○福島
委員 適正な
薬剤費の
水準、
一つの大きな理由は、諸
外国と比べてこの
水準が高いというところにどうも論拠があるようでございますけれども、であるならば、また後ほど触れますけれども、諸
外国と比較して、
日本の薬剤の薬価の問題は、いろいろと今まで
議論もされてきまして、高いものは下げなければいかぬということだと思います。同時に、その薬剤の使い方についても、諸
外国を例として我々の
日本の使い方についてもきちっと見直すべきだ、そのように今私は思っております。これはまた後ほど触れさせていただきたいと思っております。
次の御質問でございますけれども、個々の薬剤の使用、先ほど、あっという間にたくさんの薬を使うことになりますよという
お話をいたしました。
高齢者の
医療の領域で比較しましても、確かに今
局長おっしゃられましたように、例えば薬剤数に限っても、欧米諸国の使用薬剤の種類数の方が少ない、そういうデータはあります。
日本の
高齢者医療では薬剤を多用する傾向がある。これがなぜ起こるのかという質的な部分について私は考えてみたいと思うのです。
先ほども
大臣から
お話ありました、運動不足だったら運動しなさい、食事療法していないのだったら食事療法しなさいと。それはそのとおりなんだと私は思います。言ってみれば、そういう
意味では総合的な治療、総合的なかかわりということを
高齢者にはする必要がある、そう思います。
ただ、悲しいことに、
日本の
医療の現状はどうか。三時間待って三分間診療と
大臣がよく言われますけれども、しかし、医者の立場でいいますと、好きこのんで三分間しか診ないのではないのですね。ずらっと待っていますから、三分間で次々と診ていかないと一日たっても終わらないというような現状があるのですね。
それじゃ、三分間に一体何ができるか。先ほども言いましたように、
一般療法、これは
患者の
理解が不可欠です。ちゃんと
お話をして、ちゃんと納得してもらわなければ、そのように、行動は変わらない。三分じゃ済みませんね。診察で一分、そして説明で一分、処方せんを書くので一分、一分ずつでも三分はすぐ済んでしまうわけでございまして、そういう中で、
大臣さっきおっしゃられたような、
一般療法をしっかりとやろうということ自体がなかなか許されていないのだと。それは、ある
意味では、
診療報酬の体系というのが技術料を非常に低く評価しているというようなところに私は淵源があると思います。そういう伝統の中でやっているわけですから、なかなか方向が変わらない。
ですから、見直すべきは、そういった
一般療法なり、そしてまた食事療法なり、全体的な治療というようなものをきちっとやろうと思えば、やはりそれなりの、
診療報酬の体系を変える必要があるということだと私は思います。
また、心理的な
側面も大切ですね。お年寄りはあっちも痛い、こっちも痛い、いろいろなことがある。話を聞いてあげるだけでも治るということはありますね。話を聞いてあげるのは時間がかかる。ある老年医学といいますか心身医学の大家は、医者にかかる三分の一の方は大体心理的な病なんだと。薬は要らないという
意味ですね。医師は最良の薬であるという言葉もありますけれども、
日本の
医療の世界においては、最良の薬である医師の言葉というのが十分使えない、時間がない、そのかわりにお薬を与えるというようなことになってしまっているのじゃないかと私は感じます。
ですから、
高齢者医療の多剤投与の傾向は確かにあると思います。確かにありますけれども、これは決して、
経済的な動機から、ただ出せばもうかるから出しているのだということではない。その
一つ一つの診療のシーンで、診療の場面で、訴えがあり、病気があるから出している。ただ、それ以外のアプローチの仕方も当然あるだろう。それは、
一般療法であるかもしれない、食事療法であるかもしれない、そしてまたメンタルな部分でのケアであるかもしれない。そういうことをきちっとやれば、もっと薬を使わなくて済むような
医療というのができる。これが私は実は本当の
老人医療だというふうに思います。
老人医療というのは、
昭和四十年代の初頭に、故沖中先生が提唱されて、幾つかの大学に老年医学教室というのができました。しかし、それから三十数年たちますけれども、老年科というのは欧米では
確立した
一つのエンティティーになっておりますけれども、
日本では標榜科としても認められていない。そして、老年医学的な考え方というのはまさに
日本には根づいていないのじゃないかというふうに思います。
そういう
意味での
医療のあり方の
見直しということをまずやはりするべきなんじゃないか。そういう質的な転換を図って初めて、それで薬剤がどうなるのかということを見るべきなんじゃないか。ただ多いから困りますよと、
自己負担という一種のペナルティーを加えて減らしますよという話は、マクロの話としてはわかるけれども、現場に行ってみたら大変だということにしかならないのじゃないか。
患者さんも幸せじゃない、医者の側も余り幸せじゃない、そういうことになってしまうのじゃないかという危惧を私は抱いております。この点につきまして、
大臣の御意見、御感想をお聞きできればと思います。