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山本(幸)
委員 全くの間違いでかかったという例はあるということですが、実は、この積みの最終日に積めないというのは大変なことになるというふうに民間の銀行では
理解されている。
そして
日本銀行は、結局基本的には、私が
最初に申し上げた式で物事を
考えながら、資金不足、資金需要というものを
考えながら、しかしその結果、
経済に大きな変動を与える。それはなぜかというと、マネーサプライの動きというよりは、短期市場金利水準というものを余り乱高下させたくないから。そして、積み最終日のときにその短期市場金利をどのレベルへ持っていくかを
日本銀行はどう
考えているかということによって
金融調節をやると言っているわけですね。
それがマクロの
経済運営としての
金融調節なんですが、実際の現場でこの積み最終旦広々が行われるときには、そんなきれいごとじゃない。かなり
日本銀行はこの積み最終日に——最終的には面倒を見るとしている。その最終的に面倒を見るとしていることが、実は
金融機関のマネーサプライの変動をまた大きくしていることにもなっているわけですけれ
ども、具体的に最後の積みをやるときにどんなことが起こるか。
日本銀行のやっていることというのを書いた本があるのですが、焼き鳥というのですね、そのときに積みをできそうになくなった場合。
最後の頼みの綱は
日銀貸出。
日銀から公定歩合で借りて、それを金利ゼロの積立金に充当するというのは、銀行の論理には反するが、ことここに至ってはそういうことは言っていられない。
もし積立が不足したら大変なことになる。頭取は
大蔵省に呼ばれて怒られる。あるいは、準備預金が不足した、その銀行に金がないということになって、公表されたら大変なことになる。経理
部長は当然首になる。役員は当然何らかの処分を受ける。通常は、最後には
日銀貸し出しをやるということがあるからみんな安心してやっているんだけれ
ども、
日銀は銀行をいじめようとしたら、ここで嫌がらせをやる。
実際にこの人が丁銀行という、これはどこか大体わかっていますが、焼き上げたことがあると。準備預金積み立ての期限の当日だというのに丁銀行は二百億円ほど不足していた。そして
金融市場はタイトになっていた。これはタイトでないとできませんね。コール市場ですぐ調達できるとこんなことは起こりませんけれ
ども、タイトになっていて、
日銀の担当者はもう資金調達ができないということをよく知っている。
普通なら、このくらいの資金は資金第一係の
判断で、すぐにでも
日銀貸出で不足分を充当させるのだが、その日は違っていた。係長が私のほうをちらちら見ながら、
「最近、焼き鳥の串もさびついちゃってるねえ」
などと、謎かけする。私も、
「そうですねえ、ここらで焼いときましょうか」
という。
条件はそろっている。
焼くといっても、実際には何もしないだけの
話。そうしていると、今度、担当者からは矢継ぎ早に電話が入る。場合によっては、
日銀のN支店に泣きついたのだろう、
日銀のN支店もやってくる。しかし、担当者はN支店には教えないで嫌がらせをやる。そして、一生懸命やるけれ
ども、やらない。とうとう最後に
局長さんのところに副頭取がやってくる。当然、営業局の総務
課長も同席している。
丁銀行の副頭取は本当に真っ青な顔をしてい
る。実は、この時の
局長は、前の
日銀総裁の三
重野さんだった。
「
局長さん、なんとか貸出を」
「そうですねえ。丁銀行さん。そういえば、ウ
チが送った副会長は元気ですか」そういう嫌がらせをやる。そして、たまりたまった要望というのをこの際全部のませて、それでもう最後の三時半過ぎぐらいにやっと受け入れてやる。こういうことが恐らく現場では日常的に行われている。非常に不明瞭で権力的で陰湿。
私は、こういう
日本銀行の
金融政策のやり方ではおかしい。まずマネーサプライということを
考えない、ハイパワードマネーの
コントロールということを
考えないのはおかしい。また、金利と言いながら、本当に金利の
コントロールをちゃんとやっているのかわからない、つまり名目金利だから。したがって、やることがあいまいになる。しかも現実的には非常に陰湿なやり方でやる。
こういうのを一挙に解決するためには、やはり
日本銀行の
金融調整のやり方を制度的に変えなければいけない。これを変えて、ハイパワードマネーを
コントロールしやすいようにするためには、
日銀は最終的に面倒を見なければならないということがあるからできないと言っているのですが、それは準備預金の積み方の方式にも問題がある。アメリカがやっているように、最終的に
日本銀行は面倒を見ることもないよということを、もう
原則的に決めてしまえばいい。そうすると、銀行は余剰準備を持つようになる。しかも、余剰準備を持ったものを次の期に繰り越しを認めたりする。あるいは積み立て方式を、
日銀は、預金が決まっちゃってその後積みだからそれを受けざるを得ませんという言い方をするので、これを同時に積むというように、アメリカがやっているような形でやれば、この準備預金の需要曲線というのも弾力的になってくる。弾力的になってくれば、ハイパワードマネーと短期金利の
関係がはっきりわかって、
日銀が貸し出す準備、それでマネーサプライを
コントロールすることができる。
そして、
日銀がハイパワードマネーを
コントロールするのは問題だと言っているのは、貨幣乗数が大きく動くということが一つの根拠になっているんですが、これは今言ったように準備の積み方・準備の制度を変えてしまえば、繰り越しを認めれば、銀行は余剰に積むようになりますから、その
部分は現金預金比率が変わって貨幣乗数が動くときにそれを中和することができるし、あるいは持ち越しを認めたり、同時積み立てを認めるのであれば、これが安定化する。
私は、そういう
意味で、この準備預金制度を変えて、現場では陰湿で、しかし外から見ると何をやっているかわからない、しかも、やった結果というのは、物すごいマネーサプライの乱高下を起こして、
経済は物すごく変動し、この今日の不況もつくり出している。そういう
意味で、この準備預金制度を変えるべきだというふうに思いますけれ
ども、
大蔵省、いかがですか。