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1997-05-21 第140回国会 衆議院 税制問題等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十一日(水曜日)     午後一時三分開議  出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 伊吹 文明君 理事 尾身 幸次君    理事 村上誠一郎君 理事 村田 吉隆君    理事 愛知 和男君 理事 赤松 正雄君    理事 日野 市朗君 理事 佐々木陸海君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小野 晋也君    大野 功統君       岸田 文雄君    岸本 光造君       栗本慎一郎君    実川 幸夫君       高鳥  修君    滝   実君       萩山 教嚴君    持永 和見君       森山 眞弓君    横内 正明君       北橋 健治君    左藤  恵君       谷口 隆義君    中野  清君       西川 知雄君    原口 一博君       藤井 裕久君    松崎 公昭君       矢上 雅義君    山本 幸三君       安住  淳君    石井 紘基君       川内 博史君    鉢呂 吉雄君       古川 元久君    佐々木憲昭君       濱田 健一君    粟屋 敏信君       土屋 品子君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      尾原 榮夫君         自治省税務局長 湊  和夫君  委員外出席者         参  考  人         (株式会社長銀         総合研究所主席         研究員)    竹内佐和子君         参  考  人         (東京大学法学         部教授)    中里  実君         参  考  人         (日本商工会議         所特別顧問)         (東京商工会議         所副会頭)   中西 真彦君         税制問題等に関         する特別委員会         調査室長    藤井 保憲君     ───────────── 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   石田 勝之君     矢上 雅義君   田端 正広君     松崎 公昭君   石井 紘基君     安住  淳君   正森 成二君     佐々木憲昭君 同日  辞任         補欠選任   松崎 公昭君     田端 正広君   矢上 雅義君     石田 勝之君   安住  淳君     川内 博史君   佐々木憲昭君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   川内 博史君     石井 紘基君     ───────────── 三月二十五日  消費税率五%への増税中止医療へのゼロ税率  適用、消費税廃止に関する請願寺前巖君紹  介)(第一二五五号)  消費税率五%への増税中止に関する請願瀬古  由起子紹介)(第一三二三号)  同(辻第一君紹介)(第一三二四号)  同(松本善明紹介)(第一三二五号)  同(山原健二郎紹介)(第一三二六号)  消費税率五%中止に関する請願木島日出夫君  紹介)(第一三二七号)  消費税率五%への増税中止特別減税継続に  関する請願佐々木陸海紹介)(第一三二八  号) 四月一日  消費税率五%への増税中止に関する請願児玉  健次紹介)(第一三七五号)  同(春名直章紹介)(第一三七六号)  同(大森猛紹介)(第一四一八号)  同(古堅実吉紹介)(第一四一九号)  同(吉井英勝紹介)(第一四二〇号)  同(石井一紹介)(第一五一五号)  同(菅原喜重郎紹介)(第一五一六号)  同(田端正広紹介)(第一五一七号)  同(古堅実吉紹介)(第一五一八号)  消費税税率引き上げ中止に関する請願松本  善明紹介)(第一三七七号)  消費税率五%中止に関する請願瀬古由起子君  紹介)(第一三七八号)  同(木島日出夫紹介)(第一四二一号) 同月八日  消費税率五%への増税中止に関する請願藤田  スミ紹介)(第一五四五号)  同(河合正智紹介)(第一五八〇号)  同(吉井英勝紹介)(第一五八一号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一六〇二号)  同(佐々木陸海紹介)(第一六〇三号)  同(瀬古由起子紹介)(第一六〇四号)  同(藤木洋子紹介)(第一六〇五号)  同(石井郁子紹介)(第一七五七号)  同(金子満広紹介)(第一七五八号)  同(木島日出夫紹介)(第一七五九号)  同(穀田恵二紹介)(第一七六〇号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一七六一号)  同(辻第一君紹介)(第一七六二号)  同(寺前巖紹介)(第一七六三号)  同(春名直章紹介)(第一七六四号)  同(不破哲三紹介)(第一七六五号)  同(藤木洋子紹介)(第一七六六号)  同(松本善明紹介)(第一七六七号)  同(山原健二郎紹介)(第一七六八号)  同(吉井英勝紹介)(第一七六九号)  消費税率五%への引き上げ中止消費税廃止  に関する請願吉井英勝紹介)(第一五七九  号)  同(佐々木陸海紹介)(第一六〇一号)  同(佐々木陸海紹介)(第一七五四号)  同(藤田スミ紹介)(第一七五五号)  同(吉井英勝紹介)(第一七五六号)  消費税率五%中止生活必需品非課税に関す  る請願石井郁子紹介)(第一七七〇号)  同(大森猛紹介)(第一七七一号)  同(佐々木陸海紹介)(第一七七二号)  同(志位和夫紹介)(第一七七三号)  同(辻第一君紹介)(第一七七四号)  同(東中光雄紹介)(第一七七五号)  同(不破哲三紹介)(第一七七六号)  同(藤木洋子紹介)(第一七七七号)  同(藤田スミ紹介)(第一七七八号)  同(古堅実吉紹介)(第一七七九号)  同(正森成二君紹介)(第一七八〇号)  同(松本善明紹介)(第一七八一号)  同(山原健二郎紹介)(第一七八二号)  同(吉井英勝紹介)(第一七八三号)  消費税税率引き上げ中小業者への特例措置  改廃の中止に関する請願佐々木陸海紹介)   (第一七八四号)  同(松本善明紹介)(第一七八五号) 同月十一日  消費税率五%への増税中止に関する請願石井  郁子紹介)(第一八五九号)  同(穀田恵二紹介)(第一八六〇号)  同(志位和夫紹介)(第一八六一号)  同(中路雅弘紹介)(第一八六二号)  同(矢島恒夫紹介)(第一八六三号)  同(山原健二郎紹介)(第一八六四号)  消費税率五%中止生活必需品非課税に関す  る請願穀田恵二紹介)(第一八六五号)  同(東中光雄紹介)(第一八六六号)  同(藤木洋子紹介)(第一八六七号)  消費税増税撤回生活必需品非課税に関す  る請願吉田幸弘紹介)(第一八九四号) 同月十六日  消費税五%の撤回に関する請願児玉健次君紹  介)(第二〇〇四号)  同(大森猛紹介)(第二〇二六号)  同(木島日出夫紹介)(第二〇二七号)  同(佐々木陸海紹介)(第二〇二八号)  同(春名直章紹介)(第二〇二九号)  同(吉井英勝紹介)(第二〇三〇号)  同(坂上富男紹介)(第二〇七七号)  同(松本善明紹介)(第二〇七八号)  同(木島日出夫紹介)(第二〇九四号)  消費税増税撤回生活必需品非課税に関す  る請願伊藤英成紹介)(第二〇〇五号)  同(中島武敏紹介)(第二〇七六号)  消費税増税撤回生活必需品完全非課税に関  する請願瀬古由起子紹介)(第二〇二四号  )  消費税増税撤回消費税廃止に関する請願  (吉井英勝紹介)(第二〇二五号)  同(志位和夫紹介)(第二〇九五号) 同月二十二日  消費税五%の撤回に関する請願大森猛紹介  )  (第二二三八号)  同(木島日出夫紹介)(第二二三九号)  同(志位和夫紹介)(第二二四〇号)  同(辻第一君紹介)(第二二四一号)  同(中路雅弘紹介)(第二二四二号) 同月二十五日  消費税五%の増税撤回医療へのゼロ税率適  用、消費税廃止に関する請願佐々木陸海君  紹介)(第二二九六号)  消費税五%の撤回に関する請願正森成二君紹  介)(第二三七一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三七二号) 五月九日  消費税五%の撤回に関する請願石井郁子君紹  介)(第二四八三号)  同(児玉健次紹介)(第二四八四号)  同(辻第一君紹介)(第二四八五号)  同(志位和夫紹介)(第二五六〇号)  消費税増税撤回生活必需品非課税に関す  る請願草川昭三紹介)(第二五五九号) 同月十三日  消費税増税撤回生活必需品非課税に関す  る請願瀬古由起子紹介)(第二六二四号)  同(濱田健一紹介)(第二六九六号)  同(吉田公一紹介)(第二六九七号)  同(児玉健次紹介)(第二七六七号)  同(志位和夫紹介)(第二七六八号)  同(正森成二君紹介)(第二七六九号)  消費税五%の撤回に関する請願松本善明君紹  介)(第二六二五号)  同(佐々木陸海紹介)(第二六九八号)  同(吉井英勝紹介)(第二六九九号)  同(穀田恵二紹介)(第二七七〇号)  同(寺前巖紹介)(第二七七一号)  消費税増税撤回消費税廃止に関する請願  (正森成二君紹介)(第二七〇〇号) 同月二十日  消費税増税撤回生活必需品非課税に関す  る請願松本善明紹介)(第二八六〇号)  同(山原健二郎紹介)(第二八六一号)  同(石井郁子紹介)(第二九六九号)  消費税五%の撤回に関する請願金子満広君紹  介)(第二八六二号)  同(古堅実吉紹介)(第二八六三号) は本委員会に付託された。 四月三日  消費税率五%への引き上げ中止に関する陳情書  外二百十八件  (第一六九号)  消費税改革不公平税制改革に関する陳情  書  (第一七〇号)  二兆円特別減税等に関する陳情書外四件  (第一七一号) 同月十日  二兆円特別減税継続実施に関する陳情書  (第二〇二号) 同月二十五日  消費税廃止と公平公正な税制確立等に関する  陳情書外一件  (第二六三号)  二兆円特別減税継続実施等に関する陳情書外  九件  (第二六四号) 五月九日  特別減税継続等に関する陳情書外一件  (第三〇二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制及び金融問題等に関する件      ────◇─────
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  税制及び金融問題等に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として株式会社長銀総合研究所主席研究員竹内佐和子君、東京大学法学部教授中里実君及び日本商工会議所特別顧問東京商工会議所会頭中西真彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 原田昇左右

    原田委員長 この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人方々には、これからの税制のあり方についてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  なお、議事の順序についてでありますが、まず参考人方々にそれぞれ二十分間御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。御発言は着席のままでお願いいたします。  それでは、竹内参考人からお願いいたします。
  5. 竹内佐和子

    竹内参考人 それでは最初に、これからの税制の全般にかかわる考え方と、それから、ビッグバンを控えてどのような金融課税問題点が生じるかということについて述べてみたいと思います。  これからの税制というのは、昨年来、将来に向けて中長期的にどんな税制の形がいいかということで本を出版しまして、いろんな国民の皆さんから反応を得たのですが、その反応の中から一つキーワードを挙げるとしますと、やはり税制フラット化という考え方が非常に強く出てきたように思います。税のフラット化というのは、言葉はあるんですけれども、また、海外でも、アメリカあるいはヨーロッパでも、税をフラット化するというのは一体どういうことかという考え方がかなり盛んに議論されていますし、また、最近では、国際競争力とか社会保障改革の流れでもフラット化という言葉がよく使われるようになっておりますので、これをキーワードにしてきょうは御説明申し上げたいと思います。  まず、そのフラット化という意味の第一番目のポイントは、従来の租特の考え方ですとか、それから特定業界あるいは特定企業向け優遇税制みたいなものを廃止して、なるべく税率そのものを下げていこうという考え方でございます。法人課税で言えば、これは課税ベースを拡大して税率を下げるという考え方、これを通じて企業の活力を引き出すとか、新規の企業が入りやすくする、あるいは生産性を上げていくというようなことに貢献するというような形のものが第一番目にあります。  それから、第二番目のフラット化にかかわる議論というのは、税制における中立性といった考え方でございますが、これはこれから金融課税の面で非常に重要になる考え方だと思います。つまり、金融商品ごとに、銀行が取り扱っているとか生保が取り扱っている、あるいは証券業者が取り扱っているということで、同じような商品であっても違った税制が取り入れられているとか、いろんな政策的な理由でばらばらな政策が取り入れられている場合には、顧客にとって非常にわかりにくくなりますので、そういったばらばらの税制というものが、顧客の目から見て、あるいは投資家の目から見てわかりやすいような税制に変えていく、つまり、そういったいろんな区分をなるべく少なくしていくという考え方があります。  それから取引の面でも、個人であるとか高齢者であるとか機関投資家であるとかというふうなこと、あるいは非居住者であるというような考え方について、どのくらい細かく区分けするのか、それはなるべく区分けしないで考えた方がいいんじゃないかというような考え方もこういった範囲に入ってくると思います。  こういうことを通じて、所得累進性というものをなるべく緩和していく方がいいんじゃないかということが第三番目のフラット化考え方というふうなことになると思います。これが今基本となる潮流だろうと思います。  二番目に、こういった考え方に照らすと今のグローバルスタンダードというのは何なのかということになってくるわけですが、お手元にレジュメを配ってございますので、それに沿ってお話し申し上げます。グローバルスタンダードといいますと国際標準という考え方になりますが、よくスタンダードというと何か一つ国際標準がきちっとあるようなとらえ方をされておりますが、実際は一つ基準があるわけではなくて、グローバルスタンダードというのは、むしろ私は、国際的整合性というような考え方に照らした方がいいのではないか、世界の唯一の税制があってそれをコピーすれば非常にいいという、そんな考え方は実際にはとられていない。結果的に、あるいは税制の低い方に合わせるということがグローバルスタンダードということにもならないということで、実際には各国所得の階層ですとか資産の分布とか、それから所得の不平等をどの程度是正したいかとか、これからどういう産業を育てたいかという産業政策の観点、こういうものが各国によって違いますので、そういった考え方とリンクして税制の形が決められるということ。  つまり、各国ともいろいろな形の税制組み合わせのバランスというものに特徴を持たせようと知恵を絞っているというのが現状でございます。ただし、全く日本独自の税制ですとか古来からのもので、余り外国から見てロジカルではないとかあいまい過ぎるというような部分というのは、やはりグローバルスタンダードから見て是正していかなければならないという範囲だと思います。  そういう点で、金融課税についても、いろいろな取引課税もありますが、譲渡益課税部分でも総合課税考え方分離課税考え方組み合わせてとっているというのが現状ではないかと思います。アメリカなどでも、総合課税といっても実際は譲渡益部分だけは別途計算するというような考え方もとられていますし、ドイツでは富裕税のような一種独特の金融課税考え方もあるということで、日本社会にとって将来どういう組み合わせが一番いいかというような視点が重要になってくると思います。  そういう意味では、有価証券取引税というのが今話題になっているのですが、この取引税だけを国際的に比較して低いか高いかというのは、非常に難しい考え方でございます。  例えば、アメリカでは有価証券取引税はないわけですけれども、投資家の方から見ますと、株を譲渡しますと譲渡益は二八%ということになります。日本の場合は二〇%で、有価証券取引税が売却の際に〇・二一%取られますが、それを足してもアメリカよりは低い、投資家にとっての負担分は低い。実際にはみなしというふうな方法をとりますともっと低いケースもあるということで、こういうふうに税制全体として投資家負担がどのくらいかというような形で比較していくということが望ましいのではないかと思います。  それから次に、それでは金融システム改革というものが税制に与える影響というポイントに移っていきたいのですが、これからの金融システムとして一番重要なポイントは、日本個人預金が千二百兆あるということでございまして、この千二百兆がどういった形で活用されるのか、あるいはどのようにビッグバンによって動いていくのかという点が極めて重要になってまいります。  現在、その千二百兆の資産のうち四一%が預金になっておりまして、郵便貯金が一八%、それから保険が二六%、これは三百五兆でございますが二六%で、この三つが非常に大きい資産になっております。その他、株式が七%で、債券と投信が三%ずつということになっております。  アメリカ預金と比べますと、非常にがらっと変わっておりまして、日本預金が四一%ですが、アメリカでは一三%程度で三分の一以下。逆に株式を見ますと、日本は七%なのですが、アメリカでは資産の二一%が株式になっている。三倍以上が証券市場に流れ込んでいる。このコントラストがはっきりしているわけですが、ビッグパン以降どのようになるかという点につきまして、やはり欧米型に少々近づくだろう、つまり預金の比率が減って、株、債券などの割合が大体現在の二倍程度に拡大するというふうに見られているわけです。  こういうふうな段階になりますと、今までの縦割り型の税制、こっちの税制が安いからこっちにしようという形ではなく、なるべく選択性がはっきりするような、つまりゆがみを与えないような、投資家資産選択に役立つような税制というのが必要になるだろうというふうに考えられます。  ビッグバンに関しては、外為関連動きとしてもう一つ外為法改正というのがありまして、ビッグバンに伴って、海外円預金口座を開く動きがまず第一段階起こるだろう。これは人によってかなり個人差がありますので、すぐに動くケースもあれば、いや、ちょっと待ってからというケースもあるでしょうが、少なくとも海外にいた経験のある方とか海外でショッピングをしたい方などは、海外円預金口座をつくって、そこから通信販売の代金を払ったり、あるいは株の売買注文をしたりする、あるいはいろいろな預金をするというような考え方になって、まさにユニバーサルバンキング世界に一歩足を踏み入れるというような世界になるのだろうと思います。  こういうふうになっていきますと、ある程度国内で今まで高目に設定されていたいろいろな手数料体系というものがだんだんと是正されて、国際価格に近づいていく。この段階で何が起こるかといいますと、まさに日本証券市場の危機が訪れるということになるわけです。  現状を見てみますと、証券会社経営状態というのは今非常に危機的な状況にどんどんなっています。バブルの崩壊以後、ビジネスが非常に急速にマイナス傾向に入っているわけです。ちょうど平成二年のときに、こういった手数料収入というのが証券会社では一時四兆五千億円にも達していたわけですけれども、現在一兆五千億程度に低下していまして、まさに証券会社そのものビジネスが、ビッグバンを待つまでもなく極めて停滞傾向にあって、非常に危機的な状況にある。その中で、手数料自由化というのがビッグバンの目玉になっていますし、既に手数料をもらわない──もらわないというか、半額にするというような新しいニュースも出てきまして、かなりショックが広がっているということでございます。  このビジネス縮小原因はどこにあるかということなのですが、もちろん有価証券取引税を撤廃すればもう今にでもよくなるという考え方もございますが、どうも原因というのはやや深いところにありそうでございまして、かなり構造的な原因だ。  一言で言えば、やはり日本には投資家の目というものを日本経営に生かせないという体質があるのではないか。それから企業の評価をするためのいろいろな企業会計の問題。それからグローバルなROEといった基準に合わせた場合に、そういう考え方を徹底しにくいというような問題。あるいは、証券会社手数料をもらっていながらも、そこに乗せてお客さんに伝える情報が極めてあいまいであるとか、つまり情報価値が薄いものをお客さんに売っているというようなケースもある。こういうふうな問題がありまして、かなり制度的な、税制だけじゃない問題が極めて深いというふうに外国投資家などは見ているわけです。  ビッグバンを成功させるためには、やはり株式市場だけではなくて、日本マネジメント自体がある程度連動して動くというような体制に持っていく、それから証券市場自体も新しい商品の開発、MアンドA等の大きなビジネスに転換していくというふうなことが必要だ。そういう意味では、有価証券取引税は、調整は必要であっても、これをなくすと活性化するといった発想ではどうも国際的に余り信頼は得られないのではないか、やはり資本市場のルールを明確にするということによって取引高を拡大していくという発想が重要なのではないかと思います。  ここで一応金融システム関連の話を終わらせていただきまして、三番目のポイントである金融税制改革というところに話を持っていきたいと思います。  まず、外為法改正によってどんな金融課税の問題が生じるかということについて一点申し上げたいのですが、最初に、円預金を開いたり、個人がお金を送金したりという段階であれば、手数料体系が崩れるとか、そういうインパクトになります。  第二段階シナリオ、これはまだ何が起こるかわかりませんのでシナリオ段階ですが、まず、今一応百万円以上は報告義務があると言われているのですが、九十九万九千円だったらいいのかということも考えられるわけで、逆にそういった点で、富裕な人たちがいろいろな形で、銀行を介さないで送金をする、あるいは繰り返して分散して投資するというようなケースも起こってきます。それから、企業のネッティングというような形で、海外関連会社との取引を相互に決済して送金をしない、それで残った分を海外口座に残しておくというようなケースが出てきますと、企業の決済がどうなっているかという情報が外部からはとれなくなるという段階も生じまして、モニターが非常に難しくなるのが第二段階です。  第三段階は、税体形が崩れ始める段階が第三段階ということで、今まで源泉徴収になれていた人たちは、海外に出れば源泉徴収はかからないということで、なるべく安いところにお金を回していくということになりますので、それによってかなりの減収が生じる可能性があるわけです。こういう場合に、総合課税だということを徹底していくということも必要なんですが、同時に何らかのモニター制度あるいは情報の整備といったものが必要になるだろうということがこの関連では言えると思います。  それから次に、金融商品に関しては先ほど申しましたが、金融サービスの相互参入に伴いましてある程度わかりやすい税制に変えていく、長期、短期あるいは金融商品ごとというふうな税制に関して、なるべく選択しやすいような税制に変えていくということが二番目です。  それから最後に、有価証券取引税と今後の税制のあり方ということについて申し上げて終わりにしたいと思いますが、有価証券取引税というものは、売却時に〇・二一%ということになりまして、こういった取引税みたいな形をとっている英国、フランスから比べますと、税率そのものは若干低く設定されている。この考え方というのは、要するになるべく薄く、広く資産性の所得税率をかけるというふうな考え方が背景にあると思います。  これがまず問題だということで、証券市場の活性化が必要だということが言われているわけです。つまり、取引コストが高いと金融市場が活性化できないというのがその理由になっています。  確かに、売買代金が低いと、委託手数料の方は高いのですが、有価証券取引税の〇・二一%というのは委託手数料に対してかなり低い額なので余り問題にならないのですが、売買代金が高くなっていくと、手数料の率が今度は逆に下がってきます。有価証券取引税は〇・二一%で一律なので、手数料の率が下がってくるに応じて何かだんだん上がっていってしまうという、つまり有価証券取引税の方がだんだん目につくようになるというような逆の、クロスの関係がありまして、大口にとってはこの有価証券取引税というのはかなり投資家負担を拡大しているというような、目につくという考え方が出てきているわけです。  それで、こういうふうな問題点は残っていますので、取引が大きくなればなるほど有価証券取引税が大きくなってくるというのはやはり問題だという場合、それから、損した場合でも有価証券取引税はかかるというようなことで、何かここは何とかならないかということになってくるのだと思います。  それで、ある程度の調整が必要だと思うのですが、どういう調整をしたらいいかということが最後のポイントでございます。  この点について言えば、もう一つ譲渡益課税とあわせて調整が必要なのではないかと思います。  譲渡益課税について言えば、現在二種類方法があります。申告分離という考え方で、譲渡益に対して二〇%、もう一つは譲渡代金の五・二五%をみなし利益、これは世界にない考え方でございますが、そのみなしに対して二〇%の税率という考え方なんです。  この二番目のみなし利益という考え方がかなりあいまいではないか、これがちょっとグローバルスタンダードから考えますとひっかかるところだということで、この選択肢を廃止する方向に持っていったらどうかということになります。ただ、現実にはみなしで申告している方がかなり多いわけなので、投資家にとっては、このみなしを廃止されると相当困るという意見も出そうなのですが、この辺がこれからの非常に大きなテーマになると思います。  それで、実際にもし源泉分離をやめますと、申告制になりますので、すべての投資家がすべて全員申告をしなければならないということになります。これも非常に大変なことで、それぞれが申告を準備しなければいけない、それから申告漏れが生じる可能性等々ありまして、有価証券取引税を撤廃して、なおかつみなしをやめてしまいますと、完全に申告ということになりますので、そうなりますと、今までそれになれていない投資家は一体どうするかというような問題が生じる。  そこで、総合課税あるいは納税者番号制度というのがあるのですが、私は、この議論をすると相当時間がかかりそうだし、国民全体が投資家になるとも限らないし、むしろ私の選択肢としては、有価証券取引税をある程度残すことによって、きちっとしたインフラ部分としての投資家の状態は終えるような形に残しつつ譲渡益課税に移行していくというのが望ましいのではないかと思います。  以上、終わらせていただきます。(拍手)
  6. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、中里参考人にお願いいたします。
  7. 中里実

    中里参考人 中里でございます。  私、学者でございますので、極めて理屈だけのお話をさせていただきます。政策論はもう先生方の御専門ですので。  私の専門は、国際課税とそれから今のような金融取引課税、特に、デリバティブ及びセキュリタイゼーション等最先端の金融商品に関する課税が専門でございますけれども、ここではそういう話とは別の、もっと一般的なお話をさせていただきます。  レジュメに沿ってお話ししていきます。  まず、課税の目的なのですけれども、これは、税収確保と、それから課税をすることによって何らかの政策目的、誘導目的を達成するという、この二つのバランスの中に租税制度があるということで、どちらも大切だと言わざるを得ません。  現行の租税制度が直面する問題点はさまざまあるのですけれども、まず、高齢化の時代ですから、何といっても税収の確保の要請というのはここ数十年日本にとって極めて重要な問題になってくるだろうと思われます。税収なしに高齢化に対応するわけにはいかないということです。  それから、国際化の時代でございますので、国際競争力確保の視点から税制を考えていく、特にその誘導効果等を考えていくという視点も必要になってくると思われます。  それと、先ほどの竹内先生のお話と全く密接に関連するのですが、情報化の時代でございますので、国際化ともこれは絡んできますけれども、さまざまな執行の困難が生じてまいります。税務署の方で所得等を捕捉できないということが出てきますので、執行確保の要請というのがそこから出てくるだろうということで、さまざまな問題が絡んで難問として我々の前に突きつけられてくるわけです。これらをバランスよくどうやって解決していくかということが我々の課題でございます。  その中で、中期的な展望、ここ数十年、数十年を中期的というかどうかわかりませんけれども、中期的な展望をどのように考えていったらいいかということで、以下、幾つかの分野に分けてお話しさせていただきます。  まず、個人課税の方向性ですけれども、これは、消費税を大幅に増税して消費税中心主義に移行するのが望ましいと考えます。  所得課税の抱える問題は余りにも大きい。その第一の問題点は、貯蓄の抑圧効果でございます。  稼いだときに所得税を課され、それが貯蓄に回されて利子等の資産所得を生んだときにまた課税されるという税制のもと、所得課税のもとでは、貯蓄するよりも消費した方が生涯税負担は軽くなりますので、これは貯蓄を抑圧する効果があるわけでございます。高齢化の時代にこのような税制がふさわしいかどうかは、大いに疑問のあるところです。  それから、最近の流れですけれども、所得課税の中に時価主義という考え方が拡大してまいっておりますが、時価主義というのは究極的に全部の局面に応用することは難しゅうございます。  上場されている金融商品については時価評価は可能ですが、例えば土地等について時価主義で含み益に毎年課税したら、これは大変なことになってまいります。時価主義は部分的にしか採用されない。そうすると、毎年含み益に課税される資産とそうでない資産との間のアンバランスが出てきますので、その意味でも所得課税は大きな問題点を抱えているわけです。  そもそも日本の経済発展を租税制度で説明するとどうなるかと申しますと、これは、マル優を初めとする資産所得軽課によって民間部門の貯蓄が誘発され、それが設備投資に回されて資本蓄積に回り、高度経済成長が達成されたというのがまずまず妥当な経済学的な説明だろうと思います。つまり、所得課税を骨抜きにしたから日本は経済的に発展したという点がないわけではないということです。  消費税に関しては大変に大きな誤解がございます。消費税というと悪税だと考えていらっしゃる方、非常に多いのですが、消費税、付加価値税の税率が一五%、高い場合には二五%に達しているECで人々が不幸にあえいでいるということはないわけでございますから、むしろこれはいい税金だろうというふうに私は考えております。  逆進性というふうな批判もありますけれども、これは、所得基準として考えるから逆進的になるのでございまして、所得基準として考えれば所得税がいい税金になるのは当たり前のことで、そういうことをおっしゃる方は論理が逆転している。むしろ、消費に応じて課税するのが望ましいという立場に立てば、所得税は望ましくない税金だということになってくるわけです。そもそも、仮に逆進的であることが悪いことだといたしましても、租税制度全体として考えてどうかという視点もございますから、消費税だけをあげつらって悪い悪いと言うのは、これは考えものであろうと思われます。  また、消費税の逆進性を解決することは、手続的には容易でございまして、生活保護を受けている方とか御老人には、一定程度生活保護の支払いをふやすとか老人に対して福祉を手厚くするとかということで、消費税増税分をそちらでカバーするということは可能ですから、消費税を全体として累進的にすることは容易でございます。  それから、借金を消費しても課税されるのはけしからぬという考え方がありますが、借金をできるのは豊かな証拠でございまして、借金もできない人が一番かわいそう、消費税も払えない人がかわいそうなので、借金して消費するとはどういうことかといいますと、将来生ずるであろう所得を前倒しして消費するわけですから、これは課税して何の差し支えもない。貧しい人の考慮はまた別です。  それから、資産税にも欠点がございまして、これは、人間の能力には課税されないけれども、物に対してだけ課税されるということで、親から豊かな才能を相続した人間は課税されずに、親から財産を相続すると課税される。優秀な人だけが得をする税制ということになるんだろうと思います。  そうしますと、結果的に何がいいかといいますと、資産税はいろいろ議論はあるんでしょうけれども、所得税の減税と消費税の増税というのは、これは理論的には必然的なことだろうと思われます。所得税の減税は既に実施済みですから、消費税の増税もこの間実施されましたので、今後は、より一層その傾向を強めていくということだろうと思われます。  その際に注意すべきことは、消費税税率は過大に表示されるということでございまして、今、所得百万円でその百万円を消費に回すといたしますと、二五%の所得税をかけると二十五万円の税収が上がります。百万円の所得があってそれを消費に回す人に二五%の消費税を課税しますと、これは八十万円の消費に対して二十万円の消費税ということになりますから、消費税は二十万円しか上がらないわけで、消費税というのは税収が同じ税率のもとでは所得税よりも低い、つまり、税率高目に表示されることがございますので、その点も御理解いただけたらと思います。  それから、企業課税の方向性ですけれども、これは課税ベースの拡大による、できれば付加価値課税への移行というのが望ましいのではないかと思います。少なくとも、法人税の減税は消費税の増税とセットでなければ困難であろうというふうに思われます。  法人所得課税自体には大変に大きな問題がございまして、例えば、法人に課税する際に、その所得に対して課税しなければならない必然性というのはないわけです。法人の生み出した付加価値に課税してもよろしいわけですし、法人の資本金額に応じて課税してもいいわけですし、何を選ぶかは政策論の問題でありまして、法人に課税するから所得に課税しなければいけないというのは論理的には誤りです。法人所得税は、むしろ法人セクターへの投資を抑圧する効果がある程度ございますので、できれば国際標準程度にとどめておくのがいいというふうに考えます。  その後、さまざまな図が書いてありますけれども、ここはどういうことかといいますと、要するに、企業の生み出した価値というのは所得ではなくて付加価値なんだ、企業活動の成果というのは所得ではかるべきではなくて付加価値ではかるべきである。付加価値というのは、利益、これが株主の取り分です、それから支払い利子、これが債権者の取り分、それから支払い賃金、これが労働者の取り分、この三つの合計額として計算されるわけです。  法人税の課税ベースとして理論上可能なのは、二ページの「法人税の課税ベース」というところに書いてあるところでございますけれども、所得に対する課税、これが法人所得税、それからアメリカの財務省方式の支払い利子の損金算入を否定する方式、それから付加価値税、それから、ちょっと話は別ですが、レソト税というのがございます。  売り上げから仕入れを引いて、そのほかに引けるものとして、自己資本コスト、支払い利子、支払い賃金の三つがあるわけですけれども、法人所得税では自己資本コストは引けずに支払い利子と支払い賃金のみが引けるということで、自己資本形態で資金を調達した場合と借入金で資金を調達した場合とで扱いがアンバランスになる結果として、借入金による資金調達が優遇されるという効果がございます。  その欠点をなくすためには、支払い利子の損金算入を停止してしまえばいいわけです。これは私の考えではありませんで、アメリカの財務省の考え方です。それをやりますと、今度は賃金だけが控除されてしまう。つまり労働集約的な産業に有利ということになってしまいます。  付加価値税は、この支払い賃金の損金算入も否定した法人税だと考えられます。つまり、すべての生産要素の投入に対するフローを損金算入を否定するということで、まことに中立的な税金ということになります。  そうすると、純粋に理屈の上からいいますと、法人所得税を廃止して消費税をその分増税するというのが一番望ましい結論になりそうですが、ところが、そうはいかない理由がございます。それは、法人所得税の負担をほかの先進諸国以上に下げるわけにはいかないということでございます。リヨン・サミット等で、課税引き下げ競争への参加に対して、日本はそういうことは行わないと国際的に公約したこともございますので、国際標準以下に法人税を軽減するということは、これは日本としてはやってはいけないことだろうと思われます。  そうすると、国際標準まで法人所得税を下げ、その見返りとして課税ベースを拡大していく、場合によっては消費税も増税していくというのが望ましい方向性なんだろうと思われます。消費税増税は今世紀いっぱいできないということであれば、法人税の課税ベース拡大でその税率軽減を図っていくというのが理屈の上でも一番合っている。それも嫌だというのであれば、環境税等も一考に値するのではないかというふうに考えております。  以上、所得課税に関しては、所得税、法人税を軽減して、中長期的ですが消費税税率を上げる、これのみが理屈の通る唯一の方法であるということが結論でございます。  それから、課税の繰り延べに対する対応というのがございまして、ここにも所得税、法人所得税の欠点が露呈されるわけですけれども、利益操作が非常にやりやすいということが起こってまいります。それに対応するためには、時価主義ということが出てくるんですが、先ほど言いましたとおり、時価主義は非常に不公平になる可能性がある。しかし、所得課税にこだわるのであれば、時価主義は必然的でございます。その時価主義の対象というのは広がっていくだろうと思われます。時価主義が広がれば連結納税等は不必要になります。なぜならば、子会社株式が時価で評価された場合に、子会社に赤字があればその株式はマイナス、含み損が出てきますので、必然的に親会社の損益に反映されるということでございますので、この辺はさまざまな効果があるということです。  それから、デリバティブを用いた課税繰り延べというのが非常に可能なんですけれども、これは所得課税の枠内での対応というのは本質的には不可能ではないか。もちろん、時価主義である程度対応は可能ですが、本当に本質的には難しいのではないかというふうに思います。  それで、消費税の増税も難しくて所得課税で対応していくためにはどうしたらいいかといいますと、次に申し上げます執行の強化というのがぜひとも必要になってくるだろうというふうに思われます。  竹内先生のおっしゃったことと全く重なりますけれども、外国為替法改正により生ずるさまざまな執行上の困難、これは私、法律家ですから、こうやるとインチキができるというようなことを先生方の前で申し上げるわけにはいきませんけれども、さまざまなことが可能でございます。それから同時に、デリバティブ取引等の進展に伴って所得税、法人税の執行の困難が生じてくるわけです。  どういうふうに生じてくるかというと、一つは、源泉徴収が難しくなる。源泉徴収というのは、利子とか配当とか、所得の性質を限ってそのものについてだけ適用されるものですから、デリバティブ取引を使って利子を事業所得に変えてしまえば、これはいとも簡単にできる話ですから、源泉徴収はたちどころに逃れられるとか、それから、申告納税の困難、これは時価主義等と絡んで出てきますけれども、そういうものが予想されます。  ですから、どうしても執行の強化というのが必要になってまいります。つまり、所得税、法人税が源泉徴収が非常に難しくなってきて、その中で執行の強化を図るためには、申告納税制度を整備するしかないわけでございまして、申告納税制度をきちんと諸外国並みに動かすためには、以下の改正国際標準でございます。これがない申告納税制度は自発的納税制度ということで、納税が自発的というのは論理矛盾でございますから、それはあり得ない話です。  一つは、質問検査権の強化でございます。日本の質問検査権は先進諸国の中でスイスに次いで弱いというふうな結論を私は持っております。出かけて調査させていただく、コピーもとらしていただけない、場合によっては、罰則はありますけれども、拒絶できるというような制度になっております。アメリカやフランスでどうなっているかというと、資料を持ってこい、持ってこないとみなし課税を行うぞという制度になっているわけですから。イギリスでもそうでございますけれども。そこまでするのがいいかどうかはともかく、質問検査権が今のままでは申告納税制度は機能いたしません。不公平が生ずるわけです。  それから、さまざまな情報申告制度が必要になってくるだろう。これは今の支払い調書のようなものをもっと拡大して、いろいろな取引の局面に応じて、さまざまな課税資料を金融機関なり取引先が税務署に対して提出するという制度でございます。アメリカ等で非常に発達している制度です。  それから、納税者番号制度の採用も、これはどの範囲で採用という問題はもちろんあるかもしれませんけれども、基本的には、入れなければ申告納税制度にはならないと思います。  それからもう一つ日本では裁判に行ったときの立証責任が常に国側にございますので、自分のことは自分が一番知っているんですから、納税者にある程度、常にとは申しませんが、ある程度立証責任の転換というのも必要になってくるのではないかと思います。これは恫喝に近いわけですが、申告納税制度というのはこれくらい厳しい執行体制のもとでなければ成り立たない、ここがポイントでございまして、それがいいのかどうかは政策論的に国会の方で判断される問題なんだろうと思いますし、学者がどうこう言える問題ではございません。ただ、そういうことになるんだという論理的な帰結を申し上げました。  結局、所得税、法人税では対処できない問題に対して、消費税の増税が無理な場合に何があるかというと、流通税によって補完していかざるを得ないというふうに考えます。これは有価証券取引税とか取引所税とか印紙税とか、そのようなものを通じて、これは取引が行われれば必ず課税されるものでございますから、補完的に導入しておくということに関しては、手続的にはそういうあり方があるのではないかと思います。  それから、このような流通税は、近代経済学的に申しますと、トービン・タックスという議論がございまして、過大なボラティリティーに対応するということで、要するにバブルをふやす効果があるというふうに言われておりますので、まんざら捨てたものでもないという議論もございます。  「結び」に入らせていただきますけれども、今から二十年ほど前に就職を決意するときに、日本の高齢化というものが、自分が年をとるころ、日本は高齢化していて年金ももらえないのではないかと非常に心配になりまして、それでは租税法学者になろうというふうに、余り大した理由じゃありませんが、決意いたしました。  それで、このような、国民に選ばれた、民主主義の制度のもとにおける代表の先生方の前で、その政策的判断の参考にしていただけるかもしれない理論的な基礎を中立的に提供する機会を与えていただいたことを非常に感謝いたします。  考え方の差はいろいろあると思うんですが、皆、国民の幸せを考えているという一点においては、これは同じでございます。私が言ったのと全く反対のお立場の方も、それは日本を悪くしようと思ってそう考えているわけではございません。また、私が消費税を好きなのも、日本を悪くしようと思ってそう考えているわけではないのでございます。  あと三十年をしのげば、日本の未来は明るいだろうと思われます。人口構成が極端に変化する時期、特に高齢者人口がふえる段階で経済が一定程度停滞するのはある程度仕方のないことです。今まで高齢者の人口比率が少なかったからこそ、日本は経済発展を、欧米諸国と比べて強い競争条件のもとで行うことができた。今まで我々はラッキーだった。そのツケが、ツケと言ってはなんですが、来るわけですから、それを嫌がっているわけにはいきません。ヨーロッパ、特に北欧において、消費税、付加価値税というのがむしろ社会民主党的な方々によって支持されているということがここでの重要なポイントなのではないかというふうに思います。  この他に、私の専門であります国際課税の問題等があるんですが、ここでは、これは時間の関係で省略せざるを得ません。  それから、地方課税については、中西先生の方から言いたいこと、いっぱいあるんだろうと思われますので、私は省略させていただきます。  以上でございます。(拍手)
  8. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、中西参考人にお願いいたします。
  9. 中西真彦

    中西参考人 中西でございます。  それでは、私は、一産業人という立場から、一言意見を申し上げたいと思います。  まず、レジュメの中に書いてありますように、総論として四点申し上げます。  それは、税を取り巻く環境といいますか、経済社会構造の変化について述べ、第二点で、危機的な財政状況と、それに対して徹底した行財政改革が必要であるということを申し述べます。第三点で、税体系の抜本的改革が今こそ必要であるということを申し述べて、第四点で、国民的な政策課題の解決と税制の役割について述べてみたいと思います。  それから、総論が終わりまして、今度は、私は産業人でございますので、企業として非常に関心の高い個別項目のあり方につきまして、五点ほど申し上げます。  一つ法人課税、第二に土地税制、第三に金融・証券関連税制、第四に個人所得税、住民税、第五に相続税ということでまとめていきたいと思います。  まず、税制のあり方について述べさせていただく前に、現在及び将来の税制を取り巻いております環境について、一言述べてみたいと思います。  御案内のように、我が国の出生率は今他の先進国の中でも最も低くて、夫婦二人で一・三人か、たしかその辺ですか、非常に低い。世界に例を見ないスピードで、逆に高齢化は進んでいまして、まさに超少子・高齢社会を迎えようとしております。これによって、勤労世代の人口が減少して、今後増大する一方の社会保障関連の各種サービスに伴う社会的費用を支える担い手が非常に著しく減少することになりまして、勤労者一人当たりの負担企業負担はますます増大していく、こう考えねばならぬと思います。この状況をこのまま放置しておけば、また、社会全体の勤労意欲の減退や経済活力の衰退は当然危惧されるわけでございまして、これに対して税制のしかるべき手を打っていかねばならぬと思っております。  一方、経済社会は、これまたますますグローバル化、ボーダーレス化しておりまして、人と物と金と情報が、これは一国の思惑や規制を超えて、規制が少なくて負担の軽い国へどんどん選択して動いていくということになっておりまして、その結果、いや応なしに制度や負担は国際的な平準化の方向に向かわざるを得ない。経済活動に対する、いわゆる中立性の確保が当然そこで求められてくることになると思います。これは、さっき竹内先生もおっしゃいましたが、まさにグローバルスタンダードという視点が非常に重要になってくると理解しております。  このように経済社会構造が変化する中で、我が国の財政状況は、もう今さら私が申し上げるまでもなく、四百四十二兆円という債券発行残高がありまして、隠れ借金なんかも入れますと大変な額のようでございます。この平成九年度予算、ちょっと辛口のあれを言わせていただきますと、国民の多くが不急と思うような事業が九年度予算でも予算づけされたようなことでございまして、こういうことをやっておると、債務は際限なく拡大していくのではなかろうかと心配しております。  このような構造的な赤字体質の持続は、これはもう対外的にも我が国の威信を大きく失墜しかねないわけでございまして、こうした最悪の財政状況の中で、公的サービスを支える財源であります税の今後のあり方を検討する前提としては、多くの産業人にこの税制意見を、私も今回、ここへ出るに当たって意見を聞いてきたんですが、皆、十人が十人申しますことは、今言われております構造改革、省庁、特殊法人の統廃合、公務員の定員削減や規制緩和あるいは地方分権の推進など、国、地方ともどもに、徹底した行財政改革をまず断行してください、そして効率的な行政によって歳出削減を図ることが先であって、その上で、すべての税制改革意見は出てくるという意見を皆さんおっしゃいます。  構造転換が急がれる今日、経済社会を支える一つのシステムとして、これまでの税制もいろいろ改革がなされましたが、ここで抜本的な改革が不可欠になっておる、私はこう考えております。私は政府税調のメンバーでもございますが、この点も、ことしの政府税調でも強く申し述べてまいりたいと思っています。  それから、高齢化の進展とともに急増します、さっき申し上げました社会保障費など各種公的サービスに要する費用も、今の税制の枠組みの中ですべて賄ってまいるといたしますと、結果的に、個人企業に対してより一層重い負担を強いることになります。行政改革による財政削減効果や受益者負担考え方の活用などを視野に入れながら、国民や企業の間で、これはさっき中里さんがおっしゃいましたが、広く薄く負担していくこと、税制としてはそういう税制が望ましいと私は考えております。  その意味では、私は、直接税に過度に依存してきた現在の税体系を徐々に改めていって、中長期的には、やはり直間比率を是正していくことが不可欠である、これが非常に税制の方向としては大事であるということで、中里さんと全く同じでございます。  かつて、御案内でしょうが、英国でロイド・ジョージという総理大臣がおって、英国から貧乏人を追放しようという旗を掲げて、所得税、法人税ともども最高税率を九〇%まで持っていったのですね。その結果、英国は富の再配分をやって、貧乏人はなるほど追放できたのですが、英国から、背骨のある人間と、頭脳と、企業の優秀なのは全部アメリカに脱出した、その結果、英国の没落が始まったと言われておりまして、私は、さまざまな理由もあるでしょうが、大英帝国の没落はこの税制が極めて大きな要因であったと理解しております。  また、この改革の範疇は個別項目の見直しに終わることなく、所得、消費、資産の課税全体にわたるバランスの見直しもこれまた必要でございまして、その際に、当然のこととして、負担は公平、中立にして簡素であって、かつ国際的に見て整合性のとれたものでなくてはならないと思います。  また、今後の我が国において、このメガコンペティション時代を生き残っていくためには、通産省や政府がおっしゃっておるように、何よりも科学技術の振興がプライオリティーとして大事なことだと私は思っております。  また、通産省が、経済構造の改革と創造のためのプログラムというものを、全省庁横断的なプログラムを産構審で書き上げまして、この内閣議にかけたようでございますが、私も産構審のメンバーとしてこれに参画しました。産業構造改革、経済構造改革、今橋本総理によっていろいろな改革が言われておりますが、私は、財政構造改革も当然これは国家の大命題でありますけれども、プライオリティーとしては、経済構造改革にともかく手を打って、今産業転換が求められておる経済界で産業転換、構造転換をやらすということが先じゃないか。産業が沈むと、当然、賃金カットも始まれば、残業もなくなるわ、雇用の調整も入るわ、もう大変なことになってきて、すべての財政構造計画も挫折することに結びつく、したがって、プライオリティーは、まずここで経済構造改革が重要である、それにあずかってやはり税制が一番キーになる、私はこう理解しておりますので、やはりその辺、税の体系の見直しに力点を置いていきたい、こう考えております。  以上のような認識のもとで、さっき申し上げました今後企業にとって急を要する個別税目について、五点ほど所見を申し述べたいと思います。  まず第一に、法人課税のあり方ですが、我が国の法人は、御案内のように、欧米諸国に比べまして相対的に高い税負担を強いられております。日本は、実効税率が、国税と地方法人事業税合わせまして四九・九八でございまして、欧米は、英国、アメリカ、ドイツとも、まあドイツが非常に高かったのですが、今般思い切って四〇か四一ぐらいに引き下げたようですから、アメリカ、ドイツ、英国ともに四〇%前後ということで、日本だけが断トツで高いわけでございますね。これは当然我が国の空洞化を加速しますし、外国企業の我が国への進出も阻害しておる、こうなっておりまして、我が国の法人税制は、市場原理のもとでの成功者の十分な資本蓄積を妨げて、将来の投資循環にも大きな制約になっておると言わざるを得ないと思います。  自由主義経済においては、弱者を支える制度的補完は当然最低限必要と考えられますが、過度に応能に依存し過ぎる課税は社会全体の活力を奪い、向上意欲を損なうことになりかねない、こう考えています。これを抑止するためにも、法人税、法人事業税などの思い切った引き下げによって私はそれに対応する必要があると思いますので、この四九・九八を四〇%に、欧米並みに引き下げるべきである、こう思っております。  ちなみに、APECではシンガポールが二〇%台ですね。APECは大体二〇%から三〇%台でございまして、日本の中小企業などは今後このAPECの企業とまさにボーダーレスの競争をしていかなきゃならぬわけですから、これだけの差がありますと大変な負担と足かせになると言わざるを得ないと思います。  きょう、尾原審議官がおられて恐縮ですが、私は、この間、政府税調で、主税局が描きました、課税ベースを広げて、そしてその結果の減税財源でもって法人税を引き下げるというシナリオには反対をさせていただいたわけです。  なぜかというと、これも、確かに租税特別措置とかもろもろの課税ベースがタックスエロージョンを起こしておりまして、そういう課税ベースの拡大ということを否定するものではございませんが、そういった税収中立型の減税だけでは今の日本産業界の法人税引き下げというものにはとても見合わない、さっき申し上げたように、少なくとも欧米並みのところと対等に戦えるところまで実質減税をやるべきであるということで、私どもは、昨年の課税ベースを広げてレベニュー・ニュートラルで一%か二%ぐらい下げるということに対してはあえて反対をしたわけでございます。  それで、問題は、実質減税に伴うその財源として、私は、これは冒頭申し上げたように、国、地方の徹底した行財政改革をやっていただいて、課税ベースの適正化とともに税体系全体の抜本的な見直しを考える必要があるのではないか、こう考えています。  ちなみに申し上げますと、私は大田区に住んでおりますが、大田はあの程度の小さな村で、村と言うとちょっと失礼ですが、六千人の職員がおるのですね。その上に東京都約二十万がおります。その上に国家があるわけですね。中身はどの程度を出しておるかといいますと、この間私は区長に聞いたのですが、あの緑のおばさんは、私はついこの間まで、ボランティアでやっておられると思って会釈をして通っておったのですが、何とあの緑のおばさんに、地方自治体、区は年収六百万出しているのですね。六百万というのは、中小企業のれっきとした世帯主であり管理職クラスですよ。だから、彼らが聞いたら涙を流して悔しがる金額ですよ、なぜにそれだけ高いあれを出しておるかということで。今の企業の法人実効税率四九・九八、五〇のうち地方法人事業税が一二%を占めていますね。国税は一二七・五ですが、欧米が大体三五・五ですから、まあそう差がない。これも三%か四%下げる必要があると思うのですが、余りにもこの地方事業税が高過ぎる。  地方の応益サービスがあるからいいのではないか。当然、地方行政のサービスに対する応益税的対価として払う必要があるということがあると思いますが、これは住民税でも払っているし、固定資産税でも払っているのですね。ですから、私は、ここのところは今後議論を詰める必要がありますが、ともかく高い、ここを減らさないと、企業の足に重い鎖をつけてASEANなりAPECと戦えということにならざるを得ないと考えております。  次に、土地税制でございます。  土地税制につきましては、さきのバブル経済期に地価抑制策として強化された土地税制が、バブル崩壊とともに地価が大きく下落したわけでございまして、下落したにもかかわらず依然としてその枠組みが残されておるということで、一方で土地の保有コストを著しく高いものとして、他方で土地の流動化を阻害するといった、経済活動の活性化を阻む要因がこの土地税制でございます。  私は、この際、これは政府税調で盛んに申し上げておるのですが、政府税調も、学者先生その他、いろいろな意見の方がおられまして、この土地税制に関しては頑として存置すべきである、政策税制措置として存置すべきだという意見が多うございまして、私どもはこれに涙をのんだわけですが、私は、資産デフレをとめる意味でも土地税制はこの際、特に地価税などは思い切ってもう廃止すべきであると思っていますし、それから固定資産税についても、土地の評価方法自体のあり方や地価公示価格の七〇%という評価割合が非常に高いのですね。  これは、御案内のように平成六年に一気に自治省が、きょうたくさんおられますが、自治省が七割評価に上げたのですね。それまで全国は、地方によって違うけれども、大体二〇%から二五%ぐらいの評価だったのです。それを突然七割に上げたということでありまして、この辺にも私は原因があると思いますので、今、軽減措置を自治省等が用いておられますが、私は、そういう小手先ではなくて評価の引き下げ、これをきちっとした理論づけをして引き下げなければいかぬし、それから標準税率の一・四にも場合によっては踏み込む必要があるのではないか、こう考えております。  当然、土地譲渡益課税については私はだんだん廃止の方向に持っていくべきだと思っておりまして、このことが土地市場の活性化につながり、また同時に、今問題になっています不良債権問題の解決にも貢献し、いわゆる資産デフレの解消にも役立っていく、こう考えております。土地税制問題は大きな重みを持った税制であると言わざるを得ないと思います。  金融・証券関連税制については、今、竹内先生と中里さんが詳しくおっしゃいましたので、私は省かせていただきます。  それから個人所得税、住民税ですが、個人所得税も、私は何も企業エゴで法人税を下げろと言っているのではございませんで、やはり税体系全般の中で、世界グローバルスタンダードが、フラットな税制というのが多くの歴史の反省の中から出てきておるわけでございますから、私は、個人の累進構造ももう少し最高税率を引き下げてやって、子育てのサラリーマンなんかは、もう少しそこに税の負担を軽くするような措置を少子化対策とあわせてやってやるべきではないか。  この少子化対策は、ロングランには非常に大事な国家的課題だと思います。今のようなことをしていきますと、まず確実に日本はおかしくなるわけでございまして、若者が子供を産んで育てるということに、中国なんかは少なかったときにかなりある種のあれを加えたようでございますが、やはり日本もここまで来ると何らかの、例えば子供ができたら子供手当というか児童手当というか、そういうものまで考えるようなことが必要になるのではないかと思います。  最後に相続税のあり方で、これは、ウン百万の中小企業は押しなべてオーナー経営者でございます。当然、事業承継と個人資産の相続とがラップしておりまして、ここのところにいろいろ問題がございますが、相続税も今、最高税率が七〇%という世界に例を見ない高さでございまして、俗に、三代でいかなる資産家もゼロになると言われておりますから、この辺も私は、事業承継を円滑に推進するという視点からこの相続税の引き下げをお願いしたい、こう思っております。  最後になりますが、私は、税制改革はそれ自体を切り離して論じるばかりでは意味がないわけでございまして、今橋本内閣が総力を挙げて取り組んでおられますこの行財政改革の成果をしっかりと視野に入れて検討していかねばならぬと思っております。今度、例えば財政投融資システム、第二の予算と言われておりまして、ブラックホールとか伏魔殿とか悪口を言われておりますが、何せ五十兆という一般会計予算に迫るほどの膨大な金が理財局の手で運用されておる。私は、これを悪く言えば、まさにブラックホールだということで、地方交付税なんかも、一般会計、特別会計、地方財政等にも全部絡んで非常に不透明なのがこの財投資産でございまして、この抜本見直しを今度総理から指示が出まして、私、そこのメンバーに、今後三回出席するわけですが、この辺もぜひとも深く掘り下げて、透明化と市場原理をここに導入していくことをすべきである、こう考えております。  そういうことをやりながら税の抜本的解決をするときに初めて国民的コンセンサスが得られると私は思うので、これをやらないで税改革をやれば、消費税引き上げに猛然と反対が起こりますし、何をやってもそうなると思うのですね。だけれども、さっき中里さんがおっしゃったように、消費税というのを悪者のように言いますが、直間比率の是正は今やまさに世界グローバルスタンダードですね、これをどうしてもやらなければいかぬ。それをやるにはやはり行財政改革を思い切ってやって、それを踏まえて国民に理路整然と税体系のありようを訴えれば、私は、消費税のもう一段の引き上げたって一そういうことを言うと、ここで引き上げ論者になりますが、仮にそういうことも、国民を説得することは可能ではないか、こう思います。  これをやらぬ限り、中里さんはあと二十年ほどすると日本は明るくなるとおっしゃいましたが、私は必ずしもそう思わぬです。私は分水嶺だと思っています。通産省はこの日本改革のプログラムを五年と銘打っています、五年間で押さえていますけれども、私は、まさにこの五年ぐらいが分水嶺ではないかなと。だから、日本はこのまま非常に暗くて長いトンネルに突っ込んでいくのか、あるいは日はまた上るのか、その辺の分かれ道、ちょうどこの四、五年の対応の仕方でそれが分水嶺になる、こう考えております。  その辺で、ぜひ皆様の、先生方の御尽力をお願いいたしたいと思います。  以上です。(拍手)
  10. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 原田昇左右

    原田委員長 これより参考人に対する質疑に移ります。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑については、理事会協議により、一回の発言時間は三分以内とすることになっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。  なお、質疑のある委員の方は、挙手の上、委員長の指名により発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、着席のままで結構ですが、所属会派及び氏名並びに答弁を求める参考人を御指名いただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  12. 谷口隆義

    ○谷口委員 新進党の谷口でございます。  今、大変貴重な御意見をお聞きしたわけでございますが、初めに竹内参考人にお聞きいたしたいのです。  今回、先ほどお聞きしておりますと、金融システム改革ビッグバンとの関連のことをおっしゃったわけでございますが、私は、このビッグバンに関しましては、これから我が国の経済を自主的に開放していかなければいかぬ、そういう意味では方向は賛成なんですが、ただ、時期的に極めて問題がある時期だなというように思っております。  一つは、金融機関の不良債権の方向が示されておらないということと、証券業界における有価証券取引税、有取税の問題もございます、こういう規制緩和が十分まだ行われておらないということと、税制国際的整合性がとられた税制になっておらないということ、この三点においてちょっと大変な状況だなというように思っておるのです。  特に、国際的整合性、大蔵省の状況を見ておっても、ビッグバンを進めておる部署と、あと主税局、税制の方と必ず整合性がとれておるかといいますと、そのように見えない状況でございます。ですから、先ほど中西参考人のお話にもございましたように、例えば法人税率が欧米と比べて我が国は極めて高いわけでございまして、その整合性の問題もございますし、あとは、例えば相続税の問題なんかも、相続対策で海外の不動産を買って相続対策をやるのではないか、こういうような問題も言われておるわけでございます。  そういう状況の中で、個人資産一千二百兆円がどのように流れていくのか。来年の四月一日から、順調にいきますと外為法自由化が始まるわけでございまして、先ほどの竹内参考人のお話を聞いておりますと、大体預金が四一%、アメリカは一三%ということですから、これは約三〇%、アメリカ並みになるとすると、我が国の個人資産の三百兆円以上が流れてしまうと言っても過言ではない。  そのようなことが大規模に起こり得る可能性さえあるわけですが、そういう時代において、我が国の現状を踏まえた税制のあり方、これは欧米各国、それぞれいろいろ歴史をたどってきたわけでございますので、必ずしも欧米と我が国の税制がしっくりいかない、異質のところがあると思うのです。  そういう観点で、国際的整合性は大事ですが、一方で、先ほどのお話にも出ておりましたが、例えば我が国の高齢化社会というような問題もございます。そういう状況の中で、我が国の税制体系として本来どうあるべきなのかというような観点でお聞きいたしたいと思います。
  13. 竹内佐和子

    竹内参考人 まず最初に、タイミングの話が出まして、確かに銀行も証券も非常にいいタイミングとは言えませんで、どちらかというと今最後の荒波が押し寄せているというような状況で、なおかつ金融市場のグローバル化に対応しなければいけないという状況だと思いますが、タイミングについて言えば、これは待っていたからよくなるというような状況では逆にありませんで、むしろ今がツーレートの状態でこうなってしまったという面もあると思うのですね。つまり、もし国際金融市場の流れをもう少しきちっと見ておれば、もう少し早目にスタートしてもいいくらいだったものが、今までそのままになってきたものが、今回特にいろいろな問題が起こっている。  この問題が起こっているというのは非常にいいことだと思うのです、逆に言うと。つまり、今までの経営の問題性があらわれたという意味で、逆に隠された状態よりはもっとマッチベターの状態で、むしろ私は早目にやった方がいいと。  なおかつ、そういうことによって新しい業態を工夫するとか新しい商品を工夫するとかそういうふうな形にいかないと、最終的に困るのは金融機関ではなくて日本預金者であり、あるいは証券の顧客、つまり国民の方が最も損をするという状況だと思うのです。つまり、日本の今の体制そのものの中でのサービスということに限られますと。やはりこれで一回世界のサービスの水準というものをしっかりと見据えて、早くこの問題に対処した方が私はいいと思います。いろいろ不良債権あるいは最近の証券の問題はあるけれども、ほとんど無視していいんじゃないか、どんどん先に進むべきだと思っております。  それから、国際的整合性の話でございましたが、確かに法人税の税率、それから消費税税率、比べる相手によっては相当な差があるわけで、確かにフランスの消費税二〇・六%、日本は五%ということで、もしこれを同時に同じような水準にするというふうなことを考えると、物すごくとてつもない改革ということになってしまうと思います。そこまでの整合性は求めずに、今の日本税制のいいところを生かしながら、なおかつこういった経済構造の面からの改革を進めてしまうということの方がいいと思います。つまり、税制がきちっとできてからいろいろな問題を直していくというよりは、むしろある面で必要な改革をしながら税制の問題をやっていく。  ただ、根本的に非常に欠けているような点、先ほど言いました申告制度にかかわるいろいろな条件とか考え方、この辺に関しては、確かに日本個人責任ですとかリスクを個人でとるという考え方がまだ徹底していないので、この点についてはかなり根本的にきちっと、税率とは別に議論をしなくてはいけないのではないかなと思います。  証券に何%、どの程度移行するかということはいまだわかりませんし、それから日本証券市場がどのくらい透明性が高まるかということもわからないので、実質的にはそれほど急激には起こらないと思います。  最後に、高齢社会等々の問題は御指摘のとおりで、若い人の意識を聞きますと、やはり必要な負担はやむを得ないというふうに答える方も結構おりまして、その辺の若い層の人たちの感覚というか考え方、その辺にあわせて税制というものを見ていくというような形になるのではないかと思います。
  14. 小野晋也

    ○小野委員 自由民主党の小野晋也でございます。  社会の変革の中において、これから税制というものが果たして妥当性を持つかどうかという視点での御質問をさせてもらいたいと思うのですが、一番近い話題を提供していただいたのが中里参考人だと思いますから、中里参考人にお尋ねしたいと思います。  今、高齢化社会だとかいろいろな問題が言われておりますけれども、大きな意味社会システムを変更する可能性を持つものは、やはり情報社会の圧力であろうというような気持ちがいたしております。例えば、目の前の問題といたしましても、情報社会が進展するに従って、これまでは商業者として、業として取り次ぎをするような人がお互いをつなぎ合わせない限り、お互いの物と物を、また物と金銭とを交換するような形のものが成り立たなかったところが、自由に日本じゅう、または世界を結び合わせながらのネットワークが広がってくることを通して、自由自在に物々交換的なことがなされ得るような状況が生まれてきているわけでございますが、これを捕捉して税を課するような制度というのは今のところでき上がっていないと思いますね。  それからまた、金銭のやりとりの問題にいたしましても、ネットワーク上で自由自在にお金をやりとりするようなことになってきた場合、しかもそれに暗号がかけられてやりとりをされるようになった場合、税務当局はこれを本当に捕捉できるのかどうかというような問題も生まれてくるだろうと思います。  また、もう少し先の話といたしましては、テレワークというような問題も今提起されておりますが、外国に居住をしながら、情報回線を使ってやれば、東京の町中で仕事をしているのと同じように仕事をする人たちというのもこれから生まれてくるだろう。  こういうような人に対してどういう課税をはかっていけばいいのかというような問題も必ずしも答えが出ていないというような形で、大きな視点から眺めてまいりましたときに、私たち、地球社会全体として、この種のものが動き始めてきたときに、どう国家として課税を行い得るのかというような問題というのは極めて大きな問題として提起されてくる時代が来ると思うのですね。  この種の課題に対してこれまで御検討をなさったことがあるのか。また、個人的見解で結構ですけれども、どういうような方向性を考えながら取り組んでおられるのか、中里さんにお尋ねをしたいと思います。
  15. 中里実

    中里参考人 なかなかそんな魔法のような方法はないのですけれども、苦労して今まで考えてきたことを御参考までに申し上げさせていただきます。  所得税、法人税につきましては、今のような情報化の進展で、経済取引が場所を超えて行われるようになったり、それから、日本に居住することなく日本で仕事をしたのと同じような効果が出るというようなことが可能になりますと、大変に難しい事態になってくるであろうと思われます。一定程度は源泉徴収で可能だったのですけれども、それも外為法の関係で支払い地等が外国にとかということになったときに、捕捉の問題も含めますと、適性に所得税、法人税が源泉徴収も含めて今後も今までのようにうまく機能するかどうかというのは非常に難しいところはあるのではないかと思います。もちろん根幹としては揺るがないと思うのですが、揺るぐところは多く出てくるであろうと思います。  そうすると、消費税ということになってくるのですが、消費税は物についてはそんなに問題ないのだろうと思います。物は密輸をしない限り必ず税関を通りますので、そこで入ってきたときに課税をする。輸出のときには輸出免税ということで、物に対する消費税の課税というのは比較的うまくいく。ただ、サービスについて、これが国境を超えたサービスのやりとりがなされたときに消費税が課税できるかというと、サービスは税関を通りませんので、恐らく、捕捉の問題としてですが、難しくなっていくだろうというふうに思われます。  ではどうしたらいいかといいますと、本当に極端な理屈だけ申しますと、一つは人頭税なんでしょうね。日本に住んでいるから取る。  ただ、そうはいっても、それはちょっと極端過ぎてしまいますので、私も法律家ですからなかなかそこまでは言えないわけで、そうしますと、流通税が一定程度の補完的な役割を果たしてくれるのではないかというふうに思っております。  つまり、物がどう流れようと、サービスがどう流れようと、契約がなされるというこの一点だけは揺るぎがないわけでございます。それについて、もちろん逃れ方もあるんでしょうけれども、例えば印紙税のようなもの、あるいは契約書が交わされないコンピューター画面での出来事であっても、イギリスの印紙補完税のようなものですね、こういう流通税でもってバックアップしていくということはある程度やらなきゃいけないし、やれるんだろうというふうに思います。  それからもう一つは、情報化の中で人も動くし情報も動くし金も動くということで、要するにフローをどうつかまえるかということなんでしょう。そうしますと、物やサービスの流れがっかまえられなくても、金銭の流れというのは、これは金融機関に対する情報申告の制度の強化によってつかまえることは可能だろうと思われます。金の流れに着目した何らかの流通税、まあ有価証券取引税取引所税というのもそれの一種なんだろうと思いますけれども、もっと別のやり方もあるかもしれません。キャッシュフローに着目した何らかの課税を考えることは可能だと思います。  その際に、所得がないのに課税されるじゃないかという理屈はあるんですが、取引の前の段階では、もうかると思うからみんな取引をするわけですから、その段階で課税をすることに特に問題はない。結果として損するかもうかるかはその人の器量次第と運次第ですから、取引前の視点で、経済学的に言う事前の視点で考えれば、そういうキャッシュフロー的な流通税があっても特に問題はないだろう、もちろん補完税としてですけれども、そういうふうに考えております。  あとは執行の強化ですね。これを国際標準並みにぜひ持っていっていただきたいというふうに思っておりますけれども。
  16. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  中里参考人にお伺いをしたいと思います。  消費か所得かという話がありますけれども、所得を公平性の物差しにするから逆進性が見えるだけだというふうにおっしゃいました。この点は、消費というのは確かに所得と結びついているわけでありまして、所得あっての消費だと思うんですね。所得がない場合でも消費せざるを得ないという現実、これも事実だと思うわけです。特に高齢者の場合は、最近は金利が非常に低下していまして、所得の点でいいますと非常に困難な面がある。そういう状況の中で、消費税が五%に上げられて大変お困りの方が多いわけでありますが、やはりこの消費税という問題を考える場合に、どうしても逆進性というのは、一定の所得に比較して消費という点から考えなければ実態的にはとらえられない面があると思うんですね。  そういう意味で、逆進性そのものを否定されたわけではないと思うんですけれども、そういうとらえ方についてかなり批判的な見解をお持ちのような感じがしましたので、この逆進性そのものについては事実としてお認めになっておられるのかどうかというのが一つ。  それからもう一つは、この消費税によって消費の全般的な低下が現実に四月以後起こっているわけですが、これが日本経済あるいは景気全体に対してどのような影響をもたらすか、この点どのようにとらえておられるかですね。  それから、先ほど……
  17. 原田昇左右

    原田委員長 三分以内ですから、簡潔に。
  18. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 はい、わかりました。あと一問だけ。  流通税のお話でトービン・タックスのお話がありましたが、そのトービン・タックスについての評価をもう一度お聞きをしたいと思います。  以上です。
  19. 中里実

    中里参考人 経済学的に申しますと、私、経済学者じゃございませんけれども、真の意味所得とは消費であるというふうに定義されているんじゃないでしょうか。つまり、お金を得ただけで人は満足するんじゃなくて、それを消費して初めて満足感が生ずる、この満足感こそが真の意味所得であるという考え方があると思いますので、公平性の物差しとしては所得よりは消費の方がいいというのは、これは、経済学的にその反対の立場の方もいらっしゃると思いますが、少なくとも新古典派の経済学を習った方であれば、それを否定する方は、政策論としてはともかく、理論的には少ないのではないだろうかと思われます。  しかも、所得というのは年度ごとの話でございまして、人の一生を見た場合に、稼いでいないものを消費するわけにはいかないんですね。稼がないまでも、もらって一だから、私が年とった後どうして消費できるかというと、稼いだものを貯蓄してあり、あるいはだれかからもらうから消費できるのでありまして、消費能力というのはかほどに担税力を含んだものでございます。所得を稼いでもそれを消費しない人、貯蓄に回した人は担税力がないと見ていいのではないかと思いますので、逆進性という所得基準にした考え方自体が理論的に誤りであるというふうに私は考えております。  そういうことをおっしゃる方は、所得税を弁護したいからその言葉をマニピュレートしていらっしゃるというふうに考えるわけです。したがって、逆進性という言葉自体を私は余り好きではない。まあこれは好みの問題ですけれども、理論的にはおかしいだろうと思っております。  それから、消費税を課税すると消費の低下ということですが、これは、税金をかければ経済的に抑圧効果が生ずる、撹乱効果が生ずるのは当然のことでございます。所得課税を行った場合の生産に対する抑圧効果と、消費税を課税したときの消費に対する抑圧効果とどちらが相対的にいいか悪いかという問題でございまして、マーケットというものがもし一定程度信頼できるものであるとすれば、消費に対する課税の方が中立的であり、マーケットディストーションは少ないというふうに通常は考えられているように思いますので、それは、消費税が五%に上がって消費が減ることはあるかもしれませんが、所得税、法人税による生産抑圧効果よりは、まあこれはバランスの問題ですけれども、いいという考え方も当然に成り立つのではないでしょうか。  それから、トービン・タックスについては、これはなかなか評価が難しくて、アメリカの経済学者、それからイギリス等の経済学者の間でも評価が分かれているんですけれども、一つ考え方によれば、バブルというのは経済理論的にはなかなか説明できない何か熱狂的な現象らしくて、そういうときに冷やす効果というのはかなりの程度期待できるという、過大なボラティリティーという言葉をどうも使うようですけれども、その過大なボラティリティーを抑える効果があって、その点では望ましいだろうというふうに言われておりますが、逆にそれに対する否定的な見解というのも、もちろん理論の組み方ですから、あるのかもしれません。  ただ、私が申し上げたのは、これを基幹税にしろということではございませんで、あくまでも補完的にそういうことがあってもいいんじゃないかという趣旨で申し上げさせていただきました。
  20. 岸田文雄

    ○岸田委員 自由民主党、岸田文雄でございます。  まず、竹内参考人にお伺いさせていただきたいと存じます。  先ほどお話を聞いておりまして、外為法改正部分で、円預金がつくられる、または銀行を通さない送金が行われる、相殺が行われる等でモニターが難しいというお話、それからまた税体系が崩れる、これによりまして税の減収が発生する、そういうお話がございました。こういった変化が生じること、私もそのとおりだと思うんですが、ただ一方、こういった外為法による変化も当然起こるとは思いながらも、為替リスクというものがある以上、この外為法改正の影響というのがどの程度かということについていろいろ自分自身考えているところなんです。  世の中を見ておりますと、外為法改正ビッグパンの第一歩という言い方、さらには、ビッグパンの核心であるというようなことまで言うような議論もあるわけなんですが、それを見ておりますと、どうもはしゃぎ過ぎのような気もしております。  この世の中の外為法改正に対するはしゃぎぶりについて、竹内参考人、どのようにお考えか、ひとつお伺いしたいのと、また、先ほど個人資産のあり方として、現在、日本株式七%であるというお話がございました。ビッグバンによりましてアメリカ並みに二一%へ株式の割合が高まるのじゃないかというお話がありましたけれども、そのシナリオについてもう少しお話を聞かせていただければと存じます。  それからもう一つ、今度中西参考人にお伺いさせていただけますでしょうか。  このレジュメの中で、「企業として関心の高い個別項目のあり方について」として、「法人課税」「土地税制」とずっと五つ並んでおりますが、これを拝見いたしますと、軽減、廃止、軽減、引き下げ、引き下げ、ずっとそういった言葉が並んでいるわけですが、その財源につきまして、先ほど、まず行政改革だというお話がございました。それから消費税に対するお話もお伺いしましたが、これだけ軽減、廃止と並びますと、商工会議所なり、また参考人個人でのお考えでも結構なのですが、もう少し具体的な、できれば数字的なものでもお持ちになっていれば参考としてお伺いさせていただきたいなという気がいたしております。もしあれば、その辺について触れていただけませんでしょうか。  以上でございます。
  21. 竹内佐和子

    竹内参考人 最初にはしゃぎぶりについてのコメントということでございまして、確かにビッグバンが望むところというのは非常に大きい点はありますが、私は、はっきり言って、最初の第一段階動きと第二段階動きはかなり質が違うだろうと。第一段階はかなりはしゃぐでしょうけれども、第二段階ではかなり定着した動きが始まる。その段階が非常に重要で、最初は余り、要するにそんなに動かないだろうと思います、本質的には。ただ、問題は、日本の今の規制のあり方が日本ビジネスを、金融サービスをしにくくしているという面もあるわけで、その点は幾らマージナルな変化であっても重要な変化なので、やはり国際市場に与える影響は非常に大きいと思うのですね。  二番目に、株式市場、七%が二一%程度にと申し上げたのではなくて、二倍程度と申し上げたのですが、どちらにせよ証券市場というものがこれから間接金融にかわって非常に重要だと思います。  ただし、先ほど申し上げたように、今の日本の株価の水準が、国際的に見て本当に正しいかどうかという信用度がいまいち低いわけですね。どういうふうにしたら信用度が高まるかというと、まさに日本産業の姿そのものが問われるということになるわけで、どういう新規の産業が出てくるのか、あるいはまさに産業の流れにくっついてこの株式市場というのが活性化するので、株だけが動くということはまずあり得ないという意味では、やはり新しい産業の流れ、あるいは日本にないものは外国産業でも活用して、日本に新しい産業ビジネスの流れをつくっていくという形によって活性化していくということが必要なのじゃないか。  ただ、株価の流れというのは、おっしゃるとおり、アメリカ株式市場の今の流れが本当に、じゃ株価の水準として正当かどうかということは非常に大きな疑問がありますし、何年もつかという問題もあるので、必ずしもアメリカの水準を基準とする必要はないわけで、日本型の金融ビジネスというものをやっていくということになるのでしょうけれども、少なくとも今のビッグパンの目的というのは、サプライサイドがビジネスをしやすくなるというだけではなくて、まさに日本預金者が自分が思う形で選択できるように、あるいは余計な手数料を取られないというようなことにも非常に大きなメリットがあると思うのです。そういう面で、もう少しマージナルな改革、つまり非常に小さな改革でもいいからやっていくということは必要なのじゃないかなと思います。
  22. 中西真彦

    中西参考人 まず、正確な数字に基づく税体系の見直しのグランドデサインといいますか、どの部分は何%減税してどの部分はどういうふうに増税するというふうなものはまだ描き切っておりません。これは政府税調でもこれから取り組むことになるのでしょうし、商工会議所あたりも今後税制論議の中で詰めていくことになると思います。  ただ、私個人としての一つのざくっとしたデザインを申し上げますと、さっきちょっと地方自治体の状況を申し上げましたが、産業界、特に鉄鋼なんかの例を申し上げますと、新日鉄は一万三千人減らしたのですね、三年間で。それで、日本鋼管のトップとこの間会いましたけれども、あの辺も大体三年で三割減らしたのですね。だから、多分、日本鋼管は二万人前後おったのですから、六、七千減らしたのでしょうか。三年間でそれほど減らしているのですね。三割減らしている。これは、理論値じゃなくて実験例ですね。  この間も某自治体の長に言ったのですが、その人は、私は五年間で二割減らします、こうおつしゃったから、私は、産業界は三年間で三割減らしましたよ、それもかなりの効率化を進めている産業界でそうだ。そして、おもしろいことに、その産業界のトップいわく、それだけ膨大な人間を減らしてかなり業務に支障があったでしようと私が聞いたら、お互いに顔を見合わせて苦笑いして言うのは、大きい声で言えぬけれどもほとんど支障がない、こういうことですね。  ということは、私は自治体の、今言った東京都を例に挙げれば、区ベースで六千人、上に都庁二十万という膨大な数字は、もしこれを三割減らすことが可能だとしたら、大変な金額が浮いてくる。だから、地方法人事業税、約一二%、これは六兆ですね。六兆ですが、私はその半分ぐらい、三兆ぐらいは軽く浮いてくると思いますね。だから、まずこれでやるべきじゃないか。  それから国税の方は、今公共事業費の見直しが言われておりますが、公共事業費四十兆の一割、仮に入札制度その他を見直すというようなことをやれば、まず四兆は浮いてくるでしょうね。その四兆で、国税の三七・五を欧米並みの三五、二・五ぐらいは十分にこれも充当できる金額じゃなかろうか。  細部は私、詰めていませんが、いずれにしろそういった今の行財政改革と公共事業費の見直しとかいうことによって、その財源は消費税を上げなくとも可能ではなかろうかと思います。  もう一つ言えば、さっきの私の、中里さんも同じ意見ですが、長期的にはやはり税のグローバルスタンダードで、税のフラット化ということでいけば、例えば外形標準課税なんかも、私はそれをやれとは言いませんが、場合によっては国境税調整のきく消費税型付加価値税というふうなものでそれに財源を充当するというふうなことも可能ではないかと考えております。  以上です。
  23. 日野市朗

    ○日野委員 民主党の日野でございます。  きょうは、先生方、ありがとうございます。貴重な御意見を伺いました。  それで、中西参考人に伺いたいと思います。  発想としては、今岸田委員が言われたように、ここで企業としての関心の高い個別負担のあり方ということで、これは法人税から始まって、減額しろ、廃止しろ、こういうのがずっと続くわけですね。これは、今までも経済界の一貫した姿勢としてこういうものは見られるというふうに思っております。私としては、やはり経済界というのは、非常に政治に対しても強い影響力を持つ、日本の非常に重要な部分でございますから、余り軽々におっしゃっていただくと実は困るのだと思うのですよ。例えば、今、新日鉄が何ぼ減らした、日本鋼管が何ぼ減らしたというような話もずっと出ておりますが、我々そういうことも十分考えに入れながら、それでは労働の移動をどうするのだということなんかも真剣に考えながら取り組んでいるつもりでございます。  それはさておき、それでまず一つ、三分だけですから法人税についての問題意識をちょっとお話ししたいというふうに思います。  先ほど、法人税が高いので、確かに安いとは言いません、ほぼ半分でございますからね、空洞化が起きるのだ、こういうふうなおっしゃり方をなすっておられるわけですね。これは経済界の方は皆そうおっしゃる。しかし、実際に、じゃ海外に生産拠点を移した企業、どういうメリットを求めて生産拠点を移しているかというと、実は税金というのはずっと後ろの方に出てくるのですよ。順番からいけば、まずコスト問題なのですね。コスト問題、規制の問題、それから日本の経済界における業界のかた苦しさみたいなものとか、それがずっとありまして海外に生産拠点を移している。  それから日本に対する直接投資が少ないというのは、これは確かに税金のこともあるのだろうなと私は思います、調査の結果では税金の方が比較的先に出てきておりますから。ただ、そこでもやはり規制の問題とか日本における業界の窮屈さとか、そういったものも十分これは考えなくちゃいかぬのだというふうに思いますね。  それで、私は、やはり法人税が高過ぎるかどうかは別として、高いことは否定はいたしませんで、それを引き下げるとすれば、これは課税ベースを広げなくちゃいかぬ、こう思いますね。  そもそも、日本のこういう法人税の率が高くなったのは、朝鮮戦争のころに、日本の法人がどんどんもうかる、企業がもうかることによって税率を上げるということになったときに、その見合いで、いろいろな引当金とか準備金が設けられたのだというような話を最近私知ったわけです。ここいらは、税率も下げろ、課税ベースを広げるのもどうかということは、やはり税金という形で国家に対する貢献ということも必要なことでございますから、これは私は、やはり課税ベースを広げる、そして税率を下げるという考え方というのは合理的なものだ、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、私、気になってしようがないのは、日本における株の配当の少なさなんですよ。これをもっと広げませんと日本の株の取引も活発化しないでありましょうし、それから税制上も健全性を欠いてくるというふうに思うのですが、経済界の代表と言っては恐縮でございますが、そういう立場に身を置いておられる参考人として、どう考えておられるか。
  24. 中西真彦

    中西参考人 三つほどポイントがございましたが、一つは、私が申し上げたもろもろの減税財源。  まず行財政改革、もう一つ言えばリストラですね。国、地方も含めて思い切ったリストラをやってそこに財源を求めるべしということを申し上げたら、雇用をどうするのだ、こういう御意見でございますが、これは当然、雇用問題は出てくると思いますね。だけれども、私は、産業が活性化すれば、これは広いグローバルな物の見方としては、やはりそういった官庁にお勤めの方々が今度産業界にシフトするということは、非常にグローバルにとらえて、それは十分可能な考えられることである、こう考えております。  対策としては、この間も行政改革委員会で、私は規制緩和のメンバーなんで、この間から二年間かけて労働省と大いにがんがんやりましてやったことがある。今後こういった経済構造改革には大きな人の移動が伴う、だからこの労働需給、移動を原則自由化しなさいということで、今まで労働省が一手に握っておったこの需給調整権を、有料職業紹介にしても、全部民に任せなさいということをやったわけですね。これをネガティブリストで原則自由化しましたから、さっきのインターネットの話じゃないですが、それこそ今会議所でもシミュレーションもやっていますが、九州で求人をしたのが北海道で求職の人とマッチングするということが、今後はもう十分にできるのではないか、もうあと数年もすれば。  そういった対策を講じながら、最近ちょっと円高に振れましたが、円安が意外な経済効果を持っているのですね。話がちょっと長くなって恐縮ですが、かつて宮澤さんが、この構造改革というのは経済がシュリンクしていってすべてデフレに働く、だから経済が非常に不景気なときにそういった構造改革は不可能に近いのじゃないかということを英国のエコノミストも言っているし、私もそう考えるということをテレビでおっしゃった。私もそのときに一緒に出ていたのですが、これはまさに一つの急所をついておるのですが、幸いに今この円安で、予想外に、新聞が書く以上に私どもの周辺では輸出企業がうけに入って、プラントメーカーにしても何にしても、最近百十一円ですから若干ぐあい悪いのですが、百二十円になったとき大変な受注が殺到しているのですね。  したがって、私は、もう一遍百二十円台ぐらいに円は戻してもらいたい、円安にしてもらいたいのですけれども、それは神風だ、この神風が吹いているときに思い切って経済構造改革を、シュリンクに働く経済構造改革をやるべきである。そうすれば、労働問題も大きなひずみを出さないで何とかそこの需給調整ができるのではないか、これが私が考えている一点でございます。  それから、もう一つ、税が重いから日本企業海外に脱出するとか、あるいは海外から来る企業が少ないとかということではないんじゃないか、税の要因は低いんじゃないかということをおっしゃったのですが、これは中小企業庁の国際化実態調査の表で、日野さんもまさにこれを見られたと思うのですが、その中では、「海外展開のきっかけ」の理由として一番大きいのが、やはり「低廉・豊富な労働力の調達」、第二が「現地市場に対する魅力」とかずっと並んでいまして、一、二、三、四、五、六、七、八、これは九番目ぐらいに「国内の税金の負担が大きいため」、こうなっておるのですね。  だから、表を見ますとそういうことですが、私は、実際に、私自身の会社のことを申し上げてミクロ的な話で恐縮ですが、タイのバンコクでも会社をやっておりますし、今度ベトナムのサイゴンでもやります。これはまさにレーバーコストが安いということもありますけれども、やはり税金もばかにならない重みを持っておるわけでございまして、海外展開をしている企業経営者の実感としては、我が国の法人課税は非常に重くて、海外の生産拠点に生産をシフトしていくことが十分その原因においてあり得る、こう私は考えます。  それから、資料で申し上げれば、「外資系企業の動向」として通産省がまとめた資料によりますと、「外資系企業日本における事業活動上の問題点」として、「不動産コストや賃金の高さ」が六九%、これはトップですね。二番目に、「法人税等の税率の高さ」が四五・〇%、こう来ていまして、あと三、四、五、六とずっと並んでいます。  それから、これも通産省の「海外進出企業動向調査」というのがございまして、九五年十二月の調査ですが、これによりますと、日本の立地点としての魅力のない点として一体何と何があるのかということで、「生産人件費の高さ」が一番に来ています。それから二番が「市場の将来性のなさ」が来ています。それから三番目に「税負担の高さ」が来ていますね。それで、あと四、五、六、七、八、九とずっと並んでいます。「ビジネス慣行」の悪さとか、「研究者の人件費の高さ」とかいろいろありますが、税はこの中で三番目に位置しています。  それから、同じく、東京都の「外資系企業における東京進出の魅力と課題」という資料、これは九四年の東京都の資料ですが、これも、「日本ビジネス環境における問題点」としまして、「複雑な流通機構」とか「系列等の排他的慣行」とか「交通混雑」とか「オフィスと空港の距離」が遠過ぎるとか、いろいろあります。いろいろありますが、一番が「行政の煩雑な許認可制」、二番に「高い所得税・法人税」、こう来ています。  ですから、税の負担が必ずしも日本海外企業の進出とか外国企業日本進出に対して余り影響はないのじゃないかという御質問には、やはりそれはあるのではなかろうか、こうお答えしたいと思います。  それから、課税ベースを広げることをやらないのかということで、これは私も全く課税ベースを、去年税調で我々産業人が反対して、レベニュー・ニュートラルの主税局案はよろしくないということでお断りしたというか、そういうふうな意思表示をしたのですが、それは課税ベースを広げることに意味がないという意味ではなくて、課税中立性で、レベニュー・ニュートラルで課税ベースを広げた分だけを引き下げる、実質的な所得減税を、五〇もあるものをかなりの程度思い切って引き下げるということをやってもらわないと、この三、四年が産業界の勝負どころである。そうすると、課税ベースを広げて法人税を一%引き下げたから、もうこれで法人税改革やったよ、仮にそういうことになったのではこれは大変なことになる。だから、やる以上はやはり実質的に競争に大きく貢献するような程度意味合いを持った幅で下げていただかないとどうもよろしくないので、だから、課税ベースを広げることによって、その財源で法人税を引き下げるということも結構です。当然やるべきだ。既に数十年の間、やはり租特なんかはもういろいろやっていますから、タックスエロージョンを起こしていますから、そういうものもあっていいし、課税ベースを広げるということに対して全く私は頭から反対するものではございません。だけれども、やはり実質的な引き下げをやる方法を別途にここでぜひ検討してもらいたいというのが我々の意向でございます。  以上です。
  25. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 新進党の山本幸三です。ありがとうございます。  中里先生に三点お伺いしたいのです。  私は、基本的な認識としては、中里先生のお考えに非常に同意できるような気持ちでおりますが、そこで最初に、第一問が、消費税について、法人税のところは課税ベースの拡大云々があるのですが、消費税課税ベースの拡大についてどういうふうに考えておられるのか。私は、消費税は、おっしゃるように立派な税金ですから、まず課税ベースを拡大する、例外をなくしてしまう、税率を上げる前にそれをやった方がいいのではないか、倍ぐらいの税収が上がるのではないかというふうに思っているのですが、その点についてどういうふうにお考えか、ひとつお伺いをしたいと思います。  それから、二番目の質問は、不良債権問題について、これを本格的に解決する税制上のアイデアは何かないんだろうかということです。今、不良債権問題は、大分片づいてきたと言われていますが、これは私はまやかしの議論で、金融機関のバランスシート上は対応ができているという、形だけはできていますが、本当の不良債権問題というのは、むしろ借りている方の建設、不動産会社のところが、土地が動いて、そこが稼働資産にならない限り解決しないと思っていますので、それができていない。したがって、日本経済は、少々製造業のいいところが円安でよくなったって、どんよりと曇った状況はこれが解決しない限り変わらないと私は思っているのです。  そこで、今、こういう状況だと私は認識しているのです。かつて百億を借りた。その百億の価値の土地を持っていた。ところが、その百億の土地が三十になってしまった。銀行は一生懸命金を返せと口だけで言う。しかし、借りている方から見れば、それは売ったって三十にしかなりませんから、それを銀行に返しても七十の借金が残ってしまうものですから、何もしない。銀行の方は、その債権に対して、日本では間接償却、無税償却を認めてしまったものですから、その分の償却手当てをできるんです。七十について、まさに公的資金、税金を導入した形で間接償却をしてしまう。銀行はもういいとこ取りだけをやっている。しかし、借りている方は何もしない。本来ならば、欧米だったら銀行が乗り込んでいって、何らかの形で処理して動き出すようにしなければいけないのですが、銀行はじっと座っていても利益を得ていますから、しない。  したがって、私はここを思い切ってやるためには、その七十について債権放棄してやって、そこで生じてくる特別利益と寄附金という問題を解決するような税制を考えたらどうかなと思っているのが一つ。もしそれができなければ、銀行に本気でやらざるを得ないようにするために、間接償却の無税償却をやめてしまえ、そのどっちかだというふうに思っているのですが、それについての御意見、あるいはそのほかに何か不良債権問題を解決するためのアイデアがあればお聞かせいただきたい。  それから三番目、トービン・タックスについてですが、さっきちょっと議論があったのですけれども、私も、トービン・タックスというのはよくわからない。本当にトービンがどこで言ったかというのは探してみてもどうもよくわからないのですが、私の理解するところでは、為替市場で投機的な為替取引をやめるためにやったら効果があるとトービンは言っているらしいのです。しかし、為替取引上の一番大きなものは貿易取引ですから、したがって、トービン・タックスという形で、投機的取引だけでとらえるのは無理だ。だから私は、それは貿易上の為替市場を理解していない議論だと思って、意味がないと思っているのですけれども、何か意味があるような実証研究があれば教えていただきたいと思います。
  26. 中里実

    中里参考人 大変に難しい御質問ですけれども、第一点の、消費税税率を上げる前に消費税課税ベースの拡大を考えたらどうかという御指摘でございますけれども、これは多分三%で導入されてから現在までの間に随分なされてきているところだろう。一%当たりの税収が大分拡大してきているのは、消費全体が拡大してきているということもあるんでしょうけれども、執行上、課税ベースが拡大されてきたということも、大きいんだろうと思います。もちろんこれは税制として当たり前のことで、消費税の内部での課税ベースの拡大は課税の公平性の見地からもすべきだろうというふうに考えております。  ただ、その際に、複数税率はできれば入れない方がいいだろうというふうに私は思っております。制度を混乱させるだけで、いろいろなバイアスがかかってしまいますので、できれば単一税率のまま課税ベースを拡大していって、貧しい方には別途税制の外で調整を図るというのが一番温かい、しかもエフィシェントな方法なのではないかというふうに考えております。  不良債権については、大変に難しい問題で、これは基本的にはタックスの問題というよりも金融・証券、金融制度の問題なのでしょうから、私のような専門家でない者があれこれ言うべきではないんだろうとは思いますけれども、例えばアメリカでは引当金というのが原則として存在いたしません。そのかわりに焦げつきの認定というのは緩いということになっております。日本は全く逆、全くかどうかわかりませんが、ある程度逆でございまして、引当金が割と緩目だった、その反面焦げつきの認定というのが非常に厳しいという、何か対照的な扱いになっているんだろうと思います。  それから商法の方の縛りがございまして、金銭債権については、これも私は商法は学生時代に勉強したきりなのでよく覚えていないのですが、部分的に評価を減じていくことはどうもできない、全体的にどんとやるかそのままでいくかということなので、おっしゃるような銀行のいいとこ取りというのがどの程度可能なのか、ちょっと私、実態がわからないので何とも言えないんですけれども、商法からいうとどうもそれは難しそうな気が、タックスの方にも難しそうな気がするのですけれども。ただ、タックスの問題ではないとはいいましても、租税制度全体としてこの種の金融取引に対してどのように、これは大きな問題で、このチャレンジを解決しない限り日本の将来もないのかもしれませんので、考えていくということはあるんだろうと思います。  その際に、私が今注目しておりますのは、証券化、セキュリタイゼーションで、銀行の持っている部分的に不良となった債権、あるいは優良債権でもいいのですが、それをSPC等に移して、特別目的会社等に移して証券化し、その債権にクレジツトデリバティブをつけるというようなことがいいのではないか。仕組み債をつくるわけですね。  例えば、これはごく簡単な例で申しますと、社債が市場利子率五%のところを八%ぐらいの社債を発行する。三%どうして利率が高くなっているかというと、ある種の債権が焦げついたならばその社債も焦げつくというような条件を入れて社債を発行するということで、アメリカではこれは結構なされていることでございます。私が今専ら勉強しているのは、このクレジットデリバティブを組み込んだ仕組み債、ブラスト・ノートとかデモ・ノートとかいろいろなものがアメリカで発行されているわけですが、イギリス、ロンドンでも随分あるようですけれども、それを不良債権問題にどう適用できるかということ。その際に、課税の仕組みをどう適正に行ったらいいかというようなことを勉強しておりますので、その方向で、課税自体の問題ではありませんけれども、深くかかわる問題として、証券化及びクレジットデリバティブ等を通じて一般の投資家に引き受けてもらう。ハイリスク・ハイリターンの商品にはなりますけれども、そういうのがよろしいのではないかというふうに、そうすれば外為で外国に資金が流れ出すことも少しは妨げられるのではないかというふうに思っております。専らこれを勉強しております。  それから、トービン・タックスについては、おっしゃるとおりこれは賛否両論でございまして、トービンの議論、それからサマーズ等が賛成の立場、それから反対の立場の方もいて、今では一般的には、多分トービン・タックスに対しては反対の議論というのが強いのではないか、否定的な見解というのが強いのではないかというふうに思います。  ただ、例えば、途上国の外国為替関係のところでトービン・タックスをどう利用するかというようなことは、国連その他でも議論されているところですし、日本は途上国ではもちろんございませんけれども、補完税として、特に執行の問題に対応するために、バブルを冷やすということは付随的な効果、今はバブルどころではありませんから、そちらはちょっと置いておいて、執行の問題に対応するための補完税として、税率はもちろん余り高くはできないとは思うんですが、置いておくこと自体は、これは、古い税はいい税金であるという格言が我々の世界でございまして、昔からの税金にはそれなりの理由があって、ミクロ経済学的にそれが誤りかどうかわかりませんけれども、法律学者として見れば、いろいろな税金を組み合わせて、実態に合ったように穴をふさいでいくというのが常識的なところかな、そういう意味で申し上げさせていただきました。今後勉強していきたいと思います。
  27. 栗本慎一郎

    ○栗本委員 自民党の栗本慎一郎でございます。  お三方の先生、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  私は、少し細かいというか、具体的なことに関しまして、特に相続税、それから事業承継にかかわる問題、青色申告について余りお話しになられませんでしたが、そのあたりにつきまして中西参考人に、それから問題を移しまして、少し大きな、課税ベース全体の拡大というか、景気浮揚と税とのかかわり、そういったことについても御意見があれば賜りたいということでお聞きしたいと思うんです。  まずその前に、この間ずっと国会でも外でも税についての議論をしてまいりまして、両方に参加させていただきましたが、こういうまとめができると思うんです。  一つは、税自身についての効果がどうなっているのかということと、それに対して大体、例えばその税は撤廃できないというふうな場合には、財源問題というのが出てくる。効果については、例えば、今法人課税についてのお話、土地税制についてのお話がございました。余りに高過ぎるために空洞化するんだというふうな形になっておりますし、土地税制に関しては、資産デフレを克服するために、土地の流動化、不動産の流動化を獲得するために土地税制の緩和はぜひとも必要なんだ、こういうふうな議論があるかと思います。  それは、一つ筋の通ったものでありますし、また、特に法人税も土地税制も、諸国との比較において、ちょっとやそっとじゃなくてかなり大きく高いというふうなことの中であれば、当然そういう効果も、すなわち空洞化とかいった問題も出てくると思うんですけれども、他方でまた、財源論の方は、またこれは余りにも現実に即し過ぎました議論であって、ある意味では説得性が非常にある、ある意味では全然ない、裏返しでどちらをとるかによって決まってしまう。  例えば、今度、平成十二年に特別地方消費税の撤廃がようやく決まりましたが、我が自民党内部でほとんどいすを投げ合うような議論があったわけですけれども、二つ別のことを言っている。これは、全く一般の消費税があるのに二重課税ではないか。それから、旅館その他日本の国内の観光業にかかわる部分の圧迫になるんだというふうなこと。他方では、財源がない。金がないから残していく。だから、もうこの一つの点をとっても、堂々と、理論的にあり得ない税金が、金がないからやっているんだというふうな格好になっている。この場合には、ほかから財源を直接持ってこいとはさすがに言えないために、結局撤廃という形になっていったと思うんですけれども、この議論、効果か財源かという議論のほかに、もっと別のことがあるんじゃないか。  翻って考えますと、経済学の方でありますけれども、効果論というのは有効需要拡大によって、TVAなんという、テネシーバレー、テネシー渓谷開発公社なんという、私はテネシー州に住んでおりましたが、ほとんど皆さん現場に行ったことはないと思います。まだありますけれども、これによってアメリカの経済が回復して、まだ教科書に書いてあります、私は従軍慰安婦問題よりもこれは重大なうそだと思っているんですが。ところが、これに対して、そうじゃなくて、マネーサプライが非常にあるときには景気が回復したのであって、いかにTVA的なことをやったって、マネーサプライが拡大しない限りにおいては全然失敗しているじゃないか、リンクはマネーサプライの方とやるんだというふうなことがある。これはシカゴ学派の基本的な議論でありまして、それは結果的に正しいんですが、ただし、なぜマネーサプライがあると景気が浮揚するのか。これについては十分というより全然詰められていない。私は、お金がたくさんあるとみんなが元気になるんだというふうなことを半分まじめで言っております。シンボリックな効果というのはあるんだというふうに思うんですね。  そうすると、あと一般的な御質問の方から先にしてしまいますが、税金の問題で、例えば、私は教育減税というようなものをもう少し、もう少しというよりもっと大きくしていくべきである。確かに、教育減税分をすれば一ああ、もう三分経過しそうでありまして、すぐ質問に移ります。短いですね、三分は。まことに申しわけございません。別のところで返ってくる。もちろんそれが直接学校の収入になって、やや税率が少ないですけれども、それが税になって戻ってくるということもあるけれども、そういったことよりも、社会全体の活性化を促すための税制、税の効果といったようなものがもっと十分議論されていいんじゃないか。この税があるからこうなるという効果論は逆にされ過ぎているんじゃないかと思っておりまして、そのあたりについて、もし御意見があれば、どちらの先生からでもお伺いしたい。  それで、もう三分過ぎましたので、中西先生に改めて、中西参考人よろしゅうございますか。  事業承継のための相続税ということをおっしゃられましたが、つづめて申し上げます。これは、私は、都市において、商業と工業においてかなり実態が違ってくるんじゃないか。それから、事業承継のための税制というのは相続税中心でいいのか。例えば都市の商店街が非常にくしの歯が欠けるように欠けていっているんですけれども、もちろん相続税が安ければそれにまさるものはないんですけれども、商業と工業とのかかわり、事業承継税制についてどの程度ということをお考えであれば、それをぜひお聞きしたいということであります。  青色申告に関しましては、じゃ、割愛いたします。その点をぜひお教えください。失礼しました。
  28. 中西真彦

    中西参考人 相続税の問題は、今御指摘のように、我々も日ごろ言っていることですが、個人資産の相続時に、富の平均化のために持てる者からそれを取り上げて国家がそれを再配分する、その意義は相続税には、私は大いにあると思うんです。中小企業の場合は、さっきも触れましたが、経営者は個人のオーナーがほとんどでございますから、個人所得税と企業の法人税との関係が非常にあいまいなところがいろいろございまして、その辺を整理する必要があるんでしょうが、いずれにしろ、事業を承継していく上で、個人資産が大幅にそこで持っていかれるということは、小さな工業の町工場で言えば、その工場をたたき売らないと次世代が工場の運営ができないというふうな事態も起こっておるわけでございます。  そういう意味で、今法定相続人の割合が、八百万以下一〇%から始まって、二十億を超えると七〇%持っていかれるということですが、この辺は、例えば農業ですと、農業を存続する限り相続税はかからないですね。ゴーイングコンサーンで見ているわけです。ですから、産業も、今まさに中小企業の存続こそ非常に大事な課題ですから、この辺の税率を下げていただくことが非常に大事であるということですね。  その場合に、評価の仕方ですが、土地は現在その土地の資産価格で評価されるとこれは非常に高いものになって、これまた大変で、商店でも、その商店をたたき売らないとまたこれは存続できない。これはやはり収益価格還元方式で、二十坪なら二十坪の土地でどれだけの収益を上げているかということで価値を評価していただくということをぜひやってほしいということをお願いします。  それから、取引相場のない株式の評価方法の改善という問題も申し入れておりまして、これは類似業種比準方式と純資産の価額方式とあるわけです。大会社の場合は類似業種比準方式と純資産価額方式の選択可能な形になっているわけですが、小会社の場合も両方で見れるような形にぜひしてもらいたいということ。類似業種比準方式は、御案内のように、複数の上場会社から成る類似業種の株価をもととして、評価対象会社と類似業種の一株当たりの配当金額、利益金額、純資産金額の比準割合を乗じて、その七〇%相当額で評価する、こうなっておるわけですが、この辺も、もう少しこの下限を、減額率を五〇%以上にする必要があるのじゃないか、こう考えております。
  29. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  竹内先生の出番が余りないようですので、竹内先生にお願いをしたいのですが、我が党は納税者番号制度の早期導入ということを今までも主張してきているのですけれども、ことし一月、年金番号制度が導入されました。御案内のとおりに、これは、住所、氏名、性別、生年月日はもちろんのこと、所得や勤務先など、すべて必要なものはインプットされているわけですが、納番制を導入するに当たって、やはりプライバシーの保護というものや情報の流出等々、導入するにはまだ早計だというような視点があるようでございます。そして、納税者番号制度を取り入れたときにいかに租税回避行為が出てくるのかというような問題点があるということは私もわかっているわけですが、例えば、逃げ足の速い金融資産等々について総合課税をすべきかどうか。先生のこのレジュメの中にも、「総合課税化の可能性」というふうに出ているわけですが。または租税回避行為を誘発しない水準での分離課税を設定して、課税最低限も機能する、そしてその枠内における累進税率の適用を図った方がいいのか等々、税法上の問題もやはり含んでいるというふうに思うのですが、この納番制についての導入の方法と、その課題といいますか、解消しなければならないことはどんなことなのか、お聞かせいただければ幸いだというふうに思います。
  30. 竹内佐和子

    竹内参考人 まず、今前半でおっしゃった納税者番号の話と、それから後半におっしゃった逃げ足の速い課税の問題というのとは性格がやや違うと思いまして、その意味では二つのアプローチが最終的に必要になるのではないかと思っております。  納税者番号ないしは年金番号によって何かプライバシーに非常に大きな侵害が出るのではないかということと、もう一つは、納税者側にとって、例えば年金番号を使って、何らかの番号を使って納税することによるメリットというのは何なのかという二つの判断が必要になってくるんだと思うのですね。  つまり、銀行にある口座が、例えば私が何を消費したかということが一般に出るということは今のところはないわけで、それと同じように、だれがいわゆる保護義務を負っているかということがまず第一前提にはなるとは思うのですね、情報の保護義務というかそういうことについて。今、特に、納税額がどこかに漏れるということを想定していらっしゃるわけですよね、幾ら納めたかということを。アメリカでも同じような議論があって、納税額がわかるとすべての所得がわかってしまうので、それが何らかの形で悪用されるというような問題もあると思うのですが、少なくともその保護義務をきちっとするという前提があれば一つ進めるのじゃないかなというふうに思っているのです。  それから、もう一つは、納税者番号によるメリットというのは非常に大きいというように私は思っております、個人的な見解ですけれども。今のように、去年払った税金、それからことし払った税金、毎年毎年重なっていくわけですよね。そうすると、自分が通算で税金を幾ら払って、社会保険料を幾ら払ったのか、それをきちっと遡及できる方法というのは、納税者側にとってやはり非常に大きなメリットがあると思うのです。つまり、自分の資産を管理する上で、幾ら払ったものがどういう形で自分に返ってくるかということが非常に重要なポイントになってくるわけで、今は、ほとんどの人が、生命保険も社会保険料も幾ら払ったかほとんど覚えていないというようなケースもあるわけですね。  つまり、自分の払った税金というものが本当に幾らだったのかということが、ある面ではっきりとしていないところがあるわけです。自分が納税者としてそういうものを幾ら納めたということをきちっと自覚するというのは、やはり非常に重要なことだと思うのです。そういうことを通じてしか、中西先生もおっしゃったような行政サービスの質とかむだとか、そういう問題をきちっと解決していく方法がないのではないか。  つまり、納税者がみずからチェックするような形で納税者意識というものをきちっとつくっていかないと、例えば国会だけが行政サービスをチェックするというのはほとんど不可能に近い。やはり最終的には、住民あるいは市民参加の形で、あるいは納税者参加の形でやっていくにはこれがいいんじゃないかと思うのです。  最近は、よく、住んでいる場所もどんどん変わりますし、外国に行ったり日本に行ったり、いろいろなところに行っているわけなので、この納税者番号がないと、私なんか、名前が変わったり住所が変わったりいろいろなことをしますと、役所の方もだれが納めたかわからない。わからないわけじゃないのですけれども、最終的にはわかるのですけれども、わからないことがあるのですね。がらがら変わると同じ人物だということがよくわからなくなってしまう。  そういうふうなケースもあって、やはり私は、自分の納税者番号を持っているとすごく便利だなと、IDのような形で本人確認としてこれを使えるということによって、自分のいろいろな資産もチェックし、それからトータルに自分が幾ら税金を納めたかということを知るということについて、私の年代のビジネスマンの中でもかなりフェーバーな意見が多いわけなので、やはりそういうメリットの面というのももう一回検討すべきではないかなと思います。  それから、もう一つ、先ほどの足の速い所得に関しては、こういうふうな一般的な問題とは別に、投資家としての何か別のプライバシーの保護の制度みたいなものが必要なのではないかな。いわゆる投資家番号でもいいのですけれども、投資家が幾らどういうふうな形で納めたか、あるいはお金を動かしたかということを含めて、何らかの、もっと箱を小さくした形でのプライバシーのルールないしは登録制度みたいなものを考えるという二段階の構えが必要なのではないかと思います。
  31. 滝実

    ○滝委員 三分間でございますので質問は簡単に申し上げますので、お三方にそれぞれお願いをいたします。  おくれましたけれども、私は、自由民主党の滝実でございます。よろしくお願いいたします。  まず、竹内参考人に御意見をお聞かせいただきたいのは、今の、レジュメの「納税者番号との関連」でございます。  金融自由化ということになりますと、やはり納税者番号というものはどうしても必要じゃないかな、こういう感じもするのでございますけれども、その際に、例えば海外銀行に円建て預金を設定して、それで海外でショッピングをやって、そこで払ってしまうというようなことになりますと、納税者番号を設定しても、そういうようなことについて税として把握していくことが可能なのかどうか、その辺のところをどうお考えになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。  それから、中里参考人にただいまの御意見に関連してお尋ねしたいのでございますけれども、納税者番号に関連しての竹内参考人の御意見でございました。私も、プライバシーの保護ということを余りにも言うものですから、例えば、幾ら税金を納めているということを秘密にしなきゃならぬというムードが社会的にかなり蔓延しているのじゃないだろうかな、一方、考えれば、それは特に秘密にしなければならぬことだろうかなという感じも実はするわけでございます。余り新聞に堂々と発表されるのは、税金の額が少なかったら恥ずかしいとか、多かったらいろいろ言われるとか、いろいろ問題があるのだろうと思うのでございますけれども、法律家の立場として、その程度のことはむしろ漏えいしても構わないんじゃないだろうかなというような議論は法律家の中ではないのかどうか。その辺のところの御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。  それから、中西参考人にお伺いしたいのでございますけれども、これは大変個人的なことで恐縮なんでございますけれども、先ほどの御意見の中で、ベトナムとかそういうところにも中西参考人のお持ちの、関係している企業が進出している、こういうような御意見がございましたけれども、その際に、二つのことをお尋ねしたいのでございます。  一つは、海外進出される場合に、例えばベトナムならベトナムの税が日本に比べると法人関係では低い、こういうことも一つの材料になったと思うのでございますけれども、その場合に、ベトナムの税が果たして今後とも未来永劫に日本法人課税と比べて低いというようなことを前提にして進出されているのか、多少は上がっても採算が合うというふうにお考えになって進出しているのか。これが第一点です。  もう一点は、日本法人課税は高い、したがって一部はベトナムにも進出されるんだ、こういうようにも聞かせていただいているわけでございますけれども、その際に、それじゃ、日本の現在の法人課税では中西参考人の関係している企業が成り立たない、そういうような危惧を持って高いとおっしゃっているのかどうか、その辺のところ。  二つの点について、またがって恐縮ですけれども、中西参考人の関係する企業に関連して御意見をお聞かせいただけたらありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  32. 竹内佐和子

    竹内参考人 先ほどの話とも関係があるのですが、特に総合課税といかなくても、投資関係に関してはやはり納税者番号に近い制度というものが必要なんです。先ほどおっしゃったように、海外に出ていってしまったものはどうするというお話なんですが、海外金融当局というのはほとんど関知しないと思います。その場合に、本人が非居住者だというふうに御自身が考えている場合には、絶対に日本の課税方式で、投資関係に関しては一括した税の方式が大切だというのは、これはもうルールとして出すしかないと思いますね、申告して。ただ、それ以上のいわゆる総合課税化というんですか、いわゆる給与とどういうふうに合算するかということについて、そこまで広げるとやはりかなり難しくなってくるので、まず投資関係だけについてはきちっとした総合課税化という、そこの部分に関しての一括した課税の考え方というのをまずきちっとするということで対応できるんじゃないかなと思います。
  33. 中里実

    中里参考人 悪いことをしている方はプライバシーを守りたがるんだろうと思います。しかし、悪いことをしてなくても、余り何もかも根掘り葉掘り人に知られたくないというのはやはりだれでもこれは持っていることでございまして、法律論としてプライバシーはどうでもいい──どうでもいいというのか、少し緩めてもいいじゃないかというような議論は、法律家であったら多分しないであろうというふうに思われます。それくらい大切なことだと思います。  ただ一つだけ、納税との関連で言うならば、憲法三十条がございまして、これは納税の義務という日本国憲法下の国民の三大義務の一つが入っているわけですよね。義務を履行する際の権利の行使だという点が多少ほかとは違うかなという気はいたしますので、プライバシーと言えないようなものについては、おっしゃるとおり、少し国家の情報管理があってもしかるべきだと思いますが、例えば子供が何人いるかとか奥さんの年齢がどうだとか、そういうことは本当ならば秘密にしておきたい方もいらっしゃるでしょうからということでございましょう。ただ、納税者の方で自発的に明かしたいというのであれば、その限りでということはあり得るんだろうと思います。  それもこれも累進税率のもとで所得に課税しようと思うから、申告納税制度、プライバシーというような問題が起こってくるので、消費税さえきちっとしていればそういうことは起こらない。消費税は、プライバシー保護のためにも大変いい税金だというふうに思っております、これは余計なことですが。
  34. 中西真彦

    中西参考人 お答えします。  まず、タイあるいはベトナムに私ども工場を進出したわけですが、その第一要因は、やはりレーバーコストが断トツで違うということですね。今ベトナムですと、うちの現場の班長と称する某氏の給料で大体ブルーカラー、ワーカーが五、六十人雇えます。それぐらいの差ですね。タイは、年率物すごい勢いで今、インフレで賃金が上がっていますから、もう日ならずしてこれはちょっと競争力を喪失してくるんじゃないかという感じがしますが、ベトナムはそういうことですね。  税金が高いか安いか。これは、タイは御案内のように三〇%台そこそこですから、利益が出て、払う段になって、日本と比べるとはるかに安いという実感がありますね。  それから、ベトナムは、正確に申し上げますとまだ現地法人として設立しているわけではございませんで、相手の郡がやっている会社と預託生産方式でジョイントして生産預託をしているのですね。ですから、私どもに直接、税の関係は今のところないわけですが、御指摘のように共産主義国家ですから、そういうのが未来永劫、その税制がいつまでもつのか。大体、社会の枠組みがどういう状態でいつまで続くのかということは、甚だ不安定であるというふうに私は見ております。私は、中国といえども不安定である、こういう見方をしておりまして、中国にも南京に合弁会社をつくっていますが、これはもし一たん緩急のときは捨てていいという程度の輸出しか我々のような弱小企業はできない、こう考えております。  それから、国内のおまえの企業で、一体、税が高い実感があるのか、安いのかということ。これはもう、一発で高いと言わざるを得ない。まして今、構造転換は、大会社も小会社も大変な命題なんですね。  ちなみに、私、二年前に日立製作所のトップと会って話をした。御存じのように、日立製作所は重電の日立と言われたのですね。ところが、「もんじゅ」の事件が起こり、また今度東海村が起こり、巻町で拒否を受け、日立の首脳部は、もう日本に原発という字はない、もう自分たちは割り切っている。そこで、日立が飯を食うためには、重電の日立を捨てて、電子・情報通信産業分野へ向こう五、六年で数兆の投資をします、こういうことを言ってましたわ。それで、現にそれをやっておられるのですね、今。  これは、やはりそれだけ財政が豊かでなければできませんね。利潤が出まして、それを税金で全部持っていかれ、要するに留保できなければ、それが再投資に回るわけですから、税金というのは取られたっていいじゃないかというような性質のものじゃなくて、ゴーイングコンサーンの企業にとって再投資に重要な影響を及ぼすものです。こういう構造転換をやるときは、日立に限らず私どもも、今までの既成分野は縮小したりリストラしまして、それで新しいハイテクの分野を今どんどん研究開発して立ち上げているんですね。それで、在来のものはそういうふうにベトナムとかなんかに持っていっているわけですよ。そうすると、新しい事業部門というのは研究開発から始めまして、最初はひたすら投資ですよ。ほとんどリターンのない費用の流出が続くんですね。ですから、これは体力がないとだめなんですわ。その体力が税金でみんな持っていかれれば、体力はたまりません。ですから、私は、日本産業界の構造転換のためにはぜひとも法人税の減税が必要である、こう申し上げたい。
  35. 中野清

    ○中野(清)委員 新進党の中野でございます。  中西参考人にお伺いします。  先ほど、企業としてのいろいろな要求が多過ぎるというお話がございましたけれども、私も会議所の議員をやっていまして、ぜひこれから勇気を持って物を言ってもらいたいとまずお願いします。  三点だけお伺いします。  一点は、今の税務、徴収制度について、非常に細か過ぎる。税理士もわからないというのがいっぱいあるわけです。これについては、現場の声として、下手をするとわかった人しかもうからない、わからないのは自分が悪いんだというふうな今の業態ですから、それについてどう考えるかが一点。  それからもう一点は、先ほどもちょっとおっしゃいましたけれども、日商でも、平成九年度に実効税率を四〇%台に下げてもらいたいという要望が出ておりますね。やはりおっしゃるとおりで、これからの問題として、今の税制企業にとって資本の蓄積を認めないというふうに私は思っております。これについてどうお考えか。特に、中小企業にとっては、留保金課税なんて、そんなことはとんでもない話なんですよ。それを平気で残しているということについては、二点目としてお考えを伺いたいと思います。  三点目としまして、先ほど相続の話がございました。  私たちは、相続についてはこう考えているのですよ。今、相続破綻という言葉が町で一般に通っているのです。これは、相続税によって事業が続けられないというのが現状なんです。  私は、実は、日商さんの平成八年、去年とそれから平成五年のいわゆる「事業継承円滑化のための税制措置に関する要望」というのを持っておりまして、見させてもらいますと、この三年間全然変わっていない。同じ要望が出ておるのですよ、はっきり申し上げて。これについてどのようにお考えになっていらっしゃるか。  それから、先ほどは一つの例として、相続税の最高税率を、七〇%とかこんなのじゃなくて、下げてもらいたい、五〇%にしてもらいたいという御要望がありましたね。そのほかにもいっぱいありますね。例えば、株式の評価に当たっては清算価値じゃなくて収益還元方式にしてくれとか、いわゆる株の評価についてだって、類似比準方式と純資産方式の選択を認めろとか、減額率も三〇から五〇%にしろというような話とか、それから、例えば一番の相続の原資としては、いわゆる死亡保険金とか退職金というのが相続税の原資になるのですよ。それについては、今五百万だけれどもこれを一千万にしろとか、贈与税について言えば、例えばこれはもう二十二年間、昭和五十年から六十万円というのが二十二年間続いているわけですね。これを百五十万にしろと要望をしておりますけれども、どうかそういう具体的なものについても、現場の声として、中西参考人さんがお感じになっていることについてお話し願いたいと思います。
  36. 中西真彦

    中西参考人 随分たくさんのことをおっしゃいましたので、ちょっと答えられるかどうかあれなんですが。さっきから、ほかの委員の方から御質問のあったことで、大体今の御質問で既にお答えしている点もあると思うのですね。  相続に関しては、御指摘のように、これは企業を存続させなければいかぬわけですから、相続税を払うために破産、まさに破産というか、企業継続がそこでストップするという事態が頻発しておりますね。特に、都市の非常に土地の上がったところを単なる清算価値としての土地の資産価値で評価されたら、これはもうたまりません。  例えば、ちょっとした八百屋を二、三十坪でやっていたとする。しかし、そこの土地の清算価値、土地の資産価値はえらい高いものを出しますから、それはとても八百屋でそんなものを払い切れません。やはりその高い土地を売らないとそれは払えないわけですから、結局そこで商店がアウトするということですから、これは当然そんな清算価値ではなくてやはり収益価格還元方式で、その八百屋が一カ月にどれだけの利潤を上げたかということに見合って、それを評価して相続税を判定するというふうなことをしてもらわぬといかぬではないか。昔もそうだったようですね、江戸期。私は、ちょっとその辺詳しく、学者ではございませんのでわかりませんが、そうだったようですから、やはりそういうふうな仕組みに変えるべきではないかと思います。  それから、株式の方も、これはさっきも申し上げたのですが、大企業は類似業種比準方式と純資産価格方式の選択適用ができるのですが、中小企業はできないのですね。ごれはやはり全分野認めるべきではないか。そうしてやることが大事だし、減額率も五〇以上、ずっと上げてやるということを、当然今後とも我々は要求を続けていきたいと思っています。  それから、相続税問題は、日商、東商合同の委員会をつくりまして、もう十年来のみんなの悲願なんですね。幾ら提言してもさっぱり効果がないものだから、これではちょっといかぬな、ほかの方法を考えなければいかぬなと、今実は寄り寄り議論をしているぐらいの切実感は皆さん持っておられます。それが一つですね。  それと、もう一つは何でございましたか……(中野(清)委員「同族会社の留保金」と呼ぶ)留保金は、今軽減税率が二八%になっておるのですが、やはり留保金ももっと零細なところは優遇をしてやらなければいかぬじゃないかと思います。  また、消費税なんかも、免税点業者、売り上げ三千万、これはどうも高いんじゃないか。これが相当の数になっていますから、やはり消費者サイドに立たれる方が免税業者で税を取らぬというのはおかしいという意見があって、もう少し免税点を下げろという意見があるのですが、三千万の売り上げということは、大体収益が三百万そこそこなんですね。そうすると、三百万ということは、もう本当のサラリーマンのそれこそロークラスの収益で、大体父ちゃん母ちゃんクラスの、従業員二人ないし三人程度の、たばこ屋であり八百屋であり、そのクラスなんですね。だから、これは免税点を下げるのはいかがなものか。  そもそも、そのクラス、収益ウン百万以下にはそういった税の申告の免除もあるようなことですから、私は、税の原則はやはり公平、中立に簡素があるわけですから、今度、この消費税には帳簿方式に加えて領収書ですか、これを添付という、ちょっと煩雑になるのですけれども、やはりこれはなるたけ簡素にしてやらぬと、二人や三人の父ちゃん母ちゃんがとてもそういう税務処理はできない。  税理士に頼めばいいじゃないかというけれども、税理士を頼むと大体四、五十万かかるのですね、年間お願いすると。そうすると、三、四百万の収入しかないのに四十万も税理士に費用を払っていたのでは、これまたアウトになるわけであって、御指摘の税の簡素ということも、中小企業サイドの団体としては今後とも強く求めていきたい、こう思っています。
  37. 尾身幸次

    ○尾身委員 自民党の尾身幸次でございます。  先ほどから大変参考になるお話を伺っておりますが、中西参考人中里参考人、お二人に同じ質問をさせていただきたいと思います。  直間比率の見直しというのは、私は税の方向としては非常に正しい方向だと思っております。現在、私どもが税制を考えるときの政治の課題は何かということを考えますと、橋本内閣の六つの改革と言われておりますが、結局その意味は、バブルの後落ち込んだ日本経済の体質を強化する、あるいは体質を変えるといいますか、そういうこと、そして、もう一遍国際的な観点から見ても経済の面で強い日本にする、それが一つと、それから財政を再建する、二つの目的だろうと私は考えております。  そういうときに、先ほどからお話に出ております経済構造改革ということで、規制緩和とかあるいは物流の改善とかエネルギーコストとかそういうこともやらなければなりませんが、税の面で見ると、大きく考えて二つのことをやらなければいけないんじゃないか。  一つは、企業がイコールフッティングで外国にある企業活動をやっている企業と競争できるような条件を整える、つまり法人税の減税をしたり、連結納税制度を組み込んだり、そういうことをする必要があると思います。そして、企業企業活動の根拠としてこの日本という国を選ぶような、そういう経済の体質に変えていかなければいけないと考えているわけであります。  それからもう一つは、これが質問のポイントなのでありますが、実は日本経済が本格的に回復して将来税収がふえるかどうかのポイントは、不良債権の処理がきっちりとできるかどうかということに私はかかっていると思います。製造業の方はやや立ち上がってきておりますし、景気も回復過程に入っていますけれども、今しこりになっている不良債権問題が、銀行の帳簿処理上は解決しても、これが解決しなければいけない。  そういう意味からいうと、土地保有課税の緩和、例えば固定資産税とか地価税とかを、地価税はゼロ税率にする、固定資産税はさらに下げるということをやらなければいけないと思いますし、それから、流動性を高めるために、譲渡益課税の抜本的な緩和といいますか、引き下げをしていかないといけない。これによって経済の活性化を図ることが、少なくとも当面の政治の面における税制上の最大の問題だというふうに考えているわけでございますが、この点についてお二方の御意見を伺いたいと思います。
  38. 中里実

    中里参考人 財政再建と経済体質の強化を同時に果たさなければいけないというところにジレンマがあるんだろうというふうに思います。  ただ、同時に高齢化も進展してきているわけでございまして、経済体質強化のために税金を悪者にするというのは、必ずしも納得──私、税金で飯を食っておりますので、納得しにくいということです。  税金というのは、企業を痛めるために、それを目的としてかけているわけじゃございませんで、税収を得るためにかけているわけでございまして、税収が必要であれば税収を得なきゃいけない、それが最初に来るべき、少なくとも私の立場からはそうであると。もちろん、産業政策等を考える方からは別の考え方になるんだろうと思いますが、それが先だと思います。そのために納税の義務も憲法に入っている。そうすると、財政再建を図りつつ、なるたけその中で経済体質の強化も同時に図れるようなという順序になってくるのではないかと思います。  経済体質強化のために課税を規制であるかのごとく考えて、税金を軽くすれば世の中何でもうまくなっていくというような、税金を好きな人はだれもいませんから、そういうような昔流のケインジアン的な時代おくれの経済学は今やもうどうしようもない、腐っているんじゃないか、そういうふうに考えております。  結局、これは政策問題ですから、私のような学者はそういうふうに答えざるを得ないわけで、あとは国会の場で、これはさまざまな利害調整の中で政策的にその両者のバランスを判断していただけばいいわけでございまして、学者が理屈で言うとそういうことになるんだろうと思います。  それから不良債権の問題も、これは、税制の問題というのはそれとは一たんは切り離された問題でございまして、そちらの金融行政等の話として解決すべきことでございまして、だから、そのために税制をゆがめるというようなことがあるというのは、これは、少なくとも学者の理屈からいうとあってはいけないことでございます。政策目的として税制を使う際の判断というのは、もうこれは学問的な理屈ではありませんので、国会で決めることでしょうから、そちらで先生方がいろいろなジレンマの中で十分なさっていらっしゃることだろうと思いますが、租税法を専門にしている人間からいえば、憲法三十条は重い。できる限り税制というのはクリアで、あっちが困ったからまけるとか、こっちが困ったからまけるというような融通無碍なものであってはいけない、そして、高齢化に備えてみんなで痛みを分かち合うというところがなければいけないんじゃないかなと、きれいごとですけれども、そのように思っております。
  39. 中西真彦

    中西参考人 尾身委員の御指摘のように、私も冒頭の陳述で申し上げましたが、やはり経済の活性化こそ、今この日本の構造改革の中でプライオリティーとしては最優先課題であるというふうに考えておりますが、その活性化の中の一つの大きなポイントは、やはり不良債権の処理のおくれということは確かにあると思いますね。  これは、都銀やその他が抱えておる膨大な不良債権もさりながら、中小企業押しなべて皆資産があるわけですね、工場その他。これが全部バブル期よりも、一気にこのバブルがはじけまして土地の価格が資産デフレで下がりましたから、銀行に対する担保価値が激減したんですね。銀行はそこで非常に貸し渋りを今やっておる、やらざるを得ない状況になっておる。そこへもってきて、御案内でしょうが、今度の早期是正措置というのが金融界に取り入れられまして、これが非常に厳しい形で入ってくることになる。  どういうことかというと、財務内容を厳しくチェックするわけですから、当然、弱体銀行としては資産の圧縮をやらざるを得ない。資産の圧縮とは貸し出しを締めるということですね。ですから、二重の意味銀行は貸し出しを締めるし、今現に締めつつある。  最近の景気の浮揚の、在来の景気浮揚時と大いに異なるところは、これは日銀もそういう発表をしています、経済企画庁もやっていますが、最初、景気浮揚のときに投資は中小企業が先行型でまず出てきたというのが在来のパターンのようですが、今回は出てこないというんですね。それは一にかかって今のようなことで、まさに資産デフレで担保価値が下がった、そこに、借りようにも弱小ほど借りられないという理由が大いにあるわけであって、やはり私は、この資産デフレはもうこの辺でとめるべきだと。決して日本の土地が──もうバブルのときは、ロンドンもニューヨークも欧米の主要都市も皆上がったようですね。だけれどもそれなりに落ち着いてきて、日本もある程度落ち着いてきているので、これ以上の資産デフレはやはりよろしくないんじゃないか。それをとめるには、やはり土地の税制というものが大きくあずかって力があると思いますので、地価税なんかは──尾原審議官おられますが、地価税で入ってくる税金の金額はたかだか今数千億ですか……(発言する者あり)そうですね、千数百億、二千億を切っておるというほんのわずかなものですね。しかし、土地の流動化、活性化という視点からいくと、その二千億がやはり資産デフレに行こうとする大きな流れをせきとめておることになっておるわけで、私はこの地価税なんかは大いに撤廃していただきたいと思いますし、譲渡益課税も当然廃止して、そして、土地の活性化を促して資産のこれ以上の下落をとめることが経済の再浮上に重要なポイントであるということでは、尾身委員と同じ意見でございます。
  40. 江口一雄

    ○江口委員 自民党の江口です。  竹内、中里参考人に一点だけちょっとお伺いしたいんですが、御承知のように、税は国家の根源でございますから、現在、私は、日本の国あるいはまた日本の政治経済も静かな革命が行われているんじゃないか、こう受けとめております。  規制緩和、グローバル化というようなことの中で、今いろいろと議論があったんですが、国際的な税の平準化、税はどういう制度にどういう形で流れていくのか、向かっていくのか。今、何かほとんどアメリカを見習ってどんどん進んでいるような感じがするんですね。ただ、アメリカ日本の国の国情の違いというものは非常に多いと思うんです。例えば、日本は資源がないとか向こうは資源がふんだんにあるというようなことの中で、やはり日本の将来の税というものについて、私はここではっきりとした見通しなりそういうものをしっかりつくっておく、それが一番大事なときではないか、こんな感じを持っておりますので、竹内さんと中里さんに御意見を伺わせていただきたい、このように思います。
  41. 竹内佐和子

    竹内参考人 税の平準化に関しては、先ほど私も申し上げましたけれども、やはりアメリカとヨーロッパではかなり違った性格の税制の体系になっていると思うんです。それは、平等とか不平等とかという考え方に関する考え方一つの違いと、それから、社会保障コストがどの程度あるかということとのバランスがあると思います。  ヨーロッパにおいては、社会保障コストというのはほとんど直接税的な感覚で相当高い負担個人企業に強いているわけなので、どうしてもその中で税体系として存立していくためには物すごいフラット化をしなければいけない。いわゆる直接税から間接税の体系というものがどうしても必要になってくるということで、流れとしては、やはりまず消費税に行く前に特定のいろいろな租特とかそういうものを最大限なくして、税率そのものを下げていく、なおかつ課税最低限というのも下げていく、ないしは、消費税によって社会保障コストの増分ぐらいを賄うものは徴収していくという考え方になっていくと思いますので、その意味では、アメリカ考え方というのがもちろんグローバルスタンダードとは言えなくて、日本は高齢化社会に突入していくという状況から見ますと、かなりヨーロッパ型の、組み合わせ型の税制体系というものがむしろかなり重要なのではないかなということと、もう一つは、総合課税化を余り進めますと、これから金融課税等々やる際に進み過ぎてしまう可能性もありますので、やはり投資関係のものに関してはもう少し慎重な、分離課税をベースにした考え方をとりながらフラット化をしていくというような考え方一つ必要なのかなと思います。
  42. 中里実

    中里参考人 竹内先生もおっしゃったように、政府の役割の問題がヨーロッパとアメリカとでは一般的に言って違いますので、大きな政府を目指す場合と小さな政府を目指す場合とである程度差が出てきて、一概に国際的な平準化といっても単一のものを目指しているとは限らない。ある種の方向は見えるけれども、ちょっと違ったところはあるんじゃないかという気はします。  しかし、他方で、アメリカ社会も移民を受け入れられ続ける限りは高齢化の問題は余り起こってこないのでしょうけれども、この一月に社会保障を民営化するという委員会報告が出て、たしかあと七十年かなんかでアメリカのソーシャルセキュリティーが破綻するというようなことだったと思うのですが、そういう報告書が出されました。  結局、ここはアメリカもヨーロッパ型にいずれ近づいていくわけでございまして、その際に、アメリカでも付加価値税は導入したくて仕方がない、しかし、州との対立関係によって、連邦レベルでなかなかうまくいかないというようなところがあるのだろうと思います。  したがって、ヨーロッパが一番先で、後を日本が追って、アメリカがその後、別にこれは経済の発展のことを言っているのではなくて、税制的にはそんな感じになるのではないかというふうに思います。  そうすると、ある程度、付加価値税的なもので政府の支出を賄うというような税制に、先進国、アメリカも含めてなっていかざるを得ないし、アメリカの議会もそのために必死に今努力しているのだろう、USAタックスとかさまざまな議論がございますけれども、そういうふうにいっているのだろうというふうに思います。  あと一点だけですけれども、二十世紀の租税の歴史を見ますと、小口多数の納税者から集める税金から、大口少数の納税者から集める税金へというふうに変化を遂げているのではないかと思います。その方が効率がいいし、フラット化とかというのもそこから発生することでございまして、取りやすいというだけの話ではなくて、結果的には平等なんですね。  したがって、その意味でも、企業を受け皿として、消費税のようなものを企業に徴収していただいて納付していただくというような制度に世界各国が移りつつある、それが二十世紀の租税の歴史なのではないかというふうに思っております。
  43. 西川知雄

    ○西川(知)委員 簡明に質問いたします。  中里参考人に質問をいたしたいと思いますが、執行の強化ということをおっしゃいまして、国際標準的に合わすべきだというような趣旨のことをおっしゃいましたが、私は、現状ではそれは違うのじゃないかというふうに実は考えております。  というのは、執行というのは、明確なルールがあって、そのルールを正確に執行するということで初めて執行の強化ということができるわけですが、今の現状を言いますと、個々の新しい金融商品でも、いろいろな課税関係でも、判断を個々の税務署員に任せている。そして、ややこしいものはとにかく更正したり課税をしてしまう、説明は後であるというような形で現実は行われているわけです。  私も、国際関係の金融の弁護士を二十年間やっておりまして、そういう課税関係で随分悩まされましたが、アメリカではルーリングのシステムがあって、タックスデパートメントの弁護士が国税庁と新しい商品についての課税関係を明確に話し合って、投資する前にそのルーリングが決められるということで、それに基づいて執行がされているわけですが、日本はそういうことがなされてないわけです。私は、大蔵大臣にもそういうことを言いまして、ルーリングを早くつくるようなシステムを考えてくれというふうに申し上げたわけですが、その点についての先生の簡単な御意見で結構ですが、お尋ねできればと思います。
  44. 中里実

    中里参考人 所得税、法人税の制度をある程度基幹税として採用する以上、執行の強化という言葉が悪ければ、課税庁の権限の強化がない限り、日本の課税庁は十分な課税のための資料を得られず、したがって、課税もなかなか不平等というような、執行の不平等みたいなものも結果的に起こらざるを得ないというような状況にあるのではないかというのが、世界の租税手続を比較検討した上での私の結論でございます。  アメリカの課税庁の透明性、確かにアドバンスルーリングに関しては、透明性、非常にございます。問題があればすべて裁判所で解決するという方向もございます。しかし、課税庁の職員の資質を比べますと、アメリカの悪口になりますから余り言えませんが、日本の課税庁の職員の方が少なくとも七倍くらいは能力があるのではないかというふうに、七倍というのも根拠はないのですが、あります。  結局、アメリカでやたら租税訴訟が多いのは、納税者の権利意識が強いというよりも、課税庁の課税が余りにもいいかげんで、それは先生もアメリカで御経験なさったと思うのですけれども、移転価格の調査等で向こうの調査職員の資質のひどさたるや、何というのか、余り他国の悪口を言いたくはありませんが、ちょっとひどいものがある。そういう場合に、いいかげんな課税を行うから裁判所に行く事件がふえるということもあるわけですね。日本の課税庁はそういう点では非常に優秀だというふうに私は思っております。  私は日本のいろいろな制度について割と楽観論でして、日本は悪い国だと余り思っておりません。ただ、ルーリングについては、伺ったときに答えていただけるという制度については考慮していただかないと、おっしゃるとおり、金融世界では困りますよね、取引日本で行われないということになりますから。ですから、そこはいい点も悪い点もあるということだろうと思います。
  45. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 時間がありませんからあれですが、執行の問題が出ましたから私も関連して申し上げたいというふうに思います。  中西先生が、税の簡素化という観点から、例えば消費税について、領収証の提出がこれからは決まったけれども、それに反するというような御意見があったというふうに思いますが、私は、課税関係において、やはり帳票書類の提出というのは簡素化とは無関係だと。だから、しっかりとしたそういう領収証等関連書類は具備して、そして求められたときには提出する義務があるというそのルールはしっかり確立しておかなければいけないというふうに思っております。  それから第二番目ですが、挙証責任、立証責任の転嫁というのは、これは我が国の雰囲気の中で大変難しい、そういう環境にあるというふうに思います。だから、本来ならば、立証責任の転嫁ができれば、もう少し私はうまくいくのではないかというふうに思っております。  最後は、納税番号でございますが、これを万能薬のように考えているとしたらちょっと間違いであって、竹内先生が言われたような話であるならば、もう既に前年に申告してあれば、税務署から番号がついて、税務署ごとのいわば納税者番号が知らされてくるから、それを引用すればいろいろな課税関係はわかるという形に既になっているはずでございます。  それから、納税者番号でございますが、これを利用したときにどういうふうに税務調査が簡便になるかということですが、証拠書類といいますか、それをきちんと整理する仕組みを同時に納税者ごとに備えないと、やはり調査のためのいろいろな書類が納番に従ってきちんと整理できるシステムというものができないと、私はなかなかうまくいかないのだろうなというふうに思います。となると、整理のために税務署職員は物すごくたくさん要ることになりますから、そうなると、何か徴税国家みたいになって、私は余り好ましくないのではないかなという意見を持っております。  以上であります。中里参考人にこの点をお答え願いたいと思っております。
  46. 中里実

    中里参考人 執行の強化あるいは権限の強化について申し上げましたのは、所得税、法人税にこだわるのであれば、源泉徴収等が非常に危機にさらされている状況を考える際に、国際標準として申告納税制度をまともに考えるのであれば、この程度のことが必要であるということを申し上げたかったわけで、私が税務署の権限の強化が大好きであるとかそういうこととは別の話でございます。だからこそ、消費税税率を上げるのがいいのではないかというふうに申し上げているわけです。  ですから、源泉徴収でできる限り踏みとどまれれば一番これはいいわけでして、そちらの方は当然磨いていく必要があるのだろうと思いますが、どうにもならないところに関して、ある程度の権限の強化というのがありませんと、これは実は日本人、居住者、内国法人だけの問題ではありませんで、非居住者外国法人等に対する課税にも反映されてきてしまうわけでございます。日本の納税者とは違うアグレッシブな納税行動をとる非居住者外国法人等、別にいいとか悪いとかという話ではありませんで、そういう文化で行動する人たちに対して、権限がなければ国税は対応できないということでございます。そこがシリアスな問題なのではないかと思っております。
  47. 原田昇左右

    原田委員長 ほかに質疑をされる委員の方はございませんか。  それでは、質疑を終了させていただきます。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会