運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-01-27 第140回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年一月二十七日(月曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 小里 貞利君 理事 高橋 一郎君    理事 中川 秀直君 理事 藤井 孝男君    理事 石井  一君 理事 権藤 恒夫君    理事 二階 俊博君 理事 中沢 健次君    理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    石川 要三君       臼井日出男君    江藤 隆美君       尾身 幸次君    越智 伊平君       越智 通雄君    大原 一三君       菊池福治郎君    栗原 博久君       桜井  新君    関谷 勝嗣君       田中 昭一君    高鳥  修君       竹本 直一君    中山 正暉君       野中 広務君    葉梨 信行君       林  幹雄君    松永  光君       村上誠一郎君    村山 達雄君       目片  信君    谷津 義男君       山本 有二君    渡辺 具能君       愛知 和男君    愛野興一郎君       石田 勝之君    太田 昭宏君       岡田 克也君    北側 一雄君       小池百合子君    鈴木 淑夫君       田中 慶秋君    中井  洽君       西川 知雄君    平田 米男君       鰐淵 俊之君    生方 幸夫君       海江田万里君    仙谷 由人君       日野 市朗君    松本 善明君       矢島 恒夫君    上原 康助君       北沢 清功君    岩國 哲人君       新井 将敬君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 松浦  功君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 小杉  隆君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  藤本 孝雄君         通商産業大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)事務代理  佐藤 信二君         運 輸 大 臣 古賀  誠君         郵 政 大 臣 堀之内久男君         労 働 大 臣 岡野  裕君         建 設 大 臣 亀井 静香君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     白川 勝彦君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      麻生 太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 伊藤 公介君  出席政府委員         内閣審議官   及川 耕造君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      生田 長人君         警察庁生活安全         局長      泉  幸伸君         警察庁警備局長 杉田 和博君         総務庁人事局長 菊地 光興君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         総務庁行政監察         局長      土屋  勲君         防衛庁参事官  別府 信宏君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁人事局長 大越 康弘君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         沖縄開発庁総務         局長      嘉手川 勇君         沖縄開発庁振興         局長      牧  隆壽君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 五十嵐健之君         国土庁防災局長 福田 秀文君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁次長   堀田 隆夫君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文部省体育局長 佐々木正峰君         文化庁次長   小野 元之君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省社会・援         護局長     亀田 克彦君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         社会保険庁運営         部長      真野  章君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         中小企業庁長官 石黒 正大君         運輸大臣官房長 土井 勝二君         運輸省運輸政策         局長      相原  力君         運輸省航空局長 黒野 匡彦君         海上保安庁長官 土坂 泰敏君         郵政大臣官房総         務審議官    高田 昭義君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済 小鷲  茂君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局公         務員部長    芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 委員の異動 一月二十七日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     竹本 直一君   臼井日出男君     田中 昭一君   江藤 隆美君     渡辺 具能君   桜井  新君     栗原 博久君   関谷 勝嗣君     林  幹雄君   高鳥  修君     目片  信君   村上誠一郎君     山本 有二君   中井  洽君     鰐淵 俊之君   西川 知雄君     鈴木 淑夫君 同日  辞任         補欠選任   栗原 博久君     桜井  新君   田中 昭一君     臼井日出男君   竹本 直一君     相沢 英之君   林  幹雄君     関谷 勝嗣君   目片  信君     高鳥  修君   山本 有二君     村上誠一郎君   渡辺 具能君     江藤 隆美君   鈴木 淑夫君     西川 知雄君   鰐淵 俊之君     中井  洽君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計補正予算(第1号)  平成八年度特別会計補正予算(特第1号)  平成八年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ――――◇―――――
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成八年度一般会計補正予算(第1号)、平成八年度特別会計補正予算(特第1号)、平成八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤井孝男君。
  3. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、平成八年度の補正予算審議に関連いたしまして、当面する国政重要課題と、昨今我が国の内外で発生した事件事故をも含めた諸課題について、橋本総理初め関係大臣質問させていただきます。  質問に先立ちまして、まず、ペルー日本大使公邸占拠人質事件は、発生してからきようで四十一日目でございます。九日ぶりにお一人の方が健康を理由にして解放されましたけれども、いまだ七十二名の方々人質としてとらわれておられます。人質となられた方々並びに御家族の御心痛を察するに、まさに胸が痛む思いでいっぱいでございます。心からお見舞いを申し上げる次第でございます。  同時にまた、新年早々、ロシアタンカーによる重油流出事故が発生いたしました。日本海沿岸の八府県、八十市町村以上に及ぶ被害が広がっておるわけであります。大変深刻な問題になっておるわけであります。この間、多くのボランティア方々が、大勢の方々支援に来られました。その方々の中にも、たしか四名の方ですか、お亡くなりになったと聞いております。心から御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。同時に、被害を受けられている地域住民皆さん方漁業関係者、あるいはまた自治体の皆さん方大変御苦労をかけておられると思います。心からこれまたお見舞いを申し上げますとともに、多くの、全国からの支援をされている皆さん方ボランティア活動皆さん方に、これまた心からなる敬意と感謝を申し上げる次第でございます。  まず、総理に御質問させていただきたいと思います。  昨日、一昨日、二日間にわたりまして、韓国金泳三大統領との首脳会談が開かれました。私も実は、一昨日六時の両首脳記者会見を聞かせていただきました。大変成果があったと私も喜んでおります。これからの両国間の友好、さらなる発展のために頑張っていただきたいと思いますが、せっかくの機会でございますから、今回の日韓首脳会談について、総理のその成果についてまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この両日間の首脳会談を開催いたしました際、大分県、別府市初め特に地元の皆さんに大変この会談を温かく受け入れていただきまして、よい雰囲気で会談ができましたことを、冒頭この場をかりて感謝を申し上げたいと思っております。おかげさまで、無事首脳会談も終了し、大統領も帰国をされました。  私は、いろいろな言い方ができると思いますけれども、やはりふだん着て、両国の間に間違いなしに考え方の違いがある問題、例えば竹島問題一つをとりましてもそうでありますし、あるいは歴史認識の問題にいたしましてもそうであります。また、漁業協定を急がなければならない、あるいは境界画定交渉を急がなければならない、さまざまな部分お互い意見の違いがあることを、そうした問題にきちんと触れ、双方の言い分を主張しながらも、それを乗り越えて韓国日本未来に向かって協力関係を強化していかなければならない、そういう意思が双方にあることを確認できましたことが、私は一番大きなことではないかと思います。  この中には、例えば朝鮮半島情勢についての議論もございました。そして、いわゆるあの潜水艦問題というものが発生しました後、非常に粘り強い金大統領初め韓国関係者努力というものが北朝鮮側からの遺憾の意の表明につながり、それは日本韓国、それにアメリカを加えたKEDOの問題を進めていく上でも、また四者会合の実現に向ける努力という点でも将来に資するもの、そのような思いもございます。  あるいは、今までも例えばAPECにおいて、あるいはASEMにおいて、さらにはWTOにおいてさまざまな協力関係を我々は持ってまいりましたけれども、今回新たに韓国はOECDに加盟をいたしました。アジアで我々の同僚ができたという意味でもこれは祝福すべきことですし、同時に、今後協力し合っていく部分がこうした分野でもふえていくと思っております。  さらに、青少年交流でありますとかスポーツを通じて、一層両国の、殊に若い人たち交流し合うことによってお互い理解というものをより深めながら、できるなら韓国の若い方々日本の若い人々が一緒に国際社会の中で貢献できる道はないか、そうした道を探ろうではないか、そのような話し合いもなされました。  いずれにしても、お互い考え方の違う問題があることを認めた上で、将来に向けた協力関係が生まれていく、こうしたことは非常に幸せな方向づけだったと思っております。
  5. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今総理から、いろいろ日韓関係の問題についてお話があり、また成果があったという御披瀝でございました。  確かに、竹島の領有権問題、また歴史観の微妙な違いといったさまざまな微妙な課題もありますけれども、お話ありましたように、これから両国お互いに本当にきずなをしっかり持つことによって、朝鮮半島の平和的安定のためにぜひ総理もこれからも、ふだん着の関係というふうにもおっしゃられましたけれども、またそれは未来志向という形で、ぜひ両国の一層の友好発展のために頑張っていただきたいと存じます。  総理は、ことしの初めに東南アジア諸国訪問されました。施政方針演説の中でも総理は、この地域社会全体に躍動感未来への確信がみなぎっていることを改めて感じましたと述べられております。各国変貌等、実際歴訪されて肌で感じたことが多いかと思いますが、この東南アジア訪問につきましての御感想もあわせてお伺いいたしたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 実は、このASEAN訪問をどうすべきかを昨年の暮れまで私は悩んでおりました。これは先ほど議員からもお触れになりましたように、ペルー日本大使公邸における人質事件というものが非常に緊迫した状態が続いていた。そうした中で、果たしてこれを予定どおり行うことがどうなんだろう。ただ、結果として私は、やはりテロが日本国政を変えるということがあってはならない、そんな思いからこの訪問を決断をいたしました。  結果として、これは各国が、あるいはこの人質事件というものの解決のおくれる中で、中止されても今回は特別だという感じを持っていただいておりましたために、逆に、そのASEAN訪問を実施したことが、本気で日本ASEANを重視しているというそのあらわれという受けとめをしていただけた。その意味では、大変私にとりまして幸運であったとも思います。同時に、この機会に、今回の事件に対する我が国の基本的な考え方及びペル 政府対応ぶりというものを御説明しながら、各国からの支持の表明をいただけたことも大変幸せでありました。  同時に、私が今回の旅行で言い続けてきたこと、それは、ことしASEAN創立三十周年になります。既に七カ国になっておりますが、近い将来、ミャンマー、ラオス、カンボジアという三つの国を迎え入れ、そしてASEAN十カ国に広がる、そうしたことも既に公表されております。そうした中で、日本ASEAN交流というものは今まで以上に非常に大切なものになりますし、しかも、それはややもすると経済関係に偏りがちであった関係というものをこの機会にもっと幅の広い、あるいは文化その他まで広げたより深い関係を構築していきたい。  そして、その中で、ASEANに見せる日本の顔というものは、成功例を誇示する日本ではなく、過去の失敗の記録も我々は恥ずかしがらずに公表をする、そして同じ失敗をほかの人が犯すことを我々は絶対に望まない。言いかえれば、失敗例も公表することによってこれからの進展に役立てていきたい。例えば環境問題なんかが一つの例でありますけれども、こうしたことも申し上げてまいりました。そして、変わるべき日本の方向の一つとして、こうした点も喜んでいただけたのではないかと思います。  そして、それに加えてもう一つ申しましたことがある。それは、ASEAN日本、これが本当により繁栄と平和を享受していくためには二つ大事な前提条件があるだろうと。一つは、この地域に、すなわちアジア太平洋地域アメリカのプレゼンスというものを引き続き確保していくこと、同時に、中国をより建設的なパートナーとして国際社会に迎え入れる努力お互いが引き続いて払っていくこと、これが我々にとって非常に大きな課題ではなかろうか、こうした認識を申し上げましたが、この点についても、それぞれ言い回しは違いますけれども、非常に考え方を同じゅうすることができた、そのように思っております。
  7. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 たしか総理は、これからの日本アジア太平洋地域軸足を置かなければならないということをおっしゃっておられたと思います。そうした意味から、今回の訪問、今総理からのお話がありましたけれども、まさに経済的交流ばかりでなく文化的な交流も、これは人的交流も含めてでしょうが、そういったこともしっかりと見据えながらやっていかなきゃならないということと同時に、そういった中で、やはり日本が、私は、先進国という、そういうおごり高ぶったことは申し上げません。やはり日本が今、過去の成功例あるいは失敗例含めて、そうしたことを率直に、胸襟を開きながら話し合いながら進めていく。  そしてもう一つ、私は、今の総理の言葉の中に、アメリカ日本アメリカアジアとの関係、あるいは、いよいよ香港がことしの七月から中国へ返還されます。そうした中で中国ASEANとの関係、そして日本との関係、そうした中で、やはり私は、総理がリーダーシップを発揮されて、まさに軸足をしっかり置いて、これからのASEAN諸国との友好関係発展のためにも、また韓国と同様頑張って努力していただきたいことを申し添えさせていただきます。  総理、ことしになりまして就任一年を過ぎたわけであります。過去、一年を過ぎまして、振り返りますとさまざまな事柄が起きました。私は一々この事柄について申し上げるつもりはございませんけれども、先ほど触れましたように、ペルー大使公邸人質事件あるいは重油流出、昨年には土石流の災害あるいはまたトンネルの崩落事故、エイズ問題あるいはO157の問題、総理にとりましても、内閣にとりましても、我々国民にとりましても大変つらい、あるいは重い、そして残念なさまざまな事柄が次々と発生をいたしました。まさに総理は、一年を振り返って、心休まるときが全くなかったと言っても過言ではないと思います。  しかし、暗い話ばかりでなく、やはり明るいニュースももちろんございました。例えば野茂投手が大リーグで活躍されてノーヒット・ノーランを達成したとか、アトランタ・オリンピックで有森選手が活躍した。またつい先日のことですが、ダカール・ラリーで日本人として初めて篠塚選手が総合優勝した。我々日本人にとっても、日本国民にとっても元気づけられる明るいニュースも一方にありました。しかし、一言で言えば、多事多難な年だったと思います。  いずれにいたしましても、この一年間を振り返って、もし御感想等あれば、簡単で結構でございますが、一言お教えいただきたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょうどそのASEAN訪問の途中で、同行のプレスの方々から総理一周年という質問を受けまして、そのとき、ああ、本当にそんなにたっちゃったなという感想を持ちました。本当にさまざまなことがあり、一日一日を本当に大事にしながらという思いで来た一年だったと思います。  そして同時に、六つ改革というものを打ち出しましたが、この一年間、頭の中で理解をしておりました以上に戦後の日本というものが、豊かな国というものを目指しながら、平等性均質性というものを非常に大切にした国づくりをしてきたのだな、そしてそのシステムが本当にどの分野でも行き詰まってしまったな、本当にこれを思い切って変えなければならないときというのは今をおいてない、そのような思いを今も大変強く持っております。そして、この改革、それぞれの分野を同時並行的に進めていく、その必要性というものを改めて痛感をいたしております。
  9. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今、六つ改革のことに触れられましたけれども、これにつきましては、また後ほど質問させていただきたいと思います。  外務大臣ペルー大使公邸事件につきましてお伺いします。  これはもうすべての国民一人残らず、一日も早い人質無事解放あるいは事件全面解決を望んでおります。先般の衆議院の本会議におきましても決議が行われました。人質全員即時釈放、あるいは、テロリストに対しては譲歩は絶対しない、また、フジモリ大統領が先頭になって折衝に当たっておりますけれども、ペルー政府努力を支持する、こういう決議がなされ、参議院でも同様の趣旨の決議がなされました。  けさほども私はニュースを聞いておりまして、何か少しずつ事が進んでいるような感を受けますが、外務大臣も向こうにも行かれたりいろいろ毎日御苦労されておりますが、また、この手の問題は大変微妙な問題、これは知らせたいんだけれどもまだ皆さん方お話しすることはできない問題もあろうかと思いますが、直近の状況等々踏まえて、外務大臣から、この大使公邸人質事件についての御意見、御報告があればお伺いいたしたいと思います。
  10. 池田行彦

    ○池田国務大臣 昨年暮れこ発生いたしました在ペルー日本大使公邸の占拠事件でございます。  何とか早く人質の方全員が御無事で解放されるように、このことを願いながら、我々、ペルー政府の作業を信頼し、そうして緊密な連携をとりながら今日まで努力をしてまいりました。そうしてまた本院におきましても、ただいま委員からお話ございましたように決議をちょうだいしておりますし、全国民、いや、全世界がこの問題の早期の、そうして平和的な解決を願っているところでございます。我々も何とかと、こう思っているわけでございますが、もう既に随分の時間が経過し、なお数多くの方々人質状態にあること、まことに遺憾なことでございます。  さあ、これからどういうふうに展開していくか。事はテロリストのかかわることでございますから必ずしも油断できないところでございますが、御承知のとおり、ペルー政府とMRTA側の交渉を行っていく、そのための場といたしまして保証人委員会というものをつくっていこうというやりとりが今行われております。これまでのところ、その構成につきましては双方で大体折り合えるような情勢が出てきたかこ見受けておりますけれども、具体的にどの場所で、どういうふうなやり方で、あるいは、とりわけ何をテーマにしてこの話し合いを行うかということにつきましては、両者の隔たり、まだかなりございまして、これから保証人委員会がすぐできて、できればとんとんと交渉が進んでというぐあいには、いってほしいのでございますけれども、なかなかそこまで期待できる情勢には至っていないということでございます。  日本政府といたしましては、今後ともペルー政府と緊密に連携をとりながら、いや、こういう段階になりましたから、これまで以上にいろいろ細部についても御相談をしたり、我が方としての御意見を申し上げたりしながら、何とかこの交渉がまず始まるように持っていきたい。その上で、先ほど申しました人質方々全員の御無事での解放が実現するように今後とも全力を傾注してまいりたいと存じますので、本委員会初め、国民の皆様方の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げる次第でございます。
  11. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 一日も早い人質の全員無事釈放ということを願っておるわけでありますけれども、こうした事件というのは、なかなか交渉がすぐに解決しないというのが、過去の例からもそうであります。ですから、私は、今外務大臣が一層ペルー政府とこれまで以上に緊密な、密接な連絡をとり合ってというお話、これは大事だと思います。  同時にもう一つは、人質皆さん方、また御家族の皆さん方の御心痛を察するに、本当に一日も早いという気持ちはありますけれども、今言ったお話からするとまだまだ時間がかかりそうだ。しかし、やはり粘り強く折衝して、今、当面の課題は、保証人委員会がいつ、どこで、どういう形で開かれるか、そしてそのための内容の詰めがまだ詰め切っていないというお話である。私もそう聞いておりますけれども、どうか一日も早くそういった保証人委員会、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップと、そういうことを踏みながら、全員の無事解放を祈っておりますし、また、外務大臣も大変でしょうが、それに向けての努力を尽くしていただきたいということを要望しておきます。  このペルー大使公邸の占拠事件も大変重苦しい事件でありますけれども、一方、ナホトカ号から流出した重油の問題、これも大変残念な、また重苦しい事故でありました。  御承知のとおり、一月二日に発生した遭難でございます。あの冬の波の高い荒海の日本海におきまして遭難になったわけでありますけれども、海上保安庁あるいは自衛隊、特殊部隊、遭難信号を受信してすぐに現場に直行し、まさに二十メートルを超える風速、あるいは六メートルを超える高波の中で、残念ながら船長は救出できませんでしたけれども、三十一名の貴重な人命を救出いたしました。これは大変なことだと私は思います。防衛庁あるいは海上保安庁、また関係省庁の皆様方の努力は並み並みならぬものがあったと思います。心から感謝と敬意を表するわけでございます。  しかしながら、このナホトカ号から流出した重油は八府県、八十以上の市町村にその被害が及んで、まださらに広がりを見せておるわけであります。したがいまして、先ほどもお見舞い申し上げましたけれども、漁業者の皆さん方、あるいは被害に遭われている地域住民方々、黙々とあの厳寒の中で油の除去作業に従事をされていらっしゃいます。漁業者を初め地域方々への支援が今ほど求められるときはないと私は思います。  そこで、政府はこの事態に対して、大変これは重大な事態であるということを認識して、災害対策本部と災害対策関係閣僚会議を設置されて対応をされておられます。いろいろ指摘される問題たくさんございますけれども、また、この問題は多くの省庁に関係いたしますが、災害対策本部長として運輸大臣にお伺いいたします。  これまでどのような対策を講じてきたか、また、これからどう対策を講じていこうとするか、この点についてまず運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。
  12. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生の問いにお答えいたします前に、今回の老朽タンカーの事故によります重油流出の件につきましては、大変多くの方々に御心配をいただいております。とりわけ流出油の防除等につきまして 政府関係機関はもとよりでございますけれども、関係自治体を中心といたします地域の皆様方、また民間ボランティア皆さん方、それぞれの石油業界を初めとする関係者の方々の大変温かい御支援、御協力をいただいているわけであります。この機会に心から敬意と感謝を申し上げ、今もお話あっておりますように、不幸にしてボランティア活動中にお亡くなりになりました方々に心からなる弔意を表し、また、残された御家族の皆様方にお見舞いを申し上げたいと思います。  この事故の防除作業につきましては、私を本部長といたしまして、応急対策を中心といたしまして、関係省庁から成る対策本部を十日に実は政府として設置をさせていただきました。  早速対策本部といたしましては、まず基本に、この流出油の沿岸地域方々への影響を最小限に食いとめるということを基本にいたしまして、漂着油及び浮流油の防除、そして、不幸にして船首部が着底をいたしておりまして、そこに残されております油の回収、こういった防除等に全力を尽くして取り組んできているところでございます。  漂着油につきましては、ただいまも申し上げましたように、関係自治体が中心となられまして、民間ボランティア方々地域の皆様方、そしてあらゆる業界の方々、そして自衛隊、そうした方々の御協力をいただきまして今必死の防除作業に取り組んでいただいているところでございます。  船首部の残存油の回収につきましては、潜水調査を初めといたしまして技術的な検討をさせていただきまして、関係地域方々との了解を取りまとめさせていただき、十四日には、海上保安庁長官の指示によりまして、海上災害防止センターの方でその作業に既に取りかかっているところでございます。  また、浮流油につきましては、大変波風の強い、厳しい冬の日本海でございますけれども、現在も、海上保安庁を中心といたしまして、自衛隊等の御協力をいただきまして防除作業に取り組んでいるところでございます。  なお、沈没いたしております船尾部につきましても、科学技術庁の御協力をいただきまして、深海観測装置をもって湧出油の原因等について調査をいたしますと同時に、湧出油の的確な監視、そして防除に努めているところでございます。  見通しにつきましてでございますけれども、大変残念なことでございますが、あの厳しい冬の日本海でございます。天候に左右される作業であります。今、いっ、どのような結果を生み出すということを明確に先生にお答えすることができません。今後とも全力を挙げて政府一体となり、また、地域を初めとする多くの方々の御協力をいただきながら流出油の防除に全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  13. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 自民党を含めました与党三党、一昨日のことですけれども、自民党の加藤幹事長初め与党三党の方が福井県、石川県の方にこの被害状況等を視察に行かれたわけでございます。そこで地元の方々からいろんな要望が出たわけでございます。  その一点は、今運輸大臣もお話がございましたように、船首部分の残った油について、いっときも早く除去してほしい。それから本体部分について、これは水深がたしか海底二千メートル、大変深いところで大変な水圧である、また、どういうふうに今なっているかわかりませんが、この点についての不安がある、これについても対応を考えていただきたいということの要望がございました。  それから、これま政府といたしまして、私は、これを災害として認識して事に当たっていると思っております。そういったことで、地元の方からも災害として認定してほしいといった要望が強く出されておるわけであります。  それから、自治大臣も後ほどお伺いいたしますけれども、大変各自治体とも財政負担を強いられております。これに対しまするさまざまな国からの財政援助というものを出してほしい、援助してほしいということでございます。  それからもう一つつこういうことが起きますと、観光地も多くあるところでございます。大変真冬の魚介類のおいしいところでもございます。私は岐阜県でありますから、海のない県でありますから、時々私も北陸の方へお伺いして越前ガニ等々賞味させていただくことがあるわけであります。しかし、どうもその風評というものが、大変だ大変だということはこれはもちろんそういうことでありますけれども、もうカニもだめであるとか、あるいはアマエビもだめであるとかということで、何か大分キャンセルも多く出ているようです。これは非常に残念なことであります。そうしたことが余り、事故事故としての重大性は認識しつつも、やはりそういった安全であるということも、ぜひテレビあるいはラジオを通じて皆さん方にそういうことはないんだと、地元住民からそういった強い要望もあったようでございます。その点も含めて今お話をしているわけであります。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、この重大な事態を踏まえてあらゆる知恵を絞って対応していただきたい。先ほど私申し上げましたように、多くの関係省庁にかかわる問題である。ややもすると、これは縦割りの行政というものが前面に出てきてなかなか横の連絡がとれない。先ほど後ろの方で、対策本部の設置がおくれたとかいう声が聞こえましたけれども、私は、早いとか遅いとかそれは問題ありますが、後ほど危機管理のところでお伺いいたしますけれども、やはりこうしたときには縦割り行政にとらわれることなく、まさに率先してそれぞれの省庁が弾力的な対応をしていただきたいと思います。  今運輸大臣から、今後の対応、なかなかはっきりしたことを申し上げられない。これはあの厳寒の大変な荒海である日本海での除去作業ですから、苦労が多いと思います。いずれにいたしましても、今後ともこの点に関しましては一層の、政府当局におかれては万全の対策を講じていただきたい。  そこで自治大臣、先ほど申し上げましたように、各自治体非常に財政負担を強いられている。この点につきまして、私は国も積極的に援助、協力すべきだと思いますが、自治大臣、御見解をいただきたいと思います。
  14. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 委員御指摘の点でございますが、正直申し上げまして、どういう種類の被害がどのように出てくるかということについては、まだなかなか算定不可能なところもいっぱいあるようでございますが、そういうこととは別に、まず現実には、漂着しているあるいは浮遊している油を、ほとんどこれは人力に頼らざるを得ないわけでございますが、それをとにかく取り除くというのが各地方自治体が最も今御苦労されている点だと思うわけでございます。そういうものにかかる諸費用については、船主責任保険あるいは油濁補償のための国際基金など、他のそういう制度からくる補償もあるようでございますが、それでカバーできるのかできないのか、その辺も定かではありません。  いずれにいたしましても、私も、土曜日、日曜日、油が漂着してまいりました新潟県を中心に見てまいったのでございますが、本当に多くの人力、そして、とても職員や消防団員だけの力では足らないので、民間の多くのボランティア皆さんに現に応援いただいておりますが、そういう皆様の応急対策のための努力について、自治体としていろいろな意味で経費がかかるわけでございます。そういうものについては、今申し上げたような基金からの補償はもちろんでございますが、それで仮にカバーできなくても、自治省として、特別交付税できちんと措置させていただくから、費用等のことは余り考えないで、むしろとにかく今は全力でまず漂着した油をきちんと除去してもらいたい。そして、将来いろいろなことが予測されるのですが、油をきちんと取り除いておくことが予想される被害等も最小限に食しとめるわけでございますので、そのことをお願いしてまいったところでございます。
  15. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 白川自治大臣から大変力強い、また今自治大臣の言葉を聞いて、各自治体の皆さん方も大変心強く思ったと思います。  また、今賠償問題といいますか、補償問題についての話に触れられましたけれども、これはまだ被害がどのぐらいになるかわからない。まず第一に、船主、所有者による賠償と申しましょうか、それともう一つは、基金による賠償、補償といいますか、これはまた先行きどうなるかわかりませんし、基金による場合でも二百二十五億円が限度だという話もありますが、とてもそれで済まないと私は思います。そういったことにつきましても今言及されましたけれども、これからもよろしく財政措置のほどをお願いいたしたいと思います。  そこで、やはりこうした問題に対応する場合には、法律が、いろいろ制度があるわけですが、どうしても今ある法律や制度では対応し切れない、こういうこともあるかと思います。そうしたときに、私はもっと積極果敢に法律なり制度なりをつくるべきだと思います。今大事なことは、やはり政府が具体的な対応策を示すことが、この被害を受けられている地域皆さん方、自治体の皆さん方漁業関係者皆さん方に安心感を与えるのだろうと私は思います。そういう意味で、今後とも政府の、総理初め関係省庁の御努力をお願いいたしたいと思うわけであります。  さてそこで、こうした事件事故が発生しますと、いつも危機管理体制の確立ということが言われます。  総理、実は私は、衆議院の予算委員会で質問するのは初めてでございます。しかし私、七年前に、参議院の予算委員会で平成二年度の補正予算の代表質問をしたことを記憶をいたしております。そこで私は、ちょっと参考のためにと思いまして、当時の議事録を取り寄せたわけでありますけれども、今回と七年前と大変よく似た事件事故が発生しております。  平成二年、まあ御記憶のいい総理だろうと思いますのでもう思い出されたかもしれませんが、我が国にとっては、国家行事として今上陛下の即位の礼、大嘗祭が、これは大変国を挙げて、また多くの各国方々がその即位の礼にも御出席をいただきました。そういう大変めでたい国家行事がありましたけれども、一方では、八月二日に突如イラクがクウェートに侵攻いたしまして、日本人を含めて多くの人質がバグダッドに連れ去られて、人質として長い間とらわれました。これは平成二年のことであります。  それで、その後湾岸戦争が勃発いたしまして、今回は日本海でありますけれども、あのペルシャ湾が大変な原油によって、油によって汚染された。この二つの事件、七年前にも同じような事件事故が発生しておる。私はその議事録を見たとき、あら、これは何の偶然かなと思いました。  しかし、常にやはりそうした事件事故というのが起こり得るということ、そのころからもう既に危機管理体制というものについても言われました。二年たちましたけれども、阪神・淡路大震災につきましての大きな教訓を我々は受けました。災害に対する危機管理、これも大事であります。ハイジャックに対してもそうでありましょう。国際化社会になり、複雑な生活様式、そういった状況の中で、今まさに私、総理はこの危機管理というものはどうあるべきかということを頭の中に考えておられると思います。しかし、起こるたびに、あそこは不備だった、ここはどうなっているということを言われて久しいわけであります。  そういう中で、私はまず政府が先頭に立ってこの危機管理体制というものをどう構築していくかということが大事だろうと思いますけれども、しかし、これは政府だけに頼っているのでは解決しません。むしろここにいらっしゃる委員皆さん方あるいは衆参の国会議員の皆さん方、これは党派を超えて、これからの国際社会の中に我々は生きていかなきゃならない、生活していかなきゃならない、そういう中で危機管理というものは、党派を超えて、やはり議論はもちろんでありますけれども、話し合いを進めて、そういう機会なり機関なりを私はつくるべきだと思います。  総理、この危機管理体制ということについて、今回の事件事故でもいろいろな教訓を得られておりますが、その点について総理の御所見を例えればと思います。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 このペルー事件が起こりましてからも、刻々状況が変わりました。そして、当初一番心配をされましたこと、それは強硬手段による人質救出が行われた場合には多数の死傷者を出すのではなかろうかという課題でありました。同時に、日本の大使以下外交官、大使館員全員が人質になったわけでありまして、外交機能を現地においていかに立ち上げるかという問題が発生をいたしました。  私は、今議員が御指摘になりましたように、阪神・淡路大震災を含めまして、先ほど七年前の湾岸危機から湾岸戦争の時期の話もございましたけれども、そうした事件のたびに政府は危機管理のマニュアルは直してきた、そして有事即応態勢をそれだけ強めてきたつもりでございます。過去の例えば重油流出事故というものを反省いたしながら、重油流出事故に対するマニュアルも用意をされておりました。  しかし、今回、ナホトカ号の事件が起き、これを振り返りましたとき、過去のマニュアルというものは、例えば東京港でありますとか、領海内の比較的静ひつな海域における作業、これを中心に立てられており、公海における、しかも日本海の非常に大きなうねりのあるような、こうした場合の対応策というものは全く欠落をしていた、不十分だった。これはいや応なしに我々反省せざるを得ません。こうした点、気づきましたところ、気づきましたところをマニュアルは常に直していかなければ完璧なものにはなり得ない、改めてそのような思いをいたしております。今後におきましても、危機管理体制の強化というものについては不断の努力を払ってまいりたい、今そのように考えております。
  17. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今回は重油の流出ということで、今総理の話にありましたように、公海上であった、領海外であった、こういった問題でいろいろ制約があったと思います。  これは私ごとで恐縮でございますが、私は実は過去石油会社に勤務をいたしておりまして、アラビア石油という日本で初めて中近東におきまして原油の採掘の権利をとった会社に勤めておったわけでございますが、そういったことで石油に関してはいろいろな意味で興味があり、また勉強も多少なりしておるわけでありますが、これは基本的なことですが、確かにあの重油流出事故というのは大変な被害をもたらしております。  しかし一方、角度を変えて見ますと、日本という国そのものが石油という油の上に乗っている国であると言っても過言ではありません。その九九・八%、ほぼ一〇〇%、これは輸入でございます。そして、その油をもとにしていろいろな産業を興し、あるいは付加価値をつけながら、そして輸出立国として、貿易立国として成り立っている。そうした現実というものを踏まえて、四万海に囲まれている、今公海上の問題、領海外と申しましたけれども、またもっと大きなこうしたタンカーによる事故が起きないとも限らない、そういったことを踏まえて、しかし一方では、毎日毎日、日に日に生活していく上で油が切れたらまさに日本という国は成り立っていかない、そういう国であることも認識しておく。そういう現実と、実際のそういう災害、事故、そういうものを、常にタイトロープの上を渡るような形で我々は生活しているのではないかな。  しかし、やはり何か起きたときに一番大事なことは、政府が率先して迅速に、また効率的に効果的に対応するということが大事だと思うわけであります。その点について私は、今総理お話をお聞きいたしましたけれども、さらなるこの危機管理に対しましての一層の努力を心から要望しておきたいと存じます。  さて、先ほど総理、一年を振り返ってという中で六つ改革ということを述べられました。施政方針演説の中でも触れられた問題であります。行政改革改革という問題は歴代内閣も取り組んでこられたわけであります。しかし、これを着実に一体として進めていくということで、総理の御決意でございます。  やはり今回のこの改革、新しい世紀を目前に控えまして、もう後戻りはできない、ここで国民に痛みも分かち合ってもらいながらも、まず率先して政府がリーダーシップを発揮し、また総理がその先頭に立って頑張っていかなきゃならないという決意を私はお聞きいたしております。やはり強いリーダーシップを求められているものと思います。  そうした中で幾つか、六つ改革、きょうは時間の制限がございますので、すべて質問するわけにまいりませんけれども、幾つかの点について質問をさせていただきたいと思います。  その中で、総理はことしを、平成九年を財政構造改革元年というふうに位置づけられておりまして、二〇〇五年に向けて国の財政健全化を図るために、改革とそして歳出の縮減を図っていく。これはまさに、先ほど申しましたけれども、国民にも痛みを分かち合ってもらわなければいけない問題にもなるわけであります。そういう決意の中で、財政構造改革会議というものを、政府・与党が一体となって取り組むということで、そうした会議が設置されました。先日、たしか第一回目の会議が開かれたわけでございます。  そう聞いておるわけでありますけれども、しかし、決意を示しても、やはり具体的な道筋と申しましょうか、今、橋本内閣、今度の補正予算あるいは来年度予算の本予算に対しまして、姿が見えない、具体的な……(発言する者あり)何も見えないというような、今、後ろからいろいろ意見がありますけれども、私は、こうした財政構造改革、せっかくこれを発足させて、またみなぎる決意を持って進んできておられると思います。やはりそういった意味で、着実にこうした構造改革を進めていと。財政再建法というのを今国会中に提出されるというふうにも聞いておりますが、そうした具体的な道筋が見えてくれば、必ず国民は、この橋本内閣は行革を着実にやるんだなというふうに理解を示してくれると私は思います。  そうしたことこつきまして、これま大蔵大臣が直接担当だと思いますが、総理でもよろしいのですが、大蔵大臣でも結構ですが、どうぞ。その前に総理ですか、どうぞ。では総理、よろしくお願いいたします。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 第一回の財政構造改革会議を開きました際、私からその点でお願いを申し上げましたのは、この会議におきまして財政再建法の骨格を含めた歳出の改革、縮減の具体的方策を検討していただきたいと考えておりますが、ここでお願いを申し上げていきたいことがあります。すなわち、財政再建の具体的方策としては、諸外国の取り組みなどを参考にいたしますと、例えば歳出上限の設定、あるいはスクラップ・アンド・ビルドの徹底、個別の歳出削減目標の設定などが考えられるところであります。こうしたさまざまな方策について、一切の聖域を設けず、すなわち社会保障関係費、公共事業関係費、文教及び科学技術振興費、防衛費、こうしたものを初めとするあらゆる経費を対象に議論をしていただきたい。  そして、この財政再建法については、この会議で骨格を定めて、できるだけ早い機会に法律案を国会にお諮りをする、そうした運びを考えておりますが、その財政再建法、まあ今、仮の名前であります。その骨格を含めた歳出の改革と縮減の具体的方策の検討について、十年度の予算の概算要求基準にも反映させられるようなタイミングで取りまとめをあわせてお願いを申し上げますということを、その席上申し上げました。  私どもといたしましては、こうした考え方のもとにこの作業を進めてまいりたい、そのように考えております。
  19. 三塚博

    ○三塚国務大臣 総理から、基本的な財政構造改革会議についての目標、方針が披瀝をされたところであります。  御案内のとおり、双子の赤字に悩みましたアメリカ合衆国、経済の繁栄を謳歌しつつありますが、依然としてこの二つの赤字退治のために全力を尽くしております。G7、ヨーロッパ参加諸国、またしかりであります。  そういう中で、我が国のみが従前の財政運営方式を踏襲することは、政治の責任といたしまして許されるものではございません。そんな観点から、財政構造改革元年という意気込みで平成九年度予算を編成をいたしたところであります。  念のため申し上げますと、先進国、G7国並みの、それを上回る努力をしてまいりませんと我が国の経済社会、展望が開けないという危機感の中で元年と位置づけたわけでありますが、平成九年度予算においては、各般の制度改革を盛り込むことなどによりまして一般歳出の増加額は一・五%ということにしました。これは、九年ぶりの削減であります。一・五は全体に対する一・五でございますから、消費税値上げによる、政府が四千億円払わなければなりません。ですから、一%相当額が既にカットされておる分でありまして、〇・五以下というシーリングでございます。  そういうことで、さらに、公債減額については四兆三千二百二十億円、特例公債については四兆五千二百八十億円の縮減を実現をいたしたわけであります。要すれば、国債費を除く歳出を租税等の範囲内に抑制をする、これは次世代に対する現世代の責任であります。借金をツケ回して現代がぜいたくをしたと後世の批判が出ました折に、どういうことになるんでしょうか。批判は批判といたしましても、その国の状態がどうにもならぬ状態になったときどういうことになるのかというのが、現世代の我々の責任でなければなりません。  そういうことで、総理言われましたとおり、平成十年の予算編成に向けて、また財政再建に向けて、九年度予算の審議が始まったばかりの国会ではありますが、今月二十一日、財政構造改革会議ということを、三党の提言もこれあり、与党三党でございますが、そこで政府も一体となりまして本問題に取り組むことに相なりました。  現在置かれておる危機的な財政状況、先進七カ国の中で我が国は、地方及び国の累積債務においてもGDPの九〇%になりました。このまま放置すれば、GDPを乗り越えてこの債務が累積をされること、また事実であります。財政赤字がGDPに占める比率においても先進国中最悪であるというこの共通の認識の中で、国会論議が盛んに行われる、また与党としての皆さん、また政府として我々の果たすべき役割というものは、その中から確実な足取りをつくり上げていくということをおいてほかにありません。格段の御理解と御協力を賜りたいと思います。
  20. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今大蔵大臣、答弁にいろいろなことを言われて、まさに危機的な財政状況、それを後世の子孫にツケを回すことができない、それはもうみんなわかっているんですよ。さあそれをどうやってやっていくかということで、先ほど総理もおっしゃられた、まさにことしは財政構造改革元年というふうに位置づけられてやっている。どうぞこれはやはり着実に、遅過ぎるだとか何も見えないとかという、後ろからそういうやじが出ておりますけれども、そういう意見も、やはり私どもは、皆さん方も聞くところは聞いて、謙虚な気持ちでお互いにしっかりやっていこうということが大事だと私は思います。  そこで、行革担当大臣でもあられます総務庁長官、これから財政構造改革をやりますけれども、総務庁長官としてこの行革に対する決意というものも一言で、簡潔にお願いいたしたいと思います。
  21. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 簡潔ということでございますが、行革のあれをというので、なるべく短くやらせていただきます。  今大蔵大臣からも御答弁がございましたけれども、私はその中でもう一つ、御答弁の中になかったものでぜひ国民に御理解いただきたいと思いますのは、平成九年度の予算案も今この委員会に提出されておりますが、当初予算、平成八年度と平成九年度と比べますと、新規の借金は、先ほど大蔵大臣の答弁にもございましたように、四兆三千億減っております。しかし、国債そのものの発行額は、実は平成八年度も平成九年度もほとんど同じでございます。両方とも四十八兆ばかり借金をしなきゃいけない。それは、この平成九年度で来る借金を返さなきゃならない分がたしか三十六兆ぐらいあるわけでございますが、それが返せないという形で借換債をしなきゃならない。こういうのを加えると、結果的には四十八兆ぐらいこの平成九年度も国債を発行しないとつじつまが合わない、こういうことになっておる現状でございます。  それを考えますと、本当に、民間もバブルが崩壊しましてから非常にリストラを努力していただいてまいりました。果たして行政がそのリストラをやってきたのか、私は反省すべき点が多いと思うのです。まず、これが一つだと思います。思い切ってリストラをやり、なるべく人も減らし、機構もなるべく要らないところは減らしていく、そして、役所のやっている仕事を民間でやっていただけるものであれば民間に移していく、こういうことが非常に必要ではないかと思っております。  それからいま一つは、先ほども今度の重油事故事件お話がありました縦割り行政、これはやはり明治以来の今の行政機構では現在のいろいろの行政のサービスの対応に応じ切れない、どうしても新しい時代に対応できる行政機構を考えていかなきゃならない。私は、そういう面で思い切った、今総理もおっしゃっておられますが、総理は四つの観点から、新しい時代の二十一世紀の国家機能のあり方というのをおっしゃっておられますけれども、いずれにいたしましても、今の中央の省庁の統廃合といいますか再編成というか、思い切って今のを一遍すべてを解消して新しい組織をつくり上げる、こういうことをやっていかなきゃならないんじゃないか。  それからもう一つは、国民の側から見ると大変むだが多いと思われるところがたくさんある中には、今申し上げました、なるべく民間でやれるものはやるということですが、それ以外に、許認可が非常に多い。だからこれをなくしていくという点で、規制緩和という問題が今大きく取り上げられてきていると思います。  それからもう一つは、規制緩和をすると同時に、中央でいろいろやっていることで地方でお願いすべきこともあるんではなかろうか。また逆に言えば、機関委任事務のように、中央と地方とが多少重複した形でやられている面もなきにしもあらず。もう少しすっきりと中央と地方との仕事分担というものをやっていかなきゃならないんじゃないか。  それからもう一つは、この間のいろいろの事件が残念ながら出てきております。それは何があったかというと、国民の知らないところでいろいろなことが行われてきた。そういう面ではやはり情報公開というのをどうしてもこれからやっていかなきゃならないんじゃなかろうか。そして、少なくとも公務員たる者はへ国民全体への奉仕者という一つのそういう使命感に立ってやっていかなきゃならないという倫理観をぜひ確立していかなきゃならないんじゃなかろうか。  最後にもう一つでございますが、やはり新しい時代には、もう今は情報通信時代、情報産業時代と言われております。ところが、役所のいろいろ書類を申請するとなると、たくさんの判こを押さなきゃならない。また、あちらこちらへいろいろ申請をしなきゃいけない。そういうものはやっぱり電子メールを使うとか、新しい時代のそういうものを活用していく、そして、質の高い行政サービスをしていくということがこれからは必要ではないか。  時間がないようでございますから、大体そんなようなことをまとめてやっていこうというのが私どものこれからの考え方でございます。
  22. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 ありがとうございました。  今総務庁長官から、民間に移転できるものは任せようじゃないか、そのほかいろいろ、許認可の問題、縦割り行政の問題、情報社会、地方への権限移譲の問題等々ありました。ぜひともそれを、やはり総務庁長官が先頭に立って着実に進めていただきたいと思います。  そこで、今、民間に渡すものは渡すべきじゃないかという話の中で、建設大臣、本会議におきまして建設大臣は、住宅・都市整備公団の事業について、住宅分譲事業からの全面撤退、あるいは、民間に任せられるなら民間に任したらいいんじゃないか、あるいは、地域にある地域整備公団との統合もやっていったらいいんじゃないか、こういう御答弁を、これはまたその後、機会あるごとにそういう話をされておられるようでございます。これは、私はまさに特殊法人の改革の突破口だと思います。改めてここでもう一度、建設大臣の住都公団に対する今後のあり方、特殊法人についての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  23. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 お答えをいたします。  住宅整備公団を初め建設省所管の特殊法人、また財団法人めあり方その他につきましても、この際、橋本行革の中で抜本的に、徹底的にそれぞれを見直して改革に踏み込んでまいりたいと思います。  住都公団につきましては、戦後、特に余り豊かでない国民の層の方々に住宅を供給をしていくという重大な責任を、使命を果たしてきたと思います。今後も、そうした弱者に対する住宅面での配慮というのは徹底的にやっていかなければならないと思いますけれども、社会経済情勢が変化いたしました今日、思い切って民間に担当していただく部分は担当していただき、政府として責任を持ってやらなければならない分野については、新しい仕組みなり、そういうものを考えていきたいと思います。  具体的には、住都公団につきましては、分譲部門からは全面完全撤退をいたします。賃貸の面につきましては、そうした弱者対策等を含めまして、公営住宅との関係もございますから、このあたりは検討しなければならない部分がございますが、これも原則としては撤退をしていくという方向で検討をいたしたい。  ただ、阪神・淡路大震災というような、そうした大規模な災害等が起きた場合に、もう直ちに大量の住宅を供給しなければならないという場合も生じてまいります。現在、住都公団もそれに取り組んでおるわけでございますけれども、そうした機能をどうするかというような問題もございますが、そのようにまいります。  また、地域整備公団との関係では、今後住都公団が進んでいきます方向と相当ダブってまいります。四大都市圏と他の地域というような分類になっておろうかと思いますが、これを、私は通産大臣、また国土庁長官、両大臣とも協議を申し上げました結果、三大臣間におきましては、これを統合して、業務内容について今後検討し詰めていくという方針を出しておりますことを御報告申し上げます。  以上です。
  24. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今、亀井建設大臣の大変ドスのきいた声で、抜本的に、徹底的にということで、また言葉も大変丁寧に、言葉遣いも気を配りながらお答えいただきまして、ありがとうございました。やはり、そうした決断、実行というのがこの行革に大事なことだ。それをまず先鞭を切られたというのは少し持ち上げ過ぎかもしれませんけれども、やはりそれを突破口としてこれから着実に進めていただきたい。  しかし、私は、今建設大臣のお話にありましたように、住都公団は本当にいわゆる弱者と申しましょうかそういった方々社会的に弱い立場の方々のためにそうした住宅を供給したということで、大変大きな役割を果たしているということも私は事実だと思う。私はそのとおりだと思います。ただ、それが余りにちょっと肥大化し、あるいは時代が変わるということで今お話しになったと思いますが、どうぞこれからも合理化等々について積極的に取り組んでいただきたいと思います。  時間がどんどん迫ってまいりまして、まだまだいろいろ改革について、実は厚生大臣あるいは文部大臣に社会保障関係あるいは教育関係質問をさせていただきたいと思いますが、補正予算の方の関連につきましても多少質問しなければなりませんので、先に進めさせていただきます。  いずれにいたしましても、行革というのは、総理、まさに強い決断力と実行力、リーダーシップということにまとめられるわけですが、しかし、国民皆さん方から、あるいはマスコミの皆さん方からも、とにかくすぐやれ、どんどんやれというような言葉が聞こえて、また行政改革大合唱のような、そういうふうに私は聞いております。  確かに、改革はやらなければなりませんけれども、私は拙速はいけないと思います。総理六つ改革を一体としてやるというのは、まさに政治というのは着実に一つ一つ課題に取り組んで解決していく、これが大事。むしろ私は、政治は地道なものだと思っております。そして、民主主義というのはいろいろな意見を謙虚に聞きながらこうした問題に取り組んでいくわけでありますが、やはりそれにはバランス感覚というものも私は常に持つべきだと思います。そうした中で、やはり具体的に着実にこの行革の姿が見えてくれば、必ず私は国民からの橋本政権に対する、内閣に対する信頼を得ることになろうかと思います。どうぞ、この行革に対する一層の決意を持って頑張っていただかれることをお願いをいたしておきます。  景気対策、景気の問題、これまた、何か世紀末ではこういうことがあるのかどうかわかりませんが、何か日本全体に暗いムードが漂っている。もう先行き日本はだめになるんじゃないか、どうなるんだろう、私もいろいろな人方から聞かれます。私は、それはそれなりの皆さん方実態をもっての発言だと思いますけれども、どうなんでしょう、麻生経済企画庁長官、今の景気の現況というのは本当にそんなに悪いものなのかどうなのか。この点について、現状と今後の見通しについて御意見をいただきたいと思います。
  25. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 いろいろ御意見のあるところだと思って、その部分はよく理解をしておるところですが、少なくとも数字の面におきましては、これは、景気というものは、よく例に引かれます住宅着工件数は年間まあ百四十五万戸ぐらいあれば非常にいいと言われるところですけれども、実際はそれをはるかに上回る数字でいって、ちょっと過熱ぎみなぐらいに住宅着工件数は伸びております。  これが将来、いわゆる消費税前の駆け込みではないかという御意見もありますけれども、これは五月以降も百四十万を超えるような数字が予想されるところでもありますので、その面でもよろしいことになっておりますし、設備投資というのは、これは少なくとも半年先ぐらいの景気指標を示すと言われる数字ですけれども、これも間違いなく非常に高い数字を示しておりますので、そういう意味では景気は緩やかな回復傾向にある。なだらかとか、いろいろな表現をしておりますけれども、何となく文学的な表現で恐縮ですけれども、何となくそういうような感じになっておるということだけは間違いない。  数字の上ではそういうことになっておるけれども、その景気感が出てこないじゃないかというところがよく御指摘のあるところですが、これは、同じ財布の中に二万円あって、二万円しかないと思うか二万円もあると思うかはこれはかかって個人の景気感でありますので、そこのところが何となく閉塞感が出てくるというところで、そこのところが何となく規制やらいろいろなものが抑えられているから、この際、規制の緩和、撤廃等々というものが大きな話として出てきているんだと私どもは理解をしておりますので、橋本総理のもとで言っております六つ改革を含めまして、こういったものが着実に進んでまいりますと、そこらの閉塞感みたいなものも払拭されていくのだと思っております。
  26. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今、麻生経企庁長官から閉塞感という言葉が出てまいりました。これが、大蔵大臣、株安と申しましょうかあるいは円安、私は急激な円安というよりは急激なドル高だと認識を持っている一人であります。これも何とかしてくれという声が私のところにもたびたび聞こえてまいります。しかし、数年前を振り返りますと、急激な円高、これを何とかしてくれという、ほんの数年前の話がそうでありました。  私は、釈迦に説法のような話ですけれども、どういうことかといいますと、国民が望んでいる、産業界が望んでいる、願っていることは、急激な円安や円高、そのぶれというか乱高下、これを何とかしてほしい、何とか安定した、百十五円が適正な水準なのかどうか私はわかりませんけれども、多少の幅は、もちろんこれは為替相場の話ですから、これは完全にコントロールできませんけれども、しかしそういった安定した水準、動きというものにしてもらいたい、そういう気持ちのあらわれじゃないかなと思います。  株価についても、これもなかなか市場に政府が介入するなんということはできませんし、難しい問題です。そうした閉塞感、そしてそういった不安感、そういうものについて、簡単で結構でございますから大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  27. 三塚博

    ○三塚国務大臣 株式市場はいろいろな諸要素で動きますことは、御案内のとおり。そのことを特定はできません。しかし株式市場が発するメッセージは、私どもは正視をしながら、静聴をしながら自後の対策の参考にする、こういうことでいくわけでございますが、最近の株価動向はさまざまな要因を背景に、自由な市場の需給関係、こういうことで決まっておるということも前と変わりません。その特定要因は何かということも特定できません。  巷間、企業業績や景気の不透明感が指摘される一方、海外の論調は、金融システム改革、ビッグバン、財政構造改革、経済構造改革、その他諸改革が、日本政府が腹を据えて前に進んできたな、こういう認識を持つ論調が出ております。フィナンシャル・タイムズが御案内のとおりの指摘をいたしたところであります。それはそれとして、私どもは改革に全力を尽くして取り組んでいくということによって市場は安定するだろう、このように思っておるところであります。  また、為替の問題について、ドル高という、独歩高という指摘も聞いております。しかし、為替は安定しておりますことが世界経済の上から極めて大事なことでありますことは、御指摘のとおり。  しかしながら、今後の動向を見てまいりますけれども、行き過ぎた円安も行き過ぎた円高も同じでございまして、このことは決してよいことではございません。余りひど過ぎれば適正に対処するということはあろうかと思いますが、ただいまは正視をいたしておる、こういうことであります。
  28. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 今大臣のお話がありましたように、市場に政府が介入する、特に株式市場にはなかなかそういった手だては、むしろすべきなのか、むしろ市場に任せた方がいいのか。しかし、市場に任せると言った途端、政府は何もやっていないというおしかりをたしか大蔵大臣は受けられたのじゃないかと思います。しかし、これはまさに市場であることも事実であります。そうしたことを国際化の中で、日本の市場がどうあるべきか、産業はどうあるべきかということの一つの評価であるということを率直に受けとめなければならないと私は思います。  そこで、今ビッグバンの話がありまして、これは金融の大改革、革命的な改革と言って、昨日あそこにいらっしゃる大蔵省の榊原国際金融局長も民放番組で触れられました。このことにつきましてお伺いいたしたいわけでありますけれども、もう時間が差し迫ってバトンタッチもしなければならない時間になりましたので、これもやはり一つの大きな改革、そして今海外から注目されている。もしこれに手をつければ、ああ日本は本当に本気になって金融改革をやるのだなということで評価も私は変わってくるだろうと思う。これもぜひ着実に、大蔵大臣、このビッグバン、金融改革に向けての促進を進めていただきたい、この要望をこれまた申し上げておきます。  それから、通産大臣に中小企業対策、あるいは労働大臣にも雇用対策等、景気に関しましてお伺いいたしたかったのですが、ちょっと時間が差し迫ってまいりましたので、また別な機会のときに質問させていただきたいということでお許しをいただきたいと存じます。  補正関係について、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  補正関係、いろいろ御意見がありますけれども、まず災害対策、阪神・淡路大震災の対策、これは生活を失った、またとうとい多くの人命が失われました。また、本当に血のにじむような努力によって、もとの生活に戻りたい、そういった努力によって着実に震災を受けられた地域皆さん方は復旧をいたしております。しかし、いまだ多くの方々が仮設住宅に不自由な住まいを強いられていることも現実であります。  この復興状況につきまして、これもまたいろいろ関係省庁がありますけれども、国土庁長官に、この点についての状況についてお伺いいたします。
  29. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 阪神・淡路の震災から二年が経過をいたしました。私ども政府といたしましては、地元の公共団体、また地元の住民の方々とこれまで密接な連絡を上りながら、さまざまな対策を講じてきたところでございます。  昨年の九月の末には、懸案でありました阪神高速三号神戸線の全線開通を見たところでございまして、いわゆる主要なインフラ施設はほぼ順調に復旧をしていると申し上げていいと思います。  住宅の建設につきましては、公的住宅を七万七千戸計画をしているわけでございますが、既に用地買収は八五%終えております。また、住宅の建設につきましては、五五%は確実に既に着工しております。公営住宅の三万九千戸こつきましては、平成十年度までに建設をすべて終了する予定になっております。  しかし、お話にもございましたように、約三万九千世帯の方々が現実に仮設住宅にいられるわけでございます。私も長官就任後現地に伺ったわけでありますが、現地では、さまざまなボランティア活動方々が引き続き仮設住宅でさまざまな支援、活発な活動をしていただいておりまして、こうした市民の皆さんの御協力は現地の被災者の方々にとっては大変温かい支援でありまして、この機会に、私からも心から感謝を申し上げたいと思います。  また、政府といたしましては、住宅金融公庫のさまざまな借り入れの拡大をするとか、あるいは非常に所得の低い方々に対しましては、住宅の家賃を思い切って下げる、あるいはまた住宅金融公庫の、一定期間、五年間でありますけれども、無利子にするとか、また、昨年の十二月には三党の与党プロジェクトチームで御決定をいただきましたように、要援護者であるとか六十五歳以上の世帯主であるとか、そうした非常に生活を支えていかなければならないという方々こ関しましては、月額一万五千から二万五千円を結果として支援をしていく、そうしたさまざまな施策を展開をしているところでございます。  今後、仮設住宅から公営住宅こ皆さんが移っていただく、そういう状況の中では、さまざまな問題も今後残されているかと思っておりまして、現地の皆さんと十分な連絡をとりながら、あらゆる施策を講じてまいりたいと思っております。
  30. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 着実に復旧はなされているけれども、今、国土庁長官から細かに御説明いただきましたように、まだまだやらなきゃならないことはたくさんあろうかと思います。どうぞ、今後とも被災地の皆さん方に安心感を与える施策を講じていただきたいということをお願いいたしておきたいと思います。  今その中で、社会的に弱い立場というお話がありました。これに関連しまして、ことしの四月から消費税が上がります。これは厚生大臣にお聞きした方がよろしいのか、大蔵大臣がよろしいのか。大蔵大臣にお伺いしますが、四月一日から消費税が二%上がるわけでありますが、それに伴いまして、やはりこれまた社会的に弱い立場の方々に配慮する、これも今回の補正予算にも計上されておると思いますが、これは四月一日から直ちに実施しなきゃならない、本予算でやったんでは間に合わないということで今ここに計上されておりますが、この点については、そういった社会的に弱い立場の方々に対するどういう対策を計上されているのか、わかりやすく御説明いただければと思います。
  31. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件につきましては、二%アップすることにより五となるわけでありますが、年金生活者、立場の弱い方々に対しまして福祉給付金ということで、御案内のとおり、生活保護世帯、老齢福祉年金等の受給者には一万円、低所得の在宅寝たきり御老人に対しましては三万円、六十五歳以上の低所得者、住民税非課税の方でございますが、に対しましては一万円を支給するということに決めさしていただいております。  これらの給付金は、真に手を差し伸べなければならない方々への配慮といたしまして、消費税引き上げ等に対する激変の緩和ということで行わさしていただく、こういうことであります。
  32. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 ありがとうございました。社会的に弱い立場、お年寄り、そういった方々に対する配慮というのは、別に税金の面だけではなく、さまざまな面で配慮していかなきゃならないと思います。  これから高齢化社会を迎えるわけですが、そうした中での対策というのも大変重要であります。しかし一方で、大多数のお年寄りの方は元気であります。元気なお年寄りがたくさんふえておるわけであります。そうした方々の雇用等についての機会についてもこれから配慮をしていただきたい、これは労働大臣にも、ぜひともそういった面についての配慮をお願いいたしたいと思います。加えて申し添えさせていただきます。  それから、防災対策補正予算あるいはウルグアイ・ラウンド対策予算につきまして、他党の方から、これは隠れみのだ、必要のないものを盛り込んでおる、こういう意見もあるようでありますけれども、緊急防災対策予算、これについて、そういう何か緊急性についてどうあるべきか、建設大臣。  それからウルグアイ・ラウンド、これはいろいろな経緯があります、農水大臣。これについても、何かウルグアイ・ラウンド予算、今回必要ないようなことをおっしゃっている方もいらっしゃいますけれども、この点について建設大臣、農水大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  33. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 委員から防災対策について取り上げての御質問をいただき、ありがとうございます。  委員御承知のように、地球というちつちゃな惑星、何十億年の間地殻変動、天変地変を重ねてまいる長い歴史の中の一瞬を、我々はそこに住みかとしておるわけであります。そういう中で最近も、御承知のように多くの災害が日本列島を襲っておるわけでありまして、のど元過ぎれば熱さ忘るる、政治はそういうことに陥っては絶対ならない。  このたびの補正予算におきましても、そういう観点から、阪神・淡路大震災の復興はもちろんでありますが 将来の被害をできるだけ、最小限度に抑えるべきだという観点から、例えば電線の地中化、都市災害を防止するため、あるいは橋脚の補強工事等必要なものの措置をお願いをしておるわけでございまして、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。  以上です。
  34. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策につきましては、本合意の実施に伴いまして、農村、農業に与える影響を最小限度に食いとめるとともに、基本的な考え方といたしましては、国内の生産力、供給力を可能な限り維持強化していく。それから、国民の皆様に対しましては、良質で安全な食糧を適正な価格水準で安定供給をしていくということ。それから住みやすい農村地域を建設する。こういう基本的な考え方のもとに、一年間にわたりまして、農政審議会また各種団体、特に農業関係の団体の御意見を聞きながら、ほぼ大要、農業構造改革、農業生産改革、農山村改革、この三つを柱といたしまして、政府がこのウルグアイ・ラウンド合意対策として、政府・与党責任を持って決定をした、こういう経緯がございます。  今後、新しい国際環境のもとで足腰の強い我が国農業を築いていくためには、この決定をいたしましたウルグアイ・ラウンド対策を着実に二〇〇〇年に向けて実施していくということが、政府といたしましては必要な問題であるというふうに思っておるわけでございます。  今後とも本対策が農村や農業のニーズに即しまして効果的に実施されますように、また先ほど申し上げましたような所期の目的の達成に向けまして、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
  35. 藤井孝男

    藤井(孝)委員 亀井建設大臣また藤本農水大臣、ありがとうございました。  特にウルグアイ・ラウンド関係の予算というのは、これは本当に、平成五年十二月、我が自民党がまだそのとき野党だったですね。細川政権のときにこのガット・ウルグアイ・ラウンドの合意を、まさに国民的な論議になりましたけれども、苦渋の決断で、政治決断でこれを受け入れたわけです。しかし、受け入れることによって、特に我が国土の大多数が中山間地域、そういったところで農業に携わる皆さん方が不安を持ち、大きな影響を受けられる、それをカバーするということで、六年間で六兆百億円、これを着実に実施して、そしてもう三年たちましたけれども、あと三年後には農業交渉はまた継続再開ということになる。それまでこ足腰の強いそうした地域の農業が立派に確立するための措置だと思います。  本予算でも見ておりますけれども、これはシーリングという問題がありますからこういった補正予算で組む、これはもう政策の継承なんですよ。まさに細川内閣からずっと、内閣の枠組みが変わりましたけれども、そういう中でやはりやっていかなければいけない。もしこれをやらないということになれば、これは政治不信、行政不信につながると私は思います。そういったことは自信を持って私は、進めるべきものは進めていかなきゃならぬ。農水大臣、どうぞその点は自信を持って頑張っていただきたいと思います。  まだまだ質問したいことございますけれども、特に首都機能移転について国土庁長官にもお聞きしたがったわけであります。これにつきましては、私ども岐阜県、梶原知事を先頭に、首都を東京から東濃へということで今頑張っておりますけれども、委員長は東京選出の国会議員で、この私の意見にはなかなか賛成をしかねると思いますけれども、いずれにいたしましても、均衡ある国土の発展あるいは改革ということから見ましても、一説には、そんなむだな、十四兆円も二十兆円もかかるかわからないものをこの時期に、こうした時代に投入するのはむだであるという意見もありますけれども、むしろ私は、改革の観点から見れば、そういう意味では結果的こま首都機能移転というのは改革に沿った課題ではないかな、こんな意見を持っております。いずれにいたしましても、我が中部地域がそうした首都機能移転も受け入れられるだけのいわゆる受け皿を持っていることだけは、この際申し上げておきたいと思います。  いささか自己宣伝的になりましたけれども、総理初め皆様方に、大変短い時間でありましたけれども、限られた時間の中で御質問をさせていただきました。まだまだ足りない点はたくさんありますけれども、これらにつきましては、これからの本予算もございます。きょうから予算委員会始まったばかりですから、同僚議員にいろいろな課題についてもっと深く質問をしていただけると思います。  後者に譲りますけれども、最近私のところに友人から久しぶりに電話がありました。総理、最近顔に元気がないんじゃないかということで、おい、おまえから元気を出せと激励せよ、こういう電話がありました。風邪も引かれているということで、また本当に、先ほどから申し上げましたように、大変いろいろな事件事柄が発生して、まさに心休まる暇もない、そういう状況ですが、どうぞ自信を持って、先ほど訴えられました六つ改革、決して拙速ではなく本当に着実に実行していただきたい。  総理日本の顔、日本の代表は総理御自身です。やはり、その私の友人、国民皆さん方も注目していると思います。どうぞ元気を出して、明るい日本、そして私どもも、先達があの敗戦の廃墟の中から立ち上がったあの原点に戻って、皆さんとともに、国民とともに二十一世紀の扉を開き、明るい力強い日本再生のために頑張っていきたいと思います。このことを申し上げ、また総理のさらなる御活躍を祈念いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  36. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、山本有二君から関連質疑の申し出があります。藤井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山本有二君。
  37. 山本有二

    山本(有)委員 昨今、政官業、まさにスキャンダルばかりの報道でございます。国民の、政治家をあるいは役人を見る目は日に日にうつろになりつつございます。政治家のモラルを高めようと声高にお互いで叫ぶだけでは、これは本質の解決にはなりません。真相を究明し、その原因、背景を分析し、二度と不祥事が起きないようにきちんとした方策を講ずることを国民は待ち望んでおります。それこそが国会の自浄能力であり、この自浄能力を果たして政治家の威信を守らなければならない、私はそう思います。  最近の不正事件のうち、私が、民主主義の冒涜、議会制度の崩壊への予兆、そう感じるのがオレンジ共済事件でございます。  民主主義とは、手続を大切にすることで結果における善を担保するものでございます。したがって、たとえ善なる結果が得られたとしましても、手続に瑕疵、不正があれば、結果はともかく、一切を無効にしてしまう、そういう人類三千年の英知が生んだ社会科学上の所産でございます。国家権力という政治権力を生み、それを行使する、それは国の責任でもあり義務でもございます。  我が国憲法は、議院内閣制を採用しまして、国民主権主義のもとに国民の代表を選ぶ制度、すなわち、公正、平等な選挙を規定しております。まさに議会制民主主義における一番大切な手続は、選挙でございます。ここでオレンジが問題なのは、このオレンジ共済の創立者でございます友部達夫参議院議員が、その地位を金で買ったのではないかと疑われておるところでございます。  さきの政治改革によりまして、連座制の拡大適用が新しく法律制定されました。いわば、わずかおちょうし一本で、選挙違反がありましたならば、たとえ二十万票を獲得した立派な政治家でも選挙無効となって、公民権停止、さらには議員の地位剥奪、こういうことになるわけでございます。選挙区選挙、このような厳しいものになりました。  しかし、私は、このオレンジ共済はいわば盲点があったといりよりこ思います。比例選挙について、我々はもっと詳しく知り、もっと研究し、不正がないようにしなければならぬということでございます。つまり、比例選挙は、選挙自体は小選挙区選挙、地方区選挙と同じように厳しいわけでございますが、比例名簿をつくるときに、いわば密室でやられても、あるいはだれかが不正な意思を持ってしても、この名簿については何にも国民の主権者は関与できない、こういうことが大変な問題であるということをこのオレンジ共済事件というのは示してくれた、露呈したというように思うのでございます。  友部というかつての泡沫候補者が、平成七年七月の参議院選挙で突如、新進党参議院比例名簿第十三位にランクされ、十八名当選となるがゆえに楽々と参議院議員の地位を得てしまった。名簿上位にランクされたのは、新進党の幹部に多額の資金が提供されたのではないか、その資金は、二万人以上に上ると言われる多くの大衆のなけなしの金をだまし取ったその金ではないか、こういう疑いでございます。  そこで、テレビをごらんの、あるいは国民の皆様に、このオレンジ共済事件という事件の概要をわかりやすく警察庁に説明いただき、また、友部達夫議員の容疑事実あるいは被害者の被害の実態、こういうことをぜひ警察庁からつまびらかにしていただきたいと思います。
  38. 泉幸伸

    ○泉政府委員 お尋ねのオレンジ共済にかかわる事件につきましては、政治団体である年金会が、法定の除外事由がないのに、同会が行う年金会オレンジ共済、またはオレンジ共済組合の業務に関しまして、平成六年七月ころから平成八年二月ころまでの間、不特定の多数の相手方である七名から、貯蓄型オレンジスーパー定期名下に、一年につき年利六・七四%を支払う約束で現金約六千万円を受け入れ、もって業として預かり金をしたという容疑で捜索を行いまして、現在、関係者等の取り調べにより、その全容解明に努めているところでございます。  友部達夫議員の容疑事実というお尋ねでございますが、年金会につきましては、同議員が役員をしておるという関係もございますが、同議員がどのような形で本件に関与していたかということについて、現在、鋭意捜査を行っているところでございます。  なお、被害者の数等につきましては、現在までに全国約二千人以上の方から五十億を超える資金を受け入れておるという容疑を持っておりまして、これにつきましては、出資法違反容疑事件で捜索を行ったと申し上げましたが、現在、詐欺についての容疑も抱きつつ、所要の捜査を進めているところでございます。
  39. 山本有二

    山本(有)委員 五十億ともあるいは八十七億とも言われておるこの多額なお金は、実は参議院議員に友部達夫氏がなって以後、その大半をお集めになっておるという事実がございます。すなわち、国会議員の地位を、その信用を利用した事件であるという意味では大変ゆゆしき問題でございます。  実は、私は一昨日、オレンジ共済元理事の石崎松之介さん、この方に直接お目にかかりました。オレンジ共済にかかわったころから今日に至るまでのすべての事実について、微に入り細にわたってお伺いしてまいりました。もちろん、政界工作についても承ったわけでございます。石崎理事というのは、オレンジ共済組合の理事、オレンジ年金企画の社長をやっておられました。元文京区議の益川昇さんという人とともに、この事件にかかわる金の流れ、登場人物の役割など、核心的なことをすべて知っている人物でございます。  その石崎理事に直接お目にかかって、私自身が冒頭申し上げたいことがございます。それはまず、はっきりと政治家に金が流れているとこの理事が言っておることでございます。私はマスコミの報道記事を示しました。その記事には、八億円近い金が新進党本部、細川護煕さん、初村謙一郎さん、小沢辰男さん、小沢一郎さん、鳩山邦夫さん、田名部匡省さん、それで日本新党都議の新渡英夫さん、こういう人たちに配られたと書いてある記事をこの石崎理事に示しました。  そうすると、理事はこれを否定しませんでした。そして、このうちの何人かに確実にお金が配られたことを打ち明けてくれたんです。日本を代表するような政治家の方々でございます。ぜひ、御本人の名誉のためにも、新進党及びその方々は、嫌疑を、疑いをかけられた方々は、みずからの手で真相を明らかにしていただきたい、こう望むものでございます。  また、政界工作についての疑いが濃いと先ほど申しました方々や、あるいはさらには参議院の御意向をお伺いしつつこれは検討しなければならぬと思いますが、友部達夫さん議員本人、こういうような関係されたとする方々に、いわゆる国会の自浄作用、本院での真相究明というような意味を込めまして、後日、本委員会の理事皆さん委員長様に、証人喚問等の必要があるのではないかという点について御検討いただきたいというように思うところでございます。  さらに、この石崎理事があえて私と会う、そういう思い切ったことをしていただいたには実は条件がございました。二つの条件でございます。私も会うことがいいことなのかどうかちゅうちょもいたしました。しかし、むしろこの二つの条件というものはのまなければならぬことだな、こう思いましたから、私も会い、石崎理事も会ったわけでございます。  その条件の一つは、多少手前みそでございますが、新進党には愛想が尽きた、自民党しかこの国を任せるに足りる党はないということを言ってくれということが一つでございます。  それからもう一つ、それは被害者が大量に出ていて返済し切れない預かり金は五十億を超えている、こういうことでございます。その回収を少しでもしようと今躍起になっている被害者の方々が多いわけでございますが、この被害者から、損をしている被害者から、さらに十万円、二十万円というわずかなお金を救済手数料と言いながら集めて、その実何もしていないという悪らつな火事場泥棒的な人が横行しているようでございます。そのことをぜひ国民皆さんの前に言って御注意を喚起していただきたいというようにこの石崎理事が、あえてこの場で言ってくれ、だったら会いましょう、私に、山本に会いましょう、こういうことで会ったわけでございます。したがいまして、泣きっ面にハチ、泥棒に追い銭、もう被害者がこれ以上悲しむことのないようにという意味を込めて、ぜひ御注意をいただきたいと思います。  資料1を配付いたしております。資料1、これをごらんいただきたいと思います。この資料1の二枚目に、これは、この資料というのは便せん三枚でございます。これは友部達夫議員が直筆で書いた、しかもオレンジ共済の組合員の皆さんに配付をした手紙でございます、私信でございます。その二枚目の真ん中ぐらいに、「新進党本部より皆様の所に投票用紙等が送付されますので、其の節には、よろしくご協力の程お願ひ申し上げます。」こう書かれておりまして、「新進党 参議院議員友部達夫 平成七年十一月吉日」。そして、「追伸」として、「尚お願ひの件に関する一切の費用はかかりませんのでご了承下さい。」こうあります。  この「追伸」の欄が問題でございます。つまり、新進党の党首選挙、平成七年の十二月に行われたあの選挙におきまして、いわばオレンジ共済の組合員にすべて配付をして、金はかからない、千円の党費は要らない、申込料は要らない、だからあなた方ぜひ新進党でこの党首選挙に参加してくれ、こういうわけでございます。  開かれた選挙とはいえ、オレンジ共済の被害者の皆さんも参加しておった。そして、そのお金は実は不正に集められたお金で賄っておったということが本当であるならば、これこそ新進党の皆さんに猛反省を促さなければならぬことであると私は思います。  さてそこで、自治省にお伺いいたします。  友部議員あるいはオレンジ共済から新進党に何らかの献金が報告をされてしなしか。特に、私がつかんでおる話では、岩手県連に資金が流れた、新進党岩手県連ということでございますが、その真偽のほどはいかがか、自治省にお伺いいたします。
  40. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 新進党には六百五十の支部がございますので、そのすべてにつきまして政治資金収支報告の確認をできている段階ではございません。  ただ、お尋ねの新進党の岩手県連、正式には岩手県総支部連合会と申しますが、これは岩手県選挙管理委員会届け出団体でございますので、ここに確認をいたしましたところ、平成七年の収支報告書に、友部達夫氏から百万円の寄附を受けた、この記載がある旨の報告を受けております。また、新進党参議院比例代表選出第二十八総支部の平成七年の収支報告によりますと、オレンジ共済という団体から五百万円の寄附を受けた旨の記載がされているところでございます。
  41. 山本有二

    山本(有)委員 新進党という党の支部に、私が自治省で多少調べただけで二つ、しかも表で献金がなされておったわけでございます。  資料2を示させていただきます、この資料2。これは、「新進党」と書かれて、その下に「友部達夫」と、こう書かれております友部達夫さんの後援会入会の案内のパンフレットでございます。  その裏面、裏面というよりも一枚目の右に「新進党第二十八総支部 規約(抜粋)」こう書いてあるところがございますが、その「目的」というところに、「総支部は、主として「年金と高齢化社会の福祉」に迅速に対応し、適切な措置を講じるとともに、全国の中で、特にこの政治課題に取り組むことが必要と思われる市区町村を主な活動地域とする。」こう「目的」が載っておりますが、実は、これはオレンジ共済の目的と全く一緒でございます。  とすると、この新進党二十八総支部というのはオレンジ共済の意味じゃなかったのかというような疑いもあるわけでございまして、この点は、本当にまた公党として、立派な政党として、ひとつみずから疑いを晴らしていただかなければならない、私はそう思っております。  次に、警察庁にお伺いいたします。  友部議員は、このたび、このオレンジ共済で多くの被害者を出したわけでありますが、実は二十三年前、一九七四年、市ケ谷の自衛隊駐屯地の前で日本保証販売株式会社という会社をつくって自衛隊関係者から約一億円集めて、二年後には倒産させて行方不明となっておる、こういうような事実がある。しかも、今回と同じように、キャッシュ・ビルという定期預金、年利一四から一八%の定期預金があるぞと甘い話を持ちかけてお金を集めた。まさにこの件と同じことを二十三年前にやっておるという事実がわかったわけでございますが、警察庁はこれをつかんでおるかどうか、お伺いいたします。
  42. 泉幸伸

    ○泉政府委員 事件捜査の背景等の必要でそういうものについて捜査しておりますが、関係者の供述でそのような事実があったということは承知しております。
  43. 山本有二

    山本(有)委員 すなわち、二十三年前にも同じ事件をやって、経済的信用が全くない。それからまた、我が党の同僚の斉藤斗志二自民党調査局長のお調べによりますと、友部議員は過去四回国政選挙に出馬されておりますが、実は、供託金没収、全部落選という事実でございます。  すなわち、経済的信用のない方が、幾ら選挙に出ても通らなかったその人が、急に新進党の第十三位というものをもらう、こういうことになるわけでございまして、このことに疑義があることは、もう本当に間違いないわけでございます。  そして、次に、私の手元こ、オレンジ共済が文部省に、財団法人二十一世紀青少年育英事業団設立申請書というものがございます。理事長が友部達夫でございまして、衆議院議員として三名の議員がこここ挙げられております。小沢辰男、鳩山邦夫、初村謙一郎、こう理事の名前が載っております、申請書の中に。  この方々を私はあえて追及するつもりもないんですが、石崎元理事にお伺いいたしますと、このオレンジ共済はだんだん、運用していないんでお金が少なくなってくる。また何かでお金をふやして、集めていこう、こう考えたときに、学生を相手に、学生共済というやっと手を組んでそれでお金集めをやれば、百億も二百億も集まるじゃないか。そのときに、信用をつけるために、文部省所管の財団をつくろうじゃないかという画策をして、だから文部省のための、その財団の設立を躍起になってやっておった、こういうわけでございます。  そうすると、文部省も何らか、この財団の設立準備に対して圧力がかかったり、あるいは呼ばれて説明をしておったりするわけでございましょうが、そのときにおいて、財団設立において、文部省がどの程度これに関与してきたか。また、さらには休眠会社の乗っ取りまでこの友部議員は考えておったというわけでございますが、文部省がどこまで関与し、どういう措置をとったか。小杉大臣にお伺いいたします。
  44. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 平成七年の六月から、年金会オレンジ共済組合から育英奨学事業を主たる目的とする財団の設立の相談を受けました。その際、共済組合側からできるだけ早く財団が設立できるよう要望があったということは事実であります。  しかし、文部省としては、相談に対して、事業内容や収支計画について公益法人としてふさわしいものとするよう助言していたところですが、その後、平成七年の十二月を最後に相談が途絶えたままとなっております。したがって、いまだ正式な財団設立の申請はなされていないというのが事実でございます。  次の、休眠財団である中日本オート財団をオレンジ共済が買収したと聞いておりますが、その状況及び財団の解散手続をとった理由いかんという質問でありますが、オートスポーツに関する施設の設置運営を主な目的とする財団法人中日本オートスポーツ研修センターは、昭和五十三年に法人設立許可された後、財政上の理由によって平成二年以降事業を実施せず、いわゆる休眠状態となっていたため、文部省では、法人関係者に対して再三にわたって法人の自主解散を指導してきたのであります。しかし、この指導及び休眠法人としての調査確認作業を行っている中で、法人の登記簿によれば、平成八年八月にオレンジ共済組合関係者が理事に就任した様子であります。  文部省は、その後、法人が自主的に解散を行わず、かつ引き続き正当な理由なく長期間の休眠状態が続いていることもあって、平成八年十二月以降、民法、行政手続法等の関係法規に基づいて、法人の設立許可取り消し処分のための手続に着手し、平成九年一月十四日、つい先日でありますが、本法人の設立許可取り消し処分を行ったところであります。
  45. 山本有二

    山本(有)委員 天網恢々疎にして漏らさずという言葉がございます。ともかく、不正を働いた人たちは天から罰せられるということでなければなりませんが、もし、比例名簿作成権限がある者が、密室で請託を受けあるいは依頼を受けて金銭の授受などをして、それで罰せられないということは我々のこの世の中通らない、こう思うのでございますが、こういうことがもし事実であったとして、一体何かこれを罰する法律はないものかということを警察庁にお伺いいたします。せっかくですから自治大臣からお願いします。
  46. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 ございます。公選法の二百二十四条の第三に、衆議院議員の候補者となるべき者の選定、衆議院議員名簿登載者の選定または参議院名簿登載者の選定につき権限を有する者が、その権限の行使に関し、請託を受け、財産上の利益を収受し、これを要求し、もしくは約束したときは、三年以下の懲役に処するというものがございますので、今回の事件等を通じてもしこのような事実があれば、当然のことながらこの法律との関係で問題になろうかと存じております。
  47. 山本有二

    山本(有)委員 我々政治を預かる者は、常にその姿勢を明らかにしていかなければなりません。  我が党も、比例名簿を長らく政権にあって重ねてつくってきた経験があります。自由民主党としましても、もしこういうことが純粋比例の中で行われるというような疑いがあれば、それだけで我々は悲しい気持ちになるわけでございまして、特に総理はかつて幹事長の経験もございますし、党の要職を歴任されてこられました。すなわち、自民党の参議院比例名簿を数々つくってこられた御本人でございます。そのときにおいて不正はないのだ、それから、今後こういう不正は防げるのだというような御所見がございますれば、その御経験を踏まえてお願いいたしたいと思います。
  48. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、確かに幹事長として参議院の比例代表の順位を決定したことがございますが、このときは、たしか三回ぐらい世論調査を民間の会社にお願いをし、中立的な立場で行っていただいた結果と、その党員、党友の確保数、また現職の方々の場合には国会活動等を勘案した順位を、小委員会のような形をとって決定をする方式をとりました。  また、今度新しい選挙制度の発足に当たりまして、衆議院においても比例の候補者の選定が必要になりました。今回そのための選考基準を設けながら、選挙対策本部の小委員会、報告をとってみますと六十六回検討の会議を重ねております。  こうした合議の積み重ねの中から、公平、公正な順位名簿作成というものに努力をしたつもりでありますが、これから先もやはりこうした制度につきましても工夫を重ねていかなければならない、そのように思います。
  49. 山本有二

    山本(有)委員 これにて質問を終わらせていただきます。ありがどうございました。
  50. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて藤井君、山本君の質疑は終了いたしました。  次に、石井一君。
  51. 石井一

    石井(一)委員 新進党の石井一でございます。  内憂外患こもごも至る、我が国を取り巻く諸情勢は極めて厳しく、二十一世紀を直前に迎えて今ほど難問を抱えておる我が国の政治、経済、社会情勢はございませんし、今の橋本内閣に二十一世紀を目前にして日本のいわゆる構造改革ができるのかということは、国民がすべて注目をしておるところではないかと思います。  私たちは、九年度の本予算、八年度の補正予算、本日から審議を始めましたが、総理の行革に対するかたい決意の表明にかかわらず、昨年暮れの予算編成に見えた旧態依然の、公共事業を中心にした、シーリングを持った、族議員がはびこる、こういうばらまきの手法、これは大変大きな失望を招いておると思います。そして、本当に総理が口先だけでなく行政改革、構造改革に取り組むことができるのか、その疑念が強まり、そうした政策不信の結果から株価が急落するという事態も起こっております。  消費税の引き上げ、特別減税の打ち切り、医療保険の患者負担等の拡大で国民に九兆円もの負担増を求めるという、そしてその反面、将来に対する構造改革も行政改革も明確な展望を見せずにこの予算を審議する。国には、国と地方を合わせて四百四十二兆円の長期債務を抱えておる。しかも、本日、本予算におきましても、補正予算におきましても、これらの負債に対する切り込みというのはない、継続してさらに赤字国債を発行しておる。  世論は、この予算のどこに改革があるのか、元年が泣く財政改革、これでは行革も絶望的だ、優先順位を間違えた反構造改革予算、こういうことが言われておりますが、この予算の編成の責任者として、それまでに述べられた構造改革元年との関係はどのように御判断をされておるのか、まず総理の予算こ取り組む基本的姿勢を伺っておきたいと存じます。
  52. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 平成八年度補正予算の御審議に当たり、九年度予算も絡めて今基本的な姿勢についての御質問がございました。  私は、平成九年度予算編成を控え、大蔵大臣に幾つかの点の指示を作業にかかる時点において出しております。  そのうちの一つは、当時少なくとも三兆円以上と私は当初考えておりましたけれども、国債の発行額を大幅に縮減する努力を払ってもらいたい、これは結果として、既に数字は御承知のとおり、四兆三千億という縮減になりました。そして、我々は消費税は皆さん考え方が違っておりまして、先行した減税に見合う部分を含めまして二%の引き上げを国民にお願いをするわけでありますが、そのはね返り分を含めました予算編成の中で、租税収入等の範囲内に一般歳出などを抑え込んでもらいたい、こうした基本方針はそのとおりになされたと考えております。  また、個別の閣僚として厚生大臣に、介護保険という柱をしっかり立てていくためにも社会保障構造改革というものを進めなければならず、そのためには医療保険改革にどうしても入っていく必要がある、この点について努力をしてもらいたいという指示をし、これもそのとおりの方向を国会でも御論議をいただこうといたしております。  また、公共事業関係の各閣僚に対し、ばらまきという御批判を受けないためにも、例えば道路についてであるならば高規格幹線道路に集中していく、あるいは空港であるなら国際ハブ空港に向けて集中していく、そうした集中を図っていくと同時に、いたずらに事業開始の箇所数をふやすのではなく、始めた以上はその事業が短期間に終結できるよう予算の集中をといった指示をいたしております。こうしたものは、順次その効果が出てくると思っております。
  53. 石井一

    石井(一)委員 私には、基本的な考え方として、言いわけとしか受け取れない答弁でございますが、特に財政法二十九条との関連において、この補正予算は特にひどい。本日、補正予算審議をしておりますこの二兆六千六百六十三億の中身を見ますと、財政法二十九条の緊急の、いわゆるこの趣旨に沿った予算といえば、あえて言うなれば阪神・淡路、O157、それに、私たちが今回修正の要求をしたいと思っております重油流出事故に対する緊急措置、この程度が補正に盛り込まるべきものであって、あとは最初から最後まですべて公共事業のシーリングを避けた粉飾予算である。補正としての中身のあるものはほとんどない。  いかがですか。総理も長年予算編成に当たっておられたお方として、そういうことを率直に感じられませんか。私は、そういうふうなことに対する率直な気持ちを聞かしていただくのがこの議論であるべきだと思うのであります。
  54. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から御議論がありましたが、財政法二十九条、その補正の事由として、法律上または契約上国の義務に属する経費の支出を伴う場合、予算作成後生じた事由について、特に緊急となった経費の支出を行う場合、こうしたものを挙げておりまして、我々は、そうした点で、決して今議員が御指摘になりましたような感覚とは思えません。  昨年一年間を振り返ってみましても、私就任いたしました直後に、北海道において豊浜トンネルの崩落事故が発生をいたしました。また、土石流災害において、残念ながらまだ行方不明一名を残すといった事件も、多数の人命のなくなったものとあわせて出ております。  私は、阪神・淡路大震災を含めまして、新年度を待つことなく、少なくともこの新たな知見、技術というものを個々の防災対策に反映していく、そしてこうした事業を一層効果のあるものにしていこうと緊急措置を講ずることが、議員の御指摘になったような考え方だとは私は思いません。  また、当然のことながら、これは補正予算でありますから、個別の課題ごとに措置するという性格から見ましても、私は緊急性にかんがみた補正予算を御審議を願おうとしていると考えております。
  55. 石井一

    石井(一)委員 株価の下落は、政府のいわゆる経済政策やら、今申しました本予算、補正予算に関する一種の市場の失望だ、そういうことがほとんどの専門家の一致した意見であります。  現に、御承知のように、株価は昨年暮れから、十二月十八日、税制改正大綱が決定し、そしていわゆる消費税のアップとか特別減税の打ち切りというのが発表された翌日、五百二十二円のいわゆる日経平均株価の下落を起こしております。そして、この段階において二万円を割るという状況に入っておりますが、その後、十二月二十日、予算の大蔵省の内示が行われ、八年度予算の閣議決定が行われた翌日、またもや五百二十八円の下落、そして翌々十二月二十五日、予算の閣議決定が行われ、新幹線等々の合意がなされたその翌日、またもや大幅に下落をしております。さらに、年が明けまして一月八日、大蔵大臣が会見を持たれまして、株価に対して、いわゆる打つ手がない、民需に頼らざるを得ないというふうな話をされましたその翌日、六百六円の下落、翌々日七百七十円の下落をいたしまして、ついに底値一万七千三百三円、こういう状態にまでなりました。  一体、これが一万五千円ぐらいにもなれば完全なる金融の麻痺状態が起こるというふうな状況の中で、私は株価のきっかけを政府がコントロールするということは言っておりません。しかし、政府の基本的姿勢なり予算の編成なり経済に対する展望というものを見て国際的、国内的な投機家が判断をするわけであって、大蔵大臣の発言というのは非常に重い。私は、こういう政府の政策を繰り返しておる限り、本年どのような経済的、金融的恐慌が来るか、この内閣に経済政策は不在だということを年末から年初にかけて示しておる実例ではないかと思います。  元気を失っておるのは橋本政権の構造改革に市場が内閣不信任案を突きつけているからである、打つ手はないなどという大蔵大臣の発言が弱気の足を引っ張っておる、政府改革の実行を身をもって示せば株は元気になり経済は活性化する、このように言われておりますが、大蔵大臣、あなたの責任が重いという御認識をお持ちですか。
  56. 三塚博

    ○三塚国務大臣 全体を統括をしておる者として、また世界、国際市場、さらに我が国の資本市場、特に世界のとうとうたる流れは自由主義経済であります。そういう中で、市場に対する大蔵大臣としての責任というのは、その実体を見詰めていくということなんです。  私は、打つ手はないと言ったことはありません。それにニュアンスをとられたからそうなったとは思いますが、市場のことは市場に聞く以外にないのです、こう申し上げました。というのは、株価の上がり下がりまあらゆる要素がそこにございまして、特定した要素で決めつけるわけにはまいりません。自由主義経済のメッカである資本市場の動きというものは、その時を映しておるわけでございますから、そういう点でこれを見ていく。しかし、出されておるメッセージは最大限メッセージとして受けとめながら腹に据えていく、こういうことなんですね。  そこで、石井議員はおわかりの中でこれだけに凝縮して、政治不信であり、内閣不信であり、橋本不信であり、予算不信でありということでありますが、しかしながら前段申し上げましたとおり、日本の財政の危機 また経済の危機、そして金融市場の危機、以下六つあるわけですから省略させていただきますが、二十一世紀へあと四年というこの時点に立ちまして、世界の潮流におくれをとらない大改革を断行するということで今日ありますことは御理解いただけると思います。  そういう中で、政府指標だけではなく民間の指標も、昨今の経済の足取りは、ファンダメンタルズ、いわゆる経済の基礎的要件を満たしつつあるという、ここを明言する方があるわけであります。  企業につきましても、益出しをしなければならぬ銀行、不良債権を償却しなければならぬ銀行、あるいはゼネコンのノンバンクに対する保証、債務等々、三月の決算期を迎えていろいろやられておるのも企業としての株主に対する責任であります。しかし、自動車産業を含め、電気通信産業を含め、それぞれの企業は堅調であり、高い評価を受けておりますことも御承知のとおりであります。ですから、不安な材料、確実な材料が二つあるわけでありますから、主管大臣はじっと見詰めていくということでこの対応をしていかなければなりません。  そこで、大事なことは、行政改革を断行する、ビッグバンも断行する、行政改革も断行する、許認可も断行する、こういうことで今整然と取り組んでおるわけであります。このことは国民の声であり、既に前段の質疑で出ましたように、財政構造改革会議、そこで本国会末には財政再建法、数値目標も明示をして出そうということで既に会議を設置し、審議がスタートをいたしたわけであります。ビッグバンもまさにそういうことでありまして、金融のシステム改革が、外為法の提出、こういうことに象徴されますように、まさにスタートを切ったわけであります。この辺のメッセージが株式市場にも出ておるわけでございます。どうぞ、そういう点を冷静に御判断をいただきたいと思います。
  57. 石井一

    石井(一)委員 ただいまのような答弁を聞いておる国民なり投機筋は、恐らく間違いなく明日、株はまださらに下がるでしょうね、そして行き着くところまで行くだろう。今の政府には本当にやる気があるのかということが問われると思いますが、まあ本予算の審議を通じて我が党の委員が次々に問題を追及してまいると思いますので、今の総理の御答弁、大蔵大臣の答弁を了承するわけではございませんが、時間の関係で次に進ませていただきたいと存じます。  そこで、ペルー日本大使館公邸の人質事件、既に四十日が経過いたしております。私は、刻々とクリティカルなモメントが近づいておる、そう判断をいたします。  私は、実は二十年前、ダッカ・ハイジャック事件政府団長として、福田内閣総理大臣の命を受け、六名の囚人と十六億円のいわゆる身の代金を持って交渉に伺いました。丸四日間立ちづめで管制塔の中で交渉をしました。  そういうことからこの問題を拝見しておるわけでございますけれども、池田外務大臣は、その直後ペルー訪問され、フジモリ大統領とも会見をされました。そして、二日間、三日間の滞在で、現地対策本部の体制をつくられ、関係外交団、国際赤十字との打ち合わせ、在留邦人、日系人との話し合いもされましたが、重要なのは、フジモリ大統領我が国の基本姿勢について打ち合わせをした。  我が国の基本姿勢ということはどういうことであったのか。長い御答弁は要りませんが、私が聞きたいのは、大統領を強硬路線から平和路線へ方向転換させることができたと判断したので帰国した、こういうふうに報道されております。全権を委任してきたのか、この問題の解決に対して、日本からいわゆるこの事件解決の最終の段階でどの程度介入するという話し合いがついておるのか。  例えば、今特殊部隊が国際赤十字の線を越えて挑発行為に入っておるというふうにも言われております。実際、四十日間も経過いたしますと、もう我々の想像できない異常な状態になります。ゲリラは、いわゆる人質に対しては生殺与奪のすべての権利を持つという状態になる。  我々のこの外でのいわゆる普通の感覚は全く通じない異常な状態の中にクリティカルなモメントが近づいておるというときに、私が明確に、簡潔にお答えいただきたいのは、フジモリ大統領とこの問題に関してどのような最後の打ち合わせのもとに帰ってこられたのか。大臣の御答弁を願います。
  58. 池田行彦

    ○池田国務大臣 在ペルー大使公邸の占拠事件につきましては、いまだに多数の方々人質の状態に置かれているわけでございまして、御家族あるいは関係者の方々のお気持ちも含めまして、本当に一日も早く全員無事解放、こういうことにしたいと思っております。そうして、我が国といたしましては、基本的にペルー政府の取り組みを信頼し、これと緊密な連携をとりながら 先ほど申しましたような円満な解決を得たいと思っております。  そうして、私が総理の指示によりまして、その事件が起こりました直後ペルーに参りました。  その目的は幾つかございましたが、その中でも大きいのは、まず、現地におきます我が大使館の機能がほぼ崩壊状態になりました。二十名のうちの三名しかいないという姿でございました。まずその大使館の機能を立ち上げる、そうして、とりわけこの事件に対処していく現地の対策本部をきちんとつくっていく、これがございました。そうしてまた、ペルー政府との間でこの事件に対処する基本的な考え方というものをすり合わせていく、こういうことでございます。  そういった意味で、私は滞在中フジモリ大統領とは二回会談をいたしましたけれども、そこにおきまして、我が国からは、この事件につきまして、テロに、テロリズムに屈することはあってはならないけれども、何よりも人質になっている方々の安全というものを最大限に尊重しながら、全員の無事解放を目指して平和的な解決を図っていく、そういうふうな基本的な考え方を伝え、そうしてまた、ペルー政府も同じ考えであるということを確認したわけでございます。そうして、これから両国政府において緊密な連絡をとっていこうという、こういう方向で一致いたしました。  そうして、二回目の会談のときに、現在現地の対策本部の顧問を務めております寺田在メキシコ大使が現地に着きましたので、それで私と一緒に大統領と会いまして、私の方から、これから、現地対策本部長とこの寺田顧問、この二人から、いろいろペルー政府と連絡をとりたい、御相談したいということがありましたらいつでも相談ができるような、そういうふうな対応をペルー政府大統領もお願いしますということを申し上げまして、快諾を得た。そしてその後、現地におきまして緊密な連携が行われている、御承知のとおりでございます。  それから、これから一体どうなるのか、クリティカルな時期が近づいているじゃないか、こういうふうなお話でございましたが、私どもは、今の情勢、このように考えております。  ペルー政府、非常に粘り強く、慎重に事をこれまで運んでまいりました。そして、直接交渉といいましょうか、そういったものが今後行われるために必要な場の設定というものに今苦労をしているところでございますが、ようやく保証人委員会というものを通じていろいろ話をしようという基本的な合意といいましょうか、意見の一致がペルー政府とMRTAの間でできておると思います。そうしてその中で、どのような構成にこの委員会をするかということについても何となく近づいてきた、かなり折り合いがつきそうになっているのが現状でございましょう。  しかしながら、その保証人委員会を一体どの場所でどういうふうな形で行うかというようなこと、そうしてまた、とりわけ一体そこでどういったテーマを話し合うかということにつきましては、まだかなりの隔たりがあるやに見受けられますので、まだこれからどんどんそういった話し合いによる解決というものが、ずっとその道が開けていくということは必ずしも今見通せないところでございますが、少なくともそのような話し合いの場についての作業が前向きに進んでいる、これを私どもは大切にいたしまして、何とか早く保証人委員会が設置され、平和解決へ向かっての努力が進むことを強く期待しております。  そういった今のような段階で我が国政府として果たすべき役割、これはペルー政府との緊密な連携のもとに果たしてまいりたいと思いますし、また、このような努力を支えております国際社会の支持というものを一層固めていくためにも、我が国政府としての果たす役割も多いとも考えている次第でございます。  いずれこいたしましても、私はクリティカルとは申しません。非常に大切な段階に入ってきておりますので、これまで以上に慎重にあらゆる方面、要素に目配り、心配りをしながら、何とか全員御無事の解放が実現するように努力をしてまいる所存でございます。
  59. 石井一

    石井(一)委員 私がこういうことを聞いておりますのは、何とかこの問題を解決したい、こういう願いから聞いておるわけでございますが、要は、簡潔に申しまして、このテロ事件、強硬的に、ドイツ的に、特殊部隊などの強硬手段をとるか、あるいは柔軟に、日本的に、身の代金なりなんなり、ゲリラの要求に応じてこれを解決するか。過去どちらかの方法で問題が解決をされてきておるわけでありますが、かといっても、日本的であります。日本はテロに甘いということが国際社会において言われておる。(発言する者あり)私は総理の命令でやったのであって、私の気持ちではありません。しかし、責任を果たし、全員を無事連れて帰ったことも確かであります。まあ、昔の話はやめて、今どうするかということをまじめに聞け。  そこで、私が聞いておりますのは、今、例えば申されました委員会ができたというふうなことも、大いに保証人委員会、国際赤十字や牧師も入っておられるし、こういう環境は余りありません。  それから、もっと有利に動いておるのは、人質が七十三名でありますが、重要な多国籍軍は全部外れてしまっております。もう日本人ペルー人とボリビアの大使ですか。これが多くあれば大変な国際問題になります。普通、航空機のハイジャックあたりでも、人質として値打ちの高いのはファーストクラスのパッセンジャー。だから、ハイジャックが起こったらファーストクラスに乗っていたら危ないですよ。それから、多国籍。国籍が多いほどゲリラは強硬に出るということですが、ゲリラも非常に思慮を働かせながらこういうふうな形に追い込んできておる等々、今回は話し合いのつく可能性というものも十分ある。  しかし、重要なのはただ一点。最後の瞬間に、どうなるかというときに、池田外務大臣は、例えばですよ、こんなことは言いたくございません、どうしてもその現地の判断で特殊部隊を突入させるという判断のときに、日本政府に伺いを立ててくるのか立ててこないのか、そういう議論をしたのかということだけ、あとは要りませんから、イエスかノーでお答えいただきたいと思います。
  60. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私どもは、強硬手段か、あるいは身の代金その他いろいろなコンセッションを含めて、そのどちらかでやるか、その二者択一だというふうな御指摘が先ほど委員からございましたけれども、私どもはそのように考えておりません。テロリズムに屈することなくしかも平和的な解決を目指して、今ペルー政府と緊密な連携のもとに努力しているということをまず御理解いただきたいと存ずる次第でございます。  そうして、私どもは、今ペルー政府と緊密な連携と申しましたが、私が参りましたときもそうでございますし、また、その後も現地において日々緊密な連携がございます。そうしてまた、通信手段もございますので、当庁との間におきましても、あらゆるレベルでいろいろ情勢もにらみながら、いろいろあらゆる事態に適切に対処し得るように備えているところでございます。  ただ、その具体的な仮定の問題につきましてどういうことであるかということは御答弁はしない方が適切であろうと思います。先ほど申しました、テロリズムには屈しない、しかし平和的手段で、こういうことを両立させる、そのために苦労しているということで御理解いただきたいと思います。
  61. 石井一

    石井(一)委員 日本大使館が治外法権であり我が国の主権が及んでおると申しましても、一歩外へ出ればペルーの主権のところであり、実際問題、その場に体を張ってそこで交渉をしておる責任者、全権を持った者がいない限り、外部からこれに対してつべこべ言うということはおこがましいと思うのであります。外務大臣が帰ってこられた時点において、全幅の信頼をペルー大統領に置いてお任せをするというのが、私は、この問題のやはりやむを得ぬ筋ではないかなというふうに考えるわけでございます。  私は、そういうふうな意味で、責任を追及したりそうすべきだというふうなことを言っておりません。実際、ハイジャック事件なんというのは、その国の最大の政治問題になります。大統領は、次の政治任期をかけた、命をかけた戦いになっておるわけであって、日本人の大使館の問題だというふうにはならぬ問題なのであります。  願わくは、私は、この問題の解決に、大臣が無理であればだれか政務次官ぐらいをしっかり現地へ張りつけて、この人間が命を差し出すというぐらいの姿勢を示さなければ、電話で待っておってどうだこうだというふうなことでこの問題は解決をいたしません。しかし、ペルーもなかなかしっかりした対応をしておりますから、円満に解決することを期待いたしまして、次の問題に移らせていただきたいと思います。  タンカーの重油の流出事故でございます。  恐らく国民皆さんは、毎日テレビでボランティアとか消防団の人とか、あるいは自衛隊も頑張っていますが、しゃもじで重油をすくっている姿を見て、どろどろになってあれして、私は本当に心が痛んでいると思うのですよ。科学立国日本で一体こんなことしかできないのか、政府はもう少し何とかできないのだろうか、こういう気持ちがあると私は思うのですよ。  この問題の、事件の経過をたどってみますと、一月二日の午前二時にこれが起こっておりますが、その時点では、重油は流出しないと判断をして、人命救助一本に絞った。三十一名を救い出した。一人は行方不明になった。恐らく非常に楽観していたのじゃないですか。しかし、四日の夜、いろいろ調べた結果、ただ一隻ある清龍丸というのを名古屋から出港させた。それが着いたのは何日も後であった。一月十日にようやく運輸大臣を本部長にした流出油災害対策本部を政府に設置した。閣僚会議は二十日であった。こういう状態で、これは阪神のときとも一緒なんですよ。一月二日といえば正月休みだ。まあ、沈没した船の乗組員を助けようと。  今、油がどんな状態になっていますか。一府八県ですか、日本海の沿岸全体に油が流れ着いておる。二日から七日、八日ごろまでの間にもうちょっとしっかりした処置ができないんですか。十日に設置をしているというふうなことで、これ、どうなるのか。日本の危機管理というのはどうなっておるのか。阪神もあればペルーもあれば何もある。次々に起こってくる。日本は最大の石油輸入国ですよ。最大の地震国ですよ。それが初動の段階に、たった死者は七名か十名だと言ったのですよ、村山内閣は。六千名ですよ。今度のことだってどうですか。ロシアの人々を救ったらいいというぐらいに思っておるうちに、日本海全域に石油がたどり着いた。これは政府の怠慢というか、危機管理に欠如があると言われてもいたし方のない、抗弁はされると思いますが、私は、そういうふうに国民は判断すると思います。  総理、いかがですか。総理は反省の言葉も言っておられますから、総理にお答えいただきたいと思います。
  62. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員がお述べになったことを真っ向から否定しようというのではございません。  ただ、一月二日、この事件が発生をいたしましたとき、当初まず人命救助というものがあったことは、それは御指摘のとおりです。そして、その後、漂流しております。その船首部分を何とかして曳航しようという努力が繰り返し繰り返し行われておりました。また、流出油の監視、防除にも海上保安庁は一生懸命になって努力してくれたわけですけれども、残念ながら船首部の曳航に成功いたしませんでした。そして、今さまざまな御批判を受けております。  私は、当初の政府の対応、幾つかの点でもっと早くということがなかったと決して思いません。その点を私は既にもう認め、本会議場でもおわびをいたしました。ただ同時に、事態を軽視してほっていたという御発言だけは、私はどうぞその内容を消していただきたいと存じます。  ASEANから帰国いたしました段階で、私は改めて海上保安庁の諸君の作業のフィルムを取り寄せて見ました。むしろ巡視船そのものが座礁するのではないかと私、心配するぐらいぎりぎりのところまで海岸に近寄った段階でも、なおかつ彼らは二隻の巡視船の間にチェーンを張り、そのチェーンをひっかけることで何とかその船首部を接岸しないように食いとめるという努力もいたしておりました。  そして、それが成功しなかったという点で、私は、いろいろ御批判を受けることは当然だと思います。しかし、努力をしなかったということではないということだけはぜひお認めをいただきたい。
  63. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 御案内のとおり、今総理からも御答弁いただきましたけれども、ナホトカ号、本年一月二日未明に折損、沈没をいたしました。  早速その情報をキャッチいたしまして、海上保安庁職員、極めて、大変な大荒れの状況でございました。冬の日本海にも珍しいぐらいの暴風雨でありましたけれども、その中にあって三十一名の人命救助を最優先で行わせていただいたことは事実であります。  しかし、タンカーが折損し沈没でありますから、流出油が今後どういう状況になるかということは当然予知されることでありますので、それをほっていたということだけはぜひひとつ、そんな事実はないということだけは皆さんにも御理解をいただきたい。十分の監視状況を続けると同時に、今総理の御答弁もありましたように、船首部を何とか沖合に曳航したい、何とかできないかと再三チャレンジをいたしております。そういう状況の中で、残念ながら安島岬に着底をいたしました。  私は、四日に、そして六日に第八、第九管区の現地の対策本部、また警救監を着任させた現地の合同対策本部、七日の海上保安庁長官の対策本部、そして十日の私の、本部長としての政府を挙げての災害対策本部、いろいろとその都度その都度に的確な対応をしてまいったと思っておりますが、結果として、今先生がおっしゃっているように、また国民皆さん方が御存じのように、これだけの大きな災害であります、沿岸住民の方々を初め多くの方々が経済的、精神的な苦痛を味わっていただいていることに思いを寄せますと、私の足らざるところも十分反省して、先生を初めさまざまな御批判は甘受していかなければいけないと思います。  しかし、今やらなければいけないことは、浮流油を初めとして、油の防除であります。同時に、この教訓をどう今後の対策に生かすかということだろうと思っております。今まさに、先生のみならず国民皆さん方が、ひしゃくでありますか、手しゃくでありますか、この科学の進んだ我が国においてああいった作業の実態を見ていただく中で、本当に歯がゆい思いをしていただいているだろうと思います。私もその一人であります。しかし、残念ながら、流出した油の回収は、回収船、また回収装置等の方法によって行うものでありますが、あの波の高い状態の中では有効な活用が困難であります。  じゃ、静穏な状況ではどうかといいますと、時間がたってきておりますC重油、特殊性もございますが、粘度性が非常に、固まってしまうということを考えると、静穏な状態の中ででも今申し上げました回収方法というのはなかなか困難であるということで、どうしてもあの直接回収という方法がこの段階で一番有効であるということもぜひひとつ御理解をいただきたい、このように考えているところでございます。
  64. 石井一

    石井(一)委員 時間がございませんので、我が党が調査団を派遣しておりまして、その団長玉置一弥君が明日この問題を掘り下げてまいります。災害対策基本法での事故災害としての認定あるいは災害救助法、激甚災害法に関しての適用等々、具体的な問題について十分配慮してもらいたいと思います。  一点非常に大きな問題は、ボランティアの、あの寒い中で頑張っている人々がもう既に四名亡くなっている。なぜ亡くなったのか。寒いから亡くなったんだ、心不全だと言っていますが、我々が調べた結果では、重油から出る、蒸発時の、いわゆる揮発油性の毒性の物質ベンゼンによって体力を低下させておる。それなら解剖もしてあげにゃいかぬし、今後行く何千、何万という人々に対してマスクも差し上げなければ、これまた危機管理、人命尊重といいながら何もできていないというような問題があります。いろいろ問題があるということを御指摘して、我が党の次の質問者にもこれはバトンタッチをしたいと思うのであります。  そこで、午前中の最後に、阪神・淡路の問題について一つお願いを申し上げておきたいと存じます。  実は一月十七日、全世界の新聞、私はここにアメリカ・シカゴのヘラルド・トリビューンを持っておりますけれども、ほとんどが神戸の震災に関する論説、社説を挙げておるのですが、この論説では、二年たった今日、神戸は壊滅状態である、ルーインズだと書いてあります。廃墟だと書いてある。これは、外国人が仮設を回ったり町を回ったりしまして、ODAの最大のドナーのこの日本の国において、二年たってまだこんな収容所みたいなところばかりあって、町は廃墟なのか、信じられぬということが、これは何もアメリカだけじゃありまぜん、イギリズでもフランスでもどこでも指摘されておる。一体日本というのはどういう行政なり政治があるのか。  この論説を解説する時間がございませんが、その結びに、政府はそこにいる人々を捨てられた行方不明の手荷物の一つにすぎないと思っているのではないか、こんなものをそのまま置いておいていいのかということを外国からも指摘されておるというふうな状態であります。  ここで私は、被災地から出ておりますので、たびたび議論をいたしました。政府の御答弁はわかります。御努力も評価いたします。過去の実績としては、たび重なる補正、本予算で何兆という金をつぎ込んでいただき、インフラ部分はできました。差額家賃の制度も導入していただきました。最近は、政府の配慮で、高齢者世帯に対する生活の再建金の資金も決めました。この前のこの委員会で自治大臣なり官房長官からお答えをいただいた、やや個人給付的に入った、個人補償の部分に一部入ったのではないかと評価されておる部分でありますが、しかし、これとて政府は、個人補償を避けるために、地方の復興基金に回して、特別交付金措置によって、政府はまだやっていないんだよと迂回させながらこういう措置をしておる。  しかし、外国の制度を見ますと、どの国も、アメリカのFEMAを中心に、ソ連のチェルノブイリでもやっておるのですよ。こういう大変な災害が起こった場合には、政府はもっともっと食い込んだ措置をやっております。それができないという過去の、官僚の壁と、過去の、何といいますか、前例がないということだけでこれをやっておらないために国際的にもここまで言われておる問題になっておるのに対して、私は、もう少し踏み込んだ考え方が必要ではないかというふうに思うのであります。もともと我が新進党は、見舞金の法律を出しました。この国会で審議を願おうと思いましたら、政府は、そういう形での迂回制度にしろ、一部前向きな姿勢を出されましたので取り下げましたけれども、我々の法案では対象は八万人、しかし政府のでは対象は三万人そこそこであります。  私は昨日、仮設住宅へ入りました。しかし、今度は不公平が起こるじゃないか、なぜこの老人には当たるのにこの老人に当たらないの、こういうような状況が起こってきておるわけでありまして、私は、政府は十分なことをした、知事や市長とも相談をしておるということを言われますけれども、これは何も今の神戸や阪神だけの問題ではない。あす岡山へやってくるかもわからぬ、岡山は割に少ないようでございますけれども。これは我々は本当にこの問題をもう少し、二年たってはおるけれども、見直さなければいけないのではないかというふうに考えるわけでございます。  そごで、兵庫県が「自然災害に対する国民的保障制度を求める国民会議」というものを呼びかけまして、四十七都道府県三万九千四百十三団体が賛同し、現在、一千七百八十万の署名が集まっております。要するに、今回のこの未曾有の災害を奇貨として、今後この国においていつどこでどうなってもこれに対処できる制度をつくろうではないかという議論が起こっておるわけであります。  私はこれまで地震保険ということでたびたび総理にも意見を伺ってまいりましたが、総理は常に前向きには答弁をされますが、中長期的ということがっく。国民のコンセンサスを得られるのにはそういう必要もあろうかと思いますが、もうここまで来れば、千八百万といえば、自民党と書いた、この間の選挙で、全員です。一億何千といいますけれども、二千万、三千万の本当のサインが集まるということは、私は、相当な国民的な賛同というか世論があるという状態になってきておる。  この点に関しまして、この国民的な保障制度というものを将来的にこの際確立するということを進めていきたいと思うのでございますが、総理、これまでと同じような御答弁ですか。あるいは現状を認識されて前向きに御答弁がいただけますか。いかがですか。
  65. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、基本的には従来申し上げてきたのと同じように、検討すべきものではあるけれども非常にいろいろな問題点を含んでいるものじゃないかということを申し上げざるを得ないと思います。それと同時に、今議員が引用されましたような海外の論調があるとすれば、私はこれを非常に残念に思います。  確かに、我々はまだこれから阪神・神戸地域において努力しなければならない多くの課題を持っております。しかも、それは住宅だけではなく、むしろ働き場所、産業をどう復興するかというテーマにも今まで以上に力を入れていかなければなりますまい。それができなければ、例えば幾ら住宅だけを整備いたしましても、かつての神戸はよみがえってまいりません。港の機能も随分戻ってまいりましたが、なお努力をする部分を残しております。  私どもは、そういった意味で、幅広くこれからも阪神・淡路大震災の復興のためにいろいろな、例えばその産業をもう一度戻す、新たなものを生み出すことができるならそういうものにも手をかけていく、そのような思い努力をしてまいりたいと思います。
  66. 石井一

    石井(一)委員 私は、住まいも必要であり、仕事も必要であり、すべて必要なんでありますけれども、結局最も弱き立場の人々、年老いた人々というものが取り残されて、そしてそれが今の制度の中からはみ出たまま、まさに捨てられた手荷物のごとく置き去られてしまっておる、この問題に対して何らかの手を加えなければ、これはいつまでたってもこの問題は解決をしないということを申し上げておるわけであります。  最近、市民グループを中心に、今七十名の議員が賛同をしたといいます、いわゆる個人補償を求めるという、そういう動きがございます。これは作家の小田実などという人が中心でやっておるということでありますが、しかし、だれだってすがるような思いの人々はそれに賛同をいたします。私たちは国家財政ということを考えますから賛同はいたしておりまぜんけれども、しかし、心に内心じくじたるものを感じます。  社民党は与党の一角でありますが、党首を初め積極的に個人補償をやろうということを言われておる。民主党は、この国会、恐らく本委員会でも問題の提起があると思いますが、十年間に一兆円の国費を投入した中に、住まい、生活、医療等々について、これに措置をするという提案をされるというふうに伺っております。  私たちは、現実的に処理をするというために、これまで見舞金の法律を出し、政府がそれにこたえていただいたためにそれをおろしておりますけれども、今四つのプロジェクトチームをつくってやっております。  総理が言われました、雇用をどうするかというチーム。  それから、将来へ向かっての国家補償制度を、どこかで天災か何かが起こった場合に、どこかで今度のような重油のような場合が起こつた場合、自分の過失でなく不可抗力でどうにもならないという場合には、国が手を差し伸べるという制度を、我が国にはないのですから、これをつくるということ。  第三番目には、いわゆる民家その他の建てかえが全くできない。五〇%、六〇%というのが更地のまま残っておる。これに対して何らかの形での保険、共済というふうなものができないかというアングルで問題に取り組むというところ。  もう一つは、やはり民家の建てかえのたびに、権利関係の問題であるとか、あるいは融資の問題であるとかダブルローンの問題でありますとか都市計画でありますとか再開発というふうな問題の法律上の問題について、そのネックになっておるものがどうかということを何とかして改正しながら復興したいという、こういう具体的な線に沿ってプロジェクトチームをつくってやろうとしております。  先ほど与党プロジェクトチームの座長の村岡代議士が私の席に来られまして、この間神戸へ行ってきた、まだ苦しい、しかし、与党はなかなかまとまりにくい。しかし、今、社民党も加えて我々が意見をまとめたら、政府と対決して法律をつくって出していくというようなことになったら、自民党の選挙区では地震が起こっても何も知らぬ、天災が起こっても何もいいということになりはせぬか。  まあそんな言い方はどうかと思うけれども、私は、これは超党派で問題を整理し、何党がやったということでなく、できないものはできない、できるものはできる。しかし、これまでの発想を転換してこの問題に今取り組まなければ、外国の論評に異論があると言われるけれども、これだけじゃありませんよ。私は、何でしたら全部そろえてきてもいいが、外国から見て、日本という国はこれだけリッチであるとされておる国にかかわらず、みずからの難民をそのまま放置しておるのか、それでいいのかということが問われておる。私は、これまでの姿勢というものに対して、総理はやはり少し考え方を変えていただきたいと思うのであります。  繰り返し御答弁を求めませんが、担当の梶山官房長官、それから担当の伊藤国土庁長官からも、私がきょう申しました話につきまして、御所見がありましたら御答弁を願いたいと思います。
  67. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 石井委員は、御自分の選挙区でもありますから、この問題にはひとしお強い関心を持っていろいろお取り組みをいただいてきたことは、私自身も承知をしておりますし、また最近では、幾つかのテレビ討論を通じまして、石井先生とは、今置かれている阪神・淡路の問題、それからまた、災害が多い日本でこれからやってくる事態に我々がこうしたことを教訓にしてどう対応していくかということも御議論をさせていただいてきたところでございます。  もう先生は十分御承知のことでございますけれども、今政府は、四回の補正予算、あるいは平成七年、八年、九年度、この予算が通りますと、これらの予算を通じまして、四兆円に近い、あるいは、最終的に九年度が確定をいたしますと四兆円を超えることになると思います。政府は、この阪神・淡路のさまざまな対応をしてきたところでございます。しかも、立ち上がりの資金のための住宅金融公庫の枠を拡大する、あるいま五年間は無利子にする、さらに、生活再建のためには、これは石井先生もいろいろ御言及をいただいてきたところでありますが、私どもも与党三党として、昨年の十二月には、月額一万五千から二万五千、毎月支援をしていくということを、さまざま対応してまいりました。  問題は、個人補償をどうするかということは、私も今担当の立場にいて、さまざまな団体からも御議論のあるところであります。しかし、今制度の中で、私たちは、名前を個人補償というのか、あるいは生活再建というのか生活支援というのかはともかくとして、現実に対応してきたことは先生にも御理解をいただけると思います。  私たちは、不毛の議論をいつまでもしていく必要はないと思いますから、将来にわたって、今兵庫県の知事さんやあるいは全国の知事会でも、これは当時、村山総理の時代にも総理直属の防災問題懇談会でも、その結論として、地方公共団体がある一定の制度を研究すべきだという結論が出ておりまして、これを受けて知事会でも今検討していただいているところでございます。  私もこれから、災害の多い日本の国が、基金制度がいいのか、あるいは共済制度がいいのか、そうした新しい仕組みについては十分研究をしてまいりたいと思っております。また、先生からもいろいろな御指摘を賜りたいと思っております。
  68. 石井一

    石井(一)委員 それでは、官房長官は発言されぬようでありますから、ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  残余の質問を午後させていただきたいと思います。
  69. 深谷隆司

    深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  70. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石井一君。
  71. 石井一

    石井(一)委員 引き続き補正予算に関連をいたしまして御質問を申し上げたいと存じます。  沖縄関連、SACO関連の予算も計上されておりますが、沖縄問題で嘉手納飛行場など沖縄の十二の施設の中に点在する三千人の所有になる民有地の使用期限が五月の十四日に期限切れになることは御高承のとおりであります。県の収用委員会における拒否地主からの意見聴取の公開審理が既に初回が二月二十一日、二回目が三月十二日と決定をされております。  しかし、過去の例等を精査いたしますと、この時期に審理を開始しても、とても五月十四日という日に間に合わない。そういう意味では非常に厳しい情勢に政府が置かれておられるのではないか、これに対してどういう対応をされようとされておるのか、お伺いしたいと存じます。
  72. 久間章生

    ○久間国務大臣 今委員御指摘のとおり、二月の二十一日に公開審理が行われるわけでございますが、大変厳しい状況にあることは御承知のとおりでございます。  しかしながら、沖縄県との信頼関係の上に立ちまして、公告縦覧の手続に入っていただいて、そして収用委員会の方がスムーズに審理が開始されておりますので、私どもとしましても、できるだけ早くこの手続がこの後順調に進められて、一日も早く裁決が得られるように努力をいたしたい、そしてまたそれを期待しているところでございます。  確かに過去の経験からいきますと、非常に日数がかかるということはよくわかっておるわけでございますけれども、従来と若干違いますのは、いろいろないきさつがございましたけれども、県とのあのような形での信頼関係の上に立って、公告縦覧の手続が円満裏に最終的には行われたということもございまして、その辺に大いなる期待をかけているところでございます。
  73. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今防衛庁長官からも状況については申し上げたところでございます。我々としてまさにその使用期間満了までの日程を考えますと、大変厳しい日程であることは、今防衛庁長官からも申し上げたとおりでございます。我々として本当に、県の収用委員会におきまして、裁決に至る手続というものが円満かつ迅速に行われることを現在心から期待をいたしておるところであります。
  74. 石井一

    石井(一)委員 総理防衛庁長官から期待の表明はございましたが、政府の期待とは全く裏腹に、この問題は非常に深刻な状態に向かっておると申し上げたいと思います。  私は、この沖縄の問題をしばしば取り上げまして、村山前総理にも、今手を打たないとだめですよということを申し上げましたが、結局期待に期待をした後、ああいう形での不法占拠ということになりました。前回の不法占拠はまだ地主が拒否をしたというふうなことから、日米安保上の施設提供の義務があるということを理由に、何とかただ一人でもあるし継続をしておりますが、今度の場合はそうではない。政府の手続が遅れたということからこういう状態になつでおるわけですから、政府は、合法的なそれを継続するという理由は、前の象のおりよりもはるかに薄弱な状況の中に置かれておる。  しかも、三千名に近い二千九百名が、空港のど真ん中の、嘉手納と普天間の飛行場の滑走路でそれを共有しておるということ。もう二カ月先に明らかにそういう問題が起こるということになった場合、これはどうするのですか。法律的に処理をするのか、あるいは収用委員会に頼んで緊急使用の申し立てをするか、どちらかしか道がありませんが、申し立てをしたって、前回でも不許可になっておるものを許可しない。そうなると、もう残された道はただ一つというふうにも考えられるのですが、いまだに沖縄の御協力を得て御期待を申し上げる、こういうことなんですか。それでは答弁になっておりません。
  75. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々が日米安全保障条約というものの目的を達成いたしますために、日本に駐留している米軍に対して施設及び区域を円滑かつ安定的に供給する責任がある。これは我が国の条約上の義務でありまして、これはもう委員に申し上げるまでもありません。そして、今私は本当に、この使用権原の取得手続につきまして、まさに県との信頼関係の中で、公告縦覧についての御協力をいただくところまでまいりました。そして、議員がまさに御指摘のように、使用期間の満了まで大変日程的に厳しいということはそのとおりであります。  しかし、今申し上げるべきこと、それはあくまでも、やはり我々としてこの裁決に至る手続というものが円滑かつ迅速に行われることを期待しているという以上のことを申し上げるべきではないと存じます。
  76. 石井一

    石井(一)委員 現時点でそのような答弁までだと言われることも理解をいたしますが、沖縄が、県、市、どのような気持ちでどのようなサイドに立っておるか。この間、名護において海上空港の調査に入るという問題に関しましても、県は、これは国と市の問題だから立ち会いを拒否しておるというふうな問題であります。ましていわんやこの今私が問題提起しております法的問題は、県がどうのこうのできるものじゃありません。もう収用委員会が入っております。  県が今からどうすると言ったって、しかし収用委員会の態度というのは既にもう前例によって出ておるというときに、私は、期待をされることは結構ですけれども、そのような姿勢でこの問題が解決するとは思いません。恐らく、本委員会、この国会中に、私が今こう話をしております問題の提起が確実に顕在化してき、政府はそれに対して判断を迫られるということになるだろうと私は思うのであります。  官房長官、あなたは沖縄担当と言われておりますけれども、もう少し、上辺だけの答弁に終始せずに、どうしてもこうなった場合には法治国家でこうするのだとかどうだとかという明確な指針というものは出せませんか。何もそれが沖縄を逆なでするとかなんとかいうことじゃない。そんな中途半端なことでやっているから、この沖縄問題はいつまでたっても解決しないんだと思うのです。官房長官の答弁を求めます。
  77. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 過般の第二次橋本内閣の発足に当たりまして、沖縄担当を命ぜられました。責任の重いことを痛感をいたしております。そして、昨年来、石井委員からも、ここで幾たびか同様の質問を受けたことを覚えております。  沖縄問題の根の深さというかこの問題の難しさ、それを痛感をすればするほど、この五十年にわたる沖縄の置かれた立場、これに思いをいたさない限りこの問題の解決はあり得ない、そういう思いを込めて今日まで努力をいたしてまいりました。  今防衛庁長官からもお答えがありましたように、大変難しい、細い穴ではありましょうが、今懸命に努力をしているさなかでございますから、これは防衛庁長官ないしは施設庁の御努力を見守ってほしい、そう申し上げる以外に今のところ返答のしようがありません。
  78. 石井一

    石井(一)委員 三千人の民有地に関するこの期限切れの問題につきましては、解決の第一は、これまで政府がとってきたように、楚辺のあの例の通信所と同じように、時期が来て不法占拠を続ける。そして、それが基地の、空港の真ん中であるだけに、三千人の地主の立ち入りというふうなことから、国際的に日米安保の根幹を揺さぶるような、日本政府が恥をかくという状態が起こるのか。あるいは、駐留軍用地特別措置法について何らかの手を打つのか。どちらも嫌でしょう。この第二の問題だと社民党だってどうしますか。それは、人のことですからあえて申し上げませんが。第一の選択か第二の選択しか今の場合に政府にはないでしょう。  しかし、私がしばしば繰り返しておりますように、第三の選択は、基本的な問題にメスを入れることです。普天間を返還するといったって、那覇軍港と同じようなことになって、何十年もペンディングになる、コストがかかる、どうにもならない。私は、総理が腹を割って米国のクリントン大統領と交渉をされることだと思います。  沖縄の痛みがわかり、沖縄の心がわかるのなら、なぜその代替地に海上空港など、沖縄の中でたらい回しをやるのですか。そのためには、本土のどこかへ移設をすることを説得するだけの腹を決めるか、あるいはグアムかサイパンかオーストラリアかフィリピンか、韓国でも結構です、何らかの形で沖縄の兵力を削減するということを示せば、県も地主も、沖縄の心がわかってきてくれたと、たらい回しだけをやっておった政府が本当に我々の痛みがわかってくれたのかと、こういうことになると思います。私は、第三の選択を総理は勇気と決断を持ってされるべき時期が来ておると思いますが、いかがですか。
  79. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員からお話をいただきました。しかし、県道一〇四号線越えの射撃訓練を受け入れる、これについても本土内の各基地周辺の方々からいろいろな声があるという状況は、議員もよく御承知だと存じます。  同時に私は、アジア太平洋地域における平和と安定というものを考えていきます場合に、前提となる二つの大きな要素があると思います。  その一つは、いかにしてこの地域アメリカのプレゼンスを確保するかであり、もう一つは、中国国際社会の中に建設的なパートナーとして受け入れ得るための努力を払っていくこと、この二つの前提があると思います。そして、アメリカのプレゼンス、それはまさに日米安全保障条約、そしてこれによる、我々がその条約上の義務として、必要な基地、施設を安定的に提供するというところにかかっておることも御異論はないと存じます。  アメリカは今、その兵力の見直しの作業をしておるということが言われておりますけれども、同時に、沖縄における米軍のプレゼンスを変える意思なしということも責任者から日本に連絡が参っております。そして、その状況の中において、沖縄の方々に対して大変申しわけないという思いは、恐らく私はあなたに負けないだけのものがあると思います。  しかし同時に、現在日本において提供しております。その基地能力というものを、幾つかの国名を挙げて議員は述べられましたけれども、他の国に移転することができるような状況であるかどうか、この点は私、ちょっと議員と認識を異にいたします。それだけに、その中ででき得る限りの選択として私はアメリカ側と今まで話をいたしました。それがSACOの報告として結実をいたしております。  先日、那覇の防衛施設局長から、この普天間飛行場の代替ヘリポートの建設についての調査ということに対し、名護市、沖縄県及び沖縄県漁連に対して協力の要請をいたしました。名護市長さんからは、県内移設が、国においては日米安全保障条約の履行、県においては国際都市形成構想を推進するために不可欠の事業だというのなら、国と県が共通の状況認識のもとに名護市に説明を行うべきだ、調査について理解と協力を求めるのであれば県も一緒に来てほしい、今回は国だけだから聞くわけにいかないということで、申し入れを拒否されました。こうした作業につきまして、私は県の協力は不可欠だと考えておりますし、県にもぜひ御協力をいただきたいと存じます。  同時に、この場をかりまして、この一〇四号線越えの射撃訓練一つをとりましても、本土におけるそれぞれの地域で、でき得る限りの協力を沖縄の方々に対して示していただきたい、痛みを分かち合う意思ありということを表明していただきたい。今、心から願っております。
  80. 石井一

    石井(一)委員 アメリカ側は、日本の国内問題だからそちらでやってくれということであり、そこが日本の苦しいところでありますが、それじゃ、それを沖縄のたらい回しで沖縄の人々が満足するとは思いません。  私は、もうこれ以上今回は議論をいたしませんが、アメリカの多くの知人、国務省や国防省で話をすればネガティブな反応が出ますが、夜、酒でも酌み交わしながら話をすると、しかしやはり可能性はあるよ、どうするんだ、総理が腹を割って大統領と話すことだ、あとはだめだ、しかしそれだけの余裕はあるよ、そういうような話もございます。  私は、今のような公式的な解決の方法でとてもこの問題は解決しないから申し上げておるわけでございまして、五月十四日の前には、いずれこの国会で沖縄問題は大変な問題になるでしょう。そのときに再び相まみえさせていただきたいと思うわけであります。  そこで、補正予算こ返りまして、冒頭申し上げました財政法二十九条の一項で、総理も御存じのとおりでありますが、大蔵大臣も、いわゆるこの補正に組み入れるというのは、「特に緊要となった経費の支出」というものが、まさに補正という言葉のとおり、本予算にどうしても入らぬものだけ入れるということから考えると、例えば、そこにございます緊急防災対策費として六千四百七十二億などが計上されておりますが、この中の経費は、治山治水、海岸事業、道路整備、港湾整備、住宅対策、市街地整備、下水道、都市公園、農業農村整備等々ございますけれども、緊急でもなければ何でもなし。そういうものに名をかりたばらまきであります。  過ぐる選挙の途中で自民党の幹事長等が、五兆円の大型補正を呼んで金をばらまくからひとつ選挙の応援をしてくれと言ったそのツケをここへ組み入れておると申しても過言ではないと思います。  それと同じようなものが経済構造改革対策費の中にも、文部省の南極観測設備、これ、なぜ補正で入れなければいけないのか。本予算に当然入れるべきことだ。運輸省の練習船の青報通信設備。農水省では家畜改良センターの施設。建設省では国土地理院の施設の整備。これが皆入っておる。  こういう補正予算を、シーリングを外して従来の公共のばらまきをやるために入れておるというふうなことをやっておって、これは筋が通るかということです。  先進国の中でこれだけの負債を抱えておる、そういう財政事情にもかかわらず、補正に一兆六千億も上乗せするというのは、政府が声高に叫んでおられる財政再建とは全く逆行しませんか。いかがですか。
  81. 三塚博

    ○三塚国務大臣 財政法二十九条の言う事由、午前も石井議員から御指摘をいただいたところでございます。この規定を踏まえながら、緊急性のあるものを拾い上げたということであります。  特に、阪神・淡路大震災を教訓とした有識者における防災体制のあり方という研究が行われたこと、御承知のとおりであります。公共施設の耐震性ももちろんでございますが、さらに家屋の耐震性、またあり方ということもあります。特に、公共物の耐震性という意味におきましては、大震災もそのきわめつけの大変な災害でありましたが、北海道豊浜のトンネルの崩落事故等、この事故調査を拝見をいたしましても、新たな防災対策が求められるということであります。  災害は忘れたころやってくるということではなく、災害は相次ぐのではないかという前提に立って政治は適切に対応していくということが大事なポイントでなければならぬと思っております。  さらに、研究の成果、有識者の皆様からの御指摘、地方自治体、地域住民の御指摘、こういうものの知見、技術、これは新年度予算を待つまでもなく、補正において措置をしてまいりますことが政府として極めて重要なことではないだろうかと考えました。  それぞれこれらの趣旨を踏まえながら、地震災害等の防止のため、必要な公共施設の緊急整備、緊急補強、また災害に強い町づくり、地域づくりということになります。地域づくりは、防災ダムでありましたり、砂防ダムでありましたり、地方も都市と同じでありますから、国民であります限り、その箇所はその箇所として網羅していかなければなりません。  これらの公共施設の緊急整備、さらに大規模地震災害時の救援活動、被災者の生存確保のための公共施設の緊急整備、実に阪神・淡路大震災の教訓を生かしながらこれに対応してまいりますことは、地震は待っておらぬわけでございますから、そういう点で、緊急性ということでやらさせていただきました。  ウルグアイ・ラウンド農業関連事業についても、三年前の自由化という深刻な局面に農業が立たされました。自立した農家ということで、これをサポートすることは、御案内のとおり事業費含みで六兆百億円というのが五カ年計画で決められたわけでございますから、それを切れ目のない形で進めるということでなければならぬということから措置をさせていただきました。科学技術の研究という観点で御指摘のものはなされたものと考えます。御理解を得たいと思います。
  82. 石井一

    石井(一)委員 ウルグアイ・ラウンドの農業合意に関連する予算に関しましても、計上に対してとやかく言うよりも、なぜ三千百億円を補正に入れるのか。もう過去二年続けてこれをのせてきておるのに、なぜ補正に当初予算を上回ったものをやるのか。これだって本当に粉飾的予算編成と言わざるを得ないと思うのであります。  もう答弁はさておいて、しかし、この農業予算が実際に農業の発展のために役に立っておるかどうか。その後の円レートも大きく変わっておる。これはいろいろ基本的な問題がありますが、これは別の機会にするといたしまして、高知県の橋本知事が、政府の減反政策に協力できない、この人はさすがに見識があるなと私は思ったのですが、総理、これに対する御意見があれば、一言お伺いしたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 高知県知事は高知県知事として、議員御指摘のとおり、確かに私も見識があると思います。
  84. 石井一

    石井(一)委員 その見識を、弟に従うのでなく、国家の政治姿勢の中で、橋本知事が持っておるような見識をひとつ今後もっと顕著に潔く発揮していただきたしとしうことを希望しておきます。  そこで、住宅・都市整備公団、この問題につきましても、もう時間がございませんので簡単に申し上げたいと思うのでありますが、建設大臣、いずれ別の機会にやりますから、予告をしておきたいと思います。  この公団は、分譲なりあるいは賃貸その他から事業を引くとかなんとかというようなことを言っておりますが、この経営破綻の責任はどうなるのか。べらぼうな赤字で、庶民に対するものを、住宅をも供給せずして、このようなことを普通の企業でやったとしたら、経営者は責任を追及され、銀行も相手にせずに、これはもうどうにもならぬ状態になる。しかし、今現在でも、この予算を見たら、これに対する、財投を通じて資金を流し赤字の一部を補助金で賄っておる、こういうことを繰り返しておるというのが現在の姿であります。  そこで、きょうは時間の関係で、何点かの資料の要求をしておきたいと思います。  一つは、空き家が多過ぎる。過去十年以内に建てられた公団の空き家率、賃貸、分譲をリストとして出してもらいたい。建てかえをした場合には、土地はただなのだが家賃が高いから戻らない、戻り入居率についても、最近の数字をひとつ提供していただきたいと思います。  住都公団の下請に、日本住生活株式会社、JSというのがあります。これが莫大なやはり利益を上げておる。私の調べたのでは、平成七年度の売り上げが一千七百億で経常利益百四億、これはほとんど独占的に住都公団の仕事をやっておる。大規模の工事というのはほとんどこれがやっておる。  そういう中で、それと同じように住都公団が出資しておる会社が二十三、財団が七つある。一体これらの全体の売上高というのはどれぐらいになるのか。まさに独占、寡占状態の中で、そこへ全部建設省なりからの天下りが下がっておる。  こういう状態を繰り返しておって、そうして政府から補助金をもらっておるというようなことを繰り返しておって、一体この国の財政がどうなってくるのかということを建設相、あなたも腹のある政治家だったら考えてもらいたい。総裁なりなんなりを呼び出して、経営責任を追及し、今後どうなる、どう立て直す気かということを、ただ撤退するとかという問題で済まぬと思うのであります。  日本道路公団というのがございます。これまた赤字、負債総額二十二兆円、現在でももうかっておりません。しかしながら、その子会社は全部大変な勢いがあるのですね。  その子会社ではないが、財団法人道路施設協会などはほとんど全国のパーキングエリアやサービスエリアを独占しておる。それで四十六億円の占用料を支払っておるのだけれども、なかなかこれは調べても数字が出てこないのですが、四十六億円支払っておるのが八百万平米ですか、東京ドームの百七十個分のものを全国に持っておる。経常利益は百億円なんて言っておりますけれども、これが理事長、理事の役員もすべて天下っております。そして、その下にはタコの足のように子会社、関連会社がある。これは全部もうかっておる。全部天下りだ。全部それを税金から集めてきて、取ってきてやっておって、本体だけが赤字で撤退する、こういうことを繰り返してやっておったのでは、この国はもちませんよ。本当に財政改革元年であるのなら、こういうことを考えてください。  私は、道路施設協会の年商売上高、経常利益、子会社六十五社の売り上げ、利益等、また、そこに参画しておるOBの数、できれば名簿、それをこの際要求をしておきまして、そうして、問題を指摘して、次の機会に移りたいと思います。  最後に、我が党は、政府提出の補正予算に基本的に問題があるので大胆に組み替えをするべきであるということを要求をいたします。  第一に、緊急防災対策、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策、安保、沖縄、これも筋からいうとここへ入れるべきではない。住宅・都市整備公団補給金などにつきましては、これは補正で計上すべき緊要性はなく、当初予算に計上すべき性格のものでありますので、これは削除、修正されたいということであります。  そして第二に、税制改革関連対策費も、来年四月から消費税、医療保険の負担を、ごまかすためにといいますか、国民の批判をそらすために、本来当初予算で組むべきものを補正に入れておるということに対しても反対をし、当然削除すべきであると思います。  第三に、ロシアのタンカー、先ほども問題を指摘しましたように、こういうものこそ、例えば沖縄に五十億出すのなら、このタンカーの流入に対してはやるよという姿勢を、心あるものを補正の意味から考えて新たに計上するべきではあろうかと思います。  そして、第四に、今回の補正で浮いた、公共事業としては一兆七千億以上入れておりますけれども、この中での既定経費の削減や予備費を税制改革関連対策費としてあてがおうとしておりますけれども、赤字国債をこれだけ発行するというような必要はございません。これを充用することにして、双方いろいろ計算をいたしますと、約二兆円の圧縮が可能になると思います。  今後、民主党「太陽党とも協議をいたしました後、場合によってはこれ全部とは言いませんけれども、ここらで補正に対する基本的な姿勢を変えていただきたい。私は、この修正要求というものを我が党の主張として強く要求いたしまして、本日の私の質問を終わりたいと思います。
  85. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、鈴木淑夫君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを認めます。鈴木淑夫君。
  86. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 新進党の鈴木淑夫でございます。私からは、補正予算の経済効果を中心にいたしまして、政府の経済政策について質問をさせていただきたいと思います。  総理、蔵相、覚えていらっしゃいますでしょうか。私は、昨年十二月九日のこの予算委員会で同じく質問をさせていただきました。そのとき私が申し上げたことは、いろいろ申し上げましたが、そのうちの一つは、政府は足元の景気回復が次第にしっかりしてきておるということばかり自画自賛しておられるが、先行きの景気を示す株価や円相場が弱くなっておるではないか、これは足元の話ではなくて、本年四月以降の景気が不安だということをマーケットが訴えているんだということを申し上げた。その理由として、トリプルパンチという言葉を使って、四月以降に三つの大きなデフレ効果が来るということを市場は心配しているんだと申し上げたわけです。  その第一は、消費税の二%引き上げに伴う五兆円の増税、それから特別減税二兆円の打ち切り、それから社会保険負担の増加二兆円、合計九兆円、これは国民所得の二・三%に当たる、こういう負担増が第一のデフレ効果のもとだ。二番目は、昨七――九月から減少に転じた公共投資が、恐らく来年度、平成九年度の上期まで落ちていくだろうと市場は読んでおる。三番目は、足元がいいと言うが、その中には消費税率引き上げ前の駆け込み需要が住宅投資や消費にある。これは、四月以降間違いなく反動減となる。最初の二つだけでも、例えば野村総合研究所の試算によれば、一・五%の成長率引き下げの効果がある、こういうことを申し上げて、そしてこれは、先は危ないですよ、マーケットが警告しているじゃありませんか、ついては消費税率の五%への引き上げを凍結したらどうですか、あるいは二兆円の所得減税の打ち切りをしないで続けたらどうですか、さらには先送りをしてしまった法人税の減税も考えたらどうですか、こういうことを申し上げたのであります。  ここに議事録がありますからはっきりしていると思うのですが、それに対して三塚大蔵大臣は、政府としては、補正予算とそれから平成九年度の当初予算を一体的に運用することによってこれに対処する、こうお答えになっておるのですね。  ところがどうでしょう。この二つの予算案の政府原案が決まったところから、私が既に指摘していた株安、円安の傾向は一段と強くなった。あのときは辛うじて二万円をキープしていた日経平均株価は、御承知のように今、前場終わり値は一万七千五百十一円です。きょう、前場だけで百七十七円下がっておる。あのころに百十三円程度だった円相場は一時百二十円まで行きましたね。きょうは百十九円前後であります。一段と株安、円安が早まってきた。これは、三月末の決算を控えて、金融機関や企業にとっては大変なことです。資産が減価していく、したがって負債超過が強まるということですから、大きなデフレインパクトを持つ。  円安についても、既に商品市況に輸入原材料値上がりの悪影響が出始めている。これが次第に波及してきて消費者物価が上がり始めれば、ただでさえこの二%の消費税率上げで実質購買力が削減されるところへもつてきて、さらに物価上昇で購買力が削減されます。これが景気を悪化させればまた株安にはねるかもしれない、一種の悪循環の危険性が出ているわけですね。  蔵相、あのときあなたがこれが対策だとおっしゃった政府の予算案が出てきたら逆にますます株安、円安が進んだ、このことについてどうお考えでしょうか。
  87. 三塚博

    ○三塚国務大臣 鈴木議員、著名なエコノミストであり、私も長い間御兄事を申し上げておるところであります。  そういう中で、昨年の議論の御紹介がありました。私は、昨年、その前段で申し上げましたのは、厳しい我が国の財政事情、厳しい我が国の赤字体質をこのままにし、従前の経済政策を執行するということであれば、逆に日本の経済の展望は開けないであろう。財政赤字の解消、累積赤字のさらに圧縮、ふえることだけは最小限にとどめよう、こういうことで、合衆国を初めヨーロッパの諸国までこのことに全力を挙げておる昨今、ひとり我が日本だけが、つらいということで引き続き注射を打ちながら経済の振興、ケインズ経済学と私はそのとき申し上げた記憶があるわけでございますが、総需要拡大で行うということの問題はもう実証済みではないのでしょうか。  私は、経済が伸び切っておるのが我が国の現況でありますから、伸び切っておる中で最大の力を発揮できない、中ぐらいの力まで今来ておるとは思うのでありますけれども、それをしっかりとしたものに立て直すということは財政構造改革で行う以外にない、こういう御趣旨で申し上げたわけでございます。反論があると思うのでありますが、以上、前段はこの辺でとどめておきます。
  88. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 何だか私の質問に対して正面からお答えになっていないんですが、蔵相はこういうことをおっしゃったんですね。市場のことは市場に聞けということをおっしゃいましたね。今もそういうことをしきりとおっしゃるんですが、そのたびに、市場は、はいそうですかと言って値段を下げていっているんですよ。これはなぜだと思いますか。  市場のことは市場に聞けというのは、責任者である蔵相がおっぽり出しておいていいということじゃないんですよ。株価が下がっている意味を市場がどう言っているか、市場は株価を下げるという形でしか言えないんですよ。それをお聞きにならなきゃいけない。それを聞いたら、これはなぜ下がっているか、それは、専門家たちはやはり予算案が原因だと言っています。二つの意味で予算案が原因だと。  一つは、これじゃ四月以降の景気が失速しちゃうよ、そのことこよって、今何とか隠れてはいるがマグマのように動いている経済構造危機が表面化するよ、それが危ないと言っているんだと思うんですね。大体、政府は足元の景気は大丈夫だと言っておられるんでしょう。四月以降が実は危ないんですね。ところが、補正予算というのは足元を対象にするんでしょう。そこへ一・七兆円ぐらい公共投資で刺激しようというんでしょう。みんなが心配している四月以降、九兆円も負担をふやそうというんでしょう。これはやさしい言葉で言えば、とんちんかんというやつですよ。全然ちぐはぐじゃないですか。そうでしょう。  それからさらに、この補正予算に入っております公共投資の追加というのは、増税予告つき公共投資なんですよ。ケインズのことをおっしゃいましたね。国債発行して公共投資を拡大するこの補正予算に入っているようなケインズ政策の問題点の一つとして、もう学界では定説になっていることは、その公共投資の財源を調達するために増税するということがわかったら、国民はその増税準備で公共投資の結果ふえた所得の中からお金を貯蓄に回しちゃう、消費をふやさない、だから波及効果はない、これが学界の定説ですよ。  今度は典型的な増税予告つき公共投資です。しかもこの補正予算は恐らく実際に実施されるのは四月以降でしょう。それで、政府が希望しておられるように、本予算が、当初予算が年度内成立したら、ほとんど一、二カ月きびすを接していくわけですよ。公共投資というアクセルを踏んだかと思ったら、すぐ九兆円の負担増というブレーキを踏むわけですね。こういうむちゃくちゃなことをやって公共投資の景気刺激効果があると思いますか。これはもう全然ないんですね。財政赤字拡大が心配だと言いながら、財源をむだに使っているような話なんです、これは。  さっきから石井委員も言っておられるように、この補正予算の緊急性についてはかなり疑問のあるものがたくさん入っている。ましてや景気対策という観点ならば、今申し上げた二つの理由で、  これはとんちんかんですよ。  それからもう一つ、マーケットが一生懸命株価を下げることによって、蔵相、聞いてください、聞いてくださいと訴えていることは、この補正予算と来年度当初予算を見ると、どうも本気で改革をやる気があるのか、あるいは気があってもやれるのか疑問だということを言っているわけですね。  一番わかりやすい例を申し上げますと、景気が心配だ、ああ、それじゃ公共投資を一・七兆円追加しましょう、しかし財政赤字は拡大する、さあ大変だ、九兆円負担をふやしましょう、そうしたら、これは歳入と歳出の両側が大きくなっていくということでしょう。これは大きな政府に向かっていくということですよ。  ところが、改革をおっしゃるときに、政府は、行革あるいは地方分権等々で効率的で小さな政府を目指すと言っておられる。全然これは方向が逆じゃないですか。これ一つとっても、本気でこれは改革をやろうとしている予算なのかとても理解に苦しむ、そういうことを一生懸命市場は言っているのです。そして、その市場の声の中には、御承知のようにグローバル化した今日ですから、海外の声もあるわけですね。海外から日本を見て、この予算を見ると、もうこれはいけませんな、経済の先行きがとても心配だ、構造危機が出てきそうだ、これは日本売りだということであります。  しかし、日本売りという言葉は屈辱的ですよね。こういう日本売りだという状況、総理、こういう屈辱的な言葉は総理もお嫌いだと思うし、私も非常に残念。この日本売りと言われている現状、これについてどう受けとめていらっしゃいますか。
  89. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 昨年の論議から説き起こされましたので、今改めて私も昨年の委員との論議の議事録を振り返りながら見てまいりました。そして、その時点において、議員、やはり公共投資が非常に大事だということでいろいろな御論議をちょうだいをいたしておりました。  そして、その時点で私がお答えを申し上げました一つのポイントは、昨年の下期、一昨年です、今からですと一昨年の下期、確かに補正予算を合わせて十一兆程度の公共事業があった、そしてその年度内実行されたものが六兆を切っていた。昨年の場合、その限りにおいて、その下期におきましても、言いかえるなら三月までの間に、実行ベースでいうならそれを上回る財源が残っているということを申し上げ、同時に、議員が議論の中で指摘をされました、例えば自動車の販売あるいは住宅建設といったものの中に消費税の影響を考慮した前倒しの要素があることは否定しないということも申し上げてまいりました。  しかし、午前中、たしか経済企画庁でありましたかどこでありましたかちょっと忘れましたが、答弁の中に、確かに住宅建設戸数は減るが、それでも相当高い水準のものが維持されるという発言があったことも御記憶であろうと思います。  そして、そうした中で、私は、三月の末までの場合、現在の公共事業の手持ちで一昨年実績程度のものは維持できると思うということをまず申し上げ、下期に残るものを考えればそれは十分維持できるであろうということを申し上げておりました。そして、その四-六の落ち込みをカバーするに足る工夫をしておけ、好意のある忠告としてこれを承るという答弁も当時申し上げたわけでございます。  補正予算と申しますものの性格が、先ほど来石井議員も御議論になりましたように、財政法二十九条に基づくものであることはそのとおりであり、その限りにおいて必要な措置を講じたものでありますけれども、それは当然のことながら、議員が今御議論の中でもお認めになりましたように、四-六にもプラスの影響を生じるものだということは事実でありましょう。  そして、いろいろ御議論を御紹介をいただきましたし、確かに日本の国内におきまして大変厳しい報道が躍っております。しかし同時に、例えばフィナンシャル・タイムズの一月九日、当然議員もお目通しでありましょうが、全く違った考え方を述べておるものもございます。そして、ここに述べられている最大の要因というものは何か。これは、規制緩和に対して政策担当者や業界のロビーがついに本気になった、日本が本気だということを認めたというところから議論が始まっておりますことも御承知のとおりであります。  私は、どちらの見方が正しいということをここで争うのではありません。しかし、見方というものは幾つかの説があり、フィナンシャル・タイムズの見方も、私はそれなりに首肯し得る部分、議員がごらんになっても含んでいるであろうと存じます。そして同時に、我々は本当に厳しい状況の中でここを乗り切っていかなければならない、これは前回議員と御議論をさせていただいたときにも私が申し上げたことでありました。そうした努力は、我々はこれから必死になって払っていかねばならない、そのように考えております。
  90. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今総理がお答えいただいた中で、午前中、企画庁長官が言った、恐らく住宅建設の戸数をおっしゃったと思うのですね。あれは実は、私に言わせれば、物すごい落ち込みを意味しています。百四十万戸とおっしゃったのですね。百四十万から百四十五万戸くらいが正常だと言った。しかし、駆け込み需要で今どのくらい出ているか御存じですか。去年の十月は百九十万戸ですよ。百八十から百九十万戸のところから逆落としになるのですよ。これは相当なデフレインパクトを持つのですね。  それはさておき、今総理がおっしゃったこと、すなわち私の質問にお答えくださったこと、すなわち海外での日本経済の見方にもいろいろあるよと言って、フィナンシャル・タイムズのことを御紹介になりました。それは私も、海外にも大勢の人がいるからいろいろあるというのは、総理がおっしゃるとおりだと思います。しかし、今経済の議論をしているわけですから、経済のマーケットでへ海外のマーケットで一体日本がどう評価されているのであろうかということは、最も客観的な基準になると思うのですね。  それで伺いますが、ジャパン・プレミアム、ロンドンのインターバンクマーケットにおける、いわゆるLIBORといいますね、銀行間取引のオファリングレートですね、日本の金融機関に対するオファリングレートと他の国に対するものとの差がジャパン・プレミアムというわけですね。大和銀行事件のときに〇・四%くらいまで行ってしまって、もう大変だという話がありました。今、年明け後、こういう株安、円安、日本売りの中で、ジャパン・プレミアムがどうなっているかということについて御報告がありましたか。これは細かいことですから、総理も蔵相も知らぬというなら知らぬでよろしいのです。それを御存じですか。御報告を受けておられたらどうぞ。
  91. 三塚博

    ○三塚国務大臣 詳しくは政府委員から、榊原局長がきょう来ていますから知らせますが、聞いております、若干悪化をしていると。これは東京株式市場、鈴木議員が言われますとおり、挙げて政府批判であります。しかしその中でも、経済エコノミストも学者先生も研究所の所長さんもそうではないと、こういうきっちりとした意見もあります。さまざまな要素の中で株式市場は動きますことを、鈴木さんは野村総研の理事長をやられておりましたから百も承知なわけです。  政府とすれば、自由主義市場の資産市場の動向というものはそれに任せていくというのが、自由主義社会、特にサミット構成国、G7構成国の日本の立場でなければなりません。大蔵省、大蔵大臣の言明で、総理大臣の言明で株式が上下左右に揺れるなどということであればこの市場はおかしいわけでありますから、重大な関心を持ってこれを見詰めるというのが精いっぱいであるわけです。  ですからそういう点で、その点、日本売りという言葉も、攻撃を、批判をされる方々から出る言葉でありまして、フィナンシャル・タイムズじゃありませんが、それ以外のエコノミストも決してそうは言っておりません。そういう中で、今のジャパン・プレミアムは、きょうは政府委員から答えさせます。
  92. 深谷隆司

    深谷委員長 榊原国際金融局長
  93. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 政府委員の答弁は必要ありません。委員長、私は事実を聞いているのではない、報告を受けたか聞いたのです。
  94. 深谷隆司

    深谷委員長 今、委員長は金融局長を指名しました。
  95. 榊原英資

    ○榊原政府委員 今、委員から日本売りという話が出ておりましたけれども、私も今昼食で、外国のバンカーと食事をしていましたけれども、彼は、売っていない、彼のところは日本の株を買っている、こういうふうに言っておりました。  事実、一月の六日から十一日の間、日本の株価が二千百円落ちたとき、外人は三百八十億円の買い越してございます。この間に株を売ったのは、自己勘定で日本の証券会社が二千億近く売っておるわけでございます。もちろんこれは事実として、裏に先物の売りがございます。先物をどこが売ったかということは、これは統計はございませんけれども、少なくとも現物に関する限りは日本人日本売りでございます。外国人が日本の株を売っているという事実はございません。これが一点でございます。  それから、円安、株安というふうにおっしゃいますけれども、外国人の通常の感覚は、これは委員御存じだと思いますけれども、円安というのは輸出を普通は持ち上げるものでございます。輸出が上がれば景気はよくなる。ですから、通常の感覚は円安、株高でございます。これがどうして円安、株安になるのか、これはよくわかりませんけれども、そういうことを言っておる人がいる、こういうことでございます。  それから、ジャパン・プレミアムについても、確かに期末にかけてジャパン・プレミアムというのは常に上がるわけでございます。  それからもう一つは、これは委員御承知のとおり、金融ビッグバンということに関連して、日本の金融機関の将来というものに対して若干の懸念が出ているということは、これは確かでございます。ただ、外国人が日本売りというメンタリティーでジャパン・プレミアムが上がっているということではないということははっきり申し上げたいと思います。
  96. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私は、ジャパン・プレミアムについて正確な報告が、総理、蔵相に上がっているかどうかと思って聞いたのです。  私の手元にある資料を申し上げましょう。  今国金局長が言われたように、ジャパン・プレミアムにも季節性があるのですね。年末には上がって、年を越すと一度下がるんです。今のような一月の時期は、決算の期末越えの三カ月はそれはまた季節的に高くなりますよ。だけれども、一カ月なんていうのは落ちついていなきゃいけない時期なのに、私が金曜日に取り寄せたデータによれば、ジャパン・プレミアムは〇・一三から〇・一五と拡大をしているんですね。ましてや三カ月を超えるものは〇・一七です。それから、レーティングの低い日本の金融機関は、かわいそうに〇・二から〇・二五ジャパン・プレミアムがついています。  ですから、海外で調達するのは非常に不利だということで、今、日本の銀行は、調達を海外から国内のインターバンクに切りかえているんですね。優良な銀行は国内で期末越えの三カ月のCDか何か出して調達できますが、問題のある金融機関はそれができない。したがって、その日暮らしのオーバーナイト、翌日物のコールをとって必死になって今資金繰りをやっているんですよ。普通、そうしたら日本の金利は上がっちゃうんですが、日本銀行が金融調節で金利が上がらないようにしているから金利は上がりませんが、このインパクトが円安に出ている。そうでしょう。だって海外で調達するのをやめて国内に調達を切りかえれば、それだけで円安の圧力がかかるのですね。  実はそういうことで、日本売りというのがロンドン・インターバンクマーケットのジャパン・プレミアムに出ていないという認識は間違いであります。そういう間違った認識に立って判断されるのは、私は大変危険だと思います。  ちなみに、さっき国金局長は、外人は買っておると言ったけれども、あの外人の中には、年金福祉事業団のようなPKO的なものが外国の証券を通じて出ているものも一緒に入っちゃっているのですよ。だから、これは精査しないとわからぬ話であります。  それはともかくとして、そういうことで、私が非常に危険を感じますのは、日本売り、そして今発生しているジャパン・プレミアムについて蔵相も総理も危機感をお持ちでないとしたら、それはまあ報告が正確でないのかもしれないけれども、これは大変怖いことだと思います。  今国内のマーケットで二月危機、三月危機という言葉が言われているのま報告を受けておられますでしょうか。そういう中で株が大きく下がっておりますが、御承知のように、特に銀行とゼネコンの株が大きく下がっているのですね。二月危機、三月危機という言葉と絡んでこれが何を意味するものだと考えておられますか。総理、大蔵大臣、危機感をお持ちになっているなら、そういうふうに御説明いただきたい。そうじゃないのですか。どうぞ。
  97. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先ほども申し上げましたが、鈴木議員の見方も見方、まるっきり私はそれを否定するつもりはございません。そういう中で、重大な関心を持って見守ると言っておりますことは、さすが日本政府でございますから、ありとあらゆる世界の情勢を読み取ることができます。そういう中で、やはり市場は市場という資本主義、自由主義の原理原則を保ち、たくましい資産市場が、株式市場が、為替市場が成りますように、こう思っているだけでございまして、しかし重大な関心を持つというところですべておわかりのはずであります。  これは、かつての羽田さんが大蔵大臣のとき一万四千円こなりました。あのときも私と同じことを言い続け、その後上昇カーブに転ずる、こういうことがありましたこと御案内のとおりでありまして、鈴木議員に申し上げますが、日本売りは日本の誇りを傷っけるものであります。日本で育った企業は、やはり不安定、不安というものを醸し出すのではなく、業績がよいわけでございますから、精いっぱい頑張っていかなければなりません。  住専問題で金融機関が問われました。しかし、これも三法で三機関を設けることにより処理が順調に進んでおります。金融不安の心配は、さまざまなところもありますけれども、全体で見てみますと安定しつつあります。そういう中で、正視をし、重大な関心を持って見ておるというのは、そういうことであります。
  98. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 三塚大蔵大臣がおっしゃいますように、日本売りというのは屈辱的な言葉ですよ。僕らは使いたくない。使いたくないけれども、現実にジャパン・プレミアムが拡大しているじゃないですか。そういうときにそんなやせ我慢をして言っていたって、それは戦時中の精神主義みたいなものですよ。  今金融界でなぜ二月危機、三月危機と言われているか。少なくとも日本の金融機関、今五つの難問に直面しているのです、決算期を控えて。この五つの難問を抱えているから、専門家であればあるほど大変だ大変だと言って頭を抱え込んでいるのですよ。  一つは、今申し上げましたように、ジャパン・プレミアムが発生しているから国内へ戻ってきている。国内へ戻っている中で、優良な銀行は期越えの資金手当てをもうしちゃっているけれども、危ない銀行であればあるほどその日暮らしのオーバーナイトで金繰りをつけているという危険な状態なんですね。  そして二番目に、今申し上げましたけれども、ゼネコンの株と銀行の株が特に下がっているのはなぜかということであります。  御承知のように、住専その他のノンバンクの不良債権の整理が今おっしゃるように進んできているわけですね。そして、進んできているのはいいが、その相手方の中には言うまでもなく建設、不動産の企業がかなりいるわけです。その連中が住専の不良債権整理の中で困ってきているわけですが、これは同時にゼネコンの子会社である場合がかなりある。そういう中に、公共投資が昨年の七-九からずっと落ちてきているわけですから、そっちの受注も細ってきたということで、今不動産、建設の中小企業の業況が著しく悪化をしています。  そうしますと、この業界では下請の借り入れや資材購入費をゼネコンが、丸投げしていく上のゼネコンが支払い保証する慣行があるのですね。ということは、建設、不動産の中小が困ってくるということは支払い保証の関係でゼネコンが困るということです。そして、そのゼネコンとなったらもう取引先は大銀行が入ってきますから、そのレベルで金融危機がじわっと近づいているということをマーケーットは気づいているからゼネコン株と銀行株が暴落をしているのですよ。これが二番目の困難であります。  そして、三番目の困難というのは、バブルの崩壊はとうに終わっているけれども、こういう経済停滞の状況ですから、御承知のようにまだはっきり地価が下げどまったという感じがないわけですね。そうしますと、不良債権の償却を一生懸命やっていても、回収可能債権だったはずのところが地価の値下がりで根っこのところがだんだん腐ってくるわけですね。この不良債権処理が、やってもやっても思うように進まない。この地価下落で、実は数字を洗い直せばかなりの不良債権がある。それも、じわじわっと回収可能債権だったものが不能債権に変わってきているという部分があるということです。これは不良債権担当の銀行の役員に聞けばすぐわかること。  そして四番目に、今新聞をにぎわしているように、ここへ来てまた企業倒産がふえているのですね。三月の期末決算を控えてとうとうこらえ切れなくなって倒れる企業が出ているということです。  そうして最後に、五番目に株安ですよ。この株価の下落によって、御承知のように含み益がなくなっちゃった、それで含み損が発生しているという銀行がどんどんふえてきているわけですね。  余りこのことを言って国民皆さんに不安を与えてはいけませんが、新聞が書いていることだから申しますと、私自身の調べでは、一万八千円に来たところで、大銀行、都銀、長信行、それから信託銀行、いわゆるマネーセンターバンク二十行の中の一行は既に含み損に転じています。地銀の中で二行が含み損に転じている。第二地銀の中で十四行が含み損に転じている。今、一万七千五百円まで来ましたね。一万七千円までいきますと、何と大銀行のうちの五行、地銀のうちの六行、第二地銀のうちの二十四行が含み損を出すのですね。これは大変な事態であります。  以上の五つの理由で、実は金融危機のマグマが動いている。だから、マーケットは二月危機、三月危機といって悲鳴を上げているのです。  総理総理はお立場上、仮に私が今言った五つの問題点を承知していて、うっかりしたらこれは金融危機だと思っていても、まさか金融危機の危険があるなんておっしゃいませんね。そんなことをテレビの前でおっしゃったら、かえってこれが刺激になるかもしれませんから、総理に対してそれを私はお聞きしようとは思いません。しかし、総理の心の中で、今私が言ったようなことを御存じで、しかもこれはうっかりしたら危ないぞと思っておられるなら、これは行動に示さなくてはいけない。行動というのはやはり対策ということですよ。対策に示していただかなければ困るということです。  新進党は、今月の十四日に、とりあえず緊急の対策として、二兆円の特別所得減税の打ち切りはしないで続けようよ、それから有価証券取引税はもう廃止しようよ、地価税もゼロ%に凍結しようよ、この三本柱の緊急対策を提案したところです。そしてその財源は、先ほど石井委員も言われましたが、緊急性に乏しいこの補正予算の支出の本予算への繰り延べ、そして本予算の中の、在来型の、利益誘導型の、むだの多い、民間支出を誘発しないような支出を精査してカットしていく。こうすれば二兆円、三兆円の財源は出てくるのです。  だから、こういう緊急対策を政府が今おっしゃらないと、私としては、ああそうか、総理はお立場上口に出さないのではなくて内心でも危機感がないのだなと判断せざるを得ない。  もし危機感がないなら、じゃ本当に二月、三月危機で金融が動揺を起こしたときに、総理は責任をとって退陣されますか。それぐらいの決意でいてもらわなければいけないような問題ですよ。危機感なんてないよないよとのんきなことを言っているけれども、本当こ起きたらどうしますか。金融パニックぐらい怖いものはないのだから。ですから、ぜひ対策を緊急に打ち出していただきたい。少なくとも、私どもが言っている程度の対策に同意していただけないか。総理、いかがですか。
  99. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、一点私は議員にお願いを申し上げたいと思いますが、議員よく御承知のように、経済界にバンドワゴン効果という言葉がございます。あなたのようなエコノミストとして非常に令名の高い方が大変だ大変だ大変だ大変だとおっしゃればおっしゃるほど、バンドワゴン効果というものが私は気になります。それだけに、どうぞその点をできる限り穏やかなトーンでお話しをいただけないものだろうか、これが感想の第一点であります。  また、いろいろな角度から御論議がありましたけれども、議員のお触れになりませんでしたのは、市場の中での裁定取引の問題にはお触れになりませんでした。しかし、割高な現物株を売り、割安な先物を買う裁定取引が株価を押し下げている状況はないであろうかという視点も、あるいは必要な視点の一つかもしれないと思います。  そして私は、今さまざまな御議論をされましたけれども、住宅建設の戸数から非常に大変だというお話に入っていかれましたが、であるとすれば、やはり公共事業はある程度必要なのではなかろうか。にもかかわらず、その住宅建設戸数の水準から金融機関並びにゼネコン等の不良資産というものにまで入られて、それが非常に大きな影響を及ぼすという御論議をいただいたわけでありますが、それならまさに、政府が今まで保護をしてきた業界を規制の緩和等によって競争の荒波にさらそうとしている部分にその厳しさが出てきたという意味では、私はフィナンシャル・タイムズの論点と相似た視点を議員もお持ちのような気がいたしました。  いろいろな感じは、それなりに私は持ちましたし、金融市場というものが今後変革をしていきますプロセスにおいてシステムの変更を求めるわけでありますから、その中において、個々の体質においていろいろな要素を当然ながら脳裏に私なりに浮かべてまいりますけれども、トータルとして国民に不安を与えるような事態を惹起してはならない。その意味における問題意識は私なりには持っておるつもりであります。
  100. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今総理が言われたことは、私も十分わかっています。だからこそ、それなら行動で示して対策を打ってくれと言ったわけであります。  総理六つ改革とおっしゃって、全部必要だと思いますよ。その中にも金融ビッグバンというのがありますね。しかし、今私が申し上げたような金融の危機的な状況の中で、本当に金融改革ができると思っているんですか。改革というのは痛みを伴うということはもう年じゅう言っておられますね。金融ビッグバンだってそうですよ。優勝劣敗を強めますよ、競争促進で。ただでさえ金融がこういう状況のときに、そんなことをしたら、それこそ金融のパニックをあおっちゃうかもしれないんですよ。だからこそ、もっときちんと経済に手を打ってからやらなければ改革もうまくいかないということを言っているんです。  総理、金融ビッグバン、二〇〇一年までかかってやるそうですね。サッチャーがやった……(橋本内閣総理大臣「までに」と呼ぶ)までにね。サッチャーがやった金融ビッグバンというのは二つの特色がありまして、一つは、サッチャーが七九年に政権をとった後、直ちに、今新進党が言っているみたいに、所得税と法人税の減税に手をつけたんですよ。そして、八〇年、八一年、マイナス成長だった経済を、減税で勤労意欲、投資意欲を高めて、サプライサイド、供給側から経済を活性化して、二%成長、三%成長、四%成長、とうとう五%成長まで上げてきた。それで、この四%台成長に突入した八六年に、ぼかんとビッグバンをやったわけです。ビッグバンというのは宇宙創成のときの大爆発ですから、一遍に規制緩和をやるわけです。二〇〇一年までにじゃないんですよ、一発でやるわけですね。  ところが、総理が言っておられる金融改革は、これは経済に元気が出ていない、今言ったような危機的状況の金融の中でやろうとしている。そんなことをしたら、私は極めて危険だと思います。だからといって、そろりと少しずつ規制緩和をすると、金融市場というのは著しくゆがむんですね。  今私が承知している限りでは、来年四月に外為法を改正して、為替管理を完全撤廃するというところはお決まりのようだが、あとの商品開発規制の自由化とか業務分野の規制の自由化とか、そういうものはまだいっおやりになるか決まっていない、二〇〇一年までにとおっしゃっている。  ここで、実は非常に危険なことが起きます。もし為替管理だけ先行して自由化したら何が起きるか。国内の取引はまだ不便です。規制が残っています。そうしたら、日本人はみんな海外で日本株でも何でも取引を始めちゃって、日本の金融空洞化を防ぐはずのビッグバンが、逆に金融空洞化を促進しますよ。  やっぱりビッグバンというのはぽかんと一遍にやらなきゃいけない。ぽかんと一遍にやるためには、それに耐える体力を減税先行型でつけて、それからやらなきゃできないことなんですよ。  私、一番それとの関連で総理に申し上げたいのは、有価証券取引税の廃止、これは新進党が一生懸命言っていることです。さっき言ったように、三つの柱の一つに挙げている。これをすぐやらなきゃ。外為法の改正だけやったら、本当に日本の金融は空洞化してしまいますよ。サッチャーがやったように、経済に体力をつけて一遍に規制緩和をする、これが構造改革のやり方です。総理、いかがですか。
  101. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 お教えをいただきましたことには感謝いたします。  ただ、サッチャーさんは日米保険協議といった厄介な問題を片手に持つておられたわけではございませんでした。そして、自由化の方向というものを既に志向しておりました日本アメリカの間で保険協議が非常に難航いたしましたこと。しかもそれは、むしろ自由化の方向に進めようとする日本と、そのプロセスにおける既得権をできるだけ長く存続させたいという論点を持っておりました、それだけではもちろんございません、アメリカとの間でぎりぎりの調整が時間がかかったということは事実問題としてよく御承知のことであります。その上でこうしたスタートを切りました。  そしてそれだけ、例えば大幅な減税をし、それにかわる財源を持てるような状況でありましたなら私も幸せだと思います。しかし、非常に厳しい財政状況の中で、これ以上、本当に公債依存度を上げるどころか、何としても下げたいという中で、我々にはこの選択しかございませんでした。  そして当然のことながら、その外為法改正に引き続きまして、我々は次々と対応策は講じてまいります。  そして、先ほど二〇〇一年と言われましたときに、までにと私が申し上げ直しましたのは、でき得る限り全体のスピードは加速したいと思います。しかし、議員がよく、御指摘も今いただきましたように、さまざまな問題も予測されるわけでありますから、そうした問題を避けていくことも一方で十分に意識をいたしながら物事を進めてまいりたい、私どもはそのように思っております。
  102. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私は金融改革というのは、繰り返して申し上げますが、ぽんと一遍に全部規制緩和をしなかったらひどいゆがみが起きるわけでありますから、一遍に規制緩和できるだけの体力をつけるのが先だということを繰り返し申し上げておきます。  しかも、これは金融だけじゃないんですね。構造改革というのはすべて痛みを伴います。総理は、その痛みを恐れずに進もうと先週の施政方針演説でおっしゃった。あるいは、これは昨年の話ですけれども、火だるまとなってでも改革をやるんだとおっしゃった。私は、その意気やよし、その姿勢はよろしいと思いますよ。しかし、私は、そういう精神主義の最大の問題点は、実現可能な展望と合理的、科学的な戦略、戦術を必ずしも備えていないということです。  失礼ながら、私は戦時中のことを思い出しましたよ、総理お話を聞きながら。一億火の玉という言葉があった。私は小学校四年生でした。火の玉となって戦争を遂行しよう、欲しがりません勝つまでは、苦しみにも耐え抜きましょう、この精神主義は一見格好がいいですよ。だけれども、極めて危険なものを含んでおります。あのとき軍部が国民に説明したのは、日本は資源がないじゃないか、戦争をして資源を確保しなきゃ日本の生きる道はないと言った。あれは大きな間違いでしたね。戦後、日本は資源輸入で、輸入原材料多消費型の重化学工業ではあっと発展して、とうとう明治以来の、西洋に追いつき追い越そうという目的を達成しました。  今総理は、大増税でいく以外財政赤字の削減はできないんだ、痛みを我慢して耐乏をしていこうと言っていますね。この九兆円の増税を今やるというのは、私は、とても財政赤字削減に結びつくような対策ではないと思いますよ。  今財政赤字が大きくなっている理由は二つあるんですね。一つま、税収が落ち込んじゃっているんですよ。平成不況初年度の九一年度、国税、地方税を合わせて九十八兆円あった。それが九五年度で八十七兆円に十一兆円落ちている。制度減税五・五兆円引いたって、五・五兆円落ち込んでいるわけであります。経済が曲がりなりにも成長しているときに、税収が落ちているわけですよ。これはなぜですか。これは、実力相応の成長を経済がしていないからでしょう。  対GDP比率で見たって、税収というのは九一年度の二一・二%から一七・八%におっこつちゃっているのですよ。他方、支出はどうか。GDP統計で見て、政府支出の対GDP比率、九一年度一五・八から九五年度は一八・七へ二・九%上がっていますよ。これが赤字拡大の原因。  なぜそんなGDP中の支出のウエートが上がっているか。一つは、行革、行革と言いながら、やっていないからです。もう一つは、やはり公共投資、公共投資で景気対策を打ってきたからですね。これこそが赤字拡大の二つの原因なんですよ。それで日本経済がまだふらふらしている。  来年、政府は一・九%に成長率は下がるとおっしゃった。しかしながら、民間の経済見通し、私の手元に四十四の機関の見通しがあります。これを平均すると一・四%ですよ。そうしますと、九二年度から来年度、九七年度までの六年間、平均たったの一・三%しか成長していないことになる。日本経済は高度成長が終わった後、平成景気まで平均四%強成長してきた。今、若年労働力の伸びが落ちて時短が進んでいるといっても、労働力の面からいったら三%成長の力は持っています。それが、六年平均一・三ですよ。  こんな状態だから、個人に対する課税も法人に対する課税も落ち込んじゃっているんですね。法人に対する課税が七兆円落ちていますよ。個人に対する課税が八兆円落ちていますよ。減税差し引いたって、まだ落ちているでしょう。  こういう状況で赤字が拡大しているときに税率をさらに引き上げて、これで赤字削減になると思いますか。そうではなくて、赤字を削減したかったら、たったの一・四%でしか成長していないこの日本経済を、何とか実力相応の三%程度の、しかも民間需要主導型の、持続的で自律的な成長経路へ戻す、これが最優先の戦略目標でなければだめじゃないですか。これをやって税収を伸ばすことこそが財政構造改革の第一のねらいでなければいけないということですよ。  そして、他方では、もう公共投資の追加、公共投資の追加というようなやり方はおやめください。ケインズ政策の悪い点、さっきも一つ申し上げましたが、公共投資、それも増税予告つきの公共投資なんてやったって、乗数効果はがた落ちですよ、みんな貯蓄に回ってしまいますから。しかも中身を見ますと、利益誘導型の、在来型の古い、民間支出を誘発しない公共投資です。こんなもの、公共投資をやっている間は景気を持ち上げますが、手を離したらがたんとおっこってしまう。だから、事業規模で六十兆円も投資をしておきながら、日本経済、いまだに元気が出ない。村山内閣以来だって、事業規模で十八・八兆円もやっているのですよ。それでも元気が出ない。  私どもの十八兆円減税という選挙公約を皆さん方はいろいろ言っておられるが、皆さん方は十八兆円も九五年度一年間で、事業規模で公共投資につき込んでしまっている。こんなことをやったって、民間支出主導型の安定的な成長経路には戻りません。サッチャーがやったように、レーガンがやったように、私どもの十八兆円減税というのは、勤労意欲と投資意欲をねらいにしている。つまりサプライサイドですね、経済学で言う供給側のやる気を起こすための十八兆円減税ということを言っておるのですね。これは公共投資の追加と違って持続性があるのですよ、民間側の投資を誘発していきますから。そういう根本的な政策の対決ということを私は申し上げているのですね。  ですから、繰り返して、整理して申し上げますが、戦略的に最優先の目標は、民間支出主導型の、実力相応の三%ぐらいの成長軌道に経済を戻すことです。そして他方で、行革、地方分権などで、対GDP比率でどんどん拡大しちゃっている財政支出を削減していくことです。これを行えば、財政再建は間違いなく進みます。  新進党は、財政再建を考えていないのじゃなくて、最も現実的な路線で考えているのですよ。今のような九兆円の国民負担増、そして増税予告つきの公共投資追加、こんなむだなことをやって、しかも国民の負担をふやして、税率は上がるかもしれないが、税収総額は決してふえません。経済はサプライサイドから立て直さなければいけない。需要を幾らつけていたってだめなんですよ、民間投資を誘発しないから。  サプライサイドへの対策というのは、これは直接税の減税であります。だから、私どもは何回も十八兆円と言っている。法人税の減税、それから課税ベースの拡大、連結納税の導入、この三本で四兆円と言っている。それから、残りの十四兆円の中には有取税の廃止もあります。地価税のゼロ%凍結もあります。それから、NPO法案が通ればあそこで寄附金の所得控除をやる、これだって二兆円ぐらいあるのですね。そういうものを全部積み上げていって十四兆円と言って、合計十八兆円と言っている。これこそが、勤労意欲を高め、そして投資意欲を高め、サプライサイドから民間市場経済を活性化する道です。  さっき言いましたように、税収は十一兆円もおっこっちゃっている。これは、実力相応の三%成長でいけば四年間で一二、長期弾性値の一・一を適用すれば一三%伸びているはずなんですね。そうすると二十四兆円、実は税金を取りっぱぐれているという計算になるのですよ、この四年間で。それこそが、今、赤字拡大の根本的な原因なんですね。  新進党の十八兆円減税というのは、それを取り戻すための、急がば回れということを言っているのですね。急がば回れということを言っているのです。短兵急に増税したら、税率は上がったって税収はふえませんよ。来年度の税収は落ちるかもしれませんよ、うっかりしたら。この四年間ずっと落ちているのですから。どうですか、総理、もう少しサプライサイドに目を向けた政策を考えませんか。
  103. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 非常に傾聴しながら、私なりにいろいろ考えておりました。  ただ、例えば、議員先ほどサッチャーさんの改革を例示にお挙げになりましたが、その中には、付加価値税が引き上げられたことは議員はお触れになりませんでした。減税だけでなかったことは議員よく御承知のとおりであります。  また、レーガン減税当時、これはこの間も議論した話なので私ここで蒸し返すつもりはありませんけれども、あのとき、CPIがたしか一〇%を超えるアメリカはインフレだったと思います。そしてこれは、当然ながら、相当な自然増収の見込まれる時期でありました。しかし、歳入見通しと歳入実績、また歳出見通しと歳出実績の間にも相当なギャップを生じておった、これは議員御承知のとおりであります。  それと同時に、もう一つ、私は非常に、ただ単にサッチャーさんの、あるいはレーガンさんのやられたものを日本に移されますときに問題があると思いますのは、高齢化率の違いであります。人口構造として、当時のアメリカは、はるかに今我々が抱えております人口構造に比べて若い人口構成を持っておりました。こうしたところは、やはり私ども、比較をいたしまして、相手の国々から教訓を学びます場合にも十分注意をしなければならない点であると思います。  そして、所得税、個人住民税の減税が先行しておりますことも議員御承知のとおりであります。そして、もし仮に議員が御議論になりましたような減税策というものを採用いたしました場合に、少なくともその大半のそれに見合う財源というものは、現時点においては赤字公債に依存せざるを得ないといいましょうか、私は、逆にその数字に見合う赤字公債を発行して減税を行いました場合に、どのタイミングでその悪循環を切るか、切った場合の影響というものは、むしろ非常に深刻な状況になるであろうと存じます。  むしろそうした意味では、これは先回も私は同じことを申し上げたような気がいたしますけれども、歳入見積もりというものを、当然のことながら、より正確にしてもらわなければなりません。これは歳入当局に対して、当然のことながら、今以上に正確な見積もりを出させるという努力を必要といたします。そして、その範囲内におきまして、本年におきましても国債費を除く歳出というものを租税収入等の範囲の中におさめ込んで予算編成をしてきたわけでありますが、そうした努力をこれからもしていかねばならないと思います。  同時に、私は公共投資を乗数効果のみから判断をしようとは思いません。なぜなら、我が国はまだ、総合交通体系という視点で見ましたとき、複数の国土軸を必要とする、高規格道路網の整備を必要とする、あるいは国際的により強いハブ空港の整備を必要とする、そうした点は議員もお認めをいただけると思います。より効率的に使用していく努力をする、これは当然であります。しかし、乗数効果のみから公共事業というものを見る視点には、違った視点もあって許されるべきものだと私は思います。
  104. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 時間がなくなりましたので、最後に、一言申し上げて終わりにしたいと思います。  総理、ただいまおっしゃいましたように、各国の事情は違うところはあります。しかし、共通しているところもあるのですね。それは、レーガンやサッチャーが直接税減税を先行させて、民間市場経済を活性化させてから規制緩和をやったから成功したという点であります。その点を日本の経験に当てはめろと。今みたいに経済ががたがたのときに規制緩和をやったのでは、マクロ経済の支えがないのでは、必ず構造改革は立ち往生をして破綻するということを金融に例をとって申し上げたわけであります。  最後になりましたが、繰り返し申し上げます。  とりあえず、この緊急事態を迎えている日本経済に対して、緊急の対策としてこの補正予算そして来年度当初予算の中で、総理は今乗数効果ばかり考えているわけじゃないとおっしゃった。それはよろしいが、精査してみると、明らかに総理が言っているように効率的なものばかりではありません。民間投資をとても誘発しない、あるいは民間に切実なニーズがあるとはとても思えないようなものが、省庁別シェア固定で、利益誘導型で入っています。そういうものを精査してカットすることによって、せめて所得税の特別減税二兆円を続けましょう。それから、有価証券取引税の廃止と地価税の凍結をぜひやりましょう。この財源は出ますよ。赤字国債なんか出さないで、支出項目の精査で出ます。ぜひそういう形でこの補正予算、そして来年度の当初予算を修正すべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  105. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、平田米男君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平田米男君。
  106. 平田米男

    ○平田委員 新進党の平田米男でございます。  午前中の予算委員会で、山本有二委員より、オレンジ共済に関して、友部参議院議員の証人喚問の要求がありました。衆議院の自浄作用として疑惑の解明を行うとの山本有二委員のお考えは、新進党といたしましても賛成でございます。  その趣旨から、友部参議院議員とともに、山本有二委員が事情を伺ったとされますオレンジ共済の元理事石崎松之介氏の喚問もあわせて要求をいたします。委員長理事会での御検討を要求いたします。
  107. 深谷隆司

    深谷委員長 ただいまの証人喚問要求につきましては、理事会で検討いたします。
  108. 平田米男

    ○平田委員 さらに現在、疑惑として挙げられている問題が幾つかございます。  二つ三つ挙げさせていただきたいと思いますが、一つは、日本病院寝具協会や、日清医療食品についての政治家、厚生省をめぐる疑惑でございます。  二つは、泉井石油商をめぐる疑惑であり、さきに元運輸事務次官が逮捕されましたが、新たに元通産事務次官をめぐる疑惑が浮上をいたしております。  また三つ目には、彩福祉グループからの一千万円を超える収賄で逮捕されました茶谷滋の件でございます。さきの総選挙で自民党公認で出ておりますが、その公認を得るについての疑惑が取りざたをされております。  衆議院の自浄作用といたしまして、このような疑惑も、証人喚問も含めまして、その追及、解明をすべきと考えまして、その要求をいたします。  引き続きまして、まず私は最初に二点、この補正予算審議に当たりまして申し上げたいと思います。  第一は、行政側すなわち政府、官僚は、国会すなわち国会議員に対し説明義務を負っているにもかかわらず、それがなされていないということでございます。  当然のことでありますが、予算案の十分な審議を行うためには、政府、官僚が国会議員に対し、議院内閣制のもとにおいては、野党に対してこそ、より丁寧な予算案の事前説明をなすべきであります。にもかかわらず、今回も補正予算案について、大蔵省は全くと言ってよいほどその説明義務、説明責任を果たしておりません。  私は、本日の質問の準備のために、先週の火曜日に大蔵省に補正予算案の説明を求めました。若い大蔵省の官僚は、一枚の紙を渡し、歳入と歳出の数字の説明をしたのみでありました。私はその数字の中身にまで踏み込んだ説明を求めましたが、説明は拒否されました。資料の提出の要求に対しても、資料はないとの回答でありました。翌日の水曜日、数枚の、しかし内容の乏しい資料をようやく手に入れることができました。  その際私は、その資料の説明をした主計官に、なぜもっと詳しい資料を出さないかと繰り返し請求をしたところ、驚くべきことにその主計官は、予算案を見ればわかるでしようとの暴言を吐いたのであります。主計官とは、大蔵省で予算案をつくる責任者であります。予算案は、数字の羅列でしかなく、法律よりも無味乾燥なものと言えるでありましょう。  この暴言については、翌日、主計局長から一応の謝罪がありましたが、打ち続く不祥事に国民から厳しくその姿勢を問われているさなかの大蔵省の高官が、いまだにその姿勢を改めるどころか傍若無人に振る舞い、公務員としての義務を怠っている象徴的事件であり、到底許されるものではありません。断じて抗議をいたします。  そして同様に、先週の水曜日のことでありますが、民主党の代表が、本会議の代表質問の後の記者会見で、やはり、官僚が資料を全く出さないと発言をされておられました。ウルグアイ・ラウンドの農業対策費として三千百億円もの巨額が補正予算に計上されているが、その内容を示す資料を出さないとのことでありました。  私も、その資料をようやく手にいたしましたのは、木曜日になってからであります。火曜日の要求から三日間もかかりました。資料集めのために時間は無為に過ぎていきます。検討時間を十分に得ることなく、補正予算案の審議は与党の数の力で始められてしまうのであります。  しかし、このような政府、大蔵省の妨害と与党の多数の横暴を受けながらも、私たちは、国民の代表としての責任を果たすべく、全力で審議に臨んでおる次第であります。そして、政府、大蔵省、与党の反国民的姿勢を明らかにしてまいる決意でございます。  そもそも、何ゆえに今、補正予算を組む必要があるのでありましょうか。政府は、阪神・淡路大震災対策と防災対策であると説明をいたしております。しかし、補正予算が現実に実施されるのはほとんどが来年度になってからであります。その意味で、平成九年度の予算に入れても十分なものばかりであると言っても過言でまありません。しかし、なぜそれをあえて補正予算に入れたのか。補正予算では約一兆七千億円の国債を新たに発行することになっております。建設国債であります。これを平成九年度予算に回すことになりますと、増税された分のみ公債発行が減額されるのみで、財政支出の削減は一切平成九年度予算では行われないということが明らかになってしまうのであります。  この事実を国民の目から覆い隠し、橋本内閣の財政改革が単なる言葉のみであって実体のないこと、すなわち、財政改革について無力であることを国民の目から覆い隠し、国民をだますためのまさに補正予算案なのであります。このようなこそくな内閣改革などできようはずがないじゃないですか。  内閣に協力して補正予算案をつくり、しかもその説明を拒否して国民をだます手伝いをしているのが今の大蔵省であると言ってもよいでありましょう。私は、このような政府、大蔵省の態度を断じて許すわけにはまいりません。  もう一つ、第二に申し上げます。  委員質疑における国会議員の発言は、国民の人権への配慮を十分にしなければなりません。  平成六年七月、北海道の国道で乗用車が反対車線にはみ出し、対向車線を走ってきたトラックと正面衝突し、乗用車の運転手はみずからの全面的過失で死亡し、被害者のトラック運転手も負傷するという交通事故が起きました。ところが、週刊新潮は、たまたま死亡した乗用車の運転手が大石寺を総本山とする日蓮正宗の僧侶であり、トラックの運転手が創価学会の会員であったことから、平成六年九月一日号の週刊新潮に「大石寺「僧侶」を衝突死させた創価学会幹部」との大見出しの記事を掲載しました。そのため創価学会の会員であるトラック運転手は、名誉を傷つけられたとして、週刊新潮を発売している新潮社に対し名誉毀損による損害賠償請求の裁判を起こしました。昨年十二月二十日には判決があり、裁判所は、週刊新潮の記事が名誉毀損に当たることを認めて、新潮社はトラック運転手に対し百十万円の慰謝料を支払わなければならないと命じました。  その判決では、次のように週刊新潮の責任の事実を明確に認めております。  本件記事は、前記認定のとおり原告が、原告とはトラック運転手のことでありますが、本件事故を意図的に惹起したのではないかなど、本件事故に関し原告が犯罪行為等何らかの社会的非難に値する行為をしたのではないかとの疑惑を一般読者に抱かせるような表現となっており、これが公表されることになれば原告の社会的評価を低下させることとなり、事実上その後の私生活等に重大な影響を及ぼすと推認されることを考慮すると、到底公正な論評と言うことはできない。特に本件大見出しに至っては、創価学会幹部の行為に起因して事故が発生したもので、創価学会幹部が大石寺僧侶を死亡させた加害者であるとの印象を一般読者に抱かせるものであり、本件大見出しを含めた文章全体によって本件記事が前記のような疑惑を抱かせるものとなっている以上、文章全体として違法性は阻却されないと言うべきである。阻却されないとは難しい言葉でありますが、違法性はなくならない、すなわち違法であるということでございます。  無責任な週刊誌記事により殺人者扱いにされたトラック運転手及びこの御家族の悔しさ、無念さははかり知れません。週刊新潮の広告が出されてから電話は鳴りっ放し、奥さんは体調を崩して一カ月以上の入院、三人の子供たちは周りの冷たい視線に身を縮め、息を潜めるような毎日でありました。この判決により、少しは気持ちが落ちつかれることを祈りたいと思います。  ところで、驚くべきことに、平成六年十月十一日のこの予算委員会において、自由民主党所属の委員が、名誉毀損であると判決により認定された週刊新潮のこの記事を振りかざしながら質問をしたのであります。この様子は予算委員会のNHKテレビ中継中であったため、全国に放映されたのであります。これによってトラック運転手の名誉はますます傷つけられ、運転手とその家族の苦しみはさらに深刻さを増したのであります。  しかし、国会議員の委員会での発言は、憲法第五十一条に定める免責特権が認められるため、この国会議員自身の行為が、たとえトラック運転手の名誉を毀損する行為に当たると認められても、その特権により民事上の損害賠償責任や刑事上の責任を負わないとされております。責任を特権により免じられているがゆえに、より一層私たち国会議員は、特に国民の人権に対しては深く配慮をすべきであります。  議員みずから十分な調査をすることもなく、週刊誌の最もセンセーショナルな部分を殊さらに取り上げて質問することは厳に慎むべきであると考えます。もしそのような行為をなした国会議員は、免責特権があるとはいえ、道義上の責任を認め、名誉を傷つけられた被害者に対し、何らかの謝罪の言葉があってしかるべきであると考えます。いずれにいたしましても、この不謹慎な委員質問をすべての国会議員の戒めとしていかなければなりません。  そこで、総理に対し、人権について質問をいたします。  東京都日野市長が日本道路公団に対し、日野市内の中央自動車道約四・五キロメートル分の固定資産税三千五百万円の課税を決めたことに対し、亀井静香建設大臣が、勝手に法律を無視して課税をするのはおかしい、市長はアルツハイマーじゃないのと発言をいたしました。私は、亀井建設大臣の発言には大きな問題が二つあると思います。  一つは、人権感覚ゼロの人権侵害の発言であるということであります。警察庁出身である亀井静香建設大臣の人権にかかわる発言は軽視できるものではありません。問題は極めて重大であります。亀井静香建設大臣の発言は、アルツハイマーなどの老人型痴呆患者の人格を無視し、患者を抱えた家族の心を深く傷つける許しがたい発言であります。  アルツハイマーは老人型痴呆の一つで、脳の神経細胞が脱落してぼけ症状を引き起こすものであります。我が国の患者数は現在二十二万から二十三万で、年々増加をいたしており、その予防や治療は難しいと言われております。このアルツハイマーの病名を亀井静香建設大臣は差別用語として使われ、日野市長を非難したのであります。  大統領経験者さえもこの病気に侵されるのが現実であります。その患者を抱えた家族の苦しみは想像を超えるものがあります。深夜に大声を発したり、家の内外の俳回、それを防ぐために、あげくは患者をベッドに固定する。だれが愛する親を、そして夫や妻をベッドに固定をしたがるでしょうか。しかし、それをしなければ患者本人も危険であるし、家族は一時間も眠ることができません。深い心の葛藤は家族の心をますます深く傷つけます。愛する親あるいは夫や妻が痴呆の進行により人格を失い、人間性を崩壊させていく姿を目の当たりに見なければならない苦しさ、恐ろしさ。患者の家族は心身ともに疲労のふちに落ちざるを得ないのです。  さらにその先には、本日の毎日新聞一面で大きく報道された問題、延命か自然の死かという人間倫理に深くかかわる大問題が待ち受けていることさえあるのであります。食べる力がなくなれば寿命なのか、植物状態になっても栄養チューブを使い延命をさせるべきかどうか。アルツハイマーの問題には、介護の問題、終末医療の問題、安楽死の問題など、死生観を問われる深刻な問題が横たわっているわけであります。  いずれにいたしましても、アルツハイマーなどの患者を抱えた家族の苦しみの大きさ、深刻さは想像を絶するものがあります。亀井静香建設大臣の発言は、アルツハイマーなどの老人型痴呆患者の人格を軽んじるものであり、これらの家族の、これらの方々の心の痛みに思いをいたすどころか、これをさらに深刻にする、まさに人間として心のない、非情な発言であります。  さらに言えば、すべての国民も、高齢社会の中にあって、アルツハイマーなどの痴呆症に自分自身がかかり、家族を苦しめることになるのではないかという不安の中で生きておられます。亀井静香建設大臣の発言は、このような国民の不安に思いをいたし、少しでもそれを解消するために努力すべき政府の一員としては、到底口にできるような言葉ではありません。まさに、無思慮、無責任、かつ非人間的な発言であると断ずるものであります。私は、亀井静香建設大臣の、大臣の罷免を求める次第であります。  橋本内閣は、今、国会において、介護、医療の問題を論じようとしておりますが、亀井建設大臣の発言を不問に付するような橋本総理に、国民の期待にこたえることは不可能であります。  亀井建設大臣の発言のもう一つの重大な問題点は、この発言が、橋本内閣の重要政策の地方分権の推進に逆行する発言であるということであります。  私は、地方分権は、国が一方的に自治体に与えるものではなく、自治体が主体的になってかち取っていくこともぜひ必要だと思っております。日野市長は、厳しい市の財政の立て直しに懸命に努力されている方であり、財源確保のためにあらゆる手段を尽くすべしとして、一年間にわたり法的な検討をなされた結果、日本道路公団の高速道路に対する固定資産税の課税は合法であると結論を出されへそれを実行に移されようとしているのであり、まさに市民のための市長として正しい行動であります。このような日野市長の市民のための行動を評価せず、一方的かつ感情的に非難する亀井建設大臣には、大臣の資格はないと断ぜざるを得ません。  このような亀井大臣を任命した橋本総理の責任、そして、その発言後にも亀井大臣をそのままにしている橋本総理の責任はまた重大であります。橋本内閣に対し、国民は重ねて不信感を抱いたことでありましょう。  総理、日野市長の決断をどのように評価されておられますか。また、亀井建設大臣を任命された責任者として、亀井大臣の発言をどのように評価されたのですか。亀井大臣を罷免する考えはありませんか。総理国民が納得できる、責任ある答弁を求めます。
  109. 深谷隆司

    深谷委員長 ちょっと総理お待ちください。  平田米男君に申し上げたいと思いますが、委員会運営の件に関して申された中に、与党が力によって審議を進めているとおっしゃいましたが、理事会で公式に御相談申し上げた上で委員会を開催いたしておるのでありますから、これは事実と違うことを委員長から申し入れたいと思います。  それでは、橋本内閣総理大臣
  110. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変長い御発言でありましたが、結論部分についてのみがどうも私に対する御質問のようであります。  私は、閣僚として亀井建設大臣を任命をいたしました。そして、その主管業務に全力を尽くしてくれておると考えております。よって、罷免をするといった考え方はありません。  また、そのアルツハイマーの方々の御家族等に対し配慮の足りなかった発言、この御指摘は私もそのとおりにちょうだいをいたします。
  111. 深谷隆司

    深谷委員長 亀井建設大臣。
  112. 平田米男

    ○平田委員 聞いていませんから。僕の質問時間をとらないでください。委員長……
  113. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 ちょっと、それはだめだ、それはだめだ。あれだけ私に対して人格に触れる質問をしておいて、答えさせないのはおかしい。委員長職権だ。委員長の職権だ。
  114. 平田米男

    ○平田委員 委員長、お願いします。まだ総理の答弁は残っておりますので。まず総理から聞きたいのです……
  115. 深谷隆司

    深谷委員長 ただいま委員長が建設大臣を御指名いたしましたから、一応お聞きください。
  116. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 委員長職権だ。
  117. 平田米男

    ○平田委員 やめてください。そんなばかな話はないですよ。まだ総理は私の質問に全部お答えになっていないのですから、まず総理から全部答えてください。  まず総理から答えてください。まず、日野市長の決断をどう評価されましたかという質問に対してはお答えになっていないわけですから、まずそこから総理、お答えください。それにまず答えてください。
  118. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 私が答える。
  119. 深谷隆司

    深谷委員長 委員長は建設大臣に答弁を求めております。必要ならば、その後から総理の御指名をいたします。
  120. 平田米男

    ○平田委員 必要ですよ、まず私が要求しているのですから。まず私の質問に答えてからじゃないですか。総理にお答えを求めているのです、私は。(発言する者あり)
  121. 深谷隆司

    深谷委員長 ちょっとお静かにお願いします。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  122. 深谷隆司

    深谷委員長 速記を開いてください。  亀井建設大臣。
  123. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 ただいま、日野市長の発言に関する私の発言等について、私の人格に触れるようなことまで含めての御意見がございました。  まず申し上げますが、私は、アルツハイマーという老人がかかりやすい病気、病名についての偏見は一切持っておりません。  こういうところで申し上げるのはどうかと思いますが、私の肉親も残念ながらそれにかかっておるわけでございまして、地域方々を含めていろいろな方々にも大変なお世話をいただいており、私ども家族も、そうした病気にかかることがどんなにつらいことであるかということは私自身が一番承知しているのです。私も恐らく年をとってまいりますとそうした病気にかかる可能性は、私は否定できません、今の状況において。差別的な感覚で申し上げておるわけじゃございません。  私がそれを例に引きましたのは、日野市長が高齢であるということから私はあえて申し上げたのです。日野市民に対して責任を持っておられる市長が、法律的に可能であることをおっしゃるのであれば、私は、それはそれぞれ市長の権限においておやりになることですから、結構なことであります。建設大臣としてどうこう言うことではありません。  しかし、高速道路に……(平田委員「答弁の時間が長過ぎます」と呼ぶ)ちょっと委員、黙って聞いてください、あなた。固定資産税を現在かけることは、日野市長がどんなに逆立ちをされても、これは法律上できません。私が言っているのが間違いであると思えば、自治大臣にきちっとお聞きをいただきたい。歳入見積もりに、平成九年度予算についてまでお入れになるようなことで日野市政をおやりになることは、これは大変な混乱をもたらすだけの話でありまして、そういう絶対にできないことをできるがごとくおっしゃるということは、ひょっとすると我々もかかるかもしれない老齢期に多いそうした病気にかかっておられるのじゃないかということを私は率直に申し上げたわけでございまして、私は、差別的な感覚でいろいろな病気、病名について言っているつもりは一切ございません。  そういうことでございますから、その点、委員の、先ほどあなたはおっしゃいました、みずから。何でも質問をしていい、何でもこの委員会で言っていいものでは絶対にないと私は思います。  以上でございます。
  124. 平田米男

    ○平田委員 総理にお伺いしますが、先ほど残っておりました、要するに日野市長の決断をどのように評価されるか、総理からお伺いしたいと思います。
  125. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 具体的なことでありますから私は建設大臣に答弁を任せましたが、法律的にできないこと、それはやはりできないこととお答えする以外にないことだと思っております。必要でありますなら、自治大臣からその辺を御答弁をいたさせます。
  126. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 先ほど亀井建設大臣が言いましたとおり、地方税法三百四十八条第二項に、公共の用に供する道路については固定資産税を課すことはできないと書いてあります。そして、日本道路公団が建設した高速道路はどうかということに関しては、昭和三十五年に、自治省市町村税課長から、有権的に、料金はいただいているけれども、一般の有料道路と違って公共の用に供する道路ということで、これには固定資産税は課すことはできないということで、以来全国的にこのようになっておりまして、特に今まで疑いはありませんでした。
  127. 平田米男

    ○平田委員 もう時間がありませんので次の質問に移ります。しかし、今の総理の発言、また建設大臣の発言は、国民から厳正な非難を受けるものと私は思います。  では次に、これも裁判に関するものでありますが、日本財団というのがございます。会長は作家の曽野綾子さんでありますけれども、運輸省所管の財団であります。財団の正式名称は日本船舶振興会であります。この財団が、今月二十一日、古賀誠運輸大臣を相手に裁判を起こしました。内容は、財団がクロネコヤマトの宅急便で知られますヤマト運輸前会長の小倉昌男氏を財団の評議員として選び、運輸省に承認申請をいたしましたが、高齢等の理由で不承認としたことは妥当性がないと運輸大臣の不承認処分の取り消しを求めるというものであります。  私は小倉氏とは面識はございませんけれども、総理も小倉昌男氏のことはよく御存じだと思います。小倉氏は、二十年ほど前から宅急便事業を展開し、運輸省の両手両足を縛りつけるような厳しい運輸規制行政と敢然と戦い続け、宅配業を大拡大し、国民に多大な利益を与えた方であります。宅配業のパイオニアであるのみならず、今日我が日本が第一に取り組まなければならない規制緩和、その規制緩和の大闘士であります。本来なら、運輸省のみならず総理みずからが小倉氏の見識と経験を伺い、規制緩和の、あるいは行政改革のために学ばなければならないはずであります。  総理、そのような小倉氏を、運輸省がその所管の財団法人の評議員の地位さえ承認をしようとしないということに対し、どのようにお考えでございますか。私は総理の行政改革への決意を試される重要事と考え、お伺いをいたします。  総理、不承認を撤回するお考えはありませんか。また、小倉氏から運輸行政の問題点を伺うべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  128. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 小倉さんばかりではなく、私、小倉さんはそれほどよく存じ上げている方ではございませんけれども、いろいろな方々から見識を伺う、それだけの時間を国会がお与えいただければ、私は喜んでお話は伺いたいと存じます。  ただ、その財団の役員にその人がなるかならないかを私がなぜお答えをする羽目になるのか、この点は運輸大臣の方にお尋ねをいただきたいと思います。
  129. 深谷隆司

    深谷委員長 運輸大臣、いいんですか。
  130. 平田米男

    ○平田委員 委員長、まず私の意見を言わしてください。(古賀国務大臣「私の所管でございますので……」と呼ぶ)
  131. 深谷隆司

    深谷委員長 運輸大臣、委員長はまだ指名しておりませんから。  それじゃ平田米男君。
  132. 平田米男

    ○平田委員 今申し上げましたように、総理、要するに小倉さんというのは、運輸行政、厳しい運輸行政が小倉さんのクロネコヤマト、宅急便を展開するに当たってもう常にぶつかり合って、その規制の厳しさを打ち払って、そして事業展開された方であります。まさに今日本が規制緩和をしなければならない、そういう時期にこういう方こそこれからの日本のために大いに働いていただかなくちゃいけない、そういう立場だろうと思います。  したがって、それは日本財団の評議員、ただ小さな役職かもしれませんが、しかしそういうところに、実は運輸省とぶつかり合ってきた人だからだめだと。それは理由は高齢だという理由が挙げられております。しかしながら、そのような取ってつけた理由で排除をするということは、基本的に、そういう規制緩和に対して重大な決意で頑張ってこられた、見識も経験も持っておられた方を評価しない、そういう橋本内閣政府の姿勢を示すまさに象徴的な事例だと私は思うからであります。  総理、その点をどのようにお考えでございますか。
  133. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと私は、どこの財団で今役員を選んでいるのか、あるいは評議員を選考中であるのか、存じておるわけではございません。ですから、私からお答えをいたしますよりも、主管閣僚である運輸大臣からの御答弁をお許しいただきたいと思います。
  134. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 ただいま御議論になっております日本船舶振興会の評議員の補充選任の件でございます。  これは、当方といたしまして、数点検討していただくように指摘をした点がございました。その検討していただいている段階で訴訟を提起されるということは、私にとりまして大変残念なことであるというふうに思っております。しかも先方も話し合いは継続したい、こうおつしゃつておるわけでございますので、今後とも、両方において誠意ある協議を、そしてまた調整を行っていきたい。  規制緩和の件につきましては、運輸省といたしましても、全力を尽くして国民皆さん方の期待にこたえていくべく最善の努力をしてまいります。
  135. 平田米男

    ○平田委員 どういう点がというふうにおっしゃいませんでしたが、高齢というのが一つの理由になっているそうでございます。ちなみに私は、総理が会長になられました行政改革会議委員の名簿を調べてみましたところ、七十歳を超えておいでになる方が一、二、三、四、五、六人おいでになるんですよ。小倉さん、七十二歳というふうに言われておりますが、行政改革会議のメンバーは六人も七十歳を超えておいでになる。それが片方では高齢を理由としてだめだと言っている。これはおかしい。完全な差別ですよ、これは。しかも片方は、小倉さんは、運輸省に対して、もっと規制緩和すべきだといって二十年間言って戦ってきた人なんですよ。そういう人を重視しないで、そういう方を重用しないで、そして何が規制緩和ですか、何が行政改革ですか。そんなことで国民が信じますか。  先ほども申し上げましたように、この補正予算でも、まさに本予算に入れればいいものを、増税分だけしか公債発行額を減額できない。そういう姿を隠すために、まさに補正予算で一兆七千億円もの新規の建設国債の発行をしてしまっているんじゃないですか。これこそ国民をだますものですよ。そういう内閣総理大臣橋本内閣総理大臣、橋本内閣国民は信じられません。  同様に、規制緩和と言ったって、規制緩和に一生懸命頑張ってきた人を重用しない内閣が、あるいは運輸大臣がおられるような内閣が、国民の信頼を得て規制緩和をやってくれるな、こんなふうに期待できますでしょうか。私はその点を強く御指摘をして、次の質問に移りたいと思います。  厚生省の岡光次官あるいは運輸省の服部元次官、いずれも収賄罪で逮捕されました。また大蔵省では、田谷東京税関長あるいは中島主計局次長なども不祥事で退職をいたしました。官僚をめぐる贈収賄事件を初めとする不祥事が多発をしているわけであります。  さらに、泉井をめぐる疑惑は、政界のみならず官界にもさらに大きく広がると言われている現状であります。しかも、これらの人々は、官僚としては有能と評価され、その高い地位を得てきた人ばかりであります。なぜ日本官僚システムの最上層部にいる人々がかくも腐敗し、堕落したのでありましょうか。その原因は、もう既に明らかであります。政官業の癒着構造が腐敗の原因であります。  そこで、何点か総理にお伺いをしたいと思います。  まず、官業の癒着問題であります。  建設省所管の財団法人、いずれも理事長は建設省のOBでありますが、仕事の大半は建設省から受注し、下請に丸投げをして利益だけ得ていたということでございますが、この財団法人が、建設省の役人の飲み代、食事代とタクシー代を一億数千万円も負担していたことが発覚をいたしました。これに対し建設省幹部は、常識の範囲内のつき合いだと言っております。また、亀井建設大臣も問題なしとされているようでありますが、総理も問題ないとお考えでございますか。また、どのように対処をされるお考えでございますか。
  136. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 建設省所管の法人という言葉で御表現になっております内容、私はすべてを知り尽くしておるわけではございませんが、法にわたるものがあるなら、当然それは問題であると思いますか。
  137. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 委員の御質問は、先日新聞に報道されました建設省所管の二財団に対する委託業務を行っていく過程の中で、その業務を円滑に推進をしていくために、これは御承知のように、理屈だけではなかなか人間関係はうまくいきませんから、詰めた仕事をやった後にまた今後のことの打ち合わせを含めて軽い食事をとるということは、これは別に問題ないことでもありますし、これが夜遅くまでの仕事に及んだような場合、交通手段等がなくなる場合もございます。タクシーのチケットを渡されるという場合にそれを受け取るということも、これはあって私はしかるべきだと思います。  ただ、私は、立場から注意いたしましたのは、タクシーのチケットを受け取るにしても、まだ交通機関が動いておるようなとき、あるいはその会議が行われた場所の近くに交通機関が存在をしておるような、そういう状況下にあっては、これは、役所から家まで別にタクシーで帰っておるわけじゃありませんから、そのようにタクシーチケット等を受け取ることについては、やはり、いただきましようというようなことはないように努めるのが役人道だぞ、このように私は言っておきました。  以上でございます。
  138. 平田米男

    ○平田委員 今回、財政再建のためと言いまして、国民に九兆円もの増税などの負担をさせているわけであります。官官接待は厳しく非難されているさなかであります。そういうときに、つき合いが必要だのといって、一億数千万円もの飲み代、食い代、タクシー代を払っているなどというのはとんでもない話でありまして、それを厳しく調べ、また改善をしようとしない、そういう姿勢を明確に示されようとしない総理、建設大臣、こんな姿でどうして国民は納得できますか。私は、今の御答弁には納得できませんが、もう時間がありませんので、次の質問に移ります。  次は、政治と官僚の癒着の問題であります。  政治家は資金集めのパーティーをやります。これは政治資金規正法に従って行うことが許されているわけでありますが、このパーティー券を官僚が政治家に頼まれ、その省が所管する関係業界に、あるいは関係企業に売ったり、あるいは売り先として政治家に関係業界や企業を紹介することは、それこそ政治と官僚の癒着でありまして、私は絶対に行ってはならないものだと思います。  しかし、うわさによりますと、そのような配慮をする、そういうようなことをよく聞くわけでございます。省の官僚がパーティー券の販売を行っているということなどは、決して許されることではありません。絶対にあってはならないことだと思います力もし、そのようなことがあったならば、総理としてどのような対処をお考えでございましょうか。また、そのような事実はないとお考えでございましょうか。
  139. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど議員は大変漠然たるお尋ねでありましたので、私も漠然たるお返事をいたしましたところ、改革への姿勢がないという御指摘がございました。むしろ、私からそれならば改めて申し上げなければなりませんことは、昨年、本当に不祥事が何件も発生をいたしまして、その中で、真に実効の上がる綱紀粛正の方策というものにつき、随分政府部内でも議論をいたしました。閣僚ベースでも当然のことながら、事務方は彼ら自身の問題として議論をしてまいりました。そして今、事務次官等会議申し合わせに基づいて、すべての省庁において公務員の倫理規程が制定され、これを遵守しようとしております。  今議員が仰せになりましたような、政治家が官僚に対してパーティー券の売却を依頼し、あるいは官僚が政治家の意を受けてパーティー券の販売に努めるといったことは、これは許されておりません。そして、許されていない行為がなされる、そのようなことはないと私は信じております。
  140. 平田米男

    ○平田委員 時間が参りましたので終わりますが、私は根拠なくして今のことを申し上げていたわけではありません。それだけを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  141. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて石井君、鈴木君、平田君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  142. 仙谷由人

    仙谷委員 民主党の仙谷由人でございます。  ちょっと申し出てある順序を変更することになって恐縮なんですが、まず、巷間未消化予算というふうに言われておる問題をお伺いをいたしたいと思います。  実は、某新聞の十一月十九日に、平成七年度におきましては公共事業予算一兆七千億円繰り越した、消化できない、あっぷあっぷの状態であるということが記載をされております。  そこで、正しい数字を、建設省、農林省、そして運輸省、まず七年度の消化できなかったあるいは繰り越した額についてお答えをいただきたいと存じます。  そして、あわせて、八年度はこの点は、つまり現時点において、多分年度末においても消化できず、あるいは契約はしたけれども着工ができないと見込まれる額はどの程度なのか、この点についてお答えをいただきたいと存じます。
  143. 堤英隆

    ○堤政府委員 平成七年度の農林水産省の公共事業の繰越額につきましては、予算現額が三兆三百五十六億円、うち繰越額が五千四百二十九億円、繰越率は一七・八%でございます。  平成八年度につきましては、まだ実行中でございますので繰越額は不明でございます。
  144. 土井勝二

    ○土井政府委員 お答え申し上げます。  運輸省の一般公共事業の七年度から八年度の繰越額につきましては、予算現額七千十四億円に対して六百三十億円でございまして、繰越率は九%であります。  また、八年度につきましては、現在、年度内に予定された事業の円滑かつ効率的な執行に努めているところであります。八年度の繰越見込み額につきましては、現段階では申し上げる状況にはございません。
  145. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 せっかくの御質問でございますが、私は詳細を承知しておりませんので、後ほど詳細に説明をさせます。
  146. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答え申し上げます。  建設省関係の所管一般公共事業の繰越額でございますけれども、平成七年度歳出予定現額が八兆六千二百五億六千五百万円に対して、翌年度への繰越額が一兆四千四百四十億九百万円、こういうことになっております。  平成八年度につきましても、円滑かつ的確な執行に努力をしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  147. 仙谷由人

    仙谷委員 今のお答えで皆さん方におわかりいただいたと思うのですが、建設省では、平成七年度、一兆四千四百億、農林水産省では五千四百二十九億、運輸省では六百三十億、つまり二兆円という金額が七年度には繰り越された、こういうことでございます。パーセンテージでいいますと、大体一七%、こういうことでございます。  そうしますと、それだけで考えますと、今年度の公共事業予算総額に対する一七%というふうな金額は、おおむねこの補正予算の追加額より大きいのではないか。つまり、私の補正予算書の読み方を正しいといたしますと、追加される分は一兆三千七百八十六億でございますから、はるかに大きい金額が実は現時点においても三月末までに消化をされないで繰り越されていく、こういう計算になるのではないかと思います。  そこで、一点だけお伺いいたしておくわけですが、何か平成七年度と違って適正な執行をこの公共事業三省がやれば、つまり、建設省においては円滑かつ的確な執行、こうおつしゃつています。農林省は適切な執行、こうおつしゃつている。運輸省は今お答えになったとおり。的確なあるいは適切な執行をすれば、八年度には繰越額というふうなものは残らない、全額使い切る、もう既に予算はなくなって、新年度には四月、五月に空白ができるから補正が必要なんだ、こういう理屈が成り立つように繰り越しというものが発生しない可能性があるのかどうなのか、これを公共事業三省にお伺いしたいのでございます。
  148. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 御指摘の点でございますが、別に建設省といたしまして好きこのんでそういう状況を生んでおるわけじゃございませんで、御承知のように、公共事業、それぞれの分野がございます。その分野について、残念ながら、用地の問題、関係者の同意の問題等、直ちにこれが執行できない場合も出てくる場合があるわけでございまして、いわばこういう事態が起きるわけでございますが、これについては執行残ということにはならぬわけでございまして、不要な公共事業を予算に計上したということではございませんので、この点はもちろん委員御承知と思います。  また、平成八年度につきましても、全力を挙げまして年度内にこれを消化したいと思いますけれども、寒冷地等を含めまして、現場の状況におきましては、やはり年度内に終えることができない場合も出てこようかと思います。  なお、補正予算でございますが、補正予算につきましては、第四・四半期が、ほっておきますと昨年の同期に比べまして三、四%公共事業が減ってくるという、それが景気に影響を与える危険性もあるわけでございますが、私どもといたしましては、防災関係を含めまして、やはりそうした政策目的上必要な予算を補正予算に組ませていただいたということでございますので、御承知ください。  もし細かいことが必要でございましたら、官房長に説明させます。
  149. 堤英隆

    ○堤政府委員 農林水産省関係の公共事業につきましても、ただいま建設大臣からお話がございましたことにかなり共通するものがあるわけでございますが、特に農業基盤整備事業につきましては、関係者、多数の農家の方々の同意をとっていかなければならないということで、予想以上に手間がかかるというようなことが往々にしてございます。それから、積雪寒冷地帯等におきましての圃場整備その他の事業をやっておりますので、そういう気象条件の変化によりましても工事が予想外におくれるというようなことがございまして、そういう事情がございますけれども、平成八年度におきましても精いっぱい、そういうことが極力少なくなるよう努力をしていきたいというふうに考えております。
  150. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 運輸省といたしましても、ただいま官房長お話し申し上げましたように、八年度の予算につきましては、年度内に消化すべきそれぞれの事業におきまして、円滑、効率的に今進めさせていただいているところでございまして、現段階ではっきりと申し上げることができません。
  151. 仙谷由人

    仙谷委員 質問に対するお答えになっていないような気がするんですが、質問を変えます。  反対側からいいますと、どうしてもこれは見込み額すら示せないということなんでしょうか。つまり、繰り越しとなるであろう額の見込み額すら示さないということになるんでしょうか。
  152. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 私どもは、現場を含めまして、全力を挙げまして繰り越しがないように努力をいたしておるところでございます。
  153. 仙谷由人

    仙谷委員 絶えずそういうお答えなんですが、事は、財政再建を一方で宣言をしながら、一方で一・六兆円を超える建設国債を発行して公共事業をする、こういうことになっておるわけですから、そもそも余っているものがあるのにそこにさらに借金をして事業を積み増す、こういうことが現時点でいいのかどうなのかというのが問われているわけですよね。これは国民の注視の的であると思います。  そして、現に亀井建設大臣がお答えになったお答えも、その他の各省庁の政府委員の方がお答えになったお答えも、まじめに財政法第二十九条を読む限り、その程度の理由では補正の理由にならないということは、これは法律家でなくても、大蔵省の方に聞けば直ちにわかる話でございます。緊急性がある、予算後に生じた事情がある、そういうことがない限り、補正予算を毎年毎年だらだらと組まれて特例公債、建設公債が積み上がってくるこの十年間の悪癖を我々は全く反省していないんじゃないか、こういう話になるんですね。  私は、これはゆゆしい問題でございます。補正予算案を採決する前には、各省庁におかれまして、ぜひ繰越額の見込み額でもこの予算委員会に資料を提出をしていただきたいのでございます。そうしませんと、一方で大変な積み残しを抱えたまま、一方でまた建設国債を発行して、公共事業というほとんど土木事業に偏った工事が行われていくということを国民が納得できるかどうか。フォアグラ用のガチョウの口をあけて無理やりまだ脂肪を突っ込んでいるようなこういう予算編成の仕方というのは、どうしても納得できないと私は考えているところでございます。  時間の関係で、今の点、委員長、お取り扱いをお願いできますでしょうか。
  154. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 私は、極めて聡明で名高い仙谷委員の先ほどからの御質問を聞いておりまして一つ脇に落ちないと申しますのは、これはそれぞれ事業ごとに必要なものを積み上げたり、あるいはそこに配分をするという形で予算は御承知のようにでき上がっておるわけでございまして、たまたまこれが現在執行できないから、繰り越し状況になるから、他の事業にこれを振りかえて流用するということは、これはできません。  そういう観点から考えましても、このたびの補正予算は防災等がほとんどでございますけれども、地震にいたしましても、土石流にいたしましても、発生をするということを予知をして、そしてそれが警告があった段階で急いでその対応をとるというわけにはまいりません。そういう意味では、もう激発をしておるそういう自然災害に対して、私どもとしては緊急こ整備をしなければならないところがたくさん全国にございます。それをこのたび補正におきまして一部取り上げさせていただいたということでございますので、ぜひこのことは御理解を賜りたい。
  155. 仙谷由人

    仙谷委員 質問じゃないのにお答えいただくものですから、時間がもったいないんですが。  今の点は、ただ、つとに指摘されております硬直した省庁別予算あるいは部局別予算、課別予算でどうにもならなくなっているということをお述べになったにすぎない話でございまして、ということは、今回の補正予算でもあるいは本予算についても、そういう構造をどう変えたかという、次の問題になると思います。また、機会があったら亀井建設大臣と論議をいたしたいと存じます。  話題を全く変えます。  総理にちょっとお伺いしたいんですが、総理もポピュリズムとかポピュリストとかいう英語を御存じだと思いますが、この財政危機が叫ばれる段階で十八兆円減税というふうなことを言うのはポピュリズム的政策になりましょうか、どうお考えになりますか。
  156. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、横文字の定義は余り得手ではございません。そして、議員が多分お尋ねになりたいのは、先般、あるマスコミの中で行われておりました特定の対談の中で使われた言葉を取り上げておられるのではなかろうか、勝手ながら拝察をいたします。
  157. 仙谷由人

    仙谷委員 まともなお答えがいただけないようです。反対から聞きましょう。  それでは、選挙のときに、五兆円の補正予算を組む、公共事業をやるんだと言って選挙をする、そして、選挙が終わればそれに合わせるかのように補正予算を組んでしまう、これをしてポピュリズムとかポピュリストとか言うことができますでしょうか。
  158. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 またまともな答えじゃないといってしかられるかもしれませんけれども、あなたが言わせようとしておられる対談並びに出場者名をもしお述べいただければ、それに応じてお答えを申し上げますが、私、いずれにしても、与野党を問わず政治家たる立場で、それは選挙のときといえども、やはり個別地域あるいは特定業界の利益をいたずらに守るがごとき、そうしたおしかりを受けるようなことはお互いに慎むべきことだ、そう思います。
  159. 仙谷由人

    仙谷委員 実は、私が尊敬してやまない宮澤喜一元総理が、ある新聞紙上で我が民主党のことを、市民とか消費者とか格好のよいことを言うポピュリストである、こういう発言をなさっております。それから、「市場経済の欠点を強調して、情緒に訴えて自分たちの存在をアピールしようとしている。」こういうことを言っております。  果たして、私どもが野党の立場でありながら消費税の二%アップに反対しない、容認をする、そしてこの時期、行政改革を一点突破ででも断行する、こういう政策と姿勢が、市場経済の欠点を強調して情緒に訴えることになるのでしょうか。私は宮澤元総理のお言葉とは思えない。ましてや、この方は政界きっての英語遣いです。そうですね。私はほとんどできません。総理もできないとおっしゃっている。英語の新聞を斜め読みできる能力のある人だと言われております。そして、かてて加えて、宮澤元総理日本の戦後経済をまさにリードをした方でございます。私は、そのお人柄も含めて尊敬をしておるわけでございますが、日本の大新聞の中でこういうことを言われたということについては、一度公的な場所でも議論をしてみたい、こう考えております。  そして、今私どもが苦しんでおります経済的な困難な局面というものについて、果たしてどの政党のどのリーダーシップに結果責任は帰されるべきなのかということも、あわせて私は問わなければならないと思うのであります。  端的に申し上げて、一九八五年のプラザ合意に、日本の現在のこの振幅の大きいバブルの形成と崩壊、そして崩壊の処理の誤り、それが現在の、先ほど鈴木議員もおっしゃっておりましたけれども、金融界に対する大変な不信任という格好であらわれているわけでございます。  具体的に見ましても、この現在の財政赤字と言われておるものを見ましても、宮澤喜一さんが総務会長、大蔵大臣の間にどのぐらい特例公債、建設公債がふえたのか、改めて数えてみるべきではないのでしょうか。橋本総理総理が幹事長、大蔵大臣の間に公債はどのぐらい積み上がったのですか。
  160. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 とっさのお尋ねで正確に私自身記憶いたしておりませんが、むしろ私のときは国債依存度を下げたいということで努力をいたしておった時期でありました。そして、赤字公債ゼロということと同時に、ようやく公債依存度を一〇%台に単年度において下げる、そうした方向に努力をいたしておったときであります。  今‘場外から御意見がありましたように、バブルの崩壊期であったということは、その意味でそういう努力をしやすい条件をつくっておった時期だと思います。
  161. 仙谷由人

    仙谷委員 橋本総理が幹事長、大蔵大臣在任中は多分二回の予算編成をされていますから、十兆円積み上がってございます。ただ、今後ろからも声がございましたが、バブルの成果が毎年毎年五兆円、六兆円の税収増になって返ってきておったときですから少なかったのでしょう。宮澤さんの総務会長、大蔵大臣在任中には公債は三十兆円ふえております。そうですね、大蔵省。間違いないですね。  そうだといたしますと、そここおける一九八五年から九五年、あるいは現在九七年に入ったわけですが、この間における財政政策、金融政策、どこかに間違いがあった、だから現在こうなんだということになるんじゃないのでしょうか。私は、巷間よく言われます、自民党にしか経済政策はないんだ、経済は自民党にしか任せられないんだというこの言い方が、実は単に途上国型経済の、右肩上がりの成長においてだけ許された神話にしかすぎなかったのではないか、こう考えているわけでございます。そしてまた、その神話も崩壊をしつつあるのではないか。そのことがこの間の自民党政府といえどもこの不良債権問題をどうしても切開できない、手術できない。何年になりますか。私がまだ前職でおりました九二年には証券・金融スキャンダル、そしてもっとさかのぼれば九〇年の三月にはトリプル安という事態があって、これがファンダメンタルズには全く関係ないという言い方を橋本総理もされました、三重野さんもされました。しかし、あのトリプル安が実はバブルの崩壊の警鐘乱打であったということは、今になってみればごく通常の常識を備えた人であればわかる話でございます。  ところが、私が一度落選してまた上がってきても、まだ不良債権問題が片づいていない、ノンバンク問題が片づいていない。そして、片づける、処理をするスキームが果たしてあるのかないのかわからない。政治の世界は何をしているんだということが今問われているんじゃないでしょうか。大蔵大臣どうですか、御感想は。
  162. 三塚博

    ○三塚国務大臣 住専国会で六カ月近く、昨年大論争をいたしたわけであります。そういうことで、我が国金融システム、預金者保護と金融秩序の維持ということを担保し得たと思います。  そういう中で、ただいま新しい機関、三機関が不良債権の処理に当たっておりまして、それぞれの成果を上げております。詳しくは政府委員からその部分について説明をいたさせますが、ふえつつありましたものに対し、信用不安ということのきっかけになり得るであろう住専問題がそこにおいて処理されたことで、健康体に向けて一歩半ぐらい前進したんじゃないでしょうか。
  163. 仙谷由人

    仙谷委員 まじめにそういう認識をお考えになっておるとすれば大問題でございますが、ちょっとそちらの方にそれるのを修復して、財政構造の話をお伺いしたいと存じます。不良債権の話は後で時間があればやりますから、ちょっと待っていてください。  財政構造改革会議というものをおつくりになりました。しかし、私は期待をしつつ期待できない。といいますのは、先ほどの一九八五年から九五年までの日本の財政経済政策の責任者がほとんど入っていらっしゃる。この責任者の方々がこの事態について、つまり、八五年から九五年までの事態について何らかの反省の弁を公表されたことを聞いたことがない、そういう経験があるからでございます。つまり、反省をし、教訓を引き出し、どうすればいいのかということがなければ、財政再建の、あるいは財政構造改革の方針が出てくるはずがない。常識でございます。  せんだっての第一回目の財政構造改革会議におきまして、総理 何かその種の反省的な話が武村正義さん以外から出たんでしょうか。深刻な総括といいますか、反省の議論があったんでしょうか。その点についてお伺いをいたします。
  164. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 どなたという名前をここで挙げることはお許しをいただきたいと存じます。  しかし、今日までのさまざまな局面におきまして、その時点その時点において最善を尽くしたと思いながら結果として今日の状況に至っている、その責任は、私を含め全員が痛感しておられました。
  165. 仙谷由人

    仙谷委員 それを具体的に、あのときにこういう政策選択をしたのは間違いだったということを、ぜひ真摯こ議論していただいて国民の前に提示する、ぜひ国民の前にこの十年間の何が間違っていたのかということを明らかにしていただきたいと思うのです。そのことが、国際社会からも日本国民からも、日本政府の経済政策というものがもう一度信任を回復できるかもしれないということでございます。  質問を変えます。  内閣官房副長官が、歳出カットの最後の仕上がりは公共事業とかが一番大きな対象となるのではないか、公共事業を大胆にカットするという発言をされていらっしゃいます。先ほど総理は、効率的な配分が重要なんだ、こういう答弁をされておりましたですね。  一つの問題は、OECDからも、公的債務残高のレベルは維持不可能なほど高く、喫緊に修正しなければならないという指摘といいますか、見解を出されるほどに至っているというのが一点ですね。  それから、財政制度審議会の出された資料を拝見いたしましても、一般政府総固定資本形成の比率が他の先進諸国に比べて圧倒的に高い。例えば、アメリカが一・六に対して日本は六・四、ドイツ二・〇、フランス三・四、イギリス一・九、こういう数字が今出ておるんですね。それと同じような対GNP比公債残高あるいは単年度の公債依存度についても、他の先進国、今私が名前を挙げましたような諸国と同じ、同じといいますか、その総固定資本形成の比率と同じような現象が見られております。これは財政制度審議会が出している資料ですから間違いないでしょう。  民間の資料でも、政府投資と民間の設備投資というものを比べてみますと、八九年は政府投資は対GNP比六・四、ところが九六年の第三クオーターには名目九・三、実質九・五という非常に膨大な、GNPに占める政府投資の比率ということになっております。それと反比例するかのように民間の設備投資がどんどん下がってきておりまして、九六年の第三クオーターでは名目一五・一ぐらいまで下がっております。だんだん近づいてきておる。公的部門と私的部門がその投資の額において、対GNP比において近づいてくるという現象が九六年の経済の実態であるというふうに考えるわけでございます。  そうだとすれば、この財政構造の改革というのは、与謝野官房副長官がおっしゃっておりますように、歳出の構造にメスを入れる、このことしかない。そして、もしくは十八兆円に上る補助金にメスを入れる。私は、両方を行うか、どちらかを行うかしかないということになるのではないだろうかなと思います。とりわけ補助金については、地方政府に対する補助金を一挙に減らす、一般財源化できればよろしいんでしょうけれども、補助金だけを一挙に減らすというようなことは到底至難のわざでしょう。  そうしますと、特殊法人に対する補助金、これを、特殊法人の経営努力、民営化等々を通じてカットしていく方法しかないのではないか、こう考えておるわけでございますが、どなたでも結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  166. 小村武

    ○小村政府委員 ただいま歳出のカットの手法としていろいろな御指摘をいただいた中で、補助金についてメスを入れろというお話でございます。  十八兆六千億の補助金は、九年度予算では十九兆二千億に上りますが、この中には、当然社会保障関係費、先ほど御指摘いただいた公共事業等も含まれております。こうした補助金、生活保護、社会福祉施設入所者等々の費用、いろいろなものがこの中に含まれておりまして、それがいわば予算そのものでありまして、補助金という切り口だけでこうしたカットという、一律に幾らという手法は相成り立たないと思いますが、その中においても、例えば奨励的な補助金についてどう考えるか、そういった面について種々私どもも検討しているところでございます。  特殊法人に対する補助金につきましては、これは約二兆円ございます。ただ、その中で、どういうものがあるかと申し上げますと、例えば住宅金融公庫、こういったものに対して低金利でお金をお貸ししているわけでございますが、その差を補給金として入れるとか、あるいは私学助成につきまして、私立学校に直接国が補助金を出すというチャンネルは利用できないということで、日本私学振興財団を通じて補助をしている、こういったもろもろのものがございます。あるいは国際協力事業団に対する補助金等々ございまして、その事業そのものに対してメスを入れるということを通じてその削減を図るべきものと考えております。
  167. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、一千四百六十七億円の補助金を補給金として補正予算でいただくことになっておる住都公団の問題についてお伺いをいたします。  先日の本会議で、我が民主党の菅代表の代表質問に亀井建設大臣がお答えになりまして、賃貸部門、分譲部門からの撤退を行うという勇断を示されたわけでございます。いつからこの撤退を開始するのか、どのような方法で撤退するのか、お示しをいただければと思います。
  168. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 住都公団が、戦後、余り豊かでない方々に対する住宅供給という責任を今まで果たしてきた、そういう意味では私は大変な功績もあろうかと思いますが、社会経済状況が大変変化して、我が国における民間ディベロッパーも相当成長をしてきたという状況の中にありまして、そうした弱者層に対する住宅をどうするかという問題、これは公営住宅を含めまして大きな問題でございますから、政府はトータルとしてこの問題には取り組んでいかなければなりませんが、住都公団としては、あのときお答えいたしましたように、分譲からは全面完全撤退をし、賃貸については一部を限定的に行うという大筋を私はお答えをしたわけであります。  なお、これとの関係で通産大臣、国土庁長官と直ちに協議をいたしまして、地域整備公団の現在行っております業務と住都公団の将来行っていく業務との間に大変な重なり合いが出てまいります。この問題は、二つを一つにするとか住都公団が一部の分野から撤退すれば行革の実が上がるというわけでは私はないと思います。  要は、国民に対して必要なニーズにどうきっちりとこたえていけるか。民に渡すものは渡し、また官でなければやれないものは何かということを今後きっちりと、他省庁との協議を含めまして、住都公団等の中においても本省と一体となって検討をさせていただきまして、抜本的に思い切った二十一世紀を見据えての改革を実施をいたしたいと思いますので、何月何日に仕上げるというわけにはまいりませんけれども、ただ、橋本行革はことしの十一月末までに全省庁の統廃合を含めてきっちりとした原案を出すという、もうルビコンを渡っておるわけでございますから、特殊法人の整理にいたしましても、具体的な成案はそのころまでにきっちりと出していきたいというふうに考えております。
  169. 仙谷由人

    仙谷委員 住都公団の戦後果たしてきた役割、おっしゃるとおりだと思います。  ただ、現時点では世帯数よりも日本の住宅戸数が既に上回った。これから必要な住宅は、多分高齢者向けであったり、あるいは良質の住宅というものが必要になってくるのだろう。そういうときに、住都公団が首都圏におつくりになっている少々高級住宅は大変売れ残り、あるいは空き室、未入居といいますか、あるいは一たん入った人が出ていくというふうなことが多いのではないか、こう言われております。  ここからは細かい数字になりますが、まず負債の状況と七年度の支払い金利あるいは八年度の支払い金利の額、そしてその利率についてお答えをいただきたいと思います。
  170. 小川忠男

    ○小川政府委員 ただいま御指摘いただきました住宅・都市整備公団の平成七年度におきます負債の状況でございますが借入金の残高は合計で十三兆四百億円余りでございます。うち財政投融資が十二兆円強でございます。  それから、支払い利息の合計でございますが、若干民間からの借り入れもございますが、これを合わせまして七千六百三十一億円でございます。平均利率は五・九%でございます。  平成八年度については集計しておりますので、若干時間をおかしいただきたいと思います。
  171. 仙谷由人

    仙谷委員 それほどの数字の違いはないと思いますが、建設省からお伺いしました資料によりますと、流動負債が一兆四千五百四十九億円存在し、固定負債が十三兆一千六百十八億円存在する、財投による金利が五・九%であると私は聞いております。そして、流動負債の一兆四千五百四十九億円、これは民間からつなぎ資金で借りておって、二・二%の金利で借りているということでございます。短期、長期ですから単純比較はできませんけれども、単純に比較いたしますと、何とここで三・七%の金利差が存在をするわけであります。それから、別の資料によりますと、政府保証で民間資金を借り入れている分があるようでございますが、一千百八十七億円、この平均の利率は、金利は四・四%でございます。  で、この本補正予算に盛られました一千四百六十七億円というのは、固定負債十三兆、十三兆に対する、金利でいえば約一・二%分に相当すると考えてよろしいでしょうか。
  172. 小川忠男

    ○小川政府委員 ただいま補正予算でお願いいたしております補給金につきましては、特に賃貸住宅部分について申し上げますと、賃貸住宅を供用開始したときに、当初十年間はコストを三・五%になるまで補給金を投入する、二十一年目以降は〇・二%相当を投入する、十年目から二十年目まではそのちょうど中間の水準の補給金を投入する、それを個別具体の賃貸住宅に即応した数字を全部積み上げた結果として投入された数字でございます。
  173. 仙谷由人

    仙谷委員 もともとの理由はそういうことなんでしょうが、そのほかに、住都公団は、財政投融資計画総額のうちから、平成七年度においては二千五百億円を不用としているということのようでございます。それから、四千三百二十億円を繰り越しているということのようでございます。  これはどういう意味を持つのか。つまり、金利との関係でいえば、この財投金利がつく部分は、平成八年度でいえば一兆二千三百十九億の財投計画のようですから、一兆二千三百十九億のうち現時点での財投金利がついている部分はどの部分でありますか。
  174. 小川忠男

    ○小川政府委員 ただいま御指摘いただきました平成七年度の繰越額及び不用額は、御指摘のとおりそれぞれ四千三百二十億円、二千五百億円でございます。  ただ、これは財投計画に対してというふうなことでございまして、実際に公団が資金を調達する場合には、必要になった都度財投からお借りいたしております。したがいまして、ただいまの繰越額あるいは不用額は、現実に調達した、あるいはその結果として公団内に滞留しているというふうな性格のものではございません。したがいまして、これらに対応する金利はゼロというふうに御理解いただきたいと思います。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
  175. 仙谷由人

    仙谷委員 次に、大体バブルの崩壊した九〇年の四月以降に建設をされた公団住宅、空き室、売れ残り、あるいは先ほど申し上げた未入居等々、この資産価値を計算するとどのぐらいになるのか。あわせて、これに対する金利というものが計算上発生をしておるはずでございますが、金利はどのぐらいなのか。あるいは、得べかりし賃料は、本来その貸借人が入居をすれば公団に入ってくる賃料はどのぐらいになるか、あるいは売却できておれば入金したであろういわゆる分譲代金、どのぐらいなのか、わかりましたらお示しをいただきたいと思います。
  176. 小川忠男

    ○小川政府委員 平成二年の四月以降に賃貸住宅は合計で五万五千戸供給いたしました。このうち、昨年の十二月の末段階で継続して三カ月以上空き家になっている住宅の合計が四千戸でございます。これの資産価値は、推計でございますが、約一千二百億円前後というふうに見ております。  また、同じく平成二年の四月以降に建設し分譲した住宅の累計ま三万五千戸でございますが、同じく、昨年の十二月断面で売れ残っている住宅は千七百六十四戸というふうな結果になっております。  また、この状態が引き続き一年間続くというふうに仮定をいたしまして計算した場合の金利は約八十億円というふうに見込まれます。  また、家賃収入でございますが、同じく一年間継続して空き家になるというふうな前提で計算いたしますと、得べかりし収入、家賃収入は約五十八億円でございます。  それから、売れ残りの分譲住宅、先ほど千七百戸余りと申し上げましたが、これを完売できたとするならば、約八百億円というふうな計算になります。  以上でございます。
  177. 仙谷由人

    仙谷委員 結論的にもまた亀井大臣にお伺いをするわけでございますが、住都公団が出資をされた関連会社というものが相当あるように伺っております。それは、おととしの暮れになりましょうか、政府が特殊法人について見直しをするということで閣議決定をされて、それ以降始まった行政監察局の監察でも、数とかあるいはディスクローズの問題というのが出ておるようでございます。  そういう住都公団出資の関連会社について、先ほど新進党の石井先生も質問をされておりましたけれども、こういうものが幾つぐらいあるのか、そしてどんな業務をしておるのかということをまずお伺いしたいと存じます。  そしてあわせて、これらの会社というのは、役員の方々の、まあ俗な言葉で言えば天下り率でございますが、これはどのぐらいなのか、そして社長さんの給料というのはどのぐらいお取りになっているのか、この点も含めてお聞きしたいと存じます。
  178. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 住都公団の業務を遂行する上におきまして、直接担当しないでやらせた方がいいという業務等につきまして、現在関連会社十七社ございます。  ただ、委員御指摘のような人的構成その他にいたしましても、住都公団に籍を置いた者がそこの役員になっているとか、あるいはそこの職員になっておるという比率は非常に高いわけでございますので、まあこれあたりにつきましては、公務員全体の定年制の問題等を含めて、特殊法人のそうした定年制の問題、いろいろな問題との絡みでなければ解決をできない大きな問題がございますけれども、先ほど委員にお答えをいたしましたように、このたび徹底的に住都公団は生まれ変わっていくという大方針を出したわけでございますので、そうした従来の関連業務をやっていただいておった会社、法人等につきましても徹底的な、その必要性等を含めまして、これについては対応をしていくつもりでございますので、民主党におかれましても、こういう場だけでなくて結構でございますから、具体的にひとつ御指導いただければ、我々としては、そうした声を取り入れながら思い切った改革を実施をしていくつもりでございます。
  179. 仙谷由人

    仙谷委員 側隠の情を示せということのようでございますが、しかし、日本総合住生活の代表取締役社長は何と我々衆議院議員より高い二千七百二十万円の年収を得ている、こういう話でございますし、関連会社の社長さん、あるいは専務さん、常務さんはサラリーマンの中でも相当高い給料でございます。  高いからいけないということを申し上げておるのではありません。住都公団が、先ほど来出ておるように、こんなに、バランスシート上もそれほどよくない、特に損益計算をするとますます重大な事態に立ち至っている。だから、この補給金と称する一千四百六十七億という金が私は必要なんだろうなと思います。そして、ちょっと計算をしましても、この十二年間で二兆円の税金がこの住都公団に補給金としてまうり込まれているというのが実態でございます。  右肩上がりの経済成長をして税収が潤沢なうちは、これも許されるのかもわかりません。しかし、今の事態は、国民に大きな負担を求めるという財政再建をうたっていらっしゃるわけでございます。一億円でも十億円でも百億円でもその経費を削減して、国民の税金から補給金というふうな格好でいただく分を削る努力をするというのが、公団にも公団の関連会社にも求められるのではないのでしょうか。  そこで、大臣にもお願いかたがたお聞きしたいわけでございますが、この関連会社をいわゆる一般の民間の会社と同列に扱って、駐車場の経営とかビルのメンテナンスとか掃除であるとか、いろいろな保守管理業務を委託しておるようでありますけれども、これを入札制度に切りかえて、民間の業者にも、民間の業者にもと言ったら、打ち合わせに来た建設省の方が、この関連会社も全部民間の会社ですと言うから、それは民間の会社だろうけれども、資本系列と役員構成が違うだろう、こう申し上げたのですが、いわゆるひもつきじゃない民間の会社にも開放する、そのことによって公団の経費を下げていく、そういう経営努力をまずすべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  180. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 住都公団、今までも効率的な運営には努めておったことは間違いがございませんけれども、また、先ほど申しました重大なその使命を達成をしてきたことも事実でありますが、しかし、人間のやることでございまして、今の時点になって、総ざらい、これでいいのかという形で内容を検討いたしますと、今委員が御承知のように、本体に対して補給金というような形等を含めて事実上国民の税金が入っていっている、そこから受注をしている会社の中には百億を超える利益を上げるというようなことであっては、これはもう納得がいかないということであると私は思います。  この点につきましては、住都公団におきましても、今までの契約条件を変えていくというようなこと、あるいは、今委員から御指摘のように随意契約から競争入札に変えていくというような、もうこれは既に着手をさせております。そういうことをやる中で、本体が国民の税金をどんどんと吸っておる、そこから発注を受けている各企業、しかもそこに公団からOBその他が大量に行っているというようなところが膨大な利益を得ておるということは、これはもう納得いかないことでございますので、責任を持ってこれはきっちりとやらさせていただきます。  現在、牧野公団総裁も、非常な決意を持って既に改革に着手をいたしておりますことを御報告申し上げます。
  181. 仙谷由人

    仙谷委員 もう一つ、重大な経営努力をしていただかなければならない問題があると思うのです。先ほどから申し上げておる金利の問題でございます。  先ほど申し上げましたように、一千四百六十七億円は、公団の固定負債の一・二%でございます。どうですか、この一・二%を金利減免をあるいは借りかえという方法でできるように、亀井大臣がその剛腕をもって交渉をするつもりはないのですか。
  182. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 現在、御承知のように財投金利と市中の民間金利が逆転現象を起こしてきておるわけでありますが、ずっとそうであったというわけでは御承知のようにございません。そうした中で、安定的な、比較的低い金利の資金を調達するという中で、公団も苦労をしてきたわけであります。  現在の時点で、この財投金利が高いから私の方だけそれを安くしてくれということは、まかり通ればこれは結構な話でありますが、到底三塚大蔵大臣が私のそういうことをかなえてくれるはずはございませんので、この点は現実的に私は無理だと。これは、政府全体としてその問題はどうするかということを検討していただかなければならない、こういうふうに考えています。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 仙谷由人

    仙谷委員 この問題は法律的に不可能なのかということを聞きたいのでござします。いや法律的には不可能じゃない、これは契約の問題だという話があるようでございます。  契約の問題であるとすれば、事情が変われば借りかえの交渉や金利減免の交渉をすることは当たり前であります。それは、せんだっての住専問題を見れば明らかでございます。体力が弱った企業がお助けをいただく場合には、金融機関に頭を下げて、責任を明らかにして、金利減免をあるいは安い資金を借りることをお願いするのが、これが企業の論理でございます。そうでないとすれば、これはなくなっていただかなければならないのかもわかりません。  そんな観点で、ここは財投制度の大矛盾がはらまれているのじゃないかと思いますけれども、この点については、今、小泉厚生大臣がうなずいていらっしゃるのでお答えいただいてもいいのですが、時間がございませんので控えます。そして、財投の大矛盾がかかわっていると思います。この種の問題は、相当あまねく広く存在するのではないかと思います。  私は、政府において、この種の問題を国民の前にはっきりと明示をすべきだと思います。財投金利と民間の現在の金利の差、そして国民の税金がどのように使われているのかということを明らかにして国民的議論にさらさないと、到底、ほとんどの国民の目に見えないところで処理がされているようになっているのは、大変矛盾が多いと思います。ひとつその点、政府の方でも御検討をいただきたいと思います。  時間がございませんので、早急に次の問題に移ります。  不良債権の問題でございます。  菅代表が代表質問で、アメリカの議会調査局の見方といいますか、調査によると、東京三菱銀行の不良債権は実は倍ある、SEC基準によると倍になったと。だから、日本の金融機関の不良債権も大体その程度あるのではないか。私がちょっと調べましたところでは、都市銀行二十行で公表不良債権が十七兆四千百億、地銀、第二地銀が二十三兆ということでございますので、これを倍にいたしますと約八十兆円でございます。公表不良債権の倍は八十兆円ということになるわけでございます。  私は、今株価の動向も関係があるわけでございますが、つまり鶏が先か卵が先かの関係ですが、株価は、日本の金融機関の不良債権が本当はどのぐらいあるのか疑心暗鬼に駆られて売りが出る、そしてまた、金融機関も決算を控えて、含み益を吐き出すためにまた手持ちの他の銀行の株を売る、こういうある種の悪い連鎖が始まっておるのではないかと思います。  その点については、大蔵省は一番よくわかっていらっしゃるのは、兵庫銀行のときの六百十億が一兆五千億になったというこの事実、太平洋銀行が二百七十五億が二千八百億になったという事実、ふたをあけてみれば阪和銀行は四百九十五億が一千九百億になったという事実、こういう事実が不信を買っているんだろうと思います。  それで、ここで大蔵大臣にも御提案申し上げたいのは、もう一度この問題に腹を据えて取りかかる。つまり、全金融機関の資産内容、反対から言えば不良債権の質と額について、この間の、監査法人がやっているような厳しい基準で監査をして、もっと言えば、端的に言えば時価評価をして、この会計書類を別につくらせて公表する。そしてそのかわり、いざというときには政府が全責任を持つということを早く宣言した方がいいんではないか、私はその思いに駆られているわけでございます。  政府、日銀のサポート、その前提としての時価会計による決算、そして経営者の責任はとってもらうという、このことなしには現在の株価の問題も解決しないんではないか、いつまでたっても臭い物にふたをする、うみをそのまま残しておくということになるんではないか、こんな感覚にとちわれておるわけでございます。  大蔵大臣、いかがでございますか。
  184. 三塚博

    ○三塚国務大臣 株式市場、株価の問題を基本としての御議論でございますが、これをどう見るかの基本的な視点が、ストレートに、株式市場の乱高下が直ちに日本経済をしてアウトになるとかよくなるとかというものでないことだけは御承知の上で御質疑であろうと思っております。  株価の問題とは別に、金融システムの安定と、よって皆様方の預貯金の保障、さらに不良債権の問題、前段申し上げましたとおり、着実に前進をいたしておりますものですから、それと相並行しながら、御提言の気持ちはもっとしっかりしろということなんでありましょうから、その辺を受けとめております。
  185. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  186. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次に、穀田恵二君。
  187. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。  私は、端的にタンカー重油流出災害の問題と、そして阪神・淡路大震災の個人補償の問題についてお聞きしたいと思います。  事件発生後、約八十以上の市町村に被害が及んでおり、各地の海岸で、地元住民、漁業関係者や自治体、ボランティア関係省庁の現場の人々の努力に胸がふさがる思いです。  さて、現地でこの重油流出と苦闘している方々は、本会議や本日の総理の答弁で激励を受けたり安心をしたでしょうか。政府の対応の結果としてのおくれを反省した言葉があっただけで、荒天、それから公海上で発生した場合の対応体制がおくれていた、このくだりには、現地からは残念だという声が寄せられています。被害を受けている各地で共通する最大の声は、沿岸に来るまでになぜ回収できなかったのか、そうすれば被害は少なくて済んだのにというもので、総理の答弁は国民を納得させるものではありません。  今回のような事故が初めてだというんだったら仕方がないかもしれません。しかし、今回の油濁事故、災害と類似のそれは過去にもあったし、その教訓に学び、政府自身が必要な体制をとることを言明していました。  七年前の九〇年一月二十五日、ちょうど今ごろです。京都の経ケ岬沖でリベリア船籍のマリタイム・ガーデニア号の座礁によって、今回の重油の流出よりも少し少ないですけれども、九百キロリットルの大規模流出油の事故が起きています。油濁の処理に九十七日間を要した大変な事故でした。  事故の後、九一年にまとめられた第八管区海上保安本部の報告書では、「気象の悪条件で有効な措置を取れず、流出油の大半が沿岸に漂着」「回収・処理に多大の人力と機材を要した」、さらに、「拡散した流出油の防除は困難で、初期段階で人員・機材を集中的に投入する必要がある」、こうした上で、こう言っているのですね。「気象条件の厳しい外洋で使える油処理の機材はいまだ開発されていない」と指摘しています。  総理、あなたはこうしたことを御存じの上で答弁しておられるのでしょうか。荒天、そして公海上というのは理由にならないんじゃないでしょうか。
  188. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、自分の郷里の水島におきまして大規模な重油流出事故に遭遇し、その対応を必死で模索した時期がございます。そして、議員が御指摘になりましたこの事件も覚えております。  ただ、その上でお聞きをいただかなければなりませんのは、実は、例えば本日、沈んでおります船体確認のために科学技術庁のディープトウを潜航させました。そして、船体らしきものを確認をいたしましたが、それがナホトカ号の船体であるのかあるいは他の船体であるのかは現在チェックをしております。そして、しかも、しけのためにきょうも実はこの作業も午前中しかできませんでした。そして、現実に自然の力の中で、議員からおしかりを受けるかもしれませんが、我々がこの荒天というものを克服するだけの装備を残念ながら持てていないことは事実であります。
  189. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話があったように、設けていない、ここが大事なんですね。  私は資料を持ってきましたけれども、九一年の環境庁の請負調査で、大規模流出油事故に伴う海洋環境被害対策調査というのを出しているのですね。それによりますと、大きな事故日本の場合は三つあったということで、そのうち二つを実は日本海側の流出事故として規定をしているのです。時期も同じように全部冬なんですね。  その際に、この報告書は、「荒天時の事故想定」としてこう言っているのですよ、「大規模油流出事故は、荒天による海難事故に基づくことが多い。」と。荒天ですよ。そして「荒天では対応が困難であるが、荒天下における有効な処理方法を検討する必要がある。」と言っている。設けていないのじゃなくて、このように指摘をしてあった時期から既にそのことを提起していたのじゃないかと私は思うのですね。だから、やはりそれの教訓をしっかり学んでいないのじゃないか。  さらに、これは同じくこうも書いているのですね。ジュリアナ号の新潟沖の事故もあったのですね。あのときもこう言っているのですね、「荒天下における有効な処理方法の検討が指摘された」と。だから、設けることができなかったのじゃなくて、設けるべきであったことは既に明白だったわけですね。  だから、ここのところの問題をはっきりさせないと、私は、政治の責任が明確にならないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  190. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今マリタイム・ガーデニアあるいはジュリァナ号にも触れての御意見でございます。そして、こういう問題があったことを私も承知いたしておりますと申し上げました。その上で、技術的にできておらないということは事実であります。残念ながら、四メートル、六メートルといったうねりの中で作業のできる能力を現在の水準によって我々が持っていないということは事実でありまして、そういう技術開発ができなかった責任をと言われるなら、それは科学者ではない私の力には余ることでありますけれども、おしかりは甘受して受けます。
  191. 穀田恵二

    ○穀田委員 どうも技術的にできておらないという問題を随分問題にしておられるようです。しかし、私は今二つ指摘しているのですね。つまり、荒天の場合と、少なくとも日本海の場合の問題と二つ言っているのですね。つまり、これらの文書はすべて二つの点を指摘しています。荒天の際の体制の問題と日本海側の体制を強化しなくてはならぬということを述べておられるのですね。  重要な問題はもう一つありまして、技術的な問題で言うならば、いわば今度送った船と同じようなものを日本海側にきちんと配置しておれば、少なくともああいった事態をさらに拡大することはなかったのじゃないかというのが多くの方々の御意見なんですね。だから、私は、日本海側に対してどういう手を打ってきたのかという二つの点を提起しているわけなんですね。
  192. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 総理からも御答弁いただいているところでございますが、今回のこの流出油による災害につきましては、御案内のとおり、午前中の石井議員の御質問にもお答えをいたしましたけれども、二日、事故発生と同時に、まず人命救助に全力を尽くさせていただきました。そして、これはタンカーの沈没でございますから、油が流出するということについての監視、そして何といっても船首部を何とかして沖合に曳航したい、この努力を海上保安庁の職員、まさに昼夜を分かたず命がけでやってきたことだけは事実でございます。  しかし、残念ながらそれが着底し、また流出油が漂着するという結果を考えてみますと、何といいましても沿岸住民の方々の精神的な、経済的な苦痛に思いをいたすときに、私も足らざるところ、また努力不足を反省すると同時に、さまざまな御批判に対しては甘受をさせていただきたい、甘受するべきだ、このように思っております。  同時に、今先生御指摘の件でございますけれども、確かに我が国の油の防除体制というものは、タンカー等船舶交通のふくそういたしております地域に一たん事故が発生した場合の影響が大変大きいわけでありますので、重点を置いて油の回収船そして回収装置というものを整備いたしております。その結果といたしまして、東京湾、瀬戸内海等、静穏な海域に重点的にそれらの体制が置かれているということは率直に認めざるを得ないというふうに考えております。  同時に、日本海、特に冬の荒天、そうした状況の中で今後どういう対応ができるのか。また、リベリア船籍の貨物の油、重油に対しての教訓を生かしていないんじゃないか、こう御指摘でありますけれども、確かに平成二年、あの事故を契機にいたしまして、若狭湾におきましては広域的な自治体を中心といたしました協議会の結成に、即応態勢というものの一つの体制をつくらせていただいております。しかし、これが十分今回も生かされたかどうかといいますと、大変反省の点は多いと思っております。  同時に、日本海のあの荒天の中での新しい耐え得る資機材、そうしたものの開発について、御指摘のとおり大変おくれている点については私どもは率直に認め、反省していかなければいけない、このように認識をいたしております。
  193. 穀田恵二

    ○穀田委員 今のお話聞いていますと、私、二つ問題があると思うのですね。  一つは人命救助、これは大変大事なことです。しかもその後の努力で現場の方々が必死になっておられる。これはこのとおり私ども認めているのです。ただし、この油流出の事故のそういう規模の大きさ、これからしますと、三日の夜八時、二十時に既に三千七百キロと推定しているのですね。あの大きな事故であった経ケ岬のときは九百キロですよ。だから、これ以上にどでかいのがあるということは既にあったわけであります。その時点で認識したのですね。ところが、その後の手だてはやはり一日二日の空白期間があったという問題をこれはすべてのマスコミが指摘しているわけでして、やはり即応態勢に非常に不十分な点があったということについては、これは認めなくちゃならぬと思うのですね。それが一つなんですね。  もう一つは、今お話があったように、大臣も結局冬の日本海という話をしますけれども、冬の日本海というのは別に今始まったことではなくて、二十年前もそれから五年前もずっとこれは冬の日本海はこうだったわけですから、その時点から、少なくともこういう問題について対処すべし、そういう検討をすべしということを、皆ざんがお気づきでなかったらそれはいいですよ、そういうことをお気づきの上でこれはやっているわけですよ。  それで、ついでに私言っておきますと、網野町の町議会は二十四日に議会の全員のあれで決議をしていますけれども、こう言っているのですね。七年前経ケ岬で起きたリベリア船籍の事故で重大な被害をこうむったにもかかわらず、その教訓が生かされていないことはまことに遺憾だ、こう言っているのですね。やはり、この教訓の中心は、今お話ししたように即応態勢をやるということ、それにふさわしく日本海に配備をする、荒天体制をとる、この三つなんですよ。その点がやはり欠けていたというところを私は問題にしているのですよ。その辺いかがですか。
  194. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 御指摘のように、私といたしましての対応のおくれというものについては、何回も申し上げておりますように、反省すべきところは反省し、足らざるところを甘んじて御批判は受けるべきだというふうに思っております。  同時に、今おっしゃっていただいております冬の日本海、荒天というのはわかっているじゃないか、当然のことでございます。承知いたしております。これは外洋における、また日本海の冬のあの荒天にも、今回のような大規模な油汚染事故に対応可能な防除体制というものが技術的にも可能かどうかということも含めて、今後最大限の検討を行っていきたい、このように考えているところでございます。  同時に、地方自治体、それから業界等一体といたしましたさらなる即応態勢につきましても今後強力に検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  195. 穀田恵二

    ○穀田委員 どうもその、甘んじて受ける、それから技術という話ばかりしているのですけれども、結局、なぜ手を尽くし切れなかったのかという問題なんですよね。大臣も総理もそうおっしゃるけれども、大体時間は十分あったのですよ。  千九百九十年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約、いわゆるOPRC条約、これを締結しました。この締結に伴って、油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画という計画もつくっておられるのですね。  その中で、閣議決定をして、当時通産大臣であった総理も御参加のことだと思うのですが、ここでこう言っているのですね。我が国周辺海域において、つまりこれは公海ですよね、公海も含めて排他的水域も含めて言っているのでしょうけれども、万一そういう事故が発生した場合には、初期の段階から迅速かつ効果的な措置をとることが大事だとまで言っているのですよ。その上で、それを受けて、海上保安庁に対して、船艇、船ですね、排出油防除資機材の整備を推進すると決定しているのですよ。  今大臣がおっしゃった若狭の問題でもそういう民間の体制を含めたことが言われましたけれども、それ以外にこれも出ているのですね。山陰沿岸・若狭湾海域の排出油防除計画まであるのですよ。  それに何と書いてあるかというと、やはり、当海域は外洋に面した広範囲な海域であることから増強を進めることが肝要だと書いているのですね。つまり、ありとあらゆる資料は、少なくとも新しく事態が生まれたときに、日本海側の体制を強化しなくちゃならぬ、こう言っているのです。ところが、強化されていないということを問題にしているのですよ。  先ほどお話があったように、若狭の話が出ましたけれども、太平洋側の話は全部その時点でもうあるのですよ、そんなことは。そういう点で、被害を拡大させたというのは、教訓を生かしておれば防げたはずだということを言っているのですよ。だから、技術論にせずに、日本海側にきっちりとしたものを配備すべきだという再三再四にわたる指摘をどう受けとめておったのかということを言っているのです。
  196. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 結果、現在のような状況を起こしておるわけでありますから、議員が御指摘のように、日本海側に船舶、船艇、これは油回収船等をも含めてかもしれません、余裕の機材を配備しておればこの事故は防げたかもしれない、その御指摘は甘んじてちょうだいをいたします。  その上で、私、ちょうど十四日にASEANから帰ってまいりました直後に、その作業のフィルムを改めて自分なりに見せてもらいました。この浮遊する、浮遊という言い方が適当かどうかわかりません、浮かんで漂流しております船首部を何とか引っ張ろうとして海上保安庁の諸君が努力をしております姿、最後に接岸しそうになりましたぎりぎりの段階になりましても、むしろ私の目から見ておりますと、巡視艇そのものが座礁しないかという心配をいたしましたが、その二隻の巡視船の間にチェーンを引きまして、そのチェーンでそれを引っ張ろうとしている努力の姿も自分な力に見てまいりました。ですから、私は、少なくとも全力を尽くしてくれたと信じておりますが、より多くの船を配備しておくべきであったと言われれば、これま甘んじてそのおしかりをちょうだいをいたします。
  197. 穀田恵二

    ○穀田委員 それでは要求しますけれども、京都の経ケ岬沖の事故の際に、私どもの寺前議員は、やはり外洋対応、それから日本海対応の強化を求めているのですね。その際に、海上保安庁は、効果的な資機材の配備のあり方等についても検討すると当時も約束しておられました。ですから、今度は明確に教訓にして、油回収船の配備などを検討すべきだと思うのですね。しかも、その点では具体的にお聞きしたいと思うのですよ。  第五港湾建設局から派遣された清龍丸というのは、御承知のとおり、油の回収という機能としゅんせつという機能を両方持っています。建造後三十年以上たつ老朽船だけれども、同じようなしゅんせつ機能を持つ海鵬丸、それから白山丸というのがあると聞きます。この際思い切って、何も新しいものを、確かに十分配置する必要はあるのですけれども、そういうのも含めて、思い切ってしゅんせつ機能に油回収機能を付与したものに新しくつくり、船舶数もふやしたらどうかと思うのですね。  しかも、聞くところによると、運輸省のおひざ元の組合である全運輸省港湾建設労働組合は、二十年近くも前からこの具体的な提案も含めてやっているのですね。このぐらいできると私は思うのですね。そのことによってしっかり配備をするということをぜひやっていただきたい。どうですか。
  198. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 御指摘いただきました点につきましては、まず清龍丸、これは、波高二メートル以上になりますとほとんど油の回収というものが不可能でございます。そういうことも踏まえまして、日本海の冬の荒天下に備えるということになれば、かなり大規模な、また技術的にそういう実際に油の回収船ができるかどうかということもまず検討していかなければいけないでしょうし、さまざまな観点から総合的に検討させていただき、そして前向きに実現をするための努力をしていきたい、このように考えております。
  199. 穀田恵二

    ○穀田委員 何度も私は言うのですけれども、大臣、総理、荒天と言いますけれども、一定の期間は荒天でない日もあったのですよね、動けるのですよ。だから私は、一隻、当時で二十億と言われていますから、大体今は四十億ぐらいだと言われています、新しくっくるのに。  そこで、私は調べてみたのですけれども、海上防災と海洋環境保全関連予算というのは、経ケ岬事故以後も毎年約一億六千万円程度なんですね。この六年間で合計十億一千万円にすぎないのです。しかも、海上保安庁の油防除艇というのは、七九年に大分に配備された「いそしぎ」、それから油回収船、同じく七六年に堺に配備されて以来、建造計画もないのですよ。こういう実態なんですよ実際は、そう言ったって。だからふやせと言っているんですね。  片や海上自衛隊の装備調達予算はどうかというと、九一年以降毎年二千億円以上で、合計この六年間で一兆三千三百二十五億円なんですよ。毎年護衛艦と潜水艦は発注されているんですね。だから自民党の幹事長代理も、ある新聞に、報道によればですが、「いまだにひしゃくですくっている姿を見て、国民はどうなっているんだと思う。防衛関係では、一機何百億円もかかる飛行機を買っている。こうした飛行機や戦車を買うより、ただちに処理できる船を買っておく必要がある。」と、こう言っているんですね。私は、これはまさしく正論だと思うのです。この間の予算の経過を見ても、二十億円の分の二つぐらいできるんですよね。それをしろと言っているのであって、何か無理な話をしているんじゃないのですよ。そういう点をぜひ私は見ていただいて善処をしていただきたい。このぐらい検討して約束してくれるぐらいできるんじゃないですか。
  200. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 何回も申し上げておりますように、技術的にそういう船ができるかどうかという検討も必要であります。総合的に検討させていただきたいということを申し上げております。
  201. 穀田恵二

    ○穀田委員 今、私が具体的に提起したのは、荒天対策もあるが、日本海対策として、少なくとも海鵬丸、白山丸というクラスのものについていえば両方できるようにしたらいいじゃないか、こう言っているんですよ。しゅんせつの仕事はしているんですよ。これを新しく五千万円ほどの機能をつければそれはできる。ただし、三十年になっているから、それこそナホトカ号じゃありませんけれども、それじゃ沈没してはならないわけだから新しくしたらどうだと、こう割合具体的に提起して二十億円から四十億円の話をしているんですよ。そのぐらいのことをやってくれなくちゃ困るなと私は思うのですね。しかもそれは自民党の、何回も引用して申しわけありませんけれども、幹事長代理もそうだとこう言っておられるのですから、それぐらいの結論は出していただかなければならないということを言っておきたいと思います。そういうことを私は強く要求しておきたいと思うのです。  次に、もう一つだけ、阪神大震災の対策の問題について、個人補償に関係する問題を、ちょっとどうしてもお聞きしたいと思うのです。  あれから丸二年たって、私ども共産党も二周年たっての調査団を派遣をいたしました。あれから三度目の冬を迎えた仮設住宅を訪れると、こう言っています。地震に遭って、そのときはよく命が助かったと思ったが、今ではあのとき死んでおればよかったと思うようになった、こういうふうに言われて、私は、本当に大変な思いをしたというのが実感です。  そして、ついせんだって、新聞ではこんなふうにも書いています。震災で命を落とさず生き抜いた人が仮設住宅で孤独死するとは何たる悲劇であろうか、何たる政治の貧困であろうか。私も同様の意見で、生活再建のための公的支援ができなくて何の政治かと思います。  私は、地震発生後の初めての予算委員会で国による個人補償を要求して以来、一貫してこの問題を訴え続けてきました。同時に、実現に向けての共同の努力を拡大するための努力を続けてまいりました。自立自助を掲げる政府の厚い壁に、被災者や自治体も含めて、何度も何度も公的支援の拡大を求めて運動されてこられました。  政府は当初、日本は私有財産の国だからということで、にべもなく拒否されました。しかしその後、多くの方々の運動の中で、公費の瓦れき撤去、それから公費による擁壁の補修、さらには家賃補助、そして今回、九七年度の予算では、生活支援金を実行するということに至ったわけですね。  これらは、名目や手法はいろいろあろうけれども、先ほど伊藤長官お話あったように、個人補償的か個人補償かは別として、そういった形で生活再建のために国が直接間接に給付することに踏み出したと思うのですね。  問題は、だって、これらの施策を実行するたびに、国土庁長官方々は歴代、個人補償的な最大の限界、こう言ってこられたのですね。  こういうことからして、私は、さらに一歩進めて、地震から二年を経て、自立の基礎が失われて自立できないでいる被災者に、いよいよ生活再建を支援をするという肝心なところにもう一歩踏み込んで個人補償を行うべき時期に来ているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 生活支援をするか個人補償かという御議論は既に本会議委員会でも幾たびか受けてまいりました。また、つい先刻だったと思いますが、穀田委員と実は民放のテレビを通じてこのことも御議論をいたしました。  私は、今度の生活支援をするという意味で三党プロジェクトが昨年の十二月に決めていただいた、つまり要援護者であるとか六十五歳以上の方々の世帯主であるとか、そういう非常に生活の大変な方々には国は、自治体を通じてではありますけれども、地方に我々が支援をして、結果として月額一万五千円から二万五千円を支給するということになっているわけですから、個人補償とそれを呼ぶのか、あるいはそれを私どもがずっとお答えをしてまいりましたように生舌支援と言うかは、それほど私はこだわる問題ではない。  結果として、さまざまな災害に遭った人たちに国も自治体も最大限の協力をするということだと思いますし、もう穀田委員御案内のとおり、私ども国としても、四兆円に近い国の支援をして、そしてこの阪神・淡路の復旧からさらには復興に向けてあらゆる努力をしているわけでございますし、今後多くの方々が仮設住宅から恒久の住宅に立ち上がっていかなければなりません。これらのことも自治体の皆さんとよく御相談をして、国はできるだけのこれからも支援をしていきたいというふうに考えております。
  203. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話がありましたけれども、結果としてということがありました。つまり、生活支援金であれ個人補償であれということですね。そういうお話があったとすると、私は、これは非常に大事な問題だと思うのですね。つまり、結果として生活の再建ができるかどうかに根本を置くことが大事だということは、これは一致しているのですね。それでいいのですね。  私は、そうしますと、参考のためにもう一度言いますけれども、雲仙・普賢岳、奥尻における被害者というのは行政が関与した形でこれは生活再建ができているのですね。これは幾らかといいますと、雲仙の場合には、全壊住宅の再建助成金は五百五十万円であります。全壊世帯への義援金配分金は四百五十万円、家財道具購入助成金百五十万円。奥尻ではどうか。これは、住宅、生活再建のための無償供与として、全壊住宅の再建助成金七百万円、全壊住宅への義援金配分四百万円、家財道具購入助成金百五十万円、宅地購入助成百万円などが実施されているのです。あれは確かに義援金や基金で行えたけれども、行政が関与しているのです。  つまり、そうすると、あそこはできたけれどもここはできないというふうにいつもおっしゃられる。阪神大震災被災者が何分そういう規模が大きいのでと、そんなことは成り立たないのです。  つまり議論は、そういケ形で生活再建ができた、その生活再建できるためにはこういうことが必要だということを示しているのです。問題は、つまるところ国の財政出動が大きいからできないというのだったら、これはだめだと思うのですね。この程度の規模のことをするつもりがあるかどうかということが私は今の中心問題だと思うのですね。だからそれは、名前は個人補償でも生活支援金でもいいですよ。これぐらいの規模がなければできないということを、これは数々の例が示していると思う。いかがですか。
  204. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 雲仙、奥尻の場合には、御案内のとおり、義援金でかなり皆さん支援ができました。確かにそのとおりでありますが、今度の阪神・淡路の震災は、委員御存じのとおり、大変甚大なものでございました。それだけに私ども、先ほど申し上げましたように、政府としても四回の補正予算、そして平成七年度、平成八年度、ことしの予算が通れば平成九年度、それぞれの当初予算を含めまして四兆円に近い、あるいは四兆円を超えることになると思います、国はあらゆる支援をしてまいりましたし、また七万七千戸の公的住宅をつくる準備も確実に進めさせていただいております。本来ではできなかった瓦れきの処理につきましても、公的な資金で瓦れきの処理もさせていただきました。  さらに具体的に、非常に所得の低い方々に関しましては公的住宅も非常に家賃を下げる、あるいは住宅金融公庫も五年間は無利子にさせていただく、そして昨年の暮れに決めさせていただきました、先ほど申し上げたような月額一万五千円とか二万五千円、毎月支給をさせていただく、さまざまな施策を講じてきているわけでございまして、今度の災害が余りにも甚大であったということはありますが、それだけに国としても、県や市と連絡をとりながらそれだけの対応は精いっぱいしてきていると思います。  しかし、そうはいいながら、御指摘のようにまだ多くの方々が仮設住宅に現実にいるわけでありまして、これから恒久住宅に移るのにはさまざまな問題があろうかと思います。これらのことにもしっかり国は対応してまいりたいと思っております。  ただ、一言つけ加えますと、さまざま御指摘があります、これからこうした災害が起きてきたときにどうするかという問題については、実は兵庫県の知事さんなんかもいろいろな提言をしていただいております。そうしたことにつきましては、国としてもよく自治体あるいは全国の知事会の方々とも相談をして、やってくるこれからの災害に対するシステムというものについては十分研究はしてまいりたいと思っております。
  205. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話があった生活支援金の対象者は、先ほどの議論にもありましたように約三万三千ですよ。四十万人を超える方々が被災しているのですよ。  かつて総理が被災地を視察をしてこう言っておられますね。今まで我々が気づいていなかった、また実感がなかった、そういったことを含めて恒久住宅にどう移っていただくかということなどの問題を肌に触れて感じたということから家賃補助の具体的な取り組みが始まったわけですね、あの当時。  私は、今明らかに四十数万の被災をされている方々が次の展望が見出せないでいる。世帯でいえば三万三千世帯がその対象となっている。それ以外の対象者がたくさんおられる。そういう方々の新しい支援策を、先ほど四兆円という話がありましたけれども、それは、皆さん行ったらわかりますよ。復興は、町はしていますよ、港もしていますよ。しかし、相変わらずおうちは建てられてない。まあ不十分な点はありますよ、それでも。だけど肝心かなめの問題、ありとあらゆる資料は、個人のおうちを含めた住民が復興していないという問題を言っているんですよ。そこに対して手厚い手だてを今後とも要求していきたいと思うのです。そういう点での決意だけ、最後に一言お願いします。
  206. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、この問題について穀田委員と基本的に現状の認識にそう大きな違いはないと思うのです。ただ、その上で違うところがあるとすれば、その生活を支援するためにも、私は、仕事を起こすということが今非常に大事になっている。我々としては、神戸に仕事を戻すことにこれからも努力をしてまいりたい、そのように申したいと思います。
  207. 穀田恵二

    ○穀田委員 終わります。
  208. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  209. 上原康助

    ○上原委員 どうも総理初め閣僚の皆さん大変御苦労さんです。  私が提示をしている質問順序あるいは内容と若干違う面もあるかもしれませんが、できるだけ内容のある御答弁をまず要望しておきたいと存じます。  先ほど来問題になっておりますロシアタンカーの油流出事故あるいは阪神・淡路の大震災復旧並びに復興等のことについては、明日同僚議員がお尋ねすることになりますので、私はまず補正予算並びに本予算に対する社民党の基本的な立場、見解を少し述べて、橋本内閣の最重要課題一つと言われております沖縄の基地問題と振興策にできるだけ時間を割いてみたいと思っております。  そこで、まず補正予算の本来の原則等に関する確認が自民党と社民党間でせんだってなされたわけです。これについて、総理もしくは官房長官からぜひ明確な御答弁を願いたいと存じます。  御承知のように、一月二十四日、いろいろ党の幹部の皆さんが相談をして、まず第一項で、政府は公共事業に関する資料の提示に努めるとあります。そこで、本委員会における平成八年度補正予算審議の場にどのような形でこれを提示するおつもりなのか。例えば積算根拠や予定された場所等について早急に提示をしていただきたいというのがあります。これはなかなか、あす、あさってという短い期間で無理の面もあろうかと思うのですが、本予算審議をする過程において、このことについて政府としてどのようにお取り計らいするかというのが一つであります。  第二項では、今後の補正予算編成に当たっては、新たな国債発行に財源を求めないよう努めるということになっております。きょうもいろいろ各党から御指摘がありましたように、緊急に必要な経費なのかということがやはりいろいろ指摘をされて、議論のやりとりを見ていますと、疑問がなしとはしませんね。しかし、私たちは与党の一角にいるということもありますので、強くは申し上げませんが、特に財政法第二十九条とのかかわり、既定経費の削減努力によってその財源を捻出すべきだと思うのですね。  政府はこういうことについて、一生懸命御努力はなさってきたでしょうが、どうも国民の期待にまだこたえていないように思えてなりません。このことについて、ぜひ確たるお答えを願いたいと思いますし、これを本当に真剣におやりになっていただくかどうかということは本予算審議とも十分かかわっていきますので、御答弁を求めたいと存じます。
  210. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 過般、伊藤社民党幹事長、それから及川政審会長、それに自民党の加藤幹事長、山崎政調会長が立ち会いまして、社会民主党からのお申し入れを間違いなく拝受をいたしました。そして、今委員御指摘のように、第一の、この危機的な状況、財政再建、構造改革を優先して取り上げ、全力を挙げて取り組まなければならない、そのためには予算の使途等に関する情報開示の徹底が不可欠である、こういう御指摘をいただいたわけであります。  もちろん、この予算編成当初に全項目にわたって箇所づけ的なものの開示ができるはずはございません。しかし、少なくとも物の基準になる方式は、これはできる限り開示をして、少なくとも積算基礎の明らかなものをこれからつくっていかなければならない。その努力を懸命に払うということに関しては、私どもも合意をいたし、この点に努めてまいりたい。  それから、第二の、いわば補正予算。きょうも議論になっておりますが、極力既定経費の削減等の範囲にとどめ、新たな国債発行に財源を求めないように努める、当然のことであります。ただ、私は一つ条件を申し上げたというのは、大規模な災害、危機、この場合においてはその限りではどうしてもあり得ないかもしらない。これには出さないという、既定経費の中で削減ができるかどうか、そういう問題までを私は確定して抑えることはできませんけれども、当然この趣旨は盛り込みながらやっていきたい。  それから、重油の問題。冒頭にお触れになりましたけれども、この点の申し入れを受け、政府としてはこれを尊重し最大限の努力を払うというお約束をいたしまして会談を終わったわけであります。その後、総理、大蔵大臣にその旨の報告をいたしておきました。
  211. 上原康助

    ○上原委員 きょう、今の段階で、項目ごとにどういう資料なりあるいは情報開示をやれというところまでは申し上げません。しかし、これは随時理事会なりあるいは予算委員審議を通して提示をしたいと思います。  そこで、念を押すようで恐縮なんですが、総理一言、今のことと関連してお答え願いたいのです。  やはり自民党単独内閣とはいえ、先ほど来の議論を聞いても、あるいは政治各般の状況を見ても、大変厳しい内閣運営、政治状況であることは、私は総理の御認識なり閣僚の皆さんの御認識、そう違わないと思うのですね。我々が懸念するのは、補正に社民党が同意というか協調、協力しなければなかなか緊急案件も前進しないという、大所高所から判断をして、今社民党は党内でもいろいろな議論はある中でやっているわけですね。  要は、ただ数合わせ、あるいは社民党の協力がなければなかなか予算もその他難しいからという軽い受けとめ方では私はいかないと思うのですね。ややもすると、これはやっぱり自民党のおごりというのが出ていないとは私も言えないと思うのですよ、閣僚の皆さんはそうお考えじゃないかもしれませんが。これは沖縄問題とて僕は別でないと思っているので後から聞きますけれども、そのことは、社民党がこういうことについてはぜひ開示をしてもらいたい、あるいはもっと解明をしてもらいたいということについては、十分誠意を持って対処していただけますね。
  212. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 対処をいたします。
  213. 上原康助

    ○上原委員 そこで、次は沖縄問題、基地問題についてもう少し。  私は昨年の臨時国会でもお尋ねしましたが、だんだん私自身も心配してきているのです、正直申し上げて。昨年四月、クリントン大統領来日の際に取り交わされた日米安全保障共同宣言とは一体何だったかということを改めて疑問を持たざるを得ません。これは短時間では議論ができませんので、いずれまた機会を見て我々の見解や提言も含めて議論をしていきたいと思うのですが、要するに、冷戦後の日米安保条約の運用なり内容をどうするかという再定義だったような感じがするわけですね。  それはそれとして議論があるし、見解の違いと言われるかもしれませんが、今日なぜ沖縄問題が、暗礁にと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、総理初め関係者の皆さんの御努力がありながらなかなか進まないかということは、やはりこの日米の防衛協力を一層緊密なものにしていくとか、秋までにそのためのガイドラインを見直すという、いわゆる軍事面ということがよりウエートが置かれて、一昨年のあの不幸な事件がなければ沖縄の基地問題というのは二の次に考えておった政府の基本的な認識のところに問題があるのじゃないかということを、私は最近改めていろいろなことを見て感ぜざるを得ないわけですね。  そこで、具体的にお尋ねをしてみたいわけですが、沖縄に関する特別行動委員会、いわゆるSACOを通じて得られた重要な合意事項が、総理、非常に御苦労なさっていることは心から敬意も表しますし心中もお察しいたしますが、なかなか進展しない背景とか理由というのは、一体どう見ておられるのですか。
  214. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員御自身の言葉の中でも述べられましたように、一昨年発生した不幸な事件というものがその後の本土政府の沖縄県に対する対応に変化を生じさせましたということは、私は否定をいたしません。  しかし、今振り返ってみて、あのような不幸な事件がないうちに、なぜ本土の我々がもう少し沖縄の方々の気持ちを酌む努力をしなかったのかという悔いが残っておりますことは事実であります。そして、余りにも長い間我々がそうした思いに気づかずにまいりましたことを、その当時におきましても国政の中にあった一人として申しわけなく思います。そして、できればあのような不幸な事件がなくこのよりな議論ができる状態であってほしかった、そう思います。  そして、私はいろいろな角度からこの状況について申し上げることはあるのかもしれないと思いますが、ここで私が申し上げたいことは、このSACOの合意内容というものを実現していくように私は全力を尽くしたいと考えておりますし、そのプロセスにおいて地元の皆さん理解、協力というものを得ることが何よりも大切でありますし、それが得られないままに勝手に行動をすることがあってはならないと思っております。それだけに、引き続き粘り強く地元の皆さんと折のあるごとにお話し合いもしたいと存じますし、そのための努力もしたいと思います。願わくば、でき得る限り胸襟を開いて私どもの話にも耳をかしていただきたい、今私が申し上げるとすればこれに尽きると思います。
  215. 上原康助

    ○上原委員 私は、総理の沖縄に寄せる思いとかその熱意というのは評価しているのです。これはわかります、野党時代からやりとりはしましたがね。  そこで、お尋ねしたいわけですが、この共同宣言では、沖縄に関するいわゆる特別行動委員会SACOを通じて得られた基地の整理、統合、縮小合意に満足していらっしゃるわけですね、皆さん。日米安保条約の目的との調和を図りつつ、米軍の施設及び区域を整理統合、まあ我々は整理統合と言わない。整理縮小するために必要な方策を実施する決意を再確認したとなっておるわけですよね。  これは共同宣言とか外交文言ですからわからぬわけでもないですが、私は、百歩譲って、安保の重要性、必要性というものを一応認める立場に立つにしても、まさに総理がおっしゃったように、沖縄問題がなかなか前進しなかった背景には、この日米安保条約の目的との調和を図りつつ基地の整理縮小をやると言ったって無理だったわけだ。そこができなかったから全国の七五%の米軍専用基地が、戦後五十年、復帰してもうこの五月で二十五年たっても残っているわけで、この認識を改めてもらわなければいかないというのがないんだ、政府に。そこをどうするかということは考えていただきたい。  だから、石井先生の質問もあったとおり、本当に海兵隊の存在、四軍の軍隊がいまだに狭い沖縄にひしめき合っていなければいかない時代なのかどうかということを、日本の外交姿勢として、もう一遍アメリカに対して、沖縄の県民と政府が胸襟を開いて話すのもいいのだが、むしろアメリカに対して、いつも遠慮しがちのあれじゃなくして、切り込んでみたらどうですか。これがないと、これは前進しませんよ。
  216. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私ども、昨年の四月の首脳会談で合意を見ましたように、現在の国際情勢のもとにおきましても、やはり日米安保体制というものをしっかり守っていかなくちゃいけない、それが我が国の安全のためでもあり、またその効果として広くアジア太平洋地域の安定にも資するものである、このような認識をしておるわけでございます。  そして、そういった中で、そのような日米安保体制が円滑に運用されていく、これはやはり確保しなくちゃいけません。しかし、そのために、基地の所在する地域の住民の方々、とりわけ基地の集中しております沖縄の県民の方々に大変大きな御負担をこれまでもかけていたし、またこれからもおかけすることになってしまう。ここを何とかしなくちゃいけないということで、SACOもつくりまして鋭意努力してきたわけでございます。そして、あそこで合意いたしましたものが実施に移されますならば、総体として現在沖縄県に所在します基地の面積で二一%が縮小することができる、こういう形になっております。  しかし、私ども、そのことで事足れりとは思っておりません。しかし、まずはこのことを実現していく、しっかりとその最終報告に盛られた内容を実施していくことを通じまして、沖縄の県民の方々の御負担を少しでも軽減しながら、そうして同時に安保の目的も達成していく、このように考えておるわけでございます。したがいまして、今、大変難しいことでございますが、地元の方々の御理解を得るための努力政府一丸となって進めてまいっているところでございます。  一方におきまして、委員おっしゃいますように、米側にもさらに物申すべきではないか、それは私どもやってまいります。  基地の問題につきましても、決してこのSACOの最終報告で盛られたもので終わりであるとは申しておりません。これからも、沖縄における基地の整理、統合、縮小の問題は、これは最重要課題一つだと考えておりまして、引き続き取り組んでまいるということは、先般、私、外交演説の中でも申し上げたところでございます。そういったことで、これからも粘り強くいろいろな機会に話してまいります。  ただ、委員御指摘の、現在の沖縄にございます米軍の水準あるいはその兵力構成をどうするかという問題につきましては、これから、かなり先の、国際情勢が大きく変化した状態の中では、それはいろいろなことがあり得ると思いますけれども、しかし、現在の時点において、かなりの具体性を持って予見できる将来に向かって大きな変化はないということは申し上げさせていただきたいと思います。しかし、これからもそういった情勢をいろいろ見ながら、米国との間でも真剣にこの問題は話し合っていく所存でございます。
  217. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣、あなたの人のよさというか丁寧さまわかるけれども、そういう話は私は何回も聞いているんですよ。そんなことでは、とてもじゃないが私も納得しないし、沖縄県民納得しない。  安保が大事というなら、これは同僚議員の皆さんも聞いてもらいたい、国民も私は聞いてもらいたい。本当に安保が大事というなら、全国民平等に負担してみたらどうですか。大田知事もそうおっしゃっているのですよ。それはなくして、そんな、時期が来たら云々では、そういうことが不透明で見えないから、普天間の移設先の問題にしても、やがて来る五月の十四日の土地の使用期限延長問題にしても、契約更新問題にしてもできないんじゃないですか、恐らく。  そういう外務大臣政府の御認識では、とてもじゃないが納得しがたい。これも一昨年の事件があった後に、我々は地位協定をぜひ改定してもらいたいということを訴えた。できないと突っぱねたんだ、あのとき、やりもしない前から。  私は、きょう時間がありませんから、総理、問題は三つあるんですよ、三つ。  SACOで合意した重要案件をどうするかということ、その中での一番の目玉の普天間の移転問題をどう解決するかということ、これが一つですね。SACO全体の問題。今、二一%云々ですが、外務大臣、これは早くて五年先、十七年もたっんですよ、二一%全部仮にできたとしても。そんな悠長なことでは我慢できないというのが沖縄県民の心情なんですよ、気持ちなんですよ。気持ちというよりもう怒りなんだ、これは。そこで、SACOの問題をどうするかということと、もう一つは、さっきもお尋ねがあったわけですが、いわゆる五月に使用期限となる嘉手納空軍基地を含む十二施設の継続使用権原の取得の見通し、これをどうするか。いま一つは、これはもう引用するまでもなく、官房長官の懇談会で、いわゆる島田委員会の答申がある、島田懇談会の。何というか、まだまだあります。基地所在市町村と、もう一つは振興策。この三つは三位一体の問題なんですよ。いずれも進んでいない。  そこで、沖縄側の理解と協力あるいは信頼関係ということを強調なさいますけれども、まず、政府として具体的にできるものを優先順位を決めてやったらどうですか。まず、やってみたらどうですか。  例えば、島田委員会では基地内のアクセスについていろいろな改善すべき提案もなされておりますよ。それについては、しかし、まだ全く手つかずでしょう。こういうことについては一体どうするのか、日米間で。合同委員会では取り上げられているのかどうか。そういう問題がありますね。  五月の軍用地の期限切れ問題については、一体政府としてはどうするのか。大田知事が苦渋の選択をなさって公告縦覧に応じたのは、少なくとも再び沖縄の基地問題に対して強権発動してもらいたくないという、この強い希望があるわけですよ、これについて。そういうことをやらないでの便法なり方法というものをお考えなのかどうか、これが二点目。  三点目の振興策の問題と関連して申し上げるならば、これは官房長官でもいいし沖縄開発庁長官でもいいわけなんだが、例えば自由貿易地域の問題。これは、私はもう何回となく取り上げてきた。沖振法の二十三条から二十八条までは法律になっているのです。なぜこれを改正しないのですか。これを法律改正をして、少なくとも沖縄に対しては、一国二制度とかなんとか、この官僚の規制を政治の力で取っ払って、本当に沖縄の産業構造の改革とか雇用の拡大とか、基地で重圧を受けている県民に対して政府がやるべき制度、法律改正というのはできるのじゃないですか、これだけの頭脳のある立派な大臣がおって。関税法の百八条か、そういうことができるのかどうかというものを、私はきょうここでぜひはっきりしたお答えがいただければと思うのですね。  もう一つは、私たちは、振興策等、基地の移転問題等は、基本的には県外移転、これは石井先生がおっしゃるとおりだ、やってもらいたいのだが、どうしても政府の方でそういうことができないというならば、北部振興策についても一体どういうような手だてで皆さんはやろうとするのか。こういうことを二月の二十一日ないし三月の十二日までに具体的に県側と詰めて、その上で話し合いをするというならわかるのだが、もうSACOで沖縄問題は終わったのだという認識があるとするならば、これは大きな狂いが出ますよ。今の点についてはお答えください。
  218. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 細かい部分、後で補足を関係閣僚からすることをお許しをいただきたいと思います。  大事な点が幾つかございました。まず第一に、基地使用の取り扱いの問題がございました。駐留軍用地特措法に基づく使用権原の取得、この手続につきましては、今県との信頼関係の中で、知事から公告縦覧の手続に御協力をいただいております。  従来の実績からいきますと、今後の収用委員会での作業の時間というものは大変厳しいものがあるということは私も承知していますけれども、ここまで参りました中で、県との間にできてきた信頼関係というものを私は大事にしたいと思いますし、収用委員会におかれても、こうした状況やその必要性というものを御理解をいただいて、裁決に至る手続が円滑かつ迅速に行われることを心から願っております。今またそれ以上を申し上げるべきでもありますまい。  それから、SACOの関係について、去る二十一日、その代表的なケースとしての普天間飛行場の代替ヘリポートの問題につきまして、沖縄の防衛施設局長が名護市及び県そして沖縄県漁連に対し協力要請をいたしました。これに対して名護市長さんから、県内移設が国において条約履行のために必要だと考え、県において国際都市形成構想を推進するために不可欠だというのなら、両者がそろって来るべきじゃないか、それが国だけで来たのでは聞くわけにいかないというお返事をいただく結果になりました。我々としては、こうした調査の実施を初めといたしまして、残念でありますが、今私の力には、県外にこの基地を移すというところまでの力、ございません。  私なりに、むしろ普天間の名前を出すことすら、政府部内におきましても周辺におきましても、かなわない期待を県民に持たせると言われましたとき、サンタモニカであえてこの問題を切り出し、地元の皆様にどういう評価を受けるかは別として、ぎりぎりの中での妥協策を模索してまいりました。これを進めていきます上で、沖縄県の協力がなければこれが進まないことは事実でありまして、引き続き県の御協力を得たいと心から願っております。  それにいたしましても、これに関する場合のもう一つの問題として御提起をいただきました北部振興、あるいは県との間のさまざまな話題がございます。この八年度補正予算の中にも、御審議をいただきます九年度予算の中にも、既に沖縄県と合意をいたしました項目、それぞれが予算として計上されておりますこと、既に委員も御承知でありましょう。一つの例を挙げますならば、例えば沖縄県から海外留学生の枠の拡大というお話がございました。こうしたことにつきましても、知事とのお約束を我々は守ってまいっております。  殊に沖縄県の北部につきまして、非常に豊かな自然環境を有しておりますものの、総体的な開発のおくれというものが問題になっておることは私もよく存じておるつもりであります。そして、それは官房長官のもとにつくられました島田先生以下の関係者の中からも、さまざまな具体的な御意見をちょうだいしてまいりました。役所流の答弁、ここに書いてありますけれども、それを私読む気はありません。しかし、今後の開発の中に、少なくとも交通網の整備が必要であること、また、北部のそれぞれの地域におけるきめの細かい産業立地施策が必要であること、そして、それに関連するさまざまな御要望があることは承知をいたしておるつもりであります。  今後、これはまた別の問題として、我々は全力を挙げてお約束を果たすように努力をしてまいります。
  219. 上原康助

    ○上原委員 それは総理のお考えで、わかります、ある程度は。ただ、私が今言いました自由貿易地域の問題これは古くて新しい。これは官房長官、やりますね。あなた方が法改正しないと言うなら、我々はもう議員提案ででも修正案出しますよ、法改正の。このぐらいのことをやってもらわないかないんだよ、ノービザ問題含めて。これはお約束できますか。官房長官か沖縄開発庁長官、できたら総理がいいんだな。
  220. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 率直にお答えを申し上げます。  やってやれないことはございません。今までもそういう施策をとってきております。しかし、それを定着させるにはそれだけの規模がなければなりません。今私たちが考えているのは、途方もないと言われるかもしれませんが、台湾や福建と組んだこの蓬莱経済圏というものが、中国の了解を得て経済と政治が分離をされてできるかどうか。これになれば間違いなく沖縄独自のものができるはずであります。この一番大きいのを目指さなければなりません。そして、小さい今までのいわば特区的なものをやってみても、それが永続性があるのかどうなのか、経済効果があるのかどうなのか、これはもう一回検討しませんと、形を変えただけででき上がるものではありません。死力を尽くします。
  221. 上原康助

    ○上原委員 やってやれないことはないと思う、私も。ですから、それには受け皿の問題、あるいは地域性の問題、いろいろ準備はあるでしょう。あるでしょうが、政府がやる意思を明確にするということが大事だと言うんです、私は、三つの問題をセットで解決をしていくには。  それともう一つ、最後に。今の問題についてはもう一度お答えください。同時に、県道一〇四号越えの実弾射撃は、新年度からはおやりになりませんね。この二つ、お答えください。
  222. 久間章生

    ○久間国務大臣 本土の各地方自治体の御理解を得ながら、平成九年度からは本土でやれるように今鋭意やっているところでございますけれども、まだ最終的にきちっとした姿が見えているわけじゃございません。
  223. 上原康助

    ○上原委員 あれだけ政府の役人が大きく報道した以上、こういうことがまた不信感につながらないように、政府全体としてやっていただきたい。  自由貿易地域問題は、法改正を含めて沖縄側と協議をして進めていかれますね。まだ一分ありますからお答えください、これは。
  224. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 沖縄県とも十分御相談をしながら物事を進めてまいります。
  225. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  226. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、岩國哲人君。
  227. 岩國哲人

    ○岩國委員 初めて国会に入りました、太陽党の岩國哲人でございます。また、初めて予算委員会できょう質問させていただきます。  初めて国会に入りまして、いろいろと感想はございますけれども、特に外から見る国会、中から見る国会、いろいろ違います。一つ思いは、国会の外の意見と国会の中の議論が随分違っているなという思いであります。  例えば、住専問題。九〇%の国民が反対し、しかしそれでも税金を住専に使う、そのような決定がされてしまう。あるいは、消費税の増税問題。選挙の前で七四%の人が反対し、選挙の後でも、NHKの調査によれば六四%の人が五%に引き上げてもらいたくないという、そのような結果が出ているにもかかわらず、十二月には五%への引き上げが決まってしまう。日本の国会は、国会の外の民意とそして国会の中の議論が随分ねじれているなというのが私の感想であります。  きょうもこの予算委員会において、いろいろと日本の、あるいはアメリカの経済、景気、政策の違い等が議論されました。  私は、八〇年代を通じましてずっとニューヨークに住み、また経済の中心と言われるウォール街で仕事をしておりました。当時、レーガン大統領が登場したときには、アメリカの経済は三重苦、高いインフレ、高い金利、そして高い失業率、三つのそういうハンディキャップを背負ってレーガンは登場し、そして彼が実行したのは大減税でした。そして、減税によって結果的にアメリカの経済は若返り、例えば日本経済新聞の十月の一面のトップの右肩に何と書いてあったか。「米国経済若返り加速化」と書いてあります。アメリカの経済は、一時日本に対して完全に失っておった自信を今や完全に取り戻しております。  減税という方法で若返ることができるのは、世界に二つの国しかないと思います。アメリカ日本です。今、日本は、アメリカとは違った、そして私は間違っていると思いますけれども、増税という方向で同じような環境に対応しようとしております。大きな税金、つまり官庁と民間、官の使うお金をふやすこと。増税は、小さな消費、小さな経済、小さな職場、したがって小さな税収を生み出して、結局また増税をしなければならない。増税は増税を招くのです。  税率を上げると逆に税収が下がる、このような考えがあります。環境あるいは経済の情勢、景気の情勢によってはそのとおりであります。これはきょうの午後、新進党の鈴木淑夫委員が展開された意見と全く同じであります。上げれば下がる、下げれば上がるという言葉があります。これはテレビの番組で、内容を上げると視聴率が下がる、内容を下げると視聴率が上がる、こういう表現がありますけれども、これは税金ともちろん違いますけれども、今は、景気の情勢の中で、私は税率を上げると逆に税収は下がるという表現は正しいと思っております。今、日本は、誤った増税策によって日本の貴重な体力をそぎ取ろうとしております。不景気なときには公共料金を下げる、税金を下げる、これが世界の常識です。  アメリカは五年間好景気が続いております。日本はその間、五年間不景気が続いています。この違いはどこにあるのでしょうか。総理の御意見を伺いたいと思います。  クリントン大統領は、就任したとき、四年前にはアメリカの景気指標であるダウは三千ドル、四年後に再選されたときには夢の六千ドルを突破しております。四年間に一〇〇%の値上がり。その同じ四年間に日本の株価はさっぱり。この一〇〇%とさつばりの違いはどこにあるのか。単なる景気サイクルだけではないと思います。財産が倍にふえた国と全くふえなかった国、その違いはどこにあるのか。  アメリカの大学等でよく教材として使われるのは、レーガンの政策と、そして対照的なのは一九二九年の不況のときにフーバー大統領のとった政策です。このフーバー大統領のとった政策は正しかったと、あるいは間違ったと思われるのか、総理にその点をお伺いしたいと思います。
  228. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼でありますが、専門家から口頭試問を受けることを大変恐ろしく感じながらお答えを申し上げます。  そのフーバーの時代の政策が成功したかどうか、学説にはいろいろなものがございますけれども、非常に理論的にすぐれていたけれども実質的に余り効果がなかったという評価がございました。そうした見方も一面の真実でありましょう。また、レーガン政策というものに議員極めて高い評価をお与えになられてお話をいただきましたが、まさに鈴木委員とも論議がそこで分かれましたように、レーガノミックスというものについて、必ずしも私は議員と同じ評価をいたしておりません。  と申しますよりも、私は、実は、当時アメリカに参りましたとき、ストックマンと一時間半ほど大論争をやってしまいまして、後ぎくしゃくして少々困ったほど激しいやりとりになりました。その時点で私がやはり問題にして、一つ議論をしたのはインフレでございます。そして、果たしてこの見通しどおりの数字を得られる保証はあるだろうかということでありました。当時、ストックマンとしては非常に自信を持ってその見通しを語っておりましたけれども、現実には大きくその見通しは歳入歳出ともに狂いを生じたことは、御承知のとおりであります。  ただ、そう言いながら、アメリカにとって非常に有利であったこと、それは、現在の日本に比べても人口構造が非常に若い国であった。そして、私は非常にアメリカに対してその点はうまくワークさせたなと思いましたのは、特に雇用政策において、有料職業紹介とか人材派遣といった業種を拡大することによって失業のない労働力の移動というものをスムーズにしたという手法を、私はこれは高く評価をいたしました。  そして、やはり基軸通貨としてのドルというものの価値については、プラザ合意等でも示しますように、非常にほかの国もまた異常なドル高になりましたときに協力をし、それを支えてまいりました。一方日本は、むしろそのプラザ合意以降、ドルの価値というものを安定させる、そのプロセスの中において非常にバブルを生じ、その影響から抜け出すためにさまざまな手法を講じながら、結果として、あらゆる改革を志向しなければならないと私どもが思い詰めるまでに至っております。全力を尽くしてこの時期を乗り切ってまいりたいと思います。
  229. 岩國哲人

    ○岩國委員 もう一点お伺いしたいことがあります。  これは、先ほど国会とそれから民意のねじれについて触れたところでありますけれども、これは一つには、選挙の仕方、選び方にも随分問題点が多いように思います。これは随分国会の中でも議論されておりますけれども、例えば重複立候補の問題。これは全国どこに行っても、あのような制度は政治家のための制度ではないか、落選した人がまた当選しておると、こういう人をテレビで見るたびに複雑な思いをしている人が非常に多いということ、この点にも一つ問題があると思います。  二番目に、国会議員の数が多過ぎるのではないかという声も非常に強い。米が多過ぎるからそれを減反しろというのであれば、私は、米の減反よりも国会の減反こそ必要であったのではないか、そのように思っております。  そして三番目、最後ですけれども、一票の価値に大きな違いがある。例えば、定数格差二倍ということは、一人の人間が二つの人格を持つということではないでしょうか。税金は同じように払って、権利は五割。税金は十割、権利は五割、こういう人たちが、特に東京、大阪、名古屋、税金に対して重税感が特に強いわけです。こうした税金について国民の関心が非常に高くなっているとき、税金という義務の、裏腹である権利についてもやはり政治の場で何かしなければならない。それは定数格差の徹底的な是正だと私は思います。  そうした定数格差二倍と、税金は十割、権利は五割、このような状態を放置するということは、言ってみれば、政治的な意味では五〇%の消費税を払っているということになるんじゃないでしょうか。同じ権利をもらうために人より倍税金を払う、同じ人が同じ税金を払って二倍の価値をもらうということは、一倍の価値しかもらえない人からすれば、より大きな税金を払っているという重税感が非常に強いということです。  このような政治消費税の五〇%は一日も早く私は解消すべきであると思いますけれども、総理の御意見はいかがでしょうか。世界の先進国のどこに、白昼堂々とこのような人権差別を行っている国があるのか。私は、一日も早くこの人権差別は解消すべきだ、そのように思います。御意見をちょうだいしたいと思います。
  230. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 いろいろな考え方があるものだと思いながら、今御意見を拝聴しておりました。  そして、国会の定数減という御提案につきましては、与党三党の間におきましても、選挙制度をこれから見直していく前提として、国会議員定数の縮減というものが前提となっておりますという事実を申し上げたいと存じます。  その上で私は、いろいろなやり方、それはあると思うのです。議員がおっしゃるように、完全に一人一人の一票というものをそろえてしまう、完全な人口割、これも一つ考え方かもしれません。しかしその場合に、過疎地の声というのは非常に国政の中に出にくくなるという御意見も、当然それには反論として出てくるであろう、こう思います。  あるいは、他の国にもありますように、一つの、例えば都道府県に対して議席を与えるのであって、それを構成する人口とはかかわりなく、その一つの行政区域から出る議員の数を決めるという方法もありましょう。これは地域としての公平性はあるわけでありますが、一票の格差という議論からいきますなら、こういうものは論外だと言うこともできるのかもしれません。しかし、州から何名代表という上院の制度をとっている国も現実にあるわけでありまして、完全な一票の格差ということから人口割をぎりぎりと推し進めることだけが、私は選挙制度を見直していく場合の方向ではないだろう、国民の御意見の中にさまざまなものはあり得る、私はそう思います。
  231. 岩國哲人

    ○岩國委員 過疎地域についてのそういった対応というものは、必ずしも票の格差でもって対応すべきと私は考えません。それこそ政治の問題ではないでしょうか。  次に、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  鳥取県と島根県の間に広がる中海、この中海干拓事業は八年間凍結されておりました。その再開が決定され、そして調査費が予算で今度つくことになっております。  これについてはいろいろと問題があり、自民党の国会議員の中にも、さきの総選挙においてはっきりと反対を公約された候補者もおられます。私も個人的にはこうした事業には反対であります。干拓済みの工区でもまだ農地は売れ残っており、あるいは売れた農地が既に荒廃地と化しておったり、そうした全国的に次々と耕作放棄地が広がっている中で、お金を使って減反をしながら、なぜ膨大な国費を使ってまで、そして環境破壊の危険を冒してまでこのような事業を今やらなければならないのか。財政危機を叫ばれている中で、こういう事業こそやめるべきだという声が整備新幹線等々と、非常に強く上がってきております。  こうした環境破壊のおそれがある、あるいは地元から反対運動が起きておる、そのような事業に、今度の補正予算あるいは本予算の中にそのような地元反対、環境問題のある項目についてはどのような事業があるのか。そのようなデータを、少なくともリストを提供していただきたいと思います。  また、それ以外にも、緊急防災工事、緊急という名前がついてこの補正予算の中にいろいろと入っておりますけれども、この緊急の度合いが今までいただいた資料等ではさっぱりわかりません。この点についても、質問の時間が切れたようでございますので、大蔵大臣の方にそうした環境に問題のある事業についての詳しい説明書を提供していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  232. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、新井将敬君。
  233. 新井将敬

    ○新井委員 総理、私は21世紀という会派に今おりまして、石破茂、望月義夫、土屋品子と四人でチームを組んでおります。私ども、今非常に戸惑いがございます^正直に言いまして。それは、私たちは無所属で前の選挙を全員が戦いました。中には、私を含めてですが、自民党の候補とも戦った人もおります。しかし、選挙が終わりました後に、橋本総理の公約、行政改革、財政改革にかけられる情熱というものを私たち信じました。そして、首班指名で橋本龍太郎と書かせていただきました。  最近非常に戸惑いがあるという感じを受けますのは、この九年度の予算、補正予算を含めて、特にこの九年度予算、総理となられまして初めての大きな仕事でございますし、この九年度予算は財政構造改革元年予算である、そういうことを言われておられますが、その中に、あの昨年末に見た橋本総理の強い姿が何か見えない、こういうもどかしさを実は感じているものでございます。  総理から言わせますと、もう少し時間をくれよ、こういうことかもしれませんし、それは、新井君、よく中をごらん、いろいろなことがやってあるから、こういうことかもしれません。確かに一般歳出を一・五%切ったとか、国債の発行額が少し減ったとか、これは少しとはいえ、なかなか実は作業の中では大変であることは、私も経験者でございますからよく承知はいたしております。しかし、そういうささやかな成果の背後に非常に大きな後退の芽が出てきたんじゃないか、これを国民も全部が恐れていると思うのです。  大きな後退の芽が出てきたと申しますのは、私は、やはり皆さん、ここをマスコミでも言われていますけれども、一つは族議員の復活ということが出てきたんではないか。これは政権のおごりが出てきたのではないかという批判が、今巷間で広く言われていることは御承知だと思います。もう一つは、圧力団体の復活ということに非常に危惧を覚えております。  一つは、族議員の復活というものの象徴は、きょうもいろいろな議論になっておりました整備新幹線ということですが、これは私はきょうは申し上げません。  第二の圧力団体の復活ということについて気になるのは、日本医師会のここ二週間の非常にごたごたによって、法案提出のプロセスがゆがめられていっておるのではないかという思いを実は強く持っております。  一月十日に厚生大臣の方から諮問をされた。そのときには、諮問に至るまでの法案形成にはもうこの日本医師会等は十二分に関与しているわけです。事実上医療保険審議会の中で二年間も議論をしてきて、昨年末に建議を出したわけでありますし、建議書から高齢者の定率負担や薬剤の定率負担を一挙に定額負担にまで後退させた。これは明らかに日本医師会等の圧力団体の力であるというふうに聞いております。  この案で、さらに一月十日に諮問され、ここまで関与したからには十三日にはもう答申をもらって法案を出すんだ、こういうふうにたしか計画されておられた。ところが現実には、二週間たった現在、きょうの三時半からやっと行っているそうでありますが、これも十四日こま欠席をする。欠席の理由は、一剤当たり十五円という薬剤費、これを五十円で、あとは、五十円以上はもう野放しにしろという要求が一つ。高齢者の場合には、十五円も取っちゃいけない、ただにしなさい。こういうことが受け入れられないから欠席なんだということで、厚生省の方は医療保険審議会を開かないで、十七日に予定されておりましたそうですが、開かないで先送りにしてしまった。その後、きょうの午前中に、与党の医療改革協議のチームが顔を立てて会ったそうであります。何のために会うのでしょうか、こんなことは。  正規の法案のプロセスからすれば、健康保険法の中には、法案提出、立法には医療保険審議会に諮問しなきゃいけない、こう確かに書いてある。これも珍しい規定ですよ。立法に審議会に必ず諮問しなきゃいけないというのはそんなに数はありません、厚生省の中には幾つかありますが。  こういう経緯を経て、ちょっと時間がないものですから、現時点に至り、与党がもう一回顔を出して話を聞いてやり、記者会見まで開いて不満だからやめると言った人間をもう一回やめさせないで引っ張り出して、何とかきょうの三時半にこぎつけたそうでございます。  私は、こういう形で正規の法案の形成プロセスが、国民が見て、いかにも圧力団体がゆがめているんだ、ごねれば政府や与党は何でも言うことを聞いてやるという姿勢に出てくるんだと。  要するに、医療保険改革は、総理、これは財政改革の根幹だと思います。これは制度改正ですから、公共事業とは違った実に難しい問題が控えております。何と現在、国民所得は一%、賃金の伸びも一%ですが、国民医療費は六%、老人医療は一〇%の伸びを示しているのです。  また、平成八年度の医療機関の所得がどれぐらい伸びたか、御存じでしょうか。去年、八年度末で、例えば医療法人の申告所得で、一位から四十三位の平均の伸びは三〇%ですよ、国民のベアが一%の時代に。一位の法人は七〇%増。所得ですよ、所得が七〇%増。五位や六位の方の法人は三三〇%増。中には五〇〇%伸びている、一年間で。一年間で、どんな事業をやったら五倍に所得が伸びますか。  私は、悪いことをやっているというふうには思わないのです。思いたくない。しかし、これは明らかに大きな制度の欠陥、診療報酬出来高払いあるいは薬価差額。患者の負担増だけではとめてはいけない。その奥に、診療する側、医療を供給する側に実は大きな欠陥がなければ、一年で三〇〇%や五〇〇%やと、こんなばかなことが起きるわけがないのです、こんな低成長で皆が苦しんでいる時代に。  それを考えれば、医療提供サイドである日本医師会の皆さんと、やはり自民党、政府・与党の皆さんは一線をきちっと画して、処分すべきはし、そしてやめてもらう人にはやめてもらい、果たして本当に医療保険審議会に直接の利害関係者が入っていていいのかどうかという議論をもう一回しないと、例えば大蔵省の証取審なんかは、証券関係者は入ってないですよ。意見を言うことはできる、しかし決に参加することはできないというのが当たり前の考えだと思うのです。  こういう考えについて、私、十分しか時間がございませんので、ひとつ総理と厚生大臣に御意見を伺いたいと思います。
  234. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 ただいまの新井議員の御意見、筋論であり、傾聴すべき意見だと思います。今後の医療保険構造改革審議会、これは仮称でありますけれども、今の御意見を踏まえながら、今までの行き方について見直す必要があると私も思っております。大変いい意見をいただきまして、感謝しております。
  235. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一点、自民党よおごるなかれという御注意は、私は素直にこれは受けとめたいと思います。そして、もしそうした点が目立ちますなら、いつでもまた御注意をいただきたい。我々はそれを素直に承るだけの謙虚さはあるつもりだということを申し上げたいと思います。  また、本日のその審議会の状況まで、私、一日ここにおりまして存じませんでしたけれども、従来からも、ごたごたしたときに党が出て、それを調整するということは確かにありました。しかし、その審議会の構成についても、今厚生大臣から御発言がありましたけれども、従来の慣習がそうであった、だからそれでいいというものではない、その点は私も御指摘のとおりだと思います。
  236. 新井将敬

    ○新井委員 終わります。
  237. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて新井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後六時散会