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1997-04-16 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十六日(水曜日)     午後一時二分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    小林 多門君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       中野 正志君    山中 貞則君       吉川 貴盛君   吉田左エ門君       渡辺 喜美君    上田 清司君       木村 太郎君    北脇 保之君       鈴木 淑夫君    中川 正春君       並木 正芳君    藤井 裕久君       宮地 正介君    村井  仁君       山本 幸三君    末松 義規君       田中  甲君    山本 譲司君       佐々木憲昭君    秋葉 忠利君       岩國 哲人君    新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         法務大臣官房審         議官      柳田 幸三君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁課税部長 舩橋 晴雄君  委員外出席者         警察庁生活安全         局生活安全企画         課長      小堀  豊君         郵政省貯金局経         営企画課長   藤岡 道博君         労働省職業安定         局業務調整課長 浅野 賢司君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   北脇 保之君     山本 幸三君   吉田 公一君     岩國 哲人君 同日  辞任         補欠選任   山本 幸三君     北脇 保之君   岩國 哲人君     吉田 公一君     ————————————— 四月十六日  共済年金制度の堅持に関する請願(今村雅弘君  紹介)(第一九五〇号)  同(岸田文雄紹介)(第一九五一号)  同(菅義偉君紹介)(第一九五二号)  同(中曽根康弘紹介)(第一九五三号)  同(島聡紹介)(第二〇一二号)  同(原田昇左右紹介)(第二〇一三号)  同(田中眞紀子紹介)(第二〇四二号)  同(日野市朗紹介)(第二〇四三号)  同(青木宏之紹介)(第二〇八四号)  同(高鳥修紹介)(第二〇八五号)  同(藤井孝男紹介)(第二〇八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
  3. 山本幸三

    山本(幸)委員 新進党の山本幸三です。  きょうは外為法改正に絡んでですが、私は、基本的にこの外為法改正をやるというのは大いに結構なことではないかというように思いますし、そういう規制が撤廃、緩和されることは、日本経済にとって長期的に必ず利益を与えるというように確信しておりますが、問題は、そのことよりも、外為取引あるいは為替レートあるいは国際収支、そういうことについての基本的な物の考え方がより重要だと思うのですね。特に、政府のそういう基本的なことについての問題点について、きょうは質問をいたします。  まず最初に、外為法改正為替レートに一体どういう影響を与えるのだろうかということをお伺いしたいわけでありますが、例えば、前に、一九七九年に外為法改正が、これもかなり大幅な改正が行われました。一九八〇年から施行されたわけでありますけれども、七九年の平均レートが大体二百十九円、これが外為法改正が行われたときに、一九八〇年になって年の平均レートが二百二十六円、円安になっています。  そういうこともありましたけれども、今回の改正はまた大きな抜本的な改正になるわけですが、一体為替レートにどのような影響を与えると考えておられるのか、お伺いします。
  4. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  今回の改正によって、国境を超える取引あるいは通貨を超える取引が完全に自由になるわけでございますけれども、その結果、資本の流出がふえるのか流入がふえるのかというのは、そのときの為替相場状況、彼我の金利水準あるいは他のファンダメンタルズ等で決まるものでございますから、今の時点外為法改正がどういう影響を与えるかということを予測するのは極めて難しいということでございます。  それからもう一点、為替市場というのは非常にプロ市場でございまして、既に現行外為法でもプロ取引は完全に自由化されておりますので、そういう意味で、今回の外為法改正為替レートそのものに直接影響を与えるということは、余り大きくないというふうに考えております。
  5. 山本幸三

    山本(幸)委員 おっしゃるように為替相場とか金利その他の要因によりますけれども、それでは、今の金利水準でいけば円安がどんどん進むというふうに思いますけれども、それでいいですか。
  6. 榊原英資

    榊原政府委員 これは先生御承知のところでございますけれども市場ではいわゆる金利裁定という裁定取引が行われておりまして、為替リスクを勘案した上での金利水準というのは、例えば日米でほぼ同等のところにあるわけでございます。  ですから、今のドル金利水準、円の金利水準で、ドルが高いからお金が外に流れるということではございませんで、裁定された形の金利がどうなっているか。それで、先ほど申し上げましたように、為替市場というのはほぼ完全な自由市場プロの間での自由市場になっておりますから、裁定もほぼ完全に行われているわけでございます。  そういう意味で、日米裁定された金利水準というのはほぼ変わらないわけでございますから、そういう意味で、例えば金利が上がったときに若 干の影響はありますけれども市場が完全に裁定をすればその影響はないということになるわけでございます。
  7. 山本幸三

    山本(幸)委員 そこのところは少しおもしろい議論なので、これをやり出すと本格的になってしまいますから、後に回します。  次に、大蔵大臣は、これは閣僚懇談会ですか、一ドル百二十七円ぐらいが限度だというように発言されたと伝えられておりますけれども、これは事実でありますか。
  8. 三塚博

    三塚国務大臣 事実でございません。  そのまま申し上げますと、閣僚懇談会というのは、閣議の決定事項を終わりましたら、これから懇談会に入りますと。この時点で私から申し上げましたのは、最近の円相場動きは明らかに行き過ぎ動きであり、懸念を持っております、よって、こうした動きに対しては適切なタイミングをとらえまして、断固として対処をしたいということを申し上げました。
  9. 山本幸三

    山本(幸)委員 百二十七円という数字は言っていないけれども、明らかに行き過ぎ動きであって、これについて懸念を持っている、したがって、適正なタイミングをとらえて断固たる措置をとると言われたということですね。  では、もう一つ伺いますが、三月十二日の参議院の予算委員会で、小島慶委員質問に答えられまして、アメリカのサマーズ財務長官が百二十五円を超えると日米貿易戦争になると、私もそう思う、そこが上限だというように答弁しておられますが、この点はそれでよろしいですね。
  10. 三塚博

    三塚国務大臣 大蔵大臣というのは、レートに直接にコメントをしないというのが鉄則であります。小島議員とのやりとりの中では、そういう基本に立ちまして申し上げました。  その趣旨は、G7の直前にはドル円相場が百二十五円近辺であったという事実がございます。サマーズ長官との会談特定為替水準について話し合ったということはございませんで、そういう事実だけの関係を。サマーズさんとの会談の内容、内需振興等々の問題に対して、私からは、内需振興財政の出動によらずして諸改革の断行を進めておることであり、その点は理解をいただきたい、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、最近の円相場動きは明らかに行き過ぎたものでございますから、我が国の対外不均衡が大幅に拡大することは望ましくないという考えは、以前から今日まで持ち続けておるところであります。
  11. 山本幸三

    山本(幸)委員 今おっしゃったところで少し問題点を掘り下げたいと思いますが、今のレートが明らかに行き過ぎである、そう判断する根拠は何ですか。
  12. 榊原英資

    榊原政府委員 円レートあるいは為替レートというものは、ファンダメンタルズを反映すべきものだというふうに考えております。  我々がレート判断するときの基準はファンダメンタルズですから、そのファンダメンタルズ変化というものに比べて為替変化が明らかに行き過ぎである、こういう判断でございます。
  13. 山本幸三

    山本(幸)委員 そのファンダメンタルズというのは何ですか。
  14. 榊原英資

    榊原政府委員 先生もよく御存じのように、ファンダメンタルズに対する学問的定義というのはございませんけれども、しばしば、物価上昇率、あるいは金利、あるいは貿易収支経常収支、そういうものを総称してファンダメンタルズというふうに呼んでいるわけでございます。
  15. 山本幸三

    山本(幸)委員 そういう漠然としたもので、じゃ、どこに照らして明らかに行き過ぎであるというふうに判断するんですか。
  16. 榊原英資

    榊原政府委員 特定指標に照るしてということではなくて、総合的にファンダメンタルズを勘案して行き過ぎであるということでございます。
  17. 山本幸三

    山本(幸)委員 根拠がなくて、勝手に行き過ぎだということを決められては困るんですよ。自分で行き過ぎだと言っちゃって、それはそう思い込んでいるかもしれませんが、それは勝手な思い込みで、本当に、じゃ、どこでどういう根拠行き過ぎだと聞かれると答えられないというのは、これはまともな政策当局の態度じゃないんじゃないですか。
  18. 榊原英資

    榊原政府委員 このところ、数週間の円・ドルレート変化を正当化するようなファンダメンタルズ変化が起こっているというふうには私どもは考えておりません。
  19. 山本幸三

    山本(幸)委員 そうすると、為替レートというのは一体どういうふうに決まるかということについてしっかりした理解がなければ、そんなことは言えないんですね。  為替レートは、じゃ、一体どういうふうにして決まると考えているんですか。
  20. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  為替レート決定理論というのは、これは昔からいろいろなものがあるわけでございますけれども、現在、一番ポピュラーな議論として御紹介できますのは、効率的市場仮説というものでございまして、短期的にはこの効率的市場仮説が妥当しているのではないかということを言う経済学者が非常に多うございます。  これはどういうことかというと、市場が効率的であれば、市場というのはそれまでいろいろあった情報をすべて織り込んで価格の形成をする、これは債券市場でも株式市場でも同じでございます。為替市場債券市場株式市場と同じように効率的に機能しておりますので、それまでの情報をすべて織り込んで価格を形成している。ですから、それまでなかった情報が新たに出てきますとこれにレートが反応する、こういうことでございまして、いろいろな実証分析でも、この効率的市場仮説というのが比較的よく為替レートの推移を当てるというふうに言われているわけでございます。
  21. 山本幸三

    山本(幸)委員 効率的市場仮説が当てはまるというのは、私は全然そう思わない。もし効率的市場仮説が当てはまっているとすれば、為替乱高下なんてないんです。あっという間にすべての情報市場関係者が全部把握して正しい判断をするのであれば、まさにそういうファンダメンタルズ、その定義はできないけれども、何かあるとすれば、これは全部みんな同じような理解を持っちゃうわけですから、大きな変化というのは起こらないんですね。大きな変化が起こるというのは、効率的市場仮説が成り立っていないということで起こるというのが一般的理解だと私は思っているんですが、そんなことを言っていてもしようがないですから、ちょっと行きます。  私は、為替レート考え方というのは、短期中期長期で分けて考えなければいけないと思っているんですね。  短期というのは数日とかせいぜい数週間、長くても一カ月か二カ月ぐらいですが、その短期定義は、まさにファンダメンタルズは変わらないぐらいのタイミングで考える。中期というのは、ファンダメンタルズである基本的な財政金融政策が変わり得る。長期というのは、五年、十年とかいう長期的な趨勢値、これはまさに、完全雇用水準における経済動きをした場合に為替レートがどうなるか。政府の今の答弁の理解で非常に問題があると思っているのは、短期中期を一緒くたにして議論しているような気がするんですね。  つまり、短期為替レート動きというのは、一番その動きを説明するのは、市場関係者がどういう期待を持つか、それが分かれるから乱高下する。みんなが同じように情報を共有して何の問題もなければ効率的市場仮説は成り立つから、そんなに乱高下はしない。しかし、そうじゃない。こうなると思う人がいるかもしれないし、反対の向きがいるかもしれない。どっちがが大きくなったらがあっと動いちゃうということが起こる。  短期の問題は、そもそもそういう期待が大きく影響しますから、これはもともと短期為替レート動きファンダメンタルズを反映すると考えること自体が間違いなんだ。ファンダメンタルズ為替レートが反映しなければならないというのは、中期長期ではそうかもしれないけれども短期的な動きについてファンダメンタルズを反映 しなきゃいけないと考えること自体が私は間違っていると思うんですけれども、いかがですか。
  22. 榊原英資

    榊原政府委員 私が舌足らずだったのかもしれませんけれども、中長期的にはファンダメンタルズ為替レート決定のアンカーであるということについては、先生と同意見でございます。  ただ、実証的には、中期的にも為替レートファンダメンタルズからかなり乖離し続けるという現象が見られるところでございまして、そういう意味で、長期的にファンダメンタルズから大きく離れていることはできないということは言えると思いますけれども、例えば三年、四年の中期ファンダメンタルズからかなり離れた動きをすることもしばしばあるというのが一点でございます。  それからもう一点は、短期的には期待というもので為替レートが動くというのはそのとおりでございまして、その期待もさまざまな人々の期待でございますから、みんなが同じ期待を持っているわけではない、情報を同じように持っていてもその期待がかなり変わってくる。そして、その期待の中には恐らく結果的に見ると間違った期待というようなものもあるわけでございます。そういういろいろな期待が交差する中で短期的にはレートが決まっていくということでございまして、先生のおっしゃっていることと私の申し上げたこととそれほど大きな違いはない、こういうふうに考えております。
  23. 山本幸三

    山本(幸)委員 今おっしゃったことが見解であるとすれば、先ほどの効率的市場仮説で成り立つという話ではないと今言ったんですね。みんながそれぞれ間違った期待を持っているわけじゃない、そういうことで動いている、それは先ほどの効率的市場仮説じゃないことですね。  それから、ちょっと気になりましたが、中期的にファンダメンタルズから乖離することがある、じゃ、今の円レート状況というのは中期的に乖離していると理解しているのですか。
  24. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  このままずっとこのレートが続けば、これは中期的に乖離しているということになるのだと思います。為替レートは今後もいろいろ変動いたしますので、少なくとも今のレートファンダメンタルズから乖離しているというふうに私ども判断しているということでございます。
  25. 山本幸三

    山本(幸)委員 それはどうしてそう判断するのですか。中期的にファンダメンタルズから今のレートが乖離していると判断する根拠があるのですか。
  26. 榊原英資

    榊原政府委員 繰り返しになりますけれども、このところの為替レート動きは非常に激しい動きをしておりますけれども、その動きを正当化するようなファンダメンタルズ変化は起こっていない、こういうふうに言っておるわけでございます。
  27. 山本幸三

    山本(幸)委員 国金局長は、今の動き中期的な動きと考えているのか短期的な乱高下と考えているのか、どっちなんですか。
  28. 榊原英資

    榊原政府委員 今のレートがかなりディーラーの期待、しかも場合によると恐らく結果的には間違った期待になるのではないか、そういう期待によってドライブされているということは間違いないというふうに思っております。
  29. 山本幸三

    山本(幸)委員 そうすると、今の動き短期的な乱高下であって中期的な乖離ではないというように理解しておいていいのですか。
  30. 榊原英資

    榊原政府委員 短期中期をどう定義するかというのは大変難しいことでございまして、今私が申し上げているのは、為替レートのこのところの動きファンダメンタルズによって正当化されない、そしてまた、場合によると、結果的には間違っていると思われるような期待によってドライブされている可能性がある、こういうことでございまして、結果としてこういうことがかなり続くのかあるいは続かないのか、それは恐らく後で判断するということでしかないというふうに思っております。
  31. 山本幸三

    山本(幸)委員 どうも政府為替レートに対する考え方がクリアではないのですね。今の動き短期的に乱高下しているものだとすれば、もともと短期動きというのは——短期中期をどう定義したのかわからないけれども私ははっきり定義した。短期経済政策あるいは金利国際収支、そういうファンダメンタルズと普通言われているものが変化しないぐらいの短期間。中期はそういうものが変化する、特に財政政策金融政策が発動してそれで変わるときを中期。そして長期というのは、五年ないし十年の趨勢的な傾向で、これは経済学的に言うと完全雇用水準における経済が動いたときに得られる為替レート。  短期は、先ほども言ったように、ファンダメンタルズとは関係ないのですよ。ファンダメンタルズを反映しなければいけないと考える最初の出どころがおかしい。
  32. 榊原英資

    榊原政府委員 短期相場期待で動くというのは事実でございますが、期待が何に関する期待かというと、これはファンダメンタルズに関する期待でございます。ですから、例えば日本経済が弱い、日本景気回復力が弱いというような期待を持つとすれば、これは当然日本の低金利がずっと続くという期待になる。そのことは為替レートでいえば、むしろ円安傾向が続くという期待になる。そういう将来のファンダメンタルズにかかわる期待によって相場がドライブされるわけですから、短期ファンダメンタルズ関係ないということは言えないのではないかと思います。  ですから、中期的にはファンダメンタルズに対する期待が正しかったかどうかということはいずれわかるわけでございますけれども短期相場をドライブするものは、やはりファンダメンタルズ等あるいは政府政策、そういうものに関する期待でございますので、短期的なレートファンダメンタルズ関係ないというふうに言い切ってしまうのはちょっと難しいかなというふうに考えております。
  33. 山本幸三

    山本(幸)委員 そうすると、あなたの期待理論というのは、期待というのは、ファンダメンタルズ数字を並べて、それの関数として期待理論をつくるのですか。今まで経済学期待理論というのはいろいろありますけれども決定打はないのですね。何が期待をつくっているかというのは、これは今のところだれも言えない。しかし、榊原理論によると、ファンダメンタルズ関数とした期待理論というのは何かできているのですか。
  34. 榊原英資

    榊原政府委員 私が何か特定為替理論を持っているわけではございませんで、そしてまた先生よく御存じのように理論はなかなか現実を説明できないという側面もございまして、特に今までの為替理論は、一つ一つ取り上げて検証してみると、それが現実をうまく説明できるかどうかという、説明能力がかなり低いものでございます。  そういうことで、私は期待が合理的だということを申し上げているのではないのでございますけれども効率的市場仮説というのはかなりその辺をうまく整理した仮説であるというふうに申し上げたわけでございます。市場というのは、それまで市場に与えられた、出てきた情報をすべて織り込んで、その織り込み方というのは人によって違うわけでございますけれども、人によって期待が違うわけでございますけれども、織り込んで、それで新しい情報が出たときにその情報にまた反応する、そういう仮説でございまして、そういうものが比較的今までのところは短期為替動きをうまく説明できるのではないか。  つまり、絶対的に正しい理論というのはあるわけではございませんで、理論というのは常に現実によって検証されなければいけない。どうも今までのところ現実の検証に一〇〇%たえ得るような理論はない。しかし、その中でも効率的市場仮説というものは比較的うまく現実を今のところは説明している、そういうことではないかというふうに思っております。
  35. 山本幸三

    山本(幸)委員 私は、効率的市場仮説というのが成り立つ場合には間違った期待とかは生じる余地がないと思いますから、そこのところの理解がちょっと違うと思いますから、その点はそれ以上言いませんけれども、要するに私は、期待という のは別にファンダメンタルズに限ったことではない、何でも起こり得る。それは、どこかで何か彗星があらわれたからそれでまた動くということだってあるかもしれない。あるいは軍事情勢によって違う。いろいろなことが期待要因になるわけです。  しかし、局長が言われたように、日本経済は将来弱くなみかもしれないという期待が起こった場合には円安になりますね。今そういうふうに起こっていると思うのですか。
  36. 榊原英資

    榊原政府委員 常々申し上げているところでございますけれども、今の市場関係者日本経済に関する見通しは過度に悲観的過ぎるというのが私ども意見でございます。日本経済を示すいろいろな指標、あるいはいろいろな問題が次々解決されていっている、そういうことを勘案しますと、市場の一般的な期待は悲観的に過ぎる。その悲観的に過ぎるものが、先ほど言った過度の為替動きに反映されている、そういうふうに考えているわけでございます。
  37. 山本幸三

    山本(幸)委員 そうすると、日本経済見通しについて、榊原局長は正しい理解をしている、しかし世の中の人は、市場参加者は間違った理解をしておる、そういうことですか。
  38. 榊原英資

    榊原政府委員 私は決してそう思っている人間ではございません。しかし、実態的、実際の数字ですね、いろいろ発表される数字から見ると、日本経済回復がそれほど弱いものだとは思えないというのが一点でございます。  それから、例えば不動産というようなことをとっても、不動産市況がそろそろ底を打ってきたというような指標がかなりいろいろなところで出ているわけでございます。また不良債権問題についても解決の途についている。そういうことでございますので、実際に出てくる数字、そういうものから見ると、皆さんが考えているほど、一部の人たちと言ったらいいのかもしれません、私と同じような意見を持っているトレーダー、ディーラーもいるわけでございますけれども、その一部の人たちが考えているほど日本経済は悲観する必要がないというふうに考えておる。  これは、私がということではなくて、政府がそう考えておって、GNPの九七年度における成長率が一・九%だ、こう言っておるわけでございますから、これは民間の予測よりもかなり高いわけでございますけれども、この高い政府の予測の方が正しいのではないか、私としてはこういうふうに考えておるわけでございます。
  39. 山本幸三

    山本(幸)委員 私は、かつて経企庁が出した見通しの的中率というのを、誤差一〇%以内であれば当たったとして過ぎ三十年間ぐらいやったことがありますが、六分の一です。つまり、さいころを転がしたのと一緒です。だから、経企庁がそういう見通しをするよりはさいころを転がした方が——同じぐらいだというようにしか思っていませんけれども、それは冗談として、本当に、日本経済見通しについて、市場参加者は間違っていて、榊原さんを中心に政府部門はより正しい見方をしているというように言えるのかどうか。私は、そこは大いに疑問があって、やはり本当の声は、市場が正確な反応を示しているのではないかと思っているのです。  これは、一つは、例えばアメリカのホワイトハウスの高官が言ったというのですが、要するに、日本経済の最悪シナリオというものはどういうものかという話をその高官が言っている。  規制と高コストが続くため、力のある日本企業はあらかた海外に転出してしまう。ある朝起きてみると、規制産業と保護産業しか日本には残っていなかった。市場では円が暴落し、猛烈な輸入物価上昇とインフレが始まる。だが、弱体の連立政権は何もできない。こうして日本経済は本当の長期停滞に入る。実力を過大評価されて円高に苦しんだ昔が懐かしい。 これが最悪シナリオだとアメリカのホワイトハウスの高官が言っているのですが、そういう可能性がないわけでもない。  本当に改革が進むのか。外為法改正を私は希有な例だと思って、その意味最初に申し上げたように高く評価しておりますけれども、それ以外のところで進まなければ、こういう状況になり得る。  それから、不良資産問題は解決しつつあると言われましたけれども、私は全然そう思わない。不良資産問題が解決している格好に見えているのは銀行のバランスシート上だけの動きであって、実体経済のところ、貸付先の不動産、建設業界などが持っている、そこの不動産はちっとも動いていないのです。これは、今の日本の銀行の償却のあり方がおかしいから。間接償却、無税償却を認めたのは日本だけですね。そうすると何が起こるかというと、帳簿でつけ加えて間接償却して、無税の効果まで得られる。業務純益が物すごくあって、しかも無税効果まで得られてもうほくほくしているのだけれども、銀行は机の上に座って何もしない。本来ならば、そういうところへ乗り込んでいって、物すごい苦労をして不動産を処理しなければこれは動かない。  そこで、せっかく国税庁の部長さんに来ていただいているので、それに関連してちょっとお伺いしますけれども、本当に市場が間違っているというように言えるためにはそういうことをきちっとしなければいけないのです。ところが、問題は、その実際に借りている人たちの不良債権をどうして動かすかというときに問題が起こる。特に課税上の問題が非常に不明確であるというところが、実際に処理するときに困っているわけですね。  それで、先般、東京三菱銀行が担保つき不良債権をパッケージにして、その債権自体ではなくて、元本部分と金利部分を切り離して海外の投資家に売ったという新聞記事が出ておりました。ローン・パーティシペーションというやり方ですけれども、それができた。私は、この記事を見て、もしこういうことが本当にどんどん進むのなら、あるいは不良債権の処理もやりやすくなるかなと思ったのです。  問題は、業界の人たちはそれがなかなかできなかった。なぜできないかというと、そういう不良債権を外国の投資家に売ったときにつける値段が問題になる、価格が。その価格はやはり思い切って下げないと投資家は買わないという状況が起こってくる。しかし、余り下げ過ぎると、これは寄附金じゃないかという処理がされるのじゃないかなと思って、一体国税庁はどうするだろうかと顔色をうかがいながら、ずっとああでもないこうでもないと探りを入れていたわけです。実際にやってみて、どうも認めそうだと。  アメリカの場合は、もうとにかくそういうものはどんな価格でもいい、どんな安くてもいい、第三者にちゃんと売るものであればその部分は寄附金として見ませんよというような処理がされてはっきりしているから、みんな担保つきの不良債権でもどんどん売って処理してしまう。  日本の場合、こういうものについて、第三者に売るときに、その値段はその第三者との取引で決まるという値段で結構です、その点については寄附金の問題は起きませんというようにはっきり明言できるのかどうか、お尋ねします。
  40. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  一般論としてまず申し上げたいと思いますけれども、法人が有しているその債権を他に譲渡した場合におきまして、その譲渡が今先生御指摘のような第三者との間で行われる場合でございます。この場合、この第三者については独立した第三者であるということが大事だと思いますけれども、そういう場合には、基本的にはその価格は正常な取引条件に従って決定されたというふうに私どもは考えております。したがいまして、この場合には、譲渡価額とそれから帳簿価額との差額、これにつきましては税務上も損金または益金に算入されるというのが基本的な考え方でございます。  したがって、お尋ねのようなケースにつきましては、ただいま申し上げたような条件に合致しているのであればこれは寄附金課税ということにはなりませんけれども、私ども執行当局といたしましては、取引全体の具体的な事実関係を踏まえて、課税上問題があったかどうかを判断していきたい というふうに考えております。
  41. 山本幸三

    山本(幸)委員 その点の明確な解釈を出してもらえたので、大変ありがたいのです。それは、よっぽどおかしなことをやらない限りは、基本的には、第三者との間で取引をやった場合には寄附金課税としないということをはっきり明言していただいたというふうに理解しております。これは、実務的には非常に大きな影響を与えると思います。  それから、税務上でもう一つお伺いしたいのです。  今そういう債権が眠っているというのは、例えば、かつて百億円借りて不動産を買った。そのとき百億円の価値があった。ところが、今それが値下がりして三十になっちゃったと。銀行は返せ返せと言うのだけれども、借りた方から見れば、今売ったって三十にしかならない。三十のキャッシュフローを返したって七十の借金が依然として残るから、何もしないのですね。銀行は、本来ならばそこへ乗り込んでそれをやらなければいけないのだけれども、間接償却、無税償却を認めちゃったから、自分の方のバランスシートではその部分の処理が立っているのだけれども、求償権は依然として百億残っている。  これほど一挙両得している日本の銀行の状況というのはないのです。そんなことをやるぐらいなら、私は、もう間接償却、有税償却しかだめだというふうにした方がいいと思っているぐらいですが、しかし、これを何とかしてやらない限りその土地は動かない。借りている方から見れば、もう何とでもしてくれ、もつまでずるずるといきましょうという気持ちになってそのまま埋まっている、これは十年、十五年先までそういう状況になる。  しかし、それだと決して不良債権問題というのは解決しないのですね。私は、日本経済はどうしてそういう曇りがのかないのかというと、これを何とかしてやらなければいかぬ。個人的には、これは一種の徳政令だけれども、三十でもいいからキャッシュローンを返してきたら、もう百億の債権を棒引きしてやると言ったらすぐ整理して持ってくるだろうと思っているのです。そういうことができないかなと思ったぐらいですが、できれば、そういう場合に債権放棄をやってあげて、そして処理してやれば、借りている方は大いにありがたい。マイナス七十で済むよりはゼロで済むのだったら、また新しい道も開けるかなと思って、整理すべきものは整理して、新しい出発もできる。本当はそれをばっとやればいいのですが、なかなかそれができない。  税務の実務上、債権放棄というのがあり得る。そういう状況で問題になるのは、もしそれをやった場合に、これまた、一方は寄附金で、一方が特別利益で課税されると困ってしまうというので、金融機関にしろ、ほかの債権者にしろ、すくんで、一体税務当局はどう言うかわからないというので、なかなか進まないというところがあるのですが、この辺について、税務の実務上うまくできないものかどうか、いかがですか。
  42. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  債権放棄についての課税関係でございますけれども、通常、その法人が、何の縁もゆかりもないと言うとあれですが、そういうところに持っている債権を放棄した場合においては、今先生御指摘のように、寄附金課税の問題が生じてくるわけでございます。  しかしながら、資本関係のある子会社でありますとか、あるいは人的関係取引関係などにおいて密接な関連を有する相手方に対して債権放棄を行った場合、その債権放棄が、例えば業績不振の子会社の倒産を防止するために緊急に行うものだ、それから、支援額とか関係者の支援割合が合理的に決定されているとか、そういう合理的な再建計画に基づくものであるということがはっきりいたしているような場合は、債権放棄につきまして相当な理由があるというふうに認めることができるわけでございます。その場合には、当該債権放棄につきましては寄附金に該当しない、したがって、損金算入をするというような取り扱いをしているところでございます。これは、従来から、金融機関、一般事業法人を問わず、すべての法人に対してこういう考え方で対応させていただいているところでございます。
  43. 山本幸三

    山本(幸)委員 債権放棄について、かなり融資先等で問題があって、役員を派遣しているとか、そういう場合で、きちんとした再建計画をつくって、そして関係者をちゃんと調整してやるようなものであれば、これはできるというような解釈のようですから、これもかなり実務的には大きな意味を持つと思うので、ぜひ弾力的にやってもらいたいというふうに思います。  為替レートの話の最後をちょっと言って、それから次に進みたいと思うのですが、要するに、どうも今の政府為替レート理解を推察するに、短期的には期待というもので動いていることについては同意される、しかし、その期待は、市場はどうも日本経済見通しについて、暗い、弱いというような見通しをしているようだけれども政府は、それは間違っておるというように理解しているようだと。したがって、ファンダメンタルズを反映していないというような言い方をしているのかなというように理解しました。  これは、さっき言ったように、ホワイトハウスの高官が言っているような最悪シナリオになるのかどうかというのは、もうちょっと時間を見ないとわかりませんから判断はちょっとおきたいと思いますが、私の理解だけちょっと言っておきますが、私は、短期的には、言ったように期待で決まると。それが間違っているか間違っていないかは、ちょっとこの際言いません。少なくとも今は、市場の大方は日本経済について夜明けの期待をしているということで、こういう円安状況になっている。  中期的に為替レートが何で決まるかということについては、これは予算委員会でも一度やりましたけれども中期的な場合というのは、完全雇用が達成されていない状況の調整過程と考えるのですが、そのときに財政政策金融政策が発動される。これは、おっしゃったように、決め手の理論はありません。ありませんが、説明力があるというのはマンデル・フレミング理論で、財政を緊縮して金融を緩和すれば、金利水準が下がるプレッシャーがかかって、そしてその結果、為替レート円安になる。私は、今はそういう状況になっているんだろうというふうに思います。  したがって、日本のとっている政策というのは、為替レート円安政策中期的にはとっている。これ自体は私は悪いことだとは思いませんけれども経済回復するためにはそういうことも必要なときがありますから、そういうことで判断しているといえば、必ずしも悪いことではないと思いますが、少なくとも理解としてしっかりしておかなければいけないのは、中期的に日本政府がとっている政策というのは、円安方向に行く政策なんだ。財政緊縮で金融緩和すれば円安になる、したがって、中期的には円安に行く政策をとっている。  それから、長期的には、これは完全雇用水準のときの動きですから、実質レートが問題になる。実質レートの問題というのは、いわゆる交易条件の問題ですね。したがって、長期的には、交易条件がどうなるか、あるいは物価の上昇率がどうなるかということが問題になってきて、交易条件はまた、その国の技術水準とか労働市場状況とかによって実物的に決まってくる。これは、日本経済が競争力を失ってくるというような形で生産性が低くなるというようなことになると、交易条件が落ちてくる。明らかに、最近の交易条件は、去年からずっと落ちてきていますね。ということは、長期的には日本の円は弱くなるという方向に進みつつある、私はそういうふうに理解しています。これ以上この点は言いませんが、そういう意味で、もしこれを直そうとすれば、これはなかなか大変なことだなということになるように思います。  話を変えますが、大臣は、先ほど、サマーズ財務長官、あるいはルービンさんからもそうですけれども日本経常収支黒字を続けるのは望ましくないと自分も思うというふうにおっしゃいま したけれども経常収支の黒字がどうして悪いのですか。
  44. 榊原英資

    榊原政府委員 これは一般論として申し上げれば、一国が大幅な対外収支の不均衡を持続的に持っているということは、世界経済の調和のとれた発展という観点から望ましくないというふうに考えておるわけでございます。ですから、大幅で持続的な経常収支の黒字というものは問題であるという考え方に立って経済運営をこれまで行ってきたわけでございます。なお、日本の現在の経常収支のレベルは、GDP比で一・五%ということで、非常に低くなっております。  それから、もう一つ我々が強調しておりますのは、経常収支のかなりの部分が所得収支でございます。所得収支というのは、海外からの利払いとか配当とかそういうものでございまして、日本は大変な債権国でございますから、この所得収支が大きく黒字になるというのは当然のことでございまして、そういう意味で、貿易・サービス収支という概念がございます。貿易・サービス収支というもので日本の対外黒字を見るのが一番いいのではないかというふうに考えておりまして、この貿易・サービス収支で見ますと対GDP比〇・五%でございます。G7の中で、アメリカとイギリスは赤字でございますけれども、ほかの国は全部黒字でございます。その黒字国の中で日本の貿易。サービス収支の黒字が一番小さい、そういう形になっております。
  45. 山本幸三

    山本(幸)委員 大幅で持続的な国際収支の黒字がどうして望ましくないのですか。
  46. 榊原英資

    榊原政府委員 繰り返しになりますけれども、大幅で持続的な経常収支の黒字は、世界経済の調和のある発展というものを乱す可能性がある、そういう観点から、グローバルな貿易システムの中でそういうことを続けるのは望ましくない、こう申し上げておるわけでございます。
  47. 山本幸三

    山本(幸)委員 国際的な調和ある発展に反すると言っているのですが、どういうことですか。中身がよくわかりません。私は、ここのところの理解が非常に問題があるというふうに思っているのです。  経常収支が黒字というのは、資本収支がその分赤字だということです。つまり、経常収支が黒字の分を資本収支として海外に出している。今、世界はむしろ資本が足らない、後進国も含めて。そういうところに資本を供給する国がなければ、そういう国は経済発展できない。これほど寄与していることはおい、私はそう思っているのだけれども、世界の調和ある発展のためには、経常収支で黒字をやって、資金不足の世界経済を立て直すためにその資本を投入することこそ大いに寄与しているのではないですか。
  48. 榊原英資

    榊原政府委員 山本先生のように、経常収支の黒字そのものが決して悪いものではないという議論が存在していることは、承知しております。ただ、経常収支の黒字が持続的に大幅にあるということは、一方で持続的に大幅な経常収支の赤字を持っている国があるということでございますから、バランスのとれた世界経済の発展ということからは望ましくないというふうに考えております。  また、世界で資本が不足しているというようなことがございますから、その資本を提供するというのは大事なことでございまして、これは経常収支の赤、黒にかかわらず、対外投資を活発にする。また、対内投資、日本に対する投資も活発になる。こういうことは非常に重要なことだというふうに思っております。
  49. 山本幸三

    山本(幸)委員 大幅で持続的な黒字があれば、反対に赤字があるから悪いという、そこもよくわからない。  国際収支の黒字が得で赤字が損だという感覚をよく持つのですけれども、私は、そこが一番誤りの出発点で、国際収支の黒字には二種類あると思っているのです。一つは景気の循環において起こる循環的な黒字、それから先ほどの、長期的な為替レートの均衡のときのように完全雇用水準でも起こる趨勢的な黒字と二つある。循環的な黒字の分は大した問題ではない。四、五年すればバランスが合うとして、ゼロになってしまう。  問題は、趨勢的に黒字を持つ国があって、それがいけないことかという話になる。これは、イギリスだって十八世紀から五十年間ぐらい物すごい黒字を続けた、GDP比六%ぐらい。アメリカだって一九五〇年代は物すごい黒字を続けた。日本が黒字を続けたって、四十年も五十年もやっているわけではない。しかも、それほど大きい話ではない。  その趨勢的な黒字というのは、国内の経済からいえば、一体どういうことから起こるのですか。
  50. 榊原英資

    榊原政府委員 国内経済的にいえば、貯蓄超過の状態でございます。
  51. 山本幸三

    山本(幸)委員 そのとおり。要するに、完全雇用水準であっても、総貯蓄と総投資を比べてみたら、貯蓄の方が大きいという状況で起こっているわけです。そのことが何か悪いことか。  例えば、企業でも、発展している企業というのは、借金して発展するのです。しかし、借金しながら、大いに収益を上げてもうけるということができるからやっている。あるいは、個人でも、通常、個人は資産の方が多くてプラスになりますけれども、しかし、子供が大学に行かなければいかぬということで教育ローンを借りるかもしれない。住宅ローンを借りて家を建てるかもしれない。そのときにはマイナスになる。しかし、人材という資産がふえたり、あるいは住宅という実物資産がふえていって、そのことは全然悪いことだと言えない。したがって、そういうことは極めて健全なこと。  問題があるとすれば、赤字になったところがその赤字が増えすぎて、将来払えなくなりますよというような状況が出てくるときに問題がある。したがって、問題があるとすれば、赤字国がやればいいんであって、黒字国が批判されるような話では全然ない。  ところが、従来、日本の総理、大蔵大臣は、アメリカから国際収支の黒字がけしからぬと言われたら、はい、そうですか、そのとおりですねと言って、じゃ、内需拡大しろと言われて、ばんばん公共投資をつぎ込んで、効果もないのに、そして起こってきたことは何かというと、膨大な財政赤字。私は、この四、五年間のクリントン政権で、アメリカの経済・外交戦略に完全にやられてしまったと思っているのです。サマーズさんが、彼は二十六歳でハーバードの正教授になった経済学の専門家ですけれども、彼が財務省に入って、私が推察するに、当時アメリカは双子の赤字で、そして景気もまだ十分でなかった。そこで、アメリカの景気を回復するためにどうしたらいいか。一つは、輸出主導でやろう、輸出主導でやる。そのためにドル政策をとる、金融緩和する。同時に、ウォール街では、長期金利水準が上がるというのは非常に問題で、それは財政赤字対策をちゃんとやらないとそういうふうになるということで、それはやりながら、一方で金融緩和でドル政策をとって、輸出主導でやる。日本に対しては、猛烈な勢いで市場開放要求をやり、そして内需拡大要求をやる。  その結果、それを日本の総理と大蔵大臣は、はいはいと受けて、やったことは何かというと、ばんばん公共投資をつぎ込んだ。公共投資の状況というのは、アメリカでは公共投資の乗数効果が〇・六と言っているのですから、そういうことがきかないことをアメリカではわかっている。しかし、日本ではそれを繰り返し繰り返しやった。その結果、景気に対して効果はほとんどなく、そして、財政政策でやれば、さっきのマンデル・フレミング理論で説明できるのですが、猛烈な円高になる。そして、財政赤字で国債が累増して、日本経済はがたがたになってしまった。今度、アメリカは景気がよくなって、もうインフしかと思うと、一転ドル政策に戻ってやっている。  私は、この間違いを、認識を変えないといけない。黒字国が批判されるようなことなんて絶対ない。問題があるのは赤字国で、自分でやれ。どうしてそれを大蔵大臣は言えないのかと思っているのですけれども、最後に、そのことをお伺いし たい。
  52. 三塚博

    三塚国務大臣 その点は、歴代総理、大蔵大臣とよく言われますが、今日ただいまはそうではないわけであります。  日本財政赤字、御案内のとおり、世界の中において最大のピンチを迎えておるわけで、放置をいたしますと、その行き先の国民生活、国民経済は、賢明な山本さんですから先刻承知のはずであります。  よって、サマーズさんからもいろいろ話がある、ルービンさんからも話がある、その他のアメリカの方々からも話があります。ありますが、その都度申し上げておりますのは、我が国はただいま、経済的には五つ、国民教育のあり方という意味で教育改革、六本の柱でやらせていただき、みずからの努力で国内産業を盛んにし、我が国の民間経済を主力とした活動の中で収支をきっちりとする、その結果として財政構造を改革をする成果が上がるであろう、赤字を逐次減らしてまいります、よって、黒字になって攻め込むということはありませんと。  お二人との論争の中で、我が国の経常収支は、緩やかな線ではありますけれども、問題になることではありません、こう言い続けてきておるわけでございます。足元の景気が民需によって支えられてきておりますから、さらに民需中心の新しい経済への復活、こういうことになるでありましょうし、そのためには、さらに財政構造改革を初めとした改革の諸問題に積極的に取り組むことによって、輸出第一主義の日本経済の構造を根本から変えていく。しかし、要求されますから輸出が出るわけでございますから、その部分についてはしっかりと理解をしていただかなければなりません、こういうことであります。  そういう点で、山本榊原、同じゼミだそうでありますが、レートを中心とした本日の論争、国家のあり方まで言及されましたこと、私、興味深く拝聴いたしておりますので、これからの経済財政運営の中で、反面教師としてしっかりやらせていただきます。
  53. 山本幸三

    山本(幸)委員 日本経済のためにいろいろなことをやるのは大いに結構なことで、外為法改正もその一つと思っているのです。それを自分の国のためにちゃんとやるというのはそのとおり。しかし、この外為法改正をやるということは、では今まで日本市場は閉鎖していたのですねというように理解されたら困るわけですね。そうではなくて、アメリカから言われたら、間違っていることは間違っている、こんなものは受けられないと言うくらいの理論武装をちゃんとして、大いに、毅然たる態度で臨んでほしい、そして、やるべきことをちゃんとやってほしいということであります。  きょうはどうもありがとうございました。
  54. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、木村太郎君。
  55. 木村太郎

    ○木村(太)委員 大蔵大臣初め皆様、よろしくお願いしたいと思います。  まず、日本は、私たちの国は、金融システムにおいて、ようやくにして鎖国から開国へ向かおうとしているとも指摘されております。橋本総理もまた三塚大蔵大臣も、経済の基礎をなす金融システムの改革、日本版ビッグバンの必要性を強調し、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際的な金融市場としての復権を重要視しており、そのフロントランナーになるのが、ただいま審議が続いております外為法改正、外為制度の改革であるとしております。  私も、日本版ビッグバンの必要性は感じております。しかし、金融システムは今現在どうなっているのか、外為法という法律はどういう法律なのか、外国為替業務とは何か、一般国民の大多数は余り把握していないのではないか、正直、私はそう思います。  例えば、ニュースの終わりには必ず、きょうの東京外国為替市場円相場あるいは東京市場の株価動向を報じておりますが、それとて、何かごく一部の人たちにとっては必要な情報なのかなととらえている方が多いと思います。私も、その大多数の一人でありました。  外為法改正の審議に入ってから時間的に大分経過もしていますので、これまでの議論と重複する点もあろうかと思いますが、私自身、素朴に思うことや、また周りの方々から、報道等を受けての、日本版ビッグバンなるものが今後どうなっていくのだろうというような思いでの声を聞きますので、幾つかお尋ねしてまいりたいと思います。  その前に、世界的経済大競争が進む中での取り組みでありますので、外為法改正を含む金融システム改革、ビッグバンについての大臣の決意を改めてお伺いさせていただきます。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  56. 三塚博

    三塚国務大臣 木村議員が言われますように、世の中は、国民各位の多くの理解を得て進むという政治手法では取り残されていくであろうという激しい流れの時代に突入したことだけは間違いありません。そういう中で、一歩おくれが十歩おくれになって後を追いかけるということであれば、フロントランナーははるかに、追い越すことのできないところまで走り去っていっておるだろう。振り返って、自分の走っておる状況を見ますと、挽回がどうにもならぬ。  マラソンのスパートというのは後半の二千とも言われる。しかし、やはり三千というようなことでスパートをしませんとトップ集団に追いつかないということ。これも経済の流れと、また政治経済全般と言っていいのでしょうか、そういう中であらわれておる現象であろう。そういうとらえ方が、橋本さんをして、大改革の前進、結果を出す、成果を目指して、今取り組まずしていつの日かという感懐が強くあったことは事実であります。  そういう中で、転ばぬ先のつえという言葉がありますが、これは転ばぬ先ではございません、どんどん走っていってしまっておるわけですから。  アジア諸国もかつてのアジア諸国ではなくなりました。十八カ国の蔵相会談で、年金をどうするかという議論に、アメリカを含め、まだ中進国に追いつけない国の大蔵大臣までがこの問題に議論を集中してやるという時代になりました。  そういうことを考えてみますと、諸改革は前進をしなければなりません。議員御指摘のように、お金は経済の血液であります。マーケットはそれを預かり、供給する唯一の場であります。そうだとしますと、これがグローバルスタンダードでなければならぬ。国際的な基準の中でまいりませんと、鎖国の中の東京市場では機能してまいりません。  よって、アメリカ、ロンドンその他の市場に肩を並べる状況にいかなければ、一千二百兆貯金がありますよということだけでは機能しない、宝の持ちぐされにもなりかねない危機を招く、こういうことになりますものですから、そのためには、一口に言って規制緩和、それを国際水準に並べる、そういうことの中で四つに組んで取り組みをしながら、預金者、出資者、投資者、皆様にプラスがもたらされる、なおかつそれが世界の全域にわたって貢献をしていくという、金融の基本原理の中で動き回るわけでありますから、そういうことが大変大事なときに来たなと。  ですから、五年のロングで、金融システムは二〇〇一年完成ということであります。それを、一九九九年、いわゆる二〇〇〇年を迎える直前にはほぼ概成して、マーケットとしての新しい生まれ変わりができ得ますように、それぞれの審議会または大蔵省を督励し、政府諸官庁を督励しながら、全力を尽くし、そこまで到達するように取り組んでおる、こういうことであります。
  57. 木村太郎

    ○木村(太)委員 大臣から今、マラソンに例えての、あるいはまた世界にも貢献していくということでの決意があったわけですので、その決意を持って取り組んでいただきたい、こう思います。  まず、金融システムの改革、ビッグバンを進める上で、手順や段階、順番というものが大切だと思います。では、手順としては、金融の正常化があって、次に安定化、そして金融の活性化と続くと思います。ビッグバンを行う上でその前提となるべき大きな一つに、これまでも議論にありまし たが、不良債権問題の解決を図ること、つまりは正常化があってビッグバンがスムーズに取り組めると思います。最近でもその不良債権問題が根底にあるかのような金融機関における大きな動きが続いており、不良債権問題は我が国経済においてもまだまだ尾を引くものと思います。  そこでお伺いしたいのですが、不良債権については、一説によれば幾ら幾らあるとか、幾ら幾らあるとも言われているなどとよく目にしたり耳にしたりしますが、我が国経済において、不良債権は幾らあると政府はとらえているのか、きのう並木委員も触れられておりましたけれども、お尋ねしたいと思います。  というのは、大蔵省は昨年九月末においての不良債権というものを、破綻先債権六兆三千九百九十億円、延滞債権十七兆四千五百三十億円、金利減免等債権を五兆三千七百六十億円、合計二十九兆二千三百億円と発表しています。大蔵省はこの額をもって不良債権としているのか確認をしたいと思います。ただ、これには住専向け債権は除かれ、また主要行においては、このほか経営支援先債権が三兆七千億円余りあると言われています。大蔵省として、不良債権とはどう定義づけているのか、確認をさせてください。
  58. 山口公生

    ○山口政府委員 お尋ねの大蔵省が公表している不良債権の額は、今委員の申されたとおりでございます。九月末の時点での統計でございます。これは、預金取扱金融機関を対象に、それぞれが保有します破綻先債権、延滞債権、金利減免等債権の額を報告を受けまして、それを集計しているものでございます。  この定義としましては、我が国の会計制度を踏まえまして、金融機関間の比較可能性を確保するとの観点から、金融制度調査会での御議論を踏まえまして、全銀協において統一的に決定したものでございます。なぜかといいますと、不良債権という概念を個々の銀行で勝手に報告をするとなりますと、ある銀行はたくさん出してくる、ある銀行は少なく出してくるということになります。統一的な基準じゃなきゃいけないということで、金融制度調査会の方で議論をされ、その結果として、破綻先債権というのは、破産、解散、会社更生、手形交換所における取引停止処分等の経営破綻となっている先に対する債権。それから延滞債権というのは、元本の全部または一部の返済または利息の支払いが六カ月以上延滞している債権。金利減免等債権というのは、約定条件改定時に公定歩合以下の水準にまで金利を引き下げた債権というような基準でもって統計をとったものでございます。  だから、いわゆる不良債権というものの概念を、それ以外はすべて正常で何ら問題がないというふうに決めつけますと、それはいろいろな御議論があると思います。ただ、私どもが集計しています、時系列的にずっと半期ごとにとっておりますこの不良債権額、二十九兆というふうに先生おっしゃっていましたが、それはこういった統一的な統計でございます。  以上でございます。
  59. 木村太郎

    ○木村(太)委員 それでは、先ほど私が言いました二十九兆二千三百億円というのは昨年九月末時点での値だと思いますが、その後、年度末である三月末、先月末時点での最新の額というものもとらえているのではないかと思うのですが、もしあればお伺いします。
  60. 山口公生

    ○山口政府委員 本年三月末時点のこの不良債権の状況は、決算がいまだ確定しておりませんので何とも申し上げられないのは御理解賜りたいと思いますが、いずれにせよ、この三月末時点における金融機関の不良債権額について、取りまとめができましたら公表をいたしたいというふうに思っております。
  61. 木村太郎

    ○木村(太)委員 決算が確定していないのでと、そのとおりだと思いますが、局長から見て、二十九兆二千三百億円の大蔵省として発表した数値から見れば減っているのでしょうか、予測としてはどうですか。
  62. 山口公生

    ○山口政府委員 減ってほしいというふうな気持ちでおるということでございます。今期のいろいろな決算の修正等の発表を見ますと、かなり思い切って引き当てをするあるいは償却をするというような動きがかなり広く見られております。そういうところを見ますと、この償却、引き当てがかなり進んでいるのではないかなというふうに期待しております。  ただし、私が申し上げた定義で言いますと、そこにまた落ちてくる債権がないとも限りません。したがいまして、その二十九兆が減る一方だというふうに考えますと、それは減ると言えますけれども、確定的なことを申し上げられないのはそういうことでございます。だから、期待を申し上げたいということでございます。
  63. 木村太郎

    ○木村(太)委員 私も減ることを期待したいと思います。  次に、阪和銀行の例が以前ありましたけれども、その阪和銀行の例を見ますと、平成八年五月に開示、公表されたときの不良債権の額というものが、先ほど局長からもあった全銀協ベースで見ますと五百七十三億円と発表されていましたが、「金融財政事情」の記事によりますと、半年後の破綻時の額は千九百億円となっており、三・三倍です。同じく、その前にありました太平洋銀行で見た場合は、二百六十三億円の発表だったのが破綻時には二千八百億円で、実に十・六倍であります。  このように、不良債権を正確につかんでいないのではないかととられても仕方がないと思われますが、ビッグバンに向かうに当たりまして、この点も議論としてきのうまでありましたけれども、こういうことでビッグバンそのものを進めることができるのか、お伺いしたいと思います。
  64. 山口公生

    ○山口政府委員 委員の御指摘のとおり、破綻前におきます不良債権のディスクローズの額に比べまして、破綻公表した後の、いわゆる回収不能あるいは回収に重大な懸念があるという債権、すなわちそういった意味での不良債権の額は相当違っておる、これは事実でございます。  一つは、ディスクローズベースの不良債権というものがそういった基準でもって出されていたということと、破綻時における回収不可能あるいは回収に懸念があるというようなものと若干概念の差があるということを御理解賜った上で申し上げますと、それまでメーンバンクでありました、そうすると、その企業はそれで生き残っておった、担保も余り十分ではないけれどもメーンバンクがつないでいってくれた、それで企業が成り立っていたというケースが往々にしてあるわけでございます。そして、その銀行がもしなくなるとした場合には、すぐほかの銀行が引き継いでくれるかというと、では新しい口座を開いてくれ、新しい取引をするとなりますと、やはりそこでまた担保を要求されるということで、なかなかそうはいかない、そうすると行き詰まってしまうというケースがございます。したがって、破綻後は、往々にして回収不能あるいは回収に重大な懸念というのがふえるわけでございます。そういった意味で、広い意味の不良債権額が大きくなる。  それから、今回いろいろなケースにおきまして、バブルの崩壊後かなり地価等が下がっておりました。したがって、期間の経過による担保価値の減少、あるいは相手の企業の業況悪化ということがかなりそういったことには響いていったのだろうと思うわけでございます。  ただ、今先生のおっしゃいましたように、そういった不良債権の実態というものを十分把握していかなきゃいけないということは、私ども、よく肝に銘じてまいりたいというふうに思っております。
  65. 木村太郎

    ○木村(太)委員 いま一つ気になる点があります。  普通銀行の業務運営に関する基本事項について、大蔵省通達により、銀行は株式の評価損を必ず計上しなければなりませんけれども、大蔵省は、不良債権なるものを、先ほども言いました二十九兆二千三百億円と発表しております。それは昨年九月末時点における発表でありましたが、そのときの日経平均株価というものは二万一千五百五十 六円でありました。しかし、最近の株価の動きは一万八千円を挟む動きで、きのうは一万七千九百三十三円でした。この株価の動きというものが金融機関の今後の不良債権処理にどう影響を与えるか、お伺いしたいと思います。
  66. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  一般論として申し上げますと、株価の低迷が金融機関の経営に与える影響、あるいは株価の高騰が金融機関に与える影響というふうに申し上げますと、株式の含み益の増減、これが自己資本比率に影響を及ぼすということが一つございます。それから二つ目に、不良債権の処理を進展させるのに、その処理財源として株式の含み益というものを使うということがございます。したがって、その含み益の減少あるいは増加ということで影響があります。  それから、今おっしゃいましたように、株式の評価を低価法でやっています。これは、健全性の観点から低価法というやり方をやっておりますので、場合によっては株式の償却負担というのが出てくるということになるわけでございます。ただいまの株価の水準からいいますと、今私が申し上げたようなことにつきまして、そう極端な増減要因という形にはなっていないように思いますが、委員の御指摘のように、昨年の九月末時点での株価水準に比べますと今度の三月末時点での株価水準は下がっておりますので、償却財源としての含み益というものは減っているということになろうかと思います。  それから、やはり低価法の関係で、一部は償却負担が生じているということはあろうかと思いますが、さほど大きいものではなかったということは言えようかと思います。
  67. 木村太郎

    ○木村(太)委員 さほど今のところは影響がないのではというような御答弁でありましたけれども、今幾つかお尋ねしましたけれども、改めて、この不良債権問題の解決に大蔵省としてはどのようにして取り組んでいくべきと思うのか、お伺いしたいと思います。
  68. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生御指摘の不良債権額は、一年前と比べますと、三十八兆ございましたので、約九兆余り減少しておりますし、要処理見込み額というもので見ましても、一年前十八兆だったのが七兆というふうに減っております。したがって、金融機関全体としていいますと、かなり不良債権問題を克服しつつあると言えるだろうというふうに思うわけでございます。ただ、個々の銀行のケースでは、まださらにいろいろと努力を要するというようなケースはあると思いますけれども、全体として見ますとそういうことでございます。  それで、金融システム改革とのかかわりでいかがかということでございますので、私どもとしては、そういった不良債権処理を進めつつも、やはりこれは待ったなしの改革でもございますので、慎重な気を配りながらの対応ということではありますけれども、そこは、預金者保護という考え方、あるいは信用秩序の維持というような基本的な考え方でもって万全を期してまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  69. 木村太郎

    ○木村(太)委員 次に、四月一日、日債銀の再建策というものが発表されました。日銀からの出資等の支援策が講じられる予定も明らかになりました。しかし、その直後の市場は、日債銀の株価の下落が続き、必ずしも評価はされなかったと思います。ところが、去る十日、アメリカの大手銀行バンカース社との間で業務提携で合意したということが明らかになりまして、日債銀株は買いが殺到し、しかし一方、バンカース株はニューヨーク市場で下落したようであります。  そこでお尋ねしたいと思いますが、先ほど例にとりましたけれども、阪和銀行は平成八年十一月に解体、清算が発表されたわけですが、大蔵省として日債銀への対応が違うように私自身も思われます。問題を抱えた金融機関に対応する場合の基準があるのでしょうか。また、小さいものはつぶして、大きいものはつぶさないということなのか。きのうまでの議論の中でもこのことはありましたが、我が党の谷口先輩初めほか何人かの方も取り上げておりましたけれども、そのときに大臣の方から、差別はない、自己努力をするものについてはサポートするというようなお答えもありました。では、阪和銀行等の例は自己努力の姿勢がなかったということになるのか、確認をさせてもらいたいと思います。  自己努力があることが仮に基準とするならば、それでは自己努力をしているかどうかの判断というものを大蔵省はどう思っているのか、お伺いしたいと思います。
  70. 山口公生

    ○山口政府委員 日債銀と阪和銀行を比較いただきましたけれども、阪和銀行のケースにおきましては、既に大幅な債務超過で、実質、破綻状況でございまして、これ以上銀行経営を続けることが不可能だというような状況であったわけでございます。日債銀の場合は破綻のケースではございません。これは不良債権、特に関連ノンバンク三社の処理でございます、これで思い切った処理をやるとかなり資本に食い込む、そして再建策として思い切った措置をとるために関係者にいろいろ御協力をいただくという再建策の話でございます。そこのところにつきましては、若干、話の次元が違うのではないかと思うわけでございます。  ただ、今の御質問の趣旨は、自助努力との関係でいろいろお尋ねでございますが、今回、大蔵省や日銀が特に日債銀のケースにおいてサポートを打ち出したという背景には、これは先ほど何度も申し上げましたように、国内の信用秩序の維持、あるいは対外的な意味の信用不安を起こさないというような大きなシステミックリスクの問題があったわけでございます。したがって、もし仮に万一のことがありますと、これはひとり日債銀だけの問題ではございません、日本の銀行全体が外国から信用されなくなるおそれがあるわけでございます。そうしますと、具体的に言いますと、クレジットの枠がぐっとすぼめられたり、いろいろなことが起きる可能性があるという大変大きな広がりを持つわけでございます。  そういった非常に重大な金融システム全体の問題についてかかわりがあったわけでございまして、そこで、いろいろな意味のサポートをする、ただ、サポートする前提として、厳しい自助努力をしていただくことが前提だということを申し上げているわけでございます。  阪和銀行のケースも、その自助努力という意味ではいろいろ御努力されました。されましたけれども、既にもう自助努力をしても大幅な債務超過になってしまっておったというような事情があります。  では、自助努力をしていることについて、私どもが小さいところはサポート等をしないのかということになりますと、それは自助努力をして立ち直るというようなものでありますと、例えば立ち直り方もいろいろあるわけであります。できれば増資、可能ならそれはそれでいいでしょう。あるいはだめな場合には、どこか他の金融機関と一緒になるとか営業を一部肩がわりしてもらうとか、いろいろなケースがあるわけであります。私どもとしては、そういうところについてはできるだけのサポート体制、いろいろな情報を提供するあるいは環境を整備してあげるというサポートはしていきたいと思っておりまして、そういった生きている金融機関が自助努力をして立ち直るという見込みがあるのでありますと、私どもとしては、例えば他の銀行にこういう話があるけれどもどうだろうかというような話をするとか、そういった努力はできるだけしてあげたい。やはりその方がいたずらに金融機関をつぶして混乱を引き起こすよりはずっといい。  ただ残念なことに、それをやっても大幅な債務超過になって、かえってこれを長引かせたらより預金者に不安を与え、また取引先にも迷惑をかけるということになりますと、そこは預金者保護というところに徹底した形での整理、清算もあり得るというようなことでございまして、一律にどういう場合はどうということではなくて、個々のケースによって対応をしていくということだろう と思っております。
  71. 木村太郎

    ○木村(太)委員 阪和銀行の場合は既に手おくれな状態だった、大幅な債務超過であった、日債銀はまだ破綻したという状況ではないということであります。また、ただいまの局長の答弁では、大蔵省はできるだけ、どんな場合でもサポートしていきたいという気持ちはあるということでありますので、その気持ちをぜひこれからも持ち続けていただきたいと思います。  次に、日債銀とバンカースとの提携ということが一つの大きな例として、我が国においてビッグバンを進める中でも、大手の金融機関においても外国金融機関との提携や合併というものがふえてくることも予想されますが、大蔵省としての見通しをどう持っているのか。加えて、ビッグバン、ひいては我が国経済にとっては、このことをどういうふうにとらえるべきだと思いますか、お伺いします。
  72. 山口公生

    ○山口政府委員 今委員の方からお示しいただきましたバンカースと日債銀のケースは、主に日債銀の海外業務からの撤退というものを補うと同時に、いろいろな面での業務提携というものが主でございまして、大幅な資本の参加というようなものではないように聞いております。  私ども、将来、ビッグバンとともに外資とのかかわりがどういうふうになるかというのはなかなか予断を許さない、即断はできないと思いますが、考えられますのは、そういった業務のいろいろな提携の形というものはやはり今後ふえていく可能性はまずはあるのではないかというふうに思うわけでございます。ただ、合併だとか吸収だとかいうことになりますと、なかなかこれは、将来どうなるかというのは予断できないものではないかと思うわけでございます。  ただ、こういった外資とのかかわりあるいは外資の進出ということにつきましては、ビッグバンに対しましては金融技術という面でもいろいろなものが取り入れられるでしょうし、あるいは世界規模での顧客の情報といいましょうかネットワークといいましょうか、そういったものの情報もかなり入ってくるといういい面もございます。  ただ、我が国の金融機関もひとつここはまた奮起して、よりそれを生かしていく努力が必要なわけでございまして、つまり、外国の銀行等の参加というものは、それをプラスの方に持っていくという努力が必要ではなかろうかというふうに思っております。
  73. 木村太郎

    ○木村(太)委員 次に、今私たちが審議しております外為法改正をフロントランナーというふうに位置づけておりますが、私も素朴に思うわけですが、なぜフロントランナーとして位置づけたのか。野球でいいますと、一番打者を外為法改正と強調するならば、二番打者以降も、その打順というもの、あるいはメンバーというものも既に考えているというふうに私は思います。  きのうの参考人意見陳述の中でも、フロントランナーである外為法改正に続いてセカンドランナーが出てこなければならないと伊藤忠の森澤参考人が述べておりました。また、大和証券専務の米山参考人も外為法改正に続く市場全体の改革が重要不可欠というふうにも述べておりましたけれども外為法改正を二番打者以降にどのようにして生かしていくのか、また、その二番打者以降、セカンドランナー以降にどのようなものを考えているのか、大蔵省にお伺いします。
  74. 山口公生

    ○山口政府委員 確かに外為法がフロントランナー的な位置づけになっているかと思いますが、一方で、ことしの三月末に規制緩和推進計画の再改定を行いました。これは中身的には多種多様なものがたくさん盛り込まれておりまして、この中には、業態別子会社の業務範囲の見直しなどの金融、証券、保険分野における大幅な規制緩和措置等が含まれております。既に、外為法の施行に先んじてこういった規制緩和はどんどん進められておるわけでございます。  あわせて、証取法の抜本改正に加えて、我が国の金融・証券市場の基盤を国際的水準にまで引き上げることを目的としまして、市場活性化のための新しい法律などの各般の立法措置をできるだけ早く行いたいというふうに意図を表明しております。  いずれにせよ、どういった項目をどういう手順でやるかということにつきましては、各関係審議会で今鋭意議論をしていただいておりまして、本年六月にはそのプランの全貌をお示しいただけると思っておりますので、それを受けまして、できるだけ早くそういったものを実現していくように努めていきたい。したがって、フロントランナーとしての外為法だけが先にあって、後がついていっていないということではございませんで、既にやっているものもかなりございますし、また同時に、そういった検討とともに実現に向けての動きを進めてまいりたいというふうに思っております。
  75. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ここで確認したいのですが、九八年四月に早期是正措置が導入されますと、債務超過に陥った金融機関が業務停止命令などの対象になることなどが予想されます。厳しい行政処分というものもふえることが予想されると思います。そのことは自然なことだと思いますが、しかし、こういうことが金融機関の不良債権処理をおくらせることにもなり、ビッグバンの流れにもマイナスの影響も出てくるのではないかというふうにも思いますが、いかがですか。
  76. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のように、来年の四月から早期是正措置が導入されます。これは行政の透明性という面も持っておりますので、自己資本比率で一定の比率を下回った場合に具体的な是正命令を出すということでございます。最悪の場合には業務停止命令までかけるというようなものでございます。これは、恣意的な行政であってはならないという反省から生まれた一つの透明性のある行政でございますが、ただ、余りにもそれを画一的にやるものでもないと思っておりまして、いろいろ蓋然性の高い計画を組んで着実にその実効を上げておられる場合には、いろいろ配慮するというふうなことも考えておるわけでございます。  そういった、ある意味では厳しい面を民間金融機関に求めるということと、ビッグバンの競争の激化ということの関係でございますけれども、ある意味では、これは、両者とも避けられない、同時並行でいかざるを得ないものであろうと思います。したがって、この残された期間に各金融機関とも、償却すべきはできるだけ早期に償却し、先ほど申し上げたように、今後生き残っていくためにはどういうことをすればいいのか、例えばどこと提携すればいいのか、あるいは何を切り捨てればいいのかということを今真剣に考えております。  したがって、そういったことをぜひ各銀行がやっていただきまして、それでできるだけ多くの銀行が生き延びていっていただきたいと思っておるわけでございます。ビックバンは避けられない中で、こうした各金融機関の懸命な自助努力をぜひ期待したいと思っておるところでございます。
  77. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の御答弁ですと、両面持ち合わせてやるんだ、いろいろ配慮する点も考えながら、しかし一方では厳しいことも求めていく、両面を持っての対応をしていくということでもありますので、その辺の駆け引きというか、大変難しい面もあるかと思いますけれども、今御答弁あった思いで大蔵省としての対応というものをお願いしたいと思います。  いま一つ確認したいんですが、金融ビッグバンについて、政府サイドにおいてその議論をされてきた場として挙げるとすれば、金融制度調査会、証券取引審議会、保険審議会、そして今当大蔵委員会議論しております外為法改正を答申した外国為替等審議会、この四つを挙げることができますけれども、何か別々に議論されている印象も多少私は持っております。ビッグバンの目的達成のために大丈夫でしょうか。
  78. 山口公生

    ○山口政府委員 今委員の御指摘の懸念が実は私どもにもありましたので、各審議会の検討状況を持ち寄って意見交換を行い、必要に応じて各審議会相互に関連する問題について議論する場としま して、各審議会の代表者による金融システム改革連絡協議会というのを設置させていただいているところでございます。これは、各審議会の会長とかあるいは小委員長とかいう方々でございまして、そういった方々が忌憚のない意見交換をしていただいております。そういうことで今委員のおっしゃったような懸念を払拭し、できるだけ整合性のとれた金融システム改革を行っていきたいというふうに思っております。
  79. 木村太郎

    ○木村(太)委員 その協議会というものをぜひ大事にしていただきたいと思います。  さらに、この外為法改正についての影響というもの、幾つか具体的なことを少しお尋ねしたいと思いますが、きのうもさくら銀行の工藤参考人が、ビッグバンを進めると銀行にとっても収入が減少する面もあるだろうというふうにも述べていました。大蔵省として、この改正によって銀行の外為手数料収入というものがどの程度減少すると見込んでおられるか、また、この手数料収入が銀行の収益に占める比率というもの、今現在どの程度あり、改正によってどうなっていくと思われるか、お尋ねいたします。
  80. 榊原英資

    榊原政府委員 手元に、九五年度の全外国為替公認銀行の外国為替業務に係る収益の状況表というのがございますから、これに沿って答弁をさせていただきます。  まず、全為銀、これは邦銀のみでございますけれども、二百六十行で見た場合、外為業務純損益でございますが、これは一兆二千五百三十四億円でございます。これは、国内業務を含めた業務純益の一七・二%を占めておるわけでございます。  議員御承知のように、今回の外為法改正によりまして、企業が相殺などの形で為銀を通じないで対外決済を行う、あるいは外国為替の業務を外国にある金融機関と直接行うというようなことがございますので、銀行の収益が若干減るわけでございますけれども、減るアイテムは比較的少のうございまして、一つは、「外国為替売買損益」というのがございます。これはいわゆるディーリング益と外貨の売買手数料でございまして、これが九五年度の数字ですと一千九百十六億円でございます。このうちどの程度が減るか。ディーリング益そのものは余り減らないと思いますので、どの程度が減るかということはこれは推測の域を出ないわけでございますけれども、例えばヒアリング等で確認いたしますと、千九百十六億円のうちほぼ半分がそういう外貨売買手数料に当たっている。ですから、半分というとほぼ一千億でございますけれども、その一千億のうちの幾ばくがが減るだろうというのが一点でございます。  もう一つは、「送金その他手数料」という項目がございまして、送金その他手数料というのは、実は中に保証料等を含んでおりますから、保証業務そのものには余り影響がないというふうに考えられますけれども、海外送金手数料が一体どのくらいかということでございますけれども、九五年度の数字ですと一千九百六十億円でございまして、その恐らく四分の一ぐらいが海外送金手数料だというふうに考えられますので、その五百億前後のうちかなりの手数料収入が減るというようなことでございますけれども、いずれにいたしましても、業務粗利益に占めるこの収入減の割合というのは〇・五%を下回るものだ、そういうふうに考えられるわけでございます。
  81. 木村太郎

    ○木村(太)委員 銀行にとっては決して小さな数字ではないと思います。銀行みずからも努力をしていただいて、そしてまた行政サイド、政府としても、銀行を初め協力いただいてのビッグバンの進展を期待したいと思います。  きのうの参考人質疑で北側先輩も触れられておりましたけれども、この外為法改正によりまして、銀行以外の企業が自由に為替の売買ができるようになれば、株式手数料の安い欧米の証券取引所で株式の売買を行うなど、我が国の市場というものが空洞化するのではないかというふうに私も思いますけれども、いかがですかとお尋ねしたいと思います。  いま一つ、我が国の金融市場の改革に向けて、フロントランナーが外為法改正なのだというふうに位置づけているわけですが、フロントランナーとして位置づけたこと自体が空洞化に結びつくことにもならないか、いま一度お尋ねします。
  82. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  外為法というか、対外取引の自由化から金融の規制の緩和を進めるというのはごく自然の流れでございます。外国でもそのように行われておりますけれども、当然のことながら、ほかの規制の緩和、金融システム改革が遅滞なく行われるということが極めて重要だということは御指摘のとおりでございます。  なお、この外為法審議というようなことで、外国がこの金融システム改革を見る目が相当変わってまいりまして、日本は本気で金融ビッグバンをやるなというような意識が定着してまいりました。ですから、一時はジャパン・パッシングというようなことを言われたのですけれども、今や日本はランド・オブ・オポチュニティーズだ、ビジネスチャンスが非常にある国であるということで、外国の金融機関等が日本に支店あるいは駐在員事務所を持つというようなこと、あるいは日本での業務を大幅に拡大するというようなことを既に始めているわけでございまして、空洞化というよりは、逆に東京マーケットは非常に拡大する気配を見せているというのが現状でございます。
  83. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。  次に、これもきのうまでの議論にありましたけれども、源泉徴収制度というものを改める必要性が出てくるのではないか、これに対しての答弁が、これから検討されることになるだろうというふうにもありました。市場はこういう点も大変注視していると私は思いますので、いま一度私もお尋ねいたします。
  84. 薄井信明

    ○薄井政府委員 利子に対します源泉徴収制度につきましては、日本を含めまして、納税者番号制度のないイギリスとかフランスとかドイツにおいて、ほとんどのヨーロッパの先進国において行われているわけでございまして、いわば一つのグローバルスタンダードだと思っております。適正な課税を行うためには、納税者番号がない中においてこれを実現するには、源泉徴収制度は欠かせないものだと考えております。  我が国におきまして、外為法改正に伴いまして、必然的に源泉徴収制度を見直さなければならないということはないというふうにこれまで答弁申し上げているところでございます。  一部に、我が国の国内で預金すると二〇%の源泉徴収がかかる、今度は、自由化されると、海外に預金口座を開設すれば、例えばアメリカに開設すればそこで源泉徴収がない、それならば日本に預金しないで外に出ていくのではないか、そういう意味でこのことが議論されることがございますが、それは少々誤りがございます。なぜならば、外国で預金をして利子所得が出てくる。それは、日本の居住者であれば、日本で総合課税がなされます。したがって、その人が利子所得があるかないかがわかる限りにおいては、総合課税しなければ脱税することになります。したがって、海外に預金することが有利だとは言えないわけでございます。  そこで問題になるのが、海外で預金しているかどうかということを知るよすが、手がかりがあるかどうかということでございます。現在、外為法の世界からそれを入手することは可能でありますが、今度これが自由化になった暁には税制の世界でこれを確立していかないといけない、そういう意味で資料情報制度が必要である。この点を検討したいと申し上げているわけでございまして、源泉徴収制度について見直しをするということは考えておりません。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 木村太郎

    ○木村(太)委員 それでは、金融機関以外の分野への影響というもの、例えば輸出入業者とか機関投資家など、銀行を含め金融機関以外への影響というものはどう考えておりますか。
  86. 榊原英資

    榊原政府委員 外為法改正の輸出入業者などへの影響ということでございますけれども、まず、 輸出入業者等エンドユーザーにとりましては、内外の資本取引が自由化ということになりますと、許可・届け出制度が事後の報告ということになります。ですから、事前の手続に伴う負担が軽減され、ビジネスチャンスを逸することなく、素早く対外取引を行うことができるようになる、こういう点が一つございます。  それから、その輸出入業者等が、外為業務の自由化や相殺等対外決済の自由化によりまして外為関係の手数料を削減することができる。これは先ほどの銀行の影響のちょうど裏側でございますけれども、そういうユーザーにとっては手数料が安くなるということでございます。  また、個人にとりましては、クロスボーダーの取引が自由になるということで、海外預金やクロスボーダーでの証券取引を自由に行うことができるということ、さらには多様な商品が個人に提供されることになるということによるメリットもあるというふうに思っております。  いずれにしましても、今回の外為法改正は、日本の金融・資本市場の一層の活性化に資するのみならず、金融機関以外の企業の活動にとっても大変好ましい影響を与えるものだ、そういうふうに思っております。
  87. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。  次に、最近、このビッグバンということについて、内外の世論が消極的になってきているとの一部の報道を私は目にいたしました。ビッグバンについて、世論の変化というものが、大蔵省としてはあると思うかどうか、あるいはつかんでいるのかどうか。また、大蔵省自身も、当初ビッグバン構想を打ち出してからきょう現在、何らかの変化というものを持っているのか。  私は、ビッグバンが、せっかくやるのですから、ミニバンになってはならないというふうにも思いますので、そこにはやはり強いリーダーシップというものが求められてくると思いますので、この点は大臣にお伺いしたいと思います。
  88. 三塚博

    三塚国務大臣 世論の動向いかん、こういうことでございますが、今回のビッグバンにつきましての金融改革、これは御案内のとおり、ロンドン、ニューヨーク、そういうところと相伝する金融システムをつくり上げたい、こういうことであります。  御案内のとおり、千二百兆もの個人金融資産の効率的な運用のために不可欠なものであると申し上げておるところでございます。他方、市場参加者にリスクや痛みをもたらすことがあり得ますのも事実でございます。よって、情報開示の促進や早期是正措置等、ルールの明確化は極めて必要なことであり、必要な措置を講じ、自由かつ透明で信頼できる市場を構成をしていくということであります。  システム全体の安定に細心の注意を払うとともに、国際化に対応した監督・協力体制への確立に努めるということであり、いろいろ、本番を迎えつつあるこのシステムの前進について、大変なことになるという金融機関もあります。ある意味の危機感を持って、頑張り抜いて、金融機関としての責任を果たそう、こういうことであり、また、一般国民にとりましても、このあり方について大変危惧をしておる点、各位の御質疑のとおりでございますから、的確なPRをしっかりとしていかなければならぬと思っております。
  89. 木村太郎

    ○木村(太)委員 時間も余りなくなってきたので。  このビッグバンを進めることによりまして、二極化が進むだろう。金融市場あるいはまた企業、経済そのものも二極化が進むことも予想されるだろう。二極化というのは、例えば、一部の大きな力がますます力をつけていく、そして大多数のその他のものを牛耳るのであるというような指摘もされておりますが、もしそういうふうになっていった場合に、そのことがまた、例えば政府政府サイド、大蔵省や日銀なんかの政府サイド以上に日本経済の動向というものを左右するような大きな力にもなっていくのじゃないかなというふうにも思いますが、大蔵省としてはどうとらえていますか。
  90. 山口公生

    ○山口政府委員 今回の金融システム改革におきましては、市場原理が働く自由な市場を構築していくというようなことを目指すわけでございます。そこには、参入、商品、価格の自由化など、金融機関の間の競争を促進するための方策を盛り込んでおるわけでございます。もし、その競争が非常にフェアで公平なものでありますれば、御指摘のようなケースが今生じるという懸念はないだろうと思うわけでございます。むしろ、そういったものをどう克服していくかという、各金融機関の知恵比べといいましょうか、努力比べというような段階ではないのだろうかというふうに思っているわけでございます。
  91. 木村太郎

    ○木村(太)委員 いま一つ、これもきのうまでの議論にいろいろ出てきましたが、我が国の金利政策というものが、ビッグバンを進める上でどうあるべきなのかということをお尋ねしたいと思います。  これも、大蔵大臣から答弁として、しばらくは続くだろうというようなこともありました。しばらくはというのは、具体的にはいつまでなのか、お聞かせください。
  92. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金利政策についてのお尋ねでございますけれども、御承知のとおり、金利政策日本銀行の所管事項でございますが、日銀総裁は、繰り返し、当面の金融政策の運営に当たりましては、景気の回復の基盤をよりしっかりとしたものにすることに重点を置いてやっていくという趣旨の発言をされておるわけでございます。  いつまでかという期間の問題につきましては、ここで具体的に申し上げることは困難でございますけれども、景気の動向、金融市場状況、内外の経済情勢といったものを引き続き注視して、日本銀行において対応されるものというふうに理解しております。
  93. 木村太郎

    ○木村(太)委員 時間が来ましたので、最後に、我が国を取り巻く世界の経済変化というものは大変大きく変わりつつあると思います。日本もその流れに乗りおくれてはならないと思いますので、大臣初め大蔵省、そしてまた金融機関等の協力をいただいて、ビッグバンを確実に進めていただきたいと思います。  ビッグバンのために我が国金融界に競争原理を貫徹させて、全面的に自由化というもの、この大きな目標に推進できるかどうか、最後に大臣の自信のほどをお伺いさせてもらって、終わります。
  94. 三塚博

    三塚国務大臣 段々の御質疑を踏まえながら、目指す方向は議員と同じでありますので、全力を尽くします。
  95. 木村太郎

    ○木村(太)委員 どうもありがとうございました。
  96. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、田中甲君。
  97. 田中甲

    田中(甲)委員 今、質問をされました木村太郎さんは、青森県議会野球部のエースでありまして、体を弓のように曲げて剛速球を投げたピッチャーでありました。きょうの質問はいささかスローテンポだなという、そんな思いで聞いておりましたが、私は千葉県議会野球部のキャッチャーでありまして、当時は自民党で、まさに名実ともに保守系でありましたが、現在は民主党という立場で国政に臨んでいるわけであります。  少し本題と違うところから話をさせていただきましたが、やはり前向きに、元気よくこれから日本が挑戦をしていかなければいけないのだろうという思いを持つところであります。そんな中で、常にポジティブな御意見を述べられている三塚大蔵大臣は貴重でありまして、重要な役割というのを担っていらっしゃる、そんな思いをまた持たせていただいているところであります。  質問に入らせていただきますが、私は本会議で、この外為法に関して、本法案に対して質疑をさせていただきました。きょうは、少し細部にわたって、この場所、六十分間いただきましたので、御質問をさせていただきたいと思っております。  昨年の十一月に総理が指示されました、経済の基礎をなす金融システム改革、すなわち日本版ビッグバンのフロントランナーとして位置づけら れた。そこでまず、この法案の大前提である日本版ビッグバンの構想について、基本的な考えや取り組みを改めてお聞かせをいただきたいと思います。  バブル崩壊後、東京の金融市場は、株式市場を含め、今やニューヨーク、ロンドン市場に大きく引き離されたところであり、それどころか、シンガポールを初めとする東南アジアの金融市場にも追い越されそうな情勢であります。国際金融取引のグローバル化、エレクトロニクス化の急速な進展に伴い、国境を超えた金融市場間の競争が展開され始めており、従来の大蔵省のいわゆる護送船団方式の金融政策行政ではもはや時代おくれで、このままでは日本の金融市場の空洞化が必至という追い詰められた状況で浮上したのが、この日本版ビッグバン構想であると認識をさせていただいております。改革の実現には、官僚をはるかに超える、はるかにしのぐ強い政治のリーダーシップが必要であろうとも認識をさせていただいています。  まずは、大蔵大臣より、この日本版ビッグバン構想をどう考え、また、実現に向けて何をなすべきとお考えであるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  98. 三塚博

    三塚国務大臣 大変、我が国が直面する経済、また政治を含めまして、真価を問われておる時期に来ました。やらなけらばならぬこと、多くの分野にありますが、当大蔵委員とともに私ども目指す方向は、金融システムが国際に通用する、国際基準に構築をし直すというところに力点があります。  フェアである、公正であるということ、これは取引の大原則であります。そして、自由であるという、これまたつけ加えることがございません。そこに貫くものは、自己責任、自律というこれまた理念が明確に通っておるということでなければならぬと思っております。  こういう中にありまして、若干G7仲間の国におくれましたけれども、金融システムを提案で説明を申し上げましたとおりのものに仕上げることによりまして、預金者、投資者に対する安心、信頼を得ていく、このことが、ひとり日本の国益だけではなく、アジアの国益であり、それぞれの国家の利益にもつながることと思っております。全力を挙げて取り組んでまいる決意であります。
  99. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  ビッグバンを一九八六年、先になし遂げたイギリス、その事例を知るべきだろうという考えのもと、イギリスで何が起きたかを調べていくうちに、これは、我が国日本は大変な時代を迎えるぞという思いを私は持ちました。私ばかりではなく、この事例というものを調べて真っ青になったという感想を持つ方がふえてきているということでありますし、また、当然、今後さらにそれはふえていくのだろうと思います。  イギリスでは、ビッグバンの結果、ロンドン金融市場のシティーは国際的な市場として復活をいたしましたが、自国の代表的な名門証券会社は、外国資本との熾烈な競争に次々と敗れ去りました。これは、イギリスの人々にとって誤算であったと言えます。当初の政策意図は、イギリス証券会社の競争力の強化にあったのですが、時間の経過とともに外国資本の優勢が歴然とし、ロンドン市場シティーの国際市場への復活に政策意図を変更せざるを得なくなったというものであります。  この点、日本はどういう方向に、どちらの方向にと聞いた方がよろしいのでしょうか、やっていかなければならないとお考えなのか、日本版ビッグバンにおいてどのような姿が望ましいと大蔵大臣は現在お考えになられているか、お聞かせを賜りたいと思います。
  100. 三塚博

    三塚国務大臣 望ましい姿といえば、定着したロンドン市場であり、ニューヨーク市場であろうと思います。  まさに、ロンドン・ビッグバンの軌跡を検討してまいりますと、御指摘のとおりであります。しかし、結果としてビジネスチャンスが生まれ、ニュービジネスがたくさんロンドン・シティーを中心に英国に育った、スタートを切った、こう言った方が正確なんでしょうか、そういうことで、雇用面に大きな影響を及ぼし、同時に、ロンドン市場が、ヨーロッパだけではなく、オールラウンドに世界において信頼を得たということでありますから、当初の、スタートに当たっての困難はお互いがみずからの努力で通り抜けていかなければなりませんし、大蔵省としても、また政府としても、国会としても、相連携をしながら、自由という基本的理念、フェアという基本的な考え方、そして国際基準を達成をして、日本人の持つよき国民性でここを乗り越えていける、こう思っております。
  101. 田中甲

    田中(甲)委員 今申し上げたとおり、イギリスは政策の意図を変更せざるを得なくなったのだ。そして、イギリス・ビッグバンが当初の政策意図を変えなければならなくなった原因というのは、政府が、ビッグバンの前に、旧態依然としたイギリスの証券界の体質を変える施策を実行しなかったからだ、すなわち準備不足だった、これが理由であると思います。日本版ビッグバンは、イギリスの証券市場の大改革にとどまらず、金融にも手を広げるというものでありますから、イギリスと同様の轍を踏まないためにも、我が国はさらに一層の努力をしなければならないという状況なのだろうと判断をいたします。  今回の外為法改正によって内外の壁がなくなり、海外から新規参入業者が入ってくれば、銀行、証券、信託といった業態に関係なく、金融機関同士の競争が激化することになるのは明白であります。海外から怒濤のごとく流入してくる、グローバルスタンダードの、価格競争力のある魅力的な金融商品が、規制にしがみつく高コスト、高手数料の日本国内の金融機関の取り扱う魅力の薄い商品を駆逐することは、また明白であろうと思います。  今回の改革が意味するところは、単なる外為取引の自由化にとどまらないものでありまして、それを理解しているにもかかわらず、国内の金融機関の楽観的な考え方に加えて、大蔵省もこの点に非常に楽観的ではないかと不安を持つところがあります。私は、政府が真剣に対策に取り組まないと大変なことになるのだろうと予測をするのであります。  海外勢は、個人資産一千二百兆円という現代版ジパングを目指して、海の向こうから虎視たんたんと日本の金融市場をねらっているという状況であるとも、同時に思います。大蔵大臣は今回の外為法改正影響についてどのようにお考えになられているか、御所見を賜りたいと思います。
  102. 三塚博

    三塚国務大臣 先ほど来、ロンドン・ビッグバンの成果が指摘をされております。必ずしも御指摘のような空洞化ばかりではないという意味の雇用面の問題も申し上げました。ニュービジネスの分野も申し上げました。同時に、英国市場が、シティーが、証券の取引も大変なペースでふえていったという事実、今日のイギリスが存在いたしますのも、まさにこのビッグバンの成功に負うところ大、このように見て間違いはないだろうと思っております。  そういう中で、私どもは、フロントランナー、外為法の成立を今お願いをし、御審議をいただいておるわけでありますが、これの持つよさを十二分に発揮をせしめる。先ほどセカンドランナー、どうだという話もありましたが、この点については、既に規制緩和の思い切ったものを第一弾として三月二十八日、発表をいたしたところでございます。そして、今後三つの審議会から中間答申、報告が出されることになっておりますから、これをしっかりと分析をし、すぐやれるものは実行する態勢に入る。法律的なものは、来年の通常国会に提出するように準備をいたしてまいる。  二〇〇一年が完成の年でありますが、今世紀の終わり、一九九九年には体制が概成する、システムが概成するというところに取り組んでまいるということで、大蔵当局も全力を挙げ、今そのことに取り組み、私も、閣僚各位にこの辺についての御協力を要請をいたし、基本的に了解を得ておるところであります。
  103. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。しっかりとした足取りで進めていただきたいと思います。  いろいろ問題点を勉強させていただく中で感じておりまして、その一つでありますけれども、旧態依然とした業態別の規制を残したままでは、日本の金融機関や証券会社が国際的な競争に勝てるとは到底思えないのです。そういうことになりますと、国内の金融関係者に大量の失業者が出ると予測がされると思うのですけれども、その点についてはいかがでしょう。
  104. 山口公生

    ○山口政府委員 業態別の規制につきましては、御承知のように、銀行、証券、信託間の相互参入につきましては、平成四年の金融制度改革によりまして、子会社方式による相互参入が既に実現しております。ただ、一部、その業態別子会社の業務範囲に経過規定がございまして、不自由だというふうな話がございました。  今般、三月二十八日の閣議決定におきまして規制緩和推進計画の再改定を行いました。その中で、業態別子会社の業務範囲は、九年度下期より「証券子会社に現物株式に係る業務を除く全ての証券業務を解禁し、信託子会社に年金信託・合同金銭信託を除く全ての金銭の信託業務を解禁する。」という前進をさせていただいたところでございます。また、「残余の業務制限の見直しについても金融システム改革全体の中で完了させる。」とされているところでありまして、今年六月に結論を得るべく、今後検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  105. 田中甲

    田中(甲)委員 失業者の問題はいかがですか。
  106. 山口公生

    ○山口政府委員 失業者の問題につきましては、このビッグバンによりまして活性化しますと、それはおのずと、むしろ雇用はふえるというふうに考えた方がいいと思います。
  107. 田中甲

    田中(甲)委員 少し見方が甘いのではないかなと僕は思いますけれどもね。タイムラグが相当あると思うのですね。その間をどうやって埋めるかということになってくると思うのです。  さらに具体的な点に触れてまいりたいと思います。  グローバルスタンダード、すなわちリスクとリターン、この原則の中で、自己責任原則をもって市場参加者が行動するには、金融機関の時価評価原則の採用は避けて通れないだろうと考えるのであります。そして、時価評価の考え方による経営戦略が今後必要になってくると思われます。  そこで、現在の取得原価法の会計原則ということを改めて、時価評価法を採用することを検討していく必要があると思うのですけれども、この点は、大蔵省と、そして法務省にもお伺いをしたいと思いますが、まず大蔵省の方に御答弁をいただきたいと思います。
  108. 長野厖士

    ○長野政府委員 御指摘のとおり、金融機関と申しますか金融商品の会計制度に関しまして、現在一部、先般国会でお認めいただきましたトレーディンク取引への時価法の導入が図られておりますけれども、その他につきましては、まだこれからの課題となっております。  したがいまして、現在、企業会計審議会などにおきまして、国際的な動向も踏まえた会計基準の整備のための検討が行われておりまして、御指摘の点、取得原価主義の見直しといった面についても御検討をいただいております。これは法制審議会とも協調を図りながら、具体的な改善措置をまとめていただきたいと考えておるところでございます。
  109. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 商法におきましては、取得原価主義に基づく資産の評価が定められているわけでございます。時価による資産の評価は、時価の見積額のいかんによりましては過大な未実現利益が計上されたり、あるいは利益操作がなされる危険性があるということで、商法では客観的な支出を基準とする取得原価主義を採用しているわけでございます。  ただいま大蔵省の方から御答弁がございました、金融機関のトレーディング取引につきましては、一定の要件のもとに、商法の特例といたしまして時価評価法が導入されることとなったわけでございますが、一般の事業会社すべてを対象としております商法におきまして直ちに時価評価を採用するということにつきましては、なお慎重な検討を要するものと考えているところでございます。  ただいま大蔵省の方からも御答弁がございました、国際的な動向を踏まえた会計基準の整備等につきましては、企業会計審議会及びその所管官庁でございます大蔵省において検討されているということは承知しておりますので、法務省におきましても、大蔵省と協力しながら、この点について検討を進めてまいりたい、かように存じているところでございます。
  110. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  答弁を聞いたとおりに受けとめますと、現在取り入れられている取得原価法の会計原則ということを改めていくことに前向きに取り組んでいるのが大蔵省であって、法務省は、慎重な姿勢をとって、余り前向きな姿勢とは言えないというように受けとめておいてよろしいですか。それが問題点になっているのかどうか、ちょっと失礼な質問かもしれませんけれども、大蔵省に確認だけさせておいてください。
  111. 長野厖士

    ○長野政府委員 大蔵省が、法務省がというのは大変微妙な御質問でございますが、国際的な場におきましても、現在この点については結論が得られておりません。それは、なるたけ時価で表示した方が企業経営上適切であるという判断と、ただいま法務省から御答弁がありましたような問題点というのを、どこの国も悩んでおるからでございます。  そこで、私どもとしては、企業会計から見た現在の時点での金融資産の状況を反映する時価会計というものを実施するとしたらどういうシステムが考えられるかということを考えさせていただきまして、それを法務省の方で、会計の原則にのっとって、それが許容範囲に入るのか、それは恣意的な決算操作になるおそれありという御判断になるのか、そういったことを、私どもが具体案をつくりました上で御協議させていただきたいと考えております。
  112. 田中甲

    田中(甲)委員 十年おくれのビッグバンといいますか、ひとつこれは前向きに、許容範囲内に入ってくるという法務省の見解ということを早い段階で示していただき、大蔵省の現在検討している姿というものが前に進んでいくように御努力をいただきたい。私からのお願いであります。どうぞ今後ともよろしく、検討をお願いいたします。  リスクとリターンの関係が、健全な市場という、世界基準では当たり前の原則が、日本ではまだとられていないように思われます。例えば郵便貯金は、リスクが小さいのにリターンが民間金融機関よりも大きいという矛盾があります。こういった市場の撹乱要因は取り除くべきだと考えます。郵便貯金の利率は、市場原理に合わせて低くすべきと考えますが、まず担当の郵政省にお伺いをしたいと思います。
  113. 藤岡道博

    ○藤岡説明員 お答えいたします。  郵便貯金の金利につきましては、市場金利それから民間の預金金利の動向等を勘案して設定しておるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、民間金融機関の預金金利とのバランスは確保されているものというふうに考えております。  例えば、郵便貯金の大宗を占めております定額貯金でございますけれども、これは預入して六カ月以降は払い戻し自由という、そういう商品性も勘案いたしまして、民間の定期預金金利とのバランスを確保しているということでございます。
  114. 田中甲

    田中(甲)委員 これはもう聞いている人、だれもが納得できない答弁だと思いますね。郵政省の答弁には、皆今そういう思いを持ったと思います。  市場の現状を見ると、民間の利率と郵便貯金の利率は明らかに離れている。それでも市場を見て、市場に合わせて決めている、そう言えるのですか。もう一度確認をさせてください。
  115. 藤岡道博

    ○藤岡説明員 お答え申し上げます。  定額貯金の金利決定ルールというのがございます。これは平成四年に大蔵省と郵政省の間で決めたルールでございますけれども、現在は、そのルールに従って運用させていただいておりまして、例えば定額貯金の金利につきましては、民間金融機関の定期預金の〇・九五掛け、いわゆる九五%ということで、必ず民間金利より低い金利というものを設定しております。現に、現在の金利を申し上げますと、民間さんの三年物の定期預金の平均金利は〇・八四%でございまして、それに対します定額貯金の金利は〇・八〇ということで、低くなっております。
  116. 田中甲

    田中(甲)委員 大蔵大臣は今の答弁をどのようにお聞きになられたでしょうか。  またあわせて、個人資本の三分の一を占める公的金融の見直し、何らかの方法で見直しを図るべきだと考えるのですけれども、その点についても、金融システムの改革におけるまさに最高責任者である大蔵大臣に、抜本的な改革を行うということを言われている中での御所見をお聞かせを賜りたいと思います。
  117. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣の御答弁の前に事実関係を御説明いたします。  郵政省から御説明がございましたように、最近におきます郵便貯金の金利設定は、市場金利とほぼ連動しながら、それに一定率を掛けるなどの調整をしながら決められておりまして、民間の動きとかけ離れた金利設定がなされているというふうには考えておりません。  それから、郵便貯金の本来の目的規定、簡易で確実な少額貯蓄手段の提供という本来の目的でございますけれども、民間の金融市場との整合性は次第に図られてきているものと思います。  ただ、政府事業の将来のあり方という面からの見方もいろいろ検討があると思います。大臣も総理もおっしゃっていますように、こういった改革全体の中で、聖域なくいろいろ御検討がされるというふうに聞いております。
  118. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの金利論争は、それぞれのルールで行われておる、これはこれとして、ただいまの段階、認めるところであります。  それと、簡易で確実な少額預貯金制度ということで郵便貯金制度がスタートしてきております。民間市場との整合性を保ちながらということですから、最高額が一千万を超えない、こういうことと承っておるところでございます。  いずれにいたしましても、政府事業のあり方、国がどのような機能を果たすべきことなのかとの観点から、聖域なく検討が今後も行われていくということであります。
  119. 田中甲

    田中(甲)委員 新聞によりますと、昨日、与党第一党であります自民党さんの行政改革推進本部が開かれ、その中で郵便貯金問題が取り上げられたそうでありますね。新聞で拝見をいたしました。(発言する者あり)いや、そんなことありません。朝日新聞でありますけれども、いろいろな意見があるようでありますから、これは大臣も、立法府の中においてさまざまな意見が出て今論議を呼んでいる、果たしてこれから日本版ビッグバンを行う中でこの郵貯問題を取り上げないということは不完全な議論になるよという意見もそれぞれ出されているようでありますから、ぜひともこの問題に対しては進んで早急な対応をしていただきたいという私の希望を申し上げさせていただきます。  次に、本法案の個々の項目についてお伺いをさせていただきたいと思います。  法案では、第三章の第十六条、経済制裁等の国際的要請への対応は、国際条約等の国際約束の履行、政府が国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めたとき、国際収支の均衡を維持するため特に必要があると認めたとき、主務大臣が法律または法律に基づく命令の規定の確実な実施のため必要と認めたときについては、国際取引の規制や資産凍結等の措置が政令でできるとしています。これは、国民の財産権を制約し、違反者には罰則も科す経済規制を政府が閣議決定のみで可能な政令に包括的に委任することであり、憲法の精神、罪刑法定主義に照らし合わせてみても適切な措置とは思えません。  また、相手国との緊張を高め、戦争の危険につながる、その危険性がある経済制裁措置について、憲法上国権の最高機関であり、広域な行政権限を有する国会が一切関与できないというのは、立法府と行政府関係においてバランスを失するものと言わざるを得ません。端的に言えば国会の軽視であり、賛成することはできません。  ここから御質問させていただきます。  もう少し私の方でお話を続けさせていただきますが、本会議でも実は例として申し上げたのですけれども、災害対策基本法第百九条を引き合いに出しました。災害時の規制について、緊急政令という形で政令への包括的な委任を定めています。が、しかし、これは一般的な規定ではなくて、原則は法律で定めるべきことを、緊急事態に対処するための便法として政令委任を認め、事後的に国会の承認を得ることができるように定めています。あくまでも国会の承認を得なければその効力を失うという法律構成になっているわけであります。こうしたセーフガードの措置に対する国会承認の規定というものを今回の改正法案にも設けるべきだという考えなのであります。  つまり、立法府において、国会議員という立場である私たちがしっかりとそれを確認していくということが必要であろうかと思うのですが、同じく立法府において国会議員の一員であります大蔵大臣、このことに対して御見解を賜りたいと思います。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  120. 榊原英資

    榊原政府委員 大蔵大臣の前に、技術的なことについて御説明をさせていただきます。  まず、三つの理由によって国会の事後承認は必要ないというふうに考えております。  一つは、これは直接、取引を禁止するものでなく、許可制にするということでございまして、許可をする場合も十分あり得るわけでございます。現地の駐在員の給与の支払い等は当然許可することになりますし、また、医療とか食糧とか人道的なものにかかわる送金というようなものも許可をするということがありますから、全般的に財産権を停止するようなものではないというのが一点でございます。  二点目は、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与することが特に必要だと認められる場合ということで、そのケースを極めて明確に法律で定めているわけでございますから、こういうことを明確に法律に定めた上で政令に落とすというのは十分妥当なことだというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、許可義務対象も、法律上、海外送金等の特定経済行為に限定されているわけでございまして、国民の生活権を直接脅かすようなものではないという点でございます。  御指摘の災害対策基本法との基本的な違いは、災害対策基本法では、生活必需物資の譲渡の制限または禁止というような国民の財産権を直接禁止するというものでございますので、この外為法の規定と災害対策基本法の規定は基本的に異なるものだと思っております。この外為法の場合には、議院内閣制のもとで、内閣が責任を持って決定するということで十分ではないかというふうに考えております。
  121. 三塚博

    三塚国務大臣 これは何度か出ておる御質疑でございますが、法律構成ということになりますと、今、国金局長の言われましたところ、内閣法制局とも十二分過ぎる検討を行いまして、法律の授権の範囲において政令において定める、こういうことでありますから、先ほど言われました、内閣の最終責任において執行する、こういうことでありますので、理解をいただきたいと存じます。
  122. 田中甲

    田中(甲)委員 自民党が野党になるということはそう考えられることではないのかもしれませんが、しかしないとは言えません。実際にあったことでもありますし、ないとは言えません。  それでは、立法府の野党という立場はどこに追いやられてしまうのか。少なくとも、選挙で同じ ような条件で当選をしてきたこの立法府、そして、憲法第四十一条、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法府という、この違憲の疑いも私はあるのではないかと思います。閣議決定のみで進められてしまうということは、野党が全く関与できない。つまり、ここで申し上げたいのは、これは、立法府対行政府関係をやはり明確にしておかなきゃならぬということだと思うのです。それは何ら手続上複雑になるものでもありませんし、なぜ事後承認をとるということを立法府の方にしないのかということの方が疑問に思いますし、今説明されたことはそのことに対する根本的な説明にはなっていないと思います。大蔵大臣、ぜひ。
  123. 三塚博

    三塚国務大臣 お答えします。  議院内閣制というイギリスと同じような政治体制をとっております。それと、国会は常会をもって百五十日、こう決められております。そういたしますと、終わってから報告をしろ、こういうことになろうかと思うのでありますが、その件は、御質疑等、また、決定をいたしましたなら官房長官の会見でそこを明確に政令の内容、また、既に審議をいただいておりますが、先刻おわかりのことではありますが、国民に向けてそれを行う。また、主管大臣、これを丁寧に御説明、内容にわたる、こういうことでございますから、物事が、外為法の基本的な範囲が二つ、もう一つは、平和維持のための中東の例が一つございまして、あれだけの国民の血税を拠出いたしましたのにもかかわらず、クウェートの感謝決議の中に我が国のネームはございませんでした。こういうことなども、国民の税金を使わせていただきました政府、国会という立場からいいましても、極めて残念なことでございました。  そういう点で、その場合に、俊敏に国連の動向等を踏まえながらこれに対応をするということでありますから、この点を、最終的な政治責任を内閣が、そして取り決めました与党が負うという連帯性の中で政治責任を果たしていくことが国際環境の中で侮りを受けないことになる、こういうことを申し上げさせていただくところであります。
  124. 田中甲

    田中(甲)委員 これは与党が責任を負う必要はないと思うんですね。これは、国会において、いわゆる立法府の中で判断を下して、緊急に対応しなければならなかったことを承認していくということでありますから、その形を導入するということは決して問題のあることではないのだろうと思うのです。  きょうは、ちょっと違うことを申し上げることは逆に失礼かもしれませんが、経営破綻した旧兵庫銀行の頭取を務めていた元大蔵省の銀行局長が、一年半という期間を空白にしたものの、また社団法人の、金融財政事情研究会でありますけれども理事長に就任するという記事が出ております。  このことをこの問題と同一視するつもりはありませんけれども、やはりより大蔵省に対して立法府がきちんと、行政府に対して立法府がきちんと対応していく。細部にわたって、国民に選ばれた、それは与党であろうと野党であろうと、国会議員一人一人が判断を下す。野党が反対する場合もあるかもしれません。しかし、それは与党の多数をもって成立することでありますから、閣議決定で決まったことをなぜ立法府の中に報告することができないのかということを私たちは考えまして、立法府の一員として、この法案に対する修正案を提出をさせていただきたいと思っています。  わが国から外国に対する支払い等、資本取引、対外直接投資、役務取引に関して、政府が規制を課す場合は、その旨及び理由を公表し、周知を徹底する必要がある。さらに、わが国の安全保障の観点から、特に対外的な摩擦を招く恐れのある経済制裁措置については、事後的に速やかに国会の承認を求めるよう規定し、国会の意志を明らかにし、行政のチェックの仕組みを整備する必要がある。 という理由をもって修正案というものを提出させていただきたいと思います。  どうかこの提出に対して大蔵大臣の御理解を賜りたいと思います。
  125. 三塚博

    三塚国務大臣 私は、外為法という法律を検討をいたし、本件是なり、こういうことでお願いを申し上げております。田中議員の言わんとすることは全くわからぬわけではございません。どうぞ委員長を中心に御協議をいただき、取り組ませていただきます。
  126. 田中甲

    田中(甲)委員 どうもありがとうございます。  続いて、第二十一条、海外預金の自由化に関して質問をさせていただきます。  現在、例えば皆さんが海外に預金口座を開く場合、大蔵省の事前許可が必要であり、円建て預金はほとんど許可がおりなかったのですが、今回は、改正法施行後に自由になり、海外に預金口座を開設する方がふえると思われます。消費者にとっては非常にメリットのあるものとなると思われます。例えば、通信販売やインターネットを通じてアメリカから商品を購入する際、現地の銀行口座で引き落とせば手数料が安く済み、その際、内外価格差を加えると、二重のメリットと言えるのかもしれません、また、ロンドンのシティーで日本株を売買注文すれば、有価証券取引税もなく、株式委託手数料は日本国内の約十分の一で済みます。  しかし、この二つの例はいずれも海外の市場における取引であって、日本、東京の市場の活性化につながるものではありません。つまりは、今回の法改正が有価証券取引税の廃止や手数料自由化等の規制緩和を伴わないと、東京市場の活性化ところか、逆に空洞化は一層に進むということになるわけであります。この点から、大蔵省からは影響がほとんどないと楽観的な見解あるいは説明を受けているところでありますが、私はそうは思えないのであります。それは、例えて申し上げるならば水が高いところから低いところへ流れていくように、できるだけ低いコストで商売のできるところに移っていくというのが自然だからだと思うのです。  大臣も、官僚の方々と同様に、今回の改正影響は小さいとお考えでしょうか。大臣の御所見を賜りたいと思います。
  127. 榊原英資

    榊原政府委員 今回の外為法改正のインパクトが小さいということを私ども申し上げているわけではございません。ただ、大量の資金が海外に流出するというような事態が起こるのか起こらないのかということについて所見を申し述べさせていただいているわけでございまして、現在までも自由化が相当程度進んでいる、全く規制しているところから一気に自由になるわけではないということを何度も述べておりますし、それから、円預金を海外に持つメリットというのは、これはほとんどないわけでございます。  例えば今御指摘の通信販売をするというようなことであれば、これはドル預金を持つということでございます。ドル預金を持つというようなことがそれでは大量に起こるかと申しますと、これはたまたま計算をしてみましたけれども、例えば、為替リスクというものを含めてアメリカでドル建ての債券を持つということを考えると一体どのくらいの利回りになるかといいますと、利回りは〇・五%以下になるわけでございます。  ですから、為替リスクを勘案すれば、海外が高金利だからお金が出ていくということにはならないということでございまして、私どもフルヘッジと言っていますけれども、フルヘッジをとった上で海外にお金を出すということは日本国内に置いておくのとほとんど変わらない、そういうことになっておるわけでございますから、海外の金利が高いから一挙にお金が逃げてしまうということはあり得ないわけでございます。  それからもう一つ、先ほども申し上げましたように、日本に海外の金融機関が大量に進出してくる気配があるということでございまして、そういうことが起これば、当然日本株あるいは日本の債券をより大きく彼らのポートフォリオに組み入れるということがあるわけでございますから、これは当然のことながら東京市場を活性化させるということでございますから、御懸念の東京の空洞化、 あるいは資本の逃避ということは決して大きなスケールでは起きない、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  128. 田中甲

    田中(甲)委員 もちろん経験豊富な国金局長が発言されることでありますから。しかし、断定的におっしゃられていましたね。かなり自信を持って言われるというのは……(榊原政府委員「自信を持っております」と呼ぶ)  では、そういう面で大蔵大臣にお伺いをしたいのですけれども、その自信を持って発言をするためにも、四月一日の改正法案の施行までに、手数料の自由化、有価証券取引税の廃止、これはもう絶対に必要だと思うのですけれども大蔵大臣の御所見を賜りたいと思います。
  129. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は審議会において行われておることです。それともう一つは、税等に関しましては、株式市場の税金はどうあるべきかという総合判断が重要であります。  そういう意味で、年末になりますか、その前に勉強会がありますか、党の方では勉強会に入っておるようでありますが、政府税調は御案内のとおり年末に開かれる、そして最終的にその答申を受けて政府が決定をする、こういうことであります。
  130. 田中甲

    田中(甲)委員 段階を踏んでの御英断、その他実施すべき規制緩和措置というものも多く必要になってくるであろうと思われますので、ぜひ御努力を賜りたいと思います。  次に、支払い手段の自由化、両替商の認可制度の廃止についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回は、第十四条の廃止によって、だれでも自由に両替業務ができることになります。よって、コンビニエンスストアですとか八百屋さん、魚屋さんでも円とドルの交換ができるようになったり、また競争によって両替の手数料が下がり、そういう面では消費者にとってはよいことだろうと思います。また、二十一条の改正によって、ドルショップが開設されるようになり、海外旅行で使い切れずに持ち帰ったドルでハンバーガーを買えるとか、そういうさまざまな利便性は増してくるわけであります。  しかし、一方で、だれでもが両替商になれることや、ドルショップの開設に伴って、さまざまな懸念される点が出てくると思うのです。  例えば、悪質な業者が高いレートで両替を行うとか、偽造通貨、すなわちにせ札を用いた犯罪が起きてくるとか、こうした危険性の認識とその対応について、大蔵省には、両替商が加害者側といいますか悪徳両替商法の問題について、きょうは警察庁の方にもお越しをいただいておりますが、警察庁には、両替商が被害者となる犯罪、つまり今申し上げましたようなにせのドル札をつかまされるといったような犯罪の多発の危惧について、現段階でどのようにお考えになられているかをお聞かせいただきたいと思います。
  131. 榊原英資

    榊原政府委員 最初質問についてお答え申し上げます。  今回の改正は、御承知のように、我が国の金融・資本市場の活性化のために、基本的には自己責任原則や市場規律にゆだねる形で完全自由化を行うものでございます。  ただ、御指摘のような両替業務に関する不公正取引の防止については、市場のチェック機能及び既存の法体系の枠組みの中で対応することが可能だと考えております。詐欺的な行為があれば当然詐欺罪が適用されることになると思います。
  132. 小堀豊

    ○小堀説明員 お答えいたします。  認可制度の廃止が直ちに偽造外国紙幣を使用した犯罪の頻発につながるかどうかは明らかではございませんけれども、警察といたしましては、外国紙幣であるか否かは問わず、仮ににせ札の流通を認知した場合は、関係当局と連携をとりながら、その特徴、犯行の手口を分析の上、犯行が予想される場所に必要な情報提供を行うなどしまして、同種事犯の再発防止に努めてまいる所存であります。
  133. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。地方行政常任委員会のメンバーでもありますから、その点を今後御質問させていただく機会が他の場面であるかもしれません。また御指導いただきたいと思います。  今回の外為法改正に伴う税法とその執行面の整備状況について、次にお伺いをさせていただきたいと思います。  国境を超えてお金が自由に大量に流れるようになったときには、取引が活発になる点は大変結構なことでありますけれども、税法とその執行面の整備を怠ると、国際取引を利用した大がかりな租税の回避行為が行われる可能性があります。公正で適正な課税を妨げることのないように、十分な対応策が必要であると考えるところであります。現行では事前許可制度となっている海外預金は通貨供給量のごく一部でありますが、改正法案施行後の自由化により、大幅に海外の預金はふえると私は予測するところであります。  現在、国内の預金の利子は二〇%の源泉分離課税でほぼ完全に把握されていると思われますが、海外預金は自己申告制による課税なので、捕捉がはるかに難しくなると思われます。大蔵省は、その対応策として、税法に、海外送金資料情報制度法(仮称)の新設を検討していると伺いましたが、その概要についてお聞かせをいただければと思います。
  134. 薄井信明

    ○薄井政府委員 委員御指摘のとおり、このまま何も手当てをしないということは適当でないと思っておりまして、私ども為替の自由化の姿がだんだん明らかになり、かつ企業がどう対応していくかということを見きわめながら、今御指摘の資料情報制度を固めているところでございます。  その具体的内容は今後の問題ですが、概要を申し上げさせていただければ、銀行等の金融機関それから郵便局から、税務当局に対しまして、一定金額以上の海外送金、それから海外から来る入金、これに関しまして四つの項目、個人、法人の送金人及びその受取人の住所、氏名・名称等、それから相手先の所在地、所在国、氏名・名称等、送金額、日付、それに四つ目に送金の原因といったようなことを報告していただきたいと思っております。送金を依頼する方は、これらの事項を銀行等に書面で告知していただく。銀行等は、公的書類、例えば免許証等々だと思いますが、こういったもので本人であるかどうかの確認をしていただくということにする必要があると思っております。  なお、銀行等が報告義務違反を犯したり、本人が告知義務に違反した場合については、それなりの罰則を設けないと動かないのではないかなと思っております。  なお、この一定額につきましては低ければ低いほど完全ですが、一方では、これが余りに煩瑣になることはまた問題が生じますので、そのバランスをどう考えるかということで、現在、一件百万円ということで考えておる次第でございます。     〔金子(一)委員長代理退席、坂井委員長     代理着席〕
  135. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。百万円以上の海外送金について、銀行に税務署への報告を義務づけるということでありますね。  正直申し上げて、このような簡単なものなら、分割送金であるとか、そのほかに抜け穴が幾らでもつくれると思います。よりしっかりとした税法の整備が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  136. 薄井信明

    ○薄井政府委員 日本におきましては、現在源泉分離課税制度を利子についてはやっております。そうなりますと、仕組みとして名寄せができません。できない仕組みになっております。そうなりますと、一件一件で勝負をしていかなければなりません。そのときに、今申し上げた金額が低ければ低いほど税務当局から見れば望ましいわけですが、一方で、それほど細かく分けることもないのではないかなという面もあり、どこかで切らなければならないということに直面するわけでございます。  そうした場合に、為替の自由化の先進国であるアメリカがどういうことをやっているかというのを調べさせましたところ、一日百万円、あそこは名寄せができます、ということで、線を切ってい るようでございます。  そこで、その線を今回使えないかと思っている次第でございますが、もし、委員御指摘のように、百万円と置いたことが大きな穴になるという事態が生じてくるならば、それはそれで対抗措置をとっていくということになろうかと思っております。
  137. 田中甲

    田中(甲)委員 わかりました。  今まで国税局の摘発した、例えばロッキード事件などの脱税事件の多くは、銀行の調査によるものであったと認識をしております。今回、支払い手段として新たに電子マネーが加わりました。これに象徴されるように、今後、コンピューターネットワークの発展によって、銀行の記録に残らない取引がふえると思います。従来の税務調査の方法が通用しない時代が実はすぐそこまで来ているということなんだろうと思います。現行の体制ではとても対応し切れない。今後、国税庁に、こうした新しい形態の取引に対応し得る体制を整備していくことが必要になると考えます。国税職員の増員、国際調査に当たる専門知識を持った職員の養成が必要になると思いますが、大臣はいかがお考えでありましょうか。
  138. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、私ども国税当局といたしましては、適正、公平な課税の実現のために、あらゆる資料情報の収集等を図っておりまして、必要に応じて、金融機関を含む関係者からの質問調査等も行っているわけでございます。  そこで、今回の外為規制の緩和によりまして、国境を超えた資金移動が自由化され、国際取引を利用した租税回避行為の把握が一層困難になりますと、適正、公平な課税の実現に支障を来すだけでなく、税収の確保にも影響を与えるというふうに考えております。  したがいまして、執行当局といたしましては、国際課税の執行体制の一層の充実、先生御指摘になられました調査体制あるいは人材の育成、そういったことも含めて体制の充実を一層図るとともに、また、先ほど主税局長の方からお話ございました、銀行等からの資料情報制度をぜひ設けていただきたいというふうに考えております。     〔坂井委員長代理退席、柳本委員長代理着席〕
  139. 田中甲

    田中(甲)委員 大蔵大臣は、御所見ありますか。ぜひ積極的に進めていただきたいと思うのですが。
  140. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま担当者が答えたところであります。  ただ、一点、規制が余り強まりますと、せっかくのビッグバンが国際的に孤立をするという問題があります、個人の利益、国益というものをにらみながら、どこでどう調整するかというのがこれからの大事なポイントであろうと思います。よく勉強します。
  141. 田中甲

    田中(甲)委員 大臣の御指摘の点もあろうかと思います。犯罪防止のための諸施策という範疇で、ぜひ積極的に検討していただきたいと思います。  電子マネーについて、若干御質問をさせていただきたいと思います。  クロスボーダーの取引がますます増大する中、国際的なマネーロンダリングへの対応が必要となっています。電子マネーによる電子商取引がふえれば、それに伴って、国際的なマネーロンダリングの発生可能性もさらに増大することになります。その防止対策として、政府はどのようなことを検討されているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  142. 山口公生

    ○山口政府委員 いわゆる電子マネーにつきましては、現在、小口の支払い手段として、実用化に向けたさまざまな取り組みが行われております。まだ本格的な普及の段階にはございません。  したがって、マネーロンダリングに利用される可能性は現在のところは低いものと考えられますけれども、御指摘のように、将来、電子マネーが本格的に普及し、広範に利用される場合には、これがマネーロンダリングに利用されることのないよう、大蔵省としても、今後、電子マネーの発展について、十分、御指摘の点もあわせて注視していく必要があると考えております。
  143. 田中甲

    田中(甲)委員 それでは私は対応が遅いと思うのです。  というのは、こういう事例を読むことができました。意外と知られていないというか、ほとんど知られていないと思うのですけれども、我が国では、NTTが、八〇年代の後半に既に電子マネーの特許を取っているのですね。世界水準の電子マネーの技術を有しているというのが、実はそれが事実なんです。ところが、同時期に電子マネーの特許を得たオランダのデビット・チャウムという方なんですけれども、デジキャッシュ社は、九五年の秋から電子マネーをアメリカのマーク・トウェーン銀行で実用化し始めました。  これに比較いたしますと、NTTは、NTTというより日本の電子マネーは著しい出おくれの状態にあるというのが事実だと思います。そして、この状況において、ボーダーレス取引が中心となると予測される電子マネーの商取引を、今、日本が電子マネーの仕組みや規制を独自に検討していをだけではいけない段階に入ってきていると思います。つまり、この問題をめぐる欧米諸国との協調体制を十分にとっていただきたいということを御要望させていただきます。  この電子マネーというものが今まで日本国内において研究されてこなかったということは、ある意味で護送船団方式、規制の中で守られてきたというところがやはり背景にあったのではないかと思います。そういうことをこれから挽回していくということがやはり根本に、常に話し合われているわけでありますから、その点の御努力というものを欠かさず行っていただきたいと思います。  最後に、まとめという形にはならないかもしれませんが、私はこのように考えております。  自由で透明で国際的な金融市場を目指すという日本版ビッグバンと、そのフロントランナーとしての外国為替、資本取引の自由化について、私たち民主党も基本的に賛成であります。が、しかし、その前に、いわゆる空洞化という大きな病気を招かないように、予防する適切な処方せんが必要だと考えるのです。  外国為替、資本取引の自由化が施行される来年の四月までのこの短い限られた期間の中に、思い切った国内市場の規制撤廃と緩和の前倒し、経営情報の開示の徹底、有価証券取引税の廃止を初めとする税制の国際的なイコールフッティングを実現しなければならないということです。このことを行わなければ、現在は国内にある金融資産の多くが国外に流出し、国内の資金不足を引き起こし、金利が上昇することにつながると思いますし、経済の停滞という悪循環を招きます。それらの諸施策を間違えないように、もし間違えた場合には本当に日本経済の容体が急変する。大げさではなく、危篤状態になりかねないということでありますから、各課題に対し、政府が、大蔵省が適切な対応をとっていただけますように重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。
  144. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
  145. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 外為法改正をフロントランナーとした日本版ビッグバンというのは、イギリスのビッグバンと違いまして、証券市場にとどまらない、金融市場、金融改革、全体を目指したものであるということであります。したがって、イギリスよりもはるかに広い範囲を扱い、すべての金融機関を巻き込み、はるかに大きなインパクトを与えるという可能性を持っているわけであります。  そこで、大蔵大臣は四月十一日、当委員会で、二十行はつぶさないというのは大蔵大臣の決心とまで言われました。また、銀行局長は、日本の金融機関の競争力に関連して、現状に若干の不安を表明されまして、できるだけ生き残ってもらいたい、こういうふうに言われたわけであります。  大蔵大臣にお聞きをいたしますけれども、なぜ二十行なのか。その理由は何でしょうか。差別はないのだとも言われていますけれども、二十行と言う以上、二十行以外を別扱いにするということ にならざるを得ないわけでありまして、結局、二十行はつぶさない、しかし、中小についてはつぶれても仕方がない、こういうことになるのではないかと思うわけですが、その辺はどのように理解すればよろしいでしょうか。
  146. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣の御答弁の前に、私の発言もお触れいただきましたので、ちょっと私の方から。  二十行と申し上げておりますのは、邦銀の中で国際業務をいろいろやっておりますが、その九割を超えるシェアを持っております。したがって、二十行で何か破綻のような問題になりますと、これは金融不安が国際的にも広がるということでございまして、よく二十行、二十行というふうに言われるのはそこがあるからでございます。  したがって、二十行の処理を仮に誤るという事態になりますと、これは国内の金融システムに大変な不安を及ぼすのみならず、国際的にも、我が国から金融不安が外国に及んでしまうということになるわけでございます。私どもの経験でも、外国の銀行や証券会社が急に取りつけになったといって大騒ぎになった事例も現にございます。そのときに非常に私どもとしては不安に思ったわけでございます。そういったことが今度は外国で日本の銀行がきっかけで起こるということがあってはならないというところが、その二十行の問題でございます。  したがって、大臣から申し上げておりますのは、二十行に対しては、国際的な業務もあるし、日本からそういう迷惑をかけてはいけないということで、できるだけ自助努力のサポートをするのだ、こういうことをおっしゃっているわけでございます。  では、その他の銀行はみんなほったらかしかというような御質問になろうかというふうに思いますが、決してそういうことではありません。その他の銀行は、国内を中心にいろいろ活躍しております、いろいろ自助努力もしております、そういったことに対して、私どもはいろいろとサポートあるいはサジェスチョンをさせていただいておるわけでございますけれども、それはちょっと二十行とは違った形のものが表現として出てきているというだけでございます。私どもの姿勢としては、その他の銀行についても、自助努力をし、それで一生懸命営業をやっておられるところについてはきめ細かいいろいろなサポートをしていくつもりでございます。  ただ、その際に、どうしてももう成り立たないというようなことが起きますと、それは今度は預金者を保護するという観点から、これ以上続けられないという場合には、金融三法等を利用して預金者の保護に万全を期すというような処理もせざるを得ない場合があるということを御理解賜りたいと思います。
  147. 三塚博

    三塚国務大臣 山口銀行局長、万般にわたり完璧な答弁をされました。私は、その方針をその場その場で懇切丁寧に申し上げてきたところでございます。
  148. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 結局、国際業務をやっているかいないか、つまり国際的影響が大きいのか小さいのか、こういうことで分けているわけでありますね。ですから、これは結局二十行とそれ以外の銀行を区別して対応するということには違いないわけであります。しかも二十行の金融機関、そのうちの一つが仮に破綻をするということになったら、これが何かえらい大変なことになる、金融機関の連鎖的な危機を招いて、決済システム全体が麻痺する、それが世界に広がる、日本発世界金融恐慌などという言葉もありましたけれども、そういうふうに考えられるのかどうかという問題であります。  仮にある銀行がそういう危険にあるということになったとすれば、それは流動性の緊急確保など、日銀を中心としたそれに対応する具体策を検討すればよいわけであって、そうしなければならないわけであります。そうではなくて、あらかじめ、二十行が大きい影響があるからということで、それはつぶさないのだ、安泰ですということで対応するということになりますと、その経営の自己責任というのは一体どこにいくのか、どうなるのかということになるわけで、結局モラルハザードを引き起こす。こういうことでありますから、まさに大銀行、大資本中心の発想だと言わなければならぬと思うわけで、そのことが逆に金融システム全体に否定的な影響をもたらすということになるのではないかというふうに私は思います。  ですから、世界的影響ということをいわば口実にして大きな銀行だけを特別扱いするということになりますと、資本の大小によって別なルールを持ち込むということになるわけであって、そういうことはやはりすべきではない。やはり同じ基準で対応するということが、全体のルールを透明化し日本の金融システムの信頼をかち取ることになるというふうに思うわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  149. 山口公生

    ○山口政府委員 委員のおっしゃるような形でのモラルハザードを起こしてはいけないということは、私もそう思います。したがいまして、二十行は、そういった活動をしている以上は安泰であるということではありません。人一倍それは努力をしていただかなければいけない、必要なリストラを思い切ってやっていただかなければいけないという責務がむしろあるというふうに考えるべきじゃないかと思います。  したがって、今回も日債銀は早目に思い切ったリストラをやりました。役員賞与を半分にする、頭取は賞与をもらわないというようなことまで、あるいは人を減らすというようなことまでやっております。そういったことを二十行としては責任を持ってやる、ある意味では日本経済を代表している面がありますので、そういった努力をしていただく必要があるということで、その努力が前提にすべてなるわけでございまして、決してモラルハザードを起こすようなことであってはならないというふうに思っております。  資本の大小で云々と仰せられましたけれども、私どもの行政目的は預金者保護、それともう一つ大事なのが金融信用秩序の安定なのでございます。これはシステミックリスクを起こさないという表現でもあります。  これは、例えばAさんがBさんにお金を送るときに、遠隔地でありますと運べません。銀行に送金をお願いします。振り込みをお願いします。そのときその間に立つ人が信用できなかったら、これは信用秩序は成り立たないわけです。経済が麻痺してしまうわけです。要するに、そういった社会的な財産である金融信用秩序というものをやはり金融機関が守る必要があるわけで、私どもはそれは維持しなければいけない。そうすると、大きな銀行の場合にはその信用秩序が破壊されるおそれが非常に高いという面もあるわけでございます。  しかし、私どもの行政目的というのは、銀行そのものではなくて、そういう預金者保護とか社会的財産である信用秩序の維持というところに力点を置いているわけで、それが現象としてあらわれたときに大きいのと小さいのとというような議論がしばしば行われますけれども、私どものねらいは違うわけでございます。
  150. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 どうも今の説明を聞いてもよく理解できません。結局大小で区別をしているということに違いはないというふうに聞こえたわけであります。  それからもう一つは、内外の問題であります。国内資本と外国資本、この点については区別をされて対応されているのか、それともそうではないのかという点は、いかがでしょうか。
  151. 山口公生

    ○山口政府委員 我が国の銀行法などの規定に基づいて免許した金融機関の出資者が国内資本であろうと外国資本であろうと、当局の監督には何ら違いはございません。
  152. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 区別はないということですね。  実はここに第一勧業銀行の総合研究所が公表したレポートがありまして、昨年十二月のものですけれども、イギリスのビッグバンについてのレ ポートであります。この中ではこういうふうに書いているのです。「英国証券業界を中心として大規模な金融再編成が勃発した。競争の激化により市場から完全に淘汰される業者が出たり、多数のマーチャントバンクやマーケットメーカーが、英銀や欧州大陸諸国の銀行、米国の証券会社などによる買収を余儀なくされ、実質的に消滅していった。」こういうレポートが出ております。  それからもう一つは、あさひ銀行の調査部のレポートでありまして、「ロンドンのビッグバンについて」、この中でこういうふうに指摘をされています。「イギリス系証券業者を吸収・合併することによって、欧州大陸・米国の金融機関がロンドン市場において台頭し、反面、イギリスの金融機関による証券市場の支配はならなかった。このため、イギリスの金融機関の活性化を目指した当初の目的は、失敗に終わったとの見方もある。」こういうふうに指摘をされています。つまり、内外無差別ということでやられた証券業界を中心とするイギリスのビッグバンの結果であります。  そこでお聞きしたいわけですけれども日本の金融機関の競争力の問題でありますが、デリバティブあるいは新技術を駆使した新しい業務分野、あるいはグローバルビジネスにおける欧米金融機関の競争力と日本の金融機関と比べて、これは欧米の方が強いというふうに一般に言われていますけれども、実際のところ、どのようにお考えでしょうか。
  153. 山口公生

    ○山口政府委員 確かに、最近、デリバティブ等の先端的な金融技術の発展は目覚ましいものがございます。特に、海外ではそういった技術進歩が伝えられております。我が国の銀行も、海外でそういった技術をかなり今習得しておるわけでございます。欧米は世界的な規模でのいろいろな大きなそういったデリバティブの仕事にかかわっておるし、我が国の邦銀もそれに参加しております。  ところで、お尋ねは日本市場でというふうなお話になろうかと思います。日本でも、これからはお客のニーズの高度化、多様化からしまして、遠くない将来に、そういった高度の金融技術を使った金融商品が出回っていくというようなこと、あるいは機関投資家同士で話がマリーされていくということも大いにあり得ると思います。そのときに、海外の金融技術あるいは日本の邦銀の金融技術とどちらがまさるかという議論も当然出てくると思います。  ただ、海外でも大分習得している我が国の金融機関でございますので、そこは十分に研さんを積んでいけば、体制を組んでいけば十分に伍していけると思いますし、また、加えて、日本での仕事となりますと、そこは円ベースでのもし商売になりますと、顧客に関する情報というものを、邦銀の場合は少なくとも今まではかなりたくさん持っているわけでございます。そういった形で、十分にそこは対応できるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  154. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 現実的には外国資本の方がかなり先行している、しかしそれに対応しなければならない、こういうお話でありました。そうなりますと、場合によっては、外国資本によってかなり押されるという危険性さえあるわけで、実際に日債銀とバンカース・トラストの業務提携を見ましても、日本市場をねらった外資の進入ということも言えると思うわけであります。そういうことになっていきますと、いわば青い目の頭取のもとで働くことを覚悟せよということにもなるわけであります。  そういう方向でビッグバンが進んでいくということになっていきますと、次に問題になってくるのは雇用の問題であります。榊原国金局長は、ビッグバンが進みますと雇用はふえる、こういうふうな答弁をされました。果たしてそうだろうかということですね。イギリスのビッグバンでは全体としてふえたと言われていますけれども、先ほど御紹介したあさひ銀行のレポートによりますと、イギリスの雇用者数の伸びは主要先進国の中でも高い伸びを示しているけれども、ビッグバンとの関連を明確に断定することはできない、こういうふうに指摘をされているわけです。  既に、金融機関における雇用問題というのは日本でも深刻化しておりまして、この三年間をとりますと、都銀では全体で十五万五千人から十三万九千人へと一万六千人も減少しております。例えばさくら銀行が一千四百人、住友銀行九百人、東京三菱銀行七百人などがその内容であります。今度の日債銀の再建でも六百人の大幅な人減らしが行われているわけです。ほかの銀行に吸収されました兵庫銀行、太平洋銀行でも大幅な人減らしがありました。  ビッグバンが進められますと、競争が一層激化します。リストラや人減らしが推進される。こうなっていきますと、これは雇用が拡大するというよりもかなり雇用の減少につながっていくのではないかというふうに思われますけれども、拡大するというその根拠、これをお聞かせをいただきたいと思います。
  155. 榊原英資

    榊原政府委員 先ほどイギリスの例が述べられて、必ずしも相関関係が立証できないというようなレポートがあったということでございますけれども、イギリスの場合、少なくとも金融関連部門の雇用者数がビッグバン終了後大幅にふえたというのは事実でございます。  それから、論理的にどうして雇用がふえるかということを申し上げますと、これは確かに個別の金融機関ではリストラは進むかもしれない。しかし、東京での仕事がふえると先ほども申し上げましたけれども、例えば外資系の支店ですとか駐在員事務所がふえる、あるいは外資系の会社が業務を拡大するというようなことが既に起こっているわけでございますから、そういうところで雇用される日本人、これは日本人か外人かでございますけれども、そういうところで雇用される人たちということで、基本的に東京市場が活性化すれば雇用者はふえるというふうに思っておりまして、まさに今回の金融ビッグバンの目的は東京市場の活性化でございますから、そういう意味で、当然のことながら、活性化が成功すれば、ビッグバンが成功すれば雇用はふえるというふうに考えているわけでございます。
  156. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 余りリアルな答弁ではなくて、雇用がふえるといいなという願望をおっしゃったような感じがいたしますが。  これまでに事実上破綻をした銀行を見ますと、兵庫銀行、太平洋銀行の場合は受け皿というのが一応ありましたね。しかし、昨年十一月二十一日、大蔵省によって業務停止命令が出されまして事実上倒産に追い込まれた阪和銀行の場合、受け皿となる銀行もないわけであります。これは地域経済に対する影響というのは極めて大きいわけです。  阪和銀行が大蔵省の決算承認銀行になったのは、九二年六月のことであります。大蔵省は少なくとも九二年から指導を強化したのではないかと思うわけですが、例えば、決算承認銀行になった九二年六月に大蔵省から専務取締役が送り込まれました。九五年六月には大蔵省から取締役が入っています。また日銀からも行っているわけであります。そういう中で、九六年二月に策定されました経営改善計画、ここでは、九九年をめどに不良債権を回収し、リストラで経営改善を図ることがうたわれていたわけです。しかも、昨年九月期決算の予想では五千万円の黒字という見通しでありました。これは大蔵省がお認めになっていたはずであります。それなのに、なぜ突然このような事態になったのかと極めて不可解なわけです。  大蔵省は、この点でどのように責任を感じておられるのか、また、その経営者の責任という点についてもどのように考えておられるか、お答えを願いたいと思います。
  157. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘の阪和銀行の歴史的な経緯でございますけれども、途中で財務状況が悪くなり、決算承認の対象になったということでございますけれども、これは、その決算の中身がこれでいいということではなくて、社外流出等をもうやるべきではないというような形の指導でございまして、その後がなり努力はされたと思いますが、どんどん貸付債権が地価の下落等によりまして不 良化していった、回収がいよいよ難しいという状況になっていったわけでございます。  それで、昨年の九月期の決算公表を控えまして、再度内部でよくチェックしていただくことに加えまして、私どもから検査を入れたところ、回収ができないというものがかなり多く見られたわけでございます。債務超過額としましても資本を引いてもまだ二百億強あるというような、もう成り立たないというような見通しになったわけでございます。  そこで、銀行としてはその決算の見込みを修正発表するときに、もしそういう発表をしたときには預金者の皆様方に大変な不安を与えるという事態に立ち至ったわけでございます。それで、やむなく私どもとしては業務停止命令をかけたわけでございます。その際、経営者の方々も、現経営者は率直に言って原因をつくった人かと言われるとちょっといろいろ議論はあると思います、ただ、やはりそれを回復し得なかったというような責任をとられまして、頭取はすぐ退任され、しかし退任されても退くだけではなくて、関係先等に、取引先等に頭を下げてずっと回っておられますし、ほかの役員含め職員の方々も一生懸命、預金者に迷惑をかけないための預金払い戻し業務を真剣にやっていただいているわけでございます。
  158. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 経過的に言いますと、大蔵省の責任というのは極めて大きいと私は考えております。  問題は、こういう状況になった後の雇用問題であります。阪和銀行の清算銀行として新銀行、紀伊預金管理銀行というのが昨日設立されました。この銀行の目的は、結局は預金の払い戻しを中心とした整理、清算ということでありまして、この新銀行は基本的にその任務が終わればなくなるわけでありますね。したがって、そこに従業員が移ってもその先は見通しがないということであります。実際、約八百五十人の従業員の再就職は今大変なことになっておりまして、見通しが立たない。家族を含めますと三千五百人がいわば路頭に迷う状況に置かれているわけであります。したがって、どういうふうにこういう場合の従業員の就職を保障するかというのは大変重要な課題だと思うわけです。  労働省にお聞きしたいわけですが、新しい組織をつくって対策を進めているということでありますが、再就職の見通しというのはどのようになっていますでしょうか。
  159. 浅野賢司

    ○浅野説明員 御説明申し上げます。  阪和銀行の従業員の雇用問題につきましては、労働省としても細心の注意を払っているところでございます。これまでに大蔵省を初めとする関係機関、それから地元の経済団体などとの連携のもとで、和歌山県が阪和銀行雇用問題連絡調整会議というものを設置いたしました。この連絡調整会議を通じまして、四月十日現在で三百二十四の事業所から千六百七十五名分の求人情報を収集してあります。このうち、求人として固まった分、千十名分ですけれども、これを阪和銀行に対して求人情報として提供したところでございます。
  160. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ところが実際には、四十歳までという年齢制限があるとかあるいは銀行職員の職務を発揮できない例えば保険の外交員など、あるいは地域が全く違うところというように、なかなか深刻な状況でありまして、将来の生活設計が成り立たないという声も聞かれるわけであります。従業員の要望に最大限にこたえるように強く要請をしておきたいと思います。  今回は大蔵省が業務停止命令を出した初めての銀行のケースであります。突然こういうことになったというのが地域やあるいは従業員の声なわけですね。実際何とかしてほしいということでいろいろな訴えがあったと思うわけですけれども、しかし現実には再建という方向は拒否をされた、あるいはそれはできなかったということであります。  業務停止命令というのは、簡単に言いますと銀行の息の根をとめる、言葉は悪いですけれどもそういうことでありまして、そうである以上、そういうことをやる場合には事前に、従業員について路頭に迷うようなことのないよう、しっかりとした検討を行うべきだと思うわけです。  今後もビッグバンの進展によりまして同じようなケースが出てくる可能性があります。雇用がどうなるかということは極めて大きな問題でありまして、大蔵省は金融機関について免許を交付したり取り返したりする権限を持っているわけですから、少なくとも大蔵省がそういう点について雇用不安のないような努力をするというのは当然のことだというふうに思うわけですけれども三塚大蔵大臣、今後のこともありますので、ビッグバンで将来こういう可能性が広がるということはあり得ますので、雇用問題についてどのように対応されていくか、今後の決意をお聞きしたいと思います。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 三塚博

    三塚国務大臣 破綻銀行におきましても、ただいまの今後の待遇の問題、再就職の問題等々、労使の問題ということになるわけです。しかし、事柄が重大だということで、県庁が知事を中心に関係各省をそこに網羅して成果を上げたいということでございましたので、大蔵省関係の機関もそこに参加をしていただく。各省に対しましてもお願いを申し上げて、ただいま御努力をいただいておるところでございますが、今後も各省督励を申し上げ、連携を密にいたしながら事後対策に全力を尽くして取り組んでまいりたい、こう思っております。
  162. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、今後の雇用問題をぜひ今おっしゃったような立場で、従業員の不安のないように、特に阪和銀行は現実にそういう問題が起こっておりますので、対応をされるようによろしくお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  163. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、岩國哲人君。
  164. 岩國哲人

    岩國委員 岩國哲人でございます。太陽党を代表して質問させていただきます。  大変長時間にわたりまして皆さんにはこうした質問にお答えいただきました。私はきょう最後でございますので、どうぞお楽な姿勢でお聞きいただきたいと思います。  私は、二十年前に米国のビッグバン、そして十年前にはイギリスでビッグバンを迎え、そして今、イギリスからおくれて十年、アメリカからおくれて二十年、この東京で皆さんと一緒にビッグバンを迎えようとしている。感慨ひとしおであります。  先ほどからずっと質疑を伺っておりましたけれども関係者の皆さんの中には、こうしたビッグバンを何のためにやるのかという目的意識というものが、大企業あるいは銀行のため、あるいは市場の活性化のために役立つという議論は多く聞かれますけれども、ほとんど個人のためにこれがプラスになるという話は聞かないわけであります。言ってみれば、このビッグバンの構想そのもの、それが強者の論理、いわゆる金融市場、証券市場の中における強いもの、大きいもののためにより活躍の場を広げようという発想ばかりが多過ぎて、個人の発想が非常に欠落しておるというふうに思います。  例えば、アメリカのビッグバンというのは、決してそれはメリル・リンチのためにやろうとしたことではなく、一般のユーザー、ユーザーというのは企業もありましたけれども、一般の投資家からのそうした手数料自由化の要求、そういうものが一つの大きなうねりをつくってあのようにビッグバンが行われたわけであります。そうした国民の要望というのは、日本の場合どの程度現在あるのか、あるいは考慮されているのか、こうした点について疑問を抱かざるを得ません。  ちなみに、総務庁を中心にしていろいろな広報活動あるいは世論調査を行われていると思いますけれども外為法改正に対して、一般国民の期待はどれだけあるのか、何をニーズとしてこれを国民は受けとめているのか、それを大蔵大臣、どのように認識していらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  165. 榊原英資

    榊原政府委員 私ども、マーケットの活性化の ためという言い方をしてまいりましたけれども、マーケットの活性化というのは、別の言葉で言えば、そこにいる預金者、投資家あるいは個人のためにビッグバンをやるということでございまして、おっしゃるような視点というのを我々も持っておるわけでございます。  個人にとっては、御承知のように外為法というのはかなり技術的な法律でございますから、そういう意味で直接的に外為法のどこがというような要望をそう聞くわけではございませんけれども、ただ、為替の手数料、これについてはかなり高いんじゃないかというような指摘がかなり従来からございました。それで、今度の外為法改正の一つのメリットは、やはり為替手数料が個人にとっても下がっていく可能性がもちろんある、そういうことであるというふうに理解しております。
  166. 岩國哲人

    岩國委員 大蔵省としては、こういう壮大な計画を実行されるに当たって、世論調査を実行されましたか、あるいは総務庁に依頼し、その結果をどの程度参考にされましたか。
  167. 榊原英資

    榊原政府委員 世論調査は行っておりませんけれども外国為替等審議会で、これは業界の代表のみならず消費者の代表、学者等を呼んで、一年以上にわたって審議をして、世論というものに対しては相当明確な認識を持ってきたつもりでございます。
  168. 岩國哲人

    岩國委員 明確な認識を持ってということでありますけれども、では、個人の投資家、預金者を中心にして、具体的に何をその人たちは期待しておられたんでしょうか。
  169. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  クロスボーダーの取引、あるいは通貨を超える取引が自由になるということでございますから、例えば、個人が外貨を獲得するときに、今の両替商、銀行等に行かないでスーパーマーケットなりコンビニエンスストアなり、そういうところで両替をすることが可能になるというのが一点ございます。  それから、通信販売等はこのところ非常に盛んになっておりますけれども、外国から通信販売で物を買うような場合に、外国に口座を置いて、これで落としていくというようなことも可能になる。  例えば、クレジットカードというようなことを考えましても、外国を旅行するときにクレジットカードを使われる方が大変多いわけでございますけれども、その場合に、現在ですと、クレジットカードというのは日本国内の円の預金にリンクしておりますから、これを例えばドル預金にリンクするということであれば、クレジットカードを使う一回一回のときの為替手数料というものが節約できることになるわけでございます。そういうサービスを始めようというようなことを言っておる外国の銀行もあるわけでございますから、いろいろな形で個人に大きなメリットが生じるものというふうに期待しております。
  170. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  ビッグバンというのは、こうした為替取引の自由化だけではなくて、もっと大きな意味、例えば株式の取引手数料の自由化であるとか銀行サービスの自由化であるとか、大きな意味でとらえて、そしてその中で、そうした町の人たち、一般家庭の主婦の人たちまでもわかるようなメリットというのはどこに志向していらっしゃるのか、それを私は知りたいと思ってお伺いしたわけであります。  例えば、七五年のニューヨークにおけるビッグバンの場合に、そうした手数料の自由化が行われました。同時に、こうした、これはメリル・リンチのCMA、キャッシュ・マネジメント・アカウントのカードでありますけれども、この一枚を持つことによって、ニューヨークの人がカリフォルニアでもお金を引き出せる。御承知のように、アメリカの銀行はそれぞれの州に営業圏が限定されておりますから、チェース・マンハッタン銀行の顧客はカリフォルニア州に行ってもお金を出せない、そういう不便なものをこのカード一枚でもってそれを乗り越えてしまう、そういう目に見えた、手にさわれる実感というのがあったわけです。五百の支店、五万人の社員、そして五百万人の顧客をこのカード一枚でもってそのビッグバンのわかりやすいメリットというのはそこで出てきております。  そうした銀行業務に対する一般の預金者、あるいは証券会社のお客さんも含めて、随分不満が多いということを私も聞いております。確かに。アメリカの場合には二十四時間お金が引き出せる。土曜日、日曜日でも引き出せる。日本は土曜日、日曜日は不便だから結局金曜日にお金を出しておかなければならない。土曜日、日曜日に利子がついたかもしれないお金をわざわざおろして、得べかりし利子をそれだけ毎週毎週失わせる。この点も本当は経済的なマイナスを押しつけていることになります。そのようなサービスの改善というものにこのビッグバンを結びつけていかなければ、私は国民的な意味はないんではないかというふうに思います。  キャッシュマシンは、今日本では十一万台、随分多くなりました。アメリカの十二万台に迫る。あるいは人口当たり、面積当たりにすれば、そういった銀行のキャッシュマシンというのは多過ぎるくらいに多くなっているにもかかわらず、夜使えない、土曜日、日曜日も安心して使うことができないといったような一つを見ても、ビッグバンと言いながら、結局は大きいものがより大きくなるだけである、個人に対する配慮というものは非常に少ないというふうに感じております。  例えば、株式取引手数料について、証券局長としては、この手数料自由化が行われた場合に、個人の取引手数料はどれくらい下がると想定しておられますか。
  171. 長野厖士

    ○長野政府委員 自由化後の手数料の推移について現在先生に申し上げるほどの判断材料を持っておりません。これはすべてマーケットにおいてしかるべく決められていくべきものと考えております。  問題は、そういった規制をなぜ改正するのか、その理念は何かというただいまの御質問でございましたけれども、ある意味では、私どもは、これからは規制を残す方がその理由を証明する義務がある、規制を撤廃するのはそれは本来の自由に戻ることと考えるべきだろうと思っておりますので、むしるい残すべき規制があるとすれば、それはそちらの方が証明しなければいけないこと。  したがいまして、先ほどアメリカの金融市場の活性化につきまして具体的におっしゃられましたけれども、これは恐らく、財務省あるいは連銀あるいはSECといったものがそういうシステムの開発に手助けをしたということではなく、自由な競争を市場に任せることによって、市場の中で業界が消費者サービスを優先して考えて開発したものと私は承知いたしまして、そういうマーケットにしていきたいと考えています。
  172. 岩國哲人

    岩國委員 アメリカの手数料自由化の後に起きたことは、結局個人は三割高い手数料で取引をしなくてはならなくなった。法人、大口は三〇%ディスカウントし、そしてほとんどの証券会社はその埋め合わせのために個人の手数料を上げました。個人は、結局、ビッグバン、手数料自由化の結果、より高いコストで取引をしなければならない。そういうことも相まって、アメリカの個人の持ち株比率も下がりました。取引所の取引高の中におけるシェアも下がっていったのです。今度の日本における手数料自由化のときにも、全く同じことが起きるという保証はありません、しかし、起きないという保証もないわけです。  私は、今局長がおっしゃった、必要な規制は残すとおっしゃるのであれば、大口取引は自由化し、むしろ小口取引に関しては上限を設けるぐらいの配慮が今の日本の証券市場のために必要ではないかと思います。  今から四十年前、個人の持ち株比率は約六〇%でした。今幾らですか。もう二三%にまで下がってしまったでしょう。わずか四十年の間に個人のウエートが三分の一に下がってしまった。そして、取引所の出来高の中における個人の取引高という のは十年前に比べて半分に減っています。これで大衆資本主義と言えるのかどうか、資本主義の民主化と言えるのかどうか。もっと小口取引や個人へのサービスというものに配慮し、留意したビッグバンを私は望みたいと思います。  そのためには、小口取引の個人向けの手数料というのは自由化するのではなく、そういうところにこそ規制を残すべきではないかと思いますが、局長意見はいかがですか。
  173. 長野厖士

    ○長野政府委員 小口手数料の取り扱いにつきましては、証券取引審議会におきましても今日さまざまな御議論がございます。  ただ、アメリカの例についてお触れになりましたので、私の承知している範囲で申し上げますと、アメリカは、手数料の自由化に際しまして、これは六八年からたしか七五年まで、七年をかけて実施しておりますが、その実施の過程で、大口から自由化しつつ、残された規制手数料を、たしか四回、小口については引き上げておりまして、つまり自由化に当たって小口手数料を高くするという、発射台を高めたというのを政策的にアメリカは行っております。私どもは、恐らくそういったことは適切ではないのではなかろうかと考えておることを申し上げます。
  174. 岩國哲人

    岩國委員 次に、いわゆるマネーマーケット、金融市場における小口ユーザーといいますと、郵便局の利用者があります。この郵便貯金の問題についてお伺いしたいと思います。  きょうは郵政大臣がおいでになりませんが、ただ、こうしたビッグバンの一つのプレーヤーとしては、関係者としては郵便貯金という大きな存在があることは否定できませんし、また多くの市場関係者は郵便貯金の利用者でもあるわけです。  郵便貯金という制度そのものについていろいろと議論があります。郵便貯金は実際には税金で実質的に保証されている。つまりリスクはないようになっておる。少なくとも、法制度的には一〇〇%それは正確な言い方ではありませんけれども、一般の個人の皆さんの中には、銀行は危なくても郵便貯金だけは安全だ、そういう気持ちがあるから郵便貯金へシフトしているということは御存じのとおりであります。郵便貯金は実質的に政府保証つきの預金になっています。  どこの国でもそうですけれども、リスクの高いものはリターンが高い。逆に言えば、ハイリターンを求めようと思えばハイリスクがある。ハイリスク・ハイリターンというのは世界の常識。そして、ローリスクのものはリターンも少ない、ローリスク・ローリターン。しかし、日本現実というのは、郵便貯金という非常にローリスク、あるいはノーリスクと言うべきでしょう、ノーリスクでハイリターン。  先ほど銀行局長の答弁の中にもありましたけれども、差がついておるとおっしゃいますけれども、それは一%に対して〇・九五%、その程度の小さな差は、政府保証がついているかついていないかという差を補うには余りにも小さ過ぎると私は思います。  そして、先ほどの答弁の中で、民間銀行とかけ離れた金利設定がなされているとは思わないという答弁がありました。そのとおりですか。
  175. 山口公生

    ○山口政府委員 個々の金利を見ますと、平成四年以降は民間準拠という形で設定されておりますので、そういう御答弁を申し上げたわけでございます。
  176. 岩國哲人

    岩國委員 民間の銀行の金利とかけ離れないように配慮されているということが間違いではないかと私は思っております。むしろかけ離れた設定こそ郵便貯金には必要ではないかと思います。  なぜならば、ローリスクのものはローリターンというのは世界の常識です。世界の常識は日本の非常識。日本では、ローリスクでもハイリターンをもらう。こんな常識がどこにありますか。ノーリスクであったらノーリターンとまでは言いません。しかし、リスクのあるものとリスクのないものがある、私は、今こそ、このビッグバンを口にされるのであれば、当然、郵便貯金の金利設定についても、民間の銀行の金利とかけ離れた設定をするという方向に踏み出すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  177. 山口公生

    ○山口政府委員 私が申し上げたことは若干歴史的な経緯がございまして、それまでは十年の定額貯金の商品性というものがかなり問題になったわけでございます。半年たてばいつでも解約できる、金利も累積するとかなり高いというような批判がありまして、これは民間の金融側からも相当な意見がございました。それをどう調整するかということで、実は平成四年にそういうルールをしたということで、私が申し上げたのは、そういった歴史的な経緯でもって、今度はかけ離れたものではない、準拠しているというふうに申し上げたのです。  今の先生の御指摘はさらにその先の御指摘でございまして、その点については、全般的ないろいろなすべての業態を含めた見直しが行われているわけでございます。聖域なく見直すという総理や大蔵大臣の御答弁もございますので、そういった中でいろいろ御議論されていくべき話だろうと思います。
  178. 岩國哲人

    岩國委員 こうした銀行、証券会社の国際化という面を見ますと、私も大変結構なことだと思っております。  しかし、その中で、この日本の金融機関の国際化という場合に、日本の金融機関そのものが、大蔵省もそうでありますけれども、いつまでも日本の年号を使っておるということは、私は問題じゃないかと思います。ビッグバンと言う以上は、頭のビッグバンの方がもっと必要だと私は思っております。世界のマーケットで通用する市場にしようというときに、金融関係、金融市場取引はすべて西暦を使う、それぐらいのルールをまず決めなければ、和服を着たままで洋服の社会に入っていく、そのようなおかしさを私は感じます。  二〇〇〇年を目指し、あるいは二〇〇一年を目指して西暦を原則とする、併用されることもいいでしょう、そういうお考えはおありかどうか、国金局長にお伺いします。
  179. 榊原英資

    榊原政府委員 これは私の責任範囲の話ではないので、なかなかお答えが難しいのでございますけれども、少なくとも併用するというようなことが必要になっているということは事実ではないかというふうに思っております。
  180. 岩國哲人

    岩國委員 大蔵大臣のお考えはいかがですか。
  181. 三塚博

    三塚国務大臣 やはりグローバルスタンダードですから、外国取引は西暦でしょうね。国内は、やはり日本の文化、伝統が年号に出ておりますので、しばらくは、国金局長の言うとおり、併用で考えられませんかねということになります。  ただいまの御提言は私どもも共有しながら、その辺は取り組んでいかなくちゃいけないのかなと思います。
  182. 岩國哲人

    岩國委員 大蔵大臣も国際金融局長も、少なくとも併用という表現でお答えいただきました。少なくとも併用ということは、西暦はとにかく使うんだ、しかし、できれば年号も添えるという形で併用というふうに理解してよろしいでしょうか。
  183. 三塚博

    三塚国務大臣 そういう方法も併用です。しばらく検討させてください。
  184. 岩國哲人

    岩國委員 では、この西暦の件は結構です。ぜひ一日も早くそうした、少なくとも国際的な取引は、日本の年号を忘れるということではありませんけれども、やはりよそと同じ物差してもっと便宜を図っていくということは必要ではないかと思いますし、市場の国際化というその国際化の意味のイロハのイの字は、まず年号を統一するということが一番大切なことだという認識をぜひ持っていただきたいと思います。  次に、マネーロンダリングについてお伺いいたします。  こうしたアングラマネーというのは、アメリカの社会でも、それからヨーロッパの社会でも大変問題になっております。時にはそれが殺人につながったりしたことは御承知のとおりであります。こうした異国の社会、アメリカやヨーロッパへ、これからビッグバンの結果として、今までそういう国際的な市場になじまなかった投資家や預金 者、あるいは金融機関が出かけていく、こうしたマネーロンダリングという、悪質なお金を取り扱わざるを得なくなるケースが非常に多くなっていくのではないかと思います。  最近の日本の銀行あるいは証券会社の中に、既に、そういう事態に備えているかどうかわかりませんけれども、そういう訓練を積んでいらっしゃるということはないと思います、しかし、不幸にしてそういう事件に巻き込まれていらっしゃる。これからアングラマネーが堰を切ったように、日本のアングラマネーにとっては、これは百年に一回のチャンスだと思います、今まで国内取引では表に出ることのできなかったお金が、為替取引が自由化されたことによって、日本の銀行の支店あるいは外国の銀行へ直接、そういう形でもって非常に出やすくなるという危険について懸念を持っております。  こうした点についてもどのような対策を考えておられるのか。バブルのときの良質なアングラマネー、こういう言い方は表現はおかしいと思いますけれども、良質なアングラマネー、バブル崩壊後の、御承知のようなあのようなどろどろとした悪質なアングラマネー、両方が一緒になってこれから日本を去っていこうとする。そして、それが表の金となって日本へ返ってくる。こういう件についてどのようにお考えになっているか、国金局長の答弁をお願いします。
  185. 榊原英資

    榊原政府委員 マネーロンダリングについては、国際的な仕組みの中で対処しているところでございますけれども、今回の外為法改正について述べさせていただきますと、この外為法改正は、基本的に抜本自由化でございますけれども、その中で一点だけ規制を強化したところがございます。それは、現金の税関に対する事前申告でございまして、今までは、支払い手段の持ち込みは全く自由であった。持ち出しについては、円の持ち出しについてだけ五百万円以上が許可ということであったのでございますけれども、今回は持ち出しも持ち込みも、双方とも税関に事前申告をしていただく。額についてはまだ決めておりませんけれども、アメリカ等はほぼ一万ドルでございますから、百万円程度がめどになると思いますけれども、こういうことを一つしております。  それからまた、海外送金については、先ほど主税局長からも答弁ございましたけれども、これはある一定額以上のものについては、厳しくその報告をいただくということにしたいというふうに考えております。
  186. 岩國哲人

    岩國委員 私は、今答弁いただいたような対策ではまだまだ生ぬるいのではないかと思います。そうした麻薬のにおいをかぎつける特殊な犬でもいれば、あるいは大蔵省の方でそういう日本の紙幣をかぎつける特殊な犬の訓練でもしておられれば、これはまた別でありますけれども、その程度のことでアングラマネーが海外へ流出することが防げるというのは、私は大変認識が甘いように思います。  日本の銀行や証券会社が、日本人を相手にしてでもなかなかこれはどういう人かという認識がわかりにくいと同じように、あるいはそれ以上に、外国人の場合には良質な顧客なのか悪質な顧客なのか、非常にそれは認識がしにくくなる。日本の金融機関は、大きなリスクにこれからさらされていくことになろうと思います。そうしたときに、各国の検査・監督機関とのより緊密な協調体制というものが必要であり、この点については、十分、銀行、証券あるいは国際金融局、三局一体となって、各国のそういう司法機関との連携を強めていただきたい、そのように思います。  そうした不正を防ぐという観点から、アメリカでも行われております福祉番号、ソーシャル・セキュリティー番号。要するにいろいろな人がいろいろな銀行を通じて、そして次々と海外の証券会社、日本の銀行に複数の口座を、複数どころかもう数え切れないぐらいの口座を持ってしまうということもこれから可能になるわけですけれども、そうしたことを防ぐ、あるいはそうしたことによる海外の口座を使っての日本の株価操作であるとか、不正な送金であるとか、あるいは不正な政治献金であるとか、そういったことを防ぐためには、私は国民統一番号というのが必要だと思います。大蔵省が好んでお使いになる納税者番号という名前は、余りにも名前がおどろおどろしくて、あの番号をつけたら、あの背番号をつけたら、みんな税金だけ取られるという感じになります。  やはり、これは福祉番号とか社会保障番号とか国民番号という形でもって、その番号を使わなければ外国との取引はできないという制度を思い切って導入されてはどうですか。あるいは、外国との取引だけではなくて、国内における証券取引も銀行預金口座の開設も、その番号がなければ開設できない。そうしたアメリカとかヨーロッパとかいろいろな、大き過ぎてリスクも大きいところにこれから日本のお金が出ていこうとするときに、やはりセーフティーベルトというか安全ベルトをつけさせるとすれば、そのような国民番号という制度もそろえて自由化すべきではないかと思います。大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  187. 薄井信明

    ○薄井政府委員 委員御指摘のように、アメリカにおきましては、ソーシャル・セキュリティー・アカウント・ナンバーというものがございます。これを国税の方でも使っておりまして、アイデンティファイインク・ナンバーということで使っております。これで本人確認、あるいは総合課税ということが実現していると承知しております。一方、ヨーロッパを見ますと、納税者番号に当たるものを持つ国、これは北欧にはありますが、主要先進国にはないということで、この番号を使うことについては、両面、いろいろな問題点が指摘されております。  私ども税務担当者としましては、適正な課税を実現するために、こういったものがあるということはありがたいことではございます。ただ一方で、この番号を国民に今度は使っていただくということは、申告のときだけでなく、取引をするときに、口座開設なり今御指摘のように送金するときなどに、すべてこれを自分から言っていかないといけない、証明していかなくてはいけない、そういう義務を負うわけでございまして、そういう国民にとっての負担がどういうものであるかということが十分わからないままに、税務当局の事情だけからこれを進めていくことはいかがかとは思っております。  いずれにしましても、私ども、先ほど最初に御質問ありましたように、この問題については、国民がこれをどう受けとめるかということを十分考えないといけないと思っておりまして、平成四年、それから平成八年に、小規模ではありますけれどもアンケート調査をやってみました。平成四年には納税者番号制度について、言葉を知っているけれども内容は知らない、全く知らないという人が八一%にも上っていたり幸い平成八年にはそれが六二%ぐらいまでに来ておりますが、それでもまだ状況を見ますとよくわかっていない。この辺、私ども、国民にこれがどういうものであるかを十分知っていただいて、その上でいいじゃないかということであるならば進めていくべき問題だと思っております。
  188. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま主税局長が答弁したベースは大事に育てていかなければなりませんし、ビッグバンと言う以上、かくあれという見識は共鳴します。越えなければならぬ問題点は、プライバシーを含め、あります。真剣に本件に対して対応をしていかなければならない、こう思います。
  189. 岩國哲人

    岩國委員 以上をもちまして、私の時間が終了いたしましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  190. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次回は、来る十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会