○正森
委員 一応の
説明を伺ったのですが、先ほど聞いておりますと、同僚
委員からも、
事件数はどのくらいかという
質問がありましたので、
質問するかわりに私の方から申し上げますが、
調査室の資料によりますと、例えば
地方裁判所の民事
事件は、
平成七年が八十六万余り、
平成三年が六十二万余りで、約一・三八倍にふえているはずであります。それからまた、
地方裁判所の刑事
事件につきましても、一・一八倍くらいにふえています。特に、高等
裁判所の民事新受件数は、二万九千六百二十四件、これは
平成七年で、
平成三年が二万三千九百八十九ですから、一・二四倍にふえております。これは資料ですから、多分正確であろうと思われます。
そういう点からいいますと、
裁判官の
定員増というのが非常に少ないということは、今同僚
委員が言われたとおりであります。法務大臣もおられますので、細かいことはもう結構ですが、
裁判官の人数の推移について若干申しますと、明治二十三年には、
裁判官が千五百二十一名おられたそうです。そのときに
弁護士の数は千三百四十五名でした。それが
平成八年には、二千八百七十九人に
裁判官がふえ、ほぼ二倍弱になりました。
弁護士の方はどうかといいますと、一万五千九百七十三人で、約十二倍にふえております。ですから、ふえ方において
裁判官が非常に少ないということは相対的に言えると思います。
同僚
委員も言われましたが、この間、日本
弁護士連合会は昨年五月三十一日に
シンポジウムを開きました。これは、「忙しすぎる
裁判官」といって、こういう本になっております。また、
裁判官の日常をよく知ってもらうために、「
裁判官の一週間」ということで、これは仮名になっておりますが、実際上は、最近おやめになった
裁判官からの事情聴取に基づいて、ほぼ
裁判官の生活はどういうものかということを典型的な、これを見ますと、
大都市の近郊に配属されている民事の
裁判官、九年たった特例のついた
判事補の例、それから地方支部の支部長をしておられる方、それから高裁の左陪席をされている方という三人を挙げて書いておられます。
時間の関係で、そのうちの二つだけを
紹介しますと、九年たった
判事補は、今も話が出ましたが、合議
事件が約八十件、
単独事件をA係、B係でそれぞれ百五十件持って三百件、全部で三百八十件持っている。自分の
単独事件を
処理するのに精一杯で、合議
事件には余り身を入れず、合議の記録はほとんど読んでいない。これは、
裁判長が非常にわけのわかった方で、君は単独が大変だろうから、合議は余りやらぬでいいよ、こう言ってくれたのに、女性
裁判官ですが、甘えたんだということが書いてありますけれども、それぐらいの非常な大きな分量だ。
そして、十時に
裁判が始まる前に、朝のうちに二件和解
事件を入れる。
裁判が入っていない日は、一日に十六、三十分おきに和解
事件を入れるということが書いてあります。日曜日や土曜日は休みということになっているけれども、土曜日は完全に仕事に充てる。日曜日も夜は深夜まで仕事をする。一週間に大体八十時間働いておる。今、週四十時間ですね。八十時間働いておる。平日は十二時間から三時間、土曜日十二時間、日曜日六時間ぐらいだ。
こういうことで、
裁判で現場検証は事実上できない。和解は、早く和解してくれれば一丁上がりになりますから、どうしても、これで和解しておいた方がいいですよ、下手したら負けますよ、そこまでは言わぬでしょうが、それに近いことをにおわして押しつけるということがあるということを
シンポジウムなんかで言っておられるんですね。せめて手持ち
事件が二百件ぐらいであれば、これはありがたいんだがということで、この
裁判官の平均睡眠時間は五時間であるというように言っておられます。
あるいは、もっとひどいのが高裁の
裁判官のようですね。これを見ますと、高裁の
裁判官は約二百五十件持っているが、右陪席と左陪席で半分に分けるから百二十五件だということで、高裁の
事件は一審と違いまして、一審で争ってそれぞれが満足しないで控訴するわけですから、記録もこんなにあるし非常に大変だということで、新作が二十五件は来るから、右と左に分けると一人が十二、三件は解決しなければならぬということで、大変な激務であるということを言われまして、この方も土曜日も日曜日も働くということですが、高裁の同僚は、「心身の健康を保って高裁勤務を乗り切ること」。「乗り切ること」なんて書いてあるんですね。これが高裁の
裁判官になったときに皆思うことであるということで、「
裁判官の仕事があまりにも忙しいために、日曜日は月に一回休めるようにしてほしいと最高裁に上申した
裁判官がいた。」こう書いてあるんです。これは非常に厳しい。民間じゃないんですね、週休二日のはずの
裁判官が、せめて月に一回は休みたいと言って、事もあろうに、労働者あるいは働く者の労働時間などを守る、そういう判決をしなければならない
裁判官がそういう申請を出しておる。
その結果どうなっておるかというと、高等
裁判所の
裁判官にノイローゼや自殺者が非常に出ている。自分の知っている
裁判官で四人自殺した。うち三人は高裁時代に実際自殺した。「二人は庁舎から飛び降り、一人は高裁勤務当時、フェリーで飛び込み、もう一人は高裁勤務当時に踏切に飛び込む。原因は、勤務の量と質のハードさ、それをこなせない自分に気づいたときにショックを受け、うつ病になるというパターン」、こう書いてありますね。
ですから、そういうのを見ますと、やはり
国民の権利を守るためにも、
裁判官に
裁判官としての誇りを持って、余裕を持って
裁判をする意味でも、今
給源が
修習生だけだからとか言われましたが、
弁護士人口をふやすだけでなしに、
裁判官の人口を
計画的にふやすということで、もちろん我が国は単年度主義ですけれども、大きな大体の目標を持ってそれを
実現するようにする必要があるんじゃないですか。簡潔に。