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1997-05-28 第140回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十八日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 自見庄三郎君 理事 野呂田芳成君    理事 谷津 義男君 理事 柳沢 伯夫君    理事 鹿野 道彦君 理事 中井  洽君    理事 枝野 幸男君 理事 松本 善明君       赤城 徳彦君    臼井日出男君       大野 松茂君    大原 一三君       金田 英行君    熊代 昭彦君       下村 博文君    砂田 圭佑君      田野瀬良太郎君    滝   実君       谷  洋一君    中谷  元君       中山 利生君    林  幹雄君       福田 康夫君    船田  元君       松永  光君    山口 俊一君       山本 公一君    伊藤 達也君       石田幸四郎君    今井  宏君       倉田 栄喜君    斉藤 鉄夫君       富田 茂之君    永井 英慈君       西田  猛君    増田 敏男君       宮本 一三君    池田 元久君       生方 幸夫君    川内 博史君       末松 義規君    春名 直章君       畠山健治郎君    前田 武志君       土屋 品子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君  出席政府委員         首席内閣参事官 太田 義武君         内閣審議官   畠中誠二郎君         内閣審議官   白須 光美君         行政改革会議事         務局参事官   坂野 泰治君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       溝口善兵衛君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君 委員外出席者         参  考  人         (麗澤大学国際         経済学部長)  鈴木 幸夫君         参  考  人         (ソロモン・ブ          ラザーズ・ア ロバート          ジア証券会社 アラン          マネージン  フェルドマ          グ・ディレク ン    君          ター)         参  考  人         (東洋大学経済         学部教授経済         研究所長)   中北  徹君         参  考  人         (名古屋経済大         学名誉教授)  山田 弘史君         特別委員会第三         調査室長    田中 達郎君     ───────────── 委員の異動 五月二十八日  辞任         補欠選任   熊代 昭彦君     滝   実君   杉浦 正健君     大野 松茂君   谷  洋一君     砂田 圭佑君   中山 利生君    田野瀬良太郎君   福田 康夫君     下村 博文君   松永  光君     林  幹雄君   安住  淳君     川内 博史君   末松 義規君     生方 幸夫君   木島日出夫君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     杉浦 正健君   下村 博文君     福田 康夫君   砂田 圭佑君     谷  洋一君  田野瀬良太郎君     中山 利生君   滝   実君     熊代 昭彦君   林  幹雄君     松永  光君   川内 博史君     安住  淳君   春名 直章君     木島日出夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  金融監督庁設置法案内閣提出第六六号)  金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備  に関する法律案内閣提出第六七号)  日本銀行法案鈴木淑夫君外四名提出衆法第  二九号)  金融委員会設置法案鈴木淑夫君外四名提出、  衆法第三〇号)      ────◇─────
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案並び鈴木淑夫君外四名提出日本銀行法案及び金融委員会設置法案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、参考人として、麗澤大学国際経済学部長鈴木幸夫君、ソロモン・ブラザーズアジア証券会社マネージング・ディレクターロバートアランフェルドマン君、東洋大学経済学部教授経済研究所長中北徹君、名古屋経済大学名誉教授山田弘史君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。  なお、議事の順序でありますが、まず、各参考人からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、鈴木参考人お願いをいたします。
  3. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 おはようございます。麗澤大学鈴木でございます。本日は、参考人として意見を述べさせていただく機会を与えられまして、大変感謝しております。  最初に、今回御審議中の内閣提案金融監督庁設置法案、それと、それの施行に伴う関係法律整備に関する法律案、さらに、新進党鈴木淑夫議員ほかから御提出日本銀行法案並びに金融委員会設置法案について私の見解を簡単に述べさせていただくと同時に、それに関連して、金融行政一般並びに金融監督行政について私見を若干述べさせていただきたいというふうに思っております。  まず、内閣提案金融監督庁設置法案でございますけれども、どんな法案でもベストということはあり得ないと思うので、法案成立後、運用上若干問題を残しているというふうに私は考えておりますけれども、現在の諸般の情勢の中で一応、一応と言うと失礼ですけれども、ぎりぎり実情に即したものであろうというふうに評価しております。そういう面で、この法案成立には賛成いたしております。  私が特に注目しておりますのはこの法案背景にある考え方でございまして、従来、護送船団方式とよく言われておりますけれども、政府、特に大蔵省行政指導といいますか、事前誘導型の、一種の乳母日傘型の保護行政中心とした金融行政というものから、昨年以来はっきりと政府転換をいたしております。  その転換した方向というのが、基本的には市場原理というものを重視して自己責任原則というものを徹底していこう、市場における規律というものを厳格に守っていく、そのためにルール違反は厳しく取り締まっていこう、しかもそのルールは透明で公正なものをできるだけ確実につくり上げていこう、こういう発想というものが、私も若干政府方々といろいろな意味議論する機会がございますけれども、最近の政府、特にいろいろ御批判のある大蔵省思想転換というものは、百八十度大きく変わりつつあるというふうに考えております。  そういう思想背景としてこの金融監督庁法案というものができ上がったのだと私は理解しております。それぞれ権限意識の面で微妙な対立もいろいろあったでしょうけれども、でき上がった結果としては、私は、現段階においては現実的で一応筋の通った案であるというふうに理解しております。  鈴木淑夫議員ほかから御提出のこの二つ法案につきましては、私も、鈴木議員もよく存じ上げておりますので、何をお考えかもよくわかるのですが、論理的にはそれなりに、それなりと言うと失礼ですけれども、一貫しておりまして、私自身も大変示唆されるところも多いわけですけれども、そういう面で、まとめられた御努力は大変敬服いたします。しかし、現実にこれを適用するとなると非常に問題が多い。これも後で申し上げますが、そういう意味では若干現実から遊離している部分があるのではないか。そういう意味で、この内閣提案法律にかわる良案であるとは私は認めがたいということで、いろいろいい面はあるけれども、やはり内閣提案の方がベターではないかというふうに考えております。  私がここで一言強調したいと思っておりますのは、時間の関係がありますから余りだらだらとは申し上げませんけれども、よく財政金融分離ということを強調される。それから一方では、財政当局中心に、財政金融の一元化ということが昔からいろいろ言われている。どっちが正しいか、白か黒かという議論が非常に多いのですけれども、私は、政策の実務的な機能としては、金融財政というものはおのずから性格が異なるわけで、金融はやはり市場原理というものを主体として動くものであり、財政というものは市場原理になじまない部分というのをたくさん持っている、そういう意味ではカテゴリーは別であろうと思います。実務的な面では、それぞれが独立した行政機能なりあるいは調整機能というものが動かなければいけないと思います。  そういう面では分離ということは現実的に存在するわけですけれども、しかし、一国の経済運営という点から考えたり、あるいは、国際的な通貨なり金融なりあるいは経済の全体的な調整という面から見て、財政金融というものがばらばらで、一国の政策の体制として不統一のままで国家間の経済協調というのはなし得ないわけですし、また国内においても、経済政策の総合的な責任を負う、議院内閣制のもとでは経済政策における最終責任はすべて内閣が負うわけです。  ですから、その内閣責任において財政金融もやはり統一的に、統一と言うとまた言葉が悪いかもしれませんが、総合的に調整する機能というものは、これはあって当たり前のことでありまして、財政金融一体化というと、何か大蔵省権限を振るってどうのという議論がすぐ出てくるのですけれども、私は、そういう小さな権限論ではなくて、経済運営のあり方として、財政金融というのは基本的にやはり一体となって、いわゆるポリシーミックスというものが前提とならなければならないというふうに考えております。  ですから、そういう神学論争をもうやめて、それぞれ財政金融の特性のもとに責任当局自主性独立性を持って運営すると同時に、その総合調整は、ここにいらっしゃる先生方中心とする国会議員方々政府というものに対していろいろ注文をつけると同時に、その政府も、やはり議員皆様方から選ばれたいわゆる与党の政治家の方が内閣を担っておられるわけですから、その方々責任が非常に重大だと思うのですね。  ですから、今後金融監督庁大蔵省から分離されるにしても、私は、やはり基本的には、今後は、内閣責任であると同時に、国会もまた金融監督庁運営について厳しく対応していただかなければならないのではないかというふうに考えております。  時間がございませんので、また細かい点は御質疑のところでお話ししたいと思いますが、もう一言申し上げれば、監督検査というものを分離するかどうかとかいう議論が最初ありましたけれども、私は、当然これは一体となってやるべきものだと思います。  同時に、野党の新進党並びに民主党の方からもいろいろ御提案があるようですけれども、基本的に、議院内閣制のもとで政府責任を持たなければならないとすれば、合議制三条委員会というような形で果たして処理できるのかどうかという問題があるわけでございまして、非常に時間もかかるし、それから、今のような、緊急にいろいろな問題が起こっている事態に対する対応が非常に問題になるのではないかというふうに考えております。  細かい点についてもいろいろ考えるところがございますが、これからのいわゆる監督行政というものは、一つは、個別的な金融機関の、いわゆる破綻に陥らないように、あるいは破綻になった場合の対応措置というものを、個々の銀行の業績というものを常にフォローしながらルーチンな仕事としてやっていくべき部分と、それから、多数の金融機関破綻して、金融システムなりあるいは経済全体に大きなリスクというものが生み出されるときと、おのずから分けて考えなければならない。  前者の方は、やはり今回の金融監督庁が担当するのは、これは当然なことだと思います。しかし、システム全体の問題としてリスクが大きくなった場合には、これはもう当然、政府、特に財政当局監督庁との間で、例えば公的資金を使うか使わないかとか、あるいはどういうふうな手法でもってシステム危機を乗り越えていくのかといったようなことで、やはり大蔵大臣なり日銀総裁なり、あるいは、時には預金保険機構の責任者の方なりが意見を交換し合うということは、これはもう当然なことだと思いますので、そういう意味で、私は、今回の法案の内容というものは、そういう現実的な処理の上で、比較的きちんとした手順というものを踏めるような形になっているのではないかというふうに考えております。  時間がもうございませんので、私の発言は一応これで終わらせていただきますが、また後ほど、いろいろな点について、先生方からの御質疑にお答えしたいと思っております。  以上でございます。(拍手
  4. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、フェルドマン参考人お願いをいたします。
  5. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 本日は、お招きいただき、非常に光栄に思っております。とりわけ、金融制度改革という極めて重要な問題について意見を述べます機会を与えられたことを、大変うれしく思います。もちろん、きょうここで述べますのは私個人の見解であり、ソロモン・ブラザーズ見解とは必ずしも一致しません。  いわゆる外人がこのような席でお話しする機会はそれほど多くないと思いますので、まず、簡単に自己紹介をさせていただきたいと思います。  私は、マサチューセッツ工科大学で博士号を取り、現在、エコノミストとして働いています。現在は、米国証券会社ソロモン・ブラザーズ日本担当首席エコノミストを務めております。その前は、国際通貨基金、IMFに六年間勤務していました。私の日本研究は、二十八年前、交換留学生として名古屋の南山高校で一年間を過ごした時期にさかのぼります。  現在私たちが直面している問題は非常に深刻です。日本金融システム信頼喪失危機に瀕しています。こうしたことが今後も続いてよいはずはありません。これは、正義の問題のみならず、生き残りの問題でもあります。金融システム資本を配分します。効率的な資本配分は、日本生活水準を落とさずに高齢化時代を生き抜くための唯一の方法です。  規制制度は、効率的な資本配分にとって欠くことのできない要素です。これがうまく機能しなければ、生活水準は悪化します。現行の規制制度破綻しているのはだれの目にも明らかです。修復が必要なのです。ここで問題となるのは、現在提出されている二つ改革案のうち、どちらがよりすぐれた方法かということです。  規制制度の基本的な役割を復習しましょう。  簡単に言えば、その役割は公正な金融取引を促すことです。金融取引が公正でない場合は、実際の資源が不正を防ぐために使われます。公正でない取引を防ぐ規制制度経済効率に貢献します。  公正な取引をどのように促すかが問題ですが、必要なことは幾つかあります。第一に、透明なルールは欠かせません。第二に、ルールを透明に実行するメカニズムが必要です。第三に、ルール実行メカニズムも、それぞれの参加者を均等に扱うべきです。第四に、ルールから生まれる政治干渉への誘惑は避けるべきです。最後に、ルールを実行する負担は、できるだけ軽く、できるだけ公平にすべきです。  現時点での日本規制制度は、すべての項目で満点をとったと言えないでしょう。この意味では、本日議論されている提案は褒めるべきものに値します。独立された規制機構ルール透明性を高めるでしょう。新しくできた組織が、自分の存在感をつくるために、はっきりした実行メカニズムをつくると思われます。その上、独立された規制機構は、管轄問題から生ずる対立が少なくなると思われます。すべての金融機関を対等に取り扱うことは、政治干渉誘惑を少なくするでしょう。  まず言っておきたいことですが、監督庁の案も、金融委員会の案も、現時点での制度にまさるでしょう。しかし、両提案には相違点が四つあると思われます。すなわち、規制当局地位規制を取り巻く経済的なインセンティブ資源の面から見た規制コスト、そして市場の受けとめ方の四つです。これからその一つ一つを論じていきたいと思います。  規制当局地位に関しては、まず幾つかの事実を挙げてみたいと思います。  まず、政府案では、金融監督庁はいわゆる三条機関となりますが、金融監督庁長官には次官級の人がつくことが想定されています。そして、長官任期は三年です。監督庁最終決定権限内閣総理大臣にあります。  金融委員会案では、規制当局は同じく三条機関となります。しかし、総裁は、閣僚と同様な地位を持ち、任期は五年となります。規制上の決断の最終権限金融委員会総裁にあります。  問題は、規制当局効率地位が高いほどよくなるかという点です。答えは恐らくイエスだと思います。長官は、その判断が政治家である上司にチェックされますが、総裁の場合はそのようなことはありません。中身のある改革実効を上げるには、三年の任期は短過ぎるおそれがあります。また、三年という任期は、実効性のある政策遂行のためのポジションというより、官僚の忠実な職務遂行に対する御褒美に成り下がる余地が残ります。  一方、金融委員会案では、総裁という地位は高く、規制制度決定がより尊重される効果を持つと思われます。この地位は、その他の大臣からの干渉を抑制されます。政治力を使って規制当局決定に影響しようとする、あるいはそういう影響をねらう規制される側もちゅうちょするでしょう。その上、総裁の五年間の任期は、総裁実行力をふやすでしょう。  米国では、大統領は規制問題に介入する権限は持ちません。それどころか、高級官僚が介入の気配を見せただけで解任されたこともあります。米国規制に関して犯した戦後最大の失敗は、八九年の貯蓄銀行SアンドL破綻でしたが、これは一部の財務省高官が、選挙の年にみずからの管轄内金融業界の問題が露見することを恐れたことが一つの原因となりました。米国失敗から学ぶべき教訓は明らかです。すなわち、選挙を経て地位を得る人々から規制をできるだけ遠ざけろということです。  経済インセンティブという点でも、この二つの案には違いがあります。監督庁案では、監督庁の職員のほとんどは大蔵省から出向となるでしょう。大蔵省監督庁の間で人事が往復することも認められるでしょう。その結果、監督庁大蔵省に残るその他の機能と密接な関係を持つことになると思われます。さらに、監督庁案では、地方の財務局の役割が変わりません。  では、金融委員会案の方はどこが違いますか。問題解決のためにはどの道具があるかが主な違いだと思います。金融委員会は税制に対する権限はありません。予算への請求権もありません。しかし、金融政策権限があります。ここに一つの危険をはらんでいます。金融委員会が間違いを起こせば、それを直すためにインフレを使うおそれがあります。しかし、日銀法に物価安定を義務づけることによって、このリスクは少なくなるでしょう。金融委員会案では、厳格な運営に対するインセンティブが強いのでしょう。  監督庁の案も、金融委員会の案も、リスクが存在しています。監督庁案財政リスクがあります。金融委員会案インフレリスクがあります。日本はもう既に大きな財政問題があるので、金融委員会案リスクのバランスをとる観点から見れば魅力があると思われます。  資源コストも非常に重要な問題です。高齢化日本が直面する最も深刻な経済問題です。経済政策に関するあらゆる決定は、この問題を念頭に置いて行う必要があります。  ここにおられるどなた様も、政府外庁は雑草のようなものだということは御存じだと思います。一たん芽を出すと、その成長をとめることは至難のわざです。日本では、人口が減少する中、生産性を高める必要に迫られています。新しい外庁の拡大は避けられないとわかっているのに、今それをつくるべきでしょうか。貴重な資源を節約するという見地から見れば、自動的なルールを強化して、裁量を必要とする規制制度を縮小する方が賢明ではありませんでしょうか。  この点、米国の例は反面教師となるでしょう。米国は、証券会社業態別銀行保険会社などを対象に規制当局がひしめいています。その結果、各分野に特化した弁護士過剰になっています。日本は、米国の成功からだけではなく、失敗から学ぶことができます。  最後に、規制制度の改正を投資家がどう受けとめるかは非常に重要です。  監督庁案は、確かに一歩前進だというのが市場の大方の見方でしょう。しかし、大蔵省監督庁に対する権限は引き続き強大となるため、規制制度時代が必要とする速度と度合いで進化するかに関しては、疑問が残ると思われます。こうした中で監督庁独立性信認を確立するのは、金融委員会以上に難しいでしょう。  もちろん金融委員会の場合も、最終的には行動をもってみずから標榜する独立性と厳格さを証明しなければならないでしょう。しかし、新しい規制制度見た目が旧制度と全く違う方が、再び信認を築くのは容易と思われます。五年任期のある大臣級地位を持つ総裁が率いる規制機構は、投資家からの見た目がよろしいでしょう。  ここでも米国の例が役に立ちます。FRB、連邦準備銀行制度は、規制当局として高い信認を得ています。証券取引委員会も同様です。この二つ機関独立性と厳格さを確立しているおかげで、米国金融機関規制にかかわる問題が生じたときでも、比較的容易にそれを克服できます。その例から読み取れる教訓ははっきりしています。つまり、厳格な取り締まりが公正な市場を生むということです。  最後につけ加えたいことですけれども、時間がないということです。日本信頼性が問われています。しかも、高齢化は待ったなしで進むため、徐々にコンセンサスを築いていくという日本の伝統的なやり方で対応する余裕はありません。確かに監督庁案の方が実行しやすいです。過渡期コストも低いでしょう。しかし、監督庁案より成果を上げる可能性金融委員会案にあると思われます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、中北参考人お願いをいたします。
  7. 中北徹

    中北参考人 本日、このような高いお席にお招きいただきまして、大変光栄かつ感謝をする次第であります。  金融監督庁権限及び機能組織形態について論議いたしますことは、今般の行政改革方向について論ずることと等しいわけでありますが、それにもとどまらず、首相らが提唱する二〇〇一年ビッグバンのインフラについても論ずることになるかと思います。  戦後五十年、奇跡とも言える戦後の復興、高度成長を裏方として支えてきた行政のそのまた中心役割を果たしてきた役所が大蔵省であったということは、だれもが認めることだと思います。財政金融一体とする主張は、高度成長期に大蔵省が、一国の経済政策は全体として調和している必要があり、そのためには単一の主体、すなわち大蔵大臣財政金融政策の両方を決めた方がよいと一貫して述べてきたことから生じております。  確かに、大蔵省財政投融資を含む予算と金利決定権を、右手と左手を同時に持つことにより、予算の大盤振る舞いが可能であったし、また、低金利政策により、それが景気を刺激し、経済を浮揚させ、拡大させることも可能であったわけであります。財政政策金融政策の調和は、いわゆるポリシーミックスとして機能し、経済を持続的に発展させることにあずかったと言えます。  しかし、資金過剰の局面に入った一九七〇年代末期から、既に日本は、それまでの高度成長型経済の手法から市場メカニズムに即した先進国型経済への移行を求められておりました。集中豪雨のごとき輸出が主導する経済成長の結果、累積した巨大な貿易黒字が皮肉にも日本市場開放を促したのであります。  八五年のプラザ合意以降、日本は円高を容認し、閉ざされていた日本市場をあけ、規制緩和による内需主導の経済へと転換しました。それは当然のことでありましたが、急激な円高のあおりを受けた輸出企業を中心に円高不況対策の声が強まり、その対応が超低金利政策となり、長期にわたる緩和はバブルを生んだのであります。  同時並行的に進めていた金融の自由化は質的な転換を求められていたはずでありましたが、従来からの業界の利害の調整大蔵省による金融業界への大幅な介入による我が国金融市場の不透明とにより、自由化は不徹底にならざるを得ず、バブルの崩壊後には、銀行業の質的転換ではなくして、土地、株式に貸し付けた債務が膨大な不良債権の山を築くことになったのであります。  この反省が、金融財政政策分離であり、日銀法改正による日銀の行政府からの独立となり、金融政策を担う必要のなくなった大蔵省から金融行政を引き離し、かねて業者行政を行い裁量行政の温床ともなったと思われる金融機関への検査を独立させ、引き離す今回の政策へとつながっていったのであります。  以上の反省を忘れて大蔵省改革及び金融監督庁について議論をしたのでは何のためにもなりません。何の改革でありましょうか。  世界の趨勢は、金融政策財政政策を切り離すことにより財政自身の規律を確保する方向にあります。財政のファイナンスも市場を通じて行うことにより、市場メカニズムの規律を受けるわけであります。  日銀法改正に関連して一言申し述べれば、日銀の政府からの独立は、政府銀行としての機能を一部放棄しようとするものであります。なぜならば、政府銀行と発券銀行としての日銀、すなわち通貨量を決め、金融政策の主体としての中央銀行、これら二つ機能は利害相反する業務であり、分離する方が理にかなっているからでございます。歴史的にこの二つ機能が共存して中央銀行にあったのは、単にその方が便利であったからにすぎません。本来は、国債管理政策の企画部門だけを財政当局が行い、実際のオペレーション、すなわち入札、決済などは民間の機構にアウトソーシングすれば済むはずのものでございます。そして、この金融市場は開かれた、かつ公正なルールにより運営されることが今や求められております。  中央銀行の業務の中にあって利益相反を生みかねない業務は、中央銀行の本分に照らして見直し、政府に返還するのがよいのであります。FBなど政府短期証券の引き受けは言わずもがな、現在の大蔵省の下請として行っている国債の入札事務、発行された国債の決済業務、国庫収入の出納業務、政府資金繰りの管理などはすべて大蔵省に大政奉還し、大蔵省はこれらの業務を民間に委託すればよい。ビジネスとすれば透明度も高め、国債入札時にあの儀式張った集まりなど持つ必要もなくなるわけであります。  財政金融分離に関して述べれば、さらに注意を促したいことが一点ございます。  財政金融分離といった場合、当然、財政政策金融政策、すなわちマネタリーポリシーの分離を通常意味します。しかし、金融はイコール金融政策ではございません。金融政策分離は、金融政策に対して大蔵省が口出しをし、それをほしいままにするということができないことは今や明らかでありますが、財政当局金融行政、すなわちフィナンシャルレギュレーションを行う必然性がないこともまた明らかにしなければなりません。  既に申し述べましたとおり、財政金融一体であったのは、歴史的に、一国の財政運営上、利害相反という概念が生じないほど未分化のまま有効に機能してきたからであります。しかし、今日のように財政赤字が膨れ上がっている状況のもとで、そして他方、金融市場が厚みを増している中にあって、さらに金融財政が癒着を深めることは国家基盤をさえ危うくするものであります。財政当局である大蔵省財政運営のみに力を注ぐべきであって、財政運営もまた市場の原理に従うという意味において金融市場を分析する部署が万が一必要だというのであれば理解できるわけでありますが、それが業者である金融機関監督規制に短絡するというのでは筋が通らない話であります。  さらに、金融機関破綻に関して公的資金を導入する意味で、両者は密接な関連を持つがごとき論議がございますが、これこそ財政金融の利害相反にほかならず、財政を投入するに当たって厳しいチェック機能が働くように守るべきだからこそ、相互に自立し、機関として分離されているべきであります。  限られた時間の中でもう一言申し述べさせていただきます。  今回、金融監督庁を総理府のもとに置き、独立した検査監督権限を持つ外局を新設することになったわけであります。財政当局からの金融分離実効あらしめるためには、その目的を明確にする必要がございます。単に分離し、場所を変えればよいというのでは全く意味がございません。  金融監督庁の設立の目的とするところは、日本金融市場を内外にわたって開かれた透明度の高いものにし、公正なルールを確立することにより、我が国金融市場に対する内外からの信頼をかち得ることにございます。  多発する金融犯罪及びその萌芽としてのいかがわしき行為が万が一あるのであれば、これに機動的に対処できる査察、告発権限を持つ監視機構をつくることであり、また、不正が生じた場合には迅速かつ厳格な対応をすることでございます。こうしたインフラなくして金融市場ルール透明性を守ることは不可能であります。ビッグバンの理念であるフリー、フェア、グローバルな市場とは一体何によって担保されるのでございましょうか。  旧来の財政当局による一元的な、社会政策的な金融行政から市場型規律への移行を実現するためには、何が必要なのだろうか。マーケットの参加者、すなわちプレーヤーの自覚が必要であることは言うまでもありません。プレーヤー、参加者にディスクロージャーの義務があることも当然でございます。しかし、もしや不心得者がいて、マーケットの規律を乱しアンフェアな行為をしたとして、それにだれがどう対処するか、これこそが問題であるわけであります。  これまでは免許行政で、行政側にその責任の一端があり、何か事が起きれば行政に改善の術と方策とを与え、許認可権を盾に行政が業者を処分し、結果として規制を強めるというやり方であったわけであります。しかし、これぞまさに業者行政であり、そこには裁量が横たわり、不明朗な癒着も起き得るわけであります。それは住専問題や金融機関破綻によって証明されたところであります。  行政側は時にディスクロージャーさえ抑制し、マーケットの規律や透明性に反する行為さえ行う。バブル崩壊後、即座に不良債権の処理が進まなかったのは一体なぜか。不良債権の存在さえ明らかにさせなかった行政側に責任の半ばはあると言わざるを得ません。  では、この教訓を踏まえ、新設される金融監督庁はいかなる任務と目的を持つべきなのか。  既に申し述べましたとおり、二〇〇一年のビッグバン完了までに、この金融監督庁実効ある機構として、金融機関検査、証券取引法に明記される市場参加者、すなわち企業、仲介業者、投資家、これら参加者の違法行為の摘発とそれに対するペナルティーや多様な排除措置などの処分権限を与えること、市場で資金調達を図るものへのディスクローズの義務の徹底、企業ファイナンスの申請の受理、会計基準の見直し等々を行うことであります。  そのためにも、現在まだ大蔵省に残っている証券局企業財務課の機能をこの金融監督庁に移し、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家を多く登用し、民間の専門家集団に委託するなどして、膨大な情報量の解析や分析に充てる。この機能は、検査監視を実効あるものとする上で不可欠の機能でございます。  長い目で見て、金融監督庁としても、恐らく独自の企画立案部門を持って、日進月歩する金融にかかわる法律や政令などの見直しを不断に行うことが当然求められてくることでございましょう。  これから最も必要とされる機能で大切なことは、金融市場に新しく登場してくるであろう投信、年金商品、デリバティブズなど多種多様の金融商品を金融監督庁はいかにさばいていくかでございます。玉石混交の金融商品や金融犯罪を選別し、マーケットの破壊を起こさないことでございます。  消費者である一般の個人投資家からすれば、マーケットで提供される商品の違法性、脱法行為を取り締まる公正なルールの執行者、いわば金融警察の役割を期待するところでございます。こうしたインフラがないところでは安心して参加者にはなり得ないのであります。違法行為を監視する機関があればこそ、社会が機能するゆえんであります。法に対する信頼はこれをもって高まり、司法も機能するのであります。司法が機能しない社会では、情実とやみの権力が徘回するしかありません。  最後に、金融を開かれたビジネス、普通の産業にするためにも、行政から独立した金融監督庁がぜひ必要であります。ひっきょう、ビッグバンは何を目指すのか。日本市場を活性化させ、世界に通用するルール運営される市場とすることをもって、一千二百兆円の金融資産を生かし、消費者により多くの利益を提供することであり、また、このことは翻って我が国の金融市場金融システムに対する内外からの信頼を高めるゆえんでもあります。この視点の欠落したビッグバンの議論は不毛かと存じる次第であります。  詳しくは、先生方の御質問の中で誠心誠意お答えさせていただきます。(拍手
  8. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、山田参考人お願いいたします。
  9. 山田弘史

    山田参考人 国会において意見を述べる機会を与えていただきまして光栄に存じております。  金融監督庁法案並びに関連法案についての政府原案、また修正案も出ておりますけれども、主として政府原案について私の意見を申し述べたいと思います。  昨年六月に決着をいたしました住専の処理に税金投入を政府・与党が強行したということについて、国民の八割、九割から非常に強い批判、意見が出たわけでありますが、その事実上の政策立案者、執行者であった大蔵省に対して、支配力を削減せよ、すべきだという要求が国民の間から広く盛り上がってまいりました。  そして、続きまして昨年十月の総選挙前後に、これは大蔵省に余りに行政権限が集中し過ぎるじゃないかということで、政府・与党におきましてもこれを取り上げ、プロジェクトチーム等においてもそのような議論があった。そして、また同時に、金融政策当局たる日銀への大蔵省の支配があわせて問題になりまして、その批判が高まった。そういった状況に対して、政府・与党が一定の宥和的対応を余儀なくされたというふうに私は見ております。  しかしながら、その直後、十一月に成立をいたしました第二次橋本政権のもとで、重要法案として、金融が重要政策として、金融に大きな関係のあるいわゆるビッグバンというふうに、ビッグバンという言葉は私は余り好きじゃないので使わないのですけれども、いわゆる金融システムの抜本的改革ということが提起をされました。  この金融システム改革というものが出たことによって、さっき申しました一定の宥和的対応政府・与党の宥和的対応というものが変わってまいりまして、表面を繕っただけのものになってしまったというふうに私は考えております。ビッグバン自体について申しますれば、これは独占、大銀行金融市場支配を短期間の間に強化しようというものだというふうに私は考えております。     〔委員長退席、野呂田委員長代理着席〕  さて、金融監督庁法案提出されるに至りました、金融監督体制がいかにあるべきかという体制確立の理念につきましては、私は次のように考えております。  まず、これまでの大蔵省が一元的に担ってまいりました金融監督、それは一口に言って大銀行、大企業のためのものではなかったか。そのためにいろいろな批判が出てきたというふうに思うのでありますけれども、これを国民のための、もともと行政官庁は国民のためのパブリックサーバントとして、金融行政について国民の立場に立ってなすべきであるということが確立の理念の第一であるかと思います。  それから第二に、財政金融分離原則。これは最近のヨーロッパその他における状況でもわかりますとおり、資本主義が高度化してまいりまして、国民の所得、福祉を増強するという形の政府経済政策また財政政策というものが、えてして非常に現在の通貨体制のもとでは通貨の増発というものを招くような方向に流れやすいし、また流れておる。それに対して日本では、日本銀行、やはり通貨の、マネタリーディシプリンと申しますか、金融政策当局として通貨価値の擁護に当たらなくちゃならない、それがえてして大蔵省財政当局の支配に服する、従属するという形になっております。  また、金融政策金融行政というものは若干異なるわけでありまして、金融政策はいわば市場政策である、マーケットの政策である。それに対して金融行政というものは、これは規制政策であるというふうに私は考えております。したがって、金融政策財政から切り離すと同時に、金融行政もまた財政、徴税とか予算の作成、執行等から切り離す必要があるということが一つの原則であるかと思います。  そして、規制緩和ということが一つ経済政策の大きなスローガンになっておりますけれども、この規制緩和について申し上げますと、無限定の規制緩和ということは、私は余り適当ではないのではないか。やはり銀行あるいは金融機関の公共性、社会的責任に照らして、必要な規制は行わなければならないというふうに私は考えております。  また、これは国際的な観点から申しましても、バーゼルにありますBIS、国際決済銀行において最近公表されました、いわゆるバーゼル銀行監督委員会銀行監督原則、二十五項目の原則に従ってやろうではないかと各国の中央銀行総裁の合意のもとにそれが出ておりますけれども、それの一項目に、銀行が高水準の倫理的、職業的基準を促進し、犯罪分子に用いられることを防ぐルールを確認する必要がある、すなわち倫理性というものが強調されております。金融機関というものは、公共性、社会的責任からして高い倫理性を持たないと、えてして最近のような不祥事に流れやすいということは言うまでもございませんけれども、そういう国際的な合意もあるということとも照らし合わせまして、やはりそのような三つの原則、大企業、大銀行のためではない、また、財政金融分離をする、無限定な規制緩和ではなくて必要な規制はこれを行う、また、倫理性を高めるという原則を持って金融監督に臨むべきであるというふうに私は考えます。  提出をされております政府案政府原案の金融監督庁法案並びに関係法律整備に関する法案でありますけれども、そのような、さっき申し上げました大蔵省批判の原点、また監督の理念というところから申しますと、余りにも大きな欠落があるというふうに私は考えております。法案の内容、これは金融監督庁の設置、また任務等の基本的な点の規定であるかもしれないけれども、余りにそっけない、法三章的な規定ではあるまいか。八一年に銀行法が新しくできましたときにも、いわゆる訓示規定を含んで、社会的責任に立った銀行のあり方というものが規定をされておる。これは銀行あるいは金融機関監督についての基本的な法律でありますので、もう少ししっかりした法律であってもいいのではないかというふうに思います。  そして、いろいろございますけれども、基本的な点、二つ三つ申し上げますと、設置形態として、金融監督庁という総理府の外局、一応大蔵省とは切り離すけれども、外局、外庁という形態、これよりも私は、昨年九月の与党三党の合意にもあったように思うのですけれども、いつの間にかそうではなくなった、やはり公正取引委員会型の、同じ三条機関でも公正取引委員会型の独立した行政委員会という形であるべきだというのが一つでございます。  また、銀行検査機能、これを担うわけでありますけれども、やはりこれは関連法案という、あるいは関連の行政ということにかかわるかもしれませんけれども、人員が余りにも少ない。日本では金融機関検査五百七十六人、九七年度の定員が。アメリカでは、各種の検査機関がございますけれども、合わせると六千人以上の検査人員が携わっておる。こういう点からいっても、やはり検査をもっと充実させる必要があるというふうに思います。  それから、金融監督庁法案の三条に任務ということがございます。預金者、保険契約者、それから有価証券の投資者を保護ということをうたっております。これは非常に適切なことでありますけれども、私は、それに加えてやはり、後で申しますけれども、最近、銀行による個人債務者の被害が続出しておる、そういう点から、借入人等銀行取引者全般に対して保護を促進をするという必要があるのではないかというふうに考えます。  先ほど指摘がございましたけれども、またその他にディスクロージャー、大蔵省権限を持って非常に多くの金融のデータを持っております。それをやはりディスクローズするということが今まで行われていなかったということがいろいろな不正、不祥事にも関連してきている。やはりこのディスクロージャーというものをもっと充実してもらいたいということでございます。  先ほど申しました、公正取引委員会型の委員会になりますと、これは立法論としていろいろございましょうけれども、準司法機能を持つ委員会ということになりますと、調査あるいは告発ということが可能になる。現在、証券取引等監視委員会が八条機関として大蔵省にあるものが、新しい金融監督庁法案では、三条機関金融監督庁にそのまま八条機関として附属をするという形になるようでありますけれども、やはり公正取引委員会型の行政委員会になりますと、準司法機能を持って検査、告発、これは最近、野村証券のあれがございました。それは第一勧銀からお金が出ているという、やはりこれは片手落ちといいますか、非常に著しく均衡を欠くことではないか。つまり、証券取引に関して証券会社等の調査、告発はできるけれども、銀行の非違に対してこれを是正する機能が欠けているということはこれは大きな欠落でありまして、そういう点をぜひ法案においては挿入されるべきではあるまいかと思っております。  せっかく機会を与えられましたので、この際、もう一つ、消費者、個人債務者保護のための銀行監督の強化について一言申し上げておきたいというふうに思います。  消費者の銀行被害、銀行の、特にバブル期における過剰融資、押しつけ融資といってもいい、そのような融資が横行した。それについての消費者、個人債務者の被害が続出をし、それが司法の場においても六百何件という、変額保険あるいは不動産共同投資、この変額保険だけでも六百件を上回る訴訟が起きている。それに対して、一部、銀行の非違を正す原告勝訴の判決も出ておりますけれども、大部分はやはり時間もかかるし、なかなか被害者の意見を聞いてもらえない。  私、弁護士さんなんかと一緒にこの被害者の声を直接聞く機会がありましたので非常にそのことを強く感じるわけでありますけれども、銀行の過剰融資に対する社会問題化しているこういうことについて、やはり監督体制の上でも一定の処置がなされるべきではあるまいかというふうに思います。  先ほど申しました、取引者、借入者の保護ということを明記すると同時に、例えば行政委員会、公取委型の行政委員会になりますと、消費者問題についての識見、経験を持ち、またその利益を代表することのできる者を委員に任命するということも可能であります。  そのようなことを含めまして、さらにこの法律、あるいはこれは基本法でございますので関連の法律になるかと思いますけれども、現在、金融制度調査会金融機能活性化委員会において、これら金融消費者保護の立法が必要であるという意見も出されておるように聞いております。そのような法律もあわせてやはり銀行の非違を正し、あるいはこのような不正、不祥事がなくなるような監督体制の確立。関連をして仲裁制度、アメリカにおいては非常に普及しております仲裁制度というものも日本ではもっと考えられていいのではないかというふうに考えております。仲裁制度、また、先ほど申し上げました統一消費者信用保護法ということをぜひ法案あるいは関連法案に加えていただくということを要望いたしたいと思います。  現在、全国銀行の貸付残高の業種別残高で一番シェアが多いのは、実は個人向けなんですね。九五年の残高で一六・七%ということが出ております。そのような状況からいっても、個人債務者、消費者保護のための銀行監督体制の強化ということが必要であるというふうに私は考えております。  どうもありがとうございました。(拍手
  10. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  11. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。自見庄三郎君。
  12. 自見庄三郎

    ○自見委員 自由民主党の自見庄三郎でございます。  きょうは、行政改革に関する特別委員会、当委員会に、金融監督庁の設置法案初め関連法案、また新進党からも対案が出ておりますけれども、大変貴重な時間を参考人方々に御出席をいただきまして、貴重な御意見を聞かしていただきました。心からお礼を申し上げる次第でございます。  今さっきから、本当に含蓄のある参考人方々の御意見を聞かしていただきました。もう言うまでもなく、金融システム改革は、第二次橋本内閣が掲げる六大改革一つとして位置づけられておりまして、先生方は御専門家でございますから、今のまさにボーダーレス経済あるいは米ソ冷戦構造の崩壊した後の大競争の時代、こういった世界の経済金融が大きく移り変わっている中に、まさにこういった時代背景として、六大改革一つである金融システム改革は、本当にこの国家が生存していくかどうかの大変基本的な大事な改革であるというふうに私は確信をするわけでございます。  今、いろいろと参考人方々からも御意見がございましたように、我が国の金融、証券、保険などの金融市場は、今日、国際的な流れの中で、グローバルスタンダードから立ちおくれて競争力が低下してしまうなどの危機感が、いろいろな御意見があったわけでございまして、また、橋本総理も、改革方向としては、市場原理の働く自由なマーケット、市場、それから透明で信頼できる公正な市場、あるいは国際的で時代を先取りする市場、今参考人の中にもございましたように、フリー、フェア、グローバル、この三原則を掲げて、御存じのように、今後五年間、規制の撤廃・緩和あるいはディスクロージャーの充実あるいは国際標準に沿った会計制度転換などを示しているところでございます。  また、二〇〇一年、いわゆる日本版ビッグバンを目指すなら、金融、証券、保険に係る規制の緩和、撤廃にあわせて、これと表裏一体関係にある検査監督機能の強化にもこたえるものでなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  そういった中で、まず、透明な行政、監視ルールの提示、金融機関情報の開示、それと市場におけるチェック、それから自己責任原則などを基盤とした金融システム改革が不可欠であるということは、各参考人の共通した御意見であったように私は感じるわけでございます。私は特に強調したいのは、これらの改革は、国民に対しても同時に自己責任を伴うものであり、国民の理解を得ずして、また民主主義国家でございますから、これらの改革が実現することは不可能である、こういうふうに私自身は思うわけでございます。  そういった前提で、きょうは参考人方々にまず質問をさせていただきたいと思うわけでございますが、これは各参考人全員にお聞きをさせていただきたいと思うわけでございます。  今私が申しましたような時代認識、なおかつ現実には、金融については不良債権問題あるいはビッグバンの問題など取り組まなければならない問題がたくさんございますが、これらの問題を解決していくに当たり、金融検査監督行政上いかなる点に留意していく必要があるのか。  個々の先生、述べられた方もおられますし、時間があればもう少し詳しく述べたい、こういう参考人の方がおられたわけでございますから、もう一度詳細な意見を、もう少し言い足らなかったあるいはもう少しこういった点を強調したかったということがございましたら、金融検査監督行政上、こういった時代のときにいかなる留意をしていく必要があるのか、こういったことを各参考人からまずお知らせいただきたいというふうに思います。
  13. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 トップバッターということになりますが、足りない点はまたほかの先生方に御質疑いただければと思います。  今お話しになりました問題意識は私も全く同じでございまして、これは野党の方々もその問題点については恐らく皆さん同じだと思いますが、特に、私は二、三、一つは、現在起こっているいろいろな不祥事というものが何に由来するかといえば、これは一つは、もちろんこれは大蔵省がこれまでやってきた護送船団方式というものによってでき上がったもたれ合い方式、もたれ合い的な体質というものがあって、金融機関全体にやはりそういう厳しさの欠けている部分があったんだろうし、それから、大蔵省監督体制自身も長年の惰性の中で、同時にまた、一方に人手不足というような問題もいろいろございますけれども、今までの方式ではもう限界が来ているということのいろいろな表明ではないかと思うんですね。  そういう意味で、全体を一つ一つばらばらにやるんではなくて、総合的に変えていくという意味においては、今回のこのいわゆるビッグバンの体制づくりというのは、私は非常に政府としても思い切っておやりになったというふうに思っております。  特に、外為法改正が五月の十六日でございましたか成立いたしまして、これは内外の資本の自由化、外為業務の規制緩和は徹底的にやるわけですから、これがもう法律が通ってしまいましたから、こういう法律が通った後、金融制度、証券制度、保険制度がもたもたと今までのようなことをやっていたんじゃ、完全に千二百兆円の個人金融資産も大量に海外に流れていくでしょうし、日本の東京市場というものが全くローカル化してしまうということは、これはもう必然的だと思うんですね。  ですから、そういう意味では、背水の陣をもう既に政府はおしきになった。あれはワンステップだなんて気安いものじゃなくて、あれはもう背水の陣だというふうにお考えになった方がいいと思います。  私はそれを見ているがゆえに比較的楽観しているのは、先ほどから、大蔵省がいろいろ規制とかなんとかで市場ルールに反することをやるんじゃないかという懸念がいろいろ出ておりますけれども、そんなことをやっていたらどうにもならなくなってくるんです。  現に大蔵省方々もそういう方向で覚悟を決めておられるし、現にビッグバンというものの推進者は実質的には、こう言うと差しさわりがありますけれども、大蔵省方々があるいはOBの方々も含めて動いているということはもう間違いないわけでございます。  これはやはり昨年までのさまざまな大きな不祥事やら官僚のスキャンダルやら、いろいろなものの中で大蔵省たたきというのがマスコミなり政界の皆さん方から行われた。これによって徹底的にいろいろな意味で大きな反省の方向に向かってきたということで、我々は、むしろこれからは政界の方も、マスコミもそうでしょうけれども、官僚の人たちを前向きに、ともかく改革方向に走ってもらうために、余りだたくばかりが能ではない。昔のことは大いにたたいて結構なんですが、これからやろうとしていることについては、できるだけ前向きに誘導してしりをたたく方がいいのではないかというふうに思っています。  それから、銀行いわゆる金融機関でございますが、私は、最近見ておりましても、第一勧銀の問題だとかあるいは証券では野村証券の問題だとか、これはもう私があえて言うまでもございませんけれども、そういう問題が起こって、あれは第一とか野村だけの問題ではない。やはり金融機関なり証券会社なりあるいは保険会社も含めて、いわゆる政府がリードしてしようとしているビッグバンというものに対して、まだまだいろいろな意味で甘えがあるんではないかと思っております。  自己責任原則ということを今度の金融監督庁法案にも基本的な思想としてうたっているわけでございますけれども、やはりそれに追い込んでいくということが必要なのではないか。私は、日本金融産業の体質というものが不良債権の処理をおくらせているということがはっきり言えると思います。  そういう状態を生み出したのは政府にも責任がもちろんあるわけですけれども、私が一番痛感しますのは、そういうものに甘えて、土地だとか、いわゆる不動産とかゴルフ会員権とかそういうようなものにバブルのときに集中的に投資して、そしてそういうようなものにしか投資することができなかった、あるいは預金と貸し金の間の利子の差額だけで飯を食っている、こういう金融機関の体質が非常におかしいのであって、もう既に九〇年代に入りましてから、世界じゅうの先進国の銀行がデリバティブにしろさまざまな新しい商品開発をやっております。そういうものに対して日本金融機関は、ただ大蔵省規制してきたからできなかったのだということを理由にしているだけの話で、実際にやろうと思えばまだまだやれる余地があったのだろうと思います。  そういう意味では、やはり金融機関にもっとそういう意味での意識改革というものが行われてしかるべきだと思いますし、さらに、その延長線では郵貯を含めた財投各機関の問題ももちろんあるわけでございますけれども、当面、民間金融機関の問題というのは、先ほど申し上げたもう背水の陣でやらざるを得なくなったビッグバンというものは、中途半端にやれば日本市場は成り立っていかない、その主体者であるのは金融機関ではないかということを考えますと、むしろそちらの方に私どもは言いたいことがたくさんございますが、一応ここで私の意見は終わらせていただきます。
  14. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 基本的な見解として、グローバルな金融制度改革が進んでいるということに関しては自見先生と同じ考え方ですけれども、規制制度あるいは監督制度をどうやって効率を上げるかという点に関しては幾つかの点があるかと思います。  一つは、ルールづくりという機能を監査機能からできるだけ離すということが一つの大きなポイントだと思います。皆さんも選挙改革の問題によって、ルールをつくる人が変わるルールによって影響を受けることで、どこまで制度がぎくしゃくしてしまうかということはもう御存じかと思いますけれども、やはりできるだけルールづくりということを監督庁あるいは金融委員会から離すということが多分大きなポイントじゃないかと思います。監督庁提案にも金融委員会提案にも、いわゆる企画機能ルールづくりの機能だと思いますけれども、これを大蔵省に残すという特徴があります。これは非常に健全なやり方だと思います。  もう一つですけれども、最近いろいろな方が大蔵省たたきという言葉を使っているのですけれども、私は、この大蔵省たたきは非常によくないことだと思います。日本規制制度はどういうふうに今のものになってきたかといいますと、いろいろな勢力が絡んできてこうなったということが一番大きなポイントだと思います。ですから、大蔵省がつくったわけではありません。農林省も絡んでいますし、労働省も絡んでいますし、日本銀行も絡んでいますから、こっちがいい、こっちが悪いということを一切言えない状態だと思います。こういうマスコミ的なたたきはやめて、もっと分析的に取り組むべきではないかと思います。  ですから、大蔵省という言葉を使うときにみんな緊張したり、反対、賛成、強い、嫌だとかいろいろ言うのですけれども、言葉をやめて、こういう大蔵省という言葉のかわりに、例えばバナナとかリンゴとかそういう言葉を使えばもっと冷静に問題が分析できるのじゃないかと思いますけれども、とにかくたたきをやめましようというのが一つのポイントです。  もう一つは、監督を仕事とする機構を、政治から、財政からできるだけ離すということが非常に大きいと思います。ねじで何かをとめようとしたときに、道具箱からハンマーを出したってしようがないわけです。ですから、財政的な方法すなわち税制あるいは税収を使う支出、財政支出を使うということは、そもそも監督問題を解決する道具としてよくないということだと思いますから、そういう政治からも財政からも監督庁あるいは金融委員会を離すことが一つの大きなポイントじゃないかと思います。  もう一つですけれども、御存じのように日本金融制度は民間の部門と公的の部門がありまして、どうやって監督基準を一本化するかという議論になりますと、主に民間部門に関する議論が多いと思います。これは残念なことだと思います。  というのは、日本のこれからの資本の使い方をよくするために、やはり公的部門の資本の使い方をよくしなければならないということが非常に大きなポイントだと思います。ですから、今度、監督庁権限を持つ、あるいは金融委員会の持つ権限は、民間金融機構だけじゃなくて、公的部門の借入先にも当てはめる形を何かつくるべきじゃないかなと思います。特に、監査基準もできるだけ民間と公的部門も同じものを実行すべきじゃないかと思います。  この前、ニュージーランドの方とちょっと話をしたことがありますれども、やはりニュージーランドは非常に頑張って、公的部門をできるだけ民間基準で会計をやりましようという動きになりましたけれども、それによって随分財政もよくなったという話でした。こういう例を日本に導入すれば非常に日本経済が活性化するのじゃないかと思います。  もう一つは人の動きの話ですけれども、先ほど申し上げましたが、今度新しく例えば監督庁案が通った場合、その監督庁にはだれが入るかということは、恐らく大蔵省からの出向の方がたくさん入るという話をしましたけれども、アメリカの例を見ますと、公的部門と民間部門の人の流れがかなりあるという非常にいいところがあると思います。もちろん天下りとかいわゆる回転ドアという批判はいろいろあるのですけれども、やはりいろいろな方がいろいろなところで働けるという制度が、品種改良という観点から見れば非常に得するところはあると思います。  この問題は結局年金問題になってしまうと思いますけれども、長く日本の公的部門で働いた方は、民間から声がかかってきて、うちに来ないかということを言われたら、いや、年金がですねという答えが多いのです。ですから、せっかく日本経済効率を高めるチャンスがあっても、年金が継続性がありませんので動けないという問題があるから、やはりこういう問題にちょっと取り組んでいくべきじゃないかと思います。  もう一つですけれども、やはり税制の一つの問題ですけれども、八〇年代前半にグリーンカードシステムという構想がありまして、結局だめになってしまいましたけれども、今度ビッグバンによってそういうシステムを導入しなければならないということになるのじゃないかと思います。今の金融制度の中で、どうやって税金を少なくするかということを目標にした枠組みが幾つかあると思います。そういう税逃れのためのことができないような番号制度を導入したら、もっと簡単に監督機能を果たすことが可能になるのじゃないかと思います。以上です。
  15. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 大変恐縮でございますが、持ち時間があと数分でございますので、よろしくお願いいたします。
  16. 中北徹

    中北参考人 はい。手短にお話しいたします。  自見先生の御指摘、二点ございます。  一点は、冒頭陳述で申し上げましたけれども、市場型に社会政策型から移行する、これはもう世界の趨勢だ。ドイツもフランスも、これまでの金融行政とさして問題はないわけですけれども、やはりこの世界の潮流、特にEU統合の中でこの方向というのは動かしがたいということだというふうに思います。  アングロサクソン型でどうしてという疑問をよく新聞紙上で言われるわけですが、ここにフェルドマンさんがいらっしゃるからというわけじゃないんですが、アメリカがいい、イギリスがいい悪いというのではなくて、私は、市場型ということがキーポイントだというふうに思います。スウェーデンも、八〇年代に社会政策型の旗手だったあの経済は大転換をした、年金も破綻して、大転換を遂げたという点が一点あります。  それからもう一点は、日本版SECというものをぜひここで目指していただくということが、キーポイント、かぎのかぎだというふうに思います。  すなわち、証券取引等監視委員会はありますが、アメリカにございます証券取引委員会のように、すべからく証券取引というものに関しては原則としてすべてチェックをして、単に業者だけではなくて、今日、コンピューターの中も洗いざらいチェックをする、何かいかがわしい商品があったら、すぐ専門家として摘発し、あるいは参考意見を述べ、ガイドラインをなし、基準をなし、また基準もオープンに意見を聞きながら迅速に変えていく、こういう流れで、金融市場の発展と、その金融の、いわば行政委員会でありますSECとの流れというのは非常に平仄が合っているわけであります。  したがって、何か問題が起きますと、会社ぐるみというのではなくて、金融犯罪を摘発するという観点から、ぜひシステムづくりをしていくということが極めて重要ではないかというふうに思います。ですから、犯罪捜査権をきちっと持った独立性の高いものをつくるという点がポイントだと思います。
  17. 山田弘史

    山田参考人 二点だけお答えを申し上げます。  先ほど余りにも大きな欠落と申し上げましたけれども、先ほどちょっと申し残しました。人事遮断の欠落ということが非常に重要なことであるかと思います。新しい銀行監督機関財政当局と切断、切り離すという場合に、人事的にいつでも帰れる、大蔵省のお役人はいろいろと回って偉くなりたいということでしょうから、余り気に入らないかもしれないけれども、国民の公僕として対する場合には、検査監督が非常に重要であるというからには、一回そちらに出た場合には「帰らざる河」ということで、帰らないということの方がやはり国民のためには必要であるかというふうに考えます。  もう一点、さっき申しましたけれども、やはり不正、不祥事への歯どめの規定を新しい金融監督機関法律に欠いておる、欠落しておるということが大きいと思います。これは、銀行法の第四章監督規定、二十四条から二十七条までの規定については、何か関連法のあれでも新しいあれは出ていないようでありますけれども、やはりこれ自体非常に不十分なものなんですね。  最近の状況に際して、銀行は悪いことをしないんだというようなことじゃなくて、やはり悪いことをした場合にはこうという、そのような規定が、立法論的にはいろいろございましょうけれども、例えば銀行法には訓示規定というものがある、銀行は国民のためにしなくちゃいけないというような訓示規定、それでもよろしいし、どういう形でもいいですから、やはり不正、不祥事への歯どめの規定がぜひ必要であるというふうに考えます。  以上です。
  18. 自見庄三郎

    ○自見委員 大変含蓄のある情熱的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。  残念ながら、私の持ち時間を切りましたので、質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  19. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 次に、宮本一三君。
  20. 宮本一三

    ○宮本委員 宮本でございます。  新進党を代表いたしまして、参考人にいろいろ御質問をさせていただきたいわけでございますが、本当に四人の参考人皆様方の御意見、ただいま聞かせていただいておりまして、非常に含蓄のある、そして示唆に富んだ御意見を開陳していただきました。非常に感謝を申し上げておりますし、また、それぞれの御意見を参考にして、我々も最終的な判断を今からさせていただきたいということでございます。また、参考人の御意見の中で、いろいろと質問を私の方からさせていただきたいわけでございます。  実は今度のこの改正の問題の大きな出発点は、やはりバブル経済の発生と崩壊、そこから来る金融破綻といったことがもちろん最大の原因であるわけでございますが、正直申しまして、今大きな非難を受けている護送船団方式あるいは大蔵方式といいますか、いろいろな問題は確かにございますけれども、戦後の経済の発展をずっと振り返って見てまいりますと、あの混乱の中から五十年間を、少なくとも一九五〇年代、そして一九六〇年代、これは世界中が、日本というのは何とすばらしい経済発展を遂げている国だ、また七〇年代に入っても大体そういう評価で、オイルショックとかいろいろありましたけれども、切り抜けてきたわけであります。その過程で、日本株式会社と、そんな形で呼ばれるほどに、金融あるいは行政と民間企業とが非常にうまくいっている例としてさえ国際的に評価された時代があったのに、あのバブルからこんなことになってしまった。非常に残念なわけでございます。  この点に関しまして、私は、正直申しまして、あのプラザ合意というものが、先生方の中でも触れられましたけれども、大きな曲がり角のタイミングであったかなと思うのですが、あの合意の後で、どうしても円高をある程度容認しないことには国際収支が国際非難の的として余りにも大き過ぎるということで、またアメリカ側もドル高政策、ドルが強いことがアメリカの強さだといったような形から、やはり国際収支上これではやっていけないという認識を持ち、そして大きく世界の流れを転換するような合意がなされた。非常に象徴的な出来事だったと思います。  その結果としてでございますが、円高が進みました。円高は当初は歓迎されました、国際収支是正のためにいいことだと。ところが、予定されたかどうかわかりません、一定の水準を超してさらに円高が進んでしまいますと、これは日本としても輸出が大変なことになってきた。したがって、特に中小企業の方から、何とかこの円高を抑えてもらわないことには立ち行かないという悲鳴に似たような声が上がってまいったわけであります。  これは各先生も御指摘されましたように、そのためにはということになりまして、一つは、円高がこれ以上急速に進むのを国際協力のもとで、G7等で、特にアメリカの御協力を得て何とかスローダウンしたいという交渉があったわけだし、また、その見返りと言ってはあれでございますが、日本も思い切って財政支出を強化する、また金融政策でも、公定歩合を中心にできるだけの金融緩和策をやって内需を拡大する、そのことによって輸出圧力を内政で抑えてくださいよと、そういった恐らく合意のもとに国際協調が進んでいったと思うわけでございます。  ある段階になって、これは大変だ、そろそろブレーキをかけなきゃいけないなと思ったけれども、国際収支の為替レートに対する反応というのはすぐには起こらない。特に最初の半年や一年はむしろ逆効果さえ出るような、そんな状況でございますからして、大変だといったときには国際収支の黒字は減るどころかむしろふえているような、そんな状況に面して、バブルの足音が聞こえてきたのに、それに対するブレーキをどうしてもかけることが国内的にはできなかった、ブレーキを踏まなければいかぬなと思いながらも、外圧でどうしても踏めなかったという一つの事情があったのではないかなと思われるわけです。  最初にフェルドマン先生、こういった外国の委員会に御出席いただくということは本当に大変な御苦労だったと思いますし、特に日本語でやっていただいたわけでございますから、私たち本当に助かりましたが、同時に、非常に流暢な日本語といえどもやはり外国語でございますから、御苦労があったかと察するわけでございます。  その上で質問でございますが、今私が申しましたような、国際収支の黒字を抑えるために日本金融当局があるいは財政当局がここでブレーキをそろそろかけなければいかぬのに、どうしてもかけられなかったような外圧があったのではないかという私の推測でございますが、それについて、外から見ておられてどんな御印象でございましょうか。
  21. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 どうもありがとうございました。  きょうのテーマとちょっと離れた内容かと思いますけれども、米国の当局と日本の当局が密接な協力をするということは非常に大事なポイントだと思います。為替と経常収支の関係は非常に今大きく議論されて、私は、いろいろ研究を進ませようとしても、統計の不十分な点があって余り結果が出ないのであれですけれども、とにかく当局の協力と円相場の動きという点が非常におもしろいと思います。円相場が八十円台まで行ったときに、米国日本の当局が協力してこれをとめようという動きが出たことは、非常にいいことだと思います。  逆転が非常に速かったということは、どこまで協力が効き目があるかということを非常にきれいにあらわすことだと思いますけれども、逆に、密接にそういうことをやっていないと、市場がオーバーシュートするということがあることが最近非常にはっきりしたんじゃないかと思います。  ただし、こういう為替の動きは規制制度と密接な関係があるかといいますと、ちょっと遠い存在じゃないかなと思います。規制がしっかりしている中で市場がオーバーシュートする傾向が抑えられるという効果があるだろうと思いますけれども、直接、例えば金融委員会ができたからといって、為替にそれがすぐ影響が出るということはちょっと言えないんじゃないかと思います。  私は、毎日いろいろな国の投資家日本投資家、ヨーロッパの投資家、アメリカの投資家、その他の地域の投資家と話をしていますけれども、日本は、これから方向として、しっかりした規制制度を導入するか、必要ない規制を外すか、経済効率を上げるかということに非常に高い関心を持っています。ただし、それは非常に長期的な話で、あした、あさっての為替相場に、例えばこういう行政制度を導入したら為替がこう動くという話じゃありません。  経常黒字と規制の問題は、金融セクターよりもむしろ非金融部門の方が一番大事な点じゃないかと思います。  金融セクターと絡む規制と為替という話をしますと、むしろビッグバンに関する話になるかと思いますけれども、結局、この前通った為替の法律が海外へのシフトを起こすかどうかということが非常に大きな議論に今なっていると思いますけれども、私は、むしろそれほど大きな海外へのシフトはないのじゃないかと思っています。  なぜかといいますと、確かに、この為銀法の改正によって取引コストは下がることは下がりますけれども、取引コストが下がったからといって海外資産を大きくふやそうという動きが出るかどうかは、まだまだちょっと判断するには時期尚早だと思います。  とにかく、本日の議論のテーマである規制制度は、経常黒字の動きと為替の動きとそんなに密接な、短期的な関係にはないと思いますけれども、長期的にやはり日本経済効率に貢献するところですから、ぜひとも頑張っていい制度をつくっていただきたいと思います。
  22. 宮本一三

    ○宮本委員 ありがとうございました。  ちょっと私の質問のポイントとは少しあれかと思うんですが、なぜこんな質問をしたかといいますと、フェルドマンさんの方の自見先生に対するアンサーの中で、大蔵省バッシングを余りやっちゃいかぬという説明がありましたので、ひょっとしたら、金融政策のバブルへの突っ込み、余りにもブレーキが遅過ぎたことに対する批判を、ちょっとひどいんじゃないかと言いたいのかなということで述べたんですが、ちょっと質問のポイントからずれておりましたが。  鈴木参考人、私が今申しましたようなバブルへの突っ込み、それと、ブレーキの問題もありますが、この問題で、あるいは責任がどこにあるかが今度のこの委員会の、今議論している金融監督庁の問題の原点でございますので、鈴木参考人はどんな御意見をお持ちでしょうか。
  23. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 大変難しいというか、言いにくい問題だと思いますが、そもそも、あのころ私も、実際にいろいろ筆をとって経済問題について、自分もエコノミストの端くれとして物を書いたりなんかしておりました。  あの時点で、自分自身も反省して振り返ってみますと、バブルがあのように急激に拡大して、しかもあのような形で急激に落ち込んで、バブルになれば当然落ち込む時期がおのずからあるわけですから、私もある段階ではこれは危ないなと思いましたけれども、ああいう形で急激に落ち込んで、その落ち込んだ後がこれほど長引いて調整過程が続いたということは予想外であったわけでございます。  当時、やはり日本エコノミストも含め大多数の方々が、いわゆるストック重視の時代だ、ストック経済時代だと。今有名な評論家でおられる方も、今は大変厳しいことを言っておられますけれども、当時は、ストックの時代だ、どんどん株を買えとか、やれ何を買えとか言われておって、私はそれほどひどいことを言ったことはないんですけれども、当時のことを考えてみると、世の中の流れは皆そうであった。しかも、日本だけじゃございませんで、アメリカでもヨーロッパでも、当時はバブル現象というのは皆起こっておりまして、多かれ少なかれ、そういうものはあったわけでございます。  しかし、日本の場合、最大の問題は、バブルが終えんして落ち込んで以後、その後始末にこれほどまで時間がかかって、なおかつまだ解決していないというところが問題なんであって、これは、やはり不良債権というものがあれだけ拡大した、しかも、その処理に対して、行政の側にももちろん責任はあったと思いますけれども、いろいろな手おくれがあったということがあり、そういうものが累積して、しかも、それがあるために、今日これほどの低金利であるにもかかわらず景気が回復しないというその最大の原因は、まさにそこにあるのだろうと思いますね。  ですから、私は、そういう意味で、だれが悪かったかという責任については、バブルに乗った、あるいはそれを加速した金融機関なり、あるいは不動産を含めていろいろな業界の方であり、企業全般もやはりそういうものに乗った、乗らなかった人は偉いと思いますけれども、だろうと思いますし、また、その中で先を読めなかったマスコミも含めて、みんなの責任というのはあるのじゃないか。  ただしかし、そういう中で、いやしくも金融政策なり財政政策なりをコントロールしている立場にある政府の方、あるいは日銀も含めてですけれども、そういう方々がやはり適切な時期に調整に早目に乗り出す。バブルを生み出したのも、それから極端に景気をここまで落ち込ませたのも、やはりそういう政策当局者の責任はないとは言えない。  それは、どちらが悪いかというと、初期のころは財政が余り動かないで金融ばかりにしわを寄せていたという大蔵省にも責任があったでしょうけれども、ある段階から、今度は大蔵省がまたやたらに補正予算を組む。しかし、これもまた先生方にも責任があるのだろうと私は思っておりますから余り申し上げられませんけれども、円高だ円高だといって皆さんがお騒ぎになったものですから、こういうふうになってしまった。  ですから、責任問題といえば、それは簡単に言えば、財政金融をコントロールしていた大蔵省が悪いのだということは言うのは簡単でしょうけれども、大蔵省をしてそういう悪い政策をとらしめたのはだれであるのかといったら、これは非常に言いづらいけれども、先生方も含めて我々みんなであったのではないかというふうに考えております。  ありがとうございます。
  24. 宮本一三

    ○宮本委員 今の参考人の御意見、本当にありがたいと思います。  確かに、だれがと言われると、本当にみんなではなかったかということでございます。そして、今我々もバッシングを一極に集中しているような態度をとるべきではないと思いますし、特に、今の話でございますれば、バブルへの突っ込みはみんなの責任だけれども、それからの脱出に当たっての手続といいますか、やり方については、これほど長引いたのはやはり行政当局、政治にも大きな責任を負ってもらわなきゃいかぬという御意見だと拝察しました。私も同感でございまして、後の処理の問題で非常に長引いたということは、やはり英断を持ってやらなかったがためにずるずると延びてしまったということだと思います。  そこで、私は思うのですけれども、最終的な判断というものは、議院内閣制でございます、いろいろなことは確かに大蔵、日銀が金融政策について責任を持っておりますけれども、今の建前からいきますと、最後の土壇場になれば決めるのは内閣総理大臣であり、そして大蔵大臣であり、当時の与党の最高責任者だったと思います。やろうと思えばできたのでございますが、それを行政当局にあるいは日銀当局に、そういうところにいつまでも任せておいて、後になって、何だという言い方は、これはないと思います。そういう意味で、我々も政治家の一人として、本当に政治が責任を持ってやらなきゃいけない問題ではなかったかということを今反省いたしている次第でございます。  実は、先生方の御意見の中で、私非常にありがたいと思いましたのは、フェルドマン先生、内閣案と、それから我々の新進党の方から提案させていただいた案とを対比されまして、そしてどっちの方がこういう点でいいのかということを明確に述べていただきまして、本当に参考になったと思います。  その点について、若干私の方でお聞きしたいと思いますのは、一方は、日銀総裁という高い地位にある五年間の任期を持つトップが監督業務をやっていく、最高責任をとっていくということと、次官クラスの長官ということで内閣案のようにやっていくのとでは、これは大きな違いがあるように思いますし、監督庁が行政あるいはいろいろな影響から独立した本当に強い主導権を発揮するためには、この点は非常に大事なポイントだと思うのでございますが、政府案を支持されておられまする鈴木先生、そこら辺の点はどういうふうにお考えでしょうか。今のトップの人事の問題と、それからまた、やはり選挙に左右されるような人からの影響をできるだけ避けるべきだという、そういった面での日銀総裁をして委員長たらしめる案と政府案との関係ですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  25. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 私も、実は若いときは先生と同じように、日銀あるいは金融というものを財政からできるだけ独立させるべきであるという考え方を持っておりました。  しかし、国際的に各国間の経済運営調整というようなことをいろいろ見ていると、どうしてもやはり財政当局金融当局とが一体となって対応していかなければならない。特に、先ほど御指摘がありましたプラザ合意にしても、そういう事態が起こったときに、もっとあそこで日本としては統一的な戦略というものを考えるべきではなかったかなというふうに、今から言っても始まりませんけれども、考えているわけでございます。  この新進党の案でいかれますと、日本銀行法も改正され、そして金融委員会というのが、いわばこれは、終戦直後、GHQがポリシーボード構想というのを持ち出してきまして、私もそのころまだ若かったのですけれども、ちょっとそれをフォローしたことがございますが、あれは日銀からも大蔵省からも権限を全部取り上げてしまうのですね。それで両方が一種の執行機関になるということなのです。それに対して、当時、日銀はとんでもないと言って反対されたし、大蔵省ももちろん反対したのですが、今日これを拝見いたしますと、これは日本銀行は本当に黙っているのかなという感じが私はします。  つまり、金融委員会というものがポリシーボード的にでき上がって、日本銀行はその言うとおりにただやっていればいいのだという話になって、検査機能だけは、今回の政府日銀法改正案も考査については法制化するということになっておりますが、こちらの方でも検査をそこで終点的にやるというふうに書いてございますけれども、ただそれだけかという話になってまいります。  これは皮肉を言っているわけじゃございませんが、私は、やはり金融委員会というものが本格的に金融全体についての、企画立案は大蔵省だというふうになっておりますけれども、監督中心にしておやりになるということのようでございますけれども、独立行政委員会というのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり行政機関として、要するに純然たる行政機関ではないわけでございますから、そういう面で、行政機関でないところがどこまでその責任が負えるかという問題も一つございます。  それからもう一つは、先ほど申し上げたように、これは一応の合議制をとっておりますけれども、こういう合議制というものでうまくいけるかどうかという問題が一つございます。  それから、地方の組織というものを全然、何というか、独自の新設はしないということで、これはいいのですけれども、では、政府案のように地方の財務局を使うのか、日本銀行の支店を使うのかというような問題も出てきて、その辺もどうもちょっと私どもにとってはよくわからない部分があるのですね。  一貫性という意味においては、確かに新進党の案は割にすっきりしている部分はあるのですけれども、現実責任体制とかいうような面からいうと、どうも私はまだしっくり、釈然としない部分があるので、これはやはりもう少し私自身も新進党の案そのものを勉強させていただいてから改めて申し上げたいと思います。ただ、今申し上げたような問題そのものも、私自身、今までの御説明資料では十分に納得できないところがいろいろございますので、その辺を含めて、論理的には大変おもしろい案であるけれども、現実的にはどうかなというふうに依然としてまだ考えているというところでございます。  以上でございます。
  26. 宮本一三

    ○宮本委員 鈴木参考人、本当にありがとうございました。  今の問題について、中北先生、そして山田先生、ごく手短にお考えをちょっとお願いしたいと思います。
  27. 中北徹

    中北参考人 私、昨日、鈴木先生の事務所の方から、鈴木先生が書かれた資料を幾つか送っていただきまして、ありがたく思いました。  それで、現状の認識という点では、この「金融財政」に書かれた「金融監督庁は要らない」というのをちょっと拝読いたしまして、非常に平易に書いてあったものですから、それと法案を二重写しして感じましたことは、現状認識の点では、私、そう大きい違いはないというふうに思いました。つまり、このままだと非常に焼け太りになってしまう危険性がこの政府提出案にはあると。それから、現状のままでは、金融機関から見るといろいろ煩瑣だ、二カ所、三カ所回らないといけないというお話、これは現状認識では全くそのとおりだというふうに思います。  しかし、今後どういう絵を、どういう家を設計するかという点におきましては、かなり私は違和感がございます。まず、二カ所、三カ所回るというのは、ビッグバンの時代に、二カ所、三カ所回っているような金融機関は本当に存続できるのだろうかというふうに思いました。  それから、焼け太りとおっしゃっているのですが、確かに私もそういう危惧は全く同感であります。しかし、やはり世紀の大改革でありますので、一気にすべて欠陥をなくして、それで一挙に改革というのは、私はいろいろなところではかなり思い切った意見を述べておるつもりですが、すべて焼け太りをなくすというのはなかなか難しかろうという感じが率直にしております。  そういう点を感じますが、あとは、鈴木先生おっしゃったように、中央銀行独立性の問題。ヨーロッパもアメリカも含めて、百年、二百年かけてきたこの中央銀行独立性、ここから得られた歴史的な教訓というのは、この法案の中ではどんなふうに生かされているのかという疑問を私感じております。この金融委員会の、言葉は悪いのですが、いわば下請機関になってしまうというのが大変心配な点であります。
  28. 山田弘史

    山田参考人 私、先ほど原案についての意見を申し上げて、最後に申し上げようと思いましたが時間がありませんで、新進党の修正案、民主党もあれですけれども、申し上げませんで、大変失礼をいたしました。お尋ねがありましたので申し上げます。  私も、昨日、鈴木先生の事務所から、改革案骨子、また御論文のコピーをいただいておりますので、御提案の趣旨はよくわかりました。  鈴木議員、大変に金融財政について識見、経験の高い方でございますので、非常に考え抜かれた案だとは思いますけれども、私は、一言に申しまして、かなり無理な設定ではあるまいかと。私、先ほど、新しい金融監督機関の設置形態として、三条の独立行政委員会が好ましいと申し上げました。その点では共通しているようではありますけれども、中身から申しますとやや異なりまして、無理があると申し上げますのは、つまり、先ほど申し上げましたが、金融政策は中央銀行が独立してこれを行うということでございます。また、金融行政一つ規制行政でございまして、この金融監督、今までは大蔵省、今度は金融監督の新機関が行う。これはやはり別の性格のものだと思います。これを一緒にいたしますと、かなりごっちゃになってしまう。  例えば、アメリカの連邦準備制度理事会の場合には、監督機能の一端を担ってはおりますけれども、これはそれぞれの、アメリカの銀行制度は、州権が強いですから、中央銀行が十二もある、その一つのポリシーボードとしてある。ですから、これは中央銀行より外にあるという必然性があるわけですけれども、日本銀行の場合には、日本銀行の外へ出してしまって、しかも、これが金融行政金融政策と一緒にそれをやるというところで無理だし、それから、先ほど参考人からもありましたけれども、日本銀行政策に従って執行だけをやるということもやはり現実に即さないというふうに思われます。  先ほど鈴木参考人も指摘されましたように、一九四八年、九年、これは占領軍の示唆で金融庁構想というのがございました。これは、大蔵省大蔵省金融監督権限があったわけですけれども、金融政策の最高意思決定機関として日本銀行より外にという、これはアメリカ式の直輸入でありまして、かなり無理がある。これに対して日本の当局が抵抗したのは当然でありまして、ですから、それは現行法の日本銀行政策委員会という形になったわけでございます。  いずれにしても、この新進党の修正案、非常によく考え抜かれた案ではありますけれども、やや無理がありますし、それから、金融行政金融政策を一緒にやるということも無理がある。  もう一つ申し上げますと、御論文にありました検査監督の問題、これは前にも論議でありました。つまり、検査するということで足りるのであって、金融監督庁は要らないというような、監督行政は極小化するというふうに鈴木先生、書かれておられます。私は、そうではなくて、金融の、銀行監督というものは、やはり、国民の立場から非常に重要な、監督すべきものはきちっと規制をし、監督をするということが必要なのでありまして、これを極小化して、検査のみにいわば矮小化するという点で、ちょっとこの修正案には私は批判を持っておるということを申し上げます。     〔野呂田委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 宮本一三

    ○宮本委員 中北先生、山田先生、いろいろありがとうございました。  新進党の方の案も相当練りに練った案であるという御評価もちょうだいしましたが、中身について、またひとつ我々十分説明をさせていただいて、ぜひ御理解を深めていただければと思っておりますが、やはり基本的には、金融政策の独立を財政とどういう形で持っていくかというポイントにあろうかと思います。財政金融、これは本当に不可分のものであるという考え方ももちろんありますし、また、その方が有効に動くという説もあるし、同時にまた、金融がある程度独立していないことには、最近のような非常に残念な結果になるということもわかっております。  そこで、我々も、そういった両にらみで、何がこの日本の社会に、そして今の実態に即したベストな対案であるかということを考えていかなきゃいけないと思うわけでございますが、今もフェルドマン参考人の御意見の中で、やはりコストの問題に触れられておりました。本当に大事なことだと思います。  確かに、外庁は雑草のような強さがあると言われましたけれども、見ておりまして、本当にそのとおりでございます。一たん外庁をつくりますと、それが少々のことでは減らない、むしろ大きくなっていく傾向があるわけで、今行革が至上命題であるこのときにそのような余裕があるのかということ、これはどうしても真剣に考えなきゃいけない問題だと思います。  時間の関係もございますので、もう一つお伺いしたいのは、アメリカのSアンドLの崩壊の話がちょっとフェルドマンさんの方から出ましたのでお伺いするのでございますが、あのときは、公的資金も確かに投入はいたしましたけれども、大変な数の金融機関のトップを逮捕されたと聞いております。報告によっては数字、ばらばらでございますが、三けたになるような数の逮捕者を出し、そして有罪判決を受けて、いまだに獄中にいる方が七百名とも八百名とも報告を受けております。それほど、アメリカの社会では金融崩壊に対する責任は重い。金融秩序を守るために公的資金は導入するけれども、それ相応の厳しい罰則が適用されるということであります。  翻って、それでは日本対応公的資金は、アメリカに比べれば少ないかもしれませんが、投入をいたしました。一体どれほどの罰則が適用されたのかというふうに考えてみますと、特に大きな金融機関あるいは証券機関、むしろそちらがこのたびのバブルについても大きなウエートを持っているわけでございますが、何の責任もとらないと言うと語弊がありますけれども、タイミングを見計らつて辞職するだけで、そしてまた、時にはタイミングを見計らって復活するようなこともありました、もちろん、それは金融全体について言えるわけじゃございませんが。  そういった責任のとり方が、やはり今後の日本金融を、そして監督庁のあり方を考える上で非常に大事だと思うのですが、フェルドマン参考人日本の状況をアメリカとの対比で見てどのように見ておられるか、お願いしたいと思います。
  30. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 アメリカとの比較の点ですけれども、米国金融機関に問題があったときにどういうふうに責任がとられるかといいますと、もちろん日本のように上の方が辞任するとか、そういうことはよくありますけれども、まず、株価が落ちるという市場の反応が非常に大きなポイントだと思います。  市場の目から見て金融機関がうまくやっているかどうかという判断がすぐ下されるわけですから、そういう意味で、その銀行の、あるいは金融機関の動きが正しいかどうかに関して、投資家の判断がすぐわかるわけです。大きく株価が落ちた金融機関があっても、その銀行あるいは金融機関がまだしっかりしているから大丈夫だと思う人が自分のお金を投資してもいいわけですから、すぐ責任をとって、もっといい金融機関をつくり直そうという働きが動くわけですね。あるいは、株価が下がった場合に、いわゆるテークオーバー、買収ですね、それが可能になるわけですから、そういう意味で、株価あるいは株式市場の動きによって規律が成り立つことがあります。  もう一つ責任のとり方ですけれども、やはり問題が生じたときに金融機関からお金が流出するという働きがあります。かなりディスクロージャー、情報開示が進んでいるアメリカの中では、やはり問題があったときに、投資側がそれをすぐつかんで、自分のお金だから持って逃げようという動きが非常にはっきりしてきます。そうしますと、割と細かく、毎日毎日の出来事を見て投資側が動きます。株式の投資家あるいは預金者に当たる、各金融機関に負債を提供する方の動きも同じですけれども。とにかく、米国の場合は、大きな間違いを起こしたときにやはり投資側が責任をとるという非常にいいところがあると思います。  日本と比較しまして、預金は保証がつくものですから、それはやはりそのまま保証した方がいいと思われますけれども、保証がつかないところも、ある意味で保証されているという神話があるのですね。これは、これから投資家の動きを効率的にさせるために、はっきりと外した方がいいのじゃないかと思います。やはり投資家あるいは預金者が自分で自分のお金を守るという態度をとらないと、その責任のとり方が変わっていかないのじゃないかと思います。  結論として、預金者、投資家が自由に、確かな情報をもとにして自分のお金を動かす制度をつくった方が、日本責任のとり方をよくすることになるのじゃないかと思います。
  31. 宮本一三

    ○宮本委員 今の責任の問題について、鈴木参考人はどのようにお考えでしょうか。
  32. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 日本では、通常、何か事件が起こると、皆さん方の前で頭を下げておわびをした上で、それでも足りないとなると必ず辞表を出す、それですべてが終わりになってしまうというようなことが一つの社会的な慣例のように、もう戦後定着しているわけです。しかし、経営者が自分でその資産を売り払っても後始末をするというようなことは、戦前は非常に多かったわけですけれども、戦後でもなかったわけじゃありませんが、近年は、いわゆるサラリーマン経営者の方々は全くそういうことをしないで、ただ辞表を出して、そして社長から会長になったり、会長から相談役になったり、そして相談役になってもなおかついろいろ発言をしておる、こういうことの繰り返してございます。  日本のそういう企業風土というものが、これまでプラスに働いた面もありますけれども、もう今や企業のいわゆるガバナンスという面から見ても、これはもう完全に、グローバルスタンダードの面からもう一度見直さなければならない。  今までは系列とか、あるいは株式の持ち合いだとか、あるいはメーンバンクだとかいうようなものの機能を通じて、企業の経営者というのはそれなりに相互監視の中でチェックをされている部分があり、そしてまた、お互いに助け合うという部分があり、両方がある程度バランスをとってきて戦後の高度成長というのは成り立ったのだと思いますけれども、今日、メーンバンクが責任をどんどん負わなくなり、系列とか、あるいは株式の持ち合いそのものも、だんだんとこういうふうな状況になってくると、それが分解していく。それはもう市場の流れの中で大きな変化を生ずるのは当たり前のことでございます。  にもかかわらず、経営者の意識の中には、やはり株主総会に対しても、依然として個人株主の比重が低いということがございますけれども、株主に対する責任というものは、そういう自覚がないということもあり、また、監査役制度というものも、いろいろ商法を改正して強化をしておりますけれども、まだ依然として、監査役そのものの任免のプロセスなどを見ても、まだまだ十分に企業をチェックするだけの強い力を持っていない。  それから社外重役制度、そういうものも有名無実ということになっているということなので、やはりもう少しそれぞれの、せっかく芽を出しているいろいろな制度というものをもっともっと強化していくということが必要であり、それは法律でやるということももちろんですけれども、現実に社外重役なり監査役になっている人たちが、どの程度まで社内の最高権力者に対して物を言えるかということなんだろうと思います。これも、もうこれからは公認会計士や監査役のチェック機能に対して、外部から厳しく批判をするということも必要であり、また、そのチェック機能が甘かった場合には、公認会計士が責任をとる、厳しくとるということもやはりしていかなければならないのだろうと思います。  経営者の罰則についても、先ほどSアンドLのアメリカでの、財政資金は大幅に使ったけれども、経営者なり幹部の責任を非常に厳しく追及して裁判ざたにしているということなんですが、日本もそういう方向にやはりだんだん行かざるを得ない。つまり、金融の場合の問題は、特にグローバルスタンダードという場合には、アングロサクソン的なルールというものが世界を支配しつつあると考えてもいいと思います。日本は、特にニューヨーク、ロンドン市場に対抗していこうというつもりであるならば、やはりアングロサクソン型の厳しいルールというものを、全部が全部そのまま取り入れるということはできないにしても、それにできるだけ接近していくということが必要であろうと思います。  そうなれば、例えば、今罰金なんというのは五十万円ぐらいが最高限度だなんて言っていますけれども、とんでもない話なので、三百万でも少ないかな、場合によったら五百万、一千万というぐらいの罰金は取ってもいいのじゃないかと思いますね。それだけにまた、裁判も厳密にやらなければならないし、そういう事態にさせないためには、やはり監督庁検査機能も厳しくやらなければならないしと。だから、終わりのところを非常に、限界のところのペナルティーというのを厳しくしておけば、おのずからみんながそういう方向で努力していくのではないかというふうに考えております。  まだいろいろ言いたいことがございますけれども、これで終わりにさせていただきます。
  33. 宮本一三

    ○宮本委員 ありがとうございました。鈴木参考人がおっしゃるように、本当にペナルティーをもっときつくしなければいけないし、また、中北先生もその点は本当に強調されておりましたことを、我々も肝に銘じてやっていきたいと思います。  もう一つ改革でございますが、確かに、フェルドマンさんが言われたように、内閣案も改革の一歩前進であるけれども、いわば日本的伝統を尊重しながらのステップ・バイ・ステップの改革であって、これでは間に合わないよという御指摘を最後にされたと思います。私も同感でございまして、今ビッグバンが叫ばれておりますし、特に外為法の改正がもう通ってしまいました。来年の四月一日から実施でございますし、それまでにどうするかということを、これが本当に大事な問題だけに、今の内閣案のように、今まで大蔵省でやっていたものを、監督を、同じ人が恐らく異動して、そしてトップだけが少しかわって、役所の位置が何百メートルか右へ動く、あるいは左へ動くということで、これも一つ改革ではございますが、こんなことでやっていて間に合うのかなという御指摘、本当にフェルドマンさんのおっしゃるとおりだと思っております。  そういう意味で、私、我が方が提案いたしておりまするポリシーボード方式といいますか、そういう形での改革、そして監督庁日本銀行の中に移すということの方がより即効性があるのかなというふうに思っているわけでございますが、この点について、フェルドマンさん、もうちょっと何か御意見があるように思えるのです。時間がなくて切られたように思いますので、ちょっと述べていただきたいと思います。
  34. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 では、非常に短く申し上げたいと思いますけれども、基本的に人を余り使わない制度が必要だということと、早く動くべきだということが肝心のポイントだと思います。これから日本が非常に速いスピードで高齢化すると  いうことがよく知られていると思いますけれども、数字を見ると、いや、わかっても大変だという印象があります。三十年先までに日本の人口が余り変わらないのに、働く人の数が何と九百万以上、もしかしたら一千万人ぐらい減るという数字がこの前厚生省から発表されました。  その中で、やはりもう早くから動かなくてはならないという危機感が絶対必要だと思います。日本の文化は今まで漸進主義というのがあったと思いますけれども、この文化は非常に危ない面があると思います。日本生活水準を維持することが危ないというわけだと思います。早く動かないと、生産性が上がらない、資源の使い方がよくならない、今の生活水準を守るということが難しくなってしまう。強いて言えば、日本の世界の中の秩序が、あるいは地位が悪影響を受けるということになるのじゃないかと思います。監督制度がその中の一つの、小さなところかもしれませんけれども、やはり将来の意識に際する危機感をあらわすために、ここでやれることをやるべきじゃないかということじゃないかと思います。
  35. 宮本一三

    ○宮本委員 四人の参考人の御意見、本当にありがとうございました。感謝しながら、私の質問を終わります。
  36. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、池田元久君。
  37. 池田元久

    ○池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。大変御苦労さまでございます。また、参考人として貴重な御意見を賜りまして、感謝を申し上げる次第です。  先ほど聞いておりますと、どうも民主党の案がこの参考人質疑では余り取りざたされておりません。余り知られていないかもしれませんので、ちょっと紹介させていただきたいと思います。  民主党としましては、昨年、総選挙の後、この問題についてプロジェクトチームを組み、また別の組織もつくり鋭意検討し、日銀そして大蔵省改革を含むトータルな形の改革の構図を描きながら、大幅な修正案を両方に対してまとめた次第です。この修正案の内容をちょっとかいつまんで御紹介いたしますが、私たちは、グローバルスタンダードに合わせて、安定した金融システムと行政を確立しなければならないと思っております。その場合、財政金融分離、業者行政から市場重視、市場中心の行政への転換、さらに国民と国会へのアカウンタビリティーを確保するという三点を重視しております。  政府案はどうかといいますと、財政政策を担う大蔵省金融の企画立案を残したこと、大蔵省に業界団体、取引所等に対する監督権限を残したこと、さらに民間金融機関に直接、資料提出要求もできるというようなことにもなっておりまして、いろいろございます。また、住専問題の反省も余りなく、問題となっておりました信連などの農林系統金融機関などに対する検査監督は、共管で従来どおりと大変問題が多い。政府案は、要するに大蔵省権限をできるだけ温存して、民間金融機関にとっては二元行政になっていると言っても過言ではないと私は思います。  民主党案はどうかといいますと、まあ新進党案に対するいろいろ意見もありますけれども、きょうはその場ではありませんので、かいつまんで申し上げますが、民主党案は、日銀法改革とあわせてトータルな改革の構図を先ほど申し上げたとおり描きながら、大幅な修正案を提出しているわけですが、金融検査監督と企画立案というのは実務上は密接不可分だと私は思います。  そこで、民主党では、金融監督庁金融庁に改めまして、金融の企画立案事務を内閣総理大臣に移管することにしております。さらに、企画立案事務のうち、金融監督に密接にかかわる政令や総理府令の策定、企業会計基準等の検討は金融庁で行うことにしております。また、ビッグバンが始まります金融・証券市場のインフラ整備等は総理大臣直轄の金融制度企画室を総理府に設けて検討するとしているわけです。さらに、縦割り行政の弊害を是正するために、金融検査監督金融庁に一元化することにしております。また、現在起きております、信用秩序の維持を必要とする場合には万全な仕組みも設けております。  要するに、民主党案は、日銀法大蔵省改革を含めて、トータルな構図で日本金融行政をグローバルスタンダードに合わせようということにしているわけでございまして、まあ理念的にも、また実務の上からいっても、時代の要請にこたえたものと申し上げたいと思います。金融学界等の研究者からもかなり賛同の御意見も来ていることもつけ加えたいと思います。  以上、ぜひ御認識をいただきたいということを一言前段に申し上げたいと思います。  それで、御質問させていただきますが、おととしの大和銀行事件、最近の野村証券の不祥事の再発、さらには第一勧業銀行が総会屋に巨額の融資をしていたことが明るみに出ました。また、大手日興証券系の投資信託委託会社が違法の債券取引をしていたこともわかったわけです。日本版ビッグバンを前にこうした金融不祥事が頻発しているわけです。まことに憂慮にたえないと思うのですが、不祥事の原因、背景についてどうお考えになるか、参考人の皆様に端的にお尋ねしたいと思います。
  38. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 先ほどからいろいろなことを申し上げておりますが、一言で言えば、先ほどから何回も言われておりますけれども、やはりこれまでの市場メカニズムというものにウエートを置かないで、行政指導型、裁量型の行政体系というものにずっと固執してきた中から起こってきたさまざまなもたれ合い意識、あるいは横並び意識というものの中で、商品開発であろうが金融の全体的な変化に対する対応の仕方であろうが、何かもうみんな一斉にやってくるという中で、同じようなことをやりながら、そこの中でわずかばかりの差別化を図っていこうとすれば、そこに非常に政治的なあるいはもっとブラックな要素というものが入ってこざるを得ない。  そういう意味で、私は、やはり今までの日本金融資本市場システム全体がこういうものを生み出す危険性というものをずっと内包していたのではないか。したがって、それが、今やグローバルなスタンダードにアプローチしていかなければならない事態に直面して、そしてさまざまな、バブルの後遺症である不良債権問題とかそういうものの処理のプロセスを経て、全部明るみに出てきたんだ。  だから、もちろん個々の、個人の不祥事とかそういうものは一応別といたしまして、やはり金融機関全体が同じような問題を露呈している、特に大手の金融機関がそうなっているということは、やはりそういう一つの構造的な背景というものがあるからではないかと思いますね。  そういう意味で、私は、さっきから何回も申し上げているように、政府日本版ビッグバンということで思い切ったことをこれからやろうとしているわけで、先生方も新しいこういう法案をいろいろ御提案なさって、やはり皆さん方の向いている方向はほとんど同じだろうと思うのですが、そういう流れの中で、市場の監視機能のみならず、よりルールを厳しくしていく、それで、そのルールの厳しさというものに対応して罰則規定も厳しくしていくということだと思うのです。  ただ問題は、今起こっている金融不安の中には、もう早急に破綻状態に近づいていくものが幾つかあるんだろうと思います。それがこういう組織論とかいろいろなことを議論しているうちに、現実の方はそういう大きな破綻状態が起こってきたときにどうやって対応するのか。預金保険機構が持っているお金も、信用組合の方は七千億ぐらいあるんですが、一般の金融機関については、三千億だか四千億だか知りませんが非常に限られている。そういう一兆とか二兆単位のシステムリスク的な要素を持った大手の金融機関破綻の問題が起こったときに、それをどうするのか。やはりその破綻対応する公的資金というものを、今から、どういう形で、筋の通った形で対応できるのかといったこともやはり考えていかざるを得ないと思います。  私は、そういう面で、これから二、三年の、つまりいろいろな制度システムがビッグバンに向かって整備されていくその途中の段階でいろいろ問題が起こってきたときにどうするか、そこを非常に心配しているということです。  以上でございます。
  39. 池田元久

    ○池田(元)委員 お手元に時間表があると思うのですが、私の持ち時間は二十分でございまして、今十分お答えをいただきました。また別の機会に御教示をいただきたいとは思うのですが、あとの方に、申しわけないですが一分半くらいでお答えをいただければありがたいと思います。
  40. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 さっき申し上げましたように、個別の投資家が自分のお金を自分で守るという意識を高めることがこういう不祥事を防ぐ多分一番いいやり方じゃないかと思います。やはり、自分のお金を守りたいという気持ちは非常に強いから、そういうことから、やってはいけないことをやる機関に対する罰ということになりますので、情報開示などを強くして、個人が自分のお金をそういう不祥事を起こさないところに置きたいという気持ちをもとにして制度をつくれば、この不祥事の発生率が少なくなるんじゃないかと思います。
  41. 中北徹

    中北参考人 やはり護送船団行政に代表される膨大な裁量権と、それから情報が外へ出てこないというこの閉鎖的な体質、これがもう時代の要請に全く平仄が合わなくなったというのが根本的な原因だというふうに思っております。  こちらにいらっしゃいます国会議員先生方の責務といいますか御任務は、問題が起きたらたたく、あるいは、行政の後ろに立って、たたけ、たたけということが万が一あったとすれば、そうではなくて、やはりしっかりした客観的なシステムを設計していただく、それで当面、公正な運営は第一義的には行政に任せるというのが私は国会の任務ではないかということで考えております。
  42. 山田弘史

    山田参考人 二つ申し上げますけれども、一つは、銀行あるいは金融機関の公共性、社会的責任についての自覚が根本的に不足しておるということだと思います。もう一つは、その金融監督体制の法案に関連して申し上げれば、先ほど申し上げましたけれども、不正、不祥事に対する歯どめの規定の欠落ということであるかと思います。最近は、第一勧銀事件などに関連をして罰則規定の強化ということがようやく取り上げられたようですけれども、もっと基本的にこれを再考する必要があろうと思います。
  43. 池田元久

    ○池田(元)委員 大蔵省は、国債や政府短期証券を発行して金融市場から資金を調達しておりますね。ですから、市場のプレーヤーです。一方、市場ルールを決めるとともに、金融機関監督、監視をしていますから、レフェリー役も果たしている。さらに、民間金融機関に対する行政もしていますから、コーチもしている。一人でプレーヤーとレフェリーとコーチまで務めている。こうした行政を転換し、財政金融分離することが私は必要だと思います。  ちょっと大ざっぱな議論だと私申し上げて恐縮ですが、ありましたが、我々は財政金融がばらばらでいいなどとだれも思っておりません。政府経済政策調整決定が行われる中で財政金融機能が截然と分かれて、そこで健全な緊張関係を持つことが必要であるということを強調しているわけです。財政金融分離の必要性、そして大蔵省からいかに金融分離すべきか、その二点について端的にお尋ねをしたいと思います。  まずフェルドマンさん、お願いします。     〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕
  44. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 その分離のやり方はどれがいいかという質問ですよね。  やはり先生おっしゃいましたように、私はその緊張感を持つということが非常に大きなポイントだと思います。余りにも一緒にすべてを決めましようという制度になりますと、変な取引が行われてしまう。変といっても、不正の取引という意味じゃないのですけれども、最適な取引が行われないんじゃないかという可能性はあるんじゃないかと思います。  米国の場合はこのような問題も昔からありまして、結局トレジャリーの方、財務省の方が発行者であるプレーヤー、レフェリーという機能はありますけれども、監督、すなわちコーチという機能はなくなっているということになって、かなりうまく機能しているのじゃないかと思います。
  45. 池田元久

    ○池田(元)委員 時間がありませんが、鈴木さんに一言、それから中北先生、よろしくお願いします。
  46. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 財政金融の間に緊張関係を持つべきだというのは全くそのとおりだと思いますので、私は、財政金融の一元化というようなことを言ったのは、国際的に見て総合的な広い視野でそういう責任を負うべきだということと、議院内閣制のもとで最終責任政府にあるんだ、それを確認したかったということです。  一言ですから一言申し上げますが、私は、むしろ財政市場原理にできるだけ適応できるように変わっていかなければならない、特に財投は今後の問題としてやはり思い切った改革の手を打たなければいけないだろう。具体的なことは、また改めましてということで。  ありがとうございました。
  47. 中北徹

    中北参考人 先生が最初におっしゃいました、トータルデザインに従って金融財政改革、これをしっかり続けていただくというのがまず一点だというふうに思います。日銀法の改正、今、監督庁の問題以外に商法、証取法、会計基準の見直し、その他規制緩和を鋭意進めていくというのが一点です。  もう一点は、端的に申しまして、直接金融市場を積極的に整備していただく。要するに、まともな金融市場がはっきり言って日本にはないというふうに私は考えます。その意味で、上場している企業に関してはすべからくその資金の調達、運営はしっかり監視される、そういった制度が必要でありまして、やはり日本版SECが必要だというのがその点であります。  それからもう一つは、国債及びその他財投に関連する公的な債務、これを調達する市場を、やはりオープンなものをしっかりつくっていく。金融制度改革もやりましたけれども、これはまだ社債の部分でとまっておりますので、公共債そして地方債、この辺まで推し広げていく必要がある、入札とか引き受けとかディスクロージャーとか。  それからまた、国債の税の問題も、源泉徴収の問題等もありますので、その他やっていただくことはやはりたくさんあるというふうに考えております。
  48. 池田元久

    ○池田(元)委員 山田先生にちょっと質問を残して恐縮ですが、余り時間がありませんので、一言申し上げたいと思います。  今、参考人の皆さんの御意見、大変参考になりました。鈴木先生の真意もよくわかりました。やはりグローバルスタンダードに合わせるのは、中央銀行制度金融監督制度も当たり前です。特に金融監督については、ここ数日、アメリカでもイギリスでも次々に改革が打ち出されておりますので、当然日本はそういうグローバルスタンダードに合わせて改革をするというのは、これは当然ではないでしょうか。  その場合、ちょっと申し上げましたけれども、やはり過去の狂乱インフレやバブルの反省等と、それから最近の混在した、ミックスしたプレーヤー、レフェリー、コーチ兼任の行政から転換するという意味で、まさに財政金融分離が必要である。それは今鈴木先生とお話ししてわかったのですが、政府のマクロの経済政策総合調整決定する中で截然と分けて、そこで緊張関係を持つという意味での財政金融分離です。  それから、業者行政から市場重視、市場中心の行政へ転換しなければならない。さらには、余り出てこなかったと思うのですが、憲法の精神からいいましても、これはやはり国民がまず基本ですから、国民、国会に対するアカウンタビリティーが必要だと私は思います。  私は、三原則とまでは言いませんが、以上、財政金融分離、そして業者行政から市場重視の行政への転換、さらにはアカウンタビリティーの確保という点を重視してこれからも取り組んでいきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  49. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員長代理 次に、松本善明君。
  50. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本共産党の松本でございます。  まず、山田参考人に二問お聞きします。後で他の参考人共通の質問をしたいと思いますので、簡明に。  まず第一は、現在の第一勧銀、野村証券などが代表的でありますが、日債銀、日産生命、大和銀行、住専など、日本経済界全体への信頼を揺るがすような重大な事態が起こっております。そういう事態に対する金融監督庁でありますが、この法案を少し離れて、大きな視点からこの事態に対してどう対処をすべきかということが一点。  それからもう一つは、金融監督庁の任務として預金者、契約者、投資者の保護は規定をされてありますが、そのほかに銀行の借り手の保護、先ほども触れられましたが、変額保険などでは自殺者まで出ているという状態であります。金融機関との紛争の仲裁機関についても触れられましたが、いわゆる消費者の保護との関係では、アメリカなどと比べて十五年もおくれているというふうに言われております。日本のこの面での実情と外国の現状についてお答えいただきたいと思います。
  51. 山田弘史

    山田参考人 お答えをいたします。  最近頻発しております銀行金融機関の不祥事につきまして、やはり大きく考えますと、バブルのときに銀行の投機的な貸し付け、また銀行というものが個人向けには何らのノウハウを持っていなかったところに、バブルのときに大いにそっちを拡張したというところからそれが出ておりまして、また生命保険、また証券会社等もやはり銀行が決済システム中心ですから、結局銀行からお金が出るという形が報道等でも出ております。  基本的にこの金融監督関係から申しますと、不正、不祥事に対する歯どめの規定を欠いておると先ほど申し上げたところですけれども、やはり規制というものの考え方、これを一面的な、あるいは何から何まで規制緩和するということではなくて、やはり必要な規制、例えば消費者の立場等から申しますと、安全規制というふうに私ども申しておりますけれども、例えば医薬品、食品等の安全と同じようにやはりその契約者、あるいは日産生命でもそうですね、そういう利益を守るためには民主的な規制というものを必要な部面については強化するということが必要ではないか、また、最近の状況ではそうなっているのじゃないかというふうに考えます。  それから、銀行の消費者融資の問題でございますけれども、私、先ほども申し上げましたように、被害者の話をいろいろと聞く機会がございまして、本当に感じたのですけれども、銀行というのは悪いことはしないという前提のもとに日本法律制度ができているということはおかしいじゃないかという声をたくさん聞くわけですね。  新しい金融監督機構を整備するというならば、もちろん財政金融分離、あるいは金融政策分離も必要ですけれども、やはり基本的に一番必要なことは、銀行の貸し手責任というものをきちっと銀行にも認識してもらい、また、法制度上もこれを確立するということが必要じゃあるまいか。  最近、金融制度調査会等の議論でも、消費者信用保護法ということが必要だという議論も出ておるようですけれども、今、立法上どうなっておりますか。そういう、消費者信用保護という形で、いたずらな消費者、個人債務者の被害が出ないような法制度の仕組みの確立が必要である。そして、貸し手責任ということについて、まさにアメリカではこれが確立をしております。やはり、銀行についていえば、銀行と借入人、消費者との間には、もう圧倒的な力の格差がある。だから銀行が常に優位なわけですけれども、このバランスを回復するために、銀行の貸し手責任、より大きな責任を持つということをもっと理念上も確立し、法制度上も確立をする必要があるというふうに私は考えております。
  52. 松本善明

    ○松本(善)委員 四人の参考人に共通でお聞きをしたいと思います。  今申しましたように、今、金融不祥事というのは本当に重大な事態になっておりまして、フェルドマン参考人も、深刻で危機的な状態ということを先ほど申されました。まさにそうだと思いますが、こういう状態のままいわゆる金融改革日本版ビッグバンが進行いたしまして、金融の自由化、規制緩和が進みますと、激烈な競争や危険商法がはびこって、倒産でありますとか一般国民の犠牲などの弊害が強まるのではないかということが懸念をされます。何か、ビッグバンをやればみんないいように言われますが、その危険な側面というものを、やはり今、うんと強調しないといけないのではないかと思います。銀行が株式に投資をし運用することの危険性は、株への投資運用で銀行が大損をして、銀行倒産で預金者保護がなされなかったという一九三〇年代のアメリカの実例で歴史的に証明をされていると思います。グラス・スティーガル法などもそういうことでできているのだと思います。  銀行は、決済システムを形成する、信用創造を行うという特別の公共性を持っていると思います。この公共性と証券業務というのは両立しないのじゃないかというふうに私は思っているのですが、このことを含めまして、ビッグバン等が進もうとしている中で、先ほど中北参考人も言われましたが、市場規律の問題。金融機関の公共性との関係での話。特に、先ほど、バブルの崩壊で、これはもうみんなの責任だと言われましたけれども、やはりこれは責任回避で、ビッグバンをやった後、大変な被害が生まれて同じことが起こらないように、今、うんとこのことが議論をされなければならないと思います。  このことについて、四人の参考人の御意見を伺いたいと思います。まず山田参考人から、左の方から順番にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  53. 山田弘史

    山田参考人 簡単に申し上げます。  銀行の証券業進出、つまり、今銀行に、垣根を取って何でもやらせるという方向政策が進んでおりますけれども、やはりこれは大銀行の問題なのですね、小さい銀行は、地元で地元の消費者、中小企業者の面倒を見ておりますから。その大きな銀行が余り貸すところがなくなってしまった、大企業は自分で資金調達していますから。だから証券業に進出をするということでだんだんになっておりますけれども、やはりこれは大銀行が、今までの間接金融に加えて直接金融市場をも支配をするという考え方から出ておるわけで、行政あるいは政治がこれをバックアップするということでは、やはり一面的なことになるのじゃないか。これがまた投機的な運用ということを生む、そして投機性の拡大ということになりますと、証券市場の本来の任務である、それこそフェアな証券取引の拡張ということにまた害を来すというふうに思われます。  またもう一つは、今いろいろ言われておりますが、この議案は独禁法改正あるいは新法として金融持ち株会社法も出るようですけれども、金融持ち株会社方式で行われる。私の友人のある学者が、これは巨大なブラックボックスになるということを言っておりました。どういうことかというと、今でもディスクローズしていない、銀行の中身はわからない。銀行や生保会社、その上にその持ち株会社ができる。三菱持ち株会社、その下に銀行がある、実際には銀行が中核なのですけれども。そういう状況になりますと、その取引者、消費者あるいはその従業員、労働者、あるいは社会一般がこれに対してわからなくなる、銀行は何をやっているのかわからなくなるということで、ますますそのような弊害が拡大をするということでありますので、大変大きな問題を伏在しておるというふうに私は思います。
  54. 中北徹

    中北参考人 ほかの参考人の方はモラルとか自覚とか、その点をかなり強調されているように私は感じるわけでありますが、やはり、金融警察というものをつくっていただくという意味で、監督庁権限、それから存立基盤というのをきちっとこの際点検して強化していくということは重要だというふうに思います。日本では民主警察というのはほぼ確立していますが、金融犯罪を摘発する金融警察というのは、どういうわけか日本にはない。何か問題が起きますと、会社ぐるみ、結局、もうその会社に勤めている若い方も中堅の方もみんな悪いのだという村社会の論理がいつも横行して、その結果、行政の介入を深めてしまうという形になりますので、それが申し上げたい一点です。  それから、銀行の規律の問題でありますが、私は、何はさておき、今問題になっておりますのは、上場している、株主のいる金融機関がまず問題になっておりますので、これは、メーカーも商社もほかのノンバンクも含めて、まず、株主、資本市場をきちっと管理するという意味で、監視をするという意味で、くどいようですが、SEC、ここでまず全般的に点検するというのが一点です。  ただし、上場しておりません金融機関もございますので、つまり信金、信組とかその他ございますので、これは現行の枠組みの中でいいますと、日銀法の、日銀の考査、私は検査と言っていいと思いますが、そういう中で、多少オーバーラップしながら、しかし、別の角度から監視あるいは規律を担保していただくということが重要であるというふうに思います。  そして、銀行あるいは金融機関が預金という業務をやるかどうか、これは最終的には、私は、市場が決めていく時代に入るというように思います。これまでのように、参入規制があり、その外堀の外為法によって大変分厚く保護されているという状態のもとでは膨大なレソトが約束されたわけですが、これから自由化されてきますと、預金業務即もうかる商売だというわけにはまいりません。やはりそれは金融機関が選別をし、場合によってはコアバンク、つまり、絶対安全な資産運用だけしかしない、地味だけれどもそういうものに徹するという金融機関もいずれ市場の中から出てくる、そういうふうに私は考えています。ですから、市場の規律を守るということがかぎだというのが私の答えです。     〔柳沢委員長代理退席、委員長着席〕
  55. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 先生の御質問の中で、ビッグバンを実行してから、もし大きな破産などのようなことがあれば悪影響が出るおそれがあるのじゃないかということを指摘されましたけれども、基本的な問題は、やはり、今は日本は余りいい選択がないという点だと思います。  ビッグバンを実行したら、そういう先生のおっしゃったような問題が発生する可能性がある、それは認めざるを得ないと思います。逆に、そういうビッグバンをやらなかった場合どうなるかということを考えますと、今の制度が継続されて、不祥事が悪化するとか、資本の使い方がさらに悪化していくということが十分予想されると思います。ですから、ドングリの背比べじゃないと思いますけれども、とにかくどっちが一番被害を少なくするかということが問題じゃないかと思います。  ここでかぎなのは、それぞれの個人が自分のお金を自分で運用できるような制度をつくるということだと思います。今は情報開示の不十分な状況ですから、個人が余り武器を持たない状況になっているかと思います。例えば、使っている金融機関の格付に関する情報は、得ようと思えば得られますけれども、例えば会社が自分の格付はこうだということを広告に出すのは非常に難しい状態になっています。ですから、基本的なことは、さっき中北先生もおっしゃいましたけれども、こういう預金者あるいは最終投資家金融機関に規律をつけるということがかぎじゃないかと思います。こういうことは非常に厳しいことかと思いますけれども、失敗しながらこういうことを覚えるということを預金者に覚悟していただきたいと思います。  こういう経験がありましたけれども、小さな銀行がつぶれて初めて私が損をしたのは十九歳のときでした。ちょっぴり金利が高い小さな金融機関に、少額だったのですけれどもお金を預けて、それが倒産したのです。どうしようもないということでお金はなくなってしまったのですけれども、やはり十九歳以降、自分の預ける先が大丈夫かどうかということは自分の責任だということがわかったわけですから、逆にいい勉強で、大きくなってもっと、少しだけですけれどもお金を持てるようになってから、非常に安い教訓だったなと今思っています。  とにかく、自分が失敗したら自分が損をこうむるという、弱者保護を捨てた制度にしないとうまくいくはずがないというのが私の見方です。
  56. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 今までの三人の参考人先生方とほとんど私も同じでございますが、あえてつけ加えさせていただきたいと思いますが、かつて日本は、預金者保護、投資家保護という名のもとに競争抑制的な行政というものが行政指導型の形で行われてきた。参入規制だとかいわゆる店舗規制、そういうようなものとか、あるいは新しい商品開発についても、行政指導の名のもとにそういうものが抑制ぎみになされてきた。そういう中で、全体としての競争を、市場競争というものを抑制するような形でずるずるといわゆる護送船団方式というのが続けられてきたと私は解釈しているのですが、そのことは、結果的において外部に対するディスクロージャー、つまり個人の責任で預金者が行動するというようなことは、要するに自己責任原則というものが金融機関の側にも預金者の側にも両方に定着しなかった。それは、ディスクロージャーを十分にしなくても済むような環境を続けてきたということだったのですね。  しかし、もう今やそれでは日本の東京の金融資本市場の競争力がなくなってしまう、大変だと、それで外為法の改正もやったから、もういや応なしにビッグバンだ、こういうことになってきたわけで、そうなってくると、ともかくそういう規制はどんどん外されていかなければなりませんけれども、やはり先ほどから三人の先生方もおっしゃっているように、そうなればなるほど市場における厳格なルール規制というものは必要になってくる。ルールの見直しと、それからルールの厳格な適用と、そしてそれに対するペナルティーというものは今まで以上に厳しくしなければいけない。  しかも、市場に任せておけば弱肉強食が起こるということかもしれませんが、金融機関のお客がふえていくということは、その金融機関がお客に役に立つからであり、しかも先ほどからお話がありましたように、リテールバンクなどを中心といたしまして、弱小の、そういう零細な預金者層というものを対象にした金融機関というものも、それなりに一つの生きる道というのをつくっていけるし、またつくっていかざるを得ないだろう。ほかの産業構造の調整と同じでございまして、新しい産業が出てくれば古い産業がどんどんつぶれていくということはあるのですけれども、雇用のミスマッチとかそういうような問題については、また別途政府が雇用面で考えていかなければならないだろうと思いますし、何はともあれ、預金者なり消費者なりを保護するということが単に規制の上ではなくて、市場競争の上でもそれが反映してくるというふうにしなければ本来のビッグバンと言えないのではないか。ちょっと観念的かもしれませんが、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  57. 松本善明

    ○松本(善)委員 ありがとうございました。
  58. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、前田武志君。
  59. 前田武志

    ○前田(武)委員 四人の参考人先生方、きょうはお忙しい中をこうやってお出ましいただいて、先ほど来まことに示唆に富んだ、我々議論をずっとここで続けてきた委員一同にとって非常に参考になる意見を御開陳いただきまして、ありがとうございます。  さて、早速私の方からの質問でございますが、要するに金融ビッグバン、そして金融関係市場における監督検査、グローバル、フェア、そういった原則で動いていく、こういうことでございますが、このグローバルスタンダード、おおよそ皆さん方の考えというのは、グローバルスタンダードの中身というものが、重要度、例えば三点ぐらい選ぶとどういうものであるのかというようなことは一致しているのではないのかなと思いますが、しかし市場の見方を変えると、重点の置き方によってまた違ってくるかと思います。  そういった意味において、いわゆるグローバルスタンダードということを先生方はそれぞれどういうふうにお考えか、端的に三点ずつ挙げていただきたいと思います。  まず鈴木先生からお願いをいたします。
  60. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 グローバルスタンダードという言葉に厳密な定義というものがあるのかどうか、私はよく知りませんけれども、これまで世界の金融界をリードしてきたアメリカなりイギリスなりのアングロサクソン型の金融の論理それからルールというものが、世界の大きな主導的な流れになっているのではないか。EUの通貨統合なり金融改革なり、皆そういう流れの中で動いていくのではないか。だから、それにできるだけ近づけていくということが必要でございますけれども、それはそれぞれの国の特色がいろいろございますから、ヨーロッパでも、ドイツにしろフランスにしろみんなやはり日本と同じように、今まではいわゆるドイツ型というのに日本型というのは割に近かったので、アングロサクソン型とはかなりいろいろな面で違いがございましたけれども、そういうものをどこまでお互いに接近していけるのかという問題は一つあろうかと思います。  ただ、いずれにしても市場というものは流動的に共通のルールにいや応なしに統合されて動いていくものだと私は考えておりますから、そういう面では、日本だけが特殊なルールを守ろうというのは、これはとても無理だ。ですから、そういう意味では私は、今までは日本はかなり特殊なルールというものを国内的に適用してきたというふうに思っておりますので、これが今後世界の、つまりアングロサクソン型を基軸にした世界の主流となるルールにできるだけ接近していくことが望ましいのではないかというふうに考えております。
  61. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 グローバルスタンダードという問題は、まさに私たちが毎日取り組んでいる問題です。弊社のお客さんが、例えば株のお客さんですと、日本の株を買うべきかアメリカの株を買うべきか、あるいは同じ業種にある例えば自動車会社ですと、トヨタを買おうかGMを買おうかフォードを買おうかフォルクスワーゲンを買おうかという決定に毎日取り組んでいるわけですから、やはりこのグローバルスタンダードは非常に大事なポイントだと思います。  では、どこを直すべきかといいますと、私は三点を挙げたいと思いますけれども、一つは情報開示です。  日本の株はどうなっているかということを海外の方に話すときに、情報がどうも不足しているから大変だ、判断できない、そういうところに投資をしたくないということを言う方がいますから、やはり、欧米基準あるいはニュージーランド基準で情報開示を改善すれば非常に大きな貢献になると思います。そうしますと、投資家がどこに自分のお金を入れるかということを判断することができるようになって、資本の使い方がよくなって、世界が活性化するということにつながると思います。  二番目は、似たような点ですけれども、やはり会計基準を世界スタンダードにしなければならないんじゃないかと思います。  よく、日本の株価収益率がほかの国に比べて高いということを言われていますけれども、いろいろ会計基準が違うからこうなってしまっているという説明が今までありましたけれども、単に日本の収益性が低いという批判もできます。ですから、やはりできるだけ日本国内の企業がほかの国の企業が使っている会計基準を使うと、これは資本の配分を効率化するには非常に貢献をするのじゃないかと思います。  三番目は、公的部門からのサポートという点ですけれども、どこか困ったときにだれが助けるかということを、やはり世界的なルールを組まないと、土俵が同じじゃないという批判になるんじゃないかと思います。  これは特に金融業で大事な点だと思いますけれども、日本の場合は、金融機関ではないところの資本を、今度は金融機関を助けるために調達しましょうという話はよく最近ありますけれども、やはり各国のこういう公的部門の企業を助けるルール統一化しないと、企業を評価することは難しくなってしまうと思います。  例えば例を申し上げますと、最近問題になっている生命保険会社がありますけれども、じゃ、それと関連している企業から資本をいただきましょうかという話があります。世界の投資家がそういう関連している企業をどういうふうに評価するかという問題が非常に大きいですから、やはりそういう公的介入のルール統一化しないと、企業評価が難しくなるんじゃないかと思います。以上です。
  62. 中北徹

    中北参考人 私、今、世界標準の本を書いておりますので、あと詳しくはお示ししたいというふうに思います。  キーポイントは、冷戦後、そして今EU統合の大きい流れの中で、世界に単一市場が形成されているということがかぎだというふうに思います。したがって、市場一つですから、結局、基準がそこに収れんされてくる。かつてのように、イギリスだ、日本だ、いやアジアだということで、ばらばらの市場ではない。やはり、電気通信、それから交通手段の大きい発展の中で、一つ市場が競争を通じて、その基準、デファクトスタンダードを今つくっているということが一番かぎだというふうに思います。  これは、いわばオセロゲームのような世界でありまして、今強いからといってマイクロソフトが永遠に勝ち続けるわけではないと思います。場合によってはネットスケープが出ていくかもしれない。しかし、これは非常にオープンな競争の中で活力を持った企業が創意工夫を凝らしながら基準をつくっているということです。  それから、もう一点は、これは単に企業だけではなく、製造業や金融だけではなく、財政も今や競争しているという時代ではないか。あのEUでは、フランスとドイツが、失業者がもう目の前にあふれているんだけれども、とにかく財政の健全性を満たすために政治家が必死になってこれを達成しようと努力している。これがEUの財政の規律であり、財政の規律を高めることによって中央銀行独立性を高めていく、こういう好循環を世界的に今市場を通じて形成しているというのが一番かぎではないかというふうに思います。
  63. 山田弘史

    山田参考人 三点お答えいたします。  先ほど民主党の池田議員の御質問にございました。  これは、私は、財政当局市場のプレーヤーにならないということが非常に重要な一つのポイントだと思っております。  先ほどの日本銀行法、審議されておりました日本銀行法では、政府短期証券の日銀引き受けを許容しておるということが一番大きな問題の一つじゃないか。とにかく、大蔵省証券、外国為替証券ということで繰り返し繰り返しして、今、たしか残高は二十三兆円というところまで行っている。やはりこれは、大蔵省が、日本は世界一の借金国、国債発行国で、国債のコストをなるべく安くしようと。これはこれであれなんですけれども、そのために金融市場を害するというようなことは全くグローバルスタンダードに反することである。つまり、政府短期証券の日銀引き受けをやめ、そして市場でこれを消化するような体制をつくることがグローバルスタンダードに沿うゆえんであるということですね。  それから、もう一つは、野村証券で感ずるわけですけれども、VIP口座とかアンフェアな取引が半ば公然と行われていたということは驚くべきことでありますけれども、やはり、有価証券取引、これから銀行もそれにかかわっていくということですけれども、証券取引をフェアにするということがグローバルスタンダードということであるかと思います。  それから、先ほど冒頭陳述で触れましたけれども、これは中央銀行総裁の合意の、G10の合意のもとに、やはりバーゼル銀行監督委員会銀行監督の二十五の原則というものが公表されております。これは、直接この法案審議にかかわることでありますけれども、すなわち銀行の倫理性を高めるということですね。やはりこれはスタンダードとして遵守されるべきである。日本銀行が倫理性が高いかといえば、決して高くはないと私は思っておりますので、このことも重要なグローバルスタンダードであると理解をいたします。
  64. 前田武志

    ○前田(武)委員 今、ロバートアランさんの話でも、情報開示というのが出ました。当委員会における議論の中でも、金融市場というよりも、統一のグローバルな市場における一番の検査監督機能というのは情報開示だということで、ほぼ皆さん認識は一致していると思うんですね。  ただ、市場というグラウンドで多様なプレーヤーが登場してプレーをする。事業会社みたいなところであれば、まさしく先ほどアランさんが説明されたように、フェアなプレーをやらなければ直ちに市場で評価されて、株主も逃げていくし、会社の成績に影響していく。ところが、金融機関銀行であったり証券会社、これはむしろ経済のインフラの方でございますから、非常に大きな影響を与える上に、どうも素人わかりがしにくい。しかも、銀行株なんというのはほとんど持ち合いの世界なんでありましょうし、そういうことにおいて、まずは経済のインフラ、動脈である金融機関においては、特別の、情報開示における厳格さといいますか、基準が必要だと思うんですね。  まずは、金融機関における情報の開示というものはどこをポイントにすべきかということについて、実務家であるアランさん、それから中北さんにお伺いをいたします。
  65. 中北徹

    中北参考人 私、不良債権問題の基本は、やはり情報開示がおくれたということではないかというふうに思います。  その不良債権の定義というものも非常にあいまいでありますし、それから、要するに自己査定、自分で評価して自分で報告するという形になっております。それに対してペナルティーもかからないという点が問題でありますので、やはり、今後この監督庁設置の流れの中で、会計基準、それから公認会計士の問題、こういった点をしっかり専門家の間で十分に議論していただいて、世界の基準も加味しながら、一体どういうインセンティブあるいは罰則のかけ方がいいのかどうか、これをきちっと議論していただきたい。  結局、銀行が自分で判断して自分で出して、それで新聞で非難を浴びてずるずる報告を変えている、これでは規律がないということですので、やはり罰則の問題があるというふうに思います。
  66. ロバート・アラン・フェルドマン

    フェルドマン参考人 簡単に申し上げますと、やはり資産内容を評価するということが一つの大きなポイントではないかと思います。もちろん個々の預金者が、例えば銀行なら銀行のそれぞれの貸し出しを評価することはほぼ不可能ですけれども、ムーディーズとかSアンドPとか、そういうような会社がそういうようなことをやっていまして、格付をつけているわけですね。ですから、そういう格付会社の評価をもっと広く知らせるというのが一つ方法ではないかと思います。  もう一つは株価の動きですけれども、投資家がやはり多少難しくても銀行のいろいろなことを見て、あるいは金融機関のいろいろなことを見て評価する力があるわけですから、普通の預金者が、簡単に市場がどういう評価を下しているかという情報が手に入るならそれで十分かという気もします。  負債の方ですけれども、やはり資本比率はいろいろな種類があると思いますけれども、そういうものをもうちょっとはっきりした基準を立てて公表すべきではないかと思います。政府機関の中でどういう基準をつくるべきかということを今議論されている最中ですけれども、この前の金融財政事情という雑誌の中で一改善命令という基準をどういうふうにつくるかという記事が載りました。資本比率、すなわち残っている資本がゼロにならない限りは停止命令は出せないという記事の内容だったのですけれども、米国の場合はその基準は二%になっています。日本の場合は、資本がゼロになる、すなわち負債超過にならないと営業停止にできないということが今議論されていますけれども、米国の全然難しい基準があるわけですから、問題を避ける役割を果たすのではないかと思います。  三点目ですけれども、やはり市場メカニズムを使うということだと思います。自分の金融機関がこれだけいいということを言いたい機関の言い方をつぶさないことが非常に大事な点だと思います。もちろん、うそをついてはいけない、間違った、あるいはミスリードするような情報は言ってはいけません。そういう基準は米国に昔からあるわけですけれども、やはり自分のよさを訴えるような体制を容認するということが大きなポイントなのではないかと思います。
  67. 前田武志

    ○前田(武)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  68. 綿貫民輔

    綿貫委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  69. 綿貫民輔

    綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案について、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田幸四郎君。
  70. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総理以下関係大臣、大変御苦労さまでございます。  この金融監督庁をめぐる質疑が行われている最中に、いわゆる証券会社と総会屋との癒着の問題が大きく報道されておるわけでございます。また、第一勧銀との関連も大きく報道されて、世のひんしゅくを買っておるわけであります。  きょうの新聞を見ましても、野村証券酒巻元社長が小池代表と社長当時接触があった、どうも会見で話した内容と違うんじゃないかというのがある新聞の一面の記事になっております。また、第一勧銀の問題も、ある新聞の社会面にかなり大きく総会屋との関係が数字的にも報道されておるわけでございまして、この二つの不祥事件というのは、大変国民の皆さんに金融問題についての不信感を植えつけてしまった、大変ゆゆしき問題であるというふうに思うわけでございます。  また、諸外国に与える影響も、総会屋と金融機関が癒着をしているというようなことは、通常考えられないことが日本では行われておる。しかも、それが、この二つ証券会社金融機関だけではなくて、他にもそういった問題があるのではないかということすらささやかれている。こういうような状態でございますので、これはやはり国会としても、これらの問題は毅然として対処していかなければならない問題だというふうに思うわけでございます。  特に、この問題については、我が党の北側議員が、この二月、予算委員会においても取り上げて注意を喚起してきたところでございます。しかも、各委員からもこのVIP口座と言われるリストの提出、そうしたものを求められているわけでございますけれども、今司法の捜査中というようなこともございますでしょう、行政側としてはなかなかこれに対する答えを明確にお出しにならない。そういうようなことでは、国会の論議も無になってしまうし、国民の疑惑を晴らすことはできないわけですね。  このVIP口座なるもの、それが総会屋との癒着の問題で利用された経緯が歴然としているわけでございますが、この証券会社、特に野村証券といえば日本で一番大きな証券会社であるわけでございます。ただ、このVIP口座の問題については、かなり巷間伝えられるところもあったわけですね。ある新聞によりますれば、元政治家が堂々とこの問題はあったんだということを言っているのが報道されているのも見ました。私もかつて、間接的ではありますけれども、そういうものがあるのではないかという話も大分前に聞いたことがあるわけで、そういった問題について、本当に大蔵省は何も知らなかったのかなという疑惑はぬぐい去れないわけであります。  その問題は別としまして、いずれにしても、このVIP口座なるもの、この実態の解明をやはり急がなきゃならない、このように思えてならないわけでございます。そういった意味で、ひとつ政府として、行政の責任者として、この実態解明を行うとともに、証券会社透明性、公平性を確保するためにやはり何らかの対策を講ずる、こういう決意があってしかるべきではないかと思いますが、この点について、まず総理の見解を承りたいと存じます。
  71. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今議員から御指摘をいただきました、いわゆるVIP口座という問題に関しましては、政府は、それがVIPという符号を付された口座であるかないかということにかかわらず、仮にそこにおける取引につきまして法令違反などの事態があるのであれば、これは関係部局において厳正に対処してまいるということを従来から申し上げてまいりました。  そして、その法令違反などにつきましては、まさに今申し上げたことに尽きるのではないかと思いますけれども、いわゆるそのVIP口座というものをめぐりまして、国会においてこのように御議論をいただかなければならない、また国民の皆様方が疑念を持たれるということは、特定の顧客が一般の投資家よりも不当に優遇されていたのではないか、あるいは特別な扱いを受けていたのではないか、こうした問題にはどのように対処するのか、そうしたことを言っておられるのではないかと受けとめております。  今、そのような観点から、捜査の進捗状況も踏まえながら、善良な顧客の方々のプライバシーには配慮をしながらも、いわゆるVIP口座というものの正確な把握など、今議員から御指摘をいただきました問題に対しては、適切に、かつできる限りこれに取り組んでいき、国民の素朴な疑問というものに答えていきたいと思います。  また同時に、これは証券市場、そこにおける取引をより透明で、より公正なものにしてまいりますためにも、野村証券自身、また自主規制機関であります取引所あるいは証券業協会、さらに行政の、それぞれの立場から、なお何かできることがあるのじゃないか、そういう認識に立って真剣に検討させていただき、それを受けて適切に対応してまいりたい、そのように考えております。
  72. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ただいま総理の、大変まじめな、前向きな取り組みの決意の表明がございました。私は、国民の疑惑を晴らすためにも、ぜひその姿勢を鮮明にしていただくと同時に、ひとつ具体的に考えていただきたい、このように思うわけでございます。  具体的には、やはり所管大臣である大蔵大臣のお取り組みかと思いますけれども、今の総理のお答えについて、御所見があれば承っておきたいと思います。
  73. 三塚博

    ○三塚国務大臣 所管大臣として、法令の違反については厳正に対処するのは当然のことであります。証券監視委員会から勧告があれば、かねがね申し上げておりますとおり、これに従いまして厳正に対処をしてまいります。  また、ただいま総理より御答弁がありましたように、国民の疑念に答えますことは国会の役目であります。今回の事件の再発防止のための措置とあわせまして、適切に対処してまいる所存であります。
  74. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さて、これに関連して少し伺っておきたいのでございますが、この二十五日の夜でございますか夕方でございましょうか、橋本総理は、第一勧銀問題に触れられて、大蔵省に対する虚偽の報告をしていたという事実を踏まえて、いわゆる現行の刑事罰が軽くて抑止力にならないのであれば刑を重くしなきゃならぬではないかということを、記者との懇談の中かあるいは質疑の中で出されたというふうに報道されておるのでございますが、報道はしばしばしゃべったことを全部そのまま報道するという状況ではございませんし、そこら辺の発言の内容または本当に意図されるところ、どういうふうな気持ちでそこら辺をお述べになっていらっしゃるのか、国会の場でももう一度鮮明にしていただきたい、このようにお願いをいたしたいのです。
  75. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 多少答弁の長くなることをお許しいただきたいと存じますけれども、第一勧銀が野村証券の問題にかかわっているのではないかということが報道されまして以来、何回か記者諸君からこの問題についての質疑を受けました。  その一つは、一体、こういう事件が起きた場合の責任、行内における責任というものがどう処理されていくのか。これに関しては、実は私は、少なくとも現在の責任ある地位にいる方々はその事実を解明し、もし報道されていることが事実であるとすれば、なぜそのような事態を生じせしめたのか、そしてそれを二度と起こさないようにするためにはどのような体制をつくればよいのかを明らかにした上で責任をとっていただくのが本筋ではないだろうか、日本流に言挙げせずということで、何でもやめればそれで責任が終了するというものではないと私は思う、このようなやりとりをしてまいりました流れが一つございました。  同時に、これに関連をいたしまして、もう一つ申してまいりましたこと、それは、正確に私は第一勧銀の大蔵検査がいつ行われ、あるいは日銀の考査等がいつ行われたのか日付を存じませんけれども、当然ながら、例えば大蔵検査の中でこうした問題が発見されなかった、もし大蔵省検査に手落ちがあり、その結果こうしたものを見逃していたとすれば、これは大蔵検査の問題になる。しかし、それが虚偽の報告をなされ、あるいは適切な書類の提出が行われないというような推移の中でこうした状況を惹起すれば、これは銀行法上の問題を生ずるのではないだろうか、これは初期の時点でそういうことを申しておりました。  お尋ねがありました、今議員から引用されました記事が生まれましたときのやりとりは、間違いなしに虚偽の報告であると思われる状況の中で、あるいは必要な部分が隠された検査の中で、銀行法違反の問題が多分あるに違いないという想定で記者の方々からの質問がございまして、刑事罰を伴う罰則をつくっていてもこういう事態が起こることについてどう思うか、そのような質問があったときの答弁だと思います。  私は、本来、刑事罰を受けるというのは、個人としてもそうでありますが、企業としても非常な恥だと思っております。そして法律は、恐らくそのような恥を知る心を持つ対象を頭に置きながらつくられたと思います。しかし、その恥を知らずに、あるいは恥を知っていてもやってしまったのかもしれませんけれども、法規に触れるような行動をし、結果として、そこに付されていた罰則が意味を持たないものであるならば、これは私は考え直す必要があるだろう、確かにそのようなことを申しました。  私は、この第一勧業銀行の問題というのは、公共性の高い免許業種であります銀行という、そうした存在が極めて不適切な業務運営を行って、そして預金者などの信頼を著しく損ねた、そのように受けとめ、極めて遺憾な事態だと考えておりますし、今後、捜査当局による捜査また監督当局による調査などの状況を踏まえながら、厳正に対処しなければならないものだと考えております。  いずれにいたしましても、今後、事実関係が解明されていくでありましょうし、その事実関係を踏まえながら、我が国の金融市場透明性や公正性というものを一層確保していく、それによって傷ついた信頼を回復していかなければならない、そうした観点から、罰則の問題も含めて、再発防止策などを考えてまいりたいと思っております。
  76. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 今回こういうような不祥事件が発生をして、野村証券の方は役員約十二名が退陣ということでございます。野村証券の場合、常務であった方が新たに社長になる、同じく専務も前の常務であったというようなこと。第一勧銀の方も会長が責任をとっておやめになる等の処置はとられているのですけれども、こういう事件が起こると、もちろん代表取締役の責任というのは大きいわけですけれども、どうも大体トップクラスが辞任すれば何となく事は済むのじゃないかというような感じの大事になっている、そういう感じすらしないではないわけです。  御存じのとおり、会社法の規定を勉強してみますと、株式会社というのは、要するに株主総会で役員が、取締役が選任をされて、その選任された取締役というのは取締役会を編成して、その中でさらに代表取締役が選任されてくるという仕組みになっておりますね。しかも、会社のそういった業務を推進するための意思決定というのは、代表取締役と取締役会と両方にあるわけです。  そうすると、第一勧銀の場合にしても、その場合に特定して考えてみたいと思うのでございますけれども、頭取になられた方あるいは会長になられた方もかつてこの取締役会のメンバーであることは間違いないわけです。じゃ、その人たちの責任一体どうなるのだ、責任はないのか。何らかの形で取締役会全体の責任というものが明確にされなければならないのではないか。これは非常に難しい問題ではあるのですね、いきなり部長クラスから会長や社長を選ぶというのは事実上困難かもしれない。  そこで、今総理がおっしゃった、本当にそういうような当事者側の方に問題があれば、これは刑事罰も含めて考えなければならぬというようなお話でございますけれども、私は、そういったものがあってしかるべきであろうというふうに思います。だけれども、やはり会社全体が責任があるにしても、その運営のさまざまな過失を起こした人は、これはやはり人間なわけですね。そのそれぞれのセクションについている役職者が、見過ごしたのか、あるいは知っていても知らんぷりしてそういうものを実施してしまったのか、そういうところに私は問題があるように思うわけなのです。  ここのところへメスを入れないと、極端に言えば、その取締役会を構成している人たち、その人たちに対して刑事罰が科せられるぐらいの思い切った改革をしなければ、なかなかこういう事件はなくならないのではないかなというふうに思わざるを得ないわけです。と申しますのは、どうも信用がおけない問題も報道されておるわけでございます。  きょうの毎日新聞なんかを見ましても、そのことが報道されておりました。ちょっと読んでみますと、これは第一勧銀の場合なのですけれども、九五年の初めの融資残高、小甚ビル名義が二十九億一千万、それから嘉矩容疑者名義が四十六徳二百万の計七十五億というふうに膨れ上がってきた。第一勧銀は、回収は困難と判断をして、間接償却で会計処理を決めた。ですから、九五年の三月、小甚ビルの融資のうち二十六億四千万、そして本年三月に嘉矩容疑者の融資のうち四十四億何がしを償却した。ということは、少なくとも九五年ぐらいには、第一勧銀の取締役会ではこの話が議題になっているはずなのですね。それは想像ですから正確ではありませんよ。また、議題になっていなければならないはずですね。  そうすると、そういうことを容認した役員の人たちの責任はどうなるのだということを、私は素朴に感じざるを得ないわけなんですけれども、大蔵大臣、どんなふうにお考えですか。
  77. 三塚博

    ○三塚国務大臣 民間企業という制約が一つあります。役員会のあり方、役員会に準ずる物の進め方等々、石田委員言われますとおり、さまざまな対応の中で行われておると私は思っております。  そういう中で、主管大臣として、銀行法に基づいて不正行為は排除しなければなりませんし、銀行行政の適切な運営を確保するために幾多の罰則規定を設けておりますが、銀行法第六十四条に規定する両罰規定により、違反行為を行った者を処罰するとともに、法人等の主体に対して罰金刑を科すということにいたしております。御案内のように、本件の量刑が五十万円ということの多寡の御批判、問題点はあろうかと思いますが、現行法はこういう仕組みに相なっております。  いずれにいたしましても、罰則の問題については、透明かつ公正な金融市場の構築を図っていく観点から、重要な課題と認識をいたしております。今後、検査実効性を担保する観点からどうかといった点を含めまして、幅広い角度から十分検討していかなければならぬ課題が起きた、このように認識をいたしております。
  78. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私、今申し上げましたように、今申し上げたのがきょうの毎日新聞の朝刊なのですけれども、九五年度にもうそういった事態がわかっている。そういったことが大蔵省に報告もされないというような事態、私は、これは故意に報告をしなかったのではないのかなというふうに思わざるを得ない。単に債権を回収することが難しい、だから償却しよう、それだけならこれは当たり前の話かもしれません。しかし、これは総会屋との絡みの問題であったわけですね。そこまで踏み込んだ報告がなされなかったことは事実なのです。それを見過ごしてしまった取締役もしくは取締役会の状況というのは、非常に守りが甘いなというふうに思わざるを得ません。  これは地方自治体に比較して考えてみれば、この何十億というお金は、例えば県レベルの地方自治体から見ましたって大変な問題なのですね、そのお金が変なふうに使われたなんということになりますれば。これはそれぞれの議会において徹底的な解明が行われるわけですよ。しかし、取締役会ではそういうようなこともそんなに話題にならずに、そうかそうかといって過ごされたのでは、これは一般の国民は納得することはできないわけです。  どうかそこら辺を十分踏まえて、ひとつさらにこの問題、今総理の御発言もあったわけでございますので、大蔵当局として前向きに対処していただきたいことを要望をいたしておきたいと存じます。いま一度、大蔵大臣、いかがですか。
  79. 三塚博

    ○三塚国務大臣 石田委員の、金融、公共性の高い銀行に起きました今次の事件の対応についての御提言、御質疑でございました。  ビッグバンを中心とする大改革が進んでおります。世界に通用する日本市場を構築しなければなりません。そのために、ここに参加をする金融機関すべてが、国民からはもちろん、世界に向けても信認を得るための自己責任に立った行動がなければなりません。そういう点で、今後、再発防止の観点から考えましても、真剣に今後の対応を考えつつ対処をしてまいります。
  80. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、この問題はこの程度にしておきます。  次に、最近、省庁統合のためにさまざまなヒアリングを行政改革会議としてやっておられるという話が、連日これまた報道されておるわけでございまして、しかもまた、エージェンシー構想なるものが、これもまた大変テンポが進んでいるような報道がなされておる。その報道が全面的に正しいとは私も申し上げるつもりはないのでございますけれども、この問題について少しお話を承っておきたいわけです。  と申しますのは、いろいろな報道記事を見ておりますと、省庁の中央部においては政策の立案、そして執行機関は外局にというような基本的な発想を総理はもう是認していらっしゃるのだというような形で報道されておるわけですね。行革会議の中間整理、これをずっと拝見をいたしたのでございますけれども、別にそういうふうになっているわけではないのです。ですから、報道が正しいかどうかということは、必ずしもそうは言えないと思うのでございますけれども、どうもしかし、流れとして、例えば総務庁長官、この連休のときにイギリスに行かれましたね。それは単にそういった問題を勉強するというような角度ではなくして、エージェンシーというものを導入しなければならぬのだ、そういう角度で向こうへ行かれたというような感じが新聞のペーパの上からはうかがえるわけです。  まず総理に伺うのでございますが、この省庁統合の基本的な原則として、やはり省庁の中央部においては政策の立案、そういうものを中心にするのだ、執行機関というのは外局に渡してしまえ、そういう基本的な考えを固めておられるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  81. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 確かにエージェンシー化というものが非常にマスコミの注目を浴びておるテーマであり、ややもすると行政改革会議議論をいたしました内容の中でもここに視点を当てた報道が非常に多いということは、私も御指摘のとおりだと思っております。そして、英国を初めとして諸外国においてこれが例があるわけでありまして、企画と実施部門の分離など、その発想においては私どもが参考にする点は確かに多いと思っております。  ただ、それでは我が国でエージェンシーというものについて大方の合意を得た共通の概念があるかといえば、まだ存在をいたしておりません。また、我が国の法律制度や労働慣行の中で果たしてこれがそのまま当てはまるかといえば、さまざまな問題点を持っておりますし、適切な方策を考えなければならないことは間違いがありません。  その上で、多少お許しをいただきたいと存じますが、この行革会議の事務局の調査報告の中から、第五回、第六回の調査報告の中でイギリスを初めとする諸外国の例についての報告が出てきましたのが、テーブルの上にこれがのってきた最初のときでありました。その後、有識者の御意見を聴取しております中にも、この点に対して大変関心を強く寄せられた御意見があったことも事実であります。  今、行政改革会議におきまして検討を進めていく上で、主要論点項目を整理していきます中に、行政の実施機能のあり方につきまして、英国のエージェンシー制度が参考になるかどうか、どのような特徴というものを重視すべきか、そうした点が掲げられており、この主要論点項目につきましては、先般来各委員から自由に御意見の開陳が行われましたものを五月一日に中間整理の形で公表してまいりました。  実は、きょうも、本委員会にお呼びを受けましたのでこの委員会終了後、行政改革会議委員間のフリーディスカッションを行う予定でありますけれども、その中でも多分その議論は出てくるだろうと思います。そして、その主要論点項目の中で検討すべきものとして考えられましたもの、それは、例えば、英国の国家公務員というのは労働三権は持っておりますけれども、身分保障がございません。我が国の場合とその意味では国家公務員制度そのもの、雇用慣行等も相当な違いがございます。  そういう中で、一体イギリスと同じ形でエージェンシー制度は本当に採用できるか、こういう問題も提起されておりますし、エージェンシーに自律性、独立性を付与いたしました場合、主管大臣責任、あるいは権限との関係をどうするか。あるいは、行政権は内閣に帰属するという憲法の規定から考えましたときに、自律性、独立性の付与がどこまで可能か、こんな問題点もございます。あるいは、行政機関の外にエージェンシーというものを切り離して設けた場合、例えば特殊法人でありますとか認可法人という、我が国の既存の仕組みとの関係をどうするか。あるいは、公権力の行使に当たるものを行政機関からエージェンシーを切り離してつくると想定した場合にどこまで付与できるかとか、実は問題点は多数残っておりまして、現在その議論は行われておりますけれども、方向を持って、そのまま丸写しをして我が国にそれを合わせるといった状況ではございません。  ただ、本日も、今申し上げましたように本委員会終了後、行政改革会議を開きますし、こうした問題点を踏まえながらも十分な検討はしていきたい、そのように思っております。
  82. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総務庁長官、この間イギリスにお行きになって、このエージェンシーの問題、かなり突っ込んだ研究をしておられたようですね。いろいろな関係者との一問一答も行ってこられたそうですが、我が国の行政改革の中で、省庁統合等も踏まえた基本的な問題として、長官は、イギリスへ行って来られていろいろと研究をされた結果として、こういう問題は日本でも導入できるかな、こういう問題はちょっとなじまないのかなと、いろいろな御感想をお持ちになったと思うのですけれども、そこら辺について少しお聞かせをいただければと思います。
  83. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私がイギリスへエージェンシーの勉強にちょっと行ってまいりましたけれども、その感想といいますか、要は、イギリスでは最初は、行政改革というのはまずなるべく人を減らす、スリム化する、こういう形でサッチャーさんはお始めになりまして、たしか七十五万人の公務員が六十万人に減った。その次にお考えになったのが、民間のいろいろの手法を行政のシステムに取り入れられないかどうか、こういう観点から、向こうではネクストステップと言っておりますが、そこで考えられ出してきたのがたまたまエージェンシーという表現でなってきたものと思っております。  今総理からも少しお話がございましたように、イギリスのエージェンシーでは、それぞれの職員は国家公務員の身分のままでございます。日本の特殊法人、私はこれは一種のエージェンシーだと思うのですけれども、日本の特殊法人は、その点は身分が違っております。そういう点で、なぜ国家公務員かということですけれども、やはりこれはキング、王様から任命されているという一つのプライドがあって、ぜひ国家公務員の身分を保障してもらいたい、こういう観点からあったようでございます。  日本も、今お話のあったように、争議権の問題は別といたしまして、日本の公務員はそれぞれやはりプライドをお持ちでございます。こういう点を、今の特殊法人とは違った形で、何らかの形で、今総理もお話があったように、政策の立案部門と執行部門を切り離していくというふうに考えた場合には、その辺、やはり特殊法人とは違ったもう一つの考え方に立ったものが、ひょっとしたら日本でも取り入れることができるかもしれないかなという感じを私は持って帰りました。  それからもう一つ、イギリスではあくまでこれは、ですから身分はそのままでございますから、会った人すべてが非常に強調しておりましたことは、組織の変革ではないのだ、あくまで管理、マネジメントの変革であるのだ、こういうことを非常に強く主張しておられたことが私にとっては大変印象深いところでございました。  それからもう一つ、やはりエージェンシーでよかった、みんなこう言っているわけです。なぜよかったかというと、非常に日本もこれからやっていかなければなりませんが、経費の節減を役所が、中央省庁がやってきたわけですが、イギリスでどこがその経費の節減がうまくいったかというと、やはりエージェンシーでうまく経費の節減ができた部分が全体の経費の節減の六割だ、こういうことでございます。要は、スリムな行政にしていこうという点ではやはりエージェンシーが役立っておる、こういうお話でありまして、結果的にはイギリスでは非常に成功しておる。  ただ、イギリスで成功していない例としては、刑務所を実はエージェンシーにしちゃった。そうしたら、刑務所で脱獄事件が起きた。脱獄事件が起きたときに、一体それはなぜか。そうすると、その長は、いや、それは予算を切り詰められたから、予算を切り詰めた大臣責任があるんだと。大臣の方は大臣で、いや、監督しているおまえの責任だ。こういうどちらの責任かという争いがあったというような形で、正直、ほとんどの方が、あれはどうも間違いだったかな、刑務所なんというものまでそういう独立採算でやらせることがいいのかなという反省があったようでございます。  日本では、まだどこをどうするというのも全く、今の総理のお話のように、中間整理というのはそれぞれ委員の方が文書でいろいろお出しになったものを整理したものでございますから、報告は事務当局からはございましたけれども、行革会議議論したことはまだございません。多分、きょう、今総理のお話のとおりでフリーディスカッションでございますから、その中で出てくるのかなと思っておりますけれども。  ですから、これからこの制度が、日本の国の行政をスリムな、簡素にして効率のよい行政機構をつくっていこう、こういう観点からいってこういうものが一体必要なのかどうかというのは、これからの議論だと私は思っておるわけでございます。
  84. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 実はもう一遍総理に確認をさせていただきたいのですけれども、例えば、今行われている各省庁のヒアリングの問題ですね。ある新聞の報道によれば、新聞報道によればですからどこまで正確かわかりませんけれども、いわゆる行革会議としては、制度執行部門を中央省庁から分離する日本版エージェンシーの導入を各省庁に納得させることに力点を置いて、そういうものをにじませながらヒアリングをしておるというようなことが言われているわけですね。  そういうようなことの中で、もちろんこれから議論をして結論を出すわけで、まだその時期になっていないことは私もよく存じ上げております。ヒアリングが六月いっぱいぐらいまでかかるという話も聞いておりますし、省庁統合のいわゆる再編成問題の結論は年末であるということも伺っておりますから、それはそれでいいのですけれども、基本的に何か方針を出さないと、省庁統合のイメージというか物差しのイメージというものが見えてこないと、そちらの方へ議論は行かないのではないか。この新聞報道によれば、各省庁のヒアリングは、もう改革は余り歓迎しない、答えはノーばかりだというふうにも書かれておりますと、やはり基本は何なんだ。  例えば、後でもこれはお伺いしたいのでございますが、行政改革委員会で官民の役割分担という問題を、基本的な考え方を示されておりますね。そういったものを柱にして、そして、行政の問題点をそれを軸にして整理するんだということもあるでしょう。あるいは、今申し上げたように、政策の立案というのは省庁の中央部においてやるんだ、執行機関というのはできるだけ外へ出すようにするんだ、あるいはその立て分けははっきりしていくんだとか。予算の問題もありますからそう簡単ではないにしても、やはり基本を示さないで各省庁からそれぞれの改革案を出してほしいと言っても、これは出てこないと思うのですね。今までやってきたことはそれぞれの法律に基づいてやってきたわけで、その法律をつくったのは議会であるわけでございますからね。そこら辺の基本的な考えをどうされますか。  報道によりますれば、あるいは聞いたところによりますれば、間もなく一遍中間整理をして、そして基本的な問題、方向性を考えるんだという話もちらりと伺っておるわけですが、そうなれば、ますます基本的な考え方というものを軸に据えなければ改革論は前へ進まないと私は思いますが、いかがでしょうか。
  85. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 各省ヒアリングについて、私はほとんど出席をする時間がありませんで、会長代理であります武藤総務庁長官にずっと取り仕切っていただきましたので、細部にわたりましてもし御質問がありますならば、総務庁長官からかわってお答えをすることをお許しいただきたいと思います。  その上で、各省ヒアリングに入りましたときに、何も手ぶらで入ったわけではございませんということをまず申し上げたいと思います。委員の間でその前に議論をいたしました中から、それぞれの省庁における問題点、あるいはこういう点を改革する気があるのかないのかといったそれぞれの省庁に対する設問が事前に行政改革会議委員の中で合意され、それを各省に渡した上で、その上で各省庁の意見の陳述がございました。  ただ、今議員も御指摘になりましたように、人間はだれも自分のやっている仕事をむだだとは申しませんから、各省に対してヒアリングをすれば、それなりにどの仕事も大事なんだという答えが返ってくるであろうということはある程度予測をしながらも、それを逆に彼らが主張し、それに対してまた委員が問題点を指摘し、論議を深めることによって、今、行政改革会議としては、この後行ってまいりますまさに先ほど申し上げました中間整理も含めまして、議論をこれから集約していく時期が近づいてきております。多分八月の下旬には、私も含めまして行政改革会議メンバー、数日間どこかに本当に缶詰になりまして集中的に議論をし、粗く全体の方向づけをそこでいたしていくことになろうかと思います。  今、まさにそういう意味では、それぞれの省庁がみずからの行政を改革しようとする場合にどのような問題意識を持っているかをヒアリングをいたしておりますが、現時点において、濃淡はありましても、やはりみずからの仕事がむだであるということを認めた役所がない。これは議員の御指摘のとおりでありますが、それに対する事前の設問、そしてそれに対する各省庁の説明、そしてそれに対する委員からの質疑応答の中で、おのずからさまざまな問題点が浮かび上がっております。その中には、議員が先ほど指摘をされましたように、企画立案といういわば政策作成機能と執行機能は分けてはどうかといった議論も当然のことながら存在をするわけであります。
  86. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一遍エージェンシーに戻らせていただきますけれども、総務庁長官、これもある新聞ですけれども、日本版エージェンシーというのは外局と独立行政法人に分けられるというふうに勝手に書いているのですよ。これは何か試案みたいなものをつくられるのですか。  というのは、きょうも何か新聞報道がありますね。今総理が触れられた日本版エージェンシーの中で、例えば独立行政法人に、行革会議の方針として、そこの職員にはスト権を付与するんだ、人勧の対象から外すんだというようなことを決めたというふうに書かれている。  決めたとは私も思いませんよ。思いませんけれども、何かそういったたき台みたいなものをやっていらっしゃるからそういうような報道につながってくるのではないかなと私は思うのでございますけれども、日本版エージェンシーの試案みたいなものをおつくりになるのですか、どうですか。いかがですか。
  87. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 経過については、今総理からるるお話がございました。私どもとして、まだ今のところ試案をつくっておりませんし、ただ、たまたま総理の方から、総理の方と事務局との間でお話し合いがあったときに、たまたま事務局でいろいろなことを考えた、それが私の方にも連絡はございましたけれども、たたき台というほどではないと思うのでございますが、エージェンシーの問題で全くのフリーでディスカッションしていてもどうだろうか、このような形で事務局がある程度つくったのが今御指摘のようなものであるというふうに私は思います。  しかし、私どもは、そういう今のスト権の問題からいい、いろいろの問題を含んでおる、そこまで突っ込んで全く議論していないものを、やはりそういう形で既成事実として認めていくというわけにはいかないのじゃなかろうか。あくまでたたき台であったといたしましても、それにとらわれないで、もしきょう議論がなされれば、委員皆様方で自由に御議論いただいて、とにかく、より効率のよい行政機構にしていくには、今お話しのように執行部門をどういうふうに政策立案部門と分けていったらいいのか、あるいは分けていくべきではないのか、いろいろなことが私は出てくると思います。あくまでそういう面で、それにとらわれてきょう議論がなされるというものではない。もしありましても、それは一つの参考として出てくるかもしれませんけれども、それはあくまで参考としていけばいいものであるというふうに私は考えております。
  88. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それはそういうことだろうと思いますが、しかし、今まで長官、いろいろ新聞記者に書かれて、おっしゃったこともありますよね。だから、こういうものはエージェンシー方式にもなり得るのではないかというようなお話もしていらっしゃるわけで、それは全部が全部、外局にする、そういった特別の法人をつくってどうこうというふうには一律にはもちろんいかないと思いますけれども、やはりこれは一部導入はあり得るなというふうにお感じになっていらっしゃるのですか。
  89. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今申し上げましたように、やはり効率のよい行政機構にしていかなければいけないわけでございますから、その中で、政策の立案企画部門と執行部門を切り離した方がより能率が上がる、より効率がよくなるということになれば、やはりそういう組織というものが私は考えられていくというふうに思っております。
  90. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さて、これからの行政改革を進めていく上において、もう一つの物差しが、先ほど申し上げました行革委員会で官民のこれからの振り分けを考えようという提案をされておるわけですよね。この問題、どういうふうにこれから進めようとされますでしょうか。  と申しますのは、行政改革委員会の方で出された官民の中間報告を見ると、例えば、基本的に民間でできるものは民間にゆだねるということになっているわけで、そこに書かれている基本的な考え方というものは、これは総理への答申でございますから、当然行政に反映されなければならないと私は思っております。  ところが、実際にあれだけの文章を拝見をして、では、それぞれの省庁がこれからの行政を考える上において、きちんとそれぞれの省庁が機関を設置して、そして官民の役割分担の上に立った改革案を進めていかなければならないのだけれども、そういう機関というのは見当たらないのですね。今、大体、各省の官房長あたりを中心にして討議はされているのでしょうけれども、いわばつけ足しですよね。しかし、官民の役割分担を、ある省がこれを厳密にやろうということになれば、私は大変な作業だと思うのですね。真剣な討議がその省の中で行われなければならないというふうに私は思っているわけなんです。  では、総務庁長官の方にお伺いしますが、この官民の振り分けの問題、どういうふうに具体的に進められますでしょうか。
  91. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たまたま、行政改革委員会から官民の役割分担の報告が総理のところへ出てまいりましたときに、私も立ち会えということで、そのときに立ち会わせていただきました。そのとき総理からは、大変いい物差しをいただいたので、これを参考にしながらぜひ行革会議あたりでも議論をして、できるだけ官から民へ移せるものは移すような方向で努力をしなければいけないとおっしゃっておりましたし、私は、当然これから行革会議の中でこの問題についても議論がなされるものと思っております。  今お話しのように、各省庁の中でやるべきだというのも一つの考え方かと思いますけれども、先ほど総理からも御答弁がございましたように、私ども今ヒアリングを、私、総理にかわって座長を務めさせていただいてやっておりますけれども、役所の皆さんからは全然、自分の方から、スリムになるためにはここはひとつ合理化しますというお話はほとんどといっていいぐらいないわけです。やはり総理がおっしゃったように、役人の皆さんは、自分のやっている仕事はすべて必要であってやっているんだ、こういうお話でございますから、なかなか官から民へのものも、役所に、おまえの方でひとつ何か出してみろよと言っても、私は、果たしてどこまでそれが期待できるのかというのは、正直、今度のヒアリングを聞きながら疑問に思っております。ある程度はやはり物差しに基づいて、行革会議のようなところで、トップダウン方式と申しますか、ある程度行革会議方向を出した方が私はうまくいくのではないか。  いずれにいたしましても、行政改革一つの大きな柱は、やはり、今の官のやっている仕事で民間に移していいものは民間に移すというのは一つの私は大きな柱だと思っております。  今お話しのように、行革委員会の官民の仕事分担の割合でも三つの原則がございまして、その中には、国民本位の立場で、できるだけ民間でやれるものは民間に移す、それができないものは説明の責任がある、こういうことを言っているわけでございます。その辺を踏まえていけば、私は、ある程度トップダウン方式で、この役所のこういうところはもう民間でやってもいいじゃないかというようなことを指示をするぐらいにしないとまとまらないんじゃないかと実は危惧をいたしておるわけでございます。
  92. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それも一つの考え方かもしれませんが、そうしますと、要するに、規制緩和を今行政改革委員会がやっているわけですよね。それで一つ一つ指摘していますね。そして、それを各省庁が実施方に努力をしておるというふうになって、これは辛うじて進んでいるわけですよ、規制緩和は。そうすると、官民の振り分けの問題は、報告書に書いてあるのは、やはり具体的には書けませんから、基本の考え方を示しているわけですから、やはり例えば八条委員会でもつくって、そういうものをきちんと計画を立て、実施方を要請しというような形になってこなければ私は進まないと思いますよ。  私は各省庁の中で機関をつくるべきだということを主張しているのだけれども、今、武藤総務庁長官のお考えであれば、中央からトップダウンでおろした方がいいとおっしゃるならば、そういう何らかの機関をつくらなければ進まないじゃないですか。そこをどう考えますか。
  93. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 実は、きょうの行革会議に多分総理からお諮りをしていただくことになると思いますけれども、今の行革会議の中にそういう機構の問題についての小委員会を実は設置をしていただこうと思っております。これが設置をされれば、そこで当然こういう議論は私はなされるものと思っております。
  94. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま一度お願いしたいのですけれども、どういう機関ですか。
  95. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 行革会議のメンバーで小委員会をつくって、そこへお入りをいただいて御議論いただく。行革会議の中の小委員会、しかもそのメンバー構成は行革委員のメンバーが構成員になる。そこで、行政機構のいろいろそういう問題を含めた、どういう機構がいいのかということについてはそこで御議論をいただくことになると思いますから、そうなれば、当然そういう問題についても議論をそこでしていただけるもの、こう私は期待をいたしておるわけであります。
  96. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、ちょっとそれは疑問に思うのです。行革会議が今やっていらっしゃるのは、まさにかなり大きな省庁再編を目指しての考え方。そこへそういう議論が入ってこなければならないことはわかるのですけれども、しかし、省庁統合の、再編の問題というのはことしいっぱいで議論するわけですよね。今、後でちょっと問題にしますけれども、これは来年度の予算の中には出てこないということは、来年ではないわけなんですよ。そうでしょう。  そうすると、せっかくそれだけの答申を受けて、これは何にも実施しないままに、話があっただけでどんどんその話が後ろへずれていくだけ、さっぱり進まないということではありませんか。進みますか、そういう体制で。
  97. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 当然それは、今御指摘の中央省庁の統廃合の前提として、やはり私どもは規制緩和もあり官民の仕事分担もある、こういうふうに判断をいたしておりますので、中央省庁の統廃合の議論をする上においては、官民の仕事分担をはっきりさせるということは前提として当然やらなければならぬ仕事でございますから、私は、のんきな形でやるつもりはございません。これはできるだけ集中的に議論をしていただこうと思っております。
  98. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 例えば、それぞれの地域でバスが走っておりますね。公営バス、それぞれの地方自治体がバスを走らせている。バスを走らせる計画そのものは、それぞれの県なら県、大きな市なら市の立案によって予算がつけられ実施しているわけです。そういうような計画、立案の問題はいいのですけれども、しかし、公益事業だからといってそれを民間がやってはならない、民間が委託を受けてはならないということにはなりませんよね、清掃事業なんかはそういう形でやっているところが多いわけですから。  ですから、そういうようなことまで考えてみると、なかなか細かい話なんですよ。規制緩和みたいな、一つ一つつぶしていかなければならない、その中で官民の役割分担という考え方が明確化される仕事ですから、私は、この行革会議でやるのは果たして適切かどうかということは大変に疑問があります。  いずれにしても、そういうことを真剣に取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思うのです。  それから、次の問題として、概算要求の問題について、これは大蔵大臣にお伺いをするのですが、今国会が終われば直ちに概算要求の方向へと進んでいきますね。これは財政構造改革会議ですか、そういうところのいろいろな議論も踏まえていろいろ考えられていくのでしょうけれども、行革に関して概算要求の中にその姿が出てくるのかなという点を考えてみますと、非常に不安なんです。  それで、二つ伺いたいのです、この問題について。  一つは、この概算要求の問題についてやはり何らかの方針を出されるのだと思うのですが、従来型の積み重ね方式、各省庁から上がってくるものを積み重ねてやっていく方針では、これはなかなか改革は進みませんね。何らかの方針を出さなければならないと思います。その間、いろいろ話が出ているのは、例えば公共事業の長期計画を引き延ばすとかいうような話も伺っております。確かに、そういう形では、それは行政経費の節減という立場から見て予算額が縮小されるかなというふうには思うのでございますけれども、中身に立ち至った議論になっていないという批判が随分ありますね、これは。そういった問題も含めて、どんな方針を出されるのか、これが一点。  それから、この八月の概算要求というものが大体大枠で決まってくる、年末の本予算編成のときに、これが大幅な変更というものができるのだろうかできないのだろうか。今までの事例から見ると、それは余りなされていないのです。なされていない。しかし、橋本政権はとにかく行政改革財政改革、あらゆるものに手をつけられて議論をここまで進めてこられたわけですから、それが来年度の予算に反映されないということになってくると、これはやはり内閣にとってもゆゆしき問題じゃないかなと思って心配しておるわけなんです。  今の点、まず基本的にお伺いしたいのですけれども、どうでしょうか。
  99. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大変御激励を賜りまして、感謝を申し上げます。今、最大の努力をいたし、御指摘の問題に全力を尽くして、政府及び党は作業を進めておるところであります。  既に御案内のとおり、財政再建五原則という、財政構造改革憲法と私は申し上げておるのでありますが、聖域のなき諸制度の見直し、この上に立って、不要不急のものは当然制度見直しで、本年度予算編成まで歴年努力をいたしてきたわけでございますが、すべての分野について歳出の見直し、そして減を立てるという努力を行う。こういうことで、全体会議を設置をし、企画委員会を設置をし、企画委員会は与党三党の政策責任者、党務責任者、そして与党の、自民党の責任者、それに政府からは官房長官総務庁長官、自治大臣、そして大蔵大臣、こういうことの中で、十三項目に分けて協議を行ってまいりました。ようやく大詰めに参りました。  本日も全体会議、親会議と言っておりますが、総理経験者、大蔵大臣経験者、そして各党の党代表の参加の中で、財政構造改革の原点を踏まえて、集中三カ年という年度を決め、そして全体は六カ年計画で、健全な財政体質の第一歩として、国債費を除く財政予算の編成の基本は税収に見合う歳出、プライマリーバランスと言っておりますが、これを達成をしようということで、全般の歳出の見直しを、企画委員会を十三回行いましたが、問題点を詰めてまいりました。  最終的にその考え方を網羅いたしたものを月曜日に報告をいただき、そして本日、さらにその会議ということに相なりました。全般を見直しながら、真に国民の期待にこたえる歳出とは何かという原点を踏まえて協議を進めておるところでございます。最終的には、来週には最終成案を得ることができる、このように思っておるところでございます。  そういたしますと、これがイコール平成十年度予算編成の基準ということになります。これに基づいて各省に伝達をし、年末までに概算要求書を提出いただき、最終的に原案を得るための努力と、そして内閣において本件についての審議を行い、最終決定をし、来年度予算として国会提出、こういう段取りに相なろうと思っておりまして、未来に向けて孫子にそのツケを回し、借財を送るようなことはこの際遮断をし、つらいことがたくさん編成の中で出てまいりますけれども、内閣一体、与党一体の中で、本作業だけは完成をしてまいらなければならない、こういうことで取り組んでおります。
  100. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 税収に見合う歳出を基本として考えるのだというお話、よくわかるのですけれども、私たち新進党が特に考えているのは、やはり行政改革によって、それが財政方向の変更にもつながってくるというのが私は一つはあってしかるべきではないか。先ほども申し上げました公共事業、五年のものをさらに二年追加して先へ延ばすんだということだけでは済まされないのじゃないのかな。そこら辺がもう少し、ちょっと方針としては今のお答えの中では見えてこないなと思いますが、この点は、質的な問題での転換方向というのはどういう形ならばお示しになるのでしょうか。     〔委員長退席、野呂田委員長代理着席〕
  101. 三塚博

    ○三塚国務大臣 最終的に、企画委員会が取りまとめに当たっての案をつくりました。この中で、すべての問題点を網羅いたしております。社会保障のあり方、御案内のとおり少子・高齢化時代を迎えまして、本日の状態をそのままということは、負担をそのままにいたしますとその負担区分が深刻な状態に陥っていくのではないか。そしてさらに公共事業のあり方、真に公共事業、インフラ整備の必要なものということでありますとごみの問題が世論調査等においては第一位を占めるということなど、以下、地域によってばらつきはありますけれども、社会資本整備は依然として重要であるということで公共事業があるわけでございますけれども、それでも真に地域とその国民にプラスになる公共事業とはということの考え方がおおよそ取りまとめられてきておるわけであります。  問題は、延期をするだけではなく、削減に向けて決断を求めるという意味の石田委員の御指摘であろうかと思います。これは、それぞれがその問題意識をしっかりと踏まえながら、財政構造改革の、まず六カ年計画の中で集中三カ年の中におきまして、その道筋と展望だけは明示をしていかなければならないという意味で、数値目標をどうセットするかという大詰めのところに来ておることだけは間違いございません。最終的には、総理大臣の最終の決断ということが言われております。  そういう中で、政府と与党というのは議院内閣制において同一責任国会を通し国民に負うものでございますから、共同責任の中でこのことを取りまとめていかなければならない。全体会議は、梶山官房長官、座長として進行をいたしておるわけでございます。そんな中で、私も、総理、繁忙、外交日程等ありますから、できるだけ出ていただいておるわけでございますが、常時出ることによりまして、財政構造改革五原則、この基本を踏まえておのおのの努力をぜひお願いをいたしたいし、そういう認識の一致の中でただいま作業を続けておりますものですから、若干の時間、ひとつ御注視いただき、今後に対応してまいります。
  102. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総務庁長官にお伺いをいたしますが、来年度の概算要求のことを今ちょっと議論をしているわけなんですが、この行政改革関係が来年度の予算に本当に反映されるのかなという心配があるのですね。というのは、先ほど来申し上げていますように、各省庁の再編問題は年末でしょう。あるいは、地方分権といってもこれから、補助金の問題それ自体もこれから議論をしなきゃいけないわけですよね。権限移譲の問題もまだ確定しているわけじゃありません。そうなってくると、一体行政改革の問題はどうなるのだろうなと。  きのうの夕刊、この中で、例えば、内閣府で省庁間の調整を行う、こういう大きな見出しで、行革会議機能強化案というものを示したというようなことが報道されております。そういうような問題が、来年度の予算編成の中に本当に変革する姿としてこれが出てくるのかなというと、心配でならない。これは出てくる可能性がありますか。  例えば、総務庁長官は行政監察局を総理府に移してもいいよというような御意見もおっしゃっているのですけれども、これは決めれば来年度の予算の中に姿が出てこなきゃなりませんよね。あるいは、行政改革委員会を延長しようというのならば、これも予算の中に姿が出てこなきゃなりません。ところが、どうも、地方分権の権限移譲も補助金の問題もまだ議論中ですし、何か際立った──要するに、財政の基本的な考え方は今大蔵大臣から承りましたよ。だけれども、行政の方の変革の姿というものが、やはりこれは金が伴う、予算が伴う問題ですから、出してこないと、私は国民の大変な批判がそこに生ずると思いますね。来年の予算委員会は大荒れに荒れるのじゃないですか。そこら辺、どうお考えになりますか。
  103. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今、来年度の予算の概算要求から予算編成までの間のお話が大蔵大臣からございました。まあ新聞はいろいろ報道いたしておりますけれども、ちょっと私どもの今のスケジュールを、先ほど総理からもお話があったと思うのでございますが申し上げますと、正直、去年の暮れに規制緩和の答申をいただいて、改定計画を三月末にまとめさせていただきました。そして、引き続いて九月末までに、まだまとまり切れていないところもきちんとすることにいたしております。それから、地方分権は今御指摘のとおりで、昨年の暮れに第一次の勧告をちょうだいをいたしましたけれども、第二次の勧告は多分七月になるだろうと言われております。そして、先ほどの官民の仕事分担の問題も、今、我々これから議論をしていかなきゃならないと思っております。  そういうものを踏まえて、それとの関連の中で、二十一世紀の日本の行政機構はどうあるべきなのか。あくまで、日本の国家としての機能を果たしていくためにはどんな役所が、どんな仕事が必要なのか。あるいは、二十一世紀の国民のニーズにこたえていくためにはどんな仕事が必要なのか、それに応じてどういう役所が必要なのか。これが先ほどの十一月末に私どもが考えております中央省庁の再編成という形になるわけでございまして、今御指摘のような、来年度の予算にすぐ行政改革のあれを反映をしなければいけないのじゃないかということは、正直、私どもはなかなかそれには間に合わないと思っております。  例えば規制緩和の中で、もう既に過去においても、パスポートの問題であるとか車検の問題であるとかいろいろやったところもございます。多少その辺でどういうことが起きてくるかわかりませんけれども、今後も規制緩和などについてはできるものはすぐ進めてまいりますが、今御指摘のように、大きな行政改革の全体のものが、何か来年度の予算の編成にすぐ適応できるというふうには私どもは考えていないわけでございます。  ですから、今、大蔵大臣がおっしゃっておられたように、私も参画させていただいておりますが、財政構造改革会議においては、あくまでも今の制度の中で思い切ってどこをカットしていくべきか、こういうことでお互いに苦労しながら今議論をしておるわけでございます。  何かその辺、私どもは、あくまでも二十一世紀からの出発というところを最終目標にいたしておるわけでございまして、そのためにはことしじゆうに、十一月末までには案をまとめ、そして来年度の通常国会でひとつ御議論をいただこう。御議論というか、法律もそこへ出させていただいて、そして御議論いただいて行政改革方向をきちんと決めていく、こういうふうに私どもスケジュールを予定いたしておりますので、ちょっと来年度の予算にすぐ行政改革の結果を反映させろというわけにはいかないというふうに私は思っております。
  104. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうしますと、例えばこういう簡単なものもだめですか。この前、総務庁長官は、来年度の公務員の採用については六千ぐらい減らすのだとおっしゃったわけでしょう。そういうのもだめですか。できませんか。
  105. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、私は閣僚懇談会でも閣僚の皆様方に御協力をお願いいたしましたのは、今申し上げましたように、二十一世紀初頭においては思い切った、私ども簡素で効率のよい行政機構をつくるのだとお願いしているわけでございまして、当然、そこである程度の人減らしが来ないと、ただ単なる役所の数合わせの統合では国民から御批判をいただくと思います。やはりスリムになっていかなければならない。  そうすると、そのときに、実際公務員の皆さんに、あなた、やめなさいという形で生首はなかなか切れないのじゃないか。そうなれば、今からそこで減る分を少しでも新規採用を抑えていって、それでカバーをしていきたいというのが私の考え方でございまして、そういう面では来年度の予算においても、そういう点は各省庁できる限り御協力していただけるところは協力してもらいたいということはお願いをしているわけでございます。
  106. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これ以上はやめますけれども、もう少し、ひとつできるものはやっていくというステップ・バイ・ステップでいかないと、なかなか改革の実は上がらないのじゃないでしょうか。  例えば天下りの問題。これは本委員会でも予算委員会等でも随分問題になりましたでしょう。そうすると、定年延長の問題、確かに公務員制度全体にかかわる問題ではあるけれども、しかし今、これだけの高齢化社会というような状況も踏まえてみれば、これはもう早急に議論をして、そしてそういうところに踏み切らなければ改革の実は上がっていかないと思うのですよ。そのために私は申し上げているわけです。  確かに皆さんが、行政改革も二〇〇一年からというようなお話で検討されている。その流れは私ももちろんよく知っております。知っておりますけれども、できるものから着実に進めていかないと、国民全体が何だということになってしまうのですね。できそうなものはどんどん、少し小さなものからでも進めていくということが大事だということを申し上げておきたいと思います。  時間も大分経過してしまいましたので、金融監督庁の外側にある問題としてのビッグバンの問題について少し伺っておきたい、こういうふうに思うわけでございます。  このビッグバンの問題、日銀あるいは大蔵、いわゆる金融行政の大きな変革、それにプラス外国為替管理法の改定というものが来年の四月から予定されているわけですけれども、日本銀行改革大蔵省組織改革、外為法の改正、それから独禁法の改定、こういったものがビッグバンの基本的な問題点だ、ここを積極的に進めなければならないのだというふうに言われているのでございます。  大蔵大臣にお伺いしますが、これらの改定のほかに何か整備して進めていかなければならない問題、何があるというふうにお考えでしょうか。
  107. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御承知のとおり、金融システム改革は、二〇〇一年までにロンドン、ニューヨーク並みのマーケットに東京マーケットをよみがえらせよう、円の価値を安定したものにしていくというのも目的でございます。  本改革を進めるに当たりまして、結論の得られるものから速やかに実行するという方針のもと、外国為替管理法を衆参審議の上、成立をさせていただきました。同時に、規制緩和推進計画の再改定に当たりましては、業態別子会社の業務範囲の見直しなど、金融、証券、保険分野における大幅な規制緩和措置を決定をいたし、法令によらないものは逐次推進、法令によるものはその改正をまって、こういうことになります。  現在、これらの措置を含めまして、二〇〇一年までに改革が完了するプランをまとめるべく、関係審議会で最後の詰めを行っていただいております。来月にはプランの全貌を明らかにされます。全貌が明らかになれば、直ちにやれるものはスタートを切ります。法律によるものは次期国会を目指して法案作成に入る、こういうことで、アメリカ並み、ヨーロッパ並みの金融マーケット、これを確立をしてまいりたい、こういう次第であります。
  108. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 二〇〇一年から基本的にこれがスタートをするということになりますが、そういうような状態になってきますと、例えば個人金融資産というものも外為法の改正によって海外へ大きく進出をするというようなことも考えられるわけですよね。また、証券市場では、証券取引のあれが将来廃止になるのじゃないかということをもう既に言われているわけですよね。そういう意味でも、税制、これもかなり深刻に検討しなければならない事態、そういう事態が来るのではないのかな、私は素人なりにそんな感じがするのでございます。  この金融という問題が自由化の方向へ進んでいく、国際化が進んでいくということになってくると、当然、税の問題にもそれがかかわってくるというふうに思うのでございますけれども、そこら辺の関係はどんなふうにお考えでございますか。
  109. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、かねがね、当委員会はもちろん、予算委員会、大蔵委員会等においても指摘をいただいてまいったところでございます。  金融関係税制につきましては、金融システムの包括的かつ抜本的改革の具体的な内容が一歩一歩前進をいたしてきておる昨今でありますが、その中で検討を進め、結論を得ていかなければならぬものと存じます。  その場合、国境を越える資金移動が急速に活発になる中の課税の適正、公平の確保という問題があります。また、税制全体における、金融資本取引にかかわる税負担と労働や消費に対する税負担のバランス、そして公共サービスの財源という税の本質などの観点から検討が必要であろうと思います。  委員御指摘の問題の一つは、有価証券取引税、有取税のあり方に言及されておると思います。手数料の自由化等の問題などもあるのかと思います。  これらは市場税制全般のあり方の中で検討、見直していかなければならぬ問題ということで、政府税調、また各党の、与党の委員会等におきましても御論議をいただいておるところでございますが、政府とすれば、税制調査会の舞台を中心に、また、主税当局全体として本件に取り組んで、真にグローバルスタンダードの税体系になりますように取り組んでいかなければならぬ、その研究、検討に入っておるところであります。
  110. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一点お伺いをいたすわけでございますが、外為法の改正ということになりますれば、今本屋にはビッグバンの解説書がいろいろ出ているのですね。それ等をずっと読んでみますと、外為法の改正が行われると、かなり日本のお金が海外へ出ていってしまうと。ところが、これを数値的に見ていくのは非常に難しいらしいのですが、今までの経験則からいけば、マネーサプライ、通貨供給量、そういったものを基準で見るのがいいのではないかということになっていたようです。それで見てみると、アメリカでは六・六%、イギリスで七・九%、ドイツに至っては一七・一%というふうに、海外にそういった金融資産というものが流出をしておる、こういうふうに言われております。  そういうような基準から考えると、我が国も、こういったことになってくると単純計算でも三十数兆円から四十兆円ぐらい、それも非常に低く見た場合のようですね、そのぐらい海外の方へ金融資産というものが流出をしていく。まず、そういう傾向があるというふうに思われますか。  この間、倉田委員が質問をしたら、大蔵省の方は、余りそういうことは考えられない、いわゆる国際金利というものの状況も変化があるし、円高、円安といういろいろな変化もあるので、そう心配したものじゃありませんよというような答弁もされておったけれども、つい最近、対外純資産、初の百兆円台ということで、低金利を嫌って二二%も海外資産がふえていますよというのが報告されている。  そういう傾向から見ても、私は、やはりこの外為法の改正というものは、金融資産の流出、流出と言ってはどうですか、海外でのさまざまな交流の中で自然にそういうふうになっていくのかなというふうに思うのですけれども、この傾向は避けられないのではないかと思うのですが、大臣、いかがですか。     〔野呂田委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 三塚博

    ○三塚国務大臣 専門的分野の金利だ、為替だという件については政府委員から答弁をさせますが、私の今日までの分析、また国会論議を踏まえての考え方を申し述べるということになれば、海外に一方的に出るということではない、双方向性である。特に、日本のマーケットが海外の投資家にとりまして魅力あるものということになれば、当然東京マーケットに投資家が寄ってくる、盛んになる、こういうことになるでありましょうし、ただいまは、海外投資という意味のニューヨーク・マーケットであろうと思います、ロンドンであろうと思います、フランクフルトであろうと思います。そういう中で、東京市場もそれなりに、昨今の株価の動向、為替の動向等を見てまいりますと、投資が行われておるという報道、市場の専門家などの分析などもございます。  そういう中で、海外資産のことに触れられました。本件は、合弁を目指し、海外立地を目指し、投資をいたしておるということがあります。もちろん、市場に対する投資もあります。国債の購入もあることに相なります。そういう点を考えてみますと、総計してみますと百兆円を超える、こういうところまでまいりました。  こちらは、企業立地、企業投資という現地における生産体制への展開が行われている部分を含め、金融資産ということになりますと、一方的だけではなく双方向性であろう。それにつきましても、東京金融市場の改善、前進というのは避けられない重要なポイントであると認識をいたしております。
  112. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ちょっと時間の配分を誤ったようで、法案の方へちょっと入り損ねているのですが、もう一、二点だけお伺いをいたします。  公取の方にお伺いをしますが、この二〇〇一年に日本版ビッグバンを発動するについて、公取関係、独禁法の関係法でどういう整備をしていかなければならないのか、持ち株会社との関連はどうなのか。要するに、今銀行証券会社との業務提携、子会社をつくって云々というふうなことも聞いておりますが、今度のNTT問題では、まさに持ち株会社というのが表面にはっきりと見えてきたわけで、当然、こういう時代になってくれば、持ち株会社制度というものが金融の世界にも大きく乗り出してくるのじゃないかというふうに思いますが、どういった方向でこれを整備しようとしているか、御報告してください。
  113. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 金融ビッグバンと独禁法の関係でございますけれども、金融ビッグバンにつきましては、金融市場において自由化、透明化を進めるという方向での作業であるというふうに理解しておりまして、これによりまして新規参入が促進される、あるいは金融会社の自主的な判断による事業活動が活発に展開される、そういったことなどによりまして市場メカニズムがより一層有効に機能するようになるということが期待されますので、競争政策の観点からは望ましいものというふうに考えております。  次に、いわゆる金融持ち株会社、金融会社、銀行等を子会社として持つ持ち株会社でございますが、現行の独占禁止法では持ち株会社を全面的に禁止しておりますけれども、この規定を、全面禁止から、事業支配力が過度に集中することとなる持ち株会社についてのみ禁止をするというふうに改正するという改正法案を現在国会で御審議をいただいているところでございます。この改正法案におきまして、金融持ち株会社につきましても、金融会社を子会社として持たない持ち株会社、いわゆる一般の持ち株会社と同様に、事業支配力が過度に集中することになるものについては禁止をする、それ以外については、独禁法上、解禁をするといいますか、そういうことになるということであります。  なお、現在審議をしていただいておる改正法案施行日の関係でございますけれども、金融持ち株会社につきましては、預金者、契約者あるいは投資家保護等の観点から必要となる金融業法上の措置が必要であるというふうに考えておりまして、現在検討がされているわけでありますが、そういった法律上の手当てができれば、その際に金融持ち株会社についても他の一般の持ち株会社と同様に解禁をするということにしたいといいますか、そういう形で法案を御審議いただいているところでございます。
  114. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一点だけお伺いします。  この金融関係の持ち株会社のことでありますが、銀行、損保、証券、生保、こういったものを横断的にやると、これは相当大きな、要するに社会経済全般にわたる大変な影響を与えることになるのですけれども、単に小さな銀行、小さな会社が集まってくるのであればいいんですけれども、ここら辺の線引きはどういうふうに考えるんですか。これは、大きいものはだめなんでしょう。
  115. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 現在御審議をいただいております改正法案の中で、事業支配力が過度に集中することとなる持ち株会社を禁止するということで、その過度に集中することとなる持ち株会社というのはどういうものかということを改正法案の中に定義をしておりますが、その中で、今先生おっしゃったような金融関係につきましては、相互に関連性を有する相当数の主要な事業分野のそれぞれにおいて別々の有力な事業者を有する場合ということが一つ禁止されることになるわけでありますが、おっしゃるように銀行、証券、生命保険、損害保険、そういったものの会社を一つの持ち株会社のグループに持ったとしても、それが有力な事業者に該当しない、有力なというのは、現在我々、シェアが一〇%以上であるとか、あるいはシェアで数えて上位三社といったことを考えておりますが、そういったものの構成メンバーでないといいますか、一般的にはそういうものに該当しないものは当然のことながら許容されるというふうに考えております。
  116. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、もう時間がなくなりましたから、ビッグバン関係はこれで終わりにします。  法案の問題について、もう既に大変議論がありました。ただ、今までの議論の中でどうも納得ができない、政府の答弁もいろいろあるのでございますけれども、なおかつはっきりしない、そういうようなことが言われておると思うのです。私が見ましても、一つ問題なのは、なぜ金融政策の企画立案を大蔵省の方へ残してしまったのか。それぞれの社説をずっと見ておりましても、その点は問題があるというふうに書いてある社説が多い、批判が多いのですね。  そこで一つお伺いをしますが、法案提案理由には、透明かつ公正な金融行政転換をする、こういうふうに言われているのですけれども、従来、大蔵が指導監督してきた内容とどこがどういうふうに違ってくるのか、どこがどういうふうに透明かつ公正な金融行政が担保されるのか、そこのところをもう少しきちんと御説明をしていただかなければ、なかなか納得するわけにはいかない。いかがでしょうか。
  117. 白須光美

    ○白須政府委員 お答え申し上げます。  今般の金融行政機構改革におきましては、企画立案、それと検査監督、この両機能を異なった行政機関が分担するということによりまして、市場規律に基づいた透明かつ公正な行政を図るということでございます。  具体的に申し上げますと、例えばでございますが、検査監督当局。これが従来、検査権、監督権というものを背景といたしまして、行政指導によりましてルールの設定などを行うというようなことがあったわけでございますが、これらを行うことができなくなるということが一つございます。また、企画立案当局。これが日々監督を行っているということで、極めて接近的な関係にあるというような御批判もあったところでございますけれども、これが今後、業界から一歩距離を置きました観点から金融制度などの企画立案を行うことができるというようなことから、これらをもちまして透明かつ公正な金融行政転換に資するというように考えているところでございます。
  118. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、あともう時間もわずかでございますから、この三条機関意味なんですけれども、本来ならば、例えば三条委員会、そういうのは独立性を強化するために三条でなければならぬというような形でしておりますね。ところが、これも庁という形、それもいわゆる独立性という機能を強調するために三条という形でこの庁が編成をされて、まあ殊に今回は総理大臣が総括的に見ていくというようなことになっておるわけなんですが、その独立性を強調するために庁にしたという点、その趣旨については間違いないでしょうか。官房長官、いかがですか。
  119. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 今までの大蔵から分離をして監督庁にすることによって独立性を高める、そのことは間違いがございません。
  120. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうすると、独立性を高めるということになってくれば、大蔵省との協議の問題、それから農林金融などは農林省との共管ということになっていますね。この共管というのは余り、独立性という点から見ると、やはり従来の大蔵がやっていた手法と変わらぬなというふうにしか見えないんですけれども、どこか変わりますか。
  121. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 今までの数々の議論の中で、確かに住専問題の処理というか、あの事件をめぐりまして、金融のいわば政策部門と実施部門というか執行部門が同一の屋根の下にあることは極めて望ましくないというか、一定のわらじ的なものになり得る可能性がある、それがこの住専問題のいわば反省の一番大きなものであります。ですから、大蔵のいわば政策面の企画立案というものからこの検査監督分離することによってその明確化を図ろう、透明化を図ろう、そういう趣旨でこの監督庁の設立を見たわけであります。  しかし、さりとて今までやっている農水省その他のものはそれぞれの政策目的がありますから、その取り締まりとかいろいろな問題に指導監督を行っている省庁を全くネグレクトして、それじゃ金融の特殊性というかそういうものは保てるかどうかということになれば、金融としての、商品としての問題を全部見るのは監督庁であるけれども、農林その他の系統の金融においてそれぞれの省庁が合議をすることは、当然これはその適正を期するためにも必要であろうという観点からそういたしておるわけであります。
  122. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういうお考え、わからぬではないんですよ。ですけれども、それはいわゆる住専の問題を考えてみても、まさにその論理でずっと来たために成果を上げ得なかったという、大蔵の方が農林に押されちゃって十分なそういう機能を発揮し得ないで来た、そういう分野が非常に大きかった、そういうふうに言われているわけでしょう。ですから、やはりそういう独立性というものは、検査監督という機能を考えてみれば、あちこち気兼ねするようなそういうシステムにするというのは、私は、三条機関という意味合いからいけばやはりこれは違うんじゃないのかな、まずいんじゃないかなというふうに思わざるを得ないわけなんですね。今の点、もう一度ひとつお答えをください。
  123. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 現在の時点で金融検査監督という割り切り方と、例えば二年、三年前、四年前の、截然とはとうとうわからなかったわけでありますが、大蔵と農水の間に何らかの話があったのではないかという詰め方を皆さん方もやられたわけですが、それぞれあいまいのうちにあの決着を見たわけであります。しかし、これは大変な教訓になっているわけで、もうあつものに懲りて恐らくこういうことは二度と起きないであろうと私は確信を──同種の問題については起きないだろう。しかも検査監督というのをはっきり分離をいたしますとその成果がはっきりわかるわけでありますから、その点に対するチェックは私は十分可能だという理解をいたしております。  ただ、ある種のというか、全く予測のできない問題がこれから出た場合はどうかという問題について、予測できないものを今予測してここで申し上げるということは大変不謹慎になると思いますので、その都度、やはり思いを新たに検査監督というものに当たっていくことによってこの問題の処理を図ってまいりたい、このように思います。
  124. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これはどういう機構をつくってもその運営の妙にかかっている問題でもあるわけですから、それは長官のおっしゃることもわからぬではないけれども、しかし、あれだけの反省の上に立ってつくった金融監督庁であれば、むしろそこのところはびしつとしておかなければならないというのは、率直に言って私の持っている感じでございます。これ以上言ってもなかなか意見はかみ合わないと思うんですが。  それからもう一つ三条機関としての独立性の上から一番問題だと私は思っているのは、やはり財務局を使うあの話なんですけれども、これはもう本当に割り切るわけにはいかないんですか。三条機関でしょう、これは。だから、独立性が要求されているのに、全く命令、監督は違う省庁が担当しているところの人間を使わなきゃならぬという考え方は、私は全くこれはいただけない問題だと思うんですが、いかがでしょうか。
  125. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 これは前々から意見の分かれるところというか、見方の違いでありまして、確かに截然と分けることの方が形式からいえばよいかもしれません。しかし、行政改革という、必ずしも大きい人員を抱える機構を求めない、そういうことであれば、共存ができないかどうかというのを見てみますと、例えば証券監視委員会は十三財務局のうちで官名であります。これも完全にその財務局の中に入って独立はいたしております。というのは、検査官、監督官というんですか、監視官というんですか、この監視官の周辺にあるべき庶務、総務的なものを、それが別個にできれば、その機関すら持たなきゃならないということになるのは当然であります。  ですから、今回の検査監督のものはおおよそ財務局で九百名、これよりは大きい機関であります。九百名というのは大体専門職でありますから、これ以外の仕事に使うということはおよそあるはずがありません。ですから、検査監督を行う財務局にある今までの機能、これが完全に分離をされて検査監督を行う署になるわけでありますから、これもいわば証券監視委員会が財務局にあると同じように、それ以外の一般的な共通の庶務その他を行うこと、私は、そういうことに何ら共通の分野があってその問題がなおざりにされるということはない。財務局は既に検査監督の業務を完全に失っているわけであります、大蔵省自身が。そういうことになれば、そこで処理をされるということには当たらないという気がいたしますので、どうかこの行政改革というか、なるたけ小さい政府という理念に立ってやれるような方式もぜひともお考えをいただきたい、このように思います。
  126. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 行政改革というのであれば、私たち初めから監督庁なんというやり方はいかぬということを申し上げておるわけで、これも議論がかみ合いませんが、やはり一番心配をしますのは、官房長官もよく御存じのとおり、それぞれの役所では一年たっと人事異動があるわけですよね。専門官ならば、要するに金融監督庁として何百人かの人間を確保して、そしてその中で動かしていくことはできるけれども、やはり大蔵省の中の異動ですから、ある程度の人間はどこかへ異動しちゃうということがあり得るんじゃないですか。そうするとまた人事交代しなければいけない。あるいは命令系統というようなことになれば、やはりその人事権を持っている大蔵の幹部の顔色を見て仕事をするということは、これは皆無じゃないですね。人間の心理状態というのはそういうものだと思いますよ。  だから、やはり私は、三条なら三条の独立性ということから見れば、そこのところをはっきりしておいた方が、行政改革とかそういうことをおっしゃるけれども、そちらの方が大事だからこういう金融監督庁をおつくりになったわけですからね。そこのところはきちっとしておかなければいけない、こういうことを申し上げておきたいというふうに思うのです。  あの人事異動を見ていると、やはり本庁の方へお帰りになることもあり得るわけでしょう。そういうことは全くないというふうにお思いになりますか。もう時間もありませんけれども。
  127. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 これも前回議論になったところでありますが、この検査監督というのには相当専門的な知識が必要になるであろう。ですから、この人材育成も考えなきゃならない。ですから、場合によって、不適切だと思う方があれば当然人事の交代をし、後の補充をむしろどうやったならば採れるか、適材をどうやったら採れるかということに問題意識を持つならば、私は、適正な金融監督庁長官の人事権ないしは職務執行の上に必要な人材を集めるという意味での門戸は開かれてしかるべし、こう思います。
  128. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これで終わりにしたいと思いますが、官房長官のお話でございますけれども、その点はどうも納得をすることがちょっと難しいです。できません、それは。やはり省庁の最高責任者ということの方を向いてその職員が仕事をすることは間違いないわけですから、そこのところははっきりさせておかないと、本当に私は十分な機能を発揮できる役所にはなり得ない、こういうふうに思います。  それだけ申し上げておきまして、以上で私の質問は終わりにいたします。ありがとうございました。
  129. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、池田元久君。
  130. 池田元久

    ○池田(元)委員 どうも大変御苦労さまでございます。民主党の池田元久でございます。  当委員会審議も大詰めを迎えております。この重要な大蔵省改革金融行政改革につきましては、各党から改革案が出されておりまして、論戦が行われてまいりました。先日は、民主党、新進党改革案に対して与党委員などの質問も行われまして、必ずしも十分な時間ではなかったんですが、立法府におります私たち議員、つまりローメーカー、法律をつくるローメーカー同士が議論を展開できまして、大変意義があったと思います。  さて、きょうは総括的な審議ですから、政府、新進、民主の改革案について一言見解を申し上げたいと存じます。  日本版ビッグバンを目前にしております。しかしながら、住専の処理、大和銀行事件など、大蔵省金融行政のあり方が問われております。きょうは参議院の方で金融不祥事について今質疑を行われておりますが、不透明な東京マーケットのあり方も同時に問われております。私たちは、世界標準、国際標準、いわゆるグローバルスタンダードに合わせて、安定した金融システムと行政を確立しなければならないと存じます。  その場合、一つには、財政金融分離、業者行政から市場重視、市場中心の行政への転換、さらには、国民、国会へのアカウンタビリティー、つまり情報公開と説明責任の三点を重く見ていく必要があると思います。  しからば、政府案はどうかといいますと、政府案は、まとめて言いますと、財政政策を担う大蔵省金融の企画立案を残したこと、また、業界団体、取引所等に対する監督権限も残したこと。これは最初の審議でも申し上げましたが、さらに、大蔵大臣に民間金融機関に対して直接資料提出などを求める権限を与えたこと。四番目には、共同省令によって、監督にかかわる細かい事項まで大蔵省が関与できることになっていること。最後に、住専問題の反省も忘れて、信連を初め農林系統金融機関などの検査監督は共管で従来どおりとなっているなど、問題が極めて多いと思います。  要するに、政府案は、大蔵省権限をできるだけ温存し、民間金融機関にとって二元行政となっていると言って過言でないと私は思います。  マクロ経済政策をしっかりとわかりやすく遂行していくためには、財政金融が健全な緊張関係を持たなければならないと思います。しかしながら、そういった大きな視野ではなく、大蔵省からまず検査を出す、次に、大蔵省から検査に加えて監督も出す、渋々出すといった大蔵省の抵抗ラインに合わせて結局政府案はでき上がったと、別の面から言えばですよ、言わざるを得ません。  いわゆる分け目、ミシン目は、金融の中の企画立案と検査監督の間に入れるといったことではなく、大きく財政金融の間に入れるべきだと私は思います。  一方、新進党はどうか。  立派な先生がいらっしゃいますので、私も期待しておりました。しかし、いささか失望いたしました。  まず、政府案と同様に、金融の企画立案を大蔵省に残すということになっております。今、石田前委員長もおっしゃっていました。これでは改革の重要なポイントが無視されていると言っていいのではないかと思います。  また、新進党案では、検査監督の一元化についても、その考え方が盛り込まれておりません。さらに、金融委員会というものをつくって日銀に検査を委任して、つまり下請に出して、またそれぞれに政策委員会理事会を置くということが適当かどうか、大変疑問です。  日銀を活用するといった単純な考え方はとっていらっしゃらないと私は思うのですが、以上のとおり、新進党案には理念を感じることは残念ながらできません。政府案は、極めて不十分ですが、議論の出発点にはなります。しかし、新進党案は、大蔵省改革金融行政改革の原点から、残念ながら外れているのではないかと思います。  まことに僭越ながら、政府案を切らせていただいて、返す刀で新進党を切らせていただいたわけですが、そこで、民主党案を述べさせていただきます。  五十五年ぶりの改正となります日銀の改革とあわせて、私たちは、日本金融行政のトータルな構図を描きながら、金融監督庁法案日銀法案について大幅な修正案を提出しております。  私たちとしては、金融の企画立案と検査監督は実務上は密接不可分の関係にあると考えております。  そこで、民主党では、金融監督庁金融庁に改め、金融の企画立案事務を内閣総理大臣に移管することにしております。  さらに、企画立案のうち金融監督に密接に関連するもの、つまり政令や総理府令の策定、企業会計基準の策定等は金融庁で行うことにしています。  また、金融・証券市場のインフラ整備などの大きな金融制度の枠組みにつきましては、総理大臣直轄の金融制度企画室を総理府に設け、検討することにしております。  さらに、縦割り行政の弊害を是正するため、金融検査監督金融庁に一元化し、従来は事業官庁と共管でありました信連等の機関に対しても、一元的に状況を把握し、その監督責任を明確にしております。  また、民主党は、信用秩序の維持についても、これは大変重要な点ですから、これについても万全な仕組みを設けております。  このように民主党案は、政府案新進党案に比べて、理念からいっても、また、それぞれの機関役割の明確化など実務の上からいっても、時代の要請にこたえたものと申し上げさせていただきたいと思います。虚心に皆様方に検討していただければわかると思います。  では、質問に移らせていただきます。これまで審議で問題として浮き彫りになった幾つかの点についてお尋ねいたします。  まず、財政金融分離についてですが、財政金融がばらばらでよいと言っているわけではありません。先ほど申し上げました、我々は、マクロ経済政策総合調整決定の中で、それぞれが健全な緊張関係を持つ必要があるということを言っているわけです。  この委員会では、民主党ばかりでなく、かなり多くの委員財政金融分離が必要だということを主張されておりました。武藤総務庁長官、お名前を出して失礼ですが、一般論として、非常に相反するような目的を持った行政というものが一つ機関の中で行われているのはいかがなものかとお述べになりました。卓見でございます。去年十二月の与党三党合意では、三つの柱の一つとして財政金融分離をわざわざ取り上げ、「抜本的な省庁改革では、金融財政分離を明確にする。」と、それこそ明確にうたっております。  橋本総理大臣にお尋ねしたいと思います。  この三党合意に基づいて、今後、財政金融分離をいつどのように実行していくか、お伺いをしたいと思います。
  131. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、決してこの三党合意を忘れているわけではありません。「抜本的な省庁改革では、金融財政分離を明確にする。」その後に、「本件については、総理のもとの行政改革会議において検討される霞ケ関大改革の課題とすべきである。」というのが自由民主党の考え方であります。  そして、私どもは、大変理路整然と御自分の意見を述べられたことに敬意を表しますけれども、国際的な枠組みの中でそのお考えはどのように位置づけられるのかなという点について、私は率直に疑問を感じました。  例えば、G7などにおける国際的な政策協調へどう対応していくか、あるいは資源配分といった点からも、私は、もし私が議員の立場で議員がこちら側におられればお尋ねをしたい点を持っております。  そして、私は、財政金融のあり方というのは、まさに我が国の行政機構のあり方の根幹にかかわる問題だと考えておりますし、二十一世紀における国家機能あるいはそれを踏まえた中央省庁再編のあり方の検討の中の大きなテーマとして、行政改革会議において議論をしていくべき課題だと考えておりますし、また、議論も進めてまいります。  決して三党合意を無視して、忘れているわけではございません。少なくとも、しかし、武藤長官、卓見と褒められましたので、私のこの答えは落第と言われるのかもしれませんが、事実問題としてそういう問題点があることは御理解を願いたいと存じます。
  132. 池田元久

    ○池田(元)委員 忘れていないという後ろ向きの発言ではなく、その上に立って、橋本総理大臣はこうするという、恐らく近々おっしゃるということを期待しておりますが、ぜひそのようにお願いをしたいと思っております。  それから、G7の出席問題等おっしゃっていると思うのですが……(橋本内閣総理大臣「いや、出席ではありません。等、国際会議の枠組みの中でどう日本が行動するかであります」と呼ぶ)はい。それは私も、この前修正案の質疑で十分なお答えをさせていただきました。余り長くなるのはあれですが、要するに金融は中央銀行総裁が代表する。グループ・オブ・セブン、G7は、先進七カ国大蔵大臣会議じゃないのです、大蔵大臣・中央銀行総裁会議というわけですから、その辺はお間違えにならないようにお願いをしたいと思います。  さて、時間がありませんので、次の共同省令の問題に移りたいと思います。  今回の政府案では、大蔵省に企画立案を残したため、いや、むしろ企画立案が残されたことを盾に、大蔵省監督権限の一部を残したり、民間金融機関に対して直接資料提出を求める権限を持つなど、二元行政の仕組みとなっています。その中で、委員会審議開始の際に私が取り上げ、さらに同僚議員の何人かが取り上げました共同省令の問題についてお尋ねしたいと思います。  橋本総理大臣は、私の指摘に対して、指摘を受けた幾つかは我々としても不本意なものがあるとおっしゃいました。さらに、三塚さんは今いないのですか、残念ですね。三塚大蔵大臣も、同僚議員の質問に対して、総理と私の問答を受けて、「省令の実際の制定、改廃に当たっては、総理が答弁したとおり、いやしくも一方が他方に不当に影響力を行使してはならないことは当然だ、大蔵省としても、主として検査監督のための手続の詳細を定めるものについては総理府が主導的立場に立つべきであると考えている。」と述べ、補足されております。  省令というのは、行政機関が実際に活動していくときによりどころになる大事なものですね。事前にそこで行政のルールが決まってしまうわけです。これは事前に大蔵省と共同でつくる必要はあるのですか。政府委員は、政令の範囲内でルールを定める行政立法だと言っておりますが、その程度のことは金融監督庁でもたやすくできると思います。執行面の機能を的確に反映させると政府委員も言っているのですから、少なくとも検査監督にかかわるものは共同省令を外して、総理府令の単独で定めるべきだと思います。総理からお聞きしたことですから、総理からお尋ねをしたいと思います。
  133. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今御指摘がございましたように、五月六日の行革特委、議員の御質問に対し私は、「共同省令の中について私は十分熟知をしておりませんでしたので、この点は後で私自身が調べてみたいと思います。」というお答えをいたしました。  そして、議員の御議論とは別に、実態的に調べてみますと、現在、銀行法等金融関係の各法には、法律、政令の委任に基づいて大変多数の省令が定められております。これは現在、現実に存し、それが大蔵省権限となっておるわけであります。これが、金融監督庁が生まれますことにより、こうした既に存在する省令も含めて、法令に基づく検査監督という機能、執行面の機能金融監督庁が有することになります。  ですから、省令の制定とか改廃というのは、まさにルールを決めることでございますから、基本的には企画立案という性格からつくられるものでありますけれども、これが執行面で整合性を必要とする、当然ながらこれは共同省令になって、当時、議員から御指摘をいただきましたとき存じませんでしたが、こういうものは私は共同省令になって当然だろうと思うのです。  省令にいろいろなものがありますから、主として検査監督のための手続を定めるものは、私は、当然、実際の制定、改廃の場面におきまして、監督庁である金融監督庁が主導することになるだろう、そう思いますし、いずれにいたしましても、大蔵省銀行などに対し個別の監督権限の行使にこれを利用することはない、関与することはない。ただ、現行法であります省令で、企画立案の性格を持ちながら執行面に影響を持つものが共同省令になるのは、私は当然だと思いました。
  134. 池田元久

    ○池田(元)委員 共同省令の問題につきましては、今最後の方でおっしゃいましたとおり、そういうことであれば、検査監督にかかわる省令は外しても構わないと……(橋本内閣総理大臣「いや、外すと言ったって、金融監督庁になきゃ困るよ」と呼ぶ)監督庁にかかわる、検査監督にかかわるものは大蔵省の省令を外して、総理府令単独でやっても構わないということになると思います。  時間がありませんので、次の質問に移りたいと思います。  次に、検査監督の一元化につきまして、三党合意では、信連など農林系統金融機関などの検査を一元化するとうたいながら、「なお、云々、共管とする。」と、なお書きで現状を追認しております。しかし、住専問題の反省、相互に連関する金融というものの特性から、一元化は当然だと私は思います。当委員会でも、多くの委員からこうした主張がなされました。保利農水省政務次官も、さきの私に対する答弁で、当面は三党合意のとおりになったが、「金融監督庁金融の専門家としてやはり見ていただく方が将来のためにもいいのではないか。」と述べていらっしゃいます。卓見が二つ目です。  「共管のまま、やってみなければわからない」といったことではなく、真摯に考えれば、金融面での検査監督の一元化はすぐに実現しなければならないと思いますが、これも総理の考えをお聞きしたいと思います。
  135. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、保利さんの答弁というものを改めて読んでおりまして、当面はというその言葉をどういう意味で保利さんが使われたのかは私にはわかりません。  しかし、既にもう何遍も御答弁を申し上げておりますように、いろいろな金融機関、例えば労金に対する労働省とか、信連に対する農水省、民間金融機関、各省大臣大蔵大臣との共管になっておりますものが、内閣総理大臣と各省大臣の共管となるわけでありますけれども、それぞれ別個の行政目的を持った各省の検査とは別に、金融行政という観点から、金融監督庁は民間金融機関等に対する検査監督を所掌する機関として責任を持ってこれが行われる。この点では、まさに各省と共管になっております金融機関でありましても、金融監督庁金融行政の立場から検査その他の監督を専門的に行う機関としてその機能を十分発揮するように行動をさせたいと思います。
  136. 池田元久

    ○池田(元)委員 次に、機構と大事についてお尋ねしたいと思います。  報道によりますと、大蔵省銀行局と証券局は、現在、課として十一ありますが、監督庁ができても金融局に七課も残ると言われております。企画立案が残り、政府金融機関監督もあるとはいいましても、監督という重要な事務はなくなるわけですから、四課を削減するだけというのはどういうことなのか。業務を細分化していろいろな課を設けておりますが、このとおりだとすれば、行革の趣旨に反するのではないかと思います。端的にお答え願いたいと思います。
  137. 武藤敏郎

    武藤政府委員 銀行局、証券局を統合して金融局にするという組織機構の中身につきましては、十年度機構定員要求の中で決めることになっておりますので、現在、具体的な案はまだ持ち合わせておりません。
  138. 池田元久

    ○池田(元)委員 また、新しい監督庁には人事担当の総務課はない、人事係を置くだけで、それも一人にするという案すら出ていると言われております。私は、今確かに武藤さんがおっしゃった、政府としてはそういうことをおっしゃるでしょうけれども、機構、人事の面でもこういう報道が出るということは、この新しい監督庁を骨抜きにする動きがあるのではないか、こういう考えにちょっととらわれます。  次に、長官大事についてお尋ねをいたします。  その重要性については、総理を初め官房長官大蔵大臣、皆さんが言及されております。政治家ですから、形容詞が大変豊かです。当委員会でも国務大臣にすべきであるというような議論もありました。総理大臣、そうであれば、少なくとも国会の同意を受けて総理大臣が任命する特別職にすべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  139. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 要は、どうすれば一番すばらしい方を選べるかという不言だと、私は問題点をそう思います。  そして、金融監督庁というものは、民間金融機関などに対する検査その他の監督などを専門的に行う行政機関、そして総理府に置く機関でありまして、長官は私自身、内閣総理大臣が任命するということになります。  大臣という国務大臣長官に充てました場合、国家行政組織法上、大臣庁というものは、非大臣庁に比べて、政務次官及び事務次官が必置になります。そしてそれだけ行政組織は拡大いたします。そういう組織金融検査監督という業務にとって望ましい組織であるかどうかという問題がまずあります。  また、国家公務員につきましては一般職が基本ですし、特別職はその職務が政治的な職務であるといった特殊性があります。任用または服務等について一般職と異なる取り扱いとすることが要請される場合に、原則として国家公務員法の適用を受けることのない職として、制限列挙の形で掲載されているのがそういう職分です。  しかし、非常に専門性の高い知識を必要とし、しかもそれだけの人材を得ようといたしますときに、どういう形が一番人材を得やすいかという点は、これはむしろ逆に一般原則の中で、一般職として選任をする方が人材が得やすい。しかも、例えば政権の移動により任期を途中で中断されるといった政治色のある扱いを受けないためにも、私は、一般職の方が望ましい、むしろそれだけの権威を保障すべき職である、そのように思います。
  140. 池田元久

    ○池田(元)委員 最後に、政府提案法案には、これまで論議してきましたとおり問題点が大変多いわけです。閣僚からさえ、「当面の金融監督庁については、とりあえず現体制の中で発足した、必ずしも完全な形ではなかろうと思う。」という率直な発言もありました。  間もなく中央省庁の統廃合問題も日程に上がってくると思います。新しい金融監督庁のあり方について、三年あたりをめどに見直す必要があると思います。どうしても政府案の内容でいきたいというのであれば、法律に見直し条項をつけるべきだと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は本当に、こういう職務を持つ役所がこれだけの論議を生んで、その上でつくらないで済む状態であれば、それほど望ましいことはございません。そしてまた、年限を付して、あるいは見直すあるいは縮小する、そういうことを考えられるほどの状況であれば本当に幸せだと思います。  しかし、現在起きておりますさまざまな状況を考えますとき、私はこれに見直しの年限を付するだけの勇気はございません。むしろ本当に、こうした組織が不必要になった、世間からむだな組織をつくっているという御批判を浴びる日が一日も早いことを心から願います。
  142. 池田元久

    ○池田(元)委員 また論議をしたいと思います。どうもありがとうございました。
  143. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、松本善明君。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 今の一連の金融不祥事というのは、本当に重大な事態になってきていると思います。第一勧銀の問題は、大銀行が、反社会性が明らかな総会屋にノンバンクを含めて三百億の巨額融資をするという、明白に公益を害している行為だと思います。野村証券の総会屋への利益供与、VIP口座を設けての投資家の差別扱い、これらを含めて、金融業界の腐敗は徹底的にたださなければならないのではないかというふうに思います。  第一勧銀が大蔵省に虚偽報告をしていた疑いということについては、先ほども罰則強化についての総理の発言をめぐっての質疑がございました。  私は、それはそれとして、別の角度からお聞きしたいのですが、同行の藤田一郎副頭取は、二回の大蔵省検査では、貸出残高を減らしたり延滞債権利息を追い貸しして不良債権額を小さく見せる操作をした可能性がある、ほぼこの事実を認めたということであります。大蔵省は処分について検討中ということでありますが、総理は、総会屋グループへの融資を見落としていたとしたらこれは大蔵省検査の問題になるという発言をされたということを報道で拝見をいたしました。これは事実かどうかわかりません、今首を振っておられるから。しかし、報道がされていることは事実であります。  これは総理に対する質問といいますよりは大蔵大臣に対して質問をしたいのでありますが、大蔵省が虚偽報告を見抜けなかったということについて、どのような責任大蔵省は感じているのか、また、それについて調査、処分は考えているのか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  145. 中川隆進

    ○中川(隆)政府委員 お答えを申し上げます。  事実関係でございますが、第一勧銀に対します検査は、直近では六年の十月、その前は平成二年九月に実施しているところでございます。  個別の金融機関に対します検査の内容につきましては、詳細はお答えを差し控えさせていただきますけれども、また現在、捜査当局による捜査が行われている段階でございますので、詳細は差し控えさせていただきますが、今委員御指摘のとおり、一連の取引に関しまして第一勧銀みずからが、当局の過去の二回の検査に際して、本件債務者に関連して、検査官に対して抽出、分類を回避した疑念がある、すなわち、検査官に対して虚偽の報告をした疑念があるというふうに説明をしているところであります。  また、現在調査中であるという説明でございますし、我々といたしましても、現在、事実関係について調査を継続しているところでございます。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 責任の問題は、見抜けなかったということについては、大蔵大臣、何かお考えですか。
  147. 三塚博

    ○三塚国務大臣 銀行検査については、精緻な根気強い検査を今日までやってまいりました。その網をくぐったとすれば、表現のしようがございません。  そういう意味で、責任はということを毎回言われておりますが、これは実態を明らかにすること、そして、二度とさようなことが起きないようにしてまいりますこと、このことに尽きるかと思います。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 この問題につきましては、経団連が会長名で、経済界全体の信頼を揺るがすことにもなりかねないというコメントを発表しております。  総理や大蔵大臣がこの問題についてどういう姿勢で臨まれるかということは、社会全体に大きな影響を与える問題であります。総理がどのような決意でこれに臨まれるのかということを、一般的に聞くのではなくて、個々の問題に対する総理の対応の仕方でお聞きをしたいと思いますので、私の聞いておりますのはそういう趣旨で聞いているということを御理解の上、お答えをいただきたいと思います。  VIP口座の問題は重大な問題として、その提出が本委員会理事会でもたびたび議論をされ、提出させる方向議論をすることで与野党とも一致をしております。  総理はこのVIP口座について、当初新聞記者の質問に、仮定の話は答えられないと言い、僕は自分で株を買って取引、売買したことはないと述べられ、その後、厚生大臣のときに閣僚全員が国債を買えと言われて買った、それが野村らしいというふうに述べられたということが報道をされております。  野村証券に、首相自身名の口座を初め秘書や親戚など関係者名の口座はないのか、これが一つです。  あわせてお聞きしたいのは、一般投資家と取り扱いを差別するVIP口座の存在自体、証券取引の公正を害すると私は思います。新聞のアンケートに対して多くの閣僚は、これは公正でないという見解を述べている。石井道子環境庁長官などははっきりと、存在自体が公正さを欠くというふうに述べております。これが何だったのかということを国民の前に明らかにしなければならないという問題が一つあるし、それから総理は、こういうものが存在していいと考えているのかどうかという問題、三つばかりでありますが、あわせてお答えいただきたいと思います。
  149. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 非常に不愉快な御質問をいただきました。そして、マスコミの報道でお聞きをいただきましたので、あえて私はそれを云々しようとは思いません。  そして、VIPという符号を記されている口座であろうがなかろうが、その口座で違法行為、違反行為が行われているかどうかというのが私は問題だと思います。  そして、当初マスコミの諸君からVIP口座という質問を受けたとき、私はそういうものが何だかわかりませんでしたから、確かにわからないという答えをいたしました。仮に法令違反等不適切な行為があるなら、当然のことながら、証券等監視委員会などにおきまして適切に対応をしてくれると私は思います。そして、そういうものが存在することがよいと私は決して申したこともありません。  それから、二番目にお尋ねがございましたが、私は株の取引、株というものを取り扱ったことがない、それは間違いなしにマスコミに申してまいりました。そして、株という限定であるなら、私は今も取引を持っておりません。  ただ確かに、後で調べてみましたところ、第一次大平内閣の閣僚になりましたとき内閣の方針として、毎月十五万円ずつ、在任期間の九カ月、合わせて百三十五万円の国債を内閣の要請で購入を  いたしておりました。この取引先が野村証券であったことを改めて知りましたが、この国債は、十年後の平成元年に全額償還をされております。  その国債の利息分について、今回問題になったので調べてみましたところ、野村証券の口座に現在まで残っているということを聞きました。ですから、これは私としてこの利息は大変ありがたい臨時収入だと正直思いますし、解約の手続を今とっておるところであります。  それから私の扶養親族につきましては、野村証券との取引はございません。  それから、秘書あるいは政治団体、親戚というお尋ねでありますが、私は、自分の親戚であれ自分の秘書であれ、私生活までその中身を熟知しているわけではございません。  政治団体については、調べた結果として、何もないということであります。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、不愉快な質問と言われましたが、総理の立場上、私は、今の事態ではやはりこういうことを明らかにしておかなければならぬと思いますので、お聞きをしたわけでございます。  もう一つお聞きしたいのは、金融不祥事を断ち切るためには、護送船団行政をやめて政官財の癒着を断ち切ることが必要だと思います。  総理は住専のときに、金融業界からの献金を自粛するということで、そのときに総理が述べられたことが報道されていますが、政党は金はかかるが、主要母体行からお金をもらっていたら手かげんしているように国民に思われる、これでは仕事はうまくいかない、こういうふうに述べられたことが報道をされております。今の事態も同じではないかと私は思います。  我が党の木島議員が本委員会でも質問したのでありますが、自民党など政党への企業・団体献金額の上位二十企業・団体のうち、銀行、証券が九五年で十四、九四年で十五と圧倒的に多いのであります。  総理はさきの総選挙機会に、総理といいますより自民党は、銀行協会に献金を要請したということがこれまた報道をされています。私は、やはりこの金融不祥事を断ち切るために、金融業界からの献金を受けないという態度を表明すべきではないかと思いますが、総理の御答弁を伺いたいと思います。
  151. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず一般論として申し上げますなら、私は、各銀行が行っております政治献金というものは民間企業としての判断に属する事項であり、それについて私がコメントをする必要はないと思いますし、仮に銀行が政治献金を行っていたといたしましても、それが政治資金規正法等の範囲内での正当な政治活動の一環であるなら、特に問題であることではないと考えております。  なお、今議員からわざわざいろいろお述べをいただきましたが、銀行業界からの献金というものは、平成二年度までには二種類のものがございました。それは、一つは我が党の経費に充てるものであり、もう一つは我が党の借入金の返済に充当するものであります。そして、平成八年二月に党として自粛を決定いたしましたのは、我が党の経費に充てるものでありまして、それは現在も要請は行っていないと思います。借入金返済のものは、今まで国民政治協会に入り、そして返済充当分として別に管理し、そのままの金額が自由民主党を経由して借入金の返済に充てられる、これは事実であります。そのとおり御報告をいたします。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 借入金に返済のためといいましても、やはり金融業界からの献金であるという性質には変わりはないのでございます。  次の質問をしたいと思いますが、政府が進めております金融改革は、これは一層の規制緩和を進め、銀行や証券、保険など、すべての業態間の垣根を取り払う、こういうことになっていこうかと思います。  銀行が預金を使って証券業務を行うわけでありますから、預金者のリスクは非常に高くなります。銀行が株式に投資をし運用することの危険性は、株への投資運用で銀行が大損をして、銀行倒産で預金者保護がなされなかったという一九三〇年代のアメリカの実例で歴史的に証明をされております。  アメリカのグラス・スティーガル法は、値下がりして預金者の財産を危うくするような証券は持つな、証券を売買したり引き受けたりすることは、結局、証券を手持ちすることにつながる、こういう趣旨で銀行の証券業務を禁止をいたしました。  銀行は、決済システムを形成し、信用創造を行うという特別の重要な公共性を持っておる仕事であります。この公共性と証券業務というのは両立しないんじゃないか。  総理は、総理の言う金融改革に関して、預金者のリスクの問題とか、それから中小金融機関の倒産などの問題についてどのように考えているか、御答弁をいただきたいというふうに思います。
  153. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 確かに議員が例示で挙げられましたように、私はアメリカを議員が評価されたのを初めて聞きましたけれども、アメリカや日本、確かに一定の証券業務を除いて銀行本体で証券業務を営むことはできない、そういうルールを今日までとってまいりました。そして、アメリカにおいては、御承知のようにグラス・スティーガル法の成立からこういう状態が続いております。  しかし、一方では、例えばドイツのように、あるいはドイツを初めとしたヨーロッパ諸国において多く見られますように、ユニバーサルバンク制度をとっている国々も存在をいたしております。各国の金融制度というのは、それぞれの国の歴史やあるいは経済、社会的な背景、そして何よりも利用者のニーズにどういう形が一番求められているのか、そうしたことから定められてきているものだと私は思います。  そして、今日金融市場というものが、殊に議員が今例にお引きになりましたアメリカで、デリバティブを初め非常に新しい金融商品が開発され、それがどんどん世界の資金を吸収するような状況の中において、私は、我が国においても財産運用の上での手段が拡大をし、それだけ多様な選択肢を預金者の方々、あるいは資産運用をお考えになる方々と言いかえましょうか、そうした方々がお持ちになることができる状態というものが既に我々には求められている状況を今日迎えている、そのように感じております。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理は今ユニバーサルバンキングの例を挙げられましたが、これは銀行が自己資本五〇%という構造で成り立っていて、極めて例外的なものであります。  私は、このビッグバンと言われるものが非常に危険な側面を持っているということを今やはり十分論議をしておかないといけないということを申し上げて、質問を終わります。
  155. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、前田武志君。
  156. 前田武志

    ○前田(武)委員 太陽党の前田武志です。  本会議における本件に関する趣旨説明、それに対する質疑を初め、もう既に数回この問題について議論をさせていただきました。いよいよ最終場面でございます。この間、同僚議員政府、あるいは議員間の質疑を通じていろいろなことについて私自身も考えを深め、その過程で、趣旨説明に対する質疑のときに感じていたことで、余りそのまま解明されずに残っているのもあれば、いろいろ事情等わかってきた面もございます。  そこで、既に最終場面でございますので、私自身の今の受けとめ方、とにかく外為の自由化もやり、ビッグバンのスタートを切ってしまった。来年の四月一日、もうのっぴきならない事態を迎える、時間的にも制約があって、何としても踏み出さなければならない時点に来ているということだけは確かでございます。  その中で、多分初めてこのような独立したアンパイアの組織をつくろうというわけでございます。多様なプレーヤーが出てきて、プレーをしやすいようなグラウンド、そのプレーのルールというものが明確になっている、アンパイアも公正である、そういった状況を早くつくらなければいけないということで、それは世界のプレーヤーが見ているわけでございます。その組織づくり、法案が定まってから、今ここに例えば政府案、この政府案で進めるとして、この組織づくりも、もちろん予算とも絡んでくる話でございましょうし、そしてまたそれに基づいて人事配置もしていかなければならない、まさしく時間との競争になってきたなということを心配する一人であります。  しかし、やはり余りにもこの政府原案、問題が多い、いろいろな面において。そういう意味では、最終的には私自身は、議論の経過を含めて整理をして、附帯決議等のことも考えているわけでございますが、いずれにしろ、まず第一歩を踏み出さなければいけないなという気持ちになっております。  そういう中で、いかに不備なものであろうと──確かに、午前中の参考人質疑におきましても、グローバル、グローバル、こう言われる。グローバルというものは、参考人、専門の先生方から見て何が共通の観点かという中で、市場一つになったというようなことを指摘される方もおられました。もう確かにそのとおりでございます。したがって、結果はすべてこのグローバルな市場で評価をされるわけでございますから、たとえ、私なんかから見ていかにもこれはまだまだ不完全なものだなと思いながらも、踏み出した以上、市場が評価する、その評価に値するようにさらに努力をしていく、そういうインセンティブといいますか、行政側にもそういうものが働くんだろうということを期待するわけでございます。  そういう中で、市場が評価をするということになってくると、情報が公開されなければ評価のしようもないわけでございますから、そこにおいて情報公開というものは、これはもう非常に重要になってくる。これまた同僚議員議論の中でも一番指摘が多かったところでありますし、午前中の参考人意見の中でもその問題の指摘がございました。  これは事業会社の経営情報から始まって、特に経済のインフラである、当該問題にしている金融システム、それを担う大きな当事者である金融機関銀行であったりあるいは証券であったり保険であったり、そういった金融機関の情報開示、さらには、ルールに基づいて市場整備していく行政側においても情報開示というものが重要になってくる、こういうふうに思うわけでございます。  そんな観点から、これも再三総理にもお尋ねしているわけでございますが、ちょっとここは、あるいは当初言っていたところになかったかもわかりませんが、情報開示について、情報公開といいますか、この辺についての総理のお考えをまず最初に御確認をさせていただきます。
  157. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは、私が質問してはいけないんですが、金融監督庁にかかわる情報開示という意味でのお尋ねでございましょうか。
  158. 前田武志

    ○前田(武)委員 市場にかかわる、一般的に。
  159. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、その場合に二つの問題点があろうと思います。  それは、検査監督に当たり、ある場合問題意識を持って調査に当たらなければならない金融監督庁が、違反、違法と思われる取引を目し、その取引の周辺を調査し始めたとき、これは完了するまでは表に出せる情報ではないと思います。またもう一つは、善良な取引者、その善良な一般の方々取引のプライバシーというものは私は守られるべきものだと思います。こうした視点を除きました場合、私は、議員が御指摘になりましたような情報開示の必要性は非常に、これから先一層大きなものになっていくであろう。  ただ、今例として申し上げました二つのケース、これは、特に前者の場合は、その一定の確認作業が終わりますまでの調査中の情報は本来秘匿されなければならないそのように思います。
  160. 前田武志

    ○前田(武)委員 さてそこで、先ほど官房長官から、あつものに懲りたはずだというような趣旨のお話がありましたが、実態はあつものに懲りない面々が、例えば野村証券にしても同じことをやるわけですね。この辺が、今の、金融市場を含めて、非常に日本の信頼が失墜している、まことに情けない状況があるわけでございます。  もちろん、こういったことを通じて国民の信頼も随分と失っております。さらに言えば、一連の銀行であり、証券であり、保険であり、住専であり、まあいろいろありました。そういった信頼を失うようなスキャンダル続きの、それと裏腹に、官僚のまたいろいろなスキャンダルもあったわけでございます。参考人の招致というものが来週されるというふうに聞いておりますが、思いもしないような高級官僚、事務次官クラスがああいうようなことをやる。そして、その前にあったのが政治腐敗でございます。  言ってみれば、日本の統治機構そのものがどうも屋台骨から揺らいでいるではないか、これはもうまさしくここにいる我々政治家一人一人の責任でございまして、本来、時間があればもう少しこの面で総理と具体的な件でお話をしたがったのですが。  例えば青木大使のことについても、青木さんにいろいろ、上げたり下げたりというのがありますが、かつて私は、彼とベトナムで一緒に勤めたことがあるわけです。あのときの危機的な、サイゴン陥落直前の、二千人の邦人の救助をどうするかといったときの、その直前に青木さんは離任されましたが、あのときから日本の政治のこういった極端な状況で出てくる危機管理に対する無責任さというものは変わっていない。多分大使はそういったことは胸のうちに秘めておられるのだろうと思いますが。そういった面においても、やはり私は政治の責任というものが一番大きい、それが今のこういう状況に来ているのではないかな、こう思います。  しかし、これは人間の本来ならばよきもの、我々はやはり政治をやるからには侍としての心意気というか魂を持っているわけで、そういったものがもう一度本当に国民に信頼されるように、一我々自身がみずから身を正さなければいかぬと思います。  しかし一方で、これだけ複雑な世界になってきて、しかも金融というような面においては、これはもっと合理的に対応する必要がある。そのための装置がこの金融監督というものであろうかと思うのですね、制度的に。  総理は先ほどたしか、私の受け取ったところでは、こういう金融監督庁というような組織が余り前に出てくるような、こういうものの必要性が常日ごろ言われるような、そういうようなことにならないような時代が来てほしいといったような趣旨のことを言われたように思います。お気持ちはよくわかるのですが、この面というのは、ますますもっともっといろいろな面で新しい状況が出てくるわけでございますから、装置としてきちっとアンパイアの役目が果たせるようなルールをつくり、アンパイアがおって、このグラウンドで試合をすれば自分たちは思う存分プレーができるぞというような、そういう装置をつくっていくということが一番重要なのだろうと思うのですね。  そういうアンパイア組織になるかどうかということが、この長官の人事、そしてその組織独立性を含めて、一番この議論の中でのポイントになっておったわけでございますから、時間が参りましたので、最後に、総理から、私のこういった観点からの金融監督庁のこれからの、国民に信頼され、しかも世界の市場から信頼されるような監督庁づくりについての御見解、そして御決意をお聞きして、終わります。
  161. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今議員から提起をされました金融監督庁国会でお認めをいただき、通過、成立をし、発足をさせるときの人事という問題になりますと、二つの点が存在すると思います。  一つは、長官の人選をいかにするか。そしてまさに、少なくとも大半の方々が、ああ、いい人が来たなと思っていただける人材が得られなければ、これはなかなか成果を上げることはできません。それだけの人材を我々が何とかして見つけなければならないと思います。  同時に、もう一つの問題は、先ほど来もいろいろな角度からの御議論がございましたけれども、この金融監督庁を発足をいたします時点では、当然ながら、今まで大蔵省の中においてこうした分野で仕事をしてきた諸君の中から移籍をしてもらうことになります。その諸君が腰を据えてこの金融監督庁で仕事をしてくれる気になれるかどうか。いわば腰かけのつもりでこの仕事をやられたのではたまりません。腰を据えて仕事にかかってもらえる状況をつくり出せるかどうか。  この二つが非常に大事なことと考えておりますし、そうした思いでその人選に当たってまいりたい、そのように考えております。
  162. 前田武志

    ○前田(武)委員 終わります。
  163. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて、内閣提出金融監督庁設置法案金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案及び両案に対する池田元久君外一名提出の修正案並びに鈴木淑夫君外四名提出金融委員会設置法案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  164. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、鈴木淑夫君外四名提出金融委員会設置法案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣意見があればお述べいただきたいと存じます。梶山内閣官房長官
  165. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 衆議院議員鈴木淑夫君外四名、新進党提出金融委員会設置法案については、政府としては反対であります。     ─────────────
  166. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより討論に入ります。  内閣提出金融監督庁設置法案金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案及び両案に対する池田元久君外一名提出の修正案並びに鈴木淑夫君外四名提出金融委員会設置法案の各案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  167. 谷津義男

    ○谷津委員 私は、自由民主党を代表して、内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の原案に賛成、民主党から提出された修正案に対し反対、さらに、新進党から提出された金融委員会設置法案に反対の立場から討論を行います。  住専問題を初めとする金融機関の不良債権問題を契機として、国民各層から金融行政に対してなされたさまざまな批判を受けとめ、新たな金融サービスの出現や金融市場のグローバル化などの激動する時代の変化に的確に対応し、国民に信頼される金融行政を確立することは、極めて重要な課題であります。  政府案は、こうした課題に適切に対処するため、民間金融機関等に対する検査監督という執行面の機能を総理府設置の金融監督庁が担い、企画立案という政策面の機能大蔵省が分担するというものであります。  このように、金融監督庁が、大蔵省との間の明確な機能分担のもとで、市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政への転換に資することになると考えるところであります。  また、政府案は、金融機関等の破綻処理において、信用秩序の維持を図るため、検査監督を担う金融監督庁長官と企画立案を分担する大蔵大臣が、明確な役割分担のもとで必要な連携を図ることにより、金融危機管理に万全を期するものになっているものであります。  なお、民主党の修正案は、金融の企画立案についても大蔵省から総理府に移すということ等を内容とするものでありますが、財政金融分離については、我が国の行政機構のあり方の根幹にかかわるものであり、中央省庁再編のあり方の検討の一環として大所高所から議論されるべきものである等の理由から、反対であります。  また、新進党金融委員会設置法案は、金融委員会を国家行政組織法第三条の委員会として総理府に設置すること等を内容とするものでありますが、金融機関検査監督は、経済や国民生活に重大な悪影響を及ぼすことのないよう、預金者保護、信用秩序維持等を図ることを目的とするものであって、議院内閣制のもとで内閣責任を担うべき性格のものである等の理由から、反対であります。  最後に、政府案により新たに設置される金融監督庁が、民間金融機関等に対する検査監督を専門的に行う機関としてその検査監督機能を適切に発揮していくことにより、国民に信頼される金融行政が実現することを期待いたしまして、私の討論を終わります。(拍手
  168. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、増田敏男君。
  169. 増田敏男

    ○増田委員 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました新進党提出金融委員会設置法案日本銀行法案の二法案に賛成し、政府提出金融監督庁設置法案並びに同法案に対する民主党提出の修正案に対し反対の立場から討論を行います。  急速に進展する金融技術の革新や規制緩和等を背景とする金融のグローバル化を踏まえれば、我が国は、証券、保険等を含め、金融サービス業全体を視野に入れた抜本的な金融改革の断行が急務であります。  とりわけ今求められていることは、数々の失敗を繰り返し、限界を露呈しているこれまでの密室の行政指導による裁量性の高い護送船団行政から脱却して、預金者や投資家の保護と自己責任に基づく公正な競争の促進という市場原理貫徹の観点から、事前に明らかにした透明性の高い公正なルールに基づく行政へと転換することであります。さらにまた、中央銀行独立性に対し、国際的な標準に立つことであることも論をまちません。もし今、経済の心臓、血液としての金融が世界に劣後するようなことになれば、それは我が国経済が国際的な大競争から脱落せざるを得ないということを意味します。既にその兆候が種々明らかなことは、改めて申し上げるまでもないことであります。  この点から見て、政府・与党の対応時代の要請から大きく立ちおくれており、その象徴的なあらわれが今回政府提出した金融監督庁設置法案であります。この金融監督庁案は、行政改革の名に全く値しないばかりか、護送船団行政について何の反省も感じられず、むしろ大蔵省の行政権限を拡大する内容となっております。時代逆行のアナクロニズム法案とでも言うしかありません。  以下、政府提出金融監督庁設置案に反対し、我が党案に賛成する理由を申し述べます。  その第一は、政府提出法案が、金融検査監督行政大蔵省から切り離すに当たって中央省庁の中にいたずらに新しい組織をつくり、行政改革の流れに逆行することであります。政府案は、来るべき金融の抜本改革を全く視野に入れておらず、政府・与党の金融システムに対する時代おくれの考え方にのみ沿って行政当局の権限維持を最大限、最優先に配慮した結果、何のために新しい機関を創設するのかわからなくなっております。  これからの金融行政が、公正透明なルールを定めた金融市場法に基づく行政へと転換せざるを得ないことを前提とすれば、行政における監督権限は結果として極小化し、主として企画と検査の両部門に整理されます。このうち検査業務は、我が党提案のように、本来、市場の中で業務を行う日銀にゆだねることが妥当だと考えます。また、あわせて、中央銀行独立性の確保及び強化という点で、金融検査監督行政は国家行政組織法第三条に基づく独立委員会が所掌すべきだと考えます。この点、政府案は、効率化、スリム化という行革の趣旨にも反し、来るべき抜本的な金融改革にも逆行するものと言わざるを得ません。  理由の第二は、政府案は、行政機関の新設を意図しているにもかかわらず、依然として大蔵大臣に行政権限が集中し、適正な権限の移管や機能の分担が図られていないことであります。企画立案部門を大蔵省に残すことには妥当性があると考えます。しかし同時に、検査権限を名実ともに大蔵省から分離するとともに、中央銀行独立性の確保、強化が不可欠なのであります。政府案では、大蔵省から独立して金融監督庁自身の決断でできることはほとんどなく、行政の煩雑性を招くなど、金融行政システムの将来に禍根を残すものとならざるを得ないと考えます。これらはいずれも金融行政における護送船団行政の総括という点で、到底納得するわけにはまいりません。  以上、我が党提出の二法案に賛成し、政府案に反対する主な理由を申し述べました。  最後に、民主党提案の修正案につきましては、その基本的な方向性については一定の理解をいたすものの、その実現可能性の点等、幾つかの点で問題なしとしないことから反対であることを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手
  170. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、枝野幸男君。
  171. 枝野幸男

    ○枝野委員 私は、民主党を代表して、内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案に対する民主党修正案に賛成、修正されない場合の両原案に反対、新進党提出金融委員会設置法案に反対の立場から意見を申し上げます。  金融ビッグバンの時代対応した金融行政への改革を目指す今回の金融行政機構の改革は、橋本行革の第一弾となる重要な意義を持つものです。しかしながら、政府案は、本委員会審議でも重ねて指摘されたように、深刻な利益相反を内包している財政金融について、その分離が中途半端に終わっています。信用秩序の維持のみならず、取引所や業界団体の監督、はしの上げおろしのような金融監督に付随する規則や通達のたぐいまで引き続き大蔵省が関与するというのでは、果たして改革の名に値するのでしょうか。  金融の企画立案と検査監督の間ではなく、まさに財政金融の間にこそミシン目を入れるべきであります。資源の配分を政治的に決定しようという財政の論理から金融行政組織的にも明確に分離することが、金融市場原理を貫徹するための基盤となるのであります。  民主党提案の修正案は、金融の企画立案も含めて金融行政全体を総理府に移管し、検査監督行政とそれに密接に関連する企画立案の事務を金融庁に一本化しています。日本銀行や預金保険機構など信用秩序維持に関する機関金融庁に移管することとしております。同時に、金融長官には三年間の任期中の身分を保障して、高い独立性を持って職権を行使できるものとし、仮に大地震など突発的な要因で金融危機が発生した場合にも、信用秩序維持のために、政府案のように一々大蔵大臣にお伺いを立てずとも、独自の判断で機動的な対応ができるようにしています。  また、住専問題などで指摘されてきた各省ばらばらの金融検査監督の縦割り行政の弊害は、政府案では放置されたままです。金融は、その性質上、個別の金融機関の融資が互いに連鎖しており、融資構造全体を把握してその抱えるリスクを分析しなければ、正確な実態はっかめません。民主党修正案のように、金融検査は一元化して、効率的に融資の全体像が把握できるようにしていくことが必要であると考えます。  住専問題では、大蔵省と農水省の局長が覚書を結び、問題の処理を先送りして傷口を広げたことが縦割り行政の弊害として批判されました。不良債権の適切な処理を金融機関に求めるのは、金融行政の基本であります。しかし、そうした監督行政責任の所在も、現在の縦割り行政のもとでは、とかくあいまいになりがちであります。民主党案のように、少なくとも金融業務に関しては監督権限を一元化して、責任の所在を明確にすることが、行政の責任ある対応を促す基盤になると考えます。民主党案では、監督権限の一元化に合わせて、金融長官が事業官庁の大臣に重要な検査結果を報告し、業務停止命令等の処分に際しては事前協議を義務づけて、政府部内で所要の調整を行えるようにしています。こうした体制を整備すれば、政府案のように、金融監督庁と事業官庁の共管を続ける必要はないものと考えます。  さらに、政府案では、金融監督庁は自前の地方組織を持たず、大蔵省の財務局等に検査監督権限を委任することとしています。政府側の答弁によれば、大蔵省金融監督庁の人事交流も引き続き行われるようです。これでは、金融監督庁が、独立した一つの官庁というよりは、総理府につくられた大蔵省の植民地のようになってしまうおそれさえあります。  民主党の修正案では、金融庁は自前の地方組織を持つことになります。検査監督体制の充実についても、政府案のように例えば地方の金融検査官の定員増の要求を大蔵大臣お願いしなくても、金融長官がみずから要求できます。そうした組織体制を整備した上で、大事についても、出身官庁には戻さないというノーリターンルールを原則とした運営を行うことで、金融行政のプロを育成し、国際的にも信頼される一流の金融監督官庁をつくっていくことができると考えます。  最後になりますが、新進党提出金融委員会設置法案につきましては、政府案と同様に大蔵省金融の企画立案部門を残しており、財政金融分離が明確でない点、金融検査監督の一元化が盛り込まれていない点など、改革案としてはなお不十分であり、遺憾ながら反対させていただきます。  以上申し述べましたとおり、民主党としては、民主党の提出のとおり政府案を修正することで、ビッグバン時代対応した金融行政の抜本的な転換改革が実現するものと考えております。委員各位に民主党の修正案への賛同を強くお訴えして、私の意見の陳述を終わります。  ありがとうございました。(拍手
  172. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、松本善明君。
  173. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案に対して、反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、本案が、一連の金融不祥事の大蔵省に対する国民の批判を逆手にとって、日本金融市場を弱肉強食の荒波に追い込む金融ビッグバンの推進体制をつくることに最大のねらいがあることです。  政府が今進めている金融ビッグバンなるものは、金融、証券、保険といった垣根を取り払い、一つの会社で銀行、証券、保険の各業務をすべてできるようにしようとするものであります。銀行は、決済システムを形成し、信用創造を行うという特権が与えられており、金融機関の中でも特別の公共性を持っております。大銀行が、銀行業務ではもうからないからといって、公共性を投げ捨てることは許されません。  金融ビッグバンがもたらすものは、資産規模で世界でも上位を占める日本銀行がすべての金融業務を手がけ、少数の大銀行金融支配をますます強めることであります。その結果、中小金融機関の整理、淘汰が激烈に進められ、金融労働者へのリストラ攻撃は強まり、雇用は不安定を増します。リスクの高い危険商法がはびこり、消費者の犠牲が多発することも必至であります。本案による検査監督体制の大蔵省からの分離も、第二大蔵省をつくるものという批判からもわかりますが、この弱肉強食の仕組みに合わせようとするものにすぎません。  第二の理由は、本案による検査監視体制が極めて不十分であるということであります。  現行の検査監視体制が不十分であることは、大和銀行事件や最近の第一勧業銀行の不正事件などを見ても明らかであります。今日求められているのは、こうした不十分な検査監視体制を抜本的に改めて、銀行の不正行為や金融不祥事の再発を防止し、また不祥事にはメスを入れられる体制をつくれるかどうかにあります。今回の金融監督庁はこうしたことができるのかという私の質問に、総理からは、できるという答弁はありませんでした。  大蔵省の大銀行奉仕の護送船団行政を可能にしてきたのは、銀行のさまざまな許認可権限検査監視機能大蔵省が独占してきたことにも要因があります。金融機関検査監視機関としては、アメリカのSECのように許認可権限検査監視機能分離し、第三者的なチェックシステムをつくることが必要であります。  第三の理由は、消費者保護について全く触れられていないことであります。  金融監督庁の任務には、預金者、保険契約者、投資者保護の規定が置かれていますが、消費者保護や銀行からの借り手保護の規定はありません。今日、銀行が消費者に過剰融資を押しつけるなどして、消費者と金融機関の紛争がふえております。変額保険では、被害者から自殺者までが出ております。ビッグバンが進展すれば、被害者の増大は必至であります。アメリカより十五年おくれていると言われている我が国の消費者保護を抜本的に改めることは、緊急の課題となっております。  最後に、金融行政に求められている最大の課題は、大銀行奉仕の護送船団行政を根本的に改めて、国民に奉仕する金融行政転換することにあります。  しかし、政党が金融業界から多額な企業献金を受けていたり、官僚金融業界に天下っていては、金融行政の民主的転換はできません。企業・団体献金の禁止、ディスクロージャーの徹底、官僚の天下り禁止は不可欠であります。しかし、本案にはそのかけらさえも見出すことができません。  なお、新進党の対案、民主党の修正案につきましては、いずれも金融ビッグバンを推進する体制整備を図るもので賛成できないことを申し上げて、私の討論を終わります。(拍手
  174. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  175. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより採決に入ります。  まず、鈴木淑夫君外四名提出金融委員会設置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  176. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立少数。よって、鈴木淑夫君外四名提出金融委員会設置法案は否決されました。  次に、内閣提出金融監督庁設置法案及び池田元久君外一名提出の修正案について採決いたします。  まず、池田元久君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  177. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立少数。よって、池田元久君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、内閣提出金融監督庁設置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は可決されました。  次に、内閣提出金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案及び池田元久君外一名提出の修正案について採決いたします。  まず、池田元久君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  179. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立少数。よって、池田元久君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、内閣提出金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は可決されました。     ─────────────
  181. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、ただいま議決いたしました内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案に関し、野呂田芳成君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。畠山健治郎君。
  182. 畠山健治郎

    ○畠山委員 私は、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合、太陽党及び21世紀を代表して、金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案に対する附帯決議一案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一、民間金融機関検査監督に万全を期するため、金融監督庁における組織効率的運用、人材の確保、要員の専門能力の向上を図ること等により、検査監督体制の強化・充実を図ること。  一、金融監督庁長官が委任により財務局等に検査監督を行わせるに当たっては、大蔵省が財務局を介して金融監督行政に対して不当な影響力を行使することがないよう、金融監督庁長官による指揮監督を徹底すること。  一、内閣総理大臣金融監督庁長官を任命するに当たっては、今次の国会審議を踏まえ、適切な人選を行うこと。  一、金融監督庁設立後の大蔵省との人事交流は、金融監督庁独立性並びに金融行政における企画・立案と検査監督との緊張関係を維持する趣旨にのっとり、長官の独立した人事権の下、責任ある幹部職員についてこれを避けること。  一、共同省令の制定・改廃に当たっては、検査監督業務の透明性独立性が確保されるよう、大蔵省の不当な介入を排し、総理府が主導的立場に立って、制定・改廃を行うこと。  一、大蔵省銀行保険会社証券会社等に対し、資料の提出その他の協力を直接求める規定については、その必要が認められる場合は補完的手段であることにかんがみ、厳に限定的な運用に止め、いやしくも二重行政といわれることがないようにすること。  一、金融監督庁の行う検査監督業務については、早急に透明なルールを確立しこれに基づき厳正かつ的確に行うとともに、その事務の処理状況について国会に報告すること。  一、財政金融のあり方については、政策決定及び行政機構の根幹に関わる問題であり、主要国の機構も参考にしながら、中央省庁再編の中で結論を得ること。  一、金融機関検査監督については、金融監督庁への一元化を推進すること。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程を通じて各委員御承知のことと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手
  183. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  野呂田芳成君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  184. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。梶山内閣官房長官
  185. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  186. 綿貫民輔

    綿貫委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  188. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、来る三十日金曜日午前十一時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十三分散会