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1997-05-28 第140回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十八日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 太田 誠一君 理事 岸本 光造君    理事 橘 康太郎君 理事 横内 正明君    理事 鴨下 一郎君 理事 坂上 富男君       安倍 晋三君    奥野 誠亮君       栗原 博久君    笹川  堯君       下村 博文君    西川 公也君       福永 信彦君    吉川 貴盛君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       漆原 良夫君    斉藤 鉄夫君       西村 眞悟君    石毛 鍈子君       佐々木秀典君    山原健二郎君       保坂 展人君  出席国務大臣         法 務 大 臣 松浦  功君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省人権擁護         局長      大藤  敏君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   松尾 好將君         警察庁刑事局捜         査第二課長   縄田  修君         警察庁警備局警         備企画課長   小林 武仁君         防衛庁防衛局運         用課長     高見澤將林君         大蔵省証券局証         券市場課長   柏木 茂雄君         大蔵省銀行局銀         行課長     内藤 純一君         証券取引等監視         委員会事務局総         務検査課長   立石 久雄君         証券取引等監視         委員会事務局特         別調査課長   滝本 豊水君         海上保安庁警備         救難部管理課長 後藤 光征君         建設省河川局河         川計画課長   鈴木藤一郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十八日  辞任         補欠選任   河村 建夫君     安倍 晋三君   正森 成二君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     河村 建夫君   山原健二郎君     正森 成二君     ――――――――――――― 五月二十日  婚外子認知裁判における国により血液鑑定料  の立てかえ制度の創設に関する請願藤田スミ  君紹介)(第二七七六号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (秋葉忠利紹介)(第二七七七号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願秋葉忠利紹介)(第二七  七八号)  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願松本惟子君紹介)(第二  七七九号)  同(桑原豊紹介)(第二八八一号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願大森猛紹介)(第二七八  〇号)  同(北沢清功紹介)(第二七八一号)  同(中路雅弘紹介)(第二七八二号)  同(保坂展人君紹介)(第二七八三号)  同(畠山健治郎紹介)(第二八八二号)  同(藤田幸久紹介)(第二八八三号) 同月二十二日  選択的夫婦別姓導入婚外子差別を廃止する  民法改正に関する請願横光克彦紹介)(第  二九八三号)  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願桑原豊紹介)(第二九  八四号)  同(秋葉忠利紹介)(第三〇七五号)  同(桑原豊紹介)(第三〇七六号)  同(不破哲三紹介)(第三〇七七号)  同(松本善明紹介)(第三〇七八号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願石井郁子紹介)(第二九  八五号)  同(藤木洋子紹介)(第三〇七九号) 同月二十七日  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願秋葉忠利紹介)(第三  一四二号)  同(家西悟紹介)(第三一四三号)  同(池田元久紹介)(第三一四四号)  同(川内博史紹介)(第三一四五号)  同(五島正規紹介)(第三一四六号)  同(秋葉忠利紹介)(第一三九一号)  同(川内博史紹介)(第三一九二号)  同(武山百合子紹介)(第三一九三号)  同(秋葉忠利紹介)(第三二三七号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願畠山健治郎紹介)(第三  一四七号)  同(堀込征雄紹介)(第三二一二八号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員  に関する請願正森成二君紹介)(第三一九〇  号)  同(石井郁子紹介)(第三二三九号)  同(大森猛紹介)(第三二四〇号)  同(金子満広紹介)(第三二四一号)  同(木島日出夫紹介)(第三二四二号)  同(児玉健次紹介)(第三二四三号)  同(穀田恵二紹介)(第三二四四号)  同(佐々木憲昭紹介)(第三二四五号)  同(佐々木陸海紹介)(第三二四六号)  同(坂上富男紹介)(第三二四七号)  同(志位和夫紹介)(第三二四八号)  同(瀬古由起子紹介)(第三二四九号)  同(辻第一君紹介)(第三二五〇号)  同(寺前巖紹介)(第三二五一号)  同(中路雅弘紹介)(第三二五二号)  同(中島武敏紹介)(第三二五三号)  同(春名直章紹介)(第三二五四号)  同(東中光雄紹介)(第三二五五号)  同(平賀高成紹介)(第三二五六号)  同(不破哲三紹介)(第三二五七号)  同(藤木洋子紹介)(第三二五八号)  同(藤田スミ紹介)(第三二五九号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第三二六〇号)  同(古堅実吉紹介)(第三二六一号)  同(正森成二君紹介)(第三二六二号)  同(松本善明紹介)(第三二六三号)  同(矢島恒夫紹介)(第三二六四号)  同(山原健二郎紹介)(第三二六五号)  同(吉井英勝紹介)(第三二六六号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請  願(藤木洋子紹介)(第三二三六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十二日  夫婦別姓制導入反対に関する陳情書  (第三〇七号)  除籍簿、除かれた戸籍の附票等保存期間延長  に関する陳情書  (第三〇八号)  公訴時効の廃止に関する陳情書  (第三〇九号)  裁判所速記官養成継続に関する陳情書  (第三一〇号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 八代英太

    八代委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉川貴盛君。
  5. 吉川貴盛

    吉川委員 大変貴重な質問の時間をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。きょうは三点について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、オウム事件についてのその後につきましてお伺いをいたしたいと存じます。  麻原容疑者を初めオウム幹部裁判が、進行中のものもあり、あるいはもう結審をしたものもございますが、主な内容と、裁判の結果と申しましょうか、経緯と申しましょうか、その辺をまずお伺いさせていただきたいと存じます。
  6. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  当方が把握しているところによりますと、オウム真理教をめぐる一連の事件裁判状況でございますが、平成七年四月から平成九年三月までの間に、延べ三百六十四名、実人員で百八十八名の者が東京地検ほか二十庁から公判請求されております。そのうち、昨日までに有罪判決が確定している被告人の数は、実人員で百三十四名でございます。したがいまして、現在、そのほかの者五十四名が係属中ということでございますが、そのうち十二名が控訴審あるいは上告審係属しておりまして、一審係属中の者は四十二名でございます。  また、その中で、麻原彰晃こと松本智津夫公判状況につきまして概略申し上げますと、平成七年六月から平成八年三月までの間に、いわゆる地下鉄サリン事件落田耕太郎に対するリンチ殺人事件松本サリン殺人等事件公証役場事務長逮捕監禁致死事件弁護士坂本一家殺害事件等十七の事件につきまして、東京地方裁判所公判請求、起訴されまして、現在、検察官による立証が鋭意続けられているところでございます。直近は、第三十八回の公判が去る五月二十三日に開かれました。  そのほか、井上嘉浩、新実智光ら主要な幹部らにつきましても、検察官による立証が鋭意続けられているところであると承知しております。
  7. 吉川貴盛

    吉川委員 裁判大変御苦労されているのではないかと思いますが、我々は報道やマスコミ等の発することでしかよく理解ができないと申しましょうか、知ることができないものでありますから、国民の願いは、あのような大事件を起こした者に対しましては、何とか一日も早く断罪をしていただきたいというような思いでいっぱいでありますので、特段の御努力をお願いさせていただきたいと思います。  次の質問でありますけれども指名手配中のオウム幹部と申すのでしょうか、特別手配の三名がまだ、この日本におるのか、あるいはもう外国に行ったのかわかりませんが、どこかに潜伏をしているのではないかと思うのです。その特別手配の三名の捜査状況と申しましょうか、一体どうなっているのか。これはもう我々国民としては大きな疑問もございますので、その辺の捜査状況をお知らせいただきたいのと、さらに、オウム真理教そのものは現在でも活動を行っているのかどうか、その実態をお知らせいただきたいと思います。
  8. 松尾好將

    松尾説明員 オウム真理教関係警察庁特別手配被疑者追跡捜査についてでありますが、昨年の十一月と十二月に相次いで四名を検挙するなど、現在までに特別手配被疑者十九名中十六名を検挙したところでありますが、依然として三名の被疑者が現在逃走中であります。警察といたしましては、これらの被疑者早期検挙を当面の最重要課題として、全国警察を挙げて、被疑者が潜伏していると見られるアパート、マンション等捜査、そして積極的な各種広報活動等による国民協力確保推進等々を重点とした諸施策を現在推進中であります。
  9. 杉原弘泰

    杉原政府委員 オウム真理教の最近の動向について、私どもの方から御説明申し上げます。  本年の一月三十一日、公安審査委員会におきまして、破防法による団体規制請求棄却決定が行われましたが、教団は、この決定によって社会的に認知されたものと受けとめておりまして、それまでの恭順な姿勢を翻しまして、活動が停滞していた中央組織の再生を初めといたしまして、地方支部道場など活動基盤の拡充や脱会信徒に対する執拗な復帰工作など、組織再興に向けた取り組みを展開いたしております。全国支部道場では、相変わらず説法会やセミナーなどを頻繁に開催し、正悟師クラス幹部が、麻原彰晃こと松本智津夫説法内容を引用するなどいたしまして、従来からの教義を維持いたしますとともに、信徒団結力結束力を高めるための動きを示しております。また、説法会などへの参加費を名目にして相当額の資金の確保をするとともに、組織防衛にも腐心するなど、閉鎖的な集団としての性格を強めております。  このような状況から、当庁におきましては、依然としてオウム真理教には危険性があるものと認識しておりまして、引き続き調査を行っているところであります。
  10. 吉川貴盛

    吉川委員 警察の方の捜査状況をお伺いしたのですが、今のところ余り進展をしていないのかなという感じでありまして、ぴりっとしたお答えではなかったわけでありますけれども、これはともすれば忘れがちなことなのでありまするけれども、もっと強い捜査というのでしょうか、何かそういうことをしていただいて、一日も早くこの特別手配の三名を検挙していただきますように、特に要望を申し上げておきたいというふうに思います。  それから、今公安調査庁長官から、破防法適用除外社会的認知をされたというふうに思っているというような答弁でありましたけれども、これは全く腹立たしいことでありますね。私は、そもそもこの破防法が適用されなかったこと自体がおかしいと思っている一人なわけであります。さらに、この種の団体というのは、いつ姿形を変えてまた活動をするかわからないと私は思うのですね。  こういった冗談を言った方もいますよ。サリンの発見をするときにカナリアを持っていきましたね。オウムをやっつけるのに何でカナリアなんだというような冗談とも似つかないような話でして、例えばカナリア教なんというふうに生まれ変わる可能性だってあるわけですね、この種の団体というのは。常に公安としては目を光らせていただいて、徹底して追跡調査等もする必要があるのではないかというふうにこれは御指摘をさせていただきたいと思います。  続きまして、行革に関連して少しお伺いをさせていただきたいと思うのです。  私は、行政改革の精神の一つとしてスクラップ・アンド・スクラップではないというふうに思っております。スクラップ・アンド・ビルド、ある程度役割とか使命の終わったものはスクラップにして、新たにまたつくり上げていくんだと思うのです。さらに、それは時代に合った組織に改編をしていくことだろうというふうにも思います。  そこで、今、オウム真理教でも大変御苦労をされた公安調査庁なんでありますが、この公安調査庁機能をもっともっとさらに強くしていく必要があるのではないかと私は思うのですね。そもそもの公安調査庁使命そのものは、終わったとは言いませんけれども、決して終わったとは言いません。そもそもの使命は終わりつつあるのかなという感じがいたします。私は、思い切ってこれは生まれ変わるべきだと。今の時代構造に合わせて、例えば警察庁公安警備部門公安調査庁を一体化して近代的な組織に生まれ変わらせることが必要なのではないのかなという気がいたします。  そして、まさしく日本の国、我々が想像もしなかったような危機にしばしば直面をするわけであります。今も聞きましたオウム事件もそうでありますし、思いも寄らぬペルーの事件等にも遭遇をいたしました。そんなことを考えてみますと、今後もいっそういう大事件に遭うかわからないと私は思うのであります。常に危機に対して備えておかなければならないということもあるのではないかと思うのです。  時期的に構造改革時代ですし、構造改革は何も財政構造やあるいは経済構造改革だけではないと私は思うわけであります。それぞれ今日まで果たしてきた役割あるいは分担はあろうかと思いますけれども、どうでしょうか、この辺でお互いに英断をしていただいて、組織を一体化して危機管理をされてはいかがかというふうに思いますが、公安調査庁長官警察庁にそれぞれお伺いをいたしたいと思います。
  11. 杉原弘泰

    杉原政府委員 行政改革会議でさまざまな議論がなされている中で、法務省関係では私ども組織についても問題になっているということは御案内のとおりでございます。  委員がただいま御指摘になられました点に関連いたしまして、私どものこの組織というのは、本来、暴力をもって民主主義的な法秩序を覆そうとするそういう団体に対する調査と、そしてそれを規制するための組織、官庁でございます。今回、オウムの問題もまさにその機能に関連する事柄であったわけですが、オウムのように暴力でもって社会秩序を覆そうとする団体が存在する限り、やはり団体規制という制度は必要であるというのが私ども立場でございます。  そういう観点からいたしますと、我が庁は、破壊的団体規制に関する調査及び処分の請求を行うことを主たる任務とする機関であると言うことができるわけですが、それだけではなくて、一面において調査の過程で情報収集活動というようなことも行っているわけです。しかし、その情報収集というものは、あくまでも団体規制事務の遂行の必要上、破壊的団体規制に関する調査という法的な枠組みの中で行っている事柄であります。  したがいまして、団体規制機能と反面の情報収集機能というものは、いわばコインでいえば表側と裏側になるような形で、密接不可分というような関係になっておりますので、一方だけを分離して、つまり情報機能部分だけを分離して、他の例えば警察公安関係部門と統合するということはいささか難しいのではないかというような感じもいたします。  また、情報というものは、複数機関がそれぞれ異なった専門的角度から収集することによりまして、質的にも高度化し、またかつ、その確度も担保される、あるいは情報の偏りとか情報操作といったような危険も排除されるのではないかというふうなことも考えておりまして、主要な外国の例に見られますように、情報収集活動におきましては、複数機関が存在する方が望ましいのではないかという考え方もあるわけでございます。  御指摘危機管理観点から情報機能強化することの必要性につきましては、私ども公安調査庁としても十分認識しておるわけでありまして、そのことは公共の安全確保にかかわる情報関係機関相互の連携を強化するということで対処し得る場合も多いのではないかというふうに思われます。  ただ、先生の御指摘の点につきましては、今後、私ども公安調査庁のあり方を考える上で十分に検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  12. 小林武仁

    小林説明員 お答え申し上げます。  警察は、治安維持観点から必要な情報収集を行っております。これは、犯罪の予防、鎮圧、検挙に資するための活動であります。  こうした警察の一部の担当部分だけを分離いたしまして新たな組織を構築することが危機管理機能強化につながるかどうかについては、疑問の余地があると思っております。警察としては、むしろ現在のこうした機能充実強化ということに力点が置かれるべきであると考えております。
  13. 吉川貴盛

    吉川委員 それぞれ御答弁をいただきましたが、大体予測ができた答弁なわけであります。  私は、先ほども申し上げましたように、今の時代というのは大変複雑化いたしておりまして、その時代に合った公安関係警備というものをこれからやはり遂行していかなければならないと思っておるのです。その観点から二つの組織を一体化、私は一本化とは言っていません、一体化した形でやるのが時代に合った治安維持の方法ではなかろうか、そして、それが危機管理というものにつながっていくのではないか、こう思うのです。それぞれ優秀な皆さんがいられる組織なわけでありますから、それを一体化して合理的に活動を行っていく、これが今私は求められているのではないかというふうに思うのです。  大臣、何か御所見がございますれば、御意見でも結構でありますが、お願いいたします。
  14. 松浦功

    松浦国務大臣 情報収集機関の一本化による強化は、一つの大変な命題であろうかというふうに思っております。先生指摘公安調査庁警察公安部門との統合という問題につきましては、具体的にいろいろな問題が出てくると思いますので、十分それらの点を踏まえて検討してまいりたい、こう思っております。
  15. 吉川貴盛

    吉川委員 それでは、三点目の質問に移らせていただきたいと思います。  私は、去る二月にこの法務委員会で初質問をさせていただきましたときに、電子取引など情報通信高度利用が進んでおりまして、法制度の整備が必要ではないかというふうにお伺いをしたところであります。そのときに民事局長答弁で、電子取引法制に関する研究会を設置し、鋭意問題点抜本的検討をしているところであるとお答えになられたのであります。  そこで、今日までその研究会におきましてどのような検討がなされて、いつまでにその報告をまとめようとされているのか、最初にお伺いをさせていただきたいと思います。
  16. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先般の当委員会での御質問におきまして答弁を申し上げましたが、若干敷衍して申し上げさせていただきますと、電子取引がこれから本格化しようとしている、こういう状況を踏まえまして、私ども民事基本法のほか、公証制度とかあるいは会社の登記制度とか、そういったものを所管する立場において、電子取引社会においても、早くこれらの私どもの所掌している制度が果たしている機能を十分に果たせるように、そういう観点から、昨年七月からただいま御指摘研究会で取り組んでいるわけでございます。  この研究会におきましては、一つ民事実体法上何らかの特別の手当てが必要かどうかという実体法上の問題、それから電子認証とか電子公証とかいった制度面の問題、こういった両方の分野から研究を進めているところでございます。  前回御答弁申し上げました後の経緯といたしましては、との研究の冒頭に当たって実務界のニーズを聞くということでアンケート調査をいたしました、そういったアンケート調査の結果を報告する。それから、これまでの検討について中間的な取りまとめをして次のステップの基礎にする、あるいは検討状況を公表する。そういう観点から、三月末に中間報告というものを取りまとめたところでございます。  ただ、その中で、その中間報告におきましてはまだ方向性が確定しているわけではございませんので、これを踏まえてさらに今後鋭意検討を進めて、研究会の成果としては本年度中に最終報告をいただきたいということで進めているところでございます。
  17. 吉川貴盛

    吉川委員 今、今年度中に方向性をまとめたいというようなお話でありましたが、民事局長さん、この電子取引が本格化しようとしているというのは、ちょっと私は認識が甘いのじゃないのかなと。もう既に本格化していると私は思うのですよ。それは民事局長と私のその辺の認識が若干違うのかもしれませんが、例えば外為法というのが改正になりましたね。これは日本版ビッグバンと言われる一環なわけでありますけれども、もう来年の四月から外為法改正になるわけなのですね。もう既に衆議院も参議院も通過をいたしました。その中身は、例えば、釈迦に説法で大変申しわけありませんが、企業、個人の国内居住者同士で自由な外貨取引を認めるとか、ICカードなど電子マネー外為取引決済手段に認めるとか、こういうのも入っています。これは来年の四月からですからね。  さらに、例えば、きのうの日本経済新聞、「新幹線などJRの座席 家庭のパソコンで予約 来月から 発券も視野」ということにもなってきているのですね。そして、これも昨日の朝日新聞でしょうか、「インターネット使った通信販売」、サイバービジネスの市場規模が一九九六年度に推計で二百八十五億円に上った、「情報通信で雇用七十六万人 九〇年から五年間」と書いてあるのですが、このように電子取引というものがどんどん進んでいっているわけですよ。  私は、二月に質問をさせていただきましたときに、後追いにならないようにぜひお願いをしたいというふうに申し上げました。そこで、この法整備は私は急ぐべきだと思うのです。できれば、平成九年度などと言わずに、上半期と下半期ということで分けるとすれば、この上半期に研究会の意見をまとめられて、例えば法制審にこれをおかけになるのでしょう、この研究会の後。と思うのですが、もう下半期に結果を出して、来年の四月の新しい外為法が出発するときに間に合わせるべきだと私は思うのです。そのくらいのスピードでやりませんと、せっかくいろいろな制度を変えたとしても法の整備ができていない、いろいろなトラブルが起きてくる、そのトラブルに対して法整備がきちっとなっていませんと処理ができないということに私はなっていくのではないかと思うのです。ぜひこれは急いでやっていただきたい。いかがでしょうか、その辺。私が今御指摘を申し上げたことに対して御答弁をお願いいたします。
  18. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 認識が甘いという御指摘がございましたが、今御指摘のような実情を私どもも承知しているところでございます。検討している事項のうち、制度面の問題、電子認証等の問題につきましては、現段階では法制審議会にお諮りするというような問題ではなくて、むしろ制度の問題であろうと思っております。  ただ、これにつきましても、この具体的な内容を細部にわたって詰めるには、非常にいろいろの角度から検討しなければならない問題がございます。暗号技術といったものについてもいろいろな考え方があり、流動性があるというようなこともございますし、こういった制度、諸外国においても今検討が行われている最中であります。あるいはUNCITRALとかOECDとか、そういった国際機関でも検討が開始された状況にあると承知しております。そういった状況、国際的な観点からの情報を集める必要もございますし、また、御案内のとおり、各省庁においてもいろいろな角度から部分的な検討をしておられまして、そういった方面との調整といいますか、総合的な整備という観点からの検討を加える必要もございます。  そういったことで、私ども検討はできるだけ急ぎたいというふうに思っておりますが、具体的には、今御指摘のようなスピードでということになりますと、いま少し時間をいただく必要があるのかなと。しかしながら、御指摘を踏まえてできるだけ頑張ってまいりたいというふうに思っておるところであります。
  19. 吉川貴盛

    吉川委員 法的整備というのは、これはもう大変なことだと思います。一層の法務省サイドの御努力をお願いさせていただいて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  20. 八代英太

    八代委員長 渡辺喜美君。
  21. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 再度質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。  きょうは、法務省にとってはちょっと嫌な質問をさせていただきますので、大臣におかれましては、どうぞゆっくりとお休みになっていただきたいと思います。  世の中には、常識に反するけれども真実である、そういうことが時たまございます。ずっと戦後五十年以上にわたって我々が大変になれ親しんできた日本のシステムというものが一体歴史的にはいつごろでき上がったのかということについて、非常におもしろい研究がございます。これは野口悠紀雄さんがお書きになった「一九四〇年体制」という本でありますけれども、二年ぐらい前のたしかベストセラーになった本でございます。ちょうど私のおやじが死ぬ間際までこれを読んでおったのでありますけれども、この野口さんの説によれば、戦後の日本経済に特有とされるシステムが実は戦争中にほぼその骨格ができ上がったという指摘であります。  国家総動員法という法律ができましたのが昭和十三年、おまえは見てきたようなことを言うなと大臣にはしかられてしまうかもしれませんけれども、ちょうどそれに相前後いたしましていろいろな制度ができ上がってまいります。  例えば、民間企業においては、非常に人手を集める必要が出てきた。戦前は日給制というものが普通だったようでありますが、日給制では人が集まらぬ。そこで、オール月給制にしていく。それで、雇用保険をつけたり、あるいは健康保険をつけたり、また安定した人手を得るために年功序列の賃金体系や、あるいは人事制度というものをこの戦時体制のもとでつくっていった。  その当時でき上がった大企業というのがございまして、例えばトヨタ自動車とか日産自動車とか、そういった戦後日本経済を引っ張ってくる企業が、実はその時代にほぼでき上がったと言われております。例えば、日立とか東芝とか、そういった総合電機メーカーなどもこの時代にでき上がったと言われております。余計なことでありますけれども、朝日新聞とか読売新聞とか毎日新聞とか、そういった戦後の全国紙もこの時代に大変な発行部数を有するようになったと言われております。  一方、金融の世界では、戦前はどちらかといえば直接金融、つまり資本市場からお金を調達するということが普通だったようでありますけれども、この戦時体制のもとでは間接金融にシフトをしていく。つまり、いわゆる護送船団方式というのができ上がるわけでありますが、昭和十七年に日本銀行法の大改正をしまして、この国家総動員法の体制に金融のシステムを変えていく、つまり統制型の金融システムがまさに完成をしたのであります。  一方、官僚の体制は、当時霞が関の官僚の代表的な方々は革新官僚と言われたそうであります。イデオロギー的にはナチス・ドイツの国家社会主義というものを基本にしておった。企業は利潤を追求してはいかぬ、国家目的のために生産性を上げるのが企業の努めである、所有と経営を分離する、そして競争原理というものを否定していく、そういうイデオロギーが出てまいりました。政府の役割というものは、経済成長をリードすることではなく、衰退産業の調整あるいは低生産性部門に補助を与えていく、それが政府の役割だということでありました。  一方、財政においては、戦前の税の体系というものは、地租とかあるいは営業税とか、伝統的な産業分野における外形標準的な課税が中心だったのでありますが、これも戦時体制のもとで変わってまいります。また、地方もかなりの自主財源を持っておったのでありますけれども、これが極めて中央集権的な体制に変わっていく。  民間企業が日給制から月給制に変わっていく、そこに目をつけたのが大蔵省でありました。効率的に戦費を調達する、そういう必要性があったわけでありまして、日給制ではなかなか所得税というものは取れない、しかし月給袋に手を突っ込んで取るならば、これは非常に効率的に税金が取りやすいということであったろうと思います。昭和十五年に給与所得の源泉徴収制度というものができました。また、法人税というものが導入をされ、まさに直接税中心主義の体系がこの時代にでき上がってまいります。そして、こうして効率的に集められた税財源を中央集権的な手法でもって、いわば特定補助金として地方に配分をしていく、こういうシステムができたわけであります。  また、この時代に顕著な立法として、経済的、社会的弱者に対する保護制度というものを社会政策的な観点から導入をいたしました。例えば、昭和十七年に食管法という法律をつくり、地主からはお米を安く買い上げる、小作人からはお米を高く買い上げる、こういうことをやったわけであります。その結果、地主と小作人の関係は劇的に変化をいたします。実は、これが戦後の農地解放につながっていくことであり、また自作農の創設につながっていくわけであります。  また、戦前において大変に豊富であった借家においても、状況は相当変わってまいります。一家のお父ちゃんが兵隊さんにとられてしまう。そうすると、残されたお母ちゃんや子供たちが、家主、地主から簡単に明け渡しを請求されないような、そういう立法を昭和十六年にするわけであります。つまり、借地人、借家人の権利というものを強化していくわけでありまして、契約期間終了後でもそう簡単に契約解除ができにくくする。つまり、正当事由という概念を盛り込んだ借地・借家法の大改正が行われたわけであります。それ以前に国家総動員法のもとで地代家賃統制令というのができたのでありますが、この家賃の統制を実効的にするためにも、借地・借家法の改正は必要であったとされているわけでございます。  こういったもろもろの戦時体制のもとでできた制度というものが、もう今さら言うまでもなく、すべて洗いざらい今見直しを迫られているというのが我々の状況であります。今我々がやろうとしている六大改革というものは、ある意味でこの一九四〇年体制の変換をしていこうということにほかならないわけであります。貧しい時代、キャッチアップの時代には、保護と統制という手法でもって世の中をまとめていくことは非常に有意義でありましたし、うまくいったのだろうと思います。とにかく、毎年ふえ続けるパイをみんなで平等に分かち合うためには、保護と統制が必要である。極めて摩擦の少ない社会をつくってくることに大変な貢献をしただろうと思います。  しかし、残念ながら、今世界じゅうが市場経済と自由主義経済、グローバルリストラの時代になり、大競争の時代になり、まさに我々のやり方は根本的な見直しを迫られているという状況にございます。  この借地・借家法やあるいは食管法あるいは戦後の農地法、こういったことに共通することは、家主や地主、こういう人は強い人あるいは悪い人だ、借家人や小作人というのは弱い人だ、かわいそうな人である、そういう位置づけがなされていたのだろうと思います。期限が来ても正当事由がなければ契約を打ち切れないということになるわけでありますから、当然、戦前には大変豊富に供給をされた借家というものが戦後においては激減していくということになります。とにかく、一たん貸したら戻ってこない、借家でも農地でも全くそういうことが起こったわけでありますから、貸すのはもうばかばかしいというインセンティブが働くのは無理からぬことであろうというふうに思うのであります。その結果、例えば住宅においては、マイホームを持とうとすれば、所有権を取得して、かつてはウサギ小屋などと言われた住宅事情があったわけであります。また、農地においても、細分化された所有権の農地が、昭和三十年代ぐらいまでは大変生産性が高かったのでありましょうけれども、ふと気がついてみると、日本のお米の価格は国際価格の何倍にもなっておった。国際競争力は非常に多くの農業の分野で大変に弱くなってしまったということがあるわけであります。  そういった中で、この借地法というものが平成三年に改正をされ、定期借地権という制度が創設されたわけであります。この定期借地権によってそれなりに借地の供給というものは進んでいるという数字がございます。平成八年においては、戸数はまだ少ないのでありますけれども、定期借地権のついた住宅が一千八百ほど供給されるようになった。この定期借地権施行後においては、四千五百五十軒ほどの定期借地権つき住宅が供給されるようになったということもございます。  そこで、昨年の十二月三日、経済審議会の建議として、定期借家権というものを導入したらどうかという提案がなされております。「現行借地借家法は、貸し手からの解約を強力に制限しており、賃料の改訂も事前に予測することが難しい仕組みとなっている。こうした措置は、一見すると借家人を保護しているように見えるが、結局のところは良質な借家の供給を阻害することによって、劣悪な居住環境を生じさせている。」  そこで、三つの点についてこの建議は提案しております。第一点は、「従来型の借家権の存続を前提として、契約で定めた借家期間が終了すれば自動的に借家契約が切れる定期借家権制度を創設する。」こと。第二点、「継続賃料は、当事者の事前の合意がある場合にはそれを優先し、合意がない場合は、近傍の新規市場賃料を基準に設定する。」。第三点、「定期借家権導入の結果、居住等の場を失う弱者に対しては、国や地方自治体による家賃補助政策、公営住宅への入居等の対策を充実する。また、既存借家権についても、都心部等都市再開発の必要性が高い地区においては、家賃補助等の代償措置の下でこれを消滅させることができるよう特例的立法措置を講ずる。」こういう提案をしているのでございます。大変にいい提案だと私は思います。  そこで、本年三月二十八日に閣議決定がなされました「規制緩和推進計画の再改定について」で、良好な借地借家の供給促進を図るための方策として、「定期借地権の定着動向等を踏まえ、良好な借地・借家の供給促進を図るため、いわゆる定期借家権を含め検討することとし、平成九年六月末までに研究会検討状況を公表するとともに、平成九年度中にその検討結果を得て、これを踏まえ速やかに所要の措置を講ずる。」こうなっております。この研究会、六月というわけでありますから、もう目前に迫っております。  法務省の定期借家権についてのお考えと、この研究会の現状について御説明を願います。
  22. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 借家制度のあり方について、ただいま委員から御開示がありましたような意見があります。そういう状況を踏まえまして、とりわけただいま御紹介されました規制緩和推進計画を踏まえまして、御指摘の借地借家等に関する研究会を設置して検討しているところでございます。  また、この指摘されております定期借家権というもの、これは大変難しい問題がございます。御指摘のように、平成三年の改正におきまして定期借地権というものを一般的な形で利用できるように法改正をしたのでありますが、これは、借地の方は、言ってみれば建物一代というような感覚がございます。そういうことで、一般の定期借地権としては五十年以上の長期のものということで、それならばもう更新がないという形のものを導入するということにしたわけでございますが、借家というものにつきましてはそんなに長い期間が想定されるものではないだろう。  また、現在の正当事由方式の借家と、期間が来たら終了する借家の選択を認めるという御指摘なのでございますけれども、そういう選択を認めた場合には、恐らく、借家人の方で今までの正当事由方式の借家をしたいといってもなかなかその供給がないのではないか。結局、定期借家というものに供給が全部流れていってしまうのではないか。そうすると、結局のところ、貸し主と借り主の立場というのは決定的に貸し主の方が優位になる。ともかく、気に入られない借家人は、期間が来たら出ていかなければならないというようなことになるのではないか。そういった懸念が指摘されているところでございます。  ただいま御指摘の経済的弱者の保護の問題も含めて、借地借家関係というものを大変大きく変革することになり、国民生活に大変大きな影響を及ぼすのではないかという指摘も一方にあるところでありまして、この問題については国民各層の間で大変大きな意見の対立も恐らく生じるのではないか。そういうことで、私どもとしては、慎重な検討をさせていただいているところです。  研究会の現状でございますが、ただいま御指摘いただきましたような規制緩和推進計画の指摘を受けて、この六月末までに、同研究会で行ってきましたこれまでの議論を論点という形で整理いたしまして、これを公表するということで検討状況を示させていただく。それと同時に、これらの論点について、一般、各方面から広く意見を求めたい、さまざまな意見が寄せられるかと思いますが、できるだけ広い範囲で意見をいただいて、それを踏まえて、今年度中に研究会としての方向を定めたい、そういうことで現在取り組んでいるところでございます。  この問題、ただいま申しましたように、両方の考え方がある。その中で、どういう選択肢がいいのかという方向を研究会で見定めていただいて、それを踏まえて、法務省として適切に対処していきたいというふうに考えているところでございます。
  23. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 広い範囲で意見を聞く、こういうことなのでありますけれども、何人ぐらいの方に意見をお聞きになるおつもりでしょうか。
  24. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 意見の聞き方というのは、法制審議会の審議の過程における中間試案について意見を聞くような場合と似たような方法をとりたいと思っておりまして、主要な、この問題に関係のあると思われる各種団体には、直接にその問題点を整理したものをお送りして意見の提出を求める。それと同時に、マスコミ等を使ってその問題状況を広くそれぞれの人にも知っていただけるようにして、そういう方々の意見も聞けるようにしたい、こういうふうに考えております。
  25. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 確かに、この定期借家権という問題は、非常に広範な利害関係者がおります。この法務委員会で先ごろストックオプションが大多数の賛成で通ったのとは、ちょっとわけが違うわけであります。確かに、イメージ的に考えてみて、町の八百屋さんや魚屋さんが借家に住んで商売をやっておる、そういう人が、期限が来たら出ていってくださいねということになりますと、大変な騒ぎが起こることもあり得るでしょう。大体、そういう人は自民党支持者が多いものですから、私の選挙区ではそうなんですよ。ですから、そういうことを考えると非常に難しいこともあるのかもしれません。  しかし、そもそもこの借地・借家法というのは、たしか大正八年にできた法律だと承知しておりますが、本来、市場の需給のトラブル調節の法律だったはずであります。それが、戦時立法の中で社会政策としての位置づけを与えられ、戦後、二十年代、三十年代、四十年代、五十年代といろいろな時代の中でこの正当事由の機能は変遷をしていくんでありましょうけれども、法務省が住宅政策まで考えなきゃいかぬというのは、私は大変しんどい話だと思うのですね。今、行革会議で、きょうは何かエージェンシーのことをやるんだそうですけれども、八月末には省庁統廃合、こういうことを、ほぼ骨格を決めてしまおうというわけでありまして、法務省は、エージェンシーは別としても、どこかと再編統合されるという心配はないんだと思いますが、この法務省が法と正義で借地借家法を所管をしておるという時代がもう限界に来ているのかもしらぬという感想も私は持っておるんです。したがって、相変わらず借地借家法をきちんと法と正義のもとで所管をしていこうということになれば、これは住宅政策のこともよく考えてもらわないと、なかなかこれはうまくいかぬという状況だと思います。  この正当事由制度というのは、個別の事案ごとに判断して利益の比較考量をやる制度だから、非常に合理的に機能しておる、こういうこともあるんでしょうけれども、大体、一々裁判所に持ち込んで判断してもらうということは、大変なコストを要するのですね。今、我々は、事後チェックシステムというものをきちっと強化していこうということで、ついこの間、裁判所の定員増加の決定もしたのでありますが、大体、裁判所に持ち込む件数をふやさないようにする努力というのも私は大切なことだと思っております。つまり、行政の裁量とかあるいは裁判所の裁量とかいうことがある意味で小さい方が、私は世の中の紛争解決においてはむしろいいのではないかというふうに思うのであります。ですから、裁判所に全部任せるのではなくて、やはり法律でどこからどこまでができるのかできないのか、そういうことをきちっと決めていく必要があるであろうというふうに私は思います。  この定期借家権というものを創設するのが私は妥当であると考えるのでありますけれども、一遍にそこまでできないというのであれば、例えば非居住用建物にも一律に適用されている今の現実を考えますと、一体オフィスビルにこの正当事由を適用するような必要性があるのかという問題もございます。こんなものは適用除外をする余地も大いにあるのではなかろうかと思います。  また、この借家法の三十八条においては、期限つき借家権という制度が認められております。転勤、療養、介護その他やむを得ない事情においては期限つきで借家権を認めるという制度でありますけれども、こういう制度は、むしろもっと明快に、いわばポシリストというものをつくって立法化していく必要があるのではないかというふうに考えるのであります。  とにかく、裁判所任せというやり方では、私はこれからの時代はうまくいかないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  26. 八代英太

  27. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木ですけれども、私は、きょうは、限られた時間ですが、民事、刑事の裁判の判決原本、それから、その記録の保管だとか保存の問題についてお尋ねをしたいと思います。  御案内のように、裁判の判決、それから裁判の記録というものは、もちろん事件についての生の記録でありまして、その裁判の経過、それから判決は、その結果を示したものとして大変な重要な意義を持つものですけれども、しかし、この裁判事件が一件落着をして確定をして後、それらはまた一つの、この司法の上での財産だけにとどまるものではなくて、いわば国民の文化的な遺産という側面も持っているのではないかと思うわけです。  つまり、その事件というもの、あるいはそれを審理し裁いた根拠になっている法律の成り立ち、あるいはそれがどういうように機能したかなどということは、その時々の社会情勢なども背景になっているものでありまして、そういう点からも時代性、社会性、歴史性、民族性、場合によっては文学的な観点などということも織りまざって、非常に資料としての意義、文化的な財産としての側面が高いということから、世界各国においてもその保存あるいはその利用、これは閲覧ということを前提にした利用ですけれども、そういうことについてさまざまな法制あるいは工夫というものがなされているように私は考えております。  ところで、我が国の場合には、まず刑事事件関係について考えてみますと、戦争が終わりました後に、法律の仕組み、刑事法制の仕組みも大きく変わりまして、刑事訴訟法も大幅な改正がなされたわけですけれども、その中で、刑事訴訟法の五十三条は訴訟記録についての項を設けている。「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。」だれでもその裁判の記録を見ることができるんだということを原則にしながら、ただし、それに例外規定を置いております。今申し上げましたのは第一項ですけれども、第四項で「訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。」というように定めました。  ところが、この法律がなかなかできなかったんですね。その結果、さまざまな措置によって訴訟記録などの保管、保存ということが措置されていたわけですけれども、これが昭和六十二年に、一九八七年ですけれども、刑事確定記録法という法律が国会の審議を経て成立をいたしました。これが昭和六十三年一月一日から施行になったわけであります。  この結果といたしまして、刑事事件の判決原本、それから訴訟記録については一定の取り決めができたわけであります。それまでは、実は刑事判決の原本というのは取り扱い上永久保存とされていた。それがこの法律ができまして、刑事判決原本の保管、まず保管と保存ということは違うわけですけれども、保管の期間は、死刑だとか無期懲役の事案の判決原本は保管の期間を百年にするということになっております。今のは無期懲役までですけれども、今度は有期懲役、この事案では保管の期間は五十年とされました。これが判決原本の場合であります。判決原本以外のその事件裁判の記録、これは死刑、無期の事案の場合の訴訟記録については、保管期間は五十年、それ以外の有期懲役の場合には二十年と法定されたわけですね。  こういうふうに決まりましたわけですけれども、その結果、そうしますと、その期間を過ぎた判決原本それから裁判の記録、これはどうなるのか。一応廃棄の対象になるのかということになるわけですけれども、実際には、これらの期間を過ぎたもの、もう既に明治時代からずっと経てくるとこの期間を過ぎているものが幾つもあるわけですけれども、こういう判決原本それから裁判の記録、これはどうしておられるのか。取り扱いをしているのは、刑事事件の場合には検察庁になるわけですね。裁判が確定すると検察庁に戻されて、検察庁が保管ということになる、その責任者になるわけですけれども、これをどうされておられるのか。過ぎたものについては廃棄してしまったものもあるのかどうか。それからまた、これからこういうものについてはどうするおつもりなのか、この辺のことをお伺いしたいと思います。
  28. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のとおり、刑事確定訴訟記録の保管期間につきましては、昭和六十二年におつくりいただきました刑事確定訴訟記録法において定められているのでございますが、この保管期間が満了した後は、保管に当たります検察官が必要があると認めて保管期間を延長しない限り、原則として廃棄処分にすることとされているわけでございまして、保管期間満了後実際に廃棄された記録はございます。  ただ、これは、施行が昭和六十三年一月ということにしていただきまして、まだ十年でございまして、それでその期間が徒過した事件というのは、罰金に係るものであるとか、比較的短い刑期のものでございまして、そういうものにつきましては、一般的には、期間が途切れますと、大臣の委任によりまして、保管に当たる検察庁の長が定めるところによりまして廃棄していくということになろうかと思います。  ただ、これは、委員質問で今後のということでございますが、その中でも、今後とも廃棄が過ぎたものについてはその措置をとってまいらなければならないということになりますが、やはり事件内容によりまして、刑事参考記録としてあるいは再審に係るようなものについてはそのまま保存さしていただくということで、問題が生じないようにしてまいりたいと考えております。
  29. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そこで、ただいま出ました刑事確定記録法は第九条においてこのように定めております。これは刑事参考記録の保存と閲覧という項でございますけれども、第一項では、「法務大臣は、保管記録又は再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間又は保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存するものとする。」つまり、お話がありましたような期間を過ぎたものであっても、調査研究の重要な参考資料になると思料するものは、特にこの刑事参考記録という名称でそういう位置づけをして保存するんだ、特別に保存するんだ。これは期間の定めがないわけですね。ですから、ずっと保存するんだということになるわけです。  第二項では、「法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合」云々「刑事参考記録」、今申し上げた「刑事参考記録を閲覧させることができる。」これはだれにとは特定しておりませんから、だれでも閲覧できることになるんだろうと思うんですね。こういう閲覧の制度を設けている。  これは、大変私は結構なことだと思っておるんです。そしてまた、この法律の附則第五条というのがありまして、ここでは「法務大臣が刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料として保存している刑事被告事件に係る訴訟の記録は、第九条の規定による刑事参考記録とみなす。」こういう規定も丁寧につけ加えられているわけですね。  ここに言う刑事参考記録ですけれども、これは、現在そういう指定を受けている参考記録というのは、件数にしてどのぐらいあるものでしょうか。
  30. 原田明夫

    原田政府委員 現在、刑事参考記録ということで保存さしていただいているものは二百九十五件とされております。
  31. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これは具体的には、質問事前通告をしてなかったんですけれども、もしおわかりでしたらお答えいただきたいんですが、ああ、そうですね、これは次の質問と絡めてまたお尋ねをすることにいたしましょう。  たしか、従前は、この法律ができるまでは、死刑事件の記録は永久保存されていたと思うのですけれども、この死刑事件の記録というのは今度のこの法九条の枠の中に入っているのでしょうか、入っていないのでしょうか。この辺、まずお伺いしたいと思います。
  32. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  死刑事件記録がそのままストレートに法九条の定める刑事参考記録になるという取り扱いではないと考えております。  ただ、若干お答え申し上げますが、この法律の施行前に永久保存とされておりました死刑事件記録につきましては、先ほど委員も御指摘のとおり、この法律の施行により、死刑事件記録につきましては、保管期間が、裁判書について百年、保管記録については五十年とそれぞれ変更されたの でございまして、現時点では、その保管期間が満了となった事件はございません。そういう意味で刑事参考記録として保管されている記録ということにはなっていないわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、死刑事件ということになりますと刑事参考記録として保管される取り扱いになる場合が極めて多いのではないだろうか、基本的にそういうものについては慎重に判断されていくというふうに考えております。
  33. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 了解いたしました。  そこで、今度は無罪事件、これも随分大から小までいろいろあるだろうと思うのですけれども、これについては判決書、記録ともに刑事参考記録にした方がいいのではないかと私は思っているのですが、法律上は、これは十五年なんですね、保管期間。  これは、ある意味では、全部が全部誤判とは言えないにしても、無罪の理由としてもいろいろありますから、事実関係そのものがなかったという冤罪事件、それから、事実はあるけれども法律上の責任がないというような、例えば正当防衛だとか責任阻却事由になるものなど、いろいろ違いはあると思いますが、しかし、何といっても無罪事件の重要なものは冤罪事件ということになるわけで、これは、いわば司法関係者にとっては汚点にもなりかねない、そういう評価も加わってもしようがないというケースもたくさんあるわけですね。  私も弁護士の経験の間、幾つかの無罪事件も担当させていただきました。実際に、一審でも二審でも有罪になったけれども、最高裁で差し戻しになって高等裁判所で無罪になったという事件を私もやったことがあるのです。しかし、そうはいっても、そういうような事件の判決書及び記録というのは、裁判というのは人間がやることですからやはり誤りもあるわけで、誤りなきを期するためにどうしたらいいかということについては、大変重要な記録になるので、これらの無罪事件などについてはむしろ全部を刑事参考記録とすべきではないかと思っているのですが、扱いとしてどんなふうにお考えになりますか。
  34. 原田明夫

    原田政府委員 委員の弁護士としての御経験にも照らしたただいまの御意見また御質問だと思いますけれども委員も御指摘のように、無罪事件となった事件記録にもさまざまなものがございまして、そのすべてが刑事参考記録として保存する意義があるとは限らないと考えられます。  そこで、内容にかかわらず原則的に無罪事件は刑事参考記録として保存するということは、法律もそのようにとらえていないわけでございますが、いずれにいたしましても、やはり無罪になったということになりますと、そのことは司法の運用上もやはり問題がある事犯というふうに考えられますので、それらのものにつきましては、保管期間の満了後、刑事参考記録として保存すべきか否かということについて慎重な検討の上、そのような措置が図られる場合が多かろうというふうに考えております。
  35. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 もう一つお尋ねしたいのは、刑事参考記録についてですけれども、これについては事件別のリストはつくられているのでしょうか。この点いかがですか。
  36. 原田明夫

    原田政府委員 刑事参考記録、先ほど申し上げました件数の事件の目録については、法務省において作成して、保管させていただいております。  目録を一括して公表するということにつきましては、古い事件でございましても被告人その他の関係者の名誉、プライバシー保護の観点から問題がないとは考えられませんので、それ自体は相当でないというふうに考えられているところでございます。
  37. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 先ほど御紹介しましたように、この参考記録については閲覧ができることになっているのですが、聞くところによると、どうもまだ閲覧申請件数が少ないというようにも聞いております。これは、一つは、今話に出ましたリストが公表されていないからなかなか閲覧申請しにくいのだということも聞いておりますので、この辺についてもひとつ御工夫いただければいかがなものかな。これは、また今後も御相談したいと思います。  時間がなくなってまいりましたが、裁判所にお願いをいたしますけれども、最後に、民事判決原本の保管の問題についてお尋ねをしたいと思います。  民事判決原本については、これは刑事事件の記録のように法ができておらないで、最高裁が平成四年の一月に事件記録等保存規程という規程を改正し、それに合わせて事務総長通達なども出されてこの管理をされておる。  それによると、民事判決原本については、従来永久保存でおったものが、これが五十年になった。確定後五十年を経過した原本については廃棄処分になる。そこで、それでは余りにももったいないということで、国立大学の先生方などの働きかけもあって、裁判所と御相談の上で国内の十の国立大学で暫定的な保管をされているという措置になっているのですね。これについてどうするのかということが一つ。  それからまた、民事の裁判の訴訟記録については、保存期間はこの規程で十年ということになっているけれども、これもまた短いのではないかと思われたりするのですね。これは、この期間経過後は原則廃棄ということになるのですが、これについても規程の九条二項で特別保存の制度というものを決められて、特別保存に値するというような記録についてはこの後も廃棄しないということになっているようですね。これらについて、現状と、それから今後どうするかというようなことについて、簡単にお答えいただきたい。
  38. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 民事の記録でありますとか判決は、裁判所の側からいたしますと、専ら裁判手続での利用ということを考えまして保存しておるわけでございまして、これを永久保存から五十年保存に変えましたのは、従前の利用の実績で、五十年を超えるようなものがその後の裁判等で利用されるという例はもう皆無であると言っていいような状況でございましたし、また、実はこの判決原本なり記録の保存に非常にスペースが必要でございまして、なかなかそういうスペースもなくなってきておるというところからこういう扱いにしたわけでございます。  ただ、委員指摘のように、記録、判決の中には、裁判の資料としては用済みのものでありましても、学術研究といいますか、そういう目的では価値があるということはそのとおりでございます。そういう観点から、今回、大学の関係者等々と協議させていただいた上で、一括して大学の方に移管させていただいたわけです。記録の方も、実はそういう資料としての価値のあるものは各庁で一つ一つ選択をいたしまして、そういうものは保存期間経過後も資料として保存するという扱いをしておりますので、今後ともそういう運用を的確に行っていきたいというふうに考えております。
  39. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 お話がありましたように、この裁判の記録や判決書というのは、その後の裁判をやる場合でも生きていく、使えるというものと、あるいはもう用済みになっているものがあることは間違いないとは思うのだけれども一つは、文化的な側面があるということですね。それから、もう用済みだと思っても案外復活することがあるかもしれないのです。  例えば、一昨年阪神・淡路大震災がありましたけれども、その後、罹災都市借地借家臨時処理法、これはずっと使われていなかったんです、戦後の直後以外は。ところが、これが使えるようになったけれども、いざ使おうと思って弁護士が参考記録と思ったけれども、当時の裁判書や判決記録が全くない、訴訟記録が。そういう苦情も実は出てきておりまして、そういう意味でもやはり保存の必要はあると思うんです。  私は、時間がありませんからお答えをいただきませんけれども、アメリカなどでは国立公文書館で裁判記録というのは全部保管している、永久保存している。そして、これを一定の期間経過後は全部に見せるように、閲覧にも供しているということがあるわけですね。スウェーデンあたりでも、すべての裁判記録は永久保存。日本の場合に、全部が全部ということはありませんけれども、やはり選択の基準はつくる必要があると思うんです。私は、やはりこの際近代国家としては、司法関係だけの記録、判決書だけにとどまらず記録も、あるいは証拠書類、証拠物なども保存しておく、そういう公的なところをやはり設ける必要があるのではないかなと。国会図書館は立法関係ですし、それから今ある公文書館は、これは行政、総理府の管轄ですけれども、やはり法務省、裁判所が責任を持つような格好での、国全体として責任を持てるようなこういう施設なりというものを考える必要があるのではなかろうかと思います。  きょうは時間がありませんので問題提起だけにしておきますけれども、今度またこのことについて、お尋ねをしたり御相談をしたり、または大臣の御意見もお伺いしたいと思いますので、お心にとめていただければありがたいと思います。  以上、終わります。ありがとうございました。
  40. 八代英太

    八代委員長 続きまして、漆原良夫君。
  41. 漆原良夫

    ○漆原委員 新進党の漆原でございます。  先回私は法務委員会の席上で、選択的夫婦別姓制度導入の問題と、それから非嫡に関する差別撤廃の問題、それから法律扶助に関する問題について質問させていただきましたが、今回も引き続いてこの問題を取り上げさせていただいて、時間があればその他の問題を質問させていただきたい、こう思っております。  まず、先回私が、選択的夫婦別姓につきましては、婚姻の際に夫婦同姓を強制しておる民法の七百五十条の規定は、憲法の十二条、十四条、二十四条に抵触する可能性があるのではないかということを指摘させていただきました。そして、その根拠としましては、最高裁判所の、氏名というのは「人格権の一内容を構成するものというべきである」という、これは昭和六十三年二月十六日付の最高裁の判決を引用させていただきました。  そしてもう一つは、婚姻の際に名前を変える場合は、その九七・四%が女性である、女性が名前を変えているという実情を指摘させていただきました。現実は、夫婦同姓の強制ということで不利益を受けているのは男性ではなくて女性の方だという観点指摘させていただきました。これに対する法務大臣の答弁は、「民法の現在の規定は、婚姻は当事者の自由な意思によるものとしている上、夫婦が夫の氏を名乗るか、あるいは妻の氏を称するか、それは自由でございまして、対等な選択肢として用意しておりますから、」憲法違反には当たらないという結論をされたわけでございます。しかし、対等な選択肢と用意されているから対等な立場で選択されているんだろうかという問題があります。やはり男性と女性との力関係が現実にあるわけでございますから、どっちでも選べるんだという法制度があるから、だから自由に選んでいるんだという結論にはならないのではないか。大臣の答弁はある意味では形式論ではないかというふうに思います。  憲法の求めている自由とか平等というのは、形式的な自由とか平等ではなくて、相互の社会的な力関係をも考慮に入れた実質的な自由であり、実質的な平等ではなかろうかというふうに私は考えます。このような観点からいま一度大臣の御見解を承りたいと思います。よろしくお願いします。
  42. 松浦功

    松浦国務大臣 憲法違反でないという結論は、この前御質問をいただいた以降で変わっておりません。その理由も、先生がおっしゃっていただきました。それらの理由によって憲法違反とは考えていないということだけは明白に申し上げておきたいと思います。  男性と女性の力の違い、これはいつ女性の方が強くなって男の方がひっくり返るかわからないことで、その辺のところは十分御理解をいただけるのではないかと思います。
  43. 漆原良夫

    ○漆原委員 確かに、いつ女性の方が強くなるかわからないということはあるかもしれません。ただ、実際上一〇〇%近い女性が、九七・四%と申し上げましたが、一〇〇%近い女性が婚姻に際して夫の名前を名乗っているという現実ですね。これは、両方、どっちでも選べるんだという建前、法制度になっておりますけれども、これは、夫婦が婚姻当初話し合って、ほとんどの女性が男性の名前の方がすばらしいと考えて異性の名前を名乗っているのではないんじゃないかというふうに思うのですね。やはり結婚するに当たって、男性のもとに嫁ぐ、そして社会的には、何といいますか、男性の家庭に入って男性の庇護を受けるというと変な言い方ですけれども、そういうケースが非常に多い。そうすると、やはり女性としてはその力関係からいって男性の名前を名乗らざるを得ないというのが現実だと思うのですね。この辺を考慮に入れた上で、平等に選択肢として予定されているというふうに言っていいのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。
  44. 松浦功

    松浦国務大臣 いろいろ考え方があろうかと思います。しかし、現実の問題として、夫の姓を名乗るか、妻の姓を名乗るか、それは現在の現行法で保障されているわけでございますから、それが結果的にどういう数字に出てくるかということによってこの制度が憲法に違反するとかしないとか、そういう議論にはつながっていかないんではないかというふうに私は考えております。
  45. 漆原良夫

    ○漆原委員 先回もちょっと御指摘申し上げましたが、国際人権規約というのがございます。これは一九七九年に我が国も批准しておりまして、この二十二条には、「この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。」と規定しております。  そして、一九九〇年七月二十四日に国際人権規約委員会は、この二十三条に関する一般意見を採択しております。これによりますと、この三項にこう書いてあります。「「規約」の第二十三条に基づき与えられる保護を確実にするため、加盟国は立法的、行政的またはその他の措置を講じなければならない。」それから、これの第六項には「「規約」の第二十三条第四項は、婚姻中及び婚姻の解消の際における婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するために適当な措置を講ずるべきことを規定している。」そして「各配偶者がその元の姓(家族名)の使用を留保し、または新たな姓の選択において平等の立場で参加する権利が保護されなければならない。」というふうに規定されているわけでございます。  これは、この人権規約委員会としては選択的夫婦別姓導入を我が国に呼びかけているものと思われますが、この国際人権規約委員会の一般意見に対して法務大臣はどのような見解をお持ちでございましょうか。
  46. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 事実経過の問題でございますので、事務当局から答弁させていただきたいと思います。  御質問の一般意見につきましては、前回の当委員会における御質問の際に私、正確に承知しておりませんで申しわけなく思いますが、その後調査いたしましたところ、一九九〇年に人権B規約についてのいわゆる一般的な性格を有する意見としてそういう意見が採択されたということがございます。その内容も、ただいま委員指摘のような内容でございます。  ただ、この一般意見と申しますのは、これは各国がこの人権B規約に関して政府の報告書を作成する際の参考に供するという目的で作成されたものというふうに承知しておりまして、直接我が国に対する勧告文書という性格のものではないというふうに承知しております。実際にも、我が国政府がこの一般意見が出された後に、平成三年に第三回報告書を提出し、平成五年にその報告書に対する審査があったわけでございますが、この段階において、規約人権委員会から我が国の現行の夫婦同氏制度が同規約に抵触するという指摘は受けていないという経過がございます。  また、ただいま御指摘内容につきましても、今お読みいただきましたように、夫婦双方が従前の氏を称し続ける権利または新たなファミリーネームの選択について対等な立場で関与する権利が保障されなければならないということになっておりまして、このいずれかが確保されなければならないという趣旨に理解されるわけでございます。  したがって、先ほど我が国の憲法の問題について大臣が御答弁申し上げましたように、我が国においては制度として平等な立場で新しいファミリーネームの、新しい家族名の選択に関与することができるということになっておりますから、したがって、その趣旨からもこの意見書に抵触するということにはならないのではないか、こういうふうに私どもとしては考えているところであります。
  47. 漆原良夫

    ○漆原委員 それはそのように承っておきます。  次に、女子差別撤廃条約がございます。これは一九八五年に我が国が締結しておりますが、その十六条で「締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。」というふうに規定してございまして、その十六条の(g)のところで「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」こういうふうに規定しております。  私は、先ほど日本の女性の九七・四%が結婚に際し夫の氏を称しているということを指摘しました。婚姻に際して夫婦の同姓を強制する我が国の民法七百五十条の規定は、結果として九七・四%の女性に自分の姓を捨てて、そして夫の姓を名乗らせることを強制していることになると思うのですが、この条約に反するか否か、御見解はいかがでございましょうか。
  48. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の女子差別撤廃条約の条項に関しましても「同一の個人的権利」というふうに規定されているところでございまして、先ほど来大臣からも我が国の憲法の問題としてお答え申し上げましたように、制度として平等、対等な立場確保されているということから、この条項に違反するものではないというふうに考えております。  ただいま御指摘の、事実上九七・四%が夫の氏を称しているではないかという問題、これは、大臣も申し上げましたように、憲法あるいは条約に抵触するという問題ではなくて、そういう状況を踏まえて立法政策としてどうあるべきかという問題ではないかというふうに私どもは考えているところであります。
  49. 漆原良夫

    ○漆原委員 この条約は、条約の実施状況を監視するために女性に対する差別の撤廃に関する委員会、これはCEDAWという委員会を設けて、締約国について自国での進捗状況報告させているわけでございますが、一九八八年二月二十六日から三月四日まで第七回のこの委員会がニューヨークの国連本部で開かれました。日本政府はこの会議にレポートを提出しておりますが、日本政府のレポートの中には姓の選択についての記述がなかったため、この点について委員から質問がなされております。その質問内容はこういうことでございます。既婚女性には、未婚時代の名前をなお継続して用いる権利がある、しかし実際には非常に少数の、二%という非常に少数の女性が未婚時代の氏を継承して用いているにすぎない、この点について政府は女性の地位を強化するための立法を採択するよう考慮すべきであるというふうに指摘しておりますけれども、これに対する大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  50. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のように、女子差別撤廃条約に関する委員会に対して、一九八七年、昭和六十二年に我が国から報告書を提出して、翌一九八八年、昭和六十三年に審査が行われております。その際に、御指摘のように、我が国における夫婦同氏制度につきまして今御指摘のような実情等を含めて質問がされた、それに対して我が方もお答えをしているという経緯があったと承知しておりますが、その審議の中身につきましては、私ども実際にどういうやりとりが行われたか承知できる立場にございませんので、現在私どもお答えできる範囲では、その審査において委員会から御指摘のような法改正云々についての指摘がされたかどうかということについては、私ども承知していないところでございます。  なお、先ほど申しましたが、立法政策の問題としては法制審議会の審議がされ、今それをめぐってさまざまな御議論がされているということは御案内のとおりでございます。
  51. 漆原良夫

    ○漆原委員 これは、私の調べたところによりますと、日本政府の代表の答えはこういうことだそうでございます。日本女性の九八%は婚姻において夫の氏を選択している、しかし、法律工夫が妻の氏を選択することは禁止されていない。先ほど述べられた松浦法務大臣と同じ見解だと思います。  そういう意味では、一九八八年から今日までこれに対する見解は全く変わっていないのだなという気持ちを受けたのですけれども、私は、この条約の目指す平等というのは単なる形式的な平等ではなくて、本当に実質的な平等ではなかろうかと思います。この実質的な平等が確保されなければ、やはり女性が性差別によって受けるさまざまな不利益、不平等をなくすことはできないのではないかということを考えております。立法政策の問題として積極的な方向で取り扱っていただけるという今の濱崎民事局長お答えだったと理解させていただいております。  もう一点だけ、平成六年七月十二日の閣議で、男女共同参画推進本部というのが設置されております。そして、これは内閣総理大臣が本部長に就任されまして、法務大臣も一員としてお名前を連ねておられますが、そこで言う男女共同参画社会というのは、一体どういう社会のことを定義づけされているのか。大臣、お答えいただければと思います。
  52. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 男女共同参画推進本部あるいはその審議会の場でどういう定義づけがされているのかは私、今突然で、正確には記憶しておらないのでございますが、これは、社会のあらゆる場面において男女がひとしく平等に参画することができる、そういう社会を目指すという趣旨であろうというふうに理解をいたしております。
  53. 漆原良夫

    ○漆原委員 内閣総理大臣官房男女共同参画室というところが作成したこの書物によりますと、こう定義されております。男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に、政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」、こういうふうに定義されておりまして、総理大臣がこの実現を目指して本部長に就任されておる、こういうことでございます。  ところで、総理は、平成六年八月に男女共同参画審議会に対しまして、男女共同参画社会の形成に向けて二十一世紀を展望した総合ビジョンはどうあるべきなのかという諮問をしておられます。そして、この諮問を受けて、平成八年七月にこの審議会が意見を出して、答申をしておられます。その中に、この夫婦別姓のことについて答申があると思いますが、どういう答申だったか。大臣、おわかりでしたらお答えいただければと思います。
  54. 松浦功

    松浦国務大臣 平成八年七月に公表されました男女共同参画ビジョンにおいては、「男女共同参画社会の形成を促進する観点から、選択的な夫婦別氏制を認めることなどを内容とする婚姻制度等に関する民法改正を早期に実現すべきである。」こういうことになっておるようでございます。
  55. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上、国内法上の問題とか国際法上の問題、いずれの観点から見ても、夫婦別姓制度の導入というのは、政府としてはその実現に向けて積極的な努力をすべきではないかと私は思いますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  56. 松浦功

    松浦国務大臣 毎回申し上げておりますように、この問題に関しては、国民の皆様方の考え方が真っ二つに割れてしまっておる問題でございます。しかも、先生もおっしゃるように、これは極めて社会全体の基本的な制度にかかわる問題でございます。ですから、もう少し状況を見ながら、やはり皆さんに御賛成をいただいて、この制度を実現していくという機会が早く来るように、我々は努力していかなければならぬなというつもりでおります。
  57. 漆原良夫

    ○漆原委員 ありがとうございました。  それでは、非嫡の問題についてお尋ねしたいと思います。  これもやはり先回、私は、非嫡出子は嫡出子の二分の一の相続分しかないというこの民法九百条四号ただし書き前段の規定は、憲法十四条で禁止している社会的身分による差別ではないかということで、十四条違反ではないかと指摘させていただきましたが、これに対する大臣のお答えは、民法九百条の規定は法律上の家族関係の保護という観点から合理性を持っているので憲法違反ではないのだという旨のお答えだったと思います。大臣お答えの、法律上の家族関係の保護というこの観点、これをもうちょっと具体的に説明していただければと思うのですが、お願いします。
  58. 松浦功

    松浦国務大臣 極めて端的に申し上げるならば、法律上の夫婦とその間の子からでき上がっております家族を保護していこう、こういうことだと思います。
  59. 漆原良夫

    ○漆原委員 正当な婚姻関係を国家として保護していこうということだと思うのですね。ただ、私が申し上げるのは、非嫡出子の立場に立ってみた場合、いわゆる婚外子は自分が婚外子であることに対して全く責任がない、みずからの努力でいかんともしようがない、結果そういう不利益を受けることになるわけですね。ですから、民主主義の社会というのは、自分の責任によって責めを受けることはやむを得ないけれども、自分のどうしようもないことで、自分の努力ではいかんともしがたいことで不利益を受けることは不合理な不利益だという考えがまずその前提にあるのではないかと私は思います。  したがって、ノーマルな婚姻、家庭生活を保護するというために、婚外子の権利を犠牲にすることによってノーマルな家庭が保護されるというのは、僕は本末転倒ではないかと思うのです。先回申し上げましたように、法律婚主義を維持するために婚外子が不当な差別を受けるということでは本末転倒であって、むしろそういう状態をつくった男女が不利益を受けることなら、それはやむを得ないのですけれども、生まれてきた子供には何にも罪がない、その子供が不利益を受けるという制度はやはり合理性がないのではないかというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  60. 松浦功

    松浦国務大臣 最高裁判所の判示の中でも、法律婚の尊重を図る一方、嫡出でない子供にも一定の相続分を認めることにより法律婚の保護と嫡出でない子の保護との調和を図ったものである、そういう趣旨の判示がございます。それは、今まで私が先生お答えを申し上げた考え方と全く一致しているのではないかと思います。後は、これからは立法政策の問題であろうかと思っております。  ただ、現在の状況では、総理府の調査によっても、もう先生御承知のとおりだと思いますが、この問題について全く意見が分かれてしまっておる。こういう重要な問題を軽々に判断をして結論を出すということではなくて、やはり皆様に納得してもらった上でこういう制度にするんだということにしていくというのが最も適当な方法ではなかろうかと私は考えております。
  61. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほど申しました国際人権規約、これもやはり、国際人権委員会は締約国に対して規約の実施状況について報告を求めております。この委員会の求めに応じて提出した日本政府の第三回定期報告書につきましては、一九九三年十月二十七日と二十八日にわたりまして、スイスの国連ヨーロッパ本部内の規約人権委員会で審査がなされました。  婚外子の問題につきましては、二十七日の審査で最も議論が集中したと聞いております。そしてまた、日本政府はこの問題で大きな批判を委員から浴びたと聞いておりますが、どんな委員がどんな発言をされたのか、掌握されておられればお答えいただきたいと思います。
  62. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私ども、審査の議論の全容を承知できる立場にございませんが、最終的な審査の結果としての規約人権委員会のコメントによりますと、委員会からの批判の要点は、相続権に関する差別は規約二十六条、いわゆる人権B規約二十六条の規定に適合しないので、規約に従ってその差別を廃止すべきであり、我が国政府はこの点に関し世論に影響を与えるよう努力すべきである、こういうものであったということを承知しております。
  63. 漆原良夫

    ○漆原委員 これは、日本弁護士会が発刊した「日本の人権」という本の中にこの問題が触れられております。いろいろな委員からいろいろな質問がございまして、ある委員は「両親が罰を受けることがあり得ても、子どもが罰を受けることがあってはならない」。先ほどの私と同じ考え方だろうと思います。「これらは、子どもに対する残虐な取扱いであり、除去されるべき」であると。あるいは、「民法第九百条は、規約違反です。明確に規約違反です。」と述べて、「家族を保護するための法秩序を持ってしても、子どもの権利を阻害するようなものとして確保することがあってはならない」。こんな意見があります。さらに、「第二条の定める非人間的かつ品位を傷つける取扱いが存在する」。いろいろな角度から日本政府に対して質問がなされ、これは非難という言い方かもわかりませんが、婚外子に対する取り扱いは規約に照らして問題があるという指摘がなされております。  これに対する日本政府の再回答というのがどんなふうな再回答であったか掌握しておられますでしょうか。
  64. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような議論があったかと推測いたしますが、これに対しまして我が国政府といたしましては、この人権B規約の規定は不合理な差別を禁止しているものであるところ、我が国の民法九百条の現行規定は法律上の家族関係の保護との調和を図ったもので、不合理に差別するものではない。したがって、規約に違反するものではないということで対応をしております。  この考え方は従来から我が国政府がとっているところでございまして、こういう前提でこの規約を批准した、そういう理解のもとにこの条約を批准したという経緯もあるところでございます。  御質問の再回答という趣旨がちょっと私ども定かでないんですが、何か、このコメントがされた後に政府として再回答をするというようなことがあったのかどうか、この点については私ども承知しておらないところでございますが、その議論の中では、今申しましたようなことで対応してきたところであります。
  65. 漆原良夫

    ○漆原委員 再回答というのはそういうことではなくて、この委員質問に対してどんな回答をされたか、こういう意味でございます。  それで、このとき日本の政府は、婚外子に関する文書を提出するということをこの規約人権委員会に約束していると思うんですが、現在までその文書を提出されたのかどうか。提出されたんであれば、どんな内容の文書を提出されたのか。お尋ねしたいと思います。
  66. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 審査の過程においてそういうふうな約束がされたのかどうかは、当省としては答弁し得るだけの資料を持ち合わしておりませんが、現実の問題として、第三回報告書の提出後、指摘の問題について我が国政府が追加の書面を出したということはないというふうに承知しております。
  67. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほどの「世界に問われた日本の人権」の百三十八ページをちょっと読ましてもらいますが、日本政府団の発言でございまして、   昨日の午後の婚外子の取扱いに関する討議において、日本政府の意見とは異なるさまざまなご意見が高名な委員諸氏から表明されました。貴重な時間を節約するために、我々としては、我々の意見を文書で詳細かつ、この委員会が終わり次第、できるだけ早くお伝えしたいと思います。したがって、それにより、日本における状況に対する委員諸氏のご理解を深めていただきたいと思います。 というふうな記述があるんですが、こういうやりとりがあったのではないでしょうか。
  68. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 具体的な会議におけるやりとり等につきましては当省は承知できる立場にございませんので、お答えできないわけでございますが、事実関係としては先ほど申し上げたようなことであるというふうに承知しています。
  69. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、そういう今までの審査のやりとりがあった結果、一九九三年にこの規約人権委員会婚外子の相続の差別をなくするように日本政府に法改正を勧告していると思います。その内容は、「主要な懸案事項」の項目の中で、   当委員会は、婚外子に関する差別的な法規定に対して、特に懸念を有するものである。 婚外子の相続権上の差別は、規約第二十六条と矛盾するものである。 というふうに言っておりまして、さらに「提言と勧告」という項目では、  当委員会は、規約第二条、第二十四条及び第二十六条の規定に一致するように、婚外子に関する日本の法律が改正され、そこに規定されている差別的な条項が削除されるよう勧告する。日本に未だに存続しているすべての差別的な法律や取扱いは、規約第二条、第三条及び第二十六条に適合するように、廃止されなければならない。日本政府は、このことについて、世論に影響を及ぼすように努力しなければならない。 こういうふうに相当きつく明確に提言しているんですけれども、この規約委員会の意見に対して大臣はどのような御感想をお持ちでしょうか。
  70. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先回も申し上げましたが、この規約人権委員会のコメントというのは、これは加盟国に対する拘束力を有するものではないということでございますが、御指摘のとおり、大変きつい論調のコメントがされておるところでございます。  しかしながら、我が国政府としては、従来から申し上げておりますように、この規定が規約自体に抵触するものではないという考え方は変わっておりませんし、私どももそのように思っております。  後は、大臣も申し上げましたように、立法政策の問題として、そういう国際的な状況も踏まえてどうすべきかという問題であろうというふうに考えておるところであります。
  71. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、次に話題を移しまして、法律扶助についそお尋ねしたいと思います。  御存じのように、憲法三十二条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」こう規定しておりまして、これは、国民の基本的人権の一つとして裁判を受ける権利を保障しておるわけでございます。  しかし、現実には、裁判を遂行するためには相当高額な経済的な負担が必要となります。そのために、法的には保護されるべき権利が存在しても、経済的な理由から訴訟の遂行を断念し、泣き寝入りを余儀なくされるケースが非常に多いというのが実情でございます。これでは、憲法三十二条に保障されている裁判を受ける権利というのは絵にかいたもちになってしまいます。また、資力のある人は五人でも十人でも弁護士を抱えて裁判をやっておりますけれども、資力のない人は一人の弁護士に依頼することもできない。これはやはり、法のもとの平等を保障した憲法十四条の精神に反するのではないか、こう考えます。経済的な余裕がない人も安心して裁判制度を利用できるように、国家がこれを援助していくような制度を確立しなければならないと私は考えております。そして、このような制度が確立されてこそ、日本が本当の意味で民主主義国家となり、また法治国家になるものと確信しております。  その意味で、私は、法務大臣が所信表明で述べられました、「法律扶助制度は、国民裁判を受ける権利を実質的に保障するために極めて重要なもの」であるというこの御認識には、高い評価と敬意を表するものでございます。現在、財政難の折、幾多の障害があろうかと思いますが、どうか松浦法務大臣の手でこの制度を何としても確立し、なし遂げていただきたい、こう考えます。改めて、大臣の御決意をお聞かせいただければありがたいと思います。
  72. 松浦功

    松浦国務大臣 この問題、委員指摘のとおりでございまして、全く同感でございます。いろいろ問題点がたくさんございまするけれども、段階的にこれを乗り越えて、少なくとも来年度にはある程度、先生方によくやったと言われるように努力をしていきたいという気持ちでいっぱいでおるということを申し上げておきたいと思います。
  73. 漆原良夫

    ○漆原委員 大変力強いお言葉を聞いて、本当にうれしく思っております。  現在、日本における法律扶助事業は、昭和二十七年以来、日本弁護士連合会が設立した法律扶助協会によって実施されているところでございます。この協会は財団法人ではありますが、この財団基金が五億円ちょっとしかございません。したがって、まことに基礎が脆弱なものでございまして、そのために財団基金の運用果実でもって運営することができない状態で、補助金だとかあるいは寄附金によって運用されているのが実態でございます。そういう意味で、私は日本における法律扶助事業というのは、協会職員の必死の努力とまた篤志家の善意、そしてまた社会正義の実現を目指す弁護士の使命感、こういうものによって今日まで支えられてきたものだというふうに考えております。  現在行われております法律扶助協会の事業内容について、どんな事業を行っているのか、概略の説明をしていただければと思いますが、いかがでしょうか。
  74. 大藤敏

    ○大藤政府委員 現在、委員指摘のとおり、財団法人法律扶助協会が法律扶助事業を行っているわけでございますが、民事事件に関して訴訟費用等の立てかえを行う法律扶助事業のほかに、法律相談事業、刑事被疑者弁護援助事業、さらに少年保護事件付添扶助事業等を行っております。もう少し御説明申し上げますと、その他の実施事業といたしまして、中国残留孤児国籍取得支援活動と、もう一つ難民法律援助事業でございます。
  75. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の事業のうち、少年保護事件付添扶助事業とはどんなものか、あるいは刑事被疑者弁護援助事業とはどんなものか、この辺をもうちょっと御説明いただきたいと思います。
  76. 大藤敏

    ○大藤政府委員 財団法人法律扶助協会が実施しております法律扶助事業は、民事、行政事件等について、弁護士に相談をしたり訴訟等を行うために要するもろもろの経費を負担するだけの資力が乏しいために、自己の正当な権利を主張することが困難な者に対しまして、法律相談に応じたり、あるいは訴訟に要する訴訟費用、保証金、弁護士費用等のもろもろの経費を立てかえて、かつ、その者に対して弁護士を付するなどの援助を行うものでございます。  この協会が実施しております少年保護事件付添扶助事業は、少年の一般保護事件につきまして、貧困その他の事由によってみずから付添人をつけることが困難である少年に対しまして、付添人弁護士をあっせんするとともに、その費用を援助するものでございます。また、この協会が実施しております刑事被疑者弁護援助事業は、資力の乏しい刑事事件被疑者に対しまして弁護士費用等を援助するというものでございます。
  77. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の御説明はよくわかりましたが、刑事被疑者弁護は、国選弁護がつくまでの起訴前の弁護というふうに我々は理解しております。そういうことだと思っております。  協会の資産でござい良すが、平成五年度の総支出額が二十一億六千五百九十七万四千というふうに聞いておりますが、同年度の総収入は一体幾らか。それから、事業財源について、どんな名目の事業財源があるか。その辺御承知であれば、お答えいただきたいと思います。
  78. 大藤敏

    ○大藤政府委員 総収入は、二十八億九千百五十九万円でございます。その内訳は、国庫補助金が一億九千百五十六万円、償還金が七億六千四百五十一万円、寄附金が六億三千九百二万円、それから弁護士会援助金が一億八千六十万円でございます。
  79. 漆原良夫

    ○漆原委員 大体今申されたように、寄附金が六億三千、それから国庫負担が一億九千、弁護士会からの援助が一億八千、その他、償還金というのは、事業で貸し付けた、援助したお金の回収金ということだと思うのですが、これが七億ということです。実際は償還金と寄附金がほとんどで、パーセンテージでいいますと六二%を占めているということになりまして、国からの援助は八・五%、弁護士会からの援助も八・〇%、こんな状況になっております。  政府は、昭和三十三年から扶助協会に対して国庫補助金を交付しておりますけれども平成元年から平成五年までの間の金額はどうなっていますでしょうか。
  80. 大藤敏

    ○大藤政府委員 恐縮でございますが、平成三年から五年までをまず御説明申し上げます。  平成三年度が一億二千七百二十六万円、平成四年度が一億五千二十五万円、平成五年度が一億八千八百五十万円でございます。
  81. 漆原良夫

    ○漆原委員 ようやく国家に援助していただける状態になって、徐々にその金額がふえてきているわけでございますが、日本における交付額と世界との比較をちょっと調べてみました。日本は、先ほど申しましたように平成五年現在で一億九千万の補助をしていただいておりますが、イギリスでは実に千七百三十五億円も補助をしております。アメリカは三百二十八億円、ドイツは二百六十二億円、フランスは二百九億円、韓国は六億九千万円。日本の一億九千万とイギリスの千七百三十五億というのではもう本当に天地、雲泥のような差があるわけでございますけれども、こんなに大きな差がつく原因は一体どこにあるのだろうかと私は思うのですが、この点、法務省は、どこに一体原因があるのか、どうお考えなのか、お聞かせいただければと思います。あるいは制度上どうしてもやむを得ないのだということなのかどうか、その辺も含めてお尋ねしたいと思います。
  82. 大藤敏

    ○大藤政府委員 ただいま委員指摘になられましたようなことがございますのは事実でございます。  イギリス、フランス、ドイツ、アメリカといった外国におきましては、法律扶助に関する法律を制定いたしまして多額の国庫支出を行っているわけでございますが、これらの外国におきましては、例えば弁護士強制主義、弁護士費用の訴訟費用化などを初めとする司法制度、それから訴訟事件数など、法律扶助制度を取り巻く状況が我が国とは異なっているわけでございますので、必ずしも数字だけの比較というようなことはできないのではないかと考えております。  このように、我が国の法律扶助制度外国のものと比較するに当たりましては種々の事情を考慮する必要があるわけでございまして、そういう意味で、現在、法律扶助制度研究会を開いておりまして、ここで外国の実情についても幅広く調査研究を行っているところでございます。
  83. 漆原良夫

    ○漆原委員 今のお答えの中にございました法律扶助制度研究会、これが本年五月二十一日に開かれたと聞いておりますが、この研究会の発足の経緯と目的、それから構成員、この辺をお聞きしたいと思います。
  84. 大藤敏

    ○大藤政府委員 法務省におきましては、法律扶助制度の重要性にかんがみまして、従来から法務省関係部局と日本弁護士連合会、法律扶助協会との間におきまして勉強会を開催してきたわけでございますが、平成五年六月に衆議院の法務委員会理事会におきまして、法律扶助の一層の充実を図るために「調査研究に取り組むこととし、そのために必要な予算措置を講ぜられたい。」という申し合わせがされたわけでございます。これを受けまして平成六年の十一月に法律扶助制度研究会を発足させたものでございまして、その目的は、現行の法律扶助制度の充実発展を図るため、我が国の司法制度に適合した望ましい法律扶助のあり方等について調査研究を行うことにございます。  法務省、最高裁判所日本弁護士連合会、法律扶助協会、それに学者が構成員として参加いたしております。
  85. 漆原良夫

    ○漆原委員 五月二十一日に行われた会議内容についてお尋ねしてみたいと思うのですが、新しい我が国の法律扶助制度のあり方について、基本的な考え方が論じられたと思いますけれども、その新しい法律扶助制度についてはどんなことが論じられたのでございましょうか。
  86. 大藤敏

    ○大藤政府委員 法律扶助制度研究会におきましては、法律扶助の対象事件、対象者、扶助の要件、それと扶助の実施方法、さらには弁護士報酬、審査手続、運営組織など法律扶助制度の全般にわたりまして、我が国の法律扶助の現状とさまざまな問題点、それと、先ほど申し上げました外国の法律扶助制度の実情等を踏まえながら、幅広く意見を交換しているところでございます。
  87. 漆原良夫

    ○漆原委員 この新しい法律扶助制度というのは、これは憲法三十二条からくる裁判を受ける権利の実現を保障するものなんだという考え方だとか、あるいは、これを保障していくことが国家としての責務であり、あるいはまた弁護士会も弁護士もその実現に向けて頑張っていくのが責務であるというふうなことが論じられたと思いますが、その点いかがでございましょうか。
  88. 大藤敏

    ○大藤政府委員 委員指摘のとおり、この法律扶助制度をさらに充実強化するための方策として、国あるいは日本弁護士連合会等がいかなる役割を果たすべきであるか等についても議論が交わされたところでございます。
  89. 漆原良夫

    ○漆原委員 規制緩和の進展に伴って、司法の役割というのは今後ますます増大していくものだと思います。法律扶助制度を充実発展させることは国民の司法へのアクセスを充実させるものであって、規制緩和後の我が国のあるべき姿ではないか、こう考えます。  したがって、この観点からも法律扶助制度の充実発展を図るべきことが要請されていると私は思いますが、大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  90. 松浦功

    松浦国務大臣 全く委員のおっしゃるとおりでございまして、我々は最大限の努力をしていかなければならないというふうに思っております。
  91. 漆原良夫

    ○漆原委員 運営主体という話がありましたけれども、今後の法律扶助事業の運営主体については、従来の財団法人である法律扶助協会でいいのか、それとも新たな認可法人の形態によるものがいいのか、それから、認可法人の方がいいのだとすればなぜそうなのか、その辺の議論はいかがだったでございましょうか。
  92. 大藤敏

    ○大藤政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたように、法律扶助制度研究会におきましては、法律扶助制度の運営主体として認可法人が望ましいという意見も述べられておりますけれども、先ほど来御説明申し上げておりますように、この研究会は現在なお調査研究をしている途上でございまして、法務省として、この研究会最終報告が出た場合には、それを踏まえて運営主体について考えをまとめてまいりたい、かように考えているところでございます。
  93. 漆原良夫

    ○漆原委員 一般論として、国が大きなお金を出す場合に、従来の財団法人だと、一般の公益法人の一つでございますからそこにたくさんの補助金は出しにくいだろう、しかし、認可法人をつくった場合には援助をしやすくなるのではないかという考え方がございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  94. 大藤敏

    ○大藤政府委員 委員の御指摘の点はそれなりに理解できるわけでございますが、なおさまざまな見解がございまして、法務省としても、その点も含めて今後慎重に検討してまいりたいと考えております。
  95. 漆原良夫

    ○漆原委員 保護の対象の範囲でございますけれども、民事事件の法律扶助を中心にやるというふうに聞いておりますが、そうなりますと、現在行われております少年保護事件の付き添いだとか、あるいは刑事被疑者弁護、この辺が外される可能性があるのではないかという危惧も持っております。  少年事件の保護も、これは人権の擁護に関する大事な作業でございますし、また被疑者弁護、起訴前の弁護ということも、逮捕されて不安な被疑者にとってみれば、一日も早く弁護士に会っていろいろ打ち合わせをするということは、非常に僕は大事な、初動捜査と同じように初動弁護ということが一番大事ではないかと思いますが、この辺が、将来の扶助事業から外される危険性があるのかないのか、非常に心配しているんですが、この点、いかがでございましょうか。
  96. 大藤敏

    ○大藤政府委員 法律扶助制度研究会研究目的には、刑事に関する問題は含まれていないわけでございます。ただ、外国法制の調査研究をする場面と、財団法人法律扶助協会の事業の把握及びその存続について検討が及ぶ場面におきましては、刑事に関する議論も行っているところでございます。
  97. 漆原良夫

    ○漆原委員 時間がなくなりましたので、二点を一遍に質問いたします。  一つは、扶助方法ですけれども、原則償還制だという話も聞くのですが、生活保護者に対する手当ではお考えなのかどうか。それからもう一つは、研究会の今後の見通しはどういうふうになるのだろうか。その辺二点、あわせてお尋ね申し上げます。
  98. 大藤敏

    ○大藤政府委員 法律扶助制度研究会におきましては、償還制、給付制、それから一部負担制等の利用者の負担のあり方について幅広い調査研究が行われているところでございまして、これらの制度の利害得失なども分析されているわけでございます。例えば、納税者の理解という観点から償還制を主張する意見もございますし、また利用者の利便という観点などから給付制を主張する考え方、さらに、対象者の一部について負担金を主張する意見等が出されているところでございます。  それから、研究会の今後の見通しでございますけれども平成九年度末までに研究結果を取りまとめをしたいと考えておりまして、法務省といたしましては、この研究報告書を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。
  99. 漆原良夫

    ○漆原委員 これで質問を終わります。大変ありがとうございました。
  100. 八代英太

    八代委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  101. 八代英太

    八代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西村眞悟君。
  102. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私に質問のお時間を与えていただきまして、委員長また理事各位に感謝申し上げます。法務大臣も、恐れ入りますが、ちょっと尖閣問題ばかりですのでうんざりされておるかもわかりませんけれども、ちょっとその関係からお尋ねいたします。  本日は、朝刊を見ていたらおもしろかった興味深い記事が並んでおったわけです。まず、読売等を見ますと、今回の尖閣領海に対する香港、台湾の方々の侵入に対して、橋本総理はコメントを聞かれて「申し訳ない。コメントを控えておこう。どんなコメントを出しても刺激が強過ぎる」という発言をされている。中国はといいますと、これがけさの報道ですが、抗議の責任は日本にある、中国の外務省報道局長日本の「「右翼上陸に関する交渉で日本が示した約束を履行し、有効な措置を取り新たな事件を挑発しないよう望む」と語った。」この「右翼上陸に関する交渉で日本が示した約束」というのは、私が聞きたいところですけれども、昨年のことだろうと思います。  昨年中国は、十月七日に中国人が上陸したことに対して、中国人の行動は理解できるというコメントでした。私が、尖閣は日本領土であると、これは政府も変わらざる前提にあることですけれども、この尖閣に上陸しました。私のときはコメントがあったわけです。中国も、日本の総理以下の閣僚も、法務大臣はコメントなさってなかったと思いますけれども。私がいつもこの尖閣問題を取り上げたときに、私の問題意識もおわかりいただけると思いますし、法務大臣の問題意識も承りました。このたびの中国の領海侵犯に対して、橋本総理はコメントは刺激的だからと控えておられるのですけれども、何かコメントというか意見というか、法務大臣としての御所見はございませんでしょうか。
  103. 松浦功

    松浦国務大臣 今回の問題につきましては、荒びることなく排除という観点からは、完全に日本の領土であるという主張の基礎になる行動だったと思っております。ほっとしておるというのが実情でございます。
  104. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私の前に、あれは石垣市大字登野城という石垣市の行政区域にあるので、石垣市の市会議員と市会議長が尖閣に昨年視察に行ったわけですね。今回もその市会議員、市会議長が同行するという中で、市会議長はいろいろなことを言われたので断念した。石垣市の市会議員が行ったときに、政府は一市会議員の行政区域内の視察に対してコメントを出しておりました。私のときもコメントを出しておりました。コメントというのは、厄介なところに行ってくれたと。私の場合は、前回申し上げたように、少々私も感情的にならざるを得ないようなコメントだったわけですね。  そして今、中国の北京政府の報道局長のコメントは「右翼上陸に関する交渉で日本が示した約束」、こういうことを言っておるのです。何か、尖閣に日本人が行くことを日本政府はやめさせるというふうな約束を中国としておるのでしょうかね。そういう疑問を持たざるを得ない。中国人が来たときに中国政府は、昨年は、中国人の行動は理解できる、それから今回は、この責任は日本にあるとコメントを出し続けております。私の場合も石垣市の仲間市会議員の場合も、政府から非難されておる。なぜ日本政府は尖閣に行く日本人を制止しようとするのか、政府みずからの判断で制止しようとするのか。それとも、中国と制止するという約束をしたのか。法務大臣、きょうの報道に基づいて御質問しておりますので、法務大臣のお知りになる範囲で、この点、お答えいただけましたらありがたいのですが。
  105. 松浦功

    松浦国務大臣 ただいま御指摘をいただきましたお約束、そういったことについては私、一切存じておりません。
  106. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 この経過の全趣旨からいって、空はいいのですよ。私が上陸したときも、空に日本のヘリコプターも飛行機も飛んできて、それには何のコメントもないわけです。あれは日本の領空ですからね。しかし、足を着けて立つということに対しては非常に非難をするわけですね。私としては、大臣が存じておられないということは承りましたけれども日本政府が約束しているという北京のこの報道局長の言は正しいのではないか、真実なのではないか、こういうふうに思っておるわけです。  さて、大臣は先ほど、やはりほっとされたとおっしゃいました。私もほっとしたというふうな気持ちも持っております。しかし、やはり後世の教訓のために、この委員会においても事実を記録にとどめたいという思いで御質問させていただきます。  やはり我々は、大臣もほっとされたと言われるように、尖閣領海もしくはその排他的経済水域において、今度の現場で大事に至らないように阻止、排除された海上保安庁の現場の諸君に感謝しなければならない。遠く離れた海ですから、なかなか関心は高まらなかったのですけれども、感謝しなければならない。昨年のように上陸されたら、日本政府は今の時点ででも、橋本総理は刺激的だからコメントを差し控えるということですから、日本人が上がってあれほど非難したのに、今度は中国人が上がってどうするんだというふうに迫られたはずなんだ。私は、海上保安庁の諸君、また治安の維持としての沖縄県警初め警備に当たった皆さんに、今回の事態、よくやってくれたと感謝しなければならないと思っておりますが、大臣の御所見はいかがですか。
  107. 松浦功

    松浦国務大臣 この前からの質問にもございましたが、最後まで私は、不法な上陸者がいるならばこれを排除するという表現で先生お答えを申し上げてまいりました。しかし、具体的には、排除という言葉の中身が問題なのでございますが、少なくとも政府としては、いよいよの事態が何かあった場合には拿捕、逮捕ということもあり得るということを政府として決めておるということで私は理解をいたしております。
  108. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 また、本日の同じ外信に、これはフィリピン海軍ですが、排他的経済水域内で操業していた中国漁民二十一人を拘束したという記事が出ております。中国の海洋戦略は、今のフィリピンの御紹介した南シナ海、また我が尖閣がある東シナ海において極めて活発で、自己の主張を言い続けるのみならず、既成事実をつくっていこうという姿勢は感じ取れるわけです。  それで、今回の事態について、事実関係をこれからお尋ねしたいと思います。  まず、五月十八日に来る予定だということは、三月ころには向こうの新聞にも載っておった事態でございました。ところで、我が国の海上保安庁の巡視船観閲式は五月十八日の予定でございました。実際は五月十八日の予定は中止、変更されたわけですが、これがいつ中止、変更の決定をされたのか、まずそこからお伺いしたいと思います。
  109. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  五月九日でございます。
  110. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 次に、今回、実際に領海に数隻入ったわけですが、何隻が出航して我が国の排他的経済水域に入り、何隻が我が国の領海に入ったんでしょうか。
  111. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  五月二十六日早朝に、巡視船艇、航空機が、約三十隻の台湾抗議船などが尖閣諸島に接近してくるのを確認しました。それで、この日の午後、このうち三隻の船が巡視船のたび重なる警告を無視して我が国の領海内に侵入しております。
  112. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 遠くから出てこられるので、まとめてお聞きしたいと思います。  この三十隻というのは排他的経済水域内に三十隻あったということでよろしいのかということと、三十隻は排他的経済水域内で何をやっておったのか、何時間排他的経済水域内でとどまっておったのか。また、領海に侵入した三隻は何時間領海の中におったのか、尖閣の直近の島からどの距離まで三隻は接近したのかということをお伺いします。
  113. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  約三十隻と申しましたが、これがいわゆる排他的経済水域、そちらに入っております。これらのものは、巡視船による領海侵入に対する警告などによりまして、その付近で遊よくあるいは徘徊をしておりました。もちろん巡視船隊がこれらの前路を阻止するというような形で状態が続いてございます。このうち三隻がこれらをかいくぐって入ってきておりますが、このうちの最も近いのが島から約八マイル付近まで接近して、その後退去させてございます。
  114. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 三十隻が何時間ぐらい徘回しておったのか、それから三隻が八マイルまで接近するまで何時間ぐらい領海にとどまっておったのかということも先ほどお聞きしたので、お答えいただけますか。
  115. 後藤光征

    ○後藤説明員 三十隻は、十六時十五分、我々が確認した時点でいなくなっております。このうち領海内に入りました三隻につきましては、十二時ごろに領海内に入った後、十四時〇七分ころ十二海里外に退去させております。
  116. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 通常、領海に入るということはいかなる犯罪を構成するんでしょうか。  また、これと関連して、私も、巡視船にその時間のころに跳び移った者がおった、巡視船から跳び移ったのではなくて、伊豆半島沖では巡視船から跳び移って逮捕しているのですけれども、今度は反対に、飛んで火に入る夏の虫のように巡視船に跳び移ってきた者がおったというふうに聞いて、漫画みたいなことになっているなと思ったのです。  冒頭お聞きしたのは、領海内に彼らのような意図で入り、かつ、巡視船に跳び移ってきた者はどういう犯罪を構成しておるのかということについてお聞きしたいと思います。
  117. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  入管法違反でございます。
  118. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 三名ですか、今お尋ねしてお答えがなかったのですが、跳び移ってきた者は。  私は、三名とお聞きして、入管法違反の者が三名、まあ入ってきた船が全体で、その中に乗っているのが入管法違反で、跳び移ってきた者の三名というのはこれは何じゃと思っておるのです。跳び移ってきた者は、入管法違反以外に、人の看守する居宅、艦船にゆえなく侵入するというのは住居不法侵入ですし、公務の執行を妨害するのは公務執行妨害、また威力業務妨害、いろいろな犯罪に当たるのですが、どういう犯罪に当たると現場では認識されたんですか。
  119. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  入管法違反と考えられたため、身柄を一時拘束いたしました。
  120. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 その身柄拘束の法的根拠は、現行犯逮捕ですか。ゆえなく身柄は拘束されませんから、お聞きしておるのです。
  121. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  身柄拘束した上、入管職員の判断に基づき、海上保安官が強制的に退去させております。
  122. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ここは大切なところなんで、身柄を拘束したということは、法的には逮捕なんですかどうかと聞いておるわけです。刑事訴訟手続上の逮捕なんですかどうかと。それとも、超法規的に身柄を拘束したのか。いずれですか。
  123. 後藤光征

    ○後藤説明員 庁法二条でございます。海上保安庁法二条に基づき身柄を拘束いたしました。
  124. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 庁法二条というのは余り詳しくないんですが。
  125. 八代英太

    八代委員長 海上保安庁法、それをちょっと読んでください。
  126. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  海上保安庁法第二条でございます。ここには、「海上保安庁は、」ということで、任務を書いてございますが、その中に「海上における犯罪の予防及び鎮圧、」ということが書かれております。これに基づいて行いました。
  127. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 いやいや、それは任務ですね、海上保安庁の。任務に基づいて権限が付与されておって、身柄拘束のですよ。その身柄拘束の権限というのは、犯罪を現認して、治安を維持するためには刑事訴訟法上の逮捕とかいろんな手続がある。現行犯逮捕か令状による逮捕か緊急逮捕が、いずれかと聞いておるんです。
  128. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  入管法違反と考えたために、海上保安庁法第二条の規定に基づいて身柄を拘束した上で、入管職員の判断に基づいて海上保安官が強制的に退去させてございます。
  129. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 もうこれ以上お聞きしませんけれども、この件に関しては。  私が次にお聞きしたいことは、私が報告を受けたときには、協議していると。どこで協議しているか。東京か船の上かと聞けば、東京らしいと。今の拘束した上で退去させましたという判断、行為の前提として、その跳び込まれた船の船長独自の判断なのか、それともどこかで協議がなされたのか。仮に協議がなされたとするならば、どことどこが協議をしておったのかということを、どこでかも含めてお答えいただきたい。
  130. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  海上保安庁と関係当局と東京において協議いたしております。
  131. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 その関係当局というのをお聞きしたいんです。東京で関係当局と協議したその関係当局はどことどこなのか。そして、関係当局の判断によって先ほどお答えいただいたような処置になったのかどうか。そしてもう一つ、現場の船長はその判断に従わざるを得なかったのかどうか。ここまでお答えください。
  132. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  関係当局と申し上げましたが、法務省入管局でございます。それと、そこでの決定に従って、これは本庁から現場、第一線に直ちに指示が参りますので、そのとおり私ども現場でも関係当局と一緒に処理いたしてございます。
  133. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ということは、入管局がそれならだれと相談したのかということをまた聞いていかないとしようがないんですけれども、手間がかかりますので省略します。  海保の単独での決定ではなかった、協議と指示が東京からあった。伊豆半島沖で、私の印象的な映像は、逃げる密航船を海保の船が追いかけて、海保の職員がその密航船に跳び移って逮捕しているわけですね。そういうときは今のような指示があるんでしょうか、ないんでしょうか。ことし二月までには四百名ぐらい来たと思いますけれども、彼らを現場において逮捕する、またあなたの言葉では拘束するというときには、東京における指示が、今おっしゃったような指示があるんでしょうか、ないんでしょうか。
  134. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  先生今おっしゃられましたような東京沖での密航の場合は、そういう具体的な指示はいたしてございません。
  135. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 なぜ尖閣ではあり、東京沖ではないんでしょうか。これは大臣にお答えいただけますか。
  136. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 尖閣諸島への台湾、香港からの活動家の侵入につきましては、政府、関係省庁が一体となって対応するという方針に基づいて対処しましたので、そこで東京の方にも海上保安庁が指示を仰いだものと承知しております。
  137. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 尖閣は、外国政府が我が国の領海、領有を否定して領有を主張している地域でありますから、関係省庁が協議するのは当然なことです。しかし、私が申し上げたいのは、協議した結果、法執行において尖閣と他の地域が犯罪を現認したにもかかわらず違うならば、これは我が国は一国二制度をつくっている国になって、ある意味では尖閣での主権行使を一部ためらっておるというふうに私は解釈するんです。したがって、ここに非常な問題意識を持っております。  今回のことに対する、総理大臣がコメントを控えるということと、しかし中国は一貫して、昨年は、上陸した中国、香港の方の行動は理解できるという発言をなし、今年は、この責任は日本にあるんだ、なぜなら右翼が上陸した後での交渉で日本が約束したとおりしていなかったからだ、こう言っているわけですね。こういうふうな周囲の、外部からの主張に対して我が国が今のままの状況では完璧とは言えないな、現場の保安庁の、冒頭法務大臣もお認めになったあの努力を東京の弱腰がゼロにしているんじゃないか、こう私は思うのですが、法務大臣は御所見はございますか。
  138. 松浦功

    松浦国務大臣 見解を差し控えさせていただくべき問題ではなかろうかと考えております。
  139. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 法務大臣のその御答弁は何遍もお聞きしましたので、これ以上お伺いしません。  では、質問を次に進めます。  今、関係省庁と尖閣周辺の問題においては協議するということになっているというお答えもありましたけれども、今回の事態に関して、どういうふうにやるのか、いわゆる迎え撃つといったら言葉が刺激的ですけれども、保安庁の、治安を維持するためにいかなる態勢で臨むのかというのは、海上保安庁独自の情報収集に基づく装備、船の数等を決定できたのか、それともほかと相談して決めたのか、また、そこに防衛庁、自衛隊との協議があったのか、これはいかがですか。
  140. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  警備態勢につきましては、さまざまの情報、これを総合的に判断してとらせていただいております。
  141. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答えいたします。  今回の台湾、香港の抗議グループの抗議活動につきましては、内閣官房の方で中心になりまして、関係省庁とずっと協議をしてまいりまして、それで、防衛庁もその関係省庁の一つといたしまして会議にも参加をさせていただき、いろいろな情報交換を行うとともに、対応策の検討ということについても私どもも加わってまいりました。それが実情でございます。
  142. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 何隻行ったか、それとどういう工夫をしたのかということはここではお聞きいたしません。  それで、その御努力によって、今回、ある意味では昨年のごとくならなかったということでございます。しかし、政府の方針は、排除するという方針でございました。排除するということは、法務大臣お触れになったように、その内容について、段階を踏んでいろいろあろうと思います。拿捕、逮捕までも排除で含まれると思います。私、今回の事態は拿捕、逮捕の事態ではなかったかと思う。その拿捕、逮捕の事態に対処するに、東京での協議によって、身柄を拘束したけれどもお引き取りいただいた、退去させたというふうな、法的にはどうなるのかなという、一体、排除したのかお引き取りいただくに任せたのか、わけがわからぬ、こういうふうに思う。  したがって、結論としては、東京の政治が、排除する装備をもって対処した現場の努力と比べれば排除する腹がなかった、このように思っておるのですが、法務大臣、これは法務大臣のお考えでは排除したことになるのですかね。向こうがあきらめて帰っていったことになるのですか。特に、三人乗り込んできた、そして三隻領海に入った、この者たちについて、これはやはり法で言う排除なのですか。
  143. 松浦功

    松浦国務大臣 強制的に退去させたということでございまして、入管法違反ということで逮捕したとかあるいは入管法の手続に従って退去処置をしたとかいうことではございません。事実上強制退去させた。諸般の事情からその辺のところを御賢察をいただきたいと思います。
  144. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ちょっと聞き忘れたのですが、供述調書、何人の組織で、どういう組織で、どういう目的だと。供述調書等はとられたのですか、とられなかったのですか。簡単で結構です。
  145. 後藤光征

    ○後藤説明員 調書はとってございません。
  146. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今回の教訓を踏まえて、今度とういう方針で臨まれるのかということをお伺いしたいと思うのです。  私が思うに、けさの新聞を見ますと、中国海軍が大規模演習をやっておった、日本とフィリピン牽制の趣旨がというふうに専門家のコメントがあります。昨年十月七日に上がったとき前後にも、中国海軍は大規模演習を旅順沖ぐらいですか、そのあたりでしておった。上陸演習も含む海軍の演習をしておりました。これが海軍の演習なのです。そして、妙なことに、上陸する一カ月前に、海洋調査船が悠然と領海侵犯をして海洋調査を続けるわけです。去年は九月に海洋調査船の領海侵犯がありました、尖閣周辺で。ことしも四月十六日から排他的経済水域に入り、二週間以上の調査を我が国排他的経済水域内で繰り返し、その間、領海を侵犯しながら中国の海洋調査が行われておりました。  私は、中国という国家、政府の方針が、今は市民というか一国民の有志の上陸のように表面では大騒ぎしているのですが、底辺には必ずその前に海洋調査船の調査があり、中国海軍の大規模演習がその時期等にあるということが二年続いているということを前提としてお聞きするのです。今後、この領域に対する治安の維持に対して、これは国境の島ですから、自衛隊の運用を含め、今回の反省点をまた踏まえていかなる体制で臨まれるのかということについて、総括的な質問でございますけれどもお答えいただけましたらありがたいのですが。
  147. 松浦功

    松浦国務大臣 十分に関係機関と意見を交わして、どういうふうにするかということを定めていくべき問題だと思っております。
  148. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今の段階では武器はありません。海保の船は機銃にほろがかぶせてあったわけですが、今回は、聞くところによると、機銃のほろは外していたというふうにもお伺いしております。ただし、これは突発的な、表面上さざ波のような民間の事件に見えますけれども、私が今言いましたように、必ず一カ月前に海洋調査船の調査が、領海侵犯があって、そしてそのときに中国海軍が大規模演習をしておるという事態をよく御認識の上、今後、自衛隊の運用も含む政府部内での総合的な対策をどうか工夫していただきたい、御協議いただきたいと思うわけです。  次の質問は、冒頭、なぜこの尖閣に行く日本人を当の日本国政府はとめようとばかりしているのだろうというのが私の素朴な疑問です。私が五月六日に連れていっていただいた気骨のある八重山の漁民である川満船長が、いつも石垣港に帰ってくるたびに海上保安庁に呼ばれたりするわけですね。川満船長本人のみならず、家族、親戚に働きかけて、再び船を出さないように、川満さんにそのようにしなければえらいことになるぞと、素朴な方々に対して政府機関関係者は石垣において言われる。  今回、石垣市の仲間市会議員から聞いたところによると、私は検察庁かと思うのですが、三十日の一時半に来てくれというふうに、呼び出しというか、任意に来てくれというふうな話があるそうなのです。この八重山の海を八重山の漁民の五千の皆様は生活の海としておる。川満船長も、八重山の海こそ自分の生活の場なのです。尖閣は非常に魚が多い海なのです。巨大なビル風ですから、海の上に標高四百メートル、せり上がった百万坪の岩の塊があるわけですから、魚釣島でも。非常なビル風と、そして潮流の激しいところですから、非常に良好な漁場なのです。なぜ、この良好な漁場に行く、そして魚釣島に上陸したいんだと言っている日本人を乗せた船長がそこまで調べられるのか、このように思っております。  法務大臣におかれてはお答えしにくい問題かもしれませんけれども、私は、自分が行った行為は公務だと思っておる、国会議員としての。だれも国会議員として自分の領土だと言われているところを見た人がないわけですから、そして、そこが日本人の開拓が今もありありと残っている百二、三十年前からの日本人の開拓した土地であるということを見た国会議員もおらぬのですから、公務として行かせていただいたのです。私が公務と思って行って、そして、男意気に感じて私を四・五トンの船で往復三百六十キロ、荒海を運んでくれた船長さんの行為は、私は公務を助ける行為であったと思っておるんです。  私は出張旅費等々の手続はありませんから、大臣はお答えにくいと思うんですが、この川満船長という方は、我々は守らなければいかぬ船長だ、こう思うんですが、法務大臣は、今私が御説明したことについて、御所見はいかがですか、この船長に関しては。
  149. 原田明夫

    原田政府委員 大変恐縮でございますが、検察官といいますか、検察庁からの呼び出しに触れた御質問でございましたので、まず、事実関係と申しますかその状況について、事務当局からお答えをさせていただければと存ずる次第でございます。  先ほど、五月三十日に検察庁からその船長さんに出頭をお願いしているという状況にお触れになりましたが、そのような事情はあるようでございます。現在、この事態につきましては、海上保安部におきましてさまざまな観点から事情聴取中ということで、検察当局におきましても、司法警察権の行使に当たります海上保安部と連携をとりながら、事態の背景といいますか事実関係をよく承知した上で、これに適切に対処していかなければならないという責務を有するわけでございますので、そういう観点からお願いをしている状況ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  そして、あくまでもこの種の、すべて刑事法にわたるものはそうでございますけれども、具体的な行為とその背景となる事情、また関係者のそれぞれの皆さん方の気持ちというものを十分理解し、かつ、それを証拠によって確定してまいりませんと、果たしてそれが犯罪を構成するのか、するとした場合にどのように処理していったらいいのかということを決めることができないわけでございます。  しかし、そういうことを全くやらないということになりますと、これまた国の刑事関係の執行を預かっている立場の者として責任を全うできないということでございますので、ただいま委員指摘の点、さまざまな点が議論になっていることは十分承知しておりますが、その関係当局の立場というものも御理解願えればと存ずる次第でございます。
  150. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 法務大臣の前で明確に申し上げておきたい。局長が言われたのは、それは刑事司法における当然のことですよ、事実認定。その行為をまさにやってくれと。お国のためだと言って頼み込んだのはこの私です。それは明確に御認識の上、川満船長に対しては対処されたい。  彼は、私の手足として、あそこに国会議員が視察に行ける海において唯一の手段としての自分のなけなしの全財産である船を提供して、そして私を案内していただいた。彼こそは、私と苦楽をともしにした、そして、彼が主体で行こうとして私を引っ張ったんじゃなくて、私が、あんたしかいない、海をよく知っているし、どうか連れていってくれと頼んだ方なんだ。そして、その方に事実を確認しなければわからないと。そのとおりでございますが、だったら、私に対する呼び出しもあるべきだ。これは当然あるべきだ。私は逃げも隠れもしない。前回もそう申し上げた。だから、法務大臣におかれても局長におかれても、私が川満船長に頼み込んで、船長も意気に感じて行ってくれたということを認識した上で、私を抜きに川満船長だけを呼ばれるのは控えていただきたい、私がすべてを話しますから。そう申し上げておきます。  そして、一点だけ、今の点が私が実は一番申し上げたいことなんです。  私が、自分がした行為によって、ここから遠く離れた石垣の本当に素朴な漁民の方が、そして気骨ある船長が、一番漁業の日和がよくて漁業に出られる日に限って、昼間から来いという、これは聞いておるからそのまま申し上げます。こういうふうな嫌がらせはやはりやめていただいて、嫌がらせではなくて、正々堂々と事実の調査なら、私が川満船長をして尖閣まで行っていただいた張本人だということを御認識の上、私を抜きにいろいろ調べていただいては困るということを申し上げます。  委員長、最後に一点だけ。  中国海軍が演習しております。防衛庁としては、この国境の島、外国人が上陸してくるこの島を防御するという想定のもとでの演習なり机上演習なり、計画がありやなしや、また既にやったのか否か、この点についてお答えいただきたい。
  151. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答えいたします。  尖閣諸島につきましては、要するに、我が国の固有の領土である、それから我が国が現にこれを有効に支配しているということでございますので、したがって、他国からの侵略行為に対する我が国の防衛、こういった自衛隊の任務の遂行についても、我が国の他の領域と何ら変わるものではないというふうに考えております。したがいまして、こうした観点から、尖閣諸島周辺におきましても、今回の事案と関係なく、警戒、監視活動は常続的に実施しておりますし、また対領空侵犯措置についても、我が国の領域と同様に実施しているところでございます。  それで、お尋ねの具体的な計画云々ということでございますけれども、これはまさに今お答えしましたとおり、自衛隊というのは、我が国の領域を守るということで、その任務遂行のために、訓練、計画その他いろいろ含めまして、常日ごろ努力をしておるということでございます。これは一般論でございますけれども、そういうことでございます。
  152. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  153. 八代英太

    八代委員長 続いて、斉藤鉄夫君。
  154. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  きょうは、私は、帰化行政とそれから在留資格認定の申請取次制度、この二つにつきまして質問をさせていただきます。  最初に、帰化行政についてでございますが、我々もこの帰化申請のことでよく相談を受けます。その相談内容は大きく分けて二つございまして、相談内容といいましょうか苦情ですけれども一つは帰化申請に大変時間がかかるということ、それからもう一つはこの書類の作成が大変煩雑であるということ、この二点でございます。  この二点につきまして、まず最初の帰化申請に大変時間がかかるという点につきまして、現在、地方、そして本省でそれぞれどれぐらいの時間が受理してから許可がおりるまでかかるんでしょうか、それをまずお伺いいたします。
  155. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 帰化事件の処理に要する期間につきましては、これはもちろん事案によって異なるものでございますけれども、また、局の繁忙の度によっても多少違いがございますけれども、現在、申請されたときから一年程度の間には結論が出せるようにということで現場を指導し、また努力しているところでございます。  現在、いろいろまだ努力中でございますが、多くの事件についてはこの期間内に処理されているというふうに考えております。ただ、一部の大都市にあっては一年を超える処理期間を要しているという実情もまだ残っておりますが、鋭意努力したいと考えているところです。  なお、そのうち、本省の期間というのは、大体四カ月ぐらいで処理をするという方針で臨んでおります。
  156. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 以前は確かに、先ほどお答えにありましたように、地方、本省合わせて一年ぐらいということだったようですが、最近かなりこの時間が長くなっているようでございます。一年半とか、ひどいものになると二年とかいうことでございまして、一つは、時間がかかるのは申請件数がふえているからだと思うわけですけれども、この申請件数と許可件数、ここ十年あたりどのように推移をしておりますでしょうか。それをお伺いします。
  157. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 概要を申し上げますと、最近十年間の推移を見てまいりますと、申請者数につきましては、十年前の昭和六十二年当時七千人台でございましたが、その後、平成三年には一万人を超え、平成八年においては約一万五千人まで増加しているところでございます。また、これに応じて帰化許可者の数も増加しておりまして、昭和六十二年当時六千人台でございましたが、平成五年には一万人を超え、平成八年には約一万四千五百人程度まで増加してきている、こういう実情でございます。
  158. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 十年前に比べますと申請件数も許可件数も倍増しているということで、この申請件数が非常なスピードでふえているということが、最近、受理をしてから許可するまでに時間がかかっているということの理由というふうに考えてよろしいでしょうか。
  159. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 一般的に申しまして、帰化申請の処理に時間がかかる理由といたしましては、国籍法の定める帰化条件を満たしているかどうかということについていろいろ細かい調査をさせていただかなければならない。この調査はプライバシーを害さないように留意しながらいろいろな方法でやらせていただかなきゃならぬということと、それから帰化が認められますと戸籍に記載することになりますので、その身分関係についてきちっと調査を尽くさなきゃならぬ。これが外国の身分制度、それから外国における身分関係に関する公証制度、そういうことと関係してまいりますので、そういうものを調査するためにいろいろ申請者に書類の提出を要請したり、そういったことで時間がかかる。あるいは先ほど御指摘のような、書類を大変たくさん要求されるというようなことが出てくるかと思いますが、そういった事情によって相当の期間がかかるということでございます。  もちろん事件数が大変増加してきているということも滞留の一つの理由でございますが、私どもといたしましては、そういった状況に対応しては、その処理体制のあり方、それから職員の研修、さらには調査の仕方といったことにもいろいろ工夫をいたしましてその処理期間を短くするという努力をしておりまして、私ども認識としては、一時期、事件がふえるということによって滞留現象が生じつつありましたが、現段階においては相当程度回復しつつある、これからも一層その努力をしたい、こういうふうに考えているところです。
  160. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ちょっと細かい質問になりますが、申請を受理してから調査に取りかかるまでの時間というのは存在するのでしょうか。受理をしたらすぐ調査を始める。先ほどの局長お答えですと、件数もふえているし調査内容もいろいろ複雑化してきている、そういうことでちょっと時間がかかるようになったのだということでございますが、受理をしてから調査を始めるまでにかなり時間がかかっているということはあるのでしょうか。細かい点で申しわけございませんが。
  161. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 一般的に申し上げれば、受理すれば直ちにといいますか、基本的には直ちに着手するということで臨んでおります。ただ、一部、特に滞留が多いというようなところにおいては若干その期間があるかもしれませんけれども、基本的にはすぐに着手するという体制で臨んでおります。
  162. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 そうしますと、一時期かなり時間がかかってきていたけれども、最近もとに戻りつつあるというような今お答えでしたけれども、職員の配置は適正なのでしょうか。増員を要求すべき、そういう状態にはないとお考えなのでしょうか。もしくは、件数もふえているし、要件も複雑化しているので、できれば、一年という期間を守るためには要員を増員すべきだというふうにお考えなのでしょうか。
  163. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 帰化事件数の増加に伴いまして、それを迅速かつ適正に処理するための要員の確保につきましては、平成七年度から関係方面の御理解を得て増員措置をお願いし、認めていただいているところであります。平成七年六名、平成八年三名、平成九年二名という数でございますが、そういう形で増員措置をいただいているところです。  御案内のとおり、現在、国家公務員の定員をめぐる事情、大変厳しい状況にございますが、そういった事情の許す範囲で今後ともそういった措置をいただけるよう、最大限努力をしたいと考えているところです。
  164. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 時間が長引くことのないように適切な措置をとっていく必要があるかと思いますので、もし増員が必要であれば、そう簡単に今要員をふやせるという時代状況にはございませんが、それはトータルがふえなければいいわけですから、いろいろな努力をして、帰化申請の人に不便をかけることのないようにお願いしたいと思います。  それから、帰化申請をする方のほとんどといいましょうか、主要な部分を在日韓国人、在日朝鮮人の方々が占めていらっしゃるわけですが、この方々については、戦前からのさまざまな経緯があって、二世、三世、日本で生まれて日本で育った、そういう方でございます。こういう特別の事情がある場合には、手続上の何らかの配慮というのはあるのでしょうか。
  165. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 帰化を許可するにつきましては、国籍法の定める帰化の要件に従い適正に判断しているということでございまして、そのすべての申請者について公平に取り扱わなければならないということでございます。  ただしかし、御指摘のような在日韓国人・朝鮮人の方々につきましては、日本で生まれ、日本の教育を受け、日本の社会に定着している、そういった事情を十分に考慮しているところでございまして、できるだけ速やかに手続を進めて許可をするという方針で実務を運用しております。今後ともこの方針で臨んでいきたいと考えています。
  166. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 これは法律を読めばわかることなのかもしれませんが、簡単に、帰化を許可する条件ということ、細かい話になればそれはもう幾らでもあるのでしょうが、基本的な考え方というのをちょっと教えてください。
  167. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 帰化を認めるための一般的な条件は法律に規定されているところでございますが、帰化を許可するための必要不可欠の条件として、一つは住所条件、すなわち引き続き五年以上日本に住所を有すること、二つに能力条件、すなわち二十歳以上で本国法上も成年であること、三つとして素行条件、すなわち素行が善良であること、四つとして生計条件、すなわち自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営むことができること、こういったことが主要な要件でございます。そのほか重国籍防止条件とか憲法遵守条件といったようなこともございます。大きなものは、今申し上げた四つでございます。  ただ、今申しましたのは一般的な条件でございまして、日本国民と一定の身分関係を有する者等につきましては要件がいろいろな形で緩和されているところであります。
  168. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。  それから、二番目の点でございますが、書類の作成が非常に煩雑だという点でございますが、大変重要な審査でございますから、書類が精緻なきちんとした書類であること、これは当然でございます。そのための作成が煩雑になるのはこれはやむを得ないかと思いますけれども、よく言われるのは、書類作成時の窓口での指導、これが非常に不親切だ。  例えば、窓口へ持っていく。ここは不備ですよ、ここは書き直してきなさい。また次に行く。そうすると、そこはいいんだけれども、その次の点でここがまたおかしいよと言ってまた返される。また次に持っていくと、その次のところをまた言われる。一遍行ったときにすべて不備な点をきちんと注意してくれれば、ある人の例によりますと二十回、三十回と行かなきゃいけなかったという話を聞きます。  そういうことがなくなると思うわけですけれども、申請をして受理するまでの時間、これも現実には非常に時間がかかっている。申請するまでの作業において、申請者の便宜を図るべく努力をお願いしたいと思いますが、この点につきましてはいかがでございましょうか。
  169. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の、窓口に何回も行かなければならないといったことにつきましては、できるだけそういうことのないように努めていることと思いますが、場合によっては、出された書面、御本人としてはこれでいいと思ったのが、担当者の方で見てこれで十分でないというような場合もあろうかと思います。  それから、書類の不備を指摘するのに、ある段階でここが不備だから整えてくださいというふうに申し入れて、それを直してきて、またさらに調査している段階においてここがまた足してもらわなきゃならぬということで気がついて、またお願いするというようなこともあろうかと思います。いろいろな場合があろうと思います。特に先ほど申しました身分関係が複雑だというような方については、その調査のためにいろいろ御本人にも本国の方々との連絡をとりながら資料集めしてもらわなきゃならぬというような場合もあろうかと思います。  そういうことで、事案によってはそういう御苦労をかけることもあろうかと思いますが、そういったことができるだけ少ないように、それから最初指摘がありました、要するに不備な点は一遍に指摘して一度に対応していただけるような努力、そういったことにもこれからなお一層努めさせていきたいと思っております。  また、最近、大きな事件の多いところにつきましては、外部の方に委託をして国籍相談員というものを配置して専ら国籍関係の相談に対応していただくということも進めております。これは予算上の問題もございますので、これから少しずつ御理解を得て広げていきたいと思っておりますが、そういうことができれば、もっと懇切丁寧な対応ができるようになるのではないか、そういったことも努力していきたいというふうに思っております。
  170. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 これから帰化申請は大変ふえると思います。その審査はもうまさに厳正に行わなくてはならないことはもう当然でございますけれども、その厳正さと、あと事務手続のある意味では簡素化ということは相矛盾しないと思いますので、また現実に我々のところにもそういう苦情がたくさん来ておりまして、もう我々としては別にそれをどうすることもできないわけですけれども、現実問題としてそういう苦情も来ておりますので、どうかこれからの御努力をよろしくお願いいたします。  次に、この三月に総務庁から「外国人の在留に関する行政観察結果に基づく勧告」、こういう勧告が出されました。その勧告につきまして、今どういう状況になっているか、お伺いをします。  まず、在留資格認定証明書の交付申請に係る申請取次制度についてお伺いします。  本来、この在留資格の申請は、本人出頭主義といいましょうか、本人が出頭して手続をしなきゃいけないということでございますが、これまで数次にわたってこの例外が規定されてきた、法律によって定められてきた。  一つは、法務大臣の許可を受けた公益法人、具体的には財価法人入管協会と財団法人国際研修協力機構と言われるものですけれども、この公益法人が申請の取り次ぎをできる、本人が出頭しなくてもいいということになっております。それともう一つ、行政書士がこの取次申請をすることができるということになっております。ところが、この総務庁の行政監察にも指摘されておりますが、この取り次ぎにおいて、二つの財団法人が行う取り次ぎと行政書士が行う取り次ぎの処理日数に差がある。  平成七年の高松入管の例でございますが、在留資格認定証明書、公益法人、二つの財団法人の場合は十六・六日、その他、その他というのは行政書士の取り次ぎと一般の申請者、一緒に入っておりますけれども三十四・七日。倍以上処理日数が違う、こういうデータも出てきております。ちなみに、在留期間の更新に係る許可申請では、財団法人が十七・九日、その他が二十二・六日。在留資格の変更に係る許可申請においては、財団法人が二十四・九日、その他が三十四・八日ということでございます。  これに対して、行政監察の方でこの取り次ぎにおける差、つまり財団法人と行政書士の取り次ぎにおけるこの差は廃止されるべきだ、こういう勧告が出ておりますが、どのように対応されておりますでしょうか。
  171. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 申請取次案件につきましては、制度の趣旨に照らしまして、円滑に処理がなされるよう努めてきておりまして、いずれの申請取次者に対しても公平に早期処理をするよう地方入国管理局を指導しているところでございますが、今回出されました外国人の在留に関する行政監察の指摘をも十分に踏まえまして、その徹底を期してまいりたいと考えております。
  172. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それではよろしくお願いいたします。  それから、同じくこの勧告の中に、取次申請者と一般の窓口は別にすべきではないかというものもございます。つまり、窓口がある、そこにずらっと人が並んでいる。本人出頭の一般の人とそれから取り次ぎ、先ほど言いました財団法人や行政書士の方、同じ窓口だ。ところが、取り次ぎの方は一遍に十人も二十人ものその書類を持ってきている。そうすると、その後ろに当たった一般の人は長時間待たなきゃいけない、こういうことで、窓口を取り次ぎと本人出頭と別にすべきではないか、こういう勧告もなされておりますが、現実にそういう苦情も受けるわけですけれども、この点につきましてはどのように措置をされておりますでしょうか。
  173. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 本件につきましては、各地方入国管理局等に対しまして、事務室の実情に応じ専用窓口を設置するなど、一般案件と区別して受理するように既に指示しております。
  174. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 もう既に指示をされているとわかりました。  それから、この取次制度ですけれども、余り知られてない。知られてないのは、外国人の方にも余り知られてないし、また、行政書士が取次行為をすることができるわけですが、その行政書士にも知られてないということが言われております。この行政監察の中にも、この申請取次制度を利用して申請を出した人の比率は、平成六年ですけれども、札幌でわずか〇・七%、それから、東京が比較的多くて五・九%、大阪はこれも低くて一・〇%。ほとんどの人は本人出頭で処理をされているということでございます。  しかし、御存じでしょうが、この入管事務、非常に煩雑といいましょうか、多忙をきわめているわけでございまして、この過密状態を解消するためにも、取次申請者の制度を活用することが、私は、行政の効率化ということからも望ましいと思いますけれども、行政書士が申請取り次ぎをできるというPRを行政はもっとすべきではないかと思います。例えば、税務署には税理士さんの名前がずらっと掲げてございますし、法務局には司法書士の名前が掲げてあります。このように、入管のその場にも資格者たる行政書士の名前を掲げて、広く一般の人にPRをする必要があると思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  175. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 委員指摘のとおり、この申請取次制度というのは、外国人の利便を図りますとともに、申請窓口の混雑の緩和、それから申請事務の効率化を図る目的でつくられた制度でございますので、この制度がより多くの外国人に利用できるよう、今後とも、地方入国管理局等の申請窓口、それから入管協会等の財団法人を通じました広報の一層の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  176. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 では、御努力をよろしくお願いいたします。  それから、この行政監察結果の中に指摘された点を二点ほどちょっとお聞きしたいと思います。  新聞でも報道されておりますが、外国人登録画像情報システムの利用実績が非常に低調であるということが言われております。新聞でも、十九億円かけた外国人登録用の無料撮影、結局利用率は四%で、この計算はどうかと思いますが、単純に平均すると一枚二万五千円の写真を撮っている、こういうふうにも新聞に書かれているわけですけれども、これについて、廃止をすべきだという勧告が出ておりますが、この点についてはどうされておりますでしょうか。
  177. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 委員指摘のとおり、今回の行政監察におきまして、外国人登録画像情報システムによる写真撮影業務の廃止について勧告がなされているところでございますので、この勧告の趣旨に従いまして、現在、具体的な対応策について検討しているところでございます。この行政監察による勧告がなされた場合には、その六カ月後に中間報告を行うこととなっておりますので、それまでに具体的な結論を出す方向で検討を進めております。
  178. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 せっかく設けたものですから、廃止するのもちょっと、それもむだだなとも思いますし、活用されるように御検討をいただきたいと思います。  それから、大変話題になりましたいわゆる指紋の転写制度、この廃止に向けての検討をすべきだというふうに総務庁は言っておりますが、この点につきましての法務省のお考えをお聞きします。
  179. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 平成四年の外国人登録法の改正に際しての衆参両院の法務委員会における附帯決議を踏まえまして、外国人登録制度のあり方について検討しているところでありますので、この外国人登録証明書上に転写されている指紋の取り扱いにつきましても、この制度のあり方の一環として検討することとしております。
  180. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 以上、私はきょう、帰化行政について、それから在留許可のいろいろな手続について質問させていただきました。  最後に、大臣、特に帰化の問題でございますが、議論をお聞きになりましてどのようにお感じになりましたか、それをお聞きして、質問を終わります。
  181. 松浦功

    松浦国務大臣 いろいろ御指摘をいただきまして、本当にありがとうございました。御指摘をいただきました点について十分検討して、前向きに、帰化しようとされる方々が御不便にわならないように努力してまいりたいと思っております。
  182. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 終わります。
  183. 八代英太

    八代委員長 続きまして、石毛鍈子君。
  184. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛でございます。本委員会におきましては、初めて質問に立たさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、二十七日に第一回が開催されております人権擁護推進審議会の持ち方について御質問させていただきたいと思います。  一九九五年九月二十九日の閣議決定で、行政の透明性ということにかかわりまして、審議会は、原則として、会議の公開、議事録の公開を行い、運営の透明性の確保に努めるというふうに閣議決定がなされておりますが、この人権擁護推進審議会も当然公開を原則として進められるというふうに受けとめさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。その点の御確認をお願いいたします。
  185. 大藤敏

    ○大藤政府委員 今委員が御指摘になられましたように、平成七年九月二十九日の閣議決定に基づきまして、本審議会の公開についてもそれを運営してまいりたい、このように考えております。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  186. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございます。この審議会には、大変多くの期待と関心が差別を受けている当事者の方々から寄せられておりますので、ぜひその方向での推進をお願いしたいと思います。  それでは、本日、私は、三月十八日の本委員会におきまして民主党の坂上委員が問題提起をされました、聴覚障害をお持ちの方が、民法上の口授、読み聞かせという規定によって公正証書遺言ができないという問題に関連して、引き続き質問をさせていただきたいと思います。  この問題は、民法が現代の時代状況に合わなくなっていることを示す端的な一つの問題を示しており、障害を持つ方を単なる技術的な理由で排除する障害者差別の問題であるというふうに認識をしております。そのような認識から、一日も早くこの問題が解決されますことを求めまして、以下の質問をさせていただきたいと思います。  公正証書遺言に関する質問でございますけれども、それに先立ちまして、まず民法の遺言能力に関する規定でございますが、これは未成年者でも禁治産者でも、満十五歳に達していれば能力があるというふうにされております。聴覚障害がある方あるいは発話ができない方、そうした方も、満十五歳に達していればひとしく遺言能力があると理解することができると思いますが、その理解でよろしゅうございますでしょうか。
  187. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、民法九百六十一条では、「満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と規定しておりますので、御指摘のような方々も遺言をすることがもとよりできるわけでございます。
  188. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、そうした本来民法九百六十一条によりまして遺言能力を持つというふうに規定されていらっしゃる方々が、公正証書遺言についてはさまぎまな技術的な問題によってそれができないというふうになっているということでございます。  本論に入ります前に、簡単で結構でございますけれども、他の遺言方式に比べて公正証書遺言が持つメリットはどこにあるかという点を、確認の意味でお聞かせいただきたいと思います。
  189. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 民法におきましては、いわゆる普通方式の遺言として三つ、一つは自筆証書遺言、二つは公正証書遺言、三つ目として秘密証書遺言、この三つの方式を用意しております。  そのうち、公正証書遺言のメリットということですが、これは作成の手続に公証人が関与するということでございますので、一つに、その方式の有効性とか内容の解釈をめぐって後で紛争が生ずるということが相対的に少なくなる。それから、遺言書の原本が公証人役場に保管されますので、紛失とか改ざんといったおそれがなくなる。それから、手続的には、家庭裁判所の検認手続を要しないこととされている。こんなところがメリットと考えられます。
  190. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  今の御答弁からも明らかに理解できることですけれども、三つある提言方式のうち、公正証書遺言ではなくて他の方式をとればよいのではないかという、そうした問題とはこの問題は違う。おっしゃられましたように、公証人の方が関与して紛争が少なくなるですとか、あるいはまた、お答えいただいた中にありましたでしょうか、紛失や盗難、偽造のおそれもないというようなこと等々、あわせて考えますと、聴覚障害のある方あるいは発話が難しい方にとっても、公正証書遺言をつくれるということは当然の権利として受けとめることだというふうに私は理解をしております。  そこで、さらに続けますと、公正証書遺言が持つ特徴的な特質として、厳格性ということがあると思います。その厳格性は、少し敷衍いたしますと、一つには遺言の明確さとか、あるいは正確性が確保される、あるいは自発性が確保される。そうした意味で、聴覚障害がある方等々がこの公正証書遺言を作成できるということは大変重要なことであるわけです。それが、前回三月十八日、坂上委員指摘されましたように、民法が定めております口授、読み聞かせに関する規定によって、これがつくれないという問題にぶつかっているわけでございます。  そこで、公正証書は本来何が一番本質的な問題かといいますと、公正証書遺言によって厳格性が担保されるということが大変大事な点でありまして、方法としての口授、読み聞かせということは、必ずしも公正証書遺言をつくるに際してこだわる問題ではない、こだわる必要はないというふうに考えております。厳格性が大事というのはわかりますけれども、その厳格性を担保するには、口授、読み聞かせだけではない、別の方法でも立法論としては成り立つというふうに解釈したいと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  191. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のように、現行の民法の考え方は、遺言の方式一般につきまして、内容の明確性を期する、内容の真正を担保するという観点から、厳格な手続を要求しております。これは公正証書もそうでございますが、白書証書、秘密証書遺言についてもいろいろ細かく定めておるところでございます。特に、公正証書遺言につきましては、公証人の面前で作成するということから、最も確実な方法として口授、読み聞かせという手続を定めているわけでございまして、現在の現行法の解釈、裁判例におきましても、学説におきましても、その手続については厳格に解釈すべきであるということから、聴覚障害者の方々については別の方法、例えば秘密証書遺言、これも一定の限度で公証人が関与する、そのことによるメリットがあるわけでございます。そういったものを利用していただくということにしているわけでございます。  もとより、立法論として、いろいろな立法論があり得るということは委員指摘のとおりであるというふうに思いますが、現行制度で公証人に対する口述ということがその手続の根幹をなす重要な役割を果たしている。この点をどうするかということにつきましては、遺言手続全体を視野に置いて慎重に検討していかなければならぬ問題ではないだろうか、このように思っているところでございます。
  192. 石毛えい子

    ○石毛委員 少し角度を変えて質問させていただきたいと思います。  公証人法第二十九条、その条文では、嘱託人が日本語を理解できない場合と聴覚の障害、言語の障害を等しく取り扱っておりまして、その場合、通事を、通訳ということだと思いますが、立ち合わすことを義務づけているというふうになっております。公正証書遺言に関しましても、外国語の場合は通訳を介してもいいというふうに理解をしておりますけれども、この公証人法第二十九条を考えてみますと、そこで通事を立ち合わすことを義務づけているということでございますから、外国語に関する通訳と、それから口授、読み聞かせに関しまして、手話通訳を等しく扱うことができるのではないかというふうに理解をいたしますけれども、いかがでございましょうか。  音声がなければ有効ではないというその理解は甚だ納得できない、手話通訳でもよろしいのではないかというふうに申し上げたいのですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。
  193. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、公証人法第二十九条に今お話がありましたような規定がございますが、この規定の解釈といたしましては、手話通訳もこの範囲に入るというふうに考えられております。したがって、遺言以外の一般の公正証書につきましては手話通訳による作成も認められるということになろうと思うわけですが、遺言の方式については民法に規定がございまして、民法の方で口授、読み聞かせということを規定しており、先ほど申しましたように、判例、学説も厳格な解釈をすべきだという考え方でございますので、先ほど申し上げたような取り扱いになっているということでございます。
  194. 石毛えい子

    ○石毛委員 私は法律の専門家ではございませんので、普通に市民生活を送っている者の立場からして率直な疑問なのです。民法上、公正証書によって遺言をつくるときには口授、読み聞かせ、それは正確を期するからだというふうにおっしゃいましたけれども、では、そのほかの事柄は、いろいろあると思いますけれども、正確を期するということではないのか。少し揚げ足取り的な表現に聞こえたら私はちょっと本意ではないのですけれども。  それから、逆に、公証人法第二十九条の方に手話通訳が認められていて、それが正確だというふうに受けとめるならば、民法上の法の規定もそう書かれてはおりますけれども、これを何か補強をしていくことによって正確だというふうな解釈が成立すればよいのではないか。つまり、民法でそう書かれているからというふうなお答えでございますけれども、私は、市民生活から考えれば、それが正確を期すことにはならないといいますか、そういう理解というのは甚だ市民生活上の実態に合わないといいますか、常識に合わないといいますか、そういう感じがして、今の質問を重ねさせていただきますけれども、いかがでしょうか。
  195. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、一般の公正証書と遺言の場合との違いということでございますが、遺言というのは、本人が書かれて、その死後に問題になるということから、その方式を特に民法で厳格に定めているわけです。一般の契約書の場合には特にこういう様式でなければならないということは原則としてないのでございますけれども、遺言の場合には特に厳格な方式を定めている。それは、その遺言の特質によるものであるということであろうと思っております。  それから、現行の解釈運用でできるのではないかということでございますが、公証人として公正証書を作成するに当たりまして一番重要なことは、せっかく当事者の依頼に基づいてつくったのに、後で無効だと言われるということが一番ぐあいが悪いということでございます。結局、遺言の方式に従っていないから無効だというようなことは、後で御本人が亡くなってから問題になるわけでございますが、先ほども申しましたように、現在の学説、判例も、遺言の方式については厳格な解釈態度をとっておりますので、したがって、公証人の運用として、そういう御指摘のような運用をしたことによって後で無効になってしまうということがないように、現在では、公証人が一定の限度で関与する秘密証書遺言の方法によっていただくというようなことにしているという状況にあると承知しております。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  196. 石毛えい子

    ○石毛委員 現在の学説や判例では、民法第九百六十九条の規定の有効性を変えることはできないといいますか、それを維持していくというお答えをいただいたと思いますけれども、そのことをもうちょっと市民的な生活の中で申し上げさせていただ。きたいのです。  例えば、公正証書遺言の手続をより念入りにしていくということで、特別に立ち会う証人あるいは公証人の人数をふやすとか、それから口授、読み聞かせの際に双方に手話通訳を立てるとかということで、その正確さを補強する方法というのは考えられることだと思うのですけれども、やはり今の御回答、学説や判例ではだめだからということ以外の御回答は、今のところは無理ということでございますでしょうか。
  197. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 現行法上の運用の問題としては、なかなか難しいというふうに考えております。
  198. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、少し質問の角度を変えさせていただきますけれども、聴覚障害をお持ちの方が民法第九百六十九条の規定のために公正証書遺言ができない、遺言書をつくれないということにつきまして、これは市民生活の担保という点から考えましておかしいというふうにお思いになりますか。いかがでしょうか。
  199. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 もとよりいろいろ考え方があろうと思いますが、現在の民法の考え方は、遺言の方式に関しまして、遺言をする人の要求、その置かれた状況に応じて、遺言内容の明確、真正を担保し得る方法、かつ厳格な方法を類型化しているところです。先ほど来申しておりますように、白書証書あるいは公証人も一定の限度で関与する秘密証書遺言をすることはできるということでございます。  そういうことで十分なのかどうかという御指摘は、私どもとしても勉強させていただく必要があろうかと思っております。
  200. 石毛えい子

    ○石毛委員 前回坂上委員質問されました折、濱崎政府委員あるいは一番最後は松浦法務大臣、皆様が、検討を要する問題、あるいは大臣は、矛盾があれば検討しなければならない問題というふうにお答えになっておられます。  今までの私の質問、それから政府委員お答え等々を踏まえまして、私は、これは自筆証書提言や秘密遺言でつくる方式があるからいいのではないかというお答えもあろうかと思いますけれども、聴覚障害をお持ちの方、これは何らかの補強的な方策をとれば当然可能なことであるわけですし、それが排除されているというのは、明らかに機会の均等から外れているというふうに主張せざるを得ないというふうに思います。  そこで、前回も、検討しなければならないというふうなお答えが何度がなされておりますので、最後に大臣、その検討するという方向性につきまして御所見を伺いたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  201. 松浦功

    松浦国務大臣 ただいま政府委員からいろいろと御答弁を申し上げたとおりでございまして、なかなかこの問題については多くの問題がまだひっかかっておるようでございます。時間をかけて勉強させていただきたいと思います。
  202. 石毛えい子

    ○石毛委員 今大臣、時間をかけて勉強していくというふうにお答えいただきましたので、その時間がどれぐらいに及ぶかということでございますけれども、重ねてお尋ねすることはするつもりもございませんけれども、ぜひ、聴覚障害をお持ちの方々の、大きなこれは問題提起でありますし、人権の主張でもあるというふうに私は考えますので、その時間をかけてというところを、短い時間で一定の方向性を出していただき、私たちもその議論ができる、そうした方策をおとりいただきたいということを要望させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
  203. 八代英太

    八代委員長 続きまして、保坂展人君
  204. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私はここのところ新聞を見るたびに極めて憂うつになるわけです。第一勧銀の巨額な融資、これは無担保で、しかも返ってこないだろうというお金として出されている。庶民が百万、二百万借りようと、なかなか出ないわけですね。  日本を代表する銀行で、日本を代表する証券会社がこういう底なし沼のスキャンダルに今あえいでいるという中で、本委員会で、私も提案者として商法、これはストックオプションの解禁ということと消却に関して、いわゆる定時総会ではなくて取締役会で決議してという議員立法を提案させていただいた立場を踏まえて、その法務委員会での附帯決議の中にも、この導入は、いわば市場の活性化そして自由な企業活動を保障していくに当たっては、やはりそれに見合う社会的なルールの適用ということが厳密に求められなければいけないのだということを込めた附帯決議が上がったと思います。  そこで、まず大蔵省に来ていただいていると思うので伺いたいのですが、とりわけ自社株を、アメリカのようにそれこそ社長を縛れるように取締役会があるのではなくて、ワンマン社長の下にあるようなそういった日本的な取締役会が多い中で、インサイダー取引の危険性がどの程度あり、それを防ぐためにどのような知恵を、そしてあるいは法改正を考えておられるのか、この辺をまず伺いたいと思います。
  205. 柏木茂雄

    ○柏木説明員 お答え申し上げます。  ただいまインサイダーにつきましての御質問がございましたので、答えさせていただきますけれども、証券市場の公正性あるいは健全性、そういうものを維持しまして市場に対する信頼を確保していくということにつきましては、インサイダー取引を初めとします不公正取引、これを防止するというのは極めて重要であるというふうに私ども認識しておりますし、先日御審議がありました自社株消却あるいはストックオプション制度、その制度導入に当たりましても、そういう観点が極めて重要であるというふうに私ども認識しております。  これを受けまして、また証券市場における不公正取引規制の整備強化につきましては、現在証券取引審議会の総合部会というところにおかれまして、透明で公正な市場を確立するとの観点から、総合的な証券市場改革の一環として御検討いただいているということでございます。その部会におきましては、インサイダー取引規制を含めまして、その証券取引法の行為規制につきまして、あるいはその罰則の強化につきまして、国内他法規とのバランスや先進諸国とのバランスも考えながら充実を図るという御意見がございますものですから、現在、それを踏まえて、罰則強化を含めまして、法整備について証取審の議論を受けまして、証券市場改革の中で適切に対応していきたいというふうに考えております。  もとよりインサイダー取引等の不公正取引につきましては、先般の特例法の附帯決議にもございますように、証取法の厳格な適用を図っていくということは、私どもも考えておるところでございます。
  206. 保坂展人

    保坂委員 実際にインサイダー取引というのが極めて行いやすい危険もあるわけで、そこは厳重にルールをつくっていかなければいけないということを申し上げた上で、もう一つ附帯決議があったのですけれども、要するに、現在の株主総会のあり方、各社横並びで行われるわけでございますけれども、今回、野村、第一勧銀とつないで浮かび上がってきている構造、これはいわゆる総会屋という人が暗躍をしているといいますか、明らかな影響力を持っているということが浮き彫りになってきてい各と思うわけですけれども、法務省から見て、総会屋というのはわかりやすく言うとどのような職業で、どういう実態だと把握されているのでしょうか。
  207. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、総会屋というのはどういうものかという御質問について申し上げさせていただきたいと思いますが、私から今さら申し上げるまでもないと思いますけれども、私どもお聞きしているところでは、いわゆる与党総会屋というものと野党総会屋というものがある。与党総会屋というのは、株主総会の運営を円滑にするということを助けることによって会社から利益を得る、反対の方は、荒らすということ、あるいはいろいろ会社の内情を暴くということ等のために利益を得ようとする、そういう存在である、私どもそういうふうに理解をしているところでございます。  実態がどうなっているかということについては、私ども立場ではちょっと把握しておりませんので、御了承願いたいと存じます。
  208. 保坂展人

    保坂委員 前回の商法の改正が、いわば株主総会が健全に機能していて、いわば発言も自由にできて、そして民主的な空間としてこれがあるということを、少なくともその方向に向かうのだということを前提に語られた議論、そして趣旨だったと思いますけれども、ことしもまた、恐らく各社横並びでこの株主総会が非常に短期間のうちに並ぶ。この事実そのものが、いわゆる総会屋の影響を十分駆逐し得ない現状を語っているのではないかというふうに思うのですが、もう一度御見解をお願いします。
  209. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような関係があるだろうというふうに存じております。会社の立場としては、そういうことによって総会屋の活動を封じるという方策として考えておられるという見方もあるということも聞いております。
  210. 保坂展人

    保坂委員 野村証券も第一勧銀も、日本を代表する企業として大変世界的にも大きな影響を与えていると思います。ですから、市場の活性化ということで一方の蛇口をひねっても、こういう黒い部分、もう一つの蛇口をきちっと閉めなければ、これは世界に通用する市場あるいは企業あるいは経済ということになっていかないと思うのですが、大蔵省は、今回の第一勧銀が本当に合併した当初からこの元出版社社長ですかのつき合いがもうあった、いろいろもう構造的に、頭取室に出入りしながら、歴代引き継ぐ形でこういった総会屋と言われる人たちとのつながりがあったという事実を踏まえて、どういう危機感を持っておられるのか、そして先ほど指摘した株主総会の横並びということについてもどういう認識を持っておられるのか、大蔵省から伺いたいと思います。
  211. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  銀行は、その業務の公共性にかんがみまして、公共的、社会的役割を自覚した業務運営を行っていくことが求められておりまして、いやしくも社会的批判を受けることのないよう努める必要があるというふうに考えているところでございます。当局といたしましても、銀行の業務の健全かつ適切な運営について指導してきたところでございますが、今回、預金者等の信頼を著しく損ねるような問題が生じたことは極めて遺憾であるというふうに認識をいたしております。  大蔵省といたしましては、既に第一勧業銀行から中間的な報告を受けるなど事実関係の把握に全力を挙げているところでございますけれども、同行におきまして引き続き事実関係等について徹底的な調査を進めまして、捜査当局による捜査状況も踏まえつつ、法令等に従い厳正に対処していく考えでございます。こうした本事案の原因究明を通じまして、かかる不適切な業務運営の再発防止を図り、我が国金融界の信頼性確保に努めていきたいというふうに考えております。
  212. 保坂展人

    保坂委員 野村証券の事件に関しては日本版SECと言われている証券取引等監視委員会の告発というふうに言われているのですが、これはどの時点でこの情報を把握され、調査をされてきたのか、お答えできる範囲でお願いしたいのと、そして現在の体制で寄せられる情報に対して十分に機能することができるのか、あわせてお願いしたいと思います。
  213. 立石久雄

    ○立石説明員 お答え申し上げます。  後半の部分からちょっと先にお答えさせていただきますけれども証券取引等監視委員会は、証券会社等に対する検査、あるいは日常的な市場取引の監視活動、さらには取引の公正を害する犯則事件等調査、こういうものを通じまして、市場の公正性、透明性を確保する、こういうことが当委員会の責務というふうに考えておりまして、平成四年七月設立以来、着実にその成果を上げてきているものというふうに認識しております。  さらに、今後こういう委員会の持つ責務、仕事の重要性というものはさらに増してくるものというふうに考えておりますので、今後とも市場監視能力の開発、あるいはその充実、さらには体制の整備というものも図っていきたいということ、そういうことを通じましてさらに責務を果たしていきたいというふうに考えております。  それから、最初の問題でございますけれども、本件、今回の野村証券に関する件につきましては、最初に申しました日常監視的な業務の中で、一昨年の末になりますか、その中で膨大な取引の中に不自然な取引が見られたということで、そういう市場監視の中でさらに情報収集に努め、そういう不自然な取引が、さらに情報収集をする中でいろいろ問題点というものが浮かび上がってきたところから、昨年の夏以降、調査をさらに進めることによってさらなる究明をし、御案内のとおりことし五月十三日に野村証券及びその役職員について告発に至ったところでございます。  以上です。
  214. 保坂展人

    保坂委員 最後に、大臣にぜひ少し長目にお答えいただきたいのです。  といいますのは、私、大蔵委員会で酒巻前社長に参考人として質疑いたしました。いわゆるVIP口座というものが、お答えですと一方、その後は八千とかいうお答えもありましたけれども、そういうものがあり、そしてまた、具体的には申し上げませんが、省庁の官僚の名前の口座もあるのではないかというふうに伝えられている中で、こういった金融界の不祥事がとてつもなく今広がっているわけです。だれを信じていいのかわからない状態です。この事態に対して大臣の本当に重大な決意を求めたいというふうに思うのですが、少し長目にお答えいただきたいと思います。
  215. 松浦功

    松浦国務大臣 余り長目にお答えすることは私は苦手でございますけれども、ごく関心を持っている中枢事項についてはっきりとしたお答えを申し上げたいと思います。  今度の事件は、どちらについても当然あってはならない事態だと思っております。そういう意味では大変関心を持っているということだけはまず最初に申し上げておきたいと思います。  その上で、例えば銀行法の罰則の問題等、これから検討しなければならない問題が証券取引委員会の方にも大蔵省にもいろいろあるのではないかと思います。そういう機関からそれぞれ罰則等の御相談があれば、私どもとしては当然前向きにこれを取り扱っていきたい。そして今度のような事件が二度と発生しないような素地、これはもう道徳の問題か個人の問題ですから、幾ら法律を整備したって絶対に起きないという保証はないと思いますけれども、少なくとも常識のある者はそういう道にのめり込まないような体制、あるいは素地というものをつくっていく必要があるのではないか、こんなふうに考えております。
  216. 保坂展人

    保坂委員 いつもより長くお答えいただきましたが、もう一点だけ。  今回、捜査が今進展中だと思いますが、もし職務権限に絡む官僚の方の存在が浮き彫りになってきた場合には、ぜひ厳正な態度で臨んでいただきたい。これはしっかりやっていただきたいと思うのですが、そこの決意を一言お願いします。
  217. 松浦功

    松浦国務大臣 法令に抵触するような事態があれば、勇気を持ってきちっと決断をして処理をするということを検察当局が図ってくださるものと私は信用しております。
  218. 保坂展人

    保坂委員 これで終わります。
  219. 八代英太

    八代委員長 次に、山原健二郎君。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 日本共産党の山原健二郎でございます。  まず最初に、婚姻についての民法改正問題について伺います。  民法改正につきまして、法制審議会総会が昨年二月二十六日に要綱案を決定、了承し、法務大臣に答申をしました。この答申には、夫婦は婚姻の際、別姓を選択することができ、また相続について、嫡出でない子についても嫡出子と相続分を同一にする等の改正が含まれております。  ところで、一年以上たった今に至るも、法案として提出されておりません。松浦法務大臣は、国民の意見が真っ二つに分かれている、国民の理解を得ることができる状況になってから国会に提出をするという姿勢を示しております。  そこで、まず一つは、国民の意見が真っ二つに分かれているというのは、どの部分、何を指して言っているのかという点でございますが、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  221. 松浦功

    松浦国務大臣 一番中核となるべき夫婦別氏制度、これと、それから非嫡出子の嫡出子と同様の権利を与えること。この二つの問題が国民の意見が真っ二つに分かれているというふうに認識をいたしております。
  222. 山原健二郎

    ○山原委員 与党の中に法制審の見解に強力に反対している議員がいるという報道もあります。どういうことが反対理由になっているのか、お伺いをしたいと思います。
  223. 松浦功

    松浦国務大臣 夫婦別氏制度の問題については、家族制度を守っていく上から適当でないという意味で御反対があるやに伺っております。  また、非嫡出子の問題については、やはり家庭というものを保護していくという立場から、こういうことになることはうまくないという意見があるというふうに承っております。
  224. 山原健二郎

    ○山原委員 日本共産党は、選択的別姓については、既に一九八七年以来民法改正を求めております。  私の承知しているところでは、別姓は家庭を崩壊させ、社会的な混乱にもつながると、今おっしゃったような意見があるわけですが、このような考え方はまことにオーバーに過ぎるのではないかというふうに思いますが、これについて法務大臣の見解を伺いたいと思いますし、この問題についての答申に基づいて民法改正をいつやられるのか、法務大臣としての決意をまずお聞きしたいと思います。
  225. 松浦功

    松浦国務大臣 先生からもお話がございましたように、国民の皆様方にある程度の御納得をいただけるという段階になって提案をいたしたい、このように考えております。
  226. 山原健二郎

    ○山原委員 後でもう一回お聞きします。  これと別に、もう一つ、ローカルな問題になりますけれども、建設省お見えになっていますか。  五月九日に、建設省四国地方建設局から依頼を受けた土木学会四国支部のあんぜん四国検討委員会最終報告書が発表されておりまして、これが四国のローカル新聞には大きく取り上げられております。  この報告書によりますと、愛媛県伊方原発沖の海底活断層については五つの見解を列挙しております。例えば露口耕治氏によりますと、「伊予灘においては、上灘沖断層の西方に少なくとも六十キロメートルまで三崎半島と平行に分布する二十四本の活断層が二つの断層系を構成しており、それに基づく地震規模が想定されている。」こういう表現です。  しかし、このように重要な見解があるにもかかわらず、この最終報告書では、内陸活断層についての評価はありますが、海底活断層についての評価はないわけでございます。したがって、海底活断層による地震についてどのような対策を立てればよいのか、ここがわからないわけですね。  私は、このあんぜん四国検討委員会委員である高知大学理学部教授である岡村眞氏に会いまして直接聞いたところによりますと、伊予灘の海底活断層はマグニチュード六・八から七・二、最悪では七・大規模の大地震を起こす可能性もあると言われ、行政による調査を望んでいます。  また、報告書では、地質部会の「今後の調査研究課題について」の項で、「(活断層の)調査を高度に遂行できる技術者は限られるため、活断層専門家の指導をうけるにしても、果たして投資に見合う結果が得られるかどうかについて、懸念も生じている。一方、これまでの活断層研究の柱であった大学の活断層研究調査費は伸びず、官と学の活断層調査費の格差は著しく拡大している。」と報告されております。つまり、報告書も、もっと官の、国の活断層研究調査を要求しているわけでございます。  そこで、こういう状況のもとで、お尋ねしたいのですが、既に岡村氏は、地質学論集第四十号で、海底活断層が約二千年間隔で活動を繰り返していることを指摘しまして、一九九六年仙台での地質学会で正式にこの海底活断層の危険性指摘しておりますが、建設省としてこの岡村氏の調査をどのように認識されておりますか、お伺いいたします。
  227. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 突然のお尋ねでございまして、若干戸惑っているところでございますが、ただいまの御質問の点について私、今現在お答えすべきものを持っておりません。  ただ、一般的に申し上げますと、地震に関するさまざまな施策につきましては科技庁の方で推進本部を設置されるなど、恐らくそこと、あるいは私どもの所管の中には国土地理院というのがございまして、そこでもさまざまな調査研究あるいは観測等々をやっておりまして、科学技術庁と十分連携をとりながらそういった問題に対処しているところでございます。今後ともそういったことでやってまいりたいと思っております。
  228. 山原健二郎

    ○山原委員 建設省、それから通産省、運輸省に聞きましても、都市部周辺以外の海底活断層については調査の体制がないというのが実情ではないか。先日お聞きしまして、どこへ行ったらいいのかということを感じたわけです。  国として、この地域の海底活断層の調査を行うべきだと思います。せっかく学者が長年の研究によりまして重大なことを警告しておるわけですね。それに対してこたえるべき相手がいないというような状態なのでございます。地震予知連絡会は、伊予灘及び日向灘周辺を地震特定観測地域として選定をしています。また、伊方原発もあり、地震による二次災害も考えられるので、国としての調査を強く要請したいわけです。  この点について、建設省は、こういう問題をどう受けとめられるのか、そこを聞いておきたいのですが、いかがでしょうか。
  229. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、全体の問題を科学技術庁を中心に各省がいろいろ相談しながらやっていくという形になっております。今の先生のお話は原発に関連した御指摘でございますので、もし、その所管する、原発の場合ですと通産省でしょうか、そちらの方からそういったお話があれば、私どもとしても何かお手伝いできるところはしてまいりたいと考えます。  以上でございます。
  230. 山原健二郎

    ○山原委員 結局、答えがなかなか、私が理解するのは困難ですけれども、やはり海底活断層についての調査というのは、本当に心配になるんだけれども、どこをさわって判断していいのかわからないものですから今お聞きしたわけです。なお建設省としてもこの点は十分御検討いただきたいわけでございます。本日はこれでおきます。  次に、徳島県吉野川現第十堰撤去、可動堰化についての質問であります。  現在第十堰は、潮どめ機能を持ち、旧吉野川へ分水し、上流の河床低下を防ぐなど重要な役割を果たし、約二百五十年にわたって存続しています。必要に応じて適宜補修すれば、長期にわたって役目を果たし続けることもできる歴史的土木文化遺産だと思います。しかるに、この間、現第十堰を撤去し、九百五十億円もかけて、悪名高い長良川河口堰よりさらに巨大なコンクリートと鉄のゲートを検討しているとお聞きしているわけでございます。  建設省に伺いたいのですけれども、二百五十年近く改修しつつもその機能を果たしている第十堰について、どう認識しているか。さらに、このように十分機能をしている第十堰を撤去し、新しく河口堰をつくるのはむだ遣いではないかという住民の声がありますが、これに対して建設省はどうお答えになりますか。
  231. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 第十堰でございますが、この堰には治水上、私ども大きく分けて二つの問題があると考えております。  第一点は、固定堰であるということ。もう一つは、斜め堰であるということ。斜め堰と申しますのは、堤防に対して直角ではなくて斜めにできているというものでございますが、この点が治水上問題があるというふうに考えております。  もう少し具体的に申し上げますと、固定堰なものですから、ふだんは問題ないのですが、洪水のときに洪水を堰上げてしまう。そして、大きな洪水が来たときには、仮に堰がなければはんらんしないで済むようなものまではんらんさせる可能性がある。この点が第一の、固定堰であるということの問題でございます  もう一点は、斜め堰ということでございますが、これは、河床の探掘れですとか複雑な流れを発生させているということで、これもやはり治水上問題があろうかと考えております。  もう一点は、堰自体が大変老朽化しているということでございます。お話のように、この堰は、最初につくられましたのは二百四十年ほど前でございますが、たび重なる被災を受けておりまして、はっきりとした記録のある明治二十五年からだけを数えましても二十九回被災を受けております。そのうち七回は堰本体が流失しているということでございまして、現在のものは昭和四十八年被災の際に復旧したものが残っている。そのときからでも既に二十四年以上でしょうかたっているわけでございまして、堰自体が老朽化しているということでございます。  この老朽化しているということに対する問題は何かと申しますと、今、目的のお話がございまして、この堰は、堰の上流の左側から派川がございまして、旧吉野川という川でございますが、この川に安定して水を送るというために固定堰がつくられているわけでございます。こういった機能が大変老朽化しているために、大きな洪水が来たような場合には、それがまた損なわれるという可能性があるわけでございます。  以上、この第十堰につきましては、固定堰であるということ、斜め堰であるということ、老朽化しているという問題があるというのが基本的な認識でございます。  それでは、そういった問題についてどのように解決するのかというのに対します私どもの考え方は、いろいろな代替案を検討したわけでございますが、この堰自体のもともとの設置目的でありますところの、先ほど申し上げました派川、旧吉野川へ安定して水を送るという現在の堰の機能、これを保持したまま、損なわずに、しかも洪水時には、固定堰では水をとめてしまいますので、ゲートを開いて洪水を安全に流下させる、こういったことを考えようということで、具体的には可動堰への改築が最適だというふうに私どもとして判断しているところでございます。
  232. 山原健二郎

    ○山原委員 確かにいろいろな問題があると思いますけれども、あの吉野川は四国最大の川ですが、上流には早明浦ダムがありますね。そのときだって洪水調節ということが最初に言われましてあの巨大なダムがつくられたわけですけれども、これはほぼ、底が出てきたり、渇水が起こったり、住民の要求にはこたえていない大変な結果が出ているわけですが、この第十堰についても、老朽化が激しくて安全性が脅かされているとか建設省は言われております。しかし、壊れやすいということは、一面、洪水時の安全弁にもなっているという専門家の意見もありますし、壊れても河床低下は一気に進まないので、上流の第十樋門からの取水は可能であるという専門家の意見もあるわけでございます。  また、撤去の理由の一つとして、今申されましたように、第十堰付近の漏水現象は堰上げや探掘れだけが原因がという問題もありまして、堤防の側に原因はないのか、堤防の修復が先ではないのかというような意見もあるわけでございます。そして、現在の第十堰を撤去し可動堰をつくるとしますと、水質に影響を与え、河口の湿地を初め生態系を破壊するのではないかという意見もあります。  第十堰環境調査報告書の水質編によりますと、ほぼ現状水質が維持されるとしていますが、しかし、最後のページに注がついておりまして、読みますと、「現時点での予測モデルによっては局所的、一時的な現象は表すことはできないため、予測結果については上下に幅をもって理解されるべきことや、植物プランクトンの種の特定、種組織の変遷の予測は不可能であることから、これらに注意する必要がある。」というふうに出ておるのです。次に、名古屋大学の西条八東、奥田節夫編の「河川感潮域」という本では、「従来は、淡水のみを堰上流に残してゲートをしめれば、貧酸素塊の形成は妨げられると考えられていたが、(実際に長良川では)貧酸素塊が生じた。」と報告されております。長良川では、シジミが死滅し、アオコの発生もあったと報告されています。  長良川河口堰での計画と実際の違いは、この新しくつくる堰でも起こるのではないかというふうに考えておりますが、その辺の心配はどういうふうにお考えでしょうか。
  233. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 先ほども申し上げましたが、第十堰事業は、固定堰であります現在の堰を可動堰に改築するという計画でございますが、これに伴いまして堰地点を実際には下流に少し持っていくわけでございますが、堰地点の変更によって淡水域、水が堰によってためられる区域でございますが、淡水域に変化が生じること、それから、可動堰化することによって下流への流水の放流形態に変化が生じる、そういったことから、まさに自然豊かな吉野川下流部における環境への影響については、当然、慎重に検討する必要があるというのが私ども認識でございます。  そのため、建設省といたしましては、平成二年度から当該区域の環境調査を本格的に開始するということで、平成四年十月には生物等の専門家による第十堰環境調査委員会を設置しまして、これは学識経験者、大学の先生とかそういう方々でございますが、堰の改築によって河川水質への影響、地下水への影響、生態系への影響等々、幅広く慎重に検討しているところでございます。  これまでの調査結果では、まず、御指摘の上下流の水質の影響についてばおおむね改築前の水準を保つことができる。ほかの点も若干申し上げますが、河床の底質への影響については大きな変化はない。あるいは塩分濃度の変化については、改築後の堰地点については、当然これは今、汽水のところが真水になるわけでございますから、そこのところは変化するけれども、堰下流部においては現状とほとんど変わらない。あるいは生態系についても、新たに淡水にする影響区域は存在するわけでございますが、回復措置等も考慮すればその影響はほとんどない等の結論を得ているところでございまして、これらの結果はすべて公開しているところでございます。  また、堰の改築にあわせまして実施する水際部の多自然型河岸整備や魚道改築等により新たな河川環境の創造にも努めることとしているところでございまして、今御指摘ございましたように、今後とも調査を継続し、堰改築の影響を把握する精度を一層向上させていきたい、このように考えているところでございます。
  234. 山原健二郎

    ○山原委員 NHKの世論調査では、第十堰の可動堰への改築について、必要があると答えたのが二九・一%であるのに対しまして、必要なしと答えたのは三五%と大きく上回っています。それで、九五年の徳島新聞の世論調査でも、反対が四〇%を超しています。建設省が大量の宣伝をしましても大きな質的な世論の変化はない。筑紫哲也さん初め反対論者が多いわけですが、初めに可動堰建設ありきというこの立場でごり押しをするのはやめて、まさに冷静に判断をすべきだと思いますが、その点は、あくまでも九百五十億の予算を支出しましてこれをつくるというお考えですか。
  235. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 賛否の御意見がいろいろあることは私どもも承知しております。若干御報告申し上げますと、徳島県議会あるいは関係の八つほどでしょうかの市町あるいは県の商工連合会ほかから、これについて促進していただきたいというような要望があることも、あわせて御報告させていただきたいと思います。  なお、事業の進め方の問題でございますが、堰をつくることは、私どもは手段と考えております。つくることが目的ではございませんで、手段でございまして、その目的がきちっとしたものである限り、私どもとしては堰をつくるという手段を行使していきたいと考えているわけでございます。  現在、この事業につきましては、第十堰建設事業審議委員会、名前はこういう名前になりますが、いわゆるダム審議委員会でございます。ここの場合には、第十堰建設事業審議委員会におきまして当事業に対する地域の意見を聞いていただいているところでございまして、審議委員会の意見を尊重して事業の進め方を最終的に判断してまいりたい、このように考えているところでございます。
  236. 山原健二郎

    ○山原委員 徳島には、私の隣の県ですけれども、細川内ダムがあります。細川内ダムの建設については、村長以下反対、だから審議委員も出さないというようなことで、随分困難に直面しておると思いますが、実際行ってみますと、あそこに――私はもう随分ダムで苦労しているものですから、早明浦ダムを初めとしまして幾つも経験しているのですよ。だから、ダムの建設については非常に神経質になるのですけれども、細川内ダムなんかは必要があるのかと。もともと二十五年前に決定したものをそのまま今もやろうとしているわけですから、反撃のあるのは当たり前なのですよ。だから、そういう住民の声というものが、やはり建設省は聞くだけの余力を持って対応しないと、もう行き詰まってしまって、長年にわたって道もつけないでしょう。ダムができるかもしれぬということで何十年も道もつかない、そういう状態に置かれているわけですから、皆さんが怒るのもおわかりだと思います。ここの第十堰にしましても、確かに県やその他からの要請はあると思います。ありますけれども、本当にこれが徳島県民にとって、あるいは地域住民にとってプラスになるのかということについてはぜひお考えをいただきたい。  それで、これは梅原猛さんですか、あの人も論文を出しておりますが、これは反対です。あの人はかなり保守的な人ですけれども、反対。筑紫哲也さんも反対。そういう文化関係の人まで、生態系を維持するためにもこれは反対だ、こういうふうに言っているときですから、これらの声に本当に建設省が耳を傾けなかったら大変なのです。やり始めたら絶対にやるのだ、そして絶対に強行するのだというような姿勢が至るところに見えますからね。日本国民の今願っているのは、むだ遣いの問題だってそうですけれども、そんな金があればほかに使う道があるのじゃないかという声も国民の間にあるわけです。  その点についての建設省としてのお考えをもう一回お伺いしたいと思いますが、いかがですか。
  237. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 昔につくった計画を、とにかくもう計画でつくったのだから、世の中が変わろうが何しようが、その目的が変化しようが何しようが、何が何でも進めるという立場は私どもはとっておりません。そのために、既に先ほど申しましたダム事業審議委員会を初めとするそういう公共事業の見直しといいますか、そういった制度も運用しているところでございます。  なお、この第十堰につきましては、冒頭に申しましたので繰り返しませんが、先ほど申しましたような意味で、治水上の意義があるというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  238. 山原健二郎

    ○山原委員 確かに、建設省がむちゃをやっているという意味ではありませんけれども、諌早干拓にしても、長良川にしても、私が直面している細川内ダムにしても、この第十堰にしても、幾つも幾つもあるのですよ。膨大な国家資本が投入されるわけですから、それがやはり今考えさせられているのではないかと思いますので、そういう意味でなお慎重な姿勢で臨んでいただきたいことを要請いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  239. 八代英太

  240. 坂上富男

    坂上委員 まず、次の件については、要望だけをまずいたしておきたいと思います。  きのう、全国から日比谷の野外音楽堂前に約一万人の皆様方がお集まりになりました。そして、御存じのとおりの、狭山事件の石川一雄君の再審開始についての強い願いを込めての集会でございました。そして、これにつきまして、何としても検察が持っております証拠を提出してくれ、そして、何としても冤罪であるので再審開始をしてくれ、そして真実を私たちの前に明らかにしてほしいという願いでございました。  私も御招待をいただきまして、一言だけお話を申し上げてまいりました。我が党においても、この問題に真剣に取り組みまして、いわゆる再審開始に向けての小委員会をつくりまして、北村君を小委員長にいたしまして努力をしておるところでございますものですから、私は、皆様方に、このような熱気の皆様方の熱意を、たまたま明日法務委員会がありますので、多分検察関係の皆様方、裁判所関係の皆様方も出席なされますので、その旨をお伝えさせていただきたいと思いますので、ぜひひとつ皆様方も頑張っていただきたいということをお話し申し上げて帰ってまいったわけでございます。どうぞひとつ本当に、真実発見のために、また御協力賜りたいと思っておるわけでございます。  その次に、もう既に私たちの手を通じたりいたしまして請願が出ております。一つは、法務省における登記、更生保護官あるいは入管の増員問題でございます。これはもう当然のことでございまして、このことが行財政改革とどう響いてくるのだろうか。  それから、裁判所職員の増員問題でございます。これも、行財政改革とどう響いてくるのだろうか。いわゆる聖域なき削減、こう言っているのですね。しかしこれは、聖域なき削減をして少しの予算の節約をしたからといって、また秩序が乱れるようなことになったら大変なのですね。  だものですから、本当に国民の命と財産を守る立場にある検察行政あるいは裁判所、秩序を守るところの、いわゆる正義の実現をする裁判所、そういうようなところは一人たりとも欠けることによって大変な結果を招来するわけでございますから、こんなのは、とてもじゃないが聖域なきなんというようなことを言えるところではないのですね。  本当に、司法はまさに独立をしておる官庁でございますから、それにかかわりまして法務職員があり、またそれに関連をするいろいろの問題があるわけでございますから、こんなような行財政改革によってこういうようなことが削減されるようなことがあってはならぬ、こう思っておりまして、まさに私たちは常に増員を要請し、本当に御苦労を職員の皆様方にかけて司法を守り、いわゆる法務行政を守っておられるわけでございますので、ぜひひとつ関係する大臣あるいは最高裁判所長官以下頑張っていただきますことも、私は要請をいたしたいと思います。御答弁は結構でございます、時間もありませんので。  そこで、早速でございますが、一つだけ簡単にお答えください。  去年の六月でございましたでしょうか、御存じのとおり滋賀県で、女性の外性器を勝手に写真を撮ったものを分厚い本にいたしまして配布をしたという事件があるわけであります。これについてはわいせつ文書の頒布罪だというようなことで告発がなされておるわけでございますが、既に一年がたとうといたしておるわけでございますが、この見通しはどうなっているのでございますか。簡単でいいです。
  241. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  本件につきましては、御指摘のとおり、昨年六月三日、大津地方検察庁におきまして告発を受理して、現在捜査中でございます。  具体的な捜査状況について申し上げるのは差し控えさせていただきたいのでございますが、やはり問題が問題ということで、かなり幅広く意見を聞きながら捜査を続けている状況でございまして、遠からず結論が出るものというふうに承知しております。
  242. 坂上富男

    坂上委員 ぜひひとつ起訴猶予とか不起訴などというようなことのないように要望いたしたいと思っておるわけでございます。  さて、きょうの私の本題に移らせてもらいます。いわゆる野村問題、それから第一勧銀問題でございます。  大蔵省それから監視委員会からお出かけをいただいておりますのでお聞きをいたしたいのでございますが、一つは、小池側に利益供与があった、その利益供与は三億二千万なんだ、こういうようなことを言われておって、そして、それは一回だけでなくて三年ないし四年、そしてこれが年間に大体五十回、それがずっと運用されて、小池氏らの第一勧銀の六本木支店に送金されておったのだ、こうも言われておるわけでございますが、これは事実かどうか。もう大蔵省なりでお調べがあったと思うのでございますが、どうでございますか。  それから今度、小池氏の総会屋が野村に質問書を提出した、この質問書にがくんといたしまして本件のような大変な不正問題が起きたんだ、こう言われておりますが、これはまたいかがでございますか。質問書の内容というのは一体どういうものだったのですか。大蔵省、把握をいたしておりますか。  そして、これに対しまして回答は一体なされたのか。回答なされないで、回答しないから勘弁してくれ、こうするからといってこういう利益供与がなされたのでございましょうか。これはどうでございます。
  243. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  第一勧業銀行の問題についてでございますが、総会屋関係者に対して融資を行っていたということにつきましては、この報道がございました三月十八日に、同行から当局に対して報告があったわけでございます。当局といたしましては、直ちに同行に対し、詳細な事実関係等についてさらに調査を行うよう指示いたしまして、同行の内部調査に基づく中間的な報告というものを五月二十三日に受けたところでございます。  この報告によりますと、この一連の取引でございますが、昭和四十六年にさかのぼりますが、この時期から取引が開始をされたというふうに聞いておりまして、この一連の取引は、債務者である(株)小甚ビルディング代表取締役小池嘉矩が総会屋と言われている小池隆一の弟であると認識の上行われており、さらに、結果として審査面や保全面でチェック機能が十分働いていなかったと言わざるを得ない取引が行われていた。  それから第二点でございますが、同行は、平成二年九月及び平成六年十月に行った当局の検査におきまして、一部の取引が不良債権として指摘されることを回避した疑念が生じておりまして、同行としてこの点をさらに事実関係調査するというような報告を受けているところでございます。  こうした中間的な報告を受けまして、同行に対し、引き続き本件をめぐる事実関係等について徹底的な調査を進めるとともに、ほかにこのような取引、類似の取引がないかどうかといったことについてもあわせて総点検を行うよう指示したところでございます。それで、この際経営体制全般の見直しを行い、信頼回復に向けたあらゆる努力を行うよう当局の方から指示したところでございます。  当局といたしましては、今後、事実関係等についてさらに詳細な報告を受けまして内容検討を行うとともに、捜査当局による捜査状況も踏まえつつ、法令等に従い適正に対処してまいる所存でございます。
  244. 坂上富男

    坂上委員 三億二千万円の、利益も出ないのを利益が出たと称して、三年ないし四年間送ったというのです。これはどうだ、こう聞いているのです。だけれども、あなたはお答えがないから、きっとまだわからないのでしょう。それ以上は時間がもったいないから。  それから質問書、いわゆる総会屋が質問書を出したというのですよ。この質問書についてはどういう回答があったのか、どういう内容だったのか、わかるかわからぬか、こう聞いているのです。これもお答えがないから、時間がもったいないからもういいです。  それからVIP口座、これはひとつ委員会、VIP口座というのは何ですか。調査の結果どうですか。
  245. 滝本豊水

    ○滝本説明員 証券取引等監視委員会は、野村証券ほか役職員について五月十三日に告発いたしたところでございまして、現在、東京地検において告発を受けて捜査が行われていると承知しておりまして、その内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  246. 坂上富男

    坂上委員 VIP口座というのは調べてどうだったか、こう聞いているのですよ。一言なんだ。  そこで、あなたは捜査の都合があるから答えられないと言うけれども、どういう法律上の根拠に基づいて答えないんだ、あなたは。条文を挙げてごらんなさい、すぐ。答えない理由。
  247. 滝本豊水

    ○滝本説明員 調査内容につきましては、現在東京地検において鋭意捜査が行われているということで、その内容を明らかにいたしますればその捜査に支障が生ずる、あるいは、当委員会のこれまでの調査状況を明らかにいたしますれば今後の調査に支障が生ずるということで、現在、調査の細かい内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに御理解いただきたいと思います。
  248. 坂上富男

    坂上委員 あなたたちの言わぬことはそれだということはわかる。だから、その法律上の根拠を示しなさいと言っている。そういうことを言ったって、国会には内閣の責任に答弁義務があるんだよ。ただし、答弁しなくてもいいという法律上の条文があるならその条文を示せ、こう言っているんです。どうですか。あなた、勝手に根拠は示さないで答弁拒否するなんというのは、これ以上質問できないよ。
  249. 滝本豊水

    ○滝本説明員 一般的に、調査内容につきましては……(坂上委員「条文だけ言っているんだ、どこの条文だ」と呼ぶ)恐らく国家公務員につきましては、その職務上の秘密についてはこれを明らかにすることはできないということでございますので、特に、これを明らかにすれば捜査及び調査に支障が生ずるということで、御答弁することは差し控えさせていただきたい、こう理解しております。
  250. 坂上富男

    坂上委員 もうちょっとよく勉強して答えなさいよ。刑事訴訟法に書いてあるのよ、刑事訴訟法。刑事局長から聞こうと思うけれども、時間がもったいないから聞きません。勉強し直してきなさいよ。こういうように、あなたたちは何でもかんでも捜査上の秘密だとかいろいろのこと三言って答弁を拒否している。これはみんな、国民に対する不誠実なあれですよ。きちっと一つ一つ区別をして答弁してもらわぬといかないんですよ。時間がないからそれ以上言いませんが。  さて、警察、おりますか。警察は、このVIP口座、いわゆるO君、名前を言うと気の毒だから申しませんが、O君がVIP口座のメモというかコピーを持ち出したので、家宅捜索をするとき、おふくろさんのところまで家宅捜索をしたということが言われているわけ。この人は詐欺罪なんですね。どう、彼のところはいいですよ、おふくろさんのところまでやったの、やらぬの。そういううわさが流れているのよ、今世間で。
  251. 縄田修

    ○縄田説明員 お答え申し上げます。  委員指摘の件は、神奈川県の港南警察署において逮捕した詐欺被疑者事件だろうと思いますが、この件につきましては、被疑者の自宅のみを捜索いたしておりまして、御指摘の母親の方の自宅については捜索を実施していないと報告を受けております。
  252. 坂上富男

    坂上委員 それから、大臣、大変私も嫌な質問なんでございますが、率直にお答えください。  この間、私らの佐々木委員質問しました。大臣、こう答弁しました。口座は持っていることは事実であります、しかし増資について口座がないと払い込みできません、だから口座をつくったんです、こう言っているんです。  そこで、大臣、去年は取引しませんでしたか、株の取引。どうですか。
  253. 松浦功

    松浦国務大臣 全然昨年ございません。
  254. 坂上富男

    坂上委員 では大臣、御就任のとき、資産公開出したでしょう。それから、平成五年の一月一日に参議院議員として出されているでしょう、資産公開。これを私は全部調べたのですよ。大臣として出された資産公開では、去年出たのですよ、四十二社分が出ているのですね、四十二社の株が。参議院のとき出た、平成五年の株は三十九社分です。三社違うのです。名前を挙げますよ。いすゞ自動車の株。それから、これは非上場株なんですが、物すごい高い株なんですね、百株で五百万円なんです。グリエーティブユーの株です。それから日本ビクターが大臣のとき増加しております。これは、あなたの閣僚としての報告書にはあって、五年のところではないんですね。あなたはやはり買ったんですよ、これを見ると。どういうことなの。きちっと明確に、大変失礼ですが、私はちゃんと報告書をみんな調べてきた。三社が違うのです。値段にしたら相当の値段です。  それから大臣、もう一つ。大臣のこの株の中に、ミドリ十字の株があるんですね。おわかりですか、ミドリ十字。大臣がミドリ十字の株の配当のためにこれを保持するというのは、私はやはり法務大臣としてはいかがかとも思いますよ。どうですか。起訴になったんでしょう、起訴に。笑い事じゃないですよ。  大臣、あなたの答弁を聞いていますと、大臣就任のときのお話はどう書いてあるかおわかりですか。もうお忘れになったら悪いから申し上げます。株の保有の多いのは、頼まれて弟から買ったのと、つき合いのあった証券会社の人の勧められるままに買ったんだ、こう大臣就任のとき言っていられるのです。どうでしょうか。やはり、昨年じゅう、大臣、取引なさったんじゃないんですか。
  255. 松浦功

    松浦国務大臣 絶対にそういうことはございません。
  256. 坂上富男

    坂上委員 では、あなたの報告書に間違いがあるか書き落としがあるか、どっちかなんです。きちっとしてもらわぬといかないのでございますが、もしこれが間違いがあったとしたら、責任をとってもらわぬと私はいかぬと思います。これはもう本当に綿密に調べた結果です、私が。  その次、今度は委員会、おりますか。VIP口座、調査をしたんだろうが、これはどうですか。  近岡長官、株取引をしたことはないが国債は一回だけ十八年前に買った、これは野村だ、こう言っている。だけど、資産報告を見たら本当にたくさん近岡さんはあるんですよ。これは総務庁が私のところへ持ってきた。物すごくいっぱいある、これが。四万六百四十三株あるんだよ。これはまた、この報告と違うじゃないかと私は思っていますよ。どうなんですか大臣、調査して、私の言うとおりだろう。  それから今度は、藤本孝雄農水大臣だ。これはどう言っているかというと、平成八年前半まで取引していたが、取引は株式と転換社債で、今は口座を凍結している、こう言っているんですよ。そこで調べてみたら、転換社債は書いてない、報告が。それから、東京製鉄一万株、ウシオ電機三千二百六十一株ある。これもまた新聞社に言うたのと違うんだ。委員会答弁したんだったら私は許しませんよ、こういうことは。調査、どうなっているか、ひとつ報告しなさい。  それから今度、堀之内郵政大臣だ。野村とは取引はあった、こういうお話なんだ。どういう取引があったかと申しますと、これもまた堀之内大臣も財産家なんだ、随分ありますよ。宮崎銀行を初めといたしまして、一万九千四百五十五株、以下ずらっとある。これはVIP口座なんじゃないの、やっぱり。  私は、この間指摘した宮澤さんと橋本さん問題は本日やりません、別の場所でやりますが。こうやって各大臣が、VIP口座というものは完全になっていると私は思っているのですよ。それで、記者会見のときの報告と実態、みんな、私も財産報告している、大臣もしているわけ、全部照らし合わせると、こういう間違い、でたらめを言っているわけ。こういうのが日本の政治にかかわってもらったのでは、これは大変なわけよ。ましてやVIP、こういうようなものは許しがたいことなんだから、徹底的に追及していかなければならぬと私は思っているんだけれども委員会、これは調査した、答えられない、どっちか答えて。
  257. 滝本豊水

    ○滝本説明員 証券取引等監視委員会は、証券取引法違反の不正行為等があれば、法に従って厳正に対処していくところでございますが、現在、御指摘の閣僚の資産公開等の問題につきましては、当委員会としては知る立場にないと思います。
  258. 坂上富男

    坂上委員 課長さん、私は資産公開のことを聞いているのじゃないのですよ。こんなのは単なる資料なんですよ、資料。VIP口座として野村が不正な取引を政治家の先生方にしているのじゃなかろうかということを私は実は指摘しているのです。だから、新聞社から聞かれたら、事実と違うことをおっしゃっているのじゃないですかと。したがって、そういう観点から調査をなさいましたか、こう聞いているのだよ。資産公開を我々は調査する義務はないと。当たり前だよ、そんなことは。あなた方は、VIP口座の意味について、そして実態はどうかということを調べたことを報告しなさい、こう言っている。報告できなければ報告できない条文上の根拠を言え、こう言っているのだよ。もう少しまじめに答弁しなさい。
  259. 滝本豊水

    ○滝本説明員 繰り返しになりますが、証券取引等監視委員会は、損失補てん、インサイダー等証券取引法に違反する不正行為がありますれば、法に従って厳正に対処するという立場をとっておりまして、その具体的な調査内容、どこを調査したとかしなかったとかいう個別の問題につきましては、先ほど答弁いたしましたように、詳細については答弁を控えさせていただきたいと考えます。
  260. 坂上富男

    坂上委員 大蔵省、今言った点を調べましたでしょう。大蔵省もいわゆる証券行政の立場でお調べになっているでしょう。お答えください。――答えられなければ答えられないと言いなさい。後で調査すると言いなさい。
  261. 内藤純一

    ○内藤説明員 今の点につきましては、証券局の方から答弁すべき問題であるというふうに考えておりまして、ここの席におきまして証券局は出席しておりませんので、この点につきましては伝えるというふうな形にいたしたいと思います。
  262. 坂上富男

    坂上委員 委員長に申し上げます。  私はちゃんと、こういう質問をするということを言っているのです。何で来ないのですか。呼ばれなさい、直ちに。だから国民がみんな怒っているんだよ。  しかも、大蔵省は私のところに質問取りに来ましたか。あなたたちは全く来やしないんだよ。だから、時間のむだなんだよ。あげくの果ては、答弁できる者はいないというわけだ。私はちゃんと質問事項を午前中に出しているんだよ。あなたたちは午前中に読んで、私は少なくとも三時までいたんだから。よくむだのないように。  委員長、そういう状況です、これは。こんなことでは審議できない。普通だったら審議は、来るまで私は留保したっていいんだよ、そのまま夜まで続けてもいいんだけれども、そういうわけにもいきません。本日、最高裁判所のお祝いがあるから、私は早速出席をする予定だから打ち切りますが、これは大変な問題なんです。本当に大蔵省も委員会も、そして法務省も検察も、徹底的なこれをしてもらわないと国民は納得できません。  しかも、私は精いっぱい努力をして、ない頭を絞ってこうやって質問しているのです。少しも時間のむだのないように。私はわずかに二十分の質問なんです。これをもう全部わかるようなやり方でもって質問しようと思って必死の努力をしているのです。そしてこうやってむだな時間になる。  委員長、もう時間が来たからいらいらしておられますが、本当に申しわけないと思ってはいますが、もう少しきちっとした、まじめな答弁を期待いたしまして、終わります。ありがとうございました。
  263. 八代英太

    八代委員長 大蔵省にはよく注意を申し上げておきます。以後、しっかり質問取りはするように。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会