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1997-05-21 第140回国会 衆議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十一日(水曜日)     午前九時三分開議 出席委員   委員長 二田 孝治君    理事 稲葉 大和君 理事 河村 建夫君    理事 栗原 裕康君 理事 田中眞紀子君    理事 佐藤 茂樹君 理事 藤村  修君    理事 山元  勉君 理事 石井 郁子君       岩永 峯一君    栗本慎一郎君       佐田玄一郎君    阪上 善秀君       島村 宜伸君    戸井田 徹君       中山 成彬君    柳沢 伯夫君       山口 泰明君    渡辺 博道君       井上 義久君    池坊 保子君       旭道山和泰君    西  博義君       西岡 武夫君    三沢  淳君       鳩山 邦夫君    肥田美代子君       山原健二郎君    保坂 展人君       粟屋 敏信君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小杉  隆君  出席政府委員         文部政務次官  佐田玄一郎君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文部省体育局長 佐々木正峰君  委員外出席者         議     員 島村 宜伸君         議     員 河村 建夫君         議     員 船田  元君         議     員 柳沢 伯夫君         議     員 川端 達夫君         議     員 福留 泰蔵君         議     員 松浪健四郎君         議     員 山元  勉君         議     員 小坂 憲次君         議     員 望月 義夫君         人事院事務総局         任用局企画課長 関戸 秀明君         労働省労働基準         局監督課長   青木  登君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  大学教員等任期に関する法律案内閣提出  第八三号)  スポーツ振興投票実施等に関する法律案(島  村宜伸君外十二名提出衆法第二一号)  日本体育学校健康センター法の一部を改正す  る法律案島村宜伸君外十二名提出衆法第二  二号)  スポーツ振興法の一部を改正する法律案島村  宜伸君外十二名提出衆法第二三号)      ————◇—————
  2. 二田孝治

    ○二田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出大学教員等任期に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤茂樹君。
  3. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 新進党の佐藤茂樹でございます。  この大学教員等任期に関する法律案につきまして、当委員会でも、先週の十六日審議しまして、昨日は四人の先生方にお越しいただいて参考人質疑を行ったわけですけれども、その審議、いろいろ経過を見守る中でも、この今回の法案が、政府の方がおっしゃっているように、本当に大学における教育文化活性化につながるのか、それとも、いろいろな角度から御批判が寄せられているように、大学においてかえって学問の自由であるとかまた大学の自治というものが侵されるような混乱を招くのではないか、そういう疑念もありますけれども、一体どちらなのかということを、またきょうも時間の許す限り質疑の中ではっきりさせていきたいわけでございます。  まず最初に、ぜひ大臣に御確認の意味でもう一度お尋ねしたいわけですけれども、先週の当委員会審議でも同僚委員からこの件については質問をしたわけですが、要するに、今回、選択的任期制ということで、任期とかまた規則などもそれぞれの大学でお決めください、そういうことを建前としているのがこの法案なんですが、建前はそうなんですけれども、しかし逆に、文部省の持っている許認可であるとか予算配分などをうまく活用して、事実上大学に対して任期制というものが半強制的に推進されるのではないか、そういう懸念の声が私たちのところにも寄せられているわけでございます。  その点について最初にお聞きしたいのですが、特に、審議会における審議経過というものを踏まえて、もう一度大臣の方からはっきりとした答弁をお答え願いたいと思うのです。  特に、平成七年の九月十八日に「組織運営部会における審議概要」というものが公表されましたけれども、その一番最後の部分の「(4)任期制導入に伴う措置」という内容の中に、「任期制導入する大学については、これに伴って、教員流動性が高まり、教育研究活動活性化することが期待される。このため、任期制導入する大学における教育研究条件整備について積極的に支援すること等の措置について、検討する必要がある。」こういうふうに明記されているわけですわ。  その「検討する必要がある。」という審議概要をもとに一年間審議をされてきたと思うのですけれども、その結果出た平成八年十月二十九日の答申の中にはこういうことが読み取れるような内容というのは含まれておりません。一年間の経過の中でどういう議論がされたのかということについては今からほじくり返すつもりはございませんけれども、きのう参考人質疑をやった中で、この部会長をされておりました有馬先生の方から、簡単にその旨について一言言われたのが、正確ではないかもわかりませんけれども研究機関に対して手当てをすることはいかにも刺激を与えるのでやめたのだ、きのう私の聞いている範囲ではそういうように聞き取れたのですけれども、そういうお答えをされておりました。  最初趣旨に戻りますが、今回、文部省がこの大学における任期制というものを、文部省行政指導、また予算配分であるとか、また文部省の持っている大学設置とか学部の設置とか研究科設置、そういう許認可をうまく活用して実質上推進させるような、そのことを条件にして推進させるような、そういう財政誘導措置というものは今後とも全くされないのかどうか、大臣に明確に答弁をいただきたいと思います。
  4. 小杉隆

    小杉国務大臣 今回の大学教員任期制は、今御指摘のとおり、教員流動性を高める、そのための一つ方策として導入をしようというものでありまして、この任期制導入するかどうかについては大学判断にゆだねるという、いわば選択的任期制、こういう考え方をとっております。したがいまして、各大学において教員流動性を高めるための方策として有効であるという判断をした場合には任期制をとるわけでありますが、その検討は十分していただきたいと思いますけれど も、文部省大学に対して任期制導入を強制したり、あるいは誘導したりするような財政措置を講じることは考えておりません。  なお、具体的な経過については、もし必要があれば高等教育局長から答えさせます。
  5. 雨宮忠

    雨宮政府委員 若手補足して事実経過につきまして申し上げたいと思います。  おととしの九月の審議概要におきましては、任期制と、それからそれに関連いたします教育研究条件整備ということとの関連につきまして、先ほど先生指摘のような文章を出したわけでございます。このことが一体大学に対するいわゆる財政的な誘導的なものを指しているのか、あるいは当該教員研究費確保でありますとかそういう点を指しているのか、その辺のところが十分明らかでなかったということがございまして、そんなこともございまして関係団体の方からもそのことについての懸念も表明されたということもございます。  そこで、その意を明らかにするということもございまして、昨年の秋の最新の答申におきましては、それが若手教員等に対する、いわゆる当該教員に対する教育研究条件改善ということなのであるということを明確にした、こういう事実経過がございます。
  6. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、大臣局長答弁でも明らかにされておりますけれども、我々も国権の最高機関にいる者として、もし今後、いやしくも大学に対して任期制導入当該大学教育研究条件整備支援条件とするというようなことが少しでも見られましたら、我々としてもやはり厳しくこの件についてはチェックをしてまいりたいな、そのように思っているわけでございます。  次に、第二点目として、これも先週の当委員会でも何回か文部省側やりとりがあった内容でございますけれども、今回のこの任期制によりまして任期つき任用になる、そういう教員皆さんに対しての給与面でのインセンティブということ。について、果たして文部省としてどう考えておられるのかということをもう一度お尋ねをしたいのです。  また、答申に返りますけれども、これは答申の十七ページ、「関連施策推進」の中の(4)に「教員処遇改善」というところがございまして、その中で、「任期制制度として導入された場合、優れた人材確保する上で、教育研究環境の充実だけでなく、給与面においても何らかのインセンティブを工夫することが望ましい。」そういうように答申ではされているわけですね。・  ところが、この法案では、任期がつけられる教員に対して給与上の別扱いが特に考慮されているという節は、法案中身自体を見たときにはないわけであります。  その理由として、文部省側は先日の当委員会で、同僚井上議員質問に対しまして、要は任期つき教員准期のつかない教員職務内容の差は生じないのだ、そういうように答えておられたわけです。これは大臣局長もたしかそういうように答えられた。  しかし、もし職務内容に差がないのであれば、なぜ一般教員に対しては任期をつけずに——特に、今回の提案理由また第一条の目的の中に書いてありますけれども、今回の任期制目的の中でどういう先生を求めておられるのかというと、「多様な知識又は経験を有する教員」ということを強調されておるわけです。一般教員に対して任期をつけずに、逆にそういう「多様な知識又は経験を有する教員」にだけ任期をつけるのか、もう一歩わからない。その理由をやはりもう少し明確に、わかるようにお述べをいただきたいと思います。
  7. 雨宮忠

    雨宮政府委員 先生指摘のように、大学審議会答申におきましては、いわゆる任期制関連施策の重要な一つといたしまして、当該教員処遇改善ということを挙げているわけでございます。したがいまして、このことにつきましては、まず申し上げておかなければならないことは、私どもとしてやはりこれは課題であるというようにまず認識しておる、これは事実でございます。  ただし、今回の法案を考えるに当たりまして、現在の公務員制度のもとにおきましては、いわゆる職務給原則というのがあるわけでございまして、異なった職務に対しては異なった給与が支給される、しかし、基本的に同じ職務であるならば同じ給与が支給される、こういう原則があるわけでございます。  今回、任期制法案提出させていただくに当たりまして、任期の付された教員職務任期を付されていない教員職務と比べて異なったものである、制度を設計する段階において、一般的な意味合いにおきまして異なったものであるというような考えをあらかじめ定める、あるいは想定するということは非常に困難であるということでございまして、そういう意味合いにおきまして、今回特別な給与上の措置は講じていないということでございます。  ただし、今後任期制運用というものがどういうようなぐあいに発展するか、これは大学判断の問題でもございますし、時間の経過も見ていなければならないということでございます。したがいまして、それらの経過を見きわめながら、また職務内容等実態というものも、あるいはいろいろ異なってくることも実態上あり得るということも考えられるわけでございます。  そういう意味合いにおきまして、現在この任期制法案を出すに当たりまして、あらかじめ異なったものというような設定はできないわけではございますけれども、その後の運用状態を考えながら、関係省庁ともまた必要に応じて給与上の措置についても検討してまいりたい、こういうことでございます。     〔委員長退席河村(建)委員長代理着席
  8. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、局長答弁で、職務給原則に基づいて、あらかじめ異なったものであると想定するのが困難であるがゆえに、今の段階ではそういうことは考えられないと言われていました。  しかし、今回のこの法案の中で、後でちょっとこの点についても触れようと思ったのですが、わざわざ第四条において、「次の各号のいずれかに該当するときは、任期を定めることができる。」そういうことで三つ掲げられています。時間の関係上、全部読みませんけれども文部省説明によりますと、一番目が流動型である、二番目が研究助手型でああ、三番目がプロジェクト対応型である、こういう人たちですよと。説明は省きますけれども一般の方々とは違って、こういう異なった人たちに対して今回任期制導入するのですよ、そういうふうに法律案の中にも明確に言われておるわけです。  そういう意味でいうと、この職務給原則という、だれがどう違った職務であるかを判断するかという問題もありますけれども、しかし今回の任期制のこの法案中身からすると、明確にこの三つの仕事をする人、また職務に分類される人、こういう人たちについて導入しますよと。そういう趣旨からいうと、職務給原則にのっとっても、やはり今回のこの三つの分野に象徴されるような任期つき任用がされる教員皆さんに対しては、何らかの給与面でのインセンティブが必要なのではないかというふうに私は考えるのですけれども文部省の見解をお伺いしておきたいと思います。
  9. 雨宮忠

    雨宮政府委員 若干御説明が足りなかった面がございます。  第四条の一号で、例えば「多様な人材確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」云々、こういう表現がございます。ある人が任期なしの職についてある職務に従事していた、その人が任期つきポストに動くという場合に、その人の職務自体に基本的には変更はないわけであります。  ここで「多様な人材云々と言っておりますのは、任期つきポスト自体性格からして、いろいろな人が出入りして教育研究活動に従事する方がいいというようなポスト、そういうポスト性格に着目したものでございまして、現実に来る人間の素質がどうであるとか、あるいは能力が他と際立って異なっているとかということをあらかじめ 想定しているものとは言えないわけでございます。
  10. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 要するに、ポストの名前また性格の中にやはり明確に職務内容まで含まれたものになっておるのじゃないのですか。こういうポストの人というのはちょっとほかのところとは職務内容も違うから今回任期制導入いたしましょう、そういう意味合いを明確にやはり持たせているのじゃないのですか。そのことについて、もうちょっと説明をいただきたいと思います。
  11. 雨宮忠

    雨宮政府委員 ポスト性格によっていろいろな多様な人が出入りして、例えばこれは一つの例でございますけれども一つのチームを組んである研究をやろうという場合に、いろいろな人が出入りして、そこで多角的な観点から研究活動をするというような場合に、そういうポストに例えば民間からお願いして人を引っ張ってくるということもありますし、他の大学から引っ張ってくる場合もありましょう。  ただし、その場合に、その人の職務自体について、それは前の職場における職務と多少は異なるところもあるかもしれませんけれども、しかし、前の職場で行っていた、いわゆる任期なしの職場で行っていた職務内容と、それから新しい任期つきポストで行うものと期待されている職務内容そのものと基本的に給与上の措置を変えるほどの異なったものはないという、これは制度的な意味合いとしてそういうものだというように観念しているわけでございます。
  12. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 この点は後で、助手皆さんのことなんかもお尋ねしたときにもうちょっと関連して質問をさせていただきたいと思うんですけれども、この部分だけをやっていると時間がありませんので。  それで、特に給与インセンティブということで、これが関連するのかどうかちょっとお聞きしたいんですけれども、今年度の予算任期つき助手ポストに一人年間四十万円、それを百人分配分するための経費が計上されているというようにお聞きしておるんですが、これは、個人に対して交付されるものなんですか、それとも大学配分されるものなのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  13. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学を通ずることにはなるかとは思いますけれども、最終的なところは当該個人ということでございます。
  14. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の件で、大学を通じてどういう名目で四十万ずつ配分されるのか、もう一度答弁をいただきたいと思います。
  15. 雨宮忠

    雨宮政府委員 今年度予算におきまして新規に計上いたしましたものでございますが、若手教員研究支援経費、こういうことでございまして、緊要の課題となっております次世代を担う若手研究者人材養成確保改善を図る観点から、一定期間に成果を上げることが期待されている若手助手に対して、柔軟な発想のもとに取り組む教育研究活動を重点的に支援しようというものでございます。  具体的な内容でございますけれども一定教育研究期間、これは三年以上ということでございますが、一定教育研究期間の目安を示して任用された四十歳未満若手助手に対しまして、これは、いわゆる今回の任期制に基づくものと基づかないものと別に問うてございません、任用された四十歳未満若手助手に対しまして、教育研究活動のいわば初動期と申しますか、それを始める期間でございますけれども、採用後の二年間に限り研究費を重点的に措置するということにいたしておるところでございます。  これにつきましては、国立学校特別会計ということでございまして、今先生指摘のように、積算といたしましては、職員旅費あるいは校費を含めまして、対象人数といたしましては、ちょっと細かくて恐縮でございますが、公国立学校で約百人、公研究所で約四十人余り、こういうことで、それぞれ四十万円ないし六十万円という範囲のもとの積算で考えているところでございます。  これは国立学校特別会計ということでございますので、それぞれの国立学校を通じまして配分されるということでございますが、最終的なねらい自体は、そういうことでございますので、そのように当該教員研究条件改善ということのために使われる、こういうことでございます。     〔河村(建)委員長代理退席委員長着席
  16. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今局長答弁の中にも、今回の任期制とは余り関係がないんだ、要するに、任期を付される若手教員または付されない教員関係なく選ばれて、今回そういう形の、研究費になるかと思うんですが、支給がされるんだ、そういう趣旨だったと思うんです。  しかし、今の文部省のそういうやり方でいきますと、今回のこういう任期制が、例えば若手助手というこれから将来有望な皆さん導入されるということによって、大学教員人材確保という点から、今後のことを考えたらやはり非常に問題があるんではないのかなというふうに私は懸念をいたしております。というのは、終身雇用制が一部崩れてきたとはいっても、社会全体の人材流動があるというのはなかなか、やはり進んでいるというように私は感じていないわけですね。  そういう状況の中で、今回こういう制度導入されて大学教員身分を不安定なものにすれば、優秀な若者大学教員という職業を選択しなくなるのではないのか。我々の世代からもうそうでしたけれども、特に近年の若者というのは安定志向が非常に強いというふうに言われております。だから、いわゆる任期制をどう受けとめるのかというのは極めて疑問であり、否定的にとらえるんではないのかなというふうに私は心配をいたしております。  特に、大学教員、友人なんかに聞いておりますと、多額の学費と奨励金を費やして、長年にわたって修学をする、勉強をする、それを経てやっと就職できる。本当は、それから長年にわたって社会に奉仕すべき大学教員身分を何とか確保していきたい、そういうふうに思っておったと思うんですけれども、今回のこの任期制導入によって、ある視点から見ると、最初から不安定、不利益状態に置かれて、そういう意味で、人生で希望しておったそういう長期的な人生設計も崩れて、社会的にも非常に不安定になってくる。そういう意味から、社会的に、また、外から見ると、大学教員養成とか確保という点で、本当に著しく困難な状況大学自体も追い込まれてしまうんではないかなというふうな気がするわけですね。  特に、この前も当委員会井上議員質問をされておったわけですけれども、そのやりとりの中でもちょっと不明確なまま終わった部分があるんですが、この任期を付された教員というのは年金や退職金で非常に大きな不利益をこうむりますし、また、特に公務員というのはもともと失職しないことが前提となっている、これは国公立の場合ですけれども。そういう意味から、雇用保険にも、逆に言ったら加入をされておられない。失職すれば失業保険も受けられない、そういう状態、不都合な状態になってしまう。  さらには、我々国会議員ローンという点では、衆議院なんか特に不安定だと見られてなかなか借りられないというふうに我々世代は言っておりましたけれども、この任期のあるポストにいると、調査機関から非常に足元を見られて、住宅ローンなどの長期ローンもなかなか受けられない、そういう状況になるのではないかという懸念があります。  大学教員というのは、今までは安定しておったと思ったけれども、そんな不安定な職業だとわかってしまえば、今の若者というのはだれも大学教員にならないのではないか。そういうような研究者離れというのが、逆に、この今回の目的とは裏腹に進んでいくのではないか。逆に、この目的と裏腹に、二十一世紀の日本というのは本当に教育研究の発展ということが、そういう若者心理状況から考えても、大学離れが進んで、研究者離れが進んで、逆に人材確保という面でも困難になるのではないかなという危惧を私なんかはしているんですけれども、そのことについて、文部省の所見をお伺いしたいと思います。
  17. 雨宮忠

    雨宮政府委員 御参考になろうかということで 申し上げるわけでございますけれども、現在、いわゆる事実上の任期制ということで紳士協定的なことで行われている任期制、あるいはいわゆるポスドク一万人計画という計画のもとで推進されておりますポスドク、例えば学術振興会で行っております事業で、特別研究員という事業があるわけでございます。これらにつきまして見てみました場合に、事実上の任期制というのが助手を中心にかなり広範囲に実施されておるという実態があるということ。それから、日本学術振興会特別研究員、これは、例えば大学院を出てから三年間任期を付してということで運用されているわけでございますけれども、意欲のある優秀な若い人材が毎年多数応募をしてきているということでございます。  したがいまして、今先生指摘のような御懸念というものももちろんあろうかとは思うわけでございますが、私どもといたしましては、今現実に行われております。そのような実態あるいは制度運用というようなことを考えた場合に、そう懸念する必要はないのではなかろうかなというように考えておるわけでございます。  ただ、大学審議会答申でも、「関連施策推進」と書かれて、種々のことも関連して述べておりますように、例えば教育研究条件改善全体の問題、これらの問題については、あわせて努力をしていかなければならない課題であるというように考えておるところでございます。
  18. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は局長のような甘い観測は持っていなくて、やはり運用次第にもよると思うのですが、本来の目的である教育研究活性化、そういうことを本当に図ろうとするのであれば、答申の中でも触れているというように今もおっしゃっておりましたが、触れているだけではだめなので、具体的にやはり文部省の方として、若い、将来がある有能な人材大学教員になってみよう、そういうように思えるような施策をすべきではないかな。  その中でも特に、先日の質疑の中でも不明確な答弁のまま終わっております点、特に大事な身分保障という観点から見て、任期制により不利益な処分を受けた場合の退職金制度や年金制度に対して、どういうようにきちっと保障してあげるのか。さらには、転任先の確保であるとかそういう救済措置というものをやはり明確にしていただきたいということ。具体的に、健康を害することもあるでしょうし、病気であるとか災害に遭われたときの特例措置を、特に今回任期が付される可能性のある当事者の皆さんに納得いただけるような制度をきちっと整備した上で任期制導入すべきである。  法案を見ますと、これは三カ月以内にということになっておるんですけれども、周知期間も含めてまだまだそんなのは、たとえ通ったとしても短過ぎると思うのです。そういう環境整備をきちっと整えた上で導入すべきではないのかな、そういうように思うのですけれども文部省としての見解をお伺いしたいと思うのです。
  19. 雨宮忠

    雨宮政府委員 年金の関係につきましては、一般社会保険制度と異なったものであったとしても、いわゆる公的な社会保険制度というものを渡っていくわけでございますけれども、そういう場合には特段の大きな問題はなかろうかと思うわけでございます。  今御指摘の中で問題かなというように考えておりますのは、やはり退職手当の問題でございまして、これはやはり勤続年数ということを制度の大きな建前にいたしておるという関係で、同じ職場に長期間在職するということの方がはるかに有利である、これは否めない事実でございまして、この辺のところはなかなか、非常に大きな重みのある制度であるものですから、そう一朝一夕にどうこうとなるものではございませんけれども、私どもとしては課題として認識はしておるわけでございます。  それから、いろいろな諸条件整備をしてからということ、これもまことに、そういうお考えがあることは十分私どもわかるわけでございますけれども、ただ、私どもといたしましては、やはり任期制という制度制度的に開くということによってあわせてその関連施策推進も、それを横目で見ながら、それが円滑に動いていくように検討してまいりたい、こういう姿勢でおるわけでございます。
  20. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 歓迎されない制度を無理やり導入しても意味がないわけで、なるべく歓迎されるような条件、環境を整えた上でやはり導入していくように求めまして、時間がどんどんたっておりますので、次の質問に移りたいと思うのです。  次にお尋ねしたいのは、当委員会ではまだ質問されていないのですけれども、本会議では若干一方通行のやりとりがあったのですが、任期に関する現行法制の枠組みと今回の大学教員に対する任期制との関係ということについて、特に、文部省以外の人事院とか労働省の方も含めてお尋ねをしたいのです。  まず一点目に、特に国立大学教員の場合、国家公務員というのは労働基準法はすべて適用除外となっております。全部御存じの方は何を当たり前のことを言うんだと言うかもわかりませんけれども、国家公務員法第三十三条に基づく人事院規則八−一二第十五の二が「任期を定めた任用」ということをうたっておりまして、「任命権者は、臨時的任用及び併任の場合を除き、恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならない。」そういうように明らかに条文でうたっているわけですね。「恒常的に置く必要がある官職」、つまりこれは、総定員法によって定員規制の対象となる職員への任期つき任用を明確に禁じているわけです。  ただし例外として、全部条文を読んでいると長いので、若干意味を解して言いますが、一つは、三年以内に廃止される予定の官職、二番目としては、五年以内に終了する予定の時限つきプロジェクト研究に従事する研究職、三番目には、外国人教員、それとちょっと性格が違いますが、外国人教師、研究員、四番目は、非常勤職員に限定されている。これの例外を別として、原則として国立大学教員を含む国家公務員については任期を定めないこととされている。  それどころか、法で決められた事由を除いては、免職等の不利益処分を受けずに定年までの雇用保障、身分保障があるというのが公務員のもともとの労働関係であり、またそのことが逆に、労働基本権制限を正当化する一つの論拠とされてきたことは周知の事実であるわけです。  だから、要するに今回の大学教員への任期制導入というのは、これまでの公務員制度の根幹を揺るがすような制度導入であるがゆえに、やはり慎重に見ていかないといけないであろう。特に、この任期制導入が今回のような大学審議会答申に基づいて——文部省内の問題であればこれまでの法令改正という形でずんずんと進んでおったのですけれども、こういうような文部省所管法令の改正程度で処理しておいていいのか、そういう若干の疑問が私にはあるわけです。まずは、やはり一般法たる公務員法に任期に関する条項を整備して、その上で、例えば教育公務員特例法を改正するなりなんなり、そういう手順を踏むべきではなかったのか、そういうように思うわけです。  特に、これは人事院になるかと思うのですけれども、国立大学教員に限って言いますが、現行法制と今回との整合性ということについてどういうように検討されたのか、まずお尋ねをしたいと思うのです。
  21. 関戸秀明

    ○関戸説明員 お答えいたします。  国家公務員につきましては、先生指摘のとおり、国家公務員法という基本法律がありまして、この国家公務員法は、原則として任期を定めない任用を想定しているわけでございます。  ただ、任期を定めることを必要とする特段の事由がありまして、先生も御指摘になりました身分保障の趣旨に反しないという場合においては、従来から任期を定めた任用も認められているところでございます。  御指摘の人事院規則の八−一二でございますけれども、これは職員の任免関係について定めた人 事院規則でございます。この第十五条の二で臨時的任用なり併任の場合を除きまして、定員内の常勤職員を任期を定めて任用してはならないということをまず第一項で定めております。そうしつつも二項の方で、特定の場合につきましては、これも内容について先生から御指摘ございました、そういう特定の場合につきましては任期を定めた任用ができる旨規定しているわけでございます。  ただ、この人事院規則上の規定はあくまでも法律によらない場合、人事院規則でございまして、法律によらない場合における任期を定めた任用に関して定めたものでございまして、現在も、御指摘になりました外国人の大学教員への採用の問題ですとか外国人の研究公務員への採用など、別途法律によりまして任期を定めた任用が認められているところでございます。  今般のこの大学教員等の任期制につきましても、教育研究活動活性化目的といたしまして、大学教員等の流動化を図るために、他の法律による任期を定めた任用と同じように、法律によって任期導入されるものというふうに考えております。
  22. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の点で、もし文部大臣がお答えできるならちょっとお尋ねしたいのですけれども、本会議のときに同僚の両議員からこのことに触れるような質問をされました。要するに、もともとの公務員法制に対して根幹を揺るがすようなものではないのか、そういう質問があって、それに対して、これは未定稿なんですけれども、ちょっと大臣答弁を読ませていただきますと、「今回の法律案は、大学教員職務教員自身の自由な発想で主体的に取り組むものという特殊性を有していることにかんがみ、定年までの継続任用の例外として、教育研究上の必要がある場合について任期制導入できるようにするものであります。」そういうように答弁でお答えになっているのですね。  そのことからいくと、人事院規則で、第十五条の二で、要するに任期を定めて任用してはならない、そういうことを言っているけれども、先ほど言いましたように、二項以下で例外として幾つか挙げられておられる。今回の任期つき大学教員皆さんについては、この二項以下の例外に属するものであるというようにお考えになっているのかどうか、文部省の見解をお聞きしたいと思います。
  23. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほど高等教育局長から答えたように、従来の公務員法制とか労働法制というのは終身雇用制あるいは年功序列型賃金という原則で来たわけです、したがって、国家公務員法でも任期つき任用原則としてできないというふうに言っておりますけれども、しかし、いろいろそういう特別の法律をつくることによって、あるいは人事院規則によってそうした例外的な任期つきの採用もできる、こういうふうに解釈をすべきだというふうに思っておりますので、先日の本会議におきましての答弁でも、あくまでも定年までの継続任用というのが原則であるけれども、その職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めることができるということで、今回の法律案が、大学教員職務教員自身の自由な発想で主体的に取り組むという特殊性ということにかんがみて、定年までの継続任用の例外としてこの任期制導入できるようにする、こういう趣旨の法律でありますので、御理解をいただきたいと思います。
  24. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今大臣答弁されたのは本会議と全く一緒の内容だと思うのですけれども、要するに、この現行法制でのとらえ方ということを、これは文部省でなくてもいいのですが、人事院の方でもし答えられるのならお答えいただきたいのですけれども、これは、今の大臣答弁でも、特殊性を有していることにかんがみて定年までの継続任用の例外という扱いにしたものであるということであるならば、この現行の人事院規則の八−一二の第十五条の二の二項以下に幾つか、先ほど外国人教員であるとか教師であるとか、またプロジェクト研究員であるとか、そういうのは入れましたが、そういうところと同様の扱いというか、人事院規則から見るとそこに属するような考え方である、そういうふうにとらえてよろしいのでしょうか。
  25. 関戸秀明

    ○関戸説明員 先ほどちょっと説明が足りなかったかもしれませんけれども、人事院規則自体は、実は先生も御指摘いただいた任期制の中で、三年以内に廃止予定の官職とプロジェクト研究型の場合、この二つについてのみ規定しておりまして、先ほども説明しましたように、それ以外については別に法律を定めることによって国家公務員法が原則として想定していない任期つき任用を認めるという形になっているものでございます。今回のこの大学教員任期つき任用についても同様のものであるというふうに理解しております。
  26. 雨宮忠

    雨宮政府委員 国家公務員に限って申しますと人事院規則との関係というのが出てまいるわけでございます。ただし、いずれにしましても公務員制度に対する影響というのは当然あるわけでございまして、したがいまして、その例外を定めるという場合には当然慎重であってしかるべきだというように考えておるわけでございまして、そういう考え方に立ってこの法案を立案させていただいたということでございます。  したがいまして、任期をとり得るというのは、一体どういう趣旨のもとでこういう任期をとるのかということをまず明らかにし、また、どういう場合に任期を付すことができるかというその場合を特定し、また、その場合にはどういう手続でやらなければならないかということもこの法案の中に書き込んだつもりでございまして、私どもとしましては公務員制度への影響、そういうことを考えまして、例外措置を定める場合にはやはり慎重であるべきだという考え方に従って立案したつもりでございます。  また、法案の体裁といたしましては、これは単に国家公務員のみを対象とするということではございませんで、国公私を問わず大学全体に共通にわたってやはり望まれるべき事柄だということなものですから、国公私にわたってということに配慮いたしまして特別の、独立の立法とさせていただいた、こういうことでございます。
  27. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の技術的な議論をいろいろやりとりはしたくないのですけれども、ただ、人事院の方の答弁でちょっと気に入らぬところがありまして、二項の部分については法律によらない方々をここに入れたんだというような話をされていましたけれども、しかし、外国人の教師であるとか教員というのは、別の法律できちっと規定されているにもかかわらずこの二項の中に入れておられるわけですね。例えば、外国人教員任用については昭和五十七年の議員立法で外国人教員任用法というのが定められました。そういう法律になっている。また、外国人の教師についても別の法律できちっと規定されているにもかかわらずここに盛り込まれているわけですね。簡単でいいですから、もう一度答弁をお願いしたいと思います。
  28. 関戸秀明

    ○関戸説明員 先ほど申し上げましたように、今御指摘のような大学の外国人教員は特別の法律によって任期制が定められておりますし、外国人の研究公務員については研究交流促進法によって任期制が定められております。したがって、それについては、人事院規則の八−一二の十五条の二の二項では規定をしておりません。
  29. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ちょっと納得いかないのですが、こんなことをいろいろやっておっても、ほかに聞きたいこともあるので進ませていただきたいのですけれども、次に労働省の方、同様の趣旨の話を聞きたかったのでせっかく来ていただいたのですが、申しわけないのですが、ちょっと時間の都合で割愛させていただきたいと思うんです。  今回の法案で、昨年の十月の答申から一歩進んで具体的に条文に書いている内容があるんですね。それは何かというと対象教員の問題でして、私は本来、世界にも類を見ないようなこの任期制を教授から助手まで全部導入するということについては疑問を持っているという大前提の上ですけれども、しかしなぜ、文部省ここまで具体的に走ったのかということをお尋ねする意味でちょっとお聞きしたいんです。  答申では、任期制の対象教員について次のようにしか言われていないんですね。「任期制の対象 教員については、制度上は、教授から助手まですべての職を対象とし得ることとし、その旨を法令上明文化することが適切である。実際にどの職に導入するかは、各大学判断することとする。」これは特に強調されている、箱の中の部分をお読みしたんですけれども答申にはなかった、この程度にしか書いてなかったのに、なぜ、第四条で、冒頭にもここを引用しましたが、三つの分野に関連するそういう職を明確に具体的に規定されたのか、そのあたりについてわかりやすく御説明をいただきたい。
  30. 雨宮忠

    雨宮政府委員 審議会答申内容と、それから第四条の一項一号から三号までとの関連いかんというお尋ねでございます。  答申におきましては必ずしも一ところにまとめて書いてあるわけではございませんけれども若手教員の育成あるいは最先端の技術開発現場の情報等を取り入れた教育研究推進すること、あるいは学際的な教育研究などの必要性が高まっていること、さらには期限を限った教育研究のプロジェクトを共同で行う形態の増加といった教育研究上の要請にこたえる有効な手段として任期制導入を位置づけておる、こういうことでございます。また、公務員法制との関係でできるだけ限定するということでございますが、それにつきましては先ほど申し上げましたとおりでございまして、そのように答申自体に、一号から三号まで書かれてあるような内容について、やはりこれは教育研究上の必要があって任期制をとるに値するものだ、こういうようなことを述べていることと、公務員法制の例外措置という考え方との両方を勘案いたしましてこのような書きっぷりになっている、こういうことでございます。
  31. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 このことも聞きたいんですが、その答申をさらに読みますと、要するに「実際にどの職に導入するかは、各大学判断することとする。」と言われていながら、その下の行で、「なお、特に、若手教員の育成の観点から、助手への任期制導入は重要であると思われる。」そういうふうにうたっておられるわけですけれども、なぜ助手にだけそういうように、重要であるというように強調されておられるのか、そのあたりにつきましてわかりやすく明確に答弁をいただきたい。
  32. 雨宮忠

    雨宮政府委員 助手は、一般的に、大学教員としてのスタートを切る一番最初の職位だということでございまして、したがって、異なる経験や発想を持つ人材と交流いたしましたり、あるいは多様な経験を若いうちに積んでおくということは、その後の長い大学教員としてのキャリア形成、大学教員として全うするかどうかはともかくといたしまして、横文字で恐縮でございますが、いわゆるアカデミックコミュニティーの中でキャリアをつくっていくという上において非常に大きな意味を持つんだということでございます。思考の柔軟な時期に任期制によって大学間の異動を促進する、いろんな経験をするということによっていろいろな能力を培う、あるいは幅広い視野を養う、こういうことが非常に重要だということを大学審議会としても考えており、また現実にそういうような考え方に従って、事実上の任期制と呼ばれておるもので行われているのも、かなり助手を中心に行われているという実態に着目した、こういうことでございます。
  33. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ただし、私は、今回の法案助手に着目して使われている一つのポイントもあるかと思うんですけれども、法の整合性という点からいって若干疑問があるんではないかということをちょっとお尋ねしたいんです。  一つは、第四条の二番目のものとして挙げられているんですけれども、「助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とするものに就けるとき。」こういうように言われているんですね。しかし、これは、初めて助手職務としてそんなものが出てきた。「自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とするもの」というのは、今までの法制度ではどうなっていたかというと、学校教育法の第五十八条では、「助手は、教授及び助教授の職務を助ける。」これしか法制度上は言われてないんですよ。これはやはり、そういう意味では、まずそういう職務という点からしても、今までの法制度で言われていたものと全然違うものを今回助手職務として持ってきているという点がまず一点あります。  もう一つは、助手皆さんというのは法制度上も非常に今まで冷遇されてきているんですね。冷遇されてきたと言うと失礼になるかもわかりませんけれども、今回の法案では、第二条の二号、「教員」のところで「大学の教授、助教授、講師及び助手をいう。」そういうふうに言っているんです。  ところが、今までの現行法制ではどうなっているかというと、教育公務員特例法ではどういうように言っているかというと、「この法律で「教員」とは、前項の学校の教授、助教授、教頭、教諭、助教諭、」云々と、あと下に下がっていきますけれども、この中には助手というのは含まれていないんです。助手というのはどこに出てくるのかというと、教育公務員特例法施行令で初めて出てきまして、どういうところに出てくるかというと、「教育公務員以外の者」ということで第二条として出てくるんです。それは「大学助手については、法に規定する大学教員に関する規定を準用する。」だから、「準用」としてやっとここで扱われておって、もっというと、さきにも言いましたけれども、それはしかし「教育公務員以外の者」であるという、その程度の扱いしか助手皆さんというのはされていないわけです。要するに、今回のこの任期制に関する法案では教員としていながらも、現行の教育公務員特例法では教員ともされていない、準用程度の扱いである。  さらに、今までの学校教育法では、何度も繰り返しになりますけれども、「教授及び助教授の職務を助ける。」その程度にしか法として決められていないのに、今回いきなり「助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とするものに就けるとき。」全く整合性がとれてない。そういう法案を今回出されてきたんじゃないですか、明確に答弁をお願いしたいと思います。
  34. 雨宮忠

    雨宮政府委員 先生御案内のように、「助手」と学校教育法にも書いてございますし、それは「教授及び助教授の職務を助ける。」ということが書いてございますし、また教特法上準用職員であるということで、他の職とは異なった扱いになっている、こういう御指摘のとおりでございます。  ただ、実態といたしまして、助手職務内容といたしましては必ずしも一律なことにはなっておらないというのが実態でございまして、例えば所属する組織におきます教育研究の、文字どおり補助をするとか、あるいは学生の実験、実習の指導をするとか、あるいは機器の管理をするでありますとか、あるいは幅広く研究室の事務をやりますとか、あるいはみずからの研究をするでありますとか、助手職務、一言に助手と申しましても大変広うございます。  そういうたくさんの職務現実の問題として抱えております助手のすべてについて、今回の公務員制度の例外措置を適用することが適当かどうかということになってきた場合に、これはやはり教員と匹敵するほどの、教授、助教授らと匹敵するほどの例外的な扱いを行うに必要なほどの位置づけになるような助手、やはりそういうものに限定すべきではなかろうかということで、今回の法律では「自ら研究目標を定めて」云々、それを主たる職務にするそういう助手に限定した、こういうことでございます。  もちろん、助手職務全体をどうするか、これは大きな問題として、将来の検討課題としては大いにあろうかと思うわけでございますが、少なくとも今回の法案関係で申しますと、例外措置をとる、その対象としての助手、それを第二号として書くに当たりましてはこういうような限定をさせていただいた、こういうことでございます。
  35. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 しかし私は、今回、助手皆さん実態に即して、一部なのかもわかりませんが、しかし、そういう助手皆さん任期制導入するというのであれば、さっきも矛盾を指摘しまし たけれども、何よりもまず助手皆さんの法的地位というものをやはり明確に確立する必要があるのではないのか。先ほど言いましたが、教育公務員特例法でも教員の扱いもされておられない、準用でようやく読み取れる、そういう皆さんであります。  局長も述べられましたが、しかし実態としては、特に自然科学系などの場合は、大学院生の研究指導において中心的な役割を果たしておられる研究室もいっぱいあるというようにも私も聞いております。そういう状況の中で、法的にもきちっと明確にされていない助手の業績を評価しよう、これはやはり、私がもし助手なら、極めて弱いものを何とか評価して流動化させるような制度であるというように思うような制度を今回導入されようとしているのではないかと思うわけです。ですから、ぜひ、大学における助手皆さんの役割というものを、もし今不備であったのであれば実態に即して、名称であるとかもう一度含めて、またその職務であるとかというものも実態に即して検討し、法制上きちっと整備してあげる必要がやはりあるのではないのかな、そういうふうに私は思うのですけれども、再度文部省の見解をお尋ねしたいと思います。
  36. 雨宮忠

    雨宮政府委員 教授から始まって助手に至るまでの職位が適切なものなのかどうか、それから、助手として、学校教育法に書かれてあるような職務内容の書き方が一体適切なものなのかどうか、あるいは議論によりましては、助手という呼称自体が一体適当なものなのかどうか、さまざまな議論があるわけでございまして、この辺につきましては、大学審議会といたしましても、広く大学教員組織というものをどう考えるかということに当たりましてのやはり一つの大きな検討課題ではなかろうかというように考えております。
  37. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間が参りましたので終わりますが、ただ、今回の制度は、冒頭に申し上げましたけれども選択的任期制でありまして、多くの裁量が大学にゆだねられているわけでございます。しかし、その運用において、今何点か懸念を申し上げましたけれども、まかり間違っても教員解雇法というような、そういう悪用された使われ方をするのではなくて、本当にこの法案の本来の目的である大学における教育研究活性化を図るものとなるように、文部省並びに大学人の良識に期待をいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  38. 二田孝治

    ○二田委員長 次に、山元勉君。
  39. 山元勉

    山元委員 私は、前回、十六日の委員会でも質問をさせていただきました。その際になかなか明確にならなかった問題もありましたし、具体的にもう少しこの際明確にしておきたいということがあって、再度質問させていただきます。  その前に、今ありました労働基準法の十四条、それから人事院規則の八−一二の問題について、私も大変強い懸念を持っています。私が申し上げたいこと、今、佐藤委員からありましたから重複は避けますけれども最初に、やはり労働者保護のための法制の根幹にかかわる問題だというふうに思います。そのため、人事院規則やあるいは労働基準法について文部省が踏み込んでいくといいますか、そういうことについてはやはりこれからのことで、私は大変懸念を持つわけです。他の労働者あるいは他の公務員にそのことが波及をしていかないかということについて強い懸念を持つわけです。  ですから、今度の場合が、今局長からもあるいは法的には人事院からも説明がありましたけれども、そのことがなおきっちりとなっていくように努力をしていただきたい。抽象的な言い方ですけれども、そのことの懸念は、私だけではなしに、他の労働者の皆さんあるいは公務員皆さん懸念を持っているということだけはしっかりと御理解をしていただきたいというふうにまず思います。  それで、具体的な問題ですが、一つは、引き続き任用される場合ということが今度の法の二条の四号に書かれています。それの解釈についてお尋ねをしたいわけです。  この二条の四号は、国家公務員、地方公務員、学校法人の職員というふうに分けて書かれているわけですけれども、例えば国家公務員で見てみると、当該教員等がついていた職務に引き続き任用される場合、これは任期が切れない、こういうふうに考える。もう一つは、他の国家公務員の職、例えば同じ大学で他のポストだとかあるいは同じ国立の他の大学とか、あるいは国家公務員がいる国立の研究機関等に引き続き任用される場合は任期の満了に当たらない、いわゆる国家公務員としての身分は続くのだ。ただ任期制だから、そこのところのポストにつけば五年で職は切れる、退職するのですよということではなしに、そういう道が明確にあるのだということについて確認をしたいのですが、いかがですか。
  40. 雨宮忠

    雨宮政府委員 今先生指摘のとおり、第二条第四号の任期の定義におきまして、「当該教員等がついていた職」に「引き続き任用される」ということでございますが、これは、いわゆる再任の場合でございまして、任期満了となった教員が再びその任期つきの職に任用されることを意味しておるわけでございます。発令上は任用を更新するというような言い方になろうかと思うわけでございますが、基本的にはそういう性格のものでございます。  また、もう一つお尋ねといたしまして、他の国家公務員の職に引き続き任用される場合ということについてのお尋ねでございます。  任期つきの国立大学教員の職から、学内のということもございますしまた学外のということもあろうかと思うわけでございますが、国立大学教員の職に任用される場合、これも含まれるわけでございますし、また大学以外の、例えば国立の試験研究機関研究員の職に任用されるという場合も国家公務員としての身分は継続されるわけでございますので、そのような場合も含まれるということでございます。
  41. 山元勉

    山元委員 任期制導入によって、あたかも、五年なり、あるいは更新されても十年とか、あるいは三年の場合だと六年だというふうに、一つの袋小路に入るような印象がどうしてもあるわけですね。そういう点で、今局長がおっしゃるように、確かに幅があるのだと。ただ、単線で袋小路に入るということが明確になっているというふうに今の答弁で理解をしますし、そのことはもう一遍、重ねてですけれども、地方公務員についても同じように言える、あるいは学校法人の教員についてもそういうことが言える。学校法人の場合には同学内ということになろうかというふうに思いますけれども、その点について確認をさせていただきたいと思います。
  42. 雨宮忠

    雨宮政府委員 同じであるというように考えております。
  43. 山元勉

    山元委員 それでは、具体的な項目でもう一つですが、本人の意に反する再任の拒否といいますか、本人は仕事半ばである、あるいはこのことについてなお新しい展開もあってこの任期つきポストを続けたいという場合、これは学内の審査でこのことが拒まれる場合があります。その場合にどういうふうに考えるかということは、前回お尋ねをしましたけれども、私自身も少し理解ができなかったところがありますので、再度お尋ねします。  公務員でいいますと昇任だとかあるいは降格だとかあるいは懲戒処分だとかいう身分にかかわる問題については、御承知のように人事委員会なり中労委なりに提訴をして争う、そういう不服申し立ての権利があるわけですけれども、この間の答弁では、不服申し立てができない、こういうふうにおっしゃられたわけです。  例えば、具体的な例でいいますと、本人は再任を厚く希望していた、しかし審査の結果、どう考えてもこれは私に対する評価が誤っている、重大な誤りがある、あるいはその再任の拒否が特定のある人の、例はよくないかもわかりませんけれども悪意による中傷でこれが拒まれた、他の人が探されているという状況の中で、私の権利が侵されたと考えたときに、やはり救済する道がないと、これは泣き寝入りだ、ばっさり切り捨てたという ことになるだろうと思うのですが、その道についてお尋ねしたいと思うのです。
  44. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学任期制導入しようとする場合に、そのポストが一体再任を許すものなのか許さないものなのか、これもまた大学の定めるところによるわけでございますけれども、再任をしないのだというように定めた場合には、多分これは本人もそういうことだということでございますので問題は出てこないかと思うわけでございますが、今、先生の御指摘のところは、再任もあり得るというようなことを大学として定めた場合の扱い、そういうことかと思うわけでございます。  任期の満了によりまして当該任期を付された職に係る身分を失うことは、これは法案にも任期の定義ということで書かれてあるとおりでございまして、任期制の本来の趣旨からして明らかなことでございます。任期満了後、引き続き同じ職に採用されない、本人は希望したのだけれども採用されなかったという場合の不服をどうするのだ、こういうお尋ねでございます。  これは、基本的には教員の採用選考の場合に、それは人事の選考ということでございますので、基本的には通常の採用選考において自分が採用されなかったということに対する不服と同じ性格のものだというように考えざるを得ないわけでございます。したがって、このような場合につきまして、これを採用しないということは処分といういわゆる行政法上の処分ということには当たらないというように解釈されるわけでございまして、今御指摘のような状況のもとで当該教員から人事院に対して国家公務員法に基づく不服申し立てを行ったといたしましても、これは受理されない。そういう性格のものだというように考えているわけでございます。  もちろん、極めて不合理な扱いがなされたという場合に、不服申し立てというようないわゆる行政部内での手続というものは無理がとは思うわけでございますけれども、非常に不合理な扱いがなされたということであれば、当然それは司法上の救済という道が閉ざされているわけではないというように考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、再任があり得るというような扱い、これは再任しないという場合も同じでございますけれども、一体どういうことになるのかということは、任期制導入する場合にはやはり当該教員も含めて、こういうことなのだ、こういう仕組みになっているのだということを十分あらかじめ承知しておいていただく、そういう必要があるのではなかろうかということで、任期制あるいは再任があり得るという規定が置かれたからといって当然再任が保障されるというような誤解を当人が持たないような、十分な事前の理解というものを求めておく必要があるのではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  45. 山元勉

    山元委員 局長、堂々とすべて個々の、例えば八十九条、九十条ですか、こういうところで保障されている権利があるのですよ。それではこの任期制意味はなくなってくるというのか曲がるだろうと、それはわかる。けれども、私が申し上げているように、あくまでも極めて不合理な審査というのか結果が出されたことに対しては、これは再任される権利はあるわけですから、これが認められるかどうかは別です、再任される場合があるという定めがあるときに、自分はそれを希望して、極めて不合理な理由によってこれが認められなかったという場合は、最終的には司法のとおっしゃいましたけれども、私はやはり、導入する場合の規則の制定なり学内の合意という中でしっかりとそのことについては、先日来問題になっておりますように極めて高いレベルの業績評価の基準がきちっとある、あるいは透明度の高いそういう審理が行われる、そういうことが保障されなければいかぬと思うのです。そういうことが欠けていた場合には、極めて不合理な判定だ、あるいは結果だというふうに思うのです。  その場合には、私は、国公法上の国家公務員としての身分にかかわる問題として訴えることができるという権利は認めなければいかぬのではないかというふうに思いますが、その点を重ねて。
  46. 雨宮忠

    雨宮政府委員 例えば、再任があり得るとしておきながら、当人が希望したのにもかかわらず当該再任の候補者のリストの中に載せられないというようなことは、これは非常に不当なことであるというように考えるわけでございますが、ただし、数ある候補者の中の一人として人事選考が行われた結果、再任が認められなかったということもあり得るわけでございまして、そのことについて不服申し立てというのはなかなかしにくいだろうということを申し上げたわけでございます。  もちろん、今先生が御指摘のように、業績評価、これは今回の任期制に限らず重要なことなわけでございますが、特に今回の任期制導入ということをきっかけにしましてさらにその重要度を増すわけでございますが、この業績評価というものがきちっとした形で、あるいは非常に平たい言葉で恐縮でございますけれども教員の間で支持されるような、できるだけ客観的な業績評価というものが大学の中で工夫した形で打ち立てられるということが重要なことは申すまでもないことでございますが、その努力は努力として大いにやってもらわなければならぬということでございますが、ただし、不服申し立てということに関して申しますと、そのような難しさがあるということを申し上げたわけでございます。
  47. 山元勉

    山元委員 どうも局長、すれ違いがあるようです。そういうことが大事だとおっしゃるわけです、業績評価とかそういうことについて大事だとおっしゃるわけです。そういうことが欠けて極めて不合理なそういう判定が起こった場合、何人かの候補者がいて透明度の高い比較がされて、あなたはだめ、こっちの人の方が適任だとなったときには、これは、やりたかったのにという単なるそれだけでは提訴はできないだろうと思いますけれども、極めて不合理な場合があったときというのは、昨日の参考人の先生の一人の意見にも、やはり現在の大学三つの問題があるという、その一つのところに人事が極めて不透明であるということをおっしゃった参考人がいらっしゃるわけですね。  ですから私は、今の大学のそういう人事のあり方、昇任あるいは昇格等でそういう不透明さがあるというふうに残念ながら思いますから、ですから、そのことについてきっちりと、そういう極めて不合理な場合についてはしっかりと受けとめられる場がある。例えばこれは、管理機関かもしれませんし、人事院かもわかりません、私学の場合でいうと労働委員会かも。そういうところの道として司法の道しかないよというのは、これはやはり酷なといいますか、そういう善意の再任希望というのを妨げることになるのではないかというふうに思うのです。これは引き続いて検討してほしいと思うのですが、いかがですか。
  48. 雨宮忠

    雨宮政府委員 いわゆる人事選考ということに絡んでの不服申し立てというのは、今の制度のもとではなかなか難しいということを申し上げたわけでございます。もちろん、それに関連いたしまして、人事選考ということをめぐりまして諸種のトラブルというものがないにこしたことはないわけでございまして、そのようなトラブルをできるだけ少なくするために、先生指摘のようにできるだけ業績評価というものが客観性を持った、あるいは非常に説得力のあるようなものであるべきであること、あるいはできるだけ、一〇〇%透明にというのは人事選考ということにつきましてはなかなか難しいところではございますけれども、しかしできるだけ透明な形にすべきであること、そういうことは当然望まれるわけでございまして、それについては、私どもといたしましても大学にそのような努力は促してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  49. 山元勉

    山元委員 今のお考えは極めて不満です。私は、そういうことがしょっちゅう起こるような任期制運用であってはならぬともちろん思いますよ。しかし、しつこい繰り返しですけれども、そういう極端な不合理な場合には、やはりそういう道を、あるいは学内での議論をしっかりとするというそういうことについてはこれからも文部省で検討を していただきたいと思いますし、おっしゃるようにそのための業績評価だとか、あるいは人事の透明性だとかいうものを高めるための努力というのはぜひなされるようにお願いをしたいというふうに思います。  次にですが、今までよく言われてきました、特に私学においてございます、既に法によらない事実上の任期制導入されているという事実があるわけですね。ですから、その法によらない事実上の任期制といいますか、公立の場合にあっては紳士協定によるとも言われますけれども、その扱いがこの法の制定によってどうなっていくのかということですね。簡単に言いますと、法による任期制というのは、これは新しくできる。今までにある事実上の任期制あるいは紳士協定による任期制というのは、堂々という言葉は語弊があるかもわかりませんが、認められるのか、あるいはそのことが望ましいのか。どういう形にこの既にある任期制ポストについて文部省はお考えになっているのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  50. 雨宮忠

    雨宮政府委員 この法案成立と、それから私立学校で現実に実施しておりますいわゆる事実上の任期制との関係についてのお尋ねでございます。  法案成立後どういう形での任期制を実施するか、基本的には各学校法人が決めることではございますけれども、私どもといたしましては、こういう法案提出させていただき、また成立ということに相なりますれば、第四条第一項に定めるような三つの場合について、文部省といたしましては本法案による運用というものを当然期待いたしたいわけでございます。  こういうもの以外の場合におきまして、私立大学の方として、自主的に任期を付した雇用ということを行うことも考えられなくはないわけでございますけれども、これにつきましては、それぞれの学校法人が労働関係法制の枠内で、これは基本的には契約の世界に属することでございますが、労働関係法制の枠内でそれぞれその適正さというものを確保しながら、それに留意しながら実施していくべきものだ、こういうように考えておるところでございます。
  51. 山元勉

    山元委員 四の一の三つのタイプにはまっていくように期待をする。例えば、ここでもう少し突っ込んで言いますと、私学が多いということですけれども、私学の場合で言いますと、五条の手続をきちっと踏んでいくようなことになっていかないと、任期制、法による制度はつくります、こちらの方は、ほしいままにやると言ったらおかしいですけれども大学独自でみずからのシステムとして続けていくということでは、幾つかの不合理が出てくるんじゃないかというふうに思うのですね。  それは一つは、例えば各大学間の教員流動化、学問の流動化ということがこの法のねらいであるとすると、やはりそこのところにきっちりとはめていって、お互い、大学がそれぞれの人材について公募もし、あるいは交流をしていくということを本当に目指すとすれば、そういう法によらない部分というのが厳然として残っていく、あるいは肥大化していくということについては、この法の精神からいっても望ましくないというふうに思うのですね。その点はどうですか。
  52. 雨宮忠

    雨宮政府委員 先生がおっしゃろうとされていたことに含まれると思うわけでございますが、私立大学におきます雇用関係ということでございますが、これは基本的には雇用者と被用者との契約の世界に属することでございまして、契約自由という原則のもとで、例えば任期を三年とかあるいは五年に定めようとする場合におきましても、もしそれが労基法の十四条に定めていることとの関連で、例えば労働者の方を拘束するというような内容のものになっているのだとか、あるいは民法の六百二十六条に定めております五年を超えて任期を定めるのでありますとかいうようなことになりますと、これは法令違反の話になってくるわけでございますが、そういうこと以外の場合には、契約の自由ということで、それぞれの学校法人の責任において契約を結ぶことができるわけでございます。  ただし、今先生が御指摘のように、今回こういう法案を出しまして、教員流動性確保する、そして、第四条の一項の一号から三号に定めるような事由に該当するときにはしかるべき手続を経て任期を定めることができるのだ、こういう法のルールに乗っかって任期を定めるということであれば、当然一つの、その契約自体についての合理性の確認というものが法制度上得られているというように私ども考えるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、私どもとしては、学校法人の方として教員任期制を定めるという場合に、もしこの第四条の一項三号というような事由に該当するというような場合には、この法に基づく任期だ、こういうことで運用していただくことを期待したい、こういうことでございます。
  53. 山元勉

    山元委員 今、私は学校間の交流、共通化で交流ということを申し上げました。そういうところでの矛盾といいますか、それを申し上げましたけれども、例えば学内にもやはり問題が起こるだろうと思うのですね。一つの同一学内に、一方は任期制でそのポストにつく教員と、そうでない極めて短期の、今まで聞かせてもらうと一年とか二年とか短期ですけれども、そういう教員との間には、やはり差が生じる、差別が生じるだろう。もっと言うと、こちらの方は弱い者いじめをされるのではないかというふうな気がするんですね。一方の、法による任期制教員については、やはり条件、規則について定められて、公表がされてオープンになる。これは不合理なものはできるだけ排除されていって、よくわかる、あるいは筋の通った妥当な任期制教員の立場ということになってくるわけです。片一方の、二年、三年あるいは一年という短期の教員というのは、やはり弱い立場にあって、そういうことが公表されることもなく使われるといいますか、そういうことになってくる。  ですから、この法ができた限りにおいては、例えば一つ大学任期制導入します、そして法に定められた、例えば第五条の手続をずっと踏みます。そのときに、任期は、うちの大学は五年制のポストもありますよ、二年制のポストもありますよ、一年制のポストもありますよということを学内で合意すれば、規則に定めればそういうことが通っていく、そのことで、きちっとあらゆる教員皆さん身分を守っていくということを文部省としては考えるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  54. 雨宮忠

    雨宮政府委員 お答えになっていない場合にはまた御指摘いただきたいと思うわけでございますが、私立大学におきます管理運営と申しますか、あるいは教育研究活動の上で、任期を付されている教員と、それから、従来型と申しますか、任期を付されていない教員との間で特段の異なった扱いをするという合理的理由というのはなかろうかと思うわけでございます。  例えば、教授会という場を例として考えてみますと、任期を付された教員については教授会から除くというようなことについてどうか、こう私立大学からもし尋ねられたとするならば、私どもとしては、それについては余り合理的な理由はないのではないか、こういうような答えをいたしたいというように考えておるわけでございまして、任期を付されていることと任期を付されていないことと、それに直接伴います異なった条件はもちろんあるわけでございますが、それにまつわらない、それに伴わない事柄につきましては、これは同等に扱われてしかるべきだというように考えておるわけでございます。
  55. 山元勉

    山元委員 私は、やはり同一の法に基づく、まさに異質のものが余りない、そういう教員集団というのをつくるべきだ、文部省答弁で言うとそういうことだろうというふうに思いますから、そういう方向での御努力をお願いしたいというふうに思います。  きのう、参考人の先生のお一人も、法によらなくても今までのように導入できるだろう、しかし、法によらないで導入した場合には、その法によらない任期制教員大学との間に争いがあった場合には負けるだろう、こういうふうにおっしゃっ ていました。負けるだううということは、その大学の法によらない教員が強いといいますか筋が通っていて、大学は理不尽をしたというふうに一般的に考えられるという参考人の方の御意見だったというふうに聞き取りました。争いがあったら負けるだろうと、たしか二回繰り返しておっしゃったと思いますけれども、そういうことにならないように、やはり一つの学内でそういう二つのルートがあるようなことについては避けるようにするべきだというふうに私は思います。  時間がありませんから最後にもう一つ、この法の目的が第一条にありますけれども、学問的交流を促進するためだ、活性化のための法制度なのだ、こういうふうに書かれているわけです。  その場合に大きな障害となるのが、大学間の格差の問題が一つあろうというふうに思うのですね。教育条件の格差、あるいは、失礼な言い方かもわかりませんけれども、教育内容あるいは研究内容の格差というものはあるのだろうというふうに思います。これはぜひ解消していかないと、きのうの参考人、よく引用しますが、上向き志向の交流、流動というのでは困る、水平の、横の大学同士の交流が強くならないと、上へ向けて上へ向けてというような交流では大学が活性していかないということをおっしゃっていましたけれども、私は、確かにそうだろうと思うのです。  この大学審の答申にもそのための整備ということで幾つかの指摘をしているわけですが、例えば、処遇について、あるいは教育条件整備について、これは施設関係整備の問題だというふうに思いますけれども、そういう全体のレベルを上げる、あるいは格差を解消していくということで、この答申に基づいての検討というのが具体的にテーマを設定してもう始められているのかどうか、文部省お尋ねをしたい。
  56. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学教育研究条件整備充実ということにつきましては、かねてから努力してきたところでございます。昨今の財政状況が大変厳しいということの関係で、私どもがこうしたいということのすべてがそのとおりに実現されているとはなかなか言えないわけではございますけれども、私どもなりに努力してきているわけでございまして、そのことにつきましては、今回の任期制導入に当たりましても、やはり今後の努力課題であろうというように考えておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃいました大学間格差ということの意味合いは、私どもとしては、そのような、今申し上げたような意味合い課題としてとらえているわけではございますが、しかし、これは御案内のことだとは思いますけれども、それぞれの大学、いろいろな固有の歴史もございますし沿革もございます。また、規模の大小というものもおのずとあるわけでございます。また、その整備のぐあいにおきましても、学部だけ持っているものあるいは修士まで持っているもの、博士まで持っているもの、研究所を持っているもの、持っていないもの、いろいろな種類があるわけでございます。  私どもとして願っておりますのは、やはりそれぞれの大学が、そういうようないろいろな異なった要素はあるにしても、やはりそれぞれの特色を持った多様なものとして発展してもらう、それは、教育研究条件整備をしないとか、そういうことではもちろんないわけでございますが、私どもとしては、教育研究条件整備をしつつ、それぞれの大学に特色を持ってもらいたいということを願っておるわけでございます。  特色がないところにはやはり人は動かないというように思うわけでございまして、特色があるからこそ、別のことを少し研究してみようかな、あるいは教育してみようかなという意欲が出てくるわけでございまして、真っ平らな、真っ平らなというのは非常に雑駁な言い方で恐縮でございますが、全く同じ大学が幾つかあったからといって、それによって人が動くということでは必ずしもないのではないかというように考えております。
  57. 山元勉

    山元委員 文部省としては、大学間に格差がありますということは公の場で言えぬかもしれぬ。けれども、世間のみんなが、確かに大学の間に格差がある、これは格好よく特色というものではない、あるいは、中央の大学と地方の大学には格差がある、これは歴史とか特色というものではないということはみんな承知をしているわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、具体的にどういう検討をするのか、始めているのかというふうにお尋ねをしたわけです。  この大学審の答申の中にも、しっかりとしたそういう指摘がしてあるわけです。欧米と比べてとかいろいろあるわけですけれども、やはり今ある大学の現状というのを直視して、確かにあるなと。  前によく言われました、立派な国立の大学で、あの学部は弱くて、ビーカーのかわりに牛乳瓶を使っている、こういう話までありましたから、確かにそういう弱い部分がある。中央と地方と比べて、あるいは大学間を比べて、あるいは学部を比べてあるわけですから、そこのところは、この任期制導入、人事の交流、学問の交流という観点からも、しっかりと直視しなければいかぬと思うのですね。  そういう点で、私は、テーマを決めて、予算のことになるだろうと思いますが、条件整備について検討していただきたいということを申し上げているわけです。
  58. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学審議会答申の中でも、「関連施策推進」といたしまして、「教育研究環境整備充実」でありますとか、五点ほど掲げているわけでございます。  例えば、若手教員教育研究条件ということに関しましては、任期制云々はともかくといたしまして、若手助手が新たな職場に出て、研究条件が悪いということで初動の研究に支障を来すということがあってはいかぬということで、先ほども質疑がございましたけれども、一人当たり四十万円ないし六十万円という範囲教育研究費を特に措置するということを今年度から始めたわけでございます。  また、この関連施策の中の二番目といたしまして、教員採用に関する情報提供の充実ということも挙げておるわけでございます。これにつきましては、つい昨日からでございますけれども、共同利用機関でございます学術情報センターのサービスの一つといたしまして、それぞれの大学でどういう空きポストがあって、それは公募するのだというような場合に、その条件などをインターネットの上で提供するということを始めておるわけでございまして、このための予算措置も講じているわけでございます。  まだ件数は多うございませんけれども、こういうような方途を通じまして、またその充実を図ることによりまして、できるだけ関連施策もあわせて推進してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  59. 山元勉

    山元委員 また、答申では教員処遇についても触れられているわけですね。こんな書き方がしてあるわけです。「国公立大学については、私立大学や民間の研究機関等から優れた人材を採用する際」、まあ必要なことだと思うのですが、「給与が、前職で得ていた給与を下回ることとなる場合があることなど」、ですから、国公立の大学教員は、民間あるいは私学の教員給与よりも低いという逆転、逆転というのはおかしいですけれども、差があるわけですわ。そういうことまで指摘をして、業績評価基準を定めて、この任期つきポスト給与面にと触れてあるのですが、私は、これはやはり全体の問題だと思うのです。  教育公務員あるいは私学、この場合でいうと私学と比べて低いとか指摘してあるわけですから教育公務員ということになるだろうと思いますが、そういう人たち処遇については前回大臣お尋ねをして、給与の問題やあるいは義務教育費国庫負担の問題などに逆風が吹いている、頑張りましょうという話をしたのですけれども、これは、今公務員給与は高いのではないかというふうな話までちらちら出てくるわけですけれども、私は、全くその根拠はなくて、こちらの答申の方に現実があるのだろうというふうに思いますね。そういう意味で、 処遇についても検討をしなければならない。とりわけこれは、このポストにつく人たち給与面だけではなしに、やはり全体の教員皆さん給与について見直しをする必要があるのではないか。  今財政改革の時代ですけれども、これは、この間も申し上げましたように、あるいは大臣も常日ごろおっしゃっているように、百年の大計だ、これは参考人もおっしゃいました。ですから、このことについて積極的に検討して、世論の合意を得るようにしていかなければいけないというふうに思うのですが、いかがですか。
  60. 雨宮忠

    雨宮政府委員 教育関係公務員給与上の措置につきましては、先生御案内のように、基本的には国家公務員については人事院勧告というような手だてを通じて改善措置がなされているわけでございます。  教育公務員の分野におきまして、いろいろな問題点、あるいはぜひこういう点は改善を図るべきだというような考えがありました場合には、これはかねてからそうでございますけれども文部省の方から人事院に対して、こういう点について配慮してくれ、あるいは改善をしてくれというような意見も出しているわけでございまして、そういうようなことを通じて今後とも検討してまいりたいと考えておるわけでございます。  私学につきましては、やはり私学運営の自主性ということがございまして、私どもから直接その給与の水準について云々するという立場ではないことは御理解いただけることかと思うわけでございます。
  61. 山元勉

    山元委員 時間が参りましたから終わりますけれども、昨日の参考人の皆さんの意見というのは大変参考になりました。その中で、私もお尋ねをして、何が今必要だと言ったら、お二人の方が予算だ、予算だということをおっしゃいました。日本の場合には教育費がGNPの中で占める割合というのは〇・六、〇・七になっているかもしれないとおっしゃっていましたけれども、〇・六だ。それを何としてでもやはり一・二にすべきだろう、こういうふうに御意見をおっしゃっていました。欧米の諸国に比べて、このGNPに占める割合というのは二分の一、三分の一という日本の今の教育予算というのは、これはやはり大計を誤ることになるのだろうというふうに思うのです。  そういう意味では、今申し上げましたような任期制導入に絡めてということではなしに、全体的にやはり教育予算の拡充について努力をしていただかないとこの制度そのものも生きていかないだろう。格差がある、あるいは乏しい条件の中ではこの法の精神は生きていかないだろうというふうに思いますから、引き続いて文部省が御努力いただくようにお願いをして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  62. 二田孝治

    ○二田委員長 次に、石井郁子君。
  63. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  端的にいろいろ伺ってまいりたいというふうに思いますが、法案第二条で、「当該期間の満了により退職」と書かれているわけであります。任期満了時にどこかの大学なり研究所なりに職を得られなければこれは失職をするというふうになると思いますが、そうでよろしいですか。
  64. 雨宮忠

    雨宮政府委員 任期を付されたポストについている教員につきましては、任期が満了した際には、今御指摘のように、同じ職に再任されるとか、あるいは他の国家公務員等の職に引き続き任用されるとか、あるいは私立大学において新たな労働契約が締結されるということでない場合には退職するということになるわけでございます。
  65. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 失職ということですよね、そういうふうに聞いたわけであります。  では、もう一つですが、国公立大学教員の場合、雇用保険の適用外とされているわけです、これも出たことでありますけれども。失業しても失業保険も受給できないという点もどうですか。
  66. 雨宮忠

    雨宮政府委員 国家公務員につきましては法律によって身分が保障されておるわけでございまして、民間の労働者のように景気変動によります失業が予想されにくいというようなこと等の理由から、基本的には雇用保険法の適用対象から除外されているということでございます。したがいまして、保険料を負担するということもないかわりに失業給付もないということでございます。  ただし、国家公務員の場合には、退職後、職を失っている、失業している場合につきましては、雇用保険法による失業給付程度のものは保障する必要があるという考え方があるわけでございまして、このような考え方によりまして、国家公務員の退職手当法の第十条の規定におきましては、支給された退職手当の額が雇用保険法の規定による失業給付相当額に満たない者が退職後一定期間失業している場合には、その差額分を特別の退職手当として支給することとされている、こういう制度的な措置になっているわけでございます。  なお、地方公務員についても同様の制度の仕掛けになっておるわけでございます。
  67. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、大学教員あるいは将来ある若手研究者がこういう失職の不安に絶えずさらされる、これが任期制の重大問題だというふうに思うわけです。そこからやはり教育研究のさまざまなデメリットが生まれてくると言わざるを得ません。とりわけ肝心の学生の教育の手抜きが問題だというふうに思うのです。ですから、国大協、私学団体連合会、大学基準協会など多くの大学関係者の皆さんがこの点を指摘されておられるわけであります。  ところが、先日の本会議で、大臣は、教育上のメリットはあるのだというふうに御答弁されていますが、教育の面でのデメリットということをどのようにお考えですか。ないと考えているのでしょうか。
  68. 小杉隆

    小杉国務大臣 たびたび申し上げているように、任期制導入は、これを通じて教員流動性を高める、そして異なった経験とか発想を持つ多様な人材が交流をして相互に学問的な刺激を与え合う、そのことによって、教員教育研究能力を高めるということで大学活性化を図る、こういうことが目標というかメリットとして考えられるわけでございます。  今任期制導入に伴うデメリットとしてさまざまな懸念が表明されておりますけれども、これは、各大学において、業績評価の工夫とか改善を図りながらこの制度趣旨にのっとった適切な運用が行われるというふうに私は考えておりまして、御懸念のような心配はないようにそれぞれの大学が努力をしていただけるものと期待しております。任期制導入自体がデメリットを持っているとは私は考えておりません。  いずれにしても、この法案は各大学の見識ある判術を前提とした選択的任期制ということでありますので、各大学教育研究活性化のためにこの制度を有効に活用していただきたいというのが率直な気持ちであります。
  69. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 イギリスでは、八〇年代の末にサッチャー政権のもとでこの任期制導入されているわけです。その結果、今日ではさまざまなデメリットが生じているということが言われているわけです。国立教育研究所の教育政策研究部長の調査を私見ました。それでは、大学の教職に魅力を感じないと大学を去る教員が激増している、多くの大学で、専任教員が手が回らないで大学の一年生の授業はほとんど大学院生などに任せている、こういうデメリットが現にイギリスで起きているわけです。大臣、どうでしょうか。
  70. 小杉隆

    小杉国務大臣 大学教員の仕事は、研究のみならず、教育ということも非常に重要な部分を占めているわけでありまして、最近は、今御指摘のように、学生のニーズも多様化しておりますし、学生に対する教育機能というものの充実は強く求められているところだと思います。  今御懸念がありましたように、研究業績のみが重要視されて教育業績の評価がおろそかにされるのではないかというような懸念があることは承知しておりますけれども、昨年十月の大学審議会答申におきましても、単に研究業績のみならず、教育上の業績の適切な評価も行っていくべきだと いうことを促しているところでございます。  各大学で教育業績の評価についてさまざまな工夫を行う、具体的にはいろいろあると思います。授業科目とか、学生に対する教育研究指導とか、教材、教育課程の開発とか、学生の厚生補導とか授業担当時間とか、休講の状況とか、同僚の評価とか、学生による授業評価一そういった多面的な教育業績の評価というものに基づいて、任期つき教員が教育にも熱心に取り組むことができるようになるというふうに考えております。
  71. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大臣は、いろいろとおっしゃるわけですけれども、私、本当に現場をどの程度、どのように御存じなのかなと率直に言わざるを得ません。現場の先生方は、一番の悩みは授業をよくするための時間がない、今大学の教師は時間がないとおっしゃっているのですよ。この点は、実業の日本の四月号では、文部省の産学協同懇談会メンバーの一人でいらっしゃる生駒俊明さん、日本テキサス・インスツルメンツ社長、この方が本当にリアルに書いていらっしゃいます。「産学協同研究で産業界がおカネを出したり、研究者を派遣しても、研究する場所がない。膨大な書類をつくる人がいない。」「日本先生はアメリカの先生の二倍ぐらい働いている。研究をすればするほど、雑用がふえる。」こういう実態なんです。  ここ数年、大学院生も倍になりました。留学生もふえています。また、入試の業務というのは実は大変な労力でしょう。年に三回は最低されているのですよね。さらに、職員の定員削減、八次にわたって二万数千人も減る、教員はふえていません。ですから、受け持ちこま数というのはもう大変ふえている。こういう状態の中で任期制導入したら一体どうなるのか、やはりこのことを文部省はリアルにつかむべきですよ。任期五年の場合、四年目、五年目では職探しに走るわけです。公募に応ずるには業績書類の作成をしなければいけません。もちろん業績そのものもつくり上げなければいけません。そういう膨大な実務があるわけです。だから、ますます時間をとられて教育どころではない、こういうことになるのじゃありませんか、どうでしょうか。
  72. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学教員につきましては、昨日の参考人のお一人もおっしゃっておられましたけれども、教育と研究と両輪の職務を持っているわけでございます。医学部の臨床系の先生でありましたら、それにさらに診療という職務が加わるわけでございます。それぞれどれをとりましても重要な職務であるわけでございまして、そのうちのどれかをなおざりにするというようなことはあってはならないことでありますし、大学教員といたしましても両方とも重要だというように考えておるに違いないと私どもは確信しておるわけでございます。  教育をよくしようと思ったらそれなりの手間暇がかかるわけでございまして、その分教員の労力の負担というものが増す面というのは、もちろん先生の御指摘のとおり出てくるかとは思うわけでございます。例えば少人数教育をする、あるいは同じ語学の点につきましても、従来の本を読むということだけではなくて実用的な能力を持たせる、すべて手間暇のかかることであります。かかることでありますが、やはり大学先生としてはやっていただかなければならぬことだと思うわけでございまして、これをなおざりにすることは、当然大学の機能としてやってはならないことでありますし、これは、任期制をとるとかとらないとかということに直接かかわりなく、やはり期待されることではないかというように考えておるところでございます。
  73. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 イギリスのことを私引き合いに出しましたけれども、イギリスの任期制について、文部省の役人のレポートにも書かれていますよね。任期制教員は、契約期間の後半になると、次の職場探しを始めるため、研究に身が入らない。私は、研究にも身が入らないと、まして学生の教育には身が入らないのだと思うのですね。ですから、今のところ大臣は教育面のデメリットをお認めになりませんけれども、私は、やはりこういう実態をリアルに見るべきだということを重ねて申し上げて、この点を強く要求しておきたいというふうに思います。  さて、もう一点大事な問題は、こうして任期制導入が教育と研究にデメリットがあるのだということは、いろいろな大学関係者の意見、きのうの参考人質疑の中でも明らかになりました。やはり多数の共通認識だというふうに思うのですが、そういう中で、いわば押しつけというこの問題は二重、三重に許されないというふうに思うわけです。  本会議大臣答弁されました、概算要求や新学部、新研究科設置の際には任期制導入を強制するようなことは考えていないということですけれども、これは任期制導入を概算要求や新学部、新研究科設置条件にはしないというふうに考えていいでしょうか。
  74. 小杉隆

    小杉国務大臣 本会議答弁したとおり、任期制ということを強要したりということは考えておりません。
  75. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 しかし、この間いろいろな問題がございます。文部省がいろいろと進めてきた教養部改組など最近の大学改革では、予算許認可権を盾にした干渉というのがいろいろございました。この点、昨年のNHKのスペシャル「大学改革」がありましたけれども、その中でも、実は国立大学に自主性というものはない、私はこういう発言を聞いて、本当に改めて驚いたのです。  最近のマスコミでも大変なことが書かれていました。「文部省では、高等教育局の二、三十代の官僚が、新しい学科をつくりたいと願う私学の五、六十代の学長を呼びつけ、三時間ほども廊下で待たせたあげく、四十分ほどの面会で偉そうに申請書類をぱらぱらとめくり、「これじゃあだめだよ、これじゃあ」と突き返す、悪夢のような「下剋上」が日常である。」これはロンザの四月号でございます。だから、任期制でもこういう予算誘導で押しつけるのではないかというふうに思われるわけですね。  ある国立大学ですけれども、概算要求の打ち合わせの際に、窓口となっている文部省の役人から任期制導入を示唆された。それが引き金になって任期制導入に走ったということが伝えられています。文部省の窓口の示唆が条件と受け取られるわけです。こうした指導はもうやめるべきだ。しないということを御答弁できますか。
  76. 雨宮忠

    雨宮政府委員 任期制導入を押しつける押しつけないということに関しましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、さまざまなことの条件として任期制導入を強制するというようなことは考えておらないということでございます。  先生最初に引き合いに出されました記事の根拠たる事実を私どもは承知しておりませんが、多分、設置認可の関係ではなかろうかと思うわけでございますけれども、書類の不備についていろいろ御指導申し上げるということは当然あるわけでございまして、そのような場面について、そのこと自体、問題とするということではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  77. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 重ねて聞きますけれども、今後、任期制の問題をいわば窓口で、おたくの大学では任期制どうなっていますか、こういう形で示唆をする、これを条件と受け取られるようなことはしない、そこを尋ねているのですよ。きちんと答えてください。
  78. 雨宮忠

    雨宮政府委員 担当者がある大学に対して、任期制導入しようとなさっていますかいませんかということを尋ねること自体まで誘導であるというように考えられたら、私ども大変困るわけでございます。また、おたくの大学任期制導入していますかいませんかということについて調べるということは、これは役所としては当然なすべきことであろうかと思うわけでございまして、そこまで誘導だと言われても困るわけでございます。  私どもとしては、誘導だと先生が御指摘になっておられるのは、これはぜひやってもらわなければ困るというような形での強制的なこと、それを強制的な問題だというように理解しておるわけで ございます。
  79. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今の大学にお金がないことは皆さんが御存じのとおりであります。周知の事実です。ですから、最近大学では兵糧攻めという話も出ているわけですね。少しでも予算が欲しいという大学にとっては、任期制があるかないか、このことが予算の獲得に影響するのかどうかとか、概算要求の添付資料などとなれば、結局、任期制ありと答えた方がいいというふうにならざるを得ないわけですね。だから、任期制がありと答えた方が予算や認可にいい心証を与える、こういうふうに考えて、これは事実上強制力として働くのですよ。そこを問題にしているのです。  だから、一般的な場合で文部省はそれはいろいろ指導されたりするでしょう、しかし、概算要求というときに口頭でも言う、これは予算誘導そのものじゃないですか。
  80. 小杉隆

    小杉国務大臣 たびたびの御指摘ですが、概算要求とか新学部、新学科の設置とこの任期制とは全く別個の問題であります。  私は、そういう懸念を抱かれないようにするためには、できるだけ大学設置あるいは学部の設置についての透明性を高める、そういう工夫も文部省としてはやっていかなければいけないと思っておりますし、現にやっております。  それから、先ほど答弁の中にありましたように、任期制を採用するに当たっては、大学の学術情報センターというのが昨日からインターネットを通じていろいろ情報を広く公開しておりますし、また業績評価についてもそういうところで透明性を持ってやっていく。  したがって、それだけ情報が公開され透明性が高まれば、そういう疑惑を招くようなことにはならないということで、その懸念はないというふうにお考えいただきたいと思います。
  81. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 概算要求のヒアリングの際に、文部省は随分といろいろなことを言ってきているのです。これは本当にたくさんの事実があります。だから私は、そういうヒアリングの際に任期制を口にするなど。単純な話ですよ。このことをちゃんと約束してください。
  82. 雨宮忠

    雨宮政府委員 先ほど来大臣からも申し上げておりますように、任期制導入するということが当該大学予算措置に影響するようなことのないようにはいたしたいというように考えております。
  83. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 さらに、この法案の中ではプロジェクト型の研究ということも出されております。プロジェクト的な講座を含む大学院新設の場合、これはどうするのでしょうか。この場合でも本当に、その部分任期つきにすることが条件だなどということは、押しつけになるわけですから、言わないということも聞きたいと思います。
  84. 雨宮忠

    雨宮政府委員 講座を設ける設けないということは予算事項でございます。したがって、任期制導入するならばつけてやるとかやらないとかということは当然やらないわけでございます。
  85. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 もう一点伺います。  助手などで紳士協定として任期制を行っている教育研究組織はいろいろございます、きのうも出されましたが。そういうところで、法制化された任期制に変更するようにといったようなこともしませんね。これもちょっと確かめたいと思います。
  86. 雨宮忠

    雨宮政府委員 いわゆる事実上の任期制でございますけれども、この法律が制定される前と申しますか、立案される前というべきかと思いますけれども、その前におきまして、それぞれの大学の部局の判断によりまして、当該部局の教員に対して、一定教育研究期間の目安を示しまして、その期間経過後には他大学等へ異動するなどの取り組みをしていたことを指すものであるというように理解しておるわけでございます。  これらの取り組みは、ねらいといたしましては、今回の法案のねらいと同様に、それぞれの大学の部局の教育研究活性化にあるものというように理解しておるわけでございますが、国の制度上の裏づけを欠いているということのために、文字どおり関係者間の、仲間内のと言ってもいいかとも思いますけれども関係者間の紳士協定のごとき性格が強いわけでございまして、おのずとその要件や効果について明確に定められて運用されていたとは言いがたい面があるわけでございます。  今回の法律が制定された後は、大学判断によりまして、改めてこの法律に定める要件によって一定の手続を経た上で、制度上明確な裏づけを有する任期制が実施されることが当然考えられることでございますし、また期待されるところでございます。  ただし、今のお尋ねに直接かかわることでございますけれども大学や部局が、これまでの経緯を尊重するという観点から、今回の法律に基づく制度に切りかえずに従来の取り組みを継続することも考えられなくはないわけでございまして、それは違法なものでない限り、これをすべて一律に今回の法律に基づく任期制に強制的に変更させるというようなことは考えていないわけでございます。  ただし、この場合におきましては、これは従来からの事実上の任期制の問題点とされていたことでもございますし、また昨日の参考人の陳述の中にも一部ございましたけれども運用によりまして不明朗なことになってはいけないということでもございます。それは大学の責任に属することではございますけれども、そのようなことのないように、不明朗で公正さに欠けるようなものであってはならないことは当然でございますので、それぞれの大学に対してはそのような留意は促したいというように考えております。
  87. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私学に対する影響というのも非常に大きいというふうに思うのです。  時間がありませんので、私は一問だけ質問をいたします。  大学答申では、教学側の意見を十分踏まえて行うことが適切と述べられていました。ところが、本法案では、学長の意見を聞くだけでいわば経営者が決められるということになっているわけです。今私学の場合では、学長と理事長が同一人物というところが多々あるというふうに聞いています。ですから、理事会が理事長に聞けば、これで任期制が通ってしまうということにもなるわけですね。  文部大臣、どうでしょう。こういう実情を考えますと、やはり私学においても教授会の議を経て行うことが望ましい、このことはやはり確認されるべきだと思いますが、伺います。
  88. 小杉隆

    小杉国務大臣 この法案目的はあくまでも教育研究活性化ということでありますから、今度の法案でも、任期を私立大学が決める際には学長の意見を聞くべし、こういうことにしているところでありますし、また各私立大学でも、教学部門の運営に関しては独自に規則を定めて、それに基づいて運営が行われていると承知しております。  仮に、御指摘のように理事長が学長を兼任していて、理事長が恣意的に大学運営をやるというような場合も懸念されるわけですけれども、各大学の運営のルールに従って、単に経営上の見地からだけではなくて、教学部門の意見が適切に集約されるように、制度趣旨に沿った運営がなされるように私どもとしても十分注意してまいりたいと思いますし、そう期待をしたいと思っております。  しかし、教授会の意見を聞くかどうかというのは、これはそれぞれの大学の自主的な判断にゆだねられておりますので、今ここでそういうことを答弁することは控えたいと思います。
  89. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 突っ込みたいというか、もっとお尋ねしたいんですけれども、時間の関係で、次にもう一点伺います。  任期制と女性研究者の問題なんです。  この点は、先日の委員会局長の次のような答弁がございました。女性研究者にはマイナスに作用するとは考えていない。私は、これは大変驚いているんです。女性研究者、私もその一人でありましたけれども、若い時代に女性が結婚し、出産し、育児をする、これは避けられないことであります。その若い研究者にとって、三年、五年という任期がつけられた期間というのが出産、育児と重なったりすれば、次の転職は大変難しい。ですから、この任期制というのは、女性にとっては事実 上、結婚、出産、退職制につながると私は言わざるを得ないわけであります。どうでしょうか。
  90. 雨宮忠

    雨宮政府委員 私が前回お答えいたしました中で申し上げたかったのは、一つには、我が国の大学教員の中に占める女性の割合というのが先進国に比べて必ずしも高いものではない、むしろ低いということで、女性の教員の就業の機会というものはもっとあってしかるべきである、大学の側としてもっと多くの女性教員が採用されてしかるべきだという期待感を持っているということを申し上げたわけでございます。  もう一つは、今回の任期制でございますが、これはもう先生御案内のように、男子教員であれ女子教員であれ、同様の機会を付与しているわけでございまして、私ども、これによって女子教員にのみ不利な条件が新たにつけ加えられたというようには考えていないということを申し上げたわけでございます。
  91. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 女性にとって研究職が大変厳しい道だということはもう言うまでもないと思うのですね。出産、育児、そういうハンディを越えて、しかし、近年女性研究たちは随分頑張ってきたというふうに私は思います。ですから、研究を志すそういう女性たちにとうてこういう任期制は、まさにその研究者への道を閉ざすものになるんですよ。男性も厳しいから女性も厳しい、そうですけれども、しかし、女性にはもっと厳しい。女性はもう大学に残れなくなるじゃありませんか。研究活動が続けられなくなるということになるんだということを私は強く主張したいというふうに思います。  女性研究者の多くの皆さんがそういう声も上げておられるのです。大臣、この点では、そういう女性の研究者にぜひ一言あってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  92. 小杉隆

    小杉国務大臣 男女共同参画型社会ということで女性の社会進出が非常にふえておりますし、教育研究の場においても例外ではないと思います。  私は、やはり保護的な規定というもので今まで男女差別があったわけですけれども、これからは、女性研究者だからといってただ保護されるという甘えは許されないと思うのです。それは、最近のほかの法案状況を見てもそのとおりでございます。しかし、女性はまた特に家庭とか育児とかいろいろなものを持っているわけですから、その点は十分配慮しなければいけないと思いますけれども、女性だからといって、そのことによって差別をするとか別の扱いをするということはあってはならないと考えております。
  93. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大変残念ですけれども、時間でありまして、しかし、世界から見ても日本の女性研究者が大変少ない、環境が非常に厳しいということの中でこういう任期制導入するということはどういう意味を持つかということを私は言いたかったわけであります垣  時間になりました。わずかな審議で、本当に、これでは任期制問題が尽くされていないということを私は強く申し上げたいというように思います。このわずかな中でも、研究と教育を根底からやはりゆがめるということも明らかになりました。そういう点で、本当に日本の将来を思えば、こういう任期制法案は撤回以外にないということを私は強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  94. 二田孝治

    ○二田委員長 次に、保坂展人君
  95. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私、この任期制を中心とした法案を見ながら、そしていろいろな方の意見を聞きながら、やはり懸念を感じる点が多々あります。  冒頭にちょっと御紹介しておきたい事例があるのです。放送大学で起きた事例なんですけれども、御承知のように、放送大学では五年の任期で再任可ということで任期制がとられている大学としてスタートしているわけなんです。  そして一九八九年、つまり一回目の任期が終わったときに大学として、教育学の深谷昌志さん、この方たち三人の教員の再任のための手続をとらなかった。つまり、再任不可ということになった。その後、その深谷氏は次のような理由を学長から示されたとあるんですね。  一番目に、「あなたは、懇親会などの酒席に出席する率が低い。要するに人づきあいが悪くて専攻(学科)で浮いている。飲めなくても酒席で学ぶことは多いはずである。」二番目に、「あなたの研究業績があまりに多いのは、自分で論文を書かずに、名前だけつけているのではないかという人もいるが、どうなのか。」三番目に、「卒論をあなたのもとで書く学生が多いため、学内で反感を買っている。」というような理由が示されたとあるんですね。  これはちょっと驚いてしまう内容なんですけれども、このことについて、深谷氏自身が振り返りながら、なぜこんなケースが起こったのか、「私自身にすら不可解でした。しかし少しずつ手元に集まってきた情報を総合すると、この問題は学長の文部省や」、「文部省や」と書いてあるんですね、「世間に対するある種の功名心、即ちかねてから文教政策上の懸案の一つであった日本大学への任期制導入を、大学史上初めてきびしく実施した学長でありたい、とのお気持ちから生じた出来事だったのではないでしょうか。」というようなことを……。  ちょっと紹介をいたしましたけれども、起こってはならない事例が既に起こったということではないかと思うのですが、文部大臣、これは御存じだったかということと、この例をどのようにお考えになるか、お答えいただきたいと思うんです。
  96. 雨宮忠

    雨宮政府委員 放送大学におきます任期制趣旨内容が、今回の私どもがお願いしております任期制法案趣旨内容と全く違うとは申しませんけれども、放送大学の場合におきましては、一つには、公共放送という場を通じて同じ一人の方がある特定の分野についてずっと、放送を独占するという言い方が適切かどうかあれでございますが、利用するということに問題があるのではないかということで、当初から、一律の五年の任期ということを付しておったわけでございます。したがいまして、今回の法案と直接はかかわりのないことだというように私どもは認識しておるわけでございます。  ただ、今先生お尋ねの放送大学の件でございますが、今の深谷教授を初めとした三名の先生方につきましては、当初は三人とも、任期制を守り、昭和六十四年の三月末日の任期を待って退職するという意思表示をしていたけれども、うち二名が当初の意思表示を撤回して再任を希望した。このことについて、当時の評議会におきまして、評議会として、再任の可能性を排除していない放送大学教員の人事の基準の最初の適用について論議をした結果、今回はその任期をそのまま遵守して再任を行わないということが本学の、放送大学の将来にとって最善であるとの共通認識に達した。  それで、深谷教授それから宮代教授から提出された再任審査の希望に対しては、評議会は、今申し上げたような理由によりまして再任審査を行わないことと決定したところというふうに聞いておるところでございまして、この決定自体は、評議員の間で十分議論された結果でもございますし、また尊重すべきものだと考えているわけでございます。また、最終的にはこの決定を二万とも承諾しているということでございますので、放送大学の例、放送大学に限った任期制の問題でございますが、これ自体としましても大きな問題であったというようには私どもは必ずしも考えておりません。  ただ、問題は、何分にもこれは人事の問題あるいは身分にかかわる問題、これはどういう場面におきましても慎重にやるべきであるということは、私ども任期制運用のことを考える場合にもやはり心していかなければならないことだというように考えておるわけでございます。
  97. 保坂展人

    ○保坂委員 細かな事実経過を伺いたかったわけじゃなかったんですが、この深谷教授の場合には、人気がある、あるいは業績が多々広がっているということが理由になったのではないかと推察をされます。  それから、昨日の参考人の宇井純さんの場合に は、公害という分野で、必ずしも大学のアカデミズムの先任者がいないという領域で一生懸命研究を重ねる、万年助手というふうに言われたわけなんですけれども、こういう人々、大臣も地球環境には非常に関心が深いというふうに認識を私もしていますけれども、先ほどの例と、そしてまた宇井さんのような方が研究の機会を奪われる、現在の宇井さんはもう教授ですけれども、かつて万年助手という時代もあったわけで、若手人たちにそういう不安を与えてはいけないと思うんですが、その辺をちょっと一言お願いしたいと思います。
  98. 小杉隆

    小杉国務大臣 今御指摘のように、分野によっては直ちにその業績が評価しにくい、あるいは非常に長期間かかるというようなものがあることは事実であります。また、そういう基礎的、また目立たない、創造的な、新しいものを生み出すというのも、これは学術研究あるいは教育の本質でございますので、このような分野については特段の配慮が必要だと思います。  この任期制導入に関して、大学審議会答申におきましても「長期的な視野に立った研究がおろそかにされることのないよう、研究途上の業績等も含めた広い意味での研究業績を考慮するとともに、論文の多寡ではなく、その質を重視した評価の方法を工夫することが重要である。」というふうにされております。  私も、実際に学者の先生大学の学長さんに聞きましたところ、お互いその分野で研究している者同士はある程度その研究の価値とか重要性というものは認識している、こういうこともございました。文部省としても、各大学において一層適切な評価方法を工夫するように努力をしていただくことによって、御指摘のような評価方法というか、懸念をなくするということができると思っております。  きのうの質疑でも、有馬先生は、文科系、理科系を問わず、研究の途中であっても評価は可能であるというふうにお答えになっているということもつけ加えておきたいと思います。
  99. 保坂展人

    ○保坂委員 昨日の有馬先生にも申し上げたんですけれども、本当に世代間の不公平感というのがやはり増大をしていると思います。四百、五百兆という借金の問題にしても、大学改革の問題にしても、やはり研究や教育をおろそかにし、その立場に安住してこられた方が少なからず大学にいたということがこの任期制の根拠の背景にあるとするならば、そういう方たちは無傷で、若い世代のみが非常に不安を負うということに私はやはり懸念を持つわけです。  先ほどからさまざまな質疑の中で繰り返されていると思いますけれども、例えば、研究者としてスタートを切るというのは、通常の社会人よりスタートは遅いわけですね、三十歳前後だろうと思いますけれども。その三十歳前後の方が、例えば任期制助手としてスタートを切った場合、そしてこの任期が切れて、そして次にとりあえず行く場所がないというときに、これは身分上は全くの失業者ということになるんだと思いますけれども公務員ということでこれは雇用保険ども適用されないのではないかと思いますけれども、このあたりについて、いわゆる競争社会で五年の任期で当てはめていくとなると、どこにも行き場がない人というのが出てくると思います。  どこにも行き場がない人が出てくるというのが、一つは、そういう任期制というものがまだ実験段階、試行段階であればあるほど受け皿が少ないわけですから、そういう人たちに対するケアをどのように考えているのか、局長の方に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 雨宮忠

    雨宮政府委員 任期満了後の失業保険の話につきましては、先ほどお答えしたとおり、国家公務員につきましては雇用保険法の適用対象から除外されているということではございますけれども、失業給付程度のものは保障するという仕掛けがあるということを申し上げました。  また、任期満了後のケアということに関しまして、私どもとして、任期満了後も次の職場に移って活躍していただくということが望ましいわけでございます。ただし、それをどういう制度的な措置でやるかということにつきましては、実は大学審議会の議論の中でも二通りございまして、一つには、例えば助手の場合でございますけれども、やはり上に立つ者たちがいろいろ職場を開拓して、当該助手の次の異動先ということのいわば世話をするというようなことが望ましいのではないかというような議論が一方にはございました。逆にまた、むしろここはそのような世話をせずに、あるいはそういうような世話を最初から期待するということではなくて、やはり自力でその辺の職場を開拓すべきだというような議論も実はあったわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、昨日も参考人の方のお話にもございましたように、できるだけ周りの者が、きのうのお話では三十通もの手紙を書いたというようなお話もございましたけれども、自力でやるということがあるいは楽なことかもしれませんけれども、事情に応じてはやはり周りの者が相当程度の、いわゆる平たい言葉であれでございますが面倒を見るというようなことも重要なことではなかろうかというように考えておるわけでございまして、そこらのところを含めまして、大学に対して十分な努力が払われるようにお願いいたしたいというように考えておるところでございます。
  101. 保坂展人

    ○保坂委員 今のお答えでうまくいくのかどうか大変不安だと思います。それで、大学教員ということで本当にそれだけの有為な人材がこれから選ばれていくのかどうかということで非常に懸念を表明しておきます。  次のテーマなのですけれども、これは労働法制の問題なのですが、労基法十四条に、「労働契約は、期間の定のないものを除き、一定事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一年を超える期間について締結してはならない。」という点があります。ここの部分と、今回、国公立の大学及び私立大学が入っているわけですから、ここを労働省としてはどういうふうにお考えになっているのかという点について率直に、端的に見解をお願いしたいと思います。
  102. 青木登

    ○青木説明員 通常、一般に行われています労働契約は、期間の定めのない契約ということになっておりますけれども、そのほかに、一定期間を定めて労働契約を締結するというような場合も一方であるわけでございまして、そういう場合には、今御指摘がありましたように、労働基準法上では、土木工事のような事業の完了に必要な期間を定めるといった一定の場合以外は、不当な長期の人身拘束を排除するという趣旨から、一年を超える期間を定める労働契約の締結を禁止しているところであります。  こういった趣旨でございますので、労働者の側の退職の自由が保障されているいわゆる雇用保障期間というようなものであれば、一年を超える期間を定めても労働基準法十四条には違反しないという解釈を従来からとっているところでございます。  本法律案による任期制は、五条五項にも定められているように、任期中、教員がその意思により退職することを妨げるものであってはならないというふうに規定されているように、任期の途中であっても大学教員の退職の自由は確保されているというものでございますので、本任期制は労働基準法十四条には違反しないというふうに考えております。
  103. 保坂展人

    ○保坂委員 文部省の「大学教員などの任期に関する概要」というペーパーにも同様の注が打ってあって、要するに「労働者側からはいつでも解約できる「雇用保障期間」として設定するならば適法」だというような認識、これは恐らく労働省と文部省の間ですり合わせられたのだと思いますけれども、これはすりかえじゃないかと思うのですね。  要するに、今任期制が問題になっているのは大学における研究、長期的なスタンスでこれに臨まなければいけないというときに、いつでもやめら れるから適法ということであれば、これは大学教員以外のそれこそ全産業にまたがる労働者は、三年なり五年なり六年という任期を定めて就労することができるという解釈にならないですか、その点お願いします、もう一度。
  104. 青木登

    ○青木説明員 今申し上げましたように、労働者サイドからいっても退職することができるという内容の契約でありますれば、労働基準法には抵触しないということでございます。現にそういったような形での労働契約も少なからず締結されているのが実態であるというふうに認識しております。
  105. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、従来の労働省や労基法の指導あるいは最高裁の判決などには、そういうふうに労働者がいつでも職場をおりることができれば契約期間を定めていいというふうにあったとは思えないのですけれども、今後はそういうふうに方針を大転換したということですか。この任期制法案の中にそういう新たな解釈というのを盛り込んで、これからはそれでいくということですか、お願いします。
  106. 青木登

    ○青木説明員 今申し上げました解釈につきましては、従来から労働省がとっているところでございまして、今度の本法律案提出を契機に解釈を変えてそういうふうにしたというものではございません。
  107. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、日本社会終身雇用制、これはいい悪い両面ありますけれども、いわゆる会社や役所に入れば雇用は安定している、やめる自由ももちろんあります、そういう部分がこれは大きく変わろうとしている。  そしてまた、今の労働省の見解はよくわからない部分があるのですけれども、ちょっと文部省に、局長お尋ねしたいのですけれども、確かに現代の世界は非常に激しく流動化をしていて、多面的な知識が必要ですね、そして多様な人材が求められておる。そういう複合的な、いわゆる創造的集団ということが求められているということが根拠になって大学のこの任期制ということが出てきたと思うのですが、これは実は、例えば大学教育をより創造的に発展させていこうとする局長の部署でも必要な発想じゃないか。つまり、文部省の中にみずから率先して任期制を入れていくという発想はお持ちにならないのか、なぜ大学教員にだけこの任期制が入ってくるのか、その辺をどういうふうにお考えになっているのか、率直にお話しいただきたいと思います。
  108. 雨宮忠

    雨宮政府委員 今回の法案は、大学における教育研究活性化ということをねらいといたしまして、そのために教員流動化というものがもっと必要ではなかろうかという問題意識に立って、そのための一つの有効な方策として任期制というものを考えたわけでございます。  したがって、ねらいといたしましては、やはり大学という職場における人の流動性ということに着目しているわけでございまして、たまたま、たまたまというとあれでございますが、教育研究にかかわる仕事を私どもやっておりますけれども、直接教育研究を行っていない私どもとはやはり性質が異なるものだというふうに考えてもおりますし、また、文部省職員の身分扱いということは、当然文部省限りのこととして取り扱うわけにもまいらない点があるわけでございまして、これは国家公務員全体のことにもかかわることでもございますので、これはかなり大きな別の問題を生じてくるというように考えておるところでございます。
  109. 保坂展人

    ○保坂委員 あえて今、雨宮局長文部省にも任期制をというふうに申し上げたのは、やはり雇用の問題というのは大変重い問題、どういうふうにそこのところに立って任期制というものを提案なさって——そして現実に、冒頭に御紹介したものの中でも、どうもやはり文部省施策として打ち出したこの任期制を、我も我もと、要するに各大学とも先陣争いのような形でこれを導入する、そして導入したところは何らかのお目をかけてもらえるというようなことがあってはならないと思います。  そういう意味で、ぜひこの運用に関して、みずからの問題として取り計らってほしいというふうに要望しておきたいと思うのです。  続いて、私立大学なのですけれども、私立大学というのは、それぞれの個性のある建学の精神にのっとってつくられているわけだと思いますけれども、私立大学任期制というのがどんどん入ってくると、流動するわけですから、そういう意味で、私立大学の特色が失われてくるという心配があるのではないかという点と、もう一つは、これは先ほどの雇用の面というのがしっかりありますので、やはり労働組合といわば法人の間の契約あるいは協議ということが必要になると思うのですが、この点についてお答えをお願いしたいと思います。
  110. 雨宮忠

    雨宮政府委員 二つあったかと思うわけでございます。  一つは、任期制導入によってそれぞれの私立大学の個性というものがひょっとしてゆがめられはしないかという御懸念でございます。  これは、私どもはそうは考えないわけでございまして、どういう雇用形態をとるにしても、その雇用形態のもとで採用される教員組織を通じてできるだけそれぞれの大学教育研究が個性的なものであってほしい、こういうように願っているわけでもございますし、そのようなこととして今回の任期制も活用してもらいたいというように考えているわけでございます。  もう一点は、組合との交渉事項であるかどうかということにかかわることかと思うわけでございますが、私立大学におきまして、雇用者側、被用者側それぞれにおきまして、これは勤務条件にかかわることだということでございますので、交渉事項の対象であるというように考えておるところでございます。
  111. 保坂展人

    ○保坂委員 文部省は、このところ、教育改革プログラムということで打ち出されて、そして、この任期制もその一つということで現在質疑が行われていると思うのですが、若い学生、この前センター試験の問題もありましたけれども、改革ということが打ち出されていろいろなことが行われるのだけれども、どうも窮屈になっていくなと。世の中、これは研究者を目指す学生もそうでしょうし、あるいは若手研究者もそうでしょうし、そして、もっと自由に創造力や知性を羽ばたかせて、本当に世界の中で突出して注目を集めるような研究ということを鼓舞していくためには、こういった発想とは全く違う、自由研究のための基金、これは、大学に属しているか民間人であるか問わず、そういうものを投じてやっていくような仕組みが本当に必要ではないかと思うのです。  例えば、産学の提携ということが言われています。そして、現実にもう行われておりますけれども、花粉症ということ一つとってみても、私も花粉症なのですけれども、花粉症市場というのはすごいのですね、マスクだとか目薬だとか薬だとか、どんどん膨らんでいく。しかし、その研究よりも花粉症そのものの原因を除去する研究の方が必要なわけで、ではそういったところにだれがお金を出していくのか。きのう宇井先生がおっしゃったダイオキシンについてもそうですね。  ですから、本当に、処世術として、研究者としてうまく渡っていこうというような小粒の研究者をつくっていく心配があるのではないか、もっとグローバルな、地球社会に貢献をするようなところに必ずしも日本の学問のバックアップの体制はないのではないかという点について、いろいろ言いましたけれども、最後に文部大臣に伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  112. 小杉隆

    小杉国務大臣 冒頭お答えしたことに尽きるのですけれども、実用研究ももちろん大事ですけれども、その基礎となる原理原則を探求するということは非常に大事だと思います。  私も昨日東北大学研究室を拝見してきましたけれども、結局、企業とか実用研究をやっている機関ではなかなかそこまで手が回らない、半導体のもう一番の原理、そのもっと先端的といいますか独創的な研究をやっている現場を見てきましたけれども、私は、単に短期的な、すぐ結果を求めるような研究だけでは、これからの諸外国との競争 には勝っていけないと思います。どんなに地味な研究分野であっても、そういう創造的なあるいは先端的な学問研究というものは決しておろそかにしてはならない。そういうことで、そういった分野に大いに若手の優秀な人たちが参加できるような、そういうことを目指してこの任期制というものを導入したわけであります。  もちろん、いろいろ今表明されました各委員からの懸念はありますけれども、それは、今回こういう任期制導入というのは新しい試みでありますので、いろいろ試行錯誤があると思いますけれども、それらは、運用実態を踏まえて、改善すべきところは改善をしていく、こういうことでやっていきたいと思っておりますので、どうぞひとつ、また皆様のいろいろな御意見も拝聴して進めていきたいと思っております。
  113. 保坂展人

    ○保坂委員 最後に、先ほどの労基法の問題については大変重要な点を含んでいると思います。そして、先ほどの労働省の見解がそのままだとすれば、これは日本社会全体が相当ひっくり返るぐらいのことがこの先起こっても不思議ではないというぐらいの問題だということを申し上げて、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  114. 二田孝治

    ○二田委員長 次に、粟屋敏信君。
  115. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 最後に若干の質問をさせていただきたいと思います。  この大学任期制の問題は、既に幾つかの国公私立大学においてとられているということを聞いております。今、一体幾つの大学において任期制がとられているか、また、その任期制内容はどういうものか、また、本法案任期制と同じであるか異なっているか、そういう点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  116. 雨宮忠

    雨宮政府委員 平成七年の時点におきまして私どもの方で調べたところでございますが、国公私立を通じまして百一の大学、これは全大学数五百六十六のうちの約一八%ということでございますが、それらの大学におきましていわゆる事実上の任期制導入されているというように承知しているわけでございます。  もちろん、百一の大学と申しましたけれども、その大学すべての部局でこのような事実上の任期制が行われているとは必ずしも言えないわけでございまして、むしろ一般的には、それらの大学のうちの一部の部局で行われている、こういうように御理解いただきたいと思うわけでございます。  これらの大学におきましては、例えば教育研究能力の育成の視点から、助手などの若手教員を中心に任期をつけて採用したり、その場合には、一年でありますとか、あるいは三年でありますとか五年でありますとか、あるいは十年とかというところもあるわけでございますが、それらの任期をつけて採用いたしましたり、あるいは外部のすぐれた人材を特任教授というような名称のもとで任期をつけて招聘したりするというような例がございます。  いずれにいたしましても、そのような事実上の任期制をとっておるところにおきましては、多様な人材確保して特色ある教育研究を実施するという意味合いにおきまして効果があるのだというように私ども承知しているわけでございます。  今御提案申し上げております任期制法案との違いでございますけれども、それらの事実上の任期制につきましては、法制上の裏づけがないということでございますので、例えば五年の任期を付した、あるいは目安として示したということによって、それでは、強制的にあるいは自動的にと申しますか、任期がいわゆる教育研究機関の目安を過ぎたときに直ちにその身分を失うというような仕掛けにはなり得ないわけでございまして、本人がやはり引き続きやりたいということであれば、それ以上、その意を曲げてまでどうこうということはできない、そういう仕掛けにもなっておるわけでございますし、また、現在御提案申し上げておりますように、例えばどういう場合に任期制をとるのかというようなことについての規則の公表を義務づけているわけでもないわけでございます。  また、この法案では本人の同意を得てということも要件として書き込んでいるわけでございますが、そういうような手続要件ということにおいて、やはり当然のことながら事実上の任期制の方は不備な点があるというように考えておるところでございます。
  117. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 今の御説明によりますと、事実上の任期制任期が満了した場合の強制力もないし、また本法案で言っておる本人の同意ということも要件となっていない、こういうようなお話でありました。  今お話を承ると、助手だけでございましょうか、教授まで含んでいるのかどうか、その点もお聞かせをいただきたいと思いますし、また、本法案では教授、助教授、講師、助手となっておるわけでございますが、諸外国の例を見ますと、教授は大体対象となっていない、そういう例が多いようでございますけれども、この法案で教授まで任期制にされた理由、そういう点についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  118. 雨宮忠

    雨宮政府委員 いわゆる事実上の任期制の中には、助手を中心に運用しているところが多くございますけれども、教授も任期制の対象にしているというところもございます。したがいまして、大学審議会の議論といたしましても、制度的には助手から教授に至るまで対象にし得るという形にするのが適切ではなかろうかという答申になっておるわけでございまして、それを受けて今回の法案の形になっておるわけでございます。  また、もう一つお尋ねの諸外国との比較ということでございますけれども、例えばアメリカの場合でございますけれども、いわゆるアシスタントプロフェッサーというところに至るまでは、これは、むしろ実態上は一律の任期制と言ってもよいくらいの任期制が支配しているわけでございまして、むしろある意味では准教授、教授に至る試用期間的な位置づけだというように言っても差し支えないような実態にあろうかと思うわけでございます。それで、それを経て、テニュアを得るための審査を経、その上でアソシエートプロフェッサーなり、あるいはフルプロフェッサーの地位を得る、テニュアを得る、こういう仕掛けになっておるわけでございます。  それに対しまして、我が国の場合には、いずれの職位につきましても一律のという発想はいたしておらないわけでございまして、大学教育研究上の必要に応じて、かつ、どういう場合にかということは限定しておるわけでございます。それと、助手にしく場合もありましょうし、また教授にしく場合もあるというように、概括的に申しますと、かなり弾力的な運用が可能なような、そういう仕掛けであるというところが異なったところであろうかと思うわけでございます。
  119. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 今お話しのように、最終的には大学それぞれが判断をすべきことであろうと思います。やはり各大学が特色に応じて学術研究の発展のために必要な範囲内において適切な運用をなされることを期待いたしておるところであります。  また、先ほど保坂委員から御質問がございました、例の任期満了後のケアの問題であります。  昨日の参考人の意見聴取並びに質問におきまして、私はその点について有馬先生に御質問をいたしたわけであります。有馬先生は、先ほども話が出ましたように、任期満了をしたそういう方に対して三十通の紹介状等を書きながら就職の努力をされた、こういうお話をいただいたわけでありますが、私は、有馬先生のような力をお持ちの、また交際範囲のお広い方にはそれでいいかもしれないけれども、やはりそのケアについてはある程度システムとして考える余地があるのではないかということを申し上げたわけであります。  今、局長の御答弁によりますと、これは上の方々があっせんをするとか、あるいは場合によってはこれは自力で開発した方がいいとか、そういう方向でひとつ処理すべきではないかというお話でありましたけれども、やはり任期制をとって、その任期制教員等研究にいちずに打ち込むためには、後顧の憂いかないことが必要であると思うわけでございますが、その点についてもう一度 御答弁をいただきたい。
  120. 雨宮忠

    雨宮政府委員 任期を満了した方の異動先につきましては、大学や学問分野、その他個別のいろいろな事情があろうかと思うわけでございまして、したがいまして、一つの決まった形での再就職のシステムを構築するというようなことは必ずしも適切ではないというように思うわけでございます。  ただし、今先生の御指摘の中にもございましたけれども、それぞれの大学におきまして、日ごろからすぐれた人材の採用に努めるとともに、任期を付して採用されました先生教育研究能力の向上を期すということで、例えば任期の途中に当該教員の業績を中間評価して必要なガイダンスを行うというような配慮もあろうかと思います。いろいろな工夫を大学サイドにはお願いしたいというのが一点。  それからもう一つは、流動性ということが眼目であるわけでございますので、やはり流動しやすいような情報提供がなされてしかるべきだということでございまして、今年度の予算におきましても、大学教員等の研究者の公募情報の流通を促進するということで、これは今年度の新規でございますが、学術情報センターの事業の一環といたしまして、インターネットを介しまして各大学教員の公募情報を、いわばこういう教員を求めるという情報を流しまして、それを見ることによって次の職場を得られやすくするというような仕掛けも考えておるわけでございまして、現実に動きつつあるわけでございます。  まだ件数は多うございませんけれども、こういうような努力を通じまして、できるだけ任期満了者の次の異動先を容易に見つけられるようにするというような努力をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  121. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 十分この点は今後ともお考えをいただきたい、こう思っております。  また、任期制任期満了時に業績評価をやるということでありますけれども、これは、昨日も参考人に対して伺いましたし、先ほども質問がありましたけれども、長期的なレンジで考えるべき研究課題、これについて五年という短期間で果たして業績評価ができるかどうか、そういう問題についてもひとつお伺いをいたしたいと思いますが、先ほども少し文部大臣から御答弁がありましたけれども、もう一度その辺を確認させていただきたいと思います。
  122. 小杉隆

    小杉国務大臣 おっしゃるとおり、長期間を要する研究の業績評価というのは大変難しいと思いますけれども、私どもは、大学審議会で提言されているように、たとえ研究の途中であっても適切な評価ができるように、そういうことは徹底してこれからやっていくべき問題だというふうに考えております。
  123. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 とにかく、初めての任期制の採用でありますから、その運用に当たりましては、大学の自主、学問の自由、また労働者の身分の保障等の点につきまして十分な配慮をされた上で運用をしていただきたい、こう思っております。  これに関連をいたしまして、今度の法案は、任期制をとることによって教員等流動化を図る、これによって学問上の刺激が起こってきて、そうして大学における学術研究活性化に寄与する、こういうことであろうと思うわけでございますけれども大学活性化というのは、私はこの任期制、また教員等流動化だけの問題ではないと思うわけでございまして、その他設備の面においても、あらゆる面において多くの課題があると思うわけでございますけれども大学活性化につきましての大臣の基本的なお考え方、また、今までおとりになった措置についてお聞かせをいただきたいと思います。
  124. 小杉隆

    小杉国務大臣 粟屋委員指摘のように、大学教育研究活性化一つ方策がこの任期制であるという認識でございまして、あくまでもこれは大学の教育の活性化のワン・オブ・ゼムである、こういうふうに考えております。  そこで、従来から、大学における教育機能の強化とか研究の高度化等についていろいろやってきたんですけれども、具体的には、例えば高等教育の個性化ということで、カリキュラム改革の実施ということとか事業計画の作成とか学生による授業評価の実施というようなことをやっておりますし、教育研究の高度化につきましては、大学院の学生数をふやすとか、あるいは学部から独立した大学院を創設するとか、そういったことをやっております。それから、組織運営の活性化という面では、できる限り自己点検とか評価を実施するとか、あるいは開かれた大学にしていくためにできるだけ社会人学生を受け入れていくというようなことをやってきております。  具体的な数字がもし御必要であればあと事務当局から答弁させますが、そういったようなことを通じまして、私どもさらに、そういった大学側の創意を生かした個性豊かな教育研究活動が展開できるように、各大学の積極的な取り組みを要請するとともに、文部省としても、できる限りの経費措置を含めたさまざまなバックアップ体制をとっていきたいと思っております。  いずれにしても、高等教育に対する公財政支出、これは国、地方を問わず、これが対GNP比では欧米諸国の半分にしかすぎないという現状を考えますときに、私は、こういう現状で、さまざまな制約の中でいろいろな工夫を凝らしておりますけれども、基本的には、そうした高等教育全体に対する国あるいは地方の支援というものは不可欠である、こういう立場で今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。
  125. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 今の高等教育に対する国、地方の支援、先ほど山元委員もお触れになりましたが、有馬先生からもそういうお話がございました。文部大臣のこれからの御努力を期待をいたしたいと思います。  もう一点、我が国の科学技術の研究で、応用技術の研究は世界にも匹敵をする研究成果を上げていると言いますが、基礎研究の部門でややおくれている、こういうことがよく言われるわけであります。  各企業とも努力をされて、その企業に係る応用技術、その基礎研究という点は、私はかなり努力をされていると思うわけでございますけれども、本当の意味の基礎研究、これがまだ十分ではない。そのために、私はやはり大学がその役割を担うべきであると思っておるわけでございまして、むしろナショナルセンターとしての役割は大学が担うべきと思いますけれども大臣のお考えを伺いたいと思います。
  126. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほども申し上げましたが、やはり基礎的、独創的な研究の必要性というものは、御指摘のとおりでございます。  今お話しのように、研究者の多くは大学におります。ちなみに数字を申し上げますと、我が国の研究者数で見ますと、大学には二十四万三千人、そして国公民営研究機関約四万六千人ということでありますから、大学は国や地方や民間の研究機関の五倍以上の研究者を擁しているわけでありますし、このほかに民間の会社等の研究機関がいろいろあるわけでありますけれども、これは約三十八万四千人おりますけれども、こういう方々も、ほとんどその会社等で設立をしている財団とか社団でございまして、こういうのは主として応用研究でございますので、基礎研究における大学の果たす役割というか、ウエートというものは非常に高い。  こういうことで、今後とも大学における基礎研究のレベルアップを図るとともに、それを支える人材養成ということがますます大事になってくると思いますので、そういった点で、大学の基礎研究の中核としての役割というものはもっともっと強化していかないと、日本の学術研究の面では、これは将来憂慮すべき状態になるということで、特に、私は、基礎研究というものに対する認識をもっともっと深めていかなければいけないと考えております。
  127. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。
  128. 二田孝治

    ○二田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  129. 二田孝治

    ○二田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。山原健二郎君。
  130. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党を代表して、大学教員等任期に関する法律案について反対の討論を行います。  本法案は、大学教育研究活性化の名のもとに、国立、公立、私立の大学教員に五年や三年などの任期をつけて、期間の満了により退職という極めて身分不安定の状態に置くものであります。だからこそさまざまな弊害が出ることが、この間の極めて短く、しかも不十分な質疑の中でも、また参考人の招致の中でも明らかになりました。大学が最も進めなければならない中長期研究を困難にし、時代を画する研究の芽を摘み取る危機、また、教員研究業績を上げることに追われ、教育どころではないという状況に追い込まれることも明らかになりました。また、財政誘導による任期制強制の危機も指摘をされております。  今、ユネスコで高等教育の教育職員の地位に関する勧告草案を検討中でありますが、任期制ではなく、教員身分保障によって教育研究を活発化していこうとしています。しかしながら、日本政府は、大学審議会答申が出ていない段階で、しかも本法案提出されていないにもかかわらず、任期制を先取りする修正案を提案したのであります。言語道断であり、政府のとっている態度は、明らかに世界の流れに逆行するものであります。大学研究教育を本当に活発にするというのなら、政府が行うべきは任期制導入ではありません。  自由な人事交流を可能にするため、大学間格差を根本的に改めるべきであります。参考人各位が指摘していたように、大学予算を欧米並みに引き上げるべきであります。任期制導入によって学術の中心たるべき大学教育研究をゆがめてはなりません。  今、教育と研究を守れと、多くの大学で過半数を超える教員任期制反対の意見表明を行っています。この声にこたえ、将来に禍根を残さないためにも、本委員会はあくまでも徹底審議を貫くべきであります。解明すべき課題は山積しているのであります。  日本共産党は、学問の自由と大学の自治を守り、教育研究の一層の充実のために全力を挙げる決意を表明いたしまして、反対討論を終わります。
  131. 二田孝治

    ○二田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  132. 二田孝治

    ○二田委員長 これより採決に入ります。  内閣提出大学教員等任期に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 二田孝治

    ○二田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  134. 二田孝治

    ○二田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、河村建夫君外四名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。藤村修君。
  135. 藤村修

    ○藤村委員 私は、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  附帯決議の案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     大学教員等任期に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、学問の自由及び大学の自治の制度的な保障が大学における教育研究の進展の基盤であることにかんがみ、この法律の実施に当たっては、次の事項について、特段の配慮をすべきである。  一 任期制導入によって、学問の自由及び大学の自治の尊重を担保している教員身分保障の精神が損なわれることがないよう充分配慮するとともに、いやしくも大学に対して、任期制導入当該大学教育研究条件整備支援条件とする等の誘導等を行わないこと。  二 任期制の適用の対象や範囲、再任審査等において、その運用が恣意的にならないよう、本法の趣旨に沿った制度の適正な運用確保されるよう努めること。  三 任期制導入するに際して、教員の業績評価が適切に行われることとなるよう評価システム等について検討を行うとともに、特に、中長期的な教育研究活動が損なわれることがないよう、大学の理解を深めるよう努めること。  四 国公立大学については、公務員制度における均衡等に配慮して、任期付き教員給与等の処遇が一層適切な取り扱いとなるよう検討すること。  五 高等教育の活性化と充実を図るため、各地の大学が優れた教員確保できるよう、それぞれの大学の特色に応じた教育研究条件整備に配慮すること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  136. 二田孝治

    ○二田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 二田孝治

    ○二田委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小杉文部大臣
  138. 小杉隆

    小杉国務大臣 ただいまの御決議に関しましては、その御趣旨に十分留意して対処してまいりたいと思います。     —————————————
  139. 二田孝治

    ○二田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 二田孝治

    ○二田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  141. 二田孝治

    ○二田委員長 島村宜伸君外十二名提出スポーツ振興投票実施等に関する法律案日本体育学校健康センター法の一部を改正する法律案及びスポーツ振興法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより各案について順次趣旨説明を聴取いたします。島村宜伸君。     —————————————  スポーツ振興投票実施等に関する法律案  日本体育学校健康センター法の一部を改正する法律案  スポーツ振興法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  142. 島村宜伸

    島村議員 ただいま議題となりました三法律案について、私が提出者を代表して、その提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。  スポーツは、心身ともに健やかな人間を育て、生活に潤いと活力を与え、また、世界の人々をつなぐ大切な人類共通の文化であります。二十一世紀に向けて、我が国が、明るく豊かで活力のある社会を築き、充実した国民生活を実現していくためには、スポーツをめぐる環境の整備が大きな課題となっております。  そこで、このような国民の声にこたえるべく、スポーツ議員連盟において長年にわたり検討を重ね、二十一世紀に向けた我が国のスポーツ振興政 策を取りまとめたところであります。  中でも、学校週五日制や一般社会の週休二日制の進展、高齢化社会の到来に対応し、体力や年齢に応じてスポーツに親しむことのできる生涯スポーツ社会の構築は重要であるとの認識のもとに、だれもが手軽にスポーツに親しめる環境を地域のコミュニティーを中心に創造し、その活動を総合的に支援するシステムにより、多様なスポーツ活動の基盤を整備していくことを提言いたしております。  また、トップレベルの選手の躍動する姿に感動し、その活躍に胸躍らせることは国民の大きな夢であり、スポーツ選手の活躍のための条件整備し、メダルへの挑戦を支援するとともに、オリンピック大会等に象徴される国際的スポーツ活動に対する一層の支援など、競技力向上のための環境の整備の積極的な推進についても提唱いたしております。  このような、広範かつ多様なスポーツの振興に関する施策を実現していくためには、相当規模の財源が確保される必要がありますが、国の財政は依然として厳しい状況にあり、スポーツの振興に要する経費を、既存財源の中で飛躍的に充実していくことには限界があることも、残念ながら事実であります。  このため、スポーツ振興政策の実現のためには、新たに、諸外国でも定着しているスポーツ振興投票制度導入し、広く国民の理解と協力を得て、スポーツ振興に必要な資金を確保する必要があるとの結論に達しました。もとよりこの制度については、公正さと透明性が確保されるシステム、国民に理解されるシステムとすることが必要であることは言うまでもなく、慎重に検討を重ね、十分な配慮を加えております。  このような、二十一世紀に向けたスポーツ振興政策、それを実現するための新たな財源確保策は、スポーツ界の総意として、長年にわたりその実現が切望されてきたものであり、また、国民の夢と願いを実現するものとして、ここに、関係法律案提出した次第であります。  まず、スポーツ振興投票実施等に関する法律案について御説明申し上げます。  この法律案は、スポーツ振興のために必要な資金を確保してスポーツの振興に寄与するため、スポーツ振興投票に関する事項を定めるもので、その主な内容は、  第一に、この法律の目的を、スポーツの振興のために必要な資金を得るため、スポーツ振興投票実施等に関する事項を定め、もってスポーツの振興に寄与することとすること。  第二に、日本体育・学校健康センターは、スポーツ振興投票を行うことができること。  第三に、スポーツ振興投票の対象となるサッカーの試合の指定、投票券の発売並びに十九歳未満の者及び関係者等による投票券の購入の禁止、払戻金の交付など、スポーツ振興投票の実施についての所要の規定を設けること。  第四に、スポーツ振興投票に係る収益について、地域におけるスポーツの振興を目的とする事業を行うための拠点として設置する施設の整備に要する資金の支給に充てるなど、その使途についての規定を設けること。  第五に、スポーツ振興投票の対象となるサッカーの試合を行うスポーツ振興投票対象試合開催機構ついての所要の規定を設けること。  第六に、センターは、スポーツ振興投票に関する国民の理解を深めるため、情報公開などの措置を講ずること。  第七に、地方公共団体等の行うスポーツ振興事業への支援に充てる金額の総額は、センターが収益のうちから国庫に納付する金額のおおむね三分の一相当額となるようにするものとすること。  第八に、罰則に関する所要の規定を設けることであります。  なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとともに、この法律施行後七年を経過した場合においては、この法律の実施状況に照らして、スポーツ振興投票制度のあり方について見直しを行うこととしております、  次に、日本体育学校健康センター法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  本案は、スポーツ振興投票実施等に関する法律の施行に伴い、これに関連する業務を日本体育・学校健康センターの業務とする等の所要の規定を整備するものであり、その主な内容は、  第一に、日本体育・学校健康センターの目的の一部を改め、スポーツの振興のために必要な援助を行うこととすること。  第二に、センターの業務として、スポーツ振興投票実施等に関する法律に規定する業務を追加すること。  第三に、文部大臣は、センターのスポーツ振興投票等業務に係る事業計画等を認可しようとするときは、政令で定める審議会の意見を聞かなければならないこと。  第四に、センターの行う国庫納付について、規定を設けること。  第五に、政府は、センターの行う国庫納付の金額に相当する額を、教育及び文化の振興に関する事業、自然環境の保全のための事業、青少年の健全な育成のための事業、スポーツの国際交流に関する事業等の公益の増進を目的とする事業に必要な経費に充てなければならないことであります。  なお、この法律は、スポーツ振興投票実施等に関する法律の施行の日から施行することとしております。  次に、スポーツ振興法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  本案は、最近におけるスポーツに関する情勢の変化等にかんがみ、スポーツの振興のための措置を一層適切に講じるため、必要な措置を講じようとするものであり、その主な内容は、  第一に。財団法人日本オリンピック委員会が行う国際的な規模のスポーツの振興のための事業に関して、国と同委員会との緊密な連絡についての規定を追加すること。  第二に、プロスポーツの選手の競技技術の活用に関する規定を追加することであります。  なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。  以上が、各法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  143. 二田孝治

    ○二田委員長 これにて各案の趣旨説明は終わりました。  次回は、来る二十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十六分散会      ————◇—————