○
本田忠勝君 私は
本田忠勝と申します。よろしくお願いします。
私は本書き屋ですから、台本をちょっと書いてきました。
意見陳述書なるものを書いてきました。十分しか時間がございませんので、読ませていただきますのでよろしくお願いいたします。
意見陳述に入る前に述べておきたいことが一つありまして、それは、通称
NPO法案の
審議が
国会で行われて、きょうのようなこうした
市民の
意見を直接聞く地方
公聴会を開いていただいたことに対して感謝したいと思います。いわゆる多様で膨大な量の
市民活動の主人公は
市民であり、その
市民による
市民のための
法案を検討するに際して、私
ども市民の
意見を
国会審議にぜひ反映させていただきたいと思っています。
なぜなら、通称
NPO法案は、
日本の民主主義の成熟度が推しはかられる重要な契機となっているからだと思います。
NPO法案は、民主主義国家の百年の計に当たるからこそ、単なる国家経営の戦術ではなくて、国際的にも通用する二十一世紀につながる新たな民主主義国家形成の戦略として位置づけて
審議していただきたいと思っております。
市民活動といっても、
福祉分野、教育分野、国際交流分野、環境問題の分野、医療の分野、
芸術文化分野、物すごい多様で、その質と様態は多面的です。阪神・淡路大震災や北陸の油流出事故などで
市民のさまざまな
ボランティア活動が進められる中で、
市民活動の
支援のための法的不備やシステムの不備、
税制上の不備などさまざまな矛盾が噴き出しました。通称
NPO法案がクローズアップされて、
国会で
審議されるようになったと思います。
もともと国内では、これまで多様な
市民活動が展開されてきました。
市民が生活点、いわゆる
地域を母体にしながら、例えば子供会、PTA、自治会、町内会、青年団
活動、婦人会
活動、老人会、私はほとんどやりました。老人はまだやっていませんけれ
ども、婦人会までやりました。そういうことがありまして、いわゆるこれは、今まででいきますと官に近いところでの
活動という批判もありますが、そういう
活動の上に、現在、
市民活動の幅と量が多様で膨らんできております。先ほ
ども申しましたように、分野が多様になっているということと、新しい質と様態の多様性が顕著になってきているというのが昨今ではないかと思います。そういう
意味では、
市民活動は新しい質と様態の多様性がもっと広がっていくだろうし、ふえてほしいと私は願っています。
もともと
市民活動は、
行政主導や統制管理のもとで進められるものではない、
市民の自主的で自発的な質の高い暮らしを求める
活動である、そう思います。既存の組織の
活動実態を分析すれば、恐らく
公益的性格を持っているものとわかるはずです。これらの、
市民による
市民のための
市民活動が一層発展できるようにするためには、
市民や企業の
寄附金控除の
税制が改革され、また優遇
税制を導入していただきたいと私は思っています。
税制優遇措置は、非
営利団体に対する
法人格付与に関する私
たちの要望の骨格をなすものです。
市民が元気になれば、国は絶対に元気になると思います。
市民が生き生き伸び伸びと、自分のために、また他者のために
活動できる条件をつくる上で、何を条文に入れるかということを慎重
審議していただけたらと考えております。
前置きがちょっと長くなりましたが、私は物書きですから、
芸術文化分野にいる者の視点から、非
営利団体に対する
法人格付与に関する
法律をつくっていただきたいという
立場で、今から陳述をしたいというふうに思います。
意見陳述する四項目は、
法案審議の骨格に多分当たると思います。順次述べたいと思います。
少し急ぎます。
第一には、
公益的概念についてということです。
芸術文化団体の多くは、
芸術文化の創造と普及を命題にしています。それらの
活動は、みずからの創造
活動を
市民に供することによってのみ存立します。何が
公益的なのかも各種の
市民活動のテーマです。あの芝居は
公益的で、この芝居は
公益的ではないとだれが判断するのかということです。それは、国家の司法府でも立法府でも
行政府でもないと思います。
市民活動そのものの命題であるというふうに思います。
NPO法案が民主主義国家の百年の計だから慎重
審議していただきたいと申し上げましたのは、
市民自治によって
公益概念を形成していこうという非
営利団体とその
活動、また
支援の
あり方を法制化しようという高い
段階の民主主義建設をしようとしているからです。ですから、
法案の中にわざわざ
市民活動はこれしか認めないといういわゆる枠組みをはめることは、
市民がそれぞれ固有の高い人間性や、高い創造性や、価値ある暮らしを求めようとしている
活動の手かせ足かせ以外の何物でもないと思います。
先ほど申しましたように、
市民活動の質と多様性は広いし、二十一世紀に向かってもっと広がると推定されます。
NPO法案は百年の大計だと私は思っています。
市民活動の多様性を認めるならば、分野の限定はすべきではないと考えております。
第二に、許認可
制度に関する
法律案の詳細についてです。
先ほ
ども述べましたように、許認可については、極力
準則主義に近づけるとか
認証にするとかということではなくて、
市民活動は
市民の自由と
自主性と自立性と積極性を基盤にして行われるものですから、これを国家が
支援するというのですから、
日本共産党の
法案にある
準則主義を貫き、登記登録による非営利
法人として
認知すべきだと思います。
諸
先生方も御存じだと思いますが、今、各地方自治体では、楽しくておもしろい
法案、すてきな
法案ができています。
文化振興条例という
法案です。その
法案というのは、物すごい緩やかな
法案でございます。でも、その中に書き込まれている条文には、
市民の
自主性、創造性を尊重すべきと記されています。
市民活動としての多様な
芸術文化活動は、
市民の自由と
自主性、自立性、積極性を基盤にして行われるものですから、それらの
活動を認めて、法的にコントロールをするということは矛盾します。矛盾したことを統一的に解決しなければいかぬわけですから、
市民の自由、
自主性、自発性を信じて、登記登録のみで
法人格の
付与をするのが一番よいと思います。
アメリカでは、
法人登記に関して、あなたの
団体は営利
法人を選びますか、非営利
法人を選びますかという設問で簡単に登記ができます。
日本に、お医者さんですが、一人
法人という
法人があるのです。いわゆる一人でも
法人ができるという
法律で、これはすてきだと思いますが、これが一人の芸人ができたら最高だと思います。
市民の自主的で自発的な行為を
支援する
法律なのですから、もっと緩やかな登記手続で非営利
法人資格を
付与していただきたいと思っています。これは懐の深い、言葉をかえて言うならば、高い
段階の民主主義的国家運営ということへの
期待だと思います。
「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」ということで、第十五期中央教育
審議会が次のように述べています。「子供
たちに「生きる力」を」、この言葉はたくさん出ています。その中で、「教育は、「自分さがしの旅」を扶ける営みとも言える。」という言葉があります。子供をこういう形で立派な理念で教育して、大人の
市民活動にもその理念を継続、発展させる必要があると思います。狭い
意味での教育の問題ではなくて、
市民の広い
意味での自己教育権を保障することを
意味します。
NPO法案というのは、
市民の質の高い暮らしをつくるための自分探しの旅、他人探しの旅を助け、その営みを
支援するものであると置きかえられると私は思います。その
意味では、
日本共産党の現行民法三十三条を根拠法にして非営利の
法人資格を与えるという視座、見方、条文は、とてもすぐれているというふうに思います。
三番目です。
非営利
法人の監督を行う非営利
法人委員会についてですが、これはとてもいいシステムだと思います。
市民活動の自由と
自主性と創造性を保障するために非営利
法人委員会を置いて、自治機関としてその役割を果たすことと解散命令などの司法機関による強権発動権を分離するということは、さきに申しましたように、
市民活動の自由と
自主性と創造性を保障する上でも、とても大切な第三者機関だと思います。
第四番目、
税制優遇
制度の明
文化についてです。
非
営利団体に対する
法人格の
付与に関する
法律案の条項は幾つかありますけれ
ども、非
営利団体の
法人格が欲しい、人格ある社団への
芸術文化団体の願いは切実です。非営利
法人格の
付与とともに、
税制優遇
制度の導入はこの
NPO法案の不可欠の条件だと思います。
私は、劇団に所属しています。劇団は、
市民に対して演劇を再生産、配給しなければなりません。そのために、新しい作品の制作ごとに一定の
お金を留保しなければなりません。仕込み費をつくるということですね。我が国の
税法では、この留保金を所得税としてとらえて課税します。この留保金は、劇団員や劇団
関係者が報酬の受け取りを辞退するということで生み出されているというのが
実態です。多くの劇団も営利
法人になっていますが、企業
活動における利益剰余金とは性質を異にします。しかし、今日の
税制ではその点が全く考慮されていないからこそ、非営利
法人の
税制優遇措置を私
たちは求めているのです。
劇団といえど国の
税法を受け入れざるを得ません。その場合、税務署に納税義務者を届けることになりますが、劇団代表者個人の事業として届け出れば、所得税がかけられます。その他の届け出方法として残された道は、
法人化の道しかありません。今、隣の方が言われましたように、
法人化には現在、人格なき社団、
公益法人、営利
法人の
三つの選択肢しかありません。人格なき社団というのは、社会的
信用性を欠いて、一般的には選択しない。また、
公益法人は、監督官庁の許認可が要り、特定の
団体にしか許可されない。劇団の
法人化への道が辛うじて許されたのが営利
法人でしかないということですね。
そういうことで、我が国の所得
税制というのは、高度累進課税構造を伴っている総合課
税制度ですから、劇団の創造、普及
活動を代表者個人の事業として届け出た場合は、給与その他の本人の所得と劇団利益が合算されて高率課税になります。そういう不利な取り扱いになります。
また、相続税については、僕が死んだ場合、劇団の事務所やけいこ場や照明、音響機材、すべての資産については個人
財産の一部として相続税をかけられる、これは大変なことになります。社会的
公益財としての劇団の存続にとっては、大変なことになります。
劇団は、事務所やけいこ場や道具製作場や保管倉庫、駐車場など、不動産が不可欠です。たとえそれらが賃借物件であっても、保証金や権利金が必要となります。また、公演の照明機材、音響機材、大道具やスタッフ、俳優を輸送するトラックやバスも必要となります。劇団の運営には多くの高額な資産が不可欠で、それらをひとり代表者の資産として所有することは不可能となります。劇団の規模が大きくなればなるほど、その不可能が高まっていくという矛盾が生まれます。劇団が芸術
活動の幅が広がって成長すればするほど、不可能の事態が深まっていくという矛盾にぶつかります。劇団として資産を購入する場合、
法人化しなければならないのは、その
意味から必然なのです。
資産に要する
資金とともに、劇団にとって、金融機関その他の債権者は必ず存在します。また、演劇
活動は片手間でなし遂げられるものではなく、専従者などへの給与、社会保障の生活保障が要求されます。このような債権者や利害
関係者にとって、組織の明確化は劇団として
信用するための
最低限の資格条件なのです。そういう
意味で、劇団は経済的メリットがあるから営利
法人を選択してきたのではない、芸術
団体として
市民権を得るための最低の必要条件としてつくってきたということをリアルに見ていただけたらというふうに思います。
時間がありませんので、はしょります。
消費税五%も重圧ですが、営利
法人の
法人税率は、剰余金八百万以下というのは四一・九%、それを超すと五五・九%となっております。非営利
法人の
活動を振興しようとしてこの
法案が検討されているわけですから、非営利
法人税率の軽減は不可欠な課題だと思います。
そのために、一つは、非営利
法人としての
法人税率を軽減することによって、
市民活動を活性化させる条件をつくっていただけたらと思います。二つには、非営利
法人に対する企業からの
寄附金の損金算入と、個人
寄附の場合は所得控除などの措置を講じていただきたい。非営利
法人制度で人格権は認めるけれ
ども、
税制度については人格なき社団のまま人格を認めないで据え置くというのは、非営利
法人制度そのものの活力を阻害するというふうに思います。その点、
日本共産
党案は、
芸術文化団体の非営利の
活動実態をシビアに見ておられます。ぜひ、非
営利団体に対する
法人格の
付与に関する
法律案には、
税制優遇
制度を条文に明
文化していただきたい。
最後になりますけれ
ども、
委員の
先生方には、今述べました争点、これは大きくは四項目ですが、この四項目というのはこの
法案の最低必要条件だということで、ぜひ慎重
審議をしていただけたらというふうに思います。私は、もしその四項目が
意見として組み入れられないとしたならば、慌てて
国会を通して百年の計に禍根を残すことはないというふうに思います。時間をかけてもよろしいというふうに思います。
もちろん私は、内閣
委員会の諸
先生方の高い見識をもって
審議していただいて、今
国会で可決されることを要望して、私の
意見陳述にしたいと思います。
ありがとうございました。