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吉田参考人 朝日新聞の
吉田でございます。
きょうは、
機会を与えていただきましてありがとうございます。昨年の総
選挙の結果を踏まえて新しい
制度についての
意見を述べよということですので、私の
意見をかいつまんで申し上げたいと思います。
ただ、こういう問題を
考える場合に、新しい
選挙制度は
選挙制度だけの改正であったのではなくて、
政治の腐敗、
国民の
政治不信、そういったものの解消を目指して、
政治資金の
制度あるいは
政党助成の導入、そういうものを含めた一連のセットの改革であったということであろうと思います。
選挙の面では、
政党・
政策本位の
選挙ということを目指し、金のかからない
選挙というものを目指したものでありますので、やはりこの問題を
考えるときは、そういう改革の
趣旨に照らして、では実際の結果はどういうことであっただろうかという点に絞って
考えるべきであろうと私は
考えております。
その第一の、
政党・
政策本位の
選挙であったかという点でございます。
既にお三方お話しになっておりますけれ
ども、このどぶ
板選挙と言われた
選挙、これは私は、どぶ
板選挙というのは名前は余りよくないけれ
ども、もしこれが
政党が主導した
選挙運動であり、なおかつその中で
政策が真っ当に訴えられたものであれば、大変すばらしい、ある
意味では
選挙運動のモデルと言ってもいいような、そういう
選挙であろうと
考えます。
しかし、
現実はそうではなかったのであって、多くの陣営は、
政党が
中心というよりは後援会が
中心の従来型の
選挙を行ったと私は
考えております。党の
政策あるいは公約というものをもちろん訴えられたでございましょうけれ
ども、実際の場面場面では、地域の
政策、地域の利害に絡むような訴え、やはりそういうものが
中心になったというふうに言わざるを得ないと思うわけであります。この点で、やはり今回の
制度は十分に生かされていないというふうに思っております。
しかし、このことは、
制度が悪いのか、あるいは
政治風土が悪いのかと
考えますと、私は、そうではない、やはり何といっても
政党、
政治家の姿勢というのが第一義的に大きな問題ではないかというふうに
考えておるわけですね。
その中で、
制度に引きつけて申し上げますれば、一番大きな問題は、
政党の
地方の支部、とりわけ多くの
政党が三百の小
選挙区の中でつくられました
選挙区の支部、この
あり方の問題に帰着するのではないかと
考えております。
政党が主導権を持って、党員やその支持者が
候補者とともに
政策を訴える、
政党の支部がそういう核になるべきですし、もしそうなっておればよろしかったのでしょうが、実態は後援会にあったと
考えます。また、この
政党の支部というのは、年間三百億円ほど出ております
政党交付金、これはもちろん
政党の
中央本部もお使いになるわけですけれ
ども、それのうちのかなりの
部分が現場にも流れ、その資金の受け皿となっておるのがこの
政党の支部でありますので、そういう
政党の支部が
政党としての活動の拠点になっていないという状態であれば、せっかく出した
政党交付金というのが泣くのじゃないか、私はそういうふうに
考えるわけであります。こういう支部の
あり方というものを、ぜひ
政党、
政治家の
方々に篤と
考えていただきたいということが第一点であります。
第二点は、では、金のかからない
選挙というスローガンが実現しただろうかという点でございますけれ
ども、私
どもの新聞社で
選挙後一月ほどのところで、
当選された全衆院
議員にアンケートをいたしました。中
選挙区に比べて金がかからなくなったという方が、かかるようになったという方に比べまして三倍ほど多い、かからなくなったという方が多いわけでございます。これは本当であれば大変すばらしいことであります。
ただ、この最大の原因はこの並立制の導入という点にあるのではなくて、連座制の強化というものを行いました法改正、これに大きな原因があるというふうに私は
考えております。
一方で、小
選挙区の
選挙運動の密度が非常に濃くなりましたものですから、かえってお金がかかるようになったとおっしゃる方もいらっしゃるわけですね。特に、今回の
選挙から
政党の
選挙運動というものを認めるようになりました。昨年の
制度改正によりまして若干分量は減りましたけれ
ども、それでもかなりの分量の活動があるわけでございますけれ
ども、この資金を、本来ならばこれは
政党の支部が賄うべき活動であると思いますが、実際のところは、余り支部が整っていないところは
候補者の方が御自分でしょってやるというような
現実もあったのではないかと思うのですね。
そうしますと、トータルとして本当にお金がかからなくなったのかどうかという点は、ことしの秋ぐらいに発表される九六年の
政治資金収支報告等を見なければ、実際のところよくわからないと思います。ただ、もし本当にお金がかからなくなったということであるならば、私は、かねてこの
制度改革の
一つの大きな柱であった企業・団体献金の削減ないし廃止という点について、一層の御努力をいただく大変よい
機会ではないかというふうに
考えておるわけでございます。
それから三番目に、
比例区の問題、それから
重複立候補の問題について申し上げたいと思いますが、私
どもは
基本的に
比例代表的な
選挙がよろしいと
考えておりまして、もし並立制か併用制かということであれば、併用制がよいと
考えております。また、もし今並立制の中で改善を施すのだとすれば、
比例区の定数というものをもうちょっと手厚くしていただいた方がよろしいのではないかと
考えておるわけです。
そのことはちょっとおいておきまして、
重複立候補でございますけれ
ども、私は、小
選挙区の
候補者が重複して
比例区に出馬できるという
制度は、これ自体がそんなに悪いとは思っておらないわけでございます。やはり一番大きな問題は、同一
順位という問題にあったのではないかと思います。
この同一
順位、
惜敗率ということによって
当選が決定されるという仕組みがやはり大変わかりにくいし、小
選挙区の争いというものをかなり生の形で
比例区に持ち込んでしまうということで、
比例区の
あり方を相当ゆがめたのではないかなと
考えておりまして、私は、
政党が
政党であるならば、少なくとも拘束名簿の中で
当選順位というものは責任を持ってお決めいただくのがよろしいと
考えます。もしどうしてもそれができないというのであれば、同一
順位は少なくとも
制度上おやめになった方がよかろうか、こういうふうに
考えておるわけでございます。
もう時間もなくなりましたのであれですが、いずれにしても、この
政治改革、まだ途中でございまして、私、この
選挙でネガティブな面を若干申し上げましたけれ
ども、全体として大きな政界再編成というものがその途次にあって、累次進んできておるという点は十分に
評価をしなければならないと思うわけでございまして、ぜひ一層の政界再編成、対立軸の整理というものを
皆様方なりに施していただいて、この
制度を生かす中でやっていっていただきたい。
併用制がよろしいかと思いますが、直ちに、では済みませんがまた併用制に変えろ、このようなことはなかなか
現実的でもないし好ましくもないと
考えておりますので、そのような
政党の
あり方、そして、どうしても必要なことであれば
制度の手直しというようなものを施しながら進めていただきたいと思います。
以上でございます。