運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-04-02 第140回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 二田 孝治君    理事 稲葉 大和君 理事 河村 建夫君    理事 栗原 裕康君 理事 田中眞紀子君    理事 佐藤 茂樹君 理事 藤村  修君    理事 山元  勉君 理事 石井 郁子君       栗本慎一郎君    佐田玄一郎君       阪上 善秀君    島村 宜伸君       戸井田 徹君    中山 成彬君       柳沢 伯夫君    山口 泰明君       渡辺 博道君    井上 義久君       池坊 保子君    長内 順一君       旭道山和泰君    西岡 武夫君       三沢  淳君    鳩山 邦夫君       肥田美代子君    山原健二郎君       保坂 展人君    粟屋 敏信君       岩永 峯一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小杉  隆君  出席政府委員         文部政務次官  佐田玄一郎君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文部省体育局長 佐々木正峰君         文化庁次長   小野 元之君  委員外出席者         厚生大臣官房障         害保健福祉部企         画課長     伍藤 忠春君         厚生大臣官房障         害保健福祉部精         神保健福祉課長 田中 慶司君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   西  博義君     長内 順一君 同日  辞任         補欠選任   長内 順一君     西  博義君     ――――――――――――― 三月二十五日  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四九号)(参議院送付) 同月十二日  教育条件改善に関する請願谷畑孝紹介)  (第七三九号)  私立専修学校教育研究条件改善父母負  担軽減に関する請願藤木洋子紹介)(第七  四〇号)  病院内学級訪問教育等充実、希望するすべ  ての生徒に対する高等部教育保障に関する請願  (鳩山邦夫君紹介)(第七八二号) 同月十四日  ゆとりある教育に関する請願藤田スミ紹介  )(第九一六号)  義務教育費国庫負担制度堅持に関する請願  (佐々木陸海紹介)(第九一七号)  行き届いた教育、ゆとりある学校づくりに関す  る請願平賀高成紹介)(第九一八号)  行き届いた教育、小・中・高校三十人学級の早  期実現等に関する請願児玉健次紹介)(第  九一九号)  行き届いた教育実現私学助成大幅拡充に  関する請願春名直章紹介)(第九二〇号)  高校三十人以下学級実現私学助成大幅増、障  害児教育充実に関する請願寺前巖紹介)  (第九二一号)  三十人以下学級教職員増私学助成大幅増額  、障害児教育充実に関する請願瀬古由起子  君紹介)(第九二二号)  三十人学級実現教育予算大幅増父母負  担軽減に関する請願中島武敏紹介)(第九  二三号)  三十人学級早期実現公費助成制度堅持な  ど私学助成大幅増額に関する請願大森猛君  紹介)(第九二四号)  同(加藤六月紹介)(第九二五号)  同(金子満広紹介)(第九二六号)  同(穀田恵二紹介)(第九二七号)  同(佐々木憲昭紹介)(第九二八号)  同(不破哲三紹介)(第九二九号)  同(古堅実吉紹介)(第九三〇号)  同(正森成二君紹介)(第九三一号)  同(松本善明紹介)(第九三二号)  同(矢島恒夫君紹介)(第九三三号)  同(山原健二郎紹介)(第九三四号)  同(吉井英勝紹介)(第九三五号)  同(古川元久紹介)(第九七七号)  三十人学級早期実現私学助成大幅増額に関  する請願木島日出夫紹介)(第九三六号)  三十人学級早期実現生徒急減期特別助成な  どの大幅増額に関する請願中路雅弘紹介)  (第九三七号)  子供たち教育充実に関する請願(辻第一君  紹介)(第九三八号)  私学助成増額、行き届いた教育実現に関する  請願東中光雄紹介)(第九三九号)  文教予算増額、行き届いた教育実現に関する  請願藤木洋子紹介)(第九四〇号)  三十人学級早期実現教育予算私学助成拡  充、教職員定数増に関する請願石井郁子君紹  介)(第九四一号)  小・中・高校三十人学級早期実現私学助成  の大幅増額に関する請願瀬古由起子紹介)  (第九四二号)  同(古川元久紹介)(第九七五号)  小中高三十人学級早期実現障害児教育の充  実、私学助成大幅増額に関する請願志位和  夫君紹介)(第九四三号)  私立専修学校教育研究条件改善父母負  担軽減に関する請願佐々木陸海紹介)(第  九四四号)  病院内学級訪問教育等充実、希望するすべ  ての生徒に対する高等部教育保障に関する請願  (児玉健次紹介)(第九七六号) 同月十九日  小・中・高校三十人学級早期実現私学助成  の大幅増額に関する請願古川元久紹介)(  第一〇一八号)  病院内学級訪問教育等充実、希望するすべ  ての生徒に対する高等部教育保障に関する請願  (保坂展人君紹介)(第一〇六六号)  私立専修学校教育研究条件改善父母負  担軽減に関する請願山原健二郎紹介)(第  一〇六七号)  同(古堅実吉紹介)(第一〇八五号)  文教予算増額、行き届いた教育実現に関する  請願山元勉紹介)(第一〇八六号) 四月一日  安全で、安心して学べる学校施設に関する請願  (石井郁子紹介)(第一四五九号)  同(瀬古由起子紹介)(第一四六〇号)  同(藤木洋子紹介)(第一四六一号)  同(藤田スミ紹介)(第一四六二号)  同(山原健二郎紹介)(第一四六三号)  三十人学級早期実現教育予算私学助成拡  充、教職員定数増に関する請願田端正広君紹  介)(第一四六四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十二日  大学教員任期制導入反対に関する陳情書  (  第一〇〇号)  大学入試センター試験得点是正等に関する陳  情書  (第一〇一号)  中学校教科書記述訂正に関する陳情書  (第一〇二号  )  私学助成の維持と充実に関する陳情書  (第一〇三号)  いじめ撲滅に関する陳情書  (第一〇四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四九号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 二田孝治

    二田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。小杉文部大臣。     —————————————  教育公務員特例法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 小杉隆

    小杉国務大臣 このたび、政府から提出いたしました教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  大学を初めとする学術研究機関が、民間等方面から寄せられる要請に機敏に対応し、学術研究社会的協力連携を深めていくことは、社会に対する貢献として極めて重要であることは言うまでもなく、また、大学等にとっても、民間等との活発な交流を通して有益な刺激を受けるという観点から、その教育研究活性化に資するものとして非常に有意義であります。  さらに、今日、科学技術創造立国を目指す我が国にとって、大学等がその研究の特性を踏まえつつ、民間等との連携を積極的に図ることにより、二十一世紀に向けて社会経済の活力と国民福祉向上に資する独創的な研究開発を展開することが喫緊の課題となっております。  このようなことから、さきに策定されました科学技術基本計画等を踏まえ、国立大学民間との共同研究等を積極的かつ効率的に推進するため、教員民間との共同研究等に参画する場合における退職手当算定上の不利益を解消することが、今回の改正趣旨であります。  次に、この法律案概要は、国立大学等教員共同研究等に従事するため休職にされた場合の退職手当在職期間の計算について、この休職期間を除算しないこととするため、国家公務員退職手当法特例に関する規定を新設するものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。
  4. 二田孝治

    二田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 二田孝治

    二田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三沢淳君。
  6. 三沢淳

    三沢委員 おはようございます。新進党の三沢淳です。  教育公務員特例法についてお尋ねいたします。  本法律改正は、産学官人的交流を施し、我が国科学技術向上に大きく寄与することになり、これは大変喜ばしいことだと思っております。科学技術先進国と言われておりますアメリカにおいても、今日のような産業発展をもたらしたのは、産業界学術界共同研究が基礎となっております。  近年、我が国におきましても、産業界学術界との連携協力の必要が叫ばれてまいりましたが、休職期間退職手当算定上の問題、兼業規則就職制限等制度的制約学術研究者にとりまして不利益をこうむることになり、活発な産学官等共同研究がなかなか実現しない原因となっておりました。  そのような意味から、私は、今回のこの改正は一歩前進したと評価しております。産学官等共同研究を通し、研究者相互学問的刺激を与え合うことにより、創造的な発想とそれに伴う研究開発が生まれる下地ができまして、科学技術発展は、我が国経済成長の安定と新規事業の育成に大きな結果が期待できると思っております。  文部省におかれましては、産学官等共同研究システム構築に今後どのように取り組んでいかれるのか、御所見をお願いいたしたいと思います。
  7. 林田英樹

    林田政府委員 私どもといたしまして、今御指摘のございました産学共同研究というものを進めますために、いろいろな措置を進めているわけでございます。  私ども大学産業界との研究者交流促進というものが大変重要であるという認識のもとにいるわけでございますけれども、昨年七月に閣議決定されました科学技術基本計画におきましても、そのための諸制度及び運用の改善を図ることがいろいろ指摘をされておるわけでございます。研究費増額ばかりではなくて新たな研究開発システム構築が必要である、そのためいろいろな研究者交流システム構築が必要であるというふうなこと、それから、産学官連携交流促進というようなことにつきまして、種々御指摘があったところでございます。  したがいまして、このような観点から、文部省では、産学連携協力の在り方に関する調査研究協力者会議というようなものを組織をいたしまして検討お願いをしたわけでございます。これらの検討、さらには科学技術基本計画の御指摘を受けまして種々の対策をとっておるわけでございます。  大変多岐にわたるわけでございますけれども、典型的なものを申し上げますと、まず一つは、企業に対する研究協力拡充ということでございます。その中の一つ共同研究等の場の企業への拡大ということでございまして、従来、国立大学等教員企業において共同研究をいたします場合につきましては相当制限的な規定になっておったわけでございます。企業大学研究者とが余りに近過ぎることの弊害も懸念をされるというような考え方から一定の制約が設けられておりまして、企業から大学へ参りまして研究いただくことにつきましてはかなり弾力的に行えることになっておりましたけれども大学先生方企業研究所等へ行くことにつきましては相当制限的になっておったわけでございますけれども、これにつきましては、この三月末に通知改正いたしまして、平成九年度、この新しく始まりました年度から、大学関係者企業へ行って共同研究することにつきましても相当弾力的にできるような対応に改正をいたしたわけでございます。  それから、現在御検討お願いしております法律改正に絡みますものが、御指摘のございましたように、国立大学等教員企業との共同研究等に参画するために休職した場合に、退職手当算定 上の不利益をこうむらないような措置を講ずるということで、現在、教育公務員特例法改正の御審議お願いをしているということもその一環でございます。  それから、兼業範囲拡大ということもございます。  国立大学教員が勤務時間外に企業に参りましていろんな研究開発業務協力をするということにつきましても、かなりこれまでは制限的な規定になっておったわけでございますけれども、これまでの基本計画におきます記述や私ども検討の結果、これまで認められていなかった研究開発、または研究開発に関する技術指導というようなものに従事をする場合の兼業については、原則として許可するというような方針に転換をいたしまして、この点につきましては、既に昨年十二月に通知改正いたしまして、平成九年度、この四月から実施をできるような措置をとっております。  そのほかに、研究成果活用円滑化のための特許等についての相手方企業等への優先的実施期間延長の問題でございますとか、産学共同研究のための税制措置というようなものも含めまして、いろんな措置をとりまして、このような産学連携協力が一層推進されるような措置をとっているところでございます。
  8. 三沢淳

    三沢委員 ぜひ、日本の経済成長の安定のためにも、すばらしい研究をされますことを強く望んでおります。  次に、学校余裕教室についてお尋ねいたします。  全国の小学校中学校教室はただいま五十二万四千七百ありますが、そのうち約一割の五万二千教室が現在、余裕教室となっております。この余裕教室の割合を御参考までに申し上げますと、政令都市が一五・五%、町が六・五%、村が四・八%、このように大都市に集中しております。本来、都市部人口密度の高い地域でありますが、国民の都市離れ、そして少子化の傾向がここでも見られるようになりました。各自治体につきましても、創意工夫を凝らし、特別教室とかランチルームとか学校施設活用したりしていますが、まだ一五%に当たる八千教室が未活用となっております。  文部省においても、平成五年四月、余裕教室活用指針でもって余裕教室活用の基本的な考えを取りまとめたり、あるいは平成七年四月及び六月の通知でもって、デイサービス等老人福祉施設災害時の備蓄倉庫等転用の場合は大臣承認から報告事項手続簡素化されていますが、まだ用途が限定されているのが現状であります。  子供の数が減り高齢者が増加するという今の社会構造の変化に対する柔軟な姿勢が必要となってまいります。国民の、あるいは地域住民共通財産であります学校余裕教室有効利用をどのようにお考えか、文部省当局の御見解をお伺いいたします。
  9. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 お答えいたします。  学校施設は公立の場合にほとんど補助金を得て建てられております。これがその補助金目的であります学校教育に使われているうちはもちろん何ら問題がないわけでございますけれども学校教育以外に用いられる場合、これは目的外使用と言っておりますが、これは法律によって、原則その所管大臣承認が必要である。承認を得れば、もちろん公共性のあるものに限られるであろうと思いますけれども、何かのほかの目的に使うことができる、こういうふうな制度になっているわけでございます。  そこで、私どもとしては、どのような学校教育以外の目的施設に使うかということは、それぞれの設置者でございます市町村が、その地域実情を十分に踏まえた上で活用願いたいというふうに思っているところでございます。  その際に、原則大臣承認ではございますけれども、昨今で申しますと、特に福祉関係施設、その中でも老人福祉関係施設というものがかなり多くなってきております。もちろん、そのほかにも学童施設でありますとかさまざまなものがございますけれども、そういったものにつきましては、できるだけ手続承認から報告へという形で簡便化をし、迅速化を図ることによりまして、目的外使用がやりやすくなるような措置をここ数年とってきたところでございます。  そういうふうな考え方で、法律に書いてあります大臣承認というものを、各地方公共団体からの要請の強い分野を所管官庁とも協議をしながら、できるだけ早く簡便な手続で使いやすくしていくというふうな方向で、私どもは今後とも考えていきたいと思います。  なお重ねて申し上げますが、どのような目的外施設に使うかということにつきましては、やはりその地域実情を最もよく知っている市町村当局であろうというふうに考えておりますので、その有効活用を積極的に進めていくという方向考えておる次第でございます。
  10. 三沢淳

    三沢委員 文部省皆さんもいろいろの活用方法考えておられまして、地域の皆様のためにもぜひいろいろな目的で、目的外でもいいですから、いろいろなことで余裕教室を使っていただきたいと思います。  その中で、今教育現場におきましては、放課後児童対策といたしまして余裕教室活用皆さんが強く望んでおられます。特に今はパートに出られるお母さん方が多いものですから、母親が働いている留守家庭児童利用できる児童館等の希望が、今申されたように学校教育目的外使用となり、補助金に係る予算の執行の適正化法の二十二条で縛られて思うようにいかないのが現状であります。  また、放課後児童対策は、当初は文部省事業としてスタートしましたが、その後厚生省の所管になったため、文部省では教育とは関係ないとし転用を認めなくなってしまったとの声もありますが、この事実関係はどうなんでしょうか。
  11. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 今まで学童保育事業と言われてきたものであろうかと思います。  この点につきましては、既に平成三年度におきまして手続簡素化が済んでおります。したがいまして、余裕教室が生じ、それを学童保育事業転用したいというケースにおきましては、大臣承認ではなく報告をしていただければよろしいということが既に平成三年度より実施をされております。  なお、今回、児童福祉法であったかと思いますけれども改正されまして学童保育事業というのが法律上のしっかりした事業になっていくというふうなことを聞いておりますので、私どもとしても、この事業につきましては、地域子供たちのためでもございますので、従来以上に前向きの姿勢で対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  12. 三沢淳

    三沢委員 今は核家族になっていますので、子供が何とかひとりにならないような、そういう方面でもぜひ文部省子供たちのために児童館などを早く建ててあげる、つくってあげるということを強く望んでおります。  また、余裕教室利用、先ほど申されましたけれども、この手続上の問題なんですが、国の許可がおりるまでに一年から一年半もかかり、教育現場から即答できないとの声も聞こえております。申請の際、予算額設計図その他の詳細な書類が求められ、また事後の変更を認めない。しかも目的外使用条件として完全に孤立したものとされているため、附帯の設備を個別に整備しなければならない、そういうふうになっておりまして、例えば二階の余裕教室利用すれば階段を別に設置しなければならない、トイレも別なものが必要になってくる。  ある市では、学校の敷地を利用して百六十平方メートルの児童館を建てたが、費用が約六千万円かかり、財政負担が重く、住民が望んでおる施設拡充が思うようにいかない、こういうふうに皆さんが嘆いておられます。余裕教室をもっと簡単に使用できるようになれば市町村財政負担も軽くなり、予算をほかの政策に反映できるのではないか、そのように思っております。  私は、市町村余裕教室利用する際の手続簡素化範囲を広げ、余裕教室活用効率化を図るべきと思いますが、先ほども申されましたけれども、まだまだその簡素化というのがしっかりそこまでしていないのじゃないか。まだ簡素化になっていないところもたくさんあるのじゃないかと思いますけれども、その辺のところはどうでしょう。
  13. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 私ども承認事務を進める際に、やはり一番配慮していることは、余裕教室目的外転用した場合に、そのことによって学校教育が支障を来さないかどうか、この点でございます。したがって、そういうことからいろいろあるいはややこしいことを申し上げたり、それから、場合によると、そんなに先生がおっしゃるほど時間はかからないとは思いますけれども、比較的長い時間をかけたり、資料を要求したりということがあったかと思います。  したがって、それは、私どもとして余裕教室地域のためにどう有効に活用していくかという観点をもっと強く打ち出しまして、それに必要な手続簡素化迅速化、それからできるだけ余計な資料を要求したりしないような、そういうふうな体制を今後とも努力して築いていきたいと思っております。
  14. 三沢淳

    三沢委員 いろいろ努力をされていまして社会のニーズには合っておられまして、文部省の方も努力されていることは私も重々承知しております。しかし、簡素化されたのはデイサービス老人福祉施設それと災害時の備蓄倉庫への転用、この二つが簡素化されたのですけれども、今の児童館とか老人福祉デイサービス以外の施設障害者施設、この辺のところにはまだまだ時間がかかっているのではないか、簡素化されていないのではないかと思われますけれども、今後この辺のところはどういうふうにお考えでしょうか。
  15. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 転用の際の手続簡素化が既に済んでいるものとして整理して申し上げますと、平成三年度が他の学校社会教育施設社会体育施設文化施設学童保育施設等につきまして手続簡素化を行いました。それから、平成七年度におきまして、老人デイサービスセンター備蓄倉庫等を行いました。  ただいま先生の御指摘の、このほかにもいろいろあるではないか、御指摘のとおりであろうかと思います。そういったことにつきましては、私どもとしても都道府県あるいは市町村ともこれから協議をし、最終的にはこの補助金等に係る予算適正化法、それを所管をいたしております官庁十分協議をして、こういったものについては目的外使用手続簡素化しても補助金等適正化にもとるものではないであろうということを申し上げて一件一件広げていくという操作が、これは法律でございますので必要でございます。そういった努力を今後ともしていきたいというふうに思います。
  16. 三沢淳

    三沢委員 文部省の方もいろいろとお考えになっていることは承知しておりますが、まだ用途学校施設延長としかとらえていないような気が少しいたします。確かに教室学校施設である以上当然だと思いますが、余裕教室地域高齢者の活動の場あるいは憩いの場として活用できないかと要望が来ております。  福祉の方も随分力を入れておられまして、老人のために余裕教室を使うということは大分努力されています。京都府のある小学校では二年前より余裕教室の一部を高齢者デイサービスセンターに活用していますが、開設当初は校内で出会うお年寄りに戸惑った児童も、今では昼休みや放課後にこの施設に出向き、お年寄りとの交歓を楽しんでいるという子供たちがいるそうです。そしてまた、ある東京の小学校では高齢者が週に一度教室に集まって児童と同じ学校給食を楽しむ触れ合い給食を実施し、元気な子供たちに会えるのはとても楽しいと高齢者に喜ばれております。  余裕教室をこのように高齢者施設として活用することにより、高齢者は独立した自分から抜け出し、児童子供たちはお年寄りを大切にする気持ちが生まれ、教育効果も大きいと思われます。  やはり私の地域でも今はドーナツ現象でありまして、若い夫婦が、息子さんたちが郊外へ行かれて、残っているのは年寄りばかりだ。年寄りが集まるところは病院か健康センター、そこらに集まっている。もうちょっと健全な場所に集まれないか。お年寄りはやはりお話ししたりお菓子を食べたりしながら、それでいて毎日の元気を保てるのではないか。今は核家族になりまして、子供たち老人を見る目が汚いとか違った人種というような見方で、今の子供は間違った見方をしております。そういう意味でも、こういうところで子供たち老人の触れ合いというのはすばらしいことではないか。  昔私もおじいちゃん、おばあちゃんがいまして、いろいろなルールやマナーというのはやはり長年生きた経験の豊かな年寄りが子供に対して教えていました。今の子はかわいそうですけれども、お年寄りが面倒を見ない、まして一人で何もかもしなければいけないというような時代です。地域のお年寄りが本当に気楽に学校に行けて、子供たちと接触して楽しく食事をして、そして健康である。子供たちもお年寄りからすばらしい経験を聞きながら成長していく。この協調性というようなものが子供たちに今欠けているようですが、そういう感動のある、リーダーシップをとれる子供たちがこういう面から育っていくのではないか、そういうふうに思っております。  年寄りにいたしましても、バスを乗り継いだり車を乗り継いだりして行くよりは、やはり散歩がてら近所の学校に行ったりすることによって健康も保てるのではないか。  私の地域でもそうですけれども、いろいろな日本の地域も、今都会でしたら平家ではありませんので、お年寄りが隣同士仲よくお話ができません。隣組ではありません。鉄筋の市営住宅や県営住宅はもう十階、二十階の団地が建っています。その十階なんかにいますと、鉄の扉に囲まれましたらほとんど表に行くような気持ちにはならないと思います。  そういう意味でも、やはり学校というのは皆さんがどこでも知っている場所なものですから、そこに毎日通う、これだけでもお年寄りは随分元気になるのではないか。今は医療が問題になっていますが、予防医療にすることといいますか、予防医療のためにも、やはりお年寄りが元気で長生きできるというのは、こういうところから努力していけば医療費の負担も少なくなっていくのではないか。  元気なお年寄りをつくらなければいけない。そして子供たちも元気な子供たちをつくらなければいけない。特に、子供たちも今は運動もしませんし、食べるものも偏った食べ物です。冷凍食品のようなものばかり食べまして、体力も落ちています。今の子供たちが三十、四十になったときに、果たして本当に健康で長生をできるのかどうか。その辺のことも踏まえまして、この余裕教室活用というのはやはりお年寄りと子供たちの接点といいますか、家族の基本となる一番のこれからの光を当てる部分ではないか、そういうふうに思っております。  今後、文部省といたしましては、余裕教室の高齢化施設への活用はどのようにお考えになっているのか、御所見をお願いいたします。
  17. 小杉隆

    小杉国務大臣 三沢委員がるる、近年の生徒児童の減少によって都市部を中心に余裕教室が出てきたということで、それを積極的に活用すべきではないか、そういう御趣旨でございますが、私も同感でございます。  特に最近は、そういった不満の声が私のところにもたびたび寄せられまして、あんなに教室があいているのに何でもっと活用しないのかというようなことで、先ほど来教育助成局長から答弁しておりますように、教育の面ではコンピューター教室をつくるとか、あるいはLL教室というのですか、言語教育用途にするとか、あるいはカウンセラーがどんどんふえておりますけれども、カウンセリングの部屋に活用するとか、そういうことで学校教育の面でも相当活用してきておりま す。  しかし、学校だけではまだまだ余裕教室が十分消化できないということから、特に老人のためのデイホームというようなこととか、あと災害のときのために備蓄倉庫等に、これは文部省所管外の役所の仕事にまで範囲拡大しまして、その活用を図っているところでございます。  今、三沢委員が御指摘のように、こういう教室を使って子供とお年寄りの触れ合いの場がふえたり、あるいは学校給食を楽しんで触れ合い給食というような試みがあるというお話を私も興味深く聞かせていただきましたが、特に少子化の中で子供が家庭の中で、核家族化でおじいちゃん、おばあちゃんとの触れ合いが減っておりますし、またお母さんが社会進出といいますか、職場に出て働くということで家族の触れ合いが減っている中で、こういった余裕教室利用したお年寄りとか地域の人たちとの触れ合いの場をふやすということは、非常に教育上の効果という点からも私は有意義だと思います。そういったことで、今後余裕教室活用について一層弾力的に検討していかなくてはいけないと思っております。  今行財政改革ということで、特に財政構造改革というものが焦眉の急でございまして、先日も政府の方では五原則というのを発表しまして、特に教育についても聖域扱いはしない、こういう方針を立てておりますときだけに、こういった余裕教室がそのまま眠っている、こういう状態を放置しておくことは教育に対する信頼感の低下にもつながりますし、私どもは、そうした観点からもこの余裕教室、空き教室活用については積極的にまた弾力的に取り組んでいかなければいけない、そう考えております。
  18. 三沢淳

    三沢委員 ぜひ努力されまして、高齢者のためにいろいろな教室利用していただきたいと思います。  ところで、現在、余裕教室高齢者福祉に活用された事例は全国で何件ぐらいあると思われますか。文部省として把握している数をお願いいたします。
  19. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 最近の例を申し上げますと、八年度が三件、七年度が六件、その前が七件と承知しております。
  20. 三沢淳

    三沢委員 本年二月の新聞の報道によれば、文部省として五件の活用事例の報告を受けておられるようですが、これはどうでしょうか。
  21. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 ちょっとその件について、私ども思い当たるところがございません。
  22. 三沢淳

    三沢委員 第一号は一九九五年四月というのは、これはどうでしょうか。
  23. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 最初に報告をされた例として、平成六年七月、京都府宇治市の小倉小学校におきまして、在宅老人デイサービスセンターそれから在宅介護支援センターへ転用した例がございます。
  24. 三沢淳

    三沢委員 これは、こちらが間違いなのかわかりませんけれども、一九九五年四月から二年間で五例だということでして、この五例が多いか少ないかは、私は非常に少ないのじゃないかというような感じがしておりますが。大臣承認から報告事項手続が簡略化と言われても、運営の面でまだまだうまく機能していないように思っております。  文部省に責任があるとか、申請する自治体側の責任とは言いませんが、子供施設、これは文部省所管ですが、高齢者用の施設、これは厚生省の所管転用したいが、省が違うとそこに壁ができて思うように進まないというような声も現場から上がっておりますが、この点はどうでしょうか。
  25. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 今お尋ねの老人福祉施設関係について、手続面での障害はほとんど全くないであろうかと思います。ただ、建物の構造その他で、余裕教室はあるけれどもデイサービスセンターがうまくセットできないとかいった構造上の工夫でありますとか、そういった点での問題というのはやはり考えられるところでございます。
  26. 三沢淳

    三沢委員 地域皆さんは、都会では場所もないですし、いろいろな面で施設に関しましても行くところもありませんので、ぜひ余裕教室というものを、手続簡素化しまして、本当に地域皆さんが有効に使えるようにみんなで協力していくことがこれからの都会のために、地域のためになっていくのじゃないか、そういうふうに思っております。ぜひまたこれからも、いろいろと大変でしょうけれども努力をしていただきたい、そういうふうに思っております。  次に参りますけれども、これは厚生省にも非常にかかわりの深い問題ですが、聴覚障害と知的障害などをあわせ持つ重複障害者がおられます。彼らはまた彼女らは現在、二つの障害に配慮した重複障害学級に学んでいますが、卒業後は、聴覚障害か知的障害か、どちらか片方だけを対象とした授産施設で就労しております。このため、身体障害者施設では他の人と就労レベルに開きが生じ、知的障害者施設ではコミュニケーションがうまくいかず、なじめなくなりがちだと聞いております。重複障害者授産施設は全国にも数が少なく、子供の将来に不安を持った父兄たちが重複障害に配慮した作業所をつくろうと各地で運動を始めております。  障害を持つ子供たちは皆何らかの形で悲しみを背負っており、子供自身も親たちもそれを克服するのは容易なことではありません。この子どもたちはできることは少なく、できないことの方が多いかもわかりませんが、しかし、彼らは人間として一生懸命生きております。私たちは彼らの悲しみを取り除くことはできませんが、生きる姿に声援を送り、応援を送り続けることはできるのじゃないか、そういうふうに思っております。  本来、どのように重い障害を持っていようとも、その人々が人間らしく生きていくことを保障するのがやはり国の責任であり、日本国憲法の理念じゃないかと思います。この手づくりの作業所をつくろうという運動に携わった人は次のように言われております。重度重複障害者に対する国の施設はおくれにおくれている、制度のおくれは当事者と家族のみに負担を強いて、さまざまな悲劇を各地に生み出している、私たちは、国が重い腰を上げ、制度が整備されるまで指をくわえて待っているわけにはいかなかった。こういうふうに、やむにやまれぬせっぱ詰まった気持ちから運動に立ち上がったことがわかります。  一口に作業所の整備、創設といっても、用地の確保や職員の養成あるいは予算と、困難な問題は多々あると思いますが、今こそ国が率先して取り組むべき問題じゃないか、そういうふうに思います。  私は、当面の間、余裕教室の一部をこのような重複障害者の作業所に活用できないかと考えております。新規に施設を建設することも大切だと思いますが、今すぐ活用できるものは活用すべきだ、そういうふうに思います。福祉行政の主管官庁である厚生省並びに余裕教室利用の主管官庁であります文部省のお考えお願いいたします。
  27. 伍藤忠春

    伍藤説明員 御指摘のとおり、障害者、特に重複の障害者あるいは障害児の方々の施策をどうしていくかということは大変重要な問題でございます。  障害者施策全般につきましては、昨年度から七カ年の計画で障害者プランというのを決定いたしまして、現在、計画的に整備を進めておるところでございます。その中で一定の対応をしてまいりたいと思いますと同時に、省内で私ども今、これまで個別の障害ごとに形成されてまいりました障害者施策をこれからどういうふうに総合化といいますか、お互いに有効に活用していくか、あるいはそういう重複の障害を持った方々に現在の施策だけで対応できているかどうか、そういったところを総合的に見直しをしておる最中でございます。御指摘の点を十分踏まえて、それからもう一つ指摘のございました小規模作業所ということも含めて、これから鋭意検討してまいりたいと思います。  それから、教室活用という点につきましても、現在は老人対策の面だけで進められておりま すが、これから障害者行政、地域でノーマライゼーションという理念にかなって施策を進めていくという観点からいたしますと、今後、そういった教室利用ということも一つの有効な手だてかなというふうに思います。  ただ、先ほどから文部省の方からもお答えをしておりますように、提供する側、いわゆる教育の側と、活用する側の福祉のサイドと十分調整をした上で円滑にこの施策は進められていくことが重要ではないかというふうに思っております。
  28. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 私ども既に再三申し上げましたように、重複障害者の作業所に学校施設転用していくということは、設置者の判断によりましてもちろんできるわけでございます。  それと全く同じケースではございませんけれども、既に平成五年の四月と平成七年三月に、和歌山県と石川県におきまして、小学校が廃校になった際にこれを精神薄弱者授産施設転用した例が一件ずつございます。これは学校全体が廃校になったケースでございますが、もちろん余裕教室を使って重複障害者の作業所に使いたいというケースの場合には、当然それは可能であるというふうに考えております。
  29. 三沢淳

    三沢委員 やはり障害者の方というのはなかなか難しい面もあると思われますが、厚生省と文部省の方でよく打ち合わせしてこれからの方策は考えておられるのかどうか、厚生省は厚生省だけで、文部省文部省だけで考えておられるのかどうか、伺いたいと思います。
  30. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 この余裕教室の問題が発生してからかなり時間がたちます。その余裕教室有効活用しようとする際に、昨今ほとんどが厚生省サイドの施設でございます。ということでございますので、私どもとしては、これまでも必要に応じて厚生省と連絡、協議を進めてまいりました。もちろんこれは定期的にどうこうというものではございませんが、そういう体制は今後も引き続きとってまいりたいというふうに思っております。
  31. 三沢淳

    三沢委員 これは、本当に障害者の方というのは、余裕教室を使うというのは大変難しい面があるのではないか、そういうふうに思われますけれども、どうかぜひ障害者皆さんにも先を当てていただきたい。これからは教育の中でもボランティアの教育というのが必要ではないかと今言われていますけれども子供たちがやはり小さいうちから、障害者の大変さ、そしてお年寄りの痛みといいますか、この辺のところがこれからの時代に求められていることではないか、そういうふうに思っております。詰め込み式で頭でっかちばかりになりまして——本当の教育というのは、やはり大きくなってリーダーシップをとれる、みんなを率いてあるいは先頭を切って社会を生きていくというリーダーシップが求められているのではないか、そういうふうに思います。  特に、今は、核家族になりまして、個々の子供たちが本当に迷ったときでも、だれも相談相手がいないというその辺のところが一つ子供たちの問題になっているのではないか、そういうふうに思っております。協調性がない子供たちが多くなりました。もっと痛みや、いろいろな感情のあるそういう子供たちを育てると同時に、やはりお年寄りの生きがい、そして障害者皆さんが、本当に社会人の一員だ、みんなと一緒なのだというような思いでこの世の中を、日本国民全員で新しい国づくりをしていかなければいけないのではないか、そういうふうに思っております。  そういう意味でも、厚生省にしましても文部省にいたしましても、特にきょうは大臣おられますけれども、心の強い子供たちを育てることが新しい日本を、二十一世紀の日本を築いていく人をつくっていくことではないか。そういう意味でも、文部省というのは、私はこれから重要な力を発揮するところじゃないかと。人間をつくるのが一番であります。物をつくるのも大変でしょうけれども、やはり人づくりというのが今一番求められているのではないかと思います。二十一世紀を迎えまして、何とか世界に誇れる、日本人として誇りを持って生きていけるような国づくりをこれからどんどんしていっていただきたい、我々もできることならいろいろ協力して、努力してこれから頑張ってもらいたいと思います。  いろいろな面でまだまだ問題もあるかとは思いますけれども、ぜひこの余裕教室に限りましては考えていただきまして、地域皆さんのためにも障害者皆さんのためにも、そして老人皆さんのためにもぜひいい活用考えていただきたい、そういうふうに思っております。  少し時間が余りましたけれども、これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  32. 二田孝治

  33. 肥田美代子

    ○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いします。  提案されております教育公務員特例法に関連して質問いたします。  国立大学や国立高等専門学校教員民間企業などの共同研究に従事するため学校休職した場合の不利益を解消しようという本案の趣旨及び学術研究の成果を広く人類共有の知的財産としてすべて公開したいという構想についても、理解いたします。  ところで、大学の自治、学問の自由はいかなる形であれ侵害されてはならないものだと思います。産学協同は、資金を提供する企業の論理を否定できない、そういう側面を持っております。しかし、それでもなお大学の自治、学問の自由は確保されなければならない。そうしますと、そのために文部省の方では、どういうふうにすればその大学の自治、学問の自由が守れるか、その方策を恐らくお考えだと思いますけれども、そのあたりの御見解を伺いたいと思います。
  34. 林田英樹

    林田政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、大学の自主性を尊重するということは、私どもとしても大変重要な要素だと思っているわけでございます。  具体的な手続等に関しましては、法律をお認めいただきましたらその改正後いろいろな手続を進めるわけでございますけれども、基本的には、改正法の施行までの六カ月以内に関係省庁や国立大学などとの十分な連絡調整の上で決めようと思っておりますけれども、既に各省庁の国立研究所について実施をされております研究交流促進法の第六条の運用の例を参考にしながら、現時点での私ども考えを御説明申し上げますと、おおよそ次のように考えているわけでございます。  共同研究につきましては、国立大学などが、国以外の者からの共同研究の申し込みを受けまして、共同研究契約を締結いたしました後に、教員の派遣要請を受けるということになるわけでございます。国立大学などは、この要請を受けまして、文部省を通じて人事院に対する共同研究に係る休職施設の指定申請を行いますとともに、並行いたしまして、総務庁人事局に対する退職手当特例措置に係る承認申請を行うということになるわけでございます。  それで、この共同研究国立大学等が受けるということを決めます際には、それぞれの大学の中で学内組織を設けて審査をしていただくというような手続をいたしまして、大学として独自の判断で受け入れを決定いただくということになるわけでございます。それから、具体的に、では実際に休職をして行っていただくという場合につきましても、学長等が行うということになるわけでございます。したがいまして、文部省は、大学におきまして受け入れ決定をされた研究内容につきまして、その適否を審査するというような立場ではないわけでございます。  一方、人事院におきましては、全体の奉仕着性というふうなものを考えます必要から、その共同研究公共性でございますとか研究体制が十分できているかどうかというふうなこと、それからその先生の職務との関連性などを検討した上で共同研究を行う施設についての指定を行うということでございまして、研究内容の適否の判断ということではないというふうに思っているわけでござ います。  そういう意味で、大学の自主性を十分守った上でこの制度の運用が行われますように、今後とも、我々、制度につきましては整備を図ってまいると同時に、大学等に対しましてもその趣旨の十分な徹底を図ってまいりたいと思っております。
  35. 肥田美代子

    ○肥田委員 お話によりますと、共同研究内容については文部省は関知しないけれども大学の学内審査会で審査するということですね。そうしますと、その学内審査会が形骸化したり権威主義になってしまいますと、本当に国民に信頼されます立派な研究ができなくなるということもございます。例えば今、悪い例と言うのはちょっと失礼なんですけれども、治験審査会がかなりいろいろな批判を受けておりますけれども、そういうことにならないように、学内審査会をよりすばらしいものにするために何か方策をお考えでいらっしゃいますか。
  36. 林田英樹

    林田政府委員 先生、治験の例についてお話がございましたけれども、これにつきましてはいろいろな御批判といいますか、新聞記事になるようなケースもあったわけでございますけれども文部省も、厚生省、関係省庁とも相談をいたしまして、治験の制度につきましては、従来の制度については必ずしも十分ではなかった面があるということで、もう少し大学全体としてオープンな形で受け入れるように制度を改めまして、治験につきましてのいろいろなケースが、問題あるようなケースが出ないような措置を工夫をいたしたところでもございます。  したがいまして、大学におきましてそれぞれ適切な審査を行い、また、共同研究等を行う際にはその経費につきましては大学の経理をきちっと通して共同研究を進めていただくというようなことがそのとおり行われますならば、私どもとしては今後大きな心配というようなことはそう生じないのではないかとは思っておりますけれども、しかし、大学に対しましてはいろいろな工夫をしていただきまして、この共同研究が適切に、かつまた、対外的にも共同研究実施状況等についてできるだけプライバシーにも配慮しながら可能な限りの公表も図ってほしいというようなこともお願いをしておるわけでございますけれども、これらの努力をいたしながら共同研究について遺漏のないように努力してまいりたいと思っております。
  37. 肥田美代子

    ○肥田委員 産学共同研究はプラス面が多い反面、やはり学と官の癒着による不祥事が起きることも否定できないことでございます。そうした不祥事をどのようにして防止しようと思っていらっしゃるか。今、情報公開についてもお話しくださいましたけれども、ほかに何かございますか。
  38. 林田英樹

    林田政府委員 この点につきましては、今も申しましたような情報公開というようなこと、それから大学におきます審査を適切にやっていただくということが一番の基本であろうかと思っております。  従来、確かに、大学におきます産学協力のケースでいろいろな問題を指摘を受けましたケースは、先生先ほどお話しございました治験のケースと、それからもう一つは、こういう学内手続を経ないで兼職、兼業等が行われていたというようなケースが幾つか目についたわけでございますので、私ども、先ほど申しましたように、治験等につきまして制度をきちっと整備をしていく、実態にできるだけ近づけていって問題の生じないような制度の整備を図っていきますと同時に、それらをきちっとそれぞれの大学の中でしかるべき組織をつくっていただきまして、御審査をいただいた上で進めていただければ、私どもは、大学としてそう大きな遺漏が出るというようなことはそうはないんではないかというように思っているわけでございますけれども、しかし、今後とも懸念のないように、実態を見ながら引き続きの努力をしていかなければならないと思っております。
  39. 肥田美代子

    ○肥田委員 ぜひ御努力いただきたいと思います。  大人が悪いことに手を出す時代を反映しましてか、報道されておりますように、子供たちもやはり今薬物に手を出し始めております。薬物依存については、国際的にはほぼアディクション、要するに病的依存者、そういう理解をしておりまして、このアディクションというのは飢えや渇きをいやそうとするもの、そういうふうに訳されております。それが一応共通語となっておりますけれども、日本におきましては、司法の場合には犯罪になっております。  それで、文部省と厚生省にお聞きしたいんですけれども、それぞれ薬物依存はどういうふうに理解していらっしゃいますか。
  40. 田中慶司

    田中説明員 WHOの疾病分類によりますと「薬物の依存症」という項目がございまして、薬物の使用により依存症状を示した場合には、年齢にかかわらず「薬物依存症」とされておりまして、日本においても疾病としての施策が行われているところでございます。  薬物依存症につきましては、入院治療が必要な者にありましては精神病院において適正な医療を行うこととしておりますし、また、入院治療は必要としない者にありましては、外来治療を行いまして社会復帰訓練なども実施し、さらに生活訓練施設社会復帰施設において日常生活訓練等が行われているところでございます。
  41. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省におきましても厚生省と同様に理解をしておるところでございます。
  42. 肥田美代子

    ○肥田委員 文部省はどういうふうに定義されていらっしゃいますか。同じというのは疾病ということですか。疾病でいいんですか、文部省の理解は。
  43. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省におきましても、先ほどお答え申しましたとおり、厚生省と同様な理解に立って施策を進めておるところでございます。
  44. 肥田美代子

    ○肥田委員 施策をお聞きしているんじゃなくて、司法の方ではこれは犯罪と言っているわけですね。厚生省の方ではこれは疾病または精神障害というふうに多分おっしゃると思いますけれども文部省はいかがですかというふうにお聞きしているんです。
  45. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省におきましても、薬物の使用により依存症状を示した場合には薬物依存症とされており、疾病としての御施策が行われているところでございまして、文部省もそれに対応した考え方をとっておるところでございます。
  46. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、文部省と厚生省、全く同じ考えでもってこの薬物依存症については対応していってくださるという理解でよろしいですね。
  47. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 さようでございます。
  48. 肥田美代子

    ○肥田委員 それは大変ありがたいことでございます。  それで、文部省と厚生省は連携してこれからどういう対策をとろうと思っていらっしゃるか、その辺をお聞きしたいと思います。
  49. 田中慶司

    田中説明員 厚生省から説明申し上げます。  厚生省の薬物依存症に対する対策はいろいろなものがございまして、具体的には、例えば国立の医療施設あるいは県立の医療施設、こういうようなところで医療を行うとともに社会復帰のための施策を行うというようなことが一つございますし、また、薬物依存症に対する専門的な従事者、こういう方々に対する研修というようなこともやっているところでございます。また、薬物依存症に関します研究というようなこともしておりますし、地域におきましては、例えば保健所におきましてさまざまな相談指導を行うというようなこともしているところでございます。
  50. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省におきましては、薬物乱用防止に関する指導といたしまして、健康の保持、増進という観点から、子供たち一人一人が薬物乱用と健康とのかかわりについて理解し、みずからの心身を害する行為をしないという態度や習慣を身につけるように指導することが大切である、そういう観点に立って施策を講じておるところでございます。  具体的には、教科、保健体育における指導あるいは道徳、特別活動における指導など、学校教育全体の指導の中で薬物乱用の危険性、有害性を的確に認識させる、そういう観点からの指導をして おるところでございまして、平成九年度予算におきましては、高校生用ビデオ、中高校生用パンフレットの作成、配付、小中高学校の薬物乱用防止担当教員等を対象にした研修会の開催などを考えておるところでございます。  また、これらの教材の作成だとか、あるいは研修会での指導に当たりましては、子供実情に即したものであることが必要である、そういう観点に立って、その参考とするために子供の意識調査をしたい。すなわち、無作為抽出により、全国の小中高校生を対象として、児童生徒の覚せい剤等の薬物に対する意識調査を実施をしたいと考えておるところでございまして、今後とも、厚生省等関係機関と密接な連携を図りながら、必要な施策を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  51. 肥田美代子

    ○肥田委員 ところで大臣、学齢期の子供たちが薬物に汚染される原因はどこにあるとお考えですか。
  52. 小杉隆

    小杉国務大臣 これは、薬物が簡単に手に入るという社会的な状況があると思いますし、それから、薬物を使うことの罪悪感とかモラルの欠如、こういうことがあろうかと思います。
  53. 肥田美代子

    ○肥田委員 私は、それに加えまして、やはり子供たちが友達がないこと、もう一つは自分を大切に思う意識が大変低いという、その二つをつけ加えさせていただきたいのですけれども大臣、どうお考えでしょう。     〔委員長退席、河村(建)委員長代理着席〕
  54. 小杉隆

    小杉国務大臣 もちろんそういう要素もあろうかと思いますが、私はそこまで深く研究したことがありませんので。そういうことも十分考えられると思いますので、なお私ども研究してみたいと思っております。
  55. 肥田美代子

    ○肥田委員 先ほど文部省の方は、調査に入るとおっしゃいましたけれども、既に警察庁少年課の方では調査を実施しておりますね。文部省の独自調査が少し遅いように思うのですけれども、感想として、そうお考えになりませんか。
  56. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 最近の子供たちの薬物乱用の実態を見ますと、いわゆるファッション感覚での使用とか、あるいは遊び感覚での使用等が指摘をされておるわけでございます。  今後、児童生徒により効果的な指導を行う、そして、みずからの意識として、薬物乱用の危険性なり有害性なり、あるいは薬物を使用しないという態度をきちんと身につけさせるためには、子供たちがどのような意識を薬物について持っているかということについて正確に把握をしておく必要がある。そういう観点に立って今回の調査を実施することとしておるところでございまして、早急にこれを行って、広く公開をし、関係機関と連携をとりつつ今後の指導に役立ててまいりたいと考えておるところでございます。
  57. 肥田美代子

    ○肥田委員 感想としては少し長い御感想をいただいたようですけれども、私は先ほど、厚生省と文部省の薬物依存に関する見解が同じでありがたいと申しましたけれども、あれは、実は私は心の中で全く反対でございまして、薬物依存は病気じゃないと思うのですね。やはり世界が認識しているように、心の渇きをいやす自分自身の行動である、そういうふうに考えていただかないと、病気である、だから病院に入れてしまえばいい、そういうことでは私は子供たちは救われないと思うのです。  それで、実はきのう厚生省にお尋ねしました。アメリカの状況について、どのくらいリハビリの場所があって、どうなっているのかということをお尋ねしたのですけれども、厚生省から来たのは、ある学者さんの論文のコピーだけでございました。厚生省はアメリカの状況についてどういうふうに把握していらっしゃいますか。
  58. 田中慶司

    田中説明員 アメリカの薬物中毒患者さんの社会復帰のための施策につきましては、十分把握しておりません。
  59. 肥田美代子

    ○肥田委員 これは今大変な社会問題でございまして、厚生省さんが本気になってやってくださらないと、恐らく、これは時間がどんどん過ぎていく、そして子供たちの薬物汚染はどんどん広がる。ところが、一回薬物に手を染めた子供たちを完治することは本当に難しいのですね。特に若年で薬物に手を染めますと、それが一生治らないというケースもあるわけでございますから、何とか厚生省さんに頑張っていただきたいと私は思います。これはまさに緊急な課題だと思っております。  もっと文部省も積極的に、確かに先ほど、教育の中で進めていくための予算も入っているというふうにおっしゃいましたけれども、ただ、そうやって教育する、したからそれでいいというのじゃなくて、子供たちがもし薬物汚染にかかったらどうやって救うのかというところまでやはり文部省さんはきちっと対応していただかないと、子供たちに寄り添うべき文部省としての役目が本当に果たせないと私は思うのです。  ですから、もしことしの予算でできなければ来年で結構でございます。しっかりした薬物汚染に対する対策を立てていただきたいし、子供たちを何とか救うように国が動き出してくださるよう、文部大臣お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  60. 小杉隆

    小杉国務大臣 文部大臣として何ができるかというのはおのずから限界があろうかと思いますが、先ほどから体育局長がお答えしておりますように、学校教育の場でしっかり、薬物乱用の恐ろしさとか、あるいは有害性というものを教えるということがまず大事だと思います。  そのために今年度予算で、中高生用のパンフレットをつくったり、高校生用のビデオをつくったり、また、指導する教官のためのいろいろ研修会、こういうものを予定しております。  それから、学校教育の場以外のところとの連携ということも大事でございまして、社会あるいは家庭あるいは関係団体、こういうところとの連携というものが重要だろうと思います。そういうことで、今、警察のそういう担当官とか、あるいは厚生省の関係の麻薬取締官のOBの方を呼んで連携を図るというようなこと、いろいろありますけれども、今回、新たに意識調査をやるということになったわけですが、これも一つの抑止効果を和は期待できると思っております。また、今委員が御指摘の、薬物乱用の深刻さというものは私も同じ認識でございますので、今後とも、厚生省とか関係の機関とも十分連携をとって、学校教育として何をすべきか、何ができるか、それを模索して精いっぱいの努力をしたいと考えております。
  61. 肥田美代子

    ○肥田委員 文部大臣のお答え、半分だけ感謝申し上げます。あとの半分でございますが、やはりかかった子供は厚生省に預けてしまっていいのかどうかというところなんですね、心配するのは。もちろん省庁の縦割りのお仕事もございますけれども、かかってしまいましても、やはり文部省がかかわった子供でございますから、その辺を、後のリハビリ施設について、もう少し厚生省と今後きちっとやっていただきたい、  先ほど厚生省からお話がありました、既に十年日本の先を行っておりますアメリカの状況について、そしてアメリカのリハビリ施設の状況について厚生省が何にも勉強していらっしゃらない。もしあれが正直なお答えだとしたら私は大変心配になりますので、文部大臣、厚生省としっかりと手を握ってやっていただきたいので、最後にそれだけもう一度御答弁をお願いして、私の質問を終わります。
  62. 小杉隆

    小杉国務大臣 文部省としてやっていることは、主として予防という面だと思います。一回そういう薬物に手を染めた子供のアフターケアとかそういうものをどうするかというのは、これは文部省だけでできることではありません。今、総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部というのをつくりまして、文部大臣も副本部長に入っておりますから、これはひとつ政府全体として取り組むように、文部大臣としても副本部長としてしっかり取り組んでいきたいと思っております。
  63. 肥田美代子

    ○肥田委員 ありがとうございます。
  64. 河村建夫

    ○河村(建)委員長代理 次に、石井郁子君。
  65. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  教育公務員特例法の一部を改正する今回の改正案についてでございますけれども大学などの教員休職して民間や他の研究機関で研究する場合、退職手当の算出期間からその休職期間を除算しないというのは当然だというふうに思います。  そこで、民間との共同研究制度というのが始まりまして大分になるかと思いますが、一九八三年でしょうか、この間に、国立大学における民間との共同研究はどのくらいの実績を持っているのか。また、その間に、国立大学教員休職して民間研究したのはどのくらいか、その件数をお尋ねしたいと思います。
  66. 林田英樹

    林田政府委員 昭和五十八年度から実施いたしました現在の民間等との共同研究制度でございますけれども、この十年間の実績を見てみますと、昭和で申しますと、昭和六十一年度の数が件数で申しまして二百七十二件ということでございます。これが平成七年度までの十年間でどうなっているかと申しますと、件数にいたしまして千七百四件ということでござます。十年間で約六・三倍の件数ということでございます。  それから、この民間等との研究制度によりまして国立大学先生休職していらっしゃったというケースは、今までのところないわけでございます。
  67. 石井郁子

    石井(郁)委員 今の数字は十年分でございましたけれども、五十八年度からというふうに考えますと、五十八年度は五十六件ですから、約三十倍という大変なふえようだと思うのですね。だから、民間との共同研究というのはこういう形で相当進んでいるというふうに言っていいかと思うのですが、しかし一方で、休職してまで民間に行こうという国立大学教員は全くいない、こういう点について文部省としてはどのようにお考えなんでしょう。
  68. 林田英樹

    林田政府委員 これは、今お願いをいたしております、休職して民間等へ行った場合につきましては、退職手当につきまして、その期間が二分の一にしか算定されないという点は、実際、共同研究をされようという方々にとってはやはり一つ制約であったのではなかろうかというふうに思います。  そういう意味で、この制度改善をされますと、実際、共同研究休職して行っていただける方もこれから考えられるのではないかというふうに考えているところでございます。
  69. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、もう少し文部省としていろいろ実態をつかんでいらっしゃるかというふうに思ったのですけれども。確かに退職手当不利益というか、そういうことはやはり一つの要因がというふうに思いますけれども、しかしこれが正されて進むかというと、そう単純ではないように思うのですね。  今、国立大学、この後もいろいろ議論になると思うのですけれども、いろいろな施設の問題等々の中で、しかし、世界的に見てもやはり有数の研究水準を上げているという実態もあるわけであります。また学生の指導、それから、この間特に大学院生が急激にふえましたね。やはりその指導等々はもう本当に大変な実態だということを伺うわけです。  さらに、この間、先端科学などには文部省としても随分予算措置も言って、つけてきたのじゃないかというふうに思うのです。だから、大学先生が、そういう大学の中からあえて民間等、つまり企業に出向いて研究しなければならない、こういう認識を大学教員自身がやはりどのようにされているのかということを文部省としてどうつかんでいるかという問題を一点。  それから、文部省として、あるいは政府として、今後こういう方向をやはり奨励するのかなというふうに思うのですね。その場合に、共同研究をするようにとか、あるいは教員休職させて派遣をするというようなことについて、文部省として各大学大学教員にいわば押しつけになるようなことがないのかどうかという二点、ちょっと伺いたいと思います。
  70. 林田英樹

    林田政府委員 確かに、これまで国立大学先生休職でいらっしゃったケースがないというのは、今私が申し上げました理由だけではなくて、やはり大学全体として、ないしは社会全体として、産学協力に対しまして必ずしも現在ほど積極的な受けとめが十分醸成されていたかどうかというようなことも関係があろうかというふうに思います。  しかし、現在、日本全体の中で、例えば科学技術基本計画に示されておりますように、産学連携協力を進めることが、日本の社会全体にとっても、また大学研究活性化の意味でも大変有意義であるというような認識が大変深まってきているわけであろうと思うわけでございます。  実際、このような退職金についての特例制度は、実は各省庁の国立研究所につきましては既に制度が発足いたしておりまして、その実例を見てみますと、約十年間の間に五十人程度の休職でいらっしゃった例があるというようなことでもございます。  それから、私ども、この法律案を準備いたしますに際しまして、国立大学先生方産学協力についてのいろいろな実績のある方々、全体ではございませんけれども、意向聴取をいたしますと、三けたぐらいの百人近くからの関心が示されたというようなこともあるわけでございますので、このような制度を進めていただきますれば一定の前進が見られるであろうというふうに感じているわけでございます。  それから、二番目の御質問の、国立大学先生方共同研究を積極的に参加するよう勧めるのではないかというふうな御指摘でございました。  今回の法改正は、今申しましたように、国立大学などが民間から寄せられる要望に適切に対応すると同時に、学術研究社会的協力連携を深めていくことが、大学社会全体にとっても有益であるという考え方から、休職して民間などとの共同研究に専念する場合の障害を取り除くというのが目的お願いをしているわけでございます。大学におきます学術研究は、研究者の自由闊達な発想と研究意欲、高度な研究能力を源泉として展開されることによって初めてすぐれた成果を期待できるものと考えておりますので、今後とも民間等との共同研究等々の推進に当たっては、大学の主体性を確保しつつ進めてまいりたいと思っております。
  71. 石井郁子

    石井(郁)委員 文部省として、教員の意に反して押しつけることはないということをひとつはっきり言明していただきたいというふうに思ったわけですけれども、今回の問題は、民間から大学へ来ている、その共同研究というのはもう千七百件を超えている、相当進んでいるということですが、いわば国立大学の方から教員民間に出向いて研究をするということをどう考えるかという問題だと思うのですね。  私は、この問題でいえば、やはり今特定企業研究に従事するという問題が公務員としてどうあるべきかということがかかわってくると思いますし、それから、最近、企業との癒着の問題は、いろいろ薬害エイズ等々を含めて大変な社会問題にもなっているときでもありますので、やはり公務員としてのそういう特定企業との共同研究ということについてはいろいろな条件あるいは手続等があるべきだというふうに思うのですね。その点も一つ伺いたいというふうに思います。
  72. 林田英樹

    林田政府委員 国立大学などの教員共同研究などに従事するために休職処分を受けた場合でも、休職者は、職務従事を前提とする服務規制、要するに職務に専念する義務というものは受けないわけでございますけれども、それ以外の、公務員としての地位を前提とする服務規制、例えば政治的行為の制限等というようなものにつきましては適用されるわけでございまして、全体の奉仕着性を担保することは大事なことだと私どもも思っているわけでございます。  このために、現在既に行われております他省庁の国立試験研究機関の研究者共同研究休職承認に際しましては、その共同研究などについて、公共性でございますとか研究体制、さらには職務との関連性などを検討いたしまして、全体の奉仕着性を担保するというふうにされているわけでございます。国立大学等につきましても、今後同様の手続が整えられるということになろうかと思います。  また、国立大学等教員企業との研究協力に当たりましては、勤務時間の厳正な管理に留意しつつ、学内に審査会を設けるなど適切な手続を経ますとともに、大学などとして、共同研究のテーマでございますとか研究協力先、外部資金の受け入れ状況、研究成果の公表など、共同研究の実態を、個人情報の保護に配慮しつつ開示するなどの透明性を確保する工夫が必要である、こう考えておりまして、今後国立大学などを指導してまいりたいと思っております。
  73. 石井郁子

    石井(郁)委員 そのような方向でぜひ進めていただきたいと思うのです。  もう一点、研究の成果などについても、国民利用できるようにやはり公開すべきだという、研究の成果の面もちょっと伺っておきたいというふうに思います。
  74. 林田英樹

    林田政府委員 大学が行います学術研究の一環でございますので、原則としては、その成果についての公表ということは、大学側として十分配慮しながら共同研究が進められるものと思っております。しかし、実際の研究の過程では、例えば特許をどう取るかというような場合には、発表と特許の申請のタイミングというようなことの制約ということは、共同研究いたします両者で十分お話しをいただきながら、適切な一定の配慮は必要だろうかと思っておりますけれども、基本は、何と申しましても大学学術研究としての成果の公開ということを原則として考えていただきたいと思っております。
  75. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、残りの時間で、東大駒場寮問題について伺います。  国と東大当局が一緒になって、駒場寮明け渡しを求める仮処分を申請しました。しかし、建物三棟のうち二棟を取り下げるということが先月二十五日ですね。国が申請したものを途中で取り下げるというのは大変異例だというふうに私は思いますし、大失態ではないかというふうに思います。  本来、このような大学問題というのは、学内の関係者大学自治に基づいて徹底して議論を尽くす、そして解決を図っていく問題だというふうに思うのです。それでこそ解決もできるというふうに思います。だから、今回の問題からしても、こういう道を外れると問題がこじれるということを改めて示したのではないかというふうに思うのです。  しかも、大変重大な問題があります。これは裁判所で大学当局が並べ立てた根拠でございますけれども、本当に言語道断、その内容たるや、最高学府の教育者の言動がというふうに疑わざるを得ないものであります。  私は、三点申し上げたいと思うのです。  一点は、駒場寮の跡につくるというキャンパスプラザ計画というのがございますけれども、その図面が正確に伝わっていないし、隠してきたということで、明察という一棟、ここだけにかかっていたものを、あたかも駒場寮全体にかかるものだというふうに言ってきた。  第二点は、そのキャンパスプラザの予算平成八年でついたわけですけれども、来年度繰り越しができないという形で、認められていたにもかかわらず年度内執行だということを言い続けて、年度を越すと返上しなければならないというふうに学生にも言い、主張してきたということであります。  第三点は、仮処分の執行費用が一億円以上もかかる。これはうそであります。こういうことを事もあろうに学部長名の文書で学生に提出をする。この点では、裁判所から注意もされているという事態ですよね。  だから、こういう根拠のないことをいわば重ねて、二棟について取り下げざるを得なくなったのではないかというふうに言えると思うのです。  ですから、北寮、中寮というこの二棟の明け渡しということの必要性や緊急性がなくなった、こういう新しい事態が今生じているわけですから、改めて学生との話し合いによって解決の道を開くということが今求められていると私は思うのですが、この点で、大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
  76. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 駒場寮の問題につきましては、種々の経緯がございまして、委員御承知のとおりでございます。  今もう既に建築後六十年がたっておるという、大変老朽化しておるということでございまして、一方において、三鷹に新しい寮をつくるということで、駒場寮に在籍している学生は、希望があればそちらの方に移っていた、だくということが一つ、それから、駒場寮を取り壊した跡におきましては課外活動用の施設等をつくって整備をしていく、こういうようなこととの関連の中で進められてきたわけでございます。  学生との話し合いという御指摘でございます。  大学当局から伺いますと、随分と、数百回にもわたって学生との話し合いを繰り返してきたということでございますが、なかなか問題の解決のめどが立たないということで仮処分の申請をしたということでございまして、今御指摘のように、その一部分につきまして仮処分の執行が認められたということでございます。  今後とも大学側として、問題解決に向けていろいろと努力するであろうと考えておるわけでございますが、私どもといたしましては、東京大学側の今後の努力を見守ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  77. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣の御答弁はちょっと後にいただきたいと思います。  関連して、では伺っておきますけれども大学当局は、駒場寮全体の廃寮の根拠にしている、何かCCCL計画というのがあるそうですけれども、これはきのうこういうパンフレットもいただきました。これは、キャンパスプラザ以外で、北寮、中寮にひっかかる建物の予算はついているのかどうか、あるいは概算要求として何か出されているのかどうか、お伺いします。
  78. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 いわゆるCCCL計画自体につきまして、東京大学といたしまして、平成三年に基本的な方向を決め、それを、駒場の教養学部の考え方に従って、東京大学全体といたしましてもその基本方針を了承したわけでございますが、それが平成三年でございます。その後、新駒場のキャンパス再開発計画と三鷹の新しい宿舎構想の具体化ということも受けまして、平成五年十二月に、CCCLと東京大学では言っておるわけでございますが、その計画が評議会において承認されたということでございます。これらのすべてにつきまして、文部省としてどうこうということではございませんで、課外活動用の施設ということにつきまして、東京大学の方から要求がございまして、それにつきまして所要の予算措置を講じよう、こういうことになったわけでございまして、CCCL計画といたしましては、さらに大きな計画になっておるわけでございます。
  79. 石井郁子

    石井(郁)委員 大変漠とした話なのですよね。  だから、平成三年から、全体の駒場の再建計画というか、そういうことがあるというのはそうなのでしょうけれども、何年度までに、ここがどうなのだ、だからここはどうなのだという形でのものは、学内合意も得ていないのではないですか、煮詰まっていないのではないでしょうか。にもかかわらず、今問題は、立ち退きだ、一方的に廃寮だ、そして年度内執行だ、こう言ってきた根拠が崩れたということは今の御答弁の中からも私は明らかだというふうに思うのですね。  それから、先ほどの局長の答弁の中では、学生との話し合いは数百回に及んだというのは、これは事実と違うと思います。私も三百何回かというふうには聞いておりますけれども、問題はやはり 話し合いの中身なんですよ。そして、廃寮ということを大学自治の構成員の一つである寮自治会あるいは学生の合意を得ることなしに当局が一方的に断行する。だからこそ、こういう裁判にまでもつれ込んだということになっているわけですから、私は、今のお話のように、時間が今ある、しかも北寮、中寮、二棟の明け渡しの処分を取り下げたという中では、まさに今こそ話し合いの時期だというふうに思うのです。  だから、その点で再度強調したいのですけれども一つは、この北寮、中寮について申し立てを取り下げたわけですから、法的措置にゆだねるということをきっぱり改める、こういう態度をとるべきだというふうに思います。そしてまた、話し合いの環境を促進するという点でも学生との信頼関係をぜひ回復してほしい、そして、それに努める、これが私は大学人としてあるいは教員としてやるべきことではないかというふうに思うのですね。     〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕  この点で、私は一点御紹介したいのですけれども、東大教養学部の学部長を務められた小出昭一郎先生がこの事態に対して東京地裁に陳述書を出されています。この中で、「教官と学生の信頼関係というのは、大学の傘ともいうべきものです。東京大学の今後数年、十数年の将来に大きな影響を及ぼします。」と述べていらっしゃるのですね。私は全文を読みたいぐらいですけれども、こういう内外の声に本当に今大学当局は答えるべきではないかというふうに思います。  そういう点で、具体的に私は申し上げたいのですけれども、残る二棟にはまだ百名近くの寮生が生活しておられる、そのガスや電気もストップする、こういう非人道的なことを大学当局はやってきているのですね。これはもう即刻解決する、生活をちゃんと保障する。こういう電気やガスの復旧などは直ちにできることではないのか。そういう話し合いの環境を整えて……
  80. 二田孝治

    二田委員長 石井委員に申し上げます。時間が超過しておりますので、よろしくお願いします。
  81. 石井郁子

    石井(郁)委員 ぜひ文部省としては、こういう点も了解されると思うのですけれども大臣のこの点での、最高学府にあるべき解決をいかにするべきかという点で御所見を伺っておきたいというふうに思います。
  82. 小杉隆

    小杉国務大臣 この問題はまさに石井委員が所属しておられる政党が常に言っておられる大学の自治の問題でありまして、学校施設の管理権というのは大学にあるわけでございます。しかも、話し合いを数百回やって、やむなく司法手続に依存せざるを得なかったという経過があるわけでありますから、私どもとしては今後とも大学当局の努力を見守っていきたい、そういうスタンスであります。
  83. 石井郁子

    石井(郁)委員 終わります。
  84. 二田孝治

  85. 保坂展人

    保坂委員 社民党の保坂展人です。  今回の法案を見ながらいろいろまた資料を取り寄せて考えてみたのですけれども、まず、バブル経済が終わって企業の収益力が落ちてきたということで、基礎的な研究の部分についてそれほどの研究体制を構築することが難しくなった、大学に内在している知的な集積とジョイントをして、いわゆる産学提携という形で活路を開いていきたい、また大学も閉鎖的な研究環境から民間刺激を受けるというところに趣旨があろうかと思うのですが、この問題を考えていったときに、どうしても頭をよぎるのが、水俣病に代表されるようないわゆる企業の光の部分ではない影の部分なんですね。企業は利益を追求するということが基本の性格でありまして、水俣病の問題というのは過去の問題であって現在の問題ではないというふうに残念ながら言えないところが昨今の薬害エイズ問題であるとかということで明らかになってきているわけです。それこそ学問とは何か、医学とは何かということを厳しく問われてきたばかりだと思います。  こうした中で、企業は市場原理に従って動いています。そして開発、厳しい競争の環境の中で、市場原理と呼応しながら開発や研究現場があろうかと思いますが、小杉大臣、本当に私よりずっとお詳しいと思いますが、地球上の人口増加、エネルギーの問題等々で、市場原理を抑制する倫理あるいは市場原理を相対化する技術、発想というものが同時に地球的規模では求められてきている時代ではないかと思います。そういう意味では、こういった点について例えば資料研究を蓄積しているのは必ずしも企業じゃなくて、国際的にはNGO、つまり非政府組織、民間団体の中で研究所があったりあるいは個別の研究者がいたりという中で、環境や人権あるいは消費者保護というような問題についてたび重なる実践があろうかと思うのです。  今回、国立大学先生あるいは高専の先生がみずからの場を離れて共同研究を組むことができるという趣旨なんですが、その中に「民間」というふうに書かれているのですが、民間イコール民間企業なのか、民間の中に民間団体、つまりNGOというものが包括されているのか、小杉大臣の御見解を伺いたいと思います。
  86. 林田英樹

    林田政府委員 制度的な点についてちょっと御説明をさせていただきたいと思います。  今回の法改正趣旨は、国立大学などが民間から寄せられる要望に適切に対応いたしまして、学術研究社会的協力連携を深めていくということでございます。そのことがまた我が国全体としての発展にもつながっていくであろうということでございますので、この相手先につきましては、人事院等とも協議をいたしまして、大学の教官が従事するにふさわしい公共的な性格を持っているものというような形でございますので、今回の制度で想定しておりますのは、企業等の研究所、さらには地方公共団体というようなものを考えているわけでございまして、NGOというようなものを想定はしていないところでございます。
  87. 保坂展人

  88. 小杉隆

    小杉国務大臣 今の局長の答弁のとおりだと考えます。
  89. 保坂展人

    保坂委員 実は、民間企業の市場原理に即した活動ももちろん大事なんですが、同時に、やはりトータルな地球的な視野でこれを抑制していくあるいはコントロールしていくという研究も大切かと思います。ですから、ぜひそういうところへも道を開いていただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。  次に、この法律国立大学と高専の先生を対象にしていると思います。しかしながら、子供たちにとって身近な小中学校あるいは高校先生というのが入ってないわけです。  私自身の友人の中に、これは今お話しした国際NGO、例えばタイでエイズが大変な勢いで広がっているという中で、予防教育を山岳民族の中に入っていってやろうとか、あるいは既にもうエイズに感染をした方たちのホスピスの運営についてお手伝いをしようという国際NGO活動というのは、御存じのとおりこの十年で大変発展をいたしました。日本のNGOも世界のあちこちで活動しております。こういった場に小学校あるいは中学校高校先生が参加をしようとしたときに、私が知るところによれば、現行制度上はなかなか無理で、学校をやめて、退職をしてそこに参加をするというふうにやむなくされている方が多いわけです。これは非常にもったいないことではないか。確かに、夏休みを使って一週間とか十日行ってくるということは現在もできるわけですけれども、本当にその現場に肉薄した体験を積むには、一年あるいは二年、三年という期間が必要かと思います。  こういった小中学校あるいは高校先生が国際協力活動に参加をする、民間NGOに参加をするということは、制度上これは可能になっているのでしょうか、その点伺いたいと思います。
  90. 小林敬治

    小林(敬)政府委員 今お尋ねの海外でボランティア活動等でかなり長期の活動をするというようなケースを念頭に置きました際に、制度としてございますのは、いわゆる派遣法に基づく派遣があ るわけでございます。これは、JICAにいろいろお世話をいただきまして、外国の地方公共団体の機関等に派遣される一般職の地方公務員の処遇等に関する法律によりまして、職員を現職のまま外国の地方公共団体の機関等に派遣をすることができるということになっておりまして、現在、私どもの知るところでは、七年度に五十人程度青年海外協力隊に参加をしている。この場合には三年を超えることもあり得るというふうなことになっておりまして、かなり長くなっております。  それからもう一つ、これは別のケースでございますが、ことしの一月一日からスタートをいたしましたボランティア休暇制度というのがございます。これは、一年に五日の範囲内でボランティア活動に有林で参加できる、現在ボランティアの関係ではこの二つの制度があるというふうに私ども考えております。
  91. 保坂展人

    保坂委員 今の点で、確かにボランティア休暇はあるのですが、五日ということでは、私のお話しした趣旨にはなかなかそぐわないのではないかと思います。  それから、青年海外協力隊に五十何人参加されていらっしゃるということなのですが、民間NGOはさまざまな、歴史の浅い団体も大規模な活動をするようになってきていますが、この点について、そういう海外の、大事な命を支える活動を現場教員がして、そしてその新鮮な体験を教室に、子供たちに持ち帰るということは大変大事だと思うのですが、小杉大臣の御見解を。
  92. 小杉隆

    小杉国務大臣 教員がそういったボランティア活動を通じて柔軟な幅広い発想ができるようになること、あるいは交友関係が広まるということは非常に有意義なことだと思います。ただ、ボランティア休暇制度というのはことしの一月から始まったばかりでありまして、私は、そういう実態をもうちょっと精査というか調べまして、今後さらに発展させるにはどうしたらいいのか、そういうことも考えてみたいと思います。  ただ、制度的には、今局長から答えたように、JICAを通じて海外に休職をして派遣するという道も、派遣法というのがありますから、そういうことも全部総合して、今後教員のボランティア活動に対してどういう方途があるか、これから研究していきたいと思っております。
  93. 保坂展人

    保坂委員 さて、先週三月二十七日に、参議院議員の萱野さんも原告になっておられて、もう一人、貝沢さんという方で、いわゆる二風谷ダムというダムがございますけれども、このダムの土地そのものがアイヌ民族の聖地であったということで、これの土地収用委員会の裁決取り消し訴訟というのがあったわけですね。  この判決があったということをきっかけに、先週、私、北海道に飛んで、アイヌ民族のウタリ協会の笹村理事長のもとにお訪ねをして、さまざまこの問題をお聞きをしてきました。と申しますのは、今たまたま興味を持ったということではなくて、十年前に私は、アイヌの五十人の、これはもう旭川からあるいは十勝から阿寒からさまざまなところに住んでいらっしゃる方たちで文化的ないろいろな活発な活動をされている方たちにお願いをして沖縄を訪れていただくという、沖縄とアイヌ民族の南北文化交流ということをお手伝いした経験がございまして、その中でさまざまな生活面のお話を伺った記憶があるのですね。  例えば、先週その笹村理事長から伺ったのは、北海道に最初に学校ができた、学校ができたところ、それこそアイヌの子は入れない学校で、アイヌの子たちだけは別の学校に入れられたそうですね。そして昭和六年ぐらいに学校が統合されて一緒に教育を受けることになったのだけれども、アイヌの子供たちは六十人のクラスの中の二十人ぐらいで、廊下の一番暗いところに置かれていたということで、これは差別は大変でしたよというお話を伺って、改めてその歴史を思ったわけです。  先週出た判決では、これは「少数民族が先住民族である場合、民族固有の文化享有権の保障は、より一層の配慮が求められる」そして「えてして多数民族は多数であるが故に少数民族の利益を無視ないし忘れがちだ。他民族の人々は、あれこれ論ずることなく謙虚に敬意を払う必要がある。」ということで、二風谷ダムに関しては、もうこれはできてしまっているので、これを取り壊して原状回復しろというのは無理な話なので、これは退けたのですが、事実上、その判決の理由の中で、アイヌ民族の先住民族であるゆえんというのにはっきり触れた判決になっているわけです。  もう一点、これは長い時間かけて御苦労されたと思うのですけれども、昨年の四月に出たウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会の報告書がございます。この報告書の中にも、論議を重ねた結果、「アイヌの人々は当時の「和人」との関係において日本列島北部周辺、とりわけ我が国固有の領土である北海道に先住していたことは否定できないと考えられる。」というふうにおっしゃっているわけです。それからさらに、教科書で、東京書籍の「新編新しい社会科地図」というのをめくりますと、この中に「先住民族」という地図がございまして、これはエスキモーやアボリジニーあるいはマオリという人たちと同時に、北海道のアイヌというふうにきちっと記載がされている。さらに、北海道の基本計画素案、第三次北海道長期総合計画の中には、「本道の先住民族であるアイヌの人たちは、」 というふうに始まっているわけなのですけれども、これは小杉文部大臣、アイヌ民族が先住民族であるというふうな今御紹介した見解に対して、大臣の所感を伺いたいと思います。
  94. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 大臣に先立ちましてお答え申し上げます。  お話いろいろあったわけでございますけれども、私どもといたしましても、アイヌの方々が北海道に先住しておられたということは十分理解をしておるわけでございます。  そういったことを踏まえまして、アイヌの人たちの民族としての誇りが尊重される社会をつくろうではないかということがウタリ懇の報告にもあるわけでございまして、そういったことを主として踏まえまして、今回いわゆるアイヌ新法を御提案申し上げておるところでございます。これを踏まえまして、私どもといたしましても適切な施策を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  95. 小杉隆

    小杉国務大臣 私娼、詳しいことはよくわかりませんが、まだ先住民族という言葉は定説にはなってないと承知しております。ただ、先住性については、懇談会の報告書でも記述されておりますように、先住性は認めるということは私は定説だと思っております。
  96. 保坂展人

    保坂委員 十年前にそういったアイヌの方々のそれぞれの場を訪れた印象からいうと、本当に時間が長くかかりましたけれども、つい先日、参議院で審議がもう既に始まっているということを大変強く感慨を持って受けとめて、さらにお聞きをしたいと思うのです。  先ほどの懇談会の中でも、言葉の問題というのがこれは強く書かれているわけなのです。これはちょっと簡略化して御紹介いたしますけれども、アイヌ語は独自の言語であり、民族としてのアイデンティティーの中核をなす、これがアイヌ語である。しかしながら、御存じのように、アイヌ語をきちっと話せる方というのも非常に高齢化されている、それから、これは月がたてばたつほど何らかの施策が講じられなければ本当に少なくなってしまうということの中で、まず指導者の育成が大事である、そしてよい教材をつくることも大事である、それから常設のアイヌ語講座をつくること、それから入門から指導者の育成までのトータルなプログラムを持つこと、これが本当に急がれるのではないかということを訴えているというか指摘されているわけですね。北海道に、北海道以外にも実は住んでおられるわけですけれども、アイヌ民族の方自身がみずから、まあ日本語で育ち、生まれ暮らしている人がほとんどなわけですけれども、もう一回アイヌ語を回復していきたい、獲得していきたいというときに、そういう機会をなるべく手厚くし、回復していくということが必要かと思います。  こういった中で、特に子供たちがアイヌ語を学んでいくということを、今回の新法の論議を経てより一層踏み込んだ形で、これまで決してアイヌ民族と——旧土人保護法という名前が現段階ではまだ残っているわけですから、ここらの歴史を反省をして、アイヌ語を学ぶ条件づくりということについて小杉文部大臣に伺いたい。
  97. 小杉隆

    小杉国務大臣 おっしゃるように、社会環境の変化でアイヌ語を話す人がもう激減している状況でございます。そこで、今御指摘のように、アイヌ語の普及あるいは指導者の育成というのは非常に重要だと思っております。  文部省としては、アイヌの伝統文化を継承するという観点から、北海道教育委員会がやっているアイヌ語教室というのがありますが、これに助成を行っているところであります。それから、今、国会へ提出されております新法がお認めいただければ、さらにアイヌ語の指導者の育成事業とかあるいはアイヌ語の上級講座等の普及事業に対して助成を行っていく予定にしております。
  98. 保坂展人

    保坂委員 言葉というのは本当に民族にとっては一番の存在の核なわけですけれども、このことをアイヌ民族の子供たちがきちっとつかみ取っていくには、やはり学校の場においてきちっとしたプログラムが構築をされていく、世界の例を見れば、少数民族、先住民族の言葉の学習というプログラムは他の国では行われている方向でございますけれども、日本において今回を機にそういったことをお考えになっていただけないだろうかということを重ねてお尋ねしたいと思います。
  99. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、子供さんたちも含めて、アイヌ語を伝承していくための北海道教育委員会等が実施しております教室があるわけでございまして、これはこれで私どもは力を入れておるわけでございます。  それから、お話ございましたように、学校教育の中でもそういったアイヌ語の学習なんかも取り入れたらどうかという意見、確かにあるわけでございます。これは、御承知のように、設置者とか各学校の判断によるところでございますけれども、今後、文化庁といたしましては、新しい法律をお認めいただきますということでございますれば、それに対してアイヌ語の普及啓発資料あるいは副読本の作成等を行いまして、アイヌ語学習が行われるように側面から支援をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  100. 保坂展人

    保坂委員 先週末、ウタリ協会の理事長にお尋ねをしましたところ、今言われた教室でも、子供たちが参加をすると本当に言葉をきちっと獲得をしていくんだというお話でした。ただ、その教室も数が限られていますし、身近な学校の中で、いろいろな形で制度的に難しい点は工夫をされて、やはりアイヌの子供たちがみずからの言葉を回復していくということを、文部大臣にどのようにお考えかをお尋ねしたいと思います。
  101. 小杉隆

    小杉国務大臣 だんだんアイヌ語を教える指導者が、もう確保するのが本当に難しくなっている現状というものがあります。しかし、やはり日本古来のこのアイヌというのは伝統であり文化であり、これを継承していくという観点は忘れてはいけないと。こういうことでいろいろ困難な状況の中で何をすべきか、何ができるか、そういうことを、新しい法律がもし成立した後、私たちも積極的にひとつ研究をし進めていきたいと考えております。
  102. 保坂展人

    保坂委員 ぜひこの議論、今国会の中でまた再度、再々度と本当に近代史の節目ということで位置づけて、新たな多民族共生の社会発展できるように願いながら、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  103. 二田孝治

    二田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  104. 二田孝治

    二田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付教育公務員特例法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 二田孝治

    二田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 二田孝治

    二田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  107. 二田孝治

    二田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十六分散会      ————◇—————