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山田参考人 国会において
意見を述べる
機会を与えていただきまして光栄に存じております。
金融監督庁法案並びに関連
法案についての
政府原案、また修正案も出ておりますけれども、主として
政府原案について私の
意見を申し述べたいと思います。
昨年六月に決着をいたしました住専の処理に税金投入を
政府・与党が強行したということについて、国民の八割、九割から非常に強い批判、
意見が出たわけでありますが、その事実上の
政策立案者、執行者であった
大蔵省に対して、支配力を削減せよ、すべきだという要求が国民の間から広く盛り上がってまいりました。
そして、続きまして昨年十月の総
選挙前後に、これは
大蔵省に余りに行政
権限が集中し過ぎるじゃないかということで、
政府・与党におきましてもこれを取り上げ、プロジェクトチーム等においてもそのような
議論があった。そして、また同時に、
金融政策当局たる日銀への
大蔵省の支配があわせて問題になりまして、その批判が高まった。そういった状況に対して、
政府・与党が一定の宥和的
対応を余儀なくされたというふうに私は見ております。
しかしながら、その直後、十一月に
成立をいたしました第二次橋本政権のもとで、重要
法案として、
金融が重要
政策として、
金融に大きな
関係のあるいわゆるビッグバンというふうに、ビッグバンという言葉は私は余り好きじゃないので使わないのですけれども、いわゆる
金融システムの抜本的
改革ということが提起をされました。
この
金融システム改革というものが出たことによって、さっき申しました一定の宥和的
対応、
政府・与党の宥和的
対応というものが変わってまいりまして、表面を繕っただけのものになってしまったというふうに私は考えております。ビッグバン自体について申しますれば、これは独占、大
銀行の
金融市場支配を短期間の間に強化しようというものだというふうに私は考えております。
〔
委員長退席、野呂田
委員長代理着席〕
さて、
金融監督庁法案が
提出されるに至りました、
金融監督体制がいかにあるべきかという体制確立の理念につきましては、私は次のように考えております。
まず、これまでの
大蔵省が一元的に担ってまいりました
金融監督、それは一口に言って大
銀行、大企業のためのものではなかったか。そのためにいろいろな批判が出てきたというふうに思うのでありますけれども、これを国民のための、もともと行政官庁は国民のためのパブリックサーバントとして、
金融行政について国民の立場に立ってなすべきであるということが確立の理念の第一であるかと思います。
それから第二に、
財政と
金融の
分離原則。これは最近のヨーロッパその他における状況でもわかりますとおり、
資本主義が高度化してまいりまして、国民の所得、福祉を増強するという形の
政府の
経済政策また
財政政策というものが、えてして非常に現在の
通貨体制のもとでは
通貨の増発というものを招くような
方向に流れやすいし、また流れておる。それに対して
日本では、
日本銀行、やはり
通貨の、マネタリーディシプリンと申しますか、
金融政策当局として
通貨価値の擁護に当たらなくちゃならない、それがえてして
大蔵省、
財政当局の支配に服する、従属するという形になっております。
また、
金融政策と
金融行政というものは若干異なるわけでありまして、
金融政策はいわば
市場政策である、マーケットの
政策である。それに対して
金融行政というものは、これは
規制政策であるというふうに私は考えております。したがって、
金融政策を
財政から切り離すと同時に、
金融行政もまた
財政、徴税とか予算の作成、執行等から切り離す必要があるということが
一つの原則であるかと思います。
そして、
規制緩和ということが
一つの
経済政策の大きなスローガンになっておりますけれども、この
規制緩和について申し上げますと、無限定の
規制緩和ということは、私は余り適当ではないのではないか。やはり
銀行あるいは
金融機関の公共性、社会的
責任に照らして、必要な
規制は行わなければならないというふうに私は考えております。
また、これは国際的な観点から申しましても、バーゼルにありますBIS、国際決済
銀行において最近公表されました、いわゆるバーゼル
銀行監督委員会の
銀行監督原則、二十五項目の原則に従ってやろうではないかと各国の中央
銀行総裁の合意のもとにそれが出ておりますけれども、それの一項目に、
銀行が高水準の倫理的、職業的基準を促進し、犯罪分子に用いられることを防ぐ
ルールを確認する必要がある、すなわち倫理性というものが強調されております。
金融機関というものは、公共性、社会的
責任からして高い倫理性を持たないと、えてして最近のような不祥事に流れやすいということは言うまでもございませんけれども、そういう国際的な合意もあるということとも照らし合わせまして、やはりそのような三つの原則、大企業、大
銀行のためではない、また、
財政と
金融を
分離をする、無限定な
規制緩和ではなくて必要な
規制はこれを行う、また、倫理性を高めるという原則を持って
金融監督に臨むべきであるというふうに私は考えます。
提出をされております
政府案、
政府原案の
金融監督庁法案並びに
関係法律の
整備に関する
法案でありますけれども、そのような、さっき申し上げました
大蔵省批判の原点、また
監督の理念というところから申しますと、余りにも大きな欠落があるというふうに私は考えております。
法案の内容、これは
金融監督庁の設置、また任務等の基本的な点の規定であるかもしれないけれども、余りにそっけない、法三章的な規定ではあるまいか。八一年に
銀行法が新しくできましたときにも、いわゆる訓示規定を含んで、社会的
責任に立った
銀行のあり方というものが規定をされておる。これは
銀行あるいは
金融機関の
監督についての基本的な
法律でありますので、もう少ししっかりした
法律であってもいいのではないかというふうに思います。
そして、いろいろございますけれども、基本的な点、
二つ三つ申し上げますと、設置形態として、
金融監督庁という総理府の外局、一応
大蔵省とは切り離すけれども、外局、
外庁という形態、これよりも私は、昨年九月の与党三党の合意にもあったように思うのですけれども、いつの間にかそうではなくなった、やはり
公正取引委員会型の、同じ
三条機関でも
公正取引委員会型の独立した行政
委員会という形であるべきだというのが
一つでございます。
また、
銀行の
検査の
機能、これを担うわけでありますけれども、やはりこれは関連
法案という、あるいは関連の行政ということにかかわるかもしれませんけれども、人員が余りにも少ない。
日本では
金融機関検査五百七十六人、九七年度の定員が。アメリカでは、各種の
検査機関がございますけれども、合わせると六千人以上の
検査人員が携わっておる。こういう点からいっても、やはり
検査をもっと充実させる必要があるというふうに思います。
それから、
金融監督庁の
法案の三条に任務ということがございます。預金者、保険契約者、それから有価証券の投資者を保護ということをうたっております。これは非常に適切なことでありますけれども、私は、それに加えてやはり、後で申しますけれども、最近、
銀行による個人債務者の被害が続出しておる、そういう点から、借入人等
銀行取引者全般に対して保護を促進をするという必要があるのではないかというふうに考えます。
先ほど指摘がございましたけれども、またその他にディスクロージャー、
大蔵省が
権限を持って非常に多くの
金融のデータを持っております。それをやはりディスクローズするということが今まで行われていなかったということがいろいろな不正、不祥事にも関連してきている。やはりこのディスクロージャーというものをもっと充実してもらいたいということでございます。
先ほど申しました、
公正取引委員会型の
委員会になりますと、これは立法論としていろいろございましょうけれども、準司法
機能を持つ
委員会ということになりますと、調査あるいは告発ということが可能になる。現在、証券
取引等監視
委員会が八条
機関として
大蔵省にあるものが、新しい
金融監督庁法案では、
三条機関の
金融監督庁にそのまま八条
機関として附属をするという形になるようでありますけれども、やはり
公正取引委員会型の行政
委員会になりますと、準司法
機能を持って
検査、告発、これは最近、野村証券のあれがございました。それは第一勧銀からお金が出ているという、やはりこれは片手落ちといいますか、非常に著しく均衡を欠くことではないか。つまり、証券
取引に関して
証券会社等の調査、告発はできるけれども、
銀行の非違に対してこれを是正する
機能が欠けているということはこれは大きな欠落でありまして、そういう点をぜひ
法案においては挿入されるべきではあるまいかと思っております。
せっかく
機会を与えられましたので、この際、もう
一つ、消費者、個人債務者保護のための
銀行監督の強化について一言申し上げておきたいというふうに思います。
消費者の
銀行被害、
銀行の、特にバブル期における過剰融資、押しつけ融資といってもいい、そのような融資が横行した。それについての消費者、個人債務者の被害が続出をし、それが司法の場においても六百何件という、変額保険あるいは不動産共同投資、この変額保険だけでも六百件を上回る訴訟が起きている。それに対して、一部、
銀行の非違を正す原告勝訴の判決も出ておりますけれども、大
部分はやはり時間もかかるし、なかなか被害者の
意見を聞いてもらえない。
私、弁護士さんなんかと一緒にこの被害者の声を直接聞く
機会がありましたので非常にそのことを強く感じるわけでありますけれども、
銀行の過剰融資に対する社会問題化しているこういうことについて、やはり
監督体制の上でも一定の処置がなされるべきではあるまいかというふうに思います。
先ほど申しました、
取引者、借入者の保護ということを明記すると同時に、例えば行政
委員会、公取委型の行政
委員会になりますと、消費者問題についての識見、経験を持ち、またその利益を代表することのできる者を
委員に任命するということも可能であります。
そのようなことを含めまして、さらにこの
法律、あるいはこれは基本法でございますので関連の
法律になるかと思いますけれども、現在、
金融制度調査会
金融機能活性化
委員会において、これら
金融消費者保護の立法が必要であるという
意見も出されておるように聞いております。そのような
法律もあわせてやはり
銀行の非違を正し、あるいはこのような不正、不祥事がなくなるような
監督体制の確立。関連をして仲裁
制度、アメリカにおいては非常に普及しております仲裁
制度というものも
日本ではもっと考えられていいのではないかというふうに考えております。仲裁
制度、また、先ほど申し上げました
統一消費者信用保護法ということをぜひ
法案あるいは関連
法案に加えていただくということを要望いたしたいと思います。
現在、全国
銀行の貸付残高の業種別残高で一番シェアが多いのは、実は個人向けなんですね。九五年の残高で一六・七%ということが出ております。そのような状況からいっても、個人債務者、消費者保護のための
銀行監督体制の強化ということが必要であるというふうに私は考えております。
どうもありがとうございました。(
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