○岩國
委員 長官のおっしゃいますように、こうした
国民に対し、とりわけ児童に対する
環境教育の徹底がこれからの
環境行政に一番私は大切なことだと思っております。どれだけ
国民が理解を示し、関心を示し、
協力してくれるか、それによって
環境行政は小さなコストで大きな成果を生むことができる。その点で、特にこの
環境問題については、小さいときの教育が一番大切ではないかと私は思っております。
例えば、私たちが小さいころ一番最初に読まされた教科書は「サイタ サイタ サクラガサイタ」、一番最初に木の大切さが出てきます。人間は
環境が悪くなったら逃げることができます。動物は
環境が悪くなったら動くことができます。あらゆる生物の中で、動くこともできない、じっと耐えなければならないのが植物、木でありまして、木はよい
環境をつくってくれる、しかし
環境が悪くなったらそこから自分を守ることができない。そういう点で、私は、もっと木を大切にする教育こそこれからの
環境教育の一番
中心になるべきだ、そのように思っております。
出雲市では、私は市長を六年間しておりましたけれ
ども、二期六年間の間、一遍も私はコンクリートの教室を、コンクリートの建物に判こを押すことをしませんでした。私の判こはコンクリートの建物で汚れることはありませんでした。
中学校、小学校、幼稚園、すべて木づくり。子供たちは木のぬくもり、木の感性、木のやわらかさの中で育ててこそ木の感性を持ったそういうまろやかな性格の子供に育ち、そして木と親しむ、木を大切にする、そのような
国民に育っていくと私は思っております。
私は、文部省は今まで間違ったことを五十年間してきたと思います。それは、コンクリートの教室で子供たちを教育する、コンクリートの中で育つ感性は、いじめの感性しか育たなかったんじゃないでしょうか。木づくりの教室こそ
日本人の一番いい性格を育てる。そして、この間橋本
総理もおっしゃっていました、
日本の伝統的な文化、木と紙の文化を大切にする。そのような感性は、私は木づくりの教室の中から生まれてきた、そのように思って、木づくりの教室に固執してきております。
学校の校という字、校舎の校という字、木が交わると書いてあります。残念ながら、木が交わっておる校舎はどんどん姿を消して、今は石が交わるような校舎ばかり。今度当用漢字を変えるときは、いしへんに交わるとあの字を変えないと、子供たちが教室の中で先生に手を挙げて
質問するに違いありません、なぜ学校の校という字は木が交わると書いてあるのですかと。
長官もおわかりになります。私たちもわかります。しかし、これからの子供たちはわからない。ですから、いしへんに交わるとあの字は変えなければならない。私は、きへんに交わる、あの字の方を愛しております。だからこそ木づくりの校舎に私は固執してまいりました。
ある動物学者の実験によりますと、木の犬小屋、コンクリートの犬小屋、同じ犬の兄弟を別々の犬小屋で育てますと、木づくりの犬小屋で育った犬の方がはるかにいい性格に育つ。
犬でさえと言うと犬に対して大変失礼ですけれ
ども、ましてや人間の子、私は、出雲ではいい子がとれる、とれるんじゃなくて育つ、そのように言ってもらうために、木づくりの校舎で育てる、それにこだわってきました。
全国六百六十三の市議会の中で、木づくり校舎
推進決議という決議をしたのは出雲市議会だけであります。私は、そういう決議を尊重し、木づくり校舎を
推進してまいりました。
こうした
環境行政の観点から、
環境教育の観点からも、もっと
国民教育の場で木を大切に、まず教育の場にもっと木を取り入れること、それをもっと
関係者は声を大にして訴えるべきではないかと私は思います。
公民館も木づくりであります。そうしたコンクリート
時代の公民館、一年間に一万四千人の人が使っておりました。木づくりに変わって一年目、二万八千人、三年目、三万九千人、一遍に二倍、三倍の人が、木づくりの建物であるから、月に二回しが行かなかったおばあさんが月に四回行く、今まで行かなかったおじいさんまでが行き出す。利用者が二倍、三倍にふえるということは、利用者一人当たりの建築コストが二分の一、三分の一に下がるということです。こうした市民
生活の中にも、私は、木をもっともっと大切にする、そのような教育また
行政が望ましいのではないかと思います。
今から五年前に、松江市で
日本木材学会、いろいろな研究発表がなされました。その中で、住んでいる家と寿命との
関係について、こういう研究
発表がされております。
三つの結論が出ておりました。一番目の結論、高いところに住む人と低いところに住む人ではどちらが長生きできるか。低いところに住む人の方が長生きできる。二番目、木づくりの建物とコンクリートの建物はどちらが長生きできるか。木の建物に住んでいる人の方が長生きできる。三番目、
最後ですけれ
ども、女性と男性ではどちらにその影響がより大きくあらわれるか。女性の方にその影響がより大きくあらわれる。
三つの結論を
一つにまとめるとどういうことになりますか。木づくりの一階建ての家に住んでいるおばあさんが一番長生きするということなんです。コンクリートのマンションの一番上に住んでいる男は一番最初に人生が終わるということなんです。
人生五十年と言ったころには、どんな家に住んでも、影響が出る前にもう寿命の方が終わっておりました。今は違います。人生七十五年、八十年、八十五年、九十年、元気で長生きする。そういう高齢化
時代を迎えているそのようなときだからこそ、私は、木の建物をもっと
認識し直すことが必要だと思います。
少し説明が長くなって恐縮ですけれ
ども、出雲市は木のお医者さん、樹医制度を持っております。人間が病気をしたらお医者さんがいる。動物が病気をしたら獣医さんがいる。木にも命がある。その命ある木にだけはお医者さんがいない。私は間違いだと思いました。
樹木の樹、樹医制度、四百万円で始めた制度、十人の木のお医者さん。庭の木、道端の木、元気がない、病気じゃないか。樹医さんが飛んできて、無料で診断して、そして木は元気になる。
たったそれだけのことで市民に対する教育効果があります。たったそれだけのことで小さな子供にもすぐにわかります。木にもお医者さんがいる。木にも僕たちと同じように命があるんだ。
木に命があるということを知ってしまった子供たちは、木をいじめなくなるのです。そういう子が大人になれば、木を大切に、森を大切に、山を大切に、
地球を大切に、自然を大切に。
環境、
環境と朝から晩まで新聞、テレビは言っていますけれ
ども、一番大切な
環境教育の原点は、私たちの身の回りの木にも緑にも命があるということを小さな子供のうちに教えること。私は、
環境教育の
中心に、ぜひともこうした樹医制度も含めた木の教育を学校教育の中で大きく取り上げていただきたい、そのように思います。
この樹医制度、今農水省、林野庁が採用し、全国に二百六十人が既に誕生しております。こうした木を
中心とした
環境教育について、御担当の
局長あるいは
長官の御所見を
お願いしたいと思います。