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1997-05-16 第140回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十六日(金曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 太田 誠一君 理事 岸本 光造君    理事 橘 康太郎君 理事 横内 正明君    理事 上田  勇君 理事 鴨下 一郎君    理事 坂上 富男君 理事 正森 成二君       奥野 誠亮君    河村 建夫君       栗原 博久君    笹川  堯君       下村 博文君    高市 早苗君       谷川 和穗君    西川 公也君       蓮実  進君    福永 信彦君       茂木 敏充君    吉川 貴盛君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       石垣 一夫君    漆原 良夫君       加藤 六月君    斉藤 鉄夫君       西村 眞悟君    石毛 鍈子君       佐々木秀典君    細川 律夫君       中川 智子君    園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 松浦  功君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 宮本 和夫君         警察庁警備局外         事課外事調査官 内田 淳一君         法務大臣官房参         事官      菊池 洋一君         外務大臣官房審         議官      大島 賢三君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       花田 吉隆君         大蔵省証券局証         券業務課長   小手川大助君         大蔵省銀行局銀         行課長     内藤 純一君         証券取引等監視         委員会事務局特         別調査課長   滝本 豊水君         国税省課税部法         人税課長    小武山智安君         最高裁判所事務         総局人事局長  堀籠 幸男君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     茂木 敏充君   栗原 博久君     蓮実  進君   笹川  堯君     高市 早苗君   福岡 宗也君     石垣 一夫君   石毛 鍈子君     細川 偉夫君   保坂 展人君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   高市 早苗君     笹川  堯君   蓮実  進君     栗原 博久君   茂木 敏充君     加藤 紘一君   石垣 一夫君     福岡 宗也君   細川 律夫君     石毛 鍈子君   中川 智子君     保坂 展人君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第六  〇号)  商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係  法律整備に関する法律案内閣提出第六一号  )      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所堀籠人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 八代英太

    八代委員長 内閣提出商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、両案について趣旨説明を聴取いたします。松浦法務大臣。     ―――――――――――――  商法等の一部を改正する法律案  商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係   法律整備に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 松浦功

    松浦国務大臣 商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、会社合併手続簡素合理化を図るとともに、株主及び会社債権者に対する合併に関する情報開示充実するため、商法有限会社法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正しようとするものでありまして、その改正要点は、次のとおりでございます。  まず、商法につきましては、第一に、株式会社合併手続を簡素化するため、吸収合併の場合の報告総会及び新設合併の場合の創立総会廃止することといたしております。  第二に、株式会社合併をする場合における債権者保護手続合理化するため、会社債権者に対する公告官報及び会社公告をする方法として定款で定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げてしたときは、債権者に対する各別の催告を要しないことといたしております。  第三に、合併後存続する株式会社合併に際して発行する新株総数がその会社発行済み株式総数の二十分の一を超えず、かつ、合併交付金がその会社純資産額の五十分の一を超えない場合には、その会社においては、合併契約書についての株主総会承認を要しないことといたしております。  第四に、合併に関する情報開示充実するため、合併をする株式会社は、合併契約書についての承認総会の前に、各会社貸借対照表のほか、合併契約書消滅会社株主に対する株式の割り当てに関する事項につきその理由を記載した書面及び各会社損益計算書をも本店に備え置かなければならないこととするとともに、合併をした株式会社は、合併後、合併に関する事項を記載した書面本店に備え置かなければならないこととしております。  次に、有限会社法につきましては、有限会社司士合併による株式会社設立及び株式会社同士合併による有限会社設立をすることができることとするほか、報告総会及び創立総会廃止債権者保護手続合理化並びに合併に関する情報開示充実について、株式会社の場合と同様の改正をすることとしております。  最後に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律につきましては、創立総会廃止に伴い、会計監査人選任について、所要の改正をすることとしております。  次に、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、商法等の一部を改正する法律施行に伴い、非訟事件手続法ほか四十一の関係法律について規定整備をしようとするものでございます。  以上が、両法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 八代英太

    八代委員長 これにて両案に対する趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 八代英太

    八代委員長 これより両案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
  8. 栗原博久

    栗原(博)委員 商法改正は、先回、平成六年の改正自己株式取得規制緩和を図ったことなどを含めて、近年、顕著に行われているように私は思うのであります。特に、今回の商法改正に該当します会社法に関する部分の改正が今回なされるわけでありますが、ほかの民事基本法改正の件数に比べて確かに高いものがあるように伺っております。  我が国は、戦後、アメリカの制度日本に導入するというような観点から、昭和二十五年の商法の大改正があり、その後、粉飾決算を防止する意味から会計監査法人監査制度を導入するなど、かつていろいろ商法改正も行われておるわけでありますが、特に平成に入ってからは、平成二年、平成五年、そして先般の平成六年の改正があったわけであります。  先般の改正では、我が国が世界でも一番自己株式取得規制が厳格であるということで、規制緩和の中で、緩やかな方向ということで規制緩和を図っておるやに伺っております。今回の改正社会経済情勢に応じての改正であって、あるいはまた、我が国経済国際化の中で、国内企業国際競争力をいかにして高めるかという観点からであろうかと思っておるのでありますが、これについて、ほかにもまだまだ商法改正で、会社計算書類の公開の問題とか、あるいは中小会社計算適正化担保のための監視にかわる制度とか、あるいはまた有限会社を含めての中小会社区分抜本的制度改正など、まだ積み残されていると思うのです。  近年、たびたび商法改正を行っているわけでありますが、こういうことについての立法責任者としての御所見をまずお伺いしたいと思います。
  9. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 商法改正につきましては、委員ただいま御指摘いただきましたように、ほかの基本法に比べて頻繁な改正を実現させていただいております。この改正作業は、今御指摘ありました中の、昭和四十九年にいわゆる会計監査人制度を導入する等の改正をしたわけでございますが、その際の国会の附帯決議を踏まえて、株式会社制度全般についてさまざまな面から改正検討すべきである、こういう御指摘を受けて、大変幅広く、会社法全体についていろいろな問題を取り上げて検討を始めたということから始まるわけでございます。しかしながら、その全体を改正するということになりますと、これは大変な時間がかかるということから、その後、昭和五十六年、それから平成二年、平成五年、平成六年、それぞれの状況に応じて、緊急を要するものについて改正を実現するというやり方をとらせていただいてきたわけでございます。  今般は、そういう中で、その課題の一つでありました会社合併法制簡素合理化という観点からの改正案を提案させていただいているわけでございますが、ただいま御指摘のありました大小会社区分問題等、なお残された問題もあるわけでございます。これは、実務界の考え方等困難な問題も多々あるわけでございますが、今後とも鋭意そういう検討に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  10. 栗原博久

    栗原(博)委員 今回、こうして提出されております商法改正は、たしか昭和十三年以来、約六十年間にわたりまして議論されておったものが今回出されたと思っております。特に、過去二十年近い間、会社合併に関する政府の取り組みを見ますと、法制審議会等で多くの議論がされているやに伺っておるわけであります。  私、我が国のこういう現行法規規定を見ますると、大変イタリア商法影響を強く受けているやに伺っております。各会社合併決議が要求されておるという点については、各会社一定の方針に従って貸借対照表を公示すべきということになっておりまして、イタリア民法典でも、こういう合併決議とか債権者保護などに対して極めて同じような、同様の措置をされているように私伺っておるのであります。  その中で、先ほど私申しましたが、経済国際化が進展する中で国内企業競争力の強化をいかに進めるか、あるいはまた業界の再編成が必要であるわけでありますが、この中で日本の国の、我が国産業空洞化が大変激しく指摘されているわけで、こういう国内産業空洞化を防止するために、早目にこの合併等の政策はとられるべきものであったと私は思っておるのであります。そういうことで、私は、今回こういう改正を行うに当たりまして、遅きに失したというような感じを持っています。  既に、大手企業の大半においては事業分野別分社化が進んでおることは御承知のとおりであります。これはバブル崩壊によって不採算事業整理統合や、あるいはまた特定業種分野の他企業との提携を強化するなど、そういう目的で図られていると思うのでありますが、この合併を今回容易にするということでは合併のハードルを低くしたということだと思うのであります。今回の改正によって、先ほど私が申し上げたとおり、分社化された企業事業部門がお互い合併して新会社設立され、それによって経済界にも活気がみなぎってくるというふうに私は思っておるのです。そしてまた、企業規模の小さな会社同士が、今回の改正によって合併手続が簡素化されることによって経費の削減も図れるということで、この合併によって産業の下支えの分野産業の体質が改善されるというふうに私は期待しております。  そういうことで、先ほど大臣からも趣旨説明がありましたが、もう一度、本商法改正に当たっての要点と、もしできましたら問題点をひとつお聞きしたいと思うのであります。
  11. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正趣旨は先ほど大臣から申し上げたとおりでございますが、ただいま御指摘のありましたように、経済活動グローバル化、それから最近の景気の状況、そういった状況を反映して、企業グループの再編成あるいは経営の効率化、リストラ、そういう観点から合併ということが行われる事態増加してきております。そういう手続簡素合理化するということによって、間接的にでありますが、そういう活動を支えるということを今回の改正一つの大きな目的としているわけでございます。  そういう観点から、主要な改正点を改めて申し上げさせていただきますと、一番大きいのは、合併をするには二回の株主総会を開かなければならないということでございましたけれども、いわゆる事後報告的な報告総会あるいは創立総会は必要がないものとするということ。それから債権者保護手続合併によって債権の回収が困難になるおそれがある債権者保護手続が定められておりますが、これが企業にとって余りに負担の大きいものになっているということから、それを合理的な範囲で簡素化するということ。それから、例えば一〇〇%子会社吸収合併するというような事態もこれから多くなってくるわけでございますが、そういう場合には、存続会社について、存続会社株主にとっては影響が比較的少ないということから、一定の場合には承認総会も要らないという特別の手続を設けること。こういったことを柱とする改正案を提出させていただいているわけでございます。  この改正目的とあわせて、株主及び会社債権者に対する合併についての情報開示という面では、これをより充実させるということも改正一つ目的としているところでございます。  以上のようなことをもって、ただいま御指摘のような経済活動について一つの支えとなればというふうに思っている次第でございます。
  12. 栗原博久

    栗原(博)委員 では次に、この合併における債権者保護についてちょっとお聞きしたいのであります。  合併によって、会社財産の直接的または間接的な減少により債権者利益が害せられるということをまず防がねばならぬと私は思うのであります。その中で、まず、相手方資産状態にかかわっていることでありますが、資産状態の不良な会社合併することによって債権が危険にさらされるおそれがあるということも想定されると私は思うのです。そのときは、債権者にとって、相手の会社債権者と競合することなく、自分債権の安全を確保するということが最も大切なことだと思うのです。その中で、合併相手方資産状態の不良な会社であって、かつ、そのために自分債権が危険にさらされるおそれがあるということの想定をされた場合、債権者は、合併効力が生じ、財産が合一するまで何もできないというような状況もあるのじゃなかろうかと私は思うのであります。そのとき、合併効力が発生する前に各当事会社債権者異議権を与える制度が必要と思うのですが、そういうことについては今回の商法改正の中ではどのようにされているかということをお聞きしたいと思います。
  13. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のように、会社債権者にとって、財務内容の悪い他の会社合併することによって、その債権の実行が脅かされることもあり得るということから、現行法において債権者保護手続が設けられております。  ただ、現行規定におきましては、要するに、すべての債権者に対して個別に通知をしなければならない、それから、もし異議があれば、その合併によって債権者権利が害されるおそれがあるなしにかかわらず、異議があれば弁済しなければならない、あるいは十分な担保を提供しなければならない、こういう規定になっているわけでございますが、すべての債権者ということになりますと、大規模会社におきましては何万あるいは何十万という膨大な数になるわけでございます。この手続合併手続において大変な負担になっているということ、それから、こういった手厚い手続というのは欧米諸外国を見ても例を見ないものであるということ、そういったことから、今回の改正では、債権者権利が害されない範囲内においてそれを合理的なものに改正する。  具体的には、債権者合併をしようとしていることを知ってもらうための方法として、官報によって公告する、あわせて、会社公告方法として定款で定めておる新聞紙にも公告をする、こういう両方の手段公告をすれば個別の通知は必要としないということ、それから、合併によって債権者が害されるおそれがない場合には直ちに弁済等措置をとる必要がないということ、そういう措置を講じているわけでございます。これは比較法的に見ても債権者保護として欠けるところはないものであるというふうに考えております。  一方で、合併によって債権者が害されるかどうかということを知るための情報開示手段としての一定書面の備え置き、その内容について充実をして、それによって、債権者がその書面を閲覧すれば、害されるおそれがあるかどうかということを知り得る、そういう情報提供充実するという改正を加えているところでございます。
  14. 栗原博久

    栗原(博)委員 次に、今回の改正で、債務超過会社合併が認められるのかどうかをお聞きしたいのです。  と申しますのは、債務超過が単に貸借対照表上での債務超過でなくして、要するに有名なお唐とか会社とかということで、のれんがあった場合、そういうのれんを含めての資産の再評価をしてもなお、のれん評価した場合は債務超過はしないということもあると思うのですが、そういうことで、こののれんをどのように債務超過として認めてもらえるかということについて、この改正ではどのようにお考えなんでしょうか。
  15. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 債務超過会社というのは、申し上げるまでもなく純資産額がマイナスという状態となっている会社でございますので、そういう会社を吸収する合併を認めるということになりますと、要するに、出資に引き直して考えますと、消極財産を出資して、それに一定株式を与えるということになるわけでございますので、資本充実観点から、債務超過会社を吸収して合併をするということはできない、これはほぼ確定した解釈になっております。  のれんとの関係でございますが、のれんというのは一定の事実関係にすぎないということから、商法では、その評価についてはのれんは有償で譲り受ける、または合併によって取得した場合に限って貸借対照表資産の部に計上することができるということになっております。したがって、合併の場合には、その資産評価においてのれんを計上するということができると解されておりまして、そののれんを適正に計上することによって債務超過状況が解消されるということであれば、その会社吸収合併することができる、それをしてもまだ債務超過だということであれば、それは先ほど申し上げた解釈によってできないというふうに解されます。
  16. 栗原博久

    栗原(博)委員 次に、合併資本充実原則を守らなければならないと私は思うのでありますが、現行法を読んでみますと、これは明文化されていないような嫌いがあるのですが、今回の改正資本増加限度額規定が定められておりますね。その定められた理由と、今後会社合併して資本増加させるかどうか、できなくてもいいのかどうか、そういう点、ちょっと蛇足ですが、お聞きしたいのであります。
  17. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のように、今般の改正案におきまして、四百十二条ノ二という規定を新設して、いわゆる吸収合併の場合に、存続会社合併によって資本増加させる額は、消滅会社から承継するいわゆる純資産額限度においてのみすることができるという規定を設けております。これは資本充実原則からいいまして、消滅会社から承継する純資産額を超えて資本増加するということができないということは、従来から解釈上当然のことであるというふうにされておりました。これを今回の改正に伴って明文で明らかにしたわけでございます。その資本増加額はその範囲内で定めて、合併契約書で記載されるということになるわけでございます。  資本増加させない、全く増加させないという場合もあるのかという御質問でございますが、合併に際して合併新株を発行するわけでございますけれども、その合併新株として額面株式を発行する場合には、少なくともその額面株式券面額資本に組み入れなければならないということも、あわせて規定をいたしております。したがって、額面株式を発行する場合にはその分だけ資本増加させるということになるわけでございますが、ただ、無額面株式を発行する場合については特に規定を設けておりません。したがって、理論的にはそういう場合に資本を全く増加をさせない合併ということもあり得るということになるわけでございます。
  18. 栗原博久

    栗原(博)委員 じゃ、話を変えて、野村証券事件についてお聞きしたいと思います。  今回のこの不祥事は、我が国国際信用に対して大変大きな失墜をもたらしている。かつて大和銀行の問題、あるいはまた住友商事の巨額損失の問題など、本当に大企業方々がこんなことをしていいかということを私は思うのであります。今回のこの事件は、まさしく日本版ビッグバンの成功によって国際金融社会我が国信用を保とうというさなかの出来事で、大変私は遺憾に思っている。  このことについて、事件内容を聞きたいのですが、時間がございませんので省略させていただきますが、当事者の野村証券の常務あるいはまた総会屋の方が逮捕されたということで、これは商法違反で不当な利益を供与するということでのことでありましょうし、また、証券取引法の第五十条あるいは五十条の三の損失補てんあるいはまた一任取引禁止項目に該当して、今捜査が進められていると思うのであります。この点についてお聞きしたいのでありますが、こういう野村証券に対して今後どのような厳正な処分をされるかということをまずお聞きしたいと思うのであります。  今新聞報道によりますと、国債の入札あるいは引き受けの参加を除外する、シ団からも除外するし入札からも除外するというような措置大蔵省はとっているようでありますし、また、各市町村ですか、地方公共団体、二十八の団体がありますが、都道府県十六、政令指定都市十二の市場公募型の地方債発行団体引き受けを辞退させるとか、あるいはまた資金運用も辞退させるような措置をとっているようでありますが、こういう中で、私は、皆さんの方は証券取引法第三十五条の厳然たる権限を与えられているわけですから、これに対して、免許の取り消しなのか、あるいはまた部門別営業を停止させるのか、もしくは全支店にわたります個人の取引営業権も停止させるのか、そういうことについてしかと責任ある方々からひとつ御答弁賜りたいと思うのです。
  19. 小手川大助

    小手川説明員 お答え申し上げます。  平成四年七月以来、いわゆる一般的に取引の公正を損なうという法令違反につきましては、監視委員会におきまして独立した事実関係についてお調べをいただきまして、その結果、行政処分等の必要があれば私どもに対しまして勧告をいただくというシステムになっております。  したがいまして、このようなシステムに基づきまして、大蔵省証券局といたしましては、今回の事件につきましても、今後監視委員会による行政処分の勧告があれば、先生おっしゃいましたように厳正にこれに対して処断してまいりたいというふうに考えております。
  20. 栗原博久

    栗原(博)委員 厳正、厳格に、迅速にひとつ処分されることをまずお望み申します。  次に、時間がないので大変恐縮ですが、実は先般公安調査庁にもちょっとお聞きしましたけれども、きょうの読売新聞にも、北朝鮮の里帰りの問題について、向こうの当局がある程度、数人を認めるというようなことを言っているということは、私もそれを求めてきた一人として大変ありがたく思っています。  きょう、実は新聞を、ちょっと時間がないのですが、持っているのですが、これは昭和三十四年の十二月十四日、地元の新潟日報でございます。この紙面の一面に「新天地に胸ふるわせて」と題して、午後二時にクリリオン号、午後二時三十分にトボリスク号が九百七十五人の帰還者を乗せて、そして新潟の中央埠頭を去った、そこに約三千人近い方が見送りした、私もその一人でありますが、その中で、行く方々は、日本で最後の食事をして、けんちん汁とそれから生卵と朝鮮漬けを食べて帰ったという記事が載っておるわけであります。こういう中において、約七千人近い日本人の方々がたれ一人帰ってきていない。  こういう中で、政府当局があるいはまた各党の方々が懸命に努力をされて、その兆しが見えてきたことは、先ほど申したように大変私は敬意に値すると思っております。  ただ、こういう中におきまして、今、マスコミ等、あるいはまた各党の方々が、この問題と絡めて、横田めぐみさんとか、あるいはまた拉致事件についての疑惑問題の解明を強く望んでおるわけでありまして、私も当然その一人です。もしそのような疑惑があったら、ぜひ、国の主権の中において対応せねばならない。総理も、この前クリントン大統領との会談の中で、この拉致問題あるいは日本人妻の問題などについて、北朝鮮に対して人道的に食糧の援助をするのと同じように、この問題も人道的な問題だということで、強く総理もその解決を求めているわけであります。  国連は一億二千万ドルを超す北朝鮮への支援策を呼びかけておるわけでありますが、私は、感情的になってはならない、北朝鮮における食糧の飢餓の状況を隣の国の国民としてお手伝いしていかなければならぬと思う。あるいはまた、そういう拉致事件というものが真実ならば、これは我が国の国権にかかわる問題ですから徹底的に解明し、また、我が国情報が足りなかったら、CIAとか、あるいはまたKGBとか、ほかの国の情報網を遺憾なく利用して、そういう意味から国際赤十字とか、あるいは国連等を通じて、そのコネクションからぜひひとつそういう疑惑の解明、あるいはその方の救出に当たっていただきたいと思うのであります。  きょうは長官がお出ましですが、皆さんの中身は余り公表できないと思うのですが、私、この間横田めぐみさんのお父さんにお会いしましたら、公安調査庁の方が過去二十何年間一度も来なかったということを言っておられるのですが、そういうことが果たして正しいかどうかということをまずお聞きしたいと思うのです。
  21. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 委員指摘問題点については私どもも十分理解しているところであります。  当庁では、これまでも、一九八七年の大韓航空機爆破事件の際に明らかとなりました李恩恵問題、あるいはその他の日本人失踪事件発生の都度、調査体制を整えまして、行方不明の日本人との関係について情報収集を行ってきたつもりであります。  今回の横田めぐみさんの北朝鮮工作員による拉致報道以後も、改めて体制を強化しまして、情報の入手が可能な先から関連情報の収集を行っております。横田めぐみさんを初めとしまして、拉致されたと言われております方々の御家族に会って事情を聞いております。めぐみさんの御両親からも実はその後二度ほど事情を伺っております。  当庁といたしましても、今後関連情報の収集を図りまして、私どもの立場でできることは最善を尽くしたいというふうに考えております。
  22. 栗原博久

    栗原(博)委員 今あなた、その役とおっしゃったけれども、あれですか、この前横田めぐみさんのお父さんが記者会見した後にお会いしているのですか。その前に別のルートを通じてもしているかしていないかということをひとつお聞きしたいのです。
  23. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 それ以前は直接めぐみさんの御両親にお会いするということはありませんでした。その後二度ほど……
  24. 栗原博久

    栗原(博)委員 そこに私は公安調査庁に対して不満があるのですよ。公安調査庁の名前でなくても、ほかの名前を冠しても、私は、これだけ国際問題になっているものを公安調査庁が把握していないというこの事実について極めて義憤の念を持っている。これをまずあなたに申し上げたいと思うのです。  次に申し上げたいのでありますが、今いろいろ新聞紙上あるいはまた情報を聞きますと、行方不明の方々のパスポートの問題があると思うのです。そういう行方不明で、もしかしたらという、そういう者に対してパスポートの発給をしたことがあるかどうか、そういうことを警察庁は調査しているかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのですが、御答弁いただけませんか。
  25. 内田淳一

    ○内田説明員 委員指摘事件につきましては、昭和六十年の六月に韓国当局によって発表された辛光洙事件という事件でパスポートの問題が出てきているわけでございまして、そのパスポートについての事案につきましてお答えを申し上げますと、私ども、そういった事件につきましては、一般的に申し上げれば、周囲の捜索とか関係者への聞き込みというものを行方不明者に対する捜索願を受理した段階でやっておりまして、そういった形の中でいろいろな関係機関と情報交換をしております。  しかしながら、委員指摘のような拉致の疑いのある事案、特に北朝鮮工作員の日本人への成りかわりの可能性のある事案、こういう場合においては関係機関と特に連携を密にいたしまして所要の裏付け捜査を実施しているところでございますけれども、捜査の個別具体的な内容につきましては、捜査上の秘密の保持というような観点もございまして、残念でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  26. 栗原博久

    栗原(博)委員 その程度しか答えられないと思うのですが、私は、今、北朝鮮のみならず、東南アジア各国から我が国への密入国者が大変多いように伺っている、あるいはまた偽造パスポートもたくさん出ていると伺っている。そういうことを防止する意味、あるいはまた日本国民の行方不明者がそういうところのために利用され、あるいは被害に遭ってはならないという観点から、今私はあなたに御質問を申し上げたわけであります。  それで、ちょっと時間を超過いたしましたので、我が国の偽造パスポートの件でございますが、今外務省あるいはまた警察庁で把握されている範囲においてその実態をお聞きしたいと思うのです。
  27. 花田吉隆

    ○花田説明員 お答え申し上げます。  私ども外務省では、在外公館より、偽変造の旅券の発覚件数ということで、平成四年より報告を徴しまして統計を整えてございます。それに基づきますと、平成四年から平成八年までの五カ年間にわたりまして、合わせまして四百四件、冊数にいたしますと九百九十三冊の偽変造旅券の発覚を見ておるというところでございます。  ちなみに、各年度ごとについての数字を申し上げますと、これは暦年でございますが、平成四年には七十五件、百八十七冊、平成五年には八十件、百八十七冊、平成六年には九十二件、二百十四冊、平成七年には六十三件、百三十四冊、平成八年九十四件、二百七十一冊でございます。
  28. 栗原博久

    栗原(博)委員 わかりました。  この北朝鮮問題あるいはまた拉致問題、私は、主権を侵されないということで、ぜひ一つ全力を尽くして調査していただきたい。また、こうして我が国の主権と申し上げていますが、私ども日本もかつての朝鮮の併合の問題などを考えますと大変胸の痛いものもあるわけであります。その中で、私どもが北朝鮮の人道上の問題も十二分に踏まえて、そしてまた、いろいろ情報を得ますと、日本海に対して、ノドン一号等が日本全土が射程距離に入っていることもあるわけですが、こういうことを踏まえてぜひひとつ善処していただきたいということを大臣に御要望申し上げまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。
  29. 八代英太

    八代委員長 続きまして、西川公也君。
  30. 西川公也

    ○西川(公)委員 自民党の西川公也でございます。  私は、法務委員会において初めての質問でありますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  私は、昨年の十月まで栃木県議会議員としまして五期十七年ほど務めてきました。地方議会におきましては、この委員会のような話はめったにあるものではありませんで、条例の制定ぐらいがせいぜい関の山だ、こんな状況でやってきたところであります。当委員会に配属されることを予期もしていなかったのでありますが、ここに来て聞きまして、当委員会は大変重要なことをやっているということを再認識している、こういう状況でございます。  きょうは、私は、主に商法改正と今回の野村証券の問題について伺っていきたいと思います。  商法改正の問題でありますけれども、今栗原委員からも御指摘がありましたけれども、平成二年、平成五年、平成六年と最近大変まめに改正が行われてきた。今度の改正が締めくくりであろうし、これによって金融大改革にも対応できると私も受けとめているのでございます。これを改正するに当たっては、大変古い歴史があって、昭和四十九年から合併法制検討を始めたということでありまして、実に二十三年たった、こういうことであります。何点か要点はあろうかと思いますが、今回の改正に当たって特に意を用いたところをちょっとお聞かせいただくと同時に、この改正によってどんな効果を期待しているか、まず基本的なことについて伺っていきたいと思います。
  31. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 四十九年からという御指摘でございましたが、先ほど栗原委員の御質問に対して御答弁しましたとおり、四十九年から合併法制そのものの検討をしてきたということではございません。  今回の改正のねらいということでございますけれども、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、我が国合併手続に関する規定、これは株主保護あるいは債権者保護という観点から、大変厳重な手続になっておるわけでございます。それはそれで結構であるということでありますけれども、主要諸外国の法制と比べても、少し保護手続が厚すぎる、そのために合併する会社に多大の負担を課しているのではないか、こういうことがかねてから指摘されておったわけでございますが、そういう観点からの検討に取り組んでまいったわけです。  御案内のとおり、近時の経済情勢、国際化あるいは景気の状況等から、合併という方法を、企業グループの再編成あるいは経営の効率化ということから利用される要請が高くなった。それに伴いまして、この合併手続の相当な範囲での簡素合理化という要請が大変強くなった。そういうことを踏まえて、そういう要請に適切に対応する必要があるということから、約二年前から具体的な検討に取り組んで、今回の改正案を作成させていただいたわけであります。  どういう点に留意してきたかということでございますが、簡素合理化ということと、株主あるいは債権者保護のあり方というものの衡平をどのように図るか、これが最も意を用いた中心的な課題であるというふうに申し上げることができようかと存じます。
  32. 西川公也

    ○西川(公)委員 それで今の話はわかりましたが、総会が二回から一回になればこれは当然簡単になったわけでありまして、企業の期待するとおりだ、こう思います。  それから、債権者保護を考えた、こういうことでございますけれども、この債権者保護関係で、今まで会社が把握している者すべてに通知をする、あるいは公告をしていく、こういうことを考えながらやってきたと思いますけれども、株主の数の多いところは、会社が知り得る人たち皆さんに催告をするといっても現実的にはなかなか難しかった、それは私も理解をいたします。NTTのように株主が百七十万人いるとか、東電が七十万人いるとか、こういう話になりますと、確かに今度の改正の中で簡素化をした、こういうことに力点を置かれたと思います。  そこで、私はお聞きをしたいのは、今回の改正の中で、合併をする会社債権者に対する公告をする、それと同時にあわせて、先ほどお話が出ましたが、定款で定めた時事に関する事項を記載する日刊新聞紙に掲げればこれでいいんだ、こういうふうになったと思います。日刊紙はどのようなものを想定しているかわかりませんけれども、単に新聞に取り上げていって、果たして全国に散らばる株主に本当に伝わるのだろうか。こういうことを考えますと、大変疑問もあるのであります。この日刊新聞というのはどのようなものを想定して今度の法改正に臨んでいるか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  33. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 合併によって債権者がその債権の取り立てができなくなるという事態、これは一般的にそんなに多くはないかと思いますが、そういう事態に備えて、債権者異議を言うという手続が設けられております。そのために、債権者合併をしようとしているということを知ってもらう方法として、現行法では、官報公告をする、あわせて、わかっている債権者にはすべてあまねく個別に催告をする、こういうことになっている。これが大変過大であるということで、今御指摘のような改正案としているわけであります。  今御指摘ございましたように、この日刊新聞紙というのは、我が社の公告はこの新聞でするということを会社定款で定めて、その定めは同時に登記事項になっておりますので、登記簿に記載されるということになっているわけでございます。どういう日刊新聞紙を選ぶかということでございますが、これは会社の所在地あるいは会社規模活動範囲、そういったことを考慮して、適切な新聞紙会社に選んでいただくということになってございます。  新聞に掲載するということによってあまねく債権者に行き届くかという御指摘でございますが、今申しましたように、この会社公告をする新聞というのはどこであるかということは、すべての者が登記簿あるいは定款を見ることによって知ることができるということでございますので、債権が害されるおそれがあるという債権者は、そういう新聞紙を注意していただくということで、周知が図られるのではないかというふうに考えているところであります。
  34. 西川公也

    ○西川(公)委員 今の日刊紙の話は、一番効果がある日刊紙を会社が選べ、登記もしておけ、こういうことでありますが、今想定している日刊新聞紙というのは、何組を想定しているのですか。
  35. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これは一紙でいいわけでございます。
  36. 西川公也

    ○西川(公)委員 例を申し上げますけれども、この新聞は、経済行為の話だから、あえて挙げれば経済関係の新聞だろう、こう私も想定しますが、私が住んでおります栃木県は、ことしの四月一日現在で人口百九十九万余なんです。そして、戸数が六十二万八千五百戸ぐらいあるのです。新聞をどんな状況でとっているかということをまず申し上げたいと思います。  平成七年の十月時点の新聞発行部数といいますか、栃木県の朝刊ベースの購読数は、八十一万四千二百四十二部と言われているのです。そのとき、やはりどこの地方も同じかと思いますけれども、私の地方紙は下野新聞といいまして、これが二十八万六千二百二十九部、実に三五・二%のシェアになっているのです。さらに、読売は二十一万二千四百十一で二六・一%、朝日が八万七千五百九、一〇・七、毎日が五万二百五十四、六・二、産経三万九千五百六十四、四・九%、日経に至っては三万一千五百三十三、三・九%なんです、その他に小さいのがありますけれども。  今、一紙ということになりますと、なかなか私は伝わらないだろう、こう思うのです。そして、この私の県は、地方紙の下野新聞を読めば国内の記事も県内の記事も世界の記事もわかる、この一紙でいいんだ、こういううちが非常に多い。大体七人に一部、こんな割合なんですね。戸数でいいますと、大体二・二戸に一部とっている、半分の戸数がとっている、こういう状況なんです。この現象は、何も栃木だけじゃなくて、私は他の地方も同じような傾向で地方紙が読まれていると思います。  先ほど、株主が全国に散らばっているだろうという話もあったわけでありますが、全国に株主が散らばっている、栃木県だけが私は特殊じゃないと思います。日本経済新聞のシェアが三・九%ですから、果たしてここへもし出したとして、それで新聞で親切に通知しましたよ、こういって通るものですか。こういうことになりますと、私はなかなかその理屈は通らない、こう思うのです。そういう意味でも、一紙と言わずにできればどの地方紙も対応してもらえれば、地方紙こそ読みますので、そんなことを私は考えてもらいたい、こう思うのですけれども、どんな対応をしてもらえるか、少し考え方をお聞かせいただければ、こう思うのです。
  37. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その会社活動範囲一定の地方である、地域であるという会社は、地方紙を公告する新聞と定める場合もあるわけでございます。  御指摘のとおり、全国民があらゆる新聞を見ているわけではないということは当然のことでございますが、しかしながら、この問題は、会社に対して相当額の債権を持っていて、その債権合併によって害されるかどうかということについて関心を持っている人、そういう人に知れるということでいいわけでございまして、そういう観点からいえば、今申しましたように、その会社がどの新聞に公告するかということは債権者にはわかるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  債権者にあまねく知ってもらうということになると、これはもう個別通知方法しかないわけでございますが、比較法的に見ましても、主要諸外国でもそういう債権者保護手続が全くないという国もあります。しかし、保護手続を設けている国においても、公告方法としては官報、新聞ということでやっておりまして、個別通知を要求している係国はないわけでございます。  それから、事実問題でございますが、合併ということになりますれば、大会社でございますと当然総会が開かれるわけでございますので、大会社でございますと、当然、新聞、ニュース、大きなニュースになりますし、地域の会社でありますと、おのずから債権者には知れるという事実上の問題もあろうかと思います。  そういうことで、債権者保護手続会社負担という兼ね合いから、今のような改正案を提出させていただいているところでございます。
  38. 西川公也

    ○西川(公)委員 今の答えでは、外国では知らせてないところもあるよ、こういう話もありました。しかし、例えばNTTの場合、株主の数は百七十万人いると言われているのですね。それで全国新聞に出せば通じるかといいますと、先ほどのシェアの話になりまして、むしろ地方紙の方が伝わりやすい、こういうことがあるのです。  そこで、何も私は一紙に限ることはないだろうと思うのです。今までもみんな通知して、その手間を考えれば、新聞の二紙や三紙、あるいは何組に出してもそんなにお金がかかるものじゃありませんので、ぜひこれを今後考えていっていただきたい、こう思うものでありますので、御意見としてまず申し上げておきたいと思います。  それから次に、今までは、債権者合併によって害される、こういうときには担保をしたりして保護をしていけ、こういう話であったけれども、今度は、その担保といいますか、害するおそれがない、こういうものについてはそういうものを考えなくてもいい、こういう法律に変わりますね。そこで、それではその債権者を害するおそれがない、こういう判断はだれがするのですか。
  39. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その判断は第一次的には会社においてするということでございます。
  40. 西川公也

    ○西川(公)委員 そうすると、会社がするということになりますと、申し出をする人は損害があるからと思って申し出るわけですね、会社はこの合併によって損はしないと思ってやるわけですよ。利害が相反するときに、これは会社の言うことを一方的に聞け、こういう法律になるのですか。
  41. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 実態的に害するおそれがあるのにかかわらず会社の方でおそれがないといって弁済あるいは担保を提供をしなかったということになりますと、これは合併手続の違反ということになりますので、合併無効の原因になるわけでございます。したがって、それを争う債権者は、合併無効の訴えを提起することができるということになります。最終的には裁判所で判断がされるということになるわけです。  そういうことでございますので、会社としてもむやみに勝手な判断をするということはできないということになろうと思います。
  42. 西川公也

    ○西川(公)委員 今、会社が判断をする、しかし会社は、やがて起こされる、裁判所に訴えられることでもし負ければこれはまた損害賠償ということになるから、そうむやみやたらとおかしな判断は下さないだろう、こういう御意見、考え方かと思いますけれども、しかし、片方は損害があると思うから訴えるわけでして、申し出るわけですよ。片方は、それを会社に判断させたら、会社はないと思うから合併するのですよ。意見が違うのは私は当たり前だと思う。  それでは、裁判にゆだねるということになりますと、せっかく今回期間を縮めた、六カ月もかかるものを一カ月ぐらいで済まそう、承認総会後。そういうときに、これは間違いなく訴訟事になりますよ。そうしたら、どのくらいの期間がかかりますか。損するんじゃないですか、どうですか。
  43. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その訴訟が終わらなければ合併手続は完結しないということではないわけでございまして、合併手続としては、会社としては、その信ずるところにしたがって手続をして、そして合併の登記をすれば合併の作業が終わるということでございます。その後で、合併の日から六カ月内という提訴期間がありますが、その間に訴訟を提起して、もし無効だと判断されれば合併手続はひっくり返るということになるわけでございます。  訴訟をやれば時間がかかるということでございますが、おそれがあるかないかということで線を引くとすれば、そういう制度をとるということが民事法の一般的な対応の仕方でございます。現行法のように、おそれがあってもなくてもともかく弁済しろ、あるいは全部完全な担保を提供しろという制度と、今のような制度と、どちらが合理的であり、会社にとって会社負担という観点からも適正であるかという比較の問題として、改正案のような方法が適当であろうというふうに考えているところでございます。
  44. 西川公也

    ○西川(公)委員 わかりました。ここで議論していても先に進みませんので、先に進んでいきたいと思います。  それで、非上場会社とか小さな会社は従来のように個別に催告した方が手間が楽だと思いますけれども、それらについての取り扱いについてお伺いをしたいと思います。
  45. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいま申し上げました改正案は、会社官報定款で定める日刊新聞紙両方に公告をするという方法をとれば、直接の個別の催告を要しないということにするものでございますので、もちろん会社の実情によって個別の催告をするという方法をとられるときは新聞紙への公告は必要でないということになるわけでございます。
  46. 西川公也

    ○西川(公)委員 さらに進ませてもらいます。  次に、野村証券事件についてお聞きさせていただきたいと思います。  今、国民挙げてと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、金融改革をやって我が国経済の活力を取り戻そう、こういうときに今回の事件が起きて、私は時期的に大変残念だな、こう思っております。そこに、証券取引法違反と商法違反の問題で五人が逮捕された、こういう状況にありますが、まず私は、この総会屋と言われるものにつきまして、一般論でありますけれどもお聞きしておきたいと思います。  今村冨士雄さんが書いた本の中に、「株主総会へ行こう!」という本がありますけれども、この中で、一九八二年に利益供与禁止規定商法に盛り込まれてから大分企業は与党の総会屋を排除して、当時一万人いたと言われていたものが現在は千人ぐらいになったのだろう、こういう書き方をしています。しかしながら、この改正直後でも、八三年にソニーの株主総会が十三時間にも及んだ。こういうもめごとから遠ざかりたいという企業経営者もありまして、なかなか総会屋が全部いなくなるという実態にはなっていないようであります。この本の中では、今でも千人強いる、こういう書き方なんです。特に総会屋といっても暴力派ばかりじゃなくて知能派もいるよ、こういうことであります。  この人たち千人もが生活するということになりますと、大変な収入があるのだろうと私は思いますが、どの程度これらの活動の実態について警察庁は認識をしているのかどうかお聞きしたいと思うし、六月の末には株主総会がこれから集中してきますけれども、企業に対してどんな措置を行っているのか、それらについてお聞きをさせていただきたいと思います。
  47. 宮本和夫

    ○宮本説明員 警察では、株主権利行使に関して企業から不正な利益を得るなどの活動を行っておる者につきまして、総会屋として、必ずしも暴力団そのものではないわけですけれども、これに準ずるものとして取り締まりの対象といたしております。  総会屋の勢力は、商法改正直後の昭和五十八年には約一千七百名を把握しておりましたけれども、以後減少傾向にございまして、平成八年末現在で警察が把握しております総会屋の勢力は約一千人であります。この約一千人の総会屋のうち約九十人が暴力団勢力に係る者ということでございますが、このほかの者につきましてもかなりの者が暴力団と何らかのつながりを有する者と見ております。  また、警察におきましては平素から総会屋などの取り締まりを徹底しているところでございますけれども、さらに企業側に対しまして各都道府県で結成されております企業防衛協議会等の組織を通じたり、あるいは各種経済団体の会合など、あらゆる機会を利用して暴力団や総会屋等への毅然とした対応を促すとともに、こういったものによる不穏動向があった場合には速やかに警察に相談するよう指導しているところでございます。  また、株主総会の開催に際しましては、不審な入場者のチェックであるとか、事案発生時の証拠保全措置など、株主総会会場における違法行為の防止等について指導しているところでございます。
  48. 西川公也

    ○西川(公)委員 まだ千名強いるということでありますので、ぜひ最大限の努力を払って根絶のために努力をしていただきたい、こう要望しておきたいと思います。  そして、この種の事件でありますけれども、せっかく平成五年の改正でわざわざ社外の監査制度を設けた、そういう状況でありながら残念ながらこういう事件が起きた、こういうことで、今さらに再発防止策を何か考えているかどうか、ちょっと聞かせていただきたいと思うのです。
  49. 小手川大助

    小手川説明員 各個別の事案を教訓といたしまして、今後一般的なシステムを構築する際に新しいことを考えていくということはまさしく今委員が御指摘になったとおりだと思いますので、今後事件の全容が明らかになってまいりましたら、その背景、原因をも踏まえまして、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  50. 西川公也

    ○西川(公)委員 それでは、時間が追ってきましたので、VIP口座なるものについてお聞きをしたいと思います。  五月十五日の朝日新聞の夕刊によりますと、このVIP口座につきまして特捜部に任意提出している、こういう報道がなされております。そして、昨日二人が追加で逮捕されましたので、この捜査状況は相当進んでいるのだと思いますけれども、このVIP口座なるものの存在をどう把握しているのか、そして五人の逮捕を出しましたけれども、捜査状況がどんなふうになっているのか、言える範囲でひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  51. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  警察当局が現在捜査の過程におきましてどういう事実を把握しているか、あるいは今後どのような方針に基づいて捜査してまいるかということにつきましては、進行中の捜査内容等にかかわる事柄でございますので、法務当局としてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。  いずれにいたしましても、本件につきましては、所要の捜査を進めまして全容の解明に努めてまいるものと考えております。
  52. 西川公也

    ○西川(公)委員 今捜査中だ、厳正に対処する、こういうことでありますので、ぜひそうしていただきたいと思います。  最後になりますが、今度の事件が起きて判定がクロになったときに、これから行政処分の検討手続を踏んでいく、こういうことになりますと、いつ行政処分が来るのだろう、そして本当に、三十万株ずつほかの大手三社のも持っているよというこの事件が果たしてこれ一つでとどまるのかどうか、こういうことになります。  そこで、来年の四月一日に外為法改正になって海外から自由に入ってくる、日本の証券会社が休む期間にどんどん入ってくるということになりますと、日本の証券業はどうなるのだ、こういう心配がありまして、ぜひ早くこれを解決に向けて厳正にやっていただきたい、こういうことをお願いしておきたいと思います。  最後に、御意見だけ申し上げておきたいと思いますが、今回の証券取引等監視委員会はよく告発したと私は思っております。思っておりますけれども、一説によりますと、野村が大蔵省の言うことを聞かずに、株価を上げていこうという話があるときに、どうも外国人の名をかりて下げをねらって売りをかけていた、こういう話もあって、そんなに言うことを聞かないのじゃ大蔵省がこれは報復だ、こういう話も流れておることも事実なのでありまして、よく告発したことにつきましては評価をしておきますけれども、そういう話がありまして、そんなことがないように一つ要望を申し上げて、時間がちょうど来ましたので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  53. 八代英太

    八代委員長 西村眞悟君。
  54. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 新進党の西村でございます。  商法改正の議題でありますので、今度の改正案について私が思っている質問を一点させていただきたいと思います。  合併の簡素化の仲なんですが、商法は、やはり自由経済活動の領域にある問題でございまして、私としては、この簡素化の法案の中に、会社債権者及び株主、この権利保護される配慮がなされているか否か、その一点をお聞きすればそれで目的を達すると思っておりますので、また、新進党もこの法案について何ら異存はないということで、債権者保護の配慮、株主保護の配慮、この一点でこの法案においていかに配慮がなされているか、お聞きいたします。
  55. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正一つの柱は、合併手続簡素合理化ということでございます。簡素合理化するということになりますと、株主保護会社債権者保護に欠けることにならないかということが問題になるわけでございますが、まず株主保護観点から申し上げますと、今回承認総会報告総会のうち、後者の報告総会廃止したということ、これが一番株主保護観点から大きな改正ということになります。  しかしながら、現行報告総会は、これは大ざっぱに申し上げますと合併の結果の報告ということでございますので、この総会を省略するということによって、株主保護観点から大きな影響が生ずるということはないということを確信しております。それから、現行法上、報告総会で決めていた事項、例えば吸収合併でございますと、合併に伴って新たに役員を選任するというようなこと、これは、現行法では報告総会でするということになっていたわけでございますが、今回の改正案におきましては、そういった合併に伴って新しく就任する取締役等の選任につきましては、あらかじめ合併契約書に定めて、それは株主すべてに承知できるような体制にした上、その合併契約書承認総会において承認の対象にするということになっておりますから、そういった観点からも、株主保護に欠けることはないというふうに考えております。  会社債権者保護という観点でございますが、この点につきましては、先ほど来いろいろ申し上げてまいりましたけれども、一定保護手続簡素合理化ということでございます。しかしながら、実質においては、債権者権利が害されるというおそれがあるということではないと思っております。この点は、どの程度まで厚い手当てを講ずるかということが問題でございますが、先ほど来申し上げておりますように、諸外国との法制の比較から考えまして、会社負担保護のあり方という衡平の観点から、適正な手当てであるというふうに考えているところであります。  それから、今回の改正によって、現行法よりも保護の手当てを充実したという点は、先ほど来申し上げております株主及び債権者に対する情報開示充実ということでございます。  一つは、合併手続が完了する前のいわば事前の情報開示内容といたしまして、現行法では、貸借対照表のみを本店に備え置いて閲覧に供するということでございましたが、今回の改正におきまして、この貸借対照表は、承認総会の日から六カ月以内の日を基準とするものでなければならない、余り古いものではいけないという規制をするということに加えまして、合併契約書、それから合併において株主にとって一番大事な株式の割り当てに関する、いわゆる合併比率を定めた理由説明書、それからさらには、損益計算書、そういったものも備え置いて、株主あるいは会社債権者合併の意味合いというものを知る機会を確保するという改正をしております。さらに、合併をした後の開示におきましても、債権者保護手続の経過、あるいはどういう債権債務を承継したかといった事項、その他合併に関する事項を記載した書面を備え置いて、開示するということにしております。  さらに申しますと、簡易合併手続、例えば一〇〇%子会社、あるいはそれほどでなくても規模の相対的に極めて大きい会社規模の相対的に極めて小さい会社吸収合併する場合については、存続会社の方については株主に対する影響が比較的少ないということから、承認総会も必要としないという特別の簡易な手続を新設いたしましたが、この場合にも、存続会社株主で、それでは困る、どうしても困るという人には、株式買い取り請求権を認め、さらにそういった株主が非常に多い、発行済み株式総数の六分の一以上に当たる株主が反対するというような事態の場合には、そういう簡易手続による合併はできないというような株主保護のための規定を用意しているところでございます。少し長くなりましたが……。
  56. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。よくわかりました。  では、私は今度は法務大臣に一貫してお聞きしたいと思うのですが、委員諸公の御承諾をいただいた上で、私が一貫して尖閣問題をこの委員会でも取り上げてまいりました。五月十八日に香港が来るとか来ないとか、また、私が行ったことにおいて、内閣が私の行為をいろいろコメントしておる。また、私はその次元の低さに憤然とする議員の一人でございますけれども、法務大臣は、国会に対して連帯して責任を負う内閣の一員であられるという立場と、法務というものを主管する大臣であられる。尖閣問題というのは、実は領土問題ではなくて、中国政府の意向を背景にして、現時点では中国人が、どういう方々か私は把握しておりませんが、あそこは中国の領土だと言って上陸してくる。昨年、ことしもまた来るというふうに公言している地域でございます。  また、海洋調査船がこの四月二十日以降も領海侵犯をした地域でございますから、国内の法秩序の維持という観点からすれば、法務大臣は、内閣の閣僚の中で本問題に関して近い立場にあられる。したがって、法務大臣に、この委員会の場をかりてお聞きいたします。  梶山官房長官にお伺いいたしましたところ、法務大臣も同じ考えと思うのですが、確認をさせていただきますが、領土の保全というものは政治の大使命である、内閣の大使命であると、この点に関しては御認識はいかがでございますか。
  57. 松浦功

    松浦国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
  58. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 北方領土に巡視船に乗って歴代官房長官が視察されているということは私は知っております。また、辻政信参議院議員は、あの方は一人で巡視船に乗って竹島を海上から視察されたということも私は記録で知っておるのですが、これらの行為は、大臣が大前提としておっしゃられた領土保全は政治の大使命であるという観点から見て、公務でございますか、公務でなかったわけでございますか。
  59. 松浦功

    松浦国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がわからないんですが、もう少しわかるように御説明を、御質問をいただけたらありがたいと思います。
  60. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 北方領土を官房長官等が巡視船で視察されている状況大臣も御存じのとおりですね。これは、公務でしょうか、公務でないのでしょうか。これは内閣の閣僚としての行為。ただ、辻政信参議院議員という方がおられまして、東南アジアで行方不明になられましたけれども、その方が竹島を視察されているんですね。この辻さんは一参議院議員でしたけれども。まず、北方領土を官房長官が視察するというのは公務なんでしょうか。そして、辻政信さんが参議院議員として視察されたのは公務なんでしょうか。こういうふうにお聞きしておる。
  61. 松浦功

    松浦国務大臣 御質問の趣旨はよくわかりました。公務であるということになるならば、ちゃんと出張の命令とかあるいは旅費の精算とか、そういったことが当然行われている、それが前提であろうかと思います。
  62. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 手続的な細部からさかのぼって公務であるかどうかは決まるんではなくて、まず公務であるということが決まれば手続的にそうなるんです。したがって、まず公務であるかどうかをお聞きしておるんです。
  63. 松浦功

    松浦国務大臣 公務であるかどうかということは、私がきちっと申し上げるというようなことではなくて、結果的に、出張命令なり旅費の精算なりが行われているかどうかということからさかのぼってきちんと公務だということが言えるようになるんだと思います。公務だというふうに頭から決め込んでしまって、旅費の精算も出張命令も行われていないというようなことになると公務ではないということにならざるを得ないと思います。
  64. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 お答えがそういうふうに、出張の旅費等々があるかどうかを調べていただいたらわかるんだというお話で、今ここでは直ちに公務であるかどうかを答えることはできないという趣旨でございますか。(松浦国務大臣「そういうことです」と呼ぶ)  それでは、公務であるかどうかはわからないという趣旨で、私の出ばながちょっとくじかれたような思いになって、甚だ時間のロスになりそうなのでそれは飛ばしますけれども、尖閣諸島を、領土保全という、大臣が先ほど言われた政治の大使命、これは政治の責務、この観点から視察するということは、国会議員がですよ、これはいかがなんですか。
  65. 松浦功

    松浦国務大臣 ただいまお答え申し上げたことから演繹して御判断をいただけたらありがたいと思います。
  66. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 それは政府の役人の出張旅費等々の観点、次元で公務であるかどうかを大臣が考えられていることで、私ども国会議員は、大臣は内閣ですけれども、私は衆議院に属しておるんですが、みずからの公務として、聴衆に政党の考えなり、また私個人の考えなりを言うことは公務だと思っておる。しかし、それは公務員という等級、出張旅費等々の制度がない我々は、そういうことによって公務であるか公務でないかを判断する立場ではないんです。  したがって、私は、冒頭に申し上げたのは、閣僚として北方領土を視察するということと、辻政信参議院議員が行かれたということを二つお聞きしているわけです。大臣は、閣僚は公務員であるという前提で、そこに旅費等々があれば公務であろうと。私の考えは、公務であれば旅費がつくという考えですから、そのものずばりをお聞きしているんですが、大臣は、国会議員の公務ということに対しては、旅費がつくとかそういうことでははかれないにもかかわらず、答えを回避されておるんではないかなと思うんですよね。だから、大臣の答えをもって、私は、大臣の部下の公務員の方が、キャリアドシビリアンが行かれたときに、それが公務であるか否かは、現行基だそれは改ざん等がなされているということで問題化しておりますからあやふやでしょうが、真実そうであれば、旅費等でそれが公務であると認定できる。大臣、どうかね。私ども国会議員が公務であるか否かについては、本問題が政治の大使命であるか否かから導かれるんです。したがって、もう一度お聞きします。  私が国会議員として行き、いろいろなところに行きますけれども、それには出張旅費も何もない。しかし、国家の恩典、恩典というか、そのためとしてJRの無料のパスをいただいておる、例えばですよ。したがって、出張旅費等々はないんです。この国会議員の何が公務かということについて、尖閣諸島が、問題が今生じているこの場所の治安と警備状況を現実にこの目で見て、耳で聞きに行くというこの国会議員の行為は大臣は公務と判断されるのかどうか。前提は、旅費等はありません、国会議員の行為ですから。したがって、大臣のお答えは私の問いに対するお答えにはなっていないんです。この点をお答えいただきたい。
  67. 松浦功

    松浦国務大臣 その問題については、私が意見を述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  68. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 大臣が意見を差し控えさせていただくということはよくわかりますが、冒頭申し上げたように、大臣が国会に対して連帯責任を負う内閣総理大臣及び内閣官房長官は、尖閣諸島に国会議員が上陸視察することに対してコメントを発しておるんです。したがって、時間がむだですから直接聞きますけれども、私のこの尖閣視察する行為は、官房長官は軽犯罪法だと申された。大臣、軽犯罪法なんですか。大臣の考えをお聞きしたい。
  69. 松浦功

    松浦国務大臣 法務省としては、法に触れる行為があった場合に厳正に処理をする、それは当然のことだと思っております。今の問題について、先生の行動が軽犯罪法に違反するかどうかについてのコメントは差し控えさせていただきます。
  70. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 あなたの内閣は、法に触れる、つまり軽犯罪法違反だと言っておるんです。あなたは法の執行の法務大臣という立場にあられる。言いっ放しては私はおさまらないんです。私が取り調べ検察官からそう言われて防御権を保障されておるならば、私はそのプロセスにおいて防御するでありましょう。しかし、私は、言いっ放しなんです。いやしくも内閣が、国会議員が公務と確信して行った行為に対して軽犯罪法だと言っているんです。現実にそういうことがあれば厳重に処罰すると今おっしゃった以上、そのことがあると内閣が申されたんです、したがって、法務大臣がそれに対して所感を、第何条に触れ、軽犯罪法四条をいかにクリアして適用する、し得る事態なのか。被疑事実を、何月何日、どの時点でどの場所で何をしたことが軽犯罪法なのか、明確に御答弁いただきたい。
  71. 松浦功

    松浦国務大臣 先生の行動について法律に触れる問題があるということであれば、検察当局が事実関係を徹底的に調査をした上でしかるべく対処することになる、そういうふうに考えております。
  72. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 法に触れる問題があればそうでしょう。私もわかります。しかし、そのプロセスを経ずして軽犯罪法と内閣が断定した以上、いつ、どの行為が軽犯罪法何条に触れて、この法律をみだりに濫用してはならないという軽犯罪法四条はこの理由によりクリアされるということを、大臣みずからお答えにならねばなりません。  私は質問を続行できない。私に取り調べがあって、私は取り調べに協力して、自分の行動を、隠れてこそこそしたわけではないのです。すべて申し上げている。そして、それが内閣に上がり、コメントとして軽犯罪法であると言うならわかる。しかし、そのプロセスは一切ない。官房長官が軽犯罪法だと言った。法務大臣として、犯罪があるならば厳重に処罰するのがあなたの役目だと言った。したがって、そう申される以上は、第何条に当たる、私のいつ、どこでの行為が。これを明確に示していただきたい。国会に対する誠実さのあかしてございます。
  73. 松浦功

    松浦国務大臣 軽犯罪法ということについて、だれがどこでどういう形でということについて、私は承知をいたしておりません。したがって、一般論としてお答えを申し上げているまででございます。
  74. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 いやしくも内閣が私を軽犯罪法と言った以上、無責任ではないですか。承知していないのですか。私は、この二回、ここで尖閣諸島問題を取り上げて、そして堂々と行ったのです、事前にこれから行くぞと。現地石垣でも、私の行動はすべてオープンなのです。これに対して、中国政府に迎合したか何かびっくりして、軽犯罪法と言った以上、承知しておりませんでは済まされません。(松浦国務大臣「私が言っているのじゃないです」と呼ぶ)委員長、今の発言を速記録にとどめていただきたい。(松浦国務大臣「結構です」と呼ぶ)今と同じように発言してください。
  75. 松浦功

    松浦国務大臣 私が言ったのではないので、言った方が、どこで、どういう場所で、どういう環境でやったかということは、私どもは承知しておりません。
  76. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 内閣は国会に対して連帯責任を負うのです。大臣は、尖閣問題に関して私が質問したときに、それは外政審議室が総合調整しておるからということを言われました。その総合調整のかなめの梶山官房長官が、軽犯罪法と公式の場で発言されたのです。したがって、お聞きしているのです。そして、大臣においては、法秩序の、法執行のかなめじゃないですか。どうでしょう。大臣は知らぬ、だれに言っていけばいいのですか。私、一国会議員といえども公人が、どうして防御すればいいのですか。中国はそれを重く受けとめて、処罰することを要求すると言っているじゃないですか。こういう事態なのだ。  私の行動は、大臣に二月二十日に質問して、そして最後の四月に入ったときに、排除するというお答えをいただきました、五月十八日に上ってきたやつを。それは法秩序上当然である。しかし、私は、法秩序のプロセスにのせるならば、法的に逮捕するか逮捕しないか、これを明確に言っていただかなければ困る。大臣は再び排除すると申された。そうでしょう。排除というのは盗賊でもできるのですよね。したがって、警備状況を視察に行く、当然の発想になるのですよ。  そして、そのときこう申し上げたはずだ。法的に法治国家として対処しないならば、我々日本国民は現行犯逮捕の権限を持っておるんだと。国家が排除と言って、南海の遠くの海域で、何もわからないまま、去年来て、上がって大騒ぎして帰って、ことしまた来て排除されて、また向こうで喝采だという事態になってはならぬから、日本国民としての現行犯逮捕に期待するのかという質問主意書も書いたはずです。  したがって、私は、その問題を前提にして、現地石垣に行って、これから尖閣に上陸する。巡視船がずっとついてきて、私の行動は逐一報告されているはずだ。したがって、私は午前八時三十分に上陸したけれども、九時半ころには、官房長官は既に私の上陸という確報を得ていたんだ。すべてオープンなんだ。  毎週閣議をやっておるんでしょう。その中で私の行動は軽犯罪法に違反するという重大な発言をして、そして中国が、新華社電が処罰せよと言っておるんです。したがって、私には防御の権利があるし、国会の権威としても、被疑事実を明確に指摘して、そしてそれに基づいて適用される法罰が軽犯罪法である、これを聞かなければならないんです。したがって、大臣にお聞きしておる。立腹されることではない。閣僚の官房長官が言われていることだ。法務大臣に聞いてどこが悪い。  したがって、今私が説明した行為、上陸しただけだ。上陸という行為があって、視察をして、そして、その場がなぜ無人島であったか、あの厳しい自然条件を私は見た、警備状況もこれは大変だという思いで帰ってきた。このどこが軽犯罪法違反なのか、再度お尋ねしたい。
  77. 松浦功

    松浦国務大臣 事実認定の問題であろうかと思います。軽犯罪法に違反するということが立証されれば、当然検察当局としては対処するものと私は考えております。
  78. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 立証もくそもハチの頭もないんです。官房長官が断定したんだ。内閣の意見が不一致と見ていいんですか。  法務大臣、何も知らないうちに、事実が何もわからないうちに断定するというのは、これは刑事訴訟法上ゆゆしきことだ。私は、冒頭申し上げたように、国務大臣に質問しておるのであって、個々の検察官に質問しておるのではない。したがって、どうしますかね。  私が今申し上げたでしょう、私がやったすべての行為を。二時間魚釣島におりました。そのときに国旗を立てました。日の丸です。そして、その間にしたことは、その日ただ一回の食事であるおむすびを食ったことです。立ち小便はしました、便所はありませんから。立ち小便をしたのが軽犯罪法と言うならば、軽犯罪法二十六号、これは、「公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」が軽犯罪法だ。だから、該当しない。どこに該当するんだと私はお聞きしている。官房長官もトイレのないところに二十四時間おったら立ち小便するんですよ。いかがですか。  こういうふうにお聞きしましょうか。内閣としては、私の行為がどの軽犯罪法の罰条に該当するか明確に答えられない、こうなんですか、お答えは。お答えをいただきたい。
  79. 原田明夫

    ○原田政府委員 具体的な罰条に関することでございますので、事務当局として、僭越でございますが、お答えさせていただきたいと思います。  犯罪の成否一般につきましては、捜査当局におきまして、適法な手続によって証拠を収集いたしました上で、それに基づいて事実を確定した上でその事実の適用に関する罰条の有無を判断するものでございまして、そのような手続が現在とられていない以上、それについてお答えを申し上げることは適当でないというふうに考えます。
  80. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今のお答えは、今、政府において事実を確定していない、こういうことです。事実を確定していないのに、内閣のスポークスマンたる官房長官が軽犯罪法に当たると言ったこの事態を、法の適用と、刑罰の適用と、その執行の主宰者たる法務大臣はいかに意見を持っておられるか、お聞きしたい。大臣、正直にお答えください。
  81. 松浦功

    松浦国務大臣 私がそのことを申し上げたわけじゃないので、一般論としてのお答えを申し上げる、それ以上私がいろいろコメントすることは大変に問題であろうかと思いますので、差し控えさせていただきます。
  82. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 これ以上申し上げても大臣もお困りになるでしょう。まあ梶山官房長官に聞くという属人的な問題ではないんですね、私の意識は。法秩序の刑罰権の発動というものは、今お答えいただいたような事実認定の中で、その中で、疑われている私の防御権も確保されて、事実が確定して初めて、官房長官がコメントすることも私は越権だと思う、判決が出ていないんですから。官房長官たる者が発言すべきことだ、大臣がお答えできない、差し控えたいということのお気持ちはよくわかります。  橋本龍太郎総理大臣は、突然、地主の頼まれもしない弁護士になったようなことを言っておるんですね。弁護士資格もないのに弁護士みたいなことを言っている。つまり、土地所有者の意向を代弁して私を非難するんですよね。  つい最近、土地所有権は、私権は、安全保障上の重大な国家の利害のために制限を受けるんだと、昨日、権原がなくなって沖縄米軍基地がそのまま使用される状況を回避するために、その論法で土地所有権を制限という特別措置法を制定させた。その前に知花氏という方が楚辺通信所の一部を持っておりまして、不法状態だったんです。しかし、国民は、安全保障上の見地ということで、そして、国民の意を受けた我々があの法律を成立させた。  領土の保全という問題と安全保障の問題の次元を考えますならば、安全保障というものは領土を保全するためにあって、領土が確保された国家にして初めて安全保障を機能させ得るんだ。したがって、私としては、領土の保全というものが安全保障の前提にある重要なことだと思う。私は、領土保全に行った、その警備状況を視察に行った。この領土保全という一つの、大臣、冒頭お答えいただいた国家の政治の大使命も、私有権者の意向に従属すべきものなのでしょうか。大臣、所見をお伺いしたい。
  83. 松浦功

    松浦国務大臣 意見の開陳は差し控えさせていただくのが適当だと思っております。
  84. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私有地に行ったことをもって一国の総理大臣が国会議員を非難した。しからば、これは国有地の大正島に上ればそれでよかったんでしょうか。法務大臣、いかがですか。
  85. 松浦功

    松浦国務大臣 ちょっと御趣旨がよくわかりません。もう一回おっしゃっていただけると……。
  86. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 尖閣は五つの島と三つの岩礁から成り立つ列島でして、その中に、開拓者の古賀さんという方が明治十年来から開拓された。国有地として始まりましたが、古賀さんの御子息が国有地払い下げ申請を出されて、大正島以外の島を古賀さんに払い下げられた。そして、どういう経緯かわかりませんが、今栗原さんという方が譲り受けてその所有者になっておられる、所有者の栗原さんも行けない自分の所有地になっておる。  しかし、国有地の大正島というのはあるんですよ。そこに上ればよかったのかなと思っているんですが、総理大臣の批判は、所有者の意向が国家の保全のための国会議員の視察よりも優先するんだということを言っておられるから、お聞きしておるのです。これも、大臣が申し上げたことではなくて、大臣が属する内閣の総理大臣が申し上げたことをお聞きしておるので、非常に心苦しいのですが、聞く機会があれば聞きたいのですが、今はここしか機会がないので、大臣にお聞きしているのです。
  87. 松浦功

    松浦国務大臣 お答えを遠慮させていただくのが適当だと思っております。
  88. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 大臣が遠慮するのが多いのですが、委員長、どうしますか。お答えが出てこなければ質問を続行できないです。そうじゃないですか、委員の皆さん。  先ほども辛抱しておりましたけれども、軽犯罪法に当たると。我々、国会じゃないですか、衆議院じゃないですか。その一議員が当たると言われて、そして、先ほどの刑事局長の御答弁でも大臣の御答弁でも、法は、事実を認定して、犯罪事実、被疑事実を認定して、しかる後に適用法罰を確定し、そして裁判にかけて事実を確定し、それによって初めて一国会議員を犯罪の刑罰をもって非難することができる、これが明らかになりました。  しかし、その事実の確定という作業が全くない段階で、私を一国の官房長官が軽犯罪法に当たると公言して、それを北京・中国政府は重く受けとめて、新華社電は処罰を要求しておるのです。いかにいたしましょうか、委員長
  89. 八代英太

    八代委員長 それでは、ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  90. 八代英太

    八代委員長 速記を起こしてください。  ただいま西村君の御意見に対しまして理事会で協議をいたしますが、この問題以外で、時間内、御質疑がありますれば続行してください。
  91. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 後日私に時間をいただけるということは、委員長が保証されるということですか。
  92. 八代英太

    八代委員長 それらも含めて理事会で協議をいたします。
  93. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 確認させていただきますが、今の御答弁では答えが返ってこないので、質疑というのは、質問して答えが返ってきて、質問して答えが返ってきて。答えが返ってこないので質問できないということなのですよね。理事会で協議して、回答を出していただけるのですか。それなら私は質問を続行できます。
  94. 八代英太

    八代委員長 それらも含めて理事会で協議をいたします、いかがですか。
  95. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 本間以外で、もう少し別の質問をいたしましょうか。(発言する者あり)陰の委員長が言われておりますけれども、そういうことなのですか。どういうことなのですか。
  96. 八代英太

    八代委員長 今理事会で協議をいたしますが、続行するもよし、そしてこれは協議結果を聞かなければ続行できないというならそれもよし。それは、持ち時間が後日どうなるかも含めまして、優秀な理事さんとしっかりと、貴党の理事さんの御意見もしっかり聞きながら対応していきたい、こう思っております。  今回は商法改正の問題から非常にかけ離れている、それは十分理解できますけれども、そこでまた委員会が滞ってもいけませんので、持ち時間の中でほかの質疑ができるならばやっていただければよろしいし、この質疑時間を別の形でということであるならば、それらも含めて理事会で協議をしたい、こういうことでいかがでございますか。
  97. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私が委員長に協議をお願いした趣旨は、お答えが返らなければ質問続行できないということでしたので、ここで私の質問を一応やめさせていただいて、後日、しかるべきこの委員会での対処方をお願いいたします。
  98. 八代英太

    八代委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ――――◇―――――    午後一時一分開議
  99. 八代英太

    八代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  100. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは、午前中の委員会に引き続きまして、商法等の一部を改正する法案ほか一法案につきまして質問をさせていただきます。  商法は、経済活動企業活動の基本的なルールを定めたものでありまして、国民生活にとりましても極めて重要な法制度であるというふうに考えております。その意味で、法案の内容についての質疑に入る前に、若干、関連事項について何点か御質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず第一に、昨年末以来、味の素の幹部社員が総会屋へ裏金を渡していたというような事件であるとか、野村証券元役員が総会屋の関連企業損失補てんを行っていたという事件、こうしたものが続けて表面化しております。こうした事件についての報道が連日のごとく行われておりますし、これは国民が、日本経済システムは一体どうなっているんだろうかと本当にあきれ返っておりますし、大変な不安を感じているのではないかというふうに思います。  一九八一年に商法改正されまして、総会屋影響力を排除するための利益供与の禁止という改正が行われたわけでありますが、それから十五年以上が経過しているにもかかわらず、依然として日本を代表するような企業において総会屋との深い関係が取りざたされている、また不正に利益を提供しているという事実であります。私は、こうした商法違反事件がこのように続発しているという事態は、我が国経済システム、企業社会を揺るがすだけでなくて、本当に法治国家としての根幹にもかかわる極めて深刻な事態だというふうに考えております。  商法の所管でもありますし、また司法に責任を持たれている法務大臣に、最近のこうした事態をどのように認識をされていて、またどのように対処されていくお考えなのか、その辺の基本的なところをお伺いしたいというふうに思います。
  101. 松浦功

    松浦国務大臣 御指摘のように、一連の事件は、まことに日本経済界にとって情けないことだと思っております。この種の問題については、検察当局が、法に違反する事実があればどんどんこの問題については適正に処理していくということを私は確信しておりますし、また、御相談があればその方向で指導してまいりたいと思っております。
  102. 上田勇

    ○上田(勇)委員 一連の報道によりますと、東京地検特捜部は、昨日までに野村証券の元役員など三名、いわゆる元総会屋など二名を証券取引法及び商法違反の容疑で逮捕したというような新聞報道があるのですが、現在、捜査を進めているということでありますけれども、この事件の概要について、若干御説明をいただきたいというふうに思います。
  103. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  野村証券及びその関係者三名にかかわります被疑事実の要旨は、野村証券の取締役らが同社の業務または財産に関しまして、その株主である小池隆一氏の株主権行使に関しまして、同社の株主総会で議事が円滑に終了するよう協力を得ることの謝礼の趣旨で、同社の顧客である小池がその関係会社の名義で行った有価証券売買等について生じた損失の一部を補てんするため、野村証券計算において小池に対し、平成七年一月から六月までの間六回にわたり有価証券取引で得た利益を小池の関係会社名義の取引勘定に帰属させるなどいたしまして合計四千九百七十三万円相当の財産上の利益を供与したという、証券取引法違反及び利益供与に関する商法違反の事実でございます。  また、冒頭、委員指摘がございました、いわゆる総会屋である小池ら二名の被疑事実の要旨は、野村証券からただいま申し上げました利益の供与を受けたという商法違反の事実でございます。
  104. 上田勇

    ○上田(勇)委員 さらに報道されているところによりますと、先ほど名前の出ました総会屋二名は、野村証券以外の、日興証券、大和証券、山一証券、そうすると我が国の四大証券会社すべてと深い関係があった、こういう報道がされているのですけれども、こうした事実関係についてはどのように認識されているのでしょうか。
  105. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  検察当局は現在捜査の過程においてどのような事実を把握しているか、また、今後の捜査の状況見込みにつきましては、進行中の捜査の内容そのものにかかわる事柄でございますので、法務当局として答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  106. 上田勇

    ○上田(勇)委員 確認のためでございますが、こういう報道がなされていて、現在それについては捜査を行っているという理解でよろしいでしょうか。
  107. 原田明夫

    ○原田政府委員 御指摘のような報道がなされているということについては、検察当局も承知していることと存じますが、その報道の一つ一つにつきまして、それが捜査の中でどのような形でとらえられ、捜査の中身になっているかどうかという点については、法務当局としては答弁を差し控えさせていただきたいと存じますので、御理解いただきたいと存じます。
  108. 上田勇

    ○上田(勇)委員 こうした個別の事件でございますし、極めて重大な事件であるのでコメントできないということはやむを得ないというふうに思いますけれども、もしこうした報道されていることが事実であるとすれば、これは我が国の証券業界、もう四大証券会社全部が関与しているということになります。証券業界、証券市場の信頼に直接かかわる重大な事態であるというふうに思いますので、ぜひとも厳正な捜査をしていただきまして、鋭意、実態解明につきまして最大限の努力をしていただくことを御要請したいというふうに思います。  いずれにしましても、野村証券我が国の最大の証券会社でございます。その会社がこのような基本的なルールも守れないというのは甚だ遺憾であるというか、情けない限りなのではないかというふうに思うわけであります。投資家の信頼はもちろんのことでありますが、冒頭申し上げましたように、国民全体が日本の証券界に対して全く信頼を失っている事態になっているというふうに思います。こうした事態について、どのように認識されているのか、大蔵省もきょう来ていただいていると思うので、ひとつ大蔵省の見解をお伺いしたいというふうに思いますけれども、大蔵省、いかがでしょうか。
  109. 小手川大助

    小手川説明員 今回の野村証券に関します告発に関しましては、私どもといたしましても、委員指摘のとおり、極めて遺憾な事件であるというふうに認識しております。今後、監視委員会による行政処分に関する勧告がありました段階で、そのような点を踏まえまして厳正にその問題に対処してまいりたいというふうに考えております。
  110. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、行政処分についても言及がありましたけれども、ぜひその辺も、証券業界、証券市場の信頼回復の意味でも厳正な対処をお願いしたいというふうに思うのです。  冒頭、法務大臣に今の状況についての御認識を伺いました。今大蔵省に現状の認識をお伺いしたのですけれども、私は、御答弁の中で、ちょっと政府としての対応というのが悠長過ぎるのではないのかなという感じがします。もちろん、法令に基づいて行われる行政処分とはそうなのかもしれませんけれども。  今、政府、橋本内閣では、金融ビッグバンと言っているわけですね。金融ビッグバンというのをどんどん進めるんだと言っていながら、それはどういうことかといえば、金融や証券市場を自由化して国際化していこうということなんだと思うのですけれども、日本を代表するような証券会社法律も守れない、それに対してすぐにどういう対処もできない、こういう事態の中で金融ビッグバンなどと言っても、これは世界の物笑いじゃないのですか。法律も守れないようなものが、日本を代表するような証券会社だというのですね。しかも、その法律というのはどういうことかというと、それは取引にかかわる法律だとかそういうことではなくて、いわゆるやみの世界、非公式な世界、そういったところとの関係を断ち切れというような趣旨でつくられた項目について、そうしたことも守れないというのでは、金融ビッグバンなどと言ってもこれは到底実現できないことじゃないかというふうに思うのですね。  私は、国際的に開かれた証券市場、しかも国際的に評価される証券市場の条件というのは、一つには、公正な市場、フェアな市場であるということではないかというふうに思いますし、もう一つは、十分な情報公開が行われている透明な市場であるというふうに思うのですが、残念ながら、今回の事件というのは、この二つとも我が国の市場というのは条件を満たしていないということを証明したのじゃないかというふうに思うのです。ぜひ、この事態の深刻さをもっとしっかり認識していただかなければいけないというふうに思うのですが、これについて、法務省、大蔵省、再度御見解があれば、ぜひ伺いたいというふうに思います。
  111. 松浦功

    松浦国務大臣 御指摘のとおりでございますので、これまでより以上に神経をとがらせてこの問題については対処していくことになるのではないかというふうに考えております。
  112. 小手川大助

    小手川説明員 現在、私どもの方といたしましても、いわゆる金融システム改革ということで、証券市場の抜本的な見直し、新しい制度に向けまして審議会の方で御検討をいただいているところでございます。その中で、いわゆる事前予防的な行政から事後監督的な行政に移っていくという中で、やはり委員指摘のような監視体制の充実というのが非常に重要だと思いますので、その点も踏まえまして、今後頑張っていきたいと思っております。
  113. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひ、その点は最優先課題として取り組んでいただきたいというふうに思います。  それでもう一つ、認識の中で、事件について法務省の認識していることは今伺ったのですが、これは法務省、商法を所管している省といたしまして、この利益供与の禁止の項目というのは、国会でも大変な議論があった上で商法改正した。それは、我が国の不透明な、総会屋会社の経営だとか経営陣とかにかかわっていることを断ち切って、透明で近代的な企業活動をしていこうという趣旨でやって、それから十五年以上がたったわけであります。ところが、そうしたことが、冒頭申し上げました我が国を代表するような企業、この野村証券だけではありませんが、そういったところでもまだ十分にこの法の趣旨が生かされていない。この辺、商法を所管しております法務省として、どのように認識され、またどうやってそうした事態を改善していかれるのか。これは、ほかにもそういう事例というのは、表面化していませんけれども、こういうような代表的な企業があれば、当然それに近いような事態というのもあるのではないか、そういうことも予想しなければならないのじゃないかというふうに思います。  そういう意味で、商法のこうした内容の遵守、普及、啓蒙というのでしょうか、そういったことに対しまして、現状認識とこれからの対策につきまして、法務省に見解をお伺いしたいというふうに思います。
  114. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のように、昭和五十六年改正におきまして、いわゆる総会屋と呼ばれる者に対する利益供与を排除するという目的を持って、株主権利行使に関する利益供与の禁止の規定を設け、そして、その違反をして授受された場合に、民事上の返還請求、あるいは供与した取締役の損害賠償責任というようなものも規定すると同時に、罰則を設けてその排除を期した次第でございます。それにもかかわらず、今般来、こういういわゆる総会屋への利益供与が問題になる事案が発生しているということは、まことに商法の立場から残念に存じているわけですが、商法を所管する立場から申し上げれば、法整備をした、それが企業関係者に十分理解され、そしてその違反に対しては民事上、刑事上の法律に従った適用ということが大変重要なこと、大切なことではないかというふうに考えているわけでございます。  いわゆる総会屋の問題につきましては、この法律規定を踏まえて、警察、検察当局でもこれまでも大変御尽力をいただいていると思っておりますし、また、企業関係者への周知徹底といったようなことにつきましても、これまで私どもとしては、各種経済団体あるいは経営者の団体等を通じて間接的ながら努力させていただいているところでございますが、これからも一層、そういう周知徹底、それから企業の皆さん方の適正なルールづくり、そういったことに寄与させていただきたいと考えているところであります。
  115. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっと角度を変えさせていただいて、株主総会のあり方について聞かさせていただきたいと思うのです。  去年の六月の新聞報道等を見てみますと、平成八年について言えば、三月期決算の上場企業の約八八%、二千二百三十五社、これは報道されている数字でありますが、それが六月二十七日という一日に株主総会が集中している。聞くところによりますと、これは日本において際立った現象であるというふうにも聞いております。  こうしたある特定の日に、これほど多くの、九割の株主総会が集中するそうした傾向というのは、これは過去のいろいろな新聞報道を見てみますと、年々強まっているようであります。これについていろいろな、学者の方々から、また株主方々からも、例えばこういう意見も出ているのですね。複数の会社株式を持っている株主が一社の総会にしか出席できない。総会屋対策ということも理解できるけれども、一番大切な一般株主のことを忘れているといったことで、集中開催についてかなり批判も出ております。  株主権利擁護、そういった観点から、こうした事態についてどのように考えられているのか、大臣の基本認識、それからまた、さらに補足すること等ございましたら、よろしくお願いしたいというふうに思います。
  116. 松浦功

    松浦国務大臣 株主総会一定の日に多数集中することは決して好ましいことだとは思っておりません。したがって、どのような形になるかはそれぞれ企業がお決めになることでございますけれども、できるだけ分散して、株主利益が守られるようになっていくという方向が出てくるように期待をいたしております。
  117. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今のことに関連したことなのですが、この株主総会の集中開催、このことについてちょっと警察庁にもお伺いしたいと思うのです。  これは事実を確認しているわけではございません。一部の関係者の方々が、この総会の集中開催について、総会屋対策として警察当局が、同じ日にやる方が望ましいのではないかということを言っているというような話も聞くのですが、この辺について、もし事実関係を御説明いただければ、お願いします。
  118. 宮本和夫

    ○宮本説明員 警察として、御指摘のような指導をしているような事実はございません。
  119. 上田勇

    ○上田(勇)委員 また、この株主総会が、極めて形式的なものも多いし、三十分だとか短時間で終わってしまうという例も多いというのも、これも私も問題だというふうに思います。  これからは、個人の資産、これを株式市場にもっともっと投資してもらって、証券市場を活性化していくということも重要なことではないかというふうに思うのです。そのためには、やはりこの株主総会、これはある意味では一般の株主会社の経営あるいは会社の経営陣に対して発言できる唯一の機会だというふうに考えられるのですが、その意味で、総会屋対策ということはもちろん重要なのですけれども、それがゆえに、例えば株主総会が全部同じ日に集中する、あるいはそれが極めて短い時間に形式的に行われる、これはちょっと問題が本末転倒しているのではないかというふうに思うわけであります。  そういう意味で、この株主総会、一般の株主が総会で自分の発言の機会を与えられることが必要であるわけでありまして、そのためには、この総会屋と言われているグループに対する対策というのが非常に重要ではないかと思います。これが、警察当局にしろ法務省にしろ十分な御努力はされているのだと思いますが、結果としては、十分ではないがゆえにこういう事態になっているのではないかというふうにも考えるわけであります。  そこで、ぜひ警察庁それから法務省として、この総会屋対策についてもお考えをそれぞれお伺いしたいというふうに思います。
  120. 宮本和夫

    ○宮本説明員 警察といたしましては、この暴力団、総会屋の取り締まりの徹底を図っているところでございますが、株主総会会場における検挙事案の発生につきましてはここ三年ないといったことで、表面的には平穏に推移しておりますけれども、総会屋等による企業訪問は依然として継続をしておりまして、警察としては、昨年六月の大手百貨店役員及び暴力団組長らによる商法違反事件であるとか、本年三月の大手食品会社総務部長らによる商法違反事件、これらを検挙しておりますほか、昨年以降も総会屋等による企業を対象とした恐喝未遂事件なり脅迫事件等を検挙しているところでございます。  今後とも、総会屋等の動向に十分に関心を払いながら、利益供与事件商法違反その他の不法事案を検挙するとともに、企業との連携を一層強化して総会屋等の排除を徹底してまいりたいと考えております。
  121. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど申し上げましたように、商法を所管する立場といたしましては、ただいま御答弁がありましたように、捜査当局の適正な捜査ということに期待したいと存じますが、商法所管の立場から申し上げますと、利益の供与があるところには総会屋は絶えないということでございましょうから、何よりも企業関係者がそういう者への利益供与というものは絶対にしてはならないということを徹底していただくということが大事なのではないか。そういう観点から、先ほども申しましたように、企業経営者団体等を通じて、そういう気構えの醸成に努めていきたいというふうに思っております。
  122. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、局長からも答弁があったとおり、これは幾ら警察、法務省が頑張っても、結局は利益が出ればそこに集まってくる。やはり企業の経営陣がこうしたことに対して毅然とした態度で対峙していっていただかなければ、日本企業風土というのでしょうか経済界というのでしょうかの透明化が図られないというのは、もうその通りじゃないかというふうに思います。  ぜひともそういう意味で、今話題になっております野村証券事件でも、これは冒頭、野村証券という会社についても被疑者ということになっているというふうに御答弁にありましたので、やはりこれは会社全体として、それは会社に所属する一個人の役員というようなことではなくて、私はどうもそれは会社全体としてそういう風土があることに問題があるというふうに思いますので、そういう意味での啓蒙、あるいはそういう事件が発覚した場合での厳正な態度ということを重ねて御要請したいというふうに思います。  同時にこれは、あなたがしっかりしなければいけないのだといっても、それをやはりちゃんとバックアップしていく体制も、またよく各関係部門で連携をとっていただきまして、最大限に御努力を期待しているところでございます。  以上、まず野村証券にかかわる総会屋絡みの点につきまして質問させていただきました。  次に、ちょっとこれは全く違った問題でありますが、今、国会で独占禁止法改正案審議されております。衆議院では先日可決されたというふうに伺っておりますが、この独禁法の改正によりまして、従来禁止されておりました純粋持ち株会社設立が解禁になる、今そういう審議が行われているわけであります。これに伴って、この商法についても、そういう新しい形態の純粋持ち株会社設立というのが言われているときに、所要の改正を行うべきではないかという意見が、例えば日本弁護士連合会、日弁連さんあるいは何人かの有名な学者の方からも示されているわけでありますが、この独禁法の改正に伴いまして商法改正する必要性があるのか、またそれについて検討するお考えなのか、それについての御所見を伺いたいというふうに思います。
  123. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員指摘のような御意見があるということは私どもも承知いたしております。独禁法改正案審議におきましても、私どもに対してそういう御質問をいただいているところでもございます。  ただ、持ち株会社商法の立場からいえばいわゆる親会社に相当するわけでございますが、一〇〇%子会社、あるいは一〇〇%に達しないでも親子会社という存在は現行法のもとでも一般的に多数存在しているわけでございます。この親子会社の存在によって商法上何か特段の弊害が生じていて、今すぐ手当てをしなければならないというような御意見は、現在のところ聞いていないということでございます。  そういうことでございますので、持ち株会社が解禁されることによって相対的にそういう親子会社というのがふえてくるということでございますが、商法上直ちに新しい問題が生ずるということではないということから、当然に商法上の手当てが必要であるというふうには現段階においては考えていないところでございます。  ただ、今後の持ち株会社の運営の実情、あるいは持ち株会社の存在が株主債権者に実際に与える影響、そういったことについては重大な関心を払ってまいりたい、商法の立場からもそういうものを注視してまいりたい、このように考えているところでございます。
  124. 上田勇

    ○上田(勇)委員 多分今の御答弁というのは、現状においてはすぐにここが問題だというような具体的なことというのが明らかになっていないので少し注視したいというようなお話なのじゃないかなというふうに思うのです。ある何人かの有名な学者の方々がこの問題についていろいろなところで論文とかを書かれています。結構具体的なことについても指摘されています。  例えば、論点を幾つか。私もそういう意味での専門家ではないので、必ずしもそれが当を得ているかどうかわかりませんけれども、持ち株会社と子会社のそれぞれの取締役の職務権限と責任の明確化とか、特に持ち株会社の取締役の子会社の取締役に対する指示する権限の問題。また二点目に、持ち株会社監査役の子会社に対する調査権の問題であるとか、また持ち株会社株主権利保護という意味で、持ち株会社株主が子会社の管理や運営に対する直接的な権限がどこまで与えられるのかという問題であるとか、また子会社の少数株主あるいは債権者保護の問題。また、純粋持ち株会社というのは、これはその会社自体が事業を行わないわけでありますから、それの計算であるとか、その開示の問題だとか、そういった問題について幾つか、もっと商法について不備な点だとか、少し検討を要するような点というようなことが指摘されているのです。  これも、私のような素人が言っているわけではなくて、その意味での有識者の方が言っていることでありますし、日弁連さん、これはもう法律の専門家の集団でありますが、こういったところも、ここまで具体的には言っているものはないかというふうに思いますが、こういった点について懸念があるというふうなお話も伺いました。  そういった意味で、今ちょっと幾つか細かい点でありましたけれども、こうしたことについても現時点ではそれほど問題ではなくて、ただ、というような御認識だったと思うのですけれども、ちょっと今、その現状認識と、またこういった結構具体的な指摘が行われている中で、今後の検討について、具体的な何か御見解があればお伺いしたいというふうに思います。
  125. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のようなさまざまな角度からの意見があるということは承知しておりますが、これはもともと親子会社という関係のあり方について、講学上の問題としては従来からさまざまな意見があったわけでございます。今回の独禁法の改正に伴ってそういう親子会社が相対的に増加するということから、理論上はいろいろな問題点があるということが大きな指摘になってきたということだと思いますが、現実の問題として、これまでそういう問題がとりわけ大きな問題として生じてきているわけではないということから、現段階で直ちにということではないだろうというふうに先ほど申し上げたとおり思っているわけでございます。  いずれにしても、この改正が実現した場合に実際に与える影響、要するに現実問題としてそういう必要性があるかどうか、そんなことについては重大な関心を持っていきたい、こういうふうに思っているところです。
  126. 上田勇

    ○上田(勇)委員 お答えのとおり、純粋持ち株会社だからといって、現在既に認められている事業持ち株会社とそういう意味での、何というのでしょうか、会社法上の形態がまた異なるということではないのかもしれませんけれども、今回独禁法が改正されたことによりまして、今まで禁止されていた純粋持ち株会社も認められるようになった。こうした事態について、経済界では大いに期待が寄せられていたわけでありますし、そういう意味では、今回のこの改正によってそういう持ち株会社設立というのがこれまで以上に急速に進むのではないかという見方をされる方もおられます。一方では、初めて解禁されたのであって、これから連結決算制度だとかそういった諸制度整備がないとすぐにはそんなに進まないのではないかというような意見もあるのも事実でありますけれども、どういうような事態が予想されるというのは、これは実際に解禁されて、そういう形態の会社がどんどん設立されていく中で問題が顕在化していくことで、やってみなければわからないという面もあるのではないかとは思います。  とはいえ、これはやはり、問題が実際に発生してから法改正の所要の手続を法制審だとかそういう所定の手続を踏んだ上で法制化されるというまでには、一年とか二年とか、それなりの期間がかかるわけであります。そういう意味で、これはもう先ほど御答弁いただいていることでありますけれども、ぜひ、転ばぬ先のつえということもありますので、ひとつ早目早目に対応していただくことを、そういう要望を申し上げたいというふうに思います。ぜひひとつよろしくお願いいたします。  次に、もう一つ株主代表訴訟の問題についてちょっとお伺いしたいというふうに思うのです。  これはいろいろと新聞で報道されている記事をあちこちから集めてみたのですが、株主代表訴訟というのは、九三年の商法改正によりまして、要件が大分、実質的には株主代表訴訟がその改正によってかなりやりやすくなって、それから件数がふえてきているわけであります。もちろん株主代表訴訟というのは株主権利として重要なことでありますし、それによって経営陣、経営者の監督という非常に重要な意味を持っている制度だというふうに思います。  また、それがやりやすくなったというのでしょうか、その結果として件数がふえてきたということは、そういう監視体制が健全に機能している証拠でもあるというふうに思うのですが、そうした結果から出てくる損害賠償額が、例えばある株主代表訴訟の結果としては元役員に対して十二億円の賠償請求、そういう判決がおりているとか、また、先日もかなり多額の和解金によりまして和解したケースもございました。このことは裁判の結果なのでコメントできることは限られているのかもしれませんけれども、全く素人感覚で言うと、これは経営者に対して過大な負担になっているのじゃないか。本当にそこまで責任といったものが問えるのか。  あるいは、あるケースにおいては、役員をやっていた方が亡くなったがゆえに賠償請求が相続されているケースもあるというふうに聞きます。本当にそこまで、ちょっと過大になり過ぎているのではないか。あるいは、そういったペナルティーを警戒するが余り、経営者が経営判断を自由に行えなくなっている面もあるのではないかというふうに危惧されるのですけれども、ちょっと抽象的な言い方で恐縮でありますけれども、その辺についての基本認識というのでしょうか、御見解を例えればよろしくお願いしたいというふうに思います。
  127. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 株主代表訴訟制度のあり方ということにつきましては、今御指摘のありましたような視点も含めまして、主として経済実務界の方からいろいろ御意見があるということは私どもも承知しているところでございます。  ただ、ただいま御質問にもございましたように、この代表訴訟制度は、取締役の違法不当な行為によって生じた会社の損害を回復させる、そして会社の業務執行が適正に行われることを担保するという大変重要な機能も果たしているところでございます。  したがいまして、この制度のありようについてはいろいろな考え方があろうと思っておりますので、いろいろな意見をお聞きしながら慎重に考えていかなきゃならない問題ではないか、こういう認識を持っているところでございます。
  128. 上田勇

    ○上田(勇)委員 まあ私の素人としての感覚で言いますと、こうした非常に重大な責任を取締役が持っていることを、どうも経営陣の方々がそこまで十分認識されていない面もあるのじゃないかなという気がいたします。そういう意味で法体系と実態が多少遊離しているのかな。法律上は極めて大きな権限が与えられていて、しかも大きな責任も負っているのに、なかなか実態上はそこまでいってない面もあって、そうしたギャップがいろいろ今こうした問題になっている面もあるのじゃないかというふうに思うわけであります。  その意味で、取締役として会社の経営陣に加わるという責任の重大さ、またその権限の大きさといったものを十分理解させていく必要があると思います。これは法務省だけのことではないと思いますが、商法を所管されている法務省といたしましても、この点、ひとつよろしく対応していただきたいというふうに思うわけであります。  それで、関連事項ばかりやったのですが、法案につきまして何点か御質問させていただきます。  今回提出されています法案というのは、会社合併について現状を見るときに、必要以上に煩雑になってしまった手続合理化するという内容のものでありますし、現在、メガコンペティションの時代というふうによく言われますけれども、こうした中で会社の結合が機動的に行われていかなければならない、そういう環境に対応するという意味ではこの法案の趣旨には賛成でありますし、またいろいろな関係者からもそういう意味での賛同される意見を伺っているところであります。  確認のために何点か質問させていただきたいというふうに思います。  今回の改正の中で、報告総会または創立総会廃止されております。こうした手続につきましてはこれまでも他の委員からもっと総括的な質問もありましたが、合併した後つくられた会社、これは吸収合併でやれば当然大きな会社定款であるとか人事といったもので大体推測がつくのでしょうけれども、例えば対等合併の場合に、二つの会社合併して新しい会社になったときは創立総会などで新しくできる会社定款や大事について決めなきゃいけないのでしょうけれども、この報告総会というか創立総会廃止されると、株主の発言権はどこで担保されているのか。その総会を廃止することによって、新しく創立される会社定款や大事についての株主のそういう関与、権利、そういったものは制限されることにならないのか。その点についてのお考えを伺いたいというふうに思います。
  129. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のありましたいわゆる新設合併の場合について申し上げますと、新設合併の場合に、新しい会社定款、これは、まず現行では設立委員が定めて、そして創立総会においてこれを変更決議することができるということになっておりますし、新設会社の取締役、監査役等の役員は創立総会において選任するということになっているわけでございます。  今回、この創立総会廃止するに伴いまして、これらの新しく設立される会社定款の中身をどうするか、それから新しく就任する取締役等の役員をどうするか。これは合併契約書の中で定める。そして合併契約書についてはそれぞれの会社で特別多数決議をもって承認をするということでございますので、そこでそれぞれの会社株主の意思が反映される。結果的には新しく設立される会社株主になるわけでございますが、そういう形で御指摘のような点についての株主権利は十分確保されているというふうに考えております。
  130. 上田勇

    ○上田(勇)委員 手続の簡素化、合理化というのは私も評価するものであります。そうした中でやはりどうしても気をつけなければいけないのは株主権利のことだと思いますので、法律上、今御答弁いただいた担保があるわけでありますので、そういった運用が適正に行われるように今後とも御努力をいただきたいというふうに思います。  もう一つ、今回は、商法改正と同時に、非常に長い名前でありますが、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案というのが提出されております。商法改正に伴いまして、協同組合であるとか学校法人、社会福祉法人、宗教法人等々、本当にさまざまな法人の合併にかかわる規定をこの一括法で一斉に改正するわけです。  そこで、こうした手法というのは従来も同じ一括法で改正が行われていたということは伺っておりますけれども、そもそも、会社とは性格の異なるこのようなさまざまな法人に関する規定を一括法で改正することの理由、また、それについて本当に問題はないのか、その辺について御見解を伺いたいというふうに思います。
  131. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のいわゆる整備法、これは、今回の商法改正に伴って必要な整理あるいは整備を行うものでございまして、関係法律が四十二という多数に上りますために、附則という形ではなくて独立の別法案という形をとらさせていただいているところでございます。  その内容は多岐にわたりますけれども、この整備法案における各種の法人についての合併に関する規定改正、これは、今回の商法改正に伴いまして会社以外の法人の合併についても当然に会社合併手続の場合と同一の取り扱いをする必要がある、そういう事項に限って整備の対象とさせていただいております。  したがって、それぞれの分野、それぞれの法人の合併については、それぞれの制度の中で個別に考えなければならない、どうするかを判断しなければならない。そういった問題についてはそれぞれの分野ごとに個別に検討をいただくということにして、今回の会社法改正と横並びというような取り扱いは当然していないというふうに措置をさせていただいております。  例えば今回、簡易合併手続規模の相対的に大きな会社が相対的に小さな会社合併する場合の特別の簡易な手続を導入しておりますが、これは会社のうちでも株式会社についてだけ導入されたというものでございますから、整備法においてほかの法人に、この簡易合併制度を横並びで使うというような対象からは除外させていただく。そういったふうに、それぞれの分野で個別に考えていただくべきものは、この整備法では対応しないという取り扱いをさせていただいております。
  132. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私がお伺いしたかったのは、例えば今御答弁にあったように、そもそもこれらの法人は、いろいろな法人がこの中に列挙されていますけれども、非営利のものもありますし、営利企業とはおのずと性格が違うのではないかと思うのですね。  例えば、今度の合併手続の簡素化というのは、先ほどメガコンペティションと言いましたけれども、そうした中で企業活動が、いろいろ企業の結合とかそういうのが盛んになってくる。そうした需要にこたえてという意味もあってされたのではないかと思うのですが、そもそもそうした性格の異なる法人とかでも、それと横並びする必要性が本当にあるのかなというのが疑問を持っている一点。  それから、このように各法令がずっと一括法になっているのですが、この中に入っている各法令をそれぞれ個別に改正するということになると、これは手続的に、各省庁ではそれぞれ所管の何々審議会であるだとかそういうのを設けて、結構軽微な、軽微と言ってはいけないのかもしれませんが、いろいろな例を見ますと、比較的小さい変更についてもそういう所定の手続をとりながらやっているケースも見受けられます。そういう場合に、今回は一括法でそういう所要の手続きを省略してということなのですが、そういうケースとの手続上のバランスのことについては問題はないのかどうか、その辺の御見解をお伺いしたい。  以上二点、お願いします。
  133. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 もともと、商法における合併手続、これを各種の法人の合併手続に準用したり、同じようなやり方を取り入れたりしているものがあるわけでございまして、それぞれの法令でそういう取り扱いをするに際して、もちろん、営利企業である会社の場合と非営利であるそれぞれの法人の違いというものに着眼して、同じようにすべきものは同じように、違う取り扱いをすべきものは違うようにできているということであろうと思っております。今回の商法改正に伴う各法令の整備におきましても、そういう観点から、こちらが変われば当然に変わるべきもの、そういう趣旨で、そういう範囲に限って整備で対応するという取り扱いをさせていただいていることは先ほど申し上げたとおりであります。  例えば、今回の簡素合理化の最も大きな柱は、株主総会が二回必要なものが一回でいいということになるということでございますが、ほかの法人で二回の総会を必要としているというものはないように承知しておりまして、したがって、そういうものは影響がないということでございます。  先ほど申しました例のほかにもう一つ申し上げますと、今回、債権者保護手続の面で、株式会社有限会社につきましては、官報公告日刊新聞紙公告、両方をやれば個別催告は要らないという合理化を図っておりますが、こういったことについても、これは株式会社有限会社に限って認める制度でございますので、他の法人については、今回、商法改正したからといって、当然に同じ取り扱いをするという整備はしておらないというようなことでございます。  そういうことでございますので、実質のそれぞれの分野でお考えいただくべきものを今回の整備で一挙にぐさっとやってしまったということはない、そういう方針で臨んでいるところであります。
  134. 上田勇

    ○上田(勇)委員 これは法務省だけのことではないのですが、どうも今回の国会に提出されている法案を見ると、一括法みたいな形のものが余りにも多過ぎるのではないのかなという感じがいたしまして、本当に政府から提出される法案が政府の中で十分な議論がされているのか、あるいは、政府の中では多分各省協議をされているのでしょうけれども、一括法案で出てきますと、国会の審議についても非常にわかりにくい、審議をされにくいようにそういう一括法案になっているのではないのかなというような気もするぐらいであります。これは、商法については従来もこういうような形で法整備をしてきたということであるので、法務省に申し上げても仕方のないことなんですけれども、意見としてちょっと申し上げさせていただきたいというふうに思います。  最後に、これは冒頭取り上げました、我が国の優良企業がこうした総会屋の問題で商法違反の事例が相次いでいるという事態、これは本当に、これから日本経済をどんどん世界に開いた、自己責任、市場原理に基づいた経済にしていこうというときに、規制がなくなるということは、その中で経済活動に従事している人、企業活動を行っている企業、そういったものはやはりルールは守らないと、そういう自己責任または市場原理の経済というのはできないことだというふうに思います。  その意味で、ぜひとも商法を所管されております法務省において、関係各省ともよくこの点いろいろと連携を密にしていただきまして、適切に対処していただきたいということを御要望いたしまして、若干時間が残っておりますけれども、これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  135. 八代英太

    八代委員長 次に、佐々木秀典君。
  136. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  事前にお知らせをしてありました質問の順序ですけれども、恐縮ですが変えさせていただいて、最初に野村証券の今度の一連の不祥事に関する関係についてまずお尋ねをしたいと思います。  実は、私は当法務委員会のほかに科学技術委員会にも属しております。昨日も科学技術委員会が開かれましたけれども、御案内のように、動燃の例の東海村の爆発火災事故、あるいはそれに続いて「ふげん」での重水漏れなどが続いております。一昨年の十二月には「もんじゅ」のナトリウム漏れという事故もあって、その調査報告書がこの間できたばかりなのですけれども、それに加えてこの一連の事故、加えて、それに対する報告が虚偽に満ちている、あるいは捏造されているなどということなどから、ついに動燃の東海事業所には司直の手も入る、今刑事事件にもなっているというようなことで、私どもはこの対応にずっと追われておりまして、本当はもっといろいろと大切な、原子力行政だとか科学技術一般についての審議がなかなかできないというような状態であります。  そして、こうした一連の動燃のやり方を見ながら、またしても動燃かという言葉や、あるいは動燃の体質がどうしてこんなにという言葉が大はやりになっている。そして、これらの一連の動燃及びそれを監督する立場にある科学技術庁の態度などが合わさって、原子力行政に対する国民の大変な不信を招いているということは御案内のとおりであります。  所を変えて、この野村証券についても、またしても野村証券、そして、野村証券はこれまでもあれだけのいろいろな不祥事を起こして、そのたびに機構を改革する、そして反省の上に立って体制を整えるなどということを約束したにもかかわらず、その上にさらに今度のこの大きな不祥事を重ねたという、ここでもまた私どもとしては、またしても野村証券、そして野村証券の体質がということを言わざるを得ないのは、本当に情けない思いがしております。  総じて、戦争が終わって五十二年、私たちは本当にあらゆる部面で総点検をして、そしてまじめな人が、あるいはまじめに働く、まじめに暮らす人々こそが大事にされ、そしてその人々の思いがかなうような政治や行政やあるいは社会の仕組みというものをつくっていかなければ、私はどうにもならない、二十一世紀に向かっての日本がどうなっていくのだろうという心配を、この一連の動燃の事案でも、そしてまた今回の野村証券の事案でも感ぜざるを得ないわけであります。  そこで、昨日検察庁特捜部が大がかりな強制捜査をいたしました。これからいよいよ野村証券事件の核心に触れてさまざまな事柄が明るみに出、そしてまたこうした疑惑の解明も果たされていくことを私どもは期待しておりますし、この機会に、国民から今失われている証券取引に対する信用が回復されることを望んでおりますし、そのために検察庁としてもひとつ全力を挙げて取り組んでいただきたい、こう思っている次第でございます。  ところで、この一連の今度の事案の中で特に私どもが重視したいと思うし、またマスコミなども一様に言っているのは、野村証券の顧客の取り扱いの中でいわゆるVIP口座というものがつくられているということ。これは恐らく野村証券だけではない、ほかの証券会社でもこういうような口座というのはつくられているのであろうということが、いわば公知の事実になっているのではなかろうかと思われます。  実はこのことについては、本年の四月十八日の大蔵委員会でも私ども民主党の同僚議員であります池田委員が、野村証券の酒巻元社長を参考人としてお呼びしてこのことについてお尋ねをしているわけですけれども、ここで酒巻参考人は、このVIP口座の存在を認めた上で、ことしの三月にいろいろと疑いをかけられるということもあるのでこの口座を廃止したというように報告を受けているという答弁をされている。廃止をしたということは、それまでにはあったということは、これははっきりと明言をされていることになるわけですね。  ここで、このVIP口座というものを証券会社が持っている、そしてある程度の機能をさせてきたのだろうと思うのですけれども、このことについて大蔵省は、御存じだったと思うのですけれども、御存じだったか、そしてまた、これがどういうような機能を果たしているものと認識をしていたのか。それで、それに対する例えば不正な疑い。その顧客リストに載せられた人々に対する特別な利益を図るとか、そういうような操作のためにということが考えられるとすれば、私はこれは随分問題があると思うのです。  報じられるところによると、この名簿の中には、これも公知の事実として、たくさんの政治家あるいは各省庁の現役、OBの役人さんたちもこのメンバーに上がっている、載せられているというようなことも言われているわけですし、もちろんこれは、株取引一般をやってはいけないということにならないにしても、しかし、そこで特別な利益を得るなどということになることは大変法律上問題があると思われるのだけれども、そういうことに対する行政指導などということは大蔵省としてはやっておられたのかどうか、まず大蔵省の方からお聞きをしたいと思います。
  137. 小手川大助

    小手川説明員 まず最初に、今回の野村証券の件につきましては、ただいま委員の方から強く御指摘ございましたように、私どもといたしましても、極めて問題な、大きな事件であるというふうに考えております。  それで、いわゆるVIP口座でございますが、このVIP口座につきましては、野村証券の方からは、これは一般的に顧客を管理する必要性から実施していた分類のことであるという説明が行われているところでございます。私どもは、証券取引法の上では、取締役等の変更の届け出でございますとか、それから営業報告書については大蔵省に提出せよということになっておりますが、今回のような口座については提出の対象とはなっておりません。  それから、今回の場合は、名前ということとともに、やはり一番の問題は、当該の口座において法令に違反するような取引があったかどうかというところだと思っておりますが、この点につきましては、今回の問題が生じたときから、平成四年の法律の変更に伴いまして関係当局において適切な捜査が行われているものというふうに考えております。
  138. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そういうお話なのだけれども、実際には、随分このVIP口座というのは各証券会社で実際につくっていて、あるいは別の名前などもつけているようですけれども、管理のためとは言うけれども、管理のためというよりはこれに基づいた運用、つまり、少なくとも顧客を仕分けしていることは明らかなわけですよね。そうでなければずらっと名前を並べておけばいいのだから、いろいろな分類の仕方があるにしても。これがVIPだということを意識してのリストアップであることは私は間違いないと思うので、こういうことは大蔵としても十分、一つの慣行として行われたようなことはわかっていたんじゃないかと思うのですね。それに対して何らかのやはり行政指導というのはあったのではないかと思うんだけれども、やってなかったのですか、それは。それはどうなの。事情を聞くということだってあったわけでしょう。
  139. 小手川大助

    小手川説明員 現在問題になっております口座につきましては、今回の事件を契機に報道が行われるまで私どもの方としては承知していなかったわけでございまして、それで、この事件に関しましては、繰り返しになりますが、関係当局の方で調査が行われているということから、調査についての独立的な権限を持っている関係当局との関係で、私どもとしましては、特に今委員の御指摘のようなことはやっていないわけでございます。
  140. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 本当に知らなかったのだとすれば、私は、まことに大蔵としてはずさんだ、認識不足というか、私はむしろ責任回避じゃないかと思うし、責任の遂行について怠るところがあったのではないかとさえ言いたいと思うのですよ。  例えば、昨日のある新聞によりますと、この野村証券については、今刑事責任を問われている例の厚生省の汚職事件の被告人である元厚生事務次官の岡光序治被告、この夫婦の名前が、十数年前から、彼の課長時代からVIP待遇でこれに載せられていて、そして相当の特別の配慮もあった、利益供与的なものもあったということまでが関係者の供述で明らかになっているとさえ言われているのですね。これは非常に問題だと思うのです。  そこで、この際、法務省及び法務大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、これも報道によりますと、特捜部はVIP口座のリストを既に押収、あるいは、報道によっては任意の提供を受けているという報道もあります。そこで、こういうリストを現に入手されておるのかどうか。これは、捜査中の事件だからということもあると思いますけれども、ここで別に名前を明らかにしろと言っているわけではないのです。こういうリストを既に法務省として入手をされているかどうか、まずこれをお伺いしたいと思います。
  141. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  現在捜査中の事件に関しまして、具体的な捜査の中身にかかわることでございますので、大変恐縮でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  142. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 多分そういうお答えになるだろうとは思っておりましたけれども、私どもとしては、多分、強制的にであるか任意の提供を受けたのであるか、方法はいずれにいたしましても、検察庁としてはこうしたリストを入手しておられる、こう思っておりますので、いずれこれによって、あるいは匿名記載になっているか本名記載になっているか、いろいろこれは書き方があるようです。しかし、関係者の証言などを、供述もどうせこれは得られることになるでしょうから、照らし合わせていけば、その人々の実名というものもわかってくるだろうし、あるいはその人々がどういう身分の人であるかということもわかってくるだろうと思うし、それにまつわって不正があるとすれば、これは徹底的に摘発していかなければならないし、指弾をしていかなければならないわけですから、この点についての捜査というものをどうか真剣にやっていただきたいと思うわけです。  そこで、あるいは大変失礼になるかもしれませんけれども、お伺いをしておきたいのは、今のリストの中に、法務省の関係者、現役の幹部、課長以上の方々のお名前があるかどうか、あるいは、元そういう幹部であった方々のお名前があったかどうか、これについても今はまだ明かせないということになりますか、刑事局長。名前まではいいです、そういうたぐいの人がリス下の中にあるかどうか、まずそのことを。
  143. 原田明夫

    ○原田政府委員 大変恐縮でございますが、現在、検察が捜査進行中の事案につきまして、どのような資料を入手して、それにどのようなたぐいの記載があるかということにつきましてお答えを申し上げることは、法務当局としては差し控えさせていただきたいと存じます。
  144. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それでは、これまた重ねて失礼ですけれども、これは御自分のことに関するということになるのでお答えをいただけるのではないかと思うのですが、念のために、松浦法務大臣野村証券との証券取引はございましょうか。あるいは、仮にあったとして、このVIP扱いをされているというようなことはございましょうか。念のためにお伺いしたいと思います。
  145. 松浦功

    松浦国務大臣 私は、うそをつくのが大嫌いでございますから、本当のことを申し上げますけれども、野村に口座を持っていることは事実でございます。しかし、VIPの中に入っているかどうかは、私は全然知りません。
  146. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 率直なお答えをいただいてありがとうございます。  では、今の後の方のお答えをもう一回念のためにお聞かせいただきたいのですが、VIP、確かにそういう扱いをするかどうかということは顧客の方からお願いをするというようなものではない、会社の方でそういうリストをつくり登載をするんだろう、こう思うのですね。ただ、聞くところによりますと、これは逓信委員会でだったでしょうか、小泉郵政大臣の御答弁がこうした問題に関してあって、いや、私はVIP扱いをむしろしてもらいたいと思っていたぐらいだけれどもされていないようだというような、これは私、直接にそれを見ていないものですから仄聞なんですけれども、そういうような御発言があって大分もめたようにも聞いておるのです。取り消しの問題があったりなんかしたようですけれども、松浦法務大臣の場合には、そうすると、野村証券と証券取引のおつき合いはあるけれども、そういう扱いになっているかどうかということについては全くお聞きになったことはないですか。周りの方々もそうですか、例えば秘書さんなんかも。
  147. 松浦功

    松浦国務大臣 非常に古いおつき合いでございますので、口座を持っていたことは事実です。というのは、私の持った株の増資等について、口座がなければこれは金の払い込みがなかなかできないのです。そのために設けております。したがって、VIP何ですか、口座ですか、その中に入っているかどうか私は存じませんし、私自身、野村との取引の過程において特別の利益を得たなどという気持ちは毛頭持っておりません。
  148. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それでは、きょうはそのようにお伺いをしておきたいと思います。  いずれにいたしましても、この問題は、冒頭にも申しましたように、私は本当にゆゆしい問題だと思います。一般の大衆、良心的な大衆投資家などから見たら、一体どうなっているんだという思いがする。どうか、こういうことを徹底的に明るみに出していただきたい。  そして、こうした問題については、やはりディスクロージャーの問題が私はここでも要求されるだろうと思うのです。したがいまして、今のVIP口座の問題にしても、ただいま現在はまだ捜査に着手したばかりでもあるし、進行中だということはわかるのですけれども、しかし、時期を得て、やはり国民の前に、あるいは国会にお示しをいただくということも必要になってくるのではないだろうか。  かつて、予算委員会で住専の問題を私どもは議論をいたしましたし、審議しました。このときにも、住専関連の会社名あるいは個人名、これは大蔵省、なかなか出そうとされなかった。しかし、こうしたことは明らかにしてもらわないと全容の解明ができないし全体の解決が得られないではないかという国民の世論もあって、これをお出しになったということもありました。どうかひとつ、そうしたことについては、もちろんさまざまな要素はあるにしても、時にはやはり勇断を持ってこれをディスクローズしていただくように、このこともあわせて、真相の解明とともに検察庁、法務省にお願いをしたいと思います。  この問題は、またいずれこれからも取り上げる機会があろうと思いますので、一応この程度にさせていただきまして、もう一つ、これも法務大臣に、順序を変えてお伺いをしておきたいと思うことがございます。  それは、諌早湾の国営諌早湾干拓事業に関しまして、実は一昨日、五月十四日に、私ども民主党の同僚議員であります渡辺周議員が、内閣に対して、国会法に基づいて質問主意書を提出しております。  質問事項は七つの事項にわたっておりますが、一番中心になっておりますのは第一の質問でございまして、要は、御案内のように、この国営諌早湾の干拓事業、これは一九五二年、長崎の大干拓計画として打ち上げられて、八六年に現在の計画が決定して、事業が継続して行われてきた。事業主体は農水省で、農地の造成と防災対策を目的にしたものであります。これが一応干拓工事が進んで、先月の四月十四日ですけれども、湾が締め切られて、有名だった有明海の干潟、これが日に日に干上がった。ここでは有名なムツゴロウなどという、ムツゴロウだけではなくて、この地域だけに見られるようなたくさんの生物がいるのですけれども、湾が締め切られたことによって干潟が干上がって海水がなくなることによって、これらの多くの生物の生態系に狂いが出て、これらが死滅に瀕するのではないかということがある。  これらは、言ってみれば私たちの貴重な財産とも言えるものではないか。自然環境の問題とあわせて考えて、大事にしていかなければならないのではなかろうか。また、そういうことと、今こうした状態をそのままにするということとは、喫緊性の比較においていかがなものかということから、渡辺議員は質問の第一として、この締め切られた堤防の中にとりあえず海水を流入させて、この生態系の維持を図る必要があると考えるけれども、政府の見解はどうなのだ、こういう質問主意書を出しているわけです。  これは、国会法に基づきますと、この質問書が出されましてから一週間以内に、特別のことがない限り、内閣は回答することになっておるわけですね。答弁を書面ですることになっておるわけです。そういたしますと、これは閣議を経てこの答弁書が作成される、提出者に回答されるという運びになると思うのです。日にちを追っていきますと、恐らく二十一日くらいが一週間目ということになるわけです。  そこで、その前に恐らく閣議があり、そこで各大臣の御意見が聴取されるということになるのではなかろうかと思うのですが、この質問主意書が出まして御意見をお聞かれになった場合に、松浦法務大臣としてはどのような対応をなされるおつもりか、もし今そのお気持ちがもう決まっているとすればお披露目していただけないだろうか、こういうことでございます。
  149. 松浦功

    松浦国務大臣 質問主意書が出ていることはそのようでございますけれども、正式の送付をまだいただいていないようでございます。したがって、農林省自体がどういう回答をするかという、原案自身についての作成をまだしていないようでございます。農林省の原案を私どもは当然基礎にして、それで閣議で決めるということになると思いますので、正式の農林省の意見を十分承って、それについて賛否を明らかにしていくということで閣議でそれをまとめる、こういう形になろうかと思います。
  150. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 質問の主意、賢明な法務大臣のことですから、もう十分におわかりいただいていると思いますけれども、質問の趣旨をお酌み取りいただいて、どうかひとつ慎重に御考慮いただきますように、心からお願いしたいと思います。  時間も迫ってまいりましたので、法案関係について一点だけちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  今度のこの法改正、先ほども同僚委員からお話がありましたけれども、随分長い間かかってきているわけですね。時間をかけての改正についての作業が続いてきた結果、今日これが出されることになった。そのいきさつ、事情などについてもお伺いしたいと思いましたが、先ほど同僚委員も同種の質問をしておったようですから、中身についての一点です。  先ほど民事局長もお話しになっていたように、この法改正に当たっては、やはり株主だとか債権者保護、これが大変大事だということが言われているわけで、私もそうであろうと思います。そうした点で、実は今度の改正法の関連では、第百条の三項、さっきもお話がありましたけれども、合併について、債権者異議を述べたとき、弁済あるいは弁済供託が前はあったわけですけれども、合併について、その債権者を害するおそれなきときはこれは必要ないのだ、こういうことにして、手続を簡略化しましたね。  この「合併ヲ為スモ其ノ債権者ヲ書スルノ虞ナキドキハ比ノ限ニ在ラズ」、この「書スルノ虞ナキトキ」というのはどういう状態を考えているのか、それからまた、この「書スルノ虞ナキトキ」の判断者はだれなのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  151. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 債権者を害するおそれというのは、結論的に申しますと、合併によって債権者が弁済期に弁済を受けることができなくなる、あるいは十分な弁済を受けることができなくなるというおそれを意味するわけでございます。  具体的には、例えば、その債権について既に相当な担保があるという場合は害するおそれがないわけでございますし、また、合併する相手方資産状態が良好であって、かえって全体としての資産状態が好転する、あるいは相手方資産状態が若干良好でない場合でありましても、その当該会社自体の資産状態が十分なものであって、その債権額等を考慮して、そういうおそれがないという場合、そういうことを意味しているわけでございます。  損害を受けるおそれがあるかないかということは、債権者から異議があれば、その当該債権者ごとに、両当事会社資産状況、経営状況債権額が多いか少ないか、弁済期がどうなっているか、そういったことを総合して、会社自身が個別的に判断するということになるわけでございますが、もし、会社がその判断を誤って、弁済あるいは担保の提供をすべきであるのにしないで合併をしたということになれば、結果的には合併手続の違反ということで合併無効の原因になり得る。したがって、最終的には、合併無効の訴えにおいて、裁判所がそのおそれがあったかどうかということを判断することになる、こういうことでございます。
  152. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 裁判所が最終的な判断者なのだ、そういうように確認させていただいていいのですね。はい、わかりました。  それでは時間が参りました。  実は、このほかに法曹養成制度の改革の問題についてもお尋ねをしようと思っておりました。これは実はお聞きをするところによりますと、今月の十九日に法曹三者協議会が開かれる、そこで法務省がこの改革案を、前から懸案でございましたけれども、今までと違った一つの改革案を新案として提案されるということが最近の新聞で報道されておりますので、その内容その他についてもお尋ねしようと思っておりましたけれども、時間が参りましたので、この問題は私の同僚議員でございます民主党の細川委員にゆだねまして、細川委員の方からお尋ねをいただきたいと思って、私はこれで終わらせていただきたいと思います。  大臣、失礼な点があったかと思いますけれども、お許しください。どうもありがとうございました。
  153. 八代英太

    八代委員長 続きまして、細川律夫君。
  154. 細川律夫

    細川(律)委員 民主党の細川でございます。  今、佐々木委員の方からお話がありました法曹養成制度につきまして、私の方から何点かお聞きをいたしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  法曹養成制度の中で、特に司法修習生の修習期間を短縮するかどうかということで今大きな議論になっているようでございます。現在、最高裁判所、そして法務省、日弁連、この三者から成ります法曹三者の協議会で、司法修習期間の短縮期間を含めまして、いろいろな法曹養成制度の改革について議論もしているとお聞きをいたしております。その結論はことしの十月というふうに聞いておりますけれども、その議論の中で、最高裁判所の方では、現在の修習期間が二年でありますものを一年に短縮するという案をその協議会の中で提案しているようでございますけれども、その理由についてお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  155. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  平成七年十一月に、四年半にわたる協議を経まして、法曹養成制度等改革協議会から意見書が出されました。その内容は、司法の機能を充実し、国民の法的ニーズにこたえるため、法曹人口を増加させる必要があり、そのために司法試験合格者を千人程度に増加させるべきであるとする点で意見が一致しまして、さらに、この意見書の多数意見におきましては、合格者を、中期的には年間千五百人程度を目標としてその増加を図り、かつ、修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行うべきであるというものでございました。  私どもといたしましては、この意見書において指摘されましたようなことを具体化するものといたしまして、修習期間については、極めて形式的、技術的な習得というようなものを廃止し、効率的かつ効果的なカリキュラムを編成すれば、一年という修習期間であっても十分必要な修習ができるのではないかということで、この改革協における議論の大勢に沿った案というものを事務当局の案ということで作成して、これを三者協議の素材ということで三者協議の場に出したものでございます。私どもといたしましては、法務省、日弁連の方と率直な意見を交換いたしまして、法曹養成制度の抜本的改革を実現する方向で精力的に協議をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  156. 細川律夫

    細川(律)委員 ただいまの御答弁、大変丁寧な回答ではありますけれども、理由について私はお聞きをしているわけでありまして、理由をきちっと述べていただきたいと思います。
  157. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、改革協で出ておりました意見と申しますのは、現行の二年間という司法修習期間というものは、テンポの速まった現在の社会の動きからすると間延びしているのではないかという点、それから、責任を負わない見習い期間という性質上、長過ぎるのは困るのではないかという点、及び、法曹としてのトレーニングというのは、法曹になってからの現場におけるいわばオン・ザ・ジョブ・トレーニングという方法でやる方が研修効果が高まるのではないかというようなことが指摘されておりまして、このような改革協における意見を具体化したものということで私どもは提案し、現在日弁連の方からもいろいろな意見が出ておりますし、私どもも意見を述べているというところでございます。
  158. 細川律夫

    細川(律)委員 理由について、二年を一年に短縮をする、そういう最高裁の事務当局の考え、その理由が何回お聞きしてもどうもよくわからないのです。  私は、司法修習制度というのは、単に司法試験に合格をした、そういう知識があればただそれだけでいいというのではなくて、例えば裁判官ならば、憲法七十六条に規定してありますように、裁判官として独立してその職務を行う、あるいは検察官としては捜査や公訴の提起を行う、また弁護士は基本的人権を守って正義の実現をする、そういうことをするために、基礎的な実務訓練というのは本当に不可欠であるというふうに考えております。そういう意味では、今の修習期間の二年というのは決して長くはない、私はむしろ、もっともっと、充実した修習には長くてもいいぐらいの気持ちを持っておりますけれども、最高裁の考えでおられます、なぜ一年にするのかというのがちょっとよくわかりません。  それでは、法務省にお聞きをしますけれども、法務省はこの点についてどういうふうに考えておられますか。
  159. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。  私どもも三者協の中で、改革協の意見を踏まえて、法曹人口の大幅な増加とともに、司法修習制度、とりわけ修習期間について短縮が必要であるということで意見を申し述べております。  その要点は、第一が、修習制度を時代の変化に応じて効果的なものにするという観点内容的な観点と、それからもう一つは、各実務庁におきます受け入れ体制、これとの関係であるということでございます。  第一の点につきましては、現在の修習は、訴訟活動を中心にかなり高度なものを教えているというふうに私どもは認識をしているわけでございますが、やはり今後、司法修習におきましては、法曹に期待される多様な社会的ニーズ、これにこたえていかなければならないという観点が入ってまいるわけでございます。  そのような観点から、実務上、多様な問題に臨機応変に、あるいは的確に対処していく、こういうことをするために必要となる基礎的な法理論あるいは実務処理能力、それから法曹として基本的に備えておくべき責任感とか倫理感、あるいは柔軟的な思考、バランス感覚、こういうものを確実に養成するという点に重点を移すべきではないかと考えておるところでございます。そして、可塑性に富みます修習生に対しましては、これらの能力が身についたならばできる限り速やかに実務につかせるということが望ましいと考えているわけでございます。このような司法修習のカリキュラムの目的にふさわしい内容にするとともに、修習期間の短縮が必要であるというわけでございます。  それから、各実務庁における受け入れ体制でございますけれども、実務庁におきまして、適正に業務を遂行しながら、いわゆる統一修習の中核となりますマンツーマンの指導体制、これを維持しまして適正な修習環境のもとで十分に効果を上げるという観点からいきますと、現在の受け入れ体制、大体一期約七百名でございますけれども、これはもうほぼ限界に達しているというところでございます。多数の者を司法試験に合格をさせまして適正な修習を受けさせる、この観点からも修習期間の短縮が必要になる、こう考えているところでございます。
  160. 細川律夫

    細川(律)委員 昨日、五月十五日の新聞報道によりますと、法務省の司法修習期間についての考え方として、こういうふうに言っております。前期を四カ月、後期を二カ月、実務修習を十二カ月として、一年半に短縮をする、こういう改革案というものが書かれておりますけれども、これは事実でしょうか、どうでしょうか。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 今御指摘の改革案の内容については、まだ三者協議会において提案するところに至っておりません。そういう観点から、正式に申し上げることができる段階ではないということでございますけれども、お尋ねでございますので、法務省が検討したその検討要点についてお答え申し上げます。  まず、期間の問題としましては、新聞報道にございましたように、修習期間一年六月を考えております。実務修習期間は一年間ということになります。残りは研修所の教育ということになります。  それから、内容的な問題でございますけれども、ただいま私申し上げましたような、訴訟技術を中心にする観点から、もう少し責任感、倫理感、あるいは柔軟的な思考、バランス感覚、あるいはリーガルマインド、こういうものを育てていくというところに重点を移すということが一つの特徴でございます。  それから、もう一点は、やはり社会の多様な分野に視野を広げまして公共的な精神等を持つということから、ボランティア活動等実地の体験をしてもらう、こういうような特徴を盛り込んだものでございます。  先ほど委員の方から御指摘ございましたけれども、来週、五月十九日でございますけれども、提案をさせていただいて、私ども、できる限り柔軟に対応しまして、この十月までには合意に達して、来年には裁判所法等の改正ということで国会の御審議をいただきたいというふうに考えておるところでございます。
  162. 細川律夫

    細川(律)委員 今、法曹養成についての改革が必要である、法曹人口もふやさなければいけないということも、私も十分承知をいたしております。ただ、法曹そのものは、他人の生命だとかあるいは自由、あるいはまた他人の財産、そういうものに第三者としてかかわっていくものでありますから、そういう意味では、法曹を養成する上においては、これを大変重要視して、丁寧に、しかも国民の皆さんから信頼のいただける、そういう法曹人を養成していかなければいけないだろうというふうに思います。  法曹三者でいろいろお話し合いをされているようでありますけれども、どうぞ、法曹三者できちんと合意ができるように、ひとつ関係者の皆さん方の御努力を心からお願いをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  163. 八代英太

    八代委員長 引き続きまして、坂上富男君。
  164. 坂上富男

    ○坂上委員 商法について一問だけ質問させていただきます。  大変素人的質問ですが、株式会社合併というのは、営業目的が全く異なるような会社の間でも、手続さえ経れば合併というものは自由にできるのでありましょうか。  ちまたでこういう話をよく聞くのですが、黒字の会社と赤字の会社合併によって税金を支払うことを免れるということが多いというふうにも聞いておるわけでございます。赤字会社で全く動きのないところを買収をして、事実上、赤字と黒字の会社合併して税金を払わないでやっているというような事態があるともうわさされておるわけでございますが、これは商法合併ができるか、それから税法上これについてどう対策がなされているのか、この点御答弁ください。
  165. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、商法の立場から申し上げますが、営業目的が異なる株式会社においても合併をすることができます。会社目的定款で定めておりますので、当然定款変更という手続を伴うことになりますが、そういう手続を経れば合併をすることができるということでございます。  それから、赤字会社との合併ということですが、赤字ということの意味が必ずしもはっきりいたしませんが、商法上の制約としては、いわゆる債務超過会社、要するに会社のプラスの資産とマイナスの資産を比較するとマイナスの方が大きい、いわゆる純資産額がマイナス状態になっている会社、これを吸収する合併ということは、資本充実原則に反するのでできないというふうに解されております。ただ、収益が黒字、赤字という観点からは、それだけでは商法上特に制約があるわけではございません。
  166. 小武山智安

    ○小武山説明員 お答え申し上げます。  赤字会社が黒字会社を吸収した場合でございますが、それが商法上適法になされたものである限り、一般的には税法上もその合併を前提として課税することになるわけでございます。しかしながら、その合併が、例えば事業活動を全く行っていない無資産の休眠会社存続会社とするもので、赤字会社の欠損金を利用した租税回避を図ることのみを目的として行われたような場合でございますけれども、この場合は、税務上、被合併法人が存続会社であるものとして取り扱うことになりまして、したがいまして、その欠損金の控除は認められないということになるわけでございます。  このような、いわゆる逆さ合併として否認すべきものかどうかにつきましては、個々の事案に即しまして、合併後存続する会社が事業活動を行い、あるいは資産を有する実体のある会社であるかどうか、また、その合併に租税目的以外の合理的な理由があるかどうか、また、その合併当事者双方が同族的な色彩の強い会社であるかどうかなどを総合勘案して判断することとしているところでございます。
  167. 坂上富男

    ○坂上委員 大体わかりました。というのは、何かそれによって随分金もうけをしたという話を私は直接聞いておるからお聞きをしたわけでございます。  確かに、税金を免れる場合、それを目的としたなどということの証拠のあらわれないように僕は合併するんだろうと思うんですよ。したがって、税金を免れるためにのみ目的を持って合併したなどというようなことがわかるような合併の仕方などは決してしないだろうと私は実は思っておるわけでございますので、この点が、こうやって合併が簡略化されるというようなことから、今言った税法上の問題がさらにこれを支援するような形になるようでは非常に困る、こういう観点から実は指摘をしたわけでございます。この点は、国税庁、単に目的だけでなかなかこれを見破ることができるかどうか、やはり問題が相当あるんじゃなかろうかと思いますので、ひとつそれへの適正な課税をお願いしたい、こう思っておるわけでございます。  それから、けさになって突然お願いをしたわけでございますが、外務省おられますか。きょうもちょっと午前中お話もあったのでございますが、北朝鮮との間におきまして、日本人妻の方が北朝鮮に渡っておられる方は相当数あるわけでございます。大体どれぐらい日本人妻と言われる方が北朝鮮にお渡りになっているのか。そして、この方々について、なかなか帰国はできないという状態のようですが、きょうの報道によりますと、非公式ではあるけれども里帰りすることに話が決まった、こう非公式協議の中で決まったという報道がなされているわけでございます。しかし、この中には外務省のコメントもありませんものでございまするから、実態はどうなのか、いつ決まったのか、これからどうなるのか、そういう点について御答弁を外務省からまずいただきたいと思います。
  168. 大島賢三

    ○大島説明員 昭和三十四年から在日朝鮮人等による北朝鮮への帰還が開始されまして、夫とともに北朝鮮に渡った日本人妻の数は約千八百名ぐらいだと承知をいたしております。これら日本人配偶者のうちに帰国希望者が何人ぐらいおられるか把握はできませんけれども、いろいろな情報によりますと、里帰りの一時帰国の希望を持っておられる方が多数おられるんではないかというようなことでございまして、従来、外務省、政府としましても、人道的な見地から問題を重視しまして、赤十字ルートを通じる等、安否の調査要請その地やってまいっております。特に、一九九一年に始まりました日本と北朝鮮の国交正常化交渉の中でも、この問題は一つの重要な懸案事項ということで取り上げてきたわけでございますけれども、北朝鮮側は問題解決のためによい雰囲気が今ないということで、要請に応じるところとならないで今日に至っているというのが全体の背景でございます。  一方、最近、北朝鮮におきます食糧事情の悪化とか経済状況の悪化といった中で、北朝鮮に対するいわゆる人道的見地からする食糧援助等も問題になっておりますけれども、日本側としても、日本人配偶者の一時帰国の問題のほかにも、今先生お触れになりませんでしたけれども、日本人拉致事件疑惑等もございますので、また覚せい剤の密輸事件など遺憾な事件も発生しておりますので、そういう状況の中で、私どもとしては、こうした日本側が北朝鮮に対して持っております人道上の要請とかあるいは遺憾とせざるを得ない問題につきまして、真摯、誠実な態度を示してくれるということを日本側としては強く求めており、また強く期待もしておるわけでございます。この問題、なかなか解決は容易ではないと思いますけれども、我々としても引き続き、直接あるいは間接、あらゆる方法を通じまして問題の解決のために粘り強く努力していく、こういう考えでやっております。  御指摘新聞報道につきましては、特に北朝鮮側との外交的接触の具体的な内容について立ち入って申し上げることは控えさせていただきたいということで御理解を得たいと思います。  また、報道の中にあります、北朝鮮側による里帰り容認説なるものにつきましても、外務省としまして、今の段階で具体的に論評を加えたりあるいは御報告を申し上げるというような状況にはございませんということもあわせ御理解を得たいと思いますが、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、引き続いて北朝鮮側の誠意ある対応を強く求めつつ、問題解決に向けまして少しでも事態が前に進むように最善の努力を傾けていきたい、こういう姿勢で臨んでおります。
  169. 坂上富男

    ○坂上委員 もう少し外務省に聞きますが、これには法務省はかかわりあるのでございますか、折衝。
  170. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 今委員お尋ねの本日の報道の件につきましては、法務省として事実関係を承知していないということでございますので、コメントできる立場にはないということでございます。
  171. 坂上富男

    ○坂上委員 法務省の今の状況はわかりました。  ぜひ実現してもらいたいんですが、仮に里帰りが可能になったと外交交渉で決まりますと、法務省はどういう手続をとるんですか。
  172. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 日本人妻の里帰りにつきましては、これらの方々の置かれている状況に配慮しまして、日本旅券または帰国のための渡航書を所持している場合はそれによって帰国されるということになりますし、こういう書類を所持しておられない場合でも、日本人と確認できる場合には日本人としての帰国手続をとるということになります。
  173. 坂上富男

    ○坂上委員 外務省、最後でございますが、やはりこれだけの報道がなされたものでございますから、今それについて外務省がコメントすることはせっかくの外交交渉をだめにしちゃうおそれがある、だからというならそれは仕方がありませんが、やはり私は、これだけの報道を外務省としては否定はできないんでしょう。それで、外務省は公式に、こういう状態になりましたという発表をできるのは大体いつごろですか。
  174. 大島賢三

    ○大島説明員 具体的に今めど等申し上げるのは甚だ難しいということで御理解を賜るほかないと思います。  北朝鮮にかかわる問題につきましては、こうしたいわゆる人道的な側面の問題のほかにも、朝鮮半島の平和と安定にかかわるような諸問題、それから国交正常化の問題だとかいろいろ問題が絡んでおりますので、そういった中で、この問題の解決に向けても、できるだけ事態が前に進むということで全力で取り組んでいきたいということで努力をやっていきたいと思っておりますので、当面はそういうことで御理解をお願いしたいと思います。
  175. 坂上富男

    ○坂上委員 じゃ、こういう質問をしましょうか。期待をしていいんでしょうか。あるいは、明かりが見えた、見えそうだと言っていいんでしょうか。それだけでもお答えください。
  176. 大島賢三

    ○大島説明員 気持ちとしましては、できるだけ早いときにそういういいニュースをお話しできるようになればいいがなと関係者はみんな思っておるわけでございます。しかし、何分、先ほど来申し上げましたようにいろいろ複雑な問題の絡みの中での話でございますので、当面のところは、外務省としてもとにかく全力で取り組んでいきたいと考えてやっておるということで御理解を賜りたいと思います。
  177. 坂上富男

    ○坂上委員 もう時間ありませんし、予定した質問がまた先送りになりまして恐縮でございますが、まさにこれは人権問題でありまして、やはり特に女性が、自分の実家、ふるさとの墓参あるいは里帰りというのは本当に人間としての当然の願望でございますから、これはまさに人権問題といたしまして、外務省が中心になりまして法務省をバックアップしていただきまして、何としてもこの願いを一日も早くひとつ実現されるように、一人でも多く実現されるように特段希望いたしまして、ちょうどもう時間になったようでございますので、ありがとうございました。
  178. 八代英太

    八代委員長 続きまして、正森成二君。
  179. 正森成二

    ○正森委員 まず、商法改正の問題について伺いたいと思います。  私どもは、今度の商法改正は、法制審の審議も経ておりますし、また、報告総会合併について開かなければならない、非常に二度手間になるというようなことで、今回の改正には合理性があるというように思いまして、全体として賛成の態度をとらせていただきたいと思います。  その前提の上に立って、幾つか伺いたいと思います。  これまでの商法では、合併をする場合には、それぞれ特別決議で合併の決議をするわけですが、それ以外に合併報告総会を開かなければならない、その総会を開かなければ登記ができない。そうしますと、合併を決めました総会で実体が事実上できているのに、登記が数カ月も実態上おくれるというようなことが学者及び実務者から言われておりますが、こういうように、合併に際しまして報告総会まで開く、つまり二度開くというようなことは諸外国に例があるのかどうか、伺いたいと思います。
  180. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 結論だけ申し上げますと、主要諸外国の立法例には見当たらないということでございます。
  181. 正森成二

    ○正森委員 先ほどから、債権者保護手続について何人かの議員から質問がございました。この合併における債権者保護手続については、合併効力が生ずる前に行う立法例、これを事前予防型と言いますが、それから合併効力が生じた後に保護手続をとる立法例、つまりいわば事後救済型がございます。  我が国商法は事前予防型に属するというように言われておりますが、たとえ会社財産に何ら不安がないというような場合にも異議申し立てができ、諸外国では、私の承知しているところでは、そういう場合は裁判所に異議を申し立てて、裁判所が異議理由があるかどうかということを判断するようになっているようですが、我が国の場合はそうではなくて、会社異議を申し立てる。そして、それについていわば一定合併手続進行阻止の効力が事実上生ずると言われてもやむを得ないということで、これも諸外国では、イタリア等にあるというようなことを聞いたことがありますが、ほとんど例がないということですが、その点はいかがですか。
  182. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、債権者保護手続について、いわゆる事前の手続合併効力が生ずる前に異議を述べることを認めるという制度を採用した上で、さらに債権者異議合併手続の進行をとめるという効力を与えるという我が国のような法制は、御指摘イタリア法にこれに似通った制度があるというふうに聞いておりますが、欧米主要国において他に例を見ないものというふうに承知しております。
  183. 正森成二

    ○正森委員 ほかにも聞くことがございますが、ほかの質問もございますので、もう一点だけ伺いたいと思います。  それは、今回、商法改正に含まれていない問題であります。  私が承知しているところでは、昭和六十一年五月十五日に法務省の民事局参事官室で改正試案というのが発表されたはずであります。ところが、この改正試案には入っておりますけれども、今度の改正には盛り込まれなかったという点が幾つかあるはずであります。その点について、問題を限定して伺いたいと思います。  合併の際に存続会社が有する消滅会社株式等の扱いについて、これは学説も分かれているようですが、今回は規定が盛り込まれなかったと私は承知しておりますが、その理由はどういうところにありますか。
  184. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 存続会社が有する消滅会社株式合併新株を割り当てることができるかどうかということにつきましては、現行法上、肯定説と否定説と分かれております。  否定説の根拠は、割り当てを認めるということは自己株式の原始取得を認めることにほかならない、あるいは、相当の時期に処分すべきものにわざわざ新たに株式を発行するというのはおかしいのではないか、そういった主として理論面からの主張であります。  これに対して肯定説の方は、割り当てが認められないということになると、存続会社合併前に売却するという行動に出ることになるけれども、そういったことについては、インサイダー取引の問題あるいは株価に及ぼす影響といった問題があるということ、あるいは、現在割り当てをしている例があるわけですが、これによって特段の不都合は生じていないのではないか、そういった主として実務的な要請からの考え方であると言うことができようかと思います。  この点について、先ほど御指摘のありました試案の中では理論面から取り上げられていだわけでございますが、議論をいたしました結果、商法部会におきまして結局この点について意見の一致を見ることができなかった、こういうことから、この際は、この点はこれまでどおりの解釈にゆだねるというのが適当であろうというふうに判断されて、この点の改正を見送るということになった次第であります。
  185. 正森成二

    ○正森委員 今度の改正案に盛り込まれていないことですから、どちらでもいいようなものですが、念のために申しておきますと、従来、学説上肯定説と否定説があった、しかし実務上は株式を発行していない例が非常に多かった、そこで、理論上は肯定説をとる者も、株式の発行を放棄したものであるというのをあわせて、セットにして言っていたわけであります。  ところが、その後、実務を見ますと、割り当てすることができるというところだけがひとり歩きして、そして実務上会社株式を割り当てるという例が見られるようになったわけであります。しかし、学者が指摘しておりますように、実質的に考えてみると、存続会社消滅会社に投資したためにそこの株式を所有しているというものが、合併によっては、株式のかわりに直接それに対応する消滅会社の物的財産の形で自分が全部所有するようになったわけで、それなのに、物的財産は所有する、新たにまた株式も発行して所有するということになると、二重に取得することを認めるわけで、これは妥当ではないというのが学説の多数説だったはずであります。  そして、今民事局長がいみじくも言われましたように、これは通常の自己株式取得の場合と異なり、言ってみれば、原始的な自己株式引き受けの場合に該当するということで認められないというのが商法の学説上の非常に有力な説であって、今度は意見が大分分かれたようですが、そういう意見に考慮して、実際上はこの改正案に盛り込まれなかったというように思っております。  私は割り当て否定説の方がはるかに道理が通っておるというように思いますが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  186. 菊池洋一

    ○菊池説明員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のようないわば資産の二重取りという観点、それが否定説の一つの論拠でございます。そういった学説もございましたので、先ほど御指摘のありました試案のときには、その考え方に従って、否定説に従った明文の規定を設けるということでどうかということで案がつくられたわけでございますが、その後法制審議商法部会で御議論をいただきましたところ、肯定説からの御意見もあって、最終的には議論が相半ばするぐらいにまでなりましたので、ここは明文の規定を設けない、つまり現在どおり解釈にゆだねるということでございますので、解釈はいろいろ学者によってお考えはあるだろうというふうに私どもは理解しております。
  187. 正森成二

    ○正森委員 そういうことは私も専門書の幾つかを読んで聞いておりますが、解釈にゆだねるということは確かに現実的な解決だったかもしれませんが、しかし理論的に不合理な点があるということも事実であります。私は、今後この点が実務上の判例等の積み重ねで解決されることを望みますが、いずれは法律的にきちんとすべき必要があるのではないかということを指摘いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  次に私が伺いたいと思いますのは、きょう各質問で同僚議員から質問がございました野村証券の不祥事についてであります。  その点について、刑事局長、今答弁を伺っておりますと、現に捜査中の事件でございますからという答弁が多くて、それはあなたの立場としては無理からぬところであるというように私も思います。ですから、あなたが答えにくい点は答えなくてもいいですが、しかしできるだけ答え得るように、それこそ質問の仕方を変えて申し上げますので、御答弁を願いたいと思います。  まず第一に、野村証券の態度が非常に不誠実だということであります。  予算委員会等で前社長が参考人で出てまいりましたが、二人の常務の名前を名指ししまして、会社ぐるみではない、全く個人ぐるみでありますというようなことをしゃあしゃあと言っておった。それが、社長は交代するし、十五名の取締役が総退陣するということになり、今度証券監視委員会と検察によって、常務二人と一人の総務部長、それから総会屋の小池氏が逮捕されただけでなしに、法人としての野村証券にも違法があったということで法人として摘発されたということは、まさに会社ぐるみであったということを証券監視委員会やあるいは検察が認めたことにほかならないというように私は客観的に言わなければならないと思います。  しかも、それは客観的に理由があるので、今までの調べによりますと、総務部門の担当の上層にも非常に密着した常務、これはまだ逮捕されていないようですが、それから株式部、そして本店第一企業部ですね、少なくとも三つが関与しなければできないことである。しかも一逮捕された二人の常務は、酒巻というのですか、社長の非常な側近で、その人の指示を忠実に守ってきた。酒巻氏が社長になる前にも、既に総務部担当の重役からこれは歴代の引き継ぎだということで引き継いできたというようなことを考え合わせると、最高指導部あるいは経営陣の指示、少なくとも了解なしに絶対にできないことであります。  そこで、私は刑事局長なり法務大臣に伺いたいのですが、このことが我が国の証券業に対する世界あるいは一般庶民の信用を失墜させたということは非常に大きいものがある。特に、商法改正等で、私どもは反対しましたが、ストックオプション等々の広範な権限が取締役会にも与えられるというような場合に、襟を正さなければならない証券業界のリーダー企業がこういうことをやる。しかも、私どもが報道等で承知しておるところでは、かつて九一年の証券不祥事で退任せざるを得なかった会長や社長が取締役に返り咲く、これは株主総会で非常に反対が多いというようなことで、黙らせるためにこういう違法な利益提供を行ったとすれば、言語道断であると言わなければなりません。したがって、私は、上層部を含めて徹底的に事案の真相を解明すべきであるということを強く要望しておきたいと思います。  それについてのお考えと決意のほどを承りたいと思います。捜査が今どうなっているかなんということは答えなくてよろしい。
  188. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいま委員指摘のような大きな関心のある事件だということはよく承りました。  ただ、検察当局におきまして現在進行中の事件のまさに中身にかかわることでございますので、現段階で法務当局としてどのような立場でどのような角度から捜査してまいるということについてお答えすることはやはり適当でないと思いますので、差し控えさせていただきたいと存じます。
  189. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長の答弁はもっともなように見えて、国民の負託にも、検察に対して課せられている公益の代表者で公訴権を独占しておるという立場から見ても、国会に対する答弁としては非常に不十分ではありませんか。捜査の内容がどうだとかこうだとかいうのを聞いているのじゃないのです。会社ぐるみだということで告発を受け、それで捜査しているのでしょう。それだから、会社ぐるみだとなれば会社の上層部も関与していると見るのは国民にとって当然じゃないですか。だから、あらゆる制限、前提を設けないで刑事上の正すべき点があれば正します、しかしその内容は今の段階では言えないというように答えるのが当然で、そんなことはあり得ないけれども、私が政府の刑事局長だったら少なくともそこまでは答えますね。答弁。
  190. 原田明夫

    ○原田政府委員 まさに委員指摘のとおり、この事件につきましては、現在捜査中の被疑事実の中身に会社としての野村証券を被疑会社としてとらえていることはそのとおりでございます。  ただ、これは、委員先刻御承知のとおり、会社の役員その他従業員その他の職員が会社のために行ったという行為がございますときに、両罰規定ということで法人についても責任を問うという形であるわけでございます。その実態としてどういうことが証拠上認定できるかということは、あらかじめ犯罪事実そのものがピックアップされたということではございませんで、やはり総体としてどのような事実がまさに証拠によって評価されていくかということを、まさに全般的にこれから調べてまいるだろう、そのために検察は適切な措置をとるであろうというふうに私どもとしては考えておりますので、御理解いただきたいと存じます。
  191. 正森成二

    ○正森委員 しかし、今までの経緯がないならともかく、酒巻前社長は、国会の参考人で、全くの個人ぐるみでございますなんてしゃあしゃあ言っているのですよ。全くの個人ぐるみで、個人の利益のためにやっているなら、野村という法人を告発するなんというようなことは原則としてあり得ないことじゃないですか。  だから、捜査の内容は今こうなってああなって、有名な両何とかいうようなものまで間近に迫るところまで行っておりますというようなことを答えてくれと言っているんじゃないので、もっと国民に、検察は信頼に値するな、我々庶民が損ばかりして、うまいことやっているというような印象を与えないようにする責務があるということを重ねて申し上げておきたいと思います、これ以上言ってあなたを困らせてもいけませんし。ただ、私がはっきり言うたことは、少なくとも耳には残っているはずであります。  そこで、次の問題に移ります。  VIPと言うのかビップと言うのかよくわかりませんが、その口座について私の知っておりますところでは、予算委員会に、十五日ですか、大蔵省証券局が見解を発表したようであります。ここにその原文を持っております。それは、大きく言いまして、「VIPの符号は、顧客の承認なしに、野村證券が付けたもの。顧客にしてみれば、自らの知らないところで、勝手に符号が付けられたために、社会的な注目を浴びることになる。」というように大蔵省は言っております。  今言われました法務大臣も、あるいはみずからの知らないところでそういうようにされているかもわからないわけで、そうだとすると、何ら違法な取引をしていないのにその氏名をみだりに開示するということは、個人のプライバシーの問題から私は問題があるというように思います。  しかし、同時に、VIP口座において何ら問題がない場合、私はよく知りませんが、大臣はそうだというように御答弁になりましたが、私もそうだと信じております、事実を知っているわけじゃないので信じると言うより仕方がないのですが。しかし、「VIP口座において法令に違反する取引が行われている場合。」というのを分けまして、その場合は司法当局と監視委員会が厳正に対処すべき問題であるということになっているんですね。  そこで、申し上げたいんですが、我々が承知しているところによりますと、本件のVIPの名簿というのは、野村証券の不正取引を内部告発した三十五歳の調査する委員会に所属していた社員がおります。この人は、不幸にしてその後、刑事事件に関与されたということなので、名前はわかっておりますが、申しません。  その人が広く言っておるところでは、「大物政治家個人や関連企業名義の口座の取引記録をコンピューターで見た。CBや新規発行株など、プレミアム商品が頻繁に割り当てられていた」、こう言っております。  あるいは、同じ業務管理本部の元幹部も、「私もその口座の存在を知っている」あるいは、「八〇年代後半は、いろんな官庁の官僚から、プレミアム商品の割り当てで便宜を求めてくるケースが相当あった。断りにくいし、こちらも、官僚から要求があれば応じていた」、こう言っていると報道されております。  あるいは、実際に官僚を優遇した経験があるという営業の元幹部は、「公的資金の運用で証券会社と密接な関係がある郵政省、厚生省の少なくとも十数人の官僚が、個人名義で口座を開設し、新規発行のCBを優先的に割り当てた。公共法人部には再三、官僚からの要請があった。一回あたり数百万円の投資で、二十-六十万円の利益が確実だった」というように広く言われているんですね。  そこで、私は、違法性が何らないにもかかわらず、全国で一万人とも言われているものを例外なしに公開せよというようなことをここでは申しません。問題は、VIPの口座に自分の知らない間に勝手に入れられたことがいいかどうかじゃなしに、それらの人々に対して特別の便宜供与が行われたかということがまさに問題であろうと思います。その点については、証券取引監視委員会及び検察当局は十分にその点は調べて、もし違法な点があればしかるべき措置をとるというのは当然だと思いますが、これについて答えてください。これも答えられませんか。
  192. 滝本豊水

    ○滝本説明員 御指摘野村証券損失補てんの問題につきましては、証券取引等監視委員会におきまして、五月十三日、東京地方検察庁に対し告発を行ったところであり、現在、告発を受けて捜査は進行していると承知しております。  当委員会といたしましては、証券取引法に触れる疑いのある不公正な証券取引がある場合には、法の定めるところに従いまして、厳正に対処していく所存でございます。
  193. 原田明夫

    ○原田政府委員 進行中の捜査のことでございますので、あくまで一般論でございますが、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがございますれば、まさに法と証拠に基づきまして適正に対処してまいるものと考えております。
  194. 正森成二

    ○正森委員 一定の前提を置いた上でしたが、原田刑事局長が初めてやや積極的な答弁をしたことを評価したいと思います。  次に、私は、これは大蔵省の銀行局に伺うべきことだと思いますが、問題のこの小池氏というのが力を持つようになりましたのは、八九年に野村を初めとする四大証券の株式を三十万株ずつ取得して、株主総会で役員の解任決議とかそういうものを出し得る、そういう権限を取得したからだと広く言われております。また、これは事実のようであります。  ところが、これは無から有を生じるというやり方で、小池氏、今は被疑者になっておりますが、みずからは一文も持っていないんですね。みずからは一文も持っていないんだけれども、これは自分が師事した大総会屋の先輩ですか、お名前もわかっておりますが、あえて言いませんが、故人ですから、そこらが口をきいて、そして第一勧銀が全部融資をした。しかも、持っている株でさえ、最高七割ぐらいは評価して融資するのが普通なのに、株を持っていないのに融資をもらって、それで株式の預かり証だけは後から出すというようなことで融資をした。  新聞の報道によりますと、これを全部取り仕切ってやったのは日興証券だというように報道をしているところもあります。しかし、金を貸したのは第一勧銀なんですね。第一勧銀は、それだけでなしに、この逮捕されました小池総会屋に、もう常識では考えられないぐらいの便宜を次かも次へと提供しておるということが報道をされております。  私が整理したものだけでも、八九年に三十万株を四つ、百二十万株買う場合に三十一億円融資した。担保なしですね。買うてから後でその株式預かり証。九二年には、第一勧銀を訪れて、株取引の資金を追加融資するよう要請した。ところが、前のものが返されてもおらぬ、大部分が焦げつきになっているので、さすがに第一勧銀は、自分のところでは融資できないというので、自分影響下にあるノンバンクの大和信用に口頭で、万が一の場合はうちが保証すると言って債務保証の約束を大和信用にして、これもまた事実上無担保で金を貸す。相当な額で、大体二十億円だと言われております。  それから、そのほかに、山梨県内で認可されていないゴルフ場の会員権有資格証明書、山梨県がわざわざこれは価値のないものだからといって、こんなものを値打ちがあるというように見ないようにという通達を出しているにもかかわらず、それを担保にして共同で三十億円を融資しておる。  それから、今回問題になりました冨士銀行の株の取引で、九五年の六カ月ほどの間にいろいろ取引をして利益を得ましたが、これは実際上金は出さないで、そして差金取引といいますか、そういうことは原則禁止されているので金が出たようにしなければならない。そこでまた、この金を貸し出すのに便宜を提供しておるというように、まさに今回の事件の金銭的な黒幕は第一勧銀であるというように言わなければなりません。  しかも、いろいろの報道によりますと、これは焦げついてしまったので莫大な損害が起こった。それで、九五年には損金として三十億円の償却をした。ところが、問題の百二十万株を売り飛ばして、そしてそれで回収したような形跡もないというように言われております。こういうことは商法上の明白な特別背任罪ではないですか。  ところが、第一勧銀が新聞紙上で言っているのは、通常の取引だから何ら問題はないとか、個々の取引についてコメントはしないとか、全く反省がないのです。今の野村証券の首脳部よりさらに反省がない。こういう資金提供の黒幕をほっておいて、それで野村証券だけを捜査して、それでこの事件について国民があるいは社会的にも納得すると思いますか。その点について、銀行局と捜査当局の答弁を伺いまして、ちょうど時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。
  195. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答え申し上げます。  第一勧業銀行が総会屋関係者に対しまして融資を行っていたという報道がなされていることは承知しておりますが、捜査当局により当該関係者が別件で逮捕されたということでございますし、現段階におきましてコメントは差し控えたいというふうに考えております。  なお、一般論として申し上げますが、貸し出しを行うに当たりましては、銀行はその業務の公共性にかんがみまして、資金使途、返済財源、債務者の状況などを総合的に勘案して行うものとし、いやしくも社会的批判を招くことのないよう、業務の適正な遂行に十分留意する必要があるものと考えているところでございます。  当局といたしましては、このような考え方を踏まえ、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  196. 原田明夫

    ○原田政府委員 本件と申しますか、野村証券にかかわりますさまざまな事態について、さまざまな角度から報道がなされ、また国会でも重要な観点ということで御論議をなされていることはよく承知しておりますし、検察当局としてもそのことは念頭にはあると存じます。  しかしながら、あくまで捜査当局が具体的な犯罪の成否ということを考えてまいります場合には、法と証拠に基づいて事実を積み上げていき、そして全体としてどういうことが社会的事実としてあったかということを確定してまいることが何よりも必要であろうと存じます。その場合に、ある特定の事態につきまして、この場でこういう事態から捜査している、あるいは関心があるということを申し上げるのは、やはり適切でないと存じますので、どうぞその点は御理解賜りたいと存ずる次第でございます。
  197. 正森成二

    ○正森委員 これで終わりますが、日ごろ余り答弁をしない大蔵省の銀行局でさえ、一般論と断って、割と筋の通った意見を述べられたと思います。そういう点を考慮して、原田刑事局長が、あなたが捜査権を持っているわけではありませんが、しっかりと国民の期待にこたえていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  198. 八代英太

    八代委員長 この際、御報告いたします。  先ほどの西村君の質疑の件につきまして、質疑を終了いたしました。  これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  199. 八代英太

    八代委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、内閣提出商法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  200. 八代英太

    八代委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、内閣提出商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  201. 八代英太

    八代委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  203. 八代英太

    八代委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会      ――――◇―――――