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柳沢委員 今
総理から、この
法案提出に至るまでのいわば長い道のりのお話を、大変行き渡った御説明として承りました。私もそのとおりだと思います。
昨今、
金融が大変
グローバル化している、あるいはユニバーサル化しているというような流れの中で、どの国でも実は
金融監督の
あり方というのが動揺しているというか、どこに一番ベストの解答があるかということで、実は模索が重ねられているということでございます。
と同時に、
我が国では最近一番厳しい形で
金融機関の
不良資産問題というものが、住専問題を一番の典型としてこれが噴き出ました。これに対して、
国民の側からは
金融監督行政がこれでいいかという疑問が厳しく投げかけられて、それのいわば答えとして、今日こういう
議論になっておるということであるわけでございます。
実はこの問題につきましては、
党内に、これは
総理よく御存じのとおりでございますが、私もその末席に加えていただいたのですが、
議論をさせていただいた機会がございました。このときは、
二つの主張がある
意味で非常に強く対立したと言ってよろしかろうと思うわけであります。
一つは、今回、
橋本行革で我々はこれから大いに
行政組織の
改革をしていくわけですが、今
総理のお
言葉にもありましたように、
中央官庁の
仕事というのは、これは
議院内閣制の必然的な結果でもあるのですが、立法を補佐するいわば
企画立案の
部門と、
本当の
行政プロパー、つまり
制度なり
法律なりをそのとおり、言われたとおり実施していく
執行の
業務とが
混然一体になっているわけでございます。
これを、やはり
企画立案と
執行業務は分離しないと、これからの
日本の
行政改革、
行政組織改革、
行政組織の
スリム化、
肥大化をとめる、あるいは強大に過ぎる、あるいは
裁量が行き過ぎている、こういうようなことを
ルール化していこう、もっと透明な
ルールに基づいた
行政にしていこうというときには、これは
企画と
立案とを
執行から分離した方がいいじゃないか、これが
一つの切り口になっていることは、
総理に恐れ多くこんなことは言うまでもないことであるわけです。
それで、なぜこの
二つが融合すると
肥大化するというダイナミックスが生まれてくるかといえば、これは非常に簡単で、
仕事をつくり出す人と
仕事をやる人が
一緒の人になってしまったら、しかも、それは
仕事をやりたい人、
性格的にやりたいやりたいの一点張り、つまり
権限を拡張することを是とする
役所の
方々、これはある
意味で善意ではあるわけですけれども、そうなれば、これはいとも簡単に
仕事がふえていってしまう、
行政組織としても
肥大化してしまうということは当然の結果でございます。
実は、そういう
日本の
行政組織の中でも非常に例外的なものもありまして、私がかつて奉職した
大蔵省でも、税については、
主税局という
企画立案をするところと国税庁という
執行をするところとを完全に分離して
仕事をしております。
それでも、実は私自身が経験したことでございますけれども、
執行当局からはしょっちゅう、こういうふうに改善してくれ、こういうふうにした方が
自分たちの
仕事がやりやすいのだ、特に
徴収方面で、課税の面ではなくて
徴収業務についてそういう意向が非常に強く出ます。これに対して、我々
主税局におったときの経験では、そうみだりに彼らに
権限を与えて
肥大化していくことはできないのだということで、ある種の
緊張関係を持って
仕事をさせていただいた、こういうことがございます。
それからもう
一つ、強大化するという面についてどういうことがあるかというと、現在の
行政庁というのは
裁量権がすごい多いわけです。極論すると、
本当はこれはやってはならぬことだと我々
学生時代に教わったのですが、
行政は、
実施法がなければ、
行政作用法というものがなければ
行政権限というのは
執行できないのだというふうになっているはずなんですが、実は
現実にはそうなっていない。
設置法だけで、つまり、こういう問題を所掌しますよということだけで、問題が起こるとそれに対処してしまう。
実施法は何もない。
予算措置だなどという
言葉もあるくらいで、
予算だけで対処してしまう、そういうこともあるわけでございます。
MOF担などというような
言葉が
世間に広まったわけですが、
MOF担などというものがどうして存在したかといえば、これは、透明な
ルール、公開された
ルールで
仕事が行われていない、
執行が大きな
裁量を背景にして行われている、だから実際の
執行官の顔色までうかがわなきゃならぬというようなことで
MOF担というものが発生してきた、こういう面もあったということを私は指摘しておきたいわけでございます。したがって、今度も、そういうことで
企画立案と
執行とを分離すべきである、こういう意見が非常に強く出たわけであります。
ところが一方、これに対しては、実は、ちょっと待ちなさい、住専問題あるいは
不良債権問題の発生というのも現在の
日本の
金融行政の非常に大きな問題である、その個別具体的な問題がどうして発生したかという
プロセス、メカニズムに着目すれば、
企画立案と
執行との間に
癒着があったからというよりも、
執行の中の
監督と
検査の間にむしろ
癒着があったからこういうことになったのではないか、こういう
議論があったのでございます。
つまり、
監督としてそこにどういう
是正命令なりなんなりが出るかということに対して、それをおもんばかる
余り検査の結果までゆがめてしまう、こういうことが
現実にあったというふうにも取りざたされたこともあるわけです。
例えば
兵銀のケースでいいますと、
兵銀の
最後の
中間報告か
中間決算の数字では、
不良債権は六百九億円という
段階がございました。それが
現実に
破綻した後幾らになったかといえば、もう御案内のようにほぼ一兆五千億になった。六百九億円とか多く見積もっても千億台の話が、十倍にも、この場合には二十五倍ですけれども、そんなにまでなる。
これはいろいろ、
現実にランニングコンサーンとしてやっている場合と
現実に
破綻をした場合とは、それは違うでしょう。しかし、それにしても、この
検査の結果と
実態というものには違いが多過ぎはしないか、こういう
議論であります。
太平洋銀行の場合も、二百五十六億円が二千六百五十億円に
破綻後なった、こういうことです。
これは
監督のことをおもんぱかって、もし
本当の
検査結果をストレートに上げてしまったら物すごい厳しい
監督の
命令を出さざるを得ないのじゃないか、もう少しこれを何とかそれ以外の方法で生かせられないかというように、いわば
検査の結果というものがやや
監督をおもんぱかってゆがめられたことはありはしないか、こういうことでございます。そういうようなことで問題が先送りされて、だんだんだんだん問題が大きくなっていってしまったという
プロセスはなかったかということを私どもは大いに
議論をさせていただきました。
しかし、
結論としては、
検査はやはり
監督の手段である、
検査と
監督とは一体であるべきである、そしてまた、先ほど冒頭言った、今度の
橋本行革の
行政組織に加えるメス、それは
企画立案と
執行とを分けるという
原則なんだからこの
原則を適用しょうじゃないか、そういうふうな
結論になったということで、
現実に今日の
法案もそのラインで出されているわけでございます。
しかし、それにしても、この
党内の
議論を、これから
大蔵大臣、また
総務庁長官あるいは
官房長官といった
方々が
運用をされるわけですけれども、ここはやはり我々の
議論をこれからの
運用において生かしていっていただきたいということを私は申させていただきたいというふうに思うのでございます。
それはどういうことかというと、まず第一に、とにかく
執行部門が新しく
仕事をつくり出すというようなことは、断じてこれは避けなければいけない。
仕事をつくるのはあくまでも
企画立案、もっと言ったら
政治です。
政治以外には、
執行が
仕事を新しくつくり出すなどということは、金輪際これはやってはならないことである。
それからもう
一つは、
ルールであります。
執行部門が大きな
裁量を持つときにはろくなことはない。やはりもっと細かに、
執行は
本当に
企画立案部門が決めた
ルールをただ適用するのみ、それを忠実に適用する、そういうことに専念していただきたいと我々は思うのでございます。
そういうことを考えますと、現今、
金融界は
信用リスター信用リスクにつきましては、これは
資産の
分類というものが一番大事なんですが、
資産の
分類も、
大蔵省の
資産の
分類もあれば会計
検査院の
資産の
分類もまた公表されているというようなことでございますけれども、この
不良資産の
分類というようなものについても、やはり
共通のしっかりしたものをもう一回定め直していただく必要があるのじゃないか、こう思います。
それからもう
一つ、これまでの
金融機関と違って、
信用リスクのほかに、大きな
市場商品を扱っている、いわゆる
デリバティブでございますが、そういう
市場リスクという問題もございまして、この
市場リスクの評価を一体どういうふうにしていくかという大きな問題がございます。これについては、
BISでもお手上げ、
BISも
共通の世界の
ルールはつくれません、それぞれのところでお願いしますというのが現在
段階でございますが、こうしたことについてもやはりしっかりした
ルールを
企画立案部門で決めていただいて、それを忠実に
執行するという体制をぜひとっていただきたい。それから、
早期是正措置も同様でございます。
要すれば、我々、お
医者さんにかかる場合、
検査に回されるわけですが、
検査医というのは、正しく
検査をして、
検査の結果を上げるということであって、処方せんを書く診断のお
医者さんがどういうふうに思うだろうかなどということを考えて
検査の結果を適当にしてしまうということは許されないわけでございまして、
検査は
検査だ。したがって、私申し上げたいのは、できれば
監督と
検査を内部的にもある
種緊張関係を持ったような
組織立てにできないだろうかということをいまだに思っておる次第でございます。
それから
最後に、非常に
金融は専門的になっておりますから、特に新しい
デリバティブ、
BIS、
国際決済銀行でも
共通の
ルールを定めることは難しいというようなことで手を上げているような問題に切り込んでいかなければならないというのがこれからの
金融監督行政でございますので、十分に
専門的知識の蓄積に努めていただきたい。
以上でございます。これは
要望でございますので、御
答弁は結構でございます。
それから、二番目の質問は、
金融監督庁による
監督の
業務と
日本銀行による
考査業務との
関係についてお尋ねをいたしたいと思います。この
関係をどのようにお考えでしょうか、
大蔵大臣、お願いします。