○中川正春君
国会の外は桜が満開であります。私も、初めての
質問を壇上から
新進党を代表してさせていただきます。(
拍手)
さて、今
国会におけるさまざまな議論の中でも、橋本内閣の改革とは名ばかりのもので、
国民の間には、次第にその姿をあらわしてきた
日本の危機と行き詰まりの
状況に、深刻な閉塞感が漂っております。改革は既に議論の
段階を過ぎているのであります。
そういった意味では、今回提出された国鉄清算事業団の債務
負担軽減のための
特別措置を目指す法案は、二十八兆円にも上る長期債務に対して、とりあえずの緊急避難的な
特別措置を講じるだけのものであります。これによって、
政府は問題の根本をまたしても先送りしようとしているのであります。
そんな中で、まず指摘しなければならない問題の第一は、橋本
総理、あなた自身の
責任についてであります。
昭和六十三年、中曽根内閣の
もとで、国鉄の民営化と清算事業団による国鉄債務の清算方式を決めました。その結果、事業団は二十五・五兆円の長期債務を旧国鉄から引き継ぎました。そのうち十三・八兆円が
国民の
負担とされたわけであります。それから十年後の
平成九年、現在までに事業団は、毎年一兆円を超える利息の積み上げなどから、現在の累積債務は、六十三年当初の二十五・五兆円をさらに上回る二十八兆円規模に近づいています。
さらに、ある試算では、今
世紀中に事業団の保有する土地と株式をすべて売却しても、なお二十四兆四千億円の債務が残ることがはっきりしております。十年前に十三・八兆円でスタートしたものが、二十四兆円以上の
負担となる見込みであります。一人当たりの
国民負担に直すと二十万円を超え、これは住専処理の三十倍になります。まさに
政策の失敗であります。借金を清算するつもりでつくった事業団が逆にその借金をふやしているなどというばかげたことは、許されていいはずがありません。
橋本
総理は、昭和六十三年、国鉄清算事業団の債務の清算スキームを決定するときには、当時の
運輸大臣としてその
最高責任者の位置にありました。また一方で、バブル発生期の土地高騰を理由に、事業団に対して、国鉄用地の一般競争入札による売却を停止させたのも当時の橋本
運輸大臣なのであります。橋本
総理、あなたの、問題の先送り、政治決断の欠如が、結果的には長期債務を雪だるま式に膨らませ、
国民の
負担を前にも増して大きくしてしまったということではないでしょうか。
今回もまた、その場しのぎの緊急避難のための法案が提出をされましたが、いつまでこんなことを続けていくつもりですか。何にも増して
総理が
国民の前にはっきりさせなければならないことは、一連の
政策の失敗と無
責任な問題解決の先送りに対する
責任の所在であります。
同時に、
一体いつまでに根本的な長期債務の解消のための成案をつくるのか、少なくともそれを今はっきりと示すことが
国民の
協力を仰いでいくためには何よりも大切なことだと
思いますが、いかがでしょうか。
総理の明確な
答弁を求めます。
第二の問題は、今日の莫大な債務のそもそもの原因であります。特に昭和五十年代から急激に膨れ上がった国鉄の債務残高は、
一体だれにその
責任があったかということであります。
いろいろな議論の中でも、まず最初に指摘されなければならないことは、旧国鉄当局の
経営責任であることは、これは言うまでもありません。しかし、今回の長期債務の全体を見渡したときに、この問題の根はそれよりももっと深いところにあると
思います。大きく言えば、五五年体制の中での
日本の政治風土が、二十八兆円という莫大な債務の中に問われているのであります。
私たちのごく身近なところで陳情政治が繰り返されてきました。例えばそれぞれの過疎
地域の抱えるローカル線なども、その建設の当初には、地方の激しい陳情合戦がベースになっているのであります。政治的圧力がその源泉なのです。しかし、例えば昭和六十三年に民営化され第三セクターとなった私の
地元の伊勢線なども、最終的には九十一億円に上る建設費の債務残高を清算事業団にかぶせています。現在に至っても、毎年二千万円を超える営業損失を出しながら、いわばこの電車はほとんど空気を積んだまま線路の上を走り続けているのであります。こうしたことは、私の
地元だけではなく、いまだに
日本じゅうで繰り返されていることは改めて指摘するまでもありません。
当初の建設コストに対して、
利用者
負担という市場原理だけでは採算が見込めないとはっきりしているにもかかわらず、一時しのぎの鉄道債券であろうと、当時は花形であった財政投融資や補助金などの税金からの持ち出しには、無
責任きわまる甘えの構造があったという事実が問題なのであります。最後は国が面倒を見ることになるという暗黙の了解だけで物事がここまで進んできたことには、ただただ唖然とするばかりであります。
さらに、運用
段階の中で、輸送手段が鉄道から車へとシフトしてきているという指摘は、当時さまざまな
分野からありました。にもかかわらず、個別の鉄道路線に対する
合理化計画が実現できなかった
運輸省当局の鉄道へのこだわりが問題なのであります。最終的にはすべて国鉄当局の長期債務の中に押し込めて先送りをし、最後に
国民にツケを回したという
運輸省の
責任は、厳しく問われなければなりません。また一方では、建設省の独断的な道路づくりにも問題があります。地方の国土
計画、
都市計画の中に公共交通システムをトータルに描けなかった縦割り行政の弊害は、ここにも凝縮された形であらわれでいます。このように、歴代
政府の主体的な戦略の欠如は、過去の問題だけではなく、今のこの
国会でも厳しく追及されなければならないことであります。
こうした
思いを前提にして、
総理並びに担当大臣に
お尋ねをいたします。
まず第一に、私たちは、国家の財政再建という大命題に挑もうとしている今日のこの
国会に対して、新たな挑戦としか言いようのない
整備新幹線の復活論議を前にしております。かつての国鉄に課せられたこうした根本的な問題は、現在、私たちの間に本当に反省をされ、生かされているのでしょうか。
整備新幹線を凍結し、その財源を長期債務の返済に充てるつもりはありませんか。
第二に、
運輸省や建設省の縦割り行政の弊害から、
一体的な交通体系の欠如がこの長期債務の原因の一つであるとすれば、揮発油税等の特定財源を一般財源化し、その中から長期債務返済を考えていく必要はありませんか。さらに、一般の公共事業の見直しによってこの財源を
確保するということについてはどうでありましょうか。
第三に、都道府県を
中心にした
地方公共団体は、それぞれの交通体系に対して、国任せではない、主体的な
計画立案をしていかなければならないという貴重な経験を積んだのだと
思います。そうした意味でも、過去の債務に対しての
負担を、今そのサービスを享受している
地方公共団体に
協力をしてもらうという、そういうおつもりはありませんか。
第四に、そもそもの原因の張本人であるJR各社に対する運賃課税なり収益からの
負担なりを考えていくということはありませんか。
最後に、国土の均衡ある
発展を目指してという大義の
もとに、激しい陳情合戦を繰り広げ、
日本の隅々にまで鉄道
計画が設定されました。現代においても、国幹審における高速道路の建設
計画、
整備新幹線、地方空港の誘致合戦等に展開される陳情政治は、つまるところ皆同じ根っこを持っております。
私は、しかし、これを全く否定してしまうことには反対なのです。地方にとっては、どのようなものであれ、大きなプロジェクトが国家によって採択されれば、それは皆望ましいことであります。それがために、私たちは選挙を戦い、
地域を代表する形でこうして
国会に出てきました。
しかし、その結果として、各部門での行き詰まりがはっきりあらわれてきており、今こそ新しい政治システムの確立が求められていることも事実であります。私たちに欠けていたのは、そうした利害の衝突をトータルに調整する機能であり、さらに、みずからの限界を踏まえて、
国民に対し、将来に得られる本当の利益とそれに対する
負担を説明することであります。
政治の信頼を取り戻すために、
責任逃れの
審議会の答申や
省庁の権益争いではなく、この
国会で、橋本
総理、あなたの口から直接
国民に対して明確に説明する
責任があることを最後に指摘し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕