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1997-03-18 第140回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十八日(火曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 岸本 光造君 理事 橘 康太郎君    理事 横内 正明君 理事 上田  勇君    理事 鴨下 一郎君 理事 坂上 富男君    理事 正森 成二君       河村 建夫君    栗原 博久君       下村 博文君    滝   実君       棚橋 泰文君    谷川 和穂君       西川 公也君    福永 信彦君       茂木 敏充君    吉川 貴盛君       赤羽 一嘉君    漆原 良夫君       加藤 六月君    塩田  晋君       福岡 宗也君    石毛 鍈子君       佐々木秀典君    保坂 展人君       園田 博之君    笹川  堯君  出席国務大臣         法 務 大 臣 松浦  功君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省訟務局長 森脇  勝君  委員外出席者         衆議院事務局庶         務部長     清土 恒雄君         大蔵省主計局主         計官      飯原 一樹君         大蔵省証券局企         業財務課長   大西 又裕君         文部省高等教育         局学生課長   櫻井  清君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局人事局長  堀籠 幸男君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         最高裁判所事務         総局刑事局長  高橋 省吾君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     滝   実君   加藤 紘一君     茂木 敏充君   渡辺 喜美君     棚橋 泰文君   安倍 基雄君     塩田  晋君   冬柴 鐵三君     赤羽 一嘉君 同日  辞任         補欠選任   滝   実君     奥野 誠亮君   棚橋 泰文君     渡辺 喜美君   茂木 敏充君     加藤 紘一君   赤羽 一嘉君     冬柴 鐵三君   塩田  晋君     安倍 基雄君     ――――――――――――― 二月二十八日  選択的夫婦別姓導入のための民法改正に関する  請願北橋健治紹介)(第三一九号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (池端清一紹介)(第三二〇号)  同(石井紘基紹介)(第三二一号)  同(菅直人紹介)(第三二二号)  同(佐々木秀典紹介)(第三二三号)  同(佐々木陸海紹介)(第三二四号)  同(肥田美代子紹介)(第三二五号)  同(山元勉紹介)(第三二六号)  同(濱田健一紹介)(第三四七号)  同(武山百合子紹介)(第四〇一号)  同(丸谷佳織紹介)(第四二二号)  同(土井たか子紹介)(第四四三号)  同(中西績介紹介)(第四四四号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制法制  化に関する請願石井紘基紹介)(第三二七  号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願池端清一紹介)(第三二  八号)  同(石井紘基紹介)(第三二九号)  同(菅直人紹介)(第三三〇号)  同(佐々木秀典紹介)(第三三一号)  同(佐々木陸海紹介)(第三三二号)  同(肥田美代子紹介)(第三三三号)  同(山元勉紹介)(第三三四号)  同(濱田健一紹介)(第三四八号)  同(武山百合子紹介)(第四〇二号)  同(中西績介紹介)(第四二三号)  同(丸谷佳織紹介)(第四二四号)  同(土井たか子紹介)(第四四五号)  選択的夫婦別姓導入婚外子差別を廃止する  民法改正に関する請願古堅実吉紹介)(第  三三五号)  同(中西績介紹介)(第四二五号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願松本惟  子君紹介)(第三四六号)  同(土井たか子紹介)(第四四二号) 三月六日  夫婦別姓選択制法制化に関する請願肥田美  代子君紹介)(第四七一号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (石毛鍈子君紹介)(第四七二号)  同(金田誠一紹介)(第四七三号)  同(川内博史紹介)(第四七四号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第四七五号)  同(松本惟子君紹介)(第四七六号)  同(寺前巖紹介)(第五一八号)  同(中川智子紹介)(第五一九号)  同(平賀高成紹介)(第五二〇号)  同(松本善明紹介)(第五二一号)  同(矢島恒夫紹介)(第五二二号)  同(富田茂之紹介)(第五九五号)  同(深田肇紹介)(第五九六号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願石毛鍈子君紹介)(第四  七七号)  同(金田誠一紹介)(第四七八号)  同(川内博史紹介)(第四七九号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第四八〇号)  同(松本惟子君紹介)(第四八一号)  同(寺前巖紹介)(第五二三号)  同(中川智子紹介)(第五二四号)  同(平賀高成紹介)(第五二五号)  同(松本善明紹介)(第五二六号)  同(矢島恒夫紹介)(第五二七号)  同(富田茂之紹介)(第五九七号)  同(深田肇紹介)(第五九八号)  選択的夫婦別姓導入婚外子差別を廃止する  民法改正に関する請願川内博史紹介)(第  四八二号) 同月十二日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (小林守紹介)(第六四四号)  同(赤松正雄紹介)(第七二七号)  同(藤木洋子紹介)(第七二八号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願小林守紹介)(第六四五  号)  同(赤松正雄紹介)(第七二九号)  同(藤木洋子紹介)(第七三〇号) 同月十四日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (穀田恵二紹介)(第八六六号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制法制  化に関する請願枝野幸男紹介)(第八六七  号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願穀田恵二紹介)(第八六  八号)  五年別居条項等導入する民法改悪反対に関す  る請願近藤昭一紹介)(第九一〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十二日  選択的夫婦別姓制導入並びに非嫡出子差別撤廃  の民法改正に関する陳情書外一件  (第九七  号)  長野地方法務局白馬出張所の統廃合に関する陳  情書  (第九八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二号)      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長堀籠人事局長石垣民事局長高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 八代英太

    八代委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。松浦法務大臣。     —————————————  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 松浦功

    松浦国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、判事補員数を二十人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、一方において、地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員を百五十人増員するとともに、他方において、裁判所事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所職員を百二十九入減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所職員員数を二十一人増加しようとするものであります。  以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
  6. 八代英太

    八代委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 八代英太

    八代委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡宗也君
  8. 福岡宗也

    福岡委員 新進党の福岡宗也でございます。  私は、二点について御質問を申し上げたいと存じます。  まず第一点は、本年の三月三日の予算委員会第二分科会におきまして私が御質問いたしました、昨年に成立をいたしました民事訴訟法改正法案附則第二十七条と、それから衆参両議院における附帯決議により求められております公文書提出命令制度に関する審議の問題についてでございます。  この民事訴訟法改正は、公務員職務上の秘密公文書に関する改正部分は削除をして、これを棚上げとして従前どおりとする、こういう趣旨修正がなされまして、附則の二十七条と衆参両院附帯決議が付された上で可決をされたものでございます。  そして、附則二十七条では、「公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書を対象とする文書提出命令制度については、行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」そして、第二項において、「前項の措置は、新法公布後二年を目途として、講ずるものとする。」と定められたのでございます。  そして、参議院におきまして、附帯決議としてその第三項に、「政府は、附則第二十七条の検討に当たっては、公務員証人尋問についても、あわせて検討を加えるべきである。」こういうふうに決議をしております。さらに第四項において、「政府は、前二項の検討に当たっては、その経過を広く開示し、国民意見が十分反映されるように格段配慮をすべきである。」とも決議をしているわけであります。  この公務員裁判における証人尋問につきましては、刑事裁判につきましては刑事訴訟法の百四十四条におきまして、「公務員又は公務員であった者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁承諾がなければ証人としてこれを尋問することはできない。」そしてただし書きで、「当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。」こういう規定になっているわけであります。すなわち、職務上の秘密の問題に関する尋問でありましても、当該官庁は国の重大な利益を害する場合以外は承認拒絶ができないということを明定しておるわけですね。  ところが、民事裁判におきましては、改正前の旧民事訴訟法におきましては、刑事裁判と同様に職務上の秘密についての当該官庁承認を得ることを要するという規定は設けていながら、この承認拒絶するという要件については、刑事裁判と異なって全く定めがなかったわけであります。しかしながら、実務上では、ここに差を設けるのはおかしいということで、刑事訴訟法の百四十四条と同様に国の重大な利益を害する場合にのみ承認を拒むことができるんだというふうに解釈をされてきておったわけであります。  ところが、前回民事訴訟法改正におきましては、新民事訴訟法の百九十一条という規定を設けまして、この第二項におきまして、承認を拒むことができる場合といたしまして、刑事訴訟法と全く同じような公共の利益を害する場合という規定を置いたのですけれども、問題は、それ以外に公務執行に著しい支障を生ずるおそれがある場合も拒絶ができるということで、拒絶理由を広げたわけであります。支障を来すとかおそれがある場合とかという抽象的な表現でもって著しく拒絶範囲を広げてしまった。これが非常に問題になりまして、各方面からこれを指摘されたわけであります。したがって、刑事裁判との整合性の問題も、余りにも相違があり過ぎるということで批判が出てきたわけであります。  その結果、結局その審議過程において問題になりましたので、参議院において、公務秘密文書に関する提出命令に関する検討をなすときにこの問題についても同時に検討して、刑事裁判との整合性、その範囲の拡大をもう少し見直せ、こういうような形が先ほど申し上げた附帯決議の第三項だろうというふうに思うわけであります。  そこで、私の質問の第一は、この参議院附帯決議がなされた趣旨というのが私の述べたような趣旨でなされたものであるというふうに考えておられるかどうか、これをまず法務当局の方からお答えをいただきたいというふうに思うわけであります。
  9. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のありました昨年の新しい民事訴訟法に関する議論におきましては、議論中心は、ただいま御指摘ございましたように、いわゆる公務員が保有する文書についての文書提出命令制度に関する政府原案に対する批判というものが議論中心になったわけでございます。そういう議論を経て、御指摘のような修正がされ、この点についてはいわば白紙に戻して、新法公布後二年を目途として、いわば穴を埋める措置を講ずるということが附則で定められたわけでございます。  その議論の際に、これと類似の公務上の秘密の保持ということに関する証言拒絶事由のあり方というものが問題になったわけでございますが、この点につきましては、今御指摘のありました刑事訴訟法民事訴訟法規定の違いについては、それは両制度の違いに応じてそれぞれ違いがあるというふうに私どもは考えているということを御説明申しましたが、一部の議員からはそういうことについて今御指摘のような疑問も呈された。それから、証言内容公務上の秘密に属するかどうかの判断権をどうするかということについても検討が必要であるというような御意見もありました。  そういう御意見を踏まえて、この文書提出命令制度検討するということ、これがあくまでも中心でございますが、その機会にあわせて証言に関する制度についても検討するようにという趣旨で御指摘参議院附帯決議がされたというふうに理解をいたしております。     〔委員長退席岸本委員長代理着席
  10. 福岡宗也

    福岡委員 そうであるといたしますと、これは当然、この附帯決議でそういうふうになっておるわけですから、法務当局としましては早急に検討をしなければならぬ責務がある、こういうふうに思うわけでありますけれども、現在、具体的にこの証言拒絶の問題について検討に入っておられるでしょうか。ちょっと具体的に説明してください。
  11. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この附則二十七条に基づく検討につきましては、もう既に委員御案内と思いますが、法制審議会民事訴訟法部会の中に特別の小委員会を設ける、あわせて、ただいま御指摘のありました幅広く意見を聞くという観点から、これと並行的に法務当局において民事訴訟法専門家以外の方々の参画も得た研究会を組織して検討を始めているところでございます。  まだ現段階におきましてはヒアリングという段階でございますけれども、外国法制についての研究というようなこともお願いをいたしておりますし、いずれそれを踏まえて研究会としての議論整理ということが行われることが予定されております。この議論中心、あるいは研究中心、これはもちろん先ほど申しましたように文書提出命令制度でございますが、その中であわせて公務員証人尋問の問題についても研究議論がされるということを予定しております。
  12. 福岡宗也

    福岡委員 そうしますと、前回私が予算委員会分科会質問しましたときに、民事訴訟法部会提出命令小委員会とそれから研究会において提出命令の問題については検討されておるということですけれども、そこであわせて検討される、こういうことになるということですね。  そうしますと、この附帯決議のもう一つの第四項におきまして、前二項の検討に当たっては、その経過を広く開示し、国民意思を十分に反映するよう格段配慮をすべきだ、こういう附帯決議もついておりますけれども、この点について格段の御配慮というのは何かされておりますか。
  13. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいまも申し上げましたように、こういった議論法制審議会民事訴訟法部会の中の小委員会というところで検討するのが通常でございますが、御指摘附帯決議にあります国民意思が十分に反映されるようという観点から、そういう点も含めまして、研究会を設けて、そこには行政法の学者あるいは経済界労働界の代表の方々、そういった方々も入っていただいて、議論整理をしていただくことにしているのが一つでございます。  それから、法制審議会審議経過につきましては、総会及び部会については委員の御賛同を得て議事要旨を公開するということで一般に行われているところでございます。その下の小委員会については、これは部会検討のための前提の議論であるということで、そういう取り扱いはしないというのが一般でございますが、文書提出命令制度の小委員会につきましては、この附帯決議趣旨を踏まえまして、これもやはり議事要旨を公開して、どのような議論がされているかということを承知していただく、こういう方向委員の御了解を得て、そういう方向で考えたいと思っております。また、研究会につきましても、同様に議論要旨を備え置いて、ごらんいただきたい人にはごらんいただくという方向で取り扱っております。
  14. 福岡宗也

    福岡委員 どうもありがとうございました。  というわけで、これは民事裁判の真実の発見の問題も含めて、それから適正な裁判という観点からも非常に重要な問題であるというふうに思いますので、ぜひとも整合性のあるような制度になるように御努力をいただきたいということと、それから、公開も議事録要旨ということでございますけれども、できる限り詳細な報告をして、その審議過程というものが明確にできるように要望いたしまして、この問題については終わらせていただきます。  引き続きまして、本日の議題中心になっております判事補定員を二十名増加するという法案に関しまして御質問を申し上げたいと存じます。  御承知のように、我が国の憲法は国民基本的人権を広く保障をしているわけでありますけれども、その実現を図るためには国民裁判を受ける権利を実質的に保障するということが必要でありまして、裁判所の人的、物的施設を充実をして裁判の適正迅速をなすということが本当に肝要だろうというふうに思っております。その趣旨から、今回の判事補の二十名増員をなす法案につきましては全面的にこれに賛成をするものでございます。  しかしながら、裁判官の不足からきます裁判の遅延の問題、また判断の適正に対する不信の問題ということは、私が弁護士になりました当初、三十数年前ですけれども、そのころからもう既に指摘をされていたことでございます。それにもかかわらずなかなか遅々としてその改善が進まず、具体的に判事補定員がふえ始めたのは平成三年になって、大体毎年数名ということで、そして平成六年以降は毎年十名を超える判事補定員増が図られてきたわけであります。  しかしながら、実際に事件というものは、社会の多様化に伴いまして複雑になってまいりましたし、困難な問題も出てまいりました。さらには事件増加ということもございます。そういった点から見ると、今までなされた判事補定員増加によっては、裁判官負担過重、いわゆる忙し過ぎる裁判官という大きな社会問題というものは必ずしも解決をされてはいないというふうに思っております。  昨年に実施をされました日弁連シンポジウム「忙しすぎる裁判官」、こういうシンポジウムですけれども、ここにおきましても元裁判官その他の有識者から裁判官負担過重実態が詳しく報告をされております。  このような忙し過ぎる裁判官実態を解消いたしまして、適正にして迅速な裁判実現をして、国民法的救済のニーズにこたえるためには、判事補二十名の増員ということでは余りにも少な過ぎるというふうに私は考えております。  そこで、最高裁の当局の方に御質問でございますけれども、この二十名の定員の増ということで、これで一応十分と考えておられるのか。これはほんの増員の第一歩という形で、これからもさらに努力をして、判事補の、裁判官増加ということを図る計画を持っておられるのか。そして、おられをとすれば、その計画について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  15. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 何といいますか、客観的な裁判官必要数というのを算出するのは非常に難しゅうございまして、抽象的に言いますと、裁判所に提起されてまいります事件すべてを適正迅速に処理するのにどれだけの裁判官が必要かという計算が必要になってくるわけでございます。  ただ、委員承知のように、裁判官増員の場合はどうしても給源という問題がございまして、現実には、増員いたしました裁判官、ほとんどは司法修習を終わりました修習生から採用するということでございます。  御承知のように、かつては司法修習生進路希望弁護士の方に偏っておりまして、裁判官を志望してもらえる修習生がなかなかいないという問題がございました。最近ようやく、このあたり修習生増加してまいりましたので、相当程度改善されてきておりまして、裁判官について着実な増員ができるような状況になってきております。  ただ、今回の二十名という数字は、やはりそういった給源状況配慮した上での数字でございまして、今後の事件動向からいたしますと、これで十分かと言われますと、恐らく今後しばらくの間は、本年並みの裁判官増員を継続的にお願いしていく必要があるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。     〔岸本委員長代理退席委員長着席
  16. 福岡宗也

    福岡委員 先ほどの日弁連シンポジウム調査結果によりますと、大都市民事裁判官訴訟事件手持ち件数は、単独事件が約二百五十件で、それにプラス合議事件が約十件、そして、これに毎月の新作が約三十件ぐらいは来るということで非常に多忙だということでございますけれども、最高裁判所調査で、この大規模な大都市裁判官手持ち件数等調査結果があればお聞かせ願いたいと思います。
  17. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、全国の裁判官の実情を申し上げますと、多くの裁判官は、たとえ民事部に配属しております裁判官でありましても、訴訟事件だけを担当しているわけではございませんで、同時に保全事件とか執行事件をやりましたり、あるいは小さな庁になりますと同時に家裁の事件も担当しておりますので、なかなか具体的な基準でその手持ち事件数というのを調査することは難しいわけでございます。  ただ、委員指摘の、例えば東京のような大きな庁で民事部裁判官、こういった裁判官の場合はおおむね民事の訴訟事件だけを担当しておるわけでございますけれども、そういう裁判官手持ち事件数、大ざっぱな数でいいますと、先ほど御指摘ございましたように、一カ部に合議事件が大体八十件ぐらいございまして、それ以外に一人の裁判官単独事件を大体二百五十件程度持っているというのが実情だろうと思います。毎月の新受件数というのは、民事訴訟の平均審理時間が十カ月でございますので、大体これを十で割っていただきますと一カ月の件数が出てまいりますので、月間二十五件程度の新受があるというところかと思います。
  18. 福岡宗也

    福岡委員 それでは次に、地方裁判所の新受事件の総計ですね。全国的な総計ということで、民事訴訟の関係で、平成三年の数とそれから平成七年の数、それから刑事事件でも、同じく平成三年、平成七年の、理由は結構ですから、数字だけちょっと教えてください。
  19. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 まず、地裁の民事訴訟事件でございますが、平成三年は十二万七百件程度、それが平成七年には十五万五千件程度になっておりますので、約三万四千件、比率でいいますと二八%の増加になっております。  それから、地裁の刑事訴訟事件でございますが、平成三年は六万二千七百件程度であったものが、平成七年には六万九千件程度ということでございますので、約六千四百件、率にいたしますと一〇%程度の増加になっております。
  20. 福岡宗也

    福岡委員 次に、判事と判事補定員数の増加比率についてお伺いします。  判事はたしかこれは十年ぐらい定員が変わっていないと思うんですけれども、判事補の方ですが、平成四年と平成八年、それぞれどれぐらいの数が、ちょっとお伝え願いたいと思います。
  21. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 判事補定員でございますが、平成四年は六百二十一名でありましたものが、平成八年度には六百六十五名と、四十四名の増加になっております。
  22. 福岡宗也

    福岡委員 次に、司法修習生から判事補の新任状況をちょっとお尋ねしますけれども、まず、質問の第一は、平成五年と平成八年の司法修習終了者数の増加についてお伺いしたいと思います。それぞれの数字お願いします。  それからさらに、質問の第二は、平成五年と平成八年の同じく判事補の任官者数、それぞれ五年と八年で数字だけおっしゃってください。
  23. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 司法修習の終了者数でございますが、平成五年が五百六名、平成八年にはそれが六百九十九名になっております。  それから、裁判官の任官者数でございますが、平成五年には九十八名、平成八年も九十九名、ほとんど変わっておりません。
  24. 福岡宗也

    福岡委員 ということですと、司法修習の終了者は百九十名以上の差があるのに、判事補の任官者数はほとんど変わっていない、こういうことのようです。  そこで、これはいろいろと最高裁の方も御努力はされていると思いますけれども、今までのお答えをいただいた数字で見ますと、大都市裁判官の手持ち件数は二百五十件ぐらいということで、それにさらに合議が加わるということで、新作も二十五件ぐらいで、もう本当に忙しいということのようであります。しかも、新受件数としましては、この五年ぐらいの間に民事が二八%、そして刑事が一〇%ということで、事件数もどんどん増加しておるという状況。それで、裁判官増加数、これは判事補ですね、やはり五年間で二十何名ぐらいの増加ということであります。それから、修習生は百九十三名ぐらいふえているということで、供給源はもう十分だと思いますし、今聞いたところによれば、現在のこの不況もありましょうけれども、非常に希望者は多いということであります。  したがいまして、現段階で一挙にといってはあれでしょうけれども、相当に改善をするような素地といいますか、要件というものは備わってきておるというふうに思うわけであります。ここのところで毎年二十名程度は考えておられるということですから、相当数、五年すれば百名ふえるわけで、いいわけですけれども、もう少し御努力をいただいて、この際、この二、三年の間に現在の忙し過ぎる裁判官という状況を解消して、本当に国民の権利を実現する、裁判を十分に迅速に受けることができるという状況をつくっていただきたいということで、格段の御努力お願いをいたしたいわけであります。  特に、本年度の司法予算を見ますと、前年度比で三・四%程度の伸びということであります。本年度、緊縮財政と言っておりますけれども、一般的な予算の支出の伸びは五・八%ぐらいあるのに、司法予算だけが伸びが悪い。しかも、どちらかというと、それが十分過ぎるという状況ならいいんですけれども、裁判官が少なくて司法の容量が非常に狭くなっている。しかも、いろんな消費者被害等も増大をしてきて、まさに司法救済を求める国民の声というのは高い状況で、こういうことでは困るというふうに思うわけであります。  そういう意味で、ぜひとも御努力をいただきたいということで、これは最高裁の方も、それから法務省の方もともにどういうような考え方で今後臨むかということを最後にお答えをいただきたいというふうに思います。
  25. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、任官者数でございますが、かつては毎年六十名程度を採用するのがようやくでございましたのが、最近は何とか百名程度採用できるようになっている点をひとつ御理解いただきたいと思います。  ただ、今後の事件動向からいたしますと、確かに事件数というのは恐らく今後も増加してくるだろうと思っておりますので、私どもの方も継続的に必要な裁判官数の確保に力を尽くしていきたいというふうに考えております。
  26. 福岡宗也

    福岡委員 法務省の方の今後の予算の関係でちょっとお答えいただきたいのですけれども、どなたかお答えください。
  27. 頃安健司

    ○頃安政府委員 法務省におきましても、ただいま御審議中の平成九年度予算におきまして、検事三十四名の増員が内容として盛り込まれておりますが、今後とも検察官その他法務省職員の充実に力を尽くしてまいりたいと思っております。
  28. 福岡宗也

    福岡委員 お答えをいただきまして、御努力はいただいておるようでありますけれども、まだまだ他の省庁に比べて本当に予算が少ないという状況だろうと思います。  民主主義の根幹というのは、やはり人権擁護、これが遺憾なく行われる、人権のとりでである裁判官の、裁判所の充実強化ということは本当に重要なことだというふうに思います。今後も格段の御努力お願いを申し上げまして、質問を終わらさせていただきます。
  29. 八代英太

    八代委員長 続きまして、漆原良夫君。
  30. 漆原良夫

    ○漆原委員 新進党の漆原でございます。福岡委員に引き続いて、今の問題についてお尋ね申し上げたいと思います。  日弁連は昨年秋に、元裁判官であった弁護士から、裁判官時代の仕事上あるいは生活上のことについて聞き取り調査をいたしました。対象は、裁判官を退官してから五年以内の人、それから司法研修所を卒業してから八年目から三十三年目の人、五十六人の方が調査に協力してくださったわけでございます。その調査結果をもとにお尋ね申し上げたいと思います。  まず、裁判官一人の民事における手持ち件数でございますが、百件未満が二人、百件から二百件未満が五名、二百件から三百件未満が七名、三百件以上四百件未満が四名、四百件以上が三名という、全国的には一人の裁判官が二百件から三百件の事件を抱えておるということが言えるかと思いますが、事件大都市に偏っていると言われますので、東京地方裁判所それから八王子支部それから大阪地方裁判所における民事の裁判官の一人の手持ち事件数、おわかりでしたら教えていただきたい。  それからもう一つ、一カ月の新受件数、どのくらい配てんされてくるのか、その辺の数をおわかりでしたらお知らせいただきたいと思います。
  31. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 お尋ねのございました東京地裁あるいは八王子支部それから大阪地裁というのは、いずれも全国的に見まして非常に忙しい庁でございまして、大体そういう庁ですと、民事担当の裁判官単独事件手持ち事件数が二百五十件程度になっているというのが実態かと思います。  それから、新受事件でございますが、今平均的な審理期間が十カ月でございますので、大体これを十で割っていただきますと新受件数が出てまいりますが、二十五件から庁によりましては三十件近くというのが、大体、月間の新受であろうかと思います。
  32. 漆原良夫

    ○漆原委員 それから、裁判官の生活状況についてアンケートをとりました。  まず、平日の夜、大体、裁判官裁判記録を読んだり判決を書いたりしている。四十九名中四十人の方が、平日の夜、仕事をしておられます。土曜、日曜、両方とも仕事をしていると答えた人が五十四名中三十二名の方。どちらかの日一方、仕事をしているというのが五十四名中十四名の方でございました。それから、年来年始の過ごし方でございますが、仕事を中心に過ごしていたというのが四十五名中十一名。仕事と休み半分半分というのが四十五名中十三名。大体休めたとお答えいただいた方が四十五名中二十一名。  このように、裁判官の日常は、平日の夜も一生懸命仕事をしておられて、土日も一生懸命仕事をしておられるという実態が、調査の結果、判明したわけでございますけれども、最高裁はこの点についてどのような認識をお持ちでございましょうか。
  33. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、個々の裁判官の家庭でのといいますか、暮らしぶりというようなことになりますと、私どもの方でもなかなか正確な資料がないわけでございますけれども、ここ数年、やはりいわゆるバブル崩壊の影響を受けまして、大都市部で、特に民事事件を担当しております裁判官事件数がふえまして負担が重くなっておりますので、かなり忙しいといいますか、そういう仕事ぶりであるということは私どもの方も十分認識しております。
  34. 漆原良夫

    ○漆原委員 その次に、裁判官が忙し過ぎると思うかどうかという点について調査いたしたわけでございますが、忙し過ぎるとお答えいただいた方が二十八名。部署、人によって忙しいというのが十八名。必ずしもそうとは思わないとお答えいただいた方が十名。裁判官の大多数が、忙しい、忙し過ぎると考えておられるのが実態じゃないだろうかというふうに思います。  ただ、裁判官が忙しいということは、裁判官だけの問題じゃございませんで、民間も一生懸命、この不況の時代、忙しく仕事をしておるわけでございます。しかし、問題は、裁判官が忙しいことによって、あるいは忙し過ぎることによって、裁判の進め方あるいは裁判の判決内容に影響があるかどうか、この辺が裁判を受ける国民の側にしてみれば非常に大きな関心事でございまして、その点を調査してみました。  その結果、まず訴訟の進め方でございますが、何らかの影響があるとお答えをいただいた方が三十七名。影響がないとお答えをいただいた方が八名。  それでは具体的に、訴訟の進め方にどんな影響があるのか。その例を見ますと、時間のかかる証人調べや、現地に赴く検証等はなるべく制限する方向となり、当事者側からは、拙速、不十分な審理との不満を抱かれやすくなると思う。あるいは、記録を十分に読まないで訴訟を進行する。あるいは、証拠調べの期日がなかなか入らない。見通しなく和解を進める。事件を先延ばしにして判決になかなか至らない。こういう訴訟進行上の弊害があるとお答えいただいております。  その次に、和解のやり方はどうだろうかという点について調査をいたしました。この結果、和解を押しつける傾向にあるとお答えいただいた方が二十九名。特に影響がないとお答えいただいた方が六名でございます。  どんな影響があるかといいますと、当事者の意向を十分に聞くことができず、時間がないため裁判所が力を背景に押しつけるような結果になる。力を背景にというと、私の言うことを聞かないと、あなた、負けますよというふうな力の背景だと思います。あるいは、なるべく和解で処理しようとする傾向になる。こうお答えいただいております。  最後に、判決に影響があるかどうか調べてみました。判決に影響があるとお答えいただいた方が三十一名。判決に影響なしとお答えいただいた方が九名でございました。  判決にどのような影響があるのか。その具体的な例としましては、裁判所は耳が痛いかもしれませんが、判決で手抜きをするという、なかなか私も申し上げにくいのですが、判決で手を抜いてしまう。争点がいっぱいあります。判決を書きやすい争点だけに絞って、それで片づけてしまう。それから、十分に検討する時間が不足をする。あるいは、十分に証拠を見ずに、証人、本人調書等を読まずに判断をしている場合があるというふうなゆゆしき問題が指摘されております。  裁判官たる者は、訴訟の遂行に当たっては十分に審理を尽くして、判決においてはいささかも手を抜くようなことがあってはならない、こう思うわけでございます。裁判所の中では、忙し過ぎるとかあるいは今申し上げたようなことはとても口にできない状態なんでしょうけれども、現実に、退官された裁判官が自分の経験を通してこのように判決に影響があると、赤裸々な調査結果が出ておるわけでございますが、これに対して最高裁はどのようにお考えでございましょうか。
  35. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、大都市部の民事事件を担当しておる裁判官がここ数年非常に忙しくなってきておることは事実でございまして、私どもの方はこのところ毎年裁判官の着実な増員に努めてきております。数字で申しますと、昨年平成八年度までの五年間で合計五十一名の裁判官増員をお認めいただきました。  この増員されました裁判官は、主として今問題になっておりますような繁忙な庁の手当てに重点的に振り向けておりますので、かつてといいますか、数年前に比べますとこういう状態はかなり改善されてきているのではないかと思っております。ことしも二十名という増員お願いしておりますので、これが認められました場合には、さらにこの増員分をそういう繁忙庁の手当てに振り向けていきたいと思っております。もちろん、裁判官が忙しいためにずさんな事件処理をやりましたり、あるいはいいかげんな事件処理をやるということは許されないことは、もう御指摘のとおりでございます。私どもの理解しておりますところでは、繁忙な庁の裁判官もみんなそれぞれ真剣に適正な事件処理のために努力していると思っておりますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  36. 漆原良夫

    ○漆原委員 私も長い間弁護士をやっておりましたので、裁判所が一生懸命事件の進行に、判決書に当たっているということはよく存じ上げて、その上で質問をさせていただいております。  その件について、元東京地方裁判所民事部裁判長でおられまして今弁護士でございます西村宏一さんが、これは判例タイムズという雑誌でございますが、「民事訴訟運用の危機状況について」と題する小論文を寄せておられます。この中でこんなふうに言っておられます。  私は偶々、東京地裁民事部裁判長クラスの裁判官方々とお会いして、直接お話をうかがったところ、この数年三人構成の民事通常部の新受件数は、一ケ月六十件から七十件、多い時は七十件を超える、ということであった。  私が嘗て東京地裁民事部裁判長であった頃のことを回想すると、その頃新受事件数は月に三十件前後ではなかったかと記憶する。私の経験では、月に三十五件を超えるとかなり期日指定に難渋し、円滑な事件処理が困難となったように思う。これと比較しても、現在の民事裁判官が、いかに苦難の状況にあるかが察せられるのである。 中略しますが、  右のごとき負担過重からくる能率の低下による訴訟遅延及び裁判の質の低下を防ぎうるであろうか。おそらく、何人もこれを期待できない、ということに異論はないであろう。  我々にとってみれば、国民にとってみれば大変ショッキングな内容のことが書いてあるのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  37. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 いろいろな御指摘がございますが、統計的な数字で申しますと、実は事件の審理期間というのは、事件はふえてきてはおりますけれども、徐々に短くなってきております用地裁の民事訴訟事件の既済事件で、かつては平均審理期間が一年を超えておりましたけれども、最近ではこれが十カ月程度で処理できるようになっております。  この一番大きな原因は、かつての時代と比べますと訴訟のやり方が随分違ってきておりまして、これは裁判所の方だけの努力ではございませんで、むしろ当事者である訴訟代理人、弁護士さんの御努力によりまして、相当早い時間から非常に集中的な争点整理をいたしまして、本当の争点についてだけ証拠調べをするという、言ってみれば非常に合理的な審理というものができるようになってきております。そういう意味で、訴訟のやり方自体がかつての時代とは変わってきているということは御承知いただきたいと思います。  それにしましても、現在の審理期間というのは、全体では十カ月程度でございますけれども、本当に証人を調べる必要があるような事件になってまいりますと一年半から二年程度かかっておりますので、やはり国民の目から見ますと、これではまだ不満が残るということだろうと思います。私どもの方は、その点十分認識しておりまして、何とかこういったごく普通の事件をもう少し短い時間で処理できるような体制を考えていきたいというふうに思っております。
  38. 漆原良夫

    ○漆原委員 その次に質問をしようと思った内容をお答えされたようでございますが、裁判は時間がかかり過ぎるということがよく言われておりまして、本来ならば裁判所で決着すべき事案にもかかわらず、時間がかかってしまうのでついつい町の事件屋みたいなものに依頼をして大変高い解決料を取られたなんというケースがたくさんあるように思います。やはり国民にとって、裁判というのは時間と経費がかかり過ぎるんだということがもう頭の中にこびりついているように思います。  原告、被告を調べで、それから原告、被告双方から証人一人ずつを調べる、この辺が普通の係争事件のパターンだと思うのですが、そういう普通の係争パターンの事件における裁判に要する期間はどのくらいというふうにお考えでございましょうか。
  39. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、証人を双方一人ずつ調べた事件の審理期間という統計はございません。ただ、大ざっぱに言いますと大体一年半から二年弱程度はかかっているのではないかという感じがいたします。欠席判決事件を除きましたいわゆる対席判決事件の平均的な審理期間が大体一年四カ月から五カ月程度でございます。また、証人の数を何名という統計はございませんけれども、証人尋問を少なくとも一人はやったという事件全体の審理期間を見てみますと二十二カ月、一年十カ月程度になっておりますので、大体、今委員から御質問のあったような事件になりますと、一年半から二年弱というのが平均的な審理期間になっておるのではないかというふうに考えております。
  40. 漆原良夫

    ○漆原委員 私は、裁判官の仕事にゆとりを持たせ、また裁判に要する日数を短縮するためには、やはり裁判官を大幅に増員する以外にないと考えております。ここ数年の増員経過については、先ほど福岡委員の方から御質問があり、お答えいただきました。  そこで、今回も二十名ということでございますけれども、地裁の本庁は五十ございます。そして、支部は二百二ございます。したがって、十名から二十名の判事補増員したとしても、全体から見れば本当に焼け石に水の状態ではなかろうか。そういうのは一日も早く大増員をすべきだと私は思っているのですけれども、現在の事件数、現在の状況から見て、裁判所は全体としてどのくらいの数が相当なんだという目標を持っておられて、それに近づけておられるのかどうか。このくらいが現在必要なんだという全体の予定数でもあれば教えていただきたいのですが。
  41. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 非常に難しいお尋ねでございまして、実は全国の裁判所で客観的にといいますか、必要な裁判官数というのは、いろいろな要素がございまして、計算上出すというのは非常に難しい面がございます。  一つは、もちろん事件数の動向というものがどうなっていくかというところがなかなか読めない。最近数年間で見ましても、非常に大きな事件の変動がございます。それからもう一つは、やはり裁判官増員します場合に、給源の問題も考えないといけませんので、枠をふやしていただいて本当にそのとおりの人数がふえるかどうかという点も見ながら検討していかないといけません。それと、やはり増員の場合の目標といいますと、裁判所に提起されてまいります全事件を適正迅速に処理するという、そういう目標を立てることになるわけでございますけれども、この審理の迅速化というのは、実は裁判所の力だけではできない面がございまして、やはり訴訟関係人、特に代理人である弁護士さんの方が訴訟の運営についてどういう御協力をいただけるか、そういうようなところも絡んでまいります。そういったところを総合的に考えながら毎年の増員数というものを私どもの方では計算しておるわけでございます。  ただ、大きな傾向として言いますと、恐らくこのところの社会情勢からいたしますと、特に民事事件増加傾向というのはおさまることはないだろうと思っておりますので、またさらに裁判官給源の問題もかなり改善されてきておりますので、私どもの方としましては、先ほど申し上げましたように、当面、本年並みの増員というのは継続的にお願いをしていきたい、そういうふうな方針を持っておるわけでございます。
  42. 漆原良夫

    ○漆原委員 私は弁護士会で、昭和二十三年から平成七年まで四十七年間、この間、裁判官定員弁護士数、それから事件数を調べてみました。裁判官定員は、昭和二十三年が千百九十七名でございまして、平成七年度では二千五十八名、一・七倍でございます。弁護士の数は、昭和二十三年が五千九百九十二名、平成七年度が一万五千五百四十七名、二・六倍でございます。事件数は、昭和二十三年が三万九百五十四件、平成七年では十五万五千三百六十七件、実に五倍になっているわけでございます。しかし、事件は五倍になっておりますけれども裁判官の数は一・七倍にしかなっていないというのが現実でございます。将来的にもやはり事件はもっとふえる傾向にあるだろうと思うし、事件そのものも一件一住専門的になり、難しくなっていくことが予想されると思います。  そこで、日弁連の方では、十一月に開催した司法シンポジウムの際に、全国の各弁護士会が地元の裁判所において今すぐ増員すべき、増員してほしい裁判官の数を累計いたしました。その結果、五百二十八名という人数が出てきております。これは、市民のために適正、公平かつ迅速な裁判を保障するために直ちに実現していただきたいという弁護士会からの要望でございますけれども、この要望に対しまして最高裁はどのようにお考えでございましょうか。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  43. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 日弁連の方でお出しになっております数字の根拠等を私ども詳細承知しておりませんので、その当否について御意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、やはり特に民事事件中心にしましてこのところ裁判官の負担がふえてきておることは、弁護士会の方でも御指摘されているとおりであると思っております。私どもとしては、今後も必要な裁判官の人員の確保に力を尽くしていきたいというふうに考えております。
  44. 漆原良夫

    ○漆原委員 この点に関しまして、先ほどの西村元東京地裁民事裁判長は大変示唆に富む論文を、先ほどの文書の中にございます。御紹介申し上げますと、   裁判官が、日曜、祭日も記録読みと判決書に追われている、という日常生活は、到底ノーマルな状態とはいえない。裁判官には、時間的にも余裕を与えるべきである。本来の職務中心である法律学の勉強はもとより、法的紛争の基礎に存する社会・経済の動きや流れを理解するための努力も必要である。新聞・雑誌のみならず、哲学・思想・文学に関する書物もある程度は目を通すよう心掛けることが大切ではないか、と思う。  裁判官に、直接の職務を離れ、自らの職務活動を客観的に鳥瞰する余裕を与えることが、司法の健全な発展の基礎をなすものというべきであろう。  そのための方策としては、裁判官・書記官及びその他の裁判所職員の大増員しかないであろう。 というふうに指摘されております。  さらに、先ほど来申されているように、給源の問題ですね。給源の問題についてはこのような提案をしておられます。   それは、臨時立法として、現在の裁判官の定年に臨時特例を認め、六十五才の定年から七十才迄の五年間、健康であり、かつ、本人が希望した場合に、裁判官として勤務できることとする方法である。  こういうふうな認識と提案がなされておるのですけれども、この点についてどのようにお考えでございましょうか。
  45. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 裁判官の場合、いい裁判といいますか、適正な裁判を行いますためには、法律の知識だけでは足りない。やはり法律以外のもろもろの社会常識といいますか、そういうものが必要になってくるという点は、委員指摘のとおりであろうと思っています。  いろいろな方法がございますけれども、最高裁の方でも、このところ、特に若い裁判官中心にしまして、裁判所外のいろいろな物事を実地で見聞してもらえるような機会を研修等でいろいろ設けるようにしております。そういった方策を今後とも続けていきたいと思っております。  それから、裁判官の定年の特例の問題でございますが、これはかっていろいろ議論されたようでございます。そういうアイデアは一つのアイデアとして私どもの方も受けとめさせていただきたいと思っております。
  46. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほども福岡委員の方から予算ということについて少し質問がございましたけれども、私も調べてみましたが、国家予算に対する裁判所予算の比率でございますが、非常に低いのですね。平成元年は〇・四一%、平成二年〇・三九%、平成三年〇・三八%、平成五年〇・三九%、平成六年〇・三九%、平成七年〇・四二%。僕は、三権分立の一角を担う司法としては大変予算については謙抑だなという気がしているわけでございます。財政を縮小するという全体の基調ではございますけれども、本当に必要な予算であればぜひともとっていただきたいというふうに思います。  この点についての日弁連の鬼道会長の文章を御紹介したいと思います。  日本の裁判官は、世界的に見ますと、比較的廉直であると言われております。と同時に、私はまた非常にストイックな面があるのではないかというようにも見ております。したがいまして、人間として見た場合には大変過酷な労働条件の中にあって、それを黙々と遂行しておられるという面においては立派ではあります。しかし、それは人間的な問題でありますけれども、本当に国民のための司法、市民のための裁判という観点から見ますと、私どもは単に裁判官に同情ばかり申し上げておるというわけにはまいらないわけでありまして、それを我が国の司法制度の問題として、司法制度の貧困の問題としてとらえなければいけないと思います。というふうに御指摘いただいております。  これについてはお答えは必要でございませんけれども、どうか本当に国民のための司法、市民のための裁判ということを実現するために必要な予算、遠慮なさらないでどんどんとっていただきたいということを御要望申し上げます。  時間がなくなりましたので、最後に録音反訳についてお尋ね申し上げます。  最高裁は、裁判速記制度の改革というふうに題しまして、機械速記方式にかえて録音反訳方式を導入されております。その結果、録音テープによる反訳を民間委託する、それから速記官の新規養成を平成十年四月以降停止するということになっておりますが、その変更の理由と経緯をお尋ね申し上げます。     〔横内委員長代理退席、委員長着席
  47. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 今回、速記制度にかえまして録音反訳方式を採用することにいたしました一番大きな原因は、これからの裁判というものを見ますと、恐らく事件内容の複雑化あるいは事件数の増加に伴いまして詳細な尋問調書を要するような証人調べというのはますます増加してくるのではないか、そういういわば逐語的な調書の需要が増大していくところに今の速記システムで果たしてこたえられるだろうかというところでございます。  御承知のように、裁判所の現行の速記というのは機械を使います特殊な速記でございまして、これは速記官がこの機械を使って速記をしますときには肉体的にも精神的にも非常に緊張を強いられるハードな仕事でございまして、今のところ、全国の裁判所で言いますと、職業病を予防するという観点からなかなかこの速記官の立ち会い時間がふやせない状況になっております。一回当たり大体一時間弱の立ち会いを週二回程度やるのが限界というような状況になっておりますので、これでは、今申し上げましたような今後の逐語調書の需要の増大になかなかこたえていけないのではないかということ。さらに、これは機械の速記でございますので、速記用のタイプ機械の製造というものがいつまでできるかという点も非常に不安な状況が出てきております。さらに、速記官になりますためには二年間非常にハードなトレーニングをやりますので、そういうトレーニングに耐えて速記術を身につけていただけるような適任者といいますか、そういう方もなかなか得られなくなっておる。  そういうふうな状況を見まして、片や民間の方では、今は、速記はむしろ録音テープを反訳する録音反訳方式の方にどんどん移行していく状況があるということを調査いたしました結果、裁判所についてもこういう方法を採用しまして、今後の逐語調書の需要の増大にこたえていくべきではないか、こういう点が一番の原因になっておるわけでございます。
  48. 漆原良夫

    ○漆原委員 最後に一点だけお聞き申し上げます。  速記官になるためには大変に苦しい訓練とハードな研修が要請されると聞いております。今後、速記官の処遇についてどのようにお考えでございましょうか。また、今後速記官の数が徐々に減少して、将来は制度そのものがなくなってしまうということになるわけでございますが、残された速記官が裁判所の中で肩身の狭い思いをしないように、また誇りを持って仕事ができるように、具体的な措置を講ずるべきだと思いますが、そういう具体的なことをお考えであればお尋ねしたいと思います。
  49. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 今回の制度の改革の構想というのは、現在在職しております速記官につきましては今までどおりの形で仕事をしてもらうということでございます。ただ、速記官の立場からいたしますと、せっかく自分たちが苦労して身につけました技術というものがこれで絶えてしまうという意味で、非常に寂しいといいますか、そういう気持ちを持っていることは事実でございます。私ども、そういった速記官の心情にも十分配慮していかないといけないと思っております。  今後いろいろな形で、仕事のやり方とかあるいは給与の、処遇上の問題も含めまして、残りました速記官がこれまで以上に生きがいを持って仕事をやっていけるような、そういう体制を講じていきたいというふうに考えております。
  50. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で私の質問を終わります。大変ありがとうございました。
  51. 八代英太

    八代委員長 次に、坂上富男君。
  52. 坂上富男

    ○坂上委員 裁判官増員問題につきましては各先生から御質問もあるようでございますので、私は、この一点だけ、ひとつ確認だけさせてもらいたいと思います。  日本弁護士連合会の方から三冊の資料をいただきました。その三冊の資料は今持ってまいりましたが、先生方が全部質問で引用されておるものでございますが、最高裁、ここに書かれてあることは大体このとおりだなというふうな認識ですか、これは全然違いますよというようなことになりますか、どっちです。簡単に答えてください。
  53. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 日弁連から出されております小冊子は読んでおります。ここに記載されている内容につきましては、個別に実情を確認することはできませんので、お答えすることは困難でございますが、各庁の事件動向事件処理状況からしますと、バブル崩壊直後の事件が急増した時期に特定の部署において裁判官がかなり繁忙な状況にあったということは認識しておりまして、そういった部署を中心に私どもとしては人的手当てをしているところでございます。  この冊子が指摘しておりますような超繁忙な状況にあるとまで言えるかどうかということはともかく、このところ大都市部の裁判所で民事事件を担当している裁判官事件の負担が重くなってきているということは事実であるというふうに認識しているところでございます。
  54. 坂上富男

    ○坂上委員 最高裁、法務省もそうですが、ここに書かれていることがこのとおりの認識、事実ということでなければ、こんなものは増員する必要はないのです。どうですか。  やはりこのとおりだろうと私は思っているのです。私もこの間、私の地元の新潟弁護士会の総会に出まして、いろいろ懇談をしてみたら、本当に忙し過ぎて、まかり間違えますと手抜きの判決が出ているのではないかという心配をしておるようでございます。したがいまして、ここに書かれていることが事実でないとするならば、こんなものは増員しない方がいいと思うのです。どう思います。
  55. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 ただいま答弁申し上げましたように、大都市部の裁判所の民事事件を担当している裁判官中心事件の負担が重くなっているということは、そのとおりでございますので、私どもといたしましては、国民の負託にこたえるために、適正かつ迅速な裁判実現のために増員お願いしているということでございます。
  56. 坂上富男

    ○坂上委員 私、賛成なのですよ。ただ、歯切れがよくない。もう少し一つ一つ検証してごらんなさいよ、この内容を。こんなもの、検証できるのではないですか。日弁連の言っていることはうそなのだ、どうも事実とそぐわないのではなかろうかと。それならそういうふうにはっきり言ってください。これは本日はこれで終わりますけれども、参議院もあることですから、我が党の方からもこれまた強く厳しくその検証の結果を聞かせてもらいますけれども、やはりここに書かれているから、先生方みんな、大変だ、こう思っているのだ。最高裁がそれほど思っていないのだったら、やめたらいいのです。  私は、気にしているのが一つあるのです。司法修習生の、あの司法試験のげたを履かせること、猛反対をいたしました。それからまた、速記官の採用停止、これについても私らは一番猛反対をいたしたわけです。結局、予算が決まっているものだから、裁判官をふやすためには、速記官を犠牲にしたり、あるいはまた司法修習生のいわゆる修習期間を、二年間を一年間にするというわけだ。そんなような案が出ているそうでございますが、みんなそういうものを犠牲にして、枠の中での融通をきかせるために、こういうふうに裁判官増員のために、速記官を犠牲にしたりあるいは司法修習生の人数をふやして、ひいては裁判官をふやすためにげたを履かせて、その結果が修習期間を一年間に短縮する。こんなようなことになったら、結果的にはかえって国民がマイナスになるのではなかろうかと心配しておりますが、一言だけ。
  57. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、国民の負託にこたえるために、国民の皆さんにとってわかりやすく利用しやすい裁判所実現という観点から、いろいろな増員、予算をお願いしているところでございます。  これからも、そういう努力を続けていきたいというふうに考えております。(坂上委員「これ、検証しますか。その答弁」と呼ぶ)個別的な内容についてまで確認することは困難でございますが、そこに書いてある、大都市中心に忙しくなっているということは事実でございますので、私どもといたしましては、その対策をやっていくことの方が重要であるというふうに考えているところでございます。
  58. 坂上富男

    ○坂上委員 ここに書かれてあることが事実とすると大変だというのです。裁判所はこの認識をどうしているかということを聞いているのです。もう少し検討することが必要だと私は思っておりますので、ひとつ御検討していただきたいと思っております。  それから、これは話がちょっと変わりますが、やはり裁判にかかわること、あるいは司法行政にかかわることでございますが、これは三月十四日の報道でございます。これを読みまして、私も本当に申しわけないなという気がしていたのでございますが、聴覚障害者の方が、公正証書遺言をつくることができないというのです。一体、こんなことで法律と常識から考えていいのだろうかという指摘がここに書かれているのですね。  これをいろいろ私は調べてみました。調べてみましたら、公正証書は聴覚障害者の方はできないのですね。さらに調べてみました。聴覚障害者の方は何をすればいいかというと、自筆遺言をおつくりになったらいいだろう、それからもう一つは、秘密遺言をおつくりになったらいいだろう、こういうことなんですね。しかし、ここで、自筆を使うことのできない聴覚障害者の方があったら、これは一体どうなるのか。遺言ができないということになるわけです。これは一体どういうふうに法務省、考えておりますか。どうです。
  59. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員指摘のとおり、民法では、普通方式の遺言として今御指摘がありました三つの方式を用意しているわけでございますが、いずれも遺言というものの成立、それから内容というものの確実性を確保するという観点から、厳格な要件を定めているところでございます。  そこで、今御指摘のありました、聴覚障害者で自分で字も書けないという方については、結論的に申しますと、御指摘のような問題があるというふうに承知をいたしております。そういう場合には、遺言という形でない死因贈与を公正証書でつくるという形で、同じような目的を達することができるというふうに考えております。  そういうことでございますが、遺言の方式のあり方ということにつきましては、今申しましたような遺言の成立、内容の確実性を担保しなきゃならぬという要請、そういう要請で現在の制度ができているわけですが、当事者の利用勝手という観点から考えてどうすべきか。これは遺言に関するいろいろな問題とともに慎重な検討を要する問題ではないだろうかというふうに考えております。
  60. 坂上富男

    ○坂上委員 今おっしゃるとおり、聴覚障害者の方は公正証書遺言はつくれない、これ自体もう大変なことです。それからさらに、この方々が、自筆ができないという方々については、自筆遺言もできない。それから、秘密遺言もできない。危急時遺言もできない。こうなってきますと、全く遺言することができない。あなたは遺言することができないから、いわゆる死因贈与しなさいなんて言ったって、これはだれもわかりません。しかもこれは財産のことでしょう。財産以外で遺言というのもあるのじゃないですか。そうだといたしますと、これはどうも余り適切ではないのじゃなかろうかと私は思っています。  全国の聴覚二言語障害者は四十万近くいるというのですね、ここに書いてあるとおり。そこで、この経験をした聴覚障害者の方は、同じく聴覚障害者の弁護士さんがおられるそうでございますが、この方々と一緒になりまして、手話によって意思伝達ができるのだから、これはもう公正証書、手話によっても認めるべきだという運動が始まっているそうでございます。この気持ちはすくい上げていただかぬといかぬと思っております。  どうしても現在の法律の立場からこれは認められないとするならば、これは直ちに法律改正すべきです。私は改正案をすぐ提出すべきだと思っております。もし法務省がそういう意思がないとするならば、後から聞きますが、我が方で民法一部改正法案を提出していますから、追加して私は春こうと思っているわけでございますが、どうしますか、法務省。  これは本当に、まさに差別そのものじゃないですか。きちっとひとつこれらの人たちが安心して遺言できるように、しかも今、はやっているでしょう、できるだけ遺言をして死後の紛争のないようにいたしましょうということを宣伝しているけれども、これらの人たちには役に立たないのです。  しかも、私はびっくりしました、四十万の人が影響を受けるわけだ。まあ、この人はあるいは自筆がとれるかもしれませんけれども、とれない人だってあるだろうと私は思っているのです。どうですか。
  61. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 遺言の方式をどうするかということにつきましては、ただいま申しましたように、遺言の成立、内容の確実性を確保するということと、利用者の利用ぐあいのよさということとをどういうふうに調整するかという問題だろうと思っております。  今御指摘の公正証書の場合は、口述それから読み聞かせということを要することになっておりますが、これにかわる方式としてどのようなものが考えられるのかということについて十分な詰めが必要だと思っておりますし、遺言につきましては、その他の要件、例えば二人の証人の立ち会いが必要とされておりますが、その要件が現行のままでいいのか。そういった問題もあわせて検討されるべき課題であると認識しておりますし、また、聴覚障害者以外のほかの障害者についても同じような手当てが必要があるのかどうか、そういったことも検証する必要があろうと思っております。  さらに、公正証書遺言について、今検認手続は要らないということになっておりますが、この検認手続は要しないとするものの範囲についても見直しをする必要があるのではないかという考え方もございます。  そういったことを視野に入れて、遺言制度全体について慎重な検討が必要であるというふうに認識しておるところでございまして、御指摘の問題も、私どもとして立法課題であるというふうに受けとめているところでございますが、今申しましたように、これには十分な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。
  62. 坂上富男

    ○坂上委員 こう書いてあるのですね、これに。「民法の解釈では、手話通訳はだめだが、外国語の通訳を介しての公正証書遺言の作成は認められている。理由は「音声言語」だから。」こういう理由らしいですね。しかし、「どこか変だ。」こう結んでいるわけでございます。  大臣、突然ですが、御所感どうですか、お聞きになって。
  63. 松浦功

    松浦国務大臣 いきなりでございますので、私は余りよくわかりません、率直に申し上げておきますが。しかし、矛盾があれば検討しなきゃならない問題だと思っております。
  64. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひこういう人たちの差別のないように、そしてこれらの人たちも安心して遺言ができるような、そういうやはり法律でなければならぬと思っておるのです。  私、国会に出て誇りを一つ持っているのです。  と申し上げますのは、今から十一年ぐらい前でしたでしょうか、私たちの地元のやはり聴覚障害の子供たちが国会見学に来るというのです。せっかくこれらの子供たちが来るので、私はもう回るところを全部回りました。ふと思いましたら、聴覚障害なものだから、これは手話通訳が必要だなと私は思ったのです。ですから、手話通訳つけてくださいと国会に言ったら、連れてくることは結構ですが費用は先生の方で負担してくださいと言う。私は、とんでもないと。それで、各党の先生方にお願いをいたしましたら、国会の方でつけることに決定しました。自後、ずっと手話通訳さんをこういう希望があればつけてくれているわけです。  こういうふうに、障害を持っている人たちにたくさんの差別がやはり出ておりまして、民法の、基本法の中にこういうようなことが出ておりまして、私は本当にがくんとした記事の一つでございます。ぜひ法務省も、これはきちっとして、大臣、早急に検討していただかぬといかぬと私は思っておりますので、どうぞひとつお願いをいたしたいと思います。  さて、今度、弁護士がとにかくこれからふえるというわけでございまして、弁護士を開業しながら国会の政策秘書になれないだろうかという議論が出てまいりました。  そこで、衆議院の事務当局、これは兼業禁止規定はありますか、皆さんの立場から見て。簡単でいいですよ。  それから、大蔵省の方、公認会計士、この方には兼業禁止がないと聞いているのですが、公認会計士の方は、開業のままいわゆる政策秘書になることができますか。  まず、事務当局
  65. 清土恒雄

    清土参事 政策担当秘書に限らず、議員秘書について、法律の条文で兼職を禁止するものはございません。
  66. 大西又裕

    ○大西説明員 公認会計士の他業の禁止についての御質問でございますが、公認会計士法において、公務員を含めまして、他の職業を兼務することは禁止されておりません。したがいまして、開業のまま政策秘書になることはできると考えております。
  67. 坂上富男

    ○坂上委員 法務省、弁護士さんが開業しながら兼任することは、どうも常勤公務員に該当するというようなことで、どうもいかぬというような見解のようでございますが、どうですか。
  68. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答えを申し上げます。  弁護士法三十条一項に規定がございますけれども、弁護士が報酬ある公職を兼ねることはできないとされておりますけれども、その上で、例外を設けておりまして、衆議院もしくは参議院の議長もしくは副議長、内閣総理大臣等の職につくこと、それから、常時勤務を要しない公務員となること、それから、官公署より特定の事項を委嘱された職務を行うことについては、兼職をすることを認めでおるわけでございます。  委員指摘の政策担当秘書につきましては、三十条一項に定める報酬ある公職に該当いたします。したがいまして、弁護士は、政策担当秘書が常時勤務を要しないものである場合、この場合にはこれを兼職することができるということになりますが、そうでない場合には兼職することができないということになろうかと思います。
  69. 坂上富男

    ○坂上委員 御指摘のとおり、常勤の仕事かどうかということにどうもかかわるようでございます。したがいまして、弁護士会の理事会なり弁護士会の方針として、これは常勤でないと認定すればいいのかどうかなと思っているのでございますが、仮にこれが、いや、常勤だ、こういうような場合は、括弧で政策秘書は除く、こういう立法化さえすれば、これは兼業禁止に当たらなくて済む。ほかにまた、弁護士そのものの職務の中から、それでもいけませんよ、こうなるんでしょうか。あるいは、いわゆる政策秘書はよろしい、こう条文で除外規定さえ設ければ、これはいいんでしょうか。  私は、これは聞きたいのでございますが、御存じのとおり、政策秘書というのは私たちの知恵袋なんですね。だから、そんなに、毎日八時間労働で僕らのところに来ているわけじゃないのですよ。自分で一生懸命、図書館へ行って勉強したり、あるいはうちで思案して、いろいろ考えたりして、先生こうだよ、こう言ってしてくれるのでありますから、いわゆる労働基準法に言うような拘束時間なんというのは全くないわけでございます。私は、これは常勤というものには当たらないんじゃないか、こう思っておるわけでございます。したがって、法律改正すれば弁護士そのものとしてはできるんだろう、こう思います。しかしまた、改正しなくても、弁護士会の解釈いかんによって、しかもまだ、雇う人が、そんな毎日来なくたっていいよ、あなたが随時来てくれればいいよという勤務体系であるならば、これはもう常時に当たらないんじゃなかろうか、そういうことは自由に判断できるんではなかろうか、こう思っていますが、いかがです。
  70. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 常勤か否かというものについては、もちろん、その解釈の問題が入ると思います。その点につきまして弁護士会の方の御意見等も十分参考になろうというふうに我々は思っておりますけれども、それは、やはり職務実態の解釈の問題であろうというふうに考えております。
  71. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。  最後に、夫婦別姓の民法改正、私ら提出したのでございますが、これは、法務省が私たちに教えてくれました、いわゆる法律要綱に基づきまして私たちも夫婦別姓の法律案を出したわけであります。一点だけでいいですが、この一点について、こういう法律はできると困ると言うのか、あるいは、いや、ぜひひとつ成立をさせてくれ、こういうことなのか。これ、ひとつ大臣、御答弁いただけますか。
  72. 松浦功

    松浦国務大臣 現在の段階で法務省の見解を申し上げることは遠慮させていただきたいと思います。
  73. 坂上富男

    ○坂上委員 もう終わりますが、去年は、どうやったら提出できるだろうか、そして、どうしてもこれは通常国会で成立させなければ、提出をして成立させていただきたいということがずっと出てきているのですね。法務省のいわゆる法律要綱の中にもきちっと書かれているのですね。法務省の言うとおりのことをこちらが書いて出したのが、法務省が今度答弁できないというのがちょっとわからないのでございますが、遠慮は要らないんじゃないでしょうか。  法務省はそのことのために法制審議会にかけたのでしょう。法制審議会はそれをもとにして答申したのでしょう。法制審議会をもとにして法律要綱というのをおつくりになったんじゃないですか。夫婦別姓だと言うものだから、それで法務省はなかなか出しかねると言うものだから、じゃ、うちらがかわって出そうかと。ほかの先生も支持していただいている、ほかの政党も支持していただいている、自民党さえも一部は相当数御支持をいただいている。それならば、議員立法で成立可能なんじゃなかろうか。そうだとするならば、法務省の意向を体して私たちが立法できるんじゃなかろうか、こんなふうに思っているわけですが、いかがです。
  74. 松浦功

    松浦国務大臣 この段階で法務省の意見を申し上げることは、差し控えさせていただきます。
  75. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。
  76. 八代英太

    八代委員長 続きまして、佐々木秀典君。
  77. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木です。  私は、きょうは二つの点、裁判の現状の問題と対策、それからオウム真理教関連事件の訴訟その他の問題についてお伺いをしようと思っておりますが、最初の問題については、同僚の議員からもかなりお話が出たようでございます。特に、私もここに手にしております、日本弁護士連合会がシンポジウムを開いて、現在働いている裁判官が忙し過ぎるんじゃないかという指摘、これについても同僚議員からいろいろお話あるいは質問があったようでございますので、できるだけダブらない範囲質問したいと思います。  まず、裁判所にお尋ねをいたしますが、ことしの司法研修所を終了される方々の中から、判事補になりたいと志望しておられる方々はどのくらいと把握されておられますか。おわかりでしたら。
  78. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  本年度の司法修習生考試の対象者は七百二十名でございまして、考試委員会はあす開かれる予定になっております。現時点で、裁判官の任官を希望して採用願を出している者の数は百四人でございます。
  79. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ひところ、新しく裁判官になろうとする修習生、終了者が少ないということが言われていたのですね。資料によりますと、昭和五十四年から昭和六十三年を経て平成元年ぐらいまで、これはもう七十人以下の数だったのですが、平成三年ぐらいから九十人台になる。平成四年にはまた六十五人というように少なくなりましたが、平成五年九十四人、六年が百二人、七年が九十九人、八年が九十九人。大体百人前後のところで来ているのですね。ことしも何とか百人前後は確保できそうだということで、私どもとしてもこれは結構なことだとは思っております。  しかし、そうはいっても、裁判官の実数というのは、同僚議員からも多分御指摘があったろうと思いますけれども、他の先進諸国に比べると非常に少ないということが言われておりますね。もちろん、司法の仕組み、これも違うということはありましょうけれども、法曹人口が全体的に、他国に比べてみても我が国は少ないと言われている。弁護士の数をふやす必要があるということで、司法試験の合格者数も多くなることになったわけですが、多分同僚議員から御指摘があったろうと思いますけれども、弁護士がふえるということになると、それだけ訴訟事件もふえてくるだろうと私は思うのです。訴訟以外のことでもそうですけれども、法律的な処理を要することというのが多くなってくる。それに対して、裁判所の関与の度合いというのも多くなってくるのだろうと思うので、やはり弁護士をふやすだけではなしに、同時に裁判官をふやすということについても私どもは考えていかなければならないし、裁判所としても、相当真剣にこのことを考えていかなければいけないのではないかと思うのです。  裁判官給源は、何といっても司法研修所の終了者が最大であるわけですけれども、しかし同時に、弁護士から裁判官を得るという方策も立てられているわけです。ところが、資料によりますと、実際に弁護士から裁判官になるという人は極めて少ない。毎年でも恐らく数名程度ではないでしょうか。  このことについては、いろいろな事情があるとは思いますけれども、もう少し日本弁護士連合会と裁判所と御協議をいただいて、積極的に弁護士から裁判官になっていただくというようなことも考えていただく必要があるのではないかと思いますが、その辺の御努力はなされているのでしょうか。
  80. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  弁護士の方から裁判官になっていただくのは、裁判所に新しい風を吹き込んでいただくということで、私どもとしては好ましいという考えから、日本弁護士連合会と協議して、お願いしているところでございまして、常時、日本弁護士連合会の担当の方とその点での接触を持っているところでございますが、委員指摘のように、実際に任官される方は年数人程度にとどまっているところでございます。  これからも日弁連と十分協議して、努力していきたいというふうに考えております。
  81. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 裁判官の忙しさ、平均的な手持ち事件の数などということについても既に同僚の議員からお話があったそうですが、忙しいということは、これまた裁判所それぞれの事情によっても違うのだろうとは思うのですが、一般的に私ども考えられるのは、何といっても大都市及びその周辺の支部などです。こういうところで働く裁判官方々が非常に忙しいということは、私どももつくづく思います。  私も、弁護士の経験から考えて、一人の裁判官が二百件以上の事件を持つなんということは、果たしてきちんとそれに対して処理できるのだろうかという疑問を持ちます。私などは、とても能力がありませんから、弁護士をやっていたって、せいぜい五十件ぐらいやっていればいいところで、刑事もやる、民事もやる、その他の行政事件もやるなんということになってくると、その整理だけでも大変なわけでして、それは、裁判官というのは私どもよりもすぐれているのかもしれないけれども、それにしても、人間ですから、やはり限界があると思うのです。  そういうことで、過労の余り体を壊されるという人も結構ある、精神的にもストレスがたまって、苦労をされる方も多いように聞いているのですけれども、ここ三年ぐらいの間で、現職の裁判官で死亡された方の数というのはどのぐらいになるかわかりますか。
  82. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  平成六年一月一日から昨年の十二月末までの三年間に死亡した裁判官の数は、総数で十五人でございまして、判事が四人、簡易裁判所判事十一人で、いずれも病気によるものでございます。  なお、それを年度別に申し上げますと、平成六年が三人、平成七年が八人、平成八年が四人というぐあいになっております。
  83. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これを多いと見るか少ないと見るか、いろいろ評価はあるだろうと思います。また、簡易裁判所裁判官ということになると、年齢的にはやや高いのかなとも思うのですけれども。しかし、それにしても、やはり裁判官も人間ですから、仕事を離れては、本当はプライバシーあるいは私生活もあるわけでありますし、また、独身の方と世帯を持っている方とあろうかと思いますけれども、世帯を持っている方はやはり家族との和やかなひとときをせめて一週間に一遍ぐらい持つというようなことも私は大事なことだろうと思うのです。  しかし、弁護士会のシンポジウムでのさまざまな体験発表だとか、あるいは元裁判官だった相当の数の方々の体験に基づく話を聞きますと、仕事が忙しくてそれをうちに持ち込まざるを得ない、休みの日も研究をしたりあるいは判決書をするとかいうようなことで、なかなか家族と団らんの機会も少なくなっているというようなことも言われている。そういうことが高じてまたストレスがたまるということにもなりかねないわけでありまして、恐らく最高裁としてもそういうことの配慮というのはいろいろ考えられているのだろうと思うけれども、そういうことについてももう少しさまざまな配慮をされる必要があるのではないかと思います。  外国の司法官の方などにもお伺いすると、全くそういう点については余裕があるということも聞いているわけでして、人間はやはり余裕がなければいい仕事もできないと思うものですから、この辺については、きょうは時間がありませんから詳しくお伺いしませんけれども、またそういう対策などについてもぜひお考えいただくと同時に、何らかの方策を立てられているのであれば、また次の機会にでもお知らせをいただきたい、こんなふう思っております。  それから、裁判所、大都会もですけれども、過疎地などの支部、私は旭川弁護士会に所属をしておりますけれども、旭川弁護士会の管轄は稚内、それから紋別市などというところも入ります。稚内にも裁判所の支部がありますけれども、これは旭川の裁判官が出向いていくわけです。常駐していないわけです。ところが、旭川から稚内というと、夏場でも行くのに車でも片道四時間、電車に乗っても四時間、冬で雪が降ったときになりますと五時間かかるわけです。行き来だけでも大変に苦労するところです。そういうところで裁判官が常駐していない。いろいろなトラブルはあるのだけれども、なかなか裁判所での解決が図られないということがあるわけです。それだけに旭川の本庁から出かけていく裁判官は、行ったときにさまざまな事件を一遍に扱わなければいけないというので、これまた大変な苦労があると思うのです。  そもそも、やはりこういう支部に裁判官が常駐していないという状況は私はあるべき裁判所の姿ではないと思うのですけれども、この辺についての裁判所の考え方というのはないのですか。不在庁をなくすというようなことはできないのですか。もちろんそのためには裁判官増員しなければなりませんが、いかがですか。
  84. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 先ごろ簡易裁判所の適正配置と申しますか、配置の見直しをいたしましたときに、簡易裁判所につきましてはもうできるだけ裁判官の不在庁はなくそうということで、従前裁判官がほかの庁からてん補しておりました庁につきましても専属の裁判官を配置するということをやりました。  今委員指摘のような地裁の事件になりますと、これは実はなかなか難しい問題がございまして、実は私も旭川におりまして稚内支部をてん補した経験もございますけれども、件数が実は非常に少ないといいますか、常時十件を切るような件数でございますので、一人の裁判官を張りつけておきましても、本当に仕事としては月のうち一日分とかそんなような量なのでございます。そういった点を考えまして本庁の方からてん補をしておるわけでございます。ただ、支部によりましては、最近の人口動態とかそういうものを背景にしまして、事件がどんどんふえできておる庁がございます。そういった庁につきましては、裁判官の手当てを十分にやっていきたいというふうに考えております。
  85. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 確かに私も弁護士をやっているときに、あるへんぴなところの裁判所に行きましたら、裁判官がふだんは余り事件がないから専ら釣りを楽しんでいますなんという人もいたけれども、こういうのは珍しいのです。最近はやはり国民の権利意識も高まってきていますし、だんだん事件というのはふえてくるはずなので、そう遊んではいられない。そうすると、やはり私は不在庁というのはできるだけ置かないことにした方がいいのではなかろうか。そこにまた裁判官がいるということになれば頼って、事件も多くなってくるのだろうとも思うのです。相乗的な効果を出すのではないかと思います。これはひとつ、司法政策の問題もありますから、これからまた議論をして、みんなで協議していくべきことだと思います。  時間が大分迫ってまいりましたので、この点はこの程度にいたしまして、オウム関連の事件のことについてお伺いいたします。  関係者の御努力によって、麻原彰晃こと松本被告人の裁判を除いては、刑事事件も民事事件もかなり進捗しているように思いますけれども、その中で、破産事件の進捗状況、これはどうなっておりましょうか。幸い、上九一色村のサティアンなども大分撤去されたりして、住民の皆さんが喜んでおられる。管財人も非常な御努力をされているように聞いておるのですけれども、全体的な破産事件の進捗状況としてはどうでしょうか、簡単にお答えください。
  86. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 オウム真理教に対する破産事件は、ただいま委員から御指摘ありましたように、教団施設からの信者の退去も完了いたしまして、教団財産の処分につきましても、地方公共団体等の協力を得て順調に進行しているようでございます。
  87. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 裁判所としても、できるだけ管財人にも協力されておられると思いますけれども、さらに積極的な御協力をぜひお願いして、早い解決を望みたいと思います。  それから刑事事件の方ですけれども、問題の松本智津夫の事件ですね。これが、この間来マスコミをにぎわしておりますのは、弁護団が、裁判所の月四回の期日指定に対して、これはもう限界だ、月三回が手いっぱいなのだ、これ以上はやらないと言って、三月十三日の二十九回公判には十二人の弁護人全員が出廷したけれども、翌日十四日の第三十回公判には全員欠席をするという事態になった。これについてはさまざまな世論がありますし、弁護人として無責任だということもありますけれども、しかし、確かにこの事件は大変だと私は思うのです。  この弁護団長も、それから主任弁護人も私はよく知っておりまして、昔は一緒に事件もやったことがある人ですけれども、刑事弁護人としてはもう第一級の人物だと私は思うのですね。こういう人が国選弁護人をよく受けてくれたな、こんな苦労な事件と思うくらいなのです。だから、大変に苦労しているだけに、その人たちの言い分というのは私はわかる。一般方々は理解できないかもしれないけれども、私はよくわかっているつもりです。しかし、三回だ、四回だということのやりとりのために、実質的にはかえってそれがおくれていくのではないかという心配すら私は持っておるのです。  それと、実は十二人という弁護人の数も、これも確かに異例ですね。今までに国選でこんなことはない。もっとも、検察官の方も九人立ち会っているというのですから、相当なものですけれども。数が多いばかりが事件処理を早くするというわけにはいかないと私は思うのです。弁護人、同じ事務所ではないのですから、それから同じ土地の人ではないのですから。かえってそのために、弁護団会議を開いたりなんかということも手間がかかるという、非常な苦労があるわけなのですね、意思統一。  これは具体的な事件ですから、最高裁としてもどうこうということにはなかなかならないのだろうと思いますけれども、これは報告事件ですね。報告事件だから、現場からの報告は聞いておられると思うのです。一つは、この十二人の弁護人という数ですけれども、これはどこがどういうようないきさつで決めたのか。弁護士会からの。要望だったのか、あるいは裁判所からなのか。被告人自身が言うわけないですから。この辺はどういうようにお聞きになっていますか。  それと、国選弁護人ですから、弁護料だとかあるいは訴訟の記録ですとか、そういう費用について特別な配慮がなされているのかどうか。
  88. 高橋省吾

    高橋最高裁判所長官代理者 松本被告人の国選弁護人は、委員指摘のとおり、合計十二名選任されております。受訴裁判所が十二名の国選弁護人を選任したのは、本件には極めて重大な事案が複数含まれております。しかも、共犯者あるいは関係者多数の多くの事実が起訴されておりまして、証拠の量が非常に膨大である上、その証拠関係も極めて複雑困難なものということで、そのままでは非常に審理の長期化が見込まれる、そういったところから、本件の真相を早期に解明するという観点から審理を迅速に進める必要があることから、弁護人間において弁護活動を分担することを前提として、国選弁護人の負担の軽減を図るために、これまでに例のない十二名という多数の国選弁護人を選任したものと理解しております。  それから、報酬等のことですけれども、国選弁護人の報酬の額というのは、受訴裁判所が、事件の難易とか、あるいは当該弁護人の訴訟活動の状況あるいは開廷回数その他のいろいろな事情を総合的に考慮して決定するものであります。本件につきましては、その事件内容の複雑困難さ、あるいは訴訟活動の負担等が極めて大きい、そういった点を考慮しまして、受訴裁判所においてこの事件相応の報酬及び謄写料を支給しておりまして、その結果、その額は通常の事件と比べて特別に高額になっております。
  89. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そうは申しましても、やはり国選弁護料というのは限られているわけでありまして、私の弁護士経験からいっても、この事件にかかり切りで、その弁護料をいただくことによって生活あるいは事務所などを維持するなんていうことは到底私は考えられない。物すごい大きな大きな負担、犠牲を弁護人は強いられているはずなのですね。その辺のこともやはり頭に入れながら、これは最高裁判所の御指導というよりは当該裁判所でしょうけれども、早く信頼を回復して、実質的に事件処理が早く行われるように希望したいと思います。  いろいろな問題ございますので、これはまた機会を改めて質問をさせていただきたいと思いますので、一応きょうはこれで終わりたいと思います。
  90. 八代英太

    八代委員長 次に、正森成二君。
  91. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、裁判所職員定員法について伺いたいと思います。  法務委員会調査室からいろいろ資料をいただいておりますが、それを見ますと、多くの事件は横ばいないしふえているのですが、家庭裁判所の少年の新受件数だけが、平成三年に比べて大体三分の二くらいに減っております。その主な理由について簡単に説明してください。
  92. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 私どもの方もはっきりとした理由はわかりませんが、一つは、平成三年と平成七年を比べますと、少年の人口が非常に減っております。百六十万人くらい減っておる。少年自体が減っておるということ。もう一つは、やはり交通事件が非常に減っております。これは恐らく、交通反則通告制度の方に流れていくといいますか、反則金を納付する形で処理される事件がふえているため、裁判所に来る事件が減っておるのではないか、そういうふうに予測しております。
  93. 正森成二

    ○正森委員 一応の説明を伺ったのですが、先ほど聞いておりますと、同僚委員からも、事件数はどのくらいかという質問がありましたので、質問するかわりに私の方から申し上げますが、調査室の資料によりますと、例えば地方裁判所の民事事件は、平成七年が八十六万余り、平成三年が六十二万余りで、約一・三八倍にふえているはずであります。それからまた、地方裁判所の刑事事件につきましても、一・一八倍くらいにふえています。特に、高等裁判所の民事新受件数は、二万九千六百二十四件、これは平成七年で、平成三年が二万三千九百八十九ですから、一・二四倍にふえております。これは資料ですから、多分正確であろうと思われます。  そういう点からいいますと、裁判官定員増というのが非常に少ないということは、今同僚委員が言われたとおりであります。法務大臣もおられますので、細かいことはもう結構ですが、裁判官の人数の推移について若干申しますと、明治二十三年には、裁判官が千五百二十一名おられたそうです。そのときに弁護士の数は千三百四十五名でした。それが平成八年には、二千八百七十九人に裁判官がふえ、ほぼ二倍弱になりました。弁護士の方はどうかといいますと、一万五千九百七十三人で、約十二倍にふえております。ですから、ふえ方において裁判官が非常に少ないということは相対的に言えると思います。  同僚委員も言われましたが、この間、日本弁護士連合会は昨年五月三十一日にシンポジウムを開きました。これは、「忙しすぎる裁判官」といって、こういう本になっております。また、裁判官の日常をよく知ってもらうために、「裁判官の一週間」ということで、これは仮名になっておりますが、実際上は、最近おやめになった裁判官からの事情聴取に基づいて、ほぼ裁判官の生活はどういうものかということを典型的な、これを見ますと、大都市の近郊に配属されている民事の裁判官、九年たった特例のついた判事補の例、それから地方支部の支部長をしておられる方、それから高裁の左陪席をされている方という三人を挙げて書いておられます。  時間の関係で、そのうちの二つだけを紹介しますと、九年たった判事補は、今も話が出ましたが、合議事件が約八十件、単独事件をA係、B係でそれぞれ百五十件持って三百件、全部で三百八十件持っている。自分の単独事件処理するのに精一杯で、合議事件には余り身を入れず、合議の記録はほとんど読んでいない。これは、裁判長が非常にわけのわかった方で、君は単独が大変だろうから、合議は余りやらぬでいいよ、こう言ってくれたのに、女性裁判官ですが、甘えたんだということが書いてありますけれども、それぐらいの非常な大きな分量だ。  そして、十時に裁判が始まる前に、朝のうちに二件和解事件を入れる。裁判が入っていない日は、一日に十六、三十分おきに和解事件を入れるということが書いてあります。日曜日や土曜日は休みということになっているけれども、土曜日は完全に仕事に充てる。日曜日も夜は深夜まで仕事をする。一週間に大体八十時間働いておる。今、週四十時間ですね。八十時間働いておる。平日は十二時間から三時間、土曜日十二時間、日曜日六時間ぐらいだ。  こういうことで、裁判で現場検証は事実上できない。和解は、早く和解してくれれば一丁上がりになりますから、どうしても、これで和解しておいた方がいいですよ、下手したら負けますよ、そこまでは言わぬでしょうが、それに近いことをにおわして押しつけるということがあるということをシンポジウムなんかで言っておられるんですね。せめて手持ち事件が二百件ぐらいであれば、これはありがたいんだがということで、この裁判官の平均睡眠時間は五時間であるというように言っておられます。  あるいは、もっとひどいのが高裁の裁判官のようですね。これを見ますと、高裁の裁判官は約二百五十件持っているが、右陪席と左陪席で半分に分けるから百二十五件だということで、高裁の事件は一審と違いまして、一審で争ってそれぞれが満足しないで控訴するわけですから、記録もこんなにあるし非常に大変だということで、新作が二十五件は来るから、右と左に分けると一人が十二、三件は解決しなければならぬということで、大変な激務であるということを言われまして、この方も土曜日も日曜日も働くということですが、高裁の同僚は、「心身の健康を保って高裁勤務を乗り切ること」。「乗り切ること」なんて書いてあるんですね。これが高裁の裁判官になったときに皆思うことであるということで、「裁判官の仕事があまりにも忙しいために、日曜日は月に一回休めるようにしてほしいと最高裁に上申した裁判官がいた。」こう書いてあるんです。これは非常に厳しい。民間じゃないんですね、週休二日のはずの裁判官が、せめて月に一回は休みたいと言って、事もあろうに、労働者あるいは働く者の労働時間などを守る、そういう判決をしなければならない裁判官がそういう申請を出しておる。  その結果どうなっておるかというと、高等裁判所裁判官にノイローゼや自殺者が非常に出ている。自分の知っている裁判官で四人自殺した。うち三人は高裁時代に実際自殺した。「二人は庁舎から飛び降り、一人は高裁勤務当時、フェリーで飛び込み、もう一人は高裁勤務当時に踏切に飛び込む。原因は、勤務の量と質のハードさ、それをこなせない自分に気づいたときにショックを受け、うつ病になるというパターン」、こう書いてありますね。  ですから、そういうのを見ますと、やはり国民の権利を守るためにも、裁判官裁判官としての誇りを持って、余裕を持って裁判をする意味でも、今給源修習生だけだからとか言われましたが、弁護士人口をふやすだけでなしに、裁判官の人口を計画的にふやすということで、もちろん我が国は単年度主義ですけれども、大きな大体の目標を持ってそれを実現するようにする必要があるんじゃないですか。簡潔に。
  94. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 ここ数年来、特に大都市部の民事事件を担当しております部門が非常に忙しくなってきておることは、委員指摘のとおりでございます。ここ数年、私ども、そういう状況も見ながら着実な裁判官増員を行ってきたつもりでございまして、例えば、東京地裁の例でいいますと、最近三年間で、単独事件を担当いたします係というのを八係ふやしております。ことしの四月にもさらに六係ふやそうと思っております。決して十分余裕のある状態にまでということは言えませんけれども、幾らか状態は改善されてきているんじゃないかと思っております。  今後とも、今回お認めいただきました増員等を給源にいたしまして、繁忙な部署にできるだけの手当てをしていきたい。また、今後の事件の動向からいたしますと、我々としては、当分、少なくとも今年度並みの増員というのは継続してお願いしていく必要があるんじゃないかと考えております。  将来の方針といいますと漠然としたものになりますけれども、そんなようなことを考えておるわけでございます。
  95. 正森成二

    ○正森委員 私は、決して最高裁あるいは裁判所を非難するために言っているんじゃなしに、応援する意味で、もちろんこの法案には賛成いたしますし、なお努力していただきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。  それでは、きょうは、次に別のことを質問させていただきます。大蔵省と文部省、来ていただいておりますか。  それでは、伺いますが、現在、東京大学の駒場の学生寮、非常に伝統のある寮でございますが、これが廃寮処分になったということで、学生に対して速やかに立ち退けということで、裁判所に断行の仮処分を申請しております。司法権の独立がございますから、最高裁に対しては一切伺おうとは思っておりません。  まず、大蔵省に伺いたいと思います。  この事件のときに、この寮を廃寮にして、その跡にキャンパス・プラザという施設をつくって、そして、そこでいろいろな学生の活動を保障するというようなことも考えておるようですが、この関係だけで予算が、建物取り壊し等々を含めて十二億円、平成八年についたそうです。しかし、これは、私どもの知っているところでは、予算が年度内に消化されなくても、執行し得る繰越明許費という手続がとられているんではないかと思いますが、まず第一に、予算が執行されない場合に、一般的に繰越明許という制度があるのかどうか、それから、東大についてはどうなっているのかという二つの点について、担当の方から御説明を願います。
  96. 飯原一樹

    ○飯原説明員 御案内のとおり、財政法第十四条の三の繰越明許費の規定によりまして、本件につきましては、国立学校特別会計の施設整備費といたしまして、繰越明許費として国会の御承認を得ておりまして、繰越事由に該当すれば予算繰り越しも可能ということでございます。
  97. 正森成二

    ○正森委員 今答弁のとおりで、私も大蔵省から資料をいただきましたが、施設整備費ということで、文部省国立学校の欄に、丙号の繰越明許費の中に明確に入っております。  繰越明許というのは、「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用することができる。」こう書いてありまして、この手続をもう既にとっているわけなのですね。ですから、繰り越しが十分にできるわけであります。  そこで、文部省と法務省の訟務局に伺いたいと思います。  あなた方が二月の四日に仮処分の申し立て書を出しております。その仮処分の申し立て書を見ますと、予算の問題についてこう書いているのですね。「文部省を経由して概算要求を行い、右要求は、文部省や大蔵省においても高く評価された結果、平成八年度予算に盛り込まれ、東京大学に示達されたが、債務者らが」、というのは学生ですね、「本件建物を占有しているために、既に、同年度中に右予算を執行することは不可能となり、さらには、平成九年七月までに着工できる見込みが立たない場合には、右キャンパス・プラザ整備計画予算は返上しなければならない事態となる。」こう書いてあります。  これは明確に事実に違いますし、事実に反したことを裁判所に主張し、あるいは学生に対して、まあ言うたら、宣伝する効果を持っているのじゃないですか。
  98. 櫻井清

    ○櫻井説明員 東京大学の駒場キャンパス・プラザに係る歳出予算につきましては、先生御指摘のとおり、平成八年度予算において措置いたしまして東京大学に示達したところでございますが、御指摘のように、廃寮後も一部の寮生が退去をせず、大学側の明け渡し要求にも応じていない、こういうことから、その執行ができない状況となっております。  このため、大学では現在建物明け渡しの仮処分の申請を行っておるわけでございますが、東京大学といたしましては、早急に旧駒場寮建物を取り壊しの上、その跡地にキャンパス・プラザを平成九年度中に建設する、こういう見通しがあれば繰り越しの手続が認められるということでございますので、そのために鋭意努力しているというふうに承知しております。このためには、一日も早く裁判所におきまして建物明け渡しの仮処分の申請が認められることが予算の繰り越しのためにも必要であろうというふうに私どもも考えております。
  99. 正森成二

    ○正森委員 どうも説明がよくわかりませんが、断行の仮処分などというのは、現状維持の仮処分じゃなしに、本裁判を不要とするわけですから、私も弁護士ですが、もう一生のうちでもめったにないことであります。  しかも、記録を見ますと、あなた方が東大の駒場寮の廃寮処分をしたのは昨年の四月五日でしょう。そして、あなた方の書面を見ても、行政行為、これが行政行為処分であるかどうかは問題ですが、それでも取り消しは三カ月間はできる。ところが、その三カ月も待たないで、四月八日に既に電気、ガスをとめて学生が生活できないようにするという、通常は法治国家で許されない自力救済行為をとっているじゃありませんか。そういうことをやれば、学生との間で相互信頼のもとの話し合いができないというのは当たり前のことであります。  それだけではありません。普通の住居と違って、この寮については、東京大学の「確認事項」ということで、教養学部である第八委員会と寮の委員長の間で確認書があって「寮生活に重大なかかわりを持つ問題について大学の公的な意志表明があるとき、第八委員会は、」すなわち教養学部は、「寮生の意見を充分に把握・検討して、事前に大学の諸機関に反映させるよう努力する。」こういうことになっているのじゃないですか。  そういうことを全く無視して電気、ガスをとめるという自力救済をやった上に、今度、仮処分が出た後どんなことをやっているかというと、教養学部長の名前で学生に手紙を送って、執行をして、断行の仮処分をすると、その「費用は、法律上貴君の負担となることに注意してください。総額で一億円以上、一人当たり二百万円以上になる可能性があるとの説明を受けております。」それだけではなく、「損害賠償とは別個のものです。」「国が貴君に対して有する債権であり、東京大学には」「支払いを猶予する権限はありません。」「貴君の財産、たとえば就職後の給料債権が差し押さえられることになります。」  こんなことは教育機関で、当局と学生との間で言うことですか。私は弁護士を三十数年やっているけれども、物すごい激烈な、組合が二つに分かれた労働争議でもこんなことを言うことはめったにありません。これで教育機関の名に値するのですか。  だから、私は、今言いましたように、仮処分などしなくても、努力して、話し合いをして解決をするということであれば、これは平成九年度に繰り越しすることは十分に法律上可能です。それを予想しております。だから、三月中にその手続をとればいいじゃないですか。私は、そういうことをやることがまさに文部省としても大切なことであり、そういうことにして、お互いの気持ちが、それでは話し合いをして大学の発展のためにさらに尽くそうということになれば、十分に解決し得る余地があると思います。  最後に、時間になりましたので訟務局に、あなた方は、もちろん依頼者は東大であり文部省ですが、いやしくも法律家である以上、こういう間違った申請書を出して、それをずるずるとやるというのでなしに、私が弁護士のときでも、依頼者がわけのわからぬ依頼者であれば、法律上はこうなりますよと言って、助言をして、適当な解決あるいは和解をするように努力するのが本当の弁護士だというようにかねがね習っておりますが、訟務局も、文部省や東大が余りわからぬ場合には、そういう態度をとるべきじゃないですか。
  100. 森脇勝

    ○森脇政府委員 御指摘事件は、現在裁判所に係属中で司法判断を仰いでいるところでございますので、事件の内容についての答弁を差し控えさせていただきますが、一般論といたしましては、先生ただいま御指摘のとおり、行政庁の意見あるいは方針が間違っておれば、それを正していくというのも我々の役目であろうというふうに考えております。  当該事件につきましては、東京大学を初めとする関係行政庁と十分緊密な連絡をとった上で適正に対処してまいりたい、かように考えております。
  101. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  102. 八代英太

    八代委員長 続きまして、保坂展人君
  103. 保坂展人

    ○保坂委員 社民党の保坂展人です。  裁判官の忙しさについては私も質問を用意していたのですが、それぞれの委員の皆さんから既に尽くされているようなので、一点、最高裁の問題について質問をしたいと思います。  実は、何度がこの法務委員会で、最高裁の判決申し渡しの点について、あるいは最高裁の持っている閉鎖的な、国民に対して開かれているとはなかなか言えない体質について指摘をさせていただきましたけれども、今回お聞きをしたいのは、最高裁の、これは大審院以来ということになるのでしょうか、五十年経過した民事判決原本について、これを、今から五年前でしょうか、九二年の一月二十三日に、事件記録等保存規程を改正して、民事裁判の判決原本は基本的に廃棄をする、特別に保存するものは例外ということをお決めになったようです。  そうすると、それこそ明治から昭和十八年ぐらいまでの、極めて貴重な、知的な、あるいは司法文化遺産というか、そういうものが、散逸するどころか、もうなくなるんだということで、大学の先生方を初めとして、判決原本の会という任意の団体が結成をされて、最高裁の方といろいろ折衝をされた。結果、その量は並べると二千二百メートルですか、かなり莫大な量であるということで、これを各国立大学の十大学が、判決原本の一時保管に関する連絡会議というのをおつくりいただいて、緊急避難的にこれを受け取ったということで、現在その十大学がこの貴重な資料を保管されているというふうに聞いております。  ただし、それは緊急避難的、少なくとも三年四年という単位で考えておられたようで、もう既にだんだん時間がたっているわけなのですけれども、大学によっては、例えば老朽化した校舎で、夏はとても暑くなって、これは保存状態が余りいいとは言えないというようなデータはあるのですけれども、最高裁はこの判決原本の今後の扱いについて責任を持たれるのでしょうか。もうそれは、この十大学にお預けしたから、後はどうにでもしてくださいということなのか、この辺がちょっとあいまいなように思うのですが、歴史的資料として差し上げたから、後は大学人の皆さんあるいは民間の皆さんがどうぞ自由に扱ってくださいということなのか、これについてちょっと伺いたいと思います。
  104. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 最初に、最高裁の判決とおっしゃいましたが、実はこれは最高裁が保管しているのではございませんで、民事の事件の場合は、事件が完結いたしますと、第一審裁判所ですので、簡易裁判所地方裁判所で保管しているその記録、判決原本の保管の問題でございます。  実は、これは保存期間五十年ということになっておりますので、その法律、法規の定めによりますと、保存期間を経過いたしますと廃棄することになるわけでございます。実は、裁判所の方で判決原本を保存します関係といいますのは、どういう必要からするかといいますと、専ら裁判の必要上行うわけでございまして、例えば関連する事件が後に出てきましたり、あるいはその裁判を後で何らかの形で裁判の資料として利用する、そういうふうな利用の可能性がある場合に備えまして保存しておるわけでございます。五十年間保存しておきますと、およそそういう後の裁判等で前の判決原本が使われるという可能性はもうございませんので、そういうことから廃棄をする、そういうシステムになっておるわけでございます。  ただ、委員先ほど御指摘のように、この判決原本というのは、学者の方から見ますと、いろいろな意味で学術研究の資料として価値があるものだという御意見でございまして、ぜひ学術研究の資料としてこれを保存させてもらえないかという申し出があったわけでございます。そういう申し出がございましたので、裁判所の方としては、いわば裁判の必要上という面から見ますと用済みのものでございますので、学者の方が学術研究用にお使いになるということであれば、それはそれで望ましいことだろうということで、差し上げたというと妙ですが、移管させていただいたわけでございます。
  105. 保坂展人

    ○保坂委員 そうしますと、五十年期限切れというのは毎年出てくるわけですけれども、これについてはどういう扱いをするのかということと、そういうボランティアというか、緊急避難的な扱いではなくて、例えば国立司法公文書館というようなものをきちっと立ち上げてやろうというお考えは最高裁の中ではなかったのかどうか、この点について。
  106. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、国立大学の方に判決原本を移管しました際に、国立大学側の要望としましては、今後保存期間が経過していく分についても何らかの措置をとりたいので、しばらくその廃棄は待ってほしいという申し出がございまして、私どもの方ではその廃棄をまだ留保しております。  それから、今後の恒久的な保存の関係でございますが、これは判決原本の会の方でいろいろお考えになっているようでございます。私どもの方としては、裁判所の立場からいたしますと、これは裁判の必要上という制約がございますので、なかなか学術研究用の資料というのを、研究用として保存するというわけにはまいりませんが、もし大学側なりなんなりでそういう保存機関ができましたときには、移管等については今後も十分協力させていただきたいというふうに考えております。
  107. 保坂展人

    ○保坂委員 この問題については、もっと主体的にきっちり保存する方向でぜひ協議を、緊急避難的に受けとめているということですから、されていただくことを要望して、次のテーマに移りたいと思います。  民法についてなのですが、昨日私は、知人の、女性で国の研究機関に勤める公務員の方からお手紙をいただきました。ちょっと紹介したいと思います。  私は国の研究所に勤める研究公務員で、論文および学会発表は旧姓(通称)を用いています。我が省においては、公務員であることから、ほとんど全ての事務手続きは戸籍上の名前でしか行えません。ここに、大きな矛盾と混乱の原因があります。  国の研究補助金への研究費申請においては、審査員が大学教授や同業の研究者である場合が多く、学会での活躍や論文発表など、この研究者のこれまで行ってきた仕事についても業績一覧を申請時に添付し、吟味します。しかし、学会、論文を通称で名乗っている場合、研究費の申請名を戸籍上の名前を用いることで、学会等での発表者と申請者とが同一人物であることは、気づかれないと考えられ、申請にとってデメリットとなります。そこで、戸籍上の名前と通称とを併記して申請書に書いて書類を提出するのですが、その際にも、通称は括弧に入れろと行政官から注意されます。しかし、この括弧内の通称が、また面倒で、いざ研究費をいただけることになって銀行に行き、国庫金管理用の通帳を作ろうとすると、銀行員からは、「身分証明書に記載されていない名前での通帳はお作りできません」とか、通称だからと説明して理解してもらっても「コンピューターの都合で、括弧着きの名前では通帳はお作りできません」とさんざん手間取ってしまいます。さらにもっと大変な例は、国から海外に出張する際の公用パスポートのサインについてでした。パスポートは、戸籍上の名前でしか作成してくれませんので、パスポートの名前欄には、戸籍の名前が入っています。しかし、私のサインには、戸籍および通称の両方が入れてあり、それは一般旅券を作成した時には何の問題にもなりませんでした。それが、公用旅券作成時に、行政官から電話で「公務員として海外に行くのに、このようなサインは不適当だ。変更しないとパスポートは出せない」と言われたのです。  実際にこの方は、カードなんかみんな旧姓の、通称の名前でつくっているので、戸籍名だけのパスポートだともういろいろ支障を来す。それから、国際会議なんかに出て、大きな会議でパスポート提示を求められたときに、本人じゃないじゃないかというふうにやられる。大変困っているという話なのですね。  現在、通称を用いて仕事をしている者として、ぜひもう、通称使用ということではなくて、戸籍上の別姓制度になるようにしてくださいというお手紙だったわけなのです。  ちょっと法務省の方にお聞きしたいのですけれども、五年五カ月にわたる法制審の議論の中で、いわゆる旧姓続私案ですか、試案C案というのが採用されなかった理由というのは一体何なのでしょうか。それから、実務上、理論上とり得ないというふうにされたと聞いているのですが、そこの点、お答えいただきたいと思います。
  108. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、いわゆる法制審議会審議過程における中間試案というものにおいで、夫婦別姓制度につきましては、ABCという三案を提示をいたしておりました。  このC案というのは、実際上、今御指摘のような女性の社会的進出に伴う、婚姻によって氏が変わることに伴うふぐあい、不都合というものを解消するための一つの案という形で提示されたものでございます。  この考え方は、必ずしもその案の中で論理的に煮詰まっているものではございませんが、大さうばに申し上げれば、基本的に夫婦は同じ氏になるということにしながらも、氏を変えた人については、氏は変わるのだけれども旧来の氏を引き続き称することができるということにしようという制度でございます。  この案は、氏というものに二つの面を認める、夫婦共通の氏というものがあるのだけれども、しかし、氏が変わった者については、世の中の呼び方においては旧姓を使うということを認めよう、こういうものでございました。しかしながら、この案の考え方は、自己の旧姓を称するということを相手方と合意の上届け出た者は公的場面においてはすべで旧姓を用いるということを前提として考えられていたものでございますから、したがって、社会的に通用しない、これでは今御指摘のような呼称上の混乱が生ずるという観点から問題があるということではございませんで、専ら理論上の問題で、別氏ということを認めるならば、旧姓のまま婚姻することができるという、いわゆるA案と申しておりましたが、それを採用する方が理論的にはっきりするというようなことで、法制審の答申においては基本的にA案のもとで答申がされたということでございます。
  109. 保坂展人

    ○保坂委員 それから、法務省の方でおつくりになったパンフレットにも、社会的な不利益を避けるのであれば、旧姓を通称として使用できれば十分ではありませんかということにお答えになっていて、いろいろな混乱が起きるのだということで、非常に丁寧に書いてあるのです。  もう一つ、非常に大きな問題だと思いますのは、いわゆる婚外子の差別の問題なのですね。婚外子差別に関しては、国際人権規約のB規約の方に明らかに違反をしているということで、規約人権委員会から九三年にコメント、これを改善すべきではないか、世論が必ずしもそういうふうに整っていないのなら、日本政府として世論を整えるべく努力をすべきではないかというような指摘を受けて、九四年には自治省の通達で住民票については改正が行われるということも一歩一歩進んでいるわけなのですけれども、今回、民法改正というのがこれだけ長い期間引き延ばされて、もし仮に、この婚外子差別の撤廃が盛り込まれない民法改正案ができたり、あるいはそれもできなかったりしてここの改善が図られなかった場合、国際社会に対して極めて重大な責任を日本政府として問われるのじゃないか。もちろん国際社会だけじゃなくて当の当事者、婚外子として生まれてきた人たちにとって権利保障をどうしていくのかということについて、お答えいただきたいと思います。
  110. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 いわゆる嫡出子と非嫡出子の相続分の問題につきましても、御案内のとおり、法制審議会の答申ではこれを平等化するという案が提示されているわけでございますが、その答申がされるに至った経緯の一つとして、ただいま御指摘の人権B規約に関する規約人権委員会のコメントというものがあったということはそのとおりでございます。  ただ、この法制審議会の答申に基づく改正ということにつきましては、御案内のとおり、選択的夫婦別氏制度導入の問題と同様、この答申が提出いただきました後にも、国民各層に多様な意見がございまして、それを踏まえて各党その他関係各方面において議論がされているところでございます。  法務当局といたしましては、この点につきましても、選択的夫婦別氏制度導入問題と同様、国民的理解が得られる状態で法案を国会に提出することが適当であるというふうに考えているところでございます。
  111. 保坂展人

    ○保坂委員 これで終わりますが、十月から議員になって、それ以前の議事録を見てみますともっと突っ込んだやりとりがされているので、これが退却することのないよう、法務省の方でここまで来た議論をぜひ民法改正へ向けて進めていただきたいということを要望して、終わります。
  112. 八代英太

    八代委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  113. 八代英太

    八代委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  114. 八代英太

    八代委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  116. 八代英太

    八代委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十六分散会      ————◇—————