○冬柴鐵三君 栗原
議員の
質問にお答えをいたします。
まず、この
法律が成立した場合、民間
金融機関は旧
ローンの
免除を実際に行うこととなるのかとの
質問等に対しお答えいたします。
いわゆる
住宅ローンにより資金を調達して戸建て
住宅やマンションを購入した人
たちは、その家に居住しつつ、
ローン契約で定められた元利金を、例えば月々十万円ずつ、ボーナス月には二十万円を支払うなどして、十年ないし十五年間支払い続けることにより
ローンの弁済を終え、当該居住用
住宅の完全な所有権を取得し、これを子孫に残してやれるとの楽しみの
もとに、苦しい中を何よりも優先して
ローンの支払いに努めているというのが
実態であります。
このような中で、突然に襲いかかった大地震によって、まさにとらの子のような居住用
住宅を失ってしまった
被災者は、当然に借家等を探して入居しなければならなかったのであり、
ローンの支払い以外に、今まで不要であった家賃
債務の
負担を余儀なくされることとなっているのであります。
被災地では、居住用
建物が払底し、そのために家賃の額は暴騰していて、
ローンの月々の支払い額を超える家賃の支払いを余儀なくされているのが実情であり、このような
被災者が、倒壊した
建物の
ローン支払いを重ねて行う
能力を失ってしまったというのが常であります。
このような事態にかんがみ、公的
金融機関は
もとより、民間
金融機関においても、いわゆるモラトリアム
措置として、二ないし三年間の
ローン支払い猶予や利息の軽減、弁済期間の大幅な延長等、種々の
措置を講じていられるところであります。
しかし、
震災後二年五カ月を経た今日、
ローン支払いの督促を受ける事案もふえてきていで、被災世帯を半狂乱に陥れているところとなり、その防衛策としての
震災に伴う
自己破産宣告の申し立
て件数は、
被災地十市十町の中で、
平成七年九百六十五件であったものが、
平成八年には千二百二十二件と増加して、年を経るに従いなお増加すると予想されています。
言いかえれば、被災全壊居住用
建物についての
ローン債務は既に完全に不良債権化していて、その回収や取り立ては著しく困難ないし不能の
状態にあると言えます。
銀行等の
金融機関としては、低金利によって空前の
業務純益を上げ続けている今、不良債権化していて回収に過分の経費と時間と手間を必要とする
ローン債務を
免除して整理することにより、新たな経費の発生を防止したい
思いは強いのであります。しかし、現行の税法体系の
もとにおいては、
ローン免除額を
損金として処理することを許さないがゆえに、
思い切った
免除措置がとられていないのであります。
本法は、まさにかかる
金融機関のニーズにもこたえる面を有するものであり、
免除した
金融機関に対し、
当該事業年度の
所得の
金額の
計算上、
損金の額に算入することができる道を開くものであり、本法の施行によって
債務免除を行う用意があるとの
金融機関の声をつとに
提案者らは聞いているところであります。
次に、本法は
住宅ローンの借りかえのみに限定しているが、他の
被災者、特に弱い立場にある人の救済の観点から問題はないのかとのお尋ねでありますが、本法は、
阪神・
淡路大震災により滅失した居住用
建物の
再建にインセンティブを与え、
被災地の
復興と活力を取り戻すことを主たる
提案理由としています。
さきにるる述べたとおり、旧
ローン債務を
負担し家賃の支払いに追われる
被災者にとって、新しい
ローンを組み
被災地の上に
建物を再築することは、例外は除くとしても非常に困難と言って過言ではなく、事実、マンション等集合
住宅の再築がおくれている最大の
理由に二重
ローンの問題があることは、各種のマスコミ調査結果でも明らかにされているところであります。
加えて、
震災によって倒壊した
建物敷地、マンション等の場合には、その共有権の上に設定されている旧
ローンの
債務についての抵当権の残存が、
被災者の
建物再築の最大の障害となっている事実も指摘されています。
ゼロからの再出発はできても、巨額の
ローン債務を
負担してのマイナスからの再出発は望むべくもありません。本法は、せめて
被災者に対しゼロからの再出発を可能とする道を開くことにより、生きる意欲や活力を復活させ、
建物の再築についての夢を与え、全体として
被災地の人々の活力の回復と
復興に資することを主たる
目的としています。
その他、御指摘の種々の
被災者、特に弱い立場にある人々や
震災後
所得が激減した世帯に対する
支援等については、三党
提案者らは本法とは別に
阪神・
淡路大震災の
被災者に対する
支援に関する
法律案を
提案しているところであり、これがいまだ
審議の機会が与えられないことに対し、強く遺憾の意を表するところであります。
最後に、他の自然災害の
被災者救済との均衡について言及されましたが、
阪神・
淡路大震災は五百年に一度とも言われる未曾有の大規模災害であり、本法はこれに限って適用されるものではありますが、
質問者でもあられる栗原
議員の地元で発災が今予想されている東海沖
大震災や、また南関東
大震災等巨大災害発災のときには、必ずや本法は参考とされるものと信じるものであります。
その余の
質問に対する答弁は、同僚の
提案者に譲ります。(
拍手)
〔川内博史君
登壇〕