運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-02-03 第140回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月三日(月曜日)    午前十時開議  出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 小里 貞利君 理事 高橋 一郎君    理事 中川 秀直君 理事 藤井 孝男君    理事 石井  一君 理事 権藤 恒夫君    理事 二階 俊博君 理事 中沢 健次君    理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    石川 要三君       臼井日出男君    江渡 聡徳君       江藤 隆美君    尾身 幸次君       越智 伊平君    越智 通雄君       大野 松茂君    大原 一三君       大村 秀章君    加藤 紘一君       菊池福治郎君    桜井  新君       桜田 義孝君    菅  義偉君       関谷 勝嗣君    高鳥  修君       橘 康太郎君    中山 正暉君       野中 広務君    葉梨 信行君       村上誠一郎君    村山 達雄君       谷津 義男君    愛知 和男君       愛野興一郎君    石田 勝之君       太田 昭宏君    岡田 克也君       北側 一雄君    久保 哲司君       小池百合子君    田中 慶秋君       中井  洽君    西岡 武夫君       西川 知雄君    西村 眞悟君       野田  毅君    生方 幸夫君       海江田万里君    末松 義規君       仙谷 由人君    日野 市朗君       辻  第一君    平賀 高成君       松本 善明君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君       岩國 哲人君    新井 将敬君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 松浦  功君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 小杉  隆君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  藤本 孝雄君         通商産業大臣         (科学技術庁長         官)事務代理  佐藤 信二君         運 輸 大 臣 古賀  誠君         郵 政 大 臣 堀之内久男君         労 働 大 臣 岡野  裕君         建 設 大 臣 亀井 静香君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     白川 勝彦君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君         国務大臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      麻生 太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 伊藤 公介君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       田波 耕治君         内閣審議官   白須 光美君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       平林  博君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      生田 長人君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         総務庁長官官房         審議官     瀧上 信光君         総務庁人事局長 菊池 光興君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         総務庁行政監察         局長      土屋  勲君         防衛庁参事官  澤  宏紀君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         防衛施設庁建設         部長      竹永 三英君         防衛施設庁労務         部長      早矢仕哲夫君         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         経済企画庁国民         生活局長    井出 亜夫君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         科学技術庁科学         技術振興局長  青江  茂君         科学技術庁研究         開発局長    落合 俊雄君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君         国土庁防災局長 福田 秀文君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官房         長       堤  英隆君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省畜産         局長      中須 勇雄君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業大臣官         房長      広瀬 勝貞君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         通商産業省通商         政策局長    林  康夫君         特許庁長官   荒井 寿光君         運輸大臣官房長 土井 勝二君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 泰彦君         運輸省運輸政策         局長      相原  力君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         運輸省海上交通         局長      岩田 貞男君         海上保安庁長官 土坂 泰敏君         郵政大臣官房総         務審議官    高田 昭義君         郵政省通信政策         局長      木村  強君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局高齢障害者 坂本 哲也君         対策部長         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    村瀬 興一君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ————————————— 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     菅  義偉君   臼井日出男君     江渡 聡徳君   葉梨 信行君     加藤 紘一君   松永  光君     桜田 義孝君   村上誠一郎君     橘 康太郎君   石田 勝之君     野田  毅君   小池百合子君     西村 眞悟君   西川 知雄君     西岡 武夫君   平田 米男君     久保 哲司君   仙谷 由人君     末松 義規君   松本 善明君     平賀 高成君   矢島 恒夫君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     臼井日出男君   桜田 義孝君     大村 秀章君   菅  義偉君     大野 松茂君   橘 康太郎君     村上誠一郎君   久保 哲司君     平田 米男君   西岡 武夫君     西川 知雄君   西村 眞悟君     小池百合子君   野田  毅君     石田 勝之君   末松 義規君     仙谷 由人君   辻  第一君     矢島 恒夫君   平賀 高成君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     相沢 英之君   大村 秀章君     松永  光君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西岡武夫君。
  3. 西岡武夫

    西岡委員 政府に対して質疑を行うに先立ちまして、新進党として、友部参議院議員詐欺疑惑事件に関し、このような人物を平成七年七月に行われた参議院選挙で我が党の公認候補と決定したことについて、その不明の責任を痛感し、国民皆様に深くおわびをいたすものでございます。  新進党としては、友部参議院議員に対し、私から昨年十一月十九日に議員辞職を勧告したところでありますが、今後とも、たとえどのような結果を生じようとも、真相究明に断固とした態度で臨むことを国民皆様方にお約束をするものでございます。  総理大変御苦労さまでございました。  ペルー日本大使公邸人質事件につきまして、人質となっておられる方々、また家族の皆様方、また会社の関係者皆様方の御心労に対して心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く無事に問題が解決されることを心からお祈りをいたします。  今回の問題につきましては、その原因から対応について、新進党としては多くの見解を持っております。また、我が党の若手議員有志からも具体的な提案等も現実に行われているところでございますが、しかし、この問題は、すぐれて橋本総理の御判断内閣責任において対応されるべきことだと認識をいたしているところでございます。  今回の橋本フジモリ会談状況につきまして、この場において橋本総理から、大変御苦労があったことと思いますけれども、その内容につきまして御報告をいただければ幸いでございます。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この事件発生以来、何とかして一日も早く人質になっておられる方々が全員無事に解放される、そうした瞬間が一刻も早く来ることを祈り続けております。しかし、事件発生後四十日以上がたちまして、保証人委員会の構成までが決まりながらその後の進展の見えておりません状況の中で、フジモリ大統領との首脳会談というものに全力を尽くそう、そのような思いでトロントに参りました。この場をかりまして、私は、その場所を提供していただきホストをしていただいたクレティエン首相を初め、カナダの皆さんにまずお礼を申し上げたいと存じます。  そして、到着をいたしました日、その夜、翌日、そして出発の直前、いろいろな形でフジモリさんとの間で議論をいたしました。そして、フジモリ大統領として譲れないもの、それは、MRTAの現在収監されております囚人の釈放というものを条件にすることはできない、これは立場を変えてみますと、我々でもなかなかできることではございません。しかし、人質の身辺に危害が加えられない限りにおいて武力の行使をしないという確認を得られましたこと、あくまでも平和的な解決というものを目指していくという基本認識の一致を見ましたことは、私自身が一つほっとしたことでございました。  また、保証人委員会に対して、その対話が行い得る状況をつくり出すための準備的な会合というものをテロリストグループ代表者ペルー政府を代表するパレルモ教育相との間で行っていく、言いかえれば、本格的な対話準備協議を行うということをできるだけ早く、今フジモリさんはワシントンに回っておられますけれども、帰国後できるだけ早く行うということを約束していただいたこと。そして、保証人委員会にオブザーバーとして、現在現地における顧問をお願いしている寺田駐メキシコ日本大使参加をするということ、これは、直接情報がそのまま日本に入るという意味で、非常に私にとってありがたかったことでございます。そして、準備的会合という名でありましても、とにかく対話を始めるということが確認をされましたこと、こうした点で、行ってお互い共通点を見出し、協力をしていき得る情勢というものをつくることが一応できたと考えております。  今後、この対話プロセスに至る準備会合という名のもとに、直接の接触が一日も早くスタートをいたしますことを、フジモリさんが帰国されて、できるだけ早くこれが動くことを今願っております。
  5. 西岡武夫

    西岡委員 報道によりますと、フジモリ大統領はその後アメリカに行かれまして、アメリカでのマスコミのインタビューに答えられて、橋本総理との間の会談を踏まえて、人質危害が加えられない限り、力を行使することはないということを発言をしておられるわけでございますが、また、二十四時間橋本総理との間でホットラインを設置している、このことについて、具体的な内容は結構でございますが、そのような確認がなされているのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 相互に二十四時間連絡をとり合える体制というものは整備をいたしております。そして、私の方は実は今までもそういう体制を用意しておったつもりでございましたけれども、ペルー側もこれに応じていただくことになりました。  また、人質の方に身体的な危害が加えられない限り、そういう状況にならない限り絶対に武力を行使しないということは、今までも実はフジモリ大統領は述べておられましたが、改めてこの点を、確認は当然のことながらいたしております。そして、そういう事態に至らないために全力を尽くそうということが二人の合意でございました。
  7. 西岡武夫

    西岡委員 大変長期にわたって、もう一カ月半を超える状況でございますので、人質皆さん方健康等の問題について、国民全体また世界全体も大変心配をしておられることと思いますが、少なくとも、これまで我が国がややもいたしますとテロに弱い国であるというような印象を世界に与えている、このことにつきましては、橋本総理におかれては、やはり毅然たる態度で御対応いただきたいと思いますし、同時に、粘り強く平和的な解決を見るように御努力をいただきたい、このようにお願いを申し上げるものでございます。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、西岡議員から人質になっておられる方々の健康についての御配慮の発言をいただきまして、ありがとうございます。  この点は、実は私も非常に気になっておりました。そして、着きました日、その夜にこちらから実は、表敬という名でお目にかかることを求めまして、フジモリさんも気持ちよく受けていただきましたが、その席に、保証人委員会にお入りをいただくシプリアニ大司教に同席をしていただきました。フジモリさんも壁の中にお入りになっていない。本当にぎりぎりの判断というものについて、私は実は内部の様子を、聖職者としてのお立場があり、また保証人委員会の一員という立場をお持ちであることを承知の上で、お教えいただける範囲の話を伺いたいというお願いを申し上げました。非常に客観的に私は御報告をいただけたと思っております。  その中において、今医師が常時入っておりますこともあり、身体的な健康及び精神的な健康において自分は特に問題が生じているという気持ちはない、無事でおられる、ただ、こういう状態がこれからも長く続いていくと精神的な疲労というものは当然考えられる、だから対話というものはもう始める潮どきであると自分は思うという発言をしていただきました。それが予備的という名前をつけながら実質的に対話に入っていくプロセスを加速させる上で非常に大きかったと感謝をしておりますが、そうした形で、現時点において精神的にも肉体的にも特に問題があるとは思えないという判断自分はしている、シプリアニさんがそういう表現をされましたので、この場をかりて御報告をさせていただきます。
  9. 西岡武夫

    西岡委員 次に、平成九年度の予算審議全般にわたりまして、現在、既に政府におかれましても大変な御努力をいただき、またボランティアの皆さん方現地皆さん方も大変な御苦労をいただいております、日本海で起きましたロシアのタンカーの事故の問題等々について政府見解をただしたいと思いますが、その前に、平成八年度の補正予算の成立に際しまして、私ども、民主党太陽党新進党の三野党が組み替え共同要求を出したわけでございます。これに対しまして与党側から追加回答というものが四項目についてなされました。このことにつきまして総理、御認識をいただいておられることと思いますが、この追加回答については、具体的にその一つ一つを今ここで申し上げるのは、時間の関係もございますので省略をいたしますけれども、この四項目を誠実に実行していただけるのか。  例えばこの重油流出事故等につきましても、災害対策基本法による災害であるというふうに政府としてこれを認定して所要の財政措置をする等々も含んだ四項目について、追加回答与党側からなされましたけれども、この機会に政府から改めて、この四項目についてのお約束を果たしていただくということを明確にお答えをいただきたい。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 新進党民主党太陽党三党からの平成八年度補正予算(第1号)に対する組み替え共同要求に対して与党として申し上げた追加回答、今改めて拝見をしながらお答えをさせていただきます。  本来、公党間のお約束というものに政府が言及することはいかがかという点はございますけれども、政府としては、これを受けて万全を期してまいりたい、そのように存じます。
  11. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、もう一度確認をいたします。  この重油流出事故というのが未曾有の被害を与えて、先般も総理自身も、千八百メーターの深海において、当初は重油がなお流出するというようなことは物理的には考えていなかったけれども、なかなかそういう状況でもないのだ、これが今までの常識から考えると違う形で流出がなお行われているかもしれないというような点も御勉強になってその実態等もお話しになったことがあるわけでございますけれども、こうしたことを考えますと、明確に災害対策基本法に基づく災害であるということの認定を行うということがやはり関係者、まあ起こってしまったことでございまして、大変遅きに失しているわけですけれども、少なくともそのことだけは明確にお答えをいただきたいと思います。
  12. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は御案内のとおり、一義的にはというよりも基本的には、原因者被害者である日本海の各府県、全体的に日本ということになるのでしょうか、この問題の詰めをただいま精力的に行っておるところでございます。  しかしながら、同時に、あれだけの被害が蔓延をいたしておりますものですから、政府においては古賀運輸大臣本部長ということで、私どもも参加をしながら、被害実態、今後の現状がどう進んでいくのか等の分析をきっちりとやりながら、これに対する地域原状回復、と申し上げた方がよろしいのでしょうか、これに向けて何をなさなければならないかということについて分析を急いでおるところであり、各地方自治団体関係者からもそのデータの提示をいただきながら取りまとめを行い、万全を期していかなければならない、このように思っております。  外務当局も、条約に基づく本件被害補償が明示をされておるわけでございますから、被害者原因者であったことも間違いがない、こういうことが出ておるわけでございますから、本件についての確定を最終的に行いながら並行して、それはそれとして並行して、実情の分析、何をなすべきかということについて、やり得ることについては自治大臣からも、関係大臣からも地域督励を行っておるところであります。
  13. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねしておりますのは、今回の重油流出につきましては、総理自身も既に本会議でもお認めになっておられますように、初動の対応が率直に言っておくれたという御反省もあったわけでございます。そうして、日本海が天候が非常に悪いということもあって、予想外被害が拡大をしている。しかも、この重油流出につきましては、これは日本はまさに海に囲まれた国でありますし、そして世界から重油を、油を運んでこなければいけない、そういうことはもう初めからわかっている環境のもとで、こういう事故がいつ起こっても、起こってはならないことでございますけれども、起こってもおかしくないそういう状況の中で、その場合の対応というものがやはり十分なされていなかったということを政府自身もお認めになっていると思うんです。  そして、重油流出した場合に、一定の時間を過ぎるとこれがコールタールみたいな形になってしまうというようなことも、化学的な変化等々あって早急な対応が必要であった、これは確かにおくれたんだ。そういう日本政府としての対応のおくれ等々も勘案すれば、当然私がお尋ねをいたしました災害対策基本法に基づく災害の適用ということがあってしかるべきではないか、このことをお尋ねしているわけでありまして、そのことを明確にお答えをいただきたい。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の御議論を全く否定するつもりはございません。  そして、先ほど千八百メートルと言われましたが、実は現時点で確認されております船体、それがナホトカ号のものであるかどうかまだ確認ができておりませんが、もし先日科学技術庁の深海探査装置が発見をいたしました沈没している船体がナホトカ号のものであるとするならば、これを発見いたしました深さは二千五百メートルという、より実は深い場所で破損した船体が発見をされております。ただ、これがナホトカ号のものであるかどうかという確認はまだできておらず、今後継続して調査をいたしていくことになろうと存じます。  そして、この事件、事故、どういう言い方をいたすにしても、大変一つ難しい点がございます。それは、補償の交渉がこれから行われる、これを踏まえてどうするのが一番やりやすいかという一点でございます。政府が現時点においてでき得る手段はすべて駆使しながらこれに対応してまいりますということを再三申し上げております中に、そうした思いもあることをぜひ御理解をいただきたい。  我々は、すべての可能な手段を使って、これは府県だけではございません、漁業者の方々に対する、あるいはさまざまな影響を受けておられる方々、これはいずれ皆補償の対象として保険会社並びにロシアの企業に対し要求をしていくべきものがございます。その辺に絡むところもこの判断に加えていただきたい。これは率直にお願いを申し上げます。
  15. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねしておりますのは、もちろん総理が今お答えになりましたようなロシアとの補償交渉等々が並行して行われるということは私も承知をしているところでございますが、現実に起こったこの状況対応して、しかも政府総理自身が、対応がおくれたということを率直にお認めになっておられる。これはかなり早い時点でそのことについてお認めになっておられて、もうこういう状況になったことでございますから、振り返ってみたところで時間の取り戻しはっかないわけでございますけれども、こういう状況の中で、やはり政府が、これまでのいろいろな事例とか法令とかそういうことを超えて、現地皆さん方が希望しておられる災害対策基本法に基づく災害の指定を行って、それに対応する措置をとるべきではないか。これはやはり政治の判断ではないかと思うんです。そのことをお尋ねしているわけでございます。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼しました。ちょっと私、御質問の視点を取り違えてお答えをいたしました。災害対策基本法の上における災害という答弁は、実は既に政府を代表いたしまして国土庁長官が答弁をいたしております。今、多少私は委員の御質問を取り違えまして、先の方の問題を考えながらお答えをしてしまいました。  災害対策基本法における災害であるという御答弁は、政府として既に国土庁長官が申し上げておりますし、その点は、私も改めてそれではもう一度申し上げ直します。
  17. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、政府として災害対策基本法に基づく災害の指定を行うということを確認していただいたということで、先に進ませていただきます。  平成八年度の補正予算の審議の経過の中で、最終的にはこうした追加的な回答をいただきまして補正予算そのものは成立をしたわけでございますけれども、この過程の中で一つ気がかりな点があるわけです、審議の過程の中で。  と申しますのは、今まさに行政改革。行政改革を進めていくということは、国民皆さん方の前に政府の施策が常にガラス張りでなければならない。情報公開法等々の問題についても総理を中心としてお取り組みをいただいていることと思いますけれども、平成八年度の補正予算の審議の過程の中で、緊急性あるいは防災、そういうことでほとんどの予算が公共事業を中心として、そのことが頭にすべてついていて、防災と緊急性ということで平成八年度の公共事業がすべて計上されているわけでございます。これの緊急性については、私どもとしては若干の疑問をそれぞれの項目について持っていたわけでありまして、その中で、緊急性ということであるならば、また防災ということであるならば、少なくとも具体的な内容についてお知らせいただいていいのではないか。少なくとも国会の場においての審議を通じて、具体的な内容について国会にその資料を提出されてもおかしくないのではないか。  具体的に申し上げますと、どういう箇所について防災の予算が必要なのか、それがいかに緊急であるかということについて、お尋ねを私ども野党として申し上げたところ、なかなかその資料が提出されなかったという状況でございますが、この点について総理自身はどのようにお考えになつ  ておられるのか。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も個別のところまですべてを存じておるわけではございませんので、補足の答弁をお許しいただきたいと存じますが、政府側としては、御審議をいただくに必要な資料、できる限り御提出をしてきたと思っております。今後も国会における資料の御要請がありました場合、理事会等の御決定を得て我々はできるだけの協力をしてまいりたいと思います。もし必要でありますなら、平成八年度補正に関連するその内容をお尋ねであるならば、関係閣僚から御答弁をさせていただきます。
  19. 西岡武夫

    西岡委員 私は、個々の問題をここで論ずるつもりは全くございません。同僚の議員が、この補正予算の審議の過程の中で具体的な緊急性を裏づけるものというのは、補正予算でございますから、膨大な、それこそ目を通すことができないという量ではない、その範囲内で具体的に、ああなるほど、この地域、この場所の公共事業については防災上急いでやらなければいけないんだなということがわかる程度の資料は国会に提出されてしかるべきではないか。それがなされないで、情報公開というようなことが今議論されている中で、一体それはどういう政府自身の姿勢なのかということをお尋ねしているわけで、個々の問題を私がお尋ねしているわけではないわけでございます。  これは亀井大臣からお答えいただいた方がいいのかと思いますので、どうぞお願いいたします。
  20. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 補正予算の審議の中でも私の方からお答えをいたしましたけれども、御案内のように災害列島の日本であります。阪神・淡路大震災あるいはトンネルの崩落事故、小谷村の土石流と頻々と起きておるわけでございまして、そういう中で、全国の都道府県、市町村からぜひとも緊急にひとつ防災対策を講じてくれという要求が我々のところに強く来ております。  そういう箇所について全部、三塚大蔵大臣、お認めいただければ結構なんですが、そうはいかぬわけでございますので、我々は優先順位を、全国に地方建設局がございます、御承知のように。地方建設局でその現場等を実査もしながら、危険度の高いところを選択的に取り上げて積み上げたのが緊急防災工事の予算でございまして、全部それを出せとおっしゃいますと、恐らく千に近い箇所になろうかと思います。  既に実施計画をつくりましてこれをお出ししておりますけれども、そこについては、御承知のように、個々の自治体との間で常時建設省としては協議をしておるわけでございまして、そうした中で、六百あるいは千に近いその箇所の資料をここに出して、箇所づけについて御審議いただくようなことまで、まあおやりになりたいお気持ちはあるわけではございます。我々の方も全面的に協力はいたしますけれども、しかし、従来の予算について、本予算であれ補正であれ、予算についての審議のやり方等の中でそういうことをおやりになることが、果たして行政権に対する立法府の審議権の行使として適当なものなのかどうかというようなことも、ぜひひとつ今後私は議論をいただきたいと思います。  我々は別に隠しておるわけではございませんで、今度の審議の中でも、御承知のように、耐震のための橋脚の補強工事だとか、具体的な項目の中で、これが必要なんですということを細かく御説明を申し上げ、資料としてもできる限りのものをお届けをいたしておるつもりでございます。  以上でございます。
  21. 西岡武夫

    西岡委員 私どもは、ここの箇所がこれがどうだこうだ、これが幾らでどうだという、そういう細かいことを議論しようとしているわけでは決してないわけでございます。  少なくとも今回のこの補正予算についてはいろいろな議論のあったところであって、それに緊急性ということについて具体的な予算の箇所づけの、ここの箇所づけのこの予算が幾らでおかしいじゃないかということを申し上げているわけではないんで、少なくともその資料は、国会の審議の場で要求されれば、政府が、これは今後のいろいろな審議にかかわる問題でございますから、これはやはり資料としてお出しになるのが至当なのではないか、当たり前のことではないかということを申し上げているわけです。  それを、一つ一つ項目を、何も野党として、新進党としてこれをあげつらうという考えは全くないわけでありまして、少なくとも積算根拠としては、緊急性として具体的な箇所づけのものがなければ予算の積算はできないわけでありますから、これは情報公開という大きな国民的な要請の中で、少なくとも国会の場には政府はそうしたものを提出する義務も責任もあるのではないかということを申し上げているわけです。
  22. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 私どもとしては、国会で御審議をされるそうした資料について、これを意図的に出さないとか、都合が悪いとかということで対応しておるわけではございません。  御承知のように、そうした緊急度についての具体的な資料は大蔵省に対して我々は事務的に全部説明しておるわけでございますから、そういう資料は存在しております。  ただ、先ほども申し上げましたように、そういう過程の中で、自治体と我々との話し合いとか、そういうものもある中で進行していくわけでございますから、簡単に申し上げますと、地方議会が議決をしなかった場合は、執行部が要求しておりましても予算の執行にならない場合も出てくるわけでございまして、そういう意味で、予算が成立した時点で実施計画を我々はつくりまして、大蔵省と協議いたしまして、これを実施をしているということでございます。  ただ、委員が御指摘のように、何が必要かということは、我々も今までの委員会の中でも説明をいたしております。なぜ橋脚のそうした耐震上の対策が必要なのか、あるいは土石流の発生のおそれがあってどうなのか、そういう問題については、我々は幾らでも具体的な資料もお出しいたしますし、御説明もいたしておるつもりでございますが、ただ、箇所づけというような形の、検討している状況を常時ここで出して議論をしろとおっしゃいますと、今の予算の仕組みからいいましても、なかなかこれは、国会の運営上の問題とも絡んできますから私が申し上げることじゃありませんけれども、具体的に困難な問題が私は生じようと思います。  補正予算にしたって、先ほども言いましたように、箇所でいきますと千カ所近いものがあるわけでございまして、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。
  23. 西岡武夫

    西岡委員 ちょっと亀井大臣、私の質問の趣旨を御理解いただいていないと思いますが、これからの国会の審議のあり方として、少なくとも国会が要求した資料については政府はこれを基本的には提出するという姿勢が必要だと思うのです。その点はいかがですか。これは総理お答えいただきたいと思います。
  24. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 現在、政府自身が情報公開法の準備を総務庁において進めており、今改めて確認をいたしますと、総務庁の作業が完了し、法制局に審査をお願いするのは多分四月の半ばぐらいになるだろうという話でございます。  そういう中で、我々は、当然のことながら情報公開にでき得る限り努力をしていく責任は負っております。これは、国会に対しましても、国民に対しましても同様であります。同時に、現在はその以前の法体系の中で我々は行政を行っておるということもまた事実でございます。そうした中でも、政府としては、でき得る限りの、お求めの資料というものに対してはおこたえをする努力を今日までもしてまいりました。これから先も、先刻、冒頭私からお答えをいたしましたように、委員から御要求のあるものを理事会等で御決定いただければ、それを提出するための努力、その御要求に対しておこたえをすべき資料をつくる、そういう努力は当然ながら払ってまいります。
  25. 西岡武夫

    西岡委員 亀井大臣の御答弁、私は納得できませんけれども、今総理の御答弁によって、今後平成九年度の予算の審議の過程を通じて、私どもから求めた資料等については、十分国会の要請にこたえるということを総理としてお答えになったと私理解いたしまして、次の問題に移らせていただきます。  破壊活動防止法の問題でございますが、オウム真理教の事件に関しまして、これを適用しないということを公安審査委員会の方で決定がなされたわけでございます。これについて、この破防法の運用、適用等について総理の基本的なお考え、今回のオウム真理教の事件に関して破防法が適用されなかったという、こういう結果が出たことについて総理の御見解を承りたい。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 このオウム真理教の事件、すなわち我々がオウム真理教の事件という認識をいたしましたのは、率直に申しまして地下鉄サリン事件が引き金でありました。しかし、それ以外にも多くの事件がこのオウム真理教をめぐってその後明るみに出、現在、法による裁判が進行するという状況になっております。  そのプロセスにおきまして、公安調査庁は、非常に危険な要素を持ち、今後もその危険を生じ得るという認識のもとに破防法の適用を検討し、そうした結論を出し、公安審査委員会に手続をとったわけでありますが、その後捜査当局の努力によりまして、破防法適用を申請いたしました当時から、教団幹部と言われる者を含めまして指名手配犯の相当部分が逮捕される、そして法の裁きを受けるという状況になりました。まだ全員が逮捕されたのではなかったと思いますけれども、相当程度その犯行にかかわった者が既に法の手に移っております。  そうした中で、公安審査委員会とされては、今後なお危険度が全くないという認定はなさいませんでしたが、破防法という伝家の宝刀を駆使してこの団体の解散を求めるということに対しては、不同意という結論をお出しになりました。しかし、その危険というものは引き続き残る、そしてそのための監視活動は必要であるということを公安審査委員会は述べておられるわけでありますから、当然のことながら、当局といたしましてはそうした視点でこの団体に対しては監視の目を緩めない、そのような形になろうかと思います。
  27. 西岡武夫

    西岡委員 この問題につきましては、基本的にこの破防法の適用については非常に矛盾したことが今度明らかになったと思うのです。  と申しますのは、警察の皆さん方の御努力によって具体的にいろいろな証拠が明らかになり、あるいは容疑者等々が逮捕をされ、そして将来の危険という問題については、それが進めば進むほど相対的に小さくなる。一方、過去の過激派等の問題を別に例をとりますと、なかなか捜査が進まない、したがって証拠もそろわない。そうなると、破防法の適用ということを決断するには、なかなかその申請をするには至らないということになる。  これは何か非常に矛盾した、捜査が進めば将来の危険性についての、これはかなりその判断の分かれるところでございますけれども、今回も、公安審査委員会の方では、全く将来の危険がないとは言えないといっただし書きをつけられた上で不適用ということになったわけでありまして、捜査が進めば将来の危険度についてはだんだんその危険度は少なくなってくる、しかし皆無ではない。一方、過激派の例をとりますと、なかなか捜査が進まないことによって破防法の適用の申請ということが公安審査委員会にまでは至らないというような、非常に法体系として矛盾しているところがあるのではないかと私自身は今回の決定を見まして感じたわけでございますが、この点について総理はどうお考えですか。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この破防法という法律が生まれましたのは私どもが国会に出る以前のことでありますけれども、この法律が生まれます時点から大変いろいろな論議を呼び、その後もさまざまな論議を誘発してきた法律であったことは御承知のとおりであります。  内閣総理大臣という立場において、国会が定められ、その施行を内閣にゆだねられております法律につき、その問題を云々することは不適当なことかもしれませんが、まあお互い、西岡議員、私ども、大学紛争等から随分過激派の問題というものを考え、対応策を工夫し、その中において、今議員が仰せられたような、証拠が収集できないがためにという点における思いは同一にしたこともございました。その限りにおきまして、大変複雑な思いを持っておりますことは否定いたしません。
  29. 西岡武夫

    西岡委員 マスコミが報道するところによっても、オウム真理教はなおかなりの信者が存在をしている。そして、新しい杉並道場とかあるいは京都の連絡所等々ではなお活動が行われている。これはまさに心の問題でございますから、外形的にとらえることはなかなか難しい。こうしたことを考えますと、やはりあのサリンの事件等々で本当に肉親を亡くされた方々、そして、これからもそうしたことが起こることについて国民全体がやはり心配をしているということを考えると、これは極めて大きな事件であったと思うのです。  したがって、今後の推移によっては、これは総理のお考えとしては再請求、団体規制についての再請求の可能性もあるんだということなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 公安審査委員会が示されましたその御判断、まさに危険ゼロではない、継続監視の必要ありということでありますから、当面我々は、再請求とか云々という問題以前に、本当に危険がなくなったのか、やはり危険を予測しつつ監視の目を光らせるべきなのか、まずその判断をいたすのが今求められている状況ではなかろうかと存じます。  細部にわたりましてもし必要でありますなら、法務大臣の方から御答弁を申し上げることをお許しいただきたいと思います。
  31. 松浦功

    ○松浦国務大臣 ただいまの再請求に関する御質問でございますが、仮定の問題でございますので右左のお答えはなかなかできにくいと思いますけれども、現在の情勢と極端に異なる情勢が出てくれば、当然そういうことも法律的にはあり得ると私どもは考えております。
  32. 西岡武夫

    西岡委員 少なくとも国民皆様方が安心して生活ができる、そういうことを、環境を整えていくということが政治の最大の責任であると思いますので、政府におかれましても、この問題については引き続き重大な関心を持って対応されるということを強く要請をいたします。  平成九年度の予算全体について議論をさせていただきますに先立ちまして、総理の施政方針演説、他の三大臣の演説が衆議院で行われました翌日でございましたか、厚生省と国立社会保障・人口問題研究所が我が国の人口構成の将来についての予想の数字を発表されました。  これは、わずか五年前に出された数字が大幅に変更されているわけですね。下方修正されている。このことは、これからこの審議が行われます、例えば年金のあり方がどうだろうかとか、あるいは医療保険のあり方がどうだろうかというような議論をするに当たっての基本的な数字だと思うんですね。日本の子供たちの出生率、子供たちの数がどんどん減ってきている。それが五年前の数字においても、驚くほど我が国の将来の人口構成というものが大きく変化する。それがなお、今まで言われていた以上に大きく変化をしていく。しかも、それは下方修正という形で、どんどん若手の、若い皆さん方の人口が減っていくということを考えますと、これから私どもが審議をする平成九年度の予算全体にも大きな影響を与える数字が発表されたわけです。  このことについて政府としてはどのようにお考えなのか。特に、これは厚生省と国立の人口問題研究所が発表された数字でありますから、そこの関係というのは一体どのように総理としては把握をしておられるのか。もちろん厚生大臣からで結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  33. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この人口問題、特に出生率の低下というのは、今後の社会保障、財政構造全般に大きな影響を与えていくと思います。特に年金等を考えますと、これから高齢者はどんどんふえていきます。いわゆる給付を受ける方は多くなる。なおかつ、もらう期間も長くなる。一方、保険料を払う若い世代がどんどん少なくなっていくということは、社会保障構造のみならず、今の借金体質を持った財政構造全般に構造改革を促していると私は受けとめております。  だからこそあらゆる改革が必要であるということで、橋本内閣においては、行政改革のみならず、社会保障の構造改革等、積極的に取り組まなければいかぬということで大きな政策課題として掲げているわけでありまして、私どもは、この将来の人口構造にも大きな注意を払ってこれからの改革を考えていかなければならないと思っております。
  34. 西岡武夫

    西岡委員 小泉厚生大臣が今おっしゃいましたように、予想した以上に我が国の人口構成というものが大きく変化をしていっている。今行われております予算編成は五年前の数字に基づいた人口構成というものを前提として、年金、いろいろなこの問題に関係する施策が、総理自身政府全体も、平成九年度の予算というものが財政再建元年であるという位置づけをされているわけでございますけれども、それは、五年前の人口構成を前提として今度の平成九年度の予算が組まれたというふうに私は思うのですけれども、その点、大蔵大臣いかがですか。
  35. 三塚博

    三塚国務大臣 トレンドは御案内のとおりであります。  少子・老齢化社会ということを叫ばれてここ数年、そういう中で、それぞれの研究所、ただいまの研究所をのぞいている民間の学者先生、本問題に関心のあられる方々の論評は、少子化時代、これにどう対応するかが国力の伸展につながる重要課題、こういうことで論議が行われてきていることは西岡委員も御案内のとおり。  そういうトレンドを踏まえながら、しからば少子化に歯どめをかけ、正常な出生率へということについてどうするかということについては、各種審議会だけではなく、それぞれの分野で研究が行われる、党においても、本問題について真剣な論議が行われるということであります。生活環境、給与体系、それから社会体制、その後等々を勘案しながらそれぞれの関係省がそれぞれに予算要求をしておる、こういうことであろうと思います。
  36. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げているのは、非常に象徴的だったと私が印象づけられたのは、平成九年度の予算を政府が国会に提出をされた、それに基づく基本的な総理大臣の施政方針の演説が行われた、その翌日に、人口構成について、五年前の、すなわち平成九年の予算編成、昨年暮れに行われた予算編成の基礎になっている数字は、総理が施政方針をされた翌日、厚生省自体がこれを否定された、そこに問題があると私は思っているわけです。  そうなりますと、生産年齢人口というものがこの五年前の調査に比べると大幅に減少している。特に、どうもいろいろなこれに基づく予測によると、本年じゅうに、六十五歳以上の人口と十五歳未満の子供たちの人口とを比較すると、六十五歳以上の人口の方が十五歳未満を上回るということが今回の調査で推定をされているわけですね。  そうすると、平成九年度の予算の基礎になる基本的な、日本の国の姿全体の基本になるところが変化をしてしまっている。このことをどうお考えなのか。このことは、今総理からもお話がありましたように、年金とかあるいは医療、社会保障の負担など、社会保障システム全体を見直さなければいけないということになるわけでして、その点についてどうお考えなのか、お伺いをいたしたいという意味でございます。
  37. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回の統計、一つ特色を申し上げなければなりませんのは、推計期間を二〇五〇年までとしたところでございます。これは近年、国連あるいはフランス、アメリカなど先進諸外国の人口推計というものが大体二〇五〇年とそろっておりますので、ここに焦点を合わせてまいりました。  前回は平成四年九月の人口推計になるわけでありますけれども、当時の国連の人口推計と同じように、二〇二五年までをとらえておったわけであります。その上で、今議員の御指摘になりました点にお答えをいたしますとするなら、この新しい人口推計につきまして、医療あるいは介護の分野におきましては、二〇二五年の時点における六十五歳以上の人口というものは、前回三千二百四十四万人と推計されておりましたのが六十八万人ふえる、二・一%ふえる、ここは大きく変化をする数字ではございません。また、二〇二五年時点における負担年齢層の方の数、ここには大きな変化がまだ生じておりませんから、一人当たりの負担額にも必ずしも大きな影響があるというものではございません。  しかし、問題は年金についてでありまして、新人口推計のもとでは、最終保険料率が相当程度このままであれば上昇することが見込まれるわけでありまして、この部分につきましては給付と負担の見通しをまさに見直す、また、平成十一年の財政再計算時に向けて年金制度のあり方についての検討を行っていかなければならないということになります。  私どもは、本年度、すなわち平成九年度に介護保険制度を創設する、また医療保険制度改革の第一年次とする、同時に、平成十一年、たまたまこれは年金の再計算の年でありますけれども、年金改革を予定しておりまして、当然のことながら、この新人口推計のもとにおいて出てくる数字というものを前提にこれを行うということになります。
  38. 西岡武夫

    西岡委員 どうでしょうか、今総理おっしゃったのですけれども、こういう新しい予測が出たということに基づいて、何年に一度ということではなくて早急に、日本の人口構成が大きく変化する、もちろんそれに対して若い御夫婦の方々がもっと安んじてといいましょうか、安心して子供を産んで育てるというような環境をつくっていくということが非常に大事なこれからの政治の一つの、これは非常に難しい問題でございますけれども、課題であろうというふうに私は思うのですが、そういういろいろな計算、年金計算とかそういう社会保障全体について、やはり早急に、何年に一度ということではなくて、この時点で見直さなければいけない、そういう時期に来ているのではないか。  私は、何もこういうことを申し上げているからといって、平成九年度の予算を全部組み直して、出し直していかなければ審議ができないということを申し上げようとしているのではないのです。そういうような何年に一度ということではなくて、この際、少し基本的な考え方というものを政府としてお取り組みになる、見直しをするということが必要なのではないかということを申し上げているわけでございまして、その点はいかがでしょうか。
  39. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと昨年の衆議院選の折にも私は国民に訴えさせていただいておりましたのは、介護保険という仕組みをつくらせていただきたい、これを柱に現在の医療保険制度、年金制度、各種の福祉サービス、これを体系的に見直したいということを申し上げてまいりました。議員の言われる認識と基本的に私は異なると考えておりません。ただ、その時点で予測した数字より今回の数字が深刻だったことは、特に出生率について深刻だったことは間違いございません。  それだけに、我々とすれば、やはりそのスタートをことし切らせていただきますためにも、その介護という仕組みをきちんと柱立てをさせていただきたい。同時に、それに連動して、医療保険制度の見直し、改革というものの第一歩を踏み出させていただきたい。そして、年金につきましても、これによる影響等を十分もう一度見直さなければならないわけであります。  今、私は、再計算年次を繰り上げると申し上げることが必ずしも適切かどうかは、周囲の状況、例えばその資金運用の問題とかさまざまなことを考えました場合、今見直すと申し上げることが適切かどうかといえば、十一年度の少なくとも再計算を我々は予定している、そうした基本的な認識は、議員と私はそう問題意識を異にしているとは思いません。
  40. 西岡武夫

    西岡委員 予算にかかわる基本的な経済政策の問題について、総理の基本的なお考え方をお尋ねをいたしたいと思います。  橋本内閣は、財政再建ということを非常に強く、施政方針演説の中でも中心に置いてお述べになっておられます。しかし、私ども新進党の考え方は、日本の経済が現状では大変な事態になるのではないか、こういう認識を持っておりまして、日本経済の再建がなければ総理がおっしゃる財政再建というものもこれは達成できないという認識であります。この点について、どのようにお考えでしょうか。
  41. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日本経済が、私は再建という言葉の定義の問題だと思うのですけれども、かつてのバブルの時期のような状況を呈するかといえば、私はあのような形になることは決して好みません。バブル時代のような状況がいいとは思っておりません。しかし、安定した成長の軌道に乗せていかなければならないことは間違いありません。ですから、その意味で私は、経済構造を改めていき、新たな仕事をつくり出していく必要性というものを一方で強調をいたしております。  しかし、現在の財政状況の中で、これ以上赤字が拡大することにブレーキをかけなければならないという思いも私は実は同時に持っております。そして、いわば財政構造改革の方の手を緩めることによって仮に多少の刺激が可能となったといたしましても、それはその手を引いた瞬間にむしろ経済もおかしくなってしまう。とすれば、我々はこの時期をむしろ規制緩和といった努力あるいは経済にかかるコスト、いわゆる高コスト構造というものを是正していく努力、そうした努力は一方で払い続けますけれども、財政構造改革というものも並行して行っていくだけの厳しさが必要ではなかろうか、私はそう考えております。
  42. 西岡武夫

    西岡委員 私どもと橋本内閣との基本的な考え方の相違は、日本経済をとにかく活性化しなければ、総理がおっしゃっている財政再建もこれはままならない、このように考えているわけです。  今回、平成九年度の予算を編成されるに当たって、もちろん所得税減税等は先取りしたからその後追いという形で消費税を上げるんだという、そういう御議論だろうと思うのですけれども、現実問題として、九兆円の国民の負担増を求めるという平成九年度の予算の内容になっているわけでありまして、そういうことをやりながら、なおかつ国と地方との、平成九年度が終わった時点で、今この予算がそのまま執行されるということになれば、累積赤字はなお三十三兆円もふえるというようなことが言われている、報道されているわけです、地方と国と合わせると。そういう累積ですよ、これは。  そういうような状況の中で、少なくとも国民に九兆円もの負担増を求めるという中で、財政が均衡に向かうということであるならば一つの選択肢だろうと思うのですけれども、日本の経済がこういう状況の中で経済成長率等々をどのように見るのか。少なくとも消費税率が引き上げられる、今の状況のもとで五%になる、あるいは国民負担がその他大体四兆円ぐらいはふえるのではないか、そういうようなことを想定すると、日本の経済は少なくとも将来に向かって発展するという、そういう活力を失うのではないかというのが私ども新進党の見方でありまして、その点は橋本内閣の考え方とはかなりの大きなずれがあるわけであります。  私どもとしては、ここで日本経済を再建するということにまず力を入れることが大事なのではないか。例えば特別減税二兆円というものを、これは直間比率の是正という問題にもかかわる問題になるわけでございますけれども、これを制度化して所得税の累進構造を緩和していくというような、そういうようなことに充てるべきではないかということも既に提案をしているところでございますが、その基本的な考え方について総理はどのようにお考えなのか。このまま国民の負担を九兆円求めることによって平成九年度の日本の経済がどういう状況になるという御判断なのか。  そして現在、円安という状況が、きょう幾らになっているか、私、新しい数字を持ち合わせませんけれども、きょう月曜日にどういう数字になっているのかわかりませんが、株式市場等々、通常で申しますと、円が安くなれば、当然これは輸出産業については黒字になるわけですから輸出が伸びていく。そうなりますと、当然、株式市場においてはその反映を受けて株高の傾向になるのが普通である。ところが、円安であり株安であるという、そういう状況が既に起こっている。そういう状況について橋本内閣としてはどのような認識を持っておられるのか、その御認識を承りたいと思います。
  43. 三塚博

    三塚国務大臣 新進党のかねがねの御主張を代表質疑西岡委員から承りました。要すれば、今日の国家経済、国家財政がどうなっておるのかというのは、行財政運営の基本だと思うのですね。それと、マクロ経済がどう動いておるのかという分析に立った我が国の経済社会のあり方、これまた重要なポイントであろうと思うのです。  御案内のとおり、中央政府の債務が二百五十四兆に相なります。地方が百四十六兆の債務を抱えております。特別債務、いわゆる隠れ借金とよく言われるのですが、重複を除き、性質が若干違うのでありますが大ざっぱで計算をさせますと四十五兆、こういうことであります。国鉄清算事業団の二十八兆込みであります。合計四百四十五兆、こういう状況でございます。  片やEU、条約によりまして年内に参加をいただき、共通通貨を発行しよう、その参加基準は、国、地方の債務全体がGDPに対し六〇%以下でなければならない。この伝でいきますと、我が国は九〇を超えました。それと、フローのGDPに対する比率は三%以下でなければならない、こう言います。この分野で日本の財政状況を見ますと、七であります。倍を超えております。イタリーを超えて、G7国家では上位にあります。これが財政、経済の危機的状況にあるというのが、どなたも経済についての原論の知識が、財政について原論の知識のある方はおわかりをいただいているところで、政府も特に本件について国民各層から督励を受けておるわけであります。そのことが財政構造改革、そして経済システム改革、金融システム改革、経済の原点であります。そしてスリムな政府という意味で行政改革ということになるわけです。  でございますから、ただいまのように、ケインズ流に総需要を喚起し、成長経済に向けてから改革、改造をやられたらいかがですか、こういう御指摘に承っております。  しかし、深刻な財政経済状況にある日本、今のファンダメンタルズは確実な足取りで徐々に前進をしておるというのは、大方の経済学者、アナリストの分析であります。それぞれ業種について、産構審の数字も、それから月例経済報告、経企庁の報告も、それぞれが緩やかな基調で回復しつつありますと。雇用の問題については厳しい状況にありますが、これも有効倍率を見てまいりますと、緩やかな回復という、〇・一の勝負の世界でございますから。こういうことであることを考えてみますと、私は、前段申し上げました危機的な財政状況、これは、景気政策という大義名分の中で赤字公債を発行して今日まで来た結果がこうなっておるわけであります。  特別減税のお話もちょうだいいたしました。二兆円、これを引き続きやることによって二兆円の効果で経済を振興せしめようという理屈、二%はやめてください、こういうことも、これもまた先行減税で十六・五兆円、三カ年にわたってやられた成果をそこに読み取っていかなければならないという一点の欠落がございます。そういう中で、なおかつ赤字公債を発行し、公債発行を断行して経済を振興しよう、こういう手法をとるということは、まさに重病人に麻酔を打っていくということになりませんでしょうか。  それともう一つは、後世の孫と子の世代に借金を先送りいたしまして、現代の生きる者、現状以上のものを得るためにやるということになりませんでしょうか。世代間の断絶は絶対いけません。やはりよき伝統と文化を継承し、今日まで私どもは来ました。子と孫に、これ以上陥ったことではなく、いい形でバトンタッチをするのが現代に生きる者の役目じゃないでしょうか。(発言する者あり)違うことの論議はまた別にやってください、説明をしますから。総合的な判断をしてまいりませんと過ちます。この点を申し上げさせていただく次第です。
  44. 西岡武夫

    西岡委員 それではお尋ねしますが、そのような危機的な状況にあるというふうな御認識ならば、なぜ橋本内閣は、行政改革というこの大問題を今からなお議論して、十一月ですか、結論を出されるというのは。これは、橋本総理は、自民党の中でも行財政改革の問題には早くからお取り組みになった、非常に経験の豊かな方で、私も一緒に仕事をさせていただいたことがございますが、その橋本さんが総理になられたわけですから、やろうと思えば直ちに、今から議論しなくてもやれるはずではないんでしょうか。なぜ平成九年度から、具体的な行政改革あるいは規制緩和等々の問題について、大胆な考え方を国会に提出されなかったんですか。
  45. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、殊に行政を中断し、そごを来さないように改革を進めていくことの大切さをまずおわかりをいただきたいと思うのであります。  今、一方におきまして、地方分権の御論議が進んでおります。地方分権推進委員会からは第一回目の勧告をちょうだいをいたしました。これは機関委任事務のうちの相当部分をカバーするものではありますけれども、なお機関委任事務につきまして、地方分権推進委員会は、この春に向けて残るものの検討を今誠心誠意行っていただいております。これをいただき、我々は、当然前倒せるものは倒していきますけれども、地方分権推進計画としてきちんと位置づけてこれを進めていかなければなりません。  また、規制緩和につきましては、ちょうど先週末の閣議におきまして、一層の各閣僚の努力を促したばかりでありますけれども、この三月末をもって規制緩和推進計画を大幅に改定をいたします。既に運輸省の、例えば需給調整の廃止といった考え方、これは公表いたしております。しかし、この需給調整の廃止という一言をとりましても、ただ単にその需給ということからだけ物事を判断すれば、例えば離島航路でありますとか、離島への航空路、過疎地域のバスといったものをどう確保するかという問題は残りますから、そういった部分の対案はつくらなければなりません。  そうしたものをあわせ、中央省庁の持つ業務そのものを、官から民へお渡しをするもの、国から地方へお渡しするもの、それを一方で整理をし、それだけ行政量の減少する中で、中央省庁をきちんと私は再編していかなければならないと思っております。そうした作業は既に先行いたしておりました。これを受けて私は、十一月末に中央省庁の成案もお目にかけたい、そのように申し上げているわけでありまして、それだけきちんと、行政が変わります時点における切りかえの時期においても、混乱を起こさないだけの準備はきちんととって進めなければならない、私はそう思っております。
  46. 西岡武夫

    西岡委員 橋本内閣が誕生してから、当然今私が指摘した問題については一貫して御認識になり、そして御検討になっておられると思うのです。したがって、私としては、この通常国会に本来ならば橋本内閣の行政改革についての法案なりなんなりの具体的な提案がなされてしかるべきである、このように誓えてお尋ねをしているわけです。  現に、これは行政改革のみならずこの規制緩和等々も含めてでございますが、一月二十日の総理初め四大臣の演説の中で、特に麻生太郎経済企画庁長官の経済演説の中では、構造改革というのはもう議論している段階ではないんだ、実行に移していく段階に来ておりますということが明確に述べられているわけであります。ということは、もう問題点は浮き彫りになった、あとは政治の決断なんだということを麻生経済企画庁長官は言われたんだと思うのです。  これを総理大臣としてはどのように、これはもう内閣一致してこの四大臣の演説はなされたものと思いますので、また総理自身もその必要性は十分もう綿々とお述べになった。もちろんあるときにはこのことが既得権益との壮絶な対立になり、政治が相当の決断をしなければならない。それについては、新進党は今野党の立場でございますけれども、政府自身がそういう決断をなさるならば積極的に協力をするという考えを前提として私は今述べているわけでありまして、そういうことについてなぜ今時間が必要なんでしょうか、検討の。
  47. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 経済企画庁長官が実行の段階ということを申し述べた。それはまさに、昨年の十二月、経済構造の変革と創造のためのプログラムを内閣として閣議決定をいたしたところでありまして、これを実現していくために春までに行動計画をつくろうとしている、その状態を踏まえての御発言であります。当然ながら内閣としてこれに違うものではございません。  ただ、なぜ時間がかかるのかという御指摘でありますので、一つ例でお聞きをいただきたいと思うのでありますが、これは金融システム改革を大蔵大臣並びに法務大臣に私が指示をいたしましたそのメモそのものでございますけれども、例えば金融システム改革と一言で申します中にまずありますのは、私は、フリーということを申し上げました。  市場原理が働く自由な市場、そのために必要なことは、銀行、証券、保険分野への参入の促進であり、幅の広いニーズにこたえる商品サービスという意味では、長短分離などに基づく商品規制の撤廃、証券、銀行の取り扱い業務の拡大といったものが考えられますし、多様なサービスと多様な対価という視点からまいりますと、各種手数料の自由化の問題を考えなければなりません。  また、自由な内外取引という点で今回外為法の改正をお願いをいたしておりますけれども、為銀主義の撤廃というテーマがございます。  また、千二百兆円の個人貯蓄の効率的な運用というものを当然考えるわけでありますけれども、このためには、資産運用業務規制を見直すこと、同時にディスクロージャーの充実、徹底という問題を必要といたします。  また、フェアな市場、言いかえれば透明で信頼できる市場にといいますと、ここでも同じくディスクロージャーの必要性というものが今まで以上に出てくるわけでありますが、ここでは、自己責任原則というものを確立していくために、十分な情報提供を行うこととルールの明確化という課題がございます。また、当然ながらルール違反に対する処分というものを積極的に発動できるメカニズムを必要といたします。  さらに、国際的で時代を先取りする市場ということを考えますときに、デリバティブ等新たに展開されておりますいわゆる金融先物商品という世界がございます、非常にさまざまなものがあるようでありますが、こうしたものに対応した法制度の整備、会計制度の国際標準化というものをしていかなければなりません。これは商法の世界にまで入るわけでありまして、法務省に御努力を願う部分でございます。  さらに、グローバルな国際金融の世界における監督協力体制というものをG7で確立していただくといったものが入るわけでありますが、例えば商法の改正といったものが、そんなに今まででも実は簡単にできるものではございませんでした。法制審等での御議論というものを考えますと、私はそれだけの時間を必要とするということは御理解をいただきたいと思うのであります。
  48. 西岡武夫

    西岡委員 今、総理、金融のことをおっしゃいましたので、そのことに関連をいたしましてお尋ねをいたします。  橋本総理は金融のビッグバンということをおっしゃっておられます。これは、ビッグバンというのは相当すごい表現だなというふうに思うのでございますけれども、これを世界的に見ますと、日本が二〇〇一年までにこれを実現するということなんですけれども、本当はもっと急がなければいけないと私は思うのです、本来ならば。  その前提として、総理がおっしゃっている、まあ何年にこれはできるかということは別としまして、これを実現させるためには、どうしても過去のバブルの清算を思い切ってやらなければ、これは私ども新進党が昨年の通常国会で強く問題を指摘し、住専の問題が、過去のバブルの清算として金融機関全体が持っている不良債権の問題を解決するという問題とはこれは実は別個の問題である、必ずしも全く切り離された問題ではないけれども。住専という金融機関でも何でもないそういうところが引き起こした問題について公的資金を導入するということについては反対である。  そうではなくて、金融機関全体の不良債権の問題を、大胆にこれを解決しなければいけない。その際、当然金融機関の資産の内容、財務の内容については、今総理もおっしゃったようにディスクロージャー、国民皆さん方にその内容を明確に示す必要がある。  その際に、金融機関によっては、つい最近出ました経済の関係の週刊誌等では、具体的に金融機関、証券会社等の内容についてのランクづけがなされて、どこが危ないとかそういうようなことをいろいろと報道されているわけでございますが、これはこの場で私は申し上げるのは適当でないと思いますから、あえて具体的には申し上げませんけれども、しかし、少なくとも思い切って金融機関の不良債権の問題を解決しなければ、総理の言われているような金融のビッグバンというものを実現させる、達成するということは、これは不可能だと私は思うのです。  その点について、公的資金を導入するという問題については、私ども新進党としては、国民皆様方の預貯金について、これは政府責任を持って保証しましょうということが前提でなければ、金融機関のディスクロージャーというものはなかなか困難であろう。そういう意味において、私どもは一貫してこの一年間主張し続けてきたところでございますが、残念ながら、金融機関全体の不良債権の問題をどう解決するかということについては、政府の考え方と私どもの考え方とは相入れないと申しましょうか、私どもの主張は通らないで今日に至っております。それがいまだに解決をしていない。  一方においては超低金利、これは一九九五年の九月でございましたか、公定歩合〇・五%になった。このことが、本来ならば、先ほどモルヒネというような、そういうことも大蔵大臣のお言葉にあったと思いますけれども、まさにモルヒネだと思うのですね。〇・五%の公定歩合にしたということは、まさに何とかバブルのときの清算をしなければいけない、そのためには思い切って低金利政策をとらざるを得ない。  しかし、私自身が見たところ、せいぜい一年も続ければそこで正常な金融政策が展開できるようなそういう金利水準にならなければ、私は不自然だと。国民皆さん方が持っておられる預貯金が、本来ならばその利息が相当入っていなければならないのに、〇・五%の公定歩合ということが長く続いているという状況は、これは年金生活の皆さん方を初め、現に、年金の運用にしても、あるいはそれぞれ社会的な役割を果たしておられる財団の運用にしても、大変なそごを来している。そういう異常な事態をそのままにしておいて、過去のバブルの清算をなぜ大胆になさらないのか、この点について、大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  49. 三塚博

    三塚国務大臣 本件、三つあると思います。特にビッグバンの問題について、スケジュールの問題を総理から指示を受けておりますので、この機会でございますから申し上げておきたいと存じます。  金融関係には五つの審議会がありますのは御案内のとおり。証券取引審議会、企業会計審議会、金融制度調査会、保険審議会、外為審議会とあります。この五審議会を一つの協議会にしていただきまして、今真剣な論議に入らせていただいております。  ほぼ今出ておりますスケジュールは、証券取引審議会においては、この春までにデリバティブ特別部会において取りまとめを行うということにまで来ております。そして本年六月までに報告書を取りまとめる。  さらに、企業会計審議会、総理が言われました法制審議会との関係もこれあり、法務大臣とともにお呼びいただきまして、御指示をいただいた件であります。国際的な会計基準という意味でございまして、本件は九七年、本年夏までに連結会計基準について取りまとめをいただく。さらに、金融商品に係る会計基準について九七年夏中間報告、こういうことになり、九八年夏には他のテーマ全部を最終報告する。法制審議会がありますから、これだけの時間はここはかかるわけであります。  金融制度調査会は、本年の春、ですから三月、四月までに電子マネー及び電子決済に関する懇談会において取りまとめを行い、九七年六月に報告書を活性化委員会において取りまとめる。  保険審議会は、昨年十二月、保険協議が日米相調いました。金融機関だけではなく保険等、業際を離れて、まず先取りをしてビッグバンの体制に入ったのが保険関係業界と見て間違いがございません。そういう中にございまして、保険審議会は九七年一月二十一日から審議に入りまして、六月までに報告書を取りまとめるというところまで参りました。  外国為替等審議会は、御案内のとおりフロントランナーとして、いつ、どこでも、だれでもお金が、円が使用できる、こういうことで、一千二百兆に及ぶ個人資産が有利に展開をできるようにしていこう、円の価値を高めていかなければならない、こういうことで本国会、二月には外為法の法律を期限までに提出をすることに相なります。  そのほか、金融関係の行政改革は大蔵改革と言われておりますが、検査監督機構がスタート台に乗り、提案ができるということであり、金融局、銀行局、証券局、行政改革のこれまた一端としてスタートを切る、法律案、設置法を出させていただく。日銀法の改正、御案内のようなスピードで、ただいま精力的な審議が最終場面に来ておるということでございます。  さて、ただいまの後段の御質問でありますが、金融機関不良債権の問題は順調に取り進んでおります。  本件が金融各機関のリストラ、不良債権解消に対する努力、こういうもので、前段言われました金融の問題からいたしますと大幅にその不良債権が縮小をいたしておるところであります。数字は政府委員からも申し上げさせていただきますが、九兆円、十兆円台の圧縮が行われておると理解をいたしております。  さらに、低金利政策でありますが、本件は、金利生活者の方々、御高齢の方々、いわゆる利子収入の減少をもたらすという点では御案内のとおりであります。国民各位の不満が強いことにつきましては大変心苦しく感じておるところでありますが、こうした低金利は、企業、財団、家計、金利負担の軽減等を通じ、財団はデメリットを受けているわけでありますが、企業会計は軽減等を通じ景気回復に大きく寄与しておりますことも考えられるところであります。これがひいては国民生活に景気の前進という意味で好ましい影響を及ぼすもの、こう見て間違いがないと思います。  いわゆる公定歩合問題と関連をしまして、公的資金の導入をという御指摘であります。しかし、本件は、住専国会における論議の中で、特に三党の協議の中では、住専について個人預金者の保護、そして金融システムの安定ということで金融三法が出たわけでございますが、ノンバンク等その他の関係についてはこの際公的支援を、公的関与は行わないという、こういう申し合わせの中で今日進んでおるわけでございますから、その方向の中でただいま取り組んでおる、こういうことであります。
  50. 西岡武夫

    西岡委員 大蔵大臣、金融機関の不良債権の問題の処理は順調に進んでいて、全く問題がないという御認識ですか。
  51. 三塚博

    三塚国務大臣 リストラを行い、全力を尽くして頑張っておるわけですね。私どもも指導監督をしておるわけであります。もちろん、個々の金融機関それぞれの状態はあります。全体的に見て、そのリストラは進み、不良債権の解消について進んでおりますことも事実でございます。その総論、概観を申し上げておるところであります。
  52. 西岡武夫

    西岡委員 私は、あえてここで個々の金融機関の実態はこうなっているということを申し上げるのは適当でないと思いますので申し上げませんが、株式市場がこれだけ低迷し、きょうこの時点での数字はまだわかりませんけれども、私の手元にはございませんが、昨年の末からことしにかけての株式の低落、これを考えますと、銀行の含み益というのは大幅に減ってきていることは事実だと思うのです。それを考えますと、大蔵大臣が今おっしゃったように、金融機関の不良債権の問題は順調に処理されている、心配ないんだと。本当ですか、これは。
  53. 三塚博

    三塚国務大臣 今データが来ましたから申し上げます。  不良債権総額が、八年三月に三十四兆七千九百九十億円でございました。これがただいまは、リストラの結果、八年九月でありますけれども、二十九兆二千二百八十億円、こういうことになっております。ですから、これが順調に進んでおると申し上げた根拠であります。  ちなみに……(発言する者あり)全体なんです。ちなみに、都市銀行を含め、銀行と言われる第二地銀までの預金総額は、総資産と言っていいのでしょうか、本件は、全国銀行合計で一千八十五兆円ございます。そして、貸出金はその半分、五百七十兆円であります。そういうことで、不良債権等につきましても、全体の中で五兆五千八百二十億円、こういう数字もございます。先ほどの問題は、全体の中で申し上げさせていただいたところでございます。これは、今の五兆五千億円は地域銀行のトータルだけで、全国銀行統計でこちらは二十二兆九千九百六十億、こうなっております。  以上の状況でございますので、御理解をいただきます。
  54. 西岡武夫

    西岡委員 私は、そんなに今大蔵大臣がおっしゃったような簡単なものではないと思うのですね。  アメリカ等では、大体日本が公表している数字の倍ぐらいと見た方がいいのではないかというのが専らアメリカの証券会社等の見方であるということを聞いているわけでございます。  現に、我が国の金融機関が本当に中小企業等が必要とする資金を供給する場合に、これは地方をずっとお調べいただければわかるのですけれども、なかなか貸してもらえないのですね。よっぽど安全じゃないと貸さない。そういう状況が現に存在をしている。そして、優良で本当にお金が要らないようなところに、出前ではないけれども、注文取りに行ったような形で、借りてくれないかというようなことも現に行われているということを私は具体的に友人から聞いているところでございますが、実際に、金融が果たすべき役割というのは非常に大きく変わってきていると思うのです。新しい分野を開拓していく、そういうようなことが今からの日本経済にとっては非常に大事なことであって、今までの金融機関が果たしてきた役割とは別の新しい役割を金融機関は果たさなければいけない。  しかし、現実問題としては、この不良債権の問題が解決をしなければ、なかなかそういうところに踏み出していけないというのが現状だろうと思うのです。それを私は申し上げているわけであって、これをなぜ今のような数字で御説明になるだけで、実態は決してそうではないのだということを御認識になった上で、現に不良債権をいっぱい抱えているために、地価がどこが底値になるかわからない、土地の価格が、そのことが日本経済全体に大きな影を落としているということも、これは大蔵大臣、お認めになるでしょう。どうでしょう。
  55. 三塚博

    三塚国務大臣 土地税制の問題に関連して、さらに金融不安の状況等を踏まえての御質問であります。  御案内のとおり、経企庁だけではございませんで、各シンクタンクの発表は、一部別なことを言われる方がございます。大変深刻な物の言い方、日本売りというようなことを、日本人として私どもは慨嘆にたえないのでありますが、そういうことを言われる方もおりますが、総体的に我が国の経済状況のファンダメンタルズ、いわゆる基礎的条件というものは決して悪くないというのが、辛口の評論家、アナリストにおきましても、最終的にはそのトレンドは認める、こういうことなのですね。  ですから、そういうことを考えますと、今御論議をいただいている予算が年度内に成立をさせていただくということになれば余計適切な、執行に切れ目が出なくなりますから、経済は確実にそのトレンドの中で進むのではないか。  一・九の成長率というのが政府見通しであります。本件についても、下方で言われる方もおりますが、さらに人によりまして、三%は確実だということを言う人もおるのですね。一%以下と言う人もおりますが、そういうまちまちな昨今の評論家の方々、アナリストの方々の評価というものがありますが、私どもは、一・九は確実に、消費税の二%のアップ、特別減税をやめても、なおかつ恒久減税三カ年のその蓄積がサラリーマン各層に、また経済によき効果を与えておる、これも多くの方が認めるところでございますから。これに加えまして、財政構造改革、規制緩和、諸改革が、総理が言われますとおり、着実に前進をしていくわけでありますから。  やっていない、やっていないと言われるグループの方もおります。逆に、外国の評論家の方々は、ビッグパン、金融システムは確実に前進するだろうという、フィナンシャル・タイムズだけではございません、以下の世界の権威ある経済紙と言われる各位のエキスパートがそういう評論を掲げておるわけでございます。そういう諸状況の中で、株式市場等が発しておりますメッセージ、私どもはそれは重大な関心を持って見ておるわけであります。  そういう中で、今後日本の経済改革が前進をする、経済運営の基本である政府予算が、いろいろの御批判、御指摘は謙虚に承りますが、年度内に成立をしていくということでありますと、経済のベースがそこに定着をするわけでございますから、その辺の御理解を得たいと思っておるわけであります。  日本の株式市場、またレートも日本だけの諸状況で決まるわけではございません。世界経済の状況の中で自律的に決まっていくことでございますから、そういうことを私どもは真剣に受けとめながら、過ちなきを期していかなければならぬ、こういうことであります。
  56. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げたいのは、総理がおっしゃっている二〇〇一年の金融ビッグパンというのは、私はもう少し早く、ここ少なくとも二年ぐらいの間には実現すべきであるというふうに思っておりますが、それはおいたとしても、そのためにはやはり、不良債権という問題を、今の大蔵大臣のような御認識では、私は間違っていると思うのですね、もっと深刻に考えるべきだと。それを一括して大胆に解決するというお考えは、これは総理、ございませんか。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大胆と言われましたけれども、先ほど金融システム、私、実は自分でビッグバンという言葉を使ったことはありません。私は、自分で申し上げているときは、いつも金融システム改革と申し上げております。  そして、その中で、本当に我々が考えていかなければならないことは、そのシステムそのものを変更することとあわせて、その間に預金者に不安を与えるような状態をつくり出さないということでございます。そして、そういう意味では、金融の危機管理体制というものについて、さきの通常国会でいわゆる金融三法というものを整備させていただくことができました。こうした法律を駆使しながら、我々は預金者保護、信用の秩序維持というものを一方で進めてまいりながら、それと並行しながらシステム改革を進めていくわけです。  そして、システム改革と一言言いました中に、先ほど申し上げましただけの幅の広い内容のものを含んでおります。例えば、法務省系統、商法に関連いたしますような制度、そういう作業が急に前倒せると正直私は思っておりません。当然ながら、その中からできるものから進めていくことはやっていくわけですが、むしろ二〇〇一年よりも少しでも早く全体が整うように努力をしたい、そのように今思っております。
  58. 西岡武夫

    西岡委員 私が心配しておりますのは、金融機関の不良債権の問題が解決しないままに今総理がおっしゃったようなことは進めることはなかなか難しいんじゃないか、こう考えるんです。  ですから、新進党としても、この問題については、先ほども申し上げましたように、預金者の保護等の問題については、場合によっては公的資金の導入もやむを得ないということを前提として金融機関の持っている不良債権の問題をきちっとやはり解決をしないと、今金融機関の金融のシステムを大きく変えていくんだということに手がつかないのではないか。そして、日本の経済がやはりこういう状況を続けているというのは、金融機関が持っている不良債権、なかんずく土地という問題が大きく日本経済に影を落としているんだということについて、政府自身が正確に御認識になった上で、それに対する対応をされるべきではないかということを申し上げているわけです。  それと、円安という状況が続いて、そして株安という状況が続いているということについて、これは大蔵大臣はどうお考えでしょう。非常に不可思議な現象が起こっているわけですね。  私ども新進党は、今から二年ちょっと前の参議院選挙の際にも、有価証券取引税を廃止すべきだと。もちろん、キャピタルゲインについての課税の問題というものを我が国の場合には有価証券取引税という形で抱えているということは十分承知をいたしております。しかし、なおかつそれを承知の上で有価証券取引税は廃止すべきではないか。これからの世界経済全体のそのバランスの中で、やはり同じような条件のもとで我が国が競争をしていかなければいけないということを考えれば、なぜこれをちゅうちょされるのか。  政府の税調の加藤会長も、段階的になんというようなことをちょっとおっしゃっておられますけれども、そういうようなことを一つ一つ、先ほど来お聞きいたしておりますと、もちろん審議会が全部必要ないと私は申しませんけれども、審議会で審議をしているということで政府責任というものが時間的にずれていくということについて、私はもうかねてから審議会方式というのはいかがなものかということを、根本的な疑問を持っている者でございますけれども、そういうのんきなことを言っている状況ではないのではないか。この私の考え方について、総理はどうお考えでしょう。
  59. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、現行の法律制度のもとで、審議会の議を経るとか審議会の意見を聞かなければならなくなっているものがあることは議員御承知のとおりであります。そして、行政府として、法で定められておりますものを飛び越えるわけにはいきません。その時間をできるだけ短縮していただく努力は当然のことながらいたしておりますけれども、現に国会のお定めになりました法律によってつくられている、言いかえれば法律によってその役割というものが明定されている審議会を我々は無視して勝手なことはできないんです。それはどうぞ御理解をいただきたい。  その上で、その審議の時間をできるだけ短くさせていただくようにお願いをし、努力をし、これからも物事を進めていきたい、私はそう申し上げます。
  60. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げたかったのは、今総理は確かに法律に基づいてということでございますが、法律改正も含めて政策決定のプロセスについてもメスを入れていかなければいけないのではないか、そういう時期に来ているのではないかという意味で御指摘をしたわけでございます。
  61. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 その政策決定のプロセスも、当然ながら我々はよりよいものに変えていく努力というのはこれからも引き続いてやっていきたいと存じます。
  62. 深谷隆司

    深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  63. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西岡武夫君。
  64. 西岡武夫

    西岡委員 午前中、私から質問をいたしましたことにつきまして、新進党としては、現在の金融機関の持っている不良債権の問題を大胆に解決をしなければ、総理がおっしゃっている金融システムの抜本的な改革、すなわち自由化の方向に持っていくということは非常に難しい、そして、日本経済に与える、金融機関が持っている不良債権の問題が重くのしかかっていることについて、これは本当に真剣にお取り組みをいただきたいということを申し上げたわけでございます。  そこで、残された時間、わずかでございますので、十五分ばかりいただきまして、総理が、五つの改革の問題に加えて、教育改革を特にこれに加えて述べられているわけでございます。私も、最終的には教育の問題が日本の将来を決定する、このように認識をいたしておりまして、総理がそのことを特に強調されるということについて期待を申し上げるものでございますが、総理の基本的なお考え方について、ごく簡潔に要点をお尋ねをいたしたいと思います。  私は、やはり一人一人の個人が強い個人、自己完結した、みずからが責任を持てる強い個人によって初めて自由主義社会というものは維持され発展される、このように考えます。もう少し具体的に申し上げると、自立した、みずから立うた、そしてみずから律する、自律した精神を持った一人一人の個人によって自由主義社会というものは維持発展し得る、このように考えます。このように考えたときに、やはり教育という問題に最終的には課せられた課題ということになるわけでありまして、そういう意味で、総理が教育の改革という問題に着目をし、早急にこの問題に答えを出すべきであるというふうにお考えになったということについては、私自身も全く賛成でございます。  その場合に、限られた資源をどのようにそれぞれの分野に配分するか、国民のエネルギーあるいは資源というものをどうやって配分していくかということを考えたときに、二者択一ということではないけれども、先ほど平成九年度の予算の問題の冒頭に申し上げましたように、我が国の人口構造は、これは将来を見通したときに、これから百年後には、このままの状態でいけば、日本の人口は六千万人程度になってしまうというような数字も出ているというようなこと等を考えますときに、やはり教育にもっと力を入れなければいけない、これは、予算の面においてもそういう配慮が必要ではないだろうかということを示唆しているのではないかと思います。その場合、自由主義社会というものは、これは、教育にどれだけその社会が資金の面も含めて力を入れるのかということによって将来が決定すると申し上げても私は過言でないと思います。  それについて総理の御決意のほどを承りたいというのが一つと、もう一つ大きな問題がありますのは、今回、文部大臣に総理がお命じになって具体的な教育改革のプログラムというものを早急に取りまとめをされたわけでございますけれども、義務教育というのは果たして今の地方の教育委員会制度のもとでいいのかどうか、このことについて、やはり根本的な教育行政のあり方として非常に問題点があるのではないか。  もちろん、我が国の教育全体を考えたときに、義務教育も多くの問題はございますけれども、大学改革ということが、先進諸国、アメリカやヨーロッパの大学等々の状況と比較をしたときに、我が国の場合に、特に大学院を充実するとか大学教育のあり方を考えるということは極めて大事なことであって、基礎的な学術、研究という問題について日本が今どれだけ力を入れるかということは、これまた日本の将来を決定づけると申し上げて過言でないと思います。  そのときに、大学の問題を議論いたしますとこれもかなりの時間がかかりますので、きょう総理にお尋ねをいたしたいのは、義務教育を今の地方教育委員会制度のもとに置いておって、それを前提として考えていいものかどうか、これは地方の責任なのか国の責任なのか、このことについて基本的なお考え方を前段のこととあわせてお述べをいただければ幸いでございます。
  65. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この問題について、今議員から提起をされたような形で内閣一同が意見をそろえた状況ではございませんので、私の個人的な考え方ということでお許しをいただきたいと思うのでありますが。  まず第一点、基本の部分について、私は、自分が夢を持ち、その夢の実現に向かって努力し、それがかなえられる、そういった姿を描いておりますということを今まで申し上げてまいりました。そして、議員はそれを強い自己と、自分という形で表現をされましたが、目指しているものは、私は、言い方の違いを別にして、余り基本的な違いがないように存じます。  なぜなら、議員とは、例えば今引かれました大学教育でも、医学教育というもののあり方について、あるいはその後、幼児教育に特に深い、あるときは相当意見を激しく闘わせ、議論をしてまいりましたっその意味において、考え方の基礎にあるものは御理解をいただけると思うのであります。  そして、かつて私どもが議論をいたしました当時に比べ、この出生率の低下している現在の状況を考えましたときに、私は、義務教育のあり方と、これは幼児教育も含めまして、その重要性は格段に大きくなったと思っております。そして、それはただ単に制度の問題だけではなく、地域社会が挙げて地域の子供たちをいかに守り、健やかに育てるための協力の仕組みがつくれるかといったことまでを含めて、私はここに一つ大きな課題があると考えております。  これは、お互いが議論いたしましたその当時、まさに我々の先輩がヨーロッパの幼児学校制度を採用すべきかどうかという視察をされ、その結論を持ち帰られたときから我々は非常に真剣な議論を闘わせてまいりました。  そして、その中で今、地方教育委員会というものの是非をお尋ねでありますが、私は、本来、地方教育委員会の持つ役割というものの一つに、国全体が平均して一定のレベルの教育水準を維持する、その一翼を担うということと加えて、やはり、それぞれのふるさとにおける、それぞれのふるさとの持つ歴史なり伝統なり、あるいはその地域における子供たちに語り伝えたいものをカリキュラムの中にいかにして埋め込んでいくかといった視点があったように思います。  しかし、現在そうした状況が必ずしも確保されているかというなら、残念ながら、受験という仕組みの中でそうした特色は薄れてしまい、むしろ、画一的な入試制度というものに対する取り組みがその優劣を決めるような、そのような状況が生まれているように思います。  そして、そうした視点から私はこれを見直す必要があるかもしれないと思いますけれども、私は、地方教育委員会制度というものを必ずしも否定するものではありません。むしろ、それぞれの地域社会における、その地域地域で子供たちに語り伝え、残しておくべきものをいかに教科に組み入れていくか、そうした点において積極的に地方教育委員会というものが働いていただけるなら、そんな思いが私の中にあることは事実であります。  また同時に、大学制度並びに大学院制度についての御指摘がございました。  我が国の場合には、大学の入学率、同じ世代に占める比率というならば、非常に高い国であります。最近の数字、私、正確に存じませんけれども、恐らく同世代のお子さんのうちのほぼ四割に近い数字、これが短大以上の学歴を受けておるであろうと存じます。  しかし、大学院への進学率、修士、博士課程への進学率というものは、我が国は決して、高いというよりも、むしろ低い、残念ながら低い国であります。いかにしてこのレベルを向上させていくか。これには、むしろ、大学院修士課程、博士課程修了者が社会に迎え入れられるときの学部卒業生に対する待遇の問題とか、教育制度そのもの以外の分野で我々は工夫しなければならないことは多くある、私はそのような認識で今日参りました。  そして、その意味では、今まで申し上げてきた五つの改革と次元の違う問題という意識が最初ありまして、教育というものを初めは除いておったわけであります。しかし、調べてまいりますうちに、実はこの教育の世界にすら規制の問題がある、そして、規制の見直し、緩和、撤廃というものが必要である。  例えば、我が国における私学教育のあり方を考えましたとき、その果たす役割というものは極めて大きい。しかしまた、その私学に対して課せられている規制というものも非常に多くある。これは、幼児教育の段階から大学、大学院に至るまで課題がございます。  こうしたことを考えますとき、やはり、一番基本の部分の問題であり、他の改革と重ならない部分がありますし、本来、教育というものは心の中にかかってくるものを持っていますから食い違って当然でありますが、実は一連の行政改革を初めとする改革と同次元でとらえなければ解決しない問題もある、そのような思いからこれを加えて御論議に供しておるわけであります。
  66. 西岡武夫

    西岡委員 この通常国会の議論を通じて、教育改革の基本的な考え方についてなお議論を進めさせていただきたいと思っておりますけれども、ぜひこの機会に、やはり教育委員会の制度というものをどう位置づけるかという問題、国の責任と地方の責任というものをどのように考えるかということは極めて重要な問題でございまして、内閣におかれても文部省を中心として一つの方向づけをしていただきたいということをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  67. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、野田毅君から関連質疑の申し出があります。西岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。野田毅君。
  68. 野田毅

    野田(毅)委員 時間の制約がありますので、私もポイントを絞って質問したいと思います。答弁の方も、できるだけポイントを得て簡潔にお願いしたいと思います。特に大蔵大臣、ひとつよろしくお願いいたします。  冒頭、経済問題等に入ります前に、沖縄の米軍基地問題について質問をさせていただきたいのです。  特に、本年の五月十四日で期限が切れる、いわば民間所有者の土地を今国が借り上げて米軍に提供しているという、これはもう御承知のとおりであります。その前に、昨年、もう一つ大きな話題になったのは、楚辺通信所といいますか、いわゆる象のおり、これが、昨年の四月一日以降、いわば本人が承諾をしない、そして国が緊急使用許可の申し立てをしたけれども、これも却下をされた。したがって、今現在、残念ながら、法的な権原なしに国が事実上占拠して米軍に提供しているというような、こういう現実がある。これは明らかに憲法違反という状況になってしまっている。ただ、日本の国益全体を考えて、いわば不法占拠になっているから米軍出ていけというわけになかなか日本政府としては言えない。そういう状況の中でいろいろ苦労していると思うのですね。  しかし、不法占拠は不法占拠なんですね。だから、本来なら、そうなる前に法治国家としては何らかの法的手当てをしておくというのは一つの選択肢でもあったかもしれない。あるいは少なくとも地主がイエスと言うか、あるいは土地収用委員会が所有者よりも日本政府の言うことがもっともだということで許可をするか、何らかのことがあるならば、また不法占拠という状態は回避できる。  これはこれとして、いよいよ、三千人余りの地主に対する使用権原を、法的な権原を国が得たいということで今やっていますね。もう詳しくは言いませんが、残念ながら、今のところ沖縄の知事さんは、土地収用委員会に裁決を申請することを、あるいは公告縦覧をすることの代行を一応去年の秋にイエスと言って、そして現在、土地収用委員会で審理の手続が始まっている。しかし、始まっているけれども、第一回の審理はまだ二月、今月の半ばぐらいですかね。第二回が三月ぐらいになるだろう。従来どおりのテンポでいくならば、とてもじゃないが五月十四日までに間に合わないというのは常識。そして仮に間に合うとしても、イエスと言ってくれるのかどうなのか、これはまだよくわからない。今、そういう不安定な状況にある。  そうであれば、少なくとも五月十四日までに、約三千人の所有する土地に対して、もちろん、その土地所有者がいろいろ問題があるかもしれないが、しかし、法治国家として、それを何らの法的な裏づけなしに不法占拠を国が承知の上で行うという、そういう現実を五月の十五日以降もたらすようなことだけは何としても避けるというのは、これは当たり前の話だと思うのですね。この点、どう対応しようとしておられるのか。これは総理でしょうかね。梶山長官が沖縄担当という話になっているんだけれども、これは総理の方が一生懸命情熱を傾けておられますから、どうぞ。
  69. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、内閣は、これは沖縄の問題については、皆が力を合わせて少しでも事態をよくしたいと努力をしておりますということを冒頭申し上げます。  そして、御指摘がありましたように、楚辺通信所の一部の用地につきまして、使用権原切れの状態のまま今日まで続いているということは我々として本当に残念なことでありまして、少しでも早くこの事態を解決したいと願いながら今日まで解決ができませんでした。  そして、議員に対してかた苦しい言い方をするつもりはございませんけれども、我々は日米安全保障条約というものをアメリカとの間に締結し、これによって我が国の安全を保障すると同時に、これはアジア太平洋地域における安定の上にも極めて大きな役割を果たしている。その条約の目的を達成いたしますために、我が国に駐留する米軍に対して、施設及び区域を円滑かつ安定的に提供するのは我々の条約上の義務であります。そして、駐留軍用地特措法に基づく使用権原の取得手続につきまして、県と国との信頼関係の中で、知事から公告縦覧の手続への御協力をいただきました。  今、議員からも御指摘がありましたように、収用委員会によります公開審理は二月二十一日からということでありまして、従来の実績を考えますときに、今後の委員会日程というものが大変厳しいものであるということは私としても痛いほどわかっておるつもりでございます。  その上で申し上げたいことは、その収用委員会におかれましても、ぜひこのような状況、また使用期限までの権原取得の必要性というものを踏まえていただきまして、裁決に至る手続を円滑かつ迅速に行っていただけるよう、本当に我々としては願っておるわけでありますし、政府としても、当然のことながら関係者の御協力が得られますような最大限の努力をしてまいります。議員が御指摘になっている問題点を理解しないのではなく、現時点におきまして我々としてはその努力全力を尽くすということが何よりも必要な時期、そのように考えております。
  70. 野田毅

    野田(毅)委員 努力しておられることはわからぬではないんです。ただ、結論において、五月十五日以降において国が明らかなる憲法違反状態をみずから現出するという事態だけは何としても避けるというのは、これはイロハのイだと思います。そこだけははっきりしておいてもらいたい。努力したけれども結局だめでしたよというようなことにならぬようにしなければだめだ。そこだけははっきりしてください。
  71. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私どもは、この責任上さまざまな想定をいたし、今議員の御指摘のような事態を現出せしめないように全力を尽くしてまいります。
  72. 野田毅

    野田(毅)委員 明らかにわかっていることを、もうだって五月でしょう。そうするとこの決断は二、三月の間にしないと間に合わないのでしょう。それを努力中です、努力中です、そして間際になって、努力したけれどもやはりだめでしたと言って国が不法占拠状態に、見えていることに突入するということは、明らかな政治責任だと思いますよ、法治国家として。これは総理、この問題もやはり火だるまにならなければだめなんですよ。これは国家のあり方の話なんですよ。
  73. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 国家のあり方の問題であるという意識は十分持っておるつもりであります。その上で、二月二十一日から収用委員会が審理を開始される、その審理を開始していただく前に、収用委員会がその必要な手続を必要な日時の間に終了していただけなかった場合を前提のことを申し上げるというのは、私は収用委員会に対しても大変非礼なことだと思います。  私どもは、この二月二十一日に審理が開始された後、従来の経験上から申しますと大変厳しい日程であることはよく承知をいたしておりますし、使用権原切れの状況を起こせないということは十分に承知をいたしました上で、なおかつ収用委員会が所要の手続を円滑かつ迅速に終わっていただくことを心から願うと繰り返して御答弁を申し上げます。
  74. 野田毅

    野田(毅)委員 これ以上の答弁、今ここでは総理はできないとおっしゃるのですが、ただ本当に、五月十五日以降、結果において不法占拠状態に突入するということになれば、明らかに政治責任問題ですよ、これは。この一点だけは当たり前の話ですよ。よろしいですね。
  75. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 その時点、政治責任といった言葉で済むような状況であれば幸せであります。これがもしできないという事態になれば、これは日米関係に大きな亀裂を生じかねない話であります。  だからこそ今私は、二月二十一日から始まる収用委員会、本当に祈るような思いで私どもはこの開始を待っておりますし、従来の経験上、日程的に極めて厳しいことを承知しながら、なおかつ円滑かつ迅速な手続を進めていただけることを願っているわけであります。これが、使用権原を取得できない状況でカレンダーがかわりましたときの恐ろしさは十分知っておるつもりです。
  76. 野田毅

    野田(毅)委員 実は、何も特別立法なり、それだけが一つの道ではないということも言外におっしゃっているのかもしれません。  土地収用委員会が今までの流れとは異なった、いわば前向きの審理をしてくれることを期待をするというニュアンスがあっておりますね。しかし、そうならば、どういう条件ならば前向きのニュアンスに土地収用委員会がいわば態度を変えられるのだろうか。それは容易なことじゃないと思います。  辛うじて万分の一にも可能性があるとするならば、やはり沖縄駐留米軍、特に海兵隊の移転問題。特に、大田知事が四月にアメリカに行って直訴するということが報道されております。  ちょうどことしは沖縄復帰二十五年であります。ついでに言えば、二十五年というと、日中国交正常化も二十五年だし、私どもも国会に出していただいて二十五年になるわけで、これは三塚さんもそうだし、小泉さんもそうだ、深谷さんもそうだな。  そういう中で、本当に四半世紀がたって、長い間本土並みをこいねがってきた沖縄の人たちからすれば、本土並みになっていない。いろいろな経済的な特例措置やら優遇措置を講じてもらっていても満たされない。本土並みになりたい一つのポイントは、駐留米軍基地問題、これがシンボルだと思いますね。  朝鮮半島情勢がどうなるか、もちろんわかりません。しかし現に、世界軍事戦略の中で、アメリカは海兵隊をみんな本国に引き揚げて、アメリカの国外に海兵隊の基地があるのは日本だけになってしまっている。そういったことを頭に置いた場合に、大田知事がその願いを強く持っているということは県民感情の当然の趣だろうと思います。  そのことに対して、我が国政府として、特にこれは日米安保そのものにも関連するわけでありますが、当面の問題はそれはそれとしても、当然、世界全体の戦略あるいは軍事配置の見直しというものは、クリントン政権においても、特に第二期のクリントン政権において行われるのは当然の話であります。その際に、日本政府として、ただアメリカ政府がこういう方針を決めたから日本もそれに従うんですというだけでは満足できないであろう。そうであれば、日本政府として、この問題を正面から米国政府に向けてしっかりとお話をなさる、その政府の姿勢がはっきりとしたならば——まあ、それはどうかわかりませんよ、これは相手のあることですから。そういう意味でのぎりぎりの努力を果たしてしているんだろうか。私は、どうもそこのところが腑に落ちない。  何かはれものにさわるような思いの中で、そういうことを持ち出したら日米安保に亀裂が入るんじゃないか、あるいは、特別立法をやろうとするならば沖縄の県民なり知事を初め住民が反対しておかしくなるんじゃないか、どうもそのはざまにあって、結局ずるずるいたずらに、じんぜん日を過ごしてしまって今日になっているんではないか。そろそろ、やはりこの問題で総理自身も火だるまになる覚悟で取り組んでもらいたい。どうでしょうか。
  77. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から、沖縄県民の心というものはこのようなものであろうというお話がありました。基本的に、沖縄県の皆さんがどうこの問題を受けとめておられるかという点についての認識は、私は議員と異なるものではないと思います。むしろ、総理になりましたとき、私は大田知事の著書を読みまして、最初、内容に疑いを持ちました。そして、自分なりに調べてみて、そこに書かれている以上に深刻な歴史のあることも知りました。そして、その不明を大田知事御本人にも私はおわびをしたことがございます。  そういった認識のもとで、私個人から申しますなら、サンタモニカの日米首脳会談以降、また、外交当局としては、たび重なるSACOその他の場を通じ、あるべきさまざまな問題について真剣な議論を繰り返してまいりました。そして、その中において、私どもは日米安全保障条約というものの必要性を共同宣言の形で、昨年、クリントン大統領とともに、世の中に改めて申し上げてまいりました。日米安保体制というものの再確認をさせていただいたと思っております。  そうした中で、当初、普天間の基地の名前すら日米首脳会談で取り上げることに非常に慎重な意見が強い時期がございました。それを取り上げ、県民の方々に御満足がいただけないかもしれませんが、少なくともこうすれば現在ある普天間の基地を解消できるという案を日米共同で議論し得るところまでは持ってまいりました。  しかし、私は、現時点において我が国周辺を考えましたとき、海兵隊が不必要な状況になっておるとは考えておりませんし、海兵隊の駐留というものは有形無形にこの地域における安定を維持する大きな要因であると考えております。また、アメリカ側もそうした認識を示してきております。むしろ逆に、議員が御提起になりました後段のような海兵隊の撤去というものを本当に議論できるほどこの地域が早く安定をしてほしい、我が国の周辺がそれだけ安定した状況になる日を私も一日も早く招来したいものと存じますけれども、現時点においてはそうした考え方はとれないと私は判断をしております。  そして、先ほど来繰り返しておりますけれども、二月二十一日から収用委員会が作業を開始されるわけであります。まさにその何分の一のチャンスかもしれないと議員は言われました。あるいはもっと厳しいのかもしれませんけれども、私は、収用委員会が、従来のベースとは違い、何とか円滑かつ迅速に使用権原の取得に向けて行動していただけることを、審理開始を目前に控えまして、今、祈るような思いであります。
  78. 野田毅

    野田(毅)委員 いろいろ突っ込んで、本当は、アメリカの海兵隊が今どういうような人たちなのか、いろいろな説がありますよね、新兵さんが多い話とか、いろいろな話がありますよ。きょうはもうそれだけの時間的余裕がありませんので、いずれかのときにその問題はまた取り上げてみたいと思っています。  ただ、いずれにせよ、くどいようですが、五月十五日以降日本の国が民間の土地を不法占拠するという憲法違反状態を現出することだけは避けなければならぬ。もしそういうことになれば、明らかにそれは政府責任、政治の責任であるということだけははっきりしておることです。これだけは申し上げておきたい。  次に移りたいと思うのですが、午前中、西岡幹事長と総理のやりとりの中で、改革の手順等についてのお話がありました。  しかし、総理の施政方針演説、いろいろ見ましても、いや、本当にたくさん書いてあります。余りたくさん書いてあるから、これを全部橋本総理橋本内閣でやろうというのなら、十年間橋本内閣が続かないととてもできないなと。いや、本当にそれくらいのものだなと。ということは、書いてあることは、これは決して総理がこう考えておるということだけではなくて、ある意味では日本国民の多くの者がそういう問題意識を持っておる、また、そういうことを乗り越えていかなければ二十一世紀の日本はよみがえらないという意味では、私は幅広い国民的なコンセンサスはあると思っています。  ただ、問題は、どの一つをとっても、総理自身が常々おっしゃっておられますように、やはりプラス・マイナス、光と影を常に伴っている。あるいは、Aという改革をやろうとすればBという改革とトレードオフ、あちら立てればこちら立たずというようなことだって現実に出てくる。  あるいは、午前中西岡幹事長が指摘したように、本当に日本の経済をよみがえらせる、経済構造改革をやろうというのであれば、経済の血液、心臓に当たる金融システムだけは、当たり前のこととして、現在の言うならば混沌状態から安定させる状況に一刻も早く持っていかなければ、金融情勢が混乱したままで何となく不信感、不安感を抱き続けている中で、日本の経済はそれはやはりエンジンはトップに入りませんよ。当たり前の話だ。そういうことであれば、おのずから経済政策というものは、物事の手順というものがこれは一番大事なポイントなんですよ。  それからいま一つ、もう時間の関係がありますから、一つ一つ本当は聞きたいんですが、中曽根内閣のころ、当時、我々一生懸命、一緒になって指導を受けながら駆け回った一人でもあります。あのときに、中曽根行革とか民活とかいろいろな話がありました。だけれども、橋本総理ほど欲張ってはおられなかったように思う。やはり問題意識は、戦後政治の総決算、たぐさんあるんだけれども、よし、おれの内閣ではこれだけはやるぞ、これをやることによってその次の改革のステップを踏んでいくんだという、そういう手順の戦略性というものがあった。だから、三公社の改革をやろうという前に、まず国鉄にターゲットを絞ったわけだ。国鉄にターゲットを絞った結果が、結局は電電公社もついてきたわけでしょう。  そういう意味での、橋本総理が何をおやりになろうとしているのか、つまり、何を今自分はやりたいのかということがわからない。課題をざっと出して、そしてその課題をみんな審議会にぶっつけて、その審議会から出てくるのはみんな先でしょう。そして出てきてから、中央省庁のものは来年の国会ですか、これを見ると本当にそうなんですよ。  財政構造改革でも、ことしを財政構造改革元年、こうおっしゃっています。だけれども、中身を見ると、「歳出の改革と縮減を具体的にどう行うかを早急に検討し、十年度概算要求段階から」云々、だからことしはやっていないということだ。それから、そのほかいろいろ書いてありますが、「財政再建のための法律の骨格を決め、できるだけ早い機会に、国会に法律案をお諮りしたいと考えております。私自身、こうした検討作業の先頭に立ち、皆様から評価いただける平成十年度予算を編成いたします。」となっているわけですから、平成九年度予算は先頭に立たなかったということを言外に言っているわけだ。そうでしょう。国鉄債務問題についても、十年度から本格処理。  つまり私は、こういういろいろな課題を並べるのはいい、またそれぞれは、確かにその問題意識は共有している。だけれども、何から、どういう手順でやっていくのかという、ここが全然見えてない。その手順まで審議会にみんなお任せになるんでしょうかね。  私は、いろいろやじっている人がおるけれども、中身もわからないでそういうことを言っちゃいけませんね。中身を、何をやるかをこれから決めようという審議会なんでしょう。だから、その何をやるか、せめてこれとこれだけはやろうという、これはやはり橋本総理がびしっと明確に示した上で審議会に諮っていかなきゃ物事は進まないと思いますよ。どうでしょう。
  79. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私が自分の能力を超えて手を広げ過ぎておるという御批判は、議員の御意見として甘んじてちょうだいをいたします。そして、今我が国がそれだけの深刻な事態にあると私が考えているということもぜひ御理解をいただきたいと思います。  そして、その上で、私が総理を拝命いたしましたとき、行政改革委員会また地方分権推進委員会、既に随分作業を進めていただいておりました。そして、その行政改革委員会からいただきました御意見あるいは経済審からいただきました御意見というものは、この三月末にまとめ、改めてその時点でお示しをいたします規制緩和推進計画の最終の報告に当然ながら盛り込んでいくものでありますし、またそれ以上に、より具体的に経済の活性化につながる規制緩和というものに向け、各閣僚に努力をしてもらっている段階であります。言いかえますならば、規制緩和というテーマについて、三月末に公表いたします規制緩和推進計画の最終年次というものがそのお答えになるということであります。  また、官民の役割分担等につきましても御論議をいただき、報告をいただきました。あるいは、地方分権推進委員会から第一次の機関委任事務の見直しについての御報告をいただいておりますが、これは全体の四割程度をカバーしたものでありまして、なお今、引き続いての作業を分権推進委には進めていただいております。春にはこれをちょうだいできるということであります。当然ながら、これを一本のものにして地方分権推進計画としてまとめる、その中でも先行できるものは当然先行実施をしてまいりますが。  ここで規制緩和というテーマから出てくる、あるいは地方分権というテーマから出てくる中央省庁の業務の量の減というものがはっきりといたします。当然ながら、官民見直しの中でもそういうものは出てまいります。そうしたものを踏まえて、中央省庁のあるべき姿をそれだけスリム化した中でまとめていこうと今しているわけでありまして、そのタイムリミットを十一月末に置いております。  また、財政構造改革という視点からは、議員は平成九年度はやっていなかったということが言外にあると言われましたが、私どもの思いはそうではありません。しかし、それを今言い争うつもりはありません。要するに、十年度予算編成にそれを生かそうといたしますならば、概算要求というものの段階から新しいルールになっておらなければ作業ができないことは、大蔵省御出身の議員として、予算編成の手順等からよくおわかりがいただけると思います。  問題は、その概算要求を提出させる前、どんなルールで各省に概算要求をさせるか。シーリングという言葉が時々もうひとり歩きをしておりますので、本来の概算要求の基準と言いかえさせていただきますが、私は、財政構造改革というものを本格的に進めていく上で、来年度の予算編成のための要求のルールそのものが一番大切なポイントだと思っております。それだけに、財政構造改革会議でまずまとめていただこうと思っておりますのはこのルールづくりであります。  そして、その手法として、今まで海外の例を見てみますと、総額抑制という手法あるいはスクラップ・アンド・ビルドという手法、歳出項目ごとの歳出削減目標設定という手法、さまざまな手法がございます。私は今、そのうちのどれと固定して考えておるわけではありません。しかし、少なくとも、やはり歳出上限の設定というものは避けて通れないものになるだろうと思っております。  同時に、これは社会保障関係費もありますし、公共事業あるいは文教制度、農業、さまざまな分野、これは予算の費目として非常に目立つものを幾つか今申しましたけれども、そういうもののどれが聖域ということは今後は通用いたさないと私は思っております。  まさにそうした思いで取り組もうとしているわけでありまして、少なくとも行政改革の手順並びに財政構造改革というものについて、こんな思いでいるということだけは申し上げておきたいと存じます。
  80. 野田毅

    野田(毅)委員 今、財政構造改革の話、総理自分の思いを込めておっしゃいました。これはちょっと後ほどその問題でまた議論させてもらいたいと思います。  ただ、今たくさん、行革の話も中央省庁の話もありましたが、物事、戦線をわあっと広げるのも大事なのだけれども、戦略的拠点というか、そういったものがやはりあるわけで、そういう点からいえば、今の財政構造改革の問題でも、今そういった意味でのお話をされたのですが、全体を通じて、行革についてもやたらと範囲が広いのですよ、御承知のとおり。もう総理にそんなことを言う必要もないと思います、おわかりですから。余りターゲットを広げ過ぎると散漫になってしまう。  やはりその中で何が大事なのか。そういうところをもう少し見えるように、総理がきちっと今のような、要するに民間部門の、いわゆる民間分野をより広げることといわば財政の構造の改善に役立つこと、言うならばこの二つに当面ターゲットを絞るなり、そういったことでこの行革論議というものをある程度重点化していかなければ、これはなかなか話が拡散して前に進まない。  今財政のお話がありましたから、この問題はこの程度でおいておきたいと思いますが、もう一つ、ターゲットを絞るということと同時に、手順、さっきちょっと言いましたが、手順が相前後するということになると、結果としてより大きな犠牲を払うことになる。これは、特に経済政策の世界ではよくあることであります。この手順を間違えると、せっかく回復しつつある経済の頭から水をぶっかけることによって、結局また振り出しがらやり直さなきゃならぬ。このストップ・アンド・ゴーを続けると、そのうちにどんどん本当に体力そのものが弱ってきている。私は、バブル崩壊後、今日までのいろいろな歩みを見る中でそのことを痛切に感じています。  そして、これは大変だというと常にやってきたことは、結局、借金をふやして公共投資をふやしてきた。六十兆を超える公共投資をふやしてきた。ですから、GDPの中に占める、これは国、地方を通ずる数字ですが、政府投資、いわゆる公的固定資本、これのシェアがどんどん高まってきている。民間部門よりも、言うならば、公共事業にぶら下がって日本経済の成長率を維持してきている。  経済構造改革というのは、むしろそういう目で見れば、公共事業にぶら下がって日本の経済成長を達成するんじゃなくて、もっと民間部門がシェアをふやす、民間の投資、民間の消費によって支えられる経済構造にどう転換していくかということが一番の基本でなければならない。それは数字の上でもはっきりしてきているんですけれども、例えば、雇用の面を見ましてもそんな数字が出てきているんですよ。これはまた後で、公共事業のところで述べたいと思います。九一年ぐらいから九五年の間でたしか建設業の雇用が六十四、五万人ぐらいふえているんですね。一方で、製造業の雇用は百万人ぐらい落ちて、八十何万落ちているんじゃないでしょうかね、総理府統計局のあれでいきますとね。大体八十何万かな、後でちょっと数字をはっきりしますが。  私は、そういうことをどうやって切りかえていくか。それは何も、建設業がけしからぬと言っているんじゃないんです。建設業もやはり頑張ってもらわなきゃいかぬ。しかしそれは、公共事業によって飯を食うんじゃなくて、民間の住宅なり民間の設備投資が活発になって、それによって栄えてもらうような、そういう経済構造に切りかえていかなきゃならないんですよ。そこがポイントなんですよ。だから、公共事業をぶったたけば、それですべて経済構造がよくなるという話じゃない。同時に、そのデフレ効果をどうやって片っ方で減殺して、国全体の経済構造をそういうふうに民間にシフトさせていくかというこの手順を間違えるとまたおかしなことになるんです。  私はそういう意味で、これはまたもうちょっと詳しく、後で財政構造改革、公共事業の問題で申し上げたいと思いますが、その手順の問題、特に経済政策の手順の問題、これをぜひ、総理も御承知のことともちろん思いますが、念のためにあえてこのことをつけ加えておきたいと思います。  それで、午前中、いろいろ株のお話もありました。これは、余りくどくど言う必要もないかとは思うのですけれども、要するに、自分は株を持っていないから関係ないという話じゃないので、それは当然の話。その株価がいろいろな意味で経済全体に大きな影響を及ぼす。特に一定のレベルを下がりますと、そのことが結果として信用不安へのいろいろな懸念をもたらし、それがまた妙な姿で動き始めるというのは御承知のどおり。  今回、そういう面で見ますと、まず景気先行き不安、それが株安になり、その株安が不良債権処理を難しくするんじゃないか。そういったことが今度はまた銀行株、そういったところに向かっていく。それがまた先導して株価を下げていく。何か、その下がった株価がまた景気全体を押し下げていく。そういう悪いスパイラルがどうも懸念される。そういう循環がどういうことから始まったのか、何が原因で今回の昨年暮れからの株価の下落が始まっているのか、この点について大蔵大臣、簡潔にお願いします。
  81. 三塚博

    三塚国務大臣 では、簡潔に申し上げます。  現状分析をどう見るかということにつながると思うのでありますが、好業績銘柄の株価は総体的に順調に推移しておりますことは御案内のとおり。全体として軟調に推移をしておる原因は何か、この辺が一つのポイントかと思います。  株価は、さまざまな要因を背景に、自由な市場の需給関係で決まることも御案内のとおり。最近の株価動向については、その要因を特定することは極めて困難。時間をいただければそのポイントも言ってもいいんですけれども、投機筋から、思惑から、いろいろあるのです。ですから、時間が、簡単にやれというから、その辺はきょうはシャットアウトします。  ただ、巷間、企業業績や景気の不透明感が指摘されますとともに、海外の論調では、政府が真剣に改革に取り組むことになった結果、改革に伴う痛み、短期的に目に見える形で株価にあらわれておるのではないかという指摘、これはエキスパート、アナリストの各位の指摘であります。(発言する者あり)そうです、そういうこと、フィナンシャル・タイムズです。(野田(毅)委員「やじには答えなくてよろしい」と呼ぶ)そうですが。やはり、せっかく言っているものですから。  私から申し上げたいのは、我が国の経済状況のファンダメンタルズが決して悪くはないということも御案内のとおりの指標、省略をいたします。  平成八年度予算編成がおかげさまで成立を見たわけであります。これからは、いよいよ切れ目のない予算の執行を行うことにより、経済の底上げをしていかなければならない時期に到来をいたしました。九年度予算の年度内成立は、そういう意味では、極めて必要、最高の条件であろうということでございます。  財政構造改革、規制緩和等を初めとする経済構造改革は、野田委員がただいま総理との問答でやられましたとおり、着実に進めなければなりませんし、総理大臣言明のように、着実にこれも進めておるところ。小生の担当の金融システム改革は、五審議会共同で一致してやることにしましたから、これは省略をいたします。  また、これらの改革の一環として、株式市場に厚みを持たせる観点から、金融システム改革、二〇〇一年までの道筋を示すということにいたしました。ですから、株式の市場の動向については今後重大な関心を持って見ていく、そのメッセージはしかと受けとめる、こういうことで対応をしていこうということであります。
  82. 野田毅

    野田(毅)委員 最後の言葉が意味があったと思います。それは、市場のことは市場に聞けと言っていた大蔵大臣、この言葉でやはり株価が下がったことも事実なんです。そうなんですよ。だけれども、今、やはり市場のメッセージはしかと受けとめるというこの言葉は大事なんです。じゃ、しかと受けとめて何をするかがないとまた下がるんですね、これ。実はそこなんですよ。  それで、今予算が、すばらしい予算だと自画自賛されたんですが、客観的に見ると、今度の予算編成、内示の、編成過程が始まってそれが明らかになってから、株価が下がり始めた。これは客観的な事実だと思いますね。それはなぜでしょう。つまり、今度の、今現在の株価低迷の原因というのは、いろいろな要素がまたいろいろ追加されてきています。しかし、最初の第一撃、最初のきっかけは九年度予算編成なんですよ、これは。  では、なぜ九年度予算編成が株価下落の引き金になったのかと。ここが実は、やはり反省してもらわなきゃいかぬ。それはなぜか。それは三つある。(発言する者あり)  一つは、政府への信頼感なんだ。政府への信頼感。今新幹線のお話もあったけれども、時間があればその話もします。ただ、これは総理にも原因がある。そのときに、ペルーの問題で頭が真っ白で、おれは単線だからということを言われた。つまり、予算編成に対するリーダーシップを発揮しようという総理の熱意が、火だるまになると言った言葉とは裏腹に、実際に予算編成においてどういうリーダーシップを発揮されるかということが行動として出てこなかった。これは、一つは姿勢の問題があります。  いま一つは、予算編成の過程において、いわば自民党の俗に言う族議員が、新聞報道によると、やはりそこは今回そういう問題で、あるいは報復予算だとか、大体やじっているような人たちがそういう張本人かもしれないが、そういう無反省な、本当に日本の財政をおれたちの責任で立て直さなきゃならぬのだという気迫がない。それよりも選挙のときの論功行賞を前提にしたそういう予算編成、ばらまき型のことをやって悟として恥じない、そういう今の自民党の皆さんが不信の対象なんだ。こんな政府で、こういう与党の姿の中で本当に総理のおっしゃるような財政構造改革ができるんだろうかという不信があるということは、やはり総理、頭に置いておいてもらいたい。だから、リーダーシップが大事なんだ。  いま一つ、政策の中身です。いま一つは政策の中身、この予算の中身。これは当然のことながら短期的にはデフレ型ですよ。九兆円の増税をするんですものね。当たり前の話ですよ。  それから、せめて構造的な何らかの足がかりが得られたかというと、残念ながら、中長期的に見た歳出削減のシナリオはなかった、九年度では。後で恐らく大蔵大臣、答弁の中で、歳出削減をGNPよりも下にしたからというような話を多分誇らしげにおっしゃると思う。しかし、そんな話じゃだめなんだ。  昔の話だけれども、じゃ、かつて、中曽根さんの話を出して恐縮だけれども、あのときのやり方はどうですか。五年間の間一般歳出伸びゼロじゃないですか、五年間。今回は財政構造改革元年と銘打ちながら、何%ふやしているんですか。ですから、既にそういう意味で構造的な問題の端緒がなかった。それは今度の後、審議会にも諮って、さっき総理お答えになったように、来年度の概算要求から構造問題に手をつけますという話だった。しかし、今度の予算編成ではそれは反映されていなかった。そうではなくて、実際の予算編成の過程を見ると、今までの姿がそのまま復活してしまっている、こういうことが実は今回の予算をきっかけにした株価の下落の引き金になった、このことはぜひ反省をしてもらいたいと思うのです。  当然のことながら、私は株のいわゆる専門家ではありませんが、常識的に考えて、株を買おうというのなら二つの視点だろうと思うのですよ、単純化して言えば。  さや稼ぎしようと思うのなら、短期的に、半年先、今よりも上がるかもしれぬねというのなら買いに入るかもしれません。機関投資家はかなりそういう部分があるでしょう。さや稼ぎで一生懸命何とかしのがなきゃならない。じゃ、半年先の日本の経済はどうかというと、いや特別減税はなくなるよ、消費税は引き上げになるよ、健康保険料は引き上げになるよで、どうしてこれで先行きよくなると思いますか。  いま一つは、長期保有の対象、資産株として。長期保有の対象なら、目先、半年先はだめかもしれぬが、いや一年持てばいいぞ、二年持てばいいぞというのなら、それはそれでまた買おうかなという気になるのでしょう。だけれども、そういった構造問題の先行きを展望すると、とても今度の予算からは、そういった総理の意気込みの言葉とは裏腹に、実際の行動は伴っていない。だからこれは、様子を見なければ日本はわからないよという状況に現になってしまっているのです。  そのことをぜひ、市場の声かどうかはわかりませんが、大蔵大臣、謙虚に耳を傾けながらやろうとおっしゃるならば、そういう意味で、政策の対応を改めるなら改める、勇気を持ってやってもらいたい、この点についていかがですか。
  83. 三塚博

    三塚国務大臣 謙虚に聞きますから、あなたも謙虚に政府の予算編成の基本方針を、批判するところは批判して結構です、しかし評価をするところは評価をしてまいりませんと、この論議が株安の何分の一か担うということでは決して実体経済があらわれない、こういうことであります。  一、二の問題については、それは私は承っておくということで、見方の違いですから。  私が申し上げるのは、予算編成の基本です。  財政構造改革元年にふさわしい切り口をということで、聖域のない見直し、予算編成の結果として、制度の見直し、それから公共事業予算を中心とし、全体の歳出予算を対前年度比九年ぶり一・五ということにしました。この一・五は、四十三兆円の一般会計でございますから、消費税導入に伴う政府負担分四千億円は、アバウト一%に相当いたします。ですから、一・五ということは、シングルである〇・五前後に抑えたということでございまして、この努力努力として御評価をいただきながら、財政改革二年度に入る十年度予算に、総理が言われましたとおり、概算要求の段階から切り口を鋭く、プライオリティーを決め、全体の展望を見て予算編成をする基準を決める、こう言われておるわけです。  それともう一つは、四・三兆の公債を減にしたということであります。  先般来、七兆円、五%掛ける二・五で、七兆ではありませんかと。増分を計算をいたしますと、それは、一%二・五兆ですから五兆円、特別減税をプラスすると七兆円、こういうことで、その努力は、四・三は足らないのではないかという御指摘も、御党から衆参においてなされたところであります。  御案内のとおり、初年度というものはあらゆる要素を、時間がありませんから、くれるならちゃんと二・七の根拠を申し上げますけれども、二・七の効果しかないわけですね、二・七兆。国一般会計……(野田(毅)委員「そんな話をしているんじゃないんですよ」と呼ぶ)ですから、そういう大事なポイントがそういうことです。  そういう中にもかかわりませず、四・三兆の公債発行を減にしましてスタートをした。財政再建の二〇〇五年まで赤字国債は逐次低減をし、二〇〇五年にはゼロとする、こういうスタート台に立ったという現実はしかと御理解をいただいた上で論戦が闘わされるということが大事じゃないでしょうか。
  84. 野田毅

    野田(毅)委員 しかと理解しているから申し上げているのです。二・七兆というのは、それはもう技術的な話であって、国の一般会計の懐にどれだけ入るかの話なんです。そうじゃない。国、地方を含めて、要するに国民からどれだけ国、政府部門にお金が移るのかということをまず考えてみてください。実際問題、そういう中で、じゃ、取り上げた分だけみんな赤字国債を減らしているんですか。そうじゃないでしょう。そうじゃないですよ。  ですから、私は今、補正予算まで入れて考えなさいよ。補正予算でみんな、だからシーリング逃れをして、逃げているじゃないですか。もうこれは、先週、数の上で足りなくて、我々の主張が通りませんでしたけれども。だから、そういういろいろ胸を張るのもいいんだけれども、結果的にあの補正予算で、本来当初予算でトータルとしてチェックを受けるべきものが、緊急という名をかりて、全部前倒しで荷を軽くしてしまっている。トータルで考えてみてください。全然違うじゃないですか。ですから、そういったことを承知の上で申し上げているんです。  ですから、それは全く零点だとは言いませんよ。それは、それなりの努力をそれなりの分野でやっているところもあるでしょう。それはそうでしょう。だけれども、大筋において、物事の考え方、手法において間違っておる。それが現に株価に影響しているということは、これは現実なんだからしようがない。  そこで、私は、余り海外の方々がどういうことを言ったとかこう言ったということをここであげつらうつもりもありません。グリーンスパンさんの発言をよく引用されたりしていますけれども、それは決して、今の日本の経済財政政策が正しいから日本を悲観するなという意味じゃないのです。日本の民間の潜在の力はまだあるよ、トータルとしての日本は決してそんなにまだ悲観すべきものじゃない、だから知恵の多い日本だから必要な政策変更は必要なときにやるであろう、そういう賢明さを持っているのだから、そういう日本の民間の経済の力を発揮させるような政策運営が行われるならば、日本の株は捨てたものじゃないんだということを一方で言っているのであって、だから内需拡大の話だって言及しているじゃないですか。その都合のいい部分だけをとって、余り正当化しない方が私はいいと思います。  それから、海外の話はそれでいい。だから、余り断片的なことだけじゃ私は間違うと思います。何かありますか。
  85. 三塚博

    三塚国務大臣 さっき国ベースのことを申し上げましたが、国と地方の合計でそれじゃ申し上げさせていただきましょう。  消費税率二%、内訳は地方一%、国一%、よってこれは五兆円、こういうことになります。特別減税……(発言する者あり)国民皆様が聞いていますから、静かに聞いてやってください。特別減税二兆円。合計七兆円ということになりますね。中小特例、いわゆる益税解消ということで四千億円、これが減になりますから、収入として入ります。  それで、国、地方合わせた初年度効果一・九兆円というのがございます。本件は、平年度でありますと満額入りますが、決算期が全部違うわけでございますから、そういう点で、九カ月分しか入らないところもあれば十カ月入るところもあれば、平均して七五%しか入らないというのが税制改正の初年度ベースでございます。  ですから、この部分を初年度効果として差し引きますと五・五兆円、国、地方合わせてそういうことになります。  そういう中で、消費税負担、先ほども触れましたが、国も四千億円これは払っていかなければなりません。地方が三千億円程度と言われております。社会福祉増ということで、弱者、介護を要するお年寄りの家庭の福祉金、一万円ないし三万円ということで決定した予算が二千億円、差し引き四・六兆円、こういうのが国、地方合わせて入る予算ということになります。  これに対して、政府は四・三を赤字公債解消に振り向けるということにさせていただきましたし、地財計画の中で地方自治団体も、三千三百になりますけれども、二・七五兆円の公債減を地財計画の中で明記をいたしておる。合計いたしますと、七・一兆円程度の借金を国と地方一体となって取り組んでまいりました。こういう厳然たる事実なものですから、本件について聞く耳を持たないということでは論争がかみ合いません。
  86. 野田毅

    野田(毅)委員 大分長く私の持ち時間を、大蔵大臣に、いろいろ言いたいこともあるでしょうから、時間を差し上げました。  ちょっとほかの、後にも行かなければならぬので、これ以上この問題で時間を費やすことは避けたいと思いますが、ただ、そういう説明、じゃ地方債全体、今までどれだけあったのか。いわゆる地財計画と現実の縁故債初め違うんですよ、それは。地方財政計画の歳入、地方税というのは全部制限税率を基礎にしてやっていますから、実際の地方団体の収入のトータルにはなっていないんですよ。だから、地財計画を持ち出してこうなっていますというのは当たらない。方向性は方向性でいいです。これだけ指摘しておきたいと思います。(発言する者あり)ちょっとやかましいね、あなたは。黙って静かにしなさい。お行儀が悪いですね、自民党は。  それから、この問題はこれでいいのですが、さっき午前中西岡幹事長とのやりとりの中で、大蔵大臣、不良債権の額を約三十兆と、二十九兆幾らかというお話をされました。私は、そうであっていいと思うのです。  ただ、何も不安をあおるつもりは全然ないのですが、現実は、例えば昨年までいろいろ金融機関が破綻したケースがあります。兵庫銀行であったり阪和銀行であったり、それをいろいろ見ますと、公表されていた不良債権の額と実際に経営破綻に陥って明らかになったその額との間に、極端な場合に二十五倍もの開きがある。四倍から二十五倍だと言われている。これは言われているのじゃなく、そうだというのだから、現実として。そして、アメリカの基準でやるならば、あの三菱でさえ、日本の大蔵省基準でやるよりも不良債権は二倍にカウントされている、そういうことを現実に頭に置いて、目をつぶらないで考えてもらいたい。  特にこの問題は、不安感をあおるということは決していいことじゃない。だけれども、それだけこの問題は深刻だよということを申し上げておきたい、ここは。だから、強がりを言って、必要以上にその実態を過小に見せて、問題を小さな問題だというようなことを言ってはいけない。過大にあおることもいけないけれども、そういう意味でディスクロージャーということは物すごく大事、ここのところ。  そして、その不良債権の塊、潜在的なものもたくさんあるでしょう。しかし、それはどうやって処理するかというと、最終的にはやはり税金になっているのですよ、現実は。そうでしょう。金融機関が元気な金融機関であっても、自分の抱えている不良債権の処理はみんな落としていくのでしょう。それは全部無税で落としているのですから、,半分みんな税金で処理しているのでしょうが。実際に今やっていることは、超低金利によって業務純益をたくさん出させて、そしてもうかったそのうちの中から損金で落とさせているわけですから。また、それをやらないと金融システムはどうにもならぬからそういうことを現実にやっているわけで、それは否定できないのです、このことは。  ですから、金融機関に来る前の、建設会社やらノンバンクやら住専やらいろいろあるでしょう。ほかの事業会社もあるでしょう。これがみずからのリストラや何かでみずからの不良債権を処理することもあるでしょう。しかし、この先が経営破綻したときには、結局はそのツケは全部金融機関に来る。金融機関が体力があれば自分のリストラなり自分の業務純益なりなんなりで損金処理で処理していけるだろうけれども、結果としてそれができない体力の弱い金融機関が経営破綻に陥ったときに、どうやって預金者の保護をするかという問題なんです。  それがことしは、よく言われるのは、特に来年四月から、よくみんなビッグバンの話をしますが、ビッグバンよりはもっと違うのですよ。総理のおっしゃるあれじゃないのですよ。(発言する者あり)だれか、何か妙なことを言っているの、出ていきなさいよ、関係ないじゃないか。それよりも何よりも一番大事なのは、二〇〇一年からペイオフをやるでしょう。つまり預金の、一千万までの定期預金はちゃんと保証するけれども、それ以上は保証しませんというシステムに変えていくのでしょう。まさにそっちの方が今の金融システムの上で大変なんだ。  そして同時に、来年四月からは早期是正措置になっている。この早期是正措置、自分の自己資本比率の高さによって資金調達コストがみんな違ってきている。だから、今日本の銀行は体力をなくしているから、外国で資金調達しようと思っても、ジャパン・プレミアムということで、ほかの国の金融機関よりも日本の銀行だということにおいて上乗せされてしまっているのでしょう。  こういう状態の中で、本当に総理のおっしゃる金融ビッグバン、これは証券やら保険やら信託やらいろいろな垣根を除いてやっていこうという話。しかし、それより前にまさに金融システムなんですよ。この早期是正措置が今かなり働いているのですよ。みんな血眼でしょう。それはそうですよ、自分の自己資本比率を改善しようというなら、増資をして分子にある自己資本をふやすか、あるいは、分母にある総資産、分母の貸し出しをいかに切るかという話でしょう。分母の貸し出しを切るには、だから新規貸し出しもしない方がいいに決まっているのですよ。だから、午前中西岡幹事長が言ったように、なかなか中小企業には金が回らない。これは、来年の四月からの早期是正措置ということがやはり一つあるのですよ。  そして、二〇〇一年のペイオフを待たずに、もう既に今は、金融機関が破綻したときには護送船団的な処理の仕方はしないということをはっきりさせたわけですから。だから、自己責任だから、金融機関はいかにして生き残るかということで今血眼になっている。そうでしょう、だれだって自分の企業を倒産させようという人間はいないですよ、それは。そういう中で今必死になってやっている。やっていても、さいの河原みたいに、地価は下がるわ株価は下がるわということになったら、不良債権はなかなか処理できない。このままの姿で突入したら、これは本当に心配で心配てしようがないという、これが現在の銀行株を中心にした下げの一つの大きな要素になっていることは現実なんですよ。  ですから、いわゆる政策的な対応というのは、何もいわゆるPKOというか、当面の、国が直接買いがどうだとかそんな話じゃなくて、もっと政策的な対応。一つは財政政策がある。それは、先ほど来いろいろ言っている、我が党も主張している、特別減税をこの際やはり継続すべきじゃないか。  そして、もう既に、来年の四月からは直接資本の取引が行われる外為法の改正が提案されるわけだから、そうであるならば、もう有価証券取引税、イギリスには別の名前で若干残っているという話がある。だけれども、そういうことを言わないで、アメリカの市場にはないんだ、どっちみちこれはなくしていかなければならないことは目に見えている。そうであれば、そこのところを余り丁寧に丁寧に、やれ納税者番号制度ができなければどうだとか、そういうことを言わないで、まずなくするならなくするということをこの機会にぴしっと言うとか、そういう幾つかの政策手段を講ずるということが、単に目先の株価対策じゃなくて、日本の経済構造、いわゆる金融システム改革そのものにも一番大事なことじゃないか。そう思いませんか、大蔵大臣。有取税どうしますか。
  87. 三塚博

    三塚国務大臣 有取税につきましては、税制全体を見ながらいかなければならぬということは野田委員も御案内のとおり。既に有取税は三〇%カットをいたしまして、再スタートを切っておるわけであります。譲渡課税等の見合いの中でこれをどうするか、ビッグバンを迎えるに当たりまして市場税制はどうするかということで、政府税調にも本件の御勉強をいただくことになりますし、党においても本件については検討をしていかなければならぬというようなことも承っておるところであります。  不良資産の解消は、先ほども申し上げましたとおり、各銀行全力を尽くしておりますことは御案内のとおり。しかし、土地税の話もありました、株安の話もありました、総合的に資産が低迷をすることがさらにこれに加速を加えるのではないか、こういうことでありますけれども、しかし、それぞれの金融機関は、長い蓄積と伝統の中で、信頼が銀行のベースでありますから、頑張っておりますこと、先ほどデータを御紹介申し上げたところであります。  野田委員の心配する基本的な問題は、決して等閑視するつもりはございません。本件本件として承ることにしておりますけれども、市場はやはり市場の自律的行動、判定の中でこれが行われる。また、政府が市場に介入をしたのではないかなどと言われるようなことは、やはりあってはならない、ここまで日本経済が戦後五十年の歩みの中で来たわけでございますから。  そういう点を大事にしていかなければなりませんし、総合経済政策としてどうするかということについては、先ほど来橋本首相が言われるとおり、諸改革を断行する、許認可を、必要なものは残りますけれども、生命及び医療という点は残りますことは御案内のとおり、それ以外と言ってはオーバーになりますが、いわゆる民間活力で多様な活動をしてもらうためには規制を緩和すると言明をされておるわけでありますから、こういう諸問題にも果敢に取り組んでいく。  スケジュールは順次発表をされると思いますし、そういう中で、総合経済政策、行政改革政策という観点でやり抜いていくということでありますと、ファンダメンタルズがここまで来ているわけですから、各データも、労働雇用問題を別といたしますと、いい形で、緩やかではありますが前進を続けておるということを共有の判断として持つことによりまして、株式市場があおりにあおられるという結果のところでさらにおかしくなるということになりませんように、自律で動くような環境をお互いやはりつくるということに心がけていくことの方が極めて大事なのかなと思っております。
  88. 野田毅

    野田(毅)委員 私は、有取税、最後に有取税はどうするのということを聞いたんですけれども、どうするんですか。
  89. 三塚博

    三塚国務大臣 前段申し上げましたとおり、全般の税制として、有取税もあるでありましょうし、キャピタルゲインもあるでしょうし、土地税制もあるでしょうし、土地税制も御案内のとおり、平成八年度税制改正の中で、住宅取得が容易になりますよう本件についても改正を試みたところであり、土地税も御案内のとおり二分の一下げるということをやられたわけであります。  本件については、有取税も税制全体としての中でこれに検討を加えていく、これはビッグバンが前に進むということであれば当然よけて通れない道筋じゃないでしょうか。
  90. 野田毅

    野田(毅)委員 最初から最後のところだけ言っておいていただければよかったんです。これが大事なんです。つまり、外為法改正は来年四月から適用する、ということになれば、アメリカの資本市場も日本の資本市場ももう一蓮托生、だったら、有取税のない方にお金は流れていく、理の当然。  ついでに言えば、検討しなきゃならんのは、これは利子課税の源泉徴収システム、これは確かに、ドイツは若干残っているとかアメリカにはないとか、いろいろなそれぞれの国のシステムはあると思います。しかし、これはぜひ検討しておいてもらいたい。余り論議になっていませんが、恐らくこの問題も避けて通れないと思う。  そうすると、利子課税の源泉徴収をやらないという話になると、仮にですよ、これはマル優制度そのものが存続できるんでしょうか。あれは源泉徴収ゼロにしておるからいいんでしょう。もし源泉徴収しなければ一体どうなるんだろうか。そういったことも、きょうの答弁は要りません、しかしそういう問題意識もやはり頭に置いた上で、この金融システム問題、ビッグバン問題は対応しなきゃならない。この指摘だけは申し上げておかなきゃならぬのですよ。  単に、郵政の問題もいわゆる官業、民業ということだけじゃなくて、あるいは財投の議論だけじゃなくて、そういういろいろな角度から検討されなければならないということだと思っております。  大分、残り時間がだんだん制約を受けてきます。実は、本当は預金保険の話もちょっとしたかったんですけれども、これは余り時間の余裕がないんで。  ただ、最後に一点。五年間でざっと二兆円余り預金保険が入ってくる、今後五年間で。そして、その預金保険を財源にして、破綻した金融機関の持っていた預金者の預金に対してこれはカバーするよという話があり、そして場合によっては贈与するなりなんなりということでいろいろな使われ方をするんですけれども、どうも年内、これは資金ショートする。資金ショートしたら、この先大丈夫かねと。金融機関の破綻処理が本当にできるんでしょうか、今のままで。全部預金保険でカバーできる間ならば問題はないんだが、実は公的資金投入の話はこの預金保険との兼ね合いがある。  ただ、では、その預金保険をどんどん上げていっていいのかというと、これは世界の国際競争の中で勝ち抜いていかなければならない日本の金融機関の体力をなお一層実は足を引っ張るということもある。この点あわせて、大蔵大臣、しっかりとその辺に目を光らせて、きょうはもう答弁は要りませんが、ぜひこれは、冒頭言いましたように単に金融機関の話じゃない、日本の経済の血液の話でありますので、しっかり関心と責任を持って対処方針を考えておいてもらいたいということだけ指摘しておきます。  さて、さっき財政構造改革のお話、いろいろやりとりをいたしました。その中で、財政構造改革とは一体何だ、基本的にこの財政構造改革というのは一体何をイメージするのだということなんです。  この点では、先ほど総理が、単にマクロ的な、いわゆるGDPに対する国債残高の比率であったり、あるいは公債依存度であったり、そういうようなことだけじゃなくて、歳出項目一つ一つについて突っ込んでメスを入れていきたいということを、聖域なしでやる、こういうお話がありましたので、大変結構だと思う。結構だし、またぜひそれをやっていかないと本当の財政構造改革にはならない。ここを具体的に今度の、言葉じゃなくてどういうふうに、例えば公共事業についておやりになろうとするのか。この辺、何か具体的な考え方があればぜひ出してもらいたい。  そうでないと、冒頭、いろいろな改革についての話を、ただ総枠でどうするのかということだけ言ったって、実はうまくいかないのですよ。例えば、今新聞報道で出ていますが、自民党の中で公共投資基本計画を見直そうとかいう話がある。政府の方は、いや対米関係もあるからそうばいかないよという話がある。この点は一体どういうことになるのか。これは総理はどうお考えですか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、先ほど財政構造改革というものに対して、財政構造改革会議の中で議論をしていく。政府が閣議決定をいたしました中身としては、委員も引用されましたように、二〇〇五年までのできるだけ早い時期に国及び地方の財政赤字GDP比を三%以下とする、また、国の一般会計において、特例公債依存から脱却すると同時に公債依存度の引き下げを図ること等を財政健全化の目標とする、これらの目標達成のために国の一般歳出の伸び率を名目経済成長率より相当低く抑える、地方に対しても同じようなことを要請する、こうしたことを閣議決定したわけであります。その上で、財政構造改革会議における議論に、私は聖域なしということを申し上げ、社会保障関係費、公共事業あるいは文教、そしてさらには農業といったものを例示で挙げました。  そして、それぞれの項目について、たしかこういうふうに私は申し上げたと思うのです。少なくともその財政構造改革会議において、来年度のシーリングという言葉が誤解を生むので、要求基準という言葉を使わせていただきます、来年度予算要求のための要求基準という言葉を使わせていただきます。ルールです。いわゆるシーリング。ただ、シーリングと言うと今までと同じだと思われてしまうものですから、それで要求のルールあるいは要求の基準、概算要求のルールということを申し上げましたが、これをとにかく決めたいということを申し上げました。  そしてそのときに、少なくとも総額の上限を抑える、あるいはスクラップ・アンド・ビルド、個別政策の目標設定、削減の目標設定、いろいろな手法があり得るということも申し上げました。そうした議論の中で公共投資基本計画も当然私は議論の対象になると思います。  そして、それを今、ただ国の立場としてG7を間近に控えた時期に言うことが得策かどうかということは正直頭にございますし、それから公共投資そのものは、私は実は、どれぐらいの規模であるかとかいうことを別にいたしまして、我が国の社会資本整備の状況を考えますとき、将来ともに一定のものが必要だと思っておることは事実であります。
  92. 野田毅

    野田(毅)委員 公共投資基本計画の前にちょっと聞きたいことを聞き漏らしたのですが、総理が所信表明の中で述べておられるのですが、「公共事業に対する批判を重く受けとめ、建設コストを大幅に縮減するための行動計画を早急に作成し、実施いたします。」こう書いてあるのですね。どんな批判を重く受けとめられたのでしょうか。  それから、いま一つは行動計画、早急に作成、実施と言うから、いつからおやりになるのか。建設コストを大幅に縮減するための行動計画。ちょっとこの二点について聞かせてください。
  93. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 現在公共事業に対して幾つかの批判がございます。一つは、我が国の公共事業費が民間の工事に比べて高い、いわゆる高コスト構造だという批判がございます。もう一つは、いわゆるばらまきに偏してはいないかという批判であります。  さらに、本年度の予算編成時、新たにこれに地域エゴとでもいうべき批判が加わりました。順番をひっくり返しますと、これは族議員という言葉とともに言われたことでありますが、代表的に批判を受けましたものは整備新幹線の未着工区間に対する扱いの問題でありました。  これは既に議員も御承知のように、それぞれの収支採算性、並行在来線の取り扱いと地方自治体の同意、さらにJRの同意といったものをすべてをクリアした上で厳正に判断を行うとしておるわけでありますけれども、マスコミの皆さんからは、これが地域的な利害の問題あるいは族というとらえられ方をしたようであります。  私は、ちょっとこれ本当に残念でありました、こういうとらえられ方自体が。阪神・淡路大震災の結果、我が国にとって複数の国土軸が必要だということは皆が理解をするようになりました。その上で鉄道を選択するか道路を選択するか、選択肢の問題として、私はこれから国土軸の整備は我が国として複数のものを必要とすると考えておりまして、その中の一つについて、いかにも地域のエゴが優先したかのごとき批判を浴びたということは私はちょっと残念であります。しかし、事実としてこういうことがありました。  それから、ばらまきと言われることに対しましては、予算編成の予算内示の直前であったと思います。建設大臣を初めとする公共事業主管閣僚を私は呼びまして、着工箇所をふやすよりも重点を絞り込めと。例えば、道路なら高規格幹線道路なり、港湾なら重要港湾なりにし、あるいはハブ空港とか、それぞれのテーマの中の重点を絞り込んで、箇所数をふやすよりも完成年次を急げという対応を一つ指示をいたしております。これは今後の箇所づけの中で出てくることでありますが、こうした問題が一つあります。  それと同時に、コストという点につきましては、計画の段階から完成し引き渡されるまでを一つのチャートにしてみまして、それぞれの分野でどの省庁のどのような行政がコスト形成に影響するかを全部ちょっと図にしてみました。ちょっと本当に私が知らないような規制がその中にありまして、それがコストを押し上げておりました。  そこで、公共事業関係のそのチャートに登場する各省すべての閣僚に集まっていただき、これを全部それぞれの守備範囲で再検討し、コストを引き下げる方向で努力をしてもらいたい。ただ、例えば労働安全衛生といった分野は、下げるといってもそうむちゃくちゃに下げるわけにはいかない部分があります。しかし、安全率を十分計算した上で、コストに影響する部分をできるだけ抑えてもらいたい。そして、その関係閣僚全員の検討の結果を年度内にまとめて、そこでこの三月三十一日までの間に、その作業の結果を受けて、総体としてどのぐらい引き下げられるかというものを数値の目標として示したい。現在、その作業を進めております。
  94. 野田毅

    野田(毅)委員 大変結構な問題意識だと思います。ぜひそれを進めてください。  公共事業に絡んで、予算編成のやり方でもあるんですけれども、あるいは国会審議のやり方なんですが、先週ここでも議論になりましたが、緊急防災対策、じゃ、何が緊急なのか、具体的に個別事業ごとに出したらどうだという、これは建設大臣、大分押し問答があったようですね。膨大な資料になるから大変だ、そういうような話もあったようですね。  ただ、これは物事の考え方なんですけれども、従来、大体ああいう補正の案件は、大体補正予算を決めるときにはもうほぼ箇所づけは終わっているんですよね、補正は。ところが、本予算のものについては、大きな新規のものは大体十二月に決まりますが、あとの継続事業の小さなものは全部一定の枠の中で今役所が一生懸命作業しているんですよ、実際は。だから、今出せと言ったって出せないんだ。僕は今ここで、意地悪くそれを出せと言おうかと思った。思ったけれども、意地悪く言ったって、ないものはないんだから。今つくっているんだから。  ただ、それは何を意味するか。これはある意味では、防衛に関してはシビリアンコントロールということがよく言われる、しかし、個別の事業の緊急性、優先度等、内容についてのチェックは国会ではやらないということになる。これは役人を信用せいと言えばそれはそれまでだ。だけれども、それはある意味では国会における予算審議権をみずから放棄していることになっているんじゃないか。  だからここは、今総理がおっしゃった、いろいろな角度、公共事業、メスの入れ方があると思います。しかし同時に、これは何も公共事業だけじゃないですよ。例えば、公立文教施設にしたって同じ問題がある。公立文教施設の建てかえの予算はトータルこれぐらいですよと、枠配分しちゃう。それを今一生懸命作業している。厚生省のいろいろな行政だって似たようなものです。これはすなわち、結局何を意味するかというと、国会の審議権をみずから放棄していることになっている。  いま一つは、これを通じて、結果として中央の役所が地方をコントロールする重要なる武器になっているんだ、これが。ですから、ここのやり方をどうやったら変えられるのか、この構造問題をぜひメスを入れてもらいたい。  私は、前からいろいろ提案しています。我が党も問題提起している。それは、そういったもう個別の、何県の何町のどの事業を採択するかしないかということを、何で一々霞が関のお役所で決めなきゃならぬのかという話なんです。こういうことをもう卒業していいんじゃないでしょうか。だから、現実には、例えばある地域では農道と一般道が一緒にできるとか、いろいろな重複投資も現にある。  私は、今総理がおっしゃいましたように、公共事業がみんなけしからぬという話じゃない。それぞれの地域において大事なものもあるんですよ。今マスコミなんかでは、漁港はみんな悪いみたいに書かれている部分もなくはないが、しかし漁港にしたって本当に早くしなきゃならぬ漁港だってあるわけですよ、実際には。港湾だってみんなそうでしょう。だけれども、それをばさっと集めてやるからいろいろな問題が起きるんですよ。去年からいろいろなテレビでもむだ遣いが報道されているじゃないですか。そうであれば、そういったことをもう国は一々決めないというやり方ができないものだろうか。地域の自主性に任せてできないものか。私は、やり方いかんではできる。  それは実は構造問題なんですよ。私は、構造改革と言う以上は、単にシーリングで対前年何%に抑えろと言ったら、まあ大体日本人横並び志向ですから、結果的に一律みんなだめになっちゃう。そして必要なやつまで頭をつぶしてしまう。  そうじゃなくて、本当にそれぞれの地域、例えば私の地元の熊本県でいうと、県庁工事というのは補助事業、単独事業を含めて大体年間三千億ありますよ。そうであれば、五年間であれば一兆五千億大体やることになっている。それならその財源はどうやっているかというと、結果的にはみんな補助金や何かで国で面倒を見ているんでしょう。  それならば、それを一兆五千億、五年間なら五年間全部、じゃ地元で決めなさい。その中で下水道を優先するのか一いや圃場整備を優先するのか、河川改修を優先するのか、漁港整備を優先するのか、そういったことはみんな地元で決めてしまえばいいじゃないですか。一々東京まで出てこぬでもよろしいということになれば、私は、随分と重複投資はなくなる。漁船が入らないで釣り船ばかりのような漁港も私はなくなると思う。なぜそれができないんだろう。  大体年末の予算編成、大勢の陳情団が議員会館やら霞が関をわあっと練り歩いていますよ。異様な光景だ。これは全部補助金をつけてほしいから、その一点です。それは必死ですよ、地元だって。そういう仕組みに現になっているから、そういうことになっちゃっている。陳情しなければ予算がつかない。  建設大臣もちょっとおっしゃったけれども、何か新進党は余り陳情に熱心でないみたいなことを、報復予算の話でね。だから、そういうことをまた堂々とうれしそうにおっしゃるから困るんですよ。それが日本の陳情政治を促進しているんだね。だから、こういったことをどうやったらなくせるか。官官接待のもと、みんなそこにあるんじゃないですか。  そうであれば、私はこの際それぞれの十六本にわたる公共事業、五カ年計画があります。これは閣議決定しています。そうすると、それぞれの事業、全部五カ年計画の総事業費が決まっているわけですから、あと毎年度予算はそれをどれだけ具体化するかだけの予算編成になっています。ですから、ふたをあけてみたら、毎年度それぞれ事業別の配分シェアが変わりようがないんですよ、ほとんど。だって、五カ年計画の総事業費、事業ごとにみんな決まっちゃっているんですから。それじゃ変えられない、現実は。  そして、かわいそうに、運輸省なんかは余り公共事業的なものは最初なかったものだから、その公共事業の中に入れなくて、そでにされて、それで新幹線がずっと延びてきたわけでしょう。やるのなら、本当はもっと早くやってよかったんですよ。そのかわり、赤字を残すような路線はつくっちゃいかぬ。これが原点だ。  私はいろいろ申し上げましたが、この際、それぞれの五カ年計画のやり方を見直しをする、もうそういう手法をとらない、そういう発想の転換というものをやる考えはありませんか。これは建設省だけでもないし、農林省もあるし厚生省もあるし、それぞれの役所にまたがっているものだから、やはり最後は大蔵大臣ですかね。どうぞ。
  95. 三塚博

    三塚国務大臣 改革、変革の時代を迎えつつある昨今であります。そういう意味で、政治、行政についての視点で物を言われていること、拝聴いたしました。  本件は、地方分権、私は道州制論者でありますが、やはり地方自治とはという基本問題がこれから真剣に問われていかなければなりません。そういう意味で、小選挙区、十一ブロックでありますから、十一ブロックで道州制がじわっと目標に向けて合意が得られるということであれば、ただいまの問題も解決するのではないでしょうか。
  96. 野田毅

    野田(毅)委員 そんなことをしているうちに私たちはこの世を去っておると思います。大蔵大臣がそういうような問題意識程度であれば、財政構造改革は進まないね、これ、本当に。どうもさっきの総理の意気込みと大蔵大臣の意気込みが全然違う。(発言する者あり)本当だよ。私はちょっと残念ですね、これは本当に。行革をやるにしたって、みんな僕は大変だと思うんですよ。もう時間があれだから次に行く。時間がない。  ウルグアイ・ラウンドの問題で、いろいろ批判もあります。きょう、ちょうどタイムリーに、ある新聞がいろいろ書いています。具体的に、ウルグアイ・ラウンド予算で実際は温泉ハウスをつくっているじゃないかとか。私は現地に行って見ていませんので、余りそのことを知ったかぶりして言うわけにはいきません。  ただ、このウルグアイ・ラウンドの六兆百億というお話は、一にかかって、これから米価が下がっても、極端に言えばですよ、ウルグアイ・ラウンドで米の輸入を避けがたい、そういう中でどうやってこれから自分は農業に誇りを持ってやっていこうか、そういう中でどうやって農家を重点的に支援していこうかというのが短期集中的に六兆百億を使おうという話だった。それがいつの間にやら、何か六兆百億という数字だけが先に行って、中身については、実際問題どうやって消化しようかみたいな話になってしまっているのでは、これは困る、本当に。  これは農家にとっても迷惑な話だ。こんなことで何か農家がえらい無理な陳情活動をやって政治力で国民の税金を引っ張り込んでいるんだみたいな印象になったら大変なことだ。  私は、それよりも、本気でやるのなら、例えば農業基盤整備にしても、箇所数をふやすとかそんなのじゃなくて、受益者負担をもっと大幅に減らすような、そういうようなところに金を向けていくとか、そこのところをもうちょっと見直していいのじゃないか、重点的に。ばらまくのじゃなくて。そうじゃないと、今のままでは、圃場整備をやるということは、結果的には農家の負担もふえているのですよ。六兆円というのは、あれは税金の額じゃない、御承知のとおり。総事業費ですから、総事業費の中の一定割合は、農家の受益者負担が入っているのです。ですから、これを第一に……(発言する者あり)それは、中山間地と平たん地とは違いますよ。だから、まあいいや、やじに答える必要はない。これを、ぜひその重点化を図ってもらいたいこと。  それからいま一つは、単価が、さっき総理からも建設工事の単価の話がありました。そういう話が我々の耳にも入っています、実際問題。特に、これからは中山間地になればなるほど工事単価が高くなってくる。その部分がまた農家の負担を重くしている。だから、やはりそういう農業関係の予算についても単価の見直しを、さっき総理がおっしゃった、そういう中でしっかりと見てもらいたい、このことをあわせてお願いをしておきたいと思います。  あと、もう時間がだんだんなくなってきたので、最後に、社会保障構造改革ということも総理は改革の中の一つとして挙げておられます。  私は、社会保障改革ではなくて、何で構造改革という言葉を使われたのか。つまり、社会保障の構造改革とは何を意味しているのか、何回も何回も実は総理の所信表明を読んでみましたが、難しい。縦軸だの横軸だのいろいろ書いてあるのです。だけど、これは国民に向けてもっとわかりやすい平易な言葉で、構造改革をどうなのか、やってもらいたい。それが一つです。  それからいま一つは、いろいろ見ると、どうやら要点は、結局社会保障の負担をだれが賄うかと。そして結局は、何ということはない、消費税か保険料かという話になってきている。  私は、社会保障構造改革というのはやはり財政の構造改革の一環でもあるわけですが、二つの視点が必要だと思います。  一つは、社会保障の給付の内容、やり方、この中でむだはないかどうか。よく医療の世界での薬剤の話だとかいろいろな話があります。そのほかにもいろいろな指摘がなされております。まず、そういう意味での給付の内容とやり方の中でむだを省くことはあるのではないかという視点は、ぜひこれはなければならぬ、これが第一点。  いま一つは、歳入というか、社会保障を支える財源の構造改革。これは、小泉さんはどうやら全部、消費税よりも保険の方がやりやすいからということを新聞でちょっと述べておられる。今度は、介護保険もそうだし、医療財政の赤字も、どうやら多少受益者負担的な世界に入れると同時に、一方で保険料の引き上げということをやる。どうも両方絡んでいるのですね。  私は、この点を残る時間で申し上げてみたいと思いますが、まず第一点、社会保障の給付の内容と手順について、この機会に年金、医療を含めて徹底的にメスを入れるつもりはないかどうか。これはぜひ、社会保障構造改革と言う以上は、それはまず何よりも大事なことではないか、本当は保険料を引き上げる前にそういったことにメスを入れるべきではないか、この点を聞いてみたいと思うのですが、これはせっかくだから、小泉さん。
  97. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 構造改革とは何かという御質問の趣旨だと思いますが、今、人口構造を見ましても、かつてのピラミッド型の人口構造と大きく変わってまいりました。ずんどう型になってきた。同時に、経済も高度成長から低成長化しております。  そういう中で、お互い今までの制度をどのように支えていくかということを考えた場合に、今回、手順にしても、年金、医療、介護、それぞれあると思いますけれども、まず、今までの制度をこのまま維持していきますと、働く世代の負担というのは大変過重になってくる。  かつては、高齢者は医療費は無料でありました。それから、これじゃ財政がもたない、必ずしも高齢者、健康的には弱者かもしれないけれども、経済的に今すべてが弱者かというとそうでもないといって、一定の額を負担していただくことになりました。  ところが最近、サラリーマン、働く世代が一割、二割負担しているのに、このままどんどん高齢者がふえていく場合に、全体の国民負担といいますか公的負担、五〇%以下に抑えようとするとこれはもたないなということで、最近の医療改革を論議する場合に見ても、審議会等では、高齢者にも一定の率を、定率負担を導入したらいいかという意見が出ました。しかし、今回は、それは、高齢者については一定の額を負担していただく、ふやすということにおいて定率は導入しないつもりでございますけれども、そういう議論は幅広く出てまいりました。  同時に、今まで、本来医療の治療が必要のない方でも特別養護老人ホーム等介護の施設が少ないために病院に入ってしまう、そして、本当に医療が必要な方、治療が必要な方には十分な時間をとってくれない。俗に言う、三時間待って三分診療。実際のところ、本当に、大きな病院に行って診てもらうというよりも近くの診療所で診てもらっても十分いい方までがいろいろないい設備の整ったところにもたくさん行くようになって、この診療報酬とか、実際治療が必要なところ、本当に診てもらうような医療提供体制をどうするかという問題も起こってまいりました。  いわば日本は、イギリスのような揺りかごから墓場までという社会保障制度を見習ってまいりましたけれども、現に医療の点においては、どの方も自分の好きなお医者さんに行ける、あるいは好きな病院に行ける、イギリスみたいに、一定の地域の方は一定の診療所へ行って、その診療所の紹介がないと大病院に行けないということよりも、東京にいても神奈川に行ける、大阪にいても東京の病院に行ける、どこでも行けるというような、考えようによっては大変すばらしい制度も維持してきた。  ところが、果たしてこれでいいのだろうか。こういうような医療の財政をこのまま続けていったならば、この医療財政を支える層がどうなるのかという問題も出てきましたから、まずそういう問題を、今回、介護保険を導入することによって、医療と介護というものを切り離していくような構造改革を一歩一歩進めていこう。そして、今言ったような医療改革を進めて、これから、平成十一年になりますと年金の財政再計算もしなきゃならない。  結局、年金にしても医療にしても介護にしても、税金で見るのか受益者負担で見るのか保険で見るのか、この組み合わせをどのようにしていくかによってしか社会保障制度を支えられないということから、今までの制度を維持していくのじゃない、全般的に見直して、構造を直すことによって、せっかくここまで築き上げてきた年金、医療、介護、高齢者社会を支えていく制度をお互いどうやって構築していこうかということがこれからの社会保障制度の構造改革で欠かすことができない視点でありまして、私は、給付と負担の均衡ある問題というものも当然この議論の中で出てくると思いますし、財政構造の改革もその中で出てくると思うのであります。
  98. 野田毅

    野田(毅)委員 もう次にバトンタッチしなければなりません。  最後に、ぜひこの視点の中で僕は考えておかなければならぬのは、今この負担と給付のバランスということをおっしゃいました。しかし同時に、その負担の仕方の中のバランスということも物すごく大事ではないかということをこの機会に申し上げておきたいのです。  それは、金さえ入れば保険料でもいいんだ、消費税でもいいんだ、何でもいいんだということではないのであって、もともと消費税は何のためにつくったのか。まさに高齢化の時代に対応する税としてつくったわけで、そうであれば、今のお話では医療財政は医療財政一本でどうも考えておられるんだけれども、老人医療、いわゆる高齢化に伴う医療の問題、介護の問題、年金の問題というのは、むしろ消費税ということで考えていいんじゃないか、医療財政全体を保険料で面倒を見るような発想じゃなくて。  そういうことをやっていかないと、これは、保険料はある意味ではサラリーから天引きをされる第二の所得税みたいなものですから、そういうことでいくと、可処分所得というのは難しい言い方だけれども、自由になる金、要するに手取り所得、これは所得税だけじゃなくて、どんどん保険料が高くなっていったら、そのこと自体が個人でも法人でも経済の活力をそいでいくというところに問題があるのであって、いわゆる国民負担率というのは直間みんな一緒くたにしています。しかし、国民負担率が高いから経済の活力が阻害されるかというと、必ずしも直結しない。  大事な問題は、むしろ、そういう所得税等の直接税プラス第二の直接税である保険料、ここの世界をどうやって抑制するかというのが、経済構造改革という視点からいくと避けて通れない大事な課題なんだ。  だから、なぜそういうことを言うかというと、小泉さんが、介護の財源にしても医療と同じようにみんな保険の方がいいんだ、消費税の話になったら反対があるから取りにくいんだというようなことがあったから、そうではいかぬ、取りやすいところからやりましょうなどということになると大事な経済構造改革という視点がなくなってしまうんじゃないか、このことを私は、小泉さんはよくおわかりだと思っているから、あえて申し上げる。  最後にこれだけちょっと申し上げて、次に譲りたいと思います。どうぞ。
  99. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 介護においても、社会保険料だけじゃないのです。当然、公費、税も導入いたします。その中で、全部消費税でやるというのは、これはなかなか理解できにくいのじゃないか。しかも、医療も保険であります。医療も全部税で見ているのだったら、私は介護も税でいいと思います。国民の合意から見て、介護よりももっと必要な医療でも保険制度なんです。新しい制度を導入するのだったら、私は、税も投入する、保険も導入する、受益者負担も導入する、このバランスのとれた制度の方が理解が得やすいのじゃないかと言っているわけでありまして、税と保険と受益者負担というのは、これからの社会保障制度を考えてみると、全部組み合わせで議論しなければならない問題だということを御理解いただきたいと思います。
  100. 野田毅

    野田(毅)委員 この問題はまたいずれ改めてやりたいと思います。  では、次に譲ります。
  101. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、西村眞悟君から関連質疑の申し出があります。西岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村眞悟君。
  102. 西村眞悟

    西村(眞)委員 新進党西村眞悟です。  梶山官房長官は記者会見で退席されるとお聞きしておりますので、梶山長官からまずお聞きいたします。  日韓首脳会談が始まる前日、官房長官はこのように発言されたと思います。「今の人はその当時の社会状況というものを教えられていない。昔は公娼制度というものがあった。それが、戦地にもそういうものができて、」云々という発言をされたとお聞きしましたが、このとおりだと思うのですが、官房長官にお聞きしたいのです。  私は、前提として申し上げておきますけれども、官房長官の発言が事実に反するとは全く思っていない。昔は公娼制度があった、官房長官、これは事実でしょうか、事実でないのでしょうか。
  103. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 日本の社会的事実であります。
  104. 西村眞悟

    西村(眞)委員 そのとおりであります。  私の郷里の堺の「ふるさとの想い出」という写真集にも「遊郭通り」という、懐かしい写真として載っております。  次に、官房長官の発言、「今の人はその当時の社会状況というものを教えられていない。」これは、昔天然痘でよく人が死にました。今は死にません。この事実だけを並べておれば、昔の医者はすべて無能だということになる。しかし、昔は今ある薬がなかったのだという当時の状況がわかれば、そういう評価はできない。忠臣蔵もそうでございまして、昔はあだ討ちが美談でございました。その当時の状況を知らねば忠臣蔵の本質はわからないのであり、つまり当時の人間の評価をするには当時の状況を知らねばならない、これは当たり前のことと思うのですが、官房長官、どう思われますか。
  105. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 何を引き出そうというお話なのかよくわかりませんが、私の方から、時間の限定もあるので申し上げたいと思います。  確かに、私が新聞記者のいわゆるぶら下がり時、その中で断片的に話をしたことが取り上げられたということがあります。
  106. 西村眞悟

    西村(眞)委員 官房長官、そのとおりかどうかだけお答えください。そういう意図はないのですか、官房長官の御心配なさっているような。
  107. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 どの意味での心配でしょう。私が心配をするのは二つあるのです。  一つは、私の発言を、どういう伝達方式で新聞が私の話を受け、それが韓国にどう伝わって韓国民に思いを、いや、させて、日韓会談、これは大変申しわけなかったという一点。それからもう一点は、私は、社会的事実というものを歴史教育の中でもっと取り上げていかなければこの問題の解決はできない、そのことを二点申し上げたわけであります。
  108. 西村眞悟

    西村(眞)委員 今の全御答弁の趣旨から、別にこれは一当時の状況を知らねば当時のことはわからないということは、そのとおりだと思っておられると思う。  個別的に、個々に細切れにお尋ねして失礼ですけれども、長官の世代は、明確にお答えいただけると思うのですが、例えば従軍看護婦、従軍記者、当時こういう名前はありました。では、従軍慰安婦という名前は当時あったのですか、なかったのですか。
  109. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 当時ということは昭和二十年までを指すことだと思うのですが、私には残念ながらそういう知識はさほどありませんでした。ということは、社会背景として、いわば公娼があり、たくさんの方々が暗い悲しい環境の中から生まれてきたという事実、それから、従軍慰安婦という言葉は最近、いわゆる従軍慰安婦という言葉に置きかえられて言われておりますが、私が懸念をするのは、日本に慰安所というのはたくさんあった、例えば軍隊の前とか、そういう事実を隠してはいけない。私は、あの従軍慰安婦という問題、いわゆるという形で言われるのは、現在の外国の方々に対して……(西村(眞)委員「聞いたことはないかあるのか」と呼ぶ)ありません。
  110. 深谷隆司

    深谷委員長 西村君に申し上げますが、発言委員長の指名によってお願いいたします。
  111. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、この官房長官の発言は、そのとおりだと思っている一人の議員でございます。私は、本音を率直に語り合えば、隣国の韓国とは理解し得る、このような信念を持っております。  私の体験を申し上げます。後ろにおられる江藤長官発言されて向こうで提言と言われた時期に、その直後に、私は韓国の四大マスコミの一つから取材の申し込みを受けました。テレビを持って取材に来られたわけですが、なぜ私に取材に来たかということは私はわかりませんが、私は、選挙区でも各所でも、江藤長官は当然のことを言ったんだ、このように申しておったからだと思います。  それで、テレビカメラの前で、これは通訳を入れて、一時間以上だったと思いますが、要約しますと、日本はよいこともした、これは当たり前ではないか。その証拠に、金大統領自身自分日本人の恩師の遺族を韓国に呼んで、ともに食事をしているではないか。韓国人にも日本人にも悪いやつもいいやつもおる。昔も今もそうだ。しかし、私の祖父母の世代の日本人が一〇〇%悪ばかりであった、そしてこれに反することを言ったら提言と言われる、こういうことは一人の日本人として我慢ならない。総督府の建物を日帝の象徴としてつぶす。独立直後ならいざ知らず、五十年使ってきたではないか。どうも私としてはぴんとこない。それから、金大統領は、法律をつくって、前大統領、前々大統領を逮捕した。しかし、私はこの行為は信義に反すると思う。なぜなら、そんなことをすると安心して民主主義のもとで政権交代ができなくなるからだ、こういうふうに申し上げた。  それで、その記者とけんかになったかといえば、最後は、また会いたいと握手して別れたわけです。私自身判断としては、そのようにして理解できた、このように思っておるわけです。信頼感が生まれたと思っておるわけでございます。  そこで、官房長官、江藤長官官房長官もある意味では韓国から提言という最大級の非難を浴びたわけです。江藤長官はまあ実質上罷免という形になられた。(発言する者あり)辞任か。みずからやめざるを得なくなられた。日本国の大臣が外国から非難を浴びてやめられるという、こういう重大な事態なんですね。  官房長官、私が今申し上げたことは、私は確信して申し上げているのですが、私が申し上げたこと、私も憲法で言う全国民を代表した選挙された議員でございます、公人でございます。公人としてふさわしくないのでしょうか。どういうふうにお感じになっておられますか。
  112. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 私がここに立って御答弁を申し上げるのは、国務大臣官房長官という立場でしかお話を申し上げるチャンスはないわけであります。あなたに対する抗弁権ないしは質問権は持っておりません。  ただ、私が申し上げたことは、官房長官として誤解を招く発言が不適切であったという反省だけはいたしております。私の事実に基づく認識というのに間違いはございません。
  113. 西村眞悟

    西村(眞)委員 では、総理にお聞きします。  官房長官もそのように今答えられたわけでございますけれども、総理は、あなたの内閣官房長官のこの発言に対し、金大統領に陳謝された。なぜ陳謝されたのでしょうか。
  114. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 陳謝という言葉が適切かどうかわかりませんが、私はお招きをし、お客様としてお迎えをし、そのお迎えしたお客様と最初に顔を合わせることになりました昼食会の劈頭で、報道されたことに対し不快を覚えられたとすれば申しわけなかった、報道されたことに対して不快を感じられたとすれば申しわけなかったということは確かに申しました。その上で、官房長官がこういう場面でこのような内容を語られたという事実を淡々と御説明をいたしました。
  115. 西村眞悟

    西村(眞)委員 新聞報道によると、陳謝というふうになされております。陳謝というのは謝罪、そういう意味だと思うのですが、おおよそ陳謝されたんじゃないのでしょうか。今、陳謝という言葉が適切じゃないというふうな御答弁でしたけれども、いかがでしょうか。
  116. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 報道されたことがあなたに不快感を与えたとすれば申しわけなかった、その事実はこういうことでありますという話は、間違いなしに、報道された記事をごらんになって嫌な思いをされたら、せっかくお客としてお招きをしたのに申しわけない、その気持ちは事実そのとおりのことを申し上げておりますし、その上で、官房長官の発言、記者会見と書かれておったように思いますけれども、ぶら下がりの発言の一部がとらえられ、報道された事実はこうですということを説明をいたしました。
  117. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、冒頭、官房長官に発言された内容をマスコミ報道に照らして確認したのですが、おおよそそれは発言されたということです。今、総理大臣にお聞きしますと、報道された以外に、その発言はこうですというふうに説明申し上げたということになっておるのですが、報道された先ほど私がお聞きしていた内容総理が説明された内容は、そのとき違ったのですか。
  118. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も、今そのようなお尋ねがあると存じませんで、正確な当時の議事録をここに持ってきておるわけではございません。  ただ、私の記憶の中にあることを申し上げますならば、官房長官から、まさかそれが報道で大きな問題になると全く思っておりませんでした時点におきまして、ある我々の同僚が中国に行かれて、このような話をしたといって報告を受けたというお話を伺いました。その話というのは、当時の日本がまだ極めて貧しい国であり、公娼制度を持つ国であったという事実をその方が中国側に話されたということでありました。  そして、そういう話があったことは私もその時点で官房長官から伺っていたわけでありますが、それから随分日取りを経て、こうして議員から御質問を受けるとは考えておりませんでしたが、まさにその翌日の朝刊であったと思いますが、翌々日か翌日ですか、ちょっと正確に思い出せませんけれども、たしか翌日の朝刊であったと思いますが、官房長官が日本に公娼制度があったということに言及されたという発言がありました。  それで、私は、官房長官から伺いましたところ、改めて確認をしましたところ、正式の会見ではなくいわゆるぶら下がりという状態において、我々の同僚の方が中国で話してこられたという話を紹介をしながら、当時の日本にはまさに公娼制度があったんだということを語られた、そういう報告を私は受けておりましたから、そのとおりの話をいたしました。
  119. 西村眞悟

    西村(眞)委員 発言がどういうふうな背景で出たかについての説明をされたと思うのですが、報道にあらわれたものについては、私が先ほど冒頭お聞きしたように、これは客観的な事実を言っておられるわけです。総理大臣も官房長官も申しわけなかった、不快の念を与えて申しわけなかったとおっしゃっておられる。つまり、誤解を与えたということなんでしょうか、私はそうとるのですが、人の感情というよりも。  ただし、客観的事実を言って相手が誤解するならば、相手というのは一国の大統領でございます、そして総理も一国を代表しておる方でございます、その同じ内閣官房長官が客観的な事実を言ってそれで相手が誤解するならば、国益のためにその誤解を解く努力をなさるのが、総理大臣、せっかく会談されるあなたのそのときの責務ではなかったのかと私は思うわけでございます。それはいかがでしょうか。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、官房長官がどのような場面でどのような内容のことを話されたかということが正確に報道されておりましたら、恐らく私はまたその影響というものも異なったであろうと思います。しかし、官房長官の発言をされた場面もその内容の意味するものも、必ずしも正確にすべての報道機関が伝えていたとは私は思えません。そして、当然ながら、そういうものをごらんになって不愉快に思われたとすれば、それは申しわけないと言うのが私はむしろ礼儀のうちだと思います。
  121. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、率直に話し合うのが礼儀のうちだと思います。  官房長官は、江藤前長官のようにオフレコ発言をされたわけではないのです。官房長官が官房長官として新聞記者に語っておられるわけです。したがって、それが誤解を与えるとか、そういうレベルではなくて、官房長官の発言については、向こうには正確に伝わっていると。新聞に出ても恥ずべき発言をなさったわけではないと。  その中で何も、新聞報道によると、「心から深くおわびする。」こういうことを言うのが総理大臣の責務とは思いません。仮に総理大臣がそれは陳謝の意味ではなくて説明をしたのだというならば、この私が持っている産経新聞は誤報をしたことになる。いずれなんでしょう。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 報道機関が事実を全部載せていただいていれば、お互いの間も随分和やかになるであろうと存じます。私は確かに、報道をごらんになって不愉快な思いをされたとすれば申しわけないという言葉をそのまま使いました。それが、ごらんになったその報道機関の方からすれば陳謝におとりになれたのかどうかわかりませんけれども、その、心からおわびする、ですか、そういう言い回しは私はいたしておりません。そういう言い回しは私はいたしておりません。報道をごらんになって不快に思われたとすれば申しわけないということは、私は確かに申しました。
  123. 西村眞悟

    西村(眞)委員 押し問答になりますからこれ以上言いませんが、報道では、「大統領と韓国国民に不快感を与えたことを心から深くおわびする。」こういうふうに報道されているということをひとつ御指摘しておきます。  それから次に……(橋本内閣総理大臣委員長、大変済みません。そのときのメモがございますので」と呼ぶ)
  124. 深谷隆司

  125. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 従軍慰安婦問題に関する梶山官房長官の発言については、報道の結果、不快な思いをされたとすれば申しわけない、事実関係を申し上げれば、梶山官房長官は、この問題が起きた時代背景として、昔、公娼制度があったことなど、先般中国を訪問した某議員より聞いた話を紹介したということであります、これが私の発言です。
  126. 西村眞悟

    西村(眞)委員 官房長官の発言でやはり感情を害されたというふうなことで、総理大臣がコメントをなされたことは事実でございます。  それで、総理大臣は、前内閣と歴史認識をともにするんだとおっしゃっておられる。同じ相手に対して、今の発言に関してコメントしなければならない事態であった。公式発言、オフレコ発言ではない官房長官の発言であった。  ところで、このオフレコ発言によって江藤前長官辞任されたわけです。総理大臣は、現梶山官房長官に辞任していただきたいんですか、この問題で。
  127. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何度申し上げたらおわかりがいただけるのかわかりませんが、これは、今度は記者会見で私が申し上げたことを逐語的にメモを今出させました。「今日の首脳会談の最初、私の方から梶山官房長官の発言に関する報道を御覧になって不快に思われたとすれば申し訳ない、と申し上げながら、その事実関係のご説明を致しました。それは、梶山官房長官の発言は、記者会見ではなく歩きながらの取材に応じる中での発言であり、ある日本の国会議員が中国を訪問した際、話したことの紹介でありました。」云々云々、これがその記者会見で私がこの問題に対する質問に答えたそのものであります。  これは当然、金大統領と一緒の会見でありますから、私が事実と違うことを言っておれば金大統領は訂正をされたでありましょう。そして、こういうやりとりを事実いたした、それは認めております。そして、何ゆえ、梶山官房長官が辞任しなければならないかのような御質問を浴びることを私は大変不思議に思います。
  128. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、新聞で報道された、またテレビで報道された事実をもって、国民の一人としての立場から、野党議員でありますから質問申し上げておるわけです。その私の目から見て、江藤長官辞任、梶山官房長官が今回じ事態になって辞任の問題は起こらない、一体国家の閣僚という重要な地位の、辞任辞任でないかを分けるものは何なのだろうかと、私はこれをもって思っておるんです。なぜそういうふうに失笑されるんですか。国家の重要な問題だと思うんです、私は。国益にかかわる重大な問題だと思うんですよ。  ただし、これは外国から常に押された上でなされていることだ、このことは本日の予算委員会で直接総理大臣及び官房長官に聞きたいことだった。これは国民もそうだろうと思って私はお聞きしているわけです。  それで、私は私の体験も申し上げました、官房長官。未来志向の本当の日韓の友情を固めるなら、今総理大臣がおっしゃったように、中国に行かれたある議員の方がこういう発言をしたというふうな言いわけではなくて、本当に自分が思っていることを発言しながら日韓対話を進めるのが本当の、真実の道だと思うんです。妙な悪いサイクルに入っているんじゃないか、このように私は思っておるんです。  官房長官の発言は教科書に関してなされたとお聞きしておりますので、教育についてどういう御認識を持たれているか、まずお聞きしたい。  例えば、歴史観の共有ということをよく言われますが、これは、私は、国家と国家の歴史観、民族と民族の歴史観の共有が果たして可能なのだろうか、共通の歴史を両論併記ではなくてつくることが果たして可能なのだろうか、重大な疑問を持っておるんです。  そこで、例えば我々の近隣諸国において、南北、南朝鮮と言ったら失礼ですから、大韓民国と北朝鮮が共通の教科書をつくることができるかといえば、これはできない。中国と台湾が共通の教科書をつくるかといえば、それもできない。今友好国であるアメリカとイギリスが、独立に関して共通の教科書をつくるかといえば、できない。なぜなら、ジョージ・ワシントンは、イギリスでは反逆者であるけれども、アメリカでは建国の父であるからです。しかし、今ここに、日本と韓国のみが歴史の共有をなせるという幻想のみで我が国の教育が推移しているとするならば、それは重大なことだと思う。  そこで、一つお聞きしたいのですが、教育は将来の民族のあり方を決定する、したがって、国家問題としての教育というものをとらえるならば、それは政治の重要な課題である、このように私は思うのですが、これはいかがでしょうか。
  129. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 きょうここで、委員と教育論争をする気もございませんし、また、歴史認識についてそれぞれの差異を申し上げる気はございません。  私が申し上げたことは、現実に日本の教科書にいわゆる従軍慰安婦という文言が入っている、それに対して、韓国の問題ではなく日本の問題として私は記者諸君に話をした。それは、大変日本には悲しい、貧しい、苦しい時代があった。これに目をつぶるわけにはまいらない。  ですから、前回ここである委員から質問をされた際も、日本だけが、過去は清く、正しく、美しくと見せることは、私たちの実は切なる願いではあるけれども、現実に社会現象としてはそうでなかったという、その事実は私たちは直視をしなきゃならない。そういう中から日本という国が今日生まれている、そういう過去を思わないで現在があるはずがない、その延長線上に未来があるということもおよそ推定をしなきゃならない。  そのために、いわゆる公娼制度その他をほとんどの若い方々が知りません。私はあえてここで申し上げたんですが、私の孫に、高校二年生ですが、公娼という言葉を知りません。従軍慰安婦という言葉だけを知っているわけであります。そういう社会勉強というか教育でいいのかしらという大変へんぱな思いに駆られたから申し上げたのみであります。
  130. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、今お聞きしたのは、教育というものは民族の将来を決定する重大事でございますから、これは政治の重大問題でありますか否かということをお聞きしたわけです。御答弁は直接それにお答えなさらなかったけれども、そのように認識しておられると私は受け取りました。  それで一点、今ちょっと触れられましたけれども、官房長官、退席される前に一点お聞きしますが、慰安婦という、従軍慰安婦という名称でもよろしいですが、これを教科書に書いた場合に、現場の先生方はその内容を生徒に説明しなければならない。中学生の段階でこれをなすのは果たしてふさわしいのか否か、この問題についていかに御所見を持っておられますか。
  131. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 昔よりははるかに性的な知識の高い今の若い方々でございますから、それをどういうふうに理解するかどうかは別として、少なくとも社会的な背景として、社会的な事実として公娼制度があったということは、必ずしも自分の意向ではないわけであります。そういう現実を見なければいけないということを私は申し上げたつもりでございます。  ですから、比較をするもの、たったそれ一つしかないということになると不思議になります。私は、昔の表現をここで使う気はありませんが、いわゆる従軍慰安婦というものがどういうものであるか定かになりません。その後調べてみましたけれども、いわゆる従軍慰安婦という言葉は過去にはなかった。現在、いわゆるというまくら言葉をつけて言っているのは何と何を指して言うのか、おぼろげに最近そういう錯覚というか偏見を予測をしながら言っているわけでありますが、これは極めて重要な問題でありまして、私たちはやはり過去にあった日本の歴史というものを直視をしなきゃならない、そして女性史の中でどういう位置づけをしなきゃならないのか、そして今現在の女性がどういう立場であるのか、そういう問題は、やはり女性史的なあるいは社会史的な面として取り上げてまいりませんと、従軍慰安婦という問題のみがひとり歩きをする、これは大変偏見を招くおそれがあるということを私自身は感じております。
  132. 西村眞悟

    西村(眞)委員 お答えが直接的でないのでわかりにくいのです。ただ、言えることは、官房長自身が従軍慰安婦という言葉を聞いたこともない、それがどういうものであったか、それを聞いたこともないから当然である。それを、主に戦後生まれの学校の現場の先生が今の中学生に教える事態になっているということについて、私は教育においての重大な懸念を持っているのです。  それで、官房長官、退席する前にもう一点だけ。教育論争しているのじゃないのです。国家の次代を担う今の少年たちをいかにして教育するかということは政治の重大事だという観点から御質問しているのです。  今の社会を子供たちに教えるときに、小学生がこの国会にも見学に参ります。消防署にも見学に行くでしょう。魚市場にも見学に行きます。そして、この社会はこういう人たちによって、働きによって支えられて、あなたの家庭の食卓にもこの人たちの働きによって食糧が運ばれてくるんだということを教えます。しかし、今の社会にも一年に一万件の交通死亡事故がある。四万人の受刑者が刑務所におります。売春組織もあります。犯罪組織もございます。  しかし、現代社会を教えるときに、大学の犯罪学の授業のように、その暗黒面ばかり、つまり売春組織に見学に行ったり、交通事故のむごたらしい死亡現場の写真を見せて、これが現代社会だよ、殺人現場の写真を見せて、これが現代社会だよ、こういうことは我々はこの現代社会を教えるときには教えないのです、子供たちに。それは大学の犯罪学の講義ですればいいわけです。  しかし、従軍慰安婦に象徴されるように、なぜ、現代社会を今の小中学生に教えるときには決してしないことを、五十年前の我々の祖父母の世代には遠慮会釈なくできるのか。我々の国の教育はどうなっているんだ。子供たちがこの国の祖父母の歴史に誇りを持つことができる、あのおじいちゃん、おばあちゃんが頑張ってくれたから私どもは今いる、この連続の意識を持ってこそ初めて、自分自分の以降の子孫のために立派な大人になって働こうという心が生じるのじゃないですか。これが民族が誇りを持って存続する一つの要点だと思うのです。いかがですか、官房長官、御退席の前に一言。
  133. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 その問題だけを私は取り上げて論争する気はございませんが、確かに過去に、清く、正しく、美しくという言葉を私よく使うのですが、そういう時代ではかりはなかったという現実、確かに過去のものは立派であったと我々は称賛をしたい、しかし、この問題が教科書に載れば、私は、反対的な立場で過去にそういう事例がたくさんあったという現実もまた教えなければ、暗い、悲しいことも教えなければいけないはずだ、そのことを申し上げたわけであります。
  134. 西村眞悟

    西村(眞)委員 今、官房長官は教育問答とおっしゃったけれども、決して教育問答をしているわけではない。ことしの四月に配付される歴史の教科書は、国民の税金によって子供たちに勉強するために配付される教科書である、その視点から、私は、これでいいのかということを問題意識を持ってお聞きしているわけです。  私は、先ほども申し上げましたように、南北朝鮮で共通の教科書ができないのと同じように、日本日本独自の歴史観に基づいた教科書をつくるべきだ、こういうふうに思っておる。これについては、教育論争とかいうことになりがちでしょうから、これについての質問は、梶山官房長官も御退席なさいましたから、これでやめます。  次に、総理自身の対外的な姿勢についてお聞きしたい。  総理は、個人的問題と、総理大臣という立場から導かれる身の処し方を混同されておるんじゃないかなと私は思う。例えばこれ、産経新聞で一月二十六日、総理、金大統領と握手しておられるときの写真。金大統領は普通に握手しておられる。総理はこのようにして握手しておられる。これはどういう意味なんですか。
  135. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 礼を尽くしている形であります。
  136. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私がこの問題に非常に問題意識を持っているということはなぜかということを、冒頭説明申し上げましょう。私は、自分の命が地球より重いとは決して思っていない。私は、国家と民族の名誉が自分の命より重いと思っている、そういう一つの日本人です。だから問題にするのです。お聞きします。  総理に近い人が、あの握手、一部の人の中には、これです、このそでをまくってする握手、これは臣下のやり方だ、主君に対する臣下のやり方だと言う人もいるし、そこまでやる必要があるのかと言う人もいる。でも、あれは儒教的なもので、目上の人を敬う気持ちということらしい。  それで、総理、あなたはクリントン大統領とお会いするときもこの握手をされますか。
  137. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私の方が年が上であります。
  138. 西村眞悟

    西村(眞)委員 一国の代表が一国の代表と会うときに、個人的に年が上であるか年が下であるかによって、儒教的には臣下の礼をとると言われる握手をしなければならないのですか。
  139. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼をいたしました。  ただ、私は、欧米における礼、アジアにおける礼というのは、おのずから歴史の流れの中でいろいろな姿があるように思います。欧米における礼、まさに握手でありますが、握手というのは、少なくとも近代日本になるまで日本の中になかったやり方ではないかと私は思います。  そして、普通日本人の感覚からいきますならば、おじぎをするというのが礼でありますが、そのおじぎという行為も、場合によっては、相手がその礼をふだん使わない国の代表者であります場合には、向こうに非常に異様な印象をもって受け取られるときもございます。そして、握手の国でありますから、私は、アメリカ大統領とは普通に握手をいたします。東洋の場合、私は、大変議員の御意見を傾聴いたしますけれども、お客を招きました場合、目上、目下という感覚よりも、やはり礼を尽くして迎えるのが普通ではないでしょうか。私はそう思うのですが。
  140. 西村眞悟

    西村(眞)委員 総理のお考えはお聞きしましたが、お客を迎えるという意味のそのお客は一国の元首であります。総理も一国の総理として国家と国民を代表しておられる方だ。したがって、私はこの握手の仕方に非常な違和感を感じておるわけです。  それで、これは私が言っておるのではなくて、済州島での日韓会談のときに、これも産経新聞ですが、外信コラムに出ておるのです。  いいですか、国民はこういう国民もあるということを御承知おきいただきたいと思ってちょっと紹介しますが、先日、済州島で日韓首脳会談の際、橋本首相が金泳三大統領と乾杯に際し左手を右腕のわきの下に添えて杯を上げている写真があって、本紙の読者からまるで臣下のようで見苦しいと指摘があった、金泳三大統領にはその種の動作が見られなかった、確かに橋本首相が臣下の礼をとったような形である、こういう声が済州島でのあなたの立ち居振る舞いを見て、新聞がその読者の意見として報じたものでございます。  あなたは再び、今、東洋では礼、握手はしないのに握手するんですから、そのときに東洋の握手の仕方の、韓国に対する、こういう腕を上げて丁寧といいますか、そういうやり方をなされた。済州島でなさったんじゃないんですか。だから、お客を迎えるときに、それが理由としてしたのではなくて、あなたがお客であるときもされたんじゃないんですか。
  141. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼でありますが、確かに私は済州島でだって堂々とそういうポーズをとりました。そしてそれは、今新聞紙だけを例示をされましたけれども、テレビのニューズでも報ぜられていたと思います。そして、それがよいか悪いかは御判断ではありますが、私は、あの場合そうすべきだと思ったのでそのようにいたしました。それが国辱だというおしかりであるなら、甘んじてちょうだいをいたします。
  142. 西村眞悟

    西村(眞)委員 個人的な問題で会った相手ではないということをお示しするために、例を申し上げます。与野党からいろいろ異論のある方がおられると思いますが、こういう問題を真摯に議論する場が今までなかったから申し上げるわけです。  一つ、「盧泰愚大統領演説文集第三巻」、これは大統領秘書室の発売したものでございます。つまり、韓国の国家が公文書として発行しているものでございます。ここに、我が日本国天皇のことを日王と書いてある。日本の日に王、天皇陛下と盧泰愚大統領が歩いておられるときの説明は、日王と歩いておる。ここに、天皇陛下が晩さん会であいさつをされたときに、日王のあいさつと書いてある。  我が国憲法第一章第一条は、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である、このように書いておるわけです。  我々は、大韓民国を政府の公文書で決して大を取って韓民国とは言わない。また、外交儀礼としてでも、以前アフリカで、ナポレオンにあこがれて皇帝の称号を名乗ってナポレオン式の衣装をまとって三年でつぶれた政権がありました。しかし、その政権が正統であれば、外交儀礼としてその人のことを皇帝と日本も呼ぶし、韓国も呼ぶ。  なぜ韓国は日本の天皇を韓国の公文書で日王と呼ぶのか、この点について総理大臣の御所見をお伺いしたい。これに対して意見は……。
  143. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員御指摘の文書は私直接見ておりませんので、断定的な御返事を申し上げるわけにまいりませんけれども……(西村(眞)委員、資料を示す)よろしゅうございます。  文書の性格がいかなるものか、そういったものもよく見てからと思いますけれども、いずれにいたしましても、韓国と我が国と、時によりまして同じ文字を使っている部分がございますけれども、と申しましても、やはりそれぞれの国の言葉はそれぞれの国で違うんだと思います。そういった中でどういうふうに扱われるものか、そういうこともよく精査した上でこれをどういうふうに評価するかということかと存じますけれども、私は、大韓民国におかれましても、我が国の憲法なり、その中での天皇陛下の地位というものを十分理解しておるんだと思いますから、この文書は決してそういったものと矛盾するような意図で表示されておるとは思いません。
  144. 深谷隆司

    深谷委員長 西村委員に申し上げますが、書類提出その他については委員長の許可を得てください、ルールでございますから。
  145. 西村眞悟

    西村(眞)委員 はい、わかりました。  歴史を知らなければ見過ごすことでございますけれども、我が国明治維新の国書が李氏朝鮮に送られましたときに、かの国は、天皇の皇という字は中国の中華の皇帝しか使えないんだ、夷狄の日本が皇という字を使うとは何事だといって、受領を拒否したわけです。これが、征韓論にもつながっていく日韓悲劇の起点でありました。このかたくなな態度を見て、総理の御出身校の福沢諭吉は「脱亜論」を書かざるを得なくなっていったわけです。日王という称号は、天皇の皇に対して、これは日本は中華、華夷秩序から見れば使えない国だというふうに、韓国が、政府ですから、政府としてそういう意識のもとに政府も文書の中に使っているということを御指摘申し上げます。  次に、韓国大統領が国家の代表としてどういう、個人的なものではないということをお示しいたしますが、簡単な質問でございます、総理大臣、簡単にお答えください。  竹島は日本の領土ですか。
  146. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この問題について、我が国の態度は全く変わっておりません。  その上で、残念ながら、今回すべての問題を議論しました中の一つのテーマでありましたけれども、意見は一致をいたしませんでした。
  147. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ということは、日本の領土ということなんです。ということは、日本の領土に韓国の官憲が入っておるのは主権侵犯ではないのですか。いかがですか。
  148. 池田行彦

    ○池田国務大臣 竹島は我が国の領土でございます。我が国はそういう立場を堅持し、そうして、そういった立場から所要の行動をとっているわけでございます。  ただ、残念ながら、韓国は我が国とは違った立場をとり、違った主張をしております。そういったことで、先ほど総理の御答弁にもございましたが、日本といたしましては、それぞれ必要なときに我が国の立場というものを明らかにしてきたところでございます。
  149. 西村眞悟

    西村(眞)委員 我が国の外交、この竹島に関する外交は非常に節度のある外交でして、日韓条約のときの交換公文、紛争の解決に関する交換公文にのっとって、その枠をはみ出さず、これを守って粛々と毎年領土の問題に関してコメントを出しているわけです。  紛争は外交上の経路を通じて解決する、これが日韓の約束でございますね。日韓の約束で、外務大臣がそのプロセスのもとで発言されたことが、向こうでは金大統領の治世になってから提言になっているという事実を、ちょっと次元が違ってきたという事実を御認識いただきたい。つまり、いわゆる虚報に基づく教科書問題によって、全大統領は反日を外交カードとして使ったことは事実でございます。しかし、金大統領になってから、反日が自己の政権の人気取りのためのカードとして使われるようになった、このように韓国研究家が書いております。  それは、思い当たることはあるのです。九五年十一月十五日、中韓首脳会談、江藤長官発言に対して、今度こそ文民政府の堂々とした道徳性に立脚し、そのようなふざけた性根、ポルジャンモリを直してやる、過去の軍事政権と違うということを見せつけてやろうと思う、これが金大統領の発言でございました。  ただし、このポルジャンモリという言葉は、辞書にはないのです。年長者が子供に対して汚くしかりつける言葉、これは、金大統領の意識が、韓国の伝統的国家観、文民政府の伝統的国家観、つまり儒教に基づく華夷秩序によって日本にポルジャンモリという言葉を使ったと言わざるを得ないわけです。  それから、九六年二月七日、これは、先ほど外務大臣がおっしゃった日韓交換公文、紛争処理の交換公文によって節度ある——我々は毎年竹島の領土を主張しておりますけれども、それを内政問題に絡めたり、政府主催のキャンペーンをしたことは一切ないのです。その間一兆円に上る経済支援もしたわけです。しかし、外務大臣の人形は焼かれ、提言ということになっております。総理大臣、あなたが会われた、こういう厳しい利害の中にある日韓の両国の代表者でありました。  私は弁護士出身ですから、私が弁護士時代の経験を申し上げましょう。依頼者の前で、たとえ親しい先輩の弁護士であっても、年下だからといってへりくだっては依頼者との信頼関係は弁護士はつぶれるのです。だから、それは弁護士は一切しない。  しかし、あなたは今申し上げたように、竹島問題に絡んで、ポルジャンモリという発言に象徴されるように、対日を反日カード、国内政権を浮揚するための反日カードのように使う大統領と対峙して臣下の礼をとられた。九六年六月二十二日、日韓首脳会談、済州島、私が目下ですからと公言して、客の立場でありながら両手で先に酒をついだ。これは私が抜粋した「現代コリア」、この本の中にある言葉ですが。それからまた、先ほど紹介した済州島でのあなたの態度を見て、臣下の礼で嫌だという日本人の投書があるにもかかわらず、あなたはまた一月二十五日、目下の礼をとられた。  そして、先ほどの言葉にあるように、クリントン大統領があなたの年上であられたら、あなたはクリントン大統領にもするというふうな発言もされておるわけです。(橋本内閣総理大臣「参ったな」と呼ぶ)総理、何が参ったのですか。私が誤解して申し上げているのですか。私の誤解があったらおっしゃってください、総理
  150. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど私は、ヨーロッパ、欧米の伝統的なあいさつ、アジアの伝統的なあいさつというお話を申し上げました。  私とすれば、目下のと言われる、そのような受けとめしかしていただけないのであるとすれば、私は大変国に対して申しわけないことをしたのかもしれません。しかし、私はいたずらに居丈高になることが両国のためになることだとは思っておりませんし……(西村(眞)委員「そういうことを言っておりません」と呼ぶ一そう聞こえます。そして、礼を持って話し合うことと内容において譲歩をするしないということは別だということは、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  151. 西村眞悟

    西村(眞)委員 国家と国家が会うということは、話し合いの内容という以上に、両国の友好の象徴としての一つの両国民に見せる場でもあるわけですから、そのときに、いやしくも私も全国民を代表する選挙された議員でございます、そして先ほど紹介した産経新聞の投書の主も私と同じ感想を持っておるのです、そのようなことはゆめゆめなさらぬように。そしてまた、あなたは少々軽く考えておられたように思う。クリントン大統領にもそうするのですかという私の問いに対し、私の方が年上ですからと答えられた。  領土問題は、竹島のみならず北方領土、尖閣列島、不当に占拠され、もしくは埋蔵資源があると聞くや領有権を主張して、人民を上陸させて放置している国家が我が国周辺にあるということを、公式の場であれ非公式の場であれ、いやしくも国民が見ている前では、お忘れになっていただいては困る。したがって、その中で後輩の礼をとっていただいては困る。弁護士でもそれはしません。どうか、このようにお願い申し上げるわけでございます。
  152. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどクリントン大統領でもという御質問、私はあるいは委員に礼を失したかもしれません。この点はおわびを申し上げます。  そして、欧米の習慣とアジアの習慣の違いということを、改めて申し上げさせていただきます。その上で、党を代表される本日の委員の御質問でありますから、私も真剣に拝聴させていただきます。  ただ、同時に、今議員は領土問題を例示され、そうした問題を抱える中でという言葉をお使いになりました。私は、少なくとも領土の問題で一センチも譲っておりません。残念ながら意見が合わないということは認めました。  しかし、それと同時に、私は、意見の合わないところだけをぎりぎり強調し合うのが外交だとは思っておりません。お互いの意見が食い違えば、その食い違いは認めた上で、より建設的な関係を築く方が大切ではないでしょうか。残念ながら竹島の問題は、私も自分の国を代表する者としての主張をし、金大韓民国大統領はその立場を主張されました。  その上で、領土の問題を横に置いて、漁業協定の問題、あるいは海洋法条約に関連する境界水域の画定の問題という議論を始めようということと同時に、むしろ未来に向けて、両国の若い人々の中から、お互いがその力を合わせてほかの国に対して何かできないだろうか、そういう関係もつくっていこうという話し合いをしてまいりました。  先ほどから、本日新進党を代表されて御質問になっておられるお一人の議員の御意見は、私は真剣に拝聴させていただきます。礼を失した分はおわびをいたします。  その上で、私は、食い違いを強調するよりも、あすに向かって力を合わせていける問題を、食い違いは食い違いとして将来ともに議論は続けますけれども、より建設的な関係を築くことにも努力をしてまいりたいと考えております。
  153. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ともに国のことを、私は一議員でございますが、総理はもっと重い。お考えになっていることはよくわかります。短時間ですからこれ以上のことは申し上げませんが、あと一点、お許しいただきたい。私の問題意識、総理の個人的な問題と公の総理の姿勢ということについて、もう一点だけお聞かせいただきたい。  総理は、御自分の誕生日に靖国神社に参られたけれども、なぜ遺族会会長までされた総理が八月十五日に靖国神社に参られなかったのですか。
  154. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私にとりまして、靖国神社という問題はみずからの心の中の問題であります。みずからの心の中の問題でありますから、今まで自分の心の赴くままに参拝もいたしてまいりました。そして、総理という立場になりましてから、将来に向けての我が国のさまざまな対外的な問題等をも考えます中で、自分の誕生日ならという思いで参拝をいたしました。しかし、それが国に何らかの悪影響を与えるおそれがあるのであれば、みずから考えるところがあってしかるべきだろうと、その後考えております。
  155. 西村眞悟

    西村(眞)委員 この質問はここでとどめます。  私は、靖国神社という神社の象徴的なものが八月十五日に凝縮してあそこにある、こう思っておる日本人でございますから、御自分の誕生日というのは私ことでございますが、あの公の日になぜ行かれなかったのか。ことしもあなたの、総理の気の向くままに御参拝なさるのですか。それとも気の向くままではなくて、何かの基準をそこに設けられるのですか。
  156. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 みずからの心の中の問題と申し上げました。その上で、もし少しでもこの国にマイナスを生じるのであれば、私は慎まなければならないだろう、まさに自分の情を抑えるべきであろうと思っております。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
  157. 西村眞悟

    西村(眞)委員 もうこれ以上お聞きしません。マイナスを生じるというのはどういうことなのかということを聞きたいところですが、私、総理、この問題に関しては、またお話しする機会があろうかと思います。  次に、私は、これは質問ではなくて、このような日本人が今日本政府の助けを待っているのだ、このことを総理の脳裏に刻んでいただきたい、そして今我が国政治がその問題に無関心なら、その方たちの命は本当に相手の自由のままだという問題について、お考えをただしたいと思っておるわけです。  私がくどくど説明するまでもなく、これは北朝鮮による日本人拉致の問題。現実に北朝鮮秘密工作員として北朝鮮で日本人に訓練を受け、そして日本人の旅券を持って大韓航空機爆破事故に携わり、生還した金賢姫さんの「忘れられない女」という中を朗読しながら、この問題を御説明したい。言っておきますが、金賢姫さんが体力がなくてあのとき死亡していたら、日本人の旅券を持った親子のような二人が大韓航空機を爆破したのだということを反論する手だては、我が国になくなったわけです。  読みますと、   つい最近のこと、軍事境界線を偵察中だった米軍のヘリコプターが北朝鮮領域に不時着した事件がありました。このニュースを観ながら、事件を処理するアメリカ態度に は、新鮮な衝撃を受けました。   たった一人の将校を召還するためにアメリカの自尊心をかけ、国民すべてが力をそそぐのを見て、私はこのことを李恩恵問題と結び付けて考えずにはいられませんでした。   本名・田口八重子としてその存在を明らかにされた彼女は、 明らかにされたのは、我が国警察当局の本当の努力があるのです。  日本側のあらゆる努力にもかかわらず、いまでも家族の元には戻っていません。私に対する日本人化教育が終わったのち、私を日本に派遣する問題が本格的に論議されはじめ た一九八五年の夏、彼女は突然姿をくらましてしまったのです。   辛光洙という北朝鮮の工作員が韓国に侵入し、当局に捕まった、 これは八五年のことでございますが、  ということを指導員の方から聞きました。辛光洙は、日本で中華料理店のコックとして働いていた原勅晁という日本人をあらかじめ北朝鮮に拉致しておいて、この人物に変身 して日本で活動していたのです。辛光洙が韓国に侵入したところを逮捕されて、その一 件が韓国で発覚したということでした。 この辛は、今韓国の刑務所におります。  この原勅晁もまた、過ぎゆく時間のなかで日本国民の脳裏から消え去ってから、かなりの歳月が流れています。  もし、田口八重子や原勅晁が一般大衆から愛される人気者や著名人だったら、日本人のみなさまはどうなさったでしょうか。   一日一日を一生懸命生きていく平凡な人間を、一人一人大事に扱ってくれる社会こそ、真の自由な民主主義社会だと私は考えます。   田口八重子の召還のために日本のみなさますべてが気持ちを一つにすれば、たとえ李恩恵の存在自体を否定している北朝鮮であっても、彼女を日本に送り返さざるをえない でしょう。 これは、日本人が拉致されて、北朝鮮が全くその存在を認めない、そして、彼女たちは確かにいるという証言でございます。  象徴的な例、これは名前を出しても、韓国で身柄を拘束されて、その裁判の中で名前が出ましたから、今、原さんを拉致した辛という人は。原さんは八〇年六月、辛により拉致されました。私の選挙区の近くの京橋の中華料理屋のコックをしておりました。原さんが拉致されたのは八〇年六月です。八五年に辛が捕まった。その中の、向こうの、韓国の裁判にあらわれたのは、結局、自分が拉致したんだ、そして完全に原に成り済まして、その原のパスポートを持って日韓を往復して、そして韓国でスパイとして捕まったということでございます。  李恩恵は、日本警察の努力によってその田口八重子という存在が明らかにされたところ、御承知のとおりでございます。  このほかに、人数はわかりませんが、一九六三年、石川県で漁民三名が行方不明、これは船だけが空で帰ってきました。一九八七年、北にいるとの手紙があった。七四年、文世光事件。これは、日本人のパスポートを持った在日韓国人が朴大統領の奥さんを射殺した事件です。もし文世光が射殺されておれば、日本人がやったということしか残らなかったわけです。それから、七七年九月には三鷹市の久米さんが能登で拉致された。  そして、ここで私は質問主意書を、横田めぐみという一人の十三歳の少女が拉致されたむごい事件に関して質問主意書を提出しております。一月二十三日に提出しまして、本来ならその回答を待ってこの予算委員会で御質問するのが筋でございますけれども、政府の方から延期してくれと言われて、まだ回答を得ておりません。どうか、この前向きな回答をいただきたいわけでございます。これはもう一度、金賢姫さんの「忘れられない女」の中に紹介されております。私もそれに気づきました。この二百二十二ページ。   そんなふうに話をする招待所のおばさん 招待所というのは収容所のことです。その  おばさんの純朴な顔には、見るも哀れ、聞くも哀れだという同情の表情がうかがえた。 そして、拉致されてきた人の話は一つや二つではなかった。   ある人は、連れてこられるときから強く反抗したために、北朝鮮に着いたときには満 身傷だらけの姿であった。   ある日本の男性は、とても心がきれいで大工仕事をよく手伝ってくれたという。   またある日本人女性は、北朝鮮で外国人男性と結婚させられたという。   ある日本人夫婦は、海辺でデートを楽しんでいたところを拉致され、   また、 これが横田めぐみさんだと思う。   また、拉致された人のなかには、まだ高等学校に通っていた少女もいたという。その 女生徒は金持ちの娘だったのか、自分のものを洗濯することさえできなかったという。   いまは名前も顔も思い出せない招待所のおばさんたちから、拉致された人たちの身の 上話をあまりにもたくさん聞かされたが、いったい、党は何の目的で外国人を拉致して きたのかその理由はわからなかった。いずれにしても誘拐であれ拉致であれ、ともかく このように北朝鮮に連れてこられた外国人が、日本人をはじめとして相当数いるということはわかっていた。   私の考えでは、一九七〇年代後半に対南工作に外国人を利用せよという金正日の指示に従って、外国人拉致が本格的に推進されたようである。   そんな話を聞いても、当時の私は、人間的には彼らを哀れに思ったが、常に賢明な党 がよく考えたことであり、また党が偉大な祖国統一の課業を達成するためにおこなって いることだから、そんな犠牲は取るに足らないものだ、と考えていた。   いまになって振り返ってみると、北朝鮮は罪のない無辜の人たちを拉致して苦痛のなかで死へと向かわせる、許すことのできない馬賊の集団とも思える。 この高校生もいたというのが横田めぐみさんでございます。今三十三歳になっておられる。なぜわかったかと言えば、これが最近わかった。北朝鮮から亡命した工作員が、十三歳の女の子を拉致したらしい。その子は頭のいい子で、バドミントンのクラブの帰りしな、工作員が脱出しようとするのを目撃したので連れて帰った、朝鮮語をしゃべれるようになればお母さんに会わせてやると言われて、一生懸命勉強した、しかし、十八歳ごろになってそれがかなわぬこととわかり、病院にそのとき入院していた。その証言と、バドミントンの帰りに拉致されたという日本の新潟日報の記事が、見事に符合しているわけです。  きょう、アエラ、また産経に実名が出ました。私も相当悩みましたけれども、そういうマスコミに出た以上、実名を申し上げ、実名を申し上げる以上は、どうかこの問題に、総理大臣、国家の、本当の民主主義国家の正統性の証明でございます、自国民を保護するということ、これに重大な関心を示して取り組んでいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。御所見をお伺いしたいと思います。
  158. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今議員が引用されました以外にもあるいは北朝鮮による拉致の疑いの持たれている事件があるのかどうかを存じませんが、当然ながら、その疑いの持たれております事件に対しましては、捜査当局において所要の捜査が厳重に進められていると思っております。  また、関係機関におきましても、関連情報の収集に努めておるところでございまして、今後ともこうした努力を続けてまいりたい、そのように申し上げます。
  159. 西村眞悟

    西村(眞)委員 外務大臣、今御発言、何かございましたら、積極的な御所見をお願いします。
  160. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま総理から御答弁があったとおりでございますが、外務省といたしましても、このような北朝鮮による拉致の疑いが持たれておる事件につきましては、まず、捜査当局において所要の捜査が進められると思いますが、外務省としてもその情報の収集に努めてまいりたいと存じます。  李恩恵の件につきましては、委員も御高承のとおりでございまして、平成三年に、これは失踪中の日本人女性である可能性が高いと警察当局が判断いたしましたので、それを踏まえて、我が国といたしまして、日朝国交正常化交渉の場で持ち出して、北朝鮮に対していろいろ調査方そして情報提供方を求めてきたところでございますが、それが向こうの入れるところとならなくて、結局、このことが原因となって正常化交渉そのものがとんざした状態になっているというのは御承知のとおりでございます。  また、委員御指摘の報道に関する件でございますが、これにつきましても、私ども、今後その内容を踏まえて適切に対処してまいりたいと思います。
  161. 西村眞悟

    西村(眞)委員 国交がないので外交ルートがないということはよくわかりますが、しかし、北朝鮮とパイプがなかったのかといえば、あったのです。米の支援の交渉をされたではありませんか。日本人を拉致する国家になぜ米支援なのか、私はこのように思っておりました。人質をとっておる相手に対して、その人質のことを触れずに要求をのむということは、相手の立場がどんどん強くなるということでございます。  しかも、昨年、御承知のとおり、この米支援を推進されたのは現自民党加藤幹事長でございます。相手方は全容淳書記でございます。全容淳書記は対南工作担当書記でございます。先ほど金賢姫の発言を、本を御紹介しましたように、日本人を拉致して対南工作に用いるという、その対南工作担当書記が全容淳。この人物を相手に加藤幹事長は米の支援を交渉して、相手から、全容淳書記から貢ぎ物だと国内で言われた、北朝鮮国内で。そして、加藤幹事長の自分の私財で買った米ではなくて、国民の税金で買った何十億の米であったわけです。  また、この交渉で、加藤事務所吉田なる人物は北のエージェントである、この奇怪な構造の中で交渉が行われておりました。(発言する者あり)責任を持って申し上げるから、横で発言するということはお控えいただきたい。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕  それで、拉致された方ではなくて、日本人妻千八百名を含め日本人七千名が北朝鮮におって、所在がわかっていないわけです。私が申し上げるのではなくて、北朝鮮、韓国……(発言する者あり)ちょっと、静かにしなさいよ。私が発言しているんだ。委員長、注意してください。発言に気をつけろとは何事か。何事なんだ。(発言する者あり)委員長、注意してください。これは大臣の事件ではない。
  162. 深谷隆司

    深谷委員長 お静かにお願いします。並びに、委員も静かにどうぞ語ってください。
  163. 西村眞悟

    西村(眞)委員 これは、韓国、北朝鮮問題について専門的に研究をされている「現代コリア」の主宰者の佐藤勝巳さんが書いた文章でございますが、しかし、我が国民が北朝鮮の国家権力によって拉致されていると推定される事件は、この件を初めとして、李恩恵などわかっているだけでも二十件近くある。日本国籍所有者は七千人いるが、今私が申し上げたとおり、北朝鮮はどこに行っているかわからないようにしている。このような野蛮な北朝鮮に対し、我が国の政府は一体何をしてきたのだろう。かつて、日朝交渉の場で李恩恵の消息を確認しようとし、交渉が決裂したことがあった。しかし、一昨年は上記の主権侵害、人権侵害に一言も触れず、北朝鮮に事実上米五十万トンをただで上げた。これは事実でございます。こんなばかな国がどこに存在するのだろうか。信じがたいことだが、自民党加藤幹事長らは、このような国にまた米支援を検討しているという。自国民の人権を犠牲にし、北朝鮮を助ける政治家を普通「売国奴」という。こういうことを言っておるわけです。  それで、総理にお伺いしたい。  加藤幹事長に関しては、共和の件について、これは浮上すれば沈み、また浮いてくるという妙な事件。九二年に加藤幹事長はこの件で、共和の副社長からやみ献金をもらったのではないだろうか、これを国会の場で否定されました。九六年三月、その献金を受け取った、授受のときに立ち会ったという後援会長が受領を認めたため、また浮上しました。もちろん加藤幹事長は否定された。しかし、その現場におったという後援会長が言っておるわけですから、それだけでは済まなかった。九六年九月二十五日、政治倫理審査会の審査でも、開かれましたけれども明らかにはならなかった。しかし、その直後、朝日新聞が、副社長の息子に、大手ゼネコンを紹介するから獄中の父に加藤幹事長の疑惑解明の手紙を書いてくれよというふうに頼んできたのだということをまたすっぱ抜いたわけです。  そこで、総理、この加藤幹事長、米の問題であって、私は、一北朝鮮・韓国研究家がこのように断定的に雑誌で述べられているということを今御紹介しました。本国会、我々衆議院、参議院において加藤幹事長のこの疑惑について再三審議等々がなされていたことは事実でございます。そして総理は、与党第一党の幹事長として加藤幹事長を再任されたわけでございましょう。総理は、加藤幹事長に疑惑がないから再任されたのですか。それとも、疑惑があるかないかわからぬけれども、あってもいいと思って再任されたのですか。二つに一つ、どちらなんですか。
  164. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、先ほどから議員が党を代表するお立場で御質問になり、しかも弁護士という非常に重い仕事を持っておられることを議員という立場とあわせて繰り返しお述べになった上で、個人の名前をいろいろお出しになりましたことに大変な重みを感じております。  そして同時に、もう一つ議員の御意見、拝聴していてよくわからないんですけれども、北朝鮮に対する、また北朝鮮による拉致の疑いの持たれている事件、これは当然ながら我が国の捜査当局として捜査を行い、関連情報を集めるという努力がされているものでありますし、そして、その一つのケースでありますまさに李恩恵のケースで北朝鮮との国交正常化の話し合いというのは決裂をした状態にあることは、よく議員は御承知であります。  また、昨年、昨年というお話でありましたが、北朝鮮に対する米の支援というのは私の記憶では一昨年のことであったと思いますが、その一昨年に行われました米支援というものは、まさに国際的にも緊急、人道という観点から特殊、例外的な措置が求められ、行ったものではなかったでしょうか。  それが、我が党の幹事長に対するいかにも、意味ありげな御発言と言うのは失礼かもしれません、意味を持たせておられたのかもしれないんですから、その御発言と結びつけられて拉致という問題が語られることは、私は大変不本意な話であります。拉致事件に対して捜査当局が捜査をするのは当然でありますし、関連情報を集めるのも当然の努力であります。  そして、一昨年、まさに国際的に、北朝鮮の危機的状況に対して米の支援を行えというのは、まさに緊急、人道的な課題として我々の前に提起され、あくまで特殊、例外的な措置として実行したものではなかったでございましょうか。私はそう記憶をいたしております。
  165. 西村眞悟

    西村(眞)委員 時間が来ましたから、私は、この質問において、国家の基準はどこにあるのか、国益を守るための政治家の基準もどこにあるのかという問題意識を持って質問させていただいたわけです。その象徴として総理大臣のこの握手について私は違和感を感じているということを申し上げた。また、靖国神社、八月十五日に総理大臣が参拝するか参拝しないかはどこで……
  166. 深谷隆司

    深谷委員長 西村君に申し上げます。  割り当て時間を経過しておりますので、御協力お願いいたします。
  167. 西村眞悟

    西村(眞)委員 わかりました。  どこで決まるのかということ。そして、官僚の処分、百万円の者は懲戒免職で、その上司で数千万の収賄を得た者は……(発言する者あり)数千万の……(発言する者あり)わかりました。私は、歴史観……
  168. 深谷隆司

    深谷委員長 西村君に申し上げます。  既に割り当て時間は経過しております。しかも本日はテレビ中継であります。各党の約束事をお守りください。
  169. 西村眞悟

    西村(眞)委員 わかりました。失礼いたしました。
  170. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて西岡君、野田君、西村君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤紘一君。
  171. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして質問させていただきます。  冒頭、ただいまの委員発言の中に私個人のことに関したことがございますが、事実関係につきましては累次国会で述べたとおり、また、先般司法的には不覊束の判断を下されたものと思っております。  政治家としての綱紀につきましては、今後とも襟を正していかなきゃならない、これは当然のことだと思っております。  それから、北朝鮮につきましては、相手側と交渉する、話をする、接触を持つということは相手の制度を認めることではありません。また、そのリーダーを認めると同義語と解するものではありません。そして、核のいろいろな問題がある中に、北朝鮮を国際社会の中に引き出す、これは今極東アジア情勢の中で一つの重要なポイントであって、この点に関してはいずれ御議論をいたしたいと思っております。  さて総理大変御苦労さまでございました。本当に御苦労さまでございました。この予算委員会、きょう帰国後すぐこうやって激しい論争をやるのは人道上の問題じゃないかなと思うぐらい非常に大変ですけれども、よくおやりいただいていると思います。そして、カナダのトロントで行われましたフジモリ大統領との会談、私は、これはいろいろな点があると思います。テロに屈しないこと、そして人命を尊重しないこと、二つの非常に重要な任務がある中で、そして、恐らく私たち、余り表にできないいろいろな外交上の問題もあろうと思っております。  しかし、外から見ておりまして一番重要なことは、フジモリ大統領橋本総理大臣の個人的な信頼関係がしっかりと確立しているかというこの一語に尽きるのではないか、そこさえしっかりしていれば、私たちはベストを尽くしてこの問題の解決に当たられるのではないかと思っております。  その辺、会談を通じての御感想をお聞かせいただければと思います。
  172. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 午前中、西岡議員から御質問をいただきましたときにも、私は冒頭、会談の場所を提供していただいた、そしてまた、保証人委員会委員として駐ペルー大使を送ることを決断してくだすったカナダ政府、クレティェン首相を初めカナダ政府に対してお礼を申しました。そして、やはりこれはペルーも日本も同じだと思うのでありますが、一たん人質になられて、御自身もその苦しみをなめられた駐ペルー・カナダ大使ビンセントさんが保証人委員会委員を引き受けてくれたというその重みが私は大変大きいと思っております。そして、それがカナダ政府の意思であることも確認をされ、これはフジモリ大統領もお礼を言っておられましたし、私もカナダ側にお礼を申し上げました。  ただ、私は、具体的にいろいろ申し上げていきますと、一番やはり大きかったこと、それは、MRTA側が人質の身に危害を加えない限り武力行使はしないということをフジモリ大統領が改めて公式に宣言をしていただいたことであります。  同時に、我々としては、ぜひ対話プロセスを急いでもらいたい、保証人委員会ができているんだからということを随分迫りました。その中で、いろいろな議論をいたしましたけれども、予備的対話というものをできるだけ早くスタートさせるということで意見がそろいましたこと、これも実は私の一つほっとしていることでございます。  フジモリさん、きょうはたしかワシントンにおられるはずでありますけれども、帰国をされればこれが早く動き出すでありましょう。同時に、保証人委員会という第三者の立場には立てないわけでありますが、我が国の駐メキシコ大使であり現地対策本部の顧問である寺田大使をこの保証人委員会のオブザーバーとして入ってもらうことを決めましたことは、今まで間接的にしか入らなかった情報を直接とれる、その意味では、私自身大変ほっといたしております。  こうした積み重ねが、一日も早い人質になっておられる方々の全面的な無事の解放につながることを心から祈っております。
  173. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ただいま私、ちょっと発言の中で、人命を尊重しなければならないということというのを、ちょっと、しないことという舌足らずの表現をしたようでございます。そこは訂正いたします。  総理、私は、この局面を見ますと、総理大臣という仕事というのは大変つらいお仕事だなと思います。最終的な判断はすべて総理一人になっていくという中で、大変精神力の要る仕事だと思いますけれども、人質のために、解放のために、解決のために御尽力をお願いしたいと思います。  重油の問題に移らせていただきます。  この間、我々与党三党の幹事長を初めとして現地に行ってまいりました。現地の視察をして、大変よかったなというのは変な話ですが、よくわかったな、行ってよかったなという感じがいたします。  東京にいますと、重油というのはひしゃくでくむという感覚でテレビ等で報道をされておりますけれども、現地に行ってみましたら、岩場に入ってしまった重油は、手でかき出して、岩にこびりついたものをやっと手でそぎ落として、はぎ落として、手袋をこういうふうに丸めてひしゃくの中に入れて、やっと数分、五分、十分たってひしゃくいっぱいになったのをドラム缶に入れる、そういうのが実態で、あの重油の粘っこさ、重さ、そして、岩場に次から次へと寄せてくる状況、気が遠くなるようなさいの河原の石積み、そこを地元の人たちが、コミュニティーを守ろう、地域を守ろう、そして、全国からそれを支援しよう、そんな気持ちでやってくる人々に大変な感銘を受けました。  国土庁の長官にお聞きします。  今度我々、この問題は、当初、政府の腰の入れ方がちょっとふらふらしているかなという感じがしました。それは無理もない話で、加害者がはっきりとしている、原因が。そして、なおかつ外国である。一方、こっちの方は被害者が無数であって、そして、一体これは民事の話なのかそれとも一般的な公的災害なのか、なかなか行政的にも判断がつかなかった部分があったから、災害というふうに認定するということに戸惑いがあったり、国土庁が少し腰が重かったというのは私はわからなくもないけれども、その過去の話はいいです。今、はっきりと災害と考えて対処されておりますか。どうでしょうか。
  174. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 災害対策基本法上からいいますと、異常な自然現象によって生じた被害あるいは大規模な事故による被害、これはいずれも災害対策基本法上の災害でございます。  なお、これまでさまざまな災害事故がありましたが、事故につきましては、それぞれの担当の大臣が中心になって処理をしてまいりました。また、自然災害につきましては、大規模な災害の場合には、各省庁集まっていただいて、国土庁が担当してやってきたところでございます。
  175. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 運輸大臣、今のお話で、運輸大臣がこの全責任をとりあえずは負うということになります。大変な仕事だと思いますが、御決意の一端をお聞かせいただきたい。
  176. 古賀誠

    古賀国務大臣 先生も現地をお訪ねいただいたようでございまして、今、漂着した油の防除がいかに大変かということをお話しいただきました。この事故が発生以来、もう大方一カ月でございます。大変多くの方々に大変な御苦労と、また苦痛を味わわせているわけでありまして、まず沿岸の被害者方々に、経済的な、精神的な苦痛にお見舞いを申し上げなければいけないし、たくさんの方々、民間ボランティアの方々を含めて油の防除に御努力いただいている方々に、地域住民の方、漁業者の方はもちろんですけれども、本当に感謝を申し上げたいと思っております。また、不幸にして亡くなられた民間ボランティアの方々もいらっしゃいます。心から弔意とお見舞いを、この席からも何回も申し上げましたけれども、改めて申し上げたいと思います。  そして今、この応急対策に私は本部長として、それぞれの関係省庁の局長クラスに御出席をいただく対策本部をつくらせていただいておりまして、それぞれの機関で、それぞれの責任立場で大変な御努力をいただいているわけでございますが、まだ厳しい冬の日本海で油の防除作業というものが行われている現状でございます。最大限の努力を尽くしてまいりたい、このように思っております。
  177. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 現地では膨大な費用がかかっていると思います。細かなことを言えば、一回一回ぼろきれで体をふいたりしないとだめだ、それから作業服も二、三日でだめになる、ボランティアの人にそれを提供する、ひしゃくがどこから来るのか、重油のドラム缶、どうやって、だれが運んで、その運賃をどうしているのか。いろいろ考えると、実は我々が見えないところで大変な財源的な支出がかかっているんではないかと私は思います。  自治大臣にお伺いしたい。  地方自治体が中心になってこれはやっておると思います。今後の財政支援、これをしっかりやってもらえるか。その点は心配ないから、まず自治体中心でやっていなさいということを、私たち言ってきました。そして、政府にそうやってもらうというつもりで言ってきました。そこを自治大臣、その覚悟でやっていただけますか。
  178. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 お答えいたします。  もう何度も、先週の補正予算の審議の中でもテレビを通じ、また私も現地に行ったときに、とりあえず今いろいろな被害が予想されますが、それらすべて含めて、漂着した油、浮流している油を除去することが今後予想される被害を最小限に食いとめることなんだから、そして、それは地方自治体が中心になって防除作業を、回収作業をしていただくしかないんだから全力を挙げてください、そして、お金のことは万が一にも御心配なさらないようにということは明言してはばからないところでございますが、ただ誤解があっては困るのは、ではそのお金は一時的には地方自治体が支出しなければならないお金なのか、あるいは自治省が特交という形で面倒を見なければならないお金なのかということについては、それは違いますと。一義的には船主保険、船主責任保険がありますし、油濁補償基金がありますと。そういうところが、原因者なんですから出してもらわなければいけない。  ただ、現実に回収作業をしている町村は、ではだれにどうやって請求したらいいのか、本当に来るのかというような不安があるようでございますので、それはいずれちゃんと手続を通じてやりますし、仮にそのようなものが思うようにいかなかったとしても、自治体には迷惑をかけませんから、今はとにかく油の回収作業、それから漂着した油あるいは岩場やテトラポッド等にへばりついた油を取ることが、漁業被害やあるいは今後の環境被害等に、出てくる、予想される被害を防止するもとだからお願いします、こう言っているところでございます。
  179. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今から二年ほど前、私の選挙区の山形県の庄内海岸、温海町というところの、そう沖合でもないのですね、海岸から百メーターぐらいのところにロシアの貨物船が座礁しました。そして、約一年半ほっぽってあるわけです。船主がはっきりわかっているわけです。何とかしてくださいと、別に油が流れていたわけではないのですけれども、いろいろな支障が出てきましたので町当局が交渉しました。  そうしたら、船主いわく、それは私たちが悪かったと思っています、責任があります、自分たちに回収義務があると思います、しかしその能力がありませんからできませんと言って、話が終わりになっちゃった。仕方がなくてここで県と自治省が面倒を見てくれて、特別交付税でやっと処理が終わりました。ですから、理屈どおりいかないところが多分幾つか出てくるのではないかということじゃないかと思いますので、少しおおらかな気持ちで見てあげていただきたいと思います。  それから、運輸大臣、こういうような、日本にかなりの油が来る、外洋でいろいろこういう事故が起きたりするかもしれない、そういうときのことを考えて、こういう油を処理する大型の回収船みたいなものを日本はやはり少し備えておくべきではないか。その辺の議論が海上保安庁の方では起き始めていないでしょうか。
  180. 古賀誠

    古賀国務大臣 先生の御指摘の点でございますが、今回の外洋での甚大な事故にかんがみまして、まずいろいろな問題点を検証する必要があるだろう。例えば、この委員会ででも御指摘いただいておりますような初動体制の問題、それから防除体制のあり方、さまざまな問題点を検証してくる中で、今先生御指摘いただきました外洋のあの波高の高いところででも通用する油回収船、こういう問題も当然今回の事故を教訓とした問題点の検証の中の一つだと思っております。  ただ、非常に冬の日本海、並大抵の波高ではございません、御承知のとおり。そういう油回収船を技術的につくることができるのか、またそれが本当に実用化できるのか、かなり幅広い研究と、また体制全体を考えていく中での研究が必要になってくるのではないかな。そういうことも含めまして、適切にしかも早急に検討に入ってまいりたい、このように思っております。
  181. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ありがとうございました。  次に、ちょっとある意味では漠とした話かもしれないし、ある意味では重要な話かもしれませんが、今の世の中の雰囲気ですね。これをどう見るか。  実は、ことし元旦、一月一日、日本経済新聞一面トップ、特集の一回号が出されました。そのテーマは、「日本が消える」というテーマです。そして、その中の小見出しには、東京には死相が漂う、東京には死の様相が見えている。これは両方ともすさまじい表現ではないかなというふうに思います。ある種の非常に強いペシミズムみたいなものがこの日本の中に元旦から突然漂い始め、そして、これはこの間アメリカの上院の財政委員会でグリーンスパンとJ・ロックフェラー上院議員の、日本でどうしてあんな悲観論が漂っているのかという論争にまでなったぐらいの状況になっておるわけであります。  しかし、確かにこの閉塞感は、ここ二、三年、強いものがございました。この一年でこの閉塞感を打破し、ペシミズムに少し終止符を打てるようになるかどうか。それとも、このままだらだらといって、日本は打ち沈んでいく国になるのか。ある意味で、この一年は非常に大事な年ではないかなと思います。  ただ私は、このペシミズムの陰にある強烈ないらいら感というものを大切に見ていきたい。いらいらするからこそ回復へのエネルギーがあるのだと思うのです。日本の社会というものが非常にたそがれていったときに、だれもいらいらしないで、まあこういうものだなと思って、特集も組まないで、タイトルもつけないでみんながいたら、それこそ危ない国なんだけれども、ここの強烈な問題意識という中に、私は将来解決へ向けてのエネルギーに転化できるものがあるのではないかというふうに思っております。  この日本全体を今取り巻いております感じにつきまして、ちょっと本当に漠とした質問になりますけれども、非常に気になる重要な点でございますので、総理の御感想を、ございましたらお願いいたします。
  182. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も、先日のアメリカ上院におけるロックフェラー議員とグリーンスパン議長とのやりとりを拝見をいたしました。そして、こういう記事が出る、そのもとになるような議論がアメリカの上院でなされるということ自体に、我々がいかにこの状況を厳しく受けとめながら切り抜けていかなければならないかということを感じたようにも思います。  私は、その意味では、確かに、今議員はペシミズムという言葉を使われましたけれども、二つの背景があるような気がいたします。  一つは、その経済的な面において。すなわち、円高が頂点に達しましたころ、まさに企業が国を選ぶという言葉があちこちでささやかれました。そしてまた、事実、大競争時代、企業は海外に相当生産拠点を移しました。それがその後、為替が変化いたしましても戻ってはまいりません。そして、まさにそういう状況であるということが明確に認識をされましたこと、その結果として海外投資が進む、結果として空洞化が生ずる、あるいは雇用不安が生ずる、企業の収益や株価が低迷する、さらに為替が不安定、わあっとこういう感じで、私、一つ不安感が出てきた。  それに加えて、これは大変不幸なことでありますけれども、社会現象の中で、例えばいじめ、青年の非行、麻薬、覚せい剤、あるいは地域犯罪が、地域社会の、昔であれば非常にしっかりとしたつながりでもってかばわれたような部分に発生をする。これが、往々にしていじめとか何かとも連動している。さらに、サリン事件といった大変凶悪な犯罪が起きた。何となくやりきれないものが皆重なったような思いは確かにいたします。  と同時に、私、今いらいら感という言い方をされたのは非常にうまい言い回しだなと思ったのですが、むしろ私もそのムードというものを逆に現状を突破していくためのエネルギーに使わせていただくことができないか、そしてそれぞれの、私は改革のエネルギーというものの中にむしろそのうっくつ感を逆にばく進剤として使うことはできないか、そのような思いを持っております。特に規制緩和等を進めるときにこうしたエネルギーが私は貴重なものになるだろう、そのように考えております。
  183. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今のいらいら感、うっくつ感というものを改革へのエネルギーに変えていかなければならない、全くそのとおりだと思うんです。  それで、このような現象には、私は先輩があるんじゃないかと思います。実は今から十年ぐらい前のアメリカというのは、今と同じように、なかなか、社会の中は経済の運営がうまくいかなくて、非常に問題が多かった時代ではなかったかと思うんですけれども、その辺の事情をどなたか大臣、御説明いただけませんか。
  184. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 十年前ということでございましたけれども、正確に十年前は一九八七年ということになりますが、八〇年代のアメリカは、総じていわゆる財政赤字、それといわゆる経常収支の赤字と、双子の赤字に悩んでおった時代ですが、特に一九八七年は、経常収支が最悪に落ち込んだ年であります。したがって、当時、レーガン大統領のときの時代だったということでありますけれども、いわゆるSアンドL、貯蓄貸付組合という、セービング・アンド・ローンだったかな、Sアンドしというものの倒産やら何やらが、不動産投機が終わった後を受けて、そういった意味では極めて状況が厳しく、我が国でいえば住専問題等々と似たような問題が起きておった時代だったと思っております。  これに合わせて、七九年がアフガン侵攻、八〇年にレーガンが大統領に選ばれて、八一年からレーガン政権が始まったんですが、ここに合わせて、いわゆる税制の改革に合わせて規制の緩和を大幅にやるという時代で、いわゆる財政の赤字で、税金は下げるが赤字はどんどん膨らむというような時代を何とかするために、規制の緩和を大幅にやるということで、特に航空関係の規制をやって、パンナムがつぶれたりTWAがつぶれたりいろいろいたしましたけれども、そういう激しい変動を受けて、結果としてアメリカがやっとこう起き上がってくるようなものがほとんどその規制緩和によって行われたというのが、十年前がそのちょうどきっかけ時代、経常収支の面では最悪な時代というのがあの時代の主たる背景だったと記憶します。
  185. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 十年ほど前のアメリカはまさにそのような状況だったと思うんですね。  一方、十年前の我が国はどうだったかというと、昭和六十三年ぐらい、何だってうまくいったころですよ。ジャパン・アズ・ナンバーワン、世界の中で日本はトップだと。そして、貿易の黒字はどんどんたまる、自動車は売れていく、半導体も、我が国の製品が世界のシェアの中でかなりのものを示す、そして、日本型経済、経営、かんばん方式は、アメリカのタイム、ニューズウイークにしょっちゅう出てくる。ある経済人は、もう我々はアメリカに学ぶものは何もないとまで豪語した時代ですね。だから、一方、アメリカは物すごい動揺の中にあった。  そのとき、それから十年の両国の歩みというものは、実は我々にいろいろなことを考えさせるんではないかなと思います。片方、アメリカは、御承知のようにいろいろな努力をした。しかし一方、我々は、当時自動車の普及率が七、八〇%までなって、そして電気洗濯機、電気冷蔵庫、それから電気掃除機なんかはほぼ一〇〇%あって、家庭に普及して、そして明治以来の目標である、諸外国にキャッチアップする、坂の上の雲を目指して頑張っていくあの努力がもう実現したというふうに勘違いしたときだったのではないかなと思います。  しかし、そのときにはもう既にいろいろな問題を抱え始めて、実は、仮に万が一キャッチアップしたのならば、その次の目標を社会とか政治が考えなければだめになっていくのですけれども、人々はそこで、この国は成熟したという言葉を使った。成熟経済、成熟経済というのが当時はやり、成熟社会だといってみんなでしゃべっているうちに、実は、成熟という言葉の後には何があるかというと、老化しかないのですね。その社会が老化していくということをだんだん認め始めているんだということに気がつかないで、成熟という言葉を使う。  しかし、心の中ではどこかで、本当に欧米のような豊かさになったんだろうかというとそうでもない。真の豊かさがあるかといえばそうでもない。大都会でいえば住宅が悪い。我々のような農村地帯に行けば、国際的に通用するような雇用機会とか働き場所が少ない。いろいろな意味でひずみがまだあったのだけれども、そこの分析をやる前に、とりあえず日々の豊かさで満足して、そして、目標を探そうとする努力が必要なんだという認識を我々政治家も、行政の方も、社会の方もしっかり持たないまま、いらいらしているうちに、あっと思ったらそばに土地と株と絵画があったものだから、いじくっているうちにバブルの経済になった。言うならば、これで六年ぐらい我々は目標を探すことをしないで偽りの活動をしたのではないか。  そして、その後、バブルが崩壊した後五年は、私は、バブルも答えではないということがわかったものですから、政治制度をよくすればこの社会は立派になるんだろうと思ったのではないでしょうか。  政治制度、特に選挙制度を直せば、立派な国会議員が生まれて、政策論争して、すばらしい議会になって、そしてすばらしい政治家が出てきて経済ビジョンを打ち出して、この国は明るくなると思ったんだろうと思うのですが、私は、そんなに選挙制度で政治家が変わるものではないということがはっきりわかったのが今だと言うと、いろいろ我々も問題があるわけですけれども、去年の十月の選挙ですね。そんなに違った政策論争が起きるわけではないということにみんな気づいて、そして今、本当に十年前から持っていた問題の根の深さに気づいてはっと思ったときに、強烈なペシミズムに陥ったのではないかというふうに思うのです。  ですから、この十年の過ごし方の違いというのが大きかった。だから、先輩のアメリカ、何でもアメリカを先輩と言うのは嫌なんだけれども、この意味では、問題を克服したプロセスとしては、やはりアメリカは一つの先生と言っていいのではないかなと思うのですね。  通産大臣にお伺いしたい。  そのアメリカが、本当に最初の五、六年いろいろ処理をしてきた、一体本当のかぎというのは、また大蔵大臣からお聞きしてもいいのですけれども、どの辺でこの十年をうまく克服して現在の株価まで持ってきたり景気のよさまで持ってきたのでしょうか。十年前のアメリカの株価は、たしか千六百ドルか二千ドルを切っていた。今、六千七百か七千ドルかよくわかりませんが、それぐらいだろうと思うのですが、どうしてここまで持ってきて、我が方はどうして三万八千円が一万八千円まで行っちゃったのだろうか。この彼我の差、どうしてこうしたか。御見解があればどうぞ。
  186. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 通産大臣でございますので、株価の点は大蔵大臣の所管だと思います。  今おっしゃったように、加藤幹事長の御賢察のとおりだと思います。それは、近年の米国経済は、幾つかの課題を抱えながらも、一九九一年三月に始まった現在の景気拡大が戦後三番目の長さになったというように、比較的良好なパフォーマンスを続けている、こういうことですね。  実は、そのアメリカ経済の復活の要因というのは、断定はできないものの、御指摘のとおり、大企業のリエンジニアリング、リストラや規制緩和の推進、あるいは店頭取引市場の活性化に向けたような取り組み等によってベンチャー企業が次々と創生されてきた、このような実は理解をしております。そういうことで、現在の米国経済が好調と言われるのは、このような改革の成果だという側面が大きかったと思っております。  以上です。
  187. 三塚博

    三塚国務大臣 加藤委員、的確な御指摘であります。  アメリカ合衆国、ニューヨーク市場ウォール街でありますが、ブラック・マンデー、五百ハドル、史上最低の下げ幅をいたしましたのでありますが、顧みて十年、まさにダウ平均、毎日更新するようなドルの独歩高という傾向にあります。  不思議な現象だと見る人もおりましょうが、まさにそれは国力の背景がしっかりしておる。それは、政治経済の分野におけるリーダーの国であるということもさることながら、特に、双子の赤字解消のために果敢なチャレンジをして、なおかつ、ダウ平均が史上最高と言われるさなかにありましても、ドル独歩高と言われる状況にありましても、財政改革のために真摯な努力を今、ただいま続けておるという、国家観、国民観と言ってもいいんでしょうか、この国のため、そしてこの国に住む一人一人の幸せのために、やり得べきことはやはり健全財政の中で取り組んでいかなければならないということであろうと思います。  もちろん、産油高、貯蔵量、埋蔵量において依然として世界一と言われるベースもあります。プライオリティーの点は幾つかあるのでありますが、経済はやはり力関係であります。それと、資金市場であるマーケットがグローバルであるということ、これもあずかつて力があることでありますし、アンフェアというのはアメリカ人が一番嫌うところでありまして、フェアであるということ、総理から言われましたとおりディスクロージャーが進む、自己責任、そしてフリーダム、こういうことで進んでおるということであろうと思います。期せずして、今日にある。我が国は安心をして、頑張り抜くときにちょっと一息抜いたんじゃないんでしょうか。それは感想として持ちます。  変わるべき変革の時代に、やはり先取りをしていくというチャレンジ精神がございませんと、私どもは後世に悔いを残し侮りを受ける、こういうことになると思います。
  188. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 今申しました十年前のアメリカというのは、言ったように大変なペシミズムがあった。そのときにアメリカ人が非常に読んだベストセラーというのが、ポール・ケネディの「大国の興亡」という本だそうです。あの本です。イギリスの歴史学者のポール・ケネディが書いた分厚い本ですから、専門的な本ですから、これを読み通した人というのは実は案外多くない。しかし、そばに置いておいて、自分たちの国が今置かれている歴史的位置づけはどういうものだろうということを考えるというだけで、先に向かっていく努力自分がしているんだという気持ちでみんな積んでおいたというんですね。  私は最近、司馬遼太郎さん、亡くなられたけれども、司馬遼太郎さんの本がここ二、三年非常に売れているというのは、それと似たようなところがあるんではないか。私たちも、一回この時点の、一九九七年、この時点の日本を位置づけて、そして、ある意味じゃ十年おくれの問題意識かもしれません。十年おくれの問題意識かもしれませんけれども、遅くはない。これから必死に頑張っていくべきではないだろうか。  「谷深ければ山高し」という言葉を昔聞いたことがあるのですけれども、この落胆の気持ちが深ければ深いほど、向かっていく山は高くなるかもしれない。この日本の中にある一種のたそがれ感、午後三時みたいなこんな感じ、これを何とか払拭して、もう一回、明るい午前十時か十時半か十一時ぐらいの国に持ち返していきたい、そのために頑張っていただきたい。  そのために、経済構造の面でも必死の思いをこれから総理はなさるし、また、具体的に経済構造のこれからのプランを発表されたり、これからのスケジュールをお考えのようですけれども、一言お聞かせいただきたい。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は今、加藤幹事長と通産大臣また大蔵大臣の議論を非常に興味深く拝聴いたしておりました。そして確かに、十年前のアメリカと対比する、おもしろい視点だなと思いながら、同時に、アメリカにはあった、しかし我々にない、あるいは我々の方がより重い荷物を背負ったなと思う部分がございます。  それは一つには、何といいましてもドルというものが国際基軸通貨でありましたために、例えばプラザ合意が象徴いたしますように、ドルが不安定になることは各国が望みませんでした。ですから、主要先進国が力を合わせて、ドルの価値を維持し安定させるための努力をいたしました。そしてその結果、日本は、非常に速いピッチで、プラザ合意以降、円の価値が変動していったことを思い起こしていただきたいと思います。  残念ながら、円は国際的にまず第三位の通貨という言い方が適当かどうかわかりませんが、ドルに次ぐ立場を、DMそして円というものは持っております。しかし、基軸通貨の中心ではありません。そうしますと、円の価値を維持するために世界じゅうの国が協力をしてくれるといった甘い幻想は我々は持てません。むしろ我々自身が円の価値を安定させる努力を払っていく、その上での協力体制というのが国際金融の世界の考え方であろうと思います。  今、よく円安という御批判を受けるわけでありますが、正確にはDMもスイス・フランもドルに対して弱含んでいる。しかし、いずれにしてもこれが行き過ぎることを我々としては好まないとすれば、むしろそれでは国際協調でドルの価値を下げられるか。今、私はそういう雰囲気ではないだろうと思うのです。ここに私は日本アメリカの一つの違いがあると思います。  もう一つは、アメリカの方がより人口構造として若い国だということであります。言いかえるなら、我々の方がそれだけ大きな課題に取り組まなければなりません。  いろいろ御批判も受けますけれども、そして一点に絞り込めと言われますけれども、私が、改革を一点に絞り込んだだけで効果が上がる状況ではない、我々はすべての改革を、決して欲張っているんじゃない、そろえて進めていかなかったら乗り切れないんだということを申し上げ続けているのも、そうした状況を踏まえてのことであります。  我々はまさに、今、議員が引用されましたように、深い谷から上がるとすれば、思い切って上がっていかなきゃなりません。そのためには我々の力の及ぶ限りの努力を払っていかなければなりませんし、その場合に影の部分になる方々に対しても、ある程度はお許しをいただかなければならぬ。鬼手仏心という言葉もあります。そのような言葉が必要にならないことを願いますけれども、それだけの厳しさは必要である、そのように思います。
  190. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 私は、この国は未来のある国だと思っております。一つ目標をしっかり立てれば、我が国には三つのものがある。一つは、大変すぐれた人材。教育水準の高い、やる気のある人材が一億二千五百万人いる。それから、世界に冠たる資本蓄積をやった国である。それから、技術力もかなり創造的になってきている国だ。その三つがあれば、ここにシステムのチェンジを入れていけば、かなりのことが私はやれる国だなというふうに思っております。  火の玉行革橋本総理という言葉が今新聞に書かれてありますが、あの言葉が出るようになったのは、正直のところ言って犯人は私でございまして、実は去年の十一月の四日の日、日曜日、総理のところにお邪魔して、幹事長を続けさせていただくかどうか、その相談をしたときに、橋本総理は、私は火の玉になってこの六つの改革、当時は五つでしたけれども、取り組むつもりだ、それで、必死にやってみるということを言われまして、かなり本気でおっしゃっているなと私は思いました。かなりの気迫だなと思いました。  そこで、外に、火の玉になってもやるという気迫でしたよと言ったものですから、それがその後ひとり歩きして火の玉行革という言葉になった。言葉が生まれた責任者の一人でもありますので、我々党としては、必死になってその改革を支えていきたいというふうに思います。  その際に、どうしても、今橋本総理がおっしゃいましたように、改革を進めていくと幾つかのところで摩擦が出てくるかもしれぬ。そこで、当面の問題を一、二、御質問いたします。  株なんですけれども、きょう野田毅さんがこの委員会で議論されていたのも、政府の予算案が悪かったから株が下がった、こうよく言われていまして、ことしの初め、当初から新聞でそうめちゃくちゃに書かれていますけれども、これは私、ちょっとおかしいなと思うのですね。実は犯人は新幹線のばらまきだ、これで株が下がったというのですけれども、新幹線を決めたのは何日だったか、運輸大臣、覚えていますか、しっかりと決めたのは。
  191. 古賀誠

    古賀国務大臣 政府与党で申し合わせをさせていただいた中で合意させていただいたのは、クリスマスの日の十二月の二十五日だったと思っておりますが。
  192. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 そうなんです。十二月二十五日なんです。それで、株の大納会というのは、大蔵大臣、三十日か何かですね。それから四、五日、株価は動いていないのです。政府予算案が決まった、ばらまきだと言われた予算案が決まったのは二十五日ですよね。主計局長、そうでしょう。それから五日間、株は動いていないのですよ。  ところが、新年になって、それから四、五日たって新年の初めてのマーケットでがたっと下がってきた。だから、これは私は違うと思うのです。そして、特に下がったのは金融株であり、建設株であるとするならば、恐らく改革がかなり本気で進みそうだとなって、そこで、その影響に耐えられるか耐えられないかというところの株がそれぞれ下がったり、上げ幅が低かったりしたんじゃないでしょうか。銀行株なんか見ると典型ですね。  私たち与党から政府サイドを見ていますと、改革で一番先に進みそうなのはビッグバンですよ、金融改革。これはかなり具体的な足音が聞こえてくる。そうなると、金融界にしてみれば、ああ、あそこの銀行はどうのこうのということになる。  それからもう一つ。公共事業が多過ぎた、けしからぬ、けしからぬと野党の方はおっしゃる。ところが、ちょっと待ってくださいよと。去年、補正予算を出したときに、新進党は、我が党が出した補正予算与党三党が出したもの、そんなものじゃ足りないと。当初予算並みにふやさなければ通さないと言ったんですからね。補正予算は景気対策としておととしは二十兆近くやりました。平成八年は五兆ですよ、今度のを認めていただいて。四分の一です。  それから、公共事業はここ数年、七、八年ですか、毎年五%は上げるものだということで当初予算を組み始めて、仕上がりが四・五とか五・〇に近いわけですね。今度はゼロにしたわけです。それは一・五ほど伸びていますけれども、これは消費税のはね返りですから、実質はゼロの伸びですね。だから、建設関係の株が下がるのは私は当然だと思いますよ。公共事業にかなり依存している建設株の方が下がるのは当然である。  だから、今ここでの問題は、改革をやれば役所の人が職場がなくなるとかポストがなくなるとかというそんな話だけではなくて社会全般にかなりのいろんなひずみが出てくるんだけれども、それを覚悟してもやりますかというのが実は今問われている問題ではないかなと思います。  具体的に言えば、金融界はかなり弱っています。建設界も、不良債権等いろいろな問題があって弱っています。だから、その弱っているときだから、そこで大変な大きなオペレーションをやつてはよくないんじゃないのと考えるか、それとも、弱っていることはわかっていても、しかし将来よりしっかりとした体力つけるためには我慢してここでやるんだと考えるか、そのどちらかの選択は総理にとっては非常に重要な選択だと思うんですが、いかがですか。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今改めて業種別の日経平均株価を見ながら議員の御意見を承っておりました。  確かに、九六年の一月を一〇〇とした場合、一〇〇のラインより一月三十日現在で上にありますのは、例えば自動車、電気機械、その一〇〇の線を下回っておりますものを拾い上げてみますと、不動産、建設、銀行、証券。昨年の一月を一〇〇と考えました場合、証券はほぼ六〇に、銀行は七〇をちょっと下回る、今そんな水準にございます。いま一方、自動車が一一〇をちょっと上回っており、電気機械も一〇五に近いぐらいの数字でございましょうか、こんな感じになっております。  ですから、私はあえてそれ以上のことを申し上げるつもりはありませんが、先ほども申し上げましたように、我々は本当に谷底からはい上がっていかなきゃならない、そのために構造改革というものを進めていかなきゃなりません。  そして、私は先ほど光と影という言葉を使いましたけれども、改めてこれを実施していこうといたしますと、まさに痛みを生ずる部分があるわけです。そして、短期的に一部に出る痛みというものを我慢して前進することができなかったら、そこで手を緩めてしまったら、私は、問題をより先に送るだけで、次に手をつけなきゃならないときはもっと深刻になるだろうと思います。  その意味では、我々がこの国の経済というものを本当に、先ほど委員の言われたような、ペシミズムと言われるような中から、これも委員の言葉をかしていただいて、いらいら感を利して突き抜けていかなきゃならない、こういう状況を打破していかなきゃならないという場合に、その痛みを耐え抜いていくというのは何としてもやはり必要なことだと私は考えておりますし、これを実行することで中長期的な経済発展の礎はつくられると思うんです。  もとより、真に困る方々に対して手を差し伸べる用意をすること、それは当然です。しかし、ある程度の影響は我々として耐えていかなければなりませんし、また耐えていただかなければならぬ場合が、そういうお願い国民にしなければならない場合が生じることは事実であります。
  194. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 若干熱が出ても、若干の危険な部分があったり影の部分があったりしても、それを現状のままで置くのではなく、やっていかないと先々が見えないという御趣旨だと思います。大変だと思いますけれども、我々もそういう気持ちでお手伝いしていきたいと思っています。  ただ、その際に一つだけ金融の問題についてちょっと心配な部分があるのでないかということをよく言われます。不良債権がその後、去年の見通しよりもふえているのか、ふえていないのか。先ほど、大して変わりはない、少しずつ進んでいるという討論があったように聞いておりますけれども、まあ私は、不良債権の問題はできる限りオープンにしていく、ディスクロージャーをしていくということが必要だし、それから銀行の、いろいろな問題を抱えている銀行としても、経営努力とか必死の早期是正措置とかでいろいろな手当てを組んでいくべきだと思うんですが、ただ、最後の最後になったら、公的資金の導入も含めて、何らかの手を打つカードがあるということだけでかなり抑止力になる、破綻に対する抑止力になる部分があると私は思います。  それで、先週の十チャンネルの「サンデープロジェクト」というところで、西岡新進党幹事長、菅直人民主党代表、そして私が三人で討論いたしましたときに、この公的資金の導入もあえて辞せずに頑張っていくべきであるということで、菅さんも言い、西岡さんも賛成を表明され、そして、きょうのこの議場でももう一度西岡さんはそれを表明されたそうですけれども、私は、いたずらに使うべきではないけれども、ぜひこの公的資金の導入の問題も頭に入れているという政治的な判断を我々は持つべきでないかなというふうに思っております。  これは今の段階ではなかなか答えにくいところだろうと思いますが、大蔵大臣か総理か、御感想ございますか。
  195. 三塚博

    三塚国務大臣 その前に、不良債権の問題は着実に解消に向かって進んでおりますと申し上げました。これはさすが日本の銀行団だと思います。リストラをやり、積立金を取ります等々などをやりまして、確実に不良債権を解消いたしております。もちろん、黒字でありませんければそこまでまいらぬわけでありますけれども、無税償却でございますから、さらにそのことで頑張るように激励をし、場合によっては指導も申し上げておるわけであります。  金融の第一は安心であります。そういう意味で、ただいま加藤幹事長御紹介のお三方のお話、そこでそれなりのお話をされたということでありますが、私の立場からいたしますと、金融市場は自力でしっかりと立ち上がる、それだけの力はあり得るのだ、こう見ておりますし、株式市場もやがて正常な、力相応のところまで行くだろうと信じて、期待をいたしております。ドル高、独歩高の中における世界経済の安定の方向、行き過ぎたものにつきましては適切に対応するということを言い続けておるわけでありますが、そのレベルに言及したことはございません。こういう配慮の中で今後に対応していかなければいけませんし、ただいまの加藤代表の御質疑に対する御心配、御懸念、対応をしっかりやれという御激励はしかと承ってまいりたいと思います。
  196. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 改革を進めるときに一つ問題があります。それは財政再建のことです。  経企庁長官、まずお伺いしたいと思うのですが、六百三十兆の公共投資の計画ですね。これは決めたとき、私も与党の政調会長でございましたから、かなり関与いたしております。あのときは、とにかく円高が物すごくて、日本の黒字が物すごくありまして、日米関係が非常にまずくて、内需拡大ということを非常に言われていたときで、やむを得なかった数字だったとも言えると思うのですが、今諸外国は、どちらかといえば日本に対しては財政再建の方をより強く要求しているのではないか。したがって、六百三十兆というのは、これからの様子を見てもなかなか実行できないかもしれないし、考え直すべきときに来ているのではないかと思うのですが、諸外国との関係も含めていかがですか。
  197. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 公共投資の基本計画のお話でありますけれども、御存じのように、最初は加藤政調会長の、これは平成二年に四百三十兆、SIIとの関係でこれができたと伺っております。その後は村山内閣のときに、平成六年に見直しをやってプラスの二百兆、アローアンス三十兆というので、最終で六百三十兆円になったという経緯で、いずれの場合もアメリカに対する一種の、当時の約束でもありましたし、またサミット等々で当時の村山総理大臣からの発言にもなっておりますので、これはある程度の対外的なものとして大事にしておかねばならぬ約束の一つに数えられるものだと思っております。  ただし、御存じのように、財政健全化計画等々、私どもといたしましては、これは危機的状況にあります財政というものを考えました場合に、OECDからの今御指摘になっておりました文書も、確かにOECDから、一九九七年度の中央及び地方政府の財政赤字は対GDP比五カ四分の一%となり等々、いろいろ御指摘をいただいておるところでもありますので、総理のお話にもありましたように、聖域なしということで、いろいろな意味で幅広く検討していかねばならぬということであろうとは思いますけれども、今、この状況をもう少しきちんと見きわめた上でやっていかねばならぬと思っておりますので、我が国の経済構造の改革等々の内容を見ながら検討していかねばならぬと思っております。
  198. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 六百三十兆についてはまだ結論が出ないということだと思うのですが、ただ、総理の強力なリーダーシップでそれぞれの公共事業のコストの見直しというのをやっておりますね。それから、これは毎回我々も言われるのですけれども、公共事業、各種項目の中のめり張りをつけたシェアの見直しということを言われるわけであります。  この二つをどんどんと本気で進めていきますと、実は、今政府の中にある各種七カ年計画、十カ年計画、五カ年計画、まあ十三、四本あるのじゃないかと思うのですが、あれをそのままにしていいのかねと。めり張りをつけて、ふやさなきゃいけないという公共事業は、今の五カ年計画よりも多くしなければいけないかもしれない。それから、二割ほどコストをカットできて土地代もカット、前よりも安くなっているから、もうちょっとこの事業は安くできるし、それから、いつまでもこの事業をやる必要ないだろうというような事業については、その長期計画を減らさなきゃならぬというときが来るのかもしれない。  いずれにしても、四十兆とか五十兆とか七兆とか八兆とか大変な公共事業の金額でありますから、これの長期計画を見直すかどうかというのは財政問題と非常に大きくつながっていると思うのですが、長期計画を一番多く持っておられる建設大臣、覚悟のほどはいかがですか。別に、全部減らそうと言っているのじゃない。ふやすのもあってもいいかもしれない。
  199. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 覚悟のほどということでございますが、私どもは今、委員の御質問のとおり、必要な社会資本整備は着実にこれを整備してまいりませんと、国民の富を当面飲んだり食ったり遊んだりという形で費やすということは長期的に私は決してプラスではない、子々孫々に対してもこれは責任のある態度ではない、このように思います。  財政再建はもちろん大事でありますけれども、そういう中で、委員御指摘のようにめり張りをつけながら、諸外国に比べまして、先進国に比べましてまだ半分程度の整備率でございますから、我々としては計画的に、中長期の場合あり、五カ年計画とかそういう形で取り組んでいった方がいい場合もあるわけでございますし、御承知のように、経済状況あるいは財政状況も変わってくる場合もございますから、そのあたりは実際には単年度予算との関係で弾力的な運用も必要である、このように考えます。
  200. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 この問題は党の方でも、めり張りをいかにしてつけたらいいか、これから来年度のシーリングに向けていろいろ勉強したり調査したりしたいと思っております。ある一定量の事業量を考えて、そしてそれに対するコストが二割カットできるならば、それは長期計画もカットしなければおかしい、いや、金額を同じにするなら事業量をふやすということになるわけでありますので、その辺をやはり業種ごとに弾力を持って考えていかなければいかぬときに来ているのではないかなと思います。  さて、今日本の中で、政治で一般の市民が、国民がどういう議論をしているかといいますと、我々にとって沖縄問題というのは非常に重要だし、大変なんですけれども、余りそこは議論してくれていない。しかし、演説していると意外にみんな目を輝かせてくれるのは、将来あなたの生活はどうですか、特に老後はどうですかというものですね。これについては、例えば介護保険の難しい話なんかしましても、結構波静かに打つように聴衆は聞いてくれる。この将来の自分の姿というのはどうなのかというのがいろいろな雑誌に出ています。  経済同友会が出したあるレポートにおもしろいのがありまして、二人の三十歳の男が同じ商事会社に勤めた。そうすると、A君の方は仕事が趣味で、接待や同僚、上司とのつき合いはよい。会社人間のこの人は、自己開発を怠った結果、定年後妻に離婚され、相談できる友人もなく、近所づき合いもなく、仕事いちずで無趣味だったものですから、何もできることがなく、途方に暮れている暗い老後、これがAケースなんですね。  経済同友会のレポートは、Bケースとして、一方、B君の方は、会社の激務の傍ら幅広い知識や人間関係を求め、努力と投資を惜しまなかったので、定年後いろいろな資格を持っていて第二の職場で勤務ができた。友人が多い。近所づき合いは家族ぐるみ、ボランティア活動は夫婦で参加し、パソコンで知り合った仲間と釣りを楽しむ楽しい老後。それで、趣味で料理もできるので、時々腕を振るってくださいと息子夫婦に言われて、孫の誕生日に料理人として出かけていって一家団らん、こうなっているのですけれども、これはどうも日本の社会のシステムというよりも、自分が会社の中にいてどういう心構えで人生を過ごすかという個人の過ごし方論みたいな感じがするのですね。  しかし、ただ、もう一つ重要なのは、このままの年金生活や中央と地方の関係、規制緩和が行われていない状況だと、本当にこんな生活がどんなぐあいになっていくのだろうかという、そういう政治がもたらす、制度がもたらす将来像というのがあると思うのです。  例えば、この間私は、私の後援会の若い連中が東京に来たので、一晩飲んで、どんな生活がいいと思うかと聞いたら、やはり自分たちが育った地方中核都市の隣ぐらいの町に相変わらず住む。地方中核都市にはしっかりとした、中央と同じレベルの大学があって、そこで卒業後、アメリカには一年ぐらい留学する。しかし、帰ってきて地元の企業に就職するが、これがちゃんと国際的に通用する企業で、三百人ぐらいの人数だ。これは今でも案外無理のない話で、コンピューターソフト会社なんかは、全部東京にあるかと思ったら、意外にアドレスを見ると香川県の田舎にあったり、と言うとちょっと香川県に失礼ですけれども、山形県にもあるのでしょうけれども、そういう意外な田舎にあって、ちゃんと仕事が成り立っているというのですね。そこで情報は、中央のものはパソコンをちゃんとクリックすると簡単にアクセスが、いろいろな官庁の資料にも行くし、それから、新しい製品が出たら、その特許申請も電子メール、ペーパーレス作業で特許庁にできる、こういうぐあいなんです。  それで、奥さんは市役所に勤めているかなんかで、結構自治体に自己財源があるものだから、駅前再開発なんかにクリエーティブに働いている。それで、二人ともちょっとやはり何か自分たちのことだけじゃおもしろくないので、地域のサッカークラブを育てるのに一生懸命頑張ったり、それからボランティア活動をしたりして、結構人間の幅を広げていくというようになればいいな、こう言うのですけれども、こういう社会というのができるでしょうか。  問題は、今言ったことの幾つかの中に、例えばパソコンなんかで諸外国と連携をとって、コンピューターグラフィックでつくったデザインをドイツのお得意様に届けて、そしてすぐ返事をもらうとなると、かなり光ファイバーの容量が多くなければならないのですけれども、具体的なことから言いますけれども、郵政省、その準備はちゃんとできているのでしょうか。
  201. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま幹事長からお話がありました光ファイバーの敷設の状況でありますが、ちょうど幹事長が政調会長時代にいろいろ御配慮いただきました超低利の融資制度並びに税制を利用いたしまして、今着々敷設をいたしております。現在のところ約一三%でありますが、二〇〇〇年で約二〇%、そして二〇〇五年で六〇%、そして二〇一〇年に大体一〇〇%の敷設を終わりたいということでありますが、現在の段階で大体一年前倒しの状況で進んでおる次第でございます。  先ほど委員からお話がありましたように、もうマルチメディア時代に入っておりますので、今我々の農村地帯でも、最近はインターネットが普及してきたし、あるいはパソコン通信というものも流行をしておるのに私自身驚いておる状況であります。この光ファイバーがさらに敷設が、基盤ができ上がることによって、良好な画像あるいは音声というものが確保されますので、田舎というか農村においても、私は、このような新しいメディアの状況が利用できる、こういうように思っております。
  202. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 通産大臣、将来特許申請がインターネットでできるようになりますか。
  203. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今おっしゃるように、特許分野におきます電子化については、平成二年の十二月より世界で初めて電子出願の受け付けというものを開始しております。これが世界に先駆けてのペーパーレス化を実現したということでございまして、これからは、この情報通信技術の飛躍的な発展の中で、特許の手続を従来の紙出願から電子出願に移行させることができるということで、さらに、来年の四月以降、日本じゅうどこからでも普通のパソコンでもって申請できるというふうに鋭意準備を進めております。  以上です。
  204. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 通産大臣に、ちょっとついでなんですけれども、ついでと言っては申しわけないのですが、ちょっと事前にお知らせしておいたのですが、九州通産局総務企画部企画課に総括係長の湯川俊明という人、いますか。
  205. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 私自身、直接会ったことはございませんが、今の御質問のように、九州の通産局の総務企画部企画課に在籍しております。
  206. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 いや、これをちょっと申し上げたのは、私の友人が、去年、この通産局の企画課で立ち上げたホームページというのですか、そこで通産局がやっている仕事というので、こういう資料はオープンにしましたというのを出したのだそうです。そこにアクセスしてみて資料要求したら、二日以内にこの湯川という人から宅急便でしっかりとした書類が届いた。それで感激したというのですね、よくここまで情報公開をやってくれたと。  普通は、それはオープンにしますよと言いながら、どこどこに、庶務課に案内する、電話が幾つか回っているうちに、送料をどっちが見るかみたいな話で結局だめになるというのが、これがすぱっと来るようになって、やはり世の中変わったなという印象を与えたそうです。  これは九州通産局だけなのか全国通産局なのかわかりませんが、やはり変わりつつあることは私たちはちゃんと評価していきたいなと思って、その流れをしっかりこれからやっていただきたいと思っております。  それから、さっき私が言った、ある地方都市の生活の中で、幾つかそれが可能になるかお聞きしたいんですが、時間もありません。  一つ、いわゆるボランティア活動というのがかなり地域の中での活動で大きな要因を占めるのですが、今度、我々議員立法でボランティア活動法案を出そうと思っております。それで、この点について一言、法務大臣ですか、しっかりと政府としても協力していただけるか、一言おっしゃってください。
  207. 松浦功

    ○松浦国務大臣 調査をいたしてみましたが、御提案の趣旨についてはまことに立派でございますので、ぜひその方向で御協力を申し上げたいと思います。
  208. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 総理、ちょっとボランティア活動で一つ申し上げたいのですが、この間、ナホトカ号の流出事件で多くのボランティアが行って、そしてその中では、心臓麻痺で亡くなられた学校の先生もいらっしゃる。そして、これは多分公務上災害にはならぬのだろうと思うのですね、ボランティアですから。そこはよくわかりませんが。  そこで、確かにボランティアで政府関係ないという建前なんですが、やはり政府としては、そこに何とか気持ちみたいなものをあらわすことが、なかなか今できないんだそうですけれども、そこに踏み込むことを、ほんの気持ちだけでもやはり遺族の方には、それはある種の慰めというか励ましになると思うのですけれども、そこを考えてみていただけないでしょうか。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回のナホトカ号重油流出事故発生以来、大変多くのボランティアの方々に御協力をいただいてきました。そして、その中で四名の方が亡くなられたわけであります。大変お海やみを申し上げる以外にない状況でございます。  そして、私自身、何かできないんだろうか、調べろということを申しておりましたが、それぞれのケースによっての、その方のお仕事の関係でいろいろな落差を生じでしまう。これはどうしたものかと思っておりましたが、何か政府として気持ちを示すことはできないか、国会でも御論議がありましたので、検討を指示いたしておりましたところ、本日の午後、政府として事務的な詰めば終わりました。新たに褒賞を行う、そしてその功績をたたえることによって政府としての気持ちをお示しすることにしたいという事務的な検討が終わったという報告を受けました。本日の審議が終わりまして、私、その内容を聞いて異論のないものであれば、その褒賞という形で感謝をお示ししたいと考えております。
  210. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 それは非常にいいお話だと思います。  さて、時間は終わりました。  私たちは、この国は改革を通じてもう一回明るい午前中の国にし得るんだということを心に決め、そして、一つ一つの改革がどんなに小さくても、それを、ああよくやったといってエンカレッジ、勇気づけて、褒めて、そして、それじゃもっと次の改革に行こうじゃないかという気持ちで取り組むべきだと思うんですね。  今とにかく、何にもやっていない、一つ規制緩和をやればそれだけじゃ足りない、千項目やれば二千項目でなきゃだめだというような総体の議論だけで、一つ一つの変化が今起きていることをみんな認めて幸せな気持ちで改革に取り組む風土がないんだと思うんですね。  私は、変革を認め合う、そしてそれによって前向きに進んでいく、そういう仕事をこれから我々党としてはやっていきたいと思っております。  政府の御健闘を祈ります。  ありがとうございました。
  211. 深谷隆司

    深谷委員長 次回は、明四日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会