○小坂憲次君 私は、太陽党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
電気通信事業法の一部を
改正する
法律案外二法、すなわちいわゆるNTT関連三法について、
総理並びに郵政大臣に質問いたします。
総理、私は、高度情報通信
社会と呼ばれる現代にあって、電気通信事業にかかわる政策は、国の命運を左右するような大変重要な意味を持つものであると考えておりますし、
橋本総理が訴えておられるいわゆる六つの
改革を進める上でも、その中核となるべきものではないかと考えております。
一九八五年の電電公
社民営化並びに
電気通信事業法の制定以来十数年が
経過いたしましたが、近年、急速な技術革新とともに、電話と電報の時代から、ファクスと携帯電話へ、そしてコンピューターによるマルチメディアのデータ通信時代へと、世界の情報通信は高度化への変革が加速しております。一方、
我が国の情報通信市場は、ここ数年でようやく活発な新規参入が行われて競争
環境が整備され、料金の大幅な低廉化と利用者の利便性の向上が図られるようになってきました。
高度情報通信ネットワークの
発展は、産業インフラとして
我が国の経済
構造改革を推進する上で戦略的にも大変重要であり、電気通信産業の
国際競争力の強化は
我が国産業全体の
発展にとって重要な意味を持つものであります。
そこで、まず
総理にお伺いしたいと思いますことは、今回のNTT関連三法の
改正をどのように評価されておられるのか、また、今後、高度情報通信関連の政策においてどのようなことを考えておられるのか、率直な御意見をお聞かせいただきたいと存じます。
政府は、今回の法
改正は公正有効競争の促進が
目的であると述べられました。しかし、本当にそうなるのでありましょうか。
今、電気通信事業の
改革の中で
国民が求めるものは、分割されて弱体化したNTTでも、競争に疲れ経営に行き詰まる新規参入
会社の姿でもないはずであります。真に
国民が求めるものは、世界の最先端を走る、豊かな創造性と活力に満ちた情報通信産業の姿であり、二十一
世紀の豊かな市民生活を支える、公正な競争関係に裏打ちされた低廉かつ高い利便性を提供する電気通信事業であるはずであります。
本来、分離分割の効果は、新
会社同士が切磋琢磨し、経営合理化の努力によって料金を引き下げ、新技術開発を促進することであります。しかし、今回
改正による持ち株
会社下の東西二社はいわば事業本部制のようなものであり、ユニバーサルサービスを前提に均一料金の意向と言われております。だとすれば、経営努力は価格競争に反映せず、相互の地域参入による競争も期待しがたいと思われます。また、分割によって一体性が損なわれて、大競争時代のメガキャリアとの競争力も弱められるとするならば、何ゆえに、資産譲渡益課税の
特例や赤字補てんの損金算入
特例まで認めて、この時期にやる必要があるのでしょうか。
このような意味で、分離分割の効果も中途半端、メガキャリアとの競争力維持の
観点からも中途半端な今回の
結論は、郵政省とNTTの妥協の産物としての中途半端な
改正と言わざるを得ません。
現在、アメリカの通信
会社AT&Tは再び統合の方向にあります。何ゆえ、今、法
改正によってNTTを分割する必要があるのか。そもそもNTTを再編しなければならない具体的な
理由は何か。
総理の御見解をお伺いいたします。
それに加えて、民営化といいながら、NTT株の三分の二を
政府が保有し続けて、今回さらに地域
会社を特殊
会社とした
理由、また持ち株
会社は長距離
会社の
株式を当分の間保有するとなっていますが、放出するとすれば、それはどのような時期にどのような
環境と条件のもとで行うことになるのか。
さらには、今回、郵政省とNTTが
合意に至るまでにいろいろと
議論された論点、つまり、地域網の独占性、ボトルネックと言われる回線接続、株主の保護、ユニバーサルサービスの維持、将来のネットワーク構想、大規模災害時の重要通信
確保等が今後どう解決されることとなったのか、今回の法
改正によって具体的にどのような競争が促進されるのか提示し、NTT再編のメリットとデメリットについて、郵政大臣の御見解をお聞かせください。
現在、
我が国の通信政策に求められていることは、今後の世界的な技術的進歩や国内外の通信市場の変化にも柔軟に対応できる競争の枠組みをいかに構築し、また自由公正な競争によって利用者の利便性をいかに向上させるかであります。そのためには、国際と国内、長距離と地域、有線か無線接続かといった従来分類による市場区分を撤廃し、それを超えた自由な競争の枠組みを前提にすべきだと考えます。
インターネットのように接続経路を特定しない接続形態や、衛星携帯電話並びにPHS等の無線デジタル伝送技術の発達、さらには光ケーブルの大容量多重通信技術によるコストの飛躍的な引き下げ等、急速な技術革新を見れば、今や従来の分類が次第にその意義を失っていることは明白であります。この点につき、高度情報通信政策の将来展望とあわせ、
総理並びに郵政大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、国際戦略とKDDに対する
考え方についてお尋ねいたします。
アメリカの通信法の大
改正やブリティッシュ・テレコムと米国MCIの合併など、いわゆる大競争時代に備え国際的な動きが加速しております。
我が国でも日本テレコムとITJの合併など、民間独自の動きがありますが、大競争に参加できる体力を持った通信事業者の育成について、国としてどのような政策を展開しようとしているのか、
総理の御見解をお聞きいたします。
また、国内通信業務を認められたKDDとその大株主であるNTTとの関係をどのように考えているのか。KDD法によってKDDが国際競争上不利となる可能性を懸念しますが、なぜ今後ともKDD法を存続させるのか、廃止する予定はあるのか、郵政大臣の御見解を伺います。
今回の再編によって、NTT持ち株
会社と長距離
会社並びに地域
会社、それぞれに研究開発部門が分割されることとなりましたが、基礎研究と応用研究部門が分離されることにより、
我が国の技術研究開発の総合力が損なわれ、国際競争に取り残される危険性を懸念するものであります。
持ち株
会社が研究拠点を一元的に管理できるならば、子
会社の研究拠点はより業務の実情に即した開発を機動的に進めることが可能となり、応用技術研究を基礎研究部門にフィードバックすることも可能となります。しかし、一方で、一元管理は今回の分割再編の意義を失わせることにもつながるはずであります。この点につき、郵政大臣の御見解をお聞かせください。
今回の
電気通信事業法の
改正で、周辺の諸権利との調整を図る上で必要な担保
措置とされてきた過剰設備防止条項が撤廃されましたが、第一種電気通信事業者の電気通信回線の設置に当たり認められている公道、公用水面等の優先的利用や、他人の所有に属する土地等に対する公益事業特権の付与の理論的根拠は何か。また、今後、多数の新規事業者が土地利用特権等の公益事業特権を付与される結果、鉄塔など設備のふくそう、重複などによって土地所有者の権利侵害などの問題はないのか。郵政大臣の見解を伺います。
我が太陽党は、
国会が与野党の対立の場ではなく、自由で透明な
議論と対話によって市民、有権者の国家的課題に対する認識を高め、幅広い選択を提供する場となるような政治の
実現を求めてまいりました。私は、今
国会における情報通信政策を初めとした二十一
世紀に向けた重要政策の
審議に当たり、
総理並びに
政府が、
議論を尊重するとともに、指摘された問題点には
法案修正を含めて柔軟に対応し、市民、有権者の前に問題の本質を明らかにすべく、誠実に回答されることを期待するものであります。
今月二日、英国で今
世紀最年少、四十三歳のブレア首相が誕生しました。この事実は、清新かつ柔軟な発想を期待し、地殻変動的な
改革を求めた英
国民の選択が小選挙区制という選挙
制度を通じて、このように劇的な政権交代を生んだのであります。
二十一
世紀を目前にした今日、
国会に議席を有している我々に求められているものは、このような世界の急激な変革の流れに的確に対応しつつ、未来を見通す正しい政策判断と、強力で明確なリーダーシップを発揮する政治によって日本の新しい未来を描き出すことであることを改めて同僚議員各位に訴え、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕