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1997-09-04 第140回国会 衆議院 消費者問題等に関する特別委員会遺伝子組換え食品の表示問題等に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年九月四日(木曜日)     午後一時二分開議  出席小委員    小委員長 岸田 文雄君       河野 太郎君    能勢 和子君       青山 二三君    福島  豊君       藤田 スミ君    中川 智子君  小委員外出席者         参  考  人         (弁 護 士) 神山美智子君         特別委員会第二         調査室長    田中 宗孝君     ───────────── 本日の会議に付した案件  遺伝子組換え食品表示問題等に関する件      ────◇─────
  2. 岸田文雄

    岸田委員長 これより遺伝子組換え食品表示問題等に関する小委員会を開会いたします。  遺伝子組換え食品表示問題等に関する件について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、参考人として弁護士神山美智子君に御出席をいただいております。  この際、神山参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本件につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願いいたします。  なお、議事の順序でございますが、まず参考人に四十五分程度御意見をお述べいただき、その後、小委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言はすべて着席のままで結構でございます。  それでは、神山参考人にお願いいたします。
  3. 神山美智子

    神山参考人 神山でございます。  前回に引き続き参考人にお呼びいただきまして、大変名誉に感じております。  前回も申し上げましたが、日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会の中にプロジェクトチームをつくりまして、検討中であるという状況でございますが、八月二十一日に筑波大学の鎌田博先生をお呼びしてお話を伺いました。ただ、まだそういう段階で、弁護士連合会なりあるいはプロジェクトチームなりの意見がまとまるというところまでは到底至っておりませんので、本日の段階ではまだ私の個人的見解ということで御了解いただきたいと思います。  ただ、一つ申し上げられるのは、鎌田先生お話を伺って、安全論議に踏み込むのはやめよう、これをやっていると、いつまでたっても、私どものような素人が遺伝子組み換え食品が安全かどうかということをやっていてもなかなか理解できない、そこではなくて、私ども法律家団体ですので、法律的な規制の問題と表示のあり方ということに絞って意見をまとめようではないかという点ではおおむね意見が一致しております。十月の、次回のプロジェクトチームの会合でそういう方面での意見を出し合う、こういうことになっております。  この小委員会表示に関する小委員会というふうに伺っておりますけれども、実は、表示の問題というのは法規制と非常に深く結びついておりまして、法規制がないということをまず問題にしていただきたいわけです。  私は、前回も申し上げましたけれども、この遺伝子組み換え食品については何らの法規制がない、ここのところに一番大きな問題点があると思っています。安全性評価指針というものはありますけれども、この安全性評価指針の第四章、私のレジュメにも書きましたけれども、「組換えDNA技術応用食品食品添加物製造又は輸入しようとする者又は必要と認められる者は、その安全性の確保を期するため、当該生産物が本指針に適合していることの確認厚生大臣に求めることができる。」となっておりまして、求めなくてはならないとはなっておりませんので、厚生大臣のお墨つきは要らないという業者がありましたら、自由に輸入販売する、あるいは製造することが可能というシステムになっております。強制力がないという点ですね。  これは私が直接調査したわけではありませんが、いろいろとこういった方面調査をしております日本子孫基金という団体がありますけれども、こちらの小若順一さんという人が直接厚生省等に問い合わせた結果だそうですけれども、五月二十六日に厚生省BTコットンというものの安全性確認をいたしましたが、それより以前にBTコットン輸入されているかどうかということの確認のしょうはない、仮に輸入されていたとしても、それは確認できないのだというふうに厚生省お答えになったと聞いております。  それからまた、これはBTコットン、つまり殺虫剤入りの綿ですね、綿実油販売が可能になった、輸入が可能になったということですけれども、これはBTトキシンが入っているものですが、そのほかに、アメリカでは九六年から除草剤耐性遺伝子を組み込んだコットンというものが収穫されているそうです。この除草剤耐性コットン、綿が、その種がまざったまま日本に輸出されているおそれがある。そして、この綿については同じことしの五月二十八日に第三次の申請品目の中に入っておりますけれども申請をしている段階で既に日本に入ってきているかもしれない、かもしれないけれどもチェックはしていない、こういうことになっているそうです。  アメリカからの輸入量は、綿の実が約五万トン、綿実油が一万五千トン、これは九五年のデータだそうですが、そういうような状況になっていて、この中に申請前のものあるいは確認前のものが入っていても、だれも処罰もされなければ、そのもの販売が禁止されることもないわけですから、安全性評価指針に基づいて安全が確認されているのだから消費者は安心して食べなさいというシステムになっていても、これが機能していないということになります。  例えばこれが、今BT剤というものは農薬取締法に基づいて登録がなされておりまして、販売してもいいことになっておりますけれども、仮に新規に何かの農薬を開発したといたしますと、毒性データをつけて農水省に提出して農水大臣登録を受けないと販売できません。しかし、この新規農薬成分をつくり出すような遺伝子を仮に組み込んで遺伝子組み換え食品として製造販売するということは、これは法規制がないということになりますので、結局、農薬取締法脱法行為を許しているということになります。  それから、食品添加物というものがたくさんありますが、食品添加物をもし新たに製造販売あるいは使用しようという者は、食品衛生法六条に基づきまして、毒性データを添えて厚生省に提出して厚生大臣指定を受ける。これは食品衛生法施行規則の改正ということになりますけれども、そういうふうな指定を受けなければ、食品添加物製造販売あるいは使用すること、陳列することさえできないわけです。食品添加物の中にはほとんど無害に近いようなものもあると言われていますけれども、それでもそういう手続が必要なわけですが、もし食品添加物に当たるようなものを新たにつくり出すような遺伝子を組み込んでしま うと、この手続もとらなくていいわけです。  例えば、油は非常に酸化しやすいということで、油には酸化防止剤というものが入れてあります。これは、例えばBHTとかBHAとかいうようなものが過去非常に問題になりまして、BHA発がん性があるのではないかというようなことが一九八〇年代に大問題になったことがございますけれども、例えば綿実油だとか大豆の油とかコーン油とか、こういったようなものに最初から酸化防止効果のあるような何かそういう物質を生み出す遺伝子を組み込んでしまう、そうした油がっくれると仮定いたしますと、そうすると、これは食品添加物としての指定を得ないまま酸化防止剤入りの油が初めからできてしまうということになります。これも食品衛生法脱法行為を許すことになります。  農薬取締法食品衛生法も、登録を受けないで農薬販売したり、あるいは指定を受けないで食品添加物販売したりいたしますと、懲役または罰金という刑事罰が科せられます。刑事罰が科せられるように一方で規制しているものを最初から遺伝子組み換え技術で入れてしまうと、法規制が一切ないというのが現在のこの安全評価指針の効力である。  それでは、遺伝子組み換え食品というものは全く安全性について議論がないのかといいますと、いろいろと難しい本もたくさんありますし、OECDのものなど拝見いたしますと、私どものような文科系の者はよくわかりませんけれども、それでも野放していいと言っている本に出会ったことはまずありません。安全性リスク解析が必要である、リスク管理が必要である、一定の安全性評価が必要である、野放しにしてはいけない、こういう点については、恐らく異論はないのではないかと思うのです。  そうであるとすれば、安全性解析を義務づける、安全性評価を義務づける、そして必ず安全性確認したものでなければ製造販売してはいけない、輸入してはいけない、こういう制度にしておかない限り、先ほど私が申しましたように、申請が出た時点ではもう既に日本に入ってきているかもしれないということを防げないのではないかというふうに思います。  もう一つ、これはアメリカ調査に行った人と、それから先日の鎌田博先生お話の中に出てきたことなんですけれども、一番最初遺伝子組み換え食品アメリカで話題になりましたのがフレーバーセーバーのトマトですが、あれはフレーバーセーバー・トマトをつくるための遺伝子を組み込んだときに、それがきちんと入っているかどうかということを調べるためのマーカー遺伝子として抗生物質耐性遺伝子というものを組み込む、そしてそれによってたんぱく質とか酵素とか何かができるのだと思いますけれども、これをアメリカ食品添加物として承認したというふうに鎌田先生がおっしゃっておりましたし、アメリカ調査に行った者も、FDAでそう言っていたというふうに言っておりました。  それでは、それはどういう意味なのかというところが問題なんですが、実は食品添加物というものの定義アメリカ日本ではまるきり違います。ここが非常にややこしくてわかりにくい部分なんですが、日本の場合、食品添加物というものは「食品製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう。」ということになっております。  アメリカ連邦食品薬品化粧品法、FFDCAと言っているものですが、このアメリカ連邦食品薬品化粧品法の中にあります食品添加物定義は、翻訳によっていろいろ違いますけれども、「その意図する使用によって、直接的または間接的に食品成分となるか、あるいはそうなることが論理的に考えられる物質、もしくはその他食品に影響を与えるか、またはそれが論理的に考えられる物質」ということで、意図的に使われる物質であって、食品成分の一部になる物質は原則として全部食品添加物になってしまうというのがアメリカ考え方です。そこで、意図的にマーカー遺伝子を入れて抗生物質耐性の何か酵素なりたんぱく質なりをつくり出すとすると、これは意図的に食品成分になるという使い方がされるわけなので、食品添加物に当たるわけです。  アメリカ食品薬品化粧品法では、食品添加物は原則的に危険なものであるという前提に立って法律ができておりまして、安全性確認されて、安全な使用方法が定められているもの以外は含まれていてはならないという条文がありますので、原則的に危険、つまり安全な使用方法というのをチェックして、そういう使用方法を決めないと添加物として使えない、つまり食品成分の一部にできないということなので、マーカー遺伝子がつくり出す産生物添加物であるということで、恐らくFDAチェックをして安全性確認されたということで販売が承認されたのではないかというふうに私は思っております。  そういう考え方をとりますと、例えばBTがつくり出すBTトキシンというたんぱく質は、当然のことながらコーンなりバレイショなりあるいは綿なりの食品の一部になるわけですから、そういうものは食品添加物になるはずで、食品添加物としてFDAが承認しないと使えないのではないか。私はこの話をアメリカ調査に行ってきた人から最近聞きましたし、鎌田先生から伺ったのも八月二十一日でしたので、自分で直接アメリカに確かめるということをまだしておりませんけれどもアメリカ法律システムから考えると、恐らく当然そうなるであろう。  そうすると、アメリカは、アメリカ表示させていないという話がよく出ますが、しかし法規制はあるということになります。法規制があって、安全性を承認しないと使えないんだというところで一遍チェックがされている。だから、安全チェックされているんだから表示しなくてもいいんだよということが導かれてくるのだろうと思いますけれども日本のように法規制がない、ただ単にガイドラインしかない、しかもそのガイドラインも、守らなくてもだれも処罰もされなければ、その守らない食品輸入されても販売されても、その販売を禁止することもできない、そういう非常に緩やかな状態のもとにおいて、安全なんだから表示は要らないんだという理屈は全く成り立たないというふうに考えております。  では、表示はどうするのかということですけれども、非常に難しいのは、まざって輸入されてきてしまうらしいというところだと思うのですが、理論的にはまぜた人がいるはずで、BTコーンでもそのほかのものでも、畑にはBTコーンというような標識が立って植えられておりますので、その畑でできたものは遺伝子組み換えしたものだということは、少なくともつくっているお百姓さんはわかるわけですから、その収穫した段階でまぜなければよろしいわけですね。  分別するとコストがかかりますよという話がありますが、そのコスト遺伝子組み換え食品をつくっている人が負担すべきであって、それ以外の今までの通常大豆なりコーンなりを食べていた人が分別コストを負担するべきいわれはないと思います。ですから、分別をさせるのならばBTコーンが高くなる、あるいは遺伝子組み換え大豆が高くなるという方向コストは行くべきであって、通常遺伝子組み換えしていない方が高くなるというふうにコストが働くというのは、これはちょっと筋が通らないのではないかと思っております。  ただし、なかなかこの分別というのが難しいようで、EUでも、分別させないまま表示させるという方向にどうも行っているらしくて、含まれているとか、含まれているかもしれませんという、メイ・コンテインですか、そういう表示も進められているというふうに聞いておりますけれども、仮にメイ・コンテインであろうがあるいは含まれているということであろうが、表示させないよりはいいと思います。  では、何が含まれているという表示をすべきなのかという点で、私は、表示をするとすれば、グ リホサート耐性遺伝子が組み込まれている大豆を使っていますというところまで表示をしなかったら、この表示が正しいか正しくないかのチェックができないだろうと思います。  鎌田博先生お話を伺っておりましたら、表示しろ表示しろと言われてもチェックができないのだというお話がありました。チェックができないということはどういうことかと質問がありましたけれどもチェックができないというのは、例えばグリホサート耐性遺伝子を組み込まれているかどうかというチェックはできるのだそうですが、ここに何も遺伝子組み換えしていませんという表示があって、この表示が正しいかどうかをチェックするということになったら、物すごいたくさんある遺伝子一つ一つ全部チェックするなどということは、これは技術的に不可能だという話なんですね。そうであるとすると、何をチェックしてもらうのかという、チェックするべきものが決まってなければいけないわけです。  これは農薬でも一緒で、一切の農薬が含まれておりませんとかあるいは農薬使用しておりませんといったときに、これが本当かどうかをチェックするといいましたら、今国内で食用に使われている農薬は四百ぐらいあるとか言われていますから、四百の農薬を全部チェックしないと一切の農薬が使われていないということはわからないわけですけれども、例えば、何とかの農薬と何とかの農薬を使っています、あるいは減農薬にしてこういうものを一回かけていますというような表示があったときに、それ以外の農薬が出てきたら、この表示うそだということはすぐにわかります。  表示をさせるということは、その表示うそだということがチェックできなければ表示意味がありません。ですから、遺伝子組み換え食品を使っておりませんとか、あるいは遺伝子組み換えをしていない大豆でつくった豆腐ですというような表示制度化するということには反対です。そういうような表示がされてしまったら、これはだれでもつけられます。例えば、今まで有機農産物について、うそつき有機、箱だけ有機、シールだけ有機というものが大変はんらんいたしましたけれども、それと同じ状況が出てくるのではないかと思います。そういうような状況を防ぐためには、特定のものが含まれている、例えば、これはグリホサート耐性遺伝子を組み込んだ大豆が使われている豆腐であるとか、あるいはそういうものを使っている油であるとかというふうな具体的な表示をさせないといけないのではないかと思うのです。  それは 可能なはずだと思します。可能だというのは、可能の前提として、安全性評価ガイドラインガイドラインではなく法的な効果のあるものにして、安全性確認を必ず得させる、確認を得ていないものは輸入販売もさせないというふうに口を締めておけば、少なくとも日本国内に入ってくるものは厚生省安全確認が済んでいるものであると言うことができます。  法律があっても違反する人がいるということを前提に話はしておりません。法律があれば一応法律は守られるであろうという前提で話をしたいと思います。今は法律がないのだから何でもできるという状況ですけれども、少なくとも法律があればその法律に基づいて入ってくるであろう。例えば食品添加物も、食品添加物指定を受けないと輸入してはならないと書いてあるにもかかわらず、食品添加物指定を受けずにその添加物が使われた輸入食品というものが入ってまいります。しかし、これは、チェックして出てきた添加物が違反であるということがわかればそのもの販売を禁止するというようなことで、事後的にではありますけれども規制が働いておりますので、法律は守られているという前提で考えます。  そうすると、まず、チェックをして安全性確認を得たもの以外は日本に入れない、日本国内販売しないという規制をする。そうすれば、何が日本国内に流通しているかということを少なくともチェックをする厚生省は把握できるわけですから、今現在、例えば十五種類遺伝子組み換え食品が入っているとすれば、表示をさせるものは十五種類だけで済むわけです。その十五種類のものについて、もしかすると二種類のものが入っているというものがあったとすれば、二種類の、例えば除草剤耐性遺伝子あるいは殺虫剤遺伝子を組み込んでいる綿実を使った綿実油ですとかというような表示が可能になるはずだと思います。  そういう表示をするということは、私は、安全だから食べなさい、食べても大丈夫だというのとは別に、消費者側には正しい情報を知る権利があるという憲法上の要請と、それからもう一つ消費者保護基本法の第十条、「国は、消費者商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため、商品及び役務について、品質その他の内容に関する表示制度を整備し、虚偽又は誇大な表示規制する等必要な施策を講ずるものとする。」という条文があります。この消費者保護基本法十条をフルに活用すれば、消費者選択権利を確保する、知る権利を確保するための表示制度はできるはずだと思います。  厚生省食品衛生法に基づく表示制度は、直罰規定がありまして、これに違反すると罰せられるという規定ですから、なかなか発動しにくい、利用しにくい条文でありますので、安全性に問題がないのだという確認を得ているという場合に表示させるということになかなか厚生省は踏み切ってくれません。  しかし、前回伊藤康江さんが言っておりましたように、食品添加物安全性が実証または確認されたものでなければ使ってはいけないということになっておりまして、一応食品添加物は安全だと厚生省が認めたものを使わせているわけです。安全だと厚生省が認めていながら、食品添加物については全面表示を義務づけております。ですから、安全だから表示は要らないのだという議論は全く成り立たないわけですから、たとえ安全性確認したとしても、少なくとも全世界的に安全とリスク解析が必要でリスク管理が必要だという点で議論が一致しているわけですから、そのリスク管理のためには情報公開が絶対に必要なわけで、知らせるということがあるべきだと思うのです。  今、環境庁などでもリスクコミュニケーションなどという言葉を使った環境庁の方針を打ち出したりしておりますけれどもリスクコミュニケーションと言うためには一方的ではなくて双方向情報交換が必要なわけで、消費者側としても、説明だけされるとか説明したから納得しなさいというようなことでは、リスクコミュニケーション自体が成り立たないと私は思っております。安全だから大丈夫なんだではなくて、安全なんだから表示させる、だから安心してそういう表示のあるものを食べればいいではないか、後は消費者選択にお任せいただきたいというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、今、バイオフリーという、遺伝子組み換え食品を使っていないという表示うそであってもチェックできない。鎌田先生は、うそをつかないという前提で私たちは研究しておりますからというふうにおっしゃるわけです。研究者の方は私はそうだろうと思います。それから、私たちうそをつきますなどと言う企業は、初めからそんなことを言う企業はありませんけれども、しかし、例えば牛乳を水増しして売っていた酪農組合があるとか、製造年月日をごまかして売っていたパン屋さんがあるとか、さまざまなうそつき表示というのは横行しているわけです。これはもう隠れもない事実なわけです。  うそをつかないという前提で物事を考えるというのは、法律は要らないということになります。例えば、これは極端な話ですが、人を殺してはいけないというのは人類普遍ルールです。人のものを盗んではいけないというのも人類普遍ルールですし、あるいは、借りたお金は返さなければならないというのも人類普遍ルールですから、そういうルールがある以上法規制は要らないのだ というのでしたら、刑法や民法は要らないということになるわけです。でも、人類普遍ルールを破る人がいるので、破ったときにどうするかということが法律が必要であるという前提なわけで、うそをつかないという前提は結構だけれども、万  うそをついた人がいたら、うそをついているときにはどうするのかということを考えない法規制というのはあり得ないのではないかというふうに思います。  実は、経企庁にも、消費者保護基本法に基づいて表示制度というものを経企庁が中心になってやってくださいという申し入れに行きました。私のお隣にいる随行者亘昌子さんと一緒に行ったわけですけれども経企庁の方は、食品表示というのは厚生省農水省専権事項であるから、自分たち厚生省農水省にしっかりやってくださいとお願いする立場であるというふうに言われました。  それはやはりおかしいのであって、消費者保護基本法で国にそういう表示制度をつくる責務があって、この消費者保護基本法という法律消費者保護というものをやっているところは経企庁だと私は思いますので、その消費者保護基本法に基づいて、消費者選択権利と知る権利を確保するための制度というものをつくらせるように経企庁がリーダーシップをとるべきではないか。そうでないと、厚生省農水省でやっているのでは、私は心もとないという気がいたします。  厚生省の方にはまことに申しわけないとは思いますけれども、例えば薬害エイズの問題に限らず、その後、私が厚生省の行政に対して大変ショックを受けましたのはヤコブ病の問題ですけれども、硬膜移植を受けてヤコブ病を発症した人がWHOに五十人報告されていて、その五十人のうち四十三人が日本人であって、そして、アメリカは一九八七年にそういうヤコブ病に感染していないことの証明のない硬膜の輸入を禁止しているにもかかわらず、日本はWHOの勧告のあった翌日にそういう規制をした、さらにまたふえて四十六人になった。ということは、一体厚生省というところは何をしているのかということを非常に不満に思います。厚生省安全性確認しているから大丈夫だということを信じている人は、私は、残念ながらいないのではないかというくらいに思っております。  そう言いながら法規制をしろと言っているのは実は本当はおかしいのですけれども、しかし、法規制がないのは、あって法規制がいいかげんというよりももっとどうしようもないことなわけですから、少なくとも今すぐにやっていただきたいのは、ガイドライフを法的な強制力のあるものに格上げさせてほしいということです。そして、そのガイドラインに基づいて、ガイドライン法規制にして、その法規制に基づいて安全の確認を得たものについてはそのとおりの表示をさせるということを実行してほしいと思います。表示がいっぱいになると読む人はいないとか、いろいろ言われますけれども、読む人がいるかいないかは、これは読む人の自由でありまして、書いていなければ読めないわけですから、必ずそういうふうに書かせていただきたいというふうに思っております。  現在、相当多数の自治体からも表示をしてほしいという要望が、厚生省農水省等に上がってきていると聞いております。多くの人にアンケート調査をすれば、表示が必要だ、安全性はあるいは安全かもしれないけれども表示は必要だという意見が大多数を占めているというふうな結果があちこちで出てきております。アメリカでも表示を求める声が上がってきていると聞いておりますし、EUでは表示させる方向だというふうにも聞いておりますので、世界に名立たる食糧輸入大国である日本がもし表示制度を導入しなかったら、世界じゅうの遺伝子組み換え食品がすべて日本に押し寄せることは目に見えているのではないでしょうか。  例えば大豆製品を考えてみますと、これほど大豆を食べる国は世界にはないわけです。アメリカでは大豆表示させなくてもいいとしても、アメリカでは大豆製品というのは食べていないわけで、動物のえさにするか、あるいはごく一部油にするか、そういうことだけで、私どものように、みそ、しょうゆ、納豆、豆腐、油揚げ、それから煮豆から何から、大豆をこんなに食べる国はありません。  そして、私は、これは女性として申し上げたいのですが、大豆は大変大事な食べ物だそうです。私はいろいろなところに首を突っ込んでおりまして、女のからだと医療を考える会という会のスタッフもやっているのですけれども、ここで今、更年期の問題を取り扱っております。更年期について、文化人類学者がアメリカとイギリスと日本との比較研究というのもやっておりますけれども、実は、日本の女性が更年期障害は一番軽いという結果が出ております。  アメリカやイギリスの人に比べて、飲んでいる薬も、胃腸薬だけは日本が一番多いのだそうですけれども、それ以外の薬、ホルモン剤なども含めまして一番少ない。日本人の更年期障害というのは頭が痛いとか肩が凝るとか疲れやすいというもので、よく言われておりますように、かあっと暑くなって汗が出るというホットフラッシュというものは日本では非常に少ないのです。私どもの会でも千人以上の人にアンケート調査をいたしましたけれども、こういうのは少ないのですね。  なぜ日本で欧米に比べて女性の更年期障害が少ないかというと、まず、日本の女性の方がよく動くということがあるそうです、布団の上げおろしとかいうのは非常にいいのだそうですけれども。そのほかにもう一つ大豆を食べているということが大きい影響があるのではないかということを産婦人科のお医者さんが言っています。というのは、更年期障害というのは女性ホルモンが少なくなってくる結果起きるわけですが、大豆を食べるということによって体内で女性ホルモン様物質がつくられるのではないかという研究もあるらしいのですが、日本人の女性は、女性に限らずですが、大豆の摂取量が欧米に比べて非常に多いためにどうも更年期障害も軽くて済んでいるらしい。こんな大事な、大切な、女性の健康のためにもいい大豆を汚さないでほしい。  ですから、本当は一番大事なことは国内で自給していただくということですけれども国内で自給するという政策を進めてもらうのと同時に、とにかく私たちが、例えば女性としていい大豆を、良質の大豆でできたみそ、しょうゆ、納豆、豆腐を食べたかったら共同購入で苦労をしなければ買えない、あるいは有機農産物を買ってこなければ買えないのではなくて、どこかその辺のスーパーに行ってもちゃんとしたものが買えるというようにするためにも、やはり大豆を大切にしていただきたいのです。  遺伝子組み換えで、除草剤耐性の大豆だけではなくて、当然そのうちにもっといろいろな大豆が出てくるはずで、大豆を食べると虫が死んでしまうという大豆とか、あるいは、場合によっては、先ほど申し上げましたように、大豆の油をつくったときに酸化しない大豆というのができるかもしれないとか、こういったことを限りなく考えていきますと、大豆が食べられなくなってくるということがあるわけです。  いろいろな資料を読んでみますと、例えばラットや豚に人間の成長ホルモンを組み込んで、そして成長を物すごく早めるというような研究がなされているとか、そんなような話も書いてあるわけですけれども、仮にそういうものが、例えば成長ホルモンを組み込んで早く大きくした豚というものがどこかであったとして、その豚が輸入されているかもしれないわけです。チェックがないのですから、そういう豚が入ってきていてもわからないわけです。  ですから、表示は大事ですけれども表示の問題の前に、私は法規制をするという前提表示をするということをぜひ検討していただきたい。こちらの小委員会のタイトルが表示問題等に関する小委員会になっておりますので、この「等」というところに、表示だけではなくて、表示前提に なる法規制ということをぜひ入れていただきたいということを切にお願いいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、食品衛生法農薬取締法刑事罰を科してまで登録指定制度を設けているのに、それを脱法していいというような遺伝子組み換え食品は許してはいけない。このことについて、そういうものを許してはいけないということについては反対される方は恐らくいなくて、安全性確認しないで輸入する人なんかいませんよという企業性善説に立ったお話しか常になされていないというのが大変残念だと私は思っております。くどいようですけれども、ぜひ表示と同時に法規制ということを取り上げていただきたいというふうに思います。  私は、この安全性評価ガイドラインが正しいのかどうかというような判断はできません。安全性評価ガイドラインで不足していると思われるのは、一点だけ申し上げると、最終食品チェックが必要だということを鎌田博先生が以前厚生省に出された報告書にお書きになっていらしたのです。その最終食品チェックという部分が抜けているというところは問題だとは思いますけれども食品をネズミに食べさせてチェックができるのだろうか。大量に食べさせないと毒性というのは発現しないわけですから、大量に食品を食べさせたら、それは食べ過ぎてぐあいが悪くなるのかもしれないので、わからないのではないかと思いますので、その辺も、この安全性評価ガイドラインをそういうふうにするべきなのかどうかという点については私自身よくわかりません。  ですから、安全性評価ガイドラインは、私の現時点の考えでは、いじるのが難しければいじらなくても結構ですから、安全性評価ガイドラインの第四章だけ変えていただいて、第四章、当該生産物が本指針に適合していることの確認厚生大臣に求めなければならない。「できる」を「ならない」に変える、それだけですべて済むわけで、非常に簡単なことだと思いますので、ぜひこれは実行していただきたいというふうに思います。  私の意見はこの程度で終わらせていただきます。
  4. 岸田文雄

    岸田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  5. 岸田文雄

    岸田委員長 これより参考人に対し、各小委員による自由質疑を行います。  この際、質疑の方法等について御説明いたします。  本日の質疑時間は一時間程度とし、議事整理のため、質疑の際は 挙手の上 小委員長の指名により発言されますようお願いいたします。  なお、念のため参考人に申し上げますが、御発言はすべてその都度小委員長の許可を得てお願いいたします。また、小委員に対しては質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  6. 河野太郎

    ○河野(太)小委員 自由民主党の河野太郎でございます。  きょうは、わざわざ参考人として御出席ありがとうございます。何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、アメリカ連邦食品薬品化粧品法についてでございますが、実は先週、ワシントンの農務省、アメリカの農務省に行っておりましてこの話をしておりましたが、全く表示はしていないというのが農務省側の説明で、もしこのFFDCAというものにこういう定義があるのならば、当然その旨の表示があってしかるべきなのだろう。この確認をしたいと思いますので、このFFDCAの条文その他、もしわかれば、ぜひ小委員会あてにお知らせをいただきたいということです。  それから、このレジュメを見ますと、マーカー遺伝子の産出するたんぱく質が承認されたということでございます。例えば、フレーバーセーバーのトマトならば、マーカー遺伝子の前に、あれは抗アンチセンス遺伝子というのでしょうか、それがつくり出すたんぱく質も同様に食品添加物扱いになるのではないかと思うのですが、そのあたりについておわかりになれば教えていただきたいというのが一点でございます。  それから、先ほどありました更年期障害と大豆の関連について、そのもとになっている論文がどなたのどういう論文であるのか。これも小委員会に教えていただきたいと思います。  それからもう一つは、レジュメの最後に、「バイオフリー表示が良いという主張について」というところで、「常に特別の栽培をしたものが表示対象になるのが法のあり方」とございます。この書き方でいきますと、恐らくもう極めて近い将来、この数年のうちには、残念ながら今の現状でいけば、遺伝子組み換えをしていない大豆というものが特別な栽培になってしまうのだろう。分別をしたらどうかという議論は確かにあるのですが、実際に現地で見ていますと、日本の水田面積が小さいのだから水田面積を大きくしてコストを下げたらどうだ、やればできるだろうと言っているのとほとんど同じで、お金を幾らでもかけていいというのであれば可能だけれども、現実的にはほとんどそれは不可能であろう。  ということになると、アメリカから輸入される大豆等については、まざっているのが通常の栽培で、特別の栽培というのは、これは入っていませんよというIPハンドリングされたものになるだろう。そうすると、これには遺伝子組み換えを使っておりません、そういう表示の仕方というのが、特別な栽培をしたものの表示対象になるのではないだろうか。それについてどうお考えになるだろうか。  それから、うそであっても検査で証明できないということでございますが、今ほとんどあらゆる表示について、本当にそれが正しいのかどうか、うそであっても検査できない、あるいは検査しても証明できないというのがかなり多いのではないかと思います。遺伝子組み換え食品に限って、検査で証明できないからいかぬというのは、ほかの食品と比べて少し特別扱いをしているような気がいたします。もし違っていれば御指摘いただきたいと思います。  それともう一つ、最後に、発がん物質等もやはりネズミ、マウスで検査をしているわけですから、遺伝子組み換え食品の検査をマウスでやっているのはいかがかというのは、これを人間で、人間で検査できるかどうかわかりませんが、ほかの発がん物質あるいは食品添加物と同等の検査ではいけないのかどうか。そのあたりの御意見をもう少し突っ込んで教えていただきたいと思います。  以上でございます。
  7. 神山美智子

    神山参考人 まず最初に、FFDCAの条文ですが、条文そのものは英文でどこからでも入手できるわけですが、これの翻訳というのが、かなり古いものしかありませんけれども、一冊の本になっております。古い翻訳でもよろしければ、一冊の本を丸ごとコピーすることになりますけれども、そのコピーしたものを後ほどお届けするということは可能です。きょうはちょっと持ってきておりません。  それから、アンチセンス遺伝子ですが、フレーバーセーバー・トマトについては私も同じような疑問を持ったのですけれども、フレーバーセーバー・トマトは、だんだん熟していってしまう酵素を壊すのであって、酵素がつくられないようにする。つまり、食品成分の一部に新たにつけ加えるのではない、食品成分がなくなるだけの話で、それでそちらのアンチセンスの方は添加物にならないということだというふうに理解しております。  それから、先ほどの更年期障害の点については、論文化されているかどうかまでは確認しておりませんが、調査をいたしました人はマーガレット・ロックさんという人で、この人の調査結果というものは入手可能であろうと思います。私どもの女のからだと医療を考える会で、マーガレット・ロックさんの講演会をしたことがあります。  それから、常に特別な栽培をしているものの方が表示させるというのはおかしいのではないかというお話ですが、例えば加工食品の場合に、食品添加物を使っていない加工食品というのはほとんどありませんで、ほとんどすべての加工食品食品添加物使用されております。しかし、食品添加物使用する、人為的に使用するということの方が特別な製造方法なわけで、それで全部、ほとんどどんな加工食品を買っても食品添加物の名前が書いてあります。これは、無添加とか、添加物を一切使用しておりませんという表示は、法的にかどうかわかりませんが、表示はしないことになっているはずです。ですから、食品添加物の場合は、もう食品添加物を使ったものがありとあらゆる食品になっておりますが、食品添加物を使った方に表示をさせております。  それから、農薬の場合には、農薬使用した場合に食品中に残留しているというのは、厚生省の方の考え方は、あれは汚染物である、コンタミネーションだ、意図的に使っている添加物とは違うのだという考え方表示をさせていないわけですけれども、少なくとも今現在あります有機農産物の方のガイドラインでは、有機農産物としての一定の条件というものがありますね。これが、例えば国際基準に合わせてオーガニックというような表示をしようと思えば、認証を受けなければオーガニックの表示ができませんが、認証を受けるためには畑だとかあるいはその残留の検査だとか一定のチェックがあって、そしてチェックの結果正しく栽培していますというので表示をさせている。  食品添加物の場合には、ちょっと最近食品添加物指定基準が変わりましたので、その資料を現在持っておりませんけれども、以前の、昭和四十年にできました食品添加物指定基準の場合には、分析によって添加確認されるものでなければ指定してはならないという条項があったのです。ということは、つまり食品添加物を使っているか使っていないかわからないようになってしまう添加物添加物として認めないというふうになっておりましたから、ですから特別の栽培をしているものの方が表示させるというのは、つまりチェックができるものの方を表示させるべきだという趣旨でございます。  それから、うそを証明できないということは世の中にいっぱいあるのに、これだけうそチェックができないからバイオフリー表示はというのはおかしいのじゃないかというのは、検査でうそチェックできないというのは、例えば人がいないとか予算がないとか、あるいはそれだけの体制ができていないからといりような理由でチェックができないという場合が多くて、遺伝子の数というようなものを考えた場合のチェックができないというのとはかなりレベルが違うのではないかと思うのです。  例えば、これは一切の農薬使用しておりませんといったときに、それをチェックしようと思えば、世の中で製造販売されている農薬というのは何億もあるわけではありませんので、時間とお金をかければ、数百の農薬チェックすれば済むわけですけれども遺伝子の数というのはそんなものではないそうですから、もう文字どおりチェックできない、それは不可能であるというふうに筑波大の鎌田先生がおっしゃっていたので、どれほど人と手間をかけてもチェックできないというのと、人と手間をかければチェックできるというのとは少し性質が違うのではないかというふうに思います。  それから、うそであるということのチェックができないものというのが一体どういうふうに出回っているのか、私もちょっと理解できないのですが、有機農産物の場合に、うそつき有機というのが大変出回っておりましたけれども、これも結局有機農産物をつくっているところへ行けば農薬をまいているかどうかというのはわかるわけで、これはチェックができるというものになるのではないかと思います。  それから最後の、発がん物質どもネズミで検査しているのにというお話は、ちょっと私の言い方が悪かったのかとも思いますが、発がん物質などをネズミに与えて検査する場合には、かなり高濃度で与えます。コントロールという発がん物質を与えないで普通のえさだけのものに、発がん物質の濃度を変えて何種類かでだんだん濃度を上げていって、そしてその濃度に応じてがんが出てくるかどうかというようなことで、いわゆるドーズレスポンスという、量反応曲線というのがあるかどうかとか、そういったようなものを見ながら発がん性があるかないかというのをチェックするというふうに理解しておりますけれども、それは、発がん物質というごく微量のもの、つまり添加するとしてもppm単位で添加する。最初は〇・一ppm、〇・五ppm、最終的には多くても例えば六〇〇ppmというような発がん物質を入れたえさをネズミに食べさせてチェックする。  それはそれで私はいい方法なのだと思いますが、難しいのではないかと申し上げましたのは、最終食品ですね。最終食品の中に予期せぬものが何か生まれてくるおそれがないわけではないということを、鎌田先生が以前の研究報告の中で、厚生省に出されました「バイオテクノロジー応用食品等の安全性評価に関する研究報告書」の平成四年度の部分の中に、「遺伝子産物や代謝産物が、他の細胞の産物と反応して有害な影響を生じる可能性」というところで、「もちろんこの危険性は充分に考えられる。しかし、どのような新たな産物ができるかは一般的には予測不可能であり、また、全ての成分を測定することは不可能である。この点をカバーするためには、出来上がった農作物や食品について毒性試験等をするしか方法はないと思われる。」というふうに書いておられるのです。  ですから、でき上がった農産物、大豆なら大豆とか、あるいはトウモロコシとかバレイショとか、そういうものの毒性テストをしなければ、こういう予期せぬものができてくるかもしれないということはチェックできないというふうに書いておられるのですが、食品を大量に食べさせるということが可能なのかなという点で私は疑問があると申し上げただけで、例えばコントロールで普通のものを食べさせて、あるいはもう一種類遺伝子組み換えでできた大豆を食べさせる、こういう実験をするということは可能だと思います。それは、ラットで十分、あるいはラットとマウスとか組み合わせてやれば十分だと思います。
  8. 藤田スミ

    ○藤田(ス)小委員 きょうは、二度もありがとうございます。何だかとても胸をどきどきさせて聞かせていただきました。  私も、この組み換え食品に対する安全確認が、食品衛生法に基づいて行われている安全審査とはもう全く違って、開発企業安全評価指針に基づいて自主的に安全性評価を行って、厚生省に対してガイドラインに適合しているかどうかの確認を求めることができるということについては、これではだめだというふうに思っておりました。そこにある法的な根拠は厚生省の設置法による行政指導しかないということであるわけですが、法による規制がないままに食品原材料として大量に流通した場合どういう問題が起こってくると思っていらっしゃるか、もう少し聞かせていただきたいのです。先ほど、日本に組み換えの食品がどっと入ってくる、世界で最大の輸入国であるわけですし、一層規制のない、そういうところに入ってくるというお話もありましたが、もう少し詳しく聞かせてください。  それから、私は、実質的同等性の確認法というものが現在では未完成で、完成されているとは言えないということについては、この間の参考人質疑の中でも寺尾先生が、内山先生のおっしゃる発言に対して私が答弁を求めたときに、理論的にはそのとおりだというふうにお認めになりましたので、そのとおりだ、そういうことも明らかになってきたというふうに思っておりますが、この小委員会参考人の皆さんからも、少なくとも基本的な毒性試験、発がん性や催奇形性に至る毒性検査をすべきだ、そういうものを追試してほしいとい う要求が随分出されました。そのことと、先ほどから先生がおっしゃっていることと矛盾するのかなというのが、もう一つ、まだ理解しかねています。  もう一つの問題は、表示制度をつくるために、検査方法ですね。スイスではPCR法という分析法が公定法にされたというふうに、先日の小委員会でも日生協の方からお話がございましたけれども、いずれにしても検査方法を確定して、検査体制の確立を望むという声が、表示制度をつくるためにどうしてもということで求められておりますが、そのためには食品衛生法の改正が必要であると考えるのかどうか、これが二点目です。  それから、この前の参考人質疑のときには、先生は、緊急避難的にJAS法の中で表示制度を定めるということが手っ取り早いというお話がございました。実は私もそのように考えているわけでありますが、きょうのお話にはそこらあたりがございませんので、あれ、これはお考えが変わったのかなというふうに思っております。もう一度、御意見をお伺いしたいわけです。
  9. 神山美智子

    神山参考人 考えが変わっているわけではないのですけれども、なかなか企業側の姿勢がかたくて、強硬なことを言っていても余り通らないような状況がだんだんできつつあるような気がしているわけです。  それで、企業チェックして、厚生省がそのチェックが正しいかどうかを確認するというのは本当はおかしいので、食品添加物やあるいは農薬のように、厚生省が直接データを出させてチェックすべきであると私は思っております。その点については考えは変わっておりません。おりませんが、法改正をしないといけないと思いますので、そうすると、とにかく今はもうどんどん大量に入ってきつつあるわけで、間に合わない法改正では仕方がない。  法改正は当然考えていただきたいと思いますし、前回消費者保護基本法の法改正というのも考えていただきたいというふうに申し上げましたけれども、まず第一番目に、少なくとも、最低限、確認を受けなければならないということなら簡単にやれるのではなかろうか。確認を受けることができるという条文をやめてもらいたい、確認を受けなければ輸入ができない、販売ができないということに、そういうガイドラインでも、ないよりはましだ、最低限それはやっていただきたい。  そしてさらに、なおかつ、食品衛生法あるいは四条の二を使うなり、四条の二を改正してもらいたいと私は思っているわけですけれども、こういったような食品が新たに販売されるときには事前に許可を得るという制度をとるべきだと思うのです。  いろいろなところで、遺伝子組み換え食品だけ目のかたきにするのはおかしい、さまざまなバイオテクノロジー食品が出ている、例えば胚培養だとか組織培養だとかなんだとかいろいろなものが出ているではないか、三倍体の魚も出ていて、そういうものを皆さんは食べているではないか、どうしてその三倍体は言わなくて、この遺伝子組み換えだけ言うのかと。  その三倍体の魚と遺伝子組み換えとは実質的には変わらないのだというようなお話も、この間鎌田先生から伺ったのですけれども、そちらを問題にしていないということはないわけでして、そういったバイオテクノロジー、いわゆるニューバイオと言われておりますようなバイオテクノロジーを使ってつくられた食品はすべて新規性がある食品であると私は思いますので、これは四条の二を改正して、四条の二に基づいて、ニューバイオ、遺伝子組み換えを含むニューバイオ食品は、すべて事前にチェックをして許可を得なければ販売してはならないというふうにしてほしいという基本的な考え方は変わっておりません。  大量に流通したときにどんな問題が起こるのかというのは、私はわからないとしか言いようがないのだと思うのですが、もしそういうことがわかっているようでしたら、こんなに流通しないだろうと思います。  わからないものが五十年後にわかるということの一つの例はDDTだと思います。DDTは、私も首に振りかけられた世代ですけれども、魔法の薬のように言われて、八重山群島の奇跡というんですか、あそこでマラリアを撲滅するのに非常に力があったとか言われておりますが、DDTでもう奇跡的なことが起きたわけですね。  レイテェル・カーソンの「沈黙の春」以降、有機塩素の蓄積性や慢性毒性などがだんだん問題になっていって、日本でも一九七一年には販売が禁止されておりますし、使用も禁止されております。でも、現在でも、農村医学会で農村の人の五十人の血液を分析したところ、五十人全員からDDT、BHC、ディルドリンなどの有機塩素が出てきているというデータが農村医学会で報告されています。  そして、このDDTやBHC、ディルドリンなどの有機塩素はホルモン撹乱物質として働いているということで、これは確実に人類が滅びに向かっているというようなことも、論文というよりも、むしろ何なんでしょうか、いろいろなことが言われていて、書物が出ていると言った方がいいかもしれませんが、女医さんが書かれた論文もありますね。  マウントサイナ医科大学のメアリー・ウォルフさんという方はDDTと乳がんの関係ということを書いておられますけれども、DDTが体内で分解してDDEになったときに、このDDEの濃度が高ければ高いほど乳がんのリスクが高くなるというような論文が医学雑誌に掲載されているそうですが、こういったようなことが今ごろわかってくるわけです。  ですから、私は、この遺伝子組み換え食品が大量に出回ったときにどういうことが起こるかというのは、恐らく十年、二十年たってみないとわからないのではないか。今DDTを体内から排除することはできないわけですから、乳がんのリスクが高いまま、つまり爆弾を抱えたまま私たちは生きていかなければならない。こういうことを繰り返さないためにも、リスクがあるかもしれないものはできるだけ減らしていくというふうに考えるべきで、どういうことが起こるかわからないんだから大丈夫なんだという考え方はとるべきではないというふうに思っております。  それから、実質的同等性というのは、私は全くわかりません。実質的同等性というのは何なのかがそもそもわかりません。実質的同等性というのは、同一だということの証明ができないから、やむを得ずつくり出した言葉ではないかとしか思えません。つまり、ジャガイモはジャガイモには違いないけれども、そのジャガイモの中に新たにBTトキシンというたんぱく質が加わった、それでもジャガイモには違いないと言うためには、今までのジャガイモと違うことは明らかですから、違うけれども同じジャガイモなんだよと言うためには、実質的に同等じゃないかと言うしかない、だから言っているというふうに私は理解しております。  追試の問題については、私はよくわかりませんので、ちょっとお答えできません。  それから、検査法の確立というのは絶対に必要だと思います。例えば、残留農薬の基準というのが非常にたくさんふえましたけれども、基準ができても検査ができなければ何の意味もないということで、残留農薬の簡易な検査方法の確立ということが求められております。なぜ簡易で迅速な検査が必要かといいますと、大体今までは一週間以上かかるわけですが、検査結果が出たときには、ほとんどその農産物は摂取されて体外に排せつされた後なわけですね。これでは検査として何の役にも立たないので、少なくとも一日ぐらいで検査結果が出るような簡易で迅速な検査方法をつくり出さないと、そういう検査体制を確立しないと、残留農薬基準というのは何の役にも立たない。ただ基準をつくっただけ。  そうすると、遺伝子組み換え食品も、チェック体制があって簡易な検査方法というものがない限 り、これは表示をさせても意味がないということになると思いますが、そのために食品衛生法の改正が必要かと言われますと、必要ではないのではないかと思います。  食品衛生法という法律は、厚生大臣がオールマイティーの法律でして、公衆衛生の見地から必要と認めるときは厚生大臣は何々することができるという条文がたくさん並んでおりまして、しなければならないという条文は数えるほどしかありませんので、何々することができるわけですから、できるという条文を使えばどんなことでもできるはずだと思います。  四条の二も、四条の二という条文は大変迂遠な条文だと前回申し上げましたけれども、四条の二はこれはこの条文のままではどうにもしようがないのでぜひ改正していただきたいと思いますけれども、例えば、その四条の二を使って販売を禁止することができるわけで、その販売を禁止する場合に食品衛生調査会に諮問することもできるわけですから、これで、今お話しいたしましたように、大量に出回って、それが人の健康を損なうおそれがない旨の確証がない、そういうものが食品として販売される、つまり、危険だということの証明があるものが販売されるときに諮問するのではなくて、健康を損なうおそれがない旨の確証がないというものが販売される場合には食品衛生調査会に諮問して販売を禁止することができるという条文ですから、非常に幅が広い条文なんです。ほとんど使われたことのない条文ですけれども、こういう条文使用すれば何でもできるのではないかというふうに思います。  それから、JAS法でというのは、私は、緊急避難的にJAS法で食品表示をさせるというのがいいのではないかというのは、今でも思っております。思っておりますが、前回も申し上げましたとおり、消費者選択権利、知る権利を保障するための法律というのがないわけです。ですから、消費者の知る権利選択権利を保障するための法律というものをつくる義務が、消費者保護基本法に基づいて国にはあるのではないかというふうに考えております。  ですから、JAS法であろうが食品衛生法であろうが、法的な根拠は何でも結構なんです。表示制度ができて、そしてその表示制度が実効性があってチェックができれば、法律の根拠は何でもいいですし、どこの省庁でも結構です。しかし、それが消費者権利の立場から行われるためには、もうちょっと経企庁がリーダーシップをとらないと、消費者権利という視点が抜け落ちるのではないかということを心配しているというふうにつけ加えさせていただきたいと思います。
  10. 藤田スミ

    ○藤田(ス)小委員 ありがとうございました。
  11. 中川智子

    ○中川(智)小委員 社会民主党・市民連合の中川です。  本当にきょうはありがとうございました。とてもきょうを待ちわびておりまして、勉強させていただきました。  私も、基本的に今法律がないというところがネック、この表示に対しても、私たちが選ぶ権利に対してもその法的な根拠がないということに対して、ここがネックだと思っているんですね。私も実質的同等性というふうな意味もいろいろな人と議論したのですが、これは本当にわからない。  そして、私は、菅さんが厚生大臣のときにこれが実質的同等性で安全と認めてゴーサインが出されたというふうに伺っていまして、菅さんのことは嫌いじゃないのですけれども、菅さんにちょっと聞いてみたんですね、どういうふうな根拠で遺伝子組み換え食品をそのように認めて安全だというふうに決心されたんですかと。そうしたら、本当にお忙しかったらしくて、何にも覚えてないとおっしゃったんですね。遺伝子組み換えというのは、そのことは何か今問題になっているみたいだけれども、覚えてない。  そのような、国民的な議論も一切せずに、そして知らされずに食べさせられているというところで、今の神山さんのお話にもあったみたいに、五十年先、百年先を本当に想像しないとこの怖さはわからないし、生態系そのものを破壊するし、体の構造そのものに対して非常に危惧をしているわけです。そこで、私たちは、今の自分の体だけではなくて、これから先の命のためにも、今ここでこだわり、そしてきっちりした法律をつくるということに対しても真剣に取り組みたいと思いまして、この小委員会でも議論しています。  基本的な質問になるんですけれども、今もしも、知る権利、選ぶ権利がない中でどうしてもこれは食べたくない、そして食べたくないことを権利として行使するならば、それを拒否するために、例えば食べたくないのに食べさせられている、だから私の身を守ってくださいということで訴えるならば、その法律的に訴えるための何かそういう手続、守るためのものがあるかどうか。拒否するために法的な手段に訴えるならば何があるかということが一点。  もう一つは、もしも具体的に二十年先、三十年先に、この遺伝子組み換えのものが大量に出回って、そしてアレルギーを起こしたり、いろんな因果関係が、立証できないということもあるかもわかりませんが、明らかにそのアレルギー体質を持っている人がこの遺伝子組み換え食品を食したことによって大きな危害をこうむったときに、今ある法律の中でそれを訴えていくための法律というのは、今だったら具体的に何なのか。  この二つを、法律的なところでお教えいただきたいのです。
  12. 神山美智子

    神山参考人 易しい方から先に答えさせていただきたいと思いますが、二番目の、因果関係が立証できない中で、因果関係が立証できたら訴えられるのかというのは、単純に、民法とかあるいは製造物責任法というようなものがありますので、そういう法律を使って損害賠償請求をするということは可能です。  例えば、そのできてしまったものによって、そのことによって被害をこうむった、今まではそういう被害はなかったのに新たにその食品を食したことによって被害をこうむったのだということの証明ができるならば、それは損害賠償請求をするということは現在の法律でも十分可能なのですが、その因果関係の証明というものが非常に困難です。  というのは、食品というのは一種類しが食べないというわけではありませんので、いろんなものを食べて何かになります。例えば食中毒であっても、食中毒菌が特定できないといけません。それから、その食中毒菌が何の食品についていたのかというのがまずわからないですね。ただし、お弁当を食べたら食べた人全員が食中毒になったといえば、お弁当の中の何に入っていたかなどというところまで特定しなくて、そのお弁当が原因であるという点で、お弁当を製造販売した業者に損害賠償請求をするということは簡単です。  これはなぜ簡単かというと、一人だけではなくて、ほとんど集団で発生するからですね。もし大量に遺伝子組み換え食品が出回って、大量におかしな被害が発生したとすれば、これは因果関係の証明は可能だと私は思いますので、そういった場合には損害賠償請求も可能だと思います。  その出てくる被害の出方が、水俣病とかカネミ油症のように普通では出ないような被害であったら証明は簡単なのですけれども、頭が痛くなるとか、じんま疹が出るとか、下痢をするとかいうようなものですと、それは魚を食べてもじんま疹は出るではないかとか、風邪を引いても下痢はするだろうとかいうように、そのほかの原因を消去していって、これだというところを証明することができるだろうか。というのは、今の日本の裁判制度では、因果関係の証明を非常に厳格に要求するのです。因果関係が証明できなくて負けているということを私は経験しておりますので。理論的にはできるのですけれども、実際には非常に難しいだろうという気がしております。  それからもう一つ、どうしても食べたくないという権利、つまり遺伝子組み換え食品を拒否する権利、あるいは逆に言いますと、食品選択する権利あるいは知る権利、こういうものを侵されて いるという人がだれをどういうふうに訴えられるのかということですが、訴えるということは実はだれにでもできることなのです。裁判を起こす権利というのは憲法上認められておりまして、違法であろうが適法であろうが、裁判所が訴状を受け付けないなどということはありませんので、どんな訴訟でも、起こそうと思えばできます。  例えば、モンサントを訴えるということもできますし、あるいは、こういう表示制度をつくらないという点で我々国民の知る権利選択権利が侵されている、その侵されていることに対する損害賠償請求というので、これは国家賠償請求で国家を、国を相手にして、代表者は法務大臣になりますが、こういう訴訟を起こすということも可能です。  例えば、湾岸戦争でお金を出したということに対して、平和のうちに生存する権利を侵されているということで、その権利を侵害されていることに対する慰謝料請求という裁判を数千人の人が起こして、一、二審とも敗訴しておりますけれども、裁判を起こすことは可能です。そういう法的手段はあります。  国家賠償訴訟というのは、いわゆる門前払いといって、この訴訟は違法だなどというような判決が出るということはありませんので、国家賠償の訴訟を起こすということが、法的手段としては簡単な方法としてあります。靖国訴訟というのもそうでして、宗教的な自由が侵されているということで、その宗教的な自由権の侵害に対する慰謝料請求という国家賠償を起こしているわけですね。ですから、こういう裁判を起こす。  それからあとは、それを製造販売したり輸入したりしている人がわかれば、例えば植物油協会とかそういうところに対して、表示をしないで流通させていることによって私たち食品選択する権利が侵されているという訴訟を起こすことは可能ですが、裁判所が、選択する権利とが食べたくない食品を拒否する権利とかいうものを権利として認めて、そしてその権利侵害を損害として認めて損害賠償を課してくれるかどうかということまでは何とも申し上げられない、やってみないとわからないということだろうと思います。しかし、そういう訴訟をやろうという準備をしているグループはあります。
  13. 能勢和子

    ○能勢小委員 自由民主党、能勢和子でございます。  先生から大変明快な最初の陳述がありまして、大変勉強になったところであります。  先生のお話を聞いていて私も思ったことは、表示といっても、今、大豆によっておみそができて、おみそだけを町で売るならば大変表示しやすいと思うわけですけれども、商店へ行きますと、おみそからまた白あえができたりとか、あるいはみそ汁ができたりして商店で売っている。ここまで表示できるかというと、この表示というのは、どのあたりまで表示すればいいかというのは不可能に近いだろうという感じがあるわけです。豆腐が今度おみそ汁になって、町で食べるときに、このお豆腐がどうですかということもできないという難しさがあるだろうと思う。  ただ、我々、安全でありたいという気持ちについては絶対思っているわけですね。きょう先生がおっしゃった一番の、第四章の国が責任を持って安全であるという保証、厚生大臣に求めなければならないということですね。これについては、本当にまとめて、束ねて安全を保証してくれるという感じがするわけであります。表示したから安全を保証するというものではないわけであって、表示して、それを選ぼうといっても、今の流通を見ますと、大半のものがもう既に入っている。全商品に例えばこれは遺伝子組み換え食品ですとあったら、選びようがないわけであります。  それからもう一方、添加物がありますね。お菓子なんかの添加物も、あれが本当に将来、五十年先にあの添加物が安全かどうかということも、因果関係、難しい。何となく気持ちが悪くても、たくさんの添加物が入っていても、多分あれは安全だから添加物が入っているのだろうとこちらは思って食べるわけですけれども、二十年、三十年、四十年先に、果たしていいのかなと思うことだってあるわけですね。例えば芋けんぴ一つにしても、これは何かの油で揚がってきている。お芋だってそうだろう。もうすべての食品がこうなると思う。  少なくとも、今先生の御説明から我々ができることは、本当に国民に安全性を保証するとすれば、一番のネック、入り口のところで安全をきちっと国において保証する、それが最大限できることなのかなという感じがするのですけれども、先生、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  14. 神山美智子

    神山参考人 表示の問題と安全の問題というのは、おっしゃるとおり別だと思います。表示してあるから安全を保証したとかそういうことではなくて、表示というのはいろいろな目的で行われておりまして、表示してあるから消費者が選べるという問題と、それから例えば食品添加物などの場合に、何か添加物でアレルギーを起こす人もあります。そうすると、こういうものを食べていますということがお医者さんに情報として伝わると、その中に入っている添加物が原因ではないかということで、添加物をやめて、そういう添加物のないものを食べてみる。例えば香料などは割合にアレルギーを起こしやすいと言われておりますけれども、そういったふうに医療面でチェックするということもできますし、さまざまな目的で使われていると思いますので、表示してあるから安全ということには全くならないと思います。  当然のことながら、入り口のところで安全を確保していただくように法律をつくるというのが最も大切なことで、それ以上に、それから先の問題というのは、後は国が安全に責任を持てるかといったらそれは持てないだろうと思うのですけれども、だから表示がなくてもいいということにもなりませんし、表示はそれ以上に選択の問題がありますので、安全は確保しても表示をさせてほしいと思います。  表示をどこまでさせるかですが、これは添加物も実は同じでして、おみそを買ってくれば、おみそについている添加物表示されております。それからみそ汁のようなものも、できているみそ汁をお店で飲むときには表示はありませんけれども、最近はレトルトで豚汁とかみそ汁とか、いろいろなものができておりまして、加工食品でパックされている、そういうものがあります。基本的に、食品衛生法に基づく表示は、パック商品のパックに書きなさいというのが原則ですから、パックされていないものには書く場所がないので書かなくてもいいというふうになっているわけですね。ですから、やはりお店に行って、でき上がってきたものを食べているときに表示がないというのは、現在も添加物の問題の一つの抜け穴になっているわけです。  それからもう一つ添加物全面表示とは申しましたけれども、キャリーオーバー添加物といって、原材料の中に含まれている添加物で最終食品の中に効果をあらわさないようなもの、つまり、よく例に出されるのは、おせんべいに塗られているおしょうゆの中のおしょうゆの保存料はせんべいには書かなくていい、それはせんべいの保存料としての効果はあらわさないのだから書かなくていいのだ、こういうふうな制度になっておりまして、全面表示とはいいながらも、かなり抜け落ちている部分があるのです。  そういう部分があるということはいわば仕方がない、現在の時点では仕方がないものとして置いておいて、それと同じ程度、同等程度までの表示遺伝子組み換え食品でもできるのではないか。例えば、お店に行って食べているものが、お豆腐の入っているみそ汁でこの中にどうなっているか、出てきたおみそ汁がどうかというところまでは表示できなくても、少なくともレトルトの商品で何かマーボー豆腐とかあるいはみそ汁とかいうようなものを売っているときに、そのパックに書かせるというところまでは技術的に可能ではないかというふうには思っております。
  15. 能勢和子

    ○能勢小委員 ありがとうございました。
  16. 青山二三

    ○青山(二)小委員 新進党の青山二三でございます。  先生には、二度までこちらの国会の方に足をお運びいただきまして、本当にありがとうございます。  いろいろなお話をお聞きしたわけでございますけれども、食べ物というのは本当に人が生きていく上に大切なものでございまして、健康になるのも、また健康を害するのも口から入れるものであるということを考えますときに、本当に、特に主婦、女性の主婦はいろいろとこれからもしっかりと食べ物に関しましては関心を持って勉強していかなければならないということを常々思っているわけでございます。  それで、一九八八年から一九八九年にかけまして、健康食品のトリプトファンですか、昭和電工が製造いたしました、健康食品と銘打ってつくったその製品が大変な事件を起こしている、食品公害事件というようなものを起こして、千五百人もの人たちが被害を受け、三十八名が亡くなっているということを聞きましたけれども、これはPL法がきちっとあったということで、訴訟も起こっていろいろな賠償も行われていると言われているようでございますが、この事件についてのその後の経過などが先生の方でおわかりになるようでしたらお教えいただきたいということが一点でございます。  それから、この遺伝子組み換え食品が今大変大きな関心事になったということは、消費者団体の皆さんがいろいろと声を発していただいて、その影響が地方自治体の方にも吸い上がって、いろいろな意見書とかそういうものが国会にまで上がってきたという、これは大きな消費者の皆さんの成果であろうかと思うのです。  ところが、私なども地元に帰りまして、いろいろな会合でこの遺伝子組み換えお話をしましたり、こういうことがあるんですよというようなことをお話ししても、遺伝子組み換えって何でしょうかという、まだまだ知らない方が多いわけでございます。ですから、本当にもっともっと消費者の私たちが大きな声を発していかなければならないのではないか、そしてこの大きな声がやがて企業も動かしていくのではないか、こんなふうに思うわけでございます。そういうことで、今後の消費者団体の活動のあり方なども、もし参考になるようなことがありましたらお聞かせいただきたいと思います。  それから、たくさんの方々を参考人としてお呼びしているのでございますが、先ほど先生がおっしゃった、もしEUで遺伝子組み換え食品輸入禁止をするということになる、あるいは表示を義務づけるということになりますと、大豆とかそういう遺伝子組み換え食品がどっと日本に入ってくるのではないかという心配がございましたので、そういうことをお聞きいたしましたが、ヨーロッパにはそれほど大量に輸入がされていないのでその心配はないと断言された参考人がいらっしゃるわけなんです。そういう点での心配は私は残ると思うんですけれども、もう一度先生からその点についてお伺いしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  17. 神山美智子

    神山参考人 トリプトファンの事件について私は余り詳しくは存じませんけれども、トリプトファン事件についての昭和電工の対応は、日本アメリカで全く違っております。実は厚生省の対応も違っておりまして、日本国内にトリプトファン被害者がいるのかいないのか、いるとしたらだれで、どこに何人ぐらいいるのか、そういったような情報がそもそも出てきません。  それから、例えばトリプトファン被害者が、トリプトファンを食べていることは間違いない、日本では株主に売っておりますので、昭和電工の株主の家族の方が被害を受けているんですけれども、一般に販売ということまではいっておりませんでしたから、株主であってトリプトファンを食べているということは間違いないんですが、そのトリプトファンが不純物がまじっていたときのトリプトファンなのかどうかとか、あるいは筋肉痛が起きているんですけれども、その筋肉痛がトリプトファンの不純物によるものであるかどうかとかいうようなことを確定診断できる人がいなくて、アメリカに行かなきゃならないかもしれないとか、あるいは当初のカルテをアメリカに送らなければならないとかいうような問題も起きているんです。  それからもう一つは、本来、発症した直後に一定の血液検査をしなければならなかったはずなのに、その血液検査をしていないというようなこともありまして、それこそトリプトファンを食べた、株主であってトリプトファンを食べて夜も寝られないような筋肉痛に悩んでいるという人が現実におります。おりますが、この人の被害が遺伝子組み換えしたトリプトファンの不純物によるものだということを昭和電工は認めません。それは違うんだと言っているわけですね。この方は、さっき申し上げましたように、最初チェックを受けていないか、あるいは受けているにもかかわらずカルテの一部の検査結果が紛失しているらしいんです。これ以上はちょっと余り申し上げられないんですけれども、そういうような非常に厳しい状況の中でやっていかなければならないわけですね。  アメリカですと、多くの人の救済のためにアメリカFDAも力をかすというようなことがありまして、アメリカはPLの法律があるわけではなくて、そういった判例法の積み重ねがあるわけですけれども、それだけではなくて、例えば安全性を追求するためにわざわざ費用をかけて損害賠償請求する人は行政の手助けをしてくれる人なのだから、行政はその人をサポートしなければならないという思想があるんだそうです。ですから、情報も提供してもらえますし、さまざまなサポートがなされるんですけれども日本では、何かそういったことをやるときに、行政の方で資料を提供してくれたりサポートをしてくれるということが一切ありません。ですから、非常に困難な状況を強いられているのが日本の被害者です。そもそも何人被害者がいるのかさえつかめておりません。  それから、消費者団体が頑張って各自治体から意見が上がってきているということは間違いないんですけれども消費者団体がさまざまな行動をとっていることも間違いないのですが、これがまだまだ地方にまで広がらないという理由は、消費者団体の方にあるのではなくて、私はマスコミにあるのだと思っているわけです。  例えば、四月の統一行動デーでは、人間モルモットだということで、多くの人たちがモルモットの縫いぐるみを着て日比谷公会堂から厚生省までパフォーマンスをするというようなことまでやっているわけですが、ほとんど報道されておりません。モルモットの縫いぐるみを着てパフォーマンスをやっても報道されないとすれば、あと何をしたら報道してもらえるのか、全裸にでもならなければだめなんじゃないかというようなことが冗談で出るほど、遺伝子組み換え食品に反対している消費者の声が大新聞に載らないわけです。  ですから、こういったような大新聞、発行部数を誇っているような大きな新聞に載って地方にまで広がっていかないと、消費者団体だけが頑張っても、これはもう限度があります。これ以上消費者団体に頑張れと言うためには、先ほどちょっと申しましたように、国家を相手に国家賠償の訴訟でも起こさない限り限界があるのではないかというふうに思います。  実は、私もいろいろなところへ呼ばれて行きますけれども、そこのところで農業をやっていらっしゃるある方から聞いたのですが、農協の方が、これは遺伝子組み換えしたトウモロコシなんだよと言って何かトウモロコシを見せてくれた、だからおいしいんだよと農協の人が言ったんだとおっしゃるわけです。ですから、その農協の人も遺伝子組み換えをしたトウモロコシはおいしいトウモロコシだと思っている、おいしくなるように遺伝子組み換えをしたんだというふうに誤解しているというくらいですから、一般の方になかなか行き 渡らないというのは、それはそうだろうなというふうに思います。  一般の方に行き渡らせるというのは、本当にできることは、実はテレビなわけですね。新聞よりもテレビの力が圧倒的に強いわけです。ですから、テレビが例えば遺伝子組み換え食品の特集をやってくれるとか、あるいは大衆紙がやるということが必要ではないかと思います。  先ほどちょっと申し上げましたホルモン撹乱物質という問題について、イギリスのデーリー・メールという大衆紙がありますけれども、この大衆紙は、人類はみずからの生存を今後も続けることができるだろうかという大きな見出しをつけまして、六面を使ってこの問題を特集しています。DDTや何か有機塩素のホルモン撹乱作用で人類は滅亡するかもしれない、その見出しの一番最後は、今日生まれる赤ん坊はおじいさんの半分の精子しか持っていないというのがその見出しなのですけれども、そういったようなものを大衆紙が載せると、その辺の普通の人が読むのだそうです。そこまでいかないと情報は末端にまでは伝わりませんから、もうちょっとマスコミが頑張ってほしいなというふうに私は思います。
  18. 中川智子

    ○中川(智)小委員 もうそろそろ、時間がございませんので簡単に。  最初神山先生、日弁連としてのスタンス、法律規制が必要だということと表示問題をおっしゃいましたが、後は個人的なというお立場でお話しになりました心まず、日弁連としてこの遺伝子組み換え食品に対してプロジェクトでこの間ずっとさまざまな活動をしていらしたわけですけれども、その最初のきっかけと、そして、今後法律的なところで日弁連としての大々的な見解なりなんなりをお示しされる御予定があるならば、大体いつごろをめどに、そしてどの辺をネックにというところでお教えいただきたいと思います。  それと、以前いらしてくださったときにお伺いしたのかと思いますが、食品衛生法でここのところを決めていけば刑事罰があるので、余計ちょっとそこが困難だというふうにおっしゃられて、私もそれがずっと気になっているのですが、そこのところをもう少しお教えいただきたいと思います。  以上、お願いします。
  19. 神山美智子

    神山参考人 日弁連に公害対策環境保全委員会というものがございます。この中で農薬の問題にかなり古くから取り組んできておりまして、例えば「脱農薬社会のすすめ」という本をその委員会として編集して出版したり、それから有機農業促進基本法の提言というのをまとめて、有機農業を促進するためにそういう法律をつくってほしいという提言を農水省にお出ししたりしてきているわけです。それから、松枯れ防止のための空中散布をやめるべきだという意見書を林野庁に出すというようなことをやってきた委員会なのです。  その委員会の中に私も入っておりまして、そういうことをやってきた委員会が、遺伝子組み換え食品がこれだけ話題になっているときに何もやらないのはおかしいのではないかと私が言い出しまして、それでプロジェクトチームが今年度の初めに発足したというのが現状です。  日弁連としての意見を出すためには、まず委員会としての意見をまとめまして、この委員会としての意見が理事会で承認を得られませんと日弁連の意見になりません。日弁連というのは全国的な組織で、委員が全国から集まってまいりますので、会議も二カ月に一遍ぐらいしか開けないわけです。ですからなかなか進まなくて、大体作業をやらされるのは在京メンバーなわけなんですが、在京メンバーあるいは近県、横浜、埼玉、栃木ぐらいまでのメンバーが中心になってたたき台をつくったりして、それを二カ月に一遍くらいの委員会で検討して委員会としての意見書を、プロジェクトチームでまとめたものを委員会の全体委員会で承認を得て、それをその次の月の理事会にかけて、理事会の承認が出ると厚生省農水省へ持っていけるということになりますので、少なくとも、まとまってから二カ月かそこらくらいしないと公式に発表できないというふうになっています。  それで、今年度中には意見はまとめだい。少なくとも今年中にはプロジェクトチーム意見をまとめないと、今年度中に意見書をつくるということはできないと思っております。必要な場合には私ども合宿をいたしまして、何日かまとめて検討して、みんなで手分けをして意見書を打ちまして、遠方から来る人は新幹線の中でワープロを打つというようなことをやって、それをまとめて意見書を一本にするというような作業をやっております。一生懸命やっておりますので、できるだけ早くまとめるようにプロジェクトの委員にもハッパをかけたいと思います。  それから、刑事罰があるというのは、私がそれがネックだと言っているわけではなくて、常に、厚生省食品衛生法に基づいて何かをやってくださいということをお願いすると、食品衛生法は直罰規定なので発動するのが難しいのだということを言われるということなのです。  一般的に消費者保護法律というのは、違反した人はその会社名を公表するとか、それでもなおかつ違反している場合にはその後で何かをするとかいうような間接強制的なものが多いわけですけれども食品衛生法というのは、人の生命、健康に関係いたしますので、違反すると罰則がかかってくるわけです。ですから、表示でも、表示に違反がありますと罰則がかかります。罰則がかかるというのは大変重いのだというふうに厚生省が受けとめているわけです。でも、大した罰金ではありませんから、そんなものは罰則をかければいいではないかと私は思っているわけですけれども、直罰規定を発動させるのはなかなか難しいと厚生省がおっしゃるのがネックだというふうに考えているということです。
  20. 岸田文雄

    岸田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  神山参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして心から御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十九分散会