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1997-04-25 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十五日(金曜日)     午前九時三十五分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    木村 隆秀君       小林 多門君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田中 昭一君    中野 正志君       山中 貞則君    吉川 貴盛君      吉田六左ヱ門君    渡辺 喜美君       上田 清司君    木村 太郎君       北脇 保之君    鈴木 淑夫君       中川 正春君    並木 正芳君       藤井 裕久君    前田  正君       宮地 正介君    村井  仁君       川内 博史君    末松 義規君       佐々木憲昭君    秋葉 忠利君       土屋 品子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       林  正和君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      福井 俊彦君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   山本 譲司君     川内 博史君   新井 将敬君     土屋 品子君 同日  辞任         補欠選任   土屋 品子君     新井 将敬君     ————————————— 四月二十五日  共済年金制度の堅持に関する請願(臼井日出男  君紹介)(第二三〇五号)  同(畑英次郎紹介)(第二三〇八号)  同(江崎鐵磨紹介)(第二三二二号)  同(赤松広隆紹介)(第二三七八号)  同(杉浦正健紹介)(第二三七七号)  同(野中広務紹介)(第二三七八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本銀行法案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本銀行法案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣。     —————————————  日本銀行法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました日本銀行法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、内外の経済社会情勢変化に対応し、日本銀行通貨及び金融調節における独立性とその意思決定透明性を高めるとともに、日本銀行の適正かつ効率的な業務運営を確保する必要性にかんがみ、日本銀行の抜本的な改革を実施するため、日本銀行法の全部を改正することとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明を申し上げます。  第一に、日本銀行は、我が国中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融調節を行うほか金融機関の間で行われる資金決済の円滑な確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とすることとし、また、通貨及び金融調節理念等について明確化することといたしております。  第二に、政策委員会議決事項の拡充及びその組織の見直しを行うほか、通貨及び金融調節に関する事項議事とする会議議事要旨を速やかに公表する等の措置を講ずることとしております。また、通貨及び金融調節等についての報告書国会提出するとともに、業務及び財産の状況について説明を求められたときは、総裁等国会出席しなければならないこととしております。  第三に、政策委員会政府代表委員制度を廃止し、通貨及び金融調節に関する事項議事とする政策委員会会議限り政府から出席することができることとし、政府からの出席者は、議案を提出し、または議決の延期を求めることができる等の措置を講ずることとしております。  第四に、役員の構成、任命任期等について、総裁、副総裁等任命に両議院の同意を要することとする等所要見直しを行うこととしております。また、役職員について、守秘義務等を定めるとともに、給与等支給基準及び服務に関する準則を作成し、公表しなければならないこととしております。  第五に、大蔵大臣の広範な業務命令権立入検査権等を廃止し、日本銀行または役職員違法行為等があったときに限り、大蔵大臣はその是正等を求めることができることとするとともに、監事の監査機能活用を図っていくこととしております。また、経費の予算についても、大蔵大臣は、認可をしない場合にはその理由を公表しなければならないこと等を定めることとしております。  その他、所要規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  4. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 額賀福志郎

    額賀委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  本案審査中、随時、参考人として日本銀行出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 額賀福志郎

    額賀委員長 御異議なしと認め、そのように決 しました。     —————————————
  7. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより質疑に入りますが、その前に、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三塚大蔵大臣
  8. 三塚博

    三塚国務大臣 委員長の御許可を得て、質疑の前に、大蔵委員各位に御報告を申し上げたいと思う件がございます。  先ほど、日産生命より、事業継続断念との取締役会決議大蔵省提出をされたところでございます。それを受けまして、大蔵大臣として、九時に業務停止命令を発したところでございます。現在、日産生命財産を管理する保険管理人の指定について準備をいたしておるところでございますが、大蔵大臣から管理命令を発することといたしております。財産の保全ということになるでありましょうか。それと、新保険業法に基づき、契約者の不安のないために、不安を抱きませんように万全の体制をとることといたし、改めてその旨、大臣談話及び当局としての取り組みを午後会見をして明示をしてまいるということになります。  急のことでございますが、報告を申し上げ、その都度、また御指摘、御鞭撻をいただきながら万全を期してまいりたい、こう思っておりますので、報告を申し上げさせていただきました。     —————————————
  9. 額賀福志郎

    額賀委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林多門君。
  10. 小林多門

    小林(多)委員 私は、責任政党自由民主党所属議員であり、また三塚大蔵大臣日銀松下総裁を心から尊敬をしている議員の一人でありますから、三塚大臣やあるいは松下総裁の顔を逆なでするような質問はいたしません。しかしながら、幾ら与党議員といえども、正々堂々とただすことはただし、改めていただかなければならない点については改めていただく、私はそのような立場に立って、日銀法改正の問題について、どのように改正をしたらよろしいか質問をさせていただきたいと思います。  本法案が上程をされてから、私の選挙区であります八王子市民皆さんや都民の皆さん国民皆さん方から、今なぜ日銀法改正か、このような質問が寄せられているわけでありますが、この質問に対して、三塚大蔵大臣から、わかりやすく簡単明瞭に御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席金子(一)委員長代理着席
  11. 三塚博

    三塚国務大臣 小林議員お答えを申し上げますが、既に大蔵委員会では金融システム改革等日本金融あり方国際金融あり方で御審議をいただいておるところでございます。日銀法についても、昨年来、政府与党三党で本件についての審議が行われてまいりました。そして、各党からも本件についてさまざまな意見等もございました。国民間からも出されてきたところでございます。  二十一世紀に向けまして、我が国金融資本市場を自由かつ透明で信頼できる市場に確立をしていきますことは極めて大事であり、そのためには、抜本的な金融システム改革が進められなければなりません。日本銀行についても、二十一世紀我が国金融システムの中核でございますものでございますから、この改革を断行する。かねがね言われておりました独立性透明性、この問題を明確に打ち立てていきますことが、今後の金融システムの安定、我が国の信認につながるものということで取り組まさせていただいたところでございます。まさに、日本銀行改革を喫緊の課題として、できるだけ早期にということで、本日、提案をさせていただいたところであります。
  12. 小林多門

    小林(多)委員 ありがとうございました。  今、日銀と申しますと、国民皆さん最大関心事は、我が国で最も高いと言われております日銀総裁給与、いわゆる年収であります。  私の調査によりますと、現在、日銀役員及び政策委員の収入、年収は、総裁が五千百三十三万円、副総裁が三千七百十四万円、政策委員が三千三百六十二万円。ちなみに、我が国の三権の長の年収は、内閣総理大臣が四千四百八十八万円、最高裁判所長官も四千四百八十八万円、衆議院議長参議院議長は四千三十一万円であると思いますが、銀行局長、間違いはないでしょうか。  また、この機会に、三塚大臣を初め国務大臣政務次官、事務次官あるいは国会議員等年収をお聞かせをいただきたいと思います。
  13. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生の方でお読みになりました計数は全部正しゅうございます。  加えて申し上げますと、国務大臣年収三千二百七十六万円、政務次官二千六百七十三万円、国会議員二千四百一万円でございます。
  14. 小林多門

    小林(多)委員 ただいま申し上げました数字とお聞きした数字を、いわゆる年収を単純に比較してみますと、日銀総裁は、内閣総理大臣より六百四十五万円高い、衆議院議長参議院議長より一千百二万円、国務大臣より一千八百五十七万円、政務次官より実に二千四百六十万円高いのであります。  一体、この日銀総裁の五千百三十二万円は、現行日銀法の第何条何項の規定により、何を基準に算出をされているのか、日銀並び大蔵省より御答弁をいただきたいと思います。
  15. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行役員給与に関しましては、昭和三十四年の金融制度調査会実態調査小委員会報告におきまして、「総裁其の他の幹部責任者については責任遂行民間からの人材招致等事情を配慮して、その給与に改訂を加える必要がある。」とされたものでございます。  こうした提言を踏まえまして、日本銀行役員給与につきましては、市中銀行役員報酬参考にしつつ、職務の公共性にも十分配慮して総合的に判断いたしました上で、大蔵大臣認可を経て決定してまいったものでございます。
  16. 山口公生

    山口政府委員 法制上の観点をつけ加えさせていただきますと、日本銀行役員給与につきましては、現行日銀法上、特に規定はございません。日本銀行定款第三十条に基づいて、今総裁のおっしゃったような形になっております。
  17. 小林多門

    小林(多)委員 そこで、今回の改正法給与等支給基準についてお伺いをいたします。  新法の第三十一条には、「日本銀行は、その役員及び職員報酬給与及び退職手当支給基準社会一般情勢に適合したものとなるよう定め、これを大蔵大臣に届け出るとともに、公表しなければならない。」とうたわれております。「一般情勢に適合したものとなるよう定め、」とはどういうことでしょうか。残念ながら、私には理解できないのであります。松下総裁並びに大蔵大臣に御説明をいただきたいと思います。
  18. 松下康雄

    松下参考人 ただいまの御指摘のように、日銀法改正案におきましては、役員給与支給基準につきまして、特別職職員給与に関する法律の適用を受ける国家公務員給与その他の事情を勘案して定めなければならないとされているところでございます。今後につきましては、この法案成立後は、こういった趣旨を十分踏まえまして、役員給与に関する基準を検討してまいる考えでございます。
  19. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま当事者、日銀最高責任者総裁からの答弁でございます。  社会一般情勢に適合するものということ、国民理解を得るというのが大前提でございますが、同時に、市中銀行それぞれの給与体系、御案内のとおりびっくりする給与水準であります。これも株主の理解を通じた国民理解ということになるのであろうと思います。独立性観点透明性観点からいいましても、人材を得るということであれば、それはそれなりの常識というものがあろうと思っておりますし、残念ながら、給与が安ければ人材を得ることが難しい世相になっておりますことも御案内のとおりであります。そういう点で、万般を考えながらこれが取り決められるもの、このように理解をいたしております。
  20. 小林多門

    小林(多)委員 そこで、この改正法案について、それでは一体、三十一条第一項並びに第二項 に基づいて、今後日銀総裁給与をどのくらいの金額を想定しておられるかどうか、これが私も含めて、今国民皆さん方最大関心事ではないかな、このように思うわけでございますけれども総裁並びに副総裁政策委員等はどのくらいの金額考えているのか寸お答えをいただきたいと思います。
  21. 松下康雄

    松下参考人 ただいま御指摘のありました新法案におきます二つの基準に即して、今後内容を具体的に考えてまいるということでございまして、法案を御審議中でございます現在の時点におきまして私どもも具体的な方針を固めているわけではございませんが、ただ、今回の日銀法改正趣旨を十分に踏まえ、今後、役員給与に関する適正な基準を作成し、公表いたしてまいりたいというふうに考えております。
  22. 小林多門

    小林(多)委員 それでは、若干日銀法と外れますけれども、この機会でございますから、お尋ねをいたしたいと思います。それは、過日、私のところに投書が送られてまいりました。これだけはぜひ日銀総裁に直接お尋ねをしていただきたい、このようなことでございますので、質問をさせていただくわけであります。  去る三月二十五日毎日新聞の夕刊で、日銀ゴルフ会員権所有について報道がなされました。新聞報道によりますと、経営のトップの五千万を超す年収が問題になった日本銀行が、四十口余のゴルフ会員権を所有しながら資産として決算書類に掲載していないことがわかった。日銀は、購入時期は古く、当時の会計処理方法に従い経費処理したため資産に残らなかったと釈明、一方、国民の金で買ったものが資産として残っていないのはおかしい、ゴルフ会員権日銀業務に不必要なものだとの批判があると報じております。  松下総裁は、この新聞をお読みになったでしょうか。また、日銀が所有していると言われている会員権名前をこの際御紹介をしていただきたいと思います。
  23. 松下康雄

    松下参考人 新聞は私も読んでおります。  日本銀行が現在保有しておりますゴルフ会員権取得理由等につきまして、簡単に説明を申し上げたいと存じますが、これらのゴルフ会員権は、昭和二十年代から三十年代にかけまして購入したものがほとんどということでございまして、かなり古いことでございますけれども日本銀行支店長等幹部が地元の金融界経済界方々業務上交流する機会が多くて、そうした方々との意思疎通を図ります上でゴルフ会員権を保有していることが適当ということで購入したものであると聞いております。この点で……(小林(多)委員質問に答えてくれればいいです」と呼ぶ)
  24. 金子一義

    金子(一)委員長代理 簡潔にお願いいたします。
  25. 松下康雄

    松下参考人 ゴルフ場名前でございますけれども、四十カ所程度の多数のゴルフ場でございますので、紙にいたしまして、後刻差し上げることとさせていただきます。
  26. 小林多門

    小林(多)委員 大変申しわけございませんが、時間等もありますから、私の質問だけに答えていただきたい、このように思います。  それでは、委員長、ぜひひとつ、後ほどで結構でございますから、私の手元に日銀が所有している会員権のリストをお届けいただきたい、このように思います。  それでは、質問を続けます。  新聞報道によりますと、日銀が所有しているのはいずれも法人会員権であり、一九四九年、大阪府の茨木カンツリー倶楽部を初めて取得、その後、四〇年代後半から五〇年代後半にかけて首都圏ゴルフ場会員権が購入されたとのことですが、現在、河口河口ぐらいはおわかりになると思いますが、その時価はどのくらいになると想定されるでしょうか。
  27. 松下康雄

    松下参考人 口数は正確には四十二口でございます。時価につきましては、私どもも現在整理をしておりませんので、ちょっとこの場ではお答えをいたしかねます。
  28. 小林多門

    小林(多)委員 それでは、この問題についても、後ほどで結構でございますから、おおむねこんなところだろうということをひとつ教えていただければありがたいな、このように思います。  委員長、よろしくお願いします。
  29. 金子一義

    金子(一)委員長代理 はい。
  30. 小林多門

    小林(多)委員 そこで、重ねて総裁お尋ねいたしますけれども日銀が購入した当時はゴルフ会員権経理処理はあいまいだったとのことですが、一九五七年、国税庁資産として計上するよう通達を出されているようであります。現在、日銀ゴルフ会員権経理上どのようになっているのでしょうか、お尋ねをいたします。
  31. 金子一義

    金子(一)委員長代理 御質問に答えていただく前に、資料要求でありますので、理事会で協議させて扱わさせていただきますということは御了解ください。
  32. 松下康雄

    松下参考人 ゴルフ会員権につきましては、この取得当時の一般的な会計慣行に従いまして、その都度、適切な経理処理を行ったところでございます。最近はこれを資産計上するという扱いが通例になっているようでございますが、私どもといたしましては、既に取得しました会員権につきましては、この際、従来の経理方法を変更してまで資産勘定整理がえするほどの必要性は乏しいのではないかと考え、従来の処理を続けているところでございます。  この点は公認会計士とも相談をいたしまして処理方針を決めさせていただいておるところでございます。
  33. 小林多門

    小林(多)委員 そこで、三塚大蔵大臣お尋ねをするわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、一九五七年の国税庁通達により、一般企業では既にゴルフ会員権資産として計上処理されている、このように私は承知しているわけであります。しかし、今御答弁のように、日銀公認会計士相談をされてまだそのような措置がされていない、こういうことになりますと不公平ではないかな、私はこのように思うわけであります。日銀といえども日本法治国家の一団体でありますから、ぜひ私はこの際は国税庁指導どおり資産に編入すべきではないか、処理をすべきではないか、このように思うわけでありますけれども大臣、いかがでしょうか。
  34. 山口公生

    山口政府委員 大臣の御答弁の前にちょっと事実関係をお知らせします。  御指摘のように、昭和三十二年の法人税通達によりまして、「ゴルフクラブに入会するために支出した費用については、資産に計上すべきものとし、その償却は認めない」とされておりますが、これは税務処理の問題でございまして、企業会計処理までを規定したものではございません。ただ最近、現在の一般的な経理基準におきましても、ゴルフ会員権資産計上すべきものというような考え方になっておりまして、こうした経理基準に照らし合わせて現在の日銀経理処理が適当かどうか、まず日銀において改めて検討していただきたいというふうに思っております。
  35. 小林多門

    小林(多)委員 そうすると、繰り返しますけれども、五七年の国税庁通達は、日銀例外だ、あるいは公社公団、そういう団体については例外だというような解釈になるかと思いますけれども、そういう解釈でよろしいのかどうか。
  36. 山口公生

    山口政府委員 税務上の観点から申し上げますと、日本銀行からの報告では、この件については有税で処理しており、税務上の問題はなかったというふうに聞いております。ただ、御指摘企業会計の問題というのは、別途あるべき姿というのはあろうかと思います。
  37. 小林多門

    小林(多)委員 その問題については、これから国民皆さん批判のないように、ぜひひとつ十分検討をして処理をしていただきたい、このように私は指摘をさせていただきたいと思います。  そこで、松下総裁お尋ねをするわけでありますが、過日私に投書をされた方や、今多くの国民皆さんは、日銀は何のためにゴルフ会員権を持っているのか理解に苦しむ、日銀業務に不必要なものだ、この際会員権を処分すべきではない か、このような厳しい指摘があるわけでありますが、これらの指摘についてどのようなお考えを持っているか、また処分されるようなお気持ちがあるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  38. 松下康雄

    松下参考人 ゴルフ会員権取得につきましては、先ほどお答え申し上げましたような必要性考えながらやってきたところでございますけれども、ただ、やはり社会通念上の妥当性と申しますものも時代に応じて変化はあるところでございますので、日本銀行といたしましても、このゴルフ会員権を今後どのように活用あるいは扱っていくのか、どのように保有することが適当であるのかどうかという点は、新しい目で見直してまいりたいと存じております。
  39. 小林多門

    小林(多)委員 今一億二千万余の国民が注目の日銀でありますから、ぜひひとつ批判をされないように、私はこれ以上の質問はいたしませんけれども、ぜひひとつ大蔵省ともあるいは関係者ともよく御相談しながらこれらの問題に対処をしていただきたい、このように考えております。  そこで私は、日銀法改正に戻りますけれども、第十四条に「日本銀行に、政策委員会を置く。」とうたわれており、第十六条には、政策委員会は、委員九人で組織する。」「委員は、審議委員六人のほか、日本銀行総裁及び副総裁二人をもってこれに充てる。」と書かれておりますが、私は、九人のうちの三名がいわゆる総裁、副総裁二人、三名が日銀委員であり他の六名が民間人であるという形になりますと、これはおのずから答えは決まっているのではないかな、こんな心配をするわけであります。  そこで私は、ぜひこの政策委員については、日銀からは総裁一人、他の八人は学識経験者、有識者、こういう方を充てるべきであると思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  40. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は、御案内のとおり三党協議会の段々の論議、国民各位本件に対する要望、御批判等も踏まえて原案に盛り込んだところでございます。  委員九名のうち、御指摘のとおりであり、執行部から三名、外部から六名ということになっておるわけですが、外部の六名は国民代表ということになります。そういう点で、小林議員の御懸念はこの六名の委員によって目的を達することができるのではないかということであります。  いずれにいたしましても、多過ぎるとは言えない。執行部三名によって六名が何となく圧迫を受けて自己の主張、国民の主張が達成されないとは理解いたしませんし、立派な人が選ばれる、私はそのように思っております。
  41. 小林多門

    小林(多)委員 そこで、質問をいたします。  その役員任命でありますけれども、第二十三条に「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」こういうふうにうたわれているわけでありますが、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」とはどういう方を想定されているのか、具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 山口公生

    山口政府委員 現行日銀法はそれを、金融に詳しい方二名、例えば地方の金融あるいは都市銀行の代表から一人というように、あるいは農業あるいは商工業というようにある程度限定をいたしまして、四人の任命委員の性格づけをしておったわけでございます。しかし、今回はそういった業界を代表するような形のものではなくて、もっと広く、そういったものにとらわれない形での人選ということで、こういった文章にしてございます。  今先生のおっしゃったような観点を十分よく踏まえまして、人選に努めなければならないというふうに思っているところでございます。
  43. 小林多門

    小林(多)委員 時間になりましたので終わります。
  44. 金子一義

    金子(一)委員長代理 以上をもちまして小林多門君の質疑は終了しました。  次に、砂田圭佑君。
  45. 砂田圭佑

    ○砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。  日銀法改正について御質問を申し上げます。  元来、国民にとっては、日銀という銀行は大変速い存在でありますし、庶民の感覚で直接銀行とかかわり合いを持つことがありませんので、国民にとっても縁遠い存在でありました。しかし、このたびの改正法案を見ても、国民にとって大変重要な存在であることは間違いがありません。銀行券の発行、物価の安定、金融システム信用秩序の維持など、国民生活にとって極めて重要な存在であります。にもかかわらず、国民から大変遠い存在のように思われてきたのは、日本銀行が一つの聖域であったからではなかったでしょうか。  日本の国は、決して政治家のものでも、あるいは官僚のものでもありません。我々、皆さん方日本人一人一人の国であります。したがいまして、今回の法律改正によって、普通の日本人の常識が通用する、その常識ではかられる、そんな銀行であってもらいたいものだと念願をするものでございます。  バブルの崩壊あるいは住専問題、銀行の不良債権の累積というのは、一般の庶民の常識からすれば、だれかがどこかで責任をとらなければ済まされない問題であろうかという気がいたします。  総裁お尋ねをいたします。  日銀総裁は、どんなとき、どんな場合に、どういった形で責任をおとりになるのでしょうか、お答えを願いたいと思います。
  46. 松下康雄

    松下参考人 今回の日銀法改正考え方によりますれば、日本銀行政策決定に当たりまして独立性を高める、これに伴いまして政策決定の透明性を向上させる、このことは裏腹でございますけれども日銀自体の責任がそれだけ重くなるということであると考えております。この責任の内容は、いわゆるアカウンタビリティーというような英語を申しておりますが、政策内容につきましても国民によく説明を申し上げて、その理解を得ながら、自分のなしたことに対して責任を負っていくということであるというふうに理解をいたしております。  その意味で、私どもはこの法律改正の暁におきましては、国民に対して直接にいろいろな方法での政策の御説明を行うとともに、政府また国会につきましても、法律で定められたところに従いまして、私ども政策決定の考え方について十分御説明を申し上げ、そしてその御説明に対する御批判は甘んじて受けていくという点で、私どもの責任を果たしていくというふうに考えております。
  47. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ありがとうございます。  私たちは普通の日ごろの生活の中でも、会社の経営に失敗すれば当然責任は問われるわけでもありますし、そしてまた社会的にも、過ちを犯せば当然責任をとるのが常識であります。どうか、我々の常識が通用する日銀であっていただきたいと思います。  次に、総裁は太陽神戸三井銀行の代表をなさっておられましたけれども、今さくら銀行になった銀行の株式を御所有でございましょうか、お伺いをいたします。
  48. 松下康雄

    松下参考人 当時、太陽神戸銀行の役員に就任をいたしました後、同行の株式を取得いたしまして、それはさくら銀行在任中の最後の段階におきまして三万四千二百株であったと思いますが、その株を現在も保有をいたしております。
  49. 砂田圭佑

    ○砂田委員 先に進みますけれども、今、日銀職員皆さんの中で、年収が二千万円以上の所得のある方というのはどれくらいいらっしゃるのでありましょうか。
  50. 松下康雄

    松下参考人 日銀職員の中で、局長、次長、支店長クラスの職位者約八十名が年収二千万円を超えております。
  51. 砂田圭佑

    ○砂田委員 このような質問をいたしますのも、日銀にとって国民の信頼こそが日本銀行の独立の基盤である、そういうふうに考えているからでありまして、このたびの法案で、自主性の尊重と透 明性の確保が要求をされているわけであります。政策決定過程の透明性はもちろんのこと、日銀の体質そのものの透明性を高めることこそ、国民の信頼を得るということではないかと考えている次第でございます。  日本銀行も、この法律政府と同じようなレベルになるわけであります。政府は法制度の中で遵守する憲法上の義務が当然あるわけでありますし、また議会の質問にも答弁する義務があるわけであります。また選挙を通じて国民の支持を得なければなりません。日銀の場合も、政府と同様に、法制度の枠の中において金融政策を決定、運営していただく、議会からの批判意見にも謙虚に耳を傾けていただいて、質疑に対して明確にお答えをいただく。引き続いて金融政策を担っていただくためにも、先ほども申し上げましたように、国民に対して政策の決定過程あるいはその結果について十分な御説明をいただくことが大変重要かと思い、これからの御努力をお願い申し上げるものでございます。  今や日本じゅう行政改革であります。橋本総理を先頭に、日本じゅうがリストラをしているところでございますけれども日銀でも何かその点についてお考えでございましょうか。
  52. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行といたしましても、従来、中央銀行としての節度あるいは規律という点から、また一つの事業体といたしましてできるだけの効率を高めていくという見地から、内部的なリストラの努力は今日まで継続をしてまいったところでございまして、その内容の一、二を申し上げますと、定員につきましても、一番多かった戦後約九千人の定員が、現在約六千人程度まで減少をいたしておりますし、またこれに伴って機構の簡素化ということも実行いたしております。  しかしながら、私どもは、今後なお機械化というものが進展をいたしますにつれて、例えば業務の合理化、効率化というのはさらに進めてまいる余地はあるはずであると思っておりますし、そういう点に十分配慮いたしまして、今後ともリストラ、経営の効率化という点の努力を続けてまいる考えでございます。
  53. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ぜひお願いをしたいと思います。  次に、低金利政策についてお伺いをいたします。  日銀が低金利政策を打ち出してから既に一年七カ月ぐらいがたちますが、我々年がら年じゅう地元でいろいろな方に会う、おじいちゃんが残してくれた退職金で、それを当てに一生懸命生活をしているおばあちゃんは、やはり金利が安いということでその嘆きは大変なものがあるわけでございます。地元を回ってその話が出ないときはないぐらいでございます。  そういう預金者の嘆きもさることながら、高金利を求めて、オレンジ共済のようなものに手を出して元も子もなくしてしまう人もたくさん出始めています。それ以外に、怪しげな高金利のそういう商品が出回っているということも、いわば一つの社会問題化しつつある現状ではないかという気がいたします。  もちろん、反面、消費税が上がったりあるいは今までの特別減税の打ち切り等の背景がありますから、いろいろ難しい問題ではありましょうけれども、低金利政策の効用について、ひとつ委員会を通じて総裁から国民皆さんにわかりやすく、なるほど辛抱しなければしようがないというような、納得いくような御説明をぜひお願いを申し上げたいと思います。ゆっくり時間をかけてぜひ聞かせていただきたいと思います。
  54. 松下康雄

    松下参考人 金利収入に多くを依存していらっしゃる家計にとりまして、現在の低金利の継続は大変厳しい状況にあるということは私どもも十分に認識をいたしているところでございます。ただ、私ども金融政策全体は、あくまでも日本の経済全体の動向に対してどういう措置をとるべきかというマクロ的な物の見方を基軸に据えて運営すべきものでございまして、この点につきましては、ぜひとも大方の御理解を賜りたいと思っているところでございます。  そこで、現在の低金利政策の効果でございますけれども、私どもは、これまでの政策効果の浸透もありまして、現在設備投資の底がたさというようなことも見られるようになり、国内の景気は緩やかな回復基調を続けているというふうに判断をいたしております。ただ、その一方におきまして、なお先行きに対する企業あるいは消費者の信認と申しますか自信の点がまだいま一つ固まっていないように見受けるわけでございます。  こういう点で、私どもは、経済活動を活発化させていくことが、全体として見ますと、家計にとりましても、また雇用の増加や給与所得の増加という形でメリットを及ぼしていくことになりますので、いましばらく、経済全体の景気の回復力をしっかりとしたものにする見きわめがつきますように、当面の政策姿勢を維持したいと思っているところでございます。  一口にそうは申しましても、家計と申しましてもいろいろな世帯がございます。そのことは十分に認識をいたしているところでございますけれども、やはり個々の家計が豊かになります上にも、経済全体の足取りが一層しっかりしていくということが何よりも大事なことであると思っておりますので、私どもとしましては、こういった観点に立ちまして、適切な金融政策運営に引き続いて努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  55. 砂田圭佑

    ○砂田委員 それでは次に、法案について少しお伺いをいたします。  第四条では、日本銀行政策政府の経済政策の基本方針が整合的なものとなるよう十分な意思疎通を図らなければならないとうたってあります。元来、歴史的にも、政府は財政拡大を望むのが常識でありますし、中央銀行は過大な通貨の発行はできるだけ抑制をして通貨の価値を保ちたいというのがこれまでの常識であります。財政政策金融政策は、時にはそういう意味で相反するものではないかという気がいたしますが、その辺のことは、この四条はそういう意味でうまく機能していくのかどうか、大蔵省にお伺いいたします。
  56. 山口公生

    山口政府委員 今先生のおっしゃった点は極めて大事な点だと思うわけでございまして、今回の改正によりまして、日銀の行います金融調節独立性といいますか、自主性というものを法律の上でも高め、尊重するわけでございます。そうした場合に、政府の行う財政政策その他の経済対策あるいは政策そのものとよく整合的でなければいけないということは、重々私ども肝に銘じてやっていかなければいけない。そのために、常時いろいろな意見交換をやっていくことが必要だと思いますし、また仕組み上も政策委員会に、もし大蔵大臣、経済企画庁長官が必要だと御判断されれば、みずからあるいは代理者が出席してその議に参加するというような仕組みを設けさせていただいております。極めて大事な点だと私ども心得ております。
  57. 砂田圭佑

    ○砂田委員 日銀サイドからはいかがでしょうか、お願いいたします。
  58. 松下康雄

    松下参考人 ただいま銀行局長からお答えがありましたように、私どもも、金融政策につきましては、改正法の第四条の趣旨を十分に踏まえまして、今回の法案に盛られているいろいろな経済政策、財政政策全般と金融政策との間の整合性の確保を図るという点につきましては、これからの政策決定事務の遂行上、十分に配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  59. 砂田圭佑

    ○砂田委員 今回の法律では、日銀独立性につながる自主性といいますか、それと透明性というのが大変な眼目でありますけれども、この新法によってどれほど日銀の自主性が確保されるのか具体的に御説明をいただきたいと思います。大蔵省、お願いをいたします。
  60. 山口公生

    山口政府委員 今回の御審議賜っております法案におきまして、具体的な独立性といいましょうか自主性の尊重の措置を挙げさせていただきたいと思いますが、例えば政府の広範な業務命令権がございましたが、それは廃止いたします。それか ら役員の解任事由に、政府との意見の相違では解任されないということをはっきりとしておきます。それから預金準備率の変更認可は廃止いたします。それから銀行券の発行限度、発行保証の認可も廃止いたします。それから政府代表委員制度という、先ほどの必要なときに出るというものの前に今あります、必ず出るという形の政府代表委員制度も廃止いたします。それから日銀監理官制度、実は私が日銀監理官に今なっておりますが、この制度は廃止いたします。それから立入検査権、これも廃止いたします。そのような形で独立性の強化を図っているところでございます。
  61. 砂田圭佑

    ○砂田委員 そういうように非常に自主性が高まる形になっていることは大変結構であります。ただ、根本的なところで、日銀認可法人でありますから、憲法の六十五条でも内閣の行政権の下にある。そのために、自主性が本当に確保されるかどうかという点でやや懸念をするものであります。  そういう意味では、一般行政権に属する認可法人でない方がいいのではないかという気がいたしますが、前もってこのことは申し上げておりませんけれども銀行局長、いかがでしょうか。
  62. 山口公生

    山口政府委員 今御指摘日本銀行の法的性格でございますが、中央銀行研究会及び金融制度調査会においてかなりの議論をいただいたわけでございます。  結論といたしましては、日本銀行業務の性格、金融政策独立性観点から、認可法人としております現在の法的位置づけで問題がないという結論をいただいておりまして、今回お示ししております法案におきましても、この考え方を踏まえて、現在の法的位置づけを維持しているということでございます。
  63. 砂田圭佑

    ○砂田委員 我々は、物価の安定というのは、すなわち通貨価値の安定であるというふうに、昔からそう思っております。今もそう考えておりますけれども、バブル経済で大変地価の高騰があったり、株価の高騰がありました。そういう物価と関係のないところで通貨の価値が変わるという、それをどんなふうに受けとめ、また通貨の価値は一体どこのところで安定しているかどうかということを我々は確認すればいいのか、日銀総裁、よろしくお願いします。
  64. 松下康雄

    松下参考人 私どもの主要な任務でございます金融政策目的について、これを国内物価の安定というふうにとらえるか、あるいは対外価値の安定も含みます通貨価値の安定ととらえるかという点につきましては、法改正の段階におきましても非常に御議論があったところであると伺っております。私どもは、現在の金融政策目的を、この変動相場制下において自由に変化をしております為替相場の安定まで含んだ通貨価値の安定というふうにとらえますというと、かえって国内物価の安定を損なうようなケースも考えられないことはないわけでございまして、そういう議論から、今回の金融制度調査会の答申におきましても、物価の安定ということを基準とされたように思います。  物価の安定と申します場合に、ただいま御指摘がありました土地、株式等の資産価格も含めるかどうかという点につきましては、少なくともそれらの資産価格というものが現実の物価に強い影響を及ぼすものでございますから、そういった中で政策を行ってまいりますときに、十分それを参照しながら進めてまいるものであると考えております。  なお、恐縮でございますが、先ほどの答弁で、私、持ち株を三万四千二百株かと申しましたが、三万六千二百株の間違いでございました。訂正させていただきます。
  65. 砂田圭佑

    ○砂田委員 最後に、これはちょっと番外でありますけれども大蔵大臣に伺いたいのです。  この法案で、国会あるいは政府日銀、このトライアングルが、それぞれの形の中で一つ確立をされたという意味では大変好ましいことであろうかと思います。いろいろ世間の批判はありますけれども、この三権がそれぞれの立場でお互いに補完をし合いながら日本の経済の安定を図っていくことは大変大事だと思います。ひとつ大臣の御所見をお伺いをいたしたいと思います。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 三塚博

    三塚国務大臣 日銀も新しいスタートに立つわけでございまして、独立性、自主性といいますのは大きな責任を伴うわけでございます。見識を集め、この国の安定のために、また国民各位の安定のために、世界システムの中でどうあるべきかという視点もあります。低利の問題がございました。そういう思いやりの気持ちもなければなりません。しかし、辛抱するところから、日本経済の安定、社会の安定がもたらされるというプラスの面がある。  そういう意味で、国会の論議をやはり常に最大の関心を持って聞いていく、調査をし対応を考えていくというのは、当然、銀行の中の銀行と言われる日銀の大変大事なポイントであります。国会も同時に、国民に内閣を通じて責任を負うわけでありますし、ましてや与党という立場からは極めて本件も大事なポイントでございますから、言うべきことは言わなければなりません。そういう協調性の中でいかなければなりませんし、日銀の持つ透明性も、まさに信認を得るための透明性でございますから、そういう点で、先ほど来御指摘の諸問題も的確に対応されることを私は質疑を通じ期待をいたしておるところでございます。両々相まちまして、この改正我が国の基本的なベースを固め、我が国の経済国家としての持続的な成長に向けてしっかりした効果が出ますように期待をし、努力をしてまいるつもりであります。
  67. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ありがとうございます。  ぜひとも、日本国民の期待をしているところでございます日銀におかれましても、大蔵省におかれましても、また、国会においてもこれからも努力を続けていきたいと思います。よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。終わります。
  68. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、田中昭一君。
  69. 田中昭一

    田中(昭)委員 私は、自由民主党の田中昭一でございます。  ただいま議題となっております日銀法改正全般についてお伺いをさせていただきたいと存じますが、先般の議員さんの質問との重複を避けながらお伺いをさせていただきますので、明快なる御答弁をお願いを申し上げたいと存じます。  まず、日銀法は、私がお伺いをいたしておるところによりますと、昭和十七年の二月に発足をされ、五十有余年経過をしておる。この五十有余年の間、どのような指導をして、国民にどのような貢献をされたと考えておるのかまずお伺いをし、今後五十年、どのような指導をしていったら、どのような監督をしていったならば、アメリカを初めイギリス、フランス、ドイツ、先進国に負けない日本銀行と言われるようになるのか、世界の日本銀行と言われる日本銀行を生むためにはどういう決意を持って当たっていかれるのか、まず所信をお伺いしたいと存じます。
  70. 松下康雄

    松下参考人 現行日銀法は、御指摘のように昭和十七年の制定法でございます。したがいまして、その内容には当時の国情を非常に反映した点がございますけれども、戦後におきまして、まず政策委員会制度が法律改正によって導入をされまして、この点で金融政策の面での日銀の責任が明らかになったところでございます。  私どもは、戦前の法律ではございますけれども、その内容におきましては、やはり時代とともに日銀目的につきましても新たな解釈をしていくことが適切であるということを感じまして、日本銀行目的としましては、物価の安定を通じまして持続的な経済の安定成長に資していくということが基本的な目標であるという考え方のもとで、今日まで運営をしてまいったところでございます。長い期間でございますから、いろいろの変転はございましたけれども、戦後の時期を総じて物価の観点から見ますというと、我が国の物価の趨勢というものは、今日に至るまでにつきまして、諸外国、諸先進国と比較をいたしましても、 見劣りのしないような安定度を示してきたものであるというふうに考えております。  ただ、今日の経済におきましては、金融の自由化、国際化というものが非常な速度で発展をいたしまして、中央銀行におきましても、各国の中央銀行間の協力関係というようなものが進展をしてまいっております。その中で、中央銀行あり方につきましても、各国の中でだんだんと共通の考え方が出てまいりましたので、私どもはそういう点を基本法、日本銀行法の中に取り入れていただきながら、政策決定の自主性あるいは決定過程の透明性というものをはっきり明示をしていただくことで、今後、自信を持った業務運営ができるというふうに考えているところでございます。  今回の改正法案は、私どもから見まして、そういう点で新しい時代のいろいろの要望にこたえる内容のものをつくっていただいておるというふうに考えますので、こういう法案が成立をいたしましたならば、私どもといたしましても、この法案趣旨を十二分に生かして、今後とも、従来にも増して物価安定を通じた経済の持続的な成長の堅持という目標に向かって努力をいたしたいと思っております。
  71. 田中昭一

    田中(昭)委員 大変な御努力をなさってまいったということはよくわかったわけでございますが、その中でも私は、バブルの崩壊、住専問題、これは大蔵省の指導ミスであったのか、日銀の指導ミスであったのか。私がお伺いをいたしておるところによりますと、地方銀行は、こういう書類を作成してきたのならば御融資ができますから、ぜひお使いください、こういうことで昭和六十年から平成元年ぐらいまででしたか、五年間ぐらいはまず地方銀行の主導によって融資をした。ところが、平成二年八月ごろでございましたか、物で言わせていただくならば、シャッターを閉ざしたような方向で抑制をされた。したがって、融資を受けた国民は、会社の倒産はもとより、首つり自殺までしてこれの責任を負った、こういう例が数多くあるわけでございますが、これは日銀または大蔵省どちらの指導ミスであったのか、監督不十分であったのか、責任はおとりになる考えはあるかどうか、お伺いをいたします。
  72. 松下康雄

    松下参考人 昭和六十年以後の金融政策についてでございますけれども、六十年から約四年間は、銀行の貸出残高もほぼ安定的な伸びでございました。その一方で、国内経済におきましては、これはプラザ合意以後の急速な円高進行がございましたためにデフレに陥る、そのデフレ効果が大変強く懸念をされておりました。  こういう状態に配慮いたしまして、日本銀行としまして、五回にわたって公定歩合の引き下げによって金融緩和を推進したわけでございます。その後、この二・五%という公定歩合が二年三カ月間据え置きであったわけでございますが、その中でも、景気の回復は次第に強まってまいりましたけれども、なお通常の物価の安定基調は維持されておりました。国の、また当時全体の経済をめぐる環境から申しますと、大幅な経常黒字を是正すること、あるいはこれ以上の円高を回避するということが、非常に優先的な政策課題であったわけでございます。  そういった中で、金融政策といたしましても、そういう経済全体の優先的な課題と物価の動向というものをはかりにかけまして、ぎりぎりどの点の政策を選んでいくかという点で苦慮をした時期でございますけれども、結果から申しまして、この二年余の長期の金融緩和がバブル発生の原因の一端となりましたことは、否定できないところであると思っております。  その後、景気は急速に拡大いたしまして、貸出残高の伸びも二けたの伸びということになりましたので、私どもといたしましては、平成元年から二年間に五回にわたって公定歩合の引き上げを実施したところでございますけれども、平成三年の中ごろには金融引き締めの効果も確認をされましたので、金融緩和に転じたわけでございます。この点の踏み切りの時期につきましては、好況期のピークからさほど遠くない時点で初めて公定歩合の引き下げを行いました。平成三年七月でございます。しかしながら、結果的に景気が減速をいたしまして、貸し出しの伸びも低下を見たわけでございます。そういった状態の中で、今度は私どもは、景気下支えの観点から九回にわたる公定歩合引き下げを含んだ思い切った金融緩和政策を実施して、今日に至っているところでございます。  私どもといたしましては、このような経験を踏まえまして、金融政策の役割というものが為替相場の安定あるいは対外不均衡の是正ということに、過度に金融政策に依存するという態様は十分注意しなければ必ずしも適切でない面がある、あくまでインフレなき持続的な成長ということを目的にしながら、資産価格やマネーサプライ動向にも十分注意して早目早目に対応していくことが大事なことであるという教訓を得まして、今後の政策に十分それを生かしてまいりたいと考えております。
  73. 田中昭一

    田中(昭)委員 大変しつこくて恐縮でございますが、昭和六十年から平成七年まで約十年間、各年度ごとにおける金融機関の融資の残高の推移と日本銀行がとってきた金融政策についての御説明、後ほどで結構ですから、この十年間の融資、貸し付けの資料を要求したいと存じます。
  74. 松下康雄

    松下参考人 昭和六十年から平成七年までの金融情勢の概況につきましてはただいま申し述べたとおりでございますが、その計数につきましては、後ほど私どもも資料を作成、お届けをいたしたいと存じております。
  75. 田中昭一

    田中(昭)委員 金融機関にはリストラを求めておるのに対しまして、日銀は自己改革についてどのように考えておりますか、お聞かせをいただきたいと存じます。  なお、昨年十二月四日付の朝日新聞に、「日銀に「裏政策委」 政府代表加えず 九〇年ごろ発足」という見出しで、日銀が、金融政策などの最高意思決定機関とされる政策委員会とは別に、政府代表を除いた政策委員日銀幹部が参加をする裏の政策委員会とも言われております協議機関を設けておったことが明らかになったわけでございます。九〇年という、ちょうど三重野総裁時代にこの秘密協議機関が設置されておるわけでございますが、私は、事前に金融政策については調整が行われていたのではないか、こういう懸念を持つものでございますが、どのような協議機関であったのか、きめ細かく御説明をいただきたいのでございます。
  76. 松下康雄

    松下参考人 私どもの現在の、現行法下におきます政策委員会の運営につきましては、一方におきまして、政策委員の皆様方に、委員会においての活発な御審議をお願い申し上げますとともに、この御審議に役立てますために種々の情報を提供し、日常御説明を申し上げる努力をいたしているところでございます。しかしながら、あくまでも政策の決定を行いますのは公式の政策委員会の場でございまして、それ以外の場所では、いろいろデータの説明でございますとか御質問に対するお答えということはいたしますけれども、その席で政策に関する決定あるいはそれに類したことが行われるというような運営は一切いたしていないところでございます。  今、平成七年九月七日という点で御質問がございましたけれども、その日も政策委員の皆様方に対する事務の説明はございました。それは、その日に私どもの短観調査の結果がまとまりましたので、その結果につきまして、政策委員に対しまして担当の局長から御説明を行った会合でございます。私もその会合には、説明側ということでもございませんけれども出席をいたしておりましたけれども、この席上で政策委員会の議長としての何らかの動きをした、提案をしたというようなことはやっておりません。
  77. 田中昭一

    田中(昭)委員 私が聞くところによりますと、日本銀行は赤坂の一等地に接待用として氷川寮なる料亭並みの施設を保有しておると伺っておりますが、その施設を持つ必要があるのかどうか、またどのような利用状況であるのか、具体的にその 利用状況をお聞かせいただきたい。  私は、こういう資産は早急に処分すべきだ、このように考えておりますが、いかがお考えなのか、お伺いをいたします。
  78. 松下康雄

    松下参考人 ただいま御指摘の氷川分館でございますけれども、これは古いことで私はよく存じませんが、戦後間もなくの時期に建設をしたものであるように聞いております。  この分館は、日本銀行の一つの会議所、外部にございます会議所の一つでございまして、業務上の機密を要します会合等に用いているところでございます。何分環境の良好な場所にございますので、施設の外観その他につきましては周囲の環境と調和を図ってまいるという点は配慮をいたしておりますけれども会議の必要を超えた豪華なものであるとは思っておりませんので、御理解をいただきたいと思います。
  79. 田中昭一

    田中(昭)委員 総裁には大変恐縮でございますが、総裁を初め副総裁理事さん、課長さん、一般職員ですね、この退職金はどれぐらいちょうだいしておるのか、今まで払っておるのか、お聞かせをいただきます。
  80. 松下康雄

    松下参考人 退職金のお尋ねでございますが、任期いっぱいの五年間在任をいたしますと、退職金は、総裁は七千四百七十一万二千円、副総裁は五千四百十二万円、任期四年の理事の退職金は三千百二十五万八千円と相なっております。
  81. 田中昭一

    田中(昭)委員 先ほど総裁は、さくら銀行ですか株を大分お持ちという答弁がございましたが、総裁は現在日本銀行総裁でございますから、子会社のようなそういう地方銀行の株をお持ちになっておるということは、これはちょっとうまくないのではないか。違法とは申しませんが、当然これは、株はお売りになってから日本銀行総裁に就任すべきではなかったのか、このように考えますが、今後売却する気持ちはあるかどうか、お伺いします。
  82. 松下康雄

    松下参考人 私がさくら銀行に役員として在職をいたしておりました時期に、役員として通常保有することが適当であるというふうに思われる株数を取得いたしたところでございます。  さくら銀行退職後、本行に就任をいたしたわけでございますけれども、そのとき考えましたことは、銀行におきましては、役員は自分の銀行の株式を買ったり売ったりすることはできない建前でございます。それは内部の情報を耳にできる立場でございますので、インサイダーの問題その他がございますから、独自の売買はできず、仮に株式を取得したい人は、株式の保有組合をつくりまして機械的に全然別の経路で売買をするというような配慮をいたしているところでございます。  私も現在の地位に就任いたしましたときに考えたのでございますけれども中央銀行というものも銀行の内部情報は知り得る立場でございますので、いろいろの誤解を避けます上では、銀行の株式というものの売買は適当でないのではないかというふうに考えまして、現在もそのまま保有しているところでございまして、その他の銀行の株は一つも持ってはおりません。そういう事情でございますので、御理解をいただければと思います。
  83. 田中昭一

    田中(昭)委員 総裁を凝るわけではございませんが、それでは、日本銀行はさくら銀行に対して特段の融資、膨大な額の融資をしておらないと私は信用したいのですが、どのぐらいなのか。もし、他の銀行との比較、これをおわかりでしたらお聞かせをいただきたいと思います。
  84. 松下康雄

    松下参考人 私は、総裁に就任前に民間金融機関に八年余にわたって在職をいたしておりましたから、就任後にかりそめにも特定の民間銀行と何らか親密な関係があるということについての誤解を受けますれば、適正な職務の執行ができないということを肝に銘じまして、今日まで銀行の業務をやってまいります上で、いかなる点でも特定の金融機関に対して他と異なった特別の取り扱いということは絶対にいたさないように努めてまいったつもりでございますし、また、今後ともそのようにやってまいりたいと思っております。
  85. 田中昭一

    田中(昭)委員 総裁答弁を信用いたします。  日本銀行総裁、副総裁の任期は五年ということでございますが、私は、任期が長くなっては金融政策にまたまたひずみが生じるのではなかろうか、このように懸念をいたしております。私は、任期はすべて三年程度に短縮すべきだ、このように考えておりますが、どのようにお考えなのか。これは大蔵大臣になりますか、総裁になりますか、両名から御答弁をいただきたいと存じます。
  86. 山口公生

    山口政府委員 政府提案法案でございますので、まず大蔵省の方からお答え申し上げます。  日本銀行役員の任期につきましては、金融制度調査会でもいろいろ御議論をいただきました。そこで「任期が長い方が独立性に資するとの考え方から、欧州中央銀行制度への加盟国の中央銀行総裁の任期につき、五年以上とすることが求められていること等を勘案し、政策委員会の構成員である総裁・副総裁の任期は現状の五年を維持し、審議委員の任期も同じ五年とすることが適当である。」というように答申をいただいたところでございます。  さらに、国内において独立性が高いと認められる機関の委員の任期が比較的長いことなどを踏まえまして、御提案を申し上げております改正法案におきましては、総裁、副総裁審議委員の任期は五年とさせていただいているところでございます。
  87. 田中昭一

    田中(昭)委員 先ほどの日銀が所有しておりますゴルフ場会員権の件でございますが、私は、ゴルフ場会員権は購入する必要はなかった。したがって、行員の皆さんが利用されておる、このように認識をいたしておりますが、だれが月に何回、年間何回、どれくらいの利用をされておったのか答弁をいただきます。
  88. 松下康雄

    松下参考人 ゴルフ場会員権の利用につきましては、日銀業務の性質上、地元の金融界経済界方々との交流の機会が多うございますので、そういった方々との意思疎通を図ります上で会員権を持って活用するということが適当ということで、終戦後間もなくの時期から取得を始めたものでございます。ただいまのような目的に照らして活用をいたしてきておりますが、その個別の具体的な回数、金額等につきましては、資料も残っておらないと思いますので、これについてはちょっとお答えのしかねるところでございます。  ただ、このゴルフ場会員権につきましては、今の段階でよくその利用状況というものも確かめまして、本当に当初の趣旨に従って適切に利用されているかどうかということの見直しは行ってまいりたいというふうに思っております。
  89. 田中昭一

    田中(昭)委員 最後に、大蔵大臣にお願いを申し上げます。  アメリカを初めイギリス、フランス、ドイツ、先進国に負けない日本銀行、そして日本銀行は世界をリードしていける日本銀行だ、こういうしっかりとした法律を成立させていただきますようにお願いと期待を申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  90. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、渡辺喜美君。
  91. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 先ほど来、同僚の先生方から大変鋭い質問をしていただきました。  まず、本論に入る前に、白頭三塚大臣から御説明をいただきました日産生命保険、この問題につきまして、保険部長さんいらっしゃっておられると思いますが、ほかにこういう生命保険会社はないのかどうか。この日産生命保険というのはいわゆる渋谷四社の一社なんでしょうか。ほかにこういう危ない生命保険会社はございませんか。
  92. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  生命保険会社にとりましては、現在、低金利、株価の低迷等大変厳しい経営環境でございますが、その中でリストラ等を強力に進めてきておりまして、その成果もあらわれてきているところでございます。  日産生命と同様の状況にある生命保険会社はないものと考えております。
  93. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 こういうことがこれから先次々と起こるのかということになりますと、国民は大変に不安に思うわけでございます。ぜひ国民皆さんに、こういうことは心配ないですよということを、大臣初め大蔵省の皆様方が安心感を与えてもらうようなそういう努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  大臣におかれましては、週末G7に出発をされるということで、大変御苦労さまでございます。ぜひこの二月のG7における合意というものを確実にしていただくような御努力をしていただきたいと思います。日本の現在の経済状況をよく各国の大蔵大臣皆さんに御説明をしていただきたいと思うのでございます。  とにかく、このまま今のいわば無金利ともいえるような状況を続けていくならば、必ず、日米金利差が五%にもなっているわけでありますから、どんどんアメリカにお金が流れていく。そういうことになりますと、円安がさらに加速をしていくわけでございます。そういたしますと、これはまた貿易黒字が膨らんでいくということになれば、再び悪い円高というものが進んでいくわけでありますから、アメリカに蓄えたドル資産というものが消えてなくなりかねない、そういうことを招来しかねない事態が起こり得るような気がいたします。  したがって、やはりこの日本の中で内需振興策をとろうと思うならば、もうこれ以上借金はできないわけでありますし、借金をして公共投資をやったり、あるいは借金をして大減税をやったり、そういったことができないわけでございますから、これはとにかく規制緩和あるいは土地の流動化、そういうことが私は非常に大事なことになるというふうに思うのでございます。  三月三十一日に発表されました土地の流動化策というものを実効あらしめるためには、やはり私は、土地税制の大幅な緩和ということが大変に大事なことになるというふうに思うのでございます。この土地の流動化策をきちっと行っていくならば、自然に金利は上がっていくはずでありますし、金利が上がっていけば、恐らく金利格差というインセンティブでもって流れていくお金は相当減っていくのではなかろうかというふうに思うのでございます。  とにかく、来年四月に外為法が施行されるわけでございます。ビッグバンのフロントランナーがいよいよ始まるわけでありますから、私はこの数年間の日本の経済運営に絶対に失敗は許されないというふうに思うのでございます。どうぞ三塚大臣の御活躍をお祈りを申し上げますので、日本の国益を踏まえた御主張をしていただくよう、お願いを申し上げる次第でございます。  大変前置きが長くなって失礼をいたしました。福井副総裁には大変お忙しいところお越しを賜り、感謝申し上げます。  日本銀行というところは、名目上は株式会社でありますけれども、株主総会というのはないのだそうでございまして、この日本銀行新法が通りますと、国会からお呼びがかかればこれは国会出席しなければならない、そういう規定があるわけでございます。先ほどの議論を聞いておられればおわかりのとおり、大体国会なんというのは年がら年じゅう株主総会をやっているようなものでございますから、株主総会のない日銀の皆様方が、国会においでいただいて株主総会の試練を受ける、テストを受けるということになるのだというふうに思うのでございます。  大変レベルの低い話ばかりしておるじゃないかなどというお気持ちは毛頭お持ちにならないようにお願いをしたいと思います。国会というところは、ある意味で素人の代表でもございます。したがって、大変にレベルの高い方々の議論だけが行われる場所では決してございません。ですから、国会に対する説明責任を果たすということは、そういう試練も受けなければならない、テストも受けなければならないということでございますから、ぜひ肝に銘じていただきたいというふうに思うのでございます。  三塚大臣に冒頭だけ御質問をさせていただきます。  先日、この日本銀行を御視察されたそうでございますが、御感想をお伺いをしたいと思っております。日本銀行について、ある人は、主な仕事は運送業と倉庫業と廃品回収業なんだ、そんなことを言う人がいらっしゃいます。果たしてそうなのでしょうか。
  94. 三塚博

    三塚国務大臣 かねがね、大蔵大臣になりましてから、日銀法の抜本的改正議題になっておりました真っただ中でありましたから、できるだけ早い機会に見学、視察をと思っておりまして、時を得て先般参りました。議員の御父君である私の敬愛する渡辺美智雄大蔵大臣が十五年前、私が十五年後と、いみじくもそんな感じになりました。きっすいの政党人でありました渡辺蔵相、やはりみずからの目で、みずからの耳で物事を確かめ、中銀、中央銀行である日銀の運営についてという政治家としての強い思いがあったと思います。  同様の価値観で行かせていただき、小一時間程度でございましたが、今、運送業、廃品回収業というのは、恐らく、私もその現場を見ましたが、廃棄業務、クリーンにして使えるものはそのまままたもとに戻す、破損いたしたものは粉砕して復元のできない形で焼却炉へと、その一点を言われた。これも極めて重要なところであり、その現場も拝見をいたしました。同時に、銀行券の監査、また金庫室。中央銀行だなと思いましたのは七百坪の大金庫、これは四号金庫というのだそうですが、幾つかあるわけでございますが、そこも見たところであり、営業局の窓口業務ども拝見をしてきました。  要すれば、金融自由化、国際化の中の幅広いマクロ経済のセンターにある金融、そういう意味で、日銀の果たす役割は今後ますます重大になるなと思った次第であります。それだけに大蔵が監督をしてやっているときとは今度は違うわけでありますから、独立性、また政策経過の発表という透明性、そして国民に責任を負うということでありますから、その責任は十倍にも達するものかな、こんなふうに思います。  しかし、国会は国権の最高機関、その中における総選挙の結果を踏まえて政党内閣が国会に共同の責任を持つ、そして自分を生み出したその党とまた協力をいただく政党にその責任を果たすという、こういう仕組みとしては非常に完璧な仕組み、その仕組みが機能するようにしていかなければなりませんし、憲法の、行政は内閣に属するという意味で日銀もまたしかり。こういうことの中で両々相まちまして、基本原則をしっかりと踏まえながら、自主努力、責任を果たしていく。  透明性を果たすことは、まさにその中でもう一つのアカウンタビリティーという、これも明示をしていく、国会には出て状況の報告をしっかりとまたさせていただく。こういうことで、経済国家日本が、インフレなき持続成長を達成させながら、それぞれの、G7の国家だけではない、アジアの諸国からも信認を得て、システム改革金融のもう一つのセンターとしての役割を果たしていかなければなりませんし、そのような期待を込めて、実は心の中にひそかに持ちながら行かせていただきました。  渡辺蔵相、百聞は一見にしかずというのが政治行動の原点で、私もやはり百聞一見にしかずと。もろもろの感懐と、やはり見るべきものだな、今後の大蔵省あり方について大変参考になった、こう思っております。
  95. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 大変有意義なお話をありがとうございました。  保険部長さん、きょうはお忙しいでしょうから、どうぞお帰りになってお仕事をされていただきたいと思います。大臣もどうぞ、G7の御準備等でお忙しければ結構でございます。本当にありがとうございました。  それでは、せっかくおいでいただいた福井副総裁に御質問させていただきますが、我々は基本的に、この改正日銀法を廃案にしようとか流そうと か、そういう気持ちは全く持っておりません。とにかくこの新しい日銀法国会のテストを経て成立をさせたいという気持ちは変わりませんので、ぜひその点は御理解をいただきたいというふうに思います。  私は、この日銀法改正というのは、この「一九四〇年体制」、これは野口悠紀雄さんがお書きになった本でございますが、私の父は死ぬ間際までこの本を読んでおりました。赤のボールペンで線を引っ張りながら読んでおった本でございますが、結局、私の父が考えていることを実に野口先生が明快な形で本にまとめてくだすったんだろうというところだったと思います。  結局、この一九四〇年体制というものは、国家統制と競争の排除という二つの要素が絡んでいたシステムだったろうと思うのでございます。そして政党あるいは政治というものは、その国家統制の中で完膚なきまでに排除をされていく中でつくられた体制であろうというふうに思っております。今我々自民党が橋本総理の掲げる六大改革を実現しようということは、とりもなおさずこの一九四〇年体制の変換を目指していくことにほかならないというふうに私は思うのでございます。  この日銀法というものは、まさに四〇年体制のシンボリックな意味の法律であるということは再三指摘をされておられるところでございます。そういう中で成立をした日銀法というものを、市場原理に合わせた真の意味での中央銀行というものに形を変えていく、私どもはそういうことについて反対をするものでもございませんし、心からそういう中央銀行を望んでいるのでございます。  先ほど来議論のあるところでございますが、改正法の第六条でありますが、これは日本銀行の法人格について定めております。この議論については、認可法人のままでいいんだ、とにかく中央銀行というのはある意味でファジーな存在である、私流に言わせていただければ、デモクラシーの中のアリストクラシー、そういう側面を持っているんであろうというふうに思います。しかしながら、糸の切れたたこのように、政府の経済政策と全くかけ離れたことをやっていい存在ではないというふうに理解をしておるのでございます。  したがって、認可法人という形態は、第四条で言っておりますように、日銀が行う「通貨及び金融調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、」「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、」という規定がございますが、一体日本銀行というものはどういう関係を行政との間に持っているのでありましょうか。私は端的に、日銀というものは経済政策をとり行う行政の代行機関というふうに考えるのが正しい考え方だと思いますが、福井副総裁のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  96. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  その前に、まず冒頭、渡辺委員から日本銀行国会での出席義務、説明義務について明確な御指摘がございました。私どもも、その御指摘は真剣に受けとめているところでございます。従来からもそうでございますが、今後一層真剣な気持ちで国会に参って、日本銀行考えでいること、あるいは実行していることについてできるだけわかりやすく御説明させていただきたい、かつ、その上で金融政策につきまして真剣に議論をさせていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げます。  それから、ただいまの御質問の前置きとして渡辺委員から御指摘のありました、今回の日本銀行法改正の位置づけは、いわゆる四〇年体制からの国家としての大きなシステム変換の中の重要な位置づけである、さらに言えば、二十一世紀を目指して市場のグローバライゼーションが進む中で、新しい日本金融、経済のシステムをどう築いていくかという中でのまた重要な位置づけである、こういう認識は私どもも強く共有させていただいておることを申し上げさせていただきたいと思います。  それで、御質問の点でございますけれども日本銀行が責任を持って物価の安定を図りながら国民経済の健全な発展に寄与していく、この役割を果たしていく上で、やはりこの新しい時代を展望いたしますればなおさら、日本銀行金融政策独立性を制度的にも明確にして、その責任の所在を明確にされるということが重要だと思っておりますが、同時に、金融政策政府の経済政策との整合性が図られるように、制度的にも、また我々の日ごろの行動様式としてもその辺をしっかりと確保するよう努めていく必要があるということだと思います。先生のお言葉をかりますと、糸の切れたたこのようになってはならないという御指摘の点は、その点のことを指しているんだろうと思います。  お尋ねの、糸の切れたたこのようにならないという点に関しましては、今回の改正法案の中にもさまざまな工夫が盛り込まれております。改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、ただいまも先生御指摘のとおり、総則の中の第四条で、政府の経済政策の基本方針日銀政策が整合的なものとなるように常に政府と連絡を密にすること、そして十分な意思の疎通を図らなければならないとしておりますし、さらに別のところで、金融調節事項審議する政策委員会への政府出席、あるいは議案の提出権ということも書かれております。さらに議決延期を求める権利といった制度も具体的に盛り込まれているところでございます。  このように、新法案の中におきましては、政策の整合性に関しまして制度的な工夫が十分施されていると思っておりますが、日本銀行としましては、今後とも政府との間の意思疎通をしっかりと図りまして、国民やマーケットから信認を得ながら適切な金融政策を図っていくべく最大限努力をしていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  そして組織形態に絡んでこの点を申し上げますと、新法の案におきましても、日本銀行の組織形態は現行法の組織形態を維持するということになっております。半官半民の特別な法人という位置づけでございますし、定款を政府から認可をちょうだいしてこの組織が動き始めるという意味で、認可法人というふうな定義もなされているようでございます。  私ども、ただいま申し上げました政府との関係と、それから日本銀行の組織体としての性格を両方見て、この新法におきましても現行の組織形態が維持されることについてどう考えているかということを簡単に申し上げますと、一つは、委員もつとに御指摘のとおり、日本銀行は、金融政策を通じまして日本経済全般に広範にかつ強い影響を及ぼしていく、そういう意味で非常に強い公的性格を持った存在だということが言えると思います。そして同時に、その一方で、日本銀行金融政策というのは、強権力の発動ということではなくて、やはり市場メカニズムを通じて経済全般に働きかけていくというところに特徴がございます。  先般、三塚大蔵大臣日本銀行にお越しいただきまして、日本銀行のいろいろな仕事を直接ごらんいただいたわけでございますけれども、やはり日本銀行は非常に公的な色彩の強い存在であると同時に、一方で銀行業務を通じて仕事をしている、銀行という性格もあわせ持っているということでございます。  現在の組織形態は、主として過去の歴史的な系譜の中から決まってきた面が強いわけでございますが、しかし、現状におきましてもそうした公的側面と銀行という側面と両方をあわせ持っているという、これを悪く言いますと、ぬえ的存在、やや異質のものが一つに合体したような存在を微妙に表現している法人形態でもあるというふうに思うわけでございます。  しかし、それだからこそ、政府中央銀行との関係につきましては、綿密にやはり整合性がとれるような体制が整えられなければいけない。新法案の中には、先ほど申し上げましたようないろい ろな仕組みがそこに施されていて、認可法人という従来の法形態のままでも政府から糸の切れただこのような存在に日本銀行がならないような仕組みは入っている。私どももその覚悟で、今後は日本銀行の運営を一層正しい方向に運営していきたい、こういう覚悟を持っているということを申し上げさせていただきたいと思います。
  97. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 大変懇切な御説明を賜り、ありがとうございました。認可法人でも十二分に政府との意思の疎通はできるというお答えであったかと存じます。  認可法人かいわゆる特殊法人かというのは、講学上の概念だというふうに聞いております。いわゆる特殊法人というものは、国が必要としている業務をやってもらうために国の手によって法人を設立する、いわば国の業務を代行する法人だという定義がなされております。これに対して、認可法人というのは、特別の法律があるという点においては同様でありますが、本来、国以外の業務を行うために、民間などの関係者が任意の発意によって設立する法人のことを認可法人と講学上言うというふうに承知をいたしております。  とするならば、確かに、明治の初期に日本銀行が、大蔵大臣をやった松方さんですか、ああいう人たちが一部出資をされて設立をしたという形態は後者の認可法人という体裁なのかもしれませんが、実際日本銀行がやっている仕事というものの本質を考えてみたときには、やはり端的に特殊法人という形態をとるのが私は妥当なのではないかというふうに考えるのでございます。  今認可法人である日本銀行の資本金は一億円、五五%は大蔵大臣が株主である、残りの四五%が民間の株主であるというふうに承知をいたしておりますけれども、この新法が成立をいたしましたら、できるだけ早い機会日本銀行の法人格というものを全額政府出資の特殊法人という形に私は改めるべきであるというふうに思うのでございます。ぜひこの日銀法審議の過程におきまして、理事会などでも御検討をいただきますよう委員長にお願いを申し上げさせていただきます。  理事会でこの日本銀行の法人格について御検討を賜りますようお願いを申し上げる次第であります。
  98. 額賀福志郎

    額賀委員長 理事会で決定するわけにはまいりませんけれども、この問題についてどういう審議をしていくかについては、理事会相談をさせていただきたいと思います。
  99. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 ありがとうございます。  次に、若干新法の法律論からは離れますけれども日本銀行の今までの立場あるいはあり方というものが財政政策に従属をさせられてきたのではないか、そういう議論がよくなされるわけでございます。いわば大蔵省の下部機関であった、それがゆえに本来の中央銀行としての機能を発揮できずに、例えばバブルをつくってしまったあるいはインフレ経済を招いてしまった、そういうような議論がなされるわけでございます。  例えば、先ほど田中議員質問にもございましたが、これは平成八年十二月四日の朝日新聞でありますが、「大蔵支配」、大蔵の「介入排除、もがく日銀」こういった記事が出ておるのでございます。  先般、国会の本会議におきましても、これは北脇先生の御質問にもございましたが、とにかくバブル、昭和六十一年から始まった日本政府の経済運営は、「財政面で財政再建を堅持する一方で、ひたすら日銀に低金利を強要し続けることになりました。財政当局が為替政策上の要請に金融政策中央銀行を従属させた結果、すさまじい資産インフレを招いたわけであります。」こういう議論でございました。  そこで、当時の状況を考えてみますと、先ほど松下総裁の御説明の中に大変詳しい御説明がございましたので私からは簡単に申し上げますけれども、一体、昭和六十年代のあのプラザ合意以降の円高局面の中で、ほかに金融政策としてどういう選択肢がとり得たのかということをお尋ねしたいのでございます。  円が急激に高くなっていく、そういう中で、昭和六十二年の十月だったでしょうか、たしか竹下さんが自民党総裁に事実上選ばれたその日だったと記憶いたしておりますが、いわゆるブラックマンデーということが起こりました。これは、アメリカあるいはドイツのいわゆる通貨の協調体制の失敗に招来されたということであったと思います。さらに、昭和六十二年の十一月には、再びドルが暴落をするわけでございます。  そういう中で、為替が急激な変動を繰り返した。そしてそういう中で、確かに地価というものは高騰したわけでございます。しかし、家賃の上昇幅というものは極めて低かったわけでございます。一方、原油価格は、昭和六十一年には十ドルを割るというような状況がございました。輸入物価がどんどん下がっていく、そういう中で、日本銀行が使っているマクロモデルの物価推計式が使えなくなってしまった、そういうことが起こったと聞いております。そこで新しい物価推計式の中に海外物価という変数を加えたということもお聞きをいたしております。  そして、公定歩合が二・五%という状況が二年三カ月の間続くわけでございますけれども、一体、こういう状況のもとで金融政策に関してほかにとり得る選択肢があったのでしょうかということをお伺いをしたいと思うのでございます。
  100. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  最初に、渡辺委員から、金融政策が財政政策の一方的なしわ寄せを受けたという経験があるか、こういうふうな御指摘がございました。  財政政策金融政策との適切なポリシーミックスを見出すということは、日本に限らずどこの国におきましても大変難しい仕事でございまして、財政当局と金融政策当局との間には、真剣な議論の闘わせ方というものは常にございます。そういうことは私どももこれまでたびたび経験してまいりましたけれども、一方的にどちらかがどちらかの政策を犠牲にしてポリシーミックスを組むというふうな考え方は双方とも持たないで、真剣な政策努力をしてきたということでございます。  それから、一九八〇年代後半以降の経済政策、なかんずく金融政策がどうであったかという御質問でございますが、政策的な措置の経過につきましては、松下総裁が恐らく詳しく御説明申し上げましたと思いますので、ここでは繰り返して申し上げることは避けさせていただきます。簡単に申し上げますれば、プラザ合意後、急速に円高が進行して、為替円高のデフレ的影響が非常に強く懸念される、こういう状況のもとでの政策運営であり、金融政策の面では、御承知のとおり、金融緩和をかなり積極的に進めたということでございます。そしてその後、結果としていわゆるバブルと呼ばれる現象が発生したわけでございます。  このバブルの発生にはさまざまな要因があったということでございますけれども、しかし、振り返ってみました結果として、そのさまざまな要因の中の一つとして、長期にわたる金融緩和の継続ということにも原因の一端があったということが否定できないというふうに感じているわけでございます。この点は、恐らく松下総裁も同様のことを御指摘申し上げたのではないかと思います。  このような経験の中で、その当時を振り返って、オルタナティブ、別の選択肢が政策的にあったかどうかということでございますけれども、ただいま渡辺委員が御指摘のとおり、為替の不安定な動きをおさめるまでに随分時間がかかった。そして内需の拡大を通ずる国際収支の黒字の是正ということが、国民的な課題といいますか国是に近いような目的になっていた状況でございますけれども、その黒字の縮小傾向というのがなかなか出てこなかった。その間、資産価格の上昇には大変気がかりな面が出始めた中にありましても、伝統的な卸売物価、消費者物価等で見ますいわゆるインフレ率は比較的安定していた。  こういう状況のもとでございますので、当時の経過の中で、恐らく別の選択肢を政府もそれから日本銀行政策も、ともに見出していくというこ とはなかなか難しかった状況で推移したのではないか、今から振り返ってもそういうふうに思います。しかし、だからといって、後から振り返ってみてあれですべてよかったかどうかということは、今後の日本経済の運営のためにそれでは済まされない。やはりその中からも、必要な教訓、貴重な教訓というのはしっかり引き出さなければいけないということだろうと思います。  改めて、その当時を振り返ってみますと、政府の経済政策もあるいは日本銀行金融政策も、ともに為替相場の安定と対外不均衡の是正ということに過度に焦点を当て過ぎていたのではないかという反省、そして、なかんずくその点について金融政策を強く割り当てし過ぎたのではないかという反省は、今後の経済運営を考えていく上に重要な反省材料ではないか、こういうふうに思っている点でございます。  もう一つ重要な点は、資産価格やマネーサプライの動向、特にそれが大きく振れるときには経済全体にやはり大きなひずみをもたらす可能性があるという貴重な教訓も同時に得たということでございますので、当時の推移の中で別の選択肢が恐らく見出し得ない状況であったということであっても、振り返った教訓として、今後、これらの諸点は重要な我々の課題として金融政策運営上生かしていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  101. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 一つの歴史というものを語るときに、過去の完全情報を握っている人がその過去をある特定の意図から解釈をする、こういうことを歴史の後知恵判断というふうに言うのだと思います。例えば、こういう後知恵判断の一つが、ちょっと話がずれてしまって申しわけありませんけれども、今大変な話題になっておる従軍慰安婦の問題ではなかろうかというふうに思います。  この昭和六十年代の金融政策考えるときに、今副総裁が御指摘になられたのは大変に的を得たものであろうというふうに私も思います。後になって反省すべき点はあったということであったかもしれませんが、そのときの状況において、財政政策に隷従させられてこの選択をとらされたのだということでは全くなかったというふうに私は思うのであります。  バブルないしは資産インフレ、とりわけ不動産価格の高騰というものは、その当時アメリカあるいはオーストラリアでもあったわけでございます。不動産融資が非常にふえる。ただ、住宅なども着工件数がふえたわけでありますから、それは大変な景気に対する効果があったわけでございます。反面、地価が高騰をし、担保価額が上昇し、土地関連融資という自己増殖が起こりました。  結局、この金融機関の暴走を防げなかったのは、一つには土地神話。とにかく地価は下落したことがない、あるいは常に国民所得の伸び以上に地価は上昇し続けるんだと。そして、第二にはノンバンク経由の融資にメスが入らなかったこと。第三番目が銀行検査あるいは考査部門が甘かった。こと。つまり、金融自由化という波の中では、こういった検査、考査部門というのは逆に強化をされなければいけない部門だったと思いますけれども、そういう部門が残念ながらないがしろにされてしまった。そういう中で、バブルの発生と崩壊を経験し、金融機関の膨大な不良債権というものを抱えていくことになったのだろうというふうに思うのであります。  私も、巷間言われますようなモラルハザードの問題は極力回避していくべきだというふうに考えます。銀行業というものは、経済全体の決済システムを担っているという公共性から、どの国でも政府当局の厳しい監視下に置かれている状況がございます。チェックをしないと、預金者から集めたお金を勝手に危険度の高い投資に回してしまうおそれがあるからこそ、まさにこういった事後のチェックシステムというものは大事なことなのだろうというふうに思います。  そこで、今、当委員会ではございませんが、金融監督庁法案というものがかかっております。これは、とりもなおさず金融の事後チェックシステムを強化していこうという意味でつくられた法案だというふうに私は理解をしておりますが、どうも世間の理解というものは、いかにこういったチェック部門を大蔵省から切り離すか、そういうレベルでの議論に終始をしているような気がするのでございます。  本当にそういう議論でいいのかなという思いが私はするのでございますが、福井副総裁におかれましては、そういった財政と金融の分離というような議論の中で、この法案に対する御感想がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  102. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答え申し上げます。  金融監督庁をどういうふうに組成すべきかというのは行政組織の問題でございますので、組織論として日本銀行から格別のコメントを申し上げる立場にはないと思いますけれども、渡辺委員指摘の、こういう金融環境の大きな変化の中で、金融機関に対する監督機能というものがどう変わるべきかというふうな視点、これは私どもも非常に大事な視点というふうに考えております。  委員が御指摘になられましたバブル期における金融機関行動というのは、まさに大きな環境変化金融機関の行動変化がマッチして変化し切れなかった、そのギャップから生じた部分が非常に多いわけでございます。つまり、金利の自由化が急速に進む中で、金融機関が自己責任原則というものを身につけるいとまもないままに、大きな環境変化への慌てた対応をせざるを得ない状況になったということが一つ大きくあったというふうに思います。  したがいまして、今後一層市場化あるいは国際化という流れが強まっていくという展望のもとに立ちますと、なおさらのこと、金融機関に対する監督の視点というものは金融機関の自己責任原則に基づく行動というのを一層促す方向でなければいけないし、しかし、そうなれば市場の中で予想せざるところにいろいろな形のリスクが集積する可能性、システミックリスタの可能性というのは従来以上に予見しがたい形で所々方々に出てくる可能性が強いということでございます。したがいまして、金融機関の自主的な行動を一方で促しながら、一方で、金融機関の経営そのものの中に、あるいはマーケット全体の中に、どこにリスクが集積しつつあり、それを早くチェックして早く是正する手だてを講ずるか、こういう機能がしっかりと果たせるような金融機関に対する監査機能日本金融当局がしっかり身につけていくべきだ、そういう考え方は私も渡辺委員としっかり共有しているところでございます。
  103. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 この前の質問の中でも指摘をさせていただいたところでございますが、日本銀行調査月報、平成二年の四月号「わが国における近年の地価上昇の背景と影響について」、これは大変すばらしい論文だというふうに私は理解をしておるのでございます。平成二年の四月でありますから、大変にある意味で先見の明があったのかなという気がいたします。この論文においては、こういう指摘がなされております。  地価が短期間に急上昇すれば、その後反転する可能性がある、その場合には個別金融機関の経営不安定化にとどまらず、場合によっては金融システム全体の動揺にもつながりかねない、不動産関連貸出の焦付きは中小金融機関やノンバンクにおいて発生しやすい、 ということを指摘しております。平成二年の四月の調査月報であります。  続いてこういうことも言っております。  通貨価値の安定という観点からみると、地価の急激な上昇は一般物価の動向と無関係ではない。また、海外諸国の経験に照らしてみても、信用秩序維持という観点から、急激な地価変動に伴う混乱を未然に回避することも重要である。  金融機関が不動産関連の貸出を実行する際、十分な審査を行い、リスク管理の徹底を図ることも重要である。金融機関のリスク管理は不動 産関連貸出に限らず、銀行業務全般にわたって重要であるが、不動産関連のエクスポージャーが不相応に大きければ、地価変動の影響を受け易くなる。日本銀行もこのような観点から、本支店における金融機関との日々のコンタクトや実地考査等の機会を通じてそうしたリスク管理の重要性を強調している。 平成二年の四月のレポートでこういう指摘がなされているのであります。御案内のとおり、その後、大変な不良債権の問題がこの日本を覆っていくことになります。  これは経済界という雑誌、平成三年のたしか三月号か四月号でありますが、ここに日本銀行のブラックリストというものが出ております。危ない会社の三十七社、こういうリストの中には、例えば桃源社、オクト、共和、イ・アイ・イ・インターナショナル、尾上縫、末野興産、こういったその後世間を騒がす有名な企業がずらりと並んでいるのであります。日本銀行がこのブラックリストをつくったとするならば、これは平成二年の暮れ、つまり、先ほどの調査月報が出てから半年後にはもう既に把握をしていた。ということは、もう既に政策転換の効き目が出ておったということであろうと思います。  この日本銀行のブラックリストの存在について、副総裁は御存じですか。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席
  104. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  まず、九〇年の四月の調査月報のことでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、八〇年代後半の金融政策というものを、既にその時点で振り返って私どもは点検作業をいたしまして、土地の価格の大きな変動というふうなものと金融政策関係ということを真剣に考え始めたということでございます。と同時に、一たん異常に上昇しました地価あるいはその他の資産価格というものは、やはり山高ければ谷深し、必ず大きく低下せざるを得ない局面が来るということも予見しながら、この論文をつくったということでございます。  そして具体的に金融機関に対する私どもの対応の中身として、不良資産というものがどういうふうに出始めているのか、具体的にどういうところに出始めているのかということは、金融機関を通じてヒアリングを始めた、私どもも逐次情報を蓄積し始めたということでございます。ただし、御指摘の雑誌に出ておりますようなリスト、それを私どもがつくって、それが雑誌に掲載されているということではございません。それは恐らく別途の取材に基づくものであろうというふうに考えております。
  105. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 とにかく非常に危ない会社がたくさんある。その実名まで日本銀行が知っていたことは間違いのない事実だ。私は、このリストの存在について、あるという内部情報を得ております。したがって、これはもう間違いなく存在する。  結局、私が申し上げたいことは、その後の例えば住専あるいはノンバンクの膨大な不良債権について、日本銀行はその発生の初期の段階から極めて正確な情報を持っていたはずだと私は思うのであります。とするならば、結果責任が問われるこの世の中において、日本銀行は一体どういう結果責任をとってきたのか。残念ながら日本銀行は全く結果責任をとっていない、私はそう申し上げざるを得ないのであります。  大蔵省は、今大変な非難の矢面に立たされております。場合によっては解体をされるかもしれない。我々政治家は、選挙でその責任を問われたのであります。この経済をつくってしまったことについて、唯一、日本銀行のみが責任をとらずに、自主性を高められ、独立した中央銀行としてスタートをする、そういうことが許されていいのか。私は断じて許されないというふうに思うのであります。  では、日本銀行の責任のとり方は一体どういうことがあるのか。それは、例えば総裁の給料が高過ぎる、あるいは全体的にそうだ、ですからこれを下げよう、そういう一つのスリム化の努力もそうでありましょう。あるいは、遊休資産をたくさん持っておる、そういうものを処分してスリム化していこう、そういうことでもあるでしょう。しかし、私は、そういう努力と同時に、もっとシンボリックな意味で日本銀行の責任をとっていただきたいのであります。  例えば、住専問題において当時言われましたことは、お金を出す人はイコール責任をとる人である、そういうことでありました。業務純益をつぎ込んでもどうしても六千八百五十億円足りないというのであれば、平成七年度の九月の中間決算において日本銀行が出しておる剰余金、七千百億円あったはずであります。どうしても六千八百五十億円足りないというのであれば、日本銀行の半期分の剰余金を直接、住専処理機構なり預金保険機構なりに贈与をして、きちっと日本銀行が責任をつけるべきだったのではなかろうかというふうに思うのであります。  今回の改正法においては、いわゆる特融というものについて、現行法とはかなり違った規定がなされております。つまり、特融というものは、大蔵大臣が特融の要請をすることができる、それに対して日本銀行はその要請を拒否することもできる、こういうように書いてございます。当然のことながら、中央銀行としてのモラルハザードを回避し、そして中央銀行の財務の健全性を維持していこうという趣旨からは理解の得られることかもしれません。  しかし、例えば今、平成八年九月期のバランスシートにおいてもわかるように、木津信用組合につき込んでいる貸付金の九千億円、こういうものが本当に戻ってくるのか。そして最近では、日債銀につき込んだお金が本当に戻ってくるのか。もし戻ってこないことがわかっているのであれば、つなぎ資金というような形で出すべきではないのだろうと私は思うのであります。  来年の四月一日からは、日本銀行は真に自主性を発揮できる銀行になるのであります。しかし、護送船団はそれから先も何年間かは続いてまいります。時間差があるのです。そういう中で、大蔵大臣が要請をしても特融を拒否する、つなぎ資金は出せないというのでは、私はますます日本銀行の責任論というのは一体どこへ消えてしまうんだという気がしてなりません。ですから、日本銀行の責任をとるには、みずからの身を切って剰余金を吐き出す、これはつなぎ資金ではないんだ、そういう形で責任をとることは必要だろうというふうに私は思うのであります。その上でリストラをやったらいいのです。  ですから、剰余金というものがある意味で主計局のポケットの一部になっておる、そういう実情も私は理解をしております。とにかく、日本銀行が責任をとることなく、新日銀法のもとにおいて糸の切れたたこのような形で飛んでいかれることだけは、絶対に認めるわけにはまいりません。  御感想がありましたら、お聞かせいただきたい思います。
  106. 福井俊彦

    ○福井参考人 ただいま渡辺委員から、日本銀行政策運営の過程において明確な責任意識を持ってこれに当たるようにと強いお言葉を賜りました。私どももそれは肝に銘じて、今後ともしっかりやっていかなければならないというふうに思っている点でございます。  それから、特融に関しまして、新法で大蔵大臣の要請を拒否できる内容となっているのではないかこれが適切かどうかというふうな具体的な御質問もございました。  私どもは、大臣の要請を単純に拒否することが主たる目的規定であるというふうには実は理解をいたしておりません。この点につきましても、特融というふうな、日本銀行が本来持っている機能のぎりぎりのところでシステムの救済措置を講ずる場合には、大蔵大臣も非常に責任ある判断をもって日本銀行に要請されるでありましょうし、日本銀行がこれにおこたえしていく場合にも、今渡辺委員が御指摘になられましたとおり、日本銀行としてのしっかりした考え方と責任を負える形 でこれにおこたえしたいということでございます。  したがいまして、日本銀行がお断りした結果、ジステミックリスクが起こるというふうなことがあってはならないという考え方の規定でございます。
  107. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 時間が迫ってまいりましたので、次の質問に移らせていただきます。  新日銀法によって、従来のいわゆる護送船団から市場原理への劇的な転換を日本銀行も遂げていくことになります。いわば新しい過渡期の船出をするわけでありまして、国会に対する説明責任というものは、その中で極めて重要なことになるのであろうと思います。我々国会議員も、日本銀行とのおつき合いにおいては、いわばならし運転の期間をこれから経なければなりません。日本銀行においても同様でございます。  とするならば、私は、先ほど田中議員が主張されましたように、日本銀行総裁の任期については短縮をすべきであるというふうに思うのでございます。そして、経過規定の第七条で言っておりますような残任期間については、内閣の任命があったものとみなすというところは、私は、国会の同意を得た上で、両議院の同意を得た場合に限り、新法の規定により総裁または副総裁として任命されたものとみなすというふうに改めるべきだということを申し上げて、私の演説を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  108. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 次に、秋葉忠利君。
  109. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 社民党の秋葉でございます。日銀法改正案について、あるいはそれに関連した点について何点か質問したいと思います。質問通告のときの順序等と少し変わるかもしれませんけれども、基本的なことを何点か伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  最初に、現行法との比較といいますか、現行法がどういうふうにこれまで実際に効力を発揮してきたのか、あるいは部分的には無力だったのかというところから始めたいと思います。  現行法、昭和十七年にできた法律の第二条には、明確に「国家目的」という言葉が入っております。国家目的を遂げるために日銀がその機能を発揮するということだと思いますが、この国家目的というところの解釈がない限り、本当に日銀がその機能を果たしてきたのかどうか評価できないということになりますから、国家目的とはどういうふうに解釈をしてきたのか。昭和十七年とそれから戦争が終わった昭和二十年、一九四五年とはまた違っていると思いますし、それから特に最近、一九八五年以降、国家目的というのはどういうふうにとらえられてきたのかこの点をまず伺いたいと思います。
  110. 松下康雄

    松下参考人 ただいま御指摘現行法の第二条の「国家目的ノ達成」という点でございますけれども、この点につきましては、やはりもともとは戦時体制という法律制定当時の事情から生まれた規定でございます。  ただ、戦後の時代になりまして、我が国の経済環境が一変をいたしました後、日本銀行法におきましても、政策委員会が設置をされまして金融政策の運用につきましての責任を持つというような性格の変化がございましたことに伴いまして、いわゆる国家目的ということの解釈も大きく変わったと思っております。それは、すなわち物価の安定と金融システムの安定を通じまして国民経済の健全な発展に貢献するということがここにいう国家目的でございまして、日本銀行といたしましては、これを公的な使命と感じながら、その使命の達成に努力をいたしてきたというふうに考えております。
  111. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 それが常識的な解釈だと思いますが、昭和十七年の解釈とそれから戦後の解釈とは非常に大きく変わっているということも、ただいまの御答弁の中ではっきりとしているわけです。  法律との関係で伺いたいのですけれども、そういった解釈を変更する、当然解釈が変更されているわけですが、その解釈の変更はどういう手続でだれが行ったのか。具体的に議論をして国家目的解釈はこういうふうに変えましょうということで、明示的にその解釈の変更を行ったのか。あるいはそうではなくて、時代の風潮にそのまま何となく流されるといいますか、そういった形での、これを自然にと言っていいのかどうかわかりませんけれども、時の流れに従った解釈がそれなりに定着していったのか。そのあたりの具体的な解釈の変更についての手続はどういったことが行われたのかを伺いたいと思います。
  112. 松下康雄

    松下参考人 戦後の事情につきましては必ずしもつまびらかではない点もございますけれども、私の思っておりますことは、先ほど申しましたように、戦後新たに日本銀行政策委員会というものが設置をされまして、これに金融政策の遂行の責任が与えられたという非常に大きな法律改正があったわけでございます。  この改正は、当時の日本の経済運営なりあるいは行政の制度なり、全般を通じた大変革の中の一つの要素として、そのような意識の中で明確に議論をされ、そしてそれが法律の中に入ってまいりました改正でありますので、私、思いますのに、日本銀行の公的な目的というものの解釈も、この時期をきっかけにいたしまして全体に変更されるに至った、あるいは変更が事実上行われ始めていたのであるけれども政策委員会の制度の導入とともにそれが明確に法律の上でもあらわれるようになったのであろうと理解をいたしております。
  113. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 実態としてはそれでいいのかもしれませんが、法律がまずあって、その法律に従って業務を行うというのが通常の形だと思いますけれども、今の御答弁ですと、設置されたその政策委員会がいわば独立に日銀業務内容を決定した、その決定の結果が結局は法律趣旨解釈に適用されたというような感じです。そうなりますと、政策委員会独立性の方が大きくて、法に従って政策委員会がその業務内容を規制されているということではなくて、政策委員会の決定が先にあって、それに従って法の解釈が後からついてくるというような実態だったというふうにも聞こえます。  政策委員会が設置されて以来、日銀政策委員会というのは、いわば超法規的とは申しませんけれども法律が先にあるのではなくて、政策委員会の決定が先にあってそれに従って法の解釈が行われて当然であるという方針で運営をされてきたのでしょうか。
  114. 松下康雄

    松下参考人 先ほど申し上げました点は、政策委員会の制度の導入というような日本銀行の組織また運営の内容を基本的に変えるような変更が行われましたことは、それ自体が日本銀行の公的な使命に関する法律規定解釈の変更というものを前提といたしまして、それを形の上で実現をしていく、その一つが政策委員会であったように思うのでございます。  ただ、この点につきましては、そのままで解釈の変更だけによって日本銀行法は安定した法律として存続できるかどうかというような点を含めまして、その後、何回かにわたりまして日本銀行法全体の改正に対する議論が行われてきたところでございますので、そういう実質的な解釈の変更による性格変化法律の上でも明らかにしたいという努力は、その後も今日まで実は行われてまいりました。今回、それが法案の形に実ったというふうに理解をいたしております。
  115. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今のお答えの方がはっきりわかったような気がいたします。  それで、先に進みますけれども、今回の日銀法改正は、そもそも改正が必要であるという意思が、日本社会、特に日銀も含めて大蔵周辺に起こってきたわけですけれども、その理由の一つとして、先ほどの渡辺委員質問にもありましたように、バブル期の日本金融政策等についての反省があるというふうに私は考えております。  簡単に要約してしまえば、日本とドイツとは大体同じ時期に公定歩合を引き下げ始めたけれども、最終的にはドイツではバブルは起こらなかっ た。日本ではそのバブルが非常に大きな問題になり、その結果として、さらに大きな問題を生ずることになってしまった。その反省の一つとして、日本銀行独立性ということが特に重要ではないか。  もちろん、バブルだけで今回の法の改正という考え方が出てきたとは思いません。今もおっしゃいましたように、戦後のさまざまな改革の中で、あるいは状況の変化等によることもありましたし、あるいは大蔵省全体のあり方についての反省もあったわけですから、これだけとは言えませんけれども、一つの理由として、例えばドイツと日本中央銀行あり方とバブル経済との関連、それについての反省が一つの重要な契機であったというふうに考えております。この点について、これは大蔵の方からお答えいただくのが適切なのかもしれませんが、お考えをお聞かせください。
  116. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  確かにバブル経済を我が国は経験をし、またその重大さに、改めて私どもがかなり痛手を受けているということも事実でございます。そうしたことを振り返ってみて、やはりこれからまたそういったことを繰り返しちゃならないし、また一方で世の中はどんどん変化している。そうしますと、金融行政を含めまして広くシステムを新しくしなければいけない、そういったふうな考え方になっていったわけでございます。  そのときに、日銀法というものを眺めましたときに、戦前につくられ、一部政策委員会の変更はございましたけれども、かなり旧態依然たる法体系になっている。運用でもってかなり実質的には日銀独立性というものを尊重しながらやってきたつもりでございますが、法令上もきちっとそれをはっきりとさせ、またあわせて透明にするというようなことを図るということで、広く新しい時代に向けてのシステム、また過去の反省を受けてのシステム構築というようなことで、この必要性が出てきたものというふうに理解しておるところでございます。
  117. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 わかりました。  その上で、今お答えの中にありましたように日銀独立性、それから透明性を高める、それが今回の法改正の主目的だということですけれども、具体的な内容を見ますと、独立性の部分、さまざまな制度的な変更によってその独立性を保つという目的を達成することになっておりますが、その中の重要なポイントが政策委員会の機能強化ということだと理解をしております。  特にこの点について、これまで日銀政策立案の中心であった役員集会を廃止するということが述べられておりますけれども、この点について、役員集会の廃止というのは具体的にはどういうふうに担保するのか。これは法律上、役員集会というものは法律で決められている存在ではありませんから、どういうふうに廃止を担保していくのか。そして政策委員会の機能強化をその他の点でどう担保するのか。簡単に説明をしていただきたいと思います。
  118. 松下康雄

    松下参考人 現在の役員集会は、日銀の定款に基づきまして、業務の執行につき重要なる事項審議するということのために設けられております。改正法案におきましては、業務の執行の基本方針に関する事項議決及び職員の職務の執行を監督することは、これは明確に政策委員会の権限ということにされているわけでございます。一方で、日銀の内部の理事は、政策委員会の定めました方針に従って、政策委員会の監督のもとで業務執行を行うという位置づけになるわけでございます。  こういった考え方に変更されますので、私どもの定款その他の規程を通じまして、そういう意味での理事段階での職務の変化というものは明確にこれを規定し、実行していく考えでございます。
  119. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 それと同時に、これはまた日銀法改正とは別の考え方から出てきていると思いますけれども日銀総裁給与の問題ですね。これが総理大臣よりも高給ではないかというような指摘等あり、最終的には日銀総裁給与も引き下げられるということだと思います。  そうなると、当然理事給与も引き下げられるということになるのだと思いますけれども、同時に、今のお話の中にありましたように、これまで役員集会として実質的には日銀理事レベルでさまざまな重要な決定を行ってきた、業務執行上の具体的な決定はこの役員集会で行ってきたわけですが、法改正によってその重要な権限がなくなってしまう。同時に、これはまた別の理由でありますけれども給与まで下がる。  実質的に降格人事ということがこの日銀法改正の背後にはあるわけですけれども総裁も含めて理事皆さんの間から、そういった制度の改正について、これは全面的に大歓迎ですという形で日銀内で迎えられているのか、あるいは給料も下がって権限もなくなっちゃって、一体我々は何のために仕事をしてきたのだというような声が上がっているのか。その辺の実態をお教えいただきたいと思います。
  120. 松下康雄

    松下参考人 政策委員会につきましては、政策決定に責任を持つという点に加えまして、業務執行の基本方針に関します事項議決あるいは職務執行の監督ということが入ったわけでございますけれども、ただ、日銀内部の役員といたしましては、そのように定められた業務執行の方針に基づきまして現実の業務を行っていく。すなわち、例えば定められました金融政策の運営方針に沿っての日々の市場を通じる業務運営の実行について、これを適切に監督していくというような極めて重要な事項については、引き続いて担当をいたしていくわけでございます。  そういうことでございますので、政策委員会の機能、職能というものとは別の分野でございますけれども政策の運営におきましても、また業務の執行におきましても、その機能は非常に重要なものであり続ける。それに従って、理事の諸君にはその職責を十分に発揮してもらうように努力をしていただく必要があると考えております。
  121. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そういたしますと、非常にへんてこなことになる。今まで役員集会というのが定款上定められていた。それが廃止され、そしてそこでの業務は実は政策委員会に移るというのが、これは一般的な理解でありますけれども役員集会は何ら有益な役割を果たしていなかった、そしてそこに出席をしていた理事皆さんも、具体的には自分の仕事の内容に変更が起こるほどの、仮にその役員集会がなくなっても痛痒を感じない程度の仕事が実はこれまでの日銀の中枢にあったということになってしまいます。やはりそれはちょっと理解しがたいところなのですが、この点については、また関連して政策委員会のほかの点と一緒に伺いたいと思います。  これまで政策委員会、休眠委員会というような言葉も実際マスコミでは使われているわけですけれども、この政策委員会の人選がこれまでどういうふうに行われてきたのか。その点について、具体的にどのような形で人選を行ってきたのかを伺いたいと思います。
  122. 松下康雄

    松下参考人 現在の政策委員会の人選につきましては、法律規定に基づきまして、大蔵省代表、経済企画庁代表は別といたしまして、その他金融業に関してすぐれた経験、識見を有する方が二人、そのうちの一人は地方銀行、他の一人は大都市銀行に対しての経験と識見を有する方、また商業及び工業に関してすぐれた経験と識見を有する方、農業に関しすぐれた経験と識見を有する方ということで、それぞれの分野から人材の選択をいたしておりますが、今後につきましては、そういう業務分野的な考えでございませんで、広く経済全般、金融問題につきましての高度の識見と経験を有される方々の中からお選びをするということで、その選択の範囲も、具体的にはまだ今後の検討の対象でございますけれども、例えば学問の世界での金融、経済に関する具体的な高度の識見を有された方というような方も範囲の中に含めながら選択を考えていくことになると思います。
  123. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 すぐれた経験と見識を有する方、今 までもそういった方を選んでいたということですが、分野を限ったために業界の代表になってしまったというような批判もあったわけです。  その当否は別として、今の御答弁ですと、分野を限らない、広い分野から人材を求めるということが一つ。それから、すぐれた経験と見識を有する以外に高度の経験と見識ということで、その方がもうちょっと人材的にはよりすぐれた人ということになるのかもしれませんけれども、それで政策委員会がうまく動くのだというような、その二つの条件を付すことによって政策委員会がより強度の機能を持つというふうに私には聞こえたのですけれども、間違っていたら訂正していただきたいのです。  そういった抽象的なレベルの話ではなくて、政策委員会が機能しなかった理由はたくさんありますけれども、その一つは、最終的には、これは官僚の天下りが結局政策委員になるといったような悪弊ができてしまったために、官僚制度一般の疲弊の結果として政策委員会が休眠委員会というような批判を受けることになってしまったのではないかと思いますけれども、具体的に、各省庁のOB、いわゆる天下りがどの程度政策委員にこれまでなってきたのかその具体的なデータがあればお教えいただきたいのです。印象でも結構ですけれども、そり弊害について簡単に御説明いただきたいと思います。
  124. 松下康雄

    松下参考人 これまでも各界から選択、選抜をせられる方々の中にはおっしゃるように官庁の経験をお持ちの方も含まれておりますが、私どもも、ただいまはその方々の人員その他は把握いたしておりませんので、お答えをにわかに申し上げかねます。  ただ、人選をいたすに当たりまして、例えば官庁の経験が何らか優先的にこの人選の中で働くというようなことは全くなしに、それらの分野の中で候補者と考えられる方々の中で現実にお願いできる方、お願いすべき方を公平な立場で選んできたという方針は貫かれてまいったと思っております。
  125. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そこのところは評価の分かれるところだと思いますけれども、具体的にどういうつもりで選人できたということよりも、ここは事実によってきちんとした判断をすべきところだと思います。この日銀法改正案についてはまだ審議が行われますので、その中できちんとしたデータを提出していただきたい、これをお願いしたいと思いますし、その仕事の評価の仕方についてもまた別の問題提起をしていきたいと思います。  今お話の中にありましたように、より広く人材を求めるということですから、せっかくの機会ですので私は一つ提案をしたいのですけれども、ただ単に自分たちの知っている範囲内からだけ選ぶということではなくて、例えば公募制度。日銀政策委員として、例えば一定の資格、こういった分野について最低限これくらいの仕事をしてきた人、あるいは年齢的にも恐らく二十代の人では経験がないと思いますから、それなりの経験等条件を精査した上できちんと決めて、その上でその資格に合う審議委員というものを公募するようなことも当然考えるべきだと思いますけれども、そういった点について、公募制度等についてはお考えいただけるものかどうか。  それからもう一つは、天下りの是非については、具体的にはデータによって議論をしていきたいと思いますけれども、順番が逆になりますけれども、この際ですから一緒に提案だけさせていただきます。この政策委員については、天下りということはこの際はっきりとやめるという大方針をつくるべきだと思いますけれども政策委員会の人選について、この二点どうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  126. 山口公生

    山口政府委員 先生の御提案につきまして、一つは公募制をとったらどうかというような御提案がございました。  将来いろいろなやり方というのを考える必要もあろうかと思いますが、各国ともそういった制度はとっておりません。また、日銀政策委員会のメンバーというものは、相当高度な知識、技術的な意味でもかなりの知識を持っていただく必要があるというようなことから、今すぐにそういった制度にいけるかどうかというのは、私は疑問ではないか、また直接にそういった形で選ぶということについてもいかがなものかという気もいたすわけでございます。  それから天下りの問題でございますけれども、私どもいろいろ政策委員方々を選定する際に、官僚であるからとかということでもちろん選んでいるわけではございません。広く選ぶという基本方針でございます。ただ、すぐれた経験と識見を有する者ということで選びますと、こういう人はだめだ、こういう前歴を持った人はだめだということになりますと、いよいよそれが狭くなってしまうということもございますので、そうした規制を設けられますと、なかなかこれからいい人たちになっていただけないという危惧を私どもは持っておるわけでございます。
  127. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 何か官僚の天下りがだめだと言うと有能な人材の集合が物すごく小さくなってしまうというようなお答えで、それは官僚の皆さんにとっては心地よい評価かもしれませんけれども、官僚以外の人間にとっては大変不本意な評価だと私は思います。  狭くなってしまうといけないというところがあるので公募をしたらどうかということを申し上げているので、公募をするというのは、その資格とかあるいは経験その他すべて全く捨象して、公募をしてきた人、最初にそのアプリケーションが着いた人を選ぶということではありません。きちんとした条件をつけて、その条件にきちんと適合した人を選ぶということですから、選択の幅が広がるという意味がありますけれども、必ずしもそれがその人の持っている才能であるとかあるいは経験、資質といったものを妥協して選ぶということにはならないというところ、そこのところの誤解があるという気がいたしますので、その点だけ申し上げておきます。  それで、時間がありませんので、最後に一つだけ伺っておきたいのですけれども日銀がかなり前から、これは先見の明があるというふうに申し上げたらいいのかもしれませんけれどもゴルフ会員権を所有していた。これは日銀だからゴルフをやっちゃいけないということにはならないので、そういう短絡的なことで申し上げているのではありませんけれども、しかし、一体どういう目的のためにこのゴルフ会員権日銀としては所有してきたのか。一体どういう人がこの会員権を利用して実際にプレーをしてきたのか。総裁理事政策委員、いろいろと偉い人はたくさん日銀の中にはいますけれども、大体どういった人が使用するということで、どういう目的でこの会員権を保有していたのかを簡単に御説明いただきたいと思います。
  128. 松下康雄

    松下参考人 日銀が現在持っておりますゴルフ会員権は。昭和二十年代から三十年代にかけまして購入したものがほとんどと聞いておりますが、この保有の目的は、当時、日本銀行支店長等の職務にある人々が地元の金融界経済界方々業務上交流する機会が多い。この点は、日銀業務自体が行政的な権限に基づくものではありませんで、市場あるいは金融機関相対でのいろいろの取引を通じて行われていく面が大きいという点にもかかわっているかと思いますけれども、そういった方との意思疎通を図ります上で、日銀側もゴルフ会員権を保有していることが適当であるという考え方で購入したということでございます。  したがいまして、主として支店長等が地元の金融界経済界方々と交流するという機会にこれを利用するいう実例が大部分であるというふうに聞いております。
  129. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 時間が参りましたので、今回あと連休明けにまた三十分ぐらい質問させていただきますけれども、その間にできれば現在の会員権についても、それではどの地域のどういうクラブなのかといったこと、それから先ほど申し上げました ような天下り大事についてのデータがございましたら、これをぜひお願いいたして、私の質問を終わらせていただきます。
  130. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 午後一時二十分に委員会を再開することとし、この際、休館いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  131. 金子一義

    金子(一)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により、私が委員長の職務を行います。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  本案審査のため、来る五月九日金曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 金子一義

    金子(一)委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  133. 金子一義

    金子(一)委員長代理 質疑を続行いたします。北脇保之君。
  134. 北脇保之

    ○北脇委員 新進党の北脇保之でございます。  本日は、日銀法案について質問をいたしますが、その前に、本日、大蔵省から日産生命業務停止命令が出されました。そして、きょうの冒頭に、大蔵大臣からも政府としての対応の基本方針についての御意見がございましたので、この日産生命業務停止命令の問題につきまして、まず伺わせていただきます。  大蔵大臣のお話の中で、間違いなければ、新保険業法に基づき契約者に不安のないように対応していくということだったかと思いますが、その対応をどうするかということをお聞きしたいのですが、まず、その前に、事の順序として、この日産生命が経営破綻に至ったその原因は何かということについて、お聞かせをいただきたいと思います。
  135. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  日産生命保険の経営破綻の原因でございますが、日産生命におきましては、高金利の時期でありました昭和六十二年から平成二年、いわゆるバブルの時期にかけまして、極めて高予定利率五・五%中心の個人年金保険を他社に比べて異常に大量に販売して、短期間に業容を拡大したわけでございますが、その後、バブルの崩壊によりまして、市場金利の低下あるいは株式価格の低下等の影響を受けまして、運用利回りと予定利率の間に大幅な逆ざやが生じたというのが大きな原因でございます。  日産生命は、当然、経営改善努力を続けておりましたが、その後、最近に至りまして、株式投資の失敗があり、この八年度の株価の低下をもろに受けまして含み益が枯渇したわけでございます。今期は大幅な赤字決算となる見込みに至った、そういうことから、日産生命におきまして、今後の事業継続が困難であるということをけさの取締役会で決議したわけでございます。
  136. 北脇保之

    ○北脇委員 経営破綻の原因については、急激な業務拡大とか株の投資の失敗、そういったことだということでございます。  この件について、国民の立場で一番大きな関心といいますか問題、それは契約者が保護されるのかどうかということかと思います。契約者が全面的に保護されることになるのかどうかそのことをポイントとして、この日産生命に対する対応策、これについてお聞かせいただきたいと思います。
  137. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 御指摘のとおり、経営破綻の際に契約者の保護を図ることが最も肝要でございます。  本日、保険業法に基づきまして、日産生命に対して一部業務停止命令と、引き続きまして保険管理人による業務及び財産の管理を命じまして、保険管理人の選任をいたしたところでございます。具体的には、社団法人生命保険協会を選任いたしたわけでございますが、この命令によりまして、日産生命業務の停止を行うわけでございますが、保険管理人の方から大蔵大臣に対しまして、停止する業務の範囲としては、新規保険契約の締結、解約等の一部業務についてのみ停止を行いたいという申し出がなされておりますので、保険金等の払い出しとか既存契約の保険料の受領等の業務については業務が停止されず、引き続きとり行われることになっております。また、今後とも、保険管理人から業務について新たに停止を解除する旨の申し出があれば、必要な範囲で認めていくこととさせていただこうと思っております。  また、業務停止等の関係は以上でございますが、それを離れて、保険契約者の保護のためには、保険管理人に対しまして、保険契約の移転に係る計画の策定を命じたところでございまして、早急に移転計画を作成することを期待しております。  私どもとしましては、契約者の保護を図るためには、何分保険は長期性を有するものですので、保険契約が移転されるということが最も契約者の保護に資すると思っておりますので、そのために、契約者保護基金への支援要請あるいは関係業界への支援要請等について最大限の努力を行ってまいりたいと思っております。
  138. 北脇保之

    ○北脇委員 今、保険契約者保護基金の活用ということについて触れられましたけれども、この制度によりますと、保険契約を引き取る保険会社に対して二千億円を上限とする資金援助ということが定められているかと思うのですが、この日産生命の場合に、その保険契約を移転する場合、引き取るコスト、あるいは代価というふうに言った方がいいのかもしれませんが、それがどれくらいになるのか、そしてそれが二千億円を超えることになるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  139. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 日産生命につきましては、今後、大蔵検査を行う予定でございまして、その検査を行ってみた結果、計数としては正確なものが判明すると存じますので、現段階で、どれくらいのコストになるかということは、確たることは申し上げられません。  いずれにしましても、契約者保護基金を十分に活用して保護を図ってまいりたいと思っております。
  140. 北脇保之

    ○北脇委員 その引き取りのコストがどれくらいになるかということは大蔵検査を待たないとわからない、それはそれとして受けとめますが、ただ、一つの仕組みとして考えていった場合に、二千億円を仮に超えるということになれば、そこの超える部分をどう対応していくのか。つまり、その資金援助が保護基金からなされなくても引き受けるといいますか移転を認める他の生命保険会社があればそういうことは実行可能なんでしょうけれども、それは経営負担を他社に押しつけるということになる。そういう点で、もしそこまで引き受ける会社が出てこない場合はどうするのかその辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  141. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 制度的な御説明で恐縮でございますが、今後、その保険契約の移転につきましては、保険管理人におきまして移転計画を作成いたしますので、その計画を作成する段階でどのような移転になるかを詰めてまいるということでございまして、今のところ、いろいろな移転の仕方があろうかと思いますけれども、今はまだそのスキームが策定される前の状況でございますので、今後、保険管理人とよく御相談をしてまいりたいと思っております。
  142. 北脇保之

    ○北脇委員 それから、日産生命の損失について、これをどう解決していくかということもあろうかと思うのですが、その点で、先ほどの御説明の中でも生命保険各社に対して協力を求めていくということだったかと思うのです。  今の保険契約の移転の件、そしてまた損失の負担ということ、その二点において生保の各社の反応といいますか対応の状況はどうなのか、その点 をお聞かせいただきたいと思います。
  143. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 昨年発効いたしました新保険業法の中に、ただいま申し上げましたような契約者保護基金を中心とする救済のスキームが盛り込まれておりますので、この点につきましては、保険業界としても全力を挙げて支援をしていただけるものと考えております。
  144. 北脇保之

    ○北脇委員 今回の個別のケースとして、とにかく保険の管理人であるとかまた生保の各社、そして当事者である日産生命といろいろ協議しながら対応していくということかと思います。  しかし、ここで一つ問題となって明らかになってきたことは、今までこの国会においても、銀行などの破綻のときに対応するスキームはどうなのかということがございました。その中で、金融三法で一応対応するということになってはおりますが、公的資金の導入のことを含めて、また預金保険機構の財源の状況、そういったもので銀行破綻のときに果たして対応し切れるのかどうか、また預金者保護でいくのか、それとも今までのような経営の保護に当たるようなことを続けるのかどうか、こういったことが大変大きな論点として議論されてきたところでございます。それが今回、中堅、中小の生命保険会社でこういう破綻の例が出たということで、保険についてもやはりきちんとした破綻処理といいますか、危機管理の仕組み、セーフティーネットワークといいますか、そういったものを用意しておかなくてはいけないのではないか、こういうことが明らかになってきたのでは。ないかと思います。  そういう意味で、ただいまの仕組みですと、まさに、契約者の保護といっても、これは他の生命保険会社が保険契約を引き受けるということがないと契約の保護ができないという弱点を持っているかと思います。私は、基本は生命保険会社の存続とか保護を図るということではなくて、契約そのものの保護を図っていくべきだ、そう思いますけれども、そういうふうに焦点を絞ったとしても、今の仕組みでは他の保険会社の協力がないと契約の保護ができないというところに弱点があるのではないかと思います。  そういう点で、契約者保護策の根本的な検討が必要だと厚いますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  145. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 十分なお答えになっていないかもしれませんが、まず、今回の日産生命につきましては、あくまで、先ほど申し上げましたように、その経営についてかなり特異な問題があったという、例外的なケースであるというふうに申し上げてよろしいかと思います。  それから、制度的には、御指摘のとおり、現行契約者保護基金につきましては、契約を引き受ける会社が存在することが前提でございます。引受会社がない場合には、現行の制度上は、保険会社は一般の事業会社と同様破産する道しかないわけでございます。それにつきましては、新保険業法の制定のときにも国会の附帯決議をいただいておりまして、引受会社があらわれない場合についてのいわゆる支払い保証制度についての検討を早急に進めるべきであるという御指摘をいただいておりまして、現在、その支払い保証制度につきまして、昨年の秋以来研究会を発足させまして、鋭意検討を進めております。今後、結論が得られ次第、所要の法改正を行い、そういう面での契約者保護を万全なものとするように体制整備したいと考えております。
  146. 北脇保之

    ○北脇委員 この問題については、今後もこの委員会においていろいろな議論が重ねられると思います。やはり国民に安心を与え、生命保険という業態に対しても信認をきちっとしていくという意味で、ただいま当局の方の御答弁のあった支払い保証制度の検討とか、それを早急に進めていただいて、この委員会でのまた御報告などを待ちたい、−そういうふうに思います。日産生命業務停止命令に関する質問は以上でございますので、この点については、これで終了させていただきたいと思います。  次に、本来予定しておりました日銀法法案についての質問でございます。  これについては、私、先般の本会議趣旨説明に対する質疑を行わさせていただきました。そのときにも、総理大臣大蔵大臣から御答弁をいただいたわけですが、仰せ、こちらからまとめて質問して、後、御答弁をいただくという形式でございますので、十分意を尽くせなかった部分もありますので、改めてこの委員会の場で質問をさせていただきたいと思います。  先日の本会議での質疑のときに冒頭申し上げたことは、日銀独立性、こういったことを考える上で、やはり過去の経験というものに対して深く学ばなければいけないということでございました。特にバブル期の経済運営のことを取り上げたわけでございますが、バブル期において、一九八五年九月のプラザ合意を受けてドル高を円高の方に是正していくという合意のもとで、円高不況の対策、そういったこともあって一九八六年中に四回も公定歩合の引き下げがあり、さらに、明けて一九八七年二月に〇・五%のさらなる引き下げがあって二・五%というふうになり、その後、二年三カ月にわたって当時としては超低金利が続いたということで、このいきさつというのが、為替の合意に基づく円高不況をどう克服していくか、そういう課題の中で、当時の財政当局が財政再建を最優先課題ということでこれを崩さなかったために、財政出動ままならない、そういう中で金利を引き下げることで景気対策を講じた、それが非常に長期にわたったために、物価の上昇そのものはそれほどではなかったかもしれませんが、資産インフレとかいろいろな経済の混乱を招いた、こういうことかと思うのです。  そこで、私は、やはりこの経緯というのは、財政政策、これは財政再建ということを堅持していた、その財政政策の方の利害関係と、物価なり資産の安定というようなそうした金融政策との間に利益相反が生じて、これが当時の政府日銀との関係、またそのベースになっている日銀法のもとにおいては金融政策の方が財政政策の方に従属させられた、そういう結果であるというふうに思うわけなのです。  ですから、私は、この間も質問いたしましたのは、決して後知恵で何がよかった悪かったということを言いたいのではなくて、今の時点で、世界の各国が中央銀行独立性ということを非常に重視し始めて、我が国もそれと足並みをそろえつつ日銀独立性を高めよう、こういうふうに推移しているこの今の時点から振り返れば、やはり当時は中央銀行独立性というものに対する認識が政府において必ずしも十分でなかった。ですから、今、この日銀法案の提案ということを踏まえて、単に制度を変えるだけではなくて、やはり政府当局者、もちろん責任ある閣僚の皆さんが物の考え方を変えるということが大事ではないかというふうに思うのです。  ですから、その辺について当時の大蔵当局の考え方が、今の時点で考えれば、率直に言って、中央銀行独立性の尊重において不十分なところがあったのではないか。この点について大蔵当局はどのようにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  147. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 財政に金融を従属させたということがバブルの原因ではないかというようなお尋ねでございますが、まず、バブルがなぜ起きたのかということにつきましては、確かに、プラザ合意以降の急激な円高を背景といたしまして、長期間にわたって金融緩和が行われておったということがあるのは事実でございますけれども、バブルの原因には相当複雑なものがございまして、やはり景気拡大が既に長期に及んでおりまして、日本経済の先行きに対して大変強い、強気の期待があった。そこに、さらに金融機関がリスク管理という十分な認識がないまま融資競争に走って、いわゆる財テクというような現象が起こった。また、右肩上がりの土地神話というようなものがあったといったようなことから、大量の資金が株式市場、土地の市場に流れ込んだために生じたも のでございます。  なぜ、それでは金融緩和をまず行ったのかということでございますけれども、これはまさに御指摘のあったプラザ合意後の円高進行下での景気対策ということでとられたわけでございまして、当時は政策として必然であったというふうに思われます。  もう一つ、金融緩和が長期に及んだというような御指摘がございましたけれども、この点につきましては、六十二年の十月、米国ではいわゆるブラックマンデーという株価の暴落がございまして、世界的な株の連鎖安とドルの暴落を防止するための国際的な金融協調ということがあって、金融緩和策を国際的に進める必要があった。さらには円高も依然として進行して、これに対処する必要があった。また経常黒字も依然として高い水準にありまして、黒字削減、すなわち内需拡大が必要だということであったわけでございます。一方、確かにストックの価格が上昇していたということはあったわけでございますが、午前中日銀からも御説明がありましたとおり、物価は極めて安定した状況にありました。そういうことで、金融政策として金融当局が独自にこの政策をとったものでございます。  財政につきまして付言いたしますと、当時、確かに財政再建が喫緊の課題ということになっておりましたけれども、御承知のとおり、昭和六十一年の九月には、公定歩合が引き下げられた過程におきまして、総合経済対策がとられております。さらに、公定歩合が二・五%に引き下げられた直後の六十二年の五月には、いわゆる六兆円の大変大きな緊急経済対策がとられたわけでございます。  こういうことで、財政事情の大変厳しい中にありましても財政面からの措置をとったということでございまして、財政が金融政策にしわ寄せをしたという事実はありません。確かに、バブルの先行きを十分見通せなかった、今となってみれば、そういう資産価格の急激な上昇、ファンダメンタルズを乖離した上昇がやがて崩壊していくであろうということをもうちょっと見通すべきではなかったかということについては十分反省すべき点があるかと思いますけれども、決して、御指摘のように財政が金融にしわ寄せをしたとかあるいは中央銀行独立性について十分な認識がなかったとかいうようなことではないというふうに思います。  現在の日銀法のもとにおきましても、金融政策の判断は政策委員会の所管でございまして、みずからの判断による金融政策が行われているというふうに考えております。
  148. 北脇保之

    ○北脇委員 大変長い答弁をいただいたわけですが、現行法制下での政府日銀との関係を物語る事例というのはほかにもいろいろあるわけで、ここはひとつ大蔵大臣にもお聞きしたいのです。  一つの事例は、三重野総裁総裁に就任した直後に公定歩合を引き上げようとした。それが朝刊各紙に出たときに、当時の大蔵大臣、橋本現総理だったわけですが、記者会見をして、白紙撤回させる、こういう発言をされた。そうしたら当時の三重野総裁が、担当責任者によって白紙撤回する旨の釈明の記者会見をした。結局、その後六日くらいたって公定歩合の第三次の引き上げが実施された。言ってみれば、三重野総裁はすぐにでも公定歩合を引き上げたかったのに、大蔵大臣の白紙撤回させるという記者会見発言によって、それがちょっと先延ばしにされたというような事例。  それから、もう少し刺激的と言うと変ですが、一九九二年に今度公定歩合を下げる局面になってきたときに、当時の自民党副総裁が、公定歩合を引き下げたいから、首相の言うことを聞かないような日銀総裁は首を切ってでも下げさせるべきだといったような発言がございました。これは政治家の発言ですから、もちろん言葉のあやというものを十分理解しなくてはいけない、それは私そう思いますけれども、ただ、そういうところに、当時といいますかこれまでの現行法制下での政治家、政府の責任者の日銀に対する認識というものがあらわれていたのではないかと思うのです。  ですから、今回日銀法改正するに当たっては、やはりちょっと今までと認識を変えていくのだ、もっと日銀独立性というものを重視していく、最大限尊重していくのだ、そういうことが必要だと思いますので、その辺のお考え大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  149. 三塚博

    三塚国務大臣 過去の反省、歴史の見直しというのも、分析というのも大事なことでありますが、時間がありませんから、きょうはその辺はその辺にさせていただきます。  日銀政府大蔵大臣、両々責任を持って経済運営、金融政策が行われるわけでありますが、時にマスコミの扱い方が、一面をとらえてやるということもしばしば見受けられるところであります。そういうことはこちらにおくとしても、日銀独立性、それから透明性政策決定のプロセスについて特に、こういうことでありますから、それを目指して今日の法律改正案、抜本的な改正案を提示をいたしたところでございまして、これからは両々相まちまして進むと思います。特に政策委員会に学識の徒を、エキスパートをそろえるということでありますから、流れは目標に向かって着実なものになると期待をいたしておるところであります。
  150. 北脇保之

    ○北脇委員 次に、これもまた本会議でも聞いたことではあるのですが、日銀独立性ということについて、中央銀行研究会では「日本銀行独立性の確保が最も重要な課題」であるということで、「独立性」という言葉で言っているわけですが、それが金融制度調査会の答申になりますと、「通貨及び金融調節の自主性の尊重」という言い方になりまして、これが法案においてもそのまま踏襲されまして、法の三条において「日本銀行通貨及び金融調節における自主性は、尊重されなければならない。」このような表現になっているわけです。  私ども独立性という言葉、これが金融政策、特に公定歩合や通貨供給量の決定に関しては日銀が独立してその決定をするのだということを明確にするもので、独立性という言葉が適当であるというふうに思っているわけですが、これが法案の上では自主性の尊重という表現になっている。その考え方をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  151. 山口公生

    山口政府委員 御指摘のように、中央銀行研究会報告書では、日本銀行金融政策の「独立性の確保」というような言葉を使っておりますが、一方で、同報告書は、我が国の政治制度のもとでは、「日本銀行国会や内閣から完全に独立した存在ではありえない。」とも指摘しているところでございます。こうした日本銀行金融政策独立性の性格を踏まえまして、お示しさせていただいております法案においては「自主性」という文言を用いているわけでございます。日本銀行独立性という表現をとった場合には、日本銀行が内閣や国会から完全に独立した存在との意味合いで受け取られることがあるということで、用語としては適当ではないのではないかということでございます。  実質的に申し上げますと、「自主性」という文言を用いているものでございますが、日本銀行法案全体において貫かれている考え方は、日本銀行金融政策における独立性をより高めるという趣旨でございますので、用語の問題としてとらえていただければと思う次第でございます。
  152. 北脇保之

    ○北脇委員 やはり独立性という言葉、それが通貨及び金融調節というその判断においての独立性ということであれば、決して内閣の一体性とか、そういったことに触れることではないと思うのです。そこのところで、これは私どもの経済政策を担当している鈴木委員指摘でもあるのですが、経済政策として財政政策金融政策をポリシーミックスとしてやっていくという場合に、それが財政政策金融政策の当事者の間で合意ができてミックスとしてやるというのではなくて、それぞれに独立の主体として判断をして、その結果がうまくかみ合ってポリシーミックスになってい く、そういうものなんだというようなことを言っているわけでございますけれども、そういう点において、やはりそれぞれに財政政策は財政政策金融政策金融政策ということで独立の判断があっても、そのことがかえって逆に経済全体として適切な効果をもたらす、そういうことだと思います。これは特に答弁ということではないので、そういうことを言わせていただくにとどめたいと思います。  そして次に、今回の日銀法の検討過程の中で、やはり憲法論議というのがあったということを聞いております。それは先ほど銀行局長からの御答弁の中にも出てまいりましたが、憲法六十五条によって、「行政権は、内閣に属する。」ということで、日銀国会や内閣から完全に独立した存在ではあり得ない、こういうことを根拠としていろいろな形の、大蔵省から日銀に対する認可とか監督に属する事柄が規定されているということでございますが、いろいろ報道されている中銀研の議論の中には、法律専門の教授の中に、行政というのは、立法、司法以外の公的作用、国家的作用のすべてをいうというわけではなくて、国の作用として言えば、立法、司法そしてまた憲法六十五条に該当するような行政権、それ以外のものがあるということを認めてもいいのではないかという趣旨の議論もあったというふうに聞いているのですが、その辺の中央銀行研究会の内部における議論を教えていただきたいと思います。
  153. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の憲法との関係での独立性の議論は相当ありました。中央銀行研究会でもかなりの議論がございまして、ちょっと読ませていただきますと、「物価の安定のための金融政策という専門的判断を要する分野においては、政府からの独立性を認める相当の理由があり、人事権等を通じた政府のコントロールが留保されていれば、日本銀行に内閣から独立した行政的色彩を有する機能を付与したとしても、」日本銀行に対してですね、「付与したとしても、憲法六十五条等との関係では、違憲とはいえない。」というような文言がございます。一方で、「日本銀行金融政策を遂行していくには、強い独立性・中立性を付与する。ことが必要であるが、国会が主権者たる国民を代表し、その国会の信任を得て内閣が存立するという我が国の制度の下では、日本銀行国会や内閣から完全に独立した存在ではありえない。」というふうに言っております。こうした議論の中で、行政、司法、立法  立法、司法、行政かもしれません、その三権から、それとは別にという議論は余りなかったように思います。それぞれの関係の中で日銀をどう位置づけるかという議論は相当なさったというふうに承知しておるわけでございます。
  154. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの点は、何というか議論のための議論というふうになりがちですので、これ以上この場ではお聞きをしないことにいたしたいと思いますが、ただ、今銀行局長がお読みになった中央銀行研究会の報告の該当箇所ですが、日銀に対して「人事権等を通じた政府のコントロールが留保されていれば、」「憲法六十五条等との関係では、違憲とはいえない。」こういうことでございますが、この「人事権等」というところの「等」というのが非常にくせ者だと思います。これは私も行政の仕事をやっていましたので非常によくわかるのですけれども、「等」ということにいろいろなことが込められがちである。  これに対して、昭和三十二年から昭和三十五年に設けられていた金融制度調査会の法律問題小委員会報告では、日本銀行政策委員会委員総裁任命権を内閣が保有すれば違憲の問題はない、こういう報告がなされているというふうに学者の意見表明の中で出ているのです。ですから、ここは「人事権等」というふうに言っておりますけれども、「等」ということを言わなくても、人事権によるコントロールがあれば、それだけでも憲法六十五条との関係で違憲ではないと言えるのじゃないかと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  155. 山口公生

    山口政府委員 確かに学界の方でもいろいろな議論があるようでありますが、通常、人事それから予算そういったもの、あるいは法令違反についてのチェックとか、そういったものを念頭に置くというような議論の方が強うございまして、今回の提出申し上げております法案におきましても、予算の認可につきましても、かなりセーフガードをつけた、必要最小限のものというような形になっておりまして、人事だけでという議論ももちろんございますけれども金融制度調査会等の判断は、その「等」は、予算とかごく限られた部分での監督とか、そういったものでございます。
  156. 北脇保之

    ○北脇委員 今回の法案考え方に沿って考えてみた場合も、今の人事権の留保、それからまた政策委員会に対する政府側の出席、そういったようなこともありますので、それ以外の部分は極力大蔵省の関与といいますか監督というものをなくしても、それは違憲の問題はないし、また日銀独立性を確保する上で適切なのではないか、そういうふうに思います。そういう観点から、今回の日銀法改正案について、幾つかの修正といいますか、そういったものを主張させていただきたいと思います。  一つは今の予算の関係なんですが、予算については、法案では認可ということになっておりますけれども、これは届け出で足りるのではないかというのが一つの考えでございます。  それに関連してちょっとお聞きしたいのは、この法案では、いわゆる経費の予算といいますかそういう部分について、これを認可に係らしめるということになっておりますが、経費の予算というのは具体的にどういうものを言うのか、そしてまた、それは現行法で言っているところの経費の予算、それから事業予算という区分と同じで、それを踏襲したものであるのかどうか、そこを教えていただきたいと思います。
  157. 山口公生

    山口政府委員 まず、経費予算につきまして、届け出制で足りるのではないかという御議論でございますけれども金融制度調査会等の結論を受けて、今回法案を出させていただいておりますが、そのときの考え方等もあわせて御披露いたしますと、日本銀行経費が本来国民に還元されるべき通貨発行益によって賄われていること等の日本銀行の公的性格から、その経費をやはり事前に公的にチェックする必要があるのではないか。ただ、公的チェックのあり方としては、認可の対象を金融政策に影響しないものに限定する。例えば交通通信費とか一般事務費等に限定というような、限定をつけてという前提でございます。それから大蔵大臣がもし認可をしない場合には、その理由を公表するといった措置を講じた上で、金融政策に影響を及ぼしていないということを明らかにする必要があるわけでございます。そういった前提で政府認可ということですれば、金融政策独立性や運営の自主性を阻害するものではないというものでございます。  対象については、今申し上げた一般事務費とか交通通信とかそういったものに限られるというふうに考えております。
  158. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの御説明ですと、日銀の利益というようなものは、銀行券の独占的な発行権といいますか通貨発行益といいますか、そういった非常に公的な部分に由来しているから、それを国の認可に係らしめるということだと思うのです。  ただ、私、そこに若干矛盾があると感じるのは、銀行券の発行とかそういったことというのは事業予算の中で行われてくるのではないかと思うのです。そこから生じてきた剰余金の一部を控除して国庫に納付するという仕組みだと思うのです。ですから、今でも認可に係らしめられている経費の予算という部分は、通貨発行とかいうようなそういう公的な部分には余り関係なくて、むしろ当然生じてくる生活費的な部分だと思うのです。そういう通貨発行権というようなことに由来する、利益がかかわるから認可に係らしめるんだという説明だと、そっちの事業予算的な部分を認 可だとかなんとかいっていくなら一応それなりの筋が通ると思うのですが、経費の予算というまさに生活費みたいなところを認可に係らしめるというのは今の説明ではちょっと納得しがたい、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  159. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  私が申し上げておりますのは、生活費的なものの経費予算、それを賄う財源は何かということになりますと、銀行券の発行等の、つまり通貨発行益なわけでございます。つまり一万円札というお札、あれ自体が原価幾らでしたか正確には覚えておりませんが、たしか二十何円だと思いますが、それに一万円の価値を持たせるわけです。これは国家というものが背景にありますから、強制的な通用力があるわけです。そうすると、その一万円で国債などを買うわけですね。それから市場からのオペレーションでいろいろなものを買う。そうすると、それが利息を生むわけです。つまり、そういった特別に与えられた通貨の発行権、通貨高権とも申し上げますが、それから生み出される益、これがそういう生活費的な経費までも賄うという性格があるので、そういったものについてはチェックをいたす必要があるのではないかという意味で申し上げておるわけでございます。
  160. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの説明理解できるのですけれども通貨発行益というようなものがその都度その都度の通貨及び金融調節という非常に機動的なことで執行されるということで、予算といっても事業の予算という方は見込み程度のもの、一応剰余金ということは予算、歳入の方に上がるということ、そういう仕組みだということだと思うのですね。そして、通貨発行益そのものについては今のような位置づけであって、事業予算というのを認可に係らしめているわけではないですから、そこのところは事の性質としてそういうふうに扱っておきながら、生活費的な経費の予算の方を、そこはとらえられるということで認可に係らしめるというのは、どうも組織のあり方として、予算に少しでもかかわった人間ならわかるところなんですけれども、いわゆる生活費的な光熱水費だとか旅費だとかアルバイトの賃金だとか、そういったことはかなり組織の死命を制するという部分があるわけでして、そういう点をからめ手から日銀をコントロールするという色彩も非常にあるような感じがいたしますが、いかがでしょうか。
  161. 山口公生

    山口政府委員 先ほども申し上げましたように、そういう生活費的なものの財源もそういった通貨発行益から出ているということからの性格が一つございますし、逆に言いますと、それで賄われております金融政策そのもののやり方に影響する部分についてはチェックの対象にはしないということでございます。  したがって、そういった経費的な予算のところを見ると、また、先ほど午前中の御審議でもございましたけれども中央銀行としての日本銀行がこれからやはり経費の効率化等をやっていただく必要があるわけでございます。営利法人でありますと、そこにはインセンティブというのが当然働くわけでございますけれども、そういった性格もないということで、これから日本銀行もこういった予算の効率化等を通じて、リストラと言っては語弊がありますが、いろいろな努力もしていただく必要があろうかというふうに思うわけでございます。  私どもとしては、今委員の御懸念のような圧力をもしかけるようなことがありますれば、それは認可をしないということで公表しなければいけませんで、そういう国民批判に耐え得るようなことしか私どもとしてもできないわけでございますから、そういった御懸念はないのではないかというふうに私どもは思っております。
  162. 北脇保之

    ○北脇委員 あと二点の修正についての考え方について御質問いたします。  一つは政策委員会への政府側の出席の件ですが、法案では大蔵大臣や経企庁長官の指名する職員というところまで認めておりますが、私どもは、そういうふうになると、指名する職員ということであれば、事務方でございますから、いつでも出ようと思えば出られるというようなことで、かなり政府側の出席が常態化するおそれがあるのじゃないかと思うのです。そういう意味で、そういったことを防ぐと同時に、政府側の出席を非常に重いものというふうにするためには、やはり大臣もしくは政務次官、そういう方に限るのが適当ではないかというふうに思っております。  ここで、法案では必要に応じてそういう政府側の出席ができるということになっておりますが、「必要に応じ、」というのはどのような頻度を想定しているのか、それから私ども提案についてどのようにお受けとめになるか、お聞きしたいと思います。     〔委員長退席金子(一)委員長代理着席
  163. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 政策委員会への政府からの出席でございますけれども、これは、政府日本銀行の間の政策の整合性を確保するという必要性と、その過程の透明性を高めるということから必要であろうというふうに考えられたわけでございまして、金融制度調査会におきましても、その旨の答申があるわけでございます。  そこで、出席するのが大蔵大臣または経企庁長官あるいはその指名する者なのでございますけれども、具体的にだれがどういう頻度で出席するかということについては、もうこれは、その時々の状況に応じて適切と判断する者を指名して、適切と思うときに出させるということで現時点におきましてはお答えするほかないというふうに思っております。
  164. 北脇保之

    ○北脇委員 「必要に応じ、」というような表現は非常に幅の広いことですから、答弁ということになるとそういうことになるのだと思うのです。ですから、逆に、そういったことを制度的に常態化しないような歯どめをかけるということになれば、出席者の限定ということを考えざるを得ないのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つの修正の考えですが、国会への報告書提出ということについて、大蔵大臣を経由してということになっておりますけれども、これは私どもは、国会に対する説明の責任を直接的に日銀が果たすんだ、そういう意味で、大蔵大臣を経由しないで出すということでもいいのじゃないかと思うのです。  確かに、内閣の一体性だとか行政権は内閣に属する、そういうことを言うといろいろな議論があるのかもしれませんが、それは、例えば憲法とかいったものが明示的にこんな細かい扱いまで規制しているとは思えないので、国会に対して直接報告書提出するというふうにしたらどうかと思います。いかがでしょうか。
  165. 山口公生

    山口政府委員 一般的に、国会に対する報告制度を設ける場合には、内閣の構成員でございます所轄の大臣を経由することが法制上の通例となっております。例えば公正取引委員会あるいは日本放送協会につきましても、所轄の大臣を経由して国会報告書提出する旨の規定がございます。大蔵大臣を経由して出したからといって、日銀政策が何か圧力をかけられるということはないと思います。
  166. 北脇保之

    ○北脇委員 大蔵大臣を経由するということで、そこの報告書内容、それは実務的には事前のチェックが出てくるおそれがあるとかちょっと運用にまつ部分があるかと思いますので、そういったところの懸念というものを断つためにも、そしてまた日銀に対する国会のコントロールと申しますか政治の責任というか、そういったことを明確にするためにも、コントロールという表現は余り適切ではないと思いますが、逆に日銀国民の代表である国会に対する責任、こういうことをはっきりさせるためにも、直接的なそうした説明関係というのを構築する必要があるのではないか私はそういうふうに思っております。  それから、もう時間がちょっと少なくなってまいりましたので予定していたことが全部質問できないかと思うのですが、次に、金融監督庁のことをちょっとお尋ねしたいと思います。  金融監督庁については、私は、大蔵省から検 査・監督部門を切り離すということにはなっているのですが、企画立案部門は大蔵省に残すという形になっているので、そこのところで役割分担というのがちょっと不明確になってくるのではないかというふうに思うのですが、大蔵省に残る企画立案の業務の中では個別的な何か許認可とか処分という、そういう行政行為的な部分はなくて、まさに一つの規則づくりみたいな、そういう一般的な規範になるようなものをつくるという、そういうような業務に限定されてくるということなのでしょうか。
  167. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今回のこの金融監督庁を総理府に設置する目的というものは、民間金融機関等の検査・監督という執行面の機能をこの監督庁に分担させる、それから企画立案といういわば政策面の機能を大蔵大臣が分担するということによりまして、より市場規律の徹底した透明な金融行政に転換していくということに資するものと考えておるわけです。  お尋ねのその監督の中身でございますけれども、御指摘のとおり、いわゆる監督という許認可事項は、いわゆる金融機関の免許、免許の取り消し、業務停止命令等を初めといたしましてすべてこの監督庁の権限に移っていくということでございます。  残された政策面の企画立案機能というのは何かということになりますと、金融制度そのものの変更あるいは市場のルールづくり、あるいはそのルールの改廃といったようなことになると考えられておるわけでございまして、個別に議論をさせていただかないとなかなか一般論は難しいわけでございますが、一言で言えばそういうことでございます。
  168. 北脇保之

    ○北脇委員 諸外国の制度との比較をちょっと教えていただきたいのですが、いずれにしても、この財政政策金融政策、これをどういう公的な部門で分け持っていくかというのはなかなかいろいろな国によって考え方があるとは思うのです。  私は、政策の分野を考えてみたときに、一つ財政政策というのがあって、もう一つ金融政策がありますけれども金融政策の中に、狭い意味の通貨金融調節という部分と金融機関の検査・監督みたいなものがある。ですから、大きく分けると二つ、財政と金融で。金融の中がいわゆる狭義の意味の金融政策と検査・監督みたいなものがあって、そこは二つに分かれている。  これをどういうふうにくくっていくかというくくり方だと思うのですけれども現行制度でいえば、大蔵省の方に財政政策の部分があって、そして大蔵省金融政策のうちの検査・監督の部分は持っている。そして片や日銀は、狭義の意味の金融政策と検査・監督の部分をどちらも持っている。こういうことで、二つに分かれているわけですね。  今度は、新しい金融監督庁というのができると、大蔵省金融監督庁とそして日銀ということで、財政と金融という一連の政策を三つに分けて、三者が担当するという形になると思うのですが、諸外国を見たときに、分け方はともかくとして、そういう三つに分けているというような例はあるのでしょうか。
  169. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 まず、金融政策というふうに言った場合に、仮にそれが公定歩合及び公開市場操作という狭義の金融政策を意味するということでありますれば、これはどこの国でも基本的には中央銀行でございます。イギリスにおきましては、イングランド銀行に対しまして大蔵省が公定歩合変更の指示権を持っておるということで、ちょっと事情は違いますけれども、基本的にはそういうことでございます。  あと、そうすると残されたのは、金融行政という言葉でくくられる中に、制度の企画立案と検査と監督というふうにあるのかなと思いますが、この制度の企画立案と検査・監督を行政としてどのように分担するかということになると、厳密に言いますと、それぞれお国の事情によって多少の特殊性があるということであって、一概に一つの制度で全部説明するということはできないだろうというふうに思います。  特に特色があるのは、イギリスにおきましては、イングランド銀行が、公定歩合というのはどちらかというと大蔵省が指示権を持つわけでございますけれども民間金融機関の検査・監督についてまず第一義的な権限を持っておるということでございます。  それから、フランスにおきましては、行政委員会のような銀行委員会というのが監督をしておりまして、あるいは免許の付与等は金融機関委員会というのが権限を持っておるといったようなことがございます。ただし、この銀行委員会金融機関委員会も、人事権は大蔵省に相当いたします経済財政省がその委員任命を行う、あるいは経済財政省の国庫局長が当然委員として入っておるといったような、そういう事情がございます。  そういう意味では、今回の金融監督庁のように、総理府に大蔵省から機構的に全く分離されて設置されるというのは、これはまた日本独特の解決策であるわけでございますけれども、先ほどちょっとお話がありましたとおり、連携を行うために、金融監督庁と大蔵省の間で、大蔵大臣と総理大臣の間でということにもなるわけでございますけれども、いろいろな連携が行われるような形になっております。  権限という観点から見ますと、金融監督庁は検査と監督の権限を持つ、大蔵省は企画立案の権限を持つ、日本銀行金融政策とあるいは資金決済の円滑の確保といったような日本銀行本来の権限を持つということでございますので、この間が不分明であるということは法律上ないと思っております。それを、信用秩序の維持等のために迅速に適用できるように十分な連携が行われる必要があるのは御指摘のとおりでございまして、そういう観点から、連携の規定等が設けられております。  外国でこういうやり方があるのかというお尋ねについては、全く異質であるというものではないというふうに思われます。特に大蔵省ないしはそれに相当するところが金融制度なり市場のルールなりの企画立案権を持つというのは、これはアメリカでも財務省、イギリスでも大蔵省、ドイツでも大蔵省、フランスでも経済財政省が持っておりまして、そういう意味では、G7等の議論におきまして財政、金融含めた全体の政策論議が行われるわけでございますけれども、それは共通した仕組みになっている。この金融監督庁が設置された後も、そういう対応が可能となるというふうに考えております。
  170. 北脇保之

    ○北脇委員 もう時間が参りましたので、一言で終わりますが、今度の金融監督庁というのは大蔵省からの独立性というところに問題がありますし、かえって制度を複雑化するのみで、行革に資するものではないと私どもは思います。  それで、私ども考えでは、検査・監督の部分は日銀の方にくっつけて、それを一つの日銀ブロックというような形で改組して、そして大蔵省とその日銀のブロックという、こういう形での金融政策、財政政策、これが行革の趣旨にも沿う、そして新しいこれからの市場ルールにのっとった金融行政に道を開くものである、こんなふうに考えておりますので、これはまた同僚議員含めてこれから主張させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  171. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、中川正春君。
  172. 中川正春

    中川(正)委員 連休前の最後の日の最後の質問になりましたが、ひとつ頑張ってやりますので、よろしくお願いをしたいと思います。  いつも、国に帰りまして、今、国会で何の議論をしておるのかと、日銀ですよと、こういうふうに言いますと、そんな中でいかに日銀というのが国民とともにあるような形で説明をできるのか、身近なところにどのように持っていったらいいのかいつも苦心をするわけであります。  そんな中で、はたと思い出しましたのが、お札なんですね。これは日本銀行券であります。今回の日銀法改正、それの目的、特に独立性、これ を増していく方向でという議論がこれまでありまして、その中のアカウンタビリティーであるとか、あるいは責任をどう持っていくとか、あるいはチェック・アンド・バランス・システムをどうするかそういうことが議題になっていくわけでありますが、私、今回の改正の条文を見ておりまして、今回の改正というのは、このお札についての条文に典型的にあらわれているんじゃないかなという気がするのです。  そこで、一つお尋ねをしたいのですが、今回の改正では、これの発行額というもの、自分のこの日本銀行券、これはまさに日銀のいわゆる銀行券でありますが、これの発行額は自由にしなさいよ、これは実質的に独立をしていきなさいよ、こういうことだと思うのです。しかし、その様式を定めるのと製造と消却については、これは大蔵大臣の承認ですよ、こういうことになっているだろうと思うのです。  肖像、例えばこれは一万円札は福沢諭吉でありますが、これをだれにするかとか、あるいはこのデザイン、大きさ等々、こんなことを言うのだろうと思うのです、様式というのは。これは一体どういうことを意味するのか。格好だけ大臣に残しておいてほしいよ、こういう意向なんですか、これは。どういうことなんですか。まず、そこから質問を始めさせていただきたいと思います。
  173. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  今委員質問日本銀行券でございますが、これは確かに発行主体は日本銀行でございますが、法律によりまして強制通用力を与えられた通貨であるわけです。現に、今度の御提案申し上げております改正法案第四十六条で、日本銀行券は「法貨として無制限に通用する。」という規定があるわけでございまして、そういう強制通用力を持った通貨であることと、それから、やはりこの日本銀行券の種類、様式は、先ほど委員が言われました国民とともにあるといいますか、国民生活、これにとって重要なものである、それから経済取引にとっても重要でございまして、まさに通貨制度に関する問題であるわけでございます。そういうことになりますと、その種類、様式というものにつきましては、これは国民全体という意味ではやはり政府において決定すべきものということで、今回の改正案におきましても、日本銀行券の種類につきましては、内閣全体の意思決定により定めることという意味で政令事項としたところでございます。
  174. 中川正春

    中川(正)委員 法律というのは、形を定めるのだろうというふうに思うのです。そういう意味で、この日本銀行券というのは、ただ日本銀行銀行券として流通をさせる以上に、形を重んじたもの、いわゆる象徴的な部分で大蔵大臣が乗り出していく、こういうことなんだろうと思うのですが、それが今回の日銀法の議論の中に象徴的にあるように思うのです。  法律というのは一つの形式を決めるわけでありますが、中身で実際どういう運用をされておるかということ、それで、その中身の運用が実際に日本銀行独立性と、それから結果責任をとる、そしてまた国民に対して一つの政策を打ち出したアカウンタビリティーというものを確保できる、そういう体制になっていって初めてこの法律が生きていくわけであります。  そうした意味で、もう一度その観点から、現在の日銀法の中で運用されておる日銀の姿というものを確認させていただいた上で、それが実際法律が変わることによって中身がどう変わっていくのかこういう観点質問を進めさせていただきたいというふうに思います。  時間が限られておりますので、象徴的な部分だけをとって質問をしていきたいと思うのですが、この中でも、やはり政策委員会の機能といいますか中身というのが、これは非常に論点としては大切になってくるのだろうというふうに思うのです。現在も政策委員会が運営をされておりまして、先ほどそれぞれの委員皆さんからも指摘がありましたが、スリーピングボードになっているのではないかという指摘も含めて、現在の運用があるだろうというふうに思うのです。  そこで、ちょっと総括的なことで、具体的に、定例の会議をどういうふうに持たれて、例えば前回の会議議題がどのようなことが挙がって、それの議論としての中身、恐らくは報告事項というものと政策議論というものがあるのだろうと私たちは想定をするのです、この法の目的からいって。それがどういう議論をされて進められていっておるのかということ、この中身を具体的に御説明をいただきたいというふうに思います。
  175. 松下康雄

    松下参考人 現在、政策委員会は、原則として週二回の火曜と金曜に開催をいたしておりますほか必要に応じまして、随時、臨時開催をいたしております。  政策委員会におきましては、通常、内外の金融市場の状況や物価動向あるいはマネーサプライといった各種の経済指標、また金融経済情勢につきましての分析あるいは金融機関の動向などにつきまして、行内の担当の部署から報告を受け、これをもとにして委員方々が活発な議論を行っておられるところでございます。こういった平素の議論を基礎といたしまして、公定歩合変更や信用秩序の維持のための貸し出しの実施、あるいは予算、決算といった重要な事項の決定が行われているところでございます。  このような政策委員会におきまして審議されました議題につきまして、あるいはそこで審議参考として提出されました各種の経済資料につきましては、私どもの方で、日本銀行政策委員会月報という刊行物に記載をいたしまして、毎月これを公表をいたしているところでございます。
  176. 中川正春

    中川(正)委員 私もその月報をいただいて読ませていただいたのですけれども、これを見てみますと、「議事事項」と書いてありますけれども、どうでしょう、報告事項読みかえていい中身ではないかと思うぐらいに、それぞれの局がいろいろな説明をしておるわけであります。これを見て、中でどんな議論があったのかということがさっぱり出てこない。恐らくは結果だけを、こういうふうに決まりましたということの報告のつもりでこれを出しておられるのだろうと思うのですが、これからもくろんでおられる情報開示、議事録の公表というものと、それからもう一つ、会議があった後にすぐに公表されるであろう総括というのですか総評というのですか、その二つに分けて新しい法案では論じられておるわけでありますが、特にその前段階の分ですね。議事録の公表というのは少し時間をかけて、こういう意味合いがある、これは理解をしておるのですが、この公表結果はこれからもこんなものなのですか、どうなのですか。
  177. 松下康雄

    松下参考人 今お手元にお示しの日銀政策委員会月報は、定期的に日銀政策委員会の通常の活動状況につきまして一般に周知させていただくためのものでございますが、日銀政策委員会の最も重要な仕事でございます例えば金融政策の変更、公定歩合の改定その他の措置をとりました際には、別に、記者会見でございますとか関係の資料についての説明でございますとかいろいろの形で、その都度、背景となります経済金融情勢やそれに対します政策委員会としての現状判断、展望、その結果といたしましての政策変更の内容といった点については、公表、周知するように努めているところでございます。  今後、法律が変わりましたならば、そういう実際に政策変更が行われたときに限りませんで、金融政策議題といたしまして会合をやります。その都度、ただいまのような議事内容のあらましについて、また最終的には議事録につきまして公表を考えていくということになりますので、内容的には現在よりもさらに詳細なものを速やかに公開してまいれると考えております。
  178. 中川正春

    中川(正)委員 もう一つイメージが浮かんでこないのですが、では、もう一つ具体的に聞かせていただきます。  例えば、平成七年の九月八日、この委員会月報で、「公定歩合の引き下げ及び市場金利の引き下げ措置について」ということで報告が出ておりま す。結果として〇・五%引き下げました、また最低になりました、こういう機会であったわけであります。これの決定のプロセスというのは、どこでこの原案というのが起案をされて、どういう議論を経ながら政策委員会に出てくるのか、こういうことからまずお聞きをしたいと思うのです。
  179. 松下康雄

    松下参考人 平成七年九月の利下げを行いました場合の手続を具体的に御説明をいたしますと、まず、これは行内の役員集会におきまして政策変更に関します執行部としての考え方を議論いたしまして、この時点で政策変更によって利下げを行うことが適切であるという判断に達しました上で、私が議長として政策委員会にお諮りをいたしたのでございます。  政策委員会の席上におきましては、その当時、七年の九月でございますから、当時の物価情勢、これはむしろデフレスパイラルの懸念さえも一部でささやかれるような情勢でございましたが、こういう情勢や、また足踏み状態にありました景気の評価などにつきまして、各委員からそれぞれの御意見によって掘り下げた議論を行った次第でございます。  この結果、その会議におきましては、物価が過度に下落いたしました場合の経済に及ぼす影響も念頭に置きながら、経済が回復基調に復していくことを金融面から十分サポートするために一層強力に金融緩和を進めることが必要であるという共通の見解に達しまして、これによりまして、公定歩合を〇・五%に引き下げて同日の正午に実施するということで全会一致の決定をいたした次第でございます。
  180. 中川正春

    中川(正)委員 データも、それからそれに至る結論も執行部のサイドから出てくる。いわゆる日銀のスタッフの議論の中で固めて、それを議題として出してきた、こういうことですね。  これについて、各委員はいつの時点でその中身を知らされて議論に加わったわけですか。
  181. 松下康雄

    松下参考人 この九月の公定歩合の決定をいたします政策委員会に先立ちまして、各委員に対しましてはそのときそのときの金融情勢に関するデータを随時御説明し、また場合によって、委員会ではございませんが、委員方同士の懇談的なお話し合いというものも行われていた次第でございます。それらの日常の情勢判断、政策議論というものがある段階に参りましたところで、それらの日銀役員集会という形での事務局での整理というものが行われまして、それが政策委員会提案されたということでございます。
  182. 中川正春

    中川(正)委員 これまで議案の提案権というのは事務局に限られているのですか、それともみんなに開放されておるのですか。もし開放されておるとすれば、これまで事務局以外に議案提案をしてきた委員というのはおりましたか。
  183. 松下康雄

    松下参考人 議事の運営の手続といたしましては、提案権が事務局に限られるというようなものではございません。ただ、政策委員会議決を経ます事項の中で最も重要性の高い金融政策の変更に関する議題でございますので、通常の場合には、ただいま申しましたように、平素の検討に基づきまして役員集会における審議により執行部としての考え方を議論しました上で、これを政策委員会提案をしているというのが現在の姿でございます。
  184. 中川正春

    中川(正)委員 そうした現在の姿を踏まえて、この改正日銀法が執行されていく時点で、それを日銀のサイドとしては具体的にどういうふうに変えていきながら運用をしていこうとされておるのですか。
  185. 松下康雄

    松下参考人 この点は今回の法律改正に伴いまして日銀の内部全体の仕事の運び方がどう変わっていくかということの一つでございますけれども、例えばこの役員集会という形のものが今後廃止されるということになりますと、議案をその集会におきましてあらかじめ審議をいたしまして提案をするという形はおのずから変わってくることに相なると思われます。また、政策委員自体につきましても、例えば委員についてのスタッフの提供とか、そういった角度からの改正も検討されることになりますので、そういった全体の仕事の流れ、運び方というものを新しい法律のもとに則してどのように具体的につくっていくかということを、これから詰めてまいる段階に来ておると思っております。
  186. 中川正春

    中川(正)委員 さっきの発言は私は非常に意外なんですよ。もともとこういう方向で日銀は独立をしていきたいという意向があったということは私もしっかり聞かせていただいておりまして、特に現在のそれぞれ政策決定過程というのが外から見えないだけに、そうした日銀の動きというのを私たちは応援をさせていただくつもりで、その政策決定部分については頑張れと言うつもりでいたのですけれども、その肝心の日銀自体が、一番大切な元政策決定機関、これに対してクリアな、はっきりとした政策をお持ちでないということ、これから考えるということ、これについてはどうしても私は納得できないのですよ。そこのところ、どういう認識なのか、もう一度聞かせてください。
  187. 松下康雄

    松下参考人 ここは、日銀役員の機構と申しますものを、いわゆるツーボードのシステムからワンボードのシステムに持っていくということでございまして、そういう形で日銀政策委員会自体が独自の判断で独自の決定をするというやり方、それから、それに対してそれを可能とするようなスタッフその他の組織のつくり方、そういったものを前提といたしまして、政策決定についての独立性を備えた今回の法改正趣旨にのっとった決定方式の改定を行っていく。そして、そうして行われました決定につきましては、議事内容についてこれを公表するという形で広く一般の御批判を受ける。そういう形を全体として考えているところでございます。
  188. 中川正春

    中川(正)委員 そうした答弁に逃げないでください。これは一番大事なところだと思うのです。それができていないというのは、もともとこの法案に対してしっかりした信念がないと言われても仕方がないところじゃないのかと思うのです。  そこで、今度は大蔵省の見解を聞きたいのです。これは日銀との話し合いの中でこうした法案につくり上げていったんだろうと思うのですが、大蔵省サイドとしては、ここの部分の運営というのはどういうふうな想定の中でこの議案を提出されたわけでありますか。
  189. 山口公生

    山口政府委員 この日本銀行政策委員会あり方という問題につきましては中央銀行研究会でも相当な突っ込んだ議論がありました。それはどういう問題意識があったかと申し上げますと、これからはマーケットを中心とした世の中になっていく。金融行政にしてもそうですし、またマーケット自体がかなり重要になってくる。そうすると、日本銀行金融政策というものがマーケットに対していろいろな影響を与えていく。そうすると、その決定プロセスというのができるだけ透明に、また正しくマーケットで受けとめてもらわなければいけない。  例えば、アメリカでのFOMCの動きというのは非常に注目されます。あれで金利が動いたり、あるいは株が動いたりするわけでございます。非常に注目されておりますから、またその議論が非常に大切になってくる。そうしますと、実質的に物事が決まるというよりは、そこでどういう議論がされるかということが大切だという意識があるわけでございます。そうしますと、ツーボードの形であるよりは、これからはワンボードの形で、しかもそこでの議論が後できちんと公表されるというような姿であれば、これはマーケットが正しく受けとめてくれることにつながるのではないかというふうに考えたわけでございます。  そういった議論を重ねまして、政策委員会あり方というものをツーボードからワンボードにし、またメンバーの決め方、それから政策委員会の決定事項の範囲、それも拡張したというような考え方でございます。
  190. 中川正春

    中川(正)委員 アメリカのFOMCを念頭に置いておられるということは歓迎なんですけれど も、だとすればもうちょっと具体的に確認をさせていただきたいのですが、議案の提案権というのは、いわゆるワンボードで決めていく限りそれぞれのメンバーにあるんだということを前提にしていくということ。それからもう一つは、当日集まって、これまでのように執行部サイドから出てきたデータだけで、また情報源だけでというのは、それだけでこうした結論を導き出しましたよということが仮にこれからも続くとすれば、これは先ほどのお話からいくと、それこそアカウンタビリティーというのが問われるということだろうと思うんです。情報源も、それから物の考え方も、いろいろな分野、いろいろな見識を持った人たちが集まって、そこで議論を繰り返しながら出てくる結論があって、初めて独立性とそれに対する最終的な結論の責任というものが出てくるんだろう、こういうふうに思うんです。  そういう前提であるとすれば、これは当然、本当に議論をしようと思ったら、それぞれの委員に対して、先ほど総裁の方からもちらっと出ましたが、何人かのというよりも、非常に大がかりな形でそれぞれの委員が本当に主体的な発言ができるような装置づくりを周りにしてやるということがあって初めて、この政策委員会は法の目的に沿った形で生きるんだろうというふうに思うんです。  そういうふうな解釈でいいのかどうか、これを総裁にもう一度聞かせていただきます。
  191. 松下康雄

    松下参考人 各委員提案権を持ちまして、また各委員は、それぞれ独自に情報の収集あるいは外部との意見の交換等もできるという取り組み方が非常によい方式になると考えられます。この点では、金融制度調査会におきましても、「政策委員が事前の十分な検討ができるよう、各政策委員が、外部登用も含め、独自のスタッフを持てるよう、環境整備を図ることが適当である。」という答申を出しておられます。  私どもも、こういった趣旨を十分踏まえまして、今後の組織のあり方、運営の仕方を考えてまいりたいと思っております。
  192. 中川正春

    中川(正)委員 次に、これは先ほども出たんですが、委員任命なんですが、もともと現在の日銀法の法の趣旨からいきますと、それぞれの業界代表、違った立場で業界を代表する人たちが集まって相談をしなさいよ、こういう法の趣旨なんだろうと思うんです。ところが、先ほども指摘があったように、これは二十数年前から、都銀の代表を除いては、大蔵省、通産省、農水省、日本銀行のOBで占められてきておる、しかもこのポストが一つの定着した形で枠づけとしてあるんだ、こういう運営だったようであります。  これは、それこそもとの法の趣旨からいっても曲げられた形になっていますし、もっと言えば、本当の議論をしていこうと思えば、同質の人たちが、同じ背景を持った人たちが同じところに集まって同じデータで結論を出しても一つの結論しか出てこない、これは一番危険なことなんです。それがあったから、いわばバブルも招来したんだと言っても過言でないと思うんですが、そこのところについての認識をもう一度大蔵省の方から答弁を願います。
  193. 山口公生

    山口政府委員 現在の日本銀行政策委員会方々につきましても国会の御同意をいただきまして選ばせていただいておりますが、皆様、その出身いかんにかかわらず、人格、識見とも、また知識、大変お詳しい方ばかりでございますので、同じような人が同じようなステレオタイプの発想をするというものではないというふうに私は思います。
  194. 中川正春

    中川(正)委員 私の言っているのは確率の問題なんですよ。個々にとらえていったらそうかもしれないけれども、みんながみんなOBというのは、これは何かを物語っているわけでしょう。それは中にOBが一人、二人入っているというのなら、これはうなずけます。しかし、みんながOBというのは、これはどういう意味なのかということです。それについてはどうですか。
  195. 山口公生

    山口政府委員 銀行界からの代表、地銀あるいは都銀等は必ずしもOBではないんじゃないかと思いますけれども、あと商工業、農業の代表は官庁OBの人が多かったと思います。ただ、OBだから同じような発想をするというものでもないと思います。  ただ、今回の改正では、そういった限定された業の代表者というものではなくて、もう少し広く知識、経験の豊富な方から選ぼうということで、特定の業界ということから離れているということで、さらに選ばれる範囲は広がるものと私は思っております。
  196. 中川正春

    中川(正)委員 こういうふうに解釈していいですか。特定の業界あるいは特定のバックを持った人たちに偏ることはない。それは官庁OBということも特定のバックに含まれるんだ、そういうふうに解釈していいんですか。
  197. 山口公生

    山口政府委員 特定の産業界という意味で申し上げておりまして、出身がどこであるということを申し上げているわけじゃございません。
  198. 中川正春

    中川(正)委員 その答弁を聞いていると、どうもOBを持ってきたくて仕方がないというような感じの答弁に聞こえてならないんですが、ちゃんとやってくださいよ。その辺はちゃんと説明してくださいよ。
  199. 山口公生

    山口政府委員 現在でも、政策委員会委員方々には大変立派な方を選ばせていただいておりますし、国会の御同意もちょうだいしておるわけでございます。
  200. 中川正春

    中川(正)委員 この議論を聞いておっていただいて、次官、どう思われますか。政治家の立場から、こういう話で終わらせておいていいのかどうかこういうことだと思うんですが、ひとつ答えてください。
  201. 中村正三郎

    ○中村(正)政府委員 やはり出身いかんにかかわらず広く人材を求めるということで、しかもそれは国会の承認を得て就任するわけですから、こういう結果が出たことについて、やはり国会も一端の責任があるんじゃないかと思います。
  202. 中川正春

    中川(正)委員 あとは意見にとどめますが、これは国会でチェックをしていきますし、それと同時に、ここはよく御理解をいただきたいんですが、これだけ官僚批判、あるいはそれは大蔵省がみんなかぶってつらいところがあるだろうなというふうに思うんですけれども政策決定過程の中で、そうした官僚だけが談合をやって物を決めていくということに対しての批判というのが国民にあるんです。そこの部分をしっかりと踏まえて、納得ができるような、それこそ核になるボードでありますから、そういう納得ができるような人事配置をしていくということ、これがまずこの新しい船出が成功できるかどうかという問題のかなめになっていくだろうというふうに思いますので、そこのところを改めて指摘をしておきたいというふうに思っております。  次に、先ほどのディスクロージャー、公表なんですが、これは先ほどから聞いていますと、月報と、それからその都度特に重要な施策ができてきた場合、金利の上げ下げあるいはコールレートなんかも含まれてくるのかもしれませんが、そういうときに随時説明をする、こういう答弁でありましたが、私が申し上げたいのは、結果だけの説明ではなかなか納得しないのですよね。なぜそういう結論に至ったかという部分というのがあって初めて納得ができるということ、これがアカウンタビリティーなんだろうというふうに思うのです。  そこについて、これまで非常に抽象的で、あえてわかりにくくするという部分も含めて非常に問題があるように思うのですよね。それこそ総裁であるとかあるいは大蔵省のそれぞれの局長レベルの一つ一つの発言というのが次の経済活動に及ぼす影響というものをおもんぱかって、そうした意図的な部分があったんだという言いわけはできるかもしれません。できるかもしれませんが、しかし、これからのそれこそ新しい時代を考えていくときに、それだけでは納得のできない部分があるというのも、議論の中で十分御認識のことだろうというふうに思うのです。  そこで、少数意見も含めて、あるいは違った立場の意見も含めて公表をしていくというおつもりがあるかどうか、そこをお聞かせください。
  203. 松下康雄

    松下参考人 これまでも、例えば政策変更の決定を行いましたときには、私自身も記者会見で御説明をいたしますし、また場合によりまして、国会におきまして参考人として御説明をいたしたこともございますが、やはりそういうときには、特に記者会見あたりで、決定に至るまでの経緯については非常に詳細に御質問をいただくのが例でございますので、その背景につきましてもできる限り御説明はいたすようにしてまいっておりました。  ただ、今後につきましては、さらに政策委員会におきます議論の内容につきまして公表をされていくわけでございますから、当然その中には、例えば全会一致でございませんでしたならば、反対の意見もあったということになり、それはどういう角度の反対の意見があって、それがどういう議論を経て一つの結論になったかということも含めて明らかにしてまいるということになっていくことでございます。
  204. 中川正春

    中川(正)委員 私は、日本金融政策議論の中でもう一つ国民に納得がいくような方向を打ち出すとすれば、それは一つのターゲットというか、日本の国の中にどういう金融政策を持っていくかという説明の中に、目標、どういう経済レベルでどういう経済活動が望ましいのかというターゲットがあって、そのターゲットに対して政策というのが一つ一つつくられていって、つくられていった結果がそのターゲットと比べてどうであったのか、完遂されたのか、それとも失敗であったのかということによってその政策責任というのが問われてくる。こういう形があって、初めてそれこそ政策責任ということになるんだろうと思うのです。それが、日銀が独立をしていくということの前提にあるはずなんです。  ところが、これまでの日銀から発表される短観を含めて、一つ一つの議論の中に、そこのイメージがどうもはっきりしてこない。してこないがために、例えば今、低金利政策というのが三年以上続いているわけでありますが、それに対して、先ほども議論が出ていましたが、これは結果的には弱者、特に老齢人口の人たちが預金をしていく、本当につつましく生きていきながら利息を楽しみにして預金をしていく、その預金の利息というものを、当然得られるであろう所得というものを移動させて、結果的には、それぞれの各金融機関の不良債権というものを何とか払拭させる、消していくための手だてに使っておるのではないか。それはどうも政策としては、私たちにのみ犠牲を強いるということからいえば、公正性、公平性に欠けているのではないか、そういう議論がある。それに対して抽象論で今の経済情勢を説いても、国民は納得しないのですよ。  これから考えていくと、一体、私たちの日本の経済のいわゆるあるべき姿、これはよくいろいろな指標というのが取り上げられるわけですが、インフレ率、失業率、これとのバランスの中で経済成長率、この経済成長率は、新規の労働力、技術革新の進歩、これ等とあわせて数量化して大体日本の持っている潜在的な経済成長率というのはこれぐらいのものであろうということは、経済企画庁はそれなりに長期的に発表をしている数字があるわけでありますが、日銀としてはそうした具体的なターゲットを、短期、例えばこの一年の間にどういうふうに持っていきたいのか。そして、長期的に、潜在的に、いろいろな要素を含めてどういう姿が日本の経済として適切であるのか、それに対して今の低金利政策というのがどういう意味を持っているのか、こういう説明というのが前提になるんだろうというふうに思うのですが、どうですか総裁
  205. 松下康雄

    松下参考人 大変重要な点に関する御質問であると思います。  私どもといたしましては、物価の安定という金融政策の目標を達成してまいりますために、物価の上昇・下落圧力というものを、実体経済の動向とかあるいは毅が国経済の成長率、また金融面の動向などから総合的に評価、判断をしながら政策運営に当たっているわけでございますが、その中に、何かある一つの有力な判断基準というものを主たるよりどころとして判断をするべきではないかという御意見は、海外の中央銀行の事例などを見ましてもいろいろとございます。その中には、マネーサプライをターゲットとしてはどうかという議論でありますとか、あるいは端的に、インフレ率そのものをターゲットとすべきではないかというような議論がございます。  ただ、私どもとしまして、現在の考えは、そういった判断の基礎となります材料には、それぞれに統計上の制約でありますとか計測上の限界などもありますので、何か一つの主な材料だけを用いて、そして主としてこれによって判断を行ってまいるという点については、なかなか難しい点があるというふうに考えております。  したがいまして、さまざまな金融経済指標や企業からのヒアリングなどのミクロ情報までも参考にしながら、的確な判断を下していくように日常努めているところでございます。そしてまた、そういう判断のための基礎データ等につきましては、いろいろ公ルートを使いまして、これを一般に周知していただくように努力をしているところでございます。今後とも、それらの点につきましては改善の道を考えてまいりたいというふうに思っております。
  206. 中川正春

    中川(正)委員 いや、だからわからないのだと思うのですよ。国民がそれを聞いても、これは恐らく居眠りするだろうなというふうに思います。まあ言うたら、いろいろ問題があるので任せておいてくれよ、こういうことなのですね。一言で言うと、そういうことでしょう。  それで、その任せておいてくれよと言うのであれば、我々の聞きたいのは、ではどうやって責任持つのか。任すよと任すけれども、その責任については基準がないのです、今。だから、先ほどのバブルの話になって、お互いが責任のなすりつけ合いをして、日銀は大蔵だ、それで大蔵は日銀だ、こういう話になるわけでしょう。これは幾ら独立させていっても、そこの部分をはっきりさせないと評価が出ない、あるいは私たちとしても納得ができないという部分なのです。私は、この目標というのは一つでなくてもいいと思うのです。もっといろいろな議論があっていいと思うのです。でも、思い切ってそれぞれの立場の人たちがそれぞれのことを言わないと、ここでも議論にならないじゃないですか。  さっきの話だけで、例えば金利の問題、これだけじゃなくて為替の問題含めて、この国会で議論をしようと思っても、今、日銀の言われることというのは、任せておいてください、大丈夫ですよ、それぞれ要素があって難しくてこれはあなた方に言えないのですよと言っているのと一緒ですよ、それは。ここのところはどう思われますか。
  207. 松下康雄

    松下参考人 先ほど来申し上げておりますのは、いろいろの要素を総合しながら、しかし、物価の安定を通じて持続的な経済成長を実現してまいるために最適な方法は何であるかということの判断を行うという私どもの責任は重々考えているところでございます。  したがいまして、いろいろの資料なり判断材料につきましてはできるだけ広く一般に周知するように努めておりますし、それらの材料を通じまして私どもが判断を行いました場合に、それは私どもとしては決して独善的な考えではございませんので、御批判もいただきながら、また評価もいただきながら進めてまいりたい、その中で、現在の政策判断の方法というものをできる限り錬磨してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  208. 中川正春

    中川(正)委員 せっかく、独立して元気にやってください、こういう気持ちで私も始めた議論なのですが、そこなのですよ。一つの政策委員会という形に持っていって、そこで自己責任というか、独立性というものとその政策から出てきてい る責任をしっかりと認識していくという前提、これが中身で実現されていこうと思うと、私は、恐らくは、日銀の内部で今業務を担当しておられる総裁以下皆さん方の意識改革がないことには、これはやってもどこが変わったのだというふうな形で終わってしまうのじゃないかなという懸念さえ持ち始めております。  物を任すというのは、ただめったやたらに何でもやってくださいという形で任すということでは国民もないだろうというふうに思うのです。それにはちゃんとした根拠があって、それぞれが言うべきことを言って、その議論の過程というのがわかって、その結論が、だからこういうふうに出ましたと、これがアカウンタビリティーなのですよ。それが出てこないということであれば、これは何のための改革なのですか。  これまで出てこなかった、だから私たちは不満を持っていたのです。それをこの法律でこれからどのように変えようとしているのですか。また、日銀はそれをどういうふうに受け取っているのですか。そこを改めて聞きたいところなのですけれども、これはこれからの議論の一つのポイントになっていくだろうと思います。まあ聞いたって恐らく同じような答えしか今のところは返ってこないのだろうというふうに思いますので、後々の議論にまちたいというふうに思います。  最後にちょっと、直前に通告をして保険部長さんに戻ってきていただいたので、この質問だけさせていただきます。日産生命の話が先ほども詳しく出ていましたが、二点だけ確認したいのです。  一つは、ここで整理をするという結論を出した大蔵省の根拠があるだろうと思うのです。これは今からその調査をするということで先ほどの答弁がありましたけれども、そういうことじゃないと思うのです。一つの決断をしたということは、それに対してこれだけの根拠があってしたということ、これもやはりアカウンタビリティーであるし、ディスクロージャーなのです。そこを、金額も含めて、どういうふうに認識をした上での結論であったのかということをひとつ説明をいただきたいのと、それからもう一つは、それが金融界全体に及ぼす影響というものをどのように認識された上での結論なのかということ、これをお願いします。
  209. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 先ほども答弁申し上げましたが、日産生命の破綻の原因は、極めて高コストの商品を大量販売して大幅な逆ざやに陥り経営を圧迫したということと、株価の低下による多額の評価損が主な破綻原因でございます。そして、特に直近の状況ではこの破綻の程度が大変大きくなりまして、通常の企業努力ではこの要因を解消することが不可能ではないかということで、今日の業務停止命令に至ったということでございます。  数字ということでございますが、これはまだ日産生命からの報告ではございますが、相互会社の場合、御案内のとおり一般の株式会社と違いまして負債の部というのはほとんどが責任準備金でございます。この責任準備金自体は、一定の保険経理に基づいて積み立て基準によりまして所要額を積み立てておるわけでございまして、この会社の場合、約二兆円の規模でございます。他方、この責任準備金を積み立てている他方の資産として、通常はその負債に見合う資産があるべきでございますが、当社からの報告によりますと、この資産につきまして、例えば有価証券につきまして約千五百億円の含み損等を含めまして、全体で約二千億円の負債超となっているというようなことでございまして、この規模の会社としてこのような大幅な債務超過はなかなか解消できないということでございます。  それから、二番目のお尋ねの、ほかへの影響でございますが、これから契約者保護等については万全の対策を講じてまいりたいと存じますが、金融システム全体にどのような影響があるかにつきましては、直接日本金融システムに悪い影響を及ぼすことはないのではないかというふうに考えております。  第一に、生命保険会社は、銀行等と異なりまして決済機能を持っておりません。また、その他の点でも、銀行とは保険会社は法律業務が重複しておりませんので、また、銀行借り入れもございませんところから、保険会社の破綻が銀行に直接波及するものではないと考えております。  また、破綻処理におきましては、業務停止を行ったまま保険契約ないし対応資産の移転を行うことを目指しておりますので、例えば大量の有価証券の売りが発生して証券市場に混乱を及ぼすようなこともないのではないかと考えております。  また、先ほど来申し上げていますように、この破綻処理は、保険業界内の資金援助機能により対応することを考えております。また、そのような仕組みが整備されておりますので、保険業界以外への影響は、今のところ考えられないということでございます。  なお、日産生命会社自体は国内をマーケットとした中小生保でございますので、国際的な影響も特に考えられないというふうに思っております。  以上でございます。
  210. 中川正春

    中川(正)委員 けさの日本経済新聞では、保険の契約者に対しては保証をしていくというふうな言い切り方をしているのですが、これは大蔵省の見解ですか。
  211. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 保証という言葉はやや不適当かと思いますが、恐らく報道の意味は、保険会社が破綻した場合にも、先ほど申し上げているような契約者保護基金の資金援助を活用することによりまして、契約自体は健全な会社に移転するということで結果的に保護が図られる、それを保証というふうに呼んでいるのではないかと存じますし、現に私どもも、今回そのスキームを考えているわけでございます。
  212. 中川正春

    中川(正)委員 先ほど、保険会社の方から連絡があったその金額の範疇の中で、その保険機構を通じて大体の整理がその範疇の中でできるであろう、こういう解釈なんだということでいいわけですか、大蔵省としては。
  213. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 まだ日産生命の財務内容自体は、これから検査等できちっと把握する必要がございますが、いずれにしましても契約者保護が最大限の眼目でございますので、そうなりますと、契約者保護基金を活用するのが最も適切である、そのためにぜひ保険業界等の支援を仰ぎたいというふうに考えているわけでございます。
  214. 中川正春

    中川(正)委員 どうもありがとうございました。  ちょうど時間となったようですが、私は、きょうの議論を通じまして、法は法としてこれは独立性を持たせていくという趣旨、それから改正の方向、これは、中身の議論、我々の党としての議論はありますが、流れとしては私は正しい方向だろうと思うのです。しかし、先ほどからの議論で明らかになってきたように、実際の独立というのはその法体系だけで決まってくるわけじゃない。本当に中の運営というのがそうなされているのか、またその意識がどうなのか、こういうところが実際に問われてくるのだろうというふうな印象を受けました。そこも含めて議論が深まって具体的な施策に結びついていくというのが本来の改革であろう、こういうふうにも思いますので、総裁の方もあるいは日銀皆さんも頑張っていただきたい、そんなことを申し上げながら質問を終わります。
  215. 額賀福志郎

    額賀委員長 次回は、来る五月七日水曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後三時四十四分散会      ————◇—————