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1997-04-18 第140回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十八日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 太田 誠一君 理事 岸本 光造君    理事 橘 康太郎君 理事 横内 正明君    理事 上田  勇君 理事 鴨下 一郎君    理事 坂上 富男君 理事 正森 成二君       大石 秀政君    河村 建夫君       栗原 博久君    佐藤 剛男君       笹川  堯君    下村 博文君       園田 修光君    谷川 和穗君       西川 公也君    平林 鴻三君       福永 信彦君    吉川 貴盛君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       赤羽 一嘉君    漆原 良夫君       加藤 六月君    斉藤 鉄夫君       西村 眞悟君    福岡 宗也君       石毛 鍈子君    佐々木秀典君       保坂 展人君    園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 松浦  功君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君  委員外出席者         内閣官房内閣参         事官      白石 順一君         内閣官房内閣安         全保障室内閣審         議官      山崎信之郎君         警察庁生活安全         局生活環境課生         活経済対策室長 園田 一裕君         警察庁警備局公         安第三課長   伊藤 茂男君         警察庁警備局外         事課外事調査官 内田 淳一君         科学技術庁原子         力安全局核燃料         規制課長    片山正一郎君         法務大臣官房審         議官      樋渡 利秋君         法務省入国管理         局警備課長   安田 博延君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部難民支援         室長      手塚 義雅君         外務省アジア局         中国課長    佐藤 重和君         外務省アジア局         南東アジア第二         課長      平松 賢司君         厚生省社会・援         護局業務第一課         長       竹之下和雄君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      小原 正則君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十七日  辞任        補欠選任   冬柴 鐵三君    斉藤 鉄夫君 四月十八日  辞任        補欠選任   奥野 誠亮君    平林 鴻三君   粟原 博久君    佐藤 剛男君   吉川 貴盛君    園田 修光君   渡辺 喜美君    大石 秀政君   斉藤 鉄夫君    赤羽 一嘉君 同日  辞任        補欠選任   大石 秀政君    渡辺 喜美君   佐藤 剛男君    栗原 博久君   園田 修光君    吉川 貴盛君   平林 鴻三君    奥野 誠亮君   赤羽 一嘉君    斉藤 鉄夫君     ――――――――――――― 四月十五日  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出第八二号) 三月十九日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (大野由利子紹介)(第一〇一四号)  同(青山二三紹介)(第一一〇二号)  同(北沢清功紹介)(第一一四〇号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願大野由利子紹介)(第一  〇一五号)  同(青山二三紹介)(第一一〇三号)  同(北沢清功紹介)(第一一四一号) 同月二十五日  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請  願(村山富市紹介)(第一一八一号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願村山富  市君紹介)(第一一八二号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (末松義規紹介)(第一一八三号)  同(前島秀行紹介)(第一一八四号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願末松義規紹介)(第一一  八五号)  同(前島秀行紹介)(第一一八六号)  選択的夫婦別姓導入婚外子差別を廃止する  民法改正に関する請願古賀一成紹介)(第  一二六二号) 四月一日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (正森成二君紹介)(第一三三二号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願正森成二君紹介)(第一三  三三号)  同(大森猛紹介)(第一三八二号) 同月八日  五年別居条項等導入する民法改悪反対に関す  る請願畑英次郎紹介)(第一五五四号)  同(坂上富男紹介)(第一六一二号)  同(正森成二君紹介)(第一六三七号)  北朝鮮からの拉致を目的とする不法侵入者等へ  の法的整備に関する請願西村眞悟紹介)(  第一六三五号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願仙谷由人紹介)(第一六  三六号) 同月十一日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (石井郁子紹介)(第一七九〇号)  同(中島武敏紹介)(第一八九八号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願石井郁子紹介)(第一七  九一号)  同(中島武敏紹介)(第一八九九号) 同月十六日  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願金子満広紹介)(第二  〇一〇号)  同(辻元清美君紹介)(第二〇一一号)  同(石毛鍈子君紹介)(第二〇三七号)  同(岩國哲人紹介)(第二〇三八号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇三九号)  同(松本善明紹介)(第二〇四〇号)  同(松本惟子君紹介)(第二〇四一号)  同(大野由利子紹介)(第二〇八三号)  五年別居条項等導入する民法改悪反対に関す  る請願青木宏之紹介)(第二〇三六号) は本委員会に付託された。 四月十八日  五年別居条項等導入する民法改悪反対に関す  る請願坂上富男紹介)(第一六一二号) は委員会許可を得て取り下げられた。     ――――――――――――― 四月三日  組織的犯罪に対処するための刑事法整備反対に  関する陳情書(  第一二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出第八二号)  五年別居条項等導入する民法改悪反対に関す  る請願坂上富男紹介)(第一六一二号)の  取下げの件      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  内閣提出出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。松浦法務大臣。     —————————————  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法   律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 松浦功

    松浦国務大臣 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  最近、近隣諸国から船舶を利用した集団密航事件が激増しております。このような事件の背景といたしまして、密航者我が国に運んでくることなどをビジネスとする内外の犯罪組織がこの種の事件に関与して巨額の不法利益を得ていることが指摘されており、これが集団密航事件をますます助長することとなっていると思われます。このような状況を放置いたしますと、出入国管理秩序が根底から崩壊し、我が国社会の平穏が大きく脅かされることにもなりかねないと考えております。  ところで、現在、このような密航者我が国に運んでくる行為、あるいは我が国においてこのような密航者を受け取る行為などについては、不法入国不法上陸幇助罪等対応しておりますが、不法入国幇助罪または不法上陸幇助罪については、刑の上限が懲役一年六カ月にすぎず、最近の実情にかんがみますと、刑が軽さに失すると思われます。また、これらの密航者の中には旅券等を所持する者もありますが、現行法では、これらの者がたとえ本邦領域内に入ったとしても、上陸するまでの間は処罰することも退去強制をすることもできず、有効な対応が困難でありました。  この法律案は、以上に述べた出入国管理をめぐる最近の状況に的確に対応するため、密航助長、援助する者及び密航者自身に厳しく対処することができるよう、出入国管理及び難民認定法の一部を改正することを目的とするものであります。  次に、この法律案主要点について御説明申し上げます。  第一は、集団密航に係る罪を新設することであります。  その第一点は、集団密航者本邦に入らせ、または上陸させた者を五年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処し、営利目的の場合、一年以上十年以下の懲役及び一千万円以下の罰金に処することとするものであります。  その第二点は、集団密航者本邦に向けて輸送し、または本邦内において上陸場所に向けて輸送した者を三年以下の懲役または二百万円以下の罰金に処し、営利目的の場合、七年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処することとするものであります。  その第三点は、集団密航者本邦に入らせ、または上陸させる罪を犯した者からその上陸させた外国人を収受し、またはその収受した外国人を輸送し、蔵匿し、もしくは隠避させた者を五年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処し、営利目的の場合、一年以上十年以下の懲役及び一千万円以下の罰金に処することとするものであります。  第二は、その他の関連規定整備を図ることであります。  その第一点は、上陸許可等を受けないで本邦上陸しようとする外国人については、その者が有効な旅券等を所持する場合であっても不法入国罪で処罰するとともに、退去強制対象とすることとするものであります。  その第二点は、営利目的等不法入国または不法上陸を容易にした者を三年以下の懲役または二百万円以下の罰金に処することとするものであります。  その第三点は、退去強制を免れさせる目的で、不法入国者または不法上陸者を蔵匿し、または隠避させた者を三年以下の懲役または百万円以下の罰金に処し、営利目的の場合、五年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処することとするものであります。  その第四点は、集団密航に係る罪に使用された船舶車両等必要的没収対象とすることとするものであります。  その第五点は、集団密航に係る罪により刑に処せられた外国人退去強制対象とすることとするものであります。  以上が、この法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げる次第でございます。
  4. 八代英太

    八代委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 八代英太

    八代委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。
  6. 下村博文

    下村委員 おはようございます。  下村博文でございます。このことに関して質問させていただきたいと思います。  この法律改正は、まことに時宜にかなったことでございます。ポイントは、この集団密航あっせん組織であります蛇頭をこれによって根絶できるかどうか、そしてもう一つは、我が国中国における国同士の二国間の犯罪に関する連携等が、領事条約を含めてこれからどの程度できるかどうかということにかかってくるのではないかというふうな気がいたしますので、その二点を中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。  既にいろいろと新聞等で報道されておりますこの集団密航あっせん組織蛇頭というのは、組織的に我が国においてもあるいは中国においてもそれぞれ役割分担をしている中で連動している。また、我が国においては、暴力団とも絡んでかなり組織的な、国際的な活動をするということを聞いております。特に、中国におきましては、福建省等中心に、日本に対する密航者の募集、あっせんを含め、そして船のチャーターから、また日本国内に入ってからの移動、あるいは宿泊あるいは就職のあっせん等を含めまして、かなり連携組織的にしていく。なおかつ、我が国におきましては、このわずか数カ月の中においても、水際身柄を拘束した集団密入国者発生状況等を見ますと、北は北海道から日本全国にわたっているということで、場所も一定していない。これは、かなり強力な組織でないとなかなかここまではできないというふうなことであろうというふうに思います。  今時点でこの蛇頭に対してどの程度把握をされているかどうかについて、まずお聞きをしたいと思います。
  7. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 蛇頭と言われる組織につきましては、必ずしもその実態が明らかになっているわけではございませんが、一般的に集団密航ブローカーとその構成員を指すと言われておりまして、中国香港等を拠点として相当数存在する。いずれのグループにもリーダーというものがおるようでございまして、その下に不法入国者を勧誘する勧誘蛇頭不法入国者目的地まで送り届ける引率蛇頭、それから目的地での上陸の世話をしたり最終目的地にまで送り届ける出迎え蛇頭等、それぞれの役割を分担した蛇頭が存在すると言われております。
  8. 下村博文

    下村委員 さらに、蛇頭とあわせて、我が国においては暴力団がかなり絡んでいるのではないか。この暴力団も、構成員の少ない暴力団にターゲットを絞って、それというのも収入源が少ない組であればコントロールしやすいということで、かなり蛇頭密航ビジネスに対してもねらい撃ちして、国内における暴力団とかかわりがあるということが言われているそうでありますが、この暴力団との兼ね合いでは、今どの程度解明されているか、お聞きしたいと思います。
  9. 内田淳一

    内田説明員 蛇頭暴力団との関係でございますけれども、平成八年中におけます警察が検挙いたしました中国人集団密航事件、十四件ございます。この十四件のうち、暴力団が関与しているということで検挙しておりますのが三件でございます。この暴力団には、山口組系暴力団が二件、住吉会系暴力団事件が一件でございまして、こうした蛇頭国内暴力団連携をして事案を敢行しているということが明らかになっているところでございます。  このように、暴力団蛇頭との関係があるということを警察としては重要視しておりまして、警察の各部門間の連携強化して、この問題に対して重大な関心を払っているところでございます。
  10. 下村博文

    下村委員 この蛇頭についても、恐らく集団密入国というのはかなり以前から、なおかつ大量にあったのではないかということが私自身推計できるのではないかというふうに思いますが、実際に、この蛇頭という組織を確認し、あるいは暴力団絡み事件が起きたということもありまして、昨年の秋以降急激にふえたというよりは、それだけ検挙できたということでもあるかというふうに思いますが、実際、この蛇頭という組織が確認をされたのはいつごろか。また、その前後からどの程度この集団密入国者に対してこれを確認し、またこれを捕まえることができたのかどうか。  そして、この法案については、既に二月ぐらいですか、新聞報道等でこれを改正するというふうなことが出たということによって、その後少なくなった、このわずか一、二カ月の話ですけれども、というふうなことも聞いておりますが、その辺の数字の経緯について、あわせてお聞きしたいと思います。
  11. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 まず、集団密航者委員指摘のとおり、大変最近急増しております。特に昨年の十二月から大変ふえておりますが、昨年十二月以降、特に中国等からは船舶集団密入国した事案というのが急増しておりまして、昨年の十二月から本年の三月末日までに当局身柄を確保した数、船舶で来た不法入国者の数というのは四十五件、千七十九名に上っておりまして、これは既に昨年一年間に当局退去強制手続をとった船舶による不法入国者数を超えております。  それから、本年三月以降、この数は若干減少しております。この原因というのは、一つには、委員指摘のとおり、集団密航助長する者、密航ブローカー等に対する罰則の強化目的とする入管法改正をやるのだということがかなり広報されたこと、それから、警察海上保安庁等関係機関との連携を密接にして摘発強化したということ、それから、密入国者の大半を占めております中国に対しまして、外務省を介しまして、また三月十七日からは入国管理局それから警察庁外務省及び海上保安庁実務担当者中国を訪問しまして、中国公安当局に対しまして、国内ブローカー組織不法出国者等に対する取り締まり強化申し入れたというようなことが相応の効果を上げたのではないかと思っております。  しかしながら、本年の四月五日にも、長崎県島原半島において、中国人約四十人が上陸しておるということでございますので、なお予断を許さない状況にあると考えております。
  12. 下村博文

    下村委員 昨年の十二月から急増し、ことしだけでも昨年一年間トータルの人数を上回る密入国者がいたということが確認されているということでありますが、密入国者がもっと以前から、蛇頭はそもそも平成五年ぐらいに確認されたということを聞いておりますけれども、それだけふえたということは、昨年の秋ぐらいから、日本の方で海上保安庁なりあるいは警察庁なりそれぞれの関係機関が強力な体制を組んだことによってそれだけ発見をされたのではないかというふうな予想もできるわけですね。それがなければ、実はそんなには摘発されなかったのではないかというようなことも言えるのではないかというようにも思います。  それから、特に蛇頭ですから中国政府に対してだと思うのですが、今までもいろいろな申し入れはしてきたとは思うのですけれども、この三月十七日からですか、関係機関中国に行かれて申し入れもしたということでありますけれども、これに対して、それぞれ中国側関係機関がどのように対応するということを確認されたかどうか、それもあわせてお聞きしたいと思います。
  13. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 三月十七日から二十二日まで、関係省庁の職員が中国を訪問して、中国政府外交部公安部、それから中国人密航者の主たる出身地であります福建省、それから密航者の主な出国港であります上海市の地方政府と協議を行ってまいりました。  日本側からは、特に最近非常に中国人集団密入国がふえている現状を説明しまして、第一に沿岸パトロール強化、第二に船舶監視徹底、第三に密航ブローカー取り締まり強化と処罰の厳格化、第四に密航者の多い福建省等住民に対する啓発の徹底、第五に密航事案情報提供徹底ICPO手配に対する誠実な対応、第六に退去強制令書が発行された者の早期引き取りという六項目の申し入れを行いました。  これに対しまして、中国側からは、日本への集団不法入国事案が急増していることは中国側としても十分認識しておりまして、これまでも種々の対策を講じている、しかしさらに、福建省等における取り締まり監視体制、それから不法出国を防止するための住民への広報教育等を強めるとともに、不法出国させる行為等についての厳罰化などを盛り込んだ改正刑法を本年十月から施行して、その対策強化するとの説明がございました。
  14. 下村博文

    下村委員 それだけ中国から我が国に対して密航者が多いというのは、もちろんその組織的な蛇頭の問題もあるかというふうに思いますが、同時に、海を隔てて我が国中国とで非常な所得の違いがある。  この密航費用というのは、新聞報道等によれば、約三百万ぐらいかかるということが言われておりますが、これは、この中国の貧しい福建省地域の約四、五十年分ぐらいの年収に当たると。一生をかけて稼ぐぐらいの額について密航費用として投資しても、我が国にリスクをしょって来ても元が取れるということが今まで数々あったという中で、地域の中でそれだけ後を絶たずふえている状況があるんではないかというふうに思うんですが、実際、そういうふうな人たち我が国に来て、我が国の中でいわゆるそういう人たちが働くような就労が本当にあるのかどうか。実際あるから来ているわけですが。どういう形で、どういうルートでその就労、あるいは職種も含めてですが、勤めているのか。また、それがないということが一部にあったということで北区で中国人同士事件もありましたけれども、この辺の実態についてどの程度把握されているのか、お聞きしたいと思います。
  15. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  入国管理局で、昨年、すなわち平成八年中に退去強制手続をとった外国人が五万四千二百七十一人おります。このうち不法就労していたことが認められた者は四万七千七百八十五人ということで、相当な割合に上っております。この密航者につきましてもこうした不法就労についておるものと思われます。  この不法就労の内容でございますが、男性につきましては、建設作業員あるいは工員、こういう者が多くを占めております。また、女性につきましては、ホステス、ウエートレス、こういった職業についている者が多数を占めております。
  16. 下村博文

    下村委員 その密航者に対する摘発体制ですね、その対策、それは今どのように強化されているのか。今の体制についてどうなのか、お聞きしたいと思います。
  17. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  この集団密航事案というのは我が国出入国管理体制を著しく害する極めて悪質な行為だというふうに認識いたします。したがいまして、委員指摘のとおり、この種の事案については効果的な防圧を図る必要があると考えておるところでございます。したがいまして、そういった観点から、警察海上保安庁などの関係機関との連携を緊密にいたしまして、密航情報を交換するなどして、まず水際での上陸防止を図っているところであります。  また、既に潜入に成功した不法入国者、こういう者がおると認めざるを得ませんが、こういう者やブローカー組織に対処するために、私ども入国管理局では、東京、大阪、名古屋の地方入国管理局不法就労対策特別調査チーム、あるいは本年度新たに設けられました悪質事案特別調査チームを軸にしました全国一斉による集中摘発努力期間を設定するなどいたしまして、摘発に努めておるところでございます。
  18. 下村博文

    下村委員 最近の数年ぐらいで結構ですけれども、今、我が国においていわゆる不法残留者というのはどの程度ふえているのか。それから、先ほどお答えいただきましたが、退去強制手続をとった外国人の数というのは実際どの程度いるのか。また、その取り締まり状況。それから、この不法就労助長罪、これの適用状況がどの程度あるか、あわせてお聞きしたいと思います。
  19. 安田博延

    安田説明員 まず、不法残留者の数でございますが、電算統計に基づく推計によりますと、本年一月一日現在の不法残留者の数は約二十八万三千人でございます。これは、過去最も多かった平成五年五月一日現在、これが約二十八万八千人でございましたが、これをピークとしまして漸減傾向にございます。  それから、退去強制の数でございますが、昨年、平成八年は五万二千五百五十人を送還いたしております。  それから、不法就労助長関係でございますが、これにつきましては、昨年、平成八年の上半期で約百八十件余り検挙数で二百人余りを検挙いたしておるというふうに聞いております。
  20. 下村博文

    下村委員 強制送還が約五万二千人ぐらいということでありますけれども、特にこの密入国者に対して未然に水際で防ぐということが最も大切なことであるというふうに思いますが、既にもう入ってしまっている人たちに対して、この強制送還についてもきちっと中国政府なり申し入れをしながらしていくということが必要だと思うんですが、そもそも、この強制送還の手続とかこの送還に関する期間とかあるいは費用の問題とか、現在それはどんなふうになっていますでしょうか。
  21. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  まず、この強制送還の手続でございますが、私ども入国管理局で収容いたしました不法残留者あるいは不法入国者、こういった入管法の違反者につきましては、違反調査、違反審査等入管法に基づく手続を経まして、主任審査官から退去強制命令が発行されますと、各本国等へ速やかに送還する、こんなことで手続をとっております。  大体この送還に要する期間でございますが、退去強制令書が発行されてから早いものですと数日後、旅券等を所持していないために直ちに送還できないものについては、送還条件が整い次第速やかに送還するということにしております。  ただ、今の不法入国のこの事案でございますと、刑事手続を先行いたしまして刑事裁判がまず行われますので、そういったことも含めまして若干時間がかかっておる。ですから、そういったものを含めまして二、三カ月はかかっておるというのが実情でございます。  以上でございます。
  22. 下村博文

    下村委員 この法律改正をされることによりまして今のような具体的な問題が、この新しい形態で適用されるとどの程度これによって解決がさらに促進できるか。例えば、具体的にその蛇頭の問題についてこの改正案ができることによってどの程度撲滅に近い形でこれが適用できるか。あるいは、国内における暴力団等の特にこの就労問題についてはかかっているというふうに思うんですが、この不法就労助長罪を含めまして、この改正案の中で具体的にどう適用されて、どのようになるかについてちょっと事例を教えていただきたいと思います。
  23. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 先生御指摘のように、近時、内外の犯罪組織が関与した集団密航事件が多発しておりますことにかんがみまして、まず第一に、本案の改正によりまして集団密航に係る罪を新設いたしまして、「集団密航者本邦に入らせ、又は上陸させた者」、さらに、その上陸させた密航者を受け取り、運搬し、隠した者を処罰することにしております。  実際に、本邦に向かってくる密航船によりまして、向こうの蛇頭日本犯罪組織等が共謀をいたしまして連れてくるわけでありますので、それらの者を水際で検挙できる体制を整えることによりまして、不法事犯を撲滅できるだろうというふうに考えております。そのために、本邦に入らせ、または上陸させたという既遂段階以外の、その前段階の行為で見つけました場合にも検挙できますように、本邦に向けて輸送し、または本邦内で輸送した、そういう船舶を見つけますれば海上保安庁等なりが検挙できる体制になりますので、多分にそういう不法な密航者を連れてくる犯罪組織を撲滅できるのではないかというふうに考えております。
  24. 下村博文

    下村委員 この法案の改正等含めまして、我が国中国政府との関係の中で、特に国際化の中で、国際的な犯罪が多発することがいろいろと、これから将来的にますます考えられるのではないかというふうに思います。この改正案とともに、特にこの問題は中国政府に対してでありますが、犯罪に関する何らかの二国間条約、領事条約等、日中の中で検討される時期ではないかというふうに思いますが、この問題と、犯罪に関する二国間条約というのが今、世界の中でどんな国と結ばれているかを含めまして、お聞きしたいと思います。
  25. 佐藤重和

    佐藤説明員 ただいまお話のございました二国間、中国との間で、政府間でいろいろな領事関係等について取り決めを行う機会、あるいは現状がどうなっているかということについて御説明を申し上げます。  領事条約ということで申し上げますと、中国との間では、二国間条約ということではございませんで、多国間条約として領事関係ウィーン条約というものがございまして、それに我が国も、日本もメンバーになっておるということでございます。したがいまして、一般に、二国間関係の領事関係については、多国間条約であるウィーン条約というものにのっとって、日中二国間の領事関係が規定をされておるというのが現状でございます。  他方、一般に、二国間の領事条約とか、あるいは多国間条約もそうでございますが、これは、両国間の領事関係業務というものを円滑に進めるということが主な趣旨になっておりまして、直接、犯罪の防止とか取り締まりということを目的とするということにはなっておりません。今の密航の問題、犯罪取り締まりといった問題については、先ほど来お話が出ておりますが、我々としてはこれまでも中国側に対して、まさに二国間のベースで外交ルートを通じ、あるいは関係取り締まり当局同士が直接お互いに訪れ、問題を話し合い、お互いに協力を要請するという形で実務的に処理をしてきておるということでございまして、また、今般の事件に際しましても、まさにそういう方法をとってそれなりの効果を上げてきておるということでございます。  したがいまして、犯罪の態様というものはいろいろまた刻々変わってくるといったようなこともございますので、我々としては、基本的に、今後ともこの問題について、中国との関係については、引き続き、問題あるごとに緊密に中国側に対して、とにかくこういう問題があるのだということについて強く働きかけを行って、こういった問題の防止、改善というものについて強く求めていくということで対応していきたいというふうに考えております。
  26. 下村博文

    下村委員 時間がございませんので、最後に、ぜひこの法律改正することによりまして、これから国際犯罪が多発する可能性が我が国国内にある中で、関係機関におきましては、徹底的に対応していただくことによって、安心して暮らせる国のために仕事をしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  27. 八代英太

    八代委員長 続いて、安倍基雄君。
  28. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私、大分以前は法務委員会、立て続けに数年間、割に何かやったことがございますけれども、久しぶりに戻ってまいりました。  今度の改正法、ある意味からいうと、本当にこれは早くやらなくちゃいけなかったことである。この前、鴨下委員がいみじくも指摘いたしましたように、今、本当に国際化の時代になってきている。それに対して、法務省は対応できるのかという問題が起こってきている。まさにこれは一番大きな一つの。例だと思っております。  大きく見ますと、今、各国がこういった人間の移動問題というものに大きく直面している時代です。今まで日本は、何といいますか、人間の移動というものに対してはそれほど大きな関心を持っていなかった。ところが、冷戦が解消し、かつ、中国あたりに門戸が開かれてきた、東南アジアもどんどんと発展してくる、日本との経済格差が非常に目についてきたということで、今まで人口の移動というものに対して我々としてはそれほど大きな関心を払わないで済んだのが、さっきいみじくも指摘されましたように、大きな経済格差がある。でありますから、これからの時代というものは、本当にこの問題に正面から取り組まなくてはいけない時代であると私は考えるわけでございます。  結局、日本というのは、大体、子供のころから義務教育を受けて出てくる、会う人間は大体似ている、わかっている。ところが、海外から来る人間というのは、全く今までの、いわば生活習慣も教育も全部違う。そういった者がどんどん入ってくることによって、行政サービスにしても、あるいは犯罪の問題にしても、非常に大きな行政コストがかかる。ましてや、いわば違法に入ってくるというように、非常に大きな社会の混乱要因である。  そういったことで、私どもは、これからの時代、どうやって法務省はこれに対応していくのか、単なる入国管理局くらいのものでいいのかどうかという問題が基本的にあると思うのです。今回の入管法改正というのは、いわば一つのはしりではないかと私は考えております。特に今、不法入国の場合には、いわば犯罪の温床になっておりますから。  そこで、私ども、ほかの諸国が一体どういう状況になっているのかということを、やはりもう少し目を向けなくてはいけないと思います。  今回の改正に際して、従来、法務省というのはどの程度、他国における移民政策なり、あるいは不法入国についての管理体制、法的制度、そういったものに対する検討をしておるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  29. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 集団密入国といいますか、人の不正規の移動と申しますか、これはもう全世界的な現象でございますので、私どもも、先進国だけではなくて、アジア・太平洋地域の入管当局等とも絶えず意見交換をしておりまして、お互いに同じ仕事といいますか、同じ悩みを抱えているということで、いろいろな機会に情報交換をして、彼らから学ぶこともありますし、我々の手法を彼らが参考になるなと思うようなこともございます。そういう意味で、この分野では国際的ないろいろな交流というのがどんどん深くなってきております。
  30. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 非常に抽象的な答弁でございますけれども、これからの人口移動については三つの問題点がある。一つは他国からの流入をどの程度認めるのかということ。二番目はどういう条件でもってそれを自国民と扱うのか、国籍の問題。三番目に不法入国をどうやってとめるのか。この三つの大きな柱がこれからの大問題になる。  それについてどの程度皆様が、例えば帰化の条件が国際に比較してどうであるかとか、あるいはほかの国における人口の流入はどうであるかとか、例えばドイツなんかも、調べてみますと、一九八八年には四百五十万人くらいの外国人がいたのが、今や七百二十万、十年間で二百万くらいもふえておる。人口の九%まで達している。これはソ連の崩壊とか難民の受け入れとか、それから東西ドイツの合同とか、そういったものを含めまして、非常に外国人のシェアが高まっている。アメリカなども、年々大体百万人くらいの合法の移民が、それ以外に不法入国者が四、五十万ある。非常にげだ違いに大きい国でありますし、またアメリカの場合には、移民を要するに国是とする、それを余りとめないという国であるわけです。日本の場合に、これから高齢化社会になる、人口も減ってくる、所得格差が周辺と比べべらぼうに高い、そういう状況を考慮しますと、これは今のような状況の問題で済むかどうか。  ちょっとお聞きしますけれども、この数年間における日本に帰化した外国人あるいは永住を認められた外国人、どのくらいおりますか。
  31. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 まず、帰化者の数について御答弁を申し上げます。  平成八年の一年間に帰化した者の人数は、一万四千四百九十五人ということになっております。なお、過去数年を申し上げますと、平成四年が九千三百六十三人、平成五年が一万四百五十二人、平成六年が一万一千百四十六人、七年が一万四千百四人となっております。
  32. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 過去五年間に日本で永住権を取得した者の人数でございますが、平成三年に入管法の規定に基づく永住許可を受けた者、これは五千四百六十九名、平成四年四千七十八名、五年三千八百四十八名、六年六千八百四十六名、七年五千九百三十二名となっております。これに加えまして、いわゆる入管特例法に基づく永住許可を受けた者でございますが、平成三年に五百十三名、四年に五千九百八十三名、五年が四千五百四十一名、六年四千三百三十五名、七年四千三百二名でございます。
  33. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、アメリカやドイツと比べてけた違いに少ないことは事実です。これは、一つ日本が海に囲まれているという要素もございますし、余り日本の方へどっと入り込んでくるということが過去になかったからでございます。しかし、現在の国際化の時代、海に囲まれているとはいっても、どんどんと周囲の経済情勢が高まってきて、しかも日本との格差が目に映ってきますと、これはどうしてもとめられない問題になる。  でありますから、私は法務大臣にお聞きしたいのですけれども、こういった人口移動時代に対処して、これから日本はどういうことでいくのか。帰化条件なんかにしても、永住権の付与にしても、最後にいわば不法入国者の防止、この三つの柱を、私は法務省が恐らく主管だと思いますけれども、もう少しこれから総合的に研究する体制を整える必要があると思います。いかがでございますか。
  34. 松浦功

    松浦国務大臣 全くお説のとおりだと思います。十分勉強させていただきたいと思います。
  35. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 第二の問題で、そうするとさっきのいわば不法入国を防止する、監視するという体制は、アメリカやドイツや、韓国あたりはまだそれほど先進国とは言えませんけれども、しかし恐らく中国あたりから大分入ってくる連中もいると思いますけれども、その辺は組織としてどういう体制でもってこの不法入国を防止しておりますか。
  36. 松浦功

    松浦国務大臣 これまでもそのようにやっておりますけれども、今後、より関係機関との連携を密接にして、水漏れのないようにしていくという態度をとっていかなければならないのではないか、このように考えております。
  37. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私の聞いていますのは、協力体制というわけでもなくて、それぞれの国がどういう組織でもって、日本の場合には法務省があり、入国管理局があり、警察あるいは海上保安庁、そういったのが連携し合って一つ組織を持っておるわけでございますけれども、これは、アメリカとかドイツとか韓国とかあるいはオーストラリアとか、どういう体制をとっておりますか。
  38. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 米国でございますけれども、司法省に属する移民・帰化局というのがございまして、ここが不法移民対策を担当しております。移民・帰化局には調査員に加えまして国境パトロール要員も置かれておりまして、一九九六年の移民管理責任法の改正によりまして国境パトロール要員が大幅に増強されていると承知しております。  それから韓国、台湾でございますが、韓国、台湾におきましても、我が国と同様、出入国管理担当と公安担当部局等が連携して監視に当たっていると承知しております。韓国、台湾とも、公安担当部局等というのは、軍も含めてそういうことをやっておるということでございます。それから韓国においては、出入国管理の部門は法務部の出入国管理局、それから公安担当については内務部の警察庁、海上水産部の海上警察庁等が連携して対処しておると承知しております。
  39. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 米国の場合には、どうも国境パトロールあたりもいわば移民局の管轄下にある。  私は、日本の場合に、現在の体制は、警察があり、海上保安庁があり、そして入国管理局がある、その協力体制ということかと思いますけれども、不法入国について今までの体制でいいのかな。何も官庁が屋上屋を重ねる必要もないわけですけれども、これだけ人口の移動の激しい時代になってきたときに、そういうプリンシプルを考えるいわば研究機関とともに、実行面において、お互いに協力しているから大丈夫と言いますけれども、私は地元の警察の人間に会って聞いてみると、この不法入国者のテークケアでべらぼうに人数をとられちゃう、特に、それを捕まえて、言葉もよくわからないし、連れていく、そういうことに本当に忙殺されて、ほかのことが大分抜けてしまうというような話さえ聞くわけですね。  私は、これから不法入国がどんどんふえていく時代に、通常の警察業務と入管との連係プレーだけでいいんだろうかといういわば疑念を持っているのでございますけれども、この点、ほかの国との比較というか、それを含めて何らかの検討が必要ではないか。通常の警察業務が不法滞在の人間の本当にテークケアに時間をとられているという要素があります。その辺についてどういうお考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  40. 内田淳一

    内田説明員 不法滞在者、不法入国対応する警察体制の問題でございますけれども、警察におきましては、この不法入国に係る組織的な動きを含めた外国人犯罪組織に対しまして、警察庁と都道府県警察警察官の増員を図るというような対応をとって体制整備しているところでございまして、警察の総力を挙げた対応を図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。
  41. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は総力を挙げる挙げないということを聞いているのではなくて、これはもちろん現場の大変さはよくわかるのでございますけれども、こういった部分がほかの部分を大分圧迫するというか、もちろん犯罪捜査においては同じかもしれませんけれども、いわば不法入国者のテークケアに追われてしまうという要素が現に出てきている。この辺、ちょっと私の知識が不足なんですけれども、アメリカにおける移民・帰化局ですか、それはどういう、警察権的なものを一緒に持っているのかどうか、その辺の実情はいかがでございますか。
  42. 安田博延

    安田説明員 米国の実情につきましては必ずしも私ども十分把握しておりませんが、そうした米国の事情を十分参考にしまして対処していきたいと考えております。
  43. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私、今ちょっと意地悪い質問になったかもしれませんけれども、もう少しこういった入国問題とか移民問題で苦しんでいる方々の国の実情をよく皆さん検討して、そのあげく、例えば、これから必ず彼らのような時代が来ると思うのです。彼らほどでないにしても、海に囲まれているからいいとは安心していられない。そうなってくると、いわば不法入国問題で苦しんでいる国、移民問題で苦しんでいる国、そういったものの先例を一刻も早くよく調べて、そのあげく今度手を打つ。私は、今回のいわば法改正、それはそれなりに早く手を打ったと思います、法整備の面で。ただ、これはその入り口でございまして、私はもっともっと、既にそういったことで苦しんでいる、経験のある国の実情をよく調べて、その辺が、法務省、警察、それぞれの各官庁における盲点じゃないか。その面で、いわば各省庁にまたがる案件について、大きな一つのワーキンググループとしてやっていく必要があるんじゃないかと私は思います。その点、法務大臣、どうお考えですか。
  44. 松浦功

    松浦国務大臣 先ほども申し上げましたように、関係機関と十分な密接な連絡をとりながら、ただいま先生から御指摘をいただきましたような論議を通じて、万全を期してまいりたいと思っております。  なお、外国の問題については、御指摘をいただきましたので、十分勉強させていただくように当局に指導をいたしたいと思っております。
  45. 八代英太

    八代委員長 外務省手塚難民支援室長はその辺の情報は持っていますか。
  46. 手塚義雅

    ○手塚説明員 御説明いたします。  現在のところ、詳しい資料等を持ち合わせておりませんけれども、その外国の諸般の事情を調べるに当たっては、こちらもできる限りの御協力をしたいというふうに考えております。
  47. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私はこの問題は、各局の、いわば各省の協力体制とはまた別に、一つの機構の問題としても考えるべき問題かな。何も新しい局、ものをつくるという意味でもないのですけれども、これはやはり総合的にコントロールするようなものが必要なんじゃないかと私は思っております。  話は別件に移りますけれども、現在の監視体制、今海上保安庁はこういったものに対する監視船をどのくらい用意し、また結果的に、勾留した人間を大村収容所ですかどこか連れていくようですけれども、あれの収容能力とか、それに対しては今どのくらいどうなっているかとか、それをいわばどういうぐあいに回転させていくか。例えば、この一月から四月までが去年の数くらいの人間が捕まったというのであると、そういったものの収容能力もどんどんパンクしていくんじゃないかという気がいたしますけれども、第一の監視体制の問題、第二の収容能力の問題、その辺についてお聞きしたいと思います。
  48. 小原正則

    ○小原説明員 海上保安庁取り締まり体制ということでございますが、海上保安庁は、平素から、海上における治安の維持、海上交通の安全確保、あるいは海難の救助などの非常に広範にわたる業務を実施しておりまして、巡視船艇や航空機の配備につきましては、その機能を互いに連携させるということなどを行って、最大限その力が発揮されるように配慮して、二十四時間体制密航取り締まり対応しているところでございます。  特に、密航対策につきましては、昨今、非常に中国人我が国への密航事犯が急増したということがございまして、この二月二十五日からでございますが、本庁に密航対策室、管区本部に密航対策本部を設置しまして、警戒線を設定いたしまして監視を特別に強化いたしております。  その実施につきましては、先生先ほど来御指摘のとおり、関係機関連携が極めて重要でありますことから、従来にも増して法務省、警察庁あるいは防衛庁等関係行政機関との情報交換を強化しておりまして、さらに、海運、漁業関係者等の皆様方からの情報提供も要請しているところでございます。  また、密航船の早期発見ということにつきましては、航空機による広域監視が非常に効果的であるということから、海上自衛隊におかれましても、当庁と連携いたしまして航空機による監視活動を強化されております。  こういったことをあわせて、一体となって密航取り締まりに実効を期していきたい、密航取り締まり対策強化してきておるところでございます。
  49. 安田博延

    安田説明員 収容の点でございますが、まず、この集団密入国者は、これは私どもの方で、退去強制令書が発行されますと、長崎県の大村にございます大村入国管理センター、ここに一たん収容し、その送還手続をとっております。  この大村入国管理センターでございますが、収容定員八百名でございまして、現在約六百名を収容しております。その約九割が中国人でございます。そのために、現在中国政府との間で、これらの者につきまして、送還について鋭意交渉を進めておる段階でございます。
  50. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今のペースでどんどん捕まえていって、まだ収容能力があるのですか。
  51. 安田博延

    安田説明員 先ほども申しましたように、大村の入国管理センター、これも八百名でございまして、このまま送還をいたしませんと満杯になりまして収容定員を超える状況になる可能性はございます。そこで、先ほども申しましたとおり、送還を早期に進めるべく、一番その比率の高い中国政府と交渉を進めておる、それによりまして送還できれば収容者が減りますので、また次収容できる、こんなことで対応していきたいと考えております。
  52. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 中国との交渉が非常に大切だというお話も聞きましたし、今さっきの御答弁でも、中国にいろいろ申し入れて、中国における刑罰も重くなる、それからいろいろ連係プレーをやるというお話も聞きました。  では、補足的ですけれども、例えば今までのケースで、中国の方から、どういう船が出ていったぞという種類の通報なんかはあったことがあるのですか。
  53. 佐藤重和

    佐藤説明員 これまでに、中国側当局が沿岸警備の過程で怪しげな船が出ていったということを把握した場合に、必ずしも多くの事例ではございませんが、我が方に対して、こういった動きがあるということを通告した事例がございます。
  54. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、これは受け入れる側ではなくて、やはり出す方の側がよほどしっかりしてもらわないと、これは困る。私は、さっきの御説明から、なかなか中国も協力的であるかなという印象を受けました。  そういった意味で、国際協力ということは、この問題については非常に重要な課題です。中国のようにある程度そういった規制のできる国はいいけれども、できない国になってきますと、これは大問題。これは東南アジアに随分たくさんありますから。  この問題について、ベトナムから一時期大分大勢入ってきましたね。そういうようなのが最近は大分減ってきているというのは、これは何か、かつて難民扱いにしたのをしなくなったというような事情かと聞いていますけれども、それは間違いございませんか。
  55. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 委員指摘のとおりでございまして、インドシナ難民につきましては、昭和五十七年以降、一時庇護のための上陸許可によって上陸許可してきたところでございますけれども、その後のインドシナ諸国の状況の変化を踏まえまして、平成元年から、閣議了解に基づきましてスクリーニングというのを実施いたしまして、一時庇護のための上陸許可に係る審査を厳格に実施するということを始めました。  それから、その後平成六年からは、さらに状況が変化したということで、閣議了解に基づきまして、ベトナムからの出国者につきましては、旅券を所持していない場合、不法入国者として通常の退去強制手続をとるということにいたしましたので、ベトナムから本邦に来る不法入国者が減少したということであると思います。
  56. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、中近東あたりから大分来ますね、これは余り不法入国はないのかもしれませんけれども。一応今のところ不法入国というのは、いわば中国くらいが大宗であって、ああいった遠くの中東あたりから来る者は相当いるのかどうか。また、彼らの国、つまり中国との関係ではそこそこ協力的な体制がとられているけれども、中東諸国についてはそういった体制がとられているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  57. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 委員も御承知のことと存じますが、一時イランからの入国者が非常にふえて、そのまま不法に残留するというケースがあったわけでございますが、これはイラン政府と協議いたしまして、イラン政府との間にあった査証免除取り決めというのを一時停止しようということを決めまして、それ以後は、イラン人の不法残留者でございますけれども、相当減っているというようなことがございます。
  58. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 監視体制についてはそのぐらいにしまして、では、法案の問題につきましてお聞きしたいと思います。  刑罰を重くしたのはいいのですけれども、それぞれ刑罰というのは、ただ重くすればいいわけではなくして、ほかの列とのバランスを見ていかなければいかぬ。通常の場合には、そういった問題についてはいろいろな審議会とかいろいろなものを重ねて決めていくのがいわば通例ではなかったかなと思いますが、今回の刑の決定あたりについて、そういったプロセスをとられたのか、あるいはとられていなかったのか。とられていなかったとすればどういうバランスをとったのか。こういう、けしからぬ、けしからぬという面で厳しい罪を科すのは当然かもしれませんけれども、これは法体系でございますから、ただただ厳しくすればいいという話でもない。  でありますから、このいわば罰則の決定について、どういうプロセスをとられたかとられなかったか。あるいは、とられなかったとすればどういうバランスで刑を決めたのか。二点についてお聞きしたいと思います。
  59. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  本罪は、ほとんどのものが、今まで入管法でありました不法入国葬、不法上陸罪の幇助罪を本犯に直すという規定でございます。したがいまして、今までない罪を新たにつくるというのではなしに、これまであった幇助罪というものが余りにも軽過ぎるというところからこの刑を引き上げようとしたものでありまして、当局と法務省の刑事局とで相談しつつ、本件の法案の改正、この法定刑を決めさせていただきました。もちろん法制局にも御指導をいただいております。  その刑のバランスでございますけれども、第七十四条第一項の罪、これは、本邦に入らせ、または上陸させる罪でございますが、それと第七十四条の四の第一項は、本邦に入った、上陸した者を収受し、運搬し、蔵匿するという罪でございます。その法定刑につきましては、密航者を集団で我が国に送り込む行為といいますものは、個々の密航者本人の不法入国あるいは不法上陸に比べまして、我が国の公正な出入国管理を害する程度というものははるかに大きいというふうに考えますので、不法入国罪あるいは不法上陸罪の法定刑が三年以下の懲役もしくは禁錮または三十万円以下の罰金でありますことから、これよりも重い刑を定めることといたしまして、五年以下の懲役または三百万円以下の罰金としたものであります。  また、営利目的我が国密航者を集団で送り込みます行為は、我が国出入国管理秩序の根幹を害する最も悪質な行為であるというふうに考えられますので、刑法第二百二十五条、これは営利目的等略取及び誘拐罪でございますが、その法定刑が、営利目的である場合には非営利の場合の二倍としておりますことと、営利目的事犯につきましては、罰金刑を併科することによりまして経済的にも引き合わないことを感銘させる必要があることなどを考慮いたしまして、一年以上十年以下の懲役及び一千万円以下の罰金を併科するというふうに決めさせていただいたものであります。
  60. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは、ほかの国の法制にそういう例はありますか。
  61. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  例えば、アメリカにおきましては、指定されたところ以外の場所から外国人を入国させ、または入国させようとする者や、営利目的で違法に入国した外国人を隠匿し、または隠匿しようとする者につきましては、その外国人のそれぞれにつきまして罰金刑もしくは十年以下の拘禁刑といたしまして、またはそれを併科することとしております。  また、イギリスの例におきましては、不法入国者の入国を確実なものとし、または助長する準備に関与した者につきまして、罰金もしくは七年以下の自由刑とし、またはそれを併科することとなっております。
  62. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 一応御説明を受けましたけれども、それでは、さっき質問者から出た話ですけれども、彼らが就労している、こちらへ来た以上は働かなければいけませんけれども、就労の際の身元チェックというのは、たしか不法入国者を雇用してはならないという規定ができていると思います。チェック体制として、アメリカの場合、一九九六年の移民管理責任法には身元のチェックのためのいわば規定というのがあるはずでございますけれども、日本においても、不法入国の労働者を雇ってはいけないという規定はたしかあると思いますけれども、それをチェックする義務とかチェックの便法とか、そういうような考え方は今回の法改正においてとられなかったわけですか。
  63. 安田博延

    安田説明員 御指摘のアメリカのことでございますけれども、アメリカにおいては、外国人を雇用する者は、移民国籍法によりまして、当該外国人就労できる資格を有する者であるかどうか社会保険カード等によって確認する義務が課せられており、確認せずに不法就労外国人を雇用した場合の罰則が定められておるところであります。  ところで、我が国の場合でございますが、入管法でこのような義務規定については規定を設けておりません。しかし、そうした外国人就労する資格を有しないことを知りながらこれを雇い、不法就労活動をさせるなどをした場合には、不法就労助長罪入管法の第七十二条の二でございますが、これによって処罰されることとなっております。したがいまして、この不法就労助長罪を活用することにより、こうした事案に対処できる仕組みとなっておるものと考えております。  今回の法改正ではどうかということでございましたが、私どもとしましては、この不法就労助長罪を活用することで対応していきたいと考えております。
  64. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 助長罪というのは送り込む側を罰するわけですね。受け入れる、雇用する側を罰する規定ではないのですね。そこはどうなんでしょうか。
  65. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 不法就労助長罪といいますのは、例えば正規の在留資格を持っておりましても資格外活動をする者がございますし、そもそも在留資格のない方、不法入国不法上陸をしている者もおりますけれども、そういった外国人の方々を支配下に置いて就労させるあるいは援助するという罪でございます。
  66. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どちらかというと、就労させるというか、雇用者の方、いわば雇った側を罰するというよりは、そういう雇わせるように持っていった人間を罰するということですね。
  67. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 具体的な事例にもよりますけれども、とにかく、そういう資格のない方々を雇う者も雇わせる者も不法就労罪の罪に問われるということがあり得るわけであります。
  68. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしましても、アメリカのような、つまり、雇う人間がそれをチェックして、照会してというような、そういう種類の規定は今回はないわけですね。そこはどうなんですか。
  69. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 そういうようにチェックしなければならないという義務規定は我が国入管法にはございません。しかしながら、当該外国人就労する資格を有しないことを知りながらこれを雇って、不法就労活動をさせるなどをした場合に、不法就労助長罪が適用されるわけであります。  なお、そういった資格を雇い主が確認する義務はございませんけれども、働く方の外国人につきましては、入管法第十九条の二によりまして、働こうとする外国人からの申請に基づいて、法務大臣において、当該外国人に対し、同人が就労資格を有する旨を証明する文書を交付することができる旨が定めてあります。したがいまして、雇い主の側はその就労証明書を確認すれば、あるいはとってくるように指導すれば確認できるというふうになっております。
  70. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしましても、雇われる側の方は隠して雇ってもらうわけですから、その辺は余り大したあれではない。やはり雇う側がきちっとそれを把握して、不法かどうかを確かめるということをきちっとしなければいけないのじゃないかと思います。私は、この点についてまだいろいろ、アメリカの制度をいわば参考にして、改善の余地があるのではないかと思います。  それでは、ちょっと話題というかあれは違いますけれども、私、非常に心配しているのは、人口の移動の関連で、北朝鮮が今非常に食糧難で困っていますね。中国のようにちゃんと出るところを押さえてくれるところならいいのだけれども、北朝鮮がもし崩壊でもしたら大量の難民が来るかもしれぬ。これは一つの想定ですけれども、例えば西ドイツなどであれだけ大勢の外国人が入り込んだのは、どんどん難民を受け入れたという要素も随分あるのですね。ソ連が崩壊し、東欧諸国が流動化して、次々と難民が入ってきた。それはさっきお話ししたように、人口の九%がいわば外国人になってきた。ドイツの場合には非常に純血主義ですから、なかなか国籍を認めてやらない。そういうところで非常にドイツは社会問題になってきておるという話がございます。これは、アジアにおいてはあれほどの難民というのは出てきておりませんが、北朝鮮がもしどうにでもなった場合に、難民がどっと押し寄せたらどうするんだろうというような非常に危惧があるのです。  これは、法務省の問題では必ずしもないので、内閣全体の問題で、たしか一遍どこか官房長官がそれにちょっと触れたことを発言して、大分マスコミにたたかれたというような話もちらっと私は記憶にございますけれども、この問題は、一体、政府としてどう考えているのだろうか。官房長官あたり呼んで一遍聞いてみようと思ったのだけれども、また予算委員会であれば聞けるのですけれども、なかなかこの席まで出てこないようでございますが。こういった難民問題、具体的には今北朝鮮でございますけれども、こういったことが発生し始めたときにどうするのか。これは必ずしも夢物語じゃないのでございまして、現に起こり得る問題、いわば中国や東南アジアは今経済成長どんどんしていますから、大挙難民みたいなのはございませんけれども、そういったものも将来あり得る。これは単に人道主義、人道主義とばかりは言っていられない要素もあるのです。  この点について、いわばこの法案と直接関係ないわけですけれども、大きな意味では関係があるというので、現在どのような検討をなされておるのか、どういう状況にあるのか、お答え願いたい と思います。
  71. 山崎信之郎

    ○山崎説明員 御指摘の点につきまして、政府におきましては、昨年五月、現橋本総理からの指示を受けまして、四項目につきまして、我が国周辺地域におきます我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合を中心としまして、我が国に対する危機が発生した場合とか、そのおそれがある場合における必要な対応策について、現在、鋭意検討を進めているところでございますが、その一つとしまして、今先生の御質問にありましたように、大量避難民対策につきましても検討を進めております。  ただ、この検討につきまして、特定の国または地域を前提にしているものではございませんが、いずれにしましても、内閣官房の安全保障室を中心としまして、関係省庁の御協力を得まして、今現在、鋭意検討中のところでございます。
  72. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 というのは、現在ちょっとまだ表へ出せないということでございますか。
  73. 山崎信之郎

    ○山崎説明員 現在検討中ということでございまして、まだ内容等について申し上げるような段階にないということを御理解いただきたいと思います。
  74. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ここで無理やり答えを引き出すわけにいかないでしょうから。ただ、これは大きな課題として、いわば入国管理とちょっと次元は違いますけれども、難民問題は入国問題との絡みが大きいということを御理解願いたいと思います。  最後に、冒頭で述べましたように、私は、いわゆる人口移動に伴う問題というものは、二十一世紀に入って必ず大きな問題となってくる。これだけの所得格差があり、人口の移動が可能になってくると、今まで日本は単一国家というか単一民族で来ましたけれども、これは必ずアメリカやドイツが経験したような要素を多かれ少なかれ持ってくる。  でございますから、法務省も、単に入国管理局の一問題じゃなくて、もっとこれに対応する、いわばいざという場合にどう対応するのか、国籍問題あるいは帰化をどうするか、あるいは合法的に入ってくる人間の資格をどうするか、違法に入ってくる人間をどう防ぐか。この三つの柱を中心に今から、既にそういったことを経験した国の御努力を勉強するというか研究し、かつまた、いわば管理体制も現在のままでいいのかどうか、警察権を含めてどこかほかのところへ一括して持たせた方がいいのかどうか、機構のいわば再検討も含めて検討した方がいいかと思いますけれども、この点、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  75. 松浦功

    松浦国務大臣 具体的に問題が起こっているわけでございませんので、具体的なお答えはできかねますけれども、一般論としては安倍委員のおっしゃるとおり十分検討していかなければならない問題であろうかと考えております。
  76. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これをもって一時間になりましたから終わります。
  77. 八代英太

    八代委員長 続いて、西村眞悟君。
  78. 西村眞悟

    西村(眞)委員 この法案の具体的なことに入る前に、まず、最近国際的に日本の治安に関することで事件が起こりました。ミャンマーの第二書記の自宅に小包が送られて、それが爆発して第二書記の御長女が爆死されたという事件でございますが、これが、ミャンマー政府の発表によりますと、日本から送られた小包である。  ミャンマー政府からは捜査の要請が来ていると思うのですが、私は、相手国が非常に声高に日本から送られた小包であるということを国際的に強調する、強調しないにかかわらず、我が国としては、この問題に対して徹底的な捜査、そして仮に日本から送られたものであるならば、これからいかにその防圧に処するかを国際的にもミャンマー国に対しても申さねばならない事態である、このように思うわけです。  その第二書記に送られた郵便物の捜査依頼について、捜査の現状、それから今わかっている範囲での、どういうふうな組織、どういう人物が、日本人なのか外国人なのか、アウン・サン・スー・チーさんを支援する、その反政府活動の一つの分子なのか、おわかりの部分について御答弁いただきたい、このように思います。
  79. 内田淳一

    内田説明員 御指摘のミャンマーの事件でございますけれども、警察といたしましては、外務省を通じるなどしまして情報収集に努めているところでございます。  しかしながら、具体的な捜査状況については答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  80. 西村眞悟

    西村(眞)委員 現物は、ブツはミャンマー国にあるわけでございますから、ミャンマー国に捜査員を派遣するとか、そういう措置はとられたかとられていないか、この点についてお伺いしたいと思います。
  81. 内田淳一

    内田説明員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、現在捜査を進展をしているところでございまして、具体的な捜査状況については答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  82. 西村眞悟

    西村(眞)委員 法務大臣にお尋ねいたしますけれども、かつて文世光事件というのがありまして、日本から持ち出されたけん銃で韓国大統領を狙撃したという事件です。その問題について、非常に大きな韓国側からの反発があったわけです。今回も、日本から送られたとするならば、ある意味では韓国的に、国際的に非難をしてしかるべき事態だと思うのです。  今の御答弁については、差し控えさせていただきますの一点でございますが、これは国会の場でございまして、国際的にもまた国内に対してもアピールすべき、説明すべき場でございます。したがって、私はここで質問をしているわけです。大臣におかれては、この問題に大臣御自身の法務大臣としての職務としていかに対処されるかということについて御答弁いただきたい。
  83. 松浦功

    松浦国務大臣 具体的な事件については、当省としては捜査をいたしておるわけではございません。したがって、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  84. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答弁が出てこないので、どう申し上げていいのかわからぬのですが、では、御認識をお伺いします。  この問題は、我が国の対外的信用にとって重大な問題であるとお考えですか。どうかお願いします。
  85. 松浦功

    松浦国務大臣 重大な関心を持つべき問題であろうかと存じております。
  86. 西村眞悟

    西村(眞)委員 重大な関心を持つべきという御答弁をいただきましたので、その方針のもとで御指示いただきたい、このようにお願いいたします。  次に、この法案に移りますけれども、二月二十日の私の大臣に対する質問の中で、我が国に不法に入国する人の目的から分けた種類として、経済的な目的があるだろう、また政治的な重大な目的もあるだろう、これは大臣お認めになったとおりでございます。また、例えば今のミャンマーに対する、郵送した者がミャンマー反政府組織の一員であるならば、また日本人を拉致して対南工作に用いる、対南、つまり韓国の破壊活動に用いるために日本人を拉致する者が出入国をしているならば、これはテロまたは犯罪目的、工作目的の入国であろう。このように、経済目的、政治目的、テロ・工作目的の三つに分けられると思うのですね。今の法案は密航ビジネスをつぶすという法案、昨年は経済目的の密入国が二昨年より四百人多かった、本年はもう既に四月の段階で昨年の数を突破している、こういう事態ですから、慌てて、慌ててと言っては失礼ですけれども、これは適切に法を整備してそれをたたかねばならない。これはよくわかる。しかし、大臣は、尖閣に政治目的を持って上陸してくる者をいかにするのかという問題については、二月二十日に、日本一国の存立にかかわる問題であるという御認識を示されたわけです。この前提で、まず法案の方からお聞きします。  この法案は、密航ビジネス組織そのものをつぶす、これが目的なのですが、罰則は個人にかかっておるのですね。個人単位なのです。そしてまた、先ほどからの質疑の中で、密入国する人は貧しい人だという私どもの先入観がありますけれども、福建省は貧しくない。内陸部の農民は貧しいです。しかし、開放政策の恩恵を一番早く受けてきた福建省は非常に豊かである。だから、ここにありますけれども、罰則の三百万それから一千万は、密航ビジネスとしては損益計算に組み入れれば簡単にクリアできる数字であろう。また、密航ビジネスとして、個人が罰則の単位であるから、その者について、犯罪組織によくある、刑務所へ行かせて、組織全体は稼ぎをどんどん膨らます、そういうことは可能であろうと思うのです。  この法律を見れば、損益計算に組み入れて太っていく組織そのものを罰則する、直接的につぶす規定はないのだろうと思うのですが、いかがですか。これで組織そのものをつぶせるとお考えでしょうか、御認識をお伺いしたい。
  87. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 直接的に組織そのものをつぶす法律の体裁をとっておりません。組織を構成する者どもがこの犯罪に加担した場合に、その者を処罰するという形でございます。  ただ、その人と組織とのつながりの証拠いかんでございますけれども、七十六条の方に両罰規定を設けておりますので、使っている者と使われている者という立証がすべからくできれば、その組織あるいは法人からも罰則をとることができます。  それと、密航者を入れることによって得る金でございますが、罰金一千万というのは一人から三百万取るものに対していささか少ないということかもしれませんけれども、得た金は、犯罪によって得た利益といたしましてすべて没収なり追徴なりをしていくつもりでございますので、それにあわせて一千万円以下の罰金を併科するということになっておりますので、これも事案によりますでしょうけれども、証拠によってきちんと詰めていけば、得た利益は剥奪した上に、なおその上に罰金を科すというふうな体裁をとっております。
  88. 西村眞悟

    西村(眞)委員 組織そのものをつぶすということについていかがかと質問して、明確にそれは余り役に立たないとはお答えにくいと思うのですけれども、一部発覚した人間の報酬を没収する、それはいいのですけれども、こういうビジネスは、一部発覚することを損益計算の中に入れて成り立つビジネスです。したがって、今の、没収をする、罰金を科す、それで十分だろうという御認識は甘い、私はこのように申し上げる。  この法案の今度の、試行錯誤ですから、実施段階に入って、そして検証を繰り返して、それで、我が法律の体系は余りにも個人を前提としておりますが、今の犯罪実態からすれば、国内暴力団であれ何であれ、その組織犯罪で得たものという事実認定以外に、その組織が持っているすべての財産を収奪するというふうな観点に切りかえなければ、どうも国内でも、そして蛇頭という密航ビジネス組織もつぶせないし、あざ笑いながら日本の国を栄養分にして肥え太っていくということになりますので、私は、この部分について甘いですよということだけは発言させていただいて、次に移ります。  冒頭、不法な出入国問題の中で、私は、経済目的、政治目的、テロ・工作目的、この三つについて触れました。  この法律では、刑罰の加重事由については営利目的しか書いていない。法務大臣が二月二十日の時点で日本一国の存立にかかわる重大な問題であるという認識を示されたにもかかわらず、なぜこの法律には営利目的しか加重事由として書かなかったのか。もしくは、現実に書いていないのですから、これは別に法律をつくるのか。その点についてはいかがですか。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  89. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 この改正案は、集団で密航を図ってくる、そしてその者が日本国内において不法就労につくケースがほとんどであるという実態に薄目して、そのような外国人を不法に入れさせないように、その組織的な犯罪に対して……(西村(眞)委員「それはわかっておる」と呼ぶ)はい。そういう目的で考えたものでありまして、したがいまして、営利目的というものがそのほとんどの組織の場合でありますから、そのことを考えただけだということであります。
  90. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答えになっていない。それはわかっておるのですよ。なぜほかの目的を入れなかったかという理由を聞いている。  日本国の治安は、法務大臣が日本一国の存立にかかわるという部分を、入国目的があるということを前提にして出入国の問題を処理しなければならないけれども、なぜ日本一国の存立にかかわる部分についてはネグレクトしているのだということを聞いておるのです。なぜですかと聞いておるのです。なぜですか。
  91. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 申しわけありませんが、直接のお答えにはならないだろうと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、今回の法律改正は先ほどの趣旨を求めて改正したものであります。
  92. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ネグレクトしておるのです、我が国は。我が国一国の存立の部分についてはネグレクトしながら、きょうさん経済目的、経済目的は、ある意味では言葉が悪いかもしれませんが、ある意味ではかわいい犯罪なのです。日本が豊かだから稼ぎに来てくれるのです。法治国家としては取り締まらねばならないから取り締まる。しかし、それ以外にもあるということは大臣も認めておるし、日本国民公知の事実である。拉致された日本人もいるということです。  それから、この法案についてちょっと私の疑問点を言います。  法律用語の概念として集団ということを使っておる。集団というのは何だ。一人では集団ではない、多分そうであろう。この法律は、二人では集団なのか。集団とは三人以上のことなのか。たとえ一人を上陸させた、これはこの法律には当たらないのか。二人では当たるのか、何人から当たるのか。これをお答えいただきたい。
  93. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  七十四条に言う集団といいますのは、二人以上の者が一定の場所に集まっている状態をいいまして、これは密航者が自発的に集まった場合であると他の者が集合させた場合であるとを問わないという趣旨でございます。  一人の場合はどうかということでありますが、この改正法の中で、一人の者を入れる場合におきまして、それは現行法でも幇助罪に当たるわけでありますけれども、七十四条の六を新設いたしまして、営利目的でそういう幇助をする者、これは集団密航にかかわらずに三年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金に引き上げておりますし、また営利目的か非営利かを問わずに、所持人に効力を有しない旅券もしくは乗員手帳等を持たせた、提供した、提供して幇助するという罪も同様に引き上げております。
  94. 西村眞悟

    西村(眞)委員 この法律でちょっと私が気づいたことだけたださせていただきました。  まだまだ、冒頭の質問でも明らかなように、密航ビジネスという国際的にネットワークを張ったビジネスを相手にするものですから、この法律だけで事足りるとは私は思いません。したがって、警戒体制というものをこの法律をつくる限りは整備していただかねばならない。つまり、発覚することを損益計算に入れてやってくるビジネスにとっては痛くもかゆくもないということでございます。密航者の料金が値上がるだけでございまして、発覚しなければそのまま値上がり分をもうけることができる。発覚しても、損益計算に組み入れているから痛くもかゆくもない、こういう事態になるかもわかりません。  アメリカが密航を非常に厳重に取り締まって減らしていった背景には、捕まえた者の保釈を一切認めない、こういうふうな政治の強い方針があった、これを聞いております。運用においてもそのようにしていただきたい。また、発覚率。暗数がたくさんあって、その何割が発覚するか。暗数を減らしていく努力をしなければならないと思います。  それで、今の警戒体制は十分なのか。保安庁だけで、海でぐるぐる回って十分なのか。自衛隊、そしてまた陸の警察、保安庁、三者総合的な、この脅威というか、これに向けての体制というか、警察と保安庁だけでは不十分だろうと思います。対潜哨戒機等々、イージス艦を持っている自衛隊という、私に言わせれば海軍ですが、この組織連携をとって日本の沿岸警備をしなければならないと思うのですが、この点については、連携等々の業務連絡、そしてまた連絡を過ぎて、体制が今確立されておるのでしょうか。
  95. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  御指摘の点でございますが、警察、防衛庁それから海上保安庁、私どもも含めまして、あるいは外務省等とも協議いたしまして、この集団密航の問題が委員指摘のとおり我が国の重大な問題だ、こういう認識のもとに、こうした監視体制強化することで合意しております。  その内容は、警察、私ども法務省入管局も含めまして、海上保安庁は、今後とも協力して密航に係る情報の収集に努めて、密航船などの不審船に係る情報を得た場合は連携して適切な措置をとることとする。それから防衛庁におきましては、これらの措置が実施される上で広域監視が極めて有効であるということにかんがみまして、航空機による監視活動を強化し、取り締まり機関に密航船等不審船舶に係る情報を提供することによって、一層効果的な監視体制の確立に協力する。また、外務省におきましても、関係機関と協力して、引き続き中国に対して取り締まり強化等を強力に働きかける。こんなことで関係機関協力しまして、監視体制あるいは情報収集体制強化したい、こんなことで対応しております。
  96. 西村眞悟

    西村(眞)委員 日本は四海を海に囲まれて、沖縄の諸島を含めればすごい海域を監視しなければならないのですから、どうか総合的に、自衛隊との協力のもとにやっていただきたい。それで法改正が必要なら、自衛隊法の改正もかなりしなければならない問題だ、私はこう思っております。  私の問題は、密航ビジネスだけに関心があるのではございません。  二月二十日の法務大臣に対する質疑の中で、尖閣列島にことしまた来ると申しておりまして、どうするのだというふうに、対応するのかしないのかというふうにお聞きいたしましたら、大臣は、一国存亡にかかわる問題であるから答弁は差し控えさせていただくとお答えになって、そして私は、やはり一国存亡という問題の領域であれば大臣はお答えにならねばならないと。そのとき大臣は、橋本総理の考えに従いますと。閣僚は閣議で国家の方針を決定する、内閣法四条は存じております。  その後、三月二十一日に内閣委員会で梶山官房長官に、法務大臣も日本一国の存立にかかわる問題であるという認識を持たれている、閣議でお顔を合わせているはずだ、したがってことし上陸した者をどうするのかとお聞きいたしましたら、排除するとお答えになられました。排除というものは法律用語ではありません、法治国家において、例えばこの密航ビジネスの方たちをどうするのかは刑罰をもって、逮捕して、そして処罰するという司法のプロセスを経なければなりません。したがって、法律用語でお答えいただきたい、このようにお願いしておった。それで、二月二十日から現在まで時間が経過しております。日本一国の存立にかかわる問題において二カ月時間が経過したのでございますから。ことしまた来るのです。  これは四月十三日付の「明報」、香港の中立系の新聞ですが、これから引用いたします。   香港の「尖閣諸島保衛委員会」は、「来る五月十八日、十隻の船団を組織し、台湾経由で尖閣諸島に赴き、同島で二日間野営し、同島が中国の領土であることを宣言する」ことを決定した。保釣委員会は今回の行動は前回より、さらに危険なものになると予測している。  保釣委員会は四月十二日、香港の銅鑼湾地区で、署名と募金活動を行った。もし上陸に成功すれば、香港市民が氏名を記した細長い布きれを尖閣諸島上で掲げる。同時に日本の青年社が設置した灯台と日本の国旗を取り除く計画と言われている。  何俊仁・保釣委員会主席は、今回の行動は前回よりさらに危険である。日本政府は、もし上陣するようなことがあれば逮捕もやむを得ないと述べていると指摘した。  さらに同主席は、われわれの心の準備はすでに出来ている、平和的手段で抗議するつもりであるが、もし逮捕されるようなことになれば、日本の法廷で抗議することになろうと述べた。  私は、日本政府の口から逮捕するという言葉を聞いたことはありません。「明報」が報道しているだけでございます。したがって、今回は法務大臣に——香港市民に募金活動まで行っている。ということは、やらざるを得ないということです、募金活動まで行ったら。ことしまた来る、それをどうするか。領海に入れば逮捕するのか、上陸すれば逮捕するのか。上陸したら、あの魚釣島には警察官がおりません。警察官を派遣して、逮捕してそれに対処するのかとお聞きしたいと思います。
  97. 松浦功

    松浦国務大臣 この前にも御論議を通じてお答え申し上げましたように、尖閣諸島が日本の固有の領土であるということは申し上げたとおりでございますので、そういう事態が起こりました場合には、関係機関と協力をして適切な措置をとる、排除措置をとるということは当然であろうというふうに思っております。
  98. 西村眞悟

    西村(眞)委員 排除措置はわかるのですが、我々が今法務委員会で審議しているこの法案でもおわかりのように、法治国家が司法のプロセスにおいていかにするかということです。したがって、排除という意味はいかなる意味か。排除というのは、強盗でも排除できるし、暴力団でも排除できる。暴力さえあれば排除できる。しかし、法治国家はそうではなくて、司法のプロセスでいかに対処するか。逮捕するか否か、これをお聞きしたい。そして聞いておるのです。お答えいただきたい。
  99. 松浦功

    松浦国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、排除いたします。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 西村眞悟

    西村(眞)委員 どうも困りましたですな。「明報」、今朗読したものでは、逮捕するということが書いてあります。この問題を押し問答して、私が法的用語で答えていただかなければ質問できないと申し上げようかどうか、迷うところなんです。排除という言葉は、法務大臣、法務大臣がお使いになる言葉ではありません。法務大臣がこの尖閣の問題は日本一国の存立にかかわるという認識を示されるならば、暴力団の親分ではないのですから、日本国の法務大臣なんですから、法的にどうするのか、これをお聞きしている。もう一度だけ御答弁いただきたい。あれから二カ月たっております。
  101. 松浦功

    松浦国務大臣 あのときには、答弁は一切差し控えさせていただきたいというふうにお答え申し上げておりますが、少なくとも、前向きに、排除という言葉に改めておるという趣旨を十分御理解をいただきまして、御納得をいただければありがたいと思います。
  102. 西村眞悟

    西村(眞)委員 日本的な御納得ということでは、対外問題についてのけじめがはっきりしない、こう思っております。法務大臣も排除という言葉になられた。現行犯逮捕は私でもできますから、そして、日本の青年に呼びかけて、魚釣島で待ち伏せて現行犯逮捕する。しかし、二十四時間以内に、刑事訴訟の規定、細かいのは忘れましたけれども、警察官、検察官に引き渡さなければならない。引き渡すところがない。民間、国民が治安維持しても引き渡すところがない、こういう事態です。日本青年が現行犯逮捕すれば、対処してくれますか。刑事訴訟手続に沿う対処を準備されますか。お伺いしたい。
  103. 松浦功

    松浦国務大臣 仮定の御質問でございますので、お答え、非常に申し上げにくい。ただ、前は一切意見を申し上げなかったわけでございますから、排除という言葉を使い始めたことについて、一歩前進と御了解をいただいて、御納得をいただけたら幸せだ、このように思っております。
  104. 西村眞悟

    西村(眞)委員 一般国民でも現行犯逮捕できるし、あそこは石垣島の、石垣市の漁場なんだ。したがって、かの地の漁民が逮捕するかもしれない。そのときに、法治国家なら、刑事訴訟手続に従って処理できるように万全の準備を整えていただきたい、このようにお願いします。  次に、法務大臣として、北朝鮮に拉致されている日本人をどのように救出しようとお考えかということをお聞きしたい。  日本国政府は、私の質問主意書に対して、六件、九人が北に拉致されておる。横田めぐみさんを加えていない。横田めぐみさんを加えれば十人です。日本警察が努力の末特定して、決断の上、李恩恵、田口八重子さんが拉致されて北におるということを確定したのは、はるか以前でございます。文芸春秋の一月号には、その拉致組織にかかわった張龍雲さん、元兵庫県灘商工会理事長です。こういう方が「日本人拉致組織「洛東江」の二十年」という手記を書いておる。暴露をしておる。ここでも、我々が把握していない田中さんなる、身寄りのない、孤児院で育った方が拉致された、それに関与したんだとこの方が言っておる。法務大臣、どのように日本人を救出するのですか、これをお聞きしたい。
  105. 松浦功

    松浦国務大臣 事実関係が我々にははっきりつかまっておりません。したがって、どういう行動をとるかについては、この場ではいろいろ申し上げても役に立たないことではないかというふうに思います。
  106. 西村眞悟

    西村(眞)委員 では、個別的にお聞きします。  なぜ日本人を拉致するのだ。日本人に成り済ますためです。また、日本人化教育、李恩恵に関する証言でもわかるように、化粧の仕方、立ち居振る舞い、食事のときのマナー、そういうことまで、化粧品の種類までを教えて日本人に成り済まして、大韓航空を爆破した、こういうことをするためだ。日本人の救出について、法務大臣が全般的なことではお答えになりませんので、私は、それなら個別的にちょっと聞いていきます。  北朝鮮の密入国者、また合法的な出国者、入国者、この方たちは、ある意味では気の毒な方がおりまして、向こうに肉親がおるから、人質になっているような思いで日本円を持っていく人がおる。しかし、日本からの送金は非常に多額で、北朝鮮の国家予算に匹敵するか、またそれ以上なんです。  在日朝鮮人の方の再入国許可による出国者数について、平成七年は一万四千三百二十五名、こういうふうに入国管理局から回答をいただいておるのですけれども、北朝鮮に対する我が国の法務・入管行政は不平等きわまりないものです。  我が国は、北朝鮮に対する親族の訪問を許して、その再入国の許可も当然しているわけです。その数字は、今私がお読みしたとおり。しかし、北朝鮮には、六千八百名の日本国籍所有者が渡って、その子供たちがおるから、さらにふえていると思われます。我が国は父母両系主義をとっておりますから、国籍に関しては。例えば、七千名の日本国籍を持っている人、望郷の念に駆られている人に対して、北朝鮮は、我が国が開いている親族訪問のことを一切しようとしない。我が国から北朝鮮に対して親族を訪ねたいという人もできないし、日本に帰りたいという日本人を日本に帰さない。そして、日本からの送金によって北朝鮮の国家財政が支えられておる。  したがって、我が国が、拉致された日本人、また、ここにいる、望郷の念に駆られながら、北朝鮮という密封された中で閉じ込められて出られない日本人を救出するための武器は、再入国の許可をしないということなんです。そうです。実態が、どこのだれが拉致したかとか、そんなのはわかりません。ただ、自分の意思に反して、また十三歳の女の子としては、自分の意思に反したことは明らかです。それが二人の工作員の証言によって北にいるということがわかっているんです。両親が帰してくれと叫んでいるんです。それに圧力を加えるのは、再入国の許可をしない。これは法務大臣の裁量の範囲になることです。そして、日本人を救うことです。  法務大臣、日本人を救うのは政治の責務ではありませんか。日本人の人権を守るのは政治の責務ですね。そして、切実な問題が起きておりますね。したがって、そのための一つの手段は、簡単なんです。北朝鮮と我が国の相互主義に改めるんです。国際法的に相互主義に改めるということはどういうことかといえば、向こうがやっていることを我が国がするのです。再入国の許可をしない。これは日本人救出に対して法務大臣が自己の権限内で決断できることです。  どうか法務大臣の御認識をお伺いしたい。(松浦国務大臣「わからない、よくわかりません」と呼ぶ)
  107. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 まず、現行の法制をちょっと御説明したいと思います。  日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法というのがございまして、この中で、在日朝鮮人等の特別永住者に対する再入国許可については、国籍、出身地等の違いということによって扱いに差を設けておりません。また、本邦における特別永住者の生活の安定に資するというこの法律趣旨からも、一律に在日朝鮮人の再入国を不許可とすることは問題があるであろうと考えております。
  108. 西村眞悟

    西村(眞)委員 だから、政治の決断として、日本人を救出するためにそれしか手段がないんならするんですかと聞いているんです。  法務大臣、先ほど、御答弁ではなくて、座られたまま、わかりませんと答えられたのですけれども、これはどういう意味ですか。
  109. 松浦功

    松浦国務大臣 不許可とか、そういう細かな問題については、私はよく存じないので、知りませんと申し上げたわけでございます。
  110. 西村眞悟

    西村(眞)委員 今、わかったでしょう。法務大臣のところの方が答弁なさった。だから、どうするんですかと再度聞きたい。どうするんですか。
  111. 松浦功

    松浦国務大臣 事実関係がはっきりし、それぞれの方々の御意思の確認ができるという過程をたどって、その上で結論を出すべきものだと思います。
  112. 西村眞悟

    西村(眞)委員 我が国の政府の答弁は、六件、九名が拉致されておる。そして、一件、二名が未遂であった。これが政府の公式的な見解です。李恩恵に関しては、警察当局の努力によって拉致されたことは確定しておる。金賢姫が、拉致されて日本から連れてこられて、私の日本人化教育の教師になった李恩恵、李先生を救出してくれという手記まで書いているではないですか。これが事実関係が明らかではないのですか。したがって、明らかなんです。事実関係が明らかになったから、決断してくれと私は言っておるんです。決断するのかしないのかなんです。
  113. 松浦功

    松浦国務大臣 それらの方々が今どこにおられるか、それから現実にそれらの方がどういう行動をとりたいと思っておるかということの確認が現在できないわけでございます。それができますれば、私どもとして法務省の態度を決定いたしたい、こう思っております。
  114. 西村眞悟

    西村(眞)委員 法務大臣、そんなことを言っていたら、向こうで殺されますよ、本当ですよ。北朝鮮がないと言えばないのですから。そうでしょう。どこにいるか。まず原状回復することでしょう。十三歳の女の子が新潟から拉致されたのなら、まず日本に連れ戻す。そして、どうするんですかと。憲法で保障されたように、出入国は自由ですから。その手を差し伸べなければいかぬ。法務大臣が、向こうの意向を聞いて、どういう気持ちでおるかと。日本国政府は犯罪だと認めておるのでしょう、少なくとも李恩恵に関しては。だから、李恩恵一人に関してもそれぐらいはすべきだ。事実関係が明らかでないと。そんなことは前提が間違っておる。そんなことを、政府の、法秩序を守る法務大臣が言っていたら、命が危ない。発信をはっきりしていただきたい。  今の私の聞き方が悪かったのなら、北朝鮮に拉致された日本人は救出しなければならないのか、そうではないのか。この二つに一つ。まず、段階的にお聞きします。どうですか。
  115. 松浦功

    松浦国務大臣 政府の答弁で認めているとおりでございますが、当然、日本に引き戻してあげるということを考えるべきだと思います。
  116. 西村眞悟

    西村(眞)委員 その明確な答弁をいただいた。ありがとうございます。  次に、法務大臣が今政府委員から説明を受けられた。再入国を認めないという手段を法務大臣は持たれているんではないですか。だから、それは政治的判断ですよ。あの方は行政の部分で、政治的責任を負わない方なんです。法務大臣は政治的に責任を負う大臣なんです。だから、法務大臣に答えていただきたい。
  117. 松浦功

    松浦国務大臣 先生の御意見は十分承りました。慎重に検討させていただきます。
  118. 西村眞悟

    西村(眞)委員 大臣がどれほどの認識を持っておられるかわかりませんけれども、我が国が北朝鮮の生殺与奪の権を握っておる。それは、我が国かもの金であり、そして我が国からの物資です。  物資の点について触れますが、新潟に万景峰号というのがいつも入港していまして、昨年は三十一回入港して、万景峰号によって四千七百四十九名入国、四千七百二十六名出国という昨年の記録でございます。  この万景峰号というのはどういう船かといえば、はっきり言えば、これは北朝鮮への物資補給船なんです。それから対南工作スパイの指導所なんです。これは朝鮮総連が管理している船なんです。北朝鮮の兵器の部品も日本の製品だというじゃないですか。そしてノドンミサイルをこっちに向けている。そういう工業的な技術も日本から行っているというじゃないですか。  それで、この万景峰号は、先ほど私が紹介した、大臣もぜひ読んでいただきたい、文芸春秋ことしの一月号の「日本人拉致組織「洛東江」の二十年」という手記です。ここで、対南工作スパイ所中心センターとしての役割を担っておる、この船の入国を禁止したらどうですか。大臣、先ほどと同じ発想のもとで、私は大臣には、武器があるぞ、日本人救出の武器があるぞ、それを使ってくれと申し上げているわけです。  大臣どうですか、私のこのお願いは、発想は。
  119. 松浦功

    松浦国務大臣 御意見として尊重しながら承っておきます。
  120. 西村眞悟

    西村(眞)委員 二月二十日に大臣に最後の御奉公をお願いすると言って、また今、同趣旨のサイドから発言させていただきました。そして、確かに大臣は検討させていただきますとおっしゃれば検討していただいていると私は信じる。それが議論というものに対する誠意であろう。私ども時間をむだにして楽団開いてここにいるわけじゃないのですよ。この議論の積み重ねが一歩一歩問題の本質、そして日本国が日本人救出のためにとる手段を明確にしていくのだと思うわけです。したがって、ぜひ私の二点を検討していただきたい。  最後に、法務大臣が本法案の趣旨説明日本の治安に対する重大な脅威だとおっしゃった経済目的の部分、そして二月二十日にも日本一国の存立にかかわる重大な問題というふうにおっしゃった。そして、私が今ここで紹介した、日本人拉致組織というものが日本に存在する、工作組織が存在する。そして、この文芸春秋の張さんの手記にもあるように、乱数表によって平壌放送が指令を出している、日本にいる者に。こう書いております。「日本での活動環境は非常に恵まれており、まさにやりたい放題」「そして、今でも「洛東江」の中心人物と拉致に関与した人物は名前を変え、日本に暮らしている」。田中という身寄りのない人を拉致して、その田中に成り済まして北朝鮮工作員が日本にいると書いておるわけです。  乱数表による指令は、専門家の解析では六百通りの指令が発せられているという。だから、六百の指令がある、六百のそれを受ける単位があるということも推測されるのです。そして、その組織を支えているのは朝鮮総連の中にある地下工作組織なんです。そういうふうに当のその工作に関与した人が書いているわけです。そして、あれほど速やかに、日本国政府が、また警察が、海上保安庁が何にも関与をしないところであれほどの数の日本人が拉致されているのでしょう。  日本国内にどれだけおるのですか。これ、おわかりになっておりますか。あの北朝鮮の工作員、そしてそれを支援する在日朝鮮人組織が、地下組織がどれだけあるのですか。その点について、現状の認識をお伺いしたい。
  121. 内田淳一

    内田説明員 現実に、過去に北朝鮮の工作員によるさまざまな事件が検挙されております。過去二十年間において十数件を北朝鮮関係のスパイ等事件ということで検挙しておりますし、そういった面におきまして、私どもは重大な関心を持ってこれに対応してまいりたいと存じております。
  122. 西村眞悟

    西村(眞)委員 六百の乱数表があると解析しているのなら、六百の組織におりているのですから、最低六百人おる。それの支援組織があればもっとすそ野が広がるだろう。どれくらいの組織なんだ。私自身が日本人拉致事件のときに質問しましたら、身の危険はありませんかと御丁寧に警察が言ってくれましたけれども、私に聞かれてもわからぬですよ、そんなもの。だから、何人いるんだと。本当に私に身の危険があると聞くほどのものなのか。それなら壊滅しなければいかぬじゃないかというふうにお聞きしている。  何人ぐらいいるのですか。わかりませんか。わからなかったらもういいです。  いや、本当にこれは大臣、重要な問題なんです。北朝鮮のことを語れば、こういうふうに私が質問したら朝鮮人差別だとか、そんなこととは違う次元なんです。私は韓国人の友人もおりますし、学生時代は、北朝鮮へ帰るの帰らないのといった飲み屋のおばちゃんと今でもつき合っています。僕はあのとき、いや、帰ったら本当に寂しくなるなと言って、帰らなかったのですけれども、妹が帰りました。  しかし、本当に気の毒ですよ、そういう人は。北朝鮮の本当の国民は気の毒なんです。これを日本も救出する手段がある。さっきの再入国の問題、万景峰号の問題、日本人も救われ、気の毒な北朝鮮の方々も救われるから聞いておる。そして、日本国内においてこういうことをしている組織を壊滅してもらいたい、警察日本の治安の力、総力を挙げて壊滅していただきたい、このように思うわけです。  法務大臣のその問題についての御所見をお伺いしたい。
  123. 松浦功

    松浦国務大臣 最大限の努力をしてまいらなければならないと考えております。
  124. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  125. 八代英太

    八代委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時二十七分開議
  126. 八代英太

    八代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。漆原良夫君。
  127. 漆原良夫

    ○漆原委員 新進党の漆原でございます。  私の方からは、今回提出された条文について若干お尋ねしたいと思います。  まず、七十四条ですけれども、本条の処罰の対象となる主体ですが、「自己の支配又は管理の下にある集団密航者を」云々、こういうふうになっております。「自己の支配又は管理の下にある」云々というこの規定の主体、その範囲についてお尋ねをしたいと思いますが、どの範囲までが罰せられる範囲になるのか、お答えいただきたいと思います。
  128. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  この主体は、まさしく集団密航者本邦に入らせ、または上陸させようとする者でございまして、この自己の支配または管理下にあるという意味は、指示、従属関係またはそれに至らない管理関係によりまして、集団密航者の意思、行動に影響を及ぼすことができる状態にあること、言いかえますと、自己の統率のもとにあるということを指しております。
  129. 漆原良夫

    ○漆原委員 今問題になっているいわゆる蛇頭グループというのがありますけれども、この組織的グループが、仮に密航船を仕立てて、そういう場合を前提としまして、一つは、その船には乗っていないけれども、領袖格が日本以外のところにいてその船を出している、そういう船に乗っていない幹部までが含まれるのかどうか。この密航船に乗ってきた引率した幹部は当然含まれると思います。  それからもう一つ、専ら、密航船に乗ってきて、炊事、洗濯、掃除等を担当している下働きの人、こういうものが含まれるのかどうか、この辺いかがでしょうか。
  130. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  船に乗っていない幹部、その者が指示なりあるいは指示に至らなくても共謀をしておりましたら、当然にこの主体に当たります。また、この船に乗り込んでいる者が、例えば炊事、雑役を担当する者でありましても、とれは事案にもよりましょうけれども、その者について七十四条の罪の共謀の事実がありますときは、同罪の共同正犯として処罰されることになります。
  131. 漆原良夫

    ○漆原委員 共同正犯になるかどうかは別として、要するに実行正犯になるかどうかという単純な立場でお尋ねしているのですけれども、直接密航者に対して指示、指図したり監督したりはしない、ただ炊事、掃除、甲板掃除とか、そういう雑役だけをしている、こういう前提でいかがでしょうか。
  132. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 それも個々の事案によりますでしょうけれども、その船の運航、運んでくる行為につきまして、自己の支配または管理下にある状況の主体というふうに認められる証拠がありましたら実行正犯となりましょうし、あるいはそうでなくても、そういう者を連れてくることを共謀して自分が下働きをしているという場合には共謀共同正犯ということになろうかと思います。
  133. 漆原良夫

    ○漆原委員 わかりました。それはそれでいいと思います。  それから、集団密航者の定義として、「本邦上陸する目的を有する集合した外国人」、こうなっておりますが、この「集合した」というのは、二人以上の数があればいいというふうに聞いてよろしいでしょうか。
  134. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 御指摘のとおりでございます。
  135. 漆原良夫

    ○漆原委員 その次、本条の行為ですけれども、「本邦に入らせ、又は上陸させた者」、こうなっておりますが、本邦に入らせる行為とはどういうことを言うのか、「上陸させた者」、上陸させるというのはどういうことを言うのか、そのおのおのを解釈していただきたいと思います。
  136. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 「本邦に入らせ」といいますのは、本邦の領海内に入らせることを言います。本邦に「上陸させ」といいますのは、本邦の領土内に入らせることを言いますが、それは、指定港であります場合には、いわゆる入管の線を越えた段階で「上陸させ」でございまして、それ以外の本邦の領土のいかなるところにおきましては、本邦の領土に入ったときということでございます。
  137. 漆原良夫

    ○漆原委員 条文を単純に読みますと、本邦に入る、上陸するためには必ず本邦に入るではないか、それなら本邦に入ったという一つ行為でいいではないか。あえてさらに上陸まで規定した趣旨は、どういう趣旨でございましょうか。
  138. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 このような集団密航事犯におきましては、内外の密航ブローカー等がそれぞれ密航者を募集し、募集した密航者を海岸まで運び、海岸から本邦へ向かう密航船まで運び、さらに本邦内に入った密航船から密航者を受け取って上陸場所まで運んで上陸させるなどの行為を分担して行うことが少なくありません。したがいまして、これらの各分担行為を処罰の対象としなければ集団密航事犯に対しては的確に対応できなくなるわけでありまして、先生御指摘の件で申し上げますと、本邦に入ってから加担した者が上陸させた場合に、「本邦に入らせ」だけでは処罰ができなくなるというおそれがあるからでございます。
  139. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の説明、大変よくわかりました。  それから、七十四条の三項で、同条の一項、二項の罪についてだけ未遂罪が置いてありますけれども、入らせ行為本邦に入らせ行為については未遂罪の処罰規定がないとなっておりますが、これはいかがでございましょうか。
  140. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 お答えいたします。  本邦に入らせる罪の未遂は、第七十四条の二の、本邦に向けて輸送する罪の中に含まれているということによるものであります。
  141. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、七十四条の二、本邦に向けて輸送した、その結果七十四条の本邦に入らせる、例えばこういう経過になると思うのですが、この場合の罪は一罪になるのか、処罰の方は併合になるのか、この辺の考えはいかがでしょうか。
  142. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 七十四条の二の罪を犯しました者が引き続いて七十四条の罪を犯した場合は、両罪は包括一罪となります。例えば、集団密航者本邦に向けて輸送した者が引き続き本邦に入らせた場合は、輸送する罪と本邦に入らせる罪は包括一罪となりますし、さらに、その輸送した者が引き続き本邦に入らせまして、本邦内で輸送し上陸させた場合も、これらの罪は包括一罪というふうに考えております。
  143. 漆原良夫

    ○漆原委員 よくわかりました。  それでは、七十四条二項の場合、営利目的の場合、従来であれば一年六月以下の懲役もしくは禁錮または十五万円以下の罰金、こういう刑でございましたが、今回の改正によって「一年以上十年以下の懲役及び千万円以下の罰金」、こうなって、非常に大幅な加重をされているわけでございますが、こういう大幅な加重は刑法あるいは関連法案の全体から見て異常なのか、それとも法体系全体としての整合性は保たれているのか、その辺はいかがでございましょうか。同じような趣旨の条文がございましたら、どんな罪がこの一年以上十年以下に当たるのか、その辺も御紹介いただきながらお答えいただければ結構と思いますが。
  144. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 まず、このような罪の幇助形態を重くしたということでございますが、組織的に、いわばビジネスとして密航者を集団で我が国に送り込む行為などは、単なる幇助犯というより、まさに人の密輸というべきものであろうと思います。したがいまして、個々の不法入国不法上陸罪に比して、我が国出入国管理秩序を害する程度ははるかに大きく、その違法性も高いと考えますことから、これらの行為を独立の犯罪類型ととらえ、法定刑もその実態に見合ったものとする必要があるので本条の罪を設けることとしたものでありまして、刑事法上の体系から見ても問題はないというふうに考えております。  このような例は、ほかの刑法犯で考えますと、例えば刑法第九十七条の逃走の罪につきましては一年以下の懲役でありますが、同法百条第一項の逃走援助罪は三年以下の懲役となっており、また、同条第二項の逃走を援助する目的で暴行または脅迫する罪は三月以上五年以下の懲役となっておりますし、入管法自体に規定しております不法就労活動助長罪についても同様のことが言えると思います。  後の質問でございますが、一年以上十年以下の法定刑を定めておりますものは、刑法犯につきましては、例えば刑法第百五十五条第一項の公文書偽造、第百五十八条第一項の偽造公文書行使、それから二百二十五条の営利目的等略取誘拐、二百二十七条第二項の被略取者収受等がありますし、特別法犯では、労働者派遣事業法の有害業務につかせる目的の派遣、あへん法のアヘン栽培、輸入等、それから銃砲刀剣類所持等取締法のけん銃の所持等がございます。
  145. 漆原良夫

    ○漆原委員 よくわかりました。  私が一つどうしても腑に落ちない点がございます。  これは、入った人が、正犯の犯罪懲役三年、それから罰金三十万だという規定になっておるのですけれども、本来従犯と言われた、この正犯のお手伝いをするのが幇助、従犯になるわけでございますけれども、この従犯の犯罪が正犯よりもぐっと重くなっている。五年以下の懲役あるいは三百万、営利目的であれば一年以上十年以下及び一千万以下の罰金と、非常に重くなっております。果たして、正犯の刑罰よりも正犯をお手伝いした人に対する刑罰、これが飛び抜けて差があっていいんだろうか。  刑法では、共犯については、六十一条で、教唆犯については正犯に準ずという規定がございます。また、六十二条は、幇助は従犯だということで、六十二条で、従犯は刑を減軽するんだ、こうなっていますが、正犯より非常に重い刑を従犯に科す、これが果たしていいんだろうかという基本的疑問点があるのですが、この辺はいかがでございましょうか。
  146. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 先ほども若干説明させていただきましたが、本件は、幇助犯というよりも人の密輸、そういう罪だというふうにとらえておりまして、必ずしも正犯に劣る行為だというふうには考えておりません。そのために、犯罪の独立類型として人を、集団密航者本邦に入らせ、または上陸させる、それでその上陸した者を受け取る、隠す、そういう一連の行為を、人を密輸する典型的な行為としてとらえたものでございます。  なお、近年、国際的にも不法移民の組織的な密輸が問題化しておりまして、このような犯罪行為に対して罰則強化などの対応が求められておりますが、諸外国の立法例を見ましても、米国移民国籍法では、このような、外国人を米国に密入国させる等の罪の法定刑として十年以下の懲役刑を定めております。
  147. 漆原良夫

    ○漆原委員 今、僕は大変重要な発言をお聞きしたと思うのです。人の密輸というお言葉でございますが、本当に人の密輸なんだろうか。確かに、人の密輸というふうにおっしゃると、なるほどな、大変なものを密輸された日本は大変困る、これはお手伝いでなくて密輸の主犯なんだ、こう理解しやすいのですが、果たして人間の密輸なんだろうかということでございます。  共犯事件ではよく道具論というのが使われます。人を使って人殺しをさせるけれども、その使われた人が道具であれば、教唆した人が正犯なんだという理屈があります。同じようにお考えかどうかわかりませんけれども、人の密輸というお言葉はそれを非常に僕は暗示させる言葉だと思うのです。しかし、おっしゃるその密輸をされる人というのは自由意思を持った人でございます。決して、先ほど私申し上げました道具論で言う道具ではないわけでございますから、やはり人の密輸という感覚はなじまないんじゃないかな。独立の犯罪の主体としての人、密航者としての人でございますから、人の密輸という概念は今の刑法からいってなじまないんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  148. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 先生の御指摘のことはよく理解できるわけでありますが、入ってくる人間はみずから進んで入りたいという人間でございまして、何も無理やりさらってくるものではないことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、これをビジネスとしてやっている側からしましたら、入りたいと思う人間を何らかの甘言等を弄しながら集めてこれを外国に連れてくるわけでありまして、言葉の問題で適当かどうかはわかりませんが、そういう概念で、観念で人の密輸というふうに言わせていただいたわけでございます。
  149. 漆原良夫

    ○漆原委員 これは理屈、議論しても非常に難しい問題だと思うんですが、日本の法体系の中で、従犯を特に独立の犯罪規定として設けて正犯よりも重く処罰しているという例がございましたら、お教えいただければ幸いと思います。
  150. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 例えば逃走する者を援助する罪、この場合に、看守等が逃走を援助した場合には非常に重く処罰することになっております。
  151. 漆原良夫

    ○漆原委員 これは、樋渡審議官、幇助罪とお考えですか。その看守等が援助する場合は幇助罪なんだとお考えのもとでおっしゃっているわけですか。
  152. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 失礼いたしました。  幇助罪と考えているわけじゃないんですけれども、逃げようとする者を助けようという行為から見れば、同じような感覚で言えるんじゃないかというふうに思ったわけであります。
  153. 漆原良夫

    ○漆原委員 ちょうどいいところで時間がなくなりました。もっと突っ込んで議論をしたいなと思ったのですが、残念でございます。  法律的にはそういう問題があるということと、それから、実際に政府は中国に行かれて、大変御努力されて協議されておるようですけれども、私は特に福建省から来る人が多いと聞いていますので、中国の政府、ともかく福建省の省庁と、省庁というのでしょうか、そういう担当者とも十分捜査協力、それから定期的な会合等を持って情報交換する、そして蛇頭のグループのせん滅を図っていく、そういうふうな協力関係をお願いいたしまして、質問を終わらせてもらいます。大変ありがとうございました。
  154. 八代英太

    八代委員長 次に、佐々木秀典君。
  155. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木です。  本法案の関係では一点だけお尋ねをしたいと思います。今漆原委員からも七十四条の関係についてのお尋ねがあったようですが、私は、七十四条の二の関係でちょっとお尋ねをしてみたいと思います。七十四条の二、「自己の支配又は管理の下にある集団密航者本邦に向けて輸送した者」云々、その他ありますけれども、これが新しく加えられております。  それで、新聞報道その他によりますと、今度のこの改正というのは、今も話に出た蛇頭その他、中国だとか香港だとか、こういうところで暗躍をしているグループといいますか、こういう者たちにも焦点を当てているんだということが言われているわけです。  「集団密航者本邦に向けて輸送し、」というこの主体ですけれども、これは話によりますと、今度のこの改正の中でも考えられているように、いわゆる送り出し側の主たるものは蛇頭と言われるような者たちだろうと思いますけれども、それと、日本暴力団なんかがともに共謀してやっているということも頭の中に入っているわけですね。この送り出す仕事をすることは、もちろんこれは場合によると、蛇頭と相連携をしている日本関係者、暴力団などが、中国だとかあるいは香港だとか、そういうところに出向いていってみずから主体となってやるということも予想される、こういうものは当然この処罰の対象、捜査の対象にもなるわけですね。  ところが、これを送り出すものとしての蛇頭などと呼ばれている者たちは、中国人あるいはそれが香港の者だとすると、これは、この法律からいって、日本国内でそういうことを犯したなら、当然この強制捜査の対象になりましょうけれども、向こうで活動しているという分については、日本の捜査権は直接には及ばないことになるわけでしょう。この点を明らかにしていただきたいことと、それに対するこの法律趣旨を生かした対応は今後どのように考えていくのか。中国だとか香港だとかの捜査当局と相提携をしてそれぞれにやるということになるのか、その辺のことを確かめておきたいと思います。
  156. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 先生御指摘のとおりに、この犯罪の主体は日本人も外国人も含むわけでございまして、その犯罪の主体も、実行正犯にとどまらずに、共謀共同正犯も含むわけでありますから、日本人が加担するものがあるいは結構出てくることも考えられます。  外国人の場合でございますが、外国人に対しましても、国外犯処罰の規定を設けておりますので、この罪は成立するわけでありますが、確かに、先生御指摘のように、向こうまで行っていきなり捕まえてくることはできないのでありまして、ただ、その外国人も、こういう商売といいますか、こういう犯罪を繰り返しておりますと日本に来ることもあるでしょうし、その場合には日本で十分対応できます。  それと、外国にいるといった場合に、その国の取り締まり機関と協力、情報交換し合いながら、捜査共助等を通じて適切に対処していくことができるというふうに考えております。
  157. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 実際にはいろいろ難しい問題もあるだろうと思うのですけれども、せっかくこういう法律をつくった以上は、やはり関係国との協力のもとに実効あらしめていただかなければならないと思うので、これは、この法律改正されて運用されるようになってから、またその成果はどうなのかというようなことについてお尋ねをさせていただく機会があるだろうと思いますので、法案についてはこの程度でとどめておきたいと思います。  この法案とは直接に関係がないのですが、入管行政その他とも関連があります問題として、実は、フィリピンに多数の日本人が残留されている。中国の残留孤児の問題というのは、これはだれにもわかっていることですが、意外にこのフィリピンの日本人残留孤児の問題というのは知られていないところがあり、またさまざまな問題を含みながら解決されてこなかった。これは私は、やはり戦後処理の一つの大きな問題だろうということを考えておるのですけれども、この問題がございます。  これはもう皆さんも御承知だろうと思いますけれども、戦前に、実は東南アジアへの移民というのは随分多かったのですね、日本人の移民が。その中でも、とりわけフィリピンに移民をした日本人というのは非常に多かったわけです。いろいろな数字がありますけれども、そのはっきりした数で、五万人ぐらいの日本人がフィリピンでいわゆる日本人社会というようなものをつくっていて、そしてフィリピンの産業などにも貢献したり、あるいは第二次大戦の中では、その人々が徴用されたり徴兵されたりというようなことにも使われていた。  ところが、戦争が終わったときに、日本人は外国人だということで、フィリピン政府から強制送還をされて、日本人の男性はこっちに戻っている。その人たちの多くが、日本人同士で夫婦であって、住んでいた人たちはそのまま帰ってきたりしているのですけれども、何しろああいう悲惨な戦争、そして混乱があったわけですから、そしてまた、これも言われることですが、戦争中にこのフィリピンにおける日本の軍の非常に非人道的な行為などがあって、そのことが現地人からの大変な反感を買っていたということもあって、戦後のこのフィリピンにいる日本人たちは非常に肩身の狭い思いをしたり、中には親だけが日本に帰って、子供だけが残されるという悲惨なケース。あるいは、父親の方は日本人だけれども、現地のフィリピンの女性と結婚している、その夫婦から生まれた子供、つまり母親がフィリピン人であるという子供たち、それが母親とともに残るというようなケース。さまざまあって、そうしたいわゆる孤児、それから二世、あるいはもう三世までいるわけですけれども、そういう人たちの法的な身分が非常に不安定なままで、中には無国籍状態になっているというようなこともある。こういう事実が実はあるわけですね。  実は、一九九五年でしょうか外務省がこの問題についての調査を現地に出向いて三カ月ばかりやった、これが第一次調査と俗に言われていますけれども、それから、今年に入ってからも、一月から三月にかけて第二次調査をしている。この種の人々からは、日本の政府に対して、一つは、法的なというか日本人国籍の取得の問題、あるいは日本人国籍を持つ者については、さきの入管法改正もあって定住ビザが出ることになったり就労ビザが出ることになったりして、そういうこともあって、日本に来たいという希望などが政府に対して寄せられていると聞いているのですけれども、これについてまず法務省にお尋ねをしたいのは、この国籍の点ですが、こういう人たちの国籍は、日本国籍と認められる場合はどういう条件をそろえれば認められるのか、これをまず確かめておきたいと思います。
  158. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 お答え申し上げます。  いろいろなケースがあるかと思いますが、主要な点だけ申し上げますと、その子供さんが生まれる前に日本人男性とフィリピン人女性が結婚している、婚姻している、婚姻が成立している場合には我が国の、恐らく当時は旧国籍法時代のことが多いかと思いますが、その国籍法の規定によってその子供は日本国籍を取得するということになります。また、日本人男性とフィリピン人女性が婚姻をしていないという場合につきましても、現行の国籍法施行前、昭和二十五年六月末まででございますが、それまでに日本人の父がそのフィリピン人女性から生まれた子供を認知しているという場合には、旧国籍法の規定によってその子供は日本国籍を取得するということになります。
  159. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 おっしゃるように、いろいろなケースがあるのですね。父親も母親も日本人であることは確かなのだけれども、いろいろな事情でその親たちに置いていかれた、まさに中国の残留孤児みたいな場合、そういうケース。これなどは、その父親、母親が日本人であることがはっきりすれば、当然日本国籍の取得ができるのだろうと思いますけれども、あとは証明の手段などということになるのかと思うのです。それと、今局長おっしゃるように、男性が日本人、女性がフィリピン人の場合、お話のように、これも日本国籍の取得ができるわけですね。それからまた、中には確かにいろいろなケースがあって、一概には言えないようなのですけれども、何しろこれらの人々は、例えば父親の身元が確認されるといいのですけれども、なかなかそうはならないということもあったりするものですから、それを確認する手段を見つける、その証明をするのに非常に苦労しているようです。このことについてはまた後ほどお伺いをしたいと思います。  そこで、外務省、今私が言いましたように、二次にわたって調査をされているようですけれども、この調査をされることになった動機、それからこの二度にわたる調査でどんなことがわかっているのか、時間が余りありませんから、要点のみで結構ですから、お知らせいただきたいと思います。
  160. 平松賢司

    ○平松説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、外務省といたしましては、二年前ぐらいになりますけれども、平成七年八月から十一月にかけまして、第一次のフィリピン残留日本人の実態調査を行いました。この際には、先生御指摘のとおり、残留日本人の実態がよくわからないということがあったものですから、まず包括的に、できるだけ幅広く、実際その残留日本人の方がどういう状態になっているのかということを調査いたしまして、基礎的な資料を整備することができたわけでございます。  これに引き続きまして、本年一月から三月にかけまして、第二次の実態調査ということで、第一次の調査に基づきまして、残留日本人のみならず、その家族構成も含めた調査を実施いたしました。今次の第二次調査のねらいは、第一次調査の結果、相当明確になってまいりました残留日本人及びその家族の方々が、日本国籍確認あるいは日本旅券取得及び定住者査証取得のために申請を大量に行ってくるという可能性が生じてきたものでございますから、そういった申請に対する審査が円滑に行われるための基礎的な資料をつくりたいということでこういった調査を行ったわけでございます。調査の結果、調査時点において本人が保有する我が国戸籍謄本に本人の血縁者の記載のある残留日本人及びその家族、千二十四家族のうち七百二家族、合計いたしまして一万二千六百十名程度の情報が登載されることになったわけでございます。  今次の調査の結果につきましては、先ほど申し上げたとおり、フィリピン残留日本人及びその家族の方々の日本国籍確認あるいは日本旅券の発給、それから在留資格決定等に関する政府の申請の手続といったものを円滑に進めるための貴重な基礎資料として活用させていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  161. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 中国人のいわゆる残留孤児の問題は厚生省社会・援護局かな、ここが主体的に主管庁として取り組んで、大変にこれまでも御苦労されてきておる。このフィリピンの残留孤児の問題については、中国の残留孤児の問題と違うところもあるけれども、戦後処理の問題としては、私は共通するものもあるのじゃなかろうかと思われるのですけれども、厚生省としてはこの問題にはどのようなかかわり方をしてきたのか、それから、今後どのような取り組みを考えておられるのか。  今、外務省の方からお話があったように、これまでの第一次調査、第二次調査は、どうも厚生省も関与はされているようだけれども、主体的には外務省が主になってやっているようにもうかがえるのですけれども、厚生省のかかわり方はどうだったのか、それと、中国の残留孤児の場合とどんな違いがあるのか、その辺についてお聞かせください。
  162. 竹之下和雄

    ○竹之下説明員 中国残留邦人に対する対策といたしましては、さきの大戦により生じた混乱や外交上の理由などにより、我が国に引き揚げることができずに、引き続き中国に居住することを余儀なくされた方々という事情にかんがみて、円滑な帰国の促進と自立の支援を行ってきております。  一方、フィリピンを含む南方諸地域は、終戦直後から三十年代の初めまで、継続して邦人の引き揚げが行われてきておりまして、中国におけるような日本への帰国を阻む理由等が少なかったことなどから、引き揚げ援護の事業は概了していると考えております。昭和三十六年には、南方地域の邦人につきましては、今後帰国することがあっても引揚者として取り扱わないという行いになりまして、現在は海外の一般在留邦人と同様の取り扱いを行っているところでございます。  このため、フィリピン残留日本人の方に対し、中国残留邦人と同様の取り組みをすることは困難と考えております。  それから、今までどのようなかかわりを持ってきたかとおっしゃる点でございますが、私どもは海外から内地へ引き揚げてくることになった一般の引揚者の応急援護ということを行っておりまして、海外にある方の身元の調査ということは特に所管している省庁じゃございません。しかし、私どもは旧軍人軍属の資料を旧陸海軍省から引き継いでおりまして、この資料を活用することによってその肉親の消息がわかる場合もございます。  したがいまして、私ども、フィリピンにおられます残留邦人の方々から要請がありました場合に、私どもの持っている資料を活用して、その限りにおいてはいろいろと調査に御協力してきたところでございます。
  163. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 中国の残留孤児の問題と確かに違うところはあることはあるのですよ。一つは、中国の残留孤児の場合には大体両親が日本人ですから。それに比べると、フィリピンの残留孤児の場合には母親がフィリピン人だということが多い。それと一つは、戦後の国交の関係ですか、そういうこともないではない。  しかし、ちょっと今御答弁の中で気になるのは、フィリピンなんかの場合には、中国と違って、戦後帰ろうと思えば帰れたとか、来ようと思えば来られたとかという状態の違いということをおっしゃったけれども、しかし、これは外務省の九五年の調査報告書の中でも書かれておるのですけれども、この当該者たちが、つまり、かつて侵略者であった日本人の子供として、フィリピンの社会から逆に今度は戦後は迫害や差別を受けている。戦後の混乱期に命を落とした子供たちも数知れない。残留者の大部分がそうした迫害を恐れて、父の名前を捨てて、母親の名前を名乗って、フィリピン人としての名前を名乗って生きてきているとか、あるいは逆に、そういうことで、日本人の血を引く者だということをむしろ知られたくないがために、そういう身分を証明するような関係書類を意図的になくしたり、捨てたりした。そのことが逆に、今度は日本人としての国籍を取得するのに今大変障害になっている、こういうケースなのですね。  これは、本人たちの意思とはかかわらないというか、その周囲の状況と経緯などからくるネックになっているということを考えれば、私はまことに気の毒な事情だと思うのですね。それだけに、私はこの際、日本の政府としても、各省庁それぞれが協力できるものは協力し、何とかこの人たちのいわゆる人権的な問題として、あるいは人道的な問題として、何といっても私たちの同胞であるわけなのですから、そういう立場での取り組みを各省庁強めていただかなければならないと思っているわけです。  そういう意味では、今の御答弁の中で、厚生省、軍人軍属名簿その他お持ちになっている、これが一つのやはり身分確認のための手がかりのよすがになるのは間違いないことなのですから、これからもひとつ積極的にそういうようなことについての協力要請があった場合には協力していただきたい、これはぜひお願いしたいと思います。  それともう一つ、厚生省にお伺いしておきますけれども、これの身分関係がわかった場合に、例えば軍人軍属だった人に対する補償だとかあるいは恩給だとか、そうした適用についてはどのようなことになりますか、今後の問題として。
  164. 竹之下和雄

    ○竹之下説明員 私どもの厚生省で所管しておりますいわゆる援護法におきましては、国籍要件というのは言っておりますけれども、国籍が確認されて受給すべき要件が満たされれば、現に適用されている方もございます。
  165. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そうすると、条件を満たせば適用していくのだ、こういうことなのですね。わかりました。  それで、先ほど民事局長から国籍の問題についてお答えをいただいたのですけれども、実際には自分の身分を証明するものがなかなか整わないために、国籍確認あるいは戸籍をつくる、無戸籍、日本人としての戸籍がないという人たちがいてこれを何とかつくりたい、あるいは国籍を取得したいという希望を持っている方がたくさんおられます。そういう中で、フィリピンの政府が遅延登録というものを認めて、婚姻の証明あるいは出生の証明を、これは事後ですけれどもつくって出すということをやってくれているというようにも聞いています。  こういう後の遅延証明、こういうものによってフィリピンの政府がその当該者について、直接に日本の戸籍との関係などでその人が父親が日本人であることは証明できないけれども、さまざまな疎明などによって遅延登録をしたというようなことを根拠にして、日本の国籍の取得あるいは戸籍をつくること、就籍の申し立てをした場合に、これが受けられるのかどうか、この辺について法務省どうですか。
  166. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のような御要請、さまざまな場面がございますが、一番典型的な事例といたしましては、先ほど御答弁申しました、フィリピンに渡られた日本人の男性とフィリピン人女性が婚姻をして、その間に生まれた子供さん、しかしながらその婚姻の届け出あるいは出生の届け出がされていないような場合、先ほど申し上げましたようにその子供さんは日本国籍を取得しているのだけれども、その両親の婚姻の届け出そして自分の出生の届け出、こういうものを受理してもらいたいということで申し出があるという場合が典型的な例でございます。  戸籍の取り扱いにつきましては、戸籍というものは御案内のとおり日本国民の身分関係を正確に登録、公証するということを使命とする大変重要な制度でございますので、一般的に申し上げますれば、そういう戸籍の届け出を受理して記載をするというためには正確な資料に基づいて慎重な認定が必要である、そういう制度であるわけでございます。  ただ、御指摘のフィリピン残留邦人の場合につきましては、いろいろ現地でなめられた辛酸、それから今御指摘がありましたように通常なら持っていたであろう資料というものが散逸している場合が多い、そういった事情を考慮しながら適切な対応をしていきたいというふうに考えております。  ただいまお話のありました遅延登録制度、それに基づく証明書というもののそういう場面においての取り扱いが問題になるわけでございますが、遅延登録がされているからだけというわけにもなかなかまいりませんけれども、その遅延登録がされるに至ったいろいろな資料があるわけでございまして、そういうもの等を総合して、合理的にそういう身分関係があると認められる場合には、それを受理して戸籍に記載をするという方向で柔軟な対応をしているところでございますし、これからもそのように対応していきたいというふうに考えております、
  167. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 きょうは時間が限られておりますので、いろいろな問題についてもこの件についてお伺いをしたいところなのですけれども、残念ながら後に譲らなければなりません。また個別に各省庁などとも御協議をさせていただきたいとは思っておりますけれども、フィリピン在住の日本人の組織が現にあるわけです。そういう組織から日本の政府に対して、この残留日本人の問題についてさまざまな要請が出ている。  その中で特に言われているのが、一つは、自分たちとしては、二世も三世も日本人としての誇りを持ちたいのだということを言っているのです。そのためには身分の確認調査作業というものが必要なのだけれども、自分たちでは限界がある、どうか日本の政府、各省庁、それにぜひ協力をしてもらいたいという要請がある。これは私どもは重く受けとめなければならないと思うのです。  それからまた、戸籍に記載のない残留者に関して、今局長からお話がありましたけれども、直接証明するものが失われているような場合でも、さまざまな方法によって、何とか特別な事情を勘案して認めてもらいたい、あるいは戸籍をつくることについても協力をしてもらいたいというようなこと。  それからまた、この方々は全部、それが認められたからといって日本に来て住もうということではないのです。フィリピンでもう既に一定の安定した生計を立てているという方も多いわけですけれども、日本人として法的な地位を取得しながら、しかしフィリピンで永住権を持ってそこで幸せな生活をしたい。その場合にも、このフィリピン社会で日系人として誇りを持ちながら、日本のためにもフィリピンのためにも役に立っていけるような者として住んでいきたい。そういう本当に切実な願いを、素朴など言ってもいいかもしれませんけれども、持っておられる。こういうことは私どもは重く受けとめなければならない、こんなふうに考えておりますので、できるだけ各省庁に御協力をお願いしたい。具体的にはまた御相談させていただきたいと思います。  大臣、こういうことをお聞きになって、中国の残留孤児の問題などとも比べて、どんなふうな御感想をお持ちなのか、ひとつお聞かせいただければと思います。
  168. 松浦功

    松浦国務大臣 いわゆるフィリピンの残留日本人の方々につきましては、大変御苦労が多かったことと思います。心から同情を申し上げたいと思っております。  これらの方々につきましては、その置かれた極めて特殊な事情を考慮して、法務行政の上でできるだけ温かい配慮を注いでいくということは当然であろうかというふうに考えております。
  169. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 大臣、ありがとうございました。ぜひそういうことを各省庁、特に法務省内に徹底をしていただきたいと思います。  他の問題もございましたけれども、時間の関係もございますので、一応私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  170. 八代英太

    八代委員長 次に、正森成二君。
  171. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、警察庁に伺います。  ことし早々に警視庁の公安部が、蛇頭、スネークヘッドですね、蛇頭日本暴力団等がからむ組織集団密入国事件特別捜査本部というのを設置されたと伺っております。それが設置されてから捜査が非常に活発化いたしまして、密航者等の検挙が激増して、これは三月五日の報道でありますが、「すでに六百九十一人と昨年一年間を十三人も上回った。うち中国人は五百八十一人と八割を占め、やはり昨年を三十六人も超えた。」というように報道されております。  こういう特別捜査本部ができました経緯はいかなるものですか。それから、簡単に、かくもわずか三カ月間で検挙者が激増したということは、これまで対応が非常に不十分だったということを示しているのではありませんか。
  172. 内田淳一

    内田説明員 まず、委員指摘の特別捜査本部でございますけれども、これにつきましては、昨年の十二月に警視庁管内で二件連続して発覚をいたしました中国人集団密航事件の全容解明と被疑者の検挙を目指しまして、本年の一月八日、警視庁公安部に設置されたものと承知しております。  この特別捜査本部の設置に当たりましては、日本暴力団中国人密航請負組織でございます蛇頭、この関与が認められるなど、事案の重大性、頻発する集団密航事件に対する社会的な反響、こういったものの大きさを考慮してなされたものと承知しております。  この事件につきましては、この特別捜査本部によります徹底した捜索活動によりまして、蛇頭暴力団が関与した巧妙、悪質な集団密航の全容が解明されまして、密航者四十七名のほかに暴力団等の日本人が十二名、それから蛇頭構成員十五名が検挙をされているところでございます。  また、委員指摘のように、集団密航事件につきましては、本年に入りましてまさに急増をした。警察が検挙をいたしました集団密航事件については、既に本年二十四件、四百十名の検挙に上っております。昨年一年間の検挙を大きく上回っている状況であります。  このような増加の背景といたしまして、我が国やあるいは密航者出身地でございます国、こういったものを取り巻く社会情勢、あるいはその経済的な情勢、所得格差等についての多様な理由が存在するのではないか、このように私ども認識しておりますけれども、その理由の一つとしては、こうした集団密航事件の背後で暗躍をいたします蛇頭等の密航請負組織、この組織我が国国内において活動基盤の整備をかなり進めだということが実態としてあるのではないか、このように認識をしております。
  173. 正森成二

    ○正森委員 それでは次に伺いたいと思います。  本年三月十七日から二十二日までというように報道されておりますが、中国から日本への組織密航の急増を踏まえて、我が国の政府関係省庁の合同訪中団、代表が中田という海上保安庁の参事官だというように言われておりますが、それが中国に参りました。そして、三月二十二日、最終訪問地の上海で記者会見をして、「中国側が一定の協力姿勢を示した」云々というように声明いたしまして、その中で、三月の全国人民代表大会で刑法を改正して、蛇頭への処罰を強化した、あるいは一般市民に対して啓蒙活動を強化したというような点が報道されております。  この点について、刑法の改正というのはどのようなもので、その最高処罰規定、罰則ですね、それはどの程度のものかなと、簡潔でよろしいから答弁を願います。
  174. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  先生御指摘のとおり、この三月十七日から二十二日まで、私ども関係省庁中国へ行ってまいりました。その中で、中国側説明として、刑法の改正を行ってこうした密出国等に対する処罰を強化したという説明、それから住民等に対する啓蒙活動も強化しておる、こういう説明がございました。  まず、その刑法の改正でございます。  これは、このたび三月の全国人民代表大会、ここでこの改正案が成立した、こんなことでございました。その中で中国は、この密出国等に関する処罰規定を一節設けております。これは、妨害国境管理罪、こういう節がございまして、中国改正法、三百十八条から三百二十二条まで条文を設けておりまして、ここで、他人を組織して国境を越えさせた者等については厳しく処罰するということで、一定の要件のもとでは懲役刑七年以上に処する、こんなようなものもございます。そんなことで強化するということでございました。  それから住民に対する啓蒙でございますが、これは、福建省からの密航者が多いものですから、その福建省地域において住民に対する啓蒙活動を活発に行う。したがって、チラシ等を配布し、あるいはそうした宣伝の看板等を掲示するなどして住民に対する啓蒙に努めておる、こんなことでございました。
  175. 正森成二

    ○正森委員 今の説明によりますと、懲役七年以上などというと非常に重い刑だというように私も思いますので、中国側もこの点について相当考慮しているというように判断いたしますが、発表された資料を見ますと、中国公安部外交部あるいは上海人民政府公安局というような、あるいは福建省の人民政府公安庁というところと会談しているようですが、その中で私がやや奇異に思いましたのは、福建省の長楽市政府というのと一日間会談しているんですね。なぜこういう末端のところと一日とって会談したのか、ここが発進の基地と関係があるのか、言える範囲で答弁してください。
  176. 安田博延

    安田説明員 お答えいたします。  確かに福建省の長楽市、ここへ参りまして、視察及び協議をいたしました。我が国密航する中国人、これは福建省の出身者が多いということを先ほど申し上げましたが、中でも、福建省でもいわゆる海沿いの地域に出身者がかなり固まっております。この長楽市はまさにその海沿いといいますか、その地域でございまして、ここの出身者が多いことから、中国に対しまして、この訪中時に現地視察等をしたいということを申し入れておりました。そうしましたところ、中国側におきましてこれに応じていただきましたので、長楽市の現地視察と、あわせまして長楽市の副市長及び長楽市の公安関係者との意見交換を行いました。
  177. 正森成二

    ○正森委員 さらに警察庁に、その前に、海上保安庁、来ておられますか。海上保安庁に伺いたいと思います。  新聞報道によりますと、ことしの三月五日の報道でありますが、三月四日に警察庁と保安庁の実務を担当する、警備局長あるいは保安庁は次長のようですが、高級幹部が会同をいたしまして、「中国人による組織犯罪日本の治安に与える影響は大きく、水際での密航者の検挙が非常に大事だ」というようなことでの討議が行われたようであります。それは事実でしょうか。
  178. 小原正則

    ○小原説明員 三月四日に、今先生おっしゃいましたとおり海上保安庁次長と警察庁の警備局長の間で協議を行っております。
  179. 正森成二

    ○正森委員 私が資料を見ますと、今度の法律、後で質問しますが、海上保安庁の果たさなければならない役割というのは非常に大きくなってまいると思います。私は念のために海上保安庁の広報誌をいただきまして、これを全部読んでまいりました。海上保安庁というのは、海上における人命、財産の保護、治安の維持を目的として創設されたもので、海上犯罪取り締まりだけでなしに、水路業務や航路標識業務、あるいは、海洋法に関する国際連合条約の締結によりまして、新しい海洋の法的秩序の確立とか、さまざまの任務を持っておられるようであります。  非常に御苦労だと思いますが、その中で、これを読みますと、こういうスマートな巡視船の写真も載っておりまして、その中で、どれくらいの装備を持っておるかということがここに書いてあります。  それを見ますと、巡視船が百十九隻、巡視艇が二百三十五隻、測量船とか特殊警備救難艇は略します。そのほかに、航空機が、飛行機二十六機、ヘリコプター四十四機、計七十機というのが基幹装備であります。  これで昼も夜も非常に御苦労されているのですが、非常に失礼な言い方ですが、一部の報道によりますと、必ずしも装備が十分でないのではないか。特に、取り締まりをやる場合に、夜間に取り締まりをしなければならない。ところが、夜間の暗視装置といいますか、夜でも見えるような装置の装備率が必ずしも高くないという報道があります。  その点について、相手側との関係もありますが、答えられる範囲で、十分であるというのであれば、その旨を答弁していただきたいと思います。
  180. 小原正則

    ○小原説明員 先生御指摘のとおり、夜間の密航船の摘発につきまして、非常に重要な任務であろうかと思っておりますが、巡視船艇には常設型の、船に常に設備してございます赤外線捜索監視装置というのがございますが、そのほかに、持ち運び式の夜間捜索監視装置、こういったものを現場には配備してございまして、それを必要に応じて適切に搭載するというようなことで運用してまいりまして、夜間の密航取り締まりに全力を尽くしているところでございます。
  181. 正森成二

    ○正森委員 私は事前にそれぞれ何台ずつ持っておるかという数字も知っておりますが、余り手のうちを明らかにすると海上保安庁が困るかもしれませんので、ここではあえて申しません。しかし、もし我が国の安全を守るための装備に欠けるところがある場合には、遠慮なく予算要求をして、我々も一定の財政をにらみながら協力するということで、法務省等にも、あるいはおたくの場合は運輸省ですが、協力させていただきたいというように思っております。  その次に、警察庁にもう一度伺いたいと思います。  ここに平成八年の警察白書を持ってまいりました。それを見ますと、こう書いていものですね。  「平成七年の来日外国人犯罪の国籍別検挙状況は表8−2のとおりであり、アジア地域が一万三千百八十一件(全体の七六・六%)、五千八十一人(同七七・八%)で、依然として高い割合を占めており、とりわけ、中国出身者が、検挙件数、検挙人員ともに全体の約四割を占めている。」こう書いてあります。  それについて、この資料をさらに詳細に見ますと、平成七年では、刑法犯の総数が一万七千二百十三件で、そのうちアジアが一万三千百八十一件、その中で中国が断トツで七千八百二十八件となっております。検挙人員でも、総数が六千五百二十七名、アジアが五千八十一名のうち、中国が二千九百十九名で、これまた断然一位であります。  次のページに、「国籍、地域不法残留者数の推移」というのがあります。これを見ますと、タイ、韓国、中国、フィリピン、名前を挙げて申しわけありませんが、この四カ国が断然多いのですね。例えば平成七年、タイは四万三千十四名、韓国四万九千五百三十、中国三万八千四百六十四、フィリピン四万一千百二十二という数字ですが、この数字は四カ国がほぼ同じであるのに、刑法犯についてのみ中国の方がアジア人のうちの過半数を占めておる、全体でも四割を占めておるというのは、統計上余り納得できないのですね。そこで、一部の新聞には、本当は不法滞在者がもっと多いのではないか、そうだとすればこの数は納得できるという意見を言う人がいるのですね。  そういう点について、警察庁の見解があれば簡潔に述べてください。
  182. 内田淳一

    内田説明員 先生御指摘警察白書、平成八年版だと存じますが、この平成八年版の警察白書の記載のとおり、平成七年における来日外国人刑法犯総検挙人員の四四・七%、件数で申しますと四五・五%が中国出身者でございます。このうち、香港、台湾を除く中国国籍の者は、同人員の四一・七%、件数で三九・八%を占めております。  なお、平成八年の数字を申し述べますと、平成八年におきます来日外国人に係る刑法犯の検挙人員というのは六千二十六人でございまして、検挙件数は一万九千五百十三件でございます。そのうち中国国籍の者は、人員で四一・六%、件数で二九・七%を占めております。
  183. 正森成二

    ○正森委員 それにはそれなりのわけがあるのだと思いますが、必ずしも十分にお答えがございませんでしたけれども、ほかの点もございますので、次の問題に移りたいと思います。  そこで、さきに同僚議員から今回の法案の構成要件の問題について質問がありましたので、法務省に構成要件の問題について伺いたいと思います。重複しないように伺いたいと思います。  私が伺いたいのは、今度の新しい改正法の七十四条の七であります。これはどう書いてあるかといいますと、「第七十二条の二第一項第二号及び第三号、第七十四条の二(本邦内における輸送に係る部分を除く。)、第七十四条の三並びに前条の罪は、刑法第二条の例に従う。」という規定であります。  もちろん御承知のことと思いますが、念のために申しますと、刑法第二条というのは、「すべての者の国外犯」、国外でこの種類について犯罪を犯したらすべての者は処罰するという規定でありまして、これは、ごく簡略に申しますと、例えば内乱罪であるとか、外患誘致であるとか、あるいは通貨偽造であるとか、あるいは詔書等公文書の偽造であるとかいうような、こういうのっぴきならない重要な犯罪については国外犯についても刑法を適用するということになっているのですね。     〔委員長退席、岸本委員長代理着席〕  今回の改正については、今言いました七十四条の七の規定によりまして刑法第二条が適用されているわけであります。これは、今度の改正を、まあ言うたらいけませんが、刑法第二条を適用して処罰しなければならないということで、非常に重視したものであろうというように思うわけです。  そこで、それを指摘した上で、ひとつ私が、構成要件あるいは実務上の取り扱いとして、法務省と海上保安庁に特に聞いておきたいと思う点があります。  それは、刑法二条が適用される第七十四条の二、「自己の支配又は管理の下にある集団密航者本邦に向けて輸送し、又は本邦内において上陸場所に向けて輸送した者は、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。」営利目的の場合は七年以下、五百万円以下の罰金と、非常に重いのですね。その中で、「本邦内において上陸場所に向けて輸送した者」というのは当然刑法二条から除かれております。それは日本国内でやっているわけですから除かれるのが当然であります。  それからまた、今、同僚委員の質問に対して審議官が答えられましたが、蛇頭などの中には、何遍もやるうちに、たとえ第三国人、外国人であっても、そのうち日本にやってくる者があるかもしらぬ、その場合は我が国の主権下にあるのだから逮捕あるいは起訴するということができるのは当然であります。問題は相手国におる場合で、これはロッキード事件のコーチャンのように、それは、みだりに取っ捕まえたりすればえらい国際問題で主権侵害になります。これは相手国との協議あるいはその他の国際的な手続によるのですが、それを除きまして一番問題になるのは、本邦に向けて輸送している途中、つまり、向こうの領海は離れたがいまだ我が方の領海に入っていない、公海上の輸送中のものをどうするかというのが非常に問題で、非常にセンシティブな問題であるというように思います。  もっと具体的に言いますなら、例えば、ある国の領海を出たばかりのものをいきなり捕まえるなどということはめったにないでしょうが、我が国の領海に近づきつつある、船やら何かから見てどうも漁船のようでもないというような、そういう船を発見した場合。もっとはっきり言うならば、非常に領海に接近した、あるいは領海にまさに入ったが、海上保安庁の巡視船等を発見して逃亡を始めだというような場合があります。後の場合は、一たんは領海に入ったようですから問題は既遂に達していますから簡単ですが、近づきつつあるというような場合が一番微妙な問題であります。そういう場合に、この法案と刑法第二条の適用の関係から見て、海上保安庁はどう対処されるつもりか、また法務省はどういう解釈をとっておるのか、念のために伺っておきたいと思います。
  184. 樋渡利秋

    ○樋渡説明員 あるいはいろいろな説があるかもしれませんが、いまだ我が国の領海内に入っていない、公海上につきましては、日本国の公権の執行、これはもちろん日本船籍の場合は別でございますけれども、外国船籍の場合は差し控えるのだろうというふうに思っております。
  185. 小原正則

    ○小原説明員 確かに、先生がおっしゃいましたように、密航者を運んでいる船が我が国の領海に接近してまいりましたところを発見されまして、それは接続水域の中であれば我が方は立ち入る権限を持っておるわけですが、そのときに、確かに当該船舶密航者を運搬している者は既に既遂と考えられるわけですね。しかしながら、密航者本犯は確かに既遂ではございません。この間の取り扱いについては、法務省と具体に今後協議をしていきたいと考えておるところでございます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 私が伺った範囲では、法務省審議官の意見は比較的慎重であり、海上保安庁は輸送についてはもう既に既遂に達しておるというような見解であります。また、この法文の解釈としても、第七十四条に「本邦に入らせ、」という規定があり一しかも、その未遂罪を罰するというようになっているのですから、それとは別にわざわざ「本邦に向けて輸送し、」という構成要件を入れた以上は、これは、冷静に解釈すれば海上保安庁が今言ったようなことが法文から当然解釈されるのですが、法務省は、第三国との間の外交問題がややこしくなることを多少危惧して、国会ではそういう慎重な見解を述べたのであろうということで、審議官が述べるにはいろいろ苦心の上そう述べたのでしょうから、これ以上私はとやかくとここで細かく法律論を詰めることは控えておきたいと思います。  その上で、そろそろ時間がなくなってまいりましたので、これは事前に質問通告をしていなかったのですけれども、法務大臣に政治家としての御判断を伺いたいと思います。  といいますのは、今度の法律は、スネークヘッド等が営利目的等のために組織的に密航者組織する、それで、中へ入ってきた人が十分な職が得られないのでまたその一員になって、この間ありましたように、資金取り立てのために中国人を監禁するとか、あるいは日本の国民にも刑法犯を行うというようなこともございますので、新たな構成要件を設けることの必要性と必然性はあると思います。したがって、私どもは、多少刑が重過ぎるなと思わないでもない、例えば蔵匿、隠避等ですね、ありますが、賛成したいと思います。  ただ、それにしましても、いたずらに取り締まり強化するだけで本当の意味の友好ができるのだろうか、相手側にも責任はありますが。例えば四月三日の朝日新聞の「論壇」に早稲田大学の理事の方がこういう投稿をしておられるのですね。  それはどういうことかといいますと、外国人の留学生が減っている。一九八三年、まだ留学生が一万人ぐらいのころに、政府は二〇〇〇年に向けて留学生十万人計画を出した。ところが、九三年以後はそれが減りぎみで、九六年は五万二千九百二十一人に逆に減っておる。政府の計画目標を一万人下回ったということを言いまして、その理由として、「政府は、一方では「留学生十万人受け入れ」を世界に発表しながら、他方では入管法改正で、「単純労働者」及び就学生」、就学生というのは、高校、専修・各種学校で学び、一日四時間まで働くことができる学生のことです。その「入国を厳しく規制した。就学生を「不法就労者」の温床と見て締め出す政策をとったのである。その結果、九二年に二万七千人を数えた就学ビザ受給者は、九五年に九千九百二十八人へと約三分の一に激減した。」ということで、こういう点でもっと配慮しなければならぬと。長くなりますので全部読みませんが、ということを言っております。  私は、近隣諸国との友好を考える場合には、今回のような蛇頭に対する独自の構成要件をつくって取り締まることももちろん必要であると思いますが、同時に、ここで指摘されているような、我が国のなし得る限りの友好の立場、誠意というものを示し、かつ、実行していく必要があるのではないかというように思います。  まず、外務省が来ておられたら外務省の見解、あるいは法務大臣の政治家としての御見解を伺いたいと思います。     〔岸本委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 佐藤重和

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  私ども外務省の考えからいたしましても、今先生からお話がありましたとおり、各国との間、私の場合は中国を担当しておりますが、中国との間で留学生を初めとする若い人たちの交流というもの、これは非常に大事だということでございます。  他方で、こちらに来られた方々が、今お話があったように不法就労というようなことになっては、これは逆に両国の関係上もよくないわけでございますから、その間で均衡をとりながら適切な体制をつくっていくということが極めて大切だろうと考えております。
  188. 松浦功

    松浦国務大臣 御指摘をいただきましてありがとうございます。  文部省の方からのそういう考え方も私どもに伝わってきております。十分協議を受けて、やはり出入国管理の問題についても日本が世界から笑われないようにしていかなきゃいけないというつもりでこれからやっていきたいと思っております。
  189. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  190. 八代英太

    八代委員長 次に、保坂展人君
  191. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回の、いわゆるスネークヘッドというところでいろいろな法改正が必要だという趣旨は十分理解をした上で、前回、二月に法務委員会でもお触れした点なんですけれども、このことが厳しく法改正されるとともに、我が国が批准をしているいわゆる難民条約との絡みで、ここの政策が後退するようなことがあってはならないんじゃないかという立場で御質問をしたいと思います。  一九七五年に、当時の南ベトナムのサイゴンが、現在のホーチミン市ですが、陥落をすると、ボートピープルがやってくるという事態がございました。当時の政府は、いわゆる閣議了解で、閣議了解難民、これは定義があるのかどうかわかりませんが、こういうことで、一時上陸許可というものを出して、入国と一時滞在を認めるという経過があったように聞いております。  日本が一九五一年にできた難民条約に批准したのは、実に三十年たって八一年なんですが、このインドシナ難民が発生した時点からは随分時間的に、五年、六年と経過があったと思います。  その経過の中で、インドシナ難民を閣議了解ということで受け入れてきたわけです、一時滞在ということであれ。なぜこの時点で難民条約の批准に踏み切ったのか、そして、その難民条約批准にかけた理念はどこにあったのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  192. 手塚義雅

    ○手塚説明員 御説明申し上げます。  難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書につきましては、難民の人権を保障し、その地位の安定を確保するということを目的にしているものでございますけれども、我が国といたしましては、この条約及び議定書を締結することは、我が国の人権尊重のための国際協力を拡充する観点から望ましいと判断いたしまして、それぞれ、昭和五十六年十月三日及び昭和五十七年一月一日に締結したものでございます。  当時我が国は、昭和五十四年前半のインドシナ難民の大量発生を契機といたしまして難民問題とのかかわりを急速に深めていたわけでございますけれども、インドシナ難民の我が国におきます定住受け入れ等の種々の措置を講じておりました。このような措置に加えまして我が国がこの条約及び議定書を締結することは、難民問題の解決に向けての我が国の協力を拡充するという重要な意義があったものと考えているわけでございます。
  193. 保坂展人

    ○保坂委員 この難民条約の三十二条の1には次のようにあります。「締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」これが難民条約の理念かと思います。  ところで、この条約、先ほど触れたように、インドシナ難民が発生した時点から五年、六年とたってから、発効したのは八二年の一月というふうに聞いておりますけれども、時間があるわけです。その際に、つまり、条約に加わっていない間、閣議了解で難民を受け入れていた時代の窓口は総理府であったというふうに聞いております。当時つくられた定住促進センターの所管も、また総理府だったというふうに聞いております。ところが、この難民条約を批准をすると、これに対応する国内法は難民認定法となり、法務省が主管になっていく。なぜ総理府ではなくて法務省が引き受けていったのか、このあたりを法務省の方に伺いたいと思います。
  194. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 昭和五十六年三月十二日の閣議了解におきまして、難民条約への加入に伴い必要となる難民の認定は、政府として統一的に行う必要があるということで、法務大臣がこれを主管するということになったわけでございます。  このように、法務省、具体的には入国管理局が担当することとなりましたのは、対象我が国に到来する外国人であるということで、外国人の出入国及び在留に関する行政と密接な関係を有しているということで、法務省入国管理局が担当することとなったわけでございます。  以上でございます。
  195. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、閣議了解という形で難民を一時上陸という形よりは、難民条約を批准して、いわば法的な基盤の整備をしてちゃんと受けとめますよということでは、まあ事態はいわば受け入れられる側にとってはよくなるというふうに想像するわけでありますけれども、いささかちょっと疑問が、いまだに解決されない点があります。  例えば、その閣議了解時代の一時上陸許可で、インドシナ難民の方たちが定住促進センターに入りました。そこで半年間日本語を勉強したり、あるいは職業訓練を受けた。ということは、簡単に言えば、寝るところと食べるところ、そして教育や職業指導という機会が与えられたわけですね。つまり、そういう環境が整備をされたわけです。難民条約の批准以前にはそうであったわけです。  ところが、正規の条約というか、国際社会のルールに日本が加入をして、この難民条約に基づいた難民認定システムを我が国としてつくる、法務省入管でそれを認定するというふうになって、今度認定をされた方は、この定住促進センターに入りたいというケースがあったそうでございます。そうすると、入れなかったそうなんですね。  これは何か矛盾があるのではないか。つまり、法的に整備をされていない段階で緩やかに受け入れられたその人たちが受けられたケアが、きちっと整備をされると今度は受けられなくなる。この辺は是正をされるおつもりはありませんか。
  196. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 定住促進センターというものは、これはインドシナ難民の定住促進を図るために設置されたということでございますので、一般の難民認定を受けた者がその対象になっていないということでございます。  ただ、インドシナ難民以外の難民につきましては、日本語教育等定住促進センターのケアの対象とはならないわけですが、難民条約に定める各種の保護措置というのがございますので、その中でこの種のケアを受けることができるようになっておると承知しております。
  197. 保坂展人

    ○保坂委員 重ねてお尋ねしたいんですが、定住促進センターの、閣議了解難民時代のそのセンターの趣旨と、難民条約に加入して法整備をされて認定を正式にされた方がやはり国内で受けられるケアというのは、質的には変わらないと思うんですが、どうですか、その点。一考の余地もないですか。法務省の方から。
  198. 安田博延

    安田説明員 お答えします。  先生の御指摘のような面もあるかと思いますが、先ほど私どもの局長がお答えしましたように、これは、定住促進センターはインドシナ難民の定住促進、こういう面からでございますので、その点で直接難民認定を受けた者は対象となっておらない、こういうことでございます。  ただ、例えば、そういう難民認定を受けた方につきまして、生活保護とか住居の提供等の措置がとられておりますので、実質的には各種のケアを受けられる、こんなふうになっておると理解しております。
  199. 保坂展人

    ○保坂委員 ごらんになったかもしれないんですが、けさ、NHKだと思いますけれども、ちょうど、群馬のあかつきの村ですか、やはりベトナムの方と思いますが、インドシナ難民で日本に来られて、人に会うのが怖くなってしまうという形で、精神的な傷を、トラウマを負いながら、非常に孤独な形で過ごしておられるという映像レポートがありました。  ぜひインドシナ難民の人たち、ちょっと枠を超えると違うということではないと思いますので、その辺柔軟に考えていただきたいということを申し述べながら、今度、外務省の方にちょっと確かめたいんです。  条約の批准時、日本が認定をしていく難民の規模、これは何人ぐらいというのは言えないと思います。しかし、現状としては一人とか二人とかゼロということがここのところあるわけで、そういう事態として当初から予定していたのか。それとも、例えば三けた、四けたという数字も考えていたのか。これだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  200. 手塚義雅

    ○手塚説明員 御説明を申し上げます。  難民の数でございますけれども、これは予測がなかなか確定できない。政治的、社会的要因によって大きく左右されるものでございますので、なかなか憶測しにくいわけでございますけれども、そのような観点から、難民認定の数につきましても、当時具体的な数の想定があったということは承知しておりませんが、一人、二人というような極めて少ない人数であったということは考えられていなかったというふうに思われます。極めて少人数であったと考えていなかったというふうに思います。
  201. 保坂展人

    ○保坂委員 二月の法務委員会で、ビルマ難民について、申請をしてもなかなか結論が出ないんだということを指摘させていただきました。  その際に、先ほどの定住促進センターのことはずばりその例になってくると思うのですけれども、結論が出ないということに対しての答弁は、なるべく早く結論を出すしかないんだというお立場でした。わかるんですね。ただ、それが半日とか一日だったら待っていることもできるわけですけれども、一年、二年というふうになっていくと、食べなければいけない、そして寝る場所もなければいけない、したがって、何もないのであれば働かざるを得ないというふうになるわけで、ここのところが実際、放置されている状態ではないかということを申し上げたんです。  その際の御答弁でこんなことを、ちょっと要約ですけれども、難民認定申請をした外国人が、我が国に不法に入国した者であるとか、また既に不法残留している者である場合、これは難民認定手続と並行して退去強制手続がとられるんだ、そして、難民認定申請中である場合、また異議申し立て中である場合も、不法残留を理由に退去強制中の外国人ということにおいては変わりなく、合法的に就労していただくわけにはいかないというふうにはっきり御答弁されているのです。  外務省に伺いたいのです。これは国連の場で、日本政府として主張できる内容なんでしょうか。
  202. 手塚義雅

    ○手塚説明員 御説明申し上げます。  難民条約上、難民認定申請者の法的地位、その手続等につきましては規定はございませんで、専ら各締約国の国内法にゆだねられていると考えられております。  他方、先生御指摘の、不法残留者から難民認定申請がなされた場合ですが、その難民申請に対する結論が出されるまで退去強制はなされないと承知しております。  また、不法残留者就労できませんので、外務省といたしましては、難民認定申請を行っている者で、これには不法残留している者も含まれるわけでございますけれども、衣食住に欠けるような、保護を必要とする者に対しましては、生活費その他の必要経費を支給するなどの保護措置を実施してきているところでございます。
  203. 保坂展人

    ○保坂委員 先般質問をさせていただいて、難民申請中の方の身分を提示するチケット、カードですかね、書面があった、ただ、認定を却下されてしまうと証明するべきものがなかったということに関して御指摘をさせていただいたところ、こちらにコピーをいただいていますけれども、「難民の認定をしない処分に対する異議の申出を受理しました。」というものを発給していただいたという点では、現在の難民認定の制度を少しでも前進させようという御努力として非常にありがたく思っているわけなんです。しかしながら、ずばり言って、現在の難民認定システムはいろいろ問題があるのではないかと思うのですね。例えば、難民認定をする際、入管局でインタビューを行ったりして判定をしていくわけですけれども、異議申し立てをする場所もまた同じ入管なんですね。  ということで、もう少しこれを改善することができないのだろうかということで、先般UNHCR、日本の代表を含めてお話をしてきたところ、三者協議が始まっているというふうにお聞きしたのですが、どのような兆しがあるのか、あるいは改善策が見込まれているのか、お答えいただきたいと思います。
  204. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 難民認定の問題については、なかなか行政の世界では難しい分野でございます。そういうことで私どもは、外務省、UNHCRといろいろ協議しながら、できる限り難民認定のシステムを改善できることは改善していきたい、こう思っております。  今やっておりますことは、難民認定申請があった場合、またその処分の結果について、その都度外務省及びUNHCRに通報しておりますし、また、この両者から情報をいただくというようなこともやっております。そういうことで、外務省及びUNHCRとの連絡協調に努めているということでございます。  それから、平成六年から法務省、外務省及びUNHCRの間で、我が国における難民にかかわる諸問題について必要に応じて会合を開催する、意見交換を実施してきているところでございまして、今後も三者間の連絡協調を密にしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  205. 保坂展人

    ○保坂委員 二点ほど続けて伺いたいのですが、今回の法改正の際の、これは相愛だというふうに思いたい。しかし、それが杞憂でないと大変なことになるわけですけれども、いわゆる日本にいる外国人、例えば女性がだまされて暴力団に連れてこられて、シェルターといって、駆け込んで、保護する施設を運営している人たちがいる、あるいは教会でそういう外国人労働者に炊き出しをしている、その他あるわけですね、外国人支援組織あるいはいろいろな民間団体。これが今回の法で、いわゆる不法入国の幇助というふうに、罪に問われることはないのか。これはあってはならないと思うので、その点明快に御答弁いただきたいと思います。  では、一点だけお願いします。
  206. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 第七十四条の八の罪に関連した御質問と思いますけれども、密航した外国人退去強制を免れさせる目的で蔵匿し、または隠避させる行為を処罰するということでございますので、御指摘のような、女性を暴力団からかくまうといった活動につきましては、こういう退去強制を免れさせる目的で行われる行為ではございませんので、今お話があったような外国人の支援活動が処罰の対象になることはないことは当然でございます。
  207. 保坂展人

    ○保坂委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  難民認定について、三者協議でぜひよい形にしていただく中にちょっと提案させていただきたいのですけれども、例えば難民認定を申請する人に対して、あなたは認定を受けられた場合に、日本国内でこういう扱いを受けられますよ、保護も含めてこういったことができますよということを明快に示すパンフレットというようなものをおつくりになっていただけないか。そしてまた、異議申し立てをした者についても同様のことができないのか。そういう改善策はいかがでしょうか。
  208. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 難民認定の手続についてわかりやすく解説した。「難民認定手続案内」と題するパンフレットを作成して配布しておりますほかに、一般に配布する入管関係の広報資料の中で、難民認定に関する記事を記載して広報に努めておりますが、先生の御提案についても検討してみたいと思っております。
  209. 保坂展人

    ○保坂委員 ぜひ検討して、わかりやすく、日本の国は法の中で、国際社会のルールにものっとりながら、正当な事由のあるときにはこういった扱いも、難民として認定する道もあるんだということをお知らせいただきたいと思います。  最後に一点だけ。  帰化の数なんですけれども、帰化を申請する人の数が、法務年鑑ではずっと一九五二年から六四年までは載っているんですが、その後なぜかなくなってしまっているようなんですね。つまり、許可された数は明らかなんですが、申請数というのが消えてしまったのはなぜなのか。それは情報公開の中で明らかにしてもよいのではないかという点についてだけ伺います。
  210. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の、法務行政の年間の動向について編さんしております法務年鑑におきましては、御指摘のように、現在帰化許可者の数だけを掲げているところでございます。従前の取り扱いから変わった、大分古いことでございますので、どういう事情で変わったのか今つまびらかではございませんが、私どもといたしましては、申請者の数の増減の動向というものは帰化者数の動向と大体一致しているというようなことから、帰化者数を登載することによってその趨勢も認識いただけるんではないかというようなことからそういう取り扱いをしているわけでございます。  なお、将来の問題につきましては、御指摘の情報公開の流れ等を踏まえて、帰化事件の公表のあり方について考えていきたいというふうに思っております。
  211. 保坂展人

    ○保坂委員 それじゃ、追加で一点だけ。  それは、申請者数を出していないという的確な理由というのはそうないというふうに判断してよろしいですか。
  212. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 特段の理由はないのではないかというふうに考えます。
  213. 保坂展人

    ○保坂委員 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について、ぜひ難民条約の趣旨、先ほど外務省さんからも国際社会での日本の立場ということでお話もありました。そして入管当局も、本当に少ない人数で大変なお仕事だと思いますけれども、ぜひ知恵を合わせて、正当な理由のある難民認定についてはきちっと受けていくという道も後退させないということをお願いして、私の質問にかえたいと思います。
  214. 八代英太

    八代委員長 次に、坂上富男君。
  215. 坂上富男

    坂上委員 坂上富男でございますが、きょうは私はしんがりで質問させてもらいます。委員の先生方の御協力をいただきまして、私の都合によって遅くなったのでございまして、大変ありがとうございました。  早速でございますが、この入管法改正問題について我が党は賛成をいたしております。また、私個人としても賛成でございますので、今までの長い間の先生方の質問を援用させていただきまして、これはこの程度で、私の方は賛成ということで御理解をいただきたい、こう思っておるわけであります。  直接関係ありませんが、ちょっと刑事局に聞きたいと思います。  この間、動燃が虚偽報告をしたことに対しまして、科学技術庁は、いわゆる原子炉等規制法に基づきまして虚偽報告の告発をなさった、こうありますが、そこで刑事局に聞きたいのでございますが、この動燃の職員、役員というのは、公務員ですか。  それから、これらの諸君がつくる、特に原子炉規制法にありますところの内閣総理大臣に報告をする、そういう報告文書というのは僕は公文書だろうと思うのでございますが、これはどうですか、法律上。もう簡単でいいですから。
  216. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  動力炉・核燃料開発事業団法がございますが、その二十二条によりますと、この事業団の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用に関しましては公務員とみなされるという規定がございます。  そこで、一般論として申し上げますれば、公務員が作成した文書は、それが職務工作成されたことなどの一定の要件を満たしますと刑法上の公文書に該当することとなるわけでございますが、具体的な文書がここで言う公文書に当たるか否かは、その文書の性質等によって個別に判断されるべきものであると考えられております。  御質問は、現在捜査当局におきまして捜査中の事案に関するものでございまして、具体的事案における犯罪の成否は、捜査当局が収集した証拠に基づきまして、その事実に即して個別、具体的に判断されるべき事項でございますので、法務当局といたしましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。  以上でございます。
  217. 坂上富男

    坂上委員 科学技術庁がおっしゃっております虚偽文書というのはこの中に書いてあるんですね。事業団から科学技術庁長官あての第一報という文書なんです。これは法律にのっとって出しているんですね。今の法務省の御答弁のありますとおり、これがもし虚偽文書で、しかも刑法上の虚偽公文書作成、そして明らかにこれは行使ですから同行使、こういう罪名なんですね。  科学技術庁が告発をしたのは、処罰規定を見てみますると罰金なんですね。こんな国民の激しい、全国的な怒りがあるわけでございますが、これを単に罰金で処罰しよう、こういう考え方、これじゃ国民納得しません。ちょうどあの金丸氏が罰金で処罰された、激しい国民の怒りになった、そこでもう一遍やり直しをするという状況になった。私はどうも、科学技術庁はみずからのアリバイのためにこれだけちょろりと告発をして、それでやめようとしているんじゃないかと思う。  だから、おかしいおかしいと思って、全部、私はない頭を調べてみたら、虚偽公文書作成だ、同行使だ。体罰規定があるわけでございます。だから私は刑事局長に聞いたわけでございますが、何で科学技術庁、虚偽公文書作成、同行使として告発しないのかね。国民納得しませんよ。簡単に。
  218. 片山正一郎

    ○片山説明員 御説明を申し上げます。  当庁といたしましては、本件の捜査が時期を逸しないように告発をできるだけ早く行うという観点から、違法行為が確実にあったと判断できるものに限って告発したということでございます。したがいまして、本件虚偽報告問題に関して既に捜査当局で捜査が開始されておるわけでございますが、御指摘の刑法の公文書偽造、行使については、必要であれば捜査の促進に協力するという観点から検討してまいりたいと考えでございます。
  219. 坂上富男

    坂上委員 警察、これに関する捜査はどうですか。  これは単なる刑事訴訟法によるところの公務員の告発なんですね、この特別法によるところの告発でもないんですね。だから、ちょろちょろと国民の目をごまかすだけで、新聞も大きく書くものだから、大変重罪のことをやったんだろうかと思って、みんな、ああよくやるなと思った。よくよく調べてみると罰金だ、金丸と同じだ。こういうようなことで、科学技術庁は、おれらと動燃は違うんだよと。国民にアリバイづくりのためにやっているんじゃないの。  警察、どうですか、こういうようなことについて。今後の捜査の方針どうなりますか。
  220. 園田修光

    園田説明員 お答え申し上げます。  御質問の動燃東海事業所における火災・爆発事故に係ります虚偽報告事案につきましては、四月十六日、科学技術庁から茨城県警察に対しまして、原子炉等規制法違反容疑で告発がなされたところでございまして、現在茨城県警察において事案の真相解明に向けまして鋭意捜査を行っておるところでございます。  警察といたしましては、これらの捜査によりまして解明された事実に即して、刑罰法令に触れる行為については、法と証拠に基づきまして厳正に対処してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  221. 坂上富男

    坂上委員 虚偽公文書はどういう対応をするのです。
  222. 園田修光

    園田説明員 お答え申し上げます。  犯罪の成否につきましては、捜査によって収集しました証拠に基づいて個別、具体的に判断されるものと考えておりますが、捜査を行うに当たりまして、あらゆる法令を視野に入れるべきことは当然であると考えております。
  223. 坂上富男

    坂上委員 新聞では失火罪もやる、こう書いてある。虚偽公文書作成、同行使、これがやはりこの事件の基本じゃないですか。ぜひひとつ、警察の方はこの点についてきちっとやってください。もうはっきりと虚偽文書を報告をした、こう書いてあるのだから、告発したのだから。公務員なのだから、公務員がつくる公文書なのだから、これほどはっきりした犯罪はないのです。でありますから、きちっと対応していただきたい。  これに比べてみて、きのうの参議院における沖縄の諸君の二十一名の逮捕だ。これは一体、きょうはもう釈放しましたか。釈放してくださいよ、どうですか。この事件の内容をちょっとお話しください。私は、きょう、ずっと出張していたものですから、詳しい内容を調べていないのでございますが、どんな程度状況になっておるのでございますか。どうぞ。
  224. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  警視庁からの報告によりますと、昨日、四月十七日の午後開催をされました参議院の本会議場におきまして、いわゆる駐留軍用地特別措置法が審議をされていたところでございますが、その際、午後二時五十四分ごろ、傍聴席にいた傍聴者のうち二十人がやじを飛ばすなどして議事を妨害し、約五分間議事が中断した。さらにまた、午後三時三十二分ごろ、傍聴者一名が大声を出し議事を妨害した。これらの行為に対しまして、所定の手続を経て、参議院の衛視が二十一人全員を威力業務妨害罪で現行犯逮捕し、警視庁がその身柄の引き渡しを受けたものであります。身柄の引き渡しを受けた警視庁では、威力業務妨害事件として、現在捜査中でございます。  以上でございます。
  225. 坂上富男

    坂上委員 これは私、余り時間をとりたくないから、もう簡単に答えてください。  どこで引き渡しを受けたの。国会法と参議院規則を見ますと、議場における逮捕というのは、議長の命令なんだな。それから、院内において議場を出たところの逮捕は、逮捕したら直ちに議長から指示をもらわなければならぬことになっているわけでございます。これ、どっちだったのですか。警察、わかりませんか。それからもう一つ、送検するのですか、きょうはもう、それも。
  226. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、身柄につきましては、逮捕につきましては所定の手続が綴られたというふうに理解をしております。  その経緯につきまして御説明をいたしますと、二十一人の身柄の引き渡しにつきましては、参議院の警務部長から警視庁麹町警察署長あてに国会法に基づき身柄を引き渡す旨の文書が提出をされ、その際、当該文書を持参した参議院警務部警備第一課長が、現行犯逮捕した二十一人の身柄を引き渡しますと申し出たわけでございます。それにより警視庁は二十一人の身柄の引き渡しを受けたものであるとの報告を受けております。  送検をするか否かでございますが、警視庁におきましては、威力業務妨害事件として捜査を行っておりまして、検察庁に送致する予定であると承知をしております。  以上でございます。
  227. 坂上富男

    坂上委員 これ、どこで引き渡しを受けたか、こう聞いているわけ。参議院の議長室ですかとかそういうことを聞いているのです。それが一つ。  それから、この特措法、まさに沖縄の人にとりましてはこれが圧制と差別の沖縄の歴史である、こう沖縄の諸君が本当に必死の願いでもってこの法案の成立の阻止に動いていたわけです。  我が党は賛成をする、こういう決定、あわせて党議拘束だ、こういうことでございますが、私はまあまさに法律家の端くれといたしまして、私自身が、実はあの板付飛行場のあの裁判、私も多分代理人だったろうと思うのです、松本治一郎先生がやった裁判、権利濫用で負けたわけだ、明け渡し請求の。それから、沖縄の緊急使用に対する判断、これを聞いてみると、この二つを掛け合わせますと、今どうしても特措法をつくる必要は全くない、そういうような私のささやかな良心からこれについて反対をしたわけです。  でありまするから、まさに沖縄の皆様方の心を私の心として、私は、いかなる処分を受けようと対応してきたわけであります。それが、あに図らんや、今回逮捕されるなんという大変な事態が起きてしまったわけでございます。審議妨害なんというのはいっぱい国会の中であります。こんな程度でもって私は、なるほど国権の最高機関ではありますけれども、沖縄の皆様方の心情を考えてみますると、果たしてこれ、逮捕し、勾留し、裁判請求する必要性があるのだろうか、大変疑問です。できたならば送検しないでほしいと私は願っておりますが、いま少し御答弁いただきましょうか。
  228. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  身柄の引き渡しを受けた場所はどこかという御質問につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、参議院の衛視が逮捕した二十一人の身柄の引き渡しを受けた場所は警視庁麹町警察署でございます。  なお、送検するか否かにつきましては、法と証拠に基づいて捜査をしておるところでございます。送検すべきということに認められましたら、送検をいたすところでございます。
  229. 坂上富男

    坂上委員 では、これはこれでやめます。  次に、ちょっとお聞きをしたいのでございますが、外国人研修制度、労働者研修制度と言うのですかね。これは二年間、これを今度三年に延ばすというような話もあるのでございますが、それからどういう業種を三年に延ばすというふうになっているのか。これはいろいろちょっと報道されるものでございますから、私たちの三条、燕の皆様方からは、いつどういうふうになるのだろう、いつから延びるのだろうという照会がもうしょっちゅう来ているのでございますが、どうなっていますか。
  230. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 委員指摘の制度は技能実習制度というものでございますけれども、今これが、滞在期間が最長で二年間となっておりますけれども、高度な技能を学ぶためには二年では足りないという声もございますので、これを、滞在期間三年というものを新たに認めようということで、できれば今月中にもこういう新しい制度を始めたいと思っております。  ただ、三年間でそれではどういう技能を習得するのか、その目標が定まったものから三年間というものを認めていこうということで、今、技能検定三級という評価制度ができている職種から始めてみようか……(坂上委員「どういう職種です」と呼ぶ)これは、今八職種ありまして、機械検査、配管、機械加工、とび、プラスチック成形、メッキ、電気機器組み立て、内装仕上げ施工とございますが、労働省の方でこの夏ごろをめどにこの技能検定三級の評価制度を二十職種ぐらいに広げたいということで、この三年間に延びる職種をふやしたいという計画でございます。(坂上委員「いつからでございますか」と呼ぶ)これは、この制度自体を始めるのはこの四月下旬ぐらいをめどに始めたいと思いますが、職種がさらにふえるのは夏ごろになるかと思います。
  231. 坂上富男

    坂上委員 賛成でございます。また、業界の方々も渇望して待っておられますから、できるだけ早く、そして幅広くやっていただきますこともお願いをしたいと思います。  これの問題点については、私は、衆議院の予算委員会の分科会でいろいろとこの保険関係の矛盾を指摘をしましたので、この辺も頭に置いてひとつ対応していただきたい、こういうふうに思います。  さて、さっき私らの方の仲間の佐々木先生からお話があったと思うのでございますが、この間、私もフィリピンの残留日本人のことについてお話をお聞きいたしました。いろいろ調べてみました。それで、西田先生でございますか、弁護士先生が本当に身を犠牲にしてフィリピン残留日本人のために御尽力をいただいておるお話を、三度にわたりましてお話を聞きまして、私、大変頭の下がる思いでございました。そして、これはもう国会としても放置できない、そんなようなことから、本日ここでおられる各党の先生方にもお願いをしたいのでございます。  私が今ちょろちょろとこんな質問をして終わる話じゃございませんで、これは中国の残留孤児と同じような大がかりな問題だろうと私は思っておるわけでございます。したがいまして、私は、法務当局あるいは御出席の各省庁の皆様方からも御協力をいただきたいし、各党の先生方からも御協力をいただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。でありまするから、きょうはほんの最初の質問でございますが、御理解をいただいて、今後のひとつ運動のために資したい、こう思っておるわけであります。  そこで、まず冒頭お聞きをしますが、あるいは佐々木先生からお聞きになっておったら撤回いたしますから、一つだけお聞きをします。  フィリピン残留日本人、戦前日本人の男性を父、フィリピン人を母に持つ嫡出ないし非嫡出の子の国籍は日本なのかフィリピンなのか。フィリピン人である場合はどのような場合であるか。またその法的根拠はどこか。こういうことでございますが、簡単で結構です。
  232. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の場合につきましては、御本人が生まれる前に日本人男性とフィリピン人女性との婚姻が成立しているという場合には、これは旧国籍法第一条の規定によりまして、その生まれた子は日本国籍を取得するということになります。  他方、日本人男性とフィリピン人女性の間に法律上の婚姻関係がないという場合には、これは旧国籍法当時、昭和二十五年六月三十日までの間に日本人父がその子を認知しているという場合には、旧国籍法五条三号の規定によって、その子は日本国籍を取得するということになります。  他方、父母が婚姻していない場合で、かつ、今のような父からの認知がされていないという子の場合については、これは日本国籍を取得しない、基本的にはフィリピン国籍を取得するということになるのではないかというふうに考えられます。
  233. 坂上富男

    坂上委員 さて、ここに私は「フィリピン残留邦人事件調査報告書」、一九九五年十二月、日弁連人権擁護委員会の報告書を持ってまいりました。これは各省庁にもお配りになっていると思うのでございますが、これを読むと本当に大変なことが書かれておるわけでございます。  まず、一九九三年二月二十六日、フィリピン日系人会連合会、フィリピンの十四存在する各地の日系人会が一九九二年に結成した連合体でございます。規約を有するフィリピン政府公認の非政府組織でございまして、会員数は一万二千人、現在の長はこれこれの方、そして人権擁護委員会において、国を相手として、以下の内容の人権救済を求めて申し立てに及んだ。こういうことから始まりまして、ずっと書かれているわけでございます。ちょっとさわりの部分を読ませていただきます。   一九四一年十二月八日のアジア・太平洋戦争開戦当時、フィリピンにはダバオ、バギオを中心に約三万人の日系人社会が存在した。一世は日本から移民した日本人、二世・三世は父が日本人、母がフィリピン人のケースが多いが、両親とも日本人のケースもある。フィリピン在留邦人は、戦争がはじまる直前の一九四一年七月フィリピン独立準備政府により外国人登録を強制され、開戦後の一九四二年九月には日本軍により全員が日本人として登録することを強要された。そして、彼らは日本軍の軍人・軍属に徴兵・徴用されるなど様々な形で日本の侵略戦争に荷担させられ、母の国フィリピンと敵対する立場に置かれた。フィリピン在留邦人の大部分は戦争中日本人として戦争に参加し戦ったのである。そして、父親の多くは激戦地フィリピンで戦死し、運よく生き残った父親も米軍に強制収容された後、戦後日本に強制送還された。このため、日本人の父親と日系二世・三世の子供たちは日本の敗戦を境に引き裂かれ、三千名余りが戦後もフィリピン社会に置き去りにされた。また、戦前日本人と結婚したフィリピン女性は戦争で夫を失い、あるいは日本の敗戦を機に強制的に夫と引き離された。  フィリピン残留の二世・三世たちは、戦争中の日本軍のフィリピン人に対する数々の残虐行為に対する報復を逃れるため、あるいは、フィリピン社会における日系人に対する迫害や差別の中で生き抜くためフィリピン名を名のるなどしてフィリピン人を装い、日本人であることを徹底的に隠して生き延びた。彼らの多くは、戦争により父親や財産を失った結果十分な教育を受けることができず、また就労の機会も乏しくフィリピン社会の底辺で苦難の人生を歩んできた。 こういうようなことがずっと書かれておるわけでございます。  そこで、問題は、こうあるわけでございます。「フィリピン残留邦人を放置した日本政府」と書かれております。   日本政府は、戦争中はすべての日系人を日本人として扱い、処罰の強制の下で各地の日本人会に在留邦人の身分登録をさせた。そして、適齢の日系人を軍人・軍属に徴兵、徴用するなどしてすべての日系人を総動員しフィリピンでの軍事占領を遂行した。ところが、戦後は一転して、「フィリピン残留邦人問題」を放置し、フィリピン社会に取り残された残留邦人たち実態調査、身元調査をほとんど行わず、彼らの日本への帰国を援助する政策を取らなかった。  このため、残留邦人たちは、父親を失い、財産を失い、日本人としてのアイデンティティーさえも奪われ続けたのである。彼らの大多数は日本国籍を有する日本人でありながら戦後日本政府に保護されないまま今日に至っている。  これまでフィリピン残留孤児問題の存在に気付き、彼らの実態を調査し援助の手を差しのべて来たのは民間人であった。こう書かれておるわけであります。  そこで、「問題の所在」、これをしてくれと言うんですね。一、「残留邦人の実態調査」。二、「肉親捜し」。三、「戸籍の発見、身分事項の戸籍への記載、パスポートの発行」。四番目、「戦傷病者戦没者遺族等援護法などの適用」。「帰国などに対する援助」。それから、「フィリピン残留邦人および日系人社会への支援」。こういうようなことを何としてもしなければいけませんというのがここに書かれておるわけでございます。  そこで、結論として、こうあるわけでございます。いわゆる中国残留孤児の問題に絡まりまして、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の規定によりまして、「この法律の適用範囲についてであるが、中国地域以外の残留邦人に対しても厚生省令で定めることにより、適用される旨、この法律の中で明記されている点が注目される。」こう言っておるわけでございます。  そこで、中国残留邦人との対比、そして日本政府のなすべきこと、要請すべきこと、こういうことをずっと摘示をいたしまして、これをもとにいたしまして一九九六年二月九日、橋本総理大臣、それから当時の長尾法務大臣、池田外務大臣、それから菅厚生大臣、これに要望書が六項目にわたりまして出ておるわけでございます。これは、もう各省庁お出かけをいただいておるから読まれておると思うのでございますが、本当に要望事項、実践なさっているのでしょうか、対処されておるのでございましょうか。これからもう一回やり直しをしなければならぬなと私は思っているのでございますが、率直なお話をまずお聞きしたい、こう思っておりますが、各省庁どうぞ。簡単に、時間ありませんから。
  234. 平松賢司

    ○平松説明員 簡単にお答えいたします。  外務省といたしましては、二度にわたりましてフィリピン残留日本人に関する実態調査を実施しております。その実態調査の結果を踏まえまして、国籍確認、日本旅券の取得、定住者査証の取得等につきまして、できるだけ円滑な審査が行われるような体制をつくるべく努力をしておりますし、フィリピンに残留しておられる方でフィリピンに引き続き生活したいという方につきましても、フィリピンの永住権の取得等につきまして、フィリピン政府に対しまして特段の配慮を要請してきておりますので、今後とも種々の機会をとらえまして同様の要請をする所存でございます。  以上でございます。
  235. 竹之下和雄

    ○竹之下説明員 厚生省といたしましては、中国残留邦人の場合は外交上の理由で帰国できなかったという非常に大きな部分がございまして、フィリピンを含めた南方の皆様方にこの法律を即適用するということは非常に困難だと考えております。  ただ、私どもは、旧軍人軍属の資料を旧陸海軍から引き継いておりますので、それに基づいてわかる範囲で今までも肉親の消息調査をやってまいりましたし、今後とも続けていこうと思っております。
  236. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の要望書、要望事項のうち、法務省民事局が直接所管する事項としまして、ただいまお触れになりました戸籍への記載という問題があるわけでございます。残留邦人の方々の、本人あるいはその両親の過去の婚姻あるいは出生の事実に基づいて戸籍の記載をしてもらいたいという要請がございます。戸籍の記載につきましては、重要な事柄でございますので、正確な資料が必要であるということの関係において、いろいろどういうふうに取り扱うという問題があるわけでございますが、この点は先ほど佐々木委員の御質問にもお答え申し上げましたけれども、その戸籍の処理につきましては、フィリピン残留邦人の方々の置かれた特殊な事情を考慮しながら、適切かつ、できるだけ迅速な処理をするということで対応をしているところでございます。これからもそういう方向で対応してまいりたいと考えております。
  237. 伊集院明夫

    伊集院政府委員 ちょっと補足しますが、フィリピン残留邦人の帰国の問題でございますが、日本の旅券または帰国のための渡航証明書を所持している場合には日本人として帰国の手続をとっておりますし、こういう書類を持っていない場合にも、日系人としての要件に該当していると認められる場合には、これもの方々の置かれている状況に配慮しまして、とりあえず外国人として入国を認めるということにしております。
  238. 白石順一

    ○白石説明員 ただいま関係する省庁から御説明ございましたように、私ども、内閣総理大臣の方にも、昨年の二月九日付の文書を十二日にちょうだいしておりまして、それを関係する、今御答弁ございました各省庁の方に回付いたしまして、それぞれの施策への反映をお願いしてございます。
  239. 坂上富男

    坂上委員 きょうはほんの序の口でございますからこの程度でおやしますが、今後、機会あるたびにうちらの方では、法務、外務、厚生を中心にして、あるいは予算等で質問させていただきます。そういうふうな状況でございますが、これは一回や二回や十回の質問で終わる話じゃないのでございまして、ずっと腰を入れて何年がかりでこの問題に対処しなければならぬと思っておるわけでございます。でありますから、各党の先生方にも今この席でお願いをしております。また、別途お願いにも参ります。あわせて、また各省庁もどうぞひとつ、内閣の方で十分連絡をとっていただいて、この問題に対処していただきたいと思っておるわけでございます。  中国の残留孤児の問題は、日本人同士の中で生まれた子供で、まさに敗戦とともに置き去りにしてきたということがものの中心なんですね。このフィリピンは、どちらかといいますと、日本人の父親、そしてフィリピン人の母親、その間に生まれた子供たちが、父と別れたで、日本人でありながら生まれたまま戸籍がなかったり、そんなような状況にあって、大変な困難の中で今生きているというようなことなんですね。したがいまして、少し性格は違いますけれども、全く同じ関係であって、どちらかといいますと、このフィリピンの方はもう知らなくていいわというようにとられがちの問題なんでございますが、実は、これはもう絶対に放置できない問題だと私は思ってこの質問から始めさせていただいているわけでございます。  どうぞ、そんなような事態でございますので、ぜひ関係官庁の方からは、ひとつきちっと腰を入れて、また我々にアドバイスをしていただきながら、私たちがやるべきこと、政府がやられなければならないこと、いろいろと検討いただきたい、こう思っておるわけであります。どうぞ、その先頭に法務大臣がひとつ立っていただきたい、こう思っておりますが、決意のほどをお聞きいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思っています。
  240. 松浦功

    松浦国務大臣 坂上先生の御意見は十分拝聴させていただきました。
  241. 坂上富男

    坂上委員 ありがとうございました。
  242. 八代英太

    八代委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  243. 八代英太

    八代委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  244. 八代英太

    八代委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  246. 八代英太

    八代委員長 この際、請願取下げの件についてお諮りいたします。  本委員会に付託になっております五年別居条項等導入する民法改悪反対に関する請願第一六一二号につきまして、去る十一日、紹介議員坂上富男君から取下願が提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会      ————◇—————