○仙谷由人君 私は、米
駐留軍用地等に関する
特別措置法の一部を
改正する
法律案について、民主党を
代表して、
質問いたします。
橋本総理、
総理は昨年の九月十日、
沖縄県の大田
知事と会談し、
政府の
沖縄に対するそれまでの施策が不十分であったとの反省の言葉を
知事に伝え、
沖縄の諸懸案の解決に向け全力を挙げるとの決意を表明されました。私は、その率直な言葉の中に
沖縄問題にかける
総理の熱意を感じたからこそ、
沖縄県の大田
知事は、会談後、
米軍用地の公告縦覧の代行に応じたのだと思うのであります。今顧みましても、この会談は、
沖縄米軍基地問題をめぐる国と
沖縄県との
関係にとって重要な節目となるものでありました。
また
総理は、会談後、
沖縄県との信頼
関係を、一瞬のことではなく、これから先継続していくことが大事であると述べられました。しかし、幾ら言葉が誠意に飾られていようとも、その言葉が具体的な行動、実践によって裏づけられなければ、かえってその言葉を受けた者の落胆と不信ははかり知れないものにならざるを得ないのであります。
橋本総理、
総理は昨年九月の会談の際、
沖縄問題についての談話を発表し、「
米軍の
兵力構成を含む軍
事態勢について、継続的に
米国と
協議してまいります。」と述べられました。しかし、
総理のこの言葉は、一体いつどこで実行されたとおっしゃるのでしょうか。確かに、
総理はこの二月、オルブライト国務長官と会談した際、
沖縄の
海兵隊問題を含めて軍
事態勢について
協議することを提案したということのようでありますが、その後、ゴア副大統領が
海兵隊削減に対する消極
姿勢を示した途端に、
海兵隊の
削減、撤退を求める
考えはないと態度を大幅に後退させたのであります。
民主党は、
我が国の安全とアジア太平洋の安定を確保する上で、
日米安保条約を堅持することが重要であると
考えるものでございます。しかし、同時に、
国際情勢に対する
認識や
在日米軍のあり方について両国の間で
意見の相違があることはごく自然なことであり、むしろ、そのような違いの上に立って日米両国が同盟
関係を良好なものにする努力を続けていくことこそ、民主主義国家の強みであると信ずるものであります。
アメリカが言うから、アメリカが賛成しないからという理由だけで、
海兵隊を含む在
沖縄米軍の
兵力構成の問題をアメリカに対して口にすることすらはばかるというのでは、一体、
日本外交のどこに自主性、主体性があると言えるのでしょうか。(
拍手)
「過ってはすなわち改むるにはばかることなかれ」であります。今からでも遅くはありません。来るクリントン大統領との会談において、
沖縄県民が強く望んでいる、
海兵隊を含む在沖
米軍の段階的
削減と撤退について提起し、今後、この問題について日米間のしかるべき機関において継続的に
協議するよう努力すべきであると
考えるものでありますが、
総理の決意と見解をお聞かせいただきたい。
沖縄との信頼
関係を一瞬のものに終わらせないとの
総理の思いを生かすことができるかどうか、それは
総理の一身にかかっているということをぜひ強く御
認識いただきたいのであります。
海兵隊を含む在沖
米軍の
削減、撤退については、
朝鮮半島情勢が不透明なときに、
日本から話をとても持ち出せるものではないとの主張が一部でなされております。しかし、それでは、その不透明な
朝鮮半島情勢を少しでも見通しのいいもの
にするために、
政府はどのような外交努力を行ってきたのか、また行おうとしているのか。みずから努力する
姿勢を見せることなしに、
沖縄県民にだけ犠牲を強い続けることはもはや犯罪的ですらあります。
少なくとも、
朝鮮半島情勢の安定化に向けて、
我が国単独で、またはアメリカや韓国、中国、さらには北朝鮮をも含めた二国間、多国間の重層的な外交戦略を打ち出し、その着実な推進を図ることなしに、
総理がさきの
沖縄談話で表明した「アジア
情勢の安定のための外交努力を行う」という言葉は絵そらごとになってしまうのであります。
総理、今後、
朝鮮半島及び中国を含む北東アジア
地域の
緊張緩和と多国間協調の枠組みの確立に向けて、
我が国としてどのような政策展開を図っていこうとしているのか。
沖縄県民の方々も御納得いただけるように、
総理自身の言葉で明快に語っていただきたいのであります。
総理も御承知のとおり、我が党は、昨日、
沖縄米軍基地問題の打開のために緊急に取り組むべき課題として、
海兵隊の
削減、撤退を初めとする五項目の
提言を
政府に対して行ったところであります。この中で、日米
地位協定にかかわる課題として、国内法に準じた環境保護の徹底、軍事演習に関する
規定の整備について、日米間で新たな
合意を得ることを求めたところでございます。
この二月に起きた鳥島における劣化ウラン弾誤射事件並びにキャンプ瑞慶覧でのPCB廃液事件は、いかに軍事演習の規制に関する
規定が弱いか、また、いかに環境保護が無視されているかを示す象徴的な出来事でありました。
そして、この誤射事件の通報をおよそ一カ月にわたって隠ぺいし続けたことは、
日本政府、外務省が、絶えず
日本と
日本人の
立場に立って
国益と市民益を擁護することに努めるよりも、アメリカ
政府の側に立って、
日本人に対しては知らしむべからずよらしむべしとの
姿勢でアメリカ
政府をかばう、相変わらずの主体性の欠如を露呈しているところであります。
過去三回にわたってボン補足
協定を改定し、環境保護及び軍事演習について詳細な
規定を設けたというドイツの事例をも参考にしながら、これらの課題について日米間の
協議を開始することが極めて重要であると私は
考えるものであります。この点について、外務大臣のお
考えを
お尋ねいたします。
また、
沖縄に駐留する
米軍にかかわる諸活動について地元の要望をできる限り反映させていく上で、
沖縄県、那覇防衛
施設局、在
沖縄米軍各軍の
代表で構成される三者
協議会の活性化を図ることも重要な課題であります。そのためには、この三者連絡
協議会を日米合同
委員会などにおいて承認し、日米間の正式な機関として位置づけることが必要であると
考えるものでありますが、外務大臣及び
防衛庁長官の見解を求めます。
今日、
沖縄県民の抱える苦悩は、島全体を覆うように
存在する多数の
米軍基地から
基本的に発生しているものでありますけれ
ども、そのことが経済的な自立を阻み、結果として、
基地の重圧と経済的困難の重圧の二重の重圧に
沖縄の
人々は苦しめられているのであります。その意味において、
基地負担の
軽減と経済的自立を同時に追求しようとする
国際都市形成構想は、国として真剣に受けとめるべきものであり、少しでもその
構想の実現に近づくことができるように各種の
措置を講じていくべきであると
考えるものであります。
中でも、法人税の
軽減や独自関税
制度の導入、輸入割り当て
制度の見直しなどによる
自由貿易地域制度の拡充とともに、ノービザ
制度の導入による
国際観光の
発展のための環境整備を図ることが極めて重要な課題となっております。また、昨年十一月に発表された
沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会報告の具体化も求められております。
こうしたさまざまな懸案に対して、
総理並びに
関係大臣たる外務大臣、大蔵大臣はどのように取り組んでいこうとされているのか、明確な決意の表明を求めるものであります。
橋本総理、私は、
日本の安全とアジア太平洋の安定を確保する手段として
日米安保条約を重視する
立場から、
条約の円滑な運用に
支障を来すような法的空白を招くことは避けるべきであると
考えております。同時に、
米軍に提供される用地については、本来
政府がその
使用期間内に収用
手続を完了する
義務を負っているにもかかわらず、それができない
事態を発生させようとしていることは、
基本的に
政府の責任であると言わざるを得ないのでございます。
現行法に従って、民主党が要求した緊急
使用の
申し立てを行うことができたにもかかわらず、そうしなかったことは、明らかに
政府の失態であります。
政府の施策が、法定の
手続よりも別途の思惑によってなされているとの疑いなしとしないのであります。
したがって、もしどうしても
特措法の
改正が必要というのであれば、真に
必要最小限度の
改正にとどめるものでなければなりません。ところが、
改正法案を見る限り、
必要最小限度といいながら、
収用委員会の却下
裁決があっても、防衛
施設庁が審査請求をしさえすれば、建設大臣が却下
裁決を取り消すか、あるいはこの審査請求に対して建設大臣が判断をしない
状態が続く限り、正権原が取得できるまでいつまでも
暫定使用権が認められることになっております。また、既に
使用権原が切れている楚辺通信所にも
暫定使用制度を適用するなど、
沖縄県民にとっては
必要最小限度の
改正を超える見直しであるとの批判も出ているところであります。
さらに、仮に
収用委員会が防衛
施設庁の求める
使用期間を大幅に減ずる
使用期間しか認めず、これについて
施設庁が審査請求を行った場合に、ずるずると半永久的に
暫定使用が続けられることも許容されるという法律構成になっていることに、多大の危惧を感じざるを得ないところであります。すなわち、暫定の
使用が永続的、半永久的になし得るという論理矛盾の体系となっていることが法律上の問題なのであります。
こうした批判に少しでもこたえでいくためには、例えば、今回の特措
法改正について五年間の時限を付すような方法も検討すべきではないかと
考えるものであります。このような法案修正は、
政府に対して、限られた
期間内において
沖縄の諸懸案に積極的に取り組むことを強く促していくという効果も期待できるものであります。今後の
委員会における審議を通じて、そのような修正についても検討する用意があるかどうか、
総理の見解を
お尋ねいたします。
橋本総理、私もまた、
総理がおっしゃるように、
日米安保条約上の
義務を果たすことは、同盟
関係を
維持する上で極めて重要なことであると信ずるものであります。しかしながら、同盟をその根本において支えるものは、やはり
国民の意思であります。
国民の理解と
合意がなければ、幾ら形式が整っていようとも、そのような同盟は力強いものになることはできないのであります。
日米安保条約の適切な運用を図ることを念願するからこそ、
安保条約を
維持するための重圧と負担を受け続けてきた
沖縄県民の苦痛を和らげ、在
沖縄米軍基地の恒久化、固定化から脱却し、
基地縮小に希望の曙光を見出すことのできる最大限の努力を払うべきであるということを最後に強く申し述べて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕