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梶山国務大臣 ちゅうちょいたしましたけれども、たっての要求でありますから
お答えを申し上げたいと思います。極めて私見にわたると思いますけれども、お許しをいただきます。
今冒頭に
委員が御
指摘になったように、官業が民業を圧迫するというか、あるいは官業は民業の補完的な
役割ということを言われたわけでありますが、一般論としては理解をいたします。しかし、官業も民業も、利用をするのは一般国民であります。国民という視点を忘れてこの問題の解決はありません。私は、
委員と違って農村部でありますし、また、年齢もはるかに高い。勤倹貯蓄の美風のもとに私たちはやってきた人間でありますから、地方にとって郵便局とは何なのかという、
一つは確かに貯金を預かってくれるところというあれもありますが、官業というか、いわば公が地方にある唯一の
機関と思ってください。
昭和三十年に、常陸太田というところが町村合併をいたしまして、一町八カ村が一緒になりました。そのときは八カ村には全部役場もありました。それから警察の派出所もありました、駐在所。ところが、合併をして十年たちますと、各市町村の中のいわゆる分室というか、そういうものは一切、役場が取り払われました。それから、警察はこれだけ人員をふやしておりますが、地方からはほとんどの駐在所を引き揚げて、大都市中心になっていることは、効率化、能率化、あるいは警察の任務である凶悪犯その他が都市部に多いという現実もあろうかと思います。そして今、わずかに残っているのは、一町八カ村のうちで──一町のうちには確かに
民間の
金融機関がありますが、その他の旧村には一行もありません。役場の出先
機関もないわけであります。
そういうところにある公の
機関というのは、貯金業務を離れて
一つの安心感、
行政というのはあまねく公平、平等な、いや、最低限度の
行政水準は維持をしなければならない、これを考えれば、私は、郵便局という名の公がそこにあることは、大変な利便であるし、住民に対するサービス。ですから、むしろ、
郵貯をどうするかという問題以前に、あるいは戸籍業務やその他のことをそういう出先に任せることができるかどうかということを考えるのが、国民の
行政水準を維持しようという立場であれば、当然やらなければならない。恵まれない地域、そういう地域にどういう
行政を与えるかということが一点あろうと思います。
それからもう
一つは、これは大変皮肉な言い方でありますが、毎日、きのうまでは第一勧銀への攻撃を聞きました、
証券業界も聞きました。そこへいくと、前には若干の、二百万、三百万の使い込みが郵便局員にもなかったわけではございませんが、大きな貸し出しができないという
一つの面もありましょうけれども、
郵政の監察というのは大変厳しいもので、そういう
意味での公金の取り扱いは極めて厳正である。ですから、郵便貯金が
民間と比べて何と何と何に優位性を与えられているのかというものは、当然比較
検討をしていかなければなりませんが、官業なるがゆえにというか、
民間というか一般国民が要望するものを奪っていいのかどうなのかという視点も見なければなりません。
銀行はやはり危ないなという話がありますし、私の方の農村の御婦人や皆さん方から聞くと、郵便貯金がいっぱいになったから
銀行も利用しよう、
銀行の金は時々おろすのに使おう、そういう習慣というか、身を守ることがあります。一千万までしかどっちみち貯金はできませんから、ほかの
金融機関、一千万までしかこれからは保証をしませんよと言われると、郵便貯金は、保証は一千万までといいながら、家庭にそれぞれあればやれるわけですから、その点は安心をいたしております。
私は、反面教師として言うならば、
民間の
金融機関の堕落が
郵貯をして強大にさせている。それは国民の選ぶ英知であります。それを無視をして、
郵貯はだめだというのは、これは余りにも国民の権利を奪うものではないのかな、極論でありましょうけれども、そういう気もいたします。
そして、出口論をよく言いますが、入り口と出口、出口は間違いなく
政府が全部やっている
仕事です。
大蔵省の理財
局長、そこにおりますが、そういう方々がやっている。貯金があるからむだな道路をつくっている、この間NHKでやっていましたけれども、これも暴論だなと思うのですね。北海道の苫東の、一日八台しか通りません、これも
財投があるからだと。確かに
財投はわかる、それが
郵貯改革論のいわばテーマになってあったのですが、これも論理の飛躍だという気もいたします。
どこでどういうボタンのかけ違いがあるかわかりません。しかし、
郵貯というものが
民間と競争するのに余りにも有利な条件があれば、それは直さなければならない。いや、
民間よりは若干弱い条件でも戦えなければならないというのは、国家という背景、信用を持っているからであります。
そういうものを比べて、いい
意味で
銀行が競争し合うという、私は官業の中でただ
一つ役人が胸を張れるのは
郵貯ぐらいしかないのじゃないかと思うほどすばらしいものであるのですから、そのすばらしいものを奪ってみると、みんなだめになる。そうすると、お互いにだめで渡れば怖くない、みんなで渡れば怖くないということになっては大変でありますから、
銀行がちゃんとするまでは、官業である
郵貯がしっかりとしていてくれることが国民の安全、特に地方ではそういう思いがいたします。
あえて私見を申し上げました。