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坂上委員 さて、ここに私は「フィリピン残留邦人
事件調査報告書」、一九九五年十二月、日弁連人権擁護
委員会の報告書を持ってまいりました。これは各省庁にもお配りになっていると思うのでございますが、これを読むと本当に大変なことが書かれておるわけでございます。
まず、一九九三年二月二十六日、フィリピン日系人会連合会、フィリピンの十四存在する各地の日系人会が一九九二年に結成した連合体でございます。規約を有するフィリピン政府公認の非政府
組織でございまして、会員数は一万二千人、現在の長はこれこれの方、そして人権擁護
委員会において、国を相手として、以下の内容の人権救済を求めて申し立てに及んだ。こういうことから始まりまして、ずっと書かれているわけでございます。ちょっとさわりの部分を読ませていただきます。
一九四一年十二月八日のアジア・太平洋戦争開戦当時、フィリピンにはダバオ、バギオを
中心に約三万人の日系人社会が存在した。一世は
日本から移民した
日本人、二世・三世は父が
日本人、母がフィリピン人のケースが多いが、両親とも
日本人のケースもある。フィリピン在留邦人は、戦争がはじまる直前の一九四一年七月フィリピン独立準備政府により
外国人登録を強制され、開戦後の一九四二年九月には
日本軍により全員が
日本人として登録することを強要された。そして、彼らは
日本軍の軍人・軍属に徴兵・徴用されるなど様々な形で
日本の侵略戦争に荷担させられ、母の国フィリピンと敵対する立場に置かれた。フィリピン在留邦人の大部分は戦争中
日本人として戦争に参加し戦ったのである。そして、父親の多くは激戦地フィリピンで戦死し、運よく生き残った父親も米軍に強制収容された後、戦後
日本に強制送還された。このため、
日本人の父親と日系二世・三世の子供たちは
日本の敗戦を境に引き裂かれ、三千名
余りが戦後もフィリピン社会に置き去りにされた。また、戦前
日本人と結婚したフィリピン女性は戦争で夫を失い、あるいは
日本の敗戦を機に強制的に夫と引き離された。
フィリピン残留の二世・三世たちは、戦争中の
日本軍のフィリピン人に対する数々の残虐
行為に対する報復を逃れるため、あるいは、フィリピン社会における日系人に対する迫害や差別の中で生き抜くためフィリピン名を名のるなどしてフィリピン人を装い、
日本人であることを
徹底的に隠して生き延びた。彼らの多くは、戦争により父親や財産を失った結果十分な教育を受けることができず、また
就労の機会も乏しくフィリピン社会の底辺で苦難の人生を歩んできた。
こういうようなことがずっと書かれておるわけでございます。
そこで、問題は、こうあるわけでございます。「フィリピン残留邦人を放置した
日本政府」と書かれております。
日本政府は、戦争中はすべての日系人を
日本人として扱い、処罰の強制の下で各地の
日本人会に在留邦人の身分登録をさせた。そして、適齢の日系人を軍人・軍属に徴兵、徴用するなどしてすべての日系人を総動員しフィリピンでの軍事占領を遂行した。ところが、戦後は一転して、「フィリピン残留邦人問題」を放置し、フィリピン社会に取り残された残留邦
人たちの
実態調査、身元調査をほとんど行わず、彼らの
日本への帰国を援助する政策を取らなかった。
このため、残留邦
人たちは、父親を失い、財産を失い、
日本人としてのアイデンティティーさえも奪われ続けたのである。彼らの大多数は
日本国籍を有する
日本人でありながら戦後
日本政府に保護されないまま今日に至っている。
これまでフィリピン残留孤児問題の存在に気付き、彼らの
実態を調査し援助の手を差しのべて来たのは民間人であった。こう書かれておるわけであります。
そこで、「問題の所在」、これをしてくれと言うんですね。一、「残留邦人の
実態調査」。二、「肉親捜し」。三、「戸籍の発見、身分事項の戸籍への記載、パスポートの発行」。四番目、「戦傷病者戦没者遺族等援護法などの適用」。「帰国などに対する援助」。それから、「フィリピン残留邦人および日系人社会への支援」。こういうようなことを何としてもしなければいけませんというのがここに書かれておるわけでございます。
そこで、結論として、こうあるわけでございます。いわゆる
中国残留孤児の問題に絡まりまして、
中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する
法律の規定によりまして、「この
法律の適用範囲についてであるが、
中国地域以外の残留邦人に対しても厚生省令で定めることにより、適用される旨、この
法律の中で明記されている点が注目される。」こう言っておるわけでございます。
そこで、
中国残留邦人との対比、そして
日本政府のなすべきこと、要請すべきこと、こういうことをずっと摘示をいたしまして、これをもとにいたしまして一九九六年二月九日、橋本総理大臣、それから当時の長尾法務大臣、池田外務大臣、それから菅厚生大臣、これに要望書が六項目にわたりまして出ておるわけでございます。これは、もう各省庁お出かけをいただいておるから読まれておると思うのでございますが、本当に要望事項、実践なさっているのでしょうか、対処されておるのでございましょうか。これからもう一回やり直しをしなければならぬなと私は思っているのでございますが、率直なお話をまずお聞きしたい、こう思っておりますが、各省庁どうぞ。簡単に、時間ありませんから。