○不破哲三君 私は、
日本共産党を代表して、
橋本総理に質問いたします。
政府がこの
国会に提出する
予算案は、
国民に
巨額の高負担を要求するものです。四月から予定の
消費税増税は五兆円、
特別減税の
廃止分は二兆円で、
国民が負担する
税金は七兆円もふえます。しかも、
政府は
医療保険の改悪を同時に
実施しようとしており、
国民の
負担増は、
政府管掌の
健康保険で九千六百億円、組合健保、国保一般などで八千数百億円、高齢者の自己負担で最低二千四百億円、合計して二兆円を超えます。合わせて九兆円もの
負担増、これは、
国民一人当たり七万五千円、四人家族で三十万円もの負担を新たに負わせることであり、許すわけに
いかない
国民生活への攻撃であります。
これまでにも、
増税や
医療保険の改悪などで
国民に新たな負担を要求した
政府はありました。しかし、歴代のどの
政府をとっても、九兆円あるいはそれに近い
負担増を要求した
内閣は、
橋本内閣以前にはなかったのではありませんか。
総理、過去の実績で、
国民負担の
増加が一年間に一兆円を超える事例があったかどうか、あったとすれば、それは何年度で、年間どれだけの
負担増だったか、お答え願いたい。
私が調べたところでは、鈴木
内閣時代の一九八一年に約一兆六千五百億円が過去最高の記録でした。こんな歴史を振り返れば、九兆円の
負担増という今回の
政府の計画が
いかに無法な暴挙であるかが浮き彫りになるではありませんか。
さらに、
政府が
消費税増税などを
いかなる
経済情勢のもとでやろうとしているかが重要であります。九〇年代に入って以降、
日本の
経済が長引く不況に苦しみ、多年にわたる驚くべき
例外的な低
成長が国際的にも問題になっていることはよく知られているとおりであります。その原因はどこにあるのか。
経済企画庁が昨年八月に発行した
経済白書は、
日本経済はなぜこのように長期にわたって低
成長にあえぎ、かつ
景気の回復が緩やかであったのかと問題を投げかけた上で、その答えを
消費と設備投資という
景気牽引力、
景気を引っ張る二大主役の立ちおくれに求めています。
消費といえば、その中心は言うまでもなく
個人消費支出であります。白書は、その伸び悩みの
内容として、実質可
処分所得の伸びが緩慢であったことを指摘しています。つまり、所得が伸びないことに加えて、所得から差し引かれる
税金や社会保障料などの負担が重大だということです。
白書はまた、設備投資のおくれについても、いつもなら
中小企業の設備投資が先行してリード役を果たすのだが、今回はその状況が見られないことを問題にしています。
中小企業の状況はそれほど深刻なのです。
中小企業は、従業員数では
日本全体の約八割、
経済活動の
規模では五割台から六割台、文字どおり
日本経済の主役と言えるだけの比重を持った存在です。それだけに、今日一部に見られる
景気回復的な現象が大
企業だけに偏って、
日本経済を
支える
中小企業が全体としてその外に置かれていることをとりわけ重視する必要があります。
私は、白書のこれらの指摘を読んで、これは現在の不況の
問題点についてのなかなか的確な診断だと思いました。
総理、
経済企画庁のこの診断が
政府の本気の見方であるなら、なぜその診断に沿った対処をしないのですか。実質
個人消費の伸び悩みが問題だと分析する口の下で、年間九兆円もの負担を
国民の肩に新たに担わせ、
国民の実質所得を低下させることは、
政府自身の診断にも逆行する暴挙ではありませんか。これは
国民生活を痛めつける悪政であると同時に、
日本経済のかじ取りを決定的に誤るものであります。(
拍手)
増税中止を求める
国民の声は総
選挙後もいよいよ高まり、
日本共産党国
会議員団を通じて
国会に寄せられた
増税中止の請願署名は七百万を超えました。
経済界からも真剣な
反対意見が出されています。特に不況に苦しむ
中小企業の間では、この声は圧倒的です。東京都信用金庫協会が昨年十二月に行った調査では、都内の
中小企業約一万二千社のうち、ことしの
景気は悪いと答えた
経営者が七七・三%。どんな
経営環境の整備を望むかについては、回答の第一位は
消費税の軽減で五六・三%、第二位は所得
減税による
消費需要の充実で三九・七%でした。
総理、あなたが
日本経済の現状の打開を本気で
考えるのなら、
消費税塔税、
特別減税中止、
医療保険の大幅
負担増などの逆立ちの
政策を直ちに取りやめ、
国民め
消費購買力の
拡大と
中小企業の振興によって、
日本経済を
国民的な底から活気づける
政策にこそ真剣に取り組むべきではありませんか。
総理が
日本経済の現状をどうとらえているかも含めて、明確な
答弁を求めるものであります。
消費税増税についても
医療保険の
負担増についても、
政府はその
理由づけとして
財政上の困難を挙げています。しかし、現実にそこにあるのは、
国民が納得できない不当な支出、浪費やむだ遣いをそのままにして、そのツケを
国民に負担させるという、これまた
国民が納得できない不当な理屈ではありませんか。
まず、国の
財政の問題です。
日本共産党は、
財政再建のために抜本的にメスを入れるべき国政上のむだ遣いとして、ゼネコン型の公共事業・軍事費の膨張、大
企業に対する特権的な減免税の三つの分野を指摘してきました。これらの浪費を抑えれば、
消費税増税なしに
財政再建を軌道に乗せることができるし、
消費税廃止への展望も開かれできます。ところが、
政府は、
財政再建のかけ声だけで、この三つの分野には手をつけず、逆に浪費を
拡大する
方針を打ち出しています。
公共事業の投資
規模は国際水準の三倍から四倍という異常なものですが、
政府はその言いわけとして下水道などの事業をよく挙げます。しかし、問題はそこにあるのではありません。
国民生活とは無縁なゼネコン型の大型事業の中に、あきれるような浪費とむだ遣いが横行していることこそが問題なのです。例えば、五年ごとの計画を立てて進めている港湾整備計画です。その
予算は、八〇年代後半の第七次計画が三兆七千億円、九〇年代前半の第八次計画が五兆七千億円、九〇年代後半の第九次計画が七兆五千億円と急膨張しています。ところが、その
中身には工事のための工事というべきものが多く、浪費の象徴という実態を各地でさらけ出しています。
一例を挙げれば、国際的な大型港湾として整備した福井港です。ここには国と県が四百八十四億円の資金をつぎ込みましたが、肝心の外航船は月平均二、三隻しか来ず、ふだんは専ら釣り人の漁場、百億円の釣り堀として評判になっているとのこと、その実態はマスコミでも取り上げられて天下周知のことになっています。ほかにも、
経済的な
見通しも立たないまま
巨額の公薬事業費のむだ遣いの対象となっていると見られる港湾は、鳥取港、新潟港、石狩湾新港などなど各地に数多くあります。
二十数年前に
日本列島改造計画の一環として着手され、この計画
自体が破綻した後もずるずると投資が続けられてきた
二つの大
規模プロジェクト、苫小牧東部開発やむつ小川原開発も浪費の典型であります。合わせて五千億円を超える資金が投じられましたが、どちらも開発事業としては破綻そのものといった現状ではありませんか。
これらはほんの一例にすぎません。
日本の公共事業が同じような浪費の無数の事例に満ち満ちていることは、
関係者の間では今や常識となっています。
総理、これらの浪費を野放しにしてきたことこそ
財政危機をつくり出した最大の原因の一つではありませんか。
財政再建を言うなら、公共事業の現状を総点検し、むだ遣いが明白な事業はきっぱりと打ち切ることこそ急務であります。それをやらないで、みずから引き起こした
財政危機のツケを
増税で
国民に転嫁し、それをもって
財政再建の第一歩だとするなどは、
責任ある
政府のやるべきことではありません。
もう一つ例を挙げましょう。
総理が施政
方針演説でその推進を再び強調した首都機能移転事業は超大型の浪費計画であります。
第一に、この事業には合理的な目的が全くありません。当初は東京への一極集中と過密の解消が最大の大義名分としてうたわれましたが、過密の解消に役立たないことが明らかになったら、いつの間にかこの目的が文書から消えてしまいました。この問題の最後の報告書である
国会等移転調査会報告では、東京の過密解消ではなく、
反対に、
国会や
政府を過密都市東京から脱出させることが目的だと強調されています。
第二に、
政府は首都機能移転を
行政改革の転機にするなどとも言っています。しかし、実際の
事態は、
行政の簡素化ではなく、
二つの
政府の
建設という異様な
方向に向かっています。実際、
政府が二〇〇〇年に新首都の
建設を開始するという日程を決めながら、同時に、大
規模な高度の機能を集中した新首相官邸の
建設を同じ二〇〇〇年の完成を
目標として進めています。昨年六月、参議院の特別委員会でこの矛盾をつかれたとき、
総理は、東京と新首都に二重の施設があってもよいではな
いかと答えました。
二つの
政府施設を東京と新首都につくるなど、むだ遣いの最たるもめではありませんか。
第三に、この事業にかかる費用は今の
財政事情では
考える余地のないほど
巨額のものです。国土庁は以前、その費用を十四兆円と試算しましたが、関西財界の代表者で
国会等移転調査会の会長を務めた宇野收氏は、昨年二月、参院特別委員会に出席した際、今正確な数字が出ているわけではなく、その費用は二十兆にも二十五兆にもなるかもしれないと答えました。関連する交通
機関の整備などの費用を加えれば、この金額がどこまで膨れ上がるか、だれにもわかりません。
政府のどの
機関も、その費用についての
責任ある試算を一度も発表したことがないのです。
総理、幾らあなたの先輩である自民党の前副総裁金丸信氏が手がけた事業だからといっても、目的も定かでない、かつ、史上最大
規模で、どれだけ費用がかかるかの試算もされていないこういう超
大型プロジェクトについて、今日の
財政危機のもと、その強行に突き進むなどは、思慮ある
政府なら絶対にやれないはずのことであります。(
拍手)
一体、首都機能移転の目的はどこにあるのか、
国会だけでなく
政府も移転する計画なのか、
政府が移転するのだとしたら、なぜ首相官邸の
建設工事を中止しないのか、この事業計画の費用を現時点で幾らかかると概算しているのか、その費用をどういう財源で賄おうと
考えているのか、少なくとも以上の点について、
政府も承認した公式の文書、
国会等移転調査会報告の到達点も踏まえて、お答え願いたいのであります。
次に、
医療保険の問題です。
私は、昨年十二月の代表質問で、
厚生省疑惑と
医療保険の関連を取り上げ、健保会計の
赤字の一部に疑惑の事業に絡む不当な支出が含まれていること、また製薬会社と厚生
行政の癒着が薬価の不当な負担を不当に大きくし健保会計を圧迫している疑惑があることを指摘し、まず
国民の
負担増をというやり方でなく、これらのうみを一掃する努力こそを、
政府の最
優先の任務だと主張しました。このことは、その後の経過の中でいよいよ重要になっています。
まず、病院寝具協会にかかわる疑惑であります。
十二月の
国会の論戦でも、特定の
企業を中心にしたグループが、
厚生省がつくった制度を足場に病院寝具や病人用の衣類、病衣の独占をはかった上、政界に働きかけて
健康保険の加算点数の大幅なつり上げをはかり、不当な利益を得ていたことが問題になりました。このグループは政界工作を主目的に一九七七年に病院寝具
政治連盟をつくりましたが、この
政治連盟が一九九三年までに政界に行った献金は約四億円にも上ります。
重大なことは、この利権グループの不当利益がすべて
医療保険からの支出と結びついていたことであります。寝具、病衣に関する
医療保険からの支出は、試算をしてみますと、以前には年に二百億円程度でした。それが、病院寝具
政治連盟結成以後は加算点数がウナギ登りにふえた上、このグループによる独占が進んだため年々支出が激増して、九三年には年間九百九十億円と約五倍になりました。その支出の累計は、九〇年代の最初の四年間だけでも三千七百億円を大きく超えます。そのかなりの部分が政界、官界絡みの悪徳商法による不当支出だと推定されます。
総理、
医療保険にかかわるこういう問題が目の前にあるのに、その真相を明らかにせず、済んだことだと言ってふたをしたまま、
赤字だから負担をしてくれと言っても、
国民が納得しないのは当たり前ではありませんか。同じような疑惑が厚生・
福祉行政のほかの分野にもあるのかどうか、その総点検とあわせて、
医療保険に絡む悪徳商法の一掃に強く取り組むことを求めるものであります。目の前にあるゆがみを正さないで、どうして
国民本位の
行政改革を口にできるでしょうか。
また、あなたは前回、
福祉関係団体からの
政治献金について、
政治資金規正法の
手続だけでなく、みずからを
政治倫理に照らして戒めるべき問題だとする
答弁をされました。これらの団体が不当利益の
拡大を目指して政界工作を系統的に行ってきた事実が明らかになった今、
総理や
関係大臣が問題の団体から
政治献金を受け取ったり、会長や顧問などの役員になったりしてきたことの是非について、みずからの
政治倫理に照らしての
見解を伺いたいと思うのであります。
一層重要なものは、薬の価格、薬価の問題であります。
日本では、
国民医療費二十七兆円のうち約三割に当たる八兆円が薬剤費で、薬価負担の大きさは国際的にも異常なものとされています。大阪府
保険医協会が、この問題で最近大変綿密な調査を行いました。この調査は
日本でよく使われている六十二品目を対象にしたもので、それによると、
日本の薬価は、ヨーロッパに比べると、ドイツの一・四倍、フランスの二・七倍、イギリスの二・七倍という高さです。なぜこんなに高くなるかの原因についても、国際的にも安定した評価の出ている薬はほぼ世間並みの値段だが、新薬の価格が異常に高いこと、しかも、その新薬の使用比率がドイツの一割に対し
日本の五割と飛び抜けて高く、そのことが薬剤費の負担を高めているなどの事情が解明されました。
あわせて、以前と少し成分を変えただけのものが新薬扱いされて高値をつけられていることや、新薬の審査
体制が製薬会社中心であるために、薬としての信頼性が危ぶまれるものまでが認可される場合が少なくないなど、重大な問題が提起されています。
医療の専門家たちが、系統的な調査をもとに問題を真剣に提起しているのであります。
経済企画庁の
国民生活白書も、この調査結果を紹介して薬の
内外価格差を問題にしています。
総理、国際水準に照らして
日本の薬価か高いという事実をあなたはどう
認識していますか。
医療保険の
財政的な困難を打開するためにも、
国民が安心して薬を利用できる状態をつくるためにも、薬価をめぐる
問題点に正面から真剣に取り組むことが今緊急に求められているのではないでしょうか。実際、ごく控え目な計算をしても、薬価が是正されてヨーロッパ並みの水準になったら、薬剤費の
国民的な負担が少なくとも二兆円から三兆円は軽くなるという結果が出ます。
薬害エイズの問題では、製薬会社の利益を
国民の命の上に置いた厚生
行政と製薬業界の癒着が明るみに出ました。
医療保険を圧迫している薬の高価格も、結局は同じ癒着の産物であります。
国民の批判と怒りの的になっている
国民負担増の計画を取り下げ、保製薬業界との不明朗な
関係を断ち切って、
医療制度をむしばむ害悪の根源に思い切ってメスを入れるべきときです。それをやらないで、いたずらに
国民負担増を強行しても、それは一時逃れの方便にしかならず、二〇〇〇年度には
政府管掌
健康保険が
財政的な破綻に陥る、このことは、
厚生省自身がごく最近発表した試算で確認しているではありませんか。
ここでも、
国民の声にこたえる解決策は、
国民の
負担増なしに
国民に安心できる
医療を提供できるよう、
医療保険の浪費的な支出をやめさせる
改革に真剣に取り組むことであります。
総理の
見解を求めます。
次に、阪神・
淡路大震災の
対策の問題に進みます。
この一月十七日が大震災の被災二周年の日でした。今なおその
被害に苦しんでいる震災被災者の問題を抜きにして、
日本の
国民生活の問題を語ることはできません。
現地からの報告によりますと、被災地では、今なお三万八千世帯、七万人の人々が仮設住宅で三度目の冬を迎えています。現在までに災害公営住宅に入居できたのは一万三百九十世帯、そのうち仮設住宅からの入居者は六千三百八十八世帯にすぎず、兵庫県が設定する仮設住宅解消の時期も先延ばしされて、住民は不安を募らせています。さらに、十万人から十二万人と推定される県外への避難者は居住地に帰るめどを持てないでいます。仮設住宅に住む人の中で、震災で職を失った人は五一・四%、そのうち再就職できたのは臨時、パートを含めてその五割余りにとどまり、再就職の
見通しはきわめて厳しいのが現状であります。
また、
医療費の本人負担分を免除するという特例
措置が九五年末には打ち切られました。兵庫
保険医協会の調査では、病院に通っていた国保の患者のうち約四割がこの打ち切りとともに通院をやめたとのことです。被災者の孤独死が昨年十二月末までに約百二十人に上ったということも、こういう状況の中で起きた問題であります。
総理、この
日本で、震災の
被害を受けた人がこれだけの
規模で、人間らしい生活を再建できないまま、またその
見通しを持てないまま、苦難の生活を余儀なくされているのです。私は、これら被災者に対する公的支援に直ちに取り組むことは今日の
日本の
政治の最
優先の課題だということを改めて強調したいと思います。(
拍手)
日本共産党は、生活再建と住宅資金合わせて一千万円を限度とする
個人補償の制度の創設を中心に公的支援の方策を具体的に
提案していますが、
個人補償を中心にした公的支援を早く
具体化せよの声は、被災地だけでなく全国的な強い世論となりつつあります。
日本は私有財産の国だから
個人の生活の再建は
個人の
責任だ、もし
政治がこんな無
責任な論理で公的支援の道を講じないまま被災者を現状に放置し続けるとしたら、それは
国民生活に対する
政府の
責任を放棄するのと同じではありませんか。
総理は施政
方針演説で、被災二周年に当たって最大限努力すべき課題の筆頭に、被災地の生活の再建を挙げました。一刻も早く
個人補償と公的支援の
実現に取り組み、被災地の切実な声にこたえることを強く要求し、
総理の
見解を求めるものであります。
次に、この一月に起きた新たな災害、沈没したロシアのタンカーからの重油流出の問題であります。
事故発生後、各地の海岸で漁業
関係者やボランティアを含む多くの
方々がひしゃくやバケツあるいは素手で油と闘っている、この様子をテレビで見て胸を痛めなかった方はいないと思います。悪天候下の作業による死者は既に三人に達しました。
政府は、
日本は
世界に誇るべき高度な技術を持った技術大国だといつも言っています。その
日本で、巨大な
規模の
重油流出事故に素手で立ち向かわなければならないという
事態がなぜ起こったのか。
被害は既に七つの府県、六十一市町村にも及んで
拡大しつつあります。
詳細は今後の論戦に譲り、きょうは最も基本をなす
問題点に絞って質問いたします。
第一は、
事故発生に対する
政府の
対応の問題です。
事故が発生したのは一月二日の未明でした。しかし、運輸省の
油回収船清龍丸に出動
要請があったのは一月四日の夜、現地到着は九日早朝だと聞いています。流出重油の回収は四十八時間以内が鉄則だと言いますが、到着のこのおくれのために、到着したときには油は固まって、作業が一段と困難になったと言われています。
政府は、九五年十二月に、国際条約に基づく油汚染災害に
対応するための緊急時計画を決定していますが、この計画には、
事故の発生時にはその初期の段階から迅速かつ効果的な
措置をとることが明記されています。なぜ
対応がこんなにおくれたのか、
政府の
対応の時間的な経過とともに、なぜおくれたかの事情説明を求めます。
第二に、現在でも
政府が、
日本が持っているあらゆる装備を生かした万全の
体制をとっているとは到底見受けられません。
弱体だとはいっても、
油回収船は民間を合わせて全体で百四十五隻、うち沿岸用が五十一隻あるとのことですが、今現地に行っているかその途上にある船は
さきの清龍丸を含めて四隻だけです。回収ポンプなどの機材も、石油会社のものを含め相当数が存在しているはずです。なぜ必要な総動員態勢をとらないのですか。
第三は、ロシアに対する
対応です。
今回の
事故の
責任がロシア側にあることは明白ですが、ロシア
政府がこの問題でどのような
見解を持ち、どのように
責任をとろうとしているのか、また
日本政府がそのロシア
政府にどのような
対応をしているのかが、
国民には見えてきません。私は二十日ロシア
大使と会い、船主だけでなくロシア
政府も
責任を負うべきことを指摘し、
一連の要望事項を申し入れました。その席で
大使は、ロシア
政府に道義的な
責任があることをはっきり認めましたが、
日本政府として、対ロシア
政府との
関係での事の経過と
政府の
対応について伺いたいのであります。
第四は、この種の
事故に備えるふだんからの
体制の問題です。
日本は
世界でも有数の石油輸入国として、
日本の港に出入りするタンカーは毎年大変な数に上る上、
日本海は老朽化したタンカーによる重油の輸送が特に多いなど、とりわけ危険な状態にあったことは当局者にはわかっていたはずであります。ところが、一たん
事故が起こってみると、この種の
事故に対する備えが余りにも貧弱なことに
国民は驚かされました。
油回収船にしても、沖合で活動できる能力を持った大型船は清龍丸ただ一隻。しかも、百四十五隻全体の配備を見ると、清龍丸を含め圧倒的に太平洋側での配備で、問題の
日本海側には、秋田、新潟、富山、福井にそれぞれ一隻、合計わずか四隻という状態でした。
阪神大震災のときにも、
政府は自衛隊の軍備の増強や近代化には熱心だが、
国民の生命と財産を守る上で決定的な地震に対する備えの弱いことが大きな批判の的となりました。今回。
重油流出事故に対する備えが決定的に手薄な現状を、シーレーン防衛の名のもとに専ら海上軍事力の増強に熱中してきた
政府の
態度と見比べて、その思いはひときわ深刻なものがあります。一体どのような
体制と
方針でこの種の
事故に備えできたのか、現状で十分と判断してきたのか、そして今後の備えをどうするつもりか、伺いたいのであります。
次に、米軍基地の問題です。
今、各地で米軍基地やその訓練に
反対する住民の運動が広がっています。
日本にいる米軍の主力は、横須賀を母港とする空母機動部隊と沖縄及び山口県岩国に基地を構える海兵隊であって、どちらも海外への遠征を任務とする部隊であります。これらは、その軍事的性格からいって、
日本の国土防衛の任務とは無縁の存在で、日米安保条約の廃棄以前でも
日本からの撤退を要求して当然の部隊であります。
ところが、
政府は、最近、アジア太平洋地域全体に対する日米安保条約の意義を殊さらに強調し、海外への遠征と外国への攻撃を任務とするこれらの部隊にいつまでも基地を提供し続けようとしています。これは、アジア太平洋作戦の前線基地の役割を
政府自身があからさまに、また進んで引き受けることでありませんか。極めて危険なことであります。あくまで基地は
日本の安全のためだと言うなら、一体この空母機動部隊や海兵隊が
日本の国土を防衛する上でどのような具体的任務を担っているのか、具体的に説明してください。
これに関連する問題ですが、今、アメリカの空母が横須賀に寄港するとき、その艦載機が
日本各地で夜間離着陸訓練を行うのが当たり前となっています。また、全国二十八都道県、百数十市町村で問題になっている低空飛行訓練も、その大部分が空母艦載機によるものです。これらの訓練は、アメリカ本国でも人口の密集地では絶対にやりません。アメリカの同盟国でこんな訓練を認めている国は
日本以外には一つもありません。その爆音は市民生活と両立できるものではな
いからであります。
政府は、これらの訓練について、母港を提供している以上やむを得ないという
態度をとっていますが、横須賀を母港に提供したとき、
政府はそんな説明を
国会では全くしませんでした。七三年二月の
予算委員会で私が質問したとき、当時の
外務大臣及び防衛庁長官の
答弁は、乗組員の家族を横須賀に居住させるための母港化であって、その他の条件は一切ないというものでした。また、米軍の厚木基地司令官は、離着陸訓練をしないことを地元の自治体との間で繰り返し約束しました。
現在の訓練は、
政府の
国会での言明や米軍の地元との約束をほごにして、首都圏では八二年以来、いわばだまし討ち的に強行されてきたものであります。私は、住民の生活を脅かすこの種の訓練の中止をアメリカ
政府及び米軍に要求し、強力な交渉をすることを
政府に求めるものであります。もしアメリカ側が母港である以上訓練が当然だという
態度をとったら、母港化の取り決めを取り消せば済むではありませんか。
最後に、
ペルーで起こった
人質事件について質問します。
武装
テロリストのこのような行動は、人権と民主主義に敵対する国際的な犯罪行為であって、絶対に許すことのできないものであります。我が党は、この基本的立場に立ちつつ、人命尊重を最
優先の課題とし、平和的手段での解決を図るという
方針を支持するものです。
この際、
日本の側として
考える必要があるのは、なぜ
テロリストにこういう犯行の
機会を与えてしまったかという問題です。この点で
日本政府の反省を求める声は、
ペルーの識者の間からも上がっています。前の国連事務総長だったデクエヤル氏は、一月十五日の記者会見で、フランス、イギリス、アメリカなどの
対応とも比較しながら、「率直に言わせてもらえば、
日本側にも
公邸内の警備が手薄だった
責任がある」と語ったとのことです。つまり、多くの重要な人物を招いての大
規模なレセプションを無警戒なままになぜ開いたのかという問題であります。
国民の多くにとっては、この
事件を通じて、
日本の天皇誕生日が対外的には
日本のナショナルデーとされ、アメリカの独立記念日に匹敵する大
規模なレセプションをこの日に開催するのが
世界に配置された在外公館の最大の行事となっていることを知ったことは、大きな驚きでした。
国内では
一連の祝日の中の一つにすぎない天皇誕生日が、なぜそのような扱いを受けているのか。私が調べたところでは、これは明治
政府の決定に基づくもので、一八九九年、明治三十二年にニューヨークで大
規模なレセプションを開いたなどが、在外公館での行事の初期の記録などのことです。要するに、天皇が神聖不可侵の絶対君主とされた時代に決められた行事が、主権者は
国民であると明白に宣言された現憲法下の
日本で無批判に引き継がれているということにほかなりません。
総理が、
さきのデクエヤル氏の率直な忠告にこたえるとともに、外務当局の時代錯誤的な慣習についても、率直な是正の
措置をとることを強く要望するものであります。
以上、
一連の問題について質問しましたが、私たちは、ことしは
国民生活を守ることが
政治の最大の課題となる年だと
考えています。その立場で、多くの
国民の
皆さんとともに全力を挙げる
決意でいることを最後に申し上げて、質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕