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1997-02-06 第140回国会 衆議院 国会等の移転に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月六日(木曜日)     午後二時開議  出席委員   委員長 松本  龍君    理事田野瀬良太郎君 理事 西田  司君    理事 根本  匠君 理事 蓮実  進君    理事 坂本 剛二君 理事 萩野 浩基君    理事 玄葉光一郎君 理事 中島 武敏君       佐藤  勉君    下村 博文君       滝   実君    棚橋 泰文君       西川 公也君    村田敬次郎君       茂木 敏充君    渡辺 喜美君       池坊 保子君    旭道山和泰君       武山百合子君    中川 正春君       山中 燁子君    近藤 昭一君       前島 秀行君    岩國 哲人君  出席政府委員         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 五十嵐健之君  委員外出席者         参  考  人         (作   家) 堺屋 太一君         参  考  人         (東京大学大学         院工学系研究科         教授)     月尾 嘉男君         国会等移転に         関する特別委員         会調査室長   白兼 保彦君     ───────────── 委員の異動 一月二十三日  辞任         補欠選任   中野 正志君     下村 博文君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国会等移転に関する件      ────◇─────
  2. 松本龍

    松本委員長 これより会議を開きます。  国会等移転に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として作家堺屋太一さん及び東京大学大学院工学系研究科教授月尾嘉男さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松本龍

    松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。     ─────────────
  4. 松本龍

    松本委員長 この際、参考人一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序ですが、本日は、まず政府より国会等移転に関する検討経緯を聴取した後、参考人からそれぞれ二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  まず、政府より説明を聴取いたします。五十嵐国土庁大都市圏整備局長
  5. 五十嵐健之

    五十嵐政府委員 国土庁大都市圏整備局長でございます。  お手元にお配りしてございます「首都機能移転検討経緯に関する説明資料」に基づきまして、現在までの経緯を簡単に御説明を申し上げたいと存じます。  一ページをごらんいただきたいと存じます。「首都機能移転検討経緯」と書いてございます。戦後、この首都機能移転遷都・分都論を含めまして、この首都機能移転するという議論が何回か行われたわけでございます。しかしながら、いずれも、例えば学者の先生方でありますとか団体の関係の方でありますとかということでの御発言でございました。国がみずからその意思決定をしていくという段取りで始まりましたのが、一番最初に書いてございます平成二年十一月七日の国会等移転に関する決議でございます。この国会移転決議が、現在までの流れにつながっているということでございます。  二ページをごらんいただきますと、これは衆議院参議院全く同じでございます。平成二年十一月七日に決議がなされたところでございます。  最初の段落のところ、明治以来、あるいは戦後我が国は一生懸命やってきたというようなことが書いてありまして、第二パラグラフで、ただ我が国現状は、首都東京集中した結果、過密でありますとか、地価の問題でありますとか、生活環境でありますとか、あるいは災害の問題等々の問題、それから、地方におきましては地域経済停滞過疎地域を拡大させる等々の問題が生じている。  「これら国土全般にわたって生じた歪を是正するための基本的対応策として一極集中を排除し、さらに、二十一世紀にふさわしい政治行政機能を確立するため、国会及び政府機能移転を行うべきである。政府においては、右の趣旨を体し、その実現に努力すべきである。右決議する。」この決議が、全体の動きのスタートということになります。  そして、一ページにお戻りいただきますが、その二年後になります平成四年十二月二十四日に国会等移転に関する法律が公布、施行されました。ここで国会等移転具体化に向けまして、「国」、「国」とございますので、国会は当然でありますが、国会に限りませんで、行政も、それから司法も、この国会等移転について「積極的な検討を行う責務を有する。」という、言ってみますと法律上の責務を国に課したわけでございます。その検討の方針をお書きになった上で、それをもっと具体的に肉づけをするべきであるということから、国会等移転調査会の設置がこの法律で決められたわけでございます。  そして、この法律に基づきましてつくられました国会等移転調査会が二年九カ月にわたりまして審議を重ねられました。この間、国会に対しましては中間報告二回、そして最終的には平成七年十二月十三日というように書いてございますが、国会等移転調査会が最終的な報告をお取りまとめになりまして、この結果につきましても国会報告されたところでございます。  その概要につきましては、先生方詳しく御存じでございますので省略いたしますが、三ページと四ページに全体の概要が書いてあるところでございます。  「首都機能移転の意義と効果」のところ、1だけをちょっと簡単に申し上げますと、目的は何かということにつきまして、規制緩和でありますとか地方分権等国政全般改革の契機になるということ、それから東京一極集中是正災害に強い国土づくり、この国政全般改革あるいは一極集中是正災害、この三つが大きな柱となっております。  そして、3に書いてございますように、選定基準が九つ述べられておりまして、その下になお書きもございますけれども、こういったところで移転先を決めるべきではないか。  そして四ページをごらんいただきますと、全体のプログラムとしては、下の、大きな絵がかいてございますけれども、移転先候補地選定機関というのをつくって、そこで候補地選定作業をやり、その結果を国会報告して、決めるのはあくまで国会である、移転先地国会が決めるという段取りを提案されておられるところであります。  そして、そこで決まりましたら用地取得等に入りまして、二〇〇〇年といいますか、厳密には「世紀を画する年」というような言い方をしているわけでありますが、「世紀を画する年」に建設を開始して、第一段階段階的な整備をしなければいけないというふうに法律には書いてありますが、第一段階の、言ってみますと町開きといったような感じになるわけでありますが、これをそれから十年後、二〇一〇年ごろということになろうかと思いますが、二〇一〇年ごろに第一段階町開き、そしてここで新しい都市での国会を開催すべきだ、こういうような概要調査会報告が取りまとめられたところでございます。  一ページに戻りますが、平成八年六月二十六日、昨年の通常国会におきましてこの法律改正されました。移転調査会報告を受けまして、それからさらに先に、具体移転先候補地を選定すべき段階に入ったという位置づけで法律改正されまして、国会等移転審議会が設けられたところでございます。それにつきましては、五ページに書いてございます。  五ページに書いてございますように、前回の通常国会におきます改正概要でございますが、第2のところに「第一章」、それから3のところに「第二章」と書いてありまして、「第三章 国会等移転審議会」のところを簡単にごらんいただきますと、まず、「総理大臣の諮問」というのが新たに加わっております。  それから、移転先候補地を選定する国会等移転審議会を総理府に設置する。それから「審議会は、国会等移転調査会報告及びこれに関する国会審議を踏まえ、調査審議するものとする。」こと。それから、審議会委員は「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」こと。審議会事務局を置き「事務局長は、内閣官房副長官をもって充てる。」こと等が定められております。  それから、「第四章」でございます。「移転に関する決定」でございます。移転に関する決定のプロセスとしては「審議会の答申が行われたときは、国民合意形成状況社会経済情勢の諸事情に配慮し、東京都との比較考量を通じて、移転について検討されるもの」とし「移転決定する場合には、」「移転先について別に法律で定める。」こととする。「別に法律で定める。」こととありますのは、申し上げるまでもありませんが、決定するのは国会であるということが法律で書かれておるところでございます。  そして、「第五章」と「附則」に、「土地投機対策」が新たに講じられたところでございます。  また一ページに戻らせていただきますが、そういう法律改正がございました。  今申し上げましたように、審議会委員は、移転調査会の場合と異なりまして、移転審議会の場合には、委員については国会同意が必要であるという新たな制度的な枠組みがなされたところでございます。  昨年の十二月十三日というところをごらんいただきますと、国会等移転審議会委員について衆議院の御同意をいただきました。それから十八日に、移転審議会委員につきまして今度は参議院の御同意をいただいたところでございます。  審議会は、昨年十二月十九日にスタートいたしまして第一回、それから第二回がこの一月に、そして第三回をこの二月に開催するということで現在準備を進めておるところでございます。  移転審議会におきましては、移転審議会先生方の二十人のうち移転調査会委員を経験なさった方は五人の先生方にとどまっておりまして、十五人の先生方は各界の権威者でございますけれども、初めてのメンバーということでございます。今までは主としてフリートーキングが一回目、二回目続けられたところでございます。そしてなお、これからどういうぐあいにこの審議会を運んでいくかという議論が行われまして、第二回のときには、正直申しまして、その途中で終わっているというような段階でございます。  それから、全体の運び方の中の一つとして、情報公開議論がございまして、移転審議会では基本的には特定地域を対象とした議論が行われ、当該地域におきます土地騰貴等の問題が生じるおそれがある、あるいは公正かつ中立的な審議に影響、著しい支障を及ぼすおそれがあるというようなことから、これは移転調査会と同じやり方になるわけでありますけれども、審議会が終わった後に速やかに議事要旨を作成して公表する、それから会議が終わった直後には、会長でありますとか会長代理先生方から議事内容について記者団、プレスに対して対応する、こういうやり方を、移転調査会と同様のやり方を踏襲することとなりました。  ただ、移転調査会の時期に比べまして関心が大変深くなっておるというようなことがございますので、私どもできるだけこの議事要旨を詳しくする工夫をしてございます。今までがワープロで二ページ程度といったところを四、五ページぐらいまで詳しくし、かつ、パソコン通信でインターネットで知りたいという全国の方々がおられますので、それは直接国土庁のホームページを開いていただいてすぐそのままとれるような状況にする、こういったような工夫をしてできる限りの情報公開を行っておるところでございます。  以上でございます。よろしくお願いいたします。
  6. 松本龍

    松本委員長 次に、参考人から意見を聴取いたします。  御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、堺屋参考人にお願いいたします。
  7. 堺屋太一

    堺屋参考人 堺屋太一でございます。  お手元に、「首都機能移転の論点」と書いた私のプリントが配られておりますでしょうか。私は、きょう、主として三点についてお話し申し上げたいと考えております。  第一は、「首都機能移転目的効果」でございます。これは既に国会でも長期に議論されておりますので皆さん御案内のとおりだろうと思いますが、改めて申し上げておきたいと考えております。  まず、国会等首都機能移転を行います目的効果の第一は、日本の本当の改革決定的に進め、新しい時代に対応した日本をつくるということであります。  日本歴史を見ますと、各時代首都機能の所在の場所で呼ばれております。奈良時代平安時代鎌倉時代室町時代、安土・桃山時代江戸時代、こう呼ばれておるわけでございます。このことは、首都機能移転すると必ず時代は変わった、また、移転しない間は絶対に時代が変わらなかった。  平安時代は三百九十八年続くわけでございますけれども、その間にいろいろな問題が起こって、反乱が起こったこともございますれば、飢饉の起こったこともありますし、最後にはにっちもさっちもいかなくなりますけれども、それでも平清盛の力をもってしても変えられなかったのです。それで、清盛も最後には六波羅遷都というのを考えるのですが、彼の寿命は尽きました。  ところが、鎌倉時代になると一遍に世の中は変わってしまった、首都機能移転ごとに変わりました。特に、江戸時代から近代日本になるとき、首都機能が約十年間江戸から京都へ移ります。だから、幕末の話というのはすべて京都中心に起こっておりまして、あの間将軍さんも京都に移っておりまして江戸にいなくなったのですね。これが大改革ができた大きな原因でございました。日本歴史の中に首都機能移転しないで根本的な改革ができたという例はまずございません。  したがって、やはりここは、日本を抜本的に改革し、今言われております六大改革実現するためにも、首都機能移転が必要かつ不可欠ではないかと考えております。  第二番目は、東京一極集中是正でございます。  政治行政経済文化、あらゆる機能東京集中しておりますために、日本経済は、一九七〇年ごろを境といたしまして大変高コスト経済になりました。また、文化、言論の一元化、地域個性喪失等が進んでおります。このことは、日本規格大量生産の国である場合には非常に有効に働いたのです。だから、自動車産業電機産業に代表されますような規格大量生産のものは非常にうまくいったのでありますが、創造性多様性を発揮する上では大きな欠点になってまいりました。  また、現実の生活といたしましても、東京圏地価上昇通勤距離の延長、ごみ処理水供給の限界、国際機能流出等が起こっております。バブル崩壊以後、ここ三年ほど、首都圏からの人口社会減が起こっている、流出の方が多くなっているという説がございますけれども、これは、北関東南部、筑波などへの移転が、人口増加がありまして、まさに恐れている首都圏の、東京圏拡大現象過大化現象が生じているのではないかと考えられます。  また、日本経済停滞少子化によりまして相対的一極集中は非常に進んでおりまして、最近の新しい通信機器の、通信網集中も非常に極端であります。  第三番目には、文化多様化情報公平性実現でございます。  地域文化が、互いに地域間で文化的創造の競争というのが必要でございます。特に東京という超巨大都市行政機能があります場合には、行政機能に入ってくる世論や知識というのが東京情報に非常に偏りまして、いわゆる一言重みというのが、一票の重みというのは先生方よく御体験でございましょうが、一言重みというのが非常な格差になっております。  現在、広域情報というものが東京では一人当たり十七万円ぐらいの発信力がありますが、三十以上の県はほとんどゼロであります。大阪府あたりで一万数千円、だいたい十分の一、三十ぐらいの県はほとんどゼロというような値になります。このため、行政公務員情報東京情報に非常に偏っております。  ちなみに申しますと、アメリカではワシントンが経済文化中心とは別にあるだけではなしに、全米五十州でその州の最大都市に州の庁、州庁があるというのはほとんどございません。三つか四つ。その最大の理由は、公務員特定地域情報に偏るということでございますが、今日本では大変そういう状況が起こっております。  第四番目には、国家国民安全性でございます。  これは、阪神大震災のような大規模震災が生じましたときに、現状では対応し切れないという問題があります。特に被災者国家公務員被災者になる場合、救済が極めて困難になります。これは日本列島どこでも地震が起こると言いますが、分散することの効果というのは非常に高いのでございまして、国が直ちに救済活動に入れる状態をつくるべきであると思います。これを避けるために東京を改造しようと思いますと、どうしても五十年以上の歳月と百兆円以上の費用がかかってしまいます。  五番目には、国民の士気の向上でございます。  今日本は恐るべき閉塞感にとらわれておりまして、若い人たちも、日本は変わらないという考え方を持つようになりました。この日本は変われるんだ、新しくなれるんだという、まさに時代を画するという意識を全国民に与えるために、この首都機能移転という極めてわかりやすい現象が必要だろうと思っております。全国的に新たな発想と投資を生み出し、新しい産業文化を引き起こすきっかけになるだろうと思います。  六番目には、全国地域構造改革であります。  現在の地域構造東京一極集中型にできておりまして、東京へ来るため、東京から行くために通信機能交通機能もできております。このために、地方地方という情報機能通信機能交通機能が非常に脆弱でございます。このことは、先ほど申しました国家安全性にも大きくかかわりますが、同時に、情報の選択が東京だけで行われるということで、大きな問題が生じております。  例えば、飛行場にいたしましても、東京飛行機で行く必要のないところにはつくられていないのが現状でございます。例えば群馬県や静岡県には飛行場がないのでございますが、ネットワークで考えますと、九州に行く人も、北海道に行く人も、飛行機に乗って群馬県にも静岡県にも行けるのがいいことでありますが、そういう日本全体の効率的なネットワークができるだろうと思います。これを実現いたしますと、公共事業効果が非常に高くなって、日本全体の経費が非常に倹約できると思います。  ちなみに申しますと、現在日本民間企業、総交通出張費というのは大変高額になっています。旅費、交通費というのが非常に高額になっておりまして、アメリカの二倍近くかかっているのですが、これも東京一極集中日本の効率がいかに悪くなっているかの象徴だろうと思います。  最後につけ加えたいと思いますのは、第七番目の効果といたしまして、最新技術集積であります。  二十世紀軍事技術世界をリードした時代でございましたけれども、二十一世紀には都市環境技術世界をリードすると思います。日本のような豊かな国が首都機能の所在地を建設するとなりますと、世界的にハード、ソフト両面からの都市技術環境技術が集まりまして、世界に誇れるような技術集積ができるだろうと思います。これができるようなやり方、現在の既存の都市にかかわった諸規制を超えたやり方で大いに技術を集めたいと思います。これができますと、日本は大きなバーゲニングパワーを持つ、世界をリードするような技術集積を持てるのでないでしょうか。  二番目に申し上げたいのは、首都機能移転にかかわる経済性でございます。  これはかなり誤解を呼んでおります。といいますのは、先ほど事務当局からも御説明がございました調査会報告でございますが、この首都機能移転費用は、首都機能移転する場合に六十万人、九千ヘクタール、十四兆円というのがひとり歩きをしております。ところが、調査会報告にも明記してあるように、これは最大限でございます。  調査会におきましては、行政改革行政組織リストラクチャリング行政やり方リエンジニアリングについてはこの調査会だけで云々できないということで、最悪の場合、一切これが変わらない人数で動くという前提で計算したらどうなるかだけ出したのです。それが六十万人、九千ヘクタールでございまして、その費用が十四兆円と試算されました。  しかし、これはあくまでも行政改革の成果が不透明な時点での最大限でございまして、実際には行政組織改革リストラクチャリング行政機能電子化等リエンジニアリングの両方で大幅に縮小されるはずでございます。少なくとも、当面の移転は、国会開設時から十年程度を考えますと、必要量はその三分の一以下、人口にいたしまして、どんなに多くても二十万人を超えることはない。用地は三千ヘクタールを超えることはない。当然費用も、将来の用地先買い分を含めましても二分の一以下に済むであろうと思います。  ちなみに、ドイツの場合、ドイツはボンからベルリンに首都機能移転しておりますが、当初言われておりましたのは、五百億マルクないし一千億マルクと言われたのでございますけれども、実際には大幅に下回る二百億マルク以下で全部移転する。日本円に換算いたしますと一兆六千億円ぐらいでございますが、それぐらいの移転費用で全部できるということになっておりまして、かなり前倒しのスピードで進んでおります。  第二番目に、移転費用の大半は民間が支出するのでございまして、税金で賄う部分はそれほど多くございません。首都機能移転に伴う費用には、公的支出公的財産取得──これは特別会計みたいなものです。それから、公益企業投資企業及び個人純粋民間投資の四種類があります。大まかに考えますと、次のようになります。  公的支出というのは、一に基礎調査費。  二にインフラ。これは一般道路、公園、文化施設等。  三に公共建築物国会行政機関行政官庁の庁舎、最高裁判所等首都機能の建物、市役所、公立学校等のその町の地域行政施設、それから公務員宿舎でございます。  四番目には、周辺養生施設周辺河川の修理や景観の保存、植生の保護等が要ります。  それから五番目には、取りつけ道路が要ります。これは、税金といいますか、公的費用で行うべきものだろうと思います。  二番目に、公的財産取得、これは用地買収費。このうち何割かは民間企業に貸与または売却されますので、費用は回収されます。それから、公営住宅、これも、賃借、一部分譲等で回収されます。  それから、三番目には、公益企業投資。これは、電気、ガス、上下水道、市内交通空港等でございますが、これは完全に民営スタイルでできます。  それから、純粋民間といたしまして、ホテルであるとか商店でありますとかいうサービス機関私立学校私立体育館体育施設文化体育施設、例えば後楽園ドームみたいなものですね。それから印刷屋とかその他首都機能に必要な産業、それから個人住宅。  こういうぐあいに支出を分けますと、第一番目の公的支出に当たるものは三分の一以下にとどまることが当然考えられます。これを移転東京都内用地に置きかえますと、都民も安価で豊富な空間を得ることができます。これは、東京土地を売ってという意味ではございませんが、東京も、やはり安全性文化性を考えますと公共空間が必要でございますから、いずれ買うとすれば、こういうところを充てるとすると非常に公的支出として有効になるのではないかということです。  三番目に、首都機能移転費用が一体どれぐらいであるかということをお考えいただきたいと思います。  仮に調査会答申の最大限をとって十四兆円といたしましても、そのうちで財政支出にかかわるものは五兆円以下、特別会計、公共投資等で対応されるものが五兆円ぐらい、純粋民間投資が四兆円ぐらいという配分になろうかと思われます。これを二〇〇〇年から二〇一五年までの十五年間に支出するといたしますと、公共投資の一%以下にすぎません。現実には最大限ではございませんから、〇・四か〇・五%と言えると思います。  ちなみに申しますと、八四年から九三年、これは現在よりも少し単価の安い時代でございますが、その間に投資された公共投資を見ていただくと次のとおりでございまして、全国では三百五十三兆円でありました。それに比べまして、五兆円でございますから、かなり少ない数字、最近でございますとこれは六百三十兆円と言われておりますから、もっと大きくなります。東京都だけで投資されましたものが三十八・八兆円ございます。これが、首都機能移転用地の取得等ができますと、ある程度減らすことができますから、恐らくその方が大きいかもしれません。  それから、今問題になっております臨海副都心、この事業だけで六兆一千億円が投下される予定でございます。これは、建物は平成元年、それ以外は平成二年に改定した数字をとっております。  それから、国の営繕でございますが、庁舎とかあるいは国立病院、国立大学等ございますが、これに投じられているものだけで七兆七千億円支出されております。庁舎を新しく建てるのはむだだという話がありますが、現に霞が関の庁舎はどんどん建てかえられておりまして、これから十五年ぐらいの間にさらに大きく変わるのでございますが、そうなりますと、新しいところへつくった方がいいのではないかということになります。  それから、東京都の営繕でございますが、これは、市町村、区の分を除いて東京都だけでやっておりますのが約二兆五千億ございます。これは営繕だけでございます。  そういう規模から見まして、首都機能移転というのは決して大きな数字ではないということがおわかりいただけるかと思います。  最後に、一言お願いしたい件でございますが、首都機能移転調査につきましては、最終的には国権の最高機関である国会で選んでいただくことになるわけですが、そのためには移転調査について特に御配慮いただきたいと思っております。  調査会におきましては先ほどの最大限の算出をしたのみでありまして、特に立法、行政、司法の三権の最高機関を一括して一カ所に移転することが望ましいという結論に達していました。  もちろん私もそれが望ましいと思いますが、しかし、いかなる問題も絶対ということはございません。相対的な問題でございます。したがって、一つを立てると他の要件が悪くなるということもございますから、一つだけ絶対ということはございませんので、今後の審議会においては、最終的に国会決定される場合の選択肢といたしまして、まず第一に、立法、行政、司法の三権を二ないし三カ所に分けた場合にはどれぐらいの不便が生じるのか、どれぐらいのマイナスなのか、そういうことも考えてほしいわけです。  また、国会と余り関係のないような分野の行政機関の一部を分離した場合はどの程度の不利益なのか、これも考えておく必要があります。  ドイツの場合には、国防省や社会保険庁を中心にして、公務員の数にして半分ほどをボンに残しております。国防省については防衛上の理由、余り東の国境に近くない方がいいということがあるようでございますが、社会保険庁などは人数が多いということを理由にしておりますし、また、それぞれの官庁についても、余り国会と関係のないようなところは逆にボンに集めるというようなことも行ってきました。  日本もそういう可能性もどの程度の問題を持つのか調べておきたいと思っております。これはコンピューターシミュレーション等、いろいろの使い方があると思います。  第二番目には、行政組織改革と手法の変更であります。  調査会におきまして一番残念だったのは、最大限というやや非現実的な大きさのものしか出せませんでしたが、今度は、行政組織改革と手法の変更──リストラクチャリングリエンジニアリングの双方を加えて、幾つかの移転規模について想定して段階的なシミュレーションを行うべきではないでしょうか。  例えば現在、霞が関、国会、最高裁判所、大使館等を通じて五万人余の従業員がおりますが、そのうちの三分の一が移転した場合、二分の一が移転した場合、三分の二が移転した場合等のケースを想定して考えてみることが必要ではないかと思っております。  三番目に、これは一番重要なことでございますが、ややもするとこういう議論は建設議論になりまして、つくりやすさをとってしまうのです。ところが、実際には何百年、百年以上使われるといたしますと、使いやすさの方がはるかに重要であります。博覧会一つやりましても、つくることばかり最初は言って、できたら大体赤字になることが多いのですが、同時に使いやすさを考えておかなければいけません。  新しい首都機能は長きにわたって使用される都市でございますから、最も使いやすい位置と形状というものを考えるべきでございましょう。このため、特に全国土の均衡ある発展のために、各地点ごとの利便性のシミュレーションを考えるべきだと思っております。  四番目に、新技術、新法規の研究でございます。  これは先ほども申し上げましたが、日本がこういうことをやるとなりますと、全世界からいろいろな英知が集まってまいります。今までの日本都市は、既存の建物、既存の住民がいるということが大前提で行っておりましたが、今度は新しい技術を使って新しい地域コミュニティーをつくる、そういうときの新しい手法、技法というものを取り入れていきたいと思います。現行の制度にとらわれずに、新しい町づくり、新しい社会、地域コミュニティーづくりということも世界の英知を集めて研究をする方法が必要だと思います。  以上の観点からいいますと、今この段階、来年度におきまして、調査研究費等かなり官民双方から支援をいただいて、いろいろなシミュレーションを、できることなら複数の研究所に、一カ所の研究所ではなしに、同じテーマを複数の研究所にシミュレーションが出せるような方策をとればいいと思います。伺いますところによると、来年度の法律執行費、調査費は二億円ぐらいしかないそうでありますが、この点はそれで結構でございます。いずれ民間からも、あるいは予備費の流用等もいろいろとお考えいただいて、悔いなき調査、そして国会で判断いただくときにわかりやすい、全国民が判定しやすいような議論が広がるようなものをつくれれば幸いだなと考えております。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 松本龍

    松本委員長 ありがとうございました。  次に、月尾参考人にお願いいたします。
  9. 月尾嘉男

    月尾参考人 月尾でございます。  お手元に「首都機能移転への疑問」と題したレジュメと、その後に五枚ほどの図表をつけたものがありますが、それに沿って御説明させていただきたいと思います。  現在第三次ブームと言われる過去十年ほどの首都機能移転検討の中で、その移転すべき理由というものがさまざまに変遷してまいりましたが、現時点では、「1」と大きく書いてあります中に(1)から(5)までございますようなおよそ五つの理由が一般に首都機能移転が必要だと言われている理由ではないかと思います。  しかし、これらの多くは必ずしも首都機能移転が必要だということを十分納得させる理由ではないのではないかというふうに私は考えております。  順次説明させていただきますが、まず第一点は、国政全般改革のために首都機能移転が必要だということが特に強く強調されるようになっております。しかし、首都という空間というものを移動するということと国政全般改革ということは本質的には関係のないことでありまして、それを関係づけるために現在巷間言われている議論が引っ越し理論と言われるものでありまして、行政改革というのは大変困難な課題であるので空間を移動することによってそれを容易にするという議論でありますが、私はこれは立法府の役割を非常に軽視した議論ではないかと思います。  場所を移さなければ行政、財政のあり方が変えられないというのはむしろ順序が逆の議論であって、行政、財政の改革を明確に示した後、それでは一体どのような首都機能が存在し、それはどのような空間で役割を果たすかというふうに考えるべきではないかというふうに思っております。  同様に、平成七年十二月十三日に発表されました国会等移転調査会報告の二十四ページに、革袋理論といってもいいような理論が書いてございます。「新しい日本は新しい革袋に」という考え方でありますが、これも、現実今進んでいる検討の過程を考えますと、新しい革袋を先に検討し、それに合わせる新しい日本をむしろ後から検討しているような状況になっておるのではないかと思います。  これも先ほどの引っ越し理論同様に、むしろ新しい日本というのはどういう日本であるかということを明確にした上で、それを入れるべき革袋を考える、それでも移転が必要であれば移転するというような方向で考えるべきではないかというふうに思います。  そういう点では、むしろ現在別の検討が進められております、中央集権から地方分権へという動きであるとか、護送船団方式からもっと規制緩和をする方向であるとか、今別途検討されているような課題を先に明確にするということが重要ではないかというふうに思います。  二番目は、東京一極集中是正ということが非常に言われております。  これは、既に一極集中は逆の方向に動き始めているというデータが図1から図4までに掲げてあります。  図1は、三大都市圏での人口の社会増減を示したものであります。既に一九七五年ころから大阪圏、名古屋圏は社会減になっておりますが、唯一人口を吸収しておりました東京圏も一九九四年から減少に転じ始めました。  しかし、東京圏はもともと若年人口が多いために自然増があるから減らないのではないかという議論もありましたが、図2をごらんいただきますと、東京圏も今や人口増加はどんどん減少の方向にいきますし、東京都自身は既にこの六年間ほど人口全体としても減少しておるということでありまして、必ずしも首都圏東京というところが、人口という点から見れば、集中を進めているわけではないということが明確になるかと思います。  図3は、一九九四年から九五年にかけて人口がふえた都道府県と減った都道府県を色分けしたものでありますが、これをごらんいただきますと、東京、愛知、大阪、京都などの巨大な都市圏からその周辺人口が既に大きく動き始めているということが御理解いただけるのではないかと思います。  人口以外のものについてはどうかということですが、これは国土庁の方でおつくりになった資料でありますけれども、例えば、資本金十億円以上の本社、外資系企業情報産業など、つまり出版業、放送業などでの従業者数、研究者数、大学生数などという指標をとりましても、実は八〇年代から九〇年代にかけて全国でのシェアが首都圏で減っておりまして、過去のように首都圏日本経済活動、文化活動、研究活動などを吸収しているという時代ではないということがこのような指標で御理解いただけるのではないかと思います。  三番目に、災害対策ということも、特に阪神・淡路大震災以降、急速に重要な理由として挙げてこられました。これは大変重要な根拠でありまして、確かに東京に直下型の地震などの災害が来れば非常に大きな問題をもたらします。  しかし、これは、本質的に解決するためには、分散して首都機能を持つ、もしくは代替する機能を備えていくというような方法で考えない限り、どこに移しても、仮にその移した先で災害が起これば同等の問題が起こるということでありまして、この課題自身は重要でありますが、それを解決する方法が首都機能移転という方法だけで十分かどうかということも議論する必要があるのではないかと思います。  四番目は人心一新ということでありまして、日本は、先ほど堺屋参考人が御説明されましたように、古代から大変数多く遷都という形で首都機能移転が行われてきました。この多くの理由は人心一新ということでありまして、それ自身は結構かと思います。  特に、文化人類学の方々の説明によりますと、汚れを払うということが大変重要な根拠として挙げられておりますが、汚れというのは、語源は気が枯れるというところからきておるそうでありまして、今の、阪神・淡路大震災、オウム真理教の問題、最近のさまざまな政財界のスキャンダルというようなことか連続して起こる状況を考えますと、人心一新は確かに必要かもわからない。  そういう点では結構ですが、では、人心一新をするのに最も費用効果の高い方法は何かということを是非考えることが必要である。空間を移動するということが人心一新にとって最も効果的な方法かどうかということは是非考えてみるべきではないかと思います。  例えば、一例として、ケネディ大統領がアメリカの人心を一新したのは、スペースという新しいフロンティアへアメリカが進出していこうという演説によって大変人心一新をしたというような例もありまして、本当に十兆円もしくは関連施設も含めれば数十兆円になるかもわからないような費用を投入することによって人心一新をすることが妥当な手段であるかということも、ぜひ考えるべきではないかと思います。  もう一つ、景気浮揚対策として行うということでありますが、これも既に、一般にはもはや、土木的な公共事業による資金投入というものが景気浮揚に大きな効果を及ぼすという従来の考え方は非常に疑問視されるような時代になっております。むしろ、次の時代の社会の基盤をつくるような新しい投資対象に投資することの方がより景気浮揚対策としては有効だというような議論があります。  そのようなことを考えましても、先ほどの人心一新と同様、費用効果をより考え、どのような投資というものがより景気浮揚効果があるかということを考えるべきではないかというふうに思います。  以上、現在までに、過去十年ほどにいろいろ挙げられております首都機能移転の理由は、必ずしも国民全体の納得を得られるほど重要な根拠ではないのではないかと私は思いますが、むしろ、これから二番目として申し上げたい、これまで余り議論になっておらないけれども大変重要だという社会の変化ということを、今から御説明させていただきたいと思います。  よく、この首都機能移転は、国家百年の計以上、数百年にわたる大変な大事業であるというふうに説明されております。この数百年という単位を考えますと、一体、日本という社会もしくはその日本が置かれている世界、地球という環境というものがどのように変化していくかということを明確にとらえるということが必要ではないかというふうに思います。  三点、その大きな変化と思われる条件を列挙してありますが、第一点は、日本がこの過去百三十年ほどの成長ということを前提にした社会ではないということであります。  堺屋参考人がよく、右肩上がりの時代が終了し、右肩下がりの時代になると御説明しておられるような時代がこれから始まるということでありまして、既に十分御承知のことと思いますが、人口で見ますと、一九九五年に、日本の生産年齢人口という、十五歳から六十四歳の働き盛りの人口は頂点を迎え、現在減少に入っております。ことしになりまして人口問題研究所が発表されました日本人口の長期予測では、従来二〇一一年ころがピークと言われていた日本全体の人口のピークが二〇〇七年になるという予測になっております。これは、現在の合計特殊出生率をそのまままだ維持できるという前提でありますが、それが下がればより早く頂点に来るということであります。つまり、人口という国家の最も基礎的な指標がもはや増大しない社会、それを前提とした首都機能というようなものも考える必要がある。  同様に、経済についても、少なくとも過去を見ますと、その次の図6にありますように、既に部分的にはマイナス、よく成長しても年率一、二%という時代に入っております。最近の予測によりますと、次の図7にございますように、二〇二〇年ごろには、実質経済成長率がマイナスに入り、経常収支が赤字になるという予測さえある時代が迫っておるということでありまして、そのような時代に、果たして従来の首都というような概念を前提とした移転政策というものが妥当かどうかということを考える必要があるかと思います。  二番目に、地球規模で考えたときには、資源問題、環境問題というものが大変重要な課題になるということだと思います。  よく二十九日目の恐怖という言葉が使われまして、環境問題というのはまだ大丈夫だと思っていると突然倍々でふえていくために、ほんの最後の一瞬にして巨大な環境問題が到来するというようなことが説明されております。  そのような点から見ますと、現在、世界全体の資源問題、環境問題というのはかなり猶予ならざる事態に来ておるというのが、図8、9でごらんいただけるかと思います。  例えば、化石燃料というのは、あと数百年という単位でしかもはや利用可能ではないという時代が確実に予測されておりますし、過去二百年ほどの炭酸ガスの排出量、大気中の炭酸ガス濃度などの増大の様子を見ましても、こういう問題を解決するということに資するような政策をよりとると  いうことが重要ではないかというふうに思います。  最後に、三番目として申し上げたいのは、実は、新しくこれから始まる、日本に限らず世界全体が突き進む社会というのは、従来の地理的な空間にその中心があるのではなくて、英語ではサイバースペース、恐らく日本語では情報社会と翻訳するのが適切ではないかと思いますが、そのような社会にこそ日本及び世界の将来があるという認識を持つ必要があるのではないかと思います。  アメリカでは、クリントン政権、とりわけゴア副大統領は、アメリカの次の時代のフロンティアはこのサイバースペースにあるということを第一期の大統領就任以来説明しておられます。つまり、アメリカはもはや、地理的空間の中で次の時代の課題を考えるのではなくて、情報空間の中で次の課題を考えるというスタンスをとって、大きな世界戦略をとっております。  この世界というのはいろいろな特徴がありますが、どういう特徴かといいますと、基本的に、距離と場所というものが意味をなさない、距離が意味をなさないという意味は、面積、容積なども同様に意味をなさない新しい空間ということであります。  例えば、図10というのをごらんいただきますと、これは、昨年十二月からNTTが提供し始めました、次の時代情報ネットワークの概念図と、その料金体系というものが下に示してあります。  例えば、最も多くの方がこれから利用されるだろうという、一番上の「OCNエコノミー」というものをごらんいただきますと、これは、電話線四分に相当する程度の通信能力のある回線を、各家庭まで初期負担なしに敷設し、毎月三万八千円の料金を支払えば、世界じゅう二十四時間、この料金内でどのような通信も可能にするというネットワークでありまして、既にこれがサービスを開始しております。  つまり、皆様は、これ一本引かれることによって、例えばアメリカ国会議員と二十四時間にわたって、毎日、しかも一カ月議論されましても、この三万八千円で料金は十分だ、十分というか、それ以上かからないという新しい技術が、今もう既に始まっております。  現在、これまで地理的空間にありましたさまざまな活動が、このサイバースペースの中にどんどん吸収され始めております。例えば新聞は、現在、世界で二百紙ほどの新聞、日本では五、六紙でありますが、世界では二百紙程度の新聞がこのサイバースペースで情報を提供するということをやっております。世界どこでも、同じ情報が同じ時間に見れる、従来のように山奥は新聞が来ないというような状況ではない、どんな山奥におられても同じ情報が入手できるというようなことが始まっております。  商品の流通についても、このサイバースペースの中に次々と今移行しておりまして、どのような不便な場所におられても、例えばアメリカで今流行しているようなネクタイであるとか雑誌であるとか書籍であるというものが、三日程度で家まで届けられるというようなサービスが始まっております。  より大きな変化は、金融取引というようなものも、既に大きくこのサイバースペースへ移るというようなことが起こっております。  では、実際どのようなことがあるかという例を一、二御紹介しますと、朝日新聞は、現在、電子新聞を二年近くにわたって提供しておりますが、この情報は、日本から発信しておるのではなくて、アメリカのカリフォルニアの小さな都市の中にサーバーと言われるコンピューターを置き、そこから世界へ発信するということを行っております。ごく最近、通称ナベプロと言われておる芸能プロダクションが、アメリカにやはりコンピューターを置いて、ナベプロの情報提供を世界に行うというような体制をとったりしております。  そのような時代が始まっておるということを前提としますと、今、首都機能がやるべきことは何かと考えた場合に、最もその中で大事なことは、まず、国家の将来を決める情報を創造するということ、法案その他を含めた新しい情報を創造するということ、並びに、それを必要な場所、全国民を対象、場合によっては海外も対象にして伝達するということだと思います。  このような首都機能の最も本質的なことは、実は、サイバースペースに移せば、どのような場所にあっても可能であります。  これも一、二例を申し上げたいと思いますが、例えば、現在、高知県の食糧費は毎日インターネットの中で情報提供されておりまして、私たちは、ただ簡単にアクセスするだけで、何月何日、何人の方を対象に幾ら食糧費が使われたという明細をすべて見ることができます。一般競争入札の情報も、すべて今高知県はそのホームページの中に提供しております。職員採用についても、すべてこの中で情報提供しております。  それから、もっとアイロニカルなことが起こっておりますのは、アメリカ国会議論された情報国家機密に属するものを除いたものについて、私たちは、現在、日本にいながら四、五時間後にはだれでも自由に手に入れられる状況があります。日本の場合は、官報に載ってだれでも情報が手に入れられる状況というのは、現在、三週間かかっております。つまり、ほんの足元にというか、自分の土地にあるところで行われた議論情報は三週間かかってしか入手できないのに対して、一万キロ近く離れたところで行われた議論情報は三時間から四時間後にだれでも手に入れられるという社会が、既に政治世界でも行われておるということです。  以上のようなことを考えますと、私たちは、これからの移転も含めた首都機能の問題を考えるときに、六十キロから三百キロというような距離を想定したり、何千ヘクタールというような面積を想定したりするということが果たして妥当かということも、百年、二百年という単位の首都機能を考える場合には十分考えなければいけない。  それから、よくこの首都機能移転の問題を考えるときに、ボンであるとか、ワシントンであるとか、キャンベラであるとか、過去の例が引かれます。これはすべて、地理的空間が十分な意味を持った時代に計画され、実現された首都であります。まだ今世界のどこにも、情報社会の首都、つまりサイバースペースでの首都というものはどのような状態であるかということを具体的に実現しようとしているところはございません。あえて言えば、マレーシアが、現在そのような構想をつくり始め、実現に向けて進み始めたという程度であります。  以上のようなことを考えると、私は、これからの首都機能の問題を数百年という単位で考えるときには、ぜひ、既に始まり出したサイバースペースの中で、一体どのような日本を築き、どのような首都機能を持つべきかということを議論いただきたいということを申し上げて、終わらせていただきます。(拍手)
  10. 松本龍

    松本委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 松本龍

    松本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に一言申し上げます。  質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分程度となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。また、御発言は、挙手の上、委員長の許可を得た後にお願いいたします。発言は、着席のままで結構です。  御発言、何かありませんか。
  12. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 田野瀬でございますが、堺屋参考人にお聞きをいたしたいと思うのです。  先生の説明の中に、候補地をこれから審議会で選定なされるわけですが、専門的な調査機関に依頼をして、そして、その機関から挙がってきた候補地を二十人の審議委員でもって選定していく、こういうふうな説明であったやに私は受け取ったのですが、そんなふうに受け取っていいのでしょうか。
  13. 堺屋太一

    堺屋参考人 候補地を専門的な機関、外部の機関に頼むということはしない方がいいと思います。  私が申しておりますのは、テーマごとに、例えばAという地点と、Bという地点と、Cという地点へ、首都機能が行ったときに、全国の出張者がどういう動きになるか、それによって日本経済全体がどれだけ倹約ができるか、あるいは、今、月尾参考人から話がありましたように、サイバースペースを使うことによって出張とか会合とかいうのをどれだけ減らすことができるのか、そういうような個々の問題を分散いたしまして、これを専門機関に審議会の方から条件を与えて、そしてコンピューターもあれするシミュレーションだけお願いする。  それをAがやったらこうだった、Bがやったらこうだったというのが出てきまして、それらを全部集めて審議会事務当局で整理をした答えを首相に報告させていただき、首相から国会報告させていただくのがいいのではないか、そう考えておる次第でございます。
  14. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 そうですが。  そこで、現在、十だとか十一だとか十二だとか、立候補しているというのでしょうか、あるいは誘致に大変熱心なところがあるわけですが、それに限らず、そういうシミュレーションをつくっていくとすると、いろいろな候補地が挙がってくるかと思うのですね。その立候補をした誘致先と、そして先生が今おっしゃられたシミュレーションで選ばれてくるのとの整合性というのでしょうか、その辺は一体どうなるのかということを。
  15. 堺屋太一

    堺屋参考人 第一段階といたしましては、まず、特定の場所で言わないで、日本列島のこの辺の位置、この辺の位置ということを定めて、それによって大きな方向を出すというのが第一段階だろうと思うのです。  第二段階になりますと、具体的に何々県何々地域というのが出てくると思うのですが、その場合には、土地の形状とか地質の問題とか水の流れとかいうことも入ってくるでしょうが、第一段階としては、もう少し抽象化した日本列島の位置で比較検討ができるのではないかと思います。
  16. 松本龍

    松本委員長 田野瀬委員、限られた時間ですので……。
  17. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 ということは、最初の立候補した土地には最初はこだわらない……。
  18. 堺屋太一

    堺屋参考人 はい、最初はこだわらない方がいいと思います。
  19. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 はい、わかりました。
  20. 松本龍

    松本委員長 ほかにどなたか。
  21. 根本匠

    ○根本委員 根本匠です。  私、堺屋先生、月尾先生の話を聞いて、なるほどなと思うのですが、やはり今までの首都移転議論は、ある程度定性的な議論が多かったと思うのですね。これから具体的にどこにどう移すかということになりますと、定量的な、特に費用効果議論をきちんと合理的にしていかないと、何でこんなに金かけて動かすんだということになるだろう。そういう意味では私は堺屋先生の提言は全くそのとおりだと思いまして、特に十四兆円がひとり歩きしましたから、そういう意味では費用をどこまで極小にできるかという具体論、これをきちんと整備する、これが必要だと思うのですね。  その対応で、費用効果の方ですが、効果の方は、堺屋先生、全国地域構造の改変ということで、交通流通コスト、これが低減できるという効果がありますよということで提示されています。  その効果という点で整理すれば、こういう交通通信流通コストの低減、低下、あるいは災害が起こったときの一極集中していることによる効果、それからもう一つ、首都移転によって一極集中是正されて、実は、流れとしては確かに人口東京圏への流入は減っていますが、要は今の東京圏の高コスト構造、つまり、土地が高いあるいは通勤時間が非常にかかるという社会的コストが結果的に軽減できる。  つまり、今の水準をどう見るかということですから、その効果という点でのこういう項目を議論すべきだという点をもう一度お伺いしたいのと、それから月尾先生に、サイバースペースという議論、非常に雰囲気としてはわかるのですが、サイバースペースという概念を入れたときに、堺屋先生のおっしゃるそれぞれの効果についてどういうことになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  22. 堺屋太一

    堺屋参考人 月尾先生の御指摘、一々ごもっともでございまして、先に行政改革地方分権、情報化を進めるべきではないかと言われるのですけれども、実際問題といたしましては、鈴木善幸内閣以来、さまざまに行政改革規制緩和を言ってまいりましたが、余り成果が上がっておりません。特に、サイバースペースに関係のある事務のやり方につきましては、明治以来ほとんど変わらないのですね。  これを機会に大きく変えて、新しい首都機能をつくり上げる、そうすると、場所が移転し、各省の構造が変わってまいりますと、あわせてこのことが公務員の方々のみずからの問題として、外から言うのじゃなしに、みずからの問題として議論される可能性が高いだろうと考えております。  そういう意味でいいますと、私は、首都機能移転というのは日本経済を効率化する、ローコスト化する最良の方法だろうと思います。したがいまして、投資に対しまして効果は、経済的に見ても、精神的とか安全性のことを別にしまして、経済的に見ても、必ずこれは大幅に日本経済コストを引き下げる状況になるだろうと思います。  また、東京に集まっているがゆえに、日本ではフェース・ツー・フェースが便利だと言いますが、そのことがかえってフェース・ツー・フェースをふやして、パーティーばかり開くという悪現象を呼んでいるのではないか。義理があるから東京にいるとどうしても出なければいけないということがありまして、同じ人が一日に五つぐらいパーティーを回っているのがよくありますけれども、そういう情報で済ませられない現象を、この一極集中がむしろ法則的につくり上げているのではないかという気がいたします。  これは、例えばアメリカドイツへ行ってみますと、都市分散が行われているところはそういうことが余りございません。ところが、日本でございますと、東京にいる以上は行かなければいかぬといって、義理で盛んに集まるということがある。集まる癖がつきますと、なかなか電話だけで済まないから、お電話で結構ですと言っても、じゃ、ちょっと伺いますだとか、たくさん来るわけですね。  こういうことをやはり考え直すいいチャンスで、日本全体の精神的構造、習慣的行為から変化を及ぼすことが非常に大きいと思います。  また、通勤距離が非常に短くなる。それから空間的な価格が低下してくるということで、日本の効率も大変高くなると思います。  例えば、ある公務員東京からどこか、ここに書いてあるような新幹線で二時間ぐらいのところへ移転したといたしまして、物すごく東京出張の多い仕事をしているとして、月に三回ぐらい東京出張、往復いたしましても、全交通時間は通勤距離の軽減によりまして非常に短くなるのです。  出張ばかり多くなるように思いますけれども、毎日一時間の往復通勤時間をかけている人から見ると、月三回出張したとしても短くなるのですね。月三回出張する人は珍しいですから、全体としては日本人、国家公務員を含めまして日本人の移動時間を軽減し、移動コストを引き下げる効果が大変大きいと思います。  そういうことも含めて先ほどのシミュレーションをやっていきたい、そしてそれが月尾先生のおっしゃるサイバースペースを日本全体に広げる技術的、精神的なきっかけになるのではないかと考えております。
  23. 月尾嘉男

    月尾参考人 私はまず二点を申し上げたいと思います。  サイバースペースで行政などがどのように変わる可能性があるかということですが、地方分権、情報公開規制緩和の順で三つのことをもし実施できれば、非常に大きく産業の分散その他が起こ  る。  例えば、具体的に申し上げますと、道路の工事を請け負いたいという会社は、もしあらゆる都道府県に、まず道路の、どこへっくるかというような権限が移譲され、その後、現在高知県がやっておりますように直ちにそれを一般公開入札の情報として、だれでも現地へ行かなくてもアクセスできるような情報公開を行い、それに対する参加の資格というものを大幅に規制緩和をすれば、もはやどこにいる企業も必要な自分の会社に適した工事を受注して、そこで工事を行うというようなことができてくる。  これはわずか一例でありますが、そのようなことが起こる。そうなれば当然、例えば四国を中心に工事を行いたいという会社は、実際工事をする関係から四国へ本社などを移動させればいいというようなことが起こってくるかと思います。  それからもう一つサイバースペースで重要なことは、産業地方分散がかなり促進されるということで、現在既にそういうことが起こっております。これも一例をもってすべてというわけにはいかないかもしれませんが、一つの典型的な例を申し上げたいと思いますが、日本でアニメーションをつくるという産業は将来大変大きな産業になると期待されておりますが、九九%が東京集中しております。  ところが、ネットワークを使って自由にコンピューターでアニメーションをつくるという技術を開発した札幌の会社が、東京のキー局の一年間毎週放送するアニメーションをすべて北海道でつくるということを実現しました。その結果、その企業は北海道で現在二百人ぐらい雇用をする会社として発展しておるわけですが、このようなことがサイバースペースの中では可能になってきます。  そうなりますと、今、国民の勤労意識についての総理府の調査などを見ますと、必ずしも新しい若い世代は大都市生活したいという要望はありません。それは非常に少数であります。そうなれば、従来職場がなかったから分散できなかったという人々が産業が分散することによって分散する可能性があるというようなことも起こってくるということであります。  もう一点、ちょっと御参考までに、先ほど環境問題その他についても重要だということを申し上げましたが、こういう例を御紹介したいと思うのですが、紙で新聞をつくり各家庭に配達するエネルギーと電子新聞で各家庭が直接画面の上で読む新聞とは、すべてのエネルギーを比較しまして、つまり、すべてのエネルギーという意味は、例えばコンピューターをつくるのにもエネルギーが要るという部門まで換算しても、二十分の一のエネルギーで家庭まで同じ情報を届けることができます。書籍でありますと、四十分の一のエネルギーで同じ書籍の情報を届けるというようなことが既に可能になっております。  このようなことを考えても、行政の分散的な実施、産業の分散、それから環境問題、エネルギー問題などへの貢献ということがサイバースペースで非常に大きな可能性があるということが既にいろいろ計算され始めておりまして、そのようなことがもし日本の百年以上単位の将来にとって重要であるということであれば、先ほど堺屋先生言われたようなシミュレーションを本当にやってみて、そういうことも十分次の首都機能並びに場所を検討するときのシミュレーションの対象にしていただいたら結構ではないかというふうに思います。
  24. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 両先生、大変参考になりました。ありがとうございました。  私は、賛成の立場から月尾先生に反論を時間内でさせていただいて、同時に、堺屋先生にも御意見をいただきたい部分がございます。  まず一つは、月尾先生の御説明をお聞きしていて、特に最初説明をされた、東京一極集中是正という観点は今や説得力を持たない、そういう御説明でございましたけれども、しかし、確かに東京社会減はあるけれども、最初堺屋先生もちょっと触れておられたけれども、人口というのはある意味ではサイクルがあって、確かに少子化の方向というのは間違いない方向ではあるけれども、かつてだって、昭和三十七、八年ごろからずっと昭和五十年代まで下がっていった、しかしまた東京が上がっていったというそういう経過があるので、ある意味ではこれからどうなるかわからないなという部分があるのではないか。  あるいは、これはよく言われますけれども、私も確かにそうだなと思うのですが、ほかの国と比べたときに、東京圏、よく三千二百万人いると言われますけれども、じゃ、ニューヨークというのは、ニューヨーク大都市圏という大きな範囲を考えた場合でも、実は東京の三倍ぐらいの面積に二千万人ぐらいしかいない。あるいはロンドン、パリも大都市圏で考えた場合、面積は多くて人口は一千万ぐらいだ。そういうことをどう読むのか、本当にこの首都圏人口というのは正常なのかどうかという思いがございます。  それと、最も最初に触れられた、国政全般改革というのは引っ越し理論は不当だというお話がありました。これは非常に政治家は申し上げにくい話ではありますけれども、例えば今橋本総理は第三の改革、つまり第三というのは、第一は明治維新、第二は第二次世界大戦後のことを言っているのだと思いますけれども、私も基本的に認識は一緒です。それは、すなわち、大変なエネルギーを要するということであります。  これは、周知のように、外圧で行われたある意味では改革でもあった。そういう意味では、どうしてもショックなり何らかのエネルギーを力をかりてでも生み出さなければいけないという部分があるのではないかということであります。  それと三つ目は、先ほど来からお話が出ていますサイバースペース、これは私は非常におもしろいなと思って聞かせていただいて、その視点を提供していただいたことは大変ありがたいなというふうに思いますけれども、しかし、それで首都は要らないということに果たしてなるのか。ただ、今おっしゃったように、その視点は大事に考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。  あと堺屋先生に、ごもっともだなという御意見をずっと私聞かせていただきましたけれども、一つは、特におもしろいなと思ったのは、三権を、つまり行政、立法、司法を二つ三つ地域分割で移すことも含めてシミュレーションする、私ぜひそういうことも含めて幅広くやっていただきたいなというふうに思うのです。  特に私は、多極分散型国土形成とこれまで何回も何回も我が国政府は言ってきたけれども、実際には実現していない。そういうことを考えると、私は極は一つよりも二つあってもいい、三つあってもいいというような気持ちがあります。  それと同時に、ぜひ調査会で正式に私はシミュレーションしていただきたいなと思ったのは、財政の問題ですね。あの十四兆円というのは、おっしゃるように、特にアメリカから内需拡大の要請があって、そのときのある意味ではマックスの数字をあえて出したみたいなところがあって、ありとあらゆるシミュレーションを正式に出していただきたい。あの十四兆円のうち、例えば五兆円は用地費になんてなっているのですね。本当にそれが正しいのかなという思いもあるし、ぜひ正式に調査会でもやっていただきたいな、そういうふうに思います。
  25. 月尾嘉男

    月尾参考人 私は特に質問を受けたわけではないので……(玄葉委員「もし反論があれば、それに対して」と呼ぶ)  一点だけ、反論ではありませんが、私は首都は不要と言っておるわけではありません。極端に言えばどこにあってもいいような時代が今や到来するということでありまして、それを、距離とか面積とか容積という物理的次元を中心として検討しているのは、次の百年以上を考えたときには不十分ではないかというふうに申し上げております。
  26. 堺屋太一

    堺屋参考人 今のお話でございますけれども、調査会では余りシミュレーション等やりませんでした。それで、いわば定性的に検討した結果、三権の最高機関、国会、最高裁判所、総理官邸、各省本省の中核部門は一括してある方が便利であるという結論に達しました。私もそうは思います。  しかしながら、それが絶対であって、最高裁判所が分かれたらいかぬとか、特許庁が分かれたらいかぬということは、ほかの条件とのつり合いでございますから、他の条件も考えますと、ここではマイナスだけれどもここではいいということが出てくる可能性がありますから、そういうシミュレーションはぜひやってみたい。  そのときに、例えば国会との関係がどれほど濃密か、これももちろんサイバースペースで大分変わるかもしれませんけれども、やはり現状及び想像できる未来の改革を含めてどれぐらい密接か、余り密接でなかったらどれぐらいのマイナスが出てくるのか、これを実際に今の人の動きをあわせてシミュレーションできるような機会があれば非常にありがたいと思いますので、ぜひ国会でも推進していただければいいと思います。多少費用の点がございますが、今の仮定を置けば不可能な調査ではないと考えております。
  27. 池坊保子

    ○池坊委員 大変幼稚な質問なんですけれども、一極集中にさまざまな弊害があるのは理解できますけれども、首都機能移転することによって一極集中を防ぐことができるのだろうか。  つまり、Aという都市ができたときに、一極ではなくても、それは三極ぐらい、つまり経済都市政治都市文化都市というふうに分かれて首都を移転したところが、同じような疑似東京になっていく、そしたら、それは変わらないのではないかというのが私の疑問なんですけれども、それについてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。お二方に聞かせていただきとうございます。
  28. 堺屋太一

    堺屋参考人 私は、新しい首都機能の所在地ができましても現在の東京のようにはならないと思います。  といいますのは、現在の東京をつくるためにはかなり長い間、東京一極集中の政策、いわゆる有機型国土形成というのを昭和十年代から続けてまいりました。特に昭和十六年から五十年にかけまして各産業界に産業団体をつくらせました。各職能団体、例えば弁護士会とか医師会とかそういうものもつくらせた。あらゆるものをつくらせて、それを役所と関係づけて、その本部事務局を強引に東京集中させるという政策をやりました。これができてしまって完成した結果、今の構造は全くそれに自動的に吸い取られるようになっております。だから、そういう政策を再びとらなければ、現在の東京のようにはならないと思います。  例えば、今、月尾先生からお話がありましたアニメーションでございますが、昭和四十年には、東京集中率が五十数%だったのです。水島新司とか、いろいろ大阪で漫画をかいていた人も全部東京へ来なければいかぬようになったのですね。  何でそうなったかといいますと、書籍流通四社体制というのがございまして、書籍の元売が全部東京集中する、これは昭和十六年につくった体制なのですが、その結果、出版社が東京集中する仕組みをつくってしまった。これを再びつくらなければ、東京のようなことは起こらないと思います。  そして、それがなければ、情報発信が新しい首都機能のところからも政治情報が発信されますから、多様化いたしまして、アメリカドイツやイタリアのように分散がかなり進む、いわゆる都市間の文化競争が起こってくるのではないかと考えております。  だから、過去東京集中にとった政策を再びとらなければ、むしろ分散型の政策を前提とした首都づくりをすれば、再度東京が生まれるということはあり得ないことだと考えております。
  29. 月尾嘉男

    月尾参考人 十年近く前国土庁がおやりになった、東京に本社を持つ企業に対してなぜ東京に本社を置いているかということで、多くの項目の中で、非常に丸がつけられた答えが三つございます。  一つは、中央政府情報収集のために東京に本社を置く。二番目は、同業他社の情報を収集するため。三番目は、取引の情報東京で最も得られるということでありまして、あとは、幾つか理由がありますが、非常にわずかな丸しかついておりません。ということは、基本的に情報を収集するということが今東京へ多くの企業が集まっているということなんですが、そのもとは、たどっていけば、中央政府情報があるということだと思います。  そういうことでありますので、もし別の場所に仮に移しても、そこへ現在と同じような形で中央集権で情報が集まり、なおかつ、情報公開がされずに直接役所の廊下を走り回らなければ情報が入手できないという状態のままであれば、何十年かかかって、東京と同じようなことが、今の東京と同じような方向へ新しい首都が進んでいくと私は思います。  それを避けるためには、国の、立法、行政でおつくりになる情報がどこでも得られるような社会をつくっていくということの方がより効果があると思います。そうなれば、必ずしも集まる必要はない。  よくドイツアメリカなどを分散している例というふうに紹介される場合があるわけですが、これは連邦制をとっておりまして、中央政府の役割、つまり、連邦政府の役割は非常に小さなものであります。例えば教育は完全に州に任されておる、その他多くの、情報をつくる力、それを伝える力はすべて州政府にあるということで、そのために分散が起こっているということだと思います。  ですから、今の中央集権の体制で、なおかつ情報がそこでつくられ、そこへ直接行かなければ集まらないような首都機能というものを想定されれば、移してもほとんど効果はないというふうに私は考えております。
  30. 池坊保子

    ○池坊委員 堺屋先生がおっしゃった、そのような処理をとらなければ構わないということは、今のままであったならば、自然発生的に東京と同じようになってしまうということでございますね。
  31. 堺屋太一

    堺屋参考人 今のままで移ることは不可能でございます。というのは、ある日突然、霞が関のすべての官庁あるいは民間企業の官庁と関係の深い部局が、ある日突然どこかに忽然と生まれるということはあり得ません。そうなりますと、民間企業の方からいいますと、東京にある機能あるいはそれ以外の全国にある機能が、あそこへ行かないと情報がとれないなんということを許容するはずがないのです。だから、首都機能移転したら、首都機能情報を発信しろと全民間企業は要望するに違いありません。政党機能もそうなります。新聞社もそうなります。  そうすると、今のように簡単に霞が関に行けるから霞が関の廊下で歩かなければいかぬという状態になっていますが、そういう企業がそれほどできない段階、これが仮に十年でも続きますと、情報を絶対公開しろということになるのに決まっておるのですね。  したがいまして、社会の圧力からいっても、それから、移転した公務員の心理からいたしましても、また、仕事のやり方の機構からいたしましても、必ずこれは変わるだろう。これは、過去の日本歴史が示しているとおりでございますし、世界じゅう、またそのようになっております。  地方分権の問題もあわせて進むだろう。東京集中しているから、例えば昭和四十五年から今日までの東京、霞が関に権限が集中いたしまして、地方通産局とか地方財務局の権限が縮小しておりますが、これも東京に住みたいという公務員の心理条件と無関係ではございません。そういうことをあわせて考えると、一定の距離の離れたところに移転すれば必ず変わると私は思っております。
  32. 中島武敏

    ○中島(武)委員 お二人に、月尾先生に伺いたいと思います。私は、日本共産党の中島武敏でございます。  私たちは、首都機能移転ということあるいは首都の移転というのは、国民主権にかかわるあるいは議会制民主主義にかかわる非常に重大な問題だと思っているのです。そういう点からお二人にお伺いいたしたいのは、どういうところに首都を置くのがよいのかという首都論、これをひとつ伺いたいと思っています。  先ほど、月尾先生からは、どこでもいいのだというお話がありましたので、そういう角度はそういう角度でわかっておりますので、答える必要がなければ答えていただかなくて結構でございます。  それから二つ目は、これともかかわりがあるのですけれども、この前の国会で、橋本総理に私も質問をし、参議院でもかなり突っ込んだ質問と答弁がありました。結局、初めに移転するのは国会だけなのですね。総理の答弁です。それから、非常にかなり長期にわたって両方に政府ができる。政府じゃないけれども、いわば国会が移って、それから政府機能が移らないという状態が続く。  その次にどうなるかというと、政府機能は政策立案部門だけ移る。そのとき、答弁は、少数でよろしいとは言いませんでしたけれども、自民党の橋本行革ビジョンによれば、これは少数でよろしいということが非常にはっきりしております。  それで、さっき堺屋さんの方からお話があったのです。私は、それはちょっと、先ほど、玄葉さんとはちょっと違うとり方をしたと思うのですけれども、やはり三権は統一して移すべきじゃないかというのが堺屋さんの見解のように伺いました。  私は、そんなふうにして国会だけどこかへ、何か今言われたのは原っぱかあるいは丘陵か知りませんけれども、人里離れたところに持っていってしまうというようなことになれば、これはいかがなものかな。実際のところを言って、国民主権とか議会制民主主義というのは、国民意見がしっかり反映しやすいところに国会というものはあるべきじゃないかなという見解なのです。  そうすると、どこだかわかりませんけれども、行ってしまう。それで、そこへ国会請願に行くと、いや、もう何千円も何万円もかかってしまうのだと。これでいいのかという、私はこういう根本問題があるのじゃないかと思います。  それからもう一つ伺いたいと思っていますのは、さっきから人心一新論、いろいろ言われて、都が移ったときはというお話があったのですけれども、私はちょっと見解を異にしておりまして、奈良に都ができたのは、奴隷制の確立によって奈良に都が移った。それから、鎌倉に都が移ったのは、封建時代ができ上がる、それで都が移った。それから、江戸東京です。これはむしろ江戸時代の中で、つまり封建制の中で資本主義が準備されてきて、それで資本主義への転化が行われる、そういうときに移っている。  つまり、社会経済体制の変化が生み出しているのであって、結果じゃないという見地なんです。ですから、これで人心一新が図られるというのは、どうして人心一新が図られるのだろうというのが非常にわかりにくいのです。  それから……
  33. 松本龍

    松本委員長 手短にお願いします。
  34. 中島武敏

    ○中島(武)委員 では最後。  先ほど堺屋先生が述べられた中に、どれだけお金がかかるかという問題、これは調査会報告には一音半句もありません。あったのは、懇談会の段階でしかありません。  それで、これは非常にむちゃくちゃだと私思っているのですけれども、しかも、いろいろの、かなり民間のものが大多数を占める、こういう御意見でした。  私ども、今まで国会で宇野收さんに質問しますと、いや、あんなもの全然やっておりませんという話で、二十兆かかるか、二十六兆になるか、こういう話をしていて……
  35. 松本龍

    松本委員長 中島先生、手短にお願いいたします。
  36. 中島武敏

    ○中島(武)委員 これは堺屋さんの私見だったのでしょうか。  以上です。
  37. 堺屋太一

    堺屋参考人 仰せのように、首都の形態と国家の形というのは非常に重要な関係があると思います。  その意味からいいますと、現在の東京というのは、やはり中央集権の国の形としてつくられた首都であると言わざるを得ないのじゃないかという気がしております。この点、どのような未来の日本を考えるか、皆さん、国会を初め大いに議論すべきところだろうと思っております。  国会だけが野原のところにぽつんと行くということは私は考えておりません。確かに、一朝にして全部の官庁が移動するということは不可能でございますから、政策中心分野だけが移動するという段階のときが、何年というべきか何カ月というべきか、それはあると思いますが、徐々に移転して現在の中央官庁の公務員の何割かが移転する。それで、他は東京に残るというよりも地方分散に当たる。その中には、国の出先機関であります財務局とか農政局というようなところに移転するのもあれば、都道府県、市町村に移転するのもあるということになるでしょう。  また、そのときの地方制度のあり方についても、国会議論していただく必要があるのではないか、そういうぐあいに考えております。歴史的認識につきましては、先生の御見解もまことにあり得ることだと思いますが、両方相まつて、世の中の変わり方と首都機能移転が相まつて起こった現象だろうと考えております。例えば、平安時代が三百九十八年ずっと封建制度がなくて、急に鎌倉時代になったらできたというのも、その瞬間にできたというのも極端でございますし、また、そういう制度があったから移転したというのも事実でございます。  そういたしますと、まさに今、私たちは規格大量生産時代から違った時代に変わる。そういうのが、月尾先生の今のサイバースペースの話でも用意されようとしている。これをやはり促進し確立するために、場所を、新しい首都機能のあり方、そして、それに伴って新しい行政活動のあり方というものを御検討いただくのがいいのじゃないかという気がしております。  お金の件につきましては、いろいろな人がいろいろなことを言っておりまして、差がございまして、私の個人的見解に違いございません。  これは計算のしようでいろいろありますけれども、実際問題といたしまして、一つずつ積み上げていきますと、そんなに金のかかる要素はないのですね。例えば、最大限二万戸の公務員宿舎を百平米でつけても、平米二十万円として四千億ですからね。東京都庁が二つぐらいできたら、今の霞が関の勤務者全員入るだけの面積になりますが、あれはかなりいいものをつくっておられますけれども、それでも千六百億円、今はバブルがはじけましたから、もっとうんと安いと思うのです。  それから、野原につくるというか、新しいところへっくるとなりますと、工事単価は東京につくる半分ぐらいになりますから、そういうことも考えますと、かなりこれは安くできるのではないかという気がいたします。  私は、個人として自分の想定にかなり自信を持ってお答えしておるつもりでございます。
  38. 月尾嘉男

    月尾参考人 二点だけ簡単にお答えしたいと思います。  まず一つは、どこにということに関しましては、私は、どこに置いても同じような機能が発揮できるような新しい首都機能体制を考えない限りだめだ。つまり、ここにしたらこういう首都になった、こちらにしたらこういう首都になったということはだめでありまして、やや極論でありますが、例えばハワイに日本国会を置いても十分に首都機能を発揮できる程度の新しい将来の首都機能のあり方を考えるべきではないかというのが第一点であります。  ハワイというのは、国の権利が違いますのでこれは冗談ですが、要はそのぐらい自由な場所、そういう意味で、東京も含めて比較考量するという項目がありますので、私は、費用効果を非常に明確に算定してどこへ置くかということを決めたらいいのではないか。  それから、民意反映ということにつきましては、私は、現在の地理的空間よりはサイバースペースははるかに民意反映がしやすいと考えております。  一例を申し上げますと、クリントン大統領のところには毎日アメリカ国民から二万通以上のメールが来まして、三人の秘書の方が専属でそれに対してすべて答えを出しております。恐らく、日本で首相に何か意見を申し上げるということは大変今難しい状況ではないかと思うのですが、むしろそういう、それぞれ先生方の地元であっても、新しいサイバースペースの中では民意反映は現在以上に実はやりやすくなるという時代がもう来ているのではないかというふうに思います。
  39. 下村博文

    下村委員 下村でございます。  まずは委員長に、この国会等移転に関する特別委員会というのは、これは、首都機能移転に関する特別委員会と名前を変えていただいた方が直接的なところではないかなというふうに思うのですね。  それは、私は基本的に未来永劫首都機能移転することに反対しているわけではないのですが、そういう前提で堺屋先生にお聞きしたいのですけれども、そもそもこの首都機能移転を考えるようになったというのは、今までの、戦後の、ある意味ではバブルを象徴していますが、まさに先生のおっしゃる右肩上がりの発想の中での話ではないかというふうな気がいたします。そういう意味で、首都機能を移すことによって新しい日本をつくるというのは実は前後がやはり逆であって、こういう必然性があるから新しい首都をつくるということがなければ、これは失敗するのではないかというふうな気がするわけであります。  それについて先ほど先生が、いや、そうは言ってもなかなか新しいものができないのではないか、だから逆に首都をつくってしまった方が、新しい、本格的な、本質的な改革ができるのではないかというふうな発言をされましたが、それはある意味では、そういう提言であれば、今の橋本内閣の自己矛盾にもなるわけですね。つまり、六つの改革を掲げてこういう改革をしていこうという部分で、一方で、その改革はできないだろう、だから首都を移してしまって、それから本格的な改革をしようというふうな話に私は聞こえるわけであります。  そもそも、首都機能移転する前にやはり地方分権をきちっとすべきである。地方分権をする中で、東京東京の特徴、あるいは、できるだけ官から民に移譲するのと同じように、国の仕事をできるだけ地方でできるところは地方へ移す。  例えば、北海道の開発とか沖縄の開発等はそれぞれのところが独自にするという意味で、もっとある意味では、道州制といいますか、それぞれの地域が特徴のあるような地方分権を先にすることの方がはるかに先決問題であるというふうに思いますし、それは、先ほど先生がおっしゃっていましたが、まさに今の首都機能の話というのは、中央集権体制をそのまま維持するという前提の話のように私は聞こえるわけですね。  ですから、今の中央集権体制のまずい部分が時代的な変化の中で出ているわけですから、その中央集権体制をいかに地方分権に変えていくかということの中で先に議論があるべきだし、その終わった後に首都機能というのを考えても、それはそれでまた違う理由があるのかもしれませんが、繰り返すようですけれども、今の首都機能は、ある意味ではこれから効率的な投資だということも考えると、今までの体制の延長線上での発想である。時代は変わったと、ある意味では、もう一度ゼロから戻って、首都機能移転そのものが本当に六つの改革をできた前提の中で必要なのかどうかということで考えれば、その発想そのものがこれはもう違ってくるのではないか、そういう感じがいたします。  そういう意味で、六つの改革を前提とした中でもう一度首都機能移転を考えた場合に、先生としてはどんなお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  40. 堺屋太一

    堺屋参考人 この首都機能移転の問題というのは、大体私自身が考えたのは二十年近く前なんですけれども、日本が高度成長、その高度成長の前半は規格大量生産実現する時代でございました。そのときには、東京一極に集中していて、そこで情報発信機能文化創造活動も行政経済も全部あることが非常に有利だったんです。そこで、東京で一つ規格をつくって、それを東京から情報発信すれば北海道から沖縄県まで全部つながる。したがって同じ規格品がどっと売れる。だから、日本の自動車や電気製品のようなものが非常に強かった。だから七〇年代まではこれは大変効果のあった、東京一極集中というのは効果のあった時代だと思います。  ところが、七〇年代から八〇年代に移りまして規格大量生産から多様化時代になってくると、だんだんとこれが桎梏になってまいりましてマイナスになってくる。そして今、今まさに規格大量生産時代が頂点をきわめてむしろ多様化、分散化の時代になってきたときに、日本が依然として昭和十六年以来の規格大量生産型の一極集中をやっていることが問題ではないか。だから、今まさに、私はこの時代の変わり目の中で、首都機能移転が重要になってきていると認識しております。ますます重要になってきているし、そして今度つくる首都は、一極集中型、中央集権型でないとかねがね私は主張しているところでございます。  なぜ東京一極集中か、これはもう昭和の初めから立派な帝都をつくろうという意識がございまして、そこに帝都の中に、当時の言葉で帝都ですね、今はそんなこと言いませんが、当時は立派な帝都をつくる、ここに民間企業日本文化も全部集中させる、そういう方向でいろいろな業界団体も芸術文化振興も行われたし、あらゆる施設も、特定のもの、例えば歌舞伎専用劇場とかオペラ専用劇場は東京にしかつくらない、こういう政策をとってきた。これはやはり今こそやめるべきときだ。  そのためには、国家公務員、役人がすべてを知っていて、すべてを監督しているんじゃなしに、役人は情報公平性の中にいなきゃいけない。東京にいると東京のことしかわからない。土地の値段でも東京の値段だけを議論して、どうだこうだと言っております。これはまた相続税の問題でも何でも、必ず土地の値段といえば東京の値段で議論する。  一昨年、西日本で水不足がありましたが、中央官庁の公務員でそのあったということを知らない人が相当多い。こういうような情報公平性のないところでは地方分権はなかなか進まない。地方の実情というのは中央の人から見ますとよくわからないものですから、地方公務員に対する信頼性が国家公務員の方は薄いんです。  実はこれが今一番問題なんですね。地方分権にしようと思うと、そんなこと言っても地方にできるのかという心配を盛んにいたします。これはやはり地方の人の持っている情報と中央の人の持っている情報との違いなんですね。  そういうことを考えると、東京のような大都市で権力集中を前提とした考え方でないところに、いわばもっと、言葉は悪いかもしれませんが、格の低いところで中央官庁があった方が地方分権が進むのではないか。そのことが今の改革を促進するんじゃないか。  私の認識では、橋本内閣は、六つの改革プラスワンでございまして、六つの改革とこの首都機能移転とが同時並行的に考えられていると思います。したがって、これをやっているからこっちはだめだと思っておるというふうには私は読んでおりません。  恐らく、多くの方々は、こういう六つの改革を進めながら、あわせてこの公務員の構造も、新しい、まさに新しい組織を新しい場所で、そして新しい情報機能、事務のやり方というものとあわせて完成させて全部ができ上がる、こういうものだと考えておられると私は受け取っております。
  41. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 お二人の御意見、大変興味深く拝聴いたしました。  開陳された御意見について、ちょっと御質問させていただきますが、まず、堺屋先生の方で、費用の問題、先ほどのと関連するんですが、ベルリンの例をお出しになっていらっしゃいますけれども、ベルリンは首都としてのインフラはかなり整備されておりますし、それから、用地の買収などにつきましても、日本のように資金の制限がないようなところとかなり違うのではないか。そういう意味で、このように少なく見積もって本当に大丈夫かどうかという点が一点でございます。  それから二点目は、今までのちょっと読ませていただきました調査会の中で、分都、それから展都論というのも出ているわけですから、それも含めて、まだそれが可能性としてはあり得るのかどうかという点です。つまり、危機管理などの面で分都ということもあり得るのではないかと私個人は思っております。  それから三点目は、一番最後の、調査費が二億円程度ではとてもできないのではないかということで、先生の御経験から大体どの程度のものが必要でしょうか。  それから、済みません、月尾先生の方にちょっと移らせていただきますが、「人心一新」のところで、アメリカのような契約社会の場合と、日本のように、これは大江健三郎さんのあいまいという、そういう文化、心情的な部分というのをかみ合わせて、場所を移すとか箱を移すとか、物理的な移動ということが心理的に与える影響というのを加味しなくていいかどうかという点が一点です。  それからもう一点は、一番最後のところにお書きになったものの中の「サイバースペース」のところで、先ほど費用効果ということを基本に考えろとおっしゃいましたけれども、そのほかにまだキーポイントというのがあるのではないか。つまり、そういう時代の首都としてのキーポイントがあるのではないかと思いますので、もしキーポイントと考えていらっしゃる点があったら、お聞かせいただきたい。  それから、済みません、大学人の悪い癖ですが、後ほどで結構ですが、この資料の出典をお教えいただければ大変幸いでございます。  以上です。
  42. 堺屋太一

    堺屋参考人 まず第一点の、ベルリンとの比較でございますが、仰せのように、ベルリンの場合には、インフラストラクチャー、それから用地あるいは東ドイツ時代に使われていた建物の利用等がございまして、かなり安くなっております。  したがって、私はドイツと同じ一兆六千億でできるとは思いません。日本はそれよりもかなり高くつくと思いますが、私の乏しい経験で申しますと、例えば日本万国博覧会を開いたときに、これは予算の範囲内で見事に上がったものの一つでございまして、一円も追加を出さなかったのですけれども、むしろ千七百万円だけ残ったのでありますが、このとき、やはり新しい場所につくると、インフラストラクチャー、下水道でも上水道でも、交通網でも、道路でも、大都市でつくるのとけた違いに安いんですね。  大都市で一番高いのは、道路を通しながら道路をつくらなきゃいけない、水道工事をしなきゃいけないというようなところは非常に高いんですが、そういう点ではかなり安いだろう、安くできるだろうと思います。  用地につきましては、これは審議会でも議論になっておりますが、土地価格の値上がりについては抑制措置をとることも必要だと思います。  あわせて、私は土地買収の安易性といいますか、安価性といいますか、そういうものを候補地の条件にしています。土地買収でもめるようなところは落とす。だから、候補地を決めまして、それは複数決めるか、単数にするか、一年以内に九八%買えなかったらそこをやめと、こう言うと地元の協力が得られていいんじゃないか。  実は、万国博覧会を千里丘陵というところで行いました。あれはBIEの許可をとってからすぐかかるわけですから、九十日で百万坪、全部民有地でございましたが、買収しなきゃいけないという状態でありました。私はそれを担当いたしまして、九十九日目に全部御了解をいただきまして、しかも周辺の価格よりもかなり安い価格で分けていただいたことがあります。  この方法は、やはり、もしここがだめなら別のところへ行くよというのは、常に用意してやったのでありますが、そういう土地の値段につきましては抑制措置をとる。これはやはり特別立法を考えていただく必要があるんじゃないかと思います。  それから、分都、展都の問題でございますが、これは、調査会段階で、大変不便であるということで否定されております。例えば、各官庁を幾つかの都市に分散するというふうになりますと、相互の連絡出張も大変になるという問題がやはり出ております。  それから、展都につきまして、南関東一帯に分散いたしますと、その間の交通が大変でございます。外国のように借家が中心でございますと一斉に移転してくれるんですが、日本の場合には、持ち家になりますと都心を突き抜けて通勤する人がふえてしまうんですね。したがって、非常にコストが高くなる。また、建設のためのトラフィックの負担、交通網の負担などが非常に大きくなるので否定されております。  調査費につきましては、今具体的にちょっと金額を言うのは差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 月尾嘉男

    月尾参考人 第一点の、人心一新というのは場所を移すということをしなければできないのではないかというような御質問だったと思いますが、私は、もしそうだとしたら、政治というのは一体何のためにあるかというふうに、ここでは質問してはいけないということになっておりますが、ぜひ皆様方に伺いたいと思います。まさにそれこそ政治家の皆様方が国民に対してやっていただく最大のことではないかと思います。  それから二点目は、サイバースペースのキーポイントは何かということですが、私は、従来の秩序はもはや新しい社会では秩序ではないというような理解を多くの方々が持つこと、例えば年功序列制であるとか、それから終身雇用であるとか、それから、大都市と小都市を比べたときに大都市の方が例えば価値があるとか、大企業と小企業を比べたときに大企業ほど立派だというような従来の価値観を早く払拭するような、国民教育という言葉が適切かどうかわかりませんが、そのようなことを国民が理解する、それを政治家の先生方がより促進していただくというようなことが非常に重要なことではないかというふうに思っております。
  44. 西川公也

    ○西川(公)委員 西川です。  堺屋先生にお伺いをしたいと思いますけれども、先生のレポートを見ますと、費用等も、十四兆円は最大限で、当面必要なのは三分の一ぐらいだろう、こういうレポートになっております。  この審議会のメンバー二十人にお伺いいたしますと、確かに先生の発言が相当影響を持って決めていくとは思いますけれども、この中で大変発言力が強い方だなと私は思っておりました人の懇談会での意見を聞きました。  そのときの話が、何も──国土庁のレポートですと、世紀を画するまでに決めて、二〇一〇年ごろにやっと初国会が開けたらどうかと言っておりますけれども、その先生の話は、五十年ぐらいかけて交互に国会を開いていって、最終的に移転先が本当の首都になる、こういう決め方をしたらどうか。  そして、その金を、あのときたしか三百兆円ぐらいで五十年ぐらいかける、こういう話だったと思います。それを考えますと、むしろ現在の東京機能以上の機能を持たせる、こういうことを長い年月、半世紀かけてやるんだろう、こういう意見かなと受けとめました。  私は栃木県に住んでおりまして、きょうも議員が五人出ているのですね。そして、非常に県民は誘致に熱心なんです。もう反対運動が起きるぐらいまで煮詰まってきた。こういう状況でありますが、果たして世紀を画する時期までに移転先が本当に決まって動くのかということになりますと、県民は疑心暗鬼になります。  というのは、意見が余りにも違う話がある。年数についても今申し上げた意見がこの審議会委員の中にありますし、お金に関しても一けた違う。  こういうことになりますと、先ほど先生、費用等も大体私の意見でまとまっていくんじゃないかというような、見込みのようなお話を先ほど受けとめたんですけれども、今後、これらの違う意見を先生どういうふうに取りまとめていって、さらに、大体意見の集約の見通しはいつの時期を先生は考えておられるか。ぜひお伺いをさせていただければと、こう考えております。
  45. 堺屋太一

    堺屋参考人 私がそれほどの権限はございませんので一概に言えませんが、今おっしゃった三百兆円、五十年というのは見方が違うのだろうと思うのですね。だから、五十年かけたらどれぐらいかと言われると、私はちょっと今想像できません。  しかも五十年ということになると、どの範囲を言っているのか、例えば、そういう首都機能のあるところにまたリニアモーターカーが別にできるのも入れるとか、これはオリンピックが、一兆円のオリンピックと言われましたけれども、本当は五百億円ぐらいで、あとは新幹線をつくった費用とか、だから、その範囲とかディメンションが違うのでちょっと申し上げかねますが、世紀を画するころまでにやはり場所は決めた方がいいと私は思っておりますし、大方の委員及び事務局、また総理大臣からの諮問等も見ましても、そのぐらいのタイミングで考えているんじゃないかと考えております。  ただ、先生の御指摘のように、一般の国民がどうかといいますと、私は半信半疑ならぬ三信七疑だと申し上げておりまして、これは、実を申しますと、この件に限らず、今の六つの改革もそうですし、それから税制の問題でも何でも、実現するまで皆余り議論に乗ってくれないんですね。  だから、こういう極めて大きな将来に影響のある問題でも、先生の栃木県は熱心でしょうけれども、他の府県へ行きますとそうでもないところが多いので、これはやはりもっと国民議論にしていきたい。その意味でも、いろいろな放送番組その他でもこれは取り上げて大いに議論したいと思っております。やはり、信じることが実現することだと思います。
  46. 岩國哲人

    ○岩國委員 私は、首都機能移転に賛成の立場から、堺屋参考人に御意見を伺いたいと思います。  月尾先生の方から、アメリカ国会議論は三時間すると一般の人にわかる、日本国会議論は官報を通じて三週間かかる、こういうふうなお話を伺いますと、日本国民としても、アメリカ国会を非常に身近なものに感じるということがよくわかるお話でした。  確かに、この戦後五十年を振り返ってみても、日本の主な改革政治らしい政治というのはみんなワシントンによって行われてきたのですね。教育改革、農業改革、為替改革、金融改革、証券、貿易、安保、大事な政治はすべてワシントンで行われ、日本に首都というのは存在してなかったと私は思うのです。  したがって、今こそ首都をワシントンから東京移転する、これが必要じゃないかと思うのです。ですから、ワシントンから東京移転する、これは遷都論じゃなくて、私は、帰還する、奪還する、そういう意味で還都論が必要ではないかと思っております。  歴史をずっと振り返ってみますと、日本で一番最初に政が行われたのは出雲、やおよろずの神様が集まって、あそこで政を議しておったのは、出雲大社の周りに、今木づくりのきれいな議員宿舎まで残っております。  そういう出雲から奈良へ、京都へ、それから鎌倉へ、江戸へと、日本の首都は限りなく東へ東へと移動して、そして、戦後大きく東へジャンプしてワシントンへ行ったのを、今こそ私は東京へまず返すと。出雲へ一遍にというのじゃなくて、東京へまず返すという歴史的な視点から、それを還都論首都機能を今こそ東京移転させるべきだと私は思います。  現に、現政権は、地方分権、規制撤廃、そして行政改革等々を通じて小さな中央政府をつくるという改革、決断をしていらっしゃいますから、その改革ができてしまえば、六つの改革の中身をよくごらんになれば、これは首都機能移転なんかすることは必要ないぐらいの改革実現できるのですから、それを信用する。  信じることだと今おっしゃいましたけれども、それが信用できないんだったら、同じ政府首都機能移転をやらせても、これはむだなことだと私、は思うのです。むだな金を使うよりは、財政危機の折から、首都移転は現政権が改革に失敗するまで凍結する。  今の改革に失敗したとき、初めてこの首都機能移転というものを東京からよそへということを考えてみる時期であって、今の政権の六つの改革を行えば、これは首都機能東京からどこかへという議論は必要ないのであって、むしろ我々が心がけなければならないのは、あるものは生かして使う、まさにリサイクルの時代ですから、現在ある東京のインフラというものを使って、私たちが実現しなきゃいけないのは、本当の首都機能、つまり政治機能を充実すること、防災にお金をかけ、首都のインフラを整備すること、あわせて、首都機能移転ではなくて首都機能充実が今こそ私は必要ではないか、そのように思いますけれども、堺屋参考人の御意見を伺いたいと思います。
  47. 堺屋太一

    堺屋参考人 日本の首都がワシントンにあったというのは、ちょっと私には思いつかなかったし、理解できないところでございますけれども、六つの改革論と首都機能移転の問題、これは私はやはり、同時並行的な日本改革の全貌じゃないかというふうに理解しております。  この首都機能移転をおっしゃる方々の前提は、金がかかるということにあるようでございますけれども、東京の改善に比べると、私はそれほど金がかからないんじゃないか。ここにもございますけれども、例えば湾岸一つつくるので六兆円かかっているんですね。東京で、営繕だけで二兆数千億かかっているわけですね。  もし東京都民が阪神大震災クラスのものに安全な町づくりをしようといたしますと、やはり相当のことをしなければいけない。そのときに国家公務員も出勤してない。例えば兵庫県の場合は、地震が揺れましたときに、兵庫県庁、神戸市役所に勤めている人の平均通勤距離が十キロでございました。だから、徒歩でも自転車でも来れないわけではありませんでした。今、東京の場合は二十四キロでございますから、公共交通機関がとまりますと絶望的でございます。  そうなると、一体だれが復興するのかというと、やはり違うものをつくらなきゃいけない。そういうことの費用が非常に高くつくんじゃないか。そのときに、せめてといいますか、その中央司令部、救助の司令部があって、そして対外的にも、為替の問題から緊急輸入の問題までの司令部が別のところにあって、そっちは安全だ、あるいは別のところ、首都が壊れたときに東京機能がある、この分散がやはり非常に大事だと思うのです。  それを考えますと、私は、今の公共事業の中で最も費用対効率が高くて、かつ日本を新しく安全にするために一番安くっく方法である、しかも、それ以降のことを考えますと、かなり経費が安い状態が生まれるんじゃないか、これがやはり大事なところだと思います。この首都機能移転が高くつく、費用がかかるという前提でのお話が多いのでございますけれども、私はどうもその点は逆じゃないかという認識を持っております。
  48. 岩國哲人

    ○岩國委員 今、ちょっと関連してあれですけれども、費用効果ということ、確かにこれは経済世界でよく言われることですけれども、しかし東京都民、住民の立場からいいますと、たとえ高かろうと安かろうと、そのお金はまず、東京がそんなに危ないんだったら危ない東京に使ってほしいというのが東京都民の願いであって、その危ない東京を見捨てて国会議員だけが安全なところへ行こう、このような議論に聞こえるようなことは、我々としても非常に注意深くやっていかなきゃいけないなというふうに思っておりますので、感想でございます。
  49. 坂本剛二

    ○坂本(剛)委員 御苦労さまでございます。両先生方のお話、大変興味深く拝聴しました。  今まで幾たびか国会移転という話が出ましたが、それは東京土地の高騰が原因であって、ピークを過ぎると、それと同じ比率でもってこの首都移転の問題が鎮静化してしまう、こんなことがよく言われていました。  私が初めて東京首都移転の問題を耳にしたのが、例の関東大震災七十年周期説が昭和五十年代の初めに出てまいりました。あのとき、富士山ろくに国会を移すとか、これは地方にあって大変ロマンのある話だなという、非常にそういう思いで眺めておったわけですが、平成二年に国会に出てきました。バブルでどうしようもない状況下で、国会決議も、移転決議もいたしたわけですが、何だかんだいろんな改革運動で若干この首都機能移転問題がまた横滑り始まったかなと思ったときに、実はあの阪神大震災が起こったのですね。あの阪神大震災では、高速道路が落ち込んだ、これによって日本の建築技術が著しく世界に対して恥をかいたという、そればかりか、危機管理というものに対して改めて日本全国が震撼した。  これはどうも、ここまで来たら、新しい感覚でもってさまざまな機能整備した、今まで先生方からお話があったとおり、そして新しい首都を、安全な首都をつくり上げる、そういう方向に国民が進まないのでは、例えば一極集中人口集中が少なくなったとか、あるいは土地が鎮静化したとか、そういう近視眼的な物の見方でこれは議論しちゃいかぬと思うのですね。  やはり私は、危機管理というもの、これを第一にとらえて、どうするんだ、これから百年、二百年、三百年後の日本ということを考えたときに、また再び阪神地震が起こったとき、一体我々はどう対応していって、世界に対して何という言いわけをしていくのか、政治機能が麻痺したり行政機能が麻痺したときに、日本人は世界に対して一体何と申し開きをするんだ、こういう観点に立ってやはり論すべきだと私は思うのですね。  それと、今まで出てこなかった問題で一、二申し上げたいと思うのですが、民主主義が今後とも続いていく限り、政党政治が続いていく限り、議会というのはやはり国のシンボルだと思うのですね。ですから、政治の殿堂というのは国のシンボル。ワシントンが今アメリカ国民のシンボルになっていますね。  では、日本を語るのはどこだというと、東京と言う人はいないのですね。国会と言う人もいないのですね。日本を見せるときは、京都かな、奈良かなというのが多くの国民の偽らざる気持ちだと思うのですね。  アメリカのスミソニアン博物館なんかは、アメリカ歴史世界の近代史というものを全部あそこに集約している。これがやはり国のシンボルになって、米国民の多くは、一度ワシントンに行って首都を見学したいという希望があるという。  では、今の日本国会というのは果たして国民のアクセスをどこまで許しているのだというと、この東京都の状態ですから、スプロール化されている、こういう機能麻癖状態の東京でありますから、国民国会のアクセスがない。クリントン大統領へ一日二万通の国民からの手紙があるという先ほどのお話ですが、日本国民日本総理大臣に手紙を書こうなんという気はないです。まず親しみがない、心が通ってない。  それはやはり国の殿堂、シンボルと国民とのアクセスというのはほとんどなされていない。要するに、今の日本首都機能というのは、あるいは政治機能というのは、ほとんど麻痺状態だという、私はこんな見方をしていますね。  したがって、新しい時代にふさわしい機能を備えた新政治都市というのは、この辺で構築していくようにすべきだなと思うのですが、月尾先生、どんなものでしょうか。お話、伺いたいと思うのです。
  50. 月尾嘉男

    月尾参考人 全体を聞かれても大変困るのですが、一つちょっと数字を御報告したいと思います。  スイスのジュネーブにあるある研究所が毎年「ザ・ワールド・コンペティティブネス・イヤーブック」、つまり国際競争力年鑑というものを出しております。日本は、四十六カ国中のランキングがありますが、「政府」という項目については、すべての国ではありませんが、世界の主要国の中から、四十六カ国中二十一番目に今ランクされております。  その中の幾つか細かい項目で言いますと、「ポリティカルシステム」、つまり政治体制というのは、四十六カ国中四十四番目にランクしております。もちろん、その中身についてはいろいろ御意見があるかもわかりませんが、少なくともヨーロッパの日本に対する見方は、特に政治に対する見方、政府に対する見方は今そういう現状だということを考えますと、今おっしゃったように、新しい時代政府のあり方、それから立法のあり方というものは、ぜひ考えなければいけない。ただ、くどいようですが、それが本当に物理的に空間を移すということでできるかどうかというのは、私は疑問に思っております。
  51. 茂木敏充

    ○茂木委員 両参考人の大変貴重な意見、興味深く聞かせていただいたのですが、時間の関係もありますので、サイバースペースの件に関して月尾参考人に御意見を伺いたいと思うのです。  これは情報にしても、やはり私は、情報の製造と消費というのをきっちり分けて考える必要があるのではないかな、こんなふうに考えています。情報化社会が来ると、確かに情報の消費の方で距離の問題がなくなってくる。こんなことから、一九八〇年代の後半になって東京一極集中人口の意味では緩和はされてきているのだと思います。しかし、人口とか経済以上に、情報という分野になりますと、堺屋参考人もおっしゃっていましたけれども、過度な集中がそれ以上に東京に私は今進んでいるのではないかな、発信の面でいいますと、そういう状況というのがあらわれている。  そうなってくると、例えば、いっとき災害が起こったときに、人口以上に、経済以上に情報の発信というものが一カ所に集中をしている、しかも災害面で懸念もある首都圏集中しているということは、大変危険な状況というのが起こり得るのではないかな。日本全体が本当にサイバースペース時代になればなるほど、今の東京集中しているということは危険であって、もう少し自然災害のないところ、そちらに、コスト的にはもっと安くなってくるわけですから、移すということは、十分考えられるのではないかなと思うのですが、その点、参考人はいかがでしょうか。
  52. 月尾嘉男

    月尾参考人 情報をつくる手段というのを、少なくとも現時点での国会で考えますと、先生方がお集まりになって国の情報をつくるということになっているわけです。もちろんそれが必要な場合もありますが、今、例えば学問の分野では、世界の何カ国かの方々が、それぞれ自分の国にいながら共同で論文を書くというようなことが、もうかなり日常的になり始めています。そのようなことを考えると、もちろん非常に国家の基本的なことは集まられて議論される必要もあるかと思いますが、かなりのルーチン的なことについては十分サイバースペースの中で分散した形でできる。  それから情報自体も、一カ所に集まっているわけではなくて、非常に分散的な状態に保管することも可能になりますので、もちろん東京がつぶれたという前提を考えればだめでありますが、まるでつぶれるわけではないということを考えれば、分散的な形で情報をつくり、分散的な形で情報を蓄え、そこへ国内、世界から自由にアクセスできるというような社会は、十分構築できるというふうに思っております。
  53. 前島秀行

    ○前島委員 堺屋先生にちょっとお聞きしたいのですが、首都移転効果目的というものと現実の受けとめ方との兼ね合いの中で、何か、どこに移すの、幾らかかるのというだけが先行する首都機能移転ではまずいのではないかな、何か国民的にもそんなところに関心が集中してしまっている傾向がないだろうかということを私は非常に懸念するのです。  それよりか、首都の機能とはどうあるべきなのか、これからの日本を考えていくときに、どういう機能を持つべきなのかというところが先行する、ある意味だったならば、そういう面から行政改革も含めたさまざまな改革議論した上で、それをやるために首都機能移転しましょうや、こういう形に結んでくると説得力もあるし、また大きな我々の期待なんかもあるような気がするのですね。  そういう面で、何かこうバブル経済的な経済効果だけをねらって、新しい、何か東京と同じような町を次からつくっていきましょうやという意味での首都機能移転だと、ちょっと問題がありはせぬだろうかなというふうな気がするわけなんです。  そういう面で、審議会の今後の議論、また我々の議論の仕方、それから具体的に進めていく場合、その辺のところはもっと注意しないとといいましょうか、もっとそこのところを明確に目的化していかないと、何か問題がありはせぬかなという感想を感ずるのですが、審議会の今後の意向、今までの議論の雰囲気と今後の方向等々含めて、御意見を伺わせていただきたいと思います。
  54. 堺屋太一

    堺屋参考人 私が審議会意見を代表するわけではございませんが、今回の首都機能議論が非常に平成元年以来推進いたしました理由は、従来富士のすそ野がいいとか浜松がいいとか北上がいいとかいう、最初に場所ありきという議論をやめたことなんですね。最初に場所ありきという議論でずっといろいろな人が提案したのですが、これは地域運動になりまして話が進みませんでした。  それを平成元年の決議案のときに、場所は今は議論しない、まず最初移転をする必要性、そして移転するときの状況、その内容、それを先に議論しよう、こういうことで始まったのが、今回先生方にもお集まりいただき、法律も通していただけたポイントだろうと思うのです。  したがって、私たちの考え方では、最初にどこそこ、何億というのがあるのではなしに、まず最初にあるべき首都というものはどういう形か、この点について大いに議論したつもりなのです。  ところが、やはりここにいろいろと行政機構の問題がありまして、行政改革首都機能審議会とかあるいはその事務局議論をすることではない、これは別途また審議会委員会がございますから、そちらで議論する、予算の点はまた違うのだということになってまいりますと、首都機能移転審議会で、行政は全部合併して省庁はこう統合したらいいのだというようなことは不可能なのですね。それを並行してやっていただく。  したがって、今ここに、調査のところで書きましたように、仮に二分の一にした場合、仮に三分の一にした場合、仮に三分の二にした場合というような想定のもとに議論をしていくより仕方がないのですよ。  それがかなり進んで、仮に人数はこれこれにしたらこういう結果になりますと言うと、各省庁でも、また、その省庁に関係ある分野の方々も、では、あの役所はこの辺がこうなるのだろうとか、うちの役所はこうせないかぬだろうとかいう議論が出てきまして、日本改革論が非常に幅広く行われる。これをむしろ引き起こすのがこの首都機能移転の一つの球を投げる理由でもあるわけです。
  55. 武山百合子

    ○武山委員 私は積極的に首都機能移転の方に賛成の意見を述べたいと思います。  さて、二十一世紀日本をどのような社会につくるのかというのは、大体もう意見が出尽くされておると思うのですよ。それを実際に行動して、そして、これから日本の顔、日本はこうだという社会を目指していくのに、今までの歴史的な背景を見ますと、やはり日本は明治維新も黒船が来て外圧で、そして第二次世界大戦の後もやはり外圧で日本の国はおさまってきているわけですね。先ほど岩國さんがお話しされましたように、日本の首都はワシントンだ、そのくらい、世界の国々からは見られているわけです。  それで、私が一番思うのは、国内で本当に私たちが自分の国の改革を、外圧ではなく国内でやはりやれる、今橋本総理が六つの改革アメリカでは、橋本さん、本当にできるのだろうか、できないのではないかとほとんどの人は思っているわけですね、政府関係者は。そういう意味で、日本の国の改革をみずからやりたいというのが首都機能移転、一つのやはり動かす原動力になるのではなかろうかという意見です。
  56. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 私は我々立法府の人間は政治思想と政治哲学を語るべきであると考えるのであります。  憲法四十一条には「国会は、国権の最高機関」とありますが、憲法学者はこれを政治的美称説と称しております。私は国会が国権の最高機関であるということが政治的美称であってはならないと考えるのであります。  今日の日本最大の問題点は、野口悠紀雄先生の言葉をかりれば、一九四〇年体制、これがうまくいかなくなっていることであります。すなわち、政党の排除あるいは政治の排除、そういう基本的なスタンスのもとに国家の統制と保護、こういうあめとむちの政策によって、要するに官僚統制、中央集権型の構造ができ上がってきた。これがまさにうまくいかなくなってきているわけでありますから、六つの改革、構造改革が必要である。我々は橋本総理のその六つに加えて国会改革が必要だと考えるのであります。  最終的に、我々のような役人有用論の立場に立てば、要するに今の制度、仕組みが時代おくれになっているからうまくいかないのであって、この仕組みを根本的に変える、中央省庁を統廃合していくということになれば大臣の数が半分に減るわけでありますから、例えば大臣病患者みたいな人がたくさんいたらそういうことは一切できないわけであります。  必然的に国会改革、そして国権の最高機関、つまり試験選抜エリートによるこの国のかじ取りから選挙選抜エリートによるこの国のかじ取りという方向が私は原理原則であろうと思うのであります。そこで、そういう時代をつくるためのいわばエントロピーを捨てる、そういう作業が私は国会移転なのだというふうに考えるのでございます。  とにかくこの国を原理原則に戻すのだということでありまして、何のためにという議論がなされるならば、どのような形でということはおのずと結論が出るはずだ。私は国会のリストラと霞が関のリストラ、そして霞が関のシンクタンクを国会に移動させることがまさに国会移転である。国会等移転とはよくぞ言ってくれたと私は思うのであります。  場所については同僚の皆さん方にお任せをいたします。お答えは要りません。
  57. 松本龍

    松本委員長 それでは時間もありますので、お二方で終わらせていただきます。  中川さんから、最後に締めくくってください。
  58. 中川正春

    ○中川(正)委員 先ほどの堺屋先生のお話との関連もあるのですけれども、全体のこれまでのプロセスを見ていて、私は何とか前に進めたいという方向でお話をさせていただくのですが、総論である部分は、我々議員といういわゆる現実の立場で議論を重ねていかなければならない者としては、どうしても東京が反対、その他地方が賛成、こう  いうパターンがきれいにできているわけですね。それをつくったから、そういうパターンになったから総論で一つ話が進んだ、こういうお話でした。  そうすると、今度この二年間でこれが一つの地点というのが絞られるということになると、今度はそれが国会へはね返ってきて、こちらのプロセスとしては、決められたところは賛成だ、ところが、その他大勢のところがしらっとするという可能性を含んでいるから、本当にこの話ができるのかどうかというのが大変なんだ、こういうことだと思うのです。その現実の中でこの話が進んでいくのだろうというふうに思うのです。しかし、そういうことにしてしまったら、もうこの話は終わりなんだ、こういうことですね。  そうすると、この話をもう一歩進めようと思うと、先ほどまさに言われたことであります。どの議論をつかまえてもみんな縦割りの審議会の中でそれぞれ別々に答申が出てきて、そのプロセスが全体を統一した形でいっているかというと、どうもあちこちでぎくしゃくしながら言葉だけの改革に終わっているという現実がもう片方にある。その現実を見詰めながら審議会の中でそれをぐっと眺めて工夫をしていただいて話を動かさないともとのもくあみに返ってしまうという危険性があるわけでありますが、その点についての審議会運営での議論と御認識というのをちょっとこの際聞かせていただきたいのです。
  59. 堺屋太一

    堺屋参考人 私は、委員長でございませんので、審議会をどう動かすかと言われても困るのでありますけれども、今おっしゃったのは大変重要な点であります。  まずちょっとお断りしておきますが、各種世論調査で見ますと、東京都民もやや賛成が多い、反対よりも賛成が多いのでございまして、東京が反対というパターンができているとは思いません。東京都が、都という機関が反対でございます。世論調査で見ると、やや賛成が多い。全国で見るとかなり賛成が多い。  問題は、今おっしゃったように、Aという場所に決まったらA以外全部しらっとして、それなら東京の方がましだという議論に戻るのじゃないか、この点が大変重要なポイントだと思います。  したがいまして、私は、やはり場所を決めると同時に、地方分権、それから先ほど申しました全国ネットワーク的な地域構造の形成、これをあわせて御理解をいただく。だから、Aというところへ決まりましても、BもCもDもこういうような利点ができて、A対B、A対Cというネットワークができてくるからこれが利点だということを御理解いただきたい。それから同時に、それによって日本が非常に効率のいい多極分散型、多様性のある、情報多元性のある国になるのだということを御理解いただきたいと思います。  いろいろと情報機関が発達してまいりまして、インターネットとかいろいろできましたけれども、この二年ぐらいの間に情報発信の東京集中は物すごい勢いで進みました。テレビの番組などの制作もそうでございますし、あるいはいろいろとパーフェクTV等ができておりますが、これもほとんど東京一極集中なんですね。地方からの情報発信というのが急激に減っておりまして、だんだんと東京一極集中になる。こういう傾向を見ますと、やはり情報公平性の意味から、首都機能移転されないところも有利にするということが大事だと思います。  それからもう一つは、やはり首都機能移転したところは再び集中させないという、東京にしないというような方策をあわせて、リストラと同時にリエンジニアリングの方もやっていく必要がある。  国会先生方にぜひお願いしておきたいのは、移転に賛成された方は、自分の県に来ないから反対だというせりふはやめていただきたいと思います。
  60. 村田敬次郎

    ○村田(敬)委員 それでは、きょうは両先生から非常にいい御意見を次々伺って、しかも各議員先生方からの御意見も多方面にわたって、非常によかったと思います。  実は、堺屋先生とも月尾先生ともシンポジウムやあるいは座談会で御意見を伺っておるわけでありますが、私は一つずつだけ伺いたいのです。  今、新首都推進懇談会というのがありまして、国会議員が二百五十人入って、皆さんが五百円ずつ毎月会費を納めてその問題を議論していただいている。非常に私は盛り上がっていると思うのですね。その意味で、たびたびこの首都移転問題が浮かんでは消え、浮かんでは消えという表現がありましたが、そんなことはないので、これは私は一つの歴史的必然性が来ておる。  私がこの問題について勉強を始めたのは、河野一郎建設大臣が首都移転の閣議発言をした昭和三十九年のときからでありますから、三十三年間になりますけれども、その間一貫してこの問題をやってまいりました。  そこで、月尾先生の方からまずお答えいただくのがいいと思いますが、先ほど来データをいろいろ御説明になった。ただ、はっきり申し上げたいのは、日本では例えば平安京、それから約四百年後の鎌倉、それから約四百年後の江戸、こういう大きな首都移転が一つの歴史的必然のようになって起こっておる。江戸から見るとちょうど四百年ぐらいが今になっておりますから、私は恐らく今度は首都移転が確実に行われるであろうと思います。  事実、明治初年の東京市の人口が百十五万人になっているのですね。今東京都の人口が千二百万人、そして東京圏人口月尾先生がおっしゃったように三千万を超えておる。このような過大集中が行われたということは、いわゆる資本主義の上昇に伴う世界的な現象でもありましょう。しかし、本当に住みよい地域をつくるのには、これ以上東京一極集中はさせてはならないと思うのです。  したがって橋本行革は、私は首都移転決議をした後で橋本さんのところへ村山前総理とそれから武村前蔵相と三人で会いに行ったのです。一分も待たされずに橋本さんが出てきました。そして、この問題についてはぜひやろうという決意をその席で述べられた。だから、橋本行革の中心にまさに首都移転が座っておる、私はこう思っています。  共産党からは、不破委員長からも、中島委員からも反対の立場で議論がなされましたが、結論的には、これは非常に首都移転を促進させるいい意見だと私は思うのです。  月尾先生に、東京百十五万の明治以来百三十年で三千数百万というこういう時代が起こったことについて、橋本行革の中心にこれは座っておるということについての月尾先生の御所見を賜りたい。そういう歴史的必然性はないと思っておいでになるのか、あるいはあると思って言っておられるのか。私は後者だろうと思うのです。  それから堺屋先生とは、これはもう本当にいろいろと勉強をさせていただいておるわけですが、我々は、平成十年の三月三十一日までに移転先を決めてくれ、そして二〇一〇年には新首都で第一回の国会を開いてくれ、こういうふうに言っておるわけです。  もちろん、どこへ持っていけということは、これは会長である私が一切言うべきことではありませんから断じて言いませんが、今後の国会移転先決定や持っていき方について、私はこう思うということをひとつ、堺屋さん、審議会委員ですから、実質的にはあなたが中心だというふうにだれもがそう言っている。だから、平岩外四経団連名誉会長の中で、あなたがそれを大いに進めていただく上での所見を承りたい。  以上の二点です。
  61. 月尾嘉男

    月尾参考人 冒頭の説明のときの大きな2の方で大体申し上げましたが、まず一つは、これまで東京集中を進めてきたような社会条件は大きく今後変わろうとしているということを認識すべきでありまして、その中で、果たしてまだこれからも東京というものが続くかどうかということを議論すべきであるというのがまず一点です。  もう一点は、世界の主要国についてすべて共通しておりますのは、工業社会というものを発展させていく段階で、一般に、より首都へ人口集中というものが起こってきたというのが歴史の原則であります。例えばロンドンというのは、一八〇一年には百万人の人口でありましたが、一九〇一年には五百万人になっております。百年で五倍にふえまして、東京に匹敵する、比率で言えば東京よりは低いのですが、同じような勢いで進んできております。  これは何かというと、物をつくるという社会を発展させるためには、それが最も合理的であったからだというふうに思います。今、日本全体はもはや工業生産で稼いでいる部分は二三%程度になっておりまして、ほかの部分はサービス産業とか情報産業と言われる分野で今は稼ぐ時代になりまして、そういうことも含めて、産業も並びに社会の基盤も情報社会に移行し始めたときに依然として集中が起こるかどうかというのは、恐らく私は起こらないというふうに思います。  そういうふうに考えますと、単に集中した東京の問題を解決するために首都機能移転をするとか、それから工業社会のシステムを変えるために首都機能空間的に移転するということは、果たしてそれが最も得策かどうかということは、まだ十分検討の余地があると思います。  ただ、社会がそういうふうに変わっていくということは極めて明確な状態になっておりまして、それに対応する新しい首都機能というものをつくるときに、本当に場所というものが、今最も議論中心になっているような場所というものがそれほど重要かどうかというのは、よく議論してみるべきではないかということを申し上げておくということであります。
  62. 堺屋太一

    堺屋参考人 これからどういうような検討が必要かといいますと、一言で申して、日本国民全体がこの議論をよく知って、よく参加していただけるような状況にすることが大事だと私は思っております。その中で国民がどういう判断をするか、これがやはり一番大事なことだろうと思うのですが、今のところ余りこの問題が、新聞等にはかなり出るのでございますけれども、具体的な話としては国民の耳に入っておりません。  これは今改革の重要な問題がことごとくそういうニュース的おもしろさが乏しいというので、個人的な犯罪事件の方が非常に注目を浴びているような状態でございます。これをぜひおもしろおかしくやはり国民に理解してもらう、興味を持って理解してもらうということが大事でございますので、そういう種になるものをこの審議会で、あるいは事務当局で、あるいは国会議論の中でどんどんとつくっていかなければいけない。そういう意味でも、いろいろな官民協調した、そういう仮想的なものを広げていく必要があると思います。  第二番目に誘致、首都が来るか来ないかという、誘致するところとそれから東京都だけが興味を持っているのではなくして、それに基づいて日本全体がどう変わるのか、この議論をあわしてするように、できることなら行政改革等六つの改革とあわして一つのビジョンづくり、これは選択肢がある形でしようが、こういうときにはこういう形になりますよということを皆さん方に発表できるようなクロスセクションができればありがたいと思っております。  そういうことがどんどん進んでまいりますと、月尾先生の御指摘のように、実はこの新しい場所がどちらへ行くかというのはそれほど重要なことではなくして、むしろそれを移転させることによって、自分たちの地域日本全国がどのように変わるかということが重要なんだ、だから、その際には場所はどこへ移転するのも、これはもちろん賛否ございますが、それと同時に、この日本全体はこうして、地方分権はこうして、行政やり方はこうしてということを議論できればありがたいと思います。  例えば、これは議会制民主主義をつくろうというような話なのですね。おれは議会制民主主義になったら議員になりたいと思っている人がおられて、自分がなれないのなら議会制民主主義反対だから独裁制がいいと言われたのでは困るのでありまして、やはりこれは最初に仕組みとして首都機能移転日本改造が賛成なのだ、その中で、できればここがいいというのは個人個人、それぞれございますでしょうけれども、その仕組みをまず全国民に知っていただく、そういうようなことができるような調査とか広報費というようなものも御配慮いただければありがたいと思っております。
  63. 松本龍

    松本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了 いたしました。  この際、参考人一言お礼を申し上げます。  堺屋参考人及び月尾参考人におかれましては、貴重なお時間、また御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会、また委員一同を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会