○
神山参考人 神山でございます。
前回に引き続き
参考人にお呼びいただきまして、大変名誉に感じております。
前回も申し上げましたが、
日本弁護士連合会の
公害対策・
環境保全委員会の中に
プロジェクトチームをつくりまして、検討中であるという
状況でございますが、八月二十一日に筑波大学の
鎌田博先生をお呼びして
お話を伺いました。ただ、まだそういう
段階で、
弁護士連合会なりあるいは
プロジェクトチームなりの
意見がまとまるというところまでは到底至っておりませんので、本日の
段階ではまだ私の
個人的見解ということで御了解いただきたいと思います。
ただ、
一つ申し上げられるのは、
鎌田先生の
お話を伺って、
安全論議に踏み込むのはやめよう、これをやっていると、いつまでたっても、私
どものような素人が
遺伝子組み換え食品が安全かどうかということをやっていてもなかなか理解できない、そこではなくて、私
どもは
法律家の
団体ですので、
法律的な
規制の問題と
表示のあり方ということに絞って
意見をまとめようではないかという点ではおおむね
意見が一致しております。十月の、次回の
プロジェクトチームの会合でそういう
方面での
意見を出し合う、こういうことになっております。
この
小委員会は
表示に関する
小委員会というふうに伺っておりますけれ
ども、実は、
表示の問題というのは
法規制と非常に深く結びついておりまして、
法規制がないということをまず問題にしていただきたいわけです。
私は、
前回も申し上げましたけれ
ども、この
遺伝子組み換え食品については何らの
法規制がない、ここのところに一番大きな
問題点があると思っています。
安全性評価指針というものはありますけれ
ども、この
安全性評価指針の第四章、私のレジュメにも書きましたけれ
ども、「
組換えDNA技術応用食品・
食品添加物を
製造又は
輸入しようとする者又は必要と認められる者は、その
安全性の確保を期するため、
当該生産物が本
指針に適合していることの
確認を
厚生大臣に求めることができる。」となっておりまして、求めなくてはならないとはなっておりませんので、
厚生大臣のお
墨つきは要らないという業者がありましたら、自由に
輸入、
販売する、あるいは
製造することが可能という
システムになっております。
強制力がないという点ですね。
これは私が直接
調査したわけではありませんが、いろいろとこういった
方面で
調査をしております
日本子孫基金という
団体がありますけれ
ども、こちらの
小若順一さんという人が直接
厚生省等に問い合わせた結果だそうですけれ
ども、五月二十六日に
厚生省で
BTコットンというものの
安全性確認をいたしましたが、それより以前に
BTコットンが
輸入されているかどうかということの
確認のしょうはない、仮に
輸入されていたとしても、それは
確認できないのだというふうに
厚生省が
お答えになったと聞いております。
それからまた、これは
BTコットン、つまり
殺虫剤入りの綿ですね、
綿実油が
販売が可能になった、
輸入が可能になったということですけれ
ども、これは
BTトキシンが入っているものですが、そのほかに、
アメリカでは九六年から
除草剤耐性遺伝子を組み込んだ
コットンというものが収穫されているそうです。この
除草剤耐性コットン、綿が、その種がまざったまま
日本に輸出されているおそれがある。そして、この綿については同じことしの五月二十八日に第三次の
申請品目の中に入っておりますけれ
ども、
申請をしている
段階で既に
日本に入ってきているかもしれない、かもしれないけれ
どもチェックはしていない、こういうことになっているそうです。
アメリカからの
輸入量は、綿の実が約五万トン、
綿実油が一万五千トン、これは九五年の
データだそうですが、そういうような
状況になっていて、この中に
申請前のものあるいは
確認前のものが入っていても、だれも
処罰もされなければ、
そのものの
販売が禁止されることもないわけですから、
安全性評価指針に基づいて安全が
確認されているのだから
消費者は安心して食べなさいという
システムになっていても、これが機能していないということになります。
例えばこれが、今
BT剤というものは
農薬取締法に基づいて
登録がなされておりまして、
販売してもいいことになっておりますけれ
ども、仮に
新規に何かの
農薬を開発したといたしますと、
毒性データをつけて
農水省に提出して
農水大臣の
登録を受けないと
販売できません。しかし、この
新規の
農薬成分をつくり出すような
遺伝子を仮に組み込んで
遺伝子組み換え食品として
製造、
販売するということは、これは
法規制がないということになりますので、結局、
農薬取締法の
脱法行為を許しているということになります。
それから、
食品添加物というものがたくさんありますが、
食品添加物をもし新たに
製造、
販売あるいは
使用しようという者は、
食品衛生法六条に基づきまして、
毒性データを添えて
厚生省に提出して
厚生大臣の
指定を受ける。これは
食品衛生法施行規則の改正ということになりますけれ
ども、そういうふうな
指定を受けなければ、
食品添加物を
製造、
販売あるいは
使用すること、陳列することさえできないわけです。
食品添加物の中にはほとんど無害に近いようなものもあると言われていますけれ
ども、それでもそういう
手続が必要なわけですが、もし
食品添加物に当たるようなものを新たにつくり出すような
遺伝子を組み込んでしま
うと、この
手続もとらなくていいわけです。
例えば、油は非常に酸化しやすいということで、油には
酸化防止剤というものが入れてあります。これは、例えば
BHTとか
BHAとかいうようなものが過去非常に問題になりまして、
BHAは
発がん性があるのではないかというようなことが一九八〇年代に大問題になったことがございますけれ
ども、例えば
綿実油だとか
大豆の油とか
コーン油とか、こういったようなものに
最初から
酸化防止効果のあるような何かそういう
物質を生み出す
遺伝子を組み込んでしまう、そうした油がっくれると仮定いたしますと、そうすると、これは
食品添加物としての
指定を得ないまま
酸化防止剤入りの油が初めからできてしまうということになります。これも
食品衛生法の
脱法行為を許すことになります。
農薬取締法も
食品衛生法も、
登録を受けないで
農薬を
販売したり、あるいは
指定を受けないで
食品添加物を
販売したりいたしますと、懲役または罰金という
刑事罰が科せられます。
刑事罰が科せられるように一方で
規制しているものを
最初から
遺伝子組み換え技術で入れてしまうと、
法規制が一切ないというのが現在のこの
安全評価指針の効力である。
それでは、
遺伝子組み換え食品というものは全く
安全性について
議論がないのかといいますと、いろいろと難しい本もたくさんありますし、OECDのものなど拝見いたしますと、私
どものような
文科系の者はよくわかりませんけれ
ども、それでも野放していいと言っている本に出会ったことはまずありません。
安全性と
リスクの
解析が必要である、
リスク管理が必要である、一定の
安全性評価が必要である、野放しにしてはいけない、こういう点については、恐らく異論はないのではないかと思うのです。
そうであるとすれば、
安全性の
解析を義務づける、
安全性の
評価を義務づける、そして必ず
安全性を
確認したものでなければ
製造、
販売してはいけない、
輸入してはいけない、こういう
制度にしておかない限り、先ほど私が申しましたように、
申請が出た時点ではもう既に
日本に入ってきているかもしれないということを防げないのではないかというふうに思います。
もう
一つ、これは
アメリカに
調査に行った人と、それから先日の
鎌田博先生の
お話の中に出てきたことなんですけれ
ども、一番
最初に
遺伝子組み換え食品が
アメリカで話題になりましたのがフレーバーセーバーのトマトですが、あれはフレーバーセーバー・トマトをつくるための
遺伝子を組み込んだときに、それがきちんと入っているかどうかということを調べるための
マーカー遺伝子として
抗生物質耐性遺伝子というものを組み込む、そしてそれによって
たんぱく質とか
酵素とか何かができるのだと思いますけれ
ども、これを
アメリカは
食品添加物として承認したというふうに
鎌田先生がおっしゃっておりましたし、
アメリカに
調査に行った者も、
FDAでそう言っていたというふうに言っておりました。
それでは、それはどういう
意味なのかというところが問題なんですが、実は
食品添加物というものの
定義が
アメリカと
日本ではまるきり違います。ここが非常にややこしくてわかりにくい部分なんですが、
日本の場合、
食品添加物というものは「
食品の
製造の過程において又は
食品の加工若しくは保存の目的で、
食品に
添加、混和、浸潤その他の
方法によって
使用する物をいう。」ということになっております。
アメリカの
連邦食品薬品化粧品法、FFDCAと言っているものですが、この
アメリカの
連邦食品薬品化粧品法の中にあります
食品添加物の
定義は、翻訳によっていろいろ違いますけれ
ども、「その意図する
使用によって、直接的または間接的に
食品の
成分となるか、あるいはそうなることが論理的に考えられる
物質、もしくはその他
食品に影響を与えるか、またはそれが論理的に考えられる
物質」ということで、意図的に使われる
物質であって、
食品の
成分の一部になる
物質は原則として全部
食品添加物になってしまうというのが
アメリカの
考え方です。そこで、意図的に
マーカー遺伝子を入れて
抗生物質耐性の何か
酵素なり
たんぱく質なりをつくり出すとすると、これは意図的に
食品の
成分になるという使い方がされるわけなので、
食品添加物に当たるわけです。
アメリカの
食品薬品化粧品法では、
食品添加物は原則的に危険なものであるという
前提に立って
法律ができておりまして、
安全性が
確認されて、安全な
使用方法が定められているもの以外は含まれていてはならないという
条文がありますので、原則的に危険、つまり安全な
使用方法というのを
チェックして、そういう
使用方法を決めないと
添加物として使えない、つまり
食品の
成分の一部にできないということなので、
マーカー遺伝子がつくり出す
産生物は
添加物であるということで、恐らく
FDAで
チェックをして
安全性が
確認されたということで
販売が承認されたのではないかというふうに私は思っております。
そういう
考え方をとりますと、例えば
BTがつくり出す
BTトキシンという
たんぱく質は、当然のことながら
コーンなりバレイショなりあるいは綿なりの
食品の一部になるわけですから、そういうものは
食品添加物になるはずで、
食品添加物として
FDAが承認しないと使えないのではないか。私はこの話を
アメリカの
調査に行ってきた人から最近聞きましたし、
鎌田先生から伺ったのも八月二十一日でしたので、
自分で直接
アメリカに確かめるということをまだしておりませんけれ
ども、
アメリカの
法律の
システムから考えると、恐らく当然そうなるであろう。
そうすると、
アメリカは、
アメリカも
表示させていないという話がよく出ますが、しかし
法規制はあるということになります。
法規制があって、
安全性を承認しないと使えないんだというところで一遍
チェックがされている。だから、安全
チェックされているんだから
表示しなくてもいいんだよということが導かれてくるのだろうと思いますけれ
ども、
日本のように
法規制がない、ただ単に
ガイドラインしかない、しかもその
ガイドラインも、守らなくてもだれも
処罰もされなければ、その守らない
食品が
輸入されても
販売されても、その
販売を禁止することもできない、そういう非常に緩やかな状態のもとにおいて、安全なんだから
表示は要らないんだという理屈は全く成り立たないというふうに考えております。
では、
表示はどうするのかということですけれ
ども、非常に難しいのは、まざって
輸入されてきてしまうらしいというところだと思うのですが、理論的にはまぜた人がいるはずで、
BTコーンでもそのほかのものでも、畑には
BTコーンというような標識が立って植えられておりますので、その畑でできたものは
遺伝子組み換えしたものだということは、少なくともつくっているお百姓さんはわかるわけですから、その収穫した
段階でまぜなければよろしいわけですね。
分別すると
コストがかかりますよという話がありますが、その
コストは
遺伝子組み換え食品をつくっている人が負担すべきであって、それ以外の今までの
通常の
大豆なり
コーンなりを食べていた人が
分別の
コストを負担するべきいわれはないと思います。ですから、
分別をさせるのならば
BTコーンが高くなる、あるいは
遺伝子組み換え大豆が高くなるという
方向に
コストは行くべきであって、
通常の
遺伝子組み換えしていない方が高くなるというふうに
コストが働くというのは、これはちょっと筋が通らないのではないかと思っております。
ただし、なかなかこの
分別というのが難しいようで、EUでも、
分別させないまま
表示させるという
方向にどうも行っているらしくて、含まれているとか、含まれているかもしれませんという、
メイ・コンテインですか、そういう
表示も進められているというふうに聞いておりますけれ
ども、仮に
メイ・コンテインであろうがあるいは含まれているということであろうが、
表示させないよりはいいと思います。
では、何が含まれているという
表示をすべきなのかという点で、私は、
表示をするとすれば、グ
リホサート耐性遺伝子が組み込まれている
大豆を使っていますというところまで
表示をしなかったら、この
表示が正しいか正しくないかの
チェックができないだろうと思います。
鎌田博先生の
お話を伺っておりましたら、
表示しろ
表示しろと言われても
チェックができないのだという
お話がありました。
チェックができないということはどういうことかと質問がありましたけれ
ども、
チェックができないというのは、例えば
グリホサート耐性遺伝子を組み込まれているかどうかという
チェックはできるのだそうですが、ここに何も
遺伝子組み換えしていませんという
表示があって、この
表示が正しいかどうかを
チェックするということになったら、物すごいたくさんある
遺伝子を
一つ一つ全部
チェックするなどということは、これは技術的に不可能だという話なんですね。そうであるとすると、何を
チェックしてもらうのかという、
チェックするべきものが決まってなければいけないわけです。
これは
農薬でも
一緒で、一切の
農薬が含まれておりませんとかあるいは
農薬を
使用しておりませんといったときに、これが本当かどうかを
チェックするといいましたら、今
国内で食用に使われている
農薬は四百ぐらいあるとか言われていますから、四百の
農薬を全部
チェックしないと一切の
農薬が使われていないということはわからないわけですけれ
ども、例えば、何とかの
農薬と何とかの
農薬を使っています、あるいは
減農薬にしてこういうものを一回かけていますというような
表示があったときに、それ以外の
農薬が出てきたら、この
表示は
うそだということはすぐにわかります。
表示をさせるということは、その
表示が
うそだということが
チェックできなければ
表示の
意味がありません。ですから、
遺伝子組み換え食品を使っておりませんとか、あるいは
遺伝子組み換えをしていない
大豆でつくった
豆腐ですというような
表示を
制度化するということには反対です。そういうような
表示がされてしまったら、これはだれでもつけられます。例えば、今まで
有機農産物について、
うそつき有機、箱だけ
有機、シールだけ
有機というものが大変はんらんいたしましたけれ
ども、それと同じ
状況が出てくるのではないかと思います。そういうような
状況を防ぐためには、特定のものが含まれている、例えば、これは
グリホサート耐性遺伝子を組み込んだ
大豆が使われている
豆腐であるとか、あるいはそういうものを使っている油であるとかというふうな具体的な
表示をさせないといけないのではないかと思うのです。
それは 可能なはずだと思します。可能だというのは、可能の
前提として、
安全性評価ガイドラインを
ガイドラインではなく法的な
効果のあるものにして、
安全性の
確認を必ず得させる、
確認を得ていないものは
輸入も
販売もさせないというふうに口を締めておけば、少なくとも
日本国内に入ってくるものは
厚生省の
安全確認が済んでいるものであると言うことができます。
法律があっても違反する人がいるということを
前提に話はしておりません。
法律があれば一応
法律は守られるであろうという
前提で話をしたいと思います。今は
法律がないのだから何でもできるという
状況ですけれ
ども、少なくとも
法律があればその
法律に基づいて入ってくるであろう。例えば
食品添加物も、
食品添加物の
指定を受けないと
輸入してはならないと書いてあるにもかかわらず、
食品添加物の
指定を受けずにその
添加物が使われた
輸入食品というものが入ってまいります。しかし、これは、
チェックして出てきた
添加物が違反であるということがわかれば
そのものの
販売を禁止するというようなことで、事後的にではありますけれ
ども規制が働いておりますので、
法律は守られているという
前提で考えます。
そうすると、まず、
チェックをして
安全性の
確認を得たもの以外は
日本に入れない、
日本国内で
販売しないという
規制をする。そうすれば、何が
日本国内に流通しているかということを少なくとも
チェックをする
厚生省は把握できるわけですから、今現在、例えば十五
種類の
遺伝子組み換え食品が入っているとすれば、
表示をさせるものは十五
種類だけで済むわけです。その十五
種類のものについて、もしかすると二
種類のものが入っているというものがあったとすれば、二
種類の、例えば
除草剤耐性遺伝子あるいは
殺虫剤の
遺伝子を組み込んでいる
綿実を使った
綿実油ですとかというような
表示が可能になるはずだと思います。
そういう
表示をするということは、私は、安全だから食べなさい、食べても大丈夫だというのとは別に、
消費者側には正しい
情報を知る
権利があるという憲法上の要請と、それからもう
一つ、
消費者保護基本法の第十条、「国は、
消費者が
商品の購入若しくは
使用又は
役務の利用に際しその
選択等を誤ることがないようにするため、
商品及び
役務について、品質その他の内容に関する
表示制度を整備し、虚偽又は誇大な
表示を
規制する等必要な施策を講ずるものとする。」という
条文があります。この
消費者保護基本法十条をフルに活用すれば、
消費者の
選択の
権利を確保する、知る
権利を確保するための
表示制度はできるはずだと思います。
厚生省の
食品衛生法に基づく
表示制度は、直
罰規定がありまして、これに違反すると罰せられるという
規定ですから、なかなか発動しにくい、利用しにくい
条文でありますので、
安全性に問題がないのだという
確認を得ているという場合に
表示させるということになかなか
厚生省は踏み切ってくれません。
しかし、
前回伊藤康江さんが言っておりましたように、
食品添加物は
安全性が実証または
確認されたものでなければ使ってはいけないということになっておりまして、一応
食品添加物は安全だと
厚生省が認めたものを使わせているわけです。安全だと
厚生省が認めていながら、
食品添加物については
全面表示を義務づけております。ですから、安全だから
表示は要らないのだという
議論は全く成り立たないわけですから、たとえ
安全性を
確認したとしても、少なくとも全世界的に安全と
リスクの
解析が必要で
リスク管理が必要だという点で
議論が一致しているわけですから、その
リスク管理のためには
情報公開が絶対に必要なわけで、知らせるということがあるべきだと思うのです。
今、
環境庁などでも
リスク・
コミュニケーションなどという言葉を使った
環境庁の方針を打ち出したりしておりますけれ
ども、
リスク・
コミュニケーションと言うためには一方的ではなくて双
方向の
情報交換が必要なわけで、
消費者側としても、説明だけされるとか説明したから納得しなさいというようなことでは、
リスク・
コミュニケーション自体が成り立たないと私は思っております。安全だから大丈夫なんだではなくて、安全なんだから
表示させる、だから安心してそういう
表示のあるものを食べればいいではないか、後は
消費者の
選択にお任せいただきたいというふうに考えております。
先ほど申し上げましたように、今、
バイオフリーという、
遺伝子組み換え食品を使っていないという
表示は
うそであっても
チェックできない。
鎌田先生は、
うそをつかないという
前提で私
たちは研究しておりますからというふうにおっしゃるわけです。
研究者の方は私はそうだろうと思います。それから、私
たちは
うそをつきますなどと言う
企業は、初めからそんなことを言う
企業はありませんけれ
ども、しかし、例えば牛乳を水増しして売っていた
酪農組合があるとか、
製造年月日をごまかして売っていた
パン屋さんがあるとか、さまざまな
うそつき表示というのは横行しているわけです。これはもう隠れもない事実なわけです。
うそをつかないという
前提で物事を考えるというのは、
法律は要らないということになります。例えば、これは極端な話ですが、人を殺してはいけないというのは
人類普遍の
ルールです。人のものを盗んではいけないというのも
人類普遍の
ルールですし、あるいは、借りたお金は返さなければならないというのも
人類普遍の
ルールですから、そういう
ルールがある以上
法規制は要らないのだ
というのでしたら、刑法や民法は要らないということになるわけです。でも、
人類普遍の
ルールを破る人がいるので、破ったときにどうするかということが
法律が必要であるという
前提なわけで、
うそをつかないという
前提は結構だけれ
ども、万
うそをついた人がいたら、
うそをついているときにはどうするのかということを考えない
法規制というのはあり得ないのではないかというふうに思います。
実は、
経企庁にも、
消費者保護基本法に基づいて
表示制度というものを
経企庁が中心になってやってくださいという申し入れに行きました。私のお隣にいる
随行者の
亘昌子さんと
一緒に行ったわけですけれ
ども、
経企庁の方は、
食品の
表示というのは
厚生省と
農水省の
専権事項であるから、
自分たちは
厚生省と
農水省にしっかりやってくださいとお願いする立場であるというふうに言われました。
それはやはりおかしいのであって、
消費者保護基本法で国にそういう
表示制度をつくる責務があって、この
消費者保護基本法という
法律、
消費者保護というものをやっているところは
経企庁だと私は思いますので、その
消費者保護基本法に基づいて、
消費者の
選択の
権利と知る
権利を確保するための
制度というものをつくらせるように
経企庁がリーダーシップをとるべきではないか。そうでないと、
厚生省と
農水省でやっているのでは、私は心もとないという気がいたします。
厚生省の方にはまことに申しわけないとは思いますけれ
ども、例えば薬害エイズの問題に限らず、その後、私が
厚生省の行政に対して大変ショックを受けましたのはヤコブ病の問題ですけれ
ども、硬膜移植を受けてヤコブ病を発症した人がWHOに五十人報告されていて、その五十人のうち四十三人が
日本人であって、そして、
アメリカは一九八七年にそういうヤコブ病に感染していないことの証明のない硬膜の
輸入を禁止しているにもかかわらず、
日本はWHOの勧告のあった翌日にそういう
規制をした、さらにまたふえて四十六人になった。ということは、一体
厚生省というところは何をしているのかということを非常に不満に思います。
厚生省で
安全性を
確認しているから大丈夫だということを信じている人は、私は、残念ながらいないのではないかというくらいに思っております。
そう言いながら
法規制をしろと言っているのは実は本当はおかしいのですけれ
ども、しかし、
法規制がないのは、あって
法規制がいいかげんというよりももっとどうしようもないことなわけですから、少なくとも今すぐにやっていただきたいのは、ガイドライフを法的な
強制力のあるものに格上げさせてほしいということです。そして、その
ガイドラインに基づいて、
ガイドラインを
法規制にして、その
法規制に基づいて安全の
確認を得たものについてはそのとおりの
表示をさせるということを実行してほしいと思います。
表示がいっぱいになると読む人はいないとか、いろいろ言われますけれ
ども、読む人がいるかいないかは、これは読む人の自由でありまして、書いていなければ読めないわけですから、必ずそういうふうに書かせていただきたいというふうに思っております。
現在、相当多数の自治体からも
表示をしてほしいという要望が、
厚生省、
農水省等に上がってきていると聞いております。多くの人にアンケート
調査をすれば、
表示が必要だ、
安全性はあるいは安全かもしれないけれ
ども表示は必要だという
意見が大多数を占めているというふうな結果があちこちで出てきております。
アメリカでも
表示を求める声が上がってきていると聞いておりますし、EUでは
表示させる
方向だというふうにも聞いておりますので、世界に名立たる食糧
輸入大国である
日本がもし
表示制度を導入しなかったら、世界じゅうの
遺伝子組み換え食品がすべて
日本に押し寄せることは目に見えているのではないでしょうか。
例えば
大豆製品を考えてみますと、これほど
大豆を食べる国は世界にはないわけです。
アメリカでは
大豆は
表示させなくてもいいとしても、
アメリカでは
大豆製品というのは食べていないわけで、動物のえさにするか、あるいはごく一部油にするか、そういうことだけで、私
どものように、みそ、しょうゆ、納豆、
豆腐、油揚げ、それから煮豆から何から、
大豆をこんなに食べる国はありません。
そして、私は、これは女性として申し上げたいのですが、
大豆は大変大事な食べ物だそうです。私はいろいろなところに首を突っ込んでおりまして、女のからだと医療を考える会という会のスタッフもやっているのですけれ
ども、ここで今、更年期の問題を取り扱っております。更年期について、文化人類学者が
アメリカとイギリスと
日本との比較研究というのもやっておりますけれ
ども、実は、
日本の女性が更年期障害は一番軽いという結果が出ております。
アメリカやイギリスの人に比べて、飲んでいる薬も、胃腸薬だけは
日本が一番多いのだそうですけれ
ども、それ以外の薬、ホルモン剤な
ども含めまして一番少ない。
日本人の更年期障害というのは頭が痛いとか肩が凝るとか疲れやすいというもので、よく言われておりますように、かあっと暑くなって汗が出るというホットフラッシュというものは
日本では非常に少ないのです。私
どもの会でも千人以上の人にアンケート
調査をいたしましたけれ
ども、こういうのは少ないのですね。
なぜ
日本で欧米に比べて女性の更年期障害が少ないかというと、まず、
日本の女性の方がよく動くということがあるそうです、布団の上げおろしとかいうのは非常にいいのだそうですけれ
ども。そのほかにもう
一つ、
大豆を食べているということが大きい影響があるのではないかということを産婦人科のお医者さんが言っています。というのは、更年期障害というのは女性ホルモンが少なくなってくる結果起きるわけですが、
大豆を食べるということによって体内で女性ホルモン様
物質がつくられるのではないかという研究もあるらしいのですが、
日本人の女性は、女性に限らずですが、
大豆の摂取量が欧米に比べて非常に多いためにどうも更年期障害も軽くて済んでいるらしい。こんな大事な、大切な、女性の健康のためにもいい
大豆を汚さないでほしい。
ですから、本当は一番大事なことは
国内で自給していただくということですけれ
ども、
国内で自給するという政策を進めてもらうのと同時に、とにかく私
たちが、例えば女性としていい
大豆を、良質の
大豆でできたみそ、しょうゆ、納豆、
豆腐を食べたかったら共同購入で苦労をしなければ買えない、あるいは
有機農産物を買ってこなければ買えないのではなくて、どこかその辺のスーパーに行ってもちゃんとしたものが買えるというようにするためにも、やはり
大豆を大切にしていただきたいのです。
遺伝子組み換えで、除草剤耐性の
大豆だけではなくて、当然そのうちにもっといろいろな
大豆が出てくるはずで、
大豆を食べると虫が死んでしまうという
大豆とか、あるいは、場合によっては、先ほど申し上げましたように、
大豆の油をつくったときに酸化しない
大豆というのができるかもしれないとか、こういったことを限りなく考えていきますと、
大豆が食べられなくなってくるということがあるわけです。
いろいろな資料を読んでみますと、例えばラットや豚に人間の成長ホルモンを組み込んで、そして成長を物すごく早めるというような研究がなされているとか、そんなような話も書いてあるわけですけれ
ども、仮にそういうものが、例えば成長ホルモンを組み込んで早く大きくした豚というものがどこかであったとして、その豚が
輸入されているかもしれないわけです。
チェックがないのですから、そういう豚が入ってきていてもわからないわけです。
ですから、
表示は大事ですけれ
ども、
表示の問題の前に、私は
法規制をするという
前提で
表示をするということをぜひ検討していただきたい。こちらの
小委員会のタイトルが
表示問題等に関する
小委員会になっておりますので、この「等」というところに、
表示だけではなくて、
表示の
前提に
なる
法規制ということをぜひ入れていただきたいということを切にお願いいたしたいと思います。
先ほど申し上げましたように、
食品衛生法や
農薬取締法で
刑事罰を科してまで
登録や
指定制度を設けているのに、それを脱法していいというような
遺伝子組み換え食品は許してはいけない。このことについて、そういうものを許してはいけないということについては反対される方は恐らくいなくて、
安全性を
確認しないで
輸入する人なんかいませんよという
企業性善説に立った
お話しか常になされていないというのが大変残念だと私は思っております。くどいようですけれ
ども、ぜひ
表示と同時に
法規制ということを取り上げていただきたいというふうに思います。
私は、この
安全性評価ガイドラインが正しいのかどうかというような判断はできません。
安全性評価ガイドラインで不足していると思われるのは、一点だけ申し上げると、最終
食品の
チェックが必要だということを
鎌田博先生が以前
厚生省に出された報告書にお書きになっていらしたのです。その最終
食品の
チェックという部分が抜けているというところは問題だとは思いますけれ
ども、
食品をネズミに食べさせて
チェックができるのだろうか。大量に食べさせないと毒性というのは発現しないわけですから、大量に
食品を食べさせたら、それは食べ過ぎてぐあいが悪くなるのかもしれないので、わからないのではないかと思いますので、その辺も、この
安全性評価ガイドラインをそういうふうにするべきなのかどうかという点については私自身よくわかりません。
ですから、
安全性評価ガイドラインは、私の現時点の考えでは、いじるのが難しければいじらなくても結構ですから、
安全性評価ガイドラインの第四章だけ変えていただいて、第四章、
当該生産物が本
指針に適合していることの
確認を
厚生大臣に求めなければならない。「できる」を「ならない」に変える、それだけですべて済むわけで、非常に簡単なことだと思いますので、ぜひこれは実行していただきたいというふうに思います。
私の
意見はこの程度で終わらせていただきます。