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1997-06-13 第140回国会 衆議院 環境委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十三日(金曜日)     午後一時一分開議  出席委員   委員長 佐藤謙一郎君    理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 長内 順一君 理事 田端 正広君    理事 小林  守君 理事 藤木 洋子君       大野 松茂君    河野 太郎君       桜井 郁三君    桜田 義孝君       鈴木 恒夫君    砂田 圭佑君       園田 修光君    目片  信君       大野由利子君    武山百合子君       並木 正芳君    松崎 公昭君       川内 博史君    桑原  豊君       土井たか子君    保坂 展人君       岩國 哲人君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君  出席政府委員         環境政務次官  鈴木 恒夫君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         環境庁自然保護         局長      澤村  宏君         環境庁大気保全         局長      野村  瞭君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君  委員外出席者         厚生省生活衛生         局水道環境部計         画課地域計画室         長       早川 哲夫君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   三本木 徹君         農林水産省構造         改善局計画部資         源課長     四方 平和君         農林水産省構造         改善局計画部事         業計画課長   太田 信介君         農林水産省構造         改善局建設部開         発課長     江頭  輝君         通商産業省環境         立地局環境政策         課長      松永 和夫君         気象庁予報部予         報課長     白木 正規君         建設省河川局治         水課長     渡部 義信君         環境委員会調査         室長      鳥越 善弘君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十三日  辞任         補欠選任   桑原  豊君     川内 博史君   土井たか子君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   川内 博史君     桑原  豊君   保坂 展人君     土井たか子君     ――――――――――――― 六月五日  環境行政推進に関する陳情書外一件  (第三九九号)  琵琶湖の総合保全に関する陳情書  (第四〇  〇号)  ダイオキシン類による環境汚染防止強化に関す  る陳情書  (第四〇一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
  3. 杉浦正健

    杉浦委員 自由民主党を代表させていただきまして、若干質問をさせていただきます。  今国会において環境アセスメント法案が成立を見ることに相なりましたことは御高承のとおりでございます。大臣初め関係者皆様方の御尽力のたまものでございますが、環境行政前進にとりまして画期的な出来事であったと評価できると思います。そういう時期の環境委員会にめぐり合わせ、そして、自民党の中では環境部会長を仰せつかった。余り役に立ちませんでしたが、そういう立場にならせていただいたことを本当にうれしく、光栄に存ずる次第であります。同僚の議員とともに、この点は次の世代に誇っていいのではないか、こう存じておる次第であります。改めまして、環境庁長官初め関係者の御努力に心から敬意と感謝を申し上げる次第であります。  環境行政全体にとりまして、今国会のみならず、ことしはまことに時期を画する大事な年であるということは、当委員会における環境庁長官の御発言そのほかで再三言われておることでございます。近々、国連環境特別総会が開催されるということに相なっております。そこで総理大臣が、七分間と聞いておりますが、演説をされる御予定と伺っております。それに向けて、近々、地球環境問題閣僚会議も開催されると承っておるところでありますが、ぜひ、その国連環境会議における総理のいわば所信表明演説におきまして、日本環境問題への取り組みについての積極的な姿勢をお示しいただきますように心から願っておるところであります。  それにおきましても、環境庁長官は、地球環境問題担当という役目も内閣の中でお持ちであるわけでありますので、地球環境閣僚会議におきまして、十分に総理にその旨を力説をいただきまして、環境特別総会における総理演説が、私ども日本国民にとって、さすが日本だ、こう言えるような立派な内容のものとなりますように御尽力を賜りたいと存ずる次第であります。  年末にはCOP3が開催されるということでもございます。きょうの質疑一般質疑で、今国会における最後機会でございますが、改めまして、COP3に向けて、環境庁長官初め役所の皆さん一同、私どもも努力いたしますけれども、その成功に向けてさらなる御尽力を賜りますようにお願いを申し上げる次第であります。  私に与えられた時間は四十五分でございまして、環境行政全般についてお伺いしなければならないということでございますので、ひとつ要領よく、短く、簡潔に御答弁の方をお願いいたしたいと思います。長々しい饒舌な質問は避けるようにいたしたいと思います。  実は、先日、オランダで開催されましたいわゆるOBサミット日本代表として参加されました宮澤元総理のお供をして出席した際に、ちょうどいい機会でございましたので、ブラッセルにございますEU本部の、いわばヨーロッパ連合環境省ともいうべきところも訪ねて、担当局長そのほかの方から実情について伺ってまいりました。オランダで開催されましたので、オランダ環境省にもお伺いをいたしました。双方とも非常に積極的に取り組んでおられ、今度のCOP3でも、EUとしては、二〇一〇年の目標値、一九九〇年の単位でしたか、一五%削減という数値目標を提案してくるそうでありますが、その背景、根拠等々、いろいろとお伺いしてまいったところでございます。その他、環境庁推薦のいろいろなプロジェクトも可能な限り見てまいったわけですが、それらの乏しい知見を踏まえまして質問をさせていただきたいと思います。  COP3は最後にさせていただきたいと思いますが、それに入ります前に、まず、今世間で大変問題になっております諌早湾の干拓問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  この干拓事業についてはさまざまな議論があります。環境庁に対しましても、いろいろと批判の声のあることも聞こえてくるところでございます。私は、かねがね、環境部会でも、この問題、事業の当否は、これは地元の問題であり、農水省事業をやっておりますので、そちらの問題であって、我々環境部会は、あの事業による環境への影響に絞って考えていかなければいかぬ、特に、調整池水質が一番の問題だろう。生態系への影響もございますが、調整池水質が、いただいている資料によりますと、徐々に悪化しているように見られるところでありまして、これは大変懸念されるところでございます。  環境庁の話によりますと、締め切り堤防の長さが七キロメートル、面積調整池干潟を含む大きさはかなり大きくて、諏訪湖の大きさに匹敵するぐらいの巨大な池が誕生しておるということであります。そのうち一部、つまり、水面を一メーター下げた関係上、干潟かなりの部分がいわば干上がっておる。面積比率は定かではありませんが、一割から二割程度は下がっておる。行った方の話を聞きますと、海岸から見ますと、見渡す限り干潟が干上がっているようにも見える、上から見れば一割とか二割ではあっても、そういうふうに聞くところであります。干潟浄化作用が大変すばらしいものだということは、国際的に認められた知見であります。かなり面積干潟浄化作用がなくなった、そして水面がともかく一メーター低下した。何千年にわたって築き上げられてきた干潟、その調整池水面の一メーターの低下というものがどういう影響を及ぼすのかということも、いろいろ専門家の話を聞きますと、人知のいまだ及びがたいところもあると漏れ聞いてもおります。  また、下水、下水道を中へ入れる、処理したものを中へ入れるということを計画変更したわけでありますが、環境庁指摘した高度処理をしないまま現状では流されておる、流し込まれておるということでありますから、巨大な池に対して流入する下水道の量、一応処理されておりますからとはいえ、かなり影響があるだろうということも考えられるところであります。  今は梅雨どきで雨が多い。したがって、調整池へ流れ込む水も多い。時々は排水門を上げて中の水を引き潮のときに排水しておるというふうに聞いておりますが、これが、梅雨どきが終わりますと流れ込む水も減る、かんかん照りになる。そうなった場合に、水質にどういう変化があるか。もし万一、劇的な変化が起こってアオコでも大量発生するということになりますと大変なことになるわけでありまして、素人考えでありますけれども、心配をしておるわけであります。  そういった状況の中で、環境庁には、自民党としても、調査を徹底的にやるように、環境悪化、特に水質悪化について細心の注意を払ってあらゆる手を打ってほしいという御要望もし、そのようにしていただいているところでありますけれども、現状における環境庁の基本的な考え方につきまして、まず大臣から御答弁お願いしたいと思います。
  4. 石井道子

    石井国務大臣 諫早湾の干拓事業につきましては、いろいろと御心配をいただいております。そして、この事業は四十年以上前から計画をされて、その間、事業者地元との調整を何度か経まして現在に至っているわけでございます。  環境庁といたしましても、この事業環境保全の観点から、三回にわたりまして意見を述べてまいりました。その意見に沿って十分な環境保全対策が行われますようにということを期待しているところでもありますし、特に最近、水質汚濁負荷削減対策という点については一層の努力を必要とするのでございまして、今後も関係機関に強力に働きかけてまいりたいと思っております。  また、潮受け堤防締め切り後の調整池水質変化などにつきましても速やかな対応が図られなければなりませんので、先日、五月三十日でありますけれども、農林水産省連携を強化するために環境庁との連絡会議を設置いたしました。そしてさらに、水質保全について専門的な判断をいただくために、農水省が行っております委員会に、環境庁から水質に関する専門家を四名ほど委員として推薦をいたしまして、このメンバーも加えた上で委員会が開かれたところでもあります。  環境庁といたしましても、環境状況変化には十分目配りをしながら、今後も必要に応じまして本事業環境保全について必要な対応を行ってまいりたいと思っております。
  5. 杉浦正健

    杉浦委員 水質保全局の人に聞きたいのですが、いただいている資料、これは各党とももらっておられると思うのですけれども、ちょっと腑に落ちないところがありまして、CODとかトータルNとかトータルP、これは徐々に悪化しているので心配しているのです。塩素イオン、つまりこれは塩分の量に関係すると思うのですが、五月十九日時点までのデータはどんどん下がっている、つまり淡水化しているということだと思うのですが、その後、五月二十六日から六月二日にかけてのデータを見ますとやや上がっておる。つまり、外から海水も入れていないのに塩分が一たん下がってまたふえておるということなんでしょうか。これはどういうことなのか。
  6. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 確かに、一時大きく減少いたしました塩素イオン濃度が再び六千台に戻ってきております。私、なかなかはっきりとしたことは申し上げられないのですけれども、潮受け堤防がまだ完全には完成されていないという状況現状でございます。外と中とが、地下を通じて、あるいは堤防の一部分を通じて多少水の出入りといいますか、しみ出しといった方がよろしいと思うのですが、それが影響しているのではないかなというふうに予想いたしております。
  7. 杉浦正健

    杉浦委員 自然というものは霊妙なものでございます。ともかく自然を相手の大事業でありますので、環境庁長官から御答弁がありましたが、ひとつ全庁を挙げて環境保全の見地からこの問題に取り組んでいただきまして、万々が一ということがないように十分に対応していただきますようにお願い申し上げておく次第であります。  次に、二番目に、オゾン層の問題につきましてお伺いしたいと思いますが、現状見通しフロン回収等状況について簡潔に御報告願いたいと思います。
  8. 野村瞭

    野村(瞭)政府委員 まず、オゾン層現状についてでございますが、平成八年におきましても、その破壊が典型的にあらわれます南極上空におきまして、過去四年間と同程度でございますけれども、最大規模オゾンホールが出現しているというように承知をいたしております。  今後のオゾン層見通しでございますけれども、国連環境計画、UNEPの報告によりますと、すべてのモントリオール議定書締約国が、一九九二年に改正をいたしておるわけでございますが、これに基づく生産規制を遵守すれば、来世紀初頭からオゾン層は回復に転じまして、南極オゾンホールも二〇四五年ごろまでに出現しないようになると予測をされているということでございます。  一方、我が国におけるフロン回収状況について申し上げますと、平成八年末に環境庁調査をいたしておりますが、フロン回収に取り組んでいる市町村の数が約二千と全体の約六割に及んでおるわけでございます。この市町村が収集をいたしました家庭用冷蔵庫からの回収率が、台数ベースでございますけれども、五六%ということになりまして、取り組みの進展が見られるというように私ども考えておるところでございます。  ただ、業界におけるフロン回収実績が必ずしも高くなっていないわけでございますが、数字を若干申し上げますと、家電の販売店等で下取りされた家庭用冷蔵庫からの回収率が二・四%、それからカーエアコンにつきましては七・二%、それから業務用冷凍空調機器につきましては一八%ということで、かなり低率ということでございまして、こういう状況からいたしますと、業界における回収促進に向けて行政としてもさらに努力をいたさなければならないと思っております。  また、フロン破壊の方の現状でございますけれども、これも平成八年末の調査によりますと、その破壊処理量は百トンということになっておりまして、前年に比べますと二倍程度に増加をいたしております。そういうことで、これまで市町村において回収しても、そのまま破壊されないで保管されていたような状況があったわけでございますけれども、破壊設備が整備されたというようなこともございまして、平成八年末においては、保管されたままの状況が解消したというようなことになっております。  以上でございます。
  9. 杉浦正健

    杉浦委員 以上のような現状を踏まえられまして、環境庁長官にお伺いいたしますが、業界の方もそれぞれ体制をつくっていろいろ取り組んでおるようでございますが、今後、フロン等回収破壊にどう取り組まれるのか、お伺いをいたしたいと存じます。
  10. 石井道子

    石井国務大臣 フロン回収については、なかなか完全な実績が得られないという点では残念に思っておりますが、環境庁ではフロン等回収破壊促進するために、これまでもフロン回収促進のための支援事業を行ってまいりました。また、フロン破壊処理ガイドラインの公表、また、フロン破壊モデル事業も実施してきたところで、さまざまな取り組みもしてきたところでございます。  フロン回収状況につきましては、市町村における取り組みは相当程度前進していると言えますが、業界における回収が余り進んでいないという点があります。その点で、カーエアコンなど業界取り組みお願いするものも含めまして、さらに一層の努力が必要であると認識をしておるところでございます。  そのため、環境庁といたしましては、関係十八省庁から成るオゾン層保護対策推進会議において、回収破壊のための仕組みづくりを行っていく、そして、今後のフロン等回収破壊の一層の促進方策あり方について検討を進めているところでございまして、その結果を踏まえて、実効ある対策を展開してまいりたいと思っております。
  11. 杉浦正健

    杉浦委員 どうぞしっかり取り組んでいただくようにお願いをいたします。  次に、企画調整局長にお伺いしたいのです。  一つは、先日、環境白書が公表されたわけですが、広範にわたるものです。新聞、テレビ等でもかなり大きく取り上げられましたが、その環境白書のねらいはどうだったのかということ。  それから、これもつい先日ですが、環境基本計画点検報告というのが中環審から総理大臣報告されたと聞いておるところであります。その中で、地球温暖化問題を初めとして大変厳しい指摘をされているわけでありますが、環境庁としては、これを受けてどのように対応されるのか。二点ほどお伺いいたしたいと思います。
  12. 田中健次

    田中(健)政府委員 本年は、ブラジルで開催をされました地球サミットから五年目に当たりまして、また、十二月には、御案内のとおり、地球温暖化防止京都会議が開かれるなど、いわばことしは環境の年と言うことができるわけでございます。  このような状況にかんがみまして、平成九年度版の白書では、地球温暖化防止のための新たな対応責任ということをテーマにいたしまして、人類の生存基盤を損なうおそれのある最大環境問題の一つでございます地球温暖化問題に焦点を当てまして、問題の状況を明らかにいたしますとともに、国、企業、それから国民一人一人に求められております対応責任を考察いたしたわけでございます。さらに、国民関心の高い廃棄物リサイクル対策、それから化学物質による環境汚染問題についても分析を行いまして、施策方向性を明らかにいたしたものでございます。  今回の白書は、さまざまなマスメディアなどにおいて取り上げられておりますが、御指摘のとおり、今日の環境問題、私たちのライフスタイルやあるいは社会システムと密接に結びついておりまして、国民皆様一人一人がどのように環境保全に取り組んでいけばよいかを具体的に考えていただく上で、今回の白書が参考になればというふうに思っております。  それから、環境基本計画点検報告につきましては、これは中央環境審議会環境基本計画進捗状況を毎年点検をいたしまして、今後の政策方向について政府報告するものでございまして、六月九日に第二回目の点検報告総理大臣報告をされたところでございます。  点検報告では、基本認識といたしまして、ことしが環境問題の解決に向けた重要な年であること、それから、地球温暖化対策について一層の努力が必要であり、中央環境審議会としても地球温暖化対策の方針やあり方に関する集中審議をこれから早急に行うということ、それから、各省庁施策間の連携を十分に図って環境行政推進する必要があるということを掲げまして、そのほか、大気環境保全あるいは化学物質環境リスク、自然と人間との共生あるいは経済的措置などの各分野について課題を示しております。  環境庁としましては、今回の点検報告におきます厳しい御指摘を真摯に受けとめまして、各種施策に率先して取り組む所存でございます。さらに、点検報告を本日の閣議におきまして報告をいたしまして、関係省庁にも点検報告を踏まえたより一層の取り組みお願いいたしたところでございます。
  13. 杉浦正健

    杉浦委員 私も点検報告を読ませていただいたのですが、中環審の方々の関心と申しますか、非常に憂慮すべき状態だというお気持ちが強くにじみ出た点検報告だったと思うわけであります。局長言われたような方向で、ひとつ、政府部内において点検報告の趣旨が政府挙げて取り組めるものとなるように、一層の努力をしていただきたいということを申し添えておきたいと思います。  次に、四番目に、リサイクルの問題についてお伺いしたいと思います。  厚生省からお見えいただいておると思いますけれども、今度、産廃法ですか、一部改正が成立して、大分大きな前進を見るに至ったということはもう御承知のとおりでありますし、また、容器包装リサイクル法ですか、これが四月一日から施行されて、自治体を中心にした取り組みがなされておって、いわゆるリサイクル社会へ向かって一歩一歩進んでおるとは思うのです。実は、今度、ヨーロッパへ行った際に、いろいろとその問題についても、EUオランダ環境省等に聞いてまいりましたが、ヨーロッパ各国ともこのリサイクルについては大変な熱意を持って取り組んでおるし、また、日本状況と比べてみると、まだ日本後進国だなという思いを強くして帰ってきたわけです。  環境庁がぜひ見てくるようにと言われたプロジェクト一つに、デュアル・システム・ドイチェランド、DSD、ケルンにある会社へ行ったらいいよということで行ってまいったのですが、話を聞くのと実際に見て説明を受けるのと、百聞は一見にしかずということですが、驚いて帰ってきたわけです。  日本の場合には、容器包装リサイクル法では、関係業者回収義務を課しておりませんが、ドイツでは包装容器製造業者流通業者回収義務を課しております。そういう関係上、業界が挙げて、出資者八百人と言っておりましたが、共同して処理をする会社を設立して義務を果たそうということになった。あれはもう五、六年になるんですかね。そして、一万八千社がその会社に加入してというか、要するに、料金を納めておる。ただ乗りのところもあるようですが、靴とか繊維とか一部あると言いましたが、約九割方の業界が参加しておりまして、リサイクルの輪をその会社中心になって完成させておるというわけであります。  包装容器に使う物質の量に応じまして、重さに応じて料金といいますか、会費を徴収して、巨額なお金を集めて、そしてそのかわり、グリューネプンクトと言っていますが、スーパーに行くと全部そのシールが張ってあるのですが、使用を許可する。それが張ってないのはやみだということになるわけですけれども、そういうシステムをつくっておるわけであります。  スタートは回収機でありまして、規格化された統一の回収機、三色に分かれております。一つは瓶、缶、プラスチック製品、それを国の隅々まで、スーパーのわきとか街角とかに置いて、一般から、これは工場は除いておりますが、公共の施設もそこへ行ってそういうものを投入する。それを回収する業者は、デュアルシステムと契約した業者回収してくる。それを仕分けして処理していく。でき上がったものをリサイクルするとかあるいはリユースするとか、そういうのもその会社民間会社のいいものと提携をして、一部上場クラス一流企業もその下請をやっているそうなんですが、実に見事な輪を完成させておるわけでございます。  重量に応じて料金を取られるものですから、材料を少なく使えば使うほど払う金が減るものですから、容器をできるだけコンパクトに、そういう変化も起こってきたということであります。リサイクル率は九〇%、ほぼ完全に近い状態だと聞いておりましたが、おかげで一般廃棄物といいますか、燃やす方へ出るごみは激減をしたというふうに評価されておるようであります。  注目すべきことは一このドイツの例を見習って、私の聞き間違いでなければ、今EU十七カ国のうち七カ国に既に同じような組織ができて、近々その会社ヨーロッパの連合体ができる。行く行くはヨーロッパ全土に広がるのじゃないだろうかということをその担当部長が言っておられました。  これは将来の問題で、今の問題じゃありませんが、容器包装リサイクル法を施行してしばらくたったわけで、将来の問題としてこれは参考にしていいのじゃないか。要するに、その業界、汚染者負担というわけじゃないですが、産業廃棄物のリサイクルもそうなんです。排出した者あるいは製造した人、だれに義務を負わせるか、業界によっては難しいと思うのですが、そういう人に責任を持たせて処理していく。そうすると、業界は民間ですからできるだけ効率よくやろうとする、ごみを出さないようにするというようなことで、全体のごみも減っていくという面があるのじゃないかと思うのです。民間の活力といいますか、それを利用したリサイクルということで、これは本当に鋭意勉強すべきことじゃないかと思って帰りました。  もう資料なんかはお渡ししてありますから、ビデオなんかもごらんになったと思うのですが、何か御答弁いただくことがあればいただきたいと思います。
  14. 早川哲夫

    ○早川説明員 先生御指摘のように、ドイツでは一九九一年に施行されました包装廃棄物の回避に関する政令に基づきまして、事業者に対してはリサイクルのみならず回収をも義務づけておることは承知をしておるところでございます。  一方、ことしの四月から本格施行されました容器包装リサイクル法におきましては、まず、我が国では一般廃棄物の処理市町村の固有事務となっておりまして、市町村における分別収集が普及をしておるという実情がございました。さらには、事業者による回収だけでは拠点数が少ないのではないか、十分な回収量が期待できないのではないか、こういうようなことにかんがみまして、ごみの減量化及びリサイクルを効率よく推進するために、既存の市町村による分別収集体系を活用することを前提といたしまして、本制度を構成したものでございます。  すなわち、容器包装廃棄物につきましては、消費者は分別排出、市町村は分別収集、事業者は再商品化というそれぞれの役割分担を定めまして、相互の協力のもとにそのリサイクルを円滑に推進して、ごみの減量化を図るという目的の達成を目指したものでございます。  なお、ドイツのDSDのように事業者回収義務までを負わせるということにつきましては、本法が平成十二年に完全に施行されるということでございますので、その施行後の状況も見る必要があるのではないかと思っております。直ちに制度の見直しを行う考え方はございませんけれども、今後とも関係省庁とか地方公共団体、事業者などの関係者との意見交換を幅広くやっていきたい、このように考えております。
  15. 杉浦正健

    杉浦委員 もちろん私も今すぐやれとは言っておりませんが、デュアルシステムの場合にはその会社がもう隅々まで回収箱を、みんなが歩いていけるところまで物すごい量を設置しているわけですね。日本の場合は東洋社会ですから、西洋社会と違いますから、コミュニティーの社会で、東洋的な部落だとか町内とか、そういう協力を得て市町村がやる。これは一つの行き方だとは思いますが、ドイツとかヨーロッパに広がると思うのですけれども、よく勉強をして、取り入れるべきところは取り入れて、要するに日本はごみの山ですから、このごみ社会から脱却するように絶えず勉強していただきたいということだけは注文しておきたいと思います。  最後に、COP3の問題に移らせていただきます。  地球環境部長にお伺いいたしますが、今度の国連環境開発特別総会で、先ほどちょっと議論されると申し上げたのですが一何が議論されるのか、まずお伺いしたいと思います。
  16. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  今月二十三日から二十七日までニューヨークで開催を予定されております国連環境開発特別総会におきましては、アジェンダ21など地球サミットで合意されました事項につきまして、その実施の進捗状況点検し、評価するということを目的に開催されるものでございます。  この特別総会におきましては、地球サミット以降の進捗の評価を行った上で、緊急の取り組みを必要とする地球温暖化問題でございますとか、森林破壊あるいは海洋環境保全等の分野別の課題、さらには資金、技術移転などの分野横断的な課題、そして持続可能な開発の取り組みを進めるための国際的機構について議論が行われる予定でございます。
  17. 杉浦正健

    杉浦委員 私が役所から御説明をお伺いして承知している範囲では、リオの総会以降各国とも取り組んでおるわけだけれども、正直言って進捗状況が余りはかばかしくない、そういう評価であろう。それを踏まえて今度の特別総会ではいろいろな議論がなされるに違いない。COP3がありますので、とりわけ地球温暖化問題については相当具体的な議論がされると聞いておるわけですね、あなたの説明の一つに入っていたけれども。特に、京都で開かれるCOP3をにらんだ議論になると思いますので、今度のデンバー・サミットでもそうですし、国連環境開発特別総会でもどのように対応するのか。  日本COP3では議長国ですし、総理大臣演説もあるということでありますから、先ほど申し上げさせていただきましたように、きちっと日本が率先してといいますか、先頭に立ってやるんだという姿勢を示してほしいと思うのですが、どのように対応されようとしているのか。来週開かれます地球環境関係閣僚会議も含めて取り組みをどうされるのか、お伺いしたいと思います。
  18. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、ことし十二月に京都で開かれます地球温暖化防止京都会議は、二〇〇〇年以降の地球温暖化対策の国際的な対策の枠組みを決める会合でございます。我が国は御指摘のございましたように議長国となると目されておりますので、この会議を成功させ、そして環境保全上効果があり、公平で実行可能な国際合意を円滑に取りまとめていく重大な責任を負っているというふうに認識をしております。  御指摘がございましたデンバー・サミットあるいは国連環境開発特別総会は、京都会議の前に各国の首脳が顔を合わせ、環境問題について話し合うまたとない機会となるわけでございます。京都会議での合意に向けた交渉が進められているという状況のもとで、各国の首脳自身が共通の認識を築く上で重要なステップとなるのではないかというふうに考えております。  こうしたことから、環境庁といたしましては、デンバー・サミットあるいは国連特別総会におきまして、京都会議の成功に向けて議定書交渉を一層進展させるような力強いメッセージが出されることが望ましい、このように考えておりまして、現在、外務省を初め関係省庁連携をし、必要な検討作業を進めているところでございます。
  19. 杉浦正健

    杉浦委員 今、国際合意へ向けた力強い政治的メッセージというお話があったわけですが、そのためには、デンバー・サミットとか国連総会において総理演説されるということでありますので、EUは一五%削減という数字を出してくるようでありますけれども、我が国としてもCO2排出量の削減方向を、しかも力強い政治的メッセージとなるような方向を、これらの二つの会議で出す必要があるのではないかと思っているのですが、この点についてはいかがでございますか。
  20. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 環境庁といたしましては、世界の二酸化炭素排出量を長期的には削減していくという必要があることは十分認識しているところでございまして、このような方向に国際社会が動いていくこととなるように、我が国が各国の対策努力を引き出すことができ、かつ、国際合意が可能であるような目標の数字を提案することが重要であるというふうに認識をしております。  このため、各国がこれまで主張してまいりましたいろいろな点でございますとか、あるいは考えられるさまざまな国際的な対策を実施することによって排出削減はどの程度可能になるかといった検討も踏まえまして、先ほど申し上げましたとおり、環境保全上効果が高く、公平で実行可能性の高いものとして各国の賛同を得られるような具体的数値を含んだ国際的な目標の案を提案してまいりたいと考えております。  このような国際的な目標の提案は、外交交渉の中で適切な時期に行うことが望まれるわけでございまして、こうしたことができるように、政府部内の検討を加速してまいりたい、このように考えております。
  21. 杉浦正健

    杉浦委員 実は、EU本部にお伺いしたときに、オランダ環境省でも同じようなあれだったのですが、EU本部ではヘニングソンという環境保護局長、今度京都にも来るそうですが、その方、それ以外の方にも会いましたが、会って話した際に、EUの一五%目標の中身、各国のを積み上げておるわけですけれども、各国でこぼこでありますが、それの背景となる政策手段等々について、いろいろとお伺いしたわけであります。  きょうお配りした資料は、そのときにヘニングソンさんからもらった資料であります。一つは、ブリティッシュ・ペトロリアム、大手の一つですが、そこの執行責任者、ブラウンさんというのですか、その方がスタンフォード大学で講演された講演録でありますし、あとの二つは、ERT、名簿を見ますと、ヨーロッパにある大企業、大国際企業四十五社が構成している、経団連よりはもっと巨大企業だけの集まりのようなところですが、それが出したパンフレットであります。中身は大したことないと申しますか、言いたいことは言っているのですね。炭素税は反対だとか、やるのならグローバルにやらないと競争力に響くからというような、主張すべきところはしておるのです。  なぜあなた方は一五%というような案が出せるのかと言ったら、そのヘニングソンいわく、まず第一に、産業界が非常に前向きに協力しておる、ポジティブだ、前向きだということで、そうかと。日本では後ろ向きとは言わないけれども、なかなかみんな、現実的に可能な目標ということで協力はしてくれるのだけれども、難しいのだという話をしたら、出してきたのがこの資料であります。  この赤の資料なんかは、ともかく、こういうふうに大変だから、我々は取り組まなければいかぬという資料。  これは膨大な資料を中小企業に至るまで配っているそうです、我々は取り組まなければいかぬと。大企業が率先してやっておる。  このブルーの方の資料は、京都の会議へ向けて、主張すべきことは主張する、しかし、やることはやろうではないか、企業もその一部としてやっていこうということでありまして、一五%の削減目標についても企業は大変協力的だということでございます。  時間がないので、通産省の人、せっかく来ていただいて、話したからもういいようなものだけれども、聞いて帰ってください、長官のあれを伺わなければいかぬから。  そういうことでありまして、中身は、それは言うべきことは言っておるが、要するに、産業界も挙げて、やろうという姿勢だということを示す意味で、この資料をお配りしたわけであります。  議会はさらに熱心だ、自由民主党は何%の削減目標を出しているかと聞かれて、いや、我々は、与野党一体で、みんなエンカレッジしているのだと言ったら、いや、ヨーロッパの政党によっては、数値目標をこれだけやれと言って、がんがん政府をあおる政党もあるようでありますし、世論に至ってはなお盛り上げて、やらなければいかぬということのようであります。  役所が、政府が熱心になるという背景として、産業界も民間も、ともかく地球温暖化の危機に向けて、一致してやろうという意欲を持っているということを痛感して帰ってまいったわけであります。我々も頑張らなくてはいかぬという気持ちでおるわけであります。  時間もありませんので、通産省、まことに申しわけありませんが、最後に長官に。  先ほどの白書にもありましたし、中環審からの厳しい御指摘もあったわけでありますが、COP3へ向けて、しかも議長国として成功させなければいかぬ、しかも世界に対して、日本が率先垂範してやるのだ、日本がやるからみんなついてこいというのでなければ議論がまとまらぬと思います。ヘニングソンも心配しておりましたけれども、日本が後ろ向きの提案をされると困る、足を引っ張らないでくれと言われていましたが、その京都会議へ向けて取り組まれる決意のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 石井道子

    石井国務大臣 地球温暖化防止京都会議につきましては、まさにこれからの人類の将来を左右する重要な会議でございます。そして、この会議を成功させるために、日本がリーダーシップをとらなければならないということでございまして、今後も、私といたしましても、国連特別総会を初めといたしまして、あらゆる機会をとらえて温暖化防止の重要性を訴えていきたい、そして各国の意見を収れんさせ、着実に国際合意の形成が進んでいくように、その調整を図りながら、最大努力をする所存でございます。  日本の国内的な問題につきましては、今委員が御指摘されましたように、なかなかはっきりとした目標が立てられないという消極的な取り組みというふうにもおっしゃられたのでございますけれども、このたびの、閣議決定をされました環境白書にも示されましたように、十分な削減を可能な限り早い時期に実施することが必要というふうな考え方に立ちまして、そして時期を見て適切な、国際的な排出削減目標を提案することが重要と考えております。政府部内の意見調整を速やかにしていきたいと思っているところでもございます。  我が国が国内対策について、やはり十分に実行できる自信を持って、国際合意に対しても積極的な決断が行えるように、政府一体とした対策の充実に今後も努めていきたいと思っておりますし、私自身も先頭に立ちまして、国民に対する、温暖化対策に関する広報活動、普及啓発活動、そして国民総ぐるみの、参加できる対策の運動を推進してまいりたいと考えているところでございます。
  23. 杉浦正健

    杉浦委員 終わらせていただきますが、けさの新聞に、アメリカのゴア副大統領がイニシアチブをとって、世界の巨大企業日本ではトヨタ、日産が選択肢に入っているようですけれども、呼びかけて、CO2は削減するのだ、今まで削減するということを明言したことはないのですが、削減するという方向で乗り出すということが新聞報道されておりました。  ぜひとも、まだ日本政府全体としてそこまで踏み込んでいないようですが、橋本総理を先頭にして、長官、橋本総理を督励していただいて、一刻も早く削減、しかも具体的な数値目標に踏み込めるように、産業界国民一般の御協力をいただいて前進していただきますようにお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  24. 佐藤謙一郎

  25. 武山百合子

    ○武山委員 新進党の武山です。  それでは、たくさん質問したいと思いますので、早速中身に移らせていただきます。  今自民党の方が御質問されました、ゴア副大統領が米政府として日本企業にCO2削減のための要請をしているということなんですけれども、これを聞かれて環境庁長官はどう思われましたでしょうか。
  26. 石井道子

    石井国務大臣 我が国の取り組む姿勢につきましては、少々消極的な面があるということは、今実情ではそのような形であると思いますけれども、環境庁としては、常に前向きに、積極的にこの問題には取り組んでまいりました。できるだけ早く政府部内の調整を図りまして、削減する具体的な方向を決めていきたいというふうに思っております。
  27. 武山百合子

    ○武山委員 私は、アメリカのゴア副大統領から日本企業が要請を受けるという前に、日本は自分たちの国で自治を、国としての自治を持って自分たちで早く姿勢をしっかりと決めてやっていただきたいと思うんですね。  それで、私、去年からことしにかけて本当に、環境庁長官には耳の痛い話ですけれども、前向き、前向きという言葉は百万遍聞いているんですよ。もうその中身について議論して、それで現在どこまで進んでいるか、そしてあすはどこまで行くか、現在でいいわけですね、その中身を国民に情報公開していただきたいと思います。  それで、冒頭にぐさりと刺しちゃったんですけれども、実は地球温暖化を防止するために、現在各国でCO2などの削減努力が行われていまして、御存じのとおり、欧州各国では二〇%削減とか一五%削減とか、大変大胆な目標が設定されているわけなんです。ところが、日本は、先ほどの方とダブルになった質問になりますけれども、COP3で議長国となるわけですけれども、どうやら環境庁と通産省と調整がつかないのかどうか、いらいらしているわけですね、国民の皆さんは。ですから、そのもやもやをぜひ解消していただきたいということをまず言いたいと思います。  それから、環境庁は、たしかことしの四月にホームページでCO2に関するさまざまなデータを公開するはずだったと思いますけれども、それらのデータは、国民の間の議論を活発化させるためには大変いいことだったんだと思うんです。ところが、これまでのCO2の排出量の推移、また排出量の将来予測、それから排出削減のための方向が含まれているはずなんですけれども、四月に公表するはずのデータをなぜいまだに公表していないのか、ぜひ聞きたいと思います。
  28. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘の我が国の二酸化炭素の排出量の状況につきましては、一九九四年度までの数字が明らかになっておりますけれども、それによりますと、一九九〇年の水準に比べまして、特に民生部門、運輸部門を中心かなりの伸びを示しているところでございまして、非常に簡単な、丸まった数字で申し上げますと、約七%ほどの増加が見られているというような状況でございます。  しかしながら、こうした状況に対しまして、先ほどゴァ副大統領の話がございました、私ども、まだ新聞報道でございますので確認はしてございませんけれども、我が国の企業におきましても、自動車でございますとかあるいは二重ガラス窓などに据えつけるためのガラスの製造でございますとか、あるいは太陽光発電装置でございますとか、そのような面におきまして、産業界が積極的な取り組みを行っていることも事実でございます。  このような現在の我が国の排出の状況でございますとか、あるいは取り組み現状についての情報につきましても、今後積極的に情報の提供に努めてまいりたい、このように考えております。
  29. 武山百合子

    ○武山委員 ちょっと、何か私の頭が悪いのか、よくわからないんですけれども、四月に公表するはずだったデータがなぜ公表されないのかと聞いているんです。
  30. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 四月に公表される予定ということにつきましては、恐らくそれでは気候変動枠組み条約に基づきます第一面目の通報、国別報告書という形での通報のことをおっしゃっておられるのかと思われますけれども、そのようなことでございましたら、この点につきましては、昨年から関係省庁と協力をいたしまして作業を進めてきているところでございまして、相当の部分については既にまとまっている状況でございますが、二酸化炭素排出量の将来の見通しなどに関しまして、なお詰めの作業が残されているところでございます。  私ども環境庁といたしましては、可能な限り早期に政府案をまとめて、その結果を公開をいたしまして、国民皆様の御意見をお聞きした上で条約の事務局に提出をしたいと考えているところでございます。
  31. 武山百合子

    ○武山委員 これは何かことしの四月にホームページでCO2に関するさまざまなデータを公表するということを公表した。そしてその中身は、先ほど言いましたように、CO2の排出量の推移、それから二つ目に排出量の将来予測、それから三つ目に排出削減のための方策が含まれているはずだと思うんですけれども、それでは、今の三つの点でいつ公表するのか、お伺いしたいと思います。
  32. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまお答えを申し上げましたとおり、気候変動枠組み条約に基づきます第二回目の国別報告書を通報するという際に、国民皆様方に事前に公開をして、御意見を伺った上で提出をするということで、その公開の仕方としてホームページなどを通じてそれをお知らせをするということを考えております。その点についての御指摘であろうかと思います。  それで、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、なお排出量の将来見通しあるいは対策についての詰めが残されておりますので、現段階でできるだけ早く公開したいと思っておりますが、具体的な時期のめどは現在のところまだ立っていないのが状況でございます。
  33. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、四月と言ったのはまだ具体的にはっきりしないということですね。  それではもうちょっと詳しく聞きますと、公開期間だとか、そういうものも決まっておりますでしょうか。
  34. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 特にその公開の期間について具体的に今決まっているということではございませんが、国民皆様方がその内容を十分に御理解をいただいて、御意見が提出いただけるような適切な期間を定めてまいりたい、このように考えております。
  35. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、やはり環境庁と通産省との調整がつかなくておくれているという、本音の部分ではそうであろうと思います。それで、ことしの四月にホームページで公表するということになっていましたけれども、それが大変おくれているということだと思いますね。  それから、十日間の公開期間ということもそのときに言われたということなんですけれども、それもすべでおくれている状態なんでしょうか。あらゆることがおくれているという意味なんですね。
  36. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、なお詰めの作業が残されております。そのような作業を早急に完了させまして、その上で、公開をし、国民皆様の御意見をお聞きするということでございますので、その公開をして御意見を伺う期間というものについてもその段階で具体的に定めて、そしてその期間御意見を伺うということにしたいと考えておるところでございます。
  37. 武山百合子

    ○武山委員 非常にお心の中お察し申し上げるような答弁で、気の毒のような気もいたしますけれども、やはり日本が本当にリーダーシップを、先ほど環境庁長官がお答えになりましたように、リーダーシップを発揮したい、そして環境思想国日本として顔を出したい。それから、もうこれからは一生懸命国民を挙げて行政もやっていくんだ、業界もやっていくんだという姿勢を、かけ声ばかりで、本当にお察し申し上げますというところですけれども、もうみんないらいらしているわけなんです、いらいら状態なんですよ。  ですから、国民的に進めなければいけないような状態ができないということは、よほど日本国民は鈍感か、わかっていても行動できない牛のような状態か、やはりそういうところを脱皮しないと、世界じゅうは今日本を見ているわけですね、そして世界じゅうから報道の皆さんも来ているわけなんです。それがすべて世界じゅうに行っていて、日本国民はこういう国民性だ、日本政府はこういう政府だということが、みんな地球の隅々まで知れ渡っているわけですよ。  私は、野党ですので、一生懸命それを早くやっていただきたいと思いますので突っ込みますけれども、もう本当に、これだけ私に辛らつに突っ込まれても出てこないというのはどこに原因があるのか、やはりそれも考えていかなきゃいけないと思うのですよ。なぜ調整がつかないのか、そしてどうして対策がおくれているのか。  企業にアメリカが要請するなんということはやはりやめていただきたいと思います。自分たちの国なのですから、日本が、国民に、企業に、そして業界団体に要請すべきだと思うのです。ぜひともやっていただきたいと思います。あくまでも前向きに考えてやっていただかなきゃいけないと思いますので、私も今のようなお話をいたしました。  次に、ダイオキシンの規制についてお伺いいたします。  今、埼玉県の一部では、本当に、一例か二例ということで、これがすべてとは言いませんけれども、たまたま新聞報道であったということで、私、取り上げますが、子供の疎開や地価の下落、それから農作物に被害の現実が起こっているわけですけれども、もちろん原因はダイオキシンだと思われます。厚生省は、ごみの焼却場からのダイオキシンを減らすため、規制措置の素案を作成している最中と聞いておりますけれども、その措置の素案の中身をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  38. 三本木徹

    ○三本木説明員 御説明申し上げます。  ダイオキシン削減のための規制措置につきましては、現在、生活環境審議会に設けられました廃棄物処理基準等専門委員会におきまして、ダイオキシン削減の観点から、焼却施設の構造基準、維持管理基準の強化を検討しているところであります。厚生省としましては、この検討結果を踏まえ、廃棄物処理法に基づく施設の許可要件や改善命令の対象となる法的規制として、施設の構造及び維持管理に関する基準を見直す考えであります。  その概要でございますが、一つは、完全燃焼の確保のための廃棄物の定量供給、一定温度以上の燃焼温度の確保、二点目は、排ガス処理の適正化のための、集じん機入り口の排ガス温度の低温化、十分な集じん効率を有する集じん機の設置、三点目は、排ガス中のダイオキシン類濃度の定期的な測定などにつきまして、具体的な基準を設定する方向で検討しているところでございます。
  39. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  一日の焼却量が五トン未満の小規模な施設は、このままいくと許可がなくても設置が認められるような感じなのですけれども、ぜひそこをお答えください。
  40. 三本木徹

    ○三本木説明員 小型焼却炉によります焼却につきましては、炉内温度が変化しやすく、適正な燃焼状態を維持しにくい、あるいはまた排ガス処理設備が設置されていないものが多いなど、ダイオキシン対策の観点からも問題が多いと考えております。  御指摘の、現在の改正前の法律の段階ですが、許可対象となっていない小規模な廃棄物焼却施設の中には、粗悪な構造でありまして、野焼き同然の処理が行われている例も見られることから、規制の強化が必要と考えております。  このような状況を踏まえまして、小型焼却炉のあり方につきましては、現在、廃棄物処理基準等専門委員会において検討を行っているところでありまして、現時点では、より小規模なものも許可対象となるよう、いわゆるすそ切りを見直すこと、それから、許可の対象か否かにかかわらず、廃棄物の焼却を行う施設が満たすべき要件を定める、こういったことなどの措置を検討しているところでございます。
  41. 武山百合子

    ○武山委員 基準を今度決めたわけですけれども、埼玉には四十もの今のお話のような小規模な施設があるのです。ちりも積もれば山となるではないですけれども、これらの施設が被害の原因になるのは明らかなんです。当然規制を加えるべきだと考えますけれども、今小さな部分も考えておるということですが、ほとんど全部規制するという意味ですか、全く小さいものも。
  42. 三本木徹

    ○三本木説明員 ただいま御説明させていただきましたが、許可対象となる施設については、現在、一日処理能力五トン以上ということになっておりますが、これの規模を下げていくということを考えております。  それから二点目に、先生御指摘のような、許可の対象か否かにかかわらず、廃棄物の焼却を行う施設が満たすべき要件というものも定めていきたいと考えております。この部分につきましては、許可対象施設であるかないかにかかわらずということでございますので、この要件を定めましたならば、すべての焼却炉を対象にして、それなりの燃焼の仕方をきちんと守っていただく、こういう形になろうかと思っております。
  43. 武山百合子

    ○武山委員 新しくこれからできる部分は規制で抑制していくわけですけれども、では、古い小さなもの、今お話しのものはいつ規制をつくるのでしょうか。
  44. 三本木徹

    ○三本木説明員 いわゆる既存の施設について規制をかけるのかどうかという御指摘かと思いますけれども、それは規制をかけていくということで考えております。  その点につきましても、現在、具体的にどのような基準にするかについては、先ほど申し上げました生活環境審議会の専門委員会での議論になってございますので、その検討結果を踏まえて規制をしていく、こういう考え方でおります。
  45. 武山百合子

    ○武山委員 では、その検討結果はいつ出るのでしょうか。
  46. 三本木徹

    ○三本木説明員 現在、その作業を鋭意進めておりますが、できればこの夏ごろを目途に各種の基準の改正等々を行ってまいれればということで準備をしている段階でございます。
  47. 武山百合子

    ○武山委員 では、夏ごろにはその検討委員会の話がまとまって、その後どのような計画でその方向性は出るのでしょうか。ことしじゅうに出るのでしょうか。
  48. 三本木徹

    ○三本木説明員 スケジュールにつきましては、現在、先ほど来御説明させていただきましたとおり、準備をしている段階でございますが、私どもといたしましては、ダイオキシン対策は大変重要だという認識のもとでございますので、基準の改正のところにつきましては、先ほど申し上げましたように、この夏ごろにも基準は改正をする、そして年内にも施行していきたいというつもりで作業を進めているところでございます。
  49. 武山百合子

    ○武山委員 年内に施行していきたいということですので、ぜひ一刻も早くやっていただきたいと思います。二十一世紀はダイオキシンが大きな問題になると思いますので。  それから、これは環境にかかわる規制なのに、どうして基準をつくるのが厚生省なのか、私にはわからないのですけれども、厚生省主導で基準を策定することについて、環境庁はどう考えているのでしょうか。
  50. 野村瞭

    野村(瞭)政府委員 ただいま厚生省の方から御説明ございましたが、厚生省の方におきましては、廃掃法に基づきまして、一般廃棄物処理施設と産業廃棄物処理施設に係る技術上の基準を定めるということになっておりまして、先ほどお話がございましたが、施設の構造それから維持管理基準の強化について、具体的に今検討を行っているということでございます。  何をするかということでございますが、私ども環境庁におきましては、ダイオキシン類による大気汚染を防止するという見地から、廃棄物処理施設を含めまして、ダイオキシン類を大気中に排出するおそれのある施設に対しまして、大気汚染防止法に基づきまして規制的措置、具体的に申し上げれば、煙突の出口のところの濃度規制をするという意味での規制的措置でございますが、これをダイオキシンについて適用すべく、現在、中央環境審議会で御検討をいただいているということでございます。  私ども、厚生省と密接な連絡をとってダイオキシン類による汚染の防止を図らなければならないと考えておりまして、それぞれの対策が整合性を持たなければならぬということで、現在、スケジュールも含めまして密接な協議をいたしているということでございます。
  51. 武山百合子

    ○武山委員 非常にスローペースで、ドイツとか世界じゅうにもうダイオキシンのデータがあるわけですから、また日本国民は、薬害エイズ問題とか、今まで相当な教訓というか反省というか、体験というか、痛い経験をしたと思うのですよね。そういう経験を何度も繰り返さないで、ぜひスピードアップをもってやっていただきたいと思います。私はまた、国民の代表なものですから、それをずっと監視していきたいと思います。  それでは次に移ります。諫早の干拓についてお尋ねしたいと思います。  私、個人で諫早の方に行ってみました。公共事業あり方、それから環境保全、整備、それから食糧問題、本当に多くのことを考えさせられました。本当に広大な干潟というか、私、海なし県に育っているものですから、お恥ずかしながら初めて干潟というものを見てまいりました。本当にすばらしい、近くの峰から眺めた全景は美しい自然を持ったところだと感心したと同時に、大変な問題だ、大変難しい問題だと痛感して、実は帰ってまいりました。  お話に聞きますと、昭和二十年代、我々新進党の西岡幹事長のお父様の時代に、今の干拓のもとになる大干拓構想があったということも聞きました。そして、この時代の状況においては、干拓事業は妥当なものと言えたと私は思うのですね。そういう社会状況であったということで、やはり食糧増産の社会的な状況もあったと思います。  そしてその後、昭和五十七年ですか、当時の金子農水大臣のときには一たん打ち切られた構想が、地元の強い要望で、防災を主眼とした諫早湾防災総合干拓事業という名称で実現されたと聞いております。そして、昭和三十二年に大水害を経験し、多くの人命を失った地元では、事業の採択を涙を流して喜んだ人もおられると実際に行って聞きました。  経緯も、農水省のお役人が数年で入れかわるように、だんだん忘れられたというようなことも言われておりました。そして、いつの間にか防災という名称が諫早湾干拓事業という名に変わってしまったというわけですね。それで、昨年までの農水委員会で、名称の変更と干拓効果とか諫早湾干拓と防災機能、それから干拓工事と漁業被害ということでいろいろ質問をされているようです。  それで私、もちろん環境委員会のメンバーですので、環境アセスメントの絡みでちょっとお聞きしたいと思います。窒素、燐、CODの基準値が二、三倍悪くなっているわけですけれども、環境アセスメント、地元地元で行ったわけです。予測の結果が当たっているか当たっていないか、今後三年ぐらいたたないと、よくならなかったかどうかというのはわからないと思いますけれども、今のアセスメント法に何も問われないわけですね。それは、環境アセスメントの方とのかかわりをちょっとお聞きしたいと思います。
  52. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境アセスメント法につきましては、先般来御審議をいただきまして成立の運びになったわけでございますが、その過程でも御議論がございましたけれども、法の施行は二年後ということでございます。本件につきましては、既に公有水面埋立法によりまして私どもは二回意見を申し上げて、さらにことしの三月にも意見を申し上げておるということでございます。  この事業は、既に着工済みの事業でございます。着工済みの事業につきましては、アセスメント法におきましてもこれは対象にならないということでございまして、いろいろ御議論いただきましたけれども、環境影響評価制度というのは、事業の着手前に環境配慮の手続をいろいろ定めてやっていくという制度でございまして、着手後につきましては守備範囲外ということで、着手前に準備盲あるいは評価書に環境影響評価の不確実性ということでフォローアップの規定がございまして、そこに書かれている事柄につきましてフォローアップをしていく、こういうことが制度として仕組まれておるわけでございます。本件につきましては、既に着工後の事業でございまして、この環境影響評価制度の趣旨にはなじまない、こういうことでございます。
  53. 武山百合子

    ○武山委員 それは教科書どおりの答弁でありまして、予測結果がどう当たっているかどうかというのは、たしか三年後にならないとわからないということだったと思います。それで、その型どおりの答弁はもう皆聞き飽きて、わかっているわけですよね。それで、環境庁はその型どおりの答弁を押し通しているわけなんですけれども。わかりました。それはもうぜひ押し通してください、そういうふうにして押し通すわけですから。国民はもうそういうものに対してどういう態度をとっているかということを、それもよくわかっていらして押し通しているわけですから、三年後、よくならなかったらどうするかということをもちろん私たちは監視していきますので。  次に移ります。  現在、調整池水質汚濁が急速に進んでいます。農水省の事前の水質汚濁の見通しかなり甘いものだったのではないかと思うのですけれども、それはいかがでしょうか。
  54. 四方平和

    ○四方説明員 調整池水質でございますけれども、潮受け堤防の締め切り前に比較いたしまして、COD、窒素、燐等の数値が上昇いたしておるところでございます。しかしながら、測定日、測定場所によって大変変動が大きい状況になっております。  昨日、諫早の現地で開催いたしました諌早湾干拓調整池水質委員会におきまして、その原因について御議論があったわけでございますけれども、締め切り後、平年の最大規模の出水がございまして、本明川などの河川ですとか、自然干陸部からの負荷量の増大がございましたこと、それから風波、これによります底泥の巻き上げがございましたこと、それから従前の海域の生態系から淡水の生態系へ大きく変化いたします途中でございまして、現在まだ生態系が安定しておりませんこと、それから調整池の中で実施いたしておりますみお筋のしゅんせつなどの工事が影響しておりますことなどが指摘をされたところでございます。  いずれにいたしましても、水質保全対策につきましては、流域負荷の削減を図るということで下水道の整備などの促進をいたしておりますし、水質委員会の検討結果を踏まえまして、必要な対策を鋭意進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  55. 武山百合子

    ○武山委員 今、調整池に流入する下水や排水の対策ということですけれども、浄化対策はどうも二〇〇〇年まで完了しないということは、それまでの間には処理されない、下水や排水が流入し続け、水域内の水質悪化はさらに進むというわけなんですね。  それで、このさらに悪化が進んだ水のままで干拓地が完成したとき、かんがい用水はどのように調達するのでしょうか。
  56. 江頭輝

    ○江頭説明員 現在、既に一部干陸したところがございます。  それで、水質とかんがい用水の関係についてお尋ねでございますけれども、先ほど資源課長から御説明がありましたように、現在、工事等の影響、それから上流からの流入負荷等の影響水質が非常に変動しておる、そういう状況でございまして、最終的にどのような状況になるかということは現在見定めておられない、こういう状況にあるわけですけれども、我々といたしましては、計画どおり干陸をいたしまして、干拓地の農業用水といたしましては、この調整池の淡水化された水を利用する、このようにしております。
  57. 武山百合子

    ○武山委員 農業用水として利用できるというお答えだったと思います。そうしますと、調整池や農地が完成したとして、干潟のいろいろな状況で貴重な生態系もこれで死滅していくわけですけれども、それに見合うだけの防災効果があるのでしょうか。
  58. 太田信介

    ○太田説明員 諫早湾干拓事業の防災効果でございますが、この事業は、複式干拓という方法によりまして、潮受け堤防、これに排水門を二門設置しておりますが、それから干陸地、そして調整池、この三つを一体的に整備するものでございます。潮受け堤防の設置、それから調整池の水位を排水門の操作によりまして標高マイナス一メーターに管理することによりまして、高潮、洪水対策、そして周辺低平地の排水改良対策といった機能が発揮されるわけでございます。  高潮につきましては、従来の沿岸地域の既存堤防の高さ、これが、標高三・二メーターから五・五メーター、低いという状況にありまして、その背後の周辺低平地はこれまでも幾度となく高潮の被害あるいは危険にさらされてきておりますけれども、標高七メーターまでの高さを持つ潮受け堤防の設置によりまして、伊勢湾台風クラスの高潮におきましてもその被害を防止することが可能となります。  高潮と洪水が同時に発生したような場合につきましても、潮受け堤防によりまして高潮を遮断して、高潮の影響を受けることなく洪水を調整池に安全に流入させることができるといったことによりまして、諌早湾周辺地域の洪水による被害を軽減することができるということでございます。  さらに、通常の洪水もしくは常時の排水につきましては、調整池を、低い水位、標高マイナス一メーターという状態で管理することによりまして、潮の満ち引きの影響を受けることなく周辺低平地からの排水が可能となるといったことから、これら周辺低平地の排水改良を図ることができるといった効果が考えられております。
  59. 武山百合子

    ○武山委員 たしか週刊宝石じゃなかったかと思いますけれども、防災対策について、八三年、農水省の諫早湾防災対策検討委員会の中間報告によりますと、大雨が降ると干陸地を遊水地として利用しなければ容量が不足することが指摘されているわけです。今後、梅雨の時期や大雨、台風による災害被害を最小限に抑えるために千陸地を遊水地として利用しなければ、それこそ防災としては役に立たないんじゃないかと思いますけれども、その整合性はどうなんでしょうか。
  60. 太田信介

    ○太田説明員 御指摘の中間報告におきます記述でございますが、幾つかの締め切り面積を想定して検討がなされております。  その中で、先生御指摘のところにつきましては、三千三百ヘクタールの締め切り面積ということで、これについては、おっしゃるとおり、干陸地に水を導水しないと危険だといった指摘がなされておりまして、そういった検討経過を踏まえて三千九百ヘクタールという案を、最終的な妥当な案といいますか、許容し得る案ということで考えられておりまして、この案につきましては、干陸地に導水をしなくても大丈夫ということでございます。  その後、検討をさらに進めまして、あるいは漁業者との調整等を踏まえまして、現在の締め切り面積につきましては三千五百五十ヘクタールという規模になってございますが、三千九百ヘクタールのときの調整池面積、これを確保するために、あるいは調整池容量を確保するために、干陸面積をぐっと絞りまして、同等の防災機能といいますか、そういったものが確保されるような計画になっておるといった状況になっております。
  61. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、もう一回お聞きしますけれども、徐々に変更されてきたということですね、防災の面で。今、干陸地を少なくして調整池を広くしていくというふうにお答えされたと思うのですけれども。
  62. 太田信介

    ○太田説明員 中間報告は、あくまでも中間的な検討でございまして、六千ヘクタール、四千六百ヘクタール、三千三百ヘクタール、そして三千九百ヘクタールの四つの締め切り案につきまして、それぞれ調整池面積、そして干陸地の面積を設定いたしまして、防災の効果、そういったものを検討した中身でございます。  現在の計画は、そういった中間の検討を踏まえまして、最終的に三千五百五十ヘクタールという締め切り面積、そして調整池面積千七百十ヘクタールという中身での検討をきちっと行いまして、安全が確保されておるという状況でございます。
  63. 武山百合子

    ○武山委員 そうすると、もう一回確認しますけれども、三千五百五十ヘクタールでのシミュレーションで干陸地を遊水地としなくて防災が確保できるという意味ですか。
  64. 太田信介

    ○太田説明員 御指摘のとおりでございます。
  65. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、次に移ります。  入植料についてお聞きしたいと思います。莫大な国民の税金を、総工費の八割は国税が費やされて、二割は地元の費用かと思いますけれども、最終的に公共事業費はどれくらい費やされるのか、それから地元負担はどれくらいなのか。一点、総事業費ですね、それから地元負担、それからまた干拓地で農業をされる入植者の入植料、これは、例えば一反というのですか、一ヘクタールというのですか、どちらでも結構ですが、ぜひお答えいただきたいと思います。
  66. 江頭輝

    ○江頭説明員 お尋ねの、まず総事業費でございますが、現時点で二千三百七十億を見込んでおります。また、このうち地元負担額は幾らかというお尋ねでありますけれども、県等のいわゆる地元負担額は、二千三百七十億円のうち五百億円程度と見込んでおります。それと、配分の価格のお尋ねでありますが、現時点で十アール当たり百十万円と見込んでおります。
  67. 武山百合子

    ○武山委員 十アールというと一反でしょうか。一反当たり百十万。非常に高いと思うのですけれども、入植者はいるのでしょうか。
  68. 太田信介

    ○太田説明員 まず、一反といいますか、十アール当たり百十万の意味合いでございますけれども、大体周辺の農地価格とつり合うといいますか、ほぼ同等だという状況になっております。  それから、入植者は果たしているのかというお尋ねでございますけれども、この諌早湾周辺地域はバレイショ、野菜あるいは酪農等におきます県内の中心的な農業地帯ということでございます。しかも本地域周辺には、県内の四十歳未満の基幹的農業従事者、五千百五十人おられますが、この中の六割が存在するということで、非常に若手の農業者の割合が高くて、活性化といいますか、そういった状況になっております。  一ヘクタール以上の借地農家、いわゆる土地を借りておられる農家も九〇年から九五年に向けまして増加傾向にあるといったこともございますし、あるいは近年のアンケート調査等におきましても入植、増反希望があるということを確認しておりまして、経営規模の拡大意向が強い地域という背景を受けて、この入植者の見込みを確認しておるというところでございます。
  69. 武山百合子

    ○武山委員 最後質問になりますけれども、時間になってしまいました。  大変高いという印象はあります。私の地元ですと、お米は大体一反八俵ぐらいしかとれないわけですね。ここではお米はつくらない、野菜や畜産が主だということですけれども、百十万円ということは非常に高い入植料ということをまず思います。これは非常に高いということ、皆さんどう思われるか。  それから、日本の食糧問題をどうするのか、大枠で日本の公共事業はどうするのか、環境保全と整備というものをどうするのかという大きな根本的な議論が本当になされてきていたのかどうか。私は四年前に政治の世界に入ったものですからその経緯はわからないのですけれども、それはこういう事業と絡めて議論はされてきているのでしょうか。環境庁長官最後になりますけれども、お答えいただけたらと思います。
  70. 石井道子

    石井国務大臣 食糧需給の問題については農水省の管轄であると思います。環境庁としては、干拓事業に対しましては環境保全の立場から意見を申し上げてきたところでもございますので、御理解をいただきたいと思っております。
  71. 武山百合子

    ○武山委員 何か答えていただけなかったし、率直に言いまして、非常に残念でした、今のお答えは。女性同士ですけれども、ぜひこっそりと聞かせてください。  どうもありがとうございました。
  72. 佐藤謙一郎

  73. 川内博史

    川内委員 民主党の川内でございます。  きょうは、石井環境庁長官、紫色の鮮やかなお洋服で、答弁も鮮やかにお願いをしたいところでございますが、まず、長官にお尋ねをいたします。  せんだって、諫早湾を考える議員の会で長官にお目にかかりまして、何とか潮受け堤防の水門をあけていただけないでしょうかという要望書をお渡しさせていただいたわけでございます。それが六月二日だったのですけれども、その翌日、夕刊に石井長官の閣議後の記者会見ということでコメントが出ておりました。もし今諌早で環境アセスメントをしたならば恐らく違った判断をしたであろうという趣旨の御発言をされていらっしゃるというふうに出ておりました。これは大変に心強いというふうに思っておりましたら、数日後、その発言をお取り消しされたということがまた新聞に出ておりました。  一回発言をしたものは、後でいやいやそれは違っていましたと言ってもなかなか消えるものではございませんで、今環境アセスをしていたら恐らく違った結果になっていたであろうという御発言を取り消されたということは、今環境アセスをしたとしても結果は一緒だというふうに、事務当局も含めて環境庁長官は御協議をされた上で発言を取り消されたのか、それとも、これはまずい発言をしてしまったということで、ただ単に、いや、あれはちょっと勢いで言ったまでですよというような感じで取り消されたのか、御事情を御説明していただければと思います。
  74. 石井道子

    石井国務大臣 御指摘の私の発言につきましては、あのとき閣議後の記者会見の場でございまして、かなり長い時間をかけましてやりとりがあったわけでございます。その時点では私は、諌早問題につきましては、長い経緯があって現在まで来ているのでということを前提としてお話をいたしました。さらに、記者さんの御質問の中でいろいろとやりとりがあったわけでございますけれども、その結果新聞に出されました報道はちょっと誤解があったのではないかという印象を受けたわけでございます。  ですから、私はそのときにも、諫早問題については個別の案件について仮定の話をするのは不適当ではないかということも申し上げたところでありまして、一般論として、環境アセスメントはその時点において科学的知見に基づいて行われるものでありますから、その時々の環境保全に対する政府あるいは地方自治体そして住民などの考え方が多少変化をするといいますか、それを反映されるものであることなので、環境庁としての意見というものは過去と現在とはいつも同じではないというような考え方を示したわけでございます。そしてそのような意味のことを申し上げたのですが、結果的にはちょっとニュアンスが違うといいますか、誤解を招くおそれがあるということで、あえて修正をさせていただきました。  諌早湾干拓事業につきましては、環境庁としては、昭和六十三年それから平成四年、ことしと三回にわたって意見を申し上げているわけでございますし、干潟の重要性などについても十分認識した上で意見も申し上げてまいりました。ですから、私といたしましては、本事業については改めて環境アセスを行う対象ではないというふうに考えていたところでございます。政府といたしましても、従来どおり、諌早湾干拓事業を実施していくというこれまでの方針には変わりはないということを確認させていただいたところでございます。
  75. 川内博史

    川内委員 諌早湾干拓事業政府として推進していく、図らずも環境庁の長官が、内閣が一体となってこの諫早湾の干拓事業推進するのだということを今御答弁の中でおっしゃられたわけでございまして、そういう意味では、政府として推進をするということと、環境庁としてはその時点において、過去のある一定の時点においてその事業に対して意見を申し述べただけであるということには大きな矛盾があると思うのですよ。  政府として今もその事業推進していくのであれば、現時点で環境庁長官である石井先生は、現在の環境庁の長官として、政府の中において環境庁としてその事業に対してどういう態度で臨むのか、ただ意見を求められたから、それに対して干潟をつくれるようにしなさいよとかあるいはヨシの植生をつくりなさいということだけで果たして済まされるものなのかどうか、私はその辺が今大きな議論になっているところだというふうに思いますが、また後でお聞きいたします。  干拓、干拓という言葉が出てまいりましたけれども、実際には、地元の方も農水省の方も防災ということを大変に強調していらっしゃる。そこで、建設省に伺うんですが、この諫早湾の防災の場合には本明川の河川改修というものが大変に大きな要素であるというふうに思われるわけでございます。これは、農水省の所管でもなければ環境庁の所管でもない、紛れもなく建設省が、諌早大水害の後、本明川の河川改修に営々として取り組まれてきているという事情があるわけでございまして、その建設省として、本明川の河川改修の効果をどのように考えているか一または効果が上がっていると考えているかどうかを御答弁をいただければと思います。手短にお願いします、人間ありますから。
  76. 渡部義信

    ○渡部説明員 先生御存じのとおり、本明川の改修につきましては、昭和三十二年の諫早大水害を契機に改修が大々的に行われまして、昭和三十三年から直轄河川改修事業として行っておるところであります。特に、本川の中流部の福田川合流点からJR長崎本線の鉄道橋、ここにつきまして非常に被害が激甚だったというようなことがございまして、この区間の河道拡幅、築堤、構造物改築等の改修を重点的に進めまして、この間につきましては昭和三十九年度までに概成いたしておるところでございます。  現在は、昭和五十七年に発生いたしました、下流川で溢水はんらんのありました洪水でございますが、これを対象といたしまして、本川の下流部及び支川半造川で重点的に改修を行っているところでございます。現在の改修状況でございますが、この昭和五十七年の七月の出水につきまして、安全に流せる河川の延長といたしましては約七〇%程度というふうに理解しております。
  77. 川内博史

    川内委員 そういう意味では、まだ若干防災対策としてはやり残している部分があるということですね。まだまだこれから先、本明川の河川改修については取り組まれるというふうに理解をいたします。  また、農水省が、高潮が来たときのために潮受け堤が大変有効なんだということを盛んにおっしゃる。建設省も同様に、河川に高潮対策のために水門を設けている例がございます。これは賛否両論あるわけですけれども、実際にそういう水門の操作がうまくいっているのかどうか、つまり高潮に対して十分に効果を発揮しているのかどうかを手短に御説明をください。
  78. 渡部義信

    ○渡部説明員 直轄河川の河口部に位置いたします水門、それから、高潮だけではなくて潮の浸入を防ぐというような堰等を含めまして、全国で今、直轄河川で三十五カ所ございます。過去の十カ年間で見てみますと、これらの水門、堰等におきまして、操作上の事故はございません。
  79. 川内博史

    川内委員 水門の操作による事故はないと。事故というのは、要するにそれが原因で高潮の被害が出たということなどはないということだろうと思うのですけれども。潮をとめるための堰はちょっと置いておいて、普通の水門の場合は潮が出たり入ったりするわけですよね。潮が出たり入ったりするにもかかわらず高潮対策として今まで事故はない、被害が出た例はないということが建設省の方から今明らかになったわけです。  今度は、気象庁にお伺いをいたします。  例えば、九州あるいは諌早湾のある九州の北西部地域でどうやら大雨が降りそうだというようなことを予測をできるのは、大体雨が降り始めるどのくらい前から予測をすることができるのかということを御答弁をいただきたいと思います。
  80. 白木正規

    ○白木説明員 御質問の大雨の予測可能性のことでございますけれども、まず、雷雨などによる局地的な大雨、こういうのは数時間前でも困難な場合がございます。しかしながら、九州北部といった広い地域に大雨が降る可能性について言えば、二十四時間ぐらい前から予測することが可能になってきてございます。ただし、この場合でも、どのくらいの量が降るかということの正確な予測というのはちょっとまだ困難なところがございます。
  81. 川内博史

    川内委員 二十四時間前ぐらいには大体その地域にある程度まとまった量の雨が降りそうだということを予測することはできると。まあ、降らない場合もあるわけですけれどもね。  二十四時間前にわかるということは、その二十四時間の間に引き潮が二回来るということでございます。ということは、建設省さんが水門の操作で高潮で被害を出したことはない、そして今、気象庁が二十四時間前に雨が降ることがわかると言ったことを総合しますと、この諌早湾の主目的である、大変大きな目的である防災という面に限って言えば、水門をあけ閉めして潮を入れたり出したりしても防災の機能は十分に発揮させることができるということでございます。これは、建設省にできて農水省にできないなんということはないですから。  そこで、農水省にも伺わせていただきますけれども、極端に大潮とかじゃない場合、普通の状態である場合に、仮に二十四時間以内に大雨が降ると察知をした場合に、諫早湾の調整池の水位を今管理をしていらっしゃるマイナスーメートルに下げることができるかどうか、それが可能かどうかお答えくださいひ
  82. 江頭輝

    ○江頭説明員 お尋ねの件でございますが、二十四時間前に局地的な降雨あるいは大雨を正確に予測するということは、現在の気象予測の技術水準では極めて難しい、このように聞いております。したがいまして、そのようなことを前提といたしましてまさに防災のための排水門を操作するということは、とてもリスクが大きくて困難だと言わざるを得ません。
  83. 川内博史

    川内委員 農水省、二十四時間前に予測することは不可能だと、勝手にそんなことを言っちゃだめですよ。今、気象庁の専門の方がほぼ予測をできるというふうにおっしゃったんですから、あなたが勝手にそんな、難しいからそんなことはできっこありませんなんて、何で勝手にそんなことが言えるんですか。それだったら議論の前提がすべて崩れますよ。何も議論できないということじゃないですか。委員長、何か言ってくださいよ。
  84. 江頭輝

    ○江頭説明員 防災を目的といたします水門を操作するには非常に正確な降雨予測が必要であります。また、諫早湾地域は、非常に局地的な大雨等も多いところでございます。そういうふうな状況の中で二十四時間以内の気象予測は極めて難しい、このように聞いております。
  85. 川内博史

    川内委員 気象庁が、専門の方が、空振りをする場合もあるが、ほぼ二十四時間前にはまとまった雨が降るかどうか大体の場合は予測をできると言っているにもかかわらず、農水省の方はああいうことをおっしゃる。もう、この議論だけでも、この干拓事業がいかにでたらめな事業かと……。  防災は認めようとしているんですよ、我々は。防災は大事だと思っているんです。高潮に対しても、そしてまた洪水に対しても、この潮受け堤というのは一定の効果を果たすであろうということを私は申し上げたくていろいろ御質問をさせていただいた。その潮受け堤の中の干拓しようとしているところ、そこは世界的に見ても大変重要な湿地です。日本の中でも釧路湿原か諌早湾干潟かというぐらいに重要な湿地です。  ここで、環境庁にお伺いしますが、昭和五十五年にラムサール条約に我が国は加盟したわけですが、なぜ諫早湾の干潟を湿地登録をしなかったのか。するかしないかは環境庁の意思である程度できたはずですから、なぜしなかったのか、御説明していただきたいと思います。
  86. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  一般に、自然環境保全するための地域指定を行う場合には、地元を含む関係者の合意が得られていることが不可欠であります。諫早湾について見ますと、シギ・チドリ類やカモ類の渡来地として重要な湿地としては認識しているわけでございますが、ここにつきましては従来から干拓計画が進められてきておりまして、地元自治体の賛意を得て国設の鳥獣保護区等に設定する状況にはなかったわけでございます。  なお、ラムサール条約の登録湿地につきましては、国設鳥獣保護区の設定等、国内法での保護措置の担保が必要でありますが、設定について地元の賛意を得ることが困難な場合があるというようなことも御理解を賜りたいと思います。
  87. 川内博史

    川内委員 要するに、地元の要望がなかったからと。地元は、干拓、干拓と、もうこのころから干拓をやりたくでしょうがなかったわけですから、当然要望するわけはないですよ。それに対して、要望がないから、重要な湿地であるというのは冒頭で環境庁の長官もお認めになっていらっしゃる、重要な湿地であるにもかかわらず、ラムサール条約に登録をしなかった。それは、もう環境庁として私は大きなミスだったと。地元が望むわけないですよ、干拓やりたくて仕方がないわけですから。諌早湾のこの干拓に関しては、地元の多くの方々は防災を望んでいらっしゃる。私たちも、防災を否定はしない、防災は大いにやるべきだということを先ほどからの議論の中で申し上げております。  潮受け堤防が完成をすれば、高潮に対しても、そしてまた洪水に対しても有効な機能を発揮するであろうということを申し上げてまいりました。さらに、干拓地をつくらずに、陸の部分だけ水がまたたまるわけですからね、余計に調整池の容量がふえる。洪水に対する許容量というのはふえるわけでございます。防災機能も高まる、そしてまた貴重な干潟も残すことができる。  重要な干潟だと環境庁さんおっしゃっている。それで、重要な干潟だ、湿地だという認識をお持ちになっていらっしゃりながら、政府としてこの干拓事業推進するということは、この重要な湿地をつぶしてもいい、つぶすのだというふうに環境庁の長官はお考えなのかどうか、もう一度お答えください。
  88. 石井道子

    石井国務大臣 この諫早湾の干拓事業につきましては、大変長い経緯がありますものですから、過去の時点でそのようないきさつがいろいろとあって現在に至っているということを抜きにして現状を考えるわけにはいかないというふうに私は思っております。  この有明海の広大な干潟がありますけれども、渡り鳥の飛来地であったり特有なムツゴロウなどが生息するという点ではそれなりの価値があるわけでございますが、そのようなことを踏まえて、当時、諫早湾の大半の干潟がなくなることから、干潟に依存する鳥類への影響心配をされました。そのために環境庁としては、昭和六十三年三月に、公有水面埋立法の規定によりまして、鳥類等の生息環境保全の観点から意見を述べたところでございます。  そしてそのために、具体的には、鳥類の生息環境となることが予想される調整池のヨシ原等の自然植生の維持でございますとか、あるいは潮受け堤防の前面に干潟の再生を促進するための対策を講じてほしいと。そしてさらに、有明海全体を対象とした広域的な観点から鳥類の追跡調査を行って、影響の推移を把握するということを事業者に求めてきたところでございます。
  89. 川内博史

    川内委員 今、最後にっこり笑って御答弁をいただきましたが、これを最後質問にさせていただきます。  結局は、干潟をつぶすということを御判断をなさるということですよね。干潟をつぶしてもいいんだと。重要な湿地であるという認識があるにもかかわらず、そして防災という面においては、潮受け堤防だけで十分に防災、高潮対策については効果を発揮するということが徐々に昨今の議論を通じて明らかになってきている、にもかかわらず干潟はつぶす、そしてそこに農地をつくるということを決断をされた。わかりました。  三千五百ヘクタール余りの海を、環境を大きく変えるわけですから、それは環境庁さんはいろいろ調査をされてアセスをされたとおっしゃる。しかし、自然を余りばかにすると、大変な目に遭いますよ。あの辺の生態系が大きく変わって、そしてまた調整池水質が大変に悪化をして、もし万々が一、何が起きるかわからない。そのとき、長官、どうやって責任をとるのですか。どうやって責任をとるのかということを、最後にお尋ねをいたします。
  90. 石井道子

    石井国務大臣 今までもいろいろ申し上げてきたところでございますが、干潟の重要性については当時も十分認識をした上で、環境保全の立場から意見を申し上げてまいったところでございます。
  91. 川内博史

    川内委員 もう終わりという紙だと思ったら、あと五分という紙でしたから。  いや、長官、意見を申し上げてきたところでございますというだけでは、政府としてこの事業推進するということを確認したのだというふうに長官、冒頭におっしゃいましたよね、この事業推進すると。それは、環境庁の長官という立場にしてみれば、本来ならば、重要な湿地だという認識を持っていらっしゃるあの干潟を、本当は保護する、守るというのが環境庁長官のお立場だと思うのです。それが、内閣の中で推進するというお考えであるということは、万々が一、何かあのあたりの環境に大きな変化があるわけですから、どんなことが起きるとも限らないですよ。  だから、洪水は防げますよ、潮受け堤防で。洪水は防げるのです。高潮も防げるのです。何も問題はない。干潟を残すことはできるわけです。私どもは、潮受け堤防には反対していない。潮受け堤防、大いにやるべしだ。  あれは、環境庁長官、潮受け堤防は震度五弱しかもたないのですよ。鹿児島で、園田先生いますけれども、この前震度六弱の地震があったわけです。ある地域では六強の地震まであった。そうすると、まあ農水省の方は、いや、土木構造物は石とか砂をいっぱい使っているので地震については案外強いんだとおっしゃる。しかし、何が起こるかわからない。いろんな面があるわけですよ。そういうときに、本当にあの事業推進する、干潟をつぶすんだとおっしゃるのであれば、もし万々が一何かあったとき、まあ長官は長生きをされると思います、十年後、二十年後大変なことになっていたら私はこうするということを言ってくださいよ。それが責任ですよ。
  92. 石井道子

    石井国務大臣 川内先生などの大変御熱心なお取り組み、お考えを伺わせていただいたところでございますが、そのようなことを踏まえて、環境庁としても環境保全の立場から、念には念を入れて取り組まなければならないということで、ことし三月に事業者にも要請を行いました。潮受け堤防を締め切りました後も、農水省環境庁連絡会議を新たに設けまして、そして、諫早湾の干拓事業の問題についてさらに必要な重要な問題について協議を始めたところでございます。今後も、初めてあのような状況ができて環境かなり変わることも予想されるわけでございますから、いろいろと十分に目配りをしながら、この事業環境保全についての対処が適切にできるように努めていきたいと思っております。
  93. 川内博史

    川内委員 ぜひ頑張ってください。  終わります。
  94. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 藤木洋子さん。
  95. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、今回、ラムサール条約などでの日本の国際的責任と、諌早湾干潟の問題についてお伺いをいたします。  ラムサール条約の締約国は、第三条で、その領域内の湿地の持続的な賢明な利用を促進することが求められております。持続的ではない利用一これはワイズユースとは言えません。もちろん、湿地が全く消失してしまうような計画だとか、景観や生態系を著しく変えてしまうような事業も許されるべきではありません。  そこで、まず、ラムサール条約第三条の持続的な賢明な利用、いわゆるワイズユースについて、一九八七年のレジャイナ会議での定義はどうなっているか、お答えをいただきたいと思います。
  96. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  締約国会議等におきまして、湿地のワイズユース、今先生おっしゃったこの定義につきまして、いろんな言葉がさまざまな意味合いで使われていたために共通の認識を持つ必要が生じました。それで、第三回締約国会議で定義が定められたものでございます。その締約国会議で定められた湿地のワイズユースの定義とは、「生態系の自然財産を維持し得るような方法で、人類の利益のために湿地を持続的に利用すること」とされておるところでございます。
  97. 藤木洋子

    ○藤木委員 一九九〇年のモントレー会議の中では、国際的重要性の基準といたしまして、国際的に重要な湿地を期待するためのクライテリアが定められております。この国際的重要性の基準は、大まかに申しますと、二万羽以上の水鳥が生息をするとか、相当数の貴重な水鳥がいることなどと私は理解しておりますけれども、環境庁、このクライテリァの内容はどのようになっておりますでしょうか。
  98. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  ラムサール条約の登録湿地の選定基準は、一つは、代表的なあるいは独特な湿地の基準、第二番目には、植物または動物に基づく一般的な基準、それから第三に、水鳥に基づく特定の基準の三つの基準から成っております。  ただいま先生お尋ねのものは、第三番目の水鳥に基づく特定の基準ということでございますが、それには三つ要件がございます。そのうちの一つが、二万羽の水鳥を定期的に維持している場合であります。それから二番目が、湿地の価値、生産性または多様性を示す水鳥の特定の集団のうち相当数の個体を定期的に維持している場合、第三番目が、個体数のデータがある場合、水鳥の一種または亜種の総個体数の一%を定期的に維持している場合、そのようになっております。
  99. 藤木洋子

    ○藤木委員 そのとおりでございますね。日本におきましては、このクライテリアを我が国に具体化した基準はできていないというふうに伺っております。また、モントレー会議で勧告をされました湿地基本政策につきましても策定されてはおりません。これらを早急に策定すべきではないかと思うのですが、環境庁、この点いかがでしょうか。
  100. 澤村宏

    ○澤村政府委員 環境基本法に基づく、平成六年十二月に閣議決定されました環境基本計画に湿地保全取り組みが盛り込まれましたほか、平成七年十月には、地球環境保全関係閣僚会議が決定いたしました生物多様性国家戦略の中に、我が国の湿地保全の基本的な考え方が位置づけられているところでございます。  また、湿地保全に関します各種普及啓発活動の支援を行ってまいりましたほか、平成八年十一月には、佐潟がラムサール条約の登録湿地となったことを記念いたしまして、普及啓発と湿地保全促進を目的としたシンポジウムを新潟市で開催いたしました。  このように、環境庁といたしましては、湿地保全取り組み促進するためのさまざまな施策を進めてきているところでございます。
  101. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで伺いますが、諫早湾干潟に生息をする鳥類、これは十七日四十八科二百三十二種が記録されておりまして、全国的にも有数の、カモ、シギ、チドリ、サギ類の生息地で、夏はシベリアで繁殖をし、冬の到来とともに渡来をしてまいりまして、冬季の越冬数は優に二万羽を超えております。特に、全世界で三千羽しか生息しないと言われておりますズグロカモメは、その一割に当たる個体が越冬しております。この一割というのは、実に国際基準の十倍に当たるわけです。これほどのまとまった数が越冬している干潟は諫早以外にはございません。  諫早湾の干潟は、ラムサール条約のクライテリアの要件を満たしている国際的にも重要な干潟だと私は考えるのですが、その点、いかがでございましょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。
  102. 石井道子

    石井国務大臣 諫早湾を含む有明海の干潟は、我が国でも有数の渡り鳥の渡来地でございます。また、干潟特有の生物が生息しておりまして、良好な自然環境を持っているところであると認識しております。  諫早湾につきましては、環境庁が取りまとめておりますがン・カモ類の生息調査をいたしますと、毎年二万羽以上が観察されておりますので、ラムサール条約の登録湿地選定基準に適合していると考えられます。
  103. 藤木洋子

    ○藤木委員 では、結局国際的に重要な湿地だということをお認めになったわけですね。そのとおりだと私も思うのです。  そこで、諫早湾干潟は、ラムサール条約で国際的にも重要な湿地とみなされてもおります。さらに、ロシアやオーストラリアとの渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する条約で、渡り鳥の根拠地である諌早湾干潟につきまして、環境庁が独自に、渡り鳥の保護の観点から、諫早湾干潟がなくなったとき渡り鳥が生存するためにどんな可能性があるのか、渡り鳥にとってどんな新しいルートが生まれ得るのか、こういったことを実態的にお調べになったことはあるのでしょうか。環境庁、いかがですか。
  104. 澤村宏

    ○澤村政府委員 諌早干拓事業の実施に伴います水鳥の採餌場、採餌環境や渡来ルートの変化につきましては、事業者環境影響評価の一環として調査検討を行っているところでございます。  本事業について実施されました環境影響評価におきましては、本事業による諌早湾湾奥部の干潟の消滅は、シギ・チドリ類の生息環境影響を与えることは避けられないものでございます。しかしながら、潮受け堤防内部の調整池に、鳥類にとりまして新たな生息環境が創造されること、また、チドリ目は諌早湾の残存海域や有明海の在来干潟に移動することが期待されることから、鳥類には著しい影響を及ぼすことはないものと予測評価されているところでございます。
  105. 藤木洋子

    ○藤木委員 私が伺いましたのは、環境庁が独自の御調査をされただろうかということを伺ったのであって、農水省のアセスメントを農水にかわって述べていただきたいというふうに申し上げたのではございません。  農水省調査をされてまとめられたパンフレットも私、拝見したのですが、これではとても調査の経緯などわかりませんので、生資料を要求させていただきました。しかし、これを拝見いたしますと、その当時、農水省自身は、全く生態系にかかわる問題について何一つ調査を行っていないのですね。行っていないのです。  ラムサール条約や渡り鳥条約の国際的な責任から申しましても、環境庁が独自に渡り鳥の保護についてアセスメント、調査をし、評価をし、予測を立てる、そういう必要な対策をとることが求められていると思います。  渡り鳥は、諫早湾干潟を足場にいたしまして、オーストラリアからシベリアへ渡ります。その干潟がなくなりますと、渡り鳥は渡れなくなってしまうか、あるいは別のルートを確保することになるわけです。渡り鳥の生存の条件を保障して初めて国際条約の責任を果たすことになるのではないでしょうか。  外国の例でございますと、決まった場所がなくなってまいりますと、飢え死にをしてしまうことが随分あると伺っております。国際的な責任から申しましても、干潟干拓は、事前に渡り鳥のえさ場を保障しないで進めるべきではないのではありませんか。環境庁、その点いかがでしょうか。
  106. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  まず初めに、先ほどちょっと説明が足りなかったので申し上げますが、環境庁といたしましては、事業者が行いました環境影響評価の結果を慎重に審査しまして、環境影響評価の内容のとおり、本事業が鳥類に著しい影響を及ぼさないことが期待し得るものと考えましたが、なお鳥類の生息環境保全に万全を期すための措置が必要との観点からいろいろ意見を申し述べたところでございます。  それからまた、ただいまのお尋ねでございますが、諌早湾干潟に依存しておりますシギ・チドリ類の鳥類につきましては、事業者による環境影響評価におきまして、諌早湾の残存干潟や有明海の他の干潟にえさとなる底生生物の生息が確認されておりますので、これらの干潟への移動が期待され、著しい影響を受けないものと考えております。
  107. 藤木洋子

    ○藤木委員 農水省が他の干潟への移動が期待されるから著しい影響を及ぼすことはない、こう言っていますけれども、前にも私述べましたように、その根拠となるような調査農水省は全くやっていないわけですよね。ですから、鳥に期待する、渡り鳥に期待する、これは余りにも無責任と言わざるを得ません。しかも、環境庁がその渡り鳥に影響があるかどうかを独自に十分調査をなさらないで、おおむね妥当だというような見解をお示しになるのは、これは全くおかしなことではないのでしょうか。  多くの研究者からは、諫早湾のえさの量だとか質は恵まれている、ほかの干潟に移っても、えさ不足だとか環境悪化から生殖や渡りに影響が出る可能性があると指摘をしております。  ロシアやオーストラリアとの渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する条約の第六条では、各政府は、この条約に基づいて保護される鳥類の環境保全しかつ改善するため、適当な措置をとるように努めるとしております。  大臣にお尋ねをいたしますが、環境庁は、国際的な責任として、渡り鳥の保護についてのアセスメントを行わずに、国際的にも重要な干潟での諫早湾干拓事業を進めさせるべきではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  108. 石井道子

    石井国務大臣 諌早湾の問題につきましては、渡り鳥の渡来地として重要であるという認識のもとに、特に慎重に審査をして、鳥類等の生息環境保全の観点から意見も述べてまいりました。  ラムサール条約につきましては、各締約国が湿地の保全のための計画や制度を整備して湿地の保全努力すべきことを一般的に規定をしております。  いずれの地域の湿地をどのような形で保全するかといった具体的な判断は、各締約国責任においてなされるものであると認識をしておりまして、この諫早湾の干潟につきましては、国内におきます対処、処置が現在に至っているということでございます。
  109. 藤木洋子

    ○藤木委員 締約国責任に任されているからこそ、その責任を受けとめていただきたいと思っているわけです。  鳥類に著しい影響を及ぼすことはないというふうに審査をされたと言われるのですけれども、書類上の審査だけではだめなんですよ。やはり実態を、先ほどから長官は、科学的知見に立ってと言われましたけれども、そういった独自の調査が必要であります。渡り鳥の保護という観点に立ってのアセスメント、これを環境庁自身が行わずに影響はないと言うのは、やはり無責任だとしか言いようがございません。少なくとも環境庁がそういう姿勢に立つべきではないということを私は指摘しておきたいと思います。  それでは、ラムサール条約の登録指定についてですけれども、ラムサール条約は、環境問題への関心をはかるリトマス試験紙とも言われております。それは、その国の自然保護の姿勢、国民環境問題への関心が反映されるとみなされるからでございます。  環境先進国というのでしたら、諌早干潟をラムサール条約の登録湿地に指定をして、我が国の国際的な責任を果たすべきではないでしょうか。いかがでございますか。
  110. 澤村宏

    ○澤村政府委員 諫早湾につきましては、先生御案内のとおり、シギ・チドリ類やカモ類の渡来地として重要な湿地と考えております。  また、従来から干拓計画が進められているところでありまして、登録に対する地元の合意もなく、また、国内法によります湿地保全の担保措置も整っていないことから、登録湿地として指定する状況にはなっていないわけでございます。  なお、ラムサール条約に基づきます湿地の登録に当たりましては、国際的に重要な湿地であり、国設鳥獣保護区特別保護地区等の地域指定によりまして将来にわたり自然環境保全が図られている場所であって、地元自治体等から登録への賛意が得られたところについて登録をすることにしております。これまで、国内の十カ所の湿地を登録しております。  環境庁といたしましては、今後も、これらの要件の整った箇所について、順次登録を行ってまいりたいと考えております。
  111. 藤木洋子

    ○藤木委員 今もおっしゃいましたけれども、登録の条件を言われた場合に、その条件の中に必ず地元自治体の了解が必要だということを言われるわけですね。この条件というのは、閣議了解だとか庁議了解だとか通達などで明文化されたものがあるのでしょうか。  特に、地元自治体の了解というのは、ラムサール条約の登録湿地の指定手続や、国設鳥獣保護区特別保護地区にするために法律上必要な手続であって、地元自治体の了解が義務づけられているとでもおっしゃるのでしょうか。環境庁、その点はどうなっていますか。
  112. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  ラムサール条約上は、登録湿地とするために地元自治体の了解が義務づけられているものではございません。  なお、ラムサール条約の登録湿地とするためには、締約国義務を担保する措置として国設鳥獣保護区特別保護地区等に指定することが必要であることは先ほど述べたとおりでございますが、この指定のためには地元自治体の同意が必要であるということでございます。
  113. 藤木洋子

    ○藤木委員 鳥獣保護法では公聴会を開いて利害関係人の意見を聞くと規定されているのではないですか。地元自治体の了解などはどこにも明記されておりません。法律上義務づけられていない地元自治体の了解にこだわって国際的に重要な湿地を指定できないようでは、国として国際的な責任を果たしていないことになるではありませんか。  むしろ、埋め立てなどの公共事業で湿地、干潟破壊しようとする地元自治体があったとしても国としてのイニシアチブを発揮して湿地、干潟保全することがラムサール条約の精神に合致するものではないでしょうか。環境庁、どうなのでしょう。
  114. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  まず、干潟が適切に保全されていくというためには、一般的に申しましても地元の理解と協力というものが何よりも必要でございます。その意味で、保護区の設定等に際しまして、地元の賛同を得ることが重要と考えております。  なお、先ほど来、国設鳥獣保護区のことに触れておりますので、その設定の手続等について申しますと、鳥獣保護及狩猟二関スル法律第八条ノ八の規定によりまして、利害関係人の意見を聞くこととなっております。そういうことで、事実上、地元自治体の同意を得ることが必要である、そのように考えております。
  115. 藤木洋子

    ○藤木委員 それは違います。地元自治体の了解が必要だということを義務づけているわけではないのです。地元意見を聞くということを義務づけているわけです。地元の理解と協力がなければならない、それが必要だということは私は否定しているわけではありません。当然のことであります。しかし、だからといって、法律上要請されていない地元自治体の了解を条件にするというのは全く間違っているということを指摘したいと思います。  ラムサール条約締約国は、第三条で、その領域内の湿地の持続的な賢明な利用を促進することが求められております。さきに持続的な賢明な利用について締約国会議での定義を伺いましたけれども、持続的ではない利用、これはワイズユースとは言えません。もちろん湿地が全く消失してしまうような計画だとか、景観や生態系を著しく変えてしまうような事業も許されるべきではありません。当然、諌早湾干潟干拓事業はこの持続的な賢明な利用とは言えない行為だと思うのですが、環境庁、その点の評価はいかがですか。
  116. 澤村宏

    ○澤村政府委員 諫早湾の干潟は、我が国有数の渡り鳥の渡来地であることから、特に鳥類の生息環境保全の観点から、干潟干拓事業環境影響評価の結果を慎重に審査したところでございます。  具体的には、環境庁として、環境影響評価の結果を踏まえまして、干潟干拓事業が実施されてもいずれ干潟の形成が期待されること、それから干拓事業により出現する調整池が水鳥にとっての新たな生息環境となり得ることなどから、干潟の再生促進のための適正な対策を講じること、新たな鳥類の生息環境の維持を図ることなどの意見を述べたところでございます。  このようなことにかんがみますと、この事業はワイズユースにも配慮したものである、そのように言えようかと思います。
  117. 藤木洋子

    ○藤木委員 それはおかしいですね。意見を述べて農水省に万全の対応を求めているからよいというものではないですよね。ワイズユースとは言えない行為ではないかと私は伺ったわけで、ワイズユースの範疇だというふうに言われましたけれども、明らかに国際的な定義に反する行為、対立する行為にほかならないということを申し上げたいと思います。  それで、最後大臣にお伺いをいたします。  国際的にも重要な諌早湾干潟生態系を保護し、渡り鳥条約の渡り鳥の根拠地を保護するためには、当面する緊急な対策として、まず水門をあける以外に考えられません。ラムサール条約の国際的な責任である持続的な賢明な利用、これを行うのであれば、直ちに水門をあけて、干拓事業の見直しを図るよう農水省に要請すべきだと思うのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  118. 石井道子

    石井国務大臣 環境庁といたしましては、この事業につきまして、昭和六十三年当時におきましても、干潟の重要性等について十分認識した上で環境保全の立場から意見を申し上げてまいりました。  そして、ラムサール条約につきましては、各締約国が湿地の保全のための計画や制度を整備して湿地の保全努力すべきことを一般的に規定したものでありますが、これからいずれの地域の湿地をどのような形で保全するかといった具体的な判断は締約国責任においてなされるべきものと認識しております。  水門の問題につきましては、事業者であります農水省の考え方、政策の問題にもなるかとも思いますが、今後も環境庁といたしましては、環境変化にも十分目を配りながら、本事業環境保全についての適切な対処をしてまいりたいと思っております。
  119. 藤木洋子

    ○藤木委員 大臣はこれまでの経緯にこだわった御回答を常にしてこられましたけれども、環境庁がラムサール条約締約国として国際的な責任を負う、この立場を堅持していれば、さらに言いますと、水を初めとして人間生活に重要な豊富な資源を含んでいる湿地の資源を賢く利用する、賢明な利用、これをやるという立場に立つならば末永く子々孫々まで使うことが可能だというワイズユース、これに徹していたならば、私は経緯は恐らく大きく変わってきていただろうということを申し上げないわけにはまいりません。でも、今なら間に合うのです。どうか環境庁の誇り高い勇断をもって、農水省に対し、水門を即時あけ、そしてこの干拓事業の見直しを行うように強くそのことを述べていただくことを求めて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  120. 佐藤謙一郎

  121. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。当委員会では初めて質問をさせていただきます。  環境庁ができるというニュースを中学生のころでしたけれども聞いたときに、私は希望の灯がともったというふうに感じたのですね。公害という名で空がよどみ、ぜんそくが広がったり、あるいは水俣病ということが起きて、高度成長一辺倒の社会を転換させていく象徴的な出来事が環境庁のスタートだった、このように思います。  さて、本日の質問は、環境庁とは何か、環境行政とは何かということをあえて正面から問わせていただきたい、こういう趣旨であります。  実は、この月曜日、六月九日ですけれども、私たち社民党の調査団は、瀬戸内海に面した国立公園の岡山県玉野市王子が岳に九三年九月に完成をしたはずのリゾートホテルの中におりました。完成したはずの、というのはこういうことです。外装工事は終了していますから、外から見ればでき上がったように見えます。しかし、内装工事は手がついていませんから、中は使えません。こういう状態のまま既に四年が経過をしようとしております。  このホテルは、環境事業団が財投を使って約四十億円の資金を投下をして建設をしたものです。そして、同年十二月には第三セクターである王子リゾート株式会社に譲渡をされて、二十年の予定で償還をするという計画がありました。ところが、この王子リゾートは、二億三千万の頭金を支払った後に、既に始まっていた三億五千万円分の内装工事の代金を既にもう支払うことができず、資金調達ができないままに工事は中断をしたということです。しかも、地元財界の有力者であります社長の永山久さん、この方が昨年一月に亡くなって、実に一年半の間社長がいない、社長不在の会社としていわば休眠化しているわけです。  先日、この月曜日、調査に入りましたところ、大変立派な吹き抜けの、自然光が入る天井の窓があるわけです。何者かが投石をして何カ所かガラスが破れている、そこから雨が下に滴っていくということで、管理者不在ということを痛感をしたわけです。  さて、この事業計画書、約十年前に計画されたようですが、事業計画書にはこうあります。当時、公害防止事業団でした。つまり、国立公園の中のもう一つ離れたところに鷲羽山という山があります。そこには観光客が多く訪れて車公害がある。したがって、この公害を緩和するために、利用者の分散、誘導を図る公害防止の目的で、このリゾート施設、オートキャンプ場ほかあるわけですけれども、こういうものをつくるという事業計画書なんですね。これは大変深刻な問題だと思うのです。  一点目に、環境庁伺いたいのですが、この王子アルカディアリゾートをいつだれが計画したのか。そして、その企画立案のそもそもの始まり、だれが推進軸になってこれを行ったのか。あるいは、環境事業団は厳正な審査を行ってきたのか、これはどの役職のどなたが担当されてきたのか。環境庁でこの事業を担当したのはだれか。お答えいただきたいと思います。
  122. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの件につきまして、事業団より、以下に述べるとおり聞いているところでございます。  当時、造船不況、宇高連絡航路の廃止等玉野市を取り巻く環境変化の中で、玉野市では、地域振興を目指して昭和六十二年度に玉野海洋観光レクリエーション計画を策定し、その中で、王子が岳山頂地域に、ホテル、テニスコート、オートキャンプ場等から成る総合的な王子アルカディアリゾート計画が構想として提案されたところでございます。  また、王子が岳山頂部は、大半が王子が岳観光開発株式会社、代表者は永山久氏でございますが、その所有地でありましたが、永山氏からも玉野市に対しまして事業化に関する支援要請がなされたところでございます。  一方、岡山県の南、特に鷲羽山地区におきましては、瀬戸大橋の開通に伴いまして観光客の増加が見込まれ、過度の利用の集中に伴う公害が懸念されたことから、これらの緩和、分散の対策が必要とされていました。  これらを踏まえまして、昭和六十三年八月、第三セクターでの事業化を前提としまして、当時の杉本玉野市長から事業団に対しまして、国立・国定公園施設建設譲渡事業の採択と予算措置につき要望がありました。その後、昭和六十三年十二月に設立されました第三セクター王子リゾート株式会社から、平成元年一月に事業団に対しまして正式に譲り受け申し込みがなされるに至っているわけでございます。  また、本事業につきましての監督ということでございますが、自然保護局が行っているところでございます。
  123. 保坂展人

    保坂委員 この計画自体が実際にとんざをしているわけです。例えば、マーケティングリサーチをされたようなんですが、このマーケティングリサーチの中には、失敗すると永続的な非採算部門になるという指摘であるとか、あるいは瀬戸大橋効果に頼るのは危険であるという指摘があるのですね。さらに、環境アセスをめくっていきますと、古くから山火事の頻発している地域である、こうあります。事実、ここ数年、二回ほど山火事がありまして、このホテルの周辺は、焼けただれた、焼け跡の木というのですか、あちこちそれで、ホテルだけは何とか延焼を食いとめたというようなんですね。  しかも、これは計画発表段階で自然保護運動あるいは住民からの反対運動があって、かなり着手がおくれた。おくれたことを幸とすべきでなかったかと思うのです。つまり、バブル経済はもう崩壊を決定的にしていた九二年三月にこれは着工しているのですね。ブレーキをきちっと踏む人はいなかったのですか。さっき、一回目の質問に対して、具体的な役職や担当者のお名前もいただけなかったのですが、それもあわせて伺いたいと思います。
  124. 澤村宏

    ○澤村政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、昭和六十三年の瀬戸大橋の開通に伴う観光客の増加は一時的なものにとどまりましたが、本件施設の立地地域である王子が岳、玉野、渋川地区の観光客の動向は、若干の増減はあるものの、景気動向にかかわらず安定的に推移してきたところでございまして、このような状況を踏まえまして事業団は事業を実施した、そういう報告を受けております。  また、立地のことでございますが、このホテルの立地地域は、従来より公園計画上、集団施設地区として位置づけられておりまして、利用施設の適切な整備を進めることとされていた地域であるわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたが、この事業の監督そのものは、自然保護局が組織として行っているのだということでございます。
  125. 保坂展人

    保坂委員 地元調査で聞いた話では、これは本当に、永山社長の地元での力というか、これを過信をしたというような言葉も出てきたのですが、随分ずさんな計画なんですね。例えば、ホテル敷地の建物部分の三分の一は私有地なんですね。着工においては同意をした、建ててもいいですよと。しかし、賃貸料についてはまだ合意ができていないので交渉中ですということなんですね、建物はもうできてこれだけたっているのですが。こういった条件整備をなぜ行わなかったのかという点を伺いたいと思います。
  126. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  建物部分を含みます事業地のうち、事業団買収地以外の土地につきましては、地権者の了解を得て事業に着手しておりまして、当時は問題がなかったわけでございますが、施設譲渡後、事業が当初計画どおりに進んでいないために、一部地権者から王子リゾート株式会社に対し土地使用料支払いの要求が出された、そのように聞いております。  環境事業団といたしましては、王子リゾート株式会社出資者であります玉野市に対しまして、本問題の解決を現在強く求めている、そういう状況にございます。
  127. 保坂展人

    保坂委員 この設計は東京にある設計事務所が担当したようですけれども、公開入札だったのか随意契約だったのかという点について伺います。  さらに、二点目に、実際に事業を中断しているのはだれもが認めていることなんですけれども、この王子リゾートが、全体資本金五千万で、玉野市の出資がわずかに五百万、経営基盤がこれで大丈夫なのかという検証を行わなかったのか。そこをどうして見過ごしてしまったのだろうかと思うのですが、その点いかがですか。
  128. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点目でございますが、特定建設工事共同企業体によります指名競争入札として行われたという報告を受けております。  それから、この王子リゾートにつきましては、玉野市が、役職員として当時の杉本玉野市長それから麻生総務部長を派遣いたしまして、活動に極めて深く関与していたこと、また、市以外の王子リゾートの役員、例えば永山氏などがそうでございますが、これにつきましても、当地のホテル等の観光事業の経営者を中心に構成されていたことから、当事業の実施にふさわしい第三セクターであると事業団は判断した、そのような報告を受けております。
  129. 保坂展人

    保坂委員 私たちが調査に行って非常に驚きましたのは、これは外装までは環境事業団がやります、それから内装工事からは王子リゾートがやりますよという区分だったはずが、行ってみると、各部屋になるはずの場所に、ユニットバス、これは金額では一億二千万以上になるそうですけれども、置かれているのですね。その後、説明を受けますと、工事中に区分変更が行われたということなんですね。工事中ですよ。ユニットバス部分は環境事業団が持ちましようというふうに工事中に区分の変更が行われた理由は、御説明によると、大変急いでいた、工事の全体の進行の中でそうする必要があったということなのですが、なぜそんなに急いだのですか。お答えいただきたいと思います。
  130. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、本件にかかわる王子リゾートと環境事業団の工事の区分は、発注時と工事終了時では変更されております。しかしながら、これは工事過程で、内装工事について電気設備等と一体に工事をする必要が強くなったことから、環境事業団から王子リゾートの分担に変更されたものと聞いております。また、このバスユニット等は特注品でありまして、その製造に期間を要するため、平成五年七月の開業予定を控えまして、早い機会に発注する必要があったために、平成四年三月の工事発注時に合わせまして、いわば工事発注区分の変更の前でございますが、そういう時期におきまして事業団から発注されたもの、そのように聞いております。
  131. 保坂展人

    保坂委員 では、石井長官に伺いたいのです。  私どもが調査に行きましたところ、この王子リゾートの当事者能力を持つ方というのはいらっしゃらないのですね。きょう初めてホテルに入ったというある役員の方がおっしゃるには、三%、五%くらいでしょうかと、事業としてこれを約束どおり遂行するには。事実上これは無理な段階に入っている。  そうしますと、国立公園の中に巨大なコンクリートの塊——長官、これはお考えになっていただきたいのですが、解体をすると五億円以上かかるそうです、七億かもしれない。環境庁が監督をしている環境事業団の譲渡事業で国立公園の中に巨大な産廃をつくったなんということがあっては、これは許されようはずがないわけであります。加えて、これは三十億円はかかる。第三セクターは既に五億の負債を抱えているのですね。こういう事態をどのようにごらんになっているのか、長官の御答弁お願いしたいと思います。
  132. 石井道子

    石井国務大臣 この事件につきましては、過去から現在までのさまざまな状況の中で、経済情勢の変化とか第三セクターの社長が亡くなられたとか、さまざまなやむを得ない事情もあったかと聞いているわけでございますが、現在のような状況は大変残念なことであると考えております。  現在は、第三セクターの出資者であります玉野市において事業完成のための努力が行われているということでございまして、環境庁といたしましても、解決策がなるべく早くまとまるように、必要な指導を事業団に対してしていきたいと思っております。
  133. 保坂展人

    保坂委員 もう一点だけ御質問なのですが、どうしてこんなにずさんな事業が進行してしまったのかというところに対する調査をぜひお願いしたいのですが、長官、いかがでしょうか。ちょっと一言だけ、どうなさるか。
  134. 石井道子

    石井国務大臣 過去から現在までの状況も十分踏まえながら調査をし、そして今後の善後策を考えていかなければというふうに思います。
  135. 保坂展人

    保坂委員 私ども社民党は、リゾート法十年を検証するという市民との共同企画で、この問題が岡山県の方から問題提起されてきたわけでございます。私は、予算委員会で長官に、このリゾート法のガイドラインについて、環境庁がしっかりもう一度見直しを図っていただくということで、大変心強い答弁をいただいたことを非常に頼もしく思っているわけですが、ぜひこの件をきっちり解決をしていただきたいということを申し上げたいと思います。  最後に、私のつい最近読んだ本で、「官僚たちの志と死」という佐高信さんの本があります。この中に、九〇年に惜しくも亡くなられた、環境庁企画調整局長の山内豊徳さんのことが書かれています。最後にこんなふうに書いてあります。  「環境庁は詩と現実がぶつかり合う場所だった。山内の後輩たちには、山内的精神をもって死なずに生きてほしい。山内的精神とは、「遠い窓」をめざして「しかし……」と呟きつつ進む精神である。」ということで、ぜひ、環境行政を今の諌早の問題も含めてきちっと推進していただく、そのためにこういったことのけじめをつけていただきたいと申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  136. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 岩國哲人君。
  137. 岩國哲人

    ○岩國委員 今、保坂委員から御発言がありました、亡くなられた山内局長の同期生の一人として、私はきょう質問させていただくことになります。太陽党を代表して質問させていただきます。  最近、私のところにアメリカの有名な新聞社が参りまして、諫早の問題についての取材を受けました。私は、外国でも随分これは報道されておりますけれども、諫早の水門をあける、あけない、きょうももう随分その議論が出ておりますけれども、これはウォーターゲート・スキャンダル・イン・ジャパンというテーマで、同じウォーターゲートについてこちらでも議論がされているんだということで紹介してまいりました。  デンバー・サミットで、環境問題について、橋本総理からもぜひ世界に対してしっかりとした信念のある強いメッセージを発信していただきたい、そういう発言がきょう杉浦委員からもありましたけれども、私も同じ思いであります。ブラジル・サミットへ出かける前に、竹下登元首相は、今や環境を語らざる政治家は知性と理念と勇気なき政治家であると、すばらしい言葉を発されました。橋本首相には、それを上回る名言をぜひ発信していただきたいと思います。  その竹下登元首相のおひざ元、中海の問題について私は質問したいと思います、諫早についてはもう随分いろいろな方が質問されましたので。  先ほど共産党の藤木委員の方から、ラムサール条約についての質問がありました。この島根、鳥取合わせて、ラムサール条約の湿地登録の候補地としてみなされているのは何カ所ありますか。まずそれをお伺いしたいと思います。
  138. 澤村宏

    ○澤村政府委員 ただいま資料が手元にありませんので、にわかに幾つということは言えませんが、数カ所予定されていることは事実でございます。
  139. 岩國哲人

    ○岩國委員 その数カ所の中に中海が入っていることは間違いないと思います。地元でも、随分市民の期待もあります。  そのラムサール条約の湿地登録の条件として、局長の方からは、地元の同意が必要である、先ほどこのような答弁がありました。それに対して藤木委員の方から、地元の同意が必要というのではなくて、地元意見を聞くことが必要と解釈すべきであると。これは全く相反する解釈ではないでしょうか。それに対して、環境庁の方から、藤木委員の解釈は間違っているのか、正しいのか、それについてはっきりと答弁していただきたいと思います。
  140. 澤村宏

    ○澤村政府委員 先ほど申し上げましたように、この湿地の保全というようなことは地元の理解と協力というものがなければ成り立たないこと、これはもう当然でございますが、同時に、ラムサール条約の湿地の登録に当たりましては、地元の同意ということが一つの大きな要素になるわけでございます。  また、国といたしましてその登録湿地が保全されるということを担保するためには、何らかの地域の保全ということが、保護区の設定等必要になるわけでございますが、我が国におきましては、それを国設の鳥獣保護区の設定ということで担保しているわけでございます。  ちょっと事務的なことになりますが、この鳥獣保護区の設定の手順の中には、国の機関の中での調整というようなことも当然でございますが、利害関係人との調整ということが一つの大きな要素になっております。例えば、地方公共団体の長、土地の所有者、農林漁業関係者あるいは猟友会の会長それから鳥獣保護関係者、野鳥の会等、さまざまな方々が利害関係人としてあるわけでございます。そして、法律に基づきます手続といたしましては、公聴会を開催することが義務づけられておりまして、そこにおきまして利害関係人が公述人として出席するというような仕組みになっているわけでございます。
  141. 岩國哲人

    ○岩國委員 そういった条約によって義務づけられていようとなかろうと、いろいろな関係者との利害調整ということは行政として当然のことであると私は思います。  私が端的にお伺いしたいのは、仮に島根県庁と環境庁との意見が対立した場合に、それでも湿地登録ということは環境庁はできるのかできないのか、それをお答えいただきたいと思います。
  142. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  なかなか難しい御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、こうした湿地が保全されるためには地元の理解と協力がなくてはならないわけでございます。  そういうことで、私どもは、環境基本計画の中で、あるいは生物多様性国家戦略の中で干潟の重要性というものを位置づけるとともに、例えば、鳥獣保護計画の策定に当たりましては、湿地等の保全につきまして関係の地方公共団体に広くお願いをしているところでございます。  やはり地元の理解と協力、同意ということは行政を進めるに当たりまして大変に重要な要素である、そのように考えております。
  143. 岩國哲人

    ○岩國委員 仮に地元自治体の同意が得られるとすれば、この中海地域は、ラムサール条約の湿地登録は十分可能であるというふうに判断しておられますか。
  144. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、合意を前提にいたしまして、そういう可能性は十分にあるところである、そのように考えております。
  145. 岩國哲人

    ○岩國委員 諌早についても中海についても、地元の県庁あるいは市等がこうした農水省等の事業に協力している立場、あるいは推進という立場をとっているときには、恐らくこういった湿地登録をやることについて非常に消極的ではないかと思われます。  今、中海において千四百ヘクタールの埋め立てが行われようとしておりますけれども、仮にこの本庄地区の干拓が計画どおり実行されてしまうとした場合に、そのでき上がりの状態、つまり千四百ヘクタールの水面が失われたとしても、なお湿地登録の条件は十分可能であるというふうにお考えですか。
  146. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま手元に詳細な資料がありませんけれども、私が理解しているところでは、この干拓事業が行われるところにつきましては、水鳥の渡来数が少ない場所であると理解しておりますので、可能性がある、そのように考えております。
  147. 岩國哲人

    ○岩國委員 次に、長官にお伺いいたします。  こうした中海のように、事業が始まってから相当期間経過しても工事が完了しない場合には、さらに、八年間工事が凍結さえもされておった、そのような経過を踏まえた後には、当然アセスを再度実施すべきではないかと思いますが、この点について長官の御意見をお伺いします。
  148. 石井道子

    石井国務大臣 中海のように着工済みの事業につきましては、事業着手前の環境配慮手続を定める環境影響評価制度の趣旨にはなじみがたいものであると考えます。  しかし、事業着手後に問題が生じた場合には、地域の環境保全の観点から地方公共団体が、あるいは当該事業に係る指導監督という観点から主務大臣が、それぞれの制度において適切に対応することが必要ではないかと考えられます。  環境庁といたしましては、問題が生じた場合に適切な対応がなされるように、各種の環境法規の適切な運用に努めてまいりたいと思っております。
  149. 岩國哲人

    ○岩國委員 この中海の場合には八年間事業が凍結されておりました。これは明らかに問題があったということが明白なケースであって、このようなときには、今おっしゃった環境庁長官の御判断に基づいて事業官庁にも当然させるべきでありましょうし、またそれについて、環境庁も積極的に、環境の面からそうした支障が生じたということであればなおさらのこと、環境庁がむしろ主務官庁となってこういうアセスを再実施されるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  150. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ちょっと補足して御説明させていただきたいのですけれども、本庄工区の埋め立てにつきましては、御案内のとおり、昨年の三月に環境庁からかなり詳細な追加調査を島根県に指示を出しております、申し入れと言っておりますけれども。  それから、今年度から二カ年かけまして農林水産省がそこで水質なり水産振興も含めまして調査をやることになっておりますので、あそこは湖沼法に基づく指定湖沼ということもございまして、干拓と水質という関係で実際の現況と将来予測を十分にやっていただいた上で事業をどうするかという判断をしたいと思っておりますので、その点だけ補足させてください。
  151. 岩國哲人

    ○岩國委員 その農水省による調査でありますけれども、農水省事業もこの四十年間の期間の変化とともに地元の期待値も相当下がってきております。現に、本庄干拓について、農水省事業でありながら農民も漁民も熱心に期待している人は非常に少ない。熱心に期待しているのはだれか。結局、県庁と市役所と商工会議所と議会、こういう人たちだけと言っても過言ではないぐらいに農民、漁民の期待が非常に薄れてきている。  特に、中海の一部をなします米子市の崎津地区という干拓地があります。御承知と思いますけれども、これは四十五年前に政府、県、市によって事業が始められ、干拓が完成し、それは農地をつくるということでありました。塩害等の問題があって結局農地としては使われることなく、十五年たつと、今度は工業団地として使おう。しかし企業誘致も成功せず、今度は十五年たつと、昨年からは馬券売場としてその土地を活用しよう。商業目的であります。士農工商という言葉がありますけれども、まさに崎津干拓は市農工商。私は市役所の市を書いています、それは行政という意味で、行政が始めている。農地としてやる。農地がだめなら工業団地。工業がだめなら今度は商業目的で馬券売場でいこう。まさに市農工商。十五年ごとに絵にかいたように変化させて、これだけ事業目的が三転四転している。にもかかわらず、環境アセス等の点から何ら行われることがない。  一番の問題は、国会の予算審議権が実質的に奪われているということです。事業目的が変わっているにもかかわらず、一度も国会で再審議が行われない。そして環境の再アセスも行われない。一遍認めた事業は、事業目的が転々としても、国会が介入することもできなければ環境庁の介入もできない。金の面からも環境の面からも手が出せない。これが今の一番の問題ではないかと思います。  農水省による森山堤防にパイプを埋めて行う新しい調査、これについて環境庁はどう評価していますか。
  152. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 森山堤防にパイプを埋設いたしまして潮通しをする、それによって水産振興の効果等を把握するという計画があることは承知いたしております。  ただ、パイプの設置方法等にきまして現在まだ調整がとれておりません。調査事業にも着手されておりませんので、今後専門家意見を聞きながら、調査の目的にかなうように適切に決定されることを期待いたしたいと考えております。
  153. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうした点についてはしっかりと環境庁関心を払っていただきたいと思います。  一説によれば、三本のパイプを埋めるということでありますけれども、縦に埋めるのか、横一列に埋めるのかによって随分この水質調査——御承知のように、中海の潮流というのは上水、中水、下水と、それぞれ違った水の流れ、そして潮流の速さも違います。それを横一列に並べたのでは、同じところを三カ所見ているだけの話になります。  同時に、魚も怖くて通りたくないような小さなパイプでは全く意味がないわけですから、そうした点、意味のあるようなものでなければ、これは、全くそうした時間稼ぎ、あるいは強行するための言いわけとしてこの調査が使われる可能性があります。たとえ事業官庁による調査であったとしても、それについては、不十分なものは不十分であるとはっきりと言い切る勇気を私は環境庁に持っていただきたいと思います。  この中海の中に一つの大きな島があります。大根島という名前で呼ばれておりますけれども、ボタンの産地として大変有名です。この大根島というのは天然現象として非常に不思議な島でありまして、これは二十五万年前に今の水面より百メートル海面が低かった。そのころにあった一つの火山が——多孔質の玄武岩、穴がたくさんあいたスポンジのような岩ですけれども、多孔質の玄武岩によって今下が守られております。長年の雨がそこでろ過されて、そしてそこには淡水がちょうどレンズのように、淡水レンズがそこに形成されている。きれいな水、そしてそれによって農業、特に花づくりが行われているわけです。これが本庄干拓によって島根半島と陸続きになってしまう。陸続きになってしまった場合にはこの淡水レンズは完全に破壊され、そして、この大根島という非常に貴重な天然現象としての島はその特徴を失ってしまうことになります。  こういう点について、地下水についてどういう影響が出るというふうに環境庁は判断していらっしゃいますか。
  154. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 まだ具体的な調査計画を拝見をいたしておりませんけれども、御指摘ありましたように、例えば地下水が上昇するとか塩水化のおそれがあるとか、そういうふうな心配も一部にあるわけでございます。私どもは、この調査につきまして十分注視をし、そして予算委員会あるいは環境委員会でも環境庁長官から申し上げましたように、事水質については、調査結果に基づきまして厳格な点検を行うという姿勢で臨みます。
  155. 岩國哲人

    ○岩國委員 ありがとうございました。  次に、中海の問題ではなくて、東京都の問題についてお伺いいたします。  東京二十三区の中に今清掃処理工場があちこちで計画されております。この二十三区の中に、計画中のものあるいは進行中の清掃処理工場は全部で幾らあるのか、そしてその所在地は。その区の名前だけを挙げていただきたいと思います。
  156. 野村瞭

    野村(瞭)政府委員 東京都から聴取したところによりますと、これから十二年度までに建設予定のところが五カ所ございまして、墨田区、港区、豊島区、渋谷区、中央区でございます。  それから、十二年度までに建てかえ計画があるところが三カ所ございまして、江戸川区、北区、江東区と、そのように聞いております。
  157. 岩國哲人

    ○岩國委員 私が聞いているのは全部で十一カ所。その中には文京区も入っているはずだと思いますけれども、そうした何年度までの計画というよりももう少し遅いのかもしれません。  御承知のように、東京都の場合にはそれぞれの区の中でごみ処理をしなきゃならないということで、今まで自分の区の中で処理しなかったところは建てなきゃならぬということでこのような建設ラッシュが行われているわけです。  豊島区の場合には、この煙突の高さは計画何メートルになっていますか。
  158. 野村瞭

    野村(瞭)政府委員 詳細なそのような情報は東京都からまだ聴取していないところでございます。
  159. 岩國哲人

    ○岩國委員 後からお調べいただきたいんですけれども、豊島区の場合には高さ二百二十メートル、これはすばらしい、高い煙突です。何のためか。隣の区に煙を流すためでしょう。隣の文京区は今度は二百二十五メートル。流し返すためでしょう。全部で十一本のすばらしい、高い煙突がこの東京の空に完成するんです。しかしそれは、東京の豊かさの象徴ではなくて、私は愚かさの象徴だと思います。十一本、一兆一千億円のお金をかけて。そして今は、燃えるごみは燃やさないで固形燃料として再活用する。静岡県、富山県、三重県、いろいろな県やあるいは自治体で、出雲市の場合にも固形燃料に変えております。煙突が一本なくなっていくんです。首都圏、三千万の人が住み、働くこの東京都の中において、それだけの大気汚染が二十一世紀に引き続き行われる。こういうことに対して、環境庁はもっと強力な自治体に対する指導を行うべきじゃないでしょうか。  地方分権、すばらしい言葉です。しかし、新しい技術を積極的に導入し、そして、そこの住民の幸せのために、健康な生活のために、強制することは決して地方分権の精神に反するものではなくて、こういうことこそ私は中央の指導力でやるべきではないかと思います。  長官にもし御意見があれば、お伺いしたいと思います。
  160. 野村瞭

    野村(瞭)政府委員 制度的なことも含めて、まず私からお答え申し上げたいと思いますけれども、清掃工場の廃棄物焼却炉につきましては、大気汚染防止法上のばい煙発生施設として規制対象となっておりまして、硫黄酸化物、それから窒素酸化物、ばいじん、それから、塩化水素に係る排出基準の遵守でありますとか施設設置の事前届け出等が規定をされておるところでございます。  都内に設置をされます清掃工場等の比較的大規模な施設の場合、個々の施設に係る排出基準に加えまして、工場全体から排出される硫黄酸化物でありますとか窒素酸化物につきましては、総量規制という制度もあるわけでございます。  さらに、最近大きな問題となっております焼却炉等からのダイオキシンにつきましても、現在、大気汚染防止法に基づく規制的措置の導入につきまして中央環境審議会の場で御審議をいただいておるところでございまして、答申をいただき次第、早急に所要の制度改正を行ってまいりたいと思っております。  御指摘いただきましたように、東京都でそのような計画があることも承知をしておりまして、必要に応じまして、東京都に対しましても大気汚染防止の観点から指導をしてまいりたい、そのように考えておるところでございます。
  161. 岩國哲人

    ○岩國委員 どうもありがとうございました。
  162. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会