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1997-04-11 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十一日(金曜日)    午前十時二十三分開議 出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    荒井 広幸君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大村 秀章君    奥山 茂彦君       嘉数 知賢君    桜井 郁三君       鈴木 俊一君    田村 憲久君       根本  匠君    能勢 和子君       桧田  仁君    松本  純君       山下 徳夫君    青山 二三君       井上 喜一君    大口 善徳君       鴨下 一郎君    坂口  力君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       矢上 雅義君    吉田 幸弘君       米津 等史君    家西  悟君       石毛 鍈子君    中桐 伸五君       瀬古由起子君    中川 智子君       土屋 品子君    土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         社会保険庁運営         部長      真野  章君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      丹呉 泰健君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     荒井 広幸君   枝野 幸男君     中桐 伸五君 同日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     大村 秀章君   中桐 伸五君     枝野 幸男君     ――――――――――――― 四月十一日  医療保険患者負担大幅拡大中止に関する請願  (北側一雄紹介)(第一七九八号)  公的介護保障早期確立に関する請願中路雅  弘君紹介)(第一七九九号)  医療保険制度改悪反対医療充実に関する  請願中路雅弘紹介)(第一八〇〇号)  厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する  請願中路雅弘紹介)(第一八〇一号)  同(矢上雅義紹介)(第一八〇二号)  同(土肥隆一紹介)(第一八七三号)  同(西川知雄紹介)(第一八七四号)  同(吉田幸弘紹介)(第一八七五号)  同(瀬古由起子紹介)(第一九〇三号)  同(中路雅弘紹介)(第一九〇四号)  同(藤木洋子紹介)(第一九〇五号)  同(山原健二郎紹介)(第一九〇六号)  国民健康保険制度抜本改革に関する請願(中  川昭一紹介)(第一八〇三号)  同(山口俊一紹介)(第一八〇四号)  同(中川昭一紹介)(第一八七七号)  同(中川昭一紹介)(第一九〇七号)  医療等改善に関する請願小里貞利紹介)  (第一八〇五号)  同(河野洋平紹介)(第一八〇六号)  同(福田康夫紹介)(第一八〇七号)  同(堀内光雄紹介)(第一八〇八号)  同(植竹繁雄紹介)(第一八七八号)  同(中川秀直紹介)(第一九〇八号)  同(森喜朗紹介)(第一九〇九号)  医療保険改悪反対建設国保組合の国の定率補  助削減反対に関する請願木島日出夫紹介)  (第一八〇九号)  同(中路雅弘紹介)(第一八一〇号)  同(不破哲三紹介)(第一八一一号)  同(藤田スミ紹介)(第一八一二号)  同(松本善明紹介)(第一八一三号)  同(瀬古由起子紹介)(第一九一五号)  療術の法制化に関する請願吉田公一紹介)  (第一八一四号)  同(平沢勝栄紹介)(第一八七九号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第一九一六号)  同(平沢勝栄紹介)(第一九一七号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(相沢  英之君紹介)(第一八一五号)  同(岩浅嘉仁君紹介)(第一八一六号)  同(江渡聡徳紹介)(第一八一七号)  同(江藤隆美紹介)(第一八一八号)  同(衛藤晟一紹介)(第一八一九号)  同(遠藤和良紹介)(第一八二〇号)  同(尾身幸次紹介)(第一八二一号)  同(大口善徳紹介)(第一八二二号)  同(大原一三紹介)(第一八二三号)  同(大村秀章紹介)(第一八二四号)  同(川端達夫紹介)(第一八二五号)  同(岸本光造紹介)(第一八二六号)  同(小坂憲次紹介)(第一八二七号)  同(佐々木洋平紹介)(第一八二八号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第一八二九号)  同(坂井隆憲紹介)(第一八三〇号)  同(笹木竜三紹介)(第一八三一号)  同(志位和夫紹介)(第一八三二号)  同(自見庄三郎君紹介)(第一八三三号)  同(高市早苗紹介)(第一八三四号)  同(武山百合子紹介)(第一八三五号)  同(棚橋泰文紹介)(第一八三六号)  同(谷垣禎一紹介)(第一八三七号)  同(土肥隆一紹介)(第一八三八号)  同(中西啓介紹介)(第一八三九号)  同(中山太郎紹介)(第一八四〇号)  同(丹羽雄哉紹介)(第一八四一号)  同(濱田健一紹介)(第一八四二号)  同(桧田仁君紹介)(第一八四三号)  同(福永信彦紹介)(第一八四四号)  同(藤井孝男紹介)(第一八四五号)  同(村田敬次郎紹介)(第一八四六号)  同(矢上雅義紹介)(第一八四七号)  同(谷津義男紹介)(第一八四八号)  同(山口俊一紹介)(第一八四九号)  同(山本公一紹介)(第一八五〇号)  同(横光克彦紹介)(第一八五一号)  同(吉田左ヱ門紹介)(第一八五二号)  同(愛知和男紹介)(第一八八〇号)  同(浅野勝人紹介)(第一八八一号)  同(岩永峯一紹介)(第一八八二号)  同(遠藤利明紹介)(第一八八三号)  同(近江巳記夫紹介)(第一八八四号)  同(高村正彦紹介)(第一八八五号)  同(滝実紹介)(第一八八六号)  同(武山百合子紹介)(第一八八七号)  同(土肥隆一紹介)(第一八八八号)  同(中村正三郎紹介)(第一八八九号)  同(根本匠紹介)(第一八九〇号)  同(原口一博紹介)(第一八九一号)  同(前田武志紹介)(第一八九二号)  同(村山富市紹介)(第一八九三号)  同(安住淳紹介)(第一九一八号)  同(井上一成紹介)(第一九一九号)  同(石毛鍈子君紹介)(第一九二〇号)  同(石橋大吉紹介)(第一九二一号)  同(小渕恵三紹介)(第一九二二号)  同(佐々木秀典紹介)(第一九二三号)  同(瀬古由起子紹介)(第一九二四号)  同(谷洋一紹介)(第一九二五号)  同(辻一彦紹介)(第一九二六号)  同(土肥隆一紹介)(第一九二七号)  同(蓮実進紹介)(第一九二八号)  同(畠山健治郎紹介)(第一九二九号)  同(細川律夫紹介)(第一九三〇号)  同(村田吉隆紹介)(第一九三一号)  同(山下徳夫紹介)(第一九三二号)  同(山本孝史紹介)(第一九三三号)  重度心身障害者及び寝たきり老人とその介護者  が同居入所可能な社会福祉施設制度化に関す  る請願八代英太紹介)(第一八七二号)  国民医療及び建設国保組合改善に関する請願  (前田武志紹介)(第一八七六号)  医療保障充実介護保障制度確立に関する  請願瀬古由起子紹介)(第一九〇二号)  健保本人二割自己負担老人医療一部負担大幅  引き上げ反対介護保障確立等に関する請願  (瀬古由起子紹介)(第一九一〇号)  医療保険制度改悪反対公的介護保障確立に  関する請願瀬古由起子紹介)(第一九一一  号)  保険によるよい病院マッサージに関する請願  (家西悟紹介)(第一九一二号)  同(石毛鍈子君紹介)(第一九一三号)  同(瀬古由起子紹介)(第一九一四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十日  看護婦交代制勤務反対に関する陳情書  (第一八一号)  医療保険制度改悪反対医療制度抜本的改革  に関する陳情書  (第一八二号)  介護保険制度抜本的見直しに関する陳情書  (第一  八三号)  児童福祉法改正に対する保育制度の拡充に関す  る陳情書  (第一八四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒井広幸君。
  3. 荒井広幸

    荒井委員 おはようございます。  委員長、そして大臣に、きょうの機会をいただきまして、大変ありがたく思っております。  医療保険あるいは医療改革と聞いて期待する内容は、人、立場によってさまざまだと思います。政府にとっては、どちらかといえば医療費削減中心に据えた観点になりやすく、また、医療機関にとっては、医療の質やサービス向上に関心を払いたいし、また、患者にとっては、いい医療を受けたいな、こういうようなことで、それぞれ立場が違うわけでございますけれども、思いは一緒でございます。それは、患者立場に立つ、こういうことでございます。  これからの日本の、そして世界も同じでございますが、政府の仕事の大きな役割というのは、形を幾ら小さくしても、小さな政府の大きな役割は、少子高齢化社会対策だろうと私は考えております。その意味で、今回私は、薬価差益から技術料、こういったことに対しての医療の質、こういったことを根本に置いた診療報酬体系ということの方向も大事であると考えておりますが、本日は、冒頭、薬、きょうはこの薬を一つのキーワードにして大臣に御所見をお伺いしたいと考えております。  製薬会社メーカーについてでございます。  公定価格薬価基準は、国際的に見ても非常に高い。そして、それが新薬と呼ばれるいろいろな開発をする場合におきましても、長期収載品目から外れて薬価が下がると、その薬、旧薬といいましょうか、それは化学式あるいは効能を少し変えて、新薬と称してまた高値で収載をされるというふうなことを聞いております。これが実は医療費高騰要因になっておるというふうに思っておるわけでございます。また、安くなった旧薬は、需要があっても安いためになかなか製造しない傾向にメーカー業界はある、こう言われておるわけでございます。ここをやはり、大臣、私は改善しなければならないのだろうと思います。  また、こうした体質が、国際的に通用する新薬開発、それはとりもなおさず国民にも非常に有益なものという意味での開発を阻害しているばかりか、一度、診療報酬の対象になって収載されていれば、十年間は安泰で、また経営も安定する、こういうようなことも言われておるわけでございます。  それじゃ、こうした体質はどこからきたのか、こういうふうに考えますと、私は、これは実は金融・銀行界と同じような護送船団方式ということなのではないかということを大臣に申し上げたいわけでございます。  つまり、薬価基準制度というものに守られて、大臣が常に言っておられますが、市場実勢価格といいますか、市場を信用しなさい、そういう意味での競争が全くない、今そういうような環境下製薬業界はあるのではないか。そのために開発意欲までも減退している。これはまさに国民不在患者不在ではないか。この護送船団方式にメスを入れなければならないのではないか、こう思っているわけでございます。  また一方で、製薬会社厚生省のOBが天下っているということもございます。度を超える天下りは非常にあしきもたれ合いを生みます。もたれ合いは、医療の質の向上に逆行する、それどころか、医療費コスト、これを高くしている要因でもあろうと思います。  ここに私は大臣政治的決断を期待しておるわけでございまして、日本薬価は外国と比べて高い、現行薬価基準のもとで薬剤費医療費を高騰させている要因ではないか、そして、そうした競争原理が働かない現行薬価基準制度の抜本的な見直しに取り組むべきではないかと考えておりますが、大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。
  4. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 ことしの国会では、予算委員会でも、また本委員会でも、薬価に対する問題指摘、御批判がかなり多く、私もこの問題を根本的に改めるべきだというふうに考えております。今国会におきまして法案が成立次第、できるだけ早い時期にこの薬価基準制度見直しに本格的に取り組んでみたい。その際にも、今御指摘のように、市場取引実勢に合ったようないい制度がないものか、また、今委員会でそれぞれ言われております批判にたえ得るような制度を構築できないか、真剣に検討してみたいと思います。
  5. 荒井広幸

    荒井委員 冒頭、このお話を申し上げましたのは、実は、今度の一回五百円、そして一種十五円ということについて非常に関連をするからでございます。  手順論といたしましては、少子高齢化社会ビジョンを描いて、それじゃその中で社会保障制度全体をどういうふうにしていくかというあり方や構想があって、そのもとでまた今度の医療保険改革等々の中長期の構想が導かれるべきであろう、その上で、当面の医療保険対応、政管健保の赤字の問題もある、そういったことで、赤字対応なんですよというような今回の改正であると私はとらえているわけでございます。  問題は、患者皆さん国民に対して、いかに質の高い医療サービスを提供するか、こういう質の高い医療の提供の議論がどこかに忘れられつつあったなというふうに思うわけでございますが、大臣国会での御答弁などを聞いて、そしてまた今の与党三党あるいは自民党内での議論などで、急いでそこをつくっているということではありますけれども、それにしても手順がちょっと今回は悪かった、それによって特に高齢者皆さんの御理解を得るのには非常に難しい問題があると私は思っているのです。  しかし、私は評価している面もございます。それはコスト意識です。高齢者方々も、私も選挙区に行きますと、お昼御飯を食べなくてもいいぐらい薬を飲んで、げっぷなんて言っているぐらいの話がございます。それは薬が出ているから悪いというようには一概に言えないのです。薬をもらっていると安心だということもあります。ですから、そういう多面的な評価が当然必要なわけでございますが、ホッピングなどということもあるわけでございますから、医療機関を回るということもあるわけですから、コスト意識を持ってもらうという意味では、この定率二割、三割、定額五百円、そして一種十五円、こういうことはある意味では私は大切なことだったと思っております。  しかし、薬価基準制度抜本見直しによって医療費高騰の一因が除かれるということであったら、そこが新しい財源になるわけですから、その上でもなおかつ、今のようなことをしなければどうしてもやりくりができないのですよ、お互いの助け合いという視点から、負担という視点からどうだろうか、こういうことでなくては、私はやはり、赤字的手法でまず患者皆さんにしわ寄せをしていると言われていても、これは仕方のないことではないか、こういうふうに思っているわけでございます。  そこで、患者負担見直しコスト意識を持ってもらうという意味では有意義であった反面、医療制度全般にわたる医療改革構造の原案がなかなか見えない、姿が見えない。質の向上医療費効率化に取り組む、そういう目に見える形があって、その上で患者皆様方に今回の負担をお願いするということであるべきだと考えていますが、手順が逆だったのではないかということを含めて御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回、いろいろ御意見があると思いますが、目に見える患者負担増の今回の案が出てきたからこそ、それぞれ意見が出てきたのだと思います。  各党においても、また各議員においても、意見が違う点がたくさんあります。そういう中でいろいろ不備があったと思います。足らない点もあると思いますが、第一段階として、今回の法案を御審議いただく段階になった。そしてこれから、これがすべてとは思っておりません。段階的に改革を考えていかなければならないのですが、まず第一段階に今回の案を出して、そしてこの委員会具体案が出てきて初めていろいろ具体的な提言なり意見が出てきている、その意見を踏まえて本格的な改革に踏み込んでいきたいと思います。
  7. 荒井広幸

    荒井委員 大臣からこれが第一段階であるということもまた本会議場でもお聞きをいたしておりますが、それから進んでいく、こういう手順をお示しになっているわけでございます。  私は、その中で、また財源対策ということでいえば、医療情報だと思います。最近では、いわゆる情報通信分野、マルチメディアなどという言葉も非常に使われておりますけれども、医療の質の向上のために、この医療情報情報化というようなこと、高度情報化取り組み、こういったことは医療の質の向上が一番のねらい目でありますが、同時に、医療コストを軽減する有効な手段だと言われて、クリントン、ゴアのアメリカ大統領、副大統領チームスーパー情報ハイウエー構想の中で試算をいたしております。  厚生省にこの間お願いしましたが、まだその試算実用段階にいっていないものもありますから出ておりませんが、大体のところを、早くお取り組みをいただいて、医療の質にこれぐらい有益であって、なおかつ医療費削減にこれだけ有効である、こういった道筋を見せていただきたいと思うのですが、現段階のところの具体的な取り組みと今後の方向について、これは簡単で結構でございますのでお知らせをいただきたいと思います。
  8. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療分野における情報化取り組みということで現在最も力を入れておりますのは、電子カルテ開発を進めていくということでございます。この電子カルテ開発研究中心にしまして、同時に検討しておりますICカードあるいはレセプト電算処理システムなど他の医療情報システムと統合する形での情報システムというものの構築を目指しているところでございます。  なおまた、かかりつけ医を支援するという形から、平成九年度に遠隔医療推進のためのモデル事業予算を計上しているところでございます。
  9. 荒井広幸

    荒井委員 アメリカではこの情報化、今お話がありましたようないろいろな電子カルテネットワークづくり等々で、試算値はいろいろあるのですが、約一兆から二兆円ぐらい削減できるというようなお話もありますが、一番ねらい目は医療サービス、質でございます。  そういった意味において、厚生省中心取り組みをしていただいておりますが、この質を受ける立場でいえば、過疎地帯、こういった方々が非常に福音に浴するわけでございます。福音でございます。そういう意味で、早く体制を整えていただくように同時にしていただくということを要望いたしたいと思っております。  こうしたことで財源が実は浮いてくる、全体に質がよくなってくる、こういうことに私たちは取り組んでいかないと、患者あるいは国民負担ということにばかりどうしても手っ取り早くいってしまう。これは私自身反省しなければならない考え方だなと思って自己反省をいたしているわけでございます。こういったところでどれぐらいの財源が浮いてくるのだということも実は見えないと、先ほどの大きなビジョンの中の問題は解決されないわけでございます。  そういう意味で、いずれ大臣のお取り組みのようにこれから順次進めていくとするならば、財源も新しく浮いてくることでございましょう。場合によっては、いろいろな形での疾病も出てきておりますし、高齢者皆さんもふえてまいります。経済低成長でなかなか税収も上がりませんから、一方では御負担をお願いしなければならないということも当然でございます。大臣もこれは言っておられます。しかし、そのバランスの中で経費を削減していくという、情報化や先ほどの製薬業界体質みたいなものを含めて薬価基準見直していく、そんなことを組み合わせてやっていけば浮いてくる財源がある。その財源が見つかるまでの間の、私は、今回の五百円、十五円というものは時限的措置として明言するべきではないか、こういうふうに考えております。  薬価基準見直し医療分野における情報化推進、そして先はどのようないろいろな問題点を考えてまいりますと、医療の質の向上医療費削減ができるだろう。できることになれば、今回の患者に対する負担措置は解消されるべきでありまして、新たな負担ということもあるかもしれませんが、そこまでの時限的措置として今回の改正をしたらどうかと私は思っております。御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  10. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回の法案を時限的にせよということですが、私は、これからどのような改革案が出ようとも、今程度負担より下がることはないと思います。ほかのむだを省いて浮いた費用を回したとしても、医療機器医療技術の進歩は日進月歩であります。質の向上を考えるならば、私は、どのような改革案が出ても今の患者負担をもっと下げるという案は出ないと思います。  それは、患者負担、公費、税金、保険料、この組み合わせしかないんですから。患者負担というのは安易な方法じゃありません。政党政治家にとって嫌なんです。安易だから借金を若い世代へ回してきたのです。赤字国債の方がよほど安易です。それを避けなければいかぬということで、今回の案は第一段階である、どのような案が出ても今より受益者負担が低くなることはあり得ない、私はそう思います。
  11. 荒井広幸

    荒井委員 そうなりますと、国民皆さん負担をしていただく、これはどなたも否定をされないと思います。ただ、その手順、そしてまたその形、こういったものについての工夫をするのがまた政党政治家であろうと思っております。  その意味におきまして、大臣の御主張、私はそのとおりと思いますけれども、今回は、患者方々、一般は定率で二割から三割までにアップをいたします。高齢者定額五百円の中で薬剤費負担している。にもかかわらず、また十五円というものを、特にこれは高齢者という形でお聞きいただきたいのですが、十五円を取るということになりますと、なかなか形としてもこれはわかりづらい。五百円の中にどの程度のものか、これはまたいろいろな検討を要するわけでありまして、本委員会でも議論にもなろうかと思いますが、その薬剤費負担は五百円に入っているのだという形で私は考えるべきではないか。  そういう意味で、高齢者にとっては非常に重い負担に今回は一挙にいってしまうだろうという意味で、五百円に加えて十五円の薬剤負担を求める、これはある意味で二重取りである、こういうふうな意見もあるわけでございまして、私も今のように考えているわけでございますが、別途二つ持つような製剤負担を求める、製薬負担を求める理由はどこにあるのか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  まず、今回お願いをしております高齢者の外来の定額負担五百円でございますけれども、これは受診をいたしますごとに、受けました医療に係る費用の多寡、いわば多少にかかわりませず、一律に一定の額、つまり五百円の御負担をお願いするということでございます。したがって、この五百円に薬剤費が入っているとか入っていないということとは別に、受けた医療の費用の額にかかわらず負担をお願いするという形で、まず五百円をお願いいたしております。  一方、薬剤負担につきましては、これは若人、老人共通でございますけれども、我が国におきましての薬剤使用の実態等も考えまして、薬剤使用の適正化を図るという観点から、定額負担に加えまして、別途に、薬剤に着目した負担をいわば上乗せしてお願いするものでございます。  したがいまして、薬剤部分につきまして二重取りというような考え方ではございませんで、全体といたしまして、今お話もございましたように、どうしても出てまいります老人医療費というものの背景の中で、患者負担の引き上げにつきましては、全体として医療保険制度を維持し、また、運営を安定化していくためには、どうしても高齢者にも応分の負担を求めていかなければならないということでお願いをしている、ぎりぎりのお願いだというふうに考えておりますので、御理解を賜りたいというふうに考えております。
  13. 荒井広幸

    荒井委員 慢性期の方々、例えば糖尿病の方々は、一番は内服薬が有効な治療手段ということでございますけれども、そういう場合には、特に高齢者の方が多いわけでございますが、非常に負担が重くなる。コスト意識と応分の負担、そしてまた安心を含めた適切な治療をいただいて治癒していくというような意味では、本当に難しい問題だなということを感じながら、コスト意識を目覚めさせて御負担をいただくということはやむを得ないとしても、再度御検討をお願いしておきたいと思います。  続きまして、現在、高齢者方々にこのように負担をお願いするわけでもございます。ある意味高齢者皆さんにも反省をしていただかなければならないことは、先ほど冒頭に申しましたようにあるわけですが、その高齢者方々に対して、ちょっと話を移させていただきますと、今、厚生省で老人日常生活用具給付等事業ということをずっとやっていただいて、平成五年には手すりやスロープ、歩行器などの追加をしていただいておりますし、入浴補助用具などの補助もしていただいております。  こういうような要介護老人あるいはひとり暮らしの老人に対してできるだけのお手伝いをしよう、こういうことは非常に有意義なことでありますますこれから高齢者の方が多くなられます、同時に多様なニーズというのも出てまいります。これを満たすにはなかなか難しい問題もございますが、厚生省として、この日常生活用具の給付事業、現在のところ需要を十分満たしているとお考えですか、どうでしょうか。
  14. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 日常生活用具給付等事業についてのお尋ねでございます。  今先生お挙げになりましたように、この事業は、援護を要します老人等に対しまして、日常生活を進めていく上でどうしても、介護を要する状態であるがゆえに、あるいは援護を要する状態であるがゆえに必要になってまいります日常生活用具、例えば特殊寝台でございますとか、車いすでございますとか、現在、十六品目のメニューを用意いたしておりますけれども、こういったものを貸与あるいは給付という形で日常生活上の便宜を図っているわけでございます。  この対象となります日常生活用具につきまして、それで十分かというお尋ねでございますけれども、要援護の方々の態様あるいは地域の事情、さまざまなニーズがございますので、私ども、今、国の事業としてやっておりますのは、国費を投入して給付または貸与をするにふさわしい、そういう性格上、全国的に共通して最低限必要とされる品目あるいは性能等を有するものを補助対象にしているわけでございます。  したがいまして、そのほかに、現実としましては、地方自治体等におきまして、それぞれの判断におきまして、地域ニーズに応じた独自の上乗せの補助等を行っておられるというのは実態としてございます。こういったものと相まちましてそれぞれの方々の需要におこたえをしているということで、こういった国の事業と地方自治体の事業との組み合わせということについては、それなりに有用なことであろうというふうに考えております。
  15. 荒井広幸

    荒井委員 大臣、ここは非常に大切なところだと思うのです。例えば、東京都はそれにプラスして六つやっているのです。東京は都市ガスが多いですからガス安全システム、それから空気清浄器、こういったものを入れているのです。しかし、自治体で財政力がなかったり、そういう場合には、先ほど、国のお金を投入して最低限のことということですが、これは本当に言うのもつらいわけでございますが、結局、財政力がある自治体は、今の東京都のようにプラス六つの品目を給付しているわけでございます。そうなると、全国の方々が、やはり量も多くなる、それぞれのニーズも多様化してくる、こういうものに追いつくというのはなかなか国の予算では難しい、私はこういうふうに見ているわけでございます。  そこで、大臣に、時間がなくなってしまいますが、あと二間ほどあるのですが、一方では、どこまでが適正か、どこまでがミニマムか、国が最低限保障するべきことかということは、これは難しい問題があります。財源、マンパワーも必要だ、新ゴールドプランもいろいろ悩んではいる、こういったところで、小さな政府ということは、つまり、経済効率性とか、あるいはむだをなくすとか、そして大切なところに二倍の効果を発揮しよう、こういうようなことでもあろうと思います。この意味では、小さな政府、私は賛成でございますが、しかし、大きな役割があるはずだ。小さな政府の大きな役割、それは医療、福祉等の社会保障の分野であろう、こういうふうに考えております。  こうした小さな政府の大きな社会福祉・医療分野役割について、大臣の御所見を手短にお聞かせいただければ幸いでございます。
  16. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医療、福祉の役割というのは、これからどういう時代になっても大変重要なものがあると思います。まず、働くにも健康でなくてはならない、そして病気になったときには適切な医療ができるだけ軽い負担で受けられるという、医療保険制度の安定的運営というのは今後の社会を考えても大変重要であります。そして、国民すべてが福祉国家の建設を望んでいる、これはどの政党でも議員でも同じだと思います。  経済成長を何のために図るのか、それは福祉の充実のためと言っても過言ではないと思います。福祉の充実というのは経済成長を図って実現していくのだ、この経済成長の成果を福祉の充実に充てていくのだという方向で今まで日本国民はやってきたわけであります。もちろん、産業基盤の整備、いろいろ福祉の範囲のとり方は大きいと思いますが、これから少しでも豊かな生活になりたいというのは全国民の願望でありますので、その豊かさを実現するためにも、医療、福祉、年金、介護等、いわゆる社会を支える社会保障制度充実は大変重要なものになると私は思います。
  17. 荒井広幸

    荒井委員 ありがとうございます。  そうしますと、私は、全体的な分野の中で、特に、先ほど日常生活介護機器のお話をしましたけれども、この機器に対する、いろいろなものに対する要望が非常に多いのです。しかし、大臣は、今おっしゃいました、経済成長の恩恵なのだと。しかし、そうしなくてもできる場合があるということでございます。  それは、例えば、これは郵政省でございますけれども、簡易保険福祉事業団は全く独立採算で郵政事業をやっております。一銭の税金も使っていない。しかも、全国にマンパワーがいる。そして、そこで集められたお金を公共にこれを寄与する、これが財投でございますけれども、簡易保険福祉事業団は、今度は皆様方と御相談して、東京ではそういうことをやっているけれども、ほかではできない、なかなか需要に合わない、そこを今度は介護の機器などを、これを協力して自治体の皆さんとやっていこうじゃないか、こういうような展開も一つには考えられるわけでございます。  こういうことは非常に重要なことだと私は思っております。まさに厳しい財政状況の中にあって、社会保障が非常に大きな役割を果たすわけでございますけれども、今はどのような、特殊法人の中にもそうした独立採算で全く税金を使わない形におきながら国民の多様な福祉、介護、医療のニーズに合わせていこうという保健福祉事業が行われているということを大臣にぜひひとつ申し上げたいと思いますのと同時に、そういうようなものの果たす役割は、特殊法人を含めまして、一つ一つ見ていって、これはやはり検証して、必要なものは必要だとする評価が大切だと私は思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それぞれの特殊法人は存在しているから意義がある、役割があると言われればそれまででありますけれども、これは特殊法人だけの問題ではないと思います。財政投融資制度、そして財政の費用と効果を考えなければならない問題である。  この財政投融資制度という制度を考えてみますと、特殊法人は、個人個人は黒字であったとしても、財政投融資全体から見れば、多くの国民負担をもって事業展開なされている面もあるわけであります。それは一々特殊法人一つということでなく、私は、今、財政全体、財政投融資全体の中で役割見直しを図っていかなければならない問題ではないかと考えます。
  19. 荒井広幸

    荒井委員 大臣、結局、思いやりとか助け合いというものは本当に大切なもので、そこで心的にも解決できるものもある、あるいは財政に寄与するものもあろうと私は思います。  そういう中で、先ほど大臣が、今回の負担は第一歩である、そして順次とおっしゃいましたが、私はその手順だと思うのです。特殊法人も、一遍になくして必要なものが後で生まれてくるというのではなくて、一つ一つをスクラップ・アンド・ビルドしながら、しかも、例えば税金を使わないでやっているようなものもある。それが全国くまなく、東京だけが六つの補助対象を持っているというのではなくて、全国に広げてそういうものをやっていく、そういうことをお考えいただくようにお願い申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  20. 町村信孝

    町村委員長 田村憲久君。
  21. 田村憲久

    ○田村委員 自由民主党の田村でございます。  本日は、健康保険法等一部改正案に対して御質問をさせていただきたいと思います。  実は私は、国会議員三代目でありまして、じいさんも国会議員をしておったのです。そのじいさんの前のひいじいさんが医者でございまして、田村医院という医院を、今の伊勢の地、昔は宇治山田でありますけれども、山田の地で営業をいたしておりました、身の上話をするわけではないのですけれども。  いろいろとこれは大変はやった医院でありまして、前に屋台が並ぶぐらいたくさんの患者方々が来られた、そんな話をいまだに漏れ伝わって聞いておるわけであります。資産をたくさん残したわけなんですけれども、話を聞きますと、金持ちからはお金を取るけれども、一般のお金のない方々からはお金を取らない、ただで診療する。それでも財産が残ったということは、伊勢市は金持ちがたくさんいるのか、または金持ちからは本当に無理にでもたくさんお金をもらったのかという話にもなるわけでありますけれども。  そう思いますと、昔は、医療を受けられない、本当にお金がないがために医療を受けられなかった方々というのがたくさんおられたのである。そんな中で命を失われる方々も結構おられたのではないのかな、そのようにも推察をするわけであります。昭和三十六年に国民保険が達成いたしましてから日本の平均寿命というのは大変延びたわけでありますし、国民医療に対して果たした役割というのは大変大きいものがあるのであろう、そのようにも感じておるわけであります。  一九八四年十月に健康保険法の改正がありまして以来、今に至っておるわけでありますけれども、いよいよもう保険の財政状況自体も厳しい、そんな中で改正をどうしたってしなければいけない、そういう状況に来ておることは、これは私も十分に実感をしておるわけであります。  ただ、それが、全般からの改革といいますか、そういうものと、一時的の、急場しのぎの対策といいますか、そういうものとこれは根本的に考え方が違うのであろうと思います。今回の改正というのは実は急場しのぎの改正であろう。大臣はそれに対して、これがないことには抜本的な改革はできないから入り口ですよというようなお話もあるわけでありますが、私は、抜本的な改革というものも早急に詰めていかなければならない、そのようにも思うわけであります。  今までの国民保険、成立要件というのが幾つかあったと思うのです。どういう状況でこれが成立したかと考えますと、例えば日本が公衆衛生というものが高水準でありまして、いろいろなアジアの諸国から比べると病気の発生率が大変低かった。最近ではいろいろな病気が出てきておりまして、O157なんということを考えますと、公衆衛生はちょっと落ちてきておるのかな、そんなことも思うわけでありますけれども、これが一つの要因。もう一つは、経済が高度成長を遂げておりましたから、医療費の伸びを覆い隠しておった、こういう部分もあるのであろうと思います。そしてもう一点が、人口構成が若い世代が多かった。ほかにも要因はたくさんあると思うのですが、主にこの三つの要因があってこの国民保険制度が成り立ってきておる、今のほとんどの医療サービス保険の中で見ると、この制度が成り立ってきておるのであろうと思います。  ただ、現状を見ますと、どうも経済の方は高度成長というのはもう望めない。また、人口構成というのは、もう御承知のとおり、高齢化が極度に進んでおりますから、これも負担が若者にどんどんふえていく状況になってきておる。そう思いますと、当然のごとく、これは財政が破綻して当たり前なんだな、そんな感もいたしておるわけであります。  そこで、政管健保でありますけれども、平成九年に約八千億円弱ぐらいの赤字が出る、このままでいきますと十年には一兆円を超えるというような、そういう数字が出ておるわけでありますが、政管健保以外に、例えば国民健康保険でありますとか、また老人保健制度もそうでありましょう、組合健保もそうでありましょう、今どういう状況、現状になっておるのか、また、このままでいったらどのような見通しになっていくのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに社会経済状況が変化をし、先生がおっしゃるような状況のもとで、医療保険財政、非常に厳しくなっておるわけであります。  そこで、政管健保については、今先生がお触れになりましたけれども、現行制度のままで参りますと、平成九年度では八千三百十億円ほどの赤字が見込まれておりますし、十年度になりますと一兆円を超える赤字になってしまうというふうに推計をしております。  組合管掌健康保険の方につきましては、これは現在、平成七年度の状況が出ておりますけれども、これが全体としては約千二百億からの赤字ということになっておりまして、もちろんこれは、各個別組合ごとに財政状況が異なっておりますから財政が黒字の組合もありますが、トータルとして千二百億強の赤字、全体の組合の約六三%が赤字を計上しているということでございます。そして、現行制度のままでいった場合には、平成九年度には四千五百億ほどのトータルとしての赤字になるのではないかというふうに推計をいたしております。  それから、国民健康保険でありますが、市町村国民健康保険で見てまいりますと、平成七年度でトータルとして千六十九億の赤字ということでございます。全体の市町村の中の約六六・四%が赤字という格好になっておるわけでございます。そしてこれも、現行制度のまま推移いたしますと、平成九年度には二千六百七十億ほどの赤字が見込まれておる、このように推計をいたしております。  なお、老人保健につきましては、これは各健康保険制度からの拠出金という格好でやっておりますので、そういう意味では、これ自体は、収支相償うような形で運営がされておる、こういうことでございます。
  23. 田村憲久

    ○田村委員 大変な赤字が、現在もそうでありますし、これからも見込まれておるという、そんな状況であるのだと思います。  政管健保、これは大変厳しい状況でありますけれども、政管健保ということになりますと、やはり政府の責任というのは大変重いわけであります。なぜ、こんな状況になるまでほったらかしになっておったのか。これは大変な問題でありまして、急に、財政状況が悪いから保険料を上げますよ、財政状況が悪いから負担もふやしますよ、これは無責任な話であります。なぜ、このような破綻を来すのに今まで対策を講じてこられなかったのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 いわゆる医療保険制度全体が構造的な赤字体質に陥っているということは数年前から言われておるわけでありまして、そういった意味では、最近の状況としては、平成七年からおおむね二年間ぐらいかけまして医療保険審議会でいろいろ抜本的な対策について御議論をいただいてまいりました。そして、昨年の十一月の二十七日に建議をいただいたわけでございます。  ただ、そういった中で、まさに各項目についての具体的な改革案というものについてまでまとめる状況には至らなかった。一方、政管健保を初めとする医療保険制度の財政構造はただいま申し上げましたように非常に悪化をしておる、このまま放置しておくと制度そのものが崩壊の危機に瀕してしまう、こういう状況になるわけであります。  そこで、この制度全体の抜本的な改革を実施していく、これは当然の前提でありますけれども、そういった中で、現下の窮迫した医療保険制度の財政の安定をまず確保していく、これが当面急がれるということで、第一段階として、今回の給付と負担見直し改正をお願いしておるということでございます。  これをもっと早い段階から具体的な案を持って着手していくべきであった、これは私どももそのとおりだと思います。そういった意味ではまことに申しわけないというふうに思っておりますけれども、しかし、現下の制度をまず運営の安定を図り、そして、直ちに制度の抜本的な改革というものを国民的な合意を得ながら進めていく、そして、次の世代にこの医療保険制度を盤石なものにして引き継いでいく、これが我々の使命ではないか、このように思っております。
  25. 田村憲久

    ○田村委員 いずれにいたしましても、国民に対してある程度早い時期から、保険料にいたしましても、負担に対しましても、どれぐらい上がりますよというような準備期間というものはある程度必要であったのじゃないのか、そのようにも思うわけでありまして、内容というものが、やっと国民に対してこういう厳しい状況ですよということがわかってまいりましたけれども、もっと早い時期からこのようなことが十分にわかるような、そういう体制をぜひとも組んでいただきたかったな、そのように思うわけであります。  ただ、その中で、いろいろな推計があると思うのですけれども、どうも今までの推計が、当たらないといいますか、今回も厚生年金が、今まで、二〇二五年に負担分が月収の大体二九・八%ぐらいだろう、企業との折半でありますけれども、そんな話であったわけなんですが、これがどうやら三四%を超えてしまうなんという話が出てまいっております。三〇%が限界点かなというふうに年金審議会の方で答申が出ておりますから、この給付の水準を切り下げなければいけないというような議論もあるわけでありますけれども、このような将来にわたっての数字というもの、これはどうかもう少し精度を上げていただかなければいけないのじゃないのかな。そうでないと、いつまでたっても、この程度で大丈夫ですよと言っていたのが、また何年かすると、さらにもうちょっといただかなければというような、そういう追いかけごっこみたいな形になるわけでありますから、よろしくお願いをいたしたいと思います。  もちろん、政治家の責任というのもこれは十分にあるわけでありますから、私も、政治家といたしまして身を律しましてこういう問題に取り組んでいきたいな、そのようにも思っております。  ところで、この問題、先ほどお話もありましたとおり、今回の改正は対症的な改正であろうという話であります。やはり医療保険制度だけじゃなくて医療制度自体を抜本的に改革しなければいけない、そういう議論になってきておるわけでありますが、これがなかなか具体像、具体的な姿というものが見えてこない部分もあるわけであります。この基本方針といいますか、将来の方向性という言い方はちょっと無責任かもわかりませんが、具体的に改革方向性というものをぜひとも大臣からお聞かせいただきたいと思うのです。
  26. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 なぜ、これまでこういう深刻な状況を放置してきたのかというお話も先ほどありましたが、私は、それは医療保険制度だけじゃないと思います。国全体の財政状況もそうであります。  何が改革の原動力か。いろいろありますが、その一つの原動力は、行き詰まるということであります。今回、医療保険も財政も行き詰まってきた、だからこそ行封攻改革をしなければならない。医療保険もこのままではもたないから根本的な見直しが必要だというのは、行き詰まってきたということをようやく政党も政治家も国民も認識してきたからだと思います。  そういう中で、今回、第一段階の案を出しましたけれども、今、もう根本的な手直しをすべきだという声が大方の意見だと私は受けとめています。単なる保険制度だけではありません。先ほど申しました薬価見直し、あるいは診療報酬体系見直し医療提供体制の見直し、これは、この委員会の審議で出た意見というものを踏まえて、総合的な抜本策が私も必要だと思っています。  今までなぜ放置してきたのか。私は、ほとんど議論は出ている、問題点は列挙されている、あとはどういう決断をするかという段階に来ているのではないか。そういうことから、今回の法案が成立次第、できるだけ速やかに総合的な、根本的な具体策を厚生省としてもつくりたいと思います。それを世論の批判に供して、よりよき改革案をつくり上げたいというふうに決意を固めております。
  27. 田村憲久

    ○田村委員 まさに大臣のおっしゃるとおりでありまして、国民も、ある程度現状を見れば、負担をしていかなければならない、そんな時代になってきておるのだろうと思います。また、もちろん医療制度自体も、体制も含めてでありますが、それに甘えることなく合理化を進めていかなければいけない、むだなものも省いていかなければいけない、それであって、より充実した医療というものを国民に提供していかなければならないであろう、そのように思うわけであります。  そこで、今回、いろいろな意味医療費の伸びが一つ問題になってきておるわけなんですけれども、今約二十七兆円、これは普通でいいますと、医療産業という目で見ますと大変有望な産業であるはずなんです。パチンコ産業が大体それぐらいだと思うのですが。そう考えますと優良な成長産業であるわけでありますけれども、保険というパイの中においてはこれが重荷となってきておる、そのようにもなってくるわけであります。  それじゃ、これからは公的保険という部分で見る部分と、民間の保険や自費で見る部分と、そこを分けていかなければいけないのじゃないですか、そういう議論も出てきております。例えば医療の部分でも、大変有能なお医者さんに手術していただきました場合に、そのお礼といたしまして、幾らか包むなんという話がよくあります。これは、事の真相はわかりませんけれども、いろいろな話を聞く中で、その合計額の推計が三千億にも四千億にもなるというような、そんな話を言われる方もおられるわけであります。ということは、よりいい医療に対しては、国民も自費でもお金を払うということも言えるのじゃないのかな。  ただ、そういう意見がある反面、しかし最低限の医療というものは、これは公的な部分でしっかりと担保していかなければいけないのであろう、そういう意見もあります。でありますから、例えば診断でありますとか治療や看護、そういうものに関しては公的保険で、部屋代とか寝具、寝巻き、給食、こういうものは自費でというような、そんな分け方をすべきである、こういうことを言われる方々もおられます。  なかなか難しい議論で、どこまでが中心的なコアの部分であって、どこからがその周辺的な部分かというのは、これは議論が分かれるわけでありますけれども、当然、財政的な裏づけを考えますと、どこかででは区切っていかなければいけない、そういう状況に来ておるのだと思います。何もかも保険で見るのはもう無理な時代が来ておるのだと思います。  今、厚生省の方と言ったらおかしいかもわかりませんけれども、そのコアの部分と周辺の部分、大体どういう基準でお考えになっておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  28. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに医療の伸びというのは、毎年、国民医療費も一兆円に及ぶ負担がふえているわけでありまして、そういった中で経済が非常に伸びが低いということで、そのギャップがどうしてもある。そういったギャップをどういう格好で負担していくのか。これは裏返していえば、公的医療保険でどこまでカバーしていくのか、こういうことでございます。  これまでも、そういった意味では、まず必要な医療、この必要な医療というのはまさに治療部分あるいはまた看護の部分、そういったところになってくると思いますけれども、そういったものについては公的医療保険でカバーしていくということを原則としてやってまいっておるわけであります。ただ、これにつきましても、例えば医療技術の進歩というような中で、非常に高度な先進的な医療というものもどんどん入ってきております。こういったものについては、一定額までについては保険でカバーし、それを超える分については患者さんに御負担いだだくというようなものもございますけれども、基本は今申し上げたようなことであります。  それから、例えば入院のときの食事代、こういったものについては、在宅の患者さんとの負担の公平の問題とか、あるいは患者さんの選択の幅の拡大というようなことから、この辺のところの一定額を御負担いだだくというような考え方、それからまた室料等については、特別な部屋に入るような場合については患者さんに一定額は御負担いだだくというようなことでやってきております。  大方の方向としては、今先生のお話ございましたような形の方向でやってきておりますけれども、これからそういった内容をどこまでどういうふうに負担していくのか、これは大いに国民的にも議論をし、合意を得ていかなければいけないだろうというふうに思っております。
  29. 田村憲久

    ○田村委員 さて、医療費を増大させている原因の一つに病床数が過剰であるという話もあるわけでありますけれども、大体、この病床数と入院医療費との相関関係というのは大変関係が強いというふうな話があるわけでありまして、係数が〇・八九八なんということも言われておるわけであります。  二点一緒に質問させていただきたいわけでありますけれども、一点は、この過剰病床数の適正化策として具体的にどういうことをお考えになられておられるのか。  もう一点は、平均の在院日数というのはこれまた日本は大変長いわけでありまして、例えばドイツが十五・八日、フランスが十一・七日、米国が八・八日という中で、日本は三十六・二日というような数字が上がってきております。もちろん、社会的入院なんという問題があるわけでありまして、これは公的介護も含めた中でこれから適正化が進められていくと思うのですが、高齢者以外の方々の在院日数も長いという数字が出ております。この在院日数の長期化の是正策、これは具体的にどういうことを考えられておるのか。  この二点、お答えをいただきたいと思います。
  30. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 初めに、病床数の適正化策ということでございます。  日本全体で見ますと、医療計画上の必要病床数というのは百二十万床でございますが、全体で百二十五万床ということで、五万床から六万床過剰だということでございます。  具体的な対策として現在とっておりますのは、まず一つは、地域医療計画に基づきまして、病床過剰地域での病床の新設あるいは増設については事実上認めないという措置でございます。もう一点、過剰地域におきます対策としては、医療機関の建てかえ等に対します補助金の交付ということに関係いたしまして、過剰病床地域では病床数を一〇%以上削減するということを補助の要件としております。  なお、昨年の十一月にまとめられました国民医療総合政策会議の中間報告の中では、この病床数の適正化ということに関連いたしまして、今先生がお触れになりました、入院期間が長いということから、入院期間を短縮する、あわせて必要病床数を見直すということ、それから、現在の必要病床数とされている枠の中で急性期の病床と慢性期の病床というのを分けたらどうかという考え方、それからもう一つは、これは今後の課題でございますけれども、現在の過剰病床の地域におきます医療法上の許可のあり方、あるいは保険医療機関の指定の取り扱いというものを検討すべきではないかというような意見がまとめられておりまして、私どもとしては、こうした指摘を含めて、今後、この病床数の適正化ということについて具体的に対応を考えていきたいというふうに考えております。  なお、在院日数が長いということにつきましては、今申し上げたこととも若干重複いたしますけれどもへやはり先ほどの、例えば療養型病床群というような形でもって、慢性疾患のものについてはそちらの方に主としてやっていただくとか、あるいは、言われておりますようないろいろな、職員数の見直しとか、そういうようなことを含めて対応していく必要があるというふうに認識をしております。
  31. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 在院日数の適正化、これは、一方、医療保険サイドの方でもその対策というのを講じてきております。  最大のものは、診療報酬の中でそういったインセンティブが働くようなことを取り入れてきておるわけでありますが、一つには、入院時医学管理料というのがございますけれども、これも入院期間が漫然と長くならないように、めり張りのきいた形での支払いをしていくというようなことが一つございます。  それからまた、在宅医療推進していこうということで、とりわけ寝たきり老人の関係では老人在宅総合診療料というようなものを創設する、あるいはまた訪問看護制度というものを創設するというようなことで取り組んでおります。  それから、病院に入院している方々が退院した後のきちっとしたアフターケアができるように、退院計画というものをきちんと策定していただく、そして、その後の指導というものをきちんとやっていこう、それからまた、入院患者についても、入院したときに診療計画というものをきちっと立てて、そして、できるだけ早く退院できるような対応をしていただこうということで、診療報酬の面においてもそのようなものを設けたりいたしまして、できるだけ在院日数の適正化を進める、こういう努力をしております。
  32. 田村憲久

    ○田村委員 時間がなくなってまいりました。質問を飛ばさせていただくわけですけれども、本当は薬剤の問題も質問させていただきたかったのです。薬剤メーカーがもうけ過ぎだという議論もあります。ところが、反論としましては、営業利益率は高いけれども、総資本利益率は他産業よりも低い、そんな考え方もあるようであります。事実、外国の大手製薬会社の三分の一ぐらいしか利益はないですよ、そういう議論もあるわけでありまして、なかなか私ども、素人と言ったら変ですけれども、そこら辺のところがわからないわけであります。そういう分析というものを、また国民への開示というものもぜひともお願いをいたしたいわけであります。  一点、医療機器の問題というものを御質問させていただきたいわけなんですけれども、心臓のペースメーカーなどの医療機器、特定保険医療材料、これが高いという話が言われておりまして、是正をするという話のようでございました。高額なこの特定保険医療材料は、年間大体六千五百億円ぐらいの市場があるらしいのですが、医療費の二・五%ぐらいというふうにお聞きをいたしております。  今、七百五十種類ぐらいのこの材料について、市場実勢に基づいて公的価格を決め、保険で請求をされておられるのであろう、そう思うわけなんですけれども、ペースメーカーが大体平均百六十万円、血管治療用のバルーンカテーテルが約三十万円前後、内外価格差三倍だというような話も聞くわけであります。この輸入医薬品の内外価格差が大体二倍程度におさまるようにという話でありますから、そのような意味からいたしますと、どれだけ高くても二倍ぐらいまでに抑える必要があるのだろうと思うわけであります。  この点、保険の支出が減っても、その差額が自己負担になってしまいますと、これは大変な問題でありますから、しっかりと流通価格を調査した上で、厚生省といたしましても適正な価格というものを出して、そして高値是正をしていただきたいと思います。  もちろん、業者の方にもいろいろな議論はありまして、維持費でありますとか調整費用が含まれるから高いのだというような議論もあるわけでありますが、この適正化、たしか、昨年の何月かに新聞で私もその記事を読んだのですけれども、今年度中に進められるという話でありますが、現在どのような状況であるのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この特定保険材料、との価格が非常に高い、とりわけ輸入品について高いということであります。これは我が国の流通慣行と非常に密接に絡んでいるというふうに言われておりまして、現在、これらの実態調査、把握に努めているところであります。これを踏まえて診療報酬上適切な対処をしたいということで、今年度中にその辺の調査結果というものをぴしっと整理したい、このように考えております。
  34. 田村憲久

    ○田村委員 どうかよろしくお願いをいたしたいと思います。  もうほとんど時間がなくなってきたのですけれども、医療費の増大を防いでいくためには、やはり病気にならない方法というのを考えていかなければいけないのであろうと思います。健康の増進といいますか、このような施策をこれから進めていかなければならないのであろうと思います。  今まで、どちらかといいますと、ヘルスケア・サービスといいますか、病院でありますとか介護、また製薬会社、薬局、機器メーカー、それぞれが個別にこの最適化というものを進めておったわけであります。逆に、これは患者サービスを受ける方から見れば、すべてが自分の健康というものにかかわっていく中で、横軸でうまくトータルにシステムとしてこれがつながっていく、その最適化を目指していく方向に進んでいくべきであろうと思いますけれども、その点、ぜひともこれから厚生省の方でも、そのような方向で健康の増進策というものを考えていっていただきたい。これが一点。  そしてもう一点、一つは高齢化という問題が、この医療費の増大にかかわってきておるわけであります。ということは、その原因の少子化というものが一番大きくかかわってきておる部分でありますから、少子化の問題というのは、厚生省一省ではこれは対応できない問題であります。でありますから、いろいろな分野で各省庁と連携をしながら、しかし、厚生省がその中でリーダーシップをとる中で、この少子化というものの抑制策というものをしっかりと考えて実行していただきますように大臣にもお願いをさせていただきまして、もうお答えの方は結構でございます、私の質問を終わらさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  35. 町村信孝

    町村委員長 井上喜一君。
  36. 井上喜一

    井上(喜)委員 健康保険法の一部を改正する法律案の審議も、一昨昨日の本会議それから一昨日の委員会審議と本日と、三日目を迎えておりまして、政府側の提案をされました法律案の概要につきまして、大体この輪郭が明らかになってきていると思いますし、また、問題点につきましても、かなりのものが指摘されてきていると思うのであります。そういうことで、私は、きょうは、さらに法案に関連することにつきまして明らかにしていただきたいこと、それから、私が疑問に思うこと、これらについて質問をさせていただきたい、こんなふうに考えるものでございます。  まず第一に、財政の構造改革と社会保障費との関係でございます。  過般、多分これは閣議決定だと思うのでありますけれども、五つぐらいの財政改革についての項目の記事がございまして、例えば、向こう三年間にわたって主要な経費の具体的な量的縮減目標を明らかにする、あるいは、来年度予算の政策経費はマイナスシーリングで行う、国民負担率が財政赤字を含んで五〇%を超えない財政運営等々ありまして、これは恐らく、財政負担を先送りするとか、あるいは隠れ借金をするとか、こういったことは当然のこととしてしないという前提での原則だと私は思うのであります。主要経費といいますから、これは社会保障費も当然のこととして入るのだろう、こんなふうに考えます。  社会保障費といいましても、大まかには年金とか医療とか福祉というような分野であろうと思うのでありますけれども、これにつきまして、どういうような角度からといいますか、どういうところにポイントを絞って、今私が申し上げましたような財政改革に取り組まれようとしておるのか。まだはっきりしない、一般論であるいはお答えになるのかもわかりませんけれども、その場合には、少なくとも医療の分野ではどういうようなことをされようとしているのか、どこに重点を置いて検討していこうとされているのか、特殊法人などについての大臣のお答え、時々ありますけれども、医療というような分野につきましてお聞きをいたしたいと思うのです。  私は、この財政改革にしろ行政改革にしろ、閣僚が責任を持ちまして決断をしていくということがなければ改革は進まない、こんなふうに思います。しかし、閣僚であればこれはだれでもできるのかということでありますけれども、私はやはり、所管の事項につきまして明るい大臣、また、その所管の事項についての一定の改革方向性についての見識を持っておられる方、こういう方が改革を進めることができる大臣じゃないかと思うのでありますが、私どもは、小泉大臣、余りよく存じ上げませんけれども、所管の事項につきましては大変明るい方じゃないか、私自身そう思っておりますし、郵貯などの発言を聞いておりますと、賛否は別にいたしまして、大変明快なことを言っておられると思うのですね。  ですから、これは厚生省というよりも、まだ厚生省は結論が出ていないということだと思いますので、これは大臣個人としての感触で結構でありますから、財政改革と社会保障費の関係につきまして、どういう角度から検討を進めていくのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  37. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 財政構造改革の五原則を、先般、橋本総理が打ち出し、橋本内閣全体としても、この五原則をもとに行財政改革に取り組もうという結論に達しております。  その中で、社会保障制度をどのように今後見直していくか。私は社会保障というのは大変重要な制度でありますから、国民経済と調和のとれた社会保障制度を構築していかなければならないと思います。国民経済の発展なくして社会保障の充実はできないということから、あの五原則の中にもありました、将来、国民負担をGDP比で五〇%を超えないというような大枠のもとに、受益を受ける、社会保障サービスを受ける給付の問題、そしてその給付を支える負担の問題、この給付と負担との均衡を図って、社会保障制度充実させていかなければならないという観点から、私は、今後すべての社会保障関係を見直すように、今、省内で指示しております。  しかし、この社会保障制度というのは、今まで長年、多くの方の努力によって、地道に、着実に築き上げてきたものであります。一朝一夕にすべての予算に切り込むという点については、非常に難しい点があります。多くの制度ですから、法律の事項がありますし、そして制度見直しというのは、早急に見直したとしても効果が出るのは数年先であります。  非常に難しい点がありますが、先ほどのお尋ねの、医療保険制度についてはどういう視点かということでありますけれども、医療保険制度については、今回の案を第一段階として、これからということではなくて、全般的に、総合的に、まず薬価の基準の見直しがあります。そして診療報酬体系見直しがあります。同時に、高齢者保険制度の問題もあります。それと医療提供体制の問題があります。私は、これを全般的に見直してみたい、そして今回の第一段階の案が成立し次第、できるだけ速やかに、ただ審議会の意見を待つということではなくて、厚生省独自が考えて、今までの委員会議論も踏まえてたたき台的な案を出せないものか、そしてそれを審議会なり、国民なり、各政党なりの批判に供してよりよい改革案を目指していきたいな、そう思います。
  38. 井上喜一

    井上(喜)委員 この医療制度改革につきましては、もう三年ぐらい前になるのでありますけれども、三年以内に医療制度抜本改革案を出すということを厚生省はずっと言ってきたと思うのですね。三年が経過して今日に至ったのでありますけれども、今日に至りますと、また三年先にこの抜本改革案の作成を先送りするということになっていると私は思うのですね。  今大臣お話しのように、厚生省もずっとこれは検討を重ねてきていると思いますし、また、関連審議会におきましても、それぞれの審議が進んでいると思うのでありまして、おおよその方向性というものはもう出てきていると思うのです。さきの田村委員の質問にもお答えになっておりましたけれども、要は決断なんじゃないか、要するに、決断ができないから先送りされてきている、こういう状況じゃないかと思うのですね。  ですから、三年と言わず、一年ぐらいできちっとできるのじゃないか、そういうことを十分わかって今日に至ったのでありまして、私は、そんなに時間はかからないで改革案というのはできるのじゃないか、こういうぐあいに思うのですが、しかし、残念ながら、ずっと延び延びになってきているのですね。これはどうしてそういうぐあいになるのか、また、一年以内ぐらいのうちにどうして改革案が出ないのか、私は大変不思議に思うのでありますが、この点についての御見解はいかがでございますか。
  39. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この医療保険制度の問題は、現在の自由主義体制、市場経済の中で、医療制度の問題は統制経済です。なかなかすっきりした案が出しにくい。同時に、各関係者間の利害が錯綜している、  今回、高齢者医療に対しては定額制を打ち出しました。しかし、委員の中には、定額よりも定率の方がすっきりしているのじゃないかという声が出ております。しかし、もし今回の法案高齢者医療定率を打ち出したら、私は逆の議論が出てきたと思います。定額の方がいいのじゃないかという議論が出てきたと思います。一つの案を出せば必ず別の案が出てくる。それだけに、十人のうちで十人が賛成する案は出てこないと思います。案を出せば、六人が賛成すれば四人が反対するでしょう。一つの案を出すと必ず賛否両論出る。そういうことから、なかなか決断ができない面がそれぞれ、薬価基準見直しについても、診療報酬の出来高払い制度にしても、包括払い制度についても、一長一短あるわけであります。医療提供体制にしてもそうであります。各保険制度の問題もそうであります。  しかし、もう賛否両論があってどちらにも決断できないという状況ではないと思います。三年をめどに改革をしたいということでありますが、私は、今年度中に、厚生省案としての総合的な改革案は打ち出したいと思います。三年にわたっても、まず、厚生省はどういうふうに考えるのかという案は、私は今年度中につくってみたいと思います。
  40. 井上喜一

    井上(喜)委員 今回のこの法律の改正案につきましては、大臣あるいは政府委員の答弁を聞いておりますと、当面の医療財政の危機に対する案であると同時に、医療制度改革へ向けての第一歩といいますか、出発点だ、こういうことを言っておられます。一昨日の五島委員の質問に対してもそういうようなお答えだと思うのでありますが、これは、私はよく理解できないのでありますけれども、こういうことと理解をしてよろしいですか。  当面の措置として今回の改正案が考えられたということは、これはだれしも疑わないのでありますけれども、改革の第一歩だという理解は、患者負担にこれから多くを求めていくのだ、そういう意味でこれは改革の第一歩である、こういう理解かなと私は思うのですけれども、おおむねそういったことで正しいですか。
  41. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それは、給付と負担の均衡を図るということであります。どんな案を考えても、国民の税金と社会保険料といわゆる患者負担、受益負担、この組み合わせしかないと私は思います。患者負担が嫌だったら税金をさらに投入するしかない、あるいは保険料を上げるしかない、保険料を上げるのも嫌だ、税金も嫌だとなると患者負担をふやすしかない、その三つの組み合わせをどうやって均衡あるものにしていくか。  同時に、今まで言った、むだがないか、医療制度、限られた医療資源を効率的に使わなければいかぬ、その両面の見直しが必要ではないかと思います。
  42. 井上喜一

    井上(喜)委員 この両面の見直しが必要であることは申すまでもないのでありますけれども、どうも私は、そういう両面の見直しの結果、今回の案が妥当なものとして出てきた、それがまた今後の改革の第一歩、それを土台にするというような、そういうような理解がなかなか難しいのでありますが、これらにつきましては、また後々議論をしていくべきことだというふうに考えます。  それから次に、十一月二十七日、昨年でありますが、医療保険審議会の建議というのがございます。これを読んでおりますと、高齢者患者負担を一〇%から二〇%にすることとか、薬剤給付については給付除外、つまり給付をしない、ないし三〇%から五〇%負担とする、こういうことがあるわけですね。  これは恐らく、建議でありますから、大部分の方がこれに賛成をされてつくられたと思いますし、通常、こういった審議会につきましては、厚生省の事務当局の方からいろいろな説明があったと思いますし、また、建議の作成におきましても、その過程で厚生省側との十分な打ち合わせもあったのじゃないかと思います。そういったことで、これが厚生省の本音かなとも思うのでありますが、この点について、大臣、どのようなお考えを持っておられますか。
  43. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その建議の中で、厚生省と審議委員との間でいろいろ協議が行われただろうということでありますが、当然、いろいろな質疑応答、協議が行われたと思います。しかしながら、その建議においても、高齢者医療についても一割から二割ということでありますが、今回の案はそれより低いわけであります、定額といっても。  将来、そのような案も含めてこれから検討しなければいかぬと思っておりますが、私としては、そのような建議が出たとしても、各政党間の協議に入りますと、なかなかまとまらないといいますか、賛否両論あってまとまらない。ようやく与党としてまとまった案が今回の案でありますから、この過程において、いかにこの調整が難しいかということを私は痛感しました。あちら立てればこちら立たず。これがいいと思うと、必ず別の方から反対が出てくる。それじゃ、その反対意見を取り入れようとすると、今まで承知していた人がまた反対をする。その繰り返しであります。いかに民主主義というのが大変かと。手続がかかる、労力がかかる、時間がかかる。そして、そういう中で、まあこの辺でいいだろうと、大きな問題点は先送りしてきたのが現実であります。  ということで、いつの間にか若い世代にツケを回してしまった。気がついてみたら、その借金に苦しんでいる。これじゃいかぬといって、今、根本的な改革に取り組もうとしているわけでございますから、もうそんな猶予はない、ある程度腹を固めて根本的な案を出す段階に来ているのではないかな、そのような方向で私は努力をしていきたいと思います。
  44. 井上喜一

    井上(喜)委員 確かに利害関係があり、立場の違いがありまして、一本にまとめていくというその調整は大変難しいのでありますが、大臣の率直な気持ちといたしましては、今の負担関係についていいますと、この建議の中にあるような、大体こんなものだというようなお考えなんですか。調整は別ですよ、調整は別でありますが、物の考え方としては、こういうようなお考えに賛成ですか。
  45. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、どのような案が出てきても、今お願いしている法案患者負担増以下はあり得ないと思います。
  46. 井上喜一

    井上(喜)委員 次に、制度論でありますけれども、今の医療保険制度の中には患者負担というのが入っておりますが、どうも私はこれがよく理解できないのです。そもそも、制度として患者負担というものが不可欠なものなのか、制度的にそうなのかということですね。これがなければ制度として成り立たない、そういうような位置づけをされるものなのか。それとも、便宜的なもので、財源調整をするときにそういう負担というものを持ち出してくる、それも適宜金額を決めていく、そういう便宜的な制度として負担制度というのはあるのか。厚生省としては、これはどういうぐあいに考えておられますか。
  47. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険制度を考える場合に、結局、制度の設計の仕方じゃないかと思います。医療保険制度というのは、これはまさに医療費保障の制度でありますから、どこまでそれぞれ受益者に保障していくのか。それは、当然、医療にかからない方もいらっしゃる、保険料を出しているけれども余り医療を受けない方もいらっしゃるわけでありまして、そういった中で、我が国のこれまでの医療保険制度の流れで考えますと、一つには、保険給付を受ける方と受けない方との間の負担の公平、やはりこれを図っていくことが必要だという観点からこの一部負担制度というのは設けられているというふうに思います。  また、保険給付につきまして、その適正化なり一定の目的、そういったものを持った一部負担制度というものもあるわけでありまして、まさに、今回お願いしております薬剤の一部負担、これは薬の給付の適正化ということをねらいとした一部負担ということでありまして、そういった意味では、広い意味では受益と負担の公平ということになろうかと思います。
  48. 井上喜一

    井上(喜)委員 今回、今お話がありました薬剤についての定額負担、これはかつてあったような制度のようでありますけれども、この負担制度も、どういう意味があるのか、どういう性格なのか、私は、これもよくわからないのであります。今のお話によりますと、負担の公平ということから出てくる、そういう負担制度だ、こういうようにお伺いしたのでありますが、なお釈然としない点がございます。  仮に負担が必要である、負担というのは制度的にどうしても組み入れていかなければいけないというものであるといたしましても、そこにはやはり限度というものがあると思いますね。最高限度としては、医療保険制度の中ではどの程度のものを想定しているのですか。
  49. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに、医療保険制度の中でどこまでカバーしていくべきかという議論と裏腹の問題だと思います。そういった意味では、これはまさに国民的な合意ということになるわけでありまして、私は、絶対的な基準というものがあるとは思いません。  ただ、医療保険制度というのは、これが相扶共済のいわゆる医療費保障制度でありますから、そういった意味からしますと、医療保険全体の財政の状況というものも勘案した水準ということになると思いますし、そういった意味では、結局、応分の負担ということでよく言われますけれども、それを絶対的な水準としてこれであるということは、その時々における社会経済の状況なりあるいは国民の生活水準なり負担水準なり、そういうものの中で国民的な合意のもとに決まっていくものではないか、このように考えております。
  50. 井上喜一

    井上(喜)委員 負担制度はかなり弾力的に考えるということのようでございまして、本来、ある一定の制限、上限というものはないのだ、こんなふうにお伺いをいたしました。  今回の改正案で私どもがどうしても納得できないのは、先ほども申し上げましたけれども、医療の抜本的な改革案がもうできる時期に来ているのに、それを出さないで、安易に当面の財源対策に走る、そういう中身になっているということと、もう一つは、これは先ほど申し上げたのですが、当面の財源確保ということであれば、これは患者負担だけではなしに、関係の者すべてがひとしく負担をする、負担を分かち合うということがあってもいいのじゃないか。  通常、応急の場合というのはそういうのが日本の社会では多いと思うのですよ。一部の者だけがそれを負担していくというのではなしに、この場合でありますと患者でありますけれども、患者だけが負担するというのではなしに、製薬業界だってあるのでありますし、そのほかのところもあるのでありますから、そういう関係のところがひとしくこの負担を分かち合うような、そういうことをすべきじゃないかと私は思うのでありますが、この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  51. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 製薬業界あるいは医療関係者にも負担をということであります。それぞれ痛みを分かち合うということだと思いますが、今回の患者の一部負担をお願いしておりますのは、これは、先ほどの医療保険審議会の建議にもありますように、やはり適正な一部負担ということを求めていくべきだということが言われておりますし、それからまた、薬価基準あるいは診療報酬のあり方、こういったものについてもきちっとした見直しをしていかなければいけないということで考えております。  そういった意味で、今回、患者の一部負担の引き上げということで、現下の医療保険の財政の窮迫状況というものをまず安定化させるということになっておりますが、この前提として、薬価基準制度見直しあるいは診療報酬体系見直し、そういった、それぞれ、医療関係者を初めとする関係の方々に関連する内容についての抜本的な改革というものを引き続きやっていく、こういうような考え方でお願いをしておるわけでございます。
  52. 井上喜一

    井上(喜)委員 しかし、立場の弱い者に負担が寄せられる、こういうことは事実として認めざるを得ない、こんなふうに思うのでございます。  あと、事務的なことになりますが、患者負担額の増額の積算の根拠ですが、薬剤につきましては、一日一種類百五十円ぐらいだからその一〇%ぐらいが十五円だ、こういう御説明でしたが、あとの、老人の通院だとか入院につきまして、それぞれ今度単価が引き上げられておりますけれども、ここはどんな考え方でこうなったのでありますか。  例えば通院の場合、一回五百円で四回まで負担するのだとか、あるいは入院の場合に、これは通常の場合だと千円ですか、一日千円というようなことに、低所得者は別にしてそんなようなことになっているのですが、こうした点についての積算の根拠をわかりやすく説明してください。
  53. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 老人に関しまする一部負担金につきましての負担金の積算の根拠というお尋ねでございます。  今回の一部負担金の改定に当たりまして、御案内のとおり、若人、現役世代につきましては、被保険者本人について一割から二割にお願いをするというような形で負担増をお願いしているということとのバランスも考えまして、世代間の負担の公平を図る観点から、審議会におきましても、老人についても一割程度負担というものを目指すべきではないかという御意見もございました。また、今別途お願いをしております介護保険におきましても、自己負担一割という線をお願いいたしております。  こういったことを念頭に置きまして、全体としておおむね一割程度負担水準となるということを一つの念頭に置きました。頭に置いたことでまず出発をいたしまして、ただ、お年寄りの場合に、急激な負担増を避けるという観点が要るであろう、また、比較的わかりやすい無理のない負担額ということを配慮しなければいけないということで、現在の、今回お願いをしております千円なりあるいは五百円ということをお願いしたわけであります。  具体的に若干申し上げますと、外来の一部負担金につきましては、老人の場合、平均的な通院回数は三・二回でございます。この三・二回を考慮しまして、一月当たりの負担額というものを現行水準のおおむね五割増し程度になるということであれいたしますと、大体五百円ということになります。入院につきましても、同様の考え方をとりまして、一日当たりの負担額を千円というふうにいたしたわけであります。  なお、外来につきましては、お年寄りの場合、頻回に通院をされるというような場合にその負担が大きくなってはいかぬということで、そういう配慮もされまして、平均的な通院回数でございます三・二回をオーバーする四回というところを超えますものについては、一月当たりではそこで限度を出したという形にいたしたものでございます。
  54. 井上喜一

    井上(喜)委員 大臣、先ほどの御答弁でも、医療関係には大変規制が多い、自由な医療の活動が制約を受けている、こういうことを言っておられまして、医療効率化という点から問題があるのだというような御見解だと思うのであります。  先般の本会議で我が党の岡田委員に対する答弁でもございましたが、これからはできるだけこういった医療の分野にも競争原理の導入をしていきたい、こういう答弁をされたというふうに思うのでありますけれども、もう少し具体的に、どういうようなところに競争の原理を取り入れていこうとしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  55. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 健康を考えますと、ある程度の規制は必要だということはわかっております。しかしながら、その規制が政策目的に沿った必要最小限のものにとどめていきたいという観点から、医療の分野でも規制緩和があるのじゃないかということで、当面、具体的なものを挙げますと、考えられるのは、患者への適切な情報提供という観点から、今、医療機関には広告規制がありますが、みずからの医療機関患者さんに知らせるという意味において、広告規制をもうちょっと緩和していいのじゃないかという点が第一点。  第二点においては、今、原則医師、歯科医師に限定されている医療法人の理事長要件、これを緩和してもいいのじゃないか。医師でなければだめだ、歯科医師でなければだめだというこの理事長要件、こういう点も緩和していいのではないか。  三点目に、企業の指定訪問看護事業への参入。これは、企業にもそういう事業に参加したいというのがあれば、これも緩和してもいいのではないか。  そして第四点目には、遠隔医療推進していく。  今考えられる具体的な案というと、この四点ぐらいかな。そのほかいろいろまたあれば検討していきたい。当面考えられるのは、具体的に言えばこのぐらいではないかなというふうに考えております。
  56. 井上喜一

    井上(喜)委員 医療の分野にも民間の活力をもっと利用すれば、こういうような意見がございます。現に、公的な医療保険制度のほかに、民間でいろいろな医療関係の保険がありますけれども、今までのところ、これはそれぞれ余り関係なしにこういう制度があると思うのであります。  こういう公的な医療制度と民間の医療保険制度との連携というのですか、調整というのですか、そういうのをもっと積極的に図っていけばいいのじゃないか、こういう意見もあるやに聞くのでありますけれども、こういう点についての御意見はいかがですか。
  57. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これから高齢化社会に向けて、医療費の伸びというのは恐らく一般の経済成長に比べると上回るだろう、そのギャップというのはどう埋めていくのか、こういう問題を解決しなければいかぬということだと思います。  そういった中で、民間における医療関係の保険というのも発達してきておるわけでありまして、そういった意味で、公的保険でどこまでカバーするのかという問題になってくるわけでありますけれども、基本は、必要な医療というのは公的な医療保険対応していく。これを原則としながらも、医療技術の進歩あるいは国民生活水準の向上とか多様化とか、そういったものに見合った医療サービスが受けられるようなシステムということを考えますと、まさに民間の保険制度との連携なりを視野に入れた公的医療保険というものを考えていかざるを得ないだろう、このように考えております。
  58. 井上喜一

    井上(喜)委員 今後の課題としてあるというふうに理解をいたしました。  次に、薬剤費のことについてお伺いをいたします。  この薬剤費というのは、医療費の中の大方の三〇%ということで、八兆円にもなんなんとするということが今言われておりまして、しかも、この医療費を見ますと、毎年毎年、総額としては増額をしていっているのですね。しかも、私どもがわからないのは、一たん売り出されますと、当初は新薬でありましても、時の経過とともにだんだん薬価が下がってくる、こういうことになっているのですね。にもかかわらず医療費の総額が増大をしてくるということは、新しく売り出される薬が取ってかわると同時に、またその新しく売り出されるものの価格が高い、このように理解をするわけでありますが、どうもこの点が十分に理解できないわけでございます。  私は、薬というものにつきましてもう少し根本的なメスを入れていかないといけないと思うのでありますが、差し当たり、価格と量だと思うのです。薬価というのは公共料金ではありませんけれども、公共料金に匹敵する重さといいますか、国民生活に影響力を持つ商品の価格だと思うのですね。したがいまして、その決定のプロセスというのは非常に大事だというふうに考えるのです。  例えば米なんかは、米価決定というのはいつも問題になってきますけれども、総額は一兆六、七千億なんですからね、それぐらいの規模のものでも価格決定というのは大変厳密に行われるのでありますが、その点、もっと大きなへある意味では影響の大きい医薬品の価格につきましては、どうもそれにふさわしい配慮がなされていないのではないか、こんなふうに思うのでありまして、一体どういうような価格の決定をしているのか、その点をお伺いしたい。
  59. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療費に占める薬剤比率というのは、これはなかなか減らない。そういった中で、二つの原因が指摘されるわけでありますが、一つは、いわゆる薬価基準を引き下げていっても高い新薬の方にシフトしていっているという問題が一つございますし、それから、薬剤の使用が相変わらず減らない、こういったまさに価格と量の問題があるわけであります。  そういった中で、これまで一万四千からの薬が薬価基準に掲載されておる。ことしからそれをかなり減らしまして、一万一千ぐらいになっております。これらの一つ一つの価格をどういうふうに決めているのかということでありますけれども、まず新薬の価格の決め方と、それから、価格が決定された後、流通過程に上った後の価格の決め方、この二つがあるわけでありまして、原則的なルール、一般的なルールについては、これは中医協の中でこれまで御議論いただいてきて、そして、そこでお決めいただいたルール、これは公表されておるわけでありますが、そのルールに従って個別価格を決定するような格好になっております。  これは二つのやり方がありまして、まず、新薬につきましては、類似薬効の比較ということで、類似薬があるものについては類似薬効と比較しながら決めていくというのが一つ。それから、類似薬がない場合には、原価計算方式という形で算定をしております。それから、流通過程に上ったものにつきましては、それぞれの流通後の価格を調査いたしまして、そしてそれに基づいて、現在では、一定の割合、これをR幅と言っておりますが、一定の幅を加算する形で改定する、こういうふうなやり方をしておるわけであります。  ただ、その一つ一つの価格の算定の資料といいますか、これについては、確かに現在まで公表はしておりません。ただ、これについては、国会でも御議論がございますように、やはりこれを透明化するという意味では公表していくべきであるというふうに言われておるわけでありまして、私どもとしても、今後そういった方向でやっていきたいというふうに考えております。
  60. 井上喜一

    井上(喜)委員 私は、どういうような価格の決定方式をとるにしろ、調査の場合には厳密な調査が必要だと思いますし、その調査結果に基づく数字につきましても厳密な査定をしていかないといけないと思うのですね。  それから、価格決定に至る経過の公表、関連するデータの公表というのは絶対に必要だと私は思うのでありますけれども、今の御答弁を聞いておりますと、大体そういった方向で考えるということだと思うのでありますが、そのような理解でよろしいのですね。
  61. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 そのように考えております。
  62. 井上喜一

    井上(喜)委員 私は、製薬業界というのは、政とか官と大変関係が深いといいますか、俗に言う癒着になりやすい構造の中にあるのじゃないかと思うのですね。それだけに、薬価の決定についてはやはり透明にして、きちっと厳正に決定するシステムはぜひとも必要だと思いますので、今後ともそういう方向での御努力をお願い申し上げたい、こんなふうに考えます。  次に、診療報酬制度についてお尋ねをいたします。  一つは、出来高払い制というのがありますけれども、これについて、これまでの評価、そして、現実に今出てきております問題についてのお考えをお聞かせください。
  63. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これまで、医療保険制度の支払い方としては、出来高払いというのを基本に組み立てられてきたわけであります。そういった中で、今日、非常に高い水準の医療が受けられておるという意味では、この出来高払いが果たしてきた意味合いというものは非常に大きかったというふうに思っております。  これは、一番大きなメリットとして言われておりますのは、それぞれ患者さんのいろいろな症状なりがあるわけでありますが、そういった病状に応じて医師の自由な裁量のもとに適切な治療なりができる、そしてそれに対してはきちんとした支払いが裏打ちされておる、こういったメリットがあるというふうに思っております。  ただ、一方、そういった中で、薬について申し上げるならば過剰投与、あるいはまた診療についても過剰診療というふうな格好にどうしても陥りがちではないか、こういうふうな、いわゆるデメリットの面でありますが、それが結局は保険財政というものに対して圧迫するような要因になるというようなことがデメリットとしてあると思います。  また、御承知のとおり、非常に細かく診療報酬の点数表というのが決められておりますから、非常に分厚い一冊の本になるくらいでありまして、これは、診療報酬の請求とか審査とか、そういうのに当たって非常に事務が煩雑化する、こういったようなデメリットもあるわけでございます。  そういった面で、メリットもデメリットもあるわけでありますが、そこら辺のいいところは生かして、そして弊害の方は是正する、そういうふうな診療報酬体系というものを工夫していかなければいけない、このように考えております。
  64. 井上喜一

    井上(喜)委員 これに対する包括払い制度がございますけれども、既に幾つかの分野におきましてこの制度が採用されておりますが、それらの実績と、その実績を踏まえた評価についてお伺いをいたします。
  65. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これまでも、出来高払いの中でもいわゆる包括になじむものについては包括払いを推進してきておるわけであります。特に、老人医療とか精神障害者等の慢性期の医療、あるいは急性期の集中治療室における医療、こういったところについては包括払いあるいは定額払いというのを実施してきておるわけでありまして、平成六年で見てみますと、全体の医療費に占めるいわゆる包括点数といいますか、このシェアというのはおおむね七%程度でございます。  この評価ということでありますけれども、これは若干古くなりますが、平成二年に老人医療において包括払いを採用いたしました際に、各医療機関の調査を行ったわけであります。そのときの結果としましては、検査とか投薬とか注射とか、そういった面において、件数なり点数の面において減少が認められた、そしてまた、そういった中で、日常生活能力といいますか、そういった面についての減退、損なうというようなことがなかったということで、そういった意味では、この支払い方というのは一定の効果があったというふうに報告をされております。  ただ、最近の状況も踏まえてその後のフォローがございませんので、平成九年度に予算措置をいたしまして、これらを調査研究する予定でございます。
  66. 井上喜一

    井上(喜)委員 大臣の御答弁の中で、出来高払いと包括払いの制度につきましては、それぞれのいい点を生かした支払い制度をこれから考えていきたいのだ、こういうことがございましたが、もう少し具体的に、わかりやすく説明をいただきたいのであります。  つまり、この両制度が適用される分野をそれぞれあらかじめ決めておくということなのか、それとも、一つの分野につきまして、例えば今は出来高払いなんだけれども、そこについてのある種のガイドラインというのですか、そういうようなものを示していくようなことなのか、どういうようなことを考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  67. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 出来高払い制度と包括払い、いわゆる定額払い制度の組み合わせというのは、いろいろあると思います。率直に言って、考えられるのは、急性期の患者さんには出来高払いの方がいいのじゃないかな、包括払いというのはどちらかといえば慢性期の患者さんに適しているのではないかなと。  今局長からお話ありましたように、それぞれ一長一短があります。出来高払い制度でありますと、薬を与えれば与えるほど報酬がふえる、検査をすればするほど報酬がふえるということで、必要な検査や薬以外のものが投与されているのではないかと。包括払いだと逆の面が出てくるわけでありますが、現在でも、包括払い制度を実施して、かなりの病院がそれを採用して、その数は当初よりも広がっていると聞いております。  笑い話ではありませんけれども、薬をもらわなかったらかえって元気になったという高齢者の方も出ているぐらいでありますから、そういう御批判、出来高払い制度の御批判も受けながら、また、包括払い制度も、やりようによっては、病名別に包括払いにするのか、病人別に包括払いにするのか、あるいは病院ごとに包括払いにするのか、いろいろ組み合わせばあると思います。その辺は、いろいろ専門家、識者の意見を聞いて、出来高払い制度のよさと包括払い制度のよさを発揮できるような組み合わせがないものかなということを今後真剣に検討していきたいと思います。
  68. 井上喜一

    井上(喜)委員 もう時間が参りましたので、これで終わりたいと思うのでありますが、レセプトの審査でありますが、今、この審査体制がございますけれども、私は、保険者の再審査の体制を強化していくというのがこのレセプトの適正化に必要なんじゃないかと思うのですね。  そういったことで、言ってみれば保険者の機能をもう少し強化していく、そういうことで診療費の適正化を図っていくことが必要じゃないかと思うことが一点。  もう一つは、関係者にコスト意識を持たせるために、診療費の明細書をくれる病院と、くれない病院が今あるように思うのであります。現状どうなっておりますかわかりませんが、こういう明細書の交付を患者にする、こういうことを考えるべきじゃないかと思うのです。  この二点についての御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  69. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさにレセプトの内容については、これは保険者の努力ということで、医療費の節減にも当然つながるわけでありますから、これを積極的にやっていただくということは、私ども、大いにこれまでも進めているところであります。  それからまた、領収書なり明細書の発行でありますが、これについては、例えば国立病院の関係ですと九割が発行しておりますけれども、民間の医療機関についても、可能な医療機関についてはできるだけ実施していただきたいというふうな指導をこれまでもやってきております。
  70. 町村信孝

    町村委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  71. 町村信孝

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。福島豊君。
  72. 福島豊

    ○福島委員 連日審議が続いておりまして、大臣、大変に御苦労さまでございます。健康保険法等改正案につきまして質問させていただきます。  私は、政府が提出されました今回の改正案、三倍近い自己負担の拡大を一気に求めるというような改正案につきましては反対でございます。こうした国民に対して負担のツケ回しをするようなことは撤回をしていただきたいと思っております。  今回の法案が提出されました前提としまして、政府管掌健康保険の財政が大変に厳しいのだ、これは、予算委員会におきましても、そしてまた先日の厚生委員会におきましても、この政府管掌健康保険の財政赤字の原因として、国庫補助が繰り延べ措置をされて、いまだにそれが十分に返済されていないということが繰り返し指摘されております。大臣も、これに対しましては、大蔵省に対してしっかり返すように言っているという答弁を繰り返しておられますけれども、この問題は私は極めて重要だと思います。  これは、質問通告しておりませんで、私の一方的な発言ということで申し上げているわけでございますけれども、この政府管掌健康保険の国庫補助繰り延べ、どういう経緯をたどっているか、厚生省がおつくりになられました資料にはこうなっております。  昭和六十年度に始まりまして、昭和六十年が九百三十九億、六十一年が千三百億、六十二年が千三百五十億、六十三年が六百五十億、平成元年が四百億、ここから平成五年まで飛びまして千三百億、平成六年が千二百億、今回、平成八年度の補正予算で千五百四十三億が返済されましたけれども、五千五百九十六億が残っている。  私、この経過を見て大変に問題だなと思ったのは、あのバブルの当時に税収が非常にふえたにもかかわらず、この政府管掌健康保険に対しての国庫補助の繰り延べが全く返済をされなかったということでございます。これは、一つの制度として定まっているものを繰り延べしておいて、余裕ができたときにも返済をしない、こういう恣意的な財政運営をしておいて、今になって、政府管掌健康保険の財政状況が極めて危機的だ、だから負担を拡大しなければいかぬ、まさに本末転倒の話であると私は思っております。  この点については、もう昭和六十年度の委員会のときからさまざまな質疑がなされているわけでございまして、さまざまな答弁もございます。これは、平成五年、今から四年前の大蔵委員会での審議でございますけれども、政府は、政管健保の財政運営に支障が生じるような事態が発生した場合には、当然、速やかに利子相当分を含めて繰り戻しをするというような答弁をしています。ここは厚生委員会ですからあれでございますけれども。  また、こういう答弁を厚生大臣がしておったときもございます。これは増岡厚生大臣の時代のことでございますが、将来のための準備金の頭でおる、大蔵省に預けるというような答弁をしています。そういうことと考えていると。  そう考えているのであれば、まずはこの政管健保の国庫補助の繰り延べというものをきちっと返していただいて、すぐに全額返せとは言いませんが、三年なら三年、平成十二年までの間、幾ら幾ら返します、ですから政管健保の財政状況はこれだけそれによって改善されます、そういうことを示して、なおかつそれでもやはり足らない、足らないということであれば、それに対してどうしましょうかという話をするのが私は筋だというふうに思っております。  幾ら大臣答弁されても、幾ら返ってくるのかもよくわからない。そういう恣意的なことをするのでしたら、最初から法律をきちっと改正されたらよろしいわけです、補助は減らしますと。大変な反対があると思いますよ。そういうことをしないでいいかげんなことをやっているということについては、私は大変不満を持っております。ただ、この点につきまして御質問いたしましても同じ答弁が返ってくると思いますので、私は、その点はもうこれだけ申し上げて終わりにしたいと思っております。  きょうは、私は、自分自身が医者をしておりまして、医者の立場では、医療費がどんどんふえていって問題だと繰り返し指摘をされると、大変に心苦しい思いがこの国会に来ましていたしております。ですから、まず、その基本的なことからお聞きしたいと思っております。  果たして、日本医療費というのはそんなに大きいのか。医者というのが金もうけばかりをしていて、国民の懐からくすねようとばかりしていて、そして、日本医療費は世界に比べるともうみっともないぐらい大きくなってしまっているのだ、私はそんなばかなことはないと思います。どうもあの予算委員会での審議を聞いておりましても、医者は何かもう金もうけのために医療をしているのだと言わんばかりの指摘もありますけれども、そうではない。中にはそういう方もおられるかもしれませんけれども、基本的に皆まじめに医療をしているのだ。  先日、鴨下委員大臣に質問をいたしました。それは、日本医療費というものが先進諸国と比べてどうなのか、大臣の御見解をお聞きしたいというような質問でございました。  先進諸国の医療費、これは一九九一年度のものでございますが、当時、日本の高齢化率は一二・六%、国民所得に対しての医療費の比率は六・〇%でございました。それに比較してアメリカは、同じく高齢化率は一二・六%ですが、医療費日本の倍の一二・五%でございます。フランス、ドイツは、それぞれ高齢化率は一四・二%、一五・〇%と日本よりも若干高いわけでございますが、医療費はそれぞれ一一・一%、一〇・〇%と日本の二倍近い水準になっております。  こうしたデータを踏まえて理解されることは、我が国の医療費は高齢化率を勘案しても先進諸国よりは低い、比較的効率のよい医療が実現しているのだ、私はそう言って間違いはないのじゃないかと思います。日本医療費というのは非常に高くてむだばかりしている、そういうことが新聞ではしばしば報道されますけれども、決してそれは客観的な事実を踏まえたものではなくて、一種のプロパガンダに近い話ではないかというふうにも思っております。  厚生省医療改革ということでさまざまな諸国のさまざまな施策を取り上げておりますけれども、こうした比較をすると、そういう施策は必ずしも成果を上げていないわけでございまして、それを継ぎはぎ的に導入するということが日本医療費にどういう影響を与えるのか、これもはっきりしていないのじゃないか、そういうふうに私は思っております。  こう言いますと、大臣は、高齢化がどんどん進んでいくのだ、だから今は大丈夫でも将来はこれは大変なものなんだという御返事が先日ございました。この点についても、私はどうなのかなというふうにも思っております。  まず第一点目に、御質問ですが、国民医療費が過大であるということを厚生省は繰り返し国民に啓蒙していると私は思っておりますけれども、今申し上げたことを踏まえまして、本当にこれは正しい事実なのか、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  73. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医療費が多いか少ないかというのは相対的なものでありますから、人によってはこれでもまだ不十分だ、決して高くないという方もいるでしょう。いや、高いと、いろいろあると思いますが、私は、医療費だけという点ではなく、全体の社会保障ということを考えますと、このまま現在の制度を放置していって、国民はその負担に耐え切れるのだろうかという疑問がわきます。  医療費だけということをやると、まだ足りない、もっとやれという声が強い。では、年金を議論すると、年金もまだ足りない、もっと充実しろ。介護、いや、まだ足りない、もっと充実しろ。公共事業、いや、まだ足りない、もっとやれ。教育予算、もっとやれ。全部そうです。そういう中で、限られた財源の中で、どうやって国民のさまざまな生活の要望にこたえ得るかというのが政治だと思います。  現在も、社会保障に限って言っても、私は、社会保障の中で大変重視しなければならないのは年金と医療だと思います。まず、すべての国民に老後の所得を保障する。いざ病気となったら、適切な医療を受ける制度をつくる。  当初、発足時に比べれば大変充実してきました。外国の模範とした制度に比べてもそんなに遜色ない制度になってきた。しかし、人間の願望、要望に限りがありません。しかし、最近、財源には限りがあるということはだれもがわかっております。そういう中で、経済成長、高度成長のあるときには、高度成長に見合った各種国民生活の要望の施策の充実は、その範囲におさまっていました。  しかし、高度成長は望めない現在、このまま、今までの制度でどんどん前提にやっていきますと、いずれ若い人の負担がたえ切れないではないかということで、医療費に限ってみてもそうです。高齢者医療費の伸びはほかの費用の伸びに比べて大きい。若い世代の方は、病気にならないけれども保険料負担していくということから、若い世代と高齢者、受益を受ける、給付を受ける側と負担する側の公平を図ろうということから、今回、若干高齢者に御負担をいただこう。国民健康保険に入っている方は三割を負担している。健康保険の方はこれから一割が二割になる。高齢者は、定額でありますけれども、一割になっていない、若干まだ負担の余地があるのではないかということから、今回お願いしているわけであります。  医療費が多い少ない、財源があれば患者さんの負担はない方がいいに決まっています。しかし、このような財政状況厳しい折にそういうことも言っていられない、またツケを回すこともできないという中で、全体の予算は一切の聖域なし、歳出削減取り組みなさいというのが野党の皆さんの声でもあります。  そういう声をどうやって取り入れるかというと、私は、一切の聖域なしに、今までの制度の前提のままだったらば、それではだれが負担するのか。今の、患者負担をさせない、増税も嫌だ、保険料負担も嫌だというのだったらば、また赤字国債を発行して若い世代にツケを回すしかない。これも許されないという状況になったからこそ、今回、まず第一段階でありますけれども、給付に見合ったような負担高齢者にもお願いしよう。確かに、今まで一カ月千二十円が一回五百円になって四回が限度でありますが、たくさん行く方は二千円までは御負担いただかなければならないということでありますが、私は、健康のことを考えるのだったらば、この程度負担医療の面から考えて高齢者も御負担いだだけるのではないかというふうに思います。  これはあくまでも相対的なことでありまして、これからの趨勢を考えますと、どんどん高齢者はふえていきますし、どちらかというと若い世代の医療費よりも高齢者医療費の伸びの方が全然高いということから、私は、今後、余り若い世代と高齢者の間の世代間の争いが起こらないような、均衡のとれた給付と負担見直しが必要ではないかなと思います。
  74. 福島豊

    ○福島委員 今までの御答弁と基本的に軌を一にする御答弁だというふうに認識をいたしております。  大臣は、どういう負担でどういう水準の医療を実現するのか、これは国民の選択だというふうに一昨日の委員会での答弁でおっしゃられました。  私は思うのですけれども、確かに大臣がおっしゃいますように、財政状況が厳しい、税の支出は限られている、削減をしなければいけない、どう見直していくのか、それはやはり考えなければいかぬことだと思いますけれども、国民の判断だというふうに大臣はおっしゃられたわけでございまして、国民の判断であるというからには、消費税の引き上げのことも含めまして、そしてまた、この医療にかかわる保険料の引き上げ、自己負担の引き上げ等々をセットにして、選挙のときにちゃんと国民の前に提示したらよかったじゃないですか。それで選択してもらったらよかったじゃないですか。  当然、そういうことは、昨年の秋の段階でどうなるかということは大体見当がついているわけでございます。そういうことをふろしきに包んでしまって、選挙が終わってから国民の選択ですよということを委員会でおっしゃられても説得力がないのじゃないか、そういうふうに私は思いますが、この点についてはいかがですか。
  75. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 政党が選挙のときにどういう約束をするかというのは、政党によって違ってくると思います。そのときの判断だと思います。  選挙民は、医療だけが関心がある問題でもないと思います。ある人は税に関心があったり、安全保障に関心があったり、教育に関心があったり、一点集中主義にマスコミはとらえがちでありますけれども、必ずしもそうじゃない、いろいろな判断が国民にあると思います。しかし、政党として、国民が関心があるなと思う重大な問題についてはできるだけ選択の余地ができるような政策を示すというのは、私は政党の責任だと思います。それは否定いたしません。
  76. 福島豊

    ○福島委員 今の御答弁はよくわかりませんでした。  確かに、本当に国民の選択なんだと私も思うのです。国民が果たして本当にどう同意するのか。選挙制度が変わったわけでございます。ですから、むしろ、直接にかかわること、社会保障制度に関しましてはこれからは大きく変わっていかざるを得ない、これはだれもが思っていることでございまして、その選択肢をいかに国民の前に提示するのかということについて政治家はやはり真剣に考えなければいかぬというふうにも私は思います。  先ほど大臣は、医療と年金が大事なんだというお話をされました。私は、今検討が進んでいるかもしれませんけれども、医療、介護、年金、社会保障制度のさまざまな柱があるわけでございますけれども、この相互調整をどうするのかということの方が実は話としては先なんじゃないか。高齢化がどんどん進んでいく、老人の医療費は全体の医療費よりも伸びが速い、だから大変だ、今のうちにその根元の蛇口をきちっと閉めておかなければいけないという話をするよりは、どう制度間の調整をして、負担がどのくらいになるのか、社会保障の全体としての効率化というのを目指すべきじゃないか、むしろそっちの方が先なんじゃないかと思うのですね。  どうしてこういうことを言うかといいますと、医療において、自己負担ももっともらわなければいけない、効率化もしなければいけない、確かにそうなんですけれども、しかし、それは一面、大きな問題をはらんでいる。  先日の委員会でも委員から御指摘がありましたように、大臣は所得が大変高いと思いますのであれでございますけれども、実際に地域にはいろいろな所得の方がおられます。五百円、四回、大変だという人もやはりいるわけでして、そういう方の存在が必ずある。蛇口をきゅっと閉める、必ずそういう人はそこからこぼれ落ちていくということが出てくる。医療費が大変だ、まずきゅっと閉めよう、医療の荒廃といいますか、そういうことをもたらすのじゃないかと私は懸念しています。実質的な医療の水準の荒廃というのをもたらしていくのじゃないか、そういうふうに思います。  ですから、議論の順番としては、先ほども言いましたように、社会保障制度一つ一つの柱がある、その制度間の調整をどうするのか、そういう議論をまず先にすべきなんじゃないか、そう思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  77. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、先ほど年金と医療が大事だと言いましたけれども、介護が大事じゃないとか言っているのじゃないのです。すべて大事だ。生活保護も大事です。しかし、その中で、わけても一番大事なのはやはり年金と医療だろう。ほかを全部捨てるのだったらば、どれか二つを選べというのだったらそこじゃないかな、国民は。そういう極端な議論でありますけれども。とはいっても、社会福祉を充実していく場合には、年金とか医療だけじゃありません、いろいろな施策があります。それも重要であります。それを同時並行的に進めていかなければならない。  そして、今まで千二十円だったら負担できたけれども、今度は一回五百円でも最高二千円まで払わなければいかぬ、千二十円で行けたけれども二千円になったら行けないという人が出るかもしれません。しかしながら、今まで千二十円だからお医者さんにかかったけれども、二千円になったからもう行かないというのは、本人の健康状況とも相談しなければいかぬと思うのであります。自分の懐ぐあいと相談して、最も自分の健康、命に大事な問題を切り詰めるか、ほかを切り詰めるかというのは個人の選択であります。私は、みずからの命にかかわる問題で、千二十円だから行けたけれども二千円になったら行かないというのはごくごく限られた人じゃないかなと。私は、二千円というのはそれほど過大な負担ではないと思いますが。
  78. 福島豊

    ○福島委員 二千円だけではございませんで、薬剤の自己負担というのもあるわけでございまして、大臣、二千円で行けない人が出てくるかもしれない、そういう場合があったとしても、それはある意味では本人の選択で仕方がないことだ、そういうような御趣旨かと思うのですけれども、これは、国民の健康権を保障した憲法の理念に反する御答弁じゃないかというふうに私は思いますが……。
  79. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 低所得者には十分配慮しております。無料で医療サービスもやっている。それを御理解いただきたい。行けなくてもやむを得ないと言っているのじゃないのです。私は、千二十円で行けたけれども二千円では行かないという人はそんなに多くないのじゃないかと言っているのです、自分の健康度合いによって。そして、お金がない人に対しては、国がきちんとした医療サービスを施しております。金がないから医療、診られないという状態は、今の日本ではあり得ません。そこを御理解いただきたいと思います。
  80. 福島豊

    ○福島委員 続きまして、私は、医者をしておりましたときには、老年医学というのを勉強いたしました。老人の医学がどうあるべきなのか、大学を卒業しましてから、実は、恥ずかしい話ですが、老年医学の理想の姿というのはなかなかわかりませんでした。十年間医者を続けまして、どうあるべきなのか、ちょっとずつわかってきたかなというふうに思っているのですが。  老人の医療費が非常に高い、それは、高齢者人口がふえているわけですから、ふえていくのは仕方のない部分もある。だから、悪いとは言えないと思うのですね。やむを得ない部分がある。ただ、その中にあって私が経験しましたのは、果たして日本老人医療というのは理想的な医療になっているのだろうかどうか、そういうことは課題としてあるのじゃないかというふうに思っております。  政治の場に来ますと、とにかく老人の医療費というのはどんどんふえていって重荷になって困るのだ、そんな議論しかなくて、その質がどうなっているのか、その医療を受けている患者さんお一人お一人にとってどれだけクオリティー・オブ・ライフを改善するような医療が実現しているのか、そういう議論というのは余り国会でなされていないような気がいたします。  私は、先ほども大臣が言いましたけれども、コストからだけ物を考えていたらいかぬと思うのですよ。どんどん老人の医療費がふえていく、これはけしからぬじゃないか、新聞を見ると大体そういう論調ですけれども、けしからぬといったって、人間は年をとるわけですし、お年寄りの方がふえていくわけだから、これはやはりふえていくのが自然なことであります。  この老人医療費の問題について、自分自身が医者をしておりました経験を踏まえて、何点か御質問したいと思っております。  よく指摘されていることは、老人の病院通いは一種の気晴らしである、病院はサロン化していると。待合で待っていて、きょうはAさん、姿を見ないわね、どこか体でも悪くしたんじゃないの、そういう笑い話があるのも事実でございます。ただ、こういう現実は確かにないわけではないのですけれども、しかしそれは、裏返して言うと、お年寄りにとって行くところがほかに余りないということでもあろうと思うのですね。また、例えば嫁さんとの折り合いが悪いから、昼間、家にいたくない、それでずっとこの待合で待っていたりとか、そういう方も中にはおられました。ただ、そういう場合でありましても、そこに行ったら友達がいていろいろ話ができる、それだけで来ているわけでもなくて、どこかしら体に不調があるということもやはりあるわけですね。  こういうサロン化した医療にお金を払うことはむだなんじゃないかと。確かに保険者の側の論理からすればそういう話になる、随分むだがありますよと。ただしかし、これをどう改めるのかという話をした場合に、一回五百円取りますと。そのお金のハードルを高くして来させなくするという話も一つの考え方だと思いますね。今まさに厚生省がおっしゃられているのはそういうことなんだと思います。自分で勘案する、五百円払ってまで行く必要があるのかな、ないのかなと。それがなければ、まあいいか、行こうかという話になると。  ただ、先ほども言いましたように、高齢期にあってさまざまな疾病や障害が身に起きるということは避けがたいことでありまして、こうしたハードルを高くすれば、確かにそういう余り悪くない人が来なくなっていいかなという話もあるのかもしれませんけれども、やはり来なければいけない人を来なくさせるという可能性というのは必ずあるわけですよ。先ほども言いましたように、話し相手が欲しくて来る人もいるかもしれない、行くところがなくて来るそういうお年寄りもいるかもしれない。だったら、医療の場から別のところにその受け皿をつくればいいではないですか。水は高いところから低いところに流れる。別の受け皿をつくればいいではないですか。高齢者の総合的な対策、地域のコミュニティーづくりでありますとか老人クラブとかいろいろなものがありますね、そういうものをどれだけ真剣に整備していくのか。とにかくハードルを高くして、来なければそれで済むのだということではないのではないか、そんなふうに私は感じますけれども、大臣はどのようにお考えですか。
  81. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 大して必要でもないのにお医者さんに行くということ、また、お医者さんに行けるということは、ある面においては、日本医療制度のよさがあったからこそこういう状況になったと思うのです。日本みたいに、だれでもお医者様を選ぶことができる、病院を選ぶことができる、また病院をはしごしてもいい、みんなが、本当に必要だという方がそういう形で行けば余り問題が起こってこなかったと思うのですが、そういうよい制度を、中にはその趣旨以外に使う方も出てきたわけであります。それが、今言いましたように、余りお医者さんに診てもらうほど悪くないのだけれども、ちょっと友人の顔が見たいから病院に行くとか、今お話しのような話もなきにしもあらずと聞いております。  そういうことから、三時間待って三分診療、本当に必要な人が待たされて診療を受けられないという弊害も出てきているわけであります。あるいは、本来、病院に行かなくても、介護施設の方がいい人でも、病院の方が費用が安いということで、俗に言う社会的入院というような問題も出てきた。だからこそ、今回、介護保険制度を導入しまして、医療と介護というものを整理しながら連携を深めていこう、そういう総合的な見直しが必要だということで、今国会にも介護保険制度法案をお願いしております。  さらに、何でもかんでも大病院に行くということが果たしていいのかどうか。まずは、地域の、近くのかかりつけのお医者さんみたいなものを充実させていって、本当に大病院に行く方との一つの秩序といいますか流れを整理した方がいいのではないかということから、かかりつけ医の機能も充実させるような措置をとらなければいかぬという、一点だけではなくて総合的な、今の医療制度の弊害点を見ながらよりよき制度を構築していくのが我々の責任でありまして、必ずしも今の制度が全部悪いと言っているわけではありません。  当然、人間は、一つの目標を達しますと、その目標が達した段階で、今までわからなかった弊害点が出てきます。その弊害点を克服すると、また新たな弊害点が出てくる。そのいい例が、日本は戦後の一時期、先般どなたでしたか、平均寿命が二十三歳とか言っていた。だれがこの平均寿命七十五歳を超えるような世の中を想像したか。これは、お医者さんの役割、薬の役割、病院の役割、公衆衛生の水準の役割、生活水準の向上、いろいろな面があると思います。  しかし、とにもかくにも日本は、当初目標とした長生きできる社会にしようという目標は達したのだ。その途端に今度は、長生きだけすればいいというものではない、長生きするのだったらやはり元気なまま長生きするのがいいという新たな目標に向かって、今またいろいろな策を講じようとしているわけでありますので、私は、今の制度が全部悪いとは言っておりません。  当然、これだけ、だれでもかれでもお医者さんに診てもらう制度をつくった先輩の努力、これに感謝しつつ、今その制度も問題があるなという御指摘を受けていますので、よりよき制度を目指して、総合的な改革に取り組むべきではないかと思います。
  82. 福島豊

    ○福島委員 総合的な改革なんだ、一律に負担をふやすだけのことではないのだとおっしゃられたいのかなというふうにも感じましたが、医療というのも社会の中に存在するものでございまして、先ほど申し上げましたのは、高齢者がどのように地域において健やかに生きるのか、そういう全体的なイメージの中に医療を置かないとなかなかそれは理想的なものにはならないのじゃないか、いろいろなむだな部分がやはり出てきてしまう、そういうことを一つは御指摘をしたがったわけでございます。  二点目は、予防のことでございます。  高齢になりますと、さまざまな疾病が当然出てくる、そしてまた障害も出てくる。大切なことは、私は、予防医学というものをどれだけきちっとやっていくのかということなんだと思っております。できるだけ病気にならないようにする。人間は年行けば傷んでくるのは当たり前でございますけれども、なかなか病気にならないような生活習慣なりをきちっと国民の中に定着させていく、そういうことが必要だと思うのですね。老人医療費がどんどんふえてしまって困ると言う前に、どうしたらそれを本質的な部分で削減することができるのか。負担をふやして無理やりこれを減らすということじゃなくて、かからなくてもいいようにすればいいわけですから、そういう点についての取り組みについて、私は厚生省にお聞きしたいと思います。
  83. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 予防対策についてのお尋ねでございますが、予防対策を推進することによりまして、発病の予防あるいは早期発見による重病化の防止でございますとか、さらには国民の健康への自覚の高まり等、お年寄りの幸せという意味からいきまして、まずは、こういった予防対策が大変大事であるというふうに私どもも思っておりますし、御案内のように、老人保健事業等を通じましてそういった点に力を入れてきているところでございます。  このことは、同時に、予防対策の推進によりまして、先生の仰せもございましたように、医療費の効率的使用という意味からいきましても、そもそも病気にならないというところからして、医療費の節減ということにも当然資することになるものであるというふうに認識をいたしております。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  84. 福島豊

    ○福島委員 さまざまな形で、保健事業というような形で厚生省も取り組まれているということは私も知っております。  ただ、よくわからない点は、そういった予防対策を推進することによってどれだけ効果が上がるのか。例えば健診にしましても、いろいろな事業がありますけれども、その一つ一つが、果たしてどういう効果が上がるのか、どれだけ医療費削減するような効果があるのか、そういう疫学的なといいますか統計的なといいますか、そういう評価が実は余りなされていないのではないかというような気もいたしますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  85. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 予防対策によります医療費削減効果をいわば定量的にどういうふうに把握ができるかという点でございますけれども、これは、予防という事柄の性格上、これだけの予防対策をすればこれだけ医療費が減るというふうに極めて正確に出てくる性格のものではございませんし、それから、実は、全国的なベースでの調査研究というものはいまだございませんが、地域的にサンプルをとりまして、その予防対策と医療費の関係についての調査研究というものは行われております。  例えば、中西さんという方の研究をいただきました中で、健康診査の受診率あるいは保健サービス費の投入の度合いと診療費の関係ということを大阪府下の市に例をとりましてやられましたところ、それは、逆相関といいますか、受診率が高く、あるいは保健サービス費の投入が高ければ医療費が逆に低いという結果が出ておりますので、そういう意味からも、予防対策が医療費削減という意味でも、節減という意味でも効果があるということは実証をされておるのではないかというふうに考えております。
  86. 福島豊

    ○福島委員 今、一つの例を御提示いただきましたが、そういうものを踏まえた上で、効果が上がる施策を的確に組み合わせて、そして、老人の医療費というものについて、根本的な部分で、二十一世紀、どうするのだという対応をしていっていただきたい。この点については要望しておきたいというふうに思っております。  先ほど大臣は、介護が必要であれば、老人保健施設、また介護施設に行ってもらえるようになるのだ、これは介護保険の最大の目的なんだというお話をされました。  私は、日本の老年医学というのが非常に不幸だった理由は、高齢者の介護の問題を医療の枠の中で解決しようとしてきたといいますか、医療の枠の中に押しつけてきたといいますか、よく医療の福祉化というようなことが言われておりますけれども、そういう経過があったのだというふうに考えております。  本来であれば、高齢障害者を支えるための福祉基盤というものをもっと早く準備すべきだったのだと私は思います。七〇年代、八〇年代においてそういう施策を的確に講じておれば、今になって老人医療費の問題でかほどまでに苦しまなくてもよかったのではないか、そのようにすら思っております。そういう意味では、厚生省の政策的な選択というものが誤っていたのではないか。この点につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  87. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 本来、医療の領域というよりは介護という側面で、特に受け皿となります施設、あるいはそういった施策が十分であれば、医療費という形、あるいは一般病院で過ごされる社会的入院という形にならなくて済んだものが、いたずらに一般病院で過ごさざるを得ない、そのことがまた、医療資源の効率化という面からも非常に問題があるというような状態があったということにつきましては、御指摘のとおりだと思います。  今後、急速な高齢化の進展に伴いまして介護ニーズが増大をしてくるということで、それに対して介護サービス基盤の整備が必ずしも追いついてこなかったということは否定できないわけでありますけれども、厚生省としては、御案内のとおり、新ゴールドプランによりまして介護基盤の整備ということに拍車をかけて今日までやってきておりますし、さらにこの先、介護保険制度の創設をもちまして必要な介護サービスの総合的な提供という体制を組んでいくことにいたしておりますので、そういったことを通じまして、社会的入院等によります医療費の効率的な使われ方の問題についても解決を図っていく努力をいたしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  88. 福島豊

    ○福島委員 着実に整備を図っていきたい、今まではおくれていたけれども、頑張っていきたいということであろうかと思います。  二十一世紀の医療費試算というのが厚生省からは出ているわけでございますけれども、こうした介護基盤を十分に整えていくことによって国民医療費というのはどの程度抑制される可能性があるのか、この点につきましての御見解をお聞きしたいと思います。
  89. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現在提案しております介護保険法案、これは新ゴールドプランによりまして、サービスの基盤の整備を前提にしているわけでありますが、平成十二年度から施行するということでお願いしておるわけであります。  そこで、この制度ができますと、現行老人医療費の中で、老人保健施設それから療養型病床群等の介護関係の費用、これが介護保険制度に移行される格好になります。これを二〇〇〇年度、平成十二年度以降で見てみますと、約一割程度国民医療費ベースで減少することになるのではないかな、このように考えております。
  90. 福島豊

    ○福島委員 話があっちに飛んだりこっちに飛んだりしたような印象があったかと思いますが、要するに、お年寄りというのは非常に多面的な存在である。どう言ったらいいでしょうか、高齢の障害者の方がいる。それは医療の対象だけとしていれば、当然、医療費は膨らんでいく。介護という側面もある。それを的確に組み合わせていかなければいけない。また、孤独なお年寄りがいる。話す人がいなくて病院に来るかもしれない。そういう人に対しては、地域のコミュニティーづくりのようなものをしっかりやっていかなければいけない。  そういった、ある意味では医療というところからもっと横に広がった形で総合的な対策をするということが、逆に言うと、老人の医療費というものに対してはそれの効率化を進めることになるのだというように私は思っているのです。老人の医療費がふえた、大変だ、だから負担をしてもらおうという非常に単線的な話ではないのだ、単線的な話をすると逆に医療の現場をかえって荒廃させてしまうのではないか、私はそんなふうにむしろ思っているのです。  確かに、財政が厳しいというのはよくわかります。何とかしなければいけないというのもよくわかります。だからこそ、二十一世紀において、高齢者の方の医療はどうあるべきなのかということを、もっと原理的なといいますか根源的な部分から考えて、どういうものを組み立てようかと。私は、今そういう動きはどんどんできつつあるのだというふうにも思いますけれども、そこのところをよくよく考えていただきたい、そんなふうに思っております。  時間がありませんので、最後にターミナルケアの問題につきまして、これも老人医療費に大きな影響を与えるものであるというふうに考えておりますので、伺っておきたいと思います。  後期高齢者がどんどん増加をしていくわけでございます。多死時代という言葉が先日ある本で触れられておりました。九三年の死亡者が八十七・九万人、九四年が百二・六万人、二〇一〇年には百三十二・七万人になる。現在、病院で死亡する高齢者は、九一年で七七%。八十七・九万人に対する七七%ですから、六十八万人なわけですね。これをそのまま二十一世紀に向かって外挿しますと、二〇一〇年では百六万人の人が病院で亡くなられることになる。  よく言われておりますように、医療費というのは死亡する前に随分かかるのだという話があるわけでございます。このターミナルケアの問題をどうするのかということを考えておかないと、二十一世紀の老人医療費というのがよりまた拡大するという話になる。  この点につきまして、まず第一点は、老人医療費に占めている末期医療のウエートというのは今どのぐらいあるのでしょうか。
  91. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 老人医療費に占めます末期医療に係ります医療費の割合についてでございますけれども、末期医療の定義といったものを明確に今定めておるわけではございませんので、正確な数字は、ストレートな統計というのはございません。したがって、幾つかの数字を挙げましてお答えにかえさせていただきますが、平成三年度の老人医療費につきまして調べましたものがございまして、これで、その年度内に、つまり平成三年度内に死亡された人に係ります医療費というものがどのくらいの費用ベースでウエートを占めているかというところで見ますと、入院で一八%、入院外では三%という研究報告がございます。  そのほかに、これも事例的な話になりますけれども、例えば健保組合の方で調査をされたものでいきますと、高額医療費平成七年の十一月から八年十月診療の間のものをお調べになったようでありますけれども、これで高額医療費上位十例を見ますと、いずれも現在は死亡している人であったというようなことで、相当高い医療費が死亡した例について使われているケースがある、少なくともかなりあるということがうかがえるような統計、あるいは、一生のうちで医療費をどういうふうな年齢において使っているかという統計で見ますと、一生のうちで使う医療費のうち、六十歳以上で使う部分が六四%、七十歳以上で四七%を使うというような統計も出ております。  いずれも末期医療そのものの医療費の構成ということではございませんけれども、いずれにしても、そういった部分で、医療費という面ではかなり大きく出てきているという点はうかがえる数字かというふうに思います。
  92. 福島豊

    ○福島委員 末期医療の問題というのは非常に難しくて、医者としても最善を尽くさなければいかぬという話は当然あります。ただ問題は、その最善を尽くす尽くし方の問題がある。  例えば末期のがんの患者さん、抗がん剤をどんどん使った、使ったからといって治るわけでもない、抗がん剤の副作用で患者さんのぐあいはかえって悪くなる、その患者さんのクオリティー・オブ・ライフを考えれば、そういう治療はしない方がいいということになります。また、そういう治療をするということはコスト的にも非常に高いということになるわけでございまして、ここのところは、国民的な合意といいますか、先ほど大臣もおっしゃられた国民の判断というのは極めて私は大切だと思います。どういう末期の迎え方をするのか、どういう末期の医療を選択していくのか、そこのところをやはり考えていかなければいけない。  ただ、一つ不足していることは、例えばホスピスというのがございますけれども、このホスピスというのは、日本ではほとんど広がっておりません。そういう末期の医療を支える受け皿というのが実はない。その緩和された形で死を受容するようなあり方を求める人もいるけれども、それを支える受け皿というのが余りないのじゃないか。まして、在宅で死を迎えるということに対しても、それを支える仕組みというのはまだまだだというふうに思っております。どういう道を選ぶかは国民の選択だと思いますけれども、少なくともそういう緩和された形で、いわば尊厳死というような言い方をしてもいいのかもしれませんけれども、そういう道を選択できるような下支えみたいなものを今からしっかりとつくっておかなけらばいかぬのじゃないか、そんなように私は思っております。  この点につきまして御見解をお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 末期医療について幾つかお話を伺いました。  望ましい末期医療のあり方といいますか、末期医療とはどうあるべきかというのは、基本的には、先生もお触れになりましたように、人それぞれによって異なると思いますけれども、ただ、私どもがやりました意識調査なんかでも、従来の単なる延命医療ということに偏重しないで、できるだけ苦痛を緩和するといいますか、そういうことを望む方が多いというふうに認識をしています。  厚生省におきましては、末期医療ということについては、医療関係者に対する講習会ですとか、特に医師、看護婦等に対するそういう考え方の普及というようなことは一方やっておりますけれども、また、診療報酬におきましても、今触れましたいわゆるホスピスといいますか緩和ケア病棟に対する入院料ですとか、在宅に対する総合診療料といったようなことの創設をしております。  なお、九年度におきまして、末期医療に対する、特に医療従事者に対する意識というものを改めて調査したいというふうに考えております。
  94. 福島豊

    ○福島委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  95. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 岡田克也君。
  96. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也です。  まず、中身の審議に入る前に、この委員会についての大臣の審議の進め方についての御意見をお伺いしておきたいと思います。  先般の議論でも、非常に重要な審議であるから十分に議論したい、審議していただきたい、こういうお話大臣からもあったように理解をしているところでございます。  確かに、二兆円という国民負担、そしてまた同時に、重要な医療保険制度についての構造改革の第一歩としての委員会であります。したがって、私はむやみやたらに審議を引き延ばすなどということは毛頭考えておりませんが、しかし、きちんとした、国民にわかる議論というものがこの委員会において展開されなければいけない、こういうふうに思いますが、大臣の基本的なお考えをまず聞かせていただきたいと思います。
  97. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 連日精力的な御審議をいただいているということに対しては、私自身も、国民に理解をしてもらうという立場から、大変好ましい、望ましいことだと思っております。  今後の審議の方法等については、委員長を初め委員皆様方に今お任せしているわけですので、私としては、その委員会の指示に従って、いつでもこちらに出席させていただくという気持ちでおりますので、十分な審議というのは、委員長を初め皆様方の御判断にお任せしたいと思います。
  98. 岡田克也

    ○岡田委員 言い方が微妙なところがあったと思いますが、いずれにいたしましても、何か形式的に、何時間議論したからもう採決だとか、そういう方法は、特にこういう問題でありますから第一にとってはいけない、そういうふうに私は思いますし、それは委員長にお任せするということではなくて、私どもももちろんそれぞれ中で議論しておりますけれども、大臣からも、十分な審議をするようにぜひ委員長を初め与党の皆様にもお願いをしておいていただきたい、こういうふうに思っております。  さて、これから何度も議論をしたいと思いますので、きょうは、その中で、主として周辺の問題を中心に少し御議論したいと思いますが、その前に、この前の本会議の場で私が申し上げたことでありますけれども、医療における構造改革視点の問題であります。  私、本会議で申し上げましたのは、そういった基本的な視点を欠く改革というのは、結局、利害関係者の妥協の産物になってしまう、そういうことを申し上げました。  そしてその上で、基本的な視点として重要なのは二つある。一つは、競争原理の導入である。これは、もちろん医療の特殊性がありますから、一般のマーケットメカニズムが働く、すべてにそういうものが働くわけではございません。人の命を預かるという特殊性を考えれば、もちろん部分的なものにはとどまりますけれども、完全統制経済ではなくて、そこに部分的な市場原理を導入していくこと、そして同時に、情報公開をしていくこと、この二つの視点が重要ではないかというふうに御指摘を申し上げました。  大臣からは「大筋で、基本的に私も同感」だというお答えをいただいたわけでありますが、まず、ここのところをもう少し詳しく御答弁いただけませんでしょうか。
  99. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 ほかの問題と違って、医療というのは、ほかの経済活動とは違って割り切れない面がかなりあると思います。  市場経済という枠で日本経済は発展してまいりましたが、その中で医療というのは統制経済であります。普通の市場経済だと、供給が多ければ値段も下がる、需要と供給というのはバランスのとれた動きを示すわけでありますが、医療においては必ずしもそうじゃない。病院がふえたりお医者さんがふえたりすると、逆に値段を下げるというわけにはいかぬ、医療費はますます増大していくという、需要と供給の問題が普通の経済活動と違う。そして、だれでも貧富を問わず適切な医療を受けたいという国民の要望にこたえるためには、私は、ある程度統制的な、計画的な経済規制というのは必要だと思っています。  しかし、その中でも、できるだけ質の向上を促すためにも競争原理というものを導入していく必要があるのじゃないかということで、これからの改革におきましても、例えて言いますと、今、薬価基準、いろいろ問題が出ております。これも、見直しするに当たっては、市場取引実勢にゆだねるという原則に立って見直しを行っていきたい。そして、今いろいろ批判があります薬価の高さあるいは新薬への移行問題、そういう弊害を解決できるような方法、そういうことを考えますと、むしろ市場取引実勢にゆだねる方がいいのじゃないかという御意見が強いものですから、これも一つの方法だなと。  と同時に、情報公開するという点も大事な問題でありますから、どういう審議が行われているのか、利害関係者間の意見の違いはどうなのかということが国民にもわかるような情報公開を進めていきたいと思います。
  100. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、実は先ほど申し上げた二つの視点というのは、同じようなことを考えた方がいらっしゃるわけですね。それは、たまたま最近入手をしました与党医療保険制度改革協議会の座長丹羽さんの座長試案の中にも同じような表現が出てまいります。「改革視点」、二つあります。一つは「医療における情報公開の推進と透明性の確保を図ること」、第二点が「公益性を堅持しつつ、医療における市場原理を導入すること」こういう視点が大事だと書いてある。  ところが、この座長試案がもとになっていろいろ与党の中で御議論いただいたのだと思いますが、与党医療保険制度改革協議会が四月七日に出した基本方針では、情報公開の方は多少それに触れたところがあります。しかし、この市場原理の導入というところが見事に抜け落ちている。これは、原案としてあったものが途中で落ちたということは、やはりそれなりに意味があるのだろう、こういうふうに思うのですね。  もちろん、これは与党の皆さんにむしろお聞きすべき話ではありますが、今大臣としては、市場原理の導入は、もちろん限界はあるけれども重要である、統制経済だけではいけない、こういうお話がありましたが、与党の中での議論については大臣もいろいろフォローされていることとは思いますが、こういう形で最終的な与党協議会の基本方針の中で市場原理という考え方が落ちてしまっているということについて、どういうふうにお考えでしょうか。
  101. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 文章的には落ちているとしても、この基本的な方向、考え方というのは変わっていないと私は認識をしております。
  102. 岡田克也

    ○岡田委員 確かに、「医療資源に無駄がないか、効率的かどうかの観点」、こういうのは書いてあります。むだがない、効率的であるためには確かに市場原理の導入というのは一つの手段だと思いますが、今大臣は、変わっていないという御認識であれば結構だと思いますが、私は若干首をかしげている。なぜこういうふうになったのだろうか、こういう気がしております。  いずれにいたしましても、今大臣お話しになった薬価の問題、これはまた別の機会に詳しくやりたいと思いますけれども、薬価のところでありますとか、それから診療報酬のところも、ここもいろいろ御議論のあるところであります。  出来高払いだけではなくて、これはもちろん、時と場合によって出来高払いが適切である場合があるということは私は否定いたしませんけれども、しかし、場合によっては、請負制であるとか定額制というような形で、例えば定額制を導入する中で、その中では市場原理が働く、つまり医師も、額が決まっていれば、その中で同じ薬を使うとすれば安い方を使う、同じ効能であれば安い方を使う、こういうことになりますね。出来高払いであれば、そういうインセンティブは全くありませんから、せめて差額の大きいのを使おうかというだけであります。  そういう形で定額制を導入することで、部分的ではありますが市場原理が働いていく、こういう効果があることは私は否定できない、見逃せないところだ、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  103. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私も同感です。そういう仕組みで、むだのないような効率的な制度がつくられないかなと思いますので、出来高払い制と包括・定額払い制のよさが出るような組み合わせを考えていきたいなと思います。
  104. 岡田克也

    ○岡田委員 そういう形で定額制を導入して、そこで市場原理が導入されれば、同じ効能であればより安いものを使うということで、薬の値段その他検査の値段などについても、そこで一つのマーケットプライスができるわけですね。そのことが出来高払い制の制度の中にも波及をしていく、こういうことになっていくのだろう、こういうふうに私は思うわけであります。  そういう意味で、もちろん、大臣も御指摘のように、出来高払い制が適している部分もある、そのことは十分に認識をした上で、しかし、定額制が適したところについてはそれをどんどん積極的に導入していく、そういうことが重要であろうというふうに私は考えております。  きょうは、時間も限られておりますので、競争原理のところはそのぐらいにさせていただきたい、こういうふうに思います。  さて、今回の改正案の中で、医療保険構造改革審議会に関する規定がございます、もちろん名前は法律上はついておりませんが。この新しい改革審議会を、今回、この健保法等の一部改正案の中で設けることにした理由、なぜ従来の医療保険審議会とか老健審ではだめなのか、そこのところについての厚生省の考え方を聞きたいと思います。
  105. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険構造改革審議会、これはまだ仮称でございます。新しい時代に向けて、医療保険制度の抜本的な改革、これを進めるべきであるというこの認識については、関係者の方々もおおむね一致しているというふうに私どもも考えております。ただ、その際に、具体的な案を選択していくということになりますと、やはり関係者の利害が対立する問題が非常に多いという側面がございます。  そこで、この医療保険制度の抜本的な改革、これに本格的に取り組むためには、やはり関係者の利害というものを超えた国民的な立場からの議論、さらに開かれた議論というものが必要であるというふうに考えたわけでございます。そのような場として、今回、新たな審議会を設置いたしたいということでございます。  これまで、医療保険審議会、それからまた老人保健福祉審議会がございました。しかし、この医療保険制度の抜本的な改革、これはまさに、老人保健制度も、また各医療保険制度も含めまして、制度横断的な、総合的な議論ということがやはり不可欠であるというふうに考えたわけでございまして、そういった意味で、両審議会を統合いたしまして、そして新たな審議会として設けさせていただきたい、このような考え方でございます。
  106. 岡田克也

    ○岡田委員 今の局長の御説明の中で、利害関係者の立場を超えた国民立場からの議論、こういうくだりがありましたが、具体的に、この新しい改革審議会の構成メンバーはどういった方を予定しておられるのか。もちろん法律はまだ通っておりませんから、現在の段階では予定ということになるのだと思いますが、厚生省としてはどういった方々を予定しておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 審議をお願いしているわけでありますから、そういった意味で、個別の中身まで踏み込んだ形での検討をまだしておりませんけれども、考え方を御説明申し上げますと、ただいま申し上げましたように、関係団体等の利害を超えて、まさに我が国の医療保険制度のあり方を総合的に御審議いただきたい、そういう意味で設けるわけでありますから、そういう視点にふさわしい方々にお願いをしたいということが基本であります。  そしてまた、具体的な委員の構成等については、これはまさにこの国会におかれます幅広い御議論、こういったものを踏まえて今後私どもとしては検討をしていきたい、このように考えております。
  108. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお話の中で、もうちょっと突っ込んで聞きたいと思いますが、最初に利害関係者の視点を超えた国民視点とおっしゃったのですが、直接この医療制度にかかわる、利害関係があるといいますか関係者といいますか、そういう方の扱いというのはどうされる御予定でしょうか。
  109. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 利害関係者、要するに関係者のその利害を超えた国民的な立場に立った御議論をお願いしたい、こういうふうに考えておるわけでありますけれども、この医療保険制度のあり方というものを総合的に審議いただくということでありますから、そういった意味で、例えば医療に精通した方の参加、こういったことは私どもは必要であろうというふうに考えております。  そのほかの、医療保険に関係する団体等々ございますけれども、特定の団体の代表というような形で委員の委嘱をお願いするというよりも、むしろ、先ほど申し上げたような立場から、関係者の利害を超えた、国民立場に立って御議論をいただくという立場からお願いをしたい、こんなふうに考えております。
  110. 岡田克也

    ○岡田委員 私も、直接関係のある方がメンバーになってはいけないというふうには思いません。いろいろな意見を聞いて、そして議論していくのが審議会だと思います。ただ、そのメンバーの構成、数とかそういったところには十分注意をしていただかないと、利害関係を超えた国民視点といいながら、そのことが実現できないことになってしまうおそれもあると思います。  それから同時に、こういう審議会というのは全会一致が望ましいと思いますが、これだけ大きな改革をこれからやっていくときに、もし意見が割れれば、それは、少数意見は少数意見と書いていただいて、多数決で物事をやっていただきたい、こういうふうに思っております。これは御要望であります。  先ほど、開かれた審議ということも局長は言われたわけでありますが、この改革審議会ができた場合に、審議の公開についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  111. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに、開かれた御議論をお願いするというふうに考えております。  そういった意味では、私は、基本的には公開でやっていただきたいと思いますが、ただ、審議会自体の運営ということにも絡みますから、そこについては、それぞれ審議会で十分御議論いただきたいということになるわけでありますけれども、やはりできるだけ公開で、開かれた議論をということを期待しております。
  112. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお話だと、審議会のメンバーが公開かどうかを決めるようにも聞こえるわけですが、基本的には、委員皆さんも、これが公開の審議会であるのかどうかということによって、委員を受けるかどうかというのを判断されると思うのですね。  そういう意味では、やはりこれは、最初のスタートのときから、この審議会は全部公開です、こういうことを言った上で、その上で覚悟して委員を受けていただく方にやっていただかないと、委員の独自の判断にゆだねるのであれば、結局は、委員が勝手に、都合の悪いところは非公開にしてしまえば、それでだれも何も言えなくなる、従来とほとんど変わらなくなるわけであります。ここのところはどうお考えでしょうか。
  113. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 ちょっと言葉が足りなかったかもしれません。  まさに、委員に委嘱をいたすときには、今先生からお話がありましたように、当然これは公開ということで、そして、そういう中でそれぞれ自由に御発言いただくということを当然申し上げた上でお引き受けいただくということを考えております。
  114. 岡田克也

    ○岡田委員 これは国民注視の非常に大事な審議会になる、こう思いますので、ぜひ、今私が申し上げたようなことに十分配慮していただいて、そして、その審議会を聞いていた人が納得する、そういった実のある審議をしていただきたいと思います。  次に移ります。  先般の予算委員会、二月五日でありますが、そのときに、例の医療食の問題で独禁法違反の問題を取り上げた際に、医療食とか寝具とか、厚生省関係の企業・団体の中で大変問題のあるものがある。この医療食の問題なども、私の常識からすればとんでもない話であります。たしか小泉厚生大臣も、ひどい話だと思う、こういうふうに言われたと思います。それが一般の国民の感情だと思いますね。  そのときに私が申し上げたのは、厚生省所管の七十五の公益法人に対して同じようなことがあるかもしれない、だから、そこのところについて徹底調査をしてくれ、こういうふうに申し上げました。  たしか谷局長の方からは、いや、指導については通知をいたしました、こういう御答弁をいただきましたが、私は、単に通知をしたのでは、それでわかりましたというような、そんな生易しい話ではない。この寝具の例を見ても、医療食の例を見ても相当悪質だ、だから、ちゃんと厚生省が責任を持って調べてくれ、それだけの責任があるのではないか、そういうふうに申し上げたわけでありますが、それに対して大臣から、適切な指導をしたい、こういう御答弁をいただきました。  二月五日以降、厚生省はどのような調査をされたのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  115. 中西明典

    中西政府委員 岡田委員の方から七十五法人という話がございましたが、厚生省といたしましては、今、それに限らず、所管のすべての公益法人につきまして総点検を行うということをやってきておりまして、その過程で、予算や事業計画それから内部規約なんかも具体的にチェックいたし、また、必要に応じて法人からじかにヒアリングを行うなどして、改めて、おっしゃっておられます独禁法に触れるような、そういった競争制限的な行為がなされていないかどうか、これについても点検を行ってきておるところでございます。  その結果、競争制限につながるような仕組みを有しておる、そういった法人は認められていないわけでございますが、私どもといたしましては、そういう仕組みが仮にないとしても、競争制限的行為がなされないという保証はないわけでございまして、そういう目で見て、今後、適正な指導監督を各部局を通じてやっていかなければならない、かように考えております。
  116. 岡田克也

    ○岡田委員 診療報酬の世界というのは統制経済である、何度も言われているわけでありますが、そういう中で、どうしてもこういう不正あるいは競争制限的な行為というものが起こってくるのですね。だから、そのおそれはいつもあるということを理解していただいて、そして、責任を持ってそういうことが発生しないように対応していただきたいと思います。  結局、医療食だけでも一千五百億円ぐらいの国民の税金や保険料が払われた。私は、歴代の担当課長や担当局長は一体何をしていたのだろうか、率直にそういうふうに思いますよ。これだけのことをやっていながら、知らなかったのか、あるいは知っていて見過ごしていたのかわかりませんが、本来であれば処分に相当するような話だ。少なくとも国民は当然そう思っている。そのことを厚生省として真剣に受けとめていただきたい、こういうふうに思います。  そういう中で、先般、ある雑誌を見ておりましたら、これは団体の話ではありません、企業の話でありますが、具体的事実ですから具体的に名前を言ってもいいと思いますが、株式会社パラマウントベッドが公正取引委員会から立入検査を受けた、こういう報道がなされておりました。長野県の国立病院の入札に関しての独禁法違反の問題である、こういうふうに承知をしておりますが、詳細について厚生省は承知しておられますでしょうか。
  117. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 公正取引委員会が病院のベッドの購入等について調査に出られたということは承知しております。
  118. 岡田克也

    ○岡田委員 厚生省の承知しておられる具体的中身をお話しいただけませんでしょうか。
  119. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 具体的中身とおっしゃられましても、公正取引委員会が実際に入られたのは、どういう点で入られたのか、実際は私ども、詳しくは存じておりません。
  120. 岡田克也

    ○岡田委員 局長は御存じなくても、少なくとも事務方はある程度承知しておられたと私は理解しております。  いずれにしても、国立病院です。国立病院の入札で、パラマウントベッド仕様のベッドでなければだめだよという条件を付しているわけですね。そうしたら、パラマウントベッド以外なかなか応札できないじゃないですか。そういうことを堂々と国立病院がやっているということについて、公正取引委員会が調査に入ったのであれば、同時に厚生省としても事実関係をしっかり把握するのが当然ではないでしょうか。いかがでしょうか。
  121. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 国立病院でベッドの購入につきまして、パラマウントベッドでなくてはならないというふうに指定をしたことはございません。  今先生のおただしの中の話でいきますと、国立東信病院におけるベッドの入札仕様書では、パラマウントベッド社の商品名とともに、「同等若しくは同等以上と認められるもの。」と記載をいたしておりまして、御指摘のようにパラマウントベッドそのものを指定した仕様書とはなっていないのであります。  ただ、今回の仕様書については、銘柄指定ととられかねませんものですから、適切さを欠いた点があったのではないか、このようには思っております。そのため、本年二月に、銘柄指定と誤解を持たれることのないように当該病院に指導を行ったところであります。
  122. 岡田克也

    ○岡田委員 パラマウントベッドの特定の商品と同等もしくは同等以上の機能、こういうことでありますが、具体的にそこで言う機能というのは、ベッドの機能といってもいろいろあると思うのですが、その中のどの機能を指しているのでしょうか。
  123. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 ベッドの中のどの機能とおただしでございますけれども、私の方では、今回の平成九年一月二十二日の仕様書なんですが、それには電動リモートコントロールベッドということでございますから、安全性、堅牢性それから利用しやすさ、もう少し具体的に言うと、ベッドの横の手すり等についてのいわゆる患者さんの使いやすさとか、そういうようなことが多分入っているものと思っております。
  124. 岡田克也

    ○岡田委員 安全性とか使いやすさとか、いろいろなことを今おっしゃいましたが、そういうものはきちんと入札の中に具体的に記載されているのですか。
  125. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 仕様書の段階では、電動リモートコントロールベッドと書いて、パラマウント社製の商品名が書いてございまして、そして「上記仕様と同等若しくは同等以上」のもの、こう書いてありまして、具体的に利用しやすさとか堅牢さというのが、例えば何年使っても壊れないとかなんとかというふうに具体的に書いてあるわけではございません。  そういう意味で、先ほど申し上げましたように、銘柄指定ととられがちである、だからこういうような書き方はよくないと私どもは考えておりまして、それで指導をしたところでございます。
  126. 岡田克也

    ○岡田委員 局長もおわかりだと思いますが、具体的に機能が特定されていて、これと同等あるいはそれ以上というのなら、それは確かに客観的にわかりますが、そういうものがなくして、何かわけがわからぬけれどもこれと一緒かそれ以上ということであれば、果たして、安全性なのかクッションのやわらかさなのか耐久性なのかわかりませんから、結局、当該商品以外は応札できない、あるいは応札してはねられても文句を言えないわけです。ということは、入札制度といいながら、効果としては、このベッドしかだめだよというふうに国立病院が指定をしたのと結局変わらないわけですね。何でそんなことを許しているのですか。  しかも、この会社は病院用ベッドで七〇%のシェアでしょう。もしちゃんと自由に競争をさせれば価格が下がったかもしれません。そうしたら、その分、税金や保険料も安くなるわけでしょう。私は本当にこれは理解できないのですが、こういうことは一般の国立病院で、ベッドに限らず一般的にやっておられるのですか。
  127. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 国立病院で購入する備品等はいろいろな種類がございます。それで、もちろん医療機器のような機能の違いとかそういうものがあるものと、それから、どこの会社でもそう差がないものといろいろありまして、その物ごとによって違ってくるわけであります。  ベッドの場合でいきますと、このメーカーさんは、今先生おっしゃられたように、大変大きなシェアを病院ベッドではおさめていらっしゃいます。それは、この企業がそれまで病院用のベッドを一生懸命研究し開発をしてきた関係で、他社との間に開きができている。私は、実はこのベッドで、病院で手術をしたことがあるものですからよく存じていますけれども、使いやすさとか、そういうふうに企業が努力してきてその技術が商品にあらわれているというものにつきましてはやはり差がついてくる、そういうものもあるし、そうでないものもあるということでございまして、一概に国立病院で全部銘柄を指定する、そんなことはないわけであります。  病院経営ですから、できるだけ安くていいものがあれば、それは、それを購入することによっていわゆる運営費が、今赤字補てんを実際には一般会計で入れていただいているわけですから、それを減らしていくということが我々も大変大切だと思っております。もう一方で患者サービスというのがあって、患者サービスでは、安全であり使いやすくなくてはまた困るし、堅牢でなくては困る。また、故障しやすくても困る。そういう両方ありまして、そういうことを総合的に判断して、いろいろな品物、備品等を購入しているものだと我々は思っております。
  128. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろその会社が御努力されていいものをつくっているというのはある面では事実かもしれませんが、私に言わせれば、こういう形で高く買ってもらうことによって利益を上げて、そしてほかのメーカーが、競争相手が育たないように排除している、そういうふうにも思えるわけであります。  もちろん、私は、いいかげんなものを国立病院が購入したらいいなどと言っているわけではありません。しかし、やはり物事には一定の限度というものがあると思うのです。今のお話を聞いても、今の国立病院が果たして本当に努力して、そして患者の身になって、あるいは国民立場に立って効率的な病院経営をやっておられるのかどうか、私は非常に疑問に思うわけであります。そういうものを一つ一つきちんとしていくことが負担増について国民に理解を得るための前提条件だ、私はこういう視点で申し上げたわけであります。  私は、大臣にお願いしておきたいと思いますが、この国立病院の入札問題、これは一回全部洗い直していただけませんか。そのぐらいの価値のあることだと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 国立病院が備品を購入する際に、できるだけ質がよくて値段の安いものを選択するということが必要であると私も思います。そのためには、各企業は競争するでしょうし、競争することによって質の向上にも価格の安さにも反映できる、そのような契約ができるように、今後適切に国立病院にも指導を行っていきたいと思います。
  130. 岡田克也

    ○岡田委員 ぜひ今までの入札の書類を調べていただいて、類似のことが恐らくあちこちであるのだろうと思うのですね。そういうものについて、今後再発がされないように、二度と起きないようにしっかり指導していただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  最後に、今度のこの健保法の一部改正案の施行日について、ちょっとお伺いしたいと思うのです。  五月一日ということになっておりますけれども、もう現在、四月の十一日であります。衆参での審議ということを考えれば、なかなか五月一日はきついだろう、そう言っても私は決して間違いではないだろうと思います。この施行日が一カ月おくれることによって、それぞれ、健保財政も含めていろいろな影響が出てくるわけですが、一般会計の部分でどのぐらいの予算措置が必要になるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
  131. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 施行が一カ月おくれた場合のいわゆる国庫負担関係でありますが、国庫負担は三百三十億円必要になってまいります。
  132. 岡田克也

    ○岡田委員 一カ月三百三十億円ということであります。  それで、この施行日について大幅におくらせたらどうか、こういう御見解が一部にあるやに聞いておりますが、私は法案の審議はきちんとしなければいけない、審議が足らなければもちろん国会の中で日程をやりくりし、それでも足らなければ延長して、最後はきちんと採決をしなければいけないと思うわけですが、この施行日をおくらせるということがどういう意味を持つのか。  私は、例えば五月一日を十月とか十二月とかおくらせるということは、それ自身は何の意味もないのじゃないか。むしろ、そのことによって、ことしについて言えば、患者負担が先送りされたということで喜ぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなものは何の解決にもならないのであって、それならむしろ、今回のこの法の中身をきちんと改めるべきだ、こういうふうに思うわけでございます。  単純に施行日を先送りする、こういう発想について、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  133. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 五月一日に施行できるようにできるだけ御審議に協力いただきまして、速やかに御採決をいただきたいと思います。
  134. 岡田克也

    ○岡田委員 五月一日というのは非常に難しいということは、大臣もおわかりの上で言っておられることだと思います。  いずれにいたしましても、最後になりますが、この法案というのは非常に大事であります。先ほども言いましたが、二兆円の国民負担、そのこと自身も大変なことでありますし、それから、国民の側からいえば、何で自分たちだけがその負担を負わされるのだ、こういう気持ちは当然あります。  大臣は、いかなる改革をやろうともこの程度負担は必要だ、こういうふうにおっしゃいますが、しかし、国民の側から見れば、同じこの負担を負わなければいけないときに、なぜ自分たちだけがまず先行して負わなければいけないのか、こういう意識は当然あると思います。  構造改革をやることによって、私は、医療の供給者側も血を流さなければいけない。もちろん、国の負担もいろいろな形でふえるだろうと思います。そして患者さん、つまり国民の側についても負担増は避けられない。そういう全体の構図がはっきりして、そして、お互いがそれぞれ負担をする中での国民負担の増であれば、私は、国民は納得してくれると思いますし、あるいは、納得してくれるように我々は説得しなければいけない、こういうふうに思いますけれども、負担だけが先行してしまって、構造改革については後からついてくるということでは、私は説得する自信はありません。  そういう意味で、この委員会での審議を通じて、きちんとした構造改革についての先行きが見える——私は、与党三党の与党協議会、与党の協議に期待をしておりましたけれども、残念ながら、あの協議の基本方針というのは、非常に抽象的で、今までの厚生省のいろいろな審議会で議論してきたことと比べても、あるいは厚生省の中で議論したことと比べてもはるかに抽象的であります。これでは納得されない、そういうふうに私は思っております。これからも審議を、この場でいろいろな議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  終わります。
  135. 町村信孝

    町村委員長 中桐伸五君。
  136. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐でございます。  私は、本会議での質疑及び前回の委員会での五島議員の質疑を受けまして、特に、医療構造改革を具体的にどのように進めていくべきだろうかという点に重点を置きまして、質疑をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、これは本会議でも申し上げましたが、今回の健康保険法等の一部改正に関して、平成九年一月三十一日付で、社会保障制度審議会が小泉厚生大臣あてに答申を出しております。この答申の中にも、前回の委員会の質疑、あるいは本日の私までの質疑の中でも多々出されておりますが、今回の健保法等の改正が非常に緊急避難的なものではないかという、つまり、保険財政の安定化策に偏っているのではないかという非常に厳しい指摘を受けたということがあると思いますが、まず、この点に関しまして厚生大臣の見解はいかがでしょうか。
  137. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 保険財政を安定的に運営していかなければならないという面から見て緊急避難的じゃないかという御指摘、私はあえて否定はいたしません。  しかし、この案が出たからこそ、これでは足りない、もっと根本的な構造改革をせよという議論が出てきたのであって、私は、総合的な改革をするための段階的な第一次案であると。むしろ、この案が出ないと、また、緊急的な財政安定にもならない、構造改革にも踏み込めない、また若い世代にツケを回すだけという悪循環に陥ったのじゃないか。むしろ、これだけの難しい問題、利害関係者のいろいろな思惑が錯綜する中でとにもかくにもまとめた、まとめたからこそ、今いろいろな議論が展開されているのではないかと思います。
  138. 中桐伸五

    中桐委員 段階的という言葉を使われたわけでありますが、もちろん、第一段階としてどのように考えるかという見解があって今回の政府案が出たのならば、段階的というふうに考えるわけでありますけれども、その点、段階的ということは何段階を考えてこの政府案が出たのかということをお聞きしないと、今の大臣の御答弁は納得がいかないわけでありますが、いかがですか。
  139. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 与党の中での今後の医療制度改革の案が、基本方向として出されました。その中で、私は、ほぼ問題点は整理されていると思います。薬価の問題、診療報酬の問題、医療提供体制の問題、高齢者保険制度の問題、これをひっくるめて、私は、できるだけ早い段階厚生省としての具体策をまとめたい。そういう観点から見れば、今回の案は段階的な案だ、総合的な案ではないということは率直に認めます。
  140. 中桐伸五

    中桐委員 厚生大臣の決意はよく伝わってまいりますが、これは過去の経過を見てみますと、与党案がまとまる前の段階で、与党案が両論併記のような形で述べられていることは、既に平成八年の医療保険審議会の建議の中に、ほぼもう出されておるわけであります。  さらにさかのぼれば、もっと前にこういう議論も行われたというふうに聞いておりますから、つまり、与党案が出されたことが段階的に次の段階というよりも、既にこういう議論はもう出し尽くされている。要するに、どちらを選ぶかという、きょう午前中に大臣が、いろいろな制度には長所と短所があるということをお答えになられておりましたが、つまり、そういう長所と短所というものについては、それぞれの制度についてもう議論は出し尽くされていたというふうに考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  141. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私もそういうふうに思っています。  改革の目指す方向としては、大体、識者の意見も与党の中の今回の考え方も、問題点は整理されているな、あとはどれを選択するか、どういう決断をするかという問題ではないかなと。そして、いろいろ構造的な、根本的な改革案が出ますが、どんな案を採用しても、必ず賛否両論出ます。そこでちゅうちょしてしまった。これが長年の、私は今までの反省すべき点だと思います。  決断したら、批判を恐れずに、むしろ批判を受け入れる、これ以上の案があるかという案を厚生省の責任としても私はもう出す段階に来ているのではないか、そういうふうに思いますので、この段階的な案を速やかに成立させていただいたならば、できるだけ早い段階に、今までどの問題もこういう問題がある、しかし、決断するには賛成者もいるだろうが反対も出るだろう、あえて賛否両論が出るのを覚悟して、私は総合的な改革案厚生省が責任を持ってまとめるような努力をしていきたいと思います。
  142. 中桐伸五

    中桐委員 そこで、そういう段階的なというところをもう少しメスを入れて議論をして、今の政府が出しているものが仮に第一段階であるとすれば、次の第二段階あるいはそれ以降の段階というものをどのように考えるかということをここでやはり具体的に議論をしておいた方がいいというふうに思いますので、その次の段階論をもう少し詳しく議論したいと思います。何か……。
  143. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今私が段階的と言ったのは、今回の案が段階的だ、そしてできればこの法案が成立してから、九年度中には段階的ではない総合的な案を厚生省としてまとめてみたいと思います。
  144. 中桐伸五

    中桐委員 段階的という意味がちょっと共通言語としてなかなか一致していないので、スケジュールというふうに理解をしてください。何段階論という話をしてもしようがありませんので、具体的にこの改定はいつをめどにやりたいというふうな、そういう方向を考えたいというふうに思うわけですね。  つまり、これは社会保障制度審議会も、すぐすべての問題を決着をつけるということは、この問題自体が非常に幅広い議論をしなければいけない問題ですから、そうはいっても待つことはできないので、ことしじゅうに決着をつけるということは、いつごろのどういうスケジュールで、つまり社会保障制度審議会が、スケジュールを含め具体的に明確にすべきであるというふうに言ったことについての議論をこれからしたいということでございます。それはよろしいでしょうか。(小泉国務大臣「はい」と呼ぶ)  そこで、平成八年に出されました医療保険審議会の建議では、実は三段階を設け、特に第一段階と第二段階という形で当面の段階を設定し、これはもう大臣も御存じだと思いますが、平成九年から平成十二年、二〇〇〇年までを第一段階としている。平成十二年ということは、介護保険法を施行するときに解決すべきものは解決しておかなければいけないというふうなことだと思うのですが、その点についてはおおむねいかがでしょうか。この医療保険審議会が資料として提出している段階的位置づけというのはいかがなんでしょうか。
  145. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 そういう方向で行きたい。というのは、今年度中に総合的な厚生省としての案をまとめてみたい。それは当然審議会にかけます。そして、介護保険制度が導入される三年後、平成十二年度をめどに実施できるような、また、国民に理解を得られるような形に持っていければなと考えます。
  146. 中桐伸五

    中桐委員 私も、老人保健制度等あるいは医療費診療報酬制度医療提供体制、これらはまず二〇〇〇年というのが一つの大きな節目になるだろうというふうに思います。そのときに、しかし今年度に総合的なプランを考えるというふうに先ほど大臣がおっしゃいましたが、例えば規制緩和小委員会ですか、ここで、薬価基準見直し平成九年度にやるべしということが出されております。それに、きょう質疑を聞いておりますと、大臣は九年度に薬価基準の問題について、薬価制度について結論を得たいということなんですが、これについてはそういう確認でよろしいでしょうか。
  147. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今年度中に薬価基準見直しについても総合的な改革の一部として厚生省案としては出したいと思っています。ただし、これは厚生省案であって、これが国民の理解を得られるかどうかというのは、審議会もあります、各政党の意見もあります。その案というものが受け入れられるかどうかというのは、それはまだ、出す案によっても違ってきますし、その総合的な案を、いろいろ国民批判を仰ぎながら、平成十二年度を目指して実施に向けて体制がとれればいいというふうに考えております。
  148. 中桐伸五

    中桐委員 私は平成九年度じゆうでは遅いのじゃないかというふうに思うのですが、薬価基準制度の問題の選択をするというか、その時期は遅いというふうに思うのですね。  それで、薬価基準制度ともう一つ関連の深いものに診療報酬改定というのがありまして、次回、来年ありますね。少なくともこの時点までにはもう明確な結論が出ておらなければいけないと思います。厚生省案としてまとまるのが九年度中では遅いのではないかと思うのですが、いかがですか。
  149. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 九年度中というのは私は一番早い段階じゃないかと思います。ことし九年度ですから、これ以上早くはできない。
  150. 中桐伸五

    中桐委員 ごめんなさい。  そうしますと、ちょっと私の誤解でありましたが、正確には何月何日までというふうに確認すればいいのですか。
  151. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それは今言えません。できるだけ早い段階にまとめたいと思っております。
  152. 中桐伸五

    中桐委員 ことしじゅうという意味ですね、十二月三十一日までの間にという。
  153. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 少しは幅を下さい。一番早い九年度中ですから、その中でできるだけ早い時期ということで御理解いただきたいと思います。
  154. 中桐伸五

    中桐委員 次回の診療報酬改定、次の議論、薬剤の問題についてはまた関連した議論をしたいと思いますが、スケジュールとの関連で今議論をしておりますので、いわゆる医療費支払い方式というのが非常に重要な一つの柱でありますから、その医療費の支払い方式をどのようにするかということについても早急に結論を得る必要があるというふうに思うのですね。私は、次回の診療報酬改定時にはその結論が得られているというのが最も望ましいというふうに思うわけであります。  そこで、次回の診療報酬改定時にどのようなスケジュールを、どのような抜本改革をおやりになろうとしているかをお聞かせいただければと思うのですが。
  155. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これから、今回御提案しています制度改正、この成立を見ましたら、できるだけ速やかに私どもとしては抜本的な、総合的な案というものを提案してまいりたいということでありますけれども、その中の一つが薬価基準制度であり、それからまた診療報酬体系のあり方であります。  いずれも、厚生省としての考え方をお示しし、そして各般の広い御意見もお聞きし、国民的な合意のもとにそれを実施していく、こういう段取りでありますので、現行の大きな診療報酬体系そのものを直していくわけでありますから、やはり相当な国民的な議論が要ると思います。また、それを経ないで、厚生省だけの考え方でこれを実施するというわけにはいかないと思いますから、当然、そこにはそれなりの時間なり手順というものがかかると思っております。
  156. 中桐伸五

    中桐委員 私がお聞きしたいのは、内容との関係でスケジュールをお聞きしたいのですね。つまり、診療報酬で今の出来高払い制と定額支払い方式をどのようにするか、これは医療の提供体制とも密接な関連があると思います。いわゆる機能分化の問題と非常に密接な関連があると思いますが、その点で、次回の診療報酬改定時にそこの結論を得るのかどうかという問題、これについてはいかがですか。
  157. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今申し上げておりますのは、診療報酬体系の抜本的な見直し、そしてそのあるべき姿というのをどういうふうにしていくべきかという、その案というものを出していきたいということで申し上げているわけであります。まさにその中身について、どういうふうな抜本的な中身にしていくのかということにつきまして、私どもとしては、できるだけ早くその内容についてお示ししていきたい、このように考えているわけであります。
  158. 中桐伸五

    中桐委員 医師会が、薬価差に依拠する医療経営というものから脱却しなければいけないという方針を出したというふうに聞いておるのですが、つまり、薬剤師対策という問題を真剣に受けとめて、薬価差によって医療経営を成り立たせている現在の状況を脱却したいという方針を出されているというふうに聞いておるのですが、その点についてはいかがですか。
  159. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに現在の薬価差、これは公定価格を定めているために起こってくる問題でもあります。そういった意味で、この薬価基準制度そのものを市場取引実勢に合わせて、それを原則にして、そして今後制度を改めていこう、こういうふうに考えておるわけであります。当然、そこには薬価差というものが発生しないという形を求めているわけでありますし、我々としても、この診療報酬体系そのものも、あるいは医療機関の経営というものも、この薬価差に依存したような形での経営ということから、診療報酬体系としてきちっと医療担当者の技術を評価し、それからまた、いわゆるキャピタルコストといいますか、投資的費用もきちんと評価されたものをつくっていかなければいけない、これは私どもとして全く同じ意見を持っております。  そういった意味で、この診療報酬体系をどうするかということは、まさにこの薬価基準制度薬価の決め方、これと密接な関係があるわけでありますから、ですから私は、ここのところはワンセットになってくる、それだけ大きな問題であるというふうに思っておりますし、そういった形でやはり厚生省としても案をきちんと提案していかなければいけない、このように考えております。
  160. 中桐伸五

    中桐委員 全く今の御答弁のとおりだと思います。したがいまして、しつこく聞いているのですが、次回の診療報酬改定は、薬価制度見直し方針を九年度に大臣が出すと。もちろん、出したからといってすぐにそれが受け入れられるかどうかという問題はあると思うのですが、しかし、そこで出すときに、薬価基準の問題あるいは薬価差の問題にメスを入れる限りは診療報酬改定の問題を同時に問題提起しないと、先ほどの局長のキャピタルコストの問題というのは重要な問題になってまいりますから、そこはやはり避けて通れないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  161. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 先生の御主張は大筋として、恐らく私どもと余り変わらないのじゃないかと思うのですが、ただ一点、先生が強調されている中で、次回のというのを非常に強調されておるのですが、医療経営というのはこれは中断するわけにいきません。これはまさに日々動いているわけでありますし、そういった中で、今私どもが申し上げているのは、現行制度というものをこれからの時代に向けて抜本的にどう改めていくのか、この問題を申し上げているわけであります。そして、この抜本的な改革の中に薬価のあり方と診療報酬のあり方というのは密接に絡む、そういった意味で、その両方についての案というものを厚生省として提案をしていかなければいけない。それに対して、やはり国民的な合意を得るために時間もかかると思いますし、また、そういった意味での手順が要ると思います。  ですから、そういった意味での抜本的な改革の問題と、現実に日々動いておる医療経営における現行制度の問題というのは、ちょっとそこのところは私どもは整理して申し上げているつもりでございます。
  162. 中桐伸五

    中桐委員 いや、整理しているのじゃなくて混乱しているのじゃないかと私は思うのですが。つまり、方向性を同時に解決する必要があるわけですから、ですから、次々とこの問題をこの時点で解決するということは別の問題、スケジュールの問題は別としまして、基本的にこれはセットの問題ではないかということをお伺いしているのですね。  つまり、薬価差というのによって経営が成り立っていたという現実があるとすれば、その問題をどうするのかということに答えなければ、薬価差の問題だけにメスを入れるということはできないということではないかというふうに思うのですね。ですから、それは総合的な、先ほど小泉厚生大臣がおっしゃったように、総合的な決断をしなければいけないということではないかと思うのです。それをスケジュール的にどのように実現していくかということは、これはまた別に、そのときに議論をしなければいけない、またその時点時点で見直していかなければいけない問題はあろうかと思うのですが、基本的な医療構造改革方向性は、やはりセットでなければならないのではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  163. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに抜本的な改革に当たっては、診療報酬薬価基準のあり方、これはワンセットだと思います。
  164. 中桐伸五

    中桐委員 それではもう一つ、今度は製薬資本といいますか製薬業界の問題。  これは、薬価差の問題にメスを入れれば、当然、製薬資本はどうなるのだろうという問題がございますね。例えばドイツでは、非常に厳しい薬価差の問題に対する対策を、高価格薬品等の規制をしたところ、新薬の研究開発が余りできなくなったというか、ブレーキがかかったというふうな問題がありますね。つまり、今度は薬剤メーカー薬価差に対する取り組み薬剤費対策、薬剤費抑制対策をした場合にどのような影響が出てくるのかという問題が出てくると思うのです。その点についての見解をお聞かせいただきたいというふうに思うのです。
  165. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 結局、それは製薬企業のあり方になるわけでありますすれども、私はやはり、製薬企業というのは、市場の中で当然のことながら取引が行われ、そして価格形成が行われる、そういう中でそれぞれ利潤を上げていく、こういうようなことじゃないかと思います。そういった意味で、私どもが今回の薬価基準見直しにおける原則と考えておりますのは、まさに医療保険でお支払いをする薬価というものは市場取引実勢にゆだねることを原則としているわけでありますから、そういった意味で、製薬企業のビヘービアと申しますか、そういったものについては、むしろ本来の資本主義経済の中の原点に立って商売が行われるものではないかというふうに思います。  ただ、これまでとそこのところが変わってくるということに伴う準備なりというものはあるかもしれませんけれども、基本的にはそのようなことではないかというふうに思っております。
  166. 中桐伸五

    中桐委員 今の日本製薬業界、この現状というのを私まだつぶさに調べておりませんのでいろいろお聞きしたいわけですが、かなり経常利益を、一千億程度の、それより上の経常利益を上げているというふうなことを聞いているのです。また一方で、それほど新薬開発してきたのかというと、比べる国との違いもありますが、例えばドイツなど、今、薬剤費抑制対策で新薬開発がおくれている、いや、おくれが見えるようになったという新しい問題が起こっているというふうに聞いておりますが、日本の場合、例えばドイツの先進的薬剤業界と比べまして、大体どんな位置にあるというふうにお考えなんでしょうか、いわゆる研究というか新薬。  つまり、これは新しい薬ほど高価格に位置づけられるということとの関連でお聞きしているのですが、そのようなことから考えた場合、日本製薬業界新薬開発という点でどの程度の地位にあるというか、世界の中ではどうでしょうか。
  167. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 世界の新薬開発力の中で日本はどのぐらいの位置にあるかということが求められたお尋ねと理解いたしますが、結論的に申し上げますと、従来、いわば国内型産業ということで必ずしも国際競争力が強くないというふうに言われておりましたけれども、最近はいわば国際的な新薬開発力を徐々に強めておりまして、現在、世界でよく使われ評価されている、要するに評価の高い医薬品上位二十品目程度が統計でございますが、そのうち我が国の製薬産業も二品目ほどは入ってきたということで、徐々にではありますけれども、世界にも通用する新薬開発力がついてきたといったように評価をされております。  また、その前にお尋ねの、一千億を上回る経常利益というお話だったと存じますが、現在、一千億円を上回る経常利益を持っている企業は日本ではございません。  それで、通常よく、利益率につきまして日本の製造業の中でもぬきんでて高いのではないかという御指摘をいただくわけでございますけれども、日本の製造業、最近大体四%程度の利益率に対しまして、日本の大手の製薬企業、一四%台という統計がございます。ただ、これは、欧米の製薬企業と比べますと、はるかに欧米の製薬企業がぬきんでておりまして、利益率では米国では二三%台、ヨーロッパでは一六%台ということで、日本製薬業界に比べてさらに高い利益率という状態でございます。  加えて、企業規模で見てまいりますと、日本のトップ企業も世界のトップテンには入らないということで、いわば企業の規模は大変小さいという問題が指摘されております。  加えて、巨大な研究開発投資を欧米の企業は進めておりまして、その巨大な研究開発投資によりまして新薬開発力を強めている、それでも足らずに、最近は次々と企業合併が進められておりまして、世界第二位、第三位の企業が次々と誕生していくといったようなことでございます。  その中で、我が国の製薬企業が逆にまた生き残れるかという問題がございますが、これは冒頭申し上げましたように、日本の製薬企業も、徐々にですが新薬開発力をつけてまいりまして、国際化も進み、足腰を鍛えてきているという状態であろうかというように考えております。  医療費の抑制あるいは薬剤費の節減というのは、これは先進諸国共通の重要な課題でございまして、我が国の企業も当然これはいわば乗り越えていくというような事柄だろうと考えております。
  168. 中桐伸五

    中桐委員 局長、研究開発費についてはどうでしょうか。研究開発費は、先ほどちょっと抽象的にはお答えになったと思うのですが、簡単にお願いしたいと思います。
  169. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 研究開発投資につきましては、日本の製造業の中ではぬきんでて高く一〇%台、大手企業で一〇・一%といったような研究開発費を占めておりまして、これは、上位七社平均、国内企業の七社平均ですが、一社平均四百億円程度の研究開発投資をしておりますが、欧米の場合は、企業規模が大きくて、また、我が国の企業と同程度の研究開発投資率を持っておりますので、金額的には我が国の大手企業の三倍から四倍程度の研究開発費を投じているという状態でございます。
  170. 中桐伸五

    中桐委員 よくわかりました。どうもありがとうございました。  そうしますと、一応この際、かなり国際的な競争力もついてきているから、薬剤費対策はかなりメスを入れてもいいというふうに解釈をしておいてもよろしいと思うのですが、ちょっと時間がありませんので次に行きます。  前回の質疑で、欧米との価格差という問題が取り上げられておりました。これは、欧米で、例えばメバロチンという薬が、フランスでは日本の三分の一という形になっているというふうなことが言われておりました。これは薬価市場原理に基づいて決められていないためにこういうことが起こったのかどうかということでありますが、このような内外の薬価差という問題について、厚生大臣はどのようにお考えになられているのでしょうか。
  171. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 もちろん物によりますけれども、一般的に申し上げると、我が国で使われている薬が外国に比べるとやはり高いというふうに言われております。これは、日本の場合は、薬についてはどちらかというとむしろ輸出より輸入産業になっておるという面がもちろんありますから、そういった意味でのコスト高ということがあろうかと思います。  それにしてもかなり大幅な価格差というものがあるというのも現実でありまして、これは、実際に流通に供される、新薬として認可されるところがまさに公定価格という形で認可されておる、それも、類似薬がある場合には類似薬効というものでまず価格を設定する、それから類似薬がない場合には原価方式ということで設定をしておるわけでありますけれども、こういった最初の値決めのときの価格が、市場で流通する場合に比べると相対的には高目になっているのではないか、だから新薬のシフトというようなことが起こるのではないかというふうに考えておりまして、やはりこういった面についても市場の流通の実勢というものを反映したものが好ましいのではないかというふうに考えております。
  172. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、流通の過程で、卸業者みたいな形の性格がかなり日本製薬業界の中にある、要するに、自分たちのつくった薬を売っているというのじゃなくて、輸入して、そしてそれを販売する、そういう性格が強いというふうに理解してよろしいですか。
  173. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 全体的に輸出よりも輸入、その場合の輸入というのは、そのものをストレートに輸入するという場合もありますけれども、例えばバルクというものを輸入して加工するというものもございますが、全体的には、医薬品については輸入というのが、輸入産業の傾向にあると言われておるわけであります。
  174. 中桐伸五

    中桐委員 そうしますと、薬剤費抑制対策の一つには、薬価差という問題だけではなくて、その流通の問題といいますか、それがかなりあるというふうに思うのですが、その点についてはやはり対策をお考えになられるということでよろしいのでしょうか。
  175. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 我が国の薬の流通慣行というもの、いわゆるこれの近代化を図らなければいけないということは、これはかねてから問題になっておりまして、そういう意味では、ちょっと時期をはっきり覚えておりませんが、数年前から、いわゆる近代化を図るべく業界の方も努力をしてきておるわけであります。そういった意味では、製薬業界全体が近代化をしていかなければいけないと思いますけれども、基本的には、そういった意味での流通慣行というのはありますが、やはり市場実勢価格というものにリンクしたシステムというものになっていないというところに基本的な問題があるのじゃないかと思います。
  176. 中桐伸五

    中桐委員 わかりました。  これは、公定薬価基準の問題だけではなくて、もっと幅広い流通の近代化という問題も含めてやらなければいけないというふうに理解しておきたいと思います。  前回の質疑で、この委員会で高価格薬品へのシフトがえ防止対策が議論されたと思うのですが、そのときに、たしか局長だったと思いますが、今回の政府案は多剤投与の抑制にはなるというふうに考えていると。高価格薬品へのシフトがえについては何もお答えにならなかったように記憶しているのですが、その点で、高価格薬品対策として、もちろんまだはっきりした結論が得られていないというふうなことがあるかと思いますが、今厚生省として、高価格薬品のシフトがえを抑制するための検討というか、現段階でのその見解といいますか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  177. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 我が国の医療費全体に占める薬のシェアというのがなかなか下がらないというふうに言われておるわけでありまして、その原因として大きくは二つが挙げられるわけであります。一つが、まさに高価格の新薬の方にシフトをしている、もう一つが、我が国の場合、薬の多剤投与ということが指摘されておるわけであります。  今回、一種類一日十五円という形での一部負担をお願いしておるわけでありますが、これは多剤投与ということについての歯どめということに私は役に立つというふうに思っておりますが、高価格新薬の方に対するシフトという点については、この一部負担をもつてそれの是正が進むかということについては、これはストレートには効果はあるというふうには思っておりません。  ただ、方法論として、この一部負担を新たに設けるに当たりましても、そういったものがさらに防止できるような、適正化できるような、こういうふうな方式があればへそれは私は望ましいのではないかと思いますけれども、この高価格の新薬にシフトしていくというのは、そもそも薬の値段のつけ方の問題、その価格の決まり方の問題、これとの関係が一番大きいわけでありますから、やはりこの薬価基準制度そのものの抜本的な見直しがなければ、これは完全に適正化というのは難しいのではないか、こういうふうに申し上げたわけであります。
  178. 中桐伸五

    中桐委員 時間が余りありませんので、一剤十五円という、今の多剤投与を抑制できるという今回の政府案でございますが、これとの関連で少し質問したいわけですが、これは非常に現場で評判が悪い。それは、非常に実務的に煩雑だということが一つの理由に挙げられております。  そうしますと、これは、今まで診察を受けるまでに三時間待ち三分診療というふうな、ずっと引きずってきておる問題がございますが、その上に今度は、治療を受けた後にその支払いをするところでまた時間が非常にかかるのではないかという問題がありますね。その問題は現場から非常に危惧をされていて、厳しく問題が出されていると思うのですが、そこで各医療機関はいろいろな対応をするだろうと思いますが、もし仮にこの政府案が実現されるとしますと、やはり大変そこの問題が心配なわけですね。  そうしますと、例えば国立病院などでは、厚生省としては、そういう問題が起こるかもしれない、起こるのではないかということを想定しますと、例えば窓口の人員増などというふうな対策をお考えなのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  179. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 国立病院の窓口における料金計算につきましては、先生既に御存じだと思いますが、コンピューターを利用いたしておりまして、それで迅速に対応しておりますので、今回の薬剤の自己負担導入に際しては、そのコンピューターソフトを切りかえることにより対応することを考えておりまして、患者さんの待ち時間が延びることは大変少ないだろうと考えております。  ただ、今回の薬剤の自己負担導入によりまして、患者さんの待ち時間に影響を与える要因がほかにも考えられますので、私どもとしては、この待ち時間が延びないようにするなど、患者サービス向上には努めてまいりたい、このように思っております。
  180. 中桐伸五

    中桐委員 コンピューター利用とおっしゃいましたが、どのような普及状況になっているのですか、国立病院の、国立関係の医療施設で。
  181. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 すべての国立病院で導入しております。
  182. 中桐伸五

    中桐委員 それは、国立病院というか、いろいろな施設がございますね、国立療養所だとか。そういうことも全部含めて導入されていると理解していいのですか。
  183. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 私ども、国立病院・療養所関係を申し上げたので、他の国立施設等については、今の段階ではお答えできません。申しわけないと思います。
  184. 中桐伸五

    中桐委員 実際には、コンピューター利用の医療機関によって随分差があると思いますから、その点では、やはりこの問題は非常に大きな問題になると思いますね。ですから、どういう薬剤費抑制対策がいいかというのは、私も時間がありませんので議論はやりませんが、この問題は、合理的なコンピューター利用によってそこの待ち時間がすべて解消されるというにはかなり疑問点がございまして、その点についてはぜひ御配慮をしていただかないといけないのではないかというふうに思います。  きょう、大蔵省の方にも来ていただいて、時間がだんだんなくなってきましたので、せっかくお呼びしておいて質疑がないのは申しわけありませんので、次にちょっと大蔵省の方にお伺いしたいのです。  これはもう本会議でも私は言ったのですが、また、予算委員会やいろいろなところで出ているので、もうしつこいというふうにもお思いかもしれませんが、私は先ほどしつこくスケジュールをお聞きしました。  実は、早く抜本対策を立てて、総合的な対策を立てて、ちょうど大臣も、今年度じゅうに結論を得るというのは大変いいことでありまして、そういう方向でいくとしますと、ちょうどこれは政管健保の問題が非常に差し迫った問題でありますから、そうすると、これはちょうど今八千三百十億円が九年度赤字になるということですから、そうしますと、今までの借金を大蔵省が返してくれれば、十分腰を落ちつけて構造改革とタイムスケジュールの話ができるわけですよ。ですからしつこく言っているわけでありまして、そこをどうして大蔵省は今まで借金を、借金をしていると同じことなんですから、それをどうして大蔵省はうんと言わないのかというのが解せないわけです。つまり、今、政党も厚生省も各団体も医療構造改革を一生懸命考えているわけですね。それをもうちょっと安心して考えられるようにしてくれればいいと思うのですが、いかがですか。
  185. 丹呉泰健

    ○丹呉説明員 お答え申し上げます。  予算委員会あるいは本会議で大蔵大臣から答弁させていただきましたように、政府管掌健康保険の国庫負担の繰り延べの返済につきましては、平成八年度の第一次補正予算におきまして千五百四十三億円の返済をし、過去の繰り延べ分の返済に着手したところであります。残余の返済につきましては、私どもといたしましては、今後できるだけ速やかに返済できるよう誠意を持って対処するという基本方針でおります。  しかしながら、御案内のように、我が国の財政は、九年度末で公債残高二百五十四兆に達する見込みであるなど、非常に危機的な状況にあります。このような異例に厳しい財政事情のもとでございますので、返済の具体的な計画をお約束することは困難な状況にあるということを何とぞ御理解いただきたいと存じます。
  186. 中桐伸五

    中桐委員 計画を明らかにできないというのは、返すということは決めているのですか。
  187. 丹呉泰健

    ○丹呉説明員 今申し上げましたように、私どもとしては、できるだけ速やかに返済するよう誠意を持って対処するというのが基本方針でございます。
  188. 中桐伸五

    中桐委員 きょうの議論を長いこと聞いていただいたと思うので、いかに皆保険体制を守るのが重要かということを少しはおわかりいただけたと思うので、ぜひこの抜本改革をもうちょっと自由闊達に議論できるように、できるだけ混線しないようにするために、大蔵省としては、返済する方向というだけではなくて、もう少し真剣に考えていただきたいというふうに思います。  もちろん、行財政改革ということの関係でいえば、国民保険体制の崩壊はゆゆしき事態でありますから、ほかの予算をおくらせてもこの点については優先的に配慮していただきたいということを強く要望しておきたいというふうに思います。  そのほか、政管健保が黒字になったときに国庫負担率を一六・四%から一三・〇%に引き下げた経過がございますが、この点について、例えばこの負担率を、政管健保の保険料だけ上げて負担率はもう下げたままというふうにお考えなのか、どうしようとされているのか、大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  189. 丹呉泰健

    ○丹呉説明員 お答え申し上げます。  平成九年度におきまして、医療に関する国庫負担は六兆六千億円を超える巨額に達しておりまして、国の一般歳出の中でも非常に大きなウエートを占めております。先ほど申し上げましたように、我が国の財政事情は現在非常に危機的な状況にございます。  このような状況の中、昨年末の医療保険審議会の建議におきましても、医療費に対する公費負担について、「国や地方の財政構造が著しく悪化している現状では増やしていくことに限界がある」とされているところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、政管健保の国庫負担率を現状以上に引き上げることは困難であると考えております。
  190. 中桐伸五

    中桐委員 非常に冷たいわけで、その国庫負担率は私は余り強く言わないので、今、とにかく一年の赤字が大変なので、抜本改革に着手できれば効率的に医療費を使えると思いますから、やはり八千億の方を優先してお考えいただければというふうに思います。  もう時間がありませんので、最後に要望ですが、きょうの議論で大分明らかになったと思うのですが、平成九年度に、薬剤費の問題、薬価基準の問題だけではなくて、これはもう診療報酬改定だとか、それに伴う医療提供体制とか、すべて絡みますから、私としては、これはやはり全般的に、総合的に決断をする必要があるというふうに思います。  その場合、先ほどの質問の方が審議会ということを言われております。医療構造審議会ですか、これの質問をされておりました。また、今回のスケジュール等の話でも、抜本改革案の話でも、私の質問に対する答えとして、審議会で検討させてくれという話がありましたが、この審議会がほぼ今、非常にいろいろな利害団体の意見が、両論併記やら三論併記やらいろいろ出て、十分機能していないのではないかという危惧があるわけですね。先ほどの御答弁の中では、いろいろそういう利害関係のある方にむしろ少し遠慮していただいて、第三者的な方でやるということでありますが、一つはそのような方向で取り組む必要があるだろうと思うのです。  同時に、大臣に強く要望させていただきたいのは、これはやはり政治家が決断をしなければいけないのではないかというふうにも思うのですね。そのためには、この皆保険体制を堅持しなければいけない、効率的な医療を行う、質も落とさないで、むしろ質を上げるというふうな形でやろうと思いますと、やはりこれは政治家のリーダーシップが重要だと思いますので、その点、大臣としては、厚生省のリーダーシップももちろんですが、政治家としてのリーダーシップをぜひとっていただきたいということを要望して、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  191. 町村信孝

  192. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  保険財政の安定性や健全性の確保のために、国が責任を持って当たることは当然の責務だと思います。また、憲法はもとより、皆保険制度の趣旨に照らしても、すべての国民が健康に生きる権利、ひとしく医療を受ける権利が保障されなければならないというふうに思います。いわば、国民が健康に生きる権利とひとしく医療を受ける権利を保障するために保険財政の安定性や健全性が確保されなければならぬ、こういうふうに思うのですね。  そこで、伺いますけれども、高齢者世帯のうち市町村民税非課税世帯は何世帯で、何%ぐらいになりますか、お願いします。
  193. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 いわゆる老人保健法上の被保険者、七十歳以上の被保険者の中で、市町村民税非課税世帯でございますけれども、ちょっと足し算をさせていただきますので、ちょっとお待ちをいただきまして、後ほど……。
  194. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私の方で持っております。三五%です。百九十三万世帯ですね。  それで、このうち、入院負担について、一日三百円を二カ月を限度として負担するという世帯は何世帯で何%か、計算しないと出ませんか。
  195. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 恐れ入りました。  現在、いわゆる二カ月限度の三百円の世帯になっておりますのは三万五千人でございます。
  196. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 〇・三%なんです。これは実は、一九八六年の制度改正の際に、立法府の修正で入院負担の特例が設けられました。当時、高齢者世帯の九五%が非課税世帯ということで、老齢福祉年金の受給者に限定されたというふうに伺っています。  私たち日本共産党は、高齢者の入院負担には反対ですけれども、少なくとも、収入の低い、生活するのが精いっぱいだという非課税世帯には特例措置を適用すべきだというふうに考えています。しかし、今までの特例措置、対象者を絞り込んだわずか〇・三%の世帯にまで、今回の改定によりまして情け容赦なく、入院している間は期間の期限なしに五百円負担させようというものです。その上、入院給食費が自己負担になってくるわけですね。こういう大変な負担になってきます。  ここでお聞きしますけれども、非課税世帯で老齢福祉年金の受給者まで今回負担させるという根拠は一体どういう根拠から出ているのでしょうか。
  197. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 入院の一部負担金につきまして低所得者の特例を今回も設けておるわけでございますけれども、その範囲につきましては、現在の老人保健制度における特例の範囲と一致をさせております。したがいまして、現在のあれでは、いわゆる老齢福祉年金の受給者でありまして、その世帯の主たる生計維持者が市町村民税非課税である世帯ということを対象にいたしておりまして、それを今回も踏襲する形で低所得者対策を講じておるところでございます。
  198. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 老齢福祉年金の月平均の年金額というのは幾らですか。
  199. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 三万三千五百三十三円というふうに承知をしております。
  200. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今回の入院負担で食事代も含みますと、厚生省としてはどれぐらいの負担がこの人たちにかかると考えていますか。
  201. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今回の特例によります低所得者対策がされる、五百円の負担が課せられる方につきましては、定額負担が、三十日入院をされますと、五百円掛ける三十日でございますから一万五千円、それに食事の負担が三百円の三十日でございますから九千円、合わせて二万四千円というのが今度の特例によります低所得者対策を講じた場合の額でございます。
  202. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 考えてみましたら、月平均三万三千五百三十三円でしょう。そういう人から二万四千円も取るのですよ。実際には高齢者の三割を占める年収百五十万円以下の高齢者世帯からも二万四千円取る、これは実に残酷ではないですか。三万三千五百三十三円の人から二万四千円取ってしまったらどれだけ残るのですか。これだけで生活できるわけではないですよ。ほとんど収入を全部取ってしまうということになるでしょう、入院したら。こんなめちゃくちゃなやり方はないというふうに私は思うのですけれども、いかがですか。これでも負担できると思っていますか。
  203. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今は三十日丸々入院をされたケースで申し上げました。それぞれの実態はいろいろだというふうに思います。しかし、保険の中で今のような形での特例を講じておること、これは現在の老齢福祉年金の水準等から見ましても二万四千円と、一応それを下回る額での設定になっておりますことから、決してそれが楽だというふうには申し上げるわけにはまいりませんけれども、やはり保険制度としてはそれなりの配慮をした額であるというふうに考えております。
  204. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 先ほど厚生大臣が、お金がないから医療を受けられないという人にはきちんと配慮もしているのだというお話もされていましたね。今聞きましたら、月三万三千五百三十三円の人が月二万四千円も医療費を取られる、それは全員が三十日入院するわけではないけれども、少なくともこんな人から取るべきでないですよね。その辺、いかがですか、配慮されていますか。
  205. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それは、全額税金で月三万三千円年金を支給している。入院するということは全生活ですから、その二万四千円、命にかかわる問題であり、恐らく入院される方はそれが最優先だと思いますよ。この程度負担はお願いしないと、ほかの、税の公平の問題が出てくるのではないかというものがありますから、私は、苦しいとは思いますけれども、一日、全生活病院で生活するということについては御理解をいただけるのではないかなと思いますが。
  206. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 税の公平といいましても、高齢者の場合は所得格差が大変大きいわけですけれども、その中でも三百五十万円以下はもう七割、高齢者の場合は低所得者が大半なんですね。確かにいろいろな場合があると思うのですけれども、高齢者が病気になったときに、健康に生きられるといいますか、こういう権利そのものも保障されないと、税の公平だから少々のことでは我慢してくださいというのでは、私は本当に今の実態を見ていない論議だというふうに思うのです。  そこで、もっとすさまじいというか、深刻な事態を述べたいと思うのです。  実は、負担はこれだけではないのです。今、国保の問題を少し言いたいのですけれども、現在、国民健康保険料が高過ぎて滞納している世帯は二百五十万世帯と言われております。減免措置保険証を交付されていない世帯が合わせて四百七十八万二千世帯あります。この中でどういう事態が今生まれているかということなんです。  私が調べましたのは岐阜県なんですけれども、岐阜県の場合は二千百八十八世帯が資格証明書等が発行されていまして、そのうち千六百十五世帯が岐阜市に集中しております。その実態は大変ひどくて、岐阜市では、重度の障害者や乳幼児医療費の助成対象者、母子家庭やその子供、福祉医療受給者から保険証を取り上げている、こういう実態があります。出産給付金まで滞納分に充てている、こういうことまで起きているのですね。こんなやり方に問題はあると思いませんか。いかがでしょう。
  207. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 国民健康保険の財政も非常に苦しいわけでありますけれども、国民健康保険、これはいわゆる保険制度として相扶共済の制度でありますから、加入者はそれぞれの所得なりあるいは資産に応じて保険料あるいは保険税というものを納めていただいておるわけであります。  そういった中で、いわゆる被用者保険のような格好の源泉徴収の形ではありませんので、そういった意味では、それぞれの市町村方々はこの保険料を何とか自主的に納めていただくべく努力をしていただいておるわけであります。  これは大変な御苦労をされておるというふうに私は考えておりますけれども、そういった中で、保険料の収納、その確保のために、例えば滞納者の方、滞納者の方といいましても、しかるべき理由があって滞納せざるを得ないというケースと、それなりの負担能力はあるけれどもなかなか納めてくれないとか、いろいろなケースがあろうかと思います。そういった中で、それぞれの市町村の職員の方々は、いろいろな知恵を出して、あるいは生活の知恵を駆使しながら、この保険料収納の確保に努力しているというふうに思います。  そういうような中で、ただいま先生からお話がありましたような形で、例えば滞納者の場合には、保険証をそれなりの有期限で発行するとか、あるいは保険証にかえて資格証明書のようなものを発行するとか、そういったことでそれぞれ保険料を納めていただくというふうなことをやっているわけであります。これが余りにも度が行き過ぎる場合には問題かとは思いますけれども、そういった市町村の職員の方々の国保を維持するための、そしてまた、保険料を納めている方とそうでない方々との間の公平の問題もあります。制度を維持するためには、やはりみんなが公平感を持たなければ制度というのは成り立ちませんから、私はそういうふうな意味での御努力のあらわれじゃないかというふうに思っております。
  208. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 障害者や子供から保険証を取り上げる、出産給付金まで滞納分に充てるというのは、生活の知恵なんですか、よくやっている、こういう御判断ですか、厚生省は。
  209. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 出産育児一時金、これは療養費払いという形で対象者はいただくことになるわけでありますけれども、これをいただく方が保険料を滞納している、そういった場合に、出産育児一時金、これは保険給付でありますから、保険給付は保険給付として支給すべきであることは、これは間違いありません。ただ、その際に、当然それは、出産育児一時金という言うなれば給付が入ってくるわけでありまして、一方、保険料の方は滞納している、そのときに、当然のことながら、十分お話をした上で御説明をし、そして納得をいただいた上で、この保険料の滞納に対して納めていただく、こういうことをやっているというふうに聞いておるわけでありまして、そういった意味では、何かこの出産育児一時金を取り上げてしまって、そして、自動的に保険料の滞納分に充当しているということではないというふうに思います。
  210. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 実際には、事例を見れば、納得してやっているという場合じゃないです。本当に困り果てて、保険料を払えない、そして手当をもらったときにでもこれを一方的に取り上げる、こういうやり方なんですよ。  例えば、もう一つ例があるのですけれども、この岐阜の例なんですが、余りにもすさまじいのです。これはぜひ調査してもらいたいと思うのですけれども、保険証がなくて資格証明書のために、ともかく病気になってもなかなか病院に行けない、気がついたらもう手おくれで、がんで亡くなった方がいるわけですけれども、その方のカルテに、資格証明書による受診のおくれが死亡の一因、こういうように書いてあると。要するに、保険証をもらいたいと言ったけれども、もらえない、それで結局手おくれになって亡くなったという例も出てきているのですね。私は、単なる合意して、話し合って決めているというだけじゃなくて、大変すさまじい実態が次々とこの岐阜の場合は起きているのですね。  これはぜひ調べていただきたいと思うし、実際には、応益の負担割合をこの国保の場合は強化していますし、低所得者ほど保険料負担が重い、そういう仕組みになっているのですね。ですから、保険料が払えない、そうすると命の綱である保険証まで取り上げる、こういう事態になっているわけで、ぜひこの実態も調べていただいて、本当にこういう行き過ぎたやり方についてのチェックをする必要があるというように思うのですが、いかがですか。
  211. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 保険制度というのは、これは病気になった場合に医療費保険でカバーするという制度でありまして、保険制度がありながら医療にかかれないということは、これは本来の姿として決していいことではない。それからまた、我々としても、当然のことながらいろいろな方がいらっしゃるわけでありますけれども、お困りの方も大勢いらっしゃる、それについて世の中の常識を欠いたような形のことが行われるとすれば、それはだれの目から見ても適当ではないというふうに思います。  ただ、もう一方、やはり保険制度でありますから、保険料を払っていらっしゃる方がおられるわけでありまして、決して豊かな人ばかりが払っているわけじゃないと思います。皆さん、大変な中で、自分の病気、命にかかわるものとしてきちっと払っている方もたくさんいらっしゃる、そういうふうな方々のお気持ち、そういうふうなものもやはり忘れるわけにはいかないと思います。  だから、余りにも行き過ぎた状況というのはこれは問題だと思いますけれども、やはりそこら辺のところは、全体の国民感情なり県民感情なり市民感情なりというものとのかかわり合いじゃないかというふうに思いますし、相扶共済という原点に立って制度を維持しなければ、制度そのものが成り立たないというふうに思っております。
  212. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 特に、国保の世帯の場合は傷病時保障がないわけで、病気になればもうその日から生活できないという事態になるわけです。ぜひ、そういう傷病の保障も含めて本来なら対処しなければならないというふうに思います。特に、国保の場合に滞納世帯がかなり多く出ているというのは、単なる払うべくして払わないというのじゃなくて、払えない状態にあるということもよく見ていただきたいというように思うのです。  さらにもっと深刻な事態といいますか、国民にとっては大きな負担になっているという問題について伺いたいと思うのです。  保険料が高過ぎて払えないという問題がありますけれども、実は、患者さんの自己負担そのものも大変ふえてきているわけです。九六年の七月に、財政構造改革白書というのが出ていますけれども、ここでは低い患者自己負担というのを強調しています。果たしてそうかということなんですが、この根拠となっている、厚生省国民医療費における患者負担というのは一体どれだけで、何%になっていますか。
  213. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 平成六年度の国民医療費で申し上げますと、平成六年度の国民医療費の総額が約二十五兆八千億でございます。そのうち患者負担が約三兆円ということでありまして、割合で見ますと約一一・八%というシェアでございます。
  214. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この医療費の統計には、差額ベッド代とか正常分娩費とか、売薬代とか、歯科材料差額代、お世話料・おむつ代、老人病院などの保険負担は入っていないのですね。それで、実はこの保険負担というのはすさまじい額に上るわけです。  厚生省の所管である財団法人の医療経済研究機構ですけれども、これが行った報告書によりますと、風邪とか腹痛などの大衆薬を買ったときの国民負担は一兆六千億円に上る、保険外の差額ベッド代などの総額は四兆五千億円にも及んでいる、こう書いてあるのですね。  それで、大体、厚生省国民医療費に占める患者負担というのが一一・八%と言われたのですけれども、この国民医療費保険負担も含めますと、患者自己負担は低目に見て六兆五千百五十四億円で二二・一八%、高目に見ると七兆三千三百八十七億円、二四・〇一%にもなっている、こういう状態なんですね。  要するに、政府が言う医療費の倍以上を国民は実際には負担している、こういうことをこの調査でも明らかにしているわけですけれども、この程度負担は低い負担と言えるのかどうか、この点ではいかがでしょう。
  215. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに先生御指摘のとおり、この国民医療費の中には、例えば差額ベッド代あるいはおむつ代とか正常分娩の費用というものは含まれておりません。それらの推計のお話を今先生されましたが、それらをトータルして平均で見ると二四・〇一%というお話でございました。  これは基本的には平均で見た場合の数字でありますから、そういった意味で、それぞれの、例えば部屋代などになってまいりますと、特別室や何かの部屋代もありますし、そういったようなもの等々、患者さん側の選択なりニーズというものにこたえた形のものもありますので、一概にこの数字だけでは判断すべきではないというふうに思いますが、全体の医療費あるいは医療にかかった費用のうち二四%を患者負担という形で負担しているというのは高いか低いかということになりますと、この医療保険制度というものをベースにしながら、そして国民が安心して良質な医療を受けられるという観点に立った場合に、私は必ずしも高いというふうな気はいたしません。  ただ、これはそれぞれのケースによって判断は違うと思いますし、収入なり所得によっても違うと思いますから、これが決して適正な水準なんだというふうに決めつけるわけにいきませんけれども、安心して医療を受けられるコストとして負担すべきものは負担せざるを得ないということではないかというふうに考えております。
  216. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 次に、薬の負担の二重取りについて伺います。  今回問題になっているのは、一日一剤十五円を新たに負担させるという点ですけれども、実際にはこの負担分はどれだけになりますか。
  217. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 予定どおり平成九年度の五月実施ということで申し上げさせていただきたいと思いますけれども、この薬剤の一日一種類十五円の御負担を新たにお願いした場合に、お年寄りの場合千六百億円、それから若人の場合三千二百億円ということで見込んでおりまして、合わせて四千八百億円ということで見込んでおります。
  218. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 このことによって、患者さんとお医者さんの信頼関係も、一々患者さんがどれだけお金を持っているかというのを見ながらやらざるを得ない。それから、患者さんもお金がないと薬を拒否するという問題も出てきまして、私は、信頼関係を損なうということも十分考えられると思います。  特に、この薬剤負担制度というのは、以前に、一九六七年に実施されたことがあるわけですけれども、その当時、小泉厚生大臣の地元である神奈川県の保険医新聞に、これを実施されたことによって、六十一歳の患者さんが改悪実施一カ月後から来院せず、五カ月して亡くなったという記事を載せておりました。この医師は、これは医師がコメントしているのですけれども、一日十五円の薬剤負担が本人にとってもつらいものであったと考えられる、こういう記事が保険医新聞に載っています。こういうものは国民の反撃で二年で廃止になったわけです。  今、患者さんが、厚生省のモデルケースだけでも、こういう薬代の負担をさせることによって、現行千二十円が、定額負担だけで二千円、薬剤負担が千八百円、合計三千八百円と四倍近い負担増になる。そういう意味ではとても大変な事態になるということは明らかです。  最後に大臣に伺いたいのですが、本当に国民本位の医療のあり方というのを考えるならば、国民の犠牲を生み出し、二年で廃止になった、こういう教訓からしっかりと私は学ぶべきでないかと思うのですけれども、いかがでしょう。最後に伺います。
  219. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 国民保険制度、これは大方の人はいい制度であると。病気にならない人も、お医者さんにかからない人も保険料負担していただく、同時に、病気になった場合は保険制度のおかげで高額の負担なく適切な医療を受けられる、この制度は安定的に維持していかなければいけないと思います。  その中で、高齢者と若い世代、お互いがどの程度給付と負担の均衡を図るかという観点からこれからの将来を考えますと、ますます高齢者がふえる、医療にかかる方も多くなる、負担が軽い、となると、それはどこかでだれかが負担しなければならない。これ以上の負担を若い世代あるいは税で負担できるのだろうかというと、これに対しても実に反発が強いということから、今の高齢者の給付と負担を考えると、これはもう少し負担してくれてもいいのではないかということで、今回あえて一月千二十円を一回五百円、二千円を限度、そして一剤十五円という薬剤というのは、私は負担できないほど高額とは思っておりません。  むしろ、この程度負担高齢者にもお願いして、この国民保険制度、若い世代と高齢者がそんなに争われないようにお互いが支え合う、給付も受けるけれども負担もしていこうということで、この保険制度を安定的に発展させるために私は必要だということを御理解いただきたいと思います。
  220. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  221. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十八分散会