○横内
委員 自由民主党の横内正明でございます。私は、与えられた十五分間の時間でございますが、オウム真理教に対する破防法の
適用の問題について、公安
調査庁に二、三お伺いをしたいと思います。
公安
調査庁が公安審査
委員会に対してオウム真理教団を破防法の団体規制の対象にするという申請をして、一年間公安審査
委員会が審理を続けてこられた。そして、一月三十一日に公安審査
委員会として棄却の
決定をしたという経緯でございます。この
決定についていろいろの議論が、賛否両論ございまして、賛成、反対あるわけでございます。
ただ私は、私の地元の山梨で、上九一色村とか富沢町、そういったところにオウム教団の主要な施設があり、その地域の住民が長年オウム教団と闘いを続けてきて、極めて反社会性の強い団体であるという幾つかの事例を地域の住民からたくさん聞いているわけでございます。そういうようなことで、オウム教団について、
国会議員の中では多少その
実態をよく知っている者の一人として、このたびの公安審査
委員会の
決定というのは大変に、極めて疑問な
決定であり、残念な
決定であるというふうに思っているわけでございます。
公安審査
委員会のこの
決定は行政処分でございますから、
法律的な判断はもちろんでありますけれ
ども、その
法律的判断を超えて、大局的というか総合的な判断というものが、あるいは常識的な判断というものがまず前提になければいけないというふうに思うわけでございます。そういう意味で、公安審査
委員会の
委員を見ておりますと、法曹
関係者がほとんどでございまして、唯一純粋な意味の民間人というのは、青井さんという東芝の会長さんですが、これが一月にお亡くなりになった。実は、私はこの方がどういう考え方を持っておられたのか、そこに非常に興味があるわけなんですけれ
ども、今やそれを知ることができないわけでありますけれ
ども、やや公安審査
委員会のメンバーというのが少し法曹に偏り通ぎているのではないかという感じもしているわけでございます。
いずれにしても、オウム教というものは、言うまでもなく、世界で最初に毒ガスを使って
一般市民を巻き込んだ無差別テロを行って、二十数名の死者を出した、そういう犯罪組織でありますし、そして現在は、組織は確かに弱体化をしてきておりますけれ
ども、依然として多数の、数百名あるいは数千名の信者がおり、そして、その教義も全く変わっていないということでございます。こういう組織に対して破防法が
適用できなくて、一体どういう事例で破防法が
適用できるのかというふうに思うわけでございます。
とりわけ、私が大変に懸念をするのは、国際社会での今回の
決定の評価ということでございます。二月の一日の産経新聞に、フランスの公安の専門家、法曹専門家の談話が載っておりましたけれ
ども、フランスではオウム真理教団のようなこういった組織に対しては反テロ法を
適用するのは、これは当然なことだ、こういうような談話が載っておりました。恐らくそれが、テロに大変厳しい
状況になっております先進各国の常識ではないかというふうに思うわけですね。
世界のグローバル化ということが進んで、グローバルスタンダードということがよく言われております。端的に言えば、
我が国の
国内のいろんな事象を判断するに当たって、国際的なルールとかあるいは国際的な常識とか、そういうものにのっとって判断すべきなのであって、余り、
我が国の特殊な判断とかそういう事情よりも、むしろそういう国際的な常識なりルールを尊重した判断をすべきじゃないかというのが恐らくグローバルスタンダードということだと思いますけれ
ども、この問題についても、やはりそういう世界の常識というか、世界各国の現在のテロに対する基本的な対処方針というか、そういうものをもし前提にすれば別の判断があり得たのではないかというふうに思います。
世界各国のテロ
関係者の間に、テロ
関係者といいますか、公安、
治安関係者の間に、日本という国はそもそもテロに甘い国ではないか、そういう評価があるようですけれ
ども、今回の
決定がますます、日本という国はテロを容認する国なんだ、テロに甘い国なんだ、そういう認識を植えつけてしまったのではないかというふうに私は危惧をしているわけでございます。
加えて、私は
法律の専門家ではありませんけれ
ども、今回の公安審査
委員会の
決定文をずっと一わたり読んでみました。やはり一番疑問に思う、非常に大きな疑問を感ずる点があるわけでございます。
それは、刑事裁判並みの厳格な証拠が必要であるということを、そういう基本的な考え方に立っているわけですね。この文書、
決定文の中に書いてありますが、要するに、オウム教団というのが将来そういう再び危険を犯すおそれがあるかどうかという判断が一番のポイントなんですけれ
ども、その判断をする際に、もちろん証拠で、公安
調査庁が出した証拠にのっとって判断をするのですけれ
ども、その証拠で認定するに当たっては、刑事裁判における心証の程度に準ずるような高度なものが要求されるということを言っているわけですね。要するに、刑事裁判並みの厳格な証拠
適用をするんだということを言っているわけでございます。果たして行政処分でそこまでの厳格さが必要とされるのかどうかということがあると思います。
刑事裁判での証拠というのは、刑事裁判というのは疑わしきは罰せずということですから、裁判官が検察官から出された証拠を見て、それで、多少の、一点の疑念があればそれは無罪にする。もう間違いなく、一〇〇%この
被告人は犯罪を犯している、そういう確信がなければ有罪にはしないということですよね。そこまで検察官は証拠を提出して証明をせにゃいかぬわけですが、これについても同じようにやれということを端的に言うと言っていることなんだろうと思うのですね。
ということになると、要するに、オウム教団が将来再びああいう犯罪を犯すことが、間違いなく犯すという確信が持てなければこれはもう
適用しないんだ、こういうことを言っているわけで、これは非常に大変なことで、過去の事実を何か立証するというのは割とできるわけですけれ
ども、将来あることが確実に起こるということを一〇〇%立証するなどということは、これはできないわけで、犯罪が行われる直前ぐらいにならぬとできないのじゃないかというふうに思うのですね。これはむしろ無理な証拠
適用を言っているのではないかというふうに、私は読んでいて思うわけでございます。
公安審査
委員会というのは破防法の団体規制をする
権限を持っているのですけれ
ども、みずからその
権限を封印をしちゃったんだということなんだと思います。未来永劫多分これは使えないということになるでしょうし、これから
事件が起こっても、公安
調査庁は、公安審査
委員会がこういう解釈であればもうほとんどこれはできない、請求できないということに多分なるだろうというふうに思います。
まず、
調査庁長官に伺いたいのですけれ
ども、多分公安
調査庁は、この請求を始める前には、行政処分であるからそんなに厳密なものでなく、もうちょっと緩やかな運用で、解釈でしかるべきだという判断があって始まったんだろうと思うのですけれ
ども、こういう公安審査
委員会の非常にシビアな判断について長官がどういうふうに思っておられるか、感想をまず伺いたいと思います。