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1997-08-26 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年八月二十六日(火曜日)     午後一時開議  出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 津島 雄二君    理事 根本  匠君 理事 岡田 克也君    理事 山本 孝史君 理事 五島 正規君    理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    大石 秀政君       大村 秀章君    奥山 茂彦君       嘉数 知賢君    桜井 郁三君       鈴木 俊一君    住  博司君       能勢 和子君    桧田  仁君       松本  純君    青山 二三君       井上 喜一君    大口 善徳君       坂口  力君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       吉田 幸弘君    米津 等史君       家西  悟君    石毛 鍈子君       枝野 幸男君    瀬古由起子君       中川 智子君    鴨下 一郎君       土屋 品子君    土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  委員外出席者         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十六日  辞任         補欠選任   田村 憲久君     大石 秀政君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     田村 憲久君     ――――――――――――― 六月十八日  一、精神保健福祉士法案内閣提出第九〇号)  二、厚生関係基本施策に関する件  三、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉    及び人口問題に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件〔21世紀医療  保険制度厚生省案)〕      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、小泉厚生大臣から「二十一世紀医療保険制度厚生省案)」について説明を求めます。小泉厚生大臣
  3. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医療保険及び医療提供体制抜本的改革につきましては、前国会における健康保険法等の一部改正法案審議の過程におきましても、早急に全体像を示し改革に着手すべきであるとの強い要請がなされたところであります。厚生省としては、去る八月七日、抜本的改革方向について厚生省案取りまとめ与党医療保険制度改革協議会に提示するとともに公表したところであります。お手元に厚生省案を配付しておりますので、その内容について御報告させていただきます。  我が国は、今日まで、国民すべてが医療保険制度に加入し、だれもが安心して医療を受けることができる、世界でも有数の医療制度確立してまいりました。しかしながら、急速な人口の高齢化医療高度化等により医療費が増大を続ける一方で、経済基調が変化した結果、近年は、医療費伸び経済成長との間の不均衡拡大し、このままでは国民保険制度が崩壊の道をたどることにもなりかねない状況にあります。  二十一世紀の本格的な少子高齢社会においても、すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるような医療制度国民保険制度を、子供や孫たち世代に引き継いでいくためには、制度全体について抜本的な改革を実現させなければなりません。そのためには、広範多岐にわたる問題について、国民的な論議を踏まえながら二十一世紀を見据えた抜本改革案を策定していくことが急務であります。このたび公表した厚生省案は、そのためのたたき台としてお示ししたものであり、広く国民議論に供するものであります。  厚生省といたしましては、こうした議論を参考にしながらさらに具体的な検討を進め、次期通常国会に向けて、抜本改革法案取りまとめに努めてまいりたいと考えております。  それでは厚生省案内容について、概略を御説明いたします。  まず、「診療報酬体系」でありますが、現行出来高払い基本とする診療報酬制度は、導入以来既に四十年近く経過しており、累次の改定の結果として、技術、物及び施設経営のための費用等が混然として評価されるなど、全体として必ずしも均衡のとれた体系になっていないこと、出来高払い方式を中心とした体系による弊害として、過剰診療長期入院等問題点等が指摘されております。  このような問題点を克服し、二十一世紀医療制度にふさわしい診療報酬体系を再構築する必要があります。  基本的考え方としては、第一に、医師等技術医療材料等の物及び施設管理費用を明確に区分した評価体系とすること、第二に、大病院中小病院及び診療所など医療機関機能に応じた評価体系確立、第三に、急性疾患慢性疾患といった疾患特性に着目した評価体系の構築であります。  次に、「薬価基準制度」についてでありますが、我が国医療費に占める薬剤費比率が、たび重なる薬価引き下げにもかかわらずほとんど下がらない原因として、薬剤使用量増加医療機関において処方される医薬品が安価な古い薬から高価な新薬へ移行するいわゆる高薬価シフトが指摘されております。  これらの問題は、現行薬価基準制度のもとで発生するいわゆる薬価差に起因するところが大きいとされていることから、現行医薬品公定価格を定めている薬価基準制度を廃止し、市場の実勢価格基本医療保険から償還する基準額を定める仕組み導入したいと考えております。  その際、医薬品は、治療効果が類似し、治療上代替可能な成分についてグループごと分類し、償還基準額は同一グループ医薬品群について設定いたしますが、画期的新薬希少疾病用医薬品等につきましては、グループ分類配慮することとしております。  また、グループ分類償還基準額設定等審議するため、医学、薬学等専門家から成る専門家委員会を設置し、その手続の透明化を図ることとしております。  次に、「医療提供体制」についてでありますが、今後、質の高い医療確保医療保険制度安定的運営との調和を図っていくためには、自由開業制患者による医療機関の自由な選択といった基本は維持しつつ、医療需要に見合った適正かつ効率的な医療提供体制確立が求められます。  また、質の高い医療確保するために、患者立場を重視し、患者医療従事者との信頼関係を維持しながら、医療に関する情報提供推進を図っていくことが重要であります。  そのためには、医療機関機能分担明確化を図るとともに、長期入院是正過剰病床の削減、医師歯科医師の数の抑制と資質の向上対策を講ずるなど、医療需要に見合った適切な医療提供体制確立していくこととしております。  次に、「医療保険制度体系」についてでありますが、国民保険制度が実現してから三十年以上が経過した今日、産業構造就業構造の著しい変化や高齢化の急速な進行などに伴い、医療保険制度の基盤をなす保険集団あり方についても、公平、公正の視点から見直しが必要となっております。  この制度体系見直しにつきましては二つの案を提示しておりますが、第一案は、高齢者を含む全国民が加入する新たな地域医療保険制度を、都道府県を単位として創設する案であります。第二案は、現行被用者保険国民健康保険の二本立て制度を維持しながら、それぞれの制度内及び制度間で、公平、公正の視点に立って必要な調整を図ろうとする案であります。この場合、高齢者については、その心身の特性等を踏まえ、別建て制度としております。  第‘案及び第二案いずれの案においても、保険給付については、今後の少子高齢社会においては、若い世代保険料等負担が過重になるおそれがあること、病気に対する自己責任コスト意識の点からも応分の負担を求めることが必要と考えられることや、皆保険制度を安定的に運営していく観点から、患者負担現行国民健康保険と同様三割程度定率負担とし、あわせて、負担能力のある人には負担を、負担能力のない人には配慮をとの考え方に立って、これまでの高額療養費制度を改め、患者所得こ応じた一部負担償還制度を設けることとしております。また、外来患者の大病院集中の流れを是正する観点から、大病院外来は五割程度としております。  高齢者につきましては、一割または二割程度定率一部負担とするとともに、一定以上の所得のある者については、一般の加入者と同一の負担とすることとしております。  別建ての「高齢者医療制度」につきましては、世代間の公平の観点に立って、高齢者には実所得に応じた適正な負担をしていただきますが、それだけで高齢者医療費のすべてを賄うことは困難であることから、公費負担及び世代間連帯考え方に立った若年世代負担を求めることとしております。  保険料はすべての高齢者について徴収することとし、その全額を高齢者医療費に充てることとしております。なお、年金収入に対する保険料賦課につきましては、年金受給額基礎として徴収することとしております。  また、公費負担は、現行老人保健制度と同様に給付費の三割程度とし、若年世代負担については、稼得階層である二十歳から六十九歳の加入者数基礎として各保険者に按分することとしております。  最後に、「医療費適正化推進等」でありますが、医療費のむだや非効率を徹底的に排除することは、医療制度抜本的改革を進めていくための大前提であります。このような考え方に立って、健康づくり推進社会的入院是正外来重複受診等是正、超高額医療費適正化医療費請求審査の充実、保険医療機関等に対する指導監査の強化などを中心に、適正化等に積極的に取り組むこととしております。  以上、今回の厚生省案についてその概要を御報告いたしましたが、この案を契機として医療保険及び医療提供体制抜本的改革に関する国民的論議が大いに盛り上がることを期待いたしますとともに、厚生省といたしましては、引き続き抜本的改革に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますので、よろしくお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  4. 町村信孝

    町村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本純君。
  5. 松本純

    松本(純)委員 自由民主党の松本純でございます。  ただいま小泉厚生大臣より、八月七日に公表されました「二十一世紀医療保険制度厚生省案)」について御説明をいただきました。国民保険体制を堅持していくための医療保険抜本改革について、短期間にここまでおまとめになられ、御検討された厚生大臣の御苦労に対し、敬意を表させていただきたいと存じます。  この案が真に国民に資する、また、将来に向けて長きにわたって機能する制度となってほしいという願いを込めまして、何点か御質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、基本的考え方について小泉大臣お尋ねをいたします。  本案に対して医療関係団体等からさまざまな御意見があります。今回の案が財政偏重財政主導となっていることに懸念を示す声も多く伺っております。国民負担増加を求める一方で、被用者保険見直しでは政管健保の国庫補助の全廃を提案したり、その一方、医療給付サービスの縮小や混合診療拡大を想定したと思われる提唱もあるなど、国民立場から見れば高負担・高福祉ならぬ高負担・低給付となるのではないかというような懸念もあるようであります。  厚生省案基本的考え方に言われているように、すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるような医療制度を次の世代に引き継いでいくということが大切であると思います。  八月二十五日の新聞報道によれば、厚生大臣テレビ番組において、医療保険へのこれ以上の税の投入は避けたいとの趣旨の御発言をされたとのことでありますが、やはり公費保険者、そして国民がバランスある負担を担い合い、それぞれの責任を果たしていくことが必要ではないでしょうか。そして、必要な医療公的医療保険制度によって給付するといり基本的姿勢を堅持することが国民保険体制を守っていくためには不可欠と私は考えますが、小泉大臣基本的考え方をまずお尋ねをいたします。
  6. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 基本的に日本の医療保険制度は、国民の努力によりまして、世界医療水準に比べて遜色のないかなりすぐれた制度を構築してきたと私は思います。だれでもいつでもどこでも良質な医療サービスを受けられる国民保険制席である。この良質な医療サービスをだれでも受けられるという国民保険制度を堅持していきたい。  そういう中で今の財政状況等を考えますと、増税はもうしない、赤字国債も発行しない、そういう中で良質な医療サービスをどうやって提供していくかつさらに、国民各自身が医療給付を受ける者とその給付を受ける負担をどうやって均衡していくか、若い世代に対して今後ともこの医療保険制度を引き継いでいくためにどういう改革が必要かという観点からいろいろ総合的な改革案を模索してきたつもりであります。  これからいろいろ御議論いただきますが、我々といたしましては、それぞれの問題につきましてかなり幅のある柔軟な方針を示しております。いろいろな御議論があると思いますけれども、どのような制度を構築するにおきましても、国民の理解を得ていくということが大事でありますので、十分な御議論をいただきまして、将来にわたって、二十一世紀に向かつてこの国民保険制度を維持していく上において、高齢者も若い世代もお互いが給付負担の公平をどうやって図っていきながら良質な医療サービスを受ける体制を構築していくかという点に十分配慮をいただきまして、これからのよりよき案をまとめる上において、皆様方の忌憚のない御意見、御批判をいただきたいと思っております。
  7. 松本純

    松本(純)委員 それでは、診療報酬体系についてお尋ねをいたします。  現行診療報酬支払い制度は、甲表乙表等点数表設定や、同時に一点単価を一律十円に改正した内容で昭和三十三年十月から実施され、既に四十年が経過し、今回の改革の大きな柱の一つ診療報酬体系全般見直しが必要とされているところでありますが、その中の一つとして、医療機関機能体系化を促進するための評価急性疾患慢性疾患等疾患特性に応じた診療報酬評価等が提案されており、特に慢性疾患等については定額制拡大方向が示されております。  余り論議されていないように思うのですが、定額制による医療費節減効果は一体どのようなものになっているのか。現在、定額制については三十一項目について設定されておりますが、これらの定額制の実施による医療費抑制効果はどのような状況にあるのか、お調べいただいております結果があればお教えをいただきたいと思います。
  8. 高木俊明

    高木説明員 現在も一部定額払い仕組みというものを診療報酬の中で導入しております。これにつきましては、これまで大部分、いわゆる老人保健関係が多いわけでありますが、そういった意味で、平成二年になりますけれども入院医療管理承認病院実態調査ということをやっております。この報告内容を見てみますと、投薬あるいは注射、こういったものの薬剤料あるいはまた検査料というものがそれまでの状況に比べますとかなり合理化がなされておるという報告がなされております。  これからかなりの時間がたっておりますし、また、今回厚生省案でもお示ししましたように、診療報酬あり方としまして、できるだけ適正な医療費伸びというものを確保していくというような視点等々に立ちまして、定額払い制等を取り入れることこしておるわけでありますけれども、これらの効果がどういうふうなものになっていくのかという検証が今後必要になってまいります。そういった意味で、本年度におきまして、この定額制効果こ対する調査研究といりものを行うことにいたしておりまして、現在そのためのチームを編成し、そしてその調査研究内容等について検討しているところでございまして、そういった意味では、今年度このフォローアップを含めまして調査研究をしてまいりたい、このように考えております。
  9. 松本純

    松本(純)委員 定額制については、医療機関コスト意識を高め、また不必要な検査投薬抑制等効果があると言われる一方で、医療の質の低下あるいは重症患者敬遠等デメリットを指摘する声も根強いところであります。  厚生省は、定額制に関するこれらの指摘に対してどのように考えていらっしゃるか、またあわせて、定額制による医療の質の低下を防ぐためにはどのような施策が必要とお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  10. 高木俊明

    高木説明員 定額制に伴うデメリットというものがあるのではないかということが言われております。そういった中でよく指摘されますのが、いわゆる粗診粗療になりがちではないかということ、あるいはまた、できるだけ重症患者は扱わない方が有利になるというようなことから、重症患者が敬遠されるんではないかというようなことが挙げられるのでありますけれども、今回診療報酬体系あり方としてお示ししましたのは、定額制一本やりとかそういうことではありませんで、それぞれの医療機関なりあるいはまたそれぞれの疾患特性に応じてこの定額制になじむもの、それからまた出来高払いとの組み合わせ、そういった中で最適な診療報酬体系というものをつくっていこう、こう考えているわけでございます。  これまでの出来高払い一本やりといいますか、これがほとんどであった形よりも、私はやはり全体の医療内容の質の向上が期待できるというふうに考えております。  定額払いなりというものは、とかく医療経済面だけで見ますと、その中でできるだけ利益を上げるというようなことになりがちだというふうに言われますけれども、一方、医療行為ということを考えますと、出来高払い一つ一つ常に積み上げて診療報酬を請求するという形に比べますと、やはり医師の裁量の中でゆとりのある医療というものも確保できるという面がございます。そういった意味では、その適切な組み合わせ確立てきるならば、よりよい質の高い医療というものを提供できると思っております。  ただ、そういった中でも懸念される問題に対する対応ということは、これは当然大事なことでありまして、そういった意味で一番大事なのは、迂遠のようなことかもしれませんけれども医療内容につきまして患者さんに対する情報提供なり情報の公開、こういったものがやはり適切に提供される、こういうシステムづくりというものが基本だというふうに思っておりまして、そういった意味で、医療提供体制あり方の中でも掲げてございますけれども、開かれたそういった医療制度というものをつくっていこうというふうに考えております。  それからまた一方、若干規制的な、基準的なことになりますけれども看護体制の問題あるいは医療機器等に関する施設基準設定とか、そういったある程度基準なりというものを適正に設定することによって粗診粗療と言われるようなデメリット等を回避できるのではないかというふうに考えております。  ただ、最終的にはやはりそれぞれの医師患者との信頼関係、それからまた医師倫理観というものに負うところが多いと思いますけれども、全体としては今よりもいい医療システムというものは確保できるのではないかというふうに考えております。
  11. 松本純

    松本(純)委員 さきの健保法改正審議におきましても、定額制による医療の質への影響について質問させていただいたところでありますが、そのときには厚生省は十分な資料を持っていないとのことでありました。定額制拡大に当たってはこの点の十分な検証が必要であると思いますが、いかがでしょうか。  厚生省は、定額制影響について調査を実施することを計画されたとお聞きしておりますが、どのような調査を実施してしるのか、いつごろ調査結果がまとまるのか、お尋ねをいたします。
  12. 高木俊明

    高木説明員 先ほど申し上げましたように、本年度定額払い検証に関する調査研究ということを予定しております。現在は、検討委員会、この研究委員会の構成をどうするのか、それからまた具体的な調査項目というものをどうしたらいいのかということについて、専門家先生方の御意見を伺いながら詰めておる段階でございます。  今私ども念頭にありますのは、調査項目といたしましては、一つ診療内容に対する影響といった意味で見てみますと、定額払い導入前後の検査比率、それからまた薬剤比率、そういったようなものの比較というようなことがございます。これは平成年度調査でもございますけれども、そういったものがございます。それからまた、定額払いを採用している医療機関とそうではない医療機関との検査回数なりあるいは投薬量なりのそういった比較というようなものがございます。  それからまた、経営状況という面で見てみますと、これはそれぞれ定額払いというものを導入した場合、そうじゃない場合とにおける費用構造というものがどういうふうに変化してきているのかという問題がございます。それからまた、医業経営全体の収支率といいますか、経営状況というものにどういうふうに寄与してきたのかというようなこと等々でございまして、そういった意味では、診療内容そのものに対する影響、それからまた医業経営といった面に与える影響、こういった両面からそれぞれ具体的な調査項目ということを今詰めている段階でございます。  それで、この調査研究がいつまとまるのかということでございますけれども、私どもとしましては、今年度着手をいたしまして、そしてその結果につきましては来年度中には取りまとめを行いたい、こんなようなめどで検討を行っているわけでございます。
  13. 松本純

    松本(純)委員 医療機関医療の質の確保向上を図っていく上で第三者による病院機能評価が極めて重要であり、厚生省案でも取り上げています。平成年度財団法人医療機能評価機構を設立され、活動を開始されたと伺っておりますが、これまでの活動実績等についてお聞かせいただきたい。  また、厚生省案でも御提案されているように、評価の結果が公表されなければ国民医療機関を選択する際の情報とはなり得ないし、医療機関の質の向上を図る上でも公開することが重要であると存じます。先日 初めての認定病院新聞で報道されていましたが、どのような評価結果であったのか、また公表の基準等はどうなっているのか、さらに今後は評価結果は必ず公表されることになるのか、あわせてお伺いをいたします。
  14. 谷修一

    谷説明員 今お話のございました医療機能評価機構につきましては、平成七年に設立をされまして、二年間この評価事業に対する運用調査を行いました。全国百四十三の病院の協力を得まして訪問審査を実施いたしまして、評価手法というものを確立する、またあわせまして、この評価を担当していただく評価調査者養成事業というものを行いまして、この二年間で二百八十七名の調査者養成を行いました。  本年四月から実際の事業を開始いたしまして、現在百四の病院につきまして申し込みがあるわけでございますが、このうち十七病院について審査を既に行いました。その審査を行った十七病院のうち、一定の診療機能を満たしているということで、この評価機構の方が判断をいたしました八つの病院につきまして認定証を発行いたしまして、八月の初めにこの八つの病院についての病院名が公表をされたところでございます。  この公表の基準につきましては、今後詰めていかなければならない課題ではございますが、現時点では、認定証を発行した病院名は公表する。ただ、その内容こつきましては、評価病院等のプライバシーにかかわることについては現時点では公表は行わないというようなことになっております。  この評価結果について、基本的にはやはり開かれた医療を目指す、また医療の質を確保していくという観点から、積極的に公表していくということが必要であるというふうに考えておりますが、一方、評価を受けてあるいは認定を受けた、認定証を発行された病院につきましては、病院みずからがその地域に情報提供していくということが必要なんではないかというふうに考えております。  私どもといたしましては、今後、この事業がさらに拡大をしていく、普及定着をしていくということを通じて、できるだけ広く公表をしていくということで機構の方に話をしていきたいと考えております。
  15. 松本純

    松本(純)委員 医療機関機能体系化についてお尋ねをします。  今回の厚生省案では、患者の大病院への集中の是正が課題の一つとされております。そこで、医療機関機能体系化の一環として、大病院については入院機能を重視、中小病院診療所については外来のプライマリーケア機能を重視した診療報酬体系とするとの考え方が提唱されております。  医療機関機能体系化については、これまでにも、患者の流れを変え、大病院集中是正したいとして、平成四年の医療法の改正により、特定機能病院制度を創設し、特定機能病院の他の医療機関への紹介料加算を新設しました。さらに、病院の紹介患者の初診料加算の新設などが実施されてきておりますが、これらの施策により現実に患者の大病院集中是正にどのような成果が得られているのか、調査結果等ありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 高木俊明

    高木説明員 お尋ねのとおり、平成五年に特定機能病院というような形で診療情報提供料というようなものを新設してきたわけでありますが、これらの影響といいますか、これらに伴う外来の大病院集中というものがどの程度変わってきたかということについては、客観的に評価をしていくというのはこれはなかなか難しい面がございます。  今後、そういった中でも努力していく必要はあると思いますけれども、現時点においては、そういった意味で、客観的な調査データというものはございませんけれども、しかし、この特定機能病院外来というものを紹介患者に特化させる、そういう方向で、例えば紹介患者については点数上も加算を設ける、あるいはまた特定病院との関係での診療情報提供に伴う加算を設ける、提供料を設ける、こういうような仕組み導入した、また、それが現在有効に機能しているということで考えてみますと、この特定機能病院のこういった外来の集中というものに対してはある程度、それなりの効果というものが出ているというふうに私ども評価をいたしております。
  17. 松本純

    松本(純)委員 次に、償還基準額制についてお尋ねします。  抜本改革の最も大きな柱の一つである薬価基準制度について、薬価基準の廃止、償還基準額制が提案されています。今の薬価基準制度は、昭和二十五年九月の点数表改正により薬価基準が制定されてからほぼ五十年にわたって実施されてきただけに、薬価基準制度の廃止については懸念する声も大きいと聞いております。  償還基準額制度については、医療機関が購入価格で請求することを本当に担保できるのかという指摘があり、これは制度の根幹にかかわる問題であると思います。この課題の解決いかんによっては、薬価差問題は解消困難ところか、償還基準が第二の薬価基準化し、現行薬価基準制度より悪い事態ともなりかねず、また、患者負担の急増にもつながりかねないとの指摘もあるところであります。  このため、厚生省案においても、患者に対する医師等説明などを初めとして幾つかの対策を提案されていますが、これらの対策の実現可能性についてどのように考えていらっしゃるのか、お考えを承りたいと存じます。
  18. 高木俊明

    高木説明員 新たな、いわゆる償還基準額制度というような方式を導入するに当たりまして、厚生省案の中でもそれに当たっての配慮すべき事項というものを載せておりますが、さらに細部にわたって詰めていかなきゃならない問題はたくさんあると思います。  しかし、基本的な骨格は、厚生省案にございますように、保険医療機関と卸売業者との間の売買契約の透明性というものをきちっと確保する。そういうような手だてとして、いわゆる薬剤の購入伝票とかそういったものの保管あるいは保存というものの義務づけというようなことがございますし、それからまた、実際の請求の内容、いわゆるレセプトにおける請求の内容と購入伝票等の突合といったようなものもこれから指導監査等の際には行っていくというようなことがございます。  それからまた行政サイドにおいても、それぞれこういった売買が適切に行われているかどうかといった意味での卸売業者に対する納入価格等の調査、そういった権限というものを与えていただくというような対応が要るだろうというふうに思います。  ただ、こういった中でいわゆる不正あるいは不当といった状況が発見された場合に、どう厳正に対応するかという問題もございます。これまでも保険医療機関の不正、不当に対してはそれなりの、指定の取り消し等々の措置はございますけれども、今後ともこういった不正あるいは不当というものに対しては厳正に対応していく、そういったものとの関係というものが非常に、実際に実効上担保できる措置としては必要なのではないかというふうに思っております。  それからまた、何よりもこういった新しい制度導入した際に重要なのは、情報提供ということでございます。そういった意味では、厚生省案の中にもございますように、積極的に医薬品に関する情報、これは医療機関における購入価格なりあるいはまた償還基準額等、実際の医療機関における購入価格に関する情報、こういったものをきちっと公開をしていく。そして、患者さんに負担を求める場合、患者さんへの説明は当然でありますけれども、さらにその明細書の発行というようなこともきちっとやっていただかなければいけないというふうに考えております。  導入に当たっては、ある程度そういったような措置というものを講じていく中で、今後マーケットがさらに近代化されていく中で、こういったような内容が定着をしていく、そして適正な運用が行われていくというふうに私どもは考えておるわけであります。  そういった意味で、今度の制度というのは、これまでの公定価格を定める薬価基準制度ではございませんから、薬価差というものは発生しない制度でございますけれども、そういった全体の環境づくりといいますか、それと同時に、制度的にも適正な売買が確保できるような手だてというものを法的にも講じていかなければならぬ、このように考えております。
  19. 松本純

    松本(純)委員 それでは次に、製薬企業の育成という観点から質問させていただきます。  いわゆるゾロ新など、製薬企業の開発姿勢に対する批判もあるようですが、一方、国際的にも通用する開発研究力を持った製薬企業の育成、医薬品の安定的な供給ということも国民医療の上で重要な課題であると思います。新制度によって、急激な薬価低減による今後の医薬品開発に対する影響懸念する声も強いと聞いておりますが、新制度の採用に当たっては、製薬企業の育成という観点から何らかの施策も必要と考えられます。厚生省のお考えをお尋ねします。
  20. 高木俊明

    高木説明員 製薬産業というのは、これからの時代においてかなり成長産業、有望産業であるというふうに目されているわけであります。そういった意味で、この産業の成長の芽を摘んでしまってはいけないわけでありますが、ただ、我が国も製薬産業のマーケットといったものはかなりグローバル化していっておるわけでありますから、そういった意味で、我が国の製薬産業に着目してその育成を図るというような視点ではなくて、やはり我が国における製薬産業のマーケットというものが健全に機能する、こういうような視点から考えるべきだろうというふうに考えております。  ただ、そういった中で、いわゆる医薬品については、研究開発、国際的に通用するような医薬品というものが生まれてくる、これが最大の課題でございます。こういったような芽を摘んでしまう、こういったような方向を阻害する、こういうようなシステムにならないようにしなければいけないというふうに考えております。  そういった意味では、新しい制度導入するに当たりましては、いわゆる医薬品の研究開発というようなものを阻害しないというようなことから、画期的な新薬、それからまた必要な医薬品というものが市場から消えていかないようにするという意味から、希少疾病用医薬品というようなものに対する配慮というものはやはり必要であろうということでございまして、今申し上げたような観点から、新しい償還基準というものを設ける際には、これらの問題点というものを克服できるような、そういった配慮が必要であり、まだそういうような配慮というものをしていかなきゃならないというように考えております。
  21. 松本純

    松本(純)委員 時間になりましたので、最後に一つだけお伺いをさせてください。医薬分業についてお尋ねをします。  薬価基準を廃止し、市場メカニズムにゆだね、自由な価格形成を促していくという意味では、今回の案は一つ方向を示されていると思います。  ところで、薬剤選択における薬剤差益のインセンティブを排除するために、やはりその基盤として完全な医薬分業体制の整備が今こそ必要とされているのではないでしょうか。医薬分業は、平成年度末には、社会保険で二六%を超え、地域によっては四〇%あるいは五〇%を超え始めております。  厚生省案において医薬分業は、「医療費適正化推進等」の項でわずか一行のみ触れられておりますが、適正な医薬分業の推進のためにも、厚生省考え方がもっと明確にされてよいのではないでしょうか。医療提供体制見直し観点から、厚生省の今後の医薬分業の推進対策についてお尋ねをいたします。
  22. 中西明典

    ○中西説明員 医薬分業の推進についてでございますが、御承知のとおり、医薬分業の進展状況につきましては、分業率五〇%のところからわずか数%の県に至るまで、地域的格差が非常に大きゅうございます。したがって、やはりこれは、地域医療体制を考える上で、地域の実情に応じた体制づくりを行っていくということが必要であろうと考えております。  そうした観点に立ちまして、私どもといたしましては、一つは、関係団体あるいは機関の協力のもとに、二次医療圏ごとに地域医療計画の一環として医薬分業計画を策定していただくよう指導いたしておるところでございまして、本年度からそのための予算措置も講じてきておるところでございます。  それからまた、運用上の工夫等の実例を提供するとか、あるいはマニュアル化できるところ、例えば薬歴管理の方法でありますとか在庫管理の方法でありますとか、そういったマニュアルをお示しできるようなところについては、そういったものについても積極的に提供していくことによって医薬分業計画の実施を支援していきたいというふうに考えております。  それからまた、現在国会で御審議いただいております医療法の一部を改正する法律案の中では、この医薬分業に関する事項が新たに医療計画の中の必要的記載事項として位置づけられるという内容を盛り込んでおりまして、そういったものが成立いたしますれば、さらに踏み込んだ形で医薬令業を推進する体制というものができてくるんじゃないか、引き続き努力いたしたいと考えております。
  23. 松本純

    松本(純)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  24. 町村信孝

    町村委員長 坂口力君。
  25. 坂口力

    ○坂口委員 新進党の坂口でございます。  大臣は、この医療制度改革について九月までに皆さんの前に発表するということを約束されたわけでございますが、予定どおりここに案を示していただきました。改革内容全般が我々と一致するわけではございませんけれども評価する点も多いと私個人は考えております。  そこで、この医療制度の問題をどのように考えてこの案をおつくりになったのかということは、この案を拝見し、また先ほど大臣の御説明をお聞きしてよく理解をさせていただいたところでございますが、医療制度は、個人にとりましては、その周辺の年金でございますとかあるいは福祉、とりわけ介護の問題でございますとか、そうした問題と非常に密接に結びついた問題でございます。  そうした意味で、この医療制度を立案されるに当たりまして、その周辺の年金でありますとかあるいは介護でありますとかということとの関連でどんな議論をされたのかということについて、もしも何かございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 社会保障制度の根幹をなすもの医療であり、年金であり、それぞれの福祉諸制度であると思います。当然これから介護も入ってまいります。  その際に、限られた財源をどのように生かしていくか。医療ばかりに財源を充当することはできません。既に国民の税金は医療費に対して、防衛費以上の、六兆円以上の額を投入しております。  これから年金もふえてきます、介護もふえてきます。限られた財源を均衡ある形で年金にも医療にも介護にも福祉にも投入していかなければならないという観点から、医療においても整合性のとれた、公費の投入、国民保険料負担、いわゆる受益者、患者さんの負担、そして現在の医療関係者の負担、それぞれどの程度公平な負担をしていくか、その中で国民が適切な医療サービスをどうやって受けるかという視点が大事ではないか。  前提は、もう増税はしない、若い世代にツケを回さない、赤字国債を発行しない。その中で適切な医療サービスをどうやって確保していこうかという点に重点を置いて今回の案をまとめた次第であります。
  27. 坂口力

    ○坂口委員 医療制度ももちろん大事でございますが、やはり一番の基本になりますのは年金ではないかというふうに私は思っております。したがいまして、これから先、年金がこのままでいけるのか、あるいはこの年金を改正をし、そしてもう少し年金の額を下げていかなければならないのか、これから先大きな議論になるんだろうというふうに思っております。  したがいまして、この年金を現在の形で存続をしていくということを前提にこの医療制度をそこにプラスするのと、あるいは年金制度をやはりもう少し変えなきゃならないんだということを前提にしてこの医療制度を考えるのとではかなり変わってくるのではないかというふうに思いましたので、今お聞きをしたところでございます。  さて、少し話を拡大し過ぎましたから、それは結構でございます。また機会がございましたらお聞かせをいただくといたしまして、今回のこの改正案の中で一番大きい問題は、やはり何と申しましても医療保険制度だろうというふうに思います。  医療保険制度改正につきましては二つの案がここに示されております。一つは、いわゆる一本化の案でありますし、そして二つ目は、被用者保険とそれからいわゆる国民健康保険とを二本立てにしまして、そしてプラス高齢者保険というものを別途つくるという案の二つでございます。  一番目のこの案こつきましてま、私もかつて一本化案というものをかなり主張した時期がございまして、大変魅力も持っているわけでございますが、これは、言うはやすくしてなかなか実現が難しい案でございました。厚生省の中こも僕はかなり反対の意見が過去にはあったというふうに思っております。大臣がかわりましたので厚生省も変わったら別でございますが、示しておみえになりますけれども、やはり厚生省の中には、第一案はつけ足しであって、本当は第二案でいきたいということではないのかなというふうに想像をいたしております。  この第一案の問題は、ここにも若干指摘がございますが、一つには所得の捕捉の問題がございますし、これを実行するためにはどうしても納税者番号制等の問題を議論しなければならないというようなこともございまして、そうした面からもなかなか難しいということが言われたわけでございますが、それ以外に、今まで歴史的に日本の医療保険がずっと続いてきた今日までのその経過を洗い流してそして一本化するということへの抵抗もまた非常に強かったというふうに思っております。もし厚生省が本当に、いや、できたらこれをやるのだというふうに思っておみえになるとしたら大変大きな変わり方だというふうに思いますが、私は第一案よりも恐らく第二案の方向に行くのではないかというふうに考えておりますが、何かコメントがありましたらお聞きをいたします。
  28. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 言うはやすく行うはかたしと言われましたけれども、この保険制度の第一案だけではないと思います。今まで、薬価にしても診療報酬体系にしても、それぞれ言うはやすく行うはかたしだったからなかなか踏み込んだ改革案はできなかった。それではいけないという御指摘にこたえて、今回いずれも、今までだったらば言うはやすく行うはかたしばかりだと私は思っております。  そういう中で考えた案でありまして、確かに、この保険集団改革案において、第一案に比べれば第二案の方が、どちらかといえば改革度は少ないかもしれません、現状を改善したということが言えるかもしれませんが、私は、第一案は全く想定していないということで出したわけじゃありません。第一案、第二案、それぞれ長所も短所もあると思いますけれども、私は、でき得れば、根本的な、総合的な、構造的な改革を、踏み込んでいただけるような、まとめていただけるような方向に持っていっていただければなと思っておりますので、私個人としては第一案の方により魅力を感じております。  本来、保険とはそうあるべきではないか、高齢者も若い世代も、全国民がお互い支え合ってやるべきものではないかというと、第二案より第一案の方がすっきりして、わかりやすくて、お互い支え合う、私は、第一案により魅力を感じておりますということを率直に申し上げたいと思います。
  29. 坂口力

    ○坂口委員 大臣の言葉に逆らうようでございますが、なかなかそうはおっしゃいましても難しいのだろうというふうに思っておりまして、恐らくまあ第二案の方に行くのだろうというふうに思います。  それで、保険制度改正の中で、これはいろいろな点から改正をしなければならないわけでありますが、その中の一つは、やはり超高齢化社会が訪れて、そして若年者と高齢者との間の負担の問題が大きくなっていることは今さら申し上げるまでもありません。若い人たちの保険の中から現在でも二六%の保険料高齢者医療に回している。これが将来、もっともうとここが膨らんでいくということであります。医療保険は短期保険でありますし、保険という限りにおきましては、その前提としまして、やはりひとしく恩恵を受けるということが前提でありますから、そういうことからいきますと、余り多くの額を高齢者の方に回さなければならないということになりますと、保険本来の趣旨からかなり離れてくる、そうしたこともあっていかがなものか、若い人たちの保険ですべてを見るというのはどうかという問題提起があるわけでございます。そこをどのように改革をしていくかということが今回のこの医療保険改正一つの大きな論点ではないかというふうに思っております。  大臣が御指摘になりますように、第一案の方でいくということになりましたらこれはまた話は別になりますが、しかし第二案の方でいくということになりますと、そこをどうするかということが一番大事な問題になってくるというふうに思います。  現在も老人保健制度があるわけですが、この現在あります老人保健制度と今度新しくつくります、名前がどんな名前になるかわかりませんけれども高齢者保険ということにしておきましょうか、高齢者保険というものができたといたしまして、その内容がどう変わるのかということだろうと思います。  それは、この厚生省案によりますと、一つは自己負担、それから一つ高齢者による保険、こうしたものを新設すると申しますか、当然のことながら高齢者保険という限りは保険料高齢者からも出してもらう、そしてやはり自己負担もありますよという案になっております。  この九月から改正になりますけれども改正後の満年度ベースで見ました現在の老人保健の中身というのがこう示されておりまして、その平成年度改正後の満年度ベースで見ました内容を見ますと、老人保健として九・五兆円、そしてその中で拠出金、被用者保険国民健康保険の両方からの拠出金が合計いたしまして五・八兆円ということになっている。この五・八兆円の中には一・五兆円の公費も含まれておりますが、こういう内容になっております。  これは、厚生省の案によりますと、現在の老人保健と違いますのは、いわゆる保険料というものがここに、高齢者自身による保険料というものが入ってくるわけでございますが、これとてそんなに多くの額にすることはできないと思うのですね。  介護保険がさきの国会審議されまして、介護保険でございますから若干違いますが、一人当たり二千五百円でございますか、月二千五百円、夫婦で五千円という案が示されました。それで、全体で見ますと介護保険はそれが全体の一七%でございましたから、額にいたしまして六千二百億円でございました。もし仮に、介護保険と同じような保険料が平均いたしまして高齢者保険に導入されるといたしますと六千二百億円が入ってくる。これが九・五兆円。これは平成十年なり十一年なりになってきますと十兆円規模になるのだろうと思いますが、その中の六千二百億円ということになると六・二%の額になるということでございます。  どの程度のことを考えておみえになるのかよくわかりませんけれども、この介護保険と比較をして考えました場合に、この介護保険を超えてそう多くを高齢者の皆さんこお願いをするということは無理なんだろうというふうに私は思います。一人月に介護保険として二千五百円、もしもまたこの医療保険として二千五百円といたしますと、一人に五千円、夫婦で一万円という額になってまいりますから、初めに申しました年金との関連も出てくるわけでございますけれども、これは、これ以上にするということはなかなか難しい額ではないかという気がいたします。  そういたしますと、この保険料と、そして、患者負担と申しますか高齢者の自己負担の分がこの九月からのベースでいきますと〇・八兆円で八・四%でございますが、双方合わせて一五%を超えるということは、これは難しいこと、そんなに多くをお願いするということはできないことではないかというふうに私は思っております。  そういった意味でいきますと、この厚生省が示されました案は、今まで国の方が公費として、国費として、国庫負担として出しておみえになりました分が自己負担になるということであって、若年層の皆さん方がこの保険から回しますところの拠出金はさほど変わらないということになると私は思うのです。  確かに、高齢者は今まで以上に負担をすることになりますから、高齢者負担と若年者の負担との割合はそれは詰まるかもしれませんが、若年層が負担をしなければならない額ま減らないというふうに私は思いますが、その辺、意見がありましたら、局長からで結構でございますけれども、お答えいただきたいと思います。
  30. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 お答えを申し上げます。  今先生御指摘のございましたように、第二案ということで、いわば被用者保険国民健康保険を残した上で老人保健別建て制度にするという案をとりました場合でございますけれども基本的には先生おっしゃいましたように、高齢者医療費高齢者保険料ですべて賄うということは無理でございますから、基本的な構造の仕掛けとして、公費なり、あるいは若人からの拠出金あるいは負担金と申しますか、そういった若人のいわば負担において構成をされるという基本構造は新しい制度でも変わってこないという点ではそのとおりであろうと思います。  ただ、ではその負担の中身ということになってまいりますと、制度的にはやはり高齢者の方々につきましては、先ほど先生お挙げになりました拠出金という形あるいは保険料という全体の中に、今でも国保の世帯員として、あるいは世帯主の場合もあるでしょうし、それから被用者保険の被保険者として、高齢者の方々も現在も保険料を実は負担しておられます。先ほどお挙げになりました九年度のベースでいえば、大体トータルで七千億円ぐらいが高齢者御自身が御負担になっておられる保険料だということになってございます。したがいまして、これをえらくふやしてしまうというようなことは当然とれません。  ただ、そうは申しましても、現在の高齢者保険料負担ということを若人の保険料負担と比べました場合に、例えば年金収入年金収入であるがゆえに、保険料の面で若人のほかの収入と比べていわば負担が軽いような形になっているというような点がございます。あるいは、被用者保険の被扶養者という形では保険料負担していないというような点がございますから、そういった点を今回、年金収入にも一応着目した保険料設定する、あるいは被用者保険の被扶養者についても保険料を賦課するというような点へ改善するという考え方を出しておるのでありまして、そういった考え方に立った上で、若人の場合といわば負担のバランスのとれた保険料設定していくという考え方に立って、今回の高齢者保険料設定したいというふうに思っております。  そうしますというと、基本的な枠組みとしては、だれがこれを支え合っていくかという点については、やはり大きく支えるのは若人の負担ということに全体としてはなると思いますけれども、料の面において先はどのような若人との負担のバランスという中で、高齢者の方々にもどの程度相応の負担がしていただけるかというところが一つあると思いますし、それから負担の仕方につきまして、現在のいわゆる老人保健仕組みの中では、高齢者医療費高齢者自身も、それからゼロ歳からの子供も、みんな加入者全部で頭割りで負担をするというやり方をとっておりますけれども高齢者医療制度ということで今度御提案を申し上げております中では、まず高齢者医療費につきましては高齢者御自身の保険料を充てていただく、それだけでは当然埋まり切りませんから、残りを従来の公費負担の水準を維持した公費負担を入れ、さらに若人からの負担金をちょうだいする。  そういう形で、高齢者保険料あるいは高齢者の位置づけというものを、制度の受け手であると同時に支え手でもあるということをはっきりさせると同時に、そのことの裏腹として若人からの拠出というものの位置づけもはっきりさせていくということで、言ってみれば、みんなで支え合うのですけれども、その支え合う姿というものがいわば納得的にといいますか公平に負担できる仕組みに、より合理的な仕組みに変えていくという視点で立っております。  それにしましても、繰り返しになりますけれども、若人からの負担あるいは若人からの支援も含めないと成り立たないという基本構造は同じでございますし、それから、各医療保険制度で支え合ってということになれば、それぞれの医療保険制度における高齢者の加入率の差によります負担のばらつきとしりものを調整する仕組みというものも考えていかなければならないという意味では、現在の仕組みとそこらは考え方を同じくせざるを得ないというふうに思っております。
  31. 坂口力

    ○坂口委員 そこが問題だというふうに指摘をしておきたいと思います。この医療保険という制度の中で余りにも多額の額を高齢者に回さなければならないということになれば、この保険という制度意味するもの、基本の中で大変無理が生じてくる。そこをどうするかという問題は、新しいこの厚生省の案でもこれは直らないということだけを指摘しておきたいと思います。  時間がございませんので、次の問題をもう一つお聞きしたいと思います。  診療報酬評価体系の中で、「一定の基準に基づき、診療料等について、一定の範囲内で医師及び歯科医師がその技術や経験に応じて患者から徴収できるような途を開く。」こう書いてございまして、これは、今までこの問題もいろいろ議論になってきたところでございますが、やり方によっては医療保険制度の崩壊につながる部分でございます。  さりとて私も、今のままでいいかといえば、それは改革はしていかなければならないというふうに思っております。しかし、ここに余りにも多くの自由診療みたいな形になってまいりますと、財政的に負担のできる人はよい医療にかかることができるけれども、しかし負担のできない人はかかれないということになり、この保険制度というものが崩壊するというふうに思いますが、これはどの程度のことを想定してお考えになっているのかということをひとつお聞きをしたい。
  32. 高木俊明

    高木説明員 今回の提案の中で、診療報酬関係ではここは新しい道を開くことになるというふうに考えております。まさにこの問題というのは先生御指摘のとおりでございまして、これは相当慎重にやっていかなければならないということを私どもとしては考えております。  ただしかし、現在の医療保険制度、これは診療報酬もそうでありますが、御案内のとおりいわゆる統制経済のような形でかなり厳しく枠をはめられております。しかし、やはりそういった中で、医師等技術とか経験というものも生かせるような仕組みというものをある程度導入するということもこれからの新しい時代に向けての方向としては適当なのではないかということでありまして、そういった意味では、医療の面でいうならば選択の幅が広がるということにもなりましょうし、また、医療機関の経営というのはそれほど大きなウエートではありませんが、弾力化というふうなものにもつながるということだろうと思います。  しかしながら、やはりこういった道というのは、一歩間違えますとこれまでの医療保険制度の中でひとしく受けられてきた医療、いわゆる医療費負担を含めましくそういったものが崩壊をするといいますか不均衡を招くということにもなりかねないということでございます。そういった意味では、私どもとしては、一定の範囲内とかあるいは一定の基準でとかというふうに書いてございますとおり、かなり限定的に考えていかなければいけないというふうに考えております。  ただ、そういった中で私どもの念頭にありますのは、まさに医師の経験と技術というものを評価し得る一つのものとして例えば初診料のようなもの、あるいは再診料のようなもの、こういったようなものが一つ念頭にございますけれども、そういった中でだれでもかれでもこういったものが取れるということではなくて、やはりそこにはかなり制約的な範囲というものを決めていかなければならないというふうに思っております。  そういう意味で、例えば専門医の先生方というような形こしたらどうだというような御意見もございますけれども、これらの範囲等につきましては今後さらに詰めていかなければなりませんけれども基本は、まさに保険診療というものが形骸化しないよりなそういった配慮といりものをしながら、この問題については慎重に取り組んでいかなければならないというふうな姿勢でおります。
  33. 坂口力

    ○坂口委員 時間がございませんから、ぜひひとつそこのところは慎重に御検討をいただきたいというふうに思います。  この医療評価につきましては、現在までは、医療行為が行われるとそれに対するどれだけという評価であったわけであります。したがって、医療行為を少なくする、すなわち早く疾病を治すとかあるいは合併症を起こさないようにするとかいう非常に積極的な医療をしますと評価はむしろ下がるわけです。下がるというのは失礼ですけれども、多くならないわけで、例えば褥瘡をつくろのとつくらないのとを比較しますと、つくった方が医療点数は高くなるわけであります。あるいわ手足の硬直を起こして後でリハビリをしたら、その方がこれは点数は高くなるわけでありまして、よい医療をしたことに対する評価をどうするのかという、難しいことでございますけれども、その辺のところはやはりこれから加味をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。言つけ加えさせていただきたいと思います。  あと一問だけ、簡単で結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。  それは、介護保険と、もしこの次に新しく高齢者保険というのができたといたしますと、介護但険と高齢者医療というのはかなり並立と申しますか、重なってくる部分もあるわけであります。これは事務的にも非常に煩雑になりますし、もしもそうなりましたら、これはなるかならないかわからぬわけで、大臣の言うように第一案でいくというふうに言われればそれはならぬわけでございますけれども、もしもそうなったとしたらこれは一体どのようにしようというふうに思っておみえになるか。これからの介護保険の議論にも影響をすることでございますので、一言だけお聞きをしておきたいと思います。
  34. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 今回の御提案を申し上げるにつきまして、介護保険との関係をどう考えるかという点は大変大事な点だと思います。したがいまして、今回の提案に当たりましても、高齢者にも相応の負担をいただくという思想において、あるいはその一部負担等の水準等を考えます際のこととして、介護保険との整合性というものは考えながら提案をさせていただいたところでございます。  ただ、それでは今先生御提案のように、将来介護保険と医療保険は事務的にもあれなので一本にしてはということにつきましては、高齢者に着目をしているという意味ではやはり確かに介護保険と共通の側面もございますし、事務的なことでの便宜というような点もございますけれども、しかし一方において、一つには大きく今介護保険制匿というものがないがゆえに医療保険の中で社会的入院というような形で、いわば医療と保険とがごちゃごちゃにされている中で社会的入院というようなものが出てきている。  そういったことをきちっとするという意味で、構造改革の一歩としていわば介護保険を切り出すという形で介護保険の提案をさせていただいておりますので、そういった、いわばいかに効率的に全体のサービスそのものを提供していく体制をつくるかという意味と、それから、しばしばにれたって御議論ございましたように、介護保険につきましては今四十歳からを対象にするということで一つのあれをしました。  そのことについて大変御議論が当委員会でもございまして、若齢者、若鶴障害をどうするかという側面での御議論もございましたので、そういった対象者についての議論というものはどういうふうに、そしてそれ自体は今度検討事項という中に入っておるということで確認させていただいております。そういった対象者の面。  それから給付内容につきましても、やはり介護の面ですとかなり定型的なものになりますけれども医療保険の場合には、医療の場合にはそ性格上かなり非定型と申しますか、端的に言えば痛状によってはかなり高いものが出たりなんかするということがございますので、そういった違いというものもやはり十分考えないといかぬのだろうと思います。  したがいまして、今回の提案に当たりまして、将来的に介護保険と医療保険とは一本化をするというようないわば明確な展望を描いて今回の提案を申し上げたということではなくて、そういう章味ではあくまでも介護保険と医療保険それぞれの整合性をとらなければならないというところでの中で御提案を申し上げさせていただいているにとどまっております。
  35. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  36. 町村信孝

    町村委員長 岡田克也君。
  37. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  きょうはちょっと時間が長いものですから、効率的に質問していきたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。  まず、八月七日に出ましたこの「二十一世紀医療保険制度」についての厚生省案、大変興味深く読まさせていただきました。大体お役所が出す文書というのは非常に平板で、読んでいる途中で嫌になることが多いわけですが、いろいろな具体的提案が盛り込まれておりまして、もちろんその中には、私どもとしては認められない、そういうものも入っておりますけれども、具体的なものがいろいろ盛り込まれておりまして、よくここまでおまとめになった、まず敬意を表したいと思います。  その上で順次質問していきたいと思うわけでありますが、まず基本的なところとして、この厚生省案改革基本的な視点というものを一体どこに置いておられるのか。先ほど大臣がお話しになった中で、一つは、増税はしないんだ、こういうことをおっしゃいました。それからもう一つ負担の公平ということをおっしゃったと思うのですが、このあたりがこの改革のキーワードになるのかなというふうにも思いますが、その点について、この改革視点についてもう一度大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  38. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 先ほども述べましたが、日本の医療制度というのは先進諸外国と比べても基本的に遜色のない水準にある。だれでもいつでも適切な医療を受けることができるというこの国民保険制度を二十一世紀の社会においても維持発展させていきたいというのが基本であります。  その際に、これからの動向を見ますと、高齢者はますますふえていきます。若い世代比較的少なくなっていくという中にあって、医療費の中身を見ますと、どうしても高齢者医療費は、経済成長に比べてそれよりも多くふえてまいります。そうすると、基本的に、医療費をこれから捻出するという場合に 税金と保険料患者負担、この三つの組み合わせをどのように調整していくかだと思います。そういう中で、あるべき医療給付、そして適切な、できるだけ低い負担をお互い分かち合っていこう、よい給付、低い負担というのはだれもが望むことでありますが、それをどのように構築していこうかということだと思います。  そういう中で、今までの委員会の御審議におきましても、もう小手先の見直しでは済まない、薬価にしても診療報酬にしても医療提供体制にしても、あるいは保険制度におきましても、総合的な、構造的な改革をしなければならないということで、この三十数年来の今までの経緯とそれぞれの制度の矛盾を見直して、総合的に議論の場を設け、そして、厚生省としても一つ責任ある案を出せということで今回出したわけであります。  基本的に言いますと、今すべての歳出を聖域なく見直さなければいけないということで、もう増額ということが認められるような状況ではございません。すべての省庁が前年度に比べてマイナス予算を今後当分とっていかなければならないという中におきまして、医療費こおきましても、増税はしない、赤字国債は発行しないという前提の中で、どのような良質な医療確保国民の皆様から支え合っていただけるような制度を構築していくかといりことで考んだ案であります。お金がふんだんにあって増額する中の改革比較的容易であります。今回は、増額できない、そういう中での改革でありますから、私は、それぞれある面におきましては痛みを分かち合わなければならない点が出てくる、歳出削減という総論賛成の中で、いざ各論になりますとこれだけは例外という状況ではないという中での改革を御理解いただきたいと思います。
  39. 岡田克也

    ○岡田委員 今は増額という表現を使われたわけでありますが、いずれにいたしましても、これ以上増税をしないという考え方は、それは一つの御見識かと思いますけれども、それはいわば財政の世界での論理ではないかというふうに私は思います。増税をせずとも結局保険料とか自己負担がどんどんふえていくということであれば、国民から見れば同じことでありまして、増税はしないけれどもほかのところをふやすというのでは話にならぬわけでありまして、トータルとしての医療費伸びをいかに適正なものにしていくか、こういうことが大事なのだろうと思います。  増税をしない、増税をしないということを大前提に言ってしまいますと、他の省庁の話でありますけれども、例えば一般会計はマイナスになっているけれども特会のところでふえていて事業量はふえているとか、そういうことが間々あるわけでありまして、同じようなことになってしまうのではないか。やはりトータルとしての医療費をどうするかということが大事なのではないか、その上で、税と保険料と自己負担をどういうふうにかみ合わせていくかというのが次の議論として出てくる、そういうふうに私は思うわけでございます。  そして、大臣の言われた世代間の公平の問題。これから高齢化時代を本格的に迎えるに当たって、高齢者のための医療費がどんどんふえていく。そういう中で、余りにそれを働く世代、若人に負わせるわけにはいかない、それは基本的にそのとおりだと思います。しかし、今大臣のお話を聞いておりまして、私は、一つ欠けているのではないか、あるいは大臣もそういうことは当然前提としてお考えかもしれませんが、具体的に御指摘がなかったのは、やはり効率化という問題ではないかと思います。  大臣みずからこの委員会の場で何度も、医療というのは統制経済だという表現をお使いになったと思いますし、私もそのとおりだと思います。厚生省が薬の値段あるいは医師の診療行為それぞれについて点数をつける、これほど典型的な徹底した統制経済というのは日本の中では非常に珍しい、私はそういうふうに思います。そして、ソビエト社会主義が崩壊したように、そういう統制経済というのはどこかで破綻が来る。もうそのことがあちこちで出てきているというのが、私は、現状認識としてしっかりと我々の肝に据えるべき問題じゃないか、そういうふうに思うわけでございます。  安田病院の問題もありましたけれども、ああいった病的なものではなくても、いろいろな意味で統制経済が破綻してきている。したがって、これからの医療構造改革というのは、統制経済を強化したり、あるいは統制経済で問題があるからそこをまた統制でもって補っていくということではなくて、基本的に厚生省初め行政の権限というものを、そのかみぐあいというものを少なくしていく。そういう中で、どこでも言われることでありますけれども、効率化するために競争を促進していく。あるいは、医療という特質、もちろんございます、人の命を預かっておりますから限界はあるとしても、競争原理というものを可能なところは入れていく、そういう中で全体として効率化を図っていくことが大事なのじゃないか。  世代間の分配の話というのは限られたパイの中での話でありまして、そうじゃなくて、質を落とさずにパイそのものの成長を少し抑えていく、それが効率化でありますけれども、それが一番大事なことじゃないかというふうに私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  40. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私、同感であります。  先ほどの答弁の中でもそれに触れたつもりでございますけれども より具体的に申し上げますと、医療費というのは、税金と保険料と自己負担組み合わせなのですが、さらに、薬価にしても診療報酬体系にしても、これは医療関係者、医療提供者の効率化に大きく依存してきているところであります。税金も保険料も自己負担もできるだけ低く抑えたいという限り、効率化を徹底的に追求しないとこれは実現不可能であります。その辺をよく御認識いただきたいと思います。  今回厚生省の示しました案におきましても、そこを私は強く指摘したいのです。薬価においても診療報酬体系にしても、統制経済の中ではありますけれども、できるだけ効率化を徹底したい。市場原理を導入できるところ、競争原理を導入できるところは、できるだけそのような効率化が追求できるような方法がないものか、そこにメスを入れていただかない限り、税金と保険料と自己負担をふやさざるを得ない。その税金と自己負担保険料を低くするのだったらば、その分だけ薬価と診療報酬医療提供体制医療関係者の徹底的な効率化をぜひとも模索していただきたい。私も希望しております。
  41. 岡田克也

    ○岡田委員 基本的に共通の認識に立つというふうに理解をいたしました。  医療費年間二十八兆と一口に言いますけれども、頭割りで考えれば、四人家族で年間百万であります。家計の中で百万の支出というのはそうたくさんございません。食費と、ほかに何がありますか、多分余りないと思うのですね。そのぐらい大きなボリュームの部分について統制経済があって、そしてそこを何とか効率化しようということで議論しているのだ、そういう基本認識に立たないと本当の改革の意欲というものが出てこないのだろうと私は思っております。  そこで、この医療保険制度改革についての全体のスケジュールでございます。  個別に触れられている部分もございますが、全体的に、ここに書かれたものについて何年をめどに完了しようというふうにお考えなのか、厚生省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  42. 高木俊明

    高木説明員 厚生省案の中で、十一年度を目途に実施するというようなことが出ておりますのは、薬価基準制度見直し、それから診療報酬体系につきましては、これはむしろ十一年度からできるものはやっていく、こういうふうな表現になっておりまして、そのほかについては、いつから、いつまでというのは明示しておりません。  私ども考え方として、どうしてその二つをそういうふりこ明示したのかと申しますと、十一年度より前に、要するに来年度からやるにはいろいろな準備、事務的な問題も含めましてそのための準備にどうしても時間が必要であるということで、薬価基準制度につきましては、新しい方式に切りかえるためには、専門家の方々の御協力を得て、そして例えばその基準のつくり方、あるいはグルーピングの仕方それぞれについても前作業というものをやっていかなければいけない。そういうようなものについてやはり一年ぐらいはかかるというふうに私は見ております。  それからまた診療報酬体系、これは四十年ぶりの大改革ということになります。また、この診療報酬体系というのは極めて広範多岐にわたっておるわけでありますから、これを抜本的に見直そうということで考えておりますので、そういった意味では、各学会の先生方とか、あるいはまた専門の職種の先生方等の御協力を得ながらこの診療報酬体系見直しというものをやらなきゃいけない。そうしますと、完成するにはやはり二年ぐらいはかかるというふうに私は見ております。しかし二年待つというわけにはいかないというふうに思っておりまして、そういった意味で、方向というものを踏まえながら、できるものについては十一年度からでもやっていきたい、こういうようなことで書いてあるわけでございます。  しかしながら、全体のスケジュールをどうするのかということでありますが、これは、この四月に与党三党がまとめました医療制度改革基本方針というのがございますけれども、この中では、基本的には二〇〇〇年を目途、平成十二年を目途に実現するように取り組むというのがございます。私どもとしても、基本的にはこれが念頭にございますし、また、六月三日に閣議決定されました財政構造改革推進についてという中でも、できるものは平成年度からでもやっていくというのがございますし、それから、この財政構造改革の集中改革期間というのが十年、十一年、十二年ということでございます。  私どもとしましては、それらを念頭に置きますと、平成十二年度には全面的に実施ができるようにしていきたいと考えておりますが、御案内のとおり、厚生省案に対してもいろいろな反対意見がございまして、どちらかといえば非常に厳しい意見の方が多いわけでございますから、そういった中で国民の理解を得ながら、それからまた、近々与党三党としての抜本改革案というものも取りまとめられると聞いておりますし、そういったようなもの、あるいはまた、それぞれの政党におかれましても抜本的な検討をされているというふうに聞いておりますし、そういった内容等々が出そろう中で、私どもとしてはベストの改革案というものを策定し、そして御提案していかなきゃいけないというふうに考えております。  できれば、そういった意味で、広く大きな方向については賛同が得られるような、そういうものにしたいと思いますが、制度というのは常に一回つくったらそれで完璧ということはございませんから、まず現行制度改革するという意味で、できるだけ幅広い国民的な合意が得られるような方向というものを私ども努力をいたしてまいりますけれども、そういった意味でぜひ御支援を賜りたいというふうに思っております。
  43. 岡田克也

    ○岡田委員 基本的には二〇〇〇年めどというお話だったわけですけれども診療報酬と薬価についてははっきりと期限が書いてありますけれども医療提供体制その他についてはそういうものが触れられておりませんし、二〇〇〇年がゴールであれば、二〇〇〇年に至る道筋をやはりタイムスケジュールとして示していただく必要がある。そういうものがないと結果的にはどんどん先送りになってしまうのではないか、そういうふうに考えますので、そこも含めて今後きちんとした形で出していただきたい、そういうふうに要請をしておきたいと思います。  中身に入る前にもう一問お聞きしたいと思いますが、この医療保険制度改革というのは、政府のおっしゃる六つの改革社会保障制度改革の中の重要な部分である、こういうふうに認識をしておりますが、私ちょっと奇異に感じますのは、この社会保障の問題、実は橋本総理が大変お得意の分野、厚生大臣経験者でありますし、いろいろな意味で非常に見識をお持ちの分野ではないかと思います。それにしては余りこの医療制度改革を初めとする社会保障制度改革で総理の顔が見えない、そういう気がするわけでございます。  この今回の医療保険制度改革厚生省案をおまとめになって、当然大臣は総理にも御説明されていると思いますが、具体的に総理からこの案についてどういうコメントがあったのか、あるいは今後の医療保険制度改革について総理としてどういう指示があったのか、その辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 総理は、社会保障改革を六大改革一つに掲げて、社会保障制度につきましては、医療のみならず各般にわたって一つの見識を持っておられる政治家であります。当然、私もその点を考慮に入れながら、その都度総理から細かな指示なり助言なりがあるかと思っていたのですが、実を言いますと、細かいことは言いませんで、社会保障制度は大事だかち、その中で医療制度改革、しっかりしたよい案をつくってくれということだけでした。  そこで、しっかりしたよい案をつくるために厚生省挙げて全力を尽くしますということでこの案をつくったわけでございますけれども、その点についても、あれが悪い、これがいいということは言いませんで、今後この案をもとにしっかりやってもらいたい、与党の協議会、また国民意見があるだろうから、頑張ってもらいたいということだけでありました。
  45. 岡田克也

    ○岡田委員 小泉大臣に全権を委任した、そういうことだろうと思いますが、私としては、もちろん厚生省のこの案、いろいろここには議論があるところでありますから、私どもも含めて、あるいは与党の方からもいろいろな意見が出てくると思いますが、議論した結果、せっかくのいろいろな提案が大幅に後退してしまうということにはならないように、ぜひそこは、総理は大臣にお任せしたということでありますから、頑張ってさらにいい案にまとまるように御努力をいただきたい、そういうふうに要請をしておきたいと思います。  さて、具体的中身に入りたいと思いますが、まず、診療報酬であります。  診療報酬基本的考え方につきましては、大体今までこの委員会議論してきたことが踏襲されているというふうに思うわけですが、一つのポイントは定額制導入するということにあると思いますが、その定額制の具体的な水準の決め方が非常に問題だと思います。定額制というのはいろいろな意味で効率化のインセンティブを与えるというメリットはもちろんありますが、しかしその水準が現実離れして高過ぎたら、これは医療費がどんどん膨れ上がるだけであります。そういう意味で適正な水準ということがポイントになると思うわけでありますけれども、具体的にその適正な水準というものをどのように厚生省としてはお決めになろうとしているのか。どういう考え方でどこが適正であるということをお決めになるのか、今のお考えをお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  46. 高木俊明

    高木説明員 今回の診療報酬体系見直しの中で、定額制というものを幅広く導入していこうという方向でありますが、この一つのメリットとしては先ほど委員御指摘のとおりでありまして、これからの社会の中で医療費伸びというものをどういうふうに安定化させていくのか、そういった中で一つこういった方式というものも有効であろうというふうに思います。  問題は、御指摘のとおり、まさにこの水準というものをどう設定するかということで、今よりもトータルとしての医療費というものはふえるということもありますし、あるいは逆にその水準というものを抑えるというような作用も働くわけであります。そういった意味ではこれは非常に難しい問題でありまして、私どもとしては、この診療報酬体系見直しに当たっての基本的な方向というものをお示ししたわけでありますけれども、具体的にこれをどの水準に設定していくのかということについては、これは具体的な作業と同時に幅広い議論が要ると思います。  ちなみに、今後の段取りという中で申し上げますと、やはりこういった大きな作業でありますから、各学会あるいは医療関係職種等の専門家の方々に参画いただいて新しい診療報酬体系というものをつくっていく、こういう作業というものを進めていかなければならないというふうに考えております。でき上がったものにつきまして中医協にお諮りして、そしてそこで関係者の最終的な合意を得ていく、こういうふうな段取りを考えているわけであります。  ただ、これがなかなか具体的に申し上げられないので申しわけありませんけれども、私どもとしては、今回のこの定額払い制というものを幅広く導入していくという中には、従来指摘されておりますような過剰な検査とか過剰な診療、あるいは投薬の面においても、新しい方式が行われたとしても過剰な投薬というものがないような、そういう仕組みにしていかなければいけませんし、そういったものがやはり適正化される、抑制されるということが必要であります。  そういった中で、医療のむだなり非効率といったものを改善していかなければいけないというふうに考えているわけでありますから、そういった意味では、まさに医療のむだ、非効率というものを改善できるような、そういう水準に設定をしていくということは基本だろうと考えておりますが、具体的なレベルについては、まさにこれからの専門家を交えた作業の中で国民的な合意を得ていかなければならないだろうというふうに考えております。
  47. 岡田克也

    ○岡田委員 具体的な検討の中身というのは非常に専門的な部分にわたると思いますので、なかなか私どもも一概にこうだということは言えないわけでありますが、少なくとも言えることは、その議論をする人の構成が適正であること、そしてもう一つ議論がきちんと情報公開されていること、オープンになっていること、そのことによってその議論の中身を外側からきちんと担保していくということが私は非常に重要なことではないかと思います。  そういう意味で、今の中医協について見たときに、今のお話でも最終的には中医協の場で決定をされるということでありますが、中医協の審議の公開ということについては厚生省も今まで大変御努力をされてきたところでありますけれども委員の構成について、現在のような構成で本当にいいのか。これは、私は予算委員会で大臣にも御質問させていただいたわけでありますが、当事者同士が話し合って、いわばニギリの場として、支払い側と医療提供側が決めるという、それに近い構成に今なっていると思うのですね。しかし、基本的には、これは税金も入っている話でありますし、決して保険料だけではありません、そういう意味では中立委員、つまり保険者でもない医療提供者でもない人が過半数いて、そしてそこで議論をする、そういう形に持っていくべきじゃないかというふうに私は思うわけであります。これはもちろん法律改正が必要でありますが、この点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  48. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 御指摘のとおり、中医協につきましても、国民の信頼性を高めていく、そういう観点から現在のあり方見直していきたい。委員の人選につきましても、御指摘の点を踏まえまして、より透明性、信頼性を高めるような人選をし、今までのあり方検討して、よりよい構成にしていきたいと考えております。
  49. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御答弁は、構成そのものを変える、これは法律を変えなければいけないわけですけれども、そういう趣旨であるというふうに理解をいたしました。  それから、定額制の中で、先ほど来いろいろな委員から御指摘がありますように、難しい患者は診ないという、そういうお医者さんは余りいないだろうと思いますけれども、しかし、そういうことが考えられる。限られた費用の中で診るということですから、そういうことはあり得る話だと思いますが、そういうことにならないために、患者の人権を守るといいますか、あるいは医療提供側にきちんと診療する義務を負わすというか、もちろん今の法律の中でもそれに近いものはあるわけですが、より明確にそういった法律的な手当てをすべきではないか。これは患者の権利ということになるのかどうかというのは私はかなり議論があると思いますけれども、しかし、そういう診療拒否といいますか、選別が行われないように法的に手当てをするということは私は十分考えられるし、必要なことだと思いますけれども、その点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  50. 高木俊明

    高木説明員 まさに現在の医療状況の中で委員御指摘のような問題、あるいは委員がこのような問題について御指摘される状況というのは、私は余り正常な状態ではないのだろうというふうに思います。  やはり医療行為というものについては、医師のモラルといいますか、これに負うところが大部分であります。そういった意味で、重症の患者さんは金にならないから診ないというようなことが行われていくようなことになれば、まさにこれは我が国医療制度そのものが崩壊の危機に瀕するということになるのだと思います。そういった意味で、私はそういうようなことが医療界の中でそんなに一般的な例として出てくるというふうには思っておりませんし、まだそういうふうなことがあってはいけないというふうに思っております。  現行の中であってもそういう意味では起こり得るわけでありますが、それは療養担当規則、これは要するに保険医あるいは保険医療機関になるに当たっての一種の契約であります、そういった中で、そのようなことがないように、ある意味では訓示的な意味も込めて書かれておりますけれども、これをさらに法的な規制というふうなところまで高めていくことが必要かどうか。これはやはり、できればそういうふうなことがなく国民がよい医療というものを常に受けられるというような仕組みにしていかなければいけないと思います。  仮にそういうようなことが懸念されるということになれば、それはやはり定額払いの額の水準の問題、こういったものとも絡んでくると思いますから、この定額払いの水準というものが、今委員御指摘のような状況にならないような、医療側においても非常に大きな不満にならないような、そういった配慮といいますか、そういうことも念頭に置いて考えていかなければいけないというふうに思います。基本的には、やはりこういった問題については法律でそういうような担保をしていくということが必要なのかどうか、これは慎重に検討しなければいけないと思います。
  51. 岡田克也

    ○岡田委員 今の局長の御答弁でありますが、水準の問題というのは、関係ないわけではありませんけれども、重要な要素ではないと思うのですね。定額払いというのは、それを実施するコストはそれを超える場合もある、しかしそれよりも少ないコストでできる場合もある。ならして帳じりが合っていればいいということだと思うのですね。  ですから、全体の水準の問題ではなくて、それを飛び越えるものがあった場合にそれを選別的に診ないという、そういう非常にけしからぬケースが出てくるんじゃないか。それは、水準が高くても低くてもあり得る話なんですね。ですから、私は、水準が低ければそういう問題が出てくるということじゃなくて、医療機関側の姿勢に問題があればそういうことは出てき得るということを御指摘申し上げたいと思います。  次に、時間もございませんので、薬価の問題に移ります。  まず、薬価基準制度厚生省のお考えは、ドイツの参照価格制度に近い制度を提唱されているというふうに思うわけですが、一部製薬業界には、自由価格制を導入すべきだ、こういう議論がございます。自由価格制を導入するということについては、厚生省はどういうふうにお考えでしょうか。
  52. 高木俊明

    高木説明員 医薬品といえども、これは物の売買でありますから、そういった意味で、資本主義市場の中において自由に取引されるというのが私は基本だろうというふうに思っております。ただ、そういった中で、やはりこれまでの薬価基準制度ということ、いわゆる公定価格を定める形でこれまで行われてきた医薬品の取引、あるいはそういうようなことを前提とした医薬品のマーケット、そういった状況が現実にございます。  一方、まさに今製薬業界が主張しておる自由価格制というのがあるわけでありますけれども、現在のいわゆる医薬品のマーケットの実態、それからまた医薬品の業界の流通の実態、そういうようなこと、あるいは医療機関サイドの医薬品に対する考え方等々を考えていきますと、自由価格制を直ちに導入するような実態にあるのかどうか。やはり私は、そういった意味では、公定価格である薬価基準制度を改めるに当たって一足飛びに自由価格制を導入していくというのはまだ、我が国状況からすると難しいのでまないか。  そうすると、次の手段として、自由価格制というものを将来の方向としてにらむにしましても、その点については新しい方式というものを考えなきゃいけないのじゃないかといりことであります。とりわけ自由価格制にした場合に、これはだれもが懸念していることでありますけれども、本当に医薬品の値段というものが適正になるのか、高どまりというような方向にむしろ働くのではないかというふうに言われておるわけでありまして、私どもとしても、その点やはり医薬品を安く購入できるインセンティブが働くような、そういう仕組みをまず導入していく。それはしかし、いわゆる公定価格制というようなものじゃなくて、そういうものを導入していくというのが次のステップではないか、このように考えております。
  53. 岡田克也

    ○岡田委員 端的に言えば、自由価格制というのは価格メカニズムが働く場合に初めて意味があるわけですけれども、薬の場合に、消費者の方が財布を持っていない。つまり財布は保険者が持っていて、何割かの自己負担はあるにしても自分の財布が痛まない、そういう改定に対して、私は、自由価格制といっても市場メカニズム、価格メカニズムというのは働かない、そういうふうに思いますので、自由価格制を全面的に導入することには非常に問題がある、こういうふうに私も思います。  ただ、定額制導入する部分については、あるいは専らその定額制導入される医療の範囲について使われる薬であれば、あるいはそこは自由価格でもいいのかな、そういう感じはいたしますが、そういうふうにぴしっと分けられるかどうかという技術的な問題も含めて、基本的には問題が多いのじゃないかなというふうに思っております。  さて、厚生省償還基準額の決め方であります。  先ほどの診療報酬定額制のところと同じように具体的な水準をどうするのかというのがポイントでありまして、そこが適正でなければ、こういう形の償還基準額を入れてもかえって安い薬が高どまりになったりということも起こり得るわけであります。  そこで、償還基準額を決める基準というものが当然出てくるわけでありますが、厚生省考え方では、薬品の有用性でありますとかあるいは市場規模というものを実勢価格と並んで考慮要因に挙げておられますけれども、具体的にその薬品の有用性あるいは市場規模というものをどういう形でカウントして基準額に反映されるのでしょうか。
  54. 高木俊明

    高木説明員 まず、償還基準額というものをどう定めるかというところの基本的な考え方でありますけれども、これはやはりそれぞれの薬理作用なりあるいは成分なりというものに着目して、医薬品ごとのグルーピングというような格好をやろうということで考えておるわけであります。その際の基本となる医薬品の価格というのは、これは市場の実勢価格というものを基本として考えていきたい。  そして、その際問題になりますのは、本来ならば、健全なマーケットあるいは競争原理が働くマーケットであれば、そこで形成される市場の実勢価格というものがまさに償還基準額基準になるべきものであるわけでありますけれども、しかし、委員御指摘のとおり医薬品のマーケットというのは必ずしも完全な市場原理の働いているマーケットになっていない。それはまさに、財布を持っているのは保険者であり、それから医療機関というのは最終消費者ではない、ある意味では小売のようなものでありますし、そういうふうなことでありますから、通常の商品とは性格を異にしております。そういった中で、現在の薬価基準のもとでもそうでありますが、薬価基準というのは、これは御案内のとおり保険からいわゆる給付される額でありまして、実際に取引されている額というのはこれは自由価格、医療機関と卸との間では自由市場で取引されているわけでありますけれども、しかし、いろんな意味でのゆがみが生じておるということであります。  そういった中で、我が国の薬価というものがかなり諸外国と比べて高いものが多いというような指摘もあります。外国薬価とのそういった面での比較といいますか、外国薬価というものを参考にし、それからまた市場規模というのは現在の薬価基準の額を決めるときにも参考にしておりますけれども、やまり製薬企業というのまどのぐらいの売り上げというものを考えるのかということで開発しているわけでありますから、そういった中で値決めというのは今も行われております。  そういった意味で、外国薬価とか市場規模、こういった面については、これはある意味では私は過渡的なものじゃないかという気はいたしますけれども、これまでの薬の値段ということを考えた場合には、こういったものも一応加味しながら、高どまりをしない、それからまた諸外国と比べても高い薬にならないような、そういった配慮というものがどうしてもやはり当分償還基準額を決めるにおいては必要ではないか、こういうような観点からこの厚生省案の中にはそういうようなフレーズがあるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、この償還基準額というものを透明性のあるもの、それからまたどうしてそういうふうに決めたのかということについての情報がきちっと公開されなきゃいけない。そういった意味で、いわゆる「専門家委員会」というふうに書いてございますが、こういう専門家の方々から成る委員会専門家といってもこの範囲をどうするかという、価格のようなものを決めるようなことでありますから、どういう範囲を専門家とするかという問題ございますけれども、いずれにしても、この専門家委員会のようなものをきちっとつくって、そこで償還基準額を決めていただく、このようなシステムにしたいというふうに考えております。
  55. 岡田克也

    ○岡田委員 償還基準額決定の手続、それからその議論透明化するというのは、これは当然前提だと思いますが、今のお話を聞いていましても、画期的な新薬が新たに出てきたような場合にはあるいはそういう有用性とか市場規模というものも考える余地があるのかもしれませんが、一度もう出てしまった後は、私は、不十分かもしれませんけれども市場価格というものがあるわけですから、それをベースにして基準額というのを決めるべきだと。そこに厚生省が、有用性だとか市場規模だとかいろいろ言い出すと、またそこが非常に不透明になってしまう。今の局長の御答弁を聞いておりますと、今の薬価基準制度に非常に引っ張られたお考えがまだ残っているのじゃないか、そういうふうに思いました。  具体的に申し上げますと、例えば特許が切れたような場合に、後発品がどんどん出てまいります。そういう場合の基準額というのをどうするのかという問題があると思いますが、私は基本的に、この場でも申し上げましたが、特許が切れれば保護すべきものまないわけでありますから、コピー自由の世界というのが通常の経済の世界においての常識でありますから、特許が切れてしまった薬については後発品の価格を基準額にするのは当然だ、そういうふうに思うわけですが、この点について大臣、いかがでしょうか。
  56. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 これは極めて専門的なことで具体的なものについては局長なりに譲りますが、要は、今の薬価制度においては、高い薬を使いたがる、安い古い薬よりも高くて新しい薬を使いたがる傾向があって、これが薬価を押し上げているのではないか、また医療費の膨張をもたらしておるのではないかということの批判において、こういう制度をなくそうということで現行の薬価制度をなくして、償還基準額、一定の市場取引の実勢にゆだねるような方法をとるわけであります。その趣旨に沿ったような決め方をしないと意味がない。その点は専門家にも十分、何ゆえにこのような制度を設けたのか、現行薬価基準制度を廃止したのかということをよく念頭に置いて今後の基準を決めていただきたいと私は思います。
  57. 岡田克也

    ○岡田委員 後発品の価格よりも基準額を高く設定すれば、後発品の価格は恐らくその基準額に高どまりするというのは、これは経済の常識だろうと思います。そういうこともお考えいただいて具体的な基準額設定していただきたいというふうに思います。  ただ、私も何が何でもどんどん安くすればいい、そういうふうに言っているわけではなくて、先ほど局長の答弁にもありましたが、新しい、いい薬を開発していこうという意欲を阻害するようなことがあってはいかぬ、そういうふうに思いますので、そういった今までにない画期的な新薬については、少しルールを変えてやっていくしかないのじゃないか。そこを混然一体にしてしまうと非常に見えにくくなってくるというふうに思っております。  私は、薬の業界の産業育成とか業界育成、企業育成なんという話は全くアナクロニズムだと思います。そういうことを言っている業界は、日本広しといえども、これだけ激しい競争をそれぞれやっている中で、薬の業界プラス幾つかしかないのじゃないかと思います。しかし、新しい、いい薬をつくろう、そういう意欲は大事にする必要がある。そういう意欲のないところはどんどん淘汰されていくのは当然のことだと思いますが、いい薬は、それは開発する、そういう意欲は促進していく必要がある、そういうふうに思っております。  最後に、薬価のところで医薬分業について御質問したいと思います。  医薬分業については、厚生省案の一番最後のページのところで一行出てくるだけで、私はやや残念に思うわけですけれども一つは、国立病院の医薬分業について、この厚生委員会の場で、私、以前に質問させていただいたわけでありますが、その後、厚生省の方で具体的にどの程度指導されているのでしょうか。私は、やはりこの新しい制度が発足する平成十一年までには、少なくとも厚生省所管の国立病院については完全に医薬分業が成り立っているという状況がつくり出されていなければおかしいのじゃないか、そういうふうに思いますし、その他の大病院や公立病院中心に、やはり厚生省の方できちんと五カ年計画ぐらいつくって医薬分業を推進していくという姿勢が必要だと思いますが、いかがでしょうか。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 小林秀資

    ○小林説明員 医薬分業の国立病院関係について、お答えを申し上げます。  ことしの四月十八日に先生に御質問をいただきましたときに、院外処方せん発行のことについて、国立のモデル病院、モデルでやらせている三十八病院については、昭和六十三年八%であったのが平成年度は三五・八%になりましたというお答えをいたしましたが、八年度の結果も出てまいりまして、八年度は三九・五%という数字になっております。  国立病院というのは、今先生がおっしゃられましたように、医薬分業を進めるということは大変大切ということで前からやっているわけですけれども、さきの国会の先生の御指摘も踏まえ、大臣の御答弁も踏まえまして、七月十一日付でモデルの国立病院に対しまして、平成年度までに完全分業を達成することというふうに指示を出したところでございます。  この完全分業というのは、患者さんによってすべての人に出せるというわけではありませんので、一応七〇%を超す場合を完全分業と申していますけれども、それを三十八病院では平成年度までに達成しなさいという通知を発したところでございますし、モデル病院外についても、医薬面分業を進めるように、院外処方せんを発行するようにと指導しているところでございます。
  59. 中西明典

    ○中西説明員 医薬分業につきましては、先ほど松本委員にお答えしたところでございますが、私どもとしましては、地域医療計画の一環として、医薬分業計画をそれぞれの地域の実情に応じて推進していただくよう、予算的な措置も含めて各都道府県を指導しておるところでございます。その際、やはり地域医療体制の中の一つの問題でございますから、地域医療体制をどのように組み立てていくかという観点に立って、医師会、薬剤師会、それから地域の基幹病院も入っていただく協議の場のようなものを設定して、その上で分業を計画的に進めていくという取り組みが具体的になされていくよう引き続き指導してまいりたい、かように考えております。
  60. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、次の医療提供体制に移りたいと思いますが、時間も余りございませんので、簡単に御答弁をいただきたいと思います。  まず、大病院外来の自己負担を五割にするという話が突然出てまいりまして、その大胆さにやや驚いたわけであります。これは大病院の集中を排除するためという御説明だと思うのですが、もし大病院への外来患者の集中を排除するためだけなら、ほかにもやり方がいろいろあるのじゃないかと思いますが、なぜこういった五割という考え方になったのか、そして、厚生省は、今の御予定ではこれをいつ実行に移そうとしておられるのか、この点についてお聞きをしたいと思います。
  61. 高木俊明

    高木説明員 まず、やはり我が国医療機関機能分担機能に応じた適正な分担のあり方というものをきちっと考えていくというのがまずベースでございます。  そういった中で、大病院外来の集中という流れというものが従来からございまして、そういった医療機関機能に応じた役割というものを考えていく場合に、私どもとしては、大病院については、むしろ入院を中心とした機能というものにしていくことが望ましいのではないかというふうに考え、そしてまた、外来については、地域におけるプライマリーケアというものを充実していくというような方向というものを目指すべきだというふうに考えたわけであります。  そういった中で、大病院外来集中というものをどういうような手段で是正していくのか。それについては幾つか手段は考えられると思います。しかしながら、大病院外来にかかってはいけないということではなくて、そのかわり、それを選択する場合にはやはり経済的な御負担をお願いするというふうな行き方というのも一つの方法であろうということで考えたわけでありまして、そういった意味では、これだけにとどまるわけではないというふうに思っておりますが、こういった行き方というのも一つ考え方ではないかということであります。  また、この問題については、全体の医療提供体制あるいは医療制度あり方そのものとの関連のもとに提案をしているわけでありまして、そういった意味で、平成十二年を目途に実施をしていきたいと考えておりますけれども。それで、いつから始めるのかということについては、合意が得られればできるだけ早くやっていきたいというように考えておりますけれども、この辺についてはさらに幅広い御議論をいただかなければならないな、このように思っております。
  62. 岡田克也

    ○岡田委員 私ま、大病院外来を抑える、そういうお考えもわかります。一般の診療所を飛ばして大病院外来でかかる、それは抑える必要があるかもしれません。しかし、大病院外来に行かざるを得ない、例えば診療所をちゃんと経た上で行く方も五割ですよね。それはやはり、かなり大胆な、そして国民にとっては相当負担の重い悪制度だなというふうに私は思うわけであります。大病院外来抑制していく、そういう効果をねらったものであれば、ほかにもやりようはあるのではないかと私は思いますので、ぜひその点も含めてよくお考えをいただきたいというふうに要請をしておきたいと思います。  それからもう一つ、「医療提供体制」のところで情報提供の問題が厚生省案に出てまいります。厚生省案では、「医療の現場において、医療従事者による適切な説明患者の理解に基づく医療の定着を図るとともに、カルテの情報患者提供する。」こういうふうに書いてありますが、具体的にどういうふうにして実効性を担保していくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。  私は、やはり医療における情報公開というものは法律でもって担保するしかないのではないかというふうに思っております。今、情報公開ということが一つのキーワードとして言われておりまして、地方も国も、情報公開条例や情報公開法をつくろう、行政機関に対して情報公開をちゃんとしろというのが一つの定着した流れだと思いますけれども、行政ですらそれだけの情報公開をするのになぜ医療機関だけが特別なのかというのは非常にわかりにくい話であります。  医療機関は私的行為だと言えるかといえば、そうじゃなくて、それは保険料や税で賄われているわけでありますから、果たしている機能としては行政とかなり近い公的な性格を持っております。そういうものについて、もっときちんと法律で情報公開を義務づけていくというのは当然のことじゃないか。純粋私的行為であれば、今の医療機関がやっているような情報公開をしないようなやり方は通用しません。例えば、買い物に行っていろいろ買い物をして、そしてお店の人から、はい、まとめて一万円ですよと言われて納得する人はいません。必ずレシートというものが必要になってまいります。そんなことをしたらそのお店はつぶれてしまいます。しかし、今医療の現場ではそれに近いことが行われているのではないか、そういうふうに思います。  法律で医療機関情報公開を担保していくという考え方について、基本的に大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  63. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 これからは、医療機関におきましても、より積極的な情報公開が要求されると思います。また、そのような情報公開をすることによって患者との信頼関係を構築していかないと医療機関もやっていけないという時代になっていくと私は思います。領収証等におきましても今積極的に出す医療機関もふえてまいりましたし、あるいはレセプト開示要求も患者の側からも多くなってくると思います。そういう情報公開の姿勢というものをとるように厚生省としてもいろいろ指導していきたい。  しかし、それをどういう形で立法するかというのはまた別の問題ではないでしょうか。立法については、まだそこまでは考えておりませんが、どういう情報公開を要求するか、それにどう医療機関がこたえていくかという検討は今後とも積極的に行っていく必要があるし、厚生省としても情報公開を促していきたいと思っております。
  64. 岡田克也

    ○岡田委員 先般、厚生省患者のレセプト閲覧について行政指導でその取り扱いを変えられたという報道がありましたが、私は、本来こういうものは一遍の行政指導で変えるようなものではないだろうというふうに思います。レセプトの閲覧あるいはカルテの閲覧、それから先ほどの明細書の発行、あるいはさらにはインフォームド・コンセント、そういうものについてきちんと法律として整える、行政の裁量で出せたり出せなかったりするということではなくて、きちんと法律でそういうものは決める、それは当然のことではないか。  国の情報公開の議論も今までいろいろなことがなされてまいりまして、法律なんか要らないんだ、それは国の裁量で出したり出さなかったりできるんだということ、そういう時代が続きましたけれども、やはりそれはだめだ、法律をきちんとつくって、そして、できるものできないもの、はっきり法律上明確にしよう、そういうふうに流れが変わってきているわけでありますので、私は、医療世界も同じようなそういう流れできちんと対応されるのが正しい道ではないか、そういうふうに思っております。ぜひ御検討いただきたいと思います。  それでは、医療保険制度について少し質問したいと思います。  先ほど大臣は、地域医療保険制度、つまり第一案ですね、個人的にはそっちの方が魅力的だというふうにおっしゃいましたが、私は、今の国保と健保の二本立てで、どちらが効率的に運用されているだろうかということを考えるわけですね。もちろん、国保制度にもいろいろな問題がありますから市町村も大変御苦労されていることはわかるわけですけれども、しかし、より効率的にやっていこうという意欲がうかがわれるのは健保じゃないか。限られた範囲でありますが、健康保険組合がそういう努力をいろいろやっておられるということはそのとおりだと私は思うわけであります。  それを、国保と一緒にして地域保険にしてしまう、保険者は市町村か県か、こういうことになりますと、それはより効率の悪い方、運営にやや問題のある方に合わせてしまうことになるのではないかというふうに思うわけですけれども、そこのところについて大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  65. 高木俊明

    高木説明員 効率といった場合に、どういう視点から物を考えるかということで大分違ってくると思います。  こういった医療保険制度というものを考える場合に、どういうような視点から考えるかというのでまた違ってくるのですけれども、現在の健康保険組合、あるいは共済組合等もそうでありますけれども、いわゆる小集団で保険というものを運営するということのメリット、これをどう考えるのか、そういうような角度で効率性ということをとらえますと、やはり健康保険組合、これも四十人ぐらいしかいない健保組合から相当大きなところまでありますから一律には言えませんけれども、ある程度の規模を持った健康保険組合、小集団で運営していることによる健康管理等におけるメリットあるいは財政運営等におけるメリットというものは、これは大きいことは間違いありません。  しかしながら、いわゆる社会保険としての医療保険というものを考えた場合に、健康保険組合というのは現役時代に、しかも我が国の場合には企業内健康保険といいますか、そういうふうなシステムであります。これは、そもそも我が国に健康保険法というものを導入した、これはドイツのビスマルクがつくった疾病保険法をまねて導入したわけでありますけれども、そういった中で小集団方式というものを導入した。しかし、これはドイツのカッセとはまたちょっと違うところがある。そういった中で、現行仕組みというのは私は極めて沿革的なものであるというふうに思っております。  これからの高齢化社会というものを考えた場合に、年をとった後も地域において健康の管理なり健康づくりというものに留意しながら生きていくということを考えますと、やはり健康というものは一生涯を通じての問題でありますから、そういう意味では、むしろ地域というものとの関連でライフサイクルを考えるというのも一つ考え方ではないかというふうに思います。  その中で、私は、それぞれの市町村なりが保険者としての努力とともにそういった面でのヘルス事業といったものを担っていけば、それはそれとして一つの効率的な制度ができるわけでありますから、健康保険組合がやっている仕組みという小集団のよさといりものをどう考えるかという問題はありますが、ライフサイクル、しかもそういった中での健康管理といったものを考えた場合にまた地域医療というもののメリットもあるわけでありまして、そこら辺のところは優劣つけがたいのではないかというふうに思っております。
  66. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、もう優劣はついていると思うのですね。小さなものについては同じレベルで統合していく、スケールメリットを享受できるようにするというのは、これは別の次元の話であります。  基本的に地域保険にするということは、私に言わせれば、行政改革基本的な考え方がわかってないのじゃないかというふうに思うのですね。基本的に民間でできることは民間にやらせるというのが行政改革基本的考え方だとすれば、今まで健保組合という、企業じゃありませんが、しかし準民間団体がやっていたことを市町村が取り込んで肥大化するというのは基本的に行政改革考え方に反するし、そして国やそういった市町村がやることが基本的に非効率的であるという前提に立って今の行革論議というのはあるわけですから、私は、そこのところが最初から違っているのではないか、そういうふうに思っております。むしろ大事なことは、まず健康保険組合についてもっと保険者としての自律性を与えることだ。  具体的こまいろいろなことが考えられると思います。例えば、今、支払基金がやっておりますレセプト審査機能を、別にこんなのは特殊法人がやる必要ないわけですから、これを健保組合連合会に移管する。そして、そこで情報を分析して、個々の健康保険組合に対して医療機関情報患者情報をきちんと提供する。今の基金にはそういう意識がありませんから、なかなか情報提供が進まないのですね。単純に集計してお金を払っていればいいと。そういう効率化の視点がないわけであります。  あるいは、私は、保険医の指定の取り消しについてももっと健康保険組合に権限を与えるべきだというふうに思うわけであります。  今回の安田病院事件、いろいろな考え方はあると思いますけれども、やはり都道府県、この場合大阪府でありますけれども、いろいろなことで安田病院にお世話になっていたということもあって、なかなか初期動作がおくれた、そういう面があるのじゃないでしょうか。  本来であれば、保険医の指定というのは知事だけではなくて個々の保険者ができるようにすべきだというふうに思いますが、一足飛びにそこまでいかなくても、知事に対して、あの病院はおかしいよ、だからよく調べてくれ、そういうことを法律上きちんと申し立てることができる権限、調査の申し立て権限、あるいはもっといけば保険医の指定を取り消してくれということを知事に対して申し立てる権限、そういうものが保険者に法律上あっていいのだと私は思うのです。今の制度はそういうものはもちろんありませんし、それから法律上は保険医の取り消ししかできない。取り消すというのはその医療機関にとってはほとんどつぶれろというようなことですから、どうしてもそこは慎重になってしまうわけですけれども、本来、法律的にその前段階もきちんと決めておくべきだと思うのですね、勧告するとか是正しろとか。そういうものが今欠けている。その延長線で今回の安田病院の事件があったのじゃないかと私は思います。  そういう保険医の指定に関するいろいろな手続をきちんと法律で明示して、そして保険者についてもその手続に参加することができる、そういう一つ体系を考えるべきだと私は思いますけれども、この点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  67. 高木俊明

    高木説明員 保険者の権限ということで、これはとみに医療保険審議会等でも最近議論されてきたところであります。  ただ、今お話がございました点について、法的にそれをきちっと位置づけるかどうかというのはともかくとしましても、現行でもそういった意味での保険者機能というものが阻害されるということはないわけでありまして、そういった意味では、例えば保険医療機関等の中におかしなものがあるあるいは健保組合等に回ってきたレセプトにどうも不正、不当の疑いがあるというような情報、こういったものは今でも現実に健保組合等から行政の方には情報が来ているということは実態としてございます。そういうものに基づいて、行政機関としてそれを指定取り消しをするかどうかというのは一定のデュープロセスのもとにやっておるわけでございまして、やはりそういった意味での全体のルールというものをどういうふうに組み立てるのが一番合理的、効率的かという問題だろうと思います。  ただ、そういった中で、非常に長い医療保険の歴史の中で、先ほど中医協のお話がございましたけれども、そういった人選等々の問題が果たして有機的に機能しているような状況になっているのかどうか。そういった問題について見直さなければならないものは多々あると思いますけれども保険者機能現行の中で何か制約があって、そして必要な医療費の効率化なり適正化というものに対して保険者が積極的に取り組めないというような、そういう実態はないのじゃないかというふうに私どもは考えております。
  68. 岡田克也

    ○岡田委員 医療機関情報も基金からちゃんと入ってこない。基金に言わせると、いや、それはコンピューター化がおくれていてなかなかできないと。そんなもの、本当に情報を必要とする人だったら直ちこコンピューターの入力するフォームを変えますよ。それがなかなか進まないのは、やはりそれだけの問題意識がないからだと私は思うのです。  それから先ほどの話ですが、それでは、安田病院で、私は、だれが見ても行政の動作はおくれたと思うのです、なぜそういうことが起きたのでしょうか。制度的にそういうものはあるのだとおっしゃるけれども、法律的になければ、それは行政指導という非常に目に見えにくい部分で行われるわけで、そういう中で手続の遅延とかいろいろな横やりとか入ってくるわけでしょう。法律にきちんと書いてあればそういうことはできないわけですね。だから、そこの基本のところをもう少ししっかりやっていただきたい。でないと、このとんでもない安田病院事件のようなことがまた起きてしまう。あるいは国民は、ああいうことをほかの医療機関もやっているのじゃないかとすら思っているわけですね。やはりそこについてはきちんと危機感を持って、そして制度を変える、そういう意欲をぜひ大臣にも示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  69. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 できるだけ、効率的な制度はどういうものがいいかという点につきまして、これからの審議の中でもいろいろ御意見を聞かせていただきたいし、少しでもいい点を取り入れていくという形で進めていきたいと思います。  また、安田病院等における問題につきましても、確かに行政のおくれというのはあったと思います。その点の反省も踏まえまして、今後の改善策も講じておりますので、そういう中で、今後、より積極的な医療の信頼性、効率性を高めていく方法をとっていきたいと思います。今のお話の点も、今後検討させていただきたいと思います。
  70. 岡田克也

    ○岡田委員 ありがとうございました。
  71. 町村信孝

    町村委員長 五島正規君。
  72. 五島正規

    ○五島委員 きょうのこの委員会の質疑というのは、通常行われる質疑とは種類が違うと思います。厚生省医療保険制度抜本改革案について試案をお出しになった。これは決して政府原案としてまだまとまったものではないはずでございます。したがいまして、この出された試案そのものについて、ここにこういう欠点があるじゃないか、ああいう欠点があるじゃないか、こうしろというふうなことをここで審議しても、実は余り意味がないことなのだろうと思っています。  ただ、今回厚生省がお出しになられたこの試案の中で、かなり厚生省がこういうことはしたくないんだなということが透けて見える、そこのところが大変問題なのではないかということで、その点を中心に少し御意見をお伺いしたいと思っております。  また、先ほど来多くの議員が質問しておられました。かなり重複するところがございますので、重複を避けて議論したいと思うわけでございます。  まず、基本的な問題として、皆保険制度を前提とした場合の医療保険システムの問題につきまして、先ほど坂口議員の質問に対し大臣は、第一案が改革案としてよりいいと思うのだけれども、もごもごというお話でございました。確かに厚生省の出しておられるのは、地域保険として医療保険を総合化するか、第二案としてあるように、職域、地域、老人、この三つの保険制度でやっていくか、これはだれが考えてもそういうような形になってくるだろう。  じゃ、地域保険としてやっていくときに何が一番問題になってくるか。これもまたこれまでもほかの議員からも御指摘がございまして、ほぼ共通認識なんでしょうが、じゃ、保険料はどのように設定し、どのように徴収していくのか。この点で、所得の捕捉が非常に不公平であり、そのことの問題点、あるいは国保の徴収率の低さ等々が問題になっているときに、もし地域保険にするならばどういう制度があるか。そこのところを十分に議論もしないままに、ぽんと国保のやり方そのままでいきます、これでは一体そこら辺の問題はどうなるんだろうかと疑問が出るのは当然です。  また、都道府県の地域保険にした場合に、これまでも政管健保等を通じて指摘されておりました保険者機能の弱体なことが数々の問題を生んでいる、これは一体どうなるんだろうか。そこのところを十分に議論した上で第一案が出されているのか。どうも第一案、地域保険ということについては、厚生省は無理やりに、現在の国保の仕組みしかないよ、都道府県一本だよということだけを言って、現実性の問題としてはそこを検討することを避けておられるのだろうか、そう思わざるを得ません。  また、第二案として出されております職域の問題。これも厚生省案だけで見れば、政管健保に対する千分の十三の税の投入を避けたい、そこのところでいわゆる職域保険間の調整でこれをもっていきたい。その気持ちは分かるのですが、じゃ、そうなれば職域保険としての一本化ということはあるのじゃないのか、あるいは基本的なところについては一本化し、その上について各保険組合ごとに付加給付という形で独自にやるということもあるのだろう、そういうようなことは検討されたのか。それを検討しないままに、税は入れないよ、だから共済も組合健保も政管健保を救ってやってくれ。これで果たして本当にうまくいくのだろうか、そういう疑問が出てまいります。  老人保健の問題にいたしましても、独立保険、私は別に独立保険で結構ですが、独立保険を七十歳以上、従来どおりのやり方で本当にいいんだろうか。退職者健保はそのまま存続する。どういう根拠でそうなっているんだろうか。職域、地域というのであれば、むしろ退職者健保については、職域保険あるいは国保それぞれが退職者健保の年齢の間は面倒を見るという一定期間の突き抜け方式も当然議論されているはずだ。それはどうなったんだろうか。しかし、それは余りやりたくないから触れなかったんだろうか。七十歳というけれども、七十五歳の後期高齢期に入ってくれば、介護保険が成立すれば非常に医療費は固定的、安定的なものになってくる。それをあえて七十歳というところのまま残したというのは、この高齢化という時代をどう見ておられるんだろうか。幾つかの疑問が出てまいります。  そういうふうな基本的な疑問点が検討された上で一案、二案というものが出されたのかどうか。まず、その点からお伺いしたいと思います。
  73. 高木俊明

    高木説明員 かなり幅広い御指摘でありますから、全部についてどこまでやったのかということはございますけれども、ただいま御指摘ございましたような点については、我々十分検討して、そしてその上で一案、二案を示したわけであります。  この一案、二案というのは、そのほかにいろいろな案があり得ます。しかし、やはり私ども厚生省案としてお示ししたのは、これは幅広い御議論のたたき台というつもりで出しておりますから、そういった意味では、物の考え方をすっきりと出した方がわかりやすいだろうというふうな観点で、第一案の地域医療保険という考え方、これは考え方としては、先ほど来申し上げておりますような、ライフステージを通じた二元的な制度、しかもこれから二〇二〇年ごろの超高齢社会というものを眺めた場合に、別建て高齢者保険というものが本当に機能するのか、また必要なのかという点も踏まえて、これをむしろ、我々としては、もうその時代には老人だけが別というような時代ではないんじゃないか、こういうような観点を踏まえて一元的なものにしたということ。  それからもう一つは、やはりへ医療提供体制、あるいは健康対策というようなものを含めたそういう実態的な面と医療費保障制度である医療保険というものがコインの裏表という格好で地域においてもでき上がった方が、より効率的で、かつ住民にとっても望ましいのではないかというような観点、そういった観点等を踏まえたときに、二元的な形のシステムというものを考えたわけであります。もちろん、この場合でもいろいろな応用問題がございます。しかし、すっきりした形でお示しをしたというのが第一案であります。  それから、保険料の取り方についても、これもまだバリエーションはございます。いろいろな検討をしております。現在お示ししたのは、国民健康保険に準じてという書き方にしておりますけれども、それはまさに実際の収入に応じてみんな負担していこうという考え方をお示ししたということでありまして、その際の例えば事業主からの保険料の徴収の仕方あるいはまたサラリーマンの場合の保険料の徴収の仕方、そういった点でいろいろなやり方について検討はしております。ただ、それをるるあそこに記載をするということはかなりわかりにくくなるだろうということで、あのような形で提案させていただいております。  それから、第二案の方は、むしろこれまでの沿革、とりわけ小集団の保険者というものの機能というものを生かした、そういうふうな制度というものを今後ともやはり維持していく必要があるだろう。しかし、そういった中で所得とかあるいは年齢構成による格差、こういったものについては公平、公正というような視点から調整をする、そういうふうな考え方でありますが、その場合でも、どの程度まで調整をするのか。  例えば政管健保の国庫補助というものを調整後は廃止するといった場合に、これもいきなり廃止してしまうのか、あるいはその辺のところを健保組合なり共済組合の保険料負担というものとの兼ね合いの中でどう考えていくのか、こういった問題等々ございます。そういった問題についても検討しておりますけれども、一番ティピカルな姿として、ああいうような形で出させていただいたわけであります。かなりあそこの部分はショッキングだと言われているのですが、そういった意味では必ずしもあれだけということではなくて、いろいろなバリエーションというのはあり得る、そしてまだそういうものを配慮しながら私どもとして実務的に検討をしてきております。  長くなりましたけれども、そういった意味では、今回の厚生省案というのは、かなり柱の部分、幹の部分を、そしてまた物の考え方はわかりやすい形で御提案させていただいたということでございます。
  74. 五島正規

    ○五島委員 余り長い回答は要りません。第一案、第二案とも、先ほども言いましたように、考え方としての整理はそれはいいでしょう。問題は、なぜそこのところで保険料負担、第一案については、そんなだれもが問題として感じるところをわざわざ指摘して、そこのところはどうするかというところの問題の提起にとどめずに、否定的に出しているのか。  それから、第一案、第二案通じて問題になるのは保険者機能の問題でしょう。例えば、政管健保に税の投入はやめてしまって、政管健保という形で国が保険者の役割を果たすのですか。そんなことできっこないでしょう。そうした場合に、この職域保険の問題についてはどのように整理するのですか。また、保険料が各保険ばらばらの中において財政調整をする、それは本当にうまくいくのですか。幾つかの問題、これは当然議論しなければいけない。だけれども厚生省のこの案の中に、保険者機能をどうするかとかそういう基本的なこれまでも問題になったところの認識というのが不足しているのではないかということで申し上げたわけです。  また、その問題は、先ほど岡田議員の質問の中にもございましたが、例えば、この管理業務に対するコストの問題としても幾つも問題があると思います。例えば一案でいこうと二案でいこうと――今ちょっとお伺いしますが、国保に対するレセプトの審査料はたしか一枚八十円ぐらいであったと思いますが、社会保険に対するレセプトの審査料は一枚幾らになっていますか。
  75. 高木俊明

    高木説明員 今のレセプトの審査の問題というのは、管理コストという面では、支払基金と国保連合会がそれぞれやっておるという実態的な問題だというふうに思います。いずれにしても支払基金、国保連合会、合わせて年間約十二億万枚弱のレセプトを審査しているわけでありまして、そういった意味では、保険者機能というのとはこれは直接結びつくものではないということであります。  そこで、支払基金は、平成年度審査支払い業務の事務費単価というのは百十三円六十銭というふうになっております。国民健康保険団体連合会、国保連合会の場合は、これは各都道府県にございますので各都道府県によって若干異なっておりますけれども、平均的に見ますと八十四円程度ということでございます。  ただ、これは単純に字面だけで比較できない面がございますのは、別に支払基金が決して高くないということを申し上げているわけではありませんで、国保連合会の場合には、そのほか県の補助金等々、そういった補助金がございます。そういうようなもの等を含めて連合会の運営をしているというようなことがございますので単価だけでは比較できないのでありますが、私どもとしても、これは保険者負担しておるわけでありますから、できるだけこの単価につきましても低い方が望ましい。  また、そもそも現在のようないわゆる紙に落としたレセプト、十二億万枚のレセプトを審査するというようなやり方自体がもう時代に合わないというふうに考えておりまして、そういった意味で、この辺のところについても、レセプトの電算化、これは来年度から本格的にやっていくということにいたしておるわけでございます。  手数料については、今申し上げたようなことでございます。
  76. 五島正規

    ○五島委員 例えば、このレセプトの問題についても、国保と被用者保険とでは一枚当たり三十円の格差がある。その理由として局長いろいろと言われるわけですが、常識的に考えてみて、被用者保険の場合、職域保険の場合は現役世代が多いわけでございまして、一件当たりのレセプトの審査からいえば、より単純なものが多い。もしコンピューター処理をするということによって、問題レセプトだけをチェックしてそれを審査するということになれば、この審査のコストというのはもっと安くなるはずです。ところが、そういうふうなことを前提とした審査になっているのかどうか。  すなわち、今回ここまでやっていこうということであれば、例えばレセプトの審査といった管理的コストをどこまで縮小していくのか、全然厚生省案に出てきていない。あるいは、地域保険にする場合と三本立て保険にする場合とによって、そういう医療保険の管理費用はどれぐらい違ってくるのか。それぞれ違ってくるはずですよ。そういうふうなものをきちっと考えた上でつくられているのかというと、どうもそういう本当の意味での行政改革といいますか、そこのところを織り込んだ内容として出てきているように思えないわけでございます。これは、きょうここで議論して、政府案としてまとまったものでございませんので、もしこれがそのまままとまれば、そのときはまた議論したいと思います。  第二の問題として、先ほどからこれもまた議論されておりますが、診察料等のいわゆる混合診療といいますか、自由価格制あるいは差額ベッドの全面解除のようなことがあるわけですが、自由価格制、混合診療については、診察料と初診料だけということでお考えになっているのか。そうであるとすれば、その根拠は何なのか。手術料は入るのかどうか。また、先日お伺いしたところでは、一〇〇%の差額ベッドというものを認めるということでございました。それはそういうことなのかどうか、簡単にお答えください。
  77. 高木俊明

    高木説明員 今回お示ししておりますのは、先ほどから申し上げておりますように、かなり大きな考え方なり方向というものをお示ししておるわけであります。これを現実の制度にしていく上においてはさらに詰めた議論をしていかなきゃいけないわけでありますし、それと同時に、役所だけで考えるのではなく、幅広い御意見というものを組み入れて考えていかなきゃならないということでございます。  そこで、いわゆる混合診療のような形の道を慎重に開いてはどうか、こういう提案をしたわけでありますが、これについてはどこまでやっていくのか。これは、先ほど坂口先生からの御質問にございましたように、私どもとしても、これが保険診療の形骸化につながってしまうというようなことがあってはならない。私どもとしては、そういった意味ではかなり慎重に範囲を限定して、そして、最初は、滑り出しはそういう格好でいくことが適当であろうというふうに考えておりますけれども、その例として申し上げたのが、例えば初診料あるいは再診料ということを申し上げました。  これは、いやいやそこまで広げるのもどうかというような御意見もございますし、いやもうちょっと広げてもどうかという御意見もございます。それらの御意見というものを幅広く御議論いただきながら、やはりその辺のところについては合意を得ていくというふうなプロセスをたどりたいというふうに考えておりまして、政府案として例えば国会に法律案として提出するということになりますと、これはかなり詰め切った政府としての方向というものを出して御議論いただかなきゃいけないと思いますが、現段階厚生省案としてお示しいたしましたのは今申し上げたようなことで、大きな方向、こういうような新しい方向というものについて御提案しておる、こういうことでございます。
  78. 五島正規

    ○五島委員 こうした混合診療や、それから全ベッド差額ベッドなどというようなものを認めるということが皆保険制度との関係でどうなのかというのは、他の議員からも御指摘がございましたので、そのところの重複は避けます。  もう一つ、これを言われる以上はその点はどう検討されたかというのが、公的病院と民間病院との問題でございます。  公的病院には、御案内のように、国立病院だけでなくて、国公立の病院合わせて一兆三千億の税からの投入がございます。これが公的病院の主たるキャピタルコストとランニングコストに相当していると思います。こうした公的病院に対して一兆三千億の金が入っている。そういうふうに入っている以上、常識的に考えて、県立病院や町立病院、市民病院といったようなところは、それぞれの自治体の中においてこういう制度が仮に導入された場合に、保険診療以上の価格の設定を認めるということにならないだろう。すなわち、一兆三千億と引きかえにそういう上乗せの混合診療というのは廃止されるだろう、抑制されるだろう。  そのときに、では民間病院と公的病院との間で、機能がどうのこうのという御意見もございますけれども、現実問題として公立病院と民間病院との間におけるそういう格差が生まれてくる。その中において、民間病院がこれまでどおりに日本の医療の大きな役割を果たしていくことができるのか。公立病院へ行けば初診料も再診料も保険料どおりだ。民間病院へ行けばキャピタルコストその他の費用のために上乗せがある。どちらを選ぶか。ますます大病院を選ぶことになるに決まっているじゃないですか。  そこのところを保険料五〇%、あるいは入院の場合もそうですね、そういうふうなことで調整していけるのか。そういう意味では、もしこれを言われるとするならば、国公立病院というものに対してどういうふうなイメージでもってこれから対処していこうとしておられるのか、そこのところをお伺いしたいと思います。
  79. 谷修一

    谷説明員 先ほど来お話のございましたいわゆる混合診療、この問題と、先生が後段でお話しになりました公私の問題というのは、私ども議論としては分けて議論をしたつもりでございます。  一方、公私の問題につきましては、この厚生省案の中では具体的に新しい提案はしておりませんけれども、地域医療という観点から、大病院、それから中小病院診療所という大きなくくりの中で、公的病院としての役割、あるいは具体的にはさらにかかりつけ医を支援する役割というものを国公立あるいは公的病院が今より一層求められる、まだそういうような方向に持っていきたいという考え方でございます。
  80. 五島正規

    ○五島委員 別々に検討したと言われるわけですが、日本の公的病院は必ずしも政策医療に一元化されていない、地域医療全般を担っているという状況の中において、これが現実に運用される場合にはそういう問題が起こってくるというのは、これは当然考えられるわけですね。そこのところを十分に結合して検討せずにやっていったということになってくると、これは大変大きな矛盾点が出てくるだろう。その点について、与党協議の中においてもどうなるのか、我々としても関心を持って見守っていきたいと思っております。  そして、あわせてDRG等を実験的に実施するということなのですが、今回大病院中小病院という話です。そうしますと、医大の附属病院とか研究的病院、これはどうするのか。これらの病院に対してDRG、これはなじみません。DRGというのは標準的医療によってやっていくわけですから、研究的医療にはなじまない。  そうすると、そうした医大病院あるいは研究的病院医療費というのは決して小さくないわけですが、こうしたところに対する医療費の支払いをどういうシステムでやろうとしているのか。これについては全く御提案がないわけですね。むしろ、そういうふうな研究的病院に対しては総予算制みたいなものを導入しないといけないのじゃないかという気もしているわけですが、その点はどのようにお考えになったのか、お伺いしたいと思います。
  81. 高木俊明

    高木説明員 診療報酬体系を新しい方向でどういうふうに組み立てていくのかという基本的な考え方を示しているわけであります。それは、当然のことながら、その中で、具体的に支払う方式等を考える際に、今お話がございましたような、例えば総額予算制のようなものを全く排除しているという考え方はとっておりません。  ただ、例えば医大附属病院はどうで研究的病院はどうだというところまで基本的な方向として出したわけではないということでありまして、当然、今後新しい診療報酬体系というものを具体的に考えていく中において、それぞれの病院特性に応じた支払い方というものを考えていかなければならないということだろうというふうに思っております。  ですから、そういった意味で、例えばDRGの問題も書いてございますけれども、これは一定の定型的な疾患というものに対してDRGの導入方向というものを御提言しているわけでありまして、そういった意味での個別具体的な診療報酬仕組みというものについては、なおこれからやはり専門家先生方も交えてそういうような検討作業をしていかなければいけない、このように考えております。
  82. 五島正規

    ○五島委員 私は、DRGを否定しているわけではないのであって、一定の病院においてDRGが導入されていくということは必要だろうと思っております。だけれども、DRGを導入してみても、日本の医療の中において、非常に医療のコストが、出来高でいっても問題があり、DRGが導入されたとしてもそれになじまないというふうな大きな医療の部分があると厚生省は知っているはずです。  あるいは、今回の中においては触れていないけれども、例えばターミナルの医療をどうするのか。これは定額にするとも何とも書いていないし、ターミナルの定義は難しい。それはわかるけれども、ここをどうするのか。医療費を効率よくやっていこうとすれば、そこのところを避けて通れないはずです。そういうふうな部分について全くまだ今のところ触れていないわけでございますが、これは、例えば医療保険改革審議会ができ上がり、それに諮問されるまでには、その辺についても厚生省の試案はおつくりになって審議会にお諮りになるのか、その辺のところは置いたままでいかれるのか、ぜひこの点についてもきちっと検討しておいてほしいと思います。  時間がございませんので、次の問題に行きますが、もう一つは、医師歯科医師の数の抑制と資質の向上ということでございます。  これこそまさに二つ、別のものでございます。資質の向上というのは大事でございますし、研修も必要だと思います。しかし、問題は、現在六年制の医学部、歯学部の教育、これが、私は昭和三十三年の医学部の入学でございますが、その時代と今日とでは非常に研修しなければいけない学科がふえてきている。その結果どこにしわ寄せが来ているかというと、一般教養の期間が極めて短くなっている。もう一つは、ベッドサイドティーチング、すなわちアンダーグラデュェートのもとにおけるベッドサイドの授業数というのは極端に少なくなってきている。これをそのままにしたままで研修という方向に持っていっていいのだろうか。  また、研修制度というものが、スーパーローテーションにするのかどうかは別としても、いわゆる今日の研修病院を見ますと、研修病院が一定の機能を備えた高度の機能を持った病院に集中している。そして、それから後、専門医の方向に行くとするならば、ますますプライマリー医療とか、あるいは包括医療ということからは遠ざかってしまった医者がつくられる。むしろ、卒後の二年間ぐらいは幅広く、生活習慣病も含めた包括的な医療を経験させた上で、専門医としての研究期間をきちっと整備していくということの方が実はいいのではないかというふうに考えています。  そうした医師の資質の向上の問題とあわせて、今回のやり方では、これは医師歯科医師の数の抑制にはならないだろう。二年間だけは一過的になるかもわかりませんが、そのままもとのもくあみ。そうであれば、私は、医学部の教育を八年制にして、一学年を七五%にする、すなわち学生総数は変えないという形で、私学の経営にも余り影響を与えない形にしてやっていくのが一番いいのではないか。まして、インターン闘争というものを我々は経験してきたわけですが、その経験から見ても、この研修医の間の医療というものが、保険医療に従事させるということであれば非常に矛盾的になってくるでしょうし、保険医療に従事させない医療ということになってきますと、皆保険制度のもとにおいて本当に有効な研修になるのかどうかという問題にもなってきます。  このことについては、もう今から三十年も前にさんざん議論してきた内容をもう一度蒸し返している。そういう意味では、なぜこういうふうな二年制のインターンでというのか、レジデントにしてみたらおかしいし、何かわけのわからぬ日本型の研修制度ですが、なぜこういうものが生まれてきたのか。非常に判断に迷うところでございますが、これは一体どちらに、抑制に重点を置いてお考えになったのか、資質の向上こ重点を置いてお考えになったのか、その点だけで結構でございますが、お答え願いたいと思います。
  83. 谷修一

    谷説明員 私どもが示しておりますこの厚生省案では、医師の問題については、数の抑制なり削減の問題と資質の問題とは二つに分けて一応整理をいたしました。  臨床研修を義務化するということにつきましては、医師の資質を向上させるという考え方でございますが、先生もお触れになりましたように、この問題については昭和四十年代にインターン制度を廃止して以来の長年の議論があったところでございますけれども、特にこの一、二年、医学教育の関係者の中でこの卒後臨床研修の義務化の問題というのが議論をされまして、義務化をしていくということについては大方の理解がかなり深まっているというような報告が昨年の夏に出されております。  ただ、研修の内容をどうするかということについては、私どもも、プライマリーケアですとか、あるいは病院に偏らないで、例えば診療所ですとか福祉施設ですとかそういうようなところをグループにした研修施設群といいますか、そういうものをつくっていく必要があるというふうに考えております。  あわせて提案をさせていただいておりますけれども、臨床研修を義務化するといりことに伴いまして、現在の医師国家試験のあり方それから医師免許制度見直しということも提案をしているわけでございます。  一方、数の抑制ということにつきましては、現在既に始めておりますが、九年度にやっております医師歯科医師も同様でありますけれども、需給調査の結果を踏まえて新たに目標を設定したらどうかという提案をさせていただいております。  なお、臨床研修を二年間義務化をするということにあわせて、結果的には二年間の新規参入が繰り延べされるということでありますから、数の抑制ということに結果としてはなっていくわけでございますが、繰り返しになりますけれども、私どもが提案しておりますのは、あくまでも広い意味での医師の資質を向上させていくという観点から、この臨床研修の問題は提案をさせていただいています。
  84. 五島正規

    ○五島委員 中身が全然見えないままで、なぜこういうふうな方向が出てくるのか。しかも、これで見ますど、研修医に対しては、全員に対して給与を払う。これは一体どこが払うのか。保険で払うのか。医療保険が払うという根拠はどこにあるのか。税で払うのか。税で払うとすれば相当なものになるだろう。そういうことが果たして必要かどうかという議論を踏まえて、これからの問題だろうと思っております。  それから、最後になりますが、薬価の問題でございます。  どうも厚生省の今回のは、わかったようでわからないような制度でございまして、これは基本的には第二の薬価制度をつくりたいということなのかなというふうにも思えるわけでございます。  まず、先ほどの御質問にもありましたけれども、もう一度確認したいと思うのですが、いわゆるグルーピングという問題とゼネリックという形での分類と、これは同じものなのか別のものなのか。ゼネリックというのは、一定の同一組成の薬を、商品名は違ったとしても指すわけですね。ところが、「治療効果が類似し、治療上代替可能な成分」の薬のグループといいますと、必ずしもそうではないのだろうと思います。これはどういうふうなことなのか、明確にお答え願いたいと思います。
  85. 高木俊明

    高木説明員 私どもが考えておりますのは、まず、今回導入しようとする方式の場合の、一つはグルーピングの仕方をどういうふうにするのか、それからもう一つはその償還基準額をどういうふうに設定するのか、ここのところがポイントになるわけでありますけれども、例えば先発品と後発品があるといった場合について、これを一緒の形でくくってしまうのがいいのか、あるいは我が国の現在のマーケットの状況を考えた場合、これを先発品同士のくくり方にし、後発品は後発品同士のくくり方にした方がいいのか、そこら辺はいろいろなやり方があろうと思います。  その辺のところについては、やはりこれからまさに専門的な視点も踏まえて専門家委員会という場において透明化された手続のもとにこの辺のところを議論をし、そして決めていくことが必要だ、こういうふうに考えておりますから、厚生省案の中では、基本的な考え方として「治療効果が類似し、治療上代替可能な成分」というようなことで、こういった同一成分のものについては同一のグループの中でくくっていく、こういうのを原則としながら、やはり我が国医薬品マーケットの現状、実情というものに照らして最も妥当なものというものを今後考えていかなければならない、このようなことで考えております。
  86. 五島正規

    ○五島委員 今の局長のお話ですと、ますますおかしいじゃないですか。それはまさに薬価制度の単なる手直しにすぎない。ゼネリックよりももっと範囲が狭いというか、そういう内容でおっしゃっているわけですね。だけれども、文章を常識的に受け取ると、「治療効果が類似し、治療上代替可能な成分」の薬のグループといえば、一つのゼネリックよりももう少し幅の広いものをまとめてグループ化するというふうに受け取るのが常識じゃないですか。ところが、同一の薬効、同一の成分の薬を先発と後発とに分けて、一つにするか二つに分けるか、その辺のところで言っているのだといりことじゃ、これは何にもならない。その御回答だけで、どうも薬価については厚生省はもう頭を絞るのをやめられた方がいいんじゃないですか。  依然として製薬メーカーの育成というところでお考えなのかもわからぬけれども、それでは物の値段を下げるということは到底できないと思いますよ。そうであるならば、むしろ、技術と分離して、保険においてそれらの薬についてどれだけ償還しますか、率も全部切り離して、何ぼ払いますということだけ決められて、そしてその価格については保険者と業者との間で交渉させたらいいんじゃないですか。  この間の公取の調査にもございましたが、医療材料について、輸入業者の利益が六割も占めているという大きな問題と独禁法の問題まで指摘された、四種類くらいの医療材料について報告がございました。これは、たまたまあのときはペースメーカーとかカテーテルとかMRIとか特定のものについてでございましたが、ほかにもいっぱいあります。  それ以上に、あの論理というのを薬に導入した場合、日本の薬というのはほとんど全部ひっかかりますよ。そうであるとするならば、一定の薬効と成分について厚生省は型式認可をする、そして並行輸入でも何でも認めればいい。それに対しての保険の給付額というものだけを決めてしまって、市場競争の中で競争原理によって薬が安くなっていく、そのシステムを追求すべきじゃないか。  例えば、ある日本で開発された薬がフランスへ輸出されている。フランスでの価格は日本の三分の一である。三分の一の薬をフランスから逆輸入してきた場合に、厚生省は今のところは認めませんよね。認めたらいいじゃないですか。日本でっくられ日本で認可された薬がたまたまフランスに輸出されて、フランスで三分の一で売られているなら、それを並行輸入で日本へ持ってきて使ってもいいじゃないですか。  そういうところまで厚生省配慮して、ゼネリックよりももっと小さい範囲でグループ分けしてみたところで、今、全医薬品の中で後発品が出ている商品というのは二割を切るでしょう。それをさらにそんなことしてみたって、薬価が本当に適正な価格に落ちつくとは思えない。そういうふうなことでは厚生省は知恵を絞ったとは言えない。大臣の熱意はわかるわけでございますが、この点まだまだ、これは試案でございます。厚生省の試案がこれ一つで終わらなければいけないという理由もない。  聞くところによると、与党協の結論も、まだ全体像からいうとほど遠いところの議論と聞いています。もう一度、厚生省、そう時間がないのはわかりますが、真剣に御討議して、そして十分我々としても審議でき得るような、そういう内容としてお出しいただきたいということを申し上げまして、終わります。
  87. 町村信孝

    町村委員長 児玉健次君。
  88. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  先ほど冒頭の御説明で、大臣は、このままでは国民保険制度の存続が危ないという趣旨のことをおっしゃった。私たちは、この国民保険制度を、この際、医療財政の民主的再建によって大いに充実させることが可能だろう、こう思っております。大いにその点では論議をしたい。  まず最初に、医療、福祉、社会保障全体のこの後の日本の歩みとの関係からどのようにつかむか、その点を私は若干議論したいと思うのです。  厚生省に伺いますけれども、国立社会保障・人口問題研究所が毎年社会保障財源の推移について数字を出されております。その中で、一九九二年、九三年、九四年、それぞれの年の社会保障における国庫負担、地方負担の合計額を示していただきたいと思います。
  89. 田中泰弘

    ○田中説明員 お答えいたします。  社会保障費の財源の中で、国費、地方費を合わせた公費負担の額でございますが、九二年度は十八兆八百五十四億円でございます。九三年度、十八兆八千三百十三億円、九四年度、十九兆四千七百六十一億円でございます。  以上でございます。
  90. 児玉健次

    ○児玉委員 私の方で自治省の資料をいろいろ調べてみました。その中で「行政投資実績」というのがありまして、今、九二年、九三年、九四年、それぞれに当たる公共事業行政投資額は、自治省が明らかにしているものによれば、九二年は四十六・五兆円です。九三年は五十一・一兆円、そして九四年は四十七・八兆円です。大まかに言えば、社会保障における公費負担は大体二十兆円弱、そして公共事業に対する行政投資の方は約五十兆ですね。  それで、国際的にはどうかというので、経済協力開発機構、OECDが発行している「国民経済計算」、この九六年版をもとにしていろいろ調べてみました。そうすると、国内総生産に対する公共事業比率は、ドイツにおいて二・二%、イギリスでは二・一%、アメリカは一・七%。日本は五・六%です。そして、国内総生産に対する社会保障の公費負担。先ほどお聞きした九二、九三、九四の初年度の九二年、三つそろって比較することができるからそこをとりますけれども、ドイツにあっては国内総生産に対する社会保障の公費負担が七・〇%、イギリス一二・四%、アメリカ六・八%。日本は三・八%です。ドイツにあっては、この国内総生産における比率で言えば、公共事業の三・二倍が社会保障に支出されている。イギリスは五・九倍。アメリカは四・〇倍です。日本については、もう言うまでもないですが、余りにもこれは全体としての社会保障に対する負担が低いですね。  先ほど聖域なしにというお話もあったけれども、私たちは、公共事業の中で生活密着型の公共事業に対する力が足りないと思っています。例えば公園だとか、それから下水道や公共住宅、これらについての日本の到達度ははるかに低い。そこは強めなきゃいけないけれども、大手の建設業者だけが喜ぶような公共事業については徹底的にメスを入れる。そこのところから社会保障の財源の確保、そして充実の道が開かれていくんじゃないか、こう考えるのですが、大臣、どうお考えですか。
  91. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それぞれの統計のとり方があると思いますが、日本は、今、一般会計予算に見ましても、公共事業費よりも社会保障関係費の方が国費を投じている額は多いわけです。厚生省関係予算だけにおいても十四兆円を超えている。公共事業は、建設、運輸、農水ほか合わせたって十兆円そこそこだと思います。あらゆる一般会計の中で、今、国債の利払い、地方に行く交付税を除けば、日本国民はどの分野に一番税金を使っているかといえば、年金、医療、福祉の厚生省関係予算であります。そういう点について、私は、今の政府におきましても社会保障を大変重視していると言っても過言ではないと思います。
  92. 児玉健次

    ○児玉委員 今の点ですが、私は、国と地方自治体と言っているので、例えば九二年でいえば、国の場合は建設国債を含めて約十五兆、そして自治体三十一兆ですね。そのプラスが先ほどの金額です。この点については、国民の総意として、公共事業にメスを入れて、社会保障、医療、福祉を充実させてほしい。これはもう全体の声ですよ。  私たちもそう思うけれども、例えば、日本医師会が昨年の十一月に「二十一世紀に向けての医療保険制度改革」、これを出していらっしゃいます。拝見したわけですが、その中で、ずばりこう言っていますね。「今日の医療財源を支える国民経済の低迷は国の相次ぐ経済政策の失敗によって招来された」、こう述べて、この財源赤字、国債だけで言って二百四十兆以上、「この財源赤字は社会保障費の急増によって引き起こされたものではない。即ち、既得権を背景とした公共事業特別会計、財政投融資など非効率な財政運営によってもたらされたものである。」日本医師会の去年の十一月のこの指摘は、私は正論だと思うのです。どうですか。
  93. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一面的に言って、日本は社会資本投資がおくれている、そういう面から公共事業に莫大な投資をしてきた、投資の効果が出ていなくて借金がふえてしまった。一面において、それは私は当たっていると思います。
  94. 児玉健次

    ○児玉委員 それで、日本の皆保険制度をどう守っていくのかということと、日本の国の財政自身を国民的な立場でどう再建していくかという問題。私たち日本共産党は、それぞれに責任を負いたいと思っているんですよ。  その点で言いますけれども、ことし、医療保険の改悪、それぞれの分野によって違いますけれども、二倍、三倍になってしまう。九月の一日から始まるんですよ。その目前です。  そういう中で、最近、私、非常に興味深いレポートを拝見したんだけれども、富士総合研究所調査研究グループが八月二十二日に発表した「消費税の引き上げと九七年度の個人消費、住宅投資」というレポートがあります。あれこれ省きますが、その中で、消費税の引き上げによってどうかというのが主論ですけれども、こういうくだりがあるんですね。  九七年度には所得税・住民税の特別減税廃止や年金保険料の引き上げ、医療費の自己負担増(九月実施予定)があり、これら家計の税・社会保険負担額は、約三・一兆円(消費税引き上げ分を除く)に達すると見込まれる。このような税・社会保険負担増加も実質購買力を押し下げ、個人消費にマイナスの影響を及ぼす。 まさにそうだと思う。そのこと自身が、日本の国の財政再建を後に追いやり、困難にしている。やはり福祉や医療の分野というのは、雇用の面でも非常に重要な分野であるだけでなく、国民の個人消費を支えていくという点でもここを充実させていくということは極めて重要で、その面でこの医療保険制度改正も大きくつかまなきゃいけない、私はまずその点を強調したいのです。  ついさきの国会で、橋本内閣と与党の諸君は、この医療保険の赤字を理由にして、約二兆円規模の医療負担増、千八百万の反対の請願署名が集まりましたね、それを押し切って強行なさった。その実施を目前にして、また今度の案ですよ。  ある人がこう言いましたね。健康保険の本人、かつて一割、この九月一日から二割、それが三割になり、大病院に行ったら五割になる。二割、三割、五割、悪魔の三段跳びだと言ったけれども、私はうまく言ったものだと思う。そういう案が今出てくることは許しがたいですよ。この点については徹底的に検討し直すべきです。  そのことを私ははっきり述べた上で、この医療保険財政を民主的こ再建していく道、前の国会でも、私たちは、薬剤費や医療機器の問題をめぐって具体的な提起もいたしました。先ほど同僚議員が紹介された公取の九年八月のペースメーカー、PTCAカテーテル、MRI、大臣も御存じのように、二月のあの予算委員会で私が取り上げた問題に対して公取がやはりこういう努力をした、その点は私は評価しています。  まず、薬剤費の問題です。いわゆる参照価格制について盛んな論議がされています。先ほども幾つかの議論がありました。そこで、ドイツでは特許期間中の医薬品は対象外だ、日本では参照価格制という言葉を皆さんお使いになっていない。参議院における議論の中で、我が党の西山議員の大臣、局長に対するさまざまな論議の中で、九三年、平成五年の時点で、六年間の特許期間の新薬の使用頻度は約三〇%、厚生省、お答えになった。九年収載の薬品で見れば五五%。この部分について言えば、もっとずばり言いましょう、特許期間中の新薬について言えば、これは競争のしようがないですよ。その部分について、皆さんが言うところのこの新しい薬価制度ではどういう扱いになるのか、端的こ答えてください。
  95. 高木俊明

    高木説明員 ドイツで導入している参照価格制においては、特許期間中の医薬品についてはいわゆる自由取引にしておりますけれども、私どもは、今回新たに導入しようとしている、言うなれば日本型の参照価格制というふうなものでありますが、これにおいては、特許期間中であるということでこの償還基準額設定しない、逆に言えば自由価格制にするという考えはありません。
  96. 児玉健次

    ○児玉委員 そうすると、あなたたちが言う自由な市場の原理によって薬の実勢取引額が下がっていくというそのモメントというのは、新薬について言えば働かないという点はお認めでしょう。
  97. 高木俊明

    高木説明員 問題は、グルーピングの仕方であろうというふうに思います。  例えば、いわゆるゾロ品目というのがありますけれども、そういった特許期間中のものでいわゆる新薬であっても、複数、薬理効果は同じものというものがあるわけでありますから、そういう面ですべてが単品、単品というわけじゃありませんで、そういった中でのグルーピングというのは当然考えられるわけであります。  それからまた、我が国医薬品の市場価格と申しましても、やはりこれは現在のマーケットの状況の中では必ずしも、いわゆる自由競争に基づく価格といってもいろいろゆがみがあるということが指摘されているわけでありまして、そういった中でこの償還基準額というものをどう定めるか。これは透明化された委員会において決めていただくことにしておりますけれども、その際に、やはりそういった市場のゆがみというものも一応念頭に置いた形での償還基準額というような定め方、こういったものがやはり当面はあるのではないかというふうに考えております。
  98. 児玉健次

    ○児玉委員 平成九年八月六日、日本製薬団体連合会薬価基準存廃検討会、これが与党に対して自由価格・購入価給付制度に関する提言というのを出していますね。  小泉大臣、あなたと私、この新薬のことについて議論をして、そして大臣は、四月九日のこの厚生委員会における御答弁の中で、大して効き目も変わらないのに新薬に移行していく、そういうことのないようにいい改革ができないか、抜本的な薬価基準見直しに取り組んでいきたいと思います、こうおっしゃいました。私は、これに賛成です。  今局長はデュープロセスと言われた。デュープロセスになっていないところが今の日本の薬価制度の問題、そしてそれをどのように、デュープロセス、言い直せば透明化し、そして原価に着目して、その原価に合理的な一定の流通経費、そして一定の利益を付する形で薬価を設定していく、なぜその道を通ろうとしないのか。その道を通ることで、薬価について、薬剤費支出についての大幅な節減が可能だと思う。あえてなぜその道を通らないのか。  局長自身も、私の質問や参議院の西山議員に対する御答弁の中で、これは参議院の六月五日の御答弁ですけれども、個別の値段の決め方もきちっと中医協に説明して公表していく、製薬業界も納得と合意のもとに原価というものも出ていくということを承知の上でこれからはいくわけであります、過去はいろいろあった、こうも言われている。そうだとすれば、やはり薬品についての原価を明らかにさせてそこを基準にしていかなければ、これは薬剤費の支出は節減できません。  私は、医療機関でこの分野を担当している方に聞いたのですが、現在、薬価差病院の経営原資になっている、私は、それは好ましいとは思わない。しかし、経営原資を生み出すために、病院としてはどうやって薬を安く購入するかというので死に物狂いの努力をされている。その薬価引き下げのインセンティブは今度の制度によってなくなるか、または大幅に低下すると断言していますよ。そうなると、結局、あなたたちが言う償還基準額のところが新しい薬価になってしまう。私は、これはもう火を見るより明らかだと思う。やはり原価に着目すべきだ。いかがです。
  99. 高木俊明

    高木説明員 今回の新しい方式というのは、まさに、現行薬価基準制度というのがいわゆる公定価格を定めておる、それがゆえに薬価差というものが生じておる、こういう問題があったわけでありまして、この薬価差が、我が国医療費に占める医薬品のシェアというものがなかなか下がらない原因であるということがこれまでの論議でも指摘されてきたわけであります。今回の新しい方式というのは、そういった意味で、薬価差のない制度というものを導入するというのはやはり基本であります。  それから原価の問題でございますが、まず一点、先国会において御答弁してまいりましたように、現在の薬価基準制度の中においても、個別の医薬品の価格というものをどういうふうにして決められたのかということについてきちっと公表してまいりますということを申し上げ、これは、ことしの四月から新しく薬価基準設定された品目につきましては、先般の中医協にこれを御説明しまして、まさに、お約束したとおり、原価の考え方も含めて公表いたしております。ただ、マスコミにおいて余り取り上げられなかったものですから気がつかれないのが非常に残念なんですが、公表しております。  そこで、原価の問題なんでありますけれども、現在の薬価基準制度におきましても、これは前にも御説明申し上げましたとおり、二つの大きなルールで決めております。一つが、既に類似の医薬品がある場合には、類似薬効の比較という形で決めておりますし、それからもう一つは、類似薬がない場合には、原価を基礎に決めております。いずれにしましても、公定価格を決めておる。  そういった意味では、公定価格を決めておるという方式を改めるということでありますが、ただ、実際に私ども医薬品の薬価基準額を決めるに当たりまして痛感いたしますのは、原価といいましても、第一義的に決まるということではありませんから、製薬企業が言っております原価と、それから私どもがそれが原価かなというふうに思われる原価がありまして、そこら辺のところはやはりどうしても乖離がある。だから、第一義的に、これが原価であるというふうなものが決まるのであれば、それは一つ考え方だと思いますけれども、やはり物の価格というものはそれだけで決まらない要素がございます。  したがって、私どもとしては、やはり基本的には、市場の取引という、実勢取引というものにゆだねるということが価格形成においては一番合理的であろう。ただ、問題は、その際に、マーケット自体がゆがめられている、取引がゆがめられているようなマーケットの中であるとすれば、それは、その点についても考慮した上で考えていく必要があるだろうということであります。  私どもとしては、やはり我が国の実情というものは、そういった意味では必ずしも流通の近代化がなされているというふうには思っておりません。まだまだ改善されなければならない。そういうふうな改善がなされれば、まさに市場取引の実勢というものがやはり基本になるべきだ、こういうふうに考えております。
  100. 児玉健次

    ○児玉委員 時間ですから質問はもうしませんが、お許しをいただいて、一言だけ指摘をさせていただきたい。  それは、原価を明らかにすることを第一義としてと、私はそれはそのとおりやっていただきたいのです。ぜひそうやっていただきたい。その上で、やはり言わなければいけないのは、医療機関というある世界において、さまざまな流通の慣習その他で競争原理が働かないということについては、分野は違うけれども医療機器においてその実態が、今度かなり公取の調査で明らかになりましたね。そして、厚生省にお願いしていただいたのだけれども、例えば特定保険医療材料の中で、いわゆる都道府県購入価格、実勢取引のまま保険から全額償還されている部分、吸引留置用カテーテル、これは平成七年三月、千三百七十七円。平成九年三月、千五百七円。上がっているのもあるけれども、下がっているのもある。さまざまであって、そして、そこで全体として下がるという傾向を私は見ることができない。やはり原価に着目して、そして適正な流通経費と一定の利益を付する、そういう形で薬を決めていくことが浪費構造の節減につながる、この点を主張して終わります。
  101. 町村信孝

    町村委員長 中川智子さん。
  102. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  さきの通常国会では、厚生委員会のおかげさまをもちまして、六キロもやせさせていただきました。久しぶりにお会いして、皆さん元気で何よりだと思います。  「二十一世紀医療保険制度」の厚生省案が出されたときに、いやまあ、本当に楽しみに新聞を読みましたが、最初は、厚生省、ああ、ここまで考えてきているのかと思って読んでいたのですが、途中からは、やはりもうこれから日本も金持ちしか長生きできない、生き残れない時代に入ってきたのかなと思うほどの患者負担国民負担がありまして、このようなものを医療制度の中に取り入れていきましたら、与党としましても、私はもう二度とごめんなさいと言わないということを約束しましたのに、本当にまたごめんなさいなんて言うことになってしまうようなことはぜひとも避けたいと思っておりますので、私に二度とごめんなさいと言わせないような中身での抜本改革をきっちりお願いしたいということをまず最初に言わせていただきまして、質問に入らせていただきます。  厚生省案では、これまでと同様に、財政配慮を優先するものとなっています。厚生省案で提示されている制度改革案の多くが急激な患者負担増を前提としていますが、このような患者負担増は、国民が容認できる範囲を大きく逸脱していると言わざるを得ません。  また、今次の改正に当たって、我が党が一貫して反対を表明してきました薬剤の別途負担につきましても、新制度導入を前提としているといたしましても、ことし九月からの施行前に厚生省がそれの廃止を言及していることは、負担する国民の側を愚弄するものであると思っております。  また、今後は負担増を先行させるあしき手法を繰り返すべきではないということをはっきり申しまして、単に国民負担患者負担に置きかえるだけでは構造改革ではないと思います。そしてまた、安易に国民負担を求めるのではなくて、いかなる困難を伴おうと、既得権益でございますね、既得権益、はっきりとイメージがわかれると思いますが、既得権益に立ち向かって、国民本位、患者本位の医療構造改革に取り組むべきだし、また、大臣は当初、本当に取り組んでいくとおっしゃいましたが、今回のこの厚生省案は本当にそれに全面的にしっかりと取り組んでいない、やはり財政措置の緊急避難的な、そのような案だというような受けとめをしているのですが、大臣の御見解をお聞かせください。
  103. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 まず最初に、二十一世紀を見据えて、この国民保険制度を維持していこうと。医療制度国民全体が支えるんだと。国民全体のものであるという視点から、今回の厚生省の抜本案をまとめたわけであります。  増税はしない、若い世代にツケを回さない、赤字国債を出さない、そういう中でいかに適切な医療サービスを我々は受けるような制度を構築していくかという場合に、医療を支えるものはまず税金であり、保険料であり、自己負担、そして医療関係者の協力であります。この組み合わせ以外、考えられない。自己負担が嫌だったらば、医療関係者と税金と保険料をどのように調整していくか、そういう観点から、我々は、自己負担も必要だ、保険料も必要だ、公費投入、税金も必要だ、同時に、現在の医療提供体制にむだがないか、効率性を追求する、薬価にもこれはメスを入れなければならない、薬剤費が非常に高いからこれを適正化しよう、さらに診療報酬体系にも、過剰診療なりあるいは過剰投薬なり、むだがないだろうか、すべてが見直しを行う必要があるという観点から今回の案を提案したわけであります。  三割負担ばかり取り上げられますが、自己負担を将来三割導入するにしても、これは三割の負担能力がある方は負担してもらおう、一概に負担能力のない方に三割をしようという案ではないということを御理解いただきたい。五千円、一万円の三割だったらば千五百円あるいは三千円、この程度負担だったらばできる方が多いでしょう。しかしながら、五十万、百万の三割、これはとても負担できないというのが常識的でしょう。その場合に、今、原則として三割負担と言いながら、上限をどこに設けるか、低所得者に対してどのような配慮を設けるかによって、実質的には全体として全部が三割じゃない、十分考えられます。  三割がけしからぬというのだったらば、今国保に加入している方は三割負担をしているのです。その人たちにどう説明するのでしょうか。そういうことを考えますと、我々は、三割を将来もし負担しなければならない場合は、負担できる人は負担してもらいましょう、負担できない方に無理に、あるいはそれ以上の、収入のない方に負担してくれとは考えておりません。その点も考えていただきたい。  我々としては、今回の案につきましては、薬価についても診療報酬に対しても思い切ったメスを入れていただきたい、また入れるつもりであります。そういう中においてどのような給付負担の公平を図るかということをこれからみんなで考えていただこうということでありますので、一部だけを取り出して、これはけしからぬということでなく、総合的に私は考えていただきたい。  そして、将来、財政至上主義だと言いますけれども、財政が豊かな段階ですべてに恩恵を与えるだけの改革だったら、これは非常に楽であります。だれも痛みを伴わないで、すべてが収入が上がっていく、すべてが負担が軽くなっていくという改革だったらば、こんなやりやすい改革はないわけであります。  しかしながら、現在の状況を考えますと、どんどんどんどん国民の税金も今、今までした借金の利払いに一番使われてしまう中で、これからますます高齢者がふえていく、そして医療費経済成長よりも伸びていく、そういう中で国民保険制度を維持発展させていきたい、良質な医療体制確保していきたいという中で、お互い支え合っていこうという案でありますので、一部だけでなくて、総合的に、構造的にこれから改革に取り組もうということでありますので、今回の厚生省案をたたき台にして、よりよき案を皆さんで考えていただきたい。その議論一つの案としてこの厚生省案国民議論を呼び起こし、お互い医療保険制度というのは全国民が支えるものだということで、私はよりよい医療制度を構築していきたいと考えております。
  104. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは次に、厚生省が示した薬価基準制度にかわる新しい仕組みにおいて、償還基準額は新たな公定価格になるのではないかという懸念がございます。現行薬価基準制度が抱える諸問題を解消するために、公設市場方式による公開競争入札制度というのを我が党が主張しておりましたが、そこを検討すべきではないかと思うのですけれども、それについての御見解をちょっと短くお願いします。
  105. 高木俊明

    高木説明員 与党協議会の中で社民党の先生の方からそういった提案がなされていることは承知しております。私も、その際にちょうど呼ばれておりましたので考え方等をお聞きしましたが、まだ与党協議会の中でもその案について結論が出ていないようでありますから、私の方からコメントは差し控えたいと思います。
  106. 中川智子

    ○中川(智)委員 私も普通の地域に住んでおりまして、近所にたくさん診療所がございまして、やはり主婦ですと、子供を抱えて、大病院まで距離があったりして、近くのかかりっけみたいなところに行くのですけれども、私の住んでいるマンションというのは二百十戸ありまして、その中で何人かは、私の知っているだけでも三人ですね、近所のかかりっけのお医者様のところへ行って、もうずっと胃の調子が悪い、調子が悪いと言っていて、そして、結局、どこか大きな病院に移りたいのだけれども、紹介状を書いてくださいと言っても、そこがうまくいかなくて、そして胃がんで二人、一人の方が肝臓がんで亡くなったのですね。  もう大病院に集中というのじゃなくて、かかりっけに行ったときに大病院との機能がきっちり明確にされていないし、またその紹介状を書いてくれなかったりということで、それではもう少ししたらよくなるのかもわからないと言って行って、そしてあそこの病院であの人殺されてしまったといううわさがばっと地域に流れてしまう。その大病院と、今回のこの五割と三割のところで、やはりかかりつけのお医者さんのところに行ったときに、きっちりと大病院への連動、連携ができていれば不安もなく行けるのですが、そのあたりの機能が普通の市民はきっちりと見えません。  そこのところはどのように今されていて、これからもその辺を分けての今回の五割、三割というものであるかどうかということを伺いたいのですが、もう一つ質問したいので、なるべく短くお願いします。
  107. 高木俊明

    高木説明員 これはまさに非常に難しい問題で、いわゆるわかりやすい言葉でよく言われるのは、なかなか患者離れの悪い医療機関だったのじゃないかというふうに思いますが、やはり我々の目指すところというのは、そういった診療所と大病院との機能連携というものをきちっとやっていこう、そういった中でいわゆるプライマリーケアというのをその地域できちっと担っていく先生というのをきちんと適正な数を確保できるような、しかもそういったプライマリーケアを担っている先生方評価を高めていく、そういうようなことをしていくことによって医療機関間の連携というのは図っていけるのではないか。今そういったようなシステムがいわゆる国民の信頼が得られる形でできていないものですから、やはりそういったような裏返しとして外来の大病院集中というようなものがあるのではないか。  先ほどちょっと他の委員先生方の御議論の中で、診療所で紹介されて大病院に行く場合も五割取られるのかというお話がございましたけれども、その辺のところは、先ほどから全体について申し上げておりますように、応用問題といいますか、今後さらに、そういった場合にはそういうような扱いをしないというような、そういう選択肢というものを全部込めた形で私どもとしては御提案しておりますので、そこのところはまず一点御理解いただきたいと思います。  それから、ただいま大臣からお話し申し上げましたように、三割の問題も、私の見るところ、私ども説明の仕方がまずかったのじゃないかと思いますけれども新聞等での取り上げと私どもが考えているのとちょっと違う。要するに、三割というのも、従来二割と言っているのを三割にするというだけの考え方ではなくて、一部負担についても新たな考え方導入したわけであります。  これは何かというと、三割プラス所得に応じて一部負担額というものを考えていこう、負担能力に応じて考えていこうという考え方導入したわけでありまして、従来は、高額療養費という一本やりであります。しかも、それは所得関係ない、相当な高額所得者でも一月六万三千六百円まで、所得の低い方も、非常に低い方の場合は三万五千四百円というのがありますけれども基本的には六万三千六百円という、所得関係のない水準でやってきた。それに対して、これからの制度を考えるときに、新しい考え方導入したわけであります。そこのところがちょっと、マスコミや何かでも十分報道されていない。  ですから、今度の三割の問題にしましても、これは従来の一部負担仕組みとは違って新しい考え方導入しているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  108. 中川智子

    ○中川(智)委員 済みません、では、あと一問で終わります。  私はずっと障害者運動にもかかわってきたのですけれども、出生前診断のことで伺いたいのです。  今、少子化で、産婦人科医でたくさんの出生前の診断をします。その中で、やはり障害児だとわかったときに中絶する率というのがとても多いというふうに聞いております。  また、出生前診断が現在どれぐらいの割合で、その結果によって中絶した方がどれぐらいいるのかというデータを厚生省はちゃんと把握しているのかどうか。把握していらしたら、それをお示しいただきたいということが一点。  やはり障害者差別につながるさまざまな出生前診断に対して、厚生省として一定の方向性を示すべきだと思いますし、今さまざまな障害者団体が運動しておりますが、そのあたりに対して非常に情報もきっちりしておりません。ですから、やみくもに不安を抱く方たちも多いですし、私もそこに対して、障害者はこの世にとって本当に邪魔だというような形での出生前診断があるならば、それはしっかりと取り組んでいかなければいけないと思っておりますので、その二点に対してお答えをお願いいたします。
  109. 横田吉男

    ○横田説明員 出生前診断につきましては、高年齢の方で出産を迎えられた方などが受けられる例が多いようでございますが、私ども心身障害研究におきまして、平成年度に全国の大学病院八十を対象にやっておりますが、この結果、実施件数が四千百十三件という結果が出ております。この中からどの程度中絶等をされたかという点につきましては不明でございます。  これが障害者等の差別につながるのではないかというような御議論もされているところでありまして、私どもといたしましては、この出生前診断がどのような場合に認められるのか、こういった問題につきましては、医学だけでなくて、法制面、倫理面を含めまして幅広い見地から検討が必要だと考えておりまして、今年度厚生省に設置されました厚生科学審議会におきましてもこういった問題を検討していただきたいと考えております。
  110. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございました。
  111. 町村信孝

    町村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会