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吉田参考人 御紹介いただきました
吉田堯躬と申します。
宮崎産業経営大学で
財政学を担当しておる者であります。
本日は、
決算審査のあり方をめぐる
決算委員会に
意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。この問題につきまして、五点申し上げたいというふうに思います。
まず
最初ですが、
決算を規範性のあるものにしたらという点でございます。
決算が重視されていないというのは、今のお話の中や何かにも出てきているところでありますが、それはなぜかということを考えますと、
決算を
議決するということによっては物事が変わらないという事実があります。否決すれば過去の取引がこれは無効になるとか、そういうことならば、この
予算を
執行した側が緊張することになりますけれども、今は、
議決されてもされなくてもそれは影響されません。ですから、
決算について
行政府側が、多分先生方のところへも御
説明には行かないのではないか。
予算だとか法案だとか条約だったら、多分
審議にかかるとなれば
説明に行きますけれども、
決算は
説明に行かないですね。それは、
決算は事実が変わらないから
説明する必要がないと思っておられるのだろうと思います。ですから、
決算を重要視するには、
決算によって物事が決まるという形にすることが必要ではないかなというふうに考えます。
決算になじむ、規範性のあるといいますか、それによって物事が決まるということはどういうものならあり得るかということを考えますと、実は
剰余金の処理ということが
決算にふさわしい、その規範性のあるものではないかなというふうに思います。
現在は、一般会計においては、自動的に
予算処理の方に入っていってしまうということになっております。
特別会計も、そのまま繰り越して使える、あるいは積立金にしてしまう、自動的になるということになっておりますから、
決算の処理ということにはならない。しかし、これは法律でそういうふうになっているだけですから、法律を変えて、
決算の
剰余金の処理については
決算委員会の
審議後でなければ処理できないという形に変更すれば、
決算そのものが規範性のあるものに変わるのではないかというふうに考えます。先ほど
フランスの例がありましたけれども、
フランスの中のあれはそういうものが入っているということが、先ほどのお話の中にもあったように思います。
そのようにすることは、逆に言いますと、今までの行政の対応を難しくしますし、いろいろな点から、例えば
財政の硬直性、
制度が硬直化するというような反論があり得るとは思うのですけれども、実は
財政が弾力的であるというのは、
制度が厳格になっている方が、
財政は弾力的に行えるもの、弾力化するというふうに考えるのです。
制度が非常にリジッド、例えば公債は絶対に発行できないということになっていれば、
財政が現在みたいに公債で動きがつかないというような事態にまでは陥らないうちに対策がとられるのですね。ところが、その発行しないでということを取りやめて、発行してもいい、
公共事業費の範囲ならいいというようなことになりますと、今度は、ぎりぎりまでは
財政というものは悪化していくというふうに、
制度が厳格であるということと
財政自身が弾力的、硬直化しないということとは別問題です。ですから、
剰余金の処理が別個に処理されるというふうになって、それは
財政の
制度とすれば弾力性がないことになりますけれども、
財政自身がそれによって弾力性がなくなるということはないというふうに考えます。
それからもう
一つ、一般には、
決算が
議決案件でないからという点を尊重されない理由の
一つに挙げて、
議決案件にしろということが言われることがあります。しかし、この考えは、実は予備費は
議決案件ですけれども、衆参異なる
議決をしたとしても、現在何らそれが影響を持たないということからしまして、
議決案件にするかどうかではないのですね。
議決案件の中にその規範性のあるものがあるかないかがポイントだというふうに考えます。それが一点目でございます。
二点目は、
決算内容を
歳入歳出に限定しないで、
予算と対比する形でということに
制度を変える必要があるのではないかという点であります。
憲法で、
決算については、
歳入歳出決算というふうに言っておりますが、
予算はそういうふうには限定されておりませんで、現実的に
財政法で、
予算には
予算総則とか継続費とか国庫債務負担行為とかそのほかがございます。それに対して、
決算の方は
歳入歳出の
決算だけになっております。ですから、
予算と対比するためには、
決算を
予算と比較したような形で
提出される、あるいはそのように内容を変えていくということが必要だろうと思います。
ただ、
歳入歳出以外のもの
予算で決めていることは、基本的にはどうしても
予算の
歳入歳出にかかわってきますから、そういう意味では、
決算書を
方々洗っていけば大体のことはわかるようにはできております。しかし、全然出ていないものもないわけではありません。現在、
予算の中に
予算定員俸給額表というものがありまして、これに従って各
省庁は運営しなさいということになっている。これについては、どういうふうに運営されたかというのは
決算書のどこにも出ておりませんので、そういう
事例もありまして、
予算で決められたことの中で
決算にわからないことも中にはあるんだ、そういう形で、
予算で決めたことが
決算にそのままわかるようにされることが必要ではないかなということです。
それから第三番目としては、余り大所高所からではなくて、
決算というものをもう少し
実態的に考えたときに、
財政資金の処分というか
財政資金の配分という面はやはり
予算委員会の問題であろうというふうに私は思います。その
執行段階の問題が
決算だろうというふうに考えておりますので、そうしますと、不正だとかそういう問題がありますが、不正はこれは
議会というところがなかなか直接取り扱えるものではないと思います。これは、専門的にやっておられる
会計検査院とか、あるいは逆に、ジャーナリズムさんがやっていただくのを取り上げることは可能ですけれども、
議会自体がそれを独自に調べてきてというのは、それが好ましいと言われれば好ましいかもわかりませんけれども、現実的に、私も
決算の
調査室というところにおりましたけれども、そういうところでそれを要求されましても、それのサポートというのは実はなかなか難しいというふうに考えております。
むしろ
決算委員会は、そういう
財政資金の配分ではなくて、配分が長期的にどこかで変わってきておるのではないかということの
指摘ならできるのではないかというふうに考えております。そういう意味で、
特別会計とか政府出資法人なんかについては、これはっくるときに大体において資源配分というのはもう決まっているというふうに考えていいわけです。それがその後の事態にどういうふうに変化しておるかということを財務諸表そのほかからフォローするというのが、
決算委員会にはあっていいのではないかなというふうに考えております。
例えば一例を挙げますと、
外国為替資金
特別会計というのがありますが、これは固定レートの時代につくられた
制度でございます。それですから、今みたいに変動レートのもとではなかなかうまくいっていないといいますか、違う
制度になっているのだろうと思います。それでは現実には何をやっているかといいますと、これは、評価損が出た以降、この
特別会計は日銀に外為証券を発行して、それによって外貨で運用するという形で、そこで利益を上げるという形をとっております。それを一般会計に計上する、入れ込むという、要するに外貨運用で金もうけをやっている
特別会計に変わってきてしまっているというふうに思います。それがいいか悪いかの判断はまた別なのですけれども、そのように内容が変わるということがわかってきますので、そういう点は、
決算委員会などで
実態を見ていくということがいいのではないかというふうに思っております。
四番目は、もう少し実際的な面でございますが、先ほども
決算委員会が流れてしまったということが
岸井参考人の方から話が出ておりましたけれども、
決算の
制度自体は、常会に出すということになっておりますから、開会中の
審議ということを前提としているはずでございます。ところが実際的には、これが閉会中にならないとなかなかできない。開会中は、法案の
審議あるいは
予算の
審議が優先されるというのが現実であります。
決算審議を重要だと言われている各政党さんの中でも、いざとなりますと、
予算委員会をつぶして
決算委員会をやるということに賛成はなかなかしていただけないというのが実際であります。
一番いいのは、
予算の
提出が
国会法が改正されて十二月じゃなくなって一月になってしまって、
予算と
決算が同時に
提出ということになってしまいましたので、
予算の前に
決算を
審議するということからすれば、秋に臨時
国会を開いて
決算を
提出してもらうというのが最もふさわしい。そこで
審議した上で
予算の
審議に入るということが好ましいと思うのですが、もしそれができないということであれば、
予算委員会の
審議中に、週一日だけでも
決算審議の日を設けて、衆参交互なら衆参交互に
決算委員会をやるという慣習をつくっていただきたいというふうに思います。
それからもう
一つは、
決算委員会がつぶれるのはそれだけではございませんで、実は政治的な問題によって、
決算委員会がセットされていても、全部の
委員会が
審議ストップだということで
決算委員会自体が流れてしまうということがあります。しかし、先ほど御
説明の中にもありましたけれども、
決算委員会というのは、本来与
野党の対決すべきものではないというのが
イギリスだとかそういうところの例にも出ておりましたように、そういう政治的な対立に巻き込まれてストップすることはむしろない方がいいと思います。
それから現実において、
審議ストップするというのは、
野党が法案あるいはそういうもののストップをするためでありますから、その戦術の
一つとして行われているわけですけれども、
決算をやったからといって、
決算の
審議をおくらせたら政府の方が困って法案
審議のために何か譲歩するというようなことはあり得ないわけでございますので、そういうことからすると、
決算委員会は災害
委員会と同じように、全体的な
委員会運営の中でストップしないで行える
委員会にしていただいたらどうかなというふうに考えております。
審議拒否をすれば、それは行政官庁が喜ぶとまでは言いませんけれども、決して行政官庁にとって、ああ困ったなということにはならないわけですので、拒否をする理由がないというふうに私は考えております。
最後ですけれども、
決算については、実は
財政を担当している者でもほとんど取り扱いません。それは、
決算のことを書いても雑誌は載せてくれませんし、
決算の論文を書いて博士号を取るとか、あるいは助教授から教授になれるとか、そういうようなことには多分ならないのだろうというふうに思います。というふうに、学会の中でも
決算というのはそんなに重視されないというふうになっています。それですから、
決算を分析するというか、それを奨励するようなあれが全くございません。
それで、
決算委員会がそれをやってくださらないとなかなかそういう刺激を受けることがないわけでございますので、
決算委員会が、
参考人でなくて、公聴会を必ず開くというようなことをやっていただいて、そこにそれぞれ問題を見つけた人が出てきていただいて、こういう問題がある、ことしの
決算を分析したところこういうところがどうも問題点になり得るのではないかというようなことを、そういう分析能力がある人が公述できるようなふうにしていただいたらいいのではないか。もしそういうことができますと、現在地方
議会や何かであれしております市民オンブズマンの人たちや何かも活用する余地があるのではないかなというふうに考えております。
以上、五点を私なりに考えてまいりましたが、参考になりましたでしょうかどうか。どうもありがとうございました。