして、だれが見たって戦争が起こる状態ではないなという状態が進んでまいるだろうと思います。  そしてまた、KEDOについて我が国も一定の資金分担もしなければならないと思いますが、これらにつきましても、日朝国交正常化交渉が進まなければ、国民のお金から出しているわけですから、窓もあいておりません、ドアもあいておりませんという国に国民のお金を出すわけにはまいりません。  昨年春に三与党の政調会長、政審会長でソウルに参りまして、大統領を初めさまざまな方とお会いいたしまして、そのことも御説明を私どもはしてまいりました。それに対する反対という意思はもちろんございません。当然のことだと思います。  また、ジグザグございますけれども、米朝の連絡事務所相互設置の具体化の問題とか、あるいは四者会談、何か日にちが延びたということでちょっと懸念をしておりましたが、けさどこかの新聞の解説を読みましたら、何かちょっとした誤解がありて、ちぐはぐがあったというふうなことが載っておりました。真偽は本当はわかりませんが、やはりそういう方向に進んでもらいたいと思います。進まなければならない状態だろうというふうに思います。  米中関係その他を含めまして、北東アジアは冷戦が残っている地域という感じを私どもは強く今までも言ってまいりましたが、やはりそれは変わってくる。日本の外交が前向き、積極的に重要さを加えている。したがいまして、そういう状況全体をどうするのかという外交努力と、アメリカ軍のプレゼンス、沖縄の状態に対して、やはり一生懸命努力をすれば、政府も努力をする、県も協力してもらいたい、県民の皆さん御理解ください、そういう展望が非常に大事ではないだろうかと思うわけでありまして、当面する状況が非常に厳しい問題があるだけに、従来よりも一歩進んだ総理の御決意を表明いただきたい。
  187. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変幅の広い御質問になるわけでありますが、まず沖縄、申し上げなければなりませんことは、米軍の施設‘区域の約七五%が日本の国土面積のわずか〇・六%しかない沖縄県に集中しているという事実。このために、沖縄県の方々には長年にわたって大変な御負担をお願いをしてきているわけであります。  私ども内閣一同、そのような認識に立ちまして、沖縄の問題というものを国政の最も重要な課題、そう受けとめ、今日までも米軍施設・区域の問題あるいは経済社会の振興策というものに全力を挙げて取り組んでまいりました。今後もこの方針を堅持していく、このことを冒頭申し上げたいと思います。  一方で、アジア太平洋地域には朝鮮半島における緊張が続いております。それだけではなく、依然として不安定性、不確実性というものが存在しており、その中におきまして日米安保体制というものは、日本の安全だけではなく、この地域の平和と安定を保持していく上で必須の枠組みであると私は思っております。  同時に政府は、日米安全保障共同宣言におきまして確認されましたとおり、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応し、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢というものにつきまして、アメリカ政府と緊密かつ積極的に協議を継続していく所存であります。  もとより安全保障、これは国家の基本的な備えの問題でありまして、防衛政策や軍事態勢というものを検討いたしますにつきまして、短期的あるいは表面的な変化だけではなく、国際情勢の中長期的な趨勢というものもしっかり見きわめる必要はありますが、この地域の安全保障環境が大きく変化いたしますなら、当然それに最も適切に対応する防衛政策なり、あるいは軍事態勢というものについて日米が協議していくことになります。  私といたしましては、将来この地域の安全保障環境というものがさらに改善をされる、そして日米両政府として日本の安全やこの地域の平和と安定を確保しながら、同時に沖縄県民の負担を一層軽減するための展望が開けることを強く願っておりますし、そのための努力というものは継続してまいりたいと思います。とりわけアジア太平洋地域の情勢の安定を図るべく、二国間、多国間の外交努力というものを一層強化していく、各種の安全保障対話や地域間の協力の推進を図る、こうした努力を払い続けてまいるつもりであります。  こうした考え方のもとに、今私どもはさまざまな施策を一方で推し進めておりまして、私どもとしては、普天間飛行場の返還といった緊急の課題を実現するために、まずSACOの最終報告というものを着実に実施していくことが重要である、必要であると考えておりますし、沖縄県、関係市町村を初め関係各位の御理解と御協力を切に要望する次第であります。  今、我々は県からもさまざまな御要望を、そして基地所在市町村からもその御意見をいただいております。こうしたものについては、もし御質問がありますなら改めてお答えを申し上げたいと存じます。
  188. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理のお気持ちを今伺いました。願わくばその方向で、なるべく早い将来に、一歩一歩具体的な展望が開かれる、アジアの情勢はよい方向に一生懸命努力をして変えましようと。また、アメリカのプレゼンス、これは私は、那覇、東京、ワシントン、この図柄は非常に大事なことだと思いますから、そういう中でこれももっと、軍縮の時代を迎えている、沖縄県民に負担を軽減するという方向への着実な前進を、総理の今の表明に基づいてお願いをしたいと思います。  関連をいたしまして、もう一つ伺いたいことがございます。それは、普天間の移転、海上ヘリポート建設。私ども、注意深くずっといろいろと国、県、市などの状況を伺っているんですが、これは現実、難しい問題に直面をしているのが事実であります。私は、そこで非常に不信感が生まれるということは、まあまずいことだなというふうに思っております。また、県民と沖縄県に理解の得られる、納得の得られる方向での努力を精いっぱい私もしなければならないというふうに思っております。  それらを考えますと、沖縄が出されている三つのビジョンがございます。国際都市形成構想、基地返還アクションプログラム、それから、五つの柱になるわけですが、さまざまの社会経済発展についてのお願い事、五項目提案などがございます。与党の三党合意の中でも、私ども、表現ではいろいろ議論いたしまして、沖縄県の提起している三点の要望を重く受けとめ、そして米軍基地の整理、統合、縮小に向けた積極的な努力、国際都市形成構想、規制緩和等産業振興特別措置の促進に全力を尽くすというふうに表現をいたしております。  また、総理も言われましたが、アジア情勢の安定への外交努力、米軍の兵力構成を含む軍事態勢についての継続的な米国との協議となっているわけであります。  私はやはり、この三つの提起、これは一面ではもっとこれから具体化をしなくちゃなりません。非常に大きな問題だと思います。それは、フリーゾーンをつくる問題でも、それからハブ港湾をつくる問題でも、これはある意味では途方もない時間もかけた、しかも確かな計画に基づく、お互いの計画と努力というものがなければなかなかできない話でありまして、どうするのか、双方とも努力をしなければならないと思います。  ただ、私は、今の状況を見ますだけに、やっぱり沖縄の三つのビジョン、三つの提案を重く受けとめて、精いっぱい前向きに努力をするという視点をきちんと置くことが非常に大事なことではないかというふうに思うわけでありますが、いかがでございますか。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私ども、政府の立場として、先ほども申し上げましたように、沖縄県が、また県民の方々が我が国全体の安全のために担ってこられた負担、これを軽減することが極めて重要であることは十分認識をいたしているつもりでございます。  これまで、沖縄米軍基地問題協議会などを通じまして、基地返還アクションプログラムの御説明をいただくなど、県民の方々の声にも真摯に耳を傾けるように努力をしてまいったつもりでございます。そして、その沖縄県の御要望、すなわち沖縄の将来に向かっての振興策というものにつきましては、現在、大田沖縄県知事もメンバーに入っていただいておる沖縄政策協議会において具体的に検討をしていただいております。  また、先般、沖縄米軍基地所在市町村懇談会から提言がなされました。内閣としても、その実現のために最大限の努力をしてまいりたいと考えております。  いずれもその推進のために、先般御審議をいただきました平成八年度補正予算及びただいま御審議をいただいております平成九年度予算におきまして所要の手当てを行っているところでありますが、今後とも、懇談会提言あるいは政策協議会による検討の結果というものを踏まえて、沖縄県の振興に内閣として全力を挙げてまいりたい、そのような思いでおります。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 先ほど、前提に、二十一世紀のドアをあける日と申しましたが、未来を語り、未来に確かな展望、バラ色の夢ではない確かな設計を語るのが私は政治の役割であろうというふうに思いますので、二十一世紀時代の沖縄に、もう間もなく、もう目の前ですから、メッセージを送れるような努力を私どももやってまいりたいというふうに思います。  沖縄の問題をどう打開するのかということは、日本・アジア、日米関係がどうなるのか、これは一体関係のことになるわけであります。  私は非常に感銘を受けたのですが、もう数年前に、ベルリンの壁が崩れた半年か一年後に、オーストラリアの当時外務大臣だったエバンスさんがヘラルド・トリビューンに長い論文を書かれまして、アジアにも、当時からいいますとCSCE、全欧安保機構のような平和保障体制をつくろうではないかと提唱をなさいました。何カ国かがそういう提唱もなされました。  私は、我が愛する日本の代表として総理がマニラへ行かれたときにも、日本が大きなメッセージを世界に送る、次の時代の構想を述べる、ヨーロッパにOSCEがあるならば、アジア太平洋にそれに対応するような大きなビジョンがあってもいいのではないかと思い続けてまいりましたが、そういう役割を果たせるような努力を与党の中でも今後とも議論をしてまいりたいというつもりでおります。  財政問題について御質問申し上げます。  まず申し上げたいことは、財政構造改革ということの認識でございます。  政府・与党におきまして、共同で財政構造改革会議というものがスタートいたしました。かつてないハイレベルの責任ある方々がお集まりいただいてやっていこうということで、これはまだ一度やってあれなんですが、なるべく早い時期にまたやって、精力的に議論しなくてはならぬというふうに思っているわけであります。それをつくりますときに、私の方から、財政再建会議ではなくて、済みませんが構造という言葉をぜひとも入れてくださいということを与党間でお願いいたしまして、そのようにさせていただきました。  と申しますのは、私は、日本の財政それから財政改革と申しますと、先ほど来議論もございました補助金の問題、分権の問題あるいは公共事業、財投その他、ちょっと欧米とは違ったさまざまの構造を、日本的な構造を持って、それが今日大きな焦点となってきているということになるわけでありまして、何か収支均衡という発想だけでやるとなりますと、かえって矛盾を大きくするようなことになりかねない。国民の皆様からちょうだいする、その預かったお金と国の財政を次の時代に合うようにどう組みかえるのかという視点が非常に大事ではないだろうかというふうに思いまして、そのようなことで財政構造改革会議ということに実は合意をいただいたわけでございます。  その視点と、その視点に伴いまして、これから私どもも責任を持ってお互いにプランと意見を出し合って実りをつくらなければなりません。そう時間があるわけじゃないんで。恐らく、これから三月、四月、五月精力的にやって、通常でしたら次のシーリング前には結論を得なければならぬし、法制化もしなくちゃならぬというふうなことになっているわけでありまして、私は、そういうことを考えますと、たくさんのことをここで議論しなきゃならないし、また国民の皆様の前に鮮明な柱を立てるということが必要ではないかと思います。  例えば、私は、重点として五つぐらい思ったんですが、一つは、例えばシーリング方式を廃止する。シーリングで申しますと、総枠を抑えることに意味があるんですが、構造は変わりません。それなりの役割は持ったが、やはり次の方法を考えなくちゃならぬ。これは、いろいろとまた方法が私はあると思います。  それから、公共事業につきましても、先ほども御議論がございましたけれども、長年にわたる中期計画の積み上げと組み合わせの中で、硬直性だ、硬直性だと言われながらなかなか変えられないで来ているわけでありまして、私は、本来でしたら、今までの国づくりに対して二十一世紀時代日本の国づくりの柱は何だろうか、思い切った新しい柱が立つだろうと思います。その方向にどう持っていくのかということが必要でありますし、また、国の経済財政と見合ったスリムな形ということも当然必要だろうと思います。  また、三つ目には、分権それから補助金財政その他のことについての改革も必要でございますし、分権推進委員会のレポートもいただきまして努力をしなくちゃならぬと思いますし、また後で伺いますが、福祉の重点的なあり方の問題、あるいは軍拡から軍縮へという方向があると思います。  いずれにいたしましても、そういうことを含めました構造視点ということが大事ではないかと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  191. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、御提案を申し上げ、御相談をかけましたときには、財政再建会議という言葉を使いましたものの、三党の方で、主として議員から構造改革という文字に変えろという御指摘をいただき、そのおかげを受けまして財政構造会議をスタートさせることになりました。議員もこのメンバーに加わっていただいておりますことでありますので、長々とした御説明をするつもりはございませんけれども、ここでお願いを申し上げておりますのは、まさに財政再建のための法律の骨格も含めた歳出改革と縮減の具体的方途についての検討を行っていただきたいということでございます。  そのやり方につきましては、議員も今お触れになりましたけれども、諸外国の例など考えてみますと、歳出上限を設定することからあるいは個別の歳出削減目標の設定までいろいろな手法が考えられますが、日本独自で、日本の特殊性というものも踏まえた考え方をつくっていかなければならないということは、委員御指摘のとおりであります。  当然のことながら、その検討をいたします場合には、例えば社会保障関係費でありますとか、公共事業関係費でありますとか、文教及び科学振興、防衛関係費、歳出項目として大きい順に今四つを並べたわけでありますけれども、こうしたものを初めとしたあらゆる経費というものを俎上にのせながら、一切の聖域を設けることなしに御検討いただいて、我が国の社会経済システムに合った財政再建方策というものを策定していただきたいと考えております。  また、今概算要求基準、シーリングということでお触れになりましたが、平成十年度予算の概算要求のルールづくり、これは今後検討を行っていく課題でありますけれども、当然十分な論議を必要とするところであります。議員からも、できるだけ早く二度目を開け、そんな御意見をちょうだいいたしました。前回の席上、今月の上中旬に、財政経済の将来展望と財政健全化目標など財政再建の総論的な事項について、諸外国の取り組みも踏まえて議論を行うと皆さんの御意思をいただいておりまして、近いうちに開かせていただきたい、国会日程等とあわせて考えておるところでございます。
  192. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それらの御相談をさせていただく中で、私ども特に強調した点なんですが、国民に透明性のあるというやり方を強調させていただきました。  と申しますのは、昨年の夏、介護保険問題を通常国会で提案できないで、臨時国会で提案する。それで、幾つかの懸案事項をどう打開をするのかということでございまして、あのとき、与党の政審会長それから福祉プロジェクトチームの皆さん、プロジェクトの皆さん非常に熱心にやっていただきましたが、ほとんど全ブロックを回りまして公聴会をさせていただきました。延べ百人以上になりますでしょうか、各界の人から各地でお話を伺いまして、その御意見を伺ったものを全部整理をし、そしてまた、恣意的な取捨選択ではなくて、それを一々チェックをし、議論を積み上げて、そして与党修正案をつくるという経験をいたしました。やはり直接出かけていってたくさんの人と議論をして、生で意見を聞いてそれを受けとめてやるという発想、本当にいいことだったなというふうに私は思っ.ております。  そういうことを考えますと、財政は深刻な危機です。国民の皆さんには、もっと減税その他ができないかとたくさんの声がございます。しかし、この認識をやはり共通にしなければならないと私は思います。まあ三月危機とかなんとかというマスコミの言葉がありますけれども、これは与党並びに政治がしっかりしていればそんなことは問題ない話なので、私は、危機があるとすれば、一番の危機は国民的な危機感がない、国民的に危機感の気持ちを共有できないということが一番の危機だと思います。  そういう面を考えますと、透明という言葉を申し上げましたが、例えば昨年の経験に顧みましても、国会の場での公聴会もあるでしょうが、国民的な公聴会をやる、セミナーをやる。さまざまな形での、国民と認識をともにする、そういう意味での積極的な政治、政府の面からの努力というのが、問題が大きいだけに非常に大事なことではないだろうかというふうに思うわけであります。欠かせない手法として、国民の声とともに、税制の問題についてもそうだと思います。税制の民主化についても全くそれを求められていると思いますが、そういう手法を大胆に積極的にやっていくということが必要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員、介護保険の御体験を踏まえ、医療保険改革に、あるいは税制見直しについて国民意見に十分耳を傾ける、そうした御指摘をいただきました。私は、国民の御意見を十分に伺っていく、そしてそれを施策の中にどう生かしていくか、そうした視点を持って物事に当たれという御忠告と受けとめ、お礼を申し上げます。
  194. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 あらゆるところでそういう努力を私どもはしてまいりたいと思います。  それから、大蔵大臣に伺いますが、先ほども公共投資の額についてのお話がございました。六百三十兆。たしか私の記憶では、円が大体七十九円か八十円かという大変なときがございまして、そういう中で、内需振興それから国際的な経済協調という環境の中で出たということではないかと私は記憶をいたしております。  G7が間近にございますから、いろいろなことで気を使った対応を政府としてもしなければならぬということでございますけれども、あのときの状況と今とを考えれば、これらの経済認識は、これはOECDや何かさまざまな国際機関あるいは諸外国のG7の重立った方々、認識はみんな共通に持っているわけでございまして、そういう意味からいいますと、六百三十兆をもっとスリムにする、あるいは長期的なものにするなど、そう何か国際的に反発を受けるとかなんかではない話ではないだろうか。やはり手がたい日本の経済運営というベースで考えられるべき問題ではないだろうかというふうに実は思うわけでございます。  ことしの経済運営、財政運営でも、工夫しなくちゃならぬ点が幾つかあると思います。今出ているような問題意識を今年度の財政経済運営の中でもどうやっていくのかという問題もございます。  それから、今の公共事業はコストが高いという、たしか宮崎さんが経企庁長官のときでしたか、何か二、三割高いというので、いろいろと政府部内でも御相談したことを記憶をいたしておりますが、例えば、一般会計、特別会計、合わせまして相当量の公共事業ですから、それがコストダウンして合理化できればもっといい仕事ができるか、あるいはそれをどう使うことができるか、もっと社会のためにいいことができる可能性があるわけでありまして、要するに、決めてもらう、決まったらそのままやるということではないのですね。政治は日々緊張でございますから、そういうふうな努力をやるべきではないだろうか。例えば公共投資の問題に関係いたしましても、やはりそういう努力を、日夜議論をし、新しい改革の努力をしなければならないのではないだろうかというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  195. 三塚博

    ○三塚国務大臣 全体の経済運営の中でどうするか、特に財政構造改革会議というものを与党三党の中で提唱され、最終的に、ただいま総理からも言われましたとおり、第一回が終わり、第二回会議が今月中旬に行われます。同時に、三回目会議は各論に移るわけでございますが、基本的なところをまとめてまいる。透明性という話も出ました。地方公聴会などもやはり行うなどいたしまして取り組まなければならぬ。こういうことで、財政当局の責任者として上申を申し上げておるところであります。  長期計画六百三十の問題、先ほど共産党志位議員総理の論争をお互い聞いておりました。主権国家であるという基本論を踏まえることが、極めていずれの場合でも大事じゃないでしょうか。それと、経済、財政の成り行き、そして為替レートという御指摘もございましたが、そういう総合判断の中で、なおかつ社会資本充実、高齢化社会に向けた準備を今始めておかなければ、二〇二五年、二〇五〇年、世界最大の高齢社会になるということどもを考えますと、やるべきことはどうするのかということで、ここは知恵の限りを絞るということではないでしょうか。橋本首相流に言えば、第三の道を求める、なかなかいい言葉であります。これは国民の声の結集の中で、そして国会の声の中で、特に政治の責任にある与党三党の責任の中で、内閣の責任の中でとり行うということであって、そのことをとやかく言う国はないのではないでしょうか。
  196. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、もう一つ伺いたいことがございます。  最近、この委員会でも話題になりましたが、金融機関の不良債権打開のために公的資金の投入という何か話題がございまして、私はちょっと抵抗感をその話題に対しては感じております。  昨年からことしにかけまして、特に昨年一年、ほぼ一年ですね、いわゆる大蔵省改革、特に金融行政に関する改革という議論をさせていただきまして、与党の中で半年ほどプロジェクトチームの責任者を私やらさせていただきました。あのときに思ったのは、今までの金融行政、いわゆる護送船団とかそういうものはこれからもう完全にやめるんだという問題ですね。  それから、金融業界につきましては、あの当時キーワードとして、表現として使ったのは自律と責任という言葉でございまして、自律と責任、細々と大蔵省に相談していればいいという時代は終わりですよ、もっとしっかり自分責任でやりなさい、ディスクローズの努力をきちんとやって、利用者の皆さん、預金者の皆さん、国民の皆さんにわかるようにしなさいということをキーワードでまとめたわけでございます。  そういうことをきちんとしてやりませんと、何か苦しいときには保護してくれるんだという印象では、総理のビッグバンではありませんが、これからのやはり内外の金融の大激変に備えられる能力と知力と体力ができないんだという感じがいたしますが、大蔵大臣はどうお考えですか。
  197. 三塚博

    ○三塚国務大臣 伊藤議員が不良債権処理に当たりまして座長として御苦労をいただいたそのときの理念、自律と責任、ましてや金融機関その責任極めて大、こういうことでお取りまとめをいただきました内容の基本に、住専以外のノンバンクの不良債権処理については公的関与を行わないという原則が立てられておりました。私も主管大臣としてこのことはしかと踏まえていかなければならないと思っております。  よって、金融機関の不良債権問題への対応につきましては、まず金融機関において経営合理化に努めるなど最大限の自助努力を行われることが基本である、これはまさに自律と責任を踏まえたことであろうと思っております。  昨年の通常国会におきまして金融三法が成立をいたしました。預金保険制度の拡充、さらに信用組合の破綻処理について時限的な制度の整備を行ったところでございまして、これらを最大限に活用しながら信用の安定に努めていかなければなりません。  大蔵省といたしましては、以上の考え方に基づきまして、預金者保護の観点から、金融システムの安定性確保のため、その時々の状況を見ながら、金融機関の不良債権問題に適切に取り組んでまいる所存であります。
  198. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 国民生活に関連をいたしまして、二つ私から、私の考え方を申し述べておきたいと思います。  今度の予算編成の昨年末のさまざまな与党間の協議の中で、一つのテーマとして、特別減税を継続できるかどうかということが話題となりました。私ども社会民主党は、来年のといいますか、ことしの経済運営を考えますときに、国民生活と消費に何か明るいシグナルをともすということが、厳しい中でも精いっぱいその努力をすることが大事ではないだろうか。設備投資の方は相当堅調にいくだろうと思います。ただ、消費の方は、消費税がありますから四-六にはどうしてもダウン、下がってくる。それをどうやって持ち上げていけるのか、さまざまな工夫をしなくちゃならぬ。  まあ、明るいシグナルと申しましたが、懐中電灯ぐらいの明かりじゃしようがないので、探照灯か灯台の明かりぐらいの明かりをともしたいという議論をさんざんやったわけであります。大蔵省め皆さんと大議論をいたしまして、それでは新年度の財政の基本フレームの中でその可能性があるかどうかという研究をじっくり夜中までやりました。どうしてもそれをやるためには赤字公債の増発がないと二兆円やれませんと、大体そういう状況だったわけであります。  これはやはり国民の皆さんに御理解を得られる道ではないだろう。しかし、何かできる努力はしなくちゃならぬという気持ちを今でも実は持ち続けております。まあ、公共事業の方をもっと単価を下げてそちらの方へと言うと、仕事熱心な建設大臣はむくれるかもしれませんけれども、やはり何かそういう知恵を絞り続ける努力をするという姿勢が大事ではないだろうか。今すぐ案を出して、イエスかノーかとは申しません。我が党も知恵を絞ってまいりたい。また、そういう気持ちをことしの運営の中で、言うならば、橋本総理の難しいことしの経済運営の中でどう知恵を絞るのか。絶え間ない経済政策運営の努力と申されましたが、そういう視点を持っていただきたいというふうに思います。  もう一つは、消費税の問題であります。  私どもは昨年の暮れ、臨時国会、短い期間でございましたが、緊急改革ということで、消費税の二%アップによって特段に被害を受ける、いわゆる社会的弱者と言われる皆さんに何か温かい気持ちを表現しようではないかということで、できれば生活保護世帯の皆さんとかそういう方々には二%分お返ししますという意思表示をしたいなという気持ちを込めて、千五百億円の特別措置というものを合意していただき、また国会に提案を今されているということになっているわけであります。  ことしは、通常国会ですから、本体部分のさまざまの改革をしなければなりません。複数税率、インボイスと益税解消のシステム、使途の明確化などでございます。まあ多少税制を勉強したものとしては、非常にそれぞれ難しい問題を乗り越えなければなりません。  例えば、そのインボイスと益税をなくすると、中小企業、零細企業、お店の皆さんなどにつきましては、やはり声を大にして言うだけではなくて、どういう新たな事務的御負担が起きますか、それを調査しましょうということに合意をさせていただきましたが、その辺、さまざまな知恵を絞り、努力をし、やはり不信ではない税制にどう持っていくのかという努力を私どもは精力的に、与党としてもまた政党の一員としても、また私どもは消費税に深くかかわった立場にある政党でございますから、含めて努力をしていきたい、信頼される税制にどうしていくのかという努力をしてまいりたいというふうに考えております。  これは私どもの考えている気持ちであります。総理、そういうことは前向きにやりましょうね、努力を。議論をしたいと思いますが。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 当然ながら、いろいろの角度から御論議はあるものと存じますし、また、この議論を深めていただくことによりまして、より国民の御理解もいただける、そうした面もあります。私どもとしても、ぜひ真剣な御論議をちょうだいしたいと存じます。
  200. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 あと一、二、ちょっと総理に率直に実は伺いたいことがございます。  行革、大きなテーマであります。それで、行革会議総理も座長として、財政構造改革もそうですが、御努力されているわけであります。私どもは、省庁、中央官庁その他どうするのか、ことしじゅうに、秋までに結論を得て来国会とか、非常に狭い中で非常に突っ込んだ大きな議論をしなくちゃならぬ。本当に大変なことだというふうに思います。やはり、今指摘をされている、またまずいと言われているさまざまな問題、どうするのか。  私は、総選挙が終わって、昨年暮れ、新年、流れを見ていますと、さまざまの大きな改革の構図を勉強する、そういう中で、先行してまず具体的に、国民の皆さんにはっと目に見えるようにしなくちゃならぬ問題というのが三つあると思います。  一つはやはり、私どもは国家公務員倫理法、大綱を作成をいたしまして発表させていただいておりますけれども、毎日毎日、新聞見ても、一面もそうですけれども、社会面はスキャンダルのことで年じゅう埋められている。泉井とかオレンジとか何がどうとかと、絶え間なく社会面は毎日、新聞はもうスキャンダルの話で埋まっている。とても国民の皆さんが行政と政治にかたい信頼感を持てる話ではなくなってしまう。本当に大変なことだと思います。総理は何か新聞で見る限りでは、前向きに考えていたけれどもちょっと慎重であるとかいった報道をされております。去年と比べてことしの方がその問題については慎重になってというふうな報道がされているわけでございますけれども、そんなことはないと思いますが、大胆にこういう問題は、国民の皆さんに対する政治と行政の信頼回復の柱ですから。それから情報公開ですね。私どもさまざま試案の検討をいたしておりますが、なるべく早くではなく、本当に早急に明らかになる、提供されるということが必要で、もう地方議会はどんどんやっていることですから。それから、やはり企業・団体政治献金の禁止。  この三点セットといいますか三つというのは、大きな改革の構図の前に先行してやるべきことでないだろうか、私どもはそう考えておりますが、総理はどうお考えですか。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょっと順番をひっくり返して恐縮ですが、今たまたま資料を手にとりましたところ、順番が逆さになっておりました。  まず、最後にお触れになりました政治改革というものに関連し、政治資金、すなわち企業・団体からの政治献金というものについてお触れになったわけでありますが、これは、まさに先般の三党の政策合意で、「政治資金規正法付則九条、十条において、法律施行後五年を経過した場合、資金管理団体に対する寄付の禁止、政党・政治資金団体に対する寄付のあり方の見直しを定めていることを踏まえ、政治資金のあり方について今後、さらに協議を進める。」三党の政策合意そのままのこれが文章でありますが、こう明記されておるところでありまして、私どもとしてはこの動向を見守らせていただきたい、そう考えております。  また、公務員の倫理法という話、何回かここでも議論がありまして、私はその前から、去年どうで、ことしどうでと言われるのは大変妙な話だと思うのですけれども、我々も、本当に情けない事件が相次ぐ中で、まさに閣僚懇談会においてはその倫理法の制定というものも視野に入れながら議論をしてきたのです。そうした中で、昨年の十二月、事務次官等会議における申し合わせというものが出てまいり、それを受けて全省庁が法規範性を持つ訓令として公務員倫理規程をそれぞれに制定をし、国民の信を得るべく努力を始めました。私どもとしては、この厳格な遵守というものを図ることによって、政府自身綱紀粛正に努めていきたいと存じますし、まさに倫理法を視野に入れながら検討してきたわけでありますけれども、この効果というものを見守りたい、今そう考えております。  また、情報公開法の問題、これは間違いなしに必要なことだ。そして、国民に開かれた、信頼をされる行政というものを実現するために大切なことであるということは何回もお答えを申し上げてまいりました。そして現在、既に総務庁を中心に法文化、多数の既存法律との調整といった情報公開法の立案作業に着手したところでございます。  いずれにいたしましても、平成九年度内に所要の法律案の国会提出を図るという行政改革プログラムに沿って動いているわけでありますから、できるだけ早い機会に法律を国会に提出できるよう立案当局を督励してまいりたい、そのように考えております。
  202. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 厚生大臣に一つ伺います。  医療保険改革の問題、大きな問題であります。やはり、先ほど申し上げた介護保険と同じように、国会でも真剣な議論をする、国民的にも本当にいろいろな議論と意見交換をしていただかなきゃなりません。また、今国会でも非常に重要な法案としてお互い認識をいたしているわけであります。  大臣御承知だと思いますが、昨年の十二月十九日に、この問題の国会提案の衝に当たりまして、与党の三党間で三項目の確認を取り交わしました。  一つは、改革先行です。もちろんですが、負担先行という政治は我々やるつもりはありませんから、改革国民の御理解を得るというのが第一です。それから二つ目には、多くの皆さんから御意見を伺う。国会や公聴会の場で幅広い意見を十分伺って、それを反映をさせる。その上に立って、それじゃゴーとか、施行日いつにしましょうかというところは、そういうことの判断の上に協議をして決めましようというふうなことになっているわけであります。  決めましただけに、私どもも非常に大きな責任を持っているなというふうに私は思っております。また、ふさわしいような議論を立派にやらなくちゃならぬというふうにも思っております。国民の大方から、ああ、そこまでやるならわかったと言っていただけるだけの努力を詰めなければなりません。与党のプロジェクトチームの皆さんも本当に今真剣にやっていただいております。それにつきまして、特に、担当なさる厚生大臣としての決意を伺っておきたい。
  203. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 昨年十二月十九日で、医療保険改革に関する与党三党確認書、社民党幹事長、政審会長、新党さきがけ幹事長、政策調査会長、自民党幹事長、政務調査会長、この与党三党確認書の三点の、今伊藤議員指摘された意向というものを尊重しながら国会審議を進めていきたいと思います。
  204. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間でございますから質問は終わりたいと思いますが、冒頭申し上げましたように、やはり二十一世紀のドアをあける日に向けて、あと三年、四年でその日が来る、三年、四年たったときに一体どういう社会と、日本と、さまざまな制度にするのかという責任を持って私どもは努力をしてまいりたいというふうに思います。  また、この間、我が党首が自民党大会へ行かれまして、だめなものはだめ、いいことはいいということをおっしゃいましたが、やはりいいことは立派にやろうという方向への努力もしたいと思います。  きのう、ちょっとうちにあった新聞を読んだら、いつまでそれが続くのかといったようなことも新聞にございましたが、やはり私どもは、今本当に大事なときですから、そういう気持ちでやってまいりたいということを重ねて表明いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  205. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、粟屋敏信君。
  206. 粟屋敏信

    粟屋委員 太陽党を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に御質問をいたします。  質問に先立ちまして、在ペルー日本国大使公邸占拠事件が発生をしましてから四十日を過ぎました今、なお解決を見ていないことは極めて残念であります。人質とされている方々の御苦労と御家族の御心配に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。  総理は、先般カナダのトロントに行かれまして、フジモリ・ペルー大統領と親しく会談をされ、解決の方向を探られたわけであります。また、フジモリ大統領はワシントンに赴いて、クリントン大統領からペルー政府方針について支持を得られたということでございますけれども、いずれにいたしましても、人質の全員無事解放、また早期解決を目指して総理が御努力をいただくことを心から御要望を申し上げる次第でございます。よろしくお願いをいたします。  本国会は、極めて重要な国会であると思います。すなわち、転換期を迎えた日本の将来を開くための諸改革の実現の戸口が開かれるか、そうして明るい日本の将来が見えるか、こういう日本の将来に向けての課題を抱えた国会であると思いますので、白熱をした討論が展開をされて、政府・与党におかれましても率直な御意見が展開されることを心から期待するものでございます。  私たちは過般、暮れの十二月二十六日でございますが、太陽党を結成いたしました。これも、今置かれている日本の現状にかんがみて、とにかく改革を実現しなければならない、その先兵とならんという思いで結党をいたしたわけでございます。  その「結党宣言」の初めに、   戦後五十年、わが国は今、大きな転換点を迎えています。これまで、わが国の復興、  成長、発展に必要とされてきた政治、行政、経済の仕組みが、今や、日本の将来にとっ て、足かせとなりつつあるのです。これまでの発想の延長線上で、小手先の修正を重ね ている限り、確実に迫りつつある危機を克服することは不可能です。残された時間は極 めてわずかです。長い歴史の中で培われた知恵と、既成の構造に囚われない斬新な構想 をもって、今、この時からでも改革を出発させなければ、日本は没落への道をたどり、 国際社会からも取り残される事態となることは明らかです。  こういうことを述べておるわけでございますが、総理が今般、財政構造改革、教育改革社会保障構造改革、経済構造改革、金融システム改革行政改革、この六つ改革を掲げられまして、火の玉になってもこれをやり抜くという決意を御表明になっていることは、同じ思いからであろうと思うわけであります。ただ、総理所信表明演説にもございますように、既成の、長い間固まった構造、組織、これを打破して新しい道を開いていくには、なかなか困難なことが多いと思うわけであります。  昨日も、加藤幹事長に対する御答弁の中で、谷から早くはい上がらなければならない、そうして影になる人々に対しては、鬼手仏心という言葉があるけれども、そういう思いを抱きながらこれに対応していきたい、こういうお話がございました。鬼手仏心、鬼の手、仏の心ということでありましょうけれども、私はやはり心においても、ある場合には心を鬼にしてかからなければならない、そういう場合もあるのではないかと思うわけであります。  そうして、ある意味でこの改革というのは、既得権益との対決でもあるわけであります。そういう意味で、いろいろ戦後五十年の間に培われた既得権益、これを破るのはなかなか大変だと思うわけでございますけれども、この決別の意思を持たなければ私は改革はできない、こう思っておるわけであります。  政府・与党、自民党は単独政権をとられたわけでございますけれども、最近の動きを見ておりますと、やはり既得権益とのしがらみが強いのではないかなという感じに思えるわけでございますが、これを打破して真の改革をやり抜く御決意があるのか、総理の御見解を伺いたいと思います。
  207. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 冒頭、ペルーの事件にお触れをいただきました。  昨日、ワシントンにおきまして、党首がフジモリ大統領に対しお会いをいただき、日本としてのお礼の言葉を述べていただいたという報告を受けております。この場をかりてお力添えにお礼を申し上げますとともに、この国会を構成する全党派が、テロに屈することなく平和裏に人質の方々が無事に全員解放されることを、そしてそのための努力をフジモリ大統領に期待しておるということをトロントでお伝えをいたしました直後でありましただけに、この場をかりてお礼を申し上げます。  また、今改革というものの難しさについてお触れをいただきました。まさに私は、過去の五十年というもの、日本が今日の日本を形づくるために敗戦後から営々として努力をしてくる間、そしてそれに成功してくる間、そのために形づくられた仕組みが、今日になると逆に身動きのつかない状況を生み出している、そう思っております。  議員御指摘のように、当然ながら、規制をなくせば、その規制の傘のもとで仕事をしてこられた方々にとっては極めて厳しい状況をつくり出します。しかし、その結果、新たな仕事も生まれてくるはずであります。挑戦の機会も出るでありましょう。そして、財政を効率化いたしますと、これに依存している方々が厳しい状況に置かれるというのも議員御指摘のとおりであります。しかし、だからといって、その痛みを恐れて改革の歩みをとめる、あるいは先延ばしをする、私はもうそういう状況を許す事態ではないと思っております。  先ほど、昨日の私の答弁の幾つかを引用されましたが、真に手を差し伸べる必要のある方々には対応する施策をとっていきますということも実は私は申し上げました。しかし同時に、そうした厳しさを持たなければならないと思っておりますし、予算編成についての御批判をいただきましたが、このような気持ちを持ちながら既に一歩踏み出した、私はそのように考えており、これからも引き続いて努力をしてまいりたいと考えております。
  208. 粟屋敏信

    粟屋委員 力強いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。私どもも、真の改革を目指して総理が真剣にお取り組みになり、そうして成果を得られることにつきましては、できる限りの御協力もさせていただきたいと思っておるところであります。  そしてまた、最近どうも子供たちゃ若い人々、日本国家像、将来像、社会像、これが見えていないのではないかと思うわけであります。これは質問通告をいたしておりませんけれども、この改革を達成した後の我が国の国家像あるいは社会像に対しまして、総理のお考えがあれば伺いたいと思います。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今までこのような言葉を使って私の考えを申し上げてまいりました。  すなわち、国民の一人一人、それぞれの方がそれぞれのみずからの夢を持ち、その夢を実現するために挑戦することができ、そしてその夢のかなえられる可能性というものを持つ国であってほしい。同時に、子供たちがそうした夢を抱き得るだけの社会的環境が欲しい。そして願わくば、目上の人々を敬うとかあるいは弱い者いじめをしないとか、自分の国、ふるさとを大切にするとか、人間として当然持つべき倫理観を持った国民が育ってもらいたい。そしてその上で、将来に夢を持って挑戦のできる、ぞして失敗をしてもそこから立ち上がることのできる、そんなチャンスに富んだ国であってほしいし、国際的にも尊敬を受けられるような公正な国であってほしいと思います。
  210. 粟屋敏信

    粟屋委員 基本的には私の考えと差がないと思います。  今まで規制の中で、あるいは保護の中で生きてきたのが我が国の経済社会ではないかと思うわけでございまして、個々人もどうもそういう中に育てられて、そういう習慣に染まってきたのではないか。やはり、自由と自己責任、これを重んずる個々人が育ち、また社会もそうならなければならない。そこで総理のおっしゃる、創造性を生かした真の活力のある社会が生まれるのではないかと思っておるわけであります。そのためにはどうしても諸改革実行しなければならないわけでございまして、総理の御健闘をお祈りするとともに、私どもも頑張りたいと思っておるところであります。  次に、財政再建の問題について触れさせていただきたいと思います。  昨日も加藤幹事長が、十年前のアメリカを考えた場合、日本も、アメリカが今力強く復興したことを思えばペシミズムだけに陥ってはならない、勇気を持たなければならないというお話をされました。私も同感でありますが、財政の問題を考えてみました場合に、平成元年、ブッシュ大統領の提案によって日米構造協議が始まったわけであります。そうして平成二年の六月に最終報告が出たわけでございますが、そのときのことを考えてみますと、米側は大店法の規制緩和を初めとする流通制度の問題について日本に対して注文をつけ、また投資障壁についても注文をつけたわけであります。また、これは社会資本の基本計画にも関連をいたしますが、投資と貯蓄のアンバランス、これが経常収支の日米の大きな格差につながっているということで、公共投資基本計画の策定を求めたのではないかと思いますが、その際、日本側は、アメリカの財政赤字また貿易・経常収支の赤字、双子の赤字についていろいろと注文をつけたわけであります。そういう状況でございますが、平成二年からもう七年たったわけでございます。まさに日米の関係は、私は逆転をしている、こういう感じがいたしておるところでございます。  アメリカも財政均衡、財政収支の改善については大変な努力を今までやってきたと思っております。一九八五年に財政収支均衡法をつくり、また平成二年、一九九〇年には包括財政調整法を策定し、平成五年、一九九三年には包括財政調整法の改正を行う等の法制的な努力もしたわけであります。特に、包括財政調整法におきましては、経費を義務的経費と裁量的経費に分けまして一律削減の目標を設定をする、また総赤字の限度化の設定をする、そして一九九三年法では、減税もやるけれども増税もやるという、そういう措置もとったわけであります。その結果、その後のアメリカの経済情勢の好転も絡んでおりますけれども、最近では、一九九二年、平成四年に赤字のピークは二千九百四億ドルでございましたけれども、平成八年、昨年でありますけれども、これが大幅に縮減をされまして、千百六十八億ドルとなったわけであります。  また、EUでございますけれども、これまた通貨統合を目指しまして、GDP比におけるフローとストックの上限を設けて努力をしておるところであります。  ところが、我が国の場合は、だんだんこれが悪化の一路をたどっておることは御案内のとおりでございまして、平成八年度の国、地方を通ずる債務残高、これが四百四十二兆円、それから平成九年、これが四百七十五兆円でございまして、それぞれGDP比で見ますと、八七・四%、九三・一%となっているわけであります。諸外国を見てみますと、イタリアは、これは一〇〇%を超えて別でございますけれども、大体六〇%台になっていると思うわけでございまして、我が国財政の危機的状況がわかると思うわけでございますけれども、これについての御認識、また、手を打つのが遅かったのではないか、こういう批判に対してどうお答えになりますか。お答えをいただきたいと思います。
  211. 三塚博

    ○三塚国務大臣 粟屋議員の、サミット構成国、G7構成国の財政に取り組む姿勢について、ただいま御開陳をいただきました。そういう中において、ひとり日本が後塵を拝し、立ちおくれたのではないか、こういう御指摘でございます。形はそのとおりだと思います。しかし、この共通認識は、既に、橋本首相になりましてから、リヨン・サミット・コミュニケにおいて、投資、成長及び雇用創出に貢献する経済戦略として信頼のできる財政健全化計画が挙げられているなど、この分析と提案について我が国首相として推進をしたわけでございます。  それと言行一致の形の中におきまして、今ならば健全財政に向けて確実に着陸できるのではないかということで、御案内のように、先進国並みに三%以下を目指し、そして、九〇を超えておる地方、国の長期債務、これの六〇%以下を目指す。そのためには、平成九年の予算編成を財政再建元年としての形を明示し、国民各位の理解を求め、協調していかなければならないということで、赤字国債の思い切った削減の指示、そして、予算編成に公共事業を含めて聖域を設けることなく、実態に合った予算編成、といいますことは、削減をしていかなければならない、こういうことで予算編成に取り組んだところであります。御案内のとおり、公共事業は一・三の伸びであります。まさに一・三はゼロシーリングでございまして、前年、八年度と同じ結果を出すことができましたし、一般歳出におきまして一・五、九年ぶりの低伸び率にこれを抑え込むことができた。こういうことの中で、決意を国民各位に示し理解を求める、そして国際社会においてもスタートを切ったことに対する理解と協調を求めていくというスタート台に立ちました。  よって、平成十年度予算編成はどうするかということで、ただいま来論議をいただいておりますとおり、財政構造改革会議をセットし、これから真剣な取り組みの中で十年度の予算編成基準、いわゆるシーリングを明示をしながら、名実ともに財政健全国家としてのスタートを切りたい、こういうことになっておるわけでございます。
  212. 粟屋敏信

    粟屋委員 今、財政再建元年としてふさわしい予算である、こういうお話でございました。確かに特例公債は四兆五千二百八十億削減をされた、この御努力は多といたしますが、しかし、国、地方を通ずる債務は三十三兆円前年度よりふえているわけでございまして、これで果たして財政再建元年と言えるかどうか、若干私は疑問を持っておるところでございます。  公共事業、確かに御努力をされて実質伸び率ゼロ、これは異例なことでありましょうけれども、その御努力は多といたしますけれども、さらに切り込みが必要でございます。  さらに医療保険改革、これは利用者負担増ということで、医療保険財政として政府管掌保険、一応のバランスをとられたわけでありますけれども、これも三年しかもたないわけでございまして、もっと踏み込んだ改革が必要ではないかという気もいたしておるわけでございます。そういうことで、今度の予算、財政再建元年にふさわしいかどうかについては、若干私は疑問を持っておるところでございます。  また、本年度予算、経済対策という観点からどうであろうかということを考えました場合に、消費税とか特別減税の問題等々で負担がふえて、政府見通しの一・九%が達成できるかどうか、民間調査機関ではいろんな論議があるようでありますけれども、なかなか大変なことだろうと思うわけでございます。また、株価の低迷、この理由については、加藤幹事長、若干所見を異にしておられるようでありますけれども、この対策をどうするか。  そういう点で、土地を流動化する方策であるとか、また株価対策とか、そういう面で目立った政策があらわれていない予算ではないかと思うわけでございまして、どうも全体としてぼやっとした、定かでない、目標のない予算ではないかという感じがいたしておるわけであります。  この財政再建に関連をいたしまして、財政構造改革会議の先ほど来御論議がございました。そして財政再建法をおつくりになる、こういうことのようであります。そして、いかなる経費についても聖域を設けない、これはまさに御立派であろうと思うわけでございますが、実際に法律化する場合にはなかなか困難が伴うことではないかと思うわけでございますが、財政再建法にかける御決意を伺いたいと思います。
  213. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻申し上げましたとおり、財政構造改革会議におきましては、私どもは、まさに再建法というものの、(仮称)でありますけれども、制定を目指して論議を集約してまいりたいと考えております。  しかし、その法の前に、私はそのメンバーにお願いをいたしておりますのは、次年度予算編成のルールづくり、すなわち、今のシーリングにかわる予算要求の要求基準というものをどうつくればいいか、ここからが実は私は一番大事なことになると思っておりまして、平成十年度の予算を編成いたしますために概算要求を提出する、そのルールづくりをそれに間に合う時期までにぜひ固めたい、御意見をいただいて一つのルールといたしたいと考えております。  これ自体が、歳出全体の総枠を設定する、あるいは個別政策についてその削減目標を設定する、いろいろな手法はあり得ると思います。特に我が国の場合、いろいろなルールの違い、さらに、アメリカに比べまして高齢化の速度が速い、高齢・少子社会というものがより深刻に出ているといった特殊事情もございます。こうしたものを踏まえながら、ルールづくりをまず急ぎたい、そのように考えております。
  214. 粟屋敏信

    粟屋委員 財政再建論議に関しまして、私は、国民的な論議を呼び起こす必要があると思っております。どうも国民の皆さん、財政再建といいましてもなかなかぴんとこない面が多いと思うわけでございまして、国鉄の債務が二十七兆とか二十八兆円、これがみんな国民負担にかかってくるということについても、よくわからないというのが私は実情ではないかと思います。やはり財政再建を進めるに当たっては、国民的論議を起こし、国民の理解を求めていく必要があると思うわけでございまして、財政情報の公開、ぜひこれを進めなければならないと思っておるわけでございます。  予算の場合は、大項目、中項目、小項目、項、目、細目まで開示をされるわけでございますが、決算では大項目までしか開示をされていないわけでありまして、やはり決算こそ、私は、貴重な税金の使途に関したものでありますから大事ではないか、こう思うわけであります。  それと同時に、これは国だけではなくて、地方公共団体も特殊法人も、国から資金の供与を受けている公益法人についても同様なことが求められると思うわけであります。情報公開は、単に財政情報の公開だけではなくて、行政一般について求められていると思います。情報公開がきちんと行われておれば、地方公共団体の公費の乱費事件も起こらなかったでありましょうし、また、エイズ問題の発生にもブレーキがかかったのではないかという感じもいたすわけでございまして、やはり行政改革のうちで情報公開というものは極めて重要であると思うわけでございます。  政府におかれましても情報公開法の準備をされていると伺いますけれども、総務庁長官の御答弁をいただきたいと思います。
  215. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今御指摘のとおりで、エイズの問題あるいは住専の問題あるいは官僚の不祥事の問題、いろいろ言われておりますけれども、これが情報公開なされておったならば、このような事件は起きなかったのではなかろうかという反省が私どももいたしております。  そういう観点に立って、特に情報公開をしていかなければならないということで情報公開法の制定ということに踏み切ったわけでございますが、御承知のとおり、何にしても今までこういう法律というのは日本にはなかった法律でございまして、この間から調べておりますと、六百以上のこの情報公開に関する法律があって、非公開あるいは公開いろいろそれぞれあるようでございます。今それを、できるだけ調整を私どもの役所で始めておりますし、できればなるべく、この間総理からも御答弁がございましたけれども、四月ごろになれば法制局とも少し意見調整をしながら、秋過ぎには情報公開法の法律案の制定にかかりたい、そして遅くも、ちょうど来年の通常国会になりますけれども、平成九年度の通常国会にはぜひこれを提案して成立をお願いしたい、こう思っております。  同時に、今お話しのように、国の財政が大変な今危機状態にあるわけでございますし、今医療保険のお話もありましたが、年金も私は大変だろうと思います。そういうようなことは、法律が制定されるまでにおいても私ども政府としてはできるだけ情報公開に心がけていかなければならないのじゃないか。そして、より一日も早く国民の、そういう財政その他に対する御理解を得る努力をしていかなければならないのじゃないかと思っております。
  216. 粟屋敏信

    粟屋委員 せっかくの御努力をお願いをいたしたいと思います。私どもも情報公開法につきましては独自に勉強いたしまして御提案を申し上げることもあるかと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  それと、最近情報通信技術が進歩してまいっておりますので、公表のコスト、迅速性の観点から、公表はインターネット等の技術を積極的に活用するということもこれからの課題ではないかと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  次に、地方分権でございます。  地方分権は、私はやはり行政改革のかなめであると思っております。けさも地方分権推進委員会の諸井委員長お出ましの上、御論議があったようでございますが、今分権推進委員会でお進めになっているのは、まず機関委任事務の検討から始められておるわけで、それからだんだん積み上げながら最後の結論に持っていかれようとしている。いわば論理学で言えば帰納的方法によって地方分権問題に取り組んでおられるという感じがいたすわけであります。私は、この地方分権問題を進めるに当たってはむしろ演繹的方法によって進めるべきではないか、こういう意見を持っておるわけであります。  地方分権推進法におきましても、国の事務というものを列挙をされておりまして、その他地方公共団体の事務と。だから、国の全体の事務を大まかに、どうしても国がやらなければならない、そしてこれは地方に任せていいものというふうに概念的に区分をして、きちんとまず最初に分けておく必要があるのではないかなという感じがいたしております。  そして同時に並行でございますけれども、千百幾つあるという法律の総点検、また一万有余あるという許認可事務の整理をする。そして、国も地方も仕事を簡素化する。それをした上で、今度は地方税財源の配分の問題に入り、最後に受け皿としての市町村合併の問題に入る。こういう方向でやるべきではないかという意見を、実は私は持っているわけでございます。  自治大臣にお伺いいたしますけれども、私どもは地方分権を進めるに当たって、権限、財源、人間の三ゲンセット、こういうことを申しておるわけでございますけれども、今の三ゲンセットをどういうふうに進めるのか、自治大臣としてのお考えがございましたらお伺いをいたしたいと思います。
  217. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 粟屋委員にお答えいたします。  どなたが考えたのかわかりませんが、権限、財源、人間というのは随分我々も使っているわけでございます。ただ、地方行政の人材という言い方をしていたからこの三ゲンという標語が浮かばなかったのでございますが、大変いいことだと思っております。  そういう中で、大きな質問でございますので私も大きく答えさせていただきますと、みんな今地方分権ということを言っているのですが、私が今大変危惧している問題は、中央から地方へということはみんな言っているのだけれども、地方のどっちなんだということに関して、私はどうもいまいち議論が詰められているような気がいたしません。それから、基礎的地方公共団体と言われている三千数百の市町村から、私たちによこしてほしいんだという自信に満ちた力強い声がいまいち私は弱いような気がいたします。  というのは、現実の問題として、そうはいっても自分の町や村の、あるいは市の執行体制で、あれもやれ、これもやってもできるかなという不安もあるのかもわかりませんが、私は、強いて言えば、中央から地方へという点について、少なくとも国会の中では今だれも異論がありません。しかし、地方のどっちなのかということをしないと、四十七のまた中央みたいなのが下手したらできないのかなということでございます。  もう一つ、財源の問題。これがまだ正直なところどこまで詰まってくるのか、私自身地方分権推進委員会の議論を見守っております。率直に言って、なかなか抵抗が強いと聞いておりますが、財源がなければ本当の意味でおもしろいことができるわけはないのでございまして、どうぞこれらは、地方分権推進委員会の議論を見守ると同時に、変な方向に行かないようにみんなで監視していく必要があると思っております。  以上です。
  218. 粟屋敏信

    粟屋委員 地方分権、まだまだいろんな問題があると思うわけでございます。先ほども自治大臣がおっしゃったように、都道府県に行くのか、あるいは市町村に行くのか、その辺が不分明であるという御議論、私は確かにそうであろうと思います。これもやはり譲るべき事務を整理した上で、また配分をしていかなくちゃならぬ。それと、やはり組織論としては、府県、市町村の二層制と道州制との意見の違いもあるようでございますけれども、これもこれから、地方に対する事務の移譲とも絡んで論議を深めていかなければならないと思っておるところであります。  いずれにいたしましても、六つ改革、大変な大事業であります。総理初め各閣僚とも、改革の実現を目指して御精励あらんことを期待を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  219. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、新井将敬君。
  220. 新井将敬

    ○新井委員 今先進国では、すべて非常な高齢化社会でございます。その中で、特に社会保障費用の抑制ということが中心になっております。特に医療、そして年金、特にその中でも医療におきましては、やはり市場原理を活用しよう。これは基本的に公定価格でございますし、実際の負担が見えにくいところで膨らんでいるということですから、市場原理を活用しよう、マーケットメカニズムを使おう、こういうことが中心になって、各国努力いたしております。  価格メカニズム、市場原理を使う大前提は、まさに医療の情報公開ということでございます。といいますのも、マーケットにおいて、まず商品の中身がわからないと物は買えないわけです。第二に、商品の価格がきちっとわからなければ誤った行動をするわけです。第三には、本当はどこに行けばどういう商品とサービスが買えるかという具体的な供給先がなければ合理的な行動ができない。残念ながら、医療の世界におきましてはいろんな特殊事情があって、このマーケット原理を生かす商品の中身に関する知識、そして価格に関する知識、そういうものが与えられていないわけですね。・この医療保険改革というのは非常に重要なこ  ですが、やはり消費する国民の側が、一体自分がどういうサービスを受けているのか、これがまずわからないままにほっておかれる。第二に、どれだけの負担をしているのか、実際わからない。その価格が一体何によってでき上がっているのかという裏づけもわからない。このままで負担だけが増大していくということは、国民から見てやはり耐えられないと私は思います。  それで第一点はレセプト、いわゆる診療報酬請求明細書ですね、この開示、この公開というものについて、厚生大臣にちょっと伺いたいことがございます。  ちょうど五年前に、ある事件が起きました。それは、新生児を産む過程で、異常な陣痛の余り、その赤ちゃんが死んでしまった、死産をしたわけです。夫が見ていても余りに異常だったものですから、陣痛促進剤というようなものを使ったのではないか、あるいは医療ミスがあったのではないかということで調べましたが、らちが明かないので、医療過誤訴訟になりました。そのときに、カルテは証拠保全として提出した。ところが、そのカルテには改ざんの跡が見られる。事実がわからないわけですね。  そこで、その夫婦はレセプトを要求したわけです。診療報酬の明細書、これは改ざんできませんから。これを自分の国保のやっている共済組合に言った。やはりお子さんを亡くされて悔しいということで、そこで夕方の四時から夜の十時まで六時間、奥さんが泣いて、自分の子供のことだから明細を見せてください、何も自分の知っちゃいけない病名とかじゃないんで、お願いしますと六時間頼んだんです。ところが、見せられないということで、一枚の文書をその共済組合の担当者は見せた。その一枚の文書というのが実はこれなんですね。  要するに、国民健康保険質疑応答集というものでございます。省令でも政令でもないんです。この質疑応答集の中に、レセプトはたとえ本人であっても見せてはいけない、こう実は書いてございます。これについて、その御夫婦は、それから今まで五年間、いろんな手だてを尽くして厚生省にいろいろと訴え、陳情に上がってまいりました。  その間に各地で情報公開の話が進みまして、先日、実は栃木の小山市で、女性が請求したレセプトをもらえることが決定したわけです。それはまさに市の情報公開条例に、本人にかかわる情報は出しなさいという条例が一つあったのを、それがまさにレセプト公開、本人とわかれば、特に病気等異常がない限り渡すんだという根拠になったわけですね。  ところが、これは小山市の条例でこういうことがあったから、この人はもらえたわけです。これがほかの市ではどうか、あるいは組合国保ではどうか。これは実に、今私は混乱した状態にあると思います。現実がこうして、特に一定の差し支えがない場合には本人に限っては見せても構わない、こういうふうに言っているわけでありますから、ここは厚生大臣、この質疑応答集のわずか一つの項目なんですよ。これは質疑応答集ですから、かなりいろいろな状況をしっかり書けるはずなんですね、書こうと思えば。ひとつこれは大臣、リーダーシップをとってレセプトの公開ということに基本的に踏み切っていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  221. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 ただいま新井議員がお話しされた、自分のお子さんを亡くされた親御さんの立場に立って見れば、本当に憤慨にたえないと思うんですね。なぜこういうことができなかったのか、私も率直に疑問に思います。  そして、昨年十一月に、医療制度及び医療保険制度の両面から医療提供体制のあるべき姿を提言した国民医療総合政策会議で、患者へのレセプトによる情報提供について取り組むことが必要である旨の御意見をいただいております。  一方、本人に対してレセプトの内容を知らせるとしても、がんの告知がなされていない場合や係争中の場合の取り扱いなど、慎重に対応すべきではないかとの指摘もありますが、私は、どのような形で対応することが適切か、今、新井議員が指摘されたように、レセプトの内容を本人に開示すべきだ、情報開示すべきだという姿勢でこの問題に取り組んでいきたいと思います。
  222. 新井将敬

    ○新井委員 大臣、ぜひ早急にこれはお願いしたいというふうに思います。  それから、時間がございませんので、医療情報公開の第二点は、今のはいわゆる商品サービスの中身に関する情報公開ですが、第二点は、診療報酬の決定という、価格にかかわる情報公開の問題でございます。  これは、いわゆる中医協におきまして、実質的に中医協で診療報酬点数が決定されると言っても私は過言でない状態、諮問となっておりますが、現実はそう思っております。こういう中で、公定価格ですね、診療報酬は。しかも、この公定価格はほかの運賃なんかと違いまして、結果的には、税金とか保険料とか、いわゆる強制徴収されるような、財源にほとんど裏づけを持っている公定価格という意味で、ほかの公共料金よりもはるかに実は強制力と国民負担が強い性格のものでございます。この決定というのは致命的な影響を国民生活と財政に対して持っているわけでございますが、実は、この中医協の審議内容というものが要旨を除いては公開されていないわけでございます。  今度の四月から診療報酬の改定が行われますね。これは本来二年ごとに行われるのですが、今回は消費税が上がるということで、消費税に対応して上げるということにいたしております。しかし、診療報酬改定の、実はまだ答申は出されていないと思いますが、昨年来の予算の過程を見ますと、消費税分は〇・七七%なんですよ、消費税による負担は。ところが、実際の診療報酬の引き上げは一・七〇%なんですね。いわゆる消費税〇・七七プラス〇・九三、医療費ベースで。ですから、医療費にすれば二千数百億のいわゆる消費税プラスアルファが乗っかっているのです、この診療報酬改定には。これは合理化分と言われているものです。私はなぜ合理化をすれば上がるのかわかりません。合理化というのは下げるものだと思いますし、配分を変化、スクラップ・アンド・ビルドするものだと思います。  確かに、一方では薬価基準を一・三二下げている。ですから、薬価基準を一・三二下げているということの上に、消費税分が〇・七七と合理化分〇・九三が乗って一・七〇になっていますから、薬価分を引いても、実はネットで〇・三八、医療費ベースにすると一千億の医療費増が起きているわけですね。これは私、こういう言葉の使い方は、こういう場所では差し控えるべきだと思いますが、やはり一種の便乗引き上げというふうに国民の皆さんには映るのじゃないでしょうか。  たとえ、薬価を下げた分を、一・三二%ですね、そのまま診療報酬に上げてくれと、〇・七七はもともともらうべきものである、一・三二薬価を下げたんだから、薬価分はそのまま診療報酬に下さい、多分こういうふうに団体は主張されるのでしょうが、医薬分業の理念の中で、まさに医と薬とを分けている中で、薬価を切り下げたからその分は診療報酬だというのは、それはまさに医薬分業を否定した、もっと昔の考えなんですね。  そういう考えをすれば、いわゆる便乗分は〇・九三、まさに二千数百億が消費税対応という名のもとに行われようとしているということを前提にした上で、その合理化、例えばなぜそんなふうなことが決まっていくのか、そして合理化をするというならば、長期入院措置の是正に使うというならば、どんなふうに点数が決まっていくのか、こういうことを知りたいと思う国民の方は私は随分多いと思うのですね。ところが、実際問題として、その審議内容は一切公開されないで、負担だけがふえていく。  小泉大臣、中医協の審議の議事録というものは、これはやはりすべてに先駆けて公開をして、国民の皆さんの審判を仰ぐべきじゃないでしょうか。  特に、発言者の個人名にかかわることが大きな問題が起きるということでありましたならば、この中医協の法律の中には、ちゃんと委員の資格まで決めてありますね。第一号に保険者、第二号に医療担当者、第三号は公益者ですね。この例えば保険者代表であるのか、医療側であるのか、公益側の発言であるのかということぐらいはきちっとつけて、議事録を公開して、そして私、厚生省のインターネットを見ました。厚生省のインターネットは、いろいろな審議会が皆何かごちゃごちゃ載ってあるのですけれども、中医協だけは載ってないのですよ。この審議会、何十という、もうこんなにたくさん載っているんです。ごれだけは実は何の説明も載っていない。インターネット上においても完全に欠落しております。ここらについて、ぜひ大臣の決断で公開に向けて進めていただきたい、こうお願いする次第でございますが、いかがでしょうか。
  223. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 審議内容の公開についてですが、自由市場経済の中で医療は統制経済です。今新井議員が指摘されたような、どこで価格が決まるのか、これから税金を投入する、あるいは保険料を上げる、あるいは受益者の患者負担を上げるということを考えますと、国民に適切な情報を提供するというのは必要だと思います。私は、どのような適切な情報を国民に与えるべきか、積極的に取り組んでいきたいと思います。
  224. 新井将敬

    ○新井委員 せっかくあと一分だけ残っていますので、最後に後押しをしたいのですが、大臣、今現在の議事要旨がございます。私もそれを読んでみました。これだけでも大体のことはわかるのですね。ですから、この議事要旨だけでもインターネットに載せてくださいよ。ほかのもの、皆載っているのですよ、これ、渡してもいいのですが。そのインターネットに、少なくともこの議事要旨、それにさっき言った代表をしている団体ぐらいは載っけて、これはすぐできることですから、これは事務方だってすぐできるはずですよ。これはどうですか。大臣、お願いしますよ。
  225. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 その適切な情報というものをどういうふうに情報開示していくかということも、今の御意見も含めて検討をさせて、できるだけ趣旨に添うような努力をしていきたいと思います。
  226. 新井将敬

    ○新井委員 終わります。
  227. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて新井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十七分散会