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1997-01-20 第140回国会 衆議院 本会議 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年一月二十日(月曜日)     —————————————  議事日程 第一号   平成九年一月二十日     午前十時開議  第一 議席指定  第二 常任委員長選挙     …………………………………   一 国務大臣演説     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 議席指定  日程第二 常任委員長選挙  災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災   害対策特別委員会公職選挙法改正に関する   調査を行うため委員二十五人よりなる公職選   挙法改正に関する調査特別委員会石炭に関   する対策を樹立するため委員二十五人よりな   る石炭対策特別委員会物価問題等国民の消   費生活に関する対策を樹立するため委員二十   五人よりなる消費者問題等に関する特別委員   会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のた   め委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に   関する特別委員会行政機構に関する諸問題   を調査し、行政改革の総合的な対策を樹立す   るため委員四十人よりなる行政改革に関する   特別委員会及び税制及び金融問題等に関する   調査を行うため委員四十人よりなる税制問題   等に関する特別委員会設置するの件(議長   発議)  国会等移転に関する調査を行うため委員二十   五人よりなる国会等移転に関する特別委員   会を設置するの件(議長発議)  橋本内閣総理大臣施政方針に関する演説  池田外務大臣外交に関する演説  三塚大蔵大臣財政に関する演説  麻生国務大臣経済に関する演説     午後零時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 諸君、第百四十回国会は本日召集されました。  これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 議席指定
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、議席指定を行います。  衆議院規則第十四条によりまして、諸君議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。      ————◇—————  日程第二 常任委員長選挙
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第二、常任委員長選挙に入ります。  懲罰委員長が欠員となっておりますので、この際、懲罰委員長選挙を行います。
  5. 荒井広幸

    荒井広幸君 懲罰委員長選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 荒井広幸君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。  議長は、懲罰委員長左藤恵君を指名いたします。     〔拍手〕      ————◇—————  特別委員会設置の件
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 特別委員会設置につきお諮りいたします。  災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会  公職選挙法改正に関する調査を行うため委員二十五人よりなる公職選挙法改正に関する調査特別委員会  石炭に関する対策を樹立するため委員二十五人よりなる石炭対策特別委員会  物価問題等国民消費生活に関する対策を樹立するため委員二十五人よりなる消費者問題等に関する特別委員会       。  沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会  行政機構に関する諸問題調査し、行政改革の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる行政改革に関する特別委員会 及び  税制及び金融問題等に関する調査を行うため委員四十人よりなる税制問題等に関する特別委員会設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。  次に、国会等移転に関する調査を行うため委員二十五人よりなる国会等移転に関する特別委員会設置いたしたいと存じます。これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。  ただいま議決されました八特別委員会委員は追って指名いたします。      ————◇—————
  11. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、暫時休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説外務大臣から外交に関する演説大蔵大臣から財政に関する演説麻生国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎君。     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  14. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 第百四十回国会の開会に当たり、国政に臨む私の所信を申し述べます。  まず初めに、在ペルー日本国大使公邸占拠事件が、今もなお解決していないことは極めて遺憾であります。人質とされている方々の御苦労と御家族の御心配に思いをはせるとき、本当に心が痛みます。我が国は、テロに屈することなく、人命尊重を第一としながら事件平和的解決を図り、人質早期全面解放実現するよう努力しております。また、国際社会は一致してテロに対する断固たる姿勢を示しております。今後とも、フジモリ大統領に全幅の信頼を置き、ペルー政府関係国と緊密に連絡をとりながら、この事件を一刻も早く平和的に解決し、人質が全面解放されるよう全力を傾ける考えであります。  テロ活動は、すべての国家と社会に対する重大な挑戦であり、国際社会が一致して対応することが不可欠であります。我が国としても、国際的な合意を踏まえ、国内外における各種テロ対策を推進するとともに、テロ行為など我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態に対応できる体制を一層充実させてまいります。  私は、今般、東南アジア諸国を訪問いたしました。この訪問を通じ、この地域民主主義と開放的な市場経済体制に基づいて世界成長センターとも言われる発展を遂げ、社会全体に躍動感未来への確信がみなぎっていることを改めて実感いたしました。また、米国は、規制緩和技術革新を通じて経済を再活性化し、欧州も、市場統合に加え、さらに通貨統合を進めるなど世界の一体化に対応した動きを進めております。  重ねて申し上げますが、私が目指す社会は、国民一人一人が将来に夢や目標を抱き、創造性チャレンジ精神を存分に発揮できる社会世界人々と分から合える価値をつくり出すことのできる社会であります。  戦後五十年の間、我が国は、国民各層そして地域平等性を求めながら、豊かな国民生活を手に入れることを目標としてまいりました。現在の我が国システム、具体的には、行政システム民間活動に対する規制社会保障福祉仕組み教育行政、国と地方公共団体との関係などは、この目標に合った形でつくられ、長期間にわたり総じて効率的に機能してまいりました。そして、それゆえにこれらのシステム日本社会そのものに深く根をおろしております。  しかしながら、世界が一体化し、人、物、資金情報が自由に移動する時代にあって、現在の仕組みがかえって我が国の活力ある発展を妨げていることは明らかであり、世界の潮流を先取りする経済社会システムを一日も早く創造しなければなりません。社会に深く根をおろした仕組みを変えることは、大きな困難を伴います。しかも、これらのシステム相互に密接に関連し合っております。私が、行政財政社会保障経済金融システム教育を加えた六つの改革を一体的に断行しなければならないと申し上げているのは、まさにこのためであります。  また、私が目指す社会建設は、社会仕組みを変えるだけでは実現できません。私は、この国で暮らすすべての人が正義や公正を重んじ、他人や弱い者への思いやりを持ち、人生の先輩を敬い、郷土や国そしてかけがえのない地球を愛する心を持つことのできる環境をつくり出すことこそが政治役割であると考えます。  沖縄に係る諸問題につきましては、総理に就任して以来、国政の最重要課題として取り組んでまいりました。沖縄方々が背負ってこられた負担は本来国民がひとしく負うべきものとの姿勢に立ち、引き続き全力取り組みます。  このような基本認識に立ち、私は、三党政策合意に基づく協力関係もと考え方を同じくするすべでの方の未来に対する創造力と熱意を結集し、二十一世紀幕あけ国民全体が希望に満ちた気持ちで迎えられるよう、全力外交と内政に邁進いたします。(拍手)  我が国は、歴史的にも地理的にもアジア太平洋国家であります。アジア太平洋地域が開かれた地域協力基盤とした政治の安定と経済発展の好循環を維持することは、我が国外交にとって極めて重要であるとともに、この地域が、人口問題、食糧問題、エネルギー問題そして環境問題という課題を克服できるかどうかは、二十一世紀世界にとって重要な意味を持っております。  我が国は、米国との間で地球規模課題への協力を進めておりますが、今後アジア諸国との間でも同様の取り組みを強化することが重要であると考え、このような認識に立って、私は、先般のASEAN各国首脳との会談において、共同取り組みを強化することを提案いたしました。APECなどを通じてもこの分野協力を強化するとともに、また、この地域における貿易・投資の一層の自由化、さまざまな分野における経済技術協力政策対話に力を入れてまいります。  米国アジア太平洋地域への関与を続けることは、安全保障面においても経済社会面においても地域全体にとって好ましいものであり、私は、本日をもって二期目に入られるクリントン大統領とともに、我が国外交の基軸である良好な日米関係を一層強固なものとするよう最大の努力をいたします。中でも日米安全保障体制は、我が国の平和と安全にとって不可欠であるだけでなく、アジア太平洋地域全体にとって極めて重要であり、日米防衛協力のための指針の見直しなどにより、その信頼性向上に努めます。  我が国防衛については、日本国憲法もと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国になるないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守るとともに、防衛大綱及び中期防衛力整備計画に基づき、現行の防衛力の一層の合理化効率化コンパクト化及び必要な機能の充実防衛力質的向上を図ります。また、アジア太平洋地域における安全保障面信頼醸成のために、ASEAN地域フォーラムを初めとする安全保障面対話防衛交流を進めでまいります。  沖縄に所在する米軍の施設・区域の整理、統合、縮小を日米安全保障条約の目的との調和を図りながら実現することは、内閣の最も重要な課題の一つであり、普天間飛行場の返還を初め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の内容を的確かつ迅速に実施するよう全力を尽くします。沖縄振興に関しては、基地所在市町村に関する懇談会の提言の実現に向けて予算を確保したところであり、今後とも、沖縄とともに真剣に施策を検討し、内閣を挙げて全力取り組みます。  日本米国中国のいずれの二国間関係の前進も、アジア太平洋地域全体の安定と発展に寄与するものであります。米中関係が改善の方向に向かい始めたことを歓迎し、我が国中国の両国民国交正常化二十五周年を心から祝福できるよう、相互信頼に基づく両国関係発展に努めるとともに、中国WTO早期加盟支援などにより、中国国際社会との一層の協調を促します。  朝鮮半島に関しては、今週末の首脳会談などを通じて韓国との友好協力関係を一層強化するとともに、朝鮮半島の平和と安定に資するとの観点を も踏まえ、韓国などと緊密に連携しながら日朝関係に対処いたします。  欧州諸国との関係においては、我が国欧州との間の広範な協力を推進するとともに、アジア欧州国際社会における責任を共有し相互利益を増進するため、アジア欧州会合発展努力いたします。  ロシアとの関係では、さまざまな分野活発化しつつある対話協力をさらに強化するとともに、特に、東京宣言に基づいて北方領土問題解決し、平和条約を締結して関係の完全な正常化実現するため、引き続き努力してまいります。  我が国は、本年から国連安全保障理事会の非常任理事国となりました。国際社会が直面するさまざまな問題解決に向けて、国連の場などを通じて国際社会を先導し、これまで以上に主体的に行動いたします。国連時代要請に適合した役割を果たすことができるよう、全体として均衡のとれた国連改革実現に努めるとともに、安保理常任理事国入り問題については、国連改革進捗状況アジア近隣諸国を初めとする国際社会の支持と一層の国民的理解を踏まえて対処いたします。  中東などにおける地域紛争の予防と解決や、アフリカなどで深刻化している難民問題解決にも、国連平和維持活動への参加などを通しで、積極的に対応いたします。  大量破壊兵器通常兵器の軍縮と不拡散に関しては、唯一の被爆国の立場から、核兵器に用いられる核物質の生産を禁止するための条約交渉早期開始努力するなど、核兵器のない世界を目指し、率先して取り組みます。  途上国開発努力支援することは、世界全体の平和と繁栄だけでなく、我が国利益に資するものであります。国民皆様の御理解をいただきながら、政府開発援助を一層効率的に実施してまいります。同時に、途上国が直面する課題の変化に的確に対応すをため、開発援助の質の向上に重点を置いて、政府開発援助のあり方をさまざまな角度から検討いたします。  我が国は、これまで戦後の経済発展の成功を中心に、みずからの経験を諸外国に伝えてまいりましたが、今後、環境問題を初めとする我が国経験を、成功例にとどまらず、失敗事例やその解決の過程における困難、そしてそれを克服してきた努力などを含めて紹介し、他の国々が同じ過ちを繰り返すことのないようにすることが重要であります。昨年末に我が国が主催した東アジア社会保障担当閣僚会議は、私のこのような考え方社会保障福祉分野において具体化したものでありますが、世界福祉構想に基づき、今後ともあらゆる機会をとらえ、各国との間でお互いの経験を共有するよう努めてまいります。  この三月には国と地方を合わせて四百四十二兆円にも上る長期債務を抱える中、財政健全化を進めていくためには、歳出歳入両面にわたる構造改革が不可欠であります。私は、このような認識に立って、平成九年度を財政構造改革元年と位置づけ、九年度予算を編成いたしました。  歳入面においては、消費税率の引き上げ及び地方消費税の導入を予定どおり実施するとともに、特別減税を実施しない決断をいたしました。これは、これ以上の赤字拡大を放置することが財政の破綻につながる状況もとで、地方福祉充実のための財源を確保するとともに、働く世代負担を軽減し、社会を構成する一人一人が広く負担を分から合うことにより、経済構造改革にも資する税制改革を行うためであります。六十五歳以上の低所得者層など、税制改革による影響が大きい方には必要な措置を講ずることとしております。  歳出面においては、一般歳出伸び率名目成長率より相当低い一・五%に抑えることなどにより、国債費を除く歳出租税収入などで賄える範囲にとどめ、財政健全化第一歩としております。  景気との関係では、九年度予算にあわせて八年度補正予算早期成立と円滑な執行に努めるなど、適切な経済運営を進めてまいります。  財政再建は、九年度が第一歩であり、今後さらに厳しい努力が必要であります。財政健全化については、平成十七年度までのできるだけ早い時期に国及び地方財政赤字の対GDP比率を三%以下とすること、国の一般会計においては特例公債依存からの脱却と公債依存度の引き下げを図ることなどを目標といたします。  その実現に向けて、財政構造改革会議設置し、政府・与党が一体となって、歳出改革と縮減を具体的にどう行うかを早急に検討し、十年度概算要求段階からその成果を反映させ、予算編成においで一段と歳出改革と縮減を進めるとともに、財政再建のための法律の骨格を決め、できるだけ早い機会に国会法律案をお諮りしたいと考えております。私自身、こうした検討作業の先頭に立ち、皆様から評価いただける平成十年度予算を編成いたします。  同時に、少子・高齢化の進展の中で、働く世代や企業の負担の増大が経済活力を低下させる懸念を踏まえ、現在及び将来の世代負担の抑制に最大限努力いたします。処理すべき債務が二十七兆円を超え、深刻な状況にある国鉄長期債務については、十年度から本格的処理を実施すべく具体策を取りまとめてまいります。  財政投融資につきましては、改革を推進するとの基本方針もと、対象となる分野、事業について、公的部門は本来民間活動を補完すべきものであるとの観点償還確実性といった観点などから見直すとともに、効率的かつ重点的な資金配分に努めてまいります。  我が国世界的にも高い教育水準を達成できたことは、教育に対する国民の情熱のたまものでありますが、今後、国民一人一人が充実感を持って暮らしていくためには、学歴が一生を左右しかねない現状を改め、一人一人が自分の適性に基づいて能力を伸ばし、努力し、生涯にわたって活躍できる社会建設する必要があります。また、国際化情報化が進展する中で、国際社会に通用する人材を育成することはまずます重要であります。  かかる認識に立ち、平等性均質性を重視した学校教育を、個々人の多様な能力開発と、創造性チャレンジ精神を重視した生涯学習の視点に立った教育に転換する教育改革を進めてまいります。  私は、この国の将来を担う次の世代が、みずからの夢や目標のために努力すると同時に、国や地域の将来に高い志と国際的視野を持って積極的にかかわっていく世代であってほしいと願っております。こうした人材を育てるためには、答えが決められている問題を解く知識だけではなく、みずから問題意識を持って自分なりの解答を出し、その実現努力できる知識、見識、良識をバランスよく育てる教育が必要であり、また、子供たちが多様な夢や目標を目指して努力するには、教育分野においても選択の幅を広げることが必要です。  このような認識に立って、学校週五日制に移行するための準備を進めながら、中高一貫教育などの学校制度教育課程見直しにより、子供たちの持つ可能性を十分に引き出し、生きる力をはぐくむことのできる教育実現したいと考えます。いじめや非行の問題については、家庭、学校、地域社会が一体となって取り組むことができるよう支援を強化いたします。  社会の進歩と人々の幸福につながる知的資産世界に発信できる科学技術創造立国を目指し、独創的、基礎的な研究開発体制充実創造性に富む人材の育成、産学官連携協力の推進、脳科学遺伝子研究充実など、科学技術振興にも努力いたします。また、開かれた大学づくり自己啓発公共職業訓練などによる生涯学習の充実、スポーツ、文化芸術活動振興、留学生の交流拡大を含めた諸外国との文化交流文化協力活発化にも力を入れ、だれもが生きがいのある人生を送ることができる社会建設努力いたします。  女性政策については、男女共同参画社会実現するための行動計画を着実に実施するとともに、新たな審議会設置を図ります。また、働く女性が性により差別されることなく、かつ、母性を尊重しながらその能力を十分発揮できるよう、関係法案を今国会に提出いたします。  人権が守られ、差別のない公正な社会実現に向け、人権に関する教育や啓発など人権の擁護に関する施策を推進いたします。また、アイヌに関する文化振興理解の促進を図ります。  急速な少子・高齢化が進展する中で、給付と負担均衡がとれた社会保障をいかに実現するかは、国民公的負担水準とかかわる重大問題でありますが、社会保障の費用は、本人の負担事業者負担か税金を使った国や地方負担かにかかわらず、だれかが負担しおければならないものです。個人の尊厳と自立自助勢力を縦軸として確立した上で、社会の連帯の精神を横軸に据えて、民間の参入を促しながら、利用者の選択に応じて質の高いサービスを効率的に提供できる社会保障制度を整備してまいります。  切実な問題となっている高齢者介護問題に対応する介護保険制度の創設は、社会保障構造改革第一歩であり、今国会における法案成立全力を尽くします。また、大幅な赤字体質となっている医療保険制度をこのまま放置することは許されません。国民保険仕組みを維持しながら、適切かつ効率的な医療サービスを安心して受けられるよう、今国会に提出する法案出発点として、医療の提供体制保険制度全般にわたる総合的な改革を行います。さらに、高齢者障害者の方がハンディキャップを克服し、できるだけ自立した生活を送ることができるよう、新ゴールドプランと障害者プランを着実に推進いたします。  少子化傾向が定着し、夫婦共働き家庭が一般化した今日、社会の支えなくしては仕事と育児の両立は困難です。今国会においては、子供を持つ家庭のさまざまな要請に応じて保育サービスを選択できるよう、制度を改正したいと考えております。  私が目指す日本経済は、民間の需要が原動力となって安定した成長軌道をたどり、質の高い雇用の場が拡大する経済であり、豊かな国民生活財政健全化は、こうした経済もとで可能となるものであります。強靱な日本経済を再建するためには、富をもたらし新たな雇用をつくり出す重要なかぎとなる新しい産業についで、資金技術人材などの観点から環境を整備し、成長が期待される分野に応じて総合的な施策を展開しなければなりません。また、経済的に効果の大きい規制の撤廃や緩和、企業税制改革持ち株会社の解禁などを通じ、魅力ある事業環境を整備し、経済効率性柔軟性産業競争力を高めることが不可欠です。  同時に、サービス産業化が進む中にあっても、製造業日本経済基盤であり、先端産業を支える部品産業など、物づくりを支える地域における技術や技能の集積を守り育てることは重要な課題でおります。あわせで、経営革新努力する中小企業支援する目とも必要です。  昨年末に決定した経済構造の変革と創造のためのプログラムは、このような認識に立つで、経済構造改革を大胆に実行していくための政府取り組みを明らかにしたものであります。特に、物流、エネルギー及び情報通信は、産業活動基盤であり、コストを含めたサービス水準を二〇〇一年までに国際的に遜色のないものとすることを具体的な目標に掲げております。情報通信分野では、NTTの国際通信業務への進出、情報通信基盤の整備を推進いたします。  今後、関連法案の成立に努力するなど、このプログラムを着実に実施してまいりますが、プログラム基本的考え方に示された課題に対する今後の取り組み内容をできる限り充実するなど、その実現に向け政府行動計画を今年の春までに策定いたします。  農業についても構造改革を急がなければなりません。農業・農村をめぐる環境は、農業基本法が制定された昭和三十年代から大きく変化しており、意欲ある農業者の育成、活力にあふれた農村の再生など、WTO体制にも対応した農政を実現するための新たな基本法の制定に向けて本格的な検討を進めます。  水産業については、韓国中国との新漁業協定早期締結資源管理やつくり育てる漁業の推進に努めます。  公正で透明な多角的国際経済システムは、これらの経済構造改革を支えるものであり、貿易関連国際紛争WTO協定に即して解決するとともに、新しいルールづくりにも積極的に取り組みます。  国際的な自由化の進展や情報技術の革新を先取りし、東京をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場に復権させることを目指す金融システム改革は、円の国際的地位を向上させ、本格的な高齢社会の到来を控えた我が国経済活力を維持するために不可欠です。国境を越えた金融取引を抜本的に自由化する法案を今国会に提出することを初めとして、銀行、証券、保険分野への参入を促進し、千二百兆円に上る個人金融資産を有利に運用することができるよう規制見直し国際化に対応した法制度を整備するなど、二〇〇一年までに逐次改革を実行してまいります。  この改革は、利用者が多様な商品やサービスを選択することを可能にしますが、その一方で、リスクを伴う取引を自己の責任のもとで行うこと、さらには規制に安住する経営が許されなくなることを意味します。政府としては、こうした状況に的確に対処するために、ディスクロージャーの徹底、ルールの明確化などにより、透明かつ公正な金融行政を行います。同時に、金融危機が国際的に瞬時に伝播することも考えられるため、緊密な国際協力体制を確立してまいります。あわせで、我が国金融システムの安定に万全を期すとともに、金融機関の不良債権問題の速やかな処理に全力を尽くします。  さらに、新たな金融行政に対応するために金融行政機構改革する法案と、日本銀行を開かれた独立性を持つ中央銀行に改革する法案の今国会中の成立を期します。  発生から二年を経過した阪神・淡路大震災は、多数の死傷者と甚大な被害をもたらしました。また、昨年末に姫川蒲原で発生した土石流災害は、とうとい人命を失う結果となりました。亡くなられた方々と御遺族に対しまして、改めて深く哀悼の意を申し上げますとともに、これらの教訓をもとに、今後の災害対策や災害発生時の危機管理に万全を尽くします。また、補正予算や九年度予算における措置などにより、阪神・淡路大震災の被災地の生活の再建、経済の復興、安全な地域づくりや全国的な防災対策充実に最大限努力いたします。  また、阪神・淡路大震災の教訓や東京圏への一極集中などを踏まえ、全国総合開発計画の策定や首都機能の移転に積極的に取り組みます。  社会資本の整備に関しては、限られた予算を効率的に活用するために、住宅・都市、環境衛生など国民生活の質の向上に直結する分野や、国際ハブ空港や高規格幹線道路など次世代発展基盤となる分野に一層重点的に予算を配分してまいります。同時に、公共事業に対する批判を重く受けとめ、建設コストを大幅に縮減するための行動計画を早急に作成し、実施いたします。また、整備新幹線の未着工区間については、整備区間ごとに、収支採算性、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意などの基本条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断してまいります。  都市に関しては、大都市とその周辺に暮らす住民のために、職場と住宅の近接した快適な住環境実現や、密集市街地の整備などによる都市の構造改革に努めるとともに、土地の有効活用や実需 に基づく取引の活性化のために、土地政策を利用重視に転換することとし、新しい土地政策要綱を早急に策定いたします。  また、ゆとりと潤いにあふれ、緑豊かな国土を目指し、農山漁村の振興に努めるとともに、森林の多面的な機能を踏まえ、我が国林業のあり方を検討いたします。  環境開発に関する国連特別総会が開催される本年は、持続可能な開発の重要性に世界の首脳が一致した地球サミットから五年目に当たり、我が国としても環境問題への取り組みを大きく前進させるべき年であります。特に、十二月に京都で開催される国際会議は、二十一世紀における地球温暖化防止のための国際的取り組みを定める重要な会議であり、効果があり、かつ公平で実行可能な合意が得られるよう、各国に積極的に働きかけてまいります。  同時に、原子力の平和利用は、地球の温暖化と我が国の脆弱なエネルギー供給構造に対応するために不可欠であり、徹底した安全の確保を前提に積極的な情報公開に努め、国民皆様の御理解をいただきながら着実に推進いたします。  また、循環型社会を目指した廃棄物のリサイクルや排出抑制、産業廃棄物の適正な処理や不法投棄問題への対応に必要な制度改正を行うとともに、環境アセスメント制度についても所要の法案を今国会に提出する考えであります。  日本海で発生したタンカー海難事故により流出した重油は、広い範囲の海岸に漂着しており、自然環境や漁業への影響が懸念されます。いち早く重油の回収に当たられた地域皆様方やボランティアの方々に一日も早く安心していただけるよう、政府としては、地方公共団体と緊密に連携をとりながら、また民間の御協力を得ながら、関係省庁が一体となって被害の拡大防止に万全を期します。  また、市民生活の安全を脅かす銃器の使用や薬物の乱用への対策、組織犯罪対策、交通安全対策にも力を入れます。  以上申し上げた変革と創造実現するという内閣の決意を示し、国民皆様の御支持、御協力をいただくためには、政府みずからの改革を率先して行うことが不可欠です。そして、それはまさに政治の責任であります。  私は、行政サービスを利用する国民の立場から国が果たすべき機能を見きわめ、国民が求めるサービスを最小の費用で提供できる行政我が国の活力ある発展のために経済社会の変化に柔軟に対応できる行政をつくり上げることが行政改革の目的であると考えます。この目的に照らし、国や地方公共団体規制などによって民間活動に関与していることを廃止できないか、国の現業や特殊法人などの公的部門が提供しているサービス民間にゆだねられないか、行政が関与する場合であってもその主体を国から地方にゆだねられないか、この三つの観点から、一切の聖域を設けず行政のあり方を総点検いたします。  官民の役割分担に関しては、市場競争の原理を尊重し、行政改革委員会がまとめた判断基準を最大限活用して見直しを進めます。公的規制に関しては、規制緩和推進計画を三月末までに再度改定し、さらに、経済規制の原則排除、社会規制の白地からの見直しによって必要最小限に絞り込んでまいります。  地方公共団体との関係では、地方の自主性と自立性を高めるために、権限の移譲を進め、中央集権型行政の象徴とされている機関委任事務制度を廃止するとともに、補助金などの整理合理化や、国と地方役割分担に応じた地方税財源の充実確保を行います。自主的な合併を初めとする行政体制の整備と、徹底した行財政改革に取り組むよう、地方公共団体に強く求めながら、平成十年の通常国会が終了するまでのできるだけ早い時期に地方分権推進計画を策定し、総合的かつ計画的に地方分権を推進いたします。  政府は、九年度中に情報公開法案国会提出を図り、また特殊法人に関する一層のディスクロージャーなど行政活動状況と政策を積極的に説明し、開かれた行政実現するために努力いたします。一カ所で複数の事務手続を可能にすみワンストップサービスの導入や情報技術を利用した行政情報の提供など、行政サービスの質の向上にも努力いたします。  中央省庁の再編については、以上申し上げた認識に基づき、行政改革会議において十一月末までに成案を取りまとめます。  行政改革を進めるに当たり、政治の責任でこれをなし遂げるためには、政治への信頼を回復することが不可欠であります。政治の浄化に関しては、各党各会派で政治資金選挙制度について十分御論議いただき、その結果を踏まえて適切に対処するとともに、政治行政が個別地域や特定業界の利益をいたずらに守っているとのおしかりを受けることがないよう、毅然と対応いたします。  また、閣僚に対しては、各省庁の立場を離れて高い識見とリーダーシップを発揮するよう、公務員に対しては、縦割りの弊害を克服し国民本位の行政改革実現全力を尽くすよう、それぞれ求めます。あわせて、行政に対する信頼を回復するため、すべての公務員が国民全体の奉仕者であるとの自覚を持って、各省庁の定めだ倫理規程を遵守するよう徹底するとともに、全省庁の事務執行体制を再点検し、不祥事の根絶に万全を期します。さらに、公務員制度のあり方について総合的な見直しを行います。  以上、私の所信を申し述べでまいりました。  戦後五十年の間に極めて精緻かつ強固になった経済社会システムを変革し創造することは、かなりの痛みを伴うものであり、新しいシステムをつくり上げる以上の英知と勇気を必要といたします。  規制を撤廃すれば、規制の傘のもとに保護されてきた事業者は競争の荒波にさらされ、利用者にもみずからの責任において商品やサービスを選択する目が求められます。財政効率化すれば、それに依存している方々は厳しい状況に置かれます。個々人には、逆境にあっても失敗をしても、立ち上がる不屈の精神が求められます。真に手を差し伸べるべき方々には必要な手だてを講じます。しかし、痛みを恐れて改革の歩みを緩めたり、先延ばしをすることは許されません。今を生きる我々には、よりよい世界実現し、次の世代にそれを引き継ぐ責任があります。(拍手)  変革と創造実現のために、困難を乗り越えるリーダーシップを発揮することは政治の使命であります。みずから方向性を示し、国民皆様からいただく御意見、御提案には真剣かつ謙虚に耳を傾け、その上で、議論し、決断し、実行する、そのためにすべてをささげる、これが私の申し上げたいことのすべてであります。  国民皆様並びに御臨席の議員各位の御支援と御協力を心からお願いいたします。(拍手)     —————————————
  15. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 外務大臣池田行彦君。     〔国務大臣池田行彦君登壇〕
  16. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 第百四十回国会の開会に当たり、我が国外交基本方針につき所信を申し述べます。  まず、昨年十二月に発生した在ペルー日本国大使公邸占拠事件が今なお解決に至っていないことは極めて遺憾であります。人質とされている方々の御苦労と御家族、関係者の御心配を思うと、心痛にたえません。政府としては、テロに屈することなく、ペルー政府信頼し、これと緊密に連携して、人命尊重を第一としながら平和的解決を図り、人質早期全面解放実現すべく粘り強い努力を続けております。  国際社会は一致してテロに対する断固たる姿勢を示しており、政府としては、この事件が一刻も早く平和的に解決するよう一層の努力を傾ける決意であります。テロについては、各国ごとの対策とともに効果的な国際協力が不可欠であり、この ための努力もしてまいります。また、政府として、海外邦人の安全対策並びに在外公館の警備の強化を含む危機管理体制の一層の強化に努めてまいります。  我が国外交の基本目標は、言うまでもなく我が国の安全と繁栄の確保にありますが、国際的な相互依存が深まっている現在、これは国際社会の安定と繁栄なしには実現できません。我が国としては、そのためのより好ましい国際環境を醸成していくため、これまで以上に主体的な外交を展開してまいります。  米国を初めとする主要諸国との関係の強化は、我が国外交の基本であります。  日米関係日本外交の基軸であり、また、アジア太平洋地域の平和と繁栄のかなめであるのみならず、世界全体にとっても重要な関係であります。昨年四月の日米首脳会談で示された方向に沿い、今後とも幅広い分野における協力関係進展に努めてまいります。  特に日米安保体制日米関係の根幹であり、その一層円滑かつ効果的な運用に努める必要があります。沖縄県における米軍施設・区域の問題については、先月合意された沖縄に関する特別行動委員会最終報告内容を着実に実施しつつ、今後とも最重要課題の一つとして真剣に取り組んでまいります。また、日米防衛協力のための指針の見直しなどの作業を精力的に推進いたします。経済分野でも、航空などの残された問題解決に向けて引き続き努力いたします。また、WTOやAPECにおける協力やコモン・アジェンダを初めとする地球規模問題についての協力も一層推進してまいります。  地理的に近く、また歴史的にかかわりの深い中国韓国との関係は、隣国であるがゆえに生じる種々の懸案はありますが、いずれも我が国にとり最重要な二国間関係であり、懸案の解決に向け努力しつつ良好な関係を維持発展させていくことは、お互いの国のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとり極めて重要であります。  中国との間で本年は国交正常化二十五周年に当たり、緊密な対話とさまざまな交流を通じて日中関係の一層の発展に努めてまいります。また、中国国際社会において建設的な役割を果たしていくことの重要性にかんがみ、中国改革・開放政策を引き続き支援し、WTO早期加盟を支持していくと同時に、国際社会のさまざまな課題への取り組みにおいで日中間の協力を強化いたします。さらに、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の問題を含め、日中間の諸懸案の解決に努めでまいります。また、本年七月には香港が中国に返還されますが、香港の繁栄を支える法の支配のもとでの自由で開かれた諸制度が返還後も維持されることが重要であると考えます。  なお、アジア太平洋の平和と繁栄にとり、日米中三カ国の安定的な関係は極めて重要であり、こうした観点から、米中関係進展を歓迎いたします。  韓国との間では、二国間の種々の問題に適切に対処しつつ良好な関係推進するとともに、国際社会の中で日韓両国が協力していく重要性がますます高まっております。私は、先週訪韓し、柳宗夏外務部長官に対し、改めてかかる考え方を伝え、意見の一致を見ました。また、今週末の金泳三大統領の訪日がこうした日韓友好協力関係を一層発展させることと確信しております。  北朝鮮情勢については、今後ともその動向を注視していく必要がありますが、日朝関係については、第二次世界大戦後の不正常な関係を正すとともに、朝鮮半島の平和と安定に資するものとするとの二つの観点を踏まえ、韓国などと緊密に連携しながら対処いたします。また、米韓両国が提案した四者会合を引き続き支持してまいります。北朝鮮の核兵器開発問題については、今後とも米国及び韓国と緊密に協力しつつ、朝鮮半島エネルギー開発機構の活動に積極的に取り組む所存です。  また、中国及び韓国との間では、現在、新たな漁業協定を締結すべく協議を行っております。国連海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた協定が早期に締結されるよう鋭意努めます。  本年はASEAN創設三十周年に当たり、年頭に橋本総理大臣もこの地域を訪問されたところであります。我が国は、アジア太平洋において役割を増しているASEAN諸国を中心として、今後とも東南アジアとの協力関係を強化してまいります。さらに、近年の経済自由化を基礎に著しい発展を遂げつつあるインドなど、南西アジア諸国との関係推進いたします。  ロシアとの間では、国交回復四十周年でもあった昨年は、首脳会談を初めとする一層緊密な対話が持たれました。今後も、ロシア第一副首相及び国防相の訪日、私自身の訪日などを積み重ね、引き続き両国間の対話の維持強化を図り、種々の分野における実務関係を着実に進めてまいります。同時に、東京宣言に基づき北方領土問題解決し、平和条約を締結して、両国間の関係の完全な正常化を達成するため粘り強い努力を続ける所存です。(拍手)  また、今後のアジア太平洋地域発展にとって、東アジアに次ぐ世界成長センターとなりつつある中南米諸国の役割も重要です。今回のペルーでの事件は大変遺憾でありますが、中南米諸国の長期的安定を重視し、これら諸国が抱えている諸問題解決に向けての支援を強化してまいります。  我が国としては、アジア太平洋における主要二国間関係の強化と並行して地域協力推進し、もって域内の繁栄の確保と信頼関係向上に努めてまいります。  APECについては、本年のカナダ会合に向けて、自由で開かれた貿易と投資の達成のための個別行動計画を着実に実施するとともに、そのさらなる改善を図っていく必要があります。我が国としては、経済技術協力分野の強化や民間部門との連携強化などへの取り組みを含め、APECのさらなる発展に貢献してまいります。  安全保障の面では、ASEAN地域フォーラムがこの地域信頼醸成に重要な役割を果たしております。昨年七月の閣僚会合において合意された協力措置を着実に実施し、その活動発展させるため、我が国としても貢献してまいります。  統合を強めつつある欧州地域は、国際社会において引き続き重要な地位を占めております。我が国は、欧州との対話の枠組みを強化するとともに、具体的な協力を着実に進めてまいります。また、昨年始まったアジア欧州会合については、本年二月にシンガポールで外相会合が、九月には我が国経済閣僚会合などが予定されており、明年の第二回会合へ向けてその発展に貢献いたします。  以上述べたように、各国との二国間関係を強化し、地域協力推進すると同時に、国際社会全体として取り組むべき共通の課題の克服に向けた努力にも積極的に協力してまいります。  我が国は、本年より二年間、安保理非常任理事国を務めます。選出に当たり国際社会より示された期待にもかんがみ、一層積極的な役割を担ってまいります。国連改革については、国連の機能強化を目指して、安保理、財政経済社会分野を含め全体として均衡のとれた改革を進めるよう、率先して取り組んでまいります。我が国は、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方もとで、多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国としての責任を果たす用意があることにつき、これまでも国連総会などの場において表明してきているところであります。  以下、国際社会が直面する幾つかの主要課題と、これに対する我が国取り組みを述べたいと思います。  我が国は、核軍縮及び不拡散に真剣に取り組むよう一貫して訴えてまいりました。昨年の包括的核実験禁止条約の成立は歴史的な一歩であり、我が国は、その早期発効に向けて努力を続けます。さらに、カットオフ条約交渉早期開始のために最大限努力いたします。また、二〇〇〇年の核不拡散条約再検討会議に向けた準備プロセスが円滑に進展し、関係国間で建設的な議論が行われるよう努めます。  通常兵器に関しては、昨年発足した新たな国際的輸出管理体制を通じて、今後ともその過度の移転と蓄積の防止に努めます。また、対人地雷の全面禁止に向けた努力を継続するとともに、地雷の除去や犠牲者に対する支援などについての国際協力を強化するため、本年三月、対人地雷に関する東京会議を開催いたします。  地域紛争への対処に関しては、国連平和維持活動や人道的な国際救援活動に引き続き人的、物的な貢献を行うとともに、地域紛争の予防、解決、復興支援のための協力を続けてまいります。難民の急増は、深刻な人道問題であるとともに世界の大きな不安定要因であり、特に、近年大量の難民が発生している中部アフリカ地域に対しては、国連難民高等弁務官やアフリカ統一機構などの取り組み支援していく所存です。  中東和平プロセスは依然楽観を許しませんが、国際社会協力し、各当事者に対し和平プロセスの促進を働きかけでまいります。ゴラン高原における国連兵力引き離し監視隊への自衛隊部隊などの派遣の継続やパレスチナ支援及び多国間協議への参画などの努力も継続いたします。また、湾岸地域の安定を確保するため、湾岸諸国との対話協力の拡充に努めてまいります。  旧ユーゴ和平に関しても、これまでの和平努力の成果を一層進展させるため、人道・難民支援及び復旧復興支援などの分野で適切な貢献を続けてまいります。  開発途上国の安定と発展は、国際社会全体の平和と繁栄にとり不可欠であり、政府開発援助は、このために我が国がなし得る貢献の中核であります。政府開発援助を通じて途上国開発問題に取り組むことは、国際社会に大きく依存する我が国自身の利益にも資するものであり、今後とも、その効率的、効果的な実施と一層の充実に努めます。  我が国は、途上国の主体性の重視及び先進国と途上国のパートナーシップを中心的な理念とする新たな開発戦略を提唱しておりますが、その考え方に基づき、開発の成果を上げるよう努めでまいります。特にアフリカの安定と開発に関して、明年をめどに第二回アフリカ開発会議を、また本年その準備会合を我が国で開催いたします。  日本経済の繁栄のためには、世界経済の持続的な発展が不可欠であります。我が国は、経済のグローバル化が生み出している機会を積極的に活用すべく、これまで以上の思い切った規制緩和、競争政策の徹底、市場アクセスの改善などの経済構造改革努力を行っていく必要があり、こうした施策を通じ、世界経済の活性化にもさらに貢献してまいります。  同時に、経済のグローバル化の進展に伴って生じつつある新たな諸課題に対応する多角的な貿易・投資の枠組みの整備も重要です。我が国としては、第一回WTO閣僚会議の成果を踏まえ、新たな分野でのルールづくりなど多角的貿易体制の一層の強化に取り組むとともに、OECDにおける多数国間投資協定交渉を本年のOECD閣僚理事会までに終結すべく努力し、多角的で公正、透明なルールに立脚した国際経済システムの強化に引き続き努めます。また、主要先進国首脳会議などの場を活用し、引き続き先進諸国間の政策協調を強化してまいります。  我が国は、よりよい地球社会実現に向け、人口、環境福祉、食糧、エネルギー、原子力安全などの諸課題や、テロ、国際犯罪、麻薬問題など市民社会への挑戦と言える諸課題の克服に向けた国際協力に積極的に参画してまいります。また、民主化の促進及び人権の擁護にも積極的な役割を果たしてまいります。  特に環境問題については、本年六月に開催される国連特別総会が所期の成果を上げるよう協力してまいります。また、地球温暖化対策については、本年十二月に京都市においで気候変動枠組条約第三回締約国会合が開催されますが、この会議は二〇〇〇年以降の国際的取り組みに関する枠組みを定める重要な機会であり、その成功に向けて開催国として全力を尽くしてまいります。  また、安定した国際関係に不可欠な国民レベルの相互理解協力のすそ野を広げるための努力も継続いたします。そのため、文化交流分野においても、二国間にとどまらず、多国間の対話と交流や政府民間活動の連携を重視し、文化遺産の保存にも積極的に協力いたします。また、海外広報活動の一層の充実や査証手続の簡素化にも努めてまいります。  以上、外交基本方針について申し述べました。内政と外交がますます一体化する中で、私は、国民皆様の一層の御理解が得られるよう、世論に十分耳を傾けつつ、引き続き外交実施体制の一層の強化に努めてまいります。  何とぞ、議員各位、国民皆様の一層の御支援と御協力をお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 大蔵大臣三塚博君。     〔国務大臣三塚博君登壇〕
  18. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 平成九年度予算審議をお願いするに当たりまして、今後の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要の説明をいたします。  我が国経済は、戦後目覚ましい高度成長を遂げ、世界有数の地位を占めるに至りましたが、経済のグローバル化の一層の進展に伴い、国際的な競争環境が厳しさを増していく一方で、少子高齢化の急速な進行を背景に、今後、経済活力が低下していくのではないかとの懸念を抱いております。  また、バブル経済崩壊以降長きにわたり経済が低迷する中で、政府は累次にわたる経済対策等を実施し、ようやく民間需要中心の自律的回復への基盤が整ってまいりましたが、たび重なる財政出動や税収の低迷等から、財政赤字は著しく増加し、我が国経済の中長期的な持続的成長の足かせとなりかねない深刻な事態となっております。  これらの直面する問題を克服し、国民一人一人が豊かに暮らせる自由で活力ある二十一世紀社会を構築していくため、今こそ各般の構造改革を強力に進めていかなければならないのであります。  私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、このような認識に基づき、改革第一歩を着実に踏み出し、以下に述べる諸課題全力をもって取り組んでまいる所存であります。  第一の課題は、民間需要主導の自律的な景気回復を確実なものとすることであります。  まず、国際経済情勢を見ますと、米国では景気は安定した拡大が続いており、欧州では総じて緩やかに改善しているなど、世界経済は全体として拡大基調を維持しております。  また、我が国経済の現状を見ますと、景気は回復の動きを続けております。そのテンポは緩やかなものの、民間需要は堅調さを増しております。なお雇用情勢は厳しい状況にあるものの、改善の動きが見られるところであります。  政府としては、このような最近の内外経済情勢を踏まえ、現在の景気の回復力を一層強固なものとし、民間需要を軸とした中長期的な安定成長につなげていくため、引き続き適切な経済運営に努めてまいる所存であります。  九年度予算においても、極めて厳しい財政事情のもとではありますが、経済構造改革に資する創造的、基礎的研究等の分野に重点的、効率的配分を図っているところであります。また、八年度補正予算とあわせ、予算の切れ目のない円滑な執行に努めてまいりたいと考えております。  金融面では、累次にわたる金融緩和措置の実施により、各種金利は依然として低い水準にあり、 その効果を見守ってまいりたいと考えております。また、株式市場の動向につきましては、今後とも十分注視してまいる所存であります。  なお、為替相場については、今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、その安定を図ってまいりたいと考えております。  第二の課題は、財政構造改革であります。  財政健全化は、今や主要先進国共遠の課題であり、各国とも果断に取り組んでおります。我が国においても、現在の財政構造を放置し、財政赤字のさらなる拡大を招けば、経済国民生活が破綻することは必至であり、二十一世紀我が国経済社会活力を維持するため、財政構造改革に取り組んでいくことが喫緊の課題であります。  このため、二〇〇五年度までのできるだけ早い時期に、国及び地方財政赤字対GDP比を三%以下とし、また、国の一般会計において特例公債依存から脱却するとともに、公債依存度の引き下げを図ること等を財政健全化目標とすること、さらに、これらの目標の達成のため、国の一般歳出伸び率を名目経済成長率よりも相当低く抑え、地方に対しても同様のことを要請することを先般閣議決定いたしました。  このような目標もと、九年度予算においては、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革を織り込むことにより、一般歳出伸び率を一・五%と九年ぶりの低い水準に抑制するとともに、公債減額四兆三千二百二十億円、特例公債については四兆五千二百八十億円の縮減実現し、また、国債費を除く歳出を租税等の範囲内に抑制し、現世代の受益が負担を上回る状況を解消するなど、財政構造改革元年として財政健全化に向けた第一歩を踏み出したところであります。  しかしながら、これらの努力をもってしてもなお公債発行残高が平成九年度末には約二百五十四兆円にも達する見込みであるなど、我が国財政は引き続き危機的な状況にあり、今後とも年々着実に財政構造改革を進め、将来世代負担を残さない財政構造をつくり上げることに努力していく必要があります。  このため、十年度予算編成に向けて早い時期から歳出の全般的見直しを進めるとともに、概算要求段階から一層厳しい抑制に取り組むなど、さらなる歳出削減のため努力してまいりたいと考えております。また、政府・与党の財政構造改革会議設置され、財政再建のための法律の骨格を含めた歳出改革縮減の具体的方策が検討されることになっておりますので、その審議に積極的に参画してまいりたいと考えております。  なお、財政投融資につきましては、改革推進するとの基本方針もとで、民業補完の観点をも踏まえ、社会経済情勢の変化等に応じ、その対象分野事業見直し資金の重点的、効率的な配分を図ってまいりたいと考えております。  第三の課題は、税制上の諸課題に適切に対応することであります。  税制につきましては、平成六年秋の税制改革のうち、先行して実施されている所得税等の恒久減税と一体として法定された消費税率の引き上げ等がこの四月から実施に移されます。この改革は、少子高齢化進展という構造変化に税制面から対応するものであり、中長期的に見て、我が国経済社会の活性化につながるものと確信をいたしております。この改革の円滑な実施に向け、政府一体となってきめ細かな対応を図っていくとともに、その意義について国民皆様の一層の御理解をお願いしたいと思います。  税制国家の基であり、国民生活企業活動の前提として安定性が求められる一方、急速な国際化情報化等のとうとうたる潮流変化に即応して改革が常に求められます。今後とも、こうした観点から、より望ましい税制の姿を実現するよう、不断の取り組みを行ってまいる所存であります。  第四の課題は、金融をめぐる諸課題に適切に対応することであります。  金融機関の不良債権問題の処理に引き続き精力的に取り組むとともに、金融の自由化国際化技術革新等、金融をめぐる環境の著しい変化を踏まえつつ、市場規律を基軸とした透明性の高い金融行政の確立に向けて、以下の諸改革を進めてまいります。  まず、東京市場がニューヨーク、ロンドン並みの市場に復権することを目指して、日本版ビッグバンともいうべき広範かつ抜本的な金融システム改革推進いたします。現在、関係する五審議会において、銀行、証券、保険分野への参入促進、商品規制の撤廃・緩和、各種手数料の自由化等について、二〇〇一年までに改革が完了するプランを取りまとめるべく御審議をいただいており、さらに、各審議会代表者による連絡協議会を設置し、改革を二体的に進める体制整備したところであります。この改革のフロントランナーとして、国境を越えたより自由な金融取引を実現するため外国為替管理制度を改正することとし、今国会に所要の法案を提出したいと考えております。また、さきの日米保険協議の決着に基づく自由化の実施は、改革推進に大きな役割を果たすものと考えます。  金融システム改革は、千二百兆円もの個人金融資産の効率的な運用等のため不可欠なものでありますが、他方、市場参加者にリスクや痛みをもたらします。このため、情報開示の促進や早期是正措置等ルールの明確化など必要な措置を講じ、自由かつ透明で信頼できる市場を構築してまいります。また、金融システム全体の安定に細心の注意を払うとともに、国際化に対応した監督協力体制の確立にも努めてまいります。  次に、住専問題等を契機として国民各層から金融行政に対してなされたさまざまな御批判を重く受けとめ、激動する時代の変化に的確に対応し、国民信頼される金融行政を確立する観点から、金融システム改革とともに金融行政機構改革取り組みます。  先般、行政改革プログラムにおいで、大蔵省の銀行局及び証券局を統合するとともに、総理府に民間金融機関等に対する検査及び監督を所掌する機関を設立する等の措置を平成十年度に実施することとされたところであり、与党合意の趣旨を踏まえつつ、国民経済の基本にかかわる問題として万般の詰めを行い、政府として今国会に所要の法案を提出できるよう最大限努力してまいりたいと考えております。  さらに、日本銀行につきましても、中央銀行研究会報告の示した基本的な指針に沿って、開かれた独立性を有する中央銀行とするため、抜本的に改革する必要があります。現在、金融制度調査会においで御審議をいただいており、その答申の取りまとめを受けて、今国会に所要の法案を提出したいと考えております。  第五の課題は、世界経済の健全な発展への貢献であります。  我が国は、WTO、APEC等の場を通じ、多角的自由貿易体制の維持強化に積極的に取り組んでいるところであり、九年度関税改正においても、税関手続の簡素化、適正な課税の確保、関税率の改正等の所要の措置を講ずることとしております。  また、世界経済の安定と発展に資するため、国際社会と協調しつつ、開発途上国の自助努力支援に引き続き積極的に取り組んでまいります。今般、世界銀行における我が国の出資比率の引き上げが合意されたところであり、さらに、本年設立される予定の中東・北アフリカ経済協力開発銀行に対しても積極的に支援していく所存であります。  次に、平成九年度予算の大要について御説明をいたします。  一般歳出の規模を、四十三兆八千六十七億円、前年度当初予算に対し一・五%の増加と、九年度消費者物価上昇率の見通しを下回る伸び率としております。これに地方交付税交付金及び国債費等を加えた一般会計予算規模は七十七兆三千九百億 円となります。  国家公務員の定員につきましては、第九次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、二千二百十九人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。補助金等につきましては、地方行政の自主性の尊重、財政資金の効率的使用の観点から、その整理合理化を積極的に推進いたしております。  次に、歳入面について申し述べます。  税制につきましては、最近の社会経済情勢等に顧み、住宅・土地関連税制等について適切な対応を図るとともに、租税特別措置の整理合理化、蒸留酒に係る酒税の見直しその他所要の措置を講ずることといたしております。なお、自律的景気回復への基盤が整いつつある経済状況や厳しい財政状況を勘案し、特例公債によらざるを得ない所得税の特別減税は実施をいたしません。  公債発行予定額は、前年度当初予算より四兆三千二百二十億円減額し、十六兆七千七十億円としております。その内訳は、建設公債九兆二千三百七十億円、特例公債七兆四千七百億円となっております。その結果、公債依存度は二一・六%となっております。特例公債の発行等につきましては、別途、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。  財政投融資計画につきましては、対象分野事業を厳しく見直すとともに、社会経済情勢の変化に即応し、資金の重点的、効率的な配分を図っております。この結果、一般財投の規模は三十九兆三千二百七十一億円、前年度当初計画に対して三・〇%の減額となっております。また、資金運用事業を加えた財政投融資計画の総額は五十一兆三千五百七十一億円、前年度当初計画に対し四・五%の増加となっております。  次に、主要な経費について申し述べます。  社会保障関係責につきましては、二十一世紀少子高齢化社会においても、国民経済と整合性がとれ、効率的で安定的な社会保障制度を確立するための構造改革を進めることとし、九年度には医療保険制度改革に取り組むこととしております。この改革は、破綻に瀕した医療保険財政を立て直すとともに、世代間の負担と給付の公平を図るために必要なものと考えます。  雇用対策につきましては、産業構造の転換に対応した雇用の創出等を推進するとともに、雇用環境整備など勤労者のための施策を総合的に進めることとしております。  文教及び科学振興費につきましては、教育環境整備、高等教育・学術研究の推進文化振興等を図るとともに、創造的、基礎的研究の充実、着手研究者の支援、活用など科学技術振興のため、各般の施策推進に努めております。  公共事業関係費につきましては、厳しい財政事情等にかんがみ、前年度当初予算と実質的に同水準にとどめでおりますが、その配分に当たっては、公共投資基本計画等の考え方国民のニーズ等を踏まえつつ、国民生活の質の向上に直結する分野、次世代発展基盤整備等、経済構造改革に資する分野等への重点化を図っております。また、各省の枠を超えた事業間の連携の強化を図るとともに、公共工事の建設コストの低減対策を総合的かつ計画的に実施する等、その効率的、効果的実施に努めることとしております。  中小企業対策費につきましては、中小企業を取り巻く厳しい経営環境に配慮し、技術開発情報化に対する支援措置等、特に緊要な課題に重点を置いて施策充実を図っております。  農林水産関係予算につきましては、いわゆる新食糧法の施行やウルグアイ・ラウンド農業合意の実施等を踏まえ、経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体が生産の大宗を担う農業構造の実現に重点を置くこととし、所要の施策の着実な推進に努めております。  経済協力費につきましては、事前調査、事後評価の拡充等を通じまして、途上国から真に評価される質の高い援助の実施に努めるほか、NGO等との連携強化、途上国における人づくり支援充実等に重点を置くこととし、援助の量から質への転換を図ることとしております。  防衛関係費につきましては、中期防衛力整備計画等のもとに、厳しい財政事情等を踏まえ、効率的で節度ある防衛力整備を図ることといたしております。  エネルギー対策費につきましては、地球環境保全の重要性等も踏まえ、総合的なエネルギー対策の着実な推進に努めております。  地方財政につきましては、引き続き大幅な財源不足が見込まれますが、一方、国の財政事情も極めて厳しく、公経済の車の両輪がバランスのとれた財政運営を行う必要があるという基本的考え方を踏まえつつ、所要の地方交付税総額を確保する等、その運営に支障を生ずることのないよう適切な措置を講ずることとしております。地方公共団体におかれましても、徹底した歳出の抑制を図り、財政体質の健全化に鋭意努力されるよう要請するものであります。  この機会に、平成八年度補正予算について一言申し述べます。  八年度補正予算につきましては、歳出面において、阪神・淡路大震災復興対策費、災害復旧等事業費、緊急防災対策費、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策費、緊急経済構造改革対策費、税制改革関連対策費、地方交付税交付金等、特に緊要となった事項について措置を講じております。また、前年度剰余金について国債整理基金特別会計への繰り入れ等を行う一方、既定経費の節減、予備費の減額を行うこととしております。  他方、歳入面では、租税及び印紙収入、前年度剰余金等を計上するとともに、公債金については、建設公債を一兆六千七百六十億円増発する一方、特例公債を三千三百七十億円減額いたしております。  以上によりまして、八年度一般会計補正後予算の総額は、当初予算に対して二兆六千六百六十三億円増加し、七十七兆七千七百十二億円となります。  以上、平成九年度予算及び平成八年度補正予算の大要について御説明をいたしました。関係法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。  これまで申し述べてまいりました財政金融両面からの改革は、もとより容易に達成し得るものではなく、その実現の過程において幾多の困難を伴うものであります。しかし、これらの改革は、二十一世紀に向けて、豊かで活力に富み、国際的にもふさわしい役割を果たし得る経済社会を築いていくため、現世代の私たちが責任を持ってなし遂げなければならないものであると確信いたします。  国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 国務大臣麻生太郎君。     〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
  20. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 日本経済の当面する課題経済運営の基本的な考え方について、所信を申し述べさせていただきます。  敗戦後五十年を経た日本経済は、現在、まさに歴史的な転換期にあると存じます。従来の追いつき追い越せ型経済からの脱却、情報通信革命時代への対応、少子化に伴う高齢化進展、バブル経済の崩壊に伴う調整、円高や大競争と言われる時代の中での生き残りなど、過去、現在そして未来からの挑戦を日本経済は受けております。  例えば、財政社会保障につきましては、さきに経済審議会が行った試算によりますと、現行制度のままでは、国民負担率に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、一九九四年度の三九・二%から、三十年後の二〇二五年度には実に七〇%を超えるとの数字が示されております。また、この試算から、社会保障基金は二〇二五年度までには底をつき、一般政府債務残高は資金調達が困難なほど膨れ上がります。さらに、二十一世紀初頭には、我が国財政のみならず国際収支も赤字になるという双子の赤字の状態に陥り、純債務国に転落することなどの予測が示されております。  我が国が直面しているこれらの問題解決し、未来を切り開いていくためには、行財政改革とともに経済構造改革、すなわち日本経済を支えてきたこれまでの制度や慣行を根本から見直すことが必要であります。経済構造改革については、総論では理解されても、各論になるや、影響を受ける分野から反対の声が上がり、改革を進めるにしても既存の秩序を乱さないよう時間をかけて進めるべきであるとの意見が聞かれます。  しかしながら、経済構造改革は、確かに特定の分野におきましては痛みが生じるものの、日本経済全体にとってはそれを上回る大きな利益が得られるものであるということを忘れてはならないと存じます。また、構造改革がおくれれば、改革によって享受できるはずの利益が得られないことになるばかりか、経済の各分野において既に見られる空洞化がさらに進み、現在の我が国生活水準の維持さえも難しくなるおそれがあります。  すなわち、これまでの経済社会の構造やシステムに安住していては、日本経済の前途は危ぶまれるということであります。現在日本を覆っている閉塞感を払拭し、日本経済活力を復活させるためには、改革が展望を切り開くという認識もと政府国民が相携えて、変化を恐れず、勇気を持って経済社会構造改革推進していくことが必要であると確信をいたしております。  次に、内外の経済状況について申し述べたいと存じます。  世界経済は全体として拡大基調が続いております。米国経済は安定的に拡大をいたしており、西ヨーロッパ経済も総じて緩やかに改善しております。また、アジア経済は、東アジアにおいては一部に減速の動きが見られるものの、総じて拡大を続けております。  他方、日本経済の最近の動向を見ますと、設備投資は回復傾向にあり、住宅建設は高い水準で推移をいたしております。個人消費も緩やかな回復傾向にあります。また、純輸出は、円高是正などもあり、このところおおむね横ばいで推移をいたしております。こうした需要動向を背景として、生産は増加傾向にあります。このように景気は回復の動きを続けており、そのテンポは緩やかでありますが、民間需要が堅調さを増しております。また、雇用情勢につきましては、なお厳しい状況が続いておりますが、最近におきましては、雇用者数が増加するなど明るい動きが見られるところであります。  以上のような状況を踏まえ、私は、平成九年度の経済運営に当たりましては、次の基本的考え方に沿って対応してまいりたいと存じます。  基本的考え方の第一は、適切かつ機動的な経済運営を行いつつ、このところ堅調さを増しております民間需要が主導する自律的な景気回復を実現することであります。  政府は、平成九年度予算におきまして一般歳出を厳しく抑制し財政健全化に取り組む中で、創造的、基礎的な科学技術研究の充実情報通信基盤整備など、二十一世紀に向けて日本経済発展基盤を整える施策推進することといたしております。  金融政策につきましては、内外の経済動向や国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的な運営を図ってまいります。  また、我が国産業の国際競争力の源泉でもある物づくりを支え、地域経済雇用を担っております中小企業につきましては、その活力が失われることがないよう、技術開発、新規創業などに対する支援を中心とする総合的な施策推進してまいります。  物価の安定は国民生活安定の基礎であり、経済運営基盤となるものであります。物価はこのところ安定いたしておりますが、今後ともその安定に努めてまいります。また、本年四月からの消費税率の引き上げに伴い、税負担の円滑かつ適正な転嫁について、消費者及び事業者皆様の十分な理解が得られるよう努めるとともに、便乗値上げの発生を防止するため万全の対応を図ってまいる所存であります。さらに、高いという御指摘もあります公共料金につきましては、事業効率化を通じてその低廉化を図ることが重要であります。このため、参入規制緩和、価格設定方式の改革情報公開の徹底などを積極的に推進いたしてまいります。  以上申し上げた施策や次に申し上げる経済構造改革推進などにより、平成九年度におきます日本経済は、税制改正の影響などにより年度前半は景気の足取りは緩やかとなるものの、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されるとともに、持続的成長への道が開かれるものと見込まれております。  こうした経済の推移により、平成九年度の実質経済成長率は、平成八年度の二・五%程度から一・九%程度と、引き続き内需中心の成長になるものと見込んでおります。具体的に申し上げますと、まず、個人消費は、雇用者所得の緩やかな回復が持続すると見込まれ、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動などが見られるものの、総じて見れば緩やかな回復を続けてまいります。  次に、民間設備投資については、生産の増加や企業収益の改善による好影響が見込まれるとともに、経済構造改革の動きなどをにらんだ新たな投資も期待されることから、全体として見れば、大企業製造業を中心に始まった回復が中小企業や非製造業に広がりを見せるなど、増加傾向が続いてまいります。  住宅投資も、駆け込み需要の反動はあるものの、高水準を維持いたします。また、公的需要につきましては、財政構造改革を反映して横ばいで推移いたします。  国際収支につきましては、貿易サービス収支及び経常収支の黒字が引き続き減少するものの、そのテンポは緩やかなものとなります。  雇用情勢は、厳しさが続きますが、景気の回復につれ徐々に改善していくと思われます。  基本的考え方の第二は、経済構造改革推進であります。  構造改革は、もはや議論をしている段階ではなく、実行に移していく段階に来ております。  構造改革の重要な柱の一つである規制見直し緩和・撤廃につきましては、昨年十二月に経済審議会から建議された六分野経済構造改革の提言を初め、物流、金融、雇用・労働、高度情報通信医療福祉などの分野において、各種の施策に関する方針が打ち出されました。また、新規産業の創出、国際的に魅力のある事業環境の創出などを推進するため、経済構造改革に資する規制緩和の措置の充実を含めた経済構造の変革と創造のためのプログラムを閣議決定いたしたところであります。  これらの施策の具体例を申し上げますと、物流の分野におきましては、目標期限を定め、原則として需給調整規制を廃止するための施策を講ずることといたしております。金融につきましては、二〇〇一年までに東京市場をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場とすることを目指して金融システム改革を行うことといたしております。雇用面では、労働市場の流動化が進んできている現状を踏まえ、労働者と企業双方の要求をより適切に合致させるため、民間有料職業紹介事業の取扱職業の範囲を見直すなどの施策を進めてまいります。  今後は、政府として、これらの規制緩和等についてより実効性を高めるべく、経済構造の変革と創造のためのプログラムの具体化作業及び規制緩和推進計画の改定作業を鋭意進め、経済構造改革を強力に推進していくことが重要であります。  このような規制緩和を初めとする経済構造改革推進を通じて、内外価格差に象徴される日本経済の高コスト構造が改善され、国民経済全体に大きな利益がもたらされるものと確信をいたしております。政府としても、内外価格差の是正、縮小の進展状況を的確に把握するとともに、規制緩和経済効果を可能な限り定量的にお示しすることにより、国民各層の御理解、御協力を得られますよう努めてまいりたいと考えております。  基本的考え方の第三は、安全で安心な生活の再設計を図ることであります。  日本におきましては、これまで、経済的には繁栄し、かつ危険が少なく、加えて安心して暮らせる国をつくってきたと信じられておりました。しかしながら、近年の国民の意識を世論調査などで見ると、教育雇用、犯罪、医療や年金について不安や不満を感じている人がふえてきております。少子化に伴う高齢化進展日本雇用の変貌などにより、国民の将来の生活への確信に揺らぎが生じているように思われます。  これは、これまで社会の各分野を支えてきたシステム時代に合わないものになってきていることによるものと考えられます。このような状況に対応していくためには、経済構造改革社会保障構造改革推進していくとともに、日本社会システム見直し改革もあわせて進め、従来のように安全で安心して暮らすことができる日本社会の再構築を図っていくことが必要であると考えております。  また、特に大都市の住宅事情に見られる、遠い、高い、狭い、醜い、危ないといった五重苦の解消を図るため、土地の有効利用を図るなどの施策を通じて、ゆとりがあり、災害に強い住宅・都市構造の形成を図ってまいらなければなりません。  さらに、規制緩和進展する中で、消費者はより一層多様な選択を行い得るようになってまいりますが、同時に、消費者が自己責任を持つことが求められます。このため、消費者の自立を支援するべく諸施策推進してまいります。とりわけ、消費者と事業者との間の情報力や交渉力の格差を是正し、消費者、事業者双方の自己責任に基づく行動を促すための条件を整えることにより、消費者取引の適正化を図ってまいります。また、製造物責任法が施行されましてから一年余りが経過し、同法が国民の間に浸透しつつあるところであります。今後とも、都道府県などの自主的な裁判外紛争処理体制整備に対する支援、消費者安全教育充実など、関連する諸施策を実施し、消費者被害防止・救済策の推進に取り組んでまいります。  市民活動につきましては、国際化高齢化進展など我が国経済社会を取り巻く環境が変化していく中で、ボランティア活動などに対する国民意識が高まり、福祉、国際協力環境といったさまざまな分野で実際に活動されている方がふえてきております。ボランティアなどによる市民活動社会に根づき、健全な発展を遂げていくためには、法制面を含めた枠組みを構築していくことが必要であり、このための環境整備を積極的に推進してまいります。  基本的考え方の第四は、市場経済化、一体化が進んでいる世界経済への貢献であります。  日本世界とともに共存共栄していくためには、対外的にも一層開かれた経済社会を形成するとともに、人口、環境などを含む国際的な問題への取り組みに積極的に参画することにより、世界経済の持続的発展に貢献することが求められております。  そのため、WTOを中心とする制度的枠組みの中で、多角的自由貿易体制の一層の強化に貢献するとともに、APECにおける貿易・投資の自由化、円滑化のためのマニラ行動計画を着実に実施すると同時に、その内容充実に努めてまいります。  さらに、市場開放や政府調達に関する苦情処理体制の積極的な活用、対日投資促進を図る対日投資会議などの活動を通じて、諸外国から我が国への市場アクセスの改善、さらには国際的に魅力ある事業環境の創出を図ってまいります。  また、地球環境問題や人口問題への対応、民主化・市場経済化促進のための知的支援の強化など、経済協力の新たな課題にも取り組んでまいります。  敗戦後の日本の飛躍的な発展を支えてきた先進国に追いつくためのシステムは、二十一世紀を間近に控え、大幅な見直し改革を行うことが求められております。改革に伴う苦痛を避けて通ることはできません。仮にその苦痛を避けようと改革を先送りしたとしても、いずれは改革を避けることができなくなり、そのときの苦痛はより一層大きなものとなると考えられるからであります。  二十一世紀に向けて我が国経済社会の新たな展望を切り開いていくためには、行政改革経済構造改革金融システム改革社会保障構造改革財政構造改革及び教育改革という六つの改革一体的、総合的に断行していく必要があります。平成九年度は、まさにこの六つの構造改革推進していく上で大きな一歩を踏み出す構造改革元年とならなければなりません。  私たちは、先人の努力によりこれまで蓄積してきた資本、人的資源、高度な技術基盤やそれを支える文化基盤など多くを有しております。また、人口約一億二千五百万人を擁し、その一人当たりの国民所得は世界のトップクラスを誇るという、世界に冠たる国内市場を有していることを忘れてはなりません。これらの財産を活用していくことにより、豊かで安心して暮らせる活力ある高齢化社会を構築していくために、微力ながら精いっぱい努力をしてまいります。  国民皆様並びに各党各会派議員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  21. 荒井広幸

    荒井広幸君 国務大臣演説に対する質疑は延期し、来る二十二日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。
  22. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 荒井広幸君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会      ————◇—————