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池田国務大臣 まず最初に、私
どももしばしば
答弁しておりますように、今後国際情勢の変化があれば、それに対していかなる防衛政策、軍
事態勢が適正であるかは
日米間で
協議しようということになっております。しかしながら、それは短期的なあるいは表面的な変化にすぐに反応するとか対応するという話じゃございませんで、これは軍事の備えの、
安全保障の備えの問題でございますから、当然のことながら中長期的な趨勢というものをにらみながら
協議もし、またしかるべき対応もすべきものだということをまず申し上げたいと存じます。
さて、それにいたしましても、最近、北朝鮮の情勢が動いているではないか、あるいはそういったことに対して
日本がどういうふうに対処していくのかという御質問でございますが、確かに、北朝鮮、そして朝鮮半島をめぐる情勢に変化の兆しははっきり
見えていると
思います。しかし、それが本当の変化に結びつくのか、そうしてどの方向にということがまだ明確になっていないというのが私
どもの認識でございます。
まず、情勢をどう見ているかという点でございますけれ
ども、政治的には、御承知のとおり、先般来、黄書記の亡命事件であるとか、あるいは、軍部におきまして長老が相次いで死亡して、その後任がどうなるかといったことが注目される等々のいろいろな動きがございますけれ
ども、現時点におきまして、やはり政治全般の指導はいわゆる金正日書記が掌握している、こういうふうに見ているところでございます。
そうして、いわゆる金日成前主席の喪が明けるのがことしの七月であるから、その後、正式にきちんとした主席なりなんなりのポストにつくのかどうなのかということも、それはありますけれ
ども、ともかく、実態として金正日書記の指導という体制が整っております。
そして、軍事の方で申しますと、依然として地上兵力だけでも百万を超える兵力というものを維持し、そのかなりの
部分を軍事境界線のそばへ前方展開しているという状況でございます。厳しい情勢の中でも、やはりそちらに優先的な資源の配分をしているという
状態が続いております。そういった意味で、なお目を離せない情勢ではございます。
しかし、そういった政治状況あるいは軍
事態勢を支える経済的あるいは社会的な基盤がどうなのかということになりますと、これは非常に苦しい
状態にあるのだ、こう
思います。食糧事情、エネルギー事情が今非常に喧伝されておりますけれ
ども、経済全般を見ましても、少なくともここ数年間はマイナス成長になっているという
状態でございます。その中で、食糧につきましては、不足量が、いろいろな見方がございますけれ
ども、いずれにいたしましても、百万トンのけたの、オーダーの不足がある、こういうぐあいに言われている。エネルギーもそうでございます。
そういった情勢でございますので、北朝鮮といたしましても、当然のこととして、このままの行き方で将来にわたって安定した、あるいは強固な体制を維持できるとは思っていないのではないか、そういうことで、北朝鮮は北朝鮮としてのいろいろな道を模索しているというのが今の
状態だと
思います。
そういった中で、国際社会とのかかわりにつきましても変化の兆しが出てきております。
御承知のとおり、昨年の四月に米韓両国の大統領の共同提案されましたいわゆる四者
協議のプロセスでございますが、これはなかなか動かなかったわけでございますが、ここに参りまして事前説明が行われるというようなことで、少しこれが動くのではないのかなという様子も
見えてまいりました。そのほかにも、いわゆる核疑惑に対処する枠組みとしてつくられました、
我が国も参画しておりますKEDOのプロセスにつきましても、共同の調査団が今北朝鮮に入る、こういったこともあるわけでございます。
そういったふうに、北朝鮮も国際社会とのかかわりにおいても変化の兆しを見せておりますので、私
どもは、そういうことを注視しながら、米韓を初めとした各国ともよく連絡をとりながら、北朝鮮が国際社会との
関係でなるべくソフトな形で進んでいくような道へ、
日本としての果たせる役割は果たしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
そういった中で、
日本としての対応でございますね。KEDOについては御承知のとおりやっておりますが、食糧の問題、これについてどうかという具体的な御質問がございました。
食糧支援の問題については、WFPからの支援のアピールが出され、これに対しまして米国、韓国初め数カ国が既にそれに応ずる旨を明らかにしておりますし、
委員が先ほど御指摘になりました新たなるアピールも出されたわけでございますが、これは、ことしの四月一日から来年の三月三十一日までをカバーするものとして出されたわけでございます。これについて
我が国としてどういうふうに対応するかという点については、今いろいろな観点から総合的に勘案しながら、どうするか検討をしようとしているところでございます。
いろいろな観点、要素と申しますのは一体何があるかということでございますが、それは端的に申しまして、もとより国連は人道的な援助だ、こう言っておりますので、確かに食糧は窮迫しているし、人道的な観点から考えるということは、それは必要かもしれません。昨年までも、
我が国はそういったことで国連アピールに応じてきました。しかしながら、それと同時にほかの要因もいろいろ考えていかなくてはいけない。
人道と言われますならば、御承知のとおり、私
ども、北朝鮮との
関係では、やはり解明しなくてはいけない人道的な問題もございます。そういった問題が何ら進展をしないままに支援をするということに国民の皆様がどう考えているかということも、これは、直接結びつけないにしてもやはり考慮はしなくてはいけない
一つの要素でございます。それからさらに、国連アピールに応じただけで十分に食糧問題が解決されるとはとても思わないのですが、それを一体全体像としてどう考えるのかということも、
関係各国ともよく相談してみなくてはいけないと
思います。
それから、
我が国の場合には、北朝鮮との間に国交
関係がございません。そして正常化交渉も、御承知のとおり、例の李恩恵事件といいましょうか、あの疑惑の問題に絡んで中断されたままになっております。こちらの方は、その後も進展の兆しも
見えていないわけでございますね。そういった中で国民の皆様が一体どういうふうにお考えになるか、そういったいろいろな要素を勘案しながらやってまいりたい。
もとより、我々、人道的なアピールであるということをよく承知しておりますし、それから、朝鮮半島の安定という観点、これは
我が国の
安全保障の観点からも大切であるということも十分念頭に置きながら慎重に検討してまいりたい、こう考えている次第でございます。